○山本
利壽君 東北班について御
報告申し上げます。
派遣委員は川上、栗山の面
理事と私の三名で、期間は八月八日より十三日まででございました。
今回の
委員派遣の目的は、
電源開発並びに
石油及び天然
ガス資源
開発の
状況と、それにあわせて
輸出に関連した中小
企業の
実情を現地に
調査することにあったのでございますが、この目的に沿って只見川及び猪苗代の電源地帯、新潟、見附、長岡地区の
石油及び天然
ガス資源
開発状況、会津若松市の漆器
工業並びに燕市の金属洋食器
工業等を視察して参りました。
視察個所の
実情の詳細につきましては、別に
報告書を用意してございますので、これを会議録の末尾に掲載していただくことを
委員長にお願いいたしまして、ここではその視察の概要を申し述べまして、
報告にかえたいと存じます。
まず、
電源開発関係から申し上げますと、私どもの参りました只見、猪苗代の電源地帯は、標高千六百五十五メートルの名勝尾瀬より発し、重畳たる山岳地帯とうっそうたる密林を縫って流れる只見川を中枢といたしまして、その包蔵電力量約三百万キロワット、
わが国電源開発の宝庫とも申すべき所でございます。奥只見は、その只見川の最上流に、堤高百五十七メートル、有効貯水量四億六千万トンという巨大な直線電力式コンクリートダムを作り、最大出力三十六万キロワットの発電所を
建設しようとするものでありまして、その規模の雄大なることはもちろん、まさに
わが国電源開発技術の最先端を示すものであるといってよいのではないかと思われます。
私どもの参りましたときには、すでに地下発電所への発電機の据付も終わり、ダムのコンクリート打ち込みも半分以上進み、来年の秋には1部発電を開始するとのことでありましたが、渇水町の電力不足が叫ばれているおりから、その一日も早い完成が待たれる次第でございます。
田子倉発電所はすでにダムの構築を終わり、現在最大出力二十八万五千キロワットの発電を行なっておりまして、将来奥只見ダム、その他の完成を待って、最大出力三十八万キロワットまで増設されるとのことであります。ここは御
承知のように収用地の補償問題で大いに苦労したところでございまして、現地の関係者は補償問題を迅速かつ適切に
処理し得るための法的、
制度的整備を切望しておりました。
東北電力の本名、沼沢沼、柳津の各発電所は、只見の流れに階段上に設けられた水力発電所であります。このうち沼沢沼発電所は、只見川水面上二百二十メートルの高所にある沼沢沼を
利用して、豊水期や軽負荷時には余剰電力によって只見川の水をこの沼に揚水貯溜し、渇水期や尖頭負荷時には、その水を使って発電するという、いわゆる揚水式発電所でありまして、この形式のものとしては
世界でも屈指のものであるとのことでありますが、水力の有効
利用という見地からすれば、このような形式は今後とも大いに
研究開発される必要があろうと存じます。
さらに私たちは、東京電力の猪苗代第一及び秋元両発電所を視察いたしました。この地帯は、
わが国で最も早くから水力電源として
開発されたところの
一つであり、自然の力と取り組んだ先人たちの苦闘の歴史を伝えているとともに、今なお季節的な発電調整のみならず、尖頭負荷時の補給電源として重要な役割を果たしているのでございます。
以上のように只見、猪苗代の電源は、三つの電力会社によって
開発されながら、ほとんど一滴の水のむだもないほど有効に
利用されており、しかも、かたわらに
わが国有数の穀倉地帯を控えていることから、灌漑、治水にも適切な考慮が払われていることは全く感服のほかなく、今後とも一そう関係者会社の
協力と連絡の
強化が望まれる次第でございます。
次に、
石油及び天然
ガス資源
開発関係でございますが、新潟地区の天然
ガス資源
開発は、その豊富な埋蔵量にもかかわらず、例の
地盤沈下問題との関連で、若干
伸び悩んでいるようでございます。昨年六月、
科学技術庁資源
調査会において、新潟
地盤沈下問題についての中間
報告が発表された結果、新潟地区には、沈下の特にはなはだしい信濃川河口付近を
中心として、天然
ガス規制ラインが設定され、現在に至るまで、約百五十坑井の水溶性天然
ガス井戸が操業停止を余儀なくされております。これによって困難な
状態に置かれた
産業は少なくないのでございますが、中でも数年前より著しく進出し始めた
ガス化学
工業は、一方ではこのように
ガス規制というコスト高の要因をかかえ、他方では硫安の供給過剰による操短というようなこれまたコスト高の要因をかかえ、国際的水準の新鋭
設備を持ちながらも、なおその打開策に苦慮しているようでありました。従いまして
地盤沈下問題については、
ガスだけにその原因があるとは
考えられず、今後一そう
研究調査を進めるとともに、広い視野に立った総合的
対策を早急に立てる必要があろうと思われます。
さらに私たちは、近年
わが国における非常に有望な油田として、各方面注目のうちに
開発されております
石油資源開発の見附鉱場へ参りました。ここには日産百キロリットルをこす国際級の油井が幾つかあり、長年にわたる粘り強い努力の
成果と、
わが国探鉱
技術の進歩を示すものとして、大いに力強く感じて参ったのでございます。
最後に、中小
企業関係について申し上げます。
会津の漆器は、御
承知の
通り、古い歴史を持つ郷土
産業でございますが、最近は伝統の渋さと堅牢さに加え、素地をプラスチックにする等、種々な工夫がこらされております。ここにおける険路は、何といっても中国からのウルシの輸入が途絶したことでありまして、早急にウルシの輸入をはかることのほか、代用ウルシの
研究や、代用ウルシを円いた場合の
設備転換のための資金的援助等について配慮する必要があろうと思われるのでございます。
燕の金属洋食器
工業の現在直面している最大の問題は、言うまでもなく、アメリカの対日輸入制限でございまして、すでにアメリカは昨年十月よりタリフ・クオーター制を実施しております。これに対して燕の方では
工業組合の調整
活動によって
輸出規制を行なっているのでございますが、今後対米
輸出ワクを少なくともアメリカの
需要増に見合って拡大するような交渉を進めるとともに、アメリカ以外の地域に対する市場開拓にも努め、他方、
輸出貿易管理令に基づく
輸出割当制を金属洋食器メーカーが
国内の商社に不当に圧迫されないよう適切に運用していく必要があろうと存じます。
以上が東北班視察の概要でございますが、最後に、われわれの視察にあたって、種々御便宜を与えて下さいました
通産省当局並びに現地の関係者の方々に、この席をかりまして厚く御礼を申し上げ、
報告を終わります。