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1960-12-01 第36回国会 参議院 法務委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年十二月一日(木曜日)    午前十時四十二分開会   —————————————   委員の異動 本日委員坂本昭君辞任につき、その補 欠として吉田法晴君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     松村 秀逸君    理事            井川 伊平君            大川 光三君            大谷 瑩潤君    委員            野上  進君            野田 俊作君            林田 正治君            大森 創造君            亀田 得治君            千葉  信君            吉田 法晴君            赤松 常子君            市川 房枝君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   国務大臣    法 務 大 臣 小島 徹三君   説明員    法務省刑事局長 竹内 壽平君    法務省矯正局長 大沢 一郎君    東京少年鑑別所    長       鰭崎  轍君    公安調査庁総務    部長      宮下 明義君    警 視 総 監 小倉  謙君    警視庁公安部長 石岡  実君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判の運営等に関する調査  (浅沼事件に関する件)   —————————————
  2. 松村秀逸

    委員長松村秀逸君) ただいまから委員会を開会いたします。  去る十月十二日の三党首立会演説会の際に起こりました浅沼事件について調査を行ないます。  本件について当局からは、法務省から竹内刑事局長大沢矯正局長川井公安課長鰭崎少年鑑別所長警視庁から石岡公安部長がただいま出席されております。  まず政府当局より事件概要について御説明を願います。
  3. 竹内壽平

    説明員竹内壽平君) 淺沼委員長暗殺事件は、あまりにも有名な事件でございまして、新聞等でもかなり詳細に報道されておりますので、事実の内容等につきましては、大方委員の皆様御承知のことであろうと存じます。それにいたしましても、事案のごく概要につきましては、私どもの方で承知いたしております事実関係を、事件資料といたしまして、書き上げまして御配付いたしたわけでございます。  そこで内容に入るわけでございますが、検察庁におきましては、この事件捜査にあたりまして、警視庁当局と密接な協力のもとに、それぞれその立場において厳密な捜査をいたしたわけでございます。もちろん検証捜索等の基礎的な捜査をいたしておりますし、陣容といたしましても、東京地検川口公安部長主任検事といたしまして、公安部捜査担当検察官全員、十名でございますが、さらに検察事務官十四名をもって特別捜査班を編成いたしまして、鋭意究明に当たったわけでございます。  なお、事件の引き継ぎの状況でございますが、十月十四日警視庁から事件を受理いたしまして、問題少年を勾留の上、検察官においてさらに捜査を行なったのでございますが、その結果、少年法規定に基づきまして、去る十一月二日刑事処分相当という意見を付しまして、事件家庭裁判所送致いたしました。家庭裁判所におきましては、審判のため必要があるということで即日東京少年鑑別所送致決定をいたしまして、同少年鑑別所に監置されました。鑑別所東寮の二階の一号室に収容されたのでございます。ところが同日午後八時十五分ごろ突如右少年が室内において自殺を遂げたという報告に接しましたので、検察官は直ちに同所に参りまして、刑事訴訟法規定に基づいて検視を行なったのでございますが、その結果、縊死による自殺であることが判明いたしました。そこで検察官としては家裁から、いわゆる逆送処分ということで送致を受けて、これを地裁の方に起訴をいたして処理をする考えでございましたが、自殺という結果が出てしまいましたので、事件はこのまま終結をするのやむなきに至った次第でございます。  そこで検察官捜査いたしましたところによりまして、重点的に御報告を申し上げますと、まずこの基礎的捜査において検証捜索等事件発生直後からいたしておりますが、日比谷公会堂における検証捜索日比谷病院においての死体検視——淺沼委員長死体検視でございます。それから中野区の犯人自宅、それから全アジア反共青年連盟事務所、そのほか関係者自宅事務所等をそれぞれ捜索をいたしまして、その間に文書等二十六種類、九十点の差し押えをいたしております。その後さらに捜査の進展に伴いまして、追加して四カ所の捜索押収をいたしております。これも関係者自宅でございまして、そこでは文書等百七件を差し押えておるのでございます。  淺沼委員長死体の解剖の結果によりますと、浅沼さんの死因左腹部刺創による出血であるということが明らかにされております。それから凶器による傷口は、長さ三・四センチ、幅一・五センチ、深さ三十センチというここになっておりまして、そのほかにも左乳の乳首の下に長さ十三センチ、幅二センチ、深さ一・三センチの切り傷かございますが、直接の死因は、前に申しました深手の最初の一撃によって加えられた傷によって死亡しておるのでございます。それから参考人等十数行の任意出頭を求めて取り調べております。  かような状況捜査を進めていったのでございますけれども、ここで被疑者犯罪動機につきましては、どういうふうなことになっておるかという点について申し上げてみたいと思います。  本人は、かねて国家の繁栄を得るたのには精神主義を第一義として、天皇帰一精神を指導原理としなければなりない。現在の個人主義物質至上主義は、社会腐敗政治腐敗を来たしておるというような考え方をいたしておりました。ところがいわゆる安保剛争をめぐるデモ等集団行動を見るに及びまして、これを左翼的革命思想の現われであるとして激しく憂え、これらの運動に対処して国民を覚醒せしのる方法としては、微力な右翼の勢力の現状からしてはテロによるしか方法かない。これは方法としては悪であるけれども国民をして正しい政治への関心を持たせ、政治腐敗に反省を与えるためにはやむを得ないというふうに確信をしておったようでございます。で、このような立場からして、淺沼委員長のほかに数名の人たちを殺害しようというような考えを抱いておって、十月に入りましてから、たまたま日宅で短刀を発見するに及びまして実行を決意し、時期を待っているうちに、十二日、三党首演説会の開催を知りまして、本件犯行を実行するに至ったものであるというのが、彼の供述を総合してみまして判断される犯行動機というものでございます。  それから、本件につきましては犯罪背後関係究明するということが最も大事な捜査のねらいであったわけでございます。この点につきまして、検察庁におきましてはもちろん、警視庁におきましても全く同意見でございまして、両者相協力いたしまして背後関係究明に努力をいたしたのでございます。ところが捜査の結果によりますると、犯人は先ほど申しましたような動機によって本件犯行に及んだのであって、自分単独犯であるということを主張しておるのでございます。関係押収いたしました書類、それから派生して関係事件も数件検挙いたしまして、単に本人供述の裏づけというだけでなく、また外部から調べて中へ究明していくという、もう一つの手段、方法によりましての捜査をいたしたのでございまするけれども、結局それらの外部の者と本人との間に、刑法にいわゆる共犯関係というものはこれを認めるに足る証拠を発見することができなかったのでございます。特に本人が所属していたという大日本愛国党及び全アジア反共青年連盟関係者につきましては、本人との共犯関係の有無を鋭意検討をいたしましたが、本人にいわゆる思想的な影響を与えたという点につきましては、これは認めざるを得ないと一応推定されるのでございまするけれども殺人行為につきましての影響、刑法的な意味においての共犯関係というものの存在は、今日までのところ認められなかったというのが捜査の結果でございます。それにいたしましても、これらの捜査を通じまして出てきた関係者につきましては、それぞれ必要な処理をいたしておるのでございます。その関係事件につきましても、ただいまお配りいたしました資料の中に掲げてある通りでございます。  かような次第で、本件本人自殺ということによりまして捜査を打ち切らざるを得なくなって参ったのでございまするけれども、あらましの概要を申し上げますと、以上の通りでございます。
  4. 松村秀逸

    委員長松村秀逸君) 以上をもって当局説明を終わりました。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 亀田得治

    亀田得治君 本論に入ります前に、若干その捜査の形式的な点についてお尋ねをしたいと思います。これは刑事局長でけっこうです。  関係者をずいぶんお調べになったようでありまして、その関係者人数などがどの程度になっておるか、その中のおもなる人、どういう人を調べておるか。
  6. 竹内壽平

    説明員竹内壽平君) 若干のことは先ほど御説明を申し上げたのでございますが、結局事件にならないものが相当あるわけでございまして、人数くらいは申し上げなければならぬわけでございますが、事件になりましたものは私ども承知しておりますけれども、なっていないものにつきましては、報告がきておりませんので、正確なことはお答え申し上げかねますが、私が先ほど申し上げたよりももっと多数調べておるのではないかというふうに思います。
  7. 亀田得治

    亀田得治君 事件になったものは資料がありますから、これはよろしいのですが、背後関係を追及するということがきわめてこれは社会的にも要望された事件でありますから、直接法律的な関係がなくっても、多少でも関係があるのではないかといったようなものは一切やはりお調べを願いたい。だからその辺の検察庁の実際の取り組み方を私たちは知りたいわけなんです。そういう意味でお聞きしておるわけでして、ともかく起訴された、されないにかかわらず、この浅沼事件について関係者を何人調べたか、背後関係という点を重点にして何名調べたか。そうしてここに書いてあるのはよろしい。このほかにおもな人物としてどういう者を調べたか。やはりその程度は明らかにしてほしいと思います。今すぐ、後ほどの質疑にも影響してきまずから。
  8. 石岡実

    説明員石岡実君) 私から、実は警視庁関係について、検察庁の御協力を願い、お互いに協力したのですけれども、申し上げます。おおむね強制、任意参考その他で調べたものは四百三十名ばかり。その中で警察官からも大体百十名ばかり呼んで事情調べておりますから、警察官以外で三百二十名ばかりあります。それで、事件があった事実関係背後関係、特に背後関係の方に主力を置いておるわけですけれども事情調べたわけです。結局あの事件関係のあるであろうと思われるところをくまなく全部以上の方法調べたということになっております。愛国党とか全アジア反共連盟とか、防共挺身隊だとか、その他山口行動に特に最近関係があると思われるものを一応全部取り調べたわけであります。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 そのおもな人物というのはどういう人です。はっきりわかりませんか。
  10. 石岡実

    説明員石岡実君) ですから愛国党党首以下十二名ですか、赤尾党首以下十二名か三名かはっきりしたことは忘れましたが……。防共挺身隊は隊員全部です。それと、今申しましたように反共アジア書年連盟関係四名。それから愛国党を脱党いたしましてから杉本広義という男がやっております山梨県の嶽南義塾という牧場におりましたから、そこの関係者とか、そこに一緒に行っておった学生とか、そういう者並びに彼の学生時代の友だちとか、親族の方とか、そういうふうな者でございます。
  11. 亀田得治

    亀田得治君 文書関係でありますが、先ほどの刑事局長説明によりますと、これは文書以外の押収物も入っているようでございますが、文書だけに限定すると、どの程度押収されたか。その文書の中にたとえば日記のようなものはあるかどうか。警視庁として特に重要視したような文書があればどんなものか、説明してほしい。
  12. 石岡実

    説明員石岡実君) 文書以外には、防共挺身隊から日本刀六つが出ておりました。文書の中に本人日記とか、メモのようなもの、そういうものも若干ございます。
  13. 亀田得治

    亀田得治君 そういう日記なり、メモのようなものには、何か金銭出入り関係というようなものはありますか。
  14. 石岡実

    説明員石岡実君) あまり詳細なことは資料を持っておりませんけれども、今、日記と申しましたのは、本人のノートみたいなものがありますが、金銭出入り関係のものもあるかと思いますけれども、現在詳細な資料を持ち合わしておりません。
  15. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃ、捜査に関する形式的な問題はこの程度にいたしておきまして、本論に入りたいと思います。時間の制約もありますので、あらゆる点についてこまかく質疑ができませんが、重点的に四つくらいの点にしぼってお尋ねしたいと思っております。そのつど関係者の方に答弁をお願いすることになっております。  一つは、背後関係単独犯という割り切り方でいいのかどうか。  もう一つは、資金源関係。  第三は、本人自殺した事情についての関係。  それから第四番目として警察処分本件について出ているわけですが、これは当然警備関係のミスということを認められたことが前提だろうと思いますので、その点を最後にお聞きしたいと思っております。で、法務大臣もお急ぎのようですから、できるだけ大臣の関係のやつを早くやりたいと思います。  本件捜査の打ち切りということが十一月の十七日目に検察庁並び警視庁から発表されまして、地検見解としては山口単独犯だ、こういうふうにはっきり断定をされた発表をしております。しかしこの点はきわめて問題が重大であるだけに少し時期が早過ぎるのではないか。もっとやはりなすべきことを、究明すべき点も究明しなければならぬのじゃないかというふうに考える。その根拠は、まず第一に当日発表された警視庁見解ですね、これは検察庁見解と違うわけなんです。これは皆さん自身新聞ごらんになってその矛盾をお感じになっていると思いますが、この点を法務大臣としては、まずとういうふうに——当時は選挙中でありましたが、新聞ごらんになって矛盾感じておられると思うのですが、まず法務大臣にこの点をお聞きしたい。
  16. 小島徹三

    国務大臣小島徹三君) 私は、検察当局といたしましては十分捜査を遂げ、警視庁におきましても十分な捜査を遂げたものと思っておりまして、おそらくそういう単独犯と認定するについては手落ちはないと、かように考えております。新聞記事でございますが、私は実は読んでおりませんので、またおしかりがあるかもしれませんが、選挙中で、その当時新聞を読んでおりませんので、何ともどこにそごがあるのか、私今お答えいたしかねる次第であります。刑事局長からお答えいたさせます。
  17. 竹内壽平

    説明員竹内壽平君) ただいま御意見のございました打ち切ってしまうことについては早過ぎるのではないかという御意見でございますが、これは新聞記事にはあの新聞発表となっておりますけれども、これはまあ正式な発表ではなかったように私は承知しておるのでございまして、言葉の足りないところもあり、あるいは妥当を欠く点もあったかと思いますが、要するに、雑談的に話されたことが新聞発表のような形で報道されているのだというふうに聞いております。そういう意味においてまず前提として御理解をいただきたいと思いますが、今の背後関係捜査に当たりまして検察庁単独犯と断定し、警視庁はなおそうではないかのように新聞記事印象を受けられる方もあろうかと思いますが、私記事はよく読んでいましたけれども、具体的に犯人共犯関係があるというふうに認められるものがあるかどうかという点について、そういうものを認めるような証拠が得られなかったという点については、警視庁検察庁意見新聞で拝見した限りでは、私は両者の間に差異はないというふうに思うのでございますが、ただ新聞記事でございますと、検察庁はあとのものはもう調べないとは言っていないのでございますが、警視庁の方ではなお若干まだ調べが残っているのだということを言っておられるのでありまして、この点につきまして私どもの方で現場の検察庁当局に尋ねてみると、現にまだ捜査をしているのでございまして、その点も新聞記事はそういうふうになっておりますが、捜査が打ち切られているわけではないという意味において、警視庁検察庁との間に見解の相違はないというふうに私は見ているのでございます。
  18. 亀田得治

    亀田得治君 はなはだ回りくどい説明をされておりますが、私は明らかに矛盾があると考えるのですが、その前に、この新聞発表、これはきわめて重要な発表でありますが、今何か刑事局長お話だと、次席検事とはおっしゃらなかったが、検察庁の方が何か雑談でもされたようなことをおっしゃるわけですが、こういう野党の党主が殺された事件について、その結末新聞記者にしゃべられるのに、雑談をしたのだというようなことでは、私は済まないと思うのです。これは私はやはりこの発表される方も、普通ならば、ほんとうならば私は謄写板でも刷ってちゃんとお渡しになるのがこれは検察庁としての社会に対する私は義務だと思うのです。しかしそれがなくても、ちゃんとしたメモを持たれ、そうしてお話しになる、これは当然なことだと思うのです。そんなこともなしに単なる雑談であったというふうなことをおっしゃられては、これは大へん、もしそれがほんとうだったとすれば、そういう態度自体が、こういう事件に対する取っ組み方として、私は、はなはだないがしろにされたような印象を受けるわけです。で、一体その発表というものはどういうつもりでやられたものなのか、その点を、そこの事務的な、手続的な関係を、ここではっきりしておいてほしい、これは後ほど不明確であれば、やはり委員会前に問題になったように、検事正なり次席検事なり、実際にそれをおやりになった方に来てもらわぬとわからぬと思う。しかしこれは重要なことですから、法務省として確かめておられると思うのです。その点をまずはっきりしてほしい、どういう手続のこれは記者会見であるか。
  19. 竹内壽平

    説明員竹内壽平君) 公式に、この種の事件につきまして、前の国会でも非常に問題となったのでございますし、捜査の結果というものは国民がひとしく待望しておるわけでございます。この点につきまして責任ある当局として、捜査の結果を、法律の許す範囲において、できるだけ詳細に発表するということは、私は責務だと考えております。そういう意味におきまして、いずれは公式に発表しなければならぬという考えを持っておったのでございますが、突如あの新聞記事が出ましたので、実は驚いた次第でございまして、どういういきさつ発表をするようなことになったのかということで当局に尋ねましたところが、先ほど申しましたように、実は公式な発表というつもりじゃない、ただ新聞記者諸君が大ぜい見えていろいろな話をしているうち、文字通り雑談的に話をしておったのでございます。それがまあ新聞記事になってみますと、項目的にも整理されて、あたかも公式の発表であるように見える、その点はなはだ遺憾でございますということが当局の回答でございました。従いまして、いずれは、私は正式に検察当局から発表されるものというふうに考えておるのでございます。
  20. 小島徹三

    国務大臣小島徹三君) いろいろの事件について、一々その結末法務大臣まで報告するということはないのでございますけれども、世間的に非常に重大な問題につきましては、一々正式に起訴なり不起訴なりの決定をしたことは、私の方に報告があるはずでございまして、実は私の手元にもまだ正式決定というものは報告を受けておりませんので、おそらくそういう今刑事局長の言ったようないきさつじゃないかと思います。
  21. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、現在も取り調べ検察庁としても続けておるとおっしゃったんだが、その点は間違いありませんね。
  22. 竹内壽平

    説明員竹内壽平君) 間違いございません。
  23. 亀田得治

    亀田得治君 この新聞発表されたところから見ると、ともかく東京地検としてはこれは単独犯である、こういうふうに結論を出しておるのです。それからそれに対して警視庁の方は、本日出席されておる石岡公安部長談話までがここに載っておる、これはあなた自身すでにごらんになっていると思う。その談話の最終の結びは、「いまの段階では山口単独犯行であるといい切ることは出来ない。」きわめて明確な表現で言うておるわけです。この警視庁公安部長としての談話は、これは間違いないでしょう。それから警視庁もその当時発表されておりまするが、その発表というのは、これは文書でやられたものか、あるいは検察庁のように雑談をされたものなのか、どっちなんですか。その点も明らかにしてもらいたい。
  24. 石岡実

    説明員石岡実君) 発表は、今法務省からお話のありましたように、最終的な発表ではありませんけれども、たまたま中堂がほかの罪名で起訴になりましたから、捜査も相当進んでおるから、そういう意味中間発表的な形で発表になった、文章では出しおりません、口頭で発表いたしております。いろいろ新聞に書かれておる談話は、必ずしも私の言った通り正確だとは言えませんが、おおむね間違ってないと思います。
  25. 亀田得治

    亀田得治君 警視庁の方がむしろ十分準備をされて、そして中間発表として発表されたというふうに今の答弁では聞こえるわけです。それは、たとえば朝日の記事によりますと、警視庁捜査概要といったものがあなたの談話と別個に出ておるのです。これはやはり文書からいきますと、あなたの方で原稿を用意されて、そして朗読等をされたというふうな感じも受けるのですが、その辺のところはどういうふうになっておりますか。
  26. 石岡実

    説明員石岡実君) 文書を用意いたしまして朗読をいたしました。
  27. 亀田得治

    亀田得治君 その中に、朗読をされた警視庁捜査概要という中で、単独犯であるかどうかという点について触れておる点があるのですが、ちょっと読んでみますと、「犯人は性格もよくあっていちばん仲良しだった関係上、思想的に感化をうけている吉村との会話に扇動、教唆されたと思われるフシがあり」——「扇動、教唆」と明らかに法律的な用語をお使いになって、「こんごも厳重に追及する方針だ。」と、これはあなたの公安部長としての談話と全く中身は一致しているわけです。しかもこれが十分準備をされて、こういう中間発表をされたということが今明らかになったわけですから、こういう経過から、ただいまこれは法務大臣もお聞きになったでしょうが、そういう状態の中で、検察庁が、何かもう単独犯として捜査を打ち切ったような印象を与える、そういう話を外部に対してしたということについては、一体法務大臣としてどういうふうにお考えでしょうか。警察は大いに一生懸命にやっているのに、検察庁山口本人が死んだことをいいことにして、さっさと問題を片づけていっているんだ、こういう印象をこれは受けますがね、明らかに。
  28. 小島徹三

    国務大臣小島徹三君) 私は、その当時のいきさつは今刑事局長から聞いたわけでございますが、もっと具体的に調査いたしまして、御答弁申し上げたいと思いますが、多少その辺に不注意な点があったかもしれませんけれども、もしも事実あるといたしまするならば、私は非常に遺憾に存じます。しかし、よく新聞記事等におきまして多少自分の話したことと食い違うような印象を与えるような記事もあることはしばしばございますので、よくその点を注意して調べた上でまた御寺弁を申し上げたいと思います。
  29. 石岡実

    説明員石岡実君) 今の新聞記事は、ちょっと問題があると思います。私は、全体の問題の最後に、吉村についてはなお引き続き糾明中である、これだけの発表をいたしております。これは、そこにも出ております吉村という男が山口に一番深い影響を与えたんじゃないかというような点、過去いろいろ地方を歩いて、右翼の団体に関係しておったというような、そういうことをさらに若干調べなければいかぬというふうなことで、吉村についてはなお引き続き糾明中である、こういう発表をいたしております。そのほかの、教唆扇動の疑いがあるというようなことを言った覚えはありません。
  30. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、新聞発表された警視庁捜査概要というものは、これは間違っておると、間違っているのなら、その訂正を求めるなり、そういうことをされたのですか。だれでもこれを見れば、ははあ、こういうことなら警視庁はもっと力を入れてやるんだなと、こういうふうに感じます。捜査を続けるという点は書いてあるが、その前に、そういう「扇動、教唆されたと思われる」と、こんなことを新聞記者の人が勝手に書くわけがないでしょう、大事なことですから。そそのかされたといったようなことなら別ですが、「扇動、教唆」といったような専門用語を、あなたの方でお使いにならぬのに、簡単に使うわけがない。漠然とそそのかされた節もあるというふうに番いてあるのなら、これはしろうとの方はそういうふうに書く場合がある。だけれども、「扇動、教唆」と特に法律用語を区別して書いておる。だから私は、この点はむしろ新聞記者の諸君の方を実は信頼するんです。中身からして信頼する。どうも、この十七日のこういう検察庁警視庁の食い違った発表、こういうことが発表縫に皆さんの内部で問題になってそしていろんな圧力でも加わっているんじゃないか。資金源の問題はあとから申し上げますが、そういう感じがするのです。だから、メモを用意されたとおっしゃいますが、その用意されたメモというものを法務委員会に御提出願いたいと思うのです。それはできるでしょうな。それはあるでしょう。
  31. 石岡実

    説明員石岡実君) 吉村の問題につきましては、ほかの個所では全然触れてないので、最後の個所で、吉村についてはなお引き続き糾明中であるという形になっておりますし、そういう発表をしたわけです。あとの教唆扇動というのは、これはどういうところで調べて書いたか知りませんけれども、少なくともこちらのメモはそうなっております。そういうような発表をいたしております。
  32. 亀田得治

    亀田得治君 これは、警視庁で用意されたメモ、そういう問題については、後はど委員会等で取り扱いを私の方からも一つ要求したいと思いますが、ただいまの質疑でも明らかになりましたことですか、浅沼事件捜査はもう終わったのだと、こういう印象を一時世間に与えたわけですが、そうではない、まだ追及するのだと、こういうことですから、この点は私はこの席上で強く要望いたしておきます。ともかくこういう政治的な事件にはよくあることなんで、しめし合わせてやったって、おれさえ責任を負えばよいのだ。こんなことは、私が言わぬだって、常識的に行なわれることなんです。しかも、一方は死んでしまった。これはもうこれで終わりだと、打ち合わせした者がいたってやはりそういうふうに出がちです。そこを究明していくのが皆さんの立場なんですから、私はそういう意味では警視庁発表というものを非常に多としておるし、おそらく警視庁がそういう考え方を述べる根拠というものは、私はあるのだと思う。その根拠をもっと確実なものにして追及してほしいと思っておる。その点についてしからばどういう根拠で一体そういうふうに考えておるのかということを聞き過ぎますと、これはあなたのその追及の実はじゃまになってもいかぬと思いますから、この際は、私としては遠慮した方がよいのではないかと思っております。これで打ち切るのだということであれば、私の方では、それはおかしいじゃないか、吉村との関係でこういうことも世上出ているじゃないかといったような点について、もっと追及してみたいと思っております。しかし、結論はそういう追及の方向にあるようですから、これは一つしっかりとその方向で最大限のやはり努力をしてもらいたいと思う。これは私は、法務大臣は、今度は大臣としてお残りになるかどうかわかりませんけれども、こういう事件に対する一つ処置を、世間から疑いの目をもって見られないように、十分な指揮をとってほしいと思う。その点についての法務大臣見解。前向きの姿勢で指揮をとってほしいと思う。指揮をとったけれども、どうしてもこうこういう理由で行き詰まったということなら、あらためてこれは報告を受けてもいいのですが、今の状態ですと、とてもそういう段階ではないと思うのです。見解一つ聞いておきたい。
  33. 小島徹三

    国務大臣小島徹三君) ただいま亀田委員の御質問の点は、かつて私は、佐郷屋が浜口さんでしたか暗殺いたしました問題が起きたときに、その周囲におる連中が、もうほとんど私たちの常識から見れば、教唆扇動と思われるという姿で佐郷屋という者がそういう凶行に及んだということで、私たち十分教唆扇動だと考えておったのでありまするけれども、いろいろ取り調べた結果、その当時の判断といたしまして、ついに教唆扇動ではなかった。確かに連日のごとく佐郷屋の周囲を取り巻いて、ああいう者を殺さなければならぬという議論はたびたびしておって、その影響が佐郷屋に与えられたということははっきりわかるけれども、しかし教唆扇動ではなかったということで、御承知のような決定になっておるのでございまして、今度の問題につきましても、私たちは、吉村、あるいは中堂と申しますか、この二人という者は、かねがね山口少年行動をともにいたしておりましたので、非常な疑いをもって私たちもこれをながめておるのでございますけれども、しかし実際問題といたしまして、はたして刑法上にいう教唆扇動になるかということになりますと、非常にデリケートな問題でございまして、その点について疑いを持ちながらも、なかなかはっきりした具体的な事実が上がってこないということではなかったか。また、そういうことになっているのではないか。今のところ、そういうところではないかと思いまするけれども、何と申しましてもこういう問題は常にそういうところに問題があるのでございまするからして、徹底的に調査いたしまして、あくまで追及していって、はっきりした背後関係をつかみたい。かように私は考えておりまするし、今後その点については、十分に指揮するつもりでございます。現に、私はその点については、かねがねやかましく言って注意いたしておりまするからして、検察当局におきましても、手落ちなくその点については追及することと存じます。
  34. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃそういう態度でしっかりお願いしたいのだが、もう一つ、私、検察庁発表並びに刑事局長の先ほどの答弁から疑問を持つ点は、山口行動について、刑法上の共犯であるという証拠がつかめない。こういう表現を使っておるのですね。どうもこの点に警察当局との考え方の多少違いがあるのじゃないか。山口単独犯であるか、あるいは共同してやったものかということについて、刑法上の共犯という問題だけにしぼって狭い範囲で問題を検討されておるという感じがするのです。しかし扇動というのは倣防法上の罪もあるわけですから、これはあなたに説明するのもおかしいですが、ただ、ねらいどころとして、どうもその辺が消極的な感じを受けておるのです。刑法上の教唆あるいは耐助、そういったようなものになるかならぬか、破防法上の扇動、これはもっともっと広い概念ですから、私は実際問題としてそんな刑法上の教唆として証拠をつかむのはなかなか困難だと思うのです。つかめるとしたらやはり扇動の方です。ところが、どうもその辺を初めから無視されておるような感じを受けておりまして、その点、刑事局長どういうふうになっておるのですか。
  35. 竹内壽平

    説明員竹内壽平君) 私が刑法上という言葉を使いましたために、御疑念をお持ちになったようでございますが、決して刑法——形式刑法の共犯の六十条以下の規定の翻助、あるいは共同正犯といったように、限定しての私の意見ではございません。それではなせ刑法上という言葉を使ったかと申しますと、あの新聞発表のありましたあとに、地検の言い分の中に、法律上という言葉を使ってある、その法律上という言葉が意味がわからぬというようなことが、「天声人語」でございましたか何かに出ておりましたので、私頭にありまして、この法律上という言葉を刑法的な意味においての概念として私はここで申し上げたつもりだったのでございまして、決してその刑法の狭い範囲で考えておるのでなく、刑罰法令上というふうに訂正さしていただきまして、私が御答弁申し上げている趣旨はそういう趣旨でございます。御了承願います。
  36. 亀田得治

    亀田得治君 そういう意味で了承しまして、その角度で一つ努力をしてもらいたいと思うのです。若干この点で問題はまだあるわけですが、また新たに正式報告は、こういう意味じゃないのだということが明らかになりましたから、いずれの機会に、もう少しやりたいと思います。  次は資金関係のことについてお尋ねします。これは申すまでもなくテロの防止対策ということが、浅沼事件以後いろいろ世論の話題になったわけですが、いろんな対策という点が考えられましょうけれども、こういう団体に対する資金の援助、こういうことが一つの大きな問題点だと、こういうことはもうあらゆる人から指摘されておるわけです。この前の臨時国会の最終日において、衆議院の方でそういう点についての相当な質疑があった。しかし、当時の政府の答弁というものはきわめて不十分です。たとえば政治資金規正法で届け出されておる分とか、そういったようなものについての指摘が野党側からされると、それをしぶしぶ認めるといったような程度であります。そういうことでは、世間はこれは納得しておらぬわけです。政治資金規正法の届け出すらあれだけのものがあるなら、もっと奥というものがあるだろう、これはだれでも考えているのです。しかしこれはなかなかっかみにくい問題であることも事実でしょう。ところが、たまたま東京地検浅沼事件をずっと捜査されてそうして先ほどは正式発表ではないと言われたわけですが、この十一月十七日の発表の際に、資金源については地検としては調べてその証拠をつかんでおると、これもきわめてはっきりした表現で新聞に栽っておるわけです。そこで、一つどういうことをつかんだのか、この点をはっきりどういうものがどの団体にいつごろどういう金を送ったというのか、これは東京地検のこの発表によって関心を持っている人は、いずれこれは国会で明らかにされるだろうということで、これは待ち望んでおる問題です。当然こういう新聞記事があれば皆さんの方でも東京地検の力にお尋ねになっているはずだと思うのです。その点は一つ明らかにしていただきたい。
  37. 小島徹三

    国務大臣小島徹三君) おそらく地検調査いたしましたのは、その山口二矢事件に関連した背後関係と認められる右翼団体の資金源のことであろうかと私は考えております。その点につきましては、おそらくある程度の具体的の事実を握っておると思いますけれども、問題は資金源の全貌を握ってしまっておるかどうかということについては、私はまだここで全部を握っておるとは申し上げることはできないと思いまするけれども、ある程度のことはわかっております。詳しいことは刑事局長から答弁してもらいたいと思いますけれども、ただ、ここで亀田委員にお願いしておきたいと思いますことは、右翼の資金源というものは、もちろん関係のない右翼資金源調査することは事実これはできないことでありますからできませんが、一体資金源の中にいわゆるほんとうの資金というようなものは、ある意味において刑法上の問題がからむ方法によって得られる資金というものがあるのじゃないかという疑いを私は持つのであります。現実の問題といたしまして、先ほど法務省から提出いたしました淺沼委員長暗殺事件資料の中の吉村法俊というものをごらんになりましても、ここに被疑者としての容疑の点は何か、東京蓄電器株式会社より現金七千円及び額面合計八万八千八百四十二円の約手三通を預かって取り立てすると称して着服してしまったというような、あるいはその他のいろいろなそういうような多少の性質を帯びたものがあるのじゃないか、それがほとんど資金源になっているのじゃないか、大きな意味において。ということを私は疑っているのでございます。これは実は被害者からそういう届け出が事実あったりすれば、ほんとう資金源というものがつかめると思いますが、私たち検察庁で取り調べた範囲内において、おそらくそういうところまでは、被害者が届けない限りは、ほんとうのものはっかめないと、こう私は思いますので、何もかもその資金源というものは、何と申しますか、特に右翼を奨励するというような人からばかり出ているんだというふうにお考えになることは、私はちょっと行き過ぎではないかと思いますので、その点について一つ御了解願いたいと思います。
  38. 亀田得治

    亀田得治君 刑事局長、今、大臣の御答弁だと、もう少し詳しいことを聞いておられるようで、とにかく知っておるだけのことはみんな言うてもらわぬとね。
  39. 竹内壽平

    説明員竹内壽平君) このような狂信的な右翼の人たちをまかなっている金というものを、この種の事件を根本的に、抜本的に閉塞させるためには、これを明らかにして、そういう資金源を断つということが一つの対策でありますことは申すまでもないことであります。そういう意味と、それから先ほど来申し上げておる背後関係究明するという意味と両方からして、検察庁としての犯罪捜査の過程を通じて、この面にメスを入れるということは当然でございますし、その点についての可能なる限りの捜査をいたしておるのでございます。  大ざっぱに申し上げますと、反共青年連盟関係の金でございますが、本年六月上旬から十月中旬までの収入は、月平均五万円余りでございまして、その内訳を見ると、寄付という名前になっております。あるいは雑誌代というようなもの、その広告料といったようなものでございます。それから大日本愛国党の方でございますが、本年一月から六月までの収入は、月平均三十万円くらいでありまして、その内訳は党費、寄付などということになっております。それからまた防共挺身隊関係でございますが、本年一月から九月まで、月平均十万円程度でございまして、その内訳は、寄付あるいは債権取り立て等による雑収入ということになっておるようでございます。私はさらにそのほかそれらがどういうところから符付を受けておるかということを承知いたしておりますけれども、私の知っておることをここでみな申し述べるようにというお言葉でございましたが、これらは、今申し上げました表現の中にもうかがえると思いますが、債権取り立て等による雑収入という言葉自身が、よくありますこの種の犯罪とも関係するのでございます。寄付という中にも、寄付をしたのか、あるいは恐喝がましいことで取ったのか、現にそういう事例も出ておるのでございまして、私どもはこういうことにつきましては、さらに究明をしていかなければならぬと考えておるのでございまして、捜査も一応私は知っておりますけれども、ここで申し上げることははばからしていただきたい、かように考える次第でございます。
  40. 亀田得治

    亀田得治君 このただいまあげられた数字はですね、これは押収されたメモなり文書等によって得ておるものか、あるいはこの本人たちや団体の関係者に聞いたものか、どっちなんですか。
  41. 竹内壽平

    説明員竹内壽平君) 押収した書類、それから本人たちの申し述べておる供述と、そのほか政治資金規正法等によって届け出をしておりますものがありますし、そういったようなものを総合いたしまして、内訳を申し上げたわけでございます。
  42. 亀田得治

    亀田得治君 その寄付者ですね、これは明らかにできませんか。
  43. 竹内壽平

    説明員竹内壽平君) ただいまの段階では、先ほど申しましたように、名前を申し上げることをはばからしでいただきたいというようにお願いしたい次第でございます。
  44. 亀田得治

    亀田得治君 それをはばかってもらったんじゃ、きょうの委員会の実際の意味はなくなるのです。それは相当な金は使っているだろうということは、これはもう報道自体からも、世間はみんなわかっていることなんです。どこから出ているのだろうと、それをみんなが知りたがっているわけでして、またそういうものを出した人が発表されることが、その人に対する一番大きなやはり社会的な阻止手段になるのです。それがいないのですよ、なかなか。しかも私は雑談とおっしゃるけれども、この十一月十七日に東京地検の、これは次席検事のようですが、次席検事ですね、新聞記者会見をされたのは。その次席検事のおっしゃった資金源に関する点ですね、これはもう非常に重大な発言なんです。で、ちょっとそこを繰り返しますがね、「この事件に関連して大日本愛国党、全アジア反共青年連監など右翼団体の資金源調査した。」この両団体だけじゃないという意味ですがね。「この結果、これらの団体に三業地、一流会社などから資金を出していることをつきとめた。」いろんなところから出ているというのじゃない。三業地、一流会社と、これは具体的に検察庁がちゃんと銀行なら銀行、どんな会社と突きとめておるからこういう言葉が出ているのです。それで「内容関係者のうちに総選挙に立候補している者もあり、公表できない。」そうすると、総選挙に立候補したあの中にはそういう人がおると、これははっきりしている。これは法務大臣選挙されたわけですよ。そういう点から言ったって、これはあなたはっきりさせてもらわなければ困るわけですね。これは確かにおるからこういう特殊な指摘が出てきているわけです。しかし、まあ選挙中だから遠慮したいと、「しかし、国会で質問があれば内容を明らかにするだけの資料はそろっている。」これは朝日新聞記事です。それからもう一つ私は読売新聞記事も読んでみました。今私が指摘した要点というものは、きっちり全部載っております。ただ、形容詞なり、てにをはが多少違うだけです。だから、これは発表の仕方が当初お話しになったようなことでありましても、この発表された責任者が、これははっきりこのことをやはり指摘しておしゃべりになっていることは、これは事実だと思う。だから、これを読んで、私たち当時は選挙運動で地方にいたわけですが、これは国会では必ず明らかにしてもらえる、こういうふうに期待も持つし、またある情報を聞きますと、この記事が出たために実際に金を出した会社などはえらい恐慌を来たしていると、こういうことを僕ら聞いておるわけです。だから、恐慌を来たすということは当然そこがポイントなんです、今後の対策の問題として。だから、私はこれは何もこれを発表したからといって、山口の問題の単独犯、共謀犯、そういうことについての取り調べを今後続けることについて何も支障があるわけではないから、この問題は。しかも、これは世間も要望しておることです。なかなかつかみにくいことをたまたまつかんで、資料まで国会へ出していい、こういう意味のことをおっしゃっておるんですから、これはぜひはっきりしてほしいんです。
  45. 小島徹三

    国務大臣小島徹三君) 亀田委員のおっしゃることはまことにごもっともでございますか、たとえばアジア反共青年連監の資金源の問題にいたしましても、実際においては民声新聞というのを出しておりまして、その中に広告としていろいろな人の広告が載っておる。そうすると、その広告を出したのか出させられたのか、その辺のいきさつは別といたしまして、それに関連して金を出しておるというようなこともございまして、はっきり名前の出ている人は取り調べができまして話も聞いたと思いますけれども、その他そういうことで出されておる金もあるわけであります。出した人は何も決してそういう資金源、いわゆる右翼を養成するとかいう意味で出しているのじゃなくて、仕方なしに出しているというような性質のものもある。そういうものについて、もう少し調査してみなければならね問題もありますので、それで今ここでさしあたりすぐこれを発表するということは私はできかねるのではないか、かように思うのでございます。実際問題として、先ほど申しました吉村の問題にいたしましても、これは一つのこういう容疑があって、それで逮捕して取り調べておる、こういうようなことでございまして、大体この反共青年連盟に月平均五万円くらいということのもとは、私はわかっておるはずだと思います。思いますけれども、それをすべて発表していいのかどうかということになりますと、もう少し考えさしていただかないと、出した人の意思もございましょうし、どういう意味で出したのか。めんどうくさいから——われわれがよく獅子舞とかあるいはよく妙なものを持って押し売りにくるというのが、めんどうくさいから要りもしなしいものを買うとか、あるいは多少でも渡して帰していくというような意味で出した人もございましょうし、いろいろございますので、その辺のことをもう少し研究さしていただいて、そして差しつかえないと思いましたら、そのときは発表さしていただきます。
  46. 亀田得治

    亀田得治君 こんなことは少しも差しつかえないのでして、私は少なくとも社会党にはそういうものはありません、はっきり断定して言い得る、そのことは。立候補者といえばこれは自民党なんです。そういう言葉を出していいかどうか知りませんが、あなたの方で、すなおに発表されぬから、私はそれぐらいのことは言っていいと思うのです。しかし、それが自民党の皆さんがやっておられるわけじゃない。これは政治家の名誉のためにもこういうことは明らかにすべきなんです。そのことがどれだけ……。まあいろいろな形で金は取られているというふうに法務大臣は解釈されておるようです。私もそれはそうだと思う。積極的に進んで育成するために出している者もあれば、いやいやおつき合いで出す者もある。いろいろでしょう。ところがそのいやいや出すことがやはり結局は育成することになるのです。いやいや出しているのはもう伏せてかばってやるんだというようなお気持が若干法務大臣におありのようですが、そういうことじゃ、このテロ対策というものに対して結局は何もできないということになるのですよ。私たちがこうして人のいやがることを質問する、こんなことだって、あいつ、亀田のやつ要らぬことをあまり聞き過ぎるということで、私の方もだれかまたねらうようなことにもなりかねぬかもしれぬと思うのです。しかしそんなことを心配しておっちゃ、これは実際のところ問題の解決にならぬでしょう。はなはだ残念です。
  47. 小島徹三

    国務大臣小島徹三君) 私はそういういやいやながら出した人をかばうかとかいう意思は毛頭ございません。私はここではっきりと、資金源のうちには脅迫的の、刑法上の罪を伴うような性質の金の方がむしろ大きな資金源になっておるのではないかということをここで、言い切ったということは、私自身自分でもって覚悟いたしております。そういうことをはっきり言うことがどういう影響を及ぼすかということも私は考えております。しかし、私はあえてそこまで言い切ったわけです、ここで。私はそれ相当の覚悟を持っております。しかし、私はそういういやいや出した人をかばう意思はございませんけれども、しかし実際問題として、まあめんどうくさいからといって出したというような人もあると思います。それから、たとえばそこの新聞の中に、三業地という言葉がございましたけれども、そういう人は非常な弱みを持っているということもあるのですから、だから、一々それをとらえて、その人は千円か、二千円か知りませんし、あるいは五千円になるのか知りませんけれども、そういうような人がそれ相当の金を、身分相応の金を出しで、とにもかくにも、めんどうだからというような意味で出している。あるいは広告でも、出したくないものでも出す。現に私たちも、いろいろな妙な新聞なんかに出されて、そしてあとから金を請求されたりした例がたくさんありまして、実際そういう切揚もあるのですから、私が申し上げているのは、実際において、この不当な右翼団体の資金源というものに対して、徹底的に追及したいという気持は持っておりますけれども、そういうものもあるのだということを院分御了解願いたいということを申し上げているわけなんです。  で、私といたしましては、検察庁が何か立候補している人があるということを言ったということでございますが、私は自由民主党の人にはないと、かように考えております。そうじゃないと私は考えております。おそらく別個の人だろうと思いますけれども、自由民主党の人じゃないと、私はかように確信いたしております。
  48. 亀田得治

    亀田得治君 まあ共産党にあるわけがないだろうし、社会党にもない。自民党にもない。すると、あと残るのは民社と無所属と、きわめて範囲が狭められてくるわけですね。これは実はそういうことになると、よけい、それから除外された人は変な扱いになるわけでしてね。ともかくこういうことはまあ明らかにしてもらわなきゃ、これは済まぬことですよ、実際。それで、あなたのお気持は再度私今聞きまして、その決意のほどは私もまあうれしいと思うのです。しかし、そこまで決意されておるのなら、これはこちらが要求するわけなんですから、発表してくれと。あなたが積極的にやるわけでもないのだから、それはそれにすなおに応じてもらって、たとえばこの三つの件であっても、実はこういうことだというふうにして発表してもらいたいのです。これはぜひ——いずれの時期といったようなことをおっしゃるのですけれどもね。しかし、まあテロ対策が問題になっているときに、やはりこれは発表してもらうのが一番適切だと思うのです。これはもう再度ここで要求しますが……。
  49. 大川光三

    ○大川光三君 いろいろ亀田委員の御質問に引き続いて私はもっと伺いたいのでありますが、ちょうど十二時までということを伺っていますので、なお残る自殺に関する点、あるいは警察処分に関する点もありますから、本日の調査会は、本日で打ち切らずに、引き続いて日を改めて続行してもらうということをお願いして、ただ亀田委員にただいま要点だけ言うておいていただいて、もう一ぺん調査会で引き続いてやったらどうか、かように思いますが……。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  50. 亀田得治

    亀田得治君 まあ大川委員のああいう御発言もありましたし、いずれかの時期に、やはりこれは世間の要望にこたえるというかっこうで、一つ発表をお願いしたい。  そこで、前へ進むことにいたします。公安調査庁の方では、この資金源について、この事件を契機にしてお調べになったかどうか、その点を一つ……。
  51. 宮下明義

    説明員(宮下明義君) 公安調査庁におきましては、従来から破防法の観点で、特定の右翼団体を調査をいたしましたり、あるいは一般的に、その動向を監視をしておる団体がございます。で、この浅沼事件を契機としてということではなくして、従来からわれわれが調査をし、動向把握をしております団体については、その資金源を明らかにしようと努力をいたしておるわけであります。
  52. 亀田得治

    亀田得治君 まあ従来からもおやりになっているのだが、この浅沼事件が起きて、特にこれはまあ要望されているから、力を入れてやっておられるかどうかという点を聞いたわけですが、そこで、この地検発表がございましたことは、当然調査庁も十分新聞ごらんになっておると思いますが、あなたの方の仕事の性質から言っても、これはすぐ地検の方に飛んでいってどういうことになっておるかということを、あなたの方ではお調べになっておりますか、その点どうですか。
  53. 宮下明義

    説明員(宮下明義君) 公安調査庁の調査犯罪捜査とは、同時並行して進みますけれども、やはり具体的な警察検察捜査が進んでおります事件につきましては、公安調査庁の団体調査を少し手控えざるを得ない実情にあると思います。従いまして、本件の具体的な事案につきましては、われわれの調査官がすぐ検察庁なり警視庁に飛んでいって事情を聞いたという事実はございません。
  54. 亀田得治

    亀田得治君 そういう態度では、やはり何ですね、公安調査庁は右翼に対してはどうも甘い、こういうふうに一般的に相当批評がある。これは十月二十四日の衆議院においても各委員から具体的な指摘等をしております。今の御答弁を聞きますと、やはり私もそういう感じを持ちます。本気にテロ行為を防止するという気持が調査庁にあれば、たとえああいう形式的の発表であっても、そういう資金源等が検察庁でつかめたということなら、あなたの方の仕事の参考として、飛んでいって、ともかくそれを教えてもらう、私はあたりまえのことと思います。それができておらない。そんなことはちょっとおかしいですよ。この破防法の二十九条にもちゃんと書いてあります。この公安調査庁と警察庁というものは相互に法律の実施に関して情報資料の交換をしなければならないと書いてあります。当然のことができておらないのですね。それで、先ほどの答弁ですと、破防法に関係あると思われるような右翼団体についての資金等についても調査しておる。結論ははっきりしませんが、調査はしておるようにお聞きしたわけですが、その調査の結果というものをここで発表してもらうわけにいきませんか。
  55. 宮下明義

    説明員(宮下明義君) 公安調査庁が破防法に基づいて調査をしております右翼団体は、一般に世間で広く右翼団体というふうにいわれております全部には及ばないわけでございます。亀田委員も先刻御承知のことと思いますが、破防法の条文に照らしまして破壊活動に出る危険性のある団体を破防法に基づいて調査をしておるわけでございまして、世間一般に右翼団体といわれております広般な団体にまでは調査は及んでおりません。従って、われわれが調査をし、あるいは情報把握をしております団体について、われわれが資金関係で得ております結論は、これらの団体は入会金、会費あるいは機関誌代、広告料などが一つの資金ルートでありますし、そのほかに篤志家のカンパによって団体運営をしておるようであります。この篤志家のカンパというのが問題になるわけでありますが、大体こういう金は団体の最高幹部の独裁経理になっておりまして、団体の中で発表されるとか、あるいは記帳されるというようなこともほとんどない実情でございまして、実態をなかなかつかみかねているわけでございます。
  56. 亀田得治

    亀田得治君 もちろん右翼団体全部についてのお尋ねをしているわけじゃない。あなたの方で破防法上必要があると思って対象にされているものだけでけっこうなんです。それも今のお話からしても、具体的な金額等はなかなかつかみにくいといったような点もあるようです。あるようですが、どこからどういう団体に出ているのか。そういうことだけでも明確にしてほしいというのが皆の気持なんです。その程度のことなら、あなたの方で扱っているわけですから、何もこれは秘密にすべきことでも何でもない。発表を願いたいと思う。どうでしょう。
  57. 宮下明義

    説明員(宮下明義君) 篤志家の広告料、あるいは賛助費というような名目のカンパの内容が、具体的になかなかわからないで、つかみがねているという実情でございます。
  58. 亀田得治

    亀田得治君 いや、そのカンパはしているけれども、金額は幾らだとか、どこでどういうふうに渡したか、そういうことがわかりにくい。こういうことなんですから、そこまでを私は聞いているわけじゃない。旧していることは間違いないということさえつかめればそれでいい。
  59. 宮下明義

    説明員(宮下明義君) 政治資金規正法の届け出等によりますと、寄付という形で届け出られている金額があるわけでございます。これは団体の幹部の名前で届けられております。しかしながら、その内容はその幹部の寄附ではなくして篤志家からカンパをした金が寄附という形で届け出られていると思うのでございますが、その金が、だれからどのくらい出されたかということが、遺憾ながらまだわれわれにわかっておらないわけでございます。
  60. 亀田得治

    亀田得治君 それは何も政治資金規正法の届け出上の形式などを聞いているわけじゃないのです、こっちは、大事なのは害附であろうが、また人の名前を通じてであろうが、とにかく実際上どこから出ているのか、そのことが関心事なんで、またあなたの方自体としてもそのことをお調べになっているのだと思うのです。どうもその点をある程度つかんでおられるようですが、はっきりされないわけですが、はなはだ遺憾ですね、そういう点は。で、警察の方では警備計画等の関係もあるわけですが、そういう点の検討というものはされておりますか。ちょっとお聞きしたい。資金源ですね。
  61. 石岡実

    説明員石岡実君) 今のお話の警備計画がというお話なんですけれども、警備計画はもちろん十分いたしておりますけれども、その御質問の趣旨がちょっとよくわからないんですが……。
  62. 亀田得治

    亀田得治君 いや、つまりですね、右翼団体に対する金がどこから出ているかということをお調べになっているか。
  63. 石岡実

    説明員石岡実君) 先はどからお話のありましたように、不法行為のおそれのある右翼団体の実態というものは、十分わかっております。その関係で資金についても相当大切な問題だというふうなことは十分了承しております。そういうことでありますけれども、実態は、今のお話のごとく、なかなか正確に責任をもって発表するという形にとらえにくい点が非常に多いわ別けです。ただ今回も、たとえば反共青年アジア連盟というものが、こういう事件になってきますと、そういう捜査を通じて実態が相当明らかになるというような形であります。
  64. 亀田得治

    亀田得治君 この公安調査庁でも警察でも検察庁でも、ある程度のことをこれはっかんでおられるのだと思うのです。ところが、発表をどうも渋られる。ただ、まあ浅沼事件が出てきて実際に刑事事件になり、それに関連して書類などを押収されたりして、たまたま次席検事が国会なら発表してもいいと言ったようないきさつがあるものですから、やむを得ず三団体のことについてはあの程度発表がなされておるわけですが、どうもこういうことでは、結局みんなが寄ってたかって右翼団体というものを育成しておる格好になりますよ、結論としては、何も捜査の秘密に関することでも何もありませんし、実際にそういうものに金を出すことはけしからんと言ってみたって、とめる方法はないのです。社会的な批判以外にないのですよ。私はほんとうの一流会社なんかで出しているのがあるとしたら、そんな団体をほんとうに援助する気持で出しているものはおそらくないと思うのです。はとんどいやいやながらです。ですから、そういう諸君にしたって、むしろ発表してもらうことを、ある意味では希望すると思うのです。なせそれに対してもっと大胆に答にてもらえないのか。調査庁なり警察などずいぶんどうかなと思われるようなすれすれのことでも、ちょっと踏みはずして調べる場合もありますし、そんなことすらやっておって、この大事なことを実際に相当調べておりなから、うやむやにその点をされる、はなはだ遺憾です。時間がありませんから、この点は、はなはだ本日の答弁は不十分でありますが、法務大臣も適当な機会を見てというふうにおっしゃっておるわけですから、まあ査委員長の方でしかるべく理事会で御相談を願いたいと思うのです。  最後一つ残りましたが、自殺山口が十一月二日にしたわけですが、その前後の模様等については、詳しく御説明いただくと大へん長くなりますので、簡単に。ポイントだけを教えてもらいたいのですが、つまり問題は、こういう性質の事件でありますから、それはどういうことが起こるかわからないわけです。なぜそういう自殺を簡単にやってしまうか。本人浅沼さんでも殺そうというくらいの人ですから、そんな自分自殺くらいのことは軽く考えていますよ、こういう人は。それを十一月二日に鑑別所に移したその日に、もうそれをやってしまった、私はこの点ははなはだ本件をずっと明らかにしていくそのためには、遺憾だと思っているのです。そういう意味ではどんな一体扱いをしておったのか、十一月二日に本人が来てから自殺するまで。その点に問題をしぼって、ほかのことはいいですから、一つお答を願いいたい。
  65. 大沢一郎

    説明員大沢一郎君) 山口少年が観護措置決定によりまして東京鑑別書で収容中に自殺をするに至らしめたことは、まことに残念なことでありまして、われわれも、ただいま御指摘になりましたように、捜査に障害を与えたという点で、きわめて遺憾に存じている次第でございます。  山口少年が入所いたしましてから自殺に至ります経過も、新聞等で相当詳細に報道されておる次第でございますが、ただいま御質問のございました特に留意をしたという点に重点を置きまして御説明を申し上げたいと思います。  山口少年が入所いたしましたのは十一月二日でございますが、同日午前十時ごろに東京家庭裁判所から電話をもちまして、あらかじめ本日二時ごろ山百が入所するという連絡がございましたので、東京少年鑑別所におきましては、この少年犯罪がきわめて洞穴な事件でございますし、また世間の相当注目を引いた事件でございますので、その処遇につきまして直ちに所長が次長並びに課長、係長を招集いたしまして、その少年の処遇についての取り扱いと申しますか、について会議を開きました。その少年につきまして……。
  66. 亀田得治

    亀田得治君 お話し中ですが、大臣、お急ぎのはずでしたね、もうけっこうですから……。
  67. 大沢一郎

    説明員大沢一郎君) もしも少年に間違いがあってはならぬというので、所長から——その取り扱いは、普通少年が入って参りますと、その鑑別所の意義、目的というものをよく注意するわけです。これは次長が直接これに当たります。また所持品の検査等につきましても、領置をいたすわけであります。それも係長がみずから行なうわけでありますが——というふうに指示をいたしました。またその処遇についてでございますが、通常家庭裁判所から鑑別所に送られます少年につきましては、非常に動揺もしておりますので、鑑別の正しい結果を得るために、二日間単独室に入れまして、精神並びに心身ともに休養をとらせまして、その上、いろいろな専門的な観察をいたすのでございます。単独室に入れることが通常の処遇になっております。かような少年でございますので、もし万一のことがあってはならぬというので、単独処遇がいいか、または集団室に入れて監視を十分した方がいいかというようなことについても相談いたしました。しかし、かような少年に特に特別な扱いをいたしますと、自己意識が過剰になっても、正しい結果が得られないために、家庭裁判所に対しまして単独処遇がいいか、あるいは特別の処遇をしようかという点について電話で連絡いたしました。家庭裁判所からも、通常の処遇でいいだろうという連絡もありましたので、所長から、ただいま申しましたように取り扱い者を特に指示し、かつまた観察もなるべく密にするようにという指示を与えて、さような態勢で少年の受け入れを終わったわけであります。  午後二時十分に少年家庭裁判所の職員と警視庁の職員に伴われて鑑別所に参りました。その際に、それを受け取りました教官が、特に注意するような事項はないかと確かめましたところが、特段にないということでございましたので、そのまま受け入れました。その後鑑別所の次長が面接をいたしまして、本人の異同その他所定の事項を聞き、また在所中におきます注意事項を説示いたしたわけであります。それに鑑別課の心理技官も立ち会いまして、約十分か十五分の間面接しているわけであります。その間におきましては、きわめてはきはきしておるし、特段の異常が認められるような状況がなかったわけであります。続いて医療科に参りまして、一応身体検査をいたした次第でございますが、その間、医師が直接診断いたしましたが、精神病的な点もない、その他心身に異常がない。またそのときの物腰、態度というものが、きわめてすなおで、なるほど普通の男で異常な点が全然認められないというので、朝からの会議の結果に基づきまして、特段の変わったごとはないというので、単独処遇として普通の入所当初の子供を入れます東一寮の単独室に収容したわけであります。三時半ごろからその寮に入れたわけでありますが、その後、寮監が五分ないし十五分くらいのたびごとに廊下を通りまして、窓から少年の動向を視察したわけでございますが、本人は、持参いたしましたおすしのお弁当をゆっくり食べて、なおかつ鑑別所の所定の食事もほとんど食べる、変わったところも何もないというので、非常に平穏に推移しておりました。その後も、十五分ごと、あるいは五分、十五分、職員がその前を通るごとに——その寮の担当者以外の者にも注意を促しておりましたので、それぞれその前を通るごとに視察しておったのでございますが、何らの変わった点がなかったのでございます。で、午後五時から宿直勤務に入りました。宿直は、男子寮が、小さいところを入れまして八つに分かれております。それに五人の観護課の職員が宿直することになっておるわけであります。しかし、その後も大体十五分には一回、あるいは五分というようなときもございますが、視察をしておりましたのですが、何ら変わった点がないというので、午後七時五十五分までさような状態が続いておったわけでございます。で、午後八時には各寮を職員が全部就寝前の点検に参ることになっておるわけでございますが、この点検の方法が、かような少年の中には非常に暴力をふるう子供もございまして、一人の教官でその室内へ入りますと集団の暴行を受けるというような危険がございますので、全部の職員が組になりまして一寮を見て回り、一人が廊下に立ち、複数以上でその室内を点検し、また人頭の点検もするという方法をとっておりますので、午後七時五十五分に最後山口少年の部屋をのぞいたところが、静かに寝ておった、全然変わった動作もなく寝ておったというので、今までの、午後三時十分入所以来の動向から見て異状なしと認めまして、七時五十五分を最後に全員が集まって、他の寮から順次総員で一寮ずつ回っていったわけでございます。約三十分、順次回って参りまして、この東一寮に参りまして、山口少年の部屋に至ったところで自殺をしておったのを発見したというような次第でございます。この自殺方法は、部屋には寝台が備え付けられまして、この部屋のまん中にこういう格好の、野球のマスクのような鉄のかごのようなものが便器おおいにしてあるわけでございます。それにシーツを引き裂きまして、それをそれにひっかけて総死しておるというのを発見したわけでございます。かような状況でございまして、少年鑑別所としましても、特に注意をいたしまして、通常の視察のほかに視察を密にして注意してきたわけでございますが、いかんせん、入所しましてから午後七時五十五分まできわめてすなおであり、なお、その物腰態度等にいらいらしたところもなく、応対も穏やかで、挙措動作も通常人とちっとも変わらぬと、非常にまあ何といいますか、興奮しているような状況も全然認められませんでしたので、間違いないものと考えまして、三十分間視察を離れたというようなことから、かような結果になったわけでございます。  以上が概略でございます。
  68. 亀田得治

    亀田得治君 だいぶ長い説明があったのですか、その最後のところだけを私ははっきりしたいのですが、本件では、事件が発生した十月十二日、この点についても警備上の手抜かりというものがやはり指摘されているわけです。あとからいろいろな言いわけしているだけなんです。この十一月二日の自殺の問題につきましても、自殺しようと思えばそれは五分ででも十分ででもやれるわけですから、私はそういう五分ないし十五分ずつ間を置いておったということ自体がおかしいと思うのです。たまたま夕方、七時五十五分から八時半ごろまで間を置いた、そこだけが問題じゃないのですよ。なぜ私はそのことを申し上げるかというと、自殺以前に私たちはそういう感じも持つた。おそらく警視庁どもそういう感じを持っておったのじゃないかと思うのですが、これは警視庁における最初の取り調べに対して——最初のころだったと思います。これは新聞記事当時私、地方で拝見した。それによると、自分は目的を達したのだから、悪いとは思っていない、しかし、人を殺した罪の償いをするのは大切なことだと思うと、こういう意味のことを本人が言うているはずです。これは当時記事にも出たはずです。こういうことを本人が言うているのを度外視して、ただほかの精密検査みたいなことをやって通常の人間と少しも変わらないとか、そんなことを言うたって、これはもう責任を果たしたということにはちっともなりませんね。だれでもこれはぴんときていることです。人を殺した罪の償いをするのが大切なことだと言う。これはあなたどういう意味に解釈しますか。人を殺したという場合に、本人がこういうことを言う場合に、人を殺したのだから懲役にやられるのは仕方がない、あるいは裁判で死刑になっても仕方がないという意味の解釈、それだけの解釈しかあなたの方では持っておらないとしたら、これは大へんな間違いですね。その点を関係者はどういうふうにお感じになっているのですか。
  69. 大沢一郎

    説明員大沢一郎君) 人を殺した罪の償いをするというこは、いさぎよく裁判を受けるというふうに解釈するのが通常の解釈じゃないかと思います。しかし一面、山口二矢は実際に自殺したのであります。死をもってわびるというような考えを持つ人も、これはあり得ることなのですから、その点もわれわれといたしましては、懸念いたしまして、特段に、今まで収容されておりました警視庁においてどういうことがあったかということで、何か注意することはないかと聞き、なおかつ医者なり、心理学者の専門技官が入所したときからの質疑応答の態度及びその後の居室における挙措動作という点から見まして、自殺というようなこともあるまいというふうに判断したものと考えるのであります。全然さような自殺——間違いということは念頭になかったというのではございません。さような意味合いから、特に視察を密にするとかあるいは応対する職員も課長、次長あるいはまたその責任者というふうに指示しまして、十分鑑別所として最も有能と認められる者を、その係に充てたわけでございます。それらの者が判断して、異状なし。おそらく自殺をするような者であれば、さような精神的な動揺というものが看取せられるだろう、私はしろうとでわかりませんが、さような心理技官なり、医者なりというものが見ますと、何らかそこに精神的な動揺と申しますか、ある決意をすれば、そこに身体的な緊張と申しますか、さようなものがあるであろうと思われますが、さような専門家が見まして、三時間以上にわたって見ておって変わった点がないというので、通常勤務についた、かように考えているのであります。
  70. 亀田得治

    亀田得治君 何ですね、いさぎよく裁判を受けるというような意味に思うておられたようですが、そんなとり方は間違いです。これはともかく人を殺してならないなんということは法の最大の厳禁しているところなんですからね、それをやるわけでしょうが。いさぎよく裁判も何もあったものじゃないですよ、そういう心理状態の前には。だからそんな感じでもっているから手抜かりが出てくるのですよ。これは当然自殺するかもしれない、そんなことは予測できることなんです、これは。それから少しも動揺があるとかないとかいうようなことを調べた結果とおっしゃるけれども、こういう特殊な政治的な犯罪というものは、そういうものですよ。そうでないような少年が来た場合の扱いと、これは全然違うものです。これは本人は悪いことをしたとは思っていないというわけですから、動揺するはずがないじゃないですか。しかし、償いはすると言っているのですから、動揺はしないで自殺する、これは当然裏返せば出てくるじゃないですか、そんなむずかしいことを言わなくても。だからこういう場合には、当然私はかわるがわる見張りをつけておくということはあたりまえのことだと思う。五分か十五分間を置いているのがおかしいですよ。私は警視庁あたりではやはりその点どういうふうにされていたのか、警視庁の係官がこの言葉を聞いているのでしょう、その点の反省はどうなんですか。それは絶えず……。あなたは人が足らぬのだったら本部の方に要請を求めたらいいわけでしょう。重大な事件の糾明中なんですから、それくらいのことをやってもらってちっともそれは思い過ごしだったということにはなりませんよ。警視庁の方の扱いをちょっと聞いてみたいと思います。
  71. 石岡実

    説明員石岡実君) 警視庁といたしましては、動作その他では今のお話と大体同じようで、自殺するようなそぶりはないのですけれども、やはりこういう重大なあれだし、いつどういうことがあっても困るということで、常時全然目を離さないで、これだけには特別に監視をつけておりました。
  72. 鰭崎轍

    説明員鰭崎轍君) 実際に私のところに預ったわけでございますが、まことに申しわけないことをいたしまして、もう何とも言葉もないわけであります。入りますと、電話がありましたときに、ともかくもう——それからあと、その自殺のことを、まあするのじゃないかということで、皆で相談をしたわけであります。なお、ここに山口少年は二時十分に別に一人だけで参りました。そのときに警視庁家庭裁判所の方からもお見えになったそのときにも、一応何か引き継ぎの注意事項はございませんかとお聞きしたわけでございますが、特にないということであったわけでございますが、それにもかかわらず、実際にはもし疑いが少しでもあったらばということを懸念しておったわけでございますが、その通例の、あとに何十人おりました少年のこともありましたもので、ついそこのところを三十分抜けてしまった。これは鑑別所という性格が多少——何ともあとからのことで申しわけがないわけでございますが、その三十分の間もなおかつ十分だれか一人をつけておけばよかったかと、これはあとから考えることでございます。そのときは異状があったら何と正かしようということで、みんなの意見が、それでも一人だけつけようということにならなかった、そこに私といたしましては何とも申しわけないことをいたした次第で、いかにおっしゃられても、それは私の責任だと私は思うんです。それにもかかわらず一人をつけておくということに思いが至らなかった。それも鑑別所という役所が鑑別を、診断をするという建前もあるということもありますものですから、そこのところがそういう考えが十分にいかなかったということで、まことに申しわけないわけであります。何とも申しわけないわけです。そこに至らなかったということは、私の不明のいたすところであります。
  73. 大川光三

    ○大川光三君 今少年鑑別所の方から当局としての真心を込めた御説明がありました。けれども、ただそれだけで法務委員会としては、ああそうですかというわけにはいかぬと思う。そこで二、三点伺いたいのですが、先ほどから五分ないし十五分の間に視察をするんだと、こういうことなんですが、視察の仕方ですね、今までわれわれの知っている範囲では、あの扉のところに窓みたいなものをこしらえて、ふたをあけて中を見られる場合と、直接見られる場合と二つあるわけですが、どういう視察の仕方ですか、それをまず伺っておきたい。
  74. 鰭崎轍

    説明員鰭崎轍君) 三尺のドアがございまして、そこに上の方にワクがございますが、ワクをのけまして二尺七寸ぐらいになっておりますが、幅が十センチはないと思いますが、十センチ近くのそういう広いもの、そこにこういう鉄棒が入っております。十分広いものでございまして、中はすっかり見えるようになっております。そういうところから見ておったのです。
  75. 大川光三

    ○大川光三君 それは一々ふたをとるのですか、現在の様式のはふたをとらずに見えるのですか、どちらですか。
  76. 鰭崎轍

    説明員鰭崎轍君) ふたをとらないで、そのまま見えるようになっております。初めガラスがはまっておりましたが、ガラスをこわした少年もございますので、プラスチックにかえたり、あるいはそのままにしてすぐ見えるようにしてございます。ふたはそこについておりません。
  77. 大川光三

    ○大川光三君 それから大体自殺したのは七時五十五分から約三十分以内、こういうのですが、自殺をした時刻の推定ですね、これは何かの方で出たのでしょうか。
  78. 鰭崎轍

    説明員鰭崎轍君) 東京都の監察医が見えられまして、そうして検視の結果、八時十五分という推定をなさったわけでございます。ですから時間は八時十五分となっております。
  79. 大川光三

    ○大川光三君 七時五十五分が最終の視察ですね、七時五十五分が最終の視察で八時十五分に自殺をした。そうすると、その時間が約二十分ですね、しかしこの二十分の間に自殺だけをやったのではない、われわれの新聞で見ますと、あるいは天皇陛下万歳、七生報国云々という落書きをいたしております。そういう落書きというものは一体七時五十五分から八時十五分の間になされたものでしょうか、あるいは七時五十五分以前にそういうことがなされておったのであろうかという疑いを深めるのですが、その点いかがでしょうか。
  80. 鰭崎轍

    説明員鰭崎轍君) 七時五十五分にはそういうことはないと、職員の話があったのであります。で書きましたものがコップ——すぐあとでは、つまり八時三十一分に行っておるわけです。そのときにはコップがございまして、そこに歯みがき粉がありまして、中にそれを入れまして書いたことです。その前にはない。
  81. 大沢一郎

    説明員大沢一郎君) 職員の発見者の報告によりますと、縊死を発見して、室内に飛び込んで、いわゆる遺書と申しますか、字を発見したときには、書いたばかりでまだぬれておったと、水がそのまま残っておって、書いたばかりのように見受けられた、まだ水がかわき切っていなかったという報告です。従いまして七時五十五分以後であろうと推定されるのであります。
  82. 大川光三

    ○大川光三君 そこで、ただいまの御答弁でよく事情はわかりますが、しかしそれをやる少年としてはやはり七時五十五分以前にどこかに動作が現われておらなければならぬと考えますが、先ほどの少年鑑別所の御説明では、本部の報告がこうだとかというただ形式にあまりこだわり過ぎて、ほんとうに生きた仕事が出ていない。その点は、終始その人間から目を離していないという視察の仕方と比べて、その少年鑑別所の何か形式的な視察の仕方というところに大きなミスが私はあると思う。今これを責めるわけではありませんが、将来大いに考えさせられる点があると思いますが、どうでしょうか。七時五十五分以前にそういう動作というものが一切現われないでありましょうか。私はしろうとでありますが、少なくとも専門家としては、それはあらかじめ予見されたことではなかろうかと考えますが、いかがでしょうか。
  83. 鰭崎轍

    説明員鰭崎轍君) 私は元来精神科の医者なものでございますが、しかし精神病の場合でもわからない場合がございますが、今度の場合、過ぎ去ったことでございまして、あとから考えまして、あの遺書、辞世の句があったのだということをあとで聞いたのでありますが、警視庁の方に伺ったときも、特にないということでそのままになってしまったということでございまして、それで見ておりますわけでございます。七生報国、天皇陛下万歳と、こういう文字を書いた場合の自殺というものは、普通の場合の自殺というものと違っているのじゃないかということを私考えるわけでございますが、その点におきまして、三十分間常時絶えず見ているべきだった、この少年の場合には絶えず見ているべきだったかもしれないということを先ほども申し上げたわけであります。五分、十分もいけないのかもしれませんが、しかし五分、十分やっていたときにはちゃんと横になって平静の態度であった。しかも夕食を三時四十五分から、これは普通より少し早いのでございますが、役所の御飯を——大体普通のちゃんとしたカロリーでございます。主食を申し上げますと、一合五勺ぐらいあるんです。それを三分の二以上大部分食べてしまった。しかもなおすしまで食べてしまう。そういう意味におきまして普通の非行少年とは違う面が多分にあると私思います。そこで、さっき申し上げました通り、思い及ばなかったということはまことにどうも申しわけないと思うわけです。つまり、これはそういう特殊の少年である、しかもそういう七生報国という考えですから、普通の少年自殺と違う面があるということだと思います。あとから考えまして、先ほどお話がございましたように、私はあれは普通の言葉で考えたのでございますが、ひょっとしたら、何かおわびをしたいというのじゃなしに、何か別の意味のことを、自決的なものを私考えさせられたのでございます。ですから、これは先ほどおっしゃいましたように、常時見ているべきではなかったか。ただ鑑別所という役所がそういう役所でございまして少年の心をしずめて安静にして、そうして診断をするというのが建前なものでございますから、まああの場合だけ例外にするという——むろん例外を考えたのでございますけれども考えが至らなかった。まことに何とも申しわけないわけでありまして、今後そういう普通の非行少年でない非行少年、まあ人を刺したのでございますから一種の非行少年に入るわけでありますが、背後にそういう思想的なものがあるということで、もう一つ別の面を考えるべきであった、私認識が至らなかったということでございまして、何とも申しわけないのであります。   —————————————
  84. 松村秀逸

    委員長松村秀逸君) この際、委員変更について御報告申し上げます。  本日付、坂本昭君が辞任され、吉田法晴君が選任。  以上であります。   —————————————
  85. 吉田法晴

    吉田法晴君 今の説明を聞くと、遺書を書く、あるいは七生報国といったような右翼少年ですか、右翼的な信念については、鑑別の対象としてキャッチしなかった。従って自決をするかもしれぬという点もわからなかったという点はお認めになった。見ているべきではなかったかというお言葉がありましたが、その心情、あるいは間違った信念ですけれども、人を殺してもそれが正しい。あるいはその自分の信念を、生まれかわっても実現をしたい、こういうような心境になったという点の把握がなかった。その点はお認めになった。ただ、それからどうすべきかという判断がなかったということをお認めになったのですが、その点をはっきりお認めになるかどうか。それから七時五十五分に最終視察をされて、八時十五分に死亡という推定になりますと、二十分しかない。二十分の問に遺書を書く間があったかどうかという質問があったのですけれども、それは水にぬれておったから直前に書いた。その二十分の間に書いたのだから、シーツを裂いて、おそらく裂いたままそのままではないでしょう、よってあったろうと思いますが、そういう仕事が二十分の間にでき、それからベッドの上から通して死ねるかどうか。これはやっぱりその前に何分か視察をされる時間は、一分か二分か知りませんけれども、視察をされるとき、あるいは室内なら室内に入っての点検なり何なりの場合に、手落ちはなかったのか。二十分の間にこれだけのことをし、これはまあ事前に用意がなければ、急いで走り書きに書いたとしても簡単な遺書まで書いてあれするということはできなかったろうと思うのですが、その点についてどういう工合に判断しておられるのですか。私はこの時間と、その間にやったことと考えると、事前に用意をされているのではないかという想像をするのですが、その点はいかがですか。
  86. 鰭崎轍

    説明員鰭崎轍君) 職員がそこを七時五十五分に回ったそのときに、そういう、その前に回ったときと同じ姿であったということなんでございまして、ほかに御説明のいたしようがございませんのですが、なお十一五分というのは、監察医の死亡推定という時間でございまして、それが実際には二十分にやったのか、二十五分に実際にぶら下がったのか、その辺が実は私たちにはわからないのでございまして、だれも見ておりませんのでございまして、十五分というのは、死亡ということの検案書がそういうふうになっているのでございまして、ですから厳密に申し上げると、われわれ職員が五十五分に見て、そうして三十一分に行く間の出来事ということでございますから、その間でございます。それからあとおろしてそうして人工呼吸をやった。そのときには暖かいのでございます、三十一分までの間ですから。人工呼吸を三時間もやったのでございますが、とうとうだめだったのでございますけれども、どのくらい首が紋められたらばあと人工呼吸やってもだめなのか、これは人にもよりますかとも思いますけれども、その辺がよくわからないのでございまして、検案書の方は八時十五分となっているわけでございます。書きましたもの、さっきも局長が申し上げました通りに、壁に書いたものはぬれておったということで、それは実際に士五分であるのか、二十分であるのか、死体検案書は、監察医は十五分と推定してそう書いたのでございます。
  87. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃ、自殺の問題にも多少まだ問題あるのですが、最後に警視総監にお聞きしたいのは、十一月十七日に浅沼事件に関する警察官処分がなされたわけですが、これはまあ新聞等でも大体わかっているわけですが、あらためてどういう処分をされたか、それはどの点の責任を追及しておる意味なのか、理由ですね、そこを明らかにしてほしいと思います。今後ともこれは重大な関係がありますので。
  88. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 浅沼さんの事件が発生いたしましたことにつきましては、私としましてもまことに遺憾に存じております。ただいま御指摘の警備関係者の措置でございますが、事後におきまして警視庁といたしましてもよく事情調査いたしまして、そのうち国家公務員である警視正以上の者四人について、これは国家公安委員会の権限になりますので、国家公安委員会の方に処分についての申請をいたしたのであります。その四人のうち現場の警察署長、丸の内の署長でありますが、これに対しまして、国家公安委員会として訓戒処分にするという決定をなされました。その事情は、警備上相当注意をし、やっておったという点は認めるけれども、ただ事後の検討によれば、より一そう具体的な部下の指導、配置ということをなすべきであったのではないか、それから当時、場内においてビラをまいたり、激しい演説妨害行為がありまして、検挙をいたしたのでありますが、その検挙によって場内に配置してありました警察官が動いておるわけであります。その事後の、動いたあとの警察官をすぐ埋めるというような応急の措置をもう少し考えてやるべきでなかったかというような点につきまして、将来のために訓戒と、こういうような理由でございます。国家公安委員会の訓戒をもとといたしまして、警視庁といたしましては、関係部長であります警備部長公安部長を総監訓戒にいたしました。これはこのような事案についての指導監督という面について、さらに一そう事後の検討によれば注意すべきではなかったかというような意味合いにおきまして訓戒、それから関係の警備課長、公安第二課長、及び関係の係長、さらに警察署の関係課長及び係長、六名のものにつきまして、それぞれより一そう徹底を期すべきではなかったかというような意味合いで所属長の訓戒、こういうような処分をいたしました。
  89. 亀田得治

    亀田得治君 処分内容は、はなはだ私は結果に比較すると軽過ぎると思うのです。その点は一応ともかくといたしまして、警備上のミスというものをもっとはっきりと指摘しておく必要があると思うのです、こういう場合には。ただ全体の人数がもう少し足らなかったとか、会場内が騒いだときに警察官の移動等があって、手抜かりがあったといったようなことじゃなしに、もう少し具体的にはっきりと指摘しておきませんと、どうもなんですね、今後の戒めにこれはならぬですね。だからそういう点で私の意見一つ申し上げて、そういう点が考慮されていなかったのなら、再度やはり検討してもらって、もう一度処分なんかしてもらわなければいかぬと思う。その一つは、日比谷公会堂の外の階段を上がって入って行ったわけですが、階段から上がって行くところはこれは一個所ですね。そこには最初は警察官が、まあ妙なものが入って来たらいかぬということで見張っておったわけですね、二時半ごろからそこを撤去して場内へ全部行っているわけですね、これがまず大きなミスなんです。見張りというものは、先ほども鑑別所の問題も出ているわけですがね、何か事を起こそうというのは、多少計画を持てば、見張りが抜けたときに入って来るということにも当然これは考えられることなのです。で、山口の場合には、あそこに着いたのが皆さんの調べでは午後二時五十分ごろ、こういうふうになっておりますけれども、それは事実は私はまだわからぬと思うのです、その点は。きょうは時間がないから、そういう点についての質疑などはしておりませんけれども、それはもっと早く着いて、そうして中とだれかが連絡をとって、今こういう状態だから入ってくれ、入口はもうすいておるといったようなこともこれはあり得るわけです。そうしませんと、山口が家を出て、そうして二時五十分ごろそこへ着いてまっすぐどんどん入って、そうして浅沼さんの演説の終わるころにすっと入ってしばらくしてそうして実行した。こんなことはきわめて、一直線にいき過ぎております、結論としては。浅沼さんの演説が済んでしまって、浅沼さんが帰ってしまったらどうなります。計画してやろうという人ですから、それは時間などもこれはばかっているはずです。これが普通です。割合冷静ですからね、この少年は、ある意味では。まあしかしそういう観点からの捜査はこれはおやりになっておると思いますが、きょうはそういう点の質疑は私はしませんけれども、そういう疑問があるのです。せっかく肝心な関所だということで入口に見張りをつけながら、二時半ごろにそれを抜いてしまうなんというのは、ちょうど先ほどの鑑別所内において、今まではよかったからもう七時五十五分後三十分あけた、これと一緒です。これは問題の重要性というものをほんとう考えておいてもらったら、そこに置いておいていいわけなんです。大事なことなんです。それを引き揚げた責任、これはだれがそういう引き揚げを命じたのか、その点を具体的にやはり指摘をして処分をしてほしい。そういうことになっておるのかどうか。先ほどは場内だけの問題でありましたから、その点を確かめておきたい。  それからもう一つは、山口は何回も検挙されているわけですから、山口を入口なりあるいは場内で現認した者がいるのかどうか。その点が明確になっておらぬ、その点を気がつかないとすれば気がつかないのもこれは抜かっているし、また山口がおるということをたくさんの私服の中でだれかが見たものがいたんだということになれば、見ておってなぜ目を放したかと、これは場内の全体の責任ですわ、だれかが見ているとすれば。だから、そういう点についての究明はできているのかどうなのか。この二点。どうも場内の問題というのは、つまり愛国党などが左の方で騒いでおる、右の方からすっと上がったわけですから、そのとき場内の紛争に目をとらわれて右の方を怠ったのは手抜かりだ。これはもちろんそうです、手抜かりに違いない。だけれども、それだけに限定したのでは私はいかぬと思う。私の今申し上げた二つの点は、こういう処分にあたって十分警備上の欠陥として指摘されたものかどうか、お開きしたい。
  90. 大川光三

    ○大川光三君 ちょっと関連して。ただいま亀田委員から御質問の点も非常に重要かと考えますが、私はこの機会に関連して伺っておきたいと思います。今度の淺沼委員長暗殺事件のあとに来たる多くの検討すべき問題があろうと考えております。そのうちの一つとして、少年法の再検討、年令低下に関する問題を検討されなければなりませんし、山口少年自殺に関連して少年鑑別所のあり方ということも検討すべきだと考えます。また山口少年の父親がああいう凶器を所持いたしておった、たまたまその身分が自衛隊員であったということに関連して、一体自衛隊員というもののこういう銃砲刀剣等の所持取り締まりの対象としてどう考えらるべきか、あるいは多少緩慢な点がなかったかどうかということもこれは問題点であります。けれども、最も直接な関係としては、警察官の職務執行法について今や再び再検討を要する時期ではなかろうかと私は考えておるのでありまして、この痛ましい淺沼委員長暗殺に関連して、方々で民衆から聞く声は、なぜ山口少年の身体検査をやらなかったか、またそういう凶器を持っておるという、怪しいと思われる場合にはなぜそれを事前に取り上げないのか、なぜこれを警察等に引致して保護しないのかという問題、ないしはあの山口少年が演壇にかけ上がったときに、なぜ直ちに取り抑えないのかということを、一般民衆としては非常な疑問点として、われわれは質問を受けるのでありますが、この事件に関連して警察官職務執行法について改むべきであるかどうかということを、現に、こういうことに直接御関係の深い警察当局から御意見を伺っておきたいと思うのです。
  91. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと私の質問は具体的な二点についての実際の処分上のことをお聞きしておるわけですから、一般的なことは、これはまた私たちもいずれ機会があればやりたいと思っております、区別して。
  92. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 亀田さんの御指摘の、入口における警察官の配置をもっと長くといいますか、あくまで配置すべきじゃなかったかという点、それから入口から入ってからもっと早く本人を発見できなかったのかという二つの点、もちろんそういうような点も含めましての処分になっておるわけであります。先ほどより一そう具体的な指示、指導、配置等をすべきであったと思われるということを処分の理由として申し上げましたけれども、その理由の中にそれも入っておるわけです。そこで若干御説明いたしますと、入口に山口本人が参りました時間でございますが、これは本人が入場弊を持っておりませんで、入口に来ましたときに入場券が要るということを聞きまして、そこにおりました主催者側の整理員といいますか関係人から入場券をもらっておるのであります。その時間がやはり二時五十分ごろであることが調べによって判明しておりますので、やはり本人到着の時間はその時であった、かように判断をいたしております。そこで、警察官お話にありましたように二、三十分ごろまではそこにおったのであります。ちょっと事前のことになりますけれども、当時愛国党などがこの演説会選挙の事前運動であるというようなことで、これに反対いたしまして、選管などに前もって反対の申し入れをしておった事情から考えまして、当日担当のヤジとかあるいは妨害行為が行なわれる見込みがありましたので、警察官を会場内及び会場の外にも配置をいたしたのでありますが、ただ、はなはだ遺憾なことには、山口その他の者による個人的なテロ行為というものについての情報を入手し得ていなかったのであります。一般的に申し上げまして、個人的なテロ行為の危険性が非常にありましたのは六月から七月ごろにかけてのころでございます。その後状況が相当落ちついて参りまして、ややそういうような危険性は去って参ったということが一般的に言えるのでございますが、そういうような状況でありまして、演説妨害等の行為は予想されたけれども、テロ行為ということについての特別な情報を入手していなかったというような状況のもとにおきまして、会場の入口に配置になりました警察官は、大体その口に来ると思われる右翼の者たちが全部大体入り終わったというようなこと、それから一般の入場者もほとんどなくなったというようなこと、それから場内における騒ぎが非常にひどくなってきておるというようなことで、入口を離れて場内の警備に協力した、こういうような状況でございます。ただ事後に検討してみますると、やはりそういうような入口というのは大事な所でございますので、もっと長く何人かの警察官を配置して注意をしておるということは必要であった、かように考えておるのであります。それから演壇の近くに近寄れないようにするというような点につきましては、実は主催者側の…
  93. 亀田得治

    亀田得治君 その点の説明はけっこうです。衆議院等でも相当やられたように拝見しておりますから……。
  94. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) 御指摘の二りの点は、いずれも処分をする場合の検討の中に入っております。
  95. 亀田得治

    亀田得治君 二つの一つは御説明がありましたが山口の現認ですね。
  96. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) それは今申し上げようと思っていたのです。
  97. 亀田得治

    亀田得治君 それをおっしゃって下さい。
  98. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) そこで、山口が二時五十分ごろ入りまして三時過ぎに凶行が行なわれたのでありますが、大体時間にしまして十分ないし十二、三分であったと思います。そこで演壇の近くに近寄れないようにするということにつきましては、主催者側の整理員というものが、一般席とその前の招待席及び報道員の席がございますが、そのあたりに大体整理員がこうずっとおりまして、それでそこから来るものをその整理員が抑える、整理するというような打ち合わせになっておったのであります。それで、山口も入口から上がりまして、それから場内に入りまして、一般席からずっと出てきて、そこで一度整理員に手でこう制止されておる。そのままそこでいざこざがあれば気がついたと思いますけれども、おとなしくすらっと退りまして、もう一度今度は別の道——演壇に向かって右寄りの道でございます。そこから来たのであります。そこにおいて整理員から制止されるということがなかったのでございますが、この問の事情は、いろいろ調べましたところ、そこにおるべきはずの整理員がほかの方の騒ぎの関係があって、当初位置しておった所から離れておったというような事情が判明したのでありますが、そこで場内の整理員に制止されることなく演壇に近寄った、こういうような状況になっております。ただ、警察官もちろんその近くに三名おったのでございますが、この警察官は、先ほどお話の中にもありましたが、左寄り側の愛国党の演説妨害行為、それから前に一人演壇に入ってビラをまいておりますが、そういうような気配を見せるような者が近くにもおってその方を注意しておったということ、それから一人の警察官自分のすぐそばにやはりそういうようなかなりヤジ妨害を激しくやる者がおるのでその方も注意しながらまた片一方の方を注意しておったというようなことがありまして、まことにこれも残念なことでございますが、山口が右寄りの道をずっと通って行くのを気がつくことができなかったというような、かような状況でございます。ただ、あとから考えてみますと、やはりこれも主催者側の整理員というものに依存するということでなく、警察といたしましてもさらに演壇に近い所にしっかりとした配置をしておくということが必要であった、かように考えるのであります。
  99. 亀田得治

    亀田得治君 最後にいたしますが、結局、入口を手抜かったということが一つ。それから山口が実際に演壇に上がるまで、これは山口が来ておるというふうにだれも気がついておらぬのです。それがやはり大きなミスであった、たくさんの人がいて。それは一回や二回は検挙されたというようなのとは違いますからね。それともう一つは、その左の方が騒いでおるので、右の袖の方を手抜かっておる、こういったような点の一つミスを認めて処分をされたというふうに理解していいわけですね。
  100. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) いろいろ事情はございまするけれども、事後の検討によれば、そういう点はもっと周到にすべきであったという点を考えておりますし、また、そういう面を含めまして処分をいたしておるわけでございます。
  101. 亀田得治

    亀田得治君 そうして、今私が指摘したような三つの点は、これは大川さんの質問にも関連するのですが、現行法内でも十分注意してやればできるでしょう。その点で、一点お伺いしておきます。
  102. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) もちろん現行法内においてもさらに一そう注意をすべきであったというふうに事後においては考えております。
  103. 大川光三

    ○大川光三君 私の質問に答えて下さい。
  104. 小倉謙

    説明員(小倉謙君) そこで、先ほどお話のありましたこういうような事件にかんがみて警察官職務執行法の改正といいますか、そういう面についての必要を認めておらないかという御指摘でございます。これは私は今回の事件に何も限りませんで、最近刃物による殺傷事件というものは非常に多いのでございます。でありまするから、特に今回の事件があったからという意味ではございませんが、先般警職法の改正案が出ましたようなああいうような内容のものは、私は現場としては必要であると、かように考えておる次第でございます。
  105. 赤松常子

    ○赤松常子君 ちょっと私簡単に鑑別所長さんにお尋ねしたいのでございますが、あの山口少年事件のあと、たしかあなた様でしたか、新聞に御発表意見の中に、今度の事件で、教官の不足を非常に言っておられたのですが、教官の数の不足ですね、これはその後どういうふうになっているのでございましょうか、今あなたのおっしゃった中にもやはりずっと山口少年を見張りしておけばよかったとおっしゃるのですが、それは教官が不足だからそういうことができなかったのでございましょうとも思いますが、その以前に、こういう不幸な事件が起きるどいう予測がなかったというお言葉もあるのですが、事実教官不足であったということをおっしゃっておるのですが、そういうことに対して、事後どういうふうに、増員するとか、気をおつけになるとかいうことはなされておりましょうか。これはどこの少伸院に行きましてもずいぶん教官が不足しております。これは局長さんにもちょっとお聞きいただきたいのでございますが、この事件のあと、そういう問題についてどういう対処をなさっていらっしゃいましょうか、御両所から伺いたいと思います。
  106. 鰭崎轍

    説明員鰭崎轍君) あのときは、一人つけておくべきだったというのは、そのあとの考えでございまして、あのときは三百六十八人おったわけでございまして、女子がそのとき五十一人おりまして、あと三百十七人が男子でございます。それを順繰りに回るためにあそこを三十分抜けたわけでございますが、それで庶務当直というのがございまして、その庶務当直が教宣の方を援助して、そうして合計六人でやっておった。ですから、あるいは、むしろさっき申し上げたようにできなかったというのは、むしろそれにもかかわらずやるべきだったという考え方になりますれば、それは今の職員でもできないわけではございませんので、山口少年がいるのはそう長くないと思いますから、鑑別所は御承知のように長くないのですから、できると思うのでございます。ただし、現在はこういうふうにいろいろ改めましてございまして、鑑別技官というのは、大体は、教官とは違いまして、違った職務を持っておるわけでございます、診断だとか、テストだとか。それが、さっきの山口少年が入ってきてから単独室に行くまでの間をずっと一緒におったわけでございます。これは技官でございます。技官も行動観察に携ってくれるわけです。そういう意味におきまして、今は新入少年の寮舎に十一時までつくことにいたしましたのでございます。今の程度でもやりくりをいたしますれば、できるわけでございます。なおしかし、もっとほしいということで上司の方には申請はいたしておりますが、さしあたりは、今そういうことでまかなっておるわけでございます。あのとき三十分あいたのは、人手が足りなかったからという意味合いばかりではないわけでございます。向こうにとにかく三百何十人という少年がおるわけでございますから、そこを何とかしなきゃいかぬわけですから、実際にそういう少年がたくさんおるわけでございますから、狂暴な少年が。そんなわけでございまして、もちろん、あとそういう意味で上申はしておりますが、急場のあの場合は、必ずしもそればかりではないわけでございます。
  107. 赤松常子

    ○赤松常子君 もう一つ。それで、びっくりいたしましたのは、自殺する道具と申しましょうか、こうシーツや何かを引き裂くというようなことが実際はあったわけなんですね。こういうところに、首つった事実がほんとうにあったわけなんですが、こういうような前例というものは、まあなかったから気を許していられたわけでしょうが、そういうことに対して、事後、こういうことが起きたあと、シーツだとか、そういうようなものが、やはりそのまま放ってあるのでしょうか、いかがでしょうかということが一つ。  もう一つは、この事件のあと、他の少年たちの心理的影響ですね。これがどういうふうに起きておるか、それにどういうふうに対処しておいでになるか。これをちょっと私心配ですから伺ってみたいと思うのです。
  108. 鰭崎轍

    説明員鰭崎轍君) 実は持って参りましたので——これがふら下がっておる、ここに三つの縦のこういうくぎがあるのでございます。これは取りはずしまして、電球を入れかえるわけでありまして、これは一つしかはまっておらないわけでございます。三つございますが、ほとんどの寮舎、三つはまったのは二、三個所でございます。山口少年の部屋は、実は一本しかはまっておらなかったわけであります。それに実はこうゆわきまして……。で、こういうものを考えまして、これはプラスチックでありまして、穴がありまして実験してみたわけですが、こういうふうに取りかえようじゃないかということでいろいろ検討いたしております。それからシーツは、これは少年の健康管理規定できまっておるわけであります。それからまくらカバー、それから衿布ですが、これもきまっておるわけでございます。しかしもちろん自殺の危険がございますればはずすわけでございます。今まででもはずしておったわけであります。その自殺の危険がわかりますれば取り上げておったわけでございます。それをつまり二時十分に参りまして、ずっと七時五十五分まで見ておったのですが、何もないものですから、さっき申し上げた通り私の手ぬかりでございますけれども、そのままにしてほかの人と同じように扱ったわけなんでございます。おおいの敷布の方は改良いたしまして、全部こういうふうにふとんがありましたら、こういうふうにくるむようにしようというようなことで、そういういろいろ改良点というものを考えておるわけでございます。  それから少年でございますが、隣の部屋に一人少年がおったわけであります。前の部屋に一人、筋向いの部屋に一人少年がおったわけでありますが、ほとんどあとで聞きましても、何かごたごたしているという感じを受けたというのでございますが、あまりよくわからない。一人筋向いの少年がふっと起きまして、八センチぐらいのところから人工呼吸をやっておるのを見た。その少年だけはその晩よく眠れなかった。ほかの少年はよく寝ておった。ほとんど知らなかった。その後も別にほかの少年たちは、そういう特別の影響はないようでございます。で、敷布も今しばらく危険なものですから、ちょっとなにやつておりますが、別に特別の変わった影響はございませんようであります。
  109. 赤松常子

    ○赤松常子君 局長さん、教官の増員とか何とかいう具体的な予算は盛ってございましょうか。それだけ。
  110. 大沢一郎

    説明員大沢一郎君) 少年関係の教官の不足は、今御指摘ございましたように、少年院に特に多いのでございまして、これは年々要求しておるわけでございます。鑑別所につきましては、収容人員と少年の数との比較から見ますと、きわめてラフと申しますと諦弊がございますが、収容人員対職員の数が、非常に比率が、収容人員の率が商うございまして、少年院につきましての必要性と鑑別所の必要度を比べますと、少年院が強うございますので、法務省といたしましては、去年の増員は少年院に重点を置いて要求してあるのでございます。また、鑑別所がラフと申しましても、東京都のように非常にたくさん入っている所もございますし、極端な例では少年の数より職員の数の方が多いという所も全国数カ所ございますので、人員要求の技術的な面から見まして、直ちに鑑別所の定員の増員ということは不可能でございます。そのような意味で、精薄対策等で三十六年度予算におきましては、鑑別技官の要求はしておりますが、教官の、この観護に当たります教官の増員は、少年鑑別所についてはいたしておりません。また今の状況では、特に教官をふやす必要はないとと考えているわけでございます。しかし、東京でございますとか、大阪でございますとか、収容者が非常に多い所につきましては、鑑別技官を行動観察という面で、観護の方の応援をいたしておりますし、また臨時的に非常にふえました場合は、付近の少年院、あるいは鑑別所から臨時に応援を出しまして、そうしてその間の当場の人員不足を補っている次第であります。今後さような方式でやっていきたい。かように考えている次第であります。
  111. 吉田法晴

    吉田法晴君 おそくなってあれですから、簡単に一、二点だけ聞いておきたいのですが、山口少年自殺の報を私どもテレビやラジオで聞きましたときに、これは自殺をさせた、こういう感じを率直に言うと持ちました。三十分ほど余裕を与えられたのも、これはどうしても鑑別所なんかについてもまだ納得のできぬ点もございますが、言いわけをしておられますけれども、落ちついておった、それから信条、信念等についてはこれはわかっているはずなんですから、自殺の機会を与えられたのではないかという疑問を持っている、私は事直に言って……。それに対してどういう工合にお考えでございますか承りたい。  それからもう一つは、これは警察段階であったか、あるいは鑑別所に来てからか知りませんけれども自殺を示唆するものはなかったか、あるいは面会その他でこういう疑問を持つのですが、その点を承っておきたい。これは鑑別所警察等で御存じなら承りたい。これは自殺を決意する時期と関連いたします。それからこれは発表検察、庁からなされたようですから、責任を警察あるいは警視庁に伺うのは少し筋違いかもしれませんけれども国民の感情として、選挙の最中に、赤尾その他について警察調べておられる際に、背後関係はないのだ、単独犯だという発表をなさいました。これも政治的な発言だった。淺沼委員長刺殺事件は曹後関係があるのだ。あるいは資金関係背後関係を洗えというような、そうして右翼、暴力テロ、殺人を抹殺せよという世論の前に、山口二矢の単独犯行だとして選挙の終わるまでに、そういうあれを発表したいという意図で発表をなされた点で、政治的な発言であったように思うのですが、警察では、新聞の模様によりますと、なおその当時も調べておる。検察の取り調べからいうと、単独犯行だという点を山口自殺と和前後して、あまり時間を置かないで発表されたのは、きわめて政泊的な選挙に対する考慮をして発表せられたのではないかという疑問を持つのですが、それについて、法務大臣が御退席になったようですから、関係者おられないかもしれませんけれども、この疑問に対して、残っている方で弁明ができるならばしておいていただきたい。
  112. 大沢一郎

    説明員大沢一郎君) 先ほどの、最初の二つにつきまして鑑別所との関係について御答弁いたしますが、鑑別所関係につきまして山口少年が同行せられましたのは午後二時十分でございます。それ以後本人に対する面会等は全然ございません。それから三十分の暇をことさらに与えたのじゃないかというような見方も成り立ち得るというようなお説でございますが、鑑別所におきましては、就寝前に各室に教官が参りまして挙措、動作、人頭等を調べて、また所持品その他の異常の点はないかということの点検を実施いたしておるわけでございます。従来は午後九時に行なっておったわけでございますが、人員等の勤務の関係で、午後八時に現在行なうようになりまして、連日実施しておるわけでございます。特にこの日に限って職員が全部でかような方法をとったというわけではございません。なおまた全員が行くのは、これは過去におきまして教官が一人で一室あけますと、集団室には五名、六名と入っておりますから、それらの者が一斉になぐりかかったというような事例も一、二にとどまらない。教官自体の身の安全もございまするので、現在では五、六人の宿直と事務宿直の応援を得まして、六人で参りまして、一人が廊下に立って、そうして二人以上で私室の中に入って、人頭並びに室内の点検をするという方法をとっておるのでございます。ことさらにこの日に限って三十分あけたというような事情はございませんで、特に自殺の機会を与えたというような点は、結果的にはそうなっておりますが、さような意図は毛頭ございません。
  113. 竹内壽平

    説明員竹内壽平君) 検察庁発表の時期について政治的意図があるのじゃないかという御質疑でございます。先ほど来御説明をしておったわけでございますが、検察庁発表というのは、実は発表ではないのでございまして、公式な発表ではむろんないわけでございます。聞いておるところによりますと、担当の検事が雑談的に話しておったことが発表のような形で報道されたということでございます。もし正式の発表だということになりますと、私たちも常に考えておることでございますが、内容につきましてもちろん文書によって十分検討いたしまして、間違いのないものを発表するのでございますが、その発表の範囲につきましても検討いたすのでございます。同時に、今御指摘のように発表の時期等につきましても、ただいま御質疑のような政治的意図かの疑惑をこうむるような時期を選ばないということなのでございます。先ほど申したような次第で、正式に発表したものでなかったものですから、選挙中に新聞に報道されるというような結果になったのでございまして、現在でも関係事件について捜査を進めておる段階でございますので、私も説明を申し上げかねる面も、先ほど来申しておることでございます。そういう次第でございますので、もちろん政治的意図のもとに発表したというようなことはございません。その点、御了承を得たいと思います。
  114. 吉田法晴

    吉田法晴君 時聞かないから言いせんけれども新聞には検察庁談話と、それから警察もとにかく調べておるという談話が二つ載っている。しかしラジオ、テレビ等には単独犯云々という点だけしか出ておりません。そうすると、正式に文書によって発表しなかったというけれども選挙中、あるいは終わりにならない前に、山口単独犯だ、山口自殺した、こういうとにかく報道か出るような、これはだれがされたかはとにかくとして、正式でなければなおさらのことです。そんなことが報道されるようなとにかく姿勢で発表されたことは間違いない。そこに問題がある。そこで、結果から見ると、発表山口単独犯、その本人自殺した。そうして犯行単独犯だ、こういう発表選挙の終わるまでにやったのは、やはり背後関係なりあるいは自民党等に選挙について不利にならないような、責任を回避するような意味発表されたのではないか。そういう発表の仕方は、これは政治的意図が、あるいは局長は知らなかった、あるいは大臣が知らなかったかもしれぬが、その発表をされた人は、これは検察庁から言うならば一体の原則ですから、責任を免かれることはできない。その発表の仕方は、そういう効果をねらってやられたという非難は免かれない。私は知らなかった、あるいは正式発表でなかったということだけでは済みません。
  115. 石岡実

    説明員石岡実君) 先ほどの自殺の示唆をするようなことがなかったかというお話でございますけれども、これはもちろん面会は禁止されておりまして、弁護士にもほとんど会っていなかったのじゃないかと思いますけれども、そういうふうなことは全く考えられない次第であります。  それから発表の問題につきまして、今法務省からのお話もありましたけれども、こういう事件ですから、できるだけ事務の明らかになり次第、その模様、捜査の秘密、将来のことに支障のない限りは発表した方がいい、なるたけ真相を国民の前に発表して知ってもらいたいということで、先ほど申しましたように、中堂が起訴されまして、中堂の起訴という問題についていろいろ話が出てくるわけです。そういう問題に関係して、ここで中間発表を、先ほど申しましたように、吉村の問題はさらに究明中だけれども、大体の見通しはついたというようなことで発表したわけです。さらに言うならば、私どもはあの事件で、二面で背後関係を厳重に追及しておりますけれども、さらに将来に向かってああいう事件のないように全力を尽くしてやっているわけです。ところが同じような陣容を両方にさいているものですから、適当に事件の締めくくりを客観的な情勢に応じてつけるときにはつける。そういうふうに陣容を振り向けて、将来そういう問題の起きないように、こういうふうなことなどもありまして、ああいう中間的な発表をした次第であります。政治的意図は毛頭ありません。
  116. 吉田法晴

    吉田法晴君 警察の方は、新聞のあれによると、なおまだ調べている。検察庁の方では単独犯だという点を発表された、警察のあれを糾弾しているわけじゃない。これはやはり検察庁です。責任は免かれませんよ。自余の説明は聞きましたが、なおあれば……。
  117. 竹内壽平

    説明員竹内壽平君) 先ほど申し上げた通りでございます。
  118. 吉田法晴

    吉田法晴君 政治的なんです。
  119. 松村秀逸

    委員長松村秀逸君) ほかに御発言もなければ、本件に関する本日の調査はこの程度にとどめたいと存じます。  以上をもって本日の調査は終了いたします。  次回の委員会は公報をもってお知らせいたします。  ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  120. 松村秀逸

    委員長松村秀逸君) 速記を始めて。  本日はこれをもって委員会を散会いたします。    午後一時三十七分散会