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1961-04-05 第38回国会 衆議院 外務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年四月五日(水曜日)    午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 堀内 一雄君    理事 竹内 俊吉君 理事 野田 武夫君    理事 森下 國雄君 理事 岡田 春夫君    理事 松本 七郎君       椎熊 三郎君    正示啓次郎君       床次 徳二君    松本 俊一君       黒田 嘉男君    田原 春次君       穗積 七郎君    細迫 兼光君       森島 守人君    川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         外務政務次官  津島 文治君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安藤 吉光君         外務事務官         (欧亜局長)  法眼 晋作君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         外務事務官         (国際連合局         長)      鶴岡 千仭君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 四月五日  委員帆足計辞任につき、その補欠として田原  春次君が議長指名委員に選任された。 同日  委員田原春次辞任につき、その補欠として帆  足計君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月三日  日本国オーストラリア連邦との間の国際郵便  為替の交換に関する約定締結について承認を  求めるの件(条約第一五号)  日本国とパキスタンとの間の国際郵便為替の交  換に関する約定締結について承認を求めるの  件(条約第一六号)  外国仲裁判断承認及び執行に関する条約の締  結について承認を求めるの件(条約第一七号)  犯罪の防止及び犯罪者の処遇に関するアジア及  び極東研修所日本国に設置することに関する  国際連合日本国政府との間の協定締結につ  いて承認を求めるの件(条約第一八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 堀内一雄

    堀内委員長 これより会議を開きます。  先日の本委員会において森島委員より会議録に関して御質問がありましたが、その後委員長において事務局について調査しましたところ、従来本院においては、官報に掲載する本会議会議録または印刷配付する委員会議録には取り消した発言部分は掲載しないことになっており、従って、その後この削除された言辞が本会議または委員会において引用された場合には、会議録を編集するにあたって一貫した措置をとる必要上事務的にこれを削除することが慣例になっているとのことであります。  今後本委員会においては、このような場合、事務局が従来の慣例によって取り扱う際、事前に委員長及び発言者にその旨連絡をとった後処理せしめることを適当と考えます。  なお、引用の字句について、その範囲が従来の慣例により処理を困難とする場合は、委員長において理事会に諮り、処理することといたしたいと存じますので、さよう御了承を願います。
  3. 森島守人

    森島委員 私がその問題を特に持ち出しましたのは、当委員会における発言の自由に関して不当な圧迫ないし阻害があることをおそれたからでございまして、別に他意はございません。従って、委員長のただいまの御説明並びに今後の取り扱いに関する釈明によって、私は本委員会に関する限りにおいてはこれを了承いたします。  しかし、依然として国会発言の自由の問題が残っておりますので、委員長において適当なる機会に常任委員長会議その他に持ち出されまして、ただいま御説明になったような慣行を国会全体として確立されるように特に御努力を願うことを条件といたしまして私は了承いたします。これに対する委員長のお答えを求めたいと思います。
  4. 堀内一雄

    堀内委員長 ただいまの森島委員の御要望に対しましては、善処いたします。      ————◇—————
  5. 堀内一雄

    堀内委員長 これより国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑通告がありますので、順次これを許します。森島守人君。
  6. 森島守人

    森島委員 前回の委員会においてわが党の黒田委員から日中問題の根本的な方針、政策等について総理大臣に御質問がございましたが、総理大臣としてはいろいろ御事情があることは了察いたしますけれども、前向きと思われるような御発言のなかったことは、私きわめて遺憾とするところでございます。  私が三月一日に質問をいたしました際に、資料の要求をしまして、資料の提出を待って質問を続行するということを申し上げておったのでございます。私は、黒田さんの根本的な質問のほかに、自民党、政府といたしましても別に承認問題にこだわらずに、日中関係を前進的な方向で一歩進めることができるというのが私の所感でございました。私は、この点において承認問題と政府間貿易協定の問題を取り上げたのでございます。しかし、当時私がインドシナとかあるいはフィリピンとかビルマとかいろいろな例をあげましたけれども、一括してあげましたために明確を欠いたところもあったかと思います。従って、政府答弁もその際は支離滅裂であったと私は思っておる。その場限りの思いつきで答弁されたことも多かったと思いますので、ただいま資料の提供がございましたので、質問を続行したいと思っておるのでございます。  第一に私がお伺いしたいのは、資料が三月二十三日と三月二十五日の二回にわたって出ておりますが、その資料なるものにも相当な相違があります。大きな点といたしますと黙示の承認ということがありますし、また後に出されましたのには法的な承認とありますが、この両資料のうち前の資料は取り消しになったものか、あるいは両方とも生きておるのかということを、念のためにお聞きしておきたいと思います。
  7. 中川融

    中川政府委員 森島委員の御注文によりまして提出いたしました資料でございますが、先に出した方の資料はいささか不正確な点がございましたので、あとに出しました資料によって御承知願いたいと思います。
  8. 森島守人

    森島委員 では私は国別質問したいと思います。  まず第一にインドネシアから始めたいと思います。インドネシア承認を与えた日付は一九五二年四月二十八日になっておりますが、これは間違いございませんね。
  9. 中川融

    中川政府委員 間違いございません。
  10. 森島守人

    森島委員 続いてお尋ねしたいのは、小坂さんもえらい発言をやっておられますから、私は特にこの点は重点を置いているのですが、インドネシアフィリピンとの間にはすでにその国の承認がなされておりまして、貿易協定がなされて、国交は未回復でありましても、それらの国は承認されておった、中共の場合と違うのだということを明白に御答弁になっております。そこで私がお尋ねしたいのは、インドネシア日本との間に戦争状態が終結したのは、いつでございますか。
  11. 中川融

    中川政府委員 インドネシア日本との間に戦争状態が終結いたしましたのは、これはインドネシア日本との間に国交が回復いたしましたとき、つまり平和条約ができましたときであります。具体的に日付で申しますると、一九五八年四月何日でございますか、その日付は忘れましたが、平和条約ができたときであります。
  12. 森島守人

    森島委員 それではもう一つお尋ねしたいのは、戦争状態継続中、承認ということはあり得ますか。
  13. 中川融

    中川政府委員 戦争状態国家ないし政府承認というのは、必ずしも重複する、要するに、一つがあれば一つは排除するという性質のものではないと考えるのでありまして、現にたとえば日本イギリスとこの間の戦争交戦状態にあったわけでありますが、戦争中一貫いたしまして日本イギリス承認しておるという事実には変更はなかったわけでございます。従って戦争状態中でも承認ということはあり得るわけでございます。
  14. 森島守人

    森島委員 それは私は非常に重要な問題だと思う。戦争状態というものと国家ないし政府承認というものは、私は両立しないと思う。それでこのインドネシア平和条約を見ますと、第一条をごらん願いたい。「日本国インドネシア共和国との間の戦争状態は、この条約効力を生ずる日に終了する。」こうあります。はっきりしているのです。それまでは戦争状態継続しておった。私は戦争状態継続中に承認というものはあり得ない、こう思うのです。この点において、条約局からわざわざお出しになったこの資料は、前の説を肯定させるがためにことさらに作為しているのではないかというふうに考えますが、いかがでございますか。
  15. 中川融

    中川政府委員 一つ作為はしていないのでありまして、純国際法的に見まして、いつ日本インドネシア承認したかという点を考えまして、一九五二年の四月二十八日に、わが国が東京にありますインドネシア代表部にいわば外交的な地位を正式に認めた日、これをもってインドネシアを法的に承認した日である、かように考える次第でございまして、作為その他のことは一切ないと存じます。
  16. 森島守人

    森島委員 私は承認と申しますれば、先ほどイギリスの例を御引用になりましたけれども、イギリス日本との関係は、戦争状態で切れてしまっている。そこで、それを承認しておったということは、国際法上の関係からきましても条約関係からきましても、絶対にあり得ないと思う。すべての条約はそれで打ち切られてしまっておる。この点はいかがですか。
  17. 中川融

    中川政府委員 国家国家とが戦争状態になることは従来では幾らもあったわけでありますが、戦争状態になったからして、すぐにその相手国承認関係がなくなるということはないのでありまして、これは承認ということは、一つ国家国際社会一員として認めるかどうかということでございます。同じ国際社会の中におきましてもけんかをすることもあるのでありまして、けんかをしたからといって、国際社会から追い出したという、日本から考えましてイギリスなりアメリカなり、日本と交戦した国は全部国際社会の外にやってしまったのだ、かように見ることは不合理でありまして、国際法上の承認関係というのは、戦争中もずっと継続するのでございます。森島委員御承知のように、戦争中でありましても、中立国を通じてあるいは利益代表国を通じていろいろな交渉が行なわれるのでありまして、決してその国との間の関係が全部断ち切れるというわけではないのでございます。また承認関係があればこそ、ある意味戦時国際法というものがそれらの国との間にも適用になるのでありまして、国家承認戦争状態とはいわば別個のカテゴリーに入る観念である、かように考えております。
  18. 森島守人

    森島委員 今御説明になった段々は事実関係指摘しておるのにすぎないのであって、法的には戦争状態によってすべての関係が断絶するということが適当だと私は思う。私も条約専門家ではございませんが、もし今の外務省が、今中川局長の述べられたような説を通説として認めるというのにつきましては、国際法学者意見を徴するなりなんなりして、これは重要問題ですから別個に検討すべきものだと私は思うのです。常識論からいっても政治論からいっても、中川条約局長の今の御説明のごときは、断じて受け入れることができぬと私は思っております。そういう関係で、中共とそれからインドネシアその他の国が異なった状態にあるという意見を肯定するがために編み出された意見だと私は断定せざるを得ないのでございます。  私はもう一つお聞きいたしますが、この前の御説明によりますと、貿易協定を結んだり、あるいは在外事務所を置くことによって承認効果が出てくるのだということを中川条約局長は御説明になっております。そうすると、今度の法的承認というものは前の御説明と全然違いますね。
  19. 中川融

    中川政府委員 前はいわば純理論の問題として森島委員との間に質疑応答があったわけでございますが、理論的な問題といたしましては、在外事務所の設置というようなことでデ・ファクトあるいはデジューレの承認があり得るということを申し上げたのでございます。具体的な問題といたしまして資料を提出することになりましたので、詳細は当時の協定あるいはその他の関係をずっと調べてみました結果、デ・ファクト承認をいつしたかということは、これはいろいろ議論の余地があり得る問題でございます。また日本インドネシアをいつデ・ファクト承認したかということをこの際きめることも、別にそれだけの必要性というものも特にないように思います。従ってむしろデ・ジューレに承認したときはいつであるかということを中心として検討いたしましたその結果といたしまして、インドネシアにつきましては、日本在外代表部在外事務所を向こうに置いた日付ということは、正式に置いたのはおくれましたので、先方日本にあります代表部日本政府によっていつ正式に承認されたか、認められたかという事実をとるのが一番適当じゃないか、それがまた一番早い時期になりますので、それで見ました結果、一九五二年の四月二十八日、サンフランシスコ平和条約が発効いたしまして、日本独立を回復いたしますと同時に、先方の従来マッカーサー司令部に派遣されておりました代表部を、今度は日本政府に対する代表部として従来と同様のステータスを認める、つまり外交的なステータスを認めるというこちらからの手紙を出しまして、それを承認いたしておりますので、これはインドネシア在外代表というものに、少なくとも外交官に準ずる地位を正式に認めたということでありますから、これをもって法的な承認をした日である、かように考えまして、その日をここに掲げてあるのであります。
  20. 森島守人

    森島委員 それだから私は、今度の戦争を契機としまして、国際法上においても、慣例までいきませんでも、新例ができたということを冒頭に申し上げまして質問をやったのでございますが、私はこの点に関しましては、やはりどうしても戦争状態終結の日をもって承認を与えざるを得ないと思うので、あとは何といいましても、事実上の関係を設定したにすぎない。サンフランシスコ条約インドネシア調印いたしました。しかしこれはインドネシア日本との間の事項のみを規定しておるものではございません。主として大部分第三国関係と申しますか、朝鮮の処理とかその他インドネシアに直接関係のない事項を規定しておったものが多いと私は思っておる。その点においてインドネシア政府調印をする、そうしてインドネシア平和条約が確定したときに初めてサンフランシスコ講和条約実体が動き始めるというふうに解釈するのが妥当ではないか、こういうふうに私は存じておるのでございますが、その点もいかがでございますか。
  21. 中川融

    中川政府委員 ただいま森島委員指摘通りに、インドネシアサンフランシスコ平和条約調印はしたのでありますが、いろいろ事情がありまして、これは批准しなかったわけであります。それでその後になりまして賠償問題が片づきますと同時に平和条約を結びまして、ここで初めてインドネシアとの間に別な平和条約ができたわけでございます。その内容サンフランシスコ平和条約と大体同じ程度の内容でございますが、規定いたしております事項は、ご指摘のようにサンフランシスコ平和条約の方がいろいろのことを規定しておりますが、インドネシアに直接関係のある必要な事項だけをインドネシアとの条約は規定しておる、かようなことになっておるのであります。
  22. 岡田春夫

    岡田(春)委員 関連して。先ほどの国家承認の問題と戦争状態の問題の法的解釈が非常に重要なので、もう一度これを確認をしておきたいと思います。  条約局長の言われた承認というのは、国際法上の承認意味しておられるのかどうなのか、この点をまず伺っておきたい。
  23. 中川融

    中川政府委員 国際法上の承認でございます。
  24. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それではその戦争状態にある場合における二国間の承認の問題なら承認としても、インドネシア日本とでもいい、そういう問題の場合に、そういう承認の法的な効果というものはどういう点にあるわけですか。
  25. 中川融

    中川政府委員 承認効果というものは、新興独立国で新しく独立した国でありますから、新しく独立した国を国際社会一員としてこちらの国が認めると、こういう意思表示でございます。
  26. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私の伺っているのは、今インドネシアの場合新興国家の場合としてあげられましたから、あなたの例でもう一つ伺いますが、イギリス日本の場合、戦争状態であり、しかも国家間に承認があったとする。その場合における戦争状態国家承認法的効果はどうなるのでしょうか。
  27. 中川融

    中川政府委員 戦前において日本イギリス国際社会一員として認めていたわけでございますが、戦争中もその事実は続いておる。イギリス戦争をしておりますが、国際社会一員であるという事実には変わりがない、こういう情勢が続いておる、こういうことでございます。
  28. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたの言った通りそれは事実の関係ではありませんか。法的な承認の問題ではないじゃありませんか。
  29. 中川融

    中川政府委員 国際社会一員であるということを認めることが国際法上の意味を生ずるのでございまして、それが承認といわれる観念になるわけでございます。
  30. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたのおっしゃるのは、われわれが言っている国際法上の国家承認とは違うので、国家の世界における構成国としての承認存在するということを国際法上認めているから、それを認めているのだ、あなたのおっしゃっているのはこういう意味なんですね。
  31. 中川融

    中川政府委員 承認実体岡田委員の言われる通りでございますが、われわれは国際法上の承認というものはさようなことを意味しておる、かように考えております。
  32. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは国家承認があるとするならば、具体的な例で伺いましょう。イギリスとの間にいろいろな戦争前に条約上の取りきめがありますね。国家間における承認の問題があるとするならば、その条約上の取りきめというものはどうなるのですか。
  33. 中川融

    中川政府委員 戦争状態になりました際に、いろいろな条約効力を失うのでありますが、あるいは失わない条約もあるのであります。これらはその戦争の態様あるいは戦後の平和処理、これらによっていろいろの決定の仕方があるわけでございますが、しかし条約存在承認とは直接関係のない観念でございまして、承認いたしましても一つ条約関係のない国が幾らでもあるのであります。従いまして、条約存在承認とは別の観念でございます。
  34. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それは違います。あなたのおっしゃるのはそれこそ事実的にイギリスという国が存在しているという事実関係なんで、その点以上に何らかの条約上の承認、法的な拘束力を持つという意味での何らかの関係を持っているものではないと思う。でありますから、あらためてここで申し上げる必要はない開戦宣言の場合に、一方的な意思通告、一般的には通告あるいは何らかの発言によって開戦宣言が行なわれる。それに基づいて既存の条約を一方的に破棄できるわけです。一方的に破棄できたのに、相手の国であるたとえば日本と——あなたのような考え方の人は、観念的に承認関係があるからその場合においてその条約関係は取り消されると言われたが、その取り消された場合においてそれでは戦争状態になっているイギリスとの関係はどうなのですか。
  35. 中川融

    中川政府委員 戦争状態にあるイギリスとの関係交戦状態で、ございます。  なお条約の問題がいろいろありましたが、要するに承認というのは、これは国際社会にその国が入ることを承認する方の国が認めるという効果を伴う観念でありまして、たとえば例をあげますと、ソビエト連邦が一九一七年にできましたが、アメリカは一九三三年までこれを承認しなかったわけであります。その間もソビエト連邦があるという事実をアメリカは決して否認はしなかったのでありますが、ソビエト連邦があるいは外債の支払いを拒否するとかいろいろな事情からして、アメリカはそれが国際社会一員となるにはまだその資格なしという見地に立ちまして、これを承認しなかったのであります。従って承認ということは決して効果がないことではないのでありまして、国としては独立して存在しておりましても、ある国はこれを承認しないという、いわば自由があるわけでありまして、その承認しない間は、その相手の国が国際社会一員であるという事実を、いわばこちらの国は認めない、そういう効果があるわけであります。
  36. 森島守人

    森島委員 私は非常な疑問を持っておりますが、先へ進む関係からもう一つお尋ねしたいのは、貿易協定締結によって承認がされるということも黙示的な承認と申しますか、中川さんもおっしゃっている。しかし私は占領中にこの種の行為日本政府によって行なわれましても直ちに承認という効果は生じないと思う。中川さんは、それは法人格として存在しているのだから、占領中にあってもこれは制約は受けるだろうがやれるのだ、国家行為としてやれる、従って承認効果も生ずるのだという御説明をやっておられますが、私は占領中に日本が行なった行為は決して日本政府のほんとうの意思の発表じゃないというふうに思っておる。これは占領後に行なわれました貿易協定等とは非常に性質を異にしているということを私は信じている。現に外務省から出ている本、外務省政務局特別資料課で編さんした「日本管理の機構と政策」という本を見ましても、はっきり書いておるのです。その部分でございますが、「日本政府外交機能は全面的に停止され、外国との交渉はすべて総司令部を通じて行うか、又は総司令部日本に代って行うことになった。」ということもございますし、それからこれも部分的になりますが、いろいろな条約に参加した例を引きまして、「これらは技術的な行政事項に関するものであって、これをもって一般的に国際協定締結権限日本に回復されたと認めるわけにはいかない。」というふうなことも書いておるのでございます。なおもう一つ引きますと「昭和二十六年二月十三日に至り、総司令部は、日本政府現存政策の解釈問題を含まず、又は現存政策から逸脱しない限りにおいて、十二項目にわたる事務的事項について、総司令部以外の二十カ国の在日外交代表と直接折衝を行うことを許可した。」こういうふうな数点がございまして、特殊な外交関係を開いてよろしいという総司令部の明確なる許可がない限りは、日本政府が独自に外交関係に類することを行ない得なかったと私は信じておるのでございます。その点も御見解を明示していただきたい。
  37. 中川融

    中川政府委員 占領中の日本外交能力につきましては、森島委員のただいまお述べになりました通りと考えております。つまり日本は原則的には外交権がなかったのでありまして、個々の場合に総司令部から許されたその範囲においてのみ、日本外交権を行使し得たということであります。しかしながら、そういういわば例外的な場合が決してなかったのではないのでありまして、たとえばこの間のときも申し上げましたが、国際労働機関憲章日本は一九五一年の十一月に加盟しておりますが、これはそのとき司令部からそれに加盟してよろしいという許可がありまして、それで加盟したわけであります。その場合には大体どんな形でやりましたかと申しますと、たとえば日本が何か条約協定外国と結ぶということであれば、そのとき日本代表がサインするとともに総司令部代表がそれを認証する。その認証によりまして、日本代表国際法上の権限を持ってこれに署名したのだということを証明する形をとったのであります。そういう例外的な場合には外交権を行使した事例もあるのでありまして、従ってそういった例外的な意味外交権を行使した場合は、やはり国際法上の主体としての権利義務日本はそこで行ない得たというふうに申し上げたわけでございます。  なお、占領中の貿易協定につきましては、資料にも書いてございますが、インドネシアビルマフィリピン、いずれも占領中の貿易協定は、日本が今のような形で作った貿易協定ではないのでありまして、総司令部がいわば日本にかわって結んだ貿易協定であります。従って承認云々の問題はそれからは直接出てこないことになると思います。
  38. 森島守人

    森島委員 前会の御説明と全然異なった御説明で、私は奇異の感に打たれざるを得ないのですが、これにこだわっておりましては先へ進まぬものですから、私は今の説明を一応納得しておきます。  私は小坂さんにお伺いしたいのは、小坂さんは中共との貿易協定の問題は法的問題を離れまして政策上の問題であるということも一カ所で言っておられます。それから同時に、政策上の問題であるから相手方の出方も見なければならぬ——相手方というのはおそらく中共のことでございましょうが、中共の出方も見なければならぬということもおっしゃっておられる。そういたしますと、中共の意向等を知るために政府として何らかの御措置をとっておられますかいなか、またとらんとする意向があるのかどうか。私がこの点を特に確かめたいのは、アメリカへ先に行ってアメリカと話し合いをして、その結果中共政策をきめるというふうなことになりますと、私は中共に対しても不要なる誤解を与えることもあり得ると信じております。おそらく池田さんは、アメリカイギリスとの間に折衝をはかるとともに、他面直接、間接いずれの方法かは別といたしましても、中共の意向を——あなた自身相手方の出方もわからぬとおっしゃっておるのだから、アメリカに行って中共の話し合いをする場合は、前もって中共との間にも何らか接触の方法を立てなければならぬと私は思っておるのでございますが、その辺に関する御見解を述べていただきたいと思います。
  39. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 貿易の問題は一般の民間の形でももちろんできるわけでありますが、これを政府間の協定による貿易ということにしなければならぬということになりますと、いろいろむずかしい問題が出てくるということであろうと思います。  そこでただいま御質問の、アメリカへ池田総理が行かれる際に、アメリカと話し合ってだけ問題をきめるというふうな御懸念もございますような御質問でございましたが、むしろそうではございませんで、日本の考え方をきめるということが必要だと思います。しかしそれにしても、日本だけ考えをきめてもできない問題がたくさんございますので、いろいろ関係する国、世界じゅうのこの問題に関心を持つ国との間にいろいろ話し合いをするということが有益だと思っておる次第でございます。  なお、中共側の考え方というものに対しては、これはいろいろなルートからいろいろな話が私どものところへ入ってきておりますので、私ども各種の情報を慎重に勘案して、先方の意向というものをくみ取る考えを持っております。
  40. 森島守人

    森島委員 ただいまのお答えは、私の質問に当たっておりません。私は、政府として直接に中共政府との間に何らか接触の方法をお立てになる必要があるのではないか、その意向かどうかということをお尋ねしたので、民間やその他の情報を集めて慎重に検討するという段階は済んでおると思う。この点に関しまして、さらに明確なる御答弁をいただきたいと思います。
  41. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 そうした問題も含めて、慎重に考究をいたしておるところでございます。
  42. 森島守人

    森島委員 それではそういう意向があると確認してよろしゅうございますか。
  43. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これはここで御確認願うということは、むしろいかがなものかと存ずるのでございまして、私が申し上げました通り、慎重にこの問題を考えたいと思っております。
  44. 森島守人

    森島委員 それじゃ岸内閣当時のことを申し上げますと、岸首相自身でも私のこの委員会における質問に対しまして、三十三年の夏ごろだったと思いますが、いつまでも万事が中共の誤解だ誤解だといって、中共に責任を転嫁するやり方ばかりやっておったのではだめじゃないか、従って何らか中共との間で話し合いをして、もし先方に誤解があるなら日本としてもこれを解くべき手段を持たなければならぬということで、私は御質問をしたのです。そのときに、七月ごろだったと思いますが、岸首相に対しまして、時期はすでに過ぎているのではないか、日本としましても、ソ連のときにもいろいろ事前に情報といいますか、先方の意向を探るような手だてもとったことがございます。それから古い時代になりますけれども、後藤新平さんの例とかあるいは芳沢さんの例とかいろいろ例がありまして、それによって国交が回復していなかった両国の間が国交回復に至った重要な例があるのでございます。私はこれらに関連しまして岸さんに対しまして、これは時期はもうすでに過ぎておると思いますが、そのときは第三国のモスクワなりジュネーブ等において、両方の代表者のおるところで非公式に、何ら言ったことにとらわれずにコミットしないで自由な意見の交換をやったらどうか、その時期は来ているんじゃないかということを質問いたしました。岸さんはこれを肯定いたしまして、考慮中だというふうな御答弁があったと思います。それからさらに藤山さんになりますと、自民党の代表者を北京へ送ってみたいという御発言もあり、また大使会談等もやってみたいというふうな御発言もあったくらいでありますが、これは三十四年の参議院選挙の際のスローガンに終わった感があるのでございまして、自来政府は何らこの点について考慮を払っておらぬと私は信じておる。その時期はもうすでに来たのではないか。穂積委員等の北京における印象によりますと、大使の話し合いというものは段階を過ぎているというふうなお話でございますので、それより上な段階において何らかの話し合いをして、中共に誤解があればこれを解いて中共日本政府との間で納得のいく線で、承認国交回復、それから台湾の条約否認というふうなところまでいき得ないでも、一歩でも二歩でも前進した態勢でもって日中関係を打開することができるのじゃないかというふうに私は信じておるのでございます。この点に関しまして、小坂さんの意見をもう一度はっきりお聞きしたい。
  45. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 大使級会談というような形は、私も今森島さんの言われたような状態だと思っております。従いまして、そういうことを含めましていろいろ考究いたしておりますが、この際は、いろいろ申し上げる段階にないと判断せざるを得ません。従いまして、そういうことが完全に何らかの結論が出ます場合にはもちろん申し上げるわけでございますが、今のところ正直に申して、私といたしましては、将来のことに対していろいろ軽々しく言うことはどうもできぬような状態にあるというふうに思うのであります。むしろ問題は、先方にもいろいろ誤解があろうと思いますし、また日本の国情そのものに対してもかなり間違った見解もあるのではないかと思うのです。そういう誤解のままにだんだん推移いたしますことは、これは両国将来のために、はなはだ好ましからざることである、かように思っておりまして、何らかの適切なる方法を考究すべく慎重に考慮をめぐらしておる、かような段階でございます。
  46. 森島守人

    森島委員 これは要するに時期の問題がありますから、慎重に考慮する、考慮するで、岸さんからもう三年もたっているのです。これは下手な考え休むに似たり、こう批評せざるを得ないと思います。私は、慎重に考慮するということで静観主義を持続するということは、その時期はもうすでに過ぎ去っておる、こういうふうに思うのでございます。  私もう一つ事例をあげますと、シベリア、満州の北部を通過しておる東支鉄道問題、この発端のごときは、民間の藤原銀次郎氏が北海道のあるところで、当時のソ連の大使であったトラヤノフスキー氏と話をした際に、漁業問題等もあって両方の権益が錯綜している、日本の勢力範囲といわれる北満においてソ連の権益が大きく突き出しておる、同時に漁業の問題もあるというふうなところから話し合いが出まして、日ソ東支鉄道の譲渡交渉というものがついに実現に至った実例もございます。  私は、政府機関と政府機関でないとを問わず、政府として慎重に考慮されることばさることながら、今すでに時期に到達している、こういうふうに断定せざるを得ないのでございます。政府においては、なるべくすみやかに根本方針をお立てになることを私は切望せざるを得ないのでございます。  私はきょうの質問はこの程度で終えまして、池田さんが来られましたときに質問を続行したいと思いますから、その点留保いたします。
  47. 堀内一雄

    堀内委員長 川上貫一君。
  48. 川上貫一

    ○川上委員 たくさんの時間をとりませんが、日中問題についてのこれまでの政府答弁は、どうも私どもとしては了解しにくい点がたくさんあります。特に本委員会で先般黒田委員日中関係についての質問をされましたが、これは非常に条理にかなった質問であって、誠意のこもった質問であったと思う。ところがそれに対する池田総理の答弁は、私としてはますます了解することのできぬたくさんの問題を残しております。そこで私はきょうはわずかな時間をちょうだいして、黒田委員質問の精神に基づいて具体的に若干の質問をいたしたいと思うのであります。  第一に台湾の帰属問題でありますが、私はこの問題は、国際的とりきめの経過からしましても、蒋介石の政権のもとで中国が正当な手続によって台湾を接収したというこの事実にかんがみても、第三には一九五〇年の一月の五日にトルーマン大統領が、台湾は中国に引き渡したと明瞭に声明を行ない、アメリカの国務省も同様な声明を行なっておるという事実、その中にはこの問題は連合各国が承知しておるのであるという条項を含んでおる。この声明の事実、そのほかありますけれども、以上三点をとりあえず例示しますが、これだけでも実際にはとうの昔に台湾の帰属問題は済んでおると考えておるのです。それをある種のたくらみからあらゆる口実を作り上げて、台湾の帰属問題を故意にこじらかしてしもうておるのが今日の台湾問題だと私は考えております。  そこで外務大臣に質問しますが、外務大臣は参議院の予算委員会で、台湾は中国の領土ではない、帰属未決定だということは条約にのっとって言うておるのであって、日本の外務大臣としては当然のことであると、大へんな大みえを切っておられるが、平和条約のどこに台湾は中国に属さないという条項があるのか、これを第一にお伺いしたいのであります。
  49. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お答えいたしまするが、私は日本の立場において、日本の外務大臣として国会においてものを申し上げる際に、やはり法律に基づかなければならないということを申し上げたのでございます。法律と申しますれば、台湾との関係平和条約の第二条(b)項に「日本国は、台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。」ということが書いてございまして、われわれはこれを放棄いたしまして、この帰属については関係国間において協議決定せらるべきものなりという前提でこの条約調印しておるわけであります。従ってわれわれの側からこの帰属についてとかくのことを言う立場にないということを申し上、げたのであります。
  50. 川上貫一

    ○川上委員 立場にないから言わぬというのじゃない。連合国できめるものであるということをたびたび言うておられるのですが、そういう無責任なことを言うてはいけない。連合国できめるのだということを言うておるのです。放棄したのは、これはわかっております。条文を見れば放棄したとある。この放棄するというのは文字通りに放棄です。この放棄というものには、ここのところには、いくらこの条文を調べてみても、帰属問題に関することは全然ありません。放棄ということは、日本は権利、権原を持たない、放棄したんだということを宣言したにすぎない。そのあとの帰属をどうするというようなことは放棄するという条文のどこからも出てこない。これはどうなるのか。この点は念のためにちょっと聞いておきたい。
  51. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 こちらが放棄するということを条約に書いてあるのを認めて調印をしたということになると、あとの帰属は放棄さした方の側において決定すべきものなりという常識上当然の解釈が生まれてくる、こういうことでございます。
  52. 川上貫一

    ○川上委員 常識上当然の解釈は絶対に生まれません。放棄しただけです。それ以上のことがどうしてこの条文から常識的に生まれますか。これはどうなるのですか。私は前後関係政治論をしているのじゃない。この平和条約の条項を私は聞いておるのですから、前後の政治関係についての政治論を今したくない。これはどうなんですか。
  53. 中川融

    中川政府委員 ただいま大臣の言われました通り日本平和条約によって放棄したのでありますが、この平和条約日本と連合国との間の平和条約であります。約五十カ国に及ぶ戦勝国たる連合国と敗戦国たる日本との平和条約でありまして、この平和条約に基づく権利者はこれらの連合諸国であります。日本は放棄したのでありますが、放棄の結果どうするかということは、このサンフランシスコ平和条約に関する限り、権利者である連合諸国がきめるべきである、かようになるのは当然でございます。
  54. 川上貫一

    ○川上委員 それはもう解釈しておる、当然だといいますが、この条文のどこにありますか。放棄した、そうしてその帰属は連合国できめるのだということが平和条約の条文のどこにありますか。ただそう解釈するというだけなのですか。そうすれば平和条約には何にもない、政府がそう解釈するのだ、こう理解してよろしいですか。
  55. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 今条約局長が申し上げました通りでございまして、これは日本としては放棄したのでございますから、放棄したあとがどこへ帰属するかということは条約に書いてございません。書いてございませんが、放棄さした以上は、日本に対する相手方である戦勝諸国五十何カ国かがきめるであろうという前提のもとに、放棄を命ぜられ、日本もそれに調印した、こういう関係だと存ずる次第であります。
  56. 川上貫一

    ○川上委員 平和条約のその時分に連合国がきめるであろうということを日本にだれが命じましたか。命ぜられたとおっしゃるのですが、簡単に言って下さい。時間ばかり食いますから。
  57. 中川融

    中川政府委員 連合国は日本にそういうことを命じていないのであります。日本に命じていることは、一切の権利、権原を放棄せよということを命じているだけでございます。
  58. 川上貫一

    ○川上委員 きわめてよくわかりました。平和条約には台湾の帰属には関係がない、これでよろしいか。平和条約の条文条項——政治論は要らぬですよ。
  59. 中川融

    中川政府委員 台湾、澎湖島の法的地位は決定しないままになって残っておるということでございます。
  60. 川上貫一

    ○川上委員 そう了解しておるのですか。
  61. 中川融

    中川政府委員 そう了解しております。
  62. 川上貫一

    ○川上委員 決定するとかしないとかということは書いてない。日本は放棄しただけじゃないですか。
  63. 中川融

    中川政府委員 放棄したままにそのあとのことを決定していない、かようなことでございます。
  64. 川上貫一

    ○川上委員 あとのことを決定してないというようなことは書いてもないし、条文にないのです。日本は放棄しただけなのです。この放棄したことには前提があるのです。私は繰り返して言いますが、条約幾ら調べてみましても、そこから台湾の帰属は未決定であるという条項はない。これが一つ。反対に、条約で台湾を放棄したということには、事実上の動かすべからざる前提がある。この前提は何か。中華人民共和国は一九五四年八月二十二日の各党各派の共同宣言で一九四五年十月二十五日に台湾は中国に帰属したと宣言したのであります。これは中国の宣言です。しかしその日、すなわち一九四五年十月二十五日というのは台湾で蒋介石の政権によって受降式が行なわれた日なんです。この受降式によって中国は台湾接収の手続をとりました。その第一号命令をその時分に日本代表する安藤利吉に手渡しております。安藤利吉は受け取っております。同時に台湾接収の事実を世界に放送しました。これについては、その後世界どこの国からも異論はありません。すなわち、このとき明らかに国際法上における黙示の承認が成立しておる。黙示の承認というものは国際法上確立しておる原則であります。従って、この受降式行為は有効であります。国際的に有効であります。平和条約における放棄というのは、この黙示の承認の上に立って、日本側の権利、権原放棄を宣言した。これがサンフランシスコ平和条約の精神でなければならぬ。この点についてどう考えるか。外務大臣のお考えを聞きます。そう助けを求めないで、外務大臣からおっしゃって下さい。
  65. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 条約局長から答弁をいたします。
  66. 中川融

    中川政府委員 今川上委員から御指摘のありました通り日本は台湾地区におきましては国民政府軍に投降したのであります。これは、日本が降伏いたしました際に、連合軍最高司令官からの指令によりまして、こういう地区ではこういう司令官に投降せよという命令が来たのでありまして、それに基づいて、台湾地区におきましては国民政府軍に投降したのであります。国民政府に投降いたしまして、その式は行なわれ、それがいろいろ海外に報道されましたということは事実でございます。またたとえば朝鮮の南半分におきましては、日本アメリカ軍に投降しておるのであります。しかしながら、アメリカ軍に投降いたしましても、決してそれは朝鮮の南半分がアメリカのものになったということを何も日本あるいはほかの国が承認したのではないのでありまして、これはあくまでも降伏の形式であります。そのあとの領土の最終帰属がどうなるかということは、これは平和条約を待たなければきめられないのであります。その平和条約サンフランシスコ平和条約あるいは日華平和条約、いずれにおきましても、台湾。澎湖島の地位はきめていないというのが事実でございまして、この事実はやはりこれは認めざるを得ないと思うのであります。
  67. 川上貫一

    ○川上委員 そういうことを聞いておるのではない。国際法上における黙示の承認が成立しておるのかどうかということを聞いておる。黙示の承認効果を認めるのか認めないのかということを聞いておる。ただそれには——もう条約局長は何とか言おうと思って委員長と言うておるが、ついでに言います。アメリカは終戦以来、台湾を中国の一部と見る点では疑問の余地がなかった。特に一九五〇年の一月五日にトルーマン大統領が声明しておる。どう言うております。台湾は中国領として引き渡した。この内容がある。台湾に関しては、一九四三年十一月二十七日のカイロ共同宣言の中で、米国大統領、英国首相及び中国総統は、台湾のごとき日本が中国から奪取した地域は中国に帰属さるべきである。この宣言に従って台湾は蒋総統に譲渡した。また米国及び他の連合諸国は中国の台湾における権限行使を承認した。そこで台湾は中国の領土であるから、ここの問題は中国国内の問題である。アメリカは中国の問題には干渉しないという有名な内政不干渉の原則を出しておる。これについては、同じ年の二月の五日に国務省が同様のもっと詳しい声明を出しておる。これは台湾における蒋政権の台湾接収が黙示の承認をされたことを裏書きしておるのです。これが一九五〇年一月五日のトルーマン声明なんだ、五年もたっておるのです。この間世界どこの国からも異論がないのです。これをどう考えられますか。おそらくあなた方は六月のトルーマン声明を言うのでしょう。この一月のトルーマン声明では、明らかに黙示の承認から始まって、主催国であるアメリカのトルーマン大統領の声明によって世界各国が承認して、台湾の中国帰属は決定しておるのです。これは政治論じゃなしに法理論で外務大臣にお答えを願いたい。
  68. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 一九五〇年一月のトルーマン声明は、台湾は蒋介石総統に引き渡され、過去四年間米国その他連合国は同島に対する中国の権限の行使を受諾しておるということを述べております。しかしこれは領土権とは関係なく、国民政府が台湾に対して現実の支配を及ぼしておるという事実を認めたにすぎない、こういうふうに解釈いたしております。なおあなたが先回りして一九五〇年六月の声明をおっしゃいましたが、その声明においてもトルーマン氏は、台湾の将来の地位の決定は太平洋における安全の回復、日本との平和条約締結または連合国による検討を待たなければならない、こう言っておるのであります。
  69. 川上貫一

    ○川上委員 外務大臣、その説明だめですよ。それはトルーマンの一月五日の声明のしまいの方の、台湾における権限の行使を承認した、ここだけを見ておる。全部読んでごらんなさい。台湾を渡したとあるのです。台湾の問題は中国の問題だと言うてあるのです。この問題についてアメリカは内政不干渉の原則によって干渉はしない、その上もっとアチソンは、アメリカが干渉するようなことをしたならば台湾はアメリカを恨むであろうと言っております。つまりアメリカは台湾からあるいは中国から排斥せられるであろう、われわれはこのようなことはしないとはっきり言っておるのです。あなたは権限の行使を承認した、ここだけ言っておる。こんなことでごまかしてはいかぬです。これはどうなるのです。台湾を譲渡した、台湾は中国の一部であるから内政干渉しないと言うのです。これは外務大臣の答弁とは全く内容が違う。
  70. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 あなたはアチソン声明をあげられましたが、やはり今あなたのおっしゃったアチソン国務長官の声明では、台湾の中国への正式引き渡しは日本との平和条約または適当な行為を持つべきものであるということを言っておりまして、引き渡しについてはさような限定をつけております。
  71. 川上貫一

    ○川上委員 それを言うておるのじゃないのです。トルーマンは、台湾は蒋総統に譲渡した、台湾の問題は中国内部の問題であるからアメリカは干渉しないとこう言うておるのです。これをつかまえて外務大臣は権限の行使を承認しただけだとおっしゃる。
  72. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 その通り
  73. 川上貫一

    ○川上委員 これはその通りじゃありませんよ。台湾は中国の問題である、内政に干渉しないというのは権限の行使だけですか、台湾の領土を渡しておるということじゃないですか。トルーマンのこれをどう解釈するのですか。
  74. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ですから今申し上げておるように、領土権を引き渡したというのではなくて、国民政府が台湾に対して現実の支配を及ぼしておるという事実を認めたにすぎない、こういうふうに解釈いたしておるのであります。
  75. 川上貫一

    ○川上委員 台湾を譲渡するというのは権限を譲渡するということですか。これは正確に読んで下さい。台湾を渡したというのです。台湾における権限の行使を言うのじゃない、台湾を渡しておるのです。こういうむちゃな解釈をするからこじらかしておる。これは正確に解釈しませんと中国が承知しないのはあたりまえなんです。そんな解釈なんかしておるから敵視政策だというのです。正確にやりましょう。そのかわり、正確にやって日本は不必要なところまですべて譲れということは、われわれは考えておりません。正確な原則的な解釈によってりっぱな態度をとらなければいかぬというのがわれわれの要求なんです。外務大臣もう一ぺんこの点を明らかにして下さい。
  76. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 今お答えした通り法律的に台湾の領土権を、アメリカが国民政府に譲渡されたものと承認しておるのではなくて、現実の支配権はそこにあるということを認めたとわれわれは解しておりますが、条約局長から条約的な解釈を補足してもらいます。
  77. 中川融

    中川政府委員 領土権を台湾に渡してしまうということは、これは条約を待たずしてはできないのでありまして、いかにアメリカ政府の声明でありましても日本承認なくして国民政府に台湾の領土権を引き渡すことはできないのであります。声明にあります台湾を中国に引き渡したということは、物理的に要するに中国に引き渡した、つまりそれは先ほど川上委員の御指摘になりました蒋介石軍に降伏を命じたということによって事実上台湾を蒋介石に引き渡しておるのでありまして、その事実関係を言っておるにすぎない、こう解するのが正当であると考えます。
  78. 川上貫一

    ○川上委員 そうすれば政府は黙示の承認という国際法上の原則を認めますか、認めませんか。
  79. 中川融

    中川政府委員 黙示の承認というのは、国家承認政府承認では黙示の承認というのがございますが、領土をある国に割譲するという場合に黙示の承認というものは観念的にはないと考えます。
  80. 川上貫一

    ○川上委員 どうしてないというのですか。蒋介石政権が台湾を接収したのです、接収したという事実を発表し放送したのです。これで一年も二年も三年も四年も世界各国は何の異論もなかった。その上に立ってアメリカのトルーマン大統領は、台湾は中国に引き渡した、こう言った。この一連の過程の中に黙示の承認が成立しているじゃないですか。これはそう了解しますというようなことじゃないのです。国際法上の法理論で答えてもらいたい。
  81. 中川融

    中川政府委員 領土というものは国際法上きわめて重大な問題であります。一国の領土が他の国に移るという場合に、五年くらいどこの国も文句を言わなかったからということでこれが移り変わる、領土権が割譲されたというような二とにするのは、国際法上やはり安定を害するおそれがあるのでありまして、領土の割譲ということは、これは必ず条約をもってするのが原則であります。これの唯一の例外というのは、結局一国全部がある国に征服されてしまったというような場合に、もうぐうの音も出ないように征服されてしまってそれが併合されたという場合に、いずれの国も文句を言わないという場合には、これは条約なくして一国に併合されることもあり得るでありましょう。しかし最近ではそういう例はあまりないのであります。領土の移転ということはきわめて重要な事項でありますから条約をもってするのは当然でありまして、黙示でこれが行なわれるというようなことは考えられないのであります。
  82. 川上貫一

    ○川上委員 やはりへ理屈ですね。トルーマン声明をほんまに読んでごらんなさい。台湾に渡したと書いてあるんです。これは黙示の承認をはっきりと肯定したのです。これに対して世界各国は異論を言っておらぬのです。異論を言い出したのは六月のアメリカの声明からなんです。ここはさまっておりました。事情変更がありまして変わりましたと言うなら理屈はわかります。中川条約局長はこう言わなければならぬ。朝鮮の戦争によって情勢の変化、事情の変更がありました、これなら理屈が立たたぬことはない。その理屈はちょっと間違っておる。しかし理屈は立つのです。今のような説明では世界の法学者は笑いまっせ。日本政府はどこまでもむちゃくちゃを言いよるとしか理解しません。これは今の答弁を何べんでも繰り返すと思うのです。繰り返さなければかなわなぬところに追い込まれておるのだから、繰り返すと思いますけれども、私はそれは全く間違いで、そんな解釈を政府がしよったら、世界の物笑いだ、アメリカは喜ぶかもしれないけれども、ということだけ言うておく。一つだけ、台湾の帰属は未決定であって連合国で決定するんだという国際法上の文書はどこにあるか、これを出してもらいたい。
  83. 中川融

  84. 川上貫一

    ○川上委員 サンフランシスコ条約には領土のことは何にも書いてないです。放棄するだけです。サンフランシスコ条約には台湾の帰属の問題について何も書いてないんだ。連合国できめるということを政府は言うておるから、これの国際法上の文書を一つお願いしたいと言うのです。どこにどういうものがあったか、だれがどこでどうしてきめたのか、これです。
  85. 中川融

    中川政府委員 サンフランシスコ平和条約によりまして、連合各国に対して、日本は、台湾、澎湖島の一切の権利、権原を放棄しておるのであります。日本は放棄したものについてとやかく言う権利はないのでありまして、あとこれについて権利ありとすれば、それは連合各国であるということになるわけでございます。
  86. 川上貫一

    ○川上委員 そういう応答しかできぬだろうと思いますが、これではだめです。そういうことを言いよるから、与党の方もおられますが、こういう政府答弁をしよりましたら、日中問題なんか絶対に解決しません。はっきりしなさいよ、政府は。こういうむちゃくちゃな解釈をしてこじつけるからだめなんです。それだから、ごらんなさい。このこじつけが、こういうことを言いよるから、四月二日の朝日新聞の夕刊を見てごらんなさい。どう書いてある。国府の領土は何と金門、馬祖だけという珍無類の法解釈、外務当局の涙ぐましい答弁作り。中川条約局長国会答弁のペテランだ。(「ヴェテランだ」と呼ぶ者あり、笑声)こう新聞に書いてある。私は思うのです。日本の外交史上に、内外からこれほど軽べつされ、冷笑された例がありますか。こういうことになるんです。私は、黒田質問は、この点を熱意を込めて質問したと思うのです。ところが、これに対して池田総理大臣答弁は、記録にある通りであるし、きょうの御答弁を聞くと、三百代言以下の答弁です。これは少しも正確な答弁にならぬ。発言力があるとすればと言うてみたり、日本は何も権利がないと言うてみたり、そこで私の最後に質問した国際文書を一つ見せてもらいたいというのに、これはあるのですかないのですか、この答弁をしない。それはどうなんです、解釈しておるだけなんですか。国際文書はないのですか。
  87. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私はきわめてはっきりしておると思うのでありまするが、日本は台湾の帰属についてものを言う立場にないということなんです。この点はきわめてはっきりしていると思います。
  88. 川上貫一

    ○川上委員 ものを言うておるじゃないですか。連合国で決定するのだと言うておるじゃないですか。これはものを言うておらぬのですか。あなたは言うておりますがな。これは取り消しますか。
  89. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 あなたは、ものを言うと言う。言わぬということは問題ですが、国会委員の各位から御質問があれば、われわれはお答えしなければならぬのであります。そのお答えの中において、ものを言っていることは、これは間違いありませんけれども、帰属がどこであるというような断定的なことを言う立場にない、こう申し上げておるのであります。
  90. 川上貫一

    ○川上委員 いよいよおかしくなってきた。一つは、条約の上からは台湾の帰属問題には関係がない、これを一つ確認します。これはきょうの答弁ではっきりしました。第二には、日本は放棄しただけであるのだ。そこでその放棄したについては発言権はないんだと言うておる。ところが、連合国できめるのだ、こういう答弁、これは矛盾しております。だから、この二つのうちのどちらをお取り消しになるか。発言はできないのだというのを取り消すか、連合国できめるというのを取り消すか。もしそれを取り消さぬとすれば、連合国できめるのであるという国際文書を見せてもらいたいと私は言うておるのですから、了解するなんというのではいけないのですから、この点をもう一ぺん。
  91. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この帰属について日本は積極的に発言をする立場にないということであります。正確に申し上げるとそういうことだと思います。従って、その裏面解釈といたしまして、いずれどこかに帰属しなければならぬとすれば、それはサンフランシスコ平和条約相手方である連合国においてこのことは協議決定さるべきものであろう、こういうことだと思います。
  92. 川上貫一

    ○川上委員 カイロ宣言できめておいて、ポツダム宣言でこれを完全に受諾して、台湾で受降式を行なって、世界各国が異議がなくて、続いてトルーマン大統領が中国領という声明を出した。言うとすれば、これを言う方がほんとうじゃないですか、しいて言うとすれば。連合国となぜ言うのですか。なぜこのことを政府は無視するのですか。国際的な厳然たる事実です。日本が中国を侵略しておいて、もしもアメリカがそうではないと言うても、日本としては責任があります。台湾は中国領土たるべきものであるとなぜ言わないのだ。これが、言うとすれば言うべき言葉じゃないですか。これが、道理にかない、国際信義にかない、また今までの経過による台湾処理国際法的な根拠にかなう道ではないですか。ところが、言うとすればきまらぬのだ——なぜ言うとすればこの原則を言わないのですか。これはどういうことですか。外務大臣どう思いますか。これは言葉の上の問題ではありません。
  93. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 台湾の帰属について日本が何か発言をすべきであるという場合がきたときには何か言うべきであろうと思いますが、現在はそういう情勢は私どもは関知しておりませんので、川上委員とここで日本国内の論争としていろいろ申し上げる場合には、日本として台湾の帰属を決定すべしということを特に言われておりませんから、われわれとしては、平和条約の第二条において、この台湾に関するすべての権利、権原その他を放棄しておるから、日本は積極的にこの帰属についてものを言う立場にないということだけ申し上げておるのであります。
  94. 川上貫一

    ○川上委員 討論しませんが、私は外務大臣に忠告します。台湾の帰属は確定していない、こういう問題じゃない。繰り返しますが、カイロ宣言で、台湾の返還は、確定的に、国際的に、道義的にも原則的にもきまっております。  第二に、ポツダム宣言で、降伏文書で、日本は台湾を返還する義務を負うております。この義務をなぜ主張しない。言うとすれば、この義務をなぜ無視するのですか。ポツダム宣言はカイロ宣言の条項を完全受諾したのです。義務があるのです。この義務の中には、台湾は中国に返還するという義務がある。これを忘れている。これじゃ外交はできませんよ。  第三に、連合国は、蒋政権が台湾を接収した事実を黙示の承認をしております。接収をした事実を。そこでトルーマン声明が、各国は台湾が中国へ返還された事実を承認しておるというておる。これがトルーマンの声明である。この事実をなぜ踏まえませんか。おそらくいろいろな事情でもう踏まえることができぬようになっておる。これが日本外交のめちゃくちゃな理由なんだ。池田内閣が外交問題で致命傷を負うだろうというのはこの点なんだ。年若き外務大臣、しっかりしなさい。これは日本の重大な問題です。さらに言いますが、このことは動かすことのできない確定的な事実です。中国はこれを踏まえておるのです。中国はこの点を踏まえて日本に対し、政府に対し要求している。そこでちょっと聞きますが、中国のこの考え方は間違いであると政府はお考えになりますかどうか。中国は私の今言うたことを踏まえて要求しておる。
  95. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 カイロ宣言は、台湾、澎湖島は日本が清国人から奪取したのだから、これは中華民国に返すということを決定しております。宣言は連合国による政策の宣言であります。従ってこの宣言は領土権移譲というような法的な拘束力はないわけです。これは先ほど来条約局長が御答弁したように、条約によればないわけであります。当時の連合国として、連合国の合意によってそういう宣言をしたという事実は、これは明らかなことだと思います。
  96. 川上貫一

    ○川上委員 ちょっと聞きますが、南樺太の帰属は未決定ですか。
  97. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 未決定であります。
  98. 川上貫一

    ○川上委員 これは将来連合国で決定するのですか。
  99. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほどからの台湾の問題が第二条の(b)項にございますが、この第二条の(c)項においてやはり同様の問題がございます。同じ関係だと思います。
  100. 川上貫一

    ○川上委員 いや、同じと言わないで、南樺太の帰属は今後連合国で決定すると日本政府は言い切りますか。それをここで聞いている。
  101. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この条約の条文の二条(b)項にある問題と(c)項にある問題と、それによって解釈が変わるとは存じません。同じであると思います。
  102. 川上貫一

    ○川上委員 具体的に聞きます。南樺太の帰属は未決定であり、今後連合国において決定する、こう政府は言うたと記録にとどめてけっこうですか。
  103. 中川融

    中川政府委員 南樺太の帰属問題につきましては、日本サンフランシスコ平和条約以外に国際文書をかわしていないのであります。従って、これが将来決定する場合のことを考えますと、サンフランシスコ条約における権利国である連合国に対して日本は放棄しておるのでありますから、その意味で連合国が集まって相談をするということは当然だろうと思います。その際に今ここを占拠しておりますロシヤと相談しないかどうか、これは連合国の問題でありまして、日本の直接関与する問題ではないのでありますが、日本がもし日ソ平和条約締結いたしましたとすれば、少なくともサンフランシスコ平和条約と同じ規定が南樺太については置かれるでありましょう。そうすれば、その場合にはソ連も当然日本に対する権利国になるわけでございます。しかしまだ日ソ平和条約ができておりません現段階におきましては、ソ連との間に南樺太についてはっきりした約束はできていないのでありますから、現状のところ南樺太の地位決定について発言権なり、権限なりは、サンフランシスコ平和条約による連合国各国にあるわけでございます。またそれらの国々はソ連との間にはポツダム宣言とかその他の外交文書をかわしておるのでありますから、連合国としてはソ連の意思をはからずして南樺太の地位を決定することはあり得ないと思いますが、これは連合国とソ連——ある意味ではソ連も連合国でありますが、連合国間の問題であります。日本とは直接今のところは関係がないわけであります。
  104. 川上貫一

    ○川上委員 もう長くかかりませんが、これは重大なことを言われたと思います。ポツダム宣言、カイロ宣言を絶対否定です。無条件の降伏文書、ポツダム宣言の受諾、これを政府は全く踏みにじる考えです。そういうことで南樺太の帰属、台湾の帰属は未決定であり、これは連合国できめるのだ。こんな考えを持って日ソ漁業協定なんかうまくいきますか。これをソ連が聞いたらどう思いますか。ソ連は憲法を改正して南樺太もちゃんと自分の領土に入れておるのです。日本は未決定である、連合国できめると言うておる。こんなことを言うて外交ですか。こんな考えを持っておって今後日本の外交がいくと思いますか。私は心配します。私が樺太の問題を出したのは、台湾の問題にそういうことをおっしゃるから、それなら樺太もそうだろうということを言うたにすぎない。南樺太問題で論争しようとは思いません。政府の考え方は根本的に原則的に間違っておる。この間違った考えを持って国連に行って何をするのです。アジア・アフリカ諸国からはひどい冷笑、軽べつ、反撃を受けます。イギリスからさえもばかにされるにきまっております。これでやれますか。二つの中国を作ろうとして、この腹がまえを持っておるからこういうことになるのです。きょうのところは時間がありませんから、私はもう打ち切りますが、この問題については多くの問題が残っておるのであります。ことにきょう政府答弁されたことについては、重大な問題が残ってきたと思うのです。これは継続して時間をいただいて質問をさせてもらいたいと思う。  最後に外務大臣に言いますが、この考えをお持ちになっておったら、日本の外交はとても成功しないのみならず、世界のみなしごになります。権利、権原を主張するのはよろしい。何も日本は平身低頭することは要らぬ。けれども国際的な原則と国際信義と国際法上の一つの道理、条理というものを踏まえなければ、とても今後の日本をりっぱなものにすることはできない。このことを外務大臣、ほんとうにお考えなさい。外務大臣は私のこのような質問に対して、あなたは反対なんだから、反対の意見に対しては心胆の吐露はできぬと言っておる。私は追ってある機会に問題にしますが、国会というものはそんなものではありません。あなたの反対論に対しては心胆の吐露はできぬというような考え方、この考え方こそが国際法上におけるりっぱな原則に負けてしまったり、すでに確定しておる台湾の帰属問題をいろいろな口実を設けて文句を言うたり、そして結論は新しい中国に台湾を握らせないようにしておるにすぎない。私はこれ以上質問しません。しかしこれは重大な問題であり、政府のきょうの答弁でも、重大な問題についてみずから発言されておりますから、この点についてはこの次の適当な機会に時間をいただいて質問を続けさせてもらいたい。時間がありませんのできょうの私の質問はこれで終わります。
  105. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 あなたが条約の解釈をお聞きになれば、われわれ政府条約の解釈を申し上げるのは当然の務めでございます。ただいまの条約の解釈というものは政府が勝手にできるものではなくて、やはり客観的に妥当なる国際的に認められた国際法上の解釈があるわけであります。われわれはサンフランシスコ平和条約の解釈を申し上げておる。あなたはしばしば政治論は別としてということを言っておられるので今のことを申し上げておるのです。お互いに日本国会日本の国益のためを思いつつ討論することが望ましい。
  106. 川上貫一

    ○川上委員 そういうことを言うなら一言言わなければならぬ。私は平和条約の解釈論できょう質問しておる。何もおかしなことを言っておらぬ。あなたの解釈論が違うということを言っておる。条約の解釈論が違うのだということを僕は法理的に言っておる。そういう解釈が出てこぬということを言っておる。間違ってはいけません。あなたがそういうことを言うのなら、私はこれだけのことを言うておかなければならぬ。私は主観論を言うておらぬ。政治論も言うておらぬ。平和条約にのっとって、またこの前後事情を全部入れた平和条約にのっとって、平和条約の放棄の条項というものにのっとって私は言っておる。
  107. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 あなたから御訂正の話があったからけっこうですけれども、私はあくまで条約論を申し上げておる。あなたがこれから日本の外交をどうするのだとかいろいろお話しになりましたから私が申し上げておるので、そうでなければけっこうです。
  108. 川上貫一

    ○川上委員 親切に注意したのです。
  109. 堀内一雄

    堀内委員長 岡田春夫君。
  110. 岡田春夫

    岡田(春)委員 今小坂大臣の答弁を聞いておりますと、法律論をだいぶお話しになったようですから、私も法律論で御質問して小坂大臣から法律論でお答え願いたい。ただいまの質疑応答を聞いておりますと、私は残念ながら小坂大臣の答弁は法律論として筋が通らないと思う。  第一点としてお伺いしたいのは、それではサンフランシスコ平和条約に基づいて第二条で台湾の帰属というものは、これは日本が放棄するということだけがきめられたのであって、連合国はこれによって帰属を決定するという法的な規定は何らない、このように御答弁になったと解釈してよろしいと思うのですが、どうでございますか。
  111. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 まあそういうことでございまして、結局この条約からは連合国がこれを協議決定するというような条文はもちろんないわけでございます。
  112. 岡田春夫

    岡田(春)委員 その点が確認されました上で、その前提に立って私は質問を続けたいと思います。  先ほどもこれは川上委員からも質問がありましたが、日本側としては、放棄したということである限りこの帰属に対して法的に何ら発言をする権利はない。従って台湾の帰属を決定するものは連合国が決定することである。台湾の帰属を決定するという法的な措置それ自体は、連合国間における何らかの取りきめによって決定されると解釈すべきであるが、その点はどうですか。
  113. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 領土の帰属の決定でございますから、これは当然条約によって決定されるべきものというふうに解しております。
  114. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私の伺っておるのは、条約といいましても日本を含めた条約か、あるいは連合国だけの条約であるか、あるいは条約と同じような効力を持つ何らかの取りきめであるか、条約という抽象的な御答弁では困るわけです。日本自身はそれに対して何ら発言する権利がないわけですから、この条約の中に署名する権利はないと思うのですが、この点はいかがですか。
  115. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 条約ということを申しましたが、これは訂正さしていただきます。必ずしも条約という形によらないでも、何らかの正確な合意があればよろしいということだと思います。ただその場合に日本が含まれるかどうかということは、日本は放棄しておりますから、それは連合国間で決定されれば、日本はそれに対して何ら異議を言う立場にもちろんございません。
  116. 岡田春夫

    岡田(春)委員 小坂さんの今の御答弁、非常に明快だと思う。日本としてこれに対して異議を申し出すところの権限を持たない、連合国間において何らかの条約のみならず、いろいろな取りきめなり意思表示があればそれをもって事足りる、このように御答弁になったと思いますが、いかがでありますか。それでよろしいのですか、再度確認いたします。
  117. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 その通りであります。
  118. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そういう確認の上に立っていうならば、連合国間における意思表示があったわけではありませんか。これは中川さんから御答弁願ってもけっこうです。カイロ宣言に基づいて連合国間としては、台湾及び澎湖島のような国々は中華民国に返還する、そしてそれに基づく義務をポツダム宣言に規定しているとするならば、台湾というものはすでに中国の一部であるという返還の措置が取りきめによってきめられた、これがカイロ宣言である、このように解釈すべきであるから、この帰属はすでに明らかであると解釈せざるを得ない。この点はどうですか。
  119. 中川融

    中川政府委員 最終的に領土の移転がきまりますのは、やはり一番関係しておる旧主権国と申しますか、その同意がなければできないのでありまして、日本の同意なくして台湾の最終的帰属はきめられないわけであります。従ってもしサンフランシスコ平和条約の際に、連合各国がカイロ宣言通り台湾、澎湖島は中華民国に帰属せしめるんだぞということをそのときにきめれば、あるいはそのときに追認の格好か何かでこれをはっきり合意しておれば、これは当然岡田委員の言われたようなことが成立すると思いますが、サンフランシスコ平和条約の際には、あのときの議事の様子を見ましても明らかな通り、この法的地位は未決定であるという前提のもとにあの条約ができたのであります。また日本調印したのであります。従ってカイロ宣言はありましても、それはサンフランシスコ条約よりだいぶ前のことでありますから、あとサンフランシスコ条約の際にはっきりその点について合意が再確認されていなければ、すでにきまっておるとか、連合国の意思決定があったということはやはり言えないと思います。
  120. 岡田春夫

    岡田(春)委員 小坂さんに注意を喚起しますが、省内の御意見は不統一なんですね。小坂さんは先ほどは、連合国間においてこれが決定されるならば日本の国は何らそれの意思を差しはさむ余地はない、こう言った。中川さんはどうです。あなたは今、最終的に領土を持っておった日本の国に対して何ら通告がなければきめられないと言ったじゃないですか。これは明らかに食い違っておるのじゃないですか。小坂さんの方がほんとうなのか、局長の方がほんとうなのか。私は局長の言うことなんか信用しませんよ。小坂さんが大臣なんだから小坂さんの言う通りでしょう。まさか小坂さんよりも中川さんの方がえらくて、うしろでこそこそ指図しておるとは思いません。あなたが大臣になったらあなたお答えなさい。大臣になる前は少し慎んだ方がいい。  大臣はっきりお答え下さい。
  121. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほども川上さんの御質問にお答えしておるのでありますが、カイロ宣言というものは当時の連合国の政策上の宣言である。(岡田(春)委員「取りきめじゃないか」と呼ぶ)取りきめじゃない。そこでそれがかりにあなたのおっしゃるように取りきめであるとすれば、これはその後にできました平和条約に決定済みであるものとして盛り込まれておると思うのですが、しかしその後にできたサンフランシスコ条約においてこの点が未決定であります。どこにもそういう条文はございません。従って中川条約局長が申し上げたように、この帰属というものは法的には未決定であると了解せざるを得ないのであります。
  122. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたの答弁は私の質問と違っておりますよ。何らかの処分をする場合には日本の国の方へ連絡があるのだ、中川さんはこう言っている。あなたは、それはないのだ、なくて連合国だけできめられるのだ、このように先ほど御答弁になったが、あなたは前の答弁を取り消されるのですか。
  123. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 取り消しません。のみならず時期の問題を当然御考慮があっていいと思う。時期はカイロ宣言の方が一九四三年十一月でございました。サンフランシスコ条約は一九四五年の九月であります。二年後になされた条約においてそのことが書いてなければこれはだめだと思います。もしあなたのおっしゃるようなことがあるなら、その後において当然に決定さるべきものだと思います。これは日本政府がこうしてないのじゃないんですよ。連合国内の事情によるものでありまして、このことによってあなたが政府を責められてもまことにわれわれは当惑するばかりで、何もこれ以上お答えすることはありません。
  124. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私の言っておるのは、小坂さんの意見が筋が通っておる。中川さんの意見が違うから聞いている。私が小坂さんにそれを聞いているのは、中川さんという人は小坂さんの下の官僚であるから、小坂さんにそれでいいのかどうか聞いているんですよ。この点は重要ですが、もっと重要な点があるから続いて触れますが、それでは中川さん答弁されたいらしいから答弁して下さい。中川さんに伺います。カイロ宣言の中に、台湾、澎湖島とありますが、満州と書いてある。満州は日本が盗取したことになっているが、この点はどうですか。法的にお答え下さい。
  125. 中川融

    中川政府委員 法的というのはどういう意味ですか。満州を日本が盗取したかどうかということですか。
  126. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それをどういうふうに解釈しますか。
  127. 中川融

    中川政府委員 これは日本はカイロ宣言に参加していなかったのでありますが、あとでポツダム宣言受諾という格好でカイロ宣言は受諾したのでありまして、その意味で満州を盗取したということ、その当時の米、英、華三国が言っておりますことを日本は認めて降服した、こういう関係になると思うのでありますが、盗取したということを日本がはっきりその通りだというふうに積極的に言ったということまでは必ずしも言えないかと思いますが、要するにこれをそのまま受諾しておるということであります。
  128. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは伺いますが、小坂さんの答弁並びにあなたの答弁を聞いていると、カイロ宣言の方が先で、平和条約あとに出ている。平和条約が事実上の効力を持っているのだ。しかも平和条約に基づいて台湾の地位などについては日本の方は権原を放棄するということをきめてある、あなたの解釈通りとすれば……。私の解釈と違うのだけれども、あなたの解釈の通りに解釈をしていけば、平和条約の中に満州のことは書いてない。満州の権利放棄について全然書いてない。そうすると満州というものはいまだに日本の国だということになりますか、どうなんです。あなたの解釈の通りで言っているのですよ。
  129. 中川融

    中川政府委員 満州は日本の領土ではなかったのであります。
  130. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それではカイロ宣言の満州を盗取したというのは違うのだという解釈ですね。
  131. 中川融

    中川政府委員 満州は独立国であったわけでありますが、満州が独立する経緯におきまして日本があそこでいろいろ細工をして独立させた、かように連合国が見たのでありまして、日本が中に入りまして満州国を独立させた、そのことを考えまして連合国は盗取という字を使ったのであると考えます。
  132. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたは独立国という解釈をとられるのですか。岸さんはかいらい政権だということを認めたのですよ。中川さんの場合は独立国として認めるわけですね。しかもこの場合にはあの当時の満州事変のときにイギリス代表がかいらい政権という規定をしておりますね。それによってその当時の国際連盟でいわゆる日本の侵略行為の問題が問題になって、この点は連合国としてはかいらい政権というふうに規定をしているのですが、あなたは独立国という解釈を、中川さんはしているのですね。これは前の総理大臣の解釈と違うので、新しい方針が出たのだ、そういう意味で今あなたは御答弁になったのですね。
  133. 中川融

    中川政府委員 満州は日本ではなかったのでありまして、その意味日本からは独立した地域、少なくとも地域であります。
  134. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは先ほどの独立国ということは、お取り消しになるのですね。
  135. 中川融

    中川政府委員 これはその当時の客観的な歴史問題でありまして、日本は日満議定書というものを作りまして満州国の独立承認したのであります。日本の国内的には正規の手続を経て満州国の独立承認したのでありまして、しかしながら、米、英その他の連合諸国はその独立の事実を否認いたしまして、かいらい政権であると言っていたのであります。これらはいずれも歴史的事実であります。それは独立国であるといえば独立国でありましょう。かいらい政権であるといえばかいらい政権でありましょう。それをこの際いろいろここで私の意見を申し述べるということは差し控えたいと思います。
  136. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それではお差し控えになるなら先ほどのことをお取り消し下さい。少なくとも前の総理大臣の岸さんはかいらい政権と言う。独立国という法的な地位を持ったものではないという規定をしたのだから、あなた自身が差し控えたいとおっしゃるならば、私は好意を持って取り消す余地を与えますから、お取り消しになったらいいでしょう。お取り消しになるならお取り消しなさいよ。なぜ取り消さないのですか。地域だとまで言っていて取り消さないというなら取り消さなくてもいい。——いや、中川さんですよ。小坂さんにはあとで聞きます。私は中川さんに聞いている。
  137. 中川融

    中川政府委員 あるいは独立国あるいはかいらい政権と言われるいわゆる満州国、かように訂正いたします。
  138. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いわゆる満州国だからこれは国家として法的な問題ではない、こういうように私は解釈します。  それじゃ伺います。平和条約に基づいて領土の帰属はきまっておらない。そこでその後においてできたのは、日本といわゆる中華民国との平和条約、これに基づいて台湾に在住している日本国民の権利、権原は放棄されておりますね。これは第三条によって権利、権原が放棄され、従って領土に関する帰属の部分だけが帰属不明であるという解釈をとるんだというのが、小坂さんの先ほどからの法律論に基づく御解釈だろうと思います。その点でよろしいのですか。小坂さん。
  139. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 第三条ですか……。
  140. 岡田春夫

    岡田(春)委員 日本国といわゆる中華民国との講和条約の第三条に基づいて、台湾におった日本の国民の権利、権原一切は放棄された……。並びにつけ加えて申し上げますが、あるいは賠償の関係その他の関係一切のものは中華民国との平和条約に基づいて放棄されたと解釈すべきであろうと思うが、その点はどうか。こういうことです。
  141. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 第二条は領土権に基づく権利、権原、請求権、第三条は財産請求権に基づくものでありまして、これはまた別個の取りきめを要する、こういうように解釈いたしております。
  142. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それではこれは中川さんにお伺いしますが、台湾は日本の固有の領土ですか。
  143. 中川融

    中川政府委員 日本の領土であったわけであります。
  144. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私の伺っているのは、歴史的に固有の領土として云々と外務省でよく使う言葉がありますね。南千島とか、そういうような意味で使っておりましょう。そういうものと同じものですか。
  145. 中川融

    中川政府委員 日清戦争の結果日本に帰属した領土であります。
  146. 岡田春夫

    岡田(春)委員 今お話しの通り日清戦争の結果帰属した領土、日清戦争の結果帰属されたその条約は、一八九五年に取りきめられた下関条約ですね。
  147. 中川融

    中川政府委員 一八九五年の下関条約でございます。
  148. 岡田春夫

    岡田(春)委員 一八九五年の下関条約に基づいて台湾というものが日本に帰属した。ところがその下関条約というものは一体どうなっていますか。——具体的に伺いましょう。私が言っているのはこういうことなんですよ。中華民国との条約の第四条に基づいて、この一切の条約というものは全部破棄されているのです。中華民国との条約第四条を読んで見ますと、「千九百四十一年十二月九日前に日本国と中国との間で締結されたすべての条約、協約及び協定は、戦争の結果として無効となったことが承認される。」となっている。下関条約に基づいて日本の国が奪取したこの台湾というものは、この中華民国との平和条約の第四条に基づいて、この条約が一切無効になったのであるから、台湾は本来領土であるところの中国に帰属される。このことが明らかに出ているじゃないですか。この解釈をどうするのですか、小坂さん。これはもう明らかに台湾というものは法的に中国の一部であるということを明確に規定している条約じゃないですか。これこそ領土の処分を明確に規定している条約であります。条約上の規定ですよ。それでも台湾の帰属はきまっておらないとあなたは答弁できますか。これは法律解釈ですよ。はっきりしているじゃないですか。
  149. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 下関条約というものは台湾の帰属を決定する条約であったわけでありますが、この日華条約の第四条によってこれが無効である、こうなったわけです。そこで日本と台湾との関係平和条約に返ってきて、ここでは日本はそういう関係であったがすべてこの問題を放棄した、こうお読みになればいいのじゃないですか。
  150. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それはあなた、さかさまですよ。あなたがそんな非常識なことを言ってはいけないです。中華民国との条約の方が平和条約あとですよ。日時の順序で言うならば、これは昭和二十七年の八月なんです。それならば、あなたの解釈通りに言うならば、サンフランシスコ平和条約によって帰属不明になった台湾の地位というものは、その後日本と台湾との間の直接の二国間の条約に基づいて、この領土の帰属は第四条に基づいて中国それ自体に返還される。なぜならば、前の下関条約というものが第四条によって無効になったのであるから、従って現状の通りに戻るのだ、従って台湾は明らかに中国の一部じゃありませんか。それ以外に帰属はきまっていない解釈なんかは出てこないですよ。あなたの言葉を百歩譲って認めたとしても、サンフランシスコ条約が発効になってから昭和二十七年の八月まで、日本と台湾との平和条約ができるまでは帰属は不明であったかもしれない。八月以降は明らかに帰属は明確になっているじゃありませんか。
  151. 中川融

    中川政府委員 一国の領土をほかの国に割譲するという条約、たとえば平和条約の結果領土の割譲がある。平和条約というものは、戦争状態を平和に回復するためのいわば経過規定を書くのが主たる目的であります。平和条約によりましてその規定が全部履行されれば、それによって条約というものはその目的を果たすのでありまして、果たしたあとは要するにその状態が続く。要するに条約効力云々ということは、現実的にはその果たしたときをもって目的を果たしてそれで終わりになる、こういうのが条約の原則であります。従って、日華平和条約によりまして従前の条約が無効となった。同じようなことはサンフランシスコ平和条約においても書いてあるのでありまして、復活するのを希望する条約だけは連合国が一方的に通告する二とによって復活し得るということが書いてあるわけでありますが、領土その他の帰属を——前に、たとえば三十年前、五十年前あるいはヨーロッパあたりでは国によりましては百年、二百年前のこともありましょう、そういうような際の昔の条約まで全部無効になるというようなことはないのでありまして、現在なお効力を果たしておった条約、敗戦の際に効力を果たしておった条約が原則として無効になるという規定であるのでありまして、サンフランシスコ平和条約の領土に関する規定等を見ればその点は明瞭であると思うのであります。あらゆる領土の割譲等の昔の条約が、平和条約の結果として全部もとへ戻るということは出てこないのであります。
  152. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そんなことを言うのでは、あなたは何にも知らないのじゃないですか。中川さん、台湾政府日本に対して下関条約の破棄宣言を一九四一年十二月八日にしているんですよ。それが第四条で具体的になったんですよ、百年前の問題じゃないんですよ、ここで相手国が確認しているんですよ。その点をごまかしたり——しかもさっきからのあなたの話を聞いていると支離滅裂ですよ。日本の国は領土権について一切放棄したんでしょう、その放棄をしたというのを百歩譲って、そのあとにできた日本と中華民国いわゆる台湾政府との平和条約の第四条に基づいてこれは確認されているんでしょう。あなたの知っているように、サンフランシスコ条約の中には台湾が入ってないでしょう、台湾が入ってないから日本と台湾との平和条約を結んだんですよ。それに基づいて第四条ができているんですよ。だから、従って四一年の十二月八日の下関条約の破棄の問題は、これによって条約効果を破棄したんですよ、明らかじゃありませんか。台湾は明らかに中国の一部であると、これに規定しているじゃありませんか。小坂さんどうですか、これは常識で考えたって明らかじゃないですか、小坂さんはっきりしているでしょう。
  153. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御承知のように、カイロ宣言には、台湾は中国に返還することを目的として書いてある文章があるのであります。そこでカイロ宣言を受けてポツダム宣言をわれわれは受諾した。そこでわが方は、台湾の問題については、中国の領土になるという前提で日華条約を結んでおるわけです。従って第四条もそういう趣旨でできておる、こういうことだと思います。
  154. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いいですか、第四条では下関条約を含めて破棄することになっているんですよ、あるいは戦争宣言に基づく、対日宣戦布告に基づく下関条約を破棄するということをここによって確認された、とするならば、台湾は明らかに中国の一部じゃないか、帰属不明じゃない、明らかです、そうでしょう。もっとはっきり答えて下さい。
  155. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この日華条約というのは、今申し上げたように台湾は中国の領土となるという前提で結んでおるわけですね。そこで第四条に、こういう下関条約云々、これはそれに含まれるわけですが、一九四一年十二月九日以前の条約あるいは協定というものは全部無効になったことが承認される、こうなっておるわけです。しかしこのことと、われわれがサンフランシスコ講和条約において受諾した第二条(b)項による台湾に関する権利、権原、請求権すべてを放棄することとはまた場合が違うわけです。われわれは講和条約を受諾している立場から、この帰属はどこだということを今言う立場にない、法律的にはそう言わざるを得ないということを言っているので、あなたは言え言えと言ったって、講和条約に書いてあるのを言っているのだから、これ以上言ってもどうしようもない。
  156. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたの言っている第四条によって、帰属不明のものが台湾と日本との間にこれはきめられてあるのじゃないですか、だから台湾は明らかに帰属不明でなくなったんじゃないですか。しかもあなたはそういう解釈をするならば、中華民国政府というのはどこの政府ですか、一体台湾について云々したり、台湾の領土の上にある日本の財産なんかを処分できる権原を持っている——蒋介石の政府というのは、そんな権原があるのですか、この第四条を認めない限りは、あなたが言ったように、中国に返還されるというその事実の上に立たなければ、その上に立っている品物を勝手に処分することを政府ができるなんて、そんなことはないですよ。台湾政府がそんなことはできないでしょう。領土の一部にあるところの政府であるからこそ、その上におけるところの日本の財産その他一切処分をやったんじゃないですか。それが第二条、第三条、第四条、第六条以降に書いてあるじゃないか、だから第四条に基づいて台湾は中国の一部になったんでしょう。そうじゃないのだという御解釈ならば、具体的に伺いましょう。これは中川さんから伺ってもけっこうですが、中川さんどうですか、第四条には、台湾の領土の問題については触れないという何らかのアグリーメントなり口上書なりあるのですか。あなたの御解釈の通りにいうと、下関条約だけは触れません、こういう何らかの規定が設けられてあるのですね。そうしない限りは下関条約までも含むと解釈するのが、これは常識を持った人の頭なんです。何らかそれはそういう取りきめがないのかあるのか、これはどうですか。
  157. 中川融

    中川政府委員 下関条約効力というものは、もうすでに全部目的を達成いたしまして、いわば実質的に失効しておると考えるのが妥当でありまして、もしも万一かりに下関条約内容の中で現在にもその当時にもなお生きておる条項があった。たとえばもしも中華民国がある地域を防備しないというような義務を条約で負っておりまして、それが依然として続いておるということであれば、その分が失効したということで意味があるのでありますが、下関条約内容はすでに全部実施済みでありますから、それをさらにここで失効せしめたと、失効しているものを失効せしめたというのは無意味になるのでありまして、下関条約はこれに入っていないと考えるのが妥当であります。
  158. 岡田春夫

    岡田(春)委員 下関条約は全部失効したって台湾の帰属は下関条約の問題でしょう。あなたはさっきそう答弁しましたね。台湾を日本が統治したのは下関条約でしょう。この問題は未解決ですよ。だから四十一年の十二月八日に蒋介石政府が下関条約の破棄宣言をやっているのでしょうが。これを認めた。この点以外は失効したかもしれぬが、この点だけは未解決ですよ。それを第四条で認めたじゃないですか。明らかじゃないですか。これはこんな点をいつまでも牽強付会な答弁をしていたら恥ずかしいですよ。
  159. 中川融

    中川政府委員 それは、戦争中は中華民国が下関条約を失効せしめるという宣言は私的確に知りませんが、したと思います。しかしそれは必ずしも法律的に意味のあることではない。むしろ政治的な意味であろうと思います。それをはっきり戦後において実現するためには、平和条約で一ぺん日本に帰属いたしました台湾というものを今度は中華民国に割譲する、そういう規定を設けなければいけないのでありまして、同じような主張は私の記憶では韓国も日韓併合条約は無効であるというようなことを主張した経緯があるわけでありますが、法律的にいえばこれも意味をなさないのでありまして、すでに実現してしまったことは今さら取り返しはつかぬ問題であります。これをもし将来に向かって変えるためには、その具体的な内容をあらためて条約できめなければいけないわけでありまして、領土の割譲というものは戦争によっていろいろ右へ行ったり左へ行ったりいたしますが、いずれもそういう規定をするわけでありまして、この条約の四条の規定というものは現在動いておる。開戦時まで動いていたときの条約であるというのが当然の解釈である、こう考えるのが当然の解釈であると思います。
  160. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そんな解釈はなっちゃないですよ。もう一度小坂さん御研究を願います。私これで終わりますから、質問は留保しておきます。  経過的にもう一度申し上げます。いいですか、下関条約に基づいて台湾が日本に帰属した、いわゆる台湾の割譲があったわけです、当時清国から……。それは一八九五年です。ところが日本がその後いろいろな戦争を行なって、いわゆる太平洋戦争になるという経過があったのだが、その経過は省略をして、一九四一年というのは太平洋戦争の始まる年です。この年の十二月八日に中国としては過去においていろいろな不平等な条約、あるいは外国の侵略によって押えられた諸条約というものを一切破棄して、中国の本来の領土である、それらの領土の回復をするために、対日宣戦布告を行なって、そのときに下関条約の破棄宣言を行なっているわけです。このような事実があって、その後一九四五年に戦争が終わった。戦争が終わると同時に、先ほど川上君の言ったような接収の問題とか、そういう問題がいろいろありました。この点は私は時間がありませんから省略します。その後において一九五一年サンフランシスコ平和条約が結ばれて、平和条約の第二条において台湾と澎湖島のいわゆる領土に対しては一切の権利と権原を放棄する、こういうことが条約にきめられた。その翌年になって日本と中華民国といわれる台湾政府との間に条約が結ばれて、翌年の八月に下関条約の破棄という事実を、いわゆる破棄宣言を一九四一年十二月に行ったこの破棄宣言の事実を、ここで再度確認した。従って当然台湾の帰属は中国の一部である。この下関条約だけは除くということは何ら書いてない。中川さんがいかなる答弁をしましても、書いてない限りにおいて下関条約も当然にこれは破棄されると解釈せざるを得ない。これは条約解釈です。もしこれが下関条約だけが別なものであるとするならば、これは交渉の過程において何らかの合意を取りつけてなければならない。この合意の取りつけはない。それならば明らかに台湾の帰属は第四条によって明確にきまった、こう言わざるを得ないではないか。それ以外の反対解釈というものはあり得ない。中川さんのように下関条約だけは第四条には入っておりませんなどという解釈は、どこから押してもこれは出てこない。私はきょうは小坂さん、そういう歴史的な経過を申し上げて御研究を願いたい。私もこれ以上の点についてまだ実はあるのです。これに関連する点であるのです。台湾政府との条約関係で、あるのだけれども、きょうは私はこれ以上は進めません。一応一つ御研究を願った上でこの次に御答弁を願いたいと思います。
  161. 堀内一雄

    堀内委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十七分散会