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石川委員 大臣からは、非常に積極的に、誠意を持って完全なものにするために努力をすると言われましたが、その言葉は信頼いたしますけれども、そういう気持があれば、なぜ前提条件をもっと早く満たすということに全力を注がなかったか。これが具体化しないと、言葉の上で誠意を尽くすということを言われても、素朴な国民感情としては、なかなか納得いきかねる点もあるということで、今後とも、この法案をより完全なものにすることを一日も早く実現しなければならぬということで努力をしていただかなければならぬと思います。ただ、私申し上げたいのは、この法案は、第三者補償が目的であることは言うまでもないわけであります。第一条に、「もつて被害者の保護を図り、及び」と書いてありますが、「及び」ではなくて、被害者の保護をはかるのだ、そのことによって原子力産業の健全な発達をはかるのだというふうな趣旨でないと、これは同時並行の目的になっておって、主目的であるという形は明確になっておらぬ。しかし、主目的が第三者の補償である、また、そうしなければ原子力の健全な発達は実現させることができないのだということで、原子力産業の健全な発達ということは、もちろん目的ではありますけれども、第三者の補償ということが、この法に関する限りは主目的であるという点が明確であってもらいたい、こう考えるのであります。
それから、こまかいことをいろいろ申し上げてもなんでございますけれども、
認定機関は、まず、業者の方で連絡をとるといいますけれども、業者は、ある
程度のものは隠蔽しようとする。これは非常に悪い言葉で恐縮でございますが、なるべく表に出したくないという気持が働くのは人情であります。従って、第三者の気持として、これは
事故であるというときには、すぐに命令が出せる、
認定ができるということでなければ、この法案の完全な施行は不可能である、こう考えますので、この点はぜひ早急に御検討願いたいと思います。
それから、多少余談になって恐縮でありますが、実は、
モニタリングを作る場合に、
原研のうち、あるいは
コールダーホール型炉の敷地のうちということだけでなくて、
東海村でも作らなければならぬ。実は、この間笑い話みたいな形でありますけれども、茨城県のシジミには
放射能があるということで、東京の市場でもんちゃくを起こしたという話があるのです。業者が非常に心配をしまして、ほんとうにそうなのかという真剣な問い合わせがあって、私も苦笑をいたしたのでありますが、こういうことがありますと、将来茨城県の野菜は、茨城県の魚はというようなことで、市場において立場が非常に不利になるということも考えられないものでもないわけであります。これは笑い話かもしれませんが、全国的に
モニタリングを作りまして、茨城県だけがそうではないのだというような
データが出ないと、将来茨城県としては非常に困る事態になるということが考えられますので、この点も、今のところぼつぼつそういう
資料も出ておるようでありますけれども、あわせて御検討を願いたいということを、要望として申し上げておきます。
それから、この法案で、あと
一つ大へん大きな前提条件を忘れておると思うことがあります。それはどういうことかといいますと、
日本の特殊事情というものを忘れてこの法案は作られておるのではないかという点であります。それは、なぜかといいますと、
日本が世界でただ
一つの
原爆を受けた被害国である。従って、
原爆症というものに対しては非常な恐怖心を持っておる。たとえば、世界
原爆禁止大会というようなものも、言うまでもなく、
日本が中心となって世界的な大きな集まりになっておりますけれども、ほかの国が
日本ほど
原爆というものに対して恐怖心を抱いておるかというと、どう考えてもそうは考えられません。だからこそ、ウィンズケールで
事故が起こっても、英国人はそれほど騒がなかったということも、そこに原因していると私は考えております。しかしながら、話はわき道にそれますけれども、英国でも核兵器の禁止ということでデモをやって、六百人も検束されたというようなことで、英国人といえども、徐々に核兵器あるいは
放射能障害というもののおそろしさは理解し始めておると思います。けれども、まだまだ
日本人ほどにはなっておらない。こういう前提を、この法案を作るに際しまして忘れておったのではないかということがまず第一点であります。
それから、あと
一つは、立地条件というものを全然考えられなかったのではないか。と申しますことは、ウィンズケールの
事故が起こったといいますけれども、あれは
日本の国にあてはめてみますと、
東海でああいう
事故が起こったと仮定しますと、その
放射能は大体浜松ぐらいまで及んでおります。
日本の場合だったら一体どうなるか。ウィンズケールは大したことではないのだということで御答弁になっておられるようでありますけれども、
日本は、その中に東京も含まれてしまいます。大へんな問題になります。しかも、これは
放射能に対する恐怖心の
程度が、イギリスと
日本では大へん違いますから、
日本の場合だったら大へんな騒ぎになる。きのうも
参考人の中で
意見が出ましたけれども、動乱になりかねない様相を呈する危険さえあるというようなことになります。それから、アイダホで
事故が起こりましたけれども、アイダホは、私はよく
研究したわけではありませんけれども、
東海村よりもいろいろな
施設が集中しておるという話を聞いております。しかしながら、このアイダホの敷地はどのくらいかというと、大体関東地方が入ってしまうような大きさです。そこで
事故が起こったといってもアメリカは平静だと思いましたら、まるで敷地の面積に格段の相違がある。
日本でもしあれと同じような
事故が起こったら一体どうなるか。これは関東地方は全部大騒ぎです。とんでもない動乱
状態になる。こういうような立地条件を全然没却されてこの法案が作られたのは、一体どういうところに出ているかと申しますと、国際間での常識、国際水準というものをもとにしてこの法案は作られておる。しかしながら、その水準では
日本ではなかなか納得できない面がたくさんあるという点を、ぜひ当局には肝に銘じて記憶願いたいと思います。どういう面かと申しますと、たとえば、きのうも
参考人の方が言っておりましたが、ラジオ・アイソトープというようなことが対象になっておらぬのじゃないか。拡大性
放射能の性格を持つことによって生ずるところの
障害ということに含めますと、ラジオ・アイソトープも入るわけでございますが、ラジオ・アイソトープというものは入っておらない。入っておらない理由というものは、漏れ聞くところによりますと、
従業員ぐらいしかあまり問題にならない、第三者はほとんど対象とならないから、第三者の
損害賠償という場合には、ラジオ・アイソトープの製造工場というものは対象にしなくてもよろしい、第二者の場合に考えればよろしいのであって、
従業員だけを対象にすればよろしいのである、こういう考え方でこれは入っておらない。また、国際的な水準も、確かにそうなっておるようであります。私よくわかりませんが……。ですから、国際並みでやったということで良心を満たしたことになっておるのでございましょうけれども、
東海村では、そうはいかないということなんです。
東海村でアイソトープの工場が火事になったとかなんとかいうことになれば、その被害はまことに甚大である。
従業員だけで済む問題でない。ということは、先ほど申し上げました立地条件というものが、
外国と
日本とでは全然違う。従って、この法案はそういう点で非常に不備であるということを言わざるを得ない。従って、
外国の法文並みに、第三者
障害は、そういった拡大性
放射能による
障害というようなことでなしに、
原子炉災害だけでよろしいんだというふうに規定をしておりますけれども、それだけではきわめて不十分なものになるのではないか、
住民としては非常に不安でたまらないということにも相なってくるわけでありまして、私は、その点については、どうしてもこのままで法案を通すことはきわめて不徹底である、こう考えますけれども、その点についての御見解を承りたい。