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1961-03-22 第38回国会 衆議院 運輸委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年三月二十二日(水曜日)     午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 三池  信君    理事 有田 喜一君 理事 生田 宏一君    理事 尾関 義一君 理事 川野 芳滿君    理事 高橋清一郎君 理事 井岡 大治君    理事 久保 三郎君 理事 山口丈太郎君       伊藤 郷一君    浦野 幸男君       木村 俊夫君    河本 敏夫君       佐々木義武君    壽原 正一君       鈴木 仙八君    關谷 勝利君       塚原 俊郎君    細田 吉藏君       山田 彌一君    加藤 勘十君       勝澤 芳雄君    兒玉 末男君       島上善五郎君    西宮  弘君       肥田 次郎君    安平 鹿一君       吉村 吉雄君    内海  清君  出席政府委員         運輸政務次官  福家 俊一君         運輸事務官         (大臣官房長) 辻  章男君         運輸事務官        (鉄道監督局長) 岡本  悟君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  廣瀬 眞一君  出席公述人         中央大学教授  岩尾 裕純君         主     婦 大橋 春江君         日本炭鉱労働組         合事務局長   古賀  定君         産業経済新聞社         編集局次長   小暮 光三君         拓殖大学教授  高橋 秀雄君         日本船主協会理         事長      米田富士雄君  委員外出席者         日本国有鉄道副         総裁      吾孫子 豊君         日本国有鉄道常         務理事     中村  卓君         日本国有鉄道常         務理事     磯崎  叡君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案(内閣  提出第七六号)      ————◇—————
  2. 三池信

    三池委員長 これより会議を開きます。  運輸委員会公聴会に入ります。  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案について、本日御出席公述人各位より御意見を承ることといたします。  この際、公述人皆様方に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中にもかかわらず公述人として御出席を賜わり、まことにありがとうございました。本法律案につきましては深い御識見と御経験を有せられる公述人各位から、それぞれの立場に立って忌憚のない御意見を承り、もって本案審査の貴重な参考に供したいと存ずる次第でございます。  本日の議事について申し上げますと、時間の制限をいたすわけではございませんが、議事整理上、公述人各位の御意見開陳はおおむね十五分程度におまとめを願えれば幸いと存じます。  なお発言は、委員長指名順に御発言を願うことといたします。なお、御意見開陳あと委員から公述人各位に対して質疑を行ないますから、あらかじめ御承知おきを願いたいと存じます。  なお、岩尾公述人は所用のためお急ぎのようでございますので、同君の意見に対する委員よりの質疑を、意見開陳全部が終わらない前にいたす場合があるかもわかりませんから、あらかじめ御承知おきをお願いいたします。  それでは岩尾裕純君。
  3. 岩尾裕純

    岩尾公述人 岩尾裕純でございます。  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案に対しまして意見を述べさせてもらいます。  この法律案改正は、日本国鉄経営を改善し、輸送力増強をはかるため運賃を改定するということになっております。私は、国有鉄道経営を改善し、輸送力増強をはかってもらいたい、これはきわめて強く念願いたしますが、この方法としまして運賃を改定するということにつきましては、当面これは反対であります。まず旅客運賃一二%値上げをするということ、これについては絶対に反対いたします。それから貨物運賃のほぼ一五%という値上げにつきましても、これは慎重に考慮すべき点も十分ございますけれども、当面やはり反対せざるを得ません。きわめて遺憾でございますが、全面的に反対する結果になります。  その理由について、時間もございませんので、簡単に申し上げます。  まず第一点でございますけれども、これはきわめて一般的に申し上げますれば、皆様よく御存じのように、現在自由化と結びついた所得倍増政策、これは現実の問題としまして、非常に政治的には避けなければならない物価倍増政策というふうな現実になっておりますし、現実国民はそのように感じております。そういう物価倍増政策と感じられるものに対して公共料金値上げがてこになりつつありますし、その中でもこの国鉄運賃値上げというのがその突破口になる可能性が十分あるわけで、そういう意味で、これはいわゆる所得倍増政策といわれるものの弊害を除こうとしましたならば、何をもっても第一に反対せざるを得ない問題ではないかと思います。  なお加えて、この運賃値上げ、これは貨物運賃とも特に問題がからんで参りますけれども、これは自由化のもとで影響をこうむりつつある物価体系マイナスであります。これが産業構造の不均等性を強めるという可能性も見られるわけであります。その点から見てもこれは十分慎重に検討しなければならぬ点ではないかと思います。別の側面から申し上げますならば、いわゆる所得倍増計画に伴う輸送力増強、この資金調達が、簡単に言いますれば、多くの国民国際経済観点から見まして、弱い産業の犠牲で調達されるという可能性を持っているのであります。しかもその場合、多分に国鉄独占性といううものがフルに利用されておるというきらいがあるわけであります。  多少具体的に申し上げますれば、この資金調達の財源につきまして、東海道新幹線や車両整備によって運輸量が増加する、そして収入を増加し得る施設改善借入金によるということであります。つまり運輸量が増大し、しかも道路開発によって競争が激しいところでは、これは借入金によってまかなうという方針が一つ内容として含まれておりますし、他方では、たとえば単線区間を複線化いたしましても運輸量は増大するものではないけれども、国鉄でいえば山手線のようなもの、こういうようなところでは利子のつかない方法で調達しなければならない。つまり簡単に言えば、利子のつかない方法というのは、この場合運賃値上げということになっておるわけであります。つまり競争力のあるところにつきましては、これからまだ運輸量をふやせるというところにつきましては借入金でまかなうが、完全に独占しているという状態、ほとんど完全に独占しておるという状態のところでは、これは運賃値上げをやるということであります。つまり独占地域にありましては価格引き上げる、その価格引き上げを十分に資金調達源泉とするということになっております。これはやはり国鉄の性格から見ても避くべき点ではないかというふうに考えられるわけであります。  そこで、そのような一般的なことばかり申し上げてもなんでありますから、多少中身に入らしていただきますと、現在国鉄はどうやら黒字でおるわけであります。国鉄黒字といいますのはこれは大へんなことであります。進んだ諸外国におきましても国鉄黒字というのはまず珍しい。しかも日本国鉄の場合におきましては、これは非常な悪条件を背負って黒字になっておるという状態であります。内容として見ますなら、まず旅客貨物を分けますと、旅客黒字貨物赤字ということになっております。なお時間があれば申し上げますけれども、この旅客のうち、しばしば定期運賃の問題が取り上げられておりますが、定期の最も多い線区につきましてはこれは最大の黒字になっておるという状態であります。こうなりますと、現在国鉄黒字といいますのは、もっぱら旅客、しかも定期の最も多い線区において黒字源泉があるということになっております。  次に、そういう問題がありますばかりでなく、いわゆる赤字線区のうちでも政治的な路線といわれているものがかなり多い。こまかくは申し上げませんけれども、そういういわゆる公共的な負担が大きいというわけであります。加えて、これは国有財産であるにかかわらず、税を非常に大きく負担しておりますし、他の私企業について言いますならば、終戦後各経済発展の諸段階に応じましてさまざまの手厚い国家保護が加えられておるにかかわらず、国鉄公共性が主張されながら、これにつきましての国家保護というものがきわめて少ないという事態であります。  さらに、こまかいことになるかもしれませんけれども、国鉄のいわゆる余裕金国庫預託ということになっておりまして、きわめて低利の利子、利回りしか出てこないということになっております。簡単に言いますならば、国家からほとんど保護を受けることなく、いわゆる公共性だけを押しつけられる、しかもそれに対して企業的な責任を押しつけられておる。早くいうならば、幾ら企業的な責任を持ちまして国鉄黒字を出しましても、幾らでもほかに流れていく。ある経済学者が言ったことがありますが、国鉄経営というものはまるでざる経営だ、一生懸命経営合理化をやったとしましても、収入がふえればふえるほど妙なところに流れてしまうというふうな意見がある。これはきまじめに国鉄を研究すればするほどそういう考えを持つようになっている学者が多いわけであります。  以上のような事態があります場合に、このままの状態運賃値上げをしたらどうなるかということであります。そうなれば、これはまず旅客という——今収入の大きな源泉であり、しかも国鉄がほとんど独占的な地域を持っておる状態、そういう地域からの運賃値上げというのがだれに大きな負担をもたらすということになるかという問題であります。これにつきましては、定期旅客、あるいは一般旅客につきましても、この交通費旅費につきましては事業所負担が非常に多い。従って国民にはあまり影響がないというふうな意見がしばしば言われておるわけであります。私はこれは非常に疑問があると思うのであります。なるほど大会社におきましてはかなり程度事業所負担になっている場合が多いのじゃないかと思いますけれども、中小企業あるいは零細企業の場合、旅費負担する、あるいは交通費負担するという事例はまだ少ない、そうしてそういうところで、運賃値上げで、そこで働いている労働者負担がかさまるとしましても、賃上げを迫るというわけにもなかなかいかない実情にあるわけであります。そうなってきますと、国民一般、特に弱い中小企業労働者に強いしわ寄せがくるのではないか。そういう意味ではこの旅客運賃値上げというものは今までのマイナス面をより一そう強くするおそれがあるのではないか、そのように考えるわけであります。  次に、いわゆる議員推薦とか政治路線といわれているところでありますけれども、これも地方のおくれた意識からいいますならば、そういう要求をする県民が多いということもわかるのでありますが、昔ならいざ知らず、現在交通機関としましては道路開発が発展しましたならば自動車は十分使えるわけでありますし、地方開発に無理やりに赤字国鉄を引っぱり出す必要はないのではないか。その点にこそむしろ国会議員指導性が発揮されていいのではないか。非常になまいきのようでありますけれども、私はそのように考えるわけであります。  この場合具体的に言いますならばいわゆる政治路線のようなもの、あるいは部分的に言いますれば貨物運賃についても調整の必要がありましょうが、それに加えて税とかあるいは国家の、私企業に比べてあまりにも国鉄に対して不当なる冷たい待遇をしておる、その状態を直す。そういう状態を直した上でなければ運賃値上げというものは非常に危険であるし、マイナスである。国鉄経営の点から言いましても、これはマイナスであるというふうに私は考えます。その点をまず直されるのが運賃値上げよりも先ではないだろうか、そのように考えるわけでありますし、それから貨物についても、具体的に言えば石炭、金属鉱産にしてもそうでございます。農産物についてはなおさらそうでありますが、こういう問題をどうするかということをやはり並行的に考えていかなければ、国鉄運賃を先に値上げして、他方で今度は別個に問題を考えるというのでは、非常に手おくれになりますし、重大な混乱になるのではないだろうか。こういう点は他方経済政策の並行と相待つまでは、やはり上げるべきではないというふうに考えるわけであります。  当面そのように言いましても、なかなか問題は一ぺんに解決するものではございませんから、そういう条件をふんまえますならば、当面の処置としましては、いわゆる公共負担といわれるもの、この公共負担中身につきましては、たしか社会党だったと思いますけれども、その出されておる中身は多少私の考え方と違っておりますけれども、原則的に言いまして、社会党提案公共負担という問題を真剣に考慮された方がいいんじゃないだろうか、当面の処置としてはそれより手がないんじゃないだろうかというふうに考えております。  以上少しまとまらない形で要点を申し上げましたが、現在の国鉄の不合理な状態というものを直すことが先決でありますし、物価倍増突破口を開かせないということが大切であります。これによって得する層は非常に少ないと思うのであります。労働者としましても、運賃値上げを認めた上で賃上げをやった場合には、国民からもう見放されてしまいますし、一般利用者立場からは当然でありますし、国鉄経営者にしても、収入がふえたらなおさら無理難題が出てこないとも限らない。そんな状態は、国鉄経営者にとってもとるべき処置ではないと思います。  他のこれを賛成される層、つまり公共負担というものを押しつけて、あるいは輸送需要というものに対して資金源泉国家予算から出さない。出さないことによって、他の公共事業費に振り向けることができる。その結果利益を得るという層があったとしましても、これはやはり結果として起きてくる民心の不安やら、産業上の混乱等を勘案しましたら、決して利益ではなかろうと思うのであります。そういう意味でもこの問題についてはもう一度徹底した御討議を私どもとしてはお願いしたい、このように国民の一人として考えておるわけであります。  以上であります。
  4. 三池信

  5. 小暮光三

    小暮公述人 私は今度の国鉄運賃法改正という問題は、主として国鉄輸送力増強できるかどうか、こういう観点にしぼって見るべき性質のものであると考えておるのでございます。国鉄の現状は、御承知のように必ずしも現在の輸送需要をまかなうに十分であるとは言えない状態であります。貨物の例をとってみましても滞貨ができ、業界によりましてはむしろ、運賃引き上げということもいやなことではあるけれども、それよりも貨物を円滑に送ってもらった方がいいのだ、こういう要求かなり強いのであります。それから通勤輸送あるいは観光輸送、こういうものをとりましても、必ずしも国民需要に合致していない。しかも所得倍増計画その他の政府施策とにらみ合わした場合に、将来における輸送力需要というものはかなり大きくなる、こういう事態国鉄を直面さしておきまして、なおかつ将来における輸送力増強ができない、こう  いう事態になったならば、どういうふうな形が出てくるか、このことが最も心配される問題点だと思うのであります。  そこで国鉄輸送力増強いたしますには金がかかる、その金をどこから調達したらいいか、こういう問題になってくると思うのでありますが、運賃改正という問題を除きまして金を引き出し得る方法としましては、私は大体次の三つ方法があると思います。一つは、現在国鉄運賃にかぶせられておりますところの公共負担でございますが、不合理なあるいは過大な公共負担というものを調整することによって、国鉄の増収をはかる、これが一つでございます。それからもう一つは、現在国鉄がになっておりまする、例のそろばんに合わない新線建設という問題がございます。その新線建設負担というものをもう少し合理的に解決する、この問題であります。これによって国鉄の重荷を軽くしてやる。それからもう一つは、国鉄経営合理化でございます。  こういう大体三つ方法があると思うのでありますが、この三つ方法をちょっとこまかに申し上げてみますると、第一の公共負担の問題でございますが、国鉄当局の計算によりますと、三十四年度の数字でこの金額が五百二十五億円ある。この中にはもちろん当然国鉄負担すべき性質のものもございます。しかしその中にはたとえば定期運賃割引のように、国鉄運賃法できめられておりまする、法定割引率以上に割り引いている、もう少しくどく申し上げれば、直接原価を割るほど低い値段で運賃をきめておる、こういうものは当然調整されなければならない性質のものでございます。これを調整する場合に、直接値上げということで調整するのも一つ方法でございますが、もしこの中の、調整を要するものの一部において、政府社会政策あるいはその他経済政策物価政策の上からまずいというお考えであるならば、これは当然それに相当する分を政府財政において負担してやる、こういう方法国鉄負担を軽くし、そこから資金を捻出する、こういう方法一つあると思うのであります。  それからもう一つの、第二番目の点は、新線建設でございます。最近の調べによりますると、昭和二十六年の七月鉄道建設審議会が発足いたしましてから三十四年度末までに開業いたしました新線が十九線ある。この十九線の営業成績を見ますると、全部が赤字でございます。この赤字負担額は年間三十六億円という数字が出ております。さらに鉄道建設審議会ですでに着工することになっておるもの、あるいは着工しておるもの、こういう線路が三十六線ございます。これにつぎ込みますお金が千七百三十億円、三十五年度以降につぎ込むお金だけとりましても千五百一億円という数字が出ております。このお金を全部かりに国鉄借入金でまかなったといたしますると、平均利子を年七%として約百億円の利子負担でございます。利子負担だけで百億円、しかもこの大部分ができ上がった暁においては、赤字経営、こういう姿がはたしていいかどうか。政府は三十六年度予算におきまして三億八百七十五万円の、例の三十五年度着工分借入金利子に相当するものを補給する、こういう措置をおとりになっておるようでございますが、この程度のことでいいのかどうか。新線建設負担を、あげて国鉄経営の中にかぶせて、それでいいだろうかどうだろうか、こういう問題があると思うのであります。これにはいろいろ考え方があると思いまするけれども、私は今の形は不十分である、むしろこれを何らかの形において調整をいたしまして、国鉄資金調達の道をもう少し広げてやるということが必要だと思うのであります。  それから第三点は、国鉄経営合理化でございますが、今度運賃改正にからみまして約二十億円ほどの経費の節約をすることになっておりますが、国鉄経営合理化というものは、さらに今後も一そう続いてやらなければならない。と同時にこれは国鉄当局者だけの努力にまかせられない問題もございます。制度一つの例をあげれば、国庫預託金制度という制度が御承知のようにございます。国鉄資金はあげて国庫に預託しなければならない。しかもその預託した金額のうち四十億円までは無利子である。四十億円以上のお金につきましても二分何厘程度利子しかつかない。こういう状態で、しかも国鉄は莫大な資金繰りをいたします関係上、鉄道債券その他でもって金を調達する。七分以上のお金を調達しまして、さしあたり使わないからということでもってそれを国庫に預託している。七分以上の金利のかかるお金を一時ただでもって国庫に預託しておかなければならない、こういうむだなことが制度上あると思うのであります。このようなむだを当然何とか軽くするような改正をしなければならない。さらに国鉄人事管理の面におきましても、毎年人件費だけでも平常の状態で百億円ほどふえていく、このままほうっておきますと、国鉄予算というものはかなり人件費に食われてしまう、こういう問題も監査委員会で指摘されている通りであります。  以上申し上げましたように、国鉄輸送力増強します上においてお金をどこから調達するかということになりますと、大体以上三つ方法考えられます。しかしこの三つ方法を全部ある程度積極的に実施いたしますとしますと、これは大へんなことになるので、とても一度にはできない。財政上の制限もありましょうし、あるいは社会政策上、あるいは経済政策上の影響というものもある程度考えなければなりませんから、これは漸進的に是正していく、そしてそこから資金を生み出していくという方法以外はないと思います。またかりにこれを思い切って全部私が申し上げたような線で整理をし、財政負担にしたとしましても、今国鉄考えております輸送力増強資金をまかなうには十分ではございません。従いましてこの段階におきましては、ある程度運賃改正というものはやむを得ない、私はさように判断をするのでございます。  そこで問題は今度の運賃改正のいいか悪いかという問題の判断は、あげて私は今申し上げましたように輸送力増強が十分にできるかできないかという問題にかかってくると思う。国鉄は三十六年度から新五カ年計画というものを作っておりますが、御承知のように三十二年度から五カ年計画に着手しております。この実施の状況を見てみますと、概算でございますが、三十五年度末までの四カ年間の遂行率目標に対しまして六割七分程度でございます。しかも中でもってどれが一番よくできたかと申しますと、国鉄の例の老朽設備の取りかえであります。これは目標以上にできております。その次にほぼ目標を達成しておりますのは新線建設であります。老朽設備の取りかえといいますものは、国鉄を今のままにほうっておいては危険であるということを数年前世間では騒ぎましたので、これは当然でございますが、あと新線建設を除きまして輸送力増強その他全部目標に達していない。こういうことがもしこの運賃改正を契機といたしまして二度目に発足いたします新五カ年計画においても現われますと、これは運賃改正は失敗だったということになるのであります。でありますから、私は今度の運賃改正国鉄が当面しております現在の事態としましてはやむを得ないものである、しかしながらこれは運賃を上げた後においては、あくまでも国鉄輸送力増強できるように十分の施策をとってやらなければならない。そのためには今申しましたような運賃面公共負担を是正するとか、あるいは新線建設負担合理化するとか、あるいは国鉄経営を一そう節約し、合理的にし得るように必要ならば制度を変えてやる。そういうことをやりまして、さらに資金源をそこに注入するという措置を並行してとってやる。そのことにおいて十分に国鉄が今要求されている輸送力増強にこたえられるようにしてやる、これが一番大事なことだと思うのであります。そういうことができるということを前提といたしまして、私は今の段階においては国鉄運賃改正はやむを得ないものである。こまかい点においてはいろいろ問題もございますが、やむを得ないものであるということにおいて賛成をいたすものであります。  以上をもって私の公述を終わります。
  6. 三池信

  7. 大橋春江

    大橋公述人 武蔵野のすみっこに住んでおります一人の主婦でございます。専門的なことは私はわかりません。ですから、私は台所をはいずり回っている一人の主婦として意見を申し上げたいと思うのであります。  私は家庭の一主婦として、今度の国鉄運賃の問題に非常に関心を持っておるのであります。国鉄運賃は戦後何回も値上げをされてきましたが、そのたびごとに国鉄当局のおっしゃることには、赤字だからどうぞ上げさして下さい。運賃値上げによりまして輸送力を強めまして、また国電の混雑を緩和いたしますと、非常にきれいなことをたびたびおっしゃいまして、値上げを今までされてきたわけでございます。でも、いまだに国電の混雑は一向に解決されておらないのでございます。このままでは一そうの混雑が予想されます。私の家ではむすこと娘がやはり毎日通学、通勤のために中央に通っております。ところがこのごろオーバーのボタンは取れる、いや洋服のボタンは取れる。非常にそれがたび重なって参りました。また娘は私と同じように非常に背が低いものですから、大きな男の人のまん中に入りまして、圧迫されて息が切れそうになるということを訴えております。本日私もこちらに参りますときに、電車の中で押されました。押されて窮屈になりましたときに考えましたことは、もし万一この電車のドアがあいたならば、私たちはどうなるだろうということで、事故の起こらないことを非常に念願してここまで参ったわけでございます。子供なり御主人たちは何を好んでこの国電の混雑した中を、わざわざ遠いところをお通いにならなくてもいいのじゃないかというふうにお考えになるかもしれませんが、この住宅難及び物価高におきまして、安い家賃のうちに入ることはできない。やむを得ず食べるためにこうして東京都心、まん中に働き、学校に来るわけでございます。このことを国鉄の当局の人、及び政治に携わっていらっしゃる皆様委員の方によく考えていただきたいのでございます。結局国鉄は独占企業で、独占であるから横暴をしてもいいんだ、値上げも勝手にできるんだというふうな態度に見えるのじゃないかと私は考えるのでございます。確かに最近の東海道線の客車は非常にきれいになりました。特に「こだま」だとか「はと」はほんとうにりっぱでございます。これと中央線、山手線の国電の殺人的な混雑ぶりを比較して、どういうふうにこれを関係すればよいのか、私たちは家庭におりまして、非常にわからないのであります。  今度の運賃値上げによりまして、新五カ年計画を実施されたようでございますが、この計画を実施するために、資金総額九千七百五十億円のうち、通勤輸送対策費は六百四十億円のたった八%ぐらいしか計上されておりません。これでもって国民の日常生活に最も関係の深い、国電のひどい混雑が少しは緩和されるのであろうか。新五カ年計画の中で、私たち大衆の者の手の届かないような超デラックスな超特急列車を作るために資本の多くをお使いになるというならば、国鉄はもう完全に国民大衆のものではないと言ってしまいたいと存じます。  先日の参議院の予算委員会で、国鉄総裁の十河さんは、特急「こだま」は収入十三億で、そのうちの経費はたった三億である、十億円の利益金を得ている。そうしてそのお金をほかへ回しているとおっしゃっています。三月十八日の朝日新聞の夕刊でございます。夕刊にちゃんとそれが出ています。それを拝見いたしました。ほかとは一体何のことなのか、ほかへお回しになるとはどこへお回しになるのでしょうかということを伺いたいくらいでございます。三十四年度で旅客が一二%の黒字であったのに貨物輸送は七%の赤字を出しているということを発表されていますが、しかも貨物輸送のうち八〇%というのは大企業や大会社の製品や原材料を運んでいらっしゃる。これはきわめて低料金で、非常に安い料金で輸送されているということ、このことによって貨物の方は赤字になるということは当然のことなのでございます。  国鉄スワローズというプロ野球の球団がございますが、それはどんな関係にあるか私には具体的なことはわかりませんけれども、先日の東京新聞を読みますと、このプロ野球の球団は年々四千万円に近い赤字を出しているそうでございます。この赤字国鉄の補助金や鉄道弘済会、交通公社等の国鉄の外郭の組織の寄付で埋められていると書いてありましたことを記憶いたしております。ただいまここにもございます。何も国鉄がプロ野球球団をお持ちになることは悪いことだとは言っておりませんが、このようなところにむだがありながら運賃値上げされるということについては、あまりにも横暴であるということを申し上げたいのでございます。  国鉄やその他の公共料金は税金と同じでございまして、大衆課税でございます。税金をむだに使わないことが政治家として最大の美徳であると私は思うのであります。政府や与党の皆さんもここを黙って見ていてよいものでしょうか。国鉄のことをよく国鉄一家と世間では言っております。私たちが外から見て、家庭の実態はさっぱりわからないようになっていて、これでは国鉄に対する疑惑は深まるばかりでございます。やれ高架線の下を安く関係者に貸しているとか、弘済会や交通公社に不当にもうけさせているとか、工事用資材の買い入れが情実的であるとか、いろいろのことが言われています。私は運賃値上げはやめて、このような日本の人々の国鉄に対する疑惑をまずなくすることに努力される方がいいのではなかろうかと思うのでございます。  国鉄運賃運賃法という法律で決定的に原則が明らかにされていると思っております。その一つに、「賃金及び物価の安定に寄与すること。」ということが明記されております。経済企画庁長官の迫水さんは、旅客運賃の値上がりが物価に及ぼす影響はたった〇・一%程度のきわめて軽いものだとお考えになっていられるようでございますが、家計を預かる主婦の実感から申しますと、そんな簡単なものではないと思うのでございます。御主人の会社が大企業でありましたら、通勤の定期代は会社から出るでしょう。しかし年に一回か二回家族連れで旅行でもしようというときの旅費、また子供さんの通学の定期代や修学旅行の費用に、さっそく目の前に控えてはね上がって参るのでございます。特に低所得者の家庭が受ける影響は、ますます深刻だと思います。かわいい子供のために、修学旅行の費用を毎月母親は積み立てているのでございます。この苦労は大へんだと思います。私の手元に、小田原の高等学校の生徒を対象に、私鉄のバス代の値上げによってどのような影響を受けたかという調査の資料が参っております。これを見ますと、通学定期代一カ月分の平均が六百円から七百二十円と、百二十円の値上げになって参りまして、その五百七十九人の生徒のうち、百一人の生徒がバス利用をやめて、歩いて通学するようになって参りました。また、そのままバスを利用している四百六十七人のうち、二百四十人の生徒がバスの利用をやめたいと答えています。一人の高校生は、次のような「運賃の値上がりに思う」という作文を書いております。涙なくては読めないほど、これは深刻なことを書いております。「現在僕は役場に勤めております。夜通学している。月六千五百円の給料のうち、五千円を家に入れ、千五百円と奨学金千円とが僕の学費だが、今まででさえ箱根町−宮城野間一カ月九百五十円、授業料、生徒会費、PTA会費、旅行積立金でほとんど一ぱい、残りを本代に充てていたのに、一挙にバス代だけで二千四百円になってしまっては、一カ月の学費がバスに乗っただけで消えてしまうのだ。……値上げの話を聞いた夜は、家に帰っても話をする元気もなく、頭がかあっと熱くなって眠れず、一夜を考え明かしてしまった。……定期券が買えなくては……定期券、定期券、買わないで行く方法は、これは箱根の山を夜おそく歩いたりできないのだ。もうだめなのはわかり切っている。……同級のY君が学校をやめるという話を聞く。小田原から通い切れないというのだ。値上がり前の定期券の期間が切れてからは学校に全然来なくなった。」このような学生さんが全国にたくさんいると思います。これは実際書いてあるものをそのまま写して参りました。金がない者は通学するなということになっております。  今度の国鉄運賃値上げ案の中で、定期割引率は現行のまま据え置かれているのは当然といたしましても、普通旅客運賃の賃率の引き上げに伴って、通勤、通学定期値上げになることは問題であります。私は吉祥寺に住んでおりますが、吉祥寺から東京地区までの通勤定期代八百六十円が九百九十円と、百三十円の値上がりでございます。通学定期代が四百五十円から五百十円と六十円の値上がりになっておるそうですが、家族六人のうち三人が通勤なり通学なりをしておりますと、一カ月三百二十円も家計上に負担が増加してくるのでございます。定期代の割引などは、社会保障政策の一環として、当然政府が補償すべきものであると思います。  私の住んでいます吉祥寺の商店街は、いろいろの品物が非常にたくさんございますし、比較的安いものでございますから、沿線の主婦は買物かごをさげてきて、夕方には毎日のように込んでいるわけです。これは吉祥寺にたくさんの店があって、競争でございますから、物価が非常に安いのだと思います。十円なり十五円なりの運賃を払って、そして一円、二円、三円安い大根を、一回に三日分くらい買い込んで、その重い物を持って帰るわけでございます。それほど家庭の主婦というのは、感覚から申しますと、たった十円ではないかという、その十円が非常に問題なのでございます。昨年以来の野菜やお魚の値上がりは、貨物運賃値上げによってなおさら上げられるのではないかと、主婦はほんとうに恐怖を持っています。国鉄が上がれば、私鉄運賃もバス代も上がるのが今までの常識のようになっております。国鉄運賃が基準になって、その他の公共料金がきまるともいわれております。最近、日常の消費物価が値上がりし、牛乳やバターがついこの間値上がりいたしました。先日政府は、公共料金値上げは当分の間押えることをおきめになったようでございますが、主婦の皆さんは、いまだに値上がりのムードに脅かされているのでございます。物価の値上がりを心配して夢にまで見るという大臣のお気持もわかりますが、夢を見る前に、この国鉄運賃値上げをちょっとおやめになったらいかがでしょうかと思います。そうすれば、こわい夢もお見にならないだろうと思います。  委員の皆さん方、どうぞ十分に時間をおかけになって下さい。時間をおかけになって慎重に御審議されまして、私どもの納得のいくような御決定を下さることをお願いいたします。
  8. 三池信

  9. 高橋秀雄

    高橋公述人 高橋秀雄でございます。  国有鉄道旅客及び貨物運賃引き上げて、輸送力増強と輸送サービスの質的な改善を行なうということを目的としました国有鉄道運賃法改正法律案に対して、私は賛成いたします。  以下その理由を申し述べます。  一、輸送力増強、サービス改善のための財源として、運賃水準の引き上げを行なうこと。戦後日本の経済が復興を遂げ、さらに進んで飛躍的に成長している現状におきまして、すでに輸送力の不足が隘路となり、通勤、通学関係におきましてはあまりにも混雑が激しく、労力と時間の浪費を生じ、また貨物におきましては、慢性的に輸送力の不足が顕著であって、これは在庫量の増大と、資金回収の遅延を来たし、ひいては原価高を招き、産業の発展を妨げております。また輸送力の不足によって供給力が不円滑となり、これがために価格の騰貴を招くものもあるなど、好ましくない結果を生じておることは明らかであります。生産の増大と国民の福祉増進のためには、輸送力増強が何よりも必要であり、これは当然のことであります。  戦後の国鉄運賃水準は、戦前に比べまして、戦前は営業収入と営業費の割合が、大体六〇ないし七〇であります。それが戦後は著しく悪くなりまして、三十四年度の営業係数は九九というように、収入と経費の関係は非常に接近をしてきました。これがために投資する余力がなくて、輸送サービスは著しく悪化しております。それで秋あるいは冬の繁忙時だけでなく、春になっても駅頭における滞貨は一向に減退いたしませんし、通勤輸送のごときは、まさに人道問題であるとさえいわれておるのでありますから、経済成長十カ年計画の予定輸送量よりも、やや下回っておるところの輸送量を前提にした国有鉄道の新五カ年計画は、これを最小限のものとして認めなければならないと思うのであります。しかも交通施設に対する投資というものは、他の生産投資に先行して、生産に障害を与えぬようにすべきであることは、まさに経済審議会においても主張された通りであります。また、いかに将来自動車が発達しても、運輸密度の大きい区間の大量輸送や通勤交通は、自動車をもって鉄道の代行とすることはできないことは、厳然たる事実でございます。  そこでその財源を何に求めるかといいますに、国有鉄道の原案によりますと、東海道新幹線や車両増備など、運輸量の増加によって収入を増加し得る施設関係については借入金により、通勤緩和やあるいは隘路線区増強、踏み切り施設の立体化など、いわゆる能力は増加いたしますが、運輸量はこれに伴って増加しないような場合、たとえば単線区間を複線にしましても運輸量は直ちに二倍になるものではありません。これらの投資ということは、単にサービスの質的改善にすぎないのでありますから、自己資金というか、利子のつかない方法収入の増加をはかりたいというのが骨子のようでありまして、借入金利子の増加分とサービスの改善資金の不足分を運賃値上げに求めておるようであります。  これらの問題のうちで前段の借入金については、これは何人も異論はありませんが、後段のサービス改善資金の問題については議論があります。たとい一部でも、設備資金、いわゆる資本的な支出を運賃に求めるということは、一応適当でないという意見もありますが、輸送設備増強によってサービスの改善を行なうことにいたしますれば、それだけ乗車効率なり設備の利用効率が低下いたしまして、企業の操業度は正常にはなりますが、サービスの犠牲によって原価が低かったのが、サービスの改良によって運送原価は割高になってくるのでありますから、原価補償の意味において是認されなければならないものと思うのであります。もっともサービス改善の資金を、一年や二年の短期間に調達しようというならば、あるいは現在の利用者の負担において将来の人々が利益を受けるということになり、負担の公平を欠くということがいえるのでありますが、戦時戦後の国鉄の投資不足という関係もありまして、改良増強を要する個所が非常に多い、そしてこの程度の投資ということは当分毎年続くということになりますれば、いわゆる技術革新、その他社会の進歩に順応するための資金の年割額に相当するものといたしまして考えることができます。従って運賃水準の基礎になるところの原価に相当するものとしてこの程度は認めなければならないし、これによって常に相当輸送力の準備とサービスの改善を行なうということは、これは国鉄の義務であります。あたかも国鉄は、減価償却制度を採用する以前に取替法によりまして取りかえる工事資金運賃に求めていたと同様に妥当なものと考えることができるのであります。もっともその限度については問題があります。運賃物価の一種であるにかかわらず、いわゆる低物価政策の具に供せられて、一般の物価、賃金の上昇に追随することができず、常に低位に低く押えられておるということは、経済政策としてきわめて不合理だといわなければなりません。また公益企業としての公正報酬の原則にも反するものだといわなければならぬのです。これは、米国あるいはヨーロッパ諸国におきましても、借り入れ資本に対する利子はもちろんのこと、自己資本に対するものも、資産に対する計算利子というものを当然企業として計上する、そしてそれが運賃の基礎になるということははっきりしておるのでありまして、それがいいか悪いかという議論は、もう十年前に終わっておる事実であります。今回の運賃是正は、これらの点から見て妥当なものと思われるのであります。この程度運賃水準の引き上げということは、各運輸機関の運賃と比較しても均衡を得たものと考えるのであります。  今や鉄道は独占的な交通機関ではなくなり、他の交通機関競争場裏に立っておるのであります。従ってその運賃は各種の交通機関との競争ということを十分に考慮しながら、市場経済的に決定せらるべきものであります。もし過当に運賃値上げするということになれば、旅客貨物競争機関に奪われて増収は期待できないのであります。こういう関係から、当然国有鉄道運賃値上げというものは、市場経済によって妥当な程度に牽制されるのでありまして、昔の独占時代に考えられたような過当な運賃値上げというような懸念も起こらないのであります。  なお運賃値上げの問題が起こるたびごとに常に主張されるのは、鉄道経営合理化の問題でありますが、鉄道は一般の有形商品の生産の場合のように、生産過程を機械化して大量生産を行ない原価の低減をはかり得るものとは違いまして、人手をたくさん要するいわゆる労働集約産業であります。従って生産原価中における労働賃金部分が非常に多い。それからまた輸送の需要のピーク、朝のラッシュ・アワー、そういうピークのときとところにおける能力を常に用意しなければなりません。全旅客の三分の二を占める通勤者、それに対する輸送は、主として朝と晩の二時間くらいの短期間に送らなければなりませんし、そのほかの時間ではその能力が余って、非常に不経済な利用効率ということになるわけであります。しかもそのサービスは貯蔵しておくことができない性格のものでありまして、機械化によって原価低減をするという余地はきわめて少ないのであります。日本国有鉄道は、欧米諸国の鉄道に比べまして能率が決して低いものではなく、むしろサービスという点においては多少欠けるところがありますが、運賃としてはきわめて低廉で良好の成績をおさめているということは、統計の数字にはっきり現われておるところであります。しかし、これからあと国有鉄道経営合理化という措置はもちろん続けられなければならないことはいうまでもないことであります。  次に物価運賃との関係でありますが、経済成長時代に、有形商品の生産企業の場合には、労働生産性がだんだん上がっていくことによりまして原価はむしろ下がっていき、価格中における労賃の占める割合は運賃の数倍になっておる。その労賃さえも上げる余地があります。運賃物価の約三%程度を占めておるにすぎないのでありますから、その三%程度運賃のまた一割内外の値上げということは、もちろん生産者及び商取引の過程において吸収可能であり、物価に対する影響はほとんどない、きわめて軽微であるというふうに考えるのであります。これは前の運賃改正のときの昭和二十六年十一月の三割値上げ、あるいは二十八年二月の一割の値上げのときの物価指数を見ましても、一、二%程度の変動であり、三十二年四月の一割三分の値上げのときは、逆に一、二%下がっておるのであって、物価というものは、商品の需給関係の不均衡、原因は輸送力の不足ということもその一部になるでありましょうが、需給の不均衡ということによって物価は変わってくるものであります。もちろん運賃値上げということが心理的に影響し、あるいはそれに便乗して値上げするというようなことも一時的にはあるでありましょうが、それに対しては当局の適切なる措置がとられることを望むものであります。  次は定期運賃と家計費の関係でありますが、所得が増加していくのでありますから、生計費の一%を占めるにすぎない鉄道運賃の値上がりがありましても十分に負担できるはずであります。すなわち交通費の増額以上に所得が上がっていく割合の方が大きいのであります。ことに通勤費は、全国平均七五%、東京付近におきましては七八%の事業者の負担であります。この割合は、だんだん事業者負担の割合が増加していく傾向になっております。西独では、一九五八年に普通運賃は八・七%引き上げたのに対して、通勤定期につきましては五〇%の値上げを行なっております。この五〇%は、生計費に対してどういう関係になるかと申しますと、通勤費は、労働者の一週間四十五時間分の賃金の三時間分に相当するということになっております。この程度を維持するために値上げが行なわれ、物価指数と運賃指数がほとんど同じくらいの比率に変化しておるのであります。その論拠は、要するに通勤者の所得が増加した、だから運賃が原価をあまりに下回っておったので、それを調整されたのだということで、それが承認されたのであります。そうしてまた、国会の要請によって設けられたプラント委員会でも、昨年の二月、さらに通勤運賃引き上げを勧告いたしております。要するに鉄道運賃合理化することによってサービスの改善を行ない得るのでありますし、鉄道の経営の健全化もはかることができるのであります。  以上は運賃水準の改正について述べたのでありますが、このほかに、なお運賃制度自体の問題として、制度論としては多少問題があります。昭和三十六年度の予算案によりますと、道路の建設改良のために、既往の約倍額に相当する四千億円が見積もられております。従って今後自動車の運輸というものはますます急激な勢いでもって増加していくでありましょう。でありますから国鉄運賃制度につきましても、過去の独占時代の負担力主義によるところの運賃制度をできるだけ原価に近づけるような運賃制度に改めていきまして、そして各運輸機関を利用するについては、直接統制を避けて荷主に自由に最適なものを、最も都合のいいものを選択させるようにしていくということが、経済審議会や国鉄運賃制度調査会の答申にも述べられておりますが、こういう方針をとっていくということは世界各国の交通政策の一般的な動向であります。日本国有鉄道だけがひとりこれに反した運賃政策を維持していくということは不合理であり、時代錯誤であります。自動車の両数の約八割というのは自家用車であり、それが輸送原価を考えて利用されておるのでありますから、残りの二割の営業用自動車もまた原価を基準とした運賃でもって自家用と競争する。鉄道もまたその影響を受けるということは当然であります。鉄道の運賃制度もその意味におきまして原価に近い形にだんだん変えていかなければならぬと思うのです。また鉄道の運賃を、政策的に一部の利用者の運賃を安くし、他のものを高くするということは、企業内においていわゆる相互扶助を行なうことになるのでありまして、各自の負担において公平を欠くことになるのでございます。しかしこういうような根本改正ということを一時に行なうということは経済界に対する影響も非常に大きいので、改正を一ぺんに行なうことはできないといたしましても、なるべく早く何回かに分割して運賃制度の是正をしていくということが必要であろうと思うのであります。国会においてはこれらの総合的な交通政策の根本問題を決定することが特に望ましいのでありまして、個々の運賃をどうするかということはむしろ経営者にまかせておいていいのじゃないかと思うのであります。ちょうど一般物価につきましても、重要商品でさえも自由価格になっておるではありませんか。国鉄は公共企業体であり、公共性を重視しなければならない、重要視しなければならないとは言いましても、これは商事的に独立採算制を堅持し、運輸需要に応ずるということが公共性に合致するのでありまして、個々の営業条件や運賃競争によって調節ができる。鉄道と自動車との関係は小規模の自動車に大規模の鉄道が振り回されているというのが各国における実情であります。その競争によって大きな鉄道が負けて廃業をし、撤去しておるのが実情であります。そしてまたそれは日本の私鉄の場合においても廃業線区が各地に現われていることは皆さんもすでに御承知の通りであります。国有鉄道運賃というものは、現在は具体的なこまかい賃率まで国有鉄道運賃法によって法律できめられておりますが、そういうことになっておりますとどうしても政治の影響を受ける、あるいは政府がみずから設けられたところの委員会の結論までも無視し、定期運賃の是正であるとか、農林物資の暫定割引の廃止というようなこともなかなかむずかしくなるのではないかと思うのであります。でありますから、今後はやはり鉄道運賃の決定ということは、非政治的な中立的な専門委員会において、自動車その他の競争があるという客観的な事情を前提として市場経済的価格としての運賃が合理的に決定されるようになることが望ましいのでありまして、英国やアメリカのようにするか、あるいは中立的な委員会の意見を求めて運輸大臣がおきめになるか、これはドイツ、フランスの方法でありますが、いずれかの方法によってきめられる。そして今日のような運賃決定の方法を改めるということが交通機関の健全な発達を所期するゆえんであろうと考えるのであります。
  10. 三池信

    三池委員長 公述人古賀定君。
  11. 古賀定

    ○古賀公述人 私は日本炭鉱労働組合の事務局長の古賀であります。  本日公述人として、政府提出にかかる国鉄運賃値上げについて、給料生活者である労働者立場から意見を述べたいと思っております。  今私どもの周囲は、つまり値上がりムード、この雰囲気に満ち満ちておるわけです。本年一月経済企画庁長官が警告を行なっておりますけれども、昨年の夏以来、クリーニング、理髪、入浴、映画、これらの諸料金を初め、肉、野菜、魚など食料品価格は、これらの諸物価が軒並みに値上がりを示しております。総理府の物価指数によりますと、昨年十月の物価は三十四年に比べて約六%の上昇となっております。私どもの生活はすでに毎日々々が圧迫を受けている状態の中にある、このように言うことができるのであります。このような状態の中で今回国鉄運賃値上げが提起されておるわけでありますが、政府はこの問題について、数日前の国会答弁におきまして、物価指数に与える影響は〇・一%程度であり、卸売物価に吸収されてはね返らないだろう、このように弁明をいたしておるようでありますが、実際そのようになるだろうかということは疑問であります。たとえば定期券の値上げ一つとってみましても、二十キロの通勤者の場合、現行の一カ月八百十円の定期代が千三百四十円となります。金額では五百三十円、率にいたしまして六五%の支出増となるわけです。普通定期はさらに大幅でありまして、月額九百十円、八三%となります。これらが家計費に与える影響は、たとえば月収二万円の人では二・六%から四・五%こういう高率になってくるわけです。さらに運賃値上げ影響は、直接的な額そのものにとどまるだけでなくして、そのほか物価にはね返らない、このように言っておる政府の見解というものは事実に反しておるのではないか、このように私どもは判断するわけです。事実問題として米あるいはみそ、塩などの生活必需品を初め、運賃のかからない商品は何一つもない、このように言って過言ではないと思います。二、三の品目について例示をしてみますと、石炭は夕張から室蘭まで、この運賃が一五%上がっている。木炭は二八%、小麦一五%、リンゴ一七%とそれぞれ運賃が上昇する計算になっておる。従ってすべての商品についてこれらがはね返り、物価値上げを誘発してくる、このように考えなければならないと思っておるわけです。事実問題として国鉄運賃値上げが発表されますと、ちまたではすでに、私鉄の運賃値上げが新聞発表をされました。そうして次々に物価値上げの連鎖反応を引き起こしております。すでに予想されておるものだけを列挙してみますと、私鉄の一〇%、電気の一五%、郵便小包の三%、水道の三三%、都電、バス二〇%、バターの六%、牛乳七%の値上がり、こういうものが言われておるわけです。すでにこの中では一部実施されておるものもあるようです。このように考えてきますと、国鉄運賃値上げというものが、現在非常に高まっておる値上がりムードに直接影響を与える、こういうことが断言できると思っております。現在私ども労働者階級の標準家族の家計費の中に占める物価上昇額は三千円から四千円、これらの金額の膨張として現われておりまして、実質上の生活はきわめて困難の度を深めております。今後値上がりムードに一そう拍車をかけるということになりますと、私たちの生活は一体どのようになっていくのか、このことを非常に危惧せざるを得ません。特に一千万人をこえるといわれておる低所得者階層、この生活はまさに、破壊の危機に瀕している、このように言わざるを得ないわけであります。国民生活の安定をはかるべき任にある政府みずからが物価値上げの先頭に立つというような態度は、私は慎しんでもらいたい、このように考えるわけです。  以上述べて参りましたように、国鉄運賃値上げは直接値上がりムードに拍車をかけて、物価の上昇を通じて国民生活を圧迫する、このような判断からまず反対をいたします。  次に、運賃値上げ、これが各産業、なかんずくこの各産業で働いておる労働者にどのような影響を与えるのか、こういう観点から一、二の意見を述べてみたいと思います。以下、私が従事をいたしております石炭産業、並びに同じ地下産業である金属鉱業に例をとって申し上げたいと思います。  まず石炭産業の場合は、昭和三十八年度までにトン当たり価格を千二百円引き下げ、そして能率を一四・五トンから二六・二トンに引き上げる。そのために現在の炭鉱労働者を十三万人解雇しなければならない、こういう政府計画が至上命令として明確にされております。この至上命令ともいうべき計画に従って、石炭各社は、現在首切りあるいは賃下げ、労働強化、こういう合理化の方式をもって私たち労働者にきわめて過酷な犠牲を強要いたしておりますけれども、その結果、この二年間で百五十の中小炭鉱が閉休山のやむなきに至っております。また、すでに五万人近くの労働者が職場を追われました。これらの労働者は、大部分が就職の機会もなく、失業あるいは半失業の状態を続け、炭鉱離職者の窮状は、まさに目をおおわしめるものがある、このように言っても過言でないと思います。皆さんたちも御承知のように、炭田地帯が黒い飢餓地帯というふうに呼ばれて、大きな社会問題として発展し、黒い羽根運動が民間人の手によって推進されてきたことも御承知の通りであります。また、残っております労働者、これには賃下げがもたらされ、そして人員不足の中で過重な労働を押しつけられる、こういう結果を招来いたしております。これと相待って、合理化の一環として、各企業の中では経費の節減のために保安設備が非常におろそかになっておる。このような悪条件が累積いたしまして、災害は増加の一途をたどっています。すなわち昭和三十四年に五百七十四人であった死亡災害は、昨年は六百十七名にふえています。昨年以来三菱新入、三井山野、北炭夕張、上田豊州の各炭鉱において、重大災害が続発をいたしております。近くはまた、三月九日、七十一名の死者を出すに至りました上清炭鉱の災害、あるいは三月十六日、二十六名の死者を出しました大辻炭砿の災害などは、まだまだ皆さんたちが記憶に新しいところだと思っております。このように炭鉱合理化というものは私どもに耐えがたい犠牲を強要いたしておりますが、今後さらに七万五千人の労働者が首を切られようとしておるわけです。もしここで提案されておりますような国鉄運賃値上げが実施されるということになりますと、先ごろの石炭鉱業合理化審議会の結論にもありますように、総額で約三十億円、トン当たり七十五円という大幅の支出の増加となりまして、これが即炭鉱合理化の条件を一そうきびしいものにして参ります。そうしてこのことは、前述いたしましたように、災害の続発をもたらしてき、私たち炭鉱労働者にさらに過酷な犠牲を強要することになるのは、火を見るより明らかであります。  次に、金属鉱業の場合を見て若干申し上げてみますが、金属鉱業の場合も、事態はきわめて深刻であります。もし現状のまま自由化がなされるならば、銅、鉛、亜鉛の鉱山については約五〇%、あるいはそれ以上の山が休閉山のやむなきに至るであろう、このようにいわれております。そうしてマンガン、硫黄等の鉱山については、ほとんど全滅状態に陥るだろう、こうもいわれているわけであります。このように深刻な事態にある中で、もし運賃値上げが行なわれたならばどのようなことになるでしょうか。金属鉱業は、鉱石という重量物を遠距離に輸送しなければなりませんし、しかも鉱石は、その中に含有する金属はきわめて微少であります。従って鉱石価格そのものは非常に低いものであります。鉱石そのものの価格に対比して運賃の割合はきわめて高く、値上げ影響は深刻なものをもたらすということが言えます。一例をあげてみますと、硫化鉱を六百キロ運搬する場合に、鉱石価格千九百八十四円に対して、これまで千四百十八円、七一%であった運賃が、千六百五十三円、八三%に増加いたします。鉄鉱石の場合も七〇%から八二%になります。金属鉱山全体の運賃の支出増加は、約十一億円という巨額に達するといわれております。金属鉱山においては、生産過程の合理化もすでに限度に近く、合理化によって値上がり分を吸収するという余地もきわめて少ない状態にあります。このように、運賃値上げは、金属鉱山においてもきわめて大きな影響を与えるし、労働者に対するきびしい犠牲の転嫁が行なわれてくることは必至であります。  以上、私は炭鉱と金属鉱山に例をとって申し上げましたけれども、化学、鉄鋼その他の産業においても、程度の差こそあれ、似たような問題が惹起することは想像にかたくないところであります。従って私は産業労働者立場からも、今回の運賃値上げに強く反対しないわけには参りません。  次に、今回の運賃値上げの提案理由を見ますと、昭和三十六年度に始まる第二次五カ年計画に必要な資金の調達ということに、中心が置かれておるようであります。私は国鉄の関係者でもなく、専門家でもありませんので、一介の労働者として、ごく常識的な立場から、運賃値上げと関連をして、国鉄経営上の問題について若干の指摘を行なってみたいと思います。まず国鉄の問題を考える場合に、何よりも公共性、こういうことを大前提として考えなければならないと思っておるところです。その立場から、第一に設備投資の資金調達運賃値上げによるということが問題であります。私企業の場合におきましても、通常設備投資は長期にわたる償却を前提といたしまして価格に織り込まれる、こういうものであります。当面の資金調達の面から価格問題を考えるというのは正しいやり方ではない、このように考えております。しかも国営企業が国民大衆の負担によって資金調達をはかるというのは納得のいかないやり方であります。当然低利による国家資金の導入によるべきだ、このように第一点主張することができます。  第二に、国鉄運賃定期割引、学生割引その他各種の公共的な割引が行なわれており、その額は年五百二十五億円に達しております。このような公共的な負担を他の一般の利用者の負担でまかなう、こういうあり方は正しい解決策ではないと思います。前者がドイツの例を引き合いに出されまして、ドイツでも五〇%の定期値上げ、こういうものがあったということを言われておりますが、私どもの調査する諸外国の例を見ますと、このような公共的な性格を持つものに対しては、フランスでは全額国庫負担、あるいはドイツ、スイスでも一部国庫負担、こういう政策をとっているようであります。さきに述べましたように、物価上昇を招来し、国民生活を圧迫するような運賃値上げのような手段をとる前に諸外国の例を参考として、公共負担は国が補償するということを考うべきであろう、このように思っております。今回の運賃値上げによる増収額が四百八十六億円でございますから、公共負担額がこれを上回っておる事実からも、このことを強く指摘しておきたいと考えるところです。  さらに第三点として、提案理由の中で利子負担が過重である、このような点を強調されております。今回の運賃値上げによる増収分も利子の要らない資金考えられているようでありますが、しかし電力、海運等の巨大な私企業に対しましては低利の国家資金が供給され、あまつさえ利子補給が行なわれております。国営企業たる国鉄が七分以上の利子を支払い、あるいは運賃値上げ資金調達をはかるというのは矛盾もきわめてはなはだしい、このように考え、納得できないところであります。このほか国鉄労働組合の発行いたしております「国鉄経営の現状と問題点」、これらの点を調べてみますと、政治路線といわれる赤字新線の建設や資材購入についてもまだまだ節約の余地があるようであります。いろいろと経営上の問題点が存在するようにうかがわれますので、これらについてはこれまで以上経営の努力が払われ、さらにさきに述べましたような政策上の措置が実施に移されるならば運賃値上げの必要はない、このように判断をいたします。このように尽くすべき手段も尽くさずして安易に出されました今回の運賃値上げにつきましては私は反対せざるを得ません。  以上述べて参りましたが、結論的に申し上げますと、今回の運賃値上げは、第一に、現在進行しつつある値上がりムードに拍車をかけて、国民生活に重大な圧迫を加えること、第二に、各産業労働者に過酷な犠牲を強要すること、第三点に、国の適切な施策経営上の努力によって運賃値上げは必要でなくなること、この三点を結論といたしまして反対をいたします。  以上をもって私の公述を終わります。
  12. 三池信

  13. 米田富士雄

    ○米田公述人 船主協会理事長の米田であります。  私は貨物運賃を中心としてお話を申し上げたいと存じます。結論的に申しますと、今回の運賃値上げはやむを得ないものとして賛成するものであります。  以下その理由につきまして、今までの公述の方々と重複するところもございますので、簡単に申し上げたいと存じます。  私、考えますのに、この問題の基本といいますか、底に流れているものは、国鉄の陸上輸送といいますか、国内輸送における地位をどう認識するかということからいろいろの意見が出てくるのではないだろうかというふうに思われます。私の見るところでは、また実績の示しておりますところでは、いわゆる国鉄が従来陸上輸送における独占的な企業としての公共性を強く持っておったものが今日においてはかなり変わってきたということを認めなければならないのであります。そのことを多少実績について見ますと、三十四年度の輸送におきまして輸送トン数、いわゆる取り扱いトン数ですと、自動車が七六・八%、国鉄が十三・六%、海運が六・七%でありますが、これにキロをかけていわゆるトンキロの数字で見ますと、海運が四三・三%、国鉄が四一・九%、自動車が一四・二%というふうになっております。この数字から見ましても、国鉄が国内輸送における地位というものは自動車、海運と並列的に考えられるところまできておるのではないかというふうに見られるのであります。従って従来国鉄がいわゆる独占企業としての形態から考えられた運賃、たとえば運賃負担能力の大きいものについては高運賃をとり、それから運賃負担能力の少ないものについては低運賃をとり、その黒字赤字調整していく、そして全体の採算をはかっていくというふうな運賃負担力主義の上に立ったやり方というものはもうできなくなってきている。自動車の方へ、たとえば比較的短距離のまた運賃負担能力の多いものが参る。船の方へ長距離な運賃負担能力の少ないものがいって国鉄競争しているというふうな関係になっておるようであります。こういうふうに国鉄運賃のやり方がいわゆる動脈硬化的になって参りますと、従来のやり方を変えまして、どうしてもここに独立採算を建前とする原価主義の上に立った運賃制度をとらざるを得なくなるのであります。これは外国の例がどうだとか、こうだとかいうふうなこともございましょうが、しかし、今日の国鉄自身の問題として、どうしてもそこへいかなければ生きていけないというところへきたのだろうと思います。これが三十二年に、いわゆる鉄道運賃制度調査会というものが設けられ、二年間にわたって運賃制度を根本的に洗うということをやった、基本的な理由ではないかというふうに考えられるのであります。この運賃制度調査会の答申の結果、やはり原価主義を徹底していくという線の上に立って、制度改正ができたわけであります。  さて、その制度改正の上に立って、今回の運賃値上げの問題が起こりましたので、私はこの方針の上に立って、今回の運賃値上げというものを考えるべきであると思うのであります。ここに運賃負担力主義とか、あるいは公共性をもう一ぺん強く出してくるということは、せっかく軌道に乗り、それの実施に着手したものをして御破算にし、非常な混乱に陥れることになるのではないか。  それからもう一つ、先ほど申し上げましたごく簡単な数字でもおわかりのように、国鉄運賃をどうきめるかということは、物価それ自身に関係を持つということ以上に、他の輸送機関に対して大きく響いて参りまして、日本の国内輸送の円滑を危うくしていくという方向にいくことも考えなければならないのであります。この点につきましては、あとで簡単に触れさしていただきたいと思います。  そこで、今回の運賃改正でございますが、これは申し上げるまでもなく、最近の日本経済の異常な発展と、それから今回池田内閣によって取り上げられました所得倍増計画の実施という上に立って、国鉄の設備を拡充し整備していくための資金として運賃値上げを求めたのでありますが、この運賃値上げについて、先ほどの、いわゆる独立採算制の上に立った原価主義というものを基調として考えますときには、まず国鉄自身が、その企業の合理化を徹底的にやるということ、それから積極的には、国鉄自身がその経営を一そう旺盛にして、その収益をできるだけ上げることに努力する。この消極、積極の努力によって浮かび上がる金額、これをもとにして考えるべきである。それで足らないものについては、いわゆる独立採算、原価主義ということであれば、運賃値上げの方にいくのもやむを得ないということになるかと思います。  そこで、この経営合理化ということについては、先ほどいろいろお話が出ておったような点が、やはり問題になるかと思います。たとえば赤字線に対する考え新線に対する考えというふうな、当然赤字が予想せられるようなものをどう扱うべきかということ。もし国鉄私企業であれば、このような新線はやらないでありましょうし、あるいはそういう慢性的な赤字を出している経営部門については、勇敢に断ち切っていくべきだし、また断ち切っていくだろうと思います。しかしこれには、やはりある程度現実との妥協ということも考えなくてはならない面もあるかと思います。また先ほどの、国庫預託金の問題等も、非常に大きな問題として考えられます。また現在の国鉄人件費というものは、私企業として見た場合には、かなり限界にきているという感じを強く受けるのであります。これをどういうふうに減らしていくか。私は、いわゆるただ人を整理するということだけが、こういう人件費の解決の問題とは考えない。むしろ、その個々の生産性をどうやって向上していくかというふうな点が、やはり積極的に考えられるべきではないだろうかと思います。ただ安易な整理の方へだけ進むのは、少し簡単過ぎた考えではないかというふうにも思います。  一面こういうふうなことをやって、なお資金が足りなければ、運賃値上げにいくのもやむを得ないということでありますが、その運賃値上げ程度が、やはり一般物価影響するということについても、十分配慮する必要があるかと思います。この点を強く感ぜられる人は、いわゆる国鉄というものを、従来の一つのでき上がった観念の上に立って、これだけの運賃が上がると、これだけの値上がりがあるというふうになるのでありますが、先ほど申し上げましたように、国鉄、自動車、海運というものは、おのおのその分野において同じようなものを輸送しておるのであります。そこで、それに対する全部として国鉄運賃影響するというように考えるのは、ちょっと飛躍しているものがあるのではないだろうか。たとえば蔬菜一つとってみましても、なるほど国鉄で運ぶものもあれば、自動車で運ぶものもかなりたくさんあるのでありまして、そこら辺の調整というものは、やはり考えなければならないものがあるのではないだろうかと思われます。  それから今度の運賃値上げの諸物価への影響が、政府筋では、大体〇・一%何がしとかいうふうなことを申しておりますが、私も大体そんなことであるかと考えておるのですけれども、ただ最近の値上がりムードと、それから国鉄運賃値上げとをすぐ結びつけてしまうということは、これはちょっと早いのじゃないだろうかというふうな感じもいたしております。この運賃値上げにつきまして、物価に対する影響をもっと明確に一つ分析してみて、そしてただムードとして動かないように、何かそこに配慮するものが必要であるかというふうに思います。もしそういうふうな配慮があれば、そうおそれるようなものではないというふうな感じがいたしております。むしろ最近のそういう値上がりム−ドを刺激するというふうなことから運賃をそのままに置いておくというために、いわゆる国鉄輸送力増強がはばまれるというふうなことになったときの方が、日本の経済、産業に及ぼす影響、あるいは国民生活に対する影響というものは大きいのではないだろうかというふうにも感ぜられるのであります。  国鉄は、今度の値上げによって年三%何がしかの輸送力増強というふうなことを考えております。経済企画庁の所得倍増計画によりますと、国鉄の年の輸送増強の率は五%に見ておるようであります。最近は毎年九%増が考えられるというふうなときに、こういう三%の増強あたりというふうなことでほんとうにうまくいくのであるか、経済の発展が円滑にいくためには、まず輸送力が潤沢であるということが必要なのでありまして、どんなに生産がふえても、それがその生産された場所で停滞しているということであっては、ほんとうの経済の健全な発展はできないのであります。その前に、やはり輸送力を十分に大きくして、いつでも需要者の求めに応じ得るという形にしてこそ、初めてその計画通りの生産の拡充ができると思います。こういう意味では、今回港湾の設備の拡充、道路の拡充ということについてはかなり配慮が払われておりますが、国鉄が、どういう意味ですか、三%でもって遠慮したところで、まあこの程度ということは何か中途半端な不徹底なものである。むしろ国鉄としてはもっと勇敢に自分の地位を主張すべきであるというふうに考えております。まして最近の状態を見ますと、自動車も船も国鉄も、ほとんど今までにないほどの輸送力をかかえております。それでいるのにかかわらず、なお滞貨というものが減っておりません。やはり今までにないように滞貨があるのであります。こういう形で生産をどんどん増強していくということになりますと、そこに非常な麻痺状態が起こる。私は、多少の運賃の値上がりによる物価影響をどうこうということを心配するよりも、その方がむしろ心配になるものであります。  最後に、国内輸送の総合性の発揮ということが、どうしても問題として取り上げられてこなくてはならない、この総合性が発揮されてこそ、初めて日本の経済が健全に発展し、国民生活が安定していくということになると思います。それは一体何でありますかといえば、簡単にいえば、国鉄、自動車、海運が、それぞれの分野においてそれぞれの特徴を発揮して、そして輸送需要に応ずるという形を作り上げるということであります。で、所得倍増計画の十年後の姿というふうなものを聞きますと、先ほど申し上げましたように、国鉄については年率五%の増加、それから自動車については年率一一・八%の増加、それから海運については六・八%の増加というふうな一応の予想を立てております。しかしながら、これがこのようにいくための方策というものについて一体何が考えられているかということであります。この点にいきますと、戦時中から実は海主陸従、最初の間は海の方でおもに運んで、その補完的に陸の方でもやる。ところが、だんだん戦争があぶなくなってきますと、船がつぶされるので陸主海従とかいって、陸の方に輸送力の主力を置いて、船の方を従に考えておるというふうなことがある。それから戦後には、海陸輸送の調整とか、あるいは海陸の輸送分野の適正化というふうなことがよく叫ばれておりまして、何か国鉄の方で非常に輸送が逼迫しますと船の方へ流すことをいろいろ考える。しかしながら、戦争中の統制時代であれば、命令的に木材は船にいけ、石炭はこれだけ船へいけというふうにやれるが、今のような自由経済になりますれば、一体それをだれがどういうふうな方法でやるかということになるのでありまして、戦時中のようなやり方はできない。そこで、これが円満にいくというためには、非常に平凡なことでありますが、国鉄、自動車、海運というふうなものが同じ経営ベースに達しているということがまず大前提でなければならないのであります。同じ経営ベースということを具体的に申しますと、自動車、海運というものは、いわゆるコマーシャル・ベースでやる、国鉄だけがひとり公共性の必要性がまだ残っておるといいますか、何かそのコマーシャル・ベースに徹し切れない形になっておる。こういうふうな形でいくということになれば、これは総合性を発揮させようとしても実はできないのであります。そこでそういうものが全部同じベース、いわゆる採算性というふうな考えの上に立って、みんながその運賃をまずきめていく、そうして利用者がどれを選ぶことが自分の企業に対して一番有利であるかということの選択の自由を持たせるということによって、初めてその総合性といいますか、三者の円滑な行き方ができるというふうなことに考えられるのであります。ところが、ここへもし国鉄政策運賃的なものを与えるというふうなことをやりますと、その影響はすぐに海運の方にも響いてきます。現在は、内航海運の運賃というものは、大体国鉄運賃との見合いにおいてきめられているという傾向が強いのであります。そこで国鉄一つ政策運賃をつけるということは国鉄自身の問題だけでなくて、日本の国内輸送力全般に影響する問題である。もし国鉄政策運賃をとった結果、国鉄にまた荷物がどんどん集まって海運その他に出ないというようなことになるとすれば、国鉄の方も設備をどこまで拡張していいのかわからない。しかもそれが国鉄の採算からいえば肯定できるものではないというふうなことの上に立って、今度は国鉄に対する需要がどんどんふえていく、それを追っかけて設備をまた拡充していく。こういう循環的な、つまり片方の海運とかいうものはこれに圧迫されて企業それ自身の存在があぶなくなってくるというふうな形もまたそこにできてくるわけであります。こういう一つの悪循環といいますか、そういう循環を許すようなことは、やはり今日の国鉄の地位からすれば許さるべきことではないというふうに考えられるのでありますが、ぜひこれは現在の原価主義の上に立って一つ進めていただきたい。  私はこの問題を少し観念的に申し上げましたので、実際面から言うと、私の申し上げた通りにはいかない。との妥協はかなり出てくると思います。たとえば赤字線とか新線とかいうようなものを全部やめてしまえとかいったって、またできるわけではなし、理論的にいえば輸送機関といいますか輸送施設を新しく設けることによって輸送需要が生まれてくるというのも、これは交通学の一つの原則的なことでありますから、新線が最初のときに赤字であるから全部だめであるというようなことであってもまた困ると思うのです。そこにはおのずから一つの妥協点といいますか、いわゆる段階的に順を追ってそういう方針の方へいくべきではないだろうかというふうに考えるのであります。もしこれを徹底すれば、あるいはそういう不採算のものをやめれば、もっともっと国鉄利益が出て運賃値上げの幅をもっと狭めることができるのかもしれませんが、しかしそれは現実の妥協点としてはできないことである。私は冒頭にこの運賃値上げはやむを得ないこととして賛成すると申し上げたのは、その点、いわゆる現実の妥協という点からやむを得ないということで賛成いたした次第であります。  はなはだ簡単でありますが、ありがとうございました。     —————————————
  14. 三池信

    三池委員長 これより公述人に対する質疑を行ないますが、先ほど岩尾公述人が所要のためお急ぎのことを申し上げましたけれども、岩尾公述人には午後二時まで御都合をつけていただきましたので、岩尾公述人に対する質疑は午後再開後最初にまとめてやっていただくことといたします。  なお、大橋公述人が所要のために非常にお急ぎのようでございますので、この際大橋公述人に対する質疑を最初にまとめてお願いいたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。川野芳滿君。
  15. 川野芳滿

    ○川野委員 大橋さんが午後おいでにならないようでございますから、大橋さんに簡単に一言だけお尋してみたいと思います。  先ほど大橋さんの公述の中で、値上げは反対であるが、特に学割定期値上げに対しては反対である、こういうお話があったようでございますから、お尋ねしてみたいと思います。今日わが国の交通難の問題については、これは私が申し上げるまでもない点であります。ことに都市交通の交通難の問題については、先ほど大橋さんがお述べになった通りでございます。そこで国鉄は鉄道五カ年計画を企画いたしまして、今年から五カ年間に相当の輸送力増強をはかるという計画を発表いたしたのであります。この五カ年計画の完遂という問題は、先ほども小暮さんがお述べになったようでございまするが、まことにわが国にとりまして喫緊かつ実施することが至上命令であると私も存じておるわけであります。そこで五カ年計画を実行するために莫大な予算が必要だ。この予算の不足分を国家が無利子の金を出しまして、そして五カ年計画を遂行させるということになりますとまことにけっこうな話でございますが、しかし国家財政考えますると、そういうわけにも参らない点がある。しからば借金でやったらどうかという議論が出ますが、借金政策を一千億に近い金をもってやりますると、十年後には一兆数千億の利払いをせなければならないということになりまして、国家経営を危うくする、こういうことになるわけでございます。そこで今回は、ある程度の借金政策ももちろん行なって五カ年計画の遂行ということにしておるわけでありますが、ある程度値上げ資金をもって、そうして五カ年計画を断行するという計画になっておるようであります。その場合に学生割引定期割引を中止するという問題もあるわけでございます。しかし現在におきまして学生割引は九割二分に達しておる。そういたしますると学生さんは八分の金を支払っておるということになるわけであります。定期割引は八割二分、こういうことになりますと、定期割引を受けている人は一割八分支払っているということになる。大体割引というものは一割か二割割引するのが常識である、あるいは法律で鉄道は五割と示しておりますから、幾ら割引いたしましても五割程度が適当であるという考え方も、実は一部においては行なわれるわけであります。それを今申しましたように八割二分あるいは九割二分という、まことに画期的と申しますか、割引をやっておる。そこで口の悪い人は、これはもうただである、わずか一割八分くらいとっておるならば無料で運んだらどうか、こういう説をする者もあるわけであります。そこで先般読売新聞でございましたか、大体国鉄は人間を貨物扱いにしておるという批評を書いた新聞がございましたし、貨物以下の運賃を払っておるので、あれは貨物扱いにしておるのではなかろうか、こういう酷評をした人もございますが、割引というものは、私に言わせるならば、社会保障として割引をするなら別問題、そうでなかったならば一定の限度があると存じております。現在は九割二分学割をやっておる、そこで値上げをする場合に、平均度の値上げというものはやはり定期割引にいたしましても、学生割引にいたしましてもその程度負担は当然していただくのが適当である。私はこういうふうに考えておりますが、大橋さんのお考えをもう一度聞いてみたいと思います。
  16. 大橋春江

    大橋公述人 学割は非常に安くしていただいております。しかし、ある書物で見ましたところが、山手線で一キロメートル走るのに二百四十円かかっている。それで定期以外で乗っていらっしゃる方が三十三人あればもう採算はとれるのだ、定期券で乗っていただければ百三十二人で済むのだ、こういうふうな数字を私は読んだことがございます。ところが現在乗っている車は、百三十人はおろか、五、六百人も乗っているのじゃないかというふうな感じがいたします。それでそんなに定期を高くなさらなくても、貨物でどっさりおとりになれば赤字は解消するのじゃないかと私は考えるわけでございます。
  17. 川野芳滿

    ○川野委員 日本の政治というものが部分的、部分的で計算して収支の勘定が出ておるならば、あるいは御説の通りかもしれません。しかし国鉄という一つの企業体で事業をやれば、これは全国的な考え方をもってものの計算をしなければならないのではないかと思います。そこで私は実際問題としてお尋ねするわけでございます。なるほど現在たくさんの人を乗せております。しかしこれを規程によって乗せないということになりますと、一番困るのは、東京で例を申しますならば、東京都民であるということになりますが、実際そういうわけに参りません。そこで輸送の増強をはかるということが今日最も必要な問題であると存じます。輸送増強をはかるのには、先ほど申しましたように資金が要りますので、その資金の一部を大割引いたしております学割、定期割引等の方々においても平均の負担を願うのが当然ではなかろうか、かように質問いたしておるわけであります。もう一度一つ
  18. 大橋春江

    大橋公述人 国鉄運賃が上がりますれば諸物価が上がってくるわけでございます。所得倍増とおっしゃいまして、所得が倍増になっておりますれば、お上げ下さってもけっこうだと思いますけれども、今所得は以前そのままでございます。そうして今度は固定資産税ですか、家屋税ですか、そういうものもだんだんと上がってきますし、けさも電車に乗ってきますと、快速電車というのですが何も快速ではないのです。何だか苦しみに入っているような感じがいたします。決して上げてはいけませんと申し上げておりませんが、所得倍増にひっかけまして、国鉄物価値上げの先頭になることをおそれているわけでございます。
  19. 三池信

    三池委員長 大橋公述人に対する質疑は以上で終わります。大橋公述人にはお忙しいところ当委員会審査のため、貴重な御意見を伺い得ましてありがとうございました。委員会を代表いたしまして委員長より厚く御礼申し上げます。どうぞお引き取りを願います。  午前中の公聴会はこの程度にとどめ、午後一時三十分より再開して他の公述人各位に対する質疑に入ることとし、休憩いたします。    午後零時二十五分休憩      ————◇—————    午後一時四十分開議
  20. 川野芳滿

    ○川野委員長代理 午前中に引き続き公聴会を開きます。  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案について、公述人各位に対し質疑を行ないます。  この際お知らせいたしますが、岩尾公述人が所用のためお急ぎのようでございますので、同公述人に対する質疑を一括して最初にお願いしたいと存じます。  なお、小暮公述人及び高橋公述人も所用のためお急ぎのようでございますので、さよう御了承を願っておきます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。  勝澤芳雄君。
  21. 勝澤芳雄

    勝澤委員 それでは岩尾公述人にお尋ねをいたします。あとで各公述人に質問をいたします。  岩尾公述人意見はおおむね私の意見と同じようであります。そこで、意見の中で、今度の運賃改正の二つの柱として国鉄経営改善と輸送力増強を掲げられました。輸送力増強の前提になるものは国鉄経営改善が先だというお話をされました。まことにもっともなことだと存じます。経営の改善を行なわずに、輸送力増強だけを打ち出して運賃値上げをやっても、それはもう不可能だということは言われた通りだと思います。そこで、経営改善についてお考えになっている点をもう少し掘り下げて一あなたのお考えをお知らせ願いたいというのが第一点であります。  第二番目の点は、先ほども質問が出ておりましたが、通勤輸送の解決というのは運賃値上げをしなくてもできる。ということは、具体的に言うならば、通勤者が安い運賃といいながらも、ぎゅうぎゅう押し込められて鉄道にサービスをしている。逆に言うならば、高い運賃で乗っていることになるわけであります。こういう点からいうならば、ただいまの通勤輸送定期旅客が多いということが通勤輸送の解決を困難にしているということではなくて、通勤輸送の実態から定期運賃というものをどういうふうに見るべきかという点であります。  それから公共負担について少し御意見があるようでありますので、その点についてもお答えを願いたい。  以上三点について、あなたの言い足りないところを十分御説明願いたいと思います。
  22. 岩尾裕純

    岩尾公述人 申し上げます。国鉄経営の改善方法ということになりますと、それほど十分にまだ国鉄の勉強もしておりませんし、常時タッチしておりませんから、あまり思いつきになってもどうかと思うのでございます。これはこまかい問題を取り上げるまでもないと思いますが、国鉄一つの企業体として見ました場合、よく言われることでございますが、資金の調達面にしましても、それから材料の購買にしましても、人事の面にいたしましても、まだかなり前近代的な要素が強いんじゃないかというのが、検討しなければならぬ問題点一つじゃないだろうか、こういうことが多くの経営学者によって言われております。ただし、この場合の近代化というのが労働者負担においてなされるということになりますとこれは困ることになりますが、事実具体例を出せとおっしゃれば、きょうは間に合わないとしても、幾らも出せます。きわめて前近代的な運営方法というものが、少なくとも部分的に存在していることは事実でございます。  それから、そういうふうな運営の仕方も問題がございますが、何よりも不公平だと考えられますのは、やはり現在の全体としての交通政策の中で、国鉄が負わされている重荷じゃないだろうかというふうに考えます。新線赤字路線というふうに悪口をつかれておりますが、これは悪口をつかれてもやらざるを得ない。現在の政治の面での交通政策の立て方、そこらを根本的に直していきませんと、国鉄当局だけがどんなにじたばたしてもこれはどうにもなるものではないというふうに考えます。これが一番大きいことだと思います。  それから次の問題として、国有財産から税をやたらにとる。たとえば新興工業地帯で工場誘致のため税の軽減をやっているのに、国有財産である国鉄からやたらに税金をとって一体どうするだろうか。これは常識的に考えてもおかしいと思う。  次に利子負担の問題でございますが、たとえば赤字線をどしどし作らせるというならば、せめて利子くらい国家負担してやったらどうだろうか。税の減免にしましても、利子補給にしましても、造船やその他の企業ではやっているが、なぜ国鉄だけやってはいかぬか。これは非常に部分的であって、今まで新線並びに赤字線区に対して決して十分な資金ではない。今回行なわれたものはほんの部分的なものだと私は考える。  なお、これも先ほどちょっと触れましたが、国鉄余裕金の運営につきまして、この理由がまだ十分わからない。これもやはり前近代的という言い方で言われても仕方がないと思うが、余裕金国庫預託を強制して、残高一日大体百五十億、四十億は無利子になりますし、残りは非常な低利で運用部に預けさせられるということになって参りますと、これは金額とすれば大きくないかもしれないけれども、金額の問題じゃなくて、国鉄経営にとって、能率性あるいは経営者の企業力発揮の鋭さを妨げるという点が出てきはしないかというように考える。それらこれらいろいろあるわけでありますが、やはり根本は、現在の総合的な交通政策の、悪口を言えば弱点のようなもの、あるいは欠陥のようなものが国鉄経営の近代化、合理化を大きく妨げている最大のものじゃないだろうかというように考えております。その点は政治の力で国鉄経営の改善の土台を作ってやるべきではないだろうかというふうに思います。  次に定期旅客の問題でございますが、定期券の割引が非常にひどいという点、これは全体としての旅客の運送原価と定期の値段を比較すればものすごい割引率になっております。これは一目瞭然であります。しかし、定期が一番使われております地域、東京−桜木町間でありますとか、東京−浅川間でありますとかいうような地域、それから山手線、中央線、青梅線、横浜線でもそうでございますが、これは非常なもうけをやっているわけです。線区別にもし今の原価と定期の値段を比較したらどうなるか。これは検討し直してみませんと、簡単に全国平均の原価と定期運賃を比較しても話が少し乱暴じゃないだろうかというように考えるわけです。その点はもう一度検討すべき問題だと思います。ただし、この定期旅客というものをどう扱えばよいかという問題でございますが、これについては、ただ経営一本の問題だけでは片づかないものもございます。これもやはり現在の産業政策なり工場立地の問題と結びつけなければならず、交通需要の動きというものを考慮した上で検討されるならば検討しなければならないとしても、定期券そのものを廃止するのは現在としては不可能でございましょうし、またそれを上げるという場合でも、今のような単純な全国平均と原価の比較だけで議論を進めるのは不穏当じゃないか、少しく経営の実態に合ってない、こういうふうに考えます。  それから学生定期の問題は、先ほどもちょっと御議論になりましたし、私どもも考えておるわけなんですが、これについては私非常に最近不審に考えており、自分でも理解できない点もある。と言いますのは、ちょうど子供を大学なり高等学校に行かす年ごろは大体四十才から四十四、五才になって参ります。ところがそういう人たちは、ことに労働者なり何なりはそうでありますけれども、何とか子供を高等学校や大学に行かせたいという気持になっておるし、そうしなければもう一人前の労働者には使えないのだということまでいわれてきております。だから行かすときには、たとえば最近国鉄でも四十才以上はそろそろ整理の対象に考えなければならぬという問題が出てきております。年功序列賃金を直すとか、あるいは四十才以上は技術革新にとってはそろそろ役に立たなくなってきたという問題もあって、そういう岐路に立ち始めてきた人たちが、この学生定期を上げられたのでは、またそこで負担がかかるという問題があるわけであります。これについてはもちろん社会政策的な問題にもなりましょうし、これを慎重に考慮していかないと、国民に対する不必要な不安と悩みを与えるのじゃないだろうかというふうに考えます。  それから最後に、そういうような問題点をひっくるめて、それじゃ現在の赤字を当面どうしたらいいかということでございます。私はやはり公共負担国家予算措置していただくよりほかに道がないと思っております。万やむを得なかったならば必要な資金を借金でまかなったにしましても、せめて利子負担だけは国家予算でまかなうべきじゃなかろうかというふうに思います。しかし公共負担内容についてはもっと慎重に、これはいろいろ具体的に時間をかけて検討された方がいいんじゃないだろうか。少なくともそういう問題が並行しないことには、あまりにも現在の運賃値上げの問題は国民に対してドラスチックな影響を与え過ぎるんじゃないだろうかというふうに考えます。
  23. 川野芳滿

    ○川野委員長代理 なお御了承願っておきたい点がございます。米田、古賀両公述人各位も所用のためなるべく早くお帰しを願いたいとの申し出がありましたので、御質疑の申し込みも多いようですから、なるべく簡潔に質疑をお願いしたいと存じます。なお公述人におかれましても、質問のあった点について、これまたでき得べくは簡潔に御答弁を願いたいと存じます。  高橋清一郎君。
  24. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 岩尾公述人にお尋ねしたいと思いますが、お聞きしておりますると、比較的お話は抽象的にわたっておられるようでございます。具体的でございませんことをやや遺憾に存ずる面もございます。お話の中に、今回の国鉄運賃引き上げというものは物価倍増の機運を醸成するというような御意見がございました、私どものいろいろ当局から、また社会全般的に考えてみました感じは、今回の国鉄運賃値上げというものは、これはやむにやまれぬというような感じを受け取っておるのでございます。諸物価昭和十一年を基準にいたしまして輸送関係のトラックであるとか、船賃もそうでございましょうが、国鉄運賃の場合と違いまして、非常な上がり方をいたしておるのでございます。一番低い線に歩んでおったということであり、今回は当然上げなければならぬ場面にきたのだという感じを持っておるわけでございます。今回のお話によりますると、国鉄運賃引き上げというものが一般物価にいかなる影響を与えるとお考えでございますか、ということでございます。理論的に御用意がございましたならば、一つ数字的に御解明を賜わりたいと思うのであります。
  25. 岩尾裕純

    岩尾公述人 本日はこの問題についての数字的な説明は準備しておりませんので残念でございますが、ただ、これも具体例として申し上げますならば、これはただ国鉄だけではなくして、電気、ガス、私鉄その他公共料金引き上げが同時に進行しておる。国鉄がその第一着手であるという。郵便料金を加えまして……。そういう問題からいいまして、現在の国民経済の中でこの公共事業がどれだけのウエートを持っておるかということを考えますならば、これはもちろん数字的な解明がない以上不十分でございますけれども、少なくとも私はかなり大きな規模で物価引き上げ、あるいは悪口を言われておりますが物価倍増というような機運を醸成することは、これは常識的に見て想像にかたくないというように考えております。御質問のあった点につきましては本日準備しておりませんので、残念でございます。
  26. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 続きまして、お話によりますと、国鉄新線建設については地方民がこれを要望するという気持はわかるけれども、現在のような交通発達の状況下においては、必ずしも赤字をもたらすところの新線建設を固執する必要はないのではないか。むしろ国会議員がチェックすべきではなかろうかというような御意見であったと思います。それに関連してでございまするが、いわゆる地方開発ということを国会議員は、また国会におきましても非常な念を入れた各省にわたりましての御発言もあり、そうした意向の顕著であることは御存じであろうと思う。そういう点から考えてみまして、あなたは今回の新線建設補助特別措置法案というものについてどういうようにお考えでありますか、ということであります。
  27. 岩尾裕純

    岩尾公述人 新線建設の補助法案、ちょっと今準備しておりませんし、それについては具体的にちょっと今申し上げられませんけれども、やはり現在となりましては道路開発を積極的にやるということ、自動車をフルに使うということは、決して今の国鉄の分野を侵食するものでもないし、ただ問題はそれに伴う総合的な、自動車にした場合と鉄道にした場合では、たとえば小運送でありますとか、あるいはその他荷扱い機関のさまざまな形態が相伴わなければいけませんけれども、それを中心に、むしろ県民の気持は別にしましても、それを啓蒙し、指導するという点の方に重点を置いて、ただ補助をして新線建設を認めるというよりも、むしろ私はそれに反対した方がよいような気がしております。しかしこれは具体的な線路について言いませんと、あまり観念的に議論してもちょっと無理があるのではないだろうかという気がしております。
  28. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 たとえば地方末端に参りまして、トラックの輸送が相当役割を演じておるわけでございますけれども、新線建設なくしてトラック輸送の面で地方の物資の輸送というものははたして大部分負担してやれるかどうかという心配も出てくるわけでございます。その辺のところを……。
  29. 岩尾裕純

    岩尾公述人 その辺は具体的に一つ……。
  30. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 大体常識で判断してお答え願えると思ったのでございますけれども、時間のあれもございますので、その点はそれにとどめます。  最後に今回のお話でございますが、社会党提案公共負担法案には根本的には賛成であるということを言われたのでございます。それに関連してでございまするが、私が考えまするに、現在の国鉄というものは諸外国の鉄道とは異なりまして、わが国の国鉄はいまだいわゆる斜陽の段階にはないと信じております。従いまして今日の段階におきましては、国鉄財政は、これは主として運賃収入をもってあがなうべきである、従いまして公共負担というものを国家が補償するという考え方はまだその時期ではないのじゃなかろうかと思います。それについて先生の御意見を伺いたい。
  31. 岩尾裕純

    岩尾公述人 簡単に申し上げます。私の意見につきましては先ほどからいろいろ申し上げた通りでございますけれども、国鉄にいわゆる公共性要求するならば、公共性にふさわしい国家的な援助を与えるべきである、それを与えずして単に企業的な採算性だけを強調するならば、これは私はあらゆる面で矛盾が出てくると思う。先ほども申し上げましたが、諸外国でかなり国全体として経済が発展しておる状況の中で、しかも赤字が多いという国も多い。それにもかかわらず日本状態で現在国鉄黒字だというのは、あるいは運賃も高いのかもしれないし、労賃も安いのかもしれないし、国鉄経営者の努力も強いのかもしれない。いずれにせよ私はこれは非常に異例な事態であると見て差しつかえないのじゃないかと思うのですが、この点はよく考えていただいて、もう一度現在の国鉄にあまり多くの荷物を背負わせて、その結果として全体の大きな矛盾を広げないように御検討を願いたい、私はそう考えます。
  32. 川野芳滿

    ○川野委員長代理 久保三郎君。
  33. 久保三郎

    ○久保委員 岩尾公述人にお尋ねいたしたいのは今の点でありますが、わが党では御案内のように、運賃値上げというか、今回のこの法案の提出に見合って、いわゆる公共負担法というものを提案しておるわけであります。これについては先ほど岩尾さんはどうも不徹底ではあるがということでありまして、もちろんわれわれはそれを十分承知の上で実は出しておるわけであります。時間もないと思いますが、概要一言申し上げて御批判をいただきたいのであります。  われわれの考えは、ただいままでほとんどの公述人の方々から御指摘になったような点をまず取り上げていくのが先決ではないだろうか、もっと言いますれば、少なくとも現実の問題を考えながら、それに妥協してやっていくのがやはり当然ではなかろうか、こういう考えであります。それで国鉄自身がいろいろな文書や何かで出しておる公共負担、特に運賃面での公共負担、これは五百二十五億なんでありますが、われわれはこれをそのままとっておりません。そういうところに実は不徹底の面もあるわけであります。  もう一つ公共負担という問題でありますが、これは企業自体が背負うべきではないということであります。鉄道が背負うところの公共性、いわゆる企業内における公共性というものは、たとえば運賃を公示して無差別的にこれをだれにも適用していくというようなこと、あるいはダイヤ通りに列車は運行せねばならぬというような制約、あるいは鉄道線路をこれは赤字だから一つあしたから撤去してしまえというようなことが簡単にいかないような制約、こういうことが実は国鉄自体の持っておる固有の公共性である、これ以外の公共性は全部政策から出ておる、政策から出ておるものは全部国家負担すべきである、こういう思想から出たのでありますが、前段申し上げたような条件というものを考えて、貨物運賃については特別等級というものが本来からいえば産業政策上とられております。しかしわれわれが提案しました公共負担法の中には、この特別等級それ自体は入っておりません。いわゆる暫定割引と称するものは、これは政府政策だからこれまでは補償しろ、こういうことを言っておるのであります。もう時間もありませんので、私の方の考えを十分申し上げることは不可能でありますが、先ほど先生がおっしゃった不徹底であるがという点について御批判を賜わりたいと思います。
  34. 岩尾裕純

    岩尾公述人 今度は公共負担法の批判ということになりまして幅が非常に広くなってきたわけでございますが、現在非常に当面現実的な問題点としてお出しになるのは私は差しつかえないと思っております。ただしかしこの場合公共負担にいたしましても第二次五カ年計画内容というものと無関係には進まないと私は思うのでございます。その場合国民としましてかなり問題を感じますのは、やはり現在の通勤輸送対策でありますとか、いわば国鉄がほんとうに独占しておるような地域についての設備投資が望ましい、その点と結びつきませんと、公共性というものが何だか弱くなるという点が一つだと思います。それからもう一つ、やはりこの際やるのでしたら赤字線区の原因をはっきりさせて、その点についてははっきり公共負担としてやっていただいた方がいいのじゃないか。これは時間がかかりますが、当面暫定的に認めてもらうための前提だということならば、私はこの程度のものは次善の策として了解させていただきます。
  35. 久保三郎

    ○久保委員 私の説明が少し足りなかったのでありますが、実は御指摘になったような赤字線というか新線建設の問題については予算の組みかえ案として出しております。これを別途法律にするということは研究の余地があるのでありますが、三十六年度の組みかえ案は先生が御指摘になったような、大体そういう趣旨を含んでおるわけであります。それからなお五カ年計画内容通勤輸送対策というものを重点にやるべきである、中身は再検討の要がある、こういうことであるわけです。
  36. 岩尾裕純

    岩尾公述人 了解いたしました。けっこうであります。
  37. 川野芳滿

    ○川野委員長代理 岩尾公述人に対する質疑は以上で終わります。  岩尾公述人にはお忙しいところを当委員会の審査のため貴重な御意見をお述べいただきましたことを、委員会を代表して委員長より厚くお礼申し上げます。どうぞお引き取りを願います。  それでは質疑を続行いたします。  勝澤芳雄君。
  38. 勝澤芳雄

    勝澤委員 最初米田公述人にお尋ねをいたしたいのですが、国鉄運賃は独立採算の立場から原価主義が妥当であるということを言われました。そして原価主義でない場合においては、輸送の調整の上から、自動車なりあるいは海運なり、こういう立場からいっても調整がなかなか困難であるし、政策運賃についてはあまり賛成できない、こういうことを言われたのですが、やはり原価主義という立場を、今回の運賃値上げの中においてもどういうふうにあなたの立場から理解をされておられるのでしょうか。
  39. 米田富士雄

    ○米田公述人 お答え申し上げます。私は大体国鉄運賃が独立採算を基礎とした原価主義の方へいくべきであるという方向、これは現在の国鉄がその輸送力その他において、国内輸送における地位というものが前と非常に変わってきたということからして、どうしてもそこへいかなくてはならないというふうに考えておるのであります。と同時に、今回の値上げということにつきましては、原価主義という建前をとるからこそ私は今回の値上げについてやむを得ないものとして賛成するということを申し上げておいたのであります。もちろんこの原価主義につきましては直ちに今私企業のように割り切ることのできないものが現実の面でたくさん出ております。ごく大ざっぱに申しますと、やはり国鉄それ自体が公共企業体としてあるということが、まだこれを徹底してやれないような形が内部にある。それから外部からしても昔の国鉄というものに対する考え方が清算されておりません。やはりそこに公共負担というものを強く主張する面も出ておるようでありますが、それは現実が私の言う理論的なものとの妥協ということを考えざるを得ないのが根本でありまして、その妥協の上に立ってみてもやはり今日の運賃値上げというものはやむを得ないものであろう、もしこれを何か原価主義を捨てた一つ運賃負担能力というふうな面だけで解決すると、せっかくここまで持ってきたことが台なしになるのではないだろうかということをおそれるわけであります。
  40. 勝澤芳雄

    勝澤委員 そうすると国鉄運賃というものが、独立採算原価主義の立場をとって、他の輸送機関との調節で考えるべきだということになれば、今回の運賃値上げによって、これに関係のあるバスとか海運の料金というのは当然上げられるべきだ、上げられるようになるであろう、こういうことをあなたは思っておられるわけですね。
  41. 米田富士雄

    ○米田公述人 お答え申し上げます。端的に申しますと、現在の海運の運賃というものは、現在の国鉄運賃の非常な圧迫のもとにあるのでありまして、もしこれがある程度上がるということになれば、何も海運はそれに呼応して上げるというような考えはなくて、海上に物が流れていくことがかなり円満になっていくというふうに私は考えております。直ちに上がるというふうには考えておりません。
  42. 勝澤芳雄

    勝澤委員 そうしますと、国鉄運賃が上がれば海上の方に荷物が流れていくということなのですね。  基本的には今度は交通投資のあり方についてのお考えをお聞きしたいのですが、鉄道は自分で土地を買収し、そして線路を敷いているわけです。船の場合においては、港湾は国の投資で作られ、また船にも利子補給とかいうふうな形になっているわけです。そうしますとそれを両方ともばらばらにしてしまってお互いに公共投資ということをやめるか、あるいは国鉄の方に公共投資を同じように公平にしていくか、こういうことが公共投資の場合にいろいろと問題になるわけです。公共投資の道路と港湾とあるいは飛行場も入りますが、これと国鉄との関連というものはどういうふうにお考えになっておりますか。
  43. 米田富士雄

    ○米田公述人 お答え申し上げます。  海運が港湾等のいわゆる公共設備のものを使っているというのは、これは一つの海運経営のあり方なのですが、その面では自動車もおそらく道路を使うというふうなことが出て参ると思います。その点では国鉄がいろいろな施設を自分でおやりになるということと、そこにギャップがあるような感じがありますが、一体そういう個々の鉄道とか自動車とか海運とかの経営方式というものは、それぞれの形においてきまっておるのでありまして、これを改めるとかなんとかいうことじゃなくて、そういう与えられた前提の上に立っての経営の上の調整というものを、自由経済の立場から考えるということではなかろうかと私は思います。  それから先ほど海運に対して利子補給があるというお話でありましたが、利子補給のございますのは、国際競争力との関係からいたしまして、外国航路に携わっておる船に関するものでありまして、国内航路に携わっている、このくらいの船というのは大体三千トン前後までだろうと思いますが、そういう内航に携わっている船とかそういう企業に対しては利子補給は及んでおらないのが原則でございます。
  44. 勝澤芳雄

    勝澤委員 結局交通投資における国鉄に対する国の扱い方と、それから港湾とか道路とかその他に対する交通投資のあり方というものは根本的に間違っているわけなのです。間違っている上に運賃値上げをしようとしているわけです。あなたのところの業界の立場から見れば、運賃値上げをすれば荷物が海上に流れてくるから運賃値上げは賛成だということのように私には考えられます。それは国の投資が公平に行なわれて、そうして船の利子補給もけっこうですし、融資もけっこうです。ですからそれと同じ立場競争さしていくことが私はよろしいと考えておるわけでありまして——あまりあなたに質問してもあれになりますから、今の点について私は高橋さんにちょっとお尋ねしたいのですが、交通投資のあり方というのは今のでおわかりになったと思うのです。国鉄に対する国の投資あるいは港湾、道路、飛行場、こういうものには国が全部持っているわけです。その上になおかつ財政的にあるいは金融にいろいろめんどう見ているわけですから、こういう立場国鉄というものを見た場合、交通投資というものはどうあるべきか、国鉄はこれらの関連の中からどうあるべきかという点についてお尋ねいたしたい。
  45. 高橋秀雄

    高橋公述人 交通投資の問題について簡単に申し上げます。  道路も港湾も国が投資しておる、運送業者がその費用を負担しておらぬじゃないかというお話でありますが、道路につきましては、鉄道が線路の費用を負担すると同時に、道路に対してもやはり自動車業者がある程度負担すべきであるというふうに私は考えます。しかし道路そのものにつきましても、自動車だけのために使う道路ということになればお話の通りと思います。しかしながら道路投資の一部は、やはり社会的な必要によって投資が行なわれるという場合が相当あると思います。あるいはその国の治安維持とか、あるいは自動車輸送以外の理由で、社会的立場から道路に対して投資される。あるいは港湾にいたしましても、外国航路の関係とか、あるいは国内海運輸送以外の面からその港湾が利用されるという意味で投資されているものがある。でありますから鉄道以外の交通機関についての投資の利子なり、それに関連する費用の負担ですね、その負担は、交通運輸に関する限りにおいてはある程度負担をすべきである。これは国際商工会議所の去年の総会の答申にも、そういう意味の答申が出ております。各国とも大体その方針で行こうということに意見が一致しておるのであります。
  46. 勝澤芳雄

    勝澤委員 高橋さん、私はこういうことを聞いているのです。輸送の設備ですね、道路の場合においても、港の場合においても、飛行場の場合においても、これはみな個々の企業が負担をして道路なり港湾なり飛行場を作っているわけじゃないですね。国が作っているわけです。国鉄の場合は自分で用地を買って、自分で線路を敷いているわけです。これがみんな運賃原価の中で償却されている。こうした場合においては、たとえば名古屋−神戸間の名神国道が高速自動車国道ですよ。国が全部作ったのです、別に自動車会社が金を出したわけじゃないですから、(「ガソリン税を出している」と呼ぶ者あり)ガソリン税だってお客が払っているのです。ですからそこで問題になるのは、バスがキロニ円八十銭くらいで採算がとれるというのです。それが今度は国鉄が新幹線を作ると、今度の運賃は御承知のようにキロ二円七十五銭です。準急、急行料金を入れれば三円二十銭くらいになります。東海道新幹線、東京−大阪間夢の特急がかりにできたといたしましても、道路の方が二円八十銭くらい、国鉄の方は三円二十銭から三円五十銭になるであろう、こういう投資のあり方というものは間違いだ、これを運賃値上げでやるよりも公共投資にすべきだ、私はこう考えているわけです。しかしあなたのお話の中では、その点については抽象的で、何も言われていないので、輸送力増強しなければならぬから運賃値上げをしなければならぬ、こういうことしか言われていないので、その点をどういうふうにお考えになりますか。
  47. 高橋秀雄

    高橋公述人 道路については、道路の建設費はなるほど国でやっておるかもしれませんが、やはり建設費の利子というものはガソリン税その他で負担しなければならぬと思うのです。そうしてその運賃現実に幾らになるかということは、今計算しておりませんからわかりませんが、御説のように安いかあるいはもう少し高いかということはわかりません。しかし自動車の運送原価と鉄道の運送原価とを一般的に比べれば、自動車の運送原価は各国とも鉄道運賃の二倍ないし三倍くらいになっているのが現状であって、自動車の方は決して安くないと思います。ですから、今お話のようなことになるかどうか、私は数字を検討していないからここでお答えできません。しかし自動車についてガソリン税その他で道路建設費の一部の利子負担しておる、そういうふうに考えております。
  48. 勝澤芳雄

    勝澤委員 あまりあなたと討論しても仕方がありませんけれども、結局税金で負担するか、利用者が負担するかという問題になると思うのです。公平な利用者の負担ならわれわれはいいと思うのです。不公平な負担はいけない、こう言っているわけです。それが今の交通投資の例がそうなると思うのです。ガソリンの税金は自動車会社が出すわけではないのです。ですからその点は一つ考えをいただきたい。  次に、輸送力増強のために運賃値上げをしなければならない、こう言っている。輸送力増強で、今、たとえば一つの問題を取り上げてみますと、東京の国電が行き詰まっている、これは何に原因があるとあなたはお考えになっておりますか。
  49. 高橋秀雄

    高橋公述人 国鉄の電車が行き詰まっておるのは、やはり運賃が安いからだと思います。運賃がもう少し高ければもう少し調整できると思う。電車の輸送も、自動車の輸送も、輸送する方法は両方あるのです。それを一方的に輸送するということは、結局運賃が安いからだと思います。
  50. 勝澤芳雄

    勝澤委員 それは午前中の大橋さんと川野委員との御質疑をあなたはお聞きになったと思うのです。これは与野党を問わず、国鉄承知をしていることなんですが、たとえば東京の電車区間において、定期運賃が安い安いといっても、実際には黒字になっている。八十人の定員のところに五百人くらい入っているのだ、こういうことはあなたはおわかりになるだろうと思います。ですから、運賃が安いから投資がおくれているのではなくして、投資の仕方が間違っておるから問題になっているわけであります。その点おわかりにならないというのは私はどうも不思議でならないわけですけれども、結局あなたのお話の中で一番問題になるのは、輸送力増強をしなければならないから運賃値上げしなければならぬ。輸送力増強をする部面というものはたくさんある。その部面の投資がおくれているところに問題があるわけで、そのおくれている資金は一体どこにいっているかということは、これは先ほどから問題になっておりますけれども、昭和二十七年から五百億も採算のとれない路線に投資をしているわけです。年間三十六億という経常赤字になっているということは、これは小暮さんでしたか、先ほど公述されておりました。その通りなんです。ですから、その点を輸送力増強をしなければならぬから運賃値上げしなければならぬという甘い論理は、私はどうも感心しないと思うのです。論争しても仕方がありませんから、その辺で今度小暮さんの方にお聞きしたいのですが、数字的にだいぶ言われましたので、よほど御検討されていると思うのですが、やはり私は通勤輸送の困難というものは、運賃が安いから通勤輸送が困難になっているというようなことではないように思うのですけれども、同じ賛成の立場からどうでしょうか。
  51. 小暮光三

    小暮公述人 お答えします。端的に申し上げますれば、輸送需要に対して輸送設備が足りないから混雑しておる、こう申し上げておるわけであります。
  52. 勝澤芳雄

    勝澤委員 その原因はどこにあるのかということです。
  53. 小暮光三

    小暮公述人 輸送の設備をふやすことができなかった、そこに原因があると思います。
  54. 勝澤芳雄

    勝澤委員 輸送の設備をふやすことができなかった原因はどこにあるのですか。
  55. 小暮光三

    小暮公述人 それは国鉄経営全体通してみまして資金が不足しているからであります。個々のものをとって申し上げれば、使い方があっちに多かったとかこっちに少なかったとか問題はあると思いますけれども、全体を通してみれば、結局総ワクが足らなかった、こういうふうに私は見ております。
  56. 勝澤芳雄

    勝澤委員 あなたも国鉄経営の問題について指摘をされたわけですけれども、国鉄経営の中で足りなかった、こう言われているわけです。しかし国鉄経営の中に相当問題があるといいますかむだがあるといいますかあるいはこれはというようなものがある。あなたはそれは一体総額どれくらいだとお考えになっておりますか。
  57. 小暮光三

    小暮公述人 先ほど申し上げましたように、私は本日三点申し上げました。第一点は、公共負担が三十四年度の数字国鉄が計算したところでは約五百二十五億ある。これが全部むだとは申し上げませんけれども、この中には合理的に調整しなければならないものがある。これが第一点でございます。それから第二点には新線建設という負担がまるまるかかっておる。これは先ほどもお話が出ましたが、既設の開業線の中で年間の赤字額が三十六億円、それから三十五年度以降に建設を予定されているものに投資される予定額が千五百一億ですか、ある。これをかりに全部借入金によって年利七分でまかなうとすると、約百億くらい年間負担がふえるのではないか、こういうものをもう少し何とかすればそこに若干の資金源が出るはずだ。それからもう一つは、これは金額では示せませんけれども、経営合理化——今度の運賃改正で約二十億節約することになりました。それが無限にふえるとは私は思いませんけれども、まだ努力をすれば若干の余地があるであろう。それからそのほか資金の運用効率を高めるとかあるいは人件費人事管理という部面において合理的な措置を講すれば、幾らという金額は申し上げかねますけれども、ある程度のものが出てくるのではないか、こういうふうに考えております。
  58. 勝澤芳雄

    勝澤委員 そうすると、今度の運賃値上げはほんのわずか——何といいますか、これを調整すればほんのわずかで済むのではないか、こういう意見というのがあなたのお話の中から出てくるように思うのですが、私たちもそれを放任をした中で安易な運賃値上げというものはいけない、それをやはりもう少し徹底してその中で検討して運賃値上げというものはきめるべきだ、こういうふうに考えておりますが、大体意見は一緒ですね。
  59. 小暮光三

    小暮公述人 私も今申し上げましたようなものをできるだけ整理すべきであると思います。しかしこれを全部一度に整理するということは、現在案として出ておりまする運賃値上げに劣らないくらいのもっと強い影響が出るかもしれないと思います。そういうものは一度にやらないで、漸を追ってやる方針をお立てになったらいいのではないか。そしてできるだけ財政の許す範囲内において、しかも社会的あるいは経済的に強い影響を与えないように見合いながら直していく、こういうふうに考えておりますので、もしそれが強くできればある程度運賃改正の幅というものは縮める余地があるというふうにお答えします。
  60. 勝澤芳雄

    勝澤委員 もう一つ、先ほど古賀さんから炭鉱合理化の問題についてるる述べられました。これは私は大へん重大な問題だと思うのです。それでこれは高橋さんか小暮さんかどちらでもいいのですが、炭鉱合理化政策にこの運賃値上げというものは相反するものなんだ、一体どうしたらこの炭鉱合理化が進め得られ、この運賃の問題との調節がつくか、あるいはどうすべきかという意見をお尋ねしたいのです。
  61. 小暮光三

    小暮公述人 今度の貨物運賃の中でかなり問題があるだろうと思われますものの典型的なものは石炭の運賃だと私は思います。しかしながら運賃体系の面からいけば、それはそこででこぼこを作るべきでなしに、合理化の響く面は別途政府措置すべきものである、私はそういうように考えております。
  62. 川野芳滿

    ○川野委員長代理 加藤勘十君。
  63. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 私は小暮公述人一つ二つお伺いいたしたいと思います。それは勝澤君のただいまの質問にもお答えになりましたが、今度の国鉄運賃値上げについて考えられるべき点を三つお述べになっております。これはおそらくは国鉄運賃考える者は、朝であると野であると、あるいは政党政派のいかんを問わず、おそらく何人もが考える共通の点だと思います。  申すまでもなくその一つ公共負担の問題であり、二番目は新線建設負担の問題であり、三つ経営合理化の問題である、こういう点を御指摘になりまして、この点は私どもも当然そう考えるわけであります。そこでこの内容についてでありますが、第一の公共負担の問題については、お示しによれば三十四年度には五百二十五億の負担をしておる、こういう御説明でございます。それは国鉄当局の発表しておるものだから間違いないと思うのです。この内容につきましては、いろいろ公共性を持ったものがあげられております。この中のどれとどれと、また現在の率のどれとどれだけはどうしても現状を維持しなければならない。あるいは現状を是正し得るものがあるのかないのか。ないとすれば、どうすればこの負担国鉄に軽からしめることができるのか。こういうことが当然国鉄当局において考えられなければならないと思うのです。五百二十五億全部を一挙にどうこうということは事実上不可能でしょうけれども、この中の相当部分についてこれは考えられる。事実上社会政策的な立場からいっても、また野菜、魚類等、そういう経済政策的な点からいっても、これは現状維持しなければならないものがある。とすれば、それを全部国鉄負担させてよいかどうか。当然国が社会政策的な立場から負担をしなければならないのじゃないか。国鉄は一方においては、公共事業とはいいながら独立採算制を求められておる。その独立採算制を求められておる国鉄にこういう公共性を持ったもの全部の負担をかけるということは、あまりにも過酷な負担国鉄に背負わされることになるのじゃないか。このうちどれとどれとどの部分だけは国家負担をするということになって初めて、この部分においてはこれだけのものはどうしても国鉄負担しなければならぬからということが考えられるのであります。そういう点考えただけで、具体的に計数が何も計上されないし、予算の上には具体化されないところは、私は国鉄の当局者といえども、おそらく腹の中では不満だろうと思うのです。また世間のこの問題を論議する者にとっても、こんな不合理なことはないということが考えられるわけですが、この点についてどういうようにお考えになりますか。  ついでに三点だけ言ってしまいますが、二番目の新線建設負担赤字線というものについて、あなたは先ほど合理的な解決ということをおっしゃいました。あなたは国鉄当局者でございませんし、社会の良識者としての立場でお述べになったことでありますから、その立場についてお尋ねをするのでありますが、なるほど世間では政治路線とかなんとかいわれておりますが、たとい政治線にしても、その地方に鉄道が敷かれれば確かにその地域の開発にも役立つであろうし、長い将来から見れば、やはり国家の文化の程度を高めていく上に必要であろうと考えられます。私は赤字路線だから全部が全部悪いなどということは毛頭考えておりません。ただ、こういう建設費を、完全に独立採算制を保持していこうという国鉄に全部しょわしていいかどうか。先ほどのお答えの中にもございましたように、三十六年度の公共投融資は七千億からに上っておるわけです。この国家予算の中で鉄道については何らの投融資が行なわれていない。これも非常に不自然じゃないかと思うのです。同じ公共性を持ち、社会性を持った事業に対して、なぜ国鉄にだけ投融資が行なわれないのか。これも私は不思議の一つだと思うが、社会的な良識人としてのあなたの立場においては、どういうようにすればいいとお考えか。もちろん全部を国家負担するということはなかなか困難でしょう。国鉄の財産になるのですから、財産を取得することになるのですから、少なくとも経営に伴う赤字について、何年なら何年の間には補償をするとか、あるいは利子について補給をするとか、何らかの具体的な数字予算の上に計上されなければならないと思うのです。  それから第三番目の経営合理化、これも内容をこまかくいろいろ分類してお述べになりました。ここにお述べになったことは大体もっともだと思いますし、私はあす国鉄当局に対して、これらの点について具体的にお尋ねしようと思っておりますから、きょうはあなたに対しては、今のような立場においてお答えを願いたいと思ってお尋ねをするのであります。世間から見て国鉄はマンモス企業体であるだけに、何となくどこかにわからないところがある。また、現在はどうか知りませんが、過去においては国鉄経営についてはずいぶん暗い影を持っておったわけです。そういうものをくさいものにふたをするようにしてしまって、世間には知らせないようにしておいて、ただ輸送力増強をするためには経費が要る。また新線あるいは改良等に経費が要るから、結局これを利用する乗客もしくは貨物の利用者にどうしても負担をしてもらわなければならぬ、こういうことで運賃値上げが出てきたと思います。私は国鉄立場としては当然経営の実態を国民の前に明らかにして、その上でこれを求むべきであると思うのですが、いかがでしょうか。
  64. 小暮光三

    小暮公述人 第一点の公共負担をどういうふうに整理すべきかという問題でございますが、一々こまかい点まで申し上げる時間もございませんけれども、まず第一番目に私は定期運賃は少なくとも法定割引率程度までは戻すべきである、こういうふうに考えております。従いまして、今度の運賃改正の原案にあったようでございますが、定期運賃割引率は直すべきだと思う。ただ直した場合に、社会生活上、あるいはその他の面で障害が大きいほど、直すということは問題であります。またその程度まで直さなければならぬとするならば、暫定的にその幅だけは政府が補助すべきである。補助しながら逐次直していくべきものだと思うのであります。それからこの中に、自分の商売でございますが、新聞の輸送代というようなものがございます。これは腹の中は反対なんでございますが、一般論としてはやはりある程度直すのはやむを得ないのじゃないか。それから暫定割引、こういうものはできるだけ早く廃止すべきもので、むしろ今まで残っておりますのがおかしいと私は思っております。それからその他の割引の中には、こまかく言えば、これは総額で年額四億というのでございますから、金額としては大したことございませんけれども、当然政府負担すべき性質のものも入っておる、こいううふうに考えております。これを総括して申し上げれば、こういうものはある程度国鉄の独立採算制から見て適当という範囲にとどめて直すべきであるが、一ぺんに直せないならば、その期間中は政府で適当な方法でめんどうを見るべきである、こういうふうに考えております。  それから第二点の新線建設でございますが、この年々の赤字額その他をどういうふうに負担すべきかという御質問だったと思いますけれども、一つ方法としましてはこの建設費などを一部地元関係者で分担する、あるいは国家で投融資をする、こういうふうな要素を織り込んでやってしかるべきだと思います。それから第二点としましては、こういう考え方がもし許されるならば、国有鉄道法を改正しまして、新線建設に関する限りは、開拓鉄道的な要素を織り込んだらどうか。そして国鉄にある程度の客貨を培養するような措置をするだけの余地を与える、こういうのも私は一つ方法だと思います。それからそういうことでなしに、新線建設に対しまして三十六年度の予算に計上されましたようなああいう利子補給の範囲をもっと広げていく、少なくとも年間の赤字額の大部分に相当するくらいのものを補助する、こういう考え方もあると思います。そのうちのどれをどういうふうに数字的にきちっととったらいいかということは、ちょっとそこまでは検討しておりませんので申し上げかねますが、考え方の方向としては、そういう処置をとるべきだ、こういうふうに考えております。  第三点の経営合理化でございます。これはある程度お説の通りだと思います。ただわれわれ比較的国有鉄道というものを見ております者の立場から申し上げれば、かなり明るくなってきつつあることは事実であります。また経営のやり方をかなり変えつつあるということも事実でございますし、それから経営内容というものをわれわれしろうとが見る場合におきましても、御承知のようにここ数年来監査委員会から国鉄監査報告書という、大部なものが出ております。こういうものを見ればある程度国鉄の実態というものはわかるようになってきております。しかしながらそれで十分とは私は申しません。申しませんが、かなりよくなっていることは認めなければならぬ。そこで、しいてこの際それに関連して意見を申し上げれば、何といってもまだ国民に理解をしてもらうという努力が、国鉄当局には十分でないんじゃないか、そういうりっぱなものがありましても、これは専門外の一般の国民の方々がよくわかるようになるまでの努力がはたしてできているかどうか、この点の努力不足というようなこともあって、なかなか過去の暗い影がとれないということも事実だろうと思いますけれども、かなりよくなりつつあることだけは、私、申し上げることができると思います。
  65. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 そこで問題は最後の点、かなりよくなりつつあるというお話でありましたが、それは私ども認めます。たとえば国鉄と日通との関係とか、あるいは国鉄と弘済会の関係であるとか、幾らかずつは明るくなっていきつつあるであろうとはわれわれにも思われるわけです。だからそういう点は順次改善してもらうということでありまするが、ただ私は経営合理化ということが角をためて牛を殺してしまうような愚になってはいかぬというようなことも考えます。これは当然従業員の問題にも触れてくると思うのです。そういう点は十分注意したいと思いますが、それでなくて、今おっしゃったような第一、第二の問題が具体的に何にも予算の面に数字として現われていないんですね。それをそのままただ一片の議論のしっぱなし、考えのしっぱなしで、それとは別な運賃をさしあたり一番しやすいからやるという、今、勝澤君が言われたような安易な運賃値上げ方法というものは、私は国鉄としてもまた政府としてもとるべきではない、こう思うのです。この点についてはどうお考えですか。
  66. 小暮光三

    小暮公述人 私も大きな線としてはそういうふうに考えております。ただ今度の三十六年度の予算にはそれほどの数字が出ていないということは言えますけれども、先ほども申し上げましたように、それだから運賃改正をこの際見送ってもいいとは私は思わないのであります。なぜかならば、現在要求されている輸送力増強という要請はかなり強いものがございますので、経営合理化されなければされるまでほっておいていいという時間の余裕はない。従いまして運賃改正改正といたしまして、改正したからあとはそれでいいのだとは私は思わないのであります。つまり、午前中にも申し上げましたように、今度の運賃改正が適当であるかいなかということは、あげて今後の輸送力増強国鉄がどれだけの成績を上げていくか、またその成績を上げるような裏打ちをこれからどうして進めていくか、こういうことにかかってくると思いますので、しいて言えばそういう条件付でもって今度の運賃改正に賛成しなければならぬ、こういう考え方でございます。
  67. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 結論においては私とあなたとは意見が違うわけですが、そういう大衆負担、そうして下手をすればこれはいわゆる池田内閣の所得倍増論の計画そのものまでひびがいくような結果に陥るおそれも持っている、そういう危険な運賃値上げよりは、むしろ補正を組んだっていいのですから、予算は何もくぎづけになったものではないのだから、私は早々にこの法律案を一応撤回して、そうして補正予算ででも具体的なものを組み、なるほどこれまで政府国鉄も努力しておったということを——先ほど宣伝のことをおっしゃいましたけれども、宣伝は文書による宣伝よりも、具体的行為による宣伝が一番大きな宣伝力を持っていると思います。そういう点からいって、まず政府はそういう努力をすべきである、そうした後になおかつこれではこうこうであるからと国民が理解できれば、国民はそのときは文句は言わないだろうと思います。これは意見の相違でありますからやむを得ません。  それからもう一つお伺いしたいと思いますことは、先ほど、もし今度の運賃改定を行なって新五カ年計画が予定通りいかないで失敗をするということになると、今度の運賃値上げは失敗である、こういうことをおっしゃったのですが、そこで問題は、三十二年度の現在の五カ年計画立案のときの条件の、運賃国鉄の言う通り上げられないで不徹底なものになったから計画通り進まなかったという弁明を、国鉄に言わせればなさるかしれませんけれども、国鉄の発表しました数字によれば、また先ほどあなたがおっしゃいました数字によっても、これはおそらくこれに基づいておいでになるのではないかと思いますが、三十二年から三十五年までの四年間、三十五年度は断わり書きがしてありますように予算で、三十四年度までが実績なんですが、これによりますと、資金計画面においては六七%の成果を上げているわけです。それから施設その他さまざまな改良そういうものについては六〇%の成果しか上がっていないわけです。当然五カ年計画の四年ですから、計画の八〇%上げられるということが予定計画通りいく筋合いだと思うのです。国鉄当局は八〇%いくべきものがなぜ六〇%もしくは六十何%しか資金も使えなかったか、また施設その他の改良も行なえなかったということについて反省をして、そういう点で前のときにはこういうような欠陥があってこういうように失敗をしたのだ、そういうことを率直に国民の前に明らかにされることが、私はこの新五カ年計画に対する国民の信頼をつなぐゆえんだと思うのですけれども、そういうことをなされていないですね。それで現実には現在の五カ年計画は私は失敗だと思うのです。そうするとすでに三十二年の計画がなぜこういう失敗をしたかというと、私はおそらくは途中において物価の上昇等があって、あるいは資金の都合等によって計画通り進まなかったということになると思うのですが、今度の場合においてもはたして今日計画されたる資金においてまなかい得られるのかどうか、はたして、予定した資金というものが順調に計画通り進められるかどうか、こういうことに対して国鉄当局が、あなたは国鉄当局じゃないからそれは無理かもわかりけせんけれども、こういう点について社会人としてどういうようにお考えになっていらっしゃいますか。先ほどそういう言葉が出ましたからお尋ねしたいと思います。
  68. 小暮光三

    小暮公述人 お答えいたします。私は今度の運賃改正は新五カ年計画実行がうまくいかなければ失敗だというふうに裏から見るのでなしに、今後の運賃改正をする以上は国鉄当局あるいは監督官庁あげて、この計画を軌道に乗せるように裏打ちをしてもらわなければならない、そういう覚悟がないままに運賃改正をやることはまずい、こういうことでございます。最初に申し上げておきます。  それからこの計画がお説のように最初の第一次五カ年計画の成果というものはPRしてないわけでもないようでございますが、一応刷りものその他でもって、三十五年度末はこうなった、多分その中に理由としてあげておりましたものは三十三年の減収、それから人件費の増加、それから利子負担の増加、こういったようなものが予想外に大きかったので、資金が思うようにいかなかった、そんな理由をあげておると思います。過去のことは過去で、厳重にお説の通り反省すべきだと思います。反省すると同時に、三十六年度からスタートする以上は、この新五カ年計画目標に近く達成するという決意を固めていただきたいと思います。私は新五カ年計画をあまりこまかく知りませんけれども、数字だけ言いましてもなまやさしいものじゃございません。かなり大きなものです。今度の運賃改正をやりまして四百何十億という増収がありましても、これだけでこの計画が実行できるとは思いません。今申し上げましたような国鉄経営内容かなり筋を通して、そして資金源を養いながらこの計画に邁進していかなければ、とてもこれが実行できるとは思えないのであります。そういう意味では、繰り返して申し上げますが、国鉄当局並びに関係官庁あるいは国会方面がこれをバック・アップしてやる、こういうことが絶対の条件である。こういうふうに見ております。
  69. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 今度は古賀公述人にお尋ねしたいのですが、先ほどおっしゃいましたように、炭鉱鉱山等の石炭もしくは鉱石等の輸送について計画されておる通りの運賃引き上げられるということになると、事実上原鉱石の価格運賃価格とが同率を占めるようなことになって、経営が成り立っていかない。そうするとこれはそれらの企業がつぶれてしまう危険があるということでございましたが、これを避ける道はどうしたらばよいとお考えになりましょうか。
  70. 古賀定

    ○古賀公述人 先ほど午前中も公述の中で私は、特に炭鉱、それから金属鉱山、この二大産業について、今御質問のあった点について触れたわけです。  まず第一点、炭鉱の方から先に申し上げますと、合理化審議会が三十八年度までに千二百円の販売価格を下げろ、さらに能率を一四・五トンから二六・二トンに上げろ、そのために、現在の炭鉱労働者二十七万人を十三万人程度解雇しなければならぬ。これは至上命令としてわれわれ炭鉱労使の中に出しておる指導方針であります。従って、これに基づいて炭鉱経営者が企業合理化、つまり希望退職等の方法を講じて三十八年度までに千二百円を下げるという努力をしてきておる。ところがこの過程の中で、ただいま申し上げましたように総トン数にして三十億近い金額、トン当たり七十五円の運賃値上げになりますと、当然三十八年度まで千二百円という目標によって計画を進め合理化を進められておったものがさらに倍加しなければならないという事実が出てくるわけです。その場合、皆さんたちが御承知のように、多くの炭鉱労働者が完全就職をして生活を営んでおる条件の中にあるのかどうか。こういう国の政策もないままに、私ども労働者が失業のちまたにほうり出されるとしますならば、当然の抵抗というものが生まれてくるのです。それは昨年の三池闘争がいい事例を物語っておるわけです。私どものこういう抵抗があるために、合理化の達成というものは不可能ということになって、資本の貧弱な炭鉱というものはつぶれていかざるを得ない。これは言うまでもないと思います。  さらに金属鉱山におきましても、私申し上げたのですが、先ほど例示いたしましたように、硫化鉱、これを運搬して、六百キロのところで八三%の率の増加になってくる。現在、金属鉱山の中では合理化そのものが達成でき得る要素の中にあるのかどうなのか、人員にいたしましても、金属鉱山に稼働する人員は六万程度です。人員の縮小によってこのことが現在の生産を維持するというようなことは合理化の限度に達しておる。こういう立場考えますと、人員の縮小では合理化はできないし、さらにそのことを吸収する自由化、貿易の自由化に基づきまして他国との競争が、激化してくる。この中でコストを低減する方法というものがもう現在の状態の中で見出されないのではないか。こういう実態の中にあるわけです。従いまして、この運賃値上がりとしてのコストへのはね返りは、当然会社経営を苦衷に追い込んでいって、競争場裏から去っていかなければならない。   〔川野委員長代理退席、委員長着席〕 つまり私どもの表現で言う、閉休山のうき目になってくる。これまた全国金属鉱山労働組合が主張をいたしております資料の中からでも明らかなわけです。従って、今回の運賃値上げは、一地下産業である石炭、金属鉱山、この分野からとられましてもきわめて大きな社会問題に発展するような要素を内包しておるのだ、このことを私は特に強調しておきたいと思います。
  71. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 ただいまの古賀公述人のお話を聞きましても、また私どもが乏しい知識をもって検討いたしましたところによっても、一つ国鉄企業の問題から発生してくる大きな他産業に及ぼす影響、さらにそれから生まれる社会的不安、こういうことを単に運賃云々の問題ということよりは、もっと大きい立場、視野から見てこの問題は取り扱わなければならないのではないか。狭い、小さい意味の政治的のかけ引きという意味ではなくして、非常に大きな意味の政治的領野においてこの問題は扱われなければならないんでないか、こう思うわけであります。これは政府当局でございますから、何とも言うわけに参りませんが、私は明日こういう点については政府に向かって質問申し上げることとして、その点だけを申し上げて私の質問を終わります。
  72. 三池信

    三池委員長 内海清君。
  73. 内海清

    ○内海(清)委員 いろいろ御質問が出ましたが、私は主として米田公述人にお尋ね申し上げたいと思います。米田公述人日本船主協会の理事長でございますので、今日船会社が非常な経営の窮迫しておる時代、企業の経営ということにつきましてはいろいろ御苦労になっておると思うのであります。そこで一つ、あなたが先ほど公述になられました問題もありますが、その以前にお尋ねしてみたいと思いますことは、御承知のように今日国鉄運賃問題が出まして非常な議論になっておる。しかし私はその議論の根本になるものは、やはり国鉄がいわゆる公共企業体という一つの形や、この性格というものがはっきりしないから、いわゆる公共性というものと企業性、独立採算制というものの調整をどこでとるかという問題、これが根本的な問題じゃないかと思うのですが、あなたの企業経営の経験から御判断なさいまして、今日の国鉄ではこれはどの程度調整すべきものであるかということにつきまして一つ考えを伺いたいと思います。
  74. 米田富士雄

    ○米田公述人 今の国鉄が公共企業体としての経営をやっておるということにつきましては、私も現在のところその通りだと思います。ただ、先ほど、午前にも申し上げましたように、その公共企業体としてやる、それが運賃負担能力というものを考え運賃制度を持っていくという、こういう原則は、全部破れているとは申しませんけれども、だんだん破れてきているんではないか。たとえば先ほどからの石炭の問題なんかも出てきておるようですが、石炭の輸送状況を私の方から政府筋、企画庁その他の資料で見てみますと、大体国鉄で輸送しているのは、トンキロ当たりで約一三%、あと海運で輸送しているのが残り八七%、あるいはその中に多少自動車がある、こういうふうな形ができてきておるわけなんです。そこでこの国鉄運賃だけを、この際何か公共性を見てどうこうというふうなことをやってみても、その影響がかえってほかの産業の方へ、海運とかその他の交通機関の方へひどく響くようなことであっては、全体の輸送上の能率化ということからいえばむしろマイナスの方へいく危険があるのではないか、こんなふうに私は考えておりまして、公共企業体であるというこことには私も同感であります。けれども、現在国鉄が置かれている地位は、はなはだ中途半端な場所に置かれている。そこに国鉄経営の悩みがあるのではないか、そこでこれから脱皮していくためには、事情の許す限り早く独立採算制の方へ移行していくということがこれを解決する一つの道じゃないか、こういうふうに私は考えています。
  75. 内海清

    ○内海(清)委員 私の質問の意味が十分おわかりにならなかったかもしれませんが、今日国鉄においていろいろ公共負担の問題が、先ほど言われておるように、あるわけです。しかし、これは今日まで長い間の沿革的なものがありまして、もちろん一挙に解決できるものでもない。従って今日国鉄が一番経営で苦んでおるのは、この多くの公共負担があって、それが最も重圧になっていることであると思う。そこであなたにお尋ね申し上げたいことは、今日の国鉄としてはどの程度までいわゆる公共負担というものを排除していけば、国鉄経営は安定してくるのであろうか、こういう意味合いでございます。これはあなたの企業経営者としての立場から十分判断がつくと思いますが、そこら辺についてどうお考えになりますか。
  76. 米田富士雄

    ○米田公述人 非常にはっきり申し上げますれば、現在やっているたとえば赤字路線とかそれから新線の建設というようなものも、これは私は私企業であったらやめていくだろうと思う。そうしますれば、ここに四百億も何億もの金が浮いてくる、こういうふうに思います。ですから、その点では、もしこれを思い切ってそこへいければそういう形がいい。しかし今の国鉄が置かれている位置は、いわゆる公共企業体としての性格をまだ多分に持たされておりますので、思い切ってそこに行くことはできないという形があります。また私も、ほんとうの私企業として考える場合はそうでありますが、かりに新線建設というふうなものを一つとりましても、これは先ほども申し上げましたように、現在需要がないから赤字であるという形はわかりますが、しかし交通量というものは、設備を先に置くことによってそれに誘われて交通需要量が出てくるということ、この面も一つ考えなくちゃならない面であるかと思います。そこはちょうど公共企業体と結びつきまして、やはりある程度やむを得ないものが、現実の問題としては起こっている、こういうふうに思います。その点は私は、海運の場合とか、あるいは自動車の場合、私鉄の場合と多少違ったものがあるんじゃないかというふうに考えております。
  77. 内海清

    ○内海(清)委員 ただいまのお話で、もし私企業であればこれを切ってしまう——もちろんこれはだれしも考えていることだ。そうしなければ経営が成り立たぬ。ところが今日の公共性というものは、先ほど申し上げましたように、長い沿革があって、しかもこれはいわゆる国の政策的な面から強要されておるので、しからばこれは今切れと言うても、実際問題として切れぬわけです、国民生活と直結いたしておりますから。従って、それであるならば、もし公共負担が何らかの形で補われるならば、今日の運賃値上げは必要ない状態になるのであります。そこでしからば運賃値上げをしないでこれを救うとするならば、これをどの方面で負担すべきであるか、こういうことが議論になると思いますが、その点につきまして……。
  78. 米田富士雄

    ○米田公述人 私はその妥協点が、今日国鉄から出された運賃値上げという回答だろうと思います。片方でたとえば、非常に端的に申しまして、何か政府の方で補助金を出すというふうなことによって、ここでは採算的には合わないけれども、何とか運賃をこのままにしていきたいという形、いわゆる政策運賃的なものでいけるという考えも出ますが、しかし、けさほどからも申し上げましたように、だんだん公共性が薄らいできて、独立採算制の方にいくにはできるだけその方向に向かって努力しなくちゃならぬということであります。そこでそういう場合においては、まず政府のてこ入れということよりはみずからの手によってこれを解決していくというふうなことを考えるのが至当ではないか、それが今日の問題として出ておる、こういうふうに思います。  それからもう一つ、これは海運のことばかりに関連してどうも恐縮でありますが、そういう政策運賃が出ますということは、やはり海上へ流れることを押えるような形になります。そうして海運企業としての経営を非常にあぶなくしていく、そういうふうな影響面というものも、海運が先ほど申し上げたような相当大きな分量の輸送を担当しているということからして、ずいぶんその影響面についてもお考えいただくものが出るのではないか、こういうふうに私は考えます。少し余談になりますが、私が海運の擁護のために言っているというふうにおとりいただくと、実は私のほんとうの考えとは違うのでありまして、海運にしても自動車にしても鉄道にしても自由に競争させて、その結果滅びるものあるいは分野を縮小するものがあるならこれはやむを得ないものではないか。たとえば海運の場合についても私はそういうふうに考えております。ただ政府一つの力とかなんかによって、そういう方面がゆがめられるということは遺憾であるというつもりでおります。
  79. 内海清

    ○内海(清)委員 ただいまのお話によりますと、そういうものはあるがやはり今日の場合は運賃値上げが適当だというお考えなわけですね。この点はわれわれと大へん意見を異にしております。先ほど来話が出ておりますように、たとえば名神の自動車高速道路にしても、これらはいろいろガソリン税その他もございましょう。しかしその施設をやるのは、必ずその企業の借入金その他企業の負担において、自己資本においてやるということが原則なんです。しかもこういう仕事は非常に懐妊期間が長いのであります。そういう点から申しまして今度の国鉄五カ年計画も、これらの工事資金というものは当然そういうものでまかなわれて、そうしてこれができ上がって後にその増収によって回収していくというのが一般的な常識ではないかと思う。これは普通の企業においてはもちろんでありますが、国のやっていきます道路の建設にいたしましても、そういう形で行なわれておる。ここに一つの不合理がある。国鉄でもやはり同じようなスタートに立っていくときに、初めて他の運輸交通機関競争ができるのであって、初めから大きな負担をさせておいてこれを競争せいということは少し酷じゃないか。この点につきましては高橋公述人の、先般もある雑誌でそれに対する御意見などを拝見したのですが、あとから高橋公述人にもその点についてお聞きしたいと思います。
  80. 米田富士雄

    ○米田公述人 先ほどの御質問にもありましたが、今のお話、原価的に考えますと、そういうお考えが出るのはごもっともだと思います。しかし国鉄経営、海運の経営、それから自動車の経営というものは、おのおのその現実においてあるべき姿というものが、そういうふうな性格を持った姿で経営されておる、この点につきましては少し余談になりますが、先般アメリカでセントローレンス・シー・ウエーが開かれて五大湖が開通した場合に、シカゴから出る鉄道につきましては、やはり鉄道の人は同じようなことを言っておりました。片方は国費でセントローレンス・シー・ウエーをやる。自分らは自分の費用で鉄道というものを経営していかなければならぬ、そのロードというものはかなり広い、大きいものがあるだろうということを言っておりました。しかしそれならばそれに対しての経営のあり方を考え直さないのかということを聞きますと、やはりそれは鉄道のあり方はこういうあり方なんだというふうな回答でありました。私も大体鉄道というものはそういうものだと思う。そこでそれをどうしても国で補助してやらなくてはならないというところへすぐつながるものであるかどうかということについては、私は大きな疑問を持っております。
  81. 内海清

    ○内海(清)委員 ただいまのお話は、私たちと意見が違うわけでありますけれども、やはり今日国鉄はすでに独占性を失っておる。他の運輸交通機関とお互いに切磋琢磨していかなければならぬ立場にある。しからばそれは競争するだけの力、基盤を与えていかなければならぬということであります。この二点についてはあなたと意見を異にしておりますから、やむを得ないわけであります。  なおお尋ねしたいことがございますが、高橋公述人が非常にお急ぎだそうでございますので、ほかの方が高橋公述人に御質問があるようでありますので、そのあとでもう一度米田公述人にお尋ねいたしたいと思います。
  82. 三池信

    三池委員長 この際申し上げます。高橋公述人が所用があって間もなく退席いたされますので、集中して質疑をお願いしたいと思います。  久保三郎君。
  83. 久保三郎

    ○久保委員 ただいま内海委員からもお話が出ましたが、一つだけ高橋先生にお伺いしたいわけです。  先ほどの公述の中でお述べになりましたように、収入増にならないところは当然運賃値上げでもってまかなうべきだというような御所論でございました。たとえば老朽施設の取りかえ、あるいは通勤輸送の緩和というようなものは運賃でまかなうのが当然じゃないか、こういう御所論でありまして、そういう御所論もあるわけでありますが、ただここで申し上げたいのは、設備の改善増強というものが、御案内の通り、鉄道の場合は懐妊期間というか、そういうものが非常に長くなりますから、当然これがサービス提供するまでには相当の時日がかかるわけであります。その事実も考慮に入れて運賃値上げというのは素朴な感情でいってもこれは理屈に合わぬではないかという議論がございます。そうしますと、少なくとも百歩譲って両論を調節するという場合は、懐妊期間は当然借入金等でやっていく、そしてこれがサービス提供が実現しますれば、これに応じた、見合ったところの運賃をとるというならば、これは原価主義だと思うのです。もちろんこの懐妊期間中における金利も含めてそういう徹底した御所論ならば、そのときこそ大幅運賃値上げでとるというのが筋じゃないだろうか、こう思うのです。ところがそうでないようにお聞きしますが、この点はどうなんですか。
  84. 高橋秀雄

    高橋公述人 鉄道の輸送力増強のうちの現在のサービス改善に相当する部分の資本支出について運賃で解消するという点のお尋ねでありますが、これは一般の私企業でありますれば設備投資をしましてもその設備投資が一年とか二年で工事が終わって、それからあとはすぐ作業に入るわけであります。そうしてまたそれからあとはその設備投資というのは毎年続くものじゃないのです。ですからこれは資本支出として扱われて原価の基礎にはならないのでありますけれども、鉄道の場合にはそういう増強をしなければならぬ部分が非常に数多くあります。数多くある場合には、ある一部分の仕事が終わってもすぐその次の年、また他の地域増強をしなければならぬ。そうういふうにだんだんやっていかなければならぬというふうになりますれば、これはちょうど減価償却をする場合に、前の取りかえ勘定で取りかえ資金運賃に求めておったと同じように、やはり運賃の原価として扱うことが適当であるというふうに考えるわけです。と申しますのは、これはほかの国でもやっておる例でありますが、たとえば一九五九年のソビエトの営業収益係数は七三くらい。アメリカも大体七〇くらい。営業係数が七〇ということになれば、あとの三〇でもってそういう拡大の仕事をやっていけるわけです。国鉄の場合は営業係数が九九であるとか、一〇〇であるとか、ほとんどそういう余地がないということになると、こういういき方では、企業は拡大再生産ではなくて、縮小再生産になってしまう。世の中の進歩に応じて設備ができない。世の中の進歩に応じて設備をやっていくように経営ができる場合に、初めてそれが健全経営になるわけであって、それが社会の要求する、いわゆる公共性を負わされた企業のあり方ではないかと思うのであります。この増強のための資金が、一年か二年で終わるものならば、これはお話のように、原価に入れるべきものではないと思いますが、そういう個所が何カ所もあって、これは五年も十年も続けなければならぬということになれば、明らかに拡大再生産の資金として、ある程度運賃値上げによる。しかし増強する場合の資金は、幾ら多くても全部を運賃に入れるかというと、必ずしもそうはいかないのであって、それにもやはり限界があります。大体目安としては、現在持っている資産の公正報酬、ドイツの場合では六・五%認められておる。アメリカの場合は五%。その五%とか六・五%というような程度は、これは拡大再生産の資金として回収することが妥当であり、そうすることが、むしろ公共企業体として当然のあり方ではないか。たとえば英国の公共企業体の場合でも、やはりそういう近代化資金というものは、運賃原価の中に計上していいということを法律にはっきりきめております。私はそういう意味で申し上げたわけであります。
  85. 久保三郎

    ○久保委員 原価の中に含めるということは、学説として承ったわけでありますが、そこで現在の、海運を含めてでありますが、特に陸運の場合は、大体略奪的な傾向が強いわけですね。というのは、特に鉄道の場合は、長いこと官有の鉄道として運営してきた。この場合も当然資本投下が、先生がおっしゃるような形でなされるべきはずのものであった。たとえば、第一次世界大戦のあとの経済復興期において。ところが、そういうものはそこへ投資されずして、新線建設とか拡張計画の方にいった。それから第二次大戦後については、御案内の通りであります。そして二十四年に公共企業体に移行したときには、御案内の通り不良の資産を引き継いでいる。そういうことで、結局これは資本構成からいっても、御承知のように第二次五カ年計画の五年間の資金計画を、この間当委員会で発表になりましたが、大体一兆一千七百億くらいになるわけです。そのうちの六千億近くは借入金でまかなうという当局の説明です。結局、この借入金を今日も三千七百億くらい背負っております。この借入金を背負っておりますれば、利子負担ということで、先生がおっしゃるような近代化の方向まで、運賃からの収益を拡大再生産まで発展させるのは当然でありますが、これはできない、できない姿をそのままに、いわゆる過去のものをそのままにして、これからのものだけやろうといっても、これは非常に問題があろうかと私は考えております。これについて、いわゆる原価中心主義の運賃論ということではなくて、現実にそういう過去の遺産として、今日三千七百億背負っておる、これから約六千億の借金をしよう、こういう形なんです。そういう際に、はたしてこういうことでいいのだろうか、どうだろうか、こういう常識論として、われわれは疑問を持っておるのですが、いかがでしょう。
  86. 高橋秀雄

    高橋公述人 第一次大戦前後の場合には、営業係数が、先ほど申しましたように六〇ないし七〇でありまして、その残りの三〇の部分で、輸送力の設備の改良事業をやる。しかし新線建設の場合は、その当時も借入金でやっておった。第二次大戦後は、そういう資金運賃から出てこないので、やはり今回は、拡大再生産の資金というものも、一部運賃の中に入れるべきであるというので、今回出ている案の中では、借入金が半分、あとの半分は減価償却資金と、それから今度の運賃値上げの分とでカバーするというような、大体の大きな数字になっておるようでありますが、この程度のことは、過去の三千七百億の借金を背負っておっても、十分企業としてやっていかなければならぬと思うのであります。と申しますのは、大体減価償却の耐用年数も、どっちかといえば、日本の法制のもとにおいては、少し長くなり過ぎておると思うのであります。現に今ソビエトなんかも、耐用期間が長過ぎるというので、この技術革新の現状においては、耐用年数を短くすべきであるということがいわれておるわけであります。日本の場合には、その近代化ということを無視して、どっちかといえば、機械そのものの自然的な性能を基礎にした耐用期間のように大体なっております。しかし、新しい産業としての自動車が発達してくるとか、あるいは技術革新があるということになれば、この耐用期間自身も、もっと短くしなければならぬという問題があるわけであります。短くするということは、言いかえてみれば、減価償却がふくらむわけでありまして、それだけ運賃の基礎の原価が上がるということになる。それも現在の案の中では計上していないのでありますから、当然この程度は認むべきじゃないか。いわゆる健全経営をするときには、これは資本主義の国であっても社会主義の国であっても、当然この程度は認めて差しつかえないと思っております。
  87. 久保三郎

    ○久保委員 先生の御所論から参りますれば、いわゆる公共負担というものは否認されるわけでございましょうか。
  88. 高橋秀雄

    高橋公述人 公共負担というものは、これは企業としては、競争を前提とする場合には、なるべくなら負担しない方がいいと思うのであります。しかし、公共負担をなくすということは、先ほどほかの公述人からもお話がありましたように、一時にやることはなかなか厄介な問題がたくさんあると思います。その程度の問題、その他いろいろな問題がありますので、とりあえずは、やはり現在のような方法でいくべきであると思いますが、将来としては、この公共負担というものはだんだんなくしていく方向に持っていくべきだと思います。
  89. 久保三郎

    ○久保委員 そうしますと、さしあたりは公共負担を是認されるということでございましょうが、それでは、先ほどどなたかの公述にもありましたように、鉄道の運賃の中で、相互扶助的な性格はいかがかと思いますが、それはどう考えておりますか。
  90. 高橋秀雄

    高橋公述人 それは今御説明のように、企業内で相互に補給し合うという考え方は、やはり理論的にはよくないのだろうと思います。しかし、一ぺんにそれができないから、先ほども公述のときに申しましたように、運賃制度自体としては、将来は是正していくべきである。それを一度にやることができないから、なるべく回数を分けて漸次是正していく。外国の例を見ましても、公共負担を圧縮する方法は、数回の改正によって、あるいは負担力主義を原価主義に直す場合においても、数回の運賃改正を経て初めて直しておるわけでありまして、一度に直すこともできない。日本国鉄運賃についても、前回の改正において、等級の数が一つなり二つなり減らされておるのでありますが、そういうふうに、漸次減らしていくというような方法調整していくことが必要だと思います。
  91. 久保三郎

    ○久保委員 運賃の中で、相互扶助的な性格は、否認せられておりますが、旅客の原価計算と貨物の原価計算は、先生も御承知の通りであります。そこで、これは学問的でないかもしれませんが、貨物の原価と旅客の原価では、旅客の原価は九〇%ちょっとですね。貨物はさらに一〇〇%以上になっている。そこで両方でやって九九%、こうなる。原価主義を中心にする場合には、運賃体系としてはこの面に手をつけなければ、本質的なものではない、こういうふうにわれわれは考えますが、これはいかがでしょうか。
  92. 高橋秀雄

    高橋公述人 それはなるべくなら旅客貨物、おのおのがそれぞれ原価を負担すべきものでありますが、どこの国を見ましても、日本旅客負担さしておるのでありますけれども、外国ではむしろ貨物負担さしておるわけであります。それはその国の事情によってどの程度負担させるかということはきめられるのでありますが、独占時代にはそうであったけれども、だんだん競争時代になってきますと、競争程度の進化に伴って、おのおのがそれぞれの原価を負担すべきであるというふうに私は考えております。
  93. 久保三郎

    ○久保委員 外国の例と逆になっていることを先生はどう理解されておりますか。日本旅客がしょって、外国は貨物がしょっている、こういう事実をどういうふうに御理解になっておりますか。
  94. 高橋秀雄

    高橋公述人 それは先ほど申しましたように、その国の国情と、それから交通量の違いとか、あるいはその国の国民の持っている自動車の数とか、いわゆる所得の程度、いろいろな条件が前提になって、こういう差が出ておると思います。
  95. 久保三郎

    ○久保委員 貨物がしょっていることは、一般国民から見れば、はっきりしない。いわゆる物価の中に入っていますから。旅客がしょっている場合は明確ですね。このあいまいなものがたくさんかかっていて、はっきりしているものが安くいっている事実。その場合に、たとえば先ほどお話がありました通勤輸送の緩和とかいうものに対してやはり運賃値上げを是認されるというのは、どうも国民感情としても納得できないように思うのですが、いかがでしよう。
  96. 高橋秀雄

    高橋公述人 通勤だけを取り上げてお話でありますが、これはやはり沿革的に今までそうなっておるから、この際できるならば、やはり通勤についても、旅客関係としては、通勤の方は比較的原価をカバーしておらない。それは山手線においては、先ほどもお話がありましたように、カバーしておるでありましょうが、全体から見ればやはりカバーしておらないということになると思います。というのは、それはいなかの線でも、行ってみますと列車回数はごくわずかであるが、そのわずかな列車にわずかな区間だけ通勤着が乗るために、前後の区間は空車でその客車を走らせなければならない。あるいは朝は一方において込むが、反対側の客車はがらがらすいておるというふうに、利用効率が割合に低い。帰りの反対側の方は必ずしもそうではないというように、全体を通じて見るような現在運賃制度になっておりますので、特定の区間だけを対象にして考えるわけにはいかぬだろうと思います。で、この線を、先ほど申しました原価主義からいえばむしろ通勤を上げるべきだというような意見がありましたが、それは今度の改正案においては、通勤においても全体をフラットに、ほとんど平等な値上げということになっておりますが、一応それはやむを得ないとしましても、やはり今後適当な機会をとらえて、漸次少しずつでも原価主義の方向に近づくというふうに持っていくべきじゃないかと考えております。
  97. 久保三郎

    ○久保委員 運賃法には、先生御案内の通り四原則がございます。もちろん、最近の学説なり、ものの考え方の基礎としては原価中心主義である、こういうことがありますが、今日の日本国鉄運賃設定の原則は、公共性を持つということ、あるいは公正妥当なものであること、あるいは賃金、物価影響しない、産業の発展に寄与するというふうな四原則があるわけです。そうしますと、先生の御所見だと、大体原価中心主義であって、あまりこれは考慮の余地がない、こういうふうにお考えなんでありましょうか。この点を一つ。もう一つ、時間をお急ぎですから、あわせて申し上げますが、今度の旅客運賃値上げは大体一四・六%ということになっているわけですが、実体は、三百キロまでが一四・六%のアップで、従来二円四十銭のものを二円七十五銭に上げる。三百キロ以上は、これまで一円二十銭のものを一円三十五銭で、一二・五%のアップなんです。御案内の通り、三百キロ以内の旅客の層というのが大半である。こうなりますと、いわゆる一番もうかるところへ割をかけているということであって、賃金の負担の公平ということから、そういうこともどうかと思うし、あるいは原価計算からいって、今までの賃率が三百キロまでと三百キロ以上というような区分けの仕方が原価計画からいって正しいものという前提に立てば、今度の値上げの一四・六%に対して一二・五%の値上げは不公平だというふうに見るわけです。こういう点について御所見を承りたいと思います。
  98. 高橋秀雄

    高橋公述人 旅客運賃の距離による値上げ率の差につきまして御質問があったのでありますが、旅客運賃におきましても、長距離輸送の運賃の方が近距離輸送の運賃よりも原価的にはやはり安くなると思うのであります。従って、差があるということは、現在三百キロまでの賃率と三百キロ以上の賃率に差があると同じように、原価主義になるべく近づけるという意味ではむしろそういう方向がよいのではないかと思うのであります。  それからもう一つ運賃法に掲げられている四つの原則というのは、これはだいぶ議論のあるところでありますが、競争時代ということになればある程度それは修正されて、原価主義を最も強く表現しなければならないというふうに私は考えます。
  99. 久保三郎

    ○久保委員 もう一つお尋ねします。今度一等の運賃は早く言えば相対的に下がるわけですね。二等は御案内の通りです。従来通行税を含めないで一等は二等の倍、今度は含めて倍ということになっているわけです。そこで、たとえば特急に乗ります一等のお客と二等のお客では何を比較するかというと、一番手っとり早いのは車両の製作費ですね。一等車の製作費、二等車の製作費、これを定員で割ってみればわかると思うのです。大ざっぱに割って特急の一等車一人当たりの製作費は六十九万円くらいなんです。二等車の方は三十九万円、こういう比です。大体合っているかもしれませんが……。それにしても、その他に今度は一等車の場合にはサービスがつくわけです。洗たくもあるし、その他いろいろあります。そういうことになると、この一等、二等の場合というのは、一般の旅客運賃値上げに対してどうも感情的にも割り切れないという面があるのですが、これはどういうふうに理解したらよいでしょうか。
  100. 高橋秀雄

    高橋公述人 客車の製造価格その他等級別の原価ということにつきましては、これは私もまだそこまで調べておりませんのでお答えはいたしかねますが、ほかの国の例から見ればあまりに一等と二等の差が大き過ぎるというふうに考えるわけです。ほかの国では大体五割増しあるいは六割増し程度が上の等級と下の等級の差であります。
  101. 三池信

    三池委員長 西宮弘君。
  102. 西宮弘

    ○西宮委員 私個人のことを申し上げて大へん恐縮ですが、二、三お尋ね申し上げたいと思います。  先ほど公述をされました御意見、たくさんあるのでありますが、たとえばこれからは過当な値上げはしない、国鉄がむやみに値上げしますと自動車にとられてしまう、そういう面もあったりして過当な値上げをするだろうということはないので、まかしておいても大丈夫だというようなお話がありました。あるいはまた運賃値上げに伴いまして各種の便乗値上がりがある。しかしそういうものも適切なる措置を講ずればおそるに足りないというようなお話もありました。あるいはまた交通政策政府なり国会なりにおいてやればよろしいので、個々の運賃の決定は経営者にまかせるべきであるというような御意見等もいろいろあったのでありますが、こういう御意見もそれぞれに前提が整いさえすればまさに御意見の通りだと私も思いますけれども、ただ残念ながらこれらの点についてはいろいろ前提になる条件が違っておるのではないかというように考えるわけでございます。たとえば一番初めの、自由な競争にまかしても過当な値上がりになる心配はないというようなお話なども、これは全く私企業と同じ立場競争させるということでありますと、自由競争の中で値段がきまっていくのでありましょうから、放任して何ら差しつかえないと思うのでありますが、そうではなしに、現在国鉄にはいわゆるわれわれがしばしば論議いたしております公共負担の問題が数多くありますし、あるいはまた採算に合わない路線をやむを得ず国鉄としては維持経営することが余儀なくされておるというような事実があったり、そういう面にいろいろな問題があるわけであります。あるいはまた次の値上がりの問題、一般の便乗値上がりの問題にいたしましても、政府が適切なる措置をとればその心配がないのだというお話でありましたが、現在のところいわゆる適切なる措置が何らとられておらないと言わざるを得ないのであります。あるいは全般的な交通政策政府もしくは国会において立てるべきであるというようなお話でありますが、これまた残念ながら、あるいはその通りかもしれませんが、現実はこういう全般的な交通政策というものは何ら今日確立されておらない、今までこういう実情にあるわけであります。そういう点で私は、先ほどお述べになりましたような御意見を満足させるだけの前提が整っておらない、こういう現実に立ってものを考えていかなければならないと思うわけでありますが、そういう点で最後の運賃決定機構の問題をあと回しにいたしまして、前の点でありますが、すなわち公共負担の問題、それから物価の問題——公共負担の問題は今まで何回も繰り返されておりますから、お忙しいところ御迷惑をかけてもどうかと思いますし、私もちょっと違った角度からお尋ねをしたい点があるのでありますが、御遠慮を申します。物価の点はいかがでございましょうか。適切なる措置がとられるならば何も心配はないと申されますけれども、現状ではそうではないという事態においてそういう懸念がないかどうか。
  103. 高橋秀雄

    高橋公述人 物価の点は午前中公述いたしましたように、物価は単に鉄道の運賃が上がったなら上がっただけを現在の価格に加えて価格がきまるというような価格機構では現在ないのでありまして、現在価格機構にはかなり弾力がありまして、実際には上がったり下がったりいろいろな条件で需給関係から変わってきておるのでありまして、そのいろいろな要素が価格に現われてくる、その現われてきた結果が、たとえばそれを測定する一つ方法として物価指数というものができておるわけであります。その物価の指数を過去の例について見ますと、前回の三回の運賃値上げのときにはほとんど影響しておらない。従って今回の場合もほぼ同じような結果になりはしないか、あるいは便乗的に一時は上がるというものがありましても、各産業も各企業も自由競争でありますから、その現状では便乗値上がりは長く続かないというふうに考えるわけであります。ことに現在生産力倍増時代という時代には各種の産業とも現在の生産力を拡充しつつあるのでありまして、その広げるときには技術革新を採用しまして新しい技術を導入しておる。従って、原価はむしろ低減するわけです。原価は低減するから、運賃の十倍にも当たるような労賃をなお上げ得る余地があるわけであります。従って労賃を上げることができるほど余力があるのに、その十分の一、あるいは百分の一に相当する運賃が上がったから、すぐに物価にそんなに影響するということには考えられないのでありまして、もしそれがどうしても影響するならば、現在の所得倍増、あるいは生産力拡充計画そのものが間違っておると考えなければなりませんが、私はそう思わないのです。ですから物価に対しては、一時的に改正した当時は思惑その他から上がることはありましても、ロング・ランで見れば必ずしも上がっていかない。むしろ、ほかの要件として、下がる要素の方が多いのではないかというふうに考えられます。
  104. 西宮弘

    ○西宮委員 ただいまの御意見の中の、運賃の値上がりが諸物価をむしろ引き下げる要因として働くという点については、私どもなかなか簡単には承服できないのでございますが、しかしお話のように、確かに産業合理化等の中で、その運賃の値上がりも吸収されていくという面も、もちろんあると思います。ただ私が先ほどお尋ねいたしましたのは、いわゆる便乗値上がりの問題でありまして、そういう点について何ら懸念がないかどうかということをお尋ねいたしたのであります。  なおついでだからそれでは申し上げますと、たとえば国鉄運賃値上げをいたしますと、私鉄であるとか、あるいはバスであるとか、こういうものは当然に上がってくるとわれわれ予想するわけですが、単に想像して予想するというのではなしに、私は実は国鉄値上げをするのを待ちかまえておるという現実承知いたしておるわけであります。おそらく国鉄値上げしたということになれば、バス等の運賃値上げを押えるわけにはいかない。お前の方だけは上げるなということは言えない義理合いになると思うのでありますが、そういうことをどのように御判断になりますか。
  105. 高橋秀雄

    高橋公述人 バスあるいは私鉄の問題でありますが、私鉄の場合には国鉄運賃水準が必ずしも同じではなくて、私鉄の原価をカバーするように運賃がきめられておるわけでありまして、もしほんとうに私鉄の原価が高くつくものならば、それを押える手はないと思うのであります。しかし私鉄の場合には、他の副業的な産業と多角的経営をやっておりますから、必ずしもすぐ上げなければならぬかどうかということは、具体的企業について判断しなければ、判断はできないと思います。そうして、これは自由運賃でなくて、やはり認可運賃でありますから、その実情を監督官庁の方で判断されて、そうして処置されることと思います。バスについてもまた同様な考えがあると思います。原価を償わないような安い運賃私企業に強制するということは穏当でないと思います。
  106. 西宮弘

    ○西宮委員 私企業の場合は、あるいはそれで問題は解決をするかもしれませんけれども、国の場合と全く同じような公共事業体、いわゆる地方自治体のように、これは俗に都市交通と呼んでおりますけれども、都市交通を経営しておる地方の団体がたくさんあるわけであります。これらは今日全く同じような立場といいますか、国鉄運賃値上げをすれば、それに相呼応して運賃を上げたいということで、実は国鉄運賃値上がりを待ちかまえておるというような状況にあるわけです。こういう全く明々白々たる便乗値上げと申しますか、あるいはこれは国鉄運賃の値上がりがなくとも、やらざるを得ないような実情にあるかもしれませんけれども、それにしても国鉄がやらぬということになれば、これは無理をしても、おそらく値上げをしないでありましょうけれども、そういうものに最も有力な口実を与えていくことだけは避けることができないと考えるのでありますが、その辺はいかがでございましょうか。
  107. 高橋秀雄

    高橋公述人 それは、今お話の都市の経営する都電のような場合でありますれば、実際においてどういう程度になっておるかということは、私はまだ数字を見ていないのでわかりませんが、もしそれがどうしても上げなければならぬという状態にあって、それが許し得るような状態ならば、それはやはり上げなければならぬという問題が起こると思います。しかしそれは時期をすぐやるか、あるいは適当な時期まで待って、見通しをつけてやるというような措置がとられるか、それは当局の交通政策によってきめられる問題だと思います。
  108. 西宮弘

    ○西宮委員 先ほどの公述の際、一般の物価に対しまして便乗値上がりの心配はないというお話を伺ったのでありますが、今申し上げたような幾つかの事例をお話しをいたしますと、そういう場合があってもやむを得ないというお答えでありますから、これ以上お尋ねをいたしません。私は現にそういう事態が目の前に山積をしておる、あるいは刻々そういう問題が迫りつつあるということだけを指摘をして、この問題を打ち切りまして、次を伺いたいと思います。  次に第二の問題は、さっきもお尋ねのありました運賃決定機構の問題であります。先ほど公述人は、これはぜひとも国会等の審議を離れて、全く別個な立場で、いわゆる非政治的な立場で第三者が決定すべきだということを、非常に強く強調しておられたのでありますが、実は私は、先般この委員会におきましても運輸大臣あるいは国鉄の当局に対しましても、この点をるるお尋ねをいたしたのであります。その際国鉄としてはそうあることが望ましいという考え方のようでありますし、運輸省としてはそれは反対である、こういう御意見のようであります。これはおのずから立場の相違でやむを得ないと思いますが、これが純然たる私企業でありまして、自由自在に自己の採算だけで経営方針がきめられるというならば、あるいはお説の通りで差しつかえないのではないかと私は思います。現在は私鉄、私営バス等においても許可制になっておるわけですが、しかし何といいますか、ほんとうの自由競争のみにまかせるというものであれば、私企業の場合にはあるいは、それさえも撤廃しても、少なくとも理論的にはいいかもしれません。しかし鉄道の場合にはそれはできないのじゃないか。これは読んで字のごとく公共企業体でありまして、半分は公共性を持っておるのでありますから、その公共性とのからみ合いにおいて運賃をきめられる、運賃それ自体も公共性という立場から判断をしなければならぬ場合もたびたびあるわけでありまして、従ってこれを全部何といいますか、われわれの審議の手を離れて——むろん野放しという御意見ではないので、第三者の判断にまかせるというお話でありますが、今日この公共企業体であります国鉄に対しては、あるいは先ほど来問題になっております公共負担の問題であるとか、あるいは新線建設の問題であるとか、そういう政治的、政策的に要求せられる面が多々あるわけであります。そういうものが全然ない、そういう負担を全然負わさないならば、それでよろしいと思うのですが、そうじゃないということになれば、やはり政策的な判断を加えるということは当然に必要だと思うのですが、いかがでしょう。
  109. 高橋秀雄

    高橋公述人 運賃決定機構の問題でありますが、これは私企業の場合と同様に公共企業体の場合も自由にきめるというか、あるいは自由でなくても、少なくとも国会が選任した第三者に、客観的な立場から判断してもらうというような方法でいくことが望ましいということは、これは各国そういう方策をとっておるところでありまして、たとえば英国の場合は完全に公共企業体でありますが、その場合も運賃の決定は運輸審判所が決定する。運輸審判所は運輸大臣の任命した委員がその審判の任に当たる。しかもその審判所さえもことしの二月の英国の国会ではむしろ権限をもっと縮小すべきであるということになって、とにかく公共企業体であっても、その運賃の決定は、少なくとも客観的な立場に立つ第三者に判断させることがいいという意見もあるのです。それからまた、それより違った立場にある西独の鉄道のごときは、これは公共企業体でなくて国の経営であります。それでもなおかつやはり運賃審議会という形式のもとに判断をしてきめるのでありまして、国会はそれに対してタッチしておりません。またフランスの場合は国有鉄道株式会社という形になっておりまして、過半数は国が所有しておる株式会社でありますが、それもやはり国会では審議しておらない。もし国会でその運賃に対して、特に公共的立場からいろいろな要求をすれば、要求した程度に応じて公共負担について干渉するという程度でありまして、原則としてはやはり他の機関に運賃の原則をきめさせる、具体的な賃率もきめさせるという方向をとっております。従って国会はその根本的な考え方をどういう方向に持っていくかということを、十分に審議して決定していくわけであります。ですから公共企業体であるからどうしても国がきめなければならぬということには、必ずしもなっていないと思うのです。  それからまた、この問題に関連して一つ問題がありますのは、公共性という概念でありますが、公共性によるいろいろな制約を加える前提としては、その企業が独占企業であるということ、それから生活必需物資的な交通サービスを提供しておるということが条件になっておるのであります。それはそういう条件になっておるときに要求されるものであります。現在においてはそれが競争企業になっておるし、先ほどいろいろな公述人からもお話がありましたように、全数量の半分はすでに他の機関によって輸送されており、また道路もその交通の延長は鉄道の延長の十倍くらいに当たる、広い地域において他の運送機関がその輸送に当たっておるわけでありまして、他に輸送機関がたくさんあるにかかわらず、その一部分に対してのみ非常な干捗を加えるということは必ずしも適当でない、私はそういうように考えます。
  110. 西宮弘

    ○西宮委員 この点も御意見と、私の素朴な考え方でございますが、違うようでありますから、ただそれを繰り返してもいたし方ありませんので、この程度にいたします。ただ私が特にこの問題を申し上げる点は、ただいまお話のような外国の諸例、あるいはまた今日国鉄はすでに独占性を失ってしまったという事実については、私どもも若干勉強いたしておりますので、そういう点は十分承知の上で、ただいまのような意見を申し上げたわけでありますが、われわれが国会として運賃問題に関与していく、この審議に当たるというのには、私どもの心がまえと申しますか、あるいは取り組み方と申しますか、——またこの問題について答弁したり、その他に当たる国鉄当局もおのずからその考え方が違ってくる。国鉄当局がこういうところで答弁する筋合いではないのだ、全くばかばかしいのだという考え方でありますのと、そうでなしにあくまでもここで審議するのが当然なんだという考え方ではおのずから違ってくる、そういう大事な前提条件だと思うので、私はお尋ねしたわけでありますが、この程度にとどめます。  次に今回の運賃値上げについて、高橋公述人値上げしなければならぬ、あるいは値上げするのはむしろもう論議の余地がないのだというように、非常に結論を急いでおられるようでありますが、一、二お尋ねをいたしたいのは、今回の運賃値上げについて、これは今後の新しい拡充計画の財源を得るためだと言われますけれども、しかし前の五年計画、これがきわめて不徹底に終わっておる、あるいはこれに非常なそごを来たしておるということが、今日運賃値上げを余儀なくしているという大きな理由になっておると思うのですが、その点はどういうふうに御認識でございましょうか。
  111. 高橋秀雄

    高橋公述人 これは前の五カ年計画のときに、もう少し規模を広げておかれればあるいはよかったのではないかと考えるわけであります。なお今度の五カ年計画は、いわゆる日本経済の成長十年計画というものと見合って作られた一つ計画でありまして、少なくもこの程度はやっておかなければいかぬということは、先ほどほかの委員からもお話がありましたように、鉄道の投資はほかの投資に先行して行なわれなければいけないというような性格のものでありますから、できるだけ実際の交通事情に即して十分有効な投資をできるだけ早くやっていただくようにお願いしたいと私は考えるわけであります。
  112. 西宮弘

    ○西宮委員 次にお尋ねしたいのは、公述人運賃値上げをやむを得ないと言われておる内容は、今国鉄で作っておりますあの内容そのものを肯定されるわけでありますか。もっともこまかい点になるといろいろ御意見があるかもしれませんけれども、お尋ねをしたいのは、貨物旅客の問題でありますが、これはすでに前の委員がお尋ねいたしましたので申し上げません。  もう一つ私がお聞きをしたいのは、いわゆる遠距離の旅客と近距離の旅客との間に値上げの率が違っておるわけであります。御案内のように近距離が高くなっておるわけでありますが、この点はどういうようにお考えでございましょうか。
  113. 高橋秀雄

    高橋公述人 それは前回お答えしましたように、原価の差からそういう問題が出てくると思うのであります。
  114. 三池信

    三池委員長 西宮君に申し上げますが、高橋公述人は非常にお急ぎのようですから、簡潔にしかも重複しないようにお願いいたします。
  115. 西宮弘

    ○西宮委員 それでは、最後に一つだけお伺いいたします。公述人のお考え運賃値上げをすべきであるということで、これは財源の問題とは関係なくお考えなんでしょうか。たとえば財源がほかに何か得られるということがかりにあるとすれば運賃値上げは避けるべきであるという御意見なのか、あるいは米田公述人の御意見はそうでないようでありましたが、それと同様に、国鉄運賃値上げをすることによってたとえば自動車なりあるいは船なりとのバランスがとれる、これは財源の問題とは無関係に値上げをすべきであるという御意見でありますかどうか伺いたい。
  116. 高橋秀雄

    高橋公述人 財源の問題と全然無関係というわけでありませんが、他の機関との運賃のバランスということも考えなければなりませんし、また財源をほかから常に補給されながら経営するということは、経営者経営責任という面から見て、なるべく自主的に経営がやっていけるようにするには、ほかのものに依存しないで経営できるということが正しいと思います。
  117. 西宮弘

    ○西宮委員 どうもありがとうございました。
  118. 三池信

    三池委員長 高橋公述人には非常にお忙しいところ当委員会の審査に御協力いただきましたことを、委員会を代表して委員長より厚く御礼申し上げます。どうぞお引き取りを願います。  この際委員各位に申し上げます。各公述人ともそれぞれ所用を控えておられまして御出席になっておりますので、もうそろそろお帰りを願う時間になっておりますから、どうか質問は簡潔にお願いをいたします。  内海清君。
  119. 内海清

    ○内海(清)委員 米田公述人にお尋ねいたしたいと思います。  先ほどのお話で承りますと、結局私企業であるのだから公共負担は切り捨てるべきだ、ところがこれは今日の国鉄におきまする公共負担という問題は、常にあなたも御承知の通りの沿革を持ち、しかも政策的なものであって、これを切り捨てることはもちろんできないと思うのです。しからば今度の場合には、こういうふうな場合には運賃値上げでこの工事資金の一部をまかなうのが至当であるというお考えか。この考えはどうも私には少し納得いきにくいので、他に当然負担すべきものがあるならば、これは運賃値上げでやるということは少し飛躍し過ぎておるのではないか、こう思うのであります。もちろんあなたのお考えは、あるいは海運あるいは自動車の関係もございましょうけれども、先ほど申し上げましたように、少なくとも今日は独占時代を過ぎて、すでにこれらの他の交通機関競争せねばならぬという立場にある、そういう意味合いから私はやはり少し納得しがたいと思うのであります。その点についてもう一つ……。
  120. 米田富士雄

    ○米田公述人 もしこれが私企業であれば当然やめるべきであるという原則は確かにあります。しかしながら一体全部がさっぱりやめられるものであるかどうかという現実の問題、それからことに国鉄の性格の問題等から考えますと、これはそう簡単にもやめられないというふうな面が出てくると思います。そこで、それじゃその部分だけを他の何か援助といいますかそういうものでやってみたらばどうだろうかということになるかと思いますが、私はそこが現実の何か妥協された面ではないだろうか、理論的に割り切れないものがそこにあるという形で、そういうものも含めながら今回の値上げという形が出てきたのじゃないだろうか、こういうふうに一応解釈しております。ですから最初申し上げましたように、この値上げについては双手をあげて賛成するという形のものではないかもしれない、やむを得ない値上げ方法だろう、こういうことを最初私が申し上げたのはそういう気持であったわけです。と同時に、私の気持から申しますと、何かはかからの補給を受けるというやり方はできるだけ避けるべきであるという考え方であります。
  121. 内海清

    ○内海(清)委員 あなたと私の意見はやはり並行するようでありますが、私どもは今日の国鉄経営を立て直し、今度の五カ年計画をやるのにつきましては、最初に申し上げましたような国鉄の今日の性格というものが最もガンをなしておる。でありますから、これが根本的に解明されなければなりません。しかしこの状態というものは、長い間の歴史を持ってやってきております。しかも国民生活と直結しております問題であります。これをただ単に運賃値上げというようなきわめて安易な方法でやるならば簡単であります。ところが今日非常な議論があるのは、これは国民感情から申しましても、あるいは今日まで国鉄がこの公共負担経営の面から悩みつつも政策的に押しつけられたという面から考えますならば、やはりこれに対しましては、私どもは今日値上げをしなくても、公共負担の問題あるいはこの国鉄に対する政府の救いの手がある程度差し伸べられますならば解決する問題である、かように私どもは思うのであります。かような意味におきまして私どもは、これは政府の出資によるかないしは借入金等によりますとかあるいは産投によりますとか、他の適当な方法があるべきである、かように考えておりますから、その点を重ねてお尋ねしたわけでありますけれども、これは意見が違うようでございますので、それでおきます。  次にお尋ね申し上げたいのは、先ほど公述されました中に、今回の運賃値上げはいわゆる国鉄運賃制度調査会で三十二年以来二年間もいろいろ会合し、検討したものであるから、これで運賃値上げをやるのはやむを得ぬだろうというふうなお話があったと思うのでございます。ところがこの調査会の答申を見ましても、やはり公共性の問題につきましては、先ほど来私が申しましたような解釈をいたしておる。従って今これが直ちに解決しなければ、当然これは国家の補償によってまかなうべきものではないかという意見の答申もあったわけであります。先ほど来のお話ではこの点には触れられなかったと思いますが、これに対しますあなたの御所見を伺いたい。
  122. 米田富士雄

    ○米田公述人 端的に申しまして、実は調査会にも、私、委員として出ておったのでありまして、二年間いろいろと勉強させてもらったわけです。あのときにはお説の通り公共体という形を思い切って踏み切るところまでいかない、なかなかいけないというふうなことからして、そういうお説のような内容のものがあったと思います。ここにやはり国鉄の性格の非常にぼやけた面が依然として残っておったと思う。ところが今度の運賃値上げのやり方を見ますと、あのときの原則に立ちながら、なおそういうものをある程度清算してこういう形にいったということは、やはりあのときの精神を貫こうという考えの上に立っているものと思いまして、私はむしろ今回のやり方の方が、あのときのものを基礎としてさらに前進したものであると考えて賛成したわけであります。
  123. 内海清

    ○内海(清)委員 直接調査会に出ておられまして、細部のこともよく御存じのことでありましょうから、さようでありましょうが、私どもといたしましては、そういう調査会が前の答申と幾分ズレがあるようなお考えを今回お持ちになったということはもちろん存じません。これは何も発表された機関はないと思うのであります。従いまして、この国鉄の調査会でせっかくああいうふうな答申が行なわれており、必ずやその線が調査会としての最も妥当な意見であった、かように解釈いたしておるわけであります。それが今回変わりましたのはどういう理由があるかわかりませんが、今お話しのようにその後の情勢の変化と言ってしまえばそれだけのことでありますけれども、この点は私どもとしても十分納得いきにくいことでありますが、調査会の内部でそういう意見に変わったということになれば、調査会の答申はこれは無視されておることであります。そういうようなことでありますので、この点は一応そういうふうに承っておきたいと思います。  以上で終わります。
  124. 三池信

    三池委員長 公述人皆様に一言申し上げます。本日は御多用中のところ御出席いただき、長時間にわたってきわめて貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。(拍手)  公聴会はこれにて終了いたします。   午後四時十四分散会