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橋本国務大臣 ただいま
質問されました点につきましては、私の
考えておりますことを申し述べる機会を与えられましたことを厚く御礼申し上げます。
ただ、お話のありました、各省まちまちに発表をいたしておるような状態で、御注意を喚起されたのですが、実は
建設省として正式に具体的に発表する段階になっておりませんので、党との打ち合わせ等の内容が漏れて新聞に書かれたような事実がありまして、その点いろいろな誤解を受けておりまして、まことに申しわけないと思っております。
ただ、御
承知のように、
建設省は国土全体の
基本計画を
考えて、いわゆる国作りの省でありますから、全体的な構想を
考えておるわけであります。その中に
道路計画あるいは
住宅計画、
治山治水の
計画、下水
計画、水資源問題、これらが国全体の
一つの基本的なものになろうと思います。特に私といいましょうか、
政府においても同様ですが、十大政策といいますか、重要な政策として
考えようとして取り上げております問題は、
道路計画の問題を中心にして
住宅政策、水資源等があります。そのうち新
道路計画は、実は三十三
年度から現行の五カ年
計画が始められまして、本年は三
年度目を迎えておるわけです。ただ、当時策定いたしました基本的な
考え方は、現状なお不要ではありませんけれ
ども、そこにおける
経済成長といいますか、輸送力の急激な伸びによって、当時
考えられましたいわゆる輸送量の標準が非常に窮屈になって参っております。三十三年と三十五年を比べますと、大体二割前後従来の
経済と今日の実情とは食い違ってきておる。それだけ増大をしておる。輸送量が混雑をして参っております。こういうような観点から、ことに三十三年以降の
日本の
経済成長というものが非常に目ざましいものがありまして、今申したような当時策定した
道路計画ではこれをまかなうことが困難な状態になって、このまま現行の五カ年
計画を進めて参りますと、
道路の狭隘なことによって生涯の阻害を来たすような現状になっております。そういう実情から
建設省としては、
日本の
経済成長というものを十分に達成して国民の生活を安定せしめ、同時にまたこれを向上させるためには、産業の基本的な基盤である
道路計画をこの
経済成長に合わせなければならぬ、こういう
考え方で、
経済企画庁とも十分の連絡をとりながら、現在の
経済の伸びというものと合わして、どの程度の
道路計画が必要か、こういうことで、就任以来これが策定を検討中であります。目下
建設省として大体結論といいましょうか、最終的な策定を見ましたものは、一応
事業目標を十カ年
計画といたしまして、その十カ年内に六兆円の
道路投資を行なわなければ
経済成長に追いつかない。いわゆる青年が少年のくつをはく状態になる。こういうことで、青年には青年らしいくつを与えるためには、どうしても
道路投資として十年間に六兆円、五カ年間に大体二兆三千億から二兆五千億円ぐらいを実施しなければ、窮屈な着物を着せる、小さいくつをはかせる、そういう結果になるという
資料がまとまったのであります。
問題は、これでどれくらいできるかと申しますると、一級国道は大体において一〇〇%舗装まで完了する。二級国道は約半分程度ができ上がる。
地方主要道は二〇%前後、その程度であります。一般県道になりますというと、これはなかなか舗装はできません。これだけの新
道路計画で二兆円ないし二兆五千億円という相当巨大な投資をいたしましても、今申したような状態にすぎないのであります。従って十カ年
計画という目標を置いて、そうして十カ年内にはもちろん二級国道も完成し、主要道においても相当数量が完成するというような
考え方で、十カ年
計画というものを目標に置いての前期五カ年
計画というものを目下策定中で、内容としては今申したような
数字になるわけであります。
ただ問題は、
経済成長率に合わしてこれだけの
道路が必要である、これが
日本の国作りの基本になるのだ、こういうわれわれの主張と、これを作るべき財源の問題にかかって参ります。財源の問題は、もちろん
建設省も
考えなくてはいけませんが、その衝に当たるのは
大蔵省、
政府当局でありますからして、
大蔵省なり
経済企画庁等と協議をして、あくまでこれが実現をはかろうということになるわけですが、ただ、従来の五カ年
計画で御
承知のように、その大部分の費用をガソリン税に置いております。このガソリン税を現在の率で
経済成長率に合わして、新
道路計画の場合に前期五カ年
計画でどれくらいの金が出るかと申しますと、大体七千二百億円というものがガソリン税の収入による財源になる。それでもなおかつ単独
事業その他
補助事業のうちのいわゆる
地方公共団体の負担の部分は別にして、国が出すべき金はなお四千五百億円くらい必要といたします。四千五百億円はむろん五カ年間でそうですが、この四千五百億円をどういう形で調達するかという問題があるわけです。これからその問題については
大蔵当局その他と交渉を進めなくてはならぬわけですが、ただ
建設省としては、そういう
道路網を作らなければ、
道路拡充をしなければ、将来の
日本の
経済成長に対して責任が負えない、こういう建前を目下はとっておるわけであります。しかし、それだけでは御納得がいかないので、財源をどうするかという問題が出てくるわけですが、その財源はいろいろの方法があろうと思いますが、
一つには
道路公債の問題もあります。あるいは国の一般税収入といいますか、これが十分であれば、一般会計からの繰入金のことも
考えられる。あるいはまた預金部資金等に余裕があれば、預金部資金から借り入れるという方法もあるし、あるいはこれらの二つなり三つを組み合せてこれだけの財源を作るという方法もありましょう。これらの問題は、今後
政府当局等において十分に計算をしなければならぬ問題でありまするが、
計画としては十年間には六兆円の
道路投資をやらなければ、
道路はふん詰まりの状態になって、生産を阻害する。
経済成長を停止せしむる結果になる。こういうことが一応われわれ
建設省側の見解であります。
住宅問題等につきましても、御
承知のように、戦後非常な力を入れて
住宅政策をやって参っておりまするが、なおかつ今日におきましても
住宅不足は著しいものがあるわけであります。特に最近統計上の
調査によりますと、低所得者の
住宅難が増大しつつあります。これはどういう原因か。おそらく
一つには、世帯の新しい分化が最近は多くなってきておる。こういうのは、国民所得が増大するにつれ、今までは複数世帯が
一つの家におったものが、一応独立して
住宅を持とう、こういう傾向が
一つと、もう
一つは、従来住んでおりました低家賃
住宅といいますか、あるいは
公営住宅もそのうちに入りますが、広い意味の低家賃
住宅に住んでいる人が、所得は上がったにかかわらず、いわゆる少し高い家賃の方へはなかなか移りにくい。こういうことも
一つの原因であろうと思います。最大の原因は、今申したように、国民所得の増大につれ、新世帯分化の傾向がこの二、三年来著しくなっておる。これは
数字の上でもはっきりしております。こういうことに対処して、やはり
住宅の増加をはからなければ、生活の安定あるいは国民生活文化の向上は期し得ないということから、
建設省側の
考え方としては、今後十カ年間に一千万戸の
建設を行ないたい。これは終局的には一世帯一
住宅、こういうことになるわけであります。
もう
一つ、これに関連しますのは、御
承知のように、最近産業構造がかなり急激に変化をしております。たとえば石炭鉱業のごときは一種の斜陽産業といいますか、離職者の数が逐次増加しておる。あるいはその他の産業におきましても転換が行なわれておる。弱電系統とか電子工業等は非常な勢いで伸びておるし、そうでない部面もあるわけであります。こういうことからして、
住宅及び住居の移動といったようなものがある。住居の移動というものが行なわれますと、ある部分では
住宅の不足というものが出てきて、ある部分では
住宅があるいは余裕があるということもあり得るのですが、とにかく産業構造の変化でそうした変化が起きた場合には、それに対応する産業
住宅と申しますか、そういうものは進んでやっていかなければならぬ。そういうことで、最近の統計を見ますと、産労の申し込みが非常に多いのであります。従って折
計画でも産労
住宅、勤労者の
住宅というものにかなり重点を置いて、内容の質的向上とともに総体の数を増していこう。こういう
考え方で
住宅政策等も新たな策定のもとに来
年度からやっていきたい。かように
考えておるわけであります。
あるいは下水
事業等につきましても、御
承知のように下水というものは、文明国であればほとんど一〇〇%完成しておるのが外国の例であります。
ところが、残念ながら
日本では、これは全体の平均ですが、せいぜい五%に足りない。東京あたりでも大体において三〇%前後といいますか、三五、六%である。これは文明国として非常に恥かしいことであるのみならず、種々な病気の原因にもなるのでありますし、もう
一つはむだに流れる水を再生する。下水を通して、浄化槽を通して流される水をもう一度再生すれば工業用水にもなるのでありますから、地盤沈下等の問題から、これらも含めての下水
対策が必要であろうということで、これも十カ年
計画を研究しておるような状態であります。
水資源の問題については、御
指摘のように各省でいろいろ
意見を言うております。厚生省では、水道が所管でありますからして、水道公団のようなものを作りたい。あるいは通産省では、工業用水が逼迫しておるので、工業用水の公団を作りたいとか、農林省においても同様な
意見があるようでありまするが、ただ、水の問題は、一応現行の規定からいえば
建設省がこれを管理いたしております。及び都道
府県もこれに関連しておりますが、そういうことからして、水を作るということはやはり
建設省の所管でなければならぬ。これが配分その他につきましては、もちろん各省と連絡し、協議し、そうして行なわれることは当然ですが、水を作るということはやはり
建設省の仕事でありますし、先ほどから
河川局長がダムの御
質問があった際に御答弁申し上げましたように、現在すでに四十幾つかのダムができ上がり、今後四十幾つかをやろうとしておるわけでありますからして、従って、いわゆる水資源公団というものを作るにいたしましても、それは現在行なわれておるものを、今後の
事業の運営上効果を上げるために公団を作り、同時にまた、全国的に、
計画的に進める、こういう必要上からの公団であって、全然やっておらなかったことをやるのとは性質がだいぶ違うのであります。そういう意味で、具体的には各省とも連絡をとろうと
考えておりまするが、まだその段階でありませんので、一応
建設省としては
建設省の
考え方を省内において固めておる。ことに私が心配するのは、先ほ
ども御
質問がありましたように、これが他の
事業体のダム、たとえば電力ダムとか、こういうことになりますと、利水的性格が薄れざるを得ないのでありますが、ただ、この問題をほんとうに
考えるためにはいろいろの問題があります。補償の問題も大問題でありますからして、あえてそういう方針と申し上げるわけではありませんが、これは研究しなければならぬ問題であります。でありますからして、ダムの目的はもちろん多目的ダムで、利水あるいは工業用水、飲料水、農業用灌漑用水等を目的としたものではありますが、基本的には、利水
計画に沿わなければ先ほどお話しのような危険が内在してくる。そういう意味で、やはりこうした大規模の多目的ダムというものは、
建設省がいわゆる水の統制といいますか、指揮権を持っておらないと、かえって逆な結果を招来する場合もあるわけなんです。しかし、それには法律的にも
経済的にも、なお検討しなければならない補償問題等が起き上がるわけで、問題は非常に広範囲の問題でありますから、個人的な
意見は差し控えますが、一応原則論としては当然に
建設省がこの指導権といいますか、指示権というものを持たなければ、利水上の目的を達成できないという危険性があるわけであります。こういう意味で、
建設省としては、国作りをする本来の省として、全国的な視野の点に対して基本的な構想は
考えていきたい。かように
考えておるわけでありますが、これはぜひとも
委員各位の絶大なる御支援がなければ、なかなか困難で、ひとり
建設省だけでできる問題ではもちろんありません。特にこれらの問題につきましては、将来具体化するたびごとに当
委員会にも御
報告申し上げ、御
意見を拝聴したいと思っておりますので、これら諸
計画が十分に達成されますように、
一つ皆さんの御支援をお願いする次第であります。