○尾村
政府委員 確かに
精神病患者が数字的にも増加いたしております。その半面、これは
精神障害としての診断の方法、あるいは診断基準が進んだために、従来はしろうと考えで
精神病と思わぬものも、医学的に見て
精神病の
対象になってきたという点の増加も、ある部分あるかと思うのであります。しかし、絶対数がふえたと同時に、これは諸外国でも、
日本以上の増加率で、年々
精神障害者の把握数というものが増加いたしております。ということは、今までの医学でこの発生を的確に予防するという方法が、まだ世界じゅう完全ではない、こういうことでありまして、一そう
精神病の発生原因の研究と、またその発生原因がそれぞれわかれば、これの発生を防止するという方法を、
日本のみならず、国際的にもやらなければいかぬということが強調されておりまして、これはもうぜひ必要かと思います。さしあたり
日本といたしましての
精神衛生
対策の重点は、さような意味でございますので、発生しておる
患者が、家族ないしは
社会的にも非常な支障を来たす。本人自身も非常な不幸である。発生後の
対策をまずやって、当面の障害を除去する、これはできることでございますので、これに今のところは重点が置かれておる。被害を少しでも軽減するところが今のところは中心になっておりまして、先般成立を見ました
精神衛生法の改正も、重症で、しかも
治療を要する、あるいは隔離を要する、これの収容、
治療の大きな促進を中心とした改正であったわけでございます。しかしながら、それだけでは、出るものは出しておいて、起こってから火消しに回るという形でございますので、御
指摘の
通り、根本
対策にはならぬわけでございます。今、
一つ成功しておりますのは、幸いにいたしまして、性病から発生する
精神障害、これは近年非常な激減を来たしております。いわゆる麻痺性の痴呆症とか、あるいは梅毒性のいわゆる脳梅、これが着々と減っておりますのは、最近の梅毒の
治療が、
精神病のように病膏肓に達する以前にある程度食いとめてなおしてしまっている。性病だけの間になおしてしまっている。これが成功しておりまして、この部面だけは発生自身を食いとめておりますが、その他の最大多数を占める
精神分裂症、これは
日本人の
精神病の六割以上を占めておるわけでございますが、これとか、いわゆる重度の
精神薄弱者の発生、これはまだ的確な原因がつかめておりません。あくまで
治療中心ということでございますが、これもしかし、ある部分はいわゆる遺伝
関係の明白な部面がございます。従いまして、これは優生保護法の活用によるいわゆる優生断絶ということ一これは行き過ぎたら人権じゅうりんになりますが、しかし、非常に濃厚な家族歴があって、それが相当な濃度で発生している場合には、結婚をしないというような指導から始まりまして、結婚をしましても、子供を生まないという避妊ないしは優生手術、これによりまして、ある部分は除去できる。しかし、その他の多数の問題は、まだ未解決である。それからもう
一つは、最近目立って多くなっておりますのが、一般的にノイローゼと称しております、神経衰弱といっております神経質症、あるいは
精神病質と
いっておりますもの、いわゆる
社会に適応できない、しかし、
ほんとうの厳重な意味の
精神病そのものではない、これが非常にふえておるわけでございます。これはやはり対人
関係とか、あるいは
社会環境の複雑化に耐え得ない人間がある。これを耐えるような職域転換その他の
ほんとうの意味の
精神健康
対策ということで、相当程度これは救済できると思います。この部面はやはり手がつくということで、従来の
精神病者
対策に加うるにそういうような
精神衛生という広い意味の
対策、これは県立の
精神衛生相談所とか、そういうものを今逐次拡大しておりますが、こういう面で相当対処する、こういうような総合的な面で進めておりますが、ただ、御
指摘のように、他の
結核等と比べますと、非常に不十分であります。性質上も不十分な点もございますが、比較いたしますと、まだ劣っている、こういうふうに認めまして、これには大いに力を注ぐ必要がある。こう認めるわけでございます。