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1960-08-31 第35回国会 参議院 商工委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年八月三十一日(水曜日)    午前十時三十一分開会   —————————————   委員の異動 七月二十六日委員谷村貞治君辞任につ き、その補欠として上原正吉君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     剱木 亨弘君    理事            川上 為治君            古池 信三君            牛田  寛君    委員            上原 正吉君            岸田 幸雄君            小林 英三君            斎藤  昇君            鈴木 万平君            山本 利壽君            阿具根 登君            阿部 竹松君            近藤 信一君            島   清君   国務大臣    国 務 大 臣 荒木萬壽夫君    国 務 大 臣 迫水 久常君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞壽君   説明員    経済企画庁総合    計画局計画官  成田 寿治君    通商産業省石炭    局長      今井  博君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○経済自立発展に関する調査  (科学技術振興及び原子力長期計画  に関する件)  (昭和三十五年度年次経済報告及び  今後の経済見通しに関する件)  (総合エネルギー対策に関する件) ○派遣委員報告   —————————————
  2. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) これより商工委員会を開会いたします。  議事に入るに先だち、一言ごあいさつを申し上げます。  去る臨時国会で、私、はからずも商工委員長重責に選任されたわけでございますが、商工委員会関係といたしましては、私きわめて不なれでございますし、なおまた、生来の魯鈍でございますので、委員皆様には大へん御迷惑をかけることばかりと存じます。ただ私といたしましては、誠心誠意この職務の遂行に全力を注いで参るつもりでございます。どうか皆様方の御好意に甘えまして、今後、今までより以上の御支援並びに御協力をひとえにお願い申し上げます。(拍手)   —————————————
  3. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) この際、今明日の委員会議事につきまして、理事会において協議決定いたしましたところを御報告いたします。  本日は、科学技術振興及び原子力長期計画に関し科学技術庁から、昭和三十五年度年次経済報告及び今後の経済見通しに関し経済企画庁から、それぞれ説明を聴取ののち質疑を行ない、次いで通告に基づきまして、総合エネルギー対策について、企画庁及び通産省当局に対し質疑を行ないます。なお、先般電源開発石油資源開発及び天然ガス事業地盤沈下並びに輸出産業等実情調査のため、東北地方及び北陸地方に派遣されました委員から、その報告を聴取することといたします。  明日は、モスクワで開かれました日本産業見本市に出席され、去る二十五日帰朝されました石井通商産業大臣から、見本市状況あるいは日ソ貿易の将来等につき所信を聴取し、質疑を行なうことといたします。  以上、御了承を願います。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) それでは、経済自立発展に関する調査を議題といたします。  まず科学技術振興及び原子力長期計画に関する件につき、説明を聴取いたします。
  5. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 近年における科学技術発達は、申すまでもなく、まことにめざましいものがあります。  技術革新の名のもとに、科学技術産業構造を大きくゆり動かすとともに、国際政治動向を左右する動因にもなり、さらには国民の福祉の向上にも、きわめて重要な役割を果たしているところであり、まさに現代は科学技術時代とも称し得る情勢であります。  一方、一昨三十三年暮の西欧諸国通貨交換性回復を契機として、貿易為替自由化の動きは、世界経済一大潮流となり、わが国経済にも、その門戸の解放をせまりつつあるところであります。  このような変革期にあって、経済安定的成長国民生活向上をはかるだめには、わが国経済国際競争力培養強化推進し、もってわが国資源の最も有効な利用輸出の一そうの伸長をはからなければならないことは申すまでもありませんが、これらの基盤となり、推進力となるものは、まさに科学技術振興であると私は確信するものであります。  科学技術庁長官重責をになう私といたしましては、このような科学技術重要性認識に基づき、そのすみやがなる振興のためあとう限りの努力を傾注する所存であり、さしあたり次のような施策推進したいと考えております。まず第一に、国庫新技術開発に力を注ぐ所存であります。従来わが国は、外国技術導入に依存するところが多く、外国技術導入による対外支払額は、年々増加の一途をたどり、昨年のごときは三百二十三億円に及び、そり二十五年以来の累計額は実に一千億円を上回っている状況であります。このように外国技術導入に対して積極的である一方、国内における新技術開発に対する意欲は乏しく、わが国独自の優秀な科学技術をもり立て成果を上げる点において必ずしも十分といえす、時にはわが国研究者の独創的な研究成果が、海外において先に開発せられ企業化に成功するといった事態さえ起きるありさまであります。  このような外国技術依存体制を打破し、国内技術の再評価とその開発を行なうことは、わが国産業国際競争力培養のためにも、またわが国科学技術発達をはかる見地からも、きわめて肝要なことと思われますので、この際、慎極的に優秀な国産新技術開発に努のることといたし、このため理化学研究所の開発部門を分離独立させ、政府資金よる新技術開発公団設立推進するとともに、日本開発銀行の新技術工業化のための融資制度を大幅に活用し、工業化資金の円滑な流通をはかる所存であります。  第二に、研究公務員処遇改讐を行なう決意であります。国の政策として科学技術振興をはかるために最も重要かつ基本的な問題は、科学技術教育振興科学技術者待遇改善に関する方策であると考えるのでありますが、なかんずく研究公務員待遇は、諸先進国に比してはもちろんのこと、民間研究機関に比べましてもその劣位は、おおいがたく、そのため研究者国立試験研究機関を離れ、あるいは新規採用がほとんど不可能となっている実情であることは、すでに皆様御周知のところであろうかと存じます。  この点に関し、先般、給与額改善については人事院勧告のあったところでもありますが、わたくしとしては給与の額もさることながら、むしろ制度あり方が問題であり、生涯をかけて研究に没頭する研究者処遇としてふさわしい給与体系確立と運用の改善をはかることが必要と考え、これに努力する方針であります。  第三に、科学技術振興中軸となる研究活動助成促進につきましては、三つの観点すなわち、1民間研究活動助成、2国立試験研究機関等設備の、更新近代化、3特に各部門協力を要する重要研究推進重点を置いて施策を進める所存であります。まず、民間研究活動推進についてでありますが、最近のめざましい技術革新進展に伴ない、民間企業は競って研究活動に力を注ぎつつある情勢にあります。政府といたしましては、わが国科学技術水準向上中軸として、民間研究活動活発化は必要不可欠のものと思われますので、所要の税制上の優遇措置を講ずるよう努力するとともに、必要の助成金を支出して、その推進をはかる所存であります。次に国立試験研究機関等は、民間試験研究機関でなし得ない基礎研究開発研究を行なうという重要な機能を付与されているのでありますが、その設備の多くは老朽化あるいは陳腐化していて、十分な活動が期待されない状況にありますので、計画的に設備更新近代化の実施を推進し、その試験研究効率化をはかる決意であります。  また、宇宙科学技術基礎電子工学海洋科学技術等、特に各部門協力を要する重要研究につきましても、最近の各国における研究開発の趨勢にかんがみ、従来の研究体制を維持強化することはもちろん、さらに時代の要請に応え、基礎電子技術研究所設立海洋審議会の設置をはかるなど所要施策を講じ、その総合的な研究開発促進する所存であります。  第四に、原子力研究開発利用重点的推進であります。後に、御説明申し上げる通り、現在原子力委員会は、原子力をめぐる世界及び国内の諸情勢変化に対応するべく「原子力開発利用長期基本計画」の改訂を行なっておりますが、明年度は新長期基本計画の初年度であり、同計画基礎として原子力研究開発の新展開を期する年であるとの観点に立ち、原子力船開発材料試験炉開発準備核融合反応研究、再処理研究開発放射線化学開発放射線の生物及び環境に対する影響の研究等事業重点的に取り上げるとともに、本年度に引き続き、日本原子力研究所原子燃料公社放射線医学総合研究所を整備拡充して研究体制強化をはかるほか、国際協力促進核燃料計量制度確立人材養成計画推進を期する所存であります。  第五に、科学技術に関する広報普及強化についてでありますが、従来わが国国民各層は、科学技術に対する認識と理解とにおいて必ずしも十分とはいいがたく、そのため科学技術振興のための社会的基盤の形成が不十分でありました。政府といたしましては、この弊を除去し、改善するため、国民各層なかんずく青少年の科学技術に対する関心を高揚させ、次代のわが国科学技術のにない手を培養育成する方針でありますが、そのため、政府広報普及事業をさらに強化し、日本科学技術振興財団普及事業を援助するほか、科学技術に関する広報普及の機構を整備拡充する所存であります。  次に、原子力開発利用長期基本計画改訂について御説明申し上げます。  わが国における原子力研究開発につきましては、昭和二十九年度その緒について以来今日までの数年間に、めざましくかつ堅実な進展を見せ、わが国における原子力研究開発基盤に着々譲成されてきているのでありますが、一面この数年の間には、原子力平和利用をめぐる国内国外情勢変化も、またかなり顕著なものがあるのであります。原子力委員会では、先に昭和三十一年「原子力開発利用長期基本計画」を内定していたのでありますが、その後の情勢変化、たとえば(1)海外における核原料面見通しの好転、(2)電力需要の予測以上の増大エネルギー供給構造変化、(3)新鋭火力発電コスト低下傾向、(4)原子力関係技術進展に伴なう新しい問題解明のための必要な研究開発量増大等状況に対応して商計画改訂し、今後におけるわが国原子力研究開発利用の長期的の指針として、本年中には各界の衆知を結集して新長期計画を策定する方針であり、去る七月末には、その基礎となる考え方原子力委員会において内定したのであります。この内定に基づき新長期計画においては、原子力発電原子力船等動力としての利用アイソトープ利用放射線化学等放射線としての利用核燃料材料開発利用及びこれらの基盤となるべき研究開発の進め方の四点を基本線とし、さらに原子炉安全対策放射線障害防止などを総合的に検討し、一応今後二十年間を計画期間として開発利用の時期及び段階についても再検討を加え、また国際的な視野をも取り入れて、わが国原子力平和利用の健全な発達に最も効果的に寄与しようとするものであります。なお簡単に二、三敷衍いたしますと、原子力発電については、計画期間の前期一九七〇年までの十年間を開発段階とみ、主として技術育成発展人材養成に資するため数基約百万キロワット前後の原子力発電が行なわれるものとおおよそ見込み、本格的に商業ベースにのると考えられる一九七〇年以降の十年間には、一応新規火力発電設備建設容量の約一五ないし二五%、五〇〇ないし八〇〇万キロワット程度開発されるものと推定しております。原子力船については、経済的に引き合うのは一九七〇年代とみられるが、造船、海運国として将来の国際競争に備え、一九七〇年を目標原子力船一隻を建造する方針を立てるものとしており、三十六年予算要求においても、遮蔽実験用スウイミングプール型炉建設に着手することを期待しているのであります。核燃料開発については、探採鉱、精練、加工、再処理にわたり、全体を通じ関連させた方針でこれを行ない、放射線利用についても意欲的にその推進をはかろうとするものであります。また原研、燃料公社放医研等原子力関係機関の充実を通じ、研究体制強化し、基礎研究推進を期しているのであります。  以上、重要施策として当面考慮いたしております科学技術振興方策の大綱と原子力開発利用長期基本計画改訂の概要について申し述べたのでありますが、私といたしましては、これらの方策中心として科学技術振興原子力開発利用推進全力を傾注する覚悟でございますので、国会議員各位をはじめ関係各位の切なる御協力をお願いいたす次第であります。
  6. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 質疑のある方は御発言を願います——別に御質疑がなければ、本件調査は、この程度にとどめます。   —————————————
  7. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 次に、昭和三十五年度年次経済報告及び今後の経済見通しに関する件につき、説明を聴取いたします。
  8. 迫水久常

    国務大臣迫水久常君) 三十五年度年次経済報告、いわゆる経済白書は、実は池田内閣の成立する直前、前内閣の最後の仕事として発表せられたものでございます。要するに、前年度におきます日本経済あとをたどって、それによって、いろいろ今後の経済成長に資すべき方策等を勘案したものでございまして、詳細につきましては御質問に応じまして、直接担当といたしました調査局の方からでも御答弁をさしていただきたいと思います。  将来の経済見通しにつきましては、現在のところ、わが国経済はきわめて平静に推移をいたしておると申して差しつかえないと存じます。貿易量経営収支も、七月には黒字が若干ながら出ましたし、それから物価の低落の歩調も、これがとまったように観測されまするし、ただ問題となるのは、日本銀行の貸し出しが依然として非常に高いレベルにあるという点でございます。これは申せば、国内に潜在的な設備投資意欲があるということを物語っているものと思われるのでございまするが、これによって、直ちに日本経済にブームが起こってくるとも考えられませんし、民間需要も、きわめて旺盛でございまするので、急にここで景気が後退するとも考えられません。一応、順調な歩みを続けるものと存ぜられるのであります。  しこうして現在、日本経済が潜在的に持っておると思われまするところの、いわゆる経済成長の能力というのは、現在経済企画庁において研究しておりますいわゆる所得倍増計画検討過程においても、ほぼそういうことが明らかになっておるのでありまするが、少なくとも年率七・二%、すなわち十年間に総生産を倍にすることは、きわめて容易なことである。その程度の潜在的な成長エネルギーを包蔵しているものと考えられます。過去の先例、統計から見まするというと、戦後における伸び率というものは、平均して一〇%をこえる伸び率を持っておるのでありまして、若干意欲的にもろもろ施策を講ずるにおいては、今後十年間に七・二%でなく、それをずっと上回る、たとえば九%というような成長率を見込むことも不可能ではなかろう、こういうようなふうに推察をいたしておるような次第でございます。  とにかく日本経済というのは、見通しは決して暗いものはない、こう判断いたされますので、あとはもし御質問がございますれば、それによってお答えをさしていただきたいと思いまして、概括の御説明は終わる次第でございます。
  9. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 御質疑のある力は御発言を願います。  ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  10. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) では速記をつけて。  別に御質疑がなければ、本件調査は、この程度にとどめます。   —————————————
  11. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 次に、総合エネルギー対策に関し、質疑の申し出がございますので、本件を問題に供します。
  12. 阿具根登

    ○阿具根登君 長官にお尋ねいたしますが、私、本委員会年度末あるいは当初におきまして、いつも質問いたしますが、今日まで確たる御答弁がなくて計画を進められておるようでございますので、この際、池田内閣が発足いたしまして、ただいま御説明のように、非常な経済伸びとかあるいは所得倍増論とか、こういうものを中心にした政策を立てておられるようでございますので、経済伸び基礎になるものは、おそらくエネルギーであろうと思うのです。このエネルギー総合対策について、どれだけの対策を立てておられるか、それをお聞きしたいと思うのです。  まず総合エネルギー経済伸びとともに、十年の計画ならば、この十年間でどれだけのエネルギー伸びがあるのか、そのエネルギーの内訳は、一体何なのか。油が一体どれくらいなのか。ガスがどれくらいなのか。石炭がどれくらいなのか。それに起こってくる日本労働市場における移動は、一体どう考えられておられるのか。そういう点を一つ詳細にお尋ねいたしたいと思います。
  13. 迫水久常

    国務大臣迫水久常君) お説の通りエネルギーの問題は、きわめて重要な問題でございまするので、経済企画庁では経済審議会エネルギー部会というのを設置いたしまして、それでエネルギー総合計画についての諮問をいたしました。先般七月の末に、そのエネルギー部会から答申があったのでありまするが、全体的な問題としては、目下先ほど申し上げました所得倍増計画研究中でございます。これによって鉱工業生産というものが、どういうふうな格好伸びていくか。まあ工業は、大体四倍くらいということはわかっておりまするが、さらにそれを掘り下げて研究をして、それに伴ってエネルギーの問題も、エネルギー小委員会というところにおきまして、目下研究を両方関連していたしておるような次第でございます。全体的に申しまして、エネルギーというのは、固体から液体の方に回っていく傾向のあることは御承知通りでございまして、私どもの研究の対象としては、エネルギー経済的な効果、もっぱら経済の点から見て計画を立てたいと思っておるのでありまするが、何分にもまだ工業生産の全体的な形もはっきりいたしませんので、具体的に固体液体との間の比率をどうするかというようなことについては、現在まだちょっとお答えのできない状態でおります。もし御必要ならば、経済審議会エネルギー部会における審議に関する報告という三十五年七月二十五日提出された報告書皆様方にお目にかけてもけっこうであります。
  14. 阿具根登

    ○阿具根登君 私はそういうエネルギー部会の結論、それも、もちろん必要でございましょうが、政治的に見て、たとえば一千億減税池田総理が言う場合でも、一体一千億減税をするためには、どこをどうすればいいのかという問題が、ほとんど諮問重点になってくると思う。一応政治的に、どれだけの増収の税があるから、だからこのうち一千億なら一千億の減税が可能であるということを一応の柱に立てる場合、経済企画庁が、経済を主体にして企画されるのが当然でありますが、そのためには、日本経済動向を今日まで見詰められてこられて、そうしてエネルギーであるならば、どれだけのエネルギーが将来必要であるのだということは、当然そういう研究会を待つまでもなくおわかりになっていると思う。そうすると、それも日本政治情勢経済情勢から見て、どうあるべきかという一つの柱は、大臣がお考えになるべきものであると私は思うのです。  その諮問に応じて、核エネルギー部会その他がいろいろの検討をしてくれるものだと私は思っているのです。だから大臣考え方を、私はここではっきりお尋ねいたしたい、こういう考えを持っているわけです。
  15. 迫水久常

    国務大臣迫水久常君) 御質問要点というのは、石炭石油とどういう割合を持つか、あるいは石炭の最終的な分量は、大体どのくらい予定するかということを言えということではないかと思うのでありますが、その数字をつかむのについて、実際日本エネルギー必要性から考えて、各産業あり方等から考えて、どういう結果になるであろうか、一応の経済からだけの面から見て、こういう格好になるであろう、またなるのが好ましい、こういうその格好を今エネルギー小委員会研究してもらっているのです。その結末に基づいて、今御質問要点にある若干の政治的な問題を考えるとか、あるいは雇用の面における大きな変動を考えるとか、そういうようなことをして、最終的に石炭石油とは、こういう比率でやるべきだということを決定したいと思っておるのであります。  現在今、その判断の素材となるべきもろもろ数字検討中でありますので、先にこういうような格好で、そのものを予定して、こういうような格好答えを出すというようなことは、諮問はいたしておりませんので、まだそのところは、今日の段階ではお答えはできない状態でございます。
  16. 阿具根登

    ○阿具根登君 たとえば先ほどの答弁ても、工業の進出は——伸びは現在の四倍ぐらいになるであろうと、こういうことを言われておるわけです。だから基礎的な考え方はあるはずなんです。そうしなければ、たとえば今日四千七百万トンとか、あるいは八百万トンの石炭を使う、あるいは三十八年度には五千五百万トンの石炭を使う。こういう数字が出ておるはずなんです、出ておるのです。そうすれば、企画庁自身が企画しないのを、各省がそれぞれ勝手に、油はどのくらいだ、石炭はどのくらいだということをきめることはできないはずです。そういうのがあるはずです。  だから、三十八年には石炭はどのくらい、油はどのくらい、ガスはどのくらい、貿易自由化が進めば、それがどういうふうに変化する、十年後はどうなる。その計画がなければならないはずだと思うのです。それをお聞きしているのです。
  17. 迫水久常

    国務大臣迫水久常君) 実は、その計画を今立てている最中でございまして、従ってその答えが、まだ出ていないということです。
  18. 阿具根登

    ○阿具根登君 私は冒頭に申し上げましたように、年度初頭、あるいは年度末に、毎年これを繰り返して聞いておるわけです。どの長官も、それを答えられた人は一人もいない。そして現実は、どんどんそのワクの中で仕事をされておる。石炭も掘っておる、油もどんどん入ってきておる。油も、外貨を切るのだから十分わかっておるはずです。わかっておるのを、なぜ隠されるか。だから労働問題もこじれてきて、今日こういう問題になってきておる。私は今のままでお行きになって、今池田内閣が、保守党内閣が今日まで言ってきておるように、三十八年度石炭を一千二百円のコストダウンをやって、現在の数字では七万六千まで今日計算してそれが減っても、三十八年度には、現在の重油の価格であるとは思えないのです。今八千四百円ぐらいすると思います。それが七千円台になると言われておるのです。そうすれば三十八年度石炭計画されておるその計画は、三十八年度を待たずして崩れるわけです。石炭をなんぼか下げろ、また何万人の首を切る。こういう政策をされるわけです。それは企画庁計画がずさんだから、はっきりしてないから、外国から入ってくるのが、安いのがいいというならば、日本の農業その他すべてつぶれてしまいます。  だから、その計画があるはずです。それをいつお尋ねしても、お答えにならない。そうして現実は、こういう事態がいつも引さ起されておる。少なくとも三十八年度までの計画は、はっきり出ているはずですから、御存じなかったならば、局長さんでも、一つお教え願いたいと思います。
  19. 迫水久常

    国務大臣迫水久常君) 三十二年に作りました新長期計画では、三十七年度目標額というものはさまっておる。御承知通りだと思います。  ところがその新長期計画国民生産、あるいは鉱工業伸びというものは、その計画をはるかに上回わってしまったのですね、お話の通り。前に出した新長期計画の形では、ちょっと計画は狂ってしまったということなんです。  そして今度新しく、今それとの関連もあるわけでありまするが所得倍増計画を策定する経済審議会の小委員会で、もう一ぺんそれをやろうといって、現在——あまりそう長い時間じゃないのだと思いますけれども、結論が出るのには、研究している最中であります。何か事務当局は、私よりよけい知っているかも知れませんから、場合によっては事務当局からお答えいたします。
  20. 成田寿治

    説明員(成田寿治君) エネルギー関係の現在の長期計画が、三十七年度を最後とする新長期計画になっています。三十八年度と言いますのは、通産省の方の石炭合理化審議会で三十八年度千二百円引き下げるのには、どういうことになるか、今のところ、供給構造だけ三十八年度まで描いて審議会にかかっておりまして、それと需要とぶつけて、五千五百万トンくらいになるのじゃないかと思いますが、そういう石炭だけにつきましては、三十八年度までの計画を通産省でやっておりまして、全体のエネルギー計画としては、三十七年度までのが、現在これも、所得倍増計画によって修正するという段階になっております。
  21. 阿具根登

    ○阿具根登君 修正する、その修正するものは、どういう数字になっていますか。三十七年度まででいいです。
  22. 成田寿治

    説明員(成田寿治君) それは、現在所得倍増計画政府公共部門部会のエネルギー小委員会で、いろいろデータを集めて検討しておりまして、石炭につきましては、結局生産規模がどのくらいになるか、生産規模によって限界コストが違ってきますので、今通産省の石炭局の方の石炭合理化審議会の方で、山別のデータを集めてもらっておりまして、その生産量と価格との関係のデータを見ないと、石炭がどのくらいではまるかというのは、ちょっとわからない、そういう状態になっております。
  23. 阿具根登

    ○阿具根登君 エネルギーの総需要は、どのくらいですか。
  24. 成田寿治

    説明員(成田寿治君) 所得倍増に関係しまして、さっき長官が言われましたように鉱工業生産がどのくらいになるか、まだ確定しておりませんので、エネルギー需要が、全体にどのくらいになるかということははっきりしておりません。ただ、大体現在の二倍以上になるのじゃないかというふうに考えております。  それからついでに、これは長期展望部会というのが、今年の初めごろ経済審議会で結論と言いますか、報告を出しましたが、その二十年後の日本エネルギー浩三というのを長期展望部会で描いたのを見ますと、昭和五十五年における総エネルギー供給が三億五千六百万トンの供給を二十年後に描いております。これは大体、三十一年と三一十三年の年間平均を基準状態としてはじいておりますので、その三十一年から三十三年度の平均が一億一千六百万トンでございますから、大体二十年で三倍ちょっとというような計数になっております。そうしてその場合に、石炭をどう見るかというのは非常に問題になりましたのですが、さっき言いましたような山別のいろいろの積み上げデータがまだできておりませんので、一応現在の生産水準五千五百万トンというのを石炭で、国内炭として計算に入れております。それは経済性の検討を十分やらないで、一応の試算として五千五百万トンという前提をおいて計算したのでございます。  そうしてその場合のエネルギーの種別の構成がどうなるかと申しますと、石炭の、これは輸入炭も入ってでございますが、石炭が、大体全体の総供給の、さっき言いました三億五千六百万トンの中で二三%が石炭比率になっております。それから電気、これは水力でございますが、水力電気は一八%くらいでございます。それから石油は五六%というふうになっております。そうして火力の電力は、これは石炭石油、あるいは原子力というので発電いたしますので、これはまあ石炭と重油の方のパーセンテージに入っている計算で、電気としては水力電気だけが一八%というふうな比率になっておりまして、参考のため三十一年から三十三年度のさっさ申し上げました基準状態比率を見ますと、石炭が四三%から二三%というふうに、かなり比率としては下回っております。それから水力電気は、基準状態におきましては二九%でございますので、これがまあ水力の資源の限界その他から、比率としては下回りまして、一八%というふうになっております。そして石油が基準状態におきましては二一%から五六、五七%というふうに非常に比率としては上がっております。ただ、今申し上げましたように、この長期展望のデータといいますのは、民間のいわゆる学識経験者の論文を集めた展望の作業でございまして、政府というよりはエネルギー担当の専門の方にいろいろ描いてもらった将来の展望でございます。  それから石炭につきましては、今通産省の合理化審議会で、いろいろ山別の積み上げているようなデータがございませんでしたので、現在の生産水準の五千五百万トンというのをそのまま使っております。
  25. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると政府は責任はないけれども、長期経済の展望は握っておられる。二十年後には三億五千万トンのエネルギーを使うんだ、そうして、しかもその場合の石炭比率は二三%だ、こういうふうに一応の数字はつかんで、それによって構想を描いておられる。またそれを確実ならしめるために、いろいろな部会を作られて研究されておる、こういうことだと思うんです。そうすると二十年後の展望をされておって、近々四、五年の展望がないというのは私わからない。私いつお尋ねしましても、これはエネルギー部会だとか、これは何々小委員会だとか言われる。そうしてこういうお尋ねをすると、二十年後の構想まで立てておられる。これは一応構想であって、間違うこともあるでしょう。それは当然だと私は思うんです。しかしそういうものがない限りには私は図は引けない、かように思うわけです。そうしますと、二十年後で三億五千万トンの総エネルギーを使うんだ、石炭は二三%である、現在は一億一千六百万トン、そうして約半分、四八%が石炭だ、こういうように言っておられるわけですね。そうすると、この伸びというのは、貿易自由化による油の伸び考えておられるのですか。それとも固形燃料そのものは必要ないんだ。日本にはそんな石油はない、そんな重油は日本にはない。外国依存でそういう日本経済の原動力であるエネルギーをお考えになっておるかどうか、その点をお伺いいたします。
  26. 迫水久常

    国務大臣迫水久常君) 長期経済展望というのがあるのが、これはむしろちょっと上厄介なことじゃないかと私は実は思っております。というのは、これは一通り見通しを学者的にずっと集めたものであって、一つの一定の意欲のもとに計画を立てたものではないんです。従ってずっと二十年先の計画があるのに、今はないじゃないかということではないんで、所得倍増計画というものででき得られる一つ計画というものが、まあ政府の意思を盛った一つ計画になる。それは間もなくこの次の議会までには必ずできると思っております。  それで、大体の傾向というものは、御承知のように、固体から液体の方に——その方がまあコストも安いし、能率もいいということは、これはもう否定は、できないじゃないかと思っておるのです。それで貿易自由化という問題、石油の輸入の自由化という問題——自由化という問題はまた別個の点から考えていくのでありまして、当然それは石炭との関係ももちろん考えなければなりませんし、従って今御質問のように、二十年先の形というものが、貿易自由化の結果はそうなるのかどうかというようなことは、ちょっと今ここでは言えないんではないでしょうか。何か長期経済展望という非常にミスリーディングなものが存在することはかえって困ったもんじゃないかと、実は率直に言うと私はそう思っておる次第です。  で、所得倍増計画に関連する小委員会の結論というものも、従って非常に急いで作ってくれということを督促をいたしているので、きょうの御質問を受けるのにはややそれが間に合わないので、はなはだどうも不本意な答弁をしておりますけれども、そういう事情を御了承願いたいと思います。
  27. 阿具根登

    ○阿具根登君 石炭局長お見えになっているようですから、石炭局長のお考えをお伺いいたしたいと思います。前の質問をお聞きになっておらなかったかもしれませんが、石炭局の三十八年度までの処理を見てみますと、三十八年度で五千五百二十万トンの生産量を見ておられる、能率が二六・ニトン見ておられる、労務者が十七万五千人見ておられる、こういうことなんですね。これはいずれも三十八年度にトン当たりのコストが千二一百円下がって、重油に太刀打ちできるための施設でありますか、これは。
  28. 今井博

    説明員(今井博君) おっしゃる通りでございまして、三十八年度に主たる消費地における重油価額に対抗し得るということを目的として計算しております。
  29. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると重油業者の発表しております意見等を見てみますと、日本はガリンが外国に比して安いかわりに、重油は外国に比べて非常に高いのだ、私はそうだと思うんです。原油を外国から輸入して、それでガソリン、重油と精製していくならば、一が安くなれば一方が高くなるのはあたりまえだと思います。それは業者に言わせれば、石炭が高いのだから重油は高くしても合うのだ、そうしてガソリンを安くして車をふやすんだ。こういう言い方も、また一方的な言い方であるけれども、成り立つものだと思います。そういたしますと、その業者から考えれば、日本だけが重油が高いのであるから、石炭が安くなるならば重油はもっと下がる。三十八年度には七千円台になりますよ、こういうことを言っているわけです。そうしますと、そこで七千円台になれば、千何百円違うわけですね。石炭に換算すれば倍になるわけです。そういうコストダウンが出てくるかどうか。その場合一体どういう考え方をお持ちになりますか。
  30. 今井博

    説明員(今井博君) 昨年の十二月に審議会を開きまして、そのときにまあ三十八年度における重油の値段というものはこのくらい下がるということで計算をし、それに基づいていろいろな計画ないし対策を請じたわけでございます。しかし、ただいま阿具根先生おっしゃいましたように、重油の値段というものはもっと下がるのじゃないか、こういう話もございますし、またそういう傾向もだいぶ強まっております。従ってこの問題は、やはりもう少し情勢の推移を見まして、さらにもっと、そういう場合はどうするかということは、確かに今後検討しなければならぬ重大問題です。ただ実は計画が立って間がないことでございますし、それと千二百円引き下げるということ、そのこと自体が、これはまあ現在の石炭実情からしますと、相当に大きな合理化でございまして、まずこれを一つとにかくやろうじゃないかということで、ただいまはこれにあらゆる施策を集中しておる。ただいまおっしゃったような点につきましては、さらに石炭鉱業審議会の生産部会その他においてさらに継続して検討を行ないたい、こういうつもりでございます。
  31. 阿具根登

    ○阿具根登君 きょうは通産大臣がおられないので、これの問題を突っ込んでいけば局長では御答弁できないと思うのです。ただ局長にも企画庁長官にもお願いいたしたいと思いますのは、こういう問題を質問して突っ込んでいけば、一番大事なところは、これは何何部会が研究しております、何々部会がどうしておりますといって、今部責任がそちらに転嫁されます。そしてその間には血で血を洗うような争議が起こってきておるわけなんです。この次は労働大臣も来てもらいたいと思うのですがね、これは一連しておるのだから。しかしそれは労働大臣の所管だというような考えでは困ると思うのです。これは通産省の所管だ、経済企画庁経済計画の立て方が悪いからこういうことが起こっているのです。しかも今お話のように三十八年度に油が下ることはわかっているのです。そうすると今まで、これはおととしから言い出して去年からやっておりますが、千二百円、千二百円というものをばかの一つ覚えのように言って、そして首をどんどん切って、その結果また首を切らなければならぬということになったら、だれが責任を持つか。今で政府でだれか責任を持った者がおりますか。ですから石炭局長も、通産省も企画庁も、計画を立てられる場合に、企画庁は、私は、経済政策を計算さえ合えばいいのだという考えだったら、先ほどから言いますように日本の農家は全部つぶれてしまいます。麦だって米だって外国から入れれば、日本の農家は全部つぶれてしまうはずです。それを日本経済日本実情の中で処理していくのが私は政治だと思う。そうするならば、こういうエネルギー革命といわれておるときに、石炭が非常な苦境になることはわかっておる。それを一挙にこういう政策はいいかどうかということです。総合エネルギーは三倍もふくらんでいく、それに石炭は今の半分になす、そういう政策がいいかどうかというわけなんです。経済が主体になっておるか、人間が主体になっておるか、政治がさか立ちしておりやせぬかと私は思うのです。急激な革命を考えられるのか、あるいは傾斜的にやっていかれるのか、あるいはのんべんだらりと今の状態を続けられるのか私まそこに積極的な政治があると思うのです。通産大臣もきょうはおられませんし、池田さんも通産大臣でございませんし、首相ですから、いう点は相当お考えになっておられると思いますし、こういう面についても、きょうの新聞でも相当考えておられる、倍増問題でも二・七六という数字も出しておられます。そういう点も質問したいと思いますが、大臣もおられませんし、きょうは途中でございますが、質問を一応打ち切って、次に私が要望いたします大臣一つおいで願いたいと思います。総理大臣、労働大臣、それから通産大臣、お願いいたします。
  32. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) ほかに御質疑ございませんか。ほかに御質疑がなければ、本件調査は本日はこの程度にとどめます。  ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  33. 剱木亨弘

  34. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 派遣委員報告に関する件を議題といたします。  先般電源開発石油資源開発及び天然ガス事業地盤沈下並びに技術産業等の実情調査のため、東北及び北陸地方にそれぞれ委員を派遣いたしましたので、これより各班から御報告を伺うことといたします。  まず、東北班からお願いいたします。山本利壽君。
  35. 山本利壽

    ○山本利壽君 東北班について御報告申し上げます。  派遣委員は川上、栗山の面理事と私の三名で、期間は八月八日より十三日まででございました。  今回の委員派遣の目的は、電源開発並びに石油及び天然ガス資源開発状況と、それにあわせて輸出に関連した中小企業実情を現地に調査することにあったのでございますが、この目的に沿って只見川及び猪苗代の電源地帯、新潟、見附、長岡地区の石油及び天然ガス資源開発状況、会津若松市の漆器工業並びに燕市の金属洋食器工業等を視察して参りました。  視察個所の実情の詳細につきましては、別に報告書を用意してございますので、これを会議録の末尾に掲載していただくことを委員長にお願いいたしまして、ここではその視察の概要を申し述べまして、報告にかえたいと存じます。  まず、電源開発関係から申し上げますと、私どもの参りました只見、猪苗代の電源地帯は、標高千六百五十五メートルの名勝尾瀬より発し、重畳たる山岳地帯とうっそうたる密林を縫って流れる只見川を中枢といたしまして、その包蔵電力量約三百万キロワット、わが国電源開発の宝庫とも申すべき所でございます。奥只見は、その只見川の最上流に、堤高百五十七メートル、有効貯水量四億六千万トンという巨大な直線電力式コンクリートダムを作り、最大出力三十六万キロワットの発電所を建設しようとするものでありまして、その規模の雄大なることはもちろん、まさにわが国電源開発技術の最先端を示すものであるといってよいのではないかと思われます。  私どもの参りましたときには、すでに地下発電所への発電機の据付も終わり、ダムのコンクリート打ち込みも半分以上進み、来年の秋には1部発電を開始するとのことでありましたが、渇水町の電力不足が叫ばれているおりから、その一日も早い完成が待たれる次第でございます。  田子倉発電所はすでにダムの構築を終わり、現在最大出力二十八万五千キロワットの発電を行なっておりまして、将来奥只見ダム、その他の完成を待って、最大出力三十八万キロワットまで増設されるとのことであります。ここは御承知のように収用地の補償問題で大いに苦労したところでございまして、現地の関係者は補償問題を迅速かつ適切に処理し得るための法的、制度的整備を切望しておりました。  東北電力の本名、沼沢沼、柳津の各発電所は、只見の流れに階段上に設けられた水力発電所であります。このうち沼沢沼発電所は、只見川水面上二百二十メートルの高所にある沼沢沼を利用して、豊水期や軽負荷時には余剰電力によって只見川の水をこの沼に揚水貯溜し、渇水期や尖頭負荷時には、その水を使って発電するという、いわゆる揚水式発電所でありまして、この形式のものとしては世界でも屈指のものであるとのことでありますが、水力の有効利用という見地からすれば、このような形式は今後とも大いに研究開発される必要があろうと存じます。  さらに私たちは、東京電力の猪苗代第一及び秋元両発電所を視察いたしました。この地帯は、わが国で最も早くから水力電源として開発されたところの一つであり、自然の力と取り組んだ先人たちの苦闘の歴史を伝えているとともに、今なお季節的な発電調整のみならず、尖頭負荷時の補給電源として重要な役割を果たしているのでございます。  以上のように只見、猪苗代の電源は、三つの電力会社によって開発されながら、ほとんど一滴の水のむだもないほど有効に利用されており、しかも、かたわらにわが国有数の穀倉地帯を控えていることから、灌漑、治水にも適切な考慮が払われていることは全く感服のほかなく、今後とも一そう関係者会社の協力と連絡の強化が望まれる次第でございます。  次に、石油及び天然ガス資源開発関係でございますが、新潟地区の天然ガス資源開発は、その豊富な埋蔵量にもかかわらず、例の地盤沈下問題との関連で、若干伸び悩んでいるようでございます。昨年六月、科学技術庁資源調査会において、新潟地盤沈下問題についての中間報告が発表された結果、新潟地区には、沈下の特にはなはだしい信濃川河口付近を中心として、天然ガス規制ラインが設定され、現在に至るまで、約百五十坑井の水溶性天然ガス井戸が操業停止を余儀なくされております。これによって困難な状態に置かれた産業は少なくないのでございますが、中でも数年前より著しく進出し始めたガス化学工業は、一方ではこのようにガス規制というコスト高の要因をかかえ、他方では硫安の供給過剰による操短というようなこれまたコスト高の要因をかかえ、国際的水準の新鋭設備を持ちながらも、なおその打開策に苦慮しているようでありました。従いまして地盤沈下問題については、ガスだけにその原因があるとは考えられず、今後一そう研究調査を進めるとともに、広い視野に立った総合的対策を早急に立てる必要があろうと思われます。  さらに私たちは、近年わが国における非常に有望な油田として、各方面注目のうちに開発されております石油資源開発の見附鉱場へ参りました。ここには日産百キロリットルをこす国際級の油井が幾つかあり、長年にわたる粘り強い努力の成果と、わが国探鉱技術の進歩を示すものとして、大いに力強く感じて参ったのでございます。  最後に、中小企業関係について申し上げます。  会津の漆器は、御承知通り、古い歴史を持つ郷土産業でございますが、最近は伝統の渋さと堅牢さに加え、素地をプラスチックにする等、種々な工夫がこらされております。ここにおける険路は、何といっても中国からのウルシの輸入が途絶したことでありまして、早急にウルシの輸入をはかることのほか、代用ウルシの研究や、代用ウルシを円いた場合の設備転換のための資金的援助等について配慮する必要があろうと思われるのでございます。  燕の金属洋食器工業の現在直面している最大の問題は、言うまでもなく、アメリカの対日輸入制限でございまして、すでにアメリカは昨年十月よりタリフ・クオーター制を実施しております。これに対して燕の方では工業組合の調整活動によって輸出規制を行なっているのでございますが、今後対米輸出ワクを少なくともアメリカの需要増に見合って拡大するような交渉を進めるとともに、アメリカ以外の地域に対する市場開拓にも努め、他方、輸出貿易管理令に基づく輸出割当制を金属洋食器メーカーが国内の商社に不当に圧迫されないよう適切に運用していく必要があろうと存じます。  以上が東北班視察の概要でございますが、最後に、われわれの視察にあたって、種々御便宜を与えて下さいました通産省当局並びに現地の関係者の方々に、この席をかりまして厚く御礼を申し上げ、報告を終わります。
  36. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) 次に、北陸班の報告をお願いいたします。
  37. 古池信三

    ○古池信三君 北陸班の視察について御報告申し上げます。  派遣委員は、牛田理事、近藤、吉田両委員それに私の四名で、期間は八月八日から十二日まででございました。  視察個所を申し上げますと、北陸電力株式会社、有峯ダム建設現場、三井金属鉱業株式会社、神岡鉱業所、高山市内の飛騨産業株式会社、飛騨測器株式会社及び電源開発株式会社御母衣発電所建設現場でございます。  視察個所の実情の詳細につきましては、別に報告書を用意してありますので、これを会議録の末尾に掲載することをお願いをいたしまして、ここではその概略だけを御報告いたします。  まず、北陸電力有峯ダムについて申し上げますと、このダムは、日本海に注ぐ常願寺川支流和田川上流に高さ約百四十メートル、場長五百メートルの重力式ダムを築き、六つの発電所の新設、既設発電所の増設を行ない、合計三十六万七千三百キロワットの発電力を得、渇水期にも下流既設発電所に水を補給して、二万二千九百キロワットの出力増加を行ない、これらの発電所により、新たに年間約七・九億キロワットアワーの電力量を得ようとするものであります。ダムは八月二十八日にはコンクリート打設を終わる予定とのことで、視察出時はほとんど完成に近くすでに百メートルほど湛水しており、下流の和田川第一、第二、新中地山の各発電所はそれぞれ運転を開始しておりました。北陸地方の水力発電は、今まで流れ込み式を主体としておりましたが、有峯ダムの完成によって、北陸地方の電力需給に及ぼす影響は大きいものと思われます。  次に、御母衣発電所は、庄川上流約百キロの飛騨白川村、荘川村に、日本最大のロックフィル・ダムを築き、諏訪湖とほぼ同じ大きさの貯水池となし、最大出カ二十一万五千キロワットの地下発電所を建設しようとするもので、さらにこれを下流既設七発電所に渇水補給することにより、年間二八億キロワットアワーの増加電力量を得ようとするものであります。  視察当時ダムは、総体積七百九十五万立方メートルのうち、すでに七百五十万立方メートルのロック盛り立てを終わり、今秋には完成予定とのことであり、地下発電所も発電機の据付中で明年四月には発電開始とのことでありました。  本地点は、地質上の理由もあってロックフィル・ダムを採用したのでありますが、今日までに放水路トンネル工事において落盤事故を二回起こしており、視察当時にも、十一号台風に伴なう豪雨により、工事現場付近で山くずれが起こり、数名の負傷者を出したような事故もあり、この工事の困難さがうかがわれた次第であります。  またこの地点は、大家族制で知られる白川村、荘川村において、約四百戸の水没家屋を出したため、補償の問題で苦心のあったところですが、総補償費は工費の一五%にも上るとのことで、低廉な電力を得るためにも、合理的な補償基準の確立が望ましいと考えます。  次に神岡鉱業所でありますが、ここはわが国最大の鉛、亜鉛鉱山といわれ、その埋蔵鉱量の豊富なことは国内では他に比類なく、全国の鉛、亜鉛鉱山の埋蔵量の約八五%を占めているといわれております。ここの採鉱場でとれる鉱種は、鉛、亜鉛を中心として、金、銀、銅、蒼鉛、黒鉛、砒素等が混在しており、その鉱床は大規模で、容積にして丸ビルの約十倍というようなものも中にあり、世界でも屈指の大鉱床だとのことであります。このように神岡は日本では珍しく大規模であり、採掘及び製練部門でも技術的に進歩し、合理化が進められておるのでありますが、ここの鉱石の品位は海外の鉱石に比べてやや劣り、国際的にコスト高は免れ得ないとのことでありました。この点は貿易自由化により、海外の鉛、亜鉛が自由に入るようになった場合、さらに検討を要すると思われます。  飛騨産業、飛騨測器両社は、ともに高山市の木工業を代表するものであり、前者はいす、テーブル等の家具、後者は製図板等の測量器を生産し、特に飛騨産業はその製品の九割近くが輸出向けとのことでありました。これらの木工業は、わが国特有の郷土産業として、また輸出産業として、今後大いに育成さるべきものと思われます。  以上、視察の概要を申し述べましたが、最後に、今回の視察にあたって御協力下さいました通産当局、関係者会社並びに高山市等に対し、この席をかりまして厚くお礼を申し上げる次第であります。
  38. 剱木亨弘

    委員長剱木亨弘君) なお両班から委員長の手元に文書による報告書が提出されておりますので、これを本日の会議録に掲載することといたしたいと存じますので、御了承をお願いいたします。  本日は、これにて散会いたします。    午前十一時四十三分散会    —————・—————