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1961-02-18 第38回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年二月十八日(土曜日)    午前十一時四分開議  出席委員    委員長 堀内 一雄君    理事 北澤 直吉君 理事 野田 武夫君    理事 福田 篤泰君 理事 森下 國雄君    理事 岡田 春夫君 理事 戸叶 里子君    理事 松本 七郎君       賀屋 興宣君    正示啓次郎君       床次 徳二君    前尾繁三郎君       帆足  計君    穗積 七郎君       森島 守人君    川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         外 務 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         外務政務次官  津島 文治君         外務事務官         (アジア局長) 伊關佑二郎君         外務事務官         (アジア局賠償         部長)     小田部謙一君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安藤 吉光君         外務事務官         (経済局長)  牛場 信彦君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         外務事務官         (国際連合局         長)      鶴岡 千仭君         外務事務官         (移住局長)  高木 廣一君  委員外出席者         外務事務官         (欧亜局長)  法眼 晋作君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 二月八日  国際法定計量機関を設立する条約締結につい  て承認を求めるの件(条約第四号) 同月十四日  日本国とパキスタンとの間の友好通商条約の締  結について承認を求めるの件(条約第五号)  通商に関する一方日本国他方オランダ王国及  びベルギールクセンブルグ経済同盟との間の  協定締結について承認を求めるの件(条約第  六号)  日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルラ  ンド連合王国との間の文化協定締結について  承認を求めるの件(条約第七号)(予)  日本国ブラジル合衆国との間の文化協定の締  結について承認を求めるの件(条約第八号)(  予) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月十三日  核武装禁止等に関する陳情書  (第六号)  同(第一  三九号)  日中政府間の貿易協定締結促進に関する陳情書  (第三七号)  同  (第  三八号)  同(第一九  五号)  同(第一九六号)  日中政府間の貿易協定締結促進等に関する陳情  書(第一九七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 堀内一雄

    堀内委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件につき調査を進めます。質疑の通告がありますので順次これを許します。  戸叶里子君。
  3. 戸叶里子

    ○戸叶委員 総理大臣はなかなかこの委員会にお見えになれませんが、きょうはちょうどいい機会でございますから、三つの問題について伺ってみたいと思います。  まず最初にお伺いしたいのは、一応ライシャワー氏が日本大使として発表されたわけでございますが、このライシャワー氏につきましては日本に対していろいろな情報をよく知っているというようなことなどが新聞に報道されたものですから、大衆の中には、この大使はおそらく日本国民感情というものをはだで感じてもらえるんじゃなかろうかというような期待を持った人たちもあると思っておりますが、これが発表されましてから、その後まだ何ら確定したということを伺っておりませんが、アグレマンはすでにきたのかどうか、この点をまず伺いたいと思います。
  4. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 アグレマンは来たとまだ外務省から私のところに報告はございません。発表になったというお言葉でございますが、これは新聞に出たという程度ではございますまいか。われわれは公式のアグレマンはまだ受けておりません。
  5. 戸叶里子

    ○戸叶委員 一応日本大使として考えられているということが新聞に出まして——ほぼきまらなければ家庭的な問題まで私は報道されなかったんじゃないかというふうに考えるわけです。しかし聞くところによりますと、大体きめたられにもかかわらず、日本相当高官、あるいはまた一部の人たちが、アメリカ相当人たち財界の人と組んで大使になることを阻止するというような点もあるやに聞いているわけでございますけれども、この点について確かめてごらんになりましたかどうかを伺いたいと思います。
  6. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 そういううわさは耳にしておりますが、われわれの一切関知せざるところでございます。また私は日本の政界、財界の人がそんな差し出がましいことはするはずはないと考えております。
  7. 戸叶里子

    ○戸叶委員 各新聞において、しかもワシントンからの電報ということで伝えられておりますので、まさか全然そういう動きがないのに捏造するということは私はあり得ないと思うのです。しかしこのことは日本における大使を迎えるという大きな日米間の問題でもありますから、どういうところからそういう点が出たかということを今後よく御調査をしていただきたい、こう考えますが、いかがでございましょうか。
  8. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私はこういう問題は外務大臣にまかせますが、根掘り葉掘り調査することもいかがかと思います。こういうことは外務省における慣例その他もございますので、外務大臣からお答えいたさせます。
  9. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 予算委員会質問関係でおくれて参りました。  ただいまの問題は昨日の夕刊に出ておりましたので御承知思いますが、私も閣議後の記者会見におきまして、さようなことは全くわれわれの関知しないところであるし、われわれとしては現実アグレマンを受け取っておらないのであります。それでそれについて何とか言うはずもなし、またさようなこともない。あれば外務大臣たる私が承知しているはずの問題であります。何ら聞いておらない、聞いていない問題についてとかく言われるのは迷惑であるということを申し上げましたので、さような点は一切氷解しているのではないか、さように考えております。
  10. 戸叶里子

    ○戸叶委員 政府としては氷解いたしましても、あれだけ発表されますと、なかなか国民としては氷解しない面があるわけでございまして、これは外交上の問題でございますから、そういうふうなことはよくお調べになって、せっかくいらっしゃる方の感情を害さないようにしていただきたいということを考えるわけでございます。  そこで今度は次の問題に入ります。総理大臣にお伺いしたいことは、コンゴにおきましてルムンバ首相が殺害されたということは、まことにお気の毒で、私ども憤激にたえないわけでございますけれども、お気の毒とか憤激とかいうような問題を乗り越えて、今日では非常に大きな国際的な問題になっているわけでございます。安保理事会ではすでにソ連代表ハマーショルド事務総長解任案を出したり、またスチブンソン代表がこれに逆襲を行なったり、またこれを聞いて傍聴者の黒人がハマーショルド総長とか西側の理事国あるいは理事会へ攻撃を投げつけたというような、平和を討議すべき国連というものが初めて血を流すというような、まことに憂うべき事件が起きたわけでございまして、英国の議会でもこの問題をめぐって激しい議論が戦わされたということを聞いておりますし、各地におきましては、それぞれの国で大きなデモが行なわれたということを聞いているわけでございますが、世界の平和を願う、そしてまた国連中心外交をやる、こういうことを常日ごろ言っておられます池田内閣におきまして、総理大臣は、一体この問題についてじっくりと外務大臣お話しになったことがあるかどうか、そしてまたお話しになったとするならば一体どういうお考えを持っていられるかをお伺いしたいと思います。
  11. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 コンゴの問題が平和的に処理されることを念願しておったのでございまするが、お話のような事態になりましたことをまことに残念に思っております。日本といたしましては、安保理事会のあれではございませんし、とにかくできるだけのことをいたしまして、平和裏に問題が解決することを念願いたしております。詳しいことは外務大臣からお答えさせます。
  12. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ただいま総理大臣お答えの通りでございますが、われわれといたしましては、できるだけこの問題が平和裏解決をされるように熱望いたしておるわけであります。現在あくまでコンゴの問題は国連を通して収拾すべき問題でございますので、やはり国連緊急総会並びに安保理事会によって付与された権限によって行動しておるハマーショルド専務総長をして、さらに処理をせしめるという方向でいくのがよろしかろう、かようなふうに思っておるのであります。
  13. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今の総理大臣並びに外務大臣の御答弁を伺っておりますと、非常に大きな問題であるから、できるだけのことをして、平和的な処理方向へ持っていきたい、こうおっしゃるわけでございますけれども総理大臣の御答弁の中には、別に何ら具体的な方策がない。そういうことを望んでいるというだけのように伺いました。また外務大臣の御答弁も、国連中心解決をしたいから、ハマーショルド事務総長を支持していきたいんだ、これだけのお考えは伺ったのでございますが、私も、そのくらいのことは政府考えているだろうということは、想像をいたしておりました。私どもが伺いたいのは、それよりももっと積極的に、国連中心外交を唱え、そして平和な世界を望むという今の政府であるならば、もっと何らかの形で積極的な方策考えるべきではないか、いつも国連安保理事会なり総会で、アメリカがこう言ったから、ソ連がこう言ったからこうだというような、あとからついていくというような外交はこの辺でやめて、むしろ第三者の立場に立って、これを平和裏処理するための手段を積極的に講じるべきではないか、こういうふうに私ども考えるわけでございます。その場合に、国連の機構ということを考えて、あるいは外務大臣の今おっしゃったようなことも一つの案として考えられましょう。しかしそれと同時に、A・Aグループというものの考え方をも勘案しながら、日本が積極的な一つの道をとっていくということが、私は前向きの外交であり、そうして今日こそ、日本国連においての課せられた大きな試金石になるのではないかということさえ考えるわけで、ただ平和的に解決することを念願いたしますというだけでは、私はこの際物足りないような気がいたしますし、相変わらず消極、自主性のない外交と言わなければならないと思いますが、総理に何かお考えはございませんか。
  14. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私はこの際として、国連中心でこの問題を処理していくということは、一つの大きな方針だと思うのであります。すでに戸叶さんも御承知だと思いますが、コンゴの問題については国連軍がおりまして、しかもなおこれを通ぜざるいろいろな武器あるいは兵員あるいは資金等の援助があるわけなので、そういうものを一切打ち切って国連処理していく、これはもう非常に大きな方針だと思います。しかも事務総長に対してこれを解任すべしという案が出ておるわけでありますが、これについてはわれわれとしては、そういうことはよくない、今の段階において事務総長を不信任してしまうというようなことになったら、これは全く収拾のつかない問題であります。そういう方針を打ち出すということは、私は相当具体的であり、かつはっきりした明瞭な方針だと考えております。
  15. 戸叶里子

    ○戸叶委員 アメリカなり何なりが、あるいはまた一方の人たちハマーショルド事務総長解任に対して反対であるという意見を打ち出したので、それに対して、日本政府ハマーショルド事務総長を支持するということは打ち出されておりますけれども、問題はそれだけでは解決しないと思うのです。なぜならば、今度の問題を考えてみましても、ベルギーからコンゴ独立をいたしましたけれども、たくさんの白人がいて、内乱がおさまらない。なおベルギー軍隊が入ってきた。そこでこの収拾をつけるために、ルムンバ首相国連軍隊要請をした。ところがその国連軍が来たときに、結局カタンガ州の入口のところの飛行場を押えて、ルムンバ軍隊が入られないようにしてしまった。このことは結果的に見ると、カタンガ州の独立を意図したむほんというものを国連軍が助けた形になったのでありまして、このこと自体から見ましても、これは内政干渉というふうに言わざるを得ないわけでございます。こういうふうな問題をよく調査をおやりになって、ハマーショルド事務総長を支持するなら支持するとおっしゃってもいいと思いますけれども、支持するにしても、やはりそこにこういう問題はこうで、こういう問題はまずい、こうであるというような点をはっきりとお考えになった上での支持でなければ、私どもは納得ができないわけでございますが、この点について総理はいかがお考えになりますか。コンゴの問題は、外務大臣だけの問題ではなくして、やはり日本が国として考えているべき問題であるし、また総理外務大臣とこの問題ではいろいろ討議をされているはずではないかと思います。もしされていないとすると、これは怠慢もきわまりないと私言わざるを得ないのでございますが、いかがでございましょうか。
  16. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この問題につきましは常に総理からの御指示があり、私も総理にいろいろ御相談をしてやっておるわけであります。で、今のお話事務総長の行なったことについての御批判でございましたから、事実を少し申し上げさしていただきます。  いろいろございますが、抜き取って申し上げますと、八月十五日付書簡をもってコンゴ首相事務総長に対し、安保理事会決議実施確保を任務とするアジアアフリカ諸国のオブザーバー・グループを派遣するよう要請したのに対しまして、事務総長は、コンゴ首相見解についての判断を求めるために安保理市会の開催を要請いたしました。そこで八月二十一日安保理事会におきまして、事務総長は、国連軍の中立的な立場から、中央政府軍カタンが進駐に国連軍が協力し得ないという見解を述べたのであります。今のお話とはその点違います。またコンゴヘの派兵国代表をもって構成する諮問委員会を設置する意向ある旨を表明いたしました。安保理事会は上記の事務総長見解を確認し、何らの決議をも採択しなかったという事実がございます。このコンゴ問題はオリアンタル州あるいはカタン州各州間の争いもなかなかあるのでございまして、この収拾というのは非常にむずかしいわけなのであります。そこで私はいろいろ利害関係国が口を出すということよりも、やはり国連というものは世界平和を維持するための唯一の機関であり、しかもこれは最高の機関である。この国連というものを通してみなが協力して、平和を望む国が協力して、そうして一つの道を見出していくということにあらずんば、われわれが国連構成員といたしまして、そうして選挙でこれを承認した事務総長をやはり助けていくということが根本であろうと思います。もしその国連事務総長において国連の諸機関、たとえば安保理事会あるいは緊急総会できめたことに違反する態度をとったときには、これは解任の理由があると思います。しかしその結果がその線に沿ってやったにかかわらず、結果がうまく一気にいかないということだけをもって現段階においてこれを解任するというようなことには私どもは賛成することはできない、こういう立場をとるわけであります。
  17. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私が伺っておりますのは、国連を通して問題の解決に当たるという政府の言われていることはわかりますけれども、それでは、国連機関を通して問題の解決に当たるというのにどれだけの努力をされようとしているか、またはされたかということを伺いたいわけです。ただハマーショルド事務総長を支持するというだけでは、何ら積極性がないではないか。もう一歩突き進んで日本立場としてなし得ることがあるのではないか。こういうことを伺っているわけです。たとえば日本は今安保理事会のメンバーではございませんけれども憲章の二十条で緊急総会も開くことができますし、あるいは一九五一年に採択された平和への統合決議というようなものもあるわけでありまして、こういうようなものを考えましたときに、積極的に緊急総会なり何なりを開いて、そうしてこの事態収拾日本が乗り出すべきではないか。前向きの外交政策をとってもいいんではないか。こういうことを考えるわけでございますが、この点はいかがでございますか。
  18. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 前向きの姿勢を常に私ども国連に対してとっておるわけであります。ただ、日本が先頭に立って具体的にどういうことをしなければいかぬ、こういう問題になりますと、そこは事実問題としてやった、やらないの話になると思うのであります。現に日本国連軍というものに対して、日本の憲法上の建前を私どもは堅持いたしておりますが、派兵するというようなことはするわけにはいかない。われわれはそういう意思を持ってない。従ってそういう軍隊を出している国がどうこうするということのようにはわれわれとしてはいかない。しかしわれわれとしてあくまで幅の広い考え方を持って筋を通していく。このコンゴ問題の解決に筋を通していく。それには先ほどから申し上げているようなことでありますが、事務総長のとった態度がわれわれのきめたことに違反しているか、違反していないかということをもって信任、不信任するという判断の基準にする。あるいは冷戦を持ち込まないようにする。そうして各種族間においてそれぞれの軍隊を持って争うというような、そういう態度をなくするようなことをすべきであるという主張を関係各国にする。これがわれわれとしてはこの際やり得ることであり、またやらなければならぬ必要なことである。これをもって私どもは前向きであると考えているのであります。
  19. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは具体的に先ほども私が申し上げましたように、緊急特別総会を開くようにというような要請を出すお考えはないかどうか。この点を伺いたいと思います。
  20. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 今回御承知のように安保理事会は開会中でございます。緊急特別総会というものは、それがうまくいない場合、昨年もそういうことをやったわけであります。そういう場合でなくては活動し得ない。
  21. 戸叶里子

    ○戸叶委員 大臣、今、うまくいかない場合には、安保理事会勧告によって、要請によって開くということが国連憲章の二十条にはありますけれども、しかしもしも総会勧告をするのでなければ、調査をするのであれば私は開いてもいいのではないか、こういうふうに考えるわけでございますが、この点はちょっと大きな関係がありますので、事務当局でもけっこうですけれども休会中に緊急総会というものは開くことができるかできないかということを伺いたい。
  22. 鶴岡千仭

    鶴岡政府委員 休会中でありましても、緊急であるときには開くのがそういうものであります。ただしこれにつきましては、十二条というのがございまして、総会におきましては理事会で現にやっている。たしか十二条だと思いますが、十二条の第二項で「事務総長は、国際の平和及び安全の維持に関する事項で安全保障理事会が取り扱っているものを、その同意を得て、」ということは、同意がなければいけないということになっておりますので、まずそのことが必要であろうかと思います。同時に今も御指摘の国際連合加盟国理事会要請または国際連合加盟国の過半数の要請がありましたときには招集することができる。これは特別総会でございまして、緊急特別総会とちょっと違うところがございます。違うのは二十条で参りますと招集に一カ月かかります。緊急のことでございますと、たしか四十八時間か二十四時間という違いはあります。
  23. 戸叶里子

    ○戸叶委員 詳しい条約の問題は、きょうはせっかく総理がお見えになっていて時間が惜しいですから、これ以上追及しませんけれども、ただ問題はコンゴの国内の問題だけではなくして、国連に関する問題であり、そうして東西両陣営の大きな激化というようなところにまで、対立というようなところにまで持っていかれそうな問題ですから、日本としてもただ国連外交を通して何とかするのだという形だけではなくして、もう一歩前進してほしいということを考えますので、そういった緊急性を認めるべきものではないかということで提案をしておるわけでございますが、この点についてもお考えおきを願いたいと思います。  そこでこの問題について、ネール首相ハマーショルド総長に対して、ルムンバ虐殺責任者に対して直ちに強硬な手段をとるべきである。すみやかに効果的な手段が打たれない場合には、インドはそのような政策に同調するわけにはいかないというメッセージを送っているわけでございますし、さらにその中で、コンゴにおける一切のベルギー人の撤退とかあるいは外国干渉、特にベルギー干渉は阻止すべきだ、こういうふうに言っておりますし、それからまたスチブンソン米代表でさえも国連記者団昼食会で、SEATOにつながる友邦であろうと正しくないことは支持できないのだ、こういうふうに言って、ベルギーに対しては相当きびしい考え方を当然のことながら持っているわけでございます。私はこの点は日本も当然だとお思いになると思いますけれども、どうお考えになるかを伺いたいと思いますし、さらにお聞きしたいのは、第十五回の国連総会植民地独立宣言というものが賛成八十九で採択されておりますけれども、この点から考えましても、ベルギー態度というものは、この宣言に当然違反するものだ、こう考えるわけでございますが、いかがでございましょうか。
  24. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほど申し上げましたように、いやしくも内政干渉がましいこととか、あるいは冷戦を持ち込むようなこと、そういうことは避けるべきであろうと私どもも前から主張しておるわけであります。ただいまベルギーにつきましてネール首相が言われたということは、これは外国首相が言われたことをここでコメントする必要はありませんけれども、そういう意味でなくて、干渉というようなことがあれば排除すべきものだと思います。  それから植民地決議案につきましては、これは昨年総会におきまして決議されるに際して、非常にわが国のとりました態度について高く評価しておると聞いておるのでありまして、こういう決議案の趣旨はできるだけすみやかに実施さるべきものである、そういうことが実施されていないところが現実にあれば、それは改められなければならない、こう思っております。
  25. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今の御答弁は、私の質問に直接お答えになっていらっしゃらないと思います。私が例を引きましたのは、なるほどインド首相なり、あるいはアメリカスチブンソンの言われたことでございますが、私の伺いたかったのは、ベルギーが今度の問題では直接内政干渉し過ぎた、内政干渉があれば、ベルギーはけしからぬというのではなくて、今度の問題は内政干渉であったろうという事実の問題を、現在そうではなかったかということを伺っているわけで、その点を明確にしていただきたい。さらにまた、先ほど言いました植民地独立宣言というものに反するというふうに政府はお思いになるか、ならないか、その点だけを伺いたいと思います。
  26. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私はその事実について十分な確認をする前に政府としていろいろ言うことは、これは慎重でなければならぬと思います。いろいろな話があるわけであります。カタンガ州についてはどうである、あるいはオリアンタル州についてはどうであるとか、いろんな批判があるわけであります。それを私はここで御質問に答える形にいたしましても、特定の国をさしてどうこうということは、これは事実の調査をすることは、——ネール首相も言われたようでありますが、調査ができて、そういうことであるということになった暁には、非難すべきものについては鼓を鳴らして非難すべきものである、こう思うのであります。
  27. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今の答弁では私は何だかわからないと思います。私が伺っておりますことは、ベルギーの今日までの態度というものはコンゴ独立を全く妨げているものではないか、こういうふうな点を伺っているわけでございますけれども、今の外務大臣の御答弁では、よく調査をしないからわからないということですが、もうこれだけ大きな問題になっていて、日本政府調査ができないとか、わからないとかいうのは、これまでの常套手段の言葉としては許されても、私はこの段階においては許されることのできない問題だと思うのです。まだわからないとか、検討中とか、調査中とかいう域はもう脱している問題じゃないかと思うのですけれども、まだ日本がそういうふうなおくれをとっているというところに、私は自主性のない、そしてまた世界外交の舞台を踏んでも、いつでもあとからついていくという形をとっているのではないかと思うのです。  そこで、ベルギーの問題をもう少し単刀直入に、今度のコンゴの問題に関して、コンゴの中においてのベルギーのとっている態度はどうかということを単刀直入にお答え願いたいと思います。
  28. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は、御不満かもしれませんけれども日本外務大臣といたしましては、たとえばベルギー外務大臣は一昨日、その国会において、ベルギー干渉している事実はないとっておるのでありますから、調査が明らかになりまするまでは、特別の一方に味方をしてどうこうということは、これはすべきものではないと思う。調査というものは国連がやるのであります。国連もさような調査をしようといっておるのでありますから、これはそれを待つのがよろしかろうと思います。なお先ほどから申し上げておるように、今のお話カタンガ州に対しての問題であります。しかしほかの州に対してもいろいろな問題があるわけでありますから、この調査するということは、全部に対して行なわれるべき問題であります。とにかく各トライブ、種族の間でいろいろな私兵を持っておるという状態が、やはり統一された状態になるということが、私はコンゴにとって一番望ましいことではないかと、こう思っておるのであります。
  29. 戸叶里子

    ○戸叶委員 総理大臣、今のことに対して、どういうふうにお考えになりますか。
  30. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 外務大臣と同感でございます。
  31. 戸叶里子

    ○戸叶委員 国連安保理事会においてのほとんど各国が、この問題をまとめようとするときの態度の中で、その内容として、外国軍隊は撤退してもらわなければ困る、国連以外の外国軍隊は除いてもらわなければならない、こういうことを言っておるわけですが、これは一体何をさすのでしょうか、この点も私は伺いたいと思います。
  32. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 軍隊がいるかいないかということでございますが、これは撤退が要求されて、その通り行なわれておる、従って軍隊はおらないというわけであります。
  33. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それではルムンバ首相国連に向かって、国連軍を出してほしいというようなことを頼んだのは、一体どういうわけなんでしょうか。
  34. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 どういうわけかといって、国連軍を出してもらって、コンゴの状態をできるだけ早く静ひつに帰させたい、こういう理由でございます。
  35. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そういうことはできないはずだと思うのです。もしもベルギーの内乱だったならば、国連軍は出ることはできないです。ベルギー軍隊がいるから、これを出してもらうために要請したのだというふうに了解しておるわけですけれども、一体それはどうなっているのでしょうか。
  36. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これはベルギー軍隊の撤退を要求して、そして国連軍が平和を維持する、その通り行なわれておるわけであります。
  37. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それではベルギー軍隊が入ったということ、いたということをお認めになるのであって、そういう行動はけしからぬではないかということを私は言っているのですが、それに対して外務大臣は、いや、よく事実を調査しなければわからない、これじゃお話にならないじゃないですか。
  38. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 それでは事実をもう一度申し上げなくちゃならぬ。大へん時間をとって恐縮ですが……。七月十四日にベルギー軍のコンゴからの撤退を要請し、軍事援助をコンゴ政府に与えるための必要な措置をとる権限を事務総長に与える、こういう決議国連安保理事会が採択したわけであります。しかしその前のことを今言っておるわけであります。その前の段階においては、初期の段階において混乱が起きたので、そういうことがあった、あったけれども国連の手に移ってからは、ベルギー軍の撤退を要請され、ベルギーはそれを実行した、こういうわけであります。
  39. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それではベルギーがそこに入っていたということはけしからぬことだということをお認めになるわけでございますね。
  40. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 昨年の七月以前においての状態については、これはよくなかったので、撤退さしたことはけっこうだと思います。
  41. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうなりますと、コンゴにもしベルギー軍隊がいるとするならば、外国干渉を受けるべきではない、植民地独立宣言にも反するものだ、だからもしもいるならばそれには反対である、こういうことはお認めになるわけでございますね。
  42. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 外国干渉はよくないと思います。
  43. 戸叶里子

    ○戸叶委員 同じ質問を私は申し上げたくないのですが、ベルギー軍隊がもしも——外務大臣はいないとおっしゃいますけれども、もしもいるとするならば、それはけしからぬことである、こういうことはお認めになりますね。
  44. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私はベルギーを含んで外国軍隊と申して、外国軍隊ベルギーに限らずどこの軍隊でもよろしくない、こう申しておるのであります。それからその軍隊ということですが、個人か、あるいは契約によっているという場合は、これは私は軍隊ということに含めないで御答弁申し上げております。
  45. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それではアメリカでさえも、この問題に対しては、国務省がAA諸国、あるいは特にアフリカの諸国に対して働きかけを始めて、この問題は幅広く解決してもらいたいのだ、どっちかといえば、アジア・アフリカがイニシアチブをとって解決してもらった方がいいというようなことさえもいっているわけでございます。私どももそうだと思いますけれども、もしもそういうふうであるならば、日本アメリカから大へん御信用の厚い国でもありますし、日本アメリカを大へん今の政府は崇拝しておりますから、そういう関係から当然何らかの形でサジェストしてあげて、問題の解決に当たるべきではないか、こういうふうに考えるわけでございますが、この点について、まず一点伺いたい。  もう一つは、時間の関係で続けますが、十七日にインド及びAAの決議案として出されたもので、ルムンバの殺害事件を非難して、事件を徹底的に調査しろということと、それからすべての外国軍隊を撤退しなさい、コンゴの議会を開くべきだ、そういったものが出されているわけでございます。ところがAAのグループインドが出したといいましても、これにまた反対するグループがAAの中にあるというような、まことに悲しむべき状態になっているわけでございますけれども日本はそういうふうな決議案の内容をよく見きわめて、その両方を取りまとめる役割をすべきではないか、そうでなければ行き詰まる形になるのじゃないかと思いますけれども、この点はいかがでしょうか。今のような決議案の内容であったならば、日本として賛成できるものか、できないものか、この点を伺いたいと思います。
  46. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は、なるたけ先ばしりを避けたいと思いまするが、根本的に言えますことは、非難ということは、調査ができて、非難に値すべきものがあれば非難する、こういう態度で私どもはいきたいと思っております。調査をするということは非常にけっこうだと思います。
  47. 戸叶里子

    ○戸叶委員 先ばしりをすべきではないとか、調査をするとか言っているべき問題ではないと思うのです。やはり国連中心外交、そうして世界の平和を望むという熱意があるならば、少なくとも私は今度出されている決議案くらいのことは検討をして、積極的な意見くらい出してもいいのじゃないかと思うのですけれども、そういうものさえも、先ばしりをするんだ、あるいは調査をするんだということで、どこかがこうだというふうな線を出せば、日本はそうですというふうについていくというような、そういう自主性のない外交というものは、池田さんがこの前予算委員会で田中織之進さんの質問に対して、国連にりっぱな人物を送って積極的な外交を行なうんだ、こういうふうにおっしゃった内容と反するものではないかと私は思いますが、池田さんのおっしゃった積極的な外交というのは、それでは一体何を意味するのか、総理にお伺いしたいと思います。
  48. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は、今までの国連における日本外交が十分であるとは思いません。各国の例を見ましても、大体国連の代表は、政治家その他相当な人が行っているのが例でございます。そういう意味から、今後国民の期待に沿い得るように、私は国連の陣容を強化すべく今計画いたしておるのであります。詳しくは申しませんが、各国の例に比べまして、日本国連におけるスタッフというものは、私は、非常に貧弱といっては語弊がございますけれども十分でないという気持を持っておるのであります。
  49. 戸叶里子

    ○戸叶委員 池田総理大臣の御答弁でございますが、スタッフを外国に劣らないように整える、これはまことにけっこうなことだと私は思いますけれども、要は、いかなる外交をやるかということが、私は問題だと思うのです。人間ばかりそろえましても、眠っていては何にもならないわけで、りっぱな人をそこにおけば、スタッフをそろえれば、積極外交ができるのじゃないか、こういうふうなお考えでそろえられるのでしょうけれども、やはり要は内容の問題ではないかと考えます。今、池田総理は、私が伺った前段の方はお答えになりましたけれども、それでは積極的外交とはどういうことかということに対する御答弁は伺えなかったのでございますが、この点はいかがでございますか。
  50. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 いろいろな事案につきまして独自な判断で、今までもそうでございますけれども、その判断の範囲を私は広くしていくということで、ございます。
  51. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今の池田総理のお言葉を伺っておりますと、独自な判断で幅を広くやっていくんだということでございますならば、今度のコンゴの問題も、調査とかあるいは検討というような域を脱するのではないか、もっと積極性を持っていいのではないかというふうに考えますが、この点、もう一度池田総理のお考えを伺いたいと思います。
  52. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 ただいまの陣容でできるだけのことはいたしておりますが、やはり外国との関係もございますし、外務大臣も言ったように、思いつきで意見をどしどしやっていくということは、私は外交上慎むべきことであると考えます。
  53. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は、今までの質問で、政府が今度のコンゴ問題に対しても全く積極性を欠き、ただ国連待ち、国連の、しかもアメリカなり何なりの発表待ちというような、相変わらずあとについていく外交というものを認めざるを得ないことは、まことに残念でございます。これだけ大きな問題でございますから、政府の言う調査、検討というような言葉を信じたといたしましても、もう少し急いで調査をしていだいて、よその国が全部こうであるという発表をしたあとに、のこのことくっついていくような、そういう自主性のない外交だけは、ぜひこの機会にやめていただきたいということを申し上げ、次の質問に入りますが、その前に、この問題についての関連質問があるそうでございますから、ちょっとこの問題でかわりたいと思います。
  54. 堀内一雄

    堀内委員長 帆足君。
  55. 帆足計

    ○帆足委員 ただいま戸叶委員質問に対しまして、外務大臣の御答弁は、私どもを十分納得させないように思いますので、一、二のことをさらに御質問いたしたいと思います。  第一は、調査が不十分である、情勢がよくわからないということをたびたび言われましたけれども調査報告は現在どういうルートで、どこからお取り寄せになっておりますか。まずそれを伺いたいと思います。
  56. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 レオポルドビル並びに国連筋からとっております。
  57. 帆足計

    ○帆足委員 その調査報告を、できますれば委員に配付していただきたいと思います。  それから正式に国連が報告して、公正な結論を出してもらいたいというお気持は了といたしますけれども、問題がここまで深刻になっておりますときに、政府がこれに対する独自の見解を持って対処しないということに対して、われわれは不満なわけでございます。たとえば、まだ十分な調査がないから判断の材料に欠いておるというならば、昨日なぜハマーショルド事務総長に対して積極的支持の談話をなされたか。国連を尊重するということ、そうして、今後国連を通じて問題を解決していくために、事務総長の職能を尊重せねばならぬということはわかりますけれども、その事務総長の措置がよかったか悪かったかが今論議になっておりますときに、かりに措置の悪いところがあれば解職処分にするとかやめていただかなければならぬとかいうことで、世論が二つに分かれて論議いたしておりますときに、十分な調査をお持ちでない日本政府がなぜハマーショルド支持をわざわざ発表なさるか。十分な調査がなければ、もうしばらく黙っていて、そうして国連の円滑な運営を望むというくらいの発言をなさるならば、保守政党のそれも一見識であろうと私は思うのですけれども、西欧帝国主義国に追随して、そうしてハマーショルドを積極的に材料もなく弁護するような印象を与える談話をされたという新聞記事を見まして、またもやこれは、アジアの一員と言いながら、西欧帝国主義の残滓をもっている国の一員のうしろを金魚のうんこのようについていこうとしているのではあるまいかという、非常に不愉快な感じを国民に与えると思うのですが、特にアジア諸国の中で見識のある独立国の多くは、ハマーショルドのやり口にとにかく非常な欠点があった、そうしてベルギーの策謀に乗せられたという声は、アジアの小国では御承知のように別な意見を持っておる国もありますけれどもアジアの完全な独立した国々では、口をそろえて非難をしておるというときに、なぜ外務大臣アジアの一員とみずから言いながらこういう発言をされたか、そこを一つ明らかに御答弁願いたいと思います。
  58. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 何もしないという御非難と、したのが早過ぎたという御非難と、二つ伺ったわけだと思いますが、私が先ほど調査の報告を聞いておると言ったのは、これは従来のことを言っておるのです。ルムンバ氏の死因についての報告というのは今後の問題であります。そこで私どもがこの国連というものを愛し、国連を正常化し、平和維持の機関としての権威を高めるためには、やはり国連のやることは成規の手続によってやるという大原則を立てるということに日本は協力すべきものである、日本はまた積極的にその主張をすべきものであるということが大きなプリンシプルの問題として重要だと思っておるのであります。何も西欧諸国、たとえばフランスやイギリスが言うたから、あるいはアメリカが言うたからといって、これに追随するということでは決してないのであります。しかもなおアジア諸国において、AAと一口におっしゃいますけれども、たとえばセイロン、これはカサブランカ・グループにたしか入ったように承知するのですが、このセイロンあたりはやはりハマーショルド支持ということを言っております。  それからアフリカの国の中でも、そういうものは今後たくさん出てくるだろうと思います。私がこれを言いますのは、アジアの国日本、この日本という国は、やはり非常に知的水準の高い国であって、物事にはっきりと筋を通していく国であるということを言うことは、こういう事態において尊敬を得るゆえんである、かように思っておるのでありまして、決して追随などということを考えておるのではないのであります。
  59. 帆足計

    ○帆足委員 セイロンがハマーショルドについてこれに当分事務をやらしておけと言ったのは軽い意味の発言であって、外務大臣が言われるように、国連を通じて公平にやりたいというお考えならばそういう意見を発表されればよいのであって、ハマーショルドの一身上の問題についてまだ調査も済まないときに、これを内容的に支持するかのごとき発言をされたのは不謹慎であると私は思う。そこで比較的中間の立場に立っておるといわれておるセイロンの意見の中で、今度のルムンバ首相の暗殺はまことに残虐にしてかつ野蛮、そして卑怯なことであって、その死因を徹底的に調査し、これに手を加えた勢力並びに人物を処罰しろということを言っておりますが、外務大臣はこれに対して同じお考えであるかどうか。第二に、ベルギー人はとにかく策謀目に余るものがあったから、コンゴの地からベルギー人を撤退さすべきである、これをセイロンが主張しておる。またルムンバなきあと、コンゴには合法政府というべきものは今見当たらない、また法律解釈上もそれが決定できない、従って国際連合はこの問題について共同に相談せねばならぬということを言っておりますが、中間の立場にあるセイロンですら、このルムンバの暗殺に対しては怒り天をつくような勢いを示しているときに、外務大臣はこれに対してアジアの一員としてどのようにお考えであるか。
  60. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 コンゴにはカサブブ大統領がおります。そこでやはりコンゴの状態が静ひつに帰するように、われわれとしてはできるだけの分に応じたる協力をしなければならぬ。それはやはり国連を通してやれ、国連においてできるだけ調査を早くして、そうして国連の機能を十分に発揮して事態を平静に化して、そうしてコンゴの住民の福祉並びにその繁栄を考える、こういう筋で私どもはいきたいと思います。事情がわからぬうちにいろいろなことを非難してあちこち当たってみても、私は日本としてそういうことは得るところはないと思います。
  61. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまお尋ねしたのは、ベルギー人コンゴからの撤退並びにルムンバ首相暗殺の勢力に対して徹底的に追及し処罰せよという今のセイロンの意見に対して、外務大臣はどのようにお考えか、これを伺っておきます。
  62. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほど申し上げたように、ベルギー軍隊はいないわけでありますが、契約等の個人的な事情によりましてベルギー人がいるということが事態のためによくないということであれば、これはできるだけ早く撤退することが望ましいと考えます。
  63. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は次に中国の問題で二、三点だけ伺いたいと思います。まず今度の池田首相の施政方針演説の中で初めて、日中関係の改善をはかることが大へん大切であるとか、あるいは中国大陸との関係、特に貿易の促進はわが国としても歓迎するところであるということを述べられまして、池田内閣は岸内閣より一歩前進したのではないかということを期待したわけでございますけれども、肝心の点で何だか少しずつ後退しているように私どもには感じられるわけでございます。先ごろも、一月二十八日の記者会見で英国の例を引かれまして、英国は中共を承認しているが国連での代表権は認められないとか、あるいは加藤さんの質問に対して、英国は北京政府を認めているけれども、北京政府が代表権を持つことについて論議がかわされて、採決の結果は、現政府考え方がこれを認めるべきでないという結論に達したというような答えをなさいまして、あたかもイギリスは中国の国連への代表権を否認しているかのような発言をされ、イギリスから問題にされたようなことがあったわけでございますが、この問題につきましては、予算委員会では問題になりましたけれども池田さんの答弁を読んでみましても、何かそこにはっきりとしていないように思うわけでございます。そこで私はここでお伺いいたしたいのは、イギリスは原則として国連の代表権というものを認めているのだ、しかし国連を二つに割りたくないということでたな上げ論に賛成をしてきたのだ、こういうふうに了承しているわけでございますが、池田さんも、イギリスは中国の国連代表権というものを根本的に認めているのだ、こういうお考えに変わりはございませんか。
  64. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 お話の通りで、北京政府承認しております。また原則としては国連に加盟さすべきではないかという議論が与野党通じての議論のようであります。しかしただいまのところたな上げの投票をしている。今国連に代表権を認めるかどうかという会議を開くということは、まだそのときでない、こういう結論を出しております。
  65. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、イギリスの考え方としては、中国が国連に代表権を持つということは認めているのだ、こういうことは肯定されると思うのです。そうなりますと、やはり加藤さんに対する答弁なり、あるいは記者会見での発表というものは間違っていた、こういうことは訂正されるわけでございますね。
  66. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私はこういう意味で言っておるのでございます。私の言葉が足りなかったというのなら、この意味でございますから、そういう意味をお考え下さい、こう申し上げておるのでございます。
  67. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私の言っているのはこういう意味でございますというのは、結局どういうことになるのですか。わからないですね。
  68. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 加藤さんの御質問に対しての答弁はこういう意味でございます、こういうことでございます。
  69. 戸叶里子

    ○戸叶委員 こういう意味というのをちょっと説明していただきたい。
  70. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 こういう意味というのは、イギリス政府は北京政府承認しております。理論的には私は国連加盟に反対する理由はない。最近の情勢でも、たびたび政務次官も国会でも言っております。ただ、ただいまの問題としてはたな上げ論については、われわれと同じように、そういう審議をすべきでないという結論に達しております。
  71. 戸叶里子

    ○戸叶委員 池田総理の御答弁は、予算委員会答弁と同じですけれども、それでは私どもは何か割り切れないものを感じるわけです。なぜならば加藤議員の質問に対してはっきりおっしゃったことは、北京政府が代表権を持つことについて議論がかわされました、採決の結果、現政府考え方はこれを認めるべきではない。これを認めるべきではないというのは、この中共の国連への代表権を認めるべきではないというような、そういう答弁をしておるわけでございまして、この点はイギリスの国会で議論になった問題と違うのではないかと思うんです。ですから池田総理のお考えが間違っていたのだというふうに訂正されてもよろしいのじゃないでしょうか。
  72. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 代表権を与えることについての会議は今開くべきにあらず、こう言って反対しておるということを言っておるのであります。北京政府国連加入については、それは理論的にはイギリスは認めるでしょう。しかし代表権につきましては、ただいまの問題の代表権の会議につきましては、それは早いという意味で反対しておる、こういうことを言ったのであります。
  73. 戸叶里子

    ○戸叶委員 政府が中国の問題について、そのつど私どもにとってどうにでもとれるような答弁をされているというのは、中国問題に対して確とした一つの信念なり方針なりというものを持っていられないからだと思うのです。持っていられないというよりも、持っているけれども、諸般の情勢からどうにもしようがないというようなところから、ああいうふうにもなったりこういうふうにもなったりというふうに、答弁が変わるのではないかと思うのです。その一つの例といたしまして、二月二日の穂積委員の質問に対して外務大臣が、中共に対する三原則は認めるということをはっきりおっしゃっておりながら、今度は田中伊三次議員の質問に対しては、だんだん後退してきまして、中国というものが実際において二つあるのだ、だけれども今まで——これを読んでみますと、前を省略いたしますが「事実は、田中委員の仰せられるように、まさに中国大陸において事実上の支配権を持っておるものと、台湾におきまして政権を持ってその地域を支配しておるもの、これは現実としてあることは私どももとよりでございまして、これからないというのではございません、今までそういう陰謀に加担したことはなかったんだ、こういうことを申したのが私の真意でございます。」こういうふうにおっしゃっておられて、それでは一体今後の問題としてはどうするのかというような答弁がそこにございません。また田中織之進氏の質問に答えられて、「私の外務委員会における発言において、認める」、認めるというのは、三原則をです。「認めるというときに、三原則という言葉を使っておりません。認めますると同時にああした敵視政策なんというものをとった覚えはないのだということを申し上げているのであります。」こういうふうに答えているのであって、この三原則を認めるかどうかという質問に対して、認めますし、それに反することはしません、こう答えておられたにもかかわらず、私は、認めますと言ったのは、三原則という言葉を使わなかったというようなことで逃げておられるわけです。私はこの際はっきりともう一度確認しておきますが、おそらくこの問題はあとから穂積委員が追及されると思いますから、私は一点だけにしますけれども、この委員会において穂積委員の質問に対して、外務大臣が認めますし、またそれに反するようなことはしませんとおっしゃったのは、平和三原則をお認めになるということだろうと思いますが、念のために確認をしておきたいと思います。
  74. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 速記は、今ごらんのように、認めるのみならず、われわれはそれに反したことをしていないという考えに立っております。これが私の答えであります。穂積委員の質問は、外交をやっておるのでございますから、ほんとうはこういうことはあまりほじくらぬ方がいいんじゃないかと思いますけれども、バンドン精神というものは非常にいいんだ、それで三原則というものはそれから出ているんだ——私も実はこの三原則とバンドン精神というものは直接の関係はないことはもちろん存じております。しかしそういうお話でございますから、そういう答弁をしているのでございます。以上をもって大体御了解を願えるんではないかというふうに考えております。
  75. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は了解はできないのです。わからないのですが、あとできっと穂積委員がお聞きになると思いますから、私はもう一点だけ総理にお伺いしておきたいのです。今度総理が国会が済んで訪米をされるようでございます。中国の問題というのはもう世界の趨勢として、大体中国は国連に加盟させた方がいいというような意見が高まってきているわけでございます。アメリカの国務次官のチェスター・ボールズという人も、台湾は中国に渡せない、中国の国連加盟は認めないけれども、中国が加盟してもアメリカ国連を脱退するものではない、非常にこの点は含みのある言葉を言っているわけでございまして、アメリカは決して無理をするものではないということを言っているわけでございます。やはり米国と中国の問題というものは、こういう段階にまで進んできているという事実、それからまたケネディ政府が目下米中関係を検討しているんだというようなこともロイター通信によって発表されております。こういうときに訪米なされるのでありますから、特にこの国際の平和を念願する総理といたしましては、アジアの情勢をよくするという意味から申しましても、ぜひ中国の国連加盟の問題を特にお考えになって、アメリカに話し合いをしてくるべきときがきたのではないかと思いますが、この点についてはどういうお考えを持っていられるかを伺いたいと思います。
  76. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 チェスター・ボールズの今の御紹介になりました意見は、フォーリン・アフェアーズに載っている、国務次官になってからの意見ではないようであります。私はいろいろな方々の意見も集めております。世界の情勢も集めておりますが、今訪米するといたしまして、どの問題を大統領と話しするということまできめておりません。いろいろ日米共通の問題、世界の平和の問題につきまして今考えておるのでございます。
  77. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いろいろの問題を話し合うということを考えておられる、そうだろうと思いますけれども、そのいろいろの問題の中に、この中国の問題はお考えになっていらっしゃいませんか。
  78. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 どの問題をどうするということは今考えておりましても発表の段階ではございません。
  79. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それではぜひこの問題を取上げてお話になっていただきたいということを要望いたしますが、いかがでございましょうか。
  80. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 御意見は聞いておきます。
  81. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは次の委員に質問を譲ります。
  82. 堀内一雄

    堀内委員長 穂積君。
  83. 穗積七郎

    ○穂積委員 今戸叶委員から話がありましたが、あなたは国会のあとでアメリカへ行かれて、日米間のみならず、広く外交問題についてお話をされるということですから、お立ちになる前に、あらためてあなたの訪米計画全体について、すなわちあなたの外交政策全体について、適当な時期にこの委員会であなたのお考えを表明されることを希望いたしておきます。  質問に入ります前に、外務当局にちょっとお伺いしておきますが、この前私がお願いしておきましたあの日韓会談における韓国側の請求権の八項目にわたる内容発表はどうなりましたか。
  84. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 韓国側と相談いたしまして当分の間、ずっととは申しておりませんが、いましばらくは発表しない方がいいのではないか、こういうことになっております。
  85. 穗積七郎

    ○穂積委員 韓国側は発表しておりませんか。
  86. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 しておらないと思います。
  87. 穗積七郎

    ○穂積委員 きょうは総理に対する質問でございますから、その問題は打ち切っておきますけれども、私は資料を持って参りまして説明申し上げますが、韓国側はむしろ発表した方が有利だという立場で、発表することを希望する意向がれわわれに情報として入っておりますから、あなたの方がいいかげんな、直接話もしないで答弁なすっておるとは思いませんけれども、その点はもう一ぺん確かめて、次の委員会ではっきりした御答弁をいただいて、でき得べくんば向こうを説得する、向こうはそのつもりでおるようですから、資料を国民の前に明確にしていただきたいと思う。これは在韓の日本の財産権問題とも関連をいたすことでございますし、南北朝鮮全体にわたる重要な問題の一つでありますから、ぜひ明確にしなければ日韓会談の審議はできないと思うのです。わかりましたか。いかがです、
  88. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 八項目の問題と、それからアメリカの解釈の問題、みな関連しておるのでありまして、これらを一緒にいたしましてなるべく早くやりたいと思っております。
  89. 穗積七郎

    ○穂積委員 時間がありませんから池田総理に簡単にお尋ねをいたします。  あなたは日中問題について積極的に推し進めたいという御意向を表明しておられますが、日中間の打開、折衝は文化協定にいたしましても、郵便協定、貿易協定にいたしましても、その他国交回復すべての前提が友好三原則にかかっておるわけです。これは先ほどお話がありましたけれども、言うまでもなく中国を敵視しない。第二は二つの中国を作る陰謀に加担しない。第三は日中の国交回復に妨害を与えない。この三つです。これは前の岸内閣はあたかも不当なる政治的言いがかりであるかのごとくこの友好三原則というものを取り上げて、そこに日中接近のできない原因があるのだというような、むしろ言いがかりを言っておられたのです。あなたはこの問題の経過を十分御存じだと思いまして、あなたが日中の正常化に向かって積極的に努力をしたい、貿易の発展も願っておると言われる以上は、よもやそういうことはおっしゃらないと思うのですけれども、小坂外務大臣が去る二日に私に対しまして友好三原則を認め、これに反対する態度をとっておる覚えはない、こういうことをおっしゃったのでありますけれども、あなにもその通りであると確信いたしますが、念のために伺っておきます。
  90. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は何も敵視しておりません。そうして北京政府ととにかく内政不干渉で、そうしてお互いの立場を尊重し、友好の関係を増進していきたい、こういう気持を持っております。二つの中国の陰謀というのは私はよくわかりませんが、私はそういう陰謀というものに加担したことは何もございません。
  91. 穗積七郎

    ○穂積委員 そういたしますと、友好三原則は当然なこととしてこれを認める、こう理解してよろしゅうございますね。
  92. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 認めるということはどういうことなんですか。私はそういうことをしていないということを申し上げております。
  93. 穗積七郎

    ○穂積委員 そういう言葉をあいまいにして怯懦にお逃げになる必要はないのです。そういうことでなくて、これはバンドン精神の内容と全く一致した当然なことなんです。平和共存をはかり内政不干渉でいこう、それで互恵平等で文化、経済の交流をはかってお互いの発展を招こう、これがバンドン精神の中心精神だと思う。そのことを言っておるにすぎないのです。だからこういう友好三原則ということを理解をしていただきたい、支持していただきたい、こういうことを向こうは日本国民に訴えているときに、日本のほとんどすべての国民、自民党に投票される有権者の方もこれに対しては異存を私は一度も聞いたことがありません。ですからその意向を代表して政府が、向こうがそういうふうに働きかけているこの友好原則については当然なことであることから日本政府国民の意思を代表してその通り思っておる、こういうふうにおっしゃればそれですなおでいいんですよ。そうでございましょうね。
  94. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 バンドン会議に代表を送って、そうして決議して、これにサインした、これは認めます。しかし中国からこういう三原則があるから日本はどうするのだという申し込みも何もございません。従って向こうから何もあれがないのに、認めるとか認めぬとかいうのではなくても、私は事実としてこういうことはしておりません。敵視はしておりません。友好関係を増進したい。陰謀はやっておりません。これで私ははっきりしておると思う。だから認めるということは、向こうさんが三原則を認めたものとお思いになるなら、それはそれでいい。それを要求も何もしないのを、新聞に載っておるのを、日本政府は認めますでは、私はまた誤解を受けるおそれがあってはいけないから、ただいまもお答えした通りでございます。
  95. 穗積七郎

    ○穂積委員 私の言ったのは、認めるという言葉ですね。相手がネゴシエーションをしてきたから認めるとか認めないとか、外交の技術の問題とかを聞いているのではないのです。精神を聞いているのです。今申しました三つの精神というものはこれは中国とのみならず、どの国とも友好の原則というものは前提であるわけであって、特に中国におきましてはその点が大事な前提として考えておるわけです。ですから向こうの言っておる言葉、当然こちらもそういうふうに思っておるというふうに理解してよろしゅうございますね。
  96. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 そういうふうに行動をとっております。こういうことをはっきり申し上げます。
  97. 穗積七郎

    ○穂積委員 そういたしますと、言葉のあやで何かこう奥歯に物のはさまったようなところを少し残しているようでありますけれども、今の御答弁日本語でお互いに良識をもって理解すれば、友好三原則と同じ考え方をこちらも持っている、こういうふうに理解して差しつかえないと思う。よろしゅうございますね。
  98. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 敵視しない、陰謀していない、そうして増進するという行動をとっております。
  99. 穗積七郎

    ○穂積委員 それが友好三原則なんです。そうであるならばあなたの方も、日本政府も、中国に対しては友好三原則の精神を持っておる、こういうことを表明されたと私は理解いたします。そうでありますならちょっとお尋ねいたしますが、貿易問題についてあなたは非常に積極的にお考えになっておられる、けっこうなことです。昨日の予算委員会におきましては、輸出入組合あるいはまたジェトロを通じて民間ベースでやらしたいということを言っておられるようですけれども、これは一体どういう意味でございましょうか。ジェトロと向こうの貿促との間で民間契約を結んで、そしてやらせたいと思っておられるのか。周総理が昨年の夏に明確にいたしました貿易三原則にする政府協定によらざる民間契約、友好商社との間の民間契約、これとの関連はどう理解しておられますか。
  100. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は周総理から正式にそういう考え方を聞いたことはございませんが、何とかして日中の貿易増進をはかりたい、見本船ということは考えられないか、あるいは前にありました日中輸出入組合、今ほとんど眠っておりますから、それを強化していく方法はないか、外務大臣、通産大臣一つ研究を願っております。そういう方向一つ具体案を練ってくれということをお願いしておるのでございます。
  101. 穗積七郎

    ○穂積委員 総理の貿易を伸ばしたいという気持についてはわれわれは賛成ですけれども、遺憾ながらそういう方法ではできません。向こうはもうはっきりしておるわけです。貿易三原則の方針というものは幾たびかわが方へもいろいろな公式、非公式な発言を通じて伝えられておりますように、本格的なる貿易再開は政府協定でいきましょう、しかしながらその前に友好の精神を持っておる商社との間においてはぜひ——すなわち中国側が最も心配をする友好三原則に支持と協力をしていただいておる友好商社、これとの間には個別の民間契約を結んでやる、やがては長期の契約もあり得る、それでいきましょう、こう言っておるわけですから、今のジェトロあるいはまた輸出入組合を通じてやるというようなこそくなことはできるわけはないのです。おやりになるならば、この際あなた自身が正面に出て、そして政府自身が正面に出て政府協定を結ぶべきである。にもかかわらず、友好三原則を認めながら、同じ精神をお持ちになりながら、この貿易協定政府間で結べないという理由を私は理解することができないわけです。その点を明らかにしていただきたいと思います。
  102. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 政府間におきまして貿易協定をいたしますということは、ただいま北京政府を認めていないわれわれといたしましては、外交上、非常に重大な問題でございます。政府協定は相手国を承認する格好になるというので、私はこれは今その時期でないと言っておるのであります。私は向こうさんがどう言われるかということをうすうすは知っておりますが、われわれとしてこういう格好でいったらいいということをやることは何ら差しつかえない。あなたはすぐ、そんなことは向こうはいかぬのだ、こう言われますが、われわれはそういうことで努力してみたいというのであります。
  103. 穗積七郎

    ○穂積委員 友好三原則には国交回復を妨げない、そしてあなたは本会議における外交方針の中でも国交正常化の方向というものを指示しておられるわけですね。そうでありますならば、政府協定、友好三原則を認める上に立った貿易協定を初めといたします郵便協定なり、あるいは気象協定なり、漁業協定なりというものはできるわけですね。私は何ら政府方針でお困りになる理由がわからないのです。第三の問題である国交の正常化をやらないというお考えであるならば、これは問題になりましょう、しかしそうじゃないのですから。そうであるならば、口だけで国交の正常化を念願するとか、友好三原則については当然われわれも考えているとかいうような御答弁をなすっても、それはほんのごまかしにすぎないと言われても私は客観的に弁明の余地はないと思うのです。その点はどうでございましょう。
  104. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 あなたのおっしゃいます三原則に国交正常化というのがございますか。
  105. 穗積七郎

    ○穂積委員 あります。国交回復を妨げない……。
  106. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は友好関係を進めていくと解釈しておるのです。国交の正常化ということと私は考えておりません。国交の正常化という意味がわかりませんが、どういう意味の国交の正常化でございましょうか。
  107. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私どもいろいろこの問題について考えておりますけれども日本語の原則というものは大体肯定するのが建前であります。従ってそこに問題があるように思うのです。たとえば、中国を敵視しない、あるいは二つの中国の陰謀に加担しない、あるいはまた日中友好を妨げない、こういうみんなないという原則なんですね。われわれ日本語の原則というのは、何何するというのをもって大体原則ということにしております。そこで今三原則というのを向こうが言ったからといってこちらがただ無条件に——いろいろな場合を考えてみてこれに当てはまるとか当てはまらないとかいうことよりも、いわゆる前向きの姿勢、自主的な考え方というものは、こちらはこういうふうにしていきたいというのが私は当然あるべき姿ではないか。この辺に私は問題の展開を求めるかぎがあるというふうに思っております。総理大臣のお考えはさようなことに立っておられるというふうに私ども考えております。
  108. 穗積七郎

    ○穂積委員 小坂外務大臣お答えになりましたから、ついでですから確認をしておきますが、あなたは、去る二日の私の質問に対する答弁、今のところ認めておるのみならず、これに反するような態度をとっておる覚えはないという御答弁ですが、これはそのまま確認しておいてよろしゅうございますね。
  109. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 あなたの御質問は、バンドン原則によるという前提があってこの三原則というものができておる、これを認めるかという御質問でありましたから、私はこれは認めるのみならず、われわれはそれに反したことをしていないという考え方に立っております、こういうことを言っておるわけであります。それ以上出ません。
  110. 穗積七郎

    ○穂積委員 出るか出ぬかではなくて、引っ込まないかと聞いておるのです。その答弁から引っ込みませんかと聞いておるのです。その答弁をそのまま認めますか、取り消しますか、修正しますかということを聞いておる。
  111. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ただいま総理お答えになりましたと同じ気持であります。
  112. 穗積七郎

    ○穂積委員 何を言っておるかわからぬ。私はそんなことを聞いていない。あなたの発言について——私は総理が取り消すか取り消さぬかということを聞いておりませんよ。その答弁を認めますか、修正しますか、取り消しますかと聞いておるのです。そのどれですか。
  113. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は国会で言うたことには責任を持ちます。取り消す考えはありません。ただあなたの御質問が、バンドン会議の原則によって三原則ができておる、これを認めるかと言うから、バンドン会議の原則にのっとった三原則というものは認める、のみならず、敵視をしないし、陰謀などというものに加担しない、こういう考え方に立っております、こう言ったのです。
  114. 穗積七郎

    ○穂積委員 それは、私の質問なりあなたの答弁がバンドン原則を認めるかなんということではない。そういうことではないですよ。あなた、そんなあいまいなことをおっしゃって卑怯未練ですよ。あなたとのその問題についてのことはきょうは時間がありませんから次に留保しておきます。そのいずれにしても、きょう確認いたしましたことは、その御答弁は修正も撤回もしない、再確認されたということだけを明らかにしておきましょう。  総理に次にお尋ねいたしますが、イギリスの政府は中国の政権を承認しておりながら、国連の代表権問題について直ちにこれを認める態度をとらなかったということに対して、実はイギリス政府からも遺憾の意が表明されたりして、先ほど叶委員からも御質問がありました。私たちはその過去のあなたの言葉じりをつかまえて、ここでああだこうだという言葉の争いをしたくないのです。それはなぜかといえば、国連代表権問題は、本年度の秋の国連総会における中心問題の一つである。日本もそのことに対して態度を迫られておるわけですね。そのときに日本自身の考えを何ら示さない、あるいはまた方向を示さないで、顧みて他を言うがごとく言っておられるから、そこにあいまいさが残り、疑惑が残り、いろいろな問題を起こすわけです。そこで今年度におきます中国の国連代表権問題についてはどういうお考えを持っておられるか、この際伺っておきたい。イギリスの政府はどうでもよろしい、あなた自身の、日本政府自身のこの問題に対する考え方を伺っておきたいと思います。
  115. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 ただいま検討中でございます。発表の時期でございません。
  116. 穗積七郎

    ○穂積委員 どういう点を検討中でしょうか。
  117. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 いろいろな点がございます。この点、この点ということは私は日本のためによくないと思っておりますから、しばらく答弁を留保いたします。
  118. 穗積七郎

    ○穂積委員 日本のためによくないともったいぶったことをおっしゃいますけれども国連代表権問題なんということは秘密を要するような問題は何ら含んでいないのです。それこそ秘密外交じゃないでしょうか。国会でこういう貴重な機会に政府のこの問題に対する考え方というものを、最終的なイエスかノーか結論は別として、検討する問題点自身だけでもこの際明らかにしておくことが、今日の問題になっております中国との関係、これを前進せしめるために非常に役立つことだと思うから私は言うのです。
  119. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 いろいろ問題は考えておるのでございます。しかしそれを今私が申し上げるということは早過ぎる、こう考えまして差し控えたいと思います。
  120. 穗積七郎

    ○穂積委員 政府は中国との間に大使級で、しかも場所は、東京または北京にあらざる第三の場所でもって接触をしてみたいということを検討しておられるやに漏れ承っておりますが、そういうことを総理は御承知でありますかどうですか。
  121. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は聞いておりません。まだ結論はそこまでいっておりません。
  122. 穗積七郎

    ○穂積委員 外務大臣いかがですか。
  123. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私も聞いておりません。結論はまだであります。
  124. 穗積七郎

    ○穂積委員 それではさっき言いました友好三原則というものがわれわれの精神でもあるということであるならば、これは大臣級で直接接触されることが適当だと思うのです。そのためには向こうはいつでも門戸を開放いたしましょう、こういう態度が幾たびか表明されておるわけですが、検討に値することだと思うのです。そういうお考えはございませんか。
  125. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 アメリカはワルソーで今までずいぶん長い回数を重ねておるようであります。そういう点も私は検討いたしておるのでありますが、ただいま大臣級で交渉するという考えを私は持っておりません。
  126. 穗積七郎

    ○穂積委員 時間がありませんからもう一問だけで、次の機会に留保しておきたいと思いますが、こういうものはお互いに考え合ってみて、まず政府間で接触する前に、友好の精神をもって党の代表が中国側に行って、そしてネゴシエーションではなくて、お互いに意見の交換をしてみる。今までに石橋、高碕あるいは松村さんというような長老の方がいらっしゃって帰られて、われわれとは違った角度で総理はそういうことを聞いておられると思うけれども、これは個人として行かれたわけですが、そうではなくて党の代表をこの際送って、交渉はしないけれども、お互いの考え方を話し合ってみる、直接聞いてみるということは、私は一歩前進のために非常にいいことだと思うのです。大臣級を出して直ちに直接政府間の交渉めいた接触に入るということは時期が尚早だというふうにお考えになるならば、その前として考えられる点は、外務省の一部でお考えになっているやにうわさされておる大使級会談ですが、これは私はこの前外務大臣にもお伝えしておきましたが、周総理大使級会談はだめですからやりませんということを言明しておりますから、実行は不可能でしょう。そうであるならば、党の代表を出して一ぺんよく接触をし、よく懇談をし、中国の考えも聞き、こちらのこともよく向こうに話しておくということは、私は現在の段階においては非常に適切な方法だと思いますが、総裁としてどうお考えになりますか。
  127. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 御意見は承っておきますが、結論はまだここで申し上げる段階ではございません。
  128. 堀内一雄

    堀内委員長 帆足計君。
  129. 帆足計

    ○帆足委員 時間も移りまして、総理も時間の御制約があるということでございますから、簡単に質問いたしまして、残った問題はまたあとの外務委員会でさらに質疑をしていきたいと思いますが、ただいま台湾の問題がアメリカの極東政策の中の矛盾の焦点になっております。英国はかつて七つの海を支配していて、非常に視野の広い立場に立っておる国でありましたから、早くも新中国を承認いたしましくこの矛盾から身をかわすことができましたけれどもアメリカは極東軍事政策の必要上台湾に執着いたしまして、台湾政権に対する態度が論理性を欠きましたため、今非常な苦悶の状況の中にありますことは御承知の通りでございます。日本もまた終戦直後の混乱の中に、占領軍の影響下に政治が行なわれましたから、論理と一致しないような外交に追い込まれました事情はよくわかるのでございますけれども、やはり台湾問題に対して論理的な観点に立ち、一応再検討せねばならぬという時期にきておるように思います。一九四五年に日本が戦いに敗れましたときに、カイロ宣言、ポツダム宣言に従いまして台湾を中国に返すことになりまして、時の中国国民政府から国民軍が台湾に進駐いたしまして、これを中華民国に接収して当時台湾省に一時なりました。翌年七月から時の中央政府であった蒋介石の中国政府が二百万の軍隊をもって中共軍と相対峙するようになりましたが、戦いに敗れまして一九四九年の十月一日に中華人民共和国ができたことは御承知の通りでございます。池田総理大臣は、台湾が敗戦後に一応中国政府に接収されて一省になったという事実を御存じであり、そして承認せられておるか、どうか、まず伺いたいと思います。
  130. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 中華民国の一省になったかどうか、私ははっきりした記憶はございません。
  131. 帆足計

    ○帆足委員 それでは外務大臣にお尋ねしたいと思います。
  132. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 条約局長からお答えいたしてもらいまするが、われわれは台湾に関する権利、権原、請求権の一切を講和条約で放棄しておりますので、法律的な問題として事務当局から……。
  133. 中川融

    ○中川政府委員 一九四九年に中華民国政府は台湾に移ったのでございますが、それと同時に台湾省というものを設置いたしまして、台湾が自分の国の領土に編入されたという意思を表明しておるのでございます。
  134. 帆足計

    ○帆足委員 今、条約局長答弁されましたことを外務大臣は理解されたかどうか伺っておきます。これは非常に重要な出発点ですから……。
  135. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 理解いたしております。
  136. 帆足計

    ○帆足委員 そこで第二に質問いたしますが、日本国民はアジアの中では非常に技術も優秀で頭のいい民族だという先ほどお話もありましたが、従って論理を尊重せねばならぬと思うのです。論理にはずれたことばかりやっていると、世界から軽べつされて、みずから卑しめれば人これを卑しむという結果になりますから、従って私は論理的に御質問します。  さて台湾を接収して台湾省としたところの中国の中央政府は中共軍と相対峙しまして——これは内乱です。そしてこの戦いに敗れました。敗れました事情を当時のアチソン国務長官ですか、対華白書に詳細に書きまして、これをトルーマン大統領に報告いたしました。そのときの対華白書の中に、中国の国民政府はこれは他からの干渉で敗れたのではなくて、二十億ドルもの援助資金を使いながら、その資金の使い方を誤り、みずから腐敗し、大衆の支持を失い、軍隊は戦意を喪失してみずから崩壊したのである。従ってアメリカとしては、この冷厳なる事実を認識して、今後の対策に資さねばならぬという大きな五百ページからなる対華報告書を出しました。トルーマンはこれにこたえて翌年一月五日、声明書を出しまして、アメリカは台湾または中国その他の領土を今後占有しようとする意図はない。アメリカ政府は中国の国内紛争に巻き込まれることを欲しない。同時にアメリカは台湾にいる中国軍隊に軍事援助を提供したり、助言を与えるつもりもないということを、中華人民共和国の成立直後に発表したのでございます。もちろんそれより早く英国は、もう前途を洞察して新中国の政府承認したことも御承知の通りでございます。  さてこの歴史の事実に基づいてさらに一歩進めて参りますと、やがて一九五〇年の六月二十五日に朝鮮戦争が起こりました。やむにやまれぬ戦争の必要ということで、しかも国際連合が承認してくれたアフェアという事情のそういう論理のもとで、アメリカは初めてそこで台湾水域にアメリカ第七艦隊を出し、そして台湾を軍事基地として利用するチャンスをつかんだのでございます。ところが一九五四年、朝鮮戦争が済みますと、もうその軍事派遣の理由はなくなりましたために、ここにおいてか台湾政権を相手にしまして米・台相互防衛条約を結びまして、この条約によって台湾に対して今進駐し、軍事援助をいたしておりますことは御承知の通りでございます。  さて、このような歴史的経過を振り返ってみると、台湾政府の性格というものは一体どういうものであるかということが、ここに問題になるわけです。これに対する解釈は御承知のように種々ありまして、英国とアメリカとの間において非常な見解の相違があることはもう御承知の通りです。同じく自由主義国に属しておりましても、またインドアメリカとの意見の相違も御承知の通りです。従いまして私は、日本政府としては軽率に論理のけたをはずして、そして台湾問題を取り扱うべきでないとかねて思っておりまして、野党からもたびたびこの問題について政府に対する忠言もあり、そして意見も述べられたことも御承知の通りです。  そこでまずお尋ねいたしますが、独立国というものは主権と領土と人民を持っていなくてはならぬというふうに聞いておりますが、そのように考えてよいものでしょうか、外務大臣にまずそれを伺っておきます。これは論理でいきますから……。
  137. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 さように考えます。
  138. 帆足計

    ○帆足委員 人類の大脳の、最高の判断力を持っておる大脳の作用に従って、その論理に従って問題を整理整頓して参りますと、それでは中華民国というもの、今の蒋介石政権は、これは中国の国民政府の、それがこっちへ亡命して移ってきまして中国国民政府の権利義務を継承したところのその継承者であるのか、それとも、名前は中華民国という大ぎょうな名前がついておるけれども、単なる台湾の焼きイモ一つを代表している政府にすぎないのか、一つそれをお尋ねいたしたい。どういうふうに外務大臣は解釈されておるか。——外務大臣に聞きたいのです。これは重要なことですから……。
  139. 中川融

    ○中川政府委員 お答えいたしますが、中華民国は中国全体を代表する政府というふうにわれわれは考えておるのでございます。
  140. 帆足計

    ○帆足委員 外務大臣もそのようにお考えですか。
  141. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 さようでございます。
  142. 帆足計

    ○帆足委員 そういたしますとこれは重大な問題にぶつかりまして、これは英国とも違う、それからアメリカとも違う、日本独自の論理学ということになってくる。いよいよ私はこれは重大な問題にぶつかると思うのです。  まずそれではそういう趣旨でもって、中華民国が、そしてわずか領土からいえば台湾の焼きイモ一つ、人口からいえば九百万ぐらいでしょうか、それが人口六億の中国のかわりに、その嫡出子として国際連合に加盟を許され、その五大常任理事国一つになっておるということを肯定する、そういう論理で肯定するということになれば、それは論理学の上では私は落第でなかろうかと思うのですが、外務大臣はどのようにお考えでしょうか、御感想だけでもちょっと聞いておきたい。
  143. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私どもは御承知のように日華条約というものを結んでおるわけでありまして、法律的には中国を代表する政府として国民政府を相手として結んでおるわけであります。従って国と国との関係の問題、たとえば戦争状態の終了あるいは戦前条約の廃棄あるいは在支特殊権益の放棄、中国の賠償放棄、こういうようなものは中国全体を対象としているわけであります。しかし一方におきまして、その性質上その適用が地域的に限定される問題がございます。たとえば請求権の処理というような問題がございますが、これはまた今のと別途の問題であろうと思います。
  144. 帆足計

    ○帆足委員 さて、そうなりますと、アメリカの国務省はこの問題について多少あいまいな態度をとってきましたけれども、どちらかといえば、台湾というものに対してアメリカの国務省の考え方は、最近だんだん変わってきつつあること御承知の通りであって、それを反映したのか存じませんけれども外務大臣は前の外務委員会の御答弁で、台湾というその領土、場所はこれはかって日本の領土であったが、敗戦によってわれわれは放棄した。道ばたに捨ててしまって、だれが拾ったか、まだ拾得者不明の場所である。だれが拾うかということも、こっちが言う権利はないのであって、われわれはただ捨てたという事実を知っているだけだ、こういうお話だったように私は承っております。すなわちわれわれは台湾をもぎ取られてしまった。それで捨ててしまった。しかしその台湾は一体どうなったか、まだ正式にきまってない、こういうふうに聞いておりますが、そうでしょうか。
  145. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御承知のようにカイロ宣言におきまして、日本が清国人から奪取したものはその持ち主に返還されるということで、台湾、澎湖島があげられておるわけであります。われわれはポツダム宣言を受諾いたしまして、ポツダム宣言には、カイロ宣言の条章は履行せらるべくということが書いてあるわけであります。しこうしてわれわれは、サンフランシスコの平和条約におきまして、台湾、澎湖島に関する権利、権原、請求権の一切を放棄したということに法律関係でなっておるわけであります。従ってわれわれの立場から言えば、台湾を放棄した、台湾、澎湖島の権利、権原及び請求権を放棄したというのがわれわれの立場になっておる、こういう事実を申し上げたわけであります。
  146. 帆足計

    ○帆足委員 それでは、われわれは台湾を放棄しましたが、だれが放棄した台湾を今拾っておりますでしょうか。だれのものですか、台湾は。台湾はただ台湾人のものでしょうか。だれのものでありますか、その拾得者を一つ明らかにしていただきたい。
  147. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 拾ったという言葉はまあ非常にどうかと思いますけれども、要するに台湾におきましては、現在中華民国の政府がおるということであります。ただ、これについて日本が一切のコメントをする権限はない。こういうことは、これは平和条約において、われわれは台湾に関する権利、権原、請求権一切を放棄しているという立場において、われわれはコメントする気持はない、こういうことなんです。
  148. 帆足計

    ○帆足委員 それでは、日本は捨てた、捨てたものを蒋介石が現在拾っているということになるような御答弁でありますけれども、しかし先ほど条約局長が言われましたように、戦い敗れたあとに、台湾は、ポツダム宣言、カイロ宣言に従いまして中国に返還されておる。それをアメリカも認め、そうして中国の中央政府が接収してこれを台湾省にしておる。そのときだれも異存を言ってない。そうしてその蒋介石が、戦い敗れて台湾に中国の中央政府を移したときに、日本政府はこれをもって昔の中華民国の継承者として認めて、そうして国際連合に置いておる。ここであるとするならば、私は落ちておった財布は一応警察に届けられている、すなわち中国のものであるということはもう確認されておる、こう見るべきが当然であって、そうであるからこそ、そこにおる蒋介石が中華民国の政権としての資格を持っておると日本政府は認定したものであると私は思う。だとするならば、中華民国と北京の中華人民共和国との二つの政府の対立の問題は、中国の領土内におけるところの内乱であって、内戦であって、そうして国と国との、独立国同士の戦争でなくて、これは内戦である。従って中国自身のこれは国民判断にまかすべき問題であるという論理になると思いますが、外務大臣はどうお考えですか。
  149. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 日本だけがそういう立場をとっておるようなお話がございましたけれども、御承知のように、国連におきまして、中華民国政府国民政府が代表することを、中国を代表するいわゆる代表権として五十一カ国が認めておるわけであります。その事実については、私どもだけではないということを御説明申し上げておきたいと思います。それから、カイロ宣言におきまして、日本が清国人から奪取したものをもとへ返すのだ、こういうことになっておりまして、しかも日本はそれを放棄した、台湾に対する一切のものを放棄した、こういう事情にありまするので、あとは関係国間の協議によって決定さるべきものだと思いますが、われわれとしてその事実を知っておるだけで、放棄したものが、あれは放棄したがどこへ行くべきものだということを言うべき立場にない、こういうことだと思います。
  150. 堀内一雄

    堀内委員長 帆足君に申し上げます。時間がだいぶ超過しておりますから……。
  151. 帆足計

    ○帆足委員 もう一、二時間で終わります。  そこで、私は、この問題に論理にはずれることがあるということをはっきり政府に知っていただきたいし、国民に知っていただきたいのですが、もし台湾がいまだに帰属不明の島であるならば、帰属不明の島におるところの蒋介石政権は、それは台湾自治政権と言えるかどうか知りませんけれども、台湾焼きイモ政権と言えるか知らぬけれども、中華民国とは言えないと思うのです。すなわち領土を持っていなくて、ただ人を支配しているだけでは、これは中華民国と言えないし、中華民国と政府が認めて、過去の中国の継承者として認めておるならば、これは中国の領土であるから、中華人民共和国との対立は内戦にすぎない。また最近チェスター・ボールズ氏など逃げ道を作って英国に助けを求めて、そうして台湾はどこの帰属かわからないのだから、あれは中華民国でないのだ、従って台湾は将来信託統治にするか、適当な保護国にして、そうして台湾自治政府にしようという趣旨のことを、フォーリン・アフェアーズに書いていることは御承知の通り、従って最近その方向に傾いていることは御承知の通りです。従って蒋介石は、これに対して非常な恐怖を感じておる。ところが、蒋介石政権としては、自分は中国の中央政府の継承者である、従って、やがて中国全体をとってしまいたいというので、現在の台湾にある蒋介石政権の中には、中国四百余州の省に対して省長まで置いて、むだな月給を払っておいて、そうして大陸反攻しなければどうもつじつまが合わないという立場に置かれておる。ところが、自分の力で大陸反攻することはできないから、世界戦争か何か起こって、極東で戦乱が拡大して、そういうどさくさまぎれに大陸反攻を企てるというのが、従来の蒋介石の腹の中にある気持であったことは、御承知の通りです。しかしこれがもう望みなきことになってしまった。しかもここにさらに矛盾は、台湾のほかに金門、馬祖というものがついておる。金門、馬祖は、これは一体台湾の中にくっついているものか、それとも中国の領土ですか、外務大臣にお尋ねしたい。
  152. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 その問題にお答えいたしますよりもむしろ、この問題は、要するに内政問題かどうかということのようでございますから、お答えいたしますると、中国の領土内に二つの政権がある。単にそのいずれが他を実効的に支配するようになるかということであるならば、それは内政問題であるということができると思いますが、しかしながら、一方において、台湾の帰属は、少なくとも法律的には、これは私が先ほど申し上げたように未決定の問題であって、国際的な処理が必要であるということと、もう一つは、台湾問題は現実国際政治的な問題でありまして、ことに万一にも解決のためにす実力が行使されるごとき場合には、極東、ひいては世界の平和に重大な影響があるということも考えられるということからして、単にこれを内政問題として片づけることはできないと思います。
  153. 帆足計

    ○帆足委員 最後に。私は、この問題をもっと論理的に追及したいと思いますが、時間がありませんから。しかし、いやしくも論理学の初歩を心得ておる一般の世論が、いかにこれは矛盾多く罪深きものであるかということは、もうよくおわかりだと思うのです。それで、台湾は、政府が最初解釈したように、国民政府が継承者として、そうして台湾は台湾省であった、敗れた政権がそこに逃げ込んできて、そして内乱状況で二つの政権が対立している、こう見るのが私は当然であると思う。そうだとするならば、内政干渉アメリカがすることはできなくなるものだから、その論理が適用せぬので、近ごろは仕方なしに、台湾はだれが拾ったかまだわからぬと言う。だれが拾ったかわからぬならば、早く国際会議を開いてとっととおきめになればいいのに、捨てられたあと十五年もまだだれもきめる人がないということはあり得ないことであって、終戦直後台湾省になって、アメリカ国務省は幾たびか宣言書を出してそれを認めておるのです。そして世界の国々の大部分がそれを認めておる。それに今になって、今度はどうもその論理が通用しなくなってき始めたものですから、金門、馬祖は捨ててしまう。金門、馬祖はどうも言いのがれがつかぬから捨ててしまって、台湾の焼きイモ一つならば、これは拾得者がよくわからぬというようなことで、台湾自治政府でも作らせようというのが、いわゆる二つの中国の陰謀と最近言われておる第二幕の問題です。これに対して日本政府がどういう態度をとるかということは、注目されておる問題でありますから、私はこのことの実相をよく国民に知っていただいて、日本政府判断を誤らないようにしていただきたい、こう思う次第です。  時間もありませんから、次の機会にさらに質問を継続させていただきます。
  154. 堀内一雄

    堀内委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後一時一分散会