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1961-02-02 第38回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年二月二日(木曜日)     午後二時十四分開議  出席委員    委員長 堀内 一雄君    理事 北澤 直吉君 理事 竹内 俊吉君    理事 野田 武夫君 理事 福田 篤泰君    理事 森下 國雄君 理事 戸叶 里子君       正示啓次郎君    床次 徳二君       橋本 龍伍君    椎熊 三郎君       稻村 隆一君    帆足  計君       穗積 七郎君    細迫 兼光君  出席国務大臣         外 務 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         外務政務次官  津島 文治君         外務事務官         (アジア局長) 伊關佑二郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安藤 吉光君         外務事務官         (欧亜局長)  金山 正英君         外務事務官         (経済局長)  牛場 信彦君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         外務事務官         (国際連合局         長)      鶴岡 千仭君  委員外出席者         外務事務官         (アジア局賠償         部長)     小田部謙一君         通商産業事務官         (通商局次長) 瓜生 復男君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 一月三十日  委員成田知巳君辞任につき、その補欠として稻  村隆一君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 堀内一雄

    堀内委員長 これより会議を開きます。  国際状勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。野田武夫君。
  3. 野田武夫

    野田(武)委員 先般の池田総理施政方針演説並び小坂外務大臣外交演説によりまして、大体の政府外交方針を伺ったのでありますが、なお明確を欠く点がありますので、この際、世界平和外交の確立、また現実的に解決を迫られておりますところの重要な外交問題につきまして、二、三外務大臣にお尋ねいたしたいと思います。外相はなるべく具体的に、率直なお答えをお願いいたしたいと希望いたします。  世界の現状において最も重要な問題は、国際緊張の主なる原因となっておりますところの東西対立情勢をどうして打開していくかということは言うまでもないことで、ございます。しこうして、核兵器進歩や、ロケット兵器の発達に伴いまして、一たん全面戦争が起こりましたら、全人類文化が壊滅するという現在でございますから、何とかしてこの国際緊張緩和をはかって恒久平和を確立したいということは、世界諸国民の念願といわねばなりません。この念願は、一日々々全世界にみなぎっておるということは事実でございます。これに対しまして、昨年の巨頭会談の失敗は、これは何といっても世界の全人類が、東西を代表するところのソ連アメリカ動向を注視しておるのでありますが、昨年末のモスクワにおける共産党首脳会談、これにおいても、はっきりと平和共存政策を再確認し、これを声明いたしております。またアメリカにおきましては、ケネディ大統領も、その就任の演説におきまして、この際東西双方が新しく平和の追求を積極的に始めなければならぬという強い呼びかけをいたしております。すなわち、世界は新しい転機に差しかかっていることは事実であります。しかし、両者は、おのおの強大なる武力を背景として力の平和攻勢であるということも、また見のがしてはならない。モスクワにおける共産党首脳会談におきましても、平和共存政策というのは、資本主義共産主義の闘争の一形態であるというようなことを公言しております。また、ケネディ大統領も、その一般教書の中に、ソ連、中共は世界支配する野心を捨てていない、警戒せねばならぬという意味をはっきり述べております。従って世界人類念願する国際緊張緩和は、なお前途きわめて多難といわざるを得ないものがあります。しかも、戦争の惨禍を身をもりて体験いたしました日本国民の平和に対する念願というのは、決して他の国民に劣るものではございません。政府としては、この日本国民念願を体して、国際情勢が新しい局面にあるこの機会をとらえて、従来にも増して、積極的な平和外交を展開すべき時期でないかと思うのでございます。これらにつきまして、外務大臣所信をお伺いいたしたいと存じます。
  4. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お答えを申し上げます。  国際情勢の判断、また東西緊張緩和努力せなければならないという私ども気持、そういうものに対する御意見は、私も、ただいまの野田議員のお述べになりました御意見と全く同感でございます。お言葉にもありましたように、この現在の情勢を分析しつつも、その中に何とかして平和というものを確保していきたい、こういう気持において、私ども世界のどの国の国民にも劣らない強い熱望を持っておるという気持が強いのでありまして、従いまして、私どもは前向きの姿勢でこの問題を解決するように進んでいきたい、かように思っておる次第でございます。東西関係は、現実にいろいろ困難な問題がありますので、それをいろいろあげつらうよりも、そういうことによって引き離すようなことを考えるよりも、前向きの姿勢で何とかこれをつなぎ合わせる平和への努力をいたしたい、かような気持でございます。  ただ、これをいたしまする場合に、私は本会議施政方針演説に関連しても申し上げたのでございまするが、とにかく問題というものは、話し合いによって解決していく。しかもその話し合いというものは、相手方に自分主張を一方的に押しつけるのではない、その主張が分かれておっても、さらに話し合いを続けて、そして一歩一歩解決への努力を積み上げていくということが必要である。もう一つは、内政に相互が干渉しない、内政不干渉立場を堅持する。もう一つは、東西間に現実に争いになっていない場所に、新たに東西間の緊張を増すようなことを持ち込まないようにする、東西間の争点を新しい地帯に持ち込まないようにする、こういうことがまず必要な三つの原則ではなかろうか。そういう方向努力してみたい。  また、われわれが国連において提唱し続けております問題に、軍縮一つの大きな現実的な解決の手がかりになるところの核実験停止協定の問題があるわけであります。この問題につきまして、ことしこそは何とかこれを実現していきたい、かようなことを申し上げたのでありますが、そういうことを含めまして、今野田委員の仰せられる通り、私は御一緒にそうした同じ気持でこの平和を確保する方向に向かって努力していきたい、かように存じておる次第でございます。
  5. 野田武夫

    野田(武)委員 ただいま外務大臣所信をお伺いしましたが、もとより外務大臣東西緊張緩和に対するお考え方は了解もできますし、また私どもとしては非常に意を強うするものでございますが、従来ややもすれば、言葉では、いわゆる日本として積極的な態度をもって東西緩和に当たるということをしばしば政府も声明をいたしたり、またいろいろな機会でその考え方を述べておられますが、やはり従来の日本政府態度といたしましては、端的に申し上げると、まだまだやはり他の国の意向をことさらにそんたくして、独自の見解によって行動するという意欲が欠けておったようなきらいがあるのでございます。しかし、ただいま外務大臣は、ことしこそ前向きの姿勢でもってこれに当たる、非常な御決意を承りまして、できれば今お話のありました軍縮の問題、特に実行可能とまでいわれている核実験停止の問題や、あるいは核兵器の管理の問題等につきましては、一つ言葉通り積極的に世界人類の平和という正しい理念に基づいて前向きの姿勢一つ堅持していっていただきたいということをさらに希望しておきます。ただいまの日本立場としてのお考え、はっきりわかりましたが、これは特に日本がこの両陣営の緊張緩和に十分一役買って出る資格と立場を持っているのじゃないか。それはすなわち、日本アジアの有力な一員として、今後国際問題の解決あたりましては、その発言の力においても、また実行の力におきましても、今日は国際間に非常に重要視されているという事実からであります。しかも日本アジア一員としての使命というものは、これはすでに施政方針演説外交演説においていろいろ論ぜられておりますが、この意味におきまして、また日本アジア外交に対しましてやはり確固たる一つ方針を持っていただきたい。同時に、今日の世界情勢から申しますと、アジアアフリカと大体地域的に、またその環境においていろいろ近接するものがあるのでございますから、ひとりアジア外交だけではなくして、アジアアフリカ外交について日本政府としての確固たる一つ考え方を確立して今後の外交折衝に当たり、外交行動をとるべきではないかと考えております。そこで、アジア、特にアフリカにおきましては、いわゆる新興国家が多いのでありまして、これがまた東西対立国際情勢に反映して、アジアアフリカ地域東西冷戦主要舞台となっている観があるのでございます。従って、アジアアフリカ新興独立国は、かつての植民地として植民地主義に対する強い警戒心があることは当然であります。共産圏側がこれら地域に手を伸ばすのには絶好の機会である、また条件が整っている、現に今日までの共産圏側アジアアフリカに対する態度行動においてもこれが認められるのであります。これら旧来の植民地主義支配から免れた諸国が、再び共産主義支配に陥ることを各国とも希望していないことはわれわれ十分考えられる。これら諸国の真の願望は何かと申しますと、すなわち国民繁栄、福祉を目ざして経済的な後進性をすみやかに克服して、政治的、経済的並びに社会文化において独立の実をあげることであると考えるのでございます。  一方世界全体の繁栄をはかるために特に必要なことは、経済的先進国と低開発地区との間の格差をなくすことである。これがためには先進国から経済技術その他の活発な援助をしてその繁栄を促進するということが最も急務ではないかと思っております。このことは現在広く国際的にも認識されておりまして、先進諸国の間におきましては、従来各国が全く独自の見地から個別的にこれを行なって低開発国開発援助に当たっておったのでございますが、この先進国の低開発地区に対する援助というものは、特に開発援助グループ、対インド、対パキスタン債権者会議等を通じて、最近は先進諸国の協調によって低開発国援助を行なう機運がだんだん盛り上がっていることは、私は一つ進歩だと考えております。こうした世界的動向の中におきまして、わが国といたしましては特にアジア一員であり、また地域的に歴史的にその他におきまして最も深い関係がありますこれらアジアアフリカ後進地区に対しまして、この際できるだけの援助政策をとる必要があるんじゃないか。またそれはひとりアジアアフリカ新興国のためばかりではありませんで、これはひいてはわが国自身高度成長のためにも、また国際協力の面からいたしましても、この際低開発諸国との経済関係を一そう緊密化していく必要があると思っております。これらにつきまして外務大臣といたしましては、このアジアアフリカの低開発地区に対する日本としての援助計画なり、また今後これらに対する施策につきまして御説明いただけばけっこうだと思っております。
  6. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 アジアアフリカ、特にアフリカにおきまして非常に新しい国が多くなって参り、この国がやはり最近までいわゆる植民地国としておったという関係から、新たに独立をかち得た諸国の中に、その国の基礎を強固にし、その国民をしあわせにするための非常に強い経済的な立ち上がりの欲求が出ておるという認識、またこれらの国に対していわゆる先進諸国と称せられるものの間においてできるだけこの要望を満たすための経済的な協力をしなければならぬという心がまえに対する認識、あるいはこの問題がいわゆる今までの東西問題と並んで新たに南北問題とも称せられて、そしてこの問題についてこれからの新たなる課題として世界の平和のためにも、またこの新興諸国のためにも、あるいはまたその援助する国自身のためにも非常に大きな問題になっておるということにつきまして、ただいま野田議員の仰せられた事柄につきまして私も多く同感の意を表する次第でございます。ただいまお言葉の中にもありましたように、そうした国際協力一つ各国間の機関でまとめていこうということから、いわゆる開発援助グループDAGというものができて、日本もそれに加盟したわけであります。それからインドパキスタンに対する債権者会議というものにもわが国も入っておるわけであります。新たに第二世銀IDAというものができております。これから既存のDAGとか、あるいは世界銀行とか、そういうものとも関連しまして、国連の中にありまする国際開発基金というようなものともすべてからみ合って、今の新しく独立した国々に対する援助をやっていこうという世界的機運、これに対してわれわれも大いに協力し、努力をして参りたいということにつきまして、私は非常な熱意を傾けたいと考えておる次第であります。先般国会において御協賛をいただきました海外経済協力基金、これにつきまして、明年度もさらに予算を五十億追加するように原案に組んでいただいておるわけでございますが、これらを大いに活用して参りたいと考えております。最近総裁人事等もきまりましたようでありますが、新しくできた新役員諸君とも協力いたしまして一つ大いにやって参りたいと思います。  それから、やはりこの新しくできた、ことにアジアの国の中にございます気分に、援助もさることながら、やはり自分らの貿易のバランスを健全に保っていきたいという希望もあるわけでございます。従って、われわれも、その国の経済の許す限り、一次産品買付等についても、やはり協力できるものは協力すべきだと思っておりますし、また経済協力節金を入れるために、日本人がその国へ行って入国ができ、滞在ができ、しかもまた商活動ができる基礎というものが必要なわけでございますが、現在それのない国が、東南アジアの国にはたくさんあるわけであります。従って、東南アジアの国との間に、通商航海条約を結んで参りたいということで努力いたしまして、昨年の暮れマラヤとでき、それからフィリピン及びパキスタンとの間にも、通商航海条約の調印ができたわけであります。この委員会において御審議を願いたいと考えておりまするが、どうぞこれもできるだけすみやかに批准をしていただけますようにお願いしたいと思います。ことにフィリピンとの間におきましては、ずいぶん難航しておりましたが、私どもは、互譲の精神から、できるだけのものは譲って、しかもなおそうした経済協力友邦フィリピンとの間にできることが必要だと考えまして、大乗的な見地において作った条約でございますから、特に皆様の御理解をいただきまして、御賛成を願いたいと思っております。なお、今年度のところ、昨年の暮れからインドネシアとの間に通商航海条約の相談をいたしておりますので、これも何とかそのうちにまとめ上げたいと考えておる次第でありますが、そういうように、日本人がやっぱり向こうへ行って、人と物との交流がたやすくできるような素地を作る。それが一方通商関係も活発にしていく。それから、われわれが経済協力基金を持って経済協力し得るような法案も作っていただいたわけで、予算的な裏づけもいただいておるわけでございますから、そうしたものを、われわれ、国と国との間の二国間の協定としてはできるだけやっていく、そうしてDAGというようなものの中においても、大いに活躍をして参りたい、かように思っておる次第でございます。
  7. 野田武夫

    野田(武)委員 だんだんアジアアフリカに対する協力態勢を整備して、これを強力化していくということで非常にけっこうなことと思いますが、今大臣が言われました三十六年度の予算に出てきた五十億の協力資金、前年も五十億だったと思いますが、実は五十億や百億あっても、今大臣のおっしゃるような強力な経済援助政策の一端としてはなかなか心細いような感じがするのであります。実は協力基金の設定の場合におきましては、アメリカ援助資金と申しますか、あるいは西ドイツあたりのそういう経済協力基金というものも総合的に勘案して、一つ日本も出したらいいのじゃないかという説が前にあったことを記憶いたしております。しかしこれは各国のおのおのの考え方がありましょうから、その問題は別といたしまして、前年度においても、また三十六年度においても五十億の協力基金ができるとすれば、大体この協力基金を本年度はどういうふうに生かしていかれるか、何かそういう御計画でもあれば承りたいと思います。
  8. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 野田委員御指摘のように、あまり大きな金額でないということは私もさように思うのでありますが、昨年度のところは基金がありながら全く動きませんでしたので、本年こそは一つ動かして参りたい、こう思うのですが、私の構想といたしましては——これはまだ個人の構想の域を出ないわけであります。各省間の打ち合わせもまだいたしておりませんし、御承知のようにあれは主管官庁経済企画庁ですので、ここで私がどうこう言うことは責任がはなはだあいまいなものになるわけでありますが、私はやはりああいう基金はできるだけ国際的な大きな動きと平仄を合わせて使っていくのがいいのじゃないか、かような方向だけ考えておるわけであります。御承知のように、日本国連におきます経済協力分担金は、昨年度あたりの三倍に今度の予算でしてもらったわけで、非常にこの点では日本協力国連の内部において賞賛という大げさですが、認めてもらっている声が高いわけです。それから第二世銀がことしから新しく動く。これらもございまするし、そういうものと協力していくという方向がいいのじゃなかろうかというふうに思っております。その他、日本もここで二十億ドルの外貨を保有するようになったわけでございますから、一つその辺も大蔵当局ともよく相談しながら、今申し上げたような方針で、一次産品買付であるとかあるいは経済協力をバイラテラルにやる場合の構想であるとかいうふうなことについては、いろいろ活発にやって参りたいと思うのでございますが、何と申しましても先生方の御後援をいただかなければなりません。この点よろしくお願いいたします。
  9. 野田武夫

    野田(武)委員 大臣も、五十億程度ではなかなか仕事がむずかしいというようにお考えだということは、全く同感でございます。日本経済も順調に進んで、二兆円近い予算が計上されることになったのであります。これは特に今後の問題でありますが、経済協力基金としてはあまりに過小であるという考え方を大体みんな持っておると思います。できるならば、一つ経済企画庁所管とかどこの所管でなくて、外務大臣が今後できるだけ基金の大きな根底を作られまして、積極的な施策を講じていただきたい。  これはちょうどそのときから問題になっておりましたが、昨年度はとうとう使わずに済んでしまったので、どう使うかわからなくなっております。これは通産省の関係ですが、日本としては今外務大臣各国と連絡して、そうしてこの基金の使い方をプールでやるとか、あるいはその他のお考え方があるかと思いますが、日本アジアアフリカにおける最も優秀な工業国として、技術的にもまたその他の経験からいたしましても、これくらいの程度基金ならば大きなことを考えてもなかなか実現できないから、できれば一つ日本中小企業アジアアフリカに持っていって、そうして向こう技術指導をしたり、またその他のいろいろな援助をやったらどうか、その程度は大体規模としても考えられるんじゃないかという意見がよく出ておるわけであります。私はどうこうというのではございませんが、去年も五十億、金だけとって何も仕事ができない、ことしまた五十億出た、せっかく金高は、少なくとも現実にそういう基金があるのでございますから、一つ十分これを活用していただきたい、こう希望するのであります。  さらに一つわれわれが注意することは、この後進地域に対する経済援助あたりまして、後進国の中には非常にこれを誤解して、いわゆる日本が資本的な攻勢をして、何か日本が特別な考え方によってこういう経済援助に出るのではないかというように誤解している国もなきにしもあらずと思っておりますが、これらはやはり何と申しましてもアジアアフリカ外交の一番大事なことであります。こういう誤解がないように、一つ日本の真意を向こうは理解して、そうして強く手を握ってお互いの人類の幸福に向かうというように、今まで多少そういう懸念があったのでございますから、特に一つ注意を願いたいし、もしこれについて大臣のお考えがあればさらに承っておきたいと思っております。
  10. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 まことに適切な御注意でございまして、私どもやはりこの経済協力をする場合に、どうも性急なる余りさような誤解を受けることがあってはならないのだということは、特に気をつけなければならぬ点だと思っておる次第でございます。ことに東南アジアの場合、その工業規模と申しますと、やはりアメリカあるいはソ連というような非常に大規模工業になれた国の技術よりも、日本のような中小規模工業というものが非常に適応しいい、こういう規模的な条件もございます。大いに中小企業的な規模工業を十分に先方にそしゃくしてもらうということをいたしたいと思っておるのであります。現に中小工業技術センターというようなものを経済協力でいろいろ計画しておるのは御承知通りでございますが、さようなことを大いにやって参りたいと思っております。  それからただいま国連特別基金のことを申しましたので、私の一つ考えといたしまして、その基金を出しておるのでございますし、それからそれの関係日本にその基金によって建物を作れるというような割当も受けられるようでございまして、先般来から外務省国連局において検討してもらっておりまして、実はエカフェの関係で、社会防衛訓練センターというのであります。それから例のAPO、アジア生産性本部建物、それから世界地震工学研究訓練センター、この三つ東京一つ作りたいというふうに思っておるのでありますが、これらができますことによって、やはりここに、各国のそうした興味を持った方が東京に来る、東京に来ていろいろ訓練を受ける、それがまた各国に帰るということによって、非常に日本に対する——アジアにおいて最も高い工業力日本は持っておるわけであります。その日本工業力の実態をみなに理解してもらう、そして自然に経済協力というものの素地もできていくのではないか、こんなことも考えておる次第であります。
  11. 野田武夫

    野田(武)委員 この問題については一段の一つ活発な、何と申しますか、計画の遂行に当たっていただきたいことをお願いしまして、次に移ります。  現在、日韓交渉予備会談が行なわれておるようでありますが、この日韓問題というのは長い間の懸案でございまして、どの内閣もずいぶん日韓交渉には骨折っておられる。もうすでに交渉が成立するかと思うと、そのまぎわでずいぶんいろいろ行き違いができておるようであります。そこで、願わくば、韓国との間の重要懸案をすみやかに解決して、現在のような不安定な日韓関係を清算して、一日も早く友好親善関係を樹立することにしたいということは、これはもうみんなの大体希望するところでございます。(「反対だ」と呼ぶ者あり)この政府方針は、単に問題の李ライン周辺海域における操業問題に関連して、日韓関係の改善に最も切実な関心を寄せている漁業関係者ばかりでなくて、いわゆる善隣友好関係の促進を希望している者は、今反対と言われましたが、これは一部の反対はあるかもしれませんが、大多数はこれを希望いたしておるところでございます。(「絶対反対だ」と呼ぶ者あり)しかるに、日韓会談について、今うしろでヤジっておられる反対の立場をとっておる方々、すなわち、この理由としては日韓国交の正常化は、南北朝鮮の分裂が固定してくる、朝鮮民族の念願である祖国統一を阻害するゆえに、さしあたり日韓会談のかわりに南北両朝鮮との間にそれぞれ政治、経済文化関係を設定すべしとの意見もあるようであります。ついては、この際、かかる主張と関連して以下二、三の点について政府の見解をただしてみたいと思います。  第一に、最近南北朝鮮の双方から朝鮮統一を望む声が伝えられているからといって、あたかも朝鮮統一の日が現実に接近しているかのごとく考えておられますのは、いささか性急な判断に過ぎるように思われるのであります。朝鮮人が一日も早く祖国の統一を望んでいるということは当然考えられることでありますし、また、わが国もこれが実現するならばまことにけっこうなことではないか。これらに対して何人も異存のあろうはずはございません。しかしながら、わが国の外交施策考えますにあたりましては、そのような統一の希望があるというようなばく然たるところから出発していくわけにはいかない。韓国及び北朝鮮の事情並びにその背後の国際情勢から見まして、はたして、きわめて近い将来に、現実に統一が実現する見通しがあるかどうか。その客観的な判断に立つことが肝要であると思いますが、この点につきまして、政府のお考えをお聞きしてみたいと思うのであります。
  12. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 韓国との問題について、この関係を改善するということは、今仰せのように、歴代の内閣において努力されてきておるところであります。幸いにいたしまして、四月革命以後できました張勉政権が、親日ということを一つの大きな柱に打ち出して参りました。この機を逸せずに交渉したいということで、現在会談が予備会談として進行中であることは御承知通りであります。この日韓会談につきまして、最近非常にこれに反対であるというような御意向の方もあるようでございますが、御反対になりましても、現在の関係がいいということを言っていらっしゃる方はないのであって、これを改善したいという御希望はやはりお持ちの上で言っていらっしゃるのだろうと思うのであります。非常に不幸なことに、あの李承晩ラインという公海上に設けられました排他的な線によって、われわれの同胞が拉致される、それを返せという交渉ばかり続けておることが、最も近い韓国との関係において、われわれ日本として適切なものであるかというと、これは不正常のものであるということは、だれしもお思いになることと思うのであります。ただ、非常に不幸な事態は、南北に朝鮮が二分されておりまして、そうして、この韓国政府の事実上の支配権というものが北緯三十八度線の北には及んでいないということが、この反対論の根拠だと思うのでありますが、これは御承知のように、一九四八年の国連の決議におきまして自由な選挙を行なえ、そしてそれを承認しようということになったところが、韓国側においてその自由な選挙を行なって、北の方においてはこれを行なわなかった。従って、韓国を朝鮮における合法政府と認めるということを国連の中において三十八カ国が認めておる。こういう関係で、われわれもこれを認めておるわけであります。従って、これと交渉しておるわけでありますが、しかし、国連の監視下において全朝鮮が自由な選挙を行なうことによって統一されるということは、これはもとより私どもも望むところでございます。しかし、これを一体待っておって、今の関係でいいかどうかということが認識の分かれるところであろうと思うのであります。私どもは、これもなかなかそういうわけにはいかぬというふうに思っておるわけでございます。のみならず、韓国との関係を改善し、正常な国交を持つということは、決してこのわれわれのアジアにおける緊張を増すゆえんではない。むしろこれを緩和していく第一段階である、かように考えておるわけでございます。さようなことでございまして、われわれとしては鋭意会談を進めて、両国の関係を一日も早く改善いたしたい、かように思っておる次第であります。
  13. 野田武夫

    野田(武)委員 私も外務大臣のお考えに賛成のものでございまして、朝鮮が南北に分裂している間、日韓国交の正常化は進めないということになれば、過去十年間のようなきわめて不安定な日韓関係が、今後もかなり長い間続くということになりまして、もしこういうことになりますれば、今大臣が言われましたように、善隣友好を旨とするわが国の基本的な外交方針並びに日韓の間に存する歴史的な関係にかんがみまして、きわめて遺憾な結果となると思うのであります。しこうして、今お話の日韓予備会談をやっておりますが、大体日韓交渉の前途に対して、これはやってみなければわからぬとおっしゃるかもしれませんが、現在の日韓の間の会談の成り行き、その他結論においてどういうお見通しを持っておられますか。
  14. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 非常に友好的な雰囲気のうちに会談は進められておりますが、詳細につきましては、事務当局から御答弁を申し上げた方がいいと思います。
  15. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 十月の末から予備会談を始めまして、十二月の末に一時休会いたしまして、また最近これを始めております。今のところ会談で取り上げております項目と申しますのは、漁業問題、それから請求権の問題、それから法的地位の問題という三つになっておりまして、法的地位の問題につきましてはかなり進歩いたしております。請求権の問題と漁業問題につきましては、これは非常にむずかしい問題でございまして、請求権につきましては日本側の方にいろいろとむずかしい点がございます。漁業問題につきましては韓国側の方に世論と申しますか、あるいは韓国側の野党と申しますか、まだ何と申しますか踏み切れない点もございまして、それほど進捗いたしておりませんけれども、だいぶ最近空気は動いてきつつあるやにも認められます。もう少ししんぼう強く交渉してみたい、そういうふうに今考えておるのでありまして、三つのうち法的地位がかなり進捗しておる、それから請求権と漁業というものにつきましては、今動かんとしつつある、今後に期待しておるというふうなのが実情でございます。
  16. 野田武夫

    野田(武)委員 大体日韓問題に対するお考え交渉の状態がわかりましたので、次の問題に移りたいと思います。  次の問題と申しますのは、今国際間におきましても、また日本の外交におきましてもきわめて切実であり重大でありますところの日中問題でございます。この問題につきましては池田総理施政方針の中で、中国大陸との関係改善、特に貿易の増進は、わが国としても歓迎するところであり、この問題への接近が本年外交の一つの課題であると述べております。日中問題がいかに重要性を持っておるかということは、この総理の演説の一節を見ましても明らかであります。しこうしてこの日中問題は、この解決ということが、ただひとり日本立場ばかりでなくて、国際間に非常な影響を持つだけに、それだけにまた外務大臣としても、この問題の衝に当たって、きわめて重大な御決意と同時に、万般の事態を考慮されて、遺憾なきを期されるべき問題でございまして、私どもは、この日中問題の改善が一日も早く実を結ぶことを希望する者の一員といたしまして、率直に一つ外務大臣のお考えを承ってみたいと思うのであります。  そこで先般の外務大臣外交演説にも、この中共の問題が取り上げられまして、その際の一節にも出ておりますが、ここにお配り願った中にも出ておりますが、「中共問題は、最近は、国際間においても、国連代表権問題あるいは軍縮問題等とも関連いたしまして、新たなる注目を集めつつあります。中共が、いかなるときに、また、いかなる方法によって国際社会に参加できるかの問題は、複雑な要素を含んでいるのでありますから、政府は、中共の動向とこれをめぐる国際情勢の推移を慎重に見きわめて参る所存であります。しかしながら、中共との政治的関係の調整は、広く国際政治上の問題として考えられねばならないのであります。わが国の、世界、特にアジアにおいて占める地位にもかんがみ、わが国の動きが国際的に多大の影響を及ぼすことを十分考慮しなければならないと思うのであります。」、さらに末尾においては、「高度の政治的考慮を必要としている」という言葉を使っておられます。従って、総理の言われる本年外交の最重要な課題の一つである中国問題が、遺憾ながらなかなかわれわれの希望するように前進しないという一つの要因がどこかにあるのではないか。これらを検討して参ります場合には、これは中国問題だけで実は相当時間をとってお尋ねしたいと思いましたが、時間の割当がございまして制限されておりますから、きわめて遺憾ながら簡単に一つお尋ねいたしたいと思うのでありますが、私はこの問題の解決にあたっては、もちろん日本としてはアジア一員としての立場、同時に国際的の影響を考えて、高度の政治的考慮を払うという外務大臣言葉はよくわかります。しかし従来の日本政府態度に対しまして、中国側が盛んに敵視政策をとっている言葉を使っております。私が特にこの問題を取り上げますのは、一九五八年の第四次民間貿易協定に私が関係いたしておりましただけにその間の事情が多少わかっているつもりでありますが、これは率直にいって、日本態度並びに中共の態度ともに一つお互いに、反省という言葉は過ぎるかもしれませんが、ともに慎重な考慮をしてやらなければこの問題の解決はできないと思う。  そこでこの機会に私は申し上げますが、実は特にこの問題は、第四次協定を結ぶまでは保守党も革新党も一緒になって、貿易促進の議員連盟を作ってその衝に当たっておりました。第四次協定が不成立に終わった以後というものは、だいぶん両者のうちに間隔が出て参りまして、国論においても相当な考え方の相違が現われてきておるようであります。私は、日中問題のこの解決外務大臣の言われる国際的の影響があることはもとより認めますが、しかし同時にもっと強くやはりアジア一員である日本としての自主的な独自な見解を尊重した方がいいのじゃないか。もとより勝手なことをやれというのではありません。そういう心がまえがやはりこの問題の解決に重要じゃないかと思っております。また同時に中共が盛んにいっておりますところの敵視政策を日本がとっているということ、これは私当時関係した一員として当たっていない、時間の制限がありますから申し述べませんが、第四次協定を締結するという熱意におきましては、私どもは中共より以上の熱意を示してこれに当たったわけであります。当時の岸内閣の中共に対する態度も全然敵視政策をとるとか、敵視した態度をとったということはないのであります。ここに大きな中共側の誤解があることを私は今でも遺憾に思っております。これは私は実例を引いてもよろしゅうございますが、今申しますところの時間の制限がありますから申しませんが、(「ノー、ノー」と呼ぶ者あり)ノー、ノーとおっしゃるから二、三を申し上げます。たとえば当時、協定の内容として一番問題になったのは、代表部を設置する問題あるいは指紋の問題あるいは決済の問題あるいは国旗掲揚の問題、これらにつきまして、たとえば一つ例をあげますと、指紋の問題のごときは、私みずからこれに当たりまして、政府といたしましては改正法律案を出しまして指紋の問題を解決いたしております。また代表部設置につきましても政府はこれを認めまして、ただ国交が正常化していないから、つまり国交正常化に基づく外交官としての代表部の部員に対する資格はないが、同様な待遇をするということまで明言しておる。また決済問題は、これは両者において片づいた。最後に残った国旗掲揚の問題についても、中共はこれを権利として認めてくれということでございましたが、これは国際法上国交が正常化いたしておりませんから、権利として認めることはできないが、最大の敬意を払ってこれに対する保護もしよう、またいついかなるとき、いかなる場所においても国旗掲揚を認めるというまでの態度をとったわけでございます。当時私は何がゆえにあの第四次協定が不成立に終わったかという理由を自分自身でもいろいろと調べてみたのでございますが、中共側に相当政治的意向があったのじゃないかということを私は想像をしておるのでございます。しかし今これを論争いたしましても、これはむだなことでございまして、これらの点につきまして、私も一日も早く日中の友好が促進されて、互いにともに手を握って、そうしていわゆるアジアの同士として、お互いアジア一員として、また世界平和のためにわれわれは貢献する、そのためには経済的な提携もする、こういう立場からいたしまして、この問題の解決を非常に希望するのであります。そこで私が特にお尋ねしたいことは、今日日本政府といたしまして日中間の貿易は非常に希望するということは、前提として総理大臣外務大臣もおっしゃっておりますが、中共側は政府協定でなければ応じないということを言っております。こうしてこれらにつきまして、ただお互いに言いっぱなしでありまして、一向その間の接触と申しますか、先ほど外務大臣は今後の外交は大体話し合いでいきたいということを言っておられましたが、これらについて日本としてそれをいわゆる政府機関でやるか、あるいは何かのやり方、方法、手段は別でありますが、積極的に日本政府の意向を反映するような方法によって中共側と話し合うという心がまえであるかどうか、その点を特に一つ外務大臣のお考えをお聞きしてみたいと思っております。
  17. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 日中間の関係改善の問題につきまして私もそれを改善することは当然のことであるということを外交演説でも申しましたし、今野田委員の仰せられました何か関係を改善していきたいと考える御趣旨、これは私によくわかります。しかし現実の問題としてなかなかそこに困難な問題がたくさんあるわけであります。私はやはり日本と社会制度あるいは政治信条が違う国との間にも東西緊張緩和して平和共存しなければならぬということからいたしますれば、お互いにやはり相手方の立場を認め合うという前提が必要だと思うのであります。そうして相互に内政に干渉しない、この点の理解というものを十分にまず日中両方において持ちたいというふうに希望をいたすのであります。  非常に第四次貿易協定のあれは残念な結果になりましたが、あの締結に当たっての野田委員の御苦心というものは私もよく承知しておりまして敬意を表しておるのでありまするが、まあ、ああいうことはやはり双方の誤解から生じておる。ことに私ども当時岸総理大臣、自民党総裁も別にわれわれと違う考えを持っておられたことは毛頭思わないのでありまして、ただ日本には日本の制度がある、中共には中共の考え方がある。それを誤解からああいうふうにしてしまったということは残念でありまするが、どうも中共問題というものは国内政治の問題として扱わないで、やはり日本考え方日本国民である以上同じことを考えるのだ、こういう前提でまず私は日本の国内においてこの考え方を統一する必要がある。しこうして先方との接触が必要である、かような感じがするのであります。日本の国内においてもどうも全く二つの平行した議論に走っておる、またそういうことが先方にことさらに伝わる、そういう関係で話し合ってみてもなかなかうまくいかないのではないか。なんとかうまくその関係を調整することから始めたい。関係が調整されれば、日本には日本の制度があり、中共には中共の制度がある。お互いにそれを認め合った上で話し合いができる、こういうことになるのではないかと思います。かようなことを考えながら慎重にこの問題をやって参りたい、かように思っておる次第であります。
  18. 野田武夫

    野田(武)委員 私は日中問題というものの基本的な考えが、従来日中貿易というものを主体としての考え方を持っている方が多いようでありますが、私は必ずしも日中貿易ということだけにこだわるのではなくて、真にアジアの平和、ひいては世界の平和のためにはどうしても日中間は友好関係を結ばなければいけない。これに伴うて経済関係もちろん提携していくがよろしい、こういう考え方を持っておるのでございます。従って、各方面から注目されておりますところの中共の国際連合の代表権の問題というものは、必然的に本年の国際連合における大きな課題となってくると思っております。そこで端的に申しますと、中共の参加しない軍縮問題、あるいは世間に伝うるところによれば、一年のうちに中共が核武装をするのではないかとまでいわれておりますし、こういうときにおきまして、核兵器の管理その他の軍縮問題に関連いたしまして、やはり中共が国際連合の一員として、これらの世界平和のために貢献するということは、中共自身の当然の責任であるし、また国際連台の精神から申しましてもあたりまえのことだと思っておりますが、この問題はただ単にそう申し上げましても、先ほどの外務大臣外交演説にもあります通り、すなわちひとり日本だけの問題でなくて、国際的に多大の影響を及ぼすという観点からいたしますと、今日直ちに外務大臣に、具体的にお考えをどうかということは、これは私は必ずしも時宜を得たものではないと自分でも思っております。しかし私の希望としては、これらの問題は、何といっても国際的に重要な影響を来たしますにいたしましても、まずもって日本としては、やはりアジア一員として、アジアの善隣外交の一環として、相当自主的な考えも織り込んで、国際間の外交施策に表わしていただきたい、こういう希望を持つのでございます。さらに最近気象とか郵便ということでも協定したい、これは純技術的な協定でございますが、これらにつきましても、これは単に日本のためとか中共のためだけでなくて、やはりいわゆる人類の福祉の意味からいたしましても、こういうことは当然何か具体的に現われてくる必要があると思っておりますが、私は特に日中問題については、外務大臣は新しい世界の転換期といいますか、アメリカの新大統領の声明にも、中共問題はどうしても何らかの方法において打開しなければならぬという決意を示しておるということから、どうか一番緊密な関連を持っております中共問題につきましては、一つ諸般の情勢を十分御考慮願って、そうして日本としてはどうすべきか、またもっと露骨に申すならば、アメリカソ連アメリカと中共の関連において、その緊張緩和のためには日本が一役買うというくらいの決意で当たっていただきたいということをつけ加えて希望しますし、これらについて御所感を承れれば幸いかと思っております。
  19. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 中共との関係を改善したいという希望は申し上げた通りでありますが、この問題は御意見通り非常に国際的にもむずかしい面もございます。しかしながら、何といってもわれわれ非常に近いところにあるアジアの国でありますし、むしろわれわれの気持を固めて、そしていろいろな関係国との間に誤解があらば誤解を解くくらいのつもりで考えていくことはけっこうなことだと思います。しかしその前に日中相互間にある誤解、これを解くことがまず大切のように思うのであります。先般総理大臣政府間の郵便協定ないし気象協定ということはけっこうだということを予算委員会で言われたわけでありますが、これにつきましては、社会党の黒田議員一行が行かれました際にも、廖承志のあいさつの中で、これは単なるゼスチュアにすぎないということを完全に暴露しておる、こういうようなごあいさつがあったそうでございまして、この間の調整というものはわれわれは大いに努力せねばならぬ点が多いように思っております。私どもとしましては、できるだけいろいろな考えを持つ皆さんとよく話し合って、日本として一体どういうふうな考え方を持つのかという、まずこちらの考え方をきめてから始めたいというふうな気持でおります。しかしこれはこの関係を改善するためにやることであるという前提を置いて、その方向努力していきたいと思っておるのであります。何せそうした外国との関係の問題につきまして、国内で、一方は政府がやることはみんなうそだというような考え方が相当有力なる一部にある間においては、なかなかこれはやりにくいのではないか、またわれわれの努力も足りぬのではないかと思いますが、そういうことを考えられる方々においても、どうか一つ国家的見地に立って、日本を愛する見地に立って、このことを十分考えていただきたいと希望する次第であります。
  20. 野田武夫

    野田(武)委員 日中問題はきわめて重要なことでございますから、いろいろ御質問したいこともございますが、時間がだいぶん経過してきておるようでありますから、今お言葉通り日中問題改善のために一ついろいろと御努力を願いたいということで、私の日中問題に対する質問はこれで終わります。  あとはもう省きまして、二、三きわめて簡単でありますから簡単にお答え願えばけっこうです。  ラオスの問題をちょっとお聞きしたいと思っております。政府はラオスの問題について非常な関心を持っているといっておられますが、われわれ日本国民といたしましては、昨年末来激化しました内乱の犠牲となったラオス国民に対しましては、アジアの友好国として深い同情を感じておるのでございます。ところで政府は、これまでに具体的にどんな措置をこれに対しておとりになったか。また政府は今後ラオス問題の解決をいかなる方向においてなすべきであるとお考えになっておるか、この点について政府所信をお伺いしたいと思っております。
  21. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ラオスの問題につきましては二つのことがあると思うのであります。まず第一はあの内乱は早く終息させる、それから内乱の終息したあとで、ラオスが安定して、そして経済的にも国民の福祉に沿うような方向が早くなされる、こういうことを希望する二つの問題があると思うのであります。われわれとしてはそうした立場から、とにかくこうした、ことに国際間の東西の両勢力がラオスを舞台として激突することを避けさせるような方向でこれを終息させねばならぬというふうに考えまして、ラオスに関する関係国との間にいろいろ話し合いをいたしたわけでございます。これはもちろん正常の外交ルートを通じての話でございますから、公表すべきでないと考えております。そうしたじみな形でございますが、この内戦の終息について努力をして参りました一方、ラオス国民に対しましては、非常に気の毒でございますから、罹災者に対しまして医薬品とか衣料というようなものを送ったりいたしたのであります。  それから幸いにいたしまして、ジュネーブの国際監視委員会、これは一九五八年に一応終わっているわけでございますが、その当時の関係国、インドとかイギリスというようなものが、非常に関係国のゆえをもって動きまして、われわれもそれと連絡をとりまして、今内戦終息に関するところの話し合いが進んでおりますことは御承知通りでございます。これ以上拡大しないように大体明るい見通しができつつあるように見ておるのであります。なおそれに関連いたしまして、日本は何か武器弾薬を送っているのではないかというような質問が、これは参議院でしたが、ございました。そのときも申し上げたのでありますが、われわれはラオスに対してそうした武器弾薬のごときものは、もちろん送っておりません。それからその質問の御趣旨は、アメリカ側が日本から買って送っているのではないかという御趣旨もありましたが、こういうことは全然ございませんということを明らかにいたしたわけでございます。朝鮮事変以後、アメリカにおいてそうした武器、弾薬を日本でいわゆる域外調達で買うという事態はございません。従って日本がこのラオス問題に対して持っている関心、すなわちラオス問題を早く終息させたいという気持、それからこれが激化して日本が日米安保条約関係でこれに巻き込まれるのではないか、かような関係は二つともないというふうに判断できると思うのであります。さようなわけでございますから御了承願いたいと思います。
  22. 野田武夫

    野田(武)委員 大体ラオスに対するお考えはわかりました。私も新聞等で日本製の武器弾薬が向こうにいっているとかいっていないとか、だいぶ書いてありましたから心配しておりましたが、お話で大体わかりました。また在日米軍の問題もいろいろうわさに出ておりますが、今外務大臣のお話で大体わかりました。そういうことは一つ国民がはっきりわかるように、間違っている宣伝が出ますればそれに対して外務省も間違いであるというPRをもう少しなさって国民に安心を与えていただきたいと思います。  次に、もうこれで終わりますが、キューバの問題です。従来キューバが急激な農地改革や外国資本の接収などを行なったために、一部の自由諸国中米国との関係が悪化し、また他方キューバは共産圏諸国との接近を行なって、遂には昨年七月ソ連のフルシチョフ首相がキューバに手をつければロケットが飛ぶぞとの威嚇声明まで行なった次第であります。カリビア地域わが国からも遠隔なところではありますが、かかる状態は世界平和の維持という点からいたしまして、はなはだ好ましからざるところであります。すみやかに米州機構などの国際機関を通じまして問題の解決が望ましいと考えておりますが、政府としてはいかなる見解を持たれておりますか、一つ伺ってみたいと思います。
  23. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ケネディアメリカ大統領がこのキューバ問題解決のために非常に積極的な態度を表示しておられることは御承知通りでありますが、しかし大統領就任後の記者会見で、さしあたりアメリカとしてはキューバとの国交回復を考えていないということを述べ、また教書においてもキューバ国民が、国外、国内の圧制に支配されることには異議を有するものであるということを述べられて、キューバが共産主義勢力によって支配されることについてはきぜんとした態度を示しておる。しかしまた他方において教書に、キューバの社会的、経済的改革はさらに促進されなければならない。また経済及び通商についての政策上の諸問題は、いつでも交渉によって解決できる問題だということを述べまして、キューバの経済的、社会的改革に対しては積極的に理解をするという考え方を示しておるのであります。一方キューバの側においても、ケネディ大統領が就任する機会に、国交断絶以来とってきた民兵の動員というものを解除して、事態の改善に対する意欲を示しておるわけであります。わが国としては、キューバとは現在も友好関係にありますし、このキューバ問題というのが東西冷戦の場になることなく、平和的に調整されていくということを希望している次第でございます。
  24. 野田武夫

    野田(武)委員 また他日機会を得まして質問いたしたいと思いますので、これで大体終わります。  最後に外務大臣、どうか一つ世界平和というのはもう全人類の悲願であります。今お話しのキューバその他の局地的な紛争も絶えないようでありますが、この際外務大臣といたしましては、われわれの念願する世界平和のために大胆にまた勇敢にその実現に向かって努力され、邁進されんことを希望いたしまして私の質問を終わることにいたします。
  25. 堀内一雄

    堀内委員長 穗積七郎君。
  26. 穗積七郎

    穗積委員 小坂外務大臣に池田内閣の外交方針についてお尋ねしたいと思います。  その前にちょっと外務省事務当局に要求いたしておきますが、ただいま行なわれております日韓会談において、韓国側から要求されておるといわれる財産請求権、その内容はわれわれ仄聞するところによると八項目にわたっておるということですが、八項目の内容と具体的なる向こうの要求の資料を委員会に配付していただきたい。これは資料提出として委員長を通じて要求いたしておきたいと思いますから、そのようにお取り計らいをいただきたいと思います。外務省の応諾の御返事をいただきたい。
  27. 中川融

    ○中川政府委員 ただいま穗積委員御請求の資料でありますが、御承知通り目下日韓会談をやっている最中でございます。先方の出しました内容を国会に御提出いたしますことは、先方の同意がないことにはできないことは十分御承知のことと思いますので、先方と打ち合わせの上、もし差しつかえないということであれば提出の運びにいたしたいと思います。
  28. 穗積七郎

    穗積委員 その結果は後日委員会に報告をしていただきたいと思います。  外務大臣にお尋ねいたします。言うまでもないことですが、一九五五年にバンドンにおいて会議が開かれましていわゆるバンドン決議が行なわれたわけです。そのときは当時の日本は保守党の政府でありましたけれども、高碕達之助氏が政府代表として出席し、民間からは前の外務大臣をされた藤山愛一郎氏が出席されて、いわゆるバンドン決議には審議に参加し、署名をしてこれを尊重する義務を負ってお帰りになったわけです。以来内閣は変わりましたが、現池田内閣もこのバンドン原則というものはもとより尊重されると思いますが、念のために伺っておきたいと思います。
  29. 小坂善太郎

    小坂外務大臣 バンドンにおきましての、アジアアフリカ諸国が相ともに携えてそれぞれの人権を拡大し、また経済的に繁栄して、平和を確保していきたい、こういうことについて話し合った原則は、われわれも非常にけっこうだと考えております。
  30. 穗積七郎

    穗積委員 バンドン原則の中心は、言うまでもなく内政不干渉と相互国家間における友好親善、互恵平等の原則が中心になっているわけです。その点は外務大臣もとより御承知だと思いますが、念のために伺っておきます。
  31. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私が中共との国交関係の改善につきまして、そのことを申し述べておることによっても明らかだと思います。
  32. 穗積七郎

    穗積委員 続いてお尋ねいたしますが、そういたしますと、中国との間における経済並びに文化の交流、発展をやり、やがて国交の正常化をはかりますためには、その今のバンドン原則というものをお互いに尊重してかからなければならない、当然のことだと思うのです。従ってこのバンドン原則には、中国は当時周恩来総理が政府代表として出席をしておるわけです。従って第四次協定、いわゆる民間協定が岸内閣の無理解と不協力によりまして廃棄されまして、それ以来、特にこのバンドン原則の精神をうたいました友好三原則なるものを前提として、中国側は強く主張しているわけです。先般から行なわれております民間契約貿易につきましても、この原則は大前提として堅持をするという態度をとっているわけです。その内容は大臣承知通り日本側が中国を敵視しない、第二は二つの中国を作る陰謀に加担をしない、第三は国交の回復に妨害を与えない、以上三つでございます。これは特にむずかしい政治的条件をつけるものではなくて、バンドン原則によります当然の前提であるわけですね。いわゆる右手にやいばを持ち、左手にそろばんを持って貿易をやるという考え方では、われわれは応ずるわけにはいかぬ。これは中国のみならず、日本としてもその他の国としても当然のことだと思う。この友好三原則なるものは、当然外務大臣はお認めになって尊重される精神でおられると思いますが、念のために明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  33. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 認めるのみならず、われわれはそれに反したことをしていないという考え方に立っております。
  34. 穗積七郎

    穗積委員 それではちょっと具体的にお尋ねいたします。あまり古いことを申しますと切りがありませんので、先ほど与党の代表質問として野田委員から日本に敵視的な精神がなくて、中国側のみが誤解をしているというかのごときお言葉がありましたが、これは実は客観的にながめて誤りなんです。日本側があらゆる敵視政策をとったり、そういう言動をされたりしたことが積もり積もってこういうことになってきているので、これを解かなければならない。それについては新池田内閣は友好三原則、政治三原則を認め、かつ尊重して、それを日中打開の一切の大前提とするという御答弁でございましたけれども、実は昨年の十二月二十七日、暮れでございますが、あなたがお作りになった外交懇談会——その日は、新聞報道によりますと座長は民間の木内氏がなっておられますけれども池田総理並びにあなた、それから特に専門家として外務省の島審議官が御出席になっていろいろ討議をされているわけです。その中で非常に重要なことがあるわけです。それはすなわち、日中の間で国交回復をすることのために非常にじゃまになるものは、言うまでもなく台湾問題でございましょう。その台湾問題について、他の言葉を借りて、米中関係という項の中で、外務省は台湾問題が問題であるけれども、この台湾問題というのはアメリカの軍事的戦略上の理由によってこれをアメリカは離したくない、そこに問題があるのだという点を分析し、指摘されておるわけです。そうして続いて英中関係という項の中で、われわれは降伏文書によって台湾に対する領土権は放棄しているけれども、その帰属はまだ必ずしも中国ではない、それは連合国が決定するものであって、従って中国に帰属しているとはきまっていないということを言っているわけです。これは一体外務省の正当なる解釈であるか。さらに、池田内閣はこういう情勢分析や判断によって日中問題に臨まれようとしているのであるかどうか。それが真であるとするならば、非常に重大な問題をここに含んでおりますから、最初にこれが一体外務省の意見であるか、外務大臣はどうお考えになっておられるのか、池田内閣はどう考えておられるかという点を、この台湾問題の分析と評価と、それから台湾問題の領土権帰属の問題についてどう解釈しておられるか伺っておきたいと思うのです。
  35. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この問題につきましては、島審議官が純粋に法律的な見地からこの問題を解説したのであります。従って今引用されましたことは、法律的に見ればそういう解釈ができる、こういうことであろうと思います。これについて外務大臣はどう思うかということでありますが、外務大臣としての意見を申し述べることは差し控えます。ただ法律家としての島君が、国際法上の立場からそういうふうに考えるのだ、解釈するのである、こういうことを言ったことは、その通りであります。
  36. 穗積七郎

    穗積委員 そういう御答弁では、日中問題に対して積極的に弾力性を持ってこれを解決するのだ、こう口では言って国民をごまかしておりますが、明らかにごまかしです。中国もごまかしだと思って誠意を認めていないのはそういうところから出てきておる。これは島審議官の法律上の解釈にすぎない、そんなことでありませんよ。台湾が日中問題解決のためのガンだ、その台湾問題が解決できないのは、日本と中国だけの問題ではなくて、アメリカがこれを押えておるからだ、しかもそれは軍事的理由によってのみ押えておるのである。このアメリカの軍事的方針が一体正しいと思っておるのか、間違っておると思っておるのか。われわれはこのようなことは不当だと思うのです。アメリカが一方的に自分の軍事的理由によって、野心によって台湾を押えてその領土権を曲げておる、こういう態度については、日本の外務省としては、日中問題にこれからは積極的に乗り出そうという以上は、はっきりとした態度を示したらどうですか。卑怯ですよ。
  37. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 今の問題は、私が申し上げました通り、島審議官が純粋に法律上の見地から問題を解析した、その中においてアメリカ態度はこれについてこう考えておる、イギリスの考え方はこうである、こういう事実について先方の考え方を紹介したわけです。日本考え方はしからばどうかというのでありますが、日本はまだそういうことについて、いろいろ穗積さんが非難されますけれども、非難されること自体、前向きの姿勢をとる場合に非常にむずかしい障害になるということもお考えになっていただきたい。私はそういうことについての言明を差し控えます。
  38. 穗積七郎

    穗積委員 それではあなたにお尋ねいたします。あなたの外務大臣としての御判断についてお尋ねいたしますが、その島審議官の言葉、説明でなくて、あなた自身の御解釈はどうであるか、それをなぜお答えになることができないのでございましょうか。
  39. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 講和条約におきましてわれわれは台湾並びに澎湖島に関する一切の権利権原その他の請求権を放棄しておるわけです。従ってその放棄したものについてはいろいろ日本政府考え方を言わぬ方がいい、こういうことであります。
  40. 穗積七郎

    穗積委員 問題は二つです。一つは政治的判断と、一つ条約上の解釈の問題でございます。  第一の政治的評価についてお尋ねをいたしますが、もし島審議官が考えているように、アメリカが台湾を確保し、台湾問題をこだわっておるのは、一にあそこにおいて第七艦隊を初めとするアメリカの軍事基地を確保するためである。こういうことでありますならば、そういう理由によってこれを一方的に確保しておることは、はなはだしく政治的に不当な行為であると私は思いますが、外務大臣はどうお考えでございますか。
  41. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 不当であるか不当でないかという論評を私はここですることは不適当である。これは現実の事実としてそうなっておることであります。国際間の事実であります。
  42. 穗積七郎

    穗積委員 総理にしてもあなたにしても、この間から国会における演説または記者会見その他の談話発表等において、中国問題についてはこれを積極的にやるのだ、こう言いながら、具体的問題になると実は何の意見もない、何の方針もない、一にびくびくとしてアメリカの動きを見ておる、こういうことに尽きるではありませんか。そうではありませんで、アメリカと話す時期——あなたはこの問題を解決する糸口をつかむ方法、そういうことについては、これは外交戦術にも関係いたしますから、時期方法については検討されるがいい。しかしながらそれに臨む以上は、一番問題になっておる台湾に対してどういう評価をし、どういう条約上の解釈をするかという日本自身の解釈なくして、この中国問題に乗り出すことはできないと思うのです。そのときに、あなたは一体どういう評価と条約上の解釈をもって臨むわけであるか、日本政府所信を承っておきたいのです。こんなことは隠す必要のないことですよ。
  43. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 隠すとか、隠さぬということではなくて、私は日中関係を改善するために、現在ここで自分はこの問題についてこういう意見を持つとか、あるいは持たぬとか、そういうことを言うことが適当でない、かようなことであります。また穗積委員のように、この場でどうしてもお前の考えを聞きたいとおっしゃる考え方が、日中関係をよくしようという考え方からいえば、私に言わせれば不適当と思われるから、かかることを申し上げたのであります。
  44. 穗積七郎

    穗積委員 そういうもったいぶったことをおっしゃらぬ方がいいですよ。それじゃお尋ねいたしますが、事務当局からの報告でもよろしいが、この外交懇談会——政府の外郭機関である、非常にあなたが力を入れたものです。ここにおいてこれに対する解釈について一体どういう討議が行なわれ、どういう結論を外務省としてはお持ちになったのですか。
  45. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 事務当局からあとでお答えいたしまするが、この外交懇談会は、一般のいわゆる識者の参考に、外務省としては庶務的な立場をとって、その論議が行なえるような素材を与えたり、その議論をうまくかわしてもらうために、材料みたいなものを提供しておるわけです。そこでその材料の一端として、国際法の立場から見るとこういう意見もあり、こういう意見もある、こういう事実もある、かようなことを言ったにすぎないものでありまして、それが出たからけしかるとかけしからぬということを言い出したら、とても問題は前向きに解釈することができない、こういうように思うのです。
  46. 穗積七郎

    穗積委員 報告を伺う前にちょっと申し上げておきましょう。というのは、台湾の問題というのは、ソビエトとの間における平和条約におけるクーリル島の帰属問題と同様に、根本問題なんです。当然、相手国はもとよりいかなる国に対しても、日本政府としては一貫した所信をもって臨むべきなんだ。ですから、そういうことでありますならば、台湾並びに澎湖島の領土の帰属が、日本が放棄したけれども、その帰属がまだきまっていないという条約上の根拠を示していただきたいのです。外務大臣にお願いいたします。
  47. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 サンフランシスコ平和条約に書いてございます。
  48. 穗積七郎

    穗積委員 サンフランシスコ平和条約のどこに書いてありますか。
  49. 中川融

    ○中川政府委員 サンフランシスコ平和条約第二条(b)項、「日本国は、台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。」これだけが台湾、澎湖島に関する規定でございます。
  50. 穗積七郎

    穗積委員 それじゃ外務大臣にちょっと申し上げましょう。いささか講義めいて恐縮でございますけれども、言わざるを得ない。すなわち日本との関係におきましては、ポツダム宣言を受諾いたしました降伏文書ですね。一九四五年九月二日でございます。それは言うまでもなく、ポツダム宣言をそのまま受けて承認をいたしておるわけです。そのポツダム宣言は、第八項におきまして、「「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並二吾等ノ決定スル諸国小島ニ局限セラルベシ」こう書いて、カイロ宣言の決定条項というものは全部履行さるべきものであるということをポツダム宣言は受けておる。そしてそのカイロ宣言は何かというと、領土問題についてはこういうふうにちゃんと明記してあるわけです。長くなりますから途中にいたしましょう。台湾及び澎湖島のような、日本国が清国人から盗取したすべての地域を中華民国に返還することにあると明記してあるのです。このカイロ宣言がポツダム宣言にそのまま法律的に継承されて、それを降伏文書で継承しておるわけですね。しかもこれはアメリカだけではなくて、カイロ宣言は言うまでもなく、このポツダム宣言は合衆国、中華民国、イギリス並びに後にソビエトが入って、連合国の決定としてやっておるわけです。これでもうすでに済んでおると思うのです。さらに日華条約はどうですか。日華条約におきましては、台湾並びに澎湖島というものは中華民国の領土としてこれを確認して、もうすでに調印済みでございますよ。そうであるならば、この平和条約によって、今条約局長の言われた(b)項で、権利、権原、請求権を放棄すると同時に、一方においてこの降伏文書の調印、それからさらに日華条約の調印によって、これは両方とも並行してきておるわけですから、今申しました通り、カイロ宣言以来の領土条項の取りきめというものは日本はこれを承認し、帰属は明確になっておる。そのときに、あえてその帰属は不明確であるといって、アメリカの一部にある二つの中国を作る陰謀に加担をする、こういうことは、三原則は尊重し、これを認めますといいながら、二つの中国を作ることを誘引しておるではありませんか。これほど敵視政策はないと思うのです。こういう具体的な間違った考えを堂々と発表して、中国を牽制して、さらにアメリカの二つの中国を作る陰謀を国際的に有利にするような言動を、外務大臣、総理大臣が出席をして討議をしておる。こういうあいまいな態度では、私はさっきおっしゃいましたバンドン原則の尊重も、中国の友好三原則の理解尊重も、これは全く裏切るものであると言わざるを得ないと思うのです。外務大臣のこの条約の解釈に対する所感を明らかにしていただきたいと思うのです。
  51. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私はおっしゃることがどうもよくわかりませんけれども、日中問題を解決したいということで今の御質問だと思ってお答えしておるのですが、今累次にわたって申し上げたように、われわれはサンフランシスコの平和条約においてあの条項があるということだけを申し上げたので、日本が帰属がどこであるかというような主張をすることは、日本はあの平和条約に調印して、それを受諾しているからそういう立場にない、そういうことを申し上げておるだけなんです。島審議官の説明は、先ほども申し上げたように、識者の各位に、現在の日中関係について世界じゅうの識者がいろいろ問題にしている点はどういう点であるか、また事実関係はどういうふうになっておるかという御説明を、国際的な、純法律的な立場から申し上げたということであります。
  52. 穗積七郎

    穗積委員 私が言っているのはそういうことではないのです。あなたがこれから中国と交渉されようとするときに、一切の根拠になるものは、今までの降伏文書を初めとする条約ですよ。そのときに、さっき言ったカイロ宣言、ポツダム宣言、降伏文書、日華条約に現われた領土条項というものは尊重するのがあたりまえなんだ。その基本的態度をあいまいにして、そして勝手な主張をする。それで相手がこれを拒否すれば、相手が誤解をしている、こういう態度では、私はこの問題に対する誠意を疑わざるを得ないのです。友好原則はどこかに飛んでしまうわけです。敵視であり、二つの中国を作る陰謀に加担をするということになるわけですから、初めからそういうことでは郵便協定にも、気象協定にも、貿易協定にも入っていくことができないのですよ。だからこの際はっきりしていただきたい。
  53. 中川融

    ○中川政府委員 ただいま穗積委員から御質問のありましたカイロ宣言、ポツダム宣言、降伏文書、サンフランシスコ平和条約、この四つの文書に関係いたしましての条約的な政府の見解を申し述べたいと思います。  カイロ宣言、ポツダム宣言、降伏文書、この三つに関します穗積委員の御見解、われわれ全く同感でございます。カイロ宣言によりまして、台湾及び澎湖島を中華民国に返還するということを米英華三国間できめております。そのカイロ宣言やポツダム宣言によりまして、連合国の日本に対するいわば最終的な要求事項となったカイロ宣言の条項は履行せらるべしということになっておるわけであります。それをさらに日本は降伏文書で受けまして、ここに降伏したわけであります。しかしながらこの降伏というのは、あくまでも日本戦争行為を終止するための条件でございまして、最終的な領土の帰属その他のことは平和条約を待たなければ確定しないわけでございます。それで降伏文書で受諾しました条件は、講和条約でもしこれを提示されれば、日本はそのままこれを受諾しなければならないということになると思いますが、サンフランシスコ平和会議日本に提示されました条約案では、澎湖島及び台湾を中華民国に帰属せしめるという規定にはなっていないのでありまして、日本はいわば一方的にこの二つの島に対する権利、権原を放棄するという案になっておるのであります。従ってサンフランシスコ条約にきめられましたところ、日本が受諾いたしましたところが、現在のような状態になっているわけでございまして、日本としては中華民国にこれを帰属せしめたという意思決定はしていないのでございます。
  54. 穗積七郎

    穗積委員 日華条約の領土条項はどうですか。
  55. 中川融

    ○中川政府委員 日華条約には領土条項と称すべきものはないのでありまして、日華条約をどこに適用するかということについての了解があるのであります。従って日華条約によりまして日本が台湾及び澎湖島を中華民国に帰属せしめたという意思表示はしていないのでございます。
  56. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、カイロ宣言における領土条項は、国際条約として日本側はオブリゲーションを感じないでいいのだという解釈でいいわけですか。  それから第二点は、日華条約をとっても、なおかつ台湾並びに澎湖島は中華民国——台湾政権のものでも、北京政府のものでもない。帰属はペンディングのままだ、こう解釈される態度をとるわけですか。
  57. 中川融

    ○中川政府委員 日本に関します限りポツダム宣言、カイロ宣言等で日本が受諾いたしましたことは全部そのままと言いますか、日本に関する限りは平和条約によって履行済みである。すでに現地において解決した問題であると考えます。アメリカかあるいはカイロ宣言によりまして中華民国あるいはイギリス等にオブリゲーションがありやいなや、いまだ残っているかどうかという問題はまた別個の問題でございます。また日華平和条約によりましても、先ほど申しました通りはっきり領土の帰属についてはきめていないようであります。従って日本としては台湾、澎湖島がどこに帰属するかということについて積極的にあるいは明確な約束はいずれの国ともしていないという状況でございます。
  58. 穗積七郎

    穗積委員 今の条約解釈については、私は根本的に賛成するわけにはいきません。そういうことでいろいろ国際条約ないしはその国交問題を取り扱うことは不可能だと思うのです。ですからここで、その条約問題についてまだ検討済みでない、または台湾の強化について検討済みでない外務大臣を相手にして議論をしてもむだなことでございます。私はあくまで今の解釈は誤りであって、台湾に対する強化というものは、アメリカの軍事的理由によってのみ一方的にこれを確保して領土権を歪曲しているということは誤りである。第二は条約日本との関係においてはカイロ宣言、ポツダム宣言並びに降伏文書、日華条約を法源——条約上の根拠として、これは明らかに解決済みの問題である。そういう態度でなければ、いかに外務大臣が観念的には中国の言う友好三原側は支持し尊重をする、こういう言葉をもって言われましても、これは明らかに二つの中国を作る陰謀に事実上加担することになり、また中国をはなはだしく敵視する結果になるわけです。ですからその点については、外務大臣はきょうは御答弁になれないということでございますから、私はこれ以上どうしても強制できませんので、どうぞ明確にして臨んでいただきたいと思うのでございます。
  59. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 答弁をしております。これについて答弁しないというお話がありましたから、答弁をいたしておるということを申し上げます。なお、何か二つの中国の陰謀に加担しておるじゃないか、あるいは敵視しておるではないかという御断定でありますが、そういうことはいたしておりません。ということは、今条約局長から申しましたように、われわれは降伏文書に署名し、または平和条約に調印しておるので、われわれの意思によってこの問題をどうこうということができない立場である以上、陰謀に加担したも何もない、日本はその当時敗戦国であった、こういう事実について穗積委員も御認識を願っておかなければならぬと思うのであります。
  60. 穗積七郎

    穗積委員 私の言うのはそうではない。それじゃあなたの御答弁はこういうことですか。台湾の領土権帰属の問題については、日本側は放棄だけで全然関知しない、そういう解釈ですか。その最終帰属はどこにあるかということは関知もしないし、発言もしないのですか。
  61. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 関知しないということは問題があると思いますが、日本はそういう立場にない、そういうことであります。
  62. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、台湾の領土権帰属の問題については、今後日本政府は発言をしない、こういうことでございますか。
  63. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は意欲的な、するとかしないとかいうことを申し上げたことはありません。中川条約局長の御説明でお聞き取り願った通り、そういう法律上のと申しますか、むしろ敗戦国として降伏文書に調印する条件を受諾し、かつ講和条約においてそれにサインをしたわが国立場というものがあるということを申し上げたのであります。
  64. 穗積七郎

    穗積委員 はなはだしくあいまいで、そういうことでは私はこの難問題であるところの、日中問題解決の一番中心である台湾問題に対して、そのようなあいまいな態度をおとりになっておって、そしてアメリカと中国との間に入って何とか人の力でこれを解決する、解決されるのを待つという態度をとっても、日本の積極外交方針というものは決して打ち出されないと思うのです。
  65. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は先ほどから相互の立場を尊重すると言っておるのでありまして、やはりわれわれの立場も中共の側において理解してくれるように話すことが対日中関係の将来の友好の基礎になる、かように思いまして、一方的に日本はけしからぬことを言っておるのだ、日本政府はけしからぬと、穗積委員の言うようにきめつけてかからたれのでは、ほんとうの意味の友好関係はできませんから、どうぞその点はお考え直しを願いたいと思います。
  66. 穗積七郎

    穗積委員 その言葉外務大臣に申し上げたいと思うのです。私の解釈は、客観的に見て正しいことを主張することが国際的に一番聞かれることであり、権威があると思うのです。そうでなければだめです。不利と思われること、またはアメリカに対して不利と思われるようなことはごまかして通る、そういうことでは誤りでありまして、この解釈について野党と政府の間で水かけ論をいたしましても解決はいたしませんから、国際的に一つこれは処理すべき問題だ。われわれはあくまで日本のために今の台湾の領土権の最終帰属はもう決定しているという態度で臨むことが日本のためであると思うから、これからもそのことをあらゆる機会主張したいと思うのです。そして外務大臣のお考え方こそ修正していただきたい。(発言する者多し)
  67. 堀内一雄

    堀内委員長 お静かに願います。
  68. 穗積七郎

    穗積委員 その次に具体的にお尋ねいたしますが、友好三原則を尊重されるということでありますならば、実はその友好の精神を中国側に向かって日本政府としてこれを表明する。いささかおそきに失する問題でありますけれども、かねての遺骨の送還問題でございます。これは私は朝鮮の帰国問題と同様に人道的な立場に立って、そしてこの問題は日本政府として何の労苦もなしに、民間三団体がすでに熱心にやっておるところですから、あと厚生省のリスト・アップをして、それを公示して、そして外務省と協力さえすればできることです。そして相手側から見れば、これは戦争中に日本に強制的に連れてきた強制労働者、あるいはまた捕虜、これはむざんに虐待、栄養失調等によって死んだ者があるわけです。これをこの際人道的立場に立って民間三団体がやるだけでなく、日本政府もこれに積極的に協力して友好平和の精神を中国側にプレゼントとして表明するということは当然なことであり、かつ私は日本政府の友好精神を表明するのに好個の具体的問題の一つであると思うのです。これに対しまして、今まで厚生省、外務省は必ずしも協力していない。これについて外務大臣はこの問題を促進し、協力される意思があるかないか、具体的にお答えをいただきたいと思います。
  69. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 その問題については十分協力して推進したいと思います。
  70. 穗積七郎

    穗積委員 それではその御答弁はけっこうでございます。あとわれわれは関係当局と事務的に進めまして、今の大臣のお言葉政府方針として実行されることを期待いたしておきたいと思います。  次に具体的な問題としてお尋ねいたしたいのは、人事の交流問題ですが、これは必ずしも国交回復または政府協定なくして、どんどんできるわけです。今までもやって参りました。昨年の夏以来二カ年半以上にわたって途絶いたしておりました中国側からもこちらへ来るようになって、片側の交流ではなくて相互交流が始まったわけです。こちらから多くの人が行き、また向こうからも多くの人が、政界、財界、文化関係の使節団が来て、お互いに広く接触をすることは望ましいことだと思いますが、これを歓迎されますかどうであるか、これに対して外務省の事務的な手続も必要になっておりますので、あわせて外務大臣の御所信を伺っておきたいと思うのです。
  71. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 手続のお話でございますが、これは入国査証のことだと思います。これは今まで御承知のように私はかなりずばりずばりやっております。全部入れております。ただ内政干渉をしないということは非常に必要なことだと思いますし、それからせっかく来た方々が愉快な気持を持って帰られるように私どもとしては希望するのであります。日本はいやな国だということをみんなから聞かされて帰ることのないように、できるだけいいという人たちともたくさん会って帰ってもらうように私は希望したいと思うのです。
  72. 穗積七郎

    穗積委員 新聞の報ずるところによりますと、日本の財界から、今まで日中の貿易に携わっておりました商社の関係あるいは貿易団体の代表は多数行っておりますけれども、直接それに関係ないけれども、いわば日本経済界を代表するにふさわしいような使節団を、最近は政府であるか与党であるか存じませんが、これに支持協力を与えて、そうして杉道助氏を団長として中国へ送りたいという動きがあるということをいわれておりますが、これに対して小坂外務大臣関係しておられますか、関知しておられるか、どういう御所感を持っておられるか、それをお尋ねしたいと思います。
  73. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 杉道助氏を団長として使節団を送るという話はまだ何もございません。そういう事実はございません。それから最近山本熊一氏がかなり大勢の経済界の人たちを連れて行ったわけです。これなどは全然そういうことに関知しなかった人が行ったということでは新しいできごとだと思います。なお、だいぶ前になりますが、高碕達之助氏が技術関係の方を連れて行った。その人たちが見たところ、あるいはその人たちのアドバイスしたところ、こういうことについては非常に高く評価されておると聞いております。いずれにしても誤解ということは一番よくないことでありますから、誤解があれば誤解を解くということにいたしていくことがまず第一歩だと思うのでありまして、その意味で、人が接触するということは非常にけっこうなことだと思います。ただ、接触する人があまり一方に片寄って、そして現実の姿を曲げて伝えるような交流の仕方というものは、結局両国の将来のためによくないというふうに考えておりまして、どうか公平な客観的な見地でお互いに話し合って、両国の実際の実情を知り合っていく、こういうことにすることが日中関係前向きの姿勢ということであろうかと思っております。
  74. 穗積七郎

    穗積委員 実は私が昨年の夏に北京へ参りましたときに、周総理との会談の中で、この人的相互交流は重大な問題だと思っていろいろ提案をいたしました。その中でまず第一に重要なものは、中国の人民外交学会の責任において編成された代表団、できるならば張奚若会長を初めとし、廖承志、蕭向前その他中国の対日政策をとっておられる責任のある者、また日本に対して最もよく理解を持っておられるこういう方々を含む使節団が日本を訪問されることを期待する、こういう提案をいたしましたのに対して、お帰りになったあと、友好団体から中国の代表団を招くという正式なお招きがあれば、これは考慮いたします。しかし、政府の政策がいまだに友好三原則を認めていない、率直に理解していない状態のもとにおいては、政府の招待では行くわけにいかないけれども、友好三原則を支持し、協力しておられる友好団体または個人等のお招きがあるならば考慮してそれを実現するようにしたいと思うというお話があったわけです。続いて高碕達之助氏が行かれましたときにも同様の提案——高碕さんも保守党内における日中問題促進の良心派の一人としてこのことを提案、希望されました。これに対して周総理から同様の答えがあったのです。これをどういうふうに取り扱うかということは政府関係のないことです。われわれ民間における友好精神を持っている諸政党、団体との間、または個人の間において審議すべきことですが、それが確定はいたしておりませんが、これによっても実現をいたす可能性はあるわけです。そういうような場合に小坂外務大臣は率直に廖承志その他の責任者とお会いになって今の友好三原則を日本政府としても支持する、その態度に立って十分話をされるお気持があるかどうか、その点を伺っておきたいと思います。
  75. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 まず保守党内の良心派というお言葉がありましたが、保守党議員がここにおられるが、みな良心を持っておるのでございますから、そういうお言葉はどうか願い下げ願います。  それから今の御質問でございますが、どうもまだ先方がどうこうというお話をしたとかしないとかいう言葉を公式に何も聞いておりませんし、公式の場でどうしたらどうかという仮定の御質問になりますので……。
  76. 穗積七郎

    穗積委員 これはアジア局長にちょっとお尋ねしますが、外務省の事務当局では、日中問題に対する長期の研究討議を始められたようです。その中でこういう問題も取り上げられておると思いますが、政治的判断は今小坂外務大臣お答えになっておられるけれども、事務当局として日中問題を促進するために、大臣または政府関係者あるいは与党の領袖の方々が広くこういう人々と胸襟を開いて、三原則の問題や日中問題について話をされることを希望しておられるやに聞いておりますが、事務当局の御判断はどうですか。
  77. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 大臣のおられるときに事務当局限りの意見を申し上げることは、いささか穏当を欠くのではないかと思います。
  78. 穗積七郎

    穗積委員 それでは続いてお尋ねいたしますが、この友好三原則の実行の一つとして、今まで長くペンディングになっております新聞記者交換の問題があるわけですね。これは日本側は必ずしも政府ではなくて、民間でやっているわけですけれども、これについては、実は民間だけの取りきめでは実行のできない問題があるわけです。すなわち、参りましてから、特に大事な点は、身分の保障の問題があるわけです。安全保障の問題、それから通信の自由、旅行の自由の問題があるわけですね。そういう点が非常に付随した条件のようで、実は本質問題で、そのことができるかできぬかは、この条件にかかっているといっていいと思うのです。そういう問題について、政府は記者の相互交換ができることを希望されておるかどうか。もしそれが民間のベースでできた場合においては、今の身分の安全保障、旅行の自由、通信の自由、これらのこと、さらに問題として考えられますのは交換のワクですね。これは同数平等主義でいくべきだと思うのだが、そういう点についても政府の了解と保障なくしてはできないことなんですね。それに対して外務省としてはどういうふうに根本的にお考えになっておられるか。それがもしできたならば、今申し上げました重要な政治的条件については、外務省としては全面的にこれに協力するという態度をおとりになるかどうか。
  79. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 この記者交換という問題につきましては、前内閣以来から、これは政府としては異議ないということを申しております。ただ、もちろん数につきましても相互主義でございましょう。それから旅行ということになりますと、こちらは旅行の自由があるのでありますが、中国の方がどうでございますか、その辺のところも相互主義の問題が出てくるのであります。通信は普通の新聞記者と同じ通信ができるのじゃないかと思いますが、身分の保障といいますか、安全保障は、どういう身分で参りますか、新聞記者として参る以上一般的な安全の確保はいたしますけれども、外交官というふうな特別の保障をするかどうか、これはおそらくしないのではないかと思いますが、一般的にどこへ参りましても、警察が普通の意味の外国人に対する保障、安全保護ということはいたすと思っております。
  80. 穗積七郎

    穗積委員 ここで、今度はベースが政府間ベースの話になるわけですが、先般、池田総理もあなたも同感であろうと思うが、政府間接触を交渉して、郵便、気象あるいは航空協定、こういうようなもの、やがては発展すればそれが漁業協定、貿易協定、こうなると思いますけれども、これらのものについては友好三原則を尊重して、政府間接触をして協定を結んでもいい、こういうお考えのようですが、それは一体いつからどういう方法でおやりになるおつもりであるか、一歩前進をしたところを具体的にお尋ねしたいのです。
  81. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 総理はこの前の予算委員会で、郵便協定、気象協定などを結ぶことは考えようということを言われたわけですが、その反応として、先ほど野田委員の御質問にお答えしたときに申し上げましたように、黒田さんですね、行かれたときに、実際は人をだますゼスチュアにすぎないようなことを完全に暴露している、暴露しているというから何か証拠があったのではないかと思いますけれども、そういうふうに言われておりますから、それを具体的にどうこうするといわれても、直ちにお答えするわけにいかぬと思います。
  82. 穗積七郎

    穗積委員 それはこういうことだと思うのです。積極的に政府がやるつもりなら、黒田氏そのほか三議員の歓迎の席上で廖承志氏の言われた言葉を直接聞きもしないで、またそれを直接聞いた人から報告も受けないで、それでもうやれないのだということで捨てゼリフを言われるということは適当でないと思うのです。周総理も会談で明確にしておりますことは、政府協定は友好三原則というものを認める、これが第一の前提であり、大原則であり、貫く一貫した条件である、あとは所管大臣同士の間でやろう、場所は北京でやりましょう、そういうことであるならば、北京の飛行場は総理なり外務なり担当の大臣のために開放されて、かつ安全であります、こういうふうに言っているわけです。その点はつまり友好三原則というものを無視して——しかもさっき言った友好三原則は国交回復の方向まで含んでいるわけです。それも無視して、それとは別に技術的な協定等から、それは何ら友好原則とは関係のないものであるというふうな便宜主義でおやりになるならばこれはごめんだという意味であって、友好三原則をお互いに尊重するという大前提に立つならば、所管大臣同士で北京でいつでもやりましょう、こういう態度である。これは私が直接周総理から聞いてきたところでございますから、それが真義であるということをここであらためて公式に外務大臣に報告をいたしておきます。  そういうことでありますならば、あなたはきょう、バンドン精神を尊重するという抽象的なことだけでなくて、周総理が、あるいは陳毅外相が言っている友好三原則というものは、これを支持し尊重するということを明らかにされたわけですから、それをもって今の政府協定にぜひ臨まれるべきである。その態度さえ明確になるならばこれは可能性があるということは向こうはすでに言明しているところですから、何もちゅうちょする必要はないと思うのです。問題は、友好三原則に対する日本政府態度、言動が問題なのです。その点に問題の焦点があることを理解していただきたいと思う。それで、小坂外務大臣はこの問題についてどういうふうにお考えになっておられるか、具体的にお尋ねいたしたいのです。
  83. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御意見は承っておきます。
  84. 穗積七郎

    穗積委員 それから問題になるのは、郵便協定、気象協定、航空協定等は事務協定であって、従って、相手の政府を承認することにならない、しかしながら貿易協定は相手の政府を承認することになるというのであるから困る、こういうことで貿易協定は避けておられるわけです。そこのけじめが実は非常に問題になるわけですね。それが中国側でもおそらく問題にする第二の点です。第一点は友好三原則の点、第二点は、三原則の中に含まれている国交回復を妨害しないと言いながら、国交回復以前の政府の事実承認になることすら避けていこうということで、これでは、友好三原則を尊重し、支持すると口では言っていても、実際はそうではないのではないかという疑惑を相手に与えていると思うのです。従って、郵便、航空並びに気象協定を分離してこれだけを考える、それじゃ漁業協定はどうなるか、貿易協定についてはどこを根拠にしてちゅうちょされるのか、何を理由にして貿易協定の締結をちゅうちょされるのか。順序としてはいいですよ。順序としては、テクニカルに気象協定、郵便協定から始めるということにわれわれは反対するわけではありません。しかしながら、貿易協定をなぜ踏み切ることができないのか。一番願っている本格的な全面的な貿易の発展のためには、今の国際経済の事情からして日本の利益を守るためにはやらなければならぬ。それをやるためには何らちゅうちょする必要がないと思うのです。その間の区別をされる理由と、貿易協定には踏み切ることができないという理由を明らかにしていただきたいのです。
  85. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 貿易協定はその国の政府の承認、中共の承認につながる。実際上同じ問題になるということから、これは現在困難だ、こう考えておるわけであります。今の郵便協定というものは、日本は郵便は国家がやっておりますが、事柄の性質上、こうしたものは今の承認につながらない、気象問題も同様である、かような観点でやっておるわけです。改善には、あなたのように、一気にいく方法もありましょうし、またわれわれのように、一歩々々という方法もありましょうし、オール・オア・ナッシング必ずしも万全ではないという観点で、私どもはそういう立場をとっております。
  86. 穗積七郎

    穗積委員 事務協定であっても、事実承認になると思いますが、どうですか。
  87. 中川融

    ○中川政府委員 たとえば、郵便協定あるいは気象の問題について、純技術的な取りきめを両政府間にするという場合は、相手の政府政府として事実上にも承認するという意欲、考えは当方にはないということが一応推定されるのでありまして、つまり政府の存在を一応前提とした一行為でない。かような意味から、事実上の承認の問題も、純技術的な取りきめには起こらないという解釈あるのであります。従って、ただいま穗積委員の言われましたようなデ・ファクトと申しますか、実際上の承認の問題は出てこない問題であると思います。
  88. 穗積七郎

    穗積委員 そこのところは解釈のニュアンスの程度のことだと思うのです。貿易協定においても解釈は同様だと思うのです。従って、技術的な協定におきましても、私は相手の政府を代表する所管大臣同士で政府間の協定ができれば、それは前提として相手の政府の事実存在すること自身は認めておると思う。これは国連の代表権あるいは国際法上の相手の政府承認といくかいかぬかは別として、その以前の事実としては、その政府の存在を認めておる。それなくして、政府協定というものはいかなる技術協定といえども、私はできないと思うのです。また翻って言うならば、貿易協定にいたしましても同様だと思うのです。これは必ずしも平和条約ではないわけですから、しかも小坂外務大臣は、政府方針として国交回復に至ることは認める、従来はどうかといえば、従来の最も与党内における反動的な意見は、中華民国が唯一の合法的な政府であって、今は地域的には台湾と澎湖島だけに限られておるけれども、これはやがて中国大陸をも領土として支配するようになることを期待し、それまでは大陸におるところの政府そのものを認めない、これを地上からネグレクトするという態度できたわけです。そうではなくて、今度は一歩前進をして、相手の事実は認め、かつ時期は別として、国交回復へ持っていきたいと思うという点を今度の池田内閣によって明らかにしておられるわけでしょう。そうであるならば、何をもっておそれるところがありますか。事実を承認し、しかもやがては国交回復にいくのだということがすでに明示されておる以上は、何をもって一体ちゅうちょされるのであるか。その政治的理由を明らかにしていただきたいのです。法律解釈については、先ほど私が言ったように、事実承認になると思うのです。ですから事実は承認をし、国交回復をやがてしようという方針を打ち出しておる以上、貿易協定になぜ踏み切れないか。その理由がさっきのような御答弁でははなはだしく薄弱であって、そういうものをわれわれは支持するわけにいかぬ、こういうことでございます。
  89. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほど申し上げたように、政府間貿易協定というものは、現在、その国の承認につながる、こういうことでありますから、そこまではいかれない。しかし事実をだんだん積み上げていくということを考えて、国交改善、両方の関係の改善ということを考えるならば、そういう方式の方がいいだろう、こういうことであります。先ほどもあなたのおっしゃった言葉の中に、どうも日本政府のやることが非常に不信に満ちておるようなお言葉がございましたが、そういう関係ではなかなか両方の関係がよくなるということはないのでありますから、やはり双方の認識を正しくして、誤解があれば誤解を解く、政治社会の体制が違っておっても、それぞれの国民がそれを認めてやっているのだから、その体制を支持していくという前提に立って初めて友好関係というものは出るわけでございます。それがないところへいきなり一番大切なことをやれとおっしゃっても、これは私はできないと思います。  法律関係については局長から申し上げます。
  90. 中川融

    ○中川政府委員 ただいま穗積委員のいろいろ御質疑で、私はっきりしたのでありますが、要するに今われわれが問題にいたしておりますのは、そこにある政府を承認する、それがデ・ファクトであるかデ・ジューレでありますか、いろいろ承認のやり方はありますが、承認するという問題になっては困る、今の段階ではそういう時期でないという意味で、われわれはこの承認問題を考えておるのでありまして、たとえば中共政府というものが現実に中国大陸に支配権を持っておるという事実そのものを客観的事実として認めること、これはもう問題のないところでありまして、これのことを何も心配しておるわけではないのであります。中共政府が中国の正統政府であるということを、あるいは法律的に、あるいは事実上といいますか、実際上、また行為によりましてそれを認める、その意思を日本政府が表示する、表明するということが法律上の問題になってくるわけでありまして、事実上の承認という問題についてわれわれが考えておるのはその点でございます。従って穗積委員が御指摘になりましたような意味であるならば、事実上の承認ということは少しもおそれる必要はない。法律上めんどうだ関係が出ないということでございまして、中共政府が事実上大陸を支配しておるというこの客観的事実を認めることになるのじゃないかという御説であるならば、その点はわれわれとして心配しておるといいますか、そのいろいろ考えておるところとは離れた問題でございます。
  91. 穗積七郎

    穗積委員 小坂外務大臣に率直にお尋ねいたしますが、台湾問題がさっきも言ったように一番問題になるわけですね。先ほど私は、台湾問題の、現在のようなシチュエーションに置かれておる判断、それから条約上の解釈を問題にいたしましたが、これを政治的に今後解決するということになりますと、われわれも中国へ行きまして、武力解放——中国の内政に干渉するわけではないが、台湾解放の問題は国内問題だというので、われわれは内政に干渉はしません、しかしながらそのことは同時にアジアの平和に関連をいたしますから、できるだけ一つ武力解放でなくて、話し合いの方法によって、この台湾の解放問題は処理されるように希望するということを幾たびか繰り返しました。それに対しては先方の周総理、毛沢東主席も、そのことについては十分尊重して、できるだけそれでやっていきたいと思う、ということを言って、一昨年以来、御承知のようにそれを言っただけではなくて、政治的に実践されて、第三国共合作の方針を打ち出して、台湾政府に呼びかけておるわけですね。そうして御承知のように、今度民主党内閣がアメリカにおいてできて、民主党内閣というものはこの中国問題にやや積極的な姿勢を示しておりますから、そのときの台湾問題の解決の仕方としては、二つの中国問題が考えられはしないか、あるいは国連管理という問題が出はしないか、あるいは場合によれば、苦肉の策で、台湾の独立援助するような態度に出はしないかという点が心配されておるわけです。そうして台湾政府内部におきましても、実は二つの中国という問題に対してはまっ正面から反対しておるわけです。従ってそういう段階に今かけ声だけではなくて、ケネディ政権ができて、そういう武力による解決をしないということを米中会談で話をしようとしており、また一方においては、台湾問題は国共合作問題として解決する方向へ行く可能性がないとは限らぬと私は思う。そういうことでありますならば、これはわれわれ日本としては一番望ましいことであるわけです。従って中国もすでにわれわれの提案をも加味いたしました第三次国共合作の提案、平和統一の方針が打ち出されておるわけです。また台湾政府部内におきましても、そういう考えが出てきて、二つの中国を作られたり、あるいはまた関係諸国間の国際管理に移されたり、あるいはまた独立扇動がなされたりするということを避けて、大陸政府との間の話し合いということも私は現実問題として考えておくべき一つのコース、だと思うのです。そうであるならば、日本政府としては、この第三次国共合作を積極的に支持する態度を表明すべきだと思うのです。そのことが中国問題を解決するための一番いい、しかも手っ取り早い現実性のある方針であり、その方針を具体化するために、国際世論として日本政府が第三次国共合作を支持するという態度を明らかにすべきだと思うのです。外務大臣の御所見はいかがでありますか。
  92. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御意見は承っておきますが、内政干渉にわたりますから、意見は差し控えます。
  93. 穗積七郎

    穗積委員 伊關さん、つまらぬアドバイスをしてはいけません。  そうであるならば、小坂外務大臣に率直にもう一ぺん伺いたい。さきに与党の野田委員が、積極的に所信を持ってやれ、われわれは支持すると言っておられるのですが、もうあとは、私がきょうお尋ねしたところでは、バンドン原則はこれを尊重して、中国にもこの態度でいく、具体的になっておる友好三原則も支持する、それから遺骨の送還あるいは人的交流あるいは新聞記者交換についても積極的に協力をしたいというととが明らかにされました。そして続いて残る問題は、政府協定にこれから入るわけです。そうでありますならば、——あなたのおっしゃったことで余分なことは言っておりませんから、どうぞ御心配なく、確認された点だけを整理しただけです。あとは個別の政府協定に入るわけでございますが、そうであるならば、国交回復前に個別の政府協定という段階が考えられるわけです。政府政府が接触してやるということまで決意を固められたならば、今申しましたように、われわれは誤解ではないと思いますが、日本政府としては、中国側にも誤解があると思うのです。それからまたわれわれの友好三原則に対する考えもわかっていない、こういうことでありますならば、私はこの政府協定に入る前に外務大臣自身が北京に行かれて、京城にも行かれたのですから、もう三十分延ばせば行かれるのです。そして周総理、陳毅外務大臣一つひざを交えて、バンドン原則、友好三原則の尊重の立場に立って日中間の具体的な問題の話を進めらるべきだと思うのですが、ぜひそれをおやりになりませんか。
  94. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私はそれにはいろいろ前提があると思いますが、先ほどもしばしば申し上げておるように、日本の国の事情というものを説明するには、やはり日本の国が一本になっていく必要があると思うのです。先ほどからの御討議にもありましたように、今ここで御質問になっていらっしゃる穗積委員のお立場はわかりますけれども、やはりこれは日本の国としてお互いに考えていくという問題になる前提が必要だと思いまして、お互いにそれこそまず国内で腹を割って話して、結論が出てからの問題だと思いまして、その先の問題はそれができてからということにいたしたいと思います。
  95. 穗積七郎

    穗積委員 最後に一点だけお尋ねしておきます。実はきょう私も日韓会談についてお尋ねしたいと思ったのですが、時間もすでに過ぎましたし、あと戸叶委員からも御質問があるようですから、一点だけ外務大臣から責任のある御答弁を伺っておきたい。  いろいろな理由でわれわれは日韓会談は打ち切るべきだと思っておりますが、政府はやろうとしておられるわけです。それらのことは私も後にお尋ねをし、所感を明らかにしたいと思っていますが、この際一つ外務大臣に伺っておきたいのは、日韓会談に臨まれるときに一番大事な点は、三十八度線から南の限定された地域しか領有支配していない韓国政府を全朝鮮地域の唯一の合法政権として認めて、その立場に立って交渉をなさるのであるか。そうではなくて、三十八度線から南の地域支配する限定政府として交渉に当たっておられるのであるか。同時にそのことは、北における朝鮮人民共和国の存在は認めて、後にこれとの間においても、またはそれとの間における統一政府ができた場合において、それとの関連においても交渉の余地を残しておやりになるつもりであるものか。韓国政府の地位についての点が今までの御答弁で非常にあいまいでございましたから、この際その点だけをはっきりしておいていただきたい。もしそれを唯一の合法政府としてお認めになるならば、条約上の根拠は一体どこにお求めになっておられるか、政府の御所信を伺っておきたいと思うのです。
  96. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 日韓会談に反対であるという立場でおられるなら、私が何と御答弁しても無意味だと思いますが、それはいかがで、ございますか。その問題についてはしばしば所見を明らかにしております。
  97. 穗積七郎

    穗積委員 反対の理由は話し合いですから、与野党でしましょう。結論は私どもは反対ですけれども、その理由はきょうは述べません。しかしながら、政府立場交渉をやろうとしているが、そのとき一点だけお尋ねをしておきたいのは、韓国政府の法的地位についてどういう解釈をもって臨んでいかれようとしておるのか、その点を伺っているのです。
  98. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 その結論からあなたは先にお出しになる。御質問があって、それによって反対、賛成の態度考えるということであればお答えいたします。私は今までここで何回も御答弁しているのでありますが、韓国政府支配権のほかに、三十八度から向こうに、北の方にその支配権の事実上及んでいないものがあるということを頭に入れて交渉をしておるということであります。一九四八年の国連の決議によって、韓国に一つ政府しか認められません。一つの国に一つ政府しか認められないわけでありますから、それが自由選挙によって国連の支持する唯一の合法政府であるということに了解しております。
  99. 穗積七郎

    穗積委員 それはちょっとどういうことですか。唯一の合法政府として韓国政府を認めておられるのか。さきに言われた北における人民共和国の存在を無視しない、それを考慮に入れて……というようなお言葉もあるわけですが、それとこれとの関係はどうですか。
  100. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 さっき申し上げた通りであります。そういうものがあるということを頭に入れて、そういう権威が、国連ではオーソリティという言葉を使っておりますが、そういうオーソリティがあるということを頭に入れて交渉していきます。
  101. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、韓国政府は限定政権ですね。
  102. 中川融

    ○中川政府委員 韓国政府の施政が三十八度線以南にしか及んでいないという意味では、今穗積委員のいわれる限定政府と言うことができるかと思います。
  103. 堀内一雄

    堀内委員長 戸叶里子君。
  104. 戸叶里子

    戸叶委員 時間があまりないようでございますから、急いでラオス問題と日韓問題を二、三伺いたいと思います。  ラオス問題につきましては、本会議におきましても、施政方針演説に対して各党の代表者が質問をいたしておりますし、また今も野田委員から御質問がございましたけれども、御答弁を伺っておりますと、少しも私たちが聞きたいと思うような答弁をしておられない。国民が非常に不安に思っていることに対しての答弁がされておりませんので、私は、この点をもう少し深く伺ってみたいと思います。  まず、政府態度を伺っておりますと、ラオスの問題に対して、一体日本政府が何をしたかということに対して、関係各国と非公式であるけれども、目立たない態度話し合いをしたというふうなことをおっしゃっているわけでございますが、私どもといたしましては、アメリカの基地が日本にある以上は、もう少し積極的に、日本国民の不安というものを取り除くようなことをしていただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。なぜかと申しますと、安保条約の審議にあたりまして、日本に基地があるということに対して、私どもが幾たびかその不安を述べました。それに対して、基地という概念が変わってきた。国連の決議によって、基地からアメリカの軍隊なり何なりが出ていくので、勝手にそういうふうな行動はしないんだというようなことさえも言われていたのでございますけれども、今度の場合を考えましたときに、国連においてのきめ手がありません。内乱でございます。さらに、また、どっちが侵略者であるかというようなことも言っておりません。そういうふうなときの基地の概念というものは、私は違ってきていると思います。従って、もしも、たとえば、日本の基地からラオスに対して補給物資を送るとか、あるいは軍隊をどこかに移動して、そこで待機をさせておいて、そしてラオスへ送るというような場合があると思います。そういうものは、安保条約によって事前協議の対象になりません。ところが、結果的にどういうことになるかと申しますならば、相手国に対して不利なことをしますと、日本が直接ではないけれども日本にある基地から補給物資を持っていったということで、その反対側に立っている方が、その補給物資を送らないようにすることも、私は国際法上できると思うのです。そうなって参りますと、基地という概念は、やはり昔の基地というふうな考え方で、非常に危険になってくるわけでございまして、一体日本が、今度のような場合に、日本からの物資や、あるいは在日米軍の移動というものがどうなっているかということを、どの程度日本政府がおわかりになるのか、この点を伺いたいと思います。     〔委員長退席、竹内委員長代理着  席〕
  105. 安藤吉光

    ○安藤(吉)政府委員 具体的事実でございますから、具体的事実をありのままに申し上げます。  もちろん、われわれも、その軍の行動等が国民に不安な観念を与えることは、非常に差し控えなければならないというような観点から、常時、米軍、米国大使館と連絡をとっております。そしてまたこういった関係、軍の移動につきましては、向こうの方からも常時積極的に連絡をとってきております。それによりますと、現在までのところ、日本にあります基地からの直接作戦行動は全然とられておりません。  それから補給とか、そういった問題は、これは安保条約のいわゆる事前協議事項ではございません。結論を申し上げますと、安保条約で事前協議を要するような重大な作戦行動というものを、日本の基地から直接とっている事実は全然ないということが、現在までに判明しております。
  106. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうことは前にも新聞に出ておりますからわかっているのですけれども、たとえば在日米軍から、あるいは日本から何かの補給物資を送っていくというような場合もあり得るわけです。そういうふうな場合には、日本との間の事前協議の対象になりませんから、どんどんラオスに何か品物を送っても、これは日本政府は関知しないところじゃないかと思うのですが、その点はどうなんでしょうか。
  107. 安藤吉光

    ○安藤(吉)政府委員 実際、日本の基地から移動する場合におきましては、これは事前協議の対象になっておりません。しかし、先ほど申し上げました通り、私関係しております合同委員会、あるいは米大使館との常時の接触、在日米軍との連絡によって、日本から特にそういったような通常を越えたような移動があるということは聞いておりません。
  108. 戸叶里子

    戸叶委員 今のところは何もそういうことは聞いていない。そうすると、日本政府として、外務大臣は、たとえばこういうふうなラオスの問題が起きたときに、どうか日本の基地からは補給物資を送ったり、あるいはまた日本国民に疑いを持たれるような軍の移動というようなものは行なわないでほしいというような申し入れをすべきではないかと思いますけれども、その点はいかがでございましょうか。
  109. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 日本が他国の侵略に巻き込まれるというようなことは、私は、絶対に避けるべきだと思います。そういう意味で、常時、日本のそういうことに関係する国のそうした機関に対して、われわれの意思は表示しております。それからまた、ラオスの内乱事件についても、今アメリカ局長からお答えした通り、また私がいろいろな機会に申し上げている通り、そういうことがないような心がまえを持ってもらうように、常時接触をしております。
  110. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、今度のラオスの問題だけに限らずに、またどこかでそういうふうな内乱なり何なり起きて、日本国民が非常に不安に思うような場合がないとも限らないわけでございますけれども、そういうようなときに、先ほどアメリカ局長のおっしゃいましたように、絶えずアメリカ側と交渉をして、そうしてどういうものが送られるのだとか、どういうような行動をしているかというようなことは話し合うんだというふうに了解をしてよろしいわけでございますか。
  111. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私はいつ幾日こういう行動をとったとか、いろいろなことを言うことはかえってどうかと思われる点もあるので、その点は特に申し上げないのでありますが、常時非常にそういう点を気をつけてやっております。今後も御心配はないというふうに思います。
  112. 戸叶里子

    戸叶委員 先ごろ伊關アジア局長東南アジアをずっと回って帰られまして、そうして結論として、ラオスは中立にしておくのが一番いいんだ、こういうふうなことを新聞で発表されました。私は、そのときに、日本が安保理事会等で積極的にラオスの中立というようなものを支持するような発言をやはりやるべきではなかったか、そうしてまたそういうふうに周囲の人たちを説き伏せるべきではなかったか、こういうふうに考えておりますけれども、そういうふうな動きを何もなさっておらなかったように思いますが、何か国連でそういう努力をおやりになりましたかどうかを伺いたいと思います。
  113. 鶴岡千仭

    ○鶴岡政府委員 この前のラオス問題のときに、日本は安全保障理事会の非常任理事国でございました。その場におきまして、日本は、極東アジア一員でもございますし、また平和を維持する上において一番大事な安全保障理事会の一員である、こういう二つの観点から、積極的な努力をいたしました、その結果、いわゆる澁澤ミッションなるものが任命せられまして、澁澤大使——当時、外務省研修所の所長でございましたが、この方が頭になりまして、チュニジア、アルゼンチン及びイタリアの四つの国々で構成する現地派遣団が構成されて、そうして現地に一カ月ほどおって、情報の収集その他に当たったのでございます。その結果、和解せよとか、どういう解決方法をとれとかいうような権限はなかったので、ただ情報を集め、それを安全保障理事会に報告する文書を提出するにとどまったのでありますけれども、安全保障理事国におきましても、それからニューヨークの当時の評判によりましても、この団体はいわゆる国連のプレゼンス、何といいますか、国連の存在という事実によって、あのときのラオス問題を解決する上に非常に役立ったということであったのでございます。その後、日本は安全保障理事会常任の任期が切れまして、安全保障理事会におりません。三月七日から始まります十五回の総会でどういうことになるかわかりませんけれども、今までのところこの問題は起こっておりませんので、特に発言はいたしませんでした。
  114. 戸叶里子

    戸叶委員 私の言いたいのは、たとえば伊關局長が来られてそういう情報を出されたならば、やはり日本外務大臣として、すぐに日本から見ても中立的な立場をとるように、早くラオスの問題を解決するには、それ以外にはないんだというようなことを指令として国連なり何なりにいる人に出して、そうしてそういうふうな説得を周囲の人にさせるような積極的な外交を持っていただきたい、こういうことを思うわけでございます。先ごろケネディ氏がラオスはやはり中立にするしかほかないというふうなことを言われておる。そうして日本の外務省の方も、やはり自分たちとあまり違わなかったということで、ほっと胸をなでおろすということでなくて、むしろ日本から積極的に中立を保つべきであるということをアメリカにもソ連にも言うぐらいの積極外交というものを私は国連を舞台にやるべきである、こういうふうに考えますけれども、この点の外務大臣のお考えはいかがでございましょうか。
  115. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 国連は今のところ御承知通り三月七日まで休会でございます。それよりも私は、日本外務大臣がここにおりますし、各国の大使もおりますし、出先の大使も持っておるのでありますから、そういう正常なルートを活用する方がいい、かように思います。  それから、国民の不安と言いますけれども、ラオス問題は、すぐに日本がどうなるという緊迫感を感じている問題ではなくておりましたし、また現在もそれで済んだのでありますから、そういうやり方でよかったのだと思います。  それからラオスの中立問題ですが、これはケネディ氏が、中立がいいと言ったと言われますけれども、まだどうもそこまでいっていないような感じがいたします。それから、御承知のように国際監視委員会の復活に対しまして、それをイギリス、インド——インドはむしろ議長だった関係もありますし、イギリスも当事国でございますから、これはイギリスを通してアメリカへそれを言ったわけであります。日本はなぜそれをしなかったかと言いますけれども、そういう関係になかったものですから、あまり出過ぎるのはいいとも限らぬわけです。そこでああいう態度をとったわけでありますけれども、イギリスのそういうことに対して、アメリカもそれはけっこうだろうというふうな意思を表明したようでありまして、アメリカ国連の方へ持っていってやろうという態度を先ほどとったわけであります。それでよかったのでありますが、今度はソ連の方で話を聞いていないわけです。御承知のように、コン・レ、パテト・ラオの混合軍が相当に戦火を交えております。何とか一つそれも、ソ連の方もそうした監視委員会の復活に同意してくれて、これがおさまるような方向にいくことを期待しています。大体そういうふうになるんじゃなかろうかと思っているわけです。積極的に日本はこうやったこうやったと一々申し上げますと、いいようにお考えになる場合もあるかもしれませんけれども、これは事柄の性質と時と場合がありまして、必ずしも一本調子にそれがいいとは限らぬ場合が多いのでありまして、私は主として外交の正常ルートというものをできるだけ活用していきたい、かように思っております。
  116. 戸叶里子

    戸叶委員 国民はあんまり心配しなかったとおっしゃいますけれども国民は相当に心配しておりました。なぜならば、日本には米軍の基地があるわけでありまして、やはりその基地が利用されるのではないかというようなこと、そういうことに対しての心配はないんだということは、政府が心配はない、手を打ったんだというくらいはやはり発表して国民に知らしていくべきだと私は考えております。  次に伺いたいのは、一月二十日の閣議でラオスとの経済技術協力協定に基づく同国に対する援助期間を一年間延期することをきめたということを発表されました。これは私も覚えておりますが、三十四年一月発効の協定で二年間でたしか十億円の生産及び役務の援助を行なうということをきめて、ことしの一月にその期限が切れることになっておるわけですけれども、実際はまだその十億のうち四千六百万ですかそれくらいしか使っておらない。そこで日本としてはその期限を延ばすのだということを発表されたのですけれども、それはラオスのどの政府に対してやっておるわけですか。ブン・オムですか、それともプーマの方ですか、どららですか。
  117. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 現在の正統政府であるブン・オムであります。
  118. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、アメリカでさえも今のラオスのあり方に対しては非常に必配をし、先ほど小坂外務大臣は中立とははっきり言っておらないとはおっしゃいましたけれども、私どもが新聞記者会見等によって見ますと、ケネディ氏はやはりはっきり中立でなければまずい、収拾がつかないというようなことを言っておられるわけなんです。そうなってきますと、今の政府が長く続くとも考えられないわけでございますので、私はあとから問題が起きるのではないかと思いますが、この点はいかがでしょう。
  119. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 期限が切れますので、どうしてもこれをつないでおきたい。これは水道を作るというようなことは非常にいいことでありますし、この期限が切れますともう一度国会の御承認を得なければならぬことになりますし、治安がおさまりますれば、これを始めたいと思います。非常に技術的な問題でございますから、現在の政府とこの協定を延長することによって、これを政治的に支持するとかいうふうな意味合いがあるというふうには私たちは考えておらなかったのであります。ただ現在の政府としてはこれが正当な手続を経ておりまして、国会の承認とかあるいは憲法上の手続を経ておりますから、ほかにない、これとしかやれないということであります。またこれはよその国のことでございますから、この政府がかわるかもしれません。しかし元来憲法上の手続によって、政府がかわっていくということによりまして、前の政府と結んだ協定が無効にたるものとは考えておりません。一たん結んだものはどの政府になろうとも、正式に向こうの憲法に基づいて内閣がかわっていく、その場合にはその効力がずっと続くという解釈でございます。
  120. 戸叶里子

    戸叶委員 今非常に正常でない形であることはどこの国も認めておるのでございますから、やはりこの協定はラオスの政情がおさまってから、日本がその政府と締結した方がいいのじゃないかと思うのですけれども、今のアジア局長のお話では、もし今の政府と結ぶと、その次にできた政府との間にも効力があるというふうにおっしゃったのですか。
  121. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 そうでございます。今の政府と結んでおいて、次にどういう政府が出ますか、正式の政府が出て参れば当然効力は引き継ぐわけです。それからこの二十日で切れるのですから待つわけにいかなかったのであります。
  122. 戸叶里子

    戸叶委員 もしも切れるとすれば、この次に結び直すという手もあるわけですけれども、やはりそういうような政府と結びますと、今の政府日本が正当なものとみなしてこれを認めているというふうな影響を他に与えやしないか、そういう考え方を他に持たせやしないかと思いますけれども、この辺のことはいかがでございましょうか。中立というようなことを支持しておられながら、何か今の政府を正統政府として認めて、その政府協定を結ぶということは、中立と言われるその考え方と矛盾するように私たちは考えるわけです。
  123. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 どれが今正統政府であるかということになりましたら、これはほとんど多くの国は、今の政府が正統政府であるというふうに見ております。ともかく正式の所要の手続はすべて経ておるわけでございます。ただ特に好んでそういう意思表示をする必要がない場合は、それはしておらないかもしれない。しかし元来政府の承認という問題は起きない事態であります。ただこの政府と事実上の関係を持っていくということによって承認という問題は法律上ないわけであります。これは政府がかわっていく、日本政府がかわりましても、ほかの国が承認するとかせぬとかいう問題は起きないと思うのです。結局それと同じように法律的には考えておりますけれども、政治的な含みがあるものですから、ある意味で活発に接触するかせぬかというふうな政治的な考慮はあるかもしれません。しかし、こういう純技術的な問題でもって、期限の問題がありますからこれと接触いたしましたということが、将来ラオスの政府が中道の道を歩むべきであるというふうな私自身の考えに何ら影響しない。私自身では一つも矛盾を感ぜずに両方のことをやっておるわけですから、私はそういう点はないと思います。
  124. 戸叶里子

    戸叶委員 それはお考えの違いでしょうけれども、法律的には私どももわかりますけれども、政治的な考慮から今の政府との条約の締結ということはやはり考えるべきじゃなかったかというふうに私ども考えます。伊關局長がそういうふうにお考えになるのは仕方がないと思いますけれども、やはり政治的な影響というものは、今伊關局長の言われたようなことでは済まされないのじゃないかというふうに私は考えるわけです。  ラオスの問題は一応その点にいたしまして、韓国の問題を少し伺いたいと思います。二十五日に再開されました韓国との予備会談で、拿捕された日本の漁船の入江丸のことが問題として取り上げられたようでございますけれども、この釈放についてどういうふうな回答を出されたかを外務大臣に伺いたいと思います。
  125. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 事務的な問題でございますので、私から御答弁いたしますが、どういう回答と申しますと、先方の回答でございますか。
  126. 戸叶里子

    戸叶委員 先方の回答です。
  127. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 これは、いつも船が拿捕されますと、そういう事実をはっきりいたしまして、どの地点でもって何月何日拿捕された、そういうことをはっきりいたしまして、そして向こうに抗議いたしまして、直ちに返還してくれということを申すわけでございます。それに対しまして向こうは、公式に認められた自分の方の李承晩ラインを侵したものであるからというふうな理屈を言ってくるわけでございます。これはいつもの場合と同じでございます。あの席上でどういう回答を向こうがしたか。本会議の席上で澤田代表から、せっかく会談をやっておるときに、こういうことをやっておもしろくないじゃないかという点を申しまして、これに対しまして向こうも、その通りこういうことが起きたのは遺憾である、それで日本側の御要望は本国政府に伝える。しかしそれにつけ加えまして、お互いにせっかく空気をよくして会談をやろうというときであるので——まだこの李承晩ラインというものは、韓国側から見ればあるわけなんです。そこでこれをどうするかという問題をやろうとしておるときであるので、韓国側をあまり刺激するようなことをしないでほしいということをつけ加えておったというのが実情であります。
  128. 戸叶里子

    戸叶委員 予備会談を進められるにあたって、こういうふうな非友好的な行為をやられたままで進めるというのは、私はどうかと思うのです。先ほどのように、隣国であり友好国としていきたいからとおっしゃるのでしたら、その会談を続ける前に、入江丸を返してもらいたい、漁民を返してもらいたいということをはっきりさせた上で、それ以上進められないというぐらいの見識と態度をもってやっていただきたかったと思うのですけれども、その点は外務大臣いかがでございますか。
  129. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 韓国側においては、昨年の九月以来非常に親日的態度をとって国交を回復しょうと努力しておるわけでありますが、韓国の国内の世論がこの年がかわりまして以来非常に強硬になってきた。日本側においても、会談をやっても意味ないじゃないかということさえ言っておる、そういうものとは……という世論が非常に強くなってきておるので困っておるということのようであります。そこで、そういうこともあろうけれども、とにかく一つお互いに困難を乗り越えて友好関係を樹立しょう、こういうことでやっておるのでありますから、われわれの方としては、あれだけ盛んにつかまえていたのがとにかく全部釈放してくれて、その後つかまったのが一船もなかったわけです。しかしあまり国内の反響が強いのでああせざるを得なかったような先方の考え方もあるようですから、こちらはあくまでそれは不当だと抗議しておりますけれども、早くそうした事態がなくなるようにすることが大切に思うということで会談を急いでおります。
  130. 戸叶里子

    戸叶委員 そういう事態をほうっておいて会談をするということは、日本が非常に弱い立場に見られると思うのです。人道上の問題であるにもかかわらず、勝手に李ラインを作ってそうして漁夫をつかまえておきながら、予備会談を進めようじゃないか、大へん友好的ですと言っても、これは私は日本国民が納得しないと思うのです。向こう政府が非常に友好的態度に出てきて、日本との国交回復を急いでいるということをおっしゃいますけれども、私、一月以来の韓国の新聞をずっと見せてもらって読んでみますと、外務省の方もおそらく読んでいらっしゃると思いますけれども、大体統一というようなことを世論は非常に望んでいるわけです。張勉内閣としては、いろいろの経済上の問題等で早く日本と国交を回復していかなければならないという立場に追いやられつつあるということはわかりますけれども、そういうふうな人たちとだけ日韓交渉をやっていくということは非常に大きな間違いを犯すものじゃないか。やはりもっと一般の韓国民の声も聞いていくべきじゃないかということを考えるわけです。一々例をあげませんけれども、たとえば張勉内閣と争った野党の金渡演という人が、統一に対しては南北の文化人の交流をしようと言っておりますし、民議院の議長の郭尚勲という人が、超党派的に研究機関を作って、そうして統一問題をしようじゃないかと言って、その機関が二月の半ばにはできるといわれております。また民族自主統一中央協議会というものが十二月二十七日に結成されて、北の重工業と南の農作物の交流なくして完全な朝鮮の独立はできないというようなことを提唱し、手紙や交際、経済文化交流を政府に要求いたしております。さらにまた弄大統領が七日に官邸で記者会見をして、日本は先に出すべきものは出すべきだ、こう言いながら、必ず日本資本に依存すべき問題が一体どこにあるのかと反問しながら、能動的対日外交は反対である、こういうふうな意見をさえ言っているわけでございまして、こういうふうな韓国の世論を代表する新聞というものを見ましても、南も北もやはり統一というものを非常に願っているということがわかるわけです。こういうときに急いで南朝鮮とだけ協定を結ぼうということは、南北の統一をこわすのみならず、結果的に見て、北朝鮮の人からも韓国の人からも両方から恨まれるような結果になるのじゃないか、こういうことさえ私には考えられるのですけれども、こういうふうな朝鮮の世論というものをよくお調べになっていらっしゃるかどうかを伺いたいと思います。
  131. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 民主主義の国というものは、御承知のようにいろいろな意見があるものであります。それは私もいろいろな意見は聞いております。ただわれわれは一つの目的を持って進まなければいかぬというふうに考えるわけです。これは日韓友好であります。今いろいろ御意見がありましたけれども、韓国側としても、もちろん独立して繁栄しようという以上、日本の資本に依存してやっていかなければならないのだということを言うはずはないのであります。われわれは韓国側の気持も十分尊重しなければならぬと思います。それから李ラインでつかまったことに対して抗議はいたしております。しかし従来は抗議するだけで何にも解決する方法がなかったわけでありますが、それがとにかく友好のとびらが開かれて、ああしてものをお互いに合理的な基礎解決しようという議論になること、そのことが必要なのであります。弱いとおっしゃいますが、それではどういう方法で進めるかということになると、これはなかなかむずかしい問題であります。そういうことを解決することが私は外交であろうと思っております。
  132. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、少なくとも韓国との交渉をやっているのだったならば、そういう問題を解決して、そうして予備会談を進めていくべきじゃないか、その問題を懸案にしておきながら、並行して予備会談を進めるということは、少し日本として不見識じゃないかということを指摘したわけでございます。  それでは外務大臣に伺いますけれども、先ごろ日本経済視察団が韓国を訪問しようといたしましたときに、向こうではかつて日本にいた金立周という人が歓迎委員会まで作ったのですけれども、反対が非常に多くてその歓迎委員会も解散せざるを得なくなってしまった。そして日本経済視察団は訪問もできなかったというふうな結果になったわけですが、この理由は一体どこにあったんでしょうか。
  133. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 この経済視察団というものは最初からやや準備に不十分なところがございまして、早目に日本の新聞にそうそうたる顔ぶれでもって行くということが出まして、出ました以上何とか行けるようにしようということであのころ行くことになったわけなんですけれども、ややそういう面で向こう側の歓迎の態勢というものがどの団体がどういうふうに歓迎するかという点においては準備不十分な点があったわけであります。そういうことも一つの原因になっておると思いますが、直接の原因はあのあくる日に着きますと、デモがあるのではないか。われわれが参りましたときにも小さいのがございました。何かまだ割り切れないものが残っておりました。二、三百人のデモでもあって問題を起こせば、これは非常に日韓関係を悪くする。そういう意味で急遽あくる日の朝ですか午後ですか、飛行機に乗るという前の晩に、夜になりまして、デモがあるという情報がある。また現実にこの政府は視察団が来ないということを発表いたしましたけれども政府はうそをついているのじゃないかというふうな心配を持ちまして、二、三百人の人間が集まったということも事実でございます。それじゃなぜそういう問題が起きるか、そういうふう反対するかという点になりますと、これはごく一部の者が反対するというふうにもちろん言えると思いますけれども、一部の者にしてもそういう反対がなぜ起きるかという問題があるわけであります。日韓の間のしこりというものはまだ完全に割り切れておるものじゃない。そうして何と申しますか、今の時代に日本が再び軍事的に侵略するとはだれも考えておらぬかもしれませんが、やはり経済的に侵略するのじゃないかというふうなことを言う人もございます。それからある意味では政争に使われている面もございましょう。そういうことで一部の者が動いておる。先ほどからお話があるように、船を捕えておる。こういう問題があるといろいろわれわれとしては確かに不愉快な問題でございます。ある意味でこういうふうな現象が出てくるということは韓国の世論が真剣に日本との提携の問題を考え、そこで一部の者にこういうことがある。そういう議論も出てくる。大勢は私はいい方向に向いておるというふうに見ておるわけであります。
  134. 戸叶里子

    戸叶委員 私は今の見方というものは非常に甘いんじゃないかということを考えます。私などが韓国の新聞を見ましても必ずしも日韓会談を韓国自体の大衆が望んでいるというようなふうには見えない面もありますし、今アジア局長御自身が指摘されましたように、この日韓のしこりというものがまだあるわけで、そういうものをお認めになるなら、やはり急いで日韓会談というものを促進させるべきじゃない、こういうふうな考えを持つわけでございますが、この問題についてはあとからいずれもっと深く追及したいと思います。  もう一つ伺っておきたいことは韓国の新聞の民国日報というものの一月六日の社説にはこういうことが書いてございました。それは、四日外務部の語ったところによると、対日財産請求権、李ライン問題は見通しがついた。それは駐韓米大使のマッコーフィー氏が休暇を終えて韓国へ帰任する途中で、日本でマッカーサー大使と東京で会った。そのときには予備会談の命首席代表もいた。予備会談が二カ月もかかってまとまらなかった。それに第三国の大使が一回通り過ぎただけで雪のようにとけていった。そのしこりがとけていった。一体これはどういうわけだろう。問題はここにある、こういうふうに書いてあります。そうしてそのあとで、会談の内幕を見ると、日本アメリカに支払うべき債務の一部を、これは結局ガリオア、エロアだと思いますが、その一部をそのまま韓国に回すということである。このようになれば実質的にはアメリカに対する日本の債務履行が形式的には韓国に対する経済援助になる。次いで日本は何の代価も韓国のために尽くさないでも韓国の前へ経済的威勢を投げかけることになる。こういうことをその新聞の社説は書いておるわけでございます。そこで私は二つのことを考えたのですけれども、韓国の人でさえも、何か日本アメリカの外交、アメリカがうしろにおる外交であやつられておるということを笑っておるというように考えられました。  もう一つの点は、一体このガリオア、エロアで韓国に対する援助をするというような、アメリカへ返すかわりに韓国へそれを持っていって、アメリカ援助の肩がわりをするというような話が一体出ておるのか出ていないのかを伺いたいと思います。
  135. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 われわれが交渉いたしておりまして、その交渉が現在どうなっておるかというふうなことにはもちろんアメリカは興味を持っております。イギリスも持っております。そうして私の部下のところによく現状はどうなっておるかということを聞きに参りますけれども、私自身といたしましてもまた大臣におかれましても、今やっております交渉のやり方について向こうと相談をする、向こうの指示を得るということは全然ございません。ただ向こうがどう動いておるかということに関心を持っておる、これはあたりまえのことであります。その点は全然そういうことはございません。それからその新聞の記事でございますが、大体昨年の十一月か十二月ごろだれが発表しましたのか、向こう政府高官の語るところによると、日本は六億ドルくらいの、これも借款であるのか、援助であるのか、経済協力であるのかよくわからないのですが、とにかく初めは七億ドルという数字が出まして、七億ドルの経済援助ですか、協力ですか、借款ですか、これもその辺がはっきりしない。おかしなことを言っておると思っておりましたらそのうちに六億ドルというような数字が出まして、私はほうっておけばだんだん下がると言っておったのですが、結局われわれもそういう数字がどうして出たかわからない。命鎮午以下代表部の方々もわからない。どうしてこんな数字がどこから出たのかということをわれわれもしておって、そこで何かうがってみると、ガリオアの問題を、だれかがあの数字をこれに結びつけたのではなかろうかと笑ったような次第でございまして、そういうことは全然ございません。
  136. 戸叶里子

    戸叶委員 それでよくわかりましたが、それでは外務大臣に一ぺん伺っておきたいと思います。私どもはガリオア、エロアというものが債務であるということは認めませんが、今の政府のお考えでは、ガリオア、エロアというものは債務と心得ておる、こうおっしゃっておるわけでございますけれども、この心得ておる債務を使うにあたっては、日米共通の目的のためになら使うだろうということを、たびたび国会で答弁されておられます。そうなって参りますと、韓国の問題などには日米共通の目的として考えられるようなことが今後あるかないかということを、一応外務大臣に念のために伺っておきたいと思います。
  137. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ガリオア、エロアという問題はまたの機会に申し上げる機会があると思いますが、債務と心得ておりますが、その心得ておる額は幾らかということについては、まだ確定したものはないわけであります。そこでそれがどう使われるかということでありますが、これについては、私どもは、一応やはり返すものは返さなければならない。その先のことはこれから話してみないとわからない、何とも申し上げられません。
  138. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると私の伺ったことは、ガリオア、エロアということではなしに、日米共通の目的に使うということをときどき答弁されておりますけれども、今のように韓国などへ持っていくというようなことはあり得ない、日米共通の目的と韓国の問題とは考えられない、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。この点を念のために伺っておきます。
  139. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 全部持っていくかどうか、あるいは一部を持っていくか。一部を持っていくとすればどのくらい持っていくかということにもなると思いますが、私は全然ないとも言えないし、あるとも言えます。
  140. 戸叶里子

    戸叶委員 そうするとやはりあり得るということが考えられると思いますが、そういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  141. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 まだこれはさっきから何回も言うようにどのくらいきめるかはきまってないわけです。それからこれはあなた方がいろいろ御議論いただくと思いますが、私ども考えている議論をきょうやってもいいですが、時間があれですから申し上げませんけれども、それを日本としてはアメリカに返すわけです。今度アメリカの方へ、たとえば東南アジアの開発に大いに日本はやりたいから考えてくれという話をするかもしれません。アメリカがそれをいいというか悪いというか、それにまだわからない。それでアジアの問題の中に韓国も入るということはあり得ると思うのです。私は、ここでないとは言いません。しかし今のお設問のように、六億ドルぐらいの借款ができるとすればガリオア、エロアを当てにしているんだ、そういうことは私はないと思います。問題の性質を混同して、私の言っていることを妙なふうにとられるようでございますが……。
  142. 戸叶里子

    戸叶委員 私は混同していません。絶対に混同していません。ガリオア、エロアの問題は別個の問題で、いつかの機会に時間をいただいて申し上げたいと思いますけれども、たまたま韓国の問題でこういうことが出ましたし、そしてまた今までの国会の政府の答弁を伺っておりますと、ガリオア、エロアを返済する場合には日米共通の目的に使うんだというふうなことをおっしゃいますし、また韓国での新聞の問題等もありますので、今のような質問をしたわけでございますが、大体外務大臣のお考えというものは私はわかりました。そういうものを使うこともあり得るというふうに了承いたしました。
  143. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ちょっと誤解があるようですから、私ははっきり申し上げておきますが、これは仮定の問題、仮定の問題にはお答えできません。
  144. 戸叶里子

    戸叶委員 私まだ質問がありますけれども、半までというお約束でございますので、時間をかりまして次の機会にあとをやりたいと思います。
  145. 堀内一雄

    堀内委員長 次会は来たる八日午前十時三十分より開会することとして、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十三分散会