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説明員(岡本悟君) 実は通勤輸送の問題につきましては、東京、大阪、こういった都市が大きな問題を抱えているわけでございますけれ
ども、特に東京につきましては、御
承知のように、都市交通審議会の答申を得まして、昭和五十年を目標としました輸送力の整備増強方策というものを立てまして、これを実行に移しているわけでございますが、地下鉄建設の方は予定以上に進捗いたしておりますけれ
ども、肝心の
国鉄の担当している分野というものが少しも伸展していない。特にこの中央線の増強でございますが、三鷹—東京間を複々線化する、つまり具体的には中野と三鷹を線路増設する、それからお茶の水と東京間を複々線化する、こういう問題が一向に進捗いたしておりません。それから湘南電車と横須賀線の分離の問題、そこで、いろいろ
運輸省としてもこの
方面の、問題が重要でありますだけに督励いたしておりますけれ
ども、
工事上非常に難点があったということもございますけれ
ども、やはり根本的にもう少し国有鉄道というものは、通勤輸送の
解決に積極的に熱意を持ってほしいという気持が率直にいたすわけでございます。もちろん、今
委員長から御指摘のように、
採算面の問題からいたしまして、そういう、どういいますか、言うなれば消極的な気持がやはり出てきておるのじゃないかという気がいたします。しかし、何といたしましても、都市交通、なかんずく通勤輸送対策
解決は、これは非常に大きなウエートを持つ問題でございますので、どうしても
解決してもらわなきゃならぬ。もちろん、
採算の問題は国有鉄道全体としての立場からこれは
考えるべきであろうと思いまして、この点は新線建設と同様、全体の立場から
国鉄財政の健全化の問題を
考えていく、こういうことでなければならないと
考えております。ただ、しばしば
国鉄内から、あるいは外部から指摘されておりますように、大都市の通勤輸送におきまして、
国鉄の担当する分野といいますか、非常に大きいということは、大体東京を見てもはっきりいたしますけれ
ども、たとえば中央線の沿線はどんどん発展していく、そのために輸送力が整備を迫られる。輸送力の整備をいたしますとまた沿線が発達してくる、ますます混雑してくる。まあイタチごっこのような格好になっておりますが、もとより郊外私鉄なり、そういった
方面に肩がわりできないかというふうな問題があるわけでございます、
日本国有鉄道としては。従いまして、
運輸省において運賃調整をして、何とか
国鉄の重過ぎる負担を郊外私鉄に転嫁するほかないということをしょっちゅう申しておりますけれ
ども、その点は確かにございますので、たとえば地下鉄の建設
方式にいたしましても、何十年来の伝統を破りまして、郊外電鉄と、新しく建設する地下鉄との直通運転をはかりまして、乗りかえによる混雑をなくすると同時に、郊外電鉄が持つ通勤輸送能力を、直通運転することによってフルに活用する。たとえばごく最近開通いたしますが、京成電鉄が都営地下鉄の押上—品川—馬込間の線路に乗り入れいたします。あるいは間もなく近い将来には京浜電鉄が品川においてこの都営地下鉄に乗り入れいたしますが、そういうことによりまして、一方、京成電鉄は国有鉄道の総武線の副次的な、通勤輸送能力を補う役割を持ち得るでありましょうし、また京浜電鉄は湘南電車の補助的な役割も演じ得る、このことによって。そういうふうに、われわれとしては、なるべく
国鉄の重過ぎる負担というものを軽くするという、都市交通問題の
解決について
方針を立てる場合に、そういう考慮を取り入れてやっておるつもりでございまして、もっとこれを徹底いたしますれば、通勤定期の運賃調整をはかることによりまして、つまり具体的に申し上げますと、
国鉄に乗ろうが、私鉄、
国鉄を経由して都心に参ります場合においても、やはり
国鉄に乗っておると大体同じ
程度の運賃ならば、
国鉄沿線のみに片寄るということはなくなるんじゃないかというふうにも
考えておりますが、こういった根本的な方策を何らかの
機会に実施すれば、理想的な、
国鉄と私鉄を通じてアンバランスのない、均衡のとれた輸送体制ができ上がり、その結果、
国鉄の負担も軽くなってくる。総体的にそういうふうに
考えております。