○村田
説明員 御承知の
通り、イギリスでは非常に大きな原子力発電
計画を持っておりまして、いずれもコールダーホールから発展しました改良型と呼んでおりますが、原子炉一歩で現在では二十七万五千ぐらいの大きなものを作っております。その前に、いわゆる核兵器用のプルトニウムとしましては、ウィンズケールの原子炉をとめましたあとは、コールダーホールにあります熱
出力百八十
メガワットの原子炉四基、及びチャペルクロスにあります同型の原子炉四基、合わせまして八基をもって核兵器のためのプルトニウムを作っております。そのプルトニウムの量は、もちろん発表されてございませんが、現地でいろいろ
関係者が申したり、推定したりするところによりますと、大体年間四百キログラムくらいであろうということになっております。このプルトニウムは非常に純粋な形のプルトニウム二三九のものでございます。従いまして、最近問題になっております小型兵器に作るとしますと、かりに五キログラムで一発ができますとしますと、一年に八十個の原爆ができるという計算になるわけでございます。もちろん、国防
計画の内容としまして、イギリスとしましては、どの程度の核兵器を持っておれば事足ると考えておるか、あるいは米英、いわゆる自由諸国側としまして、どの程度の戦略小型核兵器を持っておったらいいかということは、どこにも公表されたものはございません。しかし、このコールダーホール及びチャペルクロスでできますプルトニウムというものも、相当な量に上っておるということは事実と思います。
さて、現在、中央発電庁の方で商業用に作っております原子力発電所、これはすでに建設に取りかかっておるもの、及び
計画ができ上がったものを入れますと、七カ所ございます。その七カ所はいずれも大体コールダーホールの改良型でございますが、これが全部動き出しますのが一九六六年ごろになろうかと思います。今からまだ五、六年先の話でございますけれ
ども、そのころに全部動くようになりましたきに、これらの原子炉から出てきます
燃料を再処理しまして得られるプルトニウムはどのくらいになるだろう、これも単なる推定にすぎません。しかしながら、大体この
燃料の燃焼に伴って出てきますプルトニウムの量等から推定いたしますのに、この七カ所の原子力発電所の合計が、大体大ざっぱにいって約千キログラムの程度になるようでございます。そういたしますと、一九六六年あるいは六七年には、コールダーホール、チャペルクロス合わせまして、年間約一トン半のプルトニウムができるというくらいの計算になるかと思います。しかしながら、岡先生の御指摘の
通り、コールダーホール及びチャペルクロスでできますプルトニウム、それから中央発電庁の方で運転することになっております商業用の発電所、商業用の原子炉から出ますプルトニウムの性質がかなり相違しております。御指摘の
通り、商業用の原子炉では
燃料をできるだけ長く燃やします。大体コールダーホールあたりで五百
メガワットデー・パー・トンあるいは六百
メガワットデー・パー・トン程度と考えられますが、それに対しまして商業用の原子力発電所では、三千
メガワットデー・パー・トンの程度で燃やすということになっておりますために、精製いたしましたプルトニウムの一部が炉の中で燃えまして、そしてプルトニウム二三九がプルトニウム二四〇あるいは二三一というふうに一部変わっていくわけでございます。従って、その意味では、チャペルクロスやコールダーホールでできますプルトニウムに比べまして、これら商業用の原子炉から出ますプルトニウムは質が悪いといいますか、そういうことになるわけでございます。なぜかならば、プルトニウム二四〇といいますのは、核分裂性でございませんし、そういう意味で核兵器としての質は劣るわけでございます。そういう点からイギリスの原子力発電
計画が考えておりますのは、この商業用の原子力発電所でできますプルトニウムを再び動力用の原子炉の
燃料として使う、その場合には非常に質的にすぐれておりませんでも、十分燃やせるわけでございますので、そういうことを考えまして、
計画を一応立てておる、こういうふうに私
ども向こうにおって了解しております。もちろん、その成分の主体がプルトニウム二三九でございますし、また、一部に精製しましたプルトニウム二四一も燃えますから、そういう意味で、商業用の原子力発電所から出てきましたプルトニウムが絶対に軍事用に使えないということではございません。技術的には使えるであろうということをイギリスの技術者も申しておるようでございます。しかしながら、ではこれをどういうふうに使うかということは、私はあちらにおりましては具体的には聞いたことがございません。御承知のように、最近の核兵器の動向を見ておりますと、ミサイル等の発展と相待ちまして、いかにして小型の原水爆を作るかという方向に向けられておるようでございまして、イギリスでもこの例に漏れないようでございます。そういう点からしますと、できるだけ不純物の少ないものを使いたいということでございますので、やはりイギリスとしましては、小型の核兵器用として、引き続きコールダーホールあるいはチャペルクロスを運転し、そこから得られるプルトニウムを充てまして、そして質の少し劣ります商業用原子力発電所から出ますプルトニウムは、将来の
燃料サイクル上、たとえば、ただいまドーンレーでやっております増殖炉の
燃料とするというような方向に向かって利用することを最大の目的としてやっておるものと了解しております。