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1961-03-15 第38回国会 衆議院 社会労働委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年三月十五日(水曜日)     午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 山本 猛夫君    理事 大石 武一君 理事 柳谷清三郎君    理事 滝井 義高君 理事 齋藤 邦吉君    理事 小林  進君 理事 八木 一男君       井村 重雄君    小沢 辰男君       加藤鐐五郎君    櫻内 義雄君       田中 正巳君    渡邊 良夫君       淺沼 享子君    五島 虎雄君       中村 英男君    井堀 繁雄君       浦野 幸男君    大橋 武夫君       倉石 忠雄君    澁谷 直藏君       松浦周太郎君    赤松  勇君       大原  亨君    田邊  誠君       吉村 古雄君    本島百合子君  出席国務大臣         労 働 大 臣 石田 博英君  出席政府委員         労働政務次官  柴田  栄君         労働事務官         (大臣官房長) 三治 重信君         労働事務官         (労政局長)  冨樫 総一君  委員外出席者         労働事務官         (労政局福祉共         済課長)    坂本 一衛君         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 三月十四日  委員吉村吉雄辞任につき、その補欠として矢  尾喜三郎君が議長指名委員に選任された。 同 日  委員矢尾喜三郎辞任につき、その補欠として  吉村吉雄君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月十四日  国民年金法案八木一男君外十四名提出衆法  第四号)  国民年金法の施行及び国民年金と他の年金との  調整等に関する法律案八木一男君外十四名提  出、衆法第五号)  国民年金積立金運用に関する法律案八木  一男君外十四名提出衆法第九号)  国民年金法の一部を改正する法律案内閣提出  第一一七号)  通算年金通則法案内閣提出第一四八号)  通算年金制度を創設するための関係法律の一部  を改正する法律案内閣提出第一四九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月十四日  小児まひ予防接種費全額国庫負担に関する陳情  書(第四四二  号)  同  (第四四三号)  国民年金法の一部改正に関する陳情書  (第四四四  号)  同  (第四四五号)  同(第四七三号)  同  (第四七四号)  同(第四七五号)  同(  第四七六号)  同(  第五〇四号)  同(  第五〇五号)  同(  第五〇六号)  同  (第五六七号)  小児まひ予防対策確立に関する陳情書  (第四七  二号)  社会保険診療単価引上げ等に関する陳情書  (第四七七号)  同  (第五三二  号)  無資格指圧業者既得権付与に関する陳情書  (第四七八  号)  国立三朝温泉病院建設に関する陳情書  (第四九一号)  生活保護法による国庫負担金交付促進に関する  陳情書(第五〇七号)  社会保障制度拡充強化に関する陳情書  (第五〇八号)  国民年金制度改善に関する陳情書  (第五二六号)  国民年金法の一部改正等に関する陳情書  (第五  二七号)  同(  第五二八号)  同  (第五九一号)  制限診療撤廃等に関する陳情書  (第五二九号)  同  (第五三〇号)  同  (第五三一号)  最低賃金制度確立等に関する陳情書  (第  五三三号)  同  (第五三四号)  医療費引上げ反対に関する陳情書  (第五三五号)  国民健康町険に対する国庫負担増額に関する陳  情書  (第五三六号)  戦死者公務扶助料支給に関する陳情書  (第五三七号)  国民年金制度に関する陳情書  (第五三八号)  小児まひ予防接種費全額国庫負担等に関する陳  情書(第五三  九号)  同(第五四〇号)  国民健康保険制度改革に関する陳情書  (第五四一号)  北方挺身隊千島軍属戦死者遺族年金支給に関  する陳情書  (第五六五号)  公共職業訓練所拡充強化に関する陳情書  (第五六六号)  国民健康保険国庫負担増額に関する陳情書  (第五八五号)  児童福祉法による収容施設措置費国庫負担金交  付基準引上げに関する陳情書  (第五八七号)  国民健康保険国庫負担増額等に関する陳情書  (第五八八号)  雇用促進事業団法案に関する陳情書  (第五八九号)  最低賃金法の一部改正等に関する陳情書  (第五九〇号)  失業対策事業改善に関する陳情書  (第五九二号)  生活保護法による保護基準額引上げに関する陳  情書(第六〇六  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案  (内閣提出第三七号)  派遣委員より報告聴取      ――――◇―――――
  2. 山本猛夫

    山本委員長 これより会議を開きます。  先般、筑豊地区における炭鉱災害及び労働者災害補償に関する調査のため、現地委員を派遣いたしましたが、この際私からその御報告を申し上げます。  九州上清炭鉱坑内火災による災害事件委員派遣調査についての報告をいたします。  当委員会の決定に基づきまして、去る三月九日の福岡田川郡香春町所在上田鉱業株式会社清炭鉱坑内火災による災害及び労働者災害補償に関し、柳谷委員小林委員及び私の三名が、商工委員会派遣委員とともに、三月十一日出発、現地鉱業所及び坑内災害発生現場入坑の上実地調査し、さらに福岡市におもむき、福岡通産局において出先関係官庁につき詳細実情を聴取し、調査当たりましたが、その調査概要について御報告を申し上げます。  まず鉱業所の大要について申し上げますと、上田鉱業株式会社は、本社を東京に置き、九州田川地区に、今回災害発生いたしました上清炭鉱のほか、豊前炭鉱と、長崎県に飛鳥炭鉱を経営し、総労働者人員数千七百名に及び、月産約二万五千トンを出炭し、同系として上尊炭鉱株式会社所属糒炭鉱と、昨年九月、水没事故のため六十七名の犠牲者を出した豊州炭鉱があり、概括して中小炭鉱の上位にあるといわれておるのであります。上清炭鉱昭和十七年、三井鉱山田川鉱業所五坑として開発、同二十六年振興丸吉炭鉱に継承、三十年七月、上田鉱業の経営に移り、今日に至っているものであります。職員を含め労働者数三百五十二名、出炭月平均三千七百トン、平均カロリー六千六百二十で、産出炭は、主として燃料用として供給されており、炭鉱保安上、指定乙種炭鉱、すなわち甲種炭鉱に比し、坑内可燃性ガス含有率がやや低い炭鉱となっておるのでありますが、過去における災害発生では、昭和三十三年六月に、坑内ガス爆発で十一名の重傷者を出しております。  なお、上田鉱業系労働組合全労系全国石炭鉱業労働組合、すなわち全炭鉱加入しておりますが、上清炭鉱労働組合は同地方の地区労には加盟しているが、上部団体には未加入となっております。  次に、今回の災害発生並びに措置状況について申し上げます。今回の災害は、去る三月九日午前十一時三十分ごろ坑口より約四百三十メートルの地点にある本卸第二水平坑道にある百馬力と五十馬力のうち、五十馬力コンプレッサー室付近から発火、当時これを発見した四、五名の者が消火弾を投ずるなど消火に努めたが火勢は弱まらず、同室のほか付近の坑木、炭壁等に延焼し、約三十平方メートルにわたる坑内火災となり、これがため坑道内に煙が充満することとなったものでありまして、この報によって同炭鉱消火班付近同系炭鉱のほか、三井田川鉱業所特別救護隊等が相次いで入坑し、消火作業に努めた結果、同日午後四時四十分ごろ発火地点の火は消えたのでありますが、坑道内は依然煙に包まれ、重大な災害となったのであります。当時坑内に九十一名の入坑者があり、このうち二十人は難をのがれて昇坑いたしましたが、同地点より最深部石炭採掘現場切羽付近作業中の七十一名、内訳、上席係員一名、保安助手一名、鉱員六十九名は、一酸化炭素中毒などと診断される中毒のために死亡するに至ったのであります。遺体引き上げ作業は、同日午後七時ごろより約二百人の救護隊によって行なわれ、翌十日の午前五時三十分に終了したのであります。  この災害原因につきましてはまだ不明な点が多いのでありますが、目下鉱山保安監督部監督官を中心として鋭意究明中であります。  次に労働者に対する災害補償等について申し上げます。事業主よりはとりあえず被災者一名につき見舞金二万円、供物料三万円合計五万円が支給されており、労働基準法及び労働者災害補償保険法上の補償については、福岡労働基準局において会社側並びに鉱山保安監督部と連携の上、準備は完了している現状であります。災害原因が判然とした上で個人別に支給されますが、被災者一名当たりの受ける金額平均六十六万円、このほかに会社内の制度としての退職金平均五万円、会社側見舞金等が支給される見込みで、合計いたしまして一人当たり約七十万円余となっております。さしあたって遺族生活に困窮するようなことはない状態であります。  最後に実地調査にあたっての感想について申し上げます。私ども調査目標を、災害防止上、行政面並びに現行法律において不備な点がなかったかどうか、これについて改正し、再検討する必要はないか、また災害補償適確に行なわれているかどうかということに重点を置いたのであります。その結果、次の事項については今後厳重に考慮を要すべきものと思量した次第であります。  第一に、鉱山災害防止については、常時保安管理者係員保安要員一般労働者保安教育訓練、ことに退避訓練保安監督官適正配置監督強化という措置は言うまでもないと思うのでありますが、坑内ガス爆発坑内火災出水等の場合の緊急時の措置として、可燃性ガス自動検知器あるいは自動警報装置坑道応急密閉装置のごとき最新の科学技術を取り入れた施設の普及を急速に進める必要があると思うのであります。緊急電話連絡等不備による災害の非常に多い現状において、可及的すみやかに施設改善の要があると思うのであります。なお、中小炭鉱には保安施設改善に要する経費について特別融資の道を開く等、あわせて実施すべきであると思うのであります。  第二に、鉱山監督行政については、鉱山特殊性人命の尊重に重点を置いて今後検討を要するものと思うのでありますが、さしあたって現制度下においての通産労働両省の密接な連繋による保安行政強化については、即時断行すべきものと思うのであります。すなわち、鉱山保安法運営については、同法第五十四条の労働大臣及び労働基準局長勧告権規定を除いては通商産業省所管とし、労働基準法に基づいて労働省鉱山労働時間、賃金、通気を除く衛生等労働条件に関する事項所管しており、昨年九月豊州炭鉱水没のため六十七名の犠牲者を出したあとを受けて、鉱山保安法規定に基づいて、労働省当局より通商産業省鉱山保安当局に対し勧告が発せられ、緊急時の措置について問題が取り上げられてきておるのでありますが、その後両省機関における常時の連絡が密接に行なわれているとは言いがたいのでありまして、常時連絡制度について、再検討を要するのではないかと思うのであります。  第三に、災害補償については、的確に行なわれなければならないということは言うまでもないことでありますが、遺族に対するせっかくの補償も、関係者の十分なる留意がなされないため、わずか一年ぐらいで補償金額を費消するというがごときことのないように、行政指導の面での考慮が必要であると存ぜられるのであります。  以上、まことに簡単ではありますが、概要を御報告いたした次第であります。  この際、小林委員よりただいまの報告について補足説明をいたしたいとの申し出があります。これを許します。小林進君。
  3. 小林進

    小林(進)委員 委員長のただいまの報告は、柳谷委員とともに私も加わりまして、三名で調査をいたしましたその結果の報告でございまするから、もちろん私は委員長報告を私自身も了承するにやぶさかなものではございませんが、ただこの際補足をいたしておきたいことは、以上の委員長報告をもって、われわれ三人の報告が完全に終了したものというふうにとられることは、はなはだ意の満たない点がございまするので、この点あえて補足をいたしておきたいと思うのでございます。  このたびの調査におきましては、私ども管理上の不備の問題、施設上の不備の問題、事件の処理後における不備の問題という三つの点において、非常に了承しがたい多くの点を認めて参りました。事件発生は、御承知通り上清炭鉱の約四百メートルばかり下がりましたところにおける約三十平方メートル近くのコンプレッサー室におけるぼやであります。まだ火災原因は不明でありまして、警察、検察等調査にゆだねているところでございますから、原因は不明といたしましても、三十平方メートル弱の部屋の中におけるぼやであります。これは地上でいいますならば、ほんの畳が焦げて、天井が焦げた、そういう程度にすぎないにもかかわらず、そのぼやのために尊い人命が七十一名も失われているというこの事実であります。人の命は地球よりも重いといわれる。その一名の命すらも地球より重いといわれるにもかかわらず、驚くなかれ七十一名の生命が、そのぼやにも足らざるようなわずかな火災のために失われているというこの事実です。これは一体原因はどこにあるか。私はこの原因を探求するときに、いわゆる鉱山保安監督部課長補佐の谷君がついに語るところもなく死んでいかれた、こういうような大きな事件が起きた。行政官庁関係いたしておる場合には、これはもう前例といってよろしいくらい、課長補佐あるいは係長といったものが生命を縮めていって、そうしてその死によって、いわゆる上級官僚責任も雲散霧消してしまいまして、ほんとう原因の探求もまたうたかたのごとく消えていくというのが、わが日本における行政あり方であります。この点はどうしても私の了承し得ないところでありまして、一体法規の上に不備がないのか、あるいは鉱山保安法という法律は制定せられておりますけれども、この法律を実際に動かす面における行政部分において、一体不備がないのかどうか。私どもはこの点を明らかにする意味において、この際一つ労働大臣ももちろん私は責任なしとは言わない。鉱山保安法五十四条には、いわゆる労働大臣は適時、適切に通産大臣勧告することができる、そして労働基準局長鉱山における危害防止に関し、鉱山保安局長勧告することができる、こういうふうに鉱山保安法にも労働大臣職務というものは明らかにしておる。基準局長職務を明らかにしておる。のみならず、現地における鉱山のいわゆる時間の問題、あるいはその他の賃金の問題、あるいは危害の問題についても、現に労働基準局長には責任があるのでございますから、そういう責任のとり方、監督の仕方に一体不備があったかなかったか。または通産大臣にも、鉱山保安法法規の上において、なおかつこういう危害、鉱害を防止し得ざる盲点があるのかどうか。あるいは法律は完備であるけれども、その運用の事実の面において監督不備の点があったかどうかこういう点をこの際つまびらかにしなければ、私は今の委員長報告だけをもって、わが報告は足れりとして、これを認めるわけにはいきません。その意味において、私は委員長報告をさらに完備いたしまして、われわれが国会議員として斯道人心の了承し得るような完全な報告を作り上げる意味において、この際通産大臣をお呼び願いまして、鉱山保安局長もお呼び願いまして、われわれの報告を全からしめるために、この質疑に入ることを私は委員長お願いをいたしたい。もし委員長がこれをお認め下さるならば、私はさらに補足報告意味において質問を続けていきたいと思いますが、もし通産大臣労働大臣をして、われわれの報告を全からしめるために御協力願えないというならば、私はこの席において、一つ重大なる決意をしなければなりません。
  4. 山本猛夫

    山本委員長 小林委員の御発言は了承いたしますが、この際、石田労働大臣より発言を求められておりますのでこれを許します。
  5. 石田博英

    石田国務大臣 上清炭鉱事件につきまして、当委員会調査団報告を承りまして、この事件は全く遺憾な事件でありまして、私が直接所管であるかないかということを問わず、労働者保護の任に当たっておる者といたしまして、深くその責任を痛感をいたすものであります。  政府といたしましては、さっそく産業災害防止関係各省会議を招集いたしまして、目下それの具体策の樹立のために鋭意運営中でございます。また保安法基準法等運営にあたりまして、特に私の所管であります基準法運営にあたりましては、従来とも炭鉱については特に重点的な監督を実施して参りました。たとえば一般事業場に対しましては約二〇%程度であるのに対しまして、炭鉱に対しましては一〇〇%以上、ある事業場に対しては二度も重ねて監督をするというような方途をとってきたのでありますが、それでもなおこういう事件発生を見ました。まことに残念に思います。今後は私どもとしましては、基準監督行政炭鉱に対する、特に中小炭鉱に対する監督をさらに重点的に強化をいたしまして、その責めを果たしたいと存じます。  また産業災害防止会議については、特に産業災害防止の安全、保安施設建設のための金融措置をすみやかにとることを当面の重点的な目標といたしまして、本国会のうちに成案を得られるようにいたしたいと考えておる次第であります。  ここに政府として遺憾の意を表し、かつその責任を痛感いたしますとともに、その責任を果たす目下の方策について御説明を申し上げまして、私の発言を終わりたいと存じます。
  6. 小林進

    小林進委員 ただいま労働大臣から、従来の鉱山に対する基準行政あり方並びに今後の処置についての御懇篤な御説明をいただきましたが、私は先ほどから申し上げておりますように、われわれの報告をして完全なものたらしめるためには、われわれが同地において抱いて参りましたいろいろの疑問の点を、労働大臣はもちろんでありますが、通産大臣あるいは鉱山保安局長等々から承りまして、それを解明していかなければほんとう責任ある報告はでき上らない、私はこういうことを申し上げて、われわれの疑問とする点を解明し、報告の完全を期するために、通産大臣もここに一つお呼びを願いたい、こういうことを私は委員長お願いをいたしておるのであります。たとえて申し上げますならば、現地において、現に鉱山保安法はあるけれども、われわれは、この保安法を実施する面において、この法律有名無実である。有名無実ということはございませんけれども、たとえていえば、保安不備である、施設不備であるからといって、その鉱山の閉鎖を命ずる、あるいは鉱業権の取り消しを命じた場合でも、業者がそれに応じない、あるいは労働者が応じない。それをやめたら百四十名か百五十名が明日から職場を失うのでございますから、通産省が言っても、私はいやでございますといって依然として炭鉱の発掘、それの作業に従事しておるときに、それ以上に打つ手はない、そういうふうな事実が行なわれておるならば、一体この鉱山保安法はあってなきがごとしです。これが法律不備か、あるいはそういうふうにして鉱山監督局がおやめなさいといっても、その作業をしておる、それに対して取り締まる権限が通産省にはないといっておる。労働省にあるか労働省にもない。それなら一体こういうような災害が起きた場合の責任は、だれがとるのかというのです。こういう疑問の点が幾つもあるのでありますから、こういう問題を私は通産大臣労働大臣にともに同席を願って、そこで責任所在あるいは取り締まりの不備の点等々を明らかにしなければ、責任ある報告はできないと思います。私は決して委員長の御報告にけちをつける一わけではありません。その報告に加えてそういう点を解明しなければ、国会議員として、国会から選ばれたる視察団の一員として、少なくとも小林進の良心ある報告を欠くわけには参りませんから、その点をここにおいてやらしていただくことはどうかということを私は委員長お願いしておきます。
  7. 山本猛夫

    山本委員長 小林委員の御発言を了承いたしますが、いずれ理事会にお諮り申し上げまして、いなやを決したいと存じます。  なお、各委員に申し上げますが、労働大臣は御承知仲裁裁定関係で、十一時にそれが開始をされる、こういうことでございまして、石田労働大臣から申し出がございます。御了承いただきます。
  8. 小林進

    小林(進)委員 それでは、今の問題ですが、今委員長理事会を開いてとおっしゃったが、この報告書類の完全を期するために、あらためて労働大臣通産大臣をこの委員会に招致願って、この報告の完全を期すことについて委員長責任を持って実現をおはかり下さるならば、私はただいまの報告補足はこれで一応打ち切り、そのときにやりたいと思います。
  9. 山本猛夫

    山本委員長 ただいま申し上げましたように、各理事にお諮りいたしまして、いなやを決します。      ————◇—————
  10. 山本猛夫

    山本委員長 中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案を議題といたしまして、審査を進めます。  質疑に入ります。五島虎雄君。
  11. 五島虎雄

    五島委員 中小企業退職金共済法が制定され発効になってから、まだここに一年二カ月です。四月一日から今回の改正法律案が施行されるとしても約一年半、この一年半の間にもう中小企業退職金共済法改正されなければならないということは、法制定当時すでに、この法律案自身に欠陥があったということです。御承知通り、当時の政府原案に対しては、われわれ社会党としては、多くの修正点を用意して、政府及び自足党といろいろ折衡の後に、一部の修正を見て現在の法律が制定されました。なお、社会党修正点については、多くの部分話し合いの場に乗らないで、話し合いはしたのですけれども修正を見ることなく、一部の修正にとどまって今日の法律が制定されておるわけです。それで、いずれこれはすみやかなるうちに改正しなければならないとわれわれは思ったところが、政府から今回数点についての改正が行なわれて、これだったら当時から社会党の言う通り修正を完全にしておいたら、あわてて、一年か一年半しかたたない今日において修正をすることはなかっただろう、こういうように考えられるわけです。従って、今後政府自民党も、われわれが修正等をやる場合には十分話し合いの場に乗って、社会党の意見通りやったら大部分が完全な法律になるのじゃないか、こういうように思うわけですから、自民党委員諸君もよく御認識を願いたいと思う。ところで、今回の改正法律案審議にあたって、現在の法律におけるところの状態が一体どうであるか、それから、またこの法に基づくところの労働省令等運営がどうであるか、これを若干明らかにしなければ、今回の改正法律案についても審議をすることは困る。従って、今日までの中小企業退職金共済事業について若干の質問をします。非常に簡単に質問をしていきます。  まず、今日の共済契約加入状況は、一体どうであろうか。加入状況が非常に少ないから、加入してこない要件があるから、そこで今回の改正をせざるを得なくなったのじゃないか、かように思いますにつけて、今日までの共済契約に対する加入状況事業所数やら、その包含される被契約者の数がどれだけあるか、御説明願いたい。
  12. 冨樫総一

    冨樫政府委員 最近までにおきます本制度に対する加入状況でございますが、事業所の数にいたしまして約二万正千、関係従業員の数にいたしまして約三十万人、これに基づく掛金積立金は約八億五千万円、従いまして一人平均掛金は四百十円ということに大体なっております。
  13. 五島虎雄

    五島委員 私が知るところによれば、二月の十日現在で二万六千事業所、それから労働者が二十七万八千人です。今局長が言われたことは、約というようなことで、きょうは三月の十五日ですから、あれからずいぶんたっと急速にふえたのだなと思いますけれども、この問題については約ということで了承しましょう。ところが約三十万人の労働者、それから事業所数は二万五千ということですが、それについての平均従業員数、事業所数はどのくらいであるかということと、それから事業所の構成別、何人から何人までがどのくらい入っておるだろうかというようなことについて、御説明を願いたいと思います。
  14. 冨樫総一

    冨樫政府委員 加入している事業所平均従業員の数は、約十二人でございます。規模別に加入事業所の数を大ざっぱに申し上げますと、加入している事業所数の約八割方は、二十人未満の小企業ないし零細企業でございます。従いまして契約されておる従業員の数から見ますと、二十人未満の従業員は約四三%、従いまして事業所数にいたしまして小、零細企業が非常に多い、しかし従業員は少ないわけでございまするから、四三%程度ということに相なります。
  15. 五島虎雄

    五島委員 そうすると、四三%も二十人以下があるというようなことですがそうしたら二万五千の事業所数で、二百円から千円までの掛金ができるということになっているわけですけれども、このそれぞれの掛金別におけるところの分布状況はどういうことになっておりますか。
  16. 坂本一衛

    ○坂本説明員 こまかい問題がございますので、私からお答えいたします。  二百円から千円までの掛金の口数につきまして、最も多いのが二百円口で、これが三六%を占めております。その次が三百円口が一八%、次いで五百円口が一三%、それから千円口が一二%、四百円口が一〇%、それから六百円口が五%、七百円、八百円口はそれぞれ三%、九百円口が一%、こういう割合になっております。
  17. 五島虎雄

    五島委員 そうすると二百円口が大体非常に多いのですね。まあ掛金は少ない方がいいわけですし、楽ですから多い。そうするとこれの分布状況がわかりますか。大体構成別における状況がわかりますか。
  18. 冨樫総一

    冨樫政府委員 調べて適当の機会に御報告したいと思いますが、今のところそこまでの統計はございません。
  19. 五島虎雄

    五島委員 そうするとこの法制定当時、中小企業の定義の中に百人、サービス業は三十人まで、こういうようなことになっておるわけですが、その百人あるいはサービス業における三十人というものは、日本の労働者人口の中の、これに対する対象人口を当初何万人と予定されたのですか。
  20. 冨樫総一

    冨樫政府委員 約八百万と計算しております。
  21. 五島虎雄

    五島委員 そうすると今回その改正をし、これが通過する、施行されるということになって、百人を二百人、三十人を五十人ということになったときの労働者数の増加は、どのくらい見込んでおられますか。
  22. 冨樫総一

    冨樫政府委員 約百二十万と見込んでおります。
  23. 五島虎雄

    五島委員 そうすると、当初八百万人を見込まれて、そうして中小企業退職金共済法を施行して、すみやかに労働者の福利の増進と、それから中小企業の振興をはかる上において、この八百万人に対してどのぐらいの速度でこれが加入していくか。当初の予定というものは、まあ百パーセント入ってくるものなりというようなことは政府も考えられていなかっただろうと思うのです。大体三百万人程度だと思っておったのですか、そうですか。
  24. 冨樫総一

    冨樫政府委員 大体十年間に先生のおっしゃるように三百万ということを予定しておりました。
  25. 五島虎雄

    五島委員 そうするとさっき御説明ございました、約三十万人今日まで加入をしておるということは、算術計算でいけば、局長が言われたように十年間ではちょうど三百万人になるから、予定の数に達しているのだということになるのですか。
  26. 冨樫総一

    冨樫政府委員 ほぼさようになると考えております。
  27. 五島虎雄

    五島委員 そうしたらその提案理由の説明の中に、どうしても入ってくるのが少ないし、入ってこられないような状況もあるので、これを拡大する、緩和するというようなことは要らぬのであって、当初の予定通りに進んでいたら改正の理由というものを——内容をよくしようということはわかります。私それに文句を言っているわけじゃない。しかしもう少し入ってこれるようにワクを拡大しておかなければならぬ、こういうようなことも述べられておるわけですけれども、着々として当初予定の通りにということですが、私たちが了解する限りにおいては、中小企業、零細企業も待ち望んでおるのだ、こういうような福祉的な退職金共済法を実施したら、日本の中小零細におけるところの、組合もできない、そういう退職金制度もない、そういうような従業員も非常に喜ぶ、そうしてまたみずからの力ではなかなか退職金規定等々もできない、そこで政府が補助をしてこういう制度をするというようなことが、当時の社会情勢としては、中小企業団体なども非常に要望される。従って八百万人のうちの三百万人を十年間で入れていくというようなことについて、初年度にはもう少しわれわれは多くなっていいのだと思っておったのです。ところが、この点についてはいろいろあるでしょう。これはあとでまた質問をしたいと思いますけれども、当初八百万人で今回百二十万人ふえるというようなことになると、大体九百十万から二十万程度がこの該当労働者ということになりますけれども、九百十万人の該当に拡大をして、そうして法改正して二百人まで範囲を拡大する、サービス業においては三十人から五十人までに範囲をふやす、そうするとやはり十カ年間の計画をもって、年々どのくらい加入していく予想がありますか。
  28. 冨樫総一

    冨樫政府委員 ただいまお話しの通り、本事業の対象は中小零細企業であり、本来は自前で退職制度を持っていただくのが理想でございますが、おっしゃいますように労働組合もないし、また事業主、御主人という人もなかなかお忙しいというようなことで、本制度を設けたわけであります。何分にもこの小零細企業が商店街とかあるいは零細工場が集団的に集まっておるというようなことであれば割合やりやすいのでありますが、広範な分野に孤立的に存在しておるというようなこともございます。中小企業団体等の援助も受けておりますが、これらの団体も発足後まだ年久しくございません。われわれとしてもいろいろ努力はしておりますが、今のところ先ほど申しましたような加入状況でございます。今後十年間大体この範囲拡大によりまして、ほぼ当初の計画に対してプラス四十万程度を見込んでおるのであります。今後とも加入につきましては精一ぱい努力いたしたいと考えます。
  29. 五島虎雄

    五島委員 今年度四十万人をふやして、そして来年度は、法施行後一年間で七十万人の加入者になるというわけですか。
  30. 冨樫総一

    冨樫政府委員 言い方が不十分でございましたが、先ほど申しました三百万に対して、三百四十万程度にいたしたい。
  31. 五島虎雄

    五島委員 わかりました。それでは次に参ります。  さいぜん局長が説明されましたように、掛金納付の金額は八億五千万円。そうするとその五十三条には、余裕金の運用という規定がございます。そこでこの余裕金の運用がどのようになされておるだろうか。金融機関への預金または金銭信託をしなければならぬとか、労働大臣及び通商産業大臣が指定する有価証券の取得、それから不動産の取得、こういうことや、資金運用部に預託しなければならない、こういうことになっておるわけですけれども、八億五千万円の内訳をどのように利用されているかということについて質問をいたします。
  32. 冨樫総一

    冨樫政府委員 この運用は、ただいま先生のあげられました条文の趣旨とする安全確実、かつその資金がかけた中小企業にできるだけ流れるようにという精神に基きづまして、約八〇%を商工債券、約八%を不動産債券に回しております。残りの約一二%を、この業務を委託しておりまする金融機関に定期預金として預金し、残りの、ごくわずか一%でございまするが、これを事業団の資金繰り預金として、普通預金として預けております。制度から申しまして、この資金の一部を大蔵省の資金運用部に預託することになっておりますが、これは大蔵省との話し合い責任準備金の一割を回すことになっております。最近この決算に基づきまする責任準備金の額が確定いたしましたので、別途一千万円程度を資金運用部に回す手建を進めております。
  33. 五島虎雄

    五島委員 そうすると資金運用部に預託するのが一千万円、それから金融関係に預託しているのが少ないけれども、一二%ということは一億円くらいになるわけですね。  次にその五十三条の五項では、「業務上の余裕金の運用については、安全かつ効率的な運用を害しない範囲内で、できるだけ中小企業者の事業資金又はその従業員の福祉を増進するための資金に融通されるように配慮されなければならない。」これが五項であります。その点についてはどのくらい使われておりますか。
  34. 冨樫総一

    冨樫政府委員 将来積立金がもっともっと増額されるような場合には、いろいろ直接融資、特に金の性質上従業員の福利施設等に融資したいという希望を持っておるのでありますが、何分現在の段階におきましては、総額八億程度でございますので、そのうち八七%に相当する額を商工債券、不動産債券等に回しておりますので、その経路を通じて適当な中小企業への融資ということを期待しておる次第でございます。なお先ほど資金運用部に一割と申しましたその一割に相当する金額が一千万円なんでございますが、これは実は三十四年度の決算から出てきた額の一割という意味で、まだ三十五年度の決算が今後に残っております。さよう御了承いただきたいと思います。
  35. 五島虎雄

    五島委員 わかりました。そうするとまだ加入者数が少ないし、従って掛金の納付も八億五、六千万円だ、従って従業員の福利施設というようなものに使われていない——私たちはこういうようなものに早く使ってほしいというような希望をしておったわけです。ところが、ずっと預金をしたり債券を買ったり、そういうものやら、あるいは市中銀行に預託をしたりした金が業者に流れるであろうし、業者に流れれば、間接的に従業員の福利も増進されるであろう、一つの仮定としてこれをやっているだけだ。現実にはどういうことをしたという具体性はない。これから努力すると言われるわけですね。これからその納付金の多寡によって努力すると言われるわけですが、こんなのは早くやってもらわなければならぬ。ところが、さいぜん局長から説明されたように、三十万人加入がある、そうして十年間に三百万人、今回の法律改正で三百四十万人ばかりを想定するのだ、こういうようなことになると、大体一年々々に三十万人ずついくということは、PRも完全になり、そうしていろいろの中小企業者あるいは従業員もこれを完全に了解した上で予測通りに事業が進行していると言われた、そういうような意味になるわけですが、私たちはそうじやない。さいぜん言いましたように、もっともっとふえなければならぬ、多いはずだ、こういうように思いますと、大体政府のPRがどういうように行なわれているのか、こういうようなことを考えざるを得ないわけです。そこで国の予算なんですが、国の予算は、大体事業団の補助金が一億六千万円、それから労働省を通じ地方の各府県に交付金として交付される金が一千九万円、それから指導監督費として百二十二万六千円ですが、合わせて大体一億七千百三十三万円程度が、この中小企業退職金共済法に関する予算づけになっている。そうすると、この中の予算で、政府は、全国の中小零細企業に対し、あるいは従業員労働者に対していかにPRをされているのか。そうしてそのPRに使われる費用は一体どのくらいだろうか。私がこの予算から見て、間違いかもしれませんけれども、各都道府県に交付される金は一千万円程度ある。そうすると、その中から各府県が政府を代表して、当該都道府県の中小零細企業に対して、こういうような制度であるし、入ればこういうような恩典もあるし、そうして中小企業の振興にもなるし、従業員も喜ぶというようなPRが行なわれていいんじゃないか。そうすると一千万円程度を四十六府県に分けるとすれば大体二十万円程度になるんじゃないか、こういうような計算になるんだけれども、十年間を通じ三百四十万人が想定される。しかも九百万人以上の該当労働者がある。それをこのくらいので一体認識がされていくのかどうか。それは十年かす必要はないと思う。法の制定当時、瞬時においてPRというものが必要でなければならない。でなければ、十年たって認識されてもなかなか目標に達しませんから、そうするとこの二十万円程度でPRができるかどうか。従ってPRの費用は——私が言ったのはPRの費用にならないかもしれません。今県の労政課の費用として各都道府県に交付される金が、ほかの目的に使われるかもしれません。私はそれがよくわかりません。それでPRはどういうところでどういうようなことを行なわれ、そうしてどのくらいの金が使われているかということを質問いたします。
  36. 冨樫総一

    冨樫政府委員 PRの経費につきましては先生のお調べになった通りでございます。中心は国から県に約一千万円、それから事業団が九百万円、自前のPR経費を計上してございます。むろん最近におきまする銀行の預金に関するPR、あるいは証券会社の猛烈なPR経費等に比べますれば、はなはだ微々たる経費であることは申すまでもございません。われわれといたしましてはこの経費をできるだけ有効に使うべく、大体県におきましては労政事務所、労政課が中心になっておりまするが、さらに監督機関職安機関、商工機関等の御援助も受けまして、それぞれの何かの会合あるいは講習会というようなときにまかり出まして説明を申し上げたり、あるいはリーフレット、パンフレットによって要領を何したり、あるいはさらに最近まだ年久しくないので十分な力はないわけでございまするが、中小企業の共同体あるいは商工会といったようなものの援助を受けて、この金につきましては、零細ながら一〇〇%有効に使っておるつもりでございます。しかしながら仰せの通りこの金で十分というようなことは毛頭考えておりません。御承知のように国の予算ということになりますと、まあ渋い上にも渋いということになりまするので、今後増額に努力いたしますとともに有効な使い方——ただ、PR経費を使えば事足りるというわけでもございませんので、そういうことで士気の落ちないようにして関係者を督励しておるようなわけでございます。
  37. 五島虎雄

    五島委員 この一千万円程度は、算術計算で二十万円ずつ分けられるわけじゃない。そうすると、この交付は何を基礎として分けられるかということを、わからぬものですから、課長さんからでもけっこうですが、ちょっとお知らせ願いたいと思うのです。  それから、今局長が一部触れられたように、民間企業が非常にPR費用を使って宣伝をする。そこで民間企業というのは生命保険の退職保険のことだと思うのですが、こういうものが、この中小企業退職金共済法よりもより有利な条件で、しかもPRをどんどんやって勧誘してそっちに吸収されていくから、従ってなかなかこの法に基づくところの加入者が増加してこない傾向もある、こうういようなこともあって今回の改正にもなるのだということは想像できるわけです。  それからもう一つは、いろいろ私聞いておるわけですけれども業者自身が、この法律では手ぬるいんだ、それで掛金をしてしまったら、現状のようになかなか中小企業にいろいろな企業の資金も回ってこない。あるいは福利施設などについてもなかなか回ってこない。これだったら自分たちが団体を作って自分たちの従業員を対象として積み立てをしてしまって、そしていかなる場合でもその民間の組合で金が使える、どんどん銀行から引き出せる、この方がよっぽど楽じゃないかというようなことで、従来もそうでしたけれども、今日もそういうことが地方では行なわれつつある。しかも地方自治体、商工団体等々が中心になって、そうしようじゃないかということが、全国で数カ所あるのじゃないか、こういうようにも聞いておるのですけれども、そういう動きがありますか。そうすると、そういう動きがあるのに、今回の法改正をしたらそういう動きはすべて吸収できるということが想定されますか。自信がありますか。二、三点になりましたけれども……。
  38. 坂本一衛

    ○坂本説明員 最初の交付金の予算の配分の問題についてお答え申し上げます。本年度の一千万円の配分につきましては、おおむね各県の加入事業所数、それから加入従業員数という実績の上に立って配分いたしました。それからなおそれに加味いたしまして、当該都道府県におきますところの対象従業員数というものも若干加味いたしました。
  39. 冨樫総一

    冨樫政府委員 今後段に御質問になられました点でございますが、現在のところ、特に民間の保険会社の退職保険でございますが、何かそれとかみ合って商売争いをしているというようなことまでは承っておりません。なおまた、資金が直接に回ってこないということで、この制度と相反しましてみずからの退職金制度を作るということでございまするが、この法律の施行後一年間、自前の退職制度からこの制度への移行を認めたのでありますが、その実績によりますと、約四万人の従業員に対する自前の退職制度のうち、約五千人分がこの制度に移行して参ったと考えております。むろん本法全体の精神が、自前の制度が望ましい、そして百人以上、今後は二百人以上の企業におきましては、自前の退職制度のできることを、この法律は、裏返すと、期待しておるわけでございます。従いまして、中小零細企業、本法の対象聖業といえども、何か役所仕事で、制度ができた以上は成績を上げるために無理無理この制度加入させるということも、これまた必ずしも本旨ではないわけであります。安全でかつ確実性のある自前の制度であれば、それはそれでいいのであります。そこら辺のところは寛厳よろしきを得たいと考えておるわけであります。
  40. 五島虎雄

    五島委員 わかりました。四十六条に、業務委託、労働大臣がこれを承認しなければならない、こういうようになっているわけですけれども、そうすると、業務を委託された金融機関は一体どういうような利益があるのだろう、手数料は一体どのくらいつけてあるだろう、そういうようなことが何か素通りになって、そして事業団の方にこの金が入っていってしまう。それはさいぜん局長から説明されましたように、大体一二%程度のものを金融機関に預託しているのだということですけれども、その数も全国で、一億円程度ですから、大した金額ではなかろう。そうすると、その間の手続というものは非常に繁雑ではないか。一体その手続に対するところの手数料などはどのくらいつけられておるか。
  41. 冨樫総一

    冨樫政府委員 この制度運営上の加入あるいは掛金の受け入れ、給付の支払い等の事務は、零細な金で、かつ安全をたっとばなければなりませんので、その点については確実を期しております。同時に件数も非常に多いことでございますので、できるだけ簡素な、ルーティンワーク式な扱いをすべく、工夫されておると考えております。それにしても相当の手数がかかるわけでございますが、それに対する手当といたしましては、現在のところ新規加入一件につき十円、それから毎月の積立金を月に三回に分けて本部に郵送してきますが、その郵送の実費、ということになっております。なおあわせて、気は心と申しますか、あるいは手続上必然なことといたしまして、集まった銭を本部に送るまでの間にほぼ七日間の余裕がございますので、できればその間コール等に対する利用の余地はないでもない。それから金融機関のこれの取り扱い店舗が全国で大体一万一千ございますが、おのずからこういう店舗は中小企業と接触の多い企業であるということも頭に入れて、わずかでございますが一二%、これらの金融機関に定期預金で預金しておるわけでございます。しかし、正規の手当は、先ほど申しましたようにきわめて微々たるもので、銀行に対しては実質的に、公共的サービスという意味で御協力を願っておるという建前でわれわれもそういばった態度でなくお願いしておるというわけでございます。   〔委員長退席、齋藤(邦)委員長代理着席〕
  42. 五島虎雄

    五島委員 何だか話によると金融機関の方から逆に協力されておるというような話で、一件十円というのは、百人の従業員を入れてきたということになると、一人一件かと思ったら、百人一括して加入しますと——たとえば一人について二百円ずつ加入するように手続をする、そうすると、その預金手帳とかなんとかを発行しなければならぬ、そういうような手続も含めて、何々会社から百人の従業員を入れますからという手続をした、それが一件で十円、こういうようなことではなかなか金融機関も——だから、むちゃくちゃに金融機関をもうけさせなければならぬというのではなくて、何か理屈に合わぬ。そうすると、政府は金融機関に恩義をこうむるというような逆な立場になるのではないかというようにも考えられます。これは認識をしておきます。  次に、法十四条の通算制の問題については、今回二年以下のところが削られました。その面においては私はいいと思うのです。その改正趣旨はいいと思いますが、自己の「責に帰すべき事由又はその都合によるものでないと労働大臣が認めたときは、」「通算することができる。」となっておるわけです。そうすると、勤務年数の比較的短いものが中小零細企業に多いから、もう少しワクを拡大したいとして改正しなければ、その労働者に対する福祉の増進などがやっていけないのだ、そこで改正するのだという改正の要旨になっておるわけです。しかも中小企業、零細企業の従業員の勤務年数というものは、当時審議されたときも、大体四年どまりじゃないか、三年から四年だい従ってここに重点を置いて定着するようにしなければならないから退職金共済法を作るんだ、こういうようなことであったわけですけれども、依然として勤務年数は、大企業に比較して、あるいは堅実な企業に比較して短い。ところがやめる人たちはどういうような状態でやめるかといいますと、あるいは事業整備とかいうことで、永年勤続などというのは比較的少ない。企業整備でやめなければならぬということは、これは国の経済しの問題ですから、景気のいいときはそういうのはだんだん減っていく。しかし企業整備というものは考えておかなければならぬ。それは経済上の事情で、本人の都合でやめていくことにはならない。従って、そういうように認められるときには通算できるのだということに十四条ではなるわけです。ところが自己の責めによってやめたときということは、法に違反した行為をやったり、あるいは就業規則に違反した行為をやったりして罰則を受けてやめるときですから、こういう場合は、その罰則の個々の条件に照らして通算しない場合があるでしょう。ところが、その自己の都合の退職者も通算されないということに法文上はなるわけです。そうすると、永年勤続をした以外あるいは企業整備など会社の都合や、やむを得ざる社会的事情によってやめなければならないとき以外は、自分が退職願を出したら、すべてこれは通念としては自己の都合になると思うのです。ほとんどそれはそうです。そうすると、これを通算しないということになると、十四条の通算制があっても、ほとんどの労働者に対しては通算しないということになるのではないか。これは法の制定当時もっと審議しておかなければならなかった、もっとわれわれも修正しておかなければならなかった。しかし、その修正の時間が非常に少なかったものですから、これまで修正の手が及ばなかった。現在そのままになっておる。この件について、たとえば移転するからやめざるを得ない、移転の理由をもって退職すれば、自己の都合になる。そうして同じく中小企業の力に再び就職をしても、打ち切られる。そうして通算されない。こういうことは私は矛盾だと思う。この点についてどういうようにお考えになるか。
  43. 冨樫総一

    冨樫政府委員 私ども承っておるところによりますれば、国会に提案された当初の原案におきましては、この通算につきましては相当きびしい条件があったと承っております。それを当時国会修正で、きびし過ぎるところをある程度緩和されたことも承っておりまするが、今回退職金共済審議会におきましてさらに検討の結果、二年間という勤続は、他の条件とのつり合い上この際廃除をしたらどうだということで、廃除したわけでございます。自己の都合によるという問題につきましては、中小零細企業におきまする従業員が方々に転々としないように、安定して定着するようにということがこの法律制定の基本的目的の一つでございまするので、この点は審議会におきましても、当時としては問題にならなかったと聞いております。審議会答申通り、今回は二年勤続という条件だけを廃除することといたしました。しかし先生が仰せのように、自己都合退職ということも、考えてみますれば、実質的にはやむを得ざる退職という場合もないでもないかと思います。自己都合のうちで、そういうほんとうに客観的にやむを得ざる退職というのと、そうでない退職ということに技術的に限界の線が引けるかどうかといったようなことは、今後重要な検討問題として検討させていただきたいと存じます。
  44. 五島虎雄

    五島委員 共済審議会でこういうことが検討され、あまり問題にならなかった。ただ二年で今までしばられたことをとる。その点はいい。あまりに勤続年数が少ないから、これをとどめておいて、中小企業の振興に寄与しなければならない、そうして発展させるんだという法の精神は、われわれは何も反対しなかったわけです。ところが私がさいぜん言いましたように、退職者というのは、永年勤続は当該事業場会社、工場でどれくらいが永年勤続である、そうするともう無条件に退職金も支給するんだというようなことも規定されておるわけですけれども、自己の都合によるというような場合は、もうあらゆるものが自己の都合になるわけです。そういう君は、その工場がいけないか情いかということは別問題として、やめるのです。退職はあるわけです。そうして健全な次の事業場に移っていく。またそのやめる会社事業場が健全であっても、やめていく退職者はあると思います。それが将来検討をすると言われましても、審議会に私たちが要望するわけにいきませんから、審議会には労働省自身が諮問をされるわけですから、こういうものをもう少し検討してもらえないかと諮問をされる必要があると思う。審議会の構成メンバーがどういう考え方で答申されるか、それはわかりません。しかし審議会が答申されるからといって、あらゆる審議会は尊重しなければならないとわれわれは言ってきたわけでありますけれども、しかしわれわれの希望でこうありたいと思うことが、審議会の結論とちぐはぐになった場合は、審議会に対しても私たちは間接的に要望することができると思うのです。それを労働省自身がどういうように考えられるか。あるいは局長がこういう問題には中心となられるわけですけれども、大臣にあるいは政務次官にどういうように進言されるか。そうしてこういうような条文があるけれども、非常に現実にそぐわないというようなことを言われるならば、あらためて諮問をされる、そうして意見を聞かれるということが必要じゃなかろうかと思うのです。そうしてまた審議会のメンバーは、それは企業者、経済団体の代表者とか学識経験者になっていますけれども、構成メンバーはそういうようにいろいろの学識経験者が集まって審議されるのですから、権威はある。私たちは決して権威を疑ってないのです。ところがそういうことは企業家を中心に考えて、企業をやめていくような人たちに対してはあまり考慮を払う必要はないじゃないかというような考え方で審議される人たちが構成メンバーの中にあるのならば、これは間違い。そうしてそれがこの通算の問題だけを抽出して、これはこういう理由だからこのままにとめおいて、二年間ということがあるからこれは削除するんだという答申ではないんじゃないか。全般をひっくるめて、通算制の問題では二年間の線があるということはちょっと不工合だから、これを削除しようという方針になっておるのじゃないか、こういうように思うわけです。そこで一般労働者を中心として考える。中小零細企業の労働者は非常に気の毒なんだ、しかも中小企業家も気の毒なんだ、しかし労働者というものはある理由によって転々とするんだ。転々とさせないのが法の従来の精神ではあるけれども、転々とさせられる。そこでやむにやまれず自己都合で退職していく人たちには通算する、この考え方がぼくは正しいのではないか、こういうように思います。政務次官もおられますけれども労働大臣がおられませんから、それで労働大臣にもこの点は強く考え方を聞きたいと思っておったんですけれども、どういうように考えられますか。
  45. 柴田栄

    ○柴田(栄)政府委員 お話の点は、中小企業の実態からいたしますると大へんあり侮ることであり、働く人たちの形式的な自己の都合ということにもなろうかと思いまするが、実態的にやむを得ない事情でということもあり得ると思われますので、御趣旨の点はもっと十分検討する必要があると存じます。本制度によりまして、先ほども申し上げましたように、なるべく長期に安定した生業の状況を醸成したいという考え方が主体をなして、ただいまのような方向になっておるというふうに私承知いたしておりまするが、御主張の点に関しましては、実態から見まして、従業員のためにもっと考えなければならぬ問題点が非常に多いような気がいたしますので、なおとくと省内で検討させていただきたいと思います。
  46. 五島虎雄

    五島委員 この点については、私たち社会党もこの審議の期間中よく考えますから、今政務次官が言われましたように、一つ考慮を願いたいと思うのです。  それから第十条、この退職金の問題についてその三項を見ると「被共済者がその責に帰すべき事由により退職し、かつ、共済契約者の申出があった場合において、労働省令で定める基準に従い労働大臣が相当であると認めたときは、事業団は、労働省令で定めるところにより、退職金の額を減額して支給することができる。」そして施行規則の十八条を見ると、退職金減額の認定基準がある。その認定基準のところで、「法第十条第三項の労働省令で定める基準は、次のとおりとする。」となって、一号、二号、三号とあり、その三号には、「正当な理由がない欠勤その他の行為により職場規律を乱したこと又は雇用契約に関し著しく信義に反する行為があったこと。」一号では、窃盗とか横領とかそういうようなことで職場規律を著しく乱したこと、それから二号では、「秘密の漏えいその他の行為により職務上の義務に著しく違反したこと。」それが基準となって減額ができる。そうして第十九条では退職金の減額ということが規定されておる。「法第十条第三項の規定による退職金の減額は、共済契約者の申し出た額によって行うものとする。ただし、事業団は、その額が被共済者にとって過酷であると認めるときは、その額を変更することができる。」こういうように減額の規定が、労働省令でも基準がきまっておる。ところが、その基準が一体どこを基準としてやられるのだろうかということは、これもまた非常に小さいことかもしれません。いろいろ法の違反をしたり、いろいろ企業に対して不工合なことがあったりした場合は、これは減額ができるでしょう。しかしその基準というものがわかっていない。ですから、その法文を読んで、本法と規則を読んでみると、結局は、退職金を支給しようとするとき、当該事業場労働者がこの基準に触れたようなことになれば、その企業者、保険者が、保険者の意思によって、第一にはそれを減額できるということ、減額されてしまうということ、それがあまりに過酷であるというような場合は事業団がこれを変更できる。その額が被共済者にとって過酷であると認めるときは、その額を事業団が変更できる。そうすると基準は示されておっても、減額の基準というものはどこにも示されておらない。そうすると、企業者が半額にしようとか三〇%にしようとかということになると、大体その通り退職金が支給されてしまう、こういうようなことだろうと思うのです。そうすると、こういうことについては大体基準というものをある点きめておかぬと、労働者にとって悪いんじゃないか。退職金の減額が自由に行なわれるということでは、労働者を保護することはならないのじゃないか、こういうように考えますが、この点についてはどういうように考えられますか。
  47. 冨樫総一

    冨樫政府委員 制度的に申しますと、この規定運用に際しまして、従業員の力に不満がありますれば、労働保険審査会に申し出ることができることになっております。しかしこれはいかにも役所的な、制度的な答弁になると率直に私も考えます。現在の減額し得る場合の基準につきましては、おそらく法制定の際に、民間における現在ある退職金規程等をいろいろ参照した上で——前にも申し上げましたように、退職金制度ができますれば、主、個々の企業において自前でできるのが望ましいというわけでありまするから、現在一般的に行なわれている自前の退職金制度、多くの場合私もこういう規程があると思いますが、そういうものを参照して作ったものと思いますが、なお念のために、常識に反した運用をされては困るということで、労働大臣の認定にかける。実際には都道府県知事にその認定事務を委任しておるわけであります。特にこの認定、その減額し縛る場合に幾ら減額するかということにつきましては、確かに法文上から申しますと過酷にわたらないことということ、そういう抽象的な限界しかないのであります。いかにも私もこれを読むだけだと、うらさびしいような感じがいたします。ただ、これもまた、減額し得る場合の基準そのものに実際問題として相当幅があるので、きめかねてこういうことになったかと思います。従いまして、今後さらに民間のそういう自前の場合の運用状況等を考えまして、行政指導として、この過酷ということの限界、基準につきまして、実情に沿う行政指導が必要かと思います。従来ややもすれば、制度ができた当初でございまするので、この制度加入しろというPRの方に主たる力がいっておったと思いまするが、今後は、加入についてのPRと合わせまして、運用上きめのこまかい指導をして参りたいというふうに考えておるわけであります。従いまして、制度的には労働保険審査会というものがあるということで突っ放すことなく、実際問題として労政課あるいは労政事務所等の窓口におきまして、適当な調整などもできるようにというふうにいたしたいと考えております。
  48. 五島虎雄

    五島委員 うらさびしいという言葉が出たのですが、うらさびしいという言葉の反面は、ただいま局長が言われたように、行政指導でこの点はやる、そういうような気持はわかります。ところが、労働基準法の九十一条——まあ第九章は就業規則の方になっているわけですけれども、それで八十九条を見れば、常時十人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成しなければならない。そこで、この該当は、さっき説明をされたのですけれども、二十名以下の組合が四八%だというような説明をされました。二十名以下ですから、十名以下の加入者数もたくさんあるわけです。ところが、就業規則は作らぬでもいいことになっておる。ところが、この労働基準法は、十名以上のところには就業規則を作らなければならない。そうして九十一条には制裁規定の制限がある。それは、「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。」こういうことになっておるわけです。これは退職金に対して、これをどうしなければならないということではないけれども、そういうように懲罰をするときでも、一口の賃金の半額をこえてはならないし、一カ月では十分の一をこえちゃならぬのだというように労働基準法では示されておるわけですね、就業規則を作る場合。そうすると、それが大体限界じゃないかと思います。そうすると、退職金規程、これは退職金共済法ですから退職金ですが、退職金とは一体いかなるものか。これは賃金のあと払いであるか、あるいは企業者従業員に対して恩恵的にやるのか、福祉的にやるのか、こういうことになりますと、いろいろ問題が発展してくるでしょうけれども賃金のあと払いである、賃金だ、あらゆる収入が労働基準法では賃金なんだ、従って税金もかかるわけです。退職金に対しては税金の対象とされておる。そうすると賃金にほかならないのじゃないか。この精神をここに援用しなければならないのじゃないか。そうするとただいま局長が言われたように行政指導ということのみならず、やはり労働省令においてきめるというふうに書いてあるから、それで労働省令においてもそういうようなことを基準として最低の限度というものは設けておかなければ、半額になったって三割になったって、それがあまりに過酷と思われるときだけ、労働保険審査会に異議の申し立てばできるというようなものの、弱い労働者はなかなか異議の申し立てというようなことは現実にできかねる。従って今局長が言われたように、この点については十分に認識をしてもらわなければならぬ。これはわれわれ社会党としても検討します。  それからもう一つ、今回法の改正にあたって、従来までの中小企業退職金共済法におけるところの中小企業とは、第二条に、百人までの従業員を要する事業場である、サービス関係は三十人までのところを中小企業と言うんだという定義があわけるです。ところが今回の法改正によって、二百人までこれを拡大されるわけですね。そしてまたサービス業に関する従業員は五十人までのところでいいんだ、こういうようなことなんですけれども一般的な概念として、中小企業というのは、現在は構造の変更もだんだん行なわれておるし、設備投資等々もどんどん目まぐるしく発展しておるわけですけれども、現在でも中小企業の概念というのは、この法律関係なくて、一般的には中小企業というのはどういうところをもって中小企業の限界と思われるか。
  49. 冨樫総一

    冨樫政府委員 一般に中小企業という概念につきましては、卒直に申しまして厳密な概念が客観的にあるとは承知しておりません。従いまして各関係法律におきまして、あるいは資本金一千万円以下、あるいは三百人以下と、いろいろ規定されておるようでございます。一々記憶しておりませんから申し上げかねまするが、それぞれの法律におきましていかなる観点から、問題があるので、法的行政措置を講じなければいかぬかという観点から、各法律にそれぞれの違いがあるかと存じます。その場合も資本金一千万円とかあるいは百人以下とか三百人以下といったような社会常識はあると思う。それでそういう観点であまり動かぬ幅のうちで問題を処理するのが常識的かと考えまするが、この法律に関しまする主たる眼目は、自前で退職金制度を作るということがむずかしい。事実自前で退職金制度を作っていない分野が広い。そういう分野に、ある観点から、これ以上は自前で作ることを期待しておる、これ以下は自前で作ることを期待するけれども、あわせて無理な場合にはこの制度に御加入願いたい、こういう観点でございます。その観点から申しまして、最初現行法では百人と規定されたのでありますが、その後本法施行後に明らかになりました中小企業総合基本調査によりますと、百人から二百人までの間におきまする自前の退職金制度の普及状態が、四七%でございましたか、半分に満たない。ではこの程度まで加入を認めるという道を開いたらどうだろうか、退職金共済審議会の審議の過程におきまして、三百人まで広げたらどうだという意見もあったようでございますが、三百人をこえたところでは、まあ過半数は自前のものを持っているというので、この際二百人というところに落ち着いたというような経過でございます。
  50. 五島虎雄

    五島委員 今の局長の言われた中小企業の概念、しかも各法律々々によってそれぞれ違うだろうと言われた説明、そこで今回百名から二百名にワクを拡大する、あるいはサービス業で五十名までに拡大する、それらのことが実際に調べてみたら、組合もない、そこで自前で退職金制度もない、だからこれを救済と言ったら何ですけれども、こういう法の中に吸収するのだ、こういうことですけれども、われわれは今日まであまりワクを拡大してはならない、従って局長が前段に述べられましたように、この退職金という規定などは、退職金そのものが一体わが国の制度の中にあっていいのかどうかとということも大きな問題でしょうけれども、これはひとまずおくとして、自前で、やはり労使双方の話し合いの中でこれらの労働条件というものは作られるべきだ、従ってどうしても零細企業は組合を作れない、現実に作ろうとしてもぶちこわされるような現実、そこであまりにこれを拡大しておれば、そういうような法律の中に安住してしまって、労使双方の話し合いの場、自前という、本来の考え方そのものが性格をなくしてくるのじゃないかというおそれがある。従って現在の法律の制定当時、われわれは百名までワクを持っていく必要はないのじゃないか、できるだけ組合のできかねるような実情にかんがみて、六十人までくらいに縛っていこう、こういうようなことでした。しかし審議会で二百人までという、あるいは三百人までという意見が出たそうで、二百人までは満場一致できまったというのですけれども、われわれの考え方とは少々違うのじゃないか。そこで、しからば百人までのワクという現在の法律の中で、五〇%程度はまあ二十名以上だ、そうすると二十名以下のところは五〇%しか含まれていない、そうするとこれでは加入者が少ないし、二百人まで入れたら、百人から二百人までの間はまだ退職金規定を持っていないから、これを入れようというような審議会の考え方だと思うわけですけれども、これをあまりに拡大することは、零細企業あるいは中小企業、二十人あるいは十人、五人以下とかいうような人々を、行政上、PR上忘れてしまうというような危険ばなかろうか、そうするとわれわれに報告されるのでも、事業団はこういうように人員がふえました、ふえただけをもってわが党はよしとしない。しかし余裕金の使い方等々には大きな注目をするわけで、それがどういうように労働者に対して福利厚生、福利の増進等々に使われるかということは注目しますけれども、私たちはそういうように考えるわけです。二百名までに拡大するということはどうだろうか。また一方サービス業は、大体商店のことを考えても、五十名も使っている商店は、商店自身としては——、資本金とか従業員数によると、一般概念からは一千万円とか三百人とかという線はあるわけですけれども、しかし商店を考えてみると、三十名も使っているところは大商店であるわけです。それを五十名まで拡大するということは、これは大々商店である。こういうところまで、こういう法律があるから、自分たちでは自前に退職金を作るというようなことはできないのだろうかというように考えるわけですね。その点についてどういうように考えられますか。審議会がこういうように満場一致になっているのだから、審議会の意見をそのままぶち込んでここの改正をするのだ、こういうことだけでしょうか。あるいはこれに対して労働者としては、あたりまえだ、もっともだというように、お考え、になって、ここの改正政府は出されたのですか。
  51. 冨樫総一

    冨樫政府委員 全く仰せの通り、本制度は中小零細企業におきまして自前で退職金制度を設けられないところに国がサービス的な意味において作った制度と考えております。従いまして、でき上がった制度につきまして、関係者がこの制度を十分に活用してもらいたいという意味のPRをし、その結果相当の加入を見るということはきわめてけっこうでありますが、何か今先生のおっしゃいましたように、手柄を立てるといったような意味合いにおいてこのサービスを押しつけるというようなことは、厳に慎むべきものである。われわれも、中小零細企業というと何でもかんでもかわいそうだから助ける、助けると言うのが能ではないので、自分たちがやれるところは自分たちでやる、こういう観点でなければいけないということを、ほかの問題との関連においても常日ごろ考えておるわけでございます。今度百人を二百人に上げましたのは、大ざっぱに言いまして、四七%の自前の制度を持っているから、四七%やっているのだから、ないところは関心が不足だとか努力が不足だとかいう非難をなし得る余地もないではないか。従いまして、その面におきましては、健全なる労働組合の組織率も相当あることだと思います。その面はその面で指導なり相談相手になりますとともに、やはり審議会におきまして労使中立一緒になりまして、過半数まで達してないのだから、二百人までこの加入の道を開くのが適当じゃないかといって、三者満場一致で決定いたされましたので、われわれといたしましても、その程度ならけっこうだろうということで、範囲拡大、多々ますます弁ずるといったような趣旨で改正案を提示したわけでないという趣旨を、ここに御了承いただきたいと存じます。
  52. 五島虎雄

    五島委員 この点についてはほかの委員からも質問があると思うのですが、時間がないというので、今労働金庫法がありますが、労働金庫の育成について、これは労政局関係ですか、労働金庫の将来の発展についてうんと理解を持ち、うんと発展させる気持がありますか。
  53. 冨樫総一

    冨樫政府委員 労働金庫が健全なる実態を持ちつつ発展するということは、労働金庫制度の本来の目的でございます。その線に沿うて、一面金庫の監督をすると同時に、その発展に即応する態度をもって臨むということは、制度制定以来一貫して変わらないところでございます。
  54. 五島虎雄

    五島委員 現在労働金庫は健全に発展していると思われますか。
  55. 冨樫総一

    冨樫政府委員 健全の限度でございますが、おおむね健全に参っておると認識しております。
  56. 五島虎雄

    五島委員 おおむねというのは、ちょっとおかしいと思うのですが、本法制定の当時、四十六条の「(業務の委託)事業団は、労働大臣の認可を受けて、金融機関に対して、退職金等の支給並びに掛金及び申込金の収納及び返還に関する業務の一部を委託することができる。」そうして「事業団は、労働大臣の認可を受けて、事業協同組合、中小企業団体中央会、商工会議所その他の事業主の団体に対して、調査、広報その他その業務の一部を委託することができる。前二項に規定するものは、他の法律規定にかかわらず、前二項の規定による委託を受け、当該業務を行うことができる。」この業務の委託の項について、いろいろ法制定当時、自民党と折衝しました。こういうことをここで言っていいかどうかわかりませんけれども、その業務の委託は事業団がやるのだ、そうして労働大臣がこれを認可するのだというようなことでございましたので、その当時、金融機関というのはどういうところだろうかと、いろいろ話し合いました。そうして労働金庫は金融機関である。また中小企業退職金共済法の精神は、さいぜんから繰り返し言っておりますように、中小企業の振興、労働者の福利増進、そうしてすべてが幸福になるようにというように考えられる。そうすると労働金庫というのは何かというと、労働金庫は労働者の団体やら生活協同組合などが組織して、労働者自身の福利を増進するのだ、そうすると法の精神というものはそこで一致するのではないかと思う。ところが労働省令、施行現則ができて、審議会で論じられて、その後労働金庫は何か除外されたわけではないでしょうけれども、当てはまっていない。従って業務の委託を受けていないという状態です。その点についてどう考えられるだろうか。何か私は四十五条において事業団の業務報告が作られて、そうして四十六条によって大臣にこの業務報告が行なわれて、指定銀行はどうするとか、金融機関はどうするとかいうようなことをきめられるのだと思っていたわけです。そこで自民党の、いうならば齋藤理事に非常に積極的に努力してもらったわけですけれども、その後入っていないのです。そうするとやはり金融機関として政府が認めるのならば、金融機関としては同等に取り扱われる必要があるのではないか。これが中小企業に対することの振興の問題について労働金庫を金融機関として指定しておるというようなことならば、僕たちも一歩遠慮する。しかし労働省はなぜこれを作るか。それは労働者を中心として、その幸福の実現のために努力しなければならぬ労働省でこの法律ができて、そして中小企業も労働者もともに発展していかなければならぬという将来の展望を持つ限りにおいて、労働金庫を除外することはまことにけしからぬというようにかねて思っておる。けしからぬという言葉は言葉が強いのですけれども、なぜ労働金庫を入れないかという疑問がある。従って、今日までは委託の取り扱いの金融機関として認定はされていないけれども労働大臣や政務次官あるいは局長が、さいぜん申し上げたような発展を労働金庫に期待し、そうして健全に発展していると見、それが労働者の副利の増進になっているというようなことを言うならば、これの加入者である労働者に対して、これを除外することはまことにけしからぬと私は思う。そこで、今後は一体この労働金庫のウエートを、この事業団の委託業務の中でどのように考えておられるかということを、一つ忌憚なくお聞かせ願いたい。
  57. 冨樫総一

    冨樫政府委員 ただいまお話しの通り、われわれといたしましても、労働金庫が金融機関として、他の機関に比し、本制度の、委託を受けて業務を遂行する上において欠くるところありという認識は持っておりません。ただ、本法の施行当初の経過を調べてみますると、本法施行早々、先ほどお話のありました退職金共済、審議会にこの点を諮問いたしましたところ、特に小委員会を設けて、四回にわたる審議の結果、総会に報告されて決定されたところによりますと、要するに労働金庫は労働者が金を預け、労働者に融資されるということが本来で、直接に中小企業者との金の受け入れの接触がない、なじみが十分でないので、中小企業者の方で何か労働金陣というものがなじまない、そこでこの際はしばらく見送ったらどうだ、ということに決定し、そういう答申を受けておるのであります。これは答申を受けた労働省にとりましては、それ自体、気分の問題であると思うのであります。この制度がサービスを本質とし、気持よく事業主加入してもらうという上におきまして、またこの気分の上で中小企業者になじまない金庫をサービス的にこれだと出すのもいかがかと思いまして、この答申をなにしたのでありますが、施行後だいぶ時間も経過しましたので、先生の仰せられました御趣旨を体しまして、近く適当な時期にもう一ぺん諮問して善処したいと存じます。
  58. 五島虎雄

    五島委員 審議会の報告等々について、局長初め労働省がどのように気分を受け取られたか、それはわかりませんが、私が聞きたいのは審議会の意見は、さっき言いましたように尊重はしなければならないけれども、この方法でいけば何でも民主的に鮮議会にかける、そして結論を得てその報告通りにやるということは一応それが本筋だろうとは思うんです。しかし、そういう結論が出て報告されたから、まあまあ考えると、そういう意見はあるけれども、気出の問題としてそうなってしまった。こういうことらしいのですけれども、そうすると私がさいぜんあと返り先返りして述べた趣旨、それをどう思っておられるかということです。だから四十五条によって、事業団が業務内容を報告する、四十六条によって、労働大臣が認可することができるというようなことになるのならば、審議会の意見を尊重するしないということは別として、労働大臣には指導監督権があるわけです。そこで労働省として、労働金庫は認可します。こういうような気持になられる場合は、積極的に諮問をされるというようなこともできると私は思う。そうしてまた事業団の事業報告の内容に入っていないというようなことであるならば、それを入れなさいという指導もできる。そうしてそういうような配慮の中で労働者の福利を増進していく配慮が労働省としてはなければならぬのではないか。これが労働省設置法の精神であるわけだ。そういうようなことで、今日までは入っていません、私が質問したまでは。局長は雰囲気だと言われるわけですが、政務次官、どうでしょう。今後この労働金庫を指定するように一つ積極的に努力していただけますか。
  59. 柴田栄

    ○柴田(栄)政府委員 御趣旨の点については、私自身非常に共感を持っております。ただ先ほど申し上げましたように、当初において気分的な問題もあったかと存じますが、審議会において相当慎重に扱うというような態度をとられたという事実がございますので、やはりそれを無視して労働省の方針だけで進めるということもどうかと思いますので、お説の通り、十分検討いたしまして、その御趣旨に沿って善処いたしたいと存じております。
  60. 五島虎雄

    五島委員 制定当時の審議会の意見は聞くともなく聞いております。だからこの件について私が言いたいことは一ぱいあるけれども、やはり——まあムードの問題は言わぬことにしましょう。そこで政務次官や局長から述べられましたように、共感してもらえるのだったらそれでいいのです。それで今後いって下さい。それでさいぜん質問の中ほどに言いましたように、手数料が十円では何にもならないじゃないか、預託金だつて一億円で一万一千の個所について預託をしている、利益だって何にもならないじゃないか、そういうようなことであって、労働金庫が利益にもならないことをなぜいうか。労働者の金融機関であるがゆえに、そういうことを損をしても、もうからなくてもやらなければならなければならない一つの使命というものがあるのだというようなことを労働者が認識しない限りにおいて、雰囲気とかムードで労働省が解決すべきではないと思うわけです。ですから、審議会はあらゆる代表が出ておられますから、いろいろなことが聞きにくいし、私たちが聞いたら怒りたくなるような意見も出るでしょう。そんなことは聞かぬことにしまして、労働金庫を指定するのだということで努力するということがはっきりわかりましたから、私はそれだけにとどめておきます。まだ定めざるところは次の機会に譲りまして、これで終わります。
  61. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)委員長代理 滝井義高君。
  62. 滝井義高

    ○滝井委員 中小企業退職金共済法について、今、五島さんの方で重要な点をおやりになったのですが、重復しないように三、四点お尋ねしたいのです。  それはこの法律ができることによって中小企業の振興をはかることはもちろんですが、同時に、その振興をはかるということの中に、そこに働く中小企業の労働者が安心をして相当長期にわたって働ける姿をこの法律は作りたいという内意があるんだと思うのです。この中小企業退職金共済法ができましてから、中小企業における労働者の勤続年数というものが、一年半ぐらいですからわからぬだろうと思いますけれども、幾分でも長くなるような傾向が出てきたかどうかということなんです。
  63. 冨樫総一

    冨樫政府委員 おっしゃいまするように、この一年四カ月ばかりの間に顕著な統計上の根拠が出てはおりません。それから中小企業全体のうちで本制度加入しておるパーセンテージもまだ微々たるものでございます。ただ一つだけわれわれの手前勝手なことを申しますると、本制度ができたときに予定いたしました中小企業の退職率が年間一八%と見ておったのが、本制度加入したものの脱退率が約九%、むろん脱退届をしないでほったらかしておるというのも、零細企業のことだから相当あろうかと思いますけれども、今の数字から申しまして、少なくとも加入したところは安定性が増し、その方向に進んでいるんではなかろうか、こう考えております。
  64. 滝井義高

    ○滝井委員 私は、今の見方は、退職金制度ができたために、一八%ぐらいあるだろうと思っておったのが、加入した企業については九%ぐらいに移動率が下がったということは、むしろこの制度のためではなくて、ここ一、二年における日本経済の成長、そして中小企業における労働力の不足というものによって、中小企業の事業主が自己のところで働く従業員を非常に大事にしなければいかぬという気持の方が多く作用したのであって、この制度ができたから一八%が半分の九%になったのじゃないんじゃないかという感じがするんです。さいぜん気分の問題り言っておったが、そういう気分があるんじゃないかという感じがするのです。  そこで私はそういう関連で一つお尋ねをしたいのは、この制度では今まで国庫の補助金を五%出す、これを五年以上掛金をかけたときに初めて五%がついてくるわけです。十年以上、百二十カ月以上になりますとこれが一〇%、一割になるわけです。最近における日本経済の状態から見て、中小企業における労働者が大企業に、少なくとも質のいい者は、特に技術を持っている人は吸収されて、引き抜かれていく傾向が出てきているわけです。それだけにやはり中小企業における大企業からの引き抜き、あるいはよりよき労働条件のところへの急激な移動を阻止するためにも、この中小企業退職金共済制度が、そういう流れに対して何か一つ中小企業を守る役割を果たさなければ意義がないと思うのです。そうしますと、その意義を果たすためには、中小企業の事業主掛金その他を急激に増加をしなさいと言っても、これはなかなか無理だと思うのです。これは退職金制度ばかりではなくして、そのほかに健康保険制度もあれば、労災もあるし、厚生年金もあるわけです。千円について、多分百二、三十円くらいかけると思います。従ってなかなか無理なんですから、私はここでこの五%なり一〇%の国庫の補助金というものを、五年以上のものについて退職時に五%国が出すわけですから、それを一つ年々出す制度を作ってみたらどうかということなんです。たとえば一年に三十億なら三十億の掛金が集まって参りました、そうするとその三十億の五%あるいは三十億の一割、一〇%、こういうような出し方をしてもらうことが必要じゃないかという感じがするのですが、この制度を作るときにも、われわれはこの制度を早く打ち立てることが必要だろう、そのためには社会党の要求を最小限度自民党さんにのんでいただく、あるいは政府に了承していただこう、こういうことであのときはこれを見過ごしたわけです。しかし、あとでまた少し触れてきますが、今日の段階になって参りますと、やはり国が五年たってからその退職時に五%とか、十年たったら一〇%というような制度では魅力がないのです。だから、従って労働者の積み立てた額の一割とか五%をまず国が先に一緒に積みましょう、いわゆる賦課方式じゃなくて積み立て方式を国もとるということなんですね。こういう方式でいく必要があると私は思うのですが、労働省当局は一体どうお考えになりますか。
  65. 冨樫総一

    冨樫政府委員 その方がよりベターになることは申すまでもないと存じます。ただこの法律ができるときの経過をあとになって私聞いたのでありますが、この五%、一〇%を何年から与えるかということは、これまた申すまでもなく特別の理論とか理屈を背景とした所産ではないので、やはり政治的な観点から、この程度の魅を付与しょうということのように承知しております。従いまして魅力を増大するためにある程度ベターな措置は十分考え得られるかと思います。なおあまり魅力が多過ぎると、自前でやろうという意欲を阻害しまするが、ただいま言った程度のことは、ある程度ベターな魅力増大というふうに考えられます。ただ制度的に失業保険におきましても、国庫の三分の一の負担というのは、労使の負担が年々積み立てて利息がついていくのに、国の負担は清算補助といったようなことになっておりますし、大蔵省との事務的折衝その他におきまして相当難渋するかと思いまするが、もともとこの国庫補助が政治的配慮ということの所産でございまするので、そういった観点におきましてわれわれのできる限りの努力を今後いたしたいと存じます。
  66. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、制度運営の上からいきますと、労働省当局も私の主張したように、積立金の総額について五%とか一〇%を先にやってもらった方がいいのだということについては意見の一致を見たようでございます。あとは全く政治的な、大蔵省なりの予算折衝上の問題になってくる、こういうことでございます。いずれこれは来週にでも大蔵省に一ぺん来てもらって少し意見を聞かなければならぬ点が出てきたのですが、私がそういう主張をなぜするかと申しますと、昨年の九月三十日現在における状態を見てみますと、さいぜんの五島さんの質問に対する御答弁は、中小企業の加入者で二十人未満が八割ですね、二十人未満の零細あるいは中小企業の人たちがこの加入者の八割を占めている。そうしますと三十万の加入者があるとすれば、二十四万人というものが二十人未満だということですね。まあ二十人ぐらいのところは、私は日本の企業だったらいい方だと思うのです。二十人未満といったら八、九割は中小企業の中で占めているわけですから、問題は私は十人未満、特に五人未満だと思うのです。これは健康保険もなければ厚生年金もない、労災もかけたりかけなかったりだ、こういうところが問題だと思うのです。昨年の九月三十日現在の状態を見てみますと、一人から四人までの事業所は五千二十三事業所です。これを比率にしてみますと、一人から四人までは二割九分です。そして従業員の数にしてみますと、一万一千九百八十九人で六%しか占めていないんですね。非常に少ない。事業所の数は二割九分を占めておるが、労働者の数は六%である、こういう実態です。今度は五人から九人までを見てみますと、事業所の数が四千四百五十人で、二五・九%です。従業員の数を見ますと二万六千六百八十二人で一三・三%、こういう程度になっております。それで私は、この十人以下のものについて、健康保険その他がないのですから、この際やはり退職制度というものを相当確立してやる必要があるんじゃないか。それによって、ここらの、十人未満の事業所における労働者の退職というものについて不安を相当程度なくすことができるんじゃないか。ということになると、おそらくこういうところの事業主というものは二百円のところにしか加入してないと思います。そうすると、二百円についてあれは五%、こうなっておるわけですね。しかしこれは全部おやじがかけてくれる金なんです。事業主がかけてくれる金なんですから、五百円とか千円かけるところは、それはもうおやじの方の負担でできておるわけです。しかし二百円しかおやじがかけ切れないというところの労働者は、二百円ぽっちりの恩典しか受けないわけですから、ここを、今私が主張した五%とか一〇%というものを掛金の総和にして国から出してもらって、そして逆にこの下に厚くするわけです。特に十人未満について厚くするわけです。そういう制度にこれをやはり組みかえる必要が私はあると思う。この制度でいきますと、これは逆ピラミッドになるのです。国の補助金も上の方によけいついていく可能性が出てくる。何となれば上の方ほど移動率が少ない、だんだん年限が長く勤務することになる。下の方はかけ捨てになる可能性の方が多いのです。従って労働者は不安定だということになりますので、今度あなたの方で、今まで五年かけ捨てのところをぐっとこう下げてきたわけですね。従って私は、かけ捨てのところを下げてきた、そこのあたりからやはり国庫補助をつけてやるという形をとるべきじゃないか。ところがそういう形で国庫補助をとるというと大蔵省はなかなか納得しません。従って総和で一つ五%でいきましょう。一〇%はいい、五%でいきましょう。あるいは中をとって七%でいきましょう。そして下につけてやるわけです。すなわち四十八カ月ぐらいで、とんとんになるのが、今度は三十四カ月ですか、二年くらいでなるわけですから、そこからもうつけてやるんですよ。そういう制度にしないと、これはとてもこの退職金制度に魅力がない。そういう形にしてもらうと、労働者もその事業主に向かって、あれに加入していただきましょうという、こういう下からの突き上げも出てくると思うのです。私はこの際そういう形にこの制度を改めてもらう必要があると思うのですが、その点あなた方はどうお考えになりますか。
  67. 冨樫総一

    冨樫政府委員 卒直に申しましてただいま初めて承った御意見でございます。御趣旨としては非常に妙味のあるおもしろい考え方かと存じます。ただ制度的に考えますると、やや似た他の保険制度等におきまして、規模別に低賃金労働者についてはこうだといったような取り扱いがなされておりません。その趣旨はどういう趣旨に基づくか、少なくとも私どもの何からいたしますと、相当技術的な困難が伴うかと存じます。長期の給付経済全体の計算上から、あるいは一線をどこに置くかといったような点、あるいは最初九人であったものが退職時代になりますと企業が発展して十五人になっておったといったようなこととか、いろいろ技術的な困難はあるかと存じます。しかしながら初めて聞きましたので、すぐどうという色よい返事と申しますか、そういったことはしにくいのでありますが、十分に検討させていただきたいと存じます。
  68. 滝井義高

    ○滝井委員 九人のものが十五人になったり、十五人のものが五人になるということはあると思うのです。問題は、たとえば今までの恩給の概念でいきますと、退職時の給与と、こうなっておるわけです。従って、退職町の企業の規模にしておけばいいのじゃないかと思うのです。そうすると、今まで二十人のところが十人になったら、それは退職時のときで適用していったらいいと思う。だから、社会党のもとの原案は六十人以下という工合にしておったのです。政府の方が百人以下なんです。私はこれを上に拡大することは逆だと思うのです。力を下に入れていくということの方がほんとうだと思うのです。百人を二百人にしておりますが、二百人の今の企業ということになりますと、これはどういうことになるかというと、オートメーション化されますと二百人といえば相当の規模です。そして相当の生産をあげなければならぬ。もう今の段階では、二百人なんというものは、これは退職金も何もほうっておるという状態ではないですよ。二百人ぐらいになりますと、大体退職金制度というものは相当確立されてきている。むしろ私は、妥協するとすれば、やはり二十人か三十人以下のところに、この政府案の退職金制度をやろうとすれば、力を入れなければならぬ段階ではないかと思う。しかもその二十人、三十人が日本の輸出産業の下請として一番力を入れているところなんです。大企業から多く搾取されておるところなんですよ。そういう点で私はどうも——政府のこの改正というものは、それは悪くないですよ。百人を二百人に拡大し、三十人を五十人に拡大することはいい。しかし、商売人で五十人使っておってごらんなさい、これは相当なものなんです。われわれが国の補助金を入れたり政策的に強めなければならぬというところは、私はむしろ逆に百人以下であり、三十人以下のところであると思うのです。そういう意味で、その中から十人未満——特に十人未満というものは、政府管掌の健康保険については五人以上が強制になっていますよ。強制になっているけれども、十人、十五人のところで加入していないところは、東京都内を調べてみるとたくさんありますよ。そういう意味で私は今のことを申し上げている。だから、退職時の規模でいろいろのことを操作したらいいと思うのです。掛金は同じくかけておるのですから。  そこで、これは別の問題に入るわけですが、そういういい制度をお作りになったわけですけれども、その場合に、所得倍増計画ですね、今内閣の経済政策の一番の柱である所得倍増計画と、この退職金制度とが、一体どういう関連を持ってくるのかということです。というのは、第一次産業が、三十一年から三十三年の平均をとれば、就業者の中で三九・六%ぐらい占めているわけです。千六百四十五万です。それが昭和四十五年になりますと二三・七%で千百五十四万、約五百万減るわけです。問題は、二次と三次がこの法案に関係してくるところですが、さいぜんの御答弁では十年で三百万人入れるということだったですね。そしてそれを四十万ふやして三百四十万、こういうことだったのですが、第二次産業が三十一年から三十三年までの平均が二四・二%のものが三二・二%になっていくわけです。千六万人ぐらいのものが千五百六十八万、五百万ふえるわけです。   〔齋藤(邦)委員長代理退席、委員長着席〕 それから第三次産業が三〇・七が三七・一になりまして、千二百七十六万が千八百八万——これは所得倍増計画の数字ですがこうなるわけです。これでやっぱり五百五十万ぐらいふえるわけですね。こういうように、十カ年間に二次と三次で約千万ふえるわけです。これは私は大企業にはそうよけいにふえないのじゃないかという感じがするのです。これは政府の計画では、あるいは大企業にふえることになっておるかもしれないが、実質的には雇用というものは中小企業に増加していきます。大企業というものは臨時工か何かになってしまう。社外工とか臨時工がふえて、最近の傾向もそうですが、実質的には中小企業にふえてくる。そうすると、今度これを二百人に拡大をし、五十人に拡大をしますと、この対象になる数というものは、ことしはあなた方はそれを九百十万程度に見たわけです。ところがこれが十年の後になりますと、おそらく倍になりますよ。倍になったときにもなお三百万だということはおかしいですよそうでしょう。そうすると今まで答弁しておった三百万が十年後に三百四十万になるというようなことでは、この制度の発展はないですよ。いわゆる二千万にもなっておって——二千万にはならないかもしれないが、千四、五百万か千七、八百万くらいになっておるのに、その中の三百万だということになると、五分の一か六分の一しか加入しないということになってしまう。それでは私はこの制度は所得倍増計画に乗る制度ではないと言わざるを得ない。やはり労働省の政策というものは人間中心に、所得倍増計画を考慮に入れた上の政策にこれは転換をしていかなければいかぬと思うのです。その転換が今度のこの改正にはないんですよ。一体所得倍増計画とこの中小企業の対策という関係をあなた方がどう考えて、そうして制度を打ち立てていくかということです。
  69. 冨樫総一

    冨樫政府委員 所得倍増計画と本法との関係でございまするが、確かに所得倍増計画の実現過程におきましては、第二次産業、第三次産業に従業員の構成比率がふえてくる。と同時に、一方におきましてはその過程において、中小企業と大企業との労働条件の従来の格差が漸次狭まっていく。すなわち生産性が低いとか、あるいは支払い能力が弱体であるという意味合いにおける中小企業という概念がだんだん薄れて、中小企業は中小企業なりに適正規模の業種というようなことで、大企業と中小企業との所得格差がだんだん狭まってくる、労働条件の格差も狭まってくるといったような傾向を持つ、従いまして逆から申しますと、今度この共済法が自前で大企業並みの、あるいはそれに準ずる退職金制度が作れないものにサービスするという制度意味合いが漸次、さっきから先生のおっしゃっておりましたように、この加入規模を拡大する方向から、今後は大筋としては、ある意味におきまして縮小して、先生のおっしゃったように零細な企業の方にこのミルクを圧縮していく、濃厚に圧縮していくという大きな方向に進まなければならない性格を持っているかと存じます。ただしかし、所得倍増計画が百年とか二百年というのでなく、十年間、この制度は長期、十年、二十年勤続ということを前提としておりますので、年々倍増計画と合わせて制度をスライド的に直していくということは、技術的に非常に困難かと思います。しかしその方向と、あるいはまたその間に金利低下の方向もございましょう。そういったようなことを何いたしまして、卒直に申しまして本法施行後現在一年四カ月目でございますが、今後そういった長期傾向との関係において、これは何もこの制度だけでなく類似の長期積み立て、長期給付という制度等にも共通の問題があるかと思いますが、そういうことで、そちらの方の検討も腰を据えてじっくり検討してみたい、そういうふうに考えております。
  70. 滝井義高

    ○滝井委員 長期のものと関連して検討をしたいということですが、由来退職金制度というものが、大体長期的な見通しに立っておらなければならぬと思うのです。そうしますと所得倍増計画で雇用の構造がずっと近代化されて変わってくることになるわけです。今の客観情勢から見ると中小企業には若年の新規労働力の吸収ということは非常に困難になっておるのが現実ですよ。そうしてそういう情勢であるから、従って中小企業には中年、高年の労働力がたまってくるわけです。これはもういい待遇を出さぬ限りは集めにくい。これは客観的に今すでに出てきている情勢です。今後ますますこの情勢は私は強くなると思う。そうしますとその中高年齢層が中小企業に定着を余儀なくされればされるほど、その老後、退職後における生活の安定ということを考えてやらなければならぬですから、従ってこの制度というものは、ますます中小企業中心に、国がある程度てこ入れして、ある程度金を入れて強化しなければならぬことになってくるのは必然です。私はいずれ機会をあらためて雇用政策全般について質問をしたいと思うのですけれども、しかし今中小企業の問題ですから……。私は雇用問題から中小企業の危機が農業よりも早く来ると見ておりますよ。中小企業自身の危機が所得倍増計画で農業よりも先に来るとすれば、中小企業における労働者の退職の問題というものは一番ポイントとして考えておかなければならぬ問題になってきますよ。それだけに、やめたときに七百二十円とか、三千四百円とか、四千三百円とか、そういうちゃちなものでなく、やはり国が相当なものをそこに入れてやる制度というものを考えなければならぬと思う。一昨年、一年四カ月前にこの制度が打ち立てられるときには、今のような所得倍増計画のムードというものはなかったわけなのですよ。そして全くここ一年ばかりの間に、特に昨年の終わりから日本の経済の状態というものはがらっと変わってきているわけですから、その変わってきている、倍増計画というものに、あの制度にやはり編成がえしなければならぬときが来ている。そういうときに、たったこれだけの改正であるということは私は問題だと思うのです。これは労働省、少しものの考え方がおくれておる。私に言わせるならばおくれておるのですよ。だから当然池田内閣の経済政策にマッチした、人間中心の、やはりこれは中小企業における雇用政策の重要な一環ですから、その中小企業の運命を考えて、その運命をどうこれで打開をしていくか、これは人間から、雇用の問題から打開をしていく点だと思うのですよ。それが欠けているのです。だからそういう点では、今の私の言ったようなものの考え方に立って、やはり国庫の補助金、負担金というものを直されなければならぬと私は思うのです。これをこのままで行ったって、所得倍増計画における中小企業の危機を救う法案にはならぬですよ、昔ながらのもので来ているのですから。だから一年四カ月前の頭を今の池田内閣における所得倍増計画の頭に、岸内閣における安保体制を強化するときの頭で作ったものではなくて、新しい経済問題を推進をしていく立場でこれは考え直さなければならぬ時期が来ていると思うのですが、その点どうですか。できれば次官に答弁してもらえば一番いいのですが。
  71. 柴田栄

    ○柴田(栄)政府委員 まことにお説の点はごもっともな点があると存じますが、先ほども申しましたように、いろいろなつかみ方の点もございまして、はっきりとそこまで打ち出すことができなかったということについては、御指摘の点等もございまして、十分ではないということを私どももまた認めざるを得ないと存じますが、さしあたり現実の問題と、将来の産業全体の構造の変革等をつかみながら、なるべく早い機会にそれにマッチさせるということに努力をいたすということで、当面非常に要望の強い、しかも不備を是正するということで、この程度にいたしたいということについては、一つ御了承をいただきたいと存じます。お説の点につきましては、いかにも不十分であるということは、私個人としては認めざるを得ない、かように考えております。
  72. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、ことし三十万人程度加入者があるのですが、三十六年中には一体労働省としてはどの程度加入をお見込みになっていますか。
  73. 冨樫総一

    冨樫政府委員 昭和三十六年度におきましては大体二十万、先ほど三百万と申しました趣旨と十年とが結びつきましたのは私の言い間違いでございます。この制度が十何年間、ある程度の頭打ちと申しますか、そういう段階になりますと、加入者と脱退者というような関係がありまして、ほぼ三百万という天井で落ちつくのではなかろうかということで、四十三年、四十四年の十年後におきましては、大体百九十万から二百万という程度の見込みでございますので、大へん恐縮でございますが、最初申したことを今の言に改めたいと存じます。先ほど三十万ということで、そのベースに乗っているというのは、一年四カ月で三十万ですから、一年間二十万というベースに乗っておるという意味に訂正さしていただきたいと思います。その意味で、三十六年度一年間の見込みとしてはほぼ二十万ということでございます。
  74. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、労働省は今の所得倍増計画で、日本の経済の雇用構造なり、事業所の視模別の構造というものが一体どういう工合になるとお考えになっておるかということです。すなわちこの法律でいう百人未満、今度これを二百人未満にするのですね。その二百人未満の事業所の数なり、労働者の総数というものは、一体昭和四十五年になったら、どの程度になるとお考えになりますか。
  75. 冨樫総一

    冨樫政府委員 所得倍増計画の実現過程におきまする雇用構造の展開でございまするが、今のところ第一次、第二次、第三次といったようなくくり方でものを考え、政策を策定してございまするが、その間におきまして、企業規模別にどういうふうに変化をもたらすかということにつきましては、なかなか事柄の性質上、そこまで計画上どうという見込みはできておりません。
  76. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、三十三年、四年になってから百九十万とか二百万ということも、これは全くおかしなことで、当てずっぽうの数字になってしまうわけですね。去年三十万くらい入って、ことしは二十万くらい入るだろう、それだからおよそ十年間で二百万くらいと言っておけばいいだろうというようなことにそれではなってしまうのですね。これは新しい所得倍増計画で雇用構造の近代化というものが行なわれる限りは、相当の変化が出てくるわけですよ。家族従事者なり自営業主というものが雇用労働者にぐっとなってくるわけですからね。従って、それに見合って、今のままの百人でも、あるいは三十人でもいいです。一体こういうサービス業とか、製造業というものがどういう工合に変わってくるかということが一番大事なところじゃないでしょうか。それじゃそれがはっきりしないならば、現実のこの三十人と百人以下で、一体どういう工合に加入の分布がなっておるかということです。これはわかるはずですよ。たとえば製造業ではどういう工合に加入しておる、サービス業ではどういう工合に退職金加入しておると、これはわかるはずです。
  77. 冨樫総一

    冨樫政府委員 現在加入しておりまする事業所を、製造業及びそれに対するサービス業というふうに分類いたしますと、製造業の方が五九%、約六割、サービス業の方が四一%、約四分六分の関係になっております。
  78. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、製造業とサービス業という分け方で、その製造業の中でもやはりもう少し特徴的なものが私はこの制度加入の中にあるのじゃないかと思うのです。サービス業だっておそらく特徴的なものが何か出てこなければならぬと思う。と申しますのは、この規模別の状態を見ると、人数でいけば、あなたがさいぜん言われたように、とにかく二十人以下というのが全加入労働者の八割を占めているということですよ。二十四万人でしょう。そうするとその二十四万人が一体どういう業態に集中して現われておるか。サービス業ならばどういうもの、製造業ならどういうものと、これはわかるはずだと思うのです。わかるはずだと思う。これはわれわれが今後この制度を推進していくPRをやる拠点をそれによって見つけることができると思うのです。だから従ってこういう制度に関心を持ち、入りやすいところの企業というものは、一体どういうものかということがそれによってわかると思うのですよ。そこらあたりをちょっと説明していただきたいのです。
  79. 冨樫総一

    冨樫政府委員 今のところ——今のところと申しますより、ただいまここに製造業、サービス業とさらに分類づけた資料がございません。ただ現在までのところ、とにかく八百万の対象従業員が全国に散らばっておる。これを相手に、できるだけ商店街、何と申しますか、産地という、中小企業の集団地といったようなところに力を入れて、加入をPRし、漸次孤立的なところまで及ぼうということを考えておりますが、先ほど申しましたように、製造業とサービス業との関係が六分四分でございまするが、サービス業だけをとってみますと、製造業の場合よりもより零細な企業の方が加入率がいいと  いうことは、サービス業の零細企業は製造業よりも質的には相当いい内容を持っているということも言えるのではなかろうか。従って加入しやすいところは、サービス業の方がこちらの加入の仕方によって入りやすい性格を相当持っておるという感じはいたしております。
  80. 滝井義高

    ○滝井委員 今の製造業なりサービス業のこまかい資料がなければ——これは一応今後PRをする上に、どこから一番入りやすいかということは、私はこの中に現われてきておると思うのです。この規模別で見ていけば、やはり事業所の数は一人から四人まで使っているところは二割九分ですから、これは相当やり方によってはぐっと全国的に伸びる可能性があるということです二。割九分、約三分の一は健康保険の適用のない事業所が入っておるということでしょう。それから健康保険に入るか入るまいかと、強制的にはなっておるけれども、相当まだふらついて、入っていない層のある五人から九人のところは二割五分、四分の一です。これを合わせますと五割五、六分程度、とにかく半数以上が十人までということです。ところが労働者の数にしてみると、悲しいかな一割九分しかならない。そこで、この半数以上を占める十人以下のところにもう少し力を入れて数をふやす、そうすれば労働者の数も自然にふえていくのです。それをやるためには、やはりここに国の補助金をよけいにつける方法を考える以外にはないのじゃないか。そうすると、ここらのものは、さいぜん言ったように百円そこそこしかかけていない。だからここらあたりをもう少し力を入れていただく。しかもその中でどういう業態が集中的に現われておるかということを足場にしながら宣伝をしていけば、非常にいいじゃないかと思うのです。ところが、こういうところは悲しいかな移動が激しいのです。だからこの制度の恩典に浴することが少ない。かけ捨てになる。そうすると、事業所の数の非常に少ない、二十人以上二十九人までの事業所は一割しか占めていない、三十人から四十九人になったら六%、それから五十人から百人になったら四%、ぐっと少ないのですが、こういうところが金をみんな取ってしまって恩典を受けるという形が非常に濃厚に出てくると思う。今度はそれが幾分途中でとんとんでもらえることになりますけれども、現行制度のままでいけば、五年度にならなければ国庫補助もつかない、こういうことなんです。そういう点から考えると、やはりこれは幾分この際修正をして、所得倍増計画に乗れば、中小企業というものはますます求人難で、中高年令層の労働者をよけいかかえることになるから、ここらあたりもう少し考えていただく必要があるというのが私の結論です。それから、二十四カ月以上の掛金を納付していなければ、通算の恩典を受けないわけです。これを今度は削除したわけですが、これを削除することによって、どの程度労働者が恩典を受けると考えておりますか。
  81. 冨樫総一

    冨樫政府委員 この点につきましては、統計的見地からこれを削除したのでなく、事柄の性質から削除いたしたものでございます。従いまして——と言うとおかしいのでありますが、そういった趣旨の統計は遺憾ながらございません。
  82. 滝井義高

    ○滝井委員 二十四カ月以上掛金をしていなければ通算ができぬというようなことは、中小企業の性質から見て、当然これは常識的に削除しなければならぬと思うのです。そうしますと、その次の項では、退職してから一年以内に通算を申し出なければいかぬことになっています。こういうのも、私は要らぬのじゃないかと思うのです。一体、二年なり三年たって申し出て、どうして悪いかということなんです。
  83. 冨樫総一

    冨樫政府委員 これは、権利義務の安定のための事務処理上で、あまり届眠り貯金的なもののないようにという趣旨でございます。
  84. 滝井義高

    ○滝井委員 御存じの通り、最近における中高年令層というものは非常に就職難です。今後やはり日本の中小企業における労働力の不足をカバーしようとすれば、中高年令層の人を中小企業に使っていく以外に方法はないのです。そうしますと、こういう申し出の期間が一年以内なんというのは削除してもちっとも差しつかえないのじゃないかと思うのです。ただあなた方が事務的にいくと御所見があるかもしれないが、どうでしょうか、そこらあたり事務処理上非常に大きな支障はないじゃないですか。
  85. 冨樫総一

    冨樫政府委員 私もひょっと考えてすぐこれでいいという考えは出ませんが、この一年が六カ月でいかぬか、二年じゃいかぬか、こう言われますと、程度の差であるというふうに考えます。ただあまりのんべんだらりというのはどうか、一たんそのときに退職金をもらって国に帰るという人であれば、その退職金をもらって別途貯蓄をして利息を生ませる、二年も三年も寝かしておく必要もそうなかろうといったような感じがいたします。
  86. 滝井義高

    ○滝井委員 大体はっきりとした理論的な根拠はないようすでから、これは適当にあとで処理させていただきたいと思います。  それから事業主団体等における自主的な共同退職金積立事業に参加していた市業主が本制度加入する際に、従前の積立事業の引継ぎ措置について便法を今度講ずることになっております。   〔委員長退席、齋藤(邦)委員長代理着席〕  こういう制度をお作りになって、一体そういうものからこの制度にどの程度移ってくるとお考えになっておりますか。それから同時に、現在百人未満とか三十人未満の、この法律の現段階で対象になっておったその事業主で、そういう自主的な退職金の積立制度というのですか、そういうものをお作りになっておったのはどの程度ありますか。
  87. 冨樫総一

    冨樫政府委員 この法律ができた当初において、やはり経過的に一年間、自主的な退職金制度をこの制度に移行できることを認めたのであります。その当時の経過措置から申しますと、対象従業員の数にいたしまして約四万人だったかと思います。この四万人のうち、移行したのが約五千人だったと思います。従いまして、その当時の状況とほぼ変わっていないとすれば、現在三万五千、ただ今回は規模が百人から二百人に拡大しましたので、そのところははっきりわかりません。ただこういう制度がないために、やむを得ず自前でやって不安定な積み立ての仕方をしておるとかいったようなところは移行してくると思いますけれども、そうでなく、自分たちの自前の制度で集った金で安定のある融資が仲間同士でできているというようなものは、しいてこっちにお入り願いたいというようなことはいたす所存はございません。きわめて自然に、こういう制度ができたからこっちに回りたいというものの加入を期待しておるのであります。
  88. 滝井義高

    ○滝井委員 それから、この事業団の代理店の数は一体幾らありますか。
  89. 冨樫総一

    冨樫政府委員 末端の店舗にいたしまして、約一万一千でございます。
  90. 滝井義高

    ○滝井委員 これは主として市中銀行ですか。
  91. 冨樫総一

    冨樫政府委員 市中銀行のほかに信用金庫農業金庫等も入っております。
  92. 滝井義高

    ○滝井委員 農業金庫というのはどういうところから……。
  93. 冨樫総一

    冨樫政府委員 私はあまり銀行に縁がないのでわからないのですが、正確に申し上げますと、都市銀行、地方銀行、信託銀行、相互銀行、商工中金、全国信用金庫連合会それから連合会の中にある信用金庫、信用組合、その信用組合に農業関係が相当にるというので、さっきちょっとそう申したわけであります。
  94. 滝井義高

    ○滝井委員 労働金庫については五島さんからお尋ねがあったそうですからやめます。  次は、現在この制度積立金が八億五千万円程度になっておるわけですが、だんだん三年、五年とたつうちに相当の状態でこれがふえてくる。あなた方の御計画で、この最初の御説明で三百万と言っておったのですが、だんだん変わって百九十万から二百万になった。昭和四十三年から四十四年ぐらいになると百九十万から二百万、こうなるわけですが、その四十三年か四十四年になったときの積立金の総額はどの程度になりますか。
  95. 冨樫総一

    冨樫政府委員 約三百七十億程度、こういうふうに見ております。
  96. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、その三百七十億円の積立金運用の計画、この事業団は四半期ごとの運用計画を作らなければならぬことはもちろんですが、しかしこの四半期ごとの余裕金の運用計画というものは、やはり三百七十億も金がたまるということになれば、四十四年までの長期の運用計画というものが見込まれておらなければならぬと思うのですが、何かそういう運用計画をお立てになっておりますか。
  97. 冨樫総一

    冨樫政府委員 大きな感じといたしましては、その段階になりますれば直接事業団による融資、従業員に対する福利施設融資というようなことを考えておりますが、率直に申しまして先のことにつきましては、今計画を立てましてもいろいろな金融情勢などの観点もありまして、現在のところ的確な青写真的な計画を持っておりません。
  98. 滝井義高

    ○滝井委員 この三百七十億になる余裕金の運用の仕方というものが、この制度の安定性を確立する土に非常に大きな役割を演ずるわけです。たとえば一割でこれを運用したら三十七億にもなるわけですから、まあ一割はとてもむずかしいにしても、六分でも二十億程度のものはすぐ出てくるわけです。二十億出ればこれは大したものなんです。零細、中小企業ですから。で、これをここに書いてあるように従業員の福祉、中小企業の事業資金というようなことを中心に運用するにしても、今問題の国民年金積立金、これがピークになりますと四兆八千億円になるそうです。まあ、これは昭和九十年ですが、今から十年か十五年すると一兆たまる。そうすると、これは同じ中小企業の対象者の金なんです。国民年金は中小企業を対象とのますから。そうするとこれらの制度との間によほど資金の運用計画上、重複がないように計画しておかないと、これは後になって相当大きな問題を引き起こすと思うのです。そういう点で、こういう長期の積立金というものはそれぞれの労働省労働省、厚生省は厚生省とわが道を行くのではなくして、これらの積立金の全般的な日本経済全体、あるいは中小企業全体の大所高所からのものの考え方に立った計画というものを相互に連絡しながら立てておかないと、そのときそのとき行き当たりばったりになったら。同じような施設がAならAというところに労働省所管ででき、厚生省の所管でできる、こういう形になりかねない。それは殷鑑遠からず、すでに労災病院というものが、労災というあの事業主の出した保険料でできておる。しかしそれは、あにはからんやそこに入っておる患者さんを調べてみたら、労災の患者さんは半分以下しか入っていなかった。健康保険の患者が五割も六割も入っておった。こういうむだな制度——むだと言ったら語弊がありますが、健康保険制度でやらなければならないことを労災がおやりになっておる。失業保険でまたった金は今九百億をこえております。この失業保険の制度で作りましたものに失業保険の対象者が入っておるかというと、そうではない。全然失業保険に関係のない人がそこに入って恩典を受けておる。それならこれは国の一般会計がやるべきものなんです。必ずこの制度もそうなってくる。従って現実に労働省所管の中にそういうものは席らもあるのですから、またこれがそういうことにならないように、今から失業保険の使う施設あるいはこれの使う施設というようにやはり計画を立てて、お互いに重複しないように、まんべんなくすべての制度が、すべてのこういう制度加入しておる国民に恩典が行くというような工合にやらなければならないと思うのです。そういう点でどうも労政局長、少し研究不足ですよ。もう少し三百七十億もの金がたまるならば、その計画はこうでございますと今から出しておけば、予算折衝のときに大蔵省に負けない。予算折衝する前になってにわかに作ってやるから、大蔵省からちょっとやられてしまう。もう見ておってごらんなさい、おそらく三百七十億もたまったら、今の一億六千万も使っている事務費はお前の方の運用利子から出しなさいと言って、必ず労災のようにやられてしまう。失業保険のようにやられてしまう。労働省だけですよ、事務費を大蔵省から取り切らないのは。みんな運用の方から出しておるではないですか。だからあなたの方もそのつもりで一つ事業計画を、  ことしとは言いません。今言っても無理だから、来年くらいにはきちっとしたらどうですか。事業計画を立てられますか。冨樫政府委員 お話しのようにわれわれも今まで不十分だったと存じます。来年にはできる限り可能な計画を立てて御趣旨に沿いたいと存じております。
  99. 滝井義高

    ○滝井委員 作る施設その他についても、おそらくこういうものができるともうきまっておるのです。老人ホームを作る、いや、病院を作る、こういうことになるのですよ。そうしますと今度は厚生省の方も国民年金の病院を作る、厚生年金も病院を作る、労災保険はもちろん労災病院を作るわけでしょうが、こういうように何もかも病院か老人ホームといったような同じようなものになってしまう。だからそういう重複のないようなきちっとした科学的な、何と申しますか資金の運用計画、施設建設計画、こういうものの十年くらいを見通したものを一つ持ってもらうように希望をして、大事がいないので大事なところの質問ができないから次会に回して、一応きょうはこれで終わっておきます。
  100. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)委員長代理 午後二昨まで休憩いたします。    午後一時三十一分休憩      ————◇—————    午後二時二十九分開議
  101. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩前の質疑を続けます。大原亨君。
  102. 大原亨

    ○大原委員 前の質問と若干ダブるかもしれませんが、今日本の国内で、サービス業で百名以下、二百名以下、五十名以下、これの労働者の数は何名ですか。
  103. 冨樫総一

    冨樫政府委員 従来の百名以下の場合ですと約八百万、今度改正して二百人以内ということになりますと。プラス百二十万になります。
  104. 大原亨

    ○大原委員 その中で三十万人ほど適用されているというと。まことに少ない数ですね。大体年次的にどのくらいの見通しを持ってこれを推進することを考えているのですか。
  105. 冨樫総一

    冨樫政府委員 従来の実績等も勘案いたしまして、かつ今後は逐次脱退者も出てくることでございまするので、安全率を見たところ大体ここ数年間は二十万人ずつの増加ということを見込んでございます。
  106. 大原亨

    ○大原委員 私はこの制度については基本的に一つ問題があるわけですが、他の国では、退職共済というな退職金制度政府でやっていますか。
  107. 冨樫総一

    冨樫政府委員 寡聞ではございまするが、欧米等におきましては自前の退職金制度すらほとんどないと聞いておりますので、公的のこういう制度はまずなかろうというふうに承知しております。
  108. 大原亨

    ○大原委員 欧米のそういう先進資本主義諸国におきましては、なぜないのですか。
  109. 冨樫総一

    冨樫政府委員 なぜないかということを裏返して日本の実情から申しますれば、日本の雇用形態がいわば一種の終身雇用制度賃金が年功序列制といったような雇用形態でありますが、欧米の方はそうでなく、何と申しますか、ドライに、働いただけ賃金をもらう。従ってやめたときにどうというような考え方が基本的にないということに基づくものと考えられます。
  110. 大原亨

    ○大原委員 終身雇用制、年功序列賃金、こういうのが企業内組合とくっついておるわけですが、このことは、近代的な労使関係を発達させるのに非常に大きな問題となっておる点です。そういう観点から考えてみますと、この制度は、たとえば経営者も別の角度から取り上げているが、年功序列賃金は打破される、こういう意向が、だんだんと近代化してくると出てくる労働者の方からも出てくる。それから経営者の方からもまた別の角度から出てきておる。このことは御承知通りですね。ある意味では、その中で力関係で決定する問題を含めて、近代化の方向へいく、こういうふうに私は思うのですが、そういう年功序列賃金について、あるいは労使関係の近代化について、労働省としては一定の方針があってしかるべきじゃないか。ちょっと退職金の問題を離れますが、この点についての御見解はいかがですか。
  111. 冨樫総一

    冨樫政府委員 ただいまお話しの通り、日本の終身雇用制、あるいは年功序列賃金制というものが、近代化するに従いまして、漸次その影を薄くしていく傾向があると存じます。ただ現状におきましては、それはそれなりの条件がありまして存在するものでございますから、これをただその面だけで人為的にあるいは政策的に変えて参りますと、そこに無理が生ずるかと存じます。ただ、個々の企業におきまして、オートメーション化するに従いまして、その必要に迫られるというような場合に、この切りかえの仕方といったようなことにつきまして、何と申しますか、技術的あるいは摩擦的なむずかしさが生ずるかと考えております。そこで労働省といたしましては、そういう進歩の過程と申しますか、近代化の過程に際して、それがうまくいきまするように指導したいということで、これは私の直接の所管ではございませんが、基準局あるいは統計調査部におきまして、民間のそういう場合の事例その他を検討、分析して、民間にそれぞれ参考に供して、それが円滑に転移するようにという方向でやっておるわけでございます。
  112. 大原亨

    ○大原委員 退職金の本質、性格、こういうものについての御見解を一つお聞きしたいと思います。
  113. 冨樫総一

    冨樫政府委員 退職金の性格を一言に客観的に申し上げることはむずかしいかと存じます。これは歴史的な展と開関連して考えなければいけないと思います。その観点からいたしますれば、当初は恩恵的な性格が相当あった。しかし、漸次労使関係の近代化あるいは労務に対する報酬というものの考え方の近代化に従いまして賃金のあと払いという性格が漸次濃厚になってきておるというふうに考えられます。現に退職金に関する課税等に際しましても、過去におきまする勤続年限等をも考慮した課税の仕方をしておるというようなことは、そういうことの現われであるというふうに理解しておるわけであります。
  114. 大原亨

    ○大原委員 局長の御説明は、退職金に対する今までの経過と現状について、大体正しく把握していると思うのですが、歴史的なものが一つの体質的なものなんですから、そういう意味において理解いたしますが、退職金をこういうふうに包括的な任意的な協定で事業団を設けてやる、政府がそういう政策をとるという、これは世界でただ一つの珍しい政策です。世界ではいまだかってない空前の政策です。それだけに問題があるわけです。そこで、そういう政府規定をいたしました退職金制度以外に、実際に退職金制度で行なわれているそういうわが国における方式、やり方はどういう方向がありますか。その実態の把握の仕方、理解の仕方を一つ局長の方に伺いたい。
  115. 冨樫総一

    冨樫政府委員 公務員あるいに公共企業体等におきまする制度におきましては、公務員の恩給が最近変わりましたので何でございまするが、この公務員に準ずる公共企業体等におきましては、労使ほぼ半額の負担をするという分担関係におきましては、労働側もある程度の負担をする、そうしてそれを積み立てて年金として支給する。別に退職金制度があるわけです。民間におきましては大体退職金規定におきまして、これは小さな企業におきましては事業主の一方的制定、大きなところで組合のしっかりしているところは協定という形においてできておる。事業主全額負担か、労働側も若干負担しているかについての明確な統計的数字はございませんが、退職金に関しては多くの場合事業主負担の原則が多いかと考えております。  なお足りないところがございましたら、御質問によりましてお答えいたします。
  116. 大原亨

    ○大原委員 国家公務員やあるいは公共企業体等は、法律やその他のものに準じて退職金制度としてやっているわけですね。それから大企業等においては労働協約においてほとんどやっている。それから就職規則でやっているところはありませんか。
  117. 冨樫総一

    冨樫政府委員 少なくとも労働組合のないところにおきまする中小企業における退職金制度は、法律で十人以上のところは就業規則で明文化することが義務づけられております。
  118. 大原亨

    ○大原委員 だからあなたの御答弁で間違いな点は、しっかりした企業においては一方的に会社だけの意向できめている、こういうふうなのはないでしょう。
  119. 冨樫総一

    冨樫政府委員 先ほど申し上げましたことが正確を欠いたか存じませんが、労働組合のあるところは原則として労働協約できまっていると思います。組合のないところは協約できめようがございませんので、就業規則できまっていると思います。それから労働組合がありましても、形の上では一方的制定の就業規則名儀になっておる。これは御承知のように就業規則制定に際して労働側の意見を聞くということになっておりまするので、その意見を述べるという仕方で、実質的に組合ないしは組合員過半数の意向を反映する、こういうことになっているものと考えます。
  120. 大原亨

    ○大原委員 問題は就業規則やその他がなくて、退職金制度がない放置状態のところをここの問題として主として取り上げておる。ただし実際上やってみると、百名ないし二百名までということになれば、それは大てい就業規則は全部あるわけです。退職金制度もあるが、国が若干金を出すというからこれに便乗しょうか、こういうことです。それが私はこの退職共済の実態であると思うのですが、それは間違いないでしょうな。
  121. 冨樫総一

    冨樫政府委員 その通りでございます。
  122. 大原亨

    ○大原委員 私は労政局長もそうだと思うのだが、労働大臣は労使関係の近代化とかあるいは民主化とか、そういうことを最初から言っておられるのですが、そういう方針から考えまして、退職共済の制度はいかがな意味を持つものでしょうか。
  123. 冨樫総一

    冨樫政府委員 日本の全体の姿から申しますれば、中小零細企業も大企業並みあるいはそれに準ずる自前の退職金制度が、さらに労働組合との対等の立場においてきめられておるということが最も望ましいかと存じます。従いましてこういう制度は、こういうことに対する補完的なサービス的な制度というふうに理解しております。
  124. 大原亨

    ○大原委員 今度の改正についての逐条説明で、第十四条のところの(ハ)ですが、今までわが党の委員から質問があったと思いますので、この点もダブるかと思いますが、「前の企業を退職した理由が、自己の責に帰すべき事由または自己の都合によるものでないこと。」こういうことを適用の要件にいたしておるわけです。私はこの退職金は、今の質疑応答で明らかなように、賃金のあと払いの形である、だから原則として今の御答弁のように労使対等の原則でやるべきであって、これは制度、といたしましては国が退職共済をやるということに例外になっておる。労働協約でやることが常識になっておって、そうでない、労働組合がない場合には就業規則でやった、しかもその際には過半数以上の職場の代表者の承認を得る、こういうふうに、労働条件としてこれは法律で最低の基準をきめるか、あるいは双方の対等の意志によってきめるかという原則であるべきであります。国が補完的な立法をするときにおいても、そのことをやらないと労使の関係は近代化していかない、こういうふうに私どもは考えますと、今指摘いたしました「自己の都合によるものでないこと。」こういうことはきわめて本質的な問題だと私は思う。というのはどういう点かと申しますと、中小企業の労働者がいろいろな職場をいろいろな事情で移っていく、賃金が低い、あるいはその他の事情で移っていく。特にこれは最近激しい。そういう際に、今まで安かった賃金のあと払いとして退職金を考える際に、そういうことをやる際に、今まで勤務してかけた金というものが、大きな企業だったら一つの企業でできるが、中小企業では一つの企業でできないから、国がある程度カバーしてやるというのだが、そういうことが権利として保護されておらないと、会社の都合だけについて——自己の都合の反対は会社の都合だが、会社の都合の場合は通算する。おそらく倒産とか閉鎖とか、いろいろな場合があるでしょう、そういうことは労使関係を近代化するとか、賃金に関する憲法や基準法の考え方を否定する方向に行くのじゃないか。政府が労務対策として安い賃金で企業にくぎづけをする政策をとるなら別ですが、そういうことは近代的な労使関係を築くものではない。ますます中小企業の賃金労働条件を、エビでタイをつるように、みじめにしていくのじゃないか。そうすれば底を上げていくとか、最低賃金制とか、最近政府も言い出したけれども、そういうこととも矛盾をするのじゃないかと思うのですが、これに対していかがですか。私は、政府がやる場合において、そういう権利として保障するような措置をとるべきじゃないか。こういう意見です。
  125. 冨樫総一

    冨樫政府委員 仰せの通り、労使関係の近代化の基本原則は、労使対等の原理、労使労働条件に関する合意の原理ということにあると存じます。ただ労働組合が組織化されておらない場合に、それが完全な姿で実現しにくい。その場合の方式として、その方式に接近する方法といたしまして、基準法におきましては、組合が組織されてない場合には、従業員の意見を聞くというようなことになっております。この退職金制度におきましても、その原則にできるだけ接近するという意味合いにおきまして、この制度加入するに際しましては、従業員の意見を聞くというふうに、その原理になるべく近づこうという建前にいたしておるわけでございます。  なお、この通算制度につきましては、えらいドライな、言い方をいたしますれば、民間におきます自主的な退職制度の場合には、三菱から三井にかわるというような場合には、通算制度はないのでございます。従って、この制度におきまして、違った企業から企業にかわるという場合の通算というのは、民間の自前の退職金制度の場合には、親会社と子会社というような関係の場合は違いますけれども、私は一般的にはないかと存じます。ただ実情から見まして。この中小零細企業におきましては、一個所にとどまりにくい。倒産、その他不安のためにそういう場合が多くある。その場合に、いわゆる退職金カーブということで、勤続年限が高いものが有利な退職金を受けるという一般的な傾向をこの際にももたらしてやろうという、実情に沿うた民間の自主的制度プラスの意味合いにおいて、こういうことができておる。ただその場合も、国の制度といたしまして、中小企業におきます従業員の定着、雇用の安定ということで、自己都合の場合は、その際通算の関係から排除する。こういうことになっているわけでございます。
  126. 大原亨

    ○大原委員 私が言っているのは、そういう制度は、歴史的にも日本においてはだれが始めたかちょっと知りませんが、この法律ができているわけだが、世界でまれな制度である。こういう恩恵的な退職金制度は世界でまれな、希有の制度である。この中で、私どもは、運営いかんによっては企業内に低賃金でくぎづけにするという使命を果たすことになる。だから運営いかんによっては労使の近代化という原則に反するという面が出てくる。しかしながら、これをやる条件を考えていけば近代化することもできる。今まで私が御質問したことに対してお答えになったが、恩恵的なものから賃金のあと払い、労働協約やその他によって、退職金は権利の保障という、日本においても、そういうふうになりつつあるし、政府の課税方式においてもそういうふうになっておる。だから、政府はしばしば言っているのだが、石田労政は労働力の流動性ということも言っている。私はそういう面から考えてみても、自分が選んだ職で、中小企業はなかなか安定しがたいような、自分の終身の生活と自分の家族の家庭をも含めて委託するには足りないようなやむを得ない条件がたくさんある。だから、その際に職をかわっていった場合に、その人の勤続が、労働に従事したということで、労働の社会的な意味から考えて、これは権利として通算ができるようにすべきではないか。それがやはり労使関係を近代化したり、あるいは中小企業を、ひいては経営を近代化したりする、あるいは格差を是正していく、最低賃金制を確立していくという、こういう均衡化の一つの社会運動に、そういう動向にマッチするのじゃないか。従って、私はそういうふうに退職金の本質から考えてみましても、果たすべき機能から考えてみましても、頭からこれは絶対反対というのではないが、権利として保障するためには、今申し上げたように、会社の都合、企業の都合によってやめた場合だけに通算を許すというのではなくて、自己の都合によったものであっても、これは通算ができるような権利、新しいところによりよい退職金制度があれば、そのときにはそれでピリオドを打って一時金をとることもあるだろう。そういうことが筋が通っているのじゃないか、少なくとも最低そのくらいは筋を通さないと、せっかくの、二十世紀の後半において、社会党も加わって審議をしておるということになりまして、私は国際的に見ましても、やはり恥ずかしいような気もするわけだ。ですから、その点について、重ねて私はどういう感覚を持っておられるかということをテストすることにもなりますから、これを削除いたしまして、そうして百歩譲って自己の責に帰すべき事由というのだけは存置するといたしましても、後半については削除すべきではないか、これはお互い審議を通じて話し合いで政治が前進をしていくということではないか、こういうふうに思いますが、これは次官から大所高所から御答弁をいただきたい。とっぴな質問をするわけではないので、今までずっと積み重ねて参りまして、この一点だけ私はきょうは御質問しょうと思っておりますが、次官に高邁なところで、しかも大所高所から御答弁をいただきまして、審議が渋滞をしないようににお計らいをいただきたい。
  127. 柴田栄

    ○柴田(栄)政府委員 まことに大へんな責任ある答弁を求められまして、私も非常に考えさせられるわけでございますが、お話の御趣旨に関しましては、私も十分そういうことも考えられると思います。ただ現段階におきまして、しかもその他の労働条件を改善し、緩和して、なるべく中小企業においても安定した雇用の状態を実現いたしたいという半面もあるかと存じますので、先刻五島先生からの御質問もございまして、自己の都合といいますか、責任ということじゃなく、都合ということで、転職のために退職をされるという場合にでも、条件その他のために、実はやむを得ない事情が内面にあらたというような場合も考えられると思われますので、それらの点に関しましては、何らかの妥当な救済の方法が検討されなければならぬというふうには考えておりますが、形式といたしまして、現在の趣旨からいたしますと、こういう程度で進めさしていただきつつ、御趣旨の方向の検討を至急進めさしていただくということで御了承いただきたいというふうに考えております。
  128. 大原亨

    ○大原委員 今長い答弁をいただきましたが、簡単に言うと、趣旨には賛成だが現在の段階では実行できぬ、こういう答弁であります。これは趣旨がわかっていただいたのだから、あと論議を進め、あるいはいろいろな話し合いを進めていく中で、この点についての話し合いの余地は十分ある。今までの適用状況を見てみますと、三十万人ほど適用して、今度は大体一年間に二十万人ずつふやしていこう、こういう法律改正以後の御予定でありますが、しかしながら労政局長の前の御答弁でもはっきりしておるように、百人以下が八百万人もおって——八、九百万人ということだから百万人ほどの差があるわけで、そういういいかげんな答弁をされたのですが、二百人以下になりましても九百二十万人と最小限度見積もっておるというそういうところから、税金を使う使い方といたしましても、やはり共済法ですから労働者保護をやって——労働者保護が中小企業の一つの大きな経営改善のために役立つ、こういう労働省の本質からいいましても、そういう零細なところを底を上げていくという性質からいきましても、大体税金の使い方というものから考えてみて普遍性がない、一般性がない。これを権利として保障し、政府がそれに対しまして助成をするということになれば、弊害がなくなった上に適用状況がよくなる、こういうふうに思うのです。この前のときにもずいぶん論議をいたしましたが、若干年数を短縮いたしましても、中途半ぱでかけ捨てになる可能性があり得る。この点は一つこの法律案が通過するまでに、労働省において十分御検討いただきまして、そうして審議を通じてよりよいものにしていく。これは私が調べた例の中では、ほんとうに世界でただ一つの例であります。日本のこの制度以外にはない。これはほんとうに珍しい世界でただ一つ制度です。そういう点からいいましても、中身をよりよくしていくということとに努力してこそ、初めてその一つの存在が光るのじゃないか。この点については、法律案が通るまでに与野党、政府をまじえまして話し合いをする、そういうことを強く要望いたしまして、私のこの項目に対する質問を終わりたいと思います。
  129. 齋藤邦吉

    ○齋藤委員長代理 小林進君。
  130. 小林進

    小林(進)委員 中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案は、中小企業退職金共済審議会から答申があって、その答申に基づいてこの改正案をお作りになると同時に、大蔵省と折衝をされて国会提出をされた、こういう順序のように承っておるのでございますが、一体中小企業共済審議会の答申と、今ここに改正をされました案との間に違いがございますか。
  131. 冨樫総一

    冨樫政府委員 今回改正された点に関する限りは答申通りでございます。ただ答申のうち実現されなかった点が二点ございます。一点は、事業団の事務費につきまして年々国から補助金を出すことになっておりますが、そういうことのないように、一町に出資金を出して、それによって事務費をまかなうべしという点であります。それから、たとえば二百人から三百人に企業規模がふえた場合も、従来と同じ継続した取り扱いができないか。この二点が今回実現されなかったところでございます。
  132. 小林進

    小林(進)委員 その実現されない点は、今初めて私はお伺いいたしまして非常に参考になったのでございますが、その他の点は全部審議会の答申通りということになりますと、私どもにとりましてはその、審議会の性格あるいはメンバーの構成等がこの際非常に気になるのでございまして、一つここでその審議会のメンバーの構成について詳しくお聞かせを願いたいと思うわけでございます。
  133. 冨樫総一

    冨樫政府委員 メンバーは労使代表及び学識経験者からなる十五人でありまして、東京商工会議所中小企業委員長石田謙一郎氏、全国中小企業団体中央会専務理事稲川宮雄氏。井堀繁雄氏が議員に当選されましたので最近辞任されまして、これが欠員になっております。それから政治経済研究所顧問岡田一郎氏、新産別書記長落合英一氏、日経連事務局長後藤洛氏、大阪市大教授近藤文二氏、大阪商工会議所専務理事里井達三良氏、早稲田大学教授末高信氏、日銀調査局長高木良一氏、日本中小企業団体連盟専務理事永井保氏、全日本労働組合会議議長浜野数氏、東洋経済新報社編集局長原田運治氏、日本フェビアン研究所員安井二郎氏、総評常任幹事柳木美雄氏、以上でございます。
  134. 小林進

    小林(進)委員 今十五名のお名前をお聞きいたしましたが、労使代表、学識代表の中の比率はどんなになっていますか。
  135. 冨樫総一

    冨樫政府委員 井堀さんとフェビアン協会研究所員安井氏を含めて労働側五人、五・五・五という見当でございます。
  136. 小林進

    小林(進)委員 井堀さんも労働者の中に加えられれば、辛うじて労働代表が五名という数字になるというお言葉でございますが、私どもが実はこういう質問を申し上げるのは、この法案が三十四年の三十一通常国会提出せられてから、審議の過程においては公聴会も開いて、私ども社会党の立場でいろいろ疑点を提出しながら御質問を申し上げました。ついてはわれわれの希望も申し上げたのでございますけれども、残念ながらこのたびでき上がって参りました改正案には、われわれ労働者側の立場からお願いした意見が一つも含まれていないのであります。と言うのは過言かもしれませんけれども、非常に含まれていない。そうしてこのたびの改正が先ほどからの討論の通り、零細企業者やあるいは五人未満のそういう厚生年金からもはみ出されているような方々を置き去りにして、むしろ地方における事業家やあるいは生産業者や卸業者一般国民からながめれば、まことに想像もつかないような大企業家、五十人までとかあるいは二百人までというふうな拡大の方向にこれが進んでいる。われわれの立場から言わせればこれは改正じゃなくて改悪の方向、こういう方向へ進んでいるということはいかにも残念にたえないわけであります。審議会のメンバーをお聞きいたしましたが、一体この審議会における労働省に対する答申は全会一致であったのか、あるいは少数意見も付帯されていたのか、いま一回この点を一つお聞かせを願いたいと思います。
  137. 冨樫総一

    冨樫政府委員 今回の答申は全会一致の答申でございます。
  138. 小林進

    小林(進)委員 まことに残念しごくであります。それでは一つ徐々にお聞かせを願いたいと思うのでございますが、三十六年の一月末日までに、いただいた資料によりますと、企業数が二万二千六百九十七で、従業員が三十七万八千百二十三人という御報告を受けておるのでございます。これはもちろん百人以下、三十人以下の事業体でございますが、これは百人以下、三十人以下の総事業体の事業数及び人数において一体何%に出たっているか、その比率を一つお聞かせを願いたいと思います。
  139. 冨樫総一

    冨樫政府委員 自前の退職金制度を持っているものを除きまして、加入率は事業所において一・七%、従業員数におきまして四・五六%ということでございます。
  140. 小林進

    小林(進)委員 自前で持っている事業所と人数はどれくらいでございますか。
  141. 冨樫総一

    冨樫政府委員 自前のものを全部含めた百人以下全体に対する加入率を申し上げます。事業所におきまして一・五八%、従業数におきまして三・五四%、この差がすなわち自前のものということになるわけです。
  142. 小林進

    小林(進)委員 今政府の方では、中小企業の退職金公済法とは違いますが、例のわれわれが非常に反対をいたしました最低賃金法業者間協定でございますが、これに対しては現在、何パーセントか比率は忘れましたけれども、試験中である、これは労働大臣の主張でございます。あなたは担当は違いますが、政務次官がいらっしゃいます。われわれは非常に今も反対しているけれども、テスト中でございます。できたばかりの法律でございますから、そう反対をせられないでいま少し日にちをかしてもらいたい。少なくともこれから三年計画ですかで、この業者間協定の労働賃金を二百五十万の労働者に適用してみたという計画でやっているからと、こういうことを言われておる。一方では、同じ時期にでき上がった法律に対して同じ労働省がわれわれの要求をはねつけて、テスト・ケースだからこのまま二年半をやらしておいてもらいたい。片方の方では、まだ三年もたたないうち、あなたのお話では事業所においてわずか一・五八%、従業員数においてわずか三・五%、実にこれは氷山の一角と言ってもよろしいような、わずかにスタートの緒についたばかりなのです。それをしもテスト・ケースと言わないで直ちにこういう改正案を国会提出せられることは、同じ省の同じ法律運用行政の仕方としては二律背反だ。実に矛盾もはなはだしいと、言わなければならぬ。一体どういう根拠があるのか。最賃法と中小企業退職金法に対するこの異なった基本的な態度のあり方は一体どういう理由か、承っておきたいと思うのであります。これは一部門を担当しておる局長のよく答弁し得るところではござません。政務次官か、政務次官がわからないならば大臣をもって答弁せしめられてもけっこうでございます。柴田(栄)政府委員 最低賃金法の建前に関しましては、最低賃金法案の審議過程におきましても、その主張において社会党側の御主張とは大へん異なったわけでございますが、一応私どもといたしましては現実に合わせて、特に非常に地域的にも業種別にも格差の多い最低賃金法を実情に合わせて実施し、なるべく早い機会に社会党の御主張の方向に促進いたしたいという考えで、着々と申し上げるとおしかりを受けるかもしれませんが、極力皆様の御主張に近づけて、全国一律に最低賃金が制定される実情に持って参りたいということで、現在ほぼ計画の通り進んでおるという建前で、ただいまこれを修正するという考えは持っておらないのございます。  一方、共済制度に関しましては、もとよりまだ緒につきかけた程度でございまするが、その間におきまして、実施上、審議会におきまする審議の経過からいたしまして、一致して、これを改正いたすことによって一そう実情に沿って促進できるという建前から改正を企図いたした次第でございまするので、御指摘ではございまするが、私どもといたしましては、両方直さなければ平仄が合わないのだというふうには実は考えておらない次第でございまして、ぜひこれを総合いたして、よりよい中小企業に対する労働者の環境改善をいたして参りたいという考え方でございます。
  143. 小林進

    小林(進)委員 どうも次官の御答弁では、残念ながら了承をするわけには参りません。これはまた、あらためて一つ大臣に、お見えになったときにもう一度質問をさしていただくことにいたします。  この制度は、三十四年の何月でございましたか、実施になりましたのは。
  144. 冨樫総一

    冨樫政府委員 三十四年十一月からでございます。
  145. 小林進

    小林(進)委員 三十四年の五月に国会を通過いたしまして、十一月から実施をせられたわけでございまするが、それが今日に至るまで、まさに人員において三・五四%しかこの制度加入をしていないわけです。三・五%です。百分の三・五%です。それくらいの過程の中において、一体この法律が、ほんとうに中小企業者の、いわゆる労働者生活の安定と企業のいわゆる増進ですか、高進ですか、振興ですか、この法律の目的とする方向にこれが効果があるかないかなどということは、私はこれだけの実施率ではそれは判断することができないと言わなくちゃならぬと思う。どうして一体、これほどのわずかなもの——事業所においては、あなたのおっしゃるように、わずか一・五八ですよ。百分の一・五ですよ。百分の一ですよ。それくらいのわずかなもので、この法律を実施して、一体、ここに効果があり、ここに欠点があり、ここに長所があるというような、これが判断の資料になるとお考えになりますかどうか、一つ私はお伺いをいたしたい。
  146. 冨樫総一

    冨樫政府委員 御承知のように、中小零細企業が日本全国にきわめて広範な分野に、厚い層として存在しておるのでございます。従いまして、これらの御主人方はいろいろ忙しい。営業のこともやれば、金融のこともやる。自分が職工長にもなり、お客の相手もする、税金のことも心配するというようなことで、なかなかこういう制度に、自前で作ることはもちろんのこと、銀行に行けばすぐ手続ができることもついおっくうになりがちであるというのが実情だと存じます。われわれとしても、といってこれを強制加入、機械的に加入させるということも、事柄の性質上いかがかと考えるわけであります。従いまして、一・五八%というような点を強調いただきますと、確かに事実でありまするけれども、こういう事業主の皆さんの御理解をいただいて自主的に加入していただいているこれまでの実績は、さしてわれわれの怠慢あるいは制度がおかしいということに帰着すべきものではなかろうと考えます。従来何もなかったところに加入したこれら三十万近い従業員にとりましては、それ自体相当福音であることは否定し得ないところであると考えております。
  147. 小林進

    小林(進)委員 局長、ひがんじゃいけませんよ。私は加入者が少ないからあなたたちの勧誘の仕方が怠慢であるとか、あるいはこの法律がおかしいとかということは、一言半句も言っているのではないのです。私が質問をするねらいは、それは、ほんとうのこの法律を作った、われわれが中心にねらっている業者を、ピントをはずれて、その上における、上層部の方へだけ中心が置かれてしまって、法律の本来のねらいが置き去りにされていくのではないかということを懸念するために、その立場から私は質問しているのです。いいですか、もう一度繰り返して申し上げますが、今の事業所における加入人員の平均は何人ですか。
  148. 冨樫総一

    冨樫政府委員 先ほどもお答えいたしましたが、十一コンマ幾ら、約十二人でございます。
  149. 小林進

    小林(進)委員 ここにもありまするように、二・八ですね。加入事業所の規模は平均して一一・八人です。一一・八人ということは、これは生産事業所と卸、サービス業も含まっての平均だと思いまするので、これを細分いたしまして、いわゆる製造業の加入事業所の数と平均人員、それから卸、サービス業の加入数と平均人員、分けてお聞かせを願いたい。
  150. 冨樫総一

    冨樫政府委員 製造業におきまする規模別の加入状況を申し上げますと、一人から四人までは一八%、五人から九人まで二三%、十人から十九人まで二六%、それから二十人から三十人まで一四%、三十一人から四十九人まで一一%、五十人から百人まで七%。  次に、商業、サービス業について申し上げます。一人から四人まで四五%、それから五人から九人まで三〇%、十人から十九人まで二〇%、二十人から三十人まで五%。  以上でございます。
  151. 小林進

    小林(進)委員 私は、今の数字を承りまして、いささか愉快になったのですが、これをお聞きしていると、私どもが心配している、特に一人から五人未満の厚生年金も強制的にかからないような——これは商業、サービス業ですが、そういうところで約四五%、半分近く入っている。事業所にすれば、五人から九人まで三〇%、合わせて七五%がこの中に含まれているということは、われわれの懸念している点が杞憂にすぎなかったということで、これは非常にわが意を得たりという感じな受けるのでございます。なおかつまた、この製造業の方におきましても、五十人から百人までの方がわずか七%ということで、もちろんこれは人員は多くありましょう、数が多いのですから、人員は多いでしょうが、事業所の数においては少ないということで、これもねらいとするところをはずれていないという感を深うするわけです。このままの形をいま少し熱意を入れて、これを一つ徹底的にやっていただいた方が、この法律の立法の趣旨から見て非常にいいのではないか。今改正をせられて、今度は二百大まで拡大せられ、五十人まで拡大せられたら、これに加入する人員の点においては、おそらく今の三十万足らずの数が百万になり、百五十万になり、立ちどころにふえていくだろうと思う。ふえていくだろうと思いますが、しかしその内容たるや、今日ここで報告を受けたものと全く変わったものになるのではないか。私はこの点を非常に懸念をするわけですが、局長いかがでございますか。
  152. 冨樫総一

    冨樫政府委員 百人から二百人に拡大した分野でどのような加入が実現するか、今特段の見込み数を立てることはできませんが、大きな傾向といたしましては、今の百人から二百人の分野においては四七%が自前の退職金規定を持っておる。従いまして、自前の退職金を持っていない領域のパーセンテージは、それより小規模の企業よりも狭いわけでございますから、加入事業所加入率におきましてはそう大きくならぬと思います。
  153. 小林進

    小林(進)委員 百人から二百人に至る聖業所において四七%のものが自前を持っているとおっしゃれば、持っていないものは五三%という勘定になります。これは子供の計算でもわかるわけです。この五三%のものを加入せしめ、五%なり一〇%なりの国費を費やすことによってこっちの百人以下、三十人以下はどうかといえば、先ほどから繰り返し申し上げますように、一・五八%ですから、そうするとこちらの方は事業所において九八・何%、人数においては九六・何%が全部未加入です。その九五%以上の、未加入の零細なる企業者の方をもっと加入せしめる方向にこの法律を動かしていくのが、この立法の趣旨からいって、私は建前じゃないかと思う。まずその百人以上の五三%の未加入の諸君をこれに加えて、いたずらに人員を多くして国家の補助金をふやしていくよりも、この九十何%の、地の最も底にいる層にもっと重点を指向するのがほんとうじゃないかというのが私の質問の趣旨なんです。いかがでございますか。
  154. 冨樫総一

    冨樫政府委員 御趣旨としてはわれわれも全く同じように考えます。従いまして、今後といえども加入に関する理解を進め勧奨するという対象は、むろん従来以上に中小零細の分野に力を入れて参りたいと考えております。ただ今回二百人にいたしましたのは、先ほど申し上げましたような満場一致の審議会の答申もあり、かつ自前のものが多いと申しましてもまだ過半数に及ばない。そこにともかく制度として門戸を開いたらどうであるかという答申でございましたので、そのように門戸を開放したわけで、加入していただく分野に対するわれわれのPRその他は主として零細企業に力点を置きたいと考えておるわけであります。御趣旨は全く同感でございます。
  155. 小林進

    小林(進)委員 私は審議会の中に労働代表も入って満場一致できめられたという点が、どうも納得ができないのであります。やはりこの法律をテスト的に政府がお作りになって、そして実施せられている状況をながめて、これはいいものだ——なるほど政府の金をちょうだいして、補助金をもらって共済資金制度を設けていくために、労働行政の上からも労働管理の上からも、あるいは中小企業者というよりも小の抜けた中層の企業者のためにこれは非常に利益になる、こういう判断に立って、より大きな大企業家の方が、主として経営者の方から希望を入れて割り込んできたものと、私はそう判断している。大体パチンコ屋を見なさい。パチンコ屋というものは今から十年ばかり前は零細企業で、子供相手のパチン、パチンという商売だったが、こいつがもうかるなというときには、大資本の力がぐんぐん力を入れてきて、もはや中小企業なんていうものが経営している五台や十台のパチンコ屋というものは、いなかのさびれたところに追いやられて、パチンコ屋といえば中以上の資本の投資の対象になっておって——さっきの大原君の質問じゃないけれども、世界で初めての案だと局長は言われたが、種々の欠陥を持ちながらも、作ってみたら案外経営者の方に都合がいい、経営者の側にうまみがあるから、こればやはりわれわれの方でこれを活用しなければならないというところで、零細なる経営者だけに与えられる恩典のところへ中の階級が割り込んできた。このままでいったならば来年か再来年には三百人までの業者もこの中小企業の仲間に入れてくれ、あるいは五十人の方はきっと七十人まで幅を上げてくれという要求が出てくるのではないか、私はそういう感じがする。もうかればだんだん味のあるところに力のあるものが加わってくる。百人以下のものよりも二百人以下の大製造業者の方が力があるにきまっている。押し込んできて、政府の補助してくれるうまみのあるところをしぼり取ろう、こういう意図を私はこの法律の中に感知するのです。私のにおいのかぎ方が間違っているかどうか知りませんが、私はそれを非常におそれる。百人以上の業者なんていうものは労働組合を作ることもできる、何も組合までも五%や一〇%の補助金をつけてやる必要はない、これは私の基本的な考え方でありますが、どうですか。百人以上に広げたというねらいは、こういう百人以上の企業者がうまみを求めて割り込んできたのではないか、そういう要望によって労働省審議会も動かされたのではないかという私の考え方に対する御所見を承りたいと思うのでございます。
  156. 冨樫総一

    冨樫政府委員 私どもといたしましては、特にそういうふうに勘ぐるようなこともいたしておりません。すなおに二百人以内のところで退職金制度を持っていないところに、こういう退職金を持っていただけるように範囲を広げた。この答申にある改正点の大部分は短期勤続者に対する給付の改善でございまして、この短期勤続者の給付改善の恩恵は、常識的に見て小零細企業の方に及ぶことは申すまでもないことでありまして、そういう中小企業の中の金持の方にサービスをするといったような考えは毛頭ございません。
  157. 小林進

    小林(進)委員 ものの考え方ですが、百人以上三百人までの製造業者や三十人以上五十人までの商業やサービス業者に国の資金を五%なり一〇%なり補助をしてあげて、そこの人たちの退職金、将来を擁護することが、所得格差が激しくて二重構造といわれるものを是正するために、これがいいか。やはり従来通り百人以下、三十人以下の底の方々に五%、一〇%の比率を上げて、一〇%なり二〇%にして国費の補助金を濃厚にしてこれを救済した方が、二重構造を直し国の経済を健全ならしめるためにいいか、どっちの方がいいか。比較対照をして私は局長の御意見を承りたいと思う。
  158. 冨樫総一

    冨樫政府委員 いつもわれわれが中小企業ということで線を引き、概念づけるときに困るのでありますが、業種によりましては百人なら百人が適正規模としての企業がある。あるいは元来大企業性の業種を小企業でやっているというような場合もある。パチンコ屋なんか確かに五十人——私は昔ちょっと行ったことがありますが、最近のパチンコ屋はあまり存じませんけれども、そういう傾向があるだろうと存じます。従いまして、そういうものを業種別にこまかく、大企業性のうちにおける中小企業、小企業性のうちの業種における中小零細企業というふうに細分していきますれば、先生のおっしゃる方向に確かに接近する方法だと思います私どもも今後それは検討事項に入れたいと存じます。  なお適用事業場のうちで大中小に国の補助金の格差をつけてはどうかということにつきましては、先ほど滝井先生からも検討すべしという御指摘をいただきました。われわれもきょう初めて承りましたので、直ちに右左の感じは申し上げかねますけれども、今後十分に検討してみたいと考えております。
  159. 小林進

    小林(進)委員 先ほどの滝井委員質問は、十人以下の零細企業の退職金には比率を高めたらどうか、格差を設けたらどうかという趣旨の質問でしたが、私のはそうじゃないのでありまして、私はあくまでも、二百人と五十人というのは今のところはどうも少し早過ぎるのではないか。それよりは百人までと三十人までをいま少し加入せしめる方向にこの法律をフルに活用すべきではないか、こういうことで御質問を申し上げているのでございます。ましてそれは百人以上二百人以下、三十人以上五十人以下の方々にこういう五%、一〇%の補助金をつけるだけの国の金にゆとりがあるならば、その金は三十人以下、百人以下の零細なる企業にそれを回して、もっと比率を高めるべきではないかというのが私の質問の趣旨なのでございます。それに対して労政局長は、人数や人員によって規模の大小は論ぜられないから、百人必ずしも優秀ならず、三百人必ずしもすぐれたりという議論は成り立たないという議論でございましたが、この答弁ではちょうだいできない。そういうごまかしの答弁、そういう一般論をもって私の質問をごまかされることは困ります。いま一度、同じ国費として出す五十億なら五十億の金ならば、二重構造の底にある方向に原案通りもっと比率よく流した方が、濃く流した方が日本の経済を平均化し、労働者賃金平均化していく上にむしろ効率があるのじゃないかというのが私の質問であります。私は何も人数によって企業の大小をあなたからお聞きしょというのではない。一応労働省がこの数字をおきめになった以上は、そういうことも勘案しておきめになったのですから、あなたの御議論からいえば、最初から百名とか三十名で線を引く必要はないのであって、企業の実態に基づいていかなければならないという勘定になるわけでありますが、ごまかしのないところを一つ承りたい。
  160. 冨樫総一

    冨樫政府委員 ごまかしたつもりじゃないので、われわれもいろいろ苦心しておるというところを申し上げたつもりなのでございますが、御趣旨としてはごもっともでございます。今回の改正も、重ねて申し上げるようでございまするが、短期給付の改善ということにつきましては、共済審議会の方々も、よく大蔵省にのませたなとおっしゃっていたくらいでございます。そういう余裕があるのでこうなったというわけでもございません。ただ範囲拡大につきましては確かにそういう感覚が出ていることもわれわれ無理からぬところと考えまするが、今回のところただいま申しましたように、制度といたしまして自前の制度が過半数に及んでおらない。そうしてまあ企業者代表の方が強く言ったかどうか存じませんが、満場一致で可決されたものでございまするので、今回のところはこれを尊重申し上げようということでございます。おそらく良識のある退職金審議会は、今後味をしめてどんどこ規模を拡大するということはなかろうかと考えます。
  161. 小林進

    小林(進)委員 良識のある審議会のメンバーに対比いたしまして、良識のない私が質問に立って、まことにこれは申しわけございません。御趣旨のほどはよく了承いたしまして、私も一つできるだけ審議会のメンバーのごとく良識をかね備えたいと思います。この点は御注意いただきましてまことにありがとうございました。  それはそれといたしましても、あなたはここで将来またこの五十人と二百人を拡大することがないという審議会メンバーの良識を、これは責任を持ってここで御言明、御返答なさいまするか。
  162. 冨樫総一

    冨樫政府委員 今後予想できない異常なる事態の変化がない限り、私はさよう確信いたします。
  163. 小林進

    小林(進)委員 あなたの先ほどの審議会の答申の中で、二つだけ用いられないのがあったというその中の一つに、二百人の企業体を、三百人に至るまでをやはりこの法律の中に含めてくれるようにという答申案があったというふうな御回答があったと思いまするが、あれは私の聞き違いでございまするか、いま一度お聞かせを願いたい。
  164. 冨樫総一

    冨樫政府委員 その通りでございまして、答申には二百人以上、この法律でいう中小企業でなくなった場合、つまり規模が拡大した場合も引き続き本制度の適用を受けて、今言った国庫補助とか何とかいうものの適用を受けさしめようということでございましたけれども、それはただいま先生の申された御趣旨に沿うて、三百人以上に出世したものまでこの適用を受けて、何と申しますかそういう恩典を付加するということはいかがかというので、これは今回の改正に入れないことといたしたわけでございます。
  165. 小林進

    小林(進)委員 入れないことにしたのは労働省の原案でございましょう。三百人に至るまでの企業体が三百人以上オーバーした場合にもこの恩典に浴せしむべしといったのがいわゆる審議会の答申の内容でございましょう。
  166. 冨樫総一

    冨樫政府委員 内幕を申すようでございますが、率直に申しまして、企業規模を二百人にするということがもし実現できない場合には、せめて百人をこえた場合には継続して恩典を付与せよという実質的な主張がございまして、企業規模の拡大が実現すればこっちはいい。それから企業規模の拡大がむずかしければこっちの方で継続恩典という意味合いが、実質的にわれわれに理解されておりました。それから今言った先生の感覚とあわせまして、二百人拡大が実現いたしましたので、他の方の実現は差し控えたというのが率直なる、実際の経緯でございます。
  167. 小林進

    小林(進)委員 そこまでお話し下されば、これ以上食い下がらずにほこをおさめてもよろしゅうございますが、しかし実際のことを言うとあなたは、この審議会の良識ある方々は、三百人以上にこの規模を拡大するようなことはまずなさらぬものだということをおっしゃった。その言葉の裏に、やはり一つの条件がそろえば、すでに今保護を受けている事業がそのまま伸びていくならば、二百人以上でも恩典に浴せしめていいというようなことが、事実上話し合いになったとしているならば、実に衣のそでからよろいが見えたようなもで、絶対に二百人以上に拡大するなどというようなことはないという確信ある御答弁は、私はできないのではないかというふうにも考えられるのでございますが、ここであなたと論争したところで、ますます常識がないといってひやかされる程度になりましょうから、これはこのくらいにいたしておきます。ただしかし、私はこの点は了承はいたしません。まだ九八%以上も未解決のままに残されていて、わずか一%程度加入を見ただけのこの法律の進展状況の中で、もうこうやって規模を拡大して、そして五〇%そこそこの百人以上のいわゆる加入者のためにこの法律を拡大していくなどという考え方は、何といっても私は了承できませんが、立法の趣旨や改正の趣旨も明らかになりましたから、これを一つプラスの面として、私はあなたに対する質問のほこは、この程度でここだけはおさめておきます。しかしまたあらためて大胆に一つお伺いしなければならぬと思います。  次に一つお伺いしたいと思うのは、一体中小企業の従業員平均在職年数というものはどのくらいでございますか。
  168. 冨樫総一

    冨樫政府委員 四年一カ月だったと記憶しております。
  169. 小林進

    小林(進)委員 その四年一カ月という年数は、どこでおやりになった調査でございましょう。
  170. 冨樫総一

    冨樫政府委員 昭和三十四年労働省の統計調査部の賃金構造基本調査、この中の調査項目に出ておるわけであります。
  171. 小林進

    小林(進)委員 私ども中小企業退職金共済法審議をいたしました三十四年三月の国会の討論のときにおけるこの資料には、二・三年という数字と四・三年という数字と二つ掲げてあるのでございます。当時の論議の中には四・一年という数字は出て参りませんが、これはいつごろからその数字をお持ちになったのですか、お聞かせを願いたいと思うのであります。
  172. 冨樫総一

    冨樫政府委員 この前の法案審議のときの基礎になった調査は、個人別賃金調査という別の統計でございますのみならず、特に昭和二十九年の調査でございます。先ほど申し上げましたのは、法制定当時の三十四年の統計で申し上げたわけであります。
  173. 小林進

    小林(進)委員 その後の従業員平均在職年数の統計的なものがおありになりますか。
  174. 冨樫総一

    冨樫政府委員 最新の統計としては三十四年の調査でございますが、ただいま申し上げました点、いずれあとで整理いたしまして詳細に先生に申し上げたいと存じます。
  175. 小林進

    小林(進)委員 先ほどからお尋ねしておるように、わずか一%か三%程度加入しかないのでありますから、中小企業の職場に働いておる労働者諸君の内容、質的な変化をこれによって察知することはやや困難とは存じますが、こういう法律ができたからには、やはりこの法律を通じて、どういうふうにその動態が変わっていくかということは調査をしていただかなければならないと思うのであります。先ほどから申し上げておるように、まだこういう短時日でこういうわずかな実績だけでは確かに困難だと思うのでありますが、しかしその中でも、この法律を作ったがゆえに、中小企業の経営あるいは労働者の動態の中にこういう違いがあるという何かお気づきの点でもありましたら、お聞かせ願いたいと思うのであります。
  176. 冨樫総一

    冨樫政府委員 これも先ほど滝井先生に申し上げたのでありますが、滝井先生のお説の通り、近年零細企業におきまして、退職金のみならず一般的な労働条件の改善意欲あるいは客観的にそうせざるを得ない条件などもからみまして、何も本制度だけのために顕著な改善が行なわれたということは申し上げかねるかと存じますが、この制度との関連における数字といたしましては、制度ができた当時の予想退職率が一年間に一八%であり、本制度加入者の実際の脱退率が九%弱、もちろん脱退届のしていないものが相当あると思いますけれども、まずそれで、若干最近他の労働条件の改善と相待って定着率がやや改善されておる。そのほか、われわれの気づきで申し上げますと、こういう制度が制定される過程におきまして、県の労政事務所の人たちと中小企業の御主人方との接触が一段と濃厚となりまして、いろいろ労務管理の近代化等のお話につきまして、意思の疎通なり何なりができるという全体としての労政行政の前進に役立っておるというようなことも聞いておる次第でございます。
  177. 小林進

    小林(進)委員 私どもはこの法案を審議する過程において、五人未満だとかあるいはそれに近い零細なる事業主というものは、社会保障というか、年金退職金と二重加入をしなければならないというところで、非常に負担にたえかねる。負担にたえかねるところから、一方に入ると一方をおろそかにする、こういうことが現われてくるのではないかということを非常に懸念をしておったわけですが、そういう傾向が現われているかいないか、お気づきの点があったら、一つお聞かせを願いたいと思うのであります。
  178. 冨樫総一

    冨樫政府委員 的確な何はございませんが、実際問題として、そのためにどうということを特に感ずるようなことはございませんです。
  179. 小林進

    小林(進)委員 それではお尋ねをいたしますが、この法律には労働者の意思というものが反映いたしておりませんね。反映いたしておりますか。
  180. 冨樫総一

    冨樫政府委員 法律上、加入に際して、従業員の意見を聞くことになっております。
  181. 小林進

    小林(進)委員 聞くことになっておりますが、それに反対をした場合にはどうなりますか。
  182. 冨樫総一

    冨樫政府委員 まず事業主がこの制度加入したいということでございますから、そうして多くの場合労働組合もないところなので、今までのところでは、従業員はまず例外なく一つよろしくお願いしますということのように聞いております。法律上は、いや入らないというても無理々々に事業主が入った場合にどうということはございませんけれども事業主従業員の気分に反してまでわざわざ掛金をかけてやるということはないでしょうから、今までのところは、まず円満にいっているという感じでございます。
  183. 小林進

    小林(進)委員 まず円満にいっているというお話でございましたが、先ほどからお尋ねしましたように、事業主は二重の負担にたえかねて、いずれか一方を放棄したり、あるいは一つを粗末にするのではないかという懸念と同様に、この労働者の意思が明らかに反映するという規定がございませんから、今お話しの通り、これから一つ中小企業の退職金共済法に入る、こういうような話を一方的な宣言の形でやって、組合のない零細企業ですから、労働者はいやであるとは言えないだろうから入る。入ることによって労働基準法の違反が行なわれる。まあ入っておいたから、君の退職金のために、私は毎月三日か四口ずつ積み立てをしてやるんだから、それだけ君は忠誠を誓って一生懸命働いてもらわなければならないという形で、労働強制が行なわれるとか、あるいはまた、労働者のその他の権利や福祉が薄められる。剥奪とまでは言いませんけれども、薄められるというような懸念が生ずるのではないかということも、われわれが非常におそれていた点でございますが、この点、実際の面においてそういうおそれがなかったかどうか。局長、私どもの方は一つあるんですよ。証拠を持っているのですから、間違いのない御返答をいただきたいと思うのであります。
  184. 冨樫総一

    冨樫政府委員 もともとこれは事業主が、従業員が従来よりもより満足して企業に安定して働いていただきたいという趣旨に出ているわけでございますから、われわれの知っている限り、報告を受けている限度においてはそういうことはございません。しかし、もしそういったようなことがありますれば、まことに法の趣旨に反することでもございますし、われわれの加入のPRに相反する結果でございますので、もし先生がそういう事例をお持ちでございましたならば、今でもあとでもお知らせ願いまして、われわれ善処の材料にさせていただきたいと存じます。
  185. 小林進

    小林(進)委員 ここでいま一回私は労政局長に、お聞きしておきたいのでありますが、この中小企業退職金共済制度というこの制度の性格は、一体法律上の性格は何でございましょうな。社会保障的性格を持っているものか、あるいは賃金の別途支払いというふうな性格を持っているものか、どういう性格なんでございましょう。
  186. 冨樫総一

    冨樫政府委員 退職金自体そのものの性格といたしましては、民間に自前で行なわれているものと本質的に変わるところないと存じます。従いまして、その意味合いにおきましては社会保障という性格とは違うと思います。ただ、大企業におきましては従業員の数が非常に多いので、その間に、短期勤続の者は給付率が悪くて、長期勤続の者が給付率が高い。そして平均的に経理されている。ところが中小零細企業におきまして、個々の企業においてそういう短期、長期というものの平均化をはかることは技術的に困難でありますので、本制度加入した者一体といたしまして長期、短期の比率の格差を設けている。その意味では加入企業相互間の、何と申しますか、連帯性と申しますか、法律に書いてありますように共済性というものがある、こういうふうに考えているわけであります。
  187. 小林進

    小林(進)委員 そうすると、中小企業者という一つのワクを設けて、その中の一種の共済制度である、こう判定してよろしゅうございますか。
  188. 冨樫総一

    冨樫政府委員 制度に対する事務費の補助金、あるいは国庫の負担金というものは除きましては、そのように理解すべきものと考えております。
  189. 小林進

    小林(進)委員 そういう理解の上に立ちまして、一体この法律で真の利点を得るのは労働者でしょうか、中小企業の経営者でしょうか、あるいは国——国は直接にはない。どちらでしょうか。国も間接にはありますね。それは社会連帯の問題から言って全部影響しますが、直接利益を受けるものの比重は労働者の方に利益の比重があるか、経営者の方に利益の比重があるか、その判断です。
  190. 冨樫総一

    冨樫政府委員 最も直接に利益を受けるものは従業員であると思います。よってもってその定着あるいは勤務意欲という関連におきまして事業主であると思います。よってもって国民経済に寄与するので、国が補助するに値する制度である、こういうことになります。
  191. 小林進

    小林(進)委員 先ほどから質問を繰り返しておりまして、この法律から生まれてくる労働者に及ぼす被害の点を——被害と申しまするか、それは一つ利益があるとしても、その利益の陰に失われるものもありまするから、われわれが失われるのではないかと懸念した点を五つ、六つあげながら質問をしてきたわけですが、労政局長のお話ではそういう弊害は出ていない、こういうお話でございまして、せんずるところは中小企業に働いている労働者には、まことに現在流行の歌並みで、ありがたやありがたやであるというような御説明と拝承いたしましたが、それでは改まった角度から一つお尋ねをしますけれども、私どもが一番心配している二重構造の問題、賃金格差の問題、待遇改善の問題が、この退職金があることによってこれが解消せられる方向へ進んでいくものか、あるいはむしろこういう退職金などというものがあることによって、労働者を低賃金にくぎづけをして、むしろ格差を拡大する方向へ持っていく懸念があるのではないかというわれわれの心配に対してどう判断をせられるか、伺っておきたいと思います。
  192. 冨樫総一

    冨樫政府委員 この賃金のあと払い的性格を持つ退職金制度、あるいは日本に一般的に存在しまする例の福祉施設、寄宿舎の料金の割引といったようないわゆる準賃金といったようなものが日本の労使関係の中に相当ウエートを持っておる。この問題を近代化するのにはどういう方向をとるかということは一つの問題点でございまするが、ただこの際この制度というものは大企業その他自前で持っておるものとの平仄を合わせる、それに準じた制度を持たせるということでありまして、その意味では労働条件の企業規模別格差の圧縮という方向に寄与しているものと考えます。最近の若い学校卒業者の就職者の方々は非常に的確な労働条件の制定ということに神経が相当向いておりますし、職業安定所においてもそういうことに配慮いたしておりまするので、少なくともこの制度があるがゆえに低賃金にくぎづけというところは、現在の経済が好況であるという条件とも相待ちまして、そういうことば今までのところはないというふうに理解しております。
  193. 小林進

    小林(進)委員 ちょっと私質問が前後いたしまして何ですか、先ほどお尋ねしたかったのですが、三年半までは給付金が掛金以下であるとか、四年半までは六分の元利金の合計であるという今までの規定は、二年から返そう、三年から五%の国庫補助をつけるというふうに改正せられたねらいはどこでございますか。
  194. 冨樫総一

    冨樫政府委員 先ほどからも申しましたように、中小企業におきましては、短期勤続者が相当多い。この制度はその定着率の向上を目ざすわけでありまするが、それにしても短期勤続者の多い現状と現行法との間に少し実情に沿わないへだたりがあり過ぎるというので、三年半というのを二年、五年を三年というふうにいたしまして、従来ややもすれば労使とも、どうせうちのところは短期勤続だということで加入を初めから投げてしまうということのない限度において、短期退職者の給付を改善したわけであります。
  195. 小林進

    小林(進)委員 これに要する事務費はよろしゅうございますが、いわゆる五%、効力を発生するのは幾何級数的に年々ふえていきますね。その長期計画の年次別の国庫の補助金の出し工合を一つお聞かせ願いたいと思います。
  196. 冨樫総一

    冨樫政府委員 国庫負担金につきましては今ここに数字がございませんが、これは非常に低率の逓増という傾向となっております。問題は退職金経済そのものでございまするが、この改正によりまして、従来積立金の最低運用率が六分でなければいけないという建前でできておりましたものが、今度の給付改善によりまして六分三厘という積立金運用率を必要とするということになっております。
  197. 小林進

    小林(進)委員 国家の補助金の額を言って下さい。
  198. 冨樫総一

    冨樫政府委員 初年度すなわち三十六年度は十万円——十万円というのは、今まで五年でなければ国庫補助金がつかなかったのが三年で国庫補助金がつくようになりました。ところがこの制度が始まってまだ一年四カ月ですから、来年一年たってもまともに三年にはなりませんけれども、従前の自前の制度から本制度に転換してきたものがありますので、そういうものを相手といたしましてわずか十万、こうなるわけであります。本格的にそういうものが出てくる十年後の昭和四十六年におきましては、そのための国庫負担増が一億五千五百五十五万、こういう一応の計算をいたしております。
  199. 小林進

    小林(進)委員 十年たって国家の負担金が一億五千五百万円でございまするから、実に国から見ればわずかの犠牲に過ぎない。それに年々出る事務費程度のものでございますから、それでこの制度運用されるのでございますけれども、一体積み立てられた金の……。
  200. 冨樫総一

    冨樫政府委員 大へん恐縮でございますが間違いました。十年後の一億五千万というのは国庫負担金の総額でございます。現行制度のままでいきましたとすれば一億円でございますから、今度の改正による増加額としては五千万円でございます。
  201. 小林進

    小林(進)委員 これは予定でございますから計画と実施が違うかもしれませんか、四十六年——十年後における積立金の予想総額は大体どれくらいになりますか。
  202. 冨樫総一

    冨樫政府委員 約四百億というふうに考えております。
  203. 五島虎雄

    五島委員 今の小林さんの質問に関連して。  現在政府はすでに銀行預金利子の引き下げ等々を行ないました。そうすると今後預託する利子から上がってくるもの、あるいはもろもろの関係が大きく予算に影響するのじゃないかと思われますが、政府の利子引き下げとこの余裕金の運用等々についてどういうように響くか、ちょっと気になりますから、この点についてどういうようになるかということを説明して下さい。
  204. 冨樫総一

    冨樫政府委員 この点は本法制定の際の御審議に際しても御心配があったようでございまするが、今までのところ六分運用が六分三厘運用というふうに変わりましても、現実の積立金運用の八割何分方の大部分は債券によって運用しております。債券の大部分は七分何厘ということになっておりますので、遠き将来は別として、今のところそう先のことを苦にするということはないという考えでございます。
  205. 小林進

    小林(進)委員 これは先ほども質問が出たのですが。私は答弁を聞きながらどうしても了承できなかったので、あらためてお尋ねするのでありますけれども、十年後に予想せられる四百億円という膨大な積立金運用の仕方についてどうお考えになっているか、お聞かせを願いたいと思います。
  206. 冨樫総一

    冨樫政府委員 十年後に四百億という場合には、われわれといたしまして、年金積立金等と同じように、将来これを中小企業に対する直接融資、労働者の福祉施設の融資ということにいたしたいという腹づもりでございます。何分まだ十億足らずのことで、先ほど滝井先生に怠慢というおしかりを受けましたが、今後十年先までの青写真をできるだけここ一年くらいで作るということで滝井先生の御了承を得たわけであります。そのようにいたしたいと考えております。
  207. 小林進

    小林(進)委員 対大蔵省との関係ももちろんでございますが、今のお話しのように、諸他の年金と何様にというお言葉がございました。午前中の質疑応答の中にもそういうお言葉があったのだが、私ばその点いささかニュアンスの違いといいますか、性格の違いから、今の年金と同様にというお言葉が納得がいかない。いかがですか。
  208. 冨樫総一

    冨樫政府委員 年金と同様にと申しました趣旨は、この資金が中小零細企業の掛金でありますので、その方面にできるだけ直接的に役立てたいという意味合いを申し上げたわけでございます。
  209. 小林進

    小林(進)委員 そういうふうに訂正していただければやや私の問わんとするところに近いのでありまするが、先ほどから性格論争をやりましたようように、これは社会保障費でもなければ、純粋の賃金でもない、中小企業の従業者と経営者に限られた共済的な性格のものでありますから、金の運用の面にもその性格がきちっと出るような形でいかなければ私はいかぬと思う。そういう意味において、中小企業の経営の改善や合理化のために使うという点はけっこうでございます。一方には、働いておる中小企業の労働者のレクリエーションなり休養なりあるいはスポーツ、センターのような形のものに使う、その使用範囲は一般の厚生年金とはまた狭い性格のはっきりした方向に使われなければならないと思いますが、いかがでございますか。
  210. 冨樫総一

    冨樫政府委員 全く同感でございます。
  211. 小林進

    小林(進)委員 私はまだ三分の一しか質問が終わっていないのでございまして、私の用意いたしました質問はまだ残っておりますけれども委員長から本日は一つこの程度にというお話がございますので、後日にあらためて御質問をすることにいたしまして、本日はこれで私の質問を終わりたいと思います。
  212. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十八分散会