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1961-03-24 第38回国会 衆議院 建設委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年三月二十四日(金曜日)    午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 加藤 高藏君    理事 佐藤虎次郎君 理事 薩摩 雄次君    理事 瀬戸山三男君 理事 石川 次夫君    理事 中島  巖君 理事 山中日露史君       逢澤  寛君    綾部健太郎君       浦野 幸男君    大倉 三郎君       大沢 雄一君    亀岡 高夫君       齋藤 邦吉君    二階堂 進君       丹羽喬四郎君    松田 鐵藏君       山口 好一君    岡本 隆一君       坂本 泰良君    三鍋 義三君       三宅 正一君    田中幾三郎君  出席国務大臣         建 設 大 臣 中村 梅吉君  出席政府委員         建設事務官         (計画局長)  關盛 吉雄君         建 設 技 官         (河川局長)  山内 一郎君         建 設 技 官         (住宅局長)  稗田  治君  委員外出席者         専  門  員 山口 乾治君     ————————————— 三月二十四日  委員木村公平君、廣瀬正雄君及び島上善五郎君  辞任につき、その補欠として亀岡高夫君浦野  幸男君及び坂本泰良君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員浦野幸男君、亀岡高夫君及び坂本泰良君辞  任につき、その補欠として廣瀬正雄君、木村公  平君及び島上善五郎君が議長指名委員に選  任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  日本住宅公団法の一部を改正する法律案内閣  提出第三四号)(参議院送付)  公営住宅法第六条第三項の規定に基づき、承認  を求めるの件(内閣提出承認第二号)  河川に関する件(松原・下筌ダム建設問題)      ————◇—————
  2. 加藤高藏

    加藤委員長 これより会議を開きます。  日本住宅公団法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案につきましては、前会質疑を終了いたしております。  これより本案討論に入ります。  討論通告がありませんので、討論を行なわず、直ちに採決いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 加藤高藏

    加藤委員長 御異議ないものと認めます。  採決いたします。  日本住宅公団法の一部を改正する法律案賛成諸君の御起立を求めます。   〔賛成者起立
  4. 加藤高藏

    加藤委員長 起立総長。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。     —————————————
  5. 加藤高藏

    加藤委員長 この際、瀬戸山君より本案附帯決議を付すべしとの動議提出されております。  趣旨弁明を許します。瀬戸山三男君。
  6. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員 ただいま議決されました日本住宅公団法の一部を改正する法律案につきまして、次のような附帯決議をいたしたいと思います。  まず附帯決議の案文を申し上げます。    日本住宅公団法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案   日本住宅公団は、公団の投融資による公団住宅居住者へのサービス機関の設立に当つては、居住者意思が充分反映し、且つ運営が営利に走らないよう措置すると共にその規模並びに業務を充実して公団地問に著しい格差を生ぜしめぬよう考慮すること。   右決議する。  以上が附帯決議案内容でありますが、簡単にその趣旨を申し上げます。  今度公団法の一部を改正いたしまして、いわゆる第二会社式の制度を作りますのは、御承知のように、公団建設いたします集団団地住宅居住者の便利をはかるために共益的な施設をいたそうとするわけでありますが、これは申し上げるまでもなく、居住者利便をはかるためにやるわけでありますから、従って、居住者意思を十分反映して、それを十分尊重しながらやるべきものであるわけであります。と同時に、そういう性質のものでありますから、当然に営利を主とするものであってはならない、こういうことでありますので、厳にそういうことを慎しむような措置をとるべきものであろうと思います。  なお、団地は各地に逐次建設されておるわけでありますが、この新しい会社等の組織によって、居住者利便をはかる施設を逐次やるわけでありますけれども、何しろ、予算等関係で一挙にこれを充実するということは事実上困難であります。けれども、団地に住む人々の立場から見ますれば、いずれの団地もそういう利便希望いたしておるわけでありますから、できるだけ団地それぞれの間に非常な差を生じないように特別の配慮をすることが当然であろう、そういう趣旨をもちましてこの附帯決議をぜひつけたい、こういうことでありますので、どうか全員の御賛成をお願い申し上げます。  これは自由民主党、社会党民主社会党三党の共同提案でありますから、付言いたしておきます。
  7. 加藤高藏

    加藤委員長 採決いたします。  瀬戸山提出動議賛成諸君の御起立を願います。   〔賛成者起立
  8. 加藤高藏

    加藤委員長 起立総員。よって、本案瀬戸山提出動議通り附帯決議を付することに決しました。     —————————————
  9. 加藤高藏

    加藤委員長 なお、ただいまの議決に伴う委員会報告書の作成並びに提出手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 加藤高藏

    加藤委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。      ————◇—————
  11. 加藤高藏

    加藤委員長 次に、公営住宅法第六条第三項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題といたします。  質疑通告がありますので、これを許します。  石川次夫君。
  12. 石川次夫

    石川委員 公営住宅法第六条第三項の規定に基づき、承認を求むる件の中で、特に問題になると思われる点について御質問したいと思います。  まず第一に、第一種木造、第二種木造公営住宅についてでありますけれども、その応募率は、最近一体どの程度になっておりますか。
  13. 稗田治

    稗田政府委員 公営住宅応募率でございますが、全国平均で見ますると、五倍ないし十倍というようなことでございます。なお、住宅需要度の高い大都市におきましては、十倍から九十倍というような倍率になる場合もございます。第二種、第一種のそれぞれの割合でございますが、大都市におきましては、大体第二種と第一種はほぼ同率に近くなっております。
  14. 石川次夫

    石川委員 そうしますと、都会地では、私の聞いている範囲では五十倍くらいの応募率だということですが、大体当たらずといえども遠からずということになります。  第二に伺いますけれども、私、この前の委員会でも申し上げましたように、日本における住宅に対する政府の積極的な取り組み方といいますか、予算の組み方というものは、非常に私は消極的だと思う。外国のように五割以上が政府施策住宅ということでなくて、わずかに三割をこす程度で、しかも、住宅事情からいいますと、日本はヨーロッパ、アメリカに比べてはるかに恵まれておらない。衣食住のうちで住だけがまだ戦後の状態のままに残されておるという形でもあり、さらにまた、住宅を提供することによって住民の福祉の向上をはかると同時に、日本景気回復一つの柱にするというアメリカ的なものの考え方を、もっと積極的に入れるべきではないか、こういうふうにわれわれとしては考えておるわけでございます。そうなると、今の数字に出てきました五十倍というのは、そのままそっくり五十倍、あるいは平均でいうところの五倍、十倍というのは、必ずしも五分の一しか充足しないということではないと思いますけれども、きわめてそれに近い数字でもって、住宅難に悩んでおるという実態はこの数字に、はっきり出ておると思います。  ところで、第一種、第二種公営住宅というものが今のような状態で行なったのでは、とうてい住民の満足を得ることは不可能だと思いますけれども、今度のこの数字を見ますと、相当積極的な配慮はいたしておりますが、まだわれわれとしては不十分だというふうに考える。その点については建設大臣所信を伺いたいと思います。
  15. 中村梅吉

    中村国務大臣 御指摘通り日本の国の事情と申しますか、衣食に非常に追われておった時代がありましたので、その方に自然いろいろな施策の重点が置かれて、住宅が十分でなかったという感じがいたしまする点については、全く同感でございます。いよいよ経済成長もこの段階に参りました以上は、極力住宅を充足いたしまして、現在のような応募率からいたしましても、非常に強度の住宅需要にこたえる努力を続けていくべきである、かように私、考えておる次第でございます。  三十六年度といたしましては御承知通りであり、また、公営住宅三カ年計画といたしましては、審議会の議を経まして、ただいま御承知を願っておりまする程度が妥当であろうという結論を得まして、御承認を願っておる次第でございますが、今後とも住宅の充足につきましては微力を尽くしたいと思っておる次第でございます。
  16. 石川次夫

    石川委員 今までの住宅計画と、その達成率について、住宅局長から御答弁願いたいと思います。
  17. 稗田治

    稗田政府委員 既住の三カ年計画計画戸数並びに達成しました戸数達成率でございますが、第一期、昭和二十七年から二十九年にわたる計画におきましては、公営住宅十八万戸を建設する計画でございましたが、実績におきましては十二万四千二十戸という戸数でございまして、達成率は六九%でございます。第二期は、昭和三十年から三十二年度にわたる計画でございまして、計画戸数は十五万五千戸でございましたが、この実績は十四万二千百九十五戸でございまして、達成率は九二%。第三期は昭和三十三年から三十五年まででございますが、計画戸数は十五万七千戸でございまして、これの実績は十四万四千四十四戸でございまして、達成率は九二%でございます。ただし、この第三期の場合に、三十五年度におきまして初めて住宅地区改良法による改良住宅建設が、従来公営住宅の中の第二種公営住宅を使っておりましたのを別ワクにいたしましたので、今申し上げました達成率の九二%というのは、公営住宅法による公営住宅としてとらえたものでございます。その改良住宅二千戸を加えますと、九三%という達成率でございます。
  18. 石川次夫

    石川委員 そうしますと、いろいろな事情がありまして一〇〇%はなかなか困難であろうとは思いますけれども、目標達成できなかったという事実は、この数字にはっきり出ておると思います。今度十七万一千戸という数字を立てられましたけれども、この数字は必ず消化できるという確信をお持ちかどうか、念のために伺いたいと思います。
  19. 稗田治

    稗田政府委員 第四期の十七万一千戸の計画につきましては、御承知のように、昨年経済長期計画としまして企画庁の方から出ました計画がございますが、その中に住宅行政投資というのが、十年間に一兆三千億というような内容で出ておるわけでございます。大体この一兆三千億と申しますのは、三十五年度の投資に比べまして二四・三倍という割合でございまして、行政投資のうちで最高伸び率を示しておるものでございます。それが年次の平均伸び率に直しますと一五・七%の伸び率になるわけであります。そういった経済長期計画に見合いまして、資金計画を順応させて立てましたのが十七万一千戸でございますので、この戸数につきましては、われわれとしては一〇〇%達成確信を持ってお偽ものでございます。
  20. 石川次夫

    石川委員 今のお話ですと、何か所得倍増伸び率に比較したようなお話が出て参りましたけれども、最初に質問いたしましたように、現在住宅だけは非常に立ちおくれておる。ほかとの較差が非常にはなはだしいのだ。そういうことを前提として一つ住宅問題を考えてもらわなければならぬということになりますと、所得倍増の比率で計算をしていくという計算の仕方じゃなくて、その断層を早急に埋めていくという気組みで住宅問題は取り組んでもらわなければならぬ。それでなければ、前向きの住宅政策にはならないというふうに痛感をいたします。そうしますと、過去三カ年で十五万ないし十六万程度計画戸数に対して、これから先の計画戸数は十七万一千戸というのでは、非常に少な過ぎるのではないか。こうわれわれとしては考えておるわけです。この点について、どうお考えになりますか。
  21. 稗田治

    稗田政府委員 ただいま経済長期計画所得倍増計画に対応するところの行政投資の分について申し上げたのでございますが、これはわれわれといたしましては、最低限度としてそういうような試算によって計算しても、十七万一千戸は達成できるというので申し上げたわけでございます。もちろん、この所得倍増経済長期計画におきましても、閣議におきまして、これは弾力的に活用するということになっておりますので、われわれといたしましては、今日の住宅事情を早期に解消するという目的で、最大の努力を払いたいと思っております。
  22. 石川次夫

    石川委員 これは先ほどの五カ年計画によりますと、三十七万五千戸というふうに出ておりまして、今度の三カ年計画は、そのうちの十七万一千戸という数字になっておるわけであります。そうなりますと、残りの二年間といいますか、それでものすごい膨大な、二十万戸ぐらいを建てなくてはならぬという非常に急ピッチ上昇カーブを描くことになっておりますけれども、住宅の問題は先行きというよりも、今現在が困っておる。そう先行き急ピッチで上げるということよりは、この三カ年のうちにできるだけの戸数を、政府施策住宅として達成をさせるという必要があるのじゃないか。そういたしますと、十七万一千戸というのは、いかにも政府としての積極的な態度というのは見られないというふうにわれわれとして考えております。  ここで一つ伺いたいのは、十七万一千戸の戸数は、これが最低という形で、これよりさらに上回るという可能性があるというのか。それとも、今までと同じように、これが達成できなくて九割程度になる可能性もあるという性格のものか。十七万一千戸というのは絶対に最低なもので、弾力性があるというのは、それより幾らでも上の数字が出てくるという考え方に基づいてできた計画か。それから、くどいようですが、今までの計画でありますと、それが大体最高目標であって、それより下回るのが普通であるわけですが、そういう考え方で出てきた数字が十七万一千戸という数字になって出てきたのか。この点を一つ確認しておきたいと思います。
  23. 稗田治

    稗田政府委員 まず、三カ年計画法律上の問題でございますが、公営住宅法の第六条の第六項に「内閣は、昭和二十七年度以降毎年度、国の財政の許す範囲内において、第三項の規定により国会の承認のあった公営住宅建設三箇年計画実施するために必要な経費を予算に計上しなければならない。」という項がございまして、ここに今読み上げましたように「国の財政の許す範囲内において」ということがございますので、この法律上から申しますと、十七万一千戸が必ずしも達成できない場合もあり得ることになるわけでございます。ただ、われわれの気持といたしましては、片方の弾力的に活用されるところの経済長期計画行政投資配分計画等に基づきまして、最低限としてもこのくらいは達成できるという見込みで立てました計画でございますので、この計画は一〇〇%達成努力をいたしたいと思うわけでございます。  なお、この十七が一千戸の戸数は少ないのではないかというお尋ねでございます。これにつきましては、当初五カ年で三十七万五千戸という計画を立てましたときは八月ごろでございまして、その後におきまして、経済企画庁の方で十カ年の行政投資というものが、多分十月ごろかと思いましたけれども、確定いたしたわけでございます。従いまして、若干のズレを生じたわけでございますが、伸び率等考えますと、今後十分所期の目的達成できるというふうに考えておるわけでございます。  なお、この公営住宅のほかに、低額所得者のための住宅政策としましては、ほとんど同じような方式で行なわれますところの改良住宅建設があるわけでございます。この改良住宅建設につきましては、毎年その実情に応じまして要求をいたすわけで、この計画戸数というのには一応法律的には縛られていないわけでございます。公営住宅といたしましては、三カ年の計画戸数の十七万一千戸という戸数に縛られるわけでございます。  それからもう一つ、この十七万一千戸のことでございますが、われわれといたしましては、最近の住宅事情というものが、国民の住水準引き上げという希望が非常に強くなっている事実も、目をおおうわけにはいかないわけでございます。従いまして、この十七万一千戸におきましても、質的な改善は十分はかっていきたい、さようなことを考えましたので、単に戸数主義という点をとらなかったわけでございます。
  24. 石川次夫

    石川委員 ちょっと話の方向が変わりますけれども、われわれとしては、三十七万五千戸という五カ年の中で、さしあたって困っておるこの住宅事情を緩和するための体制としては、そのうちの三カ年で十七万戸だということでは非常に少ないという感じを受けるのですけれども、その少ない目標それ自体達成できないようないろいろな条件が出てきているのではないかということをさらに心配をいたします。と申しますことは、いろいろ単価引き上げが行なわれまして、土木は一三%、失対が一五・六%、鉄筋が四%、ブロックが五%、木造が七%というふうな、単価引き上げということを考えて一応の配慮は払われておりますけれども、しかしながら、現在の実態から言いますと、いわゆる労働者のPWというものに比べまして、実際は、私の方の地区は特別かもしれませんが、二倍半ぐらい実態としては上がっております。従って、公共事業、特に土木関係ではないところの建築をやることを非常にいやがって、そして、やればやるほど赤字が出る、いわゆる豊作貧乏の典型的な形が出てきておるというような状態です。これは偶然私、目に入ったのですが、日本経済新聞の三月十六日付にも、中堅建築業者倒産が続出しておるというのが明らかにされております。しかも、その理由というのは、労賃高官庁工事がたたっておるということが明確に出てくる。これはいずれ、あらためてこの問題について大いにこの委員会でもって論議を重ねて、その対策も考慮しなければならぬと考えております。特に倒産の相次いで起こる原因は、官庁工事がたたっておるのだという点については、建設省としても十分考えなければならぬと思う。それでありながら、公営住宅だけは単価引き上げを適用されておらないということになっておりますが、その点はどうでしょうか。
  25. 稗田治

    稗田政府委員 三十六年度の予算単価としまして、公営住宅単価につきましては、見かけ上の単価引き上げは行なわれておらないわけでございますが、第二種公営住宅等につきましては、一坪の規模増が行なわれたわけでございます。従来公営の第二種住宅につきましては、一戸当たり八坪の予算がついておったわけでございます。地方公共団体におきましては、どうしても物置等が必要でございますので、八坪半の住宅を作っておったわけでございます。そういう点から、特に単価も苦しい点があったわけでございます。本年度におきましては、実質上の単価におきましては、公営住宅木造単価は八%上げるということで、今実施単価も定めておるわけでございます。
  26. 石川次夫

    石川委員 地方労賃が高くなっている実態というものは、今さら私から御説明するまでもありませんが、特に大工さんなんかの工賃は目立って上がっている。従って、従来とほとんど違わない単価で今度の予算を組まれたということになりますと、この工事を引き受ければ引き受けるほど赤字が出るということで、地方中小企業者はほとんど手控えてしまうのではないかという点を、われわれとしては非常に心配をいたしておるわけであります。おそらく非常に工場の集まっておるようなとろで、仕事の多いところなんかでは、官庁工事をやらないと将来困るから、やむを得ず赤字覚悟でやろうという人だけは引き受けるかもしれない。しかし、それだけの余裕のない業者はほとんど引き受けないという形になって、この数字自体が非常に少ないところに、かてて加えて、そういう工事引受人がちゅうちょをするという点で、この達成がまた非常に困難になっているということをわれわれとしては非常に心配をいたしております。  今度は一つ方向を変えまして、若干こまかい問題になりますけれども、今度の予算あるいは今後の予算には、公営住宅共同施設については予算が組まれておらないようでございます。これはどうしても必要なことだと思うのでありますが、この点についての見通しはどうなんですか。
  27. 稗田治

    稗田政府委員 ただいま御指摘通り公営住宅共同施設につきましては、現在まで国の予算としては組まれたことがないわけでございます。この実情につきましては、膨大な住宅難世帯の救済に、一戸でも多くまず住宅を与えようという考えから、戸数を多く充足するという建前できました関係で、共同施設につきましての補助金がなかったわけでございますが、三十七年度以降につきましては、若干ずつこれの実施努力したいというふうに考えておるわけでございます。
  28. 石川次夫

    石川委員 今の答弁にありましたように、古い公営住宅なんかではほとんど老朽化しているようなところも出てきております。相当大きな団地の中で、共同施設がほとんどないという点で、スラム街に近いような状態になっておるようなところもあるわけです。それに対して何らの予算的措置考えられておらないという点では、きわめて不親切なやり方であります。先ほど通ったばかりの住宅公団法の改正で、サービス施設というようなものについての考慮が一応払われたわけでありますけれども、この点においても、公営住宅については完全な置いてきぼりを食っているということになっている。従って、それらの予算もちゃんと今後は確保するのだという体制を持ちながら、さらに住宅戸数をふやし、目標達成するというところに進んでもらわなければならぬという点について、大臣の力のある所信の表明をいただきたいということをお願いするわけです。  同時に、現在住んでいる人たちの中で、先ほど申し上げたように、今までの住宅が非帯に狭隘になってしまって、従って、これを何とか建て増しをしてもらいたいという希望も相当あちらこちら出ているわけでございます。それらについても、予算措置は何ら考えられておりません。終戦後でき上がったときにいち早く住んで、しかも子供がどんどん多くなっていく。しかも、住みかえるところまでの金は確保してないし、住宅難ということもあって、住みかえもできない。そうなれば、どうしても勢い住宅建て増しをやってもらいたいという希望が出るのは、けだし当然でありまして、それらについても何ら考慮が払われてないと思いますが、その点は一体どういうことになっておりますか。
  29. 稗田治

    稗田政府委員 まず、公営住宅共同施設の点でございます。ただいまの公団住宅法サービス機関との均衡の問題でございますが、御承知のように、公営住宅は、地方公共団体建設する住宅団地でございますので、一団地の大きさといたしますと、戸数公団住宅団地に比べますと割と少ない団地が大部分でございます。五十戸から二、三百戸といったような程度団地が大部分でございます。これらの住宅団地になりますと、周囲の地域社会施設と溶け合いまして、一体として扱われるというようなこともございますので、それほど共同施設に対する緊急な要望というものはなかったわけでございます。ただ、今後公営住宅団地も相当鉄筋住宅がふえて参りますので、大団地も今後建設される予想がつくわけでございます。そういうような意味から、今後公営住宅におきましても、共同施設につきまして十分の努力を払っていきたいと考えているわけであります。  なお、共同施設と申しまして公営住宅の方であげてございますのは、管理事務所共同浴場集会所、それから児童遊園地でございます。児童遊園地等は、すでに、相当まとまりました公営住宅団地におきましては、用地の整地の形で実際は作られているという状況でございます。  なお、建て増しについてでございますが、公営住宅につきまして今後建て増しをするような必要があろうというのは、御指摘通りでございます。それで、公営住宅におきまして、われわれは原則といたしまして、今後の方針は不燃堅牢な構造にいたそうということを考えているわけでございます。今まで建てました不燃堅牢構造の建物、これに対する増築ということが、技術的に住居のプライヴァシーというものを乱さずに増築できる方法というものを、ただいま建築研究所等にお願いいたしまして、いろいろの方法を研究中でございます。そういった方法が確立されましたならば、公営住宅につきましても、旧来健てましたところの狭い公営住宅についての増築の施策というようなことも、策定いたしたいというように考えているわけでございます。
  30. 石川次夫

    石川委員 大臣がおりませんので、次の質問に移ります。  ちょっと伺いますけれども、今までの公営住宅で、払い下げの希望が相当出ておると思うのです。その払い下げの希望がどうなっておって、現実に払い下げた率はどういうふうになっておるかというふうな現状について、一つお知らせを願いたいと思います。
  31. 稗田治

    稗田政府委員 公営住宅の譲渡処分についてのお尋ねでございます。大体基本的な考え方といたしましては、公営住宅建設目的でございますが、これは住宅に困窮する低額所得者に対しまして、低廉な家賃の賃貸住宅を供給するというのが目的になっておるわけでございます。従いまして、公営住宅は、地方公共団体におきまして賃貸住宅として維持管理していくということが建前でなければならないと考えております。しかしながら、公営住宅が災害等によって、はなはだしく老朽しております場合とか、あるいは災害公営住宅等の場合によくあることでございますが、住宅が数戸の小団地として散在しているために管理上支障があるというような場合もございます。また今後住宅の用地が非常に貴重な形になっておるわけでございますが、住宅の敷地が規模とか地形の関係から、今後鉄筋のアパートの住宅に建てかえるということが著しく困難な場所もございます。そういうような観点から、当該公営住宅を譲渡しても、将来都市計画上支障を生ずるおそれがないというような場合でございまして、かつ、その入居者が譲渡を希望し、また譲渡の対価の支払い能力があるというようなものにつきましては、住宅政策上の支障がないというようなことを確認した上で譲渡を認めておるわけでございます。ただいままで譲渡処分を行ないました戸数につきましては、後ほどお答え申し上げます。
  32. 石川次夫

    石川委員 公営住宅は比較的低賃金の人に向けられる住宅が多いのでございますけれども、このほかに産労住宅というものがございます。産労住宅のことについてきょうは質問をする場ではありませんから、あらためて御質問いたしますが、産労住宅を、三十人以下の中小企業と大企業とに分けて、極力中小企業の方に多く譲渡するという方向づけをやっておるということは、その考え方はわかりますけれども、三十名以下の中小企業が産労住宅のような堅牢なりっぱな建物を消化するということは、現実の問題としてはなかなか困難だ。そのことのために消化が非常にむずかしい、あるいはまた償還が渋滞するというようなことのために、産労住宅の運営というものがまずくなるのじゃないかということも、私としては心配をしております。  それで、私考えるのですが、中小企業向けの住宅といたしましては、むしろ公営住宅というものを多くふやすことによって、この安い家賃の住宅というものを中小企業の従業員の方に多く振り向けていくというような考え方が、一番筋道の通った、現実的に多く住宅を消化する前向きの姿勢の住宅政策ではないかというふうに考えるわけでございます。それで、中小企業向けに公営住宅を持っていくと申しましても、公営住宅というのは御承知のようにくじ引きでありまして、個人々々の有資格者を選考するという建前になっておりますから、なかなかむずかしいと思います。むずかしいとは思いますけれども、現実の問題として中小企業者の従業員、特に下請の小さな町工場あたりの従業員の住宅が非常に困っておるというものを緩和するのに、産労住宅ではなかなか困難です。そうすると、これは私も先ほど申し上げたように、十七万一千戸というような少ない戸数じゃなくて、これを思い切ってふやすという形で、そこへ中小企業に携わるところの従業員等を振り向けていくという考え方をぜひとってもらいたい、こう考えるわけですが、その点について何かの構想をお持ちでしたら、一つお漏らしを願いたい。
  33. 稗田治

    稗田政府委員 三十六年度におきまして、産業労働者住宅を中小企業と大企業との分に、金融公庫におきましては七千戸ずつに配分いたしましてワクを設定いたしたわけでございますが、産業労働者住宅としましては、全体としまして二千戸ほどふえておるわけでございます。なお、中小企業と申しましても、いろいろの幅がございまして、今度住宅金融公庫で扱いますのは三百人以下、それからサービス業等につきましては三十人以下、鉱山業等につきましては一千人以下というようなことで、一応線を引いているわけでございます。これは従来中小企業の中に、御指摘のように、給与住宅を持ち得ない、給与住宅には不適当な中小企業もございますけれども、なお給与住宅建設できる能力のある中小企業もたくさんあったわけでございます。それが、ワクが少ないために中小企業の給与住宅建設が断わられたというようなことがございましたために、中小企業のワクを確保しまして、そういうような建設意欲に燃えておる中小企業につきましては、産業労働者住宅の供給を十分にしようということで、三十六年度のような措置をとったわけでございます。  なお、御指摘のように、中小企業の中にはいろいろの階層がございますので、産業労働者住宅を利用できないといったような中小企業がたくさんございます。そういうものにつきましては、公営住宅あるいは場合によりましては公団住宅というようなもので、公的な賃貸住宅を供給することによって、その従業員の方々の住宅対策に充てたい、かように考えておるわけでございます。従いまして、三カ年計画としましては、十七万一千戸を今回策定いたしたわけでございますけれども、今後におきまして逐次、公営住宅等の公的な低家賃の住宅供給というものにつきましては、最大の努力を払っていきたいというように考えておるわけでございます。  なお、先ほどお尋ねの点で、公営住宅の譲渡処分をしました戸数でございますが、三十五年の十二月三十一日現在で七万七千二百十六戸が、公営住宅始まって以来譲渡処分を受けた戸数でございます。現在管理しておる戸数でございますが、六十五万一千九百三十六戸でございます。
  34. 石川次夫

    石川委員 まだ質問したいことはたくさんございますけれども、関連質問の要求も出ておるようでございますから、一応私の質問を打ち切ります。打ち切りますが、先ほど申し上げましたように、所得倍増といわれましても、住宅だけは非常に断層がある。テレビ、ラジオ等はヨーロッパに比較してもちっとも劣らないくらいの普及率を示しておるというような状態でありながら、住宅だけは非常におくれておるという、この現状というものをよく大臣考えていただいて、この十七万一千戸という戸数はわれわれといたしましては非常に不服でございます。非常に少ない。それと、さらに先ほど申し上げたように、共同施設あるいは建て増しの要望が出ておるというものに対する予算配慮というものは全然払われておらない。それからさらに、達成率それ自体につきましても、いろいろ建設業者関係で、単価の問題でこれの引き受けを非常に渋っておるというような状態から、達成が非常に困難ではないかというふうな問題も含まれておるわけでございまして、われわれといたしましては、この三カ年計画というものに対して全幅的に賛成をしかねるという気持でございますので、そのことだけを申し上げて、一応私の質問を終わりたいと思います。
  35. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 一点だけお尋ねをいたしておきたいと思います。  この公営住宅建設三カ年計画というものは、政府がさきに発表いたしました長期経済政策の中の住宅計画、その前期五カ年計画として昨年の夏に発表されました住宅建設の五カ年計画と関連のあるものであり、その五カ年間のうちの三年、こういうことになるのだと思うのでございます。昨年の夏発表されました五カ年計画では、四百万戸建設することになっている。つまり、一千万戸十カ年に建設する、その四割を五カ年に建設して、六割を後期五カ年にやる、こういうふうな計画の模様でありますが、そういたしまして、その五カ年間のさらに前半期というと語弊があるかもしれませんが、五カ年間の前期の三カ年間に公営住宅は十七万五千戸建設する、こういうふうなことでございます。そういたしますと、その他の計画ですね、一体民間の自力建設というものにどれだけ期待をし、政府施策としては前期五カ年計画では百六十万戸でありますが、三カ年では一体どれくらいなのか。それからまた、公営住宅十七万五千のほかに公庫は幾ら、公団は幾ら、あるいは給与住宅その他のものは幾らというふうな数字を、用意がございましたらお示し願いたいと思います。
  36. 稗田治

    稗田政府委員 三十六年度を初年度といたしまして、住宅建設の五カ年計画におきまして、御承知のように、三十六年度は政府施策住宅としましては二十四万六千戸でございます。それから三十七年度は三万戸増ぐらいの二十七万六千戸、三十八年度が三十一万二千戸程度建設する計画を立てておるわけでございます。そのうち公営住宅は、この三カ年計画には入ってございませんけれども、改良住宅、不良住宅地区の改良事業がございますが、これらの公庫補助住宅というものを合わせて考えまして、三十六年度は御承知のように五万六千戸でございまして、三十七年度は六万四千戸、三十八年度は七万二千戸というように考えておるわけでございます。  なお、今後の他の公団住宅、公庫住宅、またその公庫住宅の中における産業労働者住宅、あるいは公団住宅の特定分譲住宅等の戸数につきましては、大体同じような歩調で伸びていくわけでございますけれども、これは三十七年度、八年度、それぞれ予算折衝のときにその内訳はきまるということになるわけでございます。
  37. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 そこで問題は、五カ年間に一世帯一住宅ということを達成目標とするのだ、こういうことでございますが、これは非常に時宜に適したことで、まず第一に、すべての家族が一つの住居の中に住める、同居というような窮屈な思いをしないでも済む、ということをまずやらなければならぬということ自体は非常にいいと思うのでありますが、それでは、この五カ年計画でもって一世帯一住宅目的達成されるかどうかというところに、私は大きな疑問を持つのでございます。今日、住宅難世帯は二百万ある。総理府の昭和三十三年の調査によりますと、二百二十六万八千となっておりますけれども、そのうち同居しておる世帯というものはどれくらいと見ておられますか。
  38. 稗田治

    稗田政府委員 総理府の三十三年の十月におきます住宅事情調査におきまして、今二百二十六万八千という点でございますが、その中に狭小過密というのと、同居というのと、老朽危険住宅というようなのとダブっておる分がございますので、それを不足戸数という従来の建設省のとらえ方でつかまえますと二百十六万ということになるわけでございます。それで二百十六万、その後建設されました住宅戸数、それから世帯のふえた数、また災害によりまして滅失した戸数の建てかえというようなことで差し引きいたしますと、本年度末におきまして百八十万戸くらいの不足戸数というように考えられるわけでございます。なお、その場合に、一昨年の十月の調査における同居の数と申しますのは約五十万でございます。五カ年計画におきましては、一応先ほどお話申し上げましたような建設戸数でやって参りますと、ある程度一世帯一住宅達成は可能じゃないかと考えるわけでございます。  ただ、不足戸数の数え方でございますが、たとえば狭小過密というとらえ方が、百八十万戸の不足戸数に数えられる場合に、九畳未満で、かつ一人当たり二・五畳以下というような、非常に住宅の逼迫したときの対策としまして低い住宅水準でとらえておるわけでございます。今後の計画におきましては、少なくとも十年先の計画達成された姿を考えますと、あまりに低い水準であると考えまして、前期の五カ年におきましては若干ずつ質の改善を行なって参りますけれども、十年後には、とにかく平均すれば一世帯が大体三寝室の住宅が全部持てるようにというように、住宅の質というものを高めて不足戸数を数えておるわけでございます。具体的に申しますと、九畳未満の住宅に二人以上住んでおる、十二畳未満の住宅に四人以上住んでおるというものは狭小過密住宅というようにとらえるというような計算をいたしますと、一千万戸の建設が必要であるということになってくるわけでございます。
  39. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 同居世帯が五十万という御答弁でございますけれども、この総理府の統計をそろばんを置いてみますと、昭和三十三年現在では六十六万の同居世帯があるということになっております。そうすると、現在でも大体それに近い戸数です。五十万戸とおっしゃいましたが、大づかみに五十万戸というふうにつかんでいられるのだと思いますけれども、あの統計では六十六万二千戸という数字が出ておる。そういたしますと、六十六万というところの同局世帯があるわけですが、少なくも今日一世帯が一住宅を占拠できないで同居していなければならないというのは、貧しい人、経済的に恵まれない人が多いと思うのです。そこで、その統計の中の収入階層別のものを見てみますと、私は三万以上と三万以下に分けてみたのですが、三万以下の人が六七%を占めております。世帯数にいたしますと、四十七万七千八百世帯というものが収入三万以下であって、そして同時に同居の悩みに苦しんでいる、こういうことであります。そうすると、何をおいても、まず一世帯一住宅という目標達成のためには、これらの世帯を収容するだけの建設というものが行なわれなければならない。ところが、一世帯で三万以下の収入ということでありますと、民間自立建設でみずからの力に期待するということはできない。また、三万以下の収入では、五千円も六千円もするところの公庫、公団の賃貸住宅に入るということもできない。そういたしますと、これはどうしても第一種もしくは第二秘の公営住宅の中へ収容しなければならぬ階層の人たちである。だから、第一種、第二種の中に収容しなければならない人たちが六十六万世帯もある中では、政府が五カ年に三十七万五千戸、そしてその前半では十七万五千戸ということでは、それらの要望に対するものとしては、この計画はあまりに少な過ぎると私は思うのです。せっかくあれだけ大規模住宅事情調査というものをおやりになり、そして今日の住宅難のきびしさというものがどういうものかということを政府は、はっきり握っているのです。数字をはっきり握っていながら、しかも、このような貧弱な住宅建設計画を出しているというふうなことは、政府としては無責任もはなはだしいと私は思うのです。だから、第一種、第二種の住宅建設十七万五千、これから三カ年計画ですというふうなことでは、これは今日の日本住宅事情に適応したものだとは思えない。また、住宅建設戸数というものは、単に今住宅が不足しているのはこれだけであるというだけではなく、これから新しく世帯を持つ人もたくさん出てくると思う。勤労者の子供でどんどん新しい世帯を持っていく人も、やはり経済的に恵まれない人がたくさんいるのです。それらの人にも住宅を与えていかなければならぬ。そうすると、現実に低所得階層向けで不足しているのが六十六万、それにプラス・アルファというものを加えれば、優に百万戸ぐらいは当然政府の方で五カ年に建設しなければ、一住宅一世帯という夢は達成できないと思うのです。中村建設大臣は、それをいかがお考えになりますか、御所見を伺いたい。
  40. 中村梅吉

    中村国務大臣 御承知通り公営住宅の当面する三カ年計画につきましては、十七万一千戸ということに決定いたしたのでありますが、これにはいろいろ地方財政との関係等もございまして、地方財政の見通しにつきましては自治省と十分連絡をとりまして、最終的にこの案になったわけでございます。住宅につきましては、産労住宅を初め改良住宅等、御承知通り、いろいろ他の種目の住宅施策がございますので、われわれといたしましては、今後の世帯増等に対応いたしまして、これらの施策を進めて住宅事情を改善して参りたい、かように考えておる次第であります。
  41. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 改良住宅というのは、建設戸数がほんのわずかです。それから、産労住宅、給与住宅というようなものは、国民の中のごく狭い一部分に振り向けられる。しかも、それは大企業の比較的給与に恵まれた方に向けられる。だから、ほんとうの同居世帯、住宅難に苦しんでいる者にはいかない。なるほど、給与住宅の中にも同居で困っている人もあります。そういう数字も出ております。しかし、何といっても、同居世帯で一世帯が一戸をかまえられずに苦しんでいるのは一般の勤労者です。だから、そういうふうな人たちの悩みを一日も早く解決しようとして、一世帯一住宅という方針をお立てになったことは非常にけっこうだと思うのです。しかしながら、その打ち出し方にしては、計画があまりに貧弱であり、数字を検討してみても、とうてい達成されないと私は思う。五カ年に少なくも公営住宅百万戸を建てなければ一世帯一住宅というものは達成されない。こういう現実というものに、よくこの機会に目を開いていただきまして、統計の数字をもう一度検討していただきまして、単に大づかみにこれくらいでやればいけるだろうというようなことでなしに、ほんとうに一世帯一住宅を実現するのにはどうすればいいかということを、もう一度検討していただくことをお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  42. 加藤高藏

    加藤委員長 他に御質疑はありませんか。——なければ、本件についての質疑はこれにて終局いたしました。     —————————————
  43. 加藤高藏

    加藤委員長 これより、本件を討論に付します。  討論通告がありますので、これを許します。  中島巖君。
  44. 中島巖

    ○中島(巖)委員 私は、ただいま提案されております公営住宅法第六条第三項の規定に基づき、承認を求めるの件につきまして、日本社会党を代表いたしまして、反対の討論をなすものであります。  本計画内容につきましては、昭和三十六年度から昭和三十八年度の三カ年間において、十七万一千戸を建設するというものであります。現在の住宅事情から勘案いたしまして、現在全国で住宅不足の数は二百四十万戸であります。また、東京都のみについて見ましても、過去四カ年間に百万人の人口が東京都に移り、増大していくというような現況であります。  こういうようなきびしい住宅難におきまして、現在の住宅政策におきましては、産労住宅その他もありますけれども、一般に公開されるのはこの公営住宅でありまして、公営住宅に重点を置いた住宅政策施策とせねばならないことは、私が申し上げるまでもないのであります。その公営住宅が、三カ年間にわずか十七万一千戸というような状態におきましては、現在の日本における二百四十万戸の住宅の不足をいかなる方法で解消するか。また、東京都へ毎年のように二十六、七万の人口が流入するのをどうして解消するか。こういうような観点から考えましたときに、かくのごとき微温的なるところの住宅政策をもっては、とうていこれを解決することはできないと思うのであります。かかる観点からいたしまして、政府が今回三カ年計画として提出いたしましたところの、この第一種、第二種の十七万一千戸は、あまりにも少な過ぎるのであります。われわれは、この三倍ないし五倍程度住宅建設せねばならぬ、かような見地からいたしまして、本日提案になりましたところの公営住宅法第六条第三項の規定に基づき、承認を求めるの件について反対をいたすものであります。
  45. 加藤高藏

    加藤委員長 これにて討論は終局いたしました。  公営住宅法第六条第三項の規定に基づき、承認を求めるの件につきまして採決いたします。  本件を承認すべきものと決するに賛成諸君の御起立をお願いいたします。   〔賛成者起立
  46. 加藤高藏

    加藤委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。なお、報告書の作成等につきましては委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 加藤高藏

    加藤委員長 御異議なしと認め、そのように決します。      ————◇—————
  48. 加藤高藏

    加藤委員長 次に、河川に関する件、特に松原・下筌ダムの問題につきまして調査を行ないます。  質疑通告がありますので、これを許します。  坂本泰良君。
  49. 坂本泰良

    坂本委員 ただいま委員長から申されました下筌・松原ダムの問題は、建設省としても計画を立てておられます筑後川総合開発の問題として、下流地域の洪水調節ダムということで松原・下筌ダムを作る、こういうことになっておるのでありますが、これによりまして地元民が三百戸余り水没するわけであります。   〔委員長退席、佐藤(虎)委員長代理着席〕 特に、熊本県側の約百戸の農民、山村のごくまじめな農民の方々がこれに反対をいたしまして、昨年の二月よりその反対が熾烈をきわめまして、途中、非常に豊かな愛情のある山村に警察官が出動するという悲惨な状態が出ておりまするが、いわゆる蜂之巣城の戦いと申しますか、騒動といいますか、この問題であるわけであります。  私は、筑後川総合開発についての建設省の計画に対しまして、非常なる疑問を持っておるわけであります。従いまして、この計画が真に公益のためにやられてるものであるかどうか。これは憲法上保障されました国民の財産権の保障、これに重大なる関心があるものでありますから、大臣を切め河川局長に、総合開発の根本的の問題について若干承りたいと思うのであります。  その前に、先ほど申しましたように、「蜂之巣城騒動日記」というような本が出まして、これは三千部刷ったそうでありますが、すでに売り切れまして、第二版はもっと充実した出版をする計画を今立てておるようであります。委員の皆さんにも全部差し上げたいと思いますけれども、ちょうど手元に二冊しかありませんから、委員長大臣にこれを差し上げまして、質問をいたしたいと思います。  昨年来の経過を一、二申し上げまして本論に入りたい、こういうように考えるわけであります。筑後川総合開発の洪水調節として、上流に二万六千トンのダムを作って下流の洪水を阻止する、そのためにダムを作るのである。それに対して、そのダムを作らなくても、ほかの方法で下流の洪水の調節はできるのである。いわゆる久留米以下のあの平野の穀倉地帯の田地の洪水に対しましては、現在のような建設省の計画では、その水害の防止はできない。もっとこれは、農林省との関係において利水の問題と一致いたしまして、治水と利水の一致した計画で、たとえば関東における荒川の放水路のような計画が立たなければ、あの平野の洪水の調節はできない。こういうような考えを反対側は持っております。ダムを作り、そうしてさらに、これはあるいは誤解かもわかりませんが、この二つのダムに九州電力株式会社が約四万キロワットの発電をやる。従って、これは下流の洪水調節を名目として、その実質は九州電力株式会社のダムの建設にある。国家資本を利用しての電力会社のダムの建設であるから、こういうようなものには、われわれの先祖伝来の田地並びに宅地すべてを水没するから、その犠性に供することはできない、これが反対の強いところでありまして、ことに熊本県側の約百戸は、室原知幸氏を中心としまして反対をいたしておるわけであります。決して室原氏が山林地主であるから、一人その財産擁護のために反対をしているのではなくて、むしろ零細な農民が水没すれば、その生活か全部剥奪されるというのでこれに反対をいたしておるわけであります。その証拠には、昨年トラブルが起きました際に、室原氏を逮捕してぶち込めば、あとは総くずれになる、そういうような考えもありまして、室原氏が逮捕されたのでありますが、逮捕されますと、ますます団結が固くなりまして、反対の意思が強くなって参ったわけであります。その点から見ましても、単に一人の山林地主でなくて、その部落全体がこぞってこれに反対をいたしておる。従って、この問題は農民一揆ともいうべき問題でございますから、一山村の単なる利益のための反対でなくて、社会問題にまでも発展をいたしますところの、また現在のダム構築によるところのこの弱い山村の農民、その他の権利の保障のためにも、これは明らかにしていかなければならぬと思うのであります。  昨年のトラブルにおきまして、室原知幸氏以下七名が公務執行妨害等の事件で起訴されまして、熊本地方裁判所でその審理が進められておるのでありますが、来たる三月の二十九、三十日には、熊本地方裁判所の山下裁判長の合議部が東京に出張して参りまして、はたして公務執行が正しかったのかどうか、こういうような点をただすために、村上前建設大臣、総合開発の当時の河川局長でありました山本現技監並びに現河川局長山内一郎氏、前九州地建局長の上ノ土実氏、この方々をこの刑事事件の証人として、わざわざ東京に参りまして、その証人の尋問をなす。こういうようなトラブルに対しても、重大なる刑事事件の裁判についても、この総合開発がはたして正しいかどうかということが中心になりまして、その裁判が進められているような次第であります。  さらに、昨年建設省は、この反対を押し切って強行するために、熊本地方裁判所に妨害排除の仮処分の申請をいたしましたが、口頭弁論が開かれまして、そういう緊急性はないということで、これはついに建設省側は取り下げになった。  さらに建設省は、明治三十何年かの制定でありまして、一回もまだ適用したことのなかった河川予定地制限令という法律を持ち出しまして、そうして、この制限区域にこれを特定いたしまして、その反対を押えつけよう、こういうような方針に出たのでありますが、これに関する民事の訴訟も起きておるようなわけであります。  さらにまた建設省は、このダムの建設を促進するの余り、その反対派のダムのできる土地そのものを土地収用法によって収用して、そうして、そのダムのできる予定地から全部農民を排除いたしまして、そのダムの建設を強行しよう、こういうような方策に出て、土地収用法に基づくところの事業認定が、当時の村上建設大臣の手によって認定されまして、そうして、その収用の手続に入ろうといたしたわけであります。これに対しまして反対側は、東京地方裁判所に事業認定無効確認の訴訟を提起いたしまして、東京地方裁判所第三民事部でその審理が進められまして、去る三月の十日から十四日までの五日間、東京地方裁判所民事三部合議部はこぞってこの現場検証を決定いたしたわけであります。そして、建設省側の法定代理人であります法務省の訟務局からの代理人、反対派側の弁護人、また九州地建から総動員でこの現場検証に参加をいたしました。そして、筑後川の一番下流で有明海に流れるところの大川市から久留米市、それから夜明ダム、これを通りまして、日田市に行き、日田市の上流は、御存じのように筑後川が二つの大きい支流に分れておりますから、左の玖珠高原から源を発しております玖珠川がこちらの方に向かいまして、森地区からずっと上に参りまして、猪牟田ダム予定地、さらに玖珠高原の一環をなしております千町無田ダム予定地、ここまで調査に行き、さらに引っ返しまして、今度は問題の大山川の久世畑ダム、松原・下筌ダム、さらに上りまして杖立川の黒渕ダム予定地、こういうところを実地検証いたしました。同時にまた、その双方の川の上流が非常な火山地帯でありますから、川に対するがけくずれがある、そういう崩壊の実情、さらに小さい砂防ダムの設置の条件のいいようなところはないか、こういうようなところを調査いたしました。十四日には熊本地方裁判所において証人調べとなりまして、下筌の地質調査をいたした九州大学の理学部の地質学の種子田助教授を証人に呼びまして、その証人調べがあったわけであります。種子田助教授は九州地建から依頼を受けて調査をした人であり、いろいろの関係もありまして、九電も福岡にあるというような関係で、非常にわれわれとしては公平な証言ではないか、さらにまた突っ込んだ証言は後日の鑑定によるということで、その証人尋問もほんとうの中心まではいかなかったのでありますが、ただ、わかりましたことは、種子田助教授の下筌ダム予定地の地質調査は、五万分の一の調査で終わっておるわけであります。このダムの地質調査を進めるについては、さらに五千分の一の調査をし、さらに進んで五百分の一の調査をし、ボーリングを入れて、そして初めて決定しなければならない。そういうことを踏まずに、ただわずか五万分の一の調査にすぎないということで、この下筌ダムがダム予定地として決定されておる、こういうようなことだけは判明をいたしたわけであります。さらに、火山地帯の溶岩は、これは高堰堤ダムと申しまして、高いダムは絶対地質学上不適当である。低いダムならばよろしいけれども、高堰堤ダムは全く不適当であるという点は、この専門的な地質学者の証言からもうかがわれるようになったわけであります。  そういうような点からいたしますと、この筑後川の上流であります玖珠川、大山川のこの二大支流に、やはりこの火山地帯の溶岩に適した低い砂防ダムをたくさんこしらえまして、現在建設省でも十一カ所の予定地を調査しておられますから、それにさらに、われわれしろうとが見てもわかるような両方の渓谷の砂防ダムに適した地はたくさんありますから、農民あるいは山林の被害をなくす小さいダムをたくさん作って下流の洪水の調節はできないものであろうか。全然被害がないということは申されませんが、ごく僅少な農民の財産権の被害によって下流の洪水調節はできないのであろうか。  さらにまた、下流の七十万筑後川流域の農民のために下筌・松原ダムを建設する、こういうふうにして建設省がこの強行をされておりますけれども、久留米以下の下流地帯は筑後川の洪水によってあのはんらんが生ずるのではない。他の支川あるいは、あの地帯はクリーク地帯であり、さらに有明海は、御存じのように日本でも一番引き潮と満ち潮の差のあるところでありまして、その高潮から久留米付近まで潮が押し上げて、あの下流の農民の洪水になっておる。こういうようなことも勘案すれば、今、建設省が言われるところの筑後川下流七十万農民のために下筌・松原ダムを作ってやるんだから、その犠牲は当然だというような、この公共性の問題はなくなるのじゃないだろうか。憲法上保障されましたところのいわゆる財産権は、これはやはり憲法上保障しなければならない。しかし、公共のためにはこれを出さなければならない。その公共性が、これははたしてあるかないかというのが大きい問題でありまして、現在のような状態で、また、現在のような調査の範囲内においてこれを断行いたしまして、上流農民の財産権を剥奪し、これを犠牲にするということは忍びないことであるし、また、やるべきものでもないと思うのであります。この点について十分なる検討をし、もしも検討が不十分であり、さらに二つの大きいダムを作って、そうして、そこに四万キロワットの発電会社を作らなくても、九州電力株式会社はすでに一割余りの電力の値上げをして、その電力の値上げは、世界銀行から借り入れをして北九州に対するところの火力発電をするという名目で政府から許可をされる、こういう段階になっておる。でありますから、あの四万キロワットのダムによる発電を作らなくても、やはり農民のためを考えたならば、上流の農民の犠牲も少なくするし、下流も農林省との利水と治水の関係でその被害をなくしてやらなければならない。反対派が、電力資本のためにわれわれは犠牲になりたくないというスローガンのもとに反対をしているのも、決して意味のないものではない。確固たる根拠がある。こういうふうにうかがわれるわけであります。  これに対しましては、橋本前建設大臣は、部落の代表である室原知幸氏と早稲田の同窓生でもあるというような関係で、丁重な会見の要望も書面であったわけであります。しかしながら、ここにダムを作るということを変更せずして会見をしましても、ただ補償費の問題とか、そういうような問題であるから、反対派の連中は、決して金をよけいにもらおうとか、そういうようなことで反対をしているのではない。基本的に、ダムはここに要らないような方法でできるのだ、反対派は反対派なりに、科学的な方々にも頼んで調査をいたしまして、そうして確固たる信念を持ってやっておるものでありますから、建設大臣がわざわざ丁重な面談の要望もありましたけれども、根本的の問題がもう決定しておるからそれを断行するんだ、そのやり方についての話し合いならばできないといって、それにこたえることができなかったわけであります。中村建設大臣も、就任されまして、丁重なる手紙をやられてその打開に乗り出されておりまして、その点については、大臣として全く農民の立場に立ってやられておられるということは、まことに敬意を表するものであります。   〔佐藤(虎)委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、その面談も、やはりこの総合開発をやらなければならないものであるかどうか、別な方法でできはしないか、別の方法でできるならば、もう少し地質学的にも、あるいはその他の方法によっても、検討した上でやろうということになりましたならば、ここに話し合いは十分つくと思うのであります。しかしながら、建設省が、すでにやりかけたことは、これはたとい間違っておっても断固としてやらなければならない、その強行の上に立つならば、これは絶対にできない。反対農民は、そこに水死してもこれに応ずることはできないという考え方に立っておるのであります。  私が本日お聞きしたいのは、この筑後川総合開発を決定されるにあたって、どういう考えで確たる信念を持ってやっておられるかどうか。またわれわれの調査も、反対派の調査も、十分聞き入れて、そうして、ことに火山地帯のがけがくずれるので、たとい下筌・松原ダムができても、十年ないし十五年のうちには、全部ダムが埋まってしまうというような危険のある点を、はたして打開できるかどうか。こういう大きな問題でありますから、その点について二、三おもなる点をお聞きいたしまして、そうして、なお足りない点は、ぜひとも委員の皆さん方の御了解を得て、次の機会に譲りたいと思うのであります。  ただ、いろいろと建設省側では五カ年計画とか、十カ年計画だと申されますけれども、その計画だけでは、これは実行に移らないわけであります。十カ年計画で百億の予算をとっても、毎年十億ずつ予算が出れば十カ年でできますが、二億しか国家予算から出ないということになりますと、五十年も六十年もかからなければ、完成できない。そういうようなことがございますし、ほかの河川にも——皆さんも御存じと思いますが、熊本の白川を対象にいたしましても、五十億の資金が要る。しかしながら、毎年わずか一億くらいの予算では、これは五十年かかる。また、昭和二十八年のあの大洪水は、百年に一回の洪水だといわれておりまして、これに対してはすでに明治年間から大正、昭和にかけて、国家はこの対策を考えて参りましたが、りっぱな計画は立てましても、やはり国家予算関係でそれができずに、ついに昭和二十八年のあの大洪水に見舞われた。こういう結果もありますから、ぜひ一つ建設省の方でお答えになります場合は、計画だけでなくて、その計画を実行するためには、国家予算が伴わなければならぬ。その予算が、はたして十カ年でできる予算になっておるかどうか。こういう点も考えあわせて、一つ実のある御答弁をお願いしたい、こういうように考える次第であります。  そこで、本論に入ります。まず第一に、筑後川総合開発計画といわれておりますが、この全貌はどこにあるか。このことについて、その中心の概略でけっこうですから、承りたいと思います。
  50. 山内一郎

    ○山内(一郎)政府委員 筑後川は、御承知のように、昭和二十八年の六月に古今未曽有といわれる大災害がありまして、今後こういうような大災害を再び起こさないように、こういう基本的な考え方をもちまして、筑後川の治水計画並びに治水利水総合計画といいますか、そういう総合計画を現在作っているわけでございます。この考え方といたしましては、筑後川の大洪水のあと、いろいろ調査をいたしまして、まず計画流量を長谷地点で毎秒八千五百立方メートル、これがいろいろな観点から最も妥当であろうという数字で、八千五百立方メートルということをきめております。これを上流のダムでどのように処置するとか、下流の河川改修でどういうように処置するかとか、その点につきましても、いろんな点から考えまして、全部下流で持たせる、全部下流で飲み切れない分は上流で持たせるとか、研究調査をやったのでございますが、やはり両方で、下流にも、もちろん持たせる。つまり、現在の堤防を引堤する、あるいは上流にもダムを作る、こういうような考え方から調査をして参ったわけであります。 二十八年の大災害後、さっそく調査を開始いたしまして、八千五百立方メートルのうち、上流のダムで二千五百立方メートルを引き受ける。下流には六千立方メートルというものを流しまして、現在の川幅ではもちろん六千立方メートルということでは持ちませんので、相当な堤防を引くとか、河川を掘るとか、そういういろいろなことを考えましてやれば、二十八年のような大災害は再び起こらないんじゃないか、現在こういう考え方でおります。  なお、砂防の点につきましても、今の利水、治水あわせ考えまして、せっかく作りましたダムが砂防をやらないために全部埋まってしまう、こういうようなことがないように、もちろん考えますし、ダムから上流地域における治水の問題、それについては、砂防事業等をやらなければ解決をしない問題でございます。従って、ただいま申し上げましたように、砂防とダムと河川改修、こういう基本的な水系一貫した考え方をもちまして、筑後川の改修を現在実施している段階でございます。
  51. 坂本泰良

    坂本委員 そこで、お聞きいたしたいのは、総合開発の事業計画を見ますと、筑後川の本川の洪水の治水対策が主題であるようであります。利水とおっしゃいましたが、久留米以下の利水は、全然筑後川の本川には関係ないようであります。  そこで、考えますと、わずかにあそこに九州電力の約四万キロワットの発電を加味する、それで総合開発、こう言われておるわけです。この本川洪水だけの治水対策ならば、これは河川対策で、筑後川の総合開発計画ではないじゃないか、こういうふうに考えるわけであります。だから、発電だけを加味されるならば、総合開発の意味はない。こういうことに考えるわけでありますが、その点についてはいかがでございますか。
  52. 山内一郎

    ○山内(一郎)政府委員 松原・下筌ダムで洪水調節と発電をあわせてやるのでございますが、そういう意味で利水治水総合開発と言っております。洪水調節ダムというのは、御承知のように、台風期間だけダムの水位をある程度下げまして、余裕をとっておきまして、これで上流の洪水を処理する、こういう考え方でございますが、台風季以外の期間におきましては、ダムの一番上まで水をためまして、せっかくそういう施設がございますので、おもにその間、発電に利用しようということでございまして、せっかく作った施設を何かの形に利用しよう、これは発電が一番いいのではないか、こういう考え方で現在考えているわけであります。
  53. 坂本泰良

    坂本委員 その点が非帯に違っているところでありまして、悪く言う人は、建設省は十数カ所にダム予定地を作ったが、松原・下筌に持っていったのは、すでに九電が松原・下筌に発電計画があったのだから、それを合わせるために持っていった、こういうようなことも言われております。これはあとで、発電との関係の点で御意見を聞くことにいたしまして、先に進みたいと思います。  そこで、筑後川の治水計画を見ますと、本川だけの治水計画をやっておられて、筑後川にはたくさんな支川があるわけです。その支川に対する改修は全然やっていない。ただ、一、二、この直轄河川に一部をやっておられるだけでありまして、支川の改修はほとんどやっていない。砂防計画などにも全然触れていない。こういう点から見ますと、今考えておられるこの筑後川の建設省の計画は、破綻をもたらすことは必然ではないか。支川の改修もやらなければならぬのじゃないか。こういう点は、まずしろうとにもわかるようでありますが、この点いかがでありますか。
  54. 山内一郎

    ○山内(一郎)政府委員 筑後川の総合的計画の基本的なやつは、これは直轄工事で現在やっているわけでございまして、直轄関係計画からいいますと、上流の松原・下筌ダム、それから下流の方へ参りまして、大体幹川といいますか、幹川の改修計画並びにそれに取りつく部分の中小河川、これが直轄関係計画でございまして、それ以外にも府県が実施をしております河川が相当ございます。だから、それらも合わせないと、ほんとうはいけないと思いますが、それらについて御説明申し上げますと、中小河川で、現在筑後川の関係といたしまして六河川実施をしております。そういう状況でございます。なお、砂防事業につきましても、これは府県事業でやっている関係上、この総合計画の中に入っていないというふうにおっしゃっているのではないかと思いますが、これも基本的な考え方としては、直轄でやるところと、それから、ただいま申し上げました府県でやるところを全部一緒に考えて、ただ、実施の面におきまして直轄と府県と分けている、こういう状況であります。
  55. 坂本泰良

    坂本委員 支川は府県にやらしておるとおっしゃるのですが、熊本県は私の選挙区ですから、調査しましたが、現在一つ計画はありません。大分県側においてもないと思います。それから、二十八年の災害で久留米市のはんらんのもとになりました巨瀬川、これに対する関係はどうなっているか。六河川とおっしゃったが、どこどこであるかということをお聞きしたい。
  56. 山内一郎

    ○山内(一郎)政府委員 福岡県で四河川、山ノ井川、広川、宝満川、桂川、佐賀県が大木川、大分県が玖珠川、この六河川であります。
  57. 坂本泰良

    坂本委員 次に、筑後川の大きな災害は、建設省側の主張によりますと、ほとんど大山川、玖珠川がその原因をなしておる、こう言っておりますが、これは事実に反しているのじゃないか。建設省では久留米以下を下流といって、久留米から上を上流といっておられるようですが、大体筑後川を見ますと、夜明ダム以下が下流であって、夜明ダムの上から日田市に行くところが上流でなかろうかと常識的には考えられるのです。二十八年の水害もそうでありましたが、昭和十年の水害も、また昭和十三年、十五年、十六年、十七年、十八年、二十六年の洪水も、いわゆる昭和十年型洪水と申しまして、夜明ダム以下の中流、下流の関係で、はんらんを起こしておる。こういうふうに、これは他の文献からも見られる点もありますが、この点について建設省の方の考え方が違っておるのじゃないかと思われますが、その点、いかがですか。
  58. 山内一郎

    ○山内(一郎)政府委員 河川計画考えます場合に、大災害がございますと、そのときの災害を基本にいたしまして作るわけでございますが、なおさらに古い文献を調べまして、古い時代の災害の状況、それから降雨の状況、そういうこともかね合わして考えているわけでございます。従って、昭和十年に下流の方だけ多く雨が降ったではないかという点でありますが、それでは、上流の方でそういう雨が降るということも相当可能であると考えます。従って、流域全般を考えまして、雨の型というものを、いろいろな型を考えながら河川計画を作っていく。こういうことでございまして、一つの年度の雨量、雨の降り方ということも参考にいたしますが、それのみには、たよっていない、それもあわせ考えまして計画を作っている、こういうことでございます。
  59. 坂本泰良

    坂本委員 上流に雨が降って、下流の方に降らぬということもあるわけですね。しかし、今、私が申し上げました昭和十年型の洪水を五つ、六つあげましたが、これはほとんど毎年の水害ですが、これはいわゆる夜明ダム以降の支川がたくさんあるわけです。ことに、今あげられました山ノ井川とかその他の川も、この支川になっておるわけです。この支川の洪水と、これが本流に合しまして、そして流水量が増加する。それが主であって、昭和二十八年の災害は、上流にもより一そう降ったのですが、その災害の状況を見ますと、久留米の付近の橋が流れたのも、これは玖珠川、大山川の洪水がくる前に、中流以降の支川、本川がはんらんして、そして堤防が決壊し、橋は流れる。さらに、河川管理の不始末から、日田地区の材木がこのはんらんと同時に流れまして、久留米の国道の橋なんかがひっかかりまして、その橋の上と下は一メートル近く、こういうようなはんらんの状況であった。二十八年の災害におきましても、まず中流以下の降雨と流水量の増加、はんらんによって生じて、そのこわれたあとに、上流の大山川、玖珠川の降雨によるはんらんが五時間ないし六時間おくれてこれに合流した。こういうようなことをわれわれは調査いたしておりますが、建設省の方では、こういう点についても調査いたされておりますかどうか。
  60. 山内一郎

    ○山内(一郎)政府委員 昭和十年の洪水の状況と、それから二十八年の洪水の出方と、違う点があると思いますが、二十八年のことを考えてやれば、私たちの考え方としては、昭和十年の洪水もカバーできるのじゃないか。つまり、先ほど申し上げましたように、上流から河口まで一つ計画を作る場合に、この場合で例をあげますと、二十八年の洪水も考えますし、その場合に十年の雨が降った場合にも安全であるかどうか、逆にチェックの形でいろいろ検討いたしまして、計画を作っているわけでございます。従って、昭和十年のような洪水も現在の計画で十分カバーできる、こういう考え方でございます。
  61. 坂本泰良

    坂本委員 建設省の計画を見ますと、大正十年には五千トンの計画がなされて、その後流水量の増加に伴うて七千トンとなっておるわけであります。こういうふうに、流水量が大正十二年から増加しておる。さらにまた、先ほどの説明によりますと、最大流水量は八千五百トンという御説明でありましたが、この流水量が五千トンから七千トン、さらに八千五百トン、こういうふうに増加しました技術的な根拠と申しますか、理由についてはいかがですか。
  62. 山内一郎

    ○山内(一郎)政府委員 計画高水流量というものがだんだん増加しているのはどういうわけか、という御質問でございます。いろいろ原因はあると思いますが、まず、雨の降り方がその時代によって違って参ったということも一つの原因でございますし、だんだん上流地域が開発するにつれまして、上流にも堤防を作っていく。そういたしますと、従来はんらんしていた地域が、はんらんしなくなりまして、その分は下流に流れる。こういうようないろいろな要素から計画流量がふえてくるわけでございます。二十八年の場合は、雨の降り方がうんと従来と違っていた、これが一番の原因ではないかというふうに考えております。
  63. 坂本泰良

    坂本委員 何か技術的、科学的の調査その他によるのかということをお聞きしましたら、そういう御答弁はなかったわけであります。上流地区に防水のダムを作らぬでも、下流の方は五千トンあるいは七千トン、こういう従来の建設省の基準によってやって、さらに今度八千五百トン、こういうことを主張されるのは、これは雨量が増大したわけではなくて、河川改修が進むと、雨が降れば雨量が集中して、洪水は早く大きくなる、こういうような法則もあるから、下流地区計画について——私が言うのは、久留米以下の下流でなくて、少なくとも夜明ダムから以降のことを言うわけですが、——この下流地区の対策が、今までやられたのは、全部二十八災でだめになったから、今度立てられるについても、もっとそういう点を考えて、築堤、あるいは専門語を知りませんが、川をさらえるとか、曲がった川をまっすぐにするとか、こういうふうな工事がまず先になされる。そして、その河川の改修による洪水の集中量、あるいはその集中による流水量というものの増加、こういう点をまず解決した後に、上流の問題を解決すべきではないか。と申しますのは、上流の洪水が必ずしも絶無とは申しませんが、ほとんど下流の洪水災害があったあとに、上流の雨量がきておる。こういうような点を見ますると、まず上だけやっても、これはおたまじゃくしみたいで、何にもならない、いわゆる夜明ダム以下の下流地区をまずやった上で、このダムの点を考えてもしかるべきではないか。こういうふうに考えられるわけでありますが、この点、いかがですか。
  64. 山内一郎

    ○山内(一郎)政府委員 計画と施工の順序といいますか、その両方から考え方がいろいろあると思うのです。下流の方を先にやってという御意見でございますが、総合的に水源から河口まで一貫した計画を作るということがまず必要だと思います。下流を一応やって、それで、はたして洪水が受けられるかどうかということを見て、初めて上流のダムを作らなければ間に合わぬのではないか、こういうことでは、どうかと思います。やはり総合的な計画を作りまして、それが上流のダムと下流の方の河川改修と歩調をそろえながら、逐次その安全率を高めていくということが必要だと思いまして、現在両方歩調をそろえながら、やっておるわけであります。
  65. 坂本泰良

    坂本委員 時間がありませんから、流量の点については、もっと計数を持っておりますから、計数をあげて、中下流の問題、さらにその雨量に相応する堤防の増強、河道の改修、こういうような点についてお聞きしたいのですが、これは省略しまして、せっかく大臣も見えておりますから、ダムの問題について質問をいたしたいと思うのです。  先ほど申した通りに、建設省は十一カ所、あるいはそれ以上かもわかりませんが、ダムについての地質調査をしまして、熔岩地帯だから、高堰堤ダムはできないけれども、低いダムは可能であるというのが、大体の地質学者の意見のようであります。そこで、下筌・松原に、ああいう高いダムを二つ作らなくても、砂防的なダムをたくさん作って、いわゆる建設省がいわれるような上流地区における二千五百トンの調節ができやしないか。こういうふうに考えますが、この点についてはいかがですか。
  66. 山内一郎

    ○山内(一郎)政府委員 砂防ダムというのは、御承知のように、上流の山の荒れた地帯に作りまして、土砂をこの地点にせきとめて、下流の方に流さないように、つまり洪水を調節するということは別の問題でございまして、土砂防止という考え方から砂防ダムというものを作ったわけでございます。松原・下筌は、砂防という点よりも、洪水を調節するという別の観点から考えているわけでございまして、松原・下筌と同じ容量の砂防ダムというのは、ちょっと考え方が違うのじゃないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  67. 坂本泰良

    坂本委員 簡単に砂防ダムという言葉を使ったから、意が尽くせなかったと思うのですが、ごく上流の方は砂防ダムにする。地質の関係で高堰堤ダムができないところは低いダムをたくさん作って、そうしてふだんは、何というか、専門的の言葉は私忘れましたが、穴をあけて流しておいて、雨が降るときにそれをしめて、ダムにする。ふだんは、いわゆる川のように流しておいて、いつでも河川管理によって、雨が降るときはそこをふさいでしまってやる。そういうダムがあるわけですね。そういうような方法で、できやしないか。下筌・松原ダムにいたしても、雨季には満水せずに、ふだん満水させて、もったいないから電力に使うというわけですが、そうでなくて、たくさんこしらえて、ふだんは川のように流しておく。やはり河川管理の問題は、高堰堤のダムを松原・下筌に作りましても、これは河川管理をよほど上手に抜け風なく、さらに気象庁なんかとの関係考えて、これはやらなければならない。そうでなかったならば、これは天災でなくて、人災のような洪水が出てくるということが非常にいわれておるわけです。そういうふうで、河川管理の点を充実して、小さいダムを、しかも、ふだんはためずに流してやっておく。こういうダムなんです。そういう点について、検討をしたことがあるかないか。
  68. 山内一郎

    ○山内(一郎)政府委員 ダムの調査につきましては、十一地点調査をいたしております。松原・下筌以外に、これと同じ程度の洪水調節ができるかという点につきましても検討いたしましたが、非常に集水面積、つまり雨の降る面積が狭いために、従って洪水調節をやる量も少ない。こういうようないろいろな点から考えまして、やはり松原・下筌が一番である、こういうことで決定しているわけでございます。
  69. 坂本泰良

    坂本委員 大山川の方だけの松原・下筌で洪水調節しても、片一方の支流である玖珠川、こちらの方がはんらんした場合は、下流に対する雨量の調節はならない、こう考えられるのです。ですからどうして大山川の方だけに持ってこられたか、その点、いかがですか。
  70. 山内一郎

    ○山内(一郎)政府委員 玖珠川についても、先ほど申し上げましたように、ダムの調査もやっております。しかし、適当な地点がございませんので、松原・下筌の洪水調節、それから玖珠川筋につきましては、河川改修、こういうものを合わせまして、長谷地点で八千五百立方メートルの計画流量、こういうようになっております。玖珠川の方にダム地点がないので、これは河道改修だけでいく。こういう考え方で、両方合わせまして計画八千五百、これで下流の方の対策をやる、こういうことでございます。
  71. 坂本泰良

    坂本委員 その点について、この間も調査に参りましたのですが、玖珠川の方がダムに不適地だというのは、いわゆる発電を伴うところの商堰堤ダムを作るのが不適であるのです。それで、低いダムならばできるし、また適地でないと建設省側がいわれるのは、ポケットが小さい、水をためる面積が小さい。それが玖珠川の方に作らないという理由のようです。しかし、玖珠川の方に作らなかったら、こっちの方に雨が降った場合は、下流の洪水の調節はならないし、従って、こちらの方にも小さいダムをやはり作らなければならない、こういうふうに考えられる。  時間がないから、もう一つつけ加えますと、いわゆる大分県の森町が非常に被害をこうむっておるわけです。被害をこうむっておるのは、森町から流れる下流の方が非常に狭くなって、そこに水がたまる。だから、森という町の被害を防止するためには、やはりその上流にダムを作らなければ、森地区の水害の防止の打開はできない。こういうようなこともあって、やはり玖珠川の方にも大規模でないダムを作って、洪水の調節をする。大山川の方も、下筌・松原のような、ああいう大きい発電会社の発電だけに使う——もちろん五月、六月は調節して水を少なくするというのですけれども、そういうことをせずに、双方に十カ所、その他の洪水調節のダムを作る。そういうようなことでやっていけば、建設省が主張する下流の二千五百トンの洪水調節にもなるし、また上流の被害もごく少なくて済む。こういうようなことになりますが、そういう点は全然考えられないのですか。
  72. 山内一郎

    ○山内(一郎)政府委員 ただいまのお話はごもっともでございまして、そういう点もいろいろ調査検討した結果、ただいまの松原・下筌にダムを作るということをきめているわけでございます。  それから、森町の洪水防御につきましては、二十八年の災害を河道改修の工事として、二十八年のような災害が再び起こらないように、こういう点で現在措置している状況でございます。
  73. 坂本泰良

    坂本委員 建設省がまっ先に候補地として予定しました久世畑ダムの予定地、これは地質学者の話によりますと、商いダムはできないけれども、低いダムはできるのだ。そうして、あすこが調査について非常に疑義の点がありますのは、双方の岸壁の地質調査をして、さらに川底のボーリングを入れようとしたのです。ところが、二本ばかり入れて、あの付近の非常な反対にあったから、一時ボーリングをやめてしまった。そうしてさらに、今度はいよいよそこに作らずに、下筌・松原に作るということに九電との間に話があったかどうかはわかりませんが、できたから、だからそれを合理化するために、久世畑はあとで二十本か二十一本かのボーリングを入れて、そうして、これは川底が不適当だというので、ここはだめだ、こういうふうになった経過がある。こういうことも聞いておるわけです。われわれしろうとから見ましても、久世畑にも、低い、あまり農民に被害のないダムを作る。下筌・松原にも、低い、そう被害の及ばない——被害が全然ないということはできないでしょうが、膨大な被害のあるような高堰堤ダムでないダムでやっていける。ただ、そうすると発電ができないのですが、発電は、九州電力が世界銀行から借りて、そうして火力発電を作る。こういうことになれば、ほんとうの治水の目的で、この下筌・松原、久世畑、それからその上の黒渕とか、いろいろ候補地はあるようです。それから、玖珠川の方にも五、六カ所あるようですから、それで建設省がほんとうの利水を考え、農民の財産権も剥奪しない、被害が少ないようにするという方法をとるべきだ、こういうふうにも考えられますが、こういうような点について、大臣はどう考えられますか。大臣の答弁もあわせてお伺いしたいと思います。
  74. 中村梅吉

    中村国務大臣 久世畑につきましては、私も地図等をよく見まして、非常に貯水には適したような地勢のように見まして、ここのいきさつを聞きましたが、ダム建設についての地質調査をいたしました結果、地質がダム・サイトとしては適当でないという結論になって、とりやめにいたしたということで、地元に当時反対があったそうでございますが、これは反対のためにとりやめになったのではありません。地質の関係上こうなったというように承知いたしております。  それから、立ちましたついでに、一言先ほど来のお話に触れておきたいと思います。電力資本のためにわれわれが犠牲になるのはいやだ、地元にこういう反対論があるということでございましたが、電力はあくまで副産物でありまして、電力のためにダムを作るというような考え方は毛頭ございません。ただ、洪水調節を行ない、災害を防止するために、やはり河川改修だけでは防ぎ切れない。一定の流量等を考えまして、その流量をダムによって防止するということでなければならない。それらが相関連して、初めて災害防止ができるので、やらなければならない。作る以上は、年間遊ばしておかないで、差しつかえのない時期に発電にも利用させようということでありまして、電力というのはあくまでも副産物であるということをわれわれも考えておりますし、実体もそうでございますから、地元の人たち関係方面に対しまして、その点をとくと御理解願えるように、一つ坂本さんにも御心配をいただきたいと思うのであります。
  75. 坂本泰良

    坂本委員 まことに時間が過ぎて恐縮ですが、もう一点だけ。私がお聞きしましたのは、下筌・松原のような、九十五メートルですか、高い高堰堤のダムを作らずに、建設省が今調査しておりますダム予定地も十数カ所ある。しかも、その火山地帯の溶岩は高堰堤ダムには全部不適当である。しかし、低いダムなら適当だということになっているわけですから、ダムをこしらえましても、しろうと考えで、重点のところは忘れましたが、穴をあけて、ふだんは川に水をどんどん流しておいて、雨が降るときは、気象観測も今非常に進歩いたしておりますから、それによって、いわゆる河川管理の方法で、雨が降りそうなときはそこを締めて、そして洪水調節のダムにする。そういうのをたくさん作れば、被害がごく僅少でできはしないか。その点はどうですか。  それともう一つは、そういうのができるのにかかわらず、あえて下筌・松原に高堰堤ダムを作れば、あそこに三百戸の水没地帯を作るし、熊本県側は約九十戸ばかりですが、その水没をさせなくて済むのじゃないか。昭和二十八年の大水害は百年に一回だといわれている。百年に一回に備えるためには、そういうダムで調節しておいてやればいいじゃないか。何も電力会社にあそこの発電を安い費用で——何でも、聞くところによると、国家資本によるダムを利用する発電は、三年間くらいで減価償却ができるといわれておる。こういうような副産物であるダムを作らずに、農民の機軸を少なくして、小さいダムをたくさん作って洪水調節をできないものであるか。それをお聞きしたい。
  76. 中村梅吉

    中村国務大臣 御承知通り、十カ所以上ダム・サイトの地点について地質調査等を相当行なったわけでございますが、この地帯は火山灰の地帯でありまして、ダムを建設する可能地帯というのは非常に乏しいところで、いずれも適当なダム建設の地点として見出すことができない。結局、集約した結果、松原・下筌二カ所、ここならばダムの建設が可能である、安全であるという結論が、それぞれの専門家によってしぼられたというように私、承知をいたしております。従って、低いダムならばいいのかどうかという御議論がただいまございましたが、低いダムでも、やはりある程度の貯水をする以上は圧力がかかりますので、地質との関係は非常にあると思うのです。それから、地質がたといどんなに悪かろうが、ダムが破砕されるようなことがないという程度のものにしたら、それは貯水量というものが、何カ所作ってみても、総計として非常に僅少なものになるのじゃないだろうか。これらの点は、もちろん今日に至るまでの間、関係当局といたしましては、調査をしたはずでございますが、私どもといたしましては、この松原・下筌ダムの問題は、政治的な配慮考え方でなしに、あくまで純理論的と申しますか、技術的な角度でこの筑後川の水害防除をどうすればいいのか、どうすれば可能なのか、どうすることが一番必要なのか、というしぼり方で今後も進めて参りたい、かように考えておる次第でございます。
  77. 坂本泰良

    坂本委員 最後に、今、大臣はそう申されますけれども、この問の実地検証に建設省の岡本という、九大の地質学を出た人が全部調査したのですが、その人が建設省側の、被告側の案内人と申しますか、説明員として出てこられたわけです。その説明によりましても、やはりこの火山地帯、海岸地帯はダムには全部適当でない。しかしながら、ポケットの小さい、低いダムならば、それはどこでもできる。これは認めておられたようでした。それで、下筌・松原も、見たところの岸壁は非常にいいようでありますけれども、やはり漏水するところがある。御母衣ダムかどこかは、建設費よりもあとの漏水の点で数倍金がかかったということも聞いているわけですが、下筌・松原ダムでは、その漏水の点について、建設省の方ではやったとは言われますけれども、それではどういう方法で、どこを、どういうふうにやったかというと、全然それはないわけなんです。あったらば、一つデータを出してもらえばいいのですが、これはない。しかしながら、今はダムの技術は進んでおりますから、溶岩が少しくらい悪くても、金をかければできるわけです。久世畑ダムは二百四十億かかる。しかし、それは高過ぎる。下筌・松原ダムは百三十億でできるから、経済的な理由で下筌・松原に変更したということは、昨年の当委員会で前大臣からの御答弁も聞いておるわけでありますが、できるわけです。しかしながら、別な方法がやれるのだから、無理して多額の金を使って、あとで漏水によってさらに数倍の金をかけるような大きいポケットの、大きい水をためるような下筌・松原ダムを作らずに、もっと考慮して、そうして農民の被害の少ない、私が再三申しますような方法を検討してやったらどうか。しかも、全然土砂地帯でダムができないという岡本氏の意見じゃないのです。小さいダムならばできるけれども、建設省が予定しておるような大きいポケットのダムはできない。これが前提のようでありますから、こういう点についても一つ御検討を願いたい。  なお、河川局長にお願いしておきたいのは、二十八年の災害前にいろいろの計画が立っておりました。計画はりっぱでありましたろうが、国家予算が少ないために、それがほとんどできていなかった。従って、いわゆる巨瀬川の増水によって、久留米市がああいう悲惨な災害にあったということは、災害の歴史が明らかにしておるわけであります。そういうふうで、いかに計画はりっぱであっても、それが実現ができなければ、これは何にもならぬし、ダムを作られたところの犠牲者が犠牲をこうむって、その犠牲によって利益をこうむるべきものがこうむらない。こういうようなことが遺憾ながら二十八年の災害前の建設省の筑後川の改修ではなかったか、こういうように思われる。従って、その計画と、それから毎年どれだけの国家の金を使って、どういう計画が進められていたか、その点の資料と、それから、二十八災後の計画は一、二変わっております。そうして、先ほど河川局長が言われました八千五百トンの洪水調節、下流の方で六千トン、上流で二千五百トンですか二千八百トンですか、これを下筌・松原で調節する、こういう計画が立っておりますが、はたしてこれが十カ年計画でできるかどうか、われわれは非常に疑問であります。そこで、一番危惧するのは、上流の下筌・松原のダムを先に作って、そして、そこに九電に発電所を作らせて、発電をどんどんやって、ほんとうの企図するところの下流の洪水の調節にはならない。何だ、これはやはり国家資本を使ってダムを作り、電気会社の発電の便益をはかっただけである。こういうふうになったのでは、山村の農民の財産権というものは全く保障されない。これが非常に反対の理由でありますから、三十二年に大体計画が完成したのじゃないかと思われますが、その前と、三十二年後のいわゆる十カ年計画なら十カ年計画ができて、どういう計画でやっていて、それに国家の費用を一年にどれだけつぎ込むことができるかどうか、こういう点についての資料を見せていただきたいと思うのです。やはり建設省が作られたのだから全部正しいのだ、一般国民は最初は一応そう思うでしょうが、遺憾ながらずさんな点もあるわけでありまして、やはり国民の財産権を剥奪するわけですから、いけなかったらそれを変えて、もっといい方法があればやるべきだ、こういうふうに考えます。それがそうであるかどうかという点は、一にかかって総合計画と、それを実行する国家予算の裏づけをどうやっておるか、過去はどういうふうにやられたのだ、今後はどういうふうにやるか、ということが国民を納得させるところの中心じゃないか、こういうふうにも考えられます。ただ話し合いだ、話し合いだということで、もう建設省の計画は不動のものであるという上に立って、ただ補償金の問題だけで、慈善事業的に金をよけいもらうくらいなら、もらわぬでもいいというのが国民の意思でありますから、そういう点も一つ十分考えて、大臣の方でも御検討願いたいと思います。建設省も、もちろん十分費用もかけ、調査をしておられますが、われわれもできるだけ努力をし、また専門の地質学者、河川その他のエキスパートの意見も十分聞きますし、また筑後川の長い洪水の歴史の文献等も考えてやっておるわけであります。やはり必ずそこでなければならないということになれば、そこに初めて話し合いの納得の場ができるし、もし、そうでなくて、もっといい方法があれば、いかに建設省といえども、それをやりかえるのにやぶさかでないようにやるのが、やはり今の民主主義の行き方ではないか。こういうふうに思いますので、この点はわれわれも一生懸命協力するが、建設省の方も、きめたらそれを断行するのだというような、いわゆる旧憲法時代の権力者のような立場に立たずに、やはりお互い人民のための筑後川の総合開発であるし、上流地区の犠牲者の問題である、こういうふうに考えて、納得のいくようにしなければならぬと思う。ただ、大分県の警察本部長が言うように、何でもかんでも警察官を動員してやっつけてしまえ、こういうことでは、相当犠牲者ができても反抗はおさまらないと思うのです。それで、そういうことのないように善処されんことを要望しておきます。なお、先ほど申し上げましたいろいろな詳しい資料等もいただきまして、さらに一つ所信を伺いたいと存じます。      ————◇—————
  78. 加藤高藏

    加藤委員長 この際、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。  静岡県由比町における地すべりによる被害状況調査のため、必要があれば現地に委員を派遣し、その実情を調査することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 加藤高藏

    加藤委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  なお、派遣期間、派遣委員の人選並びに議長に対する承認申請の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 加藤高藏

    加藤委員長 御異議ないものと認め、そのように決します。  次会は、公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十四分散会      ————◇—————