○
八木(
一男)
委員 中山さん、これはもうこまかい問題をよく御理解願いたい。そうなると障害者はほんとうに助からぬということになる。片足の人は障害福祉
年金はもらえないでしょう、これは三級ですから。その人は障害
年金をもらうためにどんなに掛金を払ってもらいたいという意思を持っている。ところが不幸にして十九才で切断をされた。二十才で
年金制度に入った。いかに熱心に掛金を払っても、
老齢になるまでは
年金はもらえない。
老齢になるか、あるいはその人が御婦人であって、だんなさんが死んで母子にならない限りはもらえない。それでは片足のままで、労働能力、所得能力がないままで四十年間過ごさねばならない。四十年間、男性であればそういうことのために収入がないから結婚もできないでしょう。
女性の場合でもそういうことになるでしょう。結婚とか育児とか、
基本的人権まで何もできない。もっと前の、あじけない世の中でも自分の食べていくことすら困難だということになるわけです。この
年金制度で、乏しいながら全部の人に
年金が出るというけれ
ども、そういう点で皆
年金ではない。少なくとも障害に関する限りは
保険料を払うという要件を取っ払わないとそれができない。入ってからの障害でないと、障害を受けていないときに入って、それで
保険料を払って障害を受けたらくれるというような傷害
保険的な、民間の
保険的な
考え方に立っていては障害者は助からぬわけです。障害のある人に必ず
年金をやるのだという
社会保障的な
考え方に立たないとどうしても助からぬということになる。そういうところに社会
保険の非常に悪い点がある。一本の足で入って、もう一本足が切れたときにはもらえますよ。そんなことはだれも望みません。一本のままでも残しておきたい。そういう人には、どんなに
年金を
希望し、
政府の
年金法案に協力し、どんなにまっ先に登録をして
保険料を納めても、その人には障害
年金が入らない。こういう点がある。社会党の案は、初めから、掛金はうちの方は
年金税ですが、払わないでも、二十才、その人の生産
年令、原則的に親にかかって食べさしてもらうことはできない、原則的に自分も結婚して子孫を残す権利を持つ時期、その時期になったら、自分の収入で食わなきゃいけない、それが足がないために労働能力がなくて、商売もやりにくいし働きに行くこともできない、そういう人については必ず
年金を差し上げるという案を作ってあるわけです。ほらばかり吹くわけではありません。そういう点をぜひ理解をしていただいて、前からの障害はそのままどうしても入る。それはしあわせな人の分が回ってきてもいいです。それまでほかの人がいけないといったら、それはほかの人に社会連帯精神がないのです。もちろん国庫負担をふやしていただくことは大事です。国庫負担の
部分がそっちにより多く回っても仕方がありません。仕方がないのではなくて、回すべきだ。そういうことが抜けている。
中山さんは
国民に対して非常にあたたかい心を持っておられるわけです。私
どもは、議会の与党と野党が論議をするので、どうも選挙のために攻撃をするようなふうにも思われるだろうと思いますけれ
ども、そういうことではないのです。そういうことを
中山さんに理解をしていただいて——小山さんもそういうことは知っておられるのです。ところが小山さんの練達な研究でも、
閣議とか大蔵省とか自民党とか、そういうような巨大な権力に対して、小山さんの明知をもってしてもなかなか壁が突破しにくいわけです。
大臣に同じことを理解していただいて、徐々に突破をしていただかないと問題が進まないわけです。そういうことを選挙の前じゃなしに、実は七月ごろ申し上げたかったのです。ところが
中山さんが途中で退席されたあと、
政務次官と小山さんだけになって、
政務次官も途中で退席された。これは小山さんには三年前に言っているわけです。だから新しい
中山さんに聞いていただかなければ、から回りになるだけで何にもならない。だから
中山さん、
中山さんとさっきから待っていたわけです。昼飯も食わないでがんばっているわけですから、どうかそういう点について
考えて
一つ推進をしていただきたい。
それから次に無拠出
年金であります。無拠出
年金についても、障害者はさっき言ったように一級しかない。一級でも千五百円では話になりません。二級、三級はない。ないから障害はくれないということでしょう
母子年金についてはどうか。
母子年金については、無拠出
年金は準母子
家庭の問題だけを言われる。準母子
家庭の問題は、初めからできたときから岸君や坂田君が
答弁ができなくて、そのうちに
考える。この三月に渡邊
厚生大臣がここで確約されたのだ。はっきり言うと
中山さんが実行されるということになるかもしれないが、そういう態勢はできていたわけです。していただいたのはいいけれ
ども、
中山新
厚生大臣が
母子年金について新しくしていただいた問題の範疇にはやや入らない。さらに精を出していただいて新しい何ものかを母子
家庭のために
考えられる。
中山さんが獲得をされなければならない。それには千円のものを二千円にする、三千円にする。あるいは十三万円の所得制限をもっと上まで上げる。あるいは母子世帯の問題が解決する。あるいは
子供たちが十六才になれば支給しないという過酷な要件を、もっと子供が大きくてもあげる。やるべきことはたくさんある。母子福祉
年金だけでも山とある。それが準母子
家庭の問題だけでとまっておられちゃ困る。これは全母子世帯の期待をになっておられる以上は、その問題について、少なくとも一点ではなくて、数点は解決をしていただかなければ困る、そういう点であります。
そういうことで、時間がずいぶん経過しましたから、これからさっきの滝井さんの御議論といささか違うことを少し申し上げます。違うといっても根本的には違っていない。
社会保障をやられるときに順番は何か、私は今
生活保護だと思う。その次には
医療であります。
国民健康保険なり、
健康保険の家族の
給付が少ないという問題あるいは質的に制限診療があるのはけしからぬ、制限診療をなくして十分もなのを全部できるようにしなければならぬ、そういう問題があろうと思う。また救貧
政策の
一つである福祉
年金をふやすということであろうと思う。まず防貧という言葉を学者
ども、学者
たちが言う。これは観念論であります。
日本に防貧
政策が今までなかった、不十分だった。ほかの
政治が非常に貧困であるために、零細
企業や農業の経営が悪い。労働者の賃金が少ない。そういうことと、それから防貧
政策がなかったために現在貧困がある。貧乏がある。現在貧困があったら、今の
日本の
社会保障の第一要件は救貧が先でなければなりません。観念論で防貧
政策ということばかり言ってはいけない。もちろん防貧
体制を作ることに全力を尽すのが当然でございまするが、救貧の問題を片づけるということと、防貧の問題をやる。両方やらなければならぬ。それを将来の防貧だけにすりかえてはいけない。その要点は
生活保護であります。それから福祉
年金であります。それから次に今度は防貧の中で喫緊の問題として、
医療の問題が所得保障よりも時間的には大事だと思います。その意味で滝井さんの
意見と同じであります。しかしながらそれをやるために
一つ考えていただきたいことは、
生活保護の問題、
医療の問題あるいはそれに数百億円あるいは千億円以上が要る。そういうことで非常に困るということになります。しかしながら来年度には三千億の自然増収がある。自然増収だけでなしに、租税特別措置法の改廃をやれば千億円になんなんとする新しい財源ができる。ゴルフ税をかければこれも五、六百億から千億くらいできる。そういうような財源を作ればできるのです。ありとあらゆるものが完全にできるわけです。それをしないでいるところに
政府にいけないところがある。今三本の柱と言われた。滝井さんは四本の柱と言われた。私は五本の柱だろうと思う。
政府は
社会保障と
公共投資と
減税とで三本の柱、それから
公務員のベース・アップ、人事院の勧告の問題で滝井さんは四本と言われた。
中山さんは否定されて三本と言われた。どっちでもいいです。三本、四本の中にもう一本柱がある。そのもう一本の柱は足が長い。これは金持ちの土持ち
政策です。一本長い足ができている。いかに三本あってもぐらぐらしてひっくり返ります。同じ長さではない。
減税と
社会保障と
公共投資三本でがっちり倒れないように——その場合に一本まんまん中の長い足があるから、それがひっくり返る。それが金持ちの土持ち
政策だ。租税特別措置法、ゴルフ税をやらない。それから自然増収を金持ちのもうかる方に持っていく。もっと焦点としてはロッキードの問題なんかあります。アメリカですらすでに古くなって使われないという問題を無理やりに通そうとする。私
どもは再軍備に反対であります。しかしながらあなた方は賛成らしいように伺っておる。賛成なら賛成で、それならば有効な軍備をすればいい。アメリカの古物を今になって作って何になる。そうするとアメリカは一流国だが、
日本は二流国だから古くてもいいとおっしゃるかもしれない。古くてもできるだけ新しいものを使うようにする。ロッキードはアメリカで大量生産をしておる。型が古くなっても新しいものがある。それを買えばいい。それを六年後に
日本で作るというそんなものは役に立ちません。それでもうかるのはだれか。三菱重工業がもうける。そんなことでは
社会保障なんか語る資格はありません。まんまん中の太い柱はちょん切らなければいけない。金持ちの土持ち
政策、それでなければ
政策はぐらぐらする。やろうと思えば幾らでもできる。そういうことを根本的に
考えていただかなければならないと思う。次に、それについてもいろいろ財源の競合はありましょう。この拠出
年金をよくやるためには、よくやる方法をお教えしてある。
日本社会党の拠出
年金は完全積立方式ではありません。掛金に対しては、
年金特別税については積み立てをする。しかしながら国庫負担については賦課方式をとっておる。賦課方式をとっておるのは後代の財政支出であります。従ってこの方式をとれば十分な案を現在の財政競合を受けずしてできる。それを再三再四あらゆる
厚生大臣に、あるいは岸君にも言いました。今になって小山君もそういう
考え方を取り入れようとしておられるらしい。しかしその取り入れ方をこの間も言って、そうじやなかったらしいから安心するけれ
ども、間違った
方向に取り入れられては困るのです。いい
方向に取り入れられれば、現在の支出は財政的な競合を見ずして拠出
年金をよくすることができる。そのために国庫負担の方の賦課方式、そういうことをしておる。そういうことも十分に
考えに入れられれば、たとえば六十五才、三千五百円なんというけちなことをしないで、六十才から七千円くらいのものを作る。あるいは今のような掛け捨ては一切出さない。あるいは障害に対する、母子遺児に対する
給付の要件を緩和する、なくするということができるわけです。ちゃんとそういうことを出したらどうか。そういうことを
考えていただけば、今のように救貧
政策と
生活保護、あるいは福祉
年金あるいはまたその次に大事である
医療保障の問題、それとともにこの拠出
年金の問題を即時かかれることができるわけです。ですからいろいろなものが競合するから、これをやってこれをやめるわけにいかないと思う。一番大事なものから重点を置いてやらなければいけない。しかしその大事なものをたくさんやるから低い程度でいいということは許されない。すべてのものを高い程度でやることができるわけです。
生活保護、二六%は消えてしまった。一日の食費四十六円、一級地、東京の五人家族の平均だそうであります。一人一日の嗜好品が十八銭、たばこ一本吸えない。子供がキャラメル一個食えるような内容ではない。
生活保護を二六%上げるというので、とんでもない少ないのだけれ
ども、それでも
政府はよく踏み切った、ほめてあげたいと思っておったところが、これが完全に消えてなくなってしまった。これこそ完全に
社会保障の後退であります。
池田勇人君がインチキをやる。二倍にもしなければいけないところに、二六%やるといった、やや
政府の
努力を世の中が認めたときに、すりかえて数字がなくなってしまった。徐々に上げる、そんなことは当然であります。この選挙ではっきりと二六でなしに五〇くらい引き上げると公約なさるなら、それは
池田さんの良心を信ずるでありましょう。そういうことをしないで徐々に引き上げる、そんなものは
社会保障の後退であります。
社会保障をやると言ったけれ
ども、それはうそである。
公共投資を先にする、それは
日本の経済の発展にも役に立つし、土建業者はもうかるから、そのためにやる意味もあるのだということをはっきりおっしゃるなら、それの方が男らしいと思う。後退させたものを前進させるような
考え方で言われるのは、主権者に対して非常に卑怯であります。そういう点で、今まで
社会保障についてこの三つの点、これはないよりもましであります。しかしながら、公約をされて、
国民が期待されている程度から
考えますと、猛烈な後退だということが言えるわけであります。その点について
厚生大臣のお
考えを伺いたいと思う。