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黒田委員 積み上げ方式とおっしゃいましたが、その問題について私は申し上げようと思っておりました。それは
あとから申し上げます。とにかく現在では、いろいろな政治上の関係から、
国民の望んでおりまする
政府間の協定というものは
成立しておりません。これは非常に残念なことでございます。
岸内閣の
時代には、御
承知のように
中国敵視政策をとりましたために、約二カ年半貿易が中断されておった。ところが現在では、積み上げ方式ではなく、いわゆる貿易三原則中の民間契約という方法で
中国の公司と
日本の
友好商社との間で経済上の取引が行なわれるようになっておるのであります。
中国との貿易は、今申しました
友好商社という言葉で表わされておりますように、あくまで
両国人民の
友好という見地から行なわれるという建前がとられておるのであります。日中貿易の本質は、政経不可分の原則のもとで行なわれておる貿易であるというところにあると私は
考えます。こういう原則に基づく
友好的
態度を明瞭に示すものであります限りは、商社の大きい小さいということは向こうは問題にしないで、積極的に個別的な民間契約を締結するという道が開かれております。しかしこれはただいま
総理のおっしゃいました積み重ね方式ではない、政治三原則を離れてただずるずるべったりと無原則的な個別的な民間契約を結んでその積み重ねが正常な貿易に発展する、それによって貿易問題が事実上解決できるというような
考え方は、もしこういうことが
考えられておりますとすれば、私はそれは非常に大きな間違いであると思います。「
中国との貿易は経済的に有利であるからこれを行なうのだ」というだけの
理由でやろうといたしましても、それはなかなか相手が応じてこない。そこには政経分離という
考え方がひそんでおるからでありまして、
友好的
態度を示さないで貿易ができると
考えてはならぬ。これは
中国貿易の
一つの特徴であります。これは積み重ね方式というものとは全然違う。
友好的
態度というものがなければ
中国貿易はできないのだという観点に立って
政府は貿易のことをお
考えになりませんと、せっかくいろいろ努力をなさいましても、私はむだになると思います。
中国側は
日本との貿易に関しましてこう
考えている。
日本の
友好商社との貿易は
日本の中小企業やあるいは
アメリカのドル防衛によって苦境に立たされておる大小の企業の利益のために行なうのである、こういう
考え方を
中国側は持っております。時間がありませんから
質問を続け、最後に
総理のお答えを承りたいと思います。
日本と貿易をしなければならない何らかの特別の
事情が発生したためにこれを行なうものだというようには、
中国側としては
考えていないわけであります。
日本と貿易をしなければならない何らかの弱味が
中国側にあり、それがために
中国をして
日本と貿易をさせるのだというふうに
考えますと観測を誤ることになります。ところがどうも、従来、
日本政府や外務省筋は、
日本政府の
中国に対する政治的
態度をそのままに維持しておっても、相手の
態度の
変化によって貿易関係の好転もあり得るというような
考えがあったのではないか。あったというだけでなくて現在もあるのではなかろうかと私は
考えます。しかし
中国側としましては政経不可分の原則をくずしてまでも
日本と経済的取引をしなければならぬという
事情はないと私は見ておる。
中国は原則を重視する国であります。政経分離の観念の上に立って平和原則というものを無視して貿易
政策を
中国に対し推進していこうというようなことは、私は成功しないと
考えます。この点は
政府においても十分に考慮していただきたいと思います。
中国貿易はあくまで
友好の原則の上に立つということを
政府としても
確認をされまして、政経分離の
考え方を捨てて、
国民経済の利益のために平和原則を
確認した上でやがては
政府間協定を締結する、そうして正常な貿易に発展させるのだという
考え方で
中国貿易に臨んでいただきたいと思います。このことが忘れられて、原則を抜きにして、大きな商社中心に売り込めばいいというような
態度で臨んでは、向こうが受けつけてくれないのであります。このことを私は特に申し上げておきます。私は自民党の諸君にもよくこのことは御理解いただきたいと思います。現在の
友好商社の貿易方式では技術的にも不便だということは私もよく知っておる。どうしても
政府間の協定まで押し上げていかなければなりません。けれ
ども現在では
両国の政治的な
事情によりまして
友好的商社という関係を通じての貿易という方法以外には望めない
状態である。これをあえて無視して、こちらにはこちらの
事情があるのだというようなことを言っても、相手があることですからそれでは成功しないと思います。特にこれは自民党の皆さんに申し上げておきたい。私の
考えは間違っていないと思います。
もう時間がだいぶ超過しておりますので、
総理にも御迷惑をおかけいたしました。私の
質問はこれで終わります。もしお答えできますならば答えていただきたいと思います。ただいまのような政経分離の
考え方では
中国とは現在の
国際情勢のもとにおいては貿易は成功しない、あくまで
友好原則に立つべきものである、
政府はこういう
方針に基づいて貿易
政策を推進していただきたい、こう思うのであります。