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1961-04-06 第38回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年四月六日(木曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 山口 好一君    理事 齋藤 憲三君 理事 中曽根康弘君    理事 中村 幸八君 理事 前田 正男君    理事 岡  良一君 理事 岡本 隆一君    理事 原   茂君       有田 喜一君    佐々木義武君       西村 英一君    保科善四郎君       細田 吉藏君    石川 次夫君       小林 信一君    田中 武夫君       山口 鶴男君    内海  清君  出席国務大臣         国 務 大 臣 池田正之輔君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   島村 武久君         総理府事務官         (科学技術庁振         興局長)    原田  久君  委員外出席者         科学技術事務次         官       篠原  登君         総理府技官         (科学技術庁振         興局科学調査         官)      前田 陽吉君         総理府技官         (科学技術庁振         興局管理課長) 佐藤 松男君     ————————————— 四月六日  委員河野正君辞任につき、その補欠として小林  信一君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  新技術開発事業団法案内閣提出第一二四号)      ————◇—————
  2. 山口好一

    山口委員長 これより会議を開きます。  新技術開発事業団法案を議題といたします。質疑の通告がありますので、順次これを許します。田中武夫君。
  3. 田中武夫

    田中(武)委員 新技術開発事業団法案につきましては、商工委員会との連合審査等も開き、総理出席を求めて、いろいろと所管問題について伺ったのでありますが、私といたしましては、まだすっきりしない点がありますので、なお、設置法との関係について、法律的な意味において法制局長官にお尋ねいたしたいと思います。  まず、科学技術庁設置法を見ましたときに、三条あるいは四条の十二、あるいは八条の三号、こう見てみますと、大体科学技術庁仕事は、科学技術行政事務総合的調整、これが主たる担当事務であって、企業化というようなものを前提とした、すなわち、企業にするためにやる仕事、それは、すなわち企業に続くわけであります。そういうのは科学技術庁で行なえるかどうかということに、先ほど来申しておるように疑問を持っております。設置法との関係において、どういう点から科学技術庁でできるかということを法制局長官に伺いたいのです。
  4. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは、きわめて形式的に申せば、従来、科学技術庁設置法の第八条、振興局事務の中に、理化学研究所に関することが入っておったわけであります。この理化学研究所二つに分けて、新技術開発事業団を作るわけであります。今度の法案の附則にも、この第八条の五号でございますか、改正が入っているわけであります。同時に、この振興局所掌事務ということにしてあるわけであります。形式的に申せば、そういうことでございますが、しかし、そういうのが科学技術庁設置法全体の仕事の内容から、はたしてにじみ出してくるかどうかということ、あるいは他省段間法の方にむしろ入るべき点があるかどうかという点の御疑問かと思います。これは結局この第三条で「科学技術庁は、科学技術振興を図り」云々、「科学技術に関する行政を総合的に推進する」云々と書いてあるわけであります。これは、もちろん一つの大きな柱は、今おっしゃったような総合調整ということでございますが、しかし、同時に、各省にまたがる事務については、ある範囲実施事務と申しますか、たとえば、原子力とか航空技術等については持っているところもございます。そういう点もございますし、それから、たとえば、この八条の振興局事務の中では「発明及び実用新案奨励並びにこれらの実施化推進に関すること。」というのが入っておりまして、つまり、ある暫定の省の仕事というよりは、科学技術全般にわたるようなものにつきましては、新技術開発事業団がやる範囲の程度のことは、やはり科学技術庁所管にするのが最も適当である。または第三条任務、あるいは、従来、科学技術庁に入っておりましたいろいろな所掌事務とも矛盾するものではない、かように考えるわけであります。
  5. 田中武夫

    田中(武)委員 八条第五号の「理化学研究所に関すること。」などはうたってあります。従って、今まで理化学研究所科学技術庁所管であった。ところが、そのうちから開発部が独立して、いよいよ本式の仕事をするというか、そういうことで事業団ができたわけであります。だから、これは理化学研究所に関する事項ということがあるからということでなく、私は、やはり第三条基本的任務の上に立って考えるべきだと考えます。そういたしますと、行政を総合的に推進するという中に——本法の第二条でいう「試験研究成果であって、企業化されていないもの」これが新技術であり、それを「企業的規模において実施する」ということは、これは企業なんです。そういうことを第三条で含んでおるかどうか、事業団法第二条第二項との関係はどうですか。
  6. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは新技術開発事業団法をお読みになればわかりますように、第一条の目的にも「新技術開発を効率的に行ない、及びその成果を普及する」、それから今おっしゃいました「この法律において「開発」とは、」云々ということがあるわけであります。これは今おっしゃったような企業そのものではないわけでございまして、ここにありますように「科学技術に関する試験研究成果企業的規模において実施する」ということであります。つまり、企業的規模において試験研究開発のためにやっていくということであります。企業そのものとは、もちろん違うわけでございます。要するに、試験研究を相当大きな規模でやっていこうということでありまして、普通のところにまかしておいてはなかなかできないようなものを新技術開発事業団でやっていこうということであります。科学技術庁任務矛盾するものではないと考えております。
  7. 田中武夫

    田中(武)委員 もちろん、私は、「企業的規模において」ということを企業そのものであるとは申しておりません。企業とは、もちろん、利潤追求のためのものなんです。そういうものであるとは言っていないが、「企業的規模」ということは、その実質において企業と同じようなことをやる、少なくとも、利潤追求ということを除けば同じことをやる。それを科学技術庁の「行政を総合的に推進する」という中に含むかどうか。私は、この事業団所管科学技術庁ではいけないとは言っていない。やるならば、まず科学技術庁設置法改正して、開発までやれるという意味のことをどこかにうたう必要があると思うのです。ところが、第四条の十八には「発明及び実用新案奨励を行い、並びにこれらの実施化推進する」ということなんです。新案特許とか発明実施化ということ、そして、次に、企業規模でということになるのです。だから、この十八でも、企業規模範囲ではない、そうとは解釈できないと思うのです。
  8. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは、現在の理化学研究所法ごらんになりますと、同じく第二条には、この理化学研究所目的から出てきた「「開発とは」云々という定義がございます。これは大体今度の新技術開発事業団と同じ言葉を使っております。従来も、理化学研究所においては、企業的規模における試験研究ということも当然やっておったわけでございます。そして、やはり理化学研究所監督というものは科学技術庁に属せしめられておった。その点において、実は従来と変わるところはないと思うのであります。  それから、今おっしゃいませんでしたけれども、結局、それは似通ったことになると思いますが、要するに、企業的規模、いわゆる工業的な規模試験研究あるいは開発をやっていくということでございまして、つまり、実施と申しましても、それはやはり試験研究実施でございます。それを相当大きなプラントでやっていくということだと思います。そういう意味においては、やはり科学技術総合的推進、あるいはその推進の結果を普及するという科学技術庁の本来的任務、その本来的任務に付加して、現在御承知のように、原子力とかその他多方面にわたる各省にまたがるものにつきましては、科学技術庁に実際の仕事もやらしておるわけであります。そういうことを総合的にやって私は矛盾するものではない、かように考えております。
  9. 田中武夫

    田中(武)委員 理化学研究所法と新技術開発事業団法を見た場合、あなたのおっしゃるように、なるほど、その目的二つに分けて、一方、理化学研究所に属していた開発の部分をこちらに持ってきている、条文の上では、まさにその通りです。しかし、今まで理化学研究所技術庁に属しておったから、開発もすべてやるのだということは、私は、先日来言っておるように、過去のいきさつによってやるということです。これは名前が示しておるように事業なんです。科学技術庁というのは、事業をやるべきところじゃない、そう思うのです。法律名前が「事業」になっておる。
  10. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは事業団という名前を使っておりますので、もちろん、一種の事業としてやるわけでございますが、もちろん、科学技術庁自身がやるわけじゃないわけで、その監督下に、ある一つの特殊の法人を作って、そこがやる、そこでやる仕事はどこが監督するに最もふさわしいかといえば、現在の行政組織の上でいえば科学技術庁が最もふさわしい、かように考えておるわけでございます。
  11. 田中武夫

    田中(武)委員 だから、何も科学技術庁事業をやれというのじゃない。この事業団事業をやるのですよ。それを監督し管轄するのが技術庁です。しかし、これからいえば、科学技術庁事業監督することになる。事業というようなところまで科学技術庁がやるべきかどうかということなんです。それが三条から出てくるかということなんです。だから、そうおっしゃるなら、はっきりと、この前に科学技術庁設置法改正しなさいよ。改正してからなら、僕は文句言わない。
  12. 林修三

    ○林(修)政府委員 この点は、従来からのことになりますが、今の理化学研究所に関することも、実は、この科学技術庁設置法振興局仕事に入れておるわけでございます。それから、現在の理化学研究所仕事——試験研究仕事でございますが、それが今度の事業団になりまして、これは事業団という名前ではございますけれども、普通の企業を行なう事業団とはよほど性格が違う、要するに、企業家がやることが困難な新技術開発企業的規模実施するということでございまして、特殊法人名称として事業団という名称は使っておりますが、これをもって直ちにいわゆる企業的な色彩を持っているということにはならないと私は思います。つまり、そういう開発的な仕事をやるわけでございまして、この新技術範囲は、もちろん、鉄工業に限りませんで、いろいろなものも入るわけでございますが、結局、それを各省に分属させるのはおかしい、科学技術庁が総合的に見ていくのが一番適当である、現存でも理化学研究所仕事がこの三条から当然読めるとわれわれ考えて、先ほど申しました発明奨励及び実施化推進ということもありましたし、ある程度の、各省にまたがるようなこういう実施事務と申しますかどうか、言葉の問題だと思いますが、実施的なことが入っても、この三条任務矛盾するものではない、私は、かように考えておるわけです。
  13. 田中武夫

    田中(武)委員 何回も申し上げておるように、理化学研究所が今まで所管であったからということでは、私は納得しないのです。これは過去のいきさつによってこうなっておるということは、提案のときにも言われておる。そのことについて言っているのじゃない。従って、八条五号は理由にならないのです。私の言っておるのは、それなら、三条に、開発までいけるということをはっきりとわかるようにしなさいよ。これで開発までいけるということができますか。  なお、おっしゃるように、これは何も通産省だけのものじゃない、鉱工業技術だけじゃないことはよくわかっております。従って、私は、通産省だけにせよとは言ってない。事業所管官庁がやるべきじゃないか。たとえば、二十八条三号に「新技術開発について企業等にあっせんすること。」となっておる。こういう企業を管轄するのは事業所警告なんです。その企業にあっせんをするのですから、二重手間する必要はないのですよ。総理科学技術庁に一応委任し、それから実際にまたそれぞれの事業所管省の方に移っていくというようなことをやる必要はないというのです。それとも、やるならやるでいい、はっきりとわかるような設置法改正が望ましい、こう言っておる。第三条からは、あなたがむずかしい理屈をこねたって、絶対出てこない確信を私は持っております。もし、あなたがそうおっしゃるなら、第三条についてどう解釈するかということを、専門学者数名にここに来てもらって意見を聞きたいと思います。
  14. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは意見相違になるかと思いますが、結局、この第三条の読み方でございます。これはいわゆる総合調整的な行政のみと解釈する必要はないと思うのであります。従来、科学技術庁設置法の各局の仕事、これを総体的に言い表わすものとして、第三条に包括的な大きな任務を与えているわけであります。もちろん、仕事の主力は総合調整事務であるべきでありますが、各省に分属させるに適しないある範囲のことは、やはり科学技術庁がやるという建前でできておるわけでありまして、私たちは、必ずしもこの三条改正する必要はないと思っているわけであります。  それから、今お話しの、企業実施委託するような場合におきましては、これは御案内のことと思うのでございますが、三十条では、総理大臣認可をする場合には、各主管大臣協議をするということになっておりまして、各主管省との連絡は十分つけてあります。
  15. 田中武夫

    田中(武)委員 協議で、そこが二重手間だと言っておるのです。  それから、第三条は、法制局長何とおっしゃろうとも、科学技術庁の主たる任務は、科学技術行政を総合的に調整し推進する、そういうことだと思うのです。これは、少なくとも、名前からして事業であり、やることは経済的規模においてやる、絶対に私は三条から出てこないと思う。従って、これは私とあなたの見解相違ですから、繰り返してこれ以上質問いたしませんが、納得いたしません。従って、委員長に希望いたしますが、公法学者を二、三名当委員会に呼んでいただきまして、そのことについての意見を聞いた上で処理していただきたいと思います。これについての私の質問は、これで終わります。
  16. 山口好一

    山口委員長 それでは、あと理事会に諮りまして善処いたします。
  17. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、私の希望につきましては、委員長は後日理事会に諮って処理していただきたいと思います。  引き続き、今度は鉱工業技術研究組合法案見解をお伺いいたしたいと思います。  私は、こういう法案こそ、むしろ科学技術庁でやるべきではないかという考え方でございます。これは第一条の目的のところに、「鉱工業生産技術の向上」と書いてある。これははずしまして、「これに関する試験研究を協同して行なうために」、これが目的なんです。事業の第一番は「試験研究実施し、及びその成果を管理する」というのが事業なんです。これを、あえて鉱工業技術と上に書いたのは、これも、先ほどあなたが、理化学研究所技術庁に属しておったから、この新技術開発事業団技術庁にくるのだというのと同じように、工業技術院通産省に属しておった、今まで世話しておったから通産省に織り込んだという過去の因縁だけしかないのです。それを、鉱工業技術と書かなければこういう論議が必ず起こってくるということで、鉱工業技術と書くことによって、それに限定することによって通産省に置いておこうという考え方だと思うのです。従って、これこそ、むしろ鉱工業技術ということをはずして、広く各分野にわたる研究協同組合を作らすということによって、これは科学技術庁所管しなければいかぬ、こう考えるのでありますが、いかがでございましょうか。
  18. 林修三

    ○林(修)政府委員 別に、鉱工業に限ったことについての是非は法律問題ではないわけで、実は、政策問題であります。これは必ずしも工業技術院主体となるためにそれをやったということにお考えになる必要はないのじゃないかと思うのでありまして、さしあたり、最もこういうことを必要とする部面が鉱工業技術関係だということからできておるものだと思います。それから、なるほど、鉱工業技術研究組合は、一つ試験研究主体としてやるものでございますけれども、この法案ごらんになればおわかりになりますように、鉱工業者が協同してやるわけであります。その事業者がやる関係で、事業者個々——個々と申しますか、幾つかの鉱工業研究組合ができるわけであります。これは、結局、そういう意味では事業所管大臣の方に所管させる方が適当であるが、これは必ずしも通産省のみではございません。十七条で、主務大臣は、原則は通産省が多いわけでございますから通産省になっておりますけれども、ただし書きで、各鉱工業の中でも、たとえば農林、厚生あるいは運輸というところに関係するものは、それぞれの所管大臣になるということを書いてあるわけでございまして、やはり、これは事業者がやるというところに目をつけまして、これは各省所管させるのが一番適当である、かように考えたわけでございます。
  19. 田中武夫

    田中(武)委員 法制局長官、あなたは、さっきからの答えで矛盾しておるとは思いませんか。この研究組合法、これは事業者がやるから事業所管省だとあなたは言っておるのですね。先ほどからあなたが言っている科学技術庁設置法意義は、むしろこっちがやることの目的と合っておるのです。新技術開発事業団委託を受けてやるのは事業者なんです。事業者がやるのだから事業所管省だというなら、新技術開発事業団の方も当然事業所管省です。あなたの言っておることは矛盾があります。
  20. 林修三

    ○林(修)政府委員 別に矛盾はしてないと私は思います。この事業団の方は、なるほど事業団という名称は置いておりますけれども……。
  21. 田中武夫

    田中(武)委員 企業がやる、これも企業委託してやるのだ。
  22. 林修三

    ○林(修)政府委員 企業委託する場合は、さっきもお話しいたしました通り企業委託する場合は、三十条で総理大臣認可を受けるようになっておりますし、各事業所管大臣協議をする、各所管庁立場は十分尊重してあるわけであります。そういう段階に入るものについては、主管省との関係をつけてあるわけであります。しかし、事業団自身自分で、いわゆる試験研究企業的規模開発をやるということにつきましては、これは別に各省との関係はなくて、科学技術庁が一貫的に所管しておるのがいいのではないか、これは各省にまたがりまして、しかも、事業団一つでやるわけであります。事業団で一括してやっていくのを各省がそれぞれに監督するというのは、これはやはりおかしいわけでございます。従来、科学技術庁で、たとえば航空機の研究とか、あるいは金属材料研究とか、あるいは原子力の方、これは事業からいえば各省にまたがります。しかし、これを一括して科学技術庁に持っていっておるのと同じ理屈もここに働いてくるというわけでございます。
  23. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたは、鉱工業技術研究組合法で、この研究事業者がやるのだから事業所管省でいくのがいいのだ、こうおっしゃった。そして、こちらの新技術開発事業団、これも、一つはこの事業団自体事業をやるのです。同時に、企業委託をしてやるのです。企業がやるのだから事業所管省だ、それなら、これを受けるのは、やはり企業事業委託するわけです。同時に、この事業団自体経済的規模においてやるという事業なのです。私が言っておるのは、事業技術庁にできるのかということと、むしろ、研究成果を普及するといいますか、管理する、こういうことは研究の範疇に入る、従って、これこそ科学技術庁がやるべきだ、こう言っておる。しかし、あなたの答弁はだいぶ食い違っております。あなた自体あとから会議録を読めばよくわかると思います。あなたの言われておることに矛盾があります。従って、あなたとの討論をやってみても、その点は平行線だと思う。これも、先ほど申しましたように、学者に来てもらって、両方つき合わして一つ質問をし、了解する、こういうところまで持っていきたいと思いますし、私は、もうこれ以上法制局長官とつまらぬ平行線議論をやっておっても仕方がないと思いますので、終わります。しかし、先ほど私が希望いたしました専門公法学者を呼んで来てもらって、この点について、特に科学技術庁設置法三条意義はどうであるか、こういうことについて権威者意見を聞きたい。別に、私は法制局長官権威者でないとは言いませんが、我田引水の議論を吐く人だけの意見を聞くわけにはいきません。中立的な立場にある公法学者権威者を呼んでいただきたい、こういうことを希望しておきます。
  24. 林修三

    ○林(修)政府委員 ただいま、私の先ほどから申し上げたことに矛盾があるとおっしゃいましたけれども、実は、私は、全然矛盾はしてないつもりでございます。  それから、この新技術開発事業団、これは、まさに試験研究開発、これ自身事業団の業務の目的でございまして、その意味においては、鉱工業技術研究組合とはだいぶ違うわけです。鉱工業技術研究組合は、まさに各企業自分々々で事業をやるかたわら試験研究をやっているわけでございますが、それは単独でなかなかやれないものが共同してやるということでございまして、事業者主体となっておる。こういう点で、よほど仕事のあれが違うので、やはりこれは事業所管官庁に持っていくのが適当である。新技術開発事業団は、先ほど申しましたように、試験研究というのが主体なんでございまして、これは科学技術庁所管がいいと考えているわけでございます。これ以上は議論になるかもしれませんけれども、一応私の考え矛盾してないつもりでございます。
  25. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、あなたとやらないが、あなたがそう言うなら、言わなければならない。事業者がやるのだから事業所管庁だというのです。事業団がやることは事業なんだよ。あれは事業者委託するのですよ。そこに矛盾があると言っているのです。
  26. 山口好一

  27. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 念のために、私は、当局の御意向を承っておきたいと思うのでありますが、いやしくも科学技術振興というものは、科学技術庁設置法三条に書いてあるまでもなく、「国民経済の発展に寄与する」という目的を持って科学技術振興をはかる、これが科学技術庁設置の大眼目であろうと私は思うのであります。との科学技術庁設置法に「人文科学のみに係るもの及び大学における研究に係るものを除く。」こういうことが書いてあるのであります。でありますから、人文科学に関するものは国家経済関係のないものもある。それからまた、大学研究というものは、あえて国家経済考えないでいろいろな方面に対する研究を行なうのだ、しかし、科学技術庁において取り扱うべきところの科学技術振興というものは、あくまでも国家経済関連性を持つものでなければならないということになっておるわけでありますから、科学技術庁において科学技術推進をはかるということは当然国家経済関係を持つということであって、どうしてもこれは生産体制と直結しなければ意義がない、こう私は思っておるのであります。そういう点から、条文にございます通り、いろいろな「発明及び実用新案奨励を行い、並びにこれらの実施化推進すること。」という条項もあって、科学技術庁において、これは当然国家経済関連性のあるものであるというものであれば、生産体制にまで直結するという機能は、私は、科学技術庁として重大な機能であると思うのでありますが、この点に関して、どなたでもけっこうですが、御答弁を願いたいと思うのであります。
  28. 原田久

    ○原田(久)政府委員 ただいまの御質問に関しましてお答え申し上げます。  科学技術振興していきます目的は、科学技術庁設置法三条にあります通り国民経済の向上といいますか、発展に寄与する、そのための方法としまして、設置法ではいろいろな権限が付与されている。その権限の中には、関係行政機関の事務の調整をやるというような任務もありますれば、また、特に研究機関を設けまして、たとえば、原子力関係推進いたします。それから、航空技術、あるいは金属材料、放射線医学研究所等を設けまして、研究を総合的に推進する角度から、科学技術庁としてはこういうこともやっております。それから「発明及び実用新案奨励を行い、並びにこれらの実施化推進すること。」これは主として特許あるいは実用新案等をとりました発明者が、資金的な点で発明をものにして国家社会に寄与させることができないことに対しまして、助成金を交付いたしまして実用化に持っていくというようなこともいたしておるのであります。  以上のような次第であります。
  29. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 新技術開発事業団目的は「新技術開発を効率的に行ない、及びその成果を普及することを目的とする。」私は、新技術開発ということは、その成果ということでもって、だいぶ法律考え方というものが明らかになってくるのではないか、こう思うのでありますが、ここに書いてありますところの新技術開発というものと、次の第二条の二項において「この法律において「開発」とは、科学技術に関する試験研究成果企業的規模において実施することにより、これを企業としうるようにすることをいう。」ですから、ここで言っている開発というものは、試験研究成果というものが前提となるわけでありますが、この試験研究成果というものは、ここで言っている考え方は、特許あるいは実用新案ということを前提としておるのですか。このいわゆる試験研究成果というものは、何々をもって成果と言っておるかということです。
  30. 原田久

    ○原田(久)政府委員 御承知のように、わが国では非常に研究活動が旺盛でございまして、特許の面におきましては非常にたくさんな特許が出願されております。最近におきましては、世界でも一番多い特許出願件数を保持するに至っておりまして、年間十万件程度の特許あるいは実用新案案件が出願されております。それから、研究論文等におきましても、学術的な論文は非常にたくさん出ておりまして、世界的にもわが国の学術が優秀であるということがいわれております。しかし、その研究成果というものについて、実際世の中に稗益しているものはどうかということになりますと、数多い特許の中でも、実際役に立つというものはきわめて少ないということがいわれております。それから、そういうふうに非常にたくさん特許がありながら、外国から導入いたします技術は、毎年金額にして百五十億、あるいは百六十億ないしは二百億というような数字に上っておりまして、これに対しまして、わが国が海外に技術を出しておるというのは、その百分の一くらいに当たる、こういわれております。そういうような角度から見ますと、わが国では、研究成果というものが非常にたくさんありながら埋もれておるということは、いなめないところであろうかと思います。そういう埋もれておる研究成果というものを、社会の役に立たせるためには何か機構が必要であるということで、昭和三十年当時から、学術会議あるいは経済同友会等でも、何かこういった機構がほしいということで提案がありまして、その後、昭和三十三年に理化学研究所法が制定されますときにあたりまして、新技術開発事業が定められたわけであります。そこで取り上げられます研究成果といたしましては、御質問にありましたように、特許というような工業所有権を付与されたものに限るかどうかという点でございますが、いろいろな研究成果のうちで、やはり一般技術を抜いておるのが特許になっておるものが多いだろうという観点、次に、開発をしていきます段階におきまして、やはり工業所有権という保護が与えられておりませんと、開発をする場合におきましても不安がありますし、開発が成功した場合におきましても、その管理が十分に参りませんというような関係から、法律上工業所有権を有する技術でなければならないという制限はございませんが、実際的には、工業所有権のあるような技術を新技術の対象として考えておる次第でございます。
  31. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 そうすると、これはその立場及びその人々のいろいろな考え方によってニュアンスは違うかもしれませんが、大体今の日本の現状において、たとえば、新しい構想に基づく特許なら特許になった新構想を、国家経済に寄与するために生産体制にまで導いていく過程において、どうしても全額国庫負担の形における中間工業試験をやる、しかも、その中間工業試験はきわめて困難な立場にある発明であって、だれもこれは普通の場合においては手をつけない、しかし、その発明というものを検討してみると、きわめて重要な効果を現わすかもしれないというような問題をとらえてきて、単に中間工業試験をやる、これは企業に持っていく段階における中間工業試験をやるということが重大な目的であるかどうか、それを一つ簡単に答えていただきたいと思います。
  32. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 今、局長から、えらいかたい解釈をしましたけれども、私の解釈によりますれば、必ずしも工業権が確定しなければならぬという性格のものじゃないと思います。それが企業化される場合に若干の疑義が起こるようなことは、これは避けなければなりません。しかし、必ずしも特許権を持ったとか、実用新案権を持ったものでなければならぬというような性格のものでなくて、これは正確に中間試験、あなたの今おっしゃったように、中間試験でこれならいけそうだというふうに、そのためには、これは開発審議会で検討いたしまして、これはよかろうということになれば、そういうふうに確定しなくてもやっていってよろしいというふうに、私は広義に解釈していいかと思います。
  33. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 とにかく、私の考え方からいたしますと、今日本では、先ほど局長の説明がありました通りに、外国に支払うところのパテント料、そういうものを合算すると、すでに二百億円に達せんとしておる。それで、日本の発明生産体制との間を連係する、いわゆる中間工業試験というものが非常におくれている、そういうものを国家の力によってなるべく充実せしめようというところにこの法案のねらいがあって、これは長年の間、科学技術の総合態勢推進の上から、これは必要であると考えたことを今ここでやろうとするのであって、これは、私は、別段科学技術庁が他の省の所掌事務であるところの企業を行なうというのではなく、ただ企業に移すべき段階をやるのであって、そこに、今までの質疑応答の中に紛淆を来たしておるような考え方相違が私は生まれてきているのではないかと思う。ですから、その成果であるとか、開発であるとか、企業であるとかいうような、いろいろな言葉を使ってあるし、また、新技術開発事業団というような、これは事業団という名前をどうしてもつけなければいけないというので、こういう名前をつけただけであって、私は、これは決して名は体を表わしておるものではないと思う。今、長官は、発明というものに限らない、もちろん限らないでありましょうが、主として研究成果というものを生産体制に持っていくのには、どうしても危険負担をして、そこに中間工業試験をやらなければならぬという段階がある。これは日本ではなかなかやりきれないで、外国からどんどんおくれをとっておるから、これは国家の力でやってやろうというのがこの法案のねらいであって、どう考えてみても、総合的な、農業も含める、漁業も含める、あるいは厚生省に関係のあるもの、それから運輸省に関係のあるもの、あらゆる科学技術の総合的な立場において、その研究成果について中間工業試験をやるというのでありますから、こういうのが、もし科学技術庁所掌事務から越権行為であるとして取り去られてしまったら、科学技術庁はでくの坊みたいなもので、何もできないということになってしまうのではないかと思います。この点は御答弁を必要といたしませんが、こういうような問題が起きてきて、科学技術庁のいわゆる所掌事務というものに対しての検討が熱心に加えられておる、こういうことをチャンスとして、科学技術庁においてもきぜんたる所掌事務のあり方というものを確立していただきたい、将来あまりそういうような紛淆を来たさないように、こういうときに、有力な大臣である長官が閣議においてびしびしやって、はっきりその線を確立しておいていただきたい、かようにお願いして、私の質問を終わる次第であります。
  34. 山口好一

    山口委員長 岡良一君。
  35. 岡良一

    ○岡委員 この事業団の提案理由の中に、昭和二十五年から最近までの間に、外国に支払った技術料が約一千億、日本の受け取りが十億にも満たないということが、事業団を必要とする大きな理由として掲げられております。  そこで、問題は、外国技術の導入を今日までのように認めておいていいのかどうかという問題があるわけなんです。この点について、何らか具体的な対策を持っておられるのか、長官にお伺いしたい。
  36. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 これは大へんむずかしい、また、内容の複雑な問題でございまして、現在の段階では、全体としてはやむを得ないのではないかというふうな私は考えでおります。ただし、中には、若干規制して、国内の開発の助長をはからなければならぬといったようなことも、そろそろ考えていく段階に入ってきているのではないか、かように考えております。
  37. 岡良一

    ○岡委員 通産省の方の御出席を願ってあるわけなんですが、たとえば、ポリエチレンにおいては、日本の石油八社はそれぞれ違った外国の八社と手術提携をしておるようです。しかも、ポリエチレンの原価計算を見ると、原料費が五〇%、金利が約一〇%、その他加工が約二二%、しかも、ロイアルティは八%、こういうようなことで、このままでいいのだという形、やむを得ないということで放置しておったのでは、いよいよ貿易が自由化になり——自由貿易というものは、ある意味において技術競争だと思うのですが、この大きなロイアルティをそのまましょい込んで、しかも、ミニマム・ペイメントというような過酷な条件を受け入れておるということになれば、私は、とても自由貿易に太刀打ちはできないと思う。だから、これはやむを得ないということでは科学技術庁長官は相済むまいと思う。やはり事業団を提案される以上は、今日までの放任された外来技術の導入については、相当これを規制すべき具体的な方途があってしかるべきではないかと思う。この点、もう少しすっきりしたお考えを承りたい。
  38. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 考え方としては、今、岡委員が御指摘になった通りだと思います。ただ、その場合、いわゆるケース・バイ・ケースと申しますか、物によっては十分に所管省ともお互いに検討した上で、それぞれ今後処置していくべき段階に入ったのだ、こう思っております。
  39. 岡良一

    ○岡委員 この外来技術の導入を認められる機関としては外資審議会があるわけですが、外資審議会へは、ここにお見えの篠原次官がお出ましのように聞いておりますが、科学技術庁としては、外資審議会に導入の許可の申請があったものについてはどのように取り扱っておられますか。
  40. 原田久

    ○原田(久)政府委員 外資審議会の申請につきましては、生産を担当しておる官庁がまず審査をいたします。その角度は、需給関係等を主体といたしまして審査をいたします。それから科学技術庁といたしましては、技術的な角度から、すでにわが国で開発されているような技術があれば、そういうものはあえて導入する必要はないであろうというような観点からも審査をいたします。そして、各省間に連絡機構がございまして、各省の課長クラスを網羅します幹事会がございまして、そこで原案を作成いたします。その作成された原案を外資審議会に提出いたしまして御審議を願う、その段階におきまして、科学技術庁からは科学技術庁事務次官が御出席になっております。今までの実績で申し上げますと、科学技術庁で審査いたします段階におきましては、技術の角度から十分調べますが、その間、包括的に、技術を導入するという段階の中にいろいろな品目が幾つか含まれておりまして、その品目に該当するものにつきましては、十分検討いたしまして、この品目は、すでにわが国にある技術であるというようなものは、みんな落とさせるようにいたしております。それからロイアリティ、その他条件につきましても、不当に高いというようなものにつきましては、これは商社間の交渉になりますが、ネゴシエーションをさせまして、妥当な線に持っていくように誘導しております。  なお、申しおくれましたけれども、科学学技術庁の中では、化学、電気、機械、金属の分野につきまして、参与の方に専門的な角度から御参加願いまして、各申請のありました件につきまして技術的な点で御意見を拝聴した上で、科学技術庁としての意見をまとめるようにいたしております。
  41. 岡良一

    ○岡委員 それでは、これまで外資審議会に許可を申請された、今おっしゃった化学あるいは機械、電気その他の分野のもので、科学技術庁の発言でこれが却下されておるというようなものはどれくらいあるのですか。
  42. 原田久

    ○原田(久)政府委員 完全にその申請が却下されたという件数は、数は少のうございますが、先刻御説明しましたように、品目だとか、条件交渉というような角度で、ある程度審査した意見を反映さしておるような状況でございます。おおむね主務官庁、担当します官庁が条件交渉の責任をとって、商社との間の指導をやっております。
  43. 岡良一

    ○岡委員 大臣、今御答弁があったようなわけで、まあ、あまり科学技術庁の意向というものは外来技術の導入には反映しておらないように思うのです。私は、戦争中の空白、立ちおくれを克服するためには、産業政策として、外来技術を迎えるという政策も余儀ない時代があったと思う。しかし、今日となった場合は、単なる経済政策、産業政策という見地ではなく、日本における国産技術の確立という観点から、外来技術の今日までのような放任的な導入に対しては、よほどコントロールをすることが必要ではないか。大臣は各省庁に対する勧告権を持っておられる。科学技術振興という立場からは、やはり産業政策という立場に重点を置いての外来技術導入についての大臣としての御発言は非常な重みを持ち得るわけです。そういう意味でどう対処されるか。もう少し責任のある、はっきりした御答弁を願いたいと思います。
  44. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 お述べのように、これは国内の技術開発、あるいは技術振興という面も考えなければならぬし、それから、広く経済的な立場、さらにはまた、日本の貿易の、いわゆるドル防衛といいますか、貿易上の立場等、いろいろな面から、広い視野に立って考究しなければならぬものであることは申すまでもありません。仰せのごとく、今日になってきますと、もうある種のものはこれを規制しなければならないというような問題も起こってきておるはずなんで、それを今、局長から申し上げたように、物によっては、必ずしもこれは単一産業ではないので、たとえば飛行機なら飛行機でいいましても、自動車なら自動車で申しましても、それぞれの部品なりいろいろなものがあるわけで、そのうちのどれはいかぬ、どれはいいというような問題も、こまかくなりますけれども、そういったようないろいろな問題が複雑になってきますので、今簡単に、ここで私からどれがいい、あれが悪いというようなことは申し上げにくいのですが、ただ考え方としては、あなたが今御心配なさっているように、いろいろな角度から考えて、十分検討して、そろそろ規制することがいいのじゃないか、そういう考え方で進めたい、こういうことを申し上げておきます。
  45. 岡良一

    ○岡委員 実は、ここで特に具体的な事例について科学技術庁としての態度をお聞きしたいと思っておったのですが、ポリプロピレンの問題です。ポリプロピレンについては、昨年の暮れ近くに三菱化成、住友化学、三井化学がイタリアのモンティカティニとの間に技術提携をいたしました。そのほか新日本窒素がアメリカのアビサンと技術提携をしたように聞いておる。ところが、モンティカティニとしては、ポリプロピレンについては、アビサンとの間に、アピサンが特許権の侵害ではないかということで問題を起こしておるというふうに聞いておる。ところが、この事例でも頭金が約十億、これも伝えられるところによれば、日本の各社がモンティカティニ参りをやったために、いわば足元を見られて、法外に高い頭金を支払うことになったというふうにも聞いておる。しかもロイアリティは十五カ年間に六%。特にこれはお聞きしたいと思うのだが、輸出市場についてもおそらく制限を受けておると私は思う。そういうものが、とにかく技術導入ができて、きのうあたりの新聞を見ると、ポリプロピレンの生産について化繊各社が非常な競合をやっておる。そこで化繊は供給過多というか、過剰生産の傾向本あるからこれを押えようということで、来年の秋おそくに工場が稼働できるというようないろいろな条件で、通産省の化繊の部会の方では、三井と住友と三菱と新日本窒素だけを一応認めようではないか、あとは、その条件が満たされるところがあれば追加していくんだという方針のようであります。ところがこのポリプロピレンについては、日本の民間の企業の中で九分通りまで製造をし得る研究ができておったということを私は聞いておる。そうしてみれば、何のためにミラノ参りをしなければならぬのか。いわばそういう情勢を特に見きわめて、そうしてロイヤリティや法外な頭金を支払わないでも、日本の民間企業研究室でも、もう九分までできておるかどうか、できておるなら、これを育てるという方向にいくのが国産技術の確立の方向であり、日本の科学技術振興の方針である。そういう方針が、またこの事業団となって生まれておると思う。ところが、全然野放しになっている。だから、そろそろ規制をしなければならないとすれば、具体的にどう規制するか。たとえば、外国の技術が、情報としてこういう技術があるということが伝えられた場合、甘木の民間企業研究の中で、こういう同じ方向に向かっての技術研究があるのかないのか、あればどこまできておるか、こういう実態を把握しないと、外国の特許によって全部さらわれてしまう。こういう点について、科学技術庁としては、もっと具体的な国家対策があっていいのじゃないか。ただそろそろ規制をしなければならないというだけでは、やはりポリプロピレンの例が、第二、第三のポリプロピレンとなって僕は出てくると思う。しかも、こういう技術導入とともに、大きな資本の要るプラントの輸入がまた伴われてくるということが起こる。そうして、今問題となっておる設備過剰というような、投資の過剰というような問題が技術導入で拍車されてくる。だから、私は、技術導入というものをコントロールするということは、そういう意味からいえば、日本の国産技術の確立とともに、やはり日本の経済の安定した繁栄のためにも、今度は大きな立場から非常に重要な要素になると思う。私は、こういう点について、もう少し科学技術庁が中心となって、国内においても、ある程度まできておるならばこれを育ててやる、そして、日本の大メーカーも、この技術導入の競合というものを押えて、これを育ててやる、こういうような方針を政策として具体化すべきじゃないかと私は思うのです。こういう点について御意見を伺いたいと思います。
  46. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 ただいま岡委員から御指摘をいただきました件につきましては、私もかねがねお話を承っております。しかし、それをここで規制するかどうかということになりますと、日本の各会社がどの程度までの研究成果を上げておるのかということをつかむことが非常にむずかしいのです。特殊な関係を持っておる方ならつかめると思いますけれども、そうじゃなしに、政府なり、あるいは第三者がつかみにくいのです。というのは、御承知のように、これは自由競争で、お互いに隠し合ってやっておることでございますから、従って、日本では、あなたが今御指摘のように、九〇%以上も研究成果が上がっておる、研究の結果が出ておる、いま一歩のところまでできているのにかかわらず、一方、技術導入をやっておるというような弊害も起こる危険もあると思います。あるいはあったのかもしれません。しかし、それを今ここで急にどうしようというためには、日本のそういう個々の民間の——御承知のように、通産省にも試験所があるようでありますけれども、私は、そこまでいってないのじゃないかと思う。むしろ民間の方が進んでいるのじゃないか。そうすると、民間の研究所というものがどの程度の成果を上げておるかということを正確に把握した上でないと、その措置はとれないということに実際問題としてはなってくるだろう。そういう意味で、私は、そういったようなことをあらゆる角度から検討した上で、場合によっては、断固たる処置をとらなければならぬということだと思います。
  47. 岡良一

    ○岡委員 その点の一番大きな隘路は、やはり各社が商業上の秘密といって、自分たちの研究所の成果というものを隠している。そうして、いわゆる共同的研究の措置がとられていない。ふたをあけてみたところがポリプロピレンは九割くらいまで研究がいっている。おそらく、他の会社もふたをあけてみると、そういうところまでいっているというので、むだなことをやっている場合があり得ると思うが、いずれにいたしましても、そういう意味で、外来の技術の導入につきましては外資審議会に許可の申請があった場合に、日本のそういう研究の実態に即して判断し得るような諮問機関でも何でもいいんだが、何か置かないと、これまでの繰り返しになりはしないかと思う。そういう意味で、この新技術開発という立場から、この規制について、何かそういう機関を作る必要があるのではないかと思われるが、原田君あたり何か……。
  48. 原田久

    ○原田(久)政府委員 岡委員のポリプロピレンの件でございますが、この件は、わが国としても相当重要な問題であるというので、関係各省におきましても慎重な態度で審査いたした次第であります。先刻、わが国でもこのポリプロピレンと競合し得るような技術があるじゃないか、こういう御指摘がございました。その当該会社にも係員が出向きまして、その技術の実態をよく調べて参りました。その調べました報告によりますと、その技術は、まだ急速に、いわゆる実用化する段階に至っていない、その技術が実用化するまでポリプロピレンの技術を導入するのを待ったがいいかどうかという観点につきまして検討した結果といたしまして、導入はやむを得ないであろうということになったような次第でございます。  それから、国内の需給関係及び国外に対する輸出の関係でございますが、こういった観点につきましては、それぞれ生産を担当します省が需給関係の調査をいたしまして、その結果を持ち寄りまして、それから、技術的な観点から、先刻申し上げましたような角度で意見を持ち計りまして、外資審議会の審議の原案を作るというような作業をした上で、審議会にかけるというふうに取り扱っております。現状をちょっと申し上げました。
  49. 岡良一

    ○岡委員 外来技術の導入については、われわれは、ただ全面的に否定するというのではない。今日までのあり方はあまりひどい。生産政策上という立場からやむを得なかったのかもしれませんが、今度は自由貿易を迎えた国産技術の確立という観点から、よほど慎重に、権威ある機関の意見を求めながらその最終的な決定を下す、ぜひそういう取り扱いを、これは内閣としてでもとっていただくように、池田長官の深甚なる御決意のほどをお願いしたい。  それから、理研に設けられた開発部が今日まで委託研究をされた内容についてお聞きいたします。あの内容は、おおむねこれは大企業本位にやったものである。あの開発技術は、中小企業との格差が大きな問題となっておるときに、この新しく開発されてきた技術というもの、あるいは開発しようとする方向が、やはり中小企業の近代化に役立つというような方針があってしかるべきじゃないかと私は思うので、この点についての長官の御所信を伺いたい。
  50. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 大会社は御承知のように、だいぶ自分自身でも研究機関を持つようになってきたことは大へん喜ばしいことなので、従って、われわれがねらいとするものは、むしろ、あくまでも中小企業主体に置いていきたいというのであります。
  51. 岡良一

    ○岡委員 今日までの開発部委託研究を先般ちょっと聞きましたが、あれをお聞きすると、ほとんどが大企業本位の技術開発になっておると私は思うのです。
  52. 原田久

    ○原田(久)政府委員 前回資本金を一々申し上げましたように、金額にしましても、きわめて小さな資本金しか持ってないところが大部分でございます。しいて大きなところといえば、東洋カーボンの三億というのが一番大きい。あとは数百万程度の資本金のものでございます。むしろ、小さい機関じゃないか、委託先が弱くはないか、こういうような御批判も出るかと思うくらいでございますが、それぞれ新技術という特殊性から考えまして、そういった委託先の会社としても、必ずしも規模の大きなものに限らなくていいのじゃないか、一分熱意を持って、また、技術もあるというところであれば、中小企業でもいいじゃないかというような観点から、今までのものはそういうものを選んだ次第でございます。
  53. 岡良一

    ○岡委員 研究委託した会社の大小を言っているのじゃないのです。委託した結果、生まれてきた、いわゆる企業化し得る技術というものは、大経営によって利用されるものが多いのじゃないか。くず水晶の場合くらいは別として、ほとんどそういうものじゃないかと思う。そういう方向に技術開発が進められるということは、大企業と中小企業との格差問題を拍車する結果になりはしないかということを私は憂えるのであります。
  54. 原田久

    ○原田(久)政府委員 今まで開発委託しましたうちで、大企業向けというようなテーマはきわめて数少なうございます。球状黒鉛鋳鉄というのを東北特殊鋼に委託してありますが、これは大メーカーが今後も開発するテーマになろうかと思います。そういうものはございますが、あとの人工水晶は東洋通信機に委託してあります。これもきわめて小さな規模のものでございまして、ほかで、こういうものをやろうというところは大メーカーにはございません。それから、石炭を直接原料とする炭素材の製造、これは若干大メーカーに近いかと思いますが、あとの固体分析用二重集束質量分析装置、これらは専門メーカーというところにいくのじゃないか。それから、石炭のガス化燃焼装置、これもまたきわめて小さな規模のものでございまして、大メーカーが取り上げるには必ずしも適当なものとはいえないものでございます。特にニッケル電鋳法による製品の製造などは、まさに中小企業ばかりでございまして、これは大企業は取り扱いません。それから多層薄膜の光学製品でございますが、これは将来の問題でございまして、今後需要を開拓していくというような性質のものでございますので、これもどういうふうに発展するか、大企業オンリーのものだということではないように思います。そういうようなものでございます。
  55. 岡良一

    ○岡委員 しかし、そうなると、大体人工水晶とニッケルのものですか、あれはプラントとして実際にやっていくには、中小企業ではなかなか私は追っつかないと思うのです。そういう意味で、この新技術開発事業団あたりは、もっと中小企業に密接した——中小企業という意味は、規模の大小というよりも、中小企業専門化、専門工場化という方向において中小企業の立ち行く道を見出していく、そのための技術開発というようなことを、よほど重点的に政策として進めていく必要がある。そういう点を、十分一つ運営の上で注意してもらいたい。  それから、科学技術庁の方で助成金等を出されて、地方に発明センターというようなものができておる。こういう地方的な科学発明関係のセンターと中央との体系的な連絡というか、協力というようなものについてはどういうことになっておりますか。
  56. 原田久

    ○原田(久)政府委員 今まで、地方発明センターとしましては京都、広島、本年度は兵庫、新潟にセンターを置くことにしておりまして、それぞれ補助金を交付する予定にしておりますが、地力センターは、何か中央に機構があって、その地方機関という形であるわけではなくて、それぞれの地方において発明者に便利を供与し、あるいは施設を設けろというような要望の強い、濃度の高いところを中心にいたしまして、地方の要望に基づいて補助金を交付するという態勢をとっております。そういうわけでありますので、特に中央、地方というような特別の組織があるわけではありません。
  57. 岡良一

    ○岡委員 新しい技術開発という角度から地方の発明センターを持つというが、地方にはやはり伝統的な産業があり、それに伴ういろいろな発明——発明までいかない創意工夫も実っておるだろうし、また、発明としてりっぱに実ったものもあるだろう。しかし、これをやはり技術として普及されていくような方向に向けて、事業団あたりが手をつけていくべきではないか。地方の発明センターだけではなかなかやりがたいと思うのですが、いってみれば科学博物館的な実情のようにも考えられるので、地方の伝統的な特殊の産業の中に生まれておる創意工夫、発明というようなものを技術化していく、そういう方向への政策があってしかるべきだと思う。この事業団が、大学研究室におけるプロフェッサーの編み出されたアイデア以外に、そういう地方における長い歴史的な伝統に鍛えられた発明というようなものも技術化していく、こういうような技術もあってしかるべきだと思う。そうあってこそ、地方の発明センターというものが単に孤立的なものではなくて、新技術開発という国の大きな政策と結びつく。ただこれが地力に補助金をやったきり、その方の運営は地方庁にまかせておくということでは、ほんとうの技術開発にならない。発明センターの名に対しても、そのような顧慮があってもいいのではないかと思うわけです。
  58. 原田久

    ○原田(久)政府委員 地方の発明センターは、岡委員の言われたような趣旨で、地方の発明家が共同化して研究する施設があるといい、特に、地方色豊かなものを取り上げるためには、その地方にそういう研究施設があることは非常によろしい、そういう角度から、研究施設を設けるとともに、特許文献であるとか、その他関係した資料などもそこに集まるようにしておきます。それから、特許の出願などの手続的な問題についても相談に乗れるように、あるいは必要な講習会、講演会等もその地方で開かれるように、あるいはその地方の特産物を中心にしまして展示室を設けまして、そこを観覧することによって啓発するというような機能も持ったものを地方発明センターと呼んでおりまして、そういうものが、先刻申し上げましたように四カ所できるわけであります。それは各地方々々の事情によって、御要望によって作って参りたいというふうに、漸次全国的にそういうものを作っていくことを誘導して参りたい、そういうふうに考えております。
  59. 岡良一

    ○岡委員 以上、事業団に関連して、特に強調をして善処願いたい点は、第一は、外来技術の導入については、単なる産業政策という観点でなくて、国産技術の確立という観点において、もっと適正なコントロールを与え得るような組織と運営が望ましい。それから第二には、事業団にいたしましても、これからの新しい技術開発政策にしても、これが大企業本位にならないように、中小企業をその技術を中心とする専門工場化する、あるいはまた、その他の方途によって中小企業の必要とする技術開発の方向に技術政策を振り向けていただきたい。それから第三には、中央、地方を通じた、まとまった体系として、特に地方の特殊産業にある埋もれた発明といったようなものを、技術として開発するということの顧慮をぜひ一つ持っていただかなければならないと思います。そのほか他の問題もありますが、私は、この程度で質問を打ち切ります。
  60. 山口好一

    山口委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後零時一分散会