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1960-10-14 第35回国会 衆議院 社会労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年十月十四日(金曜日)     午前十時四十四分開議 出席委員    委員長 大石 武一君    理事 齋藤 邦吉君 理事 藤本 捨助君    理事 滝井義高君  理事 八木 一男君       天野 公義君    池田 清志君       小澤佐重喜君    河野 孝子君       椎熊 三郎君    田中 正巳君       永山 忠則君    毛利 松平君       吉田 重延君    赤松  勇君       伊藤よし子君    小林  進君       五島 虎雄君    多賀谷真稔君       山口シヅエ君    本島百合子出席国務大臣         厚 生 大 臣 中山 マサ君 委員外出席者         文部事務官         (初等中等教育         局職業教育課         長)      安養寺重夫君         文部事務官         (大学学術局技         術教育課長)  犬丸  直君         厚生事務官         (大臣官房長) 高田 浩運君         厚 生 技 官         (医務局長)  川上 六馬君         厚生事務官         (社会局長)  太宰 博邦君         厚生事務官         (保険局長)  森本  潔君         厚生事務官         (年金局長)  小山進次郎君         労働政務次官  岡崎 英城君         労働事務官         (職業安定局職         業訓練部長)  有馬 元治君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 九月十三日  委員古川丈吉辞任につき、その補欠として松  岡嘉兵衛君が議長指名委員に選任された。 同日  委員松岡嘉兵衛辞任につき、その補欠として  古川丈吉君が議長指名委員に選任された。 十月十四日  委員大橋武夫君、倉石忠雄君、志賀健次郎君、  古川丈吉君及び山下春江辞任につき、その補  欠として田中正巳君、小澤佐重喜君、椎熊三郎  君、天野公義君及び毛利松平君が議長指名で  委員に選任された。 同日  委員天野公義君、小澤佐重喜君、椎熊三郎君、  田中正巳君及び毛利松平辞任につき、その補  欠として古川丈吉君、倉石忠雄君、志賀健次郎  君、大橋武夫君及び山下春江君が議長指名で  委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 大石武一

    大石委員長 これより会議を開きます。厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。     〔委員長退席八木一男委員長代理着席
  3. 八木一男

    八木一男委員長代理 ちょっと速記をやめて。     〔速記中止
  4. 八木一男

    八木一男委員長代理 速記を始めて。  中山厚生大臣に申し上げます。厚生大臣に就任されて以来、今初めて委員会に御出席になったわけでございますが、私ども待つことしばしであります。これは内閣全体のことでございますが、閣議ということで委員会に御出席にならないような悪い慣例が政府間にあるようでございます。国会は最高の機関であって、その審議は重視されなければなりませんので、閣議国会の開会する時間に差しさわりのないように開くべきであるということを、閣議の中で一つ総理大臣に御進言を願いたいと思いますし、また厚生関係審議のあるときには、こちらの時間に差しさわらぬように最大の御努力をなさいまして御出席になるように要望いたしたいと思います。
  5. 中山マサ

    中山国務大臣 この委員会には始めての出席だという今委員長のお話でございましたが、私の記憶によりますと、これで二回目でございます。それはぜひ一つ訂正をお願い申し上げます。この前、午前中衆議院、午後参議院の社労に出たことをはっきりと存じておりますから、これだけは御訂正をお願いいたしておきます。  御承知であろうと思いまするが、偶然にも閣議は火曜日と金曜日が定例の日になっておりますので、これをいかんともすることができないのでございます。それで願わくばこの委員会におかせられまして、委員会の日をなるべく火、金を避けていただきませんと、国家的にこの社労委員会が非常に重大な委員会であり、国民生活に重大なる影響を持つ委員会であるということも事実でございますし、また閣議というものも国家全体の問題に非常に重要な責務を帯びているのでございます。特に本日は人事院の勧告によります国家公務員あるいは特別職公務員、そのほかの公務員に対する給与のベース・アップに関しましての閣議でございまして、これは非常に重要なことと思うのでございます。そしてまたこれにつきましては各省の大臣から、何とかしてその公務員方々に有利なようにいろいろと論議がございましたために、私が就任いたしまして以来、最長時間であったということを一つ御了解願いたいと思います。それで、本来ならば十二時から今度は党と閣僚との懇談会がございますが、これは私が出席しないでもいいという考えのもとにこちらへさっそく走って参りましたので、どうか一つ御了承をお願いいたします。
  6. 八木一男

    八木一男委員長代理 今の御答弁中、二回目でおありになったということは、その通りだったことを認めたいいと思います。ただ火曜日、金曜日に定例閣議があるという問題については、私の方からも委員長である大石君の方に伝えますけれども、与党の関係で、そのようなものにぶつからないように御配慮願いたいということを大臣を通じておっしゃっていただきたいと思います。それからさらにその日にぶつかりましても、委員会で重要な議事審議するために、各委員が午前十時から待っております。各委員には、国事を審議するために、またそれのもとである研究をするために重大な時間があるわけでございますが、厚生大臣がお見えにならないために、そのような人が非常に時間を乱費することは国民に対しても申しわけがないと思います。閣議の終了時間をきっちりと計算をして、何時になるというようなことを、厚生省関係としては国会委員会の方に御連絡になるようなよい慣行を作っていただきたいと思いまするし、また厚生省大臣との連絡役の人が、委員会の要求があったときに直ちに最善の努力をするということの風習をつけるように、厚生省において大臣は指導を願いたいと思います。
  7. 中山マサ

    中山国務大臣 私のでき得るだけ、可能な点は御意思に沿うて努力をして、お互いの時間を尊重し、そして議事の進行に努めたいと思います。
  8. 八木一男

    八木一男委員長代理 厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますので、これを許します。齋藤邦吉
  9. 齋藤邦吉

    齋藤委員 厚生行政に関しまして、厚生大臣に三点ほど非常に簡単にお尋ねを申し上げたいと思うのでございます。  まず第一点の問題から質問をいたしたいと思うのでございますが、厚生大臣並びに厚生省の非常な御努力によりまして、国民保険が着々完成の域に達しておりますことはまことに慶賀にたえない次第でございます。ところで、私ども考えますると、国民保険体制確立する上において一番大事なことは、国民医療に対する責任体制確立するということだと思うのでございます。ところが、いろいろ最近のような日本国民医療に関する責任体制の姿を考えてみますると、御承知のように、国家公務員については、国が雇い主であるというふうなことからいたしまして、国家公務員共済組合における医療部分については、厚生大臣所管じゃない、大蔵大臣所管ということになっておるわけでございますが、私どもから言わせますれば、こういう国家公務員共済組合医療部分についても、ほんとうを言えば厚生省当局に一元化すべきものだと思うのでございますけれども、これは現在の制度がそうなっておりますから、これは将来の問題として御検討いただくことにして、これ以上は何も申しません。  そこで、私から言わしめますならば、やはり社会保障制度全般に関する責任は、国の政治においては厚生大臣が一手にあずかる、こういうことが何といっても一番大事、ことに国民医療については、非常に卓抜されておりまする厚生大臣でありまするから、厚生大臣のところで一本にまとめるということが何といっても一番大事だと私は思うのでございます。ところが、これが杞憂になってくれればいいのでございますが、先般ちょっと新聞で見ますと、自治省方面におきましては、市町村の職員の共済組合——これは医療給付はやっておりません、御承知長期給付でございますが、その部分をさらに拡張して、地方公務員全般に及ぼそう、従って地方公務員共済組合法を作ろうじゃないかという案が自治省の一部にあるように聞いているわけでございます。ところがその自治省の案なるものを見ますと、地方公務員共済組合法によってやる仕事は、年金のような長期給付のほかに、いわゆる健康保険組合がやっておるところの医療給付もやろうということが書いてある。地方公務員についての医療給付地方公務員共済組合においてやるんだ、それによって地方公務員に関する一切の長期給付医療給付をまとめてやろう、こういうふうな話が出ておるわけでありますが、この点が私非常に心配なんです。私はむしろこういうふうな医療給付を統合するならば、厚生大臣のところで一本の組合を作ってやるというなら話がわかる。ところが、地方公務員について、年金長期給付のほかに医療給付までやろう、社会保障制度の観点からいえば、はなはだ逆行じゃなかろうかという感じがするのです。この案は自治省の未定稿の案ですから、もちろん閣議では出ておらぬと思いますが、こういう案がちらほら出るということ自体が、私はやはり厚生大臣としてお考えいただかなくちゃならぬ問題だと思う。どうかこういうふうな案が新聞なんかに出ないように、初めから手を打って、医療給付については健康保険組合を中心として一本でやるならやるという方向はけっこうですが、こういうふうな自治省——自治省といったって地方公務員の身分を持っているわけではない、地方自治体でありますから、年金についてやるというのなら私はけっこうだと思うが、医療給付だけはどうも筋が違う。そこで私は、厚生大臣はおそらくそういう案が閣議に出たときには反対されるだろうと思いますけれども、その辺の御決意のほどをまず一つ最初に承っておきたいと思うのでございます。
  10. 中山マサ

    中山国務大臣 地方からもそういう御陳情の向きがございましたので、私どもといたしましても、自治省にそういうことがないようにという申し入れを省としていたしたのでございます。御承知通り内閣総理大臣からも社会保障制度審議会に、社会保障制度総合調整に関する基本方針ということについて御諮問になっていらっしゃいますが、自治省といたしましても、そこまでの御希望はないように聞いておりまするので、まだ決定されざるうちに、はしりと申しましょうか、そういうものが巷間伝えられることもあり得るのでございまして、私どもといたしましては、そういうことはなく、厚生省といたしましてこういうことは一本化していきたいという希望を持っておりますし、また、閣議にこういう問題がいまだ出たことはございませんので、この点はどうぞ一つそういうように御了承願いたいと思います。
  11. 齋藤邦吉

    齋藤委員 厚生大臣から非常に確たる御決意のほどを承ったわけでございますが、国民保険の根本は、医療についての責任体制確立ということでございますから、厚生大臣どうかさらに一そうそういう点にお骨折りをいただきたいと思います。  それから第二にお尋ね申し上げたいのは、国民年金の問題でございます。国民年金につきましては、昨年の春わが党、政府一本になりまして、画期的な法体制として年金法を制定したわけでございますが、実施面になって参りますと、やはりいろいろな事情に沿わない点も多々あるというので、できるだけ改善しようということで、わが党も政府も一体になって研究しておるわけでございます。もともとこの法律国会に出ました当時は、かりにいろいろ欠点があっても、やはり逐年改善改善を重ねて年金制度確立をはかるというのが、大体わが党、政府気持でもあったし、その後の法の施行後の事情にかんがみても、やはり相当改正するものは改正しなければならぬだろう、こういうふうに私ども考えているわけでございます。そこでいよいよ来年から保険料徴収の問題が始まるわけです。世間ではこういう拠出制年金などは、もう一年か二年延期したらどうだというような意見もございますが、延期しただけでは問題の解決にならぬですよ。やはりどうするかという積極的な改善、それを積み重ねていって初めてりっぱな年金制度になる、こうなるだろうと思う。そこで、わが党も政府も一本になって改正案について案を練っておるわけでございますが、きょう現在で厚生大臣としては、ぜひこれだけはやりたいという御意見はやはりお持ちだろうと思うのです。まだもちろん最終決定はならぬことでございますが、いろいろ保険料徴収の問題あるいは六十五才という年令も、農村の方々から言うならば、六十五才じゃちょっとおそ過ぎる、六十才にしたらどうだろうかという御意見もあるでしょう。それから所得の問題もありましょうし、いろいろあるわけでございますが、厚生大臣は、きょう現在においてぜひこれだけは改正したい、やるつもりだということを一つ意見ございましたら全貌をこの機会に明らかにしておいていただきたいと思う次第でございます。
  12. 中山マサ

    中山国務大臣 ただいま御説の通り、何か一つ法律と申しましょうか、法案と申しましょうか、そういうものが出て参るということは、地殻を割って芽を出すということが私は非常に大事なことであろうかと思うのでございます。思い出しますのは、あの自由労働者健康保険を作りますときも、私がちょうど政務次官をいたしておったときでございましたけれども、これも野党の皆様方は、こういう不完全なものはやめろという御意見でございました。そのときには医療給付がわずかに三カ月というのが見出しでございましたが、しかし私ども最初はお粗末でも、やっておれば御意見のように必ずやだんだん完成方向へ向かっていくことには間違いがないのだといって、とうとう押し切ったのであります。そうして今日では御承知通りの一年の給付、いろいろな条件もよくなっておりまするから、私はこの年金につきましても、まあ同じにいろいろ御非難の点もあることも聞いておるのでございますが、いわゆる国民の声を聞いて政治をするというのが民主主義でございまするから、まず第一に、厚生省といたしましては、一番国民がいやがっておりまする掛け捨てにならないようにということで、死亡一時金制度、これをやっていこうということに私どもは今努力をいたしておるのでございます。それでこのごろは女の年令は六九・九才、男子が六四・三でございますか、六五・三ですか、そういうように生命はだんだん延びておりますけれども、やはりもう六十になると人間というものは少し心細くなる人も多いのでございましょうか、六十五才まで待たないで、一つ六十一才ぐらいから四才までの間にほしいというお声も聞こえてきておりますので、それで一つそういう御希望向きには御希望を満たすように、ただしまるまる差し上げるということは、これは年金の建前で公平を欠くおそれがございまするので、減額で御了承いただけますればそういうふうにいたして参りたい、こう考えております。こういう点を何とかしてやっていきたい。それで母子年金または遺児年金のようなものも、受給資格も三年掛けてなければやれないというようなことも、何とかしてもっと短縮したらどうだろう、こういういろいろな難点を取り上げまして、今誠心誠意方面と折衝いたしまして改善方向努力いたしておる最中でございます。
  13. 齋藤邦吉

    齋藤委員 まことにごもっともなことでございまして、世間では単に拠出制年金はただ一年、二年延ばしてしまえばいいというようなことを言いますけれども、そんなことではやはり問題は解決しない。お互い国民努力によってよりよくしていくということが基本だと思いますので、どうか今のような掛け捨てをやめて一時金にする、六十五才を六十一才にする、そういったふうな点、その他母子年金、いろいろたくさんあると思うのでありますが、わが党、政府としても大いに協力していい案を作らなければならぬと考えておりますので、どうか厚生大臣事情に即して勇断を持って大改正をやられますようにお願い申し上げたいと思います。  それから最後の問題でございますが、最近御老人が非常にふえてきております。これはありがたいことなんでございますが、私が申し上げるまでもなく、六十才以上の老齢方々は、最近は八百万以上もあるようでございます。おそらくもう十年もしたら、これは一千万をこすと思うのです。今八百万程度ですが、一千万をこすと思う。そこでこういう老人対策というものはやはり厚生省政策としては非常に大事だと思うのです。今日までこういう老人対策として養老院だとか、いろいろな福祉施設をお考えいただいており、その点については敬意を表するわけでございますが、さらに一そう改善をはかる必要があるんじゃないだろうか、こんなふうな感じもいたします。明年度あたりで何か新らしいところの老齢者対策についてお考えがございましたら、この機会に承りたいと思います。  大体以上の三点で質問を終える次第でございます。
  14. 中山マサ

    中山国務大臣 老人層がふえるということは、結局やはり医術の進歩と申しましょうか、病気の治療が非常に進んでおって、お薬もまた非常にいいものができておるということのために、先ほど申しましたように寿命が非常に延びてきておる。そうすれば自然こういう人が一千万人をこえるようになる。ところが御承知通り家族制度というようなものもなくなりまして、子供たちは平等な権利を持っておりまして、昔のように長男が必ず親を見るというようなこともございませんので、老人なるものは私は非常に暮らしに対して不安を持っているだろうと思うのでございます。そこばくの貯蓄のあるいわゆる有産階級老人ならばまたそういうこともございませんでしょうけれども、平均して申しまして、自分の暮らしに対しあるいは住居に対して不安な人たちが非常にあろうかと思いますので、私どもは三十六年度の予算においての厚生省案といたしましては、養老施設拡充整備、五十二カ所新設でございます。軽費老人ホームの助成、今までは生活保護世帯に対しましては老人ホームもございましたけれども、実費によって御老人方をお入れ申す施設というものはまだそう力が入れられておりませんでしたが、今度はこれを十七カ所、それから老人福祉センターの設置、これが十カ所、老人世帯家庭奉仕員の配置二百人、御承知通りたとい経済的には不自由でなくても、お世話するような人がないことがございます。このごろ家庭に入って世話をしてくれるような人が非常に手に入りかねるのでございます。ですから、御老人で身のまわりの不自由な人も相当ございましょうから、そういう点を考えまして、訪問する人たちを作っていって、定時にでも訪問してもらって御用を聞くというようなところまで厚生省としては考えて、まず二百人というのを第一にやってみようじゃないかということになりまして、こういうことで老人層に対する国家のあたたかい気持を表わしていきたいと思っております。
  15. 八木一男

  16. 滝井義高

    滝井委員 初めて中山さんに御質問申し上げることになるわけですが、今齋藤さんから一、二の点について御質問がありました。     〔八木一男委員長代理退席齋藤   委員長代理着席〕  私は中山さんが厚生大臣に御就任になったことは日本女性のためにも、あるいは日本厚生行政のためにも、これは非常にけっこうなことだったと思います。しかし、先般田中政務次官があなたにかわっていろいろ御答弁になりましたけれども基本的に池田内閣社会保障政策について私たちが受けておる感じを率直に述べて、そうでないというあなたのお言葉を聞きたいと思うのです。  実は池田さんは岸さんとは違いまして、私たち池田さんを麦飯大臣だ、こう言っておったわけです。しかし最近は麦飯のむの字も言わずに、一つ話し合いましょう。話し合うときにはライスカレーでも食べながら話し合おうじゃないか、こういうことをおっしゃり始めておるわけです。池田さんが何か会談をしておるときは必ずライスカレーを食べておる写真が出ている。このライスカレーというきわめて庶民的なものを打ち出したわけです。そして今度さらに日本内閣史始まって以来——日本女性有権者は男性より多分二百万くらい多かったんじゃないかと思う、とにかく有権者の過半数以上を占める女性大臣を任命になったということは、女性の眼が一斉に池田さんの身辺に注ぐことを意味するわけです。それから私は岸さんのような高姿勢じゃありません。低姿勢です。私の低姿勢は正姿勢です。正しい姿勢です。低姿勢女性大臣ライスカレー、これは池田内閣の三象徴だ、私はこう演説しているのです。これはいわば安保の後のとげとげしい国民的な雰囲気を非常にやわらげるのに役立った。いわば日本の四つの島を庶民的なムードで塗りつぶした。演出効果満点です。そうして、そういうムードの中で、池田さんが第一に打ち出しておる政策は何であるかというと、社会保障拡充強化するという政策だった。その次は減税です。そうして三番目が公共投資というものをあげておった。ところが、私たち国民が三象徴ムードに幻惑されておる間に、池田さんは、手品師よりもっと巧みに、第一の社会保障というものをするっと引きおろして、第三番目に持っていって、公共投資というものを第一に持っていってしまった。私は、これでは池田さんの政策、いわゆる平清盛ではないが、衣の下によろいが見えた感じがし出した。と申しますのは、公共投資で一番利益を受けるのはだれなんだ。大きな港ができ、大きな道路ができるということは、日本経済の九%の拡大の上で、経済基盤が非常に弱い。だから、どんどん自動車ができて輸送するにしても、道路が貧弱ならだめなんだ。道路が凹凸しているのではだめなんだ。日本道路は、道路ではない。あれは道路以前の、何と申しますか、道路予定地であるというようなことまでいわれておるくらいです。それで公共投資はいいと思う。しかし公共投資で一番利益を受けるものはだれかというと、大企業、大資本です。減税で一番利益を受けるのはだれだ。なるほど妻の座を強化するということで、妻の扶養控除七万円を九万円に引き上げた。これは拍手かっさいを受けるでしょう。しかしもっと大きなものは企業減税です。耐用年数を減らす、こういうことの方がよけいに金を食っていくという形がどうも見える感じがする。そうすると第一に上げたアドバルーンと第二に上げたアドバルーンというものは、重点が大企業優先になっている。そうして第三番目の社会保障というものは、どうも今あなたが述べられたくらいの掛け捨てを防止する死亡一時金とか、あるいは減額年金を作るとか、死別母子でなくて生別母子にもやるというようなことくらいになってしまうわけです。  何かの新聞で読みました。あなたが言われたかどうかは知りませんが、中山厚生大臣いわく、私を池田内閣アサガオの花にしないで下さい、こう嘆いたということを私は何かで読んだ。アサガオの花は朝開いて夕方しぼんでしまう、そのはかない花にしないで下さい、少なくとも私は池田内閣の三象徴一つとして女性大臣が生まれたからには、厚生行政というものがこの機会に、国民注視の中で生まれた大臣ですから、前進しないというとこれは大へんなことだと思う。池田内閣の第一のスローガンが社会保障拡充強化でなければならぬのに、現在いつの間にか三番目になっております。そうして生活保護費の二割六分引き上げというのも近ごろちっとも新聞に載らなくなってしまった。やはり依然としてアサガオの花にあなたがなり下がっておるような感じがする。この私のニュアンス、私の受ける感じが間違っていなければ幸いだと思うのですが、これは選挙を前にして中山厚生大臣の当選を確実にするためにも、池田内閣の三象徴がほんとうに三象徴であるためにも、ここらあたりでそれが間違っているならば間違っているということをはっきりする必要があると思う。これは池田内閣基本方向です。依然として大企業優先政策でいくのか、貧しい日本の大衆のための、貧乏人のための、弱き者のための政策が優先するのかどうかということです。これを一つ大臣の腹がまえを、きょう就任してから初めての質問ですから、はっきりしておいていただきたいと思う。
  17. 中山マサ

    中山国務大臣 池田総理が麦飯大臣と言われておった時代は十年以前でございます。それである雑誌に書いてございましたが、その当時は食糧事情が非常に悪かったので、最もあたりまえの話、やっぱり食糧事情の悪かったときに対処して麦飯をよけい食べるようにと言ったときに、非常な反感を買って、そして今日十年後、だんだん吉田内閣の当時を考えてみますれば、われわれの持っておりました外貨というものが非常に少なくて、外国から食糧を買うにしても四苦八苦の状態であったのが、今日では少なくも外貨は十五億ドルだといわれるような経済状態になって、その間の経済の進歩の状態を見て、彼が、七%ではない九%上昇できる、三年ないし十年のうちにできるとあたりまえのことを言ってほめられておる。世間というものは実に不思議なものだというような評もございまして、私はなるほどそうだと思ったのです。あたりまえのことを言っておこられる、あたりまやのことを言ってほめられるときもあるということは、これをもってもはっきりしたのでございまするが、今おっしゃいましたように、女性が男性より二百万多いのだ。実は私がこの前の選挙前に聞いたのは二百三十万女性の方が多い。そして私がこういう立場に立たせていただきましたときに、大宅壮一氏いわく、日本女性は今までは国内の植民地に生きておった。中山マサがこういう立場に立たせてもらったから、日本女性は植民地から解放されたとまで激賞してくれたのでございますが、それで婦人連中の喜びは非常なものであるということも私は確認いたしておるのでございます。彼が高姿勢ではない、正姿勢だと言っておりまするが、彼の態度を見ておりますると、私もそうであろうと思うのであります。  それで、一番初めは社会保障制度、それから減税、それから公共投融資ということになったのが、このごろはおかしくなったじゃないかというお話でございます。私も、実はいわゆるアサガホと言ったのじゃ言葉がちょっと判然としないのですね。だから私は英語のモーニング・グローリー、朝のグローリーではいやだと言ったので、私は何も悲観したわけじゃないのであります。一つのこれはアドバルーンでございまして、ぜひ午後も輝くのだ、アサガオにはなりませんと言ったのでありまして、どうぞこの点御了解を願いたいのであります。しかし彼が全国遊説で歩いておりましたときに、確かに大阪の中央公会堂で言ったことを覚えております。もし池田内閣が四つの足で立っておったならば、これが一つ抜けても池田内閣というものは立っておられる。しかし社会保障減税と公共投融資という三本の足、三本のかなえでございましょうね、これで立っているのだから、これが一つはずれたら池田内閣は壊滅だ。だから社会保障減税も公共投融資も、みんな三つとも重要なる池田内閣の柱であるという演説をなさいまして、私も安心したわけでございます。考えてみますれば、公共投融資ということにやはりある程度の力を入れまして、そうして大いにもうけてもらって、道路もよくし、——いわゆる日本道路道路ではない、道路予定地だと外国で言っているそうですから、商品を運ぶ、観光客を運ぶ、いろんなものを運ぶために、道路もよくしてもらい、港もよくしてもらいまして、貿易を盛んにいたしまして日本でしっかりお金をもうけてもらうということも確かに重大な問題であって、そうしてもうけてもらえばこそ社会保障の方にも金が回ってくると私は思います。  減税の問題でございまするが、千二百億ですか、これを減税するといってけさの閣議で決定を見たのですが、今までは三十三万円まで無税であったのを今度は五人家族で四十万円まで、これを減税しようというのですから、なるほど減税というものは、減税を受ける人は底抜けに喜ぶでございましょうけれども、しかしやはり減税をし得るところにも減税もしてあげて、そうして妻の座で今度は九万円という、私はこれもやっぱり必要であろうかと思います。社会保障制度も、私ども省といたしまして、省議で二六%はぜひ一つアップしてもらいたい。私はずっと全国的に演説して歩いたのですが、片一方で所得倍増論を唱えるならば、どうしても所得倍増にならない、人にして百六十万、世帯数にして六十万ですか、この世帯にも倍増してあげるような処置をとななければならない。この中には病人あるいは身体障害者、老人という、どうにもならない人たちが半分あるのです。しかしあと半分は、いわゆる働く意欲さえ与えてやればこの人たちは立ち上がってくれるだろう。だから今まででも最高千六百五十円、最低七百円の勤労控除というものがあったわけです。それをもっとよけいしてあげて、この一つの断層から抜け出ようという意欲を持つように刺激をしなければならぬというのが私ども考え方でありまして、この人たちが本気になって何かしようとするならば、一つそのときの資金も考えようというところまで参っておりますから、むろんこれは今後とも大蔵省と折衝を続けていかなければならないことではございますけれども、私どもの腹はそこまで固まっているのでございますから、それで私は社会保障が後退をしたなどとはまだ考えてはいないのでございます。
  18. 滝井義高

    滝井委員 昔から日本には、スズメ百まで踊り忘れずということわざがございます。池田さんが正直者だと言われましたが、かつて、はしなくも貧乏人は麦飯を食え、こういうことをおっしゃった。食糧事情が不足であっても、これは国民の憤激を買ったことは事実です。だから彼は通産大臣からそのときに引きおろされた。私たちは岸さんが総理大臣になるときも、スズメ百まで踊り忘れずで、またこの人が出てきたらどんなことをやられるかわからぬということを言った。しかし彼はそのときは、自分は長い間巣鴨の飯を食って、岸信介は深い反省をしたのだ、民主政治家に生まれかわったのだ、総選挙を通じて、山口県の、国民の信任を受けて出てきたのだと彼はおっしゃったのですが、やっぱりあれだけの不祥事をやらかした。だから私は、やはりスズメ百まで踊り忘れずで、昔の人はいいことを言ってくれていると思う。やはり若いころに歩いた道というものは、年を取ってもそういうふうに行くものです。池田さんがずっと税務官吏に育って、その間二十四年にはドッジ・ラインの実行をして、二十七年には麦飯を食えと言って、二十八年には池田・ロバートソン会談を開いて自衛力増強の道を開き、二十九年にも、失意のうちに亡くなった犬養さんの造船疑獄の指揮権発動に助けられて、そうして六年の歳月が流れた今日、佐藤、池田、吉田、三人が組んで内閣を作ったという、この池田さんの歩み来たった道を見ると、どうも私はおそろしいところがある。そこで、三象徴の一人として内閣に入ったあなたにがんばってもらわなければならぬというのはここなんです。どうも池田さんの今まで歩み来たった道を見ると、大企業優先の経済政策しかとっていない。貧乏人のための社会保障政策をとっていない。たとえば、おれの目の黒い間は健康保険の三十億は大丈夫だ、こう言っておった池田さんが、どうですか、健康保険は五億に削られておる。今度はあなたが厚生大臣におなりになって、健康保険の五十億は取り戻してもらわなければいかぬ。過去にそういう言明をしたけれどもやってない。金が余ればそれはどこかほかのものに回してしまって、健康保険には一部負担をかけるという制度を、彼は確立したと言っている。彼自身が確立したのではないけれども、おれの目の黒い間はそういうことをさせないと言った、そういう人がやっているのです。だからこれは、スズメ百まで踊り忘れずです。あなたの善意を私どもは全幅的に信頼しておる。しかし淺沼委員長が十七才の少年によって殺されるように、黒い手がうしろにあるのです。あなたの善意を曲げる黒い手があるということ、それは大きな独占資本という手です。この黒い手をよく見抜いて、あなたはみずからの道を、国民大衆のために、三象徴の一人として歩いて、アサガオの花にならないのだというこの信念で一つ戦っていただきたいことを特にまずお願いしておきます。  次は、そういう見地に立って私が御見解をお聞きしたい点は、十月一日から拠出制の国民年金の登録が始まっておるわけです。一体この登録の進捗の状況はどういうふうになっておるのか、四月一日から年金を実施するだけのりっぱな態勢ができつつあるかどうか、その確信のほどをお聞かせ願いたい。
  19. 中山マサ

    中山国務大臣 いろいろと御激励をいただきましてまことに感激でございますが、どうも反対党から見ますと、反対党の人は、彼が何らか黒い手に動かされておるような御感覚がおありになるようでございますが、池田総理の人生の苦闘の歴史をお読みになりますれば、また全然違った面をごらんになれるのじゃないかと思います。私もある時代には、なるほど麦飯大臣と思っておりましたけれども、彼の個人的の、もはや東大の先生からも見離されて、職業も捨てて闘病生活を長い間やって、もう命がないというときに、霊感によって母親の手に導かれて巡礼に出て、自分の体力を回復して、天ぼうそうというのですか、それと戦って勝った。彼の首筋をごらんになりましても、黒い斑点がずいぶん残っております。私も間近にあの斑点を見て、この人も長い闘病生活をした人であるから、あながち病人に対するところの——別に今おっしゃったように、健康保険に対して冷たい態度を今後とられると私は思い切れないのであります。私といたしましては、全力をあげて私の与えられた仕事をしていきたいと思うのでございます。  そこで国民年金の登録が十月一日から始まりましたのでございますが、まだ大してそう日にちも進んでおりませんし、きょうはまだ十四日でございます。片一方にはこれに反対するところの行動も始まっておるようにも巷間申しておりますので、促進勢力だけではなくて、またそこに少しそういうものもございますと、国民がとまどうこともあり得ると思うのでございます。それで、まだ今のところどれだけというようなお話もできかねます。また政府といたしましても、御承知通り、私どもの与党もそうでございますが、非常にPRが下手だという点もここでお考え願わなければなりません。よく地方へ参りますと、なぜもっとPRしないのだ、はっきりわかってないのじゃないか、厚生省といたしましても、国民年金局において、あちらこちらとPRの活動はしておられますけれども、相手は多勢であり、こちらは少数でございまして、手が伸びかねておりますので、もうこれほどになりましたと自慢するだけの数はまだ上がっていないのではなかろうかと思いますが、私、その的確な数を存じませんので、小山局長をしてその実態を説明をしていただきたいと思います。
  20. 小山進次郎

    ○小山説明員 ただいま大臣が申し上げましたように、まだ届け出の仕事が始まったばかりでございまして、これは先生よく御存じの通り、昨年のお金を受け取っていただくというあの福祉年金でさえも、最初の一カ月で、予定しました数のおよそ三分の一程度の申請状況であったわけでございます。それで今までのところ、各地の状況をつかむ時期を十五日と月末にきめておりますので、まだ全国的にまとめた数はとっておりませんが、およそ全国の四分の一強の府県におきましては、四、五日ですでに一割以上の届け出を受けております。悪いところでは、東京都が一番悪い部類でございますが、まだ予定しておったものの五%までもいっていない、こういう状況でございます。逐次事情がわかり、それからいろいろと説明をしておりますことが受け取ってもらえるというようなことになりますならば、これも軌道に乗って参ると思います。大体のめどといたしましては、普通の申請は十一月もしくは十二月の中旬ぐらいまででほぼ受けつけ得るような態勢で運びたい、かように考えております。それから任意加入の申し出は、これは年を越しましてから重点的に進める予定でございますけれども、これも二月一ぱいぐらいにまとめるようにいたしたい。しかしいずれにしても今のような情勢でございますと、それまでに届け出を知らずして完了しない人もありますし、また中にはおれは届け出をするのがいやだといったような気持からしない人も出て参ると思いますが、こういう人々に対しては、知らない人々にはよくお知らせをし、またいやだという人々に対しては十分手を尽して説得をして届け出をしてもらうようにしていく、こういうことで逐次軌道に乗せて参って、来年の四月から始まる保険料の拠出開始については間に合わせるようにいたしたい、かように考えております。
  21. 滝井義高

    滝井委員 現在年金の内容についての不満が非常に多いために、必ずしも全面的な国民的協力が得られていないことは、とにかく首都である東京都において地方よりかはるかに少ないということが具体的にそれを表わしておると思うのです。そうしますと、この国民年金法の第七条の「日本国内に住所を有する二十歳以上六十歳未満の日本国民は、国民年金の被保険者とする。」そして二項で「次の各号のいずれかに該当する者は、前項の規定にかかわらず、国民年金の被保険者としない。」こういうことで七つの除外を設けておるわけです。これは規定としてはどういうことになりますか。その登録をせずにこれに加入しないときには、一万円以下の罰金ですかを課することに多分罰則があると思うのですが、これをやらなかった場合には、国民はどういう制裁を受けることになりますか。
  22. 小山進次郎

    ○小山説明員 これは、この種の強制適用の建前をとっている法律の普通の例に従いまして、届け出の違反に対しましては、一万円ではなくて五千円でありますけれども、五千円以下の罰金が課せられ得る規定はございます。ただし従来から、国民健康保険もそうでありますし、国民年金もそうでありますが、この種の個人を対象にした届け出に罰則をもって臨んだ例もございませんし、また私どももさようなことで事を解決する気持は毛頭ございません。これは半年かかっても一年かかっても説得を続けて軌道に乗せていく、かように考えて運営に当たっております。
  23. 滝井義高

    滝井委員 五千円以下の罰金が課せられる規定があるけれども、そういうものをやった例もなかった、自分たちはそういうことをやる意思もない、こういうことでございます。そうしますと、そういう説得をやるためには、私は、三つの点についてやはり政府がこの際明白な方針を出す必要があると思うのです。一つは、拠出制の年金に対する政府改正というものが具体的にどの点とどの点とやるのだ、そしてその財源措置はどういうことをやるのだ、これが選挙前にははっきりさせられなければならぬと思います。と申しますのは、今度の総選挙における重要な議題は、貿易為替の自由化の問題、池田内閣の今言ったかなえの三本の問題——実は池田内閣はかなえの三本のほかに、四本になったと私は思う。それはきょう閣議で問題になった公務員の給与問題というものが重要な政策になっている。四本足になったんですよ。すなわち、これが中央地方を合わして千二百億の金が要るんですから、減税と同じです。従って四本になっておりますが、そういう政策の問題というのは重要な議題になりました。それから貿易為替の自由化、それから年金です。そうするとこの拠出制の年金に対する政府基本的な改正方向というのはどういうものだということを、やはり厚生省はこの際自由民主党と意思統一をしてはっきりする必要があると思うのです。自由民主党が出しておるアドバルーン厚生省が上げているアドバルーンと、全部違うんですよ。一つ一つ同じじゃないですよ。自由民主党は一時金とそれから今言った減額年金をやろうと言っておるのだが、額も示さなければその条件も内容も何も示さない。ただやるというだけのこと。それでは国民は納得がいかないのです。やはり総選挙に臨むときには、政府与党というものは具体的に意思統一をしてきちっと出す必要があると思うのです。それは厚生省の案としてではなくて、与党としてきちっと出す必要があると思うのです。私はどうしてそういうことを言うかというと、たとえば国民健康保険の五カ年計画等を見ても、政府の言うことと厚生省の言うことが違うんですよ。そういう点はやはり意思統一をして、きちっとやる必要がある。そうしないと、与党から出ている政策を見、厚生省から出ている予算要求を見ると、ちぐはぐなんです。これでは政党政治ではないのです。政党政治というものは政党の意思が行政にきちっと反映する姿を作ってもらわなければならぬ。  そこで私は拠出制に対する政府改正の具体的な方向をやはり中山厚生大臣の口から聞きたいのです。そうしてそれに対する——たとえば死亡一時金というようなものを作ったならば、おそらくこの死亡一時金を簡単にやりますと、これは二百億くらいの金はすぐ要りますよ。そうすると年金というものは非常に正確な計算の上に立って組み立てられておるわけですから、死亡一時金をやれば将来における支出の給付計画というものが財政的に違ってくる。そうすると、たとえば還元融資というものはもっと利回りをよくしなければならぬという問題が出てくると、今度は還元融資の運用の問題に重要な関連を持ってくるのです。従って政府は、一体どういう制度とどういう制度をどれだけの財政をつぎ込んでやるのだ、これを出しってもらわなければいかぬ。そうするとこれが重要なやはり国民の中における議題になってくる。選挙闘争における議題になってくるのですよ。こういう点を今齋藤さんの御質問で、死亡一時金を出しますとか、減額年金を出しますとか言わっしゃったが、死亡一時金というものは一体どういう資格の者に死亡一時金を出すのか。一年かけても死亡一時金をくれるのか、それは利子がつくのかつかないのか、かけた保険料だけになるのか、こういう点が座談会をすると一番国民が聞くところなんです。死亡一時金をくれる。一体保険料をかけただけくれるのか、利子をつけたのをくれなければ困るという意見があるのです。それだから、大臣ここではっきりしてもらいたい。  それから第二点は、積立金の運用の問題です。積立金の運用の問題については、やはり明白に大蔵省がみずから資金管理をやるのだという意見と、あなたの方の自主管理の意見とが対立をしておる。それから、それぞれ審議会を持っていますね。国民年金審議会、資金運用部資金の運用審議会ですか、それから社会保障制度審議会、有沢先生、大内先生、中山先生と、それぞれ権威がこれにはついておるわけです。そして権威がみんな意見が違います。一体厚生省としては、与党としてはどの道を歩むのかということです。これはこの段階で、審議会の意見を聞かなければ私たちは決定ができませんというものじゃないと思うのです。政党というものは厳然たる自主性を持って、今から国民に臨もうとするときには、運用の基本方針はこれで参りますというものがなくちゃならぬと思うのです。これが一つ。  もう一つは福祉年金の改革の方向です。いわゆる福祉年金というものに生別母子世帯を入れるとおっしゃるのだが、一体その財源は三十六年度の予算で、当然これは選挙で公約したからにはおやりになると思うのです。そういう人数がどのくらいふえて財源がどうなるのだというところまで、やはりこの際——もう解散というものは一週間か十日のうちにあるのですから、国民の前にはっきりしておいて選挙に臨む必要がある。社会党はだからそういう点についてはみんなはっきりしておるわけです。政策をはっきりして言っておるわけです。だから大臣、その三点について、拠出制、無拠出、積立金の運用の問題、これを一つ与党と厚生省との一致した意見として出してもらいたい。そうすれば大蔵省が文句を言おうと、何と言おうと、政党政治の上で大蔵省が文句を言ってもだめです。あなた方が野党の滝井義高質問を通じて解明にしたことは、われわれはそのまま与党のにしきのみ旗として国民に知らせます。そうして国民の皆さんどうですか、年金はこれでお金が出せますか、保険料が出せますか、悪かったら、われわれはこの点が悪いから反対だということをはっきりいたします。一つその三点について明白にしていただきたいと思います。
  24. 中山マサ

    中山国務大臣 昨年の十一月から出ました福祉年金でございまするが、これは、母子年金にいたしましても非常に喜ばれておりますのでございまするが、その母子年金、いわゆる死別母子という人たちは非常に喜んで感謝をしてくれている。私は現場に行って聞いてきたのですが、しかしここでまだ見落とされておった人たちがございます。というのは両親が死んで、そうして祖父母が育てている孫たちがあります。それからまた両親が死んで、兄なり姉なりが育てている幼い弟妹の人たちもありますので、そういうのは、いわゆる準母子世帯として一つ考えようということでございます。それで盛んに御婦人方が叫んでいらっしゃる生別母子の問題、私もずっと前から声を聞いておりましたので、これを何とかしなければならぬといっていろいろと相談をいたしまして、生別母子世帯というものは年金の対象としてはまことに取り上げるのに困難であるというので、その親を子供からはずしまして、いわゆる子供の扶養手当のようなことで児童局で考えようというようなところまで相談が運んでおるのでございまするが、そういうことで今福祉年金の方が話が進んでおります。  それで今のお話で、大蔵省の資金運用部の審議会は、二五%しか集まったお金が返せないというようなことを御答申になっているようでございまするが、仰せの通り社会保障制度審議会、大内兵衛先生の会の方でもそうでない答申を出していただいておりますし、国民年金の方でも、また国民年金はやはり国民の福祉のために使うべきだという御答申でございます。ことに御記憶の通りこの委員会におきましても、こうして集まった金はぜひ国民の福祉のために使えという——私もそのときこの委員会の一員でございましたが、附帯決議がついておることも私どもは記憶をいたしております。それで今先生のお話では、こういう問題をどうするか、たとえば、もう一つ利子の問題でございますが、利子は大体が六分でございますが、六分五厘まで一つ持っていこうという考えを私どもは持っておるのでございまして、こういう問題を、今大蔵省のそういう審議会、私どもの方の二つの審議会、これが三つの——大体二通りと申しましょうか、答申が出ておりますし、今即時に大蔵省とここで結論を出すということはなかなか困難でございます。先生も御承知通り、いよいよ国会に予算が出ますまでは、与党と各省と、また私どもの方と大蔵省ともいろいろ折衝に折衝を重ねまして最後にコンクリートになりましたものが、今度は国会にわが党の予算として、わが政府の予算として今日まで提出されておる今までの経過からごらんいただきましても、今これがこうだとはっきりと言えとおっしゃることは、私は少し御無理、というと失礼でございますけれども、まだ私どもとしては確定的なことは申し上げる段階にきていないと申し上げるよりほかに道はないのでございます。先ほど先生は、地方公務員のべースアップがあるじゃないか、これで四つの足じゃないかとおっしゃいましたけれども、それはもう一つの足とは私ども考えておりません。と申しますのは、人事院勧告の通りアップするのだということが本日閣議決定になりましたから、夕刊でごらんいただきますか、あるいはニュースでお聞き下さるならばわかります。これは大体方向づけられましたので、やはり三本の柱だということを御了解願いたいと思います。
  25. 滝井義高

    滝井委員 大臣、あまり抽象的ではいけないと思うのです。国民をごまかすようなことになると思うのです。あれもやりますよ、これもやりますよというだけで、最後は予算折衝できまるのです。普通の状態とは違うのですよ、今度は。今度は具体的な政策を掲げて社会保障減税公共投資という三本の柱を掲げておる。それにもう一つ国家公務員地方公務員の給与引き上げ一二・四%、五月にさかのぼるのが今度十月ですから、だいぶそこにもごまかしがあるわけです。その四本の柱になっておる。これは千二百億の金を食うんですが、地方財政の問題は、一般財源の中から交付税交付金というものが出ているわけです。だから一つの大きな柱の政策としては、池田内閣の重要な政策に大きな変化を与えるものなんです。だから私は一つの重要な政策だと思う。これはまたいずれ予算委員会でも開かれましたら論議をいたします。これは社会保障とは違いますが、とにかく重要な関係があることは確実です。そうしますと、今言ったような拠出制の年金改正方向、積立金の運用の基本的な腹がまえというようなものを、この際出すことが必要だと思うのです。選挙が終わってから出すというのでは、一体国民はどういうことかさっぱりわからない。それがわからないので、私たちはどうも延期せざるを得ない形にならざるを得ないのです。われわれがこれを延期しなければならぬという理由は、どういうところにあるかというと、まず第一に、医療保障がきわめて不完全であるということです。国民健康保険保険料が、全国の世帯を見ると今年は三千五百円です。それに今度は年金保険料が、三十四才以下が二人おれば二千四百円払うわけです。そうすると約五千五、六百円から六千円の保険料を農村では払うのです。そうして短期の医療にかかった場合には半額負担ですから、社会保険もちゃちなもので中途半端、年金も中途半端、これが日本の現状ですよ。だから、まずこの際一番大事なものは、一体活生保護の転落理由は何なのかというと、病気あるいは貧乏です。貧乏になるのは病気が主たる原因であるということは、生活保護の転落者の原因を調べてみたらおわかりだと思います。そうしますと、短期の医療保障、国民健康保険を強化すべきです。これをまず七割やるためには、八百億の金がかかる。これをまず本年とるわけです。そうしてとって、その次の段階は無拠出の年金を強化することです。これが私は社会保障日本における行き方だと思う。そうして拠出はどうするか。拠出は、貿易為替の自由化によって、日本における中小企業と農家というものは大打撃を受けます。これから十カ年の間に、日本農業六百万戸、五百五十万町歩の田畑を耕して、農村人日一一千六百万おりますが、その中で農業に従事しておるのは、大きく見て千六百万。その中から池田内閣では九百万切り落とすのです。だから年金の対象者というものはがらがらとくずれる。中小企業もがらがらとくずれる。貿易為替の自由化に合わせて、大企業とその系列化に入る中小企業はいいのですが、あとは倒産か大幅な企業整備をやらなければだめです。そうしますと、年金の対象であり、国民健康保険の対象である農村と中小企業は、大変動を受けるわけです。そういう中でこういう恒久的な年金をやっていくということは問題があるわけです。そこでこれを延ばして、そういう大きな社会的な変動と、いわゆる生産の構造転換が行なわれるわけですから、短期の保険を強化し、無拠出の年金を強化することが、当面日本における社会保障の最大の重点であり、これが生産政策につながる分配政策だと思うのです。これをやらずに、農民から今すぐやらないお金を莫大に吸収していく。一年にこの吸収するお金が二百五十億、政府保険料が百二十五億で、三百七十五億がたまってくるわけです。そうしてそのたまったお金をあなたの方でぐっと握り切ればいいのですが、これは握り切れない。ここにやはり黒い手がうしろから動いております。零細な金を吸い上げなければ、現在の日本では、日本の経済の九%の拡大のための資本蓄積はできないのです。それはすでに日本の浅い資本主義が、昭和十七年のあの大東亜戦争のさなかに示してくれた。カニはおのれの甲らに似せた穴を掘る、歴史は螺旋状にめぐっていく。その通りです。だからこそ再び軍備をやろうとするならば、やはりカニがおのれの甲らに似せた穴を掘るように、昭和十七年の厚生年金が軍費調達に使われたように、これもやはりわれわれがいやだ、いやだといううちに使われてしまう。なぜならば、今度は日米安保条約というものが、十カ年間日本の軍需工業を保障したのです。今までは弾薬やちゃちな軍需工業しかできなかった。なぜならば、不安定だから投資しなかった。ところが今度は日米安保条約の自然成立で、十カ年間日本の軍需工業を保障するようになって、期限は十年で、予告一年入れて十一年保障します。だからここにお金が要ります。そうすると、日本経済基盤と資本蓄積が浅いのですから、零細な金を集めてこれにつぎ込む以外には、金をつぎ込むところがないのです。財政投融資は一兆二千億の要求がある。ところが財源は五千億か六、七千億しかないという状態ですから、ここに根本的な矛盾が出てくるわけです。これはよほどあなたがしつかりしてもらって、こういう具体的なことをはっきりせぬと、選挙が終わってからはっきりするのでは、まただまされるのですよ。それを私は言いたいのです。そこで私は、そういう私のことばかり言って気の毒ですけれども、そういう形が出てくると私は確信をしております。  そこで、一体そういう短期の医療保障を強化しなければならないが、今問題になっているのは、医療費の引き上げが問題になってきておる。これはあなた方が医療費の引き上げをいたしましょうと約束をしておる。そうすると、医療費の引き上げをやるためには、医療協議会を開かなければならぬ。一体、この医療協議会は、いつ開くのですか。
  26. 中山マサ

    中山国務大臣 貿易自由化につきまして、日本の中小企業あるいは農村が全然ぐらぐらとなるという御心配のようでございますけれども政府といたしましては、そういうことがないように、逐次やっていくという方針を立てております。何と申しましても、今までの総理の方々も、それはりっぱな政治家でいらっしゃった方も相当ございますが、今度の池田総理は名にし負う数の天才と申しましょうか、大家と申しましょうか、それでございますから私どもは、絶大なる経済に達しておる池田総理のもとに、この日本がまさかぐらぐらといくなどとは予期しておりません。意見を異にいたしましてまことに申しわけございませんが、やはり立場の違いと申しましょうか、私どもは私がこうなる前から、党の方でも、貿易自由化は逐次やる、そうしてくずれないところからやっていくんだという方針を立てておったことでございますから、私はそれは可能にやっていかれるものであろうと存じております。  それでこの国民年金のお金を使って、いわゆる十一年の安保条約の改定に対する軍備の方に持っていくのじゃなかろうかということが、しきりに巷間にもいわれておるようでございますが、結局この安保条約改定のときにも、地方に参りますと、安保条約が通れば、いたいけな尋常六年生の子供に、どうやら学校から聞いてきたこととして、お前さん方が二十才になると徴兵でとられるぞということまで流されたという事実を、私はすでにいわれた家庭の親から聞いたのでございますが、これは少し御心配が過ぎるのではなかろうかと私は思っております。それで、このお金が軍備に使われるという御心配は、どうぞ一つお捨て願いたいと思うのでございます。今まででもいろいろのお金も大蔵省で使っておりまするところから、お金の模様を見ますと、やはり民生のためにやっておる。道路だとか住宅だとか、そういう金も使っておるのでございますから、これはあるいは迂回した現われかもしれませんけれども、そういうことにもどんどん使用されておるところを見ますと、私はそう軍備々々とおっしゃっていただくのはどうか、こう考えます。  それで、短期の医療もどうだ、お医者様方に対していわゆる単価の引き上げもお約束しておるではないか。私どもも確かに、国家公務員に対して一二%引き上げるならば、やはりお医者様方に対してもそっぽを向くわけにはいくまいという感覚でございます。これがどれだけの引き上げができるかどうかはまだ決定になっておりません。中央医療器協議会が開けないかとおっしゃるのでございますが、これは何とか一つ私も全国を回っております間に各地で、お医者方の会合にもお招きいただきましてお目にかかったのでございますが、どうか私どもを御信用いただいて、この中央医療協議会の方に一日も早く医師会の代表の方をお出しいただきまして、そして事を早く運ばせていただくことが相互の喜びとなるのではなかろうかと逆陳情をして歩いておるわけでございますが、短期の医療もむろん即時——飛躍的にはどうか存じませんけれども、やはりこれも改善していただかなければなりませんけれども、それだからといって国民年金を延ばすということはまた別ワクで考えていいのじゃなかろうか、こう私は考えております。
  27. 滝井義高

    滝井委員 実は国民の財布の口は一つなのです。出ていった財源は従って一本になるわけです。あれもこれもというわけには、日本では御存じの通りいかないのですね。あれもこれもやれば、どれもこれも中途半端なものになって、本物にならないわけです。一体政治というものは、今何が一番緊急なのかということを見ていくべきだと思うのです。そうしますと、やはり農村においては、国民健康保険を七割給付するということが緊急事です。これが一番先です。そうするとその七割を給付するためには国が四割を負担しなければならない。四割とすれば八百億金が要る。その八百億の金を、税の自然増が三千五百億もあるのですから、来年は出せないとは言えない。だからこれは出すべきだと思うのです。経済の成長を九%に拡大しますと、日本は技術者が不足です。今子供が工科を出ておれば娘一人に婿八人です。八十万から百万足りない。その足りない上になお九%の拡大をやれば、七・二%でも八十万足りないから、それを十八%伸ばしますと中小企業の技術者は全部大企業へ吸い上げなければだめです。経済の拡大ができません。そうすると中小企業は技術者がいないからだめです。こういう形が出てくる。これは技術的にいろいろ検討してみるとそういう形が出てくる。そうすると、やはりそこから失業者が出てくる、そういう形になるのですね。私は、やはり今の段階では、長期の年金よりかは、こういうように経済が大きな変動を始めたならば、ここ二、三年待つべきだ、そうしてゆっくり経済が安定をしてから拠出制の年金をやってみる、そうでなければこれはとてもうまくいかないだろうというのが私の見解です。  そこで、医療保障というものにある程度の重点を置くとすれば一体どういうことになるんだというと、これを前進させていくためには、やはり医療内容を上げなければならぬ。今のようなちゃちなことではいかぬ。医療内容を上げるためには患者に負担をせしめる。保険料を千分の六十三から七十に引き上げるということは、今の低賃金政策のもとではもう不可能です。貿易為替が自由化になりますと安い農産物が入ってきます。安い農産物は一体何を意味するか。だれが一体農産物の自由化を促進していくか。それは三つの促進する勢力があります。一つは東南アジアです。一つはアメリカです。一つ日本の鉱工業資本です。すなわち農産物が安くなることは食糧費が安くなる。エンゲル係数が下がることを意味する。すなわちそれは低賃金政策をくぎづけできることなんです。それは企業は超過利潤を確保することになる。従ってそういう貿易為替の自由化のもとにおいては、大衆の賃金の中から保険料を多く吸い上げていくということは、もう限界にきている。そうすると、自然増の多い財政からこれを見ていくという以外に方法はない。そうすると、自然増の中から、年金もやります、国民健康保険も五カ年の間では全部やりますということは、これは言うだけのことです。科学的に見てできないのです、財布は一つですから。なけなしの財布の中から出ていく。日本は所得五十万円以下の人が、とにかく所得税を納める千百十三万人の中の九割おるのです。だからあんまり上まで減税政策をとってしまうと税金を納める人はなくなってしまうから、それも不可能です。というと減税政策はほどほどにして、やはり社会保障を強化しなければならぬ。こういうことにどうしても理論的にならざるを得ない。そうなると医療保障を強化する、無拠出の年金を強化して分配政策を公平にやるより以外にない、私はこう思うのです。  そこで今の医療の問題について、どうも医療協議会の見通しがついてない。田中政務次官はすぐ開くようなことをおっしゃっていた。そうすると、医療費の引き上げは、大臣は、いつおやりになるのですか。一二・四%の引き上げは十月一日からと閣議決定されたということですね。すると十月一日から、さかのぼっておやりになるのですか。片手落ちになってはいかぬのだ。国家公務員地方公務員の一二・四%の引き上げをやったんだから、そこでこれは普通の私的医療機関ではなく公的医療機関、たとえば健康保険の病院、労災病院というものは、サラリーマンの医師が幾らでもおります。だから一二・四%の引き上げをおやりになったのだから、おやりになるというのなら、それは十月一日からおやりになるのですか。
  28. 中山マサ

    中山国務大臣 技術者が足りない。八十万人今足りないそうでございます。それで文部省といたしましても、大いにその方面へ力を入れて、その足りない技術者を足していこうという政策池田内閣はとろうとしておるのでございますが、しかし中央医療協議会におきまして、それをいつ開くのだというお話でございまするが、それは私どもが医師会の皆様方にいつ出していただくのだろうかということとほとんど同じような質問でございまして、一日も早く私どもはこの中央医療協議会を開いていただいて、いろいろとここで差し迫っております問題をやっていただきたいと思います。閣議で、いわゆる人事院の勧告をそのままのむということは決定になっておりますけれども、この医療の問題はまだそういうところには出ておりませんから、それはどうぞ勘違いしていただきませんようにお願いをいたしたいのでございます。両方とっていくというようなお話でございまするが、しかし医療だけに片寄りまするよりも、やはり家庭の婦人の中で、夫を失う人も出てきましょうし、あるいは夫が負傷したりする人も出てきましょうし、死亡したりする人も出てきましょうから、こちらの方の面もやはり逐次手を打っていく方が私はいいと思います。ただ一つのことに片寄るというよりも、たといそれが不十分であるかもしれませんけれども、そういう面も考えてやっていくのが、やはり全般的に目を向けた厚生行政の行き方ではなかろうかと思います。一つのことに一生懸命やれというお話でございまするけれども、その一つだけでなく、あれもこれもやったらどうするのだというお話ですけれども、ある程度少しずつでも前進させていくということが、とるべきことではなかろうか。私ども家庭にいたしましても、ただ一つにだけこっておられません。やはりいろいろなことをにらみ合わせて、自分の財布とのにらみ合いで逐次物事を前進させていくというようなことと同じでありまして、大学にいくむすこもおれば、あるいは小学一年生のむすこもいる。中学校のむすこもいる。上のは大学だけ出して、あとの子供は中学校でやめておけというようなわけにはいかない。それと同じで、やはり逐次重点的にやっていくべきではなかろうかと私は考えます。
  29. 滝井義高

    滝井委員 重点的にやっていくべきだという主張をしておるわけです。だから私は、当面厚生行政の重点は、医療保障と無拠出の年金に重点を置きなさい、拠出の年金は、日本経済の大きな変動と、そうしてその変動の中において、農民、中小企業はたえ得ないだろうから、やはり重点を無拠出制の年金医療保障に置くべきだ、そういうことを言っておるわけです。私の重点と言うのはそれだ。私は医療保障一本ではなく、年金医療保障をやるのだが、拠出制の年金ということを今やることは、もうちょっと延ばすべきだ。というのは、池田内閣が貿易為替の自由化というずいぶん大きな政策を打ち出したから、これはいずれ臨時国会になって——年金問題は、まだ積立金運用の問題も、福祉年金改善の問題も、拠出制の年金の問題も具体的にあれしないかりら、私は不満足です。もう少し大臣が腹がまえをきめて、やはりきちっとした方向をこの際出す必要があると思う。あれもこれもとちょびちょび出すと、ほんとうのあなたの腹がわからないですよ。そこで私は、特にきょうは三つに分けて系統的に一つ聞いてみよう、こういうつもりでやってきたのだが、どうもあれこれおっしゃってはっきりしない。それから数字の裏づけも、あなたの方は、一時金をおやりになろうというのなら、これは大蔵省と折衝中でございますが、この程度のものはやりますということを出してもらわないとわからないのです。それで年金の問題はよろしいです。はっきりしてもらわなければそこいらあたりはっきりしないで、ただやる、やると言うだけじゃだめです。アドバルーンだけじゃ腹は太りませんから。そういう点が一つ。それからもう一つは、医療費の問題についてもおやりになると言うのだが、一体医療協議会が開かれなければ、あなた方は開かれるまではそれをおやりにならぬ、こういうことなのですか。どういうことなのですか。医療協議会が開かれるまでは医療費引き上げの問題はほおかぶりしていくのだ、こういうことなのですか、この二点を……。
  30. 中山マサ

    中山国務大臣 そういうわけでもございません。やはり健康保険の方はいろいろな病気の頻度というのもわかっておるわけでございますけれども国民健康保険の方はその病気の頻度も十分にわかりませんし、今そういう資料を集めている最中でございます。本来ならばこの医療をなしていらっしゃる方の業務の実態の調査というものがもしわかれば、非常にこれは厚生省といたしましては問題の解決も早いのでございますが、どうもそういう実態調査を私どもが手に入れることが今非常に困難な状態にあるのでございます。御同調いただけないような向きもございますが、これが非常に困難でございまして、この作業に遅滞を来たしております。それで、この前の実態調査をいたしましてからでも、やはり今言って今すぐ結論を出すわけにいかないことは、賢明なる滝井先生がすでに御承知でございまして、医療協議会が開かれないから単価を上げませんというような考えではございません。どうしましてもそういう点を調査いたしまして、作業をして、それでこれならばというところにきた上で結論が出るわけでございますから、やはり日時をかしていただきませんことには、そう簡単には結論は出ない。私どもの方ではそういう作業をやっております。それで医療協議会の方には私どもを御信用下すって、一つお医者様方の氏名を出していただいて、そうしてこれをお始めいただいたらどうでしょうか。こういうことは信用問題ですから、お互い一つ紳士的と申しましょうか、淑女的と申しましょうか、信用に立って私どもも仕事をしておりますから、どうぞ私ども御信用いただけないものですかというのが、私がみんな医師会に申し上げてきたことでございます。
  31. 滝井義高

    滝井委員 だいぶはっきりしてきました。私は、八木先生が急いでおりますからこれでもうやめますが、一体それならばあなた方の作業はいつ完了しますか。この前は、年内には完了はいたしませんという御答弁があったのです。ところが、作業はあなた方が自主的におやりになっておるのだから、これはめどはつかなければいかぬと思うのです。そんなに全部をするわけではない。抜き取りの頻度調査ですから、大体いつこれはめどがつきますか。そのめどだけ言ってもらえば、それから先の問題は、今度は医療協議会を軌道に乗せれば話がつくわけですから……。いつですか。
  32. 森本潔

    ○森本説明員 医療費の改定につきましては、先ほど大臣が申し上げましたように、検討を命ぜられまして事務的に作業をいたしておるわけであります。どのくらいかかるかめどを言えということでございますが、ただいまここで正確なことを申し上げるわけには参りませんが、一応前にやりました作業等に照らして考えてみますと、前回昭和三十三年に改定をやりましたが、そのときは作業としましては、昭和二十七年に行なった実態調査をもとにして検討したわけでございます。大体そのときに要しました日数が約四カ月ほど要したことになっております。一つその辺の前例におきますところの四カ月という日数が今後の一応の所要の見込数ではないかと思っております。それでこれは従来の実績でございまして、まあ一応その辺のことを頭に置いておかなければいかぬ。しかしこれをできるだけ早くやらなければならぬという気持で進めておりますが、なおこの際、前回と同様な的確な資料がございませんので、その作業にはきわめて苦労があると思いますが、一応のめどは前例によればそういうことでございます。極力早く進めるようにいたしたいと思います。
  33. 滝井義高

    滝井委員 その作業を進められたのは、一体いつごろから進められたのですか。そうすると、大体結論の出る時期がわかると思います。もう一カ月前はやりつつあったと思うのですがね。
  34. 森本潔

    ○森本説明員 これは御存じのように、私たち大臣から命令を受けましたのが九月の早々でございました。それ以後作業に着手しておるわけであります。
  35. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、森本さんのお言葉を信用して、九月早々でございますから、九、十、十一、十二と四カ月、馬力をかければ三カ月くらいでできるのかもしれない、まあ四カ月、そのあなたの言葉を信頼する。そうすると、大体一月の初めには作業は完了する、こういう形で考えていいですね、大体今までの過去の実績から考えて……。
  36. 森本潔

    ○森本説明員 四カ月という期間は一応のめどとして過去の実例から申し上げたわけであります。この際早くやらなければいかぬという気持もございます。それから作業する上におきまして現実に直面しておりますのは、前回のような資料がないという点が今回の作業における非常に致命的な点でございます。前のようによほどそろっておりましても、それだけの日数を要した。今回はそれだけの資料がそろっておらぬ。あちこちの資料を集めてやらなければいかぬという点もございますので、そういうような点を、今申しました従来要した日数、それから現在の資料の不足しておる状態、まあその辺の従来の事情の要素を勘案していただきたいと思います。
  37. 滝井義高

    滝井委員 どうもそこらあたりも、こういう問題はもう少しはっきりしておく必要があるのですよ。そういう点がはっきりしないと、医療協議会というのはいつまでもはっきりしない。はっきりしなければ厚生行政は停滞する。きのう何かの決議を見ると、もう皆保険政策に協力しないという決議もあるようなことを承っておるわけですよ。私はやはりこういう点はフレンド・シップ、それからフェア・プレイでなくちゃならぬと思うのですね。ファイテング・スピリツト——敵愾心はお互いに持たなくても、フレンドシップとフェア・プレイで正々堂々友情を持って討議し合っていくことが必要だと思うのです。ですからあなたの方はあまり手のうちを——四カ月かかる、あるいはそれは今資料がないからもうちょっと延びるか、というようなあいまいな言葉でなくて、もう都道府県に国民健康保険の頻度調査を出しなさいといっておるから出てくるでしょう。それを私の方は大車輪でやって、前と同じの四カ月なら四カ月でやりますということをいうと安心するわけです。どうですか大臣、今のお言葉ではなかなかわかりにくいのですが、あなたも御督励になって、そうして四カ月くらいでやれませんか。
  38. 中山マサ

    中山国務大臣 この前の三十三年度のときには、二十七年の調査でやったわけでございます。今度は三十五年でございますから、それからスライドしていかなければなりませんし、前より以上の困難があるように私も聞いておりまするので、私といたしましては、一日も早くこういうことが、結論が出ることをむろん心から希望しておるものでございまするから、今後とも督励をいたしまして、できるだけ早く——そういたしませんことには今もお話の通り、きのうの御決議もあったようでございますので、困るのは患者でございますから、一つ患者だけはお互いに困らせないようにしなければなるまいと思います。今のいわゆるフェア・プレイ、これは患者に対する何と申しましょうか、先生方もお医者様としては患者がいかに精神状態が苦しいものか、私も過去弱かった時代がございますからよくわかっておるのであります。それでできるだけ私も督励をいたしまして、四カ月ということをはっきり申し上げておいて、またこの次、四カ月と言ったじゃないかとおしかりを受けるのはいやでございますから、それで最大限度力を使ってやるということを御信用いただきますれば幸いだと思います。
  39. 滝井義高

    滝井委員 委員長、これでいいです。
  40. 齋藤邦吉

  41. 八木一男

    八木一男委員 中山厚生大臣に御質問をいたしたいと思います。さっき同僚の滝井委員からの質問に対する御答弁で、私としてはそのままでは非常に納得のいかない点がございました。その点について、再度中山さんに御見解を伺いたいと思います。     〔齋藤委員長代理退席滝井委員長   代理着席〕  特に池田総理大臣の態度に対する問題でございますが、麦飯大臣の問題について、麦飯を国民に食えといったことは、その当時あたりまえのことであった。あたりまえのことであったのに、その当時はしかられた。今はほかのことを言ったら、あたりまえのことを言っているのに、ほめられているという御答弁がありました。これは滝井さんの御質問にも一部あとでその点について解明がございましたけれども、あれはあたりまえのことであるというような御認識を厚生大臣が持っておられるとしったならば、これは非常にゆゆしき問題である。あたりまえのことと思っておられるのかどうか、伺いたいと思います。
  42. 中山マサ

    中山国務大臣 私がそれがあたりまえのことであると言ったのではございません。お聞き漏らしになったと思いますが、ある雑誌か新聞であったか、私は忘れたけれども、そういうことが書いてあった。これは何かのマスコミの人が書いたことであって、私には責任はございません。
  43. 八木一男

    八木一男委員 それではあの問題を非常に悪かったと思っておられますか、あたりまえだと思っておられますか、どちらですか。
  44. 中山マサ

    中山国務大臣 悪いとかいいとかいうのは、これは主観と客観の違いでございますから、池田総理がおっしゃったことに対して、私がとやかく言う責任はないと思います。
  45. 八木一男

    八木一男委員 それでは、あの当時麦飯を食えという政策が——池田さんがいい、悪いじゃないのです、中山さんはいいと思われるかどうか。
  46. 中山マサ

    中山国務大臣 それは私自身の体験にいたしましても、戦争中食糧がないときには、配給されたあの豆を、お米を少しまぜて、おかゆにたいて食べたこともありますし、また高槻まで長男が学校に行くのに、お米がないのでジャガイモをゆでてお弁当に持たしてやった体験もございますから、私はそのときそのときの状況によってそういうことは判断をしなければならないかと思いますので、私といたしましては、やはりそのときの自分の配給を受ける食糧の関係、また自分の財布の関係で、そのときに順応した生活をしてきたというのが、私自身でございます。それで、それがいいとか悪いとかいうことは、いわゆる時と場所と人によって、こういうことはきまると思いますから、私はとかくの批評は避けたいと思います。
  47. 八木一男

    八木一男委員 中山さんは厚生大臣であるとともに衆議院議員であります。厚生大臣で、池田君が首班の内閣の閣僚になっておるから、池田君のことについては批判を極力避けようとされる。しかし国民の代表の衆議院議員でありますから、質問は今厚生大臣質問しているのですけれども、そういうことについては、やはり定見をお持ちにならなければいけない。あの麦飯大臣ということを簡単にいってはいけないと思います。貧乏人に麦飯を食えといったことであります。日本の全国民に、食糧が足りないから、一部麦でがまんして下さいというなら、それはその当時としては、日本の食糧事情が悪い、経済事情が悪いということで、あるいはいたし方のないことかもしれません。しかしながら、貧乏人は麦を食えということは、半面金持ちはぜいたくをしてもかまわないという言葉の反語であります。これは中山さん十分おわかりだと思う。そういうような精神は、乏しきを憂えずひとしからざるを憂えるという日本の昔からの格言でありますが、あらゆる政治家が考えたことからはずれているわけであります。普通の常識からもはずれていると同時に、貧しい人や気の毒な人が生活ができるように、あるいは医療ができるように考えるべき社会保障制度とは、全然反対の思想であります。今社会保障を担当しておる大臣である中山さんが、そういうことについて定見を持たれない、あるいは自分の内閣の総理大臣に対して当然言うべきことも、そういうことについては批判ができないということでは、社会保障を担当される大臣としては態度が非常に弱いと思う。その点についての御意見を伺いたいと思います。
  48. 中山マサ

    中山国務大臣 社会保障に対しての態度と、それから今はもう十年もたって、いろいろな事情が変わり、お互いにその人の立場というのも変わり、いろいろな体験もあって、いろいろなことによりまして、ものの考え方も変わってきたのに、いつまでも過去のことにこだわっているということは、私はいかがかと思うのであります。政治家というものは、さらさらと水の流れたように過去を忘れて、そして現在のことに対処していって、池田総理が低姿勢すなわち正姿勢である、ここまで言っておるあの言葉に対して、いろいろと御批判になるのは御自由でございますけれども、私にいろいろなことをお迫りになるということは、私はいかがかと思うのでございます。それとこれとは全然事が違うのではございませんでしょうか。きのうの私はきょうの私ではないのであります。肉体にいたしましても、細胞も消長がございましょうし、体験によりましてものの考え方も違うのですから、十年前にだれかが言ったことにいつまでもこだわっているということは、いかがかと思います。たとえばここに何かつまらないことをした少年があるといたします。そうしてその人が刑務所から出てきたとする場合に、いつまでもその罪をとがめておるようなことがございましたら、その人がもともとになるでしょうか。冷たい目で人を見るということは、やはり結局その人の前進をいろいろ妨げるのではないか。私もかつて教育家として立っておりました人間といたしましては、日本にはスズメ百まで踊り忘れずと、今の委員長の席の人がおっしゃっておられますけれども、しかし人をにくまずということもございまするから、八木先生は一つ人間の成長というものをお考えになりまして、きのうの人間はきょうの人間でないかもしれないという、何と申しましょうか、フェア・プレイ、フレンドシップということを滝井先生もおっしゃいましたが、この言葉を私は八木先生にささげて、どうぞ一つ人間愛を持って、わが国の総理大臣というのですから、この人にも敬意を表して、今後の施策を見て彼を御批判願えないものだろうかと私はお願いいたします。
  49. 八木一男

    八木一男委員 母親のような大きな愛をもってほかの人を包んでもらいたい。総理大臣まで包まれるということは、別に反対はしませんけれども、非常に恐縮なんですけれども、御答弁の本筋外の非常に美しい、快い言葉でございますが、それが非常に多いのです。これからたくさん質問したいと思いますから、私そう頭は悪くありませんから、形容詞をつけられなくても、御答弁いただけばすぐわかりますから、御答弁の方も簡潔に、要点をお願いしておきたいと思います。  それからもう一つ、今の点で、すっかり改められたら、われわれも今、たとえば池田君が何かいい政治をやろうとしている意欲を認めるのにやぶさかではありません。しかしながら、それをほんとうに改められなければ、その意欲は認められないのです。あの当時は、日本人に経済を建て直すために、あるいは食糧事情が悪いために、耐乏生活をお願いしたのだということであれば、筋が通るであろうそれを大平君や何か、脚色してそういうことを言っているのです。それは、そういう理屈だってあります。しかしながら、貧乏人は麦を食えと言ったことは、これは許されない。国民に、しばらく麦を食っていただきたいということなら許される。いただきたいという丁寧な言葉で言わなくても、国民に麦を食えと言っても、言葉が乱暴だけ、粗雑であるという批判は免れなくても、政策としては、そういう時代だったら、許されるかもしれない。しかし貧乏人はということは、あくまでも——食糧という問題は人間の生活基本的な一番大事な問題であります。そのときに配給制度をしっかりできなかったり、いろいろな集荷制度がしっかりできなかったために、貧乏人は麦を食い、実際に金持ちだけは、米だけでなしに、肉を食ったり卵を食ったり、そういうようなことをしていた時代なんです。そういうことを反省されないで——そこまで反省して、あのときああいうことは悪かった、今後はそういう考え方でなく政治をやるのだということをはっきりおっしゃれば、過去の非をはっきり認めておっしゃれば、過去は追及いたしません。過去の非をごまかして、国民の耐乏生活によって経済を再建するためにお願いしたのだ、その言葉が足りなくて荒っぽいので批判を受けたということでは、ほんとうに前の非を改めておられることにはならない。そのときには貧乏人は麦を食えといって、社会保障の思想はなかったけれども、それから政治を勉強したら、それが必要なことがわかった、過去の非を改めて、これからやるのだということを池田さんあるいは大平君が、あるいは中山さんが言われれば、そう過去は追及しません。少年の例について、いろいろと改めたものについてあたたかい心を持つことは、われわれは賛成であります。しかし池田勇人君はその時代から大臣であり、その時代から国会議員である。そんなものとそういう少年とは比較にはなりません。やはりその時代の政治責任を持っておられるわけですから、それについてははっきりと非を改めて、今後はそういう考え方を改めてやるのだということを言明されない限り、過去は当然追及されるものであって、それをはっきり弁解しない限り、スズメ百まで踊り忘れずという批判がどうしても出てくるであろうと思います。長くなって恐縮でありますが、そういうことであります。中山さんがおっしゃった中にもこういう思想が幾分ひそんでいるというのであります。誤解であれば幸いであります。ということは御答弁中にあるわけであります。先ほど滝井委員の御質問に対して、社会保障減税公共投資ということについて御説明がありました。政府の閣僚として、政府政策のいい点をPRをなさりたい気持は十分わかるのですが、そのいうことを努めてなさり過ぎますと、やはりわれわれも強烈に攻撃しなければならないということになる。公共投資をやられたら経済の基盤が拡大する、経済の基盤がよくなったら、その金を社会保障に回せる。これは一つの公式論であります。それではそういうことになるまで貧乏人が助からない、病人が助からないということになる。社会保障の問題は現実の問題であります。経済が発展して、日本の国力が増す、そうなったときにどうなるという絵図面を見せてもらっても、今の貧乏人は助からないし、病気で苦しんでいる人は助からない。そういうことを与党の人は言われるけれども、そういうことを改めなければ社会保障を語る資格はありません。現在の貧乏の問題、病気の問題に直ちに全力を尽くすということを言われなければ、社会保障の社の字も語る資格がないと思うのであります。それをわれわれに講義なさったところで、社会保障についてわれわれも一生懸命やっておりますから、そのような経済の発展したときにやるということをおっしゃっても、われわれは承服できない。議論がいつまでも長くなるということを御理解いただいて、これから御答弁願いたいと思います。  次には年金の問題に単刀直入に入ります。年金の問題について、拠出と無拠出の問題でありまするが、年金中山さんの方は、滝井さんがおっしゃったように、まだ確定はしていない。与党の方と政府の方がごちゃごちゃで、こんなものはわけのわからぬ政策でございますけれども、二つ、三つやろうと考えていると言われる。これははっきりしておいてもらわなければいけない。昭和三十三年に日本社会党が国民年金法案を出した。そのときに自民党の議院運営委員人たちが、これは初年度千二百五十六億円要る、これだけの大きな法律はいまだかつて類例が少ない、従って当然本会議で趣旨弁明をすべき法律であることは完全に認める、しかしながら社会党提案が先に出ることは自由民主党が損になるから、損なことはどうしても上程をさせないというような態度で二週間をずらして、それから岸さんが新聞社の方を呼んで、岸内閣国民年金を取り上げるということを公表された。そのときには内容が一つもない。そういうようなインチキなことをやられるから、今の問題が起こってくる。岸内閣が今のようなインチキなことをやられるとか、そういうようなことを発表しておられたから、それだけの批判が出たでしょう。何にも内容をはっきりと示されないで、やるんだ、やるんだということで年金のことをかき集められた。かき集められて、国民が期待したのと違うような考え方で、不熱心さでやろうとせられた政府年金法案が出たので、その実施にあたって今の反対運動あるいは延期運動が起こったということであります。ですからそういう問題については、選挙の前にこのような案を幾つも出されるのはいいけれども、この次の臨時国会が開かれたときに、これは審議をしたけれどもできない、これは審議したらできると、はっきりしなければいけない。できるようなできないような、そしてできるような考え方を持たしておいて、国会が済んだら食い逃げをするというようなことになっては、これは厚生大臣の公明な御精神に反すると思いますから、臨時国会にこれこれはするのだ、これはできないのだ、これこれは二年後にするのだというようなことをはっきり出して、主権者である国民にこの問題についての審判を問うていただきたい。やるようなやらないような、そういうことではいけないと思います。  それから特に、いいことはどんどんやっていただいた方がいいのですけれども、やっていただくことについて御研究がはっきり言うと非常に不十分であると思う。掛け捨ての問題をおっしゃいました。繰り上げ減額年金制度の問題を言われました。それから母子、遺児の三年間納入してなければ支給しない支給制限を短縮する問題がありました。これはもちろんみなやっていただいていいことであります。しかしながらこれだけでは非常に不十分である。年金を世論にこたえてよくしたとは言えない。年金の問題で、これは掛け捨ての問題、母子、遺児の問題でございまするが、おもに中心になる老齢の問題で、中山さんは、単刀直入に一言でけっこうでありますが、その点でもし今御答弁できないならできないでけっこうでありまするが、拠出年金老齢年金について一番大事なことは何であるかということを御答弁できたらすぐしていただきたい。できなければけっこうであります。
  50. 中山マサ

    中山国務大臣 いろいろと池田総理を私がかばうかのごときお話でございますが、私は自分がそう思っていることを率直に申し上げただけでございまして、しかもあのとき不信任案によりまして彼は大臣を棒に振ったのですから、その発言に対するところの処置がもうすでにできているのでございまするから、もうその問題は私は過去の問題と思っております。  それで社会党の国民年金のことにつきましては、いろいろと御研究の上でそういうことをやっていただいておりますることはまことにけっこうだと思います。もし来たる選挙におきまして社会党が最大多数をとられましたら、そして政権をおとりになりましたら、それを実施いただきますればよろしいのでございますし、また私どもは私どもとしての見解に基づいて、これだけは可能にしたいという願望の柱を立てておるのでござまして、今老齢年金をどう言えとおっしゃると、私は今のところ老齢年金というものは月に千円で行っておりまするが……。
  51. 八木一男

    八木一男委員 いや、拠出の方です。六十五才月三千五百円の方です。
  52. 中山マサ

    中山国務大臣 それは六十五才でございますれば三千五百円になるのでございますけれども世間希望がありますように、六十一才から四才の間にもほしいとおっしゃれば、やはりそれに比例して減額になることはやむを得ないだろうと、こう考えております。
  53. 八木一男

    八木一男委員 私あまり簡単に申し上げましたから、こっちから御説明いたします。老齢年金というものは、拠出が政府の方は柱になっておりますから、拠出で申し上げまするけれども、お年寄りになられたときに、老齢年金をもらって、老齢保障で生活をしていけるということが一番の建前であろうかと思いますが、それは御異存ございませんですね。
  54. 中山マサ

    中山国務大臣 そのもらったお金で生活がしていけるかどうかというお話でございますね。三千五百円もらいまして、たとえばほかに家族がございますれば、やはり一人で生活できなくても、二人は生活できるというのが私どもの常識なのでございますから、相寄って生活すれば、三千五百円があれば、子供も働いておるといたしますれば、私はそうぜいたくな暮らしはいかがかと思います。けれども、なんとかいくのじゃながろうか、これは最低の線かもしれませんけれども、今私ども考えとして、責任ある政府として、結局実行しなければならないことしか言わないという立場からは、この程度でならばやっていけるのじゃないかという考えでこれがはじき出されたものと思います。
  55. 八木一男

    八木一男委員 とにかくどういう生活ができるか知りませんけれども生活が苦しい人にお出しになるという考えでやっていこうというお考えであろうと理解します。ところがその点においてこの年金が非常にけしからぬ年金なんです。そこを一つよくお考えをいただきたい。それがもらえない人があるわけです。それがもらえない人ができるわけです。現行法では、十年間保険料を掛けないと年金は一文ももらえないことになっております。無拠出年金があるという御答弁は必要ございません、これは七十歳以上ですから。六十歳と六十五歳とは関係ございません。また諸制限がございます。そういう御答弁は要りませんが、とにかく保険料が十年以上払えないともらえない。これをほんとうに考えていただくと、年金制度はむずかしいですから、国民の諸君もどこが重点か、はっきりわからないと思います。政府案の現行法の最大の欠点はこの点にあると思います。年金というものは、年をとって生活の困難な人にお金が入って、生活を全部足すなり、政府案は非常に乏しいけれども幾分の足しになる、そういうことが必要なわけです。ところがそれが十年間保険料を払えない人には入らない。それについて中山さんは今おそらく答弁は、免除制度があるから大丈夫ですということをおっしゃるだろうと思います。ところがこの免除制度がインチキで、幽霊で、実効がない。その証拠をお目にかけますと、十年まで保険料を、前後してもいい、合計十年間払われる。次に免除制度が十五年適用を受けた。あと十年間は払わなかったという場合には、十年プラス十五年の計算になって、二十五年間払ったときと同じように六十五歳から月二千円の年金になります、現行法では。社会党案じゃありません、政府の現行法がなるわけです。その点においては十五年間の免除は役に立ちます。ところが九年間保険料を納めた、十六年免除した、十五年払わなかったという場合には、御承知通り一文にもなりません。そこに一番の欠点があります、実際的な。十年間くらい払えそうではないか、そのくらい協力したらよかろうではないかというような考え方が成り立つか、成り立つというふうにお思いになるかもしれませんが、これはそうではありません。政府案の十年間というのは、一年間に四回ずつ政府は徴収され、四十回であります。三十九回では一文にもならない。一回分は百五十円で、夫婦であればこれで三百円、それが一カ月分。三カ月分でありますから九百円ということになる。子供でもいれば千円をこえる。約千円のものを四十回払わなければ年金にならない、そういうことになる。ところで免除制度関係のない人は幾分それは薄くなりますが、免除制度の適用を受ける人は、免除制度の適用を受けたときは非常に苦しい。すれすれで、ちょっとで適用を受けない、そのときだけちょっと収入が減った、そのときでも苦しい。あるいは免除の適用を受け、あるいはここで受けない、こういうふうになる。免除を受けないときでも苦しい。その人が一回千円なんというような負担にはたえられない。またたえようと、今こんなに貧乏だから、年をとったらさらに困る。年金をもらうために一生懸命払うでしょう。政府がPRなさったら払うでしょうけれども、それが四十回続くということは至難です。二十回ぐらいで切れます。そういうことになると、結局そのような人が年金をもらえないわけです。政府年金案は、保険料を払い得るような余裕のある人が年金を完全にもらえる。保険料を払えないような人が、保険減額規定がない、免除規定が幽霊だ、十年以下はだめだ、そういうようなことでもらえない。聞いて下さい、その通りですから。小山君が幾ら説明しても同じですから。そういうことになっておりまするから、保険料を払えないような人が年金が激減するか、あるいは全然もらえないことになる。年金という、労齢保障というものは何のために必要か、生活のできない老人のために最も必要であります。保険料を払いにくい人が年よりになったら最も年金が必要なのだ。その人に一文もこない、あるいはちょっとしかこない。そんな年金年金ではありません。社会党の案は欠陥があるかもしれないけれども、われわれ渾身の努力を尽くして作った。そういう点について一切不合理が起こらないように一年前に手本を出してあるのに、政府が気がつかないということは言えないはずだ。ちゃんと、そういうことが一切起こらないようなりっぱな手本を出しておるのに、りっぱな点を全部削除して、くだらない点だけまねして政府案を作った。そうして今国民の総攻撃を受ける。そんなことでは困る。これから直されるときに、その根本のことを忘れて、ほかのことをいじくって——ほかのこともいじくらないよりましでありますが、年金というものがほんとうに必要な老人に渡らなければ年金制度は必要ない。そんなような中心点を御理解になっておかなければ困ると思う。これからの問題は、そういうことを中心に、具体的にいえば免除というものを、十年間払わなければ年金は一切やらないというようなところを一切はずすことが最も大事であります。免除を有効にすることが大事である。  次には減額という問題であります。事務的にめんどうだということを厚生省の人は言うかもしれませんが、千円のものを取られるか、あるいは全部まけてもらうか、その境の人はどういう気持が起こりますか。五万円も六万円もある人なら千円ぐらい何でもない。千円が納められるか納められないかという人がある。そういう人に適切な減額があって、五百円か三百円、一人当たり月三十円か二十円になる。そういうものがあってこそ、ほんとうのあたたかい政治であります。事務的に全部取るか、全部まけてやるか、そんなものは政治ではありません。事務がどうか知らないが、それはお役人が楽だけで、国民政治ではありません。大体三カ月に一ぺん取るのが大間違い、安くして一カ月に一ぺん取るのがあたりまえ。そうしてほんとうの国民の声は、年金制度はむずかしく複雑だから、まだほんとうに上がっておりません。ごくわかりやすい掛け捨てその他については上がっているけれども、掛け捨てについて上がったら、掛け捨てについてだけ措置すればいいということでは、社会保障を担当する大臣としてはだめだと思う気がつかないところでも、それから解明されれば、ますます気がつくであろうことを初めから考えて、世論のあることを取り上げると同時に、それと同様に、それ以上に大事なことを解決するために厚生行政を進めていただかなければならない。そういう点について厚生大臣は、まだできないけれども、そうしたいということでもなかった。そういうことでは御研究が薄いと思う。小山君も厚生大臣に対する御連絡、補助がその点は少ないと思う。それについての御意見を伺いたいと思う
  56. 中山マサ

    中山国務大臣 御承知通り社会保障という言葉すら終戦直後はだれも知らなかったというような話すら流れておりますが、わが国で十五年たちまして、社会保障制度もお粗末ではございますけれども逐次改善方向へ向かってきておるということはお認めいただくでございましょう。年金制度にいたしましても、ほんのまだ始まったばかりでございまして、それにもかかわらずいろいろ国民の声を聞きまして、こういう点、ああいう点といわれるところを私どもが取り上げてやっていっておるのでございますが、今全然もらえなくなるものがあるじゃないかというお話でございます。しかし拠出制年金という見出しでございます以上は、全部のお方に御満足のいくだけのことがなかなかまだできないのではなかろうかということでございまして、また逐次研究に研究を重ねまして、私どものない知恵をしぼりまして、逐次改善方向へ進んでいきたいと思います。社会党におかれましては少しも欠陥のないものをお作りになっているということでございますが、またそれはそれとして私どもは敬意を表するわけでございます。お互いに立場を異にする者、特に国の責任を今担当している者といたしましては、これで自分たちの力ぎりぎりだと思うところを出しているわけでございまするから、いろいろとお気に沿わないこともございましょうけれども、少し時をかしていただいて、私どもがこれをまず、この程度ならばまあどうにかやれるのではなかろうかという見通しで今のところやっているわけでございますので、どうか一つ、また時の流れに従いましていろいろ研究すべきことは研究し、また社会党のお知恵も拝借いたしまして、改善をして、国民のためになることはしなければなるまいと考えております。
  57. 八木一男

    八木一男委員 中山さんが非常に一生懸命取り組んでおられることは私率直にお認めしたいと思う。しかしながら問題の社会保障とか厚生行政というのは非常に重大な問題で、政府の行政の中で今ほんとうに一番重要な地位を占めている。その重大な責任に対比して考えますと、中山さんの個人的に一生懸命努力しておられるのはわかりますけれども、まだ御努力が非常に足りない。歴代の厚生大臣に比して——厚生大臣、りっぱな方もおられますけれども中山さんが女性の立場で一生懸命やっておられることはわかります。ほんとうにその点はけっこうだと思いますが、とにかく厚生行政というものはまだその程度のことではいけないのです。もっとしっかりしていただかなければならぬ。  そこでお願いしたいのは、これはお願いという言葉は僕は一切政府には使いたくないんで、政府には使っていません。中山さんにはちょっとお願いしたい。中山さんは池田内閣のシンボルみたいになっている。ですから池田内閣の死命を制している。中山さんがほんとうに考えて、これを通してくれなければ私は責任持ってないからやめますということを言ってもらいたい。それなら幾ら池田さんでもぐらぐらすると思う。そうしなければ通りませんよ。今までずいぶん名論卓説を吐いても、大蔵省というようなわけのわからぬ省があって、それでまた総理大臣も大蔵省に引きずられがちで、社会保障が前進してない。一つのチャンスであります。中山さんが大臣を何年間か務められるよりは、ここで強硬な態度を出して、幾分でも今まで考えられなかったようなものが入れば、これは国民に対してほんとうに中山さんが政治家としての務めを果たしたということになる。池田さんに反抗してもいい、自民党から除名になってもいい、そのくらいにやらなければ全国民に対して責任を果たしたということにならぬ。絶好のチャンスです。ほかの男が言ったところで、中山さんが象徴になっていたようなことになっていないからだめですが、ほんとうに愛を持つ女性として、国民に対して申しわけないから、池田さんがやってくれなければ辞表をたたきつけます、いけなければ除名を覚悟します、というくらいの腹を据えてくれなければいけない。そういうことで中山さんは国民的な人気がある。それを今までの厚生行政にちょっと色をつけたぐらいで済ましておられたのでは、多くの全女性の期待をはずすということになる。期待を持たれるということはけっこうです。期待を持たれて期待をはずすということは、もう次のチャンスはなかなか回ってきませんよ。重大な責任です、それだけの期待を持たれたということは。だから池田さんに食いついても、閣議でどんなに大きな声を出しても、そこでも自分の意見を通すというだけの覚悟を持たれなければ、ほんとうに国民中山さんに対する期待を裏切ることになる。今までの厚生大臣に比して一生懸命やられておることは認めますが、それだけの期待を全女性に持たれておる。そのような強い覚悟でいていただきたいと思う。私はそういうことを中山さんにやっていただくために、今非常に不遜でございますが、年金についてはいささかの研究を積んでおりますので、中山さんにその点を申し上げておる。それを一つあとでとか、野党の立場では違うとかおっしゃらないで、いいと思われたことはいいとおっしゃっていただいて、それをやるために全力をこれから数週間尽くす、総選挙までに公約させるというところまで突き進んでいただきたい、そういうことであります。そういうことでこれからお聞き取りを願いたいと思うのであります。  次に、今のもらえない人のことをやります。制度がだんだん進むからしょうがないと言われますけれども、これは申すまでもなく非常に重大な問題をはらんでおる。というのは政府は五割の国庫負担をしており、それを非常にいいというように言われる。それがこの制度がだめなために、それが逆に非常に悪いことになる。保険料百円について五十円の国庫負担をされる。百五十円について七十五円の国庫負担をされる。それはいいことであります。しかしそれをくれるのは、年金がもらえるときにつくのであります。年金がもらえない人にはつかない。十年未満しか保険料の払えない人にはつかない。無拠出と同じものになる。国の大事な費用です。国庫負担ですよ。それが一番貧しい人にいかないで、住友吉左衛門君や松下幸之助君には完全にいくんです。社会保障というのは金持ちから貧乏人に、生活を潤すために所得再分配をするのが目的であります。それが逆になるわけです。税金は直接税で出るものばかりではありません。タバコも砂糖もみな税金がかかっておる。零細な人から払った税金——中でめちゃくちゃになるにしても、税金の一部である。それが住友吉左衛門君や松下幸之助君のために国庫負担として費されることは確実であります。その税金を納めるに難儀しておる人、タバコは十本吸うところを一本でがまんしよう、砂糖が少ないから子供の甘いものを控えさせようと考えている大衆、その大衆の負担の金が金持ちにいって、金持ちの金が貧乏人にこない。このような根本的な矛盾をこの年金制度は含んでおるわけです。これはあまり自民党の方は御研究が足りないと思う。足りてもまた知らぬ顔しておられると思うこの年金制度についての世論は、年金制度がむずかしいから、掛け捨てがいかぬというような——これはもちろんいかぬが、素朴な点が主点になっております。または積立金の運用という点が主点になっております。しかし年金制度自体としては、ほんとうに大事な人に年金がいかない、大事な国庫負担が金持ちだけにいって、貧乏人にいかないというところに、この政府の拠出年金の、年金としての根本的な欠点があります。その点について中山さんの基本的な賛成の御意見を表明していただきたい。
  58. 中山マサ

    中山国務大臣 賛成の意見という御要望でございますが、先生は先生としての立場、また私どもは私どもとしての立場、見解もございまするので、意見の相違ということも認め合って、お互いに人の意見を聞いて、取り入れるべきところは取り入れるように努力するということは、私もお約束をしたいと思いまするが、言うことを聞いてくれないから池田総理にかみつけとか、これは暴力を否定しております私といたしましてはできないことでございます。そういうわけでございまして、力説はいたしたいと思います。しかし言うことを今聞いてくれないからやめる、それではあまりにも無責任だと私は思います。やめないで懸命な努力をしていくところにその人の味があるのじゃなかろうかと思います。先生もまた、私が即刻そうでございますとも申し上げないのに、国会議員をやめないで、ここでやはり高い声を上げていらっしゃるところに先生の値打ちがあるのですから、どうぞ一つお互いにこういう点を寛容していきたい。先生は先生の立場——野党でいらっしゃいますし、私どもはまた政府、与党の立場で、いささかやはり見解の違うところもございましょうが、そこは一つ、いつの日か社会党が天下をおとりになったときに、また場所をかえて、私がどなり得る日もくるかもしれませんから、そのときを楽しみにいたしております。     〔滝井委員長代理退席委員長着   席〕
  59. 八木一男

    八木一男委員 賛成ということではなくても、今の見解についていろいろ一生懸命理解をして、いいところを取り入れるといっていただいたことでがまんをします。ほんとうは勇猛果敢な返事をしていただきたいのですが、やはりいろいろお立場もあるでしょうから御無理かと思います。その点で、今政府案の欠点はそこにあるわけです。その具体的なる解決の方法は、もっともっとよくしなければならないけれども、十分あるわけです。たとえば六十五歳、三千五百円ということになりますね。そうすると三分の一国庫負担でそれは出るわけですから、千百六十六円というものは国庫から出るわけです。そうなりますと、結局その千百六十六円分は保険料を払わないでもらうことになるわけであります。そうなれば、そんな金は金持ちに上げるよりは、貧しい人に上げる方が政治の常道であるということは、中山さんすぐおわかりだと思います。そういうことになるわけですね。三分の一は国庫から出る。三千五百円のうち千百六十六円は国庫からただで出ておるわけです。これは政府が大いにPRされるだろうと思います。PRされるであろうことを予期して、それに対する反駁を用意しておりますが、とにかくそういうことになります。それで千百六十六円は結局つくわけなんです。今の政府の予算としては、とにかく国民が全部納めたらそれだけ用意しなければならない。法律もきまっておるわけです。そうなれば、そういう貧しい事情で納められない人に対して——大蔵省はもう千百六十六円は踏み切っておるわけです。だから千百六十六円は保険料を払っても払わないでも、三千五百円上げられないでも、すぐ六十五歳から出すということは、大蔵省も年金法を承認した以上わかっておるわけです。そのくらいのことはいかに池田内閣でも考えなければ、国民に対して顔向けができないはずです。ただ問題が複雑だから、平気で国民の方に池田さんは顔を向けられておるが、そういうことがおわかりになったらほんとうに顔向けできない。大事な国の金を、金持ちだけに上げて貧乏人には上げない。金持ちの方はやめても貧乏人に上げるのがほんとうです。そういう根本的なひん曲り、弱点が政府年金にはあるわけです。大体社会保険方式がいけないのです。厚生省で大体作られたときに、何か保険会社の方を入れられて研究をされたことがある。社会保険社会保障というものは、大体考え方を違えていかなければいけない。もちろん今社会保険社会保障はかみ合って組み合わせになっているわけですけれども考え方としては、やはり社会保障に徹底していないと、一字違いで違う。社会保障というものは、そういうものが必要な者にその保障がいくということ、社会保険というものは、保険料を払った割合に応じて給付を受けるということです。保険というものはほんとうの社会保障じゃない。ただし、国庫負担分その他があるから社会保障ということが幾分言えるわけです。その国庫負担分が金持ちにだけいって、貧乏人にいかないのじゃ、これは社会保障じゃないということになる。国庫負担分があるとか、底上げがあるとか、そういう点が社会保障の味を持っている。それ以外は社会保険です。社会保障というものは、社会保険とは違う。社会保険の体系で成立しているから仕方がないようなものの、社会保障としての味が大いに出てくるように変えていただかなければ困る。少なくとも千百六十六円というものは、全国民に保障されなければ、所得再配分をやるべき社会保障と称した制度の中で、金持ちの上持ちをやる、貧乏人から金を巻き上げて金持ちの方に捧げるということになってしまうわけです。これはきっと池田さんがわからないんだろうと思います。池田さん頭がいいかどうかわからないけれども、計数の魔術だけはうまいかもしれないけれども年金の問題はわからない。池田さんに、かみつかないでもいいですから、とっくりと教えていただいて、どうしても通さなければ、そこでも承知しないとおっしゃれば、池田さんは頭がいいと言われておりますから、よほどのばかや気違いじゃない限り、これはうん、そうしなければいけないと言われるはずだ。池田さんは年金制度を知らないから、今のままでいいと思っているんだろうと思います。これは野田卯一君も言った。この間論戦をやりまして、そうしなければいかぬと思うけれども、なかなか事情があってと、そういうことを言われておりました。これでも少ないのですよ。少ないけれども、直ちにそのくらいのことはされなければ、これはつじつまが合わぬ。  その次に、掛け捨て防止の問題ですが、死亡一時金制度を設けられたのはけっこうです。ところが生存のときの掛け捨ての問題、生存して十年未満しか納められないときの掛け捨ての問題については、現在どう進行しているか、ちょっと伺いたい。
  60. 中山マサ

    中山国務大臣 それは今研究中でございます。それで、金持ちにまでやるというお話が先ほどございましたけれども、すべての国民は法の前に平等なんでございますから、やはりきまったものを規定通り納めていけば、結局その年金制度において約束されたものがいくということは、これは私はいかんともしがたい問題であろうかと思うのであります。それで、生きている間の掛け捨てということは、今研究中だそうでございます。
  61. 八木一男

    八木一男委員 中山さん、その前の方の御答弁、そういう御答弁が困るのです。形式的に拠出年金制度というものは国民に固定したものじゃないのです。拠出年金制度という言葉は、学者は拠出という言葉だから出さない限りやれないと言うが、学者がそんな言葉を作っただけだ。問題の本質は、貧乏な年寄りが食べられるかどうか、完全に食べられないにしても、それが助かるかどうかという問題が根底だ。それを解決する問題として国民年金法を作り、そしてその中に拠出年金制度ができているわけです。言葉にとらわれて、拠出というものは保険料などをかける制度である、従って、一文でもかけない者は国庫負担を受けることはできないということは、人間が自分でこまかい、くだらない規定を作って、それに縛られているわけです。政治の本願は、そういう法律字句じゃありませんよ。裕福な老人に国庫負担がいくなら、最低限少なくともそれと同じもの——それと同じものじゃいけないのですけれども、幾ら自民党の内閣でも、それと同じものを差し上げるようにしなければ、国民に対して非常な欺瞞であるということになる。直そうと思えば直ちにできます。拠出年金制度の中にでも、保険料を納められないときは千百六十六円を支給すると一行書けばできます。私に委託して下されば、二十分で法律案は作りますよ。そんなものはみな学者の観念論で、拠出といった以上は、金をとらなければやれないのだということなら、拠出という言葉をやめればいい。そんな言葉のことで、国民のほんとうの大事なことを失われてはいけないと思う。小山君は非常に頭のいい役人でもあり、この年金に一生懸命のこともわかっております。いろいろ政府や自民党の圧力があるから、しんどいから厚生大臣答弁に窮しておられるので、助け舟を出すのはわかっております。小山君の善意はわかります。しかし、そういう言葉の問題で、問題は片づかないということを、一つ中山さん考えていただきたい。やろうとすれば、与党の力をもってすれば即時にできる問題です。拠出年金制度でも、わからず屋の御用学者が何と言っても、それは政治家が決断さえすればいい。学者というものは、ただ自分の学説ということで、拠出というものは保険料をとるものだと言うけれども、拠出年金制度法律の中に、それだけ無拠出に引っぱり出して、六十五才からは千百六十六円支給するということで、そんなものは幾らでもできる。そういう法律論としてはつまらない、形式的、観念的学者論というものは抜きにして、ほんとうに国民のためにやろうという決心を起こされれば問題は解決する。問題は、内閣がそれをきめるかどうか自民党がそれを決定するかどうか、大蔵省のつまらない議論に厚生省が打ち勝って、それを進めることができるかどうかということにかかっているわけです。そのような言葉じりで反撃されて引っ込むようなことは、断じてなさらないようにしていただかないと、厚生行政はストップをいたします。  次に、死亡一時金制度は作られたが、生存の一時金については今研究中だと言われたが、研究するというのは、ずっと前に言われた。さっき僕が、ちょっと寝不足のものだから記憶が薄れていたが、厚生大臣が三十分ほど出てこられて、あと政務次官にかわられたという、あの日の委員会のときに、小山君が考えていると言われた。それからずいぶん時間がたっている。ところが世論が、死んだとぎの掛け捨てはけしからぬということが高まって、ほんとうに年金制度考える意味ではなしに、世論の当然の攻撃をかわして、また選挙を少し有利に何とかしたいという考えで、こっちから出ている問題だけを取り上げて、何かつじつまを合わせるところに、政府政策の悪さがある。死亡一時金を考えるのはもちろんいいが、生存の一時金も考えなければならない。生存しても、さっき言ったように、貧しい人が九年間千円ずつ三十九回納めても、それが三十九回であったために、全然返ってこないじゃいけない。それについて、返ってくるように考えましょうと小山君は言ったはずです。しかしその考えの中には、三年分は没収します、従って十一回分一万何千円は没収するということが入っているわけです。これも社会保険思想です。しかし生命保険は、契約されて途中でやめた改約保険は、渡さないということが生命保険のやり方です。これは任意で、保険約款を形式的に見て、そういうことを了承した上で入っているのだから、これはかまいませんが、政府は強制です。苦しい人に強制で入れて、一千円ずつ三カ月ごとに納めさせて、その人が二十何回、三十何回かけて、息が切れてもう払えないということで払わなかったものを没収して返ってこない。しかも考えている案も、三年間、十一回一万一千円没収する。そういう貧しい人が、年金をもらいたいために一生懸命苦心して納めて、十二回目にどうにも払えなくなってとめたら、その金が没収されてしまうという案です。それは生存のときの一時金です。世の中では、年金制度はむずかしいから、いろいろな反対論が全部完璧に高まっておりませんで、わかりやすいところだけ出ていて、わかりにくいところで大事なところは抜けている。そんなことは中山さんが研究されたらわかるはずです。野田卯一君ならわかっているはずです。小山さんはもっとわかっているはずです。声がなくても、やはり変えなければならないところは検討していただかなければ困る。死亡一時金の問題は片づいても、生存の問題で、そういうことにみな気がついたらまた反対運動が起こりますよ。生存の問題についてはどうなさいます。
  62. 小山進次郎

    ○小山説明員 八木先生は、事実を正確に御理解になっていないようでありますが、現在先生がおあげになるような人々に対しては、返すことに法律できめてあるわけです。問題は、先生がおっしゃったように、その間ほかの年金について被保険者履歴を持っていた、その費用を差っ引くというので、たまたまそれが三年分に当たっておるので、それを控除している。これが非常にけしからぬという先生の御意見でありますが、この点については、私もあの際に申し上げたように、できることならば何か考えたいというので、現在でもずっと考え続けております。ただこれについては、先生もよく御存じのようにこの点はたまたま先生と私は全く同じ立場で議論しているわけでありますが、社会保障制度審議会の学識経験者その他の方々がこぞって、あれは全額を返すべきじゃない、保険料の還付というのはやるべきじゃないということで、答申にもわざわざそういうことを入れております。それにもかかわらず、あの際先生の御意見もありましたし、私どもこれはどうしても返すような思想で考えたい、あるいはそこに私保険考え方が入り過ぎていると言われても、この点に関する限りは何とかしたいということでやったわけであります。従ってあと三年分を除く除かぬということについては、そういう意味でいろいろ考えさせていただかなければならぬ問題があるのでずっと研究を続けてきた、こういうことでございまして、決してこれを置き去りにするという気持はございません。
  63. 八木一男

    八木一男委員 理解の相違があったようですが、中山さんも焦点はおわかりになったと思うのです、失礼な言い分ですけれども。三年の問題はまだはっきり解決がついていない。十一回分納めた者は没収されるわけです。さっき言ったように、非常に貧しい人々が一生懸命年金をもらおうと思って納めたものが没収される。これは非常に苛酷であります。社会保障制度審議会が何と言おうとも、それは断じて社会保障制度審議会の間違いであります。その点で三年未満の没収はやめるように御努力を願いたいと思います。社会保障制度審議会のあの当時の答申は、私は解散中でいなくて、非常にけしからぬ状態できまったと思っております。大内さんに聞いていただいてもかまいませんけれども、三年未満を返さない、三年以上も返さないというようなことは、社会保険思想が濃厚に出て、社会保障思想が出ていない。非常に間違いだと思う。この点については小山さんも同じような思想でございますので、中山さんも一つ確信を持って三年未満の没収という問題についてはなくなるように御努力を願いたいと思います。  その次に、もう中山さんのあげ足とりはやめにいたします。あげ足とりではないけれども母子年金遺児年金の問題を言われましたが、障害の問題を言っておりません。中山さんは女性でありますから、母子や遺児のことについて熱心であるのはけっこうだと思いますけれども、どうも政府年金では障害者に対する措置が一番冷酷なんです。これも考えていただかなければ困る。これは御答弁が足りなかったのかもしれません。母子、遺児について、三年のものを短縮すると言われました。それであったら当然障害のものも短縮をしなければいけませんので、言い足りなかったのでしたら、はっきり入っていると……。
  64. 中山マサ

    中山国務大臣 入っていますから……。
  65. 八木一男

    八木一男委員 そのほかにも、それだけでは足りないと思うのです。たとえば前から言われている内科障害の問題は、拠出年金でさえ支給されないという今の理解のもとに行なわれているわけです。そういうものが内科障害の人に拠出年金ですら支給されないのでは話にならないと思う極端に言えば、障害については、私ども考えたものは、保険料を一切払わなくても、その前に、結局十九歳以下で両足切断のような障害を受けた人が二十歳になられたら、とたんに月七千円、年八万四千円の一級障害年金を差し上げることにしておる。それは保険料のいかんではございません。年金というものは保険料というよりは所得能力があるか労働能力があるかということできまっているわけです。そういう人はとたんにそういうことになるわけでありますから、将来無拠出の障害年金が拡大されればいいですが、今のところ見込みはない。そうならば、十八歳くらいで両足切断になった人が二十歳で年金に入る場合については非常に困ると思うのですが、この点について理解がまた違っているといけないから、小山さんちょっとはっきりさせておきたいけれども、十九歳の人が両足切断の障害後、二十歳で拠出年金制度に入り、掛金を払ったときには一体どうなるか、現行法でのこまかい行政解釈を伺いたい。
  66. 小山進次郎

    ○小山説明員 十九歳のときに両足切断というような方が二十歳になった場合には、これは二十歳になったときから障害福祉年金が出ることになっております。拠出年金は出ません。
  67. 八木一男

    八木一男委員 それで困るのです。障害福祉年金にしても、今両足切断の例を言いましたから、福祉年金が出るという答弁が辛うじておできになったが、片手足の切断のときや二級、三級については障害福祉年金制度はないわけです。そういう人には政府の案では一文も年金がない。その片手足切断の後、拠出年金に入って保険料を払っても、障害年金はもらえないのでしょう。もらえるのですか。
  68. 小山進次郎

    ○小山説明員 その後、拠出年金に入ったあと得ました障害については、障害等級表にきめているものに応じて年金が出る、こういうことになるわけであります。
  69. 八木一男

    八木一男委員 中山さん、これはもうこまかい問題をよく御理解願いたい。そうなると障害者はほんとうに助からぬということになる。片足の人は障害福祉年金はもらえないでしょう、これは三級ですから。その人は障害年金をもらうためにどんなに掛金を払ってもらいたいという意思を持っている。ところが不幸にして十九才で切断をされた。二十才で年金制度に入った。いかに熱心に掛金を払っても、老齢になるまでは年金はもらえない。老齢になるか、あるいはその人が御婦人であって、だんなさんが死んで母子にならない限りはもらえない。それでは片足のままで、労働能力、所得能力がないままで四十年間過ごさねばならない。四十年間、男性であればそういうことのために収入がないから結婚もできないでしょう。女性の場合でもそういうことになるでしょう。結婚とか育児とか、基本的人権まで何もできない。もっと前の、あじけない世の中でも自分の食べていくことすら困難だということになるわけです。この年金制度で、乏しいながら全部の人に年金が出るというけれども、そういう点で皆年金ではない。少なくとも障害に関する限りは保険料を払うという要件を取っ払わないとそれができない。入ってからの障害でないと、障害を受けていないときに入って、それで保険料を払って障害を受けたらくれるというような傷害保険的な、民間の保険的な考え方に立っていては障害者は助からぬわけです。障害のある人に必ず年金をやるのだという社会保障的な考え方に立たないとどうしても助からぬということになる。そういうところに社会保険の非常に悪い点がある。一本の足で入って、もう一本足が切れたときにはもらえますよ。そんなことはだれも望みません。一本のままでも残しておきたい。そういう人には、どんなに年金希望し、政府年金法案に協力し、どんなにまっ先に登録をして保険料を納めても、その人には障害年金が入らない。こういう点がある。社会党の案は、初めから、掛金はうちの方は年金税ですが、払わないでも、二十才、その人の生産年令、原則的に親にかかって食べさしてもらうことはできない、原則的に自分も結婚して子孫を残す権利を持つ時期、その時期になったら、自分の収入で食わなきゃいけない、それが足がないために労働能力がなくて、商売もやりにくいし働きに行くこともできない、そういう人については必ず年金を差し上げるという案を作ってあるわけです。ほらばかり吹くわけではありません。そういう点をぜひ理解をしていただいて、前からの障害はそのままどうしても入る。それはしあわせな人の分が回ってきてもいいです。それまでほかの人がいけないといったら、それはほかの人に社会連帯精神がないのです。もちろん国庫負担をふやしていただくことは大事です。国庫負担の部分がそっちにより多く回っても仕方がありません。仕方がないのではなくて、回すべきだ。そういうことが抜けている。中山さんは国民に対して非常にあたたかい心を持っておられるわけです。私どもは、議会の与党と野党が論議をするので、どうも選挙のために攻撃をするようなふうにも思われるだろうと思いますけれども、そういうことではないのです。そういうことを中山さんに理解をしていただいて——小山さんもそういうことは知っておられるのです。ところが小山さんの練達な研究でも、閣議とか大蔵省とか自民党とか、そういうような巨大な権力に対して、小山さんの明知をもってしてもなかなか壁が突破しにくいわけです。大臣に同じことを理解していただいて、徐々に突破をしていただかないと問題が進まないわけです。そういうことを選挙の前じゃなしに、実は七月ごろ申し上げたかったのです。ところが中山さんが途中で退席されたあと、政務次官と小山さんだけになって、政務次官も途中で退席された。これは小山さんには三年前に言っているわけです。だから新しい中山さんに聞いていただかなければ、から回りになるだけで何にもならない。だから中山さん、中山さんとさっきから待っていたわけです。昼飯も食わないでがんばっているわけですから、どうかそういう点について考え一つ推進をしていただきたい。  それから次に無拠出年金であります。無拠出年金についても、障害者はさっき言ったように一級しかない。一級でも千五百円では話になりません。二級、三級はない。ないから障害はくれないということでしょう母子年金についてはどうか。母子年金については、無拠出年金は準母子家庭の問題だけを言われる。準母子家庭の問題は、初めからできたときから岸君や坂田君が答弁ができなくて、そのうちに考える。この三月に渡邊厚生大臣がここで確約されたのだ。はっきり言うと中山さんが実行されるということになるかもしれないが、そういう態勢はできていたわけです。していただいたのはいいけれども中山厚生大臣母子年金について新しくしていただいた問題の範疇にはやや入らない。さらに精を出していただいて新しい何ものかを母子家庭のために考えられる。中山さんが獲得をされなければならない。それには千円のものを二千円にする、三千円にする。あるいは十三万円の所得制限をもっと上まで上げる。あるいは母子世帯の問題が解決する。あるいは子供たちが十六才になれば支給しないという過酷な要件を、もっと子供が大きくてもあげる。やるべきことはたくさんある。母子福祉年金だけでも山とある。それが準母子家庭の問題だけでとまっておられちゃ困る。これは全母子世帯の期待をになっておられる以上は、その問題について、少なくとも一点ではなくて、数点は解決をしていただかなければ困る、そういう点であります。  そういうことで、時間がずいぶん経過しましたから、これからさっきの滝井さんの御議論といささか違うことを少し申し上げます。違うといっても根本的には違っていない。社会保障をやられるときに順番は何か、私は今生活保護だと思う。その次には医療であります。国民健康保険なり、健康保険の家族の給付が少ないという問題あるいは質的に制限診療があるのはけしからぬ、制限診療をなくして十分もなのを全部できるようにしなければならぬ、そういう問題があろうと思う。また救貧政策一つである福祉年金をふやすということであろうと思う。まず防貧という言葉を学者ども、学者たちが言う。これは観念論であります。日本に防貧政策が今までなかった、不十分だった。ほかの政治が非常に貧困であるために、零細企業や農業の経営が悪い。労働者の賃金が少ない。そういうことと、それから防貧政策がなかったために現在貧困がある。貧乏がある。現在貧困があったら、今の日本社会保障の第一要件は救貧が先でなければなりません。観念論で防貧政策ということばかり言ってはいけない。もちろん防貧体制を作ることに全力を尽すのが当然でございまするが、救貧の問題を片づけるということと、防貧の問題をやる。両方やらなければならぬ。それを将来の防貧だけにすりかえてはいけない。その要点は生活保護であります。それから福祉年金であります。それから次に今度は防貧の中で喫緊の問題として、医療の問題が所得保障よりも時間的には大事だと思います。その意味で滝井さんの意見と同じであります。しかしながらそれをやるために一つ考えていただきたいことは、生活保護の問題、医療の問題あるいはそれに数百億円あるいは千億円以上が要る。そういうことで非常に困るということになります。しかしながら来年度には三千億の自然増収がある。自然増収だけでなしに、租税特別措置法の改廃をやれば千億円になんなんとする新しい財源ができる。ゴルフ税をかければこれも五、六百億から千億くらいできる。そういうような財源を作ればできるのです。ありとあらゆるものが完全にできるわけです。それをしないでいるところに政府にいけないところがある。今三本の柱と言われた。滝井さんは四本の柱と言われた。私は五本の柱だろうと思う。政府社会保障公共投資減税とで三本の柱、それから公務員のベース・アップ、人事院の勧告の問題で滝井さんは四本と言われた。中山さんは否定されて三本と言われた。どっちでもいいです。三本、四本の中にもう一本柱がある。そのもう一本の柱は足が長い。これは金持ちの土持ち政策です。一本長い足ができている。いかに三本あってもぐらぐらしてひっくり返ります。同じ長さではない。減税社会保障公共投資三本でがっちり倒れないように——その場合に一本まんまん中の長い足があるから、それがひっくり返る。それが金持ちの土持ち政策だ。租税特別措置法、ゴルフ税をやらない。それから自然増収を金持ちのもうかる方に持っていく。もっと焦点としてはロッキードの問題なんかあります。アメリカですらすでに古くなって使われないという問題を無理やりに通そうとする。私どもは再軍備に反対であります。しかしながらあなた方は賛成らしいように伺っておる。賛成なら賛成で、それならば有効な軍備をすればいい。アメリカの古物を今になって作って何になる。そうするとアメリカは一流国だが、日本は二流国だから古くてもいいとおっしゃるかもしれない。古くてもできるだけ新しいものを使うようにする。ロッキードはアメリカで大量生産をしておる。型が古くなっても新しいものがある。それを買えばいい。それを六年後に日本で作るというそんなものは役に立ちません。それでもうかるのはだれか。三菱重工業がもうける。そんなことでは社会保障なんか語る資格はありません。まんまん中の太い柱はちょん切らなければいけない。金持ちの土持ち政策、それでなければ政策はぐらぐらする。やろうと思えば幾らでもできる。そういうことを根本的に考えていただかなければならないと思う。次に、それについてもいろいろ財源の競合はありましょう。この拠出年金をよくやるためには、よくやる方法をお教えしてある。日本社会党の拠出年金は完全積立方式ではありません。掛金に対しては、年金特別税については積み立てをする。しかしながら国庫負担については賦課方式をとっておる。賦課方式をとっておるのは後代の財政支出であります。従ってこの方式をとれば十分な案を現在の財政競合を受けずしてできる。それを再三再四あらゆる厚生大臣に、あるいは岸君にも言いました。今になって小山君もそういう考え方を取り入れようとしておられるらしい。しかしその取り入れ方をこの間も言って、そうじやなかったらしいから安心するけれども、間違った方向に取り入れられては困るのです。いい方向に取り入れられれば、現在の支出は財政的な競合を見ずして拠出年金をよくすることができる。そのために国庫負担の方の賦課方式、そういうことをしておる。そういうことも十分に考えに入れられれば、たとえば六十五才、三千五百円なんというけちなことをしないで、六十才から七千円くらいのものを作る。あるいは今のような掛け捨ては一切出さない。あるいは障害に対する、母子遺児に対する給付の要件を緩和する、なくするということができるわけです。ちゃんとそういうことを出したらどうか。そういうことを考えていただけば、今のように救貧政策生活保護、あるいは福祉年金あるいはまたその次に大事である医療保障の問題、それとともにこの拠出年金の問題を即時かかれることができるわけです。ですからいろいろなものが競合するから、これをやってこれをやめるわけにいかないと思う。一番大事なものから重点を置いてやらなければいけない。しかしその大事なものをたくさんやるから低い程度でいいということは許されない。すべてのものを高い程度でやることができるわけです。生活保護、二六%は消えてしまった。一日の食費四十六円、一級地、東京の五人家族の平均だそうであります。一人一日の嗜好品が十八銭、たばこ一本吸えない。子供がキャラメル一個食えるような内容ではない。生活保護を二六%上げるというので、とんでもない少ないのだけれども、それでも政府はよく踏み切った、ほめてあげたいと思っておったところが、これが完全に消えてなくなってしまった。これこそ完全に社会保障の後退であります。池田勇人君がインチキをやる。二倍にもしなければいけないところに、二六%やるといった、やや政府努力を世の中が認めたときに、すりかえて数字がなくなってしまった。徐々に上げる、そんなことは当然であります。この選挙ではっきりと二六でなしに五〇くらい引き上げると公約なさるなら、それは池田さんの良心を信ずるでありましょう。そういうことをしないで徐々に引き上げる、そんなものは社会保障の後退であります。社会保障をやると言ったけれども、それはうそである。公共投資を先にする、それは日本の経済の発展にも役に立つし、土建業者はもうかるから、そのためにやる意味もあるのだということをはっきりおっしゃるなら、それの方が男らしいと思う。後退させたものを前進させるような考え方で言われるのは、主権者に対して非常に卑怯であります。そういう点で、今まで社会保障についてこの三つの点、これはないよりもましであります。しかしながら、公約をされて、国民が期待されている程度から考えますと、猛烈な後退だということが言えるわけであります。その点について厚生大臣のお考えを伺いたいと思う。
  70. 中山マサ

    中山国務大臣 生活保護世帯に対して二六%ということを総理が言ったとは、私は記憶いたしておりません。それで、そこまで総理はパーセンテージまではっきりおっしゃったとは私は記憶がないのでございますが、今いろいろと御高説を拝聴しておりましたが、私どもは、まだこれからだと思っております。これから私どもがほんとうに努力をしていくのでございますので、池田総理も好んで言っていらっしゃいますように、過去のことは言うてくれるな、これから先の自分の努力を見とって下さいというような御表現をなすったことも、私はどこかで聞いたか、読んだかのように思いますが、私どももこれからだと思っております。お立場の違い、いろいろな面もございますが、国民年金で救われない人は、また生活保護あるいはそのほかいろいろと社会保障も幅が広うございますから、私どものすべての知能を集結いたしまして、良心的にこれだけはやれるのだということに、厚生省厚生省として努力をしているということは、どうぞ御了解願いたいと思います。  私に対しましてはいろいろあたたかいお言葉をちょうだいいたしましたけれども、私だけでなく、厚生省そのものがやはり生に厚い省でございまして、決して薄生省ではございませんので、私どもは厚くしようという努力をしておるのであって、国民、いわゆる私どもの同じ民族の人の個々の人権を尊重して、できる範囲内で最大限の努力をしようという覚悟は厚生省全体がいたしておりますから、どうぞ一つその点をお間違いなくお願いいたします。
  71. 八木一男

    八木一男委員 もうこれで質問は終わりにいたしますが、さっき滝井君も言われましたけれども厚生省試案、自民党試案というようなことで努力をされるのはけっこうであります。しかしながら国民の主権者にははっきりとしたことで訴えなければ、御主人である主権者を偽ることになります。ですから、試案とかいろいろな調査会案というのをぼかぼか出して、これもしてくれるだろうと期待をしているのにそれがあとでひっくり返ることになりますから、きっちりとこれだけはする。これは半年後にするというようなこと、いろいろな問題について結論を出して、国民に正々堂々と厚生行政についても信頼を問うていただきたいと思います。あいまいなことで、あとでやらないということでなく、公約したことは必ずやるということでなければいけないと思う。  おもに年金に集中しましたけれども国民健康保険給付率を上げることが必要であります。制限診療ということは非常にいけないと思う。国民保険となったって、これは皆保険じゃございません。給付率が五割であれば、これは半分保険であります。それから質的に最新なものが制限診療で使うことが許されないのでは、これは話になりません。そういうことであります。  それから日本医師会との問題、診療報酬の問題、それからその他について。私は医師会の方々の御要求は相当に根拠があると思う。二十六年以来そのまま据え置いているわけでございますが、これについても十分にそういう団体と御協議になって、あの人たちも満足され、医師会の方々も満足され、早く問題が解決するように努力していただきたいと思います。  それから抜けましたけれども、日雇い労働者健康保険、一番貧困な人たち健康保険の問題、これは進展はしていないし、またその進展の方向保険料の値上げというような方向考えておられることは非常に遺憾であります。それではなしに国庫負担がふえて、給付が今のほんとうに貧弱な内容が十分になるように、手続が簡単になるように、そういうふうに御処置を願いたいと思うわけであります。  最後に国民の健康の衛生上の問題でございますが、非常に憂慮すべきことがずいぶん多いと思う。たとえば食品にいろいろの色彩をつけるというような問題が健康上害があるとか、あるいは農薬が野菜やくだものについて、それを知らずして食べることによって非常に国民に害があるというようなことを言われる識者がかなりあるわけです。こういう問題はすぐに見えないから、だんだん問題化するのが少ないようでございますけれども、そういうようなことで理解が足りないために、研究が足りないために、行政措置が足りないために、国民の健康が次第々々に虫ばまれるというようなことがあってはゆゆしき問題でありますので、そういう問題についてぜひ公衆衛生局その他で御検討になって、国民の健康についてはいささかも心配がないように体制をぜひ作っていただきたいと思います。  それから小児麻痺のワクチンの問題については大へん御努力になっておるようでありますけれども、さらに努力を重ねていただきたいと思います。  それから医療上の問題で気がつかない点は論議をしなければならないけれども、時間切れでほとんどされてない問題がございますけれども、それはよくお考え下されば、対処しなければならないことが山積していると思う。それをどんどん進めていただくことを御要望申し上げまして、一応きょうの質問はこれで終わります。その問題についての御答弁をちょっと……。
  72. 中山マサ

    中山国務大臣 いろいろとお話を伺いましたが、日本におきましては昔は人生わずか五十年といわれておりましたのに、最近厚生省が発表いたしました中では、女は六九・九、男は六五というように非常に長命になって参りまして、老人人口が非常にふえたということは、あの戦争の終わりました当時としますれば、公衆衛生の面で隔世の感が出てきているといっていいので、十五年間の業績というものは、これはおろそかにはならないと思うのでございます。今いろいろおっしゃいましたが、食品に関する衛生、こういうことも非常に私ども心を砕いておる問題でございまして、いろいろな面について努力いたしたいと思います。何と申しましても、英国風に申しますればゆりかごからと言いたいのですが、実はゆりかご以前の、何と申しましょうか、受胎いたしますれば、その当時からの問題で、墓場までの問題でございますから、非常に広いのでございますから、あるいは私どももみな各局に分かれ、課に分かれ、必死になってやって下すっておるのですけれども、目の届かないところがあり得ることは私どもも認めます。それで御指摘をいただきますれば大いに改善したいという熱意はみな持っておることでございますから、さよう御承知いただきたいと思います。
  73. 本島百合子

    ○本島委員 関連して。先々月の委員会また先月の委員会ともに政務次官に申し上げたわけですが、社会保障についての予算が獲得できない、先細りをしておる、こういうことを国民一般が受けているから、婦人大臣のこの機会に伸ばしていくべきだ、先細りはけしからぬということで質問いたしましたところが、そうさせない予定でがんばる、こういうことでしたが、現実には先細りというか、火が消えてしまったんではなかろうかと思うくらいになっておるので、そういう意味で社会党の委員たちの御質問だったと思いますが、私も実は生活保護費の問題について、この二六%を増額するということで、これは非常な恩恵だなんというようなことを言われたんですが、それすらも今日はわからなくなっておる。御承知通り物価はすでに上がっておるのです。つい先ごろ大平官房長官に、物価値上げについてはけしからぬということで陳情に参ったわけです。そのあくる日が閣議であって、物価問題については今夜から検討を始めて明日の閣議で押えるつもりだ、しかし全部押えることができるかどうかはわからないが、当面押えます、こういう御答弁であったのです。ところが、御承知通りパンも上がっておりますし、めん類もすでに、値段は上がらなくても量が減っておる。こういう実情にあるし、物価は上がっておるわけなんです。この際に生活保護費の改正は当然なさらなければならないと考えておりますがこの点の見通しはどうでございますか。
  74. 中山マサ

    中山国務大臣 御承知通り環衛法だとかそのほかのものがございまして、その業者の間で協議して上げたものが相当あるわけですね。これが独禁法に触れるおそれがあるというので、私どもも忠告と申しましょうか、注意を喚起しておるのでございますが、お野菜なんかが上がりましたのは、九州なんかにいたしますれば非常に旱魃がございまして、そういうことで輸送も十分できなかったような関係もございまして、あるいは季節的に上がったものもあろうかと思います。おしょうゆの値上げにいたしますれば、ビン代が十五円上がっております。中身は上がらないで入れものが上がったためにおしょうゆが上がったというような現象も出てきております。閣議におきましてもこの問題に関連いたしまして、こういう物価の上昇は押えるという方針を決定いたしておりまするから、いずれそういうふうにおさまってくると思います。季節の面あるいはその業態が勝手に上げてしまうというようないろんな面が出てきております。  それでさっきのお話の厚生行政の面で非常に先細りしているじゃないかというお話でございまするけれども、私ども厚生省といたしましては、昨年の予算要求よりも一千億余分に、八月の私どもの省の省議では決定いたしておりまするから、先細りどころか先太りをしているのじゃないかと私どもとしては考えております。
  75. 本島百合子

    ○本島委員 物価がどんどん上がって参りまして所得が倍増になっていないのですから、こういう点については厚生省関係の物価値上がり分についてはよほど検討されて——適正価格という線の打ち出し方がなかなかできないということを官房長官は言われたんですけども、やはり物価にスライド、こういうことに生活保護費の計算の順序はなると思いますから、そういう点については、こういう機会に適正価格というものの算定をなさるべきじゃないか。同時に、生活保護費はあまりに低廉であるために低額所得層の生活困窮ということは目に余るものがあるわけなんです。そこでこの二六%増額ということは確実に見込まれるものであるかどうか。同時に、先ほども言われたように二六%が適正価格に順応した値上げであるかどうか。これは大臣の見解をお聞きしたいのです。  同時にもう一つ生活保護費で一番困って参りますのは、夜間の高等学校に入れましても、生活保護費は打ち切られるわけなんです。現在の状態の雇用の関係を見て参りますと、中学出だけでは学力が足りないということで、多少とも高等学校の技術的な面でも修得しておるということが優位になるわけです。親の心とすれば、当然自分は貧しいから子供には学問をさせたい、こういう願いであるにかかわらず、ここで打ち切られる、そうするとどうにもならない。脱法行為であるでしょうけれども、これを他に寄留さして、別居生活を整えた形において受給する、こういう格好が多いと思うこういう脱法行為をさせるということ自体があたたかい政治ではないと思う。そこで夜間の高等学校に進学する人々については、ある程度見てやるべきではないか、そういう点、女の大臣として考えていただきたい。  もう一点は、現在別収入があります場合、五百円程度しか見てないと思います。そこで私どもは長い間婦人会の人々と、別収二千円程度までは見てほしいという運動を続けて参ったわけであります。それがなかなか認めてもらえないのですが、二千円程度の内職で得られるものは免除するという形はとれないか。それをとってもらうことによって、ようやくにして生活保護費の不足する分の補いをつけるという格好になっていくのが現状じゃないか。そういう点が全然なされていないので、かりに今度二六%増額ということになれば、家庭調査が非常に厳格になって、従前受けておられる方々も受けられないケースが多くなるだろう、こういう心配が世間に流布されていたわけなんです。そこで先月政務次官に伺いましたら、そんなことはありません、こうおっしゃるのですが、現実には政務次官のおっしゃることとは違ってきて、私の言う方が正しいだろうと思います。そういう状態である。従ってこの増額を見られる場合に、どうせ改定されるわけですから、そういう点を今回は考えていただけるかどうか、その点をお伺いいたします。
  76. 中山マサ

    中山国務大臣 保護世帯二六%のアップは私ども厚生省としては決定いたしております。それで今お話しの高等学校へ行く問題につきましては、今までは今おっしゃった通りでございましたけれども、いかなる階層の中にいかなる人材があるかわからないのでございますから、今の生活の問題だけでなく、やはりそういう人材があれば何かの機会にまた抜擢していかなければならないのでございます。だから三十六年度におきましては高等学校へ行くことを認めようということになっておりますし、またこの世帯の中でどういうことが出ておるかということを見ますと、自分たちの食べるものを食べないでも子供を学校にやっているような世帯があるということがわかって参りましたので、いわゆる更生資金でございますか、いろいろな面におきまして高等学校に行くことを可能にしてあげたいという考え厚生省としてはいたしておるような次第でございます。今まででも働いておった人たちに対して最高千六百五十円、最低七百円くらいまでは勤労控除で見てございます。それで全部余った金を取り上げたということにはなっていないのでございますが、こういうことが割方世間に知られていないようでございます。それで今度はそういう面もなんとかしてもっとふやしてあげよう。そうして本気になって、この六十万世帯ですか、この中の三十万はり病人、老人、身体障害者で、これはいかんともできない世帯であるかもしれませんが、あとは働く刺激を与えてあげたら、あるいはこの階層から抜け出すだけの努力をしてくれるであろう、日本人は勤勉な国民なんですから、そこに私どもが心をいたしまして、この人たちがほんとうに何かの仕事をやろうということがございますれば、その奨励の意味におきまして、今までもそういう人たちには一万二千円という金が出してあったわけですが、これを五万円くらいにしたいという希望が私どもの中にはあるわけでございます。
  77. 本島百合子

    ○本島委員 これで終わりにいたしますが、今の勤労控除の問題です。厳密にはこれは行なわれていないようでございますから、この点は一つ諸監督庁に調査をさしていただきたいと思います。五百円以上になりますと、大体は差っ引きを受けでおる現実でございます。ですから、そういう点でせっかく親心でそういう勤労控除を認められておっても、行なわれていないということになれば、何の効果もない。ですからそういう点は御調査願って、できるだけやっていただきたい。今六十万世帯とおっしゃったのですが、岩戸景気であるにもかかわらず、世帯数がちっとも減っていないようです。これが最近減少傾向にあるのかないのか、それから同時に、こういう低所得層に対して、今厚生省としてはとおっしゃっておるようですけれども、このあとの問題につきましても、厚生省が腰が弱くてなかなか予算がとれないでいる。前回の答弁では、そういうことはございません、こういう答弁でしたが、現実にはとれていない、物価の値上がりの方が先なんです。そして床屋さんが二月に一回、また衣類の着がえなんかにしても半年に一回というような状態で、これでは何かをしていかなければこの人々はやっていかれないのです。また普通に暮せるはずがないのです。こういう点について厚生大臣は腰強く、この機会に予算を獲得される、ただ選挙スローガンだけでは困るということを言われるのは当然だ。こういう点について低額所得層に対するあたたかい施策としてがんばっていただきたい。私どももバック・アップは幾らでもいたしますが、こういう点にあたたかい政治ということが、女の大臣にとって一番必要なことだと思います。それで、減少しているのか増加しているのか、そういう点を最近の統計でお示し願いたいと思います。
  78. 太宰博邦

    ○太宰説明員 便宜私から御答弁申し上げます。最初に内職の場合の勤労控除でございますが、それは先ほど大臣からお答え申し上げましたように、今の私どもの仕組みでは、その勤労の度合いによりまして、それに必要な経費として、その収入の中からその分だけ有利に解釈して、保護費の中にその分だけ入れてあげる、こういう制度をとっておる。その中に内職は私の方で見込んでおるわけであります。額は飲食物その他の経費と合わせまして約七百円ほどのもの、内職、手伝い、そういうものにつきましてやっておるわけでございます。そういう面についてはそれで御了承いただきたいと思います。  それから岩戸景気とかなんとかということをいっておるにかかわらず、被保護世帯の数は減っておらぬじゃないかというような趣旨のお話であったかと思いますが、世の中の景気がよくなりますと、少し時期的なズレはありますけれども、被保護世帯の方にもいい影響が参ってきておることは事実でございます。しかしながら、たとえば昨年のように伊勢湾の台風なんかがありますと、そういう突発的な事故のために、また急に被保護世帯がふえるということもこれまた当然でございます。私ども長い目で見ますれば、被保護世帯というものは昭和三十年からずっとこちらは漸減ないしは横ばいという格好になっておるわけであります。その間におきます人口の増というものがあるわけでございますから、そういう点を考えてみますれば、いろんな政府の施策なり、あるいは日本人の勤労によって国民生活水準あるいは国民経済の伸びというものがありますれば、やはりこの方面にはいい影響があるもの、こういうことは申し上げて差しつかえないと思います。個々の岩戸景気とかなんとかいうことは、具体的なことになりますと、それが的確に、この分は岩戸景気の分、この分は伊勢湾台風の分というふうに私どもの方に出て参っておらないので、なかなかお答えしにくい点でありますけれども、筋としてはそのようなことで、何か最近の数字ということでございますが、ことしの五月までの統計がございますので、生活扶助で申し上げますと、昭和三十年度平均は百七十万の方々生活扶助を受けておったということでありますが、それから漸次減って参りまして、昭和三十三年に百四十三万八千ということになります。三十四年にちょっとふえて百四十六万九千、これは先ほど申し上げたようなことがあろうかと思います。その後またずっと減って参りまして、ことしの一番新しい五月のあれで申し上げますと百四十四万七千、このようであります。しかし最近の数カ月間をとりましても季節の変動がございます。三月のようなときには百四十八万と、ふえているときもございますが、大体の傾向としてはその辺で御了承いただけるかと思います。
  79. 本島百合子

    ○本島委員 一つがんばって下さるように——生活扶助、被保護者、なべて低額所得層に対するあたたかい施策というものは、やはり先ほど言われたように軍事費を切ってもやらなければいかぬと思います。そういう意味で要望いたしまして終わりといたします。
  80. 大石武一

    大石委員長 これで厚生関係の質疑を終わります。      ————◇—————
  81. 大石武一

    大石委員長 次に、労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。発言の通告があるので、順次これを許可いたします。本島百合子君。
  82. 本島百合子

    ○本島委員 最初にお伺いいたしたいことは、身体障害者雇用促進法の適用の問題でございますが、現在就職時期になっておるので、どの程度に身体障害者の雇用が進められておるか、またどのくらいの数字でそれを法律に適用して、委員会で説明をされた状態の雇用になっていくのかどうか、そういう点をちょっとお知らせ願いたいと思います。
  83. 岡崎英城

    ○岡崎説明員 ただいまの先生の御要求は、今安定局長を呼びまして御答弁させたいと思いますので、ちょっと御猶予いただきたいと思います。
  84. 本島百合子

    ○本島委員 それではその次に、今日労働人口が不足しておるというわけで、特に中小企業の零細業なんかは労働者を地方に出向いていって集めてくる、こういう状態にあるわけなんです。そこで、失業者をかかえながら労働人口が不足しているという奇現象だと新聞等にも報じられておりますが、その解消のために、労働省でお出しになったのだろうと思いますけれども、労働省の意見として、三十五年八月に出されておる書類で参りますと、現在の従業員十五人以上の事業所で大体技能労働者八十一万に上るところの大量の不足を示しておる、そういうことから、今後の技術労働者の不足を図解をされて、十カ年間のものが出されておるわけですが、これに対応して労働省としてはどういうふうに不足を補っていく考え方でいられるのか。
  85. 有馬元治

    ○有馬説明員 私からお答えいたします。先生のお手元に、八月に出しました、たしか技能労働者が八十一万不足しておるという資料が届いておると思いますが、私どもはこの技能労働者の大量な不足に対処いたしまして、今後職業訓練の面で新しく技能者を養成確保して参りたい、こういう考え方で現在十年間の長期計画を立てまして、この計画のもとに今後の公共の職業訓練と、それから事業内の職業訓練と、両方の面にわたりまして拡充強化をはかって参りたいと思って準備を進めております。もちろんこの十カ年の長期計画は、経済の所得倍増計画とのうらはらの関係におきましても、同じ数字的な資料のもとに立てられておりますので、労働省といたしましては、雇用の量と質と両面からこの雇用対策を進めていこう、特に今後の十カ年の経済の発展から考えますと、技能労働者の不足が著しいので、この質の面を長期計画を立てて、今申しましたように対処して参りたい、こういう考え方で進めております。
  86. 本島百合子

    ○本島委員 職業訓練によるという考え方ですね。たとえば三池等におきます大量離職者、こういう方々もこれをおやりになるわけなんですが、現実問題としては、なかなか雇用して下さる方が少ないというようなうわさも飛んでおるわけですね。解雇受諾というのはごく最近のことですから、これがどうなるかということは、訓練を経た後のことでしょうし、時間的にズレもあるでしょうが、こういう点について確信を持ってこの人々三池ばかりでなく炭鉱労働者の大量離職ということになっておるわけですが、こういう人々に不安のない転職を保証できるかどうか。
  87. 有馬元治

    ○有馬説明員 当面一番離職者の中で問題になっておりますのは、御承知のように三池の離職者でございますが、私どもとしては、三池の離職者を含めて石炭の離職者対策に万全を期するという考え方で、労働大臣も、離職者は希望する者は全部訓練所に収容して、そこで新しい技術を見につけて一〇〇%の就職を確保してやる、こういうふうな基本的な方針のもとに私ども現在訓練をいたしております。現在の状況から申しますと、現在までに訓練を受けておる離職者が千九百九名でございます。その中で六カ月の訓練を終了した者が六百三十二名ございます。今後この三月までの年度内に訓練所に入所される予定数が二千七百三十名ございます。従いまして約四千六百名程度の規模で訓練を実施する予定にしておりますが、現在までの終了者の就職の状況を申しますと、一〇〇%多少欠けておりますが、九〇%程度現在就職しておりますが、もちろんこの未就職の者についても現在就職あっせん活動を続けておりますので、多少の時期的なズレはあると思いますが就職を一〇〇%確保していく、こういう目標で現在努力をしております。
  88. 本島百合子

    ○本島委員 この炭鉱離職者ばかりでなく、一般の方々でも技術革新によって訓練所に入って参るわけなんです。こういう人々の年令がかなり高いように聞いております。若い人でなくて、今まで働いておったが、どうしても斜陽産業的になっておるからこの際技術を身につけたい、こういう形で訓練所を利用しておる人も増加しておるわけなんですが、こうした人たちとあわせて考えていかれるときに、今後の雇用計画とあっせんをされる度合いですね。そういう点はお考えになっていられるか。  それからこういう訓練所を来年度増設される考え方であるかどうかということ。
  89. 有馬元治

    ○有馬説明員 本島先生の御指摘のように、石炭以外にも離職者が各産業部門からいろいろな形で出ております。私どもは訓練所の性格から申しまして、学校卒業したてのいわゆる学卒といいますが、新規労働力のみを訓練所に収容しておるのではなくて、現在の比率から申しますと、約六割が学卒からまっすぐ来ておりますが、約四割は何らかの形で離職をしたり、あるいは農業に志して二、三年農業をやって、工業方面の技能者になりたいということで出て参っておりますので、現在でも相当離職者を吸収すべく努力はしておりますが、今後日本経済の発展の中で、いろいろな形で技術革新あるいは産業構造の高度化というふうなことで離職者が相当各方面に出ることが予想されますので、この離職者をできるだけ大幅に訓練所に収容していこう、こういう考え方で、訓練所の運営その他についても中年層向きの訓練方式ということを新たに検討をしております。そういう状況でございますので、今後の訓練所の運営の新しい重点といたしましては、中年層の離職者に対処してどう訓練するか、それらの離職者を訓練して就職を一〇〇%確保するにはどういうふうな訓練をしたらいいか、こういうことに重点を置きまして訓練所の運営を逐次改善をして参ろう、こういうことで現在進めておる段階でございます。
  90. 本島百合子

    ○本島委員 これによりましても、現行の教育計画にあっては、今後十年間に高等学校工業課程及び大学理工学部卒業者は、前者が約三十万ないし五十万人、後者が約十万ないし十五万人に達する著しい供給不足が見込まれる、こういうふうになっておるのですが、これだけのことを発表されるからには、文部省との連係を立てながらただいま言われたように、訓練所だけではどうにも追っつかないことなんです。こういう点はどういうふうになされておるか、労働省側の御意向を先に聞きたいと思います。
  91. 岡崎英城

    ○岡崎説明員 ただいまの御質問の御趣旨の点につきましては、文部省との間に話し合い調整は十分つけております。そのこまかい数字につきましては、担当部長から御答弁いたします。
  92. 有馬元治

    ○有馬説明員 先生のお手元に差し上げております資料は、外部に出す資料として作ったわけではないものですから、多少その当時の数字と動いておりますけれども、その後文部省、経済企画庁、それに科学技術庁、こういった関係各省が集まりまして、数字を調整をいたしまして、その結果は新聞その他でも御承知かと思いますが、大学の理工学部系統では約十七万不足する、それから工業高等学校の卒業生は約四十四万不足する、こういう数字になっております。お手元の資料は、その調整過程における大体の見当の数字を、うちの大臣に内部的に説明するために作った資料でございますから、その数字が多少違っておりますが、大体見当としては間違いがないと思います。
  93. 安養寺重夫

    ○安養寺説明員 ただいま有馬部長からお話ございましたように、文部省においても向こう十年間見当で、高級技術者あるいは初級技術者の不足数というものを見込みまして、今お聞き取りのような数字を前提にして、いろいろその具体的な案を検討中なのでございます。
  94. 本島百合子

    ○本島委員 その案を検討中だと言われるのですが、技術革新に伴う産業構造の変革、こういうことに伴って不足がだんだん増大していくのではないか、こういうふうに考えられるのです。ことしあたりも文科系統はなかなか就職ができなくて、理工科系は飛ぶように売れる、こういう時勢なんです。ですからこういう点について、大体文部省としては今後の理工科系に対する教育をどういうふうに考えていかれるのか。労働省がこれだけのものを出されておるのですから、それに伴って文部省は、それの立場に立って教育を考えられるはずですから、そういう点はどういうふうになっておりますか。
  95. 安養寺重夫

    ○安養寺説明員 われわれが目下事務的に操作しております案では、御承知のように、理工系の大学の学部、学科の増設、あるいは工業高等学校の増設を画期的に増大しなくちゃならないということになるわけでございますけれども、いろいろ具体的に検討しますと、教員の面とか、その他のことで多少の隘路がある。従前とも、昭和三十三年からこういうような傾向が目立って参りまして、大学においては理工系学部の定員増、八千名の拡大、こういうことをやって参りました。工業高等学校も、約一万五千名の定員増ということをやって参ったわけでございます。さらに将来の十年間に、それを上回る大きな不足数というものが想像されますので、とりあえずその施策の一環といたしまして、来年度において大体大学の理工系で千八百名、工業高等学校の生徒定員増約一万名というようなことを実現していきたいというようなことで、目下概算要求の最中でございます。
  96. 本島百合子

    ○本島委員 大体文科系統と違って、こういう学校は非常に施設費がかかってくるわけなんです。そうすると、今そういうことを要求されても、来年度見込み額通りにはいかないだろうと思うのです。こうしてやっていますと、どうしても学校が不足するということになるわけです。学校がそういう施設をなさる場合に、公立、私立を問わず考えていられるかどうか。これは労働省とちょっとはずれますが、文部省に対して言いたいことは、公立学校と私立学校では、学校差が非常にあるわけです。それから私立学校では、そういう設備を作るには金がかかりますから、なかなかできないという現状に置かれている。ところが現実には、高等学校に進む生徒の率は多くなっているし、せっかく高等学校を出ましても、社会へ出てすぐ役立つという形にはならないわけです。そういう方々の就職難というものが、新卒のときから生まれるわけです。こういう点で、公私を区別せずに、補助金その他で、学校の格差をなくするとか、月謝の格差をなくするとか、そういう施策というものを持っていられるかどうか。
  97. 安養寺重夫

    ○安養寺説明員 先ほど申し上げましたような、今まで立てた計画の実現については、国立、公立あるいは私立学校すべてについて、文部省において助成金を出すとか、そういうことをやって参ったわけでございまして、特に高等学校の段階におきましては、御承知の産業教育振興法という法律がございまして、公立、私立とも同じような扱いで、国においていろいろな設備の充実のために補助をなすということもございます。今までもそうでございましたが、今後もそういう基本的な線で大いに実現していきたい、かように考えているわけです。
  98. 本島百合子

    ○本島委員 実は二、三学校を見て参りましたが、産業教育振興の予算がフルに使われておるかどうか、疑問だと思うのです。あの程度のやり方では、なかなか今の技能者不足の場合、社会が要求するようなことにマッチできないのではないか。大幅にこの点を考えていかなければならぬということは、だれでも言っておることなんです。言っておるが、その割合に振興していかないということは、結局文部省がそういうことに対する熱意が欠けているのではないかということが、教育者の中でも、また一般社会の家庭の中からも言われておるのです。そういう点について、来年度予算はどのくらいがんばられますか。
  99. 安養寺重夫

    ○安養寺説明員 私立学校の助成については、お話の点もございますが、文部省においてもいろいろな面でやっておるわけでございます。どのくらいというようなお話でございますと、大へん恐縮でございますが、私そういう方はあまり詳しく知らないものでございますので、御趣旨のところは、また帰りましていろいろと上司に報告して、できるだけそういう趣旨が実現するように、文部省としても当然努力いたすべきものと考えております。
  100. 本島百合子

    ○本島委員 きょうそういう責任者に来てもらうつもりで昨日からお願いしておったので、答弁を得られないことは非常に残念だと思います。文書でもけっこうでございますから、一つお願いしたいと思います。  それから労働省にお尋ねいたしますが、ただいまのような文部省の考え方、遅々として進まずという感じ方なんです。こういう場合において、労働不足というものをどうやってカバーされていかれるのか。現実に中小企業、零細業の方を回ってみますと、工場の内容で違いますけれども、一番長いところで一人の工員に大体六年かかるそうです。それから簡単な労務で大体三年の訓練を要する。こういう状態で中学出、高等学校出を雇っても、それだけの年月をかげながらやっても、資本の小さいところにはなかなか労働者は来ない。そういうことで現在も地方に求人で歩いている、こういうことにずいぶんぶつかるわけなんです。そういたしますと、その能率は非常に低下するというわけで、大体試験制度が、大資本のところには皆さん方が希望されるけれども、零細、中小企業の場合には、そういう行き手も少ない、こういう難渋をしているわけなんです。しかも貿易の自由化等も控えて、今後の日本の産業の振興ということを考えて参りますときに、この問題の解決を急がなければなかなかうまくいかぬじゃないだろうか、こういう不安を持つのですが、そうした点、労働省としてはどう考えていかれますか。
  101. 有馬元治

    ○有馬説明員 労働者の不足、中でも技能労働者の不足の度合いから申しますと、大企業よりも中小企業の方が、不足の度合いが高いわけです。特に最近のように大企業が中小企業、下請からいい技能労働者を引き抜くという、これは一部の現象ですが、そういったことも例外的には見られておりますので、そういう不届きなことをするなということで、大企業の方をためなければいかぬと思いますが、とにかく中小企業において非常に足りない。これは八十一万の数字の分析をいたしますと、大企業との比較においてはっきり出ております。そこで私どもの職業訓練はもともと大企業に技能労働者を補給するためにやっておるというよりは、中小企業に補給するために熟練工、半熟練工の養成をやっておるわけです。ただ最近のように中小企業と大企業とのいろいろな労働条件の格差が出て参りますと、どうしても高いいい方に流れるという傾向が若干出てきておりますが、これは中小企業の労働条件を改善することによって、本来中小企業に向けるために養成しておるのですから、中小企業の労働条件を改善して、そこへわれわれの訓練所の卒業生を振り向ける、こういうことを強力に指導して参っております。何せ御指摘のように、数字的に数量的にまだ十分でございませんので、十カ年計画では約二倍半見当の数字を目標に訓練を拡充して参りたい、こういうつもりで、今、年次別に計画を立てまして、来年度の予算も要求しておる次第でございます。
  102. 本島百合子

    ○本島委員 政務次官にお伺いしますが、こういう計画書を見ましても、非常に技能労働者の不足ということがこれから深刻な問題になってくると思うのです。そこで労働行政として、こういう点については大幅な考え方に立ってなさらなければならない。同時に文部省に対しても、産業教育の普及ということが徹底してなされないと、どうしても需要供給のバランスがとれない、こうなってくるわけです。そういう点で、どういう話し合いが閣議等でも行なわれているのか。こうした大問題を目の前に置いておって、ただ文部省、労働省だけの話し合いということでは解決しないと思うのです。新大臣になって、その点はどういう考え方でおられますか。
  103. 岡崎英城

    ○岡崎説明員 ただいまの本島先生の御質疑はごもっともな次第でございますので、その点については、労働省といたしましても、非常な深刻な考慮を払っておりまして、大臣も、省内をあげて、その問題についての調査立案等について督励をいたしておる次第でございますから、お話のごとく労働省だけで十分いくべき問題ではないのでございますから、大いに文部省その他各省の協力がなければなりませんので、私は日にちは忘れましたが、石田労働大臣も、閣議でこの点を強く要求して各省庁の協力等について熱意のある発言をいたしております。そのうちだんだんと煮つまって参りまして、来年度には相当御満足の得るような案ができるものと私たちは信じておる次第でございます。十分御意見のあるところを尊重いたしまして、また鋭意努力いたしたいと思う次第であります。
  104. 本島百合子

    ○本島委員 今聞くと、閣議で相当お話し合いがあったということになると、受けて立つ文部省の方が何だか腰が弱いようですが、文部省の今の御答弁でいくと、なかなか心細い感じがするのですけれども、どうでしょうか。これは文部省の方に私の要望ですけれども、公立学校重点主義という考え方が今まで非常に強かったと思うのです。産業教育については差は設けていない、こうおっしゃるけれども、何としても私立学校と公立学校では、みな公立学校を希望するわけなんで、産業教育の面だけでもいいから、公立学校私立学校の差をなくするだけの、私立学校に対してそういう学科設置を奨励するというようなことはできないかどうか。
  105. 安養寺重夫

    ○安養寺説明員 ただいま労働政務次官からお話がございましたように、われわれの方も大臣から命を受けまして、将来十カ年計画で、大学あるいは工業高等学校の関係部門の増設計画を目下作っております。産業教育の面でも、やはり技術者の養成ということが国家的な現在の急務でありますので、国公私立一律にいろいろこういう方面の振興策をやっていきたい、かように存じておるわけであります。
  106. 本島百合子

    ○本島委員 そこでもう一点申し上げたいのですが、私は私立学校側に立つわけではないのですけれども、子供を持つ親として考えたときに、公立と私立では、その月謝から違ってくるのです。大体高等学校を志望する者は、私立を含めて、完全進学ができるという統計にはなっている、こういうのです。しかし選ばせる親の立場にすれば、学費の負担が私立学校は大きいものですから、どうしても公立をねらえ——また文部省が公立に力をお入れになるものですから、どうしてもそういう傾向になりがちです。これからのこの技術革新の時代を迎えて、こういう傾向があってはならないと私ども親の立場から考えるのです。そうした場合において、思い切って月謝その他においても平等にさせていく、差がないようにする、そうしてあらゆる子供たちに均等な機会を与えてやるというような考え方に立ち得るかどうか。今の場合立てないとおっしゃるのは当然だと思うのですが、そういう方向づけをしていかなければならないのではないか、またそれを要望されておる、こういうように考えるのですが、こういう点どうでしょう。あなたがお帰りになって大臣等に、こういう委員会で発言があったと進言をされて、そういう変革を起こすだけのものが出てくるかどうか。あなたに少し重いかもしれませんが、そういう点を私は強く要望する。これは私が議員としてだけでなくて、すべての親が考え願っておることでありますので、そういう意味で、できましょうか。
  107. 安養寺重夫

    ○安養寺説明員 御説のように大へん大きな問題でございまして、私立学校といえども教育の分野では国立、公立と少しも変わらない機能を担当していただいておるわけでございます。いろいろな従来の経緯もございますけれども、御趣旨の実現が文部省においてもできるだけ急速にはかられるように努力いたしておるつもりでございます。こういう御意見があったということを帰りましてとくと上司によく報告をいたしたいと思います。
  108. 本島百合子

    ○本島委員 私はなぜこういうふうなことをしつこく言うかというと、これは労働大臣に聞いていただきたいのです。公立、私立で区別しちゃいけないけれども、雇う方はどうしても公立に重点を置きがちなのです。御承知でもございましょうが、雇う方が学校へ申し込みをするわけですね。ですから新卒の子供たち希望してどこへでも入社試験を受けることができるかということができるかというと、できないシステムになっておるわけであります。こういうような状態の中で、学校差によっていろいろな問題が引き起こってきている、こういうことになるわけです。ですから、こういう点はやはり私どもは将来の日本の産業発展のためには考えていかなければならぬ。現在の場合においては、労働省としてどこの学校の子供であろうが、受験の機会均等、入社試験の機会均等を与えてやるという角度における指令等はできないものか。
  109. 岡崎英城

    ○岡崎説明員 本島先生のただいまの御意見は、非常に当を得た、またごもっともな御意見と私たちも拝聴いたしました。ただ、今役所側の方から求人側にあらゆる公立、私立を問わず求人の要求をすべきである、そういうような指令を出すことがいいか悪いかはよく検討さしていただきたいのでありますが、ただそういう方向に向かって求人をするように、安定所その他あらゆる方面の機関を利用いたしまして、順次そういう習慣になるように持っていきたいということはわれわれも望んでおる次第でございます。その点について十分の工夫をさしていただきたいと思う次第でございます。
  110. 本島百合子

    ○本島委員 この点については、今もうどこの家庭でも悩みの種で、非常な苦悩なんです。それはやはり学校制度並びに社会制度の欠陥からくるものだと思うけれども、このままでいっては日本の産業の発展のためにも私は一大欠陥が起こってくるだろうと思う。技術革新という言葉の陰には、こうした社会的矛盾が大きいということなんです。これは文部省側も、労働省側もできるだけ協力されて是正していくという形をとって、将来の学童たちの不安というものを除いてもらいたい、こういうことできょうの質問をしたわけなんです。  それから、問題は別でございますが、労働省の政務次官にお尋ねいたします。先々月山谷のドヤ街に参ったわけでございます。それからその月でしたか、八月でしたか、大阪、神戸に視察に参ったわけなんです。特に東京でいうドヤ街的なところを見て参ったわけですけれども一つの社会のガンとしてああいうものがだんだん大きくなりつつあるわけです。やみ市場もあるし、またああいう神戸あたりでは、警察官も踏み入れられない麻薬の巣くつであるし、売春の巣くつだし、犯罪の巣くつになっておる、どうにも手がつけられないというような場所があるわけなんですね。こういうようなところに対して、今労働力が不足しているといわれておるのですから、何とか手を伸ばして、そういうところのガンを取り除き、正しい適職を与えてやる、こういう振り向け方はできないか。  いま一点は、義務教育である小学校、中学校の課程を終えない子供たちがああいうところにもおる、零細企業者の中に就労しておる率が多いわけです。そういう子供たちを何とかして見つけ出して、やはり教育だけは受けさせるというような形がとれないものか、こういう点で文部省の方にもまたがるかもしれませんが、かなり義務教育を受けてない子供の就労がある、それが大産業面では少ないのですから、何としても社会のガンというようなスラム街的な状態の中での企業体にいるということを強く言われてきたわけなんですから、そういう点についての施策を何か労働省としてお持ちであるか、また文部省としてもそういう義務教育の受けられない子供たちに特別な手を伸ばしていられるかどうか、この二点をお伺いします。
  111. 岡崎英城

    ○岡崎説明員 ただいまの山谷ドヤ街等の各地の問題でございますが、これはただいまの御意見通り、ずいぶんわれわれといたしましても施策を施して、ああいう状態が起こらないように、政治上、またいろいろな方面から努力いたして参りたいと思っております。ことにただいまの石田労働大臣はドヤ街のことにつきましては深甚な考慮を払われて、みずからも月に一回くらい必ず視察をする、またみんなと話し合いをするというような努力を払っておられます。ただ具体的な就職のあっせんの問題は、やはり各機関を通じてやらなければならない問題でございますから、そういう面についても特別な専門的な機関を作るまでの運びにはなっておりませんが、ただいまの安定所等を十分督励いたしまして、そういう状態の人々の就職ができるだけ早く充足できるように努力をしつつございますし、また将来もして参りたいと思っておる次第でございます。
  112. 安養寺重夫

    ○安養寺説明員 お話のような、義務教育であるにもかかわらず、そういうような不幸な子供がおるというような事実があるいはございましょう。そこで文部省といたしましても、また各教育委員会、学校の当局においても、そういう子供のないようにということで、ともかく学校に連れてくることが第一番でございますから、そういう努力を重ねております。またそういう教育が真実受けられるようにということで、教科書の無償給与の問題、あるいは学校給食の補助、医療費の補助、そういうようなことについても、最近国の補助金を出すというような仕組みで努力をいたしておるような次第でございます。
  113. 本島百合子

    ○本島委員 そのことは大体わかっておるわけですが、それでも生活かできないから子供を就労させるわけなんですね。そういう子供たちはなかなか大産業では厄介だから使わないのです。零細業の中に多くいるわけです。職安の方でお聞きいたしましても、なかなか発見するのは困難だけれども、推定すればというような形で、二千名、三千名というものがある、こう言われるのですね。東京にしても大阪にしても神戸にしても、そういうものがあるということがわかっていてもどうすることもできないというのが現状なんです。ですからこういう点については、やはり学校を通し、職安を通し、そういう子供たちにただ教科書を無料配布するとか給食費を出すとかいうことだけでは解決できないのです。これは低額所得層の家庭の問題にもあると思いますが、私たちはやはりこういう子供たちが、ほんとうに義務教育は完全に受けられるという杉を考えていかなければならぬと思うのです。これは所管違いかもしれませんけれども特別な措置というものを、今の方法を抜きにして考えていかなければ、こうした子供たちの絶滅はできない。非行少年の大体三分の二が、義務教育を受けていないという形がある、こういわれておるのです。こういう点を考えてみても、国家の一大損失だと思うのです。これから伸びて、これからの日本を背負っていくべき子供たちに対して、職安の方もまた文部省の方も、できるだけ急速に発見して就学ができるなり、あるいはよりよき職場を与えてやって、夜間の中学でも通学させるとか、そういう形をとる施策というものを、新池田内閣はいろいろの点で愛情ある政治をやる、こういって豪語されているのですから、この機会にやらせるだけの文部省なり労働省の気概があっていいんじゃないか、こう思って質問してみたわけですが、そういう点に十二分に心を砕いて、この機会にある程度の方針というものを打ち立ててほしいということを希望いたしまして、質問を終わりといたします。
  114. 大石武一

    大石委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十二分散会