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1960-10-12 第35回国会 衆議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年十月十二日(水曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 山本 勝市君    理事 足立 篤郎君 理事 高見 三郎君    理事 坊  秀男君 理事 山中 貞則君    理事 佐藤觀次郎君 理事 平岡忠次郎君       鴨田 宗一君    黒金 泰美君       竹下  登君    濱田 幸雄君       細田 義安君    毛利 松平君       石野 久男君    石村 英雄君       加藤 勘十君    久保田鶴松君       櫻井 奎夫君    西村 力弥君       堀  昌雄君    山本 幸一君       横山 利秋君    大貫 大八君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         国 務 大 臣 高橋進太郎君  委員外出席者         総理府事務官         (調達庁労務部         長)      小里  玲君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    中野 正一君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  大来佐武郎君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    大月  高君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    渡辺  誠君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    泉 美之松君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    村上孝太郎君         大蔵事務官         (主計官)   新保 実生君         大蔵事務官         (理財局長)  西原 直廉君         文部事務官         (初等中等教育         局職業教育課         長)      安養寺重夫君         文部事務官         (大学学術局技         術教育課長)  犬丸  直君         農林事務官         (大臣官房企画         室長)     中西 一郎君         通商産業事務官         (通商局通商政         策課長)    大慈弥嘉久君         通商産業事務官         (企業局次長) 伊藤 三郎君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部長)    川島 一郎君         運輸事務官         (鉄道監督局業         務課長)    小林 正興君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  松永 正男君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 九月十三日  委員押谷富三辞任につき、その補欠として松  田鐵藏君が議長指名委員に選任された。 同日  委員松田鐵藏辞任につき、その補欠として押  谷富三君が議長指名委員に選任された。 十月十二日  委員神近市子君及び栗林三郎辞任につき、そ  の補欠として櫻井奎夫君及び西村力弥君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員櫻井奎夫君及び西村力弥辞任につき、そ  の補欠として神近市子君及び栗林三郎君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の会計に関する件  税制に関する件  金融に関する件  外国為替に関する件      ————◇—————
  2. 山本勝市

    山本委員長 これより会議を開きます。  去る八月、本委員会におきまして各地委員を派遣し、税制金融等の諸般の実情調査いたしたのでありますが、その報告書委員長の手元に提出されておりますので、これを本日の会議録の末尾に参照として掲載いたしたいと存じますが、御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山本勝市

    山本委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らいます。      ————◇—————
  4. 山本勝市

    山本委員長 国の会計に関する件、税制に関する件、金融に関する件及び外国為替に関する件について調査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。佐藤觀次郎君。
  5. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 最近酒団法の法律が実施されまして、酒の自由販売ということが問題になっておりますが、このごろうわさに聞きますと、一升一万五千円もする酒が出たという話です。今までは価格が規制されておりましたが、実際にこういう問題が起きるということになれば、やはりこれらに対する非難もあろうと思います。自由販売になればすぐお酒が上がるということであれば、これは非常にわれわれの考え方と違っておるわけでありますが、こういう点について当局はどのように考えておられるのか、一つ泉さんにお伺いいたしたいと思います。
  6. 泉美之松

    泉説明員 お答えいたします。  お話のように十月一日から昭和十五年以来引き続きました物価統制令によるマル公制度を廃止いたしまして、酒類業組合法による基準販売価格中心とした新しい価格制度に乗り移ったわけでございます。この乗り移ったあと価格がどういうふうになるかということにつきましては、かつてお答え申し上げましたように、強い銘柄のものは一部上がるものがあるかもしれませんが、大部分基準販売価格取引され、また将来はものによって基準価格を下回るようなものも出てくるであろうということを予測しておったわけでございます。大体はそういうことで、強い銘柄のものが一部若干値上がりをいたしておりますが、大部分のものは基準販売価格取引されているのが実情と思っておりました。お話のように、ただ一つの例でございますが、特級酒につきまして非常に高い値段で売るという事例が出ております。この内容を調べておりますと、問題は中身ではございませんで、その入れておる容器美術工芸上から見ますといわゆる逸品作品といわれるものでありまして、容器値段が非常に高いために著しく値段が上がっておるというふうに認められるものでございます。これにつきましては、もちろん容器そのものに対しまして物品税を課税するということを考えると同時に、それからお話のように一升一万数千円もするようなことはわれわれの庶幾していることではございません。かようなことは好ましくないと考えております。これに対しまして、もしさような値段で売れるのであれば、それ相当の税金を徴収すべきだというふうに考えておる次第でございます。いずれ、それらのことにつきましては、その後の推移を見ながらやっていかなければならないと思うのでございますが、さしあたりはただ一件だけでございます。はたしてそれも売れるものかどうか、消費者がそういうものを買うものかどうか、まだ見当もついておらないような状況でございます。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 例外なことだと思いますが、しかしこういうことが出ますと、ほかに影響して、所得倍増論という関係でどんどんものが上がってきて、所得倍増にならない前に実際に物価が三倍になる傾向で、これは池田内閣の大きな黒星になっておりますが、こういう問題について、特に酒の問題については大衆生活関係がありますから、十分注意をしていただきたいと思います。  それから、これに付随しまして、最近小売販売の方々が酒団法のためにいろいろと不安を持っておられる。それは、これで税務署正常取引委員会というものができて、そして酒税の確保のために末端で当局からいろいろな無理な要求が出てきておるので、今小売業というものは非常な不安を持っております。この点について、泉さんは、前は間税部長、今は主税局の局次長になられたそうではありますから、直接の責任はどうかと思いますが、こういう点について酒団法のときにいろいろな問題がありました。そういう点についてどういうようなお考えを持っておられるのか。これは一般の小売業者がようやくこの酒団法実施にあたりまして非常に不安を持ってきて、このままでは小売業者は倒れてしまうのではないかというような非常な不安を持っております。せっかく今まで統制があるときにはある程度までこういう不安がなかったのが、酒団法関係で非常に不安な状態各地に出ておりますが、こういう点についてどんなふうにお考えになっておるのか、この際御説明をしていただきたいと思います。
  8. 泉美之松

    泉説明員 お話の酒の小売業者が、酒類業組合法実施と申しますか、新しい基準販売価格制度に乗り移った後の状態において、非常に不安を持っておられるということでございます。その不安の内容がわかりかねますが、御承知と思いますが、基準販売価格におきましては、従来販売業者販売マージンが比較的少なかったという実情を考慮いたしまして、基準販売価格設定の際、各酒類につきまして卸及び小売マージンをかなり引き上げておるのであります。これによって、基準販売価格で販売しておっても、卸及び小売業者の利潤は相当確保されるように配意いたしておるのでございます。ただ、先ほどお話がございましたように、基準販売価格に乗り移った直後におきまして、生産者の一部に基準販売価格より高く売りたいという業者が出ておるわけでございますが、その生産者がほんとうに値上げして売れるかどうかという点につきまして、先ほどお話がありましたように、消費者の利益その他から考えまして、相当多数のものが値上げするのが好ましくないということが考えられますので、業界指導いたしまして、そう値上げをするということは消費者に対して不利益を与えることでもあるし、また実力のないものがそういうことをした場合に、かえって将来酒の取引が乱れてくるおそれがあるから、そういうことのないようにという指導をいたしておるのであります。それがあるいは役所の方から指導を受けたということで不安に感ずるということがあったのかもしれません。しかし、それは新しい価格制度に乗り移った際のきわめて短期間の間の混乱期の問題でございまして、基準価格制度に乗り移った後いつまでもそういう混乱が続くものとは思っておりません。いずれ販売秩序というものも成り立ちましてそういう混乱はなくなるし、また役所の方のそういう指導もする必要がだんだんなくなってくるというふうに考えております。ただ、お話がありましたように、従来二十年間もマル公になれておったのが新しい価格制度に乗り移りましたので、当分の間、正常取引と申しますか、基準販売価格中心として取引をやっていくということの必要性はあろうと思いますので、その間はやはり役所行政指導もある程度必要であろうかと思っておりますが、行政指導の際におきましては、お話のような、小売業者が不安を感ずるようなことにならないように、十分配慮いたさなければならないと考えております。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 酒の値段についてはいずれあらためてあとで直接お話を伺いたいと思いますが、もう一点、これはお願いであります。私の方の愛知県、岐阜県方面にみりんの小さい業者が非常に多いわけです。みりんというのは、昨年税を下げてもらいましたが、現在は、アルコールは入っておりますけれども調味料よりほかに使っておりません。それで大きな業者のために押されて、小さな業者が非常に困っておる傾向でありますが、政府アルコール専売をやっておるああいうものを融通してもらえないのかどうかというようなことをやかましく言っております。それから、幾らでも自由に作られるという関係上、非常にむちゃくちゃにみりんが作られるというようなことがありますが、こういう点について何らかの対策を講ぜられる考えがないのか。これを一点、お願いやら、またあなた方の方のお考えをちょっと伺っておきたいと思います。
  10. 泉美之松

    泉説明員 みりんにつきましては、御承知のように新式みりん業者旧式みりん業者と両方がおるわけでございます。新式みりん業者の方はしょうちゅうと兼業いたしておりまして、比較的大業者が多いわけございます。旧式みりんの方は、そういう新式業者の作りましたアルコールを買い受けまして、みりんを製造するということからいたしまして、みりん自体製造原価に、片一方は自分のところでできたアルコールを使って、片一方はそれを買ってくるという関係で、コストにかなりの差があるわけでございます。そのために旧式業者新式業者に押されて苦しいということは、佐藤委員お話通りでございまして、私どもも、従来からその点を考慮いたしまして、昨年、その前からいたしておるのでございますが、政府専売アルコールのうち、食用に適するアルコール——政府専売アルコールは、収益を目的としておりませんので、比較的安く生産されますので、その比較的安く生産される政府専売アルコールのうち、食用に適するものを旧式業者アルコール業者を通じて販売するというやり方をとって、コストができるだけ下がるように、そして新式との間のコスト差がなくなるように配意いたしております。昨年はそれによって旧式みりん業者の所要するアルコールの約半分程度をこの安い価格で売り渡したのでございます。問題は、その半分程度でいいか、それとももっと安い価格のものの割合をふやすかどうかという点にあるわけでございます。そこで、私どもといたしましては、最近における旧式みりん業者新式みりん業者との間の原価差というものを調査いたしまして、その調査に基づきまして適切な措置を講じたい、かように考えておる次第でございます。
  11. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 同僚委員質問がたくさんありますから、また他日質問いたすことにして、ちょうど大蔵大臣が見えましたから、減税問題についてお伺いしたいと思うのでございます。  それは私たち社会党からも絶えず言っております物品税の問題でありますが、今六十数品目だけが物品税がかかっております。減税の問題などで、一千億減税、一千五百億減税というお話がありますが、この物品税は非常に不公平だ。これはアメリカやフランスの例がありますが、こういう物品税については、あらゆるものがついておるので、不公平とは思われませんけれども、日本の物品税は、非常に一部の弱い業者だけが物品税をかけられて、これを要領よくうまく逃げたのはかからぬというような不公平なことになって始ります。これは絶えず大蔵委員会で問題になりまして、自民党の方もこういう不公平なことについては——折衝をするたびごとに非常にこういうことが問題になるわけでございますが、新しく大蔵大臣になられたのでございますから、特に水田大蔵大臣政調会の会長もやっておられたし、物品税について何らかの新しい考えがないのか。私たち社会党物品税廃止論を唱えておりますが、物品税というものに対して、この際、税制調査会などの意見ではなくて、やはり大蔵省独自の考え方で、何らかの方法で抜本的な解決政策をとる必要があるのではないかと考えておりますが、この点について、減税問題がやかましくなっておるだけに、一番不公平な物品税についての大臣の御所見を最初に伺っておきたいと思います。
  12. 水田三喜男

    水田国務大臣 物品税は、御承知のように昭和二十五年、六年に大幅な整理をして、いわゆる戦時税というような性格を払拭して、その後もだんだんに整理をやって、特に零細企業製品についての整理免税というものをたびたびやってきましたので、大体今の物品税課税品目というものは、しぼられた最後のもので、ある程度ども妥当なものだと思っているのです。しかし、今言われますように、この零細企業税額を転嫁することが非常にむずかしいとか、あるいは徴税上の問題で事実上は不公平な取り扱いになるとか言われるものがまだありますので、検討はしております。これは一ついじると全体に響いて、御承知通りなかなかむずかしい問題ですので、理屈に合った最低の調整はやりたいとは考えておりますが、御承知のように、この税制の改革については、ばらばらにやらないで、やはり税制調査会答申を次々に待って、順をきめて整理しようという考えを持っています。今のところは、ことしは直接税中心減税答申が出ていますので、今役所でわれわれがやっていますことは、あの答申に基づいた線の検討をやっておりますが、今後もその点は検討を続けたいと思います。
  13. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 いろいろ大臣考えもありますし、一朝一夕にすぐということもできかねる点もありますが、絶えず大蔵委員会物品税の問題が問題になりまして、与党の自民党の方とわれわれ社会党の者が打ち合わせをして、できるだけ免税点ぐらいは何とかしてやろうじゃないかということを、大蔵委員会のあるたびごとに毎年その問題をやっておるわけでございます。物品税がなくならぬならば、せめてこの際思い切って免税点——生活に密着しておるような低いものは、やはり何とか免税にして、大衆生活を圧迫しないように、そうして中小企業零細業者の立っていけるような方法を講じてもらえる御意思が一体あるのかどうか。こういう点について、減税は直接税だけで、ほかのことは全然やらないというお考えであるのかどうか。この点も、将来のことでございますが、この際一つ大臣から伺っておきたいと思います。
  14. 水田三喜男

    水田国務大臣 今お話ございましたように、物品税全体をいろいろいじるということは、次の段階検討事項になっておりますので、これは私は今度はやりたくないという方針ですが、全体に影響するのでなくて、合理的に解決できるものはしたいという気持検討はしていますが、まだそこまで方針がきまっておりません。
  15. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一点。泉さんか第二課長さんに伺っておきたいと思いますが、だいぶん物品税が毎年増徴されておるのじゃないかと思うのです。せめて今まで増徴された分だけぐらいは、何とか免税点で引き下げる方法はないのか。今まで免税点品目にわたりまして、われわれもいろいろ折衝いたしましたが、中には非常に不公平なものもあると思われますので、こういう点について事務当局としてどういうお考えを持っておられるのか。この際いろいろの業者からわれわれの陳情もありますし、せめて今の段階でこれだけぐらいは何とかしてやってほしいというような、こういう観点もあるわけですけれども、そういう点についての何らかの御意思をこの際伺っておきたいと思います。
  16. 泉美之松

    泉説明員 先ほど大臣から御答弁申し上げたような方向考えておりますが、物品税免税点につきましては、ほとんど毎年諸先生の方からお話がございまして、検討をいたして、昨年におきましても——昨年と申しますか、本年春におきましてもかなり行なったような次第でございます。私どもといたしましても、かなり免税点につきましても整理されて参っておると思っておりますが、お話のように業界の方もいろいろ困った実情があるようでございます。これらの点につきましては、その実情を十分調査いたしまして、その調査の結果によって、その実情のはなはだしいものにつきましては、適正な処理をはからなければならないかと考えております。現在のところまだそれほど調査も進んでおりません。どういうふうに持っていくかということについての検討は済んでおりませんが、将来そういう方向でいろいろ調査いたしたいと考えております。
  17. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 最後ですが、大臣お願いしておきたいのは、今度はおそらく、三月三十一日までには、大体一千五百億ぐらいの自然増収があるといわれています。こういうような時期でございますから、一つぜひ今までの減税の問題についても抜本的に考えていただきまして、できるだけ、弱い業者に対しては、もっと同情的なあたたかい気持でやっていただきたい。特にいろいろ税法の中にも矛盾もあるし、またいろいろ解決すべき問題もありますけれども物品税の問題については、やはり事業税と同じように悪税の中の一つに数えられています。どうか、こういうような問題については、特に今後の問題もありますし、せっかく減税を唱えておる今日でありますから、できる限り業者が成り立っていくような限度までは、やはり免税点なり、あるいはこういうような物品税についての不当なものは、どしどし改正していただくようにお願いいたしまして、私の質疑を終わります。
  18. 久保田鶴松

    久保田(鶴)委員 関連して。  大蔵大臣にお伺いするのですが、今佐藤さんの質問に対して、今度は物品税等については考えていない、こういうお話でございましたが、私がお尋ねしたいと思いますのは、六十数目にわたる物品税をはずすのと、はずさないのと、それに関連して一千億減税の額ですね。大体この物品税を取るのと取らないのとで、その税額はどのくらいになりますか、伺いたいと思います。
  19. 水田三喜男

    水田国務大臣 ことしの予算では、物品税の予定した総額は六百四十九億だそうでございます。
  20. 久保田鶴松

    久保田(鶴)委員 そうすると、六百四十九億が物品税なんですね。そういたしますと、ことしの予算と来年の予算との大まかな線だけはこの間新聞で見ましたが、大体各省の要求は二兆三千億、けれども一兆八千億ないし九千億ぐらいに落ちつくだろう、こういうようなことを新聞で見たのですが、ことしの予算が一兆五千六百九十億、そうすると予算が大きくふくらんで税金が減少するというようなことですね。そうすると、その間どの税額をふやして予算を作るのか。大体一千億減税、こう言われておりますが、大きな法人にだけで、零細な業者なんてちっとも減税にならない。今税務署は、盛んに、農村関係においても、特に写真機を持たして作況を調べている。あるいは菜っぱなんか作っているところのでき工合はどうだ。大きくふくらむ予算所得倍増、こういうことで零細な国民から多く税金を取ろうという政府計画なんです。これはどういうふうにお考えですか。
  21. 水田三喜男

    水田国務大臣 それは減税内容の問題ですが、今度の減税所得税、しかもそれはなるたけ中小所得者に重い減税にしようということと、それから法人においても耐用年数の短縮、それから内部留保所得についてのいろいろな問題というふうに、中小企業に一番その軽減を多くすることを中心とした減税案でございますので、今おっしゃられるような心配はございません。
  22. 久保田鶴松

    久保田(鶴)委員 私は大臣がおっしゃるような解釈はいたしておりません。また、今全国的に税務署に国税庁からどういう調査をせよという指令をしておられるのか知りませんが、申しましたように、全国的に見て税務署税金をよけい取る調査をやっておる。あなたは選挙前であるからといってごまかさないで、もっと具体的に、中小零細な業者に対する一千億減税の割当はどういうふうに、どの範囲においてこうするのだ、ああするのだとはっきり私はきょう伺いたい。ごまかしてはいけない。具体的に教えて下さい。
  23. 水田三喜男

    水田国務大臣 徴税方法についてですか、減税内容についてですか。
  24. 久保田鶴松

    久保田(鶴)委員 減税内容について……。
  25. 水田三喜男

    水田国務大臣 減税内容は大体私ども検討済みになっておりますので、近くこれは次期の国会に提出することにいたしますが、内容はもっぱら中小所得者中小企業に重い減税案を出そうと思っております。
  26. 山本勝市

    山本委員長 あと質問があるので、物品税関連質問だというのだから、関連範囲で一応切って下さい。
  27. 久保田鶴松

    久保田(鶴)委員 それでは大蔵大臣にお伺いしますが、各税務署において、いろいろ申しましたような調査をいたしておりますが、これらの調査等において、たとえばことし四十万円であったものが、来年三月十五日、最後確定申告の折に、池田減税方針として三十五万円にするとか、あるいは三十六万円にするとかというようなことになりますか。あるいは、あなたの所得はふえているのだから、従って去年四十万円であったものが、ことしは去年の何割増し、こういうようなことを税務署では申しませんか。私必ずそう申すと思います。そういう調査をやっている。ここに減税のごまかしがある。減税だ、減税だというようなことをいって大きな宣伝をしておいて、そして去年とことしと同じ額で、よほど商売がうまくいかなんだというような人だけがとんとんで、でなかったら、去年よりあなたは何割所得がふえているから何割増しというようなことをやる。そういうことで国税庁の方から税務署にそういう調査をさせておいて、そして税務署ではその調査を盛んにやる。また今やっております。それが自然増収になる。それを自然増収と言うが、自然増収じゃない。むりに税金をよけい取れという指令を出して、税金をよけい取るような方法をやらしておいて、そしてそれを自然増収、そういうようなことを言う。こういうごまがしはいけません。私は関連ですから、その点、もっと具体的にいろいろなとをお伺いしたいのですが、また次に伺います。しかしそういう方法はおとりにならぬでしょうね。重ねて私は伺っておきます。
  28. 水田三喜男

    水田国務大臣 とりません、それは。
  29. 山本勝市

    山本委員長 堀君。
  30. 堀昌雄

    ○堀委員 本日は、この前の委員会大臣がお答えになりました九%の経済成長の問題につきまして、実は、来たる臨時国会では、どうも私はきめのこまかい論議をする時間がないようでございますから、本日少し時間をいただいて、こまかくこの問題の点検を一ぺんさしていただこうというふうに思っております。  この前の委員会で、大臣は「日本の経済の伸び率というのは、世界の外国の伸び率に左右されることはない内在的な別個のものを持っておりますので、私どもは、やはり過去の実績を検討し、現状を検討して、そういう結論になったわけでございますので、細工をして特に作った数字ではございません。」「少なくとも八・五%ということはどこの数字をとっても一番内輪な見方として出て参りましたので、九%ということについては、これはほとんど異論の余地がございませんでした。」と、こういうふうに実はお答えになりまして、何か資料も大へんちゃんとあるのだということで、少しもめました。そこで、きょうは、この問題について、各方面から私自身調べてみて、はたしてこの九%というものの成長の中にはボルト・ネックはないのかどうかということを、一面理論的に、一面現実の問題の中で一つ点検をさせていただきたい、こういうふうに思っております。  そこで、大臣に伺っておきたいことは、九%になったというぎりぎりのところの根拠は一体何か、それを一つ最初に承っておきたいと思います。
  31. 水田三喜男

    水田国務大臣 まあいろいろのところから判断はいたしたのでございますが、やはり私どもが一番自信を持ったことは、結局日本の今までの伸び率をとにかく計算しまして、この十年間の伸び率、それからこの四、五年間の伸び率全体の平均から見ましても、特に現在の時点に関係のある四、五年間の一番最近の伸び率というものの検討をいたしますと、御承知のように、資料は差し上げてあるかもしれませんが、九・三%、九%以上というものが出ております。今後の問題はなかなか推定するのはいろいろむずかしい問題はありましても、過去のいろいろな点から見て、過去の平均までいけないかどうか、これを拒む要因がいろいろあるかどうかというような観点から推してみて、九%程度の伸び率は可能ではないかときめたのが、大体最初の考え方考えていただいてけっこうだと思います。積極的にこれが九・何%になるかというような計算は実際むずかしいのですが、過去の実績通りいかない要因があるかどうかというような消極的な方面からの推定が大体九%になったのだということだろうと思います。そこらの点につきましては、これはほんとうは、経済企画庁が来ておりますが、そちらの方とわれわれの方といろいろ検討したことでございます。
  32. 堀昌雄

    ○堀委員 九%ですが、ちょっと最知に一つ承っておきたいことは、これは実質なのか、名目なのか、実はこの点に全然池田さんも触れておられません。実質ですか、名目ですか、大臣にお聞きします。
  33. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは実質でございます。
  34. 堀昌雄

    ○堀委員 今大臣は、何か過去の計算をすると、九・三%の平均値が出たのだとおっしゃいますが、私が見たところでは、二十五年から二十七年では年率が一一%、二十七年から三十三年では年率六・六%、通算して八・八%なんですが、これはことしの一七%を入れて、どこでどういうふうに計算されたか。これは村上さんでけっこうです。
  35. 村上孝太郎

    ○村上説明員 これはお説の通りに三十四年が入っております。三十四年を入れまして二十五年から三十四年度までの平均が九・三%、三十年から三十四年までの平均が九・三%、こういうふうに出ております。
  36. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、昨日私村上さんから資料をいただきましたので、これはちょっと皆さんのお手元になくて、私と村上さんとだけわかっていることになるので大へんまずいと思うのですが、村上さんは、この前私どもが議論をしましたときに、資料がございますということで、九%というものの資料として実は御提出になったものは、一つは、供給側の成長要因として、戦後各国における労働力の増加率が、日本が二・四%で、その次がドイツが一・四%、アメリカが〇・九%ということで、非常に日本は労働力の増加率が高い、この労働力の増加率が高いということが経済成長の一つの要因だ、こういうふうにおっしゃっているわけです。これは私もその通りだと思うのですが、これは数量としてはその通りなのですね。ところが質的な問題が私は残っておるのではないかと思う。質的な問題というのは、日本は教育程度が十分に行き届いておりますから、もちろん他の後進国に比べると質的にも優位だと思っております。しかし、その質的な問題は、高度の鉱工業生産を伸ばしていくということになると、単なる普通教育の普及ということだけでは問題は解決しないのではないか。少なくとも技術者の問題になってくる。これはあと経済企画庁の方やあるいは文部省の方に伺いますけれども、要するに技術者というものの供給能力もあわせてない限り、単に労働力人口があったら成長はしていけるのだというのは、私は少し機械的に過ぎるのではないかという感じがいたしております。  それから、その次の生産年令人口の見通しはほとんど同じ問題になりまするけれども、産業別就業構成の国際比較として、日本は第一次産業が三八・三、第二次が二四・八、第三次が三六・九ということで、諸外国に比べますと、比較的第一次産業にプールされておる就業者があるから、これを第二次、第三次に動かし得るということを一つお話になっておりますが、この問題はあとでまた農林省の方や企画庁の方に伺いますけれども、私は、池田さんが最初に農業就業人口の問題で最終的に農村就業人口を四百六十五万人にするとおっしゃったのは、最近いろいろ調べてみますと、下村博士の試算の昭和四十五年度の最終年度における第一次産業の就業者があげられておるように思うのでございます。その後いろいろ見ると、あとで触れますから何ですが、必ずしもそういうことではなくて、四割というようなことに訂正をされておられるようでありますけれども、どうもそういう点で私はこれが必ずしもそれに対する強力な資料であり得るとは思わないということであります。  その次に、Bとして輸入力と国際収支ということをあげておられますけれども、戦後の国際収支としては、大体最近は黒字になって参っております。そこで、こういうふうに黒字になっているし、あと輸入依存度の問題や輸出の問題がありますけれども、大体こういう経過で国際収支は心配はないのだというような御意見を述べられておりますけれども、ちょっとここで伺っておきたいのは、特需は一体どれくらいになるのか。三十年ぐらいからでけっこうですから、ちょっと特需のことをおっしゃっていただきたい。
  37. 村上孝太郎

    ○村上説明員 最初、労働力の給源が非常に日本は豊富である、現在西欧その他の国の一番成長のネックになっているのは労働力であるけれども、日本はその点に対して非常にりっぱな給源を持っておるということ、しかもそれは量的な問題ではなくて、質的な問題を考えろとおっしゃいましたけれども、確かに私もそれは考えております。これは昨日私が御説明漏れであったわけで、日本の労働力は豊富であり、しかも質も優秀だというようなことが、日本の成長の大きな原因になっているわけであります。  それから、農村人口の問題は労働省等その他からお話があると思いますので、私は特需の問題を申し上げますが、特需の大体正確な数字は今集計しなければなりませんけれども、三十四年は四億ドル余りであります。三十三年につきましては五億ドルないし六億ドル程度と思います。
  38. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、実は私特需を伺いましたのは、最近の経過をずっと見ておりますと、大体国際収支の黒字と特需とがほほ見合っているということだと思うのです。こちらでいただいた資料では、国際収支が五億五千万ドルくらいの黒字であったときに、大体特需がそのくらいあったと思います。三十四年が四億二千万ドル黒字のときに、大体特需も四億ドル余り、大体現状の国際収支を見ますと、黒字になっておるというのは特需で黒字になっておるのであって、恒常輸出入差額として見ると、常に大体赤字になっておるというのが現状だと思うのです。ですから、私は、この戦後の国際収支というものは、御承知のように、最近アメリカも景気が少しダウンしてきたということの中では、新聞で伝えるところによれば、特需もできるだけ国内発注に切りかえたいというようなことも伝えられておるということになりますと、この国際収支、これだけで見て、手放しで、これだけあるから今後もこうだと言うわけには参らないのじゃないか、これはトレンドの問題でありますけれども。  その次に、戦後の世界貿易の伸びと日本のシェアというのを出していただいているのですけれども、そこで輸出弾性値が三・五くらいですか、三・幾らということである。世界の伸び率が三%くらいだから、要するに日本の貿易は一〇%は伸びるだろうということは、企画庁初め一般の通念のようでございます。しかし、これはあとから通産省の方へ伺いますけれども、理論的にそういう過去のデータだけをつかまえて考えてみれば、なるほど一〇%になり得る条件があると思いますが、それは非常に状態がいいという場合ですね。世界景気が安定しておるという状態でならわかるのですが、アメリカの景気が伝えられるようにもし下降してくるということがあった場合に、はたしてその弾性値と世界貿易の伸びというものだけをかけ合わせた形で貿易ができるかどうか。日本の対米貿易の今の比重を考えてみますと、単に理論的にそういうふうに割り切る点には少し問題があるのではないか、私はこういうふうに感ずるわけでございます。  次に、輸入依存度、これはあとでだいぶこまかい論議をさしていただかなければなりませんけれども、私は、輸入依存度の議論がいろいろ行なわれている中で、資料を調べて非常に困るのは、二つの輸入依存度の問題が頭を出して、片や下村さんの方は為替ベース、国民生産、GNP、企画庁その他でお使いになっているのは通関ベース、国民所得、二つの輸入依存度が、あっちが出たり、こっちが出たりして、どうもこの問題は把握しにくい点がございます。しかし、少なくともこれを四半期別輸入依存度で見てみますと、やはり私は、最近の輸入依存度は安定しておるといわれるのに少し実は疑問があるのであります。これは外務省の経済局の矢野さんの資料ですけれども、国民総生産に対する輸入依存度を昭和二十八年から三十四年の九月まで出しておいでになる中で、二十九年あたりで見ると山が一四・四、ところが三十四年の七月—九月では一四・九となっております。山で見ても、実は最近山は高いところへ来ておる。二十九年の一番低いのが一〇・七ですが、三十三年から三十四年の一番低いところは一一・九、そこもやはり少し上がっておるということになりますと、トレンドだけとして見ても、私は必ずしも輸入依存度がこのままで安定しておると言うわけにはいかないのじゃないかというふうに考えるわけです。  その次に、今後の問題としてここで一緒に伺っておきますが、大来さんもおいでになっておりますが、大来さんがおっしゃっておることは私非常に同感な点があるわけでありますけれども、貿易自由化に伴うところの製品輸入の問題は、下村さんのお話をいろいろ拝見しておると、閉鎖経済の中でならなるほどその通りにいく可能性は相当あるという気がするのですが、現在のように自由化に当面しておって、自由化についても相当スピード・アップを要求されておるような地点に立って見ると、私は必ずしも下村さんのおっしゃるようにはいかないのじゃないかと思う。これはあとでちょっと通産省の方に伺いますが、イタリアやドイツの状態が下に出ておりますけれども、各国の輸入依存度ということで見ますと、西ドイツは一九五一年が一二・二であったものが、一二・五、一三・一、一四・一、一五・二、一五・六、一六・九と輸入依存度がずんずん上がっております。イタリアは一一・九から始まって一二・四、一一・八、一一・二、一一・二、一二・〇、一二・九、これもトレンドとしては少し上がりつつある、こういうふうに見ておるのですが、西独の機械関係の自由化率とそれに伴う機械輸入のトレンドといいますか、そういう状態を一ぺん通産省の方からお答えいただけないかと思います。
  39. 大慈弥嘉久

    ○大慈弥説明員 西独の機械の自由化と輸入依存の関連の問題でありますが、はなはだ申しわけありませんが、現在そういう資料を持ってきておりませんので、わかりかねます。
  40. 堀昌雄

    ○堀委員 企画庁はどうでしょうか。大来さんいかがですか。
  41. 大来佐武郎

    ○大来説明員 ただいまその関係の資料は持っておりません。
  42. 堀昌雄

    ○堀委員 私の調べたので申し上げますと、一九五四年を一〇〇といたしまして、西ドイツの場合は、一九五五年に自由化率がドル地域に対して初め五九が六八になりましたときには、いきなり一八九にふえております。その次に一九五六年には、これが同じ六八なのですが、やはり二一〇とさらにふえております。次に一九五七年にいきますと、自由化率がドル地域向けが九四%になると、三四六に指数がふえてきておる。さらに、ここはちょっとおかしく、統計がどうかなっておるのじゃないかと思いますが、一九五八年にまた七八%と出ておるのですが、これはどっちかがおかしいと思いますが、四〇一。ですから、見ますと、自由化率の進捗に対しては、四年間くらいの問で四倍くらいに機械輸入が西独の場合にはふえてきておる。こういうことが具体的なデータで出ておる。そうしてみますと、やはり、日本の場合においても、自由化と工業化の推進と成長という関係の中では、機械輸入、製品輸入が相当大幅にふえる条件があり得るのじゃないか。ですから、この点は大来さんのおっしゃっておることは同感だと思います。その他、日本の輸入依存度がある程度コンスタントになりつつあるという一つの条件の中には、交易条件が最近非常にいいということがやはり一つのファクターじゃないか、こういうようにいろいろ見てみますと、必ずしもここへお出しになっておることだけで輸入依存度は大丈夫だと言うわけにはいかない。さっき申し上げました輸出の問題はあとにしますが、輸出が一〇%という問題との関連の中で見ても、さらに特需の減少というような問題の中から見ても、私は、国際収支の問題については、下村さんがおっしゃっておるように、必ずしも楽観を許すものじゃない、こう思っておるわけです。  それから、設備能力についてお出しになっておりますが、日本の貯蓄率が二八・八%で非常に高い、こういうことでございますが、この貯蓄率をちょっと調べてみますと、ネットになっておるものの中で一番大きな力を持っておりますのは、個人貯蓄率が日本はよそに比べて非常に高い。大体二八%の中で一〇%くらいを占めておる。西独もやはり二三・三で高いですが、その中身を点検しますと、やはり個人と法人留保が非常に高い。そうなりますと、今後の日本の貯蓄率というものが、この線で維持していけるのかどうかということになると、私は必ずしもそういうことになることはないのじゃないか。最近の、二十六年から三十三年までしかないのですが、それの中での総貯蓄の推移を見ると、四三・一、四一・一、二六・五、三二・三、三九・四、三二・三、三四・三、四二・三。ですから、非常に低いところがあって、また急に高くなったりしておるのです。私は個人貯蓄が今後の経済の成長の割合に応じてそのような線を維持できるかどうかということは少し疑問があるので、ここへお出しになっておりますけれども、ここに少し問題がある。  資本係数については、企画庁の方へお伺いしますから、あとに残しますが、これもやはり問題がある。その次に設備投資額と設備投資比率というものもありますが、これはあまり関係がないと思いますし、生産能力指数と稼動率というのを出していただいておりますが、なるほど稼動率は最近だいぶよくなりましたけれども、しかし私はどうもこの稼動率の内容についてはいささか問題があるように感じておるわけです。  以上の点から、村上さんはこれで九%になるのだというふうなお話なのですが、これは九%を妨げないかもしれないという消極的な要素ではあるけれども、積極的に九%を肯定する要素というものは、この中にはないのじゃないか、こういうふうに思うのですけれども、そこはどうでしょうか。
  43. 村上孝太郎

    ○村上説明員 最初に、私の昨日の説明に少し誤解を持っておられるようなんですが、私は、差し上げた資料から九%の成長が可能であり、それ以外の成長はあり得ないということを申し上げたのじゃありません。従来の日本の経済の非常に高い成長の基盤になる体質というものはいろいろございます。その中で生産函数を規定するいろんな労働力とかあるいは輸入力あるいは設備能力というふうなものを御説明申し上げて、この従来の高い成長を維持した供給サイドの要件の中で、今後直ちにそうした要件が消滅するだろうという事情は考えられない。そうすれば、従来の成長率が実績九・三%という場合に、それが不可能であるという証明はつかないじゃないか。従って私は九%という成長率が夢物語ではないということを御説明申し上げたにすぎないのであります。将来の成長率を何%とずばりと予想することは非常にむずかしい問題でございまして、非常に高い成長ならばそれは不可能だということは言えるかもしれません。非常に低過ぎる成長率ならば、そんなに落ちることはあるまいということは言えましょうけれども、その幅のある可能性の中でどの成長率を政策の目標として掲げるかということは、やはり主観的な価値判断の問題になるということをまず申し上げたいのであります。  それから、いろいろこまかい御質問をなされましたが、たまたま下村理論の弁護をさせられるような立場になりましたけれども、私自身何も下村理論を信奉しておるわけではありません。また差し上げました資料は必ずしも下村理論が根拠になっておるものでもございませんが、小さな質問について私いささか技術的なお答えを申し上げますと、従来特需の関係が国際収支の黒字の大きな割合を占めておりましたことは確かでございます。しかし、最近の傾向を見ておりますと、たとえば三十三年度の五億五千万ドルというのは特需の五億三千万ドルですかを上回っております。ちょっと今正確にあれを記憶しておりませんが、この輸出の今後の伸びというものが期待できるならば、特需によらなくても、特需が減少した場合においても、国際収支において九%の成長を妨げるような要因にはなるまい、こう考えるのであります。  それからまた、将来の輸入力の問題とかいろんな短期の世界経済のふれというふうなものが一体どう影響するのだということをおっしゃる。最近のアメリカ経済の動向に関連しまして、もしアメリカの経済が後退するならば、現在三割を占めておる日本の輸出貿易が非常に困りはせぬかというお話でございます。私が申し上げておるのは、今後の三年なら三年というサイクル全体の平均的な性向を申し上げておるのでありまして、その間において起伏があるということはやむを得ない。ただ、平均的に見れば——一時的な国際収支の赤字があったら、直ちにそれでもって成長がストップするかというと、そういうことはあり得ない。そうした長期の平均的なあれから見れば、少なくとも従来の実績から徴して、今後対外的均衡を破るほどの成長率と言うわけにはいかぬだろうということを申し上げたいのであります。  それから、輸入依存度の問題で、私の差し上げましたGNP対為替ベースの輸入額に対する比率の輸入依存度に対して、通関ベースでとるとだいぶ違うではないかというお話でございます。通関ベースの輸入依存度もございますけれども、これもそう大きなふれはございません。確かにおっしゃるように、前回のサイクルの底と山と今回のサイクルの山というふうなものを比べてみますと、山同士では少し上がっておる。底同士でも少し上がっておる。従って、今後の輸入依存度が上がるのではないかというお説をなさいましたが、そういう学者もおられます。ただこの輸入通関額をとります輸入依存度というものは、たとえば運賃が上がりました際には、輸入物資の中では相当量を日本の船で運んでおりますから、そういう意味から言うと、必ずしも通関額の方が、輸入依存度というか、国際収支の輸入力というものを規定する場合の分析法として正しいかどうかということは疑問であります。それは、運賃が上がりましても、日本の船で運んでおりますのは外貨に関係がないからであります。先ほどの問題に帰りますけれども、一体今後の輸入依存度が上がるか下がるかという問題は非常にむずかしい問題で、学界にもいろいろ議論があることは御存じの通りでありますけれども、私はそう輸入依存度が上がるというふうな傾向は見られないのではないかと思う。と申しますのは、これを戦前の日本の輸入依存度と最近の輸入依存度と比べてみますと、戦前の二二%くらいに比べて、最近はこの通関額でとりましても一四、五%に落ちておりますが、その大きな理由は、一つは日本の産業構造が変わっておるということであります。と申しますことは、重化学工業というような非常に加工度の高い産業分野が割合として非常に占めてきた。たとえばこの重化学工業で、ことに金属、機械類の戦前の輸入依存度を見ますと一六%になっておると思いますが、最近では六%というふうに下がっております。そうしたことから申しますと、今後の日本経済の構造変化がますます重化学工業というふうな高度の産構造になっていくことを考えますと、その面からは下がるということも言えるかと思うのであります。また食糧の輸入なども戦前に比べて非常に減っております。あるいは繊維といういうふうな輸入依存度の高い産業の割合が、重化学工業化とともに逆に減ってくるということも言えるでありましょう。これらはすべて今後の輸入依存度が下がっていくだろうという一つの類推の根拠になっておるわけであります。しかし、先ほど説明申し上げましたように、製品輸入の問題がどうだろうかということもあるだろうと思います。製品輸入の輸入依存度が輸出の自由化ということによって今後ある程度上がるだろうということは言えるかと思いますけれども先ほど申し上げた下がるだろうという要素と相殺した場合に、非常に製品輸入の関係で輸入依存度が上昇するだろうということは、私は言えないのではないかという気がするので、先ほど申し上げたような輸出量その他から見て、今後の輸入力は九%を阻害するものではないということを申し上げたのであります。ただ、西独とかイタリアの輸入依存度の上昇を引き合いに出されまして、今後の日本の自由化に伴う将来の動向を推察されるようなお言葉があったのでありますが、私は西独とかイタリアと日本とは少し違うと思う。と申しますのは、西独、イタリアはすでに完全雇用に達しておりまして、今後何でもかでも自分のところで作るというわけにいかない経済であります。その場合においてはできるだけ自分の得意なものに特化するという傾向が顕著に現われるわけでありまして、その場合に、特化したものをたくさん輸出して、自分のところでこれ以上できないものを輸入するというふうなところから、輸入依存度が上がるのは当然でありますし、地縁的にもほかに密接な関係がある共同市場というものを考えます場合に、そうした傾向が日本においても当てはまるということは言えないのではないか、こう考えるのであります。  それから、設備能力の問題に関連して、貯蓄の将来の動向ということをおっしゃったのでありますが、これは、先ほどお聞きになった三十二年でありますか、二八%、これはたしか一九五一年から一九五七年までの平均だったと思いますが、その後の情勢を見ましても、たとえば昨年三十四年度は三四%というふうに非常に高い貯蓄率を示しておるわけでありまして、今後これが下がるとしましても、三〇%の境界を前後する程度だろうと私は思うのであります。三〇%前後の貯蓄が可能であれば、今後九%の成長率を達成することも決して不可能ではないということを答弁として申し上げたいと思うのであります。  いろいろお聞きになりましたので、漏れておるところがあろうかと思うのでありますが、以上のことから私に対する質問は十分でありましょうか。それならばこれで終わります。
  44. 堀昌雄

    ○堀委員 おっしゃったことは九%を抑制する要素はないのであるというお話であります。だから、私は、実はこの問題についての資料は、最初に申し上げたように、一体なぜ九%というものが出てきたかということが問題点であって、その九%を消極的に抑制するものではないという程度の意味で伺ったつもりではなかったわけです。  そこで、ずっとお話を聞いておりまして、今度は大臣に伺いたいのですけれども経済企画庁でやってお出しになっております所得倍増計画の七・二%というものは、所得倍増するためには必要な数でございますから、私はこれは科学的な数だと理解しております。それから、下村さんが出しておいでになります一一%から一一・九%に至るものは、よく私わからない点がありますけれども、一応下村さんとして、設備投資をこういうふうにした場合には大体こうなるだろう、こういう一つ考え方の上に立っての試算をしていらっしゃいますから、これも一つの体系の中の科学的な指数として拝見をしていいと思います。ところが、今まで伺ったところを見ても、今度政府の皆さんがお出しになった九%というのは、結論すると、下村理論の方の一一%を腹八分目にすると八・八%になるのです。腹八分目で八・八に近いから九にしたというのが私は本物の姿じゃないかと思う。腹八分目などという非科学的なものが池田さんのような比較的合理主義の上に立っておられる人の頭から飛び出してくるということは、私はまことにどうも不可解な感じがするのですが、どうでしょう。大蔵大臣、私はそういうふうに理解しますが、大臣はどう理解されましょうか。
  45. 水田三喜男

    水田国務大臣 私どもの方の理解は、今までの実績をもとにして、その実績を拒む、そこまでいかない要因というものが実際にどうあるかという、先ほどのようないろいろな検討をしてみた結果、この後三年間ぐらいは、実績よりはちょっと下回るのですが、九%前後の成長率の確保というものはできる。そのかわり十年間七・二%という計画は四年度以降どうなるか。しまいにいってたとえば六%になるとか、いろいろなこれからの見通しや作業はやらなければならぬと思いますが、さしあたり今の時点に接着している向こう三年間の伸び率というものは、別に下村理論の計算を腹八分目にしたとかいうものではなくて、過去の実績から見て妥当な線だろうというふうに考えて、政府の中の意思統一をやったということでございます。
  46. 堀昌雄

    ○堀委員 どうもそこが、私率直に言うと非常に問題があると思うのです。九・三%の内輪で九%、私は八分目として九%、似たようなものでございますけれども、最近の日本経済のトレンドなるものは、必ずしも九・九%とかいうものではなくて、やはり非常な変動の中で動いておるものでありますから、それを何か平均値だけで将来がこうだということよりも、やはり全体のバランスの中で見たらこうなるんじゃないかという検討をされてから発表されるのが本物じゃないか。この前同僚の佐藤委員が一夜づけじゃないかとおっしゃったけれども、私も実は一夜づけじゃないかというような感じが非常にするわけであります。  ちょっとそれはそこまでにいたしまして、村上さんは、主観的な価値判断だ、こういうふうにおっしゃっておられます。私はこれはちょっと問題があるのじゃないかと思うのです。もちろん、価値判断というものは、最終的には主観が入ると思うのですけれども、やはり客観的な価値判断の上に立って、その客観的な価値判断というものを集約して、それは最後には思惟的なものが入りますが、比重は客観的な価値判断に置かれてこないと、主観的な価値判断ならば腹八分目というふうに理解せざるを得ない、こういうふうに感じます。  もう一つ、これは一つ政府側に見解を統一していただきたいと思うのですが、企画庁の方に伺います。今村上さんは、輸入依存度は通関ベース、国民所得の比率よりも、為替ベース、GNPの方がいいのであるというお話でありますが、いいなら今度はこっちに統一してもらうか、とにかく基礎資料を調べると、そっちやこっちが出てくるということで非常に混乱を起こすのですが、経済企画庁の方はどうでしょうか。
  47. 大来佐武郎

    ○大来説明員 私の方は、従来経済審議会の貿易の小委員会等で作業をやっております際には、国民所得と通関輸入額、この対比をとっております。これは輸入依存度を使う目的にもよるわけでありまして、国の経済の生産規模から輸入規模をはじきます場合、たとえば鉄が何万トンでそれに必要な石炭なり鉄鉱石は幾ら要るか、こういうふうな物量的計算をやります場合には、どうしても通関輸入でないと、為替輸入は無為替輸入等いろいろなものがございまして、数字が積み上げと為替輸入とは合いませんものですから、私どもやはり経済の総合バランスを見る場合には、通関輸入で物的バランスと国際収支の貿易のバランスとをチェックするという意味で通関の数字を使っておりますが、同時に換算係数をいろいろ加減乗除して為替ベースの輸入も併記する。両方のベースの計算をやっておりますので、国際収支のバランスを見る場合には為替ベースが便利でございますし、国の経済活動と輸入規模との関連を見る場合には通関ベースでなければならない。その両方の要請がございますので、どうも統一するわけにいかない事情がございます。
  48. 村上孝太郎

    ○村上説明員 今主観的価値判断という言葉をつかまえられましておっしゃいましたが、ちょっと私の言葉がすべりましたので、訂正申し上げておきます。私どもは、客観的な資料に基づいた客観的な類推から、最後的に価値判断は主観的なものであるから主観性が入ってくる、こういうふうに御了解願いたい。
  49. 山本勝市

    山本委員長 ちょっと僕も聞きますが、価値判断は主観的なものだ、あるいは客観的なものと言う。今向こうでは、価値判断は主観的だというのは間違いで、客観的な価値判断をという質問がありましたね。あなたの答弁は……。
  50. 村上孝太郎

    ○村上説明員 私どもは、要するに価値判断というものが主観的であることは、これはだれに聞いてもそうだろうと思いますが、ただその資料は客観的な資料にあくまでも基づいて類推したものである、こういうことであります。
  51. 山本勝市

    山本委員長 こういうことじゃないでしょうか。価値判断の中にきわめて主観的な価値判断がある。たとえばネクタイの色がいいか悪いかという価値判断はきわめて主観的なものだ。しかし、病人よりも健康な者の方がよろしい、こういう価値判断は客観的といっていい。たとえば戦争よりも平和がいいというのは、価値判断でも非常に客観的なものです。主観的な価値判断から客観的な価値判断へいろいろずっと並べてみると、段階があるのじゃないか。だから、価値判断というものは主観的だとか、あるいは価値判断というものは客観的な価値判断ということは言えないのじゃないか。これはどうでしょうか。
  52. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、私の申したのも、今委員長のおっしゃるように、どうもこの九%というものの価値判断は主観的に過ぎるということを私はさっきから申し上げておる。そうすると、たまたま村上さんも主観的な価値判断だ、こうおっしゃるから、それならば八・八は今の腹八分目なんだろうということに結果は相なるのであって、その価値判断により客観的な要素があるということならば、私は下村さんの一一%はより客観的なものと見るのです。それはなるほど設備投資を幾らにするかということはきわめて主観的なものです。しかし、主観的なものはそこにあるけれども、全体のバランスをずっととってきた中で、下村さんが一ぺんずっと置いて見られて、総固定投資比率か何かのところでもう一ぺんひっくり返して計算を合わせた形跡がある、この資料を拝見しますと。そうすると、比較的緻密な作業をしておる点から得た一一%というものの判断は、これは客観的な要素がきわめて多い。しかし、今の政府の答弁を聞いていると、これは主観的要素の方が多いから、そこでもう一ぺん私はあらためて申し上げただけです。
  53. 山本勝市

    山本委員長 委員長が発言して申しわけないのですが、論理的な、数学的な判断は客観的なものです。事実判断となりますと、これは大体客観的ではあっても、やはり事実判断には主観が入ってくる。価値判断は常に主観的だという考え方の人がありますよ。しかし価値判断には非常な主観的なものからきわめて客観的なものに近いところまで序列がある。だから、問題によって違うのであって、あなたのように、客観的な価値判断でなければいかぬとか、価値判断は主観的だというふうに一がいに言うのはどうだろうかというので、これはしかし委員長の発言すべきことではないのだけれども、ちょっと……。
  54. 堀昌雄

    ○堀委員 結局この土台をなしておるものはやはり私は下村さんのものの考え方だと思う。これは池田さんがしばしば言っていらっしゃることとよく似通っております。例の四百五十六万というのは下村試算から出ているわけですから、私はやはりそれを土台にしてこの論争をさしていただこうと思うのです。そこできょうは一つずつ具体的な問題の中でボトル・ネックはないかという点検を少しやらしていただこうということなのです。そこで、最初に運輸省の方に伺いたいのですが、最近の輸送状況はどうですか。十—十二月の国鉄輸送の状態をちょっと伺いたいのです。
  55. 小林正興

    ○小林説明員 例年十月から十二月までのいわゆる第三・四半期の輸送は、秋冬繁忙期と申しまして、ことしだけではないわけですが、非常に出荷が旺盛になりまして、それに伴って相当輸送力の増強を計画的にはかっておるわけですが、かなりいわゆる送り不足というものが出る状況です。特にことしは、九月までにおきまして十月以降の第三・四半期の輸送の状況というものを推算いたしたところによりますと、輸送要請、これはいわゆる全国各地の出荷団体、荷主さん方というようなものが……。
  56. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと失礼ですが、調整局長がお帰りになるようですから、ちょっと中断させて下さい。  九%の場合のいろいろの設備投資なり個人消費なり、そういう問題について調整局長からお答えいただけますか。実は下村さんのものの考え方といろいろ企画庁のお考えになっておる点とは相違があるということは新聞紙上で承っておるわけですけれども、九%の場合に、私ちょっと試算してみたのですけれども、大体「△GNP」が一兆三千五百億、一兆二千二百億、一兆三千三百億、一兆四千五百億、三十八年には十七兆六千億になるというようなことが出ておるのですが、これに設備更新投資を今度企画庁では大体どのくらいに見て、それから限界需給比率がどれくらい——過去のトレンドを見ると、私は必ずしも下村さんのようなふうには出ないと思うのですが、もし三十六、七、八年について何かありましたら、ちょっと伺いたいと思います。
  57. 中野正一

    ○中野説明員 企画庁におきましては、目下所得倍増計画を経済審議会において審査をしていただいておりまして、これが近く答申があることになっておりますので、それを待ちまして、さしあたり三年間の九%達成という問題について、需要の面、供給の面からどうなるかということを目下検討しております。ただ下村さんの産出係数あるいはこれをひっくり返した資本係数というもので、生産力がどれだけできて、それにはどれだけ需要をつけなければいかぬか、こういうようなやり方は実は企画庁としてはとっておりません。ただ、あとでいろいろ来年度について経済見通しなり経済の計画を作ります場合に、設備投資は最近相当高い水準で行なわれておりますので、その結果相当の生産能力が出てくるのじゃないか。ただこれも長期に見ますと、産出係数は一でなければならぬとか、七でなければならぬとか、西欧ではこれ以下であるとか、いろいろな数字が出ておりますが、最近の自由化に備えまして、能力増強じゃなしに、やはり相当設備の取りかえというものがあるのじゃないかというようにわれわれは聞いております。そういう見方をしますと、産出係数は相当低くてもいいというような計算が出て参りまして、そういう点で、あとで設備能力が過剰になりはせぬかというような計算をする場合に、こういうものを一つのものさしに使う。しかし、経済企画庁でやっております毎年度の計画というものは、あくまで各個人の消費指数の伸び、設備投資の伸びそれから輸出の伸び、あるいは政府の財貨及びサービスの更新等、各需要要因について見通しを立てまして、それから国民総生産が幾らになり、ひいては鉱工業の生産がどれくらい伸びる、こういう計算を来年度についてやりまして——まだ目下関係省といろいろ相談しておりますが、われわれの今まで事務的にやりましたところでは、はっきり計数は出ておりませんが、少なくとも本年度につきましては、当初この一月に見通しを立てましたが、これは御承知のように成長率は六・六%、鉱工業の生産は一一・八%ということになっておりますけれども、最近の実績、今後のトレンド等から見まして、少なくとも鉱工業生産は二〇%以上いくのじゃないか、それから成長率は実質で一〇%程度になるのじゃないかということを見ておりまして、そこらから来年の趨勢を——もちろん、先ほど触れられましたように、世界の貿易の動向はどうなるか、特にアメリカの景気は停滞するのじゃないかというような面がありまして、なるほど最近の実績を見ますと、去年はたしかアメリカに対する貿易は四八%近く伸びておりますが、この四月—七月の実績を見ましても、去年の同期に比べて一一%くらいしか伸びていない。ところが一方ではヨーロッパに非常に大きな伸びをしておる。また、豪州あるいは東南アジア方面に対しては、去年の実績よりも相当伸び率は大きいというようなことがありまして、来年のトレンドについてはこれからいろいろ検討事項があろうと思いますが、施策よろしきを得てうまくいけば、九%程度であればそう達成困難じゃないのじゃないかどいうのが、事務的な検討段階でございます。
  58. 堀昌雄

    ○堀委員 今おっしゃることで私ちょっと疑問がございますのは、いろいろな指数をずっとお並べになって、パラメーターか何かを使って計算をお出しになる。そうすると、これは九%になるかどうか私はわからないと言うのです。池田さんはともかく三カ年九%だと言ったのですよ。ほかの場合は、指数から持ってきたら現実にここへ落ちつくというのは奇跡じゃないかと私は思うのです。そうすると、この議論は九%から出発しなければ、これは議論にならないのじゃないか。経済企画庁では、そうすると他のもののいろいろな条件から。パラメーターを使って出して、九%できますか。個々の国民所得、「△GNP」が、さっき申し上げたように一兆三千億から一兆四千億にずっと動いていますよ。こういう動き方のところへびしゃっとそういうふうに合いますか。
  59. 中野正一

    ○中野説明員 われわれの方の作業を来年度について申し上げますと、九%という数字に拘泥せずに、現在の見通しからいってどういうところへ持っていけるかという一つのガイド・ポスト——九%というものはそういうものであって、われわれの見通しは一応そういうものを頭に置きながら、現在から先の見通しを立てまして、どこらへいくかということを目下計算中でございます。
  60. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、政府の問題としては、九%というのがガイド・ポストということになるわけですね。だんたんはっきりしてきました。だから、そうすると池田さんがこれまでおっしゃっておりました七・二%を九%だという点が、ガイド・ポストでは私はちょっと問題があると思うのですが、大臣どうですか。
  61. 水田三喜男

    水田国務大臣 九%というのは、御承知通りこの三カ年は、今までの実積から見ても、さっきお話ししましたようにこの目標で施策を立てられる、またそれが可能だということからきたわれわれの計画の目標でございますから、これが今企画庁のような計算でやつて、初年度は九・何%いけるかもしれぬし、二年度はちょっと減って、三年度はどういうことになるということがあっても、三年間の平均目標九%として考えたことが妥当か妥当でないかという問題は残りましょうが、今言ったようにこの目標でいくことは妥当だ、また可能だとわれわれが考え政府施策の目標をそこへ立てたわけですから、積み上げ計算によってそれが来年九・八%になろうと、それはわれわれちっともかまわないと思っています。
  62. 堀昌雄

    ○堀委員 だんだんわかって参りました。そうすると、要するに三カ年九%ということは、毎年九%ということじゃないんだ、三十八年度にGNPが十七兆六千億になればいいんだ、こういうことなんですね。そこを一つはっきりして下さい。
  63. 水田三喜男

    水田国務大臣 大体それを目標とするということでございます。
  64. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは企画庁の方に一つ伺いたいのですが、お宅の方の経済審議会総合部会ですか、昭和四十年の中間のデータをお出しになるということになっておったけれども、四十年の中間データと三十八年の今の十七兆六千億というのがどうもバランスが取れないので、中間報告はやめるんだということが新聞に出ている。そうすると、経済企画庁は、九%というのは頭のどこかには置いておくけれども、しかし方向としては——これは計画局長の方ですが、あまりこだわらないんだ、今のあれを煮詰めていくと、こういうことですか。客観的な諸要素を分析して積み上げていって、なるほどことしは名目で一一くらいになるのじゃないか、来年はあるいは九に近いところにあるかもしれない、これはもうちょっとダウンするかもしれないが、これはアメリカのリセッションの状態によって先の見通しはちょっと立たないのじゃないかというくらいに私は思っているのですが、日本には非常に特殊な条件があるからと大臣もおっしゃっていますから、その点で問題になると思うのですが、そこは一体どうでしょうか。
  65. 大来佐武郎

    ○大来説明員 中間年次の問題につきましては経済審議会の計量部会でも従来から議論がございまして、実は九%論議の出る前から大体十年という期間を考えますと、前年がやや成長率が高いのじゃなかろうか。その理由といたしまして、大体四十年、四十一年ごろまで労働力人口の伸び、生産年令人口の伸びが相当高うございます。そのあと急速に落ちてくる。労働力の供給の事情、それから資本の蓄積率が現状では非常に高い。その高いのがここ近い将来にはある程度続くと見られるというような事情もございまして、中間年次についての論議がございました。しかしなかなかきめ手がはっきりと学問的にも出て参りません。そういう関係もありまして、中間的な問題については政府の三年平均九%ということで検討する、審議会としては、将来予想されます過程について概略の要素、考えりれる変化については報告の中に盛り込むけれども、確定的な数字は途中を示さないということになったわけでございます。私どもの理解しておる範囲では九%、三年というのは毎年必ず九%というよりも、三年通算して九%、しかしその間の景気変動がかりにあるといたしましても、なるべく狭い幅にするという目標だというふうに理解しております。
  66. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、だんだんわかって参りましたのは、実は私どもの党も八%、一〇%という長期経済計画を出した。しかしこれはちょっとガイド・ポストで出したのじゃなくて、一応試算をしてみて、大体においてこの試算の中でならいけるというので出したのですが、池田さんの場合はそうじゃなくて、大まかなところで十七兆六千億にGNPがなるだろう、そういうところで出たのだということをはっきりさせておいてもらわないと困る。今後経済企画庁で作業をなさる場合には九%ではないということがはっきりわかった。もし出たら奇跡なんであって、上か下かにシュバンケンするものが出る。三年先にもう一ぺんまたこの委員会で伺いますけれども、一体その点検かどうだという点の過去の問題、これは先のことですから、どうにもなりませんが、私は経済企画庁はその線でやっていただきたいと思う。九%なんというものを頭に置いてそれで政策を一々こまかく計算してやられた日には、伸びるなら伸びるものを押えられるし、伸びないものならばそれを九%にすれば問題が起きてくるわけでして、そういうようなさっき問題になつた——多少主観的価値判断というようなものを基礎にして経済の問題を論議していただいては困るというふうに私は思っておりますから、科学的な良心に基づいて、勇敢に企画庁としては経済の実態の中で分析していただいて、経済計算を出していただきたい、こういうように思うのですが、ちょっと一つだけ伺いたいのは、個人消費の過去の実績は「△個人消費」という格好ではどんなようになっておるか、教えていただきたいのです。「△」になっておる部分を、増加分を私伺いたいのですが、私ちょっと申し上げますから、それくらいかどうかお答え願いたい。  昭和二十七年六・六、二十八年六・七——これは千億円ベースですが、二十九年三・九、三十年三・五、三十一年三・六、三十二年四・五、三十三年三・四、三十四年五・〇、これを大体平均してみますと——私が平均してみたところでは、三十四年までで見ると、大体「△個人消費」というのは四千六百億円くらいになるのじゃないか、こう思っておるのです。  そこで、大体下村さんのいろいろな議論を拝見しておると、これが一躍して非常にふえることになっておる。大体三十六年は九千億、三十七年は一兆八百億ですか、三十八年は一兆二千四百億、個人消費支出は非常にふえることになっておるのですが、これは下村さんはそういう有効需要というものは広がるのだ、こういう理解の上に立っておいでになると思うのですが、政府の方では今後の個人消費の伸びというものを一体どのくらいに考えておられますか。ここを一つ伺いたい。
  67. 中野正一

    ○中野説明員 実は個人消費の国民生産全体に占めます割合というものは五割五分からちょっとございますので、非常に大きいわけでございまする。この動向がどうなるかということで、成長もどうなるかという非常に大きな要素でございますが、ことしの一月の見通しでは、本年度実は七・三%伸びるという計算で、全体の国民総生産が六・六、こういうことに出ておったわけでございますが、最近のは、一—三月あたりの国民所得の私の方の国民所得部で出しております数字なんか見ますと、大体八%以上になっているわけであります。それで、三十四年が大体八・三%くらいになっておるのじゃないかということで、三十五年につきましてもちょっと今までの企画庁の個人消費の伸びの見方が少し低目じゃないか。ことしにつきましては、先ほど一〇%内外成長があるのじゃないかというのも、実は個人消費の伸びが相当大きくなるのじゃないか。これは一つには非常な豊作で農村で相当所得がふえる、それから、これはまだ決定したかどうか知りませんが、ベース・アップがある、あるいは年内に減税をやるというような要素をいろいろ加味しますと、個人所得は今年度相当伸びる。それに従いまして消費も相当伸びるのじゃないか。従って、目下のところでは、われわれは九ないし九・四%くらいことしは個人消費が伸びるのじゃないかというふうに考えております。ただ、下村さんの計算によりますと、下村さんはどういう計算をされましたか、そういう積み上げではございませんので、ただ下村さんの計算をわれわれが取って計算してみますと、一〇%以上あるいは一一%という伸びで個人消費が相当伸びないとバランスがとれないという計算になっておるようでございます。そこらはわれわれの方は積み上げで、最近の賃金の伸び、雇用の伸び、それから所得は各業種について幾ら伸びるか、そのうちでどれだけ消費に回るかという計算をやりましても、今までの見方はちょっと低過ぎたのじゃないか。従来は、年によって違いますが、大体七、八%ということになっております。
  68. 堀昌雄

    ○堀委員 それではさっきの続きを運輸省の方にお願いいたします。
  69. 小林正興

    ○小林説明員 先ほども申し上げましたように、第三・四半期、十月から十二月までの国鉄に対します輸送需要の総量は、積み上げ計算によりまして五千五百八十万トンという数字になっております。これに対しまして、国鉄の輸送力は、大体昨年よりか約一割程度、諸般の対策を講じまして計画を立てたわけでございますが、その最大の輸送能力は五千百三十万トンと計画されております。従いまして、その差約四百五十万トンという数字が一応滞貨となる見通しでございます。そのうち特に北海道対本土といった問題につきましては、代替輸送機関の問題もございますので、むしろ別個に計算することとして、そのうち約二十万トンという滞貨が見込まれております。
  70. 堀昌雄

    ○堀委員 これから九%伸ばす前に、ことしもうすでに国鉄輸送が今お話のように四百五十万トン輸送不能が第三・四半期に出るということのようですが、一体今後の輸送能力の伸び率ですね、向こう三カ年くらいの伸び率というのは、国鉄の場合にはそろそろ限度にきているのじゃないかと思うのですが、まだ伸ばせますか。
  71. 小林正興

    ○小林説明員 輸送力の今後の増強という問題につきましては、従来からも需要に対応して輸送力を漸次伸ばしておるわけでございますが、今年までの輸送力の増強といったものは、車両あるいは線路関係、全般的に各般の分野につきまして輸送力の増強ができているわけでございますが、御承知通り、輸送力というものを出します場合に、鉄道の輸送力そのものが非常に複雑でございますので、いわゆる総合的に輸送力をつけなければならぬという問題がある。そういった点から、もうすでに限界に来ているのかどうかといった点につきましては、少なくとも輸送需要に対しては今後なお輸送力を増強しなければならぬということで、もちろん政府としても、今後の輸送見込みというものは、所得倍増計画の一環としましても試算をしております。それに対応する輸送力の増強策を講じたいということで、具体的に検討を進めておるわけでございます。
  72. 堀昌雄

    ○堀委員 そんな抽象的なことじゃ議論にならないのですよ。要するにもう現状で四百五十万トン滞貨があるのでしょう。もしあなた方の計画によって伸ばすことができるのなら、これを滞貨にしないでやるということは今おっしゃったように秋季から冬季へかけての季節的変動というのは毎年あると思う、ことしたまたま起きたものでなければ。私はもうすでに鉄道輸送についてはボトル・ネックだと思う。ちょっと企画庁に伺いますけれども、今の九%でなくて七・二%でもけっこうですが、そういう年率で伸びていく場合における輸送需要の伸びというものは、国鉄輸送についてはどれくらいございましょうか。
  73. 大来佐武郎

    ○大来説明員 これは、GNP、国民総生産と輸送需要との相関関係をとりまして、大体国民総生産が伸びますときには、国鉄貨物のトンキロ輸送量としては、GNPの伸び率の六割くらいになるかと思います。大体今までの計算のやり方としましては、鉄道貨物のトンキロと、トラックによるトンキロと、沿岸航路によるトンキロ、その総合計、総輸送トンキロと国民総生産の相関式を立てまして、それをその三つのおもな輸送手段にブレーク・ダウンするというやり方をしておりますが、大体国鉄輸送量の伸びは、従来からいたしまして国民総生産の伸び率よりも低うございます。トラックの方が大きな勢いで伸びているという状況でございます。
  74. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで企画庁の方に伺いますが、もうすでに今——どうも国鉄の方では、そういうこまかい輸送能力増強というのは政府がこれからやってくれるんでしょうというようなことで、まことに他人まかせで心もとないのですけれども計算として見ますと、東海道新線が通れば別だけれども、一本の線路の上を運ぶ能力というものは私は大体限度があるのじゃないかと思う。そこで今の国鉄はまだまだGNPの六割ずつ伸ばし得る条件があるのかないのか。これは運輸省に伺った方がいいのか、企画庁に伺った方がいいのか、よくわかりませんけれども、どちらでもけっこうですが、今後東海道新線ができても——あとのところにはできっこないのですが、それができるまでの間は、これはボトル・ネックにならないのか。あるいはことしは四百五十万トン滞貨ができる。そうすると、GNPが十割ふえたとすれば、これは六割ふえるわけですから、少なくとも二百七十万トンこれにプラスしていくということになりますと、七百二十万トンの滞貨だ。それだけ滞貨が起きれば、これはインフレ要因に——少なくとも消費者物価はおそろしく上がってくる条件というものができはせぬか。現状でもすでに消費者物価は相当上がってきているわけですから、これはボトル・ネックにならないのかどうか、一つお聞きしたい。
  75. 大来佐武郎

    ○大来説明員 私どもは、やはり輸送とエネルギーが、経済成長率が非常に高い場合には、ボトル・ネックになる可能性があると思います。実は昨年の国民総生産が推定で約一七%伸びたということが、ことしの滞貨に相当影響しておるというふうに考えておりますが、ただ、輸送機関というのは、実際上考えますと、ある程度鉄道からトラックヘ、あるいは鉄道から沿岸輸送へというような転換、各輸送手段の間に移り変わりが可能な限度がございますので、鉄道で運べない場合に、ある程度トラックで運ぶというようなことがございまして、鉄道だけが絶対的ボトル・ネックになることはないのじゃないか。もう一つは、輸送、特に鉄道の場合の輸送能力の増強が、これはどうもいたし方ないことなんでございますが、段階的になる。東海道新幹線ができますと、そこで飛躍的に輸送能力がふえて参るわけでございますが、それができるまでは、かなり苦しい状態が出てくる。その辺は他の輸送機関で穴埋めしていかなければならない。この点は、確かに短期の対策としても、相当重視して考えていかなければならない隘路の問題だと存じます。
  76. 堀昌雄

    ○堀委員 私も、今おっしゃったように、もちろんその鉄道輸送を他のトラックあるいは沿岸に切りかえられる条件はあると思いますけれども、しかし、それなら、正直に言いますと、四百五十万トンが滞貨にならなくて済むはずなんです。経済的な自然現象の中で滞貨になることがわかっているのなら、本来ならトラック輸送やその他も興こるはずなんですが、おそらくは現実に滞貨になるだろうという見通しが立っておるということは、やはり今おっしゃるような条件というものが、必ずしも現在の時点において十分でないから、おそらく滞貨になるのじゃないか。そういうことになれば、これは明らかに輸送の面においては、現状ですでにボトル・ネックというものが出てきておるのじゃないか、私はこういうふうに評価をいたします。これもまた、いろいろな価値判断が入ってくるとあれですから、この辺でとどめますけれども委員長、どうですかね、私はまだもう二時間くらいはかかると思うのですね。ですから、昼食にしていただいてやるか、ぶっ続けでもいいですか。——それでは次に移らしていただきます。  文部省、見えていますか。いいですね。九%経済が成長するというのは、ガイド・ポストはそうですけれども、それを何とかそこに持っていこうという一つの政策だと私は思うのです。政策がそこにあるとすれば、私は、一番最初にちょっと触れましたけれども、労働力の供給というのは、量的に考えれば確かにあるのですよ。あるのですけれども、現在、労働大臣もちょっとおっしゃっているのですけれども、技能労働者が非常に不足をしておる。本年二月の調べで八十一万人技能労働者が足りないということを労働大臣は報告しておられますね。そこでちょっと伺いたいのは、今高級技術者の需要数、中級技術者の需要数というのは、一体どのくらいになりますか。一つ需要の面から伺いたい。
  77. 犬丸直

    ○犬丸説明員 私どもの推計によりますと、年間の新規需要でございますが、昭和三十五年の新規需要、これは技術者というふうにおっしゃいましたけれども、技術者、管理者、その他含めまして、大学卒業者とか高校卒業者とか、そういう数字でございますが、三十五年におきまして、理工農医の学部卒業者を需要している数が五万四千百六十四、一応そういう数字になっております。それから中等教育でございますが……。
  78. 堀昌雄

    ○堀委員 中等はいいですよ。高等学校まででいいです。
  79. 犬丸直

    ○犬丸説明員 中等教育というのは高等学校卒業者の意味でございますが、それが、昭和三十五年におきまして、農業と水産と工業の関係の卒業者の需要が約十四万でございます。個別に申し上げますと、農業関係が二万七千二百四十、水産関係が二千七百四十二、それから工業が十一万八千五百九十、それだけが需要でございます。
  80. 堀昌雄

    ○堀委員 平岡さんが御質問があるようですから、ちょっとそちらの答弁がもたもたしているようですから、私ちゃんと話しますから、先におやり下さい。
  81. 山本勝市

    山本委員長 平岡委員
  82. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 給与担当大臣にお尋ねいたします。十一日の閣議で、政府は国家公務員の給与の引き上げに対する人事院勧告をいれまして、十月一日から平均一二・四%引き上げ、地方公務員もこれに準じて引き上げるとの方針を内定したと伝えられております。立法化と公布の時期はいつかをお聞きしたいと思います。
  83. 高橋進太郎

    ○高橋国務大臣 お答えいたします間の十一日の閣議におきましては、従来の関係各省間の経過をお話しいたしたのでございますが、最終的な決定は十四日の閣議で決定するということに相なっております。そこで、今のお尋ねの点のこれの立法化でありますが、われわれといたしましては、なるべく早くその方針の決定の線に沿いまして立法を急ぎ、細目の点につきましては、なお立法の際において若干それらの点を十分考慮してあれしたい、そしてできるだけ早い機会に、少なくとも年内には法案は提出いたしたい、そしてこれの成立を実現いたしたい、こういうことで努力いたしたいと考えておる次第でございます。
  84. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 それでは、大体この臨時国会のあとの通常国会の冒頭、年内に立法化し、これを公布せしめる、そういうお考えですね。
  85. 高橋進太郎

    ○高橋国務大臣 国会の都合で、たとえば昨年のように十二月の暮れまでに、特別国会という形式であれば特別国会に、もしも特別国会が非常に短くて十二月の当初から通常国会ということになれば、通常国会の当初に出したい、こういうことで、少なくとも年内にこれが実現をはかりたい、こういうふうに考えております。
  86. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 かりに年内のいずれかの国会におきましてこれが公布された場合でありますが、十月以降公布の月の十二月に至るまでのベース・アップ差額については、これはやはり十二月に支払うというわけですね。
  87. 高橋進太郎

    ○高橋国務大臣 今のお話のように、かりに十月実施ということになれば、さかのぼった分を法律成立と同時に支給するということに相なると思います。
  88. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 次に、かりにある公務員が十月の二十五日にやめた場合、この公務員に対しまして、ベース・アップは遡及して十月分に対してその差額が追加支払いとなると思うのです。また、退職の時点において、その人に旧給与額を基準として積算された退職金が支払われるわけでありますが、公布の暁、新給与額を基準として積算される退職金との差額も、その人が公布の折無籍となっていても追加支払いを受けられるものと考えておりますが、その通り了解してよろしゅうございますか。
  89. 高橋進太郎

    ○高橋国務大臣 さよう、私も同じように考えております。
  90. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 そこで、私、きょう一番重点質疑としてお尋ねしたいことがあるわけですが、駐留軍労務者の離職者の場合も国家公務員に準ずるかどうか。すなわち、通常給与のベース・アップの差額並びに退職金の積算差額が追加支払われるものと了解してよろしいですか。
  91. 高橋進太郎

    ○高橋国務大臣 ただいまのお話につきましては、大体のことは、これは国家公務員の例に準ずるというのが従来の例でございますが、その分については若干従来の取り扱い等の違いがございますし、私十分承知しておりませんので、調達庁の方からお答えをすることにいたしたいと思います。
  92. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 大筋としてはそのようにあるべきだと考えておるのですけれども、その点は御異論ございませんか。
  93. 高橋進太郎

    ○高橋国務大臣 実は私も国家公務員の分について承知しておりまして、そのようには考えておりますけれども、これは事務的に従来の慣例等もあり、またいろいろ渉外関係の法規等の複雑さもございますし、どうもまだ私その点について十分研究しておりませんので、担当官からお答えをするようにいたしたいと思います。
  94. 小里玲

    ○小里説明員 お答えいたします。  駐留軍労務者の給与に関しましては、日本政府とアメリカ政府との間に締結しておる契約がございますが、これは、昭和三十二年の十月から新しい契約ができまして、われわれは新契約と申しておりますが、その契約の中に給与のことが一切記載されております。そこで、公務員のベース・アップ等がありました場合に、従来、日本政府並びにアメリカ軍当局方針として、国家公務員に準じた措置をとる、こういう方針のもとに実施して参っております。従いまして、今度国家公務員のベース・アップがございますと、国家公務員に準じて、駐留軍労務者の給与に関する、先ほど申しました日本政府とアメリカ政府との間に結びました契約を改定して準じた措置をとる、こういうふうに考えております。
  95. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 考えておるのはいいのですが、そうなりそうでないので心配しておるのです。従来の慣行を見ますと、国家公務員のベース・アップが法律によって日本で改められる、こういう時期に、それと同じような方式をもって、あらためてケース・バイ・ケースで別個の付属協定を結んでいく、こういう建前であると思うのです。ところが、実績を見ますと、駐留軍労務者の場合に限りまして、在籍者対象主義と申しますか、遡及条項が無視されておる。ここに問題があるわけであります。ですから、不遡及主義は、私の考えでは、日本政府を代弁する調達庁の不当な対米屈服ではないか、私はかように考えております。日本の法律関係が治外法権的なと言っては言い過ぎかもしれぬけれども、それに似たような力関係で支配されておるのではないかと思います。いずれにいたしましてもきわめて不合理だと思っております。そこで、政治力の不足と申しましょうか、日本とアメリカとの力関係と申しましょうか、そういったことから労働者への権利侵害としてこのことがいまだに解決されていないということ、しかして、解決されていないことがあたかも公準である、ものさしであるかのごとく、いつでも申し開きとしてのみ陳弁されておること自身が間違いであると思います。  そこで、この不合理を打開するための方途として大略二つの筋が考えられると思います。その一つは、公務員の給与改定のおりに、駐留軍労務者も、給与並びに退職金計算において公務員に準ずべきであるということを明確に法文として入れるのです。そうして、この法律を橋頭堡にして、日米合同委員会ですか、日米間の交渉の場において、従来の慣行を打破するという前向きの解決をしてもらいたい。これが一点。もう一つの筋は、もしこのことができないなら、あるいはこのことが早急にできそうもないという判断に立つならば、無在籍者の遡及分は日本政府が負担する、こういう腹をきめてもらいたいと思うのです。ついては、これは予算関係が伴うということで多少御懸念があろうと思いますが、十月一日以降新給与法公布までの期間はあなたの計画では大体二カ月、この二カ月の間の問題となるべき駐留軍離職者の数というものは、たかだか二千人か三千人であると思っております。従いまして、退職金並びに普通給与ベース・アップ差額一人当たり五万円といたしましても、わずか一億円か一億五千万円であります。米国がしょわなくても、これを理由にほっかぶりをきめ込むことは不当であると考えております。駐留軍労務提供者は、祖国の中の異国で賠償労務に服しておりまして、安保条約締結後におきましては、日本の条約上の義務履行の一環として政府の被雇用者として働いてきて、ここに基地閉鎖で失業のちまたに、しかも大部分が老齢というハンディキャップをしょってほうり出されるのです。駐留軍労務者を、公務員に準ずる扱いをせず、これを差別して扱うことは、理屈の上でも道義上でも許し得ないと思うのです。そういうことから、給与担当大臣がこの給与処置につきましてどういう御所見を持っておられるか、明確にしていただきたいと思います。
  96. 高橋進太郎

    ○高橋国務大臣 私の所管外でございまして、条約その他別個の法律関係によって結ばれております駐留軍の労務者の取り扱いでございまして、私自身どうもすぐここでにわかにお答えできないと思いますが、その趣旨のことは十分所管大臣お話し申し上げておきたいと思います。
  97. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 それでけっこうです。善意と愛情をもって検討してほしいと存じます。  この際、ついでですから大蔵大臣にお伺いいたします。簡単なことですからお答えを願います。  結局こうした矛盾が出てきているということは、労務関係の財源を全部米国に依存せしめているということからきておると思うのです。基地に関する対米財源調整を将来変更して、基地の被雇用者は名実ともに日本政府の被雇用者として、百パーセント日本政府が給与の面でめんどうを見るということ、他方軍事基地の維持管理費に関しましての費用、たとえばこれが予算上出ておるのは、防衛支出金の中に施設提供等諸費として五十六億ほど出ておりますが、こうした米軍の軍事基地の維持管理関係の費用を米国に持たしてしまうということで両者を振りかえてしまう、こういうことができるかどうか。もちろん支出バランスという要素もありましょうけれども、その可能性があるかどうか、お答えをいただきたいと思います。これは抜本塞源的に給与問題を解決しておくべきだとする立場から申し上げておるわけです。
  98. 水田三喜男

    水田国務大臣 今その問題について担当の主計官にきてもらいましたから、お答えします。
  99. 新保実生

    ○新保説明員 駐留米軍に提供いたしております施設区域において働いておる日本人労務者の労務費を、実質的に日本政府が負担したらどうかという御趣旨と承りましたが、この点は、新しい地位協定におきまして、そういう性質の経費は米軍が負担をするというふうに取りきめられておりますので、これを日本政府の実質負担に振りかえるということは、そういう地位協定のもとにおいてはできないことになっておるわけであります。
  100. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 それはわかっておる。けれども、将来前向きの解決方法として、給与関係は米国の財源に依存せずに、基地管理費関係を米国に持ってもらう、こういう勘定の振りかえをやる可能性があるかどうかということを聞いておるわけです。
  101. 小里玲

    ○小里説明員 お答えいたします。駐留軍労務者の給与その他一切の経費は、現在の地位協定からいいますと、今大蔵省の方から御説明がありましたように、アメリカ政府がこれを負担するということになっております。従って、それを日本政府の負担にするためには、地位協定を変えるということにしなければ、そういうことは不可能だと思います。
  102. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 できる可能性があるかどうかということです。現状のことを聞いておるのではない。将来このことが可能かどうか。
  103. 小里玲

    ○小里説明員 これは現在のやり方自身の根本的な改正になりますと、事務屋がちょっと想像するところ以外でございますけれども、全然不可能だということはないと思います。
  104. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 ですから、大蔵大臣に聞いたわけです。しかし、だんだん事務屋さんの方に移っていって、事務屋では答えができぬというのでは理屈に合わぬ。大蔵大臣どうお考えでしょうか。
  105. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは関係官庁といろいろ検討しなければ簡単にいかない問題じゃないかと思っています。
  106. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 いずれにしても、先ほど高橋給与担当大臣に申し上げた点も御善処いただきたい。なお、そのわずらわしさを将来避けるために、抜本塞源的な一つの交渉の方式として、後段に申し上げたことにつきましては、大蔵大臣において、さらに関係官庁等と御協議の上御検討願いたい。このことを申し上げまして、私の質問を終わります。
  107. 山本勝市

  108. 堀昌雄

    ○堀委員 農林省の企画室長が御予定があるそうですから、ちょっと文部省の今のやつを計算しておいて下さい。  実は今度の問題の中で一つ非常に問題になりましたのは、今度池田さんが、経済を大いに伸ばして、農村はともかく人間を減らすんだ、最初の四百五十六万が次には四割になる——四割になりますと六百六十二万くらいだ、こういうふうに思うのです。そこで、企画室長に伺いますが、現在の農業就業人口の年令別、性別、階層別分布はどういうことになっておりますか。
  109. 中西一郎

    ○中西説明員 実は今資料を持ち合わせていないのでありますが……。
  110. 堀昌雄

    ○堀委員 では、私の方から申し上げます。お宅の農家経済調査報告の中で見なければ、ないのですね。ずっと調べて見ましたが、これが全国の労働力サンプル、抽出で五千七百五十九戸、ざっと千分の一くらいに当たるように思います。農業人口が総計で三万三千四百十四人と出ておりますから、これも千分の一、ちょっと大まかですが、置いて計算すれば、これはケタだけ動かすとわかるのですが、これで見ますと、十五才までが千百九十五万七千人、十五才から二十才が二百五十四万五千人、二十才から三十才までが四百六十四万四千人、それから三十才—四十才が四百三十二万四千人、大体これで見ますと、下の方の十五才—二十才が少なくて、二十才—三十才、三十才—四十才がほぼ四百六十万、四百三十万くらいというようになっておるようであります。そこでいろいろ問題があると思うのですが、最近の就職離村とそれから離職帰村と、これの状態は一体どういうことになっておりますか。
  111. 中西一郎

    ○中西説明員 それについての直のお答えには農林省の農山漁家の就業動向調査がございまして、三十三年までは集計が確定しておると思います。三十四年はまだ確定してないのでありますが、中間報告は出ておったと思います。その御質問の直のお答えにならないと思うのですが、リタイアー、死亡などとは別に農村から年々他産業へ転出しておる人は、おおむね九万人から十万人程度の数ではなかろうかと思います。
  112. 堀昌雄

    ○堀委員 農山漁家就業動向調査で見ますと、これは数が少しおかしいんじゃないか。全然合わないんです。数で出ておりますのは、総計で離職、就職離村が三十三年が三十九万二千五百人と出ております。三十四年もそうなんで、あまり数が合わないので、比率だけ私が見たら、三十三年が十五才—十九才が六五%で、二十才—三十四才が二三%というふうに大体なっております。三十四年も五五%、二三%とやはり十五才—十九才に非常に比重がかかっておるというのが現状です。そうすると、今おっしゃった年間十万ということの出入りがよくわからないのです。実際上はそういうことでは非常に雑でよくわからないのですが、結局鉱工業生産が伸びてくれば、やはりそれは一次から二次、三次へ当然流れていくと私は思います。そこで、その流れていく場合の問題について、お宅の方で一つ試算をしていらっしゃるものがありますね。農林水産業就業人口の推計試算というのをお宅の方でやっていらっしゃって、その資料がある。この資料で見ますと、いろいろの角度から非常に御検討をいただいておりますが、大体その資料のいろいろの幅を見ても、四十四年度で一千万から一千三百万くらいの間にいろいろな分でおやりになったのが入っております。国民所得の相関による分は八百六十四万から千三百十五万、労働生産性格差を想定すると、千二百十八万から千二百五万、補充可能量から推計をすれば千百七十二万、千百四十八万、交代補充率等を用いると千百八十四万、大体一千万程度に出ているし、企画庁でおやりになっておる小委員会の報告も大体一千万そこそこのところにくるように計算が出ておりまして、どうも池田さんのおっしゃる四割とはだいぶん幅がある、こういうふうに思うのですが、農林省としては大体どのくらいになるということですか。一つ答えていただきたい。
  113. 中西一郎

    ○中西説明員 その前に、先ほど申し上げた九万ないし十万人について申し上げます。これは現在農業に就業しておる人の中からの転出でございます。先生のおっしゃった三十数万、それは、就業と限らずに、農家人口の中における転出でございます。それで計算を詰めていけば、そう違っていないと思います。  お尋ねの十年たったらどのくらいになるかということでございますが、われわれいろいろ計算いたしましたのは、例の五月十日に答申が出まして、農林漁業基本問題調査会の事務局として、いろいろなお指図のもとで計算をいたしました。実は農林省として、そのうちのどれがいいのかというようなことについては確定的な判断をいたしておりません。ただ、ああいう推計でございますから、そういう推計を行なった段階において条件測定をいたしまして、いわば三十一年から三十二、三年のころの就業動向を、大体の実績のようなものを頭に入れて、そういう千百万ですか、前後の数字がいろいろな計算をやって出てきた。角度を変えて計算をすれば、また違った数字も出得るだろうと思います。十年先のことでございますし、経済成長がどうなるかということの見通しあるいは政策自身との関連もございます。そういう意味で相当の幅をもって理解すべきものではなかろうかというふうに現在のところ考えておるわけでございます。
  114. 堀昌雄

    ○堀委員 もちろんそれはきっちり出ませんけれども、大体一千万前後と、五百万前後とか六百万前後というのではだいぶ違います。四百万も違ったらこれは大へんなことになります。お宅の方で計算された国民所得から引っぱり出されたものによりますと、成長率が七・二%でいくと、大体最終が八百六十四万になる。ところが、六%で大体一千六十五万、それから五%で一千二百九万という数字が出ている。そうしてみると、経済審議会の賃金雇用小委員会の方でも大体千百五十四万人くらいというようなものをお出しになっておるところを見ると、いろいろずっと見てみますと、やはりどうも四十四年から四十五年あたりの農業就業人口というものはそのくらいじゃないか。なぜ私はそうかと申しますと、さっき申し上げたように、若い方から労働力をずっと補給していきますと、先に若いのが出ますから、あとに残っているのがうしろ側の——さっき私は年齢階層別で申し上げたのですけれども、一番最終点に残ってくるものだけを見ますと、もう大体四十才—五十才とそれから三十才—四十才とだけで約八百万ぐらいになってしまって、それだけが残るわけではないのでしょうが、農村労働力というのは、これは老朽化というと非常に言葉は悪いですが、老齢化してくる。そうすると、経済企画庁倍増計画でおやりになっておるいろいろな国民個人消費の伸びの中のエンゲル係数やいろいろなものから判断をいたしますと、農業生産も相当のものをやらなければならぬというような面が片一方にあり、片一方にはもう若い者は出てしまったということになれば、私はこの問題のボトル・ネックの一つの条件になるのがここの中に出てくるのじゃないか、こういうふうに感ずるのですが、それについて計画局長からお答えいただきましょうか。
  115. 大来佐武郎

    ○大来説明員 この点は経済審議会の農業近代化小委員会でも検討がございましたのですが、いろいろただいま堀先生からの御指摘もありましたが、いろいろな計算をいたしますと、一応千万ないし千百万というところが、十年倍増の成長で考えまして、ほぼ結論的には出て参るわけでございます。ただ近代化小委員会でいっております平均二町五反の自立経営農家、これは約三百万、そのほかに非自立の過渡的農家として五百万、それからいわゆる第二種兼業といっております農業が副であるもの約二百万、それを合わせて一千万、それからもう少し近代化がおくれる場合には、非自立の方が二百五十万くらい残るのじゃないだろうか。それで千万ないし千五百万、これは経営規模から出しました数字でございますが、今自立経営家族の三百万と残り第一種及び第二種兼業の七百万、この七百万を実効農家に換算するというようなことをいたしましても、実質的な農業としてやっておるのは半分以下の力をさいているのだというようなことで、これでかりに七百万を実質農民換算で三百万くらいに考えますと、合わせて六百万というような数字は出てくるかと思われます。
  116. 堀昌雄

    ○堀委員 実は計算はけっこうなんですけれども、要するに鉱工業生産の伸びにつれて第二次及び第三次で労働力は必要になってくる、その労働力は農村から補給するのだ、新規労働力補給だけでは足らないから、農村から補給するのだという場合に、はたしてそれがスムーズに補給できるような条件があるかどうかという点が、やはりこれは九%はもう少し先になるだろうと思いますが、やはりボトル・ネックになる条件がありはしないかと思いますから、そこのところの年令別の需要と供給の問題から見ると、今さら四十才の農民を連れてきて機械工業をやらせるわけにはいかないと思いますので、そういう質的な面から見ると、一千万というものは、兼業であるとかなんとかということは別として、農業生産人口のワクの中に入っていて、単純なる賃労働者ということにいかないということになってくると、二次なり三次なりの労働需要を押える条件が出てきはしないか、こういうふうに思いますが、そこはどうでしょうか。
  117. 大来佐武郎

    ○大来説明員 ただいま仰せの通りでございまして、次、三男が出る段階ではかなり労働力の移動が流動的である。需要があれば割合に出てくる。その限界を越えますと、反流動的というか、なかなか出にくくなるのではなかろうか。この点につきましては、経済企画庁の経済研究所の方で、その出す方と出る方との状況をいろいろ検討しております。また、ある段階までいきますと、農業の生産性と非農業の生産性との比較で、農業に残った方が得な面も一面には出て参りましょうし、その辺の見当で、先ほどちょっと申しましたように、十年の後半期に成長率が前半期に比べればやや低くなるだろうというようなことを計量部会で議論しておりましたときも、その労働力供給が今まで日本の経済の成長ではボトル・ネックではない、つまり労働力供給無限大という仮定で、一応そういう考え方できたわけでございますし、率直にいって下村さんの計算もそういう必要な労働力はすべて得られるということだったと思いますが、後半期におきましては、ややそういう点で労働力の限界が幾分出て参るかというふうに考えております。
  118. 堀昌雄

    ○堀委員 次に文部省に伺います。時間がないようですから、簡単に一つお願いしますが、高級技術者の需要数は五カ年で十九万人、中級技術者は五十万人、需要はこれで大体よろしいのですね。
  119. 犬丸直

    ○犬丸説明員 おおむねそのようになっております。
  120. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、現在の供給能力との差は五カ年で大体幾らになりますか。——ちょっと言い落としましたが、三十五年から三十九年までの総計でございますが、その間における供給力と今の需要との差、要するに差し引き不足額が一体幾らになりますか。
  121. 犬丸直

    ○犬丸説明員 高級技術者におきましては、理工系の大学卒業生につきまして、ただいまの約十九万の需要に対しまして供給は約十一万でございますので、その差八万が不足ということになります。
  122. 堀昌雄

    ○堀委員 中級技術者の方も一つお願いいたします。
  123. 犬丸直

    ○犬丸説明員 中級技術者におきましては不足は約八万。
  124. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、私は、さっきの議論の中で最初に村上さんに申し上げたように、鉱工業生産が今度だんだん高度になってくる、重化学化するという傾向になればなるほど、量的な問題はありますけれども、やはり技術者を必要とする段階というのはだんだん高度になってくるのじゃないか。そうすると、今点検をしてみますと、大学卒業者について約八万人足らない。それから高等工業で八万人くらい足らない。これは現状として三十九年までに足らないとすると、学校というのは大学なら四カ年やらなければ間に合わない。高等学校は三カ年やらなければ間に合わない。そうすると、今からやっても、今いきなり大学に八万人ぽんと入れて三十九年でようやくフラットになるのですから、文部省としては私は相当大幅な財源要求やなんかをしておられるかと思って点検をしてみたら、大体千八百人ぐらいが今年の新規要求じゃないかと思いましたが、そうでしたか。
  125. 犬丸直

    ○犬丸説明員 大学につきましては、新規要求の理工系の定員増は約千八百人です。  それから、先ほどの不足数でございますが、その点をちょっとつけ加えさせていただきますと、これは将来における雇用の伸びと減耗補充と、さらに現在技術者が不足である、それの不足な状態を補正するという、この三つの要素を含んでの推定でございます。
  126. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、これは一つ大蔵大臣に伺いたいのですが、財政当局として、文部省千八百人くらいの国立の理工科系の増員では足らぬじゃないかというふうにおっしゃるくらいでないと、なかなか今の九%なんというのはいきにくくなって、先へ行ったらすごい技術者の不足からくるボトル・ネックというのは明らかになると思うのですが、大臣の文教予算に対するお考え一つ伺いたいのです。
  127. 水田三喜男

    水田国務大臣 前に党の政策で発表しましたように、この問題に対処するためには、まず高等学校をなるたけ工業高等学校に変えていくという方向をとりたいと思います。それから、ほんとうは、各学校の短期大学というようなものが、こういうものの養成の大学になることが好もしいと思うのですが、これはなかなかむずかしい問題もございまして、文部省でそういう学校制度の改革について今考えるからとうことで、文部省が検討しておるよう。でございます。大学の技術採用制につきましては、すでに一定の計画があって、八千人なら八千人文科系統から理科系統へ置きかえて養成するという計画が出ておりますので、その計画に載った予算はわれわれの方で見て、従来の計画はそごさせないようにするつもりでございます。
  128. 堀昌雄

    ○堀委員 今大臣は何か文科系から八千人理工系に回してと言われたでしょう。文部省何かそういう計画があるのですか。
  129. 犬丸直

    ○犬丸説明員 具体的に文科系から回すというような計画は作っておりません。
  130. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣どうですか。今あなたは文科系から八千人理科へ回すと言われた。私は理科の出身ですが、文科の人がいきなり理工科へ途中から回ってきたところで間に合わぬと思うので、そういうことは不可能だと思います。
  131. 水田三喜男

    水田国務大臣 そうじゃなくて、理科系と文科系の比率を徐々に変えるということによって、理科系統の養成者を八千人増加するという計画ができておりまして、まだ今年度もその計画のうちに入っておりますので、その予算は確保するということでございます。
  132. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、八千人というのはどういうふうにふやすのですか。私は三十六年度概算要求千八百人しか知らない。ちょっとそれを言って下さい。
  133. 犬丸直

    ○犬丸説明員 八千人の計画は今まですでに過去四年間にやってきた数字でございまして、三十五年度をもって八千人増を完成したわけでございます。
  134. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、完成しても現状数は大へん足らないと思うのですが、現状数で足らないのは幾らですか。
  135. 犬丸直

    ○犬丸説明員 先ほど申し上げました数字は、その八千人を織り込んだ上でなお不足すると推定される数字でございます。
  136. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、あと八万人足らぬということになると、これはなかなか理工科系大学もちょっとのことじゃないと思うのですが、これは計画局長どうでしょう、ボトル・ネックになりませんか。
  137. 大来佐武郎

    ○大来説明員 実はその人の点が非常に大きなボトル・ネックだと考えられますので、今度の所得倍増委員会でも、教育訓練小委員会、それから技術小委員会でこの問題をいろいろ検討して参りまして、かなり大きな不足が現われておる。実は文部省の見積もりと私どもの方の見積もりで幾分違いがございます。文部省では十年間に約十七万、今お話しの五年でいくと八万という数字でございますが、私どもの方では、一応五年で七、八万というように見ておる。これは見方をきびしくするかどうかによりますが、文部省は、現在の就職状況調査というのを従来三年ずつ二回おやりになりまして、その中で現状の職場の人員配置に当然技術者であるべきところがそうでない人になっているという不適正配置の修正を含めて、十年で十七万人になる。そこまでは少し欲が深いからという見積もりでおりますが、一応十年で十七、八万不足ということになるわけでございまして、私どもも、この所得倍増の達成、特に工業が、二次産業が経済成長の主力になります。そのうちでも機械工業が主力になっていくということを考えますと、この面はどうしてもやっていかなければならない重大な政策実現の手段であろうというふうに考えております。
  138. 堀昌雄

    ○堀委員 そこまでで、ボトル・ネックをじっと拝見してみて、大体私も調べてみた中で、今の教育問題は九%で三年後すぐどうなるという問題ではないかもしれませんが、しかし、現状でも相当不足しておりますから、私は、やはりこれはボトル・ネックというほどではないにしても、成長を引っぱる要素がもうそろそろ出てくる条件はあるんじゃないか、こういうふうに感じております。  そこで、最後大臣に伺いたいのは、今世間で非常にやかましい消費者物価の問題です。実はこの物価問題をいろいろ調べてみると、日本もそろそろコスト・インフレの世界に入りつつある。完全雇用じゃないから、それは完成したコスト・インフレとは言えないと思いますけれども、日本では非常に低賃金で使っていたという条件があるのが、ようやく経済成長の中で低賃金部分が上がり出したということは、当然サービス部門なんかにおいては非常にはね返ってくるということになりますので、何か企画庁の長官は、年率二%くらいはあたりまえなんだ——これはこの前山本さんも、ことしの予算委員会でもおっしゃっているのですが、物価問題というものが年率二%くらいは、そんなのはあたりまえだなんということになると、計算してみたら十年後には二〇%くらいになりますね。どっちにしてもこのくらいは上がってしまう。もし最近の消費者物価の上がるみたいに年率で五%も六%も上がった場合には、これは所得倍増もへったくれもないということに当然になってくると思います。一体物価政策というものに対して、やれる範囲とやれない範囲があるのですが、経済成長の中でどうしても押えようとしたって押えられない部分がある。多少押えられる部分は押えられると思いますが、押えようと思っても押えられない部分の比重が高くなってくるから、これは名目でおっしゃる将来の倍増計画ならいいけれども、実質でそうやって押えてみたら、倍増計画というけれども、一体どこへいくのだろうかという気がするのですが、その点を大臣から伺っておきたい。
  139. 水田三喜男

    水田国務大臣 問題は、貨幣価値が安定しなくて、物価が上がってきてインフレになったということでしたら、もう経済成長というものは、破壊されてしまうのですから、そういうところへは行かせない。財政政策、金融政策、いろいろなものをもってインフレを防ぐということは成長政策の基本政策でございまして、その点の心配は今あまりしておりません。従って卸売物価が急騰するというような事態は起こさない。またこれは起きないだろうとわれわれは思っておりますが、小売物価となりますと、非常にむずかしい要素がたくさんございまして、これは少しでも小売物価が上がったら困るから、全部押えなければならぬという考えは、私はあまり持っていません。いろんな季節的な需給関係小売物価が上がるというような問題については、その問題としての解決策があるし、それから政府が政策的にいろいろ押されておって、他の物価の上がった倍率に比較して特に上がり方が少ないというもののでこぼこ調整というものが、ここへきて頭を上げてきたと見られるものもございますので、それはそれとして適当に処置をする。それから、こういう成長政策をやっておりますと、その過程においてやはり雇用のいろいろな不均衡からくる問題がたくさん出てこようと思います。現にサービス業を中心としてその傾向が出てきておりますが、これはそう心配することかどうかと考えますと、日本経済全体からいいますれば、経済は成長するのだ、それに伴って国民所得はふえていきますし、賃金にしても実質賃金、名目賃金がふえるということがまたいいことであって、そういうものが前提で経済の成長力がささえられていくことになるのですから、その過程におけるそういう問題をそう私どもは神経質に扱いたくないと思っております。そういう賃金上昇というものがあっても、それをカバーして国際競争力に勝つだけの合理化をやっていくのが本筋ですから、こういう問題が起こればかえって企業も合理化へ熱心になってきますので、低賃金というものにあぐらをかいて国際競争に勝っておったという従来の形は今後変えていくことがむしろ本筋なんで、そういう意味の若干の物価上昇というものは、これはあまり心配すべき問題じゃないと考えますし、この小売物価の上昇についてはいろいろな要素がありますので、その場合々々に対処する方法を講じて、とにかくこれを上げないようにするということと、ある程度上がるのもやむを得ないという考えの反面には、これはやはりベース・アップの問題も出て参りますし、減税の問題も出てきますし、社会保障の強化というような形で、あるべき姿で徐々に上がっていくということは、これは私はやむを得ない現象だと思っておりますが、不当にこれが上がって国民生活の圧迫になるような問題については、政府の力でできるだけの対策は立てる、こういう行き方でいくよりほかに仕方がないのじゃないかと考えております。
  140. 堀昌雄

    ○堀委員 そういうふうに伺うと、なるほど経済問題としては私はおっしゃることでいかなければならぬと思います。しかし国民は経済問題で生きていないのですよ。国民というものは消費生活の中で生きているということになりますと、九月の総理府統計局の消費者物価指数を東京で見ると、総合で昨年より五・四上がっている。食料で六・二、住居で五・一、光熱で七・二雑費で五・四、一年間でこれだけ上がるということになっても、卸売物価が固定しているから経済は心配ない。これは池田さんが何回もおっしゃっています。私どもはそういう企業や生産の中で生きているのじゃないのであって、日常の消費の中で生きているということになりますと、卸売物価が上がらないことは私もけっこうだと思いますが、しかし小売物価は上がってもいいのだ、それはさっき申し上げたように上がる要素があるのですから上がってもいいのだということになれば、上がってもいいだけのものを給与でふやすという裏づけがなかったならば、実質賃金は下がるということになる。さっき社会保障に触れられましたから、ちょっとここで具体的な社会保障で申し上げておきたいのですけれども生活保護基準を昭和三十年からこの四月の十六次改定までで見ますと、保護基準の八千二百三十四円は九千六百二十一円になりまして、この間の伸び率は一六・八%とあります。しかしこれは東京です。ところが、この間の消費者物価の値上がりは一二・二%とあるのですね。保護基準は一六・八%上がったけれども、一二・二%消費者物価が上がっているということになれば、実質としては四%ぐらい上がったかどうかということになると思うのです。そこで一般の標準世帯の消費支出額とのバランスを見ると、昭和三十年には二九%ぐらいだったものが、一般の方も伸びているものだから、保護基準から見ると二六・一%に総体的に下がっている。私は結局経済成長ということは国民のすべてが豊かになるということが経済成長だと思うのにもかかわらず、実際に厚生行政基礎調査で調べてみても、こういう低所得者の部分というものは依然として多い。三十四年の厚生行政基礎調査で見ても、二千百万世帯の中で大体五三%くらいある。これはとり方が少し問題があろうかということで、今度は税金を納めている人の方で調べてみると、やはり所得税を納めるのは四五%くらいだということになれば、大体二万数千円以下の所得というものは依然として国民の半数ある。そうして、経済はどんどん成長していく中で、低所得の方はだんだん下へ沈澱する現象が出てきていると私は思う。そうすると、貧乏とは何かということになると、貧乏というものは生活に供し得る物資が乏しいから貧乏ということではないと私は思っております。アフリカの土人は生活の物資というものはきわめて乏しい生活をしているけれども、彼らに貧乏の意識があるかといえば、貧乏の意識はないと思います。片方で標準世帯で三万円も五万円もの生活があるときに、片方に四分の一で暮らす保護基準のもの及び一万円以下のものが厚生行政基礎調査では現在二六・七%ぐらい出ていますけれども、一万円以下の所得のものが国民の中にそれだけあるということになると、やはり経済成長がある中では、それはネットとしている数字はふえていっても、相対的なものの広がりというものが、国民の中に貧乏の意識を植え付けるということになる。現在、片一方の家には電気洗濯機、テレビがある、片一方の家ではラジオ一つないような生活をしているなら、これは明らかに貧乏という意識を子供も持ち親も持つと思うんです。そういう意味で、物価政策というものが低所得のものについては非常に大きなウエートを現わす。この前もたしか大蔵委員会で申し上げたように、同じ千円の効果にいたしましても、一万円世帯の千円と五万円世帯の千円と十万円世帯の千円とでは、同じ千円でも千円が違う。本質的に違うということになったときに、あなたのおっしゃったように物価が上がるのもある程度やむを得ないということを言われるならば、なるたけ積極的に低所得のものを引き上げるような工作をやらなかったら、物価は上がる。低所得の人は所得伸び率が悪い。これはいろいろな統計でもはっきり現われているのです。そうすると一体どうなるんだ。経済成長が行なわれれば行なわれるほど、貧乏人がたくさんできるということが考えられるのじゃないかと思うんです。大蔵大臣いかがですか。
  141. 水田三喜男

    水田国務大臣 これはやはり両方からやらなければいけないので、物価が不当に上がるということは、押えられるだけ原因を突き詰めてそれに対処する方法をとると同時に、やはり全体の国民所得を上げて低所得者を引き上げるということをあわせてやらなければ、この問題は解決しないのじゃないかと思っています。たとえば、きのう関西へ参りましたら、ある漁民が来まして、米は豊作になっても値段を保障されて豊作貧乏をやらない。ひとり日本の漁民だけは大漁貧乏で、魚がとれたというときには値段を下げられて、得しているのはだれかといったら、都会の生活者がひとり得をしているだけであって、自分たちは食えなくなるのだ、今程度に魚が上がることぐらいで都会がぎゃんぎゃん騒ぐことは間違いで、そのくらいの保障をわれわれに与えろということでして、これは無理もないことだと思っております。これをどう解決したらいいかといったら、やはり流通過程におけるいろいろな合理化の余地がまだ日本の漁村に残っていまして、漁の少ないときは値段がすぐ上がってくる、漁が多ければ今度は大漁でみんな貧乏するというような、値段の異動のあることがいけないので、これはやはり冷蔵庫とかいうようなものがほんとうに整備されれば、これを季節的に調整できて、都会の生活小売値段も安定することができます。そういう流通過程における考慮とか、いろいろ政府指導する面がたくさん残っていると思いますので、そういう点に一歩入って解決するとか、不当に小売物価を上げるということを押える方法はまだたくさんある。しかし、いろいろな形で押えられないで、その水準がある程度上がるのをとめられないという部門も当然あると思います。要するにこれは一つの自然現象です。この物価に対して今いろいろ要望があって、政府が少し強権を用いてやれというような要望もなきにしもあらずですが、私は、昔の物価統制的な態度をもってこの問題に対処すべきでない、やはり自然条件の調整をうまくやっていくのがほんとうだと考えております。
  142. 堀昌雄

    ○堀委員 要するに、おっしゃることはわかりますけれども、一番肝心なところは、低所得の者の収入をいかにしてふやすかということになる。経済成長をやると、なるほど厚生行政基本調査を見ましても、だんだん低所得の方が減りつつあるトレンドはあります。しかし、このトレンドはきわめて低いために、上の方の伸び率との間で格差がつきつつあるというのが日本の現状だ。ということになりますと、政府として何らか積極的に低所得の人たちの収入がふえる方法というものを考えるべきではないか。たとえば、現在教育の費用を見てみましても、一体どのくらいかかっているかというと、文部省の統計を調べてみましても、昭和三十年に小学校で九千百二十八円かかっていたものが、現在では一万二千五百八十二円になっている。この間の値上がり率が三七・八%となっている。ところが、小学校へ行くというような費用については、これは金持ちであろうと貧しい人であろうと同じ条件で、同じ支出をしなければならぬということになっている。こういう負担がどんどん上がるということになれば、何とかやりたいということは気持としてはおっしゃっても、現実の中ではむしろ逆な方向に動いているのが日本の政治だと思う。たとえば、義務教育は無償ということが憲法にはっきりしているならば、当然国は義務教育で今払っておりますところの年間一万二千五百八十二円の中身をもっと増すべきでないか。こまかく分析してみると、直接支出金、間接支出金という中には、当然国や地方自治体が持たなければならぬものを父兄に転嫁している。これは、社会保障の面についても、あらゆる面において、もっと国の責任を明らかにする方向があるべきだと思う。どうも今の経済九%の話を聞いていると、何か経済生産ということの中だけに比重がかかって、人間が住んでいる今の世の中というものを何か工場だけのような格好で冷たく把握しておられるのが池田さんのお考えのように感じられて仕方がない。結局、前から問題になっておりますところの、貧乏人は麦を食えとか、中小企業の二つや三つの倒産ということは、物事の道理としてはそのままですよ。そのままだけれども、やはり政治というものは、麦を食わなければならぬ人にどうやって米を食わすかというところが政治なのであって、米を買えなければ麦、麦を買えなければ水を飲んでいろだけなら、政治でも何でもないと思う。そういう行き方が今度の経済成長の中の各所に見受けられる。農民に対する四百五十六万問題にしたって、算術計算の上では四百五十六万ということで、それはいきなり町へ出ていって農民を四百五十六万にする。その理論は麦を食えの理論と全く同じだ。だから、私が皆さんの政府に要望したいことは、われわれが住んでいる世界は人間が住んでいる世界だということを確認していただいて、その人間がよき環境の中で豊かに暮らせるためには、公平に問題を考えるような方向考えていただかないと、経済偏重で政治がおろそかになっておるというのが今の池田政府の一番の問題点ではないか、私はかように考えますので、まあ今後ともよろしくお願いをいたしたいと思います。
  143. 山本勝市

    山本委員長 次会は公報をもって御通知することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後一時四十一分散会