○今井(榮)
政府委員 私から昨晩の日航機の国際空港における事故につきまして概要を御報告申し上げたいと存じます。
昨晩、滑走路上において事故を起こしました日航機は、JA八〇〇三というDC八型の大型ジェット機でございまして、新聞にも出ておりましたように最近入手いたしましたもので、名前は「箱根」号という名称になっております。この飛行機はサンフランシスコからホノルルを経由いたしましてウエーキ島を経て
東京国際空港に昨晩の九時三十分着の予定のものでございます。これが二時間ばかリディレードいたしまして、現実に羽田に着陸いたしましたのは十一時二十九分でございます。
事故を起こしました場所は、今主として使っております通常Aランと称しておりますが、A滑走路の北端でございまして、つまり海側から着陸いたしまして滑走したままで滑走路の北端の、ちょうど現在延長のために埋め立てをやっております排水溝に機首を突っ込んだような形で事故を起こしておるわけでございます。乗務員は機長が古谷野等と言いまして日航における搭乗時間は約八千時間飛んでおりまして、相当のベテランのパイロットでございます。ただしこの大型ジェットの操縦を始めてからはそれほど長時間はたっておらない。しかしまありっぱなキャプテンとしての資格を備えた操縦士でございます。コー・パイは大形貢と言いまして、これが搭乗しておったわけであります。乗務員は全部合わせまして十三名乗っておりまして、これはコックピット・クルーといいますか、これは操縦席の方におりますクルーとそれからキャビン・クルー、そのほかの乗務員というものを合わせまして全部で十三名でございます。客はほとんど満載でございまして、百九名乗っておったわけでございます。
損害の
状況は、結局滑走路上で飛行機がとまることができず、滑走路をオーバーいたしまして、先ほど申し上げたような埋め立て区域の前面にある排水路に機首を突っ込んだような形になっておりますが、その損害の概況を申し上げますと、一番先についております操縦席、ノーズ・セクターと申しておりますが、つまり鼻の部分でございますが、ノーズ・セクターが前面に傾斜して前の方、上部の取り付けておる部分の接着部分が切断されております。前に突っ込んでおる、ちょうど頭をくじかれたような形で、前に折れておるわけでございます。それからエンジンにつぎまして、左右の内側のエンジンが二個損傷いたしております。それからもう
一つ右側の横の外側の方のエンジンがさらに一個、下面が地面をすって損傷をいたしております。従いまして、操縦席が破損いたしましたのと、それからエンジンが四個のうち三個が損傷を起こしております。それ以外に右の方の内側のタイヤが一個パンクいたしております。これは排水溝その他に激突したときにパンクしたのじゃないかと思われます。そういう状態でございます。
幸いに人命には損傷が全然ございませんでした。これは乗務員につきましても乗客につきましても損傷は全然ないというのが、現状の
調査の結果でございます。
そこで私
ども今実は原因をいろいろ探求いたしておるのでございますが、まだ何分にも事故後数時間しか
経過しない現状でございますので、事故の原因等についてはまだ明確にいたしておりません。いろいろ新聞等も書いておりますので、事故の原因と思われるような事項はどういうことであるかという点についても、実はけさ
会議をやって参ったのであります。現揚には早くから職員を派遣いたしまして、職員がちょうどけさがた帰って参りまして、さっそく
会議を開いたわけでございます。飛行機が着陸いたしまして停止するまでに使用されるブレーキの系統がございます。これは通常のブレーキは油圧をもって車輪をとめる、いわゆる通常のブレーキでございます。それ以外にジェットのプラストを前の方に噴射させる、つまり逆噴射装置、普通リバースと申しておりますが、逆噴射装置によって前進をとめる装置を持っておるわけでございます。それからもう
一つは、エマージェンシー・エア・ブレーキと申しますか、非常ブレーキがもう
一つついております。ブレーキの系統としては、通常使われるブレーキと、それから逆噴射装置、それからもう
一つはエマージェンシー・エア・ブレーキこの三つのブレーキを使っておるわけでございます。はたしてこの三つのブレーキが十分に効果的に機能したかどうかという点が
一つの問題ではないかと
考えます。それからもう
一つは、操縦士は通常のポイントで接地した、こう言っておる。つまり南側の滑走路の先端において、通常着陸すべき地点において着陸したかどうか、つまり接地ポイントが正しかったかどうか、非常にまん中の方で接地いたしますと、当然先へ距離を要するわけであります。接地ポイントがはたして正しかったかどうか。それからもう
一つは、接地するときの速度はどうであったか、こういうふうな点が問題になるのではないかというふうに存じます。こういった点について今後詳細な
調査を行なわなければならない。
新聞等にいわれておりますが、実は滑走路が羽田は短過ぎる。従ってああいうふうな大型のジェット機については、滑走する距離が短いためにああいうふうな事故が起こったのではないかというふうなことも一部新聞で書いておるようでございますが、この点につきましては、現在羽田の滑走路は御承知のように八千九百フィート、メートルに直しますと二千七百メートルございまして、その二千七百メートルの滑走路に合うような重量を許容するというような建前をとっておるわけでございます。今着陸重量として許容されておる最大の重量は
幾らかと申しますと、十九万九千五百ポンド、つまりジエットが着陸します場合の重さの最大の限度は十九万九千五百ポンド、これ以上の重量であってはならないということになっておるわけでございます。昨晩のジェットの実際の重量は十九万九千ポンドでございまして、五百ポンドのまだ許容重量に余裕があるという状態でございます。従いまして、そういった面からは大体基準の範囲内で重量はおさまっておる。
それから、接地いたしましてからどのくらいの滑走路の長さが必要であるかという点につきましては、
計算上四千フィートあれば足りる、こういうことでございます。従いまして滑走路の長さは八千九百フィート現在あるわけでございます。従って着陸する場合四千フィートあれば足りる、そういう
規定でございますので、従ってその面から滑走路が短過ぎるということはないわけでございます。これはむしろ余談でございますが、離陸する場合の方が滑走路は長さを必要とするのでございます。現在羽田の
状況でいいますと、この八千九百フィートの滑走路の長さに対しまして、飛行機の両翼のフラップといいますか、このフラップの傾斜角度を二十五度というふうにしまして、それからいわゆる標準温度、気温が十六度Cの場合に二十九万五千ポンドという
計算になっております。従いまして、燃料を満載いたしましてかりに二十九万五千ポンドめ飛行機が離陸いたします場合には、八千九百フィート、フルに滑走路を使うということでございますが、着陸する場合には燃料はもうほとんどないわけでございます。従って着陸する場合の
所要滑走踏の長さというものは四千フィートで足りるということでございます。これは
規定はむしろある
程度のマージンをもって
規定してございますので、こういった面でぎりぎりに
規定しておるということはございませんので、この面からの滑走路の長さの問題は今度の事故については必ずしも問題はない。
それからもう
一つは、雨で滑走路がぬれておった、そのためにスリップしたのだということでございますが、この点につきましても、従来も雨が降っておるときも707にしましても、D C8にしましても、もう毎日何機となく着陸いたしております。従ってさっきの着陸に必要な滑走路の長さにすれば、多少スリップしましても、十分とまり得るのではないかというふうな感じがいたすのであります。従って、滑走路の長さの問題、それから雨による滑走路のすべり、スリップという問題は
決定的な要因ではないのではないかという感じが実はいたすのでございます。従って、先ほど申し上げましたように、今後重点的に原因として
調査すべき問題は、ブレーキ系統が十分機能しておったかどうか、それからまた操縦士の接地ポイントがはたして妥当であったかどうか、それからまた接地速度がはたしてそれほど早過ぎないで、いわゆる
規定以内の接地速度で着陸したか、こういうふうな点を重点を置いて調べたいと思いますが、なおこれ以外にいろいろな原因があるいは出てくるかもわかりませんけれ
ども、現在のところではさしあたってそういうふうな
程度の結論が一応得られたというような
状況であります。