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説明員(
大沢一郎君) もしも
少年に間違いがあってはならぬというので、所長から
——その取り扱いは、普通
少年が入って参りますと、その
鑑別所の意義、目的というものをよく注意するわけです。これは次長が直接これに当たります。また所持品の検査等につきましても、領置をいたすわけであります。それも係長がみずから行なうわけでありますが
——というふうに指示をいたしました。またその処遇についてでございますが、通常
家庭裁判所から
鑑別所に送られます
少年につきましては、非常に動揺もしておりますので、鑑別の正しい結果を得るために、二日間単独室に入れまして、
精神並びに心身ともに休養をとらせまして、その上、いろいろな専門的な観察をいたすのでございます。単独室に入れることが通常の処遇になっております。かような
少年でございますので、もし万一のことがあってはならぬというので、単独処遇がいいか、または集団室に入れて監視を十分した方がいいかというようなことについても相談いたしました。しかし、かような
少年に特に特別な扱いをいたしますと、自己意識が過剰になっても、正しい結果が得られないために、
家庭裁判所に対しまして単独処遇がいいか、あるいは特別の処遇をしようかという点について電話で連絡いたしました。
家庭裁判所からも、通常の処遇でいいだろうという連絡もありましたので、所長から、ただいま申しましたように取り扱い者を特に指示し、かつまた観察もなるべく密にするようにという指示を与えて、さような態勢で
少年の受け入れを終わったわけであります。
午後二時十分に
少年が
家庭裁判所の職員と
警視庁の職員に伴われて
鑑別所に参りました。その際に、それを受け取りました教官が、特に注意するような事項はないかと確かめましたところが、特段にないということでございましたので、そのまま受け入れました。その後
鑑別所の次長が面接をいたしまして、
本人の異同その他所定の事項を聞き、また在所中におきます注意事項を説示いたしたわけであります。それに鑑別課の心理技官も立ち会いまして、約十分か十五分の間面接しているわけであります。その間におきましては、きわめてはきはきしておるし、特段の異常が認められるような
状況がなかったわけであります。続いて医療科に参りまして、一応身体検査をいたした次第でございますが、その間、医師が直接診断いたしましたが、
精神病的な点もない、その他心身に異常がない。またそのときの物腰、態度というものが、きわめてすなおで、なるほど普通の男で異常な点が全然認められないというので、朝からの会議の結果に基づきまして、特段の変わったごとはないというので、単独処遇として普通の入所当初の子供を入れます東一寮の単独室に収容したわけであります。三時半ごろからその寮に入れたわけでありますが、その後、寮監が五分ないし十五分くらいのたびごとに廊下を
通りまして、窓から
少年の動向を視察したわけでございますが、
本人は、持参いたしましたおすしのお弁当をゆっくり食べて、なおかつ
鑑別所の所定の食事もほとんど食べる、変わったところも何もないというので、非常に平穏に推移しておりました。その後も、十五分ごと、あるいは五分、十五分、職員がその前を通るごとに
——その寮の担当者以外の者にも注意を促しておりましたので、それぞれその前を通るごとに視察しておったのでございますが、何らの変わった点がなかったのでございます。で、午後五時から宿直勤務に入りました。宿直は、男子寮が、小さいところを入れまして八つに分かれております。それに五人の観護課の職員が宿直することになっておるわけであります。しかし、その後も大体十五分には一回、あるいは五分というようなときもございますが、視察をしておりましたのですが、何ら変わった点がないというので、午後七時五十五分までさような状態が続いておったわけでございます。で、午後八時には各寮を職員が全部就寝前の点検に参ることになっておるわけでございますが、この点検の
方法が、かような
少年の中には非常に暴力をふるう子供もございまして、一人の教官でその室内へ入りますと集団の暴行を受けるというような危険がございますので、全部の職員が組になりまして一寮を見て回り、一人が廊下に立ち、複数以上でその室内を点検し、また人頭の点検もするという
方法をとっておりますので、午後七時五十五分に
最後に
山口少年の部屋をのぞいたところが、静かに寝ておった、全然変わった動作もなく寝ておったというので、今までの、午後三時十分入所以来の動向から見て異状なしと認めまして、七時五十五分を
最後に全員が集まって、他の寮から順次総員で一寮ずつ回っていったわけでございます。約三十分、順次回って参りまして、この東一寮に参りまして、
山口少年の部屋に至ったところで
自殺をしておったのを発見したというような次第でございます。この
自殺の
方法は、部屋には寝台が備え付けられまして、この部屋のまん中にこういう格好の、野球のマスクのような鉄のかごのようなものが便器おおいにしてあるわけでございます。それにシーツを引き裂きまして、それをそれにひっかけて総死しておるというのを発見したわけでございます。かような
状況でございまして、
少年鑑別所としましても、特に注意をいたしまして、通常の視察のほかに視察を密にして注意してきたわけでございますが、いかんせん、入所しましてから午後七時五十五分まできわめてすなおであり、なお、その物腰態度等にいらいらしたところもなく、応対も穏やかで、挙措動作も通常人とちっとも変わらぬと、非常にまあ何といいますか、興奮しているような
状況も全然認められませんでしたので、間違いないものと
考えまして、三十分間視察を離れたというようなことから、かような結果になったわけでございます。
以上が概略でございます。