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1961-02-16 第38回国会 衆議院 社会労働委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年二月十六日(木曜日)     午前十一時三十二分開議  出席委員    委員長 山本 猛夫君    理事 大石 武一君 理事 齋藤 邦吉君    理事 永山 忠則君 理事 藤本 捨助君    理事 柳谷清三郎君 理事 小林  進君    理事 滝井 義高君 理事 八木 一男君       井村 重雄君    伊藤宗一郎君       浦野 幸男君    小沢 辰男君       加藤鐐五郎君    藏内 修治君       佐伯 宗義君    櫻内 義雄君       澁谷 直藏君    田口長治郎君       田中 正巳君    早川  崇君       福田 繁芳君    松山千惠子君       赤松  勇君    淺沼 享子君       大原  亨君    河野  正君       五島 虎雄君    島本 虎三君       田邊  誠君    中村 英男君       吉村 吉雄君    本島百合子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 古井 喜實君  出席政府委員         厚生政務次官  安藤  覺君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      尾村 偉久君         厚 生 技 官         (医務局長)  川上 六馬君         厚生事務官         (保険局長)  森本  潔君  委員外出席者         参  考  人         (日本医師会         長)      武見 太郎君         参  考  人         (日本歯科医師         会長)     河村  弘君         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 二月十五日  中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案  (内閣提出第三七号)  失業保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第三八号) 同日  墓地、埋葬等に関する法律の一部改正に関する  請願赤澤正道紹介)(第四一六号)  同(坂田道太紹介)(第四一七号)  同(正力松太郎紹介)(第四一八号)  同(福永健司紹介)(第四一九号)  同(松永東紹介)(第四二〇号)  同(柳谷清三郎紹介)(第四二一号)  同(早川崇紹介)(第五四三号)  同外一件(前田義雄紹介)(第五四四号)  同(高津正道紹介)(第六〇五号)  簡易水道布設費国庫補助に関する請願足鹿覺  君紹介)(第四二二号)  少年補導施設の設置に関する請願足鹿覺君紹  介)(第四二三号)  精神薄弱者対策促進強化に関する請願石川次  夫君紹介)(第四二四号)  同(上林榮吉紹介)(第四二五号)  同(正力松太郎紹介)(第四二六号)  同(富田健治紹介)(第四二七号)  同外一件(渡海元三郎紹介)(第五三六号)  同(橋本龍伍紹介)(第五三七号)  同(原田憲紹介)(第五三八号)  同(野田卯一紹介)(第五三九号)  同(岡良一紹介)(第五八六号)  同(帆足計紹介)(第五八七号)  緊急失業対策法改正に関する請願安藤覺君  紹介)(第四二八号)  同(有馬英治紹介)(第四二九号)  同(宇田國榮紹介)(第四三〇号)  同(遠藤三郎紹介)(第四三一号)  同(大倉三郎紹介)(第四三二号)  同(大森玉木紹介)(第四三三号)  同(木原津與志君外一名紹介)(第四三四号)  同(倉成正君外五名紹介)(第四三五号)  同(小枝一雄紹介)(第四三六号)  同外一件(坂田道太紹介)(第四三七号)  同(志賀健次郎紹介)(第四三八号)  同(田村元紹介)(第四三九号)  同(高橋清一郎紹介)(第四四〇号)  同(滝井義高紹介)(第四四一号)  同(富田健治紹介)(第四四二号)  同(八田貞義紹介)(第四四三号)  同外一件(亀岡高夫君外一名紹介)(第四四四  号)  同(福永健司紹介)(第四四五号)  同外一件(保利茂紹介)(第四四六号)  同(松永東紹介)(第四四七号)  同(松本俊一紹介)(第四四八号)  同(森本靖紹介)(第四四九号)  同(柳谷清三郎紹介)(第四五〇号)  同(山口喜久一郎紹介)(第四五一号)  同外一件(山手滿男紹介)(第四五二号)  同(愛知揆一君紹介)(第五一一号)  同(飯塚定輔紹介)(第五一二号)  同(臼井莊一君紹介)(第五一三号)  同(上林榮吉紹介)(第五一四号)  同(鴨田宗一紹介)(第五一五号)  同(壽原正一紹介)(第五一六号)  同(瀬戸山三男紹介)(第五一七号)  同(田中正巳君外二名紹介)(第五一八号)  同(塚原俊郎君外一名紹介)(第五一九号)  同(寺島隆太郎紹介)(第五二〇号)  同外一件(渡海元三郎紹介)(第五二一号)  同外一件(中垣國男紹介)(第五二二号)  同外一件(野田卯一紹介)(第五二三号)  同(橋本龍伍君外一名紹介)(第五二四号)  同(福永健司紹介)(第五二五号)  同(前田義雄紹介)(第五二六号)  同(松山千惠子紹介)(第五二七号)  同(山崎巖紹介)(第五二八号)  同(米田吉盛紹介)(第五二九号)  同(伊藤卯四郎紹介)(第五八九号)  同(内海清紹介)(第五九〇号)  同(重政誠之紹介)(第五九一号)  同(村山喜一紹介)(第五九二号)  同(稲富稜人君紹介)(第五九三号)  戦傷病者のための単独法制定に関する請願(遠  藤三郎紹介)(第四五三号)  同外一件(木村俊夫君紹介)(第四五四号)  同(倉成正紹介)(第四五五号)  同(小島徹三紹介)(第四五六号)  同(櫻内義雄紹介)(第四五七号)  同(濱野清吾紹介)(第四五八号)  同(渡海元三郎紹介)(第五四〇号)  同(橋本龍伍紹介)(第五四一号)  同(松山千惠子紹介)(第五四二号)  理容師法の一部改正に関する請願志賀健次郎  君紹介)(第四五九号)  同(田村元紹介)(第四六〇号)  同(濱地文平紹介)(第四六一号)  同(柳谷清三郎紹介)(第四六二号)  同(愛知揆一君紹介)(第五三〇号)  同(今松治郎紹介)(第五三一号)  同(野田卯一紹介)(第五三二号)  同(早川崇紹介)(第五三三号)  同(船田中紹介)(第五三四号)  同(松山千惠子紹介)(第五三五号)  同(井堀繁雄紹介)(第五八八号)  都市清掃施設国庫補助増額等に関する請願外  六百一件(阪上安太郎紹介)(第四六三号)  同(緒方孝男紹介)(第五七九号)  同(加藤勘十君紹介)(第五八〇号)  同(松本七郎紹介)(第五八一号)  国民年金に関する請願滝井義高紹介)(第  四六四号)  環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律  の一部改正に関する請願原田憲紹介)(第  四六五号)  同(小平久雄紹介)(第五四六号)  同(受田新吉紹介)(第五八四号)  拠出制国民年金実施延期等に関する請願外三  百十一件(三鍋義三紹介)(第四六六号)  同外千九百八十五件(横山利秋紹介)(第四  六七号)  拠出制国民年金制度改善に関する請願(小枝一  雄君紹介)(第五四五号)  引揚者給付金等支給法の一部改正に関する請願  (野田卯一紹介)(第五八二号)  厚生省看護課復活に関する請願外一件(岡良一  君紹介)(第五八五号)  外地引揚医師特例試験存続等に関する請願(  本島百合子紹介)(第五九四号)  理容師法及び美容師法の一部改正に関する請願  (園田直紹介)(第五九五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  医療に関する件について参考人より意見聴取      ――――◇―――――
  2. 山本猛夫

    山本委員長 これより会議を開きます。  医療に閲する件について調査を進めます。  本件に関し、本日は日本医師会長武見太郎君及び日本歯科医師会長河村弘君に参考人として御出席を願っております。  参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。本日はお忙しいところをおいでいただきましてありがとうございます。申すまでもなく、医療問題は国民生活と密接な関係を有するのでありまして、特に最近における本問題の推移、すなわち一斉休診の問題はひとしく国民注目を集めているところであります。本委員会といたしましても、本問題に重大な関心を持ち、先般来調査を行なっておるわけでありますが、本日はお二方の忌憚のない御意見を承り、もって本問題調査参考にいたしたいと存ずるのであります。  なお、議事進行上最初にお一人十分程度御意見をお述べいただきまして、その後委員より質疑にお答えいただきとうございます。  それでは武見参考人からお願いを申し上げます。   (滝井委員議事進行について」と呼ぶ)
  3. 山本猛夫

  4. 滝井義高

    滝井委員 先般の理事会で、きょうの参考意見を聞くにあたって、当然古井厚生大臣出席をするという約束のもとに本日の委員会は開かれました。しかるに、まだ参議院答弁の番が回ってこないにもかかわらず、古井厚生大臣衆議院のこの社会労働委員会出席がございません。そこで、われわれは今参議院に参りまして古井厚生大臣に面会をいたしましたところ、古井厚生大臣自由民主党の、党の方から参議院に出ろという強い命令があったので自分はここに出てきているのだ、しかし、党の方で衆議院に行けといえば衆議院に行きます。こういうことです。しからば、あなたの自主的判断は、今委員長の御発言にもありました通り、国民の重要な関心事であり、注目を集めているこの医療問題はあなたの所管であるから、当然あなたの自主的判断によって衆議院出席すべきであるという要求をいたしましたが、黙っておりました。従って、まず第一に私たち古井厚生大臣はこの重要な問題に対する認識がないということを認定をいたしました。さらに第二番目には、医療費の問題はそういう国民的な問題でございますから、従ってきょうは両医師会会長に来ていただいて、その御意見を聞くわけです。こういうときに、当面の責任者である厚生大臣がそれを聞かずして参議院出席をするということは、政治的判断から見ても当を得ない大臣判断行動であろうかと思います。そこで私たちといたしましては、こういう大臣相手にして今後の日本社会保障の推進なり厚生行政を遂行して参ることは不可能なりという判断に立ちました。従って、本日は私たちとしては安藤厚生政務次官に全面的に大臣としての責任をとっていただいて、ここに出ていただきたいと思うわけです。これに対する安藤さんの御答弁をまずいただきたいこと、それから同時にここに宣言をいたしておきますが、今後厚生省の法案その他については、われわれは一切古井厚生大臣答弁を拒否をいたしますから、これをここに宣言をいたして、安藤厚生政務次官答弁お願いをいたします。
  5. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 ただいまの滝井先生の御発言に対して私の考え方を申し述べさしていただきますが、まず前提となりました、古井大臣が自民党の命令に従って参議院出席しておるのであるというお言葉があったそうでありますが、あるいはそういうお言葉があったかもしれませんけれども、その場合、おそらく何か錯覚であろうかと思います。それは衆議院参議院との御調整の上、どちらにでも御意見がきまりますならばそれに従います。こういうお言葉であったろうかと存ぜられます。(「そうじやない」「そうだ」と呼ぶ者あり)しこうして私に大臣にかわって答弁せよとの御要望でございます。しかしながら私は、ただいま滝井先生お話しになりましたように、自今古井厚生大臣相手としての質疑応答は一切しないという御前提に立たれましては、私御答弁申し上げるということが非常に苦しいのでございますが、その辺のところは一つもう一度滝井先生においてお考え直し下さいまして私への御質問をいただきとうございます。お願いいたします。
  6. 滝井義高

    滝井委員 大臣が出てこないときには、政務次官が出てきて大臣にかわってやることは当然のことです。従って、前のことは私たち党の決意と態度を表明したのであって、われわれは今後古井厚生大臣が出てきても古井さんには一切質疑応答はしない、同時にわれわれはそのときには古井さんはなきものですから、従ってあなたに出ていただく、こういうことなんです。それをすなおにお受けになって出てきていただいたらいいと思います。従って本日もまた、一切の責任を持って質疑応答にあなたが当たっていただくという、この確認さえいただけばいいのです。自分はきょうは出ているのだけれども、それは大臣意見を聞かぬとわからぬのだなんと言って逃げられたら、この重要な問題を解決するのに、あなたが出ておっても何にもならぬことになる。それならあなたの責任厚生大臣をここにお呼びいただく以外にない。どちらなんです。
  7. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 重ねてお答えいたします。おそらくそれは院において御協議いただいて、その院の御協議の結果に従って厚生大臣行動すると私は確信いたしますので、その辺のところを皆様において御協議を願いたいと存じます。もしそれほんとうに個人の古井厚生大臣意見でそれを決定しておるといたしますならば、私の責任においてここへ厚生大臣を連れて参ります。
  8. 滝井義高

    滝井委員 理事会で十時からきちんと始めることをきめているわけです。ところがじんぜん時間を経過せしめたのはだれが経過せしめたのか。自由民主党が経過さした。参考人の方は十時にきちんといらっしゃった。出てこなかったのはだれか。厚生大臣だ。大臣が出てこなかったんだ。参議院はさいぜん始まったばかり、十時には始まっていない。そして故意にこれを延ばした。しかも今まで古井大臣は何と言ったか。医療費問題というものは今までのようなやみ取引ではまかりならぬ、自分は筋を通さなければいかぬと言った。その本人がこの国民注視の的である、解決しようとする問題に筋を通さずして参議院に、悪い言葉で言えば逃げていったような形を作ることはもってのほかだと思う。そういう大臣をわれわれは相手にすることはできない。そこで、前の前提はとにかくとして、本日はあなたは大臣としてここに一切の答弁責任を持たれるかどうかということをわれわれはお聞かせ願えればいい。
  9. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 大臣としての責任を持つわけに参りませんけれども厚生政務次官として私の名において御答弁申し上げます。そしてまた私も大臣の御意思のほどは一応存じておりますので、あとう限り御答弁申し上げる次第であります。
  10. 滝井義高

    滝井委員 委員長から一つはっきり確認をとっていただきたい。本日出てきて御答弁せられる安藤厚生政務次官発言古井厚生大臣発言と同じだ、そのかわりであると認めて差しつかえありませんか。それをはっきりしないでそういうでたらめなことじゃ議会政治というものは成り立たぬですよ。
  11. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 ただいまのようなお言葉でございますならば私、大臣にかわって御答弁申し上げます。ただいままでのをはき違えておりました。
  12. 山本猛夫

  13. 武見太郎

    武見参考人 私どもは、三十二年に日本医師会会長に就任当時、代議員会決議をもちまして、国民保険に全面的に協力するという決議をいたしたのでございます。自来その線は、私ども団体といたしましてはできる限り努力をいたしました。私ども国民保険に際しまして、医療を受け入れる側の態勢整備という問題を専門的な立場からいろいろと検討を加えたのでございます。  第一の問題は、医学の進歩に対応いたしまして、現在の新しい医学社会保障体系の中にいかに入れるかという問題について私ども努力を重ねてきたのでございます。  ここでちょっと御説明を申し上げますと、病気になったならば治療をしてやるという簡単な病人医師関係では社会保障医療は成り立たないのでございます。これは明治大正期のきわめて個人的な医療時代でございましたならば、そのような考え方でございますけれども、現在の医学の思想の中には疾病の原因が社会にある、従って社会責任病気をなおす、また社会責任病気の発現を押えていこうという、きわめて社会的な要因を重く見る医学時代でございます。これをコンプレヘンシブ・メディシンあるいはコンストラクティブ・メディシンと申しております。全く個人的な病気という病気が、自分の養生が悪かったからだという個人的な考え方から、ずっと進歩した考え方になっているわけでございます。社会保障制度のもとにおける医学は、このような崇高な新しい社会理念で当然根強く建設され、展開されなければならないわけでございまして、同じ患者さんを診察いたしますに際しましても、その人の生活環境あるいはその人がなぜ病気になったか、なおったあとはどうすればこの病気が起きないで済むか、なおらないとすればどういう形で社会生活をやっていけるかという点までめんどうを見るのが今日の医学考え方でございます。この医学考え方を推進していこうという私ども熱意は何ら今日まで行政の面で取り上げられたことがないのでございます。私どもは力の及ぶ限りこの問題と取り組みました。その例といたしまして、私どもは建設的な面といたしましては、このような理想を具体化するために地域医師が協同をいたしまして、医師会病院を建設をいたしております。ここで技術経済とを公開いたしまして、医療を実施いたしますと同時に、そこに集まりました資料をもとにして、その地域公衆衛生予防衛生に関する具体策を立て、建設的な方向を進んでおるわけでございます。  昔のヒューマニズムと申しますものは非常に個人的な情けの感じでございましたが、今日のヒューマニズムと申しますか、仁術と申しますものは、このような社会的な合理性を持ったものでなければ新しい仁術は生まれて来ないわけでございます。仁術はから念仏であってはならないわけでありまして、架空の概念として封建的な仁術観が強要されることはかえって国民に不幸でございます。私ども努力いたしましたのは、この古い仁術観、これを新しい世代にいかに生かしていこうかという努力が、新しい社会医療理念と一緒に具体的に展開することでございます。また私どもはこのような医師地域的な新しい協力態勢というものによりまして、公私の医療機関が渾然一体となりまして、まず疾病予防に対して重要な役割を日常生活の中に打ち立てていこう、それでもなお病人が出た場合には、できるだけの治療をやろうというのが私ども考え方でございます。  この考え方に立ちますときに、現在の健康保険を中心といたしました社会保険医療の実情は、私どもの意図を全然無視いたしました明治大正期医学概念をそのままの形で国民全体に数の上だけ普及しようという方針としか考えられないのでございます。私どもはこの面におきまして、さらに私どもがみずからこれらの大きな事業をなしとげ得ない大きな要素といたしまして、医療費の問題、ことに診療報酬の問題について痛切に考えております。  敗戦以来わが国は自由主義国家体制をとり、民主主義政治体制をとられておりますけれども医師活動の分野におきましては、保険の普及とともに学問上の自由は保険者、官僚の独裁的な制約を受けて参りました。この舞台は中央医療協議会という場所でございます。また経済面におきましても全くこれは完全なる統制経済に服しております。しかもこのように自由社会において完全なる統制経済に服しておるにかかわらず、保険医の身分を保障し、老後を保障し、あるいはまた日常の権利を保障する施策は、社会保険の全体系の中に一つもないわけでございます。換言いたしますならば、集団的な奴隷制度のもとに社会保険を推進されておるというのが事実でございます。このような形で大学の病院保険医療機関に指定をされまして以来、学問の研究と教育に非常な不都合を来たしまして、学術会議が熱心にこの問題と取り組まざるを得なくなったわけでございます。また町や村の開業医もおのおのその職域におきまして自分技術学問とを生かすべき資材の購入も不可能であるという状況に陥っております。私どもはこれらの状況のもとにおいて、どうしても私ども学問の、日本医学の輝かしい百年の伝統を国民保険の名によってこのともしびを消すことは、日本医師会の名誉にかけまして、また国民の誇りとする日本医学に対しまして、私どもはこの態度を続けることは医師としての良心が許さないわけでございます。こういうふうな観点に立ちまして、医師会は大所高所から建設的な動きを今まで続けておるわけでございます。  また私がここで最後につけ加えいたしませんければなりませんことは、一番私の心配をいたしますことは、医療に従事いたします医師看護婦さんたちが大きな不平不満やあるいは老後に対する、不安を持ちまして日常患者さんに接しておる。この見えないおそろしさというものをむしろ表に出しまして、正しく解決することが皆保険前に当然なされなければならないと確信を私は持ったのでございます。不幸にいたしまして病院ストライキは私どもの思った以上に根強く進んで参りました。これは医療従事者人権ストとしてこのような形をとられたのでございますが、私どもはこのような形をとらないで、専門の職域団体としての社会的な正しい行動によりまして、日本社会を新しく学問的に生かしていこうという行動をとる段階になったわけでございます。四月一日の国民保険は、名前は皆保険でございましても、ぼろぼろのレールの上に急行列車を通すようなあぶないことは、たっとい国民の生命を取り扱う態度でないということを、身をもって体験しているのは医師であると私は確信をいたします。医師の申しますことが、不平不満や、あるいはまた個人的な利害関係という名のもとに捨て去られましたならば、私は今後ほんとう国民福祉は守られないだろうと思います。この点で私どもは歴史的な日本社会の転換期の医療を、どのような形へ持っていくかということに対して、また国民医療に対して、大きな熱意と歴史的な使命を自覚いたしまして、今日いろいろな活動をいたしておるわけでございます。
  14. 山本猛夫

  15. 河村弘

    河村参考人 私は、ただいま御紹介のありました日本歯科医師会河村でございます。ただいま医師会長武見先生から、今日までのいろいろな形におきまする状態の御説明がありました。私は歯科立場におきまする今日までの、またかような立場に至りました経過、こういうようなことについての面をお話し申し上げたいと思います。  御承知のごとく、本年の四月一日をもちまして、先ほどお話しのごとく、国民保険というものが実施せられるということになっておるのでございまするが、日本国民であれば、必ず各種の健康保険のいずれかに包括されるようなことになるのであります。これは大へん重大なことであります。国民病気になる、またけがをするとなれば、必ず社会保険医療によってこれをなおしますということに相なりまして、この社会保険というものがいいのか悪いかということは、よって全国民の健康が左右されるということに影響を持ってくるわけでございます。  かような現状でございまして、さらに保険経済が常に今までは優先して考えられていましたために、実に多くの矛盾が起こってきておったのであります。最低の資材、経費をもって最大の効果を求める、また労働力回復を重視するねらいということによりまして、平等な福祉がすべての国民に平等に与えられない結果を生じておるのであります。これが皆保険下における基本理念でございまするが、国民が平等な福祉を与えられるようにいたさねばならないのであります。   〔委員長退席大石委員長代理着席〕 かように社会保険という医療が、国民生活に重大なる影響を及ぼすときになりました現在において、私どもは現行の社会保険医療制度に見られるところの欠陥と非合理性を是正いたしまして、そうして国民医療の真の正しい姿を守り、近代医学の進歩に沿い得るところの良心的なる医療ができ得るようにいたさねばならないのであります。しかるに現状はいかがでございましょう。われわれは再三再四これらに対してわれわれの要望を当局に出したのでございます。しかるに当局におきましては、これらに対して何らの誠意を示ておらない。こういう状態におきまして国民保険に突入するということは、全く国民の健康、福祉を犠牲にするといってもあえて過言ではないと思うのであります。  要望につきましては皆様に文書をもってお配りしてございます。一点単価の引き上げ、歯科立場におきますところの補綴の点数の是正、社会保険歯科医療の内容の改善、事務の簡素化と地域差の撤廃、こういうような四点を指摘いたしまして、特に今日まで要望あるいは陳情におきまして、また各地区における決議をもって当局に訴えておるわけであります。  単価の問題は、診療費の問題につきまして詳しく申し上げることは、時間がございませんので、後ほど御質問がありました場合にかえたいと思いますが、この件に対して特に御考慮をいただきたいということは、歯科医のいろいろな面におきまする経済状態というものは、一般の社会情勢とは若干異なるものがございまして、歯科医師の人件費というものはほかの勤労者に見られないところの上昇を示しておるのであります。これは歯科医が非常に少ないということが最大の原因ではございますが、かくのごとく人件費の大幅の上昇ということが、経費の大きい支出の要素と変わってきております。またその他歯科の機械、資材というものも予想以上の暴騰を示しております。特に近代歯科医療に欠かせないところのレントゲンの撮影装置、またさらに最近に至りましてはタービンによる高速度切削機械、こういうものも出て参ったのでありますが、今日の一般の歯科医におきましては、こういうものを直ちに購入するということがなかなか容易ではないのであります。全くこれは歯科医療経常の困難を示しておるということでございます。そこで診療報酬の現状では医療機械の整備強化ということはむずかしくなる。現在のままでは陳腐化した設備でやっているような次第でありまして、これでは適正なる医療国民に与えられないということになるわけであります。  なお低単価のために私的医療機関によりましては、生活の必要上全く労働過重をしいられまして、十一時間から十三時間、あるいはそれ以上に及ぶところの稼働を余儀なくされる、これでなければ経営が立っていかない、かような実情でございまして、疲労こんぱい、ここにおいて何らの進歩の姿が見られないような状態である。  また歯科におきまする特殊な事情といたしまして、補綴に関する不合理の面もございます。これはあとでゆっくりと申し上げたいと思うのであります。  いずれにいたしましても現政府におきまして、御承知のごとく国家経済の成長に伴うところの国民所得の倍増計画というものを特に打ち立てられまして、その実現の態勢に入っておられるようでありますが、適正なる医療というものが行なわれるには、やはり適正なる医療費というものが支払われなければならないということがはっきりおわかりになることと思うのであります。そこですみやかに国民所得倍増に見合うところの方途を決定いたしまして、単価の引き上げを決定いたさなければならない。繰り返して申しますれば、国家経済は伸びておる、国民の所得は増加する、労働賃金は年々とベース・アップされていく、なぜわれわれ医療担当者だけが取り残されなければならないのか。低い単価や制限されましたるところのワク内の診療に耐えて不満を忍びつつも今日に及んだ次第であります。しかしながら私どもは知性と学識と技術というものを利用して、国民の健康保持のために身も心もすり減らす気持を持って今日まで続けて参ったのであります。しかも私どもが要求いたしましたものはまことに遠慮深い最低の線を出した。しかもこれら私どもの要望は私利私欲にかられた、大それた要求では決してないのでございまして、国民の健康保持に要する大事な栄養源であるにすぎない。また医療の本質ということから考えてみますると、先ほど武見先生からとくとお話がございましたが、一面から考えまして医師患者とはかたいつながりがある。なおそう、頼もう、これはいささか古いかもしれませんけれども、そこに人間愛と信頼感というものがなければならないのであります。しかもわれわれはその上に医学技術の進歩に応じたところで、常にみずからを磨き高めていくようなことになっておるわけであります。しかも先ほど来お話しのごとく、保険者の圧迫で押しつぶされたような形におきまして、まことにスズメの涙ほどの医療費の値上げにすぎないと思うのであります。これに対してまことに不遜きわまる反対をしている。私ども全一国三万の歯科医師は、常にこの切実なる声を体しまして、全国的なる形において盛り上がる力をもってこの要望の貫徹を期している。しかしてここに国民の正しい医療を守り、新しい医学の進歩と国民生活とを結ぶところのいわゆる社会的使命を果たさなければならない。しかるに今日この状態ではこれはとうていでき得ない、こういう結論のもとに、すでに御承知のごとく総辞退を含む実力態勢をとるもやむを得ない、かようなことに相なったわけでありまして、すでにその面についての指令が全国的に発せられまして、今日の事態に入ったわけでございます。  なおここでつけ加えて申し上げておきたいことは、現時点におきましては、私どもは単なる賃上げ的な経済闘争ということより、さらに進みまして医療制度の抜本的改革、厚生行政の革新的改革、さらに健保法の全体系改正、こういうようなものに十分なる目安をつけない限りは、いかなる形においてこれを一時的なる方途によって償おうと思っても、これは決してできない、私どもは長期戦の形をもってあくまでもこの態勢を持して、真の姿の日本医療国民福祉のために戦わなければならないことを決意しておるわけなんです。かような意味におきまして、特に厚生当局並びに政府に対して大なる反省を促したい。かような意味におきまして今日の状態に立ち至ったわけでありますので、十分なる御了察を得たいと思います。これをもって私の今日の経過説明を終わります。
  16. 大石武一

    大石委員長代理 どうも御苦労さまでした。  これより参考人に対する質疑に入ります。順次これを許可いたします。山本猛夫君。
  17. 山本猛夫

    山本(猛)委員 私はきわめて総括的に、時間の都合等もございますので手短かに参考人にお尋ねを申し上げます。  まず、武見参考人にお尋ねを申し上げます。武見さん、これは十九日に全国一斉休診をおやりになるわけなんですね。どういうことで、どんな御都合で十九日を一斉休診の日にお選びになりましたのか、まず第一に一つ伺っておきたい。
  18. 武見太郎

    武見参考人 十九日を選びます前に、もう少し段階がございます。私どもは御承知のように、昨年の八月十八日厚生大臣に対しまして、現状で国民保険に入りますならば、私ども医師としての責任を全うして、ほんとう医学の全機能と医師としての真心を持って患者治療がはたしてできるかできないかという自信が持てない、そこでこれだけのことはしていただかなければならないということで、制限診療の撤廃という問題を出しました。これは簡単に申しますと、今日いろいろな面で制約を受けております。世界中で自由に処方箋を書けない医者というのは日本の医者だけでございます。もちろん治療も自由にはできません。使います薬の種類も量も使い方も、全部保険者と役人によって制限をされておるわけでございます。このような状態では病態が年々歳々変わっております今日、また相手の体質等を考えましてこれが一番いいと考えましても、それがやれない状態では、国民保険にわれわれは乗るわけにいかないわけでございます。学問がせっかく進歩いたしまして、大学でどんなことを勉強いたしましても、実際に使えなければ意味がございませんので、この点は私どもは、今日の制限診療を保険経済の問題からのみしぼられていることに対しまして非常な不満を持ちますと同時に、命を預かる医者としては非常な不安を持たざるを得ないわけでございます。この不満と命を取り扱う者としての大きな不安から、私どもはこの制限診療の撤廃を申し出ております。  それから一点単価の引き上げの問題でございますが、昭和二十五年以来新聞紙は約十倍近くも上がっております。お役人の月給も二倍になっておりますが、医師に対する診療報酬は一・二四倍しか上がっておらないわけであります。そうして事務が非常に複雑でございまして、貴重な時間を支払い事務にとられるということでございます。ごく少数の患者保険でございました場合は、事務の繁雑化は問題こざいませんが、皆保険の段階におきましてこれだけの全部の人が保険であるときに、二%か三%の人が保険であった当時と同じ事務量を強要されますことは、これはとうてい不可能でございます。またいろいろな経済変動その他に対しましても、私どもは自主的にこれと対応していくだけの診療報酬が払われておりません。この状態ではとうていやっていけないということから、私どもといたしまして、甲乙二表の一本化と、不必要な地域差が今日残っております。地域差と申しますものは、医療の面では絶対に必要のないものでございます。この地域差を何のために残すかといえば、私どもは低医療費強要の具としか考えられないわけでありまして、こういう点から強く八月十八日に申し入れをいたしました。その後機会あるごとに私どもはこのことを各方面にお願いを申しているのでございますが、不幸にして全く取り上げられなかったと言ってもいいのでございまして、具体的な御相談も私どもは受けておらないのでございます。たまたま病院ストが起きますと、医療費の問題が表に出て参りまして、上げずばなるまいという空気が出てきたわけでありまして、このようなことは私としては非常に遺憾なことでございます。私は医療従事者が耐え切れなくなってストライキに踏み切る前にこの問題を解決していただいて、われわれの要望をいれられないでストライキにまで追い込んで初めてこの問題が取り上げられたという厚生出局のふまじめさに対しまして、私は非常な怒りを持っておるものであります。こういうような怒りは私だけの怒りではございません。全国の会員の怒りとなったわけでございます。根本に流れております生命を取り扱いものとしての不安感、これは絶対に私は除いていただかなければなりません。これらの点におきてまして、全国におきましていろいろ勝手な、各県さまざまな運動が地域的に展開されました。私はこれらの情勢を客観的にながめておりまして、これは日本医師会が一本になってこの問題を取り扱わないと、地方的に非常に問題があると考えましたので、全国会長会議を開きまして、今後のこれらの運動を全部私が責任を負うから全部私にまかせてもらいたいということで、全国都道府県の会長から私が委任を受けたわけでございます。委任を受けまして一番私が考えましたことは、国民大衆に被害を与えることなく、そして最も社会的な影響を少なくしながら、われわれの希望を国民に理解してもらうにはどうすればいいかということでございます。このためにはいろいろな議論もございましたが、二十四時間労働をしております医者に対して、なおかつ日曜日も休んではならないというようなことは、とうてい私は今後正しい医療をやる上から不可能と考えておりますので、先ほど申し上げました学問の自由を失い、経済の自由を失った奴隷的な状態に陥りました医師に対して、奴隷解放運動の第一段階といたしまして日曜休診を取り上げたわけであります。すでにこの問題は、各地で日曜日の休診は現実には実施されておるのでございまして、実害の最も少ない方法としては日曜日を選ぶということが一番いいと考えたわけでございます。しかも医師の天職といたしまして診療拒否をいたすことは、これは私は絶対に避けなければならないと考えましたので、一切の診療拒否に関する問題はしてございません。診療拒否こそ医師のストライキでございます。新聞紙上等におきましてはこれに対してストライキという表現が使われておりますことは、私どもの意図が正しく国民に伝えられないで、不必要に社会の不安を醸成しているのじゃないかと私はおそれておるわけでございます。日本医師会のいろいろな指示、通達には、診療拒否という問題は一つも入っておりません。十九日を選びましたのは、最も実害が少なく、そして勤務医も開業医も学校に勤めている人間も、すべての人間が共通の問題として国民とともにこの問題を十分話し合う機会を持つことは日曜日が一番いいと考えましたので、十九日の日曜日を選んだわけでございます。私は今日まで隠忍自重いたしまして、このような統一行動をとることを遠慮し、おったのでございますが、四月一日を目前に控えまして、待てど暮せど具体的な策が示されません。いたずらに中央医療協議会責任を転嫁して、いささかも大臣が御自分責任で問題を打開なさるという熱意を、私はいまだ受け取ることができませんので、このような統一行動に踏み切ったわけでございます。
  19. 山本猛夫

    山本(猛)委員 それでは一斉休診は指令したが、一斉休診というのは一斉診療拒否ではない、こういうふうにおっしゃるわけでございますか。
  20. 武見太郎

    武見参考人 もちろんそうでございます。
  21. 山本猛夫

    山本(猛)委員 河村さんの方もさようでございますか。
  22. 河村弘

    河村参考人 私から申し上げます。私の方も同様の考えでございます。
  23. 山本猛夫

    山本(猛)委員 八日に全国に指令書をお出しになりましたね。
  24. 武見太郎

    武見参考人 出しました。
  25. 山本猛夫

    山本(猛)委員 その指令書の内容を伺いたい。
  26. 武見太郎

    武見参考人 お手元にお配りいたしました資料の1をごらんを願いたいと思います。「全国一斉休診、定期検診、予防注射及び予防接種の協力拒否並びに健保・国保総辞退届の取りまとめについて」というのがございます。その記というところに、「二月十九日(日)全国一斉休診により、国民大衆に対し「医療の実情を訴える会」を各地で催し、歯科との共同斗争を行なう。赤旗、白衣は用いぬこと。例えば街頭演説、婦人会、部落会、PTA等その他に働きかけること。大会も結構である。今回は日曜日につき勤務医にも働きかけること。なお、保安要員は残さない。」残さない」と書きましたのは、残してはならないということは言っておりません。それからストライキではございませんから保安要員を残す必要はないわけでございます。ストライキならば保安要員の問題も考えられますが、ストライキではございませんから「保安、要員は残さない。」と書いてございます。そしてしかも個人の開業医が日曜日に休みます場合には届け出る必要も何もないわけであります。これは官公立病院でさえも日曜日にお休みになっているのでございますから、個人の医者も休むことは全く差しつかえないわけで、病院医療法に、よって当直がおります。しかし私どもは万一のことがあっては国民に相済まないと考えておりますので、「予め都道府県知事に申出で、都道府県知事の責任において準備せしめ、医師会はこれと協力しないこと。また日病の協力要請にも応じないこと。」ということを出したわけでございます。このことは都道府県知事が、医師が休むとすれば当然公的医療機関その他を御利用になるということが権利としてできることでございます。日本医師会長は会員に対しまして、お前は残って、日曜日を休んじゃいけない、その日は患者を見ろという命令をいたす権限はございません。もし残って患者の診療に従事せよと申しますならば、まず私は本人の承諾を求めなければなりません。その上看護婦その他の費用を日本医師会が弁償をいたさなければなりません。これらのことはとうてい日本医師会には権限もございませんし、それから全国的に弁償する力もないわけでございます。またそういう種類の団体でもないわけでございますから、それでこういうふうな申し出をしているわけでございます。  日曜休診を非常に罪悪視している、ようでございますが、これが診療拒否でないこと、しかも医療の実情を国民に訴えて新しいりっぱなものをこしらえようとする建設的な努力をやっていこうということでございます。またこの中で大事なことは、もしも将来日曜日にある特定の病院、診療所に対して診療を続けろというようなことが、その土地の状態として望ましいならば、国の責任において費用を持っていただかなければ、現在の低単価のもとにおきまして個人の医師が自発的にこれをすることは、労働基準法その他の面からとうてい不可能の状態になっております。  皆保険をむやみに、いいかげんな線路の上に通すことが悪いと申し上げましたのは、まず日曜休診だけでさえこのような問題が起きるということは、いかに皆保険の路線がいいかげんな、がたがたな路線であるかということであると私は考えております。また私どもは、定期検診や予防注射、予防接種は一切協力しない旨、直ちにこれを都道府県知事や保健所長に連絡をいたしますが、流感でございますとか、小児麻痺ワクチンのような、医師会において緊急、必要と認めたものに対しましては、お役所の下請はやらないけれども、自発的にこれを土地の方々に奉仕するということをここで言っているわけでございますから、いささかの不安も国民には与えていないわけでございます。その次の三は、「健保、国保総辞退届を都道府県医師会長の下に二月二十五日までに取りまとめること。文書様式は追って指示する。」これはどうしても国民保険が現状のままで入るならば、私ども責任を持って患者さんの治療に応ずることができませんし、新しい医学理念日本に植え付けることができませんので、私ども学問上の良心、専門家としての良心から、このような処置はやむを得ないと考えております。「迫って、同封「医療白書」並びに「あなたがたの医療」のパンフレットをPRに活用願います。」ということでございます。
  27. 山本猛夫

    山本(猛)委員 次に、歯科医師会と共闘をなさることになったわけでございますが、武見さんに伺うのですが、どういうことで、歯科医師会とも共闘なさることになったのですか。
  28. 武見太郎

    武見参考人 歯科医師会におかれましても、医師会と、医学者としては全く同じ立場に立つわけであります。また、保険医といたしましても、同じような条件に置かれているわけでございます。そして、これを改善してりっぱなものにしようとする熱意、また国民福祉の向上に努力しようとする熱意におきまして、両者は全く同じ強さと同じ熱意とを持ってこれを長期的に取り組んでいこうという熱意がございますので、この問題の解決まで、われわれがほんとうに正しい社会医療を期待できるような状態に持ち来たすまでわれわれは共同でやろうということが、末端の医師会から強く共同の線が出て参りまして、中央におきましては、地方の情勢に従って中央の共同闘争の問題が取り上げられたということでございます。発端は、地方から燃え上がった意気が全く両医師会を結合させたということでございます。
  29. 山本猛夫

    山本(猛)委員 河村参考人、いかがでございますか。
  30. 河村弘

    河村参考人 先に、日本医師会との共闘の問題につきまして申し上げます。  ただいま武見会長がはっきりと申し上げられましたように、この点と全く同じ意見でございまして、また私ども歯科医師会においても盛り上がる力がかような面にまでやって、参ったのでありまして、私ども医療担当者という形におきまして、大きなる立場において、あくまでもこの時代において、この国民医療を救うべきはこのとき以外にない、かような決意のもとに日本医師会と共闘の形を樹立いたし、ここにかたく、手を握りまして、あくまで解決のつくまではのまぬという決意をもって進んでいる次第であります。  なお、先ほど私どもが指令を――指令と申しましたのですが、地方に通知を出しました、これはちょっとこういう趣旨であることをお含みをいただきたい。一、日本医師会と共闘すること。一、その第一段階として、十九日全国一斉休診を行なうこと。一、都道府県歯科医師会も同医師会と共闘すること。一、応急処置については都道府県歯科医師会判断にまかせる。かような四つのことを趣旨として通告いたしました。
  31. 山本猛夫

    山本(猛)委員 ところが、印象的にかもしれませんけれども、これは武見さんに伺うのですが、政府や自民党は一生懸命になってこの問題を取り上げて、つまり医療費の問題を取り上げて解決に努力をしておるわけでございますが、これもまあ印象的にと前提をして申し上げておきます。国民に与えた印象的な角度からお尋ね申し上げますならば、政府と、つまり主として厚生省厚生大臣とあなたはよくお話し合いをなさっておられないかのような感じを受けるのです。なぜこういうふうに政府や自民党が一生懸命になって本問題の解決に努力をしているのに、あなたは、それを拒否されて、話し合いをなさろうとしないまま、こういう事態にお入りになったのか。つまり、十九日の一斉休診にお入りになったのか、それを一つ伺いたい。
  32. 武見太郎

    武見参考人 ただいま山本先生から御質問の点が出ておりますが、政府、自民党におかれましてこの医療費問題に一生懸命に取り組んでいるのにということでございますが、先ほど来私がるる申し上げましたように、今回の盛り上がりは単なる医療費の問題ではないのでございます。専門家としての、社会に生きる基本的な人権闘争でございまして、医療費だけの問題に集約してこの問題をお考え願いたくないわけでございます。この点、保険者団体医療費だけにしぼりまして保険のあらゆる面にコントロールを加えましたのと、私ども医師としてのヒューマニズムと良心とが許さないという問題とでは、この方を医療費の問題より以上に重大にお考えを願いたいと私は思うのでございます。決して、これは医療費だけの問題で、このように全国の医師歯科医師が団結をいたしたとは私は考えておりません。専門家の良識が生きるか死ぬかという基本的な断末魔の状態が今日の状態でございまして、この点は、私は国会の先生方に十分御認識を願いたいと思うのでございます。そして、自民党におかれましてもいろいろ御検討はあることでございましょう。しかしながら、不幸にして、全国の医師厚生省に対しましていささかの信頼感も持っていないということはこれは悲劇でございますが、だまされ続けました私どもといたしましては、これは非常に真実な声でございます。あたかも、今度の一斉休診の問題にいたしましても、官公立病院の当直医的な考え方でふだんから一般の医師を見ておったのではないかということを、この騒ぎを通じて私は痛感するのでございます。こういう点から考えまして、ただいまの問題は、医療費の問題を御検討いただいておりますことは感謝にたえないわけでありますが、予算審議その他を通じまして、私どもが受けました印象と現実の予算総領は、医療の実際面に携わっております者からすれば問題にならない数字でございます。資料の中にございますが、税金を取られておりません病院におきましても、六〇%が人件費であり、そして、費用の分析をいたしますと、必ず赤字が出ているわけでございます。費用分析の結果、私どもが都道府県立病院の三十三年、三十五年を比較いたしますと、人件費の増大のために、いずれの医療機関も崩壊に瀕しております。個人の開業医は借入金ができませんので、従事者を減らし、新しい機械を買わない。古いもので間に合わせる。そのようなことで家族労働が強要される、辛うじて現状が維持されておるわけでございますが、せっかく医療費の問題で御検討をいただいておりますけれども、このような御検討の程度では、末端の医師は安心して今後の医業に従事する自信をつかめないわけでございます。どうか医師が、勤務員、医療従事者をあわせまして、安心して、前途に輝きを見ながら、ほんとう国民の生命を尊重するという働きができますような御審議、御検討を願えますならば、私は問題なく良識のもとに返ると思います。この点私は慎重に御考慮を願いたいと思います。本日まで新聞紙上に出ました古井厚生大臣の談話は、これらの医師並びに従業員に対して将来に光明を認めさせる何ものもなかったことを私はきわめて遺憾に思っております。またつけ加えますが、私は厚生大臣から面会を求められまして拒否した事実は一回もないことを明確に申し上げておきます。さらに前後を通じまして約九時間厚生大臣とはお話し合いをいたしましたが、私は古井さんの結論は中央医療協議会以外にない、中央医療協議会にかけるならば必ず問題が解決するかということについて具体的な御説明を承ったことがないのでございます。
  33. 山本猛夫

    山本(猛)委員 厚生省にだまされ続けたとおっしゃっておられますが、もう少しわかりやすく、具体的な点一、二でけっこうでございます。
  34. 武見太郎

    武見参考人 私の就任前でございますが、健康保険法の改正がございまして、いわゆる保険医療機関というものとそれから保険医というものと二通りに分けられまして、二重指定と称しておりますものができました。このときに当時の担当官が日本医師会においでになって、共産党の診療所をシャットアウトするためにやるのだということを御説明になったわけでございます。当時の理事者はこの説明を真に受けて聞いたわけでございます。何とこれが実施されますと、共産党の診療所はいささかもこれによってシャットアウトされてはおらないわけでございます。私は医療機関の実態から考えましても、共産党の診療所をシャットアウトするという名目でこのような法律を通されたことは、広く国民並びに医師をおだましになったことと私は判断をいたしております。またこの二重指定によりまして保険医療機関というまぼろしの機関ができましたために、医師患者との人間関係法律的には成り立たなくなって参りました。保険医療機関に対して医師歯科医師技術を提供するにとどまって参りました。今度看護婦や従業員のストライキが起きましたが、保険医療機関はまぼろしの機関でございまして、院長といえども――あるいは個人診療所、個人病院の場合は別でございますが、とにかくこの責任者経済的な力も人事権も持っていない場合が多いのでありまして、下手をするとアベック・ストのような形が出てくるわけでございます。医療機関経営の責任を、薬は薬局でなければ扱わせないという厚生省によって医療医師以外の者でも堂々とやってよろしいということが実はこの保険医療機関概念から大きく引き出されたと私は判断をしております。日本医療体系を非常に大きく乱し、医師患者との近代的な人間関係の発生を阻止したという点で、これは私は全部の国民医師とをだましたものだと考えております。  さらにもう一つ例を申し上げます。新医療体系と申しまして、非常に合理的だということを言って宣伝をなされました。この宣伝がどのようなものであったかということは実施をしてみたところでわかるわけでございますが、これがはなはだ非合理的であったことは、これをやっております病院が第二薬局を外に作って、高い薬をそこから患者に買わせなければやれないというところまで追い込んでおります。こういうふうにいたしまして、合理的だと厚生省がおっしゃったものをとりました医者の中には首をくくらざるを得なくなった医者もございます。ある良医が甲表をとりまして首をくくったという非常に悲しい事実もあるわけでございます。厚生省保険局が五年前から合理化と称しておるものを古井厚生大臣によって合理化と叫ばれているということが、これが全医師古井厚生大臣に対する不信感となって現われてくることを私は非常におそれております。古井厚生大臣から中央医療協議会にかけて点数の合理化々々々ということがしきりと言われておりますが、甲表的な合理化というものは私的医療機関の撲滅をねらったものにすぎないものでありまして、決して共産党の診療所をねらったという詭弁は当たっていないと思います。  そのほか数えあげれば切りがないことでございまして、全国の医師ほんとうに心からこの不正直な保険者官僚の発言に対して反感を持っておることは事実でございます。また社会保険旬報の昨年の一月一日号の中の、大橋武夫先生と一ッ橋の高橋教授とここにおいでの滝井先生との座談会におきまして、厚生省が合理的々々々と言った甲表について、大橋先生はあの当時医療費のワクが将来拡大しないために甲表を作ったのだということを正直に述べておられます。私は非常に正直な政治家として、この一文を読んで敬意を表したのでございますが、今日もまだこれを合理的と称している人たちは、これは明らかにうそつきであるという証拠として、私は貴重な発言であると考えているわけであります。
  35. 山本猛夫

    山本(猛)委員 武見さん、この指令書の第一の中に保安要員のことがございますね。これは、あなたのお話を伺っておりますと、妙な感じもするのです。たとえば保安要員は残さないとおっしゃったのであって、残してはならないと言ったのじゃない。これは詭弁のように聞えるのですがね。
  36. 武見太郎

    武見参考人 これは私の方で残せという権限はございません。さっき申し上げたように、残せというのならば本人の承諾と費用の弁償をいたさなければなりません。従いまして残さないといって、自発的に残る人に対しましては何も制約を加えてございません。私ども団体はこの会合に出てこない者に対する制裁権は一つも持っていないわけでございます。
  37. 山本猛夫

    山本(猛)委員 それでは保安要員として自発的に残られる医師会員に対しましては制約をなさらない、こういうわけでございますか。
  38. 武見太郎

    武見参考人 これを制約する権利もございません。
  39. 山本猛夫

    山本(猛)委員 あなたは、命を預かる仕事をしておるのだ、こういうふうにおっしゃっておられますが、保安要員は大部分自発的にお残りになるとお考えでございますか。
  40. 武見太郎

    武見参考人 重症な患者を持っておる人は自発的に残ると考えております。患者を捨てて参加するような医者はないという確信を持っております。これは全国医師の良識としてお聞き取りを願いたいと考えます。
  41. 山本猛夫

    山本(猛)委員 次に、あなたは一斉休診を御発表になったとき、記者会見をなさっておられますね。その記者会見の席上で、この一斉休診の日に病気をする者は悪いとお述べになった。私はこれを私の行く床屋さんの職人さんに聞いている。ですから、床屋さんの職人さんや何かああいう人たちの、つまり国民全体に与えた印象がいかにも強く響き過ぎている。この点何か誤解があるのかどうか。
  42. 武見太郎

    武見参考人 これは、記者会見をいたしましてすっかり済みましてから、コーヒーを飲みながらの茶話で私はこういうことを申しました。日曜日は大学病院も休みである、教授も部長もおらないのだ、当直の医者しかおらない、県立病院へ行っても、課長さんはお留守である、当直しかおらないのだ、こういうときに病気をしては損だというふうな意味で私は話したのでありますが、その片言だけでその雰囲気を全然伝えないで、あのような形で出ましたことは非常に私は遺憾に考えております。これに対する反証といたしまして、私がそれよりはるかに以前に今度の問題に対して、お手元に配ってございますこの壁新聞は私自身が書いたものでございます。この中で私は「人一人の生命を尊ぶ保険に改め誤魔化しの皆保険を阻止しよう」ということを言っております。いかに私が一人一人の生命をたっとばなければならないか、人間を物として大量生産的に取り扱う厚生省考え方に対して、いかに抵抗しているかという点が、私は御理解をいただけるだろうと思うのであります。誤解を招きました点は不徳のいたすところと深く反省をいたすのでありますが、あのような誤解を招く、また病気に、自由に自由なところで、なれるというふうな事実は、どんなに文明が進歩しても私はないだろうと思うのですが、あのような事実が活字になって真実として受け取られるという日本の現状について、私はいささか深く考えさせられるものがあるわけでございます。この壁新聞のポスターをごらんいただきますと、あの発言と全く反対の表現がされていることで、御理解を願いたいと思います。
  43. 山本猛夫

    山本(猛)委員 医療協力にどうして出ておいでにならないのですか。この医療協は基本問題を解決する重要な集まり、それをどうして拒否されておるのでしょうか。
  44. 武見太郎

    武見参考人 中央医療協議会は昭和二十五年に改組されております。この改組されましてからの歴史を調べてみますと、お手元の資料の六と七がそれでございます。この六と七の資料に書いてございますように、今日の制限診療の強化というものは、中央医療協議会を舞台として、これは保険者と官僚の権力をカムフラージュする場として使われたわけであります。これにつきまして、私は慎重に中央医療協議会の実績を検討いたしましたが、まことに残念なことには、医師の良心的な診療を阻害した張本人が、この中央医療協議会という場を使ってされたということでございます。ここは、その構成から申しましても、大臣の諮問案を作るべき当面の責任者である保険局長保険者代表として入っております。その他医療課長も保険者代表として入っております。またそうして自分が諮問案を作って、自分が答申をするのでありますから、そのような形がとられるのは無理からぬことでありますが、とにかくその構成や運営のいろいろな面の十年間の実績から考えまして、国民福祉を守る場所でないという結論は、すでにとうからこの問題が出ているわけでございます。低医療費強要もこの場所を舞台として行なわれております。この中で委員となったある人の説明を私は聞きましたが、厚生省からメモを渡されて、おれはあのとき読んだけれども医師会から聞かれて返事ができないで困った。しかしあとのメモをよこさないので、醜態だったというような話もあります。まことに国民を欺瞞するサル芝居的な場所にすぎないのであります。このような形で、国民の生命と重大なつながりを持たせますところに私は非常に問題があると考えます。さらにある新しい薬を使うにいたしましても、たとえて申しますとマイトマイシンというふうな、日本で作りまして、外国で保険に採用され、堂々と使われております薬が、今日まだあらゆる医師患者の熱望にもかかわらず、中央医療協議会にかからないのゆえをもって使われておらないのでございます。このようなことで、私は医師の良心をどのように当局がお考えになっているかわかりません。また一ぺん薬事審議会というところで、大臣の諮問によって正しく使うことが許可されました薬が、大多数がしろうとである中央医療協議会でもう一ぺんオーソライズされなければ医師が使えないということは、国民保険のもとにおきましては大きな矛盾でございます。このような矛盾撞着というものは、われわれとしては服するわけには参りません。これは保険者、官僚のたてとなって国民を欺瞞する機関でございまして、この十年間の実績の中で、医療費の問題について申しますならば、昭和三十六年から上がりました一円五十銭の単価の引き上げは、大臣の諮問案は出ておらなかったのでございます。医師側の委員から申し出が強く出まして、議となりましたが、決定をいたしませんでした。当時の谷口会長、ただいま参議院の谷口先生が、当時の総理大臣と直接お話し合いの上で、単価一円五十銭が上がりまして、これが事後報告をされた歴史がございます。もう一回は昭和三十二年、私が会長になりましてからでございますが、このときには、当時の中央医療協議会で全部意見がまとまらないで、羅列的な答申が、多数意見、少数意見の形でばらばらに出たわけでございます。何らの結論に到達をいたさなかったわけであります。そこで当時の自民党七役会議のごあっせんによりまして、私と歯科医師会責任者が呼ばれまして、ただいまここに傍聴しておられる鹿島参議院議員と一緒に七役会議出席をいたしまして、そこで厚生省医師会歯科医師会が五人ずつ委員を出して、十五人懇談会を作って一本にまとめたらどうかというごあっせん案をいただきました。これをいたしましたが、頑迷なる厚生省側はついにここでこの問題に結論を与えなかったので、党のごあっせんにもかかわらず、厚生省の頑迷によって、これは流れたのであります。そこで最後に橋本厚生大臣と私との話し合いによりまして、甲乙二表ができて、今日使われております乙表は中央医療協議会には諮問されなかった乙表でございます。これが私と橋本厚生大臣と話し合いによりまして、告示されまして、中央医療協議会は事後報告をされております。このようなことでございまして、重大な経済問題に関しましては、中央医療協議会は過去十年間一回もその機能を果たした歴史がないのでございます。この実績こそ、中央医療協議会に対して私ども出席をいたさない大きな理由でございます。
  45. 山本猛夫

    山本(猛)委員 それでは、時間がございませんので結論に入りますが、武見さん、この四項目の要求をなすっておられるのですね。これはなんでしょうか河村さん、歯科医師会の方も御同様ですね。そこで、これは一体全部の要求が貫徹されなければ、たとえばこの十九日の一斉休診という指令を撤回なさらないとおっしゃるのか、あるいはまた、この四項目の要求の中の一部が満されれば、十九日の、発動されました指令を御撤回なさるとおっしゃるのか、その辺のことをちょっと伺います。
  46. 武見太郎

    武見参考人 四項目の要望は、最小限度の医師の良心を満たすだけの要望でございます。日本の現実から申しまして、決して高い要望ではございません。ことに医療費の問題に関しましては、インドネシアやその他の国よりも、日本医師医療費が安いという事実を一つ御記憶を願いたいと思います。この四つの要望は、どれに重点を置いて、どれを軽んずるという要望ではございません。  それから、十九日の問題にしぼって、一斉休診をとりやめるというお話でございますが、私はそのお考えはわからないわけではないのでありますが、先ほどからるる御説明申し上げましたように、日曜休診という光によって、医療の近代化の窓をあけようとする私ども努力はお認めを願いたいと思うのでございます。労働基準法その他の面から考えましても、日曜休診はいたしますが、急患やなんかの場合には、そこにおりましたならば、医者は必ず手当をいたすものでございます。急患はこの限りにあらずと書いてございます。また預かっておる重症の患者に対しましては、引き続いていつも、日曜日でも夜中でも診療をいたしておるわけでございますから、十九日の一斉休診がストライキでないという前提に立ってこれを取りやめろとおっしゃるのか、ストライキと似たように国民がとるからやめろとおっしゃるのか、どちらか私は了解できないのでございますが、どうでございましょうか。
  47. 山本猛夫

    山本(猛)委員 御説明を伺いまして、御説明の通りでありまするならば、またこれを国民全部がストライキではないのだというふうにとっておりますならば、かようなことを申し上げないわけでございますけれども国民全般の、疑惑かもしれませんけれども、お出しになりました指令に対しましては、国民全般はストライキであるかのごとくとっておりますことは間違いのない事実でございますので、きょうの御説明国民の疑惑が解ければ幸いでございます。また国民の疑惑を解いてもらいますために、この社労の委員会を通じて御説明お願いしたわけでございます。私は以上で質問を終わらしていただきますが、参考に伺っておきますが、医療協のことで、お支払いになる方とお受け取りになる方のお話を伺いましたけれども、従って医療協の性格というものと医療協の現状というものを伺いましたが、この医療協の中に健保連が入っておりますね。その健保連が、巷間伝えられるところによると、また医師会の役員の方から――役員の名はここでは匿名にいたしておきますが、伺ったことでありますが、健保連は大へんな財産を持っている、その隠し財産のごときは五千億もあるのだ、それを調整すれば、この問題の一部を解決するのに大へんに役立つのだ、ということを武見さんがどこかでおっしゃらないとかいったようなことも伺っているのですが、その間のことをお差しつかえない範囲でお聞かせ願いたい。
  48. 武見太郎

    武見参考人 健康保険組合連合会と申しますか、保険者団体と申しますものは、被保険者と雇い主から保険料を取り立てまして支払いをいたす事務屋でございます。これは医療の主体を握るべきものではないのでございます。保険者というものはあくまでも事務担当者でございます。しかるに、政府管掌健康保険は、零細なる企業を集めて政府管掌健康保険ができ上がっているわけでございますが、大企業の最も報酬の高い健康保険組合を中心にいたしまして健保連合会ができているわけでございます。御承知のように、年々の賃上げストによりまして、労働者の生活は非常に向上をいたしたものと私は考えております。またこれによりまして、保険料率も同じでございますので、保険者に入ります保険料は非常にふえていることは計数的に明らかになっております。しかるに医療費は一・二四倍でございますから、どうしても保険者の手元に莫大な金が一部分のところに残るわけでございます。これらの人々は家族保険料を払っておらないわけでございます。しかも家族は十割給付を受けております。しかるに国民健康保険の被保険者は、家族保険料を払いまして、五割給付しか受けておらないわけでございます。こういうことで非常に給付の不公平というものが現在出てきております。この不公平、もう一つ保険料負担の不公平というこの二つの面の矛盾が調整されません限り、健保連は、大蔵省関係の共済組合等もそうでございますが、私どもの調べましたところでは、表向き三百何十億というものが出ておりますし、莫大な不動産を持っておられることも事実でございます。主な東京新聞に出ておりましたところによりますと、債券の買い入れの大口として健保組合が報告記事として出ているようなことでございまして、健康保険組合が保険者としての働きよりは、むしろ経済行為をする団体になってきていると私は考えます。中央医療協議会は、この最も富裕な階層の保険者発言が最も強く、そうして政府管掌の被保険者の代表は保険局長医療課長でございますから、政府管掌の零細なる、ほんとうに必要な階層の声は役人が代弁するという非常な不合理の形をとっているわけであります。また国民健康保険は非常に条件が悪くなっておりまして、雇い主負担がないわけでございます。こういう関係で非常なアンバランスの状態は、国民が正しくこれを見ますならば、私は早急に解決をしていただかなければならぬと考えます。この現状維持を今日まで続けて参りましたのは、医療協議会そのものに私は責任があったと考えております。このような中間的な団体が不当な財産を持ちますことに関しましては、私どもは、それが保険施設の名目で医療行為が行なわれましたり、いろいろな付加給付が行なわれるにいたしましても、国民保険という観点から考えますならば、必ずしも好ましい現象ではないと考えております。
  49. 山本猛夫

    山本(猛)委員 最後に安藤厚生政務次官お願いをいたしておきます。資料の要求をいたします。国保連のように、赤字に悩んでいるところもある一方、この健保連においては隠し財産五千億ということが、巷間かまびすしく伝えられているのですよ。事実はどうかわかりませんが、たとえば金が余って一億で土地を買ったというのです。それが十億にも値上がりをしている。一億で買った土地が十億に値上がりしているのだという、大へんな財産をも持っているということが巷間伝えられている。事実のほどはわからぬ。ところが、かようにして医療費の問題で今日参考人からるる伺ったようなみじめな状態も一方には行なわれているということに対しては、われわれはこの実態を知らなければならぬ。そこで健保連に関する資料を御提出願いたい。  以上で私の質問を終わります。
  50. 大石武一

    大石委員長代理 これより一時半まで休憩をいたします。    午後壁日時五十八分休憩      ――――◇―――――    午後二時十一分開議
  51. 山本猛夫

    山本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。河野正君。
  52. 河野正

    ○河野(正)委員 十九日の一斉休診を中心といたしまして、医療問題、特に国民医療に関する医療問題もきわめて重大な段階に到達をしたというふうに私は考えておるわけでございます。従って国民もこの問題に対しましてひとしく重大な関心を持って見守っておりましょうし、またわれわれ国会も、この問題を何とかして円満に解決の道を求め、さらには国民医療に対します不安を除去する、そういう意味で実は私どももこの委員会を開催して、そしてことに医療立場で重大な立場をとります両医師会長を招致して、いろいろ貴重な意見を聞き、そういう愚見の中からわれわれ国会議員は国会としての使命を達成していこう、こういう重大な使命を持った本委員会でございますが、この委員会に実はさっきも滝井委員から指摘がありましたように、国の厚生行政に対しまするところの最高責任者である厚生大臣出席をしない。このことは、厚生当局が、これだけ医療に対しまするところの不安を持ちつつある国民に対して、決して誠意と熱意を示した態度ではない、私はかように痛感をいたす次第でございます。厚生大臣こそはまず率先をしてこの委員会出席をし、そうしてあらゆる貴重な意見を聴取して、迅速に直ちにこの問題の解決の方向というものを発見して、国民の不安を除去するために最大の熱意を傾注すべきだというように考えておるのでございますけれども、さっき申し上げまするように、厚生大臣出席しない。このことは、私は国民に対しましても必ずしも親切な態度でない、国民の誠意を裏切る行為ではないか、かように考えるわけでございまするが、この点は今日の段階におきましてはきわめて重大な問題でございまするから、私は、厚生省の最高責任者とみなしております厚生次官から、まずもって御所信を一つ御披瀝を願いたいと思っております。
  53. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 お答え申し上げます。  大臣参議院の方の予算の審議に出席中なのでございまして、個人の都合によってここに現われないというのではございません。ただいま間もなく参議院の方の都合がつくそうでございまして、ここへ現われることと存じます。御了承をお願いいたします。
  54. 河野正

    ○河野(正)委員 間もなく出席するというようなことでございますけれども、本日の委員会でどのような重大な案件を審議するかということは、すでに数日前の委員会において決定した事項でございます。なるほど、今次官からもお話しのごとくに、参議院の予算委員会がきわめて重大な審議であることも私どもは否定はいたしませんけれども、しかし私どもさっきからいろいろと経緯を伺っておりますると、必ずしも参議院の審議に出席をして、そうして今日のきわめて重大な案件をかかえておりまする本委員会出席できないというふうな状況ではなかったと私どもは推察をいたしております。そういたしますると、なるほど一方におきまして参議院の審議もやっておりまするけれども、問題は、今日の国民医療に対しまするところの国民の不安をいかにして除去していくかという熱意がきわめて欠けておるのではないか。いろいろ理由はございましょう。しかし私どもは、熱意、誠意という点においてはきわめて欠けておったというふうに見ております。この点いかがですか。
  55. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 重ねてお答え申し上げますが、大臣におきましては、十九日を控えての主管大臣といたしまして、その上に思いをいたし、憂慮いたしておりますことは、私のはたから見ておる目におきましても察せられるところであります。ただしかし本日は、参議院と当委員会との間において、両方へ出席せよとの強い御要請でございまするので、その両院の御相談に従って参議院の方へ出席いたしておるものと私解釈いたしまして、参議院が重く、当委員会が軽々しく考えられるからということで参議院に行っておるのではないものと存ずるのでございます。
  56. 河野正

    ○河野(正)委員 厚生次官はいろいろ理由を並べての御答弁でございまするけれども、私どもはこれ以上追及しようとは思いません。ただ、国民医療に対しまする国民の不安、これに対して、国の厚生行政の最高責任者でございまする大臣が、きわめて熱意を持っておるというような御答弁ではございまするけれども、それは単なるかけ声であって、真にそういう誠意と熱意があるならば、私はやはり参議院の審議というものも重要でございまするけれども、必ずしも本委員会に出てこられなかったという理由にならぬと考えております。そこで、私は深く追及はいたしませんけれども、しかし今厚生次官がおっしゃいまする御答弁というものは、全くかけ声であって、実の伴わない詭弁である、私どもはこういう理解をいたしまするから、さよう御承知おきを願っておきたいと考えております。  それでは、貴重な時間でもございまするので、さっそく本論に入りたいと思いますが、今回の、日医が行ないまする十九日の一斉休診というものは、これは、医師会の会員諸君が、下部から盛り上がる自主的な意思によって全国一斉に行なうという、ある意味におきましては、さっきも申し上げますように、日本の歴史始まって以来の一つの重大な事態ではなかろうかというふうに私は考えております。  もともと、今回の全国一斉休診が行なわれる、これに対しまして、国民はひとしく関心の眼を注いでいるわけでありますが、私は、それに対してはいろいろな理由があるかと考えております。もちろん今度の問題を契機として医療費の引き上げが行なわれる、そのために、国民医療に対しまするしわ寄せと申しますか、負担というものが増加するのではなかろうか、そういう立場からの関心もございましょう。しかし今度の場合、関心が喚起されます一番大きな理由というものは、巷間伝えられますところの保安要員を置かない、ここに私は、国民がいろいろの立場から関心を持っておるでございましょうけれども、その中で一番大きな関心の理由というものはそこにあるのではなかろうか。なるほど、先ほど武見会長からいろいろとこの保安要員の問題等につきましても御説明がございました。そこで私はやはり国民が大きな不安を持っております以上は、その不安というものを除去してもらう必要があろうかと考えております。そこで、先ほどからいろいろと武見会長の御説明によりまして、私どもは私どもなりの理解をいたすわけでございますけれども国民の批判というものがそういう点に特に大きなウエートを持っているといたしますならば、やはりここで国民医療に対する国民の不安を除去する――会長はおそらく良識ある会長でもございますので、この国民医療に対する不安の除去について一つの大きな確信を持っておられると思いますけれども、重ねて本委員会におきましてもその確信のほどを明確にしていただきまして、国民にこの十九日の一斉休診に対する正しい認識を与える一つの必要性というものがあるのではなかろうかというように私ども考えて参っておるのでございます。そこで一つこの国民医療についての不安除去に対する確信のほどをこの席上において明確にしておいていただきたいと思います。
  57. 武見太郎

    武見参考人 国民に対する不安とおっしゃいますが、診療を担当しております医師が不安を一持って患者に接している、また不満を持って患者に接している態度が失われなければ、医師立場から国民にごまかしの安心感を与えることは私は偽善であると考えております。こういう点から考えまして、真実を国民に訴えるために、十九日を休むのでございます。また日曜日は当然休むべき日でございます。こういう点で、先ほど来申し上げましたように、日曜日を一日休みますが、またこれからも私は日曜を休むように指導する方針でおります。これによりまして、医者が休んでくれることの方が国民が安心できるはずであります。休まないで、勉強もしないで、請求書ばかり書いているようでは、国民は安心して医者にかかれなくなるのがほんとうの姿であります。国民医療の不安を与えている最大の責任は、私は厚生省におありになると思います。むしろ厚生省医師会の言うことをお聞きになることによって、国民に安心を与えていただきたいと考えております。
  58. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいま武見会長から、一斉休診よりも、むしろ今日の医療の実態というものを国民に正しく認識させる方が、より国民の不安を除去する道であるというふうな御答弁があったわけでございます。もしそういう医師会の方針に基づいて、なお国民に大きく不安があったとするならば、それは一にかかって厚生省当局の責任である、こういう御答弁があったわけでございます。この点に対して安藤厚生次官いかがお考えでございますか、一つ御所信を承りたいと思います。
  59. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 ただいまの武見会長の御意見に対して、私の所見を述べろとのお言葉でございました。先ほど武見会長のお述べになりました種々の医療制度についての問題点につきまして、多々考えさせられるところのものがございます。しこうしてこれらの問題については、今後私たち立場からいたしまして、大いにこの御意見参考としてもろもろの制度に改善を加えていくべきものは改善を加えていかなければならぬ、かように考えておる次第でございます。
  60. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいま安藤次官の御答弁を承っておりますと、何か十九日の一斉休診ということがあったから、いろいろと医師会の、要望等について検討を加えるべき点は検討する、改善を加えるべき点については改善をする、こういう御意見の開陳があったようでございます。ところが先ほど来両医師会長の御意見の開陳を承って参りますと、この問題は今始まったことではなくて、すでに昨年の八月から実はいろいろと要求項目を掲げて、この要求項目がいれられなければ重大な事態が予見されるぞ、こういうようなことで今日まで経過してきたような御意見の開陳もございました。そうだといたしますと、先ほど武見会長からも、もし責任があるとするならば一にかかって厚生当局の責任だというような御意見もございましたが、先ほどのような厚生次官の御意見でございますならば、全く私は厚生省当局の職務怠慢によって今日の、不測の事態というものが発生をした、こういうふうに実は判断せざるを得ないのでございます。もし誠意を持って、熱意を持って今日までの諸懸案を解決しようという御意図があったといたしますならば、何もどろなわ式に今さらあらたまって十九日の一斉休診を中心としてお考えになる必要はない、かように私は考えるわけでございますが、その点いかがでございますか。
  61. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 先ほどの先生からの御質問が、ただいま武見会長のお答えになったことについてどうであるかというふうに私は受け取ったものですから、ただいまのようなお答えをいたしたわけでございますが、ここに午前中お述べになりました武見会長の御意見は、他の機会において私もいろいろと承っておりまして、承知いたしておりました。それでこのためにはわれわれの立場において着々となすべく努力して参ったものでありますが、いかんせんわれわれども任を帯びましてその日からほとんど予算編成の仕事に没頭いたしまして、かつまた特別国会にも入りました等々のことから、見るべきこうしたものということを今日までなし得ないで参っておることは、はなはだ遺憾に存じておる次第でございますが、来たるべき十九日の一斉休診に対して、よって生じたる事態に対して厚生省において責任を負え、こういうお言葉でございますが、その原因のいかんにかかわりませず、国民医療行政というものをあずかっております厚生大臣といたしましては、またそれを補佐いたすべき立場におります私といたしましては、よって生じましたる政治的責任について当然負うことは覚悟いたしておる次第でございます。
  62. 河野正

    ○河野(正)委員 私がなぜその点について繰り返し御所見を承ったかと申しますると、先ほど来武見会長は、患者の人権を守ることも必要であるし、さればといって医師個人の人権を守ることも必要である。従って今度の十九日の一斉休診というものは、基準法その他で定められておりまするところの権利を擁護する一つの実力行使である――実力行使という言葉がいいか悪いかわかりませんけれども、そういう行為である、こういう御所見の開陳があったわけです。それですから、世間では、こういう言葉が適切であるかどうかわかりませんけれども、一部においては、医師会は圧力団体だという見方もあるようでございます。これは医師会にとっては不本意でございましょうけれども、そういう見方もあるようでございます。そこで、こういう一斉休診という一つの旗じるしを掲げて、何か裏の方で四畳半的な取引をするのじゃなかろうかというような偏見も実はあるわけです。ところが武見会長は、ここで明確にされましたように、この十九日の一斉休診というものは医師の個人の権利を守る一つの行為である、こういうふうに意見の開陳をなさっておるわけです。そうしますと、先ほど来厚生次官の御答弁を承って参りますると、何か一斉休診があるから、一つ聞くべき意見は聞かねばならない、改善すべき点があるならば改善しなければならない、何か一斉休診に水をさすために、そういう一つの甘言と申しますか、先ほど来武見会長から、いろいろと今日まで厚生官僚からだまされたというような御意見もあったようでございまするが、そういう一つの甘言ともいうべき表現をなされておるのじゃなかろうかという気もいたすわけでございます。  そこで私、武見会長にもう一度お尋ねをして御意見を承っておきたいと思いまする点は、それは、いろいろ世間が言っておりまするような、医師会の今度の行動と申しますか行為と申しますか、そういう見方に立つ行為なり行動でなくて、医師個人の権利を守る一つの行為である、人権を守る行為である、こういうふうに基本的にはお考えになっておるであろうと思いまするが、そういう点に対しまする御所見も、この際本委員会におきまして明確にしておいていただきたいと考えております。
  63. 武見太郎

    武見参考人 私は日曜休診は今後励行するように会員を指導する方針でおります。具体的内容を申し上げますと、その四回の休みのうち、一日は公衆衛生活動をやる、一日は衛生教育を徹底的にやる、あとの二日間は休養と勉強とをする、こういう形で組織的に医師会を新しい制度に乗せていく方針でおります。
  64. 河野正

    ○河野(正)委員 今、武見会長からも、今度の一斉休診に対しまする基本的な考え方というものが明確にされたわけでございまするが、そういう認識の上に立って、厚生次官は、今後どういう態度でこの問題に対して臨んでいかれようとしておられまするか、それに対します所見も一つこの際明確にしていただきたいと考えております。
  65. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 ただいまの武見会長の今後における日曜日の休診の指導方針を承りますと、これはこの十九日に行なわれまする医師会医師の人権を主張し、現在の医療制度に対して根本的改善の要求を持たれたこの休診とは違って、医師としても当然日曜日くらいには休養もし勉強もし、さらに医師としての立場から社会活動をするというような建前において、日常のこととしてお扱いになられようといたしておられるようであります。しかりとするならば、それに対して今後その日曜日にどの程度までの先生方のお休みが行なわれるものやらも具体的に今後において承って、これに対して医療行政をあずかり指導する立場に立つ者として行動していかなければならぬだろう、かように考えております。
  66. 河野正

    ○河野(正)委員 先ほどから、武見会長からも、今度の行動というものは医師の権利を守るための行動であるというふうな御所見の開陳がありました。今、厚生次官からも、それに対しまする御意見の開陳をいろいろと承ったわけでございますが、どうも厚生省当局の感覚と申しますか、そういう点が非常に疑われるような気持が強くいたすわけです。そういう気持でこの問題に対処されてきた。そこに私は、今日この、医療問題が非常に大きく国民関心を呼んで参りましたが、もし国民が今日の時点において国民医療に大きな不安を持ったといたしまするならば、その責任は、何らかどうも今までの厚生省当局の感覚が非常にずれて一おった、そういうところに基因するかのような印象が強くいたします。おそらくどうもこれはちょっと勝手が違ったなというような気持で厚生次官もおられるのではないかと思いますが、そういうところに今日の問題の原因があったかのような感じが私は強くするわけです。私は、この点に対しましては、厚生省がさらに反省をして、今後こういう問題に対しまする解決のための意欲というものを一そう強く持っていただかなければならぬというふうに思うわけでございますが、その点に対しまする厚生次官の御確信のほどをこの際明確にしていただきたいと考えております。
  67. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 お言葉のように、決してこの問題を等閑視いたすものではございません。先生方と同様に事態を憂慮はいたしておるものでございます。しこうしてこの十九日を一つの契機としてお取り上げになっておられます医師会の御主張に対しては、十分に耳を傾けて今後において検討していく、かように申すのでございまして、ただ十九日以後の日曜の御休診に対しては、この十九日というものが一つの契機にはなったかもしれませんけれども、それ以後の日曜においては、医師としての日常生活一つとして当然休むという建前をおとりになっているやに承りましたので、私は、もとより先生方におかれましても、日曜くらい心から安心してお休みになれるようにしていっていただきたいし、また御安心になれるような施策を今後においてせねばなるまい、かように申すわけでございまして、かようにまた考えておるわけでございます。
  68. 河野正

    ○河野(正)委員 どうもいろいろと御意見を重ねて承って参りますと、何だか医師会の今日唱えられておりまする諸要求と申しまするか、その本質、基本的な態度、そういう点に対しまする認識が非常に薄かった。午前の委員会におきましては、委員長から、この問題については政府も与党も非常に強い熱意を持っておるのだというふうな御意見の開陳もあったようでございまするけれども、どうも質問を繰り返して厚生次官から意見を承って参りますと、何だか少しピントがぼけておるというふうな感じがいたします。おそらく厚生次官も静かに胸に手を当てて考えていただければ、私の指摘いたしますることがよくおわかりになるだろうと考えております。もし今日国民医療というものに対しまして非常に大きな不安を持っておるとすれば、一にかかって厚生省当局の怠慢なり、さらには感覚のずれなり、センスがなかったというところに基因するのではないかということを、私はここではっきり申し上げても過言ではなかろうと考えております。  そこで私もそういう理解を明確にいたしまして、そうしてさらに話を発展させて参りたいと考えておりまするが、今度の十九日の一斉休診は、世間でストライキであるかのような言い分をされておりまするけれども、そういう点に対しまする医師会の真の考え方につきましては、先ほどから武見会長からるる申し述べられましたから今さら言葉を重ねませんけれども、どうも私ども今日起こって参っておりまするいろいろな現象をながめて参りますと、たとえば先般来病院ストが次々と波及をして拡大をいたして参りました。そういう病院ストあるいはまた今日医師会宣言いたしておりまする一斉休診、こういう現象が起こって参りますと、どうも厚生省当局もあわてて何とかそういう政治的な責任を回避したいというふうな行動もとられておるようでございまするが、私どもは静かに振り返って参りまして強く感じますることは、私ども武見会長からも言われましたように、医師医師としての人権があるのだ、また今日、日進月歩の科学の進歩におくれないように、そのための努力もあるいは研さんも重ねなければならぬ、そういう理由での一斉休診の御解明等もございました。今日の医療の現状をながめて参りますと、今回行なわれております病院ストでも明らかでもございまするように、労働過重、病院病院で、これは後ほど医療制度の問題としても取り上げたいと思いまするけれども、労働過重あるいは低賃金、こういうことが今日の病院ストの一番大きな原因になっておるわけでございまするが、そういう労働過重なり低賃金、一方におきましては皆保険というワク内でいろいろな義務づけが行なわれておる。そういういろんな要素によって、今日医療従事者の心中深くいろんな欲求なりふんまんというものがだんだんと充満してくる。そこで私は、たとえば病院ストを行なう、あるいはまた一斉休診の解釈につきましては、先ほど武見会長からいろいろと御説明がございましたので、この点につきましては触れませんが、そういう病院ストという一つの現象が起こってくると厚生省はあわてるけれども、しかしさっき申し上げますように労働過重なり低賃金、あるいはさっき武見会長からもお話がございましたように、医師が今日の日進月歩の科学の進歩に順応しようということで勉強しようといたしましても、過重労働のために時間がない、あるいは経済的な理由でそういう余裕がないということで、いろんなふんまん、欲求というものが充満をしてくる。そのために国民医療に対しまする意欲というものをだんだんと低下さしていく。これは午前中の意見の開陳の中でも武見会長がちょっと触れられたと思いますけれども、そういう一つの要素というものは決して軽視してはならぬ。単に厚生省、政府は、ストライキが起こる、一斉休診が起こる、何とかしてまるめようというような努力と申しますか、責任回避の行動はとられるけれども、ところが実際には今申し上げましたような一つの潜在するところの大きな意欲の低下というものが充満しつつある。この姿というものは、私は決して軽視してはならぬし無視してはならぬ、かように考えるわけですが、この点は午前中武見会長もちょっと触れられたと思いますけれども、これは今日行なわれておりますところの病院スト以上に私は重大な問題だというふうに理解いたしますので、この際一つ武見会長から重ねて意見を御披瀝願っておきたいと考えております。
  69. 武見太郎

    武見参考人 医師ほんとう自分の全知全能を傾けて、技術的にも人格的にも全力を患者に集中できないということは、医師にとりましては、相手の命を取り扱うとき、これくらい大きな不安はないわけでございます。また医療従業員がすぐれた能力を持っておりませんと、どんなすぐれた医師でも正しい医療自分の能力通りにふるうことができないわけでございます。医師医療従業員の、チーム・ワークでこそ今日の医療は成り立ってくるわけでございまして、医師から始まりまして、医師歯科医師、薬剤師あるいは検査技師、エキス線技師その他の要員、看護婦に至るまで、そのチーム・ワークにおきましてりっぱな医療というものができなければならないのでありまして、その一カ所に穴があきましても今後の医療は進展いたさないと私は考えておるものでございます。こういう意味におきまして、先ほど来私が申し上げましたような、その一番の責任者である医師が、非常な不満と不安とを持ち、さらにまた従業員である看護婦やその他の人々の待遇が非常に悪いために、優秀な従業員を得ることかできない。それどころじゃない。今日は病院ができましても、看護婦の絶対数が足りなくて、なり手がないというような状態でございます。この状態に追い込んだ原因は、厚生省の低医療費政策が私は最大の原因だと思います。このような組み合わせのもとにおきましては、私は意欲的な診療というものはとうてい期待することができないわけであります。私が先ほど壁新聞で示しましたように、一人々々の命を尊重する、同時にまたあらゆる障害を乗り越えてベストを尽くそうという意欲が今日の段階でははばまれております。この責任医師医療従業員にはいささかもないことを私は明確にしておきたいと思います。
  70. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいま国民医療に対しまする一つの体制と申しますか、そういう点に対しまする医師会長としての御意見が開陳されたわけでございますが、こういう医師会長意見に対して厚生省当局はいかがお考えになりまするか。この点は非常に私は重大だと考えておりますので、この際一つ御所見を明確にしていただきたいと思います。
  71. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 お答えいたします。ただいまの武見会長の御意見でございますが、医療費の非常に低いということについては、私たちといたしましても一応同感いたしておるところでございます。それゆえに、十分ではございませんでも、来年度の予算の中に医療費の値上げの予算を組んだようなわけでございます。しこうして先ほど来お話しの十九日の予想されまする事態、あるいは病院スト等について、にわかにこれが対策を立て、責任を回避するがごとき傾向があるということでございますが、病院ストにいたしましても、また十九日の予想されます事態にいたしましても、先生のお話のごとく、まことに人命の尊さに思いをいたせばいたすほど、この事態を重視して、この事態に対処すべき対策を立て、処していくということはなくてはならぬことであると考えております。    〔委員長退席、柳谷委員長代理着席〕 ただ、これまでの過去の幾つかの蓄積されてきた、ストを起こさねばならぬ不満、あるいは一斉休診ということにまできた諸先生方のあり方というものに対して、制度的な上からこれを十分に是正すべきものありと認識いたしますときに、これを是正していくことにやぶさかであってはならないし、あくまでわれわれはそれに熱意を持っていきたい、かように考えておるわけでございます。
  72. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいま厚生次官から、制度上の問題等も御発言があったようでございますが、なおまた武見会長からも、現在の医療に対して医師が全知全能をもってやることが不可能だというような御意見の御開陳もあったようでございますが、今日のこういった諸問題を抜本的に解決をする――さっきたまたま厚生次官からも制度上の問題がございましたので私は申し上げますが、私どもが今日非常に考えておりますることは、今日の医療行政、さらには保険行政というものがてんでんばらばらの形に置かれておる。しかもてんでんばらばらの形に置かれておるという上に、さらには統制的な保険行政というものが医療行政の前に大きく障害として横たわっておる。そこに私は今日の医療問題を抜本的に解決するための一番大きな障害というものが横たわっておるのではなかろうかと思う。もう少し突っ込んで申し上げますならば、本来の医療行政というものが全く弱体で、一方の統制的な保険行政というものが力を持ち過ぎておる。そういうところに今日の医療問題の大きな隘路というものが横たわっておるのではなかろうかというふうなことを私ども考えて参りまするというと、単に今日厚生省が言っておりまするように、今日いろいろ要求があるので一〇%程度医療費のワクというものを予算のワクで拡大をしたのだ、そういうことだけで今日の問題を解決するということはとうてい不可能である、かように私は考えるわけです。こういう点に対しまする御意見をこの際武見会長から一つ承っておきたいと考えております。
  73. 武見太郎

    武見参考人 ただいまのお考えは非常に現実をえぐったお考えであると、私も全く同感でございます。医務行政があたかも保険行政のほんの一部分であるかのごとき形をとってきております。これは保険行政と申しますよりは、金を支払う側が独裁的な形をとったという表現が当たっているように私は思います。必ずしも保険という言葉を用いませんでも、金を払う側の独裁体制が災いをしていると考えます。また、学問の進歩に対応した医療行政が、厚生省の現在の機構でははなはだ不十分でございます。でき得るならば、医務局の行政が、けさ冒頭に私が申し上げましたように、純医学的な見地に立ちまして、全く新しい態度で改変されなければなりません。厚生大臣政務次官も、制度の抜本的改正と言っておられますが、私は、制度の抜本的改正をなさってもできない最後の堅塁が残ると思います。それは官僚主義の権化であります。この官僚主義、権力主義の学問を曲げて恥としない体制がなくなりませんと、いかに制度を改変なさっても、私は、学問も線も伸びませんし、国民福祉も増強されないだろうと思います。こういう点で、私は、医療の面における関係者の魂の結合というものを、強くこの際強調しておきたいと思うのであります。これは高度に技術が進みますほど、この関係を重視していただかなければなりません。
  74. 河野正

    ○河野(正)委員 ある意味におきましては、外堀が制度の改変だ。しかし内堀が残るが、その内堀の問題としては、たとえば今日の医療費の問題についても純学問的な立場から検討を加えていくべきだ、こういうお話のようでございました。私ども考えるのでございますが、やはり今日の医療費の問題というものは、数字によって幻惑されるのかどうかわかりませんけれども、何か経済的に医療というものを処理していこうというふうな考え方があるようでございまするし、また先ほど厚生次官からもそういった意味の御答弁があったようでございます。しかしこの科学技術というものが進歩し、さらには高度になればなるだけ、やっぱりそういう問題というものは、純学問的、専門的、技術的に解決しなければならぬ、こういう武見会長意見については、私どもも同感でございます。しかし、今日ある紙上では、今の医療問題はちょうどバナナのたたき売りと同じだというような意味の記事が出ております。しかも医者と患者、すなわち医療というものは売手と買手という関係で成り立つわけですが、ところが今日の医療問題は、売手と買手でなくて、仲買いがどうもこの医療問題を支配しておるという傾向が非常に強い。そういうところに私は今日の医療問題というものの解決をはばむ一つの大きい原因があるのじゃなかろうかと思う。私はやっぱりこういう問題の抜本的な解決というものは、もちろん、さっき武見会長からも意見の開陳がございましたように、外堀としては制度の改変、内堀としてはもう一つ学問的、純学術的、そういう観点での解決というものが望ましい。そこに官僚意識の打破があるというような御意見の開陳もございましたが、そういう点に対しまする御意見、これは一つ厚生次官の方にお尋ねをいたしておきたいと考えております。
  75. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 午前中の武見会長の御発言の中に、昨今の医学というものが社会的要因を非常に重視するものであるというお言葉がございました。これはちょうど政治なり制度なりの上から参りますと、いわゆる社会保障という声が強くなってき、それが現実に進展してきたのでありますが、こうした考え方のもとに社会保険医療制度という制度が作られたものと考えられます。もししかりといたしますならば、この社会保険という一つの制度の中において医療が行なわれる、こういう結果になるわけであります。一つ社会保険医療制度という制度の中で医療が行なわれますと、そのワクの中でございます。これに対して、これにはみ出しまする医療の方法あるいは経費等につきましては、当然先ほど来武見先生のおあげになりましたようなお声が出てくることは避けられない事実だと思います。しこうして日進月歩するこの治療方法あるいは医薬、器械等々について、一方においては一つの制度の中でワクをほめておるのでございます。言葉を変えて申しますと、人命尊きか経済尊きか、いわゆる保険経済によって人命を制約するじゃないか、こういう問題が起きてきます。そこには武見先生も先ほどお取り上げになりましたいわゆる診療制限の問題というような事態が考えられなければならぬと存じております。従いましてこうした一つの制度、時代の進むにつれていく保険制度というものについては、私たち熱意を持って貧しき人々のためにもお互いのしあわせのためにも推進していかなければなりませんが、一面また日進月歩していくそのワクの中だけでどうすることもできないものに対して、これに照応するところの人命救助の方法、また諸先生方の医学的良心を御満足願えるような方法を講じていかねばならぬものと考えておるわけでございます。
  76. 河野正

    ○河野(正)委員 この制度の中の運営ということについては私ども否定はしておらぬわけです。その点は午前中も、武見会長は、レールは敷かれたけれどもボロボロのレールだ、そのレールに乗せようとしておるところに非常に問題があるということを指摘されておったようでございます。私どももそういう一つの制度の中でどう合理的に、しかも民主的に運営していくかということが非常に重大だ、こういうような指摘をやっておるわけです。さっき私が申し上げましたように、売手と買手の間の問題でなくて、むしろ間の仲買い業者が権力を握って支配しておるところに非常に大きな問題がある。これはさっき山本委員長からも具体的に資料を出してもらいたいというような健保連の話も出て参りましたが、問題はそういう一つのワク内でこれをいかに合理的に民主的に運営していくか。これは重大な問題でございまするから、そういう一つのワクの中で仲買い業者が安く買って高く患者に売りつける、買手に売りつけるということじゃなくて、そのワク内はワク内の制度内の問題でございまするけれども、それをいかに民主的にあるいは合理的に運営していくかということが問題であるとするならば、私は今の独占資本という立場をとるような健保連、そういう健保連にこの運営を支配されるのではなくて、むしろ買手と元手との意思なり意向なりを十二分に尊重して、そうして運営していくということが、制度の中で最大の効果と最大の能率を上げるゆえんだというふうに考えるわけです。  そこで、制度々々とおっしゃるけれども、今厚生当局が考えられております考え方というものが、制度の中で物事を機械的に処理していこうというところに、私は今日の非常に大きな問題をかもし出す原因があるというふうに考えるわけです。こういう今の一つの傾向に対して、ことに仲買い業的な立場をとっておりますところの健保連が、この制度に対します大きな支配権を持っておるこういう一つの傾向に対して、どういう御所信を持っておられるのか、一つ武見会長の御意見をこの際承っておきたいと考えます。
  77. 武見太郎

    武見参考人 世界医師会の十二憲章の中に、医師患者との間に第三者の介入を許すべきじゃないということがございます。私どもも、民主主義国家群の世界医師会の一員といたしまして、この考え方は非常にもっともであるとして主張するものでございます。この、中に入りました保険者と申しますものが保険の独裁者になっております今日の姿が、私は患者のためにも医師のためにも、一番の障害であると考えます。これと官僚権力と結んでいる現実の姿というものは、おそらく世界に類例を見ない悪い制度であると断言していいと思います。
  78. 河野正

    ○河野(正)委員 時間もございませんから、あとたくさん質問者が続いておりますので、端折ってだんだん結論にいきたいと思いますが、今、仲買い業者的な立場をとっておりまする健保連に対するいろいろな御意見武見会長から承りました。そこで今度は、国民立場から、もう一つ意見を承っておきたいと思います。それはさっき私が申しましたように、買手と売手との話が出て参りましたから、一つ御所見を承っておきたいと思いますが、私が冒頭に申し上げましたように、国民が今日の医療に対しまして大きな関心を持って参りました原因の一つに、医療費の引き上げと申しますか、それに伴って国民医療に対しまする負担というものが、しわ寄せというものが行なわれるんじゃなかろうか、そういう立場から起こっている一つの不安もあると思います。関心もあると思います。私ども党の立場としても、この医療費の引き上げという点につきましては、全く同感だという態度をとっているわけです。しかし、そのために一般国民に対しまする医療の負担が増加するということに対しましては、私どもは強く反対の態度をとっておる。これは御承知の通りである。そこで、私先ほど買手と売手と仲買いという話を例に出して参りましたから、国民立場からこの際一つ承っておきたいと思いますが、今日医師会 歯科医師会も同様でございますが、国民医療を守る諸要求なりいろんな御意見なりを掲げて、いろいろ努力されておりまするが、そういう中で国民医療に対しまするしわ寄せが行なわれないようにというような立場から、やはり日医なり日歯の方も努力して、そうして国民の理解の上に立った行動というものを展開していただきたい。これは日本医師会の方も歯科医師会の方も同様でありまするけれども、そういった考え方を私どもは強く持っておるわけでございます。そういう点に対しまする日本医師会歯科医師会の御意見なり御所見なりもこの際一つ国民のために承っておきたいと思います。
  79. 武見太郎

    武見参考人 医療費の増大の問題は、国民負担として重要な分野を占めることは私どもも、考えております。しかしながら現物給付の陰にかくれまして保険者団体医療費を値切って、非常に粗悪な医療を供給している姿というものが社会保障の名のもとに行なわれることは許されないと私は考えます。この点で、私が十九日の日曜日に医療の実情を国民に訴えるというテーマを選びましたのは、そういう趣旨でございます。また日本医師会が、要求いたしました三円引き上げの問題について、国民負担がどのようになるかということにつきましては、専門家といろいろ負担の区分を検討いたしております。また厚生省案の一〇%の場合には、どのように被保険者一人当たりに国庫負担が分布するかという点も検討しておりますが、今日の制度のもとにおきましては、はなはだ負担の公平を欠いておると私は思います。従いまして医師会の要求は、技術者として、診療担当者として、最小限度の要求でございます。この負担の公平化については、私は政府において善処していただくより方法がないと思います。でき得るならば大幅の国庫負担によりまして、多数のボーダーラインの階層に対して重点的な施策が行なわれることを強く期待しないわけにいかないのが私ども考え方でございます。
  80. 河村弘

    河村参考人 ただいま武見会長からの発言に対して、私も全面的にさように考えます。しかしここで私どもが特に考えなければいけないことは被保険者、こういう方面にいきます負担ということであります。その意味におきまして、国庫負担ということを私たちは強く出しておるわけであります。従いまして国庫負担によるところの医療費の引き上げ、こういう面を強く要求しておるわけでございまして、この意味において一つ十分なる御了察を願いたい。またボーダーラインにおける人々に対して、またそういう関係のある方々に対しては特にわれわれは留意を持ってこれに臨むべきである、かように考えておる次第でございます。
  81. 河野正

    ○河野(正)委員 だんだん結論に入りたいと思いますが、古井厚生大臣が一月二十五日に大阪で記者会見を行なって、制限診療の撤廃、診療報酬の引き上げ、事務の簡素化等々、これは日医の要求もかなり入っておりますが、そういう一つの解決の方法として償環方式を採用したらどうかというふうな御発言があったようでございまするが、この点は今後及ぼす影響というものも非常に重大だと考えております。そこでこの厚生大臣発言について、さらに一つここで明確に厚生次官からも御所見を承っておきたいと思います。
  82. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 ただいまの御質問は、確かに厚生大臣が大阪の旅行の途次記者会見において申し述べたことのようであります。また私もしばしば厚生大臣のお話の中に、それに対して熱意を持っておられることを承って承知いたしております。ただしかし、それがただ一つの打開の道であるというきめ方をしておるのではなくして、もしそれ言葉を変えて言いますならば、問題点としてはこういうものがありこういうものがある、これらの問題についてどれを採用すればいいか、どの点からいけばいいかということについて自分は考えているのだ、そういう意欲を持っているのだと申されたものと存じまするし、その後において、今日どの方法で解決していくのだと御決心になっている事実をいまだ承っておりません。
  83. 河野正

    ○河野(正)委員 これは次官だけでなくて、適切な言葉でないかもしれぬけれども、私は厚生大臣の非常にずるい表現だと思うのです。というのは、いろいろな方法論を並べ立てて問題の焦点をぼかしていこう、こういう考え方というものが支配しておるのじゃないかというようなことを、これは償還方式に限らず医療費の引き上げのワクの配分についても、こういう方法がある、こういう方法があるというような所見がしばしば述べられてきた点から見ても、こういう言葉は申し上げたくないのですけれども、まことにずるい方法だというふうに私どもは考えておるわけです。そこでこれは厚生大臣が言ったことですから、いずれ厚生大臣に質問をしてよろしいという党のお許しが出たならば一ついろいろ追及して参りたいと思いまするけれども、今日厚生大臣に質問してはならぬという党の方の厳命でございますので、あらためて質疑をいたしたいと思います。とにかくこの償還方式も一つの方式でございましょうけれども、この方式というものは、さっき私が申し上げますように、焦点をぼかす非常にずるい方法であって、一部医師会員の要望というものを聞き入れたような格好で、実際には国民に――先ほど私はいろいろと医療費の負担について触れましたが、国民に負担をおっかぶせてしまう、そういう私は傾向があると思う。きらいがあると思う。そういたしますると、厚生大臣が大阪で述べられた内容はむしろ皆保険保険医療というものを充実、整備していきたい、こういうふうに政府は言っておられるのでありまするけれども、実際には医療保障制度の一つの後退であるというように私ども考えるわけです。この点に対します御所見を一つ武見会長の方から承っておきたいと思います。
  84. 武見太郎

    武見参考人 私はそのお考えを厚生大臣から直接承りました。非常に重大でございますので、私は絶対反対の意思表示をいたしておるのでございます。これは非常にうまい話のように見えますけれども日本で実施いたします場合には非常な困難を伴います。過半数が貧乏人でございまして、現金を持っていない場合が多うございます。それをどうするかという難問がございます。それを今度は何とか解決いたしましたならば、収入の少ない人が多額の診療費を払って大家に見てもらう機会というものは永久に失われます。私はボーダー・ライン以下の階層の人々が必要ある場合に専門の大家に見てもらう機会を失うような支払い方式には絶対賛成いたしかねるということを大臣に強く申し上げたのであります。これは日本医師会長として、私たちヒューマニズムが許さないから、絶対に賛成しないということを強く申し上げてございます。詳しい点は省略させていただきます。
  85. 河野正

    ○河野(正)委員 最後に結論的に申し上げますが、今まで私どもと日医の会長歯科医師会会長さんといろいろと言葉のやりとりの中から御理解をいただいておりますけれども、今日医療行政保険医療、これの中で医療担当者というものが非常に大きな比重を占めておると思います。そういう大きな比重を占めておりますこの医療担当者の考え方、これは厚生大臣もよくお聞き取り願ったと思います。ところがそういう方々の御意見なり御意思と厚生省当局の御意見なり御意思というものが、まことに残念でございますけれども、非常にずれておるということです。両者の御意見の中から、残念でございますけれども、そういった考え方を強く持ったわけでございます。やはり医療行政あるいは保険医療、医療保障、そういうワクの中で大きな比重を持っております――歯科医の方も同様でございますけれども、そういう方々の御意思なり御意見というものを大きく取り上げてこそ初めて国民医療の発展向上というものが期待されるというふうに私は考えるわけです。まだ大臣は御出席ないようでございますけれども、今私が申し上げたようなことに対して厚生次官は責任を持って御対処できまする御確信があるかどうか、その点を一つ最後に明確に承って、私の質問を終わりたいと考えております。   〔柳谷委員長代理退席、委員長着席〕
  86. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 ただいまの先生の御質問でございますが、確かに私も私自身の体験によりまして、国民の命というものが諸先生の手の中に完全に掌握されておると思います。従ってこれを制度化して治癒していくということになりますれば、医師発言というものに大きく耳を傾けなければならない、そしてそれは制度の上に取り入れられていくことが必要である、かように、先生の御意見のごとく承知いたすものでございます。しかりとすれば、今日までそのことが少なかったのではないかというお言葉でございましょうが、今日までそのことが少なかったことはやむを得ぬといたしまして、今日こうしてそのことの必要なることを痛感いたします以上、今後においてはそれをあくまで実践に移すべく最善の努力をささげていきたい、かように存ずる次第でございます。
  87. 山本猛夫

    山本委員長 中村英男君。――ちょっと中村君に御相談申し上げますが、実は参考人の御都合、次官の御都合等もございますので、まだ社会党二名、民社党一名の御通告がございますから、なるべく時間を短縮していただきますよう、これは御相談でございます。
  88. 中村英男

    ○中村(英)委員 ただいま武見会長河村会長から御説明を承りまして、また質疑応答の中から、医師会歯科医師会が主張されておることも私どもは大体了解をいたしました。了解をいたしましたが、きょう両会長が申されましたことを総合してみると、実はこの十九日の一斉休診の問題も医療担当者の問題じゃないんだ、こういう制限診療下においては十分な進歩した近代医学というもの、技術というものが被保険者に適用されないから、実は国民の問題だ。従ってこの十九日の一斉休診はそういう意味合いで、国民にそういう点を十分理解を願うために、そういう趣旨を含めて一斉休診をやる、こういう趣旨のように承りましたが、その通りですか。――それでは最初の質問はおもに武見会長にお伺いしますが、きょうの武見会長厚生省に対する考え方を承っておりますと、昭和二年から保険ができまして今日まで、医療担当者は非常に協力して参ったが、国家資本あるいは健保団体、そういう公的医療機関の膨大な設備の陰に開業医は非常に困っておる。従ってそういうすべての責任というものは、病院のストがあり、あるいは医療担当者の一斉休診というような、こういう事態を招来したのは、これはもちろんきわめて重大なことですが、長い閥保険というものが医療担当者の犠牲において行なわれ、このしわがここに寄ってきた。それで当面の問題は別として、この際に根本的に解決しなければならぬと私ども思っております。従って、単にこれを厚生官僚の統制の結果であるということだけに意見を集中されておるような御意見でしたが、実は私はそういう点に対しては、もちろん今日の医療行政というものが、監督あるいは指導機関である厚生省保険団体と一緒になって医療協議会を作ったり、そういう点に間違いはありますが、やはり昭和二年に保険ができたときに、医療担当者が保険というものはサービスだと考えて、適正な料金の評価をして十分にそのときに主張しておらなかったという点に私は間違いがあろうと思うのですが、そういう点は医療担当者としてどういうようにお考えですか。
  89. 武見太郎

    武見参考人 三十年前のことは私にはちょっとお答え申し上げかねます。
  90. 中村英男

    ○中村(英)委員 もちろん三十年前のことは武見会長にはおわかりにならぬでしょうが、少なくとも保険のできました最初の出発点は、事業主、管理者が労務管理としてこれをやった点も一つあります。それからまたその当時は料金というものが今のような形で表現されておりません。売手と買手との間できまっている問題ですから、第三者が介入していない。従って保険の占める医者の報酬のウエートというものがきわめて低かった。そういう事情がございましたからどうか知らないけれども、その当時の保険の料金というものは適正に評価されていない。従ってその当時の事情は、手続がめんどうくさいから請求なんかおいておけ、つまりサービスのつもりでやった、この事情が今日まで残ってはおらぬかということを私は心配しておるわけであります。
  91. 武見太郎

    武見参考人 その事情は私は残っておると考えますけれども、それよりなお重大なことは、終戦後いろいろな労働者の賃金が社会的、経済的に合理化されて参りましたときに、医療担当者に対する報酬がいささかも合理化せずにきたというところに今日の問題があると考えております。あえて三十年前を問題にいたしませんでも、少なくとも終戦後今日までの十五年間、あらゆる業種の報酬なり俸給なりが合理化されてきておりますときに、診療報酬だけが近代経済学の路線に乗らないで、保険者のあてがいぶちであったというところに問題がはっきりあると私は考えております。
  92. 中村英男

    ○中村(英)委員 厚生大臣は、この報酬の問題を中央医療協議会の土俵の上で解決したい、こういう説明をこの間承った。きょう御両所の御意見を伺うと、中央医療協議会の構成あるいは厚生省考え方、いろいろな事情のために、今の中央医療協議会に対する医師会歯科医師会の認識と厚生省の認識は相当開きがあるのです。そうすると、私ども聞いておる者の感じでは、おそらく中央医療協議会というものはなかなか土俵の場面というものは作れない、こういうふうに私どもは考えるのです。そうすると、おそらく、この重大な日本国民医療の問題を、厚生省医療担当者ときわめて大きい開きのまま、平行線のまま今日進んでおるということになると、これは国民の側からしてもきわめて重大なことだ。そこで私のお伺いしたいのは、それでは一体医師会歯科医師会医療協議会というものを――厚生省はあくまでも筋を通すために、この土俵の上で審議したいと言っておる。しかし私どもの理解によれば、これは厚生省の諮問機関なのですね。ところが厚生大臣はそういうこと言っておるのですが、これはなかなからちがあかぬと思うのです。そうすると医師会歯科医師会は、当面今四つここに掲げてありますが、この四つの中のどれをとっても、なかなか簡単に私は解決しにくいと思うのです。ことに一番医師会歯科医師会の主張しておいでになるのは制限診療の撤廃、これが本質の問題だと思うのです。この問題が解決しない限りは、医療担当者の国民に対する適正な医療の行使というものができないという感覚の上に立って本運動を国民の間にPRしよう、こうなさっていると私は理解するのですが、一体それでは医師会歯科医師会はこの根本的な問題が半年や一年の間に解決する、こういうふうな見込みに立って運動をやっておいでになりますか、どうですか。
  93. 武見太郎

    武見参考人 私が就任いたしましてからも、今日まで約四年間、この問題の具体的な方策について話し合いましても、相手方が誠意がなくて問題にならないわけでございます。四月一日からの皆保険という時限的な現象に対しまして、これをどうやって適合させていくかという具体策が出てくることが私は必要だと考えております。その具体策を出すことにつきまして、日本医学界を包括しております日本医師会といたしましては、具体策は持っているわけでございます。そこにも書いてございますように、今日治療指針はプリンシプルではなく教科書的なものであるはずのものが、六法全書と同じように取り扱われておるわけでございます。これを基準にいたしまして審査がされ、減点がされるわけでございます。少なくともその本人の患者に対して最善のものであったかないかということは、紙上審査ではできないはずでございます。それですから、この方式を改めますことによって、この問題は十分片づく問題であり、また社会保険医療経済性というものに関しましては、診療担当者が自発的に医師会歯科医師会、学会の指導によってなすべきことでございまして、少なくとも権力行政のもとにおいて生命に対する医師の行為を制限することは、私は妥当ではないと考えております。その間の経済的な診療にいかに協力するかということは、診療担当者自身の問題として私は課題を出していただく方が現実的に解決すると考えます。
  94. 中村英男

    ○中村(英)委員 けさの山本委員長の質問の一番おしまいに、健保連合会の実態調査の資料提出の要求があったのですが、私どもはここまで来た長い間の医療の問題の解決というものをこの際に根本的に解決しなければいかぬ、こう思っている一人なのですが、それをするためには、医療協議会の中に武見会長が言われるように、行政機関である厚生省あるいは健保連合会、こういうものが入って、そうしてそういう中でなされることは不満だという御意見ですが、これは私どもは、こういう医療担当者も健保連合会も、ばらばらになったいろいろな組合も、全部実態を調査して、そしてどういうふうな制度、どういうふうな技術の評価をすることが近代医学の発展であり国民医療の発展であるか、そういうふうにすべきだと思っているのです。それではこれはどういう方法でできるか、もちろんやらなければいかぬと思っているのですが、健保連合会あるいは公的機関の実態調査と、医師会歯科医師会の会員の業態の実態調査というものを並行してやられたら、医師会歯科医師会の方は喜んでこれの調査に応ぜられる用意がありますか。
  95. 武見太郎

    武見参考人 実態調査の問題は非常にいきさつがございます。昭和二十七年の医業経済実態調査の際には、厚生省の統計調査部から示されました案は、経済調査として学術的な根拠に不十分な点がございました。この点で私は一橋大学の専門家と、その調査の担当官とにおいでを願いまして、話し合いを願ったわけであります。その際厚生省側は御自分の非を認めておりましたけれども、実施の場面におきましては、少しも改めるところなく自分の原案を押し通されたわけであります。従って医師会はこの際には協力を拒否いたしました。拒否をいたしましたが、そのときのランダム・サンプリングでおとりになりました資料は、においても公表をなさらなかった資料でございます。私はこれを手に入れましたが、きわめて重大なことは、赤いインキで気に食わない数字は片っぱしから直してございました。私はそれが信頼に値しない資料であるということの確実な資料として、ここにおいでの滝井先生にもお目にかけたことがございます。驚くべきでっち上げの資料でございました。これは私は行政官庁としてまことに驚き入った次第であります。このような資料を作られたことは、その後の信頼を絶対になくしまして、仕方がないから私どもは、三十二年にやはり一橋の中山伊知郎教授の指導のもとで、医師会みずから二千五百万円の支出をいたしまして、医業経済実態調査をいたしたわけでございます。その医業経済実態調査のときに、当時の点数から十八円四十六銭が一点単価として相当なものである、それで初めて約六〇%の医療機関が採算に乗るという結論が近代経済学を使って出た最初の資料でございます。この資料は、世界医師会におきまして、ドイツ、アメリカ、フランス、イタリア等の医師会で非常に高く評価されて、これは日本に来る人が必ずこの資料の検討をして帰るというふうに進んだ資料になっております。しかるに厚生省は、この学問上正しく行ないました資料に対して、合理化と称して、当時公表を逃げてしまったわけでございます。中央医療協議会はこの適正妥当な資料を問題としないで、捨て去ったわけでございます。今日厚生省が二十七年資料を補正したと称していろいろな計数を出しておりますが、何を根拠に、いかなる方式で補正したかということは明らかにされておりません。私ども厚生省の数字に対して信頼感を持ちませんのは、そういういきさつがございます。そういうことでございまして、今後医業経済の実態調査は私もやらなければならないし、日本医師会責任におきましてもやらなければならぬと考えますが、厚生省だけが個人の財産を、特別な場合の税務署の調査以上に詳しくなさるという権限は私は勝手にはないだろうと思います。法律専門家に尋ねましても、財産法の上でかなりな問題点が明らかに出てくるような心配の点もございます。しかしながら診療報酬適正化という点から、日本医師会みずからこの資料をとるということでございますならば、会員は納得すると考えます。こういうふうにいたしまして集めました資料の処理につきましては、専門家に委託しまして処理をいたしております。この資料は参考程度以上の当てにならないというふうなことを厚生省が放言しているという話を陰ながら聞いているのでございますが、私どもはこれをきわめて遺憾とするものであります。外国におきましては、専門団体調査資料は官庁資料と同等以上に高く評価するのでございますが、日本におきましては、民間の資料は問題なくその価値を認めないというようなビューロークラティックな考え方はやめていただかなければならぬ。厚生省の行ないます実態調査をもしやります場合には、同じ紙を日本医師会ももらいまして、私の方は私の方として積算、集計いたさなければ、妥当な結論かいなかは今後断定できないと考えております。
  96. 中村英男

    ○中村(英)委員 この際武見会長にお伺いしておきたいのです。これはきょうの問題とはいささかはずれておると思いますが、しかしここに書いてありますから……。一番しまいの二行目に、国営の準備である、こういう書き出しがしてあるのですが、私ども社会党は何か医療の国営を考えているのだ、こういうことを武見さんが医師会の会員に流されて、社会党が迷惑した経過があることは御承知の通りと思うのです。当時武見さんに出てもらおうと思ったら、お出かけになりませんでしたから、十分私は釈明は聞きませんが、私の考えるところでは、今日の開業医の状態というものは、簡単にいえばうどん屋やそば屋である。もちろん社会的な意義はきわめて違います。違いますけれども、業態というものはそういうものだと私は思うのです。しかし、企業の形はそういうものであるが、内容はもちろん重大であり、社会的な意義は違います。そういうものを社会党は国営にするということを、かつて私どもは言ったことはないのです。国営というものを一つ社会が考えるとすれば、それは生産手段だ。ですから、開業医の方が大きな病院を持っておいでになろうが、小さい病院であろうが、それは大きい小さいの問題であって、業態としては国の基本的な生産手段ではない。従ってそういう意味合いで、特に今日の医学というものはまだ個人の投資によって医者ができておるという現状の中で、また教育が社会化されぬのに、できました医者の国営というもの、統制というものは、私どもは考えたことも言ったこともないはずだが、そういうことが実はまことしやかに伝えられておる現状にあるのです。その点この機会に会長の方からその辺の御理解のほどを一つ説明願って、私の質問を終わりたいと思います。
  97. 武見太郎

    武見参考人 今の問題は両社会党合併以前の資料として私どもはいただいたことがございます。これは明らかに資料として日本医師会にとってございます。これは合併前の資料であります。これは明らかにプリントされた政策審議会の資料だったと思いますが、私どもがいただいた資料の中にございました。しかしながら両社会党が合併なさった以後はその問題は出ていないというお話で、私どもは新しい社会党は非常に進歩なさったというふうに考えたわけでございます。  また、うどん屋、そば星と比較なさったのでございますが、私はうどん屋、そば屋と比較なさることは必ずしも適切ではないと思います。これは全国の医師歯科医師は先生の真意をつかみ得ないで誤解するおそれがあると、私ははなはだ心配にたえないわけでございます。うどん屋、そば屋さんも人命に関する食物を取り扱っておられるのでありますけれども医師歯科医師は専門のプロフェッショナルな団体でございまして、業態の形態が似通うでございましょうとも、本質的なプロフェッショナルな社会的な団体であるという点で、あらためて御認識を願っておきたいと思います。
  98. 中村英男

    ○中村(英)委員 医者の方の私の言う言葉に対する受け取り方の問題がございましたが、会長も私の言葉を受け取り方を間違えておいでになるものですから……。私の申し上げたのは、企業の内容だの社会的な意義が重大であることはもちろん申すまでもない。ただ業態がそういう個人の一つの投資によってなされておる、そういう企業である、これをたとえて申し上げたわけですから、内容は必ずしも一緒であるという意味ではございません。もちろん医療担当者は、人間の生命に関するきわめて重大な問題を取り扱っておいでになるし、社会的な異議はきわめて重大であるということは申し上げるまでもないのでありますから、そういうように御理解を願いたい。業態のことです。
  99. 武見太郎

    武見参考人 わかりました。
  100. 小林進

    ○小林(進)委員 本日は午前中から両会長の具体的な医療担当者の立場に対する御解明がございまして、われわれは医師会立場というものを相当誤解をいたしておりましたし、また知らない点もあったのでありますが、その点の理解を深めたので、まことにきょうは有意義だったというふうに考えるのでございます。しかし私どもは、この当面いたしております緊急の事態を一体どう解決していいかというその解決の方法については、残念ながらまだその曙光を見出すようなお話を承っておりません。この点まことに遺憾に存じますので、私は主として、これを一体どう収拾した方がよろしいかという私なりの考えに立って、二、三の質問をさせていただきたいと思うのでございます。  まず、医師会からは四項目にわたる基本的な要求が昨年の中山厚相時代から出されておることは、私どもも承知をいたしておるのであります。その要求のよって来たる科学的基礎と申しましょうか、いわゆる医療担当者の経営の実態調査とでも申しましょうか、そうしたものを私どもは今まで入手する機会がなかった。ないながらも、こういう事態にだんだん医療担当者も国民の側も厚生省も追い込まれてくるということは、私どもやはり医療行政の一端を担当しておる者として予感がいたしました。それで三十四年、一昨年の十一月、この社労委員会において、すみやかにこの医療問題の解決をせい、まず当面矛盾に満ちているといわれているこの医療の二本の表の問題も一本化をはかれ。これは医師会が要求せられております単価の引き上げも含まれるのでございまして、それ玉、含めて、早く合理的な医療の単価を作れということを私ども決議をいたしております。決議をいたしまして、その決議を政府並びに厚生省に要求いたしたのでありますが、確かにこの点に両会長の言われる通り、厚生当局はわれわれの決議をも軽視をいたしまして、今日なおそれを作り上げていない。いないその理由は、先ほども質問がありましたけれども厚生省側に言わせれば、医師会側が、いわゆる医療の経営の実態調査に協力をしてくれない、拒否をしている、だから実態をつかむことができないから、医療単価の合理化の問題に対しても結論を出すことができない、こういう主張をいたしておるのであります。ところが今武見会長のお話を承りますると、医師会では二千五百万円ですかの多額の費用を費やして科学的合理的な実態調査の資料がある、これを厚生省側は参考にもならないずさんなものであるとしてこれを用いない、かような言い分でございまするが、一体這般の真相は、厚生省が言われるがごとく、医師会側の非協力が今日なお厚生省にして合理的な医療単価の作業ができない結果に至らしめているのか、われわれは両者からそれぞれの立場を明確に承りたいと思うのであります。まず一つ医師会長から承りたいと存じます。
  101. 武見太郎

    武見参考人 これは先ほど来申し上げていることでおわかりを願っていると私は理解いたしております。
  102. 小林進

    ○小林(進)委員 厚生省側に、一つ厚生政務次官にその点の……。
  103. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 小林先生にお答えいたします。ここに古井厚生大臣がお見えになっておられるのでございます。厚生大臣の補佐というのが私の責務でございますので、厚生大臣がお見えになりました以上、先ほど、厚生大臣出席しないのははなはだ遺憾である、ぜひとも厚生大臣出席させよという御要請もありましたことでございまするので、何とぞ厚生大臣からお聞き取りを願いとう存じます。
  104. 小林進

    ○小林(進)委員 それは委員長も御承知の通り、われわれは先ほど理事会を開きまして、厚生大臣出席を要望いいたしました。それはわれわれは第一塊でありまするし、同時に十九日を期して一斉休診というがごとき、わが日本社会生活と申しましょうか、医療生活にかつてなかったような大きな事態に直面いたしまして、何をおいても私ども厚生大臣に御出席を願って、そうしてこの緊急なる事態を収拾するために努力をしていただかなければならぬ、国民側の疑惑も解いてもらわなければならない、また厚生省側との対立点も明確にしてもらわなければならないということで、懇切丁寧に私どもは懇願これ努めて参りましたにもかかわらず、先ほどからお話のあります通り、厚生大臣は、自民党のいわゆる命令に基づいて参議院の予算委員会出席せよという指令を受けているから、私はその指令の解かれざる限り衆議院社会労働委員会出席することはできない、こういうつれない答弁でございましたから、われわれは、しからば今日を契機として厚生大臣はしばし私ども社労委員会出席を願わない。少なくとも誠意がない、熱意がないものと判断いたしまして、また新たなる事態が出来するまで厚生大臣から御答弁もお話も承らないということを私は委員長の前に確認をいたしまして、そして私ども大臣代理たる安藤政務次官から這般のお話を承るという固い決意をいたしました。この委員会の申し合わせ並びにわれわれの決意に基づいて残余を進めていただきたいと思います。   〔発言する者多し〕
  105. 山本猛夫

    山本委員長 小林委員にちょっと申し上げます。実は参議院社会党さんの御要請によりまして、予算補正関係の上程の都合上厚生大臣を向こうへ出席さした、そういうことでございますので、どうか自民党の都合ではございませんので、誤解の点はあしからず……。それから向こうが済みますれば、こちらへ厚生大臣出席してもらうことに強く委員長から要請しておりました。ところがただいま時間があきましたので、まだ参議院社会党さんの方では御用があるそうでございますけれども衆議院社会党さんの御要請に基づきまして出席されたわけでございます。どうか一つ行きがかりを一掃されまして、せっかく厚生省の最高責任者が見えられたことでございますので、行きがかりもございましょう、お腹立ちもございましょうけれども、どうかここは委員長に免じていただきまして、どうぞ一つ御審議をお進め願いたい。どうぞ御了承願いたい。お願いいたします。よろしゅうございますか。
  106. 小林進

    ○小林(進)委員 山木委員長の御苦心のほどはよくわかりまするが、若干その点でまだ委員長のこの問題の事態に対する真の解明に立ち至らぬところがございます。実は内容はそうではございません。実は私ども参議院の予算委員会に出かけて参りまして、社会党の諸君とも打ち合わせまして、参議院のわが党の委員諸君から、目下質問は厚生行政ではないから、自由に一つ大臣衆議院の社労委員会の方にお連れ下さってけっこうですよという明快なる許可を得ておるけれども大臣みずからは、自民党の指令が出ていないから私は出るわけにいきません、こう言われておるのであります。それならばわれわれはもう厚生大臣相手にしなくともよろしい、こういうことになっておるのでございまするから、大臣、おひまでございましょうから、つれづれなるままに傍聴席でゆっくり私どもの話の経緯を傍聴していただきたい。その大臣の傍聴までもわれわれは拒否する権限はございません。
  107. 山本猛夫

    山本委員長 多少のいきさつもあったようでございますけれども、行き違いもあったようでございますが、ともかく社会党の皆さんの御要請に応じまして、せっかく参議院から中座をされて厚生大臣出席をされたことでございますので、一切のことは委員長の不手際の点でおわびを申し上げますから、どうぞ一つ御了承を願います。(「さっき委員長はそんなこと言わないじゃないか」と呼ぶ者あり)ただいま釈明の段階に入りましたので、釈明を申し上げておるのでございますから……。
  108. 小林進

    ○小林(進)委員 それで私は医療の経営の実態調査について、いわゆる医療担当者側の拒否にあって今日まで調査ができなかったんだというこの問題に対する厚生省側の答弁、これは事務的でいいと思いまするから、政務次官でなくて、どなたか……。
  109. 山本猛夫

    山本委員長 それでは小林委員のただいまの御発言に対する釈明として、厚生大臣から御発言を願いたいと思います。いかがでございますか。   〔「そんなことではだめだ、絶対協力しませんよ」と呼び、その他発言する者多し〕
  110. 山本猛夫

    山本委員長 それじゃ小林委員、審議をお進め願います。
  111. 小林進

    ○小林(進)委員 政務次官に、今の私の質問に対して御答弁一つお願いいたしたいと思います。
  112. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 ただいまの小林先生の御質疑の点につきましては、事務当局より詳細答えさせたいと存じます。
  113. 森本潔

    森本政府委員 ただいまの医業実態調査のことでございますが、お話しのように現在までに二種ございます。一つ厚生省で作りました昭和二十七年の調査、もう一つは日医で作成しました昭和三十二年の調査のものであります。それで医療費の改定を行ないます場合には、これは最新の合理的、科学的な実態調査によりまして改定を行なうのが一番いい方法でございます。そういうことでございますので、本年度の予算におきましても厚生省においては所要の予算を組みまして、これを調査いたしたいということを言ってきておりました。関係団体の協力を得なければ、これはやはり私的医療機関もございますので、実施ができないというので御協力をお願いしたのでございますが、先ほど来お述べになられましたような理由等からいたしまして、この調査には御協力が願えなかった、こういう事態で今日に参ったわけでございます。
  114. 小林進

    ○小林(進)委員 私はそれでは、先ほども会長が言われた、三下五百万円をお出しになって、そして調査をされたその資料を^厚生省は、参考にもならないずさんな案であるという御批判を、これは明確に言われたとは言わない。何かそういう風評もあったというふうに会長が言われたのでありますが、厚生省自体はそういう批判をされているのかどうか、一つお聞きをしたいのであります。
  115. 森本潔

    森本政府委員 そういう話は実は私も存じておりません。ただこの二つの資料でございますが、厚生省で作りました二十七年の調査、それから三十二年に医師会で実施されました先ほどの調査、この二つはいずれも昭和三十二年の中央医療協議会参考案と申しますか、資料として提出になりまして、医療協議会においてはそれぞれ一応御検討になりました。そういういきさつでございます。その際、中央医療協議会においてどちらの資料をおとりになったかと申しますと、審議の結果から見ますれば厚生省調査を御採用になった、こういうような感じがいたします。
  116. 小林進

    ○小林(進)委員 なかなか巧みな答弁で、私は中央医療協議会が二つの資料のいずれをとったかということを聞いているのじゃなくて、あなたたちがその医師会でお作りになった調査書の価値をどれだけに認められているかという質問を私はしているのでありますけれども、そこは巧みに逃げられているのだが、まあこんなことで議論しても問題が進みませんから、大体厚生省はこれは問題にならぬと軽視されるというふうに私は了解いたしまして、次の問題に一つ進みたいと思うのであります。  これは主として医療担当者側に私はお尋ねをしたい。またきょうの舞台もそうあるべきだと思いますので、努めて厚生省の方の質問は私は省略したいと思いますが、何といっても事態を収拾するために、先ほどからも繰り返し聞いておりますが、四つの基本的な要求を絶対的なものとして、これの解決のためにはどうしてもこの四つの線を譲れないとおっしゃるのかどうか、私はその点を尋ねたい。ということは、御承知のように事態収拾のために今まで三つの案が、医師会歯科医師会の案のほかに出ております。いわゆる自民党の中には山中案といいますか、医療特別委員会で作られた案、医師会の単価三割値上げと、現在一点単価を合わせて二つに割って一円五十銭の値上げをする、いわゆる一点単価十一円五十銭、一五%値上げ案、こういう山中案が一つ出て、そして事態の収拾に乗り出してきたわけでございます。この案に対して今度は第二案といたしまして、これは御承知のように自民党の政調会の社会部会、田中正巳案とでも申しましょうか、その案が一月の十一日に出ているのでありまして、この案にはイ、ロ、ハ、ニ、ホと、こまかいいろいろな案があります。御承知と思いますけれども医療費の値上げは病院と診療所との間に差は設けないで一律に値上げをする。値上げは点数引き上げでも単価の引き上げでも、または新しく金額表示の方法を採用してもいずれでもよろしい。これはなかなか幅があります。それから値上げの幅は、厚生省の値上げ分五%より高く、病院の値上げ分一二%から一五%よりも低い程度とする。第三番目には、現行医療費の不合理を是正する。点数改定は行なわないが、極端に不合理な点については部分的な手直しをする。それから第四番目には、このような妥協案では悪化した病院の経営改善ははかれないので、病院については別に特別融資の方法などを講ずる。また三十六年度中に病院経営改善の根本的な方策を講ずる。第五番目には、診療報酬点数表甲乙二表の一本化問題はたな上げし、三十六年度中に再検討をする。こういうふうな田中案というものが出ているのでありますが、これに対しては厚生省は反対の意思表示をせられましたが、私は、医師会歯科医師会としましては、この山中案、田中案に対しては一体どういう御見解――いささかでも歩み寄りを見せるというお気持があるのか、やはりこれは両案ともだめだ、こういうふうなお考えなのか、一つこの点をお聞かせを願いたいと思うのであります。
  117. 武見太郎

    武見参考人 まず順序といたしまして山中案に対しましては、日本医師会といたしまして、その考え方の筋を尊重するということを表明いたしてございます。これはただし一円五十銭の引き上げでは足りないということは、はっきりいたしておるわけでございます。地域差撤廃に対しましては全面的な賛成でございます。私たちは緊迫いたしました、ほんとうに縮小に縮小を重ねてきた今日の医業経営の実態から参りまして、この現状を打開する方策といたしましては三円の値上げが絶対に必要であるという主張を今日なお変えておりません。また病院等におきましても、三円の値上げをいたしますことによって医療従事者のベース・アップその他に対しましてある適当な線を出すことは、大部分の病院が可能であると考えます。大きな病院は余裕が出て参りますが、小さな、ベット数が百以下の病院は、おそらく三円ではまだかつかつのところで、ほとんど余裕がない線が出ると思います。しかしながら一応の安定点に立ちまして、ある期間医療従事者と休戦条約を結びまして、その間に医療制度の全面的改正を行なって正しい医療の軌道を敷くことが私は政治だと考えております。わずかばかり上げて、永久に医療従事者不満のもとに闘争の体型を続けますことは、正しい診療を進めていく上において非常に障害があると考えるものでございます。
  118. 河村弘

    河村参考人 ただいま日本医師会長の武見先生のおっしゃることに対して、私も全面的に同じ意見を持っております。ただここで私がもう少し進めますと、私どもが先ほど申しました、すでに本日ただいまの時点におきましては、少なくとも根本的な面についての解決ができない限りはこれはだめだ、少なくとも厚生当局においても全くこれに誠意を持ってぶつかるという以外にはない、かように考えるのでありまして、私どもはこの機をのがしてまた来年やる、また再来年やる、こういうことはしたくない。あくまでも根本的にこれの二面におきましての解決を出す、その形において今後は進んでいく、こういうようなものに進みたいと思っておるのでありまして、従いましてこういうような面につきまして断固、同じような意見をもって進みたいと思っております。
  119. 小林進

    ○小林(進)委員 私は医療の根本問題の一部分であるかもしれませんが、医療問題、単価の問題をこれほどまでに混迷せしめた案のいま一つとして、次には厚生省事務局案なるものがあると思うのであります。私はこの事務局案なるものが、こういう事態を悪化に追い込んだ重大な責任があると思っておるのでありますが、きょうは参考人を前にいたしまして厚生当局の責任まで究明しようという考えはございません。これはあらためて別の日にやりたいと思うのでありますけれども、いずれにしてもこの機会にやはり医療担当者側の御意見は聞いておかなければならないと私は思うのであります。それで申し上げるのでありますが、たしか一月の九日ごろだと思いましたが、九日ごろに厚生省事務局案というものが出て、そして摩訶不思議にもそれが一月の十四日にはまた引っ込められておるという、実に出したり引っ込めたり、自信があるのかないのか、ただ求めて事態をさらに混迷ならしめるためのみに出したような形でございます。ただその内容は、私は医療担当者側の御意見を承っておきたいから申し上げるのでありますが、その事務局案によりますと、いわゆる病院医療費を二つに分けて、病院――これはベッド二十以上だそうでございますが、その医療費をまず一二%から一五%の値上げをする、それから診療所――これは十九ベッド以下でありまするが、診療所の医療費というものを五%の値上げをいたします。こういう事務同案というものが出て、そしてこれを四月から実施するため、診療報酬点数表改定による医療費の値上げをこの方法でやるために、もはや大蔵当局と一月九日ごろから非公式に予算折衝を始めたという情報をわれわれはキャッチした。しかもその大蔵省に対する要求額は、これに基づいて百億円ないし百五十億円の見込みで大蔵省との要求を進めていった、こういうのでございまするが、それが今度一月の十四日になりますと、厚生省病院と診療所との二日に値段を分けたというやり方に対して、非常に事態が混乱をいたして参りました。医療機関の経営の規模の大小によって差を設けたことがさらに医師会の怒りを買ったということで、これにびっくりして、それを十四日には引き下げた、こういうようなことになっているのでございまするが、一体この問題に対して医師会側はどういう工合にお怒りになったのか、お怒りの内容をここで一つ明らかに私どもに知らしておいていただきたいと思います。
  120. 武見太郎

    武見参考人 医療行政を扱っている人々が本質的な理解を全く欠いていたという証拠が、国民の前にさらけ出たわけでございます。一体、診断とか治療の効果が影響するならば診療報酬が変わることは当然だろうと思いますけれども、建物の大きさによって診療報酬を変えるなんということは、世界の歴史にはなはだ輝かしい一ページを掲げます歴史的な発表だったと思います。こういうようなものは、医療担当者の常識からは絶対に生まれてこないことでございます。たとえば大学の教授が定年で退職をいたしますと、とたんに大先生が翌日からは安い診療報酬患者を診察する、これはあり得べからざることでございます。宿泊料なら、いいホテルは高くとるのは当然でございますが、一体病人を扱うということをどのような考え方でいるかということにつきまして、私は厚生省の基本的な態度が、この一事で明確に看取されたわけでございます。われわれが今日まで厚生行政に不信を唱えておりましたことが、これによってほんとうに明らかになって、末端の会員までここに憤然として立ち上がらざるを得なくなった。私はこれを発表された事務当局の勇気に敬意を表するものであります。これは全国の医師が、このような考え方医療行政をやられたのだし、今後もやろうとする底意がある、そのねらいは点数改正であるという確信を持つに至ったわけであります。これは、御指摘の通り引っ込められたといたしましても、今後の点数改正を非常に困難ならしめた原因であろうと思います。  それからもう一つの問題ですが、先ほどの実態調査に関連いたしますが、低医療費に長年の間追い込まれておりました私的な医療機関は、病院、診療所を問わず、縮小再生産の建前をとらざるを得ません。官公立は赤字を出してもカバーしてもらえますが、赤字をカバーすることのできない、個人の責任においていたしますところは、どうしても縮小再生産でございます。この縮小再生産の事実は当然ストライキを起こす事実につながるわけでございます。この縮小再生産は、このような考え方で参りますと、なお大病院だけを尊重して中小の病院をつぶしていこうという考え方につながるわけでございまして、これは医療国営の路線であるという結論がその次の段階として出てくるわけでございます。
  121. 小林進

    ○小林(進)委員 この際解決に向かう方向としていま一点。厚生省側の事務同案なるもの、これは私は厚生省に資料を要求しておりまするから、資料が出ない限りはまだ正確な点はわかりません。ただこれは新聞紙上で報道せられた厚生省原案なるものを内容としてお尋ねをするのでありまするが、それによりますると、現行の点数表――今の一〇%の引き上げの前でありまするが、このままでいくとして、三十六年度の医療機関の推定収入として、病院は一カ月平均二一百二十七万円、診療所は一カ月平均二十四万円。そうして、病院は全国平均して二百三十七万円で、それによって月四万円の赤字が出る。必要経費の一・五%の赤字であります。これに対して診療所の二十四万円は、月一万四千円、五・八%の黒字になる。じゃこの二十四万円という診療所の平均の収入は一体どこから出たかというと、一日の診療患者は四十七人平均ある、それで一カ月の総収入が二十四万円、二十四万円から必要経費を差し引いた医師の純所得が十一万一千円になる、こういうふうに算出をせられたわけであります。その四十七人の患者数は一体どこから出たかというたら、先ほどお話のありました二十七年の経営実態調査の中には一日二十四人という平均数字が出ていますが、それを今日推定をいたしますと二十四人が四十七人に増大する、こういう計算に基づいて先ほど申し上げました病院と診療所との医療費の相違というものが編み出された、こういうのでありますが、この資料に対して医療担当者側の御意見一つ承っておきたいと思うのであります。
  122. 武見太郎

    武見参考人 これはその資料が私どもに示されておりませんから、批評をすることは差し控えます。しかしながら、私ども実態調査の結果から見ますと、でたらめきわまりないものでございます。いささかの信憑性も持っておりません。また、これらに対しまして平均の概念で、算術平均でこれを打ち出しておりますことは、私は正しい見方ではないと考えます。二十七年の実態調査を、いかなる方法でいかなる計数をどういう理由で出して、この数字をはじき出したかということについては、これは雲の上のことで私どもにはわからないことであります。ただ結果だけ出して世間をごまかしたと私は判断しております。
  123. 小林進

    ○小林(進)委員 大体今お尋ねしました点あたりで医師会歯科医師会厚生省との考え方、事態のつかみ方の違いがだんだん明確になってきたわけでございますが、こういう両者の違いをそのままに論じ合っていられても、お世話になるわれわれ国民の側、被保険者の側には、これはちっとも有利にはならないのでございまして、その違いは違いとして、これをどこかで一つ一致点を見出して歩み寄りをしていただいて、そしてわれわれのいわゆる生命の安全を保持してもらわなければならないのでありますが、そういう違いを明らかにしながら、歩み寄りをする場所として、厚生大臣は、この社会労働委員会にも繰り返して言われるのは中央医療協議会であります。ここを一つ土俵の場にして、ここで何とか事態の収拾をしたいということを言われておるのでありまするが、先ほどの両会長のお話を承っておりますると、医療協議会は全然われわれの信頼に足るものではない、二十四人制ででき上がっておって、十八対六でございまして、その中に特に厚生省の局長、課長まで入って、むしろわれわれに圧力を加える一方的な協議会にすぎないからというふうなお話があった。私はその点、言われることはまことに了承できるのでありますが、しかし、この点についても厚生大臣は、現在の医療制度が医師会の言われる通り、歯科医師会の言われる通り、不公平な組織であるならば、機構であるならば、これを一つ改革をして、その改革をするために、社会保障制度審議会に早急に改革の試案を作ってくれるようにというふうに依頼をしておる。きょうあたりの新聞によれば、事態がここまで追い込まれてきておりますから、社会保障制度審議会でも二月中に何とか中央医療協議会の機構の改革の原案を一つ作りたいということで、大内博士を中心に非常に問題を急いでおられる。ここまできているのでありますが、この際私は医療担当者たる皆さん方の方から、どこに一体解決の場所を求めるか、これは中央医療協議会の方がだめならば、ここで一つ話をきめようという何か具体的な話の場所をお示しを願えないか。あるいはいま一歩進んでいけば、今社会保障制度審議会でやっております原案の作成に対して、医師会側の要求を続けて、医師会はこう考えている、医療協議会の内容がこうならば、ここまでくれば、われわれは協力してもいいというような具体案ぐらいお示し願えるのならば示していただいた方が、問題の解決のために一歩でも二歩でも前進した形になるのではないか、われわれはかように考えますが、この点について一つ会長の御所見を承りたいと思うのであります。
  124. 武見太郎

    武見参考人 共同声明が資料の三に入っております。これをごらんいただきますと、中央医療協議会だけを現在の健康保険法のもとにおいて改組することはサル芝居でございます。これは国民を欺瞞し、また国民医師に対する不信感に陥れようとする、政治家としては私は最も無責任態度であると考えております。これは、先ほど申しました機関指定の考え方を排除することによりまして、中央医療協議会のあり方にも大幅な変化がございます。根本的には健康保険法の全体系を、もっと官僚的でなく、保険者的でなく、正しい形にいたしまして、そうして科学と経済とを組み合わせたりっぱな社会立法としてこれを再編成する必要がございます。そのときに初めて、名称はいかなるものでございましょうとも、こういう機関ができることは私は正しいことだと考えております。社会保障制度審議会がどのような御答申をなさるかわかりませんけれども、私どもは現在の健保法のもとにおける中央医療協議会だけの改組に対しましては、前途には悲観的でございます。
  125. 河村弘

    河村参考人 私もただいまの武見会長の論と全く同意見でございます。特に私がここで強調したいことは、医療担当者というものの立場医療担当者を尊重するという信念が欠けておるということであります。これをもう少しすべての点において十分に勘案して考えていただきたい。そういうことからしでいけば、今のような形もある程度進むものと確信しております。
  126. 小林進

    ○小林(進)委員 私は日本医療体系その他を根本的に改めて、そうして国民の生命の安全を保持しようという、そういう基本的な改組の考え方には全く賛成であります。賛成でありまするが、私どもはその基本問題とあわせて、当面ここまで追い込まれている事態を非常に憂えておりまするので、この急場を一体どう打開していくか。先ほどのお話によりますれば、大臣との会見、厚生省関係との会見を拒否したことはない、こういうふうに会長が言われましたので、私ども安心いたしましたが、どうも新聞紙等の報道では、何か会長大臣その他関係閣僚との会見を拒否せられているというふうにも考えて、話し合いの場がないじゃないか。そこへ持ってきて、そこにいられる安藤政務次官が御茶の水の医師会館まで会長をおたずねになったら、美しい婦人が出てこられて、軽くあしらわれてとぼとぼとお帰りになった、あのさびしげな姿をテレビ等でながめて、さらに私どもは事態の急迫を痛感いたした次第でございまするが、当面この問題を解決するそういう基本的な問題を徐々に話をしていく、その窓口としても、改組せられた医療協議会あたりを御利用になるお考えがないかどうか、いま一度……。
  127. 武見太郎

    武見参考人 私はこれは全く羊頭狗肉であると判断いたします。私の診断が誤っている場合は、私はいさぎよく責任をとります。これはうっかり乗れるしろものではございません。健保法の全面的改正前提といたしまして、私はこれに期待を持つわけであります。  それからまた当面の問題のお話でございますが、私どもは昨年の八月から熱心にこの問題を提起しているのでありまして、その前からも基本的な問題を申し上げておるのでありますが、お取り上げにならなかったのは厚生省当局でございます。責任は全くそこにある以上、当面の問題を収拾しようとするならば、私どもの要求を率直に大臣責任において御採用になることが、やはり私は国民に対して忠実な道だと考えております。
  128. 小林進

    ○小林(進)委員 簡単でよろしゅうございますが、安藤政務次官に健保法の改正医療体系の基本的な改正の問題について、一体厚生省はどれほどの熱意をお持ちになっているか、一つ答弁願いたい。
  129. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 私自身といたしましては、ぜひこれを順を追うて実現していきたいという熱意を持っております。
  130. 小林進

    ○小林(進)委員 これは非常に率直な質問で、あるいは会長のお気持にさわるかもしれませんが、巷間伝えられるところでありますから、私はそのままにお尋ねいたしますけれども医師会といたしましては、このたびの選挙にも、数千万円の金をお集めになりまして、社会党に二百万円、民社党に百万円の献金をされるとともに、あとは数千万円自民党に献金された。同時に武見会長の個人的な個々のつながりもありまして、自民党の首脳部にそれぞれ知己、友人がおありでありますから、最後はそういう政党の首脳部との政治的な交渉で問題の収拾をされることを考えておられるのではないか、またその可能を信じていられるのではないか、こういうようなことが伝わっておるのでございまして、私どもはこういうようなことを耳にしながら、ともすると先ほどもお話がありました、何か三十二年の橋本厚生大臣のときに、十五人委員会でありますか、五・五・五の十五人の委員会を作って、そこで甲乙二本の単価問題を協議した。もちろんそのときには協議が成立しなかったというお話がございましたが、そのような形のあるいは十人委員会、十五人委員会あるいは自民党首脳部あたりの仲介に基づくそういう委員会でも搾り上げて事態の収拾をやろうというお考えがあるのかどうか、私はそれもあわせて一つお尋ねいたしておきたいと思います。
  131. 武見太郎

    武見参考人 政治的な問題に発展いたしましたのをごらんいただけば、裏にやみ取引がないことがおわかりだろうと思います。これは私は日本医師会の名誉のため、また私自身の名誉のためにはっきりと申し上げますが、特定な政党とやみ取引はいたしません。これは全医師の名誉のために明確に申し上げておきます。
  132. 小林進

    ○小林(進)委員 大体私のお尋ねをいたしたい点はこれで終わりましたが、いま一点だけにしておきたいと思うのであります。先ほどからのお話の中にもしばしば出て参りましたが、厚生省官僚統制に対する強い非難があったのであります。あるいは健保連との連合に基づく圧力に対する非常な憎しみというものも承ったのでありますが、それはきょうだけではございません。確かに両会長はあらゆる機会にこれを講演していらっしゃる。武見会長はたしか、厚生省の役人はやくざの集団であるというような表現をお用いになったこともあるようでございまするし、年頭のテレビの放送でも、私は大いに戦うのだ、そういうふうな言葉宣言されておりました。私どもはその気持はよくわかるのでありますが、この厚生省がけしからぬという、そのけしからぬというのは、一体厚生省のお役人がけしからぬのか、あるいは厚生省の現在の制度それ自体がやくざ的集団でけしからぬとおっしゃるのか、この点を一つ承っておきたいと思うのであります。もし厚生省の役人の中にそういうやくざ的けしからぬ集団があるならば、われわれも国民の側からはこれをとうてい了承することはできません。大いに追及しなければならぬと思いますが、それが制度の問題でありますならば、私どもはまた御意見を拝聴しながら制度の改正のために一つ力を尽くさなければならぬとも思いますので、この点をお伺いいたしたいと思います
  133. 武見太郎

    武見参考人 私はやくざという表現を使った覚えはございません。もしありましたら御指摘を願いたいと思います。無責任な第三者の表現は私はとりません。私自身が書いたものであるならば責任がございます。それから厚生省の――とにかく先ほどの格差の問題のごときは、これは全部の医師の怒りを買っております。こういうふうな実績が、けしからぬという雰囲気を強く生じたわけであります。それからまた権力的に問題を解決しようとすることに問題があります。昨年監査問題で二人の尊い犠牲者を出しました。その犠牲者の出しました中で、私はこれを民主的な線に変えていただきたいと思っていろいろ事務局と御折衝を申し上げました。しかしこのときは保険局長、次官も快く六カ月の間私と話し合いをいたしまして、監査の民主化ができ上がったわけでございます。そういうふうに話し合いで正しくいった面もあることは御承知おきを願いたいと思います。全部がけんかをしているという考え方ではございません。また医務局関係におきましても、国立ガン・センターの問題は私が非常に重要な任務をまかされまして、学会等を結んで、国立ガン・センターの設立については世界的な視野と現在の最高の科学を全面的に取り入れて、これをでき上がらせていこうというので、共同の作業が綿密にやられております。ですから厚生省の全部をさしておるわけでは決してございません。医師会に重大な打撃を与えておりますものは、保険者と合同いたしました保険局官僚に対する問題でございます。私はこの点で医務行政の確立というものを強く要請したいし、厚生省の制度が三十年前の制度をほとんどそのまま踏襲しておられるところに医務行政も押えられていると思います。医務行政の発展こそ私は日本医療を明るくするものに願いたいと考えるものでございます。
  134. 小林進

    ○小林(進)委員 これ一問で終わります。たしかやくざの集団であるという言葉を私は新聞の切り抜きで知ったのでございまして、今おっしゃるように、会長自身の言った証拠を見せろと言われればございませんので、これは私の出所を明らかにいたしまして御了解を得ておきたいと思います。  なおいま一つ、これも新聞紙上の報道するところです。これも間違っていたら御訂正を願いたいのでありまするが、この医療問題が非常に激しくなりましてから、新聞でいろいろな意見や論説が伝えられたことは御存じの通りでございますけれども厚生省が先ほどの事務局案として病院と診療所の二本建の医療費というものを出しましたその前後に、ここに切り抜きがあるのですが、時間がありませんからお見せすることができないのでございますが、数回、開業医の方にはいわゆる水増しというものができるのだ、だから正確な診療報酬のほかに水増しができたり、陰の余得というものがあるのであって、これはいわゆる給料をもらっている病院の勤務者とは内容がずっと変わっているのだという、何かわれわれが見ても医者というものは不正ができる、開業医、私的医療機関というものは不正ができる、水増しができる、悪いことができるというようなことを思わせる、そういう記事がずいぶん出て参りました。これは実際私どもはそのために、先ほど申し上げましたいわゆる犠牲者が二人出たとおっしゃいましたが、これに関連する問題でございまするが、これもこの機会を通して私は両会長から一つ明確にしておいていただきたいと思うのであります。
  135. 武見太郎

    武見参考人 これは全医師の名誉のためにはっきり申し上げますが、国会の先生方があのような記事を、活字になったがゆえに真実であるというふうにおっしゃいますことは、私としては遺憾しごくでございます。少なくとも国会に席を置かれる方が、あのようなことが常識であるとしてお取り上げになるようなことがもしございますならば、これは、私は重大な決意を持ってこの問題と取り組まなければなりません。私は逆に先生の真意を伺いたいと思います。
  136. 小林進

    ○小林(進)委員 会長の言うように、私どもはこの社会労働委員会におきまして、医療制度の診療報酬の請求に対する検査制度が非常に過酷でありまして、指導という理念より、むしろ不正を摘発するような形に行なわれているのは非常にけしからぬということで、私どもが中心になりまして、その結果があるいは厚生省と今言われました医師会との話し合いのように、その制度を非常に緩和いたしまして、二人の医者の犠牲者を今後なからしめるようにされた。それは今までも言いましたように、会長厚生省との話し合いの上でそれが改められたとおっしゃいましたが、お話し合いになる前に、私ども社労委員会においてはこの問題を強く厚生省に追及いたしました。いやしくも医師という名誉ある地位にある者を、それを正しく指導する立場でやるならいいけれども、悪い、不正を検査するという形で圧迫を加えるのはけしからぬ、改むべきだというので、渡邊厚生大臣のときに私どもはそれを追及したのであります。ですから、医者をそういう水増しをする者であるという考え方に立っているそれ自体が間違いであるというのがわれわれ社会党の考え方です。私どもはその考え方に立っておりましたにもかかわらず、なおかつ今年の一月あたりは、厚生省はこういう二本建の医療費を出したときに、偶然かあるいは故意か、世上、新聞紙上を通じて、なお水増しが自由に行なえるような、勝手にできるようなことが新聞に報道せられておりましたが、これは私どもとしては実に、第三者の立場からも、医師を侮辱する大なるものじゃないか、かように考えておりましたから、この際私自身が医師立場でものを言うよりも、会長みずからがこの国会の委員会において、国民にそうでないゆえんを、医師立場一つ明らかに表明しておいていただきたい、これが私の質問の真意であります。
  137. 武見太郎

    武見参考人 今お話を承りまして、私はよく御真意がつかめました。私は医師の中に悪人はいないと確信をいたしております。たまには間違いをしでかす者がないということは断言はできませんけれども、悪人はないと私は確信を持っております。
  138. 小林進

    ○小林(進)委員 これで質問を終わります。
  139. 山本猛夫

  140. 滝井義高

    滝井委員 今、小林委員から御質問がありましたので、これは愚問かと思いますけれども、幾分世の中にはそういう疑いが出つつあるので、最後にもう一回念のためにお聞きしておきたいのです。  それはきょうの新聞をごらんになりますと、古井厚生大臣の談話が出ております。その談話の中には、医療費問題は国民の負担と直接関係する問題であり、一般国民の意思を無視し医師会と取引をするような形で妥協をはかることは筋を曲げるものである、こういう談話が出ておるわけです。これは古井さんの至るところの談話にこういう形が現われておるわけです。何か歯科医師会医師会が絶えず政府与党とどこかで取引をしているというニュアンスがこの古井談話の中にも出てきておるわけです。今武見会長が同僚の小林君の御質問に対して強く否定をせられましたが、この点については私たちは、このように重大化した医療費の問題を医師会なり歯料医師会が、そういう取引の形で与党とやろうとは夢想だに考えておりませんでした。従って、考えていないがゆえに、本日この席上に厚生大臣に来ていただいて、堂々たる形で厚生省の考えておる基本方針、医師会歯科医師会の考えておられる基本方針を明示していただいて、そうして国民的なガラス張りの中でこの問題を解決しよう、こういう気持で実はきょう私たちはこの委員会を要請したわけです。ところが、はしなくもこういう談話を発表しておられるその御本人がきょうは出てこられぬので、非常に遺憾です。しかし安藤厚生政務次官がおられますから、これはいずれ機会を別にしてお聞きするとして、もう一回河村先生、武見先生からその点を一つ重ねて明示をしていただきたいと思うのです。
  141. 武見太郎

    武見参考人 医師会と取引をすることはという大臣の表現は、私は少しも当たっていないと思います。所管大臣が所管の専門団体と話し合いをして、御自分意見なり責任である線をお出しになることは、決して私は取引だとは考えておりません。このことがもし取引だという考え方ならば、私は取引という字を改めていただかなければならないだろうと思うのであります。専門団体と所管大臣との話し合いがいかにも取引であるかのごとく、御自分から発表なさっている真意は私には了解ができません。
  142. 河村弘

    河村参考人 私も全く同意見であります。信ずることができません。
  143. 滝井義高

    滝井委員 前に小林君の質問で大体その点は明白になっております。おそらくこういう表現を用いているところに、結局日本の今の厚生省行政というものが何か問題を含んでおる感じがいたしますので、その点だけまず御指摘をして、少し具体的な質問に入りたいと思います。  まず第一に、現在十九日に行われようとする医師会歯科医師会の一斉休診と並んで、現在日本医療労働者が病院ストをやっておるわけです。実は厚生省は二月十九日のこの一斉休診に対して厚生省の対策なるものを発表しておるわけです。そして、たとえば官公立の病院や公的医療機関について、新聞紙の伝えるところによると、場合によっては業務命令でも出そうかというような報道さえ一部出ております。しかし医療労働者は、われわれは日曜日は当然休む権利があるのだから、当直以外には動員はやらないという意味のことを言っておるわけです。この医療労働者の病院ストというものに対して武見会長はどうお考えになっているのか、これを一つお示し願いたいと思います。
  144. 武見太郎

    武見参考人 私は医療労働者の病院ストに関しまして、日本医師会雑誌の一月一日号で非常に強い同情の意思表示を明確にいたしております。これは低賃金と労働強化で長い間痛めつけられ通しに痛めつけられております。また他の業種と違いまして昇進の道がほとんどない職業でございます。昇進の道のない職業に対して、いかなる方法で優遇するかという、優遇の道が閉ざされているわけでございます。これは非常に重大なことでございまして、このような形では正しい医療が行なえません。この点で私は、またその他の理由は先ほど申し上げましたからここで申し上げませんが、起きるべくして起きたものであり、またこれを改善することなしには医療の近代化は不可能であると考えております。
  145. 滝井義高

    滝井委員 公的医療機関なりあるいは国立病院等の病院における医師の給与体系あるいは従業員の給与体系というものは、そっくりそのまま日本医療費体系の重要な基礎をなしていることは両先生御存じの通りであります。現在非常に低賃金であることは医務当局もお認めになっております。現在日本医療機関に従事する労働者の賃金が三千五百円とか、あるいは普通六千四、五戸円、こういうことなんです。こういう医療に従事する従業員の低賃金というものが低単価、低医療の結果としてそのまま現われてきておるわけです。現在医療機関に従事する人たちは、ほとんど国家試験を通った専門技術者が多いわけです。この賃金の体系が最低一万円程度を保障することは私は当然のことではないかと考えるわけです。この点、その方面の専門家としての両会長さんの御意見を一応私は聞かしておいていただきたいと思うのです。
  146. 武見太郎

    武見参考人 当然私はそうした要求は妥当であると考えるものでございます。これは高賃金、高能率を入れることが医療の近代化の原則でございまして、低賃金、低能率というものは医療の面では非常に危険な現象でございます。
  147. 河村弘

    河村参考人 病院ストの問題は、経営の問題というものが一応浮かび上がってくる問題でありまして、医療の本質の問題とはまた別の形においても考えられるべきものであります。従って、直ちにその医療費という問題をそこに入れることもどうかと思うのでありますが、一応これは考えるべき問題である。しかしながらこの問題については経営ということも一応頭に置いて考えるべきだということを感じます。
  148. 滝井義高

    滝井委員 あとで当面の具体的な対策の問題については少し突っ込んで御意見を聞かしていただきたいと思いますが、いろいろと同僚が御質問をいたしましたので少し専門的にわたりますけれども、今論争の中心になっている一、二の問題について見解をお伺いしたいと思います。  まず第一に安藤政務次官にお尋ねしたいのです。現在厚生省方面で、甲表というものが非常に合理的であって、乙表が不合理であるという論が行なわれておるわけですが、どういう点が甲表が合理的で、どういうことで乙表が不合理だという点を、国民の前にまず簡単に御指示を願いたいと思うのです。
  149. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 甲表が合理化されておって乙表が不合理であるという見解は、私は持っておりません。ただ甲表、乙表の一本化をなすべきである、こういうお声は強く聞いておりますし、またいろいろな御意見等も承って、一本化がすでに当委員会においても御決議になっておることでもありますし、なさるべきものであろう、またなしたいものである、かように考えておるわけであります。
  150. 滝井義高

    滝井委員 その場合に一本化するということはどういう意味なんでしょうか。何を基礎にして一本化をするのでしょうか。
  151. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 それについていろいろの案があるようであります。乙を廃して甲一本にする、あるいは甲を廃して乙一本にする、あるいは甲乙合わせていくというようなことがいろいろと言われております。しかし私におきまして、そのいずれをとるということを専門的にまだ研究をいたしておりません。
  152. 滝井義高

    滝井委員 これは普通の算術とは違うのですね。やはり甲表、乙表というからには、学問の成果である技術を評価しておるわけです。技術一つ体系として甲表とか乙表というものが出てきておると思うのです。ところがそれを今言ったように、あれこれ足し算をしていくということではいけないと思うのです。やはりそこに厚生省が、そういう一本化を一昨年の十一月にわれわれが決議をしていますから、何らかの作業を学問的におやりにならなければいかぬと思うのです。これは何もおやりになっていないのですか。そうしますと、もう一年以上経過したにもかかわらず何もおやりになっていない、こういうことではおかしいと思うのです。やはり専門団体なり、あるいは学会なりに十分御検討願って、その方向を示さなければならぬと思うのです。今は政党政治です。政党政治は、国民から政党が選挙を通じて負託を受けておるわけです。従って、大臣になりましたならば、あそこの委員会にかけよう、ここの審議会にかけようというのではなくて、やはり自分の基本的な方針というものがないところに、日本厚生行政というものが、こんなに風の間に間にゆれなければならぬという問題があると思うのです。  そこであなたとしては、一体甲表が合理的かどうかもわからぬ、乙表もどうかわからぬということなら、一本化する方向もわからないわけなんです。これは一体どういうことなんですか。
  153. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 お答えいたします。厚生省において乙表が不合理であって、甲表が合理的だということを言っておられるかどうか、こういうお尋ねでございましたので、私はそういうことを承っておりませんし、また申したこともございませんというのです。甲乙一本化はどうかということでございますので、ある方は甲表を廃して乙表に、ある方は乙表を廃して甲表に、ある方は甲乙合わせて二で割るということをおっしゃる方もあります。かように申すのでありまして、私がそれをどうこういたそうということでございません。  それから作業を進めておるかということにつきましては、作業を進めておるそうでありまして、その作業の進捗状態等につきましては事務当局からお聞き取りを願いたい、かように存じます。
  154. 滝井義高

    滝井委員 作業を進めておるならば、基本的な方針がなければならぬわけです。どういう方針で作業をお進めになっているのですか。今言ったように無原則の進め方では作業にならない。どういう基本方針にのって作業を進めておられるのか。
  155. 森本潔

    森本政府委員 基本的な考え方といたしましては、現在甲乙二表ございますが、それらよりもより合理的であるという一語に尽きると思うのであります。一語にしていえば、より合理的なものにする、こういう方向で考えておる、こういうことであります。
  156. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、作業を進められておれば、その作業の片りんでよろしいから、後刻資料として提出を願います。  最近点数の改正と単価の改定、それぞれどちらがいいかということが論争をされておるわけです。この点数改定なり単価改定の意味について、武見医師会会長の見解を承りたいと思います。
  157. 武見太郎

    武見参考人 私は今の森本局長の、より合理的ということが全然空漠として、形容詞だけでございますので、この点はなはだ不安を感ずるものでございます。一体いかなるものが合理的かということは、立場々々によって違います。学問をしております者は、学問の線がまっすぐに通ることが合理的でございます。また金を支払う保険者団体は、おそらくできるだけ払わないことが合理的だろうと思います。また被保険者は、安いことが一番合理的と考えやすい危険がございます。おのおのの立場から、その合理的というものの内容が明確になりますが、ほんとうにこれが社会的に合理的であるかどうかという点について、秘密裏に作業を進めているというところに、私は権力行政の裏側があるような気がするのであります。点数単価方式が現在採用されておるわけでありますが、世界的に点数単価方式を採用しております国の点数表の考え方は、技術士のランキングが大部分でございます。専門学会がこの問題を取り上げることが一番正しいのでありまして、学術上のランキングと経済変動という二つの大きな要素がなければ、診療報酬は成り立つわけがないのであります。もしこれを拒否する体制が出ますならば、これは保険者のあてがい扶持の合理化でございます。学術上のランキングと申しますものは、専門学会である日本医学会以外にこれをすることはできないはずであります。厚生省の技官が一部々々を聞いて寄せ集めましても、これは学会の承認したランキングではございません。この点は誤解のないように願いたいと思います。  また経済変動に対処いたしまして、ことに池田総理の所得倍増計画に対しまして、私どもは非常な危惧の念を持ちます。国民所得が倍増いたしましたときに、物の生産は倍増するかもしれませんけれども、私ども病人を倍にすることはできないわけであります。診療報酬が倍に上がらなければ所得倍増にならないわけでありますが、今日の診療報酬考え方の中では、これがどのように取り扱われていくかということは、非常に大きな不安の種でございます。私は今一のままで参りますと、十年後には医師は所得が半減するだろうと思います。この十年後の所得半減ということが、今日の、医師に対しまして非常な危惧の念と焦燥感を与えていることは大きな不安でございます。これを明確に解消する方向を診療報酬の面で打ち出されることが、私は目下の問題解決にとって非常に重要であると考えるものでございます。
  158. 滝井義高

    滝井委員 安藤政務次官に御質問いたしますが、現在の診療報酬は点数と単価とのかけ算になっております。点数だけを上げる条件、単価だけを上げる条件とは、一体どうい場合に起こりますか。今点数と単価とがあるわけです。だからどちらかを上げる場合があるわけです。両方上げる場合もありましょう。しかし単価だけを上げる場合、点数だけを上げる場合の条件があると思います。どういう場合に点数だけを上げますか。どういう場合に単価だけを上げますか。
  159. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 単価で上げまする場合におきましては、結果として医療費全体に及んでいくだろうと思います。また点数の場合におきましては、これが特殊のものにだけいくということが行なわれるだろうと思います。
  160. 滝井義高

    滝井委員 そういう場合はどういう場合ですか。どういう条件の場合に点数だけを上げることになるのですか。どういう条件の場合に単価だけを上げることになるのか、それをお聞きしておるわけです。これが大事な点なのです。ここにはっきりとした基本的な方針、ルールがきめられていないと、今のような論争が起こってくるわけです。だから私は三十三年にこれをきめるときに、その条件について政府の見解をただしておるわけです。これをはっきりしてもらわなければだめなのです。
  161. 森本潔

    森本政府委員 非常に事務的な問題でございますので、私からお答えいたします。どういう場合に点数で上げるか単価で上げるかということでございますが、これにはやはりいろいろ前提がございまして、たとえば単価というものをどういうように見るか、これを経済単位と見る場合には、これを上げるということが考えられましょうし、これを計算単位でいう、たとえば一円が一点であるというような単価があるとします場合には、これは計算上のものでありますので、これを上げるということは考えられない、こういうことになるだろうと思います。その辺、いろいろ議論がございますが、一応の考え方としてはそうだと思います。  それから点数でやる場合といいますと、今申しましたように、単価というものが計算単位であるというような場合が一つございましょう。あるいは点数自体がアンバランスがある、それぞれのバランスがとれておらぬというような場合には、点数だけをやることもございましょう。あるいは全体がバランスがとれておる。しかしながらこれが一律に何%か上がる方が適当であるという場合には、点数全部をいじることがあると思います。いろいろなケースがございますので、一がいには答えられないところでございます。大体今申し上げましたようないろいろなケースが予想されます。
  162. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、客観的に現在の日本の情勢はどういう場合に当たりますか。これは現実ですから、答えられるはずです。
  163. 森本潔

    森本政府委員 この単価についての考え方は、従来いろいろ変遷をいたしておりますが、最近におきます考え方というのは、昭和三十三年に点数表の改定をいたしました。そのときにとりました考え方というのは、十円というのを計算上の単価とする、こういう考え方であったのであります。従いまして今後医療費改定の方法として考えます場合には、一律に点数をいじるとか、あるいは点数表のアンバランスを是正する意味において点数をいじる、こういうことになると思うのであります。
  164. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、政府としては単価をいじることはない、単価というものは点数上の計算の基礎なんだから、一円一点というようなものと同じなのだからないのだ、アンバランスで点数だけなんだ、こういうことの答弁だ、そう了解して差しつかえありませんか。
  165. 森本潔

    森本政府委員 先ほども申し上げましたように、昭和三十三年に十円という単価をきめましたときは、そういう考え方でやったわけでございます。従いまして今後単価というものにどういう面を持たせるか、あるいは十円というものを経済単位と考えて、今後そういう処置をしていくか、今後の問題としては、そういうことであります。ただいままでの経過としてはそうでございますが、今後単価というものを経済単位に考えるという考え方が絶無ではないわけでございまして、その辺は今後の問題でございます。
  166. 滝井義高

    滝井委員 どうもはっきりしません。実はここが一番論争のポイントなのです。だから私は実は厚生大臣に来ていただいて、基本的な厚生大臣の考えを、この国民的な注視の的の中で、はっきりしていく、いろいろなものの考えをはっきりしていく、その上で論争をすれば一番はっきりするのです。今のように、何か三十三年のときのことばかり言って、現実の段階で一体政府がどうするかということもわからぬくせに、ちょこちょこ資料だけ出すということが問題なのです。だから今のようなことでは、われわれちょっと納得ができませんが、時間がありませんから次に移ります。無原則ということだけわかりました。  そこで武見会長にお尋ねしますが、現在衆議院では三十六年度の予算がすでに、審議を開始されて、もう半ばくらいの審議が進行いたしました。この医療費の問題というものは、五つの大きな手かせ足かせがはめられておるわけです。それはまず第一に、三十六年度の十二兆七千三百十億円という国民所得のワクが一つはめられております。これはもう厳然として、この十二兆というものが一応正しいかどうかは問題があるにしても、そういう国民所得というワクがはめられておるわけであります。もう一つのワクは、その国民所得から出て参りました一兆九千五百二十七億円という三十六年度の予算のワクがはめられたわけです。そうして一兆九千五百二十七億円のワクの下に、二千四百六十六億円という社会保障のワクがはめられた。その二千四百六十六億の社会保障のワクの中で五百二十一億円という社会保険の経費が出てきたわけです。そして五百二十一億円の社会保険の経費の中に政府は、医療費の改定としてはいろいろ厚生省で計算した結果、大体ことしの医療費の値上げの要望に対しては一割を引き上げたならば大丈夫だろうという確信の上に立って大体予算を計上した。そうしてその一割の引き上げに対して国の負担をする分は約七十四億程度だ、こうなったわけです。従って、ずっと七十四億、五百二十一億、二千四百六十六億、一兆九千五百二十七億、十二兆七千三百十億という、こういう五つの手かせ足かせがはめられたわけです。ヘレン・ケラーの三重苦より苦しいですが、五重苦の悩みができたわけです。これは衆議院を予算が通りますと、これが国会の意思として非常に強い拘束力を持ってきます。今までそれでわれわれ社会党もずいぶんだまされてきました。委員会では、いや、それは御説ごもっとも、近く検討いたします。近く御期待に沿いますと言っても、一向社会党微力にして御期待に沿ってもらえなかったわけです。ことしもまたこれが通るとごまかされることになるわけです。三十六年度予算に計上をしておる一割の医療費の引き上げのこの予算の現実を両会長さんは一体どう認識せられ、どうお考えになっておられるのか、この点をここに明らかにしていただきたいと思います。
  167. 武見太郎

    武見参考人 この七十四億の決定に対しましては、日本医師会のいろいろな数字は全く採択されなかったわけでございます。従いまして、私どもはこの七十四億がわれわれの要求、国民医療を守る点から、私どもははなはだ不十分であると考えております。従いまして、この七十四億はへたをすると、私どもはこんなものなら国民医療は守れません、お返し申し上げてもよろしいという強い決意に立つものでございます。
  168. 河村弘

    河村参考人 私もこの一〇%――第一、一〇%というものはどういう根拠で出てきたか、こういうことが全然わかりません。またこの間も参議院の社労でのお話を聞いておっても、どうしてもそういうことが納得ができません。またこういうような形で一〇%ということをはっきり出したということ自体に私は非常に疑いを持つのです。また実際われわれの要望からいたしましても、全然こういうものでは今後の医療の完成は期することができないことを信じております。
  169. 滝井義高

    滝井委員 両会長さんの意向は、よくわかりました。  次は、問題はやはり同じような基本的な問題にそれが発展していくことになるのですが、一割の引き上げをやりますと、二百十七億の医療費の増になる、これは七月一日から実施のことになっておる。当初は四月一日と言っておったが、これもわれわれをだましたわけですが、二百十七億、その中で国が今七十四億を負担をしますが、患者負担が六十五億、それから保険者負担百六億、保険者といっても結局患者の被保険者大衆の保険料の集積ですが、これを負担させるということになっておる。その中で一番われわれが問題にしなければならないのは、国民健康保険、政府管掌の健康保険、それから今赤字に悩みつつある日雇いの健康保険、船員保険、この四つだと思うのです。特にやはり国民健康保険に集中的に問題が現われてくると思うのです。この場合に国民健康保険というものは、画会長さん御存じの通り、今年四月一日から拠出制の年金が始まるわけでございます。この拠出制の年金は、国民健康保険の被保険者と同じ層を対象にする年金なんです。従って、全国の国民健康保険保険料というものは、一世帯平均三千五、六百円です。それから今度は国民年金保険料は、これは三十四才で御夫婦いらっしゃれば二千四百円払うことになる。そうすると五千五、六百円から六千円のものが保険料でとられていく。そのほかに今度は新しく一部負担が国保には出てきたわけです。これでは今の日本の皆保険政策の今後の柱となり、日本医療保障の柱となるのであろう国民健康保険というものは、これはもう患者の犠牲によるか療養担当者の犠牲による以外には、農民、中小企業者の疾病治療予防というものができないという現実が、大体はっきりしてきたわけです。こういう点について、具体的な数字を今度は政府は課そうとしておる。この医療費の改定をさらに拡大をすればするほど、その負担というものが重くなってくることになるのですが、これに対する明確な療養担当者の意向というものを、さいぜんちょっと表明されましたが、特にこれらの点について、どう一体重点的にしたならば、両医師会長さんの言われる科学技術を尊重し、専門技術者としての医学的良心が満足できる姿ができるのかということなんですね。この点に対する御見解を一つお聞かせ願いたい。
  170. 武見太郎

    武見参考人 私は、この点に関しましては、国民健康保険の給付率の引き上げが前提条件でなければならないと思います。少なくとも私は大幅の国庫負担によりまして、国民健康保険の給付率を引き上げていく、これを基本的な条件といたしまして問題の打開のかぎとしなければならないと思います。その他いろいろ給付の不公平、負担の不公平は当然これに伴って是正されるべきものと考えております。
  171. 滝井義高

    滝井委員 御意見はよくわかりました。よくわかりましたので、しからば、一体、この当面の事態の中で両医師会が要求をせられております――歯科医師会歯科の特殊性が幾分ほかにもございますが、医療費をとにかく三円上げてもらいたい、制限診療を撤廃をしてもらいたい、甲乙三表の一本化と、それから地域差を撤廃をしてくれ、保険事務を簡素化してくれという四つの要求が、今のような日本の客観的なこの予算の状況から考えて、一挙にこれを解決することはなかなか困難だと思うのです。そこで解決は、それらのものを一挙に四ついかなくても、段階的にどこか一つ一つ橋頭堡というか、足場を固めながら、これを解決していく道を現実の段階としてはとられなければならぬと思うのです。そのとられる案として、今古井厚生行政としては医療協議会の改組をお出しになっておるわけです。これについては両医師会長は、医療協議会が今の段階で改組されても、われわれはこれに入る意思がないということが明白になったわけです。今のような姿で入れといったってそれは無理だということがはっきりしてきたわけです。  そこでこれから少しずつ具体的な解決の御意見をお聞きするわけですが、現在巷間に伝えられるところによると、日本医療費問題の致命傷は三つあるんだということが巷間にいわれております。それは実態調査が行なわれないのだ、いま一つ医療協議会がどうも開会が阻止されている、いま一つ医師歯科医師病院等の医療従事荷、これらの一斉休診とかスト、いわゆる実力行使と申しましょうか、そういうような三つの問題が出たために、日本医療費問題は致命傷になったということがマスコミ等に取り上げられております。そこでまず、これが致命傷かどうかということはいろいろ問題があるだろうと思いますが、やはり問題の発端というものは、二十七年三月調査というものが、お互いに信頼感を得ていなかったところに根本的な一つの大きな問題があると思うのです。そこで現在世の中では、医師会医療の実態調査を拒否するからできないのだ、しかも三円には何ら根拠がないじゃないかということが、マスコミその他で言われておるわけです。それから同時に、一方においては健康保険組合その他の隠し財産があって、実態がはっきりしないじゃないかという主張もはっきりしているわけです。そこで私は両医師会長さんに御意見をお聞きするわけでございますが、この際日本医療費問題というものを根本的に解決する糸口を作り、その糸口の中から日本社会医療保険体系にメスを加えていく、こういう一応の道行きを考えて、この医療費の実態調査、まあ医療費といえば診療機関だけを調査することになりますが、医療費を解決するための実態調査ともいうべきものです。それはどういうものかというと、もちろん公的医療機関、私的医療機関あるいは国立病院調査、それから健康保険組合の調査、すでに二百十五億の政府管掌の健康保険の積立金が三十五年末にはできるそうでございますが、この政府管掌の健康保険の実態調査、それから被保険者の側の負担能力の調査、同時にもう一つわれわれが見落としているのは日本における製薬企業のロスの調査、私はこれを三者と申すのですが、日本医療を前進させるためにはこれら王者、保険者、被保険者、療養担当者、国家、そして製薬企業という三者が、喜ぶときにはともに喜び、悲しむときにはともに悲しむという体系を作ることが必要だと思うのです。これらの王者が一つの土俵に上がる姿にできないところに問題があると思うのです。この土俵に上がる姿をもし作るとするならば、それに喜んで参加をする御意思が町医師会はあるのかないのかということなんです。
  172. 武見太郎

    武見参考人 今の問題にお答えをいたします前に、非常に重要な前提条件があると思います。厚生省行政基本理念を欠いておりまして、ふらふらでございますならば調査は意義がなくなると思います。先ほど保険局長は三十三年――これは三十二年です。実際やりましたのは橋本さんが大臣ですから三十二年ですが、このときには橋本厚生大臣は、乙表の単価は経済的要素を含むということを明確に約束いたしました。国会においてもその発言をいたしたものでございます。しかるに今保険局長は、両表とも指数単価であるかのごとき表現をしております。また必要があれば経済単価に戻ってもいいような表現もしております。このようなふらふら行政のもとにおきましては、私は経済調査は行ない得ないじゃないかと思うのです。ですから私どもはまず調査を行ないますならば、厚生省が確固たる方針と長期的な観点に立って、関係者の納得の上に方針を確立したときに、初めて調査が有効にできると考えます。それからまた先ほど来申し上げましたような調査資料の信頼性の問題でございます。これは非常に重要です。これは全く官庁側が独自で数字をいじることに対しましては、私ども今日賛成いたしかねます。これは私どもといたしましてはその数字は私どもにおいても同様な立場で数字を処理するということが許されなければなりません。少なくとも医業の調査と申しますものは、世界的に見まして四年間で価値を消失するというのが通則になっております。今日昭和二十七年の調査をいかなる方法で、神がかりで補正されましても、今日の医療の報酬はこの補正の姿からは出てこないはずであります。ここに現実と背離した数字がいかに国民とマスコミを誤らせているかということを特に申し上げまして、私どもはそういう重大な前提条件の確立の上で、調査に御協力申し上げたいと思います。
  173. 河村弘

    河村参考人 歯科医師会といたしましては、先般実態調査の御依頼があったのでありますが、これも拒否いたしました。しかしながら私どもは、私ども歯科医師会の方から歯科の自主的な立場によりましてはっきりしたものを作ることの確信を持っております。従いまして近い将来において、この面を出すことを渾身努めたい。また今武見会長のお話のように、信頼性ということに対して私も非常に疑いを持っておるのであります。それは、先ほど申しましたごとく、われわれ医療担当者というものに対しての信頼、尊重、こういうものが欠けておるのでありまして、あくまでもほんとうの誠意を持ってわれわれと共同、あるいはそういう形の信頼性をはっきり出すようなことがあるならば、われわれは協力を惜しまないものであります。その上で私どもは全面的な形をとりたいと思います。
  174. 滝井義高

    滝井委員 わかりました。厚生行政基本理念がしっかり確立をされて、しかも調査の結果の取り扱い、あるいは調査の実施の段階において、それぞれ全部が、相互の信頼と、しかも平等の立場でやればよろしいんだ、そういう一つ前提条件が満たされるならば、基本的な医療調査については両医師会とも御協力いただけるということが明白になりました。そうしますと、そういう前提のもとに実態調査が出て参りますと、当然これを今度は具体的にどう現実の医療に具現をしていくかという問題になるわけです。そうなりますと、今現実の制度の中であるものは医療協議会なんです。そういう場合に、医療協議会が民主的な公平な機関として改組せられたときには、入る可能性は十分できてくると考えて差しつかえありませんか。
  175. 武見太郎

    武見参考人 これは、すぐそこにいくのはいささか私は論理的に無理があるんじゃないかと思います。それは、どのような形で、具体的に、中央医療協議会の名であろうがなかろうが、正しく、行なわれ、第三者が納得するような形の場合は、われわれは喜んで上がるわけでございます。
  176. 滝井義高

    滝井委員 これもよくわかりました。そうすると、あとに残る問題はもう一つになってきた。それは、現在五つの手かせ足かせをはめられておる、一番末端の七十四億を、これを国会を通してしまったんでは、もう厳然たる既成事実になってしまうんです。主税局長の説明によれば、今年度使い得る財源というものは四千六百九十九億で、全部はたいてしまいましたので、あとに残っておる財源はもう七億しかありません、こういうことがあるわけです。そうしますと、一〇%が通ってしまうと、もうあといかにじたばたしたってだめなんです。そこでこの一〇%を破る道を考えておかなければいかぬわけです。で、社会党はそれを一つ考えておるのです。考えておりますので、この点両医師会の御意見を聞き、御協力をいただければ、ともに一つしなければならぬと思っておりますが、それは、やがて近く政府が国民健康保険法の改正を出してくるのです。今度精神、結核は本人について七割の給付をやることになったのです。同時に、健康保険についても、これは御存じの通り、お産の給付のワクを広げて、多分六千円ぐらいにするのです。この予算を一挙にわれわれが修正をするということは、非常に困難です。今の自由民三党に、われわれか皆さんと力を合わしてやってもなかなか困難かと思いますが、しかし法律の修正は、これはやはり工合によってはできる可能性が十分あるんです、客観情勢は。そこで、そういう点についてのあなた方の御協力なり考えというものが、やはり一〇%のワクを破るという前提がないと、これはなかなか問題があるわけです。患者負担も出てくる。それから一〇%のワクがしぼられてしまう。こういうことで、いかに実態調査をやり、医療協議会を再開したところで、これは実現できない。だから、やはりこれは将来にわたって予算を補正し、その足場を作る必要があると思うのですが、そういう一つの問題点についてはどういうお感じを持っておるか。
  177. 武見太郎

    武見参考人 これは、私は国会の御責任で、正しいと御判断になった方法を十分にとっていただきたいと思います。  ここで私がもう一つ申し上げなければならぬ問題は、ただいまお産の六千円の問題が出ましたが、滝井先生の御指摘になりました、六千円の財源がどこから出てきたかという点、私は相当疑問に思うのでございます。それから昨年四月以来、結核の治癒患者に対して予防内服をやっておられます。しかもこれは社会保障制度審議会その他におきまして、保険医療機関には差別を設けないというにもかかわらず、予防内服はある特定の病院を指定して、予防内服をされております。これは、中央医療協議会でカナマイシンの採用をあれほど引っぱっておきながら、この患者に対する予防内服は中央医療協議会にもかけず、結核予防審議会にもかけないで、やみのうちに行なわれたわけであります。これらの財源がどのような形で今日使われておるかということについて、私どもは了解しないわけであります。新しくお産に使われる六千円は、私はかれこれ申しませんが、その財源がどのような形で政府管掌の被保険者に流れているかという点を考えますと、診療報酬の引き上げに要する隠し財源を食っているんじゃないかという危惧の念も私はあるわけでありまして、あらゆる関係の審議会を利用する、利用すると言っておきながら、予防内服というようなものを勝手にやった事実は、私は究明さるべきだと思います。これもあわせて御参考に御検討を願いたいと思うのであります。
  178. 滝井義高

    滝井委員 両会長さんの御意向、十分わかりました。私は一つだけ武見会長に御注意を申し上げておきたいことがあるのです。それは、われわれが今後医療費問題を解決していく上に、新聞、テレビ、ラジオ等のマスコミの役割というものは非常に重大でございます。ところが、現在私は驚くべきことを実は発見をいたしたのです。それは、先日成田政審会長等とともにあなたに一斉休診に対する党の態度の申し入れをやりまして、その後記者発表その他を行なったわけですが、ジャーナリストの中において、あなたが非常に憎まれ、非常に非難の爼上に上っておるということです。これは、私は、今後ほんとうに公正な立場医療費の問題なり、社会保険の問題を解決する上に、きわめて重要な点だと思うのです。これは三百にして言えば、あるいはあなたは自分の不徳のいたすところだと、こう言われるかもしれませんけれども、これはそれだけではなかなか済まないところがあると思うのです。それは、七万あるいは十万の日本医療に携わる科学者の問題にも通じてきておると思うのです。今後一つぜひそういう――私は公衆の面前で率直に申し上げるわけです。そういういわば四面楚歌の中にあるということです。そういう点、一つ十分発言その他においても慎重におやりになって――きょうのあなたのいろいろの御意見というものは、われわれ非常に参考になりました。傾聴するところ多かったのです。その御意見を堂々と御主張になり、常々と所信を貫き、やはり謙虚に、そして寛大な、太っ腹な気持で新聞記者等にもお接しになって、そしてあなたの所信を貫いていただくことを特に要望をいたして私の質問を終わりたいと思います。
  179. 山本猛夫

    山本委員長 大原亨君。
  180. 大原亨

    ○大原委員 時間もたちましたので、きわめて簡潔に御質問いたしたいと思います。  今のいろいろな討論を聞いておりまして、やはり相当恒久的な見通しの中で当面の対策を立てなければいけない、こういうことがよく私は理解できました。その中で、私は医者ではありませんけれども、しかしそういう医者との関係においては、第三者といたしまして、昭和三十六年から国民保険が出発するにあたって、今の討論の中から二つの点について私は特に取り上げて、医師会歯科医師会がこれから運動を展開されていく上においての御所見をお聞きしたいと思う。  その第一点は、国民保険というのは皆さん方の医療技術というものを公一定価格できめてしまう、こういうことであります。皆保険の善悪についての議論は別といたしまして、その中でコストが非常に問題になると私は思う。そのコストの一つとして無視できない要素は、やはり薬品であると思うのです。私は、この点は厚生省を徹底的に追及をいたしたいと思うのですが、この薬品に対するコストの問題を討議をしないでおいて医療の規制をするものだから、お医者さんやあるいは患者にそのしわ寄せがくるという面もあると思う。私いろいろな資料を拝見をいたしますると、たとえば保健剤などがひどいのですけれども、四〇でメーカーから出荷いたしまして、それが卸へ行く、そうすると五二くらいで小売へ行く、そして末端価格は一〇〇くらいになっている。広告費の問題等いろいろな冗費があると思うが、そういう問題について国民立場に立って問題を解決する際に、政府全体も納得できるような施策をとるとともに、医師会の皆さん方も巨大な政治力をもって国民の納得できるような、そういう面における合理的な解決方法を考えていただくことが、私はこれからの運動展開の上で必要ではないかという点が一つであります。これは低医療費政策をとっているのはだれかという問題にも関連をいたします。  もう一つは、医師会、長の御発言で非常に示唆に富み、私も従来から関心を持っておりましたが、医師会病院という考え方であります。今の医療費の問題をめぐって経済問題と技術の問題、この二つの問題を解決する一つの方向として医師会病院という提案がなされた。こういう積極的な提案をどんどんしていただいて、全体としては消費者が納得できるような、そういう問題解決を目ざしながら、当面の問題について解決を与えていく、こういうことが今日の段階ではきわめて大切ではないか。国民保険ということで、昭和三十六年からこれが出発するのでありますから、これは画期的なことであります。従って、それらの諸問題について、もう少し医師会の方も積極的なそういう提案をしていただいて、立場を明確にしていただくことが必要ではないかと思うのですが、その点に対する御所見をお伺いしたいと思います
  181. 武見太郎

    武見参考人 薬品の問題に関しまして、これが自由価格で売られておりまして、医師技術は完全統制であるということは大きな矛盾であると私は考えております。御趣旨に全く賛成でございます。  それから医師会病院の問題は、これは私が昭和二十五、六年、副会長当時に、今後の高度の医学を第一線医療機関に導入するにはこれ以外に方法がないと考えまして、試験的に一カ所作って、これが非常に成功いたしたわけでございます。今年度におきましては、おそらく二十カ所くらいできると思います。おのおのの地域でまだ試験的な段階でございますので、確実な結論を申し上げることはできませんけれども、運営よろしきを得ましたところは、非常に住民の信頼と福祉の増進に貢献をいたしておるようでございます。公的医療機関の乱設と申しますものはクローズド・システムでございまして、技術経済が公開されていないのに対して、医師会病院技術経済が公開されておる、また全部の地域医師のチーム・ワークがここで完成する、それから必要のある場合には大家を呼んできてどんな貧乏人でもその診察を受けることができる、あるいは手術も受けることができる、こういう点で、私は第一線の医療機関を拡充強化するという観点から、医師会病院は有力な構想であると考えます。いたずらな公的医療機関の乱設は私は非常に医療費のむだな負担を国民にしいているように考えておりますので、私はこの点につきましては医療金融公庫も重点的にこちらに使ってもらうように努力をしておるわけでございますが、それではまだ足らないわけでございます。できますならば厚生年金の還元融資、あるいは今度できます年金、事業団等の融資がこれらの面に積極的に加えられるように国会方面におきましてお取り計らいを願いますならば、非常にありがたいことと考えております。
  182. 大原亨

    ○大原委員 もう一つ私はこの際に問題点といたしまして明らかにしたい点は、厚生省の中にもその点については同調する人があると私は信ずるのですが、これはあとに議論するといたしまして、現在のそういう医療協議会その他の問題をめぐる混乱の原因は、日本医療行政は歴史的に監督行政保険の当事者が混乱をしてしまっておる。そういう行政の部面と、保険者団体等がやるような業務の面、保険者代表というような名目で官僚が出るという面を分化する方向で当面のいろいろな問題点を解決すべきであるという点を国会といたしても十分検討いたしまして、明確に方向を示しながら問題解決に当たっていく、こういうことが私は必要であると思うのですが、その点についての簡単な医師会長の御所見をお伺いしたいと思います。
  183. 武見太郎

    武見参考人 私は昭和二十五年の第一回の社会保障制度審議会の勧告の際にも、監督と運営の分離というものを強調いたしたことを覚えております。これは当然分化すべきものが今日分化しておりませんことが、御指摘のように混迷の大きな原因になっております。
  184. 大原亨

    ○大原委員 その他の諸問題につきましては今まで御質問がありましたから、私は重複して触れませんが、きょうの討論を通じまして両医師会長は非常に御苦労であって、非常にお疲れになったと思います。しかしあらゆる問題は私は一応出つつあると思うのであります。その点については一つ将来もこういう機会がありましたら御協力いただきたいと思うのですが、私は十九日の皆さん方の一斉休診につきましては、医師会は団結をしておられるのですから、集団として意思表示をされることは当然の権利であるし、特にその内容等におきましては、日曜云々の問題とか、積極的な医療開拓の意欲も示されたわけであります。そういう点で私どもは理解と認識を深める点が多かったわけであります。そういう点では正々堂々と意思を表明されることがあってしかるべきである。しかしながらこれがやたらに、このことを通じまして医師会側の意向というものが国民に誤解を与えたり、あるいは国民のための医療の前進のために役立たなかったり、そういう点、われわれも十分責任があると思うのですけれども、そういう点については緊急措置や急患、重患等の措置の問題についても触れられたわけであります。急患や重患等の人命救済の問題、国民の人命救済の問題を取り上げられるからこそ、医師の人権尊重を主張されておるのだ、そういう点におきましては医師会側のせっぱ詰まった立場というものは十分理解できるのでありますけれども、そういう措置につきましては万全の措置をとっていただくようにというこの意向が医師会の内部においても徹底し、そしてその皆様方の真の意図というものが国民の中にも浸透するように十分のお取り計らいをいただきたいと思いますし、きょうの議論は大いに役立っておる、こういうことを確信いたしますけれども、最後にその点に対します医師会長の御所信のほどをお伺いいたしたいと思います。
  185. 武見太郎

    武見参考人 これは私は通達の中で述べておりますように、私たちが現在見ている重症患者を診察しないということではございませんし、急患がいれば見るようにもなっております。それからまた公的医療機関は当然都道府県知事の責任において動員さるべきであり、それが動員されない場合は、都道府県の費用負担におきまして医師会長との話し合いの余地が残っております。これらの点を通じまして私は問題は大過なくいくと思いますが、ふだんの日でも医者が間に合わなかったような例までもこの際のできごとは全部医者の責任に転嫁されることは私は困ると思います。これらの点に関しましては、このような情勢をこしらえました厚生大臣が全責任を負うべきものと考えております。
  186. 山本猛夫

    山本委員長 本局百合子君。
  187. 本島百合子

    ○本島委員 きょうは大へん長い時間参考人の方々の供述をいただきまして非常に参考になったわけでありますが、二点ばかり心配になる点がございますのでお伺いをいたしたいと思います。  先ほどから繰り返し言われておりますように、一斉休診ということは国民にとりまして大きな衝撃であったと思うのです。ということは、いついかなるとき病気になるかわからない。特に日曜日に病気になった人々はかけ込んでいくところがない。公的医療機関ではなかなか受けてくれない。どうしても皆様方医師会の先生方のところに御相談に参るわけであります。それが一斉に休診されるということになったときに、国民は、一体自分たち病気になったときだれが責任を持ってくれるのだろうかという不安と、その後には不満という形になって、徐々にそういう傾向が現われてきていると思うのです。ところが、ただいまずっとお聞きいたしまして、皆保険下における基本的な措置がされていなかったということがだんだんと明確になって参ったわけでありますが、その中で、私は、中央社会保険医療協議会に出席されないということは何としても割り切れない。そこで、たびたび言及されておるところから見ますと、この構成が妥当でないというところにあると私は感ずるわけであります。それならば、構成は二十四名となっておりますが、これは両医師会ともに、どういう比率をもって出せばこの協議会に出席ができるのかということになりはしないか、このように感ずるわけでありますが、この点はいかがでございましょうか。
  188. 武見太郎

    武見参考人 これは人数だけの問題ではございませんで、運営の問題も、あるいはこれに諮問する問題の内容等も全く前時代的なものでございまして、委員会委員の構成にふさわしくない者が指名されたりいろいろいたしております。先ほど来申し上げましたように、健康保険法の全面的改正の上に、中央医療協議会と同じようなものを別に考えられることが必要だと考えます。
  189. 本島百合子

    ○本島委員 そういたしますと、改組ではなく、全然別個な形において構成されなければならない、これが両医師会考え方でございますか。
  190. 武見太郎

    武見参考人 その通りであります。
  191. 本島百合子

    ○本島委員 それでは、四月一日から行なわれようといたしております皆保険下で、その問題が急速に解決するというようには私どもは考えられないのです。ということは、先ほどから政務次官も言われておるように、厚生大臣はこの協議会に非常な期待を持っておられる。この場において両者の話をきめたいということを言われておる。そういたしますならば、ただいま言われるように、全然別個な形において作られるものが間に合わないというような気がいたすわけなんですが、人員、またそのメンバーあるいは運営等において両医師会が希望されるような方向に切りかわるとするならば、それは了承されることであるかどうかということでございます。
  192. 河村弘

    河村参考人 この面につきましては、先ほど来私も述べておる次第でございまして、現状といたしましては、先ほどお話ししましたごとく、健保法の全面的の改革という面は、誠意をもって、真摯な形において取り上げていくべきであると私は思っておりますので、これを待っているわけであります。
  193. 本島百合子

    ○本島委員 そういう点についてはすでに提案がなされておると私どもは聞いておりますが、それが聞かれない。聞かれないというのは、厚生省のいわゆる官僚行政の欠陥であるというふうに指摘されたと思うのです。私どもは、この事態になって考えた場合に、それは厚生省としても多分何とか方向を変えなければならぬということは了承されておると思うし、また今明日中に政府与党側の要路者とお会いになるはずだと思います。その場合においても何らかの話が打ち出されるというように仄聞しておりますが、そういう場合においても、完全無欠なる皆様方の要望通りでなければそれは受けられない、こういうふうにお考えでしょうか。
  194. 武見太郎

    武見参考人 これは政府御当局の具体的なお答えを私どもは期待するわけでございます。八月以来最も具体的な要求を出しておりますが、何ら具体的なお答えをいただいておらないのでございますから、具体的なお答えをいただきましたときに初めて私たちがお答えできる問題だと考えております。
  195. 本島百合子

    ○本島委員 そういたしますと、一点単価引き上げの問題と中央社会保険医療協議会の改組といいますか――改組ではなくて、別個の機関を作るということが最重要に聞かれて参ったわけなんです。今までの話を聞いておりますと、この点非常に問題点になっておるように聞いたわけなんですが、国民の願う気持というものは、そういうやかましいことを言われてもわからないのです。要は、何とか円満に保険行政が行なわれることを希望いたし、なおかつ自分たちが苦悩にさらされないということを考えているわけです。従って、私は、厚生大臣が先ほどおいでになったからそのときにぜひとも聞きたいと思ったのですが、これだけ強硬に要望されておる事項について、厚生省側もまた政府与党側においても、こういう点を何とかしょうという意思があるのかないのか、それがなければこの問題の解決が今見出されないという段階に来ておるわけなんです。この点は政務次官にお尋ねしますが、いかがでございましょう。
  196. 安藤覺

    安藤(覺)政府委員 お答え申し上げます。  武見会長からだんだんお申し入れの点等もございまして、また本日ここにいろいろ御意見の御展開等もございました。これらに沿って何らかの道を切り開いていかなければならぬという熱意のもとに、先般まずその第一着手として、古井厚生大臣医療協議会の改組というよりは全然別個の何らかの案を生み出していただきたいと社会保険審議会へ御諮問になったわけであります。その他の問題につきましても、順を追うてこれが解決に熱意を持っておられることだけははっきりとここに申し上げておく次第でございます。
  197. 本島百合子

    ○本島委員 ただいまの答弁でいきますと、諮問をしたと言われても、両医師会の方々が出席をされないで、欠けたままにおいて審議がなされるはずはないのですね。この前カナマイシンを使いますときに、やはりこの審議会を通さなければならないということになっておるにもかかわらず、これは事後承認という形で、持ち回りでカナマイシンを使うということが昨年暮れにきまったわけです。こういう点を考えてみますと、非常に便宜主義にこの協議会が使われておるということが私どもにもわかるわけです。従って、とにかくこの十九日の事態を避ける、その中でこれが最も重要な点になっておるとするならば、この点は政府も与党もまたこれを考え直してみる必要があるということを私は強く要望しておきたいと思うのです。  次に、両医師会の方にお尋ねいたしますが、医師会の方では、甲乙二表のうち、乙表が全医師の九一%を占めておるといわれております。そういたしますと、甲乙二表の一本化、あるいは格差をなくせ、地域差をなくせということを主張されておるわけでありますが、この場合において、先ほどこの表についてはいろいろの形があるということでしたが、そういうことでなしに、大体乙表に一本化しろという御要望であるのかどうか承りたいと思います。
  198. 武見太郎

    武見参考人 私どもは、一つのものに二つの公定価格があるということは、いかに経済の原則を無視した診療報酬であるかということを強く訴えておるわけでございます。世界医師会の三十五年度の総会におきまして、日本のこのデュアル・システムというものは大問題になりまして、説明をいたしました代表に対しまして、世界の嘲笑が浴びせられたわけであります。国辱的な存在でございます。これをいかに改めるかということに関しましては、私は学問の筋を通すということが第一だと考えております。
  199. 本島百合子

    ○本島委員 そこで、乙表によるとは今申されていないようでありますから、新たなる線において技術あるいは身分の保障、経済所得の面、こういう面を勘案した新たなる表を作れという趣旨でございましょうか。
  200. 武見太郎

    武見参考人 たとえて申しますならば、往診料が二キロまで百三十五円である、そういたしますと、これは往復いたしますと自動車屋さんよりも非常に安いような料金でございます。専門技術を正しく評価しておらないことは事実でございます。いろいろな矛盾はありますが、低医療費の現状を打開するとすれば、私どもは乙表の経済的な要素である単価を動かす以外に道はないと考えます。その上でいろいろな基礎的な調査資料をとりまして、そして正しい方向で新しいものを作っていくことが必要だと考えるものでございます。とにかく現状を打開するには、今の低医療費では、医療機関が全部赤字を出しておりますから、この赤字対策としては、点数表の改定が非常に難中の難事でございます。現に外科の手術の順位をきめますのに、専門の大先生が集まりまして六カ月かかっておりまして、これを横の各科と調整その他をいたしましても、なかなか問題はございます。それから、簡単に点数表をいじりますと、医療機関によって収入のアンバランスが非常に強く出て参ります。これは大きな医療の混乱を来たすのでございますので、点数をうっかりいじりましたときの医療の混乱は、単価を引き上げたときのようなスムーズな形ではいかないのであります。この点で、私は単価の経済的要素を失なわせてはならないと強く感ずるものでございます。
  201. 本島百合子

    ○本島委員 そういたしますと、大体現行の乙表に基づいて、それを合理化されたものを新たに作っていくということを主張しておられるわけでございますね。
  202. 武見太郎

    武見参考人 これは学問的にかなり古くなっております。従いまして、新しい学問の視野で全部ランキングをつけまして、そして経済的要素を盛った単価をとってくるということで私は合理化されると考えております。
  203. 本島百合子

    ○本島委員 もう一点それに関連して参るわけでありますが、先ほどから、十年後には所得は半減するということを言われております。そうすると、医師の身分の保障がないというような不安感、そういうものが今回の行動に大きな役割をもたらしておるというふうに聞き取れたわけなんです。そういたしますと、身分の保障ということになれば、当然年金という問題が今後われわれには行なわれるわけなんですそうすると、それとの関連をどのようにお考えになっていられるか。そしてそれは今日ありますような、公務員の恩給というものと関連したものを考えていられるかどうか。
  204. 武見太郎

    武見参考人 この問題に関しまして、私は約六、七年前に、保険医福祉組合法案というものを考えたことがございます。これによりまして、休業給付でございますとか、死亡給付でございますとか、あるいは遺族年金というふうなものを検討いたしましたが、実現に至っておらないのでございます。自由経済社会の中で医師だけが完全な統制に服しております段階におきましては、どうしても国の施策がそこに及び、またこの問題は医師だけではなくて、医療従業員に対しましても非常に重大な問題でございますが、私どもは今後十分検討いたさなければならないと思っております。私ども団体医師だけの団体でございますので、医師福祉組合的な考え方は、すでに、応は成案を得たものがあるわけでございますが、これも内容がちょっと古くなっておりますので、他のいろいろな年金等との関係から、もう一ぺん再検討の段階にあると考えております
  205. 本島百合子

    ○本島委員 これで最後にいたしますが、昔からお医者さんは仁術なりといいますし、看護婦さんはナイチンゲール精神であるといわれて、今日まで医療行政というものが行なわれてきているわけでありますが、そこに勤労者としての確固たる地盤が与えられていなかったということが、今回の問題の発火点であろうというふうに思われるわけであります。こういう点についての矛盾、あるいは今までるる申された点を私どもも聞いておりまして、実に不合理きわまりないものがあるということはわかるわけです。しかし今私が質問いたしました点だけを見ましても、近々に解決するというめどが今のところないわけであります。こうした場合に日曜休診が今後ともずっと続けられる――大体この日曜日の行動ということを発表されたわけでありますが、今回の十九日はそれと趣きが変わるわけであります。これは将来の医療に対する国民考え方が非常に変わってくるわけであります。武見会長さんが言われた言葉が誤報されたといたしましても、日曜日に病気するのはおかしいじゃないかというようなことは言えないことで、人道的にも許せないことであると思うのです。こういう場合にやはり病人は出るのですから、こういう人々に対して善処されていくというものが出てこなければ、やはり功罪半ばするというのが、今日の十九日一斉休診に対する国民考え方ではなかろうか、このように思うわけであります。もちろん厚生行政の欠陥ということは十二分にここに出ております。しかしそれに即応してやはりお医者様の方も多少無理はないであろうかというのが偽らざる国民の声だろうと考えております。こういう点において事態を何とか回避できるものならば今明日にお会いになり、またいろいろと働きかけ等もあるはずでありますから、そういう点で、問題は恒久的な問題もあるでしょう。そういう問題を今早急にきめることは困難としても、何とかここで話し合いをつける、めどがつけられるならばつけてもらいたいと私は希望するわけであります。  そういう点について今政府は何にも提案していないのだから、そういうことは答えられないと言われると思いますが、両医師会長ともそういう点についての国民の声、国民の生命に関する事態でございますから、こういう点については国民の感情を十二分に入れて一つ考えていただきたいということを要望し、なおかつそれに対しまして御答弁というとおかしいのですが、両会長さんから何らかお話を聞かせていただきたいと思います。
  206. 武見太郎

    武見参考人 先ほど仁術というお言葉がありましたが、私がけさ冒頭に申し上げましたように、封建的な古い仁術観は捨てなければいけない、新しい社会の合理的な仁術観というものが生まれてこなければいけない、この訓練は医師だけでなくて関係者、国民までも同じ必要があると思います。今日まで医師が非常な圧迫を受け、このような自由をもぎ取られましたことは、仁術の名に隠れて行なわれたことでございます。これ以上仁術の名に隠れて医師を集団奴隷の状態に置くことは私の良心が許しませんし、また国民も御理解を願えると思うのでございます。新しい仁術観医師が生きられますために、奴隷解放の第一段として日曜休診を選んだわけでありますから、どうか十分御了承願いたいと思います。
  207. 河村弘

    河村参考人 私も先ほど来のいろいろのお話についてはよくわかりますが、私どもの方の立場といたしましては、十九日の一斉休診というものはすでにその方針でおります。しかしながらそれに対する緊急の者に対しては、決して御心配のことはないことを、私は確言をして申し上げることができます。  なおここで最後に申し上げておきたいことは、私どもはいろいろな面において教育も受け、いろいろな仕事に面しても草間に忠実なる良心的なものをしたい、しかしながらこのワクの中の医療の仕事においてはできない。たとえば、ちょうど頭があって胴があって腕のないこけし人形と同じであります。われわれはこけし人形扱いをされておる、こういうことはまことに不合理きわまりないのでありまして、どうか皆さんの力でこういうことのないように、大いにお力をいただきたいと思います。
  208. 本島百合子

    ○本島委員 どうも長い時間供述をいただきましたことを心から感謝いたしますと同時に、今後ともこうした問題の解決には私ども会議員といえども取り組んでやっているわけでありますから、国民の大多数の不安、こうしたものが取り除かれていくために全力をあげていきたい、こういう気持を持っておりますので、その点を披瀝いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  209. 山本猛夫

    山本委員長 武見河村参考人には、御多用のところ、長時間にわたり、種々貴重な御意見をお述べいただき、本委員会調査に多大の参考となりましたことを厚く御礼申し上げます。  本日はこの程度にいたし、次会は来たる二十一日火曜日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時一分散会