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1960-12-15 第37回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年十二月十五日(木曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 船田  中君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 重政 誠之君 理事 野田 卯一君    理事 保科善四郎君 理事 井手 以誠君    理事 田中織之進君 理事 横路 節雄君       相川 勝六君    赤澤 正道君       井出一太郎君    稻葉  修君       臼井 莊一君    小川 半次君       上林山榮吉君    菅野和太郎君       北澤 直吉君    倉石 忠雄君       櫻内 義雄君    園田  直君       田中伊三次君    床次 徳二君       中曽根康弘君    中野 四郎君       羽田武嗣郎君    橋本 龍伍君       前田 正男君    松浦周太郎君       松野 頼三君    三浦 一雄君       山崎  巖君    有馬 輝武君       淡谷 悠藏君    岡  良一君       川俣 清音君    木原津與志君       北山 愛郎君    小松  幹君       河野  密君    島上善五郎君       楯 兼次郎君    辻原 弘市君       堂森 芳夫君    野原  覺君       受田 新吉君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 植木庚子郎君         外 務 大 臣 小坂善太郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         厚 生 大 臣 古井 喜實君         農 林 大 臣 周東 英雄君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         運 輸 大 臣 木暮武太夫君         郵 政 大 臣 小金 義照君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 中村 梅吉君         自 治 大 臣 安井  謙君         国 務 大 臣 小澤佐重喜君         国 務 大 臣 西村 直己君         国 務 大 臣 迫水 久常君         国 務 大 臣 池田正之輔君  出席政府委員         内閣官房長官  大平 正芳君         法制局長官   林  修三君         人事院総裁   淺井  清君         総理府総務長官 藤枝 泉介君         調達庁長官   丸山  佶君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君         食糧庁長官   須賀 賢二君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ――――――――――――― 十二月十五日  委員早川崇君及び有馬輝武君辞任につき、その  補欠として菅太郎君及び島上善五郎君が議長の  指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和三十五年度一般会計予算補正(第1号)  昭和三十五年度特別会計予算補正(特第1号)      ――――◇―――――
  2. 船田中

    船田委員長 これより会議を開きます。  昭和三十五年度一般会計予算補正(第1号)、同じく特別会計予算補正(特第1号)、以上両案を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。北山愛郎君。
  3. 北山愛郎

    北山委員 私は補正予算に関連をして、主として経済問題を中心お尋ねをしたいと思うでありますが、その前にこの前の総選挙につきまして二、三お尋ねをいたします。  この選挙については、これが戦後最大の物量選挙であった、金の選挙であったという点につきましては、すでに定評のあるところであります。また池田総理もその点は必ずしも否定をされておりません。所信表明におきましても、国民の過般の総選挙に対する批判というものを認めておられるのであります。しかし国会の今までの質疑を通じて、また昨日の政府措置を見ましても、今度の総選挙にかんがみて選挙公明化をはかると言いながら、公明選挙国民運動をやる、国民協力を求める、あるいは公職選挙法改正をやる、こういうような方針をきめているのでありますが、私は納得がいかないのであります。今の選挙法におきましても、必ずしも金のかかる選挙ではなく、金をかけないでもやれる。何百万も何千万円も金をかけなければならないような選挙法ではないのであります。それを選挙法改正に問題を移してしまうということは、これは言うならば、極端な表現をするならば、どろぼうが刑法の罰則をきびしくすることによらなければどろぼうがやめられない、こういうことと同じだと思うのであります。私はこの点について池田総理大臣所信をお伺いしたいと思いますが、一体国民に何の協力を求めるのか。国民協力を求める前に、政党としてあるいは政党総裁としてその前に考えなければならぬ、措置をしなければならない問題があるだろうと思うのであります。この前の総選挙の際に、自民党では財界に十億円の選挙資金を要求したといわれております。実際は八億にこれが削られた。十億円としますと、四百人の候補者で一人当たりが二百五十万円、与党は初めから法定費用の中で選挙をやろうと思っておらない。こういうところに私は問題があるだろうと思うのであります。そこで私は国民公明選挙についての協力を求める前に、選挙を実際にやっておる、たくさんの公認候補を出しておる政党として、政党の中でこれから金の選挙をやらない、そういうかたい決心と断固たる措置とをやる必要があると思う。この点についてそのような決心を持っておるか、あるいはそういう措置をとるか、これは吉田総理にまずお伺いしたいと思うのであります。(笑声
  4. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 大体の考え方北山さんと同じでございます。私は法を変えることによって、厳格にすることによって選挙が直ちに公明になるとは考えておりません。従いまして、本会議でも申し上げましたごとく、まず政治家並びに国民公明選挙の絶対的に必要なるゆえんを知ることが第一だと考えまして、公明選挙についてのPRを極力やっていきたいと思います。また法におきましても、改正すべき点がないことは私はないと思う。これもやはり公明選挙という大目的のために検討を加えていきたいと考えておるのであります。この総選挙というものは各候補者選挙費用より、別に政党としての活動費用が相当要ることも私は御承知と思います。私はつとめて前の選挙以上に使うことはいけない、少なくしてもらいたい、こういうふうなことを党幹部にも申し出ておるのでございますが、どれだけの費用がかかって、個人にどれだけ渡したということは、まだつまびつらかにいたしておりません
  5. 北山愛郎

    北山委員 池田さんはどうも吉田さんと似ておるので、つい間違うのでありますが、(笑声)今の御答弁で私は納得ができない。この前の十億円の要求をして、一人当たりそれだけでも二百五十万円ですよ。それ以外に各派閥から相当な金が出ておる。財界から流れておる。そういうことをやらないということを池田さんは自民党総裁として、責任者としてその方針をはっきりするべきである。そうでなければ国民協力していけない。何も国民選挙違反を好んでやるわけじゃない。しかも今の選挙地方選挙は別としましても、国会議員はほとんど大部分が公認候補なんです。政党公認をした候補なんですから、政党選挙活動だ、従って各政党が金の選挙はやらないのだ、そういうたくさんの選挙資金は使わないのだということをはっきり党内でもってPRする、この方がまず先ではないかと思う。国民運動といっても、国民協力を求められても、国民は何をしていいんだかわからぬだろうと思う。こういう点を一つはっきりと――何も私は自民党だけとは言いません。それぞれの政党の中において物量選挙、金の選挙はやらないということをはっきりする必要がある。しかも悪質な選挙違反党内に出ましたならば、それに対しては断固たる処分をする必要がある。それをやらないでおいて国民運動とは私はおかしいのではないかと思う。それから今の選挙法が金がかかると言いますけれども、それは何万円かの非常に少ない金で選挙をやろうとすれば、確かに今の選挙法はそれではやれませんけれども法定費用内でやれるだけの選挙法になっておる。選挙法が悪いから金がかかるのではなくて、金をかけるのです。まず金をかけることを政党自身がやめなければならない。この点をはっきり池田さんは国民に明らかにする必要がある。再びお尋ねいたします。
  6. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 お話のような金額が集まったかどうか、私の聞くところでは財界からと申しますか、懇談会からの分は八億も集まらなかったと聞き及んでおります。しかし、いずれにいたしましても、お話の通り、選挙に金がたくさんかかるということは避けるべきだと思う。私はどちらかといえば、党活動で金を使うということが本式だと考えております。従いまして先ほど申し上げましたように、選挙につきましてはできるだけ金のかからないようにということは、私は党にも申し出ておるのであります。今後も十分反省いたしまして、金のかからない選挙をいたしたいと思っております。
  7. 北山愛郎

    北山委員 これはそれぞれの党内の問題であり、私はここで自民党党内のことをとやかく立ち入ることは避けたいと思いますが、社会党としても選挙違反に対する処分ということははっきりしておるのであります。お互いに党員が違反を犯さないように、ことに悪質な事犯を出さないように、出したならばその人に対しては断固たる処分をするという方針をきめておるのであります。  そこで私は、池田さんは責任ある多数党の総裁として党内における選挙違反を出さない、また出したならばはっきりと処分をするという措置を断固としてやってもらいたい。そうでなければどんなに国民運動をやっても国民はついていけません。また選挙法をどんなに改正をしても、やはり金をかける選挙になってしまいましょう。この点をまずはっきりしておきたいと思います。  その次に今度の総理所信表明の中で私は気に入った言葉一つある。それは今度の選挙は「政策中心論議にともかくも終始した」こういうことを認める。「ともかくも」というのが大へん気に入っておるのですが、物量選挙ではあったけれども、ともかくも今度の総選挙政策中心として行なわれた、こういう点を認めておる。私も二割か三割か、二〇%か三〇%だろうと思うのでありますが、ともかくも政策中心論議が行なわれた、これは民主政治の大きな前進だろうと思う。ところが選挙の結果としてどういう結果が出たかと申しますと、自民党議席は十三ふえました。けれども得票数においては、前回の二千二百九十七万票から今度は二千二百七十四万票というように二十四万票減っておるのであります。社会党の方は、前回の九百七十万票から千八十八万票と、百十八万票も大きく伸びておるのであります。民社党が七万五千票、共産党も十四万票、わずかながら得票としてはふえておるのであります。議席の数はいろいろその選挙の情勢によって変わって参ることがございますが、得票数におきましては、社会党がはっきりと躍進をしておる。また自民党得票数前回より減っておる。こういう結果が出ておるのであります。総理が言われるように、今度の選挙がともかくも政策論議中心とされたというならば、この選挙の結果、国民審判社会党政策平和中立政策あるいは農業政策、その他の正しい経済政策等支持する人がふえた、こういう結果が過般の総選挙国民審判ではなかったろうか、私どもはそう言わざるを得ないのでありますが、この点についての総理のお考えを聞きたいのであります。
  8. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 各政党候補得票数によって民意の表われと見る見方もございましょうが、それ以前において、候補者の数のどうなったかということも考えなくてはならぬのであります。われわれは、絶対多数と申しまするか、当選者を多くしようというので、候補者をしぼりました。そういう関係上、そうしてまた公認の問題につきましても、当然わが党の者であるにかかわらず、無所属で出るというふうな場合もありましたので、必ずしもその票の長短によって支持がどうこうということは、一つ要素として考えなくてはならぬかもわかりませんが、議席がどれだけになったかということが、私は常識的な考え方と思っております。
  9. 北山愛郎

    北山委員 議席の数から見ても、社会党の方が二十三、自民党は十三であります。しかし得票から見ても、これはもちろん重要な要素でありますから、得票から見るならば、それよりもはっきりと社会党が百十八万票ふえておる。自民党は減っておるのです。従って、前回選挙から比べて、今度の選挙で表われたところは、社会党政策に対する支持がふえて、自民党はわずかに物量その他の力でもって今までの勢力を維持したにとどまる。これが今度の選挙の結果ではないか、こういうふうに思うわけであります。少なくとも平和中立外交政策支持する者がふえたということです。総理はこの総選挙にあたって、社会党国民の手で打ち負かして反省をさせなくてはならぬ、こういうことを国民に呼びかけた。しかしその呼びかけに国民は必ずしも応じなかったわけです。むしろ反省をしなければならぬのは池田総理であり、また自民党である。国民はそういう判断を、そういう結論を下したわけであります。この点についてはどうお考えですか。
  10. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 わが自由民主党が有史以来二度目の三百名、結果は三百名になっておるのであります。このことは内外とも自由民主党が大勝したと私は考えておると思います。
  11. 北山愛郎

    北山委員 私は従来の立っておった自民党の基盤と、この前の選挙と今度の選挙との比較を申し上げておるのです。傾向として、国民の意思がどちらの方へ向いておるかということを申し上げております。しかも池田さんは社会党を惨敗をさして反省をさせなければならぬ、こう言われた。これに対して一体国民はそれにこたえましたか。
  12. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 われわれが大勝したということにつきまして、私は相当国民考えてくれたと思います。
  13. 北山愛郎

    北山委員 私の尋ねたことに対してはお答えをそらしておられるので、おそらく選挙の結果については総理自身反省しておられ、社会党の力がはっきりと伸びておるということは、社会党中立外交支持する者がふえておる、こういう認識は腹の中でお持ちであろうと思いますので、選挙につきましては以上で質問を打ち切りますが、しかし最初に申し上げたように、今のような物量選挙や金の選挙をやっておったのでは、議会政治は墓穴を掘るだけだ、こういう点については真剣にお考えを願いたいと思うわけであります。選挙の前に、十月の十二日に淺沼委員長が日比谷の公会堂でなさった最後演説というのは、いろいろな意味で重大な歴史的な演説でございますが、その最後言葉議会政治擁護であり、しかもその絶句となったのが、金の選挙によっては議会政治自身が破壊されるということ、これに触れようとして浅沼さんは凶刃に倒れたのであります。私どもはこういう点をよく考えまして、議会政治擁護のために、金権選挙物量選挙というものをなくするために、先ほど申し上げたような断固たる決意と措置とを要望するものであります。  そこで次にアメリカ経済の見通しでございますが、私はこの前の臨時国会の衆議院の本会議で、アメリカ景気後退に触れまして、いろいろな資料をもって池田さんにこれをただしたのであります。ところが池田さんは、そういうことはどこにもない、現にアメリカアンダーソン財務長官アメリカは不景気ではないということを言っておるじゃないか、あなたは新聞をよく見た方がよろしい、こういうようなまことに丁寧な御忠告を含んだ答弁であったわけであります。現在でも池田さんはそのように、アメリカ景気後退は起こっておらない、不景気ではない、こういうふうに考えておられるかどうか、その点をあらためてお伺いをするものであります。
  14. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 不景気の定義がなかなかむずかしいのでございますが、アメリカ国民所得はそう減ってはおりません。昨年に比べて減ってはいない。ただ上昇率が非常に衰えてきておるという程度で、アメリカがただいま不景気だとは断定し得られないのじゃないかと私は考えております。
  15. 北山愛郎

    北山委員 少なくとも最近の指標によりましても、またいろいろなエコノミスト学者等意見を見ましても、アメリカ景気後退がはっきりとこの八月ごろから――あるいは五月という人もございますが、はっきりと後退が始まっておる、こういうことをいろいろな識者が指摘しておるわけであります。私がその当時そのことを申しましたところが、そんなことはどこにもないのだというようなお話でございましたが、池田さんはアメリカ政府当局の言明だけを信用して、それ以外のニュースや見解というものはほとんどお読みにならないのではないか。しかも、あの当時からさらに事態は深刻になってきておりまして、アメリカ経済はこの八月から総生産もだんだん減ってきておる。工業生産後退をしておる。ことに鉄鋼におきましては操業率が四七%台まで下がってきておる。しかも来年度はさらに現在の景気後退するであろう、こういうふうにいわれておるのでありまして、これを総理が不景気でない――不景気という言葉を使わないにしろ、景気後退しておる、しかもそれがさらに進んでおるという事実は、これは認めざるを得ないと思うのです。これは、私はこの前の臨時国会にはいろいろな数字なども並べてお伺いしたのでありますが、一つ総理からも根拠を示して不景気でない、後退してないというようなことを客観的に御説明を願いたいと思うのであります。
  16. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 アメリカ景気につきましては、先ほども申し上げましたように、不景気という状態ではございません。この景気、不景気生産で申しますると、これは横ばいのときには上がったり下がったりするのがあるのでございますが、二年あるいは一年半ぐらい前に比べまして、生産は落ちておりません。それはここ一、ニヵ月は――六、七月ごろはちょっと落ちておりまするが、これは長い目で見なければならぬのであって、生産だけが横ばいとか、あるいは二、三ヵ月前に比べて落ちておるから、さあ不景気だ、こういうことは私は言えないのじゃないかと思います。今アメリカ景気上昇率はとまっておるけれども、大体横ばい程度だ、こう考えるのが適当だと思います。
  17. 北山愛郎

    北山委員 資料を示しておらないので、私から申し上げますが、アメリカ景気は、なるほど一九五七年に比べて現在は、十月は一〇六・五%、工業生産の率でありますが、七月から比べますと、七月の一一一%からずっと下がってきておる。それから耐久財あるいは非耐久財等の需要も低下しておる、個人消費後退しておるわけであります。また設備投資も減っておる。住宅も、ことしの九月には百七万七千戸、昨年に比べて二九%も減っておる、こういうことでございますが、さらにこれが最近の十二月の七日、八日のアメリカ上下両院合同経済委員会におきましても、公聴会が行なわれたのでありますが、景気後退を認める人が多かった。そして景気の回復というものの微候はないんだという意見が強かったのであります。しかも来年の一月、二月ごろには失業者が五百二十万から五百八十万にまで達するであろう、こういうふうに公聴会では学者あるいはエコノミストが言っておる。また、マグロー・ヒル出版社の明年の民間設備投資の見込みを見ましても、ことしから比べて七%も減るだろう、本年の三百六十一億ドルから三百三十九億ドルへ減るであろう、こういうふうに見ておる。どの資料を見ても、景気後退をし、また、だんだん来年の春に至ってこれが深刻になっていくということを指摘しないものはないわけです。ことに、政府が総選挙の最中に出しました企画庁世界経済白書におきましても、はっきりとアメリカ景気後退は始まっておる、こういうことをこの政府企画庁白書の中に書いてある。こういう事実を一体池田さんは認めないのですか。雨が降っておるのは、これは雨というものじゃなくて、水が落ちているんだ、こういうふうに言えばそれで一体済むのですか。もう少しはっきりと常識に合うような御答弁を願いたいと思うのです。
  18. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 経済につきまして月ごとにでこぼこはございましょう。しかし、これをはかる一番の問題は生産指数だと思いますが、アメリカ生産指数は、私は八月、九月くらいまでしか持っておりませんが、一九五九年のアメリカの全体の生産指数は一〇四でございます。ことしの平均はどのくらいになっておりますか、多分一〇八・五くらいになりはしませんか、私はこういう目で見ておるのであります。ことに、これから景気が下降になるというふうなことは言われておることは言われておりますが、ケネディ政権は、年率五%の成長率でやっていこう、こういう新政策を言っておるのでございまするから、私は今のリセッションは大したことはない。一九五六、七年七、八年ごろのようなことはないのであって、一つの波であり、これをアメリカが不景気だ、将来非常に不景気になるんだ、こういう結論を出すことは私は誤りであると考えております。
  19. 北山愛郎

    北山委員 ケネディの五%の経済成長池田さんの九%、どちらが信用ができるか問題でありますが、これは現状を言っておるんじゃなくて、五%成長さしたいと言っておるのであって、むしろ、それだからこそアメリカ経済というのは後退しておるんじゃないか。ことに、せんだって八日にアメリカから帰って参りました日本貿易振興会駒村顧問総理報告書を出しておるわけであります。その中には、アメリカ景気後退というのは非常に短期なものじゃなくて、二年、三年、平たいさらのように長いことこの後退が続いていくんじゃないか、こういう見解を、また報告池田さんにしたはずでありますが、こういう事実をも否定されるのか、あらためてお伺いするものであります。
  20. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 駒村君の報告は私はまだ見ておりません。また会ってもおりません。しかし駒村さんがどういう意見を持とうとも、私はアメリカにそうひどいリセッションは起こらない、こう確信しております。また昨年に比べて今年の生産指数も、御承知の通り平均的には上がっております。三・四%、四・五%上がっております。しかも去年に比べても上がっておるし、おととしに比べてもそれ以上に上がっている状況でございます。そうして、アメリカという国は、財政経済施策を弾力的に思い切ってびしびしやるところでございまして、私はアメリカが非常な不景気になるというふうなことは考えておりません。またアメリカ人もそうすることを望んでいないし、これが対策は講じていくものと私は考えております。
  21. 北山愛郎

    北山委員 池田さんの見解は、おそらく世界でも珍しい見解じゃないかと思うわけであります。最近においては、アメリカ政府自身景気後退を示す政府資料を出しておるわけでありまして、それ以外のいろいろな、どんな学者あるいはジャーナリストにしろ、評論家にしろ、アメリカ経済が、景気が今横ばいだとか、不景気でないとか、そんなことを言っておる人は、おそらく池田さんをおいて非常に少ないのじゃないか、私はそう思うのでありますが、問題はこれから先どういうふうにアメリカ経済が伸展をするかということでありますから、その今後のアメリカ経済の推移に従って、どちらの見解が正しいのか、これを私は見守っていきたいと思うのであります。  この際関連してお伺いしておきますが、一体今度のドル防衛というものは、そのアメリカ景気後退関係がないのか、あるいはまた池田さんが九%、あるいはそれ以上の日本経済成長という政策所得倍増政策ということを考えたときに、アメリカ経済のそういうような変調というものは全然予想していなかったかどうか、この点をお伺いしたいのであります。
  22. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 アメリカ景気の動向につきましては、ただいま申し上げた通りでございます。  それからアメリカのドル不足の問題は、これは私は以前からこういうことを考えており、またそういうことを希望しておる一人であったのであります。御承知の通り、四、五年前、三年くらい前まではアメリカに金が集まり過ぎておる。これをヨーロッパあるいは日本あるいは低開発国の開発に向けるべきだ、そうして金の集中を排除すべきだということは、われわれのみならずヨーロッパ諸国もそう言っておったのであります。それが実現したということでございます。私はこういうことは望ましいことである。そうしてこういうことに対処するために私は一昨年来貿易の自由化ということを唱えておった次第でございます。しこうしてドル不足がアメリカ景気に全然関係がないかということになります。全然関係がないとは申しませんが、アメリカ景気ということとドル不足ということは直接の関係は私はない、もちろん関係はございますが、ドル不足だから非常に不景気になるんだ、こういう結論は出てこない、こう申し上げます。
  23. 北山愛郎

    北山委員 ドルの防衛対策についてでありますが、この点はもうすでにきのう、委員会でもっていろいろ論議をされましたし、政府見解を出されましたので、繰り返すことは避けますけれども、その中でアメリカの軍とそれから軍事援助計画に要する経費の削減でありますが、これも結局だんだん出て参ると思うのでありますが、一体日本の防衛費に対する影響はどうなのか、特にMSAの援助によってことしは二百六十億ですか、来年も防衛庁は自衛隊のいろいろな施設等にアメリカの援助を期待しておると思うのでありますが、そういうものに対する影響はないのかどうか、三十六年度はどの程度アメリカの軍事援助を期待して予算の要求をしておるのであるか、それに関連をして第二次防衛力整備計画というものは一体いつ作るのか、いつはっきりするのか、この点をお伺いをしたいのであります。これは防衛庁長官に……。
  24. 西村直己

    ○西村国務大臣 お答えいたします。  アメリカドル防衛政策日本の防衛費を拡張しはせぬか、端的に申しますれば、そういう御質問のように承りました。そこでアメリカの極東、特に日本における戦略というか、それに伴うところの兵力その他の装備、配置等が大きな変更がくるかどうか、ただいまのところ私どもはそういう話を聞いておりませんし、またそう考えておりません。問題はただドル防衛の見地から家族の引き揚げ、こういうことは当然発表にもなっております。これ自体は直ちに私の所管いたしております防衛庁の経費に影響を及ぼすものでない、こういうことでございます。  それからいま一つ、対日軍事援助の問題でありますが、従来確かにわが方としては無償の援助を受けておった面もございますが、この無償援助を漸次私どもの方としても、また米側としても切りかえて有償援助という形に、ドル防衛以前からずっとそういう方向へ移ってきております。従って私どもとしては防衛計画の中にそれはすでに織り込みつつ計画を立て、かつ実行しておる、こういう状況でございます。  それから二次防衛計画、言いかえれば次期の防衛計画につきましては、もちろんこれはいずれは長期計画の一環としてやらなければなりませんが、これについては部内で検討中でございます。
  25. 北山愛郎

    北山委員 第二次の防衛計画というのは三十六年度からということになっておりますが、来年度の予算も決定をしなければなりませんし、第二次防衛力の整備計画、これは三十六年度の予算と関係なしにやるのかやらないのか、一体いつやるのか。それからもう一つは、今まではアメリカとの間には打ち合わせをして防衛計画はアメリカに対しては示すけれども国民に対しては示さない、国会にもはっきりと示さない、こういうことになっておりましたが、その点は三十六年度の予算の決定なり、あるいは審議との関連がありますので、防衛力整備計画というものはいつ出すのか、はっきりとこれは総理から御答弁をいただきたいと思うのであります。
  26. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 第二次防衛計画は防衛庁におきましてただいま検討中と聞いております。その検討の結果を見まして私はどう処理すべきかをきめたいと思っております。
  27. 北山愛郎

    北山委員 防衛庁長官に重ねてお伺いしますが、その防衛力整備第二次計画の場合防衛庁で検討しておるということでありますが、その中には一体自衛隊の人員というものはどの程度にふやすという計画があるのかどうか、この点をお尋ねします。
  28. 西村直己

    ○西村国務大臣 国防会議等々におきまして、陸の兵力という言葉は妥当であるか、陸の兵力の十八万等々の基本目標というものがすでにきまっておるということは御存じの通りでございます。従って二次計画におきましてもそこいらを基本にいたしまして国力という、そういうものに相応じた防衛力の整備をはかりたい、こういう考え方で検討を進めております。
  29. 北山愛郎

    北山委員 けさの新聞を見ますというと、防衛庁長官は新聞記者に語って、防衛二法案、いわゆる自衛隊の定員をふやすという二法案をこの特別国会に出すという話をされたようであります。われわれとしてはこの特別国会というものは二十二日までの会期になっており非常に短期なものであります。しかも防衛二法は、これはきわめて重要な、今お話を申し上げたように今後一体日本の防衛力整備というものをどういう方針でいくのかというものとも関連をした問題でありますので、もちろん私どもは自衛隊そのものに反対をするのでございますが、しかしそのような重要な法案を今度の国会に出すなどということはもってのほかだ、こういうふうに考えるのですが、一体そういうふうな考えを持っておるのですか、政府は……。
  30. 西村直己

    ○西村国務大臣 お答えいたします。  二法案と申しますのは防衛庁設置法の一部改正と自衛隊法の一部改正法案、これをおさしになっておられると思いますが、これはさきの春の国会でございますか、行政機関職員定員法、この一部改正と相伴いまして予算におきましてはすでに当初予算において春の国会で御審議御成立を願ったわけであります。今般一般行政機関の定員法の改正もたしか提案されておると思います。それらの趣旨から防衛庁としては当然予算措置も済み、それに伴うところの自衛隊の隊の編成がえというような関連もありますので、自衛隊法とあわせて提案をいたしたい、防衛努力の一環としての職責としていたしたい考え方をもって防衛庁長官としては考えております。ただし国会の会期というようなものも短期であることは十分了承いたします。これらは政府内部においてさらに検討を進めてもらいたい、こういう考え方でございます。
  31. 北山愛郎

    北山委員 池田総理、どのように考えておりますか。今の防衛二法をこのような特別国会というような、普通ならば国会の構成なり、首班指名だけで済むべき性格の国会であり、しかもはっきりと二十二日で終わるというような短期国会に、そのような重大な法案を出すということについて総理はどのように考えるかということ、が、問題は今防衛庁長官がお話をしましたけれども予算が通ったから、その後の事後処理なんだ、こういうことではなくて、むしろ法律が通らないで予算が通ったということが間違っておる。予算が通っておってもその法律が通らなければ、その実施はしないでもいいことなんですから、またすべきではないんですから、この予算が通ったから認められたというものではない。しかもこのような国際情勢、その他の情勢の変化もありますので、そういう角度からあらためてて自衛隊の増員のごときは考えるべきであって、予算が通ったから、跡始末として防衛法案を出すというような問題ではない。別個の見地からほんとうに腰を入れて検討しなければならない問題だ。それを今度の短期国会で出すなどということはもってのほかだと思うのでありますが、総理の御見解を聞きたいのであります。
  32. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 原則といたしまして、予算と定員法は一体であるべきことは、もう申すまでもないことであります。ただ審議期間の関係その他におきまして、定員関係の法案がおくれておるのであります。従ってこの特別国会にそういう事案がたくさんございますが、どれを出すかということの問題につきましては、当初は防衛庁の方はあと回しということに私は考えておったのであります。今のお話によりまして、今国会に出すか出さないかということは、防衛庁長官並びに閣議に諮って慎重に検討いたしたいと思います。
  33. 北山愛郎

    北山委員 どういういきさつであろうとも、やはり今度の国会というものは、だれが考えても会期という制限があるわけであります。この短い会期でも通り得るというような性格の法案を提出する――初めから無理な法案を出すということは、政府措置としてもとらないのでありますから、その点は政府としては慎重に考えて、この国会にそのような重大な法案を出すということをされないように私は要望するものであります。  次に所得倍増の問題でありますが、この前の臨時国会で、この予算委員会で成田さんから例の九%の問題が出まして、その九%の数字的な計画に対しましては何もはっきりしたものをお示しにならない。そこで今所得倍増計画なるものは一体どういうものがあるかといえば、正式には経済審議会の答申案がある。七・二%ずつ十年間成長して所得を二倍にするという審議会の答申案がある。これを政府はどのような措置をするのか。ただ答申を受けただけで、これに対してこれを基礎として、これを裏づけて政府の正式な倍増計画とするのかどうか、あるいは池田さんが言うところの九%の三カ年成長、これを裏づけるような三カ年計画というものを別に作っていくのであるか、この点がはっきりしておらぬのであります。ですから今のところ所得倍増計画といっても計画実体はない。政府の正式な計画はないという現状にあるわけでありますが、一体どういうふうな措置をおとりになるのか、これをはっきりしておきたいと思うのであります。
  34. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 昨日本委員会におきまして、この問題につきましては御説明いたしましたので再度繰り返しまするが、今の企画庁より所得倍増に関する審議会に諮問いたしましたのは、十年間倍増ということでいくならばどういうふうな過程を今後たどり、どういう面にどういう施策を講ずるかということにつきましての答申が出たのであります。われわれは過去の実績を見ましても、すなわち昭和三十年あるいは三十二年にこしらえました五ヵ年計画というものが一応閣議決定はいたしましたが、一、二年後にはもうすっかり組みかえなければならぬような状況にあるのであります。従いまして、私は今回の十年間に倍というこの答申は、いわゆる倍増計画の一つの指針として受け入れて、これを材料としてとりあえず三カ年間の年平均九%の計画を立てようと、今立案中であるのであります。
  35. 北山愛郎

    北山委員 三カ年九%というのはいつごろできるか。いつごろ出されるのか。三十六年度の予算審議と関係がありますので、予算提出の前にこの九%三カ年の計画をお出しになるかどうか、その点をはっきりしておきたい。
  36. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 三十六年度の予算編成につきまして直接関係のあります、いわゆる三年間年平均九%増としての三十六年度の計画は、予算を作ります関係上できます。それに関連いたしまして三十七年、三十八年の一応の試算はいたすつもりでございます。従いましてその試算も大体予算編成後におきまして、七、八年度につきましてはごらんに入れ得るかと考えております。
  37. 北山愛郎

    北山委員 次に所得倍増計画案というのは、要するに経済成長政策でありますが、昨日の委員会で池田総理経済成長というものは、要するに国民のたくましい潜在的な創造力の現われである、こういうことでまことに抽象的な説明をされたわけであります。国民の創造力、潜在的なエネルギーが成長を押し上げているのだというような、空気みたいなお話でありましたが、私は今行なわれておる経済成長の力、創造力というものはそういうきれいな創造力というよりは、むしろ非常にどす黒い、たくましい、利潤追求の力であろうと思うのであります。いわゆる高い利潤と、それからその設備投資、またそれを保証していくところの資金の供給、こういうものが集まって、この数年来の日本経済のいわゆる成長というものがなされておる。経済成長の推進力というのは、大企業のたくましい利潤追求の力であり、欲求であり、またそれを可能にするところのいろいろの条件ではないか、こう思うわけであります。そのいろいろな条件がありますが、要するにもうからなければ企業家は事業を拡大いたしません。その高い利潤というものを保証するような政策が、今の自民党政府の歴代とってきておる政策である、経済成長政策である、こういわざるを得ないのであります。まず第一には大企業には都合のいい税制になっております租税特別措置――本年度におきましても、千二百億も大企業を中心として税の軽減の恩典がなされておる。また独占物価でありまして、大企業ほど、その独占――協定、カルテルの力によって値段を下げない。生産性は上げるけれども値段は下げない。こういう独占物価の体系というものが、大企業の利潤を保証しておる。ですからこの長い間、約十年間の卸売物価の指数を見ましても、経済企画庁の卸売物価の指数によりますと、これは昭和二十五年を基準とする去年の三月でありますが、食糧は一七二・三、金属が二四一、機械が一八六・九、建築材料が二七三・五というように、むしろ生産性が高くなった、いわゆる合理化が進んでコストが安くなっておるべきはずのものが、卸売物価指数というものが高くなってきておる。そして生産性の低い食糧、農産物というものが、比較的値段が上がっておらない。合理化が進んでコストが安くなるならば、その品物は安くならなければならぬはずでありますが、安くしないのであります。そこに独占物価というものが形成をされて、大企業の利益を保証しているのではないか。これがやはり経済成長の大きな推進力になっているのではないかと思うのであります。そういうわけでありますから、税制の上でも三十四年の下半期の銀行の例をとりましても、全国銀行の決算を見ますと、その中にも貸し倒れ準備金であるとかあるいは価格変動準備金というものが約九百億も見込まれておって、それが税の対象になっておらない。約一千億の利益を上げながら、税金の方はたった九十二億円しか出ておらない。こういうような租税特別措置の恩典を大企業ほど受けておるのであります。もう一つは安い賃金、これはもうすでに経済白書でも指摘をしておりますが、非常に安い賃金でありますと同時に、その労働者に対する分配率が非常に低いわけであります。イギリスは五七・一というのが労働者に対する分配率、いわゆる付加価値の、仕事の働きの五七・一%というものをイギリスの場合においては労働者にこれを分配しておる。ところが日本の場合は三七・八%、こういうように非常に労働者に対する分配が低い。そして安い賃金の、しかも最近では中学校卒業というような年少の安い臨時工を大量に使っておる。労働の搾取が非常に高いということであります。ことし出ました経済白書によりましても、労働者の生産性はどんどん上がって、今の状態では生産性において西ヨーロッパ並みになっておる。ところが労働賃金の方は、労働者の所得は上がっておらない。生産性の上昇と労働賃金とを比べて参りますと、昭和二十八年から三十四年までの平均を見ると、生産性の方は七・六%の上昇でありますが、賃金の方は、実質賃金で見ると四%にも足らない。いわゆる生産性の半分しか労働賃金が上がっておらない。ここに結局低賃金の上に非常な搾取が行なわれて、そして主として大きな企業がぼろもうけをしておる。そういうような上に大企業に対しては非常に豊富な安い金利の資金が供給をされておるわけであります。今度の補正予算にもある、輸出入銀行に百二十億の国の資金を一般会計から出すことになっておりますが、この輸出入銀行に対しての貸付の利子などは四%、非常に安い金を貿易業者というものは借りて、しかも政府資金を借りておれる。こういうように税金の面から見ても物価の面から見ても労働賃金から見ても、またその金融の面から見ても、あらゆる面で大きな企業というものが国の政策の保護を受けておる。助成を受けておる。援護を受けておる。そこに経済の激しい成長の原動力があるのだと思うのです。要するに大企業に対しては高い利潤を保証している。ですから、池田さんが説明をされたように、経済の成長によって産業なりあるいは所得の格差が縮まるのではなくて、むしろ労働者やあるいは小さい企業やあるいは農業というものの犠牲において、あらゆる政府の恩典を受けて大企業が先頭に立って機関車のようにどんどん進んでいくという、いわゆる傾斜的な方式を初めからとられておる、そこに経済成長の原動力がある、こう言わざるを得ないのです。この点について一つしっかりとした材料に基づいて、池田総理の御見解を承りたいのであります。
  38. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 御質問が非常に多岐にわたっておるようでありますが、私は、今後の政策といたしましては、今までのやり方とはかえていきたいと考えております。  まず税制面におきまして特別措置の問題が出ました。この特別措置につきましては、三十六年度からの税制改正におきまして、これの合理化を徐々に進めていきたいと考えております。  第二の生産性の向上と賃金の問題でございます。この問題につきましては、私は、昨年来全体としての生産性は非常に向上しておるが、賃金の上昇がそこまでいっていないということは、私も認めております。また公開の席上でもそれをはっきりと言っておるのであります。これはやはり経済の動向によってこの生産性の向上に追いつくように、賃金の上昇があってしかるべきだ、それが日本経済の発展のもとをなすものだ、こう考えておるのであります。  なお、輸出入銀行に対しまする政府の貸付金利の四分、これは最近において、今検討中で、改めるようになるのではないかと思います。しかし、輸出入銀行の出します金利が即大企業とおっしゃるということは、これは少し行き過ぎではないか。たとえば最も大きい船舶の輸出、これは御承知の通り、船舶の建造には中小企業が非常に入っておるのでございます。ほとんど半分近くは中小企業関係のものでございます。で、今までのいわゆる輸出財、何としても輸出を増加しようというこの措置につきまして、これは輸出入銀行の負担割合、輸出入銀行の金利につきましては、行政において再検討を加えておるのであります。  なお、いろいろな大産業が非常に有利になっている、こういうことでございますが、経済発展を急速にさす場合におきましては、こういう問題が起こってくるのであります。しかし、今の状態、日本の現状のようになって参りますると、私は、今後は中小企業に力を入れるべきである、こう考えておるのであります。で、よく北山さんなんかは、政府の財政投融資も大企業にばかり出す、こういうふうなことをおっしゃるのでございますが、私は大企業にばかり出すとは考えておりません。財政投融資関係の六千億円をごらんいただきましても、そのうちおもなるものは地方債の引き受け、そうしてその次は農林漁業あるいは中小企業関係の融資、そうしてまた、これは大企業と申すことは私はできぬと思うのでありますが、公益事業関係すなわち電力あるいは地下鉄、こういうものでございまして、財政投融資をごらんになりましても、主として出して――大企業というものは昔は電力、石炭、鉄鋼、造船、こう四つを見ておりますが、電力というものは大企業という範疇に入りません。それから船舶に二百億出しておるのは、これは先ほど申し上げましたように日本の造船業の拡充と、ことにそれが中小企業関係に潤すものだ、半分あるいはそれ以上潤すものだ、こういう関係にいたしております。石炭の方も御承知の通り、昨年度におきましても、六千億円のうち七、八十億円で、今後も再建のために相当出しますが、百億ちょっとぐらいであるのであります。こう見て参りますと、私は財政投融資が何も大企業にばかりいっておるのではなくて、よくごらん下されば六千億円の財政投融資がどの方面に使われておるということは、私は数字がはっきり示しておると思います。いずれにいたしましても、私は、経済の伸長ということはやはり農民、中小企業、労働関係、いわゆる大衆の所得を上げることが経済伸長のもとでございます。国内の個人消費というものをふやす、それが経済の伸長になる、そしてそのうしろだてとして輸出の振興、この方法でやっていきたいと思います。  それから、どこに力を入れるかということは、そのときの経済事情、国内情勢によって判断すべきものであって、私は自由民主党政策として言っておりますように、とにかく大衆の所得を上げるように経済政策を持っていこうといたしておるのであります。
  39. 北山愛郎

    北山委員 私の言っておるのは、今までの経済成長、いわゆるたくましい潜在的な創造力という美しい名前で言われましたが、実際のその原動力というのは、やはり大企業中心の高い利潤を保証されるような政策、そういう条件、これが経済成長の大きな推進力であり、従って先ほど申し上げたようないろいろな条件を分析してみると、結局金にしても、税金にしても、あるいは物価にしても、みな大企業に都合のいいような形に行なわれておるから、そこで農業なり、労働者なりあるいは中小企業というものは、そのしわ寄せを受けるのだから、そこで格差は縮まるのではなくて、ほうっておけばこれは格差が開くばかりだ、こういう事実、これを私は認めてもらいたいと思うのです。この点は否定されないようでありますから、従来のやり方としては、やはりそういうような格差の開くような経済成長のやり方であったということを、池田総理は認めたと私は思うのであります。賃金は上げなければならぬ、生産性よりも実質賃金の上がり方が少ない、これも認めておられる。それならば、賃金を上げるには、具体的な政策としてどうするか。一体これをどうするのです。
  40. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 政府関係職員以外の、一般財界の労務者につきましては、これは労使の間で考えていくことであって、政府が賃金を上げろとか下げろと言う筋合いのものではございません。そして大企業に力を入れているということは、先ほどでおわかりいただいたと思いますが、所得の格差というものはこれは私はあることは認めます。しかし成長が所得の格差を多くするものだとは私は考えておりません。成長の段階において所得の格差を少なくするようにするのが政治である、こういうのでございます。日本経済の発展から申しまして、中産階級以上と申しますか、三十万円以上の所得者は非常にふえてきておるのであります。三十万円以下の所得者は、人口あるいは納税人員がふえるにかかわらず横ばいでございまして、人口のふえたのはほとんど全部三十万円以上の方にいっている、こういう統計もあるのでございます。私は、所得の増進が格差を多くするものでないということは、数字でも説明できると考えております。
  41. 北山愛郎

    北山委員 そうすると、池田さんは、賃金の問題は労使の問題だ、政府はすることはないのだ、こういうふうに聞こえるが、それでいいのですか。
  42. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 今の法制からいって、民間会社の賃金を政府が上げろとか下げろとかは言うべき筋合いのものではないと思います。
  43. 北山愛郎

    北山委員 私はそういう意味で言っているのではなくて、やはり賃金が安いならば、その賃金を引き上げるような、政策の上でいろいろな施策があると思うのですが、そういうことをやらぬでいいようなお話だから聞くのです。最低賃金法も私は一つの方法だと思うのですが、そういうような、賃金を引き上げ、労働者の条件を引き上げるような――しかも今申し上げたように搾取が非常にひどい。生産性は上がっても、賃金は上がらないということがはっきりしておるのですから、それを是正するのが政治だというならば、やはり具体的な、賃金を正しくして、労働者の条件をよくするという政策をとらなければならぬと思うが、それは労使の問題だ。これじゃ池田さんが言うことと実際にやることとは違うじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  44. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は法制的に言っておるのでございまして、実質的には、私は公開の席上でも、昭和三十年からの生産性の上昇と――賃金も上昇しております。あなたのように上昇していないとは私言っていない。しておりますが、その差が生産性の上昇ほどに賃金が上がってない。たとえば、また数字になりますが、昭和三十年から今までを比べてみますと、三十一年、三十二年は生産性の向上よりも賃金の向上が大きい、三十三年の下期ごろから三十四年、五年にかけては、生産性の向上ほど賃金の上昇がいっておりません。ちょうど三十一年、二年から三十三年のごく初めにかけては、賃金指数の上昇が生産性をこえておる。しかし過去三年足らず、二年余りの分は、先ほど申し上げましたように、賃金の上昇もありまするが、生産性の上昇が伸びておる、こう言っております。それからまた最低賃金の問題が出ましたが、私は最低賃金法に賛成です。この最低賃金法が生産性の上昇によりまする労働条件の改善に非常に役立ってくる。だから今年なんかも中学校、高等学校の卒業生の初任給がだんだん上がってくるということは、これは経済成長率によりまして、最低賃金制が自然に改まってここに確立するゆえんだと考えておるのであります。
  45. 北山愛郎

    北山委員 ここで賃金の問題を深く掘り下げてやる考えはございませんが、しかし最低賃金にしても労資の力関係できまるというよりは、最低賃金法は業者間協定でこれを資本家同士できめる、経営者同士できめるような最低賃金だから、むしろ池田さんの今のお考えよりは今の最低賃金法というのは後退しておる。むしろ労使の力関係で、やはり労働者の力もその最低賃金をきめる場合には一つ要素として取り入れるのが正しい最低賃金法のあり方だと思うのです。そこまでも達しておらぬのでありますから、そういう点は一つ考えを願いたいと思いますが、先を急ぎますので次に移ります。  今お話ししたように、今までの経済成長あるいは今後の経済成長政策というものは、これはやはり大企業の高利潤をあげ得るような環境を作り、それに対してどんどん設備投資の資金を供給するというのが、長い間の保守党の経済政策であるようでありますが、しかしこれを実現するのにはどうしても作ったものが売れなければならぬわけであります。せっかく生産力をふやしても、売れなければその利潤が実現をされないのでございます。そこでこれから先の経済の見通しとして、一体生産過剰にならないかどうか。最近の情勢で見ると、いろいろな生産過剰を示すような徴候が現われておる。対米経済貿易関係も心配はないと言いながら、自動車などについてもどうですか。当初相当な、一万台以上の乗用車をアメリカに売るというような計画を持って日産なりトヨタなりが大きな設備投資をしたが、最近ではほとんど売れない。こういう状態じゃないでしょうか。乗用車などを生産しても売れない。自動車の例をとりましても――自動車は非常に重要な機械工業でありますから、それなどを見ても、生産の過剰ということが起こってくるんではないかと思うのです。これは総理よりも通産大臣の問題だと思いますが、総理にお伺いしたいのです。
  46. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 お話の通り、日本設備投資が非常に伸びております。これはもう先進国のイギリスをこえ、ドイツ、フランスをこえ――総体の生産はイギリスの半分あまりでございますが、設備投資というものはイギリスをこえております。フランス、イタリアの倍の設備投資をやっておる。どんどん設備投資をしていく。そしてこれが私は経済の伸びるもとだと思う。そこで、設備投資をしたものが、全部稼働するかという問題があるのであります。そこが経済の調整作用であります。設備投資をし、生産過剰になったときに、これが価格を安くして消費に向かうか、あるいは稼働率を下げて、マッチするような生産にするか、これが経済のかなめであるのでございます。私は設備投資が行なわれ、生産性が向上し、合理化し、そしていいものが安くできるということがまず第一だと思います。そういう事態が出てきたときに、生産と消費がマッチするか、貿易がそれでできるか、あるいは国内にそれだけの消費力があるかという問題が二段の問題でございます。私はできるだけいい物を作って外国に輸出すると同時に、国内においてそういうものが消費されるような経済政策をやっていって、そうして生産の向上と品質の向上と価格の安定低下、そうして消費の健全性を保っていくところに経済の運用のもとがあると考えております。
  47. 北山愛郎

    北山委員 具体的な自動車の問題なんかどうなんですか。自動車にしろ、肥料にしろ、いろいろな問題が設備過剰というか、生産が過剰で、その処理に困るというような情勢になってきていやしないか。しかも最近における通産省の調査なんかによりましても、鉱工業製品の出荷が減って在庫が非常に急激にふえておる、十月の在庫は五・二%ふえておる、こういうように急激に在庫がふえておるわけでありますが、それで結局は生産過剰が、この景気のいいといわれる日本にも、低流としてはこれから次第にひどくなってくるのではないか。個々に言えば先ほどの自動車のような問題がある。自動車の問題、それから肥料の問題はどうなのですか。
  48. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 個々の問題につきましては、私は所管でございませんからよくわかりませんが、私の見るところでは、トヨタあるいは日産がアメリカへ輸出するということを希望はいたしております。しかしそれによって事業計画を立てるということよりも、国内の自動車の消費を目安にしてやっておることが多いと思います。そしてまた特需関係でICAの問題等もございまするが、ICAの問題は一応差しおきまして、自動車工業が今までの伸び率ほど伸びないかもわかりませんが、しかし自動車工業が今破綻に瀕するというようなことは私は考えておりません。  それから、肥料の問題にいたしましても、生産過剰と申しまするが、肥料二法案をこしらえたころの肥料の状態は、日本生産は百七、八十万トン、しかもあの肥料二法案をこしらえた当時は、国内の生産を確保するという建前から十五万トンはどうしても置いておかなければいかぬ、こういうので百七、八十万トンの生産であったのが、今能力は五百万トンくらいになって、製造も四百万トン余りと思います。しこうしてこんなにふえたのがだんだん価格を安くいたしまして、一トン当たり当時は六十五ドルくらいだったのが、今は輸出は四十三、四ドルくらいで輸出し得るようになったのでございます。肥料がどうなるかと申しますと、過去の経歴を考えてみれば、日本人の力強さというものは肥料においても現われておると思います。もちろん輸出赤字という問題はございますが、肥料の合理化というものはすばらしく進んでいったと考えておるのであります。だから個々の現象ですぐこれがどうなる、あれがどうなるということでなしに、全体を見ながらこれが調整をしていくところに、堅実な、安定した伸びがあると私は考えておるのであります。
  49. 北山愛郎

    北山委員 自動車の問題、肥料の問題あるいはセメントの問題、こういう事業はいわゆる成長産業の先頭を切るような重要産業だから、そういう産業に早くも消費の頭打ちといいますか、輸出面においてもいろいろな悪影響がある、その現象がすでに現われておる、こういうことを私は指摘して、そして将来警戒を要するということを申し上げたわけであります。この点は世間でも、来年の夏ごろには、アメリカと同じように、日本でも野要な生産過剰の事態が、危機が現われるのじゃないか、こういうことを指摘しておりますので、単に楽観的な観測だけじゃなしに、十分な考慮をしていただきたいと思うのであります。  次に農業の問題でありますが、池田さんは例の農民を六割減らすということを言われて、非常なセンセーションを起こした。このために自民党選挙にも非常な影響があったように私は聞いておるわけでありますが、そのあとでいろいろと弁解をされておる。きのうも言われておったわけでありますが、問題は今後農家の一部を自立経営の形、いわゆる企業として成り立ち得る形にしようというお考えですが、一体何町歩以上、何ヘクタール以上の農家にしようとするのか、あるいはそれをどの程度の数にしようとするのか、百万なり二百万なりの戸数のものにしようとするのか、そこら辺の見通し、御見解を聞きたいのであります。
  50. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は農家を減らすということじゃないのでございます。だんだん所得倍増論でやっていきますると、今の農家ではもう立ち行かないので、りっぱな企業として農業が再建せられる方法をとる、こういうのでございます。現に北山さんも御承知の通り、農家と申しましても、もう半農なしに七、八割がほかの二、三割農家というのもあるのでございます。(「食えないからだ」と呼ぶ者あり)これを農家として取り扱うということがどうかという――食えないからという話でございますが、食えるように、もっとうまいものが食えるように、もっと生活をよくしようというのが農業の立て直しであります。従いまして、農業基本法を今検討いたしまして、これを所得倍増といかにしてマッチさせるが、りっぱな農業をどうやって打ち立てるか、これが第一でございます。しこうして、その間において過剰の方々がどういうふうにして気持よく他産業に行くか、これが今の地域格差その他の問題が起こってくる問題でございます。今後われわれはりっぱな農家を作り上げよう、そうして農業というものが他の産業と太刀打ちでき、農業と他産業との所得の格差のないようにしようというのが私の考え方のもとでございます。
  51. 北山愛郎

    北山委員 今私の聞いておるのは、そういう今まで何べんも繰り返した弁解ではなくて、総理はいろいろな数字を上げて具体的にお話になっておりますので、一体自立経営のできる農家というものをどの程度のところに置いて、それを何万戸を作ろうとするのか、あるいは何年計画でどうするのか、こういうことをお聞きしておるのであります。
  52. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 初めから何万戸を作ろうというふうな考えは私はないのです。経済成長というのは、先ほどお引きになりましたように、きのうも申し上げたように、国民の創造力を強めてこれを自由に発揮さす、そうして自由に発揮し得るような環境を作るというのがもとであります。従いまして、私はりっぱな農業を作ろうというのに、何町歩ということは言えません。それは気候にもよりましょうし、経営の土地の状況にもよりましょう。たとえば平坦地の分につきまして、二町歩なら二町歩を、米と麦とあるいは牧草とあるいは畜産その他を考えて、どの地方はどういうふうな経営規模でいいか、それからまた関西のように段段畑のところ、今まで麦を作ったりなんかしておりますが、これを果樹園にかえていくのにはどういうふうな方法にしたらよいか、こういうふうな具体的な問題を検討して、りっぱな地方地方における農業を考えていくというのが私の気持でございます。
  53. 北山愛郎

    北山委員 そういうふうな考えなら、あんなことを言われぬ方がいいのです。農民を削減して、自立経営のできる企業として成り立ち得る農家、こんなことは、ただ一般の家庭あるいは世間の人が言うならばいいが、政府責任者として、一つ農業政策として言っておるならば、どの程度のもの、たとえば山地なら何町歩とか、水田地帯なら何町歩とか、何かめどがなければ、自立経営のできる農家というような概念が出てこない。事実自民党の農林政策を見ると、大体三町歩となっておる。それから今度の所得倍増計画、いわゆる経済審議会から出たものを見ると、三・五ヘクタールとなっておる、それ以上にしよう、こういうことになっておるのでありますが、一体どれをとるのですか。そうしてまた十年計画なら十年計画で、大体どの程度の自立経営のできる農家を育成しようというのか、こういうのが何もないのですか。
  54. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 政治家としてそういうことを言うのは、不見識とはおっしゃらなかったのですが、言い過ぎだというようなお気持でありますが、しかし今の日本の農業をこのままで置いていいとはお考えにならないと思うのです。私はこの前の国会の施政演説で、いつかは、だれかがやらなければならぬ問題でございます、日本の政治として最も大きな問題の一つだと考えますから。――しかも現状では、農民の所得は、他産業の所得に比べまして現状においても低いし、そうして見通しとしてもますます格差ができようとするときに、この農業をどうやっていこうかということについて、政治家として考えるのは当然だと思います。しこうして、それならば具体案をどうするかという問題であります。具体案は、先ほど申し上げましたように、農業基本法という法を制定いたしまして、各地方において適正な農業規模の経営が行なわれるように、しかもそのテンポにつきましては、経済の成長と見合ってこれから考えなければならぬ。私は政治の方向、心がまえを施政方針で述べておるのでございます。
  55. 北山愛郎

    北山委員 その具体策のことでわれわれは論議しておるわけです。社会党としては社会党考えがある。政府としては政府考えがあるでしょう。それを国民は、農民は知りたがっているわけです。それを今あげたような一般に常識論みたいなことを言って、今のままでいいかなどということを言ってごまかしてしまうのじゃ、これは責任ある答弁とは言えない。  それでは具体的に聞きますけれども、所得倍増の経済審議会の計画によりますと、十年先になったならば、自立経営のできる農家としては、二・五ヘクタールのものを百万戸作る、大体それをめどにしてやるのだということが書いてある。そういう考え方に賛成ですか。一体二・五ヘクタールという考え方でいいのですか。
  56. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は総理大臣として、政治の持っていき方の基本を申し上げておる。具体的の問題につきましては、三十六年度以降におきまして具体的になる。それを今具体化せいと言われましても、農業基本法その他につきまして、あなた方の御審議を経て具体化するのが私はほんとうだと思う。政治家としてはこういう方向でいくということで、今のところはがまんしていただくよりほかにないと思います。しこうして所得倍増計画の二・五ヘクタールでいいか悪いかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、各地の事情が違います。また農民の方々の意思も考えなければなりません。だから私は、今所得倍増計画の答申案につきまして賛否を申し上げることは差し控えたいと思います。これはあくまで一応の指針としてわれわれが受け取って、この決定をいたすにつきましても、これか最後結論でないということは、きのうの愛知委員の御質問に対して答えた通りであります。
  57. 北山愛郎

    北山委員 私の聞きたいのは、問題は自立経営のできる農家、これは二町歩とか二町五反とか、その農家を作っていく。要するに現在の一町歩以下というような農家がたくさんある、その農地を大きな農家の方に移していかなければならぬ、そういう非常に重大な問題が出てくる。そうなれば当然現在の小さな農家というのは、農家としてなくならざるを得ないのじゃないか。しかし実態は、この前の農業センサスでもわかる通りで、昭和三十年からの農家人口の推移を見ると、人口の方は確かに減っておる。しかし農家は、昭和三十年以来ことしまでにわずかに一万九千戸しか減っておらない。事実、東北の私の県などについては、農家の戸数の方がふえておるのです。ただ就業人口は減っておる。これが現在の実態だと思うのです。しからば、総理がこの前にも言われましたが、いわゆる兼業農家というのはもう農家でないのだ、よその収入の方が多くなって、農業収入の方が少ないから農家とは言えないのだ、こう言いますけれども、しかし農業を営んでおる限りにおいては、多少の農地を持っておるはずなんです。そうなれば、農家の戸数を減らさない限りは、いわゆる自立経営のできるような二町歩なり二町五反以上の農家は作られないという問題が出てくる。そこで私はその点を聞きたいのです。農地をふやさないで自立経営のできる大きな農家を育成しようとするならば、どうしても農家戸数を減らさなければならない。そういうことをおやりになるのかどうか、どういう方法でおやりになるか。
  58. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 よその国の例を言って恐縮でございますが、ドイツの農家は何ぼあるかという統計を調べますると、あるところでは全体の戸数の五%という数字が出ております。それからまたある統計によりますると、二〇%近いという数字が出ておる。さあ、これ、どちらをとるかという問題になってくる。私は、農家は相当減ってくるというのは、ドイツの農家が二〇%というのでなしに、私は五%という数字をとりたいという気持なんです。それをいや二〇%がほんとうの農家だ。農業所得というものは全体の所得の一、二割、二、三割でもこれは農家だから農家だ。じゃそれを勤労者だとは言わぬ、あるいはわれわれはこれは勤労者だ、農家は二町農家、こう取り扱うのも一つの方法であるのであります。だからイギリスは、純農家は五%、こう言っております。そういうことから考えまして、私の言う農家というのは専業農家か、あるいは今の言葉でいえば第一種兼業農家というふうなものを考えておるのであります。私は所得倍増答申案を全部読んだのではありませんが、農業として成り立つ場合におきましては、今のような八反百姓、一町百姓ではなかなかいきません。いかに二町百姓でありましても。そこで今の八反百姓、一町百姓というのはどういうふうにしていこうかというところに、ここ数年来から出ておりまする共同作業とかあるいは農業法人とかあるいは土地の売買に関する農地法の改正とか、いろいろな問題が出て参りますが、これは農地法で研究しようといたしております。ただ私がここで社会党のお考えを批判しては悪うございますが、全体の面積に対しまして今の耕地が一七%だ、これを一二%ふやして三〇%の耕地にするというお考えにつきましては、私は農業の効率性から申しましても、賛成できないということだけは申し上げておきます。ただ耕地をふやさぬということではございませんよ。能率のいいところは耕地をふやしましょう、また土地改良もいたしましょう、いろんな手は尽くしまするが、今の全体の耕地に対する一七%を三〇%、今の六百数十万町歩を一千百万町歩にしようという考え方につきましては、私は数字的には賛成できません。
  59. 北山愛郎

    北山委員 そこが問題なわけですよ。私どもは一七%の耕地をふやすのじゃない。もっと広い考え方の農地を考えておるわけです。三百万町歩を八カ年でふやそうというのは、そのうち二百万町歩を草地として、あとの百万町歩は畑地としてふやそうとしておるのであります。だから田をふやそうというのじゃないのですよ。それは田にはもちろんもうすでに限界があるわけなんです。ただ外国の例を見ると、西ヨーロッパのドイツその他についても、イギリスについても、イタリア、フランス、みな五割以上ですね。国土面積の五割以上というものは農地なんです。イギリスは八割ですよ。スイスなんかは五割一分。あの山国であっても五割一分というものを農用地に使っておる。そういう意味の農用地は、日本は草地を入れてもわずかに二〇%なんです。それを三〇にするというのはちっとも無理じゃないし、しかも畜産や果樹をこれから伸ばしていこうというのが自民党政策であるならば、これは当然今の水田の上にだけやったんじゃ、酪農はそれほど伸びない。やはり草地とかあるいは畑というものを伸ばしていかなければならぬし、三〇%にするということは、ヨーロッパの例なんかから考えましても、これは当然のことなんです。今までの日本の農業の姿というものがゆがんでおる。ゆがんでおる姿を広げようという。ところが今の池田総理考えでもわかる通り、政府自民党には、今申し上げたような広い意味の農用地を拡大するという考え方がない。農用地を拡大しないで、自立経営のできる農家を育成しようとするならば、必ず零細農家の土地を取り上げて移さなければならないわけですよ。そこが私は問題だから聞いておる。しかも、これは農林大臣に聞きますけれども、ことしの予算の要求の中で、例の自作農維持資金――今までは零細農の生活資金等にも貸してあった、いわゆる農家から転落する者を防止するための資金でもあった自作農資金というものを、性格を変えて経営拡大の資金にする。要するに大きな農家が小さな農家の土地を買い入れるための融資に切りかえて、いわゆる小農を相手にしないという新しい性格の資金に初りかえようとするような予算要求をしておるはずであります。だから、強制的に小さな農家の首を切って、農業の外に引っぱり込んでいこう、こういうようなことはなさらぬでしょう。しかし、今申し上げたように、自作農維持資金なども、零細農を相手にしない、小農を相手にしないで、大きな農家にこれを貸していくという方針に切りかえる、いわゆる小農いびり出しの政策をとろうとしておる。ここに問題があると思うのでありますが、農林大臣及び総理大臣から今私の申し上げた点についてお伺いしたいのであります。
  60. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は農地をふやすことに反対というのではございませんよ。それは土地改良もやります。あなた方のおっしゃるように、全体の面積の今一七%、六百万町歩余り、それを一七%を三〇%にする、すなわち四百万あるいは四百五十万町歩を農地としてこれからやろうと言われることにつきましては、私は数字的には反対です。数字的にはと言っております。その意味は、今土地改良あるいは開墾、干拓――干拓はあまり力を入れませんが、そういう農地をふやすことには、あなた方のように安易――安易というのは言葉は悪いかもしれませんが、今の一七%を三〇%にまでやって農地を拡大しようという考え方、――拡大の考え方には賛成ですが、三〇%までやるということは私は反対だ、こう申し上げたのであります。(「何%までやるのか」と呼ぶ者あり)それはそのときの状況によって考えなければならない。先ほどから申し上げておるように、これからの進み方によってどこを草地にするとか、どこを畑地にするとか、あるいは土地改良その他と関連して考えていかなければならぬ問題だ。だからあなたのおっしゃるのに数字的に反対というのは、三〇%までやるということは今の土地の効用率からいっていかがなものか。従ってわれわれは既存の農地につきまして農業法人とか共同経営とか、あるいは売買等も起こる場合におきましての農地法の改正というものを今度農業基本法で考えていこう、こうしておるのでございます。
  61. 周東英雄

    ○周東国務大臣 大体今お話がありましたが、北山さんのお話、ただ三百万町歩をふやせということだけではいけないということを総理は言っておるわけです。私どもの方の新しい政策の立て方というものは、いかにして農業所得を拡大するかということが一つ中心になり、他産業との間における不均衡をいかにして是正するかという問題については、当然、農業生産の拡大については、必要がある範囲においては、土地の開墾、干拓あるいは土地改良というものが考えられていくわけであります。ことにお話の点の新しい農業の経営の方向の変化というものの中に、酪農あるいは畜産のあることは当然でございます。それらについて草地の改善あるいは干拓というもの、原野等を開くということは考えておりますから、当然その中に既耕地に対する転換ということも考えて、しこうして将来十年の間において、いかにいいといっても従来のような思いつきではいかない、畜産と酪農というものを、日本国内における需要の増に対してどのように持っていくかという基礎の上に立って、どれだけの耕地が要るかということを考えて立てたいと思うのであります。その点については、ただいま所得倍増に関して経済審議会の答申の内容等にも検討を加えております。これはいずれ全部検討を終わりますれば、具体的に御相談を申し上げる機会があると思います。
  62. 北山愛郎

    北山委員 自作農維持資金のことを……。
  63. 周東英雄

    ○周東国務大臣 自作農創設資金についてのお尋ねでありますが、これは廃止してはおりません。拡大しております。金額においても、また一人当たりの自作農維持あるいは創設に関しての貸付のワクが少ないために、これをもう少しよけいにしようという立場から出ているのでありまして、御指摘のような小農から取り立てるための、拡大するための自作農維持資金というものを考えているわけではございません。
  64. 北山愛郎

    北山委員 予算要求には百七十億要求している。しかもそれは今私が申し上げたように、従来の自作農創設維持資金の性格を改めて、経営拡大資金にするのだ、こういうことになっているはずです。大蔵大臣、そういう要求が出ているはずですが……。
  65. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 来年度の予算の各省の概算要求の査定はこれからでございますので、また承知しておりません。
  66. 北山愛郎

    北山委員 今の問題を大臣が知らなければ、農林省の方がから、そういう要求を出しておるはずたが、その点を詳細に説明してもらいたいと思うのです。  その前に、今社会党の三百万町歩が適当でないということ、一体どういうものさしで適当でないというのか、拡大の方はいいんだ、三百万町歩はいかぬ、どういうわけなんです。私の言うのは――しかも池田総理が先ほど数字を間違っておると思うのですが、われわれの国土の全面積の一七%が耕地だ、社会党のこれを三〇%にしようというのは、今六百万町歩の耕地だとすれば、三百万町歩ということに大体なるわけですよ。もう少しふえますけれども、大体三百万町歩。国土面積の三〇%というのはそういう角度から言っておるのであって、ヨーロッパの例から見ても、どの国も五割以上農業に利用しておるのですよ。その農業のやり方は、やはり畜産や果樹を主体にしておるから、そういう利用度が高まるわけです。これから日本の農業を畜産なり果樹なりを重点にして、大いに所得をふやしていこうというのが自民党政府考えでもあるようだから、それならば、やはりそういう広い意味における農用地をふやさなければいけないのじゃないか。しかも自立経営のできる農家、二町なり二町五反以上なり、そういう農家を基礎にしようといいながら、広い意味の農地の拡大ということには触れておらぬということは、結局小さな農家から土地を移すほかないのじゃないか、こういうことを聞いておるのであって、話が矛盾しておるわけです。
  67. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お話の点は、先ほど申しましたように、新しい農政のあり方に関して、農業生産所得を拡大するについて必要な限度においては、もとよりお話のように土地の拡大ということはあり得ると思います。しかし、それは私どもは計画の上に立っての土地改良あるいは開墾、干拓、草地の拡大、山地の利用ということを考えて参りますのですから、社会党のお考え方必ずしも私は悪いとは申しませんが、頭から三百万町歩と、こう増をお考えになるのではなく、私でもはやはり基礎の上に立った計画を立てたい、こう考えております。
  68. 北山愛郎

    北山委員 とにかく私は三百万町歩に賛成してもらおうと思って質問しておるのじゃないのですよ。ただ、考え方として、農用地を広げなければ、――二百万町歩、三百万町歩、それはいろいろ考えはあるでしょう。あるでしょうが、相当に広げなければ、自立経営のできる農家もできなければ、酪農、果樹なんかの農業生産もふえない。農地の開発は条件なんです。ところが今度の経済審議会の計画を見ても、十年間に農林投資はたった一兆円ですよ。それで一体農地の開発ができるのか、農業所得の増加ができるのか、こう言いたくなるから聞いておるのです。しかも池田さんは総選挙以来、第一種兼業がどうのこうのと言っておる。最近になりますと、園芸農業は農業でないなんて言っておる。園芸農業であっても、何反歩かの農地は必要なのです。土地なしに農業をやれるならいいですよ。だからして、その兼業農家、第二種兼業というものが農家でないという定義の仕方は別として、やはり土地を必要とするわけです。それを認める以上は、一体自立経営のできる農家の土地をどこから持ってくるか。農地をふやさなければならぬでしょう。しかも日本の農地の割合というものは、今申し上げたように少ないんだから、相当思い切って農用地というものを拡大する必要があるのだ、こういう結論にならざるを得ないから私は申し上げておる。社会党の三百万町歩に賛成してくれという要求なんかは一つもしておりません。その点はよく御認識をいただいて、農業政策というものをもっと考えてもらわなければだめだ。池田さんの考えは、ほんとうの意味での農業政策ではないのです。むしろ農業というものはおくれており、今後それほど発展の見込みはないから、人口を減らして、そして人減らしによって一人あたまの所得の倍増をはかろう。こういういわば農業外の政策です。農業政策ではない。われわれは農業政策というものを考えてもらいたい。農業自体の中で生産をふやし、所得をふやす方法を考えてもらいたいし、またわれわれの考えによればそれは可能なんだ。むしろ日本の農業のあり方というのはおくれており、農業に対する政府政策というものは間違っておる。それを直さなければならぬという大事業だから、所得倍増計画の中でもたった一兆円しか十年間に投資をしないなどというような消極的なことでは、これは日本の農業というのは惨たんたる状態になると思う。だから言っておるのですが、これはあとでまた同僚からお話があると思いますのでこの程度にして、時間がございませんので先を急ぎます。  次に補正予算の問題であります。補正予算は、税の見積りについてきのう愛知さんからお話がありましたが、これに対して精一ぱいの税収の見込みをしたのだ、こういうことであります。しかし私ども大蔵省から出されました数字を見ましても、今度の千五百十四億じゃなくて、もっと税収が見込めるんじゃないか、こういうふうに私は思うわけであります。時間もありませんから、私から私の計算の基礎を申し上げますと、大蔵省から出た十月までの税収実績、これを基礎にして試算をしてみますると、ことしの一般会計の税収というのは、去年の実績と比べてみて三割以上伸びておる。去年の同期に比べて三割三分くらい伸びておる。従って昨年の決算額を基礎にして、今後も同じような率で、これは経済が不景気にならない、それからどんどん発展をするというのでありますから、それで計算をして参りますと、今までの十月までの伸びと同じ率で今後年度末までいくとするならば、さらに千億くらいが一般会計の関係で見込めるような計算が出て参る。これに対して大蔵大臣はどのようにお考えですか。
  69. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 昨日申しましたように、予算をきめる当初の総生産の伸びは大体三十五年度が七・八%という予想のもとにいろいろ税収も見込まれてあったのでございますが、御承知のようにことしの十月までの鉱工生産の伸びも月平均一・三%という程度伸びておりますし、また一方個人消費設備投資、輸出というような最終需要も着実に伸びておるという現状でございまして、昨日も申しましたように当初の予想よりも大きく実質一〇%以上の経済の伸びが見られるという状態になっておりますので、従ってこの情勢に伴って、法人収益、個人企業収益も相当の増収が見込まれますし、また個人消費の伸びも大きいのでございますから、酒類の販売、耐久消費財の伸びというようなものから考えられますいろんな増収について、税種別に今までの実績を参考にしながら、私どもとしては、今現在で確実に見込み得るものというものを見込んで計上したというわけでございます。きのうも申しましたように、まだ今後の問題につきましては、不確定な要素をたくさん持っておりますので、これがどういう方向にいくかがはっきりつかめないという問題がございますが、今現在でこれを歳入として見込むことは適当であるという範囲の見込み方ということになっておりますが、この計数的ないろいろそういう見込みをつけた根拠というようなものについてなら、これは主税局長に説明していただきます。
  70. 北山愛郎

    北山委員 今までの、政府のこれからの本年度内の経済の見通しなどについても、格別景気というものは後退するという見通しではないようであります。そうするならば、税収においても、第一・四半期、第二・四半期、十月までの実績というものを基礎にして考えてみると、今申し上げたように、去年の実収の三割以上が見込まれる。数字を申し上げまするならば、十月までの一般会計の税収というのは八千五百十六億九千万円、それから昨年同期が六千三百九十八億、そうしますと、三割以上伸びておるのですね。その率でもってこれから推していくと、年度内その率でいくとするならば、昨年の決算額を基礎にして計算すると、今申し上げたように一兆四千八百八十億じゃなくて、さらに千億くらい、千十五億という伸びが見込まれるわけです。私の計算はどこか間違いがありますか。もちろんこれはフルに見込んだもので、今までの調子で、同じ率で年度末までいくとするならば、さらに千億以上見込むのが常識的な算定だと思うのですが、この私の算定にどこか間違いがありますか。
  71. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 その問題なら、主税局長に説明させます。
  72. 村山達雄

    ○村山政府委員 お答え申し上げます。  ただいまのお話、ちょっとわかりかねたのですが、実はわれわれは十月末までの収入実績はわかっております。それによりますと、本年度は、当初予算に対しまして、昨年度に比べて収入歩合で一〇・九%伸びております。昨年度の決算総額に対しまして、昨年度の十月末の収入歩合がございます。ことしの当初予算に対することしの収入歩合を見てみますと、約一〇・九%伸びておる。ということは、今後も同じような順調な伸び方、今までの十月末までと同じように、その平均の好調の程度を続けるとすれば幾らであるかという数字が出て参るわけでございますが、それで計算いたしますと、千四百幾らという数字になるわけでございます。今北山先生のおっしゃったこと、ちょっとわかりかねたのでございますが……。
  73. 北山愛郎

    北山委員 私の考え方は、ことしの十月までの実収が大蔵省から出ておる。それで昨年同期の実収を見るわけです。それと比べてみると、去年の実収に比べて三割一分ばかり伸びておる。ことしの実収が、昨年の十月末の実収に比べて三割伸びておる。そこで、昨年度末の決算額は一兆二千百三十三億ですか、それを三割伸びるとするならば、要するにこれから十一月以降も同じ三割の率で去年からふえるとするならば、その決算額に比べて――決算額というのは実収額だから、これの三割はふえなければならぬじゃないか、こういうことです。
  74. 村山達雄

    ○村山政府委員 わかりました。あとで計算いたしますが、二つの問題がございます。一つは、そうやりまして、去年と同じような割合でふえるとすると、去年の決算額に対しまして一・三をかけた数字が一応出ます。ただしこれは総額になりますから、当初予算においてすでに増収を見込んでおるわけでございます。当初予算対当初予算では二千九十六億の増収を見込んでおります。これは決算との差額にいたしまして、その分を引いて幾らになるという問題が一つあります。  それから、この点は非常に注意せねばならぬと思うのでございますが、昨年の経済構造は非常に下半期に収入が片寄っておる。と申しますのは、去年の上半期から在庫調整その他が行なわれまして、収入の型が下半期に非常に寄っておるということでございます。大体税収は半年おくれで参るというのが常識でございまして、従いまして、ことしはどちらかといったら上半期の方に税収のウェートは片寄るであろう、こういうことでございますので、両方相殺いたして考えなくちゃならぬという問題がございます。従いまして、われわれは収入の状況を単純に、機械的にかけ算、割り算をして、この問題を求めているわけではございません。
  75. 北山愛郎

    北山委員 予算というのは、当初予算であろうが何であろうがそうですが、どうも当初予算というのはあやしいものですから、しかも政府の毎年の経済見通しはみんないつも狂っておる。だから私はその実績を見るわけです。去年の十月末の決算の実収とことしの実収とを比べて、ことしどのくらい入るだろうかということを計算すると、ずっとふえるわけです。一兆五千八百九十五億くらいになる。それを当初予算と今度の補正とを差し引いたらまだ千億残っている。千億というのはフルに三割伸びると見てやるのであって、今言ったような時間的ないろいろな状況を考慮しても、私は五、六百億くらいはまだ見込めるんじゃないかと思う。まあ将来の見通しですから、確定的なことは申しませんが、こういう点から見ても、まだまだ予算にその税収の余裕があるのじゃないか、いつもこういう論争をして、そのときには、ございません、かたいところでございますと言いながら、年度末になると、何百億もたくさん出てきておるのが今までの例だから、大蔵大臣も、あまりがんばりなさらぬ方がいいと思うのです。  そこで、きのうも愛知さんに対する答弁があったようでありますが、第二次補正というのはしないという考えですか。
  76. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 税収の見込みが確実であるとするなら、別に第二次補正をする余地はございませんので、今のところ私は、もう一度予算補正をするという考えは持っておりません。
  77. 北山愛郎

    北山委員 何かどこからともなく、第二次補正も考えておるのだということをわれわれは聞くものですから、私はこういう質問をするのです。税収に余裕を持っておいて、そして次に何らかの予定しておる目的のため第二次補正をするんじゃないか、こういうことですから、私お伺いするのですが、そうすると第二次補正はない、こう考えていいですね。
  78. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今のところはそうでございます。かりに見込みが狂って百億前後の増収があったといたしましても、例年から見まして、後年度に持ち越す剰余金がそれだけあることは少しも差しつかえないことでございますし、見積りの小さな狂いである程度においては、第二次補正をする意思は今のところ持っておりません。
  79. 北山愛郎

    北山委員 それから補正予算の中にある輸出入銀行のことですが、先ほど総理は、輸出入銀行の利率というものを今度は変えるのだ、こういうようなお話でありますが、今輸出金融というものは四%から七%、輸入についても四・五%から七・五%というふうに非常に安いわけです。これは金利はやはり引き上げる、こう考えていいのですね。総理大臣はそう言った。
  80. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 各国の輸出入銀行の金利を見ましても、日本の金利は一番安いということから、御承知のようないろいろな問題が出ておったことでもございますし、また輸出入銀行の経理の状態から見ましても、ここで金利を若干上げた方がいい。そうして政府関係機関の金利体系をここで一応整えたいという考えは私ども持っておりましたが、いろいろの問題が――今輸出増進を必要とする事態が出ております際でありますので、これを慎重に検討をしようということになりまして、関係省内で今検討中でございまして、まだ方針はきまっておりません。
  81. 北山愛郎

    北山委員 それでは総理の先ほどの発言と違うですね。まだ検討中だと言うし、総理はもう輸出入銀行の利子は引き上げるような話を先ほどされたのです。いわゆる政府の財政投融資その他の金利は安過ぎるのじゃないのだ、いわゆる大企業というものに恩典を与えるのじゃないのだというようなことを説明する際にそう言われたのだから、今きまっておらなくても、引き上げるという総理大臣の意思である、そう考えていいですね。
  82. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 この問題は、御承知の通り、以前から検討を加えておるのでございます。金利四分というものは、たとえばアメリカの輸出入銀行のそれと比べても安いのであります。低うございます。それからまた御承知の通り、民間の銀行との持ち分の割合がございます。輸出入銀行が何割持ち、民間が何割、こういう検討を加えまして、今引き上げる方向に向かって検討中と申し上げておるのであります。引き上げることにきまったとは申し上げておりません。引き上げる方向で検討中と言っておるはずであります。
  83. 北山愛郎

    北山委員 時間もないようですから最後に、先ほど触れたいと思って触れなかったのですが、社会保障の問題です。先ほどの経済成長についてのわれわれの考え方からするならば、今まで、あるいは今後の経済成長政策というものは、やはり格差を広げるというか、いわゆる傾斜的な大企業を先頭として、そこにいろいろな恩典を与えて、そうしてそれを先頭にして推進をしていく、従ってそのしわ寄せが所得の低い人たちに及んでくる、いわゆる格差を広げるような力として働いておるのだ、こういうことを申しましたときに、税金の問題あるいは金融の問題その他についてもお話があったのでありますが、この社会保障は、今までの池田さんのお答えでは、これから先は社会保障で従来できてきたその格差というものを補うように非常に強い政策をとるのだ、こういうふうに言われておりますが、一体どの程度考えておるのか。これはきのうもこの委員会で問題になりましたが、抽象論ではなくて、一体社会保障にどの程度の予算をさくという考え方総理は持っておるのか。これはこまかい数字は要求いたしません。これから予算編成をするのでありますが、しかし大きな政策の柱でありますから、減税については千億とか、公共投資はどうだとか、道路についてはどうだとかいうふうな数字が上がっておりますけれども、社会保障については、予算の結果を見て下さいとしか言っていない。しかも自民党や何かのいろいろな政策を見ると、必ずしも期待したほどの金額にはならぬようである。たとえば生活保護法の保護基準というものを一体二六%上げるのかどうか。これは自民党政策では、はっきり書いてない。厚生省では要求しているはずであります。そういう問題をどうするのか。総体の額としては大体見当がつくと思いますから、少なくとも三大政策の大きな柱である社会保障を、減税は千億だが、社会保障は予算の結果を見てくれじゃちょっと困るのじゃないかと思うのです。もう少し積極的なはっきりした御答弁をいただきたいと思うのです。
  84. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 来年の一月の終わりかおそくとも二月の初めには、はっきり申し上げます。ただ私がここで申し上げたいことは、今から三、四カ月前の日本経済の状況を見まして、租税収入が自然増収千二百億か三百億、あるいは来年度の増収見込み二千五百億、ああいうときに考えておったときの減税千億以上というものはこれは動かさずに、経済が拡大したための収入増につきましては、私はできるだけ社会保障制度へ持っていきたい。その額を言えとおっしゃるけれども、私は、はっきりした額をたくさん言いたいために今はしばらくお待ち下さい、こう言っておるのであります。
  85. 北山愛郎

    北山委員 減税にしたって、これは千億の約半分というのは、企業課税のものでしょう。法人等の減税なんで、企業所得者その他の減税というものは五百億くらい、こういうふうなことで、半分はやはり今までと同じように経済成長のための企業擁護の減税になっておるのですね。あとの半分、五百億くらいが働く者に、いわば所得均衡のための減税というふうに大体見られるでしょう。減税についてもたった五百億ですよ。やはりこの企業擁護精神というものは、減税の際にも貫かれておる。だから、社会保障についても、私どもは心配なのです。しかも自民党政策を見ても、どうも大したことはなさそうに思える。だから少なくとも生活保護基準を二六にするんだというふうな宣伝を最初にしたのですから、ある程度の概算のものは、千億なり二千億なりというような大ざっぱな数字は出てくるはずでありますが、どうも今でもこの数字が言えない、このぎりぎりのところまできて言えないというのは、私はどうやら社会保障も先行きが案ぜられると思うのでありますが、さらにその減税について、もう一つ税の負担について関連してこの点をお考えおきを願いたいということを要望しておきたいのであります。一つは、減税という陰に非常な増税があるということなんです。今、問題になっておるのは国民健康保険です。保険税、これが健康保険をやっている各市町村も非常な赤字で、そうしてわれわれの方でも軒並みに市町村が赤字であります。その赤字を埋めるために保険税を引き上げる。私の町では一世帯が四千二百円でありますが、それを今度は四千九百円に七百円上げる。そういうふうに大体四千円から四千五百円です。それが国民健康保険の負担で、その上に、今度国民年金の掛金というのが来年の四月から始まる。こうなれば、農家などでは、一年に六千円も七千円も、多いところでは一万円も国民年金の掛金をしなければならぬ。そうすれば健康保険と国民年金とを合わせただけでもう一万円くらい、しかも所得のない者でも取られるというような格好になってくるのです。この点については、われわれは、減税は減税とし、陰ではそのようなむしろ力のない低所得層の人たちに大きな負担をかけるような問題であるから、国民年金だけの問題ではなくて、そういうようないろいろな負担が多い上に、さらにそれを何千円も加重するという問題であるから、国民年金はまず延ばしてもらいたいというのがわれわれの考えであり、それから出てくるのであります。こういう点はよく考えていただきたいと思うのでありますが、総理は、これを再検討するような、国民年金の掛金を四月から始めるということをもう一ぺん考え直すというような考えはないのか、また国民健康保険の税金が各市町村でどんどん上がっても、その点についての何らの考慮もしないというのであるか、この点をはっきりお答えを願いたいと思います。
  86. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 詳しくは存じませんが、私は今度の平年度千億円余りの減税につきまして、所得税が六百億以上だと考えております。それから企業課税と言われまするが、いわゆる償却あるいは留保金の軽減等は、留保金の軽減につきましてはほとんど中小企業、同族会社、こういう方面の減税をしております。また償却も、今まで大企業の償却よりも中小企業の償却を多分に考えるという方向で進んでいっておると思いますから、減税は、北山さんのおっしゃるよりも、私は所得税もいいし、企業課税につきましても中小企業の方に相当の力を入れておる、また留保所得に対する税率の軽減等は中小企業が数においてもほとんどだと思います。  なお、国民年金につきましては、いろいろな議論がございますので、死亡一時金を設けるとか、いろいろな点につきましてのみいいような案に検討を加えておるのでございまするが、国民年金を今施行を待つという考えは、私は持っておりません。
  87. 北山愛郎

    北山委員 では、その社会保障の結果が出るのを期待して、私の質問を終わります。
  88. 船田中

    船田委員長 午後一時三十分より再開することとし、この際暫時休憩いたします。     午後零時四十七分休憩      ――――◇―――――     午後二時五分開議
  89. 船田中

    船田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。川俣清音君。
  90. 川俣清音

    ○川俣委員 私は、この際主として農村問題について総理大臣の所見をお伺いいたしたいと思うのでございます。農産物安定制度が確立されない限り所得倍増計画は架空のものとなるのではないかという観点に立って、まず食管制度からお尋ねいたしたいと思います。  最近の政府の構想によりますれば、米の直接統制から支持価格的な間接統制に移行しようとしておるのではないかと思われるのでございますが、今後食糧管理制度をどのように進めていくつもりであるか、所見を承りたいのであります。私は、あくまで米の直接統制を堅持し、生産者価格は生産費及び所得補償方式によってきめらるべきであるし、消費者価格は家計の安定の立場から決定し、これによって生ずる差額は一般会計から補てんをすべきものと思うのでございますが、政府の所見を承っておきたいと思うのでございます。
  91. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 米の統制の問題につきまして、食糧管理特別会計のあり方等につきましての御質問でございますが、私はただいまのところ、お米の統制に関しまして格別ひどく変わったことをしようという考えを持ったことはございません。大体におきまして今の制度がいいのではないか。それはもちろんいろいろな早場米の問題とか、あるいは陸稲の問題、もち米の問題等々ございますけれども、そういう主要の点につきましてはいろいろ考えていかなければならぬと思います。しかし、米の統制のあり方についてこれを抜本的に変えなければならぬという気持はただいまのところございません。
  92. 川俣清音

    ○川俣委員 さらにお尋ねをいたしたいのでございますが、とかく食管制度について世上いろいろな問題がございますのは、いわゆる食管会計の中に赤字が相当出てくるというところから批判が行なわれておるように思うのでございます。ところが、これは食管会計の内容をよく知らざるために起こってくる疑問であるし、批判であると思うのでございます。そこで食管会計をすっきりしたものに仕上げていくことが第一考えらるべきだろうと思うのでございます。組織機構上、行政上、あるいは財政上の処置によりまして、赤字の発生を阻止することができる勘定項目がたくさんあると思うのでございます。たとえば食管会計の金利は三十五年の予算で百八億、補正で百三十一億に上るのであります。しこうして他の項目、倉敷保管料あるいは輸送費、事務人件費などと比較いたしましても、最高の支出となっております。これを石当たりに直しますならば、三十五年度予算で石当たり二百九十四円が補正で三百四十三円、一七%の増でございます。事務人件費をはるかに上回る予算でございまして、こうした金利負担の過重が赤字を出すところの大きな原因になっておるのではないかと思うわけでございます。これを国庫余裕金でまかないまするならば、百三十一億は浮くことになるのであります。国民経済安定のために大きく寄与いたしております食管会計に過大な金利負担をさせておることは、それ自体に問題があるのではないかと私はたびたび指摘いたしておるのであります。このことにつきまして総理大臣は、かつて大蔵大臣の時代に、食管会計の金利負担が過重であることは好ましくないので、大蔵省としては金利負担の軽減をはかるよう極力努力しておるはずである。こういう説明を二十六国会においてされておるのでございますが、三十五年度におきましてこの金利負担の過重が三十四年度よりもむしろ増してきておるわけでございます。このように金利負担の過重が食管会計の赤字の大きな要因となっておることにつきましては、大蔵大臣も総理もすでにお認めになっておるところだと思うのです。これを、国庫余裕金がない時代とは違って、自然増収が生ずる余地のありまする今年度におきましては、赤字が出たから一般会計から繰り入れるのじゃなくて、その以前において国庫余裕金をもって補いまするならば、赤字が出てこない事態が起きてきておったと思うのです。この措置を、総理は十分お認めになっておりながらなぜやれなかったのであろうか、この点についてお伺いいたします。
  93. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 大蔵大臣がお答えになるのが至当だと思いますが、前からの関係で川俣委員が御質問になりましたので、お答えいたします。これは以前からやっているわけでございます。以前から相当やっております。今国庫余裕金の運用はまず第一食管会計に使っておるのであります。そして外為会計にも使っておりますが、私が想像しまするのに――これははっきりした数字は大蔵大臣から申し上げましょうが、今でも千億以上は無利子の金を使っておると思っております。御承知の通り史上最大の豊作で、買い入れ価額も予算よりもうんと多くなって参りました。従いまして何千億という金の金利でございまするから、国庫余裕金だけで金利負担のないように出すべき筋合いのものじゃない。ことに特別会計の建前から申しまして、理論的にいえば国庫余裕金を食管会計ばかりに使うという筋合いのものではない。ただわれわれは食管会計の赤字を少なくするために、一般会計並びに各特別会計からやり繰りして、できるだけ赤字を少なくしようという気持は、今も昔も何ら変わりはない、あなたのお考え通りに大蔵省はやっておると私は思うのであります。従いまして今年二百億余りの補正予算を食管会計へ繰り入れますゆえんのものも、おおむねことしの豊作により政府買上米の数量が非常に多くなりまして、その手当資金も無利子の国庫余裕金では足りなくなった、こういうことから出てきていると私は想像いたしておるのであります。私、ここ五、六日前くらいの国庫のあれを見ましたときに、千億円余りの国庫余裕金が食管へいっているように記憶いたしております。
  94. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今の問題ですが、当初予算を組むときには国庫余裕金の使用を大体一五%という予定でございましたが、その後使用率を増しまして約二三%ということになっておりますので、これによって金利負担を少なくとも十五億円前後当初予算のときよりは軽くする措置をとっておるということが言えるだろうと思います。
  95. 川俣清音

    ○川俣委員 最高のときはたしか四八%くらい国庫余裕金を出しておったと思うのです。これはもちろん月別によりまして違うでしょうけれども、最高時においては約半分に近い国庫余裕金を出しておった。なぜ国庫余裕金を出すに至ったかということは、今総理の御説明でもございますが、大正年間に間接統制を始めたときには、一般会計から資金を持ち出しまして、いわゆる米の買い上げをいたした前例に基づくものでございます。従いまして食管会計ができました今日、これは事業特別会計でない、行政的な歩みを非非に持った食管特別会計でありますだけに、本来で言いますならば、事業特別会計と同じように政府出資があって、自己資金でまかなえるということになるならば、こうした金利負担がなしに運営ができたと思うのでございます。しかも最初のころは二十八年までは原価取得主義をとっておりましたがために、買い入れ年度においては赤字を出さないで、翌年度に赤字を回して、そうして翌年度の赤字を一般会計で補てんをするという方式をとっておったのでございますが、二十九年かと思いますが、それ以来は御承知のような修正売却主義と申しますか、修正評価主義と申しますか、買い入れ価格を会計年度末におきまして修正して赤字を出すというやり方に変わっただけに、やはり本来の姿であります自己資金と申しますか、一般会計運営資金を持つことによって食管会計自体の運営が円滑にいくことになると思うのでございます。そういうふうな今の時代においてすら、将来の大きな構想は別にして、現実にこの問題を解決することにおきましてもそういう措置がとれるはずだと思うのです。特に自然増収のあります今日におきまして食管会計の自己資金に、いわゆる赤字補てんのための一般会計からの繰り入れではなしに、もう少し大きな金を自己資金として持たせるような出資の仕方と申しますか、投資の仕方ができますならば、食管会計がこんな不安定なままに放置されることがないのではないかと思うのですが、この点について総理大臣にお伺いいたします。
  96. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 事業会計と違いまして、管理会計につきまして出資をしてやるということは、管理会計と事業会計の違いはそこにあるのであります。私は、管理会計といたしましては出資がないのが原則だと思います。しかし出資をしならどうか。そうしたならばその出資はどこから持ってくるかという問題もありますので、今までの原則で、調整勘定を置くことは昭和三十三年来できておりますが、これでいくことが管理会計の本来の姿ではないかと思うのであります。ただ専門家のあなたはまたおっしゃるかもわかりませんが、外為特別会計には昔インベントリーとして一般会計から出したこともございます。
  97. 川俣清音

    ○川俣委員 総理大臣の言う通り、外為の場合には管理会計でありながら国庫資金を持ってまかなったことがございますから、これも国民生活の上に、ことに総理が所得倍増論を唱えますならば、その一番生活安定の基礎になっておりますこの重要な食糧管理制度について、やはり外為と同じような処置はとれないわけはないのであります。しかも緊縮の時代でありますなら別にして、大きな将来の経済の成長を見込んでおられますときに、その基礎であります食管制度にこれだけの犠牲を払うことは決して不可能なことではなしに、むしろ将来の経済成長の最初の基礎にもなるのではないかと思うわけでございます。なぜ私がこういうことを申し上げるかというと、赤字が出たからということで食管制度の改変を意図するような世論やあるいは行政部内に意見が出てくるからでございます。初めからこれがそういう意図でできておるんだということを理解されておりますならば、総理大臣の言われる通りで私どもは異存はないのです。しかしなぜ赤字が出てくるか、高いものを買って安く売るからであるというように誤解されがちでございます。食管会計の本質というものを理解しないために起こってくる批判をとかく受く入れて、将来の食管制度に対する改正考えられまするので、その前に予備的に手を打っておく必要があろうということで質問をいたしておるわけでございます。  このことは、これは古いことを持ち出して言うわけじゃありませんけれども、二十六国会におきまして、総理大臣が大蔵大臣のときに、ここでだいぶ論争をいたしておるわけです。それは、総理は私がいくら説明いたしましても、その年度の決算を待って赤字を補てんするのが本則である、こういう主張を強く主張されておるわけです。私が、法律改正あるいは法律の修正によって、自然増収のあった機会に赤字を補てんするという方法をとってはどうかという強い主張をしたに対しまして、やってやれないことはないけれども、それは本則に反するじゃないか、今赤字を予想して補てんをしておいても、次にまた赤字が出た場合においては二度補足しなければならぬ、やはり決算を待って赤字を補てんするのが本則であるという説明を強調されておるわけなんです。大臣、そのときはおそらく消費価格を上げるという調査会の答申が出るであろう、その場合は赤字が少なくなるからという腹で答弁されたと思うのですけれども、大臣の強気の表現で、いや、法律上あるいは原則上決算を待って出すのが本則であるということを主張されておったのですが、今度は私の説に屈しられまして、調整勘定に前もって入れられることになったのですが、最初の本則はおやめになったのかどうか、この点をお尋ねしておきたいと思うのであります。
  98. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 本則をやめたというのじゃございません。あの当時は食糧管理特別会計法附則第二項に、決算による赤字を一般会計から補てんする、こうなっておったのです。これは規定に従ってやったわけであります。それからその後におきまして、私が大蔵大臣をやめてから、ここにおけるあなたの議論が非常にいいと大蔵省が感じたのでございましょう。今度はその附則第二項を変えまして、調整勘定を置いてやることになったから、それが今度本則になったわけでございます。だから法律が変わってきたから法律通りにやっておるのであります。だから法律を変えない場合には私の言うのがほんとうだ、しかし変えた場合には、あなたの主張によって変えたということも言えると思います。
  99. 川俣清音

    ○川俣委員 これはその当時の本則というのは原則という意味でございます。従って私は附則二項によらないでも、臨時措置、特例もあることであるから、それはその年度にわずかに言葉改正することによってできることである、法律上の手続としてはそうむずかしいものじゃない。こういう意見に対しまして、大臣は、決算を待つというのがとにかく特別会計の本則であるという主張をされたのでございます。別に私は今それを取り上げて、あなたがよく変わったことにつきまして、池田さんなかなか頑強なのに変わられたことについて、決して私は不服を言うのじゃない。しかしときどき強気でやられることが、強気の意見が必ずしも将来修正を要しないことではないという現実が出てきておったということになると思うのでございます。  そこで総理大臣にはこれは少し小さ過ぎるのですけれども、私どうしても聞きたいと思うのです。予算説明によりますると、国内産米の豊作によって、また麦の豊作によって買い上げ数量が非常にふえた、こういうことで補正を組まなければならない。こういう説明になっておるのですが、それならば、麦の豊作で買い上げ数量約百六十万トンの予想が、三十万トンぐらい多く買う予定のようでございます。そういたしますると、印紙収入も、この検査収入も当然見込まれなければならないのに、収量は多いと称しておりながら、検査の対象になるところの税収入といいますか、印紙収入は同じ五億になっておる。これは買い上げる数量が三十万トン、一般の市場にも出回るという。検査規格品でなければこれは出回らないのでありますが、出回りも多いというときに、検査手数量はわずか五千万円ぐらいのものでございますけれども、わざわざこの税収入といいますか、租税収入、雑収入を隠しておられるようなのは、どうも自然増収におきましても同じような考え方が出ているのではないかという疑いを持つのです。そこで総理お尋ねしておきたいのですが、わずか五千万円を隠したからといって総理お尋ねするのではなくして、そういう考え方が自然増収の見積もりにおきましても内輪に見積もっておるのではないかという懸念がございますからお尋ねをしておきたいのです。
  100. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は強気で言ったわけではなくて、規定上そうなっておりますから、規定に従ったというだけであります。強気で赤字補てんの問題をがんばったわけではありません。規定からきたわけでございます。  それから、大体自然増収というものを見まする場合におきまして、各税目、各科目についてずっと一々より出すということは今までいたしておりません。大体大きい科目につきまして見積もってやる。三千万、五千万、たとえば罰金だとかいろいろな点がふえたり減ったりすることもありますけれども、そういうこと一々について自然増収を組み入れるということはやっていない。しかし私の見るところでは、印紙収入につきまして、相当自然増収を入れておるのじゃございませんか。そのうちに入っておるかもわかりませんが、しかし自然増収の補正予算財源として見る今までの慣例は、大体歳出と見合うようなものであれば、一々各税目の科目別に拾い上げるということは、今までの例ではいたしておりません。今度印紙収入の増を見ておりますが、その中に入っておるか入っていないかは事務当局からお答えさせます。
  101. 川俣清音

    ○川俣委員 総理大臣、ちょっと誤解があるようです。私は、麦の検査手数料です。買い上げ数量がふえ、一般市場の数量がふえれば、当然検査が行なわれておるはずだ、その収入がふえていないのはおかしくないか。欠損の赤字の方は出しておるけれども、収入もあるはずじゃないか、こういうことです。
  102. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 ただいま申し上げたのでおわかりいただけると思いますが、補正予算を組む場合におきましての自然増収というものは、各科目について一々精査するわけではございません。それは何十億という問題ならばこれはもちろん組み入れますが、各税目あるいは雑収入の点におきましても、たとえば日銀の納付金がどうなるか、今の発券状況によって動きがございますけれども、それを日銀の納付金までさわるというようなことは、やった例もございますけれども、大体ほかのでまかなえるならば、そう何千万とか一、一億のものはやらぬのが通例でございます。麦の赤字につきましては相当の金額が出ておりますが、それの手数料は、これは事務当局から、入れているか入れていないか答えさせますが、今までの補正予算を組む場合におきましてのやり方には、そこまで行っていないのが慣例でございます。
  103. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 麦の受検数量だけでなく、他の農産物の受検数量の問題もございますので、それが不確定でございますから、一括してこの収入見込額の補正は今度行なっておりません。
  104. 川俣清音

    ○川俣委員 大蔵大臣にお尋ねしますが、あなたは三十五年度の予算補正の説明の十三ページに、わざわざ検査印紙収入を五億にとどめておる。しかし説明では、内地米の買い入れ数量がふえ、麦の買い入れ数量がふえるということで赤字が出る。こう説明されておりながら、その対象になっておりまする検査印紙の収入が予算と同じだということは、どうも説明としては不十分じゃないか。麦の収入から見るとほかの手数料というのはごくわずかです。麦が三十万トンもふえれば五千万円の手数料が入ることは大体理屈だ。その他のものがどのくらい減るかということはあり得ると思いまするけれども、五億のうちの一割に当たる五千万円の収入ですから、やはりこれは麦の買い入れ価額がふえて、麦の増産が確実だ。こういう形で予算を組まれておるからには、その検査手数料というものは当然収入の中に現われてくるのが説明の上からいってあたりまえじゃないかという疑問を持ってお尋ねをしたのです。こういうふうに隠しておることは、一般自然増収の方においても同じようなことをやっておられるのじゃないか、こういう懸念がさらに発展するから、この際この点をお聞きしたい。麦の買い入れ数量が三十万トンふえるわけでしょう。それだけでも検査手数料というのは出てくるはずなのです。三十万トンで五千万円になる。ほかの農産物の手数料が減るという説明かもしれませんけれども、それはむしろ予想がつかないので、わざわざ説明としては麦が増産になって、市場性を持つところの数量がふえるという説明ですから、それで麦も買い入れしなければならないという説明ですから、それならば当然検査手数料というものが加わってこなければならないのじゃないか、こういうことなんです。それをなぜわざわざ隠しておくかということです。こういう隠し方をするのはほかの方でもやっておるのじゃないかという疑念があるから説明を求めたいということなのです。
  105. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 わざわざ隠したというわけじゃございませんで、食管会計の予想される赤字の大宗というものは、今言った麦と米の問題でございますので、その処置をすれば、最後にこの食管会計の赤字の決済は調整勘定で行なわれるのですから、小さい額のものはわざわざ補正しなかったというだけのことでございます。
  106. 川俣清音

    ○川俣委員 収入の明確なものですら、わざわざ補正しないということはおかしいのじゃないですか。不明確であれば補正をしないということはわかりますけれども、三十万トン買い入れるということは明確でしょう、そのための補正ですからね。それならばそれに伴うところの収入というものがあることも、これまた明瞭じゃないですか。三十万トン買わないというなら不明瞭ですけれども、三十万トン買い上げる結果生ずる赤字の補てんですから、それだけの収入が付帯して起こってくる。それはやはり金額は小さくても入れられるのがあたりまえじゃないか。それだけ赤字が少なくなる。それをわざわざ隠しておられるような感じを受けるから、それでしつこくお尋ねしておるのです。
  107. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 検査料収入の収入見積りにつきまして、事務的にお答え申し上げますが、ただいま御指摘のように麦の買い入れは当初百三十万トン見積りましたものを、結果は百六十万トンを若干こえております。三十万トンばかりふえておるわけであります。従いまして、それに伴いまして検査料収入は麦の関係で約五千万円ばかりふえる計算になるわけであります。ただ雑穀等の検査料収入の見通しは、まだ現在の時点においてはっきりしておりませんし、全体としてどういうふうになるか、はっきりした見通しは持ちかねておるわけであります。昨年の実績を見てみますと、昨年度の麦の買い入れと本年の麦の買い入れとは大体同数量でございますが、昨年の検査料収入の総額は四億八千万円程度になっております。ことしの麦の買い入れ百六十万トンといたしましても、総収入におきましては大体五億円以内というふうに考えられますので、今回は特に収入の面において補正をいたさなかったわけでございます。
  108. 川俣清音

    ○川俣委員 食糧庁長官を相手にして話をしても、これは時間を空費するだけです。大蔵省がこういう印紙収入などについて、これは結局人件費なんですね。人件費の値上がりを見るならば、その収入も当然見るということが私はやはり建前だ、こういうふうに思うのでございます。これ以上この点については差し控えます。  そこで次にお尋ねしたいのでございますが、企画庁がおいでになっておるようですからお伺いします。一体今後十年間に農産物はどの程度生産量がふえるという見込み、または計画を立てておられますか、この点企画庁お尋ねいたしたいと思います。
  109. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 経済審議会で出しております所得倍増計画に従いますと、農業で昭和三十一年――三十三年平均を一〇〇といたしまして、目標年次の四十五年では一四五・四%、林業で一三三・六%、漁業で一四六・八%、こういうようになっておるようでございます。
  110. 川俣清音

    ○川俣委員 もう少し、農業といいましても非常に広範な農産物でございますので、今後農業構造を変えていくということになりますれば、米麦ではどのくらい、あるいは畜産ではどのくらいというようにお示し願わなければならないと思うのでございます。
  111. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 それでは申し上げますが、農業のうちの耕種、耕作する方でございますが、一二一・九、それから畜産の方は三一六・四、養蚕は大体現状維持、一〇〇でございます。
  112. 川俣清音

    ○川俣委員 そこでさらにお尋ねいたしたいのでありますが、現在大麦、裸麦の在庫が増加している一方、生乳の不足あるいは豚肉の不足等の現象の起こっておることは御承知の通りであります。これは畜産物に対する価格支持制度がないために起こってくる現象であると同時に、加えて飼料価格に対する適切な施策が不備であるから起こってくるのではないかと思うのですが、農林大臣はどのような見解を持っておられますか、お尋ねいたしたい。私は、原料乳や食肉あるいはくだもの等の価格支持制度がとられることによって、農産物に対する生産を増強する力になり得ると思うのでございます。特に農業以外の産業が高成長を持つときに、その犠牲になる農業という傾向が強く出てきて、農業と他産業との格差が増大するときに、こうしたものに対する方策を打ち出しておきませんと、経済成長の大きなネックとなりまして、期待されるような成長率を制約する結果になるのではないか。農村における購買力が、有効需要が今日の肥料の産業を進め、あるいはビニール産業についても、農村の大きな有効需要を待って成長したと思うのでございますから、そこでこの点についての所管大臣の見解を伺っておきたいと思うのであります。
  113. 周東英雄

    ○周東国務大臣 御指摘のように、今後の農業における所得の引き上げ、生産の拡大ということのうちで、大きな望みを嘱されるのは畜産、酪農等であると思います。これに対して価格安定、価格支持政策がとられなければ伸びないじゃないかということですが、私は大体御意見はごもっともだと思いますが、それについての方法でございます。ただいまお話しのように、将来日本における畜産物の需要、乳の需要という方は、もっぱら消費者の安定した伸びということが必要でありますが、それに関しては、何と申しましても畜産物の価格が安定した形において伸びることが必要だと思う。そうなりますると、需給、消費の増はこれについてくると思うのであります。それ以外のものについては、方法として私どもはまず今御指摘の通り、飼料の安定ということが考えられます。これはこれからの農村対策といたしまして、作物の転換等を要する場面において、畜産に対応する自給飼料と言いますか、草地の改良と申しますか、飼料について大きな安定的な方法を考えるということが一つ。またもう一つは、畜産、酪農について共通する問題は、何と申しましても流通過程における改善ということが大きな問題でありまするし、またこれらをやらせるにつきまして必要なる金融的措置ということが必要だろうと思います。こういうふうなあらゆる面を総合的に立てまして、価格の安定を進め、需給、消費の増大をはかっていきたい、かように考えます。
  114. 川俣清音

    ○川俣委員 これで戻って総理大臣にお尋ねいたしたいのですが、日本は災害国でございまして、過去の歴史を調べてみましても、災害というものを無視した行政は成り立たないようでございます。そこで今度の所得倍増にいたしましても、経済成長率にいたしましても、災害をどの程度見込んでおられるのか。この成長率の中に、災害によるところの成長率の引き下げの度合いがどの程度見ておられて、いわゆる総理が言われる九%の成長率がある、こう言われるのか。一体災害というものは全然なしに成長率を計算しておられるのか。戦後の災害ではそれほど大きい災害もなかったとも言えるのですが、部分的にはありました。これが重工業の地帯に災害が起こりますと、かなり成長率を阻止する大きな要因となると思うのです。日本は災害国でありますから、その災害国というものを頭に入れないでの成長率をどうも考えておられるやにも見受けるのですが、災害の度合いをどの程度に見積もって成長率を計算しておられますのか、これは詳しくなくてもいいですから、総理における見解一つ伺っておきたいと思います。
  115. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 昨日来申し上げましたごとく、企画庁で諮問を受けました所得倍増計画案の内容は私詳しく見ておりません。多分私は、個人として想像した場合に、あれの中に災害による所得伸び率の減は別に見ていないのではないかと思います。われわれは十年以内に倍増ということを申しております。さしあたり三年間は年平均九%というので、今この分は立案いたしております。池田個人として三年間のうちに災害による伸び率をどう見ておるかということは非常にむずかしい問題で、これは私は計算できないと思う。気持だけのものであります。私が年九%と言う問題は全体として見てのことであります。あるいは電力はどうなる、飼料はどうなる、鉄鋼はどうなるというふうな計算はできましょう。できましょうが、その災害が、たとえば名古屋の伊勢湾台風のごとき全体の伸び率にどれだけの影響があったかと申しますると、国全体としたらあれだけの大きな災害でも、所得の伸び率からいったら大した支障のものではないので、ものの〇・〇何%というくらいじゃございますまいか。今後それが入れられれば入れた方が完璧かもわかりませんが、およそ年平均何用というときに、災害がこうだ、しかもその災害が地震であるや、あるいは津波であるや、あるいは豪雨によるものか、こういうことは私はどこの計画でも入れていないのが普通じゃないかと思います。しかし全体としての九%の伸び率というときに、いろんな点はある程度考えられるものは頭に入れてやることは当然でございますが、数字に出す出さぬという問題は別問題で、企画庁の分での答申についてはそういうものは入れていないと見ております。
  116. 川俣清音

    ○川俣委員 災害そのものを見ると、大きな災害でないということですが、日本の場合には交通網の麻痺という形において、これは生産に大きな影響を与えることは幾多の経験を見ておる。それじゃ災害に耐え得るような港湾の施設あるいは交通網の整備等が行なわれておりますならば、今の大臣の答弁で私は必ずしもいなめないと思うのですが、現在の道路の状態、交通網の状態、港湾の状態等から見ますと、災害によりまする間接の被害というものが、相当日本経済の成長の上に大きなネックになって現われるということは、過去の経験から言い得るのではないか。こうした日本は災害国でありながら、災害を無視してから宣伝をすることはやや無責任ではないかと思うのです。その災害対策というものを十分考慮に入れておるからその影響は微弱で済むのだ、これなら私は答弁として聞きとれないわけはない。いや影響は少ないのだというだけではなかなか受け取れないと思いますし、一般の国民も災害なかりせばという楽観の上に立って経済成長率も計算されておるのです。学者の中には――日本の災害というものは他の国と比較して非常に災害率が高いばかりでなくして、その社会的施設でありまするところの、社会的資本でありまするところの道路、港湾、交通の整備が十分でないために起きるその被害が甚大であるということを考えまするならば、その方面に対する当然の対策がなければならぬはずだと思うのです。軽微で済ませるならばその対策がなければならぬ。この点総理、どうでしょうか。
  117. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 御質問の点が災害による伸び率がどうなるか、こういう御質問だと思って答えたのであります。今のお話では、それではなしに、うらはらになりまするが、どういうふうなことを防止について考えておるか。これならば、私は三本の柱の一つとしてやっております公共投資ということでございます。今までは減税とかあるいは社会保障には非常なたくさんの質問がございましたが、災害予防を兼ねての公共投資ということはあなたが初めてでございます。その点は私は十分考えまして、公共投資がわれわれの政策一つの柱だ、こう言っておるのでございます。これは陰に陽に災害防止にもなることでございます。また治山治水にしましても、私はそういう観点から相当力を入れていきたい。これが三本の柱の一つでございますから、その点は十分考えております。
  118. 川俣清音

    ○川俣委員 柱は三本であっても、一本が弱ければ鼎立しないわけです。特に治山治水にいたしましても、水資源でありまする山林にいたしましても、あるいは林道網の拡充にいたしましても、過去の状態から見ますると、アドバルーンはかなり強く上げるのです。ことに周東さんは長年治山治水の会長をしておられて、毎度アドバルーンは相当上げられるのですけれども、予算の面については、大会等においては相当自信を持った発言をされまするけれども党内に帰ると、期待はずれになるおそれが多いわけです。きのう愛知さんも指摘されましたように、他の産業に対する公共投資が二十五兆円になるのに、農業投資に対しては一兆円で押えられておるという状態は、どうも総理大臣は三本の柱だと言われるけれども、その柱は非常に弱い柱で、三本によって鼎立しないので、一本から崩壊をしていくおそれがあるのじゃないか、こういう意味でお尋ねをしたわけです。  特に今度は周東さんにお尋ねをしたいのですが、あなたは林道協会あるいは治山治水の会長をやっておられて、山村経済のために大いに林道網を開発しなければならないということを強調されておるわけですが、現在の林道の採択基準は御承知のように二十六年に策定した基準です。今の経済成長率に合わした策定ではないわけですから、採択基準、いわゆる採用基準というものが非常に狭い基準になっておる。この狭い基準ですから予算の裏づけは三分の二程度であって、一向進捗しておらないわけです。これをさらに成長率に合わして公共投資を大いにやるとしまするならば、採択基準をかなり広範に広めていかなければならないだろうと思うのです。狭義の採択基準でやってすら予算が三分の一つかず、進捗しておらないのに、今度の成長率に合わして採択基準を上げるとすれば、なお予算の配分は少なくなるというおそれが出てくるだろうと思いますが、周東さん一つ、どういう見解を持っておられますか。あなたがかつて野におられた時代に非常に強調された点ですから、私が今質問しなくてもあなたが積極的に御答弁あってしかるべきだと思うのですが、お尋ねをいたしておきたい。
  119. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お答えをいたします。  治山治水等につきまして、また林道について大へん御心配をいただきましてありがとうございます。ただ川俣さんも御承知だと思いますが、この治山治水計画におきましては、昨年度初めて河川並びに治山につきまして十カ年計画ができて、特別会計制度ができました。これはかなり大幅に、山につきましては二千五百万円、十カ年、河川については九千五百万円という率ができました。しかも大蔵大臣の所管でございますが、でき得る限りこれを財政的な方面でまかなうが、万一の場合にはこの十年計画を遂行するについて、場合によっては特別会計において借入金もできるような形になっている。要はこれを実行に移すことでありまして、ある程度進んでおりますことを申し添えておきます。  それから林道の問題は、当然治山治水にも関係し、山村経済の発展の上からも必要でございます。この林道につきましては、御承知の通り国有林でもうかってくる金を林道の方に出すという形で、これは公有林野のみならず、民有林に対しましても林道の方面に及ぼす計画を昨年から立て、ことしもそれを増加していこうとしております。順次これは大蔵当局とも話し合いをいたしまして、新しい方向に向かって進みつつあります。ことに今度の所得倍増計画等におきます審議会の答申の内容につきましては、あの答申を参考にいたしまして検討いたしておりますので、理屈が合い、筋を立てた形において増加する必要があれば当然その方向に向かって進みたいと思います。
  120. 川俣清音

    ○川俣委員 周東さんにお尋ねするのですが、あまり一般会計で林道網の拡充をはからないから、むしろ林野特別会計から一般会計へ繰り入れるというような形において林道網の拡充をはかったらどうかという農林委員会の決議にけつをたたかれて、やむなくとった措置なんです。進んでとった措置じゃ、ないのです。従ってこれからは実行にあるのだというが、実行の責任者は今度はあなたなんです。私じゃなくてあなたなんですよ。意見を言う方は私ですけれども、実行をする方はあなたなんですから、実行をするという言明を得なければならないので御質問を申し上げているのです。実行するのかしないのか、こういうお尋ねでございます。
  121. 周東英雄

    ○周東国務大臣 実行した姿を見ていただきたいと思います。
  122. 川俣清音

    ○川俣委員 それではさらにお尋ねいたしますが、農村の中でも特に山村は所得の格差が非常に激しいわけです。そういうところから、林道網の開発や治山治水の問題を解決することによって山村経済を高め、その所得をふやそう、こういうことだろうと思います。またあなたの所管でありますところの国有林野事業にいたしましても、今一番問題になりつつありますのは、低所得でありますために山村におり得ないで山村から離れていく傾向が非常に強く出てきたわけです。そこで雇用条件が非常に悪化いたしまして、林業の計画的な生産並びに増強ができないほど雇用条件が悪化してきているのじゃないか、これは総理に言わせますと、そういう者を第二次産業へ持っていくのがねらいだそうでございますが、実行を承るところの周東さんは、こうした雇用条件の悪化する中でこの仕事を遂行していかなければならぬといたしますと、従来の予算では実行率は下がってくるということになるであろうと思われます。予算がふえたからいいのでなくて、予算を実行に移す場合におきましては、雇用条件が悪化しているということを内容として予算を持って参りませんと、実行不可能に陥るのじゃないかということを御注意申し上げておきたいと思うのです。  次にこれは総理にちょっとお尋ねしたいのですが、戦後日本の就業数を見ますと、二十二年から三十三年の間の十一年間で合計千九十七万人、毎年九十六万人が増加してきたと、こう説明されております。日本ではこの不完全な失業者の存在や就業構造の変化などによって、好成長のために必要な労働力を十分供給できるとして見ておるようでございます。これらのいわゆる未就業人口あるいは不完全失業者の数が大きいだけに、これからの経済成長に対して阻害になるところの雇用条件はない、こう見て成長率をはかっておるようでございますが、これは農業の面から見ますと非常に重要なことになって参ります。今日の日本の農業の生産の上昇――生産性は別にいたしまして、生産量の増長は、残念ではございますけれども低所得の過剰な人口によってようやく生産を保ってきたのではないか。これは大きな欠陥でありますけれども、今日の農業の成長というものは、この過剰人口をかかえ、不完全な失業者を持っておるところによってようやく生産が伸びてきたのではないか、これはまことに遺憾ではありまするけれども、そうしたことによって発展をしてきたのではないか。これを総理の言われるように、農業所得の格差をなくするためにわずかな人によって農業を営ませるということになりますると、日本の農業自体が成り立っていくのかどうかという疑問も出て参りますが、総理はどのようにお考えになっておられますか。総理はこの間秋田へ来られたときに、八郎潟を二町五反なんということは言わないで、倍の五町歩の規模にして大いにやったらどうだというような御説の指示をされたそうでございます。これは机上的には二町五反より五町歩の規模で農業経営をやれば生産性が高まるというふうに見られないことはございません。しかしながらいずれも手不足で、五町歩の経営面積をやるならば――農業というものは雇用が非常に時期的に不足なわけですから、自家労働だけではなかなかこなせないのが農業の実態であります。そこで年間においては不安定でありますけれども、潜在失業者があることによって、そういう不完全な失業者があることを対象として、日本の農業というものは過去において成り立ってきた、これを構造を変えるということですが、構造を変えるだけに、いわゆる付近に労働量を把握する状態がないのにかかわらず、規模だけ大きくしたのでは、それだけの生産を上げることができないということになるのじゃないか。それほど日本の農業の本質というものは一年間機械化できないという欠陥を持っておるのでありますから、労働力の不足しておる農業というものは成り立たないことになるのじゃないかと思いますが、総理はこの点どう見ておりますか。そこで特に総理大臣にお尋ねしたいのですが、総理はそうではなくして、むしろ農村に過剰人口を持っておる、この過剰人口の低所得者が農村におるから、大企業の成長率には十分備え得るだけの余裕を持っておるのだ。これは労働力の貯水池だと考えて、そうして六割削減論が出てきたのではないかと私どもは勘ぐるのです。この点について一つお答えを願いたい。
  123. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 御質問の点がよくわからないのですが、とにかく農村におきまして潜在失業者が数百万人あるということはよく言われております。私もそうかなと思う節もございます。削減論と言われるが、これは削減論じゃないのでございまして、ほんとうに農業が今のごく小さい規模でなしに、適正な一つの企業として成り立つような農業はどうやったらいいか。先ほど来もありましたが、二町歩くらいあるいは三町歩くらい、いろいろな点もございましょうが、八郎潟の干拓につきまして、私は五町歩にしろと言ったわけじゃない。どの程度の規模でやられますか、こう言いましたら、三町歩、五町歩二通りある、これはモデル・ケースで五町歩も一つやってみる。それは私はけっこうじゃないか、こう申し上げたわけであります。五町歩がいいと私言っているわけじゃありません。それからこれはもう釈迦に説法でございましょうが、農村が機械化されてきつつある状態、これは好むと好まざるとにかかわらず、耕耘機を持たなければお嫁に来手がないという状態のときに、私は、今までの農業の考え方で、潜在失業者があそこにおるから、急に忙しくなったりひまになったりすることに耐え得るのだ、この考え方は私は古いのじゃないかと思います。私は、機械化することによって相当農村の方に手があいてくる、そうしてそれが多角経営化の方へいくのだ。これはどこの農業でも、たとえばフランスとかベルギーあたりでは一戸当たり七、八町とか十町、あるいは十五町くらいな規模だそうであります。そして土質からいい、気候からいい、雨の関係からいって、決して日本という国はフランスやオランダ、ベルギーに負けるものではないのです。そうやっていくならば、彼らと同じようなことをすれば、日本の農民の頭のよさと勤勉さなら、私は、今の潜在失業者がおったからこそ農村がやっていけるのだという考え方には賛成しかねるのでございます。
  124. 川俣清音

    ○川俣委員 私は別に賛成しろと強要しておるわけではない。むしろそこに農村の問題があるので指摘したわけです。最近の農村の人口の移動状態を見ますると、農林省の統計と文部省の統計と厚生省の統計と必ずしも一致しません。文部省の地方の学校から集めた統計と、農林省の動態調査をやった統計とございますが、御承知の通り農林省の動態調査は抽出調査でございまするから、抽出の場所によって非常に大きな変動を示すわけでございます。文部省のいわゆる中学校及び高等学校の卒業生の就職状態を調査した資料が、全国的ではございませんが、部分的にある。これらを見ますると、毎年青壮年の離農していく率が高まってきている。秋田県の場合の統計を持っておりますが、年々著しい勢いで中卒、高卒の離農者がふえていくわけです。これは長男、跡取りといわず、二男三男といわず、離農していく者が非常に多くなっている。そうすると、機械化するということではございまするけれども、こうした将来一番労働価値の高い者が農村を離れていくということは、必ずしも生産性を高めることにはならないのではないか。特に農林省の統計を見ますると、漸次青壮年の就業人口がふえまして、婦人または老年または年少者によって農業が営まれている傾向が露骨に出てきておる。こうなって参りますと、機械化するというのですけれども、近代農業に切りかえていく能力というものを失ったところに機械化を強要していくということになるのではないか、私どもはそう思いまするので、早く農業に定着するように、農業と他産業との格差をなくさなければ、最後には農業の効率を上げるような労働力を確保することができなくなる欠陥が出てくるのではないか。そのことが他の産業の成長を阻害する大きな要因になるのじゃないかと思うのですが、総理はどのような見解を持っておられますか。
  125. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 川俣さんと全く同感でございます。一部に、離村離農のあれがあるから女子供だけが農業に残るのじゃないか、こう御心配なさる議論がある。それじゃいけない、早く農業が一つの企業としてりっぱに成り立つような態勢を整える必要があるということを私は言っておる。だから全く同感でございます。先般も秋田へ参りましたが、おたくの辺のあのなには、一反歩という田はない。もう三畝か五畝か、徳川時代のあぜそのままを守っておるのでございますが、こういうところを早く近代農業化することによって、りっぱな人が農民として残られるようにしていく、今抜本的策を講ずるときではないかというのが、私の今度の成長論を編み出したもとであります。この点は川俣さんと全く同感で、早く農業をりっぱな企業として成り立つように持っていきたいと考えております。
  126. 川俣清音

    ○川俣委員 その通りだと言われる。その通りだとすれば、総理はたびたび大蔵大臣をされて、農業に対する投資を十分しておけば、あんな変なあぜのままの、土地改良も行なわれないものが放置されているはずはないということになる。ごらんになったように、放置されておりますのは、政府の施策が行き届かなかったために起きておる現象であって、農民の欲しておる土地改良が行なわれていないのは、これは農民の責任ではなくて、従来政治をとってこられました人々の責任がそのまま姿になって残っておるのが車上から見えたということになると思う。私どもはそう理解せざるを得ない。そうじゃございませんか。
  127. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 だれの責任という責任論じゃございませんが、とにかく戦後におきまして米価が非常に上がったからもうこれでいいのだと思ったところが、あにはからんや世が変わってきた、だからここに手をつけようというのであります。私は過去の責任をどうこう言うのじゃなしに、それはそれといたしまして、今度みんなこの国民の盛り上がる力、ことに農民の方々はわれわれ以上にやはり心配なすっておられるのだろうと想像いたしますので、私はみんなから言い過ぎだとか、やり過ぎだとか言われますが、だれかが何どきかやらなければならぬ問題だ、こういうので打ち出しておるのであります。
  128. 川俣清音

    ○川俣委員 私は、総理は少しやはり角度を違えておられるのじゃないかと思うのです。あなたのほんとうの腹はそうじゃなくて、やはり高度の成長には農村の低所得者があることが好ましいという考え方がどこかにあるのではないか。そのことがたまたま、舌足らずだと非難する人も自民党の中にあるようでございますが、六割の離農政策をとるなんということに言葉が走った結果ではないかと思うのです。これは総理はそういうことを言わないと言いますけれども、仙台においでになったときに、三分の二離農させるというのを六割に修正されたわけです。六割六分六厘の離農を六割に修正されたわけですから……。修正などは、新聞記者が修正するわけじゃないし、しかもあなたに随行した記者会見の席上ですから、あなたにないことが表面に出てくるわけはない。こうした農村人口の過剰を、農村を救済するためではなしに、むしろ大企業に対する犠牲を、この不均衡になっております、格差の生じておる農村に求めておるのではないかということで、せっかくあなたが大言壮語されましても農村は踊らないで、自民党の中にはこれはもうけしからぬことを言ったというような御批評が出てきますのは、私の曲解ではなしに、あなたの方の所属の政党の中からも出てきますので、従って農村に対する投資と申しますか、農村に対する施策が、大蔵省の削減にあって、とかく十分な生産基盤に対する施策が行き渡っておらなかったために格差がさらに生じておるのではないか。池田さんの本家であります大蔵省がもう少し農村に対する施策が行き渡っておりますならば、こんなに格差ができなかったのではないかと、そこに政治的な批判も生まれてきますし、農民の池田内閣に対する信頼度もそういうところから出てくる、あなたの言葉の走りに出てきたのではなくして、従来やはり大蔵省の本尊と思われております池田さんに対する農民の不満が言葉じりをとらえて出てきたのではないかと私は思うのです。従って今後は農業の生産基盤の充実のために相当な財政的な措置をとるということのために周東さんが大いに張り切っておられるわけですが、それを総理としてお認めになりますかどうか、この点をお伺いいたします。
  129. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 農家、農民の数が減るということは仙台でどうこう言ったのではございません。私はテレビの会見のときに、初めいろいろ所得の年率増加を計算しておったのですが、年に一一%ずっと伸びた場合の十年後の状態は三分の一、それからまた修正いたしまして九%のときには大体六割近く減る、この九%と一一%を間違って言いましたということをNHKの放送でもう仙台へ行く前に言っております。これは自分のほんとうの試算では、純農家は今の六割近い減の四割程度の農家として残るのじゃないか、これは専業と第一種兼業ですが、こう言っておるわけであります。農村に対しましての措置は、先ほど申し上げましたように、私はいろいろな企業間の均衡、格差解消につきましてできるだけの努力をいたしたいと考えております。
  130. 川俣清音

    ○川俣委員 次にお尋ねいたしたいのは貿易の自由化であります。さなきだに農業と他産業との格差が拡大していくおそれがありますときに、さらに貿易の自由化が促進されて参りますことによって、農産物における打撃は絶大なものがあるのではないかとおそれられておるわけであります。この点についてどのような見解をとっておられますか。貿易の自由化の促進の圧力を農村に及ぼさないようにするためにどのような施策をとろうとしておられますか、この点をお尋ねいたしたいと思うのであります。さらにまた、十一月十三日に来日いたしましたアメリカのベンソン農務長官が十四日に農林省を訪れまして、小麦、大豆などの自由化促進を極力要請したと伝えられておりますが、どのような提案がなされ、これに対して農林省はどのような回答を与えておりますか、この点をお尋ねいたしたいと思います。
  131. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お答えをいたします。自由化の問題について農村に悪影響が及ばないようにいかなる対策をとるか、こういうお尋ねであります。これは今日までに自由化された品目の中で農村関係は約四七%でありますが、これらは農村においての競争作物でもなく、むしろ農村に対してはよい影響を与える、あるいは一般国民によい影響を与えるようなものが自由化されております。これは今後の問題であります。これについてはよく自由化すれば一ぺんに農村には安い農産物が入って農村は大へん迷惑するような印象を与えるような議論をされますが、これは今後の問題につきましては、農村に影響のないように、自由化を原則としてやらなければならない場合においては、これに対して品目別にある程度の関税の問題あるいは国内の予算措置等によりましてこれが保護をはかり遺漏のないようにしていく、これが私どもの態度であります。このことは川俣さんは十分御承知でありましょうが、西欧諸国におきましても、いろいろ自由化もやっておりますが、やはり農産物等に対してはちゃんと保護するところは保護しております。日本だけが自由になったら農村はどうなってもいいというような政策池田内閣はとらぬのであります。御承知おき願いたいと思います。それから今のベンソン長官の問題でありますが、これはちょうど十一月十四日でありますので、前の農相も選挙中で御不在でございまして、当時農林事務官がこれに会っておりますが、私話を聞いてみますと特別に具体的の話はなかったようであります。ある程度儀礼的な会見であり、ことに事務次官でありますから突っ込んだ話まで入らなかったと思います。聞きますと、まあ一般的にアメリカからの農産物輸入等を考えてくれというような話があったということです。
  132. 川俣清音

    ○川俣委員 紙上伝えられるところによりますと、ベンソン長官がわざわざ農林省を訪れておるのでございまして、それには相当大豆または小麦の輸入の増加を期待して折衝が行なわれたと見られておるわけでございます。なかったということでございますならば、それはそれでよろしいのですが、強要を受けた場合はどのような処置をとられるかをお聞きいたしたかったわけです。次にお尋ねするのは、砂糖の輸入の自由化の問題でございます。これは総理関係が深いようでございますから、お尋ねしておきたいのでございますが、十一月二十九日に政府は砂糖の輸入の自由化を明年四月以降できるだけ早い機会に進めるという決定をしたようでございます。これによりますと、日本の砂糖業界がかなりあわてたようでございまして、農林省の推定によりますならば、砂糖業界が手にした過剰利潤は本年度で七十八億、昨年度で三十六億、二年間で百十四億に上る超過利潤を得たといわれております。そこで砂糖業界から農林省に対しまして、これは池田さんの側近の紹介を持っていったといわれておりますが、真偽のほどは別にいたしまして、超過利潤は食管会計に納付金として出すから自由化政策は慎重に考えてほしいという陳情雷が出されたといわれております。これはたまたま日本経済新聞に載ったのでございますが、政府は砂糖業界の超過利潤を幾らと見ており、これをどのように措置するつもりでおりますか、大蔵大臣と農林大臣にお尋ねしておきたいと思います。前の点につきましては総理大臣からお答え願いたいと思います。
  133. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は砂糖問題につきましては紹介もしませんし、関知いたしておりません。ただ官房長官から聞きましたら、総理官邸の隣の部屋で三大臣がお集まりになって砂糖の問題を議論しておられる。どういうことをやるんだと言ったところが、どうでも輸入関税を引き上げる。どのくらい引き上げるのかと聞きましたら、六円五十銭くらい引き上げる。そして今の砂糖会社がもうかっているのが非常に減って、ことに消費者価格がそれで減るようになる。ああそうか、それならば今の砂糖に対する関税、消費税は非常に高いが、どのくらいになるか。百四、五十%に今でもなっておると思います。それを上げた場合に価格の点はどうなるか。それからこれはいずれはやらなければならぬ問題だが、今のキューバ糖、台湾糖等のバーター関係のものをどういうように措置をするのか、そういう点について、しかもまた関税を引き上げるとすれば、関税制度調査会にいつかけるかということにつきまして、官房長官に言って、南條農林大臣から資料をよこせ、こういっただけで、資料は私あとから見まして、まあ大体妥当な案かな、こういうので、まだ閣議決定いたしましたかどうか、その点の事後報告を受けているだけでございまして、タッチしておりません。しかし私は方向としては、新聞その他で見ましたが、大体あれでいいのじゃないかという気持でおります。
  134. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私の手元にある数字は農林省の推算でございますので、こまかい点の答弁は農林省の事務局からお願いしたいと思います。本年度が七十八億円、昨年度が三十六億円、二年間に約百十四億円程度に超過利潤が上るだろうという数字でございます。
  135. 周東英雄

    ○周東国務大臣 超過利潤の問題については、ただいま大蔵大臣からお話があった通りであります。いろいろお話があったようですが、私どもは陳情を受けたということも聞いておりませんが、こういうふうな超過利潤をそのままにしていくことはあまりよいことではないと思いまするし、また、砂糖に関する自由化ということはやはりある時期に、これを行なう必要があろうと思う。しかしその結果が、われわれが国内において奨励しておるブドウ糖なり、てん菜糖の問題等に対する方も考えなければなりませんので、その意味において関税を引き上げるということを大体きめておるわけでございます。そういうことをやりますことによって、今後は一面においてはそういう超過利潤ということがなくなりまするし、また一面においては自由化をされた時期において、この関税の引き上げは同時に発効するような運びになると思います。これによって一つの保護を考えていこうというふうに考えております。
  136. 川俣清音

    ○川俣委員 大蔵大臣の説明によりますと、私が先ほど申し上げましたように、砂糖業界が手にした超過利潤は本年度は七十八億、昨年三十六億、合わせて百十四億という農林省の計算をお認めのようでございますが、こんなに一体超過利潤があったものをそのままにしておかれるつもりですか。それとも何らかの処置をとられるつもりですか、これは大蔵省としての見解を承っておきたいと思います。
  137. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この超過利潤をなくする方法は、さっき農林大臣が説明されましたように自由化すか、そうでなければ食管会計にこの超過利潤を吸い上げる方法をとるかというような問題でいろいろ論議がございましたが、結局自由化によって将来超過利潤が発生しないような措置をとるということに方針がきまったわけでございますが、過去に起こったこういう利潤は法人の利潤として税の対象になることになります。
  138. 川俣清音

    ○川俣委員 そうすると大蔵大臣と農林大臣の答弁は食い違っておりますね。大蔵大臣はこういう超過利潤の発生しないように自由化を促進していく、こういう答弁なんです。農林大臣は自由化による国内産業の影響力を考慮して対策を立てて自由化する、こういう答弁になっておりますね。確かに農林大臣は結晶ブドウ糖その他てん菜糖、最近非常に農業の上に脚光を浴びて参りました西南暖地のいわゆる暖地ビート、北海道で今日まで発展しました寒地ビート等に与える影響が非常に大きいし、しかも北海道の工場などはあらゆる政争の中から、あれだけの紛争を起こして、相当な運動資金を使ってまで設置して参りました工場に大きな影響を与えるわけであります。そのことは大したことはないにしても、北海道の転換期に立っている農業が、砂糖産業に転換したために、北海道の寒冷地農業がようやく浮き上がりつつあるときに、この自由化による打撃が非常に大きいと思うわけです。むしろこれを関税によって吸収いたしまして、これらの産業の奨励に向けていくことの方が妥当ではないか、そのことの方が農村と他の産業との格差を埋め合わせる基盤になるのではないかと思う。大蔵大臣はさっそく自由化すると言うが、農林大臣は慎重なんですが、その点はどういうふうにきまっておりますか。
  139. 周東英雄

    ○周東国務大臣 ただいま私お答えしたことと、大蔵大臣とそごしていないのです。私どもは甘味資源の国内増産をはかるということが、これが農業者に対する所得の増加にもなるし、輸入を防遏することにもなるのであります。こういう意味合いにおいて保護して育成していきたい。たまいま砂糖に関する問題に関して自由化の問題が起こる。そうなればその影響をいかにして食いとめていくかという問題、それからてん菜糖及びブドウ糖というような関係は、将来十カ年計画その他でふえるのではなかろうか。その間において、どうしたって不足する数量は入れなければならない。その間において、ただいま申し上げたような超過利潤なんか取らせないことも一つ考えられるし、同時にもしも自由化された場合において、計画的に育成さるべきブドウ糖その他の内地甘味資源の保護のためにも関税というものの引き上げを考えていく、こういうことで大体この間の関税審議会においてはさまっているわけです。ただしこのことはいろいろとガットの方との話し合いもしなければなりませんし、そのことができるときにおいて自由化の問題は同時にやらなければならぬ。その点は並行して考えている。こういうことを申し上げております。
  140. 川俣清音

    ○川俣委員 大蔵大臣、農林大臣は今このように話された。あなたは今超過利潤をなくすために自由化を促進するのだ、そう決定したという御発言であったようでございます。そこで食い違っておらぬか、こうお尋ねしたのです。その言葉じりをとらえるわけではございませんが、どちらでありますか、この点明確にしておいていただきたい。
  141. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今申しましたように、超過利潤というのは割当制度から発生してくる現象でございますので、これをどうするかといういろいろ関係省の相談のときに、こういう方向で解消しよう、そのためには今申しました自由化をやる以外にはない。ただしその場合には国内のいろいろなところへの影響がございますので、関税をどれだけ上げるのが合理的かというような話を関係省の間でして、大体方針意見の一致を見たということでございます。
  142. 川俣清音

    ○川俣委員 次にお尋ねいたしますが、最近大企業が農村へだんだん進出してくる。必ずしもそれは私どもは否定はしませんけれども、やはり影響の非常に大きいことを考慮しなければならぬ。特に大漁業家が持っておる蛋白資源を活用するために大規模の養鶏経営を始めております。各地に大規模な経営を始めているわけですが、これらは養鶏振興の上に必ずしも悪くはないと思いますけれども、今日の戦後養鶏がこれまで盛んになって参りました農民の犠牲も非常に大きいわけであります。犠牲が回復しないうちに大企業が進出して参りますというと、犠牲倒れになる農家が非常に多いと思いまするし、またこの養鶏によるところの利益は家族の労働による小経営によって盛んになってもきておるわけです。だんだん近代的な養鶏にも変わりつつありますけれども、なお産卵の約半分というものはこの家族経営によって生産を維持しておるわけです。これが頓挫いたしますと、これは食生活の上に大きな影響を与えるわけですから、農業の面からもまた生産の面からも、小経営が必ずしも否定されない事情が消費者の事情からも生産者の事情からもあると思う。それを無計画に大企業が農村の分野に進出して参りますと、一時生産を渋滞させるようなおそれも出てくると思いますし、農家経営の上におきましては大きな副業としての打撃も出てくると思うのでございますが、今後どのように処置し、どのように政策を進めていくおつもりでございますか、農林大臣にお尋ねしておきたいと思います。
  143. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お答えします。御心配の点は、まことにごもっともでありまするし、私ども新しい農村のあり方、農業増産を進めて参るについて、この点は十分考えておる次第であります。ことに御指摘のように、畜産につきまして、牛豚、鶏というようなものにつきまして、最近大企業と申しますか、ことに水産会社がこれをみずから買うて原料として加工するというようなことが起こりつつあります。しかしこれに対しましては、私ども大体十一月でありましたか、具体的指導によりまして覚書を交換させております。これは今後農村において養豚、肉牛の飼育、鶏の飼育等について農業団体を中心にして農村にやってもらう。その肉を引き取って加工の方をやっていくとかいう面、あるいは委託生産と申しますか、ある程度飼育すべきひよことかあるいは小豚を会社の方から渡して、これを飼育した後に引き渡させるというようなことや、いろいろな点について農村のこれからやろうとする畜産の増加に対して、影響のないように、相互に考えていこうという覚書の交換を指導的にやっておりますが、今後ともそういう点については十分に考慮を払っていくとともに、やはり農村自体がもう少し力強く団結して、あるいは共同法人的なもの、あるいは農業協同組合等が、畜産酪農についての強い力を出し得るように政府は施策して参りたい、かように考えております。
  144. 川俣清音

    ○川俣委員 そこで大臣、問題になるのですが、ようやく封建的な小作制度から最近解放されたわけですが、また豚小作だとか鶏小作というような傾向が委託という形式で出てくるのではないかという懸念があるわけです。これは決して近代化ではなくてむしろ逆行でございます。何か農林省はそういう逆行的な指導をしておられるようですが、周東さん、新任ですから、この点一つ是正する必要があるのではないかと思うのです。次に、農業災害補償制度についてお尋ねをいたしたいのですが、現行の農業災害補償制度に対しては農民の不満も大きいし、政府、大蔵省当局等にもかねてからその改正の意図が明らかになってきております。そこで、本年四月農林省に農業災害補償制度協議会が設置されるに至ったのであるが、この協議会が種々検討いたしまして、去る十月十五日に一応現段階においては最善と見られる小委員会の案が決定いたしたはずであります。ところが、その後与党の内部にいろいろな議論がありまして、そのままたな上げになって今日まで本委員会の決定を見ずに放任されておるようでございます。長年各方面から批判の行なわれましたこの制度でございまするから、すみやかに制度改正の態度を決定いたしまして、来年度予算の編成にあたっては、この改正を見越した予算並びに法案の用意をすべきではないかと思いますが、農林大臣の所見を伺っておきたいと存じます。
  145. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お答えしますが、ただいまの御意見はまことに私も賛成であります。ただ小委員会で一応の案がまとまっておりますが、ときあたかも選挙前後の混乱していたときでありまして、なお十分に検討いたしまして、すみやかにまとめまして予算案なり法律案を出す覚悟でおります。
  146. 川俣清音

    ○川俣委員 もう二点で終わりたいと思います。これは総理にちょっとお尋ねしておきたいのですが、他産業、農業以外の産業の高度成長からくる地価の高騰によって、農業所得の実取得がさらに減少するような傾向が最近非常に濃厚に出てきております。名目地価の高騰によって農業所得が減少するような結果になりますることは、農業の生産の上にも、また所得格差を解消する上からも好ましい現象ではないと思うのでございます。高度成長産業が土地を必要とする、そのこと自体からくるいわゆる低生産の農業の生産基盤であります土地の値上がりによって農民所得が減って参りますことは、何としても耐えられないことだと思います。そこでやはり地域を農業地域と工業地域というものとを区分するというようなことも非常に困難であろうと思いますが、地価の高騰によって住宅難がさらに深刻になると同時に、一方においては名目的な土地の値上がりが固定資産税の上に現われて参ります。今度は一五%ですか、何パーセントかの固定資産税を上げるわけですから、さなきだに農業所得が低いといわれるのに、固定資産税だけが上がって参り、固定資産税が上がることによって、その他の、地方における農民のいわゆる公課負担がふえてくるわけであります。地価の値上がりによって農村の公課負担がふえて参りまして、結局農業所得を減少させる結果になるのではないかと思いますが、これに対して総理大臣、何かうまいお考えをお持ちになっておるのでありますかどうか。ただ高度成長だけが望ましいということで放任しておきますと、こういう結果が生まれるおそれが現実に出てきております。この点についての御見解を承りたいと思います。
  147. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 実態はよくわかりませんが、工場ができたというのでその付近の田畑の値段が上がった、従って固定資産の課税標準を上げる、こういう事例がございますか。私はそれはあまり好ましくないと考えております。農地等につきまして、その付近に売買実例が上がってきたから固定資産税を上げるという措置は、全体として私はとるべきではないと考えております。しからざる限りにおいて地価が上がったから小作料をどうこうということはないと私は思っておりますから、お話の点は固定資産税を上げるということになればこれは別でございますが、私はそういうことはよくない、抑制いたしたいと思います。
  148. 川俣清音

    ○川俣委員 総理大臣、こういうことなんです。今度固定資産税を上げるわけです。地価、宅地の固定資産税を上げる計画が発表されておるわけです。そこでこれは町村内において評価をするわけですから、工場ができますと付近の固定資産の評価額が上がるわけであります。上がった形において税金をかけられる、こういうことになります。その町村内の税金は高くなりませんけれども、町村内における税金の比率が非常に違って参ります。そういたしますと、工場の近くにあることによって評価が高くなり、しかも固定資産税が上がって参りますと、固定資産税自体ではいいのですが、それによってその他の賦課される公租公課が非常にかさばってくるわけです。そうすると負担が非常に過重になってくる。すなわち農民所得が減ってくるということになるのではないか、これに対して処置をどうされるか、こうお尋ねしたわけであります。
  149. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 所管のことではないし、詳しくは存じませんが、しかし固定資産税というものは、その土地に対して負担力がない場合に、その課税標準を上げるということは、私は税の本来から言ってよくないと思います。それは今まで田であったものが、畑であったものが宅地になれば、それは当然収益力が変わってきたのですからこれは上げなければいけないが、隣が宅地になったから同じように米麦を作っておるところをこの際上げなければならぬということは、固定資産税の本質からいっていかがなものかという私見を持っております。どういうことを自治省があるいは各府県がやっておるか知りませんが、名目的な値上がりによって税負担を多くするとか、あるいは他の負担関係を動かすということは、いかがなものかと、私はあまり賛成しておりません。ただほかに事情があるなら別でございますが、私は固定資産税の性質からいって、そういう考え方は少し行き過ぎではないかと思います。
  150. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お話の点でありますが、今度改定期になっておりますけれども、類地価格によって非常に高くなっておるからといって、それを評価の基準にはしてもらわぬことにしております。売った人はなるほどえらくもうかるかもしれませんが、農家にとって売らない土地については、それは実際は生産の基盤でありますが、価格はないと見てもいいくらいであります。絶対に離すべからざるものであります。それについて類地価格で評価されることは困るということで強くお話をし、自治省の方におきましても、これは従来と同じようにやるとすれば、農家の所得が増加した範囲において最低限にこれを考えようということで進んでおることだけを申し上げておきます。
  151. 安井謙

    ○安井国務大臣 ただいま農林大臣がお話の通りでございまして、せんだって大体平均が五%、農地につきましては三%、これは今のお話の通り、収益を基準に、その収益も最低を基準に評価をいたす基準を今出しておる次第であります。
  152. 川俣清音

    ○川俣委員 自治大臣はあまりよく御存じないかもしれませんが、自治省が各府県に対して標準を示して、県がまた町村に標準を示す、標準が三%となりあるいは五%になるということについては理解できる、でただ町村で割り当てる場合には、やはり付近に工場ができたり、あるいは今農林大臣が答弁されたように、売り払って宅地になっておるようなものがそばにありますと、大体類地価格だということで評価査定が非常に高くなる、高くなって税金が重くなる、一方においては軽くなりますけれども、一方においては重くなる、町村の平均は変わりはないけれども、非常にそうした区分ができてくるわけであります。それで私はお尋ねしたのですけれども、平均は五分でありあるいは三分であります。しかしながら固定資産税の五分の値上がりの分布状態が異なってくる、それによって名目だけの土地公課になってきて農民所得が減る現象が出てくるのではないか、こういうお尋ねをしたわけでありますから、その指導をどのようにされるかという御説明があればよろしいのです。
  153. 安井謙

    ○安井国務大臣 御説の通りでございまして、類地の土地が上がって、それに対して評価が之をして農村に負担をかける、農家に負担をかけるということの不当であるということは、ただいま総理のお答えの通りでありまして、この点につきましては、自治省といたしましては、今の基準を示しますと同時に、そういうことのないように十分行政指導をやって参るつもりでございます。また家屋等につきましても、今の御趣旨につきまして、十分な措置をいたすように用意をいたしております。
  154. 川俣清音

    ○川俣委員 次にたばこの問題について一つ大蔵大臣にお尋ねをいたしたいと思います。三十六年葉たばこ賠償価格が決定を見ようといたしておるようでありますが、専売公社の審議会に対する案は、諸物価の値上がり等を加味いたしまして、二・五%の引き上げを提案いたしておるようでございますが、審議会の答申によりますというと、これはおもに学識経験者の意見であるそうでございますが、生産者側は退場して答申がなされたそうでございますが、五%の値上げを決定をして答申したようでございます。この答申を尊重されますか、専売公社案であります二・五%の程度よりも引き上げないという御意向でありますか。今後農民所得の上に大きな影響をもたらすたばこの賠償価格でありますだけに、大蔵大臣の御答弁をわずらわしたいと思うのであります。さらにもう一つ、つけ加えてお答えを願いたいのは、こうした農産物価格は、農林物資規格法によりまして農林省の規格に基づいて一般市場に取引されるという構成の法律がございます。たばこについてだけは例外で、公社が収納検査をするわけです。かつてこれは公社でなかった時代、大蔵省がやっておられた時代には、例外として認められたことでございましょうが、公社といえどもやはり民間でございますから、農林規格という規格に基づいて検査をされる方が農産物全体の構成の上からいって妥当ではないかと思うのです。これは米もまたほんとうは収納検査でございまして、農林規格から申しますと邪道を行っているわけですが、葉たばこはさらに邪道だと思うのです。葉たばこの奨励の上から申しましても、やはり農林物資規格法という法律がございますから、その規格に基づいた検査、第三者検査が行なわれることが妥当ではないかと思う。この点についての御見解、二つ御答弁願いたいと存じます。
  155. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 専売公社の諮問案は御承知のように二・九%ということでございましたが、昨日来国会の与党の方たちからの話もありまして、この計算の基準についていろいろ問題があるというようなことでございましたので、いろいろこちらも検討いたしましたし、またこの審議会におきましてもその点がいろいろ指摘されまして、その結果五%を下らないようにという答申が出て参りました。もちろん、私どもはこの答申を尊重して五%以上のところでどの辺が適当であるかを今内部で検討しておるところでございますので、いずれにしろこの答申案を尊重して決定するということは間違いございません。それから今の検査の問題につきましては、私よくわかりませんので、事務当局からお答えいたさせます。
  156. 石原周夫

    ○石原政府委員 検査の規格の問題につきましては十分に検討いたしてみまして、よく専売公社とも相談をいたしたいと思います。
  157. 川俣清音

    ○川俣委員 もう一点で終わりたいと思います。これは総理に特にお尋ねしたいのですが、米の需給が非常に円滑になって参りましたので、これをいたずらにストックしておくというようなことは、食管会計をしてますます窮屈ならしめるもとであると思うのです。そこで米の利用度を高めていくということが必要じゃないか。いたずらにストックをかかえておるばかりが能じゃないと思う。そこで加工用あるいは工業用または酒米用に米を利用した過去の実績を調べて参りますと、明治十四年、十五年においては四百九十万石ぐらい酒米に使用しておる。大正になりましても四百万石台があるわけです。昭和になりましても四百万石台の酒米が出ておるわけでございます。農業所得をふやす上からも、総理大臣御承知の通り、あなたの郷里であります岡山等におきましては、酒米としてプラス百五十キロ当たり三千三百六十円という割増しで酒屋が買っておるわけです。これは農民にとっての大きな所得の増でございます。このように酒米としての品種の改良も相当行なわれてきておるわけです。すなわち土地の効用度を高める上からもこうした酒米について新しい品種が出て参りましたから、そういう方面にもう少し利用度を高めていったらどうか。そうしたら一般の食糧の方に――窮屈な時代はこれは別ですけれども、これほど余裕が出てきたならば、もう少し酒米に米を回したらどうか。しかも、酒はかつては嗜好品でありましたけれども、一方においては嗜好品から大体ぜいたく品にまで上せてもいい時代ではないか。また、一方からいうと嗜好品からさらに生活必需品になって参りますから、非常に安い酒と高い酒とを作って、そうしてこれを一方においては、生活必需品であるところの酒は値を下げていく、一方においては、ぜいたく品として高度の上級酒を作りまして、税の対象にしていくということによって、酒造税の緩和もできるのではないか。一方、外国のウイスキーなんかにかなり酒造界が撹乱されておる状態も出てきておるわけですから、酒についての関心の深い総理大臣でございますから、そういうことも進んでおやりになることの方が――私は、これは食管会計の上から言うのでございまして、酒の方はあまり得手ではございませんけれども、そういうことが考慮されるのではないかと思うのですが、この際総理大臣の所感をお聞きしたいと思っております。
  158. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 これはまた所管外でございますが、名ざしがございましたから……。御承知の通り、清酒につきましては、大正から昭和の初めごろは六百万石ないし六百五十万石ぐらい消費しておりました。そうして、米がお話の通り四百万石余りいっております。しかし、嗜好が変わりまして、今清酒は人口がふえましてもなおかつ四百万石前後じゃないかと思います。ビールの方は百万石ぐらいであったのが五百万石、あるいは近いうちに一千万石になる、こういうふうに嗜好が変わって参っております。従って、米が余るのだから酒に使ったらいいじゃないか、こうおっしゃいますが、今米の不自由なときに三倍増醸といってアルコールを入れてやっておるわけでありますから、米を使いますれば、イモがだめになってしまう。だから、国家経済からいうならばやはりイモを使った方がいいので、しかも三倍増醸も、醸造技術が進歩して参りましたから、米とあまり変わりなくなって参りました。今は、私は清酒に高い米を使うということは、国全体としてもまた酒の値段の点から申しても少し無理じゃないか。しかし、片一方をふくらせば片一方がへこむということになりまして、イモの方がもっと苦しくなるのじゃないかという気がいたしております。  それから、御承知の通り、もう特級酒と申しましても千円以上でございますが、二級酒は五百円足らずでございまして、まあ半分になっております。それから、所得がふえましても、特級酒、一級酒というものの売れ行きは、前は全体の三割から三割五分ほどありましたが、今では特級酒、一級酒が一割程度でございますので、お話のようにぜいたく品とか、必需品というふうに酒の方はいっておりません。従って今のお話は、せっかくのいいお考えのようでございますけれども、実情にはちょっと合わないのじゃないかと思います。
  159. 川俣清音

    ○川俣委員 酒のことについては明るいわけではありませんが、しかしアルコールの点については、イモからアルコールをとるということは非常に大きな欠損をしておるわけです。むしろブドウ糖の加工の方に今後イモは移るべきじゃないか。ブドウ糖になると、むしろさっき申し上げた砂糖との影響力の方が大きいわけです。酒のアルコールをとるためのイモの利用というものは、経済的にも決して効果的なものでもないように思います。しかしイモの生産を維持するために、必要やむを得ない処置として今日までとられたことは、妥当と認めます。今後はやはりブドー糖工業の方に進むべきではないかと思うのです。そこで日本独特の日本酒のアルコールを入れて、かなり程度は高くなって参りましたものの、やはりもう少し程度の高いものがあってしかるべきじゃないか。ウイスキーなどあるいはビールにいたしましても相当程度が高くなって参りましたのに、日本の酒だけが依然として、むしろ以前よりも低いという状態であります。そういうためにも原料でありまする高度の米の活用ということが考えられるのではないか、こういうふうに申し上げたのでありますから、一つ御検討を願いたいと思うわけでございます。農林大臣も十分御検討を願いたいと思います。  時間が参りましたので、私の質問はこれで終わりたいと思います。(拍手)
  160. 船田中

    船田委員長 辻原弘市君。
  161. 辻原弘市

    ○辻原委員 最初に私がお伺いをいたしておきたいことは、政府の民主主義擁護ということと、それから暴力の絶滅に対する熱意、またその具体的方策ということであります。この問題につきましては、総理に総選挙の中でも、国民の各階層から非常に大きな世論となってその施策を迫られた問題でありまするので、お伺いをいたしておきたいと思います。
  162. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 民主主義を建前としておるときに、暴力というものはあり得ないと思います。しかしこれはあり得ないことでございますが、事実上出てくるのでございまするから、民主主義を守ろうとするわれわれとして、暴力を、それが集団的であろうと個別的であろうと絶対に排除するように全力を尽くさなければならぬと思います。
  163. 辻原弘市

    ○辻原委員 特に過ぐる十月の十二日に、わが社会党淺沼委員長が日比谷の公会堂におきまして、山口二矢なる少年の心ない暴力によって刺殺をせられたのであります。当時このことはわれわれのみならず、社会全般に対して大きな衝撃を与えました。国会は直ちにこの問題を取り上げて、暴力の絶滅に関する決議を行なって、政府に対して今後再びかかる事態の起こらないような具体的措置を要求いたしておるのであります。たまたま本日、日比谷の公会堂におきまして、この淺沼委員長を刺殺いたしました山口二矢少年の慰霊祭なるものが、国民葬という名によって行なわれておるのであります。この行為を是認し、この行為を賞揚するための国民葬が本日行なわれておる模様であります。私はこの点に対して、民主主義確立、また暴力否定という建前に立つ政府は、一体いかなる所論、いかなる見解をお持ちになるか、この機会に承っておかなくちゃならぬ。総理から承っておきたい。
  164. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私はただいまの御質問のあるまで、そういうことを知りませんので、いかなる人がどういう考えのもとにやったのか存じません。従いまして取り調べまして御返事いたします。
  165. 辻原弘市

    ○辻原委員 すでにこの計画はかなり前から一般にも周知せられておるし、またこういった慰霊祭執行の相当多数の方々の名前を連ねた文書も配布せられておるのであります。この点については公安委員長もお見えになっておられると思いますが、事実は総理が知らないとおっしゃっておる。公安委員長はどうでありましょうか。また法務大臣はこれについてどういうふうな所見を持っておられるか、伺っておきたいと思います。
  166. 安井謙

    ○安井国務大臣 実はまたこの計画の具体的な内容について十分な報告を受けておりません。(「そんなばかなことがあるか」と呼ぶ者あり)至急に取り調べましてお答えをいたしたいと思います。
  167. 辻原弘市

    ○辻原委員 事実について知るといなとにかかわらず、暴力によって人を刺し殺したという行為を是認するがごときこういった具体的な行事というものが行なわれるということについて、そのこと自体について一体総理はどのようにお考えになるか。
  168. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私はそういうことをお考えになり、また具体的に大会を開かれる趣旨を見ないと、総理大臣としてここで即答はしかねます。
  169. 辻原弘市

    ○辻原委員 私は、あえて総理はこの答弁を避けておられると思う。(「読み上げてやれ」と呼ぶ者あり)これは私がここで読み上げるまでもなく、このような文書が、すでにわれわれの手にも入手されておるのです。従って問題は、これは憲法に保障された集会あるいは行動の自由というものは、国民の何人にも与えられておる。しかし私が前段にお尋ねをいたした通り、民主主義ということと暴力とは、これは並び立たないものである。人を殺す行為というものは、これは暴力の最大のものであります。その行為を是認し、賞揚するということは、これは今日民主主義の社会において、わが国の憲法においては、これはいかなる観点に立つとも許されてはいないはずである。その意味において、そういったものの考え、そういった一つの行為というものが、はたして民主主義の社会において許されるものであるかどうかということの一般論を、私はまず総理にお伺いいたしておるのであります。
  170. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 皆さんの考えようの問題でございまして、私は今の憲法下、そういう集会、言論を法律的に取り締まる規定はないと思います。ただそれが具体的に全般の公安、治安に影響するものならば別でございます、思想的にどうこういうことにつきまして、政府がやめろとかあるいはいいとかいうことを言うべき筋合いのものではございません。ただ……(「暴力を是認することになるじゃないか」と呼ぶ者あり)よくお聞きになってから。(発言する者あり)よくお聞きになってから……。そこで、そういう行動をとることにつきましての代表者と申しますか、そういう人の意向を聞いて私は御返事することがけっこうだと思います。あなた方の考えでいえば、そういうものは暴力を使嗾することになる、こういうお考えでございます。私も一応そういうことも考えられぬことはございません。しかしやはりそういうことを考える人の気持もわれわれ聞いてみないと、それはいかぬ、そういうことはやめろという筋合いのものじゃございませんから、一応検討した上において、私はお答えをいたしたいと思います。
  171. 辻原弘市

    ○辻原委員 この点については、これは総理大臣が、この事実を知らぬということで答弁を避けておられますから、いずれわが党におきまして、総理見解をさらにお伺いをいたした上で、問題の追及をいたしていきたいと思いますが、総理の御答弁はいつわれわれお伺いすることができるか、その点をちょっと……。
  172. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 関係当局の報告を聞きまして、御返事いたします。
  173. 井手以誠

    ○井手委員 議事進行について。ただいまの烈士山口二矢の慰霊祭と称するものについては、きわめて内容重大でございます。民主主義擁護、暴力追放の建前からきわめて重大でございますので、ただいま総理の、まだ報告を聞いていないという御答弁は非常に不満といたします。しかし報告がないとしますならば、直ちに調査の上、明日の開会劈頭に総理並びに公安委員長から答弁を願いたいと思います。その点の御回答を願いたいと思います。
  174. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 御趣旨に沿うように努力いたしてみます。
  175. 辻原弘市

    ○辻原委員 私は次に、今回の補正の中で最も重要な項目を占めておる公務員のベース・アップの問題について、政府の所見をただしておきたいと思います。今度の給与改善措置の中で、最も大きな問題としてわれわれが指摘をしなければならぬことは、このせっかくの給与改善措置でありながら、その体系の中には非常に大きな開きを作っておるということであります。簡単にいえば上に厚くて下にきわめて薄い、いわゆる改善とは言いがたい内容を持っているという点であって、このことは私が指摘するのみならず、すでに八月の八日に人事院の勧告が出まするや、各新聞あるいは国民一般の世論の中にも、あまりにもひどいではないかという議論が出ておったことは事実であります。従って政府においても、このことはお認めになるだろうと思いますが、現実に最低が八百円、最高は二万三千八百円という、倍率にいたしますると実に一対三〇の開き、このような大きな格差といういうものは、これは私は本来の改善措置ではないと思うが、一体政府はどういうふうにお考えになっておられるか。またこの開きをそのままお認めになるかどうか承りたいと思います。
  176. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 今回の改正につきまして、お話のような議論はあると思います。しかしこれは逆に申しますると、今までが上に薄く下に厚かったかという議論もあるいは起こるかもわかりません。しこうしてわれわれは、人事院が人事院本来の考え方のもとに、民間給与等と比較いたしましてこれが最善の案なりとして出してきておるのであります。私は上に厚く下に薄い、あるいは従来はどうだ、あるいはこれはここで申すべき筋合いかどうかはわかりませんが、戦前におけるそういう階級等のことを考えたわけではございますまいが、厚いとか薄いとかいうことは比較論であります。どこに基準を置くかということをきめれば、私はその基準ではじき出した人事院勧告が適当のものであると考えておるのであります。
  177. 辻原弘市

    ○辻原委員 どこに基準を置くか、これが他の産業その他に比較をいたしまして、どの程度の、どういう位置づけになっておるかということは、おいおい私は議論の中で明らかにいたして参りたいと思うのでありますが、今総理が言われたことは、これを集約いたしますと、要するに人事院が調査をいたしましたその資料に基づいて、これが適切であると考えたから政府はそれを採用した、こういうお話に間違いございませんか。
  178. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 人事院の勧告を尊重いたしまして、そうして検討の結果、これが適当なるものとして、政府はこれによったのであります。
  179. 辻原弘市

    ○辻原委員 給与担当大臣に伺いますが、あなたはこの開き、しかも最低八百円アップ、またその位置にくぎづけられておるいわゆる下級の公務員の給与というものが、これで適正なりや、現状において適正だ、こういうふうにお思いになっておりますか、その点はどうでありますか。
  180. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 人事院というところは、こういう給与の勧告をするのが任務でございまして、その人事院が案を作りまして政府に持って参りました。われわれ検討いたしまして、人事院の案が適当だと考えた次第でございます。
  181. 辻原弘市

    ○辻原委員 人事院の案をあなたが、また政府が検討したときに、現在の公務員の給与、特に八百円しか上がらない下級の公務員の給与というものが、はたして常識的に考えてこれでよかろう、これでよろしい、こういうようにあなたは判断をされたかどうか、こういう私は具体的な質問であります。人事院のことはあとで人事院に聞きます。
  182. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 一つの体系の立った給与体系として、適当と考えました。
  183. 辻原弘市

    ○辻原委員 あなたはきのうの内閣委員会における答弁の中で、低いということを認められておったではありませんか。予算委員会では、あげて人事院のこの勧告が適切であるからこれを採用したという答弁、食い違っておるではありませんか、どうなんですか。
  184. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 給与というものの基準について、高いとか安いとかいうのは、人おのおのの考え方があると思いますが、一つの体系を整えた上においては、この体系で適当であるということを考えたということは、先日の内閣委員会においても申し上げました。ちっともその点は変わっておりません。
  185. 辻原弘市

    ○辻原委員 低いと言ったじゃないか。その点は、私が現に内閣委員会で傍聴しておりましたから、はっきりこの耳で聞いておる。速記録を調べて、もう一度あなたの今の御答弁と私は対照してみたい。そこで具体的に、あなた方は低くはないのだ、これで適切なんだと言われておる。ところが私は、この人事院の給与勧告を精細に検討いたしました。また現実の公務員の生活状況を見てみましても、これではほんとうにあなた方が能率増進を要求される給与ではないと、われわれは判断するのであります。たとえばその低いという私の根拠に、人事院が出しました資料――人事院が昨年の八月、勧告と同時に説明資料なるものを添付しておりますが、その第八表を見ますと、こういう資料が載ってある。それは東京における独身男子の標準化計費なるものを算出して、これが現在の公務員のいわゆる給与ベースの基礎になっておる、また特に初任給の基礎になっておる。それを見ますと、昭和三十五年の四月における独身男子一人、一日当たりの食生活費というものは、百二十九円二十九銭と算出しておる。これが一日すなわち三食に要する独身成年男子のいわゆる食費なんです。そうするとこれを三で割りますと、一食が四十三円ということになる。四十三円という食費は、一体どういうものを公務員に食べろとあなた方は要求されておるのか。四十三円といえば、これはラーメン一ぱい代だよ。ラーメン一ぱい食ってしっかり働けというのが、あなた方の給与制度であると、この一事をもってしても私は指摘せざるを得ない。これを積み上げて、どういうことになっておるかというと、食料費の一カ月の総額が三千九百三十円、これが基礎になって、人事院勧告書の中にある本年四月の独身男子十八歳程度の標準生計費は月額八千七百十円と見込まれるとあるのは、これが基礎になっておる。この四十三円のいわゆるラーメンを食って生活しろという給与が、はたして低くないとおっしゃるのですか。迫水長官、どうです。
  186. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 人事院の勧告いたしました給与体系というのは、民間のいろいろな給与と比較をして、それでバランスをとったものと考えておりまして、ただいまお示しになりました標準生計費、これも統計上のいろいろな数字だと思いますけれども、それで必ず食えるとか食えぬとかいう問題とは別な一つの統計上の数字だと思いますが、その数字を基礎にしてはじいたものではないと私は考えております。
  187. 辻原弘市

    ○辻原委員 おかしな議論をするものじゃありません。食えるか食えぬかと言って、いわゆる食うことを、また働くことを前提にして給与がきまっておる。しかもこれは人事院が公に出した資料ですよ。その公に出した資料によって、食えるか食えぬかわからない。またこの資料が給与の基礎になっておるかどうかわからない。単なる統計資料であるというのは、これは人事院の一年間にわたる調査を冒涜するものではないですか。人事院の淺井総裁、これはでたらめな資料ですか。
  188. 淺井清

    ○淺井政府委員 お答えをいたします。公務員法の規定によりますれば、民間賃金、生計費その他の事情を考慮して給与を定めるということになっておりますから、それに従って適当な俸給表を勧告したのであります。ですから、第一は民間賃金を基礎にしておる。そこでただいま低いという仰せでございまするけれども、これを民間の同種のものの賃金と比較いたしますれば、私は民間の方が高いとは思いますが、そのような、辻原さんの言われるような差はないだろうと思っております。そこでその生計費の問題でございまするが、これは抽象的に一応標準の生計費を出し、これをものさしとしてあとでこれを初任給のところに当ててみるだけのものでございます。
  189. 辻原弘市

    ○辻原委員 今私が問わぬことまでおっしゃってくれたのですが、給与の基礎は、これは法律に定められておる通り、一つは生計費です。一つは民間給与、いわゆる社会情勢の適合の原則、すなわち民間給与、これは公務員の場合には民間の給与であります。その民間給与の移行の状況と照らし合わせて、それで均衡をとる。その二つのファクターによってこれは給与がきまり、またべース・アップが行なわれる。その重要な一つのファクターなんです。さっき迫水さんは、そういうものは単なる統計のいわゆる資料であって、あたかも今回のこの給与ベースの勧告またべース・アップには何ら影響をしていないようなことをおっしゃる。もう一度私はお伺いしますが、そうなんですか。そういう基礎があるのですか。迫水さん、どうなんですか。
  190. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 私が申し上げましたのは、その統計上の数字を基礎にして、それを基準にして、人事院が計算をしたとは思わないということを申し上げたということで、一番の人事院の意図いたしましたところは、公務員の俸給と一般の働いている人たちの俸給とのバランスをとるということが、重点に置かれているものと考えております。
  191. 辻原弘市

    ○辻原委員 もう一度私は淺井さんにお尋ねしてみたいのでありますが、それは重要なる給与を決定する基本の問題、そうすると淺井さんはまた、法律は生計費といわゆる民間給与との比較ということを規定している。ところが、今の政府答弁によれば、主として民間給与との比較、これが中心であって今回のベース・アップがきまったように言われる。そうなれば先ほど総理が、人事院の勧告を尊重いたしましたということは、またこれはおかしくなってくる。一体どういうことなのか。淺井さんもう一ぺん、あなたが給与をきめられた基礎は何か、この点をはっきりしてもらいたい。
  192. 淺井清

    ○淺井政府委員 迫水国務大臣と私の答弁は決して矛盾していない、同じことを違った言葉で言ったばかりでございます。第一に民間賃金を基礎としてやっておるのでございます。そうして出ました俸給表に、これは低くないかどうかを計算する場合のものさしとして標準生計費を当てておるのでございまして、第一に官民の賃金を比較して俸給表をきめるのであります。迫水長官も同じ意味を違った言葉で言われたのでございまして、これは矛盾しておりません。
  193. 辻原弘市

    ○辻原委員 私の受け取った受け取り方としては、これは単なる言葉の上だけの問題ではない。だいぶ人事院総裁は迫水長官の答弁をカバーせられておるようでありますが、これは後日私は非常に問題だと思う。民間給与というものとそれから生計費というものは、これは相対的な関係においてきまっておる。もちろん八千七百十円というものが直ちに初任給決定そのもののファクターにならないということは、私は十分承知をしている。しかしこれがいわゆる給与べースをきめる重要な要素となっておることは間違いはない。それは淺井総裁どうなんですか。
  194. 淺井清

    ○淺井政府委員 給与べースをきめる基準と仰せられましたが、さようにはなっていないのであります。これは初任給をきめるものさしとして使ったばかりでございます。
  195. 辻原弘市

    ○辻原委員 それも同じことなんです。私は省略をして言ったのであるが、初任給をきめるということは要するに、その初任給から給与が積み上げられるのでありますから、給与べースを決定すると同じことじゃありませんか。そういうような言葉のごまかしを言うものじゃありません。その通りに、八千七百十円というこの独身成年十八才の一人当たりの生計費というものが基礎になって、明らかに人事院が勧告したそれぞれの給与表には初任給が定まっておるではありませんか。行政職の第一表を見れば、八千円という初任給はやはりこの生計費と重要な関係を持っている。あるいは税務職員の八千七百円という初任給は、これまたこの生計費ときわめて近似値じゃありませんか。これを見ても、初任給決定の重要なファクターである。私が指摘しておるのは、一対三〇の大きな倍率、この開きを作っている一つの原因に、低い生計費の取り方、言いかえてみると、この低い生計費を基礎としてでき上がった初任給に問題があると言っているのです。まだ私は民間給与との比較の問題を申しておりません。それはあとの問題にいたします。生計費から主としてその基礎をとっておる初任給が、いわゆる四十三円のこの一食当たりラーメン代を基礎にして計算されておるところに、こんな上厚下薄が生まれてきている大きな原因を作っているということを指摘しておる。総理大臣、いかがですか。数字には非常にあなたは明るいということでありますので、その点についてもお伺いをしたい。どうでありますか。
  196. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 これは数字の問題でなしに、考え方の問題のようでございます。私は人事院並びに給与担当国務大臣の言うことがよくわかるのであります。
  197. 辻原弘市

    ○辻原委員 それでは迫水さんに伺っておきますが、あなたはこの初任給が適正なりと先ほどの答弁を繰り返されますか。私は率直に公務員の生活実態を考えながら御答弁を願いたいと思うのです。単に機械的なことは、私があえてこの席上で聞かずともわかっているのですから、具体的におっしゃってもらいたい。
  198. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 適当であると考えております。
  199. 辻原弘市

    ○辻原委員 まことに不満であります。少なくとも人事院総裁が言われた初任給決定の基礎のこの生計費のとり方、これが百二十九円、これを基礎にしているということは、間違いもない事実なんです。そういった一つのこの食生活の値、これが公務員の給与の基礎になっているということは、これは政府は否定できない。しかしこれを政府は適当なりとこういうふうに重ねて答弁をせられておるのでありますから、はたしてそれが適当でありやいなやは、これは国民世論が決定するでありましょう。そういうような食生活を、これは憲法に保障しておる健康で文化的な生活の基準だと政府考えているということを明らかにしたものであると私は把握をいたします。そこで先ほどから政府が言っておる民間給与との比較、いわゆる民間給与との基準においてこの給与を決定した、バランスがとれているからこれが適切なんだというそのお答えでありますが、人事院の勧告によりますると、三十四年の三月から本年の四月に至る間の民間給与の上昇率は一一・二%であった、その四月の時限を押えて公務員のベースは民間給与との間に一二・五%の差があるから、従って一二・四%を上昇せしめる必要がある。これが人事院の民間給与との比較の考え方だと私は思うのですが、総裁、これに間違いございませんね。
  200. 淺井清

    ○淺井政府委員 さようではないのでございます。官民の給与を本年の四月時点において比較して申しておるのでございまして、その参考として上昇率報告中に掲げておる次第でございます。
  201. 辻原弘市

    ○辻原委員 そうすると今総裁が言われたことは、四月の時点において一二・五%の差があった、それを基礎にして一二・四%をとった、こういうことですか。
  202. 淺井清

    ○淺井政府委員 御説の通りでございます。
  203. 辻原弘市

    ○辻原委員 ここにも議論があると思うのでありますが、その議論は少しく時間がかかりますから省くといたしまして、民間給与との比較のとり方に私は一つの問題があると思う。それは人事院が今回民間給与との比較を取り出されましたその抽出の方法は、これは報告書にも明らかなように、主として五十人の事業所を対象にしてその比較をおとりになっている。本来ならば当然公務員の資格あるいは学歴あるいは勤続年数、また公務員の任務、こういったものからいろいろ諸条件を勘案いたしますると、それに対照し得る民間給与というものは、これは常識的にかなり限定せられて参ると私は思うのです。ところがそういうような考え方に立つならば、あまり小さないわゆる企業、これには現在給与は千差万別であります。千差万別だからこそわが党は最低賃金制度をもって、この給与の大企業との間の格差をなくせということを主張しておるのであります。その非常に不当に低い給与に置かれている民間給与と比較をとったのでは意味をなさない。そこで、そうではなくて、ほぼこれならば公務員のそれぞれの諸条件と合致しておるという、そういう企業と比較をおとりになるということが何よりも先決問題であります。ところが今回の人事院の報告書を検討いたしますると必ずしもそうではない。そうではないところに公務員と民間給与とのいわゆる官民給与の差が、現実よりも低い報告がなされておる、こうわれわれは把握をいたしておるのでありまするが、その点について政府は一体どう考えられているか、迫水長官から伺っておきたい。
  204. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 ちょっと私御質問の要点をつかまえ切れなかったような気がいたしますが、官民給与の比較をする場合には、公務員のこういうところがちょうど適当であろうというところで比較すべし、こういう御意見でございますが、私は現在の人事院のやり方というものは、一般の職種の、また大きいところ小さいところ、そういうところをずっと一つ総合した基準、民間給与というものの基準を考えて、それと比較しているということだと思いまして、私はむしろその方が適当だと考えております。
  205. 淺井清

    ○淺井政府委員 ただいま人事院の調査は主として五十人以上の企業を云々と仰せられましたが、決して主としてはおらないのでございます。五十人以上全部をとっておる、こういうことでございまして、また企業と仰せられましたが、これは企業ではなくて事業所をとっておるのでございます。でございますから、全国的に非常に大きな会社等におきましても、五十人以上の事業所が地方にあればこれも含むということでございます。
  206. 辻原弘市

    ○辻原委員 私が問題にしているのはそこなんです。通例五十人の規模の、企業と私は簡単に言ったのでありますが、事業所であります、訂正しておきますが、五十人以上、それと五百人以上の事業所とを取り上げてみた場合に、その経営の規模、またその業績の状態というものには、もちろん個々によっていろいろの差があるであろうと思いますが、総体的に申して非常に大きな格差がある、これは現実の問題であります。だからそういった不当に低い事業所までを含めて計算をしておるというところに、いわゆる民間給与の平均というものが薄められておる。その薄められたものと公務員とを比較するから、その格差というものは現状よりも低い目に現われているということを私は言っている。このことは人事院お認めになりませんか、どうですか。
  207. 淺井清

    ○淺井政府委員 一番大きなところだけとれば、もちろん辻原さんのおっしゃるように高くはなると思います。しかしそれがはたして官民の比較として適当であるかどうかと思うのです。五十人以上と申されますけれども、大会社の支店でもこれは五十人以上の支店であれば事業所として含むものでございますから、非常に薄められておるということはないように思います。
  208. 辻原弘市

    ○辻原委員 この議論をやりますと水かけ論になりますが、少なくともこれは人事院自体としてもその反省があるはずだと思うのであります。私が一々時間をかけてこまかいことを議論するわけには参りませんけれども、大ざっぱにいってこれは常識的な問題だ。同じ資格を持ち、同じ学歴を持つ者が大企業に就職するのと、あるいは中企業の比較的成績の不振であるところに就職するのとでは、その給与の取り方は非常に違っておる。そういう傾向がどこに多いかといえば、それは一つは経営規模、すなわち従業員の少ないそういう経営の中に多くあるということです。私はすべてが低いとは言っていない。だからそれを非常に多いであろうと考えられる五十人あるいは六十人、百人といったような程度の事業所にまで調査を切り下げて行なっておるというところに、民間給与との差が正確に出ておらないということを私は指摘しておる。しかしこれは議論になりますからその程度にとどめておきます。さらにその民間給与の比較の場合に重要な点は、民間給与のすべてと、それから公務員のすべてと同じような開きを持っているかというと、必ずしもそうではない。最も民間給与と公務員給与との間に大きな差のあるのは中級公務員、年令にしますと三十五才前後、さらにそれ以下、これが民間給与に比ベますと――これは私のデータでありますけれども、約六八%にしか達しておらない。ところがそれがだんだん年令がいって参り、勤続年数がかさんで参りました五十才というところをとってみますと、七八%の差に縮まっておる。すなわち形としては山型になっておる。上の方が開きが少なくて下の方の開きの方が大きい。もちろんさらに下にいけば、最近の大企業を中心とした好景気によって民間の初任給というものはかなり上がっておりまするから、そこらにおいては、あるいはまたその後の若干の中だるみ是正というようなことで幾分公務員の場合にも縮まっておるから、完全な山型ではありませんけれども、総体的に中級以下が民間給与との差が著しいのであります。この点は一体政府はどういうようにお考えになっておるか。
  209. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 はなはだ勉強が足りないで申しわけございませんが、ただいま御指摘になりましたようなことを私は正確には把握いたしておりません。感じとしては、おそらくそういうことではなかろうかという感じはいたしますが、しかし私正確に把握しておりませんので、しばらく勉強をさせていただきたいと思います。
  210. 辻原弘市

    ○辻原委員 正直におっしゃっておられますので、私もそれ以上に追及はいたしませんけれども、しかし長官、これは重要な点なんです。あなたが、また総理大臣が冒頭主として民間給与との比較において、このベース・アップを決定したと言われておる。そうするならば一体民間給与との間に平均においてどれだけの差があるのか。またそれぞれの年令別において一体どれほど差があるのか。少なくとも詳細なデータを検討せられたはずなんだ。これは事務当局の仕事だとおっしゃるかもわかりませんけれども、決定をせられる大臣の頭におおよそどういうような開きが生じておるかくらいの検討なしに、私は給与をきめるなんということはこれはあり得ないと思う。それだから御質問をいたしておるのであります。しかし大体のところはそういうことだろうと、こういう御答弁がありましたので、政府も、私が今申し上げましたこの民間給与との開き、年令構成等における開きということはお認めになったようであります。ここに私は今公務員の組合が――少なくても給与の中で最も大きな問題は全体をアップするということなんであります。開きをつけてくれということは一言も言っていない。要するに全部が公務員としてその職務に精励をでき、その生活が守れるような給与たらしめてもらいたい。そのために、このような大きな開きを持っている下を上げてくれ、その方法は一律に三千円を引き上げるということが一番いいのだ、こういう要求を私は掲げている主たる理由だろうと思います。ところが人事院の勧告によると、率にして一二・四%、金額にいたしますると二千六百八十円、すなわち公務員の組合が一律三千円を引き上げてくれという要求とこれは近い近似値である、だからこれでもって公務員の要求にこたえたなどと、あるいは皆さんがおっしゃるかもわかりませんが、これはとんでもないことだと私は申し上げておるのであります。冒頭に申し上げたように、平均においては近似値を持っておるかもわからぬけれども、実際の個々人について考えてみたならば、最も上がる人は二万四千円近くも上がるけれども、せっかくの年末、もう月給が上がるのだ、ベース・アップが行なわれると楽しんでおった若い人たちの俸給袋には、差額が追給せられてもわずかに八百円しか上がっていないという現状、これが今度の給与アップの実相なんだとこう言っている。これではほんとうの給与改善ではありません。なぜもっと現実に民間給与との間に大きな開きを持っている中級以下の公務員を引き上げろという、そういった多くの公務員側の意見をあなた方は無視されたか。それらの意見を徴して引き上げられなかったか。本来公務員に団体交渉樺、罷業権という憲法によって与えられた基本権があるならば、おそらく私は公務員側の意見というものは、大半が他の民間企業と同じように、その意向を、その要求を検討しつつ、それに近づける努力をしたであろうと思う。遺憾ながら現在の公務員には団体交渉権も罷業権も、これらの労働権の一切は与えられておらない。与えられておらないからといって、このように現実に低いものを上げてくれという要求を無視していいという政治のあり方は、私はあってよかろうはずはないと思うのでありますが、一体この点について迫水長官はどうお考えになっておられるか。また給与担当大臣として、政府に特にこの衝に当たるあなたを設けられた趣旨というものも、単に人事院との折衝、内閣における取りまとめだけではなく、少なくても多くの公務員の意見を徴しながら給与を決定していくという、そういう重大なる任務を課せられておったと思うのであります。それに何ぞや、このようにほとんど当然のこの要求を無視しておるということは何事であるかと私は申し上げたいのであります。あなたはどうお考えになりますか。
  211. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 給与というものはやはり一つの体系を整えていることが必要だと思いますし、人事院が今回勧告いたしましたのも、一つの体系として勧告をし、かつそれは民間とのバランスをとったものだと考えておるのでありまして、私は人事院のこの勧告を適当だと考えたような次第でございます。
  212. 辻原弘市

    ○辻原委員 何回伺っても同じ答弁ばかりであります。人事院の勧告を適当だと思われる、この一点しかあなたの御答弁では出ておりません。  そこで具体的にもう一度私は伺いますが、この給与制度を実行していきますと、ますます上下の差というものは開いていきます。現にこの人事院の二千六百八十円という、平均上がらなければならぬアップが、及んでいない公務員がどれだけあるかというと、おおよそ七〇%に近いのであります。公務員全体の七〇%に近い人たちは、平均これだけは引き上げるといって政府が示したその額に達していないということは、一体これは何事でありますか。この事実を迫水さんはお認めになりますかどうか。
  213. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 どうも御質問を聞き返して相済みませんけれども、今の御質問は二千六百幾らという平均額に上がるのに達しない人が七〇%ある。その事実は認めるかとおっしゃるのですか。認めます。
  214. 辻原弘市

    ○辻原委員 今大臣が認められましたように、たとえば一般の国民からいえば、役人は俸給がどんどん上がって、しかも新聞によれば平均二千六百八十円も上がるそうだ、これは大へんだ、こういう議論が往々にして巷間起こりがちな中に、その対象にされている公務員が実際は二千六百八十円上がる者はわずか三〇%、これがベース・アップの実態なんです。上に厚く下に薄い。池田さんが第一次内閣から折に触れて口にせられておるいわゆる所得倍増計画というものは、われわれが常に指摘をしておりまするように、持てる者はどんどん所得が拡大するけれども、持たない者は一向に上がらない。言うなれば、所得の格差をさらに大きく広げていく所得倍増計画である、こういうことをわれわれは常に指摘をしてきておるのであります。それに対してこの間からの予算委員会における池田さんの答弁を承ってみても、そうじゃないのだ、政府の、自民党の所得倍増計画は、上げると同時にその格差をなくするのだとここで口では言われておる。ところが実際はこの民間給与のすべての基本になり、またあなた方がその基本にしようと考えておる今回のこの給与アップは、まさにその格差を、業種間の格差、あるいは各産業間の格差のみならず、同一の公務員というこの範疇の中においてすら、これほど大きな格差を生じてきておるということを雄弁に物語っておるものではありませんか。いわゆる池田内閣の所得倍増というものは、ますます格差を広げるものであるということを、ここに実証づけておるものだと私は言わざるを得ないのでありますが、どうでありまするか、池田さん。
  215. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 その考えは私にはわかりません。今回の給与の改定というのは、民間の給与の状況等を考えて是正しておるのでございます。また正しい姿に表わしておる。そして所得倍増ということは、この現実の状態から将来に向かってやって行こう、その将来に向かっての過程において、上の人よりも下の人をよくしようというのでございまして、過去の悪いところを、至らぬところを直すということを、将来にそのまま適用するというあなた方のお考えは私にはわかりません。
  216. 辻原弘市

    ○辻原委員 これは今までこういうことであって、今後ベース・アップをとるというときには引き上げるのだ、こういうお説だと思うのでありますけれども、今給与改定をしようとしておるのです。そのしようとしている中に、現実に先ほど給与担当大臣が認められたように、平均まで上がらない者が七〇%もあるというようなアップがまだあるということは、いかに下の者と上の者との開きが大きいかということをこれは証拠立てておるものなんです。そういう給与が適正であるというものの考え方、現実に開きがあることは事実なんです。これは否定できないのです。この大きな開きがそれでけっこうである、所得倍増は将来の問題なんだ、総理はそう逃げておられると私は思う。それでは公務員にあなた方は国民に対して能率よく奉仕をしろ、そのかわり生活を保障してやる、こういう答えにはならぬと私は言っているのです。そこでもう一度迫水さんにお尋ねをいたしますが、平均の引き上げ率に満たぬ者が七〇%も出ておる今回のこのアップの中で、もう少しいわゆる平均に近づけるような、平均に近い額ができるだけ多くの公務員にアップされるようなそういう手直し、言いかえてみると八千円とか九千円とか一万円とか、こういった低い層にある公務員の初任給を初め、その上に積み上げられました低い給与、これを手直しされる考え方はございませんか。少し手直しをする、そうすれば平均が上がる、格差は縮まる、どうですか。
  217. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 ただいまの御質問に対しましては、これは一つの体系を持っておるものでございまするから、一カ所だけをちょっと手直しをするということはなかなか困難だと私は考えております。
  218. 辻原弘市

    ○辻原委員 困難ではないと思います。うしろの方でいろいろ雑音が入っておりますが、ここで私が平均と言っておるのは、誤解がないようにしていただきたい。それは今回人事院が一二・四%を引き上げるために要する経費、それから割り出した平均が二千六百八十円、私の平均というのはその平均を言っておる。それに満たぬ者がたくさんあるから、せっかくみんなが――常識的に言ってそうでしょう。二千六百八十円平均だといえば、大体それに近いようなものくらいはおれももらえるのだろうと思うのが常識、人情なんです。ところがふたをあけてみると、それが八百円だから、私は低過ぎると言うのです。だからその八百円をもう少しその平均値に近づける程度の金額、そこまで引き上げていったらどうか。そうして引き上げれば平均が上がりますよ。しかしそのことによって格差が縮まる。これは私は公務員全体の立場からいって非常に大きな利益だと思う。上がる者と上がらぬ者、こんな三十対一というような開きに放置されるということは重大な問題だと思うから、手直しはできませんかと言ったならば、体系があるからできませんと、あなたは今お答えになられた。非常に困難だ、私はそんなことはない。これはむずかしい問題ではないと思う。現に今までも国会において政府の出した給与法についてその手直しを行なってきました。体系を検討しながら、その手直しを行なってきた。それによって公務員の不平不満をある程度緩和した事例があるではありませんか。これはできない相談なんですか。一体どうですか。その点をもう一度迫水さんにお尋ねいたします。
  219. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 お話の趣旨は私もよくわかりますが、私としてはどうも困難なような感じがいたします。
  220. 辻原弘市

    ○辻原委員 事務当局に検討さしてみるつもりはございませんか。事務当局に検討さしてみるつもりはございませんか。私はどうも困難なように思うがという、まことに自信のない答弁でありまするが、できるかできぬか。私が申し上げたように、初任給を初め若干のこの格差を縮めるための措置くらいは、私は事務当局にはできると思う。検討さしてみる用意はありませんか、どうですか。
  221. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 検討さしてみる意思があるかないかということのお尋ねでございますが、実際問題として、私はやはり困難じゃないかと、今のところ考えております。
  222. 辻原弘市

    ○辻原委員 どうもそれだけでは、私も御答弁を承ったような気がいたしませんので、困難なように思う。あなたが今困難なように思われておるその困難はどういうことか。ちょっぴりお聞かせ願えませんか。どういうことが困難なように思うか、具体的に一つお教えを願いたい。
  223. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 一番下のところを、八百円上げるところをかりに千円にするなら千円にすると直しただけでは話がつかないので、それからだんだんに上に上げていかなければならないから、全体の問題を考えると、これはなかなか困難である、こういうことを申し上げたのであります。
  224. 辻原弘市

    ○辻原委員 物事には困難ということと不可能ということがある。あなたが言っているのは、不可能ということを言われておるのでありまするか、それとも技術上困難ということを言われておるのでありますか、その点を承りたい。
  225. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 かりにそういうようなところに手をつけていきますと、全体の一二・何%とかいうその数字にも狂いが参ります。簡単にいかないと思っております。
  226. 辻原弘市

    ○辻原委員 そうすると、今長官が言われたことは、私の受取方によりますると、それは技術的に困難だということであって、技術的にも不可能だということではない。また政治的意味において困難だと、こういう趣旨でもなかったように聞きましたが、あなたが先ほどから二回繰り返して、困難なように思うと言われたのは、今一二・四%に狂いがくるといったような技術的な面における困難さというふうに私が了解して差しつかえございませんか。
  227. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 そういう技術的の点もございますし、財政の点もございますし、要するに総合的に相当困難である、きわめて困難である、こういうことを申し上げているわけであります。
  228. 辻原弘市

    ○辻原委員 それでは長官ちょっと伺いますが、今財政的にと言われたのですが、かりに千円上げたら、一体財政上何ぼかかるのですか。大体そのくらいの検討をしていなければならないはずです。
  229. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 やはり数千万円の金になると思いますが、どこのところをどういうふうにいじるかということで、もちろん数字はだいぶ違って参ります。とにかく一つの体系を持っており、人事院の勧告したものでありますから、これを今手直ししたりなんかするということは、きわめて困難であるということをお答えをいたします。
  230. 辻原弘市

    ○辻原委員 数千万円の金だと言われた。私も厳密に計算はいたしておりませんけれども、一千円を今の体系から引き上げるとなると、財政上の理由を政府が振りかざさなければならぬような金額にはならないはずであります。従って今企画庁長官が言われた、給与担当大臣が言われた数千万円というのは、私は比較的正確だと思います。大体平年度にして、千円アップの場合に、五千万円に満たない金で事済むと私は理解している。それが財政上の理由でありますか。これほどの大きな給与勧告をやり、また未曽有の自然増収が生まれている今の経済の中で、数千万円の金というのは、政府が財政上の理由をたてにとってやれないというような、そういう理由に当たりますか。その点は一体どうでしょう。
  231. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 数千万円という金も、下のところだけ一つ動かせばそのくらいで済むが、どのくらいのところ上に影響するかということは、なかなか計算してみなければわからないという話であります。私のただいまの御答弁といたしましては、これを手直しすることは、きわめて困難であるという御答弁で御了解をお願いします。
  232. 辻原弘市

    ○辻原委員 私がお伺いしているのは、不可能か困難か。あなたは困難だと思うと言われる。しかも技術的な説明がございましたから、それでは一体千円引き上げたらどの程度の金がかかるか。数千万円だ。これは私の考えとも大体一致しておるから、それは財政上の理由には当たらぬと申し上げておる。しかもそれをどこまで上げるかということは、これは給与の引き上げでありますから、極端に言えば、多々ますます弁ずなんです。しかしそれを私は限定して、かりに千円あるいは二千円あるいは三千円、こういうふうに引き上げていった場合に、それは技術的に体系は修正できるのです。しかもその千円という形に引き上げたならば、それはきわめて少部分の金で済むということを、あなたも言われておる。言われておりながら、困難だと答弁を強弁されている、私はその理由がわからないのです。技術上、財政上不可能ではないのです。しかもきわめて困難という問題でもない。それなのに、困難だからやれませんと言われている点が、私にはどうにも了解がいきがたい。しかしこの点にのみ議論を集中するわけにいきませんから、私は次の問題にお尋ねを進めていきたいと思うのでありますが、今までの給与担当大臣のお考え、御答弁によりますならば、若干の手直しは可能であるという判断を私は持ちます。財政上の見地から考えましても可能であり、技術上から考えましても、過去において国会自身でも、その給与の手直しをやった、体系の位置づけをやった、そういう経験から徴してみましても、不可能ではないという結論を抱きます。そこで次の問題についてお尋ねいたしたいのでありますが、先ほどから私は上厚下薄の問題にのみ議論を集中してお尋ねをいたしました。そうすると政府答弁は、体系は、またその基礎のとり方は、あげて人事院がお出しになった勧告に基づいて、その勧告を尊重するために、政府はこの案を採用したのだという答弁であります。総理大臣以下各大臣のお考えは、私が今言った通りであったと思うのです。そこで労働大臣にお伺いいたしますが、あなたは今まで労働大臣としてしばしば言われた。それは何であったかというと、よりよい労使の慣行ということ、それから公務員の違法なる行動については、これを厳重を取り締まるけれども、しかし政府もまた法の建前または憲法の趣旨によって、守るべきことは必ず順守をいたします。その具体的な問題としては、人事院勧告は完全実施をいたします、こう言っておる。私は、あえて勧告を尊重するという言葉を使っておりません。勧告を完全実施いたします、これが正しい労働行政でありますなんと、大みえを切っておられる。首を振っておられるが、違うのですか。どうなんですか。
  233. 石田博英

    ○石田国務大臣 お答えを申し上げます。私は公労協の問題については、仲裁裁定を完全に実施するということを建前といたしまして、従って公労協の職員各位も、公労法の建前を順守してもらいたいということは、しばしば申しました。それから法律の建前といたしまして、公務員に団体交渉権、行動権を与えていない場合に、その対価として存在しております人事院の勧告は、これを尊重すべきものと考えておりますが、完全実施を尊重と言葉を違えておりますところは、公労法と人事院規則との法律上の相違によるのであります。
  234. 辻原弘市

    ○辻原委員 そうすると、あなたは初めから人事院の勧告、これを完全実施するという考え方はなかったのですな。だから、政府がしばしば言う人事院の勧告の尊重ということは、極端に言えば、都合のいいところはとるが、都合の悪いところは採用いたしませんという意味での尊重であって、完全実施とは、私は用語を使い分けたのでありますけれども、あなた方自身も、初めから尊重という言葉を使っているその腹の中は、完全実施をしないという前提をもってものを申されておったというふうに理解してよろしいのですか。労働大臣、いかがですか。
  235. 石田博英

    ○石田国務大臣 公労法におきましては、はっきりと仲裁裁定は労使双方ともこれに従うこととある。しかし予算上、資金上実施不可能の場合は、国会の議決を得るという規定が明確にございます。人事院規則の場合においては、こういう明確な規定がないわけでありますけれども、私の立場として、あるいは法の精神としては、でき得る限りやはり法律上の機関の勧告なり裁定なりが、完全に実施されることが望ましいのであります。しかし人事院勧告の場合は、ただいま申しました法律上の違いがございますから、その点について、政府が財政上その他の勘案をする余地は、仲裁裁定の場合より残っておるものと解釈いたしておりますけれども、私の立場としては、でき得る限り完全に実施されるように参りたいと考えております。
  236. 辻原弘市

    ○辻原委員 そういたしますと、今回のこの改善措置は、あなたの見解から言うとどうなんですか。
  237. 石田博英

    ○石田国務大臣 ちょっと反問をいたすようでありますが、それは改善措置の内容でございますか。改善措置全体の、政府の処置でございますか。
  238. 辻原弘市

    ○辻原委員 全体です。
  239. 石田博英

    ○石田国務大臣 私どもといたしましては、やはり労働行政という立場からいいますと、完全実施が望ましいと思うのでありますが、同時に国務大臣といたしまして、財政その他全般を考えました場合におきましては、現在の政府の決定いたしました処置がやむを得ないもの、現段階においては適当なものと考えるのであります。
  240. 辻原弘市

    ○辻原委員 給与担当大臣に伺いますが、あなたは先ほどから、私が申し述べましたように、今回の改善措置は内容、すなわち給与体系については、しばしば答弁が繰り返されておりまするように、あげて人事院の勧告通りこれを尊重する。ところが、それほど内容の詳細にわたってまで一言一句違わないように尊重しておきながら、実施の時期をなぜずらされたのでありますか。一体、勧告の精神なり人事院勧告の内容の一言半句にわたってまで尊重するという政府のやり方が、肝心かなめの実施の時期についてなぜこれをずらされたか、その理由について承りたい。
  241. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 率直に申しまして、池田総理以下なるべく人事院の考えに沿いたいと思っていろいろ研究をいたしたのでありますが、先般これに関する法律の提案の理由を内閣委員会で説明いたしました通り、重要な他の施策や財政上の事情によって十月一日から実施ということ、これが一番早い機会の実施であるということは私も了承いたしましたので、こうきめた次第であります。
  242. 辻原弘市

    ○辻原委員 今まで伺って参りますと、どうも政府言葉の上でのごまかしを今までやってきたように思う。そうして公務員に非常な期待を与え――すなわち勧告を尊重するということは必ずしも人事院の勧告通りやるということではない、こういうふうに言われておるのでありますが、過ぐる五月に当時の益谷副総理ははっきり内閣委員会において言明をせられておる。人事院の勧告が出されれば必ずこれを完全実施いたします、こういう言明が行なわれておるのでありますが、そういう言明は、すでに閣僚として今日その地位におらない釜谷さんの言だから、政府は何ら責任を感じておりません、こういうふうに言われるかどうか、給与担当大臣はその事実を御存じないかどうか。
  243. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 もちろんそういうことは知っております。益谷さんもそう言っておられるから、できるだけ早い時期に実施しようということでいろいろ研究をいたしたのであります。
  244. 辻原弘市

    ○辻原委員 一体ずらした理由は何でありますか。
  245. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 先ほど申し上げました通り、財政上の事情ということが一番、それだけの理由でございます。
  246. 辻原弘市

    ○辻原委員 給与法の提案理由の中にもそういったことが書いてある。諸般の緊急重要施策、それから財政上の見地、この二つのことが並べてあるが、今大臣は財政上の理由だけを言われた。ところが私は当たらぬと言っておる。それは先刻わが党の北山議員も大蔵大臣に税収の問題について議論をいたしておりましたが、その議論の中でもかなり明らかなように、現在の段階において自然増収が一千五百億見積られる。さらに今後の自然増収は少なくとも五百億程度のものが考えられるのではないか。未曽有の自然増収があるときに、財政上の理由をもってわずか五カ月のこの期間における給与措置ができないということは、これは理屈にはならぬと私は申し上げるのであります。それは単につけたへ理屈というものです。理屈のための理屈であって、やる気さえあるならば、これだけの自然増収の中でありますから、当然措置できるはずなのであります。それをあえて財政上の理由ということでここまで人事院の勧告をずらしたということについては、政府がいかに人事院勧告を尊重しておらないか、また民間企業との比較云々を言っておりますけれども、いかに冷たい公務員に対する行政をやっておるかということが、この一事をもってしても私は明らかであると思う。人事院総裁に承わりますが、あなたの方の出された勧告によりますと、四月が時点になっておる。先ほどから申し上げましたように、四月に一二・五%の民間給与との差がある。だから五月にそれのバランスをとる必要があるのだというのが勧告全体を通ずる体系なんだ。それを十月と引き延ばしたならば、一体それまでのブランクはあなた方は理論的にどう説明されますか。先ほど政府は一方において、私が体系の質問をすれば、ちょっぴりさわるのでも全体の体系に大きく響く、いわゆる理論構成が変わってくるというようなことをここで答弁をされながら、最も重要な基礎である、いつの時点において民間給与との開きが生まれたのか、その重要なファクターを、十月に引き延ばすことによって根本からくつがえしてしまっておるということには冷然としておる。知らぬ顔をしておる。人事院総裁はどうなんです。あなた方の理論根拠はくずれ去っておるではありませんか。この点はどうなんです。
  247. 淺井清

    ○淺井政府委員 お答えを申し上げます。人事院といたしましては、勧告に示してありますように、この勧告が五月から実施されることを希望することは今も変わりません。しかしながらこの勧告を実施するために要する数百億の金をどういうふうに調達するかということは、これは国家財政全体の立場から内閣にまかせるより仕方がないのでございまして、これは現行制度における勧告権の限界であろうと思います。
  248. 辻原弘市

    ○辻原委員 まあ政府のおっしゃることだからやむを得ません。しかし不満の意をただいま表明されたのであります。われわれはさらに不満なんです。なぜかというと、せっかく四月において一二・五%の差があるということならば、これは四月になって初めて一二・五%の差が生まれたものではないのです。それまで積み上げられてきて、たまたま四月をとってみたら一二・五%の差があったということであって、その時点において差があるならば、当然その四月から均衡をとるという改善措置を行なうのが正しいやり方である。だから、われわれが四月から実施すべきであるという主張をいたしておるのは、ここに根拠を持っておるのです。しかしそれを人事院は、四月の時点において初めてこの一二・五%の差が生まれたという前提において五月実施ということを主張されておるのでありますから、一歩下がってかりにあなた方の主張を認めたとしても、政府のいう十月ということにはどうしても理解がいかない。その五カ月間の空白というものは、これは政府の給与の考え方からするならば、その間には不均衡がなかったということだ。その間には民間給与との間の差がないということを理論的にあなた方は主張しておることだ。そこに私は大きな矛盾があると思う。ただ財政上の理由ということだけで勝手に割り切れる問題ではない。すべて正確なデータと理論的な根底をもって積み上げられてきておるところに、いわゆる給与体系というものの非常にむずかしさがある。それを中身については非常に複雑だから人事院のあれを採用し、またちょっぴりいじることも避けたい、しかし重要な実施の時期については少しく金がかかるからこれをずらす、こういうことでは本来の改善措置ではありません。その点を私は強く不満の意を述べておきたいと思います。さらに、次に内容の点についていま一、二点お尋ねしたい。上厚下薄の給与であると同時に、もう一つ重要な問題がある。それは何かといえば、今までの通し号俸というものを全部廃止してしまっていることであります。そうして各等級別にこれを独立さしておる。言いかえると、職階制というものをきちっと完成づけたということ、ここに私は、政府のねらい、また人事院のねらいというものを強く感ずるのであります。このことは一体何を物語るか。これは各等級別に独立さしたことによって職制を強化することである。もう一つは、上厚下薄、すなわち上に厚い給与と同時に、各等級別の職務というものを明確にするという言葉によってこの等級に縛りつけるという意味における、新しい官僚機構の完成を目ざしたものであると思う。一体政府は私の意見に対してどうお考えになるかお尋ねをいたしたい。
  249. 淺井清

    ○淺井政府委員 勧告に関係がございますから、私から補足を先にさしていただきますが、まず第一に上厚下薄ということを非常におっしゃるのでございます。しかし私は今回の勧告だけごらんになっていただいては困ると思います。昨年やりました中だるみの是正は、辻原さんの最も問題とされました中級職員の給与の改善されたものであります。一昨年の初任給の是正は、これまた辻原さんの最も問題とされました初任給を是正したものでございます。またその辺が一番官民の給与の格差が大きいと申されますけれども、上級職員に至っては、非常に大きな差が官民給与にできていることも御了承願いたいと思うのでございます。また上厚下薄と仰せられますけれども、これくらいの上下の格差は過去にもあったということを御了承願いたい。それから第二の問題は、非常にこれをイデオロギッシュにお考えになりますけれども、さようなことはちっともないのでございまして、ただ国家公務員法で職員の給与は職務と責任に応じてこれをなすというところからはいろいろやりましたけれども、決して新官僚機構であるとかあるいは職制の強化であるとか、さようなことを特に考えたことはございません。
  250. 辻原弘市

    ○辻原委員 まあ私がそうお尋ねしたからといって、そうでございますという答弁はおそらくできないでしょう。しかし現実に物話ることは、この給与体系の中に政府も人事院の内容にまるきり賛成をして、そうして新しい職階制を強める給与体系を採用したというところに重大な問題がある。職階制というものがどういう影響を持つかということは、ここで議論の余地がないと思う。だから私は将来この給与体系によって職階制を中心にした公務員の人事行政というものが行なわれるのじゃないかということを心配するからここに記録にとどめておいた。次に小澤大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、給与の改善の問題それから今言った職階制を完成したという今回の給与体系の問題等々にからんで考えてみますると、あるいは私のひがみかもわかりませんが、将来政府は行政整理等を意図しておるのじゃないかということを感じるのでありますが、そういうことはございませんか。
  251. 小澤佐重喜

    ○小澤国務大臣 今そういうことは考えておりません。
  252. 辻原弘市

    ○辻原委員 ちょっと聞き取りにくかったのですが、今すぐ……。将来はどうなんですか。
  253. 小澤佐重喜

    ○小澤国務大臣 将来のことはわかりません。
  254. 辻原弘市

    ○辻原委員 そういうふざげた答弁をされちゃ困る。私は真剣にこの問題についてお伺いしておる。今すぐおやりになる意思はないということはわかりました。しかし将来のことはわらぬ。今考えられる範囲で将来はどうか。将来ともそういうことは考えておりませんというなら話はわかる、そういう答弁は私は少し不満であります。もう一度ここで御訂正を願います。
  255. 小澤佐重喜

    ○小澤国務大臣 将来はわかりません。
  256. 辻原弘市

    ○辻原委員 今池田内閣のあなたが行政管理庁の長官としての立場において考えられる範囲は、そういうことは考えておりませんというふうに了解してよろしいのですか。
  257. 小澤佐重喜

    ○小澤国務大臣 現在のところはそう考えます。
  258. 辻原弘市

    ○辻原委員 次に、定年制の問題はどうでございますか。
  259. 小澤佐重喜

    ○小澤国務大臣 定年制の問題も現在考えておりません。
  260. 辻原弘市

    ○辻原委員 それからこれはこまかい問題でありますが、一つ指摘をいたしておきたいと思う。それは内容についてはほとんど人事院勧告を尊重完全実施をいたしました。違っている点は、実施の時期をずらせた点は、これは財政上の見地からやむを得ない措置としてやった、こういうようなお答えであったわけです。ところが給与法を見ますると、あの附則に一つ手直しをしておるのがある。それは教育職の俸給表の第二、これは高等学校職員に対する適用の俸給表でありますが、この切りかえの問題についてなぜここだけ三カ月短縮しておるか、これは一体どういう理由に基づくのか。私は皆さんに誤解のないようにしていただきたいのは、上厚下薄と言っているのも上を上げることに反対しているのじゃありません。上の上がり方に対して下があまりにも少ないから、これは上厚下薄で、ずれたのは、あなた方が財政的理由ということをおっしゃるから、それならとりあえず便法として下を引き上げろ、全体を上げるにこしたことはない。だから今私が指摘したこの部分だけ三ヵ月分のいわゆる昇給期間を短くした、このことについてもそうしてはいかぬということを前提として言っておるのではありません。そうではない、なぜここだけをおやりになったか、ここだけがやれるならほかのところもなぜおやりにならなかったか。最も影響を持つ中学校――中学校であれば同じように同一学歴、また同一業種、いわゆる同じ職務内容を持っておる、同じ学歴を持っておる。それがたまたま高等学校におるならば、これは三カ月短く早く昇給できる。ところがたまたま中学校に席を置いたためにこれは三カ月ずれておる、これは平等の原則に立っていないではないかと言うのです。だから俸給表の二をいじるならば何で同じように他をやらないのか。同様にほかの各俸給表についてもそういう措置ができないのか、このことを言っておる。なぜそこだけを特記して上げたかということをお尋ねしておる。
  261. 藤枝泉介

    ○藤枝政府委員 御承知のように人事院の勧告は別表の俸給表について行なわれたものでございまして、その切りかえ措置その他等については人事院の勧告はございません。ただし人事院のお考え方というものはあったと思いますが……。そこでただいまお尋ねの附則第五項の問題であろうと思いますが、御承知のように大学院に勤務する教授、助教授につきましてはある号俸に至りますと普通の大学の教授よりも三月短縮して昇給をすることになっておりましたが、今回は昇給期間を十二カ月にしまして一率になったわけでございます。従いまして、これらの大学院の教授、助教授につきましては、今まで普通の大学の教授よりも早く昇給をできるという、いわば一種の期待権とでも申しますか、そういうものがございましたので、将来の問題は別といたしまして、この切りかえにあたりましてだけその激変を避けるために三カ月の短縮をする処置をとったわけでございます。それから高等学校の教員についても、御承知のように従来の体系といたしましては、義務教育の校長の俸給よりも上回っておりましたが、今回の人事院の勧告によりますと、二十一号俸になりますと御承知のように小中学校の校長の方が上になる、いわば一種の逆転があるわけでございますが、これにつきましてもやはり従来の体系に対する一種の期待とでも申しますか、それも尊重いたしまして切りかえの処置のときだけは一つ激変を避けたい、かように考えたのでございまして、それならば全般についてもそういう考慮ができないかと申しますが、この俸給表の今回と従来との違いの一番特殊な例はその二つでございますので、これについて経過的に切りかえについて処置をして激変を避けた、かような趣旨でございます。
  262. 辻原弘市

    ○辻原委員 時間がございませんので議論はいたしません。次に期末手当について伺いますが、簡単にお答えを願いたいと思います。民間が三・七という人事院の調査の資料であります。なぜ公務員が三カ月であっていいという理屈になりましたか、その点を伺いたい。
  263. 淺井清

    ○淺井政府委員 期末手当につきましては、大体民間と合わせるという趣旨でやっておるから必ずしもぴったりと合わないのであります。これは従来からもその通りでございます。ことに民間の会社におきましては、業績のいいか悪いかによって、これらの給与は上がったり下がったりいたすのでございます。もちろん公務員の給与も民間と比較いたしまして、理論的には下げれば下がるのでありますけれども、これは事実上はなはだ困難でございますから、常にこの点においては民間の給与に大体追随していくという趣旨でございまして、ことにこれだけ切り捨てるというような考え方ではなかったのであります。
  264. 辻原弘市

    ○辻原委員 次に人事院総裁に承りますが、暫定手当の問題であります。暫定手当の問題はたしか三十一年の改正のおりに衆参両院で、すみやかにこれを是正するために、本俸繰り入れの決議をしておると思うのでありますが、その後人事院は、これについて何ら措置をせられていない、政府もそのままほっておられる。ところがその間、御承知のように大規模な町村合併が行なわれて、特に教職員については同一市町村内における人事配置にも非常な障害となっておる。ところが現在において、何らこれの改善措置が行なわれておらない、一体人事院は、この衆参両院の決議なり、また人事院自体としての責任上から、今後もほっておかれるのか、何か早急に措置する必要があると思うが、具体的な構想をお持ちになっておられるか、人事院の見解とあわせて政府のお考えを承っておきたい。
  265. 淺井清

    ○淺井政府委員 お答えをいたします。人事院は何もしなかったという仰せでございますが、権限が削除されておったのであります。これは昨年でございましたか、給与法が改正になりまして、また権限が復活いたしましたので、最近国会の附帯決議の御趣旨にも沿いまして、勧告をいたしたいと思っております。
  266. 辻原弘市

    ○辻原委員 いつごろ勧告をされますか、大体の見通しを承りたい。
  267. 淺井清

    ○淺井政府委員 これは来年四月一日から実施されるようにいたしたいと思いますが、ただし予算がそれより前に決定するだろうと思いますから、予算の編成に間に合うように勧告いたしたいと思います。
  268. 辻原弘市

    ○辻原委員 その場合の内容についてお尋ねをいたしておきたいのでありますが、私が先ほど申し上げましたような、たとえば同一市町村内における、これはたとえば京都であるとかいったような大都市の場合には、若干の考慮が必要でございましょうが、最近町村合併をして新らしく生まれたような市等については、同一市町村内における差というものは全然私は必要がないと思うのでありますが、そういう点については完全に勧告の中で是正をされますかどうか。
  269. 淺井清

    ○淺井政府委員 このことはまだ内容をきめておりませんので申し上げにくいのでございますが、大体暫定手当が残っておりますところは百二十から百三十までの間だろうと思っております。今回人事院のやります措置によりまして、その半数以上が問題は解決するだろう。ただ暫定手当を全部一ぺんに解決することは困難だろうと思っております。
  270. 辻原弘市

    ○辻原委員 そういたしますと、暫定手当の問題については来年の四月一日から政府が実施でき得るごとく勧告をする、そうして全部を解消すると申しますか、全部を同列にすることは不可能だけれども、大よそ人事院の考えるところは半分程度は解消できる、こういう見通しである、こう承っておきます。次に自治省と文部省に伺いたいと思いますが、今回の公務員に対するベース・アップは地方公務員に対しても同様行なうということは、政府はしばしば言明されておる通りであります。ところが、これを行なうのはそれぞれの地方団体である。はたして政府として、いわゆる国家公務員、地方公務員のそれぞれ平等取り扱いの原則に立って、地方公務員に完全に行なわしめる具体的措置が今日おとり願っておるかどうか、この点を承りたいと思います。
  271. 安井謙

    ○安井国務大臣 お答えいたします。自治省といたしましても、国家公務員に準じて地方の公務員もそれぞれ給与改定をすべきものと心得まして、十月三十一日に自治省からそれぞれの市町村長に通達を出し、その指導要領を示しております。
  272. 辻原弘市

    ○辻原委員 財源措置はどうなっておりますか。
  273. 安井謙

    ○安井国務大臣 財源措置につきましても、これは非常に明らかな所要財源でございますので、今回地方交付税の特例に関する法律案を出しまして、交付税の基準の算定がえをいたし、その財源措置の全きを期しておる次第であります。財源といたしましては総額三百三十億程度に見られます。そのうち交付団体に支給すべき額は約二百四十億を算定いたしております。
  274. 辻原弘市

    ○辻原委員 見通しについて承っておきたいと思うのでありますが、今回のベース・アップの措置についても、私は従来の経験から見ますと、必ずしもあなたが今おっしゃられたように、財源措置を約二百四十億配ることを計画しておる、また通牒を発したと申されましたが、そういうことだけで全部の都道府県、市町村がやれるであろうというふうに簡単には考えられない。というのは、前回の給与法の改正によって行なった中だるみ是正についても、現在なお行なわれていない県が数府県あるやに聞いております。それは大臣御存じでありますか。前回の給与法の改正によって行なうことになっている中だるみ是正がまだ行なわれていない県がある。
  275. 安井謙

    ○安井国務大臣 一、二不十分な点が前回にはあったかと存じますが、今四の措置につきましては正確な計算をいたしまして、総額三百三十億のうち交付団体に対する二百四十億の財源手当は法律をもってこれをやるというふうにいたしておりますから、今回の措置につきましては御懸念は要らないと思います。
  276. 辻原弘市

    ○辻原委員 責任を持っていただければ非常にけっこうであるけれども、私はそう簡単には考えられない。そこでもう少し具体的に見通しを聞きたいと思うのですが、十二月中に行なわれるであろうと見通しがついている府県はどの程度ありますか。それともう一つは、計算上二百四十億を配ったからといって、地方に直ちに新しい財源が生まれたとは考えられない。そこで承りたいのは、新しく財政計画を点検され、基準財政需要額を算定された場合に、基準財政収入額との差引計算で二百四十億は数字上いくけれども、現実に金がいかぬという府県が出てきはしないか。それがもしあるとすれば、どこどこの府県であるか、それをお教えいただきたい。また再建団体については一体どうなるか。二百四十億を数字上配ったから、再建団体は確実にできるという自信を自治省はお持ちになっておるか。また先ほど私が言った中だるみがやられていない県、すなわちこれは再建団体に多いと思うが、その中だるみが今問題になっておる。それと給与のべース・アップというものが一緒くたにからまって相当の財源を要する。それについてはたして二百四十億を機械的に配ることによってのみべース・アップが可能であるとあなた方は判断せられておるか、この具体的なケースについてお答えを願いたい。
  277. 安井謙

    ○安井国務大臣 ただいまお尋ねの十二月中に給与改定が行なわれる見込みであろうという県につきましては、現在十一月二十八日の調査によりまして三十三都道府県でございます。名前をあげますと、北海道、青森、宮城、秋田、山形、福島、埼玉、東京、神奈川、新潟、石川、福井、山梨、長野、岐阜、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、鳥取、島根、岡山、広島、香川、愛媛、福岡、佐賀、長崎、熊木、大分、宮崎、鹿児島県等でございます。従いまして、今の二百四十億の財源措置は、御承知の通りに、平衡交付税の交付団体分だけでございます。一方、地方団体の全体の財政収入につきましても、今日は若干の増収が見込まれておる事情もございまして、今度これを計算上はっきりと基準単価に加えましてやります限り、地方団体が給与改定を行なう分には憂いがなかろうと思います。
  278. 辻原弘市

    ○辻原委員 現実に二百四十億ある。これは私は不交付団体は言っておりませんから、不交付団体は除いて、当初の財政計画からその後増収が若干あった、しかしそれはそれぞれの当初予算に見込んであった、それが今度のいわゆる単価計算上、それから税収の伸びというものを差引計算によって結局二百四十億の配分が受けられるという県が出てくる。実際はもうその金は、そういう県は再建団体もしくは非常に財政の貧困な県です。そうすると現実に金がないからこのベース・アップはなかなか早急にやれない、こういうところが起きてきたときに、現実の問題として一体どういうような配慮を自治省としてはこれについていたしてあるかという問題です。
  279. 安井謙

    ○安井国務大臣 実は二百四十億というのは、所要の総額なんでございます。ところが財政収入の方からいきますと、御承知の通り、これは法人税、あるいは法人事業税、こういうもので他府県にまたがる計算をいたしますと、この分の財政収入は約七十億程度のものが見込まれておるのであります。従いまして、実際は二百四十億まるまる要るのじゃないのであります。相当余裕を持った財源の配分をいたしておりますから、この点は御安心を願いたいと思います。
  280. 辻原弘市

    ○辻原委員 詳細な点はまた別の機会にやりたいと思うのでありますが、最後に自治省にお伺いをしておきたいと思うのであります。聞くところによれば、三百六十億の配分のうち、いわゆる実際給与費として必要額を差引計算をすると、今おっしゃった二百四十億、そういたしますと、残額については補正を行なう範囲内、いわゆる本年度の範囲内においては、地方団体に配ることは若干困難なように考えられるから、そのうちの九十億程度は繰り越して来年に使用したいというような考え方を持っているのじゃないかということを私はほのかに聞いておるのでありますが、それは一体どういうことでありますか。
  281. 安井謙

    ○安井国務大臣 御説の通りでございまして、今度の給与の財源につきましては、御承知の地方交付税の配分の算定の基礎を変えまして、法律を変えて正確な財源給与をやったわけであります。もしあの三税に伴います地方交付税をそのままやろうといたしますと、これはいわゆる特別交付税になるわけであります。この配分につきましては相当な手数もかかりますから、これを今全額配分いたしますより、若干繰り越しまして、来年度合理的な基礎計算のもとに、さらに公平に配分した方が、残額についてはよかろう、こういうふうに考えまして、そういう措置をとる予定であります。
  282. 辻原弘市

    ○辻原委員 補正で計上した金は、これは現在地方団体は、いつも言われるほど、それほどゆとりがあるわけではありません。当然年度内に使用されるのが正しい。せっかくの金をその年の間に使えないというのは、地方団体として承知まかりならぬところだと思う。その点は自治省で御再考を願いたい。次に給与の問題に関連をいたしまして、駐留車の問題について若干お尋ねをいたしておきたい。駐留軍労務者のベース・アップはどうなっておりますか。
  283. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私から便宜お答えを申し上げます。大体国家公務員の十月からのベース・アップがきまれば、これと同様に扱おうというような話になっております。
  284. 辻原弘市

    ○辻原委員 聞くところによると、米軍から従来与えられておった休暇の買い上げ、すなわちこれを金額にいたしますと月額千七百円程度になるそうでありますが、この分についてはベース・アップの機会に、これは休暇は休暇としてとらす。すなわちその分は買い上げない、こういうことになりますると、実際問題として、一二丁四%の公務員と均衡をとる改定が行なわれても、駐留軍労務者に関するベース改定は、実質計算いたしますると、三%強にしかならぬという計算が出てくるのであります。これは一体どういうことでありますか。少なくとも米軍との交渉は、これは政府の責任であります。本来ならば労務者が直接交渉するのがあたりまえでしょうけれども、それを特殊だからというので、政府がそれにかわって折衝しておるというわけでありますが、そういうことになっておりますか。とするならば、このような給与のむしろアップではなしに減額ということに対しては、政府は強く反対をしていかなければならぬと思いますが、現状の経緯はどうなっておりますか、簡単にお聞かせ願いたい。
  285. 丸山佶

    ○丸山政府委員 有給休暇の買い上げ問題についてお答えいたします。有給休暇の買い上げという制度自体には問題がございますが、お話の通り、これの変更をすることによりまして、実質的に労務者の手取り賃金が減りますので、今回のベース・アップの機会に、これを実施することは適当でない。このようなことで米軍と折衝いたしまして、今回のベース・アップ処置に関しては、このような措置をしないことにきめております。
  286. 辻原弘市

    ○辻原委員 次に離職者対策は一体どうなっておりますか。時間がありませんので、私は一括して申し上げますが、現在離職中の者で、少なくとも救済対策の必要ありと認められる者が約三千四、五百名あると判断しております。さらにドル防衛措置によって、今後起こり得る離職問題等を考えてみますると、大ざっぱにいって、五千名程度はやはり問題になってくるのじゃないか。これについて一応現在石炭離職者にとっておる程度措置だけは最低限としてやる必要があると思うが、臨時措置法等の改正政府はお考えになっておられるか。そして、訓練手当あるいは移住手当等について、石炭離職者と同じような措置をおとりになる考えがあるかどうか、これが一つ。それからいま一つは、新安保条約に基づく新駐留協定の、たしか十五条であったと思いますが、それに基づけば、軍直接の雇用ということをなくして、政府雇用に切りかえるという旨がうたわれておりますが、これがいまだに行なわれず、そうしてその間にこういう離職問題が発生しておるということは、いささか怠慢であると思うのであります。これは一体どういうことなのか、この点も一つ承っておきたいと思います。
  287. 石田博英

    ○石田国務大臣 離職者対策の件について私はお答えいたしますが、安保条約の件は外務大臣、調達庁長官にお答えしていただきたいと思います。ただいま御指摘の問題につきましては、御承知のごとく、中央並びに地方に駐留軍離職者対策臨時措置法に基づく協議会が設置せられておりまして、就職のあっぜん、職業の訓練あるいは自家営業の援助等をいたしております。また失業保険法に基づきまする移転費等の支給をいたしておるのでありますが、石炭離職者援護法に基づきます移住資金その他につきましては、現在のところ駐留軍関係の離職者の発生する地域が比較的大都会に多いのでありまして、この点が遠隔の地へ新しく職を求めて行かなければならない石炭離職者の場合と若干違うのであります。従って、現在のところは、そういう措置をとっておらないのでありますが、しかしこれからの事態も予想されますので、それについての研究は開始いたさせております。ただ、芦屋のごとく集中的に発生いたしましたところにおきましては、職業安定法に基づきまして、失業保険法の保険金の給付期間の延長等をいたさせておることは御承知の通りであります。またこれから生じまする離職者等につきましては、あとう限り基地内におきまして、現在給与を受け、現在働いている状態において職業の訓練をいたさせるようになっておりますことをお答え申し上げておきたいと思います。
  288. 丸山佶

    ○丸山政府委員 失業労務者の切りかえに関しましては、現在米軍と折衝中でございます。御承知の通り直用労務者はPX、食堂、クラブ、劇場等種々なるサービス機関あるいはレクリエーション機関の仕事をやっておるわけでございまして、しかもその資金は利用者の会費あるいはその買い上げ金というようなことで、資金的にも一般軍の経費と違っておるわけでございまして、業務形態も違い、またその資金の出どころも違う。なお、この施設の総体が百数十にわたりまして大小種々があります。これらの契約をどういう工合にしていくか、人事管理の問題その他いろいろございます。従いまして、あの条約発効以来折衝を重ねておりますが、まだ実現に至っておりませんが、できるだけその切りかえを早めるように努力いたしておるのが現状でございます。
  289. 辻原弘市

    ○辻原委員 私は、この問題をめぐって思いますことは、アメリカドル防衛措置によって直接打撃を受ける、また打撃を受けつつある一例であります。他国の経済政策によって、日本の国の経済のみならず、雇用の面まで深刻に影響を与えるというようなことは、これは全く悲劇であると思うのであります。そのよって来たる根本は、アメリカに隷属する今日の保守党の外交のあり方に基本の問題があると私は考えます。この機会に、経済全般あるいは国内の具体的問題に大きな影響を与えつつある現状にかんがみまして、政府はわが国の経済の自主性、ひいてはまた日本の真の独立、こういう点に立脚した新しい外交を根本的に検討し、確立をされるということがぜひとも必要ではないかと私は痛感をするのであります。すでに先日からわが党の各委員が申し上げておりますように、今日、世界の大勢というものは、すでに中立の方向に向いつつあることは事実であります。それなのに、今まで私どもが本会議及び当委員会等で承りました政府の外交に対する、特に中国問題に対する考え方等を見れば、これは前岸内閣よりもさらに強い対米依存、向米一辺倒のにおいが、まさに響きがうかがえるのであります。これではいかに小手先の経済政策を弄しましたところで、今日の日本経済の混乱、あるいは国内における米軍駐留といったような具体的問題の根本解決をはかることはできないと思います。その意味におきまして、この機会に池田総理さらに小坂外務大臣の率直な見解を重ねて承っておきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  290. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 中立論に対しましての御意見は私は賛同はいたしません。ただアメリカの駐留並びにICA等の経済関係は、私は以前からこれはだんだん減ってくることを覚悟しております。従いまして皆さんがお驚きになるほどに私は驚いておりません。しかし日本の行くベき道といたしましては、できるだけ基地も少なくなり、そうしてそういうICAがなくてもやっていけるような状況が望ましい状況でございます。ICAが相当減り、あるいは全部なくなるような事態が来るかもわかりません。あるいは今は家族の引き揚げ等でございますが、軍人家族の引き揚げがどのくらいになるか、あるいはまた軍人自体も相当引き揚げるような場面が来るかもわかりません。また沖縄における軍事措置等につきましても、今まで通りであるとわれわれは期待してはいないのであります。いかなることが起こりましょうとも、われわれは日本の国、日本経済にさしたる影響がないように、日本自体をよくしていくことに専念いたしたいと考えております。
  291. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ただいま総理大臣からお答えの通りでございます。もう一回繰り返して申しますと、アメリカの資本援助並びに軍関係の調達は、毎年三十億ドルぐらいずつ出ておった。従って、アメリカの貿易じりが現在二十億ぐらいの輸出超過になっておりますので、四十億ぐらいのドルが流出している。そのドルがどこへ行ったかというと、結局従来欠乏しておった地域にドルが移ったわけです。たとえば西ドイツ、日本、そういうころに移ってきた。そこでこの移動によってドルが不安定になるというようなことになったら、われわれ自由主義諸国といたしまして共通の問題でございますから、ドル防衛というものに対しては、われわれもわれわれの立場から十分協力していきたい、こういうことでおるのであります。  なお特需関係につきましても、従来から見ると大体半分くらい、月三千万ドルぐらいの特需の支出があるわけでございます。これはICAが一億二千万ドルといいましても、今総理大臣からお言葉のように、われわれの日本経済はこれに耐え得る力を持っておる、こう思うのであります。米軍の人員がどう移動するかという問題につきましては、これはドル防衛との直接な関連はないわけでありまして、軍そのものの移動をどう考えるかという米軍の政策にもよるものでございましょうが、われわれはそれに対しても、われわれの立場から十分これに備えるという経済的な固い布陣をしておりますのでございます。決して向米一辺倒ではないのでありまして、われわれ自由主義諸国の責任のある一員としてりっぱな外交を展開していきたい、かように考えておる次第であります。
  292. 辻原弘市

    ○辻原委員 時間が過ぎましたので、残余の質問は別の機会に譲りたいと思います。終わります。
  293. 船田中

    船田委員長 明日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時五十五分散会