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1961-06-01 第38回国会 衆議院 社会労働委員会 第41号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年六月一日(木曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 山本 猛夫君    理事 大石 武一君 理事 齋藤 邦吉君    理事 永山 忠則君 理事 藤本 捨助君    理事 柳谷清三郎君 理事 小林  進君    理事 滝井 義高君 理事 八木 一男君       伊藤宗一郎君    上村千一郎君       浦野 幸男君    小沢 辰男君       亀岡 高夫君    久保田藤麿君       倉石 忠雄君    藏内 修治君       櫻内 義雄君    澁谷 直藏君       田中 正巳君    服部 安司君       松浦周太郎君    松山千惠子君       赤松  勇君    大原  亨君       河野  正君    五島 虎雄君       島本 虎三君    田邊  誠君       中村 英男君    吉村 吉雄君       井堀 繁雄君    本島百合子君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         厚 生 大 臣 古井 喜實君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         総理府総務長官 藤枝 泉介君         総理府事務官         (調達庁長官) 丸山  佶君         総理府事務官         (調達庁不動産         部長)     柏原益太郎君         総理府事務官         (調達庁労務部         長)      小里  玲君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木 才藏君         厚生政務次官  安藤  覺君         厚生事務官         (大臣官房長) 高田 浩運君         厚 生 技 官         (医務局長)  川上 六馬君         厚生事務官         (児童局長)  大山  正君         厚生事務官         (保険局長)  森本  潔君         厚生事務官         (年金局長)  小山進次郎君  委員外出席者         文部事務官         (管理局教育施         設部長)    田中 徳治君         文部事務官         (管理局教育施         設部計画課長) 中尾 龍彦君         厚 生 技 官         (環境衛生局         長)      聖成  稔君         労働基準監督官         (労働基準局労         働衛生課長)  加藤 光徳君         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 六月一日  委員浦野幸男君及び中山マサ辞任につき、そ  の補欠として山口好一君及び上村千一郎君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員山口好一辞任につき、その補欠として浦  野幸男君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月三十一日  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全印刷局  労働組合関係)(内閣提出議決第一号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全造幣労  働組合関係)(内閣提出議決第二号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全専売労  働組合関係)(内閣提出議決第三号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全林野労  働組合関係)(内閣提出議決第四号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(日本国有  林労働組合関係)(内閣提出議決第五号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(アルコー  ル専売労働組合関係)(内閣提出議決第六  号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄労働  組合関係)(内閣提出議決第七号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄動力  車労働組合関係)(内閣提出議決第八号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄職能  別労働組合連合関係)(内閣提出議決第九  号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄新潟  地方労働組合関係)(内閣提出議決第一〇  号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄金沢  地方労働組合関係)(内閣提出議決第一一  号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(新国鉄大  阪地方労働組合関係)(内閣提出議決第一二  号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全逓信労  働組合関係)(内閣提出議決第一三号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全国特定  局労働組合関係)(内閣提出議決第一四号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全国郵政  労働組合関係)(内閣提出議決第一五号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全国電信  電話労働組合関係)(内閣提出議決第一六  号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全国電気  通信労働組合関係)(内閣提出議決第一七  号) は、内閣総理大臣から議長宛昭和三十六年度特 別会計予算補正(特第1号)及び昭和三十六年度 政府関係機関予算補正(機第1号)が成立し裁定 を実施し得る見込が明らかになった旨の通知があ ったので自然消滅となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国民年金法の一部を改正する法律案内閣提出  第一一七号)  通算年金通則法案内閣提出第一四八号)  通算年金制度を創設するための関係法律の一部  を改正する法律案内閣提出第一四九号)  年金福祉事業団法案内閣提出第一三三号)  児童扶養手当法案内閣提出第一三九号)  国民年金法案八木一男君外十四名提出衆法  第四号)  国民年金法施行及び国民年金と他の年金との  調整等に関する法律案八木一男君外十四名提  出、衆法第五号)  国民年金積立金運用に関する法律案八木  一男君外十四名提出衆法第九号)  厚生関係及び労働関係基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 山本猛夫

    山本委員長 これより会議を開きます。  この際御報告いたします。昨五月三十一日付の公報に掲載されております通り、五月三十一日、内閣総理大臣から衆議院議長に、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件、全印刷局労働組合関係議決第一号、同じく全造幣労働組合関係議決第二号、同じく全専売労働組合関係議決第三号、同じく全林野労働組合関係議決第四号、同じく日本国有林労働組合関係議決第五号、同じくアルコール専売労働組合関係議決第六号、同じく国鉄労働組合関係議決第七号、同じく国鉄動力車労働組合関係議決第八号、同じく国鉄職能別労働組合連合関係議決第九号、同じく国鉄新潟地方労働組合関係議決第十号、同じく国鉄金沢地方労働組合関係議決第十一号、同じく新国鉄大阪地方労働組合関係議決第十二号、同じく全逓信労働組合関係議決第十三号、同じく全国特定局労働組合関係議決第十四号、同じく全国郵政労働組合関係議決第十五号、同じく全国電信電話労働組合関係議決第十六号、同じく全国電気通信労働組合関係議決第十七号、以上十七件については、昭和三十六年度特別会計予算補正特第一号及び昭和三十六年度政府関係機関予算補正機第一号、いずれもこれが成立し、それぞれの裁定を実施し縛る見込みが明らかになった旨の通知がありました。以上の結果十七件はいずれも自然消滅となりましたので御報告いたします。     ―――――――――――――
  3. 山本猛夫

    山本委員長 次に、内閣提出国民年金法の一部を改正する法律案通算年金通則法案通算年金制度を創設するための関係法律の一部を改正する法律案年金福祉事業団法案児童扶養手当法案八木一男君外十四名提出国民年金法案国民年金法施行及び国民年金と他の年金との調整等に関する法律案国民年金積立金運用に関する法律案、以上八法案を一括して議題とし、審査を進めます。質疑を許します。八木一男君。
  4. 八木一男

    八木(一)委員 ただいま議題となりました国民年金関係の諸法案につきまして、内閣総理大臣並びに厚生大臣に御質問を申し上げたいと存じます。  まず、総理大臣に御質問を申し上げるわけでございますが、民主主義政治においては正しい世論を尊重いたしまして、これから議会論議ほんとう国政に即時反映するようにしていくことが要諦の重要な部分であると存じまするが、総理大臣いかがお考えでございますか。
  5. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 全くお話通りでございます。
  6. 八木一男

    八木(一)委員 議会論議の結果が即時に国政に反映することにつきまして、総理大臣の、私ども考えと同じ御答弁をいただいて非常にけっこうでございますが、実際の議会政治においてそれが反映しない部分があることを総理大臣はお認めになると思うわけであります。と申しますのは、議会論議が、予算論議法律案論議が時間的に離れて行なわれております。時間的に離れておりますがために、法律案論議において与野党とともにこの法律はこうしたらよかろうという結論に達した、国民代表のあらゆる政党の方がその結論に達しても、その前に総括的な予算審議できめられたワクに従って、それが自由がきかないということは、今の国会運営上非常に重大な難点の一つであります。それについて総理大臣いかがお考えでございましょうか。
  7. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 原則といたしましては、これが一緒になるのが望ましいのでございます。しかし予算の組み方、また議会あり方、今までの慣例等からいたしまして、ちぐはぐになる場合があることは私も存じております。しかしそのちぐはぐとなった場合に、次年度予算あるいは施策にこれが盛り込まれることが望ましいと私は考えておるのであります。だから建前といたしましては、両方とも一緒にするということがほんとうでございますけれども、御案内の通りいろいろな関係いかない、そういう場合におきましては、議会の気持を翌年度に実現するように努力するのが私は政治だと思います。
  8. 八木一男

    八木(一)委員 大体総理大臣のお考えは了承できるのですけれども、それだけではやはり不十分だと思うわけであります。施策の中にはその年に実行することが非常に国民のために望ましいものもございます。それが次年度ということであれば、国民代表のすべての政党によってそれがいいという方向施策に移されることが一年間ずれるということになります。そういうような欠点をできる限りにおいて克服していく努力与野党ともになされて参らなければならぬと思うわけであります。ことに野党立場から申しますと、予算案の総ワクを作りますときに、与党方々は、現状におきましては内閣与党政策審議会その他の部門の方が相談になりますから、ある程度与党の方の意見が入っておるわけであります。与党の方は政治を熱心にいろいろ考えられる、しかしながら野党の私ども意見を聞いて、なるほどそれはそうであったと思われることもあるわけであります。われわれもまた与党の方が言われることについてなるほどそうであったと思うことも――そんなに多くありませんが、たまにはないでもないわけであります。そういうことで、議会論議で両党の意見が戦わされて、両党がそれがいいと思われたときに、予算与党方々意見だけ――そのときの意見といっても全部入っておりませんけれども、ある程度入ってそれが調整されて予算がきまる。予算が実際上修正された例が、今までの自由民主党が絶対多数をとっておる国会運営ではない。そういうことが行なわれておらないということであれば、今おっしゃったような、ほんとう国会論議国民のために確かにこれは即時やらなければならないということが実施できないということになるわけであります。ことに国会の三分の一以上を占める野党意見を尊重せられなければ、ほんとう民主主義政治ではないと思うのでありまするが、野党意見が入ることは皆無であるという状態になるわけであります。そこでこれからの国会運営を根本的な考え方に立って直して参らなければならないと思いますが、現状においてそういう状態考えられましたならば、翌年にこの論議を実現されることはもちろんでございまするが、たとえばそのことを翌年完全に実施できるように今から法律案だけは直しておくとか、補正予算を組むとか、また補正予算が十月に提出される場合を予想して、十月以降の問題については今から直ちにそれを確定しておくとか、そのような配慮が重大な問題についてはなされるべきであると私ども考えるわけであります。総理大臣ほんとう民主主義政治立場に立った御答弁をお伺いいたしたいと思います。
  9. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 予算編成の場合に与党意見が入るということは、これは政党政治だから当然でございます。それから理想として予算編成の際に各党の意見を聞くかという問題もございましょう。しかしそれは先進国の例ではございません。英米においてはもちろんございません。ことに英米におきましては、予算の内容につきまして、与党も知らないというふうなのが通例でございます。従いまして、理想的なあり方としては、予算審議過程におきましてこれを修正するということが本筋だと思います。この予算提出権内閣にありますけれども修正国会がし得る。そこで内閣予算提出権修正権とのかね合いの問題がございます。私はこの款、項につきましては、提出権政府にある以上はできませんが、目その他につきましてのやりくりは、たといある程度の増額があってもこれはやるのが常識じゃないか、こういうふうに考えておるのであります。だから、今後におきまして、予算審議過程において与野党一致か、あるいは一致じゃなくても、修正案が通るということにつきまして、政府はりっぱなものなら望むところでございます。これはほんとうの民主的なやり方だと思う。しかし、今国会の様子を見ましても、私はそういう弾力的考えを持っておったのでございまするが、何分にもこちらの譲ることのできないところに手をつけられるものですから議がまとまらなかったのでございます。私は今後与野党がそういうふうに話し合って、政府考えている以上の予算修正ができることが望ましいことであるというふうに考えております。それでは通常国会審議されたものを補正予算に出す、あるいは補正予算を組む機会がなければ、次の通常予算でやるか、いろいろ問題は出てくると思いますが、これは先ほど申し上げた通りで、何と申しましても、国権の最高機関国会でございます。ただ問題は、予算提出権とのかね合いということはお考え願わないと、憲法上の問題があると思います。
  10. 八木一男

    八木(一)委員 総理大臣の御答弁まことにけっこうであります。予算国会において直す権限は当然あるわけでございまするが、国会を運営しておられる絶対多数党である自由民主党の今までのやり方で、実際の国会予算修正権が動かないという状態にあったわけであります。こういう状態であれば予算も動かせない、予算関係のある法律案も動かせないということであれば、議会というのはただからくり細工をやっているだけであって、実際は選挙が済んで多数党の内閣が成立しますと、議会という手続を経ているだけで、実際上は独裁的なやり方をやっていると言われても仕方がないわけであります。このような今までの自由民主党の多数党のやり方について、断固としてこれから反省をされて変えていかれなければならないと考えるわけであります。それとともに今の時点において、本年度予算は残念ながらわが党は、最小補正国民立場に立って修正を言ったわけでございまするが、わが党からすれば、自由民主党皆様方国民立場を御理解にならないで修正交渉ができなかったことを非常に遺憾に思っておるわけでございまするが、それはそれといたしまして、予算は今残念ながらこのようなまずい予算が通ってしまった。通ってしまって、それから後に予算関係のある重大な法案審議をされている。重大な法案審議している際において、これはどうしてもこうした方がいいということを与党野党もみな思っているのに、予算に縛られていろいろとやりにくい。われわれはそういう縛られることはないと思いまするけれども、そういうことは断じてないのでありまするが、議会の多数を占めておられる自由民主党においてそのような形式論で、前線で熱心に審議をしておられる自由民主党の議員の人々を縛るというようなことが行なわれて、そのために、今からでも少しでもその誤りを正そう、おそきを急がせようということにブレーキがかかっている点は非常に重大であります。その点について、総理大臣であり、また与党最高責任者であり総裁である池田さんが、今までのこのあやまちを将来大きく直すという方向を示されたことは非常にけっこうでありまするが、今の時点におけるその誤りの影響を最小限度に食いとめる、そのような実際必要なことが即時やれるというふうにしようという決心総理大臣総裁である池田さんがなさいましたならば、この問題の間違いは最小で済むわけであります。その意味において、池田さんの前進的な国民のための御答弁をお願いいたしたいと存じます。
  11. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 この問題につきましては、先ほどお答えしたところで尽きていると思います。私はあくまで与野党考え方が近寄ってきて、ほんとうに円満に審議が行なわれることを期待いたしておるのであります。そのためには、われわれとしてもできるだけ譲るべきは譲ります。譲れるように野党もすることが必要であろうと思います。
  12. 八木一男

    八木(一)委員 次に、池田内閣総理大臣所得倍増論というものに非常に確信を持って宣伝をしておられるようであります。国民所得がどんどんふえるということは非常によいことであります。私ども倍増くらいでは足りないと思っておるわけでございますが、問題は、この倍増ほんとうに必要なところに倍増以上の増加がいき、国民の今の生活の格差というものがなくなっていくか。急速にほんとうになくなるかということが問題であります。ところが、池田さんのやり方を見ると、私どもはどう考えても、大資本がはびこって、そうして今生活に苦闘しておられる方の生活はなかなかによくならないという状態であろうと思うわけでありまするが、それについて池田さんはどのように考えておられ、どのようにこの問題に対処しようとしておられるか、ごく簡単でけっこうでありまするから伺わしていただきたい。
  13. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私が政界に入りましたときの決意は、やはり国民生活水準の引き上げと社会保障制度拡充完全雇用ということも言いましたが、この方針で私はいっておるのであります。国民努力によりまして、御承知の通り名目的には三倍半になり――昭和二十四年に私が予算を作ったときから比べますと、予算倍半ですが、総生産、国民所得は三倍半、四倍近くになろうとしておる。社会保障制度におきましても、私がこの前社会保障関係表彰式に出ましたときに申し上げようかと思ったのですが、私初めて予算を作りました昭和二十四年の社会保障関係経費は二百四、五十億円だったと思う。本年のことを考えますと、ほとんど十倍近くになっておる。しかも軍人遺家族というふうなところへもいっておる。広い意味社会保障ということにつきましては、私は世界でもないくらいのテンポでいっておると考えておるのであります。
  14. 八木一男

    八木(一)委員 池田総理大臣がそのように考えておられると私どもは非常に困るわけです。不安なのであります。今のようなもので相当進歩をしたというような考えでは、自由民主党政権をとっておられる限りにおいて、社会保障ほんとう意味の発展を示さないと思う。今のは非常に不十分である、幾分伸びたが、伸び方が急速でないと思うという御答弁がいただければやや安心ができるわけでありますが、それが急速度であるというお考えを伺ったら、国民のために非常に悲しむべきことだと思うわけであります。今度社会保障関係は総体的に少し予算はふえておりまするけれども、これは池田さんの前に政権を担当しておられた岸内閣時代国民保険のことがきまり、今度は皆保険を達成する時期である。従ってそれが当然増の経費が相当あるわけであります。また国民年金においても二年前に発足をいたしました。それがことしは法律上やらなければならない時期に達した。無拠出年金については満一年の予算を組んでおらなかったのを、満一年の予算を組まなければならない。また拠出年金について保険料の五割を支出しなければならない。これは池田内閣以前からきまっておったのであります。生活保護を一八%上げたと言われたいだろうと思いますし、失対の賃金を上げたと言われたいだろうと思いますけれども生活保護の実態は十割ぐらい上げなければこれに対処できない事態なんです。池田内閣の初頭においては二五%くらいだということを宣伝されていたけれども、それが一八%にとどまっておる。これは重大な公約違反であります。従って、社会保障に関する限り非常に伸びたとか、十分であるとかいうようなことは断じて言えない状態にあるわけであります。このことを深く御理解をなさっていただいて、社会保障はおくれておる、所得倍増で底辺にある人は五倍も十倍もふやさなければこれは問題にならない。その要点は社会保障であるということを観念的に池田さんは言っておられるだろうと思うが、それをほんとうに実際にするために決心を示していただかなければ国民は納得しないと思うわけであります。それについての総理の御決心を明確に伺いたいと思います。
  15. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は過去の歩みを言っただけであって、これで十分だとは言っておりません。政治の目標はこういうところにあるということを基点にして言っておる。これはいろいろ見方がございます。今のお話では、当然増の分が予算がふえても意味をなさぬのだ、こういう考え方は私はいかぬと思う。やはり予算の当然増であろうが新規であろうが、私はそれは同じように重要視すべきものだと思います。私は池田内閣がどうこう言っておるのではございません。岸内閣、またその前の内閣、われわれ保守党の考え方自由民主党考え方がこうだということを言っておるのであります。今後におきましても、先ほど申し上げましたように、社会保障制度拡充政治のもとでございます。この点につきましては、十分意を用いていきたいと思います。
  16. 八木一男

    八木(一)委員 そのように、今後十分意を用いて、急速に前進されるということであれば非常にけっこうであります。ただ当然増の問題については……。   〔発言する者あり〕
  17. 山本猛夫

    山本委員長 静粛に願います。
  18. 八木一男

    八木(一)委員 当然増の問題については、総理の御答弁ではこれは不十分であります。当然増ということは、二年前からそういうことがきまっているということであります。社会保障を伸ばすということは、新規増がなければ伸ばしたということにならないわけであります。その意味で、違う意味があることを、賢明な、非常にそういうことに明るい総理大臣はおわかりにならないはずがないわけでございまして、そういう点で、当然増という今の御説明、そういうような問題を離れて、当然増は前にきまったことだ、社会保障は急速に伸ばさなければならないから、当然増に加えて新規増を大いにやらなければならない、やる気持であるというような態度で言っていただかなければならないと思うわけであります。  次に、年金制度について伺いたいと思いますが、国民年金制度というものは、またそれに関連する被用者の年金は、社会保障の中の所得保障という一つの大きな柱であって、社会保障を進める意味において、国民年金制度並びに関連の被用者年金を急速にりっぱなものにしなければならないことについて、総理大臣はどうお考えでございましょう。
  19. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 医療制度と年金制度は社会保障の二つの柱でございます。われわれはこれをともどもに伸ばして大きくしていきたいと考えております。
  20. 八木一男

    八木(一)委員 積極的な御答弁でけっこうでありますが、本年においては、この年金制度についてはほとんど伸びていないと言うことができるわけであります。いささかの改正案を出されましたけれども、この年金の全貌、全体の総量から見れば、これは改正すべきものの百分の一ぐらいの改正にしかならないわけであります。社会保障に熱心に取り組む、社会保障の中で年金制度が非常に重大な意味を持っていると言う池田総理大臣考えと背違した結果になっているわけであります。このような軽微な改正案であり、しかもその中に、重大な欠陥を直そうという意図が盛られていないことについて非常に遺憾に存ずるわけでございますが、それについての総理大臣の御答弁をお伺いいたしたいと思います。
  21. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 先ほども申しましたように、重要な仕事でございますから、力を入れていかなければなりません。しかし、およそ政治にも順序があり、そして全体の調和ということを考えいかなければいけない。社会保障ばかりがいって、国民全体の福祉、力というものが弱るようじゃいけない。力を伸ばしながら重点的に社会保障に持っていこう、こういうことでございます。
  22. 八木一男

    八木(一)委員 単刀直入に、総理大臣の御答弁の中に非常にわれわれの考え方と違った点があって、論駁をいたしたいわけでございますが、もっと具体的な問題がありますので、他日に譲りまして、具体的な問題に入りたいと思います。  年金制度については、実は岸内閣当時に、坂田厚生大臣の時代に提出をされました。そこで国会において大いに論議をされて、各党ともそれが非常に不十分である、仕組みにおいて非常に不合理な点があるということを指摘をされまして、そのときの岸内閣総理大臣並びに坂田厚生大臣はそれを認めておられるわけであります。ただしこれは生まれたての、今生まれようという法律である、拠出年金については二年後に出発をするわけであるから、それまでにこの欠点については十分に直す案を準備をして改正案を出すからということで、われわれは反対をいたしましたけれども与党の熱心な諸君をくどかれまして、その意味で多数であれが通ったわけであります。そういう意味で、あの当時からはっきりとこれについては、組み立てについてもっと根本的に考え直さなければならない。その給付の非常に不十分である点については十分にしなければならないということで、自民党内閣みずからの手によって、そういう意味でやりますからということが確認されて、約束されているわけであります。自民党内閣の主宰者である池田さんはそれを踏襲する義務があります。その意味で今度の改正案は非常に乏しいものであり、現行法自体について抜本的に直そうという意欲を示されなかったことについて、国民は非常に憤激しておるわけであります。このことについて池田さんの御答弁をお伺いいたしたいと存じます。
  23. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 今回出している案は、やはり自由民主党全体の考え方でございまして、従来の考え方と変わっていないのであります。
  24. 八木一男

    八木(一)委員 そのように形式的に御答弁になるのでは、ほんとう審議が進みません。そうではなしに、岸内閣当時の論議を、池田さんはもちろん重要なほかの任務を持っておられて、社会労働委員会の委員でもないから、そのときのことを御記憶にならないと思いますけれども、そのようにりっぱなものにしなければならない、それを拠出年金をするまでにするからということで、与党の方も納得されてなった。野党も大いに批判いたしましたけれども、そうであろうということを期待し、そのような政府答弁であったことを報告し、国民もそれを期待をしておったわけであります。それにもかかわらず、国民のその期待に沿うような案を出しておられないことは非常に残念であります。ことにこの前の案においては非常に不十分で、特に根底が間違っておるわけであります。六十五才、月三千五百円という金額、このようなものであったならば、ほんとう所得保障とは言えないことは、池田さんはすでに御存じだろうと思います。この前の生活保護基準の全国六大都市一人当たり水準約二千円を基底といたしまして、それに経済成長率二%という推定をいたしまして、資本蓄積に名をかりて五%だけそれを減らして、そうして設定した金額が四十年後月三千五百円という金額であります。その四十年後にそれを実行するという考え方に立って、それをさらに五年延ばして実行は四十五年後に年金支給をする、そのような粗末な案であります。これは池田さんが考えられても恥ずかしいと思います。所得倍増論を言われるが、所得はこのような老齢者あるいはまたこのような障害者、母子家庭の所得ももちろん増加をさせようという気持を池田さんは持っておられるはずであります。ところがこのような長期間かかって、そのような状態の人に、今の生活保護基準と同じような考え方保険料を払って、四十五年後にやっと払われる。そのもとが経済の成長二%という間違った計算から出ているわけであります。池田さんは経済を九%ずつ成長させると言っておられる。池田内閣はいつだれと交代するかわかりませんが、交代するとすれば河上内閣でしょう、河上内閣のもとで、日本社会党においてはそれ以上に経済成長を考えているわけであります。自民党内閣であろうと社会党内閣であろうと、日本の経済はそれ以上に発展をする。そういう状態において、経済成長を二%と設定して考えたような金額、そのような年金法を二年もかかってそのままにするというようなことは、政府の重大な怠慢であります。池田さんは経済成長についてはおれにまかせておけと言われるくらい自信をお持ちであろうと思います。この方が、このような池田内閣をばかにしたような根底からできた年金額を、そのままにしてやっておいていいものであろうかどうか。これは池田総理大臣のほかの政策との関連において重大な矛盾であります。池田さんは矛盾を正し、それを前進する方向をとられなければ、政治家としての道を踏んだと言うことはできないでしょう。池田総理大臣のこの面に対する御答弁をお伺いしたいと思います。
  25. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 国民年金お話しのように非常に長い目で見なければならぬものであります。三年間九%という一応見込みを立てておりますが、との年金の掛金は、あるいは財政上の問題等から考えまして、ただいまはこれで出発するけれども、将来私の考えるようにどんどん伸びていく場合におきましては、その伸びようによって、力のつきようによって変えていくという建前をとっているのであります。このままでずっといくというのではないのであります。四条か五条に書いてあると思います。
  26. 八木一男

    八木(一)委員 もちろん経済の成長の実態に応じてどんどんそれを変えていく、方向としては増大をしていく、これは当然である。しかし目標金額をあまりに低いところに設定したところに間違いがあります。国民年金というのは国民のためのものであります。そういうよいものがあると言ったならば、国民はそれに期待をすることによって非常に安心して生産にいそしめるでありましょう。またその制度に同調、理解をしてそれに協力をするでありましょう。それをあまりにも低きに設定をしたために魅力がない。そういうことのために年金ほんとうに重要なことが浸透しない。そういうものがあるという安心感で生産にいそしむことができないということであってはいけないと思う。あまりにも低い。ですから余裕を残してもよろしい。二%のかわりに三なり四なりを設定して、それ以上に、池田さんの言うように九%伸びるならば、その時点において変えられたらいいでありましょう。初めから二というようなことは、日本のこれからの政治家の施策あるいは国民努力を全く無視した、国民全体をばかにした設定であります。国民は生産にいそしむ。それだけの経済成長はありますでしょう。政治家はそのかじをとる。ばかな政治家ばかりではありません。二%以下の経済成長しかしないと考えるような政治家は、どの内閣になってもないでありましょう。国民政治家もばかにしたようなこんな設定をそのまま池田さんが認めていいものかどうか。設定をもう少し高くして、それ以上に伸びたときは、その時点において変えられたらけっこうであります。その点についての池田さんのお考えを伺いたい。
  27. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 先ほどお答えした通りでございますが、この二%というのをもっと上げろ――今の国民生活現状所得の状況から申しまして、むちゃな上げようは政治ではございません。私は、この国民年金というのは農民あるいは中小企業、こういうふうな、どちらかといったら非常に低い階級の人を目当てにしておる。今の掛金でこれじゃ少な過ぎるという意見が圧倒的でしょうか。片一方でこれでもなかなかむずかしいという意見が相当あるのです。だから、いいことでございますから早くスタートいたします。しかしその後において、事情を見ながらこれを上げるように努力していくのが政治である。しかもこの点におきましては、財政負担その他もありますので、長い目で見て、そうしてみんなのやりいいようにしていくのがいいのじゃございますまいか。六十キロ走る汽車でも初めは徐々に行くのがほんとうなのです。私はそう考えて、どちらかといったら軽いぐらいなところからいくことがこの制度をよくするゆえんであると思います。
  28. 八木一男

    八木(一)委員 池田さんの御意見に半分賛成であります。あと半分、反対のところに重要な点がありますが、ほかの具体的な点がありますから……。もう御答弁を一々求めなくても、池田さんは聡明な政治家でありますから、私が言っていることの正しいことを認められるにきまっておりますし、それをしなければならないという気を起こされるにきまっているのです。若造の話なのですけれども、この問題については池田さんと同じようによく研究しておりますからよく聞いてもらいたいと思います。私は何も保険料の負担を上げろということを言っているのじゃない。国民経済の成長があれば税の自然増収があるであろう。そうなれば財政的に余裕ができるであろう。今の三分の一の国庫負担、それがいいというようなことは、世の中の社会保障の社の字でも知っている人は思ってもおりません。税の自然増収の見込みがたくさんあれば、それに対しての国庫負担の見込みがつくでありましょう。そうしたならば、保険料など上げないで金額を増大する、開始年令を引き下げるということができるわけであります。そういうことをすぐ御答弁にならないところに、池田さんの社会保障に対する御理解なり御熱意なりが少ないと言わざるを得ないわけであります。当然社会保障の論理はそういう方向に立つことであり、経済が成長すれば財政の資金になって回ってくるということは、社会保障の社の字でも知っている人の考え方であります。そういう点についてもっと理解を深めていただいて前進をされるという方向をとられなければならないと思いますが、時間がないようでありますから、その次のもっと根本的な点に参ります。  年金について去年から非常に批判運動が起こっておる。反対である、ほんとうに抜本的な改正をするまで延期をしてくれという運動が全国にほうはいとして起こっておりますことを、池田総理大臣は御存じだろうと思います。その理由は何かということを池田さんは御存じでありましたら伺わせていただきたいと思います。
  29. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私の話を半分でもおわかり願えたことを光栄に存じます。非常に専門的な話ですが、なかなかよくおわかりいただけたと思います。国民年金についてのいろいろな議論を聞いております。われわれもそういうことに耳を傾けて今回の改正案を出しておるのであります。とにかく根本は経済基盤を強化して、できるだけたくさん社会保障制度に持っていこうという私の考えはおわかりいただけると思います。
  30. 八木一男

    八木(一)委員 その批判の方を、これは総理大臣であられるので御専門でありませんから、こっちから申します。批判の中には、金額が少ないとか開始年令がおそいということもありますけれども、根本的には、この政府拠出年金制度が社会保障的でない、社会保険的であるということにこれが由来をしておるわけであります。社会保障的ということは、それが必要な人に必要な給付がいくということであります。所得保障は必要なところに必要な給付がいくということであります。社会保険的というのは、端的に申しますと、保険料を払った度合いに応じてその給付を受けるということであります。その社会保険の味が強過ぎれば、年金という制度は意味をなさなくなるわけであります。保険料の負担できる人は易々として負担ができるけれども、そのような人は所得保障の必要度はほかの人より少ないわけであります。その保険料の負担に耐え得ない人が、お年寄りになったときに、その人がなくなって遺族が生活するときに、また障害を受けたときに、一番所得保障の必要が多いのであります。そういう人に給付が少なくいったり給付がいかないということであれば、社会保障ではないのであります。所得保障ではないのであります。国民年金法第一条に書いてある憲法二十五条の精神とは違うわけであります。そういう点を直される方向をとられないと、ほんとう意味国民の納得、協力は得られないわけであります。その点についての池田総理大臣の、前にだんだん進んでいこう――われわれは急速に進むことを期待をいたしますけれども、少なくともその方向に進んでいこうという前進的な御答弁をいただかなければ、日本国民池田内閣社会保障という言葉の社の字も信用しなくなるでありましょう。私どもは自民党が勢力失墜することを好むものではありません。もちろんわれわれが政権を握ってわれわれの政策を実現する意思でありますけれども、それ以上に国民ほんとうによい政治の恩恵を受けるということが肝心なのであります。その意味年金社会保障的に進めるという前進的な意味総理大臣の御答弁を心から期待するものであります。総理大臣ほんとう国民政治家であろうとなさるのであれば、今まで不十分であっても、これからはその方向に進もうという気持を披瀝していただく必要があろうと思います。
  31. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 ただいまの年金は社会保険的のにおいが強過ぎる、社会保障的のにおいをもっと織り込まなければならぬという議論は存じております。しかしその答えは、先ほど申し上げましたように、今の日本の状態から考えて、今はこれでいきますが。将来は社会保障的の年金にするように努力しよう、これはだれも同じ考えだと思います。
  32. 八木一男

    八木(一)委員 野党質問だからなるべくかわそうという意味ではなしに、ほんとう意味で答えていただきたいと思うのであります。私どももほかに申したいことはずいぶんあるけれども、それを押えて、世の中の政治をよくするために、非常な権限を持っておられる総理大臣にそれを理解していただこうと思って話しておりますので、野党質問をかわそうという意味でなしに、ほんとうに取っ組んで御答弁願いたいと思う。と申しますのは、金額や年令については漸進的にやろうという意見に、われわれは賛成できないけれども政府側としてはそういう考え方を持っておられる立場はわからないではありません。ですけれども、仕組みの問題は直ちに変えていかなければ、これは非常に問題が多いのであります。今結局所得保障というものはほんとう年金が必要な人にするわけでございますが、政府の制度で言うと、結局そのような保険料の負担にたえない人は免除をするということを言っておられる。これはないよりましであります。ところが免除を受けた人は保険料を強制徴収されないというだけであって、それが老齢年金をふやすことにはなっておらないわけであります。そうなると、そのような保険料の負担のできない、免除される人たちは、その人たちがお年寄りになったときに一番必要な年金の制度から期間的にほうり出されるということになるわけであります。そういう年金であっては、あってもなくても同じであります。ない方がましであります。そのような気の毒な人に何らかの方向年金が保障されるということでなければ、国民年金なんというものは要らないものであります。そういう方向がよく打ち出されなければ国民年金については非常な不信が高まる。ほんとうに困ったことになるでありましょう。そういう方向政府が進む、進む方向を示すということをぜひ総理大臣考えていただく必要があろうと思います。腹を割っての話でございまするから、言葉じりを引っかけてどうのこうのということじゃありません。政治の本道の意味国民のために、今申し上げたことでおわかりだと思いまするから、その方向を打ち出していただきたいと思います。
  33. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私はかわすことを考えておるのじゃないのです。やはり自分としての信念を申し上げて、これは記録に残りますから、私は誠心誠意お答えしております。今の免除を受けている人が、将来こういう人こそ――急に金持になれば別でございますが、こういう人こそ年金によって助けなければならぬじゃないか、これは将来年金社会保障的のにおいをどんどん入れていこうという方向に沿うわけであります。私はそういう方向に進んでいきたいと思います。
  34. 八木一男

    八木(一)委員 そういう方向に非常に急速に進むように、総理大臣がんばっていただけますか。そういう方向で非常にけっこうでございますが、それをいつやっていただけますでしょうか。
  35. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 これは先ほど申し上げましたように、あなた方の意見も尊重し、党内の同僚の意見も聞き、財政その他を見、そうして国民の世論に従って考えていきたいと思います。
  36. 山本猛夫

    山本委員長 ちょっと八木君に御注意いたしますが、イタリアの外務大臣が来ておられまして、十一時半にイタリアの外務大臣と総理大臣がお目にかかられるお約束ができております。外交関係等でございますから、御了承いただきたいと思います。
  37. 八木一男

    八木(一)委員 それではそういう前進の方向を急速にやっていただくことを期待をいたしたいと思いますが、その中で特にまた考えていただかなければならない問題があります。池田さんは年金に国庫負担を出されたのは、所得保障という問題、社会保障という問題のために熱心に出されたのであろうと思いまするが、その国庫負担というものは、社会保障の目的である、ほんとうの人権を確立するとともに、そういうことをするために所得を再配分するという意味考えられたと思うわけでございまするが、それについての池田さんのお考えを伺いたいと思います。
  38. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は、所得再配分ということに社会保障制度を使うということはいかがなものかと思います、これは税制その他で、結果においてそういうことになることは生まれて参ります。しかし考え方としては、社会保障所得再配分だということの考え方は第一義的じゃないと思います。結果におきましてはそうなります。しかも私は、社会保障制度拡充強化するということは、経済の成長のもとをなすという気持は持っております。
  39. 八木一男

    八木(一)委員 言葉を裏から言われただけで、必要な所得保障をするために国庫の支出をして、結局国庫の全体からきた支出金で、本人自体では生活ができない人に必要な所得保障をする、結果においてそういう意味所得再配分になるという御意向であろうと思いますが、それについて……。
  40. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 結果は、その人に社会保障で金がいくのですから、所得がふえることになりますが、理論的の考え方所得再配分じゃございません、結果においてそういうことであります。
  41. 八木一男

    八木(一)委員 国庫負担は、ですから所得保障をするために出しておられるわけですね。
  42. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 所得保障ということではなしに、生活の安定、向上という意味でございます。
  43. 八木一男

    八木(一)委員 言葉じりにばかりとらわれておりますけれども、とにかく必要な人に年金を出すためにやっておられるということと同義語であろうと思います。  そこで非常に考えていただかなければならないことは、今の拠出年金の三分の一の国庫負担、保険料に対する五割国庫負担は、今の制度でいきますと、これは年金をもらうときにお金になりまして、その対象者にいくわけであります。今の仕組みでございますと、保険料をどんどん払える人、免除なんか受けなくていい人は必ず年金をもらえる。変わり者で、年金を一切もらわないという人はとにかくとして、普通の人だったら必ず年金がもらえる仕組みになります。中間層以上の人は結局保険料の支払い能力があるし、免除などを受ける機会がないから、まん中以上の人は必ず年金がもらえる。従って国庫負担がもらえるわけであります。ところが中間以下の人になりますと、貧乏の度合いに従って免除の適用期間が多い。それならばそれだけ、免除の期間は老齢年金をふやす要件にされておらないわけでありますから、年金をくれる度合いが減ってきて、ある程度以下になると年金がもらえないということになるわけです。国庫負担の三分の一という大事な国の資源が、金持ちには必ずいく、貧乏人にはこないという仕組みになっているわけです。これは非常に問題であろうかと思います。この点について、既往は私はとやかく言いません。これから急速にこの点についてだけは直していただかないと、累進課税はあるかもしれませんが、酒やタバコや、大衆の課税からも税源があるわけです。その国民大衆の税金がこの制度を通じて金持ちには必ずいく、貧乏人にはこないというシステムになっていることは非常に残念であります。そういうシステムがある、それを直す方向は簡単であります。厚生大臣にも質問をしましたけれども厚生大臣もそれをしなければならないという気持になっておられます。与党の各委員も全部そうであります。ただ与党の中の強大な統制力、予算に関してはそういうことは言ってはいけないという内閣の強大なる統制力、そのためにこれがブレーキになっているだけであって、与野党ともにそういう気持になっているわけです。(発言する者多し)それをしなければ国民年金の本筋が直らないということになっている。そこで御心配にならないように申し上げておきますが、自民党の方の国民年金を作るときの責任者であり、権威者だった野田卯一君と私とが、品川の公会堂でこの問題の立会討論並びに懇談会をいたしたことがございます。両党の立場からいろいろ話しましたけれども、この問題について野田卯一先生が、これはどうしても直さなければならないということをはっきりと言っておられます。これはうそではない、野田さんに聞いていただいていい。これは総理大臣が安心なさるために言っているわけです。(発言する者多し)どうしてもその方向であるということは、与党の方も社会保障の社の字を知っておられる方はそう思っておられるわけです。それが内閣及び与党の強大な統制力にブレーキがかけられて、したいけれどもという言葉で濁さざるを得ないというような、非常に与党の議員の方々に気の毒な状態にあります。国民のためにこれだけは急速に、直ちに直すということを総理大臣が、(発言する者あり)国の政治を動かし得る権力のある、義務のある総理大臣がやっていただくことが、政治ほんとうに動かす立場になると思うのです。そういう意味でどうか総理大臣、この問題について直ちにやるという御答弁をぜひ、国民の名においてお願いをいたしたいと思うのです。
  44. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 前からずっと申し上げております通りに、今の国民年金というものは社会保険的のにおいが相当ある、しかし将来は社会保障的に持っていかなければならぬ、こう言っておるのであります。将来というのは、今直ちに、こういわれることはなかなか困難な問題でございまして、十分検討しなければなりません。しかし方向としては、私はそういう方向でおるのであります。
  45. 八木一男

    八木(一)委員 委員長、外交的な取りきめは配慮をしますけれども審議のために雑音を入れさせないで下さい。
  46. 山本猛夫

    山本委員長 社会党が非常に雑音が多い、困っております。社会党、御静粛に願います。   〔発言する者あり〕
  47. 八木一男

    八木(一)委員 今急速にということでございますが、それをほんとうに急速にやられる意図を明確に一つ示していただきたいと思います。
  48. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私もそういう考えを持っておるのでございますから、できるだけ早い機会に実現いたしたいと思っております。今直ちにというわけには参りません。
  49. 八木一男

    八木(一)委員 できるだけ早い機会ということは、私ども補正予算を組んで、ことしからということを考えるわけでございますが、池田さんの政治的な信念の立場から考えましても、できるだけ早い機会ということは少なくとも明年ということが最低限でなければならないと思いまするが、それについての池田さんの御答弁を伺いたいと思います。
  50. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 非常に重大なことでございますし、またほかにもやらなければならぬ社会保障制度拡充強化もございますから、十分考えさせていただきたいと思います。
  51. 八木一男

    八木(一)委員 その問題について、実現をしようというお気持で十分に考えて、そうして急速にそれをやられるという御意思であろうと思いまするが、それについての池田さんの御答弁を伺いたいと思います。
  52. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 先ほど来申し上げておる通りでございます。
  53. 山本猛夫

    山本委員長 八木君にちょっとお願いいたしますが、イタリアの外務大臣と総理大臣の会見が十一時半にございますので、もう行かなければならぬ時間になりましたので、まことに恐縮ですけれども……。
  54. 八木一男

    八木(一)委員 もう一点最後に……。今の問題については、今も申し上げましたが、あらゆるところでこれだけはしなければならないということで、与党の方も大部分はそう考えておられます。この年金制度はほんとうに今でももちろん反対であります。できても反対でありまするが、この問題については徹底的に戦い抜かなければならないと考えておるわけでありまして、国民のためにそれがよい方向に進まなければほんとうにまずいと思うわけであります。そういう意味では、政治を動かす実権を持っておられる総理大臣ほんとうのお気持を披瀝なさいまして、お気持を固められましたならば、急速に、私が言っておるように急速に、そのような時点ででき得るものだと思います。それができ得るために、最大の、前に進む勢いをもってやられるという御決意を、総括的に、明快に、強硬に示していただきたいと思います。抽象的でも仕方がありませんが、断固として急速に、自由民主党の名誉にかけて、池田内閣の名誉にかけてやるというような勢いでやる、そのような御答弁、それに類した御答弁池田さんの御答弁として一つ伺いたいと思います。
  55. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 八木さんの熱心な、しかもうんちくを傾けられた御議論につきましては敬服いたします。今後におきましても、ただいま申し上げましたような方向へ、前向きに、できるだけ早い速度で進みたいと思います。
  56. 山本猛夫

    山本委員長 小林進君。
  57. 小林進

    ○小林(進)委員 実は総理、われわれの方では八木さんを含めて総理に十の質問を用意をしておったわけであります。今一問を八木さんが言われただけでもう時間が逼迫してきたのでございまして、とうてい全部をお問いするわけにはいきませんが、かけ足で私は今一言申し上げておきたいのであります。  それは、農業基本法に関係する問題です。農業基本法は御承知のように、農村の所得が低い、そうして生産性も低い、文化的にもおくれている、この格差をなくするために農業基本法をお作りになる、こういうことを目的にされまして、そうして農村のレベルを向上するためにいろいろの条件をお作りになったのでありまするが、その基本法の二十条の中に、やはり農業政策だけではだめだから、商業政策や、文化政策や、あるいは文部省や労働省とともに、厚生省の力も用いて、社会保障制度で農村地域の所得の格差をなくし、生活の向上をはかるということを明記されております。その二十条の中に明記されておりまする社会保障制度、これを一体どんなふうに具体的に示してきたか。私は、二十条の抽象論の条文だけでは満足することができませんので、社会保障の面、厚生行政の面でどれくらい農村の格差を縮めて下さるかということをお聞きするために、われわれは、農林水産委員会、社会労働委員会との合同審査を申し込んだのでありまするけれども、ついに与党の多数決で拒否せられまして、そうしてこの問題をちっとも解明しないうちに農業基本法案は参議院へ送り込まれてしまったことはもう御存じの通りであります。でありまするから、われわれはこういう機会をうかがっておったのでありまして、一体どういう方法でこの格差をなくするか。もし社会保障でやるといえば、先ほどから総理が言われたように、所得保障と医療保障、この二つの面でこの格差を縮めていく。いま一つは、公衆衛生や環境あるいは公共施設という問題で格差を縮めていく手段もございましょうけれども、農業従事者個々の面から見るならば、やはり医療保障と所得保障、この二つでいかなければなりません。社会保障の中で特に重要なのは所得保障でございますが、この所得保障をどのように具体的に示して、この農村の生活のレベル・ダウンを上げて下さるかどうか、これを私はお伺いいたしておきたい。
  58. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 先ほど来申し上げている通りでございまして、私は、施政演説におきましても、農業に対しまして抜本的な措置をとらなければいかぬと言ったのでありますが、これは単に農林省だけでなく、労働から社会保障、教育、あらゆる面からやっていかなければならぬ、こういう意味で農業基本法を制定し、スタートしたわけでございます。しかして、農村における社会保障をどうやっていくかという問題につきましては、医療と国民年金等を拡大強化して、そうして他の産業とつり合うようにしていこう、そしてこれはやはりずっと歩んでいく道々によっていろいろ施策考えなければならぬというわけで、そのスタートをしようとしているのが今回の措置でございます。
  59. 小林進

    ○小林(進)委員 総理は一時四十五分から用事があるそうでありますから、まだ十五分ございますから、少し落ちついて御答弁いただきたいと思うのでございますが、農村の所得生活の格差を上げるために、いわゆる社会保障の中の国民年金総理大臣は今はっきりこうおっしゃいました。国民年金等の方法でその格差を縮めていきたいとおっしゃいました。確かにその主張は、施政方針演説でも言われたし、予算委員会でも言われたし、農林水産委員会の審議のときにも総理はそれを言われた。それほど明確に言われているのでありますから、今、国民年金を改正するこの時点において、何らか具体的な形において総理の御意思が表われてこなければならぬ。ところが、現実のこの改正の中には一つも表われてこない。表われてこないだけではございません、全部逆をいっている。これを一体御承知でありますか、私はそれを申し上げたい。農村を逆に絞めつけるような方向へこの年金が歩み続けているということを私が具体的にお示しする前に、この年金について、総理は一体具体的にどういうふうにそれをお示しになったか、その崇高なる主張を、具体的に年金法の改正のどこでお示しになったか、一言でよろしゅうございますから、総理一つお示し願いたいと思います。
  60. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 社会保障制度議会が全会一致でこの国民年金をおきめになったのでございます。一応さきの国会で通しましたが、その後いろいろ国民の声を聞きまして、われわれは今回修正案を出したのであります。しかし先ほど来申し上げておるように、これは十分じゃございません。まだまだこれから改善していかなければいかぬということは、前お答えした通りでございます。とりあえず、国民の声を聞いて今回修正案を出したのでございます。今後におきましても、十分聞いて修正していきたいと思います。
  61. 小林進

    ○小林(進)委員 社会保障制度議会の全会一致ということは、これはもう与党政府の売り言葉になっておりますが、しかし制度審議会のその満場一致の中にも、いろいろな意見が含まれております。その意見はちっとも採用されていないのでありますから、その御答弁自体も、われわれはちょうだいをするわけには参りません。  それから同時に、総理はこれから将来何とかしていくとおっしゃいますけれども、あのくらい農業基本法で強く言われたのでありますから、今日のこの大改正の中にいささかでも総理の御趣旨というものが現われていなければならぬはずであります。ところが逆なんです。その最も逆な表現を、私は一、二例示をいたしますと、第一番には、年金を受ける受給の開始の期限の問題であります。一般の被用者年金においては、満六十才になったら年金はもらえる、所得が少ない、生活が苦しい農民が年金をちょうだいするのは一体いつか、開始されるのはいつか、満六十五才であります。五年間の差を設けている。やはり百姓は五年間だけ一般の勤労者や労働者よりもよけい苦しんでいけという形が、ここに格差をつけられておる。それから年金の期間であります。年金期間も――厚生大臣、これはあなたにはあとでゆっくり一つお話し申し上げますから、このところは一つ総理に私の話を聞くようにあなたはしてもらいたい。その期間も一般の被用者年金においては、大体資格期間は二十年、二十年保険料を納めていけば、満六十才から今度は反対に給付せられる。こちらは最低期限が二十五年、満四十年、五年間休みの期間を置いて六十五才まで待たされる。二十五年も納めなければ一銭も出ない。わずかの例外はありますけれども、それは受給開始をされない。全部五年ずつの格差をつけている。そしてこれは私は農業従事者とは言いません。しかし一般の年金の中にこういう農業従事者が一番含まれておるということは事実でありますから、私は農民と表現しても過言ではないと思うのであります。そういうわけで、こういう年金の受給期間、交付期間あるいはその納める期間というものが、全部一般の年金より五年ずつ差をつけて、虐待をしております。これを一体総理いかようにお考えになりますか。これで農業基本法の精神が社会保障に生かされておるということが、一体どこを押せば言われるのでありますか。これは羊頭を掲げて狗肉を売るもはなはだしい暴言であると言わなければならないのでありますが、総理いかがでございますか。
  62. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 お話の点はわかります。できるだけほかの年金制度と合わせたいのでございますが、何分にも掛金の問題、財政の問題等々がございますので、十分ではないということは先ほど来申し上げておる通りでございますが、徐々にこれを直していこうというのがわれわれの考えでございます。
  63. 小林進

    ○小林(進)委員 ともかくわれわれは、むしろこれが逆になりまして、片一方は二十年ならば、この一般年金の方は十五年、一方の開始期限が満六十才ならば、この過重な労働に従事している、しかも所得の少ない農民各位に対しては五十五才、こういうふうにこれが逆転してこそ初めて私は総理の主張がこの年金法に現われてきたということが言えるのでありますが、これから徐々に直していって、ようやくそこへ近づけてくるなどというような御答弁では、私は総理のその御誠意ある御答弁としていただくわけにはいかないのでありまして、これは逆になるまでかけ足で早急に改良していただかなければならない。これは悪い点であります。これはほんとうに一つやってもらわなければならぬ。  いま一つの点は、免除の規定、免除の問題です。これも先ほどから八木さんも御質問になりましたから、私はくどくは申し上げませんけれども、現在免除の基準というものが、これは厚生省も非常に苦労されて――大体年金の強制加入しなければならない総数人口が二千百万人おります。満二十才から五十才までの、被用者年金を除いた者が大体二千百万人、その中に当然免除で、生活保護を受けておる者が六、七十万人、それから生活が低くて申請によって免除される者が二百二、三十万人じゃないかという厚生省の推定でございます。それも含めて、そのほか住居が不明であったり、いろいろな関係で大体三割程度が免除、強制加入できない人員があるのではないか、こう言われておるのでありますが、その免除の申請で免除される者の基準がないのであります。明確にない。全国一律の基準がない。だから都市と農村の生活、地域の生活を比較してみますと、農村なんかへ行って都会の生活から見ると、山間地帯の貧農、二反や三反のたんぼをこねまわしているというようなところに行きますと、その農村の九割九分まで生活保護にならなければならないような環境、あるいは申請に基づいて全部免除されなければならないような方々が多い、全国的に比較して参りますと。しかし地域別にみんな生活の様式が違っておりますから、そういう農村へ行っても免除される者はせいぜい五%から一割、あとの八割から八割五分の諸君は、都会や一般のレベルから見ればほんとうに獣、畜生のような貧しい生活をしながらも、その中から毎月百円、百五十円ずつも年金を強制的に取り上げられる。保険税も取られ、そうして年金料も取られる、こういうような状態になる危険性が今あるのです。そういうような状態があるのですから、総理はそれを大所高所からどう一体救済されるか。それができなければ、農民はさらに年金制度のためにまた苦しんでいかなければならぬ、もっと格差に苦しまなければならない、こういう状態があります。この免除の問題を一体どう解決して、そして農業基本法の精神をこの国民年金の中に生かして下さるか、配慮して下さるか、お伺いいたしたいのであります。
  64. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私もそういう事情を聞いておりますし、またもっともなことでございます。こういうことなんかを考えますと、一がいに掛金を多くするわけにはいかないし、その間のあやを縫っていくこともなかなかむずかしいのでありますが、お話のような事態は今後も十分考えいかなければいかぬ問題と思っておりますから、厚生省におきましても検討いたすと思います。また検討しなければならぬ問題だと思います。
  65. 小林進

    ○小林(進)委員 大臣、八分ばかりございますから落ち着いておっしゃっていただきたいのであります。きのうからも私は厚生大臣にお伺いいたしておるのでありますが、そうした地域的な免除の基準をきめるときに、厚生省の中の考え方、それは古井厚生大臣考えでもありますけれども、農民は生産手段を持っておる。生産手段を持っておるから、生産手段を持たない都市の勤労者とはどうしても免除にも差をつけなければならぬという考え方がある。これが米価の問題をきめるときにも農産物の価格をきめるときにも出てきて、そして豊作のときにも全部農民が貧乏のどん底に追い込まれる。だからわれわれは農産物の価格をきめるときにも、工場で働くのもたんぼで働くのも労働の質量には変わりはないのだから、やはり都会における労働賃金並みの賃金で農産物を買ってくれというのでありますから、総理ほんとうに農民の免除の規定をおきめになるときに、生産手段を持っておるとか、二反や三反のたんぼがあるとかいうようなことにこだわらずに、その意味において、少なくとも専業農家である限りは、農村に関する限りは五反歩、私は五反歩以下の専業農家は全部国民年金を免除する、こういうすぱっとした一本の特例を設けて下さってこそ初めて農業基本法の精神が生きてくる、総理の言われる社会保障をもって農民を救うという線が出てくると思う。このような線をすぱっと一本特例を設けてお入れ下さるだけの思い切った決断が総理におありになりますか。これは総理のツルの一声でできるのでありますから、お伺いいたしたいのであります。
  66. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は五反の専業農家が普通の生活はできにくいということはよく知っておりますから、五反歩を一町五反、二町あるいはそれ以上にしたいということが農業基本法で、またそれにならないという方につきましては、具体的に私は厚生省で十分検討していただきたいと思っております。
  67. 小林進

    ○小林(進)委員 そうして今農村の諸君が苦しい生活の中からも強制せられる。しかしその中で免除をすると、特に農村というところは御承知のように非常に世間体を重んずる、農民は先祖代々同じ土地にいますから、隣近所の面子がある、親戚の顔があるというので、無理をして年金を納めようとする。これは都会の人と全く違っておる。そういうことで強制をされて年金を払うのであります。しかし今度それでもできなくて払わない、免除になったときには、先ほども八木さんが言われたように、国家は免除になった者には補助金を与えない。三分の一の金のめんどうを見ない。それは年金から払い出して、六十五才になっても六十七才になっても、六十九才十一カ月になっても一銭も金をくれないでめんどうを見ない。こういうような残酷な仕打をなさっているのが今の年金でありますから、私は今度国会が終わるとうしろ向きになって農民各位に訴える。これほど今の政府は残酷な年金を作ってあなた方を冷遇しているということを訴える。これは事実です。一言もうそはない。そのために総理は今早くそれは改正するという確約をされたい。今確約されるならば、池田総理には血も涙もあった、それは厚生省の役人が間違っていたから直ちに改正するという総理の責任において言明があった、そうすれば私はそれをつけ加えて農民に報告するだけの良心がありますから、どうかここで早急に改正するという言明をしていただきたいのであります。
  68. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 この問題は八木さんにお答えしたあの問題と同じように、とにかく社会保障、ことに年金制度をもっとりっぱなものにしていく、みんなに喜ばれるようにできるだけ早い機会をとらえてやっていくということを、どうぞつけ加えて農民の方にもおっしゃっていただくようにお願いいたします。
  69. 小林進

    ○小林(進)委員 私はこれで終わりますが、これは年金の他のこまかい技術上の問題は別といたしまして、これらあれこれを総合して今度の通常国会で一番重要な問題は、農業基本法や防衛二法や国鉄運賃の値上げなどいろいろございましたけれども、あわせて医療問題、これは御承知のように古井厚生大臣はあれだけ苦労されておられますけれども、大臣の足元も浮き上がるような医療費の問題もございますし、私ども総理にお会いいたしまして、無理にお願いして、ああやって国保の二割の補助金を二割五分に上げてくれ、そして保険財政の赤字を補うと同時に、いわゆるわれわれ被保険者の負担金を一つもっと軽減をしてもらいたいということをお願いいたしました。そういうわけで、さっき総理もおっしゃったわが日本の社会保障体系の中の医療保障がまだ不安定な状態にあって、非常にあいまいもことして苦難の道を歩んでいる。そうして欧米先進国から見てまだおくれております。総理も御存じの通り、英国あたりに行けばめがねか補綴くらいで、あとは全部無料ですっかり生命を保全して、安全を保障している。そういう状態の中で、これをまだ二割や二割五分の補助金ぐらいにしておいて、また国民年金の方に足を入れて、そしてあいまいもこなものをおやりになっている。これじゃあぶはちとらずになってしまう。ここで総理が腹をきめて、よし医療も年金も思い切って来年から財政予算を組んで、少なくとも今年の倍の三千五百億以上も社会保障に組んでやろうという言明があるならば、われわれも一緒になってやりましょう、しかしそれができないならばやはり着実に一つ一つ物事を完成していくというのが社会保障推進の正しい進め方ではないか。その意味において、この国民年金の中でも拠出年金は、さっきも八木さん言われたように、しばらく待っていただいて、そうして無拠出年金、福祉年金、これは昨年の十一月から福祉年金に主力を注いで、七十才になったら千円なんというけちなことを言わないで、六十五才になったら二千円、障害年金は四千円あるいは母子年金には三千円くらいの金、こういう感じで一つこれを充実していかれる御意思はないかどうか、承っておきたいのであります。
  70. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 短時間ではございましたが、非常に有益な、りっぱな議論を拝聴いたしました。今後の施策に参考にすることを私は非常に喜びといたします。ありがとうございました。(拍手)社会保障制度につきましては、ほんとうに一番力を入れて進めていくということをここで申し上げまして、お答えといたしたいと思います。
  71. 山本猛夫

    山本委員長 次に、厚生関係及び労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。河野正君。
  72. 河野正

    ○河野(正)委員 本日は、公害について質疑をするということで議題になっておるわけですが、その中で特に私は騒音問題にしぼって若干の質疑を行ない、そうしてそれぞれ関係者の適切な御答弁をお願いを申し上げたいと考えております。  騒音の中には、いわゆる都市騒音あるいはまた今日非常に問題になっております基地の騒音、特にジェット機に関します騒音でございますが、そういう二つの大きな問題があるわけでございます。ところがその中でも特に今日わが国に点在いたしますジェット基地、この騒音というものが人体あるいは家畜、家屋さらには交通、こういう各方面に対しまする悪影響というものが今非常に顕著なものがあるわけでございます。そこで私はそういう諸問題について、いろいろきょうは関係者においで願ってそれぞれ御所見を承って参りたいと思いますが、特に福岡の板付のごとく、都心に近接するこういう地域におきましては、今申し上げましたようなもろもろの悪影響というものが非常に顕著であるわけです。そのために住民に及ぼします影響というものも非常に著しいものがあるわけでございますが、大臣もお時間がないということでございますので、まずそういう騒音の、特に厚生大臣でございますから人体あるいはまた家畜、そういう面に及ぼしますもろもろの悪影響に対しましてどういう御所信を持っておられるのかということについて、一応お尋ね申し上げたいと考えます。
  73. 古井喜實

    ○古井国務大臣 特に基地等におきましてジェット機の騒音がはなはだしい、そのために特に私ども関係では病院とか、病院でなくても付近の病人の人とか、こういう人に非常に悪い影響があるのではないか、これは非常に問題にして気にしておる一つの点であります。やはり個々の基地の具体的な事情に合いますように、そういう害を最小限度にとどめるようにできるだけの措置をやっていきたいということで、個々の具体事案ごとに、できるだけ防止あるいは被害を少なくする道を考えるということでやっていく態度をとってきておる現状であります。
  74. 河野正

    ○河野(正)委員 非常に抽象的な御答弁でありましたが、実際問題としてこの問題の対策というものは非常に困難な面があるわけでございます。特に今日の実情を見ておりますと、同じジェット機にいたしましても、機種がだんだんと進歩をして参るわけです。こういうような機種の変遷に基づきまして、少なくとも今日の段階では変遷に伴う騒音の度合いというものが増強する傾向にあるわけです。ところが今厚生大臣も、個々のケースについてそれぞれ対策を講じつつあるというようなお説のようでございましたが、今日の政府施策を見ておりますと、たとえば今の時点ではF102あるいはF100Dを対象としてのそれぞれの対策が進められておる。ところがそういう対策が完成せざるうちに、次にはもうF106の段階に到達をするわけです。そうしますと、私は今まで講じられました対策が全然無意味だとは申しませんけれども、今申し上げますように、対策が完了せざる時点においてすでにさらに騒音の強い機種が配属される、こうなりますと、全く今日の騒音対策というものがちょうどイタチごっこといいますか、悪循環を繰り返す、こういう一つの経緯をたどっておるわけです。そこで今お説のように、なるほどそれぞれ具体的な対策を講じつつあるということでございますけれども、抜本的な対策を講じていただかないと、この問題は解決するわけには参らぬであろう、私はこういうことを考えるわけです。そこでそれについて一体抜本的な対策としてはどういうことをお考えになるのか、私はこの点が非常に重大だと思うのです。今の時点において解決しますと、それが完成せざる時点において、さらにやかましい新しいジェット機がくるわけですから、なるほど対策は講じられてはおるということを私どもも承知をいたしておりますけれども、それだけでは抜本的な解決にならぬ。そこでそういう抜本的な解決についてはどういう御所信を持っておられるのか、この際明確にお示しを願いたい。
  75. 古井喜實

    ○古井国務大臣 お話のように、だんだん進歩をしたり、変化していくことでありますから、先回りをしてこういうことをやっておくというすべもないわけであります。やはり具体の事情に応じて対策を講ずるほかはないのでありますから、うまい知恵がありますれば、これをやるのにやぶさかではございませんけれども、先回りをして、どういうことになるかわからぬのにやっておく、そういう道はとれない、なかなかむずかしいのであります。よい知恵があればいかようにもこれを聞かしていただいたり、参酌しながら適切な具体的対策をとっていくほかはありませんので、そういうふうにいたしたいと思います。
  76. 山本猛夫

    山本委員長 ちょっと河野君にお願いします。厚生大臣のお約束の時間が参りましたので、あと一問だけ厚生大臣に先にお願いします。
  77. 河野正

    ○河野(正)委員 先回りしてというお話もございましたけれども、基地をなくするということになれば当然解決するわけです。基本的に基地を撤退させるということが抜本的な解決だと思います。ところが、それについてはいろいろ国と国との問題もございましょうし、そういう点で当面それが不可能であるならば、それに応ずるだけの対策を講じていただかなければならぬということになろうかと考えるわけです。  そこで委員長から、厚生大臣に対する質問はあと一問だけという御指摘もございましたので、ちょっと話題は飛びますけれども、この際一言厚生大臣から明確に承っておきたいことがございますので、お尋ね申し上げておきたいと考えます。  それは、騒音が人体に及ぼします悪影響は少なくとも人権を侵害するおそれがあるという判定が名古屋法務局の人権擁護部から下されておるわけであります。その理由といたしましては、現地の医師は騒音のために患者の心臓音を聞きとることができない。そのほか、これはいずれ文部省にお尋ね申し上げたいと思いますけれども、学生が騒音のために受験勉強が十分にできない、さらには、さっき申し上げましたように家畜の問題でございますけれども、産卵率が非常に悪くなってくる、こういうような理由で基地の騒音というものは人権侵害のおそれがあるという判定が名古屋法務局の人権擁護部から下された、こういう事実があるわけです。これは法務省の人権擁護局長にも御出席願っておりますので、後ほど御所見を承りたいと思いますけれども、その中に、今申し上げますように、一点厚生問題ときわめて密接な関係もあり、そのことが一つの理由として人権侵害のおそれがあるという判定が下っておるわけですが、この点に対します厚生大臣の御所見を一応承っておきたい。
  78. 古井喜實

    ○古井国務大臣 人体ことに病人のような人に騒音が影響がある、こういうことは場合によって認めなければならぬと思うのでございますけれども、それが人権問題という考え方になるのかならぬのかは、軽率にそうだ、そうでないというわけにはいかぬと思うのであります。これは法律的な論拠としてよく考えてみなければならぬと思うのであります。問題は、とにかくそういう被害を最小限度にとどめる最善の努力をするという問題だろうと思うのであります。これは先ほど申し上げましたように抽象論ではだめでありまして、抽象論をやったところでどうにもならぬ。具体的なケース、ケースに応じて最善の対策を講ずることがよいことだ、またそれ以外に道はない。これは基地の騒音だけじゃありません。公害一般の問題、空気の汚染にしても近来は都会などはひどい、振動もひどい、こういうわけでありますから、今お話しの問題だけと私どもは狭く考えませんが、やはり具体の状況に応じて最善を期する、よい方法があれば幾らでも承って実行に努力する、そういう行き方をしたいと思うのであります。
  79. 河野正

    ○河野(正)委員 実は今申し上げました騒音に対します理解の仕方でございます。大臣は、その騒音に対します対策をいかにやるかということであるというような御発言でございましたが、要は騒音に対します理解の仕方が基本にならなければならぬ。これが名古屋の法務局が判定しておりますように人権侵害だという理解に立てば、当然それに対します補償の問題も具体的に解決していかなければならぬ、あるいはまた人権侵害でございますから、それに対する対策というものを急速に推進する必要がある、こういうことになっていこうと思うのです。そこで私は公害の一例として騒音を取り上げたわけでございますが、もちろん公害の中には、いろいろ汚染の問題もございましょうし、騒音の問題もございましょうし、あるいはまた地盤沈下の問題もございましょう。ございましょうけれども、少なくとも具体的に人体に被害を与えるという科学的な資料が出て参りましたのは、やはりこれが比較的顕著な例であろうというふうに私は考えるわけです。そういたしますと、当然そういう公害に対しますもろもろの対策を講じていただかたければならぬけれども、その中にもおのずからやはり政府政府の力の限界もございましょうし、財源上の問題もございましょうし、いろいろ解決する方法が残されますので、いずれにいたしましても、緩急の度合いというものが当然起こってくるであろう。そういたしますれば、そういうふうに法務局が少なくとも人権侵害のおそれがあるというふうに問題を提起したこういうケースにつきましては、やはり率直に大臣もお認め願って、そうしてそれに対します対策というものを具体的に急速に推進していただく必要があるのじゃないだろうかというふうに御指摘を申し上げたわけでございますから、そういう意味で一つ御答弁をお願い申し上げたいと考えます。
  80. 古井喜實

    ○古井国務大臣 先ほど来申し上げますように、最善の策を講じたいと思いますので、具体的に、こういうふうにやったらいいじゃないか、ああいうふうにやったらいいじゃないかという、またお考え等もありましたら、われわれも大きに参考にしたいと思いますので、最善の適切な策を努力していきたいと思います。
  81. 滝井義高

    ○滝井委員 今の河野さんの質問に関連して……。具体的にこうしたらいい、ああしたらいいという案を指示せよということでございますが、ジェット機による騒音について、現在小学校については、ある程度防音装置その他を装備してくれているわけです。ところが米軍によるジェット機の騒音について、病院ではやられていないのです。これは当然やらなければならぬ。ところが予算関係でやっていないのです。私、調達庁とも個人的にかけ合ったことがあるのです。実はことしもやるつもりだったのですが、予算関係で大蔵省からはねつけられたのです。来年は必ずやりますという一応の言質はいただいているのです。しかしこれは何といっても主管省の厚生省がその腹にならないことには、調達庁だけではどうにもならぬというところがある。そこでその問題について、ジェット機が頭の上を通っていくというときは、患者にも非常に迷惑を及ぼす。入院している患者はみな退院してしまうのです。とてもこの病院では治療ができないといって退院してしまう。特に労災においては、転院するときに理由を書かなければならぬ。その理由が、ジェット機の騒音によってここでは療養ができないという理由になって今退院をしておる。そういうところがある。たとえば福岡県の板付などというのがそうです。こういうことについては、やはり厚生省がイニシアチブを握って、調達庁と共同して、やはり大蔵省に予算を認めさせる方向にいけるかどうか。
  82. 古井喜實

    ○古井国務大臣 全く具体の事情にもよることでありますが、お話のように、まるで入院患者がおれない、こういうふうなひどい状況のことでありますれば、これをそのままにほっておくということもなかなか問題だと思うのでありますから、われわれの方としても具体の事情に応じて極力この被害を少なくする対策について努力をしていきたい、こう思うのであります。
  83. 山本猛夫

    山本委員長 どうぞ厚生大臣、お引きとり下さい。
  84. 河野正

    ○河野(正)委員 実は今厚生大臣との話し合いの経緯の中で、人権侵害の問題が出て参りましたので、この際一つ、局長もおいでのようでございますから、重ねてお伺いをいたしておきたいと思います。先ほどから申し上げましたように、名古屋の法務局の人権擁護部では、擁護部長がこの小牧基地を訪れまして、そうして同基地にございます消音機であるサイレンサーを具体的にテストをして、その結果、実は先ほど申し上げますように、現在の騒音状態では人権侵害の疑いが強い、こういう判定を下されたわけでございます。これに対しまして、同擁護部でも本省に報告をして、そうして今後の処置をきめたいというふうな御意見のようでもございますが、こういう点についてどういうふうに本省の擁護局ではお考え願っておりますのか、また報告があったといたしますならば、どういう御処置が行なわれたものか、こういう点に対しますお答えを願えれば幸いだと思います。
  85. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 小牧飛行場の飛行機から出す騒音でございます。ジェット機の爆音によって、その周辺の人たち、あるいは学校、病院等が、いろいろ日常の生活上悩まされておる、こういうふうな訴えが名古屋法務局の方にございまして、名古屋法務局ではさっそく実態調査をいたしました。今、人権侵害の疑いがあるという部長の話は、新聞に発表された記事によるものと思いますが、人権擁護部では、この事件につきましての結論はまだ出しておりません。私の方はこういうふうな騒音その他の公害問題につきましても、ただ結論を出すというよりも、その関係者と話し合いまして、できる限りこの騒音による被害を少なくしていくように継続的に努力をして参る、こういうふうな方針をとっております。ただ、われわれは、小牧飛行場のみならず、最近では厚木飛行場等の事件もわれわれの方に持ち込まれておりまして、いろいろ実情を調査いたしておりますが、やはり一般の公害と同じように、特定の地域に住む人たち、それは農家も、また病院経営者、あるいは一般の住民の方々も、距離によりましては日常生活上非常な不愉快と申しますか、そういうふうな感じを受け、また病人に対しましてもよくない影響を与えておる、あるいは防音設備のまだできておりません学校方面におきましては、ほとんど授業ができないというふうな訴えも相当ございまして、われわれの方も、この解決策は別途でございますが、やはり大きな意味の、むしろ深刻な人権問題として関心は持っております。それで私たちの方の指導といたしましては、人権侵害があるというふうな結論そのものを出して、ただ勧告するというよりも、その小牧飛行場では自衛隊の方といろいろ協力をいたしまして、できる限り騒音による被害を少なくするように、ほかの関係者とともに話し合いをしておりまして、徐々にではありますが、できる限り被害を少なくする方向の方に官庁方面もいろいろ努力をされておる、こういうふうに聞いております。
  86. 河野正

    ○河野(正)委員 実は今御答弁の中にございましたように、判定を下すということが目的じゃない、できるだけ騒音というものがなくなるように、まあ話はその通りでけっこうでございますけれども、やはり人権擁護局の使命としては、そういう意見なり訴えがあれば当然それに対します御所見を述べられる、そういうことによってまた私どもは私どもなりにそういう御見解に基づいて対策を強力に推進していく、私はこれが一つの筋道であろうというふうに考えるわけです。そういう意味で実はお尋ねを申し上げたわけでございます。  なお私が先ほどから厚生大臣に一、二お尋ねを申し上げておりましたように、ものの認識の仕方によってその後の対策というものが非常に違ってくるわけです。そこで小牧の例のごとく、少なくとも人権侵害のおそれがあるというような談話が発表されたということでございますが、そういう認識であるならば、そういう認識に基づいての対策というものが急速に進められなければならぬ。たださっきのお話にもございましたように、一般の公害と同列に取り扱う、もちろん一般の公害についてもそれぞれ善後措置をしていただくことはけっこうなことでございますけれども、それと同列に取り扱っていただくということは、私はかなり具体的な事情においては問題があろうと考えるわけです。そこで、これはたくさん例をあげれば際限ございませんけれども、一、二例をあげてこの際御所見を承って、率直に御意見を漏らしていただいて、もしそういう御意見が聞き入れられるならば、そういう御意見に基づいてさらに一そう今後具体的な対策を推進していきたい、かような立場から申し上げておりますから、率直にお答えを願いたいと考えております。  そこで一、二の例をあげたいと思います。それは今も御説明の中にございましたようにいろいろ神経症状が起こってくる。それはおそらく爆音の恐怖もございましょう。あるいは騒音、爆音、音波、そういう影響に基づきますいろいろな障害もございましょう。たとえば頭が痛むとか吐き気がするとか、あるいは気分がいらいらするとか、あるいは落ちついてものごとを考えることができなくなったとか注意散漫になったとか、こういうような精神的な障害もございましょう。そういう点につきまして私が調査をした一つの具体的な統計資料をあげますと、気が短くなったという住民、これが調査の対象人員の中で約七〇%、それから頭が重いとか、頭が痛むとか、そういう訴えをされる人々の比率というものが七九%、それからこれは気がいらいらするとか、気が短くなったとか、いろいろございましょうけれども、そういう神経衰弱様症状を訴えられた住民が七七%、こういう一つの調査統計というものが出て参っておるわけです。そういたしますと、これは基本的な問題でございますけれども、憲法二十五条で、これは私が説明するまでもないと思いますけれども、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」が与えられておるわけです。そういたしますと、今申し上げましたように基地があるために、その基地の周辺の住民に対しましては今申し上げたようないろいろな苦痛が与えられる、この点は明らかに私は憲法に違反する一つの行為であるというか、環境であるのではないか、こういう一つの見方をするわけでございますが、そういう点をどういうふうにお考え願いますか、これは人権擁護局長それからさらに総務長官もおいででございますので、総務長官からも一つ御答弁を願っておきたいと考えます。
  87. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 憲法二十五条違反であるのではないかというお問いでありますが、そういう特定の原因がはっきりしており、その特定の原因によりまして今おっしゃったような被害が人間に生じておるとするならば、これは人権上その解消に努力すべき重大な問題であると私は考えております。ただ問題は、これは大きなことになるかもしれませんが、世の中がこのようにテクニカルに発達して参りますと、それに関連するいろいろないわゆる人間の精神上あるいは生命身体上に危険をかもしやすいいろいろの工夫なり方法というもの、あるいは機械なりが発達されて参りまして、これはやはりこの現代に生きる限り、そういう機械文明の発達に伴う被害をできるだけ少なくするようにするということは、これは大きな人権上の問題ではないかと私は考えております。ただこれはやはり一面においては文明の利器であり、二面においてそれに伴う被害があるとするならば、できるだけ文明の利器を生かしつつ、その被害を少なくしていく、これはやはり総合的な大きな力をもって解消していくというのがわれわれまたは人類の一つの大きな仕事ではないかと私は考えております。ただ人権擁護局といたしまして、この問題と取り組むには、人権擁護局の小さな機関の一つの努力のみではなかなかこれは達成できないのでありまして、われわれの方ではやはりむしろ推進体の中心となって、それに関係のある官庁なり民間団体あるいはその他の人たちと協力してお互いに、いわゆる文明の利器に伴う一つの被害をできるだけ少なくしていく、こういうふうに努力して参る以外にない、こういうふうに考えております。
  88. 藤枝泉介

    ○藤枝政府委員 私からお答えするのはあるいは適当でないかと存じますが、しかしおあげになりましたような問題につきましては、極力そうしたことのないように努めるということはやはり政府の責任であると存じます。
  89. 河野正

    ○河野(正)委員 先ほど人権擁護局長が御答弁なされたことについては、実は私は基本的に考え方が違うわけです。と申しますのは、文明の利器が社会福祉のために行使される、そのために起こって参りまするいろいろな公害の場合と、基地の場合は何ら社会福祉に貢献するわけではないので、基地の場合は私らは文明の利器とは考えません。そういう具体的な事実によって起こって参りまする騒音による被害とは、これはおのずから根本的に違わなければならないと私は考える。憲法の中にも社会福祉という点が規定されておりまするけれども、これもやはり私はそういう立場を明確にしておると思うのです。  そこで、私がはっきり申し上げておきたいと思いまする点は、文明の利器も社会福祉のために行使される場合と、今申し上げたように、基地で何ら社会福祉のために貢献しない戦争のために行使されるものであって、人類の敵だと思うそういう場合の騒音とは、おのずから区別して考えるべきだというふうに私は考える。私が今指摘しておりまするのは、文明の利器として利用され、起こってくるところの騒音ではなくて、むしろ人類の敵として行使されるために起こってくる騒音でございまするから、この点ははっきり区別をして御所見をお述べ願っておかぬと、私は非常に大きな問題があると思うのです。そういうわけで御指摘を申し上げたわけでございまするから、そういう後段の場合の騒音に対して、人権擁護局としてはどういうふうにお考えになっておるか、今後騒音をなくすとかなくさぬとか、そういうことについてはさっきおっしゃったように、人権擁護局は非常に微力だと思う。これは国民国民の力によってやっていくべきだと思います。ですけれどもそういう具体的な事実に対して、人権擁護局としてはどういうふうにお考えになるのか。この点は私は人権擁護局に与えられた一つの使命ではなかろうかと思いますので、そういう意味で一つ率直にお答えを願っておきたいと思います。
  90. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 今の御質問は、いわゆる飛行基地というもの、またその飛行基地に発着するジェット機というもの、それは基地の場合には文明の利器というよりも人類のために害になるような目的のために使われておる、そういう場合にどうかというお話であります。今先生のおっしゃいました、たとえば小牧の飛行場、あれは自衛隊が使っておりますが、その発着する飛行機が真の社会福祉とか国民の福利のためにではなくして、別の害になるような目的のために使われておる、こういう場合のジェット機の騒音を特にどういうように考えるかというお話でございますけれども、私の現在の人権擁護局長の立場といたしまして、今先生のおっしゃいましたように小牧飛行場あるいは軍の基地に発着する飛行機が人類に害を与えるような目的のために使われておるかどうか、私は即座に先生のお考え通りであると言いかねるのであります。それはやはり私のみならず、一般国民考えなければいかぬ問題ではないかと思います。私はその点についての御答弁は差し控えたいと思います。
  91. 河野正

    ○河野(正)委員 それでは当地における騒音というものは、たとい騒音が人体に危害を与えても、それは人類のための福祉である、やむを得ぬことだ、こういうふうにおっしゃるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  92. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 いや、私はそのように考えておりません。いわゆる軍が使っておる基地の飛行機による騒音、爆音の被害であるがゆえに、どのような被害があろうともがまんしなくちゃいかぬということは、私は考えておりません。そういうものが現存する以上、その現存することについての当否ということは、今私がここで局長として意見を申し上げる立場ではないということを申し上げました。私は、現在置かれたその基地における飛行機の発着をとめる権限もございませんし、またそういう場合を離れまして、できる限り関係者と協力してその被害を少なくするように努力していくということのみが、われわれに与えられた一つの仕事ではないか考えております。
  93. 河野正

    ○河野(正)委員 そうじゃない。私が御指摘申し上げているのは、先ほど答弁の中で、騒音というものもあるけれども、これも文明の利器で、社会福祉のために貢献をしているのだから、ある程度やむを得ないじゃないかというような印象を受ける発言があったわけです。そこで私はそういうことを取り上げたのであって、どうも私の質問に対する答弁としては少しピントが狂っていると思うのです。そういうあなたの発言から、私はそれに対して反論を申し上げたので、私が積極的にそういうことを提起したわけじゃない。そういうことでございますから、そういうふうに御理解いただかぬといかぬと思うのです。  そこで、それぞれ関係各省からおいで願っておりますので、一、二具体的な例についてお尋ねを申し上げておきたいと思いますが、騒音に基づきまするいろいろな障害がたくさんございます。先ほど一つ神経障害をあげましたけれども、さらに生理的には聴器聴覚が侵される例もございます。ところで、これは労働省の労働衛生研究所長の論文の一節でございまするけれども、これによりますと、この騒音に基づきます聴器の障害、特に難聴、これはちょうど粉塵作業におけるじん肺と同じように重大な意義を持っておる。しかもそういう騒音に基づきます影響というものが非常に多種多様にわたっておる。これは実験の例をあげておりますが、たとえば騒音の実況をテープレコーダーにとりまして、それを科学的に分析しますと、いろいろな振幅、横のずれ、それから周波数があって、従ってそれに基づきます影響は非常に多種多様である。しかもこの難聴、聴覚の障害に対しましては、ほとんど施すすべがない。この辺もちょっとじん肺に似ておると思うのです。じん肺の場合にもほとんど治療方法がないというような実情でございまするけれども、全くそれと同じような状況である、こういうふうに書かれておる。こういう、政府当局が書かれておりまする論文の一節を見て参りましても、今申し上げましたような非常な肉体的な障害をもたらしておるわけです。これは具体的な実情です。しかも権威ある論文ですから、そういう実情に対して人権上の立場からどういうふうにお考えになっておるか、一つ労働省から御所見を伺っておきたいと思います。
  94. 加藤光徳

    ○加藤説明員 騒音性の難聴につきましては、騒音作業におきまして相当数が考えられております。従いまして、どういうところが騒音の作業であるかというようなことにつきましては、従来百フォン以上の騒音につきまして騒音作業という形でやっておりまするが、それによりますると約二十八種類くらいの作業が分類されて参ります。現在のところ二十八作業についてのいろいろな調査をいたして参っておりまするので、その間におきまして難聴の分布が大体見当がつく。これは二年間かかってやっております。  同時に、先ほど御指摘になりましたように、騒音によりまする難聴はもとに戻らぬというようなことがございますので、そういう面につきましていかなる方法でやるかということでありますが、現在やっておりますのは、最も手っとり早い、しかしやり方としては消極的でございますが、耳せんをはめることによりまして、大体三十デシベル程度の音を消すことができます。その程度に下げますと、多くの者は難聴を起こさない程度になって参りますので、そのように指導いたしております。しかしこれはあくまでも消極的な方法でありまして、根本的には、音の発生いたしますところに対しまして、それをなくす方法として障壁等を作る、あるいはそれをカバーするというようなことによりまして、できる限り費を少なくするようにいたしたいと考えております。現在のところ、学問的に音をなくすということは非常にむずかしいことでありますが、そういう方面の研究を研究所の方でやらせて参っております。  なお、私自身の仕事ではございませんが、基準局といたしましても、そのあとの補償の問題などについては、補償審議会及び中央労働基準審議会の方で審議し、いろいろ検討しておるようであります。
  95. 河野正

    ○河野(正)委員 今労働省の方から、百フォン以上の騒音は聴器にも障害を与えるという意味の研究資料に対しまする御所見があったわけです。それは、労働省の御調査によりますと二十八種の職種があるというお答えのようでございますが、もちろん労働省の場合はそれぞれの職種におきまする騒音だと思います。ところが、私もせっかく基地問題を取り上げておるのでありまするからこの際重ねてお尋ねを申し上げておきたいと思いまするが、たとえば私どもが調査をいたしました実情によりますと、飛行機の場合はプロペラで大体九十六フォン、F86、これは大体昭和三十年から三十一年に使用されておる機種ですが、これが百十フォン、F100、これは三十二年から三十三年当時使用されている機種ですが、これが百二十二フォン、F102、これは三十四年から三十五年、昨年まで使用されておる機種ですが、これが百二十七フォン、ところがもうことしあたりは、F106が国内に配置されようというようなことが言われておるわけです。こういったように基地におきまする騒音というものは、プロペラは別といたしまして、ジェット機の場合はほとんど百十フォンを超過いたしておるわけです。そういたしますと、今労働省からの御説のように、百フォン以上の場合は大体聴器に障害を与えるということでございますから、これは当然そういう障害に対しまする対策ないし補償というものが考えられておらなければならぬというふうに考えるわけでございますが、その点、丸山長官、いかがですか。
  96. 丸山佶

    ○丸山政府委員 米軍の飛行場等の周辺の騒音対策問題に関しましては、御承知の通り昭和二十八年以来調達庁ではまず学校の防音工事というものを取り上げまして、これまでに数にして二百近くやってきたわけでございますが、お話通り、今までの配置状況から見て最高のものと思われるF102というものを主体に考えております。今後なお104あるいは106というようなものが配置になったときにどうなるかということは種々検討を加えております。104の程度ならば大体従来のものと同様と今のところ推定しておりますが、106になると確かに増すということになります。これが対策といたしまして、これまでの経験によりましても、やはり学校で申しまするならば木造のものの改良工事、防音工事にも種々工夫をこらしますけれども、やはりこれを鉄筋コンクリートのものにすることが一番よい方法だと考えております。それで最近の年度におきましてはそのような方向考えを変えておりますが、御承知の通り予算の制約もありまして、全部のものを直ちにするというわけにも参らず、逐次その方向に従って今後の処置を考えております。なお、病院、診療所のことも、これは数は少なうございますが、一、二年前から、緊急を要するものをやはり取り上げることにいたしております。
  97. 山本猛夫

    山本委員長 藤枝総務長官は十二時四十分でどうしてもお帰ししなければなりません。先にどうぞお願いいたします。
  98. 河野正

    ○河野(正)委員 今までお聞きとり願っておりますように、この基地の騒音が人体に及ぼす影響というものは非常に顕著なものがあるわけです。ところがそれに対する対策も進められつつはございますけれども、機種の変遷に基づいて、だんだん騒音の度合いが強くなっていく。今、丸山長官からもお話があったように、今の時点ではF102を対象にしての対策を進めておる、その対策はあるいはF104までは間に合うかもしれぬけれども、106になってくると間に合わぬ、こういう御答弁があったわけです。そこでこれは長官が基地周辺環境整備対策協議会議長さんか会長さんか、責任者ということでございますから、そういう意味でお尋ねするわけですが、今の対策ではイタチごっこと申しますか、F102を対象としてやる、それが完了せざる先に104がくる、106がくるということになりまするから、そういうような現時点におきます対策というものが、私は全然無意味になったとは申し上げませんけれども、次の新しい機種が配属されますと、少なくともそういう対策というものは相当効果が薄らいでいく。これは否定することのできない事実だと思うのです。そういたしますと、今の対策というものは、私は率直に申し上げましてイタチごっこで、万全の対策ということは言えないと思う。そうすると、そういうものを解決するためにはここで抜本的な解決をしなければならぬ。その抜本的な解決方法として基地をなくすということになりますが、そういう抜本的な対策について、この基地問題の協議会における責任者でございます長官がどのようにお考えになっておりますか。時間もございませんので、この点だけ長官から御所見を承っておきたいと思います。
  99. 藤枝泉介

    ○藤枝政府委員 基地等周辺問題対策協議会をこの三十日の閣議で決定をして設置いたしました。その際、基地問題等閣僚懇談会も同様に設置をいたしたわけであります。これは先ほど来ジェット機による騒音に御限定になってのお話でございましたが、その他基地の周辺の環境整備についていろいろなことがありますことは申すまでもございません。さらに基地そのものずばりについてもいろいろな問題がございます。従って現在の状態において将来を見通しながら基地周辺の環境整備の対策について、各省庁が足並みをそろえたバランスのとれた対策をしていくということがまず一つ問題になるわけであります。しかしそれだけでは解決しない問題がございまして、現実にはただいま御指摘になりましたように、基地をなくしたらどうだろうという問題もございます。あるいは基地そのものをどういうふうな形にすればいいかというような問題もございまして、閣僚懇談会もさらに設けたような次第でございます。従いましてこういう機関を通じまして、先ほど来お話のありました騒音の防止、さらには積極的な基地周辺の環境の整備、そういう問題についてある程度先を見通した対策を、この協議会並びに懇談会において至急検討して参りたいというふうに考えておる次第でございます。
  100. 河野正

    ○河野(正)委員 もう一点だけお尋ねしておきたいと思います。  今長官が言われましたように、積極的な対策というものは基地をなくすことだと私は思う。消極的な場合は、現実に基地があるのだから、それに対してどういう対策をやるかということになると思います。そこで積極的か消極的かということは、培地をなくすかなくさぬかということと、あるとすればどういう対策を立てるかという二つの問題が検討されなければならぬというふうに考えておりますが、一番すっきりするのは、長官も言われたように基地をなくす問題だと思うのであります。自民党の池田内閣の場合にはいろいろ問題があろうと思いますけれども、しかし根本的な対策として、基地をなくすということが一番理想的であることは否定されぬ事実だと思う、そういうことが技術的にむずかしいかむずかしくないかということは別問題として。それで私は基本的に基地をなくすということで対策を進めてもらわなければならぬと思うのであります。そういう点についていかがでございますか。最後にその点についての御所見を承っておきたいと思います。
  101. 藤枝泉介

    ○藤枝政府委員 この問題そのものについては、私から答弁申し上げるのはあるいは不適当かと存じます。しかし日本において基地というものがいか考えらるべきかということは、十分考えいかなければならない問題だと存じます。そういう根本的な問題につきましても閣僚懇談会においては十分に検討して参りたいというふうに考えております。
  102. 山本猛夫

    山本委員長 総務長官、どうぞお引き取り下さい。
  103. 河野正

    ○河野(正)委員 先ほど丸山長官から騒音対策については鉄筋による防音対策、こういう点について触れられたわけですが、もちろんそういう点についていろいろ具体的に推進いただいておることについては私どもも一応敬意を表します。しかし今日の対策を振り返ってみますと、そういう物理的な面についてはなるほど具体的に対策が推進されておりますけれども、先ほどから私が人権擁護局長等にお尋ねしておりますように、そういう心理的な、生理的な点につきまする対策というものは、ほとんど講じられておらない。ところがむしろ今の実情を見て参りますと、そういう心理的な、あるいは生理的ないろいろな被害に対しまする資料というものが、具体的にどんどん明確になってきておる。先ほど労働省からも御答弁がございましたように、百フォン以上の騒音というものは明らかに長期に障害をもたらす、こういうふうに、むしろ今日では具体的に生理的な面あるいは心理的な面に対しまする実害というものが非常に明白になってきておる。ところがそういう点について一つも対策が進められておらない。その点私は非常に不幸なことであると思いますし、非常に遺憾な点であるというふうに考えておるわけです。そういう点に対しまする対策をどうお考えになっておるのか、これは一つ長官からお答えを願っておきたいと考えます。
  104. 丸山佶

    ○丸山政府委員 お話通り、基地に関して調達庁がこれまでやってきましたことは、学校並びに若干の病院、診療所のみでございますが、それ以外に一般的にいろいろ騒音のために周辺の方が御迷惑をこうむっておる事情を私どももつぶさに存じております。具体的な、たとえば板付あるいは厚木というような基地の周辺におきましては、病人のみならず、妊産婦あるいは老人、あるいは学童が学校から帰ってきたあと家においても勉強できないというようなこと、あるいはニワトリが卵を生まない、牛が乳を出さないというようなこと等々、いろいろな実情を承り、また御迷惑の状況も、私どももときには実地検分をしております。これらの対策に関しまして、今の学校、病院に限らず、これ以上どういうことをしていけばいいか、これが大問題のめんどうな問題なわけでございまして、若干のところにおいては、これは騒音のみならず事故の危険もあるというようなところでは、いわゆる集団移転というようなこともやったような例もございます。しかしながら各般の今のような被害に対する対策、これらの点につきまして積極的に政府がやるために、先ほど総務長官のお話がありましたが、内閣において、関係各行がみんな集まった機関においていろいろ協議し検討して、そして具体的の措置を探し、これによって騒音対策を講じていきたい。私ども基地の主管者といたしまして、今回内閣にできました、このようなものに非常に期待をかけておるわけでございます。
  105. 河野正

    ○河野(正)委員 福岡の板付周辺におきまする調査を再三再四申し上げましたが、その一つとして、もう一つ具体的な例を申し述べておきたいと思います。それによりますと、爆音のために耳が聞こえにくくなった、こういうふうに答えた住民というものが、調査対象の中で大体五三%おる。それからさらに記憶力が少し悪くなったようだ、こういうふうに訴えた住民が調査対象の中で五九%おる。それだけでは信憑性が非常に薄いので、実際に基地周辺の住民と、全然基地に関係のない一定地域の住民とを調査いたしましたところ、基地周辺の百五十名の住民の調査によりますると、難聴者が百五十名のうち三十六名おる。約二四%、それから全然基地と関係のない、環境のよい地域の一定の人員百四十四名について調査したところ、この中には二十一名の難聴者がおられた。これは一四・六%。そういたしますると、単に職場あるいは基地内で作業に従事する、そういう一つの悪い環境の中で生活するという人たちだけでなくて、そういう一定地域の住民というものも、今申し上げるように、一方では基地周辺では二四%の難聴者、それから関係のない、環境のよい地域で一四・六%の難聴者というのでありますから、約一〇%の開きがある。この一〇%というものは、おそらく基地の騒音によってそういう悪影響を受けたのではなかろうか、こういう一つの判断が行なわれるわけです。ところが基地が設定されまして、今日まで非常に長い歳月を経てきているわけですが、今ここで対策協議会を作って、今からそういう実害について調査をするんだということでは、私はあまりにも基地周辺の住民が気の毒だと思うのです。しかも今日までそれに対する対策ないしは補償というものは全然講じられておらない。そういう点については今後どういうふうに御検討願う御意思があるのか。内閣に対策協議会ができるわけですから、そこでいろいろ検討されると思いますけれども、調達庁としてはどういう御見解でその対策協議会に臨もうとされておるのか、そういう点について一つ御所見を承っておきたいと思います。
  106. 丸山佶

    ○丸山政府委員 これは基地周辺の環境整備にも非常によることと存じます。難聴の問題その他の問題で病理学的に、あるいは医学的の調査をした報告はあるようであります。また板付では福岡市の一応調査された、今のお話のような報告書もございます。私ども調達庁といたしましては、なおこの政府の環境整備の対策協議会等におきまして対策を立てる意味の資料調整のための調査もいたしましたが、私はやはり環境整備という方面に力を入れていくのが、まずさしあたり調達庁としては考えるべき対策と、このように考えております。
  107. 河野正

    ○河野(正)委員 もちろん環境整備も必要でございますけれども、その環境整備というものは今後の問題だと思うのです。ところが実際に今日そういう騒音に基づいて実害をこうむっておる人がいるわけです。これは労働省から御説明がありましたように、百フォンの騒音というものは確かに長期に被害を与えるというような研究資料もそろえて御発表になっておるわけですから、今日実害をこうむっており、実害をこうむりつつあるそういう人々に対しましてはどういう対策ないし補償を考えておられるのか。たとえば、労務部長もおいででございますからお尋ね申し上げておきたいと思いますけれども、基地で働いておる駐留軍労働者について私が板付で調査したところによりますと、騒音手当をもらっておる人が一人もおらぬ。協約ではなるほど騒音手当を出すようになっておるそうでございますけれども、それの適用を受けた人が一名もおらぬ。今申し上げましたように板付基地周辺におきまする騒音というものは甚大なものがあるにもかかわらず、しかもそういう被害をこうむっておるであろうということで、実はそういう労働者に対しては騒音手当を給付するということになっておりながら、それが適用されておらぬ。これは具体的な一例でございますけれども、そういう状態のもとで今後いろいろ対策を講ずるのだとおっしゃっても、私はそのまま額面通り受け取ることができぬわけです。そういう点を解決しておって、さらに将来についてはこうだとおっしゃるならば話はわかりますけれども、今後の問題以前に解決しなければならぬ問題がたくさんあるにもかかわらず、そういう問題については全く放任の状態に置かれておる、こういう状態を一体どういうようにお考えになっておるのか、明らかにしておいていただきたいと思います。
  108. 丸山佶

    ○丸山政府委員 今まで行なってきましたごときいわゆる補償措置は、形の上に現われまして金額的に算定し得るようなものをやって参ったわけでございますが、それ以上今先生の御提議のような問題は、実は私どももこれまでそのような問題に対する補償措置あるいはその対策措置、このようなことについていかがすべきかということに検討を加えてきておるのですが、遺憾ながら今日のところ、具体的にどうすればいいのか、またもし補償というようなことで応ずるとすればどのような補償の根拠、形態あるいは額というようなことにすべきか、結論を得ておらない次第であります。そこで今後の問題としましては、われわれの力の及ばないところ政府全体の力をもって何らかこれの解決策を見出していただきたいというのが今度内閣にできました機関の一つの趣旨でございます。  なお、板付の基地内の作業状況の問題につきまして、やかましいジェット機のもとで作業をする労務者の方々に関しますることにつきましては、これは少なくとも特別の手当を支給すべきだということで、三十三年の八月にそのような協定をアメリカと結びましてやってきておるのでございますが、この協定ではジェット・エンジンの修理工場またはその付近の作業ということでありますので、実情としては、そういうような修理工場でないところにおいても、大体百フォンをこえるような騒音下において仕事しなければならぬ場合もありますので、これらについても同様に特別手当を出したいものと考えまして、目下これに対して検討折衝を続けておる次第でございます。
  109. 河野正

    ○河野(正)委員 委員長の方に協力したいと思いますので端折って申し上げたいと思いますが、今長官から百フォン以上の騒音のある作業では騒音手当について検討したいと言われたが、これは即急にやっていただきたいと思う。ただ私はここで一つふんどしを締めておいていただきたい点は、現地の実情を聞くと、耳にせんをしておけばいいじゃないか、こういうことをアメリカ軍が言っているということも聞いておる。そういう認識の仕方ですから、この問題が今日実現の方向に運ばれておらなかったというふうに実は私は判断をしていた。そこで実害については今まで再三再四繰り返して申し上げましたし、そういう協約もあることで、これは完全実施していただくということで今お話もございましたから、それを即刻御検討して実施していただくようにお願いしたい。これでよろしゅうございますね。それではもう一点だけお尋ねして委員長に協力したいと思います。  最後に教育との関係についてお尋ねをして締めくくりたいと思いますが、先ほど調達庁長官からも防音教室その他についての御所見の開陳がございました。しかし今日なお防音教室の問題が、もちろん予算上の問題にも制約を受けておると思いますけれども、なかなか思うように進捗しておらない。そのために板付周辺におきましても公立高校進学率に非常に差が出てきている。これは具体的に統計がございますけれども時間がありませんから申し上げませんが、これは進学率ですから確実なものです。これによりましても、三十二年に基地周辺の高校進学率が四五・七%、その他が五三・四%、三十三年におきましては基地周辺が四五・三%、その他が五四・八%、こういうように一〇%近い差が出てきておって、長期にわたる教育効果に非常に大きな悪影響が招来されている一つの具体的な実例が出て参っておるわけであります。このことは今後の日本を背負って参りまする第二の国民を養成する上においても、私はきわめて遺憾な点があるということを考えるわけです。こういう点に対する御所見と今後に対する対策、これは文部省から。それからさらに調達庁にお尋ね申し上げたいと思いまするが、なるほど特損法の精神に従って防音工事が行なわれる、ところがもともと基礎になる施設というものが非常に老朽化されておるということになりますと、それに防音装置を施してもらいましても、施した当時は別としましても、だんだん効果が薄らいでいく。そういたしますと、防音教室はすでに行なってもらったが、勢いその施設を移さなければならぬという事態が起こってくるケースがある。たとえば福岡の商業高校の場合がそれです。特損法の精神に基づいて行なわれましても、今申し上げたような実情というものが起こってくるケースがある。そういう問題については国はどのようにお考え願っておるのか。当然それ相応の助成案を講ぜられなければならぬと思いますけれども、時間がございませんから今の二点だけ取りまとめて御質問申し上げましたので、それぞれの関係者の方から簡潔に、しかも率直な御答弁をお願い申し上げたいと思います。
  110. 中尾龍彦

    ○中尾説明員 局長お差しつかえのため、計画課長でありますが、お答え申し上げます。教育上の問題といたしまして、私の所管といささか違うのでございますが、御質問がございましたので、私の所管する範囲でお答え申し上げたいと存じます。  本年に入りまして、騒音対策調査会、文部省の中にそういう騒音による教育上の障害に対する問題を研究するという委員会の経費が初めて認められたのであります。この点おしかりをこうむるかもしれませんが、おそきに失したうらみはございますが、こういう調査会を作りまして、学識経験者という方々あるいは官庁関係方々委員になっていただきまして、教育上の問題あるいは保健衛生上の問題、そういう問題点についてこれから具体的に一そう推進したいということになっております。ただいま御質問の点についても当然その委員会でさっそく取り上げていただく予定になっております。
  111. 丸山佶

    ○丸山政府委員 教育の問題は私も最も重要なことと考えておりますので、これまでもそうでありましたが、今後ともに文部省と協議しつつ私どもできる限りの力を尽していく所存であります。特に今お話のありました老朽の校舎であって、一応の防音をしたけれども、なお効果を上げない、こういうようなものに関しましては、これを先ほど申しましたように鉄筋化するか、あるいは適当な場所に移転するか、このようなことも考えていきたいと考えております。
  112. 山本猛夫

    山本委員長 午後二時まで休憩いたします。    午後一時一分休憩      ――――◇―――――    午後二時四十三分開議
  113. 山本猛夫

    山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出国民年金法の一部を改正する法律案通算年金通則法案通算年金制度を創設するための関係法律の一部を改正する法律案年金福祉事業団法案児童扶養手当法案八木一男君外十四名提出国民年金法案国民年金法施行及び国民年金と他の年金との調整等に関する法律案国民年金積立金運用に関する法律案、以上八法案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑を許します。滝井義高君。
  114. 滝井義高

    ○滝井委員 時間がございませんから、要点だけを御質問いたしますから、簡明率直にお答えを願います。  今度政府の方で年金法の一部改正に関連をして新しく通算の制度を確立する法律をお出しになったわけであります。しかし総理も御存じの通り、現在われわれの国には、国民年金のほかに厚生年金、船員保険等、少なくとも七つの老後を保障する制度があるわけでありますが、それらのものはみんなばらばらなのです。総理が言われるように、日本の経済の体質を改善して構造政策というものを強力に推進しようという場合に、労働力の産業間の移動というものは非常に重要な問題になってきたわけであります。特に農業基本法等をおやりになる場合に、農村からここ十年間に少なくとも四、五百万くらいの人口の移動がある。そうしますと、これは単に年金の通算だけでは老後を確実に保障していくということはむずかしくなる。どうしても老後を保障する日本の年金制度の再編成をしなければならない時期が来ていると思います。幸い医療については総合調整の問題が今議題にしっております。しかし政府は、いわば乱立する中にもう一つ国民年金というものな作ったわけです。これも群鶏の一鶴のようなもので、さっとすぐれたものならばいいのですが、これがまたそうじゃない、乱立に拍車をかける状態なんですね。いわゆる日本経済の構造的な改革をやる場合にこれは非常に重要な問題です。産業間の労働力の流動をはからなければならぬ、斜陽産業と日の当たる産業との間のアンバランスが大いに出てくるわけですから。これについての総理の見解をまず第一にお聞かせ願いたい。
  115. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 なかなか専門的のことで、お話の点がはっきりわかりませんが、一応厚生大臣から答えまして、そしてそれによってまた御答弁いたします。
  116. 古井喜實

    ○古井国務大臣 この年金制度ができたときも違うし、ばらばらになっておる。現状お話通りであります。これは産業構造の変化などの問題と深く関係を持ちますが、そうでなくても公務員の年金、あるいは大会社に勤める人の年金、落ちこぼれみたいな弱い立場国民年金、これをそのままで永久に置いておくというのでは、国民が同じように老後の生活を保障されるという、そういう体制が整わないのでありますから、全体的な調整ということは理想の問題としてどうしても考えなければならぬ問題であります。ただ、各制度、の現状を見ますと、それぞれの沿革心あるし、古いものもあるし、やっとこのごろ生まれたばかりのような国民年金のようなものもあるし、そういうわけでありますから、やはり時期、段階を考えいかなければならぬ。お話のように医療の全体的な調整の問題はもっと熟しておると思いますが、遠い理想といっては悪いのですけれども、理想としてはそういう考えを持ちながら段階を踏んでいく、こういうふうに考えるほかはないかと今のところは考えております。
  117. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと落ちこぼれのような国民年金が、ある程度地に足がつく状態になってくると、やはり再編成は近い機会におやりになる。こう考えて差しつかえありませんか。
  118. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 お話の点がわかりました。日本の社会保障制度は御承知の通り績み重ねられてだんだん広くなってきておるのであります。これは年金におきましても今厚生大臣が言った通り、医療につきましてもやはり非常に不公平な切実な問題があるわけです。私、全般的に進むにつれて、これに対してのいろいろな善処をしていかなければならぬと思っております。
  119. 滝井義高

    ○滝井委員 次は、われわれが今実施されておる国民年金を問題にする場合には、四十年先はなるほど三千五百円です。二十才の人が四十年かける。しかしそれを一応比較するときには、先ほど小林委員からも指摘がありましたが、他の年金というものは大体二十年です。恩給なんかはもっと短くて十七年とかというわけですが、大体二十年です。これは二十五年です。ところがその二十五年でもらう年金額というものは二千円なんですね。この二千円では食っていけないのです。一体政府はこの二千円をどうしておきめになったのですか、こういう質問をしますと、これは家計支持的なものだ。いわば一家で三人働いている、ほんとうはおやじだけが働いていればいいのだけれども、おやじだけの給料では食えぬので、家計補てん的に義務教育を終わった二人の息子と娘を働かしているのだ、こういう形があるわけです。今度のこの年金もそういう意味に厚生省は答弁をしているわけです。そうしてこの二千円というのはどういうところからきたかというと、生活保護費が大人が二千円なんです。これを基準にしている、こういうわけなんです。ところがヨーロッパ諸国におきましては、大体において熟練工の賃金か未熟練工の賃金を基礎にしてきめているわけです。もちろん最低は二割五分くらいですけれども、高いのは六割六分くらいになっております。ところが日本の年金をきめる場合に、家計支持的なものでは、あなたが言う社会保障というものを今から一生懸命やるんだといっても、ちょっと工合が悪いような感じがしますが、これも一つ修正をしてほんとうに老後の生活を安定せしめる方向年金額を持っていかなければならぬと思うのですが、その点に対する総理の御見解を承っておきたいと思います。
  120. 古井喜實

    ○古井国務大臣 また先に御迷惑をおかけいたしますが、先に一言答えさせていただきたいと思います。  今の年金額は、要するに今の掛金、国庫負担をもとにして成り立つ金額であるのであります。その金額を二十五年で二千円であるとか、あるいは四十年も四十五年もたってから三千五百円であるとか、今日の掛金とか国庫負担からいくとそういうそろばんになるわけでありますけれども、しかし経済が成長して所得が二倍になり三倍になるということになれば、当然年金額もこの成長に伴って、今若い人がもらうころまでには引き上げられ引き上げられして、二万工手円とか一方円というもっと大きな金額にも引き上げられるべき筋合いになっておるものと私は思っておるのであります。きょうの金額が、きょうの二十代の人が六十五になってもらう金額が、そんなものとは思っておりません。青写真はそこにあるはずでなければならぬ、あるはずだと思います。でなければ楽しみがない。二千円というのは生活保護とあわせたというばかりの意味ではない。その辺からも出ておりますが、しかし、これで生活を立てていく手がかり、足場にするという考え方でありまして、この二千円で生活が立っていく、そういうわけのものではないのでありますから、今後の改善に待っていくべきであるというふうに私ども考えております。
  121. 滝井義高

    ○滝井委員 ILOの社会保障の最低基準では、配偶者加算を含めて従前の所得または未熟練工の賃金の四〇%、こう定められておるわけです。そこで私の御質問は、将来は少なくともそういう賃金というものをどの程度でこういう形の方針をとりますかどうかということです。今は家計支持的なものだということですから、さしみのつまみたいなものなんです。それでは困るではないか。だんだん経済が伸びれば所得が上がることは事実だが、その場合の基準というものをILOの社会保障の最低基準のような工合にいたしますかということをお尋ねしているわけです。イエスかノーを言って下さればけっこうです。池田総理からお答えして下さい。
  122. 古井喜實

    ○古井国務大臣 また先に失礼しますが、産業構造、就業形態というものの今後の変化、推移もよく考えなければならない。きょうのままの姿でおっしゃるような形に直ちにやれるかどうかにはだいぶ問題があると思います。今後の推移も考えなければならぬし、何しろILO百二号のああいう一つのタイプもあるのでありますからして、これを大いに考えつつ、産業構造、産業形態などの推移とにらみ合わせて、あの通りにいったらいい、こういう状況でありますればそこにいくことはしごくもっともなことだと思うのでございます。
  123. 滝井義高

    ○滝井委員 どうも古井さんばかりが立つので、今度は池田さんのお得意のところを聞かしていただきたいと思います。  実は厚生省の計算によりますと、厚生年金がピークになる時期は昭和八十五年です。これが四兆八千億、それから国民年金昭和九十年になると三兆六千億、合わせて八兆四千億の積立金ができるわけです。これは十年もすると一兆くらいにはすぐなるわけです。所得倍増計画の最終年度くらいになると七、八千億から一兆くらいになるのではないかと思うのです。このような莫大な積立金を今後一体どう運用するかということが非常に重要になってくるわけです。今までの運用状態を見るとばらばらです。みんなわが道を行っておる。あとで御指摘いたしますが、これではいかぬと思います。国民の零細な金が集まって、しかも強制適用で集まったこの金を計画的、年次的に運用をしていく方針、日本経済の成長にもある程度寄与させなければいけない大事な金なんです。そういう方向にやっていく意思があるかないか
  124. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 国民の零細な資金でございまするから、これが国家資金であると同時に、またもとの方に対しましても注意をしながら、そのときどきによりまして適正な運営をはかっていかなければならぬことは当然でございます。
  125. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、過去の積立金運用に対するこういう批判が行なわれている。積立金の有利な運用が行なわれていないということが一つ、もう一つは、被保険者の福祉の増進のために運用しておるということが不十分だ。それから運用方法について拠出者の意思が十分反映されていない。だからこれを当然有利な運用がはかられ、被保険者の福祉のために運用をし、十分被保険者の、拠出者の意思が反映するようにしなさい、これが積立金運用の三原則だ、こう厚生省あたりは言っておるわけです。さきに池田総理なり大蔵大臣なり厚生大臣が、それぞれの諮問機関に運用についての諮問をされたら、それぞれその機関から答申があったわけです。社会保障制度議会、資金運用部資金運用議会国民年金議会、それぞれニュアンスの違った答申をしておりますけれども、とにかく国民年金議会社会保障制度議会が非常に重要な点で一致しているのは、この年金積立金運用にあたっては、資金運用部に年金の特別勘定を設けてくれということについて意見一致を見ておるようであります。そこで、これは零細な金を預かる古井さんの方の意見を先に聞かしてもらって、それから全体を統括する総理の御意見を今度は聞かしてもらいたい。古井さん簡単に一つ……。
  126. 古井喜實

    ○古井国務大臣 簡単にお答えいたします。  そこで特別勘定という形式的のものを設けようが、設けまいが、これは年金の性格に、また拠出者の意思に合うように積立金運用しなければなりませんので、そういう方針で運用するわけでありますし、本年度におきましても、滝井さんが御専門で御承知のように、そういう方針で運用をやっております。しかし形式的にもきちんと、しろうとわかりというか、国民多数がわかるように特別勘定という形式を設ける問題は、非常に望ましいと私としては思います。で、これは実現に努力をしたいというふうに私は思っておるのであります。これは私の意見でございますが……。
  127. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 この問題につきましては、時代の流れは滝井さんのおっしゃる通りでございます。流れはそういうふうにいっておる。われわれもそうしなければいかぬと思う。いつか私は今の三審議会の会長にお集まりを願って、食事をしながらずっと聞くと、大体皆さんの意見も同じように受け取れたわけです。そうして、また途中におきましても、大蔵省並びに厚生省の事務当局の意見も聞きましたが、もう実質的にはほとんど一致している。これはうまく片づいたと私は考えておったのでございますが、今の形式的の問題につきまして御質問があったようでございます。十分御意見を承りまして、そうして今の流れ、この流れというものに逆らわないようにやっていきたいと考えております。
  128. 滝井義高

    ○滝井委員 今年はその流れの過渡的な段階として、三十六年度予算編成にあたっては、財政投融資を三十六年度財政投融資使途別分類ということで、今年はどうにか両方の頭を抑えたわけですね。しかしこれは年金特別勘定をお設けになっても、資金運用部の中に設けるんですから、だから依然として大蔵大臣の所管のもとにあることは確実なんです。しかし零細な金を使うのにははっきりと明白にしてくれ、こういうことなんですから、この点は、総理、ここで、くどいようでございますが、大内さんやら、有沢さんやら、中山さんやら、そのほかの御意見をお聞きになって、大体意見一致を見たようであるということでありますから、一つ特別勘定に来年からするように努力するというくらいの御言明はいただきたいと思うのです。
  129. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 先ほど申し上げましたように、実質的には私はもう話はついておる。ただ形式的の問題でございますから、先ほどお答えしたように、こういう流れに沿って皆さんのお気に入るような方向に善処したいと思っております。
  130. 滝井義高

    ○滝井委員 皆さんの言うように善処する……。  それから最後に一つだけ、非常に問題がありますから指摘しておきます。  それは、この年金の金がどういう形で運用されておるかという、その多元的な運用の矛盾点を、総理、知っておいていただきたい。それは、この年金の金が、まず病院を建てる面では医療金融公庫にいくのです。それから病院を建てるのに、同じく年金福祉事業団というのにいくのです。それから地方債の形で今度は病院が建てられる。それからこの年金と同じ性質を持っている国家公務員の共済組合、たとえば非現業、こういうところの金はここに入ってこないのです。そこで独自に病院を建てる。こういう形になっております。そこで、この積立金が、こういうような機関にばらばらにいって、病院が建てられて、そしてそこにはだれもその病院の建設について全国的な統制をやらないのです。だから、まずAという町のまん中に一つ医療金融公庫の病院ができたとします。そうすると、隣に年金福祉事業団ができる。もう一つ今度は労働省の労働福祉事業団ができるのです。そうしてみんなそれぞれこの目的に沿った労災なら労災をやっていると赤字になるから、一般患者を見るようになる。もうむちゃくちゃです。こういう形が一つ。それからもう一つ、住宅を見てみますと、やはり同じです。雇用促進事業団がこのごろできました。これが職業訓練と、共同住宅を作る。今度はやはり年金福祉事業団も共同住宅を作る。それから年金の金は住宅公団にいくのです。同じく住宅金融公庫にいくのです。こういう工合に、同じ年金の金が多元的にばらばらと運用せられて何ら脈絡がないのです。一体この金は住宅のどういう方面にいきますかと言っても、大蔵大臣も答弁ができなかったのです。こういう多元的な運営がそれぞれ行なわれて、そして各省が、あるいは各局がわがなわ張りを広げるために狂奔をしておる、こういう形なんです。そしてその利率は全部いった先々で違ってきている。こういうことではいかぬと思うのです。資本主義の世の中で、自由と創意で工夫するとはいえ、お金を効率的に使う方向にはやはり御留意を願わなければいかぬと思うのです。一つこの点の総理の明快な御答弁だけをいただいておきたい。
  131. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 全く同感で、そういう事例があることを私も存じております。今後こういうふうなお金がだんだんふえていきますと、その弊害が非常に多くなってくる、高くなってくる。それを改めるように善処しなければならぬと思っております。
  132. 滝井義高

    ○滝井委員 よろしくお願いいたします。これで終わります。
  133. 山本猛夫

    山本委員長 河野正君。
  134. 河野正

    ○河野(正)委員 時間がありませんから、母子福祉年金、さらには遺児年金に関して、基本的な点について若干触れて御所見を承っておきたいと考えます。  御承知のように、自民党の所得倍増計画の中でも若干言及されておるわけでございまするが、今申し上げまするような児童の問題は、社会保障体系の中できわめて重要な位置を占めておるわけでございます。従ってこれにつきましては、西欧諸国でも、それぞれ国の責任において、もうすでに四十カ国において今申し上げましたような対策が完璧を期して実施されておる。  そこでまず第一にお尋ねを申し上げておきたいと思いまする点は、国連におきまする児童権利宣言の中にも、子供の多い家庭に属する児童に対しては、国の責任において費用の負担を行なわなければならぬということがある。そもそも社会保障の建前から申し上げますると、すべてそういう社会保障というものは、世帯単位ではなくて、一人当たりに対して、個々に対して保障を行なっていくということが私は社会保障の建前でなければならぬと思う。特に子供たちは日本の次代を背負うきわめて重要な使命をになっておるわけでございますから、特にそういう社会保障の原則に基づきましても、世帯単位でなくて個々において保障の措置をとっていくということが、国連の児童権利宣言の精神からも当然私は望ましいと思いますが、そういう点に対しまする御所見をまず承っておきたいと思います。
  135. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 国連の関係での施策は私十分存じておりませんが、児童に対しましての国としてとるべき策につきましては、今後の国のことを考えますと十分な手を尽くしていかなければいかぬと思います。私は母子福祉年金とかあるいは母子家庭の貸付金等等を拡大し、今後におきましても、生別母子につきましては特段の考慮を払うよう厚生省にお願いしたような次第でございます。この点は今後拡大していきたいと思います。
  136. 河野正

    ○河野(正)委員 時間がございませんから、これはお尋ねするよりも要望になってしまいますが、今度の法案にございまする、低所得者のそういう児童を対象にするのではなくて、児童というのは日本の次の世代を背負うわけでございますから、すべての児童の個々それぞれに措置を行なうというのが、社会保障の原則からいって一番理想的な措置であることは、もう御説明申し上げるまでもないと考えております。しかも国連の児童権利宣言の中にも、そういう趣旨がうたわれておるわけでありますので、一つそういう趣旨で、所得いかんを問わず、次代のりっぱな健全な児童を育成するという意味で、さらに積極的な施策を施していただくようにお願いしておきたいと思います。  それから第二点は、先ほど滝井委員からもお話ございました、いわゆるILOの、社会保障の最低基準に関しまする百二号条約でございますが、この中にも、すべての労働者の家族に対しまする手当の支給ということが定められておるわけでございます。ところが今日の日本の実情を見て参りますと、公務員あるいは民間の大企業や経営者の非常に強大なところで、それぞれそういう責任者によりまして家族に対します手当と申しますか保障というものが行なわれておることは御案内の通りでございます。ところが比較的力の弱い中小企業、零細企業あるいは農民においては、そういうあたたかい措置が行なわれておらないというのが今日の実情でございます。そういたしますと、大企業、中小企業あるいはまた農村というような地域、職域によって非常に格差、不合理と申しますか、そういうものが生じて参るわけでございます。従ってこの点は、一部はILO百二号の問題にも関連いたしまするけれども、それのみならず、国民全般から見て参りましても、そういう力の強いところ、あるいは非常に力の弱いところに生活するそれぞれの国民が、非常に不合理な措置を受けるということは必ずしも適切でない。これは今の自民党内閣の方針にも反するであろうというふうにも考えるわけであります。そこでそういう点に対しましては、当然国がそういう弱いところに対しては措置をする、そうして社会保障の万全を期していくという形が当然確立されなければならぬと思いますが、基本的な点でございますけれども、こういう点に対しまする所信を承っておきたいと思います。
  137. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 この家族手当の問題も、先ほど来お答えしておると同じように、家族手当が行なわれないばかりでなしに、お話のように農民とか中小企業の方々は、手当どころか働いておられる、私はこういう点につきまして、税制その他でも、だんだん専従者控除などで拡大していく、そして今の各産業別の不均衡をなくしたい、こういうことを常に考えておるのであります。税制面とか、あるいは積極的に中小企業、農民等の業務の拡大、そしてまた社会保障的にもいろいろな点から考えていきたいと思います。
  138. 山本猛夫

    山本委員長 大原亨君。
  139. 大原亨

    ○大原委員 それでは簡単に二点ほど質問をいたします。  第一点は、国民年金法通りますときに附帯決議があったのであります。その附帯決議は、身体障害者年金についても、内科的な疾患の実態等を十分研究いたしまして、これを身体障害音の年金の中に入れるべきである、こういうことで与野党一致いたしまして附帯決議をいたしたわけであります。附帯決議がございましたけれども、今回の改正案には一向に姿を見せておらないのであります。結核等で肺などを四分の三くらいとりまして、肺活量が八百ぐらいだ、階段を上るにも、あるいはかぜを引いてもすぐ病気になる、余病を併発しやすい、こういう非常な健康管理をしなければならぬということがはっきりいたしておる病気は、内科的な疾患でも外科的のものと、ほとんど同じである。それからもう一つは、精神病もあるでしょう。  それからもう一つは、これは総理大臣関係が深いわけでありますが、広島、長崎の原爆症、この原爆症の中で昭和、十二年と昨年の法律改正によりまして、認定被爆者と特別被爆者、こういう医療保障の制度が出て参りました。認定被爆者というのは総理大臣も御承知だと思いますが、白血病とか白内障とか、原爆の放射能による身体の疾患障害であります。これは因果関係が明確なのであります。しかし、昨年改正をいたしました特別被爆者というのは、これは因果関係が明確でないけれども、健康管理を要するから、いろいろな点を論議いたしまして国が保障することになっておるわけであります。この点についても範囲が少し狭いという議論がある。私は無理を申し上げるつもりはないのですが、申し上げたい点は、現代の医学によりまして、放射能の影響によっていわゆる白内障、白血病の宣告を受けましたら、これはほとんど不治の病だといわれております。だからこの原爆症のおそるべき被害については、総理大臣も、初めて内閣総理大臣になられて広島に行かれてごらんになったはずだと思います。これはいかぬといって総理大臣も新聞に発表されておるわけです。どんどん案を出してくれ、やるからということを言われ、また前の中山マサ厚生大臣も参りまして、これは大へんだという話なんです。だから私はこの国民年金の中で、無拠出、拠出の別はありますが、無拠出身体障害者の年金の中で、これらの問題をやはり附帯決議の趣旨に沿うて、すみやかに改正していただきたい。総理大臣は、そういう点について具体的なことは十分お聞きになっていないかもしれませんが、若干の説明を加えまして、身体障害者の年金には至急にこれを入れて、そうして年金を支給するように、そういう点についての御意見をお聞きしたいと思います。
  140. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 身体障害者の年金を拡大するという御意見のようでございます。その趣旨には私も賛成でありますが、何分にも内科的のものについては、その診断と思いますか、その部分が非常にむずかしゅうございますので、厚生省の方でも研究はいたしておりましょうが、まだ結論は得ておらないようであります。今後この問題については十分検討いたしたいと思います。なお、これらの関係の気の毒な方々には、徐々にめんどうを見る範囲をふやしていっておると承知しております。
  141. 大原亨

    ○大原委員 今の、放射能の影響、原爆の影響ですね。それによりまする、私が申し上げました一番狭い範囲で放射能との因果関係がわかっている白血病とか、そういう病気ですね。これは今原爆医療法の医療審議会におきまして認定いたしましたのが四千数百名であります。人数がわずかなのであります。私は時間がありませんから、こまかくこの問題について政策論や、そういう点については触れませんけれども、そういう原爆の影響によるという点がはっきりわかっておりますと造血機能や増殖機能にも非常に大きな影響を及ぼすのですから、そういう点は私は研究をするという段階よりも実施をする段階ではないかというふうに存じますが、事務当局が怠慢でありましたら総理大臣の方から厚生大臣を通じて督励していただきまして、どんどんやっていただきたいと思うのですが、その点につきまして、特に総理大臣は御関係いかと思いますから御理解あると思いまして、重ねて一つ御見解を伺いたい。
  142. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 ただいまお答え申し上げましたように、大原さん御存じの通りに、原爆を受けられた方にもいろいろな種類がございます。だから今後十分研究いたしまして、今までの措置を拡大し、あるいは身体障害年金にどの程度のものが加わるべきかというようなことにつきまして検討いたしたいと思います。
  143. 大原亨

    ○大原委員 その点は一つ事務当局を督励していただきまして、できるだけすみやかに実現していただくように要請いたしたいと思いますが、これに関連して厚生大臣に、総理大臣の前でもう少し具体的な答弁をしていただきたいと思います。
  144. 古井喜實

    ○古井国務大臣 毎々大原さんからも伺っている問題でもありますし、実行を早くしなければならぬ面は実行を急ぎたいと思います。内科的疾患の問題は、これは前々からの問題で、今まで申し上げているようなことでありますので、いっときに御満足のいく返事が今までできておりませんが、これもよく研究して――事柄としては、総理も言われたように内科的疾患だって同じ問題ですから、具体化の問題はもうちょっと研究してみたいと思います。
  145. 大原亨

    ○大原委員 最後に一言だけ質問しますが、さしあたり無拠出のやつをとって御質問するのですが、御承知のように給付の制限があるわけです。年令につきましては七十才以上。私どもは少なくともこれを六十五、六十までやってもらいたいという要望があるわけです。それからもう一つは所得の制限があるわけです。本人につきましては福祉年金等でも十三万円、世帯で五十万円、こういうのがあるわけです。これらの給付の制限をできるだけ逐次緩和していくような御努力をできるだけ近い機会にしていただきたい、給付の制限について緩和するような措置をとっていただきたい。その点につきまして総理大臣の御答弁をお願いしたい。
  146. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 この給付の制限につきましても、わが党内でもいろいろ拡大論があるのでございます。私もその点につきまして今回の予算について検討いたしてみましたが、まだまだいろいろな問題もほかにたくさんございますので、社会保障関係経費をできるだけ多くして、だんだんこういう問題も解決していきたいと思っております。
  147. 山本猛夫

    山本委員長 井堀繁雄君。
  148. 井堀繁雄

    ○井堀委員 ごく基本的なことを簡単にお尋ねをいたしたいと思います。私は、今この長期保険の一番大切な発足の時期にあたりまして、政府の英断を要望する意味でお尋ねをしたいと思うのであります。  この年金制度は、正直に言って国民の間に非常に不人気だと思うのです。この人気を挽回するということは、この制度を成功せしめる一番大切な措置ではないかと思うのであります。そこで問題になりますのは、国民年金保険の対象になる被保険者は、おおむね低所得者が多いと思うのであります。雇用労働者あるいは公務員などは、すでにそれぞれの年金制度によって構成されておりますので、国民年金の方は、かなり低所得者に類するものを包括しなければならぬと思うのであります。そして、これはやはり類似の保険にやや近いものにしていくという魅力がなければならぬのではないか。正直に言いまして、毎月百円ないし百五十円の掛金に対して、二十五年後にようやく二千円、あるいは四十年後に三千五百円というのでは、あまりにも魅力がなさ過ぎるというよりは、こういうものではという、全く失望を感ずるような感じを与えておると思うのであります。もちろんこの制度は長期のもので、五年ごとに調整を行なうことになっておるのでありますが、この制度を、他の先進国の例にならって、最初に政府が財政的な思い切った導入を行なって、五年後くらいには最低の生活の保障が可能だという限界に近い給付を行なって、そしてその後に漸次経営を堅実化していくというやり方、もう一つ言えば国民所得を増大する意味において、被保険者はおおむね勤労者でありますから、その勤労意欲を刺激するというやり方に置きかえていくということが、今日保険者である政府にとっては英断を必要とするところではないか。こういう方向に政策の基底を置きかえれば、国民年金制度の不人気を挽回することは決して至難ではないと思う。その制度を今ここで踏み切らなければ、将来年金制度に対する非常な困難を生ずるのではないかという憂いを持ちますのでお尋ねをいたすのでありますが、ことに総理は計数に明るいのでありますから、私が申し上げるまでもなく、今日総理府の統計から見ましても、二千二百五十五万世帯のうちで月額二万以下の低所得者というものがその半ば以上になる一千二百十五万世帯という三十四年七月現在の資料が出ておるのであります。その中でもさらに低い階層がこの対象になるのでありますから、百円というのは非常に大きな金額だと思いますので、この点の抜本的な切りかえをなされる御意思がおありになるかどうか、その具体的な点について、一つ御意思を伺っておきたい。
  149. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 けさほど来、そういう問題につきまして、いろいろお答えを申し上げたのでございます。何分にも今の日本の経済状態その他を考えますと、まずこの程度でいって、そして急速な経済の成長とにらみ合わせて、今後そういう問題を片づけていきたいと思っております。
  150. 井堀繁雄

    ○井堀委員 経済のにらみ合いですが、ただ問題は、どちらを先にやるかということについて、実はお尋ねしたわけであります。経済の成長を待ってこの制度を育成していこうということは当然なことでありましょうが、その経済の成長を促進するために、この制度を一足先に育てていくというお考え方になれぬかどうかという点をお尋ねいたします。
  151. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 それはちょっとむずかしいのじゃございませんか。やはり経済の発展というものにつきましては、これは社会保障制度拡充その他が必要でございますが、しかしどちらかといったならば、ためる方が先で、そうして使うのがそのあとだと思います。しかし、それをどんどん繰り返すことによって経済の成長も出てくるということは言い得ると思います。
  152. 井堀繁雄

    ○井堀委員 最後に一つ一お尋ねしておきたいのは、積立金運用であります。これも、この制度にとっては非常に基本的なものだと思うのでありますが、その運営については、各審議会や諮問機関からの御注意もあるということで、よくおわかりだと思いますから、説明は付きますが、私は積立金がピークになるのはかなり先のことになると思いますけれども、もっと加速度的に伸びてくると私は思うのであります。こういう積立金が相当額に達するのを待って改善するということでなしに、その見込みはある程度他の政策のあんばいによってやりくりのできるものではないか、そういう点について、先ほどの御答弁で大体思想はわかりますけれども、この際、そういう点に対する考え方の切りかえをそれぞれの専門家から要請しておるようでありますが、この点に対する御見解を一つ伺って、私の質問を終わります。
  153. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 その資金の使い方につきましては、先ほど申し上げましたようにだんだん流れがきまって参りまして、今後は皆さん方の要望、御意見等に沿い得るようになってくると私は思っております。またそれがほんとうの道だと思います。   〔委員長退席、齋藤(邦)委員長代理着席〕      ――――◇―――――
  154. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)委員長代理 次に青森県、岩手県における火災による被災者の救助に関する問題について、山本猛夫君より発言を求められておりますので、これを許します。山本猛夫君。
  155. 山本猛夫

    山本(猛)委員 去る二十九日より翌三十、三十一日にわたり、岩手県下に起こったフェーン災害の実情並びにその応急措置等調査のため、私は三十日夜東京発、翌三十一日、盛岡駅長室において岩手県の杉田厚生部長より一応事情聴取の後、直ちに災害現地たる宮古市、下閉伊郡田老町及び最大の被災地田老鉱山等にわたりつぶさにその実情を視察し、また、これが応急措置等の点について現地当局と打ち合わせを遂げて参ったのでありますが、以下それらの概要について御報告申し上げます。  まず今回の災害について申し上げますれば、去る二十九日、第四号台風に伴ったフェーン現象により、同地方にきわめて広範囲にわたり旋風を巻き起こし、十四時ごろ下閉伊郡新里村二俣部落に山林火災が発生、その飛火が烈風にあおられ、猛烈な速度で四方に燃え広がり、わずか数時間にして宮古市、久慈町、山田町、田老町、岩泉町、田野畑村、普代村の山林約二万ヘクタール、工場施設、民家等約一千戸を一瞬にして焼野原と化す猛威をふるい、三十一日もなお延焼を続けている状態でございました。  これによる被害は、六月六日現在死者五名、行方不明一名、重軽傷者合わせて百二十二名、罹災世帯一千百四十六、罹災者総数五千四百三十七名に及ぶきわめて広範囲のものであり、その損害額は住宅関係約六億円、山林関係約三十三億円、商工鉱業関係約十三億円のほか、学校、公共物、土木、農作物等総計において約七十四億円に達する、当地方としては未曾有の惨状を呈しておるのであります。  これに対し、県においては、二十九日午後九時、災害救助法に基づく災害救助隊木部を設置し、被災市町村に災害救助法を適用するとともに、現地に係員を派遣し、それぞれ避難所を設置し、収容、たき出しを実施したほか、食糧、被服、寝具等の緊急調達、輸送を行ない、さらに日赤に対し医療班派遣を要請いたしたのであります。また災害発生後、直ちに被災地の求めにより、知事は、自衛隊岩手駐屯部隊に対し部隊の現地派遣を要請、四百八十五名が、現地で障害物の除去、橋梁の復旧、焼け跡の清掃、消火等活発な作業が続けられておるのであります。なお住宅の被害がきわめて多い実情に照らし、県は住宅の確保を重点対策として関係市町村に対しその必要戸数を照会し、設置計画を推進いたしておりますが、今後被災世帯の実態が判明するにつれてさらに万全の手配をとるべく準備中であります。  応急対策等につきましても、私は現地当局並びに岩手県庁首脳者と種々打ち合わせを行なって参ったのでありますが、今回の災害の特殊性にかんがみ、とりあえず次の諸措置が緊急のものと存ずる次第であります。  まず、すべてを失った罹災者に対してその生活再建に必要な生業資金のあっせんでありますが、政府における生業資金のワクを拡大し、これがすみやかに罹災者の手に渡るよう格段の措置が講ぜられねばならないのであります。  次に罹災者に対して現金収入の道を講ずるための救済土木事業を起こすこと、さらに住宅関係については農漁家向きの産業住宅の建築を促進することは、生活安定のため何よりも急を要するものと存ずるものであります。  なお平素消火、飲料用水等に多大の困難を感じている農漁村部落の問題として、この際簡易水道の促進、国庫補助予算ワクの拡大等も必要でありますが、山林を失った当地方の事情により山林の整備資金、山林保護対策に関する強い要望のありましたことをつけ加えまして、以上まことに簡単でありますが、概要を御報告いたした次第でございます。  なお、現地より次のような意見書が来ております。     意見書   昭和三十六年五月二十九日第四号台風が伴ったフェン現象によって当地方に極めて広範囲にわたり旋風を捲き起し、十四時頃山火事が発生、烈風にあおられ、猛烈な速度で、みるみる四方に燃えひろがり僅か数時間にして、宮古市、久慈市、山田市、田老町、岩泉町、田野畑村、普代村の山林約二万ヘクタール、工場施設、民家等約千戸を一瞬にして焼野原と化す猛威をふるい、三十日、三十一日現在尚延焼を続けている現況であります。このような実情において、政府において速やかに善処されるよう、次の事項について意見書を提出します。      記  一、住宅について    現在国でとられている災害復旧のための住宅は、その基準が概ね都市的性格の住宅建築によって画一的に規制されますので今回の罹災者の工場住宅を除いては、その全部が農漁家でありますのでその特性をよく認識され産業住宅の建築について、その実施を速やかに措置されたい。  二、生業資金について    家を焼き、山を焼き、家財、生産資材、食糧等生活に必要な総べてのものを焼きつくした罹災者は、生活再建に必要な資金こそ明日への出発の第一条件であり、生業資金について政府資金の枠を拡大され、速やかに罹災者の手に渡るよう措置されたい。  三、山林に対する保護制度について    山林こそが罹災者の生活をささえる最も大きなよりどころであったが、山の資源を失った罹災者に対して山林の整備資金、調整資金、山林保護対策について特に法制度の措置をとられるよう措置されたい。  四、簡易水道について    従来連たん戸数の不足な農漁村部は簡易水道施設の補助対象にならないので災害時において、消火、飲料水等大変な困難を来すので下記について善処されたい。   イ、簡易水道についての国庫補助金の予算の枠を拡大すること   ロ、利用人口百人未満に対しても国庫補助の対象とされたい   ハ、消火栓の設備についても国庫補助の対象とされたい  五、災害救済土木事業について     すべてを失った罹災者にとって、取りあえず絶対必要なものは現金である、速やかに救農土木事業を起して現金収入の道を講じられるよう特別の措置をとられたい。  六、砂防、導流堤、河川改修について    広範囲な山火事によって裸にされた後において、雨に見舞われた場合はいうまでもなく流域の河川のはん濫である。よって砂防堤、導流堤及び河川改修工事を速やかに実現されるよう措置されたい。  七、海上保安庁看視船の配置について    災害時においては往々にして、陸上交通、陸上通信が杜絶し、混乱を招くおそれがあるので、海上保安庁の看視船を宮古港に常時配船されるよう措置されたい。    昭和三十六年五月三十一日   代表岩手県宮古市長 菊池 良三   関係市町村久慈市長 山内 堯文        田老町長 久保 利七        山田町長 佐藤 善一        普代村長 和村 幸得       田野畑村長 幕内 貞衛   内閣総理大臣 池田勇人殿  最後に一言つけ加えたいと思いますが、今回の三陸沿岸を襲った強風及びフェーン現象下における火災は熾烈をきわめ、岩手県のみならず青森県、宮城県の各地においても多大の被害を与えております。青森県においては死者六名、負傷七十三名、罹災世帯一千百七十、罹災者総数六千四百一名に及び、農林水産業、商工業、建物、土木施設等の損害額は、暴風被害四十六億円、八戸火災被害二十五億円、合わせて七十一億円と相なっております。岩手、青森両県の損害額に宮城県における損害額三億円を加えますと、被害総額は実に百五十億円の巨額に達するのであります。政府におきましては、前に述べました応急措置とともに、これが復旧に万全の措置をとられるよう重ねて強く要望いたす次第でございます。      ――――◇―――――
  156. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)委員長代理 次に厚生関係及び労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑を許します。島本虎三君。   〔齋藤(邦)委員長代理退席、長着席〕
  157. 島本虎三

    ○島本委員 厚生省の方で今回はっきり出している方針の中で、行政的に大きく脱皮するいわゆる新しい方策の一つとして、今回は公害問題を取り上げられて、その行政的ないろいろな機構の点でも画期的な手当をされたように聞いておるわけでございます。それと同時に、各官庁の方でも、公害関係の調査研究費が計上されておりまして、厚生省でも公害防止の調査会が設立されて調査活動を展開されておる、こういうように承っておるわけでございます。従ってこの公害という範囲と今後のはっきりした一つの見通し、確信がなければ、せっかく作ってもこれは何にもならないことになるんじゃないか。ことにこの点は大臣に明確に伺っておかなければならないわけですが、従来これがずいぶんといろいろな方面から叫ばれておりながら、産業振興上の一つの阻害になるということで、これが日の目も見なかったような立法関係、こういうような点がずいぶんあったように聞いておるわけです。今回これを踏み越えられて、公害対策というものを取り上げて調査されておるわけですから、これに対して、はっきりした今後の確信がなければならないと思うのです。従って今後――この公害というものは各人が各様に考えられておるのです。いわゆる公の害なんです。これについて大臣は、公害の定義と申しますか、公害をどの辺まで厚生省の方で考えて、対策を講ぜられるのか、この点のはっきりした見解をまず承っておきたいと思います。
  158. 古井喜實

    ○古井国務大臣 公害の問題につきましては、次第にこの問題が国民に大きな影響を与えてきましたので、空気の汚染にいたしましても、騒音にしても、あるいは振動にしても、なかなか都会地などは、ことに度が強くなってき出したわけでありまして、そこでこれに対して、事柄は容易でありませんけれども国民の健康を守る私ども立場であります。国民の健康を守るためにほうっておくわけにいかない。こういうわけで、この対策を立てるべく調査をいたしておるわけであります。公害の範囲いかんということはきわめてむずかしい問題であります。この種類、程度、実にむずかしい問題でありますから、一口にどうと申すのもすぐさま困難だと思います。ただし、われわれの立場としては、多数の国民に少なくとも健康上の大きな障害を与えるような、そういう悪影響を及ぼすような問題は、これを放置することが適当でない、こういうふうな考え方でおるところであります。そういう現段階であります。
  159. 島本虎三

    ○島本委員 それでは、大臣が今所用で帰られましたので、その点ではっきりしない面において、係の局長の方からこれを明確にしておいてもらいます。大体公害の範囲としては、人体に直接、間接に危害を及ぼし、生活に影響あるような状態、こういうようなことについていろいろ公害と認めて、直接、間接にこれを規制していく、こういうような意味に大体要約されるのではないかと思うのです。では、どういうような問題をここに持ってきて、害を及ぼす、いわゆる公害として規定されるように考えるのか、こういうような点になると、これまたばく然としておればおるだけに、とてもめんどうくさい問題がある。幸いにして局ができ上がって、優秀なる新任の局長がおられるということも聞いて心うれしいわけです。従ってそれを前提にしてお伺いいたしますが、騒音、振動、煤煙、粉塵、ガス、悪臭、汚水、放射線、こういうようなものを全部含むのか、これ以外にももっとあるのかというような点、その範囲について明確にしてもらいます。
  160. 聖成稔

    聖成説明員 公害の範囲でございますが、正確には、公に公害とはいかなるものであるかというはっきりした定義は、まだわが国ではさまっていないわけでございます。しかし今私どもが公害として考えておりますのは、今先生が御指摘になりましたような、煤煙、粉塵、有害ガス、悪臭、騒音、振動、汚水、放射線、大体こういうものを考えております。
  161. 島本虎三

    ○島本委員 これだけで質問は終わっていないのです。まだまだあるのですが、そういたしますと、その範囲だと、ここで大きい問題は、最近地盤沈下というものが、工業の発展とともに、各方面に見られてきた一つの現象です。それと、先ほど大原委員総理質問されておりました件に関連して、原水爆の被害によるところのいろいろな対策という問題は間接に、直接にわれわれ自身としては受けておるわけです。雨が降る、この中に放射能が入っている、こういうような点に対して黙っておいていいのかというような点も当然考えられなければならない。この地盤沈下、それから原水爆の影響によるところの放射線効果というのですか、雨またはそのほか空気の汚染なんかによって、直接これは調査しなければわかりませんが、現在のところでも、相当明らかな被害の程度が発表されております。こういうようなものも公害に入るのか入らぬのか、今までのところに入っておりませんが、この見解を聞かしていただきます。
  162. 聖成稔

    聖成説明員 先ほど私が列挙いたしました中に、放射線と最後に申し上げました。これは放射能と申した方が適当であるかと思うのでありますが、今御指摘の雨その他降下性の放射能、これは従来から公害の観念に入れて私ども考えております。  それから地盤没下につきましては、今までこれを直接公害というふうに私自身考えたことはなかったのでありますが、しかしこれは地盤沈下によりますところの浸水の問題等が起これば、当然また健康に影響がある、あるいは飲料水が払底するというようなことによって間接的に影響が起こるといったようなことも考えられますので、さらに専門家の意見を聞きまして、これを今後公害の中に含めて考える必要があるかどうか、考えることが適当であるかどうかということにつきまして、よく検討いたしたいと考えます。
  163. 島本虎三

    ○島本委員 そういうような点は当然考えられておりまして、国の立法の方がおくれて、地方自治体のそれぞれの条例の判定によるところの行為の方が先になっている県がある。名古屋なんか、この点においては、立法の先に条例によって相当程度進んだ保護をしておられるように聞いておるのですが、それにしても、この問題に対しては最近調査会などというものが設けられておりますが、まだまだ国の施策としてはおくれているというような、立ちおくれの感だけは払拭できないと思う。  そこで具体的に伺って、そのあとでこれは総務長官の方に伺わなければならないことになるわけなんですが、専門の担当部門の設置、こういうようなものについては、ようやく今あなたが責任者となられて、こういうような局ができておるから、それでいいと思うのですが、今後立法措置について、これはどのように考えて、これを行なおうとする準備がありますか。たとえば調査中であるのか、ある程度の成案を得たのか、現にもうすでに水質汚濁の点においては、ある程度の立法行為がなされておりますが、そのほかにやらなければならない点が順次あるように聞き及んでおる。この問題に対して立法措置の点はどういうように措置しようとしておるのか、伺います。
  164. 聖成稔

    聖成説明員 公害の問題につきましては、私どもは、国民の健康への、障害、こういう観点からこの問題を考えいかなければならぬ、こういう立場だと思うのであります。そこでこの健康への障害という問題が、何と申しましても公害の種類が、先ほど例挙いたしましたように非常に多岐にわたるわけでございますが、一たび健康への障害ということになりますと、いずれも慢性的な被害というような傾向、性格を持っておりますので、一体どの程度までは許されるか、どの程度から先は困るかという基準のきめ方が、実際問題として非常に困難であると考えておるのであります。そこでこれらの問題につきまして、煤煙の問題一つを取り上げましても、その基準をどこに置くか、いわゆる許容限度をどこに置くかという問題が一つ大きな問題だと思うのです。そこでそれがきまってこないことには、立法措置をとると申しましても、なかなか一方における産業関係との問題等とのかね合いが非常にむずかしくなるであろうと私は思うのであります。そういう観点から、さりとてこの問題は一日もゆるがせにすることのできない、年々悪化してくる問題でございますので、昨年から特に行政的に、従来学問的に行なわれておりましたものを、調査研究する必要があるということで、予算措置を講じまして、専門の学者の方々にお集まりを願いまして、さしあたっては大気汚染対策、それから騒音振動対策、この二つを重点的に取り上げまして、御意見を承り、そして先ほど申し上げたような実際日本の現状はどうなっておるかということ、さらに外国の状態を調査いたし、さらにまた今後立法措置をとっていきますためには、どういうような段階を経ていくか、あるいはまた財政措置はどのようにとっていくかといったような諸問題につきまして、通称公害防止調査会と呼んでおりますが、この専門家に再々お集まりを願いまして、検討を進めておる、こういう段階でございます。
  165. 島本虎三

    ○島本委員 ほんとうに一つの問題を取り上げても、各省に関係してくる重大な問題が多いんです。今までできている法律でも、公共用水域の水質の保全に関する法律だとか、工場排水の規制に関する法律、こういうような法律でも各省からのいろいろな横やりによって、せっかく皆さんの方で規制しようと思っても、結局すり抜けになってしまう。もちろん処罰はない。指導だけである。調査研究だけにとどまる。あってないようなものをどんどん作られるようでは困る。こういうようなところで、やはり学術的なはっきりした基礎がないということは大きな問題だと思う。幸いにして今まで若干でもその問題について進んできておるということは私どもも知っておりまして、この点はよかったと思っているのですが、今のように、ただ困難であるかもしれないということを前提にして考えたら、この問題だけは立法措置は全然できませんよ。あなたは最も困難なところに入って局長になったんです。しかしながら、この点なんかはもっと決断を持って、ある場合においては、あなた自身が他の省を相手にして、厚生大臣の先頭に立って、けんかして歩かなければ解決しない問題も数多く現われるだろうと思いますから、今のようにして引っ込み思案のようなことを抜きにして、もっともっと技術的基礎の確立のためには一生懸命やってほしいと思うのです。その点がはっきりしない以上、あなたががんばる基礎がなくなる。私は、この点の立ちおくれが厚生省にあるのじゃないかと思うのです。この技術的基礎の確立という点についても、どういうように考えておられますか。   〔委員長退席、永山委員長代理着席〕
  166. 聖成稔

    聖成説明員 実は、るる先生おっしゃいました水質保全法関係の二法案につきましても、最初に名乗りを上げましたのは厚生省でございまして、御承知のように、水道の原水を河川からとっておりますので、これらがどんどんよごれては上水道として困るというところから、被害者としての立場から何とかこの規制が必要である。しかし今先生おっしゃっておりますように、水の問題というのは関係各省がございまして、当初は厚生省が中心でやっておりましたが、なかなか話がつかない。それで経済企画庁の方に幹事役を務めてもらいまして、関係各省がいろいろ相談をいたしまして、最終的に水質保全の法律を確定いたしたわけであります。私は、先ほど申し上げておるような各種の公害について何とかしなければならないということは、確信を持っておるのであります。何か自信がないじゃないかというお言葉がございましたが、要するに、これらの公害はいずれも慢性毒的な傾向を持っておりますので、従ってどの限界まではいいが、どの限界から先はいけないということを明らかにして、どんな悪影響が人体にあるかということを学問的に明らかにすることがまずもって急務ではないか考えまして、先ほど申し上げましたような専門家の方々、あるいは国立の衛生試験所その他厚生省関係の付属機関においていろいろ今研究してもらっておるわけであります。一つのめどがつきましたならば、当然公害防止の法制化、先ほどおっしゃったように、現在条例で府県や市が一部やっておりますが、なかなか条例では効果が上がらない、どうしても立法措置をとってもらいたいという要望が高まってきておりますので、今申し上げたような順序でやっていきたいと思っております。
  167. 島本虎三

    ○島本委員 技術的な基礎をそういうふうにはっきり確立した上で調査研究のこういうようなデータをはっきり確立さして、その上でやるのでないとだめだということは、今あなたがおっしゃった通りであります。現にこれが二、三年前に実施されて、川の水があめ色に濁って、上の方にはビート会社があり澱粉工場がある、それからパルプ工場があって、流れてくる水はあめ色になって、中に入っていく船は、胴体につけてある金属性のものがそれによって腐蝕度が強いということがはっきりわかっておっても、現在水質は汚濁ではありませんという決定が出ている。もちろんその水には魚は住めません。においはしません。しかしながらはっきりあめ色になって、わかります。これに対してもはっきり基準のきめようがないという。こういうようなことであるから、ほんとうは困ることでしょうし、漁業関係でも農業関係でもいろいろこの問題についての意見が出てくるのはわかります。はっきりした基準を示しておらないということは今まで皆さんの腰が弱かった、こう言わざるを得ないと思うのですが、今申し述べましたような技術的な基礎を確立するためにはっきりした決意を持って臨むということを、私はここで皆さんの前でそれを承認したいと思う。今後、都道府県にも相当な調査機関もあるだろうと思います。それから国の方で、たとえば水質汚濁の問題等についてはもうすでに調査段階に入っておるはずですから、その河川の指定もあるはずでございますから、そこから上がってくるデータ等については皆さんがほんとうに行政的に学問的に考えて、圧力を排除して、明確に規定するようにする決意が必要だと思います。これは激励になりましたけれども、単なる激励で、はいはい聞いておくだけでなく、水が濁っていても、現在水質が汚濁だという判定ができない現状があるということをはっきり認識しておられますかどうか。この水質汚濁の点に限って局長の意見をまず伺わしていただきます。
  168. 聖成稔

    聖成説明員 水質汚濁の問題は、御承知のように経済企画庁の所管でございますが、あの法律の手続に従いまして、毎年水系を指定して参りまして、その水系ごとに水質汚濁の許容基準をきめていく、こういう仕組みになっております。従来からすでに取り上げられておりますのは、北海道の石狩川、豊平川、それから木曾川、淀川、多摩川、こういったような河川について行なっておりますが、それ以外の河川については一応水質保全がまだとられてないという状況でございますので、逐次広げていく、こういうことになるかと思います。
  169. 島本虎三

    ○島本委員 そういうようにして、その点しり抜けにならないようにはっきりやるということは、今までの言明によって議事録にもとどまっておりますから、決意を新たにして出てもらいたい。  最後に問題になるのは、やはりそういうような公害が各般にわたって、先ほど私が言ったように八つほどあげられるわけです。それに今度は地盤沈下をもし入れるとすれば九つほどになる勘定になります。それほどまでにいろいろと多いようなこういう問題を、個々に解決しなければならないというような点はもちろんあるのでありまして、地盤沈下の点で、新潟等においては、そのためにもうすでに皆さんも御存じのように対策を講じておられます。しかしあれも大きく見れば公害の一つになるわけでありまして、この公害についてはまことに広く、かつ重要なものだと思うわけです。それで今度そういうような煤煙から始まって水、放射能、こういうようなところまで入るとすると、工場関係だとか、またいろいろな移転補償だとか、設備補償だとか、こういうような点まで考えいかなければならないような状態になってくるわけです。飛行機の爆音というようなのも当然入ってくるようになってくると、これは事がだいぶ大きくなってくるわけですが、今の局の方では移転補償、設備補償、こういうようなところまで積極的に考えておられますかどうか、これをはっきり伺います。
  170. 聖成稔

    聖成説明員 先ほど来申し上げておるような段階でございますので、現在はまだ今御指摘のようなところまでは検討いたしておりません。
  171. 島本虎三

    ○島本委員 ほんとうはそれでは困るのです。現在そういうようなことはないと言っても、米軍の場合には、八十フォンまでのものは、前に河野委員がここで質問されたように、もう御存じだと思うのですが、これはまずよろしいが、現在の飛行機の爆音の八十フォン以上のものは、米軍の場合にははっきり補償の対象になるし、調達庁においてもこの点等にいろいろと配慮をしてあるわけです。こういうようなことからして、音に対しても、これから考えなければならないということでのんきにしている段階ではもうないはずじゃございませんか。それだのに補償の問題等についてはこれから考えると言ったって、これは皆さんの方でまだ新しく局ができて間もないからそういうふうに思っておられるのかもしれませんが、今までの公害というものを総合してごらんなさい、もう方々でこれに対する補償を行なっておりますよ。九州の水俣病だって、これは厚生省としても重大な一つの解決しなければならない問題であるし、解決した問題でしょう。これだってもうはっきりしていながら、これからいろいろな被害の点については考えなければならないなんというようなものではいけないと思う。基準をはっきり出しておかないとだめな段階なんです。もうおそいのですから、この点急いでやるべきだと思うのです。まずそうなると、あなたの方だけでも相当困ってくるだろうと思うのですけれども、この抜本的対策というものは、爆音の場合には相当重要な度合いを占めて参るわけでございまして、われわれとしては、米軍基地だとか軍用機だとか、あんなものをかくすればいいのじゃないか、そのもとである基地を近いところからなくしたらいいのじゃないか、それで一挙に解決できるじゃないかという具体案ももちろん社会党にはあるわけです。それが皆さんの方で行政上政治上できないとするならば、それに対してはっきりした音に対する対策を考えておかないといけないと思う。この点等については、基地をなくすることはできないのだというような答弁が先ほどあったり、それから先を見通して対策を講じたいというようなことも答弁の中にあったようですが、この音に対して、百フォン以上の音を発する飛行機の場合には、これに対するはっきりした補償の対策があるのかないのか、これは総務長官にはっきり伺っておきたいと思います。
  172. 藤枝泉介

    ○藤枝政府委員 先ほど河野さんの御質問にお答えしたように、総理府に作られました基地等周辺問題対策協議会は、米軍の基地、自衛隊の基地、あるいはその他一般の民間空港等の周辺における環境の整備ということを中心に考えておるわけでございます。具体的に一つ一つの騒音等についてそれをいかにするかということは、各省庁でその責任においてやっていただくわけでございますが、ただ、こういう基地周辺等につきましては幾つかの、しかも各省庁にまたがる施策がバランスがとれてやられなければならないという意味においてこの対策協議会を設けたような次第で、しかもそれは単に被害を防止する、あるいは被害の限度を少なくするという消極面ばかりでなく、積極的に道路だとか耕地だとかあるいは林だとか、そうしたものの整備もまた基地周辺においては必要な場合がございます。そういうものをあわせて、平均のとれた施策を十分に連絡をしてやっていきたいということを考えておるわけであります。従いまして、具体的に何フォン以上の爆音についてどういう処置をするかというようなことにつきましては、各省においてそれぞれその責任においてやっていただくというふうな考え方でございます。
  173. 島本虎三

    ○島本委員 いろいろとこの問題に対しては議論があったということも聞いておりますが、八十フォン以上のものに対しては人畜に被害があるということで、すでに補償の対象になっておるのだと聞いておるのです。これからあらためて各省でこれをきめてやらなければならないという問題じゃないというふうに私は聞いているのですが、調達庁の方では、この問題に対して、今総理府の長官のおっしゃったようにこれからの問題なんですか、私の言うように今まで八十フォン以上のものは対象としてその損害の点でいろいろ措置されたのですか、この点はっきりしていただきます。
  174. 柏原益太郎

    ○柏原政府委員 八十フォン以上の騒音に対しまして、一般的にその騒音被害に対して補償することを実際やっておるかというお尋ねだと思います。調達庁といたしましては、学校とかあるいは病院に対しましては、御承知のように防音工事を施行しております。それから騒音によって、たとえば漁場に影響を与え、そのために漁獲高に減少を来たしたといった場合に、その減少被害に対しまして補償をいたします。さらにまた、これはわずかしか例がございませんが、乳牛が騒音のために乳量が減少したといった場合に、乳量の減に対しましてその損害を補償した事例もございます。さらに、騒音だけではございませんが、ほかの地域に比べまして非常に危険度の多い地域に対しましての家屋の移転のための補償ということも行なった実例がございます。
  175. 島本虎三

    ○島本委員 今まではそういうような趣旨の補償を行なったということだと思うのですが、そのいろいろな条件というのは、音と、それから環境のうちのどういうようなことなんですか。どういうものに補償を行なったんですか。これは私今聞き漏らしたかもしれませんが、この点もう一回はっきりお願いしたいと思います。
  176. 柏原益太郎

    ○柏原政府委員 ただいま申し上げました事例で、種類としては尽きるわけでございます。件数は別であります。  それで、先ほどからいろいろとお話のございまする、人体に対する被害というものに対する補償をどうしているか、これは調達庁といたしましても非常にむずかしい問題でもございまするので、ただいままでのところは補償をいたしておりません。しかし、けさほど河野先生からもお話がございましたが、いわゆる難聴障害というもの、あるいは、たとえば児童の能率が低下するとか、そういった方面の調査を本年度実施したいという考えであります。
  177. 島本虎三

    ○島本委員 答弁の範囲はわかりました。そうすると、プロペラによる音は大体九十五から六フォン程度である、ジェット機による音はやっぱり百十くらいまでのものであるといわれております。もうすでに各基地に配られておるとも聞いておりますが、今度入る予定のF106あたりになると百十フォン以上の高音を発する、こういうことも聞いておるのですが、こういうものは、それらの基地のある町や村の方に持っていかれる場合には、病院、学校、保育所、こういうものはよくわかるのですが、そのほかの住民等に対して影響があるならば、十分これを考えた上で行なわなければ重大な問題になるのじゃないかと思うのです。今度国内へ入ってくる予定のF104から106の軍用機、こういうものの騒音に対しての補償という点と、それに対する対策をはっきりしておかなければとんでもないことになると思うのですが、これは長官と調達庁の方からはっきりした見解を聞かしていただきます。
  178. 藤枝泉介

    ○藤枝政府委員 第一には、先ほど来申し上げましたように、基地周辺の環境の整備と申しますか、騒音の防止対策、あるいはその他の道路等の整備という問題もあろうかと思います。しかしもう一つ、ただいま調達庁の方からお答え申し上げましたように、個々の人体に対するいろんな影響、これは十分調査をしたていだきまして、それに対する対策を立てて参りたいと考えております。
  179. 柏原益太郎

    ○柏原政府委員 ただいま総務長官からお答えがございましたように、調達庁といたしましても、106等のさらに高度の音を発する飛行機が配備された場合を予想して、いろいろな被害に対する補償の措置を講じていかなくちゃいけないということで、始終その方向に向かっての検討をしておるわけでございます。幸い今回これに関する関係各省の協議会も設置されましたので、調達庁といたしましてもできるだけの調査をいたしますし、また各省、特にただいま厚生省からもいろいろお話がございましたが、そういった方面でお調べ願ったデータもその協議会に持ち寄っていただきまして、そこでその調査の結果に基づいて、どういった対策を立てるのが一番適当であるかということについて至急に検討を進めたい、かように考えておるわけでございます。
  180. 島本虎三

    ○島本委員 言葉を返すようでちょっと工合が悪いのだけれども、その検討を進めないうちは、そういうような飛行機の爆音による被害を与えるようなことはしない、こういうようなふうに逆に解釈しておいてよろしいですか。
  181. 柏原益太郎

    ○柏原政府委員 ただいま配備されております飛行機は102でありますが、米軍の場合は102が中心になっております。その次に配備されます飛行機は、先生の今おっしゃいますように106のジェット機が配備されるのではないか、かように考えているわけであります。それで今よりもさらに音が高くなるのだから大へんではないかということになるわけでございます。また一方、軍の方といたしましても、飛行機自体に対する消音のいろいろな装置と申しますか、そういったものの研究も進めているようでございますが、はたしてそういったものを考えない場合の音の高さというものは、ただいま配備されている飛行機よりも単純に高くなるのだということを考えていいかどうかということにも問題があろうと思いますが、それはともかくといたしまして、できるだけ早くそういった調査研究の結果を出しまして、しかるべき措置を講じたい、かように考えているわけでございます。
  182. 島本虎三

    ○島本委員 私の方で知らなければその通りごもっともなんですが、一機、もうすでに試験で北海道の千歳の方にいっている機種は106ですか104ですか、これは今までの旅客機はもちろんですけれども、どのようなジェット機とも違う音であって、それがまともにいったならば、とても神経をふるわせるような音で、これはそのまま飛ばせることはできないので、風向きを変えて、その千歳の町に直接風が入らないような、その風の方向を見定めた上で試験の飛行を行なったものであるということも、私どもの方で聞いている。それでもその音はだいぶわれわれの耳にはひどく影響があるように思われて、これじゃとても困るというふうに思ったという一住民からの言葉を私は思い出したわけですけれども、この音に対しては、106であろうと、これは百十フォン以下であって大したことはないというふうに断言なさるならば、あえてこれは差しつかえないのですが、これはほんとうにそういうふうに思っている、この音だけの問題については大したことはないのだというように解釈してもいいですか。その点は、この際はっきりしておかないと、せっかくいい御答弁があっても、これは何もならないことになっては困りますので、このF106に限って、この音そのものは今までのものに比べて影響はなくてあえて措置する必要がないというふうにお考えなのかどうか、くどいけれども、もう少しこの問題についてはっきりしていただきます。
  183. 柏原益太郎

    ○柏原政府委員 千歳飛行場に104が飛んでいるというようなお話でございますが、私その事実は承知しておりません。それはともかくといたしまして、104は102と大差ないというふうに私は聞いております。しかし106になりますと102に比べましてかなり高い音を発するようになるということも聞いております。私、その方面の専門家ではございませんので、私の申し上げることがあるいは間違っているかもしれませんが、一応ただいままで私が聞きましたところでは、そういったことのように承知いたしております。  それで先生のお尋ねの点でございますが、われわれといたしましては、そういった基地周辺の住民に対しての音による影響、被害というものに対しまして、これはそのまま捨てておけないということは重々承知しているわけであります。それで先ほど来総務長官もおっしゃっておりますように、各省が集まりまして、知恵をしぼって、この問題を解決する。この問題だけではございませんが、特にこの問題は重要な問題でございますので、各省力を合わせて、できるだけ早く結論を出そうというふうに考えておるわけでございます。
  184. 島本虎三

    ○島本委員 F102で百二十七フォンだというふうに、さっき河野委員がちょっとデータを発表されました。それ以上になると相当の高音になるのではないか、人畜に相当の被害があるのではないかということもわかるのです。それで十分対策は講ずるというのですから、それは同時に補償措置等についても考えてやるのであるというふうに理解しておきたいと思います。これもあわせてお伺いしておきたいのですけれども、病院、学校というようなところは、今までのプロペラによる爆音の防音措置だけでは全然だめになってしまいますが、こういうようなものは厚生省の方で十分考えた上で直ちに措置するのでなければ、おそきに失してはとんでもないことになるのではないかと思います。病院や保育所など、厚生省が所管しているいろいろな公営の企業体、それからまた学校なんかの点については、すぐにでもやっておかなければならない重大な問題じゃなかろうかと思うわけであります。ことに先ほどのいろいろな答弁等を聞いておりましても、これは総務長官あたりもはっきり言っておられるところですけれども、建物を鉄筋にするか、場所を適当なところに移した方がいいと思うというような整備の計画も考えられておるようです。しかし町や村を単位にしてそれ全部に受ける被害を考えたならば、その基地を移すのでない限りにおいては、これをうんと遠いところへ移したら保育所、病院並びに学校なんというものは価値が全然なくなってしまうわけでして、これは全然音の影響のないところに移すというのは不可能ではないか。不可能であるとすると、これに対する防音の措置を的確にし――他の国でこういうような問題があまり起きないというのは、おそらくは木造に対しての鉄筋コンクリートという、この建物の構造のせいではないかというように思うわけですが。こういうような点についてもはっきりした――自治体自体でもある場合には指導し、防火地帯、または別な名前でそういうような建築物を慫慂しておるようなところもあろうと思うのです。今度は国の方で、新たに建てるものに対しては、おそらく木造で建てるくらいの費用でできるように、この基地周辺の方の家の改築に対して措置するのでなければ、おそらくは皆さんが考えているように、この鉄筋による家の建築というのはできないのではないか、こういうように考えられるのですが、措置としてその辺まで考えて補助するつもりなのですか。それとも適当な場所に移動さした方がいいという、学校に対しての移動の考えがさっきございましたけれども、この学校は、住民の住宅等からぐっと離した適当な場所というと、基地から相当な距離を保った場所でなければならぬはずですが、この適当な場所に移動を考えているというような点、距離などをあわせて、これは先ほど河野委員に対しての答弁のちょっと補足ということで私は聞いておきたいのですが、この点も文部省当局の方から明確にしていただきたいと思います。
  185. 田中徳治

    田中説明員 学校の騒音防止でございますが、この点につきましては、従来特損法でもって音響の強度及び頻度の基準がございます。これはその当時学習課程にある程度支障のない限度をきめて、その基準によりまして補償していただくように当時の調達庁にお願いをいたしまして、この基準ができたのでございます。その後、防衛庁もこの要綱に基づきまして補償の対象となっております。文部省といたしますれば、さらに今後飛行機の騒音度の高まるという点を考えまして、たとえばその地域にあるものにつきましては、移転しなければならないならば移転するような方途を講じまして、調達庁なりあるいは関係各官庁と連絡いたしまして、そういう移転の予算等を措置するように、地元の方の協力を得まして、関係官庁に要請しております。  なお、文部省におきましては、近く騒音対策調査会を作りまして、これは各関係官庁の職員、学識経験者等で、構成人員約二十名の予定でありますが、この騒音の被害防止あるいは低下、もちろんそのためには教育の学習指導内容、教材関係というものも調査し、それからさらに今後の騒音の高度化に伴いましてどうするかというような問題、今までの基準の改定の問題、そういうものを早急に検討いたしまして、規制措置を講ずるようにしたいと考えております。  それから、この該当区域においては、公立学校の増改築の補助金、それから老朽校舎の改築がございます。老朽校舎については、なるべく優先的に、たとえば基準に合わなくても、鉄筋にしなければならないようなところは、防衝庁なり調達庁と連絡をとりまして、協議しながら鉄筋化をはかっております。できるだけその地域においては、今後は木造を建てずに鉄筋化の予定で進んでおります。
  186. 島本虎三

    ○島本委員 総務長官に一点伺いますが、前にいろいろと厚生大臣答弁され、二月二十二日の議事録にも明確になっておるわけでありますが、こういう爆音による被害は、調達庁の方と十分検討した上で、これは幅の広い問題であるけれども、そのつど考えて善処しますということを明確に言っておるわけです。そのときに大臣としては、軍用機の音の被害、住民に与えるいろいろな肉体的な影響、また病院や学校というようなところにどのような影響を与えておるか、そういうような点を具体的に調べておきましょう、そうしてそれに対する対策は的確に行ないましょう、こういうふうに二十二日に断言しておるわけです。こういうような実情については長官の方もおそらく知っておられることだと思っておりますけれども、この対策等をはっきりしてもらいたい。今度新しくできたこの軍用機の爆音というものは、今までのものとは全然違うそうでございます。その音の被害に対して、基地の人たちは相当の恐怖感を持っておることは事実ですから、そういうような点については、はっきりした対策を持った上でないと、今後とんでもないことになるのじゃないか、こういうふうに私どもは思っております。対策は十分考えると言いますけれども、あなた自身の答弁並びに調達庁の答弁とあわせて、これは私の方では完全に行なう、こういうような意味だろうと思いまして、この点は了解しておきます。ただその中で、前に古井大臣の答弁の中にもありました通り、今後起きた問題に対しては具体的に問題を考えて善処しますという点、この点は御答弁ではっきりしておりますから、これも大臣がおれば、その後の調査やその研究の過程を聞きたかったのですが、おりませんので、これは私の方から議事録に基づいて申し上げておきますから、この点、十分善処されるように要請しておきます。  それとあわせて、今後基地にはこの問題についていろいろ問題が起きる可能性がございます。そうすると、今いろいろ新しく入ってくる機種はロッキードのF106ですか、こういうようなのが来ますと、そのままの状態で受け入れることはできないだろう、当然滑走路をずっと延ばさなければならない。延ばすならば、今までのものに対して今度相当程度の自治体との契約に対する更新を行なわなければならなくなってしまうのじゃなかろうか、こういうような点がはっきりしているわけです。今まで各地で私どもの調べたところによると、拡張は行なわない、こういうふうに契約を結んでおられるところが相当程度あるかのように聞いております。こういうような問題に対して、拡張を行なわなければ飛ばされない、飛ばされないとすると、これはもう皆さんの方で、政府の方で困るということになると、何らか強制措置を講じて、またトラブルがそこに発生するおそれがあるのじゃないかと思うのですが、自治体とのこの契約の履行というようなことを長官としてどのように今後考えて実施されるおつもりですか、その抱負なんかも明確に聞かしていただきたいと思います。
  187. 藤枝泉介

    ○藤枝政府委員 実はただいま御指摘になりましたような問題もございまして、従来基地の設置あるいは拡張、そうしたものは調達庁を含めました防衛庁が責任の衝に当たっておるわけでございます。しかしながら、今御指摘になりましたようないろいろな問題を含んでおります。従って、今後の基地問題というのは単に防衛庁なり調達庁だけで解決し得ない、非常に各省にまたがった問題もございますので、そういう点も考えまして、今回内閣に基地問題等の閣僚懇談会を設け、その総合的な解決をはかっていこうとしておるわけでございます。しかも、それについては、問題が起こってからどうしたいというものでなく、むしろ前向きな形でその周辺の整備その他についても十分考えていこうじゃないか、至急に考えていこうじゃないかということで、一方、周辺についての各省の連絡会議を設けたような次第でございます。この両々相待ちまして、ただいま御指摘になりましたような点について十分な対策ができますように努力いたして参りたいと考えております。
  188. 島本虎三

    ○島本委員 最後に、お急ぎですから、これ一つだけで長官に対しては終わりたいと思うのですけれども、先ほど文部省の方で答えられた児童の進学率が、基地の人と一般の人との間で、基地の人の方が下がっておる、約一〇%の差があるというような報告があったわけです。もしそうすると、これは文部省だけの問題じゃなくて、あなたの所管する行政機構の中でもこれは相当大きい問題としてこの問題を考えておかなければならないと思うのです。これはやはり一〇%ぐらいの差がそれぞれ基地とそのほかの学童との間にあるというようなことであるとすると、ほんとうに大事なことになる。この問題に対しては、文部省の方ではいろいろ調査をしたいということのようでございましたけれども、調査ぐらいではもうデータが上がっておるのにおそ過ぎるのです。この問題に対しては、はっきりした特別な教育なり特別な何か施策、施設、こういうようなものを講じなければならないはずなんですが、長官はこの問題に対してどのように考え、文部省の方でも、このあとで、具体的にこの問題に対してはどういうふうに進めていくのか、両方からこの問題に対して伺いたいと思います。
  189. 藤枝泉介

    ○藤枝政府委員 まず第一には、防音装置その他の整備、しかもそれが先ほど来御指摘になりましたように、従来の機種以上に高音を発するF106等が入りますならば、それに対応するような防音装置その他について、しっかりした施設をしていかなければならないと思います。その上、さらに問題は、ただいま御指摘になりましたように、進学率がその基地においては下がるとか、あるいは一般の住民の方々が非常にいろいろな身体上の障害を受けるということになりますならば、やはりそれは従来のように、病院あるいは学校等に防音装置をするということのみばかりでなくて、個人的なそういう問題についての対策と申しますか、処置と申しますか、そういうものもあわせて考えいかなければならないと考えております。
  190. 島本虎三

    ○島本委員 それははっきり考えて措置するということですね。ただ単にこれから考えるということではありませんね。それだけについて最後に名答弁をしておいて下さい。
  191. 藤枝泉介

    ○藤枝政府委員 考えておくということは、もちろんそれによって適切な措置をするということに御理解をいただきたいと思います。
  192. 田中徳治

    田中説明員 騒音によりますいろいろな被害の報告は受けております。もちろん進学率の低下等もあります。そのほかには学習上のいろいろなこまかい調査もしておるようでありますが、こういったものを全面的に取り上げまして、さらに積極的にどうするかということを、先ほど申し上げました委員会で至急検討して対処していきたいというふうに考えております。   〔永山委員長代理退席、柳谷委員長代理着席〕
  193. 河野正

    ○河野(正)委員 関連して。実は、今総務長官のおられる席上で申し上げたかったわけでありますが、物理的な補償についてはある程度具体的に進んでおることは私どもも認めるにやぶさかではない。ところが心理的、精神的な対策というものがほとんど行なわれておらない、この点が非常に大きな問題だと思うのです。たとえば教育上の問題一つ取り上げてみても明らかでありますように、騒音のために聴覚教育というものが非常に侵される、極端にいうとクラシック音楽ならクラシック音楽をかけようとしても、騒音のためにそういう情操教育が十分にできない。そうすると当然そういう聴覚を通じての教育が侵されることになれば、それを何らかの形で補わなければならない。聴覚が騒音によって侵されるわけだから、従ってこれを聴覚で解決することは困難である。そこで、私は視覚教育でこれを補うという具体的な方法があろうと考えております。ところが、今日まで長いことこの問題について取り組んできておりますけれども、そういう具体的な施策というものがほとんど行なわれない。なおまた教える方の立場に立って考えて参りましても、たとえば教室内の教師というものは、環境のよい教育施設の中で教育する場合と、そういう騒音という非常に悪い環境の中で教育する場合とでは、おのずから労力その他においても非常な不均衡が生じてくるわけであります。といって、今まで述べているように防音対策を講ずる、防音対策を講じて、なるほどフォンが下がることは事実です。しかしフォンが下がったからといって、いきなり環境のよいところと同じ状態になるかというと、必ずしもそうではない。さらにまた、これは逐次改善されたけれども、防音装置をするために非常に換気が不十分である。非常に悪い空気が停滞する。そのために、教わる方もそうでありますけれども、教える方にとりましても生理的な悪影響というものが当然起こってくる。そういういろいろな悪条件が積み重ねられるわけでありますから、私は当然それらに対するところの対策が行なわれなければならぬと思う。このことを今から研究するとか検討するとかいうことではなくて、これは常識で判断してもわかる明らかな事実であります。私は、この点は一にかかって文部省なり厚生省なりにそういった問題を真剣に解決していこうという熱意があるかないかという点に尽きると思う。そういう点において、まことに残念でございますけれども、今日まで、それは文部省でもそうでございますけれども、騒音に対して物理的な補償、防音装置を施すという物理的な補償のみに重点が置かれて、そしてそのために一方心理的な、精神的な補償というものが非常に見のがされてきた。そこで私は今後も物理的な補償についても、さらに改善するものは改善していくということが行なわれなければならぬですけれども、さらに私は今日の段階では、今申し上げまするような心理的あるいは精神的補償、こういう面に対して格段の努力と誠意というものが尽くされなければならぬ、こういうふうに考えるわけでございまするが、時間もございませんので、再度そういう点に対する誠意ある御答弁を一つお願い申し上げたい。
  194. 田中徳治

    田中説明員 実際今までにおきましては物理的な現象というものを基準の対象に取り上げておった実情でございます。今の教育面からする児童に対する障害、これは視聴覚両方とも現在研究はいたしておりますが、すでに三十三年度からは理科教育振興法によりまして、騒音のための中学校八万人、小学校五万人に対する視聴覚教育のための補助金を出しております。やはり全然考えていないということはございません。今の調査会におきましても、特にそういった面を研究していただきたいためにこの調査会を設けまして、急速にその結論を出したいというふうに考えておるわけでございます。
  195. 島本虎三

    ○島本委員 今の文部省の関係者の答弁では、ただ対策そのもので今後明け暮れしたのではどうにもならない。その基地の子供たちの被害は現実ですから、この点等については言葉そのものだけで終わらせないように、その点誠意を持って対処してもらいたい。これだけは私も真心をもって要請申し上げたいと思います。  それとあわせて厚生省の方に、せっかく局ができて新任の優秀なる局長が赴任されてきょう答弁に当たっておられるわけなんですが、このようにして公害の及ぼす影響というようなものは各社会の文明の進歩に伴って住民があらゆる面でこれを受けるような状態が現出されておるわけです。これを一つ一つ解決していくこと、このレベルが文明の一つのレベルになるかと思うわけです。そこも十分考えて、これは単なる皆さんの事務的な扱いだけじゃなく、一つ大きい目で研究機関を十分動員されて、また現行法の実施に対して、これは遅疑逡巡してはならない。煤煙の問題では皆さんめんどうくさいし、出る煙に対してはこれはどうにもならぬじゃないかというあきらめに似た考えがあるとしたら、これこそとんでもない話で、建築基準法なんかでこれを明確にしていけば、ある程度これを規制できるし、技術的に、完全燃焼したならばある程度被害は防げるはずなんです。そういうような点も考えて、いろいろと産業部門に対しての差しさわりはあるだろうけれども、決意を新たにしてやることが世の中をよくする一つの方法なんですから、皆さん決意を新たにして十分やって下さい。その公害の中でも、いろいろ申しましたほかに、皆さんが考えておらないような面もこれから出てくるであろう。工業用水をあまり使うことによる地盤沈下、これは各方面に見られております。また海流の変化によるところの海岸の侵食、こういうような点も当然公害として取り上げられる問題じゃないかと思います。それとあわせて放射能の問題なんかも、今後やはりどのような問題があってもその研究は十分されて、これに対して、雨が降ってもしっぽりぬれていこう、何の危害もありませんから、月形半平太のような気持になって歩けるように、これもあなたの一つの仕事ですから、十分考えて対処してもらいたいと思います。あなた自身の公害に対する決意を最後にもう一回はっきり表明して下さい。
  196. 聖成稔

    聖成説明員 公害の問題の重要性は、先生がるるお述べになりました通りで、私も全く同感に存じております。そのほか現在の汚物処理の仕事でありますとか、あるいは水道の普及とか、環境衛生の問題につきましては立ちおくれている問題がたくさんございます。特に東京オリンピックを控えまして、東京を初めほんとうにきれいな、気持のよい日本国土を建設しなくちゃいけないという声も一つの世論になっていることは私どもは十分承知いたしております。厚生省はそういう立場から今回設置法の改正をお願いいたしまして、従来の環境衛生部を今度局に昇格いたしましたので、この上は一段と環境衛生行政の確立をはかりたい、かように私も固く決意しておる次第でございます。
  197. 島本虎三

    ○島本委員 調達庁の方でも明確なこれに対する態度の表明があり、いろいろと総理府の長官からも補償の措置や防音装置の整備、こういうような点に対する見解がはっきりされたわけです。文部省等においても、厚生省でもわざわざ局まで設けてこれに対するような態度もはっきりしましたから、今後私はこれを大いに激励するだけですから、遠慮しないであなたやって下さい。これが大いに効果が上がらないということは、あなたの怠慢を表明する以外の何ものでもないということを十分考えておいてもらわなければならないということと、あわせて最後に、人権擁護局長さんもせっかく見えておられるわけでございまするけれども、先ほど河野委員からデータをあげた、ほんとうにりっぱな質問があったわけでございます。そのりっぱな質問に対しましても、たとえばジェット機の騒音に悩んでいるような問題と、それに騒音から受ける被害、こういうようなことに対して人権侵害の疑いさえもあるのじゃないか、こういうような問題の提起があったわけでございまして、あなたのそれに対するお答えは、まことに私としては新聞にその問題を利用されている云々という答弁があったことは、私としてはまことに遺憾なんです。こういうようなことは行政上のどのような部門でどのようなことが討議されてあっても、新聞がどのように報道しようと、人間としてその人が受ける健康にして文化的な生活を受けることの阻害になるようなことは、あなたが積極的に取り上げてこの解決に努力すればいいわけなんです。そういうふうなことがあるにかかわらず、いろいろと新聞が利用して云々と、いかにも飛行機を擁護するような、このような発言があるということは、私としては前にまことに残念だと思って聞いたのですが、この機会でございますから、不本意でございますならば、河野委員もここにおられますから、この問題をはっきりさしておいた方があなたのためにお得じゃないかと思います。
  198. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 私の言葉が足りませんで誤解を招いたようですが、この際はっきり申します。私は河野委員の新聞記事をお読みになりましたのに、このジェット機による騒音問題、この深刻な問題でありますが、これを新聞が利用しているというふうに私は申したのではございません。またこの基地におけるジェット機の騒音による被害を人権上大したことじゃないのだというふうには考えていません。むしろ今いろいろ御質問が出ました、またいろいろデータをあげておられます。私は人権問題としては、おっしゃったところはしごく同感であります。私は人権擁護局がいろいろ公害問題を調べておりますが、やはり人権上非常に新しい今まで考えられなかった形態の重大な人権問題であることは肝に銘じております。その点は誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
  199. 島本虎三

    ○島本委員 それで、私は先ほどの答弁に対しての疑義がそれによって晴れたことになりますが、それだけでもまだ若干今後こういうような問題は厚生省当局と十分に協力されて、少しでもこういうような人たちがいないように、これは十分今後配慮してもらわなければならないし、また努力してもらいたいと思います。また先ほどの言葉の中にも、人類に害を与えるものと言いかねる、一般国民もこの点はもう少し考えなければならないのだというふうな言葉もあったかのように承りますが、こういうような言葉は少し不遜じゃないかと思ったのですが、人の身を考え、人権を考えて、あなたも自分の子供はかわいいように、今後あなたも大いに国民全体の人権が侵害されないように大いに努力してもらいたい。これだけを私くれぐれも申し上げておきます。最後に一言何かはっきり言って下さい。
  200. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 はっきり申しますと、私も人権擁護の仕事を担当いたしております者として、最近は公害問題については大きな問題であり、現在の機械文明から見ての重大な一つのウィーク・ポイントであり、また人権上一歩前進する問題じゃないか、こういうふうに私は考えます。真剣にやりたいと思います。
  201. 田中徳治

    田中説明員 先ほどの答弁で、所管事項以外のことで多少内容が違っておりますので、訂正させていただきます。  先ほどの理科教育振興法によります補助金の問題でございますが、これは騒音対象校に対しましてのみでございますが、中学校八万円、小学校五万円の視覚教育教材補助費としてこれが計上されております。先ほどちょっと間違いましたので、この点訂正させていただきます。
  202. 柳谷清三郎

    ○柳谷委員長代理 暫時休憩いたします。    午後四時五十一分休憩      ――――◇―――――   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕