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説明員(
木村行藏君)
警察で扱いました
資料に基づきまして、ごく最近の
状況を申し上げたいと思います。もうすでに何回か御
説明申してありますので、御案内の点がたくさんございますが、大まかに申し上げて
少年犯罪は戦後
昭和二十六年を
ピークにいたしまして、その際に
最高の
非行少年の数を示したわけであります。その後、数
年間若干停滞いたしまして、
少年犯罪の数も、あるいは質も
横ばいといいますか、比較的平穏な
状態でありました。ところが三十年から再び
少年非行の
状況が悪くなりまして、特に昨年の
昭和三十四年におきまして、
戦前戦後を通じまして、
少年非行の
犯罪が最大の
数字を示しました。で、非常に憂えておりましたのですけれ
ども、さらにことしに入りまして、ことしの一月から六月までの
上半期の
状況から考えまして、
戦前戦後を通じまして、昨年
刑法犯が
最高の
ピークを示しておりまして、質も悪くなっておりましたが、それにも増して、ことしに入りましてから、なおかつその憂慮すべき
状態が強まっておるということを申し上げることができるかと思います。
数字でことしの一月から六月までの半年の間の
状況を、
少年刑法犯について申し上げます。この
刑法犯の数、それは
触法少年を一応含まずに申し上げておきたいと思います。満十四才以下で法律に触れるような
触法性の
少年については一応含まずに、
刑法に触れた
少年犯罪で、
警察で検挙いたしました数を申し上げたいと存じます。この半年の間で検挙いたしました
少年刑法犯の数は七万二千七十四名、これは前年同期の昨年
昭和三十四年の一月から六月までの
状況に比較しますと、前年同期は六万四千五百九十九名でございますので、七千四百七十五名の
増加でございまして、一〇・四%の
増加であります。従いまして、
戦前、戦後を通じて
最高の
ピークを示した昨年のそれよりもさらに一割一分近くの
増加でありまして、
成人の
犯罪は、ことしの
上半期の
状況は、昨年の
上半期の
状況に比較しまして六三%増でありますから、
成人の約六%の
増加に比較しまして二倍近い一一%近くの増になっているわけでありますので、その点から見ましても、非常に憂うべき点があると思います。この
状況でいきますと、ことしの
年間の
推定でございますが、いろいろ資材を
検討いたしまして、ことしの
昭和三十五年一
年間の
少年刑法犯の数
——警察で検挙いたします数
——は、十五万六千人くらいになるかと思います。昨年の一
年間は約十三万九千でございましたので、相当の数の飛躍になる。それにさらに
触法少年すなわち満十四才以下の
触法少年を含めますと、ことしの
少年非行の数は十九万五千人くらいになるかと一応
推定されるのであります。昨年は十七万六千八百九十九名でございましたので、二十万近い本年の
年間推定から見ますと、ことしはやはり相当
少年非行の問題については深刻な問題があるかと思います。
それ以外に、
虞犯行為、
虞犯少年の
状況を申し上げますと、一昨年は七十二万人
警察で
補導いたしたのであります。すなわち
少年刑法犯なり、あるいは
触法少年以外に、
犯罪一歩手前の
非行虞犯行為という形で
少年が
警察の
補導を受けたというのが一昨年七十二万でございました。昨年は七十九万であります。ことしはまだはっきりした
データがありませんが、おそらく大体昨年並みにふえましても
年間六万くらいふえておりますので、おそらく八十五、六万くらいの
補導人員になるかと思います。従いまして、八十六万に、先ほど申し上げました
触法少年を含めたいわゆる
犯罪少年というものが十九万五千くらいに勘案されますので、すなわち二十万近くになりますので、ことしは
少年犯罪及び
虞犯少年というもの全体総なべて百万を突破するのではないかと思われます。一昨年は八十六万くらいの数であり、昨年は九十六万くらいの数であり、ことしは日五、六万くらい。総体いたしますと
警察のタッチしますのが百万を突破するというような数になろうかと思います。そういう
状況でありますので、非常に憂うべき
状態だと思います。
それからことしの
上半期の
少年刑法犯の
内容を分析しますと、一応
強姦とか
知能犯というものは若干
横ばいになっている、あるいは減少しているという
現象が見られておりまして、これは相当
検討を要すべき新しい
研究課題ではないかと思います。しかし、それ以外の
各種犯罪はなべて全部
増加いたしております。
強姦は、ただいま申し上げましたように、ことしの
上半期の
状況が昨年の
上半期の
状況に比較いたしまして七・一%、約七%の減になっております。ここ数
年間、特に一昨年までは、
少年の
強姦関係の
犯罪は非常に激しい
増加を示しておりましたのが、昨年は若干
ふえ方も減っているといいますか、弱まっているように思われますけれ
ども、ことしははっきりパーセントにいたしまして七%減少しているという
状況が出ております。これは若干
検討を要すべき問題でありまして、まだ半年くらいの
状況でどうのこうのということは申せませんけれ
ども、私
たちも掘り下げて詰めて
研究してみたいと思っております。それ以外に、一番ふえている
罪種から申し上げますと、
賭博が一番ふえておりまして、
賭博がこの
上半期の
状況で一二四・七%、約一二五%という
増加でありまして、非常に
賭博がふえたということは、
少年の将来と
少年の何といいますか、質的な問題からいいまして、非常に考えさせられるのではないかと思われます。その次にふえたのは
脅迫でありまして一九・四%、二割近くふえております。それから
わいせつ犯罪、
強姦以外の
わいせつ犯が、
刑法犯でございますが、その
刑法犯などの
わいせつ犯罪、これが一七・八%、約一八%ふえております。その次が
強盗でございまして、一三・二%、一割三分ばかり。それから
窃盗がふえております。この
窃盗の
関係は一昨年までは逐年減っておったんですけれ
ども、昨年から
窃盗の
関係が
少年犯罪でふえております。ことしの
上半期で一二%ふえております。これは非常にやはり注目すべき問題でありまして、終戦直後から
昭和二十六年の
少年非行問題の
一つの大きな波がありまして、二十六年までの
一つの大きな山といいますか、この山までの
犯罪はおもに
窃盗、かっぱらい、こういう
財産犯が多かったのであります。それは戦争の影響によって生活苦その他生活上からくる経済問題から、かっぱらいその他がふえたのでありまして、
窃盗犯というものが圧倒的に多かったのでありますけれ
ども、その後の
状況は、むしろ逐年
窃盗の
犯罪が減って、
脅迫とか
強盗とか
強姦とか、そういうようなものが、いわゆる
粗暴犯、
凶悪犯が非常にふえておった。ところが、昨年から
窃盗がふえましてことしの
上半期もふえているというようなことは、
一つの大きな
研究テーマではないかと思います。これは一応今までの私
たちの観察では、やはり
遊興費ほしさ
——いろいう
性犯罪その他の関連、
賭博もあるかもしれませんが、一連の、
遊興費をかせぐ、そういう面からくる
窃盗が多いようでありまして、そういう
意味合いにおいては、
昭和二十六年までの第一の山であった
少年非行の場合の
窃盗犯と、質がだいぶ変わっているというように思うのであります。それから次に多いのは
恐喝でありまして、八・二%増、約八%の増。それから暴行七・五%の増、そういう
状況でありまして、
強姦の問題は別にいたしまして、一応やはりここ数年来、この
少年の
犯罪、
非行の性質というものが、やはり依然として悪化の
方向にあるということを申し上げることができるかと思います。
それから次に、これもこの半年だけの
状況でありますので、はたしてここで報告申し上げて御参考になるかどうか疑問かと思いますけれ
ども、若干われわれが注目しておる問題は、これもここ二、三年来、
少年非行の
年令層が低下しております。数年前までは十八、十九というものが多かった。また一昨年からは十六、十七、昨年は十四、十五というのが、非常に
非行の数がふえたわけです。昨年の十四、十五才の
非行少年刑法犯の
ふえ方は、一昨年の二二%もふえております。そういう
状況で、非常に低
年令層——ロー・
ティーンの
ふえ方が激しかったのであります。ところが、この一月から六月の
上半期では、それがやや低調になっておりまして四・二%の増にすぎないのであります。先ほど申し上げた全体として一〇・四%、一割一分近くふえておりますけれ
ども、
ロー・
ティーンの十四才、十五才の
ふえ方は、この半年では四%にすぎない。圧倒的に激しいのはやはり十八才、十九才という比較的高い
ティーン・エージャー、ハイ・
ティーンが十七・六%、一割八分近くふえておるわけであります。そういう
意味合いにおきまして、憂慮すべきことは同じでありますけれ
ども、低
年令層の
ふえ方が若干低調になっているということについては、一時的な
現象であるか、あるいはここ一、二年続くかという問題については、今後非常に注目すべき問題だろうと思います。
それから
成人を含めた
被疑者総数、すなわち
警察で検挙いたしました
事件の全体、
少年も
成人も全部含めまして、その全体の中に占める
少年の
犯罪の
比率、
少年刑法犯の
比率というものは、
総数で二六%であります。すべての
刑法犯の
警察のタッチした中で、
少年刑法犯は二六%。しかし
強盗は四八%、それから
強姦は依然として五二%、半分以上は
少年、
恐喝は五四%という
状況でございまして、大体そういう
状況が
上半期に見られておりますけれ
ども、今後さらに半年を見まして
研究を詰めて参りたいと思っております。