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1960-08-12 第35回国会 衆議院 大蔵委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年八月十一日(木曜日)委員長指名 で、次の通り小委員及び小委員長を選任した。  税制並びに税の執行に関する小委員       足立 篤郎君    奧村又十郎君       押谷 富三君    鴨田 宗一君       黒金 泰美君    田邉 國男君       塚田十一郎君    濱田 幸雄君       古川 丈吉君    細田 義安君       毛利 松平君    神近 市子君       久保田鶴松君    平岡忠次郎君       山本 幸一君    横山 利秋君       大貫 大八君    松尾トシ子君  税制並びに税の執行に関する小委員長                 奧村又十郎君  金融及び証券に関する小委員       足立 篤郎君    植木庚子郎君       奧村又十郎君    押谷 富三君       高見 三郎君    竹下  登君       福田 篤泰君    福永 一臣君       古川 丈吉君    細田 義安君       毛利 松平君    山下 春江君       山中 貞則君    石野 久男君       石村 英雄君    佐藤觀次郎君       堀  昌雄君    横山 利秋君       春日 一幸君    松尾トシ子君  金融及び証券に関する小委員長 細田 義安君  国有財産に関する小委員       加藤 高藏君    進藤 一馬君       高見 三郎君    福井 順一君       坊  秀男君    山中 貞則君       山本 勝市君    加藤 勘十君       栗林 三郎君    佐藤觀次郎君       平岡忠次郎君    廣瀬 勝邦君  国有財産に関する小委員長   山本 勝市君  専売事業に関する小委員       黒金 泰美君    進藤 一馬君       田邉 國男君    高瀬  傳君       濱田 幸雄君    福田 篤泰君       福永 一臣君    山下 春江君       石野 久男君    石村 英雄君       堀  昌雄君    廣瀬 勝邦君  専売事業に関する小委員長                 進勝 一馬君     ————————————— 昭和三十五年八月十二日(金曜日)     午前十一時三十分開議  出席委員    委員長 山本 勝市君    理事 足立 篤郎君 理事 坊  秀男君    理事 山中 貞則君 理事 佐藤觀次郎君       奧村又十郎君    鴨田 宗一君       進藤 一馬君    田過 國男君       高瀬  傳君    竹下  登君       塚田十一郎君    古川 丈吉君       細田 義安君    石村 英雄君       神近 市子君    多賀谷真稔君       堀  昌雄君    山本 幸一君       春日 一幸君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房長) 宮川新一郎君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君         大蔵事務官         (理財局長)  山下 武利君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 八月十二日  委員久保田鶴松君辞任につき、その補欠として  多賀谷真稔君が議長指名委員に選任された。 同日  委員賀谷真稔君辞件につき、その補欠として  久保田鶴松君が議長指名委員に選任された。 本日の会議に付した案件  国の会計に関する件  税制に関する件  金融に関する件  外国為替に関する件      ————◇—————
  2. 山本勝市

    山本委員長 これより会議を開きます。  国の会計に関する件、税制に関する件、金融に関する件及び外国為替に関する件について調査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。佐藤觀次郎君。
  3. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 池田内閣が生まれてからもう一月近くになりますが、今度は佐藤蔵相に次いで水田蔵相が新しくなられたのですが、いろいろ党の方針やその他内閣方針もまだきまっていないようであります。最近問題になった自然増収、これはわれわれは取り過ぎたと言っておりますが、この取り過ぎの千五百億から千三百億の財源をどのように使われるのか。これは国民にとって非常に重大な問題でありますし、わが党でもこれは問題にしておりますが、大蔵大臣はどういうお考えであるのか、まず最初にお伺いをしておきます。
  4. 水田三喜男

    水田国務大臣 内閣政策がまだきまっていないようだがというお話でございましたが、実はその通りでございまして、私ども日程としましては、この八月二十日までに各省から要望を出していただく、そうしてそのあとでこれをまとめて政府の新しい政策を月末までに作りたい、こういう日程で今作業中でございます。同時に党の方でもこの研究をやっておりますので、政府と与党との打ち合わせも日程は二十日以後になっておる。こういう状態でございますので、今のところ財政に関しましても根本的にいろいろな方針はまだきまっていない、こういう状態でございますので、この点は一つ御了承願いたいと思います。従って、今年度自然増収分も来年度政策とからむ問題もございますし、これを今年度内にどう使用するかという方針も私どもはやはり二十日以後になってきめるという予定を持っておりますので、現在のところまだ方針はきまっておりません。
  5. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 最近国家公務員に対する人事院勧告がありました。これは、今度総理になった池田さんからも、前の通産大臣のときにもいろいろ意見がありましたし、同時に、公務員ベースのことについては内容に立ち入っていろいろ矛盾もありますけれども、少なくとも所得倍増論を唱えておった池田さんの内閣で一割二分くらいの給与が上がらないということはあり得ないと思うのです。こういうような問題についてはあと委員諸君からも質問があるかと存じますが、こういう点についてどういうお考えを持っておられるのか。大蔵大臣は逃げられますけれども新聞などでは、どんどん、委員会で発表のある前に、いろいろ、きょうも朝日や毎日の新聞に出ているわけです。これは想像の記事だと思いますけれども、そういうような記事がどんどん出るような時代でございますが、公務員ベースについて一体どういう考えがあるのか、大蔵大臣責任でございますから、ちょっとお伺いをいたします。
  6. 水田三喜男

    水田国務大臣 人事院勧告は尊重するという方針は、前政府のときからきまっておりますが、私どもも、勧告は尊重する、こういう建前から、今勧告内容についての検討内閣給与担当責任者の方で行なっている。近くこの検討が済むと思いますので、それによって政府態度をきめようと思っております。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 水田大蔵大臣は、前にはたしか政調会長もやっておられたし、一応保守党内閣の重要なメンバ一として政策の問題にもタッチされておったのです。同時に、池田内閣もいわゆる岸亜流内閣といわれており、頭がかわったからといっても、今の池田総理は前の通産大臣で閣僚の地位にあった人でございますから、当然前の政策とあまり違ってない政策が生まれるだろうということが想像されるわけでございます。池田内閣は、三つの柱を立てて、そのほかに公務員給与改革の問題と、四つの柱を立てての方針はわかっておりますけれども、しかし、おざなりで、こういう勧告が出たからということで、それだけでお茶を濁すということは、同じ保守党——社会党内閣ができれば別でございますけれども自民党内閣として当然前からの責任があることだと思いますので、そういう点についてもう少し明確な御意見大蔵大臣からお伺いしたいと思うのです。
  8. 水田三喜男

    水田国務大臣 ちょうど人事院勧告の出ます前に、池田総理が、車中談においても、公務員給与民間給与の均衡がとれていないので、この際そういう給与の改定をやる方針だと、勧告が出ない前に政府方針は述べられておるようなことでございますので、私どもも、この問題は、勧告のあるなしにかかわらず、政府としては何らかの措置をとるということを最初から考えておりましたので、この内容検討を十分にして、それによって善処したいと考えております。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 今度は伊勢湾台風災害のために減税がなかったのですが、このごろ減税論がやかましくなりまして、これは池田さんの車中談の中でも減税は今年の一番大事な政策だと言っておられますし、私たちも、前々から、大蔵委員会において、減税の問題には特に物品税の問題、こういうような問題はやはり妥当でないという見解を持っておるし、同時に、事業税の問題あるいは今問題になっております予約減税の問題など、こういう問題についての具体的な問題はあらためて委員会でお伺いしたいと思うのですが、こういうような減税の問題についての税法の改正なり、あるいは税制についての何らかの新しい内閣としての方針はあるのかないのか、この点を減税の問題に関連して一つ伺いしたいと思うのでございます。
  10. 水田三喜男

    水田国務大臣 税制につきましは、御承知通り税制調査会が早くから検討をしておったのでございますが、昨年は、本年度予算をきめるときまでには結論が出ておりませんでした。従って、税制改革を見送るという処置を本年度はとられたわけでございます。その後税制調査会審議も進んでおりますので、この答申を待って、今おっしゃられたような所得税法人税物品税の問題を含めて、なるたけこの答申の趣旨を尊重した税制改革をやりたいと思っておりまして、今検討中でございます。
  11. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それに関連してではありませんが、今度の補正予算公務員ベース引き上げをやる御意思があるのかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  12. 水田三喜男

    水田国務大臣 それも、さっき申しましたように、結局内容検討とからんだ問題でございまして、これが済んでから、その時期の点も一緒にあわせて政府方針をきめようと思っております。
  13. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 なお、これは小さい問題のようでありますが、先日の委員懇談会で、国民公庫のようなああいう小さい、いわゆる銀行に類したような公団や、それらのものに対して非常に待遇が悪い。初任給などについて一般には非常に高く、一万四千円台になっておるというようなことを聞いておりますが、こういう点について、公務員ベース引き上げと同時に、いわゆる役人の中で、こういう大蔵省の所管で比較的谷間にあるような人の待遇も、こういうようなときに考えてやっていただきたい。これは先日も委員長を中心にして懇談会がありましたが、そういう点についていろいろ矛盾の点があるし、同時に、こういうような谷間にある国民公庫諸君などは非常に熱心に仕事をして、われわれも現実に名古屋の公庫現状を見て、非常に気の毒だという感じがするのであります。いわゆる公務員の中にも今日いろいろ種類があって、こういう谷間にある階級の人があると思うのですが、こういう点について、水田さんは御承知のように東京都におられたけれども民間の出身の大蔵大臣でありますから、そういう点についての深い思いやりを持っていただきたいと思うのでございますが、そういう点についての所見を一つ伺いたいと思います。
  14. 水田三喜男

    水田国務大臣 これはもう十分配慮したいと思っております。そして、現に公庫公団初任給是正というようなものもすでに一週間前にやっているという状態でございますので、もし詳しい説明がお入り用でしたら、事務当局から説明させます。
  15. 石原周夫

    石原説明員 公庫公団初任給是正につきましては、先ごろ決定をいたしまして、お尋ね国民金融公庫につきましては一万四千三百円ということにきめまして、四月から適用いたしております。
  16. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 一万四千円では安いので、一万五千円というのが一般公務員のあれらしい。これは他日また委員会でひまなときにお伺いします。  それから、この前の内閣で問題になった貿易自由化の問題ですが、この問題は中小企業や農民に対して非常に大きな圧力になって現われてくるし、どうも池田内閣政策の中にはちょっと矛盾をしたような感じがするのでありますが、大蔵大臣貿易自由化に対してどんな考えを持っておられるのか。特に今度のあなたの方の政策としては、どうも貿易自由化と相反したような政策がうたわれているわけですが、この点についての大蔵大臣考え方はどんなのか、お伺いしたいと思います。
  17. 水田三喜男

    水田国務大臣 貿易自由化の大体の計画につきましては、すでに前内閣時代政府方針がきまっておりますので、大体あの方針にのっとって私どもは極力推進したいという考えを持っております。そのためには、やはりたとえば予算措置とかあるいは税制措置とか金融措置とか、いろいろな問題がございますので、そういう一つ総合政策を私どもは持ってこれに対処しようと、今この問題も研究中でございます。為替自由化というような問題は比較的影響なくいきますので、今大蔵省でもこれは新内閣になっても相当推進して参っておりますが、農村について一番大きな影響を持ちますので、その点に対しては特にわれわれは用意を持って当ろうと、今これは関係省で協議中でございます。
  18. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 こういう問題と関連して、最近輸銀の利上げの問題が大蔵大臣通産大臣との間で話し合いがあったということもありますし、同時に為替自由化の問題が出てくると思うのですが、そういうような見解については、どういうように大蔵大臣はお考えになっておるのですか、この際伺っておきたいと思います。
  19. 水田三喜男

    水田国務大臣 為替自由化の問題は経常勘定部面自由化ニカ年くらいの間に完全にやりたい、資本勘定自由化問題は、これもできるだけ緩和促進をはかろうという方針でやっております。
  20. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 実は、前の佐藤大蔵大臣のときにもいろいろ問題が広げられて、そして何一つ解決しないで内閣が倒れたのですが、前々から問題になっておる日本銀行法改正という問題も、これは非常に問題になりまして、こういう問題もそのままに打ち捨ててあって、これは中央銀行の性格として非常に重要な問題だと思うのですが、こういう点についても水田大蔵大臣はどんなような見解を持っておられるのか。まだ就任早々だからわからぬというのでなく、おそらくそういうことでなくて、前々から通産大臣もやられたし、政調会長もやられて、いわゆるしろうとの大蔵大臣でないので、こういう見解についての率直な御意見を承っておきたいと思います。
  21. 水田三喜男

    水田国務大臣 日銀法改正の問題は、金融制度調査会が現在審議をいたしておりまして、近く政府結論答申して参ることになっておりますので、それを受け取ってから、私どもはこれをどう処理するかということをきめようと思っております。もうおそらく来月ころにはこの調査会結論がつくことと思っております。
  22. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 まあ一つ未解決の問題を——これは選挙管理内閣ともいわれておるし、また水田さんがいつまでやられるかこれはわかりませんけれども一つ解散までにこれを処理していただきたいと思います。  それから問題のある食管会計赤字の問題ですが、これは絶えずいつでも問題になるのでありますが、これは米の政策として非常に重要な問題でもあるので、この赤字をどういうように補てんされていくのか、このままずるずるやっていかれるのかどうか、この点も重要な問題でありますので伺っておきたいと思います。
  23. 水田三喜男

    水田国務大臣 食管の問題は御承知のように大きい赤字でございます。今年度赤字が出るばかりでなく、来年度食管も、今のやり方そのままでいったら、これは相当赤字が予想されますので、すでに出た赤字処理は当然政府がこれをしなければなりませんが、今後食管をどう運営していくかということにつきましては、相当ここで考えなければならぬ問題がたくさんございますので、これも、来年度予算編成その他とからんで、今関係省でいろいろこの問題を討議しておる最中でございます。
  24. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 まあ就任早々でありますから、あまり強いことを今申しませんが、最近台風の問題がまた十一号、十二号ということで——実は昨年伊勢湾台風のためにいろいろ政府協力もあって順調に運んでおると思いますけれども災害地を回って歩くと、やはりせっかく予算がきまっておっても、今なお末端までつかぬという問題が相当にあるわけでございます。特に私どもの方は今工事中の問題がたくさんありまして、九月の台風を控えて今非常に戦々きょうきょうとしておるわけでございます。これは石原主計局長でけっこうでありますが、そういうような災害地に回る金が順調にいっておるのかどうか、大蔵省から金を出さぬから仕事ができぬというようなことがありはしないかというようなことが考えられて、提防が切れたあとで、大蔵省が金を出さなかったからこうなったということがありはしないかということを心配いたしております。こういう点について、石原主計局長から、実際の実施状況についての簡単なアウトラインでけっこうでございますから、この際伺っておきたい。
  25. 石原周夫

    石原説明員 災害復旧につきましては、御承知のように、緊急工事につきまして三割、五割、二割という割合でやる、緊急ならざる工事は四年間でやるということで、予算を組んでおるわけであります。本年度は幸いに年度内に予算も成立いたしたものでありますから、早期に予算配賦いたしておりまして、いわゆる植付前に復旧もしたい、あるいは提防出水期前にできるだけ手当をしたいということをやっておるわけであります。ただ、農林関係につきまして、佐藤委員お尋ねは、あるいはその点かと思うのでありますが、配賦が足りないのじゃないかということがありまして、この点につきまして、農林省といたしましても、私ども相談をいたしまして、若干手配をいたしたのでありますが、なお実情を現在調査をいたしておりまして、その調査の結果どうするか、また相談に持ってくるか、現在のところはまだ調査の結果について相談する段階に至っておりません。現在あります金は、今おっしゃいますような災害の防止に必要なところに集中的に回すということで、努力いたしておるという現状であります。
  26. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 石原主計局長説明で大体了解しましたが、とにかく非常に重要な緊急の場合が起こり得ることも予想されますので、どうか予算できまった分はできるだけ末端に流していただくようなことを希望しておきます。  なお、同僚議員からもたくさん質問がありますから、私一人でいろいろ申し上げませんが、せっかく水田大蔵大臣が出られて、私ども前々からよく知っておる関係上、あまりこまかいことは申しませんが、どうか在任中に水田大蔵大臣がこういう仕事をやったというりっぱな仕事を残すためには、やはり強い意思を持って処理していただきたい。来月に委員会がありますから、あとのことはまたそのときにお伺いしたいと思いますが、どうか責任のがれのないように、十分健闘あらんことをお願いしまして、私の質問を終わります。
  27. 山本勝市

  28. 春日一幸

    春日委員 今後われわれは、あなたと協力をして、そしてわが国財政政策やその他重要な問題を研究することに相なると思うのであります。従いまして、あなたがわが国財政金融税制に対してどのような考え方をお持ちになっておるかということは、今や国民の重大な関心事であろうと存ずるのでございます。われわれは野党ではありますけれども、こういうような産業経済に関する諸問題については、是は是、非は非として大いに協力的な態度でやっていきたいと考えますので、われわれ野党意見たるとはいえ、正しい主張、必要な要請に対しては、一つ虚心たんかいにこれを受け入れて、そうして超党派的に問題の処理をはかっていくというような考え方で、物事をお取り扱いを願いたいと思うのであります。と申しますのは、先般あなたが大臣選考の過程において新聞に述べられた御意見の中に、ちょっと気になることがございました。と申しますのは、私の進退は大野先生に一任してある、こういうようなことを述べられておったのでございます。私は、そのようなセンチメンタルな言葉を少なくとも一国の大蔵大臣が述べられるものではない、われこそは日本国大蔵大臣である、このような誇り、またこのような政治信条を持って、とにかくきぜんたる態度で事に当たっていただきたい。このことをまず冒頭に強く申し述べておきたいと存ずるのであります。  そこで、私は第一番にお伺いをいたしたいのでありますが、財政政策の樹立は、それは時の経済情勢に対応したものでなければならぬことは、申し上げるまでもないと存ずるのでございます。そこで、大臣は、現在当面しておるわが国産業経済情勢にかんがみて、この景気見通しを何と見ておられるか、この点を一つ伺いいたしたいと存ずるのでございます。と申しますのは、先般来私どもが、政府関係機関景気見通し、その他権威ある機関景気見通し等をいろいろと判断研究をいたしておりますと、必ずしもその見通しについて方向が合致いたしてはいないのでございます。たとえて申し上げますと、経済企画庁では、経済は順調な歩みを続けてはおるが、大局的に見て下期は生産増勢の鈍化が表面化するであろうという見通しを立てておるのであります。しこうして、日銀、それから経済同友会、この二つ機関景気見通しは、景気勢力期に入って過熱下降要因がからみ合っておるという、この二つの点では意見が合致いたしておるのでありますが、その後において、日銀ではこの過熱要因をより重く見ておる。すなわち根強い最終需要がささえになって、なお高原景気は続くであろう、さればこそ金融引き締め政策をなお堅持せねばならぬと、暗にその点をアクセント強く主張しておると思うのであります。ところが、経済同友会はこの下降要因を重く見ておる。日銀過熱要因を重く見ておるのに対して、同友会は下降要因を重く見まして、そうして近い将来に供給過剰の現象を現わしてくるのではないか、さればこそここに景気を刺激することのための何らかの政策が必要ではあるまいか、こういうような調子でございまして、三者厳密に分析をいたしますれば、三様の見通しを立てておるのでございます。大蔵大臣といたしましては、それぞれ今後財政政策金融税制、これらについて、これに対応した政策をお立てにならなければ相ならぬわけでありましょうが、水田大臣はこの景気見通しを一体何と見ておられるか、まずこの一点について大臣の御見解伺いたいと存じます。
  29. 水田三喜男

    水田国務大臣 お説のように、この財政政策を立てるためには、やはり景気の動向をどう観察するかということが一番大きい問題でございます。新内閣ができましたら、どうも総理大蔵大臣がとかく積極政策なので、相当思い切った積極政策をとるだろうというふうにいわれておるようでございますが、積極政策をとるか、あるいは消極政策をとるかということは、要するに現在の経済状態がどうか、この調子で行ったら来年はどういう方向をとるだろう、その見きわめがつかない限りは、どういう政策をとるかきまらぬと私ども考えております。で、もし景気が来年度下降状態をとるということでしたら、相当需要喚起のいろいろな方法もとらなければならぬ、そうではなくて、景気相当過熱する心配があるというときだったら、これはまたそれに対する財政政策をとらなければならぬというので、私どもは、この問題を特に重視して、今そういう経済情勢分析をやっております。大体さっき言われましたように、企画庁の見られておる五月ごろまでの経済情勢を見て、若干下期を危ぶんだという傾向があったと思いますが、六月に入りましてから、相当経済状態が変わってきまして、経済は非常に落ちついてきましたし、一応在庫補充相当にできまして、輸入が減る傾向になるし、輸出が伸びて国際収支面も変わってきている。物価の状態を見ましても落ちついて、そうしてこの状態でいくなら一般に心配された景気下降傾向というものはあまりないんじゃないかと私どもは今思っておりますが、六、七月の傾向を見届けたら、ある程度自信を持った予算編成ができるのではないかという考えから、今七月の分析をやっている最中でございますが、大体一般に心配されるような情勢はない。最終需要情勢から考えましても、今の金融状態、物価の状態から見ましても、輸出の状況を見ましても、大体これは相当水準の高いいわゆる高原景気というようなものを持続できる、順調に経済が伸びていく方向に行くだろうというふうに、今では大体見通しをつけているところでございますので、これによってこれからの予算編成考えようと私ども考えております。大体私どもはいろいろ景気の悲観説もございますが、今までいろいろ分析した結果では、この下期から来年にかけて経済は悪い状態にはならぬというふうに、今考えておるところでございます。
  30. 春日一幸

    春日委員 いずれにしても、景気が成熟期に入っておるということについては、各機関とも誤りのないところであろうと存ずるのでございます。そこでわれわれが判断をしなければならない要点は、このなだらかな高原景気をいかにして持続していくかという、この一点にあろうと思うのでございます。その前に、当然景気の転換期があるかどうか、あるとするならば、これについては適切な手を打たなければならぬでありましょうが、しかし日銀生産増勢の鈍化の傾向とか、あるいは同友会のいう供給過剰が現われてくるとか、こういうような点について、とにもかくにも転換期があるとするならば、それはいち早く早期診断、早期治療をはからなければならぬと思うのでありますが、しかし、今大臣の言われたように、大体においてなだらかな健全な歩みを進めておる。だとすれば、この高原景気をさらに持続していくというところにあなたの職責はあろうと思うのでございます。  そこで、私は、これに対してこの際大臣の基本構想を確かめておかなければならぬと思うのでありますが、問題はこういう点にあろうと思います。すなわち、昭和三十三年度では設備投資が一兆六千億、三十四年度ではこれが二兆円という高水準でございますが、これらの生産効果が現われて参りますのは本年度あたりである。従って、これは供給力が需要力を上回るような現象が現われてくる。そういうことを同友会なんかは指摘して、それから下降要因が外部に露呈してくるのではないかと指摘をしておるのでございますが、特に本年度、この三十五年度の設備投資なんかも、これは御調査通りかなり旺盛な指数を示しております。従って、三十四年度の設備投資、三十三年度の設備投資の生産効果の現われ方と、そういうものが累積をいたしまして、とにかく供給過剰の現象というものは、これは次第に下半期から来年度にかけて現象として現われてくるのではないか。この点をそれぞれの権威筋はおもんばかっておると思うのであります。従いまして、当面、あなたの方としては、とにかく需要を政策的に造成をしなければならぬであろう、そういうような意味合いで、それでは何をするかという形になって参りますと、組閣早々総理も述べておられるような社会保障の大きな拡充という点も考えられるでありましょうが、とにかく当面の政治問題となっております公務員給与ベース、これなんかも年間相当額を放出することによって、そこで人工需要を造成することができ得ると思うのでありますし、同時に、購買力をささえることのために、本年度自然増収、来年度自然増収——ただいま佐藤君が指摘されたように、これは予想外に大きなものが見込まれておるようでありますから、これまた来年度においては当然の大幅減税、また本年度内においても年度減税を行なうことによって、これまた政策的に購買力を造成していくことが考えられるのであります。いずれにいたしましても、政策というものは、私ども、この十カ年間大蔵委員をやって、特にこういう問題としばしば取り組んで参っておるのでありますが、とにかく三十三年でありましたか、あのなべ底不景気のああいう事態になってしまってからいろいろと手を打ったのでは、時すでにおそいのであります。申し上げるまでもなく、これは先手を打って、早期治療、早期診断の施術を試みなければならないと思うのであります。今こそこういうような各権威筋の景気観測というものを重視して、この際政策的に需要を造成しなければならぬと私は思う。そのために、とりあえず政治問題になっておるところ公務員ベース・アップなんかがその趣意にかなうものでありましょうし、また政治問題の解決のためにも一石二鳥の効果をおさめると思うのであります。この公務員給与ベース人事院勧告のごとくにそのまま実施するということが、適切妥当な経済政策の面からしても当を得た施策であると思うのであるが、これについては、ただいま佐藤委員の御質問に対して的確な御答弁がございませんでした。一つ、あなたは、ただ閣議で検討中であるとかなんとかいうことではなしに、われわれはともに国会と政府とが協力しながらそれぞれの問題の処置に当たらなければなりませんが、あなたは信念を持ってこの問題にお答えを願いたい。公務員給与ベース人事院勧告のごとくに完全実施する意思はないかどうか。年度内の減税を実施するの意思はないかどうか。その経済政策を通じて、あなたの御判断、御方針を承っておきたいと思います。
  31. 水田三喜男

    水田国務大臣 さっき申しましたように、年度減税の問題も、人事院勧告の実施の内容、時期も、これはほんとうのところまだ私ども方針を今きめていない。これは、さっき申しましたように、給与担当の責任者が検討しているところでありますが、それの検討を待って、人事院勧告をなるべく尊重する方向で私どもは善処しようと思っておりますし、年度減税につきましても、そろそろ台風期にかかっておるときでありますので、そういうものをしっかり見届けて、そうして来年度予算編成方針ともからんで、あとからその方針をきめようということになっておりますので、正直なところ、今のところ実はその方針はきまっておりません。
  32. 春日一幸

    春日委員 あなたは、御経歴はとにかく財政経済問題と取り組まれて相当の閲歴を積まれておる方であります。政調会長も、通産大臣も、水田委員会責任も負われて、こういうような問題についてはわれわれも権威を認めて、そうしてこういうお話を申し上げておる。昨日参議院におきまする内閣委員会においては、大平君もあのような明快な答弁に踏み切っておられるのであります。今朝の新聞におきましても、公務員給与ベース・アップについては人事院勧告の線に沿って完全実施をしたいと、こういうような意向を表明いたしておるわけであります。従って、われわれがこういうようなことわりをあげて、そういう問題についてあなたにお伺いをいたしておるときに、やはりあなたはみずからの権威とそして責任感、信条に基づいてずばりと答弁をされるのでなければ、本委員会の使命は果たしがたい。少なくとも大蔵大臣たる者はそれだけの見識があっていいと思う。委員会で答えたから、だからのっぴきならぬからやるんだというようなことでも問題の処理はできると思う。私はもう少し——いろいろと相談をしてとかなんとかいうことでなしに、とにかく全国民相談をするのはこの場所ですよ。この場所で全国民相談しながら、可能であるならばそれを踏み切って、不可能であるならば不可能である理由をつまびらかにする。これでなければ委員会の権威というものは保ちがたいと思う。あらためて御答弁を願いたい。
  33. 水田三喜男

    水田国務大臣 今申しましたように、とにかく私担当者でございませんので、担当者の検討が済んで内閣方針がきまれば、金を出すのはこちらでございますから、どうとでもこれはもう私は責任を持ってやりますが、方針をきめるのは私自身でございませんので、そう申しただけでございまして、私は、さっき言いましたように、下期においてあなたのおっしゃられるように生産過剰の傾向というものが少しでも見られるということだったら、やはりこれに対処するためには減税もやることは必要だ、積極的に減税をやって、実質賃金、所得を増すという方法と同時に、日本経済は一歩一歩よくなっているのですから、結局日本人の所得がだんだんに上がっていくという形を確保していくべきでありますし、そのためには、現在の公務員の給料のように、民間給与との開きができておるというようなものは、消極的な減税じゃなくて、やはり積極的な給与アップというようなこともあわせて用いていくことが財政政策としてもいいのだという考えを私自身は持っておりますので、その方向に沿って善処したいと思っております。
  34. 春日一幸

    春日委員 そういたしますと、今の質疑応答を集約いたしますると、公務員のベア勧告については、所管責任者が方針を決定すれば、原資については水田大臣責任を持ってこれを調弁する、こういう工合にこれを理解する。それからもう一つ年度減税の問題については、やはり景気を刺激する要因が現われてくるならば、年度減税も必要であるからこれは一つ断行する、こういう工合に理解をいたしてよろしゅうございますか。
  35. 水田三喜男

    水田国務大臣 前の方はそう理解してもいいと思いますが、あとの方は、まだちょとそう理解されては困る問題もございますので、これは私自身の方針がきまっておりませんから、いずれこの問題を解決するのには国会の御審議を願う問題でございますので、この月末ごろまでには私の考えをきめたいと思いますが、今はきまっておりません。
  36. 春日一幸

    春日委員 述べておりまする通りに、とにかく年度内の自然増収相当なものであろう。しかも、財政法の原則からいきますると、膨大なその余裕を繰り越すというようなことは不適当なことである。特に年度減税の問題については、新聞なんかでちらほらと、すでにその意思があるような工合に述べられておるのです。だとすれば、この機会というものは、一カ月に一回しか大蔵委員会は開かれないのでございますから、すでに新聞においても取りざたされ、国民の要望は強いのでございますかな、年度減税をやるならばやる、その項目については苦干考察の余裕が残されておる、しかし、この問題は所管大臣が全くあなたでございまして、他に関連大臣というものはないのでございますから、一つこの問題については、もう一歩具体的な形を、体をなした御答弁を願っておきたいと思います。
  37. 水田三喜男

    水田国務大臣 年度減税をやるということは、実際はまだ一ぺんも言っておりません。これにはいろいろ問題がございまして、これは慎重に検討すべき問題でございますので、私どもはもう少し経過を見てから方針をきめようと思っておりますので、これは今のところやるやらぬということは、ほんとうにはっきりまだ申せない段階であることを御承知願いたいと思います。
  38. 春日一幸

    春日委員 では、この問題については、断じてなさるべきであるということを強く要望いたしまして、善処を求めておきたいと思います。  次は、大臣はこの下半期の輸出の見通しをどういうふうに見ておられるか、この点についてお伺いをいたしておきたいと思うのでございます。大体世界経済の動向をちょっと探ってみますると、アメリカは本六〇年を黄金の時代とはいったけれども、しかし意外に景気は悪い。従いまして、連邦準備銀行はこの六月二年振りで公定歩合の引き下げを行なって、三分五厘にいたしたことは御承知通りでございます。そうして、アメリカとしては、今後設備投資を中心にして、緩慢ではあるけれども景気の上昇をはかるような施策に転じてきておることは、御承知通りであろうと思うのであります。これに対して、ヨーロッパは逆で、景気過熱状態にある。消費ブーム、設備投資景気等で、いろいろと顕著な傾向が現われて参りまして、この一月と六月、二度にわたってイギリスは公定歩合の引き上げを行なって、金融引き締めの方向に転じております。欧州各国では、イギリスと同様にこの過熱方向に進んでおるものとしては、西ドイツ、オーストリア、デンマーク、スェーデン、いずれも次々と公定歩合の引き上げをいたしておるようでございます。けれども、この限界の中において、なおかつ高原景気が続いておるようであります。ところが、一方東南アジア諸国の外貨事情は、これまた一昨年あたりからやや改善されたとはいえ、昨年あたりからまた鈍化の傾向を示して、中には減少のものすら見受けられるようでございます。こういうような国際的な経済背景の中において、わが国のこの下期における輸出の見通しはどうであるか。大臣はこれについてどういうような見通しをお立てになっておるのであるか。この点を一つ伺いをいたしておきたいと思います。
  39. 水田三喜男

    水田国務大臣 輸出の見通しでございますが、御承知のように本年の一月から六月までは国際収支から見まして相当赤字を出しておりますが、この赤字分析してみますと、その少くとも七、八割は原材料の在庫が確保されておるという状態でございますので、その点から見ますと非常に貿易は順調だということが言えるだろうと思います。下期の見通しでございますが、御承知のようにアメリカの景気が若干停滞ぎみでございますので、対米輸出がそうふえていないという傾向はございますが、欧州の経済は活発であるし、東南アジアの経済相当好転しておりますので、今日本の輸出は対欧州、対東南アジア諸国へどんどん伸びておる。そういう趨勢にございまして、この方向が大体この下半期は続くと私どもは思っておりますので、そうすれば、ことしの三十七億五千万ドルの年間を通ずる輸出目標額は達成される、少なくともとんとんじゃなくて、それ以上黒字を見る程度まで輸出が伸びるという見通しで、今のところこの輸出については私どもはある程度楽観している、こういう情勢でございます。
  40. 春日一幸

    春日委員 昨日の大蔵委員会でわれわれが予定をして参集したのに対して、御都合が悪くて大臣は御出席がございませんでしたが、その理由は、何でもシンガポールの大蔵大臣でありまするかが来朝されて、何か重要会談がなされる、こういうことであるということで了承をいたしておった次第でありまするが、私はこの貿易を伸張していきまするためには、インド、パキスタンを含めて、特に東南アジア諸地域、シンガポール、マラヤ連邦、タイ等も含めなければなりませんが、ここに円借款を供与するの必要が大いにありはしないかと存ずるのでございます。先年インドに対して百八十億円でございますか借款が供与されましたが、先年私ども現地に参って諸外国との借款の現状を調べてみますると、いずれも膨大な借款を供与して、そういう後進国の開発、それから円借款を供与することによって、自国の輸出の増進にあまねく手が打たれております。私は、先年来インド政府からもわが国に対して別途円借款の強力な申し出もあると思いまするし、シンガポール、マラヤ連邦においても特にその要望があるように聞いておるのでございまするが、昨日のシンガポールの大臣との間の話し合いは、何かそういうような問題に関連があったのかなかったのか。お差しつかえがなければ、一つその円借款供与に関するあなたの構想、それから現実にはどんな話し合いが諸国となされておるのであるか、この点をあわせてお伺いをいたしたいと思います。
  41. 水田三喜男

    水田国務大臣 きのうシンガポールの大蔵大臣がお見えになったことは、大蔵省に対しては儀礼的なあいさつということでございまして、他の省に対しては若干いろいろお願いする事項を持ってきたようでございますが、私との話においてはそういう問題はございませんでした。ただ、シンガポールは日本との合弁事業を非常に歓迎する、そうして資本の比率とかなんとかいうことは全くあの国は考えていないんで、今後そういう問題についても日本と十分研究したいという話はして帰られました。それだけでございます。それから、今の円クレジットの設定の問題については、私は賛成でございますので、できるだけそういう経済協力をアジアの各国とやりたいと思っております。
  42. 春日一幸

    春日委員 この間、自民党内部に一萬田委員会というのがあって、後進国開発のために円借款をも含めてそれぞれの経済協力を行なっていくという機構が、予算の裏づけを見て出発をしたようでありますが、これはその後どういう工合に推進をしておりますか。この機会にあらためてお伺いをしておきたいと思います。
  43. 水田三喜男

    水田国務大臣 これはもう御承知通り、前国会でこの法律案が継続審議になりましたので、これはまた来国会にお願いして、この法案を通していただいてから、従来の方針通りの推進をやりたいと考えております。
  44. 春日一幸

    春日委員 いずれにいたしましても、アメリカといい、ヨーロッパといい、そういうような諸地域に対する輸出の伸びというものは、私はある限界に来つつあるかと思うのでございます。従いまして、東南アジア諸地域、インド、パキスタン、ビルマ等を含めて、これはなし得る施策の限りを尽くして、輸出の増大をはかるにあらざれば、国内におきましては一方生産力の増強の現象が現われつつあるのでございまするから、これは、内外相呼応して、一日もゆるがせにすることのできない焦眉の急であると思うのでございます。従いまして、そのために、私は、この際早期に要望のある国々に対して円のクレジットを設定して、そうして相手に購買力を供与する、そうして国内の生産力の消化と見合う政策をとっていくということが必要欠くべからざることであると考えられまするし、アメリカといい、イギリスといい、ドイツ、フランス、イタリア、スイスまで、そういうような貿易振興の策をとっておることとにらみ合わせて、一つ大臣において手抜かりなく手を打っていただきたい。このことを強く要望いたしておきたいと思います。  次は、三十六年度予算編成減税の問題に集約をいたしまして、お伺いをいたしたいと思うのでありまするが、今佐藤君に対する御答弁の中で、八月の二十日にならなければめどがつかぬということでございます。政党政治としては私も理解はできるのではございますが、しかし、池田さんといい、水田さんといい、こういう問題については、それぞれ抱負経輪というものが、かねがねあると思うのでございます。どうか、そういうような配慮もけっこうでございまするから、この際、組閣早々述べられておりまするところの公共投資の増大、それから社会保障の拡充、それから大幅減税、この三つの柱が当時から打ち出されておるのでございまするが、これについて水田大蔵大臣としての経輪、構想、そんなものがきっとなくてはならないと思うのでございまするが、それについてお差しつかえのない範囲で、この際お述べを願いたいと思うのでございます。     〔委員長退席、坊委員長代理着席〕
  45. 水田三喜男

    水田国務大臣 まあ大体予算編成の柱は、そういうものが中心になるだろうと考えております。そこで、来年度の歳入の見込みでございますが、これは今作業中でございますし、歳出の方につきましても今やっておる最中でございますので、この財源をまず確定してから、こういう政策の比重をどういう形で調整するかという問題が、今度の予算編成一つのむずかしい問題だろうと思っておりますので、これについては作業中でございまして、もう少したたないと私どもも全貌を示せないという状態でございます。
  46. 春日一幸

    春日委員 むずかしそうに言えばそういうことになるだろうと思うのだけれども、そんなものははっきりわかっておると思う。われわれ野党の一議員でもそんな資料に事欠くことはない。いわんや大蔵大臣がそのような資料に事欠いて判断ができないというようなことはあり得ないわけであります。私たちの聞きたいことは、来年度予算のプラス要因といたしましては、税の自然増収が二千億から二千三百億あるということは、これは常識的なことであって、だれでもそのような理解を持っておる。それから、前年度の剰余金が百六十八億から五百十二億にふえたことによって差額が三百四十四億、災害復旧費の当然減というものが二百億、そうするとこれはどう見ても二千五百億ないし二千八百億の自然増というものが見込まれる。だれがやったって、しろうとがやったって、その程度の自然増というものがある。そこへもってきて、一方マイナス要因としては、国民年金だとか、国民健康保険、国民皆保険、こういうようなものの自然増が七、八百億、公務員ベース・アップが三百億、こういうものをやっていくと、差引どうしても千五百億円というものの余裕財源が出てくるのではないか。だから、大臣はこの千五百億円の余裕財源をいかに処理するか。すなわち、今言われたような社会保障の拡充強化にこの原資を充てるか、それともこれを減税に振り向けていくか、それとも公共事業というものに対してこの中のどの程度のものを振り向けていくのか、こういうことを聞きたいと思うのです。だからそれは答えていただかなければ質疑応答にならぬ。私もまた職責を果たし得ないことになる。やはり聞いたことは率直に答えてもらわなければ困ります。
  47. 水田三喜男

    水田国務大臣 それが答えられるときが政府の新政策の決定するときでございまして、今の段階ではまだはっきり御返事できない段階でありますので、これは御了承願います。
  48. 春日一幸

    春日委員 それはなぜ私がくどくこの点を重ねてお伺いをいたしておるかといいますと、新聞に伝えられておるところによりますと、自民党の一部では、この際社会保障のために減税見送り論というものが現在横行しておるということでございます。もしこの際この説をとって来年度減税を見送るということになりますと、とにかく三十四年度国民の税負担率は二〇・五%から二一・六%になる。そうすると、税制調査会がこの間その見解を述べておりますように、国民所得に対する対比率は二〇%以内にとどめることが望ましい、こう言っておることに逆行する形になって参るわけであります。われわれは、今自民党の一部で言われておるといわれておるところの、いわゆる社会保障か減税かというような二者択一のやり方ではなくして、この問題については同時並行的にこの際税制調査会意思表示というものを尊重しながら——ということは、現在低所得階級、中小企業階級、勤労階級において税の負担が重いのだから、しかもあなたの方においては現実の問題として所得倍増論等も強調されておるいきさつもあるのでございますから、そういうような意味合いにおいて、少なくとも所得倍増計画との関連でこの課税最低限を引き上げるのは、こういうような財源が豊かなとき、そして経済がなだらかな高原景気を持続できるという見通しの上に立つときをおいてはない。そういうような意味合いで、減税というものはこの際なすべきである。従って、われわれとしては、来年度昭和三十六年度予算編成方針の中には、減税を主として、同時に社会保障制度の拡充ということもゆるがせにはできないことでありますから、同時並行的にこれを行なっていく。これは単なる一つの社会保障だけにすべてのものを犠牲にするというようなやり方でなくして、経済政策の全般的な意図とのからみ合わせでこの辺の均衡をとることが特に必要であると考えるので、このことを言うわけでございます。その点について、党内で強い意見が述べられておるといわれておる減税見送り論というものについて、今あなたの手元で練られておる構想というもの、それは過渡的なものでもけっこうでありますから、国民はこの問題については重大な関心を持っておると思いますので、この点だけについて一つ御答弁を願っておきたいと思います。     〔坊委員長代理退席、委員長着席〕
  49. 水田三喜男

    水田国務大臣 減税か社会保障かという二者択一の考えは持っておりません。お説のようにこの二つはわれわれはやるつもりで今作業中でありますが、この幅をどうするかというような問題がまだきまっておりませんので、ほんとうなら、こういう問題がきまって、われわれの構想ができたときに、この委員会に呼んでいただけるなら、きわめて明快にお答えするのですが、それができないので、もう少し待っていただきたいとこちらが申しておったのも、そこにございます。方針としては二者択一という考えは持っておりません。
  50. 春日一幸

    春日委員 了解いたしました。  特にこの際、私は減税の場合あなたに強調いたしておきたいと思うのでありますが、それは今からたしか三、四年前だったと思うのですが、団体法のとき、あなたは通産大臣でしたか、たしかそうだったと思うんだが、あなたから前尾さんにかわられた。重なっておりましたね、あのときに団体法の中で二十三条という一条が設けられておることが御記憶にあられましょうか。それは、勤労事業者、いわば零細事業者、こういうものに対しては「税制上、金融上特別の措置を講じなければならない。」これは政府に対する訓示規定ともいい、宣言規定ともいい、とにかく一カ条が設けられておるのでございます。これはあなたのときにその原案ができて、前尾さんのときにこれが臨時国会で仕上がった、私はこのように記憶をいたしております。ところが、その団体法二十三条の中の、政府はこれら勤労事業者に対して、税法上、金融上特別の措置を講じなければならないという宣言規定に対応する何らの措置も講じていないのであります。従いまして、今回減税を行なうとするならば、政府にそのようなことを義務づけております内容に触れて、減税というものがまず第一番になされるべきであろうと思うのであります。従いまして、その中では配偶者控除の新設、扶養控除の引き上げ、専従者控除の拡大、それから特別勤労控除の創設、それから税率の引き下げ、こういうようなことがとにもかくにも第一番に手がけられなければならないと考えます。従って、自民党の内部において二者択一論などというものがあったとしても、大臣はそのような方針をとる意思はない、こういうことでありますならば、とにかく減税を大いにやっていただくのだが、そのときには零細事業者に対して、政府に宣言されておる法律について忠実にその職責を果たしていただく、このことを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  51. 山本勝市

    山本委員長 堀昌雄君。
  52. 堀昌雄

    ○堀委員 ただいま二人の委員からの質問に対しては、私どもとしては、せっかく委員会を開いていただいたにかかわらず、それに値しないような答弁しかいただけないのは非常に残念だと思います。  そこで、三十五年七月二十日の日本経済新聞に「新政策方向と焦点」という記事が出ておりまして、水田蔵相が一問一答でお答えになっておるのがございますが、大体これは水田蔵相の御発言と確認をしてよろしゅうございますか。
  53. 水田三喜男

    水田国務大臣 私、その内容を見ておりません。
  54. 堀昌雄

    ○堀委員 見ておいでにならないそうですが、会談というか懇談はなさったことだと思います。日本経済新聞がよもや大蔵大臣の発言しないことを公に一問一答の形式で発表するおそれはないと思いますので、私は、一応これは大蔵大臣責任ある御発言として認めた上で、質問を進めさせていただきたいと思います。  ちょっとここで私気になることが二、三点ございます。それは問 蔵相は何を減税したいと思うか。  答 所得税と企業課税が中心だろう。  問 企業課税というのは法人税減税といったいわゆる一般減税なのか、それとも租税特別措置の強化拡張という産業政策的なものを考えているのか。  答 私は特別措置の方をとる。なぜかというと貿易・為替自由化に対処して産業界の抵抗力を強め、国際競争力をつける必要があるからだ。  こういうふうに出ておりますけれども、これについてはこのようにお答えになったのかどうか。そうして、お答えになったのならば、その租税特別措置というものの強化拡張ということを一体どういう線でお考えになっておるのか。この二点について伺いたい。
  55. 水田三喜男

    水田国務大臣 租税の特別措置については、先ほど申しました税制調査会でも今非常に議論が出ていることは御承知通りでございます。私どももその議論の方向に賛成でありまして、すでに政策的な効果を果たした措置というものは逐次やめていく、今まであった措置でそういう方向のものは逐次整理していくことは正しい、しかし、新たにまた自由化の問題に対処するためには、新しい角度からの特別措置というものもときによって必要であろう、そういうものはわれわれは新たにまたそういう措置をとることも考えているという意味で話したのだと思います。
  56. 堀昌雄

    ○堀委員 そういたしますと、ここの中には、企業課税の減税については、そういう法人税減税というものよりも、特別措置によるものだ、こういうふうな意味でお答えになっておりますが、それはお考えにおいてもさようでございましょうか。
  57. 水田三喜男

    水田国務大臣 私は、やはり減税をするとすれば、ここで減税の中心は、中小所得者の所得税減税というものと、企業に対してはやはりここで耐用年数の問題に触れた減税、そこらを中心にやるのが当面適当な措置じゃないかというような考えを私個人は今持っておりますが、まだこれは具体的に今検討中で、きまってはおりません。
  58. 堀昌雄

    ○堀委員 実はここに書かれております答えのニュアンスと今の大臣のお答えとは、いささかちょっと違うようでございまして、ここに書かれておりますものをこのままで承ると、やはり大企業に対しては特別措置減税考えるけれども法人税一般について考えないということは、中小法人に対してはあまり考慮が払われていないように承ったものでございますから伺ったのでありますが、大臣のお心構えを伺って、それで私もけっこうだと思います。  次に、ちょっと問題になりますのは「しかし特別措置は大企業に恩典がかたより過ぎているし、大蔵当局はむしろ整理の方向検討しているが……。」ということに対して「国際競争力をつけなくてもいいというならそれでもいい。しかし競争力をつけなければならないという要請が現にある。とするならば拡充の方向に踏み切るべきではないのか。」これは今おっしゃったことの意味の中に含まれていると思いますが、そこで「貿易・為替自由化については岸内閣がつくったスケジュールがある。しかしIMFなど海外からこれをもっと促進すべきだという批判があるが……。」「答 あの程度のスケジュールが妥当なところだ。あのスケジュールでさえ、これを実施するためには税制その他で政府が打つ手を示し、業界が力をたくわえたうえで進める必要がある。」。こういうふうにお答えになっております。そこで、私どもは、やはり自由化が行なわれるためには、国内のいろいろな産業が一応対応できるような力を持ってからやるのでなければ、無理をすれば、大企業は耐えられても、中小の企業は必ずしも耐えられないのではないかというのが私の方針であります。ですから、その点では、大蔵大臣のこういうふうなお考えは、私は大へんけっこうだと思うのでありますが、その競争力をつけるつけ方というものは、単に租税特別措置を強化するというようなことだけでつけられるものなのかどうなのか、その点について大臣の答えをまず承っておきたい。
  59. 水田三喜男

    水田国務大臣 今そこに書いてある答えはあまり明確でないようでありますが、結局むずかしい問題でして、やはり自由化に踏み切ることによって体質が強化されるのですから、踏み切ることによって体質を強化するという目的もございますし、ある程度の強化をはかっておかなければ踏み切れないという状況もございますので、そこらをいろいろ勘案して、並行的な措置をわれわれはとるべきだと今思っております。もし若干の補強をやらなければ踏み切ることがむずかしいというものに対しては、特別措置というのは今税制の問題だと思いますが、ひとり税制の問題だけではなく、金融の問題も出てきましょうし、予算措置をやはり必要とする問題も出てきましょうし、そういう政府に必要な措置はとっても踏み切るという場合と、そうじゃなくて、その措置がとれてからでなければやれないということばかりじゃなくて、ある程度やることによって事実ほんとうに体質が強化されるという産業もございます。これはその産業別に応じた処置をとりながら、私どもはあの政府できめた要綱程度の自由化は急速に進めていきたいと思っております。
  60. 堀昌雄

    ○堀委員 次に、減税所得税というのが出ておりますので、先ほどからいろいろと御質問がありましたけれども、私どもが期待するようなお答えはいただけなかったのですが、私は、個個の具体的な問題を離れまして、減税をやるということの基本的なねらい、今度の減税をやるということに対するねらいは一体どこにあるのか、これを一つ承りたいと思います。
  61. 水田三喜男

    水田国務大臣 減税のねらいというのは、減税というものは国民経済にどういう影響を与えるかということはもう御承知通りと存じますので、減税のねらいというものは大体そういうことになっておると思うのであります。それで、今私ども考えておりますことは、国民所得がだんだんに大きくなっていく、日本経済がよくなって国民所得が大きくなっていく場合に、今の累進課税の税制制度でいきますと、国民所得の伸びの率よりも、税金の自然増の率が非常に多くなる、こういうことで国民の負担を非常に多くしますので、なるたけそういうことのないように、国民所得がふえるに従っていわゆる税金の自然増というものがふえないように、その部分を国民に返すということは、やはり今の国民経済に及ぼす影響とは別に、国民負担の公平というような理論からもやらなければならぬ。特に最近の傾向を見て、そういう観点からの減税を私どもはぜひやりたいと考えているわけでございます。
  62. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、国民所得はだんだん伸びて参りましたが、現在総理府の家計調査で見ますと、五人世帯で昨年の六月ころで見ますと約三万一千円くらいになっております。そうすると、ある水準を規定して、そこまでは一応日本人として生活するに必要な金額が要るんだということになるならば、その減税考え方国民所得の伸びに応じて自然増がふえる分を返すのだということになると、どちらかというと下の方は少なくなって、上の方はたくさんに返るということが結果として起きてくるんじゃないかと私は思うのですが、私が特にお伺いしたいのは、まず減税をするにも仕方があるだろう、その仕方はやはり生活できる状態というものの幅をできるだけゆったり見て、その諸君に対してはともかく税金をとらないのだという考え方がまず一番先にきて、そうしてその次に、多少上がってきたものについて返して上げようということであるべきじゃないかと私は思うわけです。  もう一つ、実は減税にしてもそうでありますけれども、所得三万円のところの千円と、所得六万円のところの千円と、所得十万円のところの千円は、通貨の価値では同じ千円ですけれども、その家計における実質的効果というものは決して同一ではないわけでございますから、そういう面から考えていくならば、私は、やはり過去の減税の経過を見ると、ややもすると上の方も一緒にずっと減税になる。もう所得が余って困らぬようなところが、なおかつ減税になり、片面の赤字家計になっておるところでも払わなければならぬという、いびつな減税が行なわれておると私は思うのですが、今後もし減税を行なわれるとすれば、私はやはり、一体どこにその線を引くかは別の問題、技術的な問題になりましょうが、まず一番下を減税をして、ともかく税金を払わないものを国民の大きな幅の水準の中に設定をすることが第一義である。次は勾配がついて、しかしその勾配のつき方は、さっき申し上げた同じ千円であってすらその効果が違うわけですから、その効果を考えた形の減税であるべきだというふうに私は考えますが、それについての大臣のお考えを承りたい。
  63. 水田三喜男

    水田国務大臣 今私が申しましたことから言いますと、大体さっき春日さんからもお話がありましたように、やはり大体二〇%に国民負担をとどめるようにという税制調査会意見もございましたが、これをこえないようにするために、こえる部分を国民に還元するということにいたしますと、大体減税の幅というものが出てくると思います。今年度はこの幅において国民に還元するということが出てきますと、その幅の中でどこの減税を重くするかどうかは、これは別問題でございまして、私どもも、今あなたがおっしゃられたような形で、今度の場合も一定の幅がきまりましたら、中小所得者というものの減税を中心にやりたい。さっき申しました通りでございまして、幅がきまれば、減税のやり方はそういう方針でやりたいと思います。
  64. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、今度は、皆さんの方は、先ほどからのお話で、社会保障、減税、こう出て参りました。ところが、まだ新聞で拝見しておる範囲ですから、詳しいことはわかりませんが、社会保障というものの中にも、いろいろな性格があります。現在所得税減税問題になりますと、大体三五%くらいしか納税をしていないんじゃないかと思いますから、国民の六五%は、さっきおっしゃったような形で、恩恵を受けられないものが私は出てくると思います。一体、そうすると、この六五%の国民のうちで、今度は社会保障で、たとえば生活保護基準を上げることによって、下の形の方たちはささえができるようになるかもしれません。あるいは国民年金その他を少し増額するというようなことによって、今度は周辺の所得保障についても多少ささえができるかもしれませんが、まん中に残っておる六五%のいわゆる低所得の皆さんというものは、今度の自民党の社会保障あるいは減税政策、公共投資、こういう形のものでは直接に潤わないんじゃないか、そういうふうに私は感じますけれども減税と今の残された人たちに対する政策、手を、どういうふうな形で、これらの人たちの実質所得が上がるように具体的に考えられるのか、ちょっとここのところが私はどうも理解できない点があると思いますので、伺いたいと思います。
  65. 水田三喜男

    水田国務大臣 その六五%というのがちょっとわからないのですが、日本の納税者が千二百万ある。その家族が何人ある。いろいろ計算しますと、はっきり税金を納める力のないものがどのくらいかというところを全部計算しますと、私どもは、今言うような政府政策で全く潤わない層が六五%あるというふうには実は考えておりません。
  66. 堀昌雄

    ○堀委員 政府委員の方で一つお答えを願いたいのですが、やはり今おっしゃったように、納税者は千二百万、納税者一人当たりの家族が一・五幾らということで、世帯数なんかを見ますと、私は大体概数三五%くらいが納税のサークルに入っておって、六五%くらいは今納税をしていないサークルではないか。これは大体私の推計でございますが、一つ主税局長の方で正確なお答えをいただきたいと思います。
  67. 村山達雄

    ○村山説明員 こまかい数字は持ち合わしておりませんので、私の記憶を申し上げますと、人口が約九千万でございます。有業人口が四千四百万くらいでございます。それに対しまして申告と源泉の納税義務者を合わせまして一千一百万になります。比率をとりますと、有業人口に対しまして約二六%になっております。大体住民税もこれまた国税、地方税を通じまして一種の所得税を納めておるもの、これは均等割と所得割がありますが、その所得割だけを納めておるつまり上の階層を納税義務者といたしますと、約二六%という数字が三〇%くらいに上がってくる。しかしその数字をよく分析してみますと、いわゆる有業人口の四千四百万という中には家族従業者を含んでおるわけでございます。御案内のように、外国等におきましては、個人の事業で家族従業者が従事しておる数が非常に少ないと思われます。ですからそれが約一千万ぐらいございますので、それを除いて国際的に比較をいたしますと、約三六%になる。ただしこれは人口に対する納税者個人対個人を比較しておるのであります。実際の減税の及ぼす効果ということを人ごとに見るか、世帯別に見るかということは、また別の考え方だと思います。今の日本はなお世帯経済にたよる部分が多いということを考えまして、全世帯納税世帯、こういう観点で計算して参りますと、全世帯は約二千万世帯だろうと思いますが、それに対しまして納税世帯は全体で四五・八%程度になる。と申しますのは、その世帯主以外の家族が月給取りになっておって、税金を納めておるというものが相当あるわけでございます。ですから、そういう観点でいきますと、約四五・八%、まあ五〇%近くのものになっております。それに住民税の均等割まで含めますと、八五%程度のものが納税世帯になっておる、こういう計算になっておるわけでございます。
  68. 山本勝市

    山本委員長 ちょっと堀君、さっきお願いしたのですが、なるべく簡潔に大体のところで……。
  69. 堀昌雄

    ○堀委員 肝心なところだけ聞かしていただきます。そうすると、私の三五%、六五%——少し違って、五〇%ぐらいは私は大体国税の所得税を中心として考えておりましたのですが、それが少し動いたにしても、五〇%は国税の所得税減税しても、減税の恩典には浴さない。しかし社会保障の下積みの方には影響があるけれども、まん中はあまり影響がないということになってくると、やはりまん中の一番賃金の低いところが五〇%ほど残ってくる。総理府の家計調査を見てみましても、実は全部の平均で見ますと倍ぐらいになっておりますところでも、それを内容的に分析してみますと、下の方はほとんど上がっていなくて、大体三割くらいしか上がっていないのに対して、次の階層で見ると、これは五割、次は七割上がっておる、こういうように階層別で分解して見ると、上の方は伸びているけれども下の方は上がっていないというのが、経済の実態じゃないかと思います。しかも、伸びていないところは減税にも浴せないし、また社会保障の外側にくるということでは、減税についても問題があるのじゃないか。そこで、政府は、残された五〇%を一体どうしようというのか、その点だけを伺っておきたいと思います。
  70. 水田三喜男

    水田国務大臣 そういう層はいわゆる不完全就労者というようなもの、あるいは農村にも相当多いと思うのですが、これは結局国全体の政策考えるよりほかない。これを中心とした経済の拡大計画を遂行することによって、国民生活、国民所得の水準をだんだん上げるという個々の小手先の手によるよりは、やはり国全体の経済政策で一緒に水準を上げていくよりほか仕方がないのではないかと考えます。
  71. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、私この問題について考えますのは、今は全然間接税の問題が減税の問題について関連していないように思うのですが、間接税もやはり逐年自然増収が出ておるようでありますし、実はこの五〇%の諸君も、やはり労働しておる方の部分については高いお酒も飲んでおるし、たばこもかなり高いたばこをのんでおる。こういうことになりますと、減税所得税中心だけに行なわれるから、今の五〇%は取り残されるということになる面が一つありはしないかと私は考える。要するにこの層は一番所得がふえにくい層である。景気がどんどん前進する中で常に取り残される。そうであるとするならば、おっしゃるように経済政策でこの人たちの所得を上げる方向経済政策でございますが、きわめて間接的なものであり、直接的に響かない。直接的に少し救済するにはどうしたらいいか。多少の間接税の特にこういう低所得の人たちが負担しておる部分は、やはり何らかの処置を考える必要があるのじゃないかと私は考えます。もう一つは、医療の問題があるのじゃないかと思います。もちろん生活保護の引き上げも大事でありましょう。いろんな年金も必要でありましょうが、病気になったときに、現在国民皆保険になっておりますけれども、やはり国民健康保険については五割しか給付をされていない。あるいは健康保険についても家族は五割しか給付されないということになると、この五〇%の部分において支出の非常に大きなものは、もし病気をしたりすれば、これは非常に大きな影響を与える。そうすると、医療のようなものをできるだけ安く、ただというわけには参らないと思いますが、安くやってやるということになれば、この五〇%の階層というものも現実に支出を減らすことはできる。何とかこの階層に対しては、収入をふやすいとう方向がとりにくいとするならば、この階層の支出を減らすということを私は政治の中に考えるのが政治じゃないか、こういうふうに考えるのでありますが、そういう面を含めて、間接税に対する問題、社会保障の問題を考える場合における医療費の問題、この問題を一つ大臣の方からお答えをいただきたいと思います。
  72. 水田三喜男

    水田国務大臣 診療費の問題は、三十三年度にもわれわれは改善をはかっておりますし、今後も社会保障制度の問題として十分研究するつもりであります。  先に申されました間接税の問題でございますが、この問題もやはり今税制調査会検討中でございますが、その様子につきましては主税局長から御説明申し上げます。
  73. 村山達雄

    ○村山説明員 ただいま堀委員から間接税の負担を軽減することはどうかということであります。この点につきましては昨年来税制調査会等でも検討しておりますが、大体の空気並びにわれわれの現在の観測を御参考までに申し上げておきたいと思います。  間接税と一口に申しますが、その中には酒、たばこのように従価実に四割から七割くらいまで、幾分かは消費抑制的な意味を持っておる間接税、こういうものもございます。また、揮発油税のように明らかに道路財源としてこれを使う、こういう性質の間接税もございます。また、砂糖消費税のように、かりに減税したとしても、今の砂糖政策全体からして値段の下がることが期待できないと思われるような種類のものもあるわけであります。その他物品税にいたしましても、それぞれ品目によりまして消費の弾力性の度合いもあるものでございます。これらを考えますと、一口に間接税と申しましてもそれぞれの性質がありますので、考えなければならぬ。  ただ言えますことは、日本の間接税体系は、外国に比べまして比較的その対象物品が選択されておるという感じが強い。ある程度非常にセレクトされておるという感じがするわけであります。もちろん、物品税の一部等におきましては、なお中小企業の製造にかかるものでありまして、それが最終的に転嫁できるかどうかという点に疑念が持たれる、つまり消費者よりもむしろその製造者の方が物品税を負担するという向きがないかと疑われるものもあるようであります。こういうものについては検討して参る。あるいは物品税の一部について、この前の国会で附帯決議がつきましたように、全般的に洗い直してやったらどうかという御意見がありますので、特に大衆課税になるようなものについて個々的に検討して参りたいと思いますが、全体の感じからいいますと、少なくとも間接税を中心にして減税をやるという段階ではない。そういう部分的に選択して手直しをするということはありましても、やはり現在の段階では、中小企業等を中心にいたしました、中小所得者を中心にした所得税減税が優先すべきではないか、かような考えであります。
  74. 堀昌雄

    ○堀委員 私も間接税中心に減税をやりなさいということを申しておるのではないのです。ただ所得税で大幅な減税をしておいて、そうして間接税については全然触れないということになると、さつき申し上げた五〇%の階層は何らそういう政策に参加することができない。取り残されていくのではないか。取り残されるものをもっとあたたかい目で見てやるというのが政治ではないかということが私の考えでございますから、具体的な問題については、今後委員会が開かれましたときにまた申し上げます。  最後に、今診療報酬の問題にちょっとお触れになりましたので、私自分の立場が医者であるということだけでなくて申し上げておきたいのは、実は今度人事院勧告が出まして、大へんおそまきながら公務員についても給与ベースが上がる見通しが明らかになったのであります。ところが、診療報酬の問題については昭和二十六年から——大臣は三十三年に診療報酬を手直ししたと言われましたが、実は一般の医師の場合は五%もふえていないということが実情でありまして、昭和二十六年から一般の所得は倍くらいになっておりますけれども、医師の診療報酬はふえていないというのが現実の姿なんです。そこで、社会保障を推進していくということは、日本の政策で非常に必要だし、その社会保障のにない手であるものも、やはりさっきおっしゃったような国民経済の伸びに応じた程度に考えてやるべきではないか。なるほど、農業生産の問題について見ると、必ずしも国民所得の伸びと同じように今伸びておりません。何も医師の診療報酬が国民所得にランクしたような格好で上がっていくということは不可能であると思いますが、いかさま昭和二十六年以来ほとんど上がらないというあり方は、ちょっと問題があるのではないかと思っております。  もう一つ極端な例がありますのは、学校に勤めておる学校医というお医者さんたちが全国の学校に何万とおります。この人たちが一年間にもらっておる報酬が、安いところでは二千円なんです。三千円から五千円というのが大幅にありまして、実は自治庁の方から交付金の中に七千円入っておるということになっていますが、七千円もらっておるところは三分の一くらいしかない。あとの三分の二は五千円です。これは年額なんです。そして今一年に十日も二十日も学校にかり出されて、児童のための健康診断や注射やいろんなことをこの人たちがやっておる。私はこういうところを見ましても、日本の中に取り残されておる者が、あっちこっちに、目立たないけれども、実にたくさんあるということなんです。  そこで、大蔵大臣として、こういう取り残された人たち、特に今ちょっと医師をあげておりますが、学校医の報酬問題であるとかを、一ぺんに何万よこせとは言いませんが、徐々にでも適正化の方向に進めるというお考えが、診療報酬の問題を含めておありかどうか。社会保障をやるのだということが大幅にうたわれておる現在でございますので、その点を含めてお答えいただきたいと思います。
  75. 水田三喜男

    水田国務大臣 そういう問題が実は各省からこの二十日までには要望として集まってくるだろうと私どもは思っております。それを見て私ども政府政策をきめたいということになっておりますので、こちらは今その意味で各省のいろいろ出てくるのを待っておるということであります。
  76. 堀昌雄

    ○堀委員 私はちょっとお答えは納得できないのです。各省から出てきたら、それを見てからおやりになる。それはけっこうですが、大臣としては、出てくるものに対して何らかの腹がまえがなければ、何もなしでは、出てくるものに対処できないのではないかと思う。一応あなたの腹がまえがあって、それで出てきて、それをどうしようかということがものの筋道ではないかと思いますが、腹がまえの点だけでけっこうでございますから……。
  77. 水田三喜男

    水田国務大臣 できるだけ善処いたします。
  78. 山本勝市

    山本委員長 次会は来たる九月八日午前十時二十分より開会することとして、本日はこれにて散会いたします。     午後一時十三分散会