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1961-03-31 第38回国会 衆議院 外務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年三月三十一日(金曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 堀内 一雄君    理事 北澤 直吉君 理事 竹内 俊吉君    理事 野田 武夫君 理事 福田 篤泰君    理事 森下 國雄君 理事 岡田 春夫君    理事 戸叶 里子君 理事 松本 七郎君       愛知 揆一君    椎熊 三郎君       正示啓次郎君    床次 徳二君       松本 俊一君    黒田 寿男君       穗積 七郎君    森島 守人君       内海  清君    川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         外務政務次官  津島 文治君         外務事務官         (経済局長)  牛場 信彦君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         外務事務官         (国際連合局         長)      鶴岡 千仭君  委員外出席者         大 蔵 技 官         (主税局税関部         関税調査官)  柴崎 芳博君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 三月三十一日  委員西尾末廣君辞任につき、その補欠として内  海清君が議長指名委員に選任された。 同日  委員内海清辞任につき、その補欠として西尾  末廣君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商に関する一方日本国他方オランダ王国及  びベルギールクセンブルグ経済同盟との間の  協定の締結について承認を求めるの件(条約第  六号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 堀内一雄

    堀内委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。穗積七郎君。
  3. 穗積七郎

    穗積委員 きょうは緊急に外務大臣お尋ねいたしたいと思うのですが、言うまでもなく、日中の国交回復にあたりましては、一番中心の問題はやはり台湾問題ですね。そのことはあなたも十分御理解になっておられると思うのですが、さきごろ政府代表の使命を帯びて国連代表として行っておられる福島さんが、記者会見の席上ではありましたけれども国連代表資格において、二つ中国を認めざるを得ないであろうという意味発言をいたしました。これはわが国、われわれにとっても重大な発言であると同時に、国際的にも重大な意味を持っていると思うのです。従って先にお尋ねいたしますが、その後外務省は事の真相をお確かめになったと思いますが、当委員会において、まずその照会されました真相を明らかにしていただきたいと思うのです。
  4. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 まずお尋ねの照会したかということでありますが、電報及び電話をもって照会いたしました。その結果われわれが知りましたことは、これは今お尋ねのような正式の会見をしたものでもなく、また声明をしたものでもないということであります。  事情は、何か会議に出ようとしておりますと、ホテルの部屋に一人のAP記者が入ってきて一これはお互いよくあることです。どこかへ会議に出席しようと思うと、ちょっとこの問題どうですかとか聞かれる場合があるわけですが、おそらくそういうような事情に該当するようでありまするが、一つ台湾の今の問題どうですか、そういう話で、そういう問題についてはいろいろ研究している、しかし、これは終局的には本国日本政府が決定すべき問題であろうということを言った。なおそういう二つ中国論というようなことも、それはいろいろ議論はあるけれども、最終的にはもっと大きく世界の平和、極東の平和、そして日本立場から見た安全と利益ということからこの問題は大きく考えるべきであろう、こういうことを言ったということでありました。  繰り返して申し上げますが、公式な発言ではない、そしていわゆる会見ではない、その発言も、正式の会見における正式の発言ではないということであります。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 その真相の形式について私はお尋ねしているだけではなくて発言内容についてお尋ねをしておるのですから、内容につきましても、この際明確にしていただきたいと思います。
  6. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 内容は今申し上げました通りであります。
  7. 穗積七郎

    穗積委員 二つ中国を認めざるを得ないということですが、そういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  8. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 今申し上げたことはそうでなかったと思います。二つ中国問題についてはどうですか、台湾問題はどうですかと聞かれたのに対し、そういうこともいろいろ考えなければならぬ点もあろうが、終局的には、大きく極東の平和、世界の平和、日本利益と安全ということからみて、この問題を検討すべきだ。最終的には、これは日本政府がいろいろ苦労して、本国において、ウッド・ビー・セトルド、というふうに外電の方では書いておりますが、そういうふうに言ったわけであります。
  9. 穗積七郎

    穗積委員 最終的には政府が決定するとい言葉がついているから、従って国連代表福島氏としての発言は、今の二つ中国問題については不当ではないというような、弁護されるようなあるいは弁明されるような御発言でございますが、われわれは、これは重大な発言だと思うのです。今まで、特にアメリカにおきましてはケネディ政権ができましてから、中国にアプローチしよう、中国問題について前向きにもの解決しようとするときに、予想されるのは二つ中国政策なんですね。それはこの前私も大臣に申し上げたように、一にかかって、アメリカがアジアにおける戦略的なエゴイズムの立場に立って二つ中国を要求しておる、台湾軍事基地として放棄することがてきない、それを確保するために、言を左右にいたしまして、二つ中国政権を認めよう。真実は何かというと、中国領土の中にアメリカ軍事基地をあくまで確保しよう、それが真実でございますしそれを誘導するかのごとく、あるいは正当化するかのごとく、この国連代表に赴任された福島氏が発言することは、日本政府としてこれはお許しになったのかどうか。それを訓令を出して発言させたのではないが、その発言というものは非常な政治的意味を持っている今日、事の経過がいかんであろうとも、内容が大事であるのであります。そうすると政府は、この福島氏の発言は、事前訓令はしなかったけれども、事後にこれを承認するということですか。そういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  10. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 そういうふうにきめつけられると、これはもういわゆるファッショの世の中のようになるのでありまして、個人が、個人立場で何か聞かれたときに言うた、その片言隻句言葉じりをとらえて、これを政府態度か、政府は追認するかというふうに畳み込まれても、私はお答えするすべがないと思うのです。繰り返して申しているように、これは政府とは無関係に、福島君が、ちょうど出がけにやってきた人に聞かれて、その気持を言った、いわゆる個人的な考えでありまして、それも何も結論づけてはいないのであります。何も結論めいたことは言っていない。本国政府において最終的に決定すべく慎重に検討している問題だ、二つ中国とかなんとかということじゃなくて、要するに極東の安全と平和、この問題が極東の脅威にならぬようにするにはどうしたらいいかということも含めて考えているのだということを言ったそうでありまして、私どもは、個人が何を言ったからといって、これをすぐ追認するとかなんとかということは別に今必要のないことだ、かように考えておる次第であります。
  11. 穗積七郎

    穗積委員 個人発言だと言うが、その個人日本国連代表という資格を持った個人です。それも家庭の中において、奥さんとの間におけるお茶飲み話の会話の中で出たのではない。相手は国際的な権威を持った通信記者質問に対して答えるわけですから、それが予告をしたインタビューであろうと、あるいは数社であろうと一社であろうと、それは世界世論に向かっての発言でございましょう。私ははなはだしく不当だと思うのです。  問題は二つあると思うのですね。一つは、そういう状況であっても、相手世界世論代表するAP記者から、個人資格だからと言っても、国連代表としての立場において質問を受け、国連代表立場において発言をしておるのです。その形がはなはだしく不用意であり、不当である。  さらに第二は、内容において、これは明らかに二つ中国自分としては認めざるを得ないと思う、その方が正しい方向である。しかし、最終決定政府でするにしても、そこへくるのじゃなくて、この今の情勢の中で福島代表が、二つ中国が正しい解決方向であるかのごときことを言うことは、内容において不適当だと思うのです。  私はその二点について不当性を主張したいのですけれども外務大臣はそれに対して何というのか、何ものも感じておられないというのは、はなはだしく政治的なセンスを疑わざるを得ないですね。国際的にも重要な影響を与えておるじゃありませんか。外務大臣はどうお考えですか。
  12. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほども申したように、これはいわゆる会見ではない。福島君もおそらくそうしたことが新聞紙に報道されることを予期して話したのではないと思います。そういう事情を御説明したのがまず第一点。  それから二つ中国の問題はどうかといえば、そういう可能性を全然否定はされなかったようでありますけれども、しかしこういう可能性が否定されないということと、そうするつもりであるということとは別の問題だと思う。穂積さんも、現在世界のいろいろな中国問題をめぐっての議論の中に、二つ中国論というものがあるということは御否定なさらないでしょう。政府がそれをとるかとらないかは別の問題です。その可能性を否定しなかったからといって、日本政府の責任だとかいうようなことを言われても、私ははなはだ迷惑だと思う。福島君は国連代表でありますけれども個人立場でいる場合もあるわけです。その立場で言ったことがすなわち政府と直接つながるとは私は思いません。
  13. 穗積七郎

    穗積委員 次に外務省立場お尋ねしますが、この発言に対してただ問い合わせただけであるのか。これからだんだん問題が接近して参りますと、ますます出先機関発言というものは機会が多くなる、それが重要な影響を与える結果になると思うのです。そういうことについて、この場合における福島発言を今後どういうふうに処理されるつもりであるか、あるいは今後の福島代表発言を慎重を期すような指令を事前にお出しになったかどうか、それを伺っておきたいと思います。
  14. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 とにかくさっき申し上げたような事情でございますが、なかなかこの問題については国内にもいろいろなリパーカッションがあるから、ものを言う場合には、たとい個人で言う場合でも、一つできるだけ慎重に扱われたいということを言っております。
  15. 穗積七郎

    穗積委員 それでは続いてお尋ねしますが、第一に一番重要なことは、日本政府自身二つ中国問題に対してどういう態度をとっているかということです。それが問題なんです。あなたは前に私の質問に対して、友好原則はこれを支持すると言われた。友好原則の中の重要な一つは、二つ中国陰謀加担をしないことですね。その点について政府のお考えをもう一ぺんここで確認しておきたいと思う。
  16. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは何度も申し上げるようになりますけれども、われわれはカイロ宣言を見まして、カイロ宣言の中には「日本国清国人から盗取した」と書いてありますが、台湾澎湖島についてはこれを中華民国に返還するということを書いてあります。これを受けたポツダム宣言日本は受諾したのであります。これには「カイロ宣言の条項は、履行せらるべく、」と書いてある。そこでわれわれはサンフランシスコ講和条約に臨んだわけでありますが、日本ポツダム宣言趣旨に従いまして、この趣旨を受けて書いてございます平和条約第二条において、台湾並び澎湖島に関する権利権原請求権の一切を放棄している。そこで日本は放棄したままになっているわけです。従って日本は、台湾帰属等については、法律的にはものを言うべき立場にない、こういうことであります。従ってわれわれは、今あなたのお尋ね二つ中国陰謀加担するというような立場に従来もなかったし、今そういうことをするべき法律的な立場にないということを申し上げておるのであります。
  17. 穗積七郎

    穗積委員 問題の本質をお避けになってはいけない。領土の問題と政権の問題とは、これはまた別個の問題で、領土帰属中国にあるということは明瞭です。ただその場合に、中国国内における政権の交代というものはいくらでもあり得ることです。領土帰属については、台湾はむろん中国領土でございます。ところで問題は、その中国領土の中における二つ政権を認めるか認めないかということの問題なんです。それをあなたはこの領土問題とすりかえて、政権問題について何ら所信を明らかにしておられないわけです。私の伺うのは政権の問題、これをまず明らかにしていただきたい。領土のことはまた次にお尋ねいたします。政権の問題についてはどうですか。
  18. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 日本日華条約におきまして、この中国本土をも含めて、中国代表する政権として台湾政権との間に平和条約を結んだのであります。従ってその政府相手としているわけです。しかし現実支配権中国本土に及んでいない実情であるのみならず、中国本土においては中共政権というものができていることは、これはその通りであります。そこで一つの国に二つ政権が、それぞれ自分の方が唯一の政権であると主張している現在において、私どもは今日そういうことをいろいろ議論する、ことにさっき申し上げたように台湾というもののすべての権利権原請求権の一切を放棄している今日の立場における日本が、このことについていろいろの議論をするということは、これは全く国の利益と、極東の平和と安全のために、百害あって一利なきもの考えます。
  19. 穗積七郎

    穗積委員 それでは中国における中華人民共和国中華民国との政権問題は国内問題である、解釈として外務省はそういう考えであるというふうに理解してよろしゅうございますね。
  20. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 一つの国に二つ政権がある。だからどっちかが正統政府であるときめることが国内問題であるという、こういう前提ならばそういうことが言えるかもしれません。しかしながら、その問題の解決のために万一武力が行使されるということになりますならば、これはもう極東の平和と安全に重大なる影響を及ぼす。そのことのためによって生ずるところの混乱は非常なことになる。従ってその背景というものは非常に深く、国際的なものに根ざしておるわけです。従ってしかく簡単にわれわれがさようなことを言うことは無意味であるのみならず、百害あって一利なきものだとまた言わざるを得ない。
  21. 穗積七郎

    穗積委員 あなたは、今国内にも、世界の他の国にも二つ中国政権を認めて中国問題を解決しようという動きがある、こういうふうに言われたわけですけれども、そういう所論に対する池田内閣方針というか態度、これはどういったことでしょうか。
  22. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 その問題については、諸般の国際情勢を十分に見きわめながら、慎重に考慮したいと考えておることは、従来から申し上げておる通りであります。
  23. 穗積七郎

    穗積委員 それに対して、それではアメリカの側から二つ中国を認めて中国問題を解決したい、こういうことであるならば、応ずる場合があるかもしれぬし、応じない場合もあるかもしれないということでしょうか。
  24. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 そうした仮定の問題についてお答えすることは不適当と存じます。
  25. 穗積七郎

    穗積委員 仮定ではありません。現実にもう福島氏がそのことについて発言しておるじゃありませんか。日本独自の立場二つ中国を認めるというのではなくて、アメリカケネディ政権中心とする国際世論の中にそういうものがあるから、それに迎合し押されて、あるいは加担をして、二つ中国政権を認めることが合理的であるかのごとき発言をしている。これは明らかに中国に対しはなはだしく非友好的な、あなたの言う三原則を無視する最大の敵視政策でなくて何でしょう。そういうことが現にもう行なわれているじゃありませんか。これは仮定じゃありませんよ。現実ですよ。明確な御答弁をお願いしたい。
  26. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほども言っていますように、福島君はそういうことを言ってないです。新聞記事に伝わっておりました二つ中国は、今ここに新聞記事を持っておりませんが、外電の書いているのと、日本新聞のと言葉の違いでしょうけれども、ニュアンスが違いますし、本人にただしましたところが、さっき申し上げたようなことでありまして、現実の問題とおっしゃるけれども現実の問題ではないのであります。以上をもってお答えといたします。
  27. 穗積七郎

    穗積委員 中国問題がもう現実の問題になっているということです。中国問題が現実の問題になっているから、池田内閣はこれを取り上げて検討しているのでしょう。だからこそ総理が単なるインテリゲンチャの一人としてケネディと話すのではなくて、総理が行って中国問題の具体的解決方策について話し合うと言っている。現実問題ではなくて何でしょう。だからそれに対する政府態度——国民代表する政府態度というものはわれわれにとって重大なる現実問題になっているから、従ってその焦点である二つ中国問題については、一体政府はどういう考えを持っているのか、どういう方針でこれに臨もうとしているのか。事前の交渉なり事前のサウンドというものはすでに始まっているわけでしょう。将来の仮定に対して、抽象的なる仮定に対して私はお尋ねしているのではありません。もう外交問題の現実中心の課題になっている。それに対しては私はあなたのお考えを伺っておるのです。それに対して、あなたは友好政治原則は認めると言っておる。そう言っておきながら、二つ中国政権問題については、国際関係とも関連をするから従ってこれを詳細に検討した後にいずれかにきめると、こう言っている。だから二つ中国政権を認める場合もあり得るわけでしょう、あなたの今の発言は。そういう態度だから、かつての関東軍の出先機関が勝手な発言をして既成事実を作るかのごとき、既成事実を作る一つじゃありませんか。松平発言も今度の福島発言も、二つ中国を認め、あるいは安保条約によって外地に出兵をするという既成事実を作るための誘導発言であり、誘導的な陰謀じゃありませんか。だから聞いているのです。だから外務省態度はどうですかと言ったら、領土問題については中国に、ポツダム宣言カイロ協定平和条約、続いて日華条約によって継承されているから、日本ものではない、中国ものだ。こう言っておきながら、一方口の上では友好原則は認める。すなわち二つ中国陰謀には加担をしない、したこともない、これからもしないと言われながら、現実に起きてくる、今年度の外交問題になって池田さんが行って話し合いをしようとしているその中国問題に対して、一つ中国じゃありませんよ、二つ中国を醸成するかのごとき発言をしておられるのでしょう。だから聞いているのですよ。はなはだしく趣旨が矛盾していると思うのです。二つ中国は認めないということは、友好原則政治原則の中に明記されております。それをあなたは認めると言って、領土問題も日本はこれに対して発言をしないと言って、いよいよ二つ政権問題が国際外交の上に出てきたら、詳細に検討して態度をきめるということは、一体どういうことでしょう。ということは、二つ中国陰謀に対して反対をしないということでしょう。重大だと思うのです。あなたの今の発言福島君の発言というものは全く表裏一体になっておるわけです。そこを私は伺ったのですから、誤解のないように。中国問題を前進せしめるつもりなら、池田さんとケネディの間で二つ中国政権論による解決の話がついても、中国とは絶対解決しませんよ。中国話し合いがつかずして、中国問題が解決できますか。その所信を伺っておきたいわけです。
  28. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 あなたとこの外務委員会で話をしたときの話では、バンドン精神、いわゆる相互不可侵、互恵平等、内政不干渉領土主権の尊重、こういうものからいわゆる政治原則ができている。それは長崎の国旗事件のあとの問題でございますが、それに関連して出てきている。そこで私は陰謀加担したとか、あるいは友好を妨げたとか、あるいは敵視したとか、そういうことがないという意味においてなら、それはまた認めることになるのみならず、友好的な気持を持って近い国に接しようということは、われわれの考えでもありますということを申し上げたと思います。しかのみならずわれわれがそういう友好的な気持を持ってつき合うとすれば、やはり相互相手方の立場というものを尊重しなければならぬ。しかも内政に干渉し合ったらそういうことはできないんだ。こういうわれわれの立場も必要であるということを申し上げたつもりでおります。先ほどから申し上げているように、福島君の発言というものは、政府との関係はなく、個人気持を話した、しかもその場所もホテルで、たまたま一人の記者が来て、いわゆる会見という形でなく問われたので、それに対して何か言うたということ、しかも新聞に報道されることを意識して言うたことでもないようでございまするし、政府関係がないということを何回も申し上げている通りであります。  政府立場はどうかということについては、先ほどから申し上げているように、この問題は非常に重要な問題でありますから、慎重に検討中であって、今とかくのことは百害あって一利ないことであるということを繰り返し申し上げておるのであります。
  29. 穗積七郎

    穗積委員 あなたは二つの点について非常な誤りを犯しておられるわけです。あなたが政治原則を認めると言ったときに、私はバンドン原則イコール政治原則とは言いませんよ。同じ精神に立って平和共存というのは内政不干渉だ、そんなことはまっ先に書いてある。一々そんなことは言う必要はない問題でありますが、ちゃんとバンドン原則でも認め、中印五原則の中でもはっきりしているわけですよ。ソビエトも中国内政不干渉の点については平和共存の不動の前提として認めているわけです。そうでなく、私が伺ったときは、敵視政策をとらないか、二つ中国陰謀加担をしないか、さらに国交回復を妨害しないか、これが政治原則で、これを認めるかと言ったら、認めると言ったじゃありませんか。バンドン精神を認めるか、バンドン決議を認めますということは別なんです。その中の第二の二つ中国陰謀加担をしないということは明瞭である、二つ中国の問題についてはわれわれは発言しない、領土についても同様である、こう言っておきながら、あなたは二つ中国政権中国解決しようとするのか、一つ中国中華人民共和国との間の国交回復解決するのか、それについては態度がきまらぬというのはおかしいじゃありませんか。直ちに、中華人民共和国との間に国交を回復する前に、日華条約を廃棄するということの有無を言っておるのではない、方向を言っておるわけです。その点をはっきりしていただかないと、中国問題については、全然国民の要望する前進はあり得ない。二つ中国を認める方向であなたは解決しようとしておるのか、それは今日行なわれているのが正しいと認めておられるのか、この点をはっきりしておいていただきたいのです。
  30. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私が三原則を認めたとかしきりにおっしゃいますけれども、あのときのことを考えていただきたい。私の答弁は今でもはっきり覚えておる。あなたはバンドン原則を認めるでしょうね、そして、三原則はそれから出てきておりますよとおっしゃったから、私は、はっきり、認めるのみならず、われわれは三原則にいうようないろいろなことに反した覚えはありませんと言ったんです。これをそういうふうにすりかえられて、あなたがあたかも重大な言質のごとく言われることは、私ははなはだ迷惑をいたします。ここに速記録がございますから一応読んでみますと、「これは特にむずかしい政治的条件をつけるものではなくて、バンドン原則によります当然の前提であるわけですね。」こういうあなたの御質問に対して、私の答弁ははなはだ短いのでありますが、「認めるのみならず、われわれはそれに反したことをしていないという考え方に立っております。」こう言っております。これは速記録その通りです。  なお、福島君の問題については、先ほどから申し上げておるように、政府とは関係のない個人的な意見の一つ気持を表明したものでありましょうが、それも表明するという公式な立場に立って言ったものではないということであります。
  31. 穗積七郎

    穗積委員 小坂さん、あなたはそういう卑怯なことを言われてはいけませんよ。きょうはあなたの都合で時間がないというし、あとに質問者もあるわけです。だから、私は、三原則を認めるかということについては、「その内容大臣御承知の通り日本側が中国を敵視しない、第二は二つ中国を作る陰謀加担をしない、第三は国交の回復に妨害を与えない、以上三つでございます。」これが三原則だとちゃんと言っている。あなたは何を言っているのですか。そんなことで一体中国問題が解決できる、池田内閣中国問題について前向きだなどと言えるでしょうか。卑怯ではございませんか。大臣、きょうはそのことの問答がどういう理解であったかということを私は言おうとしているのではないのです。そうではなくて、そのときも議論したように、このときの他の部分でも話が出たように、二つ中国を認めるか認めないかということなんです。それを聞いておるのです。それが大事なんですよ。それに対する態度を明らかにしていただきたいのです。
  32. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は、その三原則内容が何かということはよく存じております。  それから今の認めるか認めないかということでございますが、そういう問題も含めて政府は今慎重に検討中でございます。中国問題解決とおっしゃいますけれども、これはやはり日本立場においてもの考えなければならぬと思います。先方の立場ももちろん大事でございます。しかし、わが国の立場において、この問題をいかに把握するかということが重要でございまして、その問題について十分前向きかつ弾力的に検討中であるということはしばしば申し上げております。今日の段階におきましてそういうことをいろいろ申し上げることは、国のために百害あって一利もないことであるということを私はしんから考えております。
  33. 穗積七郎

    穗積委員 時間がなくなりましたから他の機会に譲りますが、最後に一点だけ指摘してお尋ねしたいのは、われわれは、中国のために中国問題を解決するとは一言も言っていない。もとより日中両国の利益のために、アジア全体の平和のためにわれわれは中国問題を解決しようと言っておるのです。そこで問題は、あなたの立場に立ってこの問題を解決するのに、一体同じ領土の中に二つ政権を認める政策を支持するのか。今度の戦争後、日本二つ政権によって支配されている。朝鮮もそうです。中国もそうです。ベトナムもそうです。ドイツもそうです。これらは大国の軍事主義による不当な政策ですよ。そこに原因がある。われわれが同一民族、同一国家、単一政権という主張を正しく主張するためには−このことなくして沖繩問題も解決しないでしょう、朝鮮問題も解決しないでしょう。すべてそうじゃありませんか。ベトナム、ドイツしかりです。そのときに二つ政権を、しかも、それは何かといえば、先ほど言ったように大国の軍事主義が唯一の原因です。国際的な平和とか世界の人民の利益関係するかのごとく、二つ政権中心にして解決することが、アジアの平和や日本国民生活や中国国民生活やアジア全体の人民の生活のために利益になるかのごときお言葉でございますが、それは全然違うのですよ。アメリカの軍事的要求によってのみ二つ政権陰謀が行なわれておる。その不当をわれわれがきぜんとしてはっきりしなければ……(「アメリカじゃない、ソビエトだよ」と呼ぶ者あり)ソビエトならばソビエトにそのことを明らかにしましよう。大国のその軍事主義というものをはっきりしなければいけない。それによって二つの朝鮮ができ、二つ日本ができ、二つ中国ができ、二つのベトナムができ、二つのドイツができておる。それに対する方針というものをはっきりしなければ平和の願いあるいは平和共存もあり得ないと思うのです。だからそんなあいまいな態度ではおかしいですよ。
  34. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 あなたの御質問を伺っておりますと、何か二つ中国ができておるのは日本の責任であるようなことにとれるのでありますが、そうではありません。われわれは戦争に破れた結果といたしまして、無条件降服をして、サンフランシスコの講和条約に調印をして、そうして台湾並び澎湖島権利権原請求権を放棄しておる、こういう事実があるだけであります。これをあたかも日本の責任であるというようなことを言われることははなはだ不当だと思います。
  35. 穗積七郎

    穗積委員 私が言っておるのは、アメリカの軍国主義の陰謀ですよ。それを言っておるのだ。言を左右にして、あなた卑怯じゃありませんか。国民の一番関心事である中国問題に対して、前向きと言われながら、何もおっしゃらないのははなはだ遺憾ですよ。台湾問題はアメリカの軍国主義の陰謀ですよ。
  36. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 アメリカアメリカと非常に非難なさいますが、私は、他のいかなる国も非難することはよくないと思う。そうしてできるだけ世界平和に持っていこうというのが日本政府方針であり、これはまた国会の意思でもあろうとそんたくいたします。そういう際に、一方が悪いときめつけて、それが悪いのはまた日本の責任でもあるかのようなことをおっしゃるのは、われわれとしては、日本の国全体にとりましてはなはだ残念なことだと思います。この点ははっきりお考え直しを願いたいと思っております。
  37. 穗積七郎

    穗積委員 きょうは時間が限られておりますし、あと質問者がありますから、私はこれでやめますけれども、今の大臣の御答弁は、はなはだしく無責任であり、無誠意であり、無方針であり、われわれとしては納得するわけにはいきませんから、この問題については、次の機会に徹底的にお尋ねすることを留保いたしまして、きょうの質問は打ち切って、戸叶委員にかわっていただきます。
  38. 堀内一雄

    堀内委員長 戸叶里子君。
  39. 戸叶里子

    戸叶委員 時間がないようでございますし、すでに穗積委員から御質問がございましたので、私はほんの二、三点福島発言をめぐってだけ伺ってみたいと思います。  まず第一にお伺いしたいことは、福島さんは、日本代表として国連にいらしたわけでございますけれども、そういうふうな代表でいらっしゃる以上は、外務大臣なり何なりと日本の国連での発言すべき内容というようなものは、基本的な線だけは打ち合わせていらしたのではないかと思いますが、この点はいかがでございましょう。
  40. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 基本的な問題は、私どもの訓令に従って発言してもらうということをはっきりきめております。
  41. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、中国の問題も、ことしの国連の総会におきましては、当然大きな問題として取り上げられることでございまして、基本的な線だけはお話し合いになったと思いますが、全然お話し合いにならないで、そういう問題が出てきたら訓令を待ちなさいということだけしかお話しにならなかったかどうか、この点も伺いたいと思います。
  42. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 中国問題といいますか、中共の代表権の問題というのは、御承知の通りこれは議決によって一年間その扱いがきまっておるわけで、従って九月までは問題にならないのであります。従って今度の国連総会には、その議題はないものでございますから、その点については福島君も十分承知しておることであります。
  43. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、九月まで議題がないから、これは訓令に従って、そういうふうな中国代表権の問題が出てきたときには行動をしてもらう、こういうふうにお考えになっていられるわけでございますか。
  44. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 すべて訓令によって代表は行動すべきものであるということにいたしております。
  45. 戸叶里子

    戸叶委員 そういたしますと、外務大臣先ほどから福島さんの私見である、私見であるということをおっしゃっていらっしゃいますけれども、ともかくこれだけ国際的に大きな問題になっております中国の問題を、たとい私見にしろ、こういうふうな二つ中国が最終的の解決策としては必要であるというようなことを言われたということは、何かそこにあるのではないかというふうに考えるのが私は当然ではないかと思いますけれども、それに対して外務大臣は、いやそういうふうなことを考えていたから言ったにすぎないだろうというふうに、簡単に解決できるというふうにお考えになっているところが間違いではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  46. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 どうも新聞の伝えてあるようなことではないようでございます。先ほど申し上げたように、電報ないし電話で問い合わせたところによりますと、この問題は東京において日本本国政府が決定すべき問題で慎重に考えておるということを言うたようであります。
  47. 戸叶里子

    戸叶委員 ジャパン・タイムスを見ましたら、これも記事が間違いだとおっしゃればそれまででございますけれども日本の新しい国連での代表者の福島さんは、彼がこういうことを信じるということを言った。それは、中共と中華民国のジレンマの最終的な解決というものは、二つ中国を認めるべきことであるということを言ったというふうに書いてあるわけでございますけれども、そう言われたということはどういうふうにお考えになりますか。
  48. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 さっき申し上げた通りでありますが、もう一度繰り返しますと、そういうことは可能性一つとして考えられることだけれども、最終的には日本政府において決定することだ、こう言うたことでありまして、日本政府の権限を一つも侵しておるわけではないのであると思います。
  49. 戸叶里子

    戸叶委員 今外務大臣の御答弁の、日本政府が最終的にきめることである、こういうことは確かに言っていらっしゃいます。しかしその前に福島さんが強調して言ったこととして、長い目で見た場合にはこういうふうなことを考えられるんだということを強調した。そしてさらに検討を要する問題だ、そして最後に、東京の本国政府のきめることだ、こういうふうに三段階で話をしていられるわけでございまして、このことは外務大臣もきのうの参議院の予算委員会においてそれを説明しておられるわけでございます。そして最後に外務大臣が、この問題について慎重に検討しており、割り切っていくことはできないというような答弁を、きのうの予算委員会でなさったようでございますけれども、この問題について慎重に検討しておりということは、二つ中国の問題について検討しているという意味でございますか、どういうことでございますか。
  50. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 そういうことをそのまま言うたことはないのであります。要するに極東の平和と安全、日本利益ということのためには、この中国問題というのはどう解決したらいいかということについて、慎重に各般の角度から検討しておるのだ、こういうことでございます。今すぐにこれかいい、あれがいいというような割り切り方をするよりも、もっと今の段階では慎重に考慮すべきことであろう、こう言ったのであります。
  51. 戸叶里子

    戸叶委員 きのう外務大臣の御答弁によれば、福島君は長い目で見た場合のことだ、さらに検討を要する問題だ、東京の本国政府のきめることだというような点を取り上げながら発言したというふうに、新聞には書いてあったことでございますが、さらにそれにつけ加えて、この問題について慎重に検討してというこの問題ということは、どうしても前の三つの問題を受けるより仕方がないように思いますが、そうなってくると、最終的に二つ中国を認めること以外に解決はないというふうに言われた、その問題を検討しなければならないというふうにお考えになっていられるのではないかと思いますが、この際、そういうふうに考えている人も多いわけでございますから、はっきりと御答弁を願いたいと思います。
  52. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 わが国の新聞は非常に正確でございまするが、何分にも紙面が限られておりますので、そこにニュアンスが全部出るということもなかなかむずかしい点もございます。そこでこの問題というのは、いわゆる中国問題全般について申しておるのでございます。
  53. 戸叶里子

    戸叶委員 中国問題全般についてですね。それでは伺いますが、外務大臣も御列席でこの間池田総理大臣がこの委員会にいらっしゃいましたときに、黒田委員質問に対して、台湾中国に属する、中国ものであるということをおっしゃったわけですが、その答弁と今度の福島発言とは矛盾するものであるとお考えになるかならないか、その点だけを伺いたいと思います。
  54. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 矛盾するものでないと存じます。それはあの前後で十分御了解願っていると思いますが、いわゆるカイロ宣言で中華民間に返すということを宣言しておるわけで、ポツダム宣言はそれを受けておる。そこで日本平和条約台湾澎湖島を放棄したけれども、放棄したのであるから、従ってこの帰属は連合国が決定すべきものである。しかしながらこのカイロ宣言を受けている以上は、台湾というものはほかの、たとえばイギリスとかフランスとかに行くということは考えられないわけでございます。従って日本日華条約を結びます場合に、この台湾というもの中華民国中国ものであるという前提日華条約というものを結んでおる。従って池田総理答弁はそういうことであるのであります。私はあの答弁を若干補足させていただきまして、すぐあとでそういうふうに申し上げておるのでございます。総理答弁はそういう趣旨でなされたものでございます。
  55. 戸叶里子

    戸叶委員 今外務大臣は、中国中華民国ものである、こういうふうにおっしゃいましたが、池田さんはこの前はっきり中国ものである、こういうふうにおっしゃったわけで、私は政府立場考えて申しますならば、その間に食い違いがあるように思いますけれども中国というふうに池田さんが使われた言葉というものは、今外務大臣考えておられるのとはニュアンスが違うと思いますけれども、いかがでございますか。
  56. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 あのときはチャイナという言葉を使われ、中国という言葉も使われた、こういうように考えます。
  57. 戸叶里子

    戸叶委員 この間チャイナという言葉を使われまして、そして予算委員会におきましてもこれまでチャイナ、チャイナという言葉を使っておられたわけです。そこで黒田委員が、私は英語よりも日本語の方がいいから日本語で言っていただきたいということで、中国という言葉を使われたように私は考えております。はっきりと池田さんは中国ものであるとおっしゃったのですが、小坂さんの御答弁は、中国ものであるし、中華民国ものであるというふうに二つに答えていらっしゃいますけれども、どういうふうなお気持でそういうふうなお答えをなさるのですか、お差しつかえなかったならばお聞かせいただきたいと思います。
  58. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 カイロ宣言にはっきりそういうふうになっておりますから、私は純法律的にお答えしたわけであります。
  59. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、私はさっきから委員長に時間々々と言われていますからやめますけれども、このカイロ宣言で言う、これまで予算委員会池田さんが中国、チャイナという言葉を使っておられたのは、カイロ宣言に言うところの中国と言いますか、そのリパブリック・オブ・チャイナというその言葉を使っておられるのかどうか、この点を確かめておきたいと思います。
  60. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 まあそこまでいろいろ言わない方がいいんじゃないでしょうか。その点は私はここで議論をして根本的に解決する問題じゃない。(「むちゃな答弁だ」と呼ぶ者あり)むちゃではありません。われわれは政治家なんですから、政治家の議論として、学校の討論会でやるのとは違う解釈というものをお互いに持っていくということが、案外解決できるということにもなろうと思います。その程度で御了承願いたいと思います。
  61. 戸叶里子

    戸叶委員 私はきょうはこの程度にいたしておきます。      ————◇—————
  62. 堀内一雄

    堀内委員長 次に、通商に関する一方日本国他方オランダ王国及びベルギールクセンブルグ経済同盟との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。  前会に引き続き質疑を行ないます。戸叶里子君。
  63. 戸叶里子

    戸叶委員 この間の質問に続きまして、私は二、三点質問したいと思いますが、二国家間の通商条約と、それからガット協定の効力が競合する場合、どっちが優先するかということを伺いたいと思います。二国家問の通商協定を特別法として、ガット協定を一般法として考えるならば、特別法である二国家間の通商協定の方が優先することになると思いますけれでも、この点はいかがでございますか。
  64. 牛場信彦

    牛場政府委員 これはその当事国がガット関係にあるかないかでもって事情はちょっと違うと思います。ガット関係にある場合におきましては、二国間の協定を作りましてもガットの規定に違反するようなことは協定の中に書けない次第でございます。その場合には、貿易通商に関する問題は結局ガットと同じ規定を書き出す、あるいはガットによるということにするか、どちらかと思います。  それから当事国がガット関係がありませんで、その当事国の間でもって特別の二国間条約を作りました場合には、これはもちろん二国間条約の方が優先いたします。従いまして、現在ベネルックスは日本に対してガットの三十五条を援用いたしておりまして、ガット上におきましては最恵国待遇を与えることはないわけであります。今回の協定におきまして、一定の制限はございますけれども最恵国待遇を与えるということになりましたので、この協定の続いております間はその義務が優先するということになります。
  65. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、Aという国がBという国に対してガットの協定三十五条を援用しているというふうに考えてみます。その場合に、Aという国とBという国が通商協定を結んで、その中で関税その他の事項で最恵国待遇の相互付与を規定したといたします。そうした場合に、Bという国は、Aという国がほかの国に与えているガット関税率の適用を受けることができるかどうか、この点を伺いたいと思います。事実上の問題または政策論というような立場でなくして、法律上の権利義務関係をここで明らかにしておいていただきたいと思います。
  66. 牛場信彦

    牛場政府委員 その場合は、B国はもちろんA国のガット加盟国に与えております関税率に均霑するわけでございます。ただその場合、A国がB国に対してガットの加盟国に与えております以上のものを与えるということは、これまた不穏当でございますので、そこでこの条約におきましても第三条の第一項という項目を設けまして、せいぜいもらってもガットの利益だけだということを書いているわけでございます。
  67. 戸叶里子

    戸叶委員 イギリスやフランスとの通商航海条約というものは締結されておりませんけれども、これは締結される見込みがあるのか、伺いたいと思います。
  68. 牛場信彦

    牛場政府委員 イギリスとの間におきましては、両三年来通商航海条約の交渉を行なっておりまして、できますれば一つことしじゅうくらいに締結に持って参りたいと思って、ただいま努力をいたしておるところでございます。フランスとはまだそこまで機運が熟しておりませんが、さしあたり毎年更新されます貿易協定によりまして、できるだけ貿易の量をふやしていくというやり方をいたしております。ただしイギリスとの間におきましては、関税に関しましては毎年の貿易協定によりましてお互いに最恵国の税率を供与し合っております。フランスの場合にはまだそこまでいっておりません。これはわれわれの仕事の中で一番大事なものといたしまして、大いに努力いたしたいと思っております。
  69. 戸叶里子

    戸叶委員 結ばれない理由はどういうところにあるのでしょうか。
  70. 牛場信彦

    牛場政府委員 これはもう、一番大きな理由は、やはり日本からの輸出品に対する先方の業界の恐怖心ということであろうと思います。これは戦争前からの非常な悪い記憶が残っておりますのと、それから現実にある種のものにつきましては価格の点で日本品に競争できないということがあるものでございますから、なかなかその問題がむずかしいわけであります。それからもう一つは、日本側の貿易の管理制度が現在までのところは非常に厳重でございまして、いわゆる自由化の進展が少ないということ、もし最恵国待遇を交換した場合には、日本だけが先方の自由化によって利益を得て、先方は日本に対してあまり物が売れないということになるのだということも第二の理由としてあげられると存じます。
  71. 戸叶里子

    戸叶委員 今の御答弁を伺っておりましても、日本の工業の輸出に対するおそれを持っておるということでございまして、これはそういうふうなおそれが抜けない限り、なかなか締結できないのではないかというふうにも考えられますけれども、見通しとしてはどういうふうな見通しを持っていられるか、伺っておきたいと思います。
  72. 牛場信彦

    牛場政府委員 日英の条約について申し上げますれば、同時にただいまガットにおきまして、御承知の通り三十五条問題、それから例の低価格工業製品の輸入による市場撹乱問題に対する対策の研究、こういうことが行なわれておりまして、ガットの審議が早く進んで何らかの多角的な合意ができますれば、日英の問題もほとんど問題がなく解決するだろうと存じます。そういうようなガットの審議が結果を見ます前に日英間でもって合意をするということになりますと、やはりベネルックスとの条約にもございますような一種の政府ガードというものを先方は要求するのではないか。これは日本といたしましては現在のところはある程度いたし方ないと考えておりますけれども、一方でガットの審議における日本立場を、そういうふうな二国間条約を結んだために悪くするということも困る次第でございますので、大体今回のベネルックスとの条約の程度ならばこれは話がつくのではないか、それよりもっと以上のことをイギリス側が要求することになりますと、これは話が非常にむずかしくなるのではないかというふうに考えております。
  73. 戸叶里子

    戸叶委員 私は質問をこれで終わりますけれども、この次までに資料を要求したいと思うのです。それは開発援助グループについての資料でございますが、DAGの規定と沿革を書いていただきたい。それからDAGの構成国というものを聞きたいと思います。それからコロンボ・プランのような実行機関があるのか、それともどういうふうな形になっているか、それらについての資料を出していただきたい、これを要求いたします。
  74. 牛場信彦

    牛場政府委員 かしこまりました。
  75. 堀内一雄

    堀内委員長 他に御質疑はありませんか。——御質疑はないようでありますから、これにて本件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  76. 堀内一雄

    堀内委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の通告もないようでありますから直ちに採決いたします。  通商に関する一方日本国他方オランダ王国及びベルギールクセンブルグ経済同盟との間の協定の締結について承認を求めるの件、本件を承認すべきものと決するに御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 堀内一雄

    堀内委員長 御異議なしと認めます。よって本件は承認すべきものと決しました。  なお本件に関する報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 堀内一雄

    堀内委員長 御異議がないようでありますから、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十四分散会      ————◇—————