○鈴木(仙)
委員 重ねて申しますが、マスコミの無責任な物の言い方に対して、
運輸省が何
一つ弁解もせず、間違った考えが押し通るようになっている問題の
一つに、
国鉄の
赤字新線問題があると思います。
赤字心々というが、
赤字線の乗客が幹線へ流れ込む量が多いからこそ幹線の黒字採算が見られるのであって、商人が本店のほかに多くの支店、分店を
経営して、全体の採算が黒字なら、支店の中の若干が
赤字になっても、これを吸収していくのは、多角
経営では当然のことと思います。現に多くの私鉄は、
鉄道部門が
赤字でも、バスや観光
事業で黒字をかせいでいく
勘定になっているし、学校の
経営でも、理工科系は
赤字だが、法文科系で夜学生などを多量に入れて黒字をかせぐのが、学校
経営の常道であると思いますが、
国鉄が今回の
運賃引き上げの
理由として、
国鉄輸送力の貧困が
経済成長を妨げると公表している。これはみずから
輸送力の貧弱なことを認めているのではないでしょうか。これは私が
昭和二十八年夏の第十六国会にはっきり指摘したことであって、日本の国力の成長
発展の前に
国鉄輸送力がこんなに貧弱では、やがておそるべき行き詰まりが近い将来必ず起こると予言をしたにもかかわらず、どうも当時の
国鉄の幹部の皆さんは、私の言ったことをもう一笑に付して、せせら笑っていたように思います。今日、八年たって、初めてようやく御自分自身で
輸送力が貧弱であるということを言い出したのではないかと思います。正しいことを認めさせるのに、国会において八年の歳月をけみしたものであります。その間無責任なマスコミは何を言っていたか。もはや
鉄道は斜陽産業である、これからは自動車飛行機の時代であると言っているではありませんか。このマスコミの無責任な言葉というものはいろいろな障害を起こすもので、はなはだどうも、枝葉末節のことかもしれませんが、私はかつて京浜、山手線電車の分離運転を主唱したことがございます。当然運輸
委員の一人としてこれを主唱し、さらに三十年の選挙の街頭や演説会に、
輸送力の
増強という
建前から、貧弱な知識ですが、この京浜、山手線分離運転問題を取り上げて演説をしていた。ところが三十年の二月の選挙、しかも投票日を前にして——一週間ぐらい前だ。東京新聞が、選挙のまつ最中に、二月の十五日の社説の中で、「橋をかけるとか
補助金をとってやるなどと、選挙区の
利益で投票を釣るものがある。東京にも山手線と京浜線の分離などをうたう輩がある。国
会議員は
国民全体の
利益代表であって、一選挙民の御用ききではない。こういう手合は国費の濫費や汚職に縁が深い」こういうふうなことを大見出しでもって私は書かれたことがございます。選挙はもちろん落選いたしました。いろいろ申しますけれども、それは決して
国鉄やなんかの暗躍とは考えておりません。私みたいな貧弱な人間に対して——しかし私に対する批判は手きびしいものでございまして、これは間違いなく落選はいたしましたが、直ちに私はこれを告発いたしました。ところが東京新聞から出てきた人は、今はもう済んだことですからお名前を申し上げることは差し控えますが、現在でもそうそうたる政治評論家であり、しかも一言半句も、私の京浜、山手電車分離運転に対するお答えがございませんでした。そうしてまあ謝罪をせられたという事実がございますけれども、一貧弱な私にいたしましても、日本の輸送能力というものを考えて、もう貧しい知識ながらそうしたことをやったことは、かえって逆になり、また
鉄道会館問題等もございましたでしょうが、いろいろ聞くとどうも実は情けない思いがするのでございますけれども、恐るべき筆先の暴力とでも申しましょうか、ただマスコミの無責任なことをそのままにしておいてはいけないということを、この際申し上げておきたいと思います。こういういい加減なものの言い方とはっきりと戦わないから八年間の間
国鉄輸送力の
増強はすっかり足踏みをしてしまって、今ごろ
所得倍増計画を
政府から出され、そうしてろうばいをして斜陽産業意識から脱し、自分自身で
輸送力の貧困などと言い始め、どろなわ式に
車両をふやそうというのはいかにも無定見なような気がいたします。
昭和二十八年の第十六国会で私もさんざんな目にあいましたが、その間、
国鉄よ目をさまして下さいなんてなまいきなことを申し上げましたが、
国鉄の八年間の足踏みを私は実に残念に思うのであります。今や
国民は一歩自宅を出れば
国鉄の残酷なぎゅうぎゅう詰め輸送に苦しめられ、それこそほんとうにドイツ軍のアウシュヴィッツやトレプリンカの人間焼却炉に送られた人たちの貨車輸送のようなありさまで、日夜塗炭の苦しみにあえいでいる
現状でございます。中央線の混雑のために話がどうも少し大きくなるかもしれませんけれども、毎朝オーバーのボタンが千個も二千個も、靴が百足も二百足も、カバンが十個も二十個も落ちていて、新宿駅には医師、看護婦が出動しているというような暴状を日本ほどの高度の工業国家がどうすることもできないというのはまことに残念な次第であると思います。これというのもマスコミのいわゆる商売主義に対し何
一つ戦わないからであると思いますが、これから飛躍的に
増強をする産業が何のゆえに斜陽産業といわれているのか、また座席定員輸送を命じた
鉄道営業法第二十六条の定めこそ、これによって
国鉄、私鉄をぴしっと引き締めて監督すべきではないかと思います。
岡本鉄監局長、広瀬
国鉄部長の監督行政に関しての御決心を重ねてお尋ねをしておきたいと思います。