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1960-09-01 第35回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年九月一日(木曜日)     午後一時三十二分開議  出席委員    委員長 稻葉  修君    理事 菅野和太郎君 理事 中曽根康弘君    理事 保科善四郎君 理事 前田 正男君    理事 石野 久男君 理事 岡  良一君    理事 北條 秀一君       赤澤 正道君    鍛冶 良作君       高橋清一郎君    二階堂 進君       石川 次夫君    岡本 隆一君       松前 重義君  出席国務大臣         国 務 大 臣 荒木萬壽夫君  委員外出席者         原子力委員会委         員       石川 一郎君         原子力委員会委         員       兼重寛九郎君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   島村 武久君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   杠  文吉君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局次長)  法貴 四郎君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局科学調査         官)      村田  浩君         総理府事務官         (科学技術庁資         源局計画課長) 來正 秀雄君         通商産業事務官         (鉱山局長)  福井 政男君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      小岩井康朔君         通商産業技官         (工業技術院地         質調査所燃料部         長)      金原 均二君         参  考  人         (原子燃料公社         理事長)    高橋幸三郎君     ————————————— 九月一日  委員内田常雄君、正力松太郎君及び八木徹雄君  辞任につき、その補欠として二階堂進君、鍛冶  良作君及び高橋清一郎君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員鍛冶良作君、高橋清一郎君及び二階堂進君  辞任につき、その補欠として正力松太郎君、八  木徹雄君及び内田常雄君が議長指名委員に  選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  科学技術振興対策に関する件      ————◇—————
  2. 稻葉修

    稻葉委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件につきまして調査を進めます。  この際お諮りいたします。  ただいま諸君のお手元に配付してございます科学技術文献資料収集整備に関する件につきましては、さきの本委員会における決議によりまして議院運営委員会に対し申し入れを行なったのであります。本日これを本委員会において再確認いたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 稻葉修

    稻葉委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  なお、ただいまの決定に基づく所要の手続等は、必要の場合にはこれらについて委員長に御一任願いたいと存じますので、さよう御了承願います。     —————————————
  4. 稻葉修

    稻葉委員長 科学技術振興対策に関する件について質疑の通告がありますので、順次これを許します。石野久男君。
  5. 石野久男

    石野委員 昨日の委員会CP5の問題につきまして質問いたしましたが、きょう政府の側から原研等といろいろと契約事項等について話し合いをして、その後の結果を、どういうふうになっておるかということを御答弁いただくことになっておりますので、ぜひ一つその件について御答弁いただきたいと思います。
  6. 杠文吉

    杠説明員 昨日お約束申し上げましたCP5の保証期間延長交渉でございますが、原研におきましては、本年の八月十五日付をもちまして、保証期間契約期間五十七カ月——五十七カ月と申しますのは、瑕疵担保関係でございます。また、十メガワット出力につきましては五十一カ月延長してもらいたい、その理由とするところは、工期が当初の契約の日よりもおくれた、そのおくれた期間だけを延ばしてくれという交渉をいたしております。先方からは近く回答するという申し入れがきております。以上が、昨日お約束しました原研AMFとの間の交渉経緯でございます。
  7. 石野久男

    石野委員 保証期間延長の問題について、原研の方からAMF社に対する交渉が行なわれていて、その瑕疵担保問題については五十七カ月、十メガワット保証については五十一カ月間を延長するという交渉がされているそうでありますが、それは具体的には期限はいつまでということになりますか。
  8. 杠文吉

    杠説明員 五十七カ月分につきましては、昭和三十六年八月十四日、来年の八月十四日ということになります。また、十メガワットの方につきましては、来年、昭和三十六年の二月十四日ということになります。
  9. 石野久男

    石野委員 保証期間延長はそういうふうにして交渉しておるそうでありまするが、しかし、見通しとしては、大体こちらの申し込み通り延長されるような見通しになっているということですか、どうですか。
  10. 杠文吉

    杠説明員 ただいままで得ました情報によりますと、非常に遺憾の意を表しておるそうでございます。おそらくは認めてくれるものだと思っております。また、認めさせるように局といたしましても努力いたしたいと思います。
  11. 石野久男

    石野委員 工期関係とか、その他契約期間延長されるということは、希望としてそのようになっていくだろうということでありますから、それはそうなることを私たちも希望いたしまするが、昨日から問題にしておりますように、当初この炉を作るときには計画があったわけでございまするし、また、その計画が、最近の事情から見ますと、予定通りに炉の完成した後あるいは燃料を使った後においても出にくいということがおよそ明らかになっているようでございます。もう一度確認いたしまするが、当初の、炉が完成されたときの計画と、今日の事情のもとではどのくらいの違いがあるか、そういう点について原研なり、あるいは当局がつかんでおる事情はどういうふうになっておりましょうか。
  12. 杠文吉

    杠説明員 昨日も御説明申し上げましたが、確認ということでございますから、重ねてお答え申し上げますと、原研側における計算によりますと、第一期の燃料におきましては三メガワット出すということでございます。しかしながら、当初の研究計画におきましては、第一期においては一メガワットをもって十分であるというふうになっておりました。従って、第二期の燃料以後におきましては、原研が自主的にスペックを作りまして、当初の計画が第二期においては五メガワット出すということでございましたので、五メガワットは出し得るものだと原研側確信を持っておるようでございます。第三期におきまして十メガワットを出すということでございます。
  13. 石野久男

    石野委員 昨日もお聞きしたのでございまするが、第三期において十メガワットを出そうとする場合の燃料あり方というものが非常に問題になってくるのが、現在の実情だと思うのです。それは、日米間におけるところの協定からしてもそういうことは言えると思うのです。それで十メガワットを出す場合に、昨日の御答弁によりますと、計画通り出力が出ないという問題の中には、燃料工作過程の中に問題があるのじゃないかというようなお話がございました。現在の時点においても、当初計画では一メガワットであったそうでありますから、三メガワットが出るということになれば、一応の成果は得られるもののように思われますけれども、しかし、今日までの経緯状態から見ますと、燃料の問題だけでこの問題が解決できるのか、それとも、炉の建設とか、あるいは炉の性能の問題、そういう問題に関係するかという問題については、私どもとしても非常に疑問を持つ点が多いのでございます。そういう観点から見ますると、原子力開発という意味合いからしてCP5二号炉というものが実際に当初の計画通り成果を上げるにつきましては、ただ燃料だけで解決するのであるかどうかということについて、私たちの疑念を持っておる点がありますことについて、当局側あるいは原研究側では、そういう疑問は全然持ってないのかどうか、この際聞いておきたいと思います。
  14. 杠文吉

    杠説明員 お答え申し上げます。昨日も御説明申し上げましたので、ほぼおわかりかと思いますが、炉そのものは目下検査中でございます。今までの報告によりますと、炉自体には瑕疵はない。従って、十メガワット出せる炉を完成しておるということは言えるかと思います。従って、あとは燃料をそれに応ずるスペックにして装荷いたしましたならば、炉そのもの瑕疵による損傷その他はないというふうに原研並びに原子力局では考えております。
  15. 石野久男

    石野委員 大体原研なり当局はそういうふうに見ておると言われるのですから、私もあえてそれをここで追及もいたしません。しかし、今日まで当初の計画計画通り進まなかったという事情の中には、炉と燃料との関係の中で相当微妙なものがあると思います。特にAMF社と、それからMC社との間におけるクレームのつき方や何か考えますると、そういう点に非常な疑点があるわけです。私は、炉が完成し、あるいはそういう燃料が皆さんの一応の、今日期待される程度の中で活用される場合に、ほんとうにこの計画通り成果が上がればそれでけっこうでございますけれども、その際に、もしあなた方の予定されておるような成果が上がらないとしたら、非常に重大な問題が出てくるだろうと思います。こういう点については、今この段階では私は、仮定の事実に属しますから、追及いたしません。この点は当局としても一つ十分注意をしていただくことが大事だろうと思います。むしろ、やはり契約当時に、今日保証期間延長等についてずいぶんと迷惑な事態が出てきておるということをわれわれは注意しなければいかぬと思います。こういう契約をする際の当局側あり方については、私の観点では、ずいぶん開発ということが重点になったということからきていると思いまするが、先を急いでおるためにどうも足元を固めないままに契約が先行している。で、ずいぶんずさんな契約とか、その実施方が行なわれてきたのじゃないかと思うのです。そういうことのないことを私は念願しておるわけです。そこで私は、炉が完成されましたときに期待されるべき成果を中心として、いろいろな関係研究部門計画があったと思うのです。今日の段階で、それぞれ予定されておった計画が、予定通りに炉の完成が行なわれない、また燃料が入らないということから、計画変更といいますか、予定されていた線をずっとくずすとか、あるいはまた、別な方向でその研究機関を活用しなければならないとか、道を求めなくてはならぬというようなことが出てきていることを私たち承知しております。現状の計画のそごからきておるところのそういう研究機関の混乱といいますか、そういうことが具体的にはどういうふうに出ておるか、この際こまかく御説明していただきたいと思います。
  16. 杠文吉

    杠説明員 ただいま具体的に説明せよということでございましたが、残念ながら資料の持ち合わせがございませんので、期間的にずれているということだけは言えるかと思いますが、具体的にどの計画がどれだけどう変更されておるかというようなことにつきましては、なお調査さしていただきたい。
  17. 石野久男

    石野委員 今、資料がないから説明ができないというお話でございますから、その資料をぜひ一つ出していただきたいと思います。と同時に、今日の段階で、工期延長されておる関係上、今すぐにでも対策を考えなくてはならないような部門があると思います。そういうものの一、二のものだけでもわかっておりましたら、この際御答弁いただきたい。
  18. 杠文吉

    杠説明員 資料は後ほど御提出申し上げます。ただいま差し迫って研究支障を来たしておるかどうかということでございますが、差し迫って研究支障を来たしておるということは承知いたしておりません。おそらくは差し迫っては支障を来たしていないのじゃないか、ただ期間的なずれがあるのではないかというふうに考えております。
  19. 北條秀一

    北條委員 今の資料の問題でございますが、CP5の問題については、今の池田内閣が成立直後、大新聞朝日新聞社説においてこれを非難攻撃したことは、御承知のところであります。あの社説の中で、CP5は非常に高い授業料を払っておる、従って政府及び関係者は、今後この高い授業料を払ったことについて十分な戒慎をもって将来に処せ、こういう結論を書いたのですが、あなたは今言った結論を是認されますか。
  20. 杠文吉

    杠説明員 いろいろな見方があろうかと思いますが、やはり朝日新聞社説のいうところの見方も是認せざるを得ないと思います。
  21. 北條秀一

    北條委員 高い授業料を払うべくして払うものならいいのです。ところが、払うべからざる高い授業料を、どこかの手違いで払ったわけだということになると思うのです。今あなたは、その社説結論は是認すると言われた。そうすると、どこにそういう欠陥があったかということになってくると思うのです。先ほど来石野委員からいろいろと質問されておりますが、要するに、そこに落ちつくと思うのです。従って、どこに欠陥があったか、どこに手落ちがあったか、だれが責任をとるかとらぬか、これは石野委員もその責任についてはあえて追及しないと言われましたけれども、私どもも追及するつもりはございません。しかし、責任の所在だけは明らかにする必要があると思う。昨日来原子力局長お話を聞いておると、いろいろな、とうてい僕には理解できないような条件があって、だから、結果としてはどこでどうなったか、わけがわからぬ。そこで、幸い今石野委員からその資料を出せということでありますから、その資料は、政府として、あるいは当局として、CP5の経緯について責任の持てる、オーソリティのある書類を一つ整備して出していただきたい。そうしなければ、私どもは聞いておるだけではとても理解できないのですから、ぜひ一つはっきりとしていただきたい。
  22. 杠文吉

    杠説明員 ただいまの北條先生の御要求でありますが、もちろん、私たちはこの高い授業料というものをこのままにしておくつもりではございません。従いまして、十分にその間の経緯がおわかりいただけるように、資料を作成いたしまして、権威のある、私の方で責任の持てる資料を差し上げるつもりでおります。
  23. 北條秀一

    北條委員 それに関連いたしましてもう一点申し上げたい。  それは、原子力問題は国民の関心の的であります。同時に、これに対しては非常な危険感を伴っておるわけですね。そこで、待望のCP5、すなわち第二号炉ができて、これがああいうふうなことになりますと、天下の耳目はあげてこれに集中しておるわけです。従って、原子力開発の問題について、将来大きな疑惑国民の心の中に印象づけておるのではないかと私は思うのです。だから、すみやかに政府はその疑惑を解きほぐすために努力をすべきだと私は考えておるのですが、今日まで政府はそれに対して善処されたと思うのですが、もし善処されたとすれば、どういうふうなことをやられたか。ことに、今日は啓蒙宣伝の活動について池田内閣は大いに力を注ぐと言っておられるのでありますから、ことにこの問題については格別そうだと私は思う。でありますから、社説が出てから一カ月半以上過ぎますが、この間にどういうふうな措置をされて国民疑惑を解くような努力をされたか、あるいはマスコミに対してどういうふうな啓蒙宣伝をされたか、それについてやられた事実をこの際説明していただきたい。
  24. 杠文吉

    杠説明員 私の方といたしましては、科学技術庁記者クラブというのがございます。これは有力各紙が多数参加しておるわけでありますが、その科学技術庁記者クラブにおきまして、経過を私みずから、また原子力研究所菊池理事長杉本理事から十分に御説明申し上げました。
  25. 北條秀一

    北條委員 しかし、それは科学技術庁記者クラブ説明されたというだけで満足はできないと思うのです。要するに、疑惑国民に与えておるのですから、その記者クラブがあらためて意を決して新聞そのものの力によって国民の方にPRしてくれるならいいのですけれども、それは事実ないんだな。ないということは、疑惑がいつまでも残っておるということではないかと思うのです。しかし、政府ではそういうことをやらぬでいいのだ、心配はないのだとおっしゃれば話は別になりますが、それでは、あなたの方では、あの新聞の論説によって天下に暴露された疑惑については、あれは今までの処置で心配ないのだ、こういうふうにお考えになっておるのかどうか。
  26. 杠文吉

    杠説明員 ただいまのところでは、科学技術庁記者クラブにおいて十分に御説明申し上げまして、その経過はよくわかったというような回答を得ておりますので、一応わかってもらえているものだというふうに考えております。それ以外のマスコミによる事態の解明につきましては、私の方にも妙手がないというところでございます。
  27. 北條秀一

    北條委員 きのう私、この「原研」2号をいただいたのですが、私はおそらくあの問題についてこういうものが出てくると思ったんだな。ところが、全然出てこない。だから、こういうものを出すべきだと思うんです。ぜひ出していただきたい。
  28. 杠文吉

    杠説明員 お説ごもっともでございますから、次の号が発行されますおりには掲載したいと思っております。
  29. 北條秀一

    北條委員 それに関連いたしまして、今朝の新聞を見ますと、今度は第三号炉の問題が決定したようでありますが、この第二号炉における失敗の苦い経験を必ず第三号炉には十分生かして、第三号炉については十分に慎重に検討されたと思うのですが、その点どうですか。
  30. 杠文吉

    杠説明員 第三号炉とおっしゃっておりますのは、動力試験炉のことだと思いますが、動力試験炉は、ジャパンGE社との間に、ただいまお話がございましたように八月三十日に契約の締結をいたしました。その間約一カ月、アメリカ本国の方から——親元GEと申しますか、インターナショナルGE社からも、弁護士を引き連れまして、四人ばかり参っております。私の方も——私の方と申しますのは原子力局の方でございますが、原子力局の方も立ち会いまして、十分検討いたしました。従いまして、CP5におけるがごとく、すなわち昭和三十一年度当時のごとき契約ではございませんで、日本流のと申しますか、日本国内において理解のいくような、すなわち炉完成後の保証も取りつけております。十分にCP5のいわゆる高い授業料なるものの経験は生かしております。     〔委員長退席中曽根委員長代理着   席〕
  31. 北條秀一

    北條委員 それでは、再び失敗を絶対に繰り返さないという確信があるということですか。
  32. 杠文吉

    杠説明員 その通りでございます。
  33. 石野久男

    石野委員 今お話しのCP5に対して再び失敗を繰り返さない、CP5の今度の問題については、高い授業料を払ったということの確認の中で、高い授業料失敗に終わらさないということのためには、契約当時における事情にさかのぼって考えなければならぬ問題が相当多かろうと思うのです。ことにCP5の問題は、燃料の問題は二月に完成されたものが三月になってからクレームがついてきた。しかもそのクレームは、受け取るこちらではなくて、AMF社の方でMC社に対してクレームがついたんだ、こういうことになっておりますから、われわれの側、特に日本の側からすればそれをどういうふうに考えるかという問題が非常に重要であろうと思うのです。考えられる線としては、AMF社ほんとうに善意な立場で、日本原子力開発失敗をもたらさないという立場から、燃料に対するクレームをつけておるということも言えると思います。しかし、燃料にしてそう大してクレームのつくべきものでないのだということを原研の側で確認しているようでございますが、もしそうだとしますと、今度はAMF社MC社に対するクレームつけ方にまた疑義が出てくるのですが、こういう二つの問題があると思うのです。ですから、私は、当局がどういうふうにこのクレームつけ方について見ておるかということについて、この際一つ聞いておきたいと思うのです。
  34. 杠文吉

    杠説明員 ただいまの御質問でございますが、昨日来御説明申し上げておりますように、炉の契約当事者原子力研究所であります。燃料契約当事者日本政府でございます。従いまして、MC社関係日本政府との間の関係でございますが、ただ、ここに日本政府と申しましても、きのう来御説明申し上げておりますように、炉は特殊なものでございますから、当時においては、日本政府が独自に、AMFが設計したところのCP5の炉に適合するような燃料のすべてを作り得る状態でなかった。従いまして、AMF社の一方に間接的に——と申しますのは、日本政府原子力研究所の方に燃料検査を委任いたしました。原子力研究所におきましては、燃料スペックを作りましたAMFとの間に検査契約を結びまして、原研の人の立ち会いの上に燃料検査をいたしたわけでございまして、原子力局、すなわち政府を代表する契約当事者としての科学技術庁におきましては、燃料において瑕疵はないものと考えております。従いまして、しからばAMFの方で何ゆえに燃料の出荷について四月初めにストップをかけたかということになるわけでございますが、その辺のところになりますと、今の燃料検査契約関係に問題が戻ってくるわけでございまして、検査契約において、そのスペックに厳密に合致しているかどうかというその判定の相違、それが論争になっていて燃料は遅延したことになっておるわけでございます。従いまして、その判定は、一方、燃料契約当事者である科学技術庁におきましては、先ほど申しましたように原子力研究所に委任しておるわけでございます。原子力研究所は十分であるというわけでございますから、燃料に関する限りにおいては瑕疵のないものだというふうに考えておるわけでございます。
  35. 石野久男

    石野委員 日本政府原子力研究所に依頼し、そして原子力研究所AMFとの間に検査に対する一つ契約を結び、それで瑕疵のないものとして通過したものが、今度はAMF社クレームをつける、ストップをかけるということがどうも解せないわけなんです。それをどういうふうに見ているかということです。
  36. 杠文吉

    杠説明員 それはAMFにおきましても、当初はスペック通りに合っているということでオーケーをしております。ただ、ここに非常に微妙な問題は、当初スペック通りであるといってオーケーをしておったAMFが、なぜストップをかけたかと申しますと、いわば念のためにフローテストというテストをやってみる必要があるということを言い出した。そうしましたら、MCにおいては、これを当初オーケーしておるわけですから、拒絶すればいいとも言えるわけですが、非常に良心的に、メーカーの信用におきましてそれを受け入れまして、検査をいたした。ところが、多少おかしいものがあるというので取りかえを交渉されまして、そして取りかえにはMCは応じて、三本、すなわち、その量は、昨日申し上げましたように、三本は作り直しをして出しますということでございましたが、今度はMC側において、そのフローテストの際に少し黒い固体的なものがごく微量出てきたということを、良心的にAMFに話をしました。次いでAMFにおきましては、それは問題だから、ボイリング・ウォーター・テストというものをやってみる必要がある。そして二十四時間、摂氏百度に近いという湯の中にその燃料をつける試験をしたわけであります。そうしたら、何ということはなかった。従って、その限りにおいてはオーケーでございますが、次にはAMFの方で、今の何か不純なやつといいますか、まじっておるかもしれないというので、ラジオ・グラフィ、すなわちエックス線検査をしてみた。そうしたら、エックス線検査について、AMFが、先ほど申し上げましたが、厳密にスペックに合っているかいないかというその論争の種が出てきたようであります。と申しますのは、ウランがアルミとホモジニアスに——といいますか、入っているかどうか、合金されているかどうかということが、今のエックス線写真において論争になったということでございます。しかし、これが厳密にホモジニアスであるかどうかということは、いずれもが判定し得ない。いずれもと申しますのは、原研の立ち会いにおきましても、またAMF社MC社においても、すべてが納得し得るような結論に至り得ていないということでございます。しかし、そのために日を送ることは得策でなかろう。と申しますのは、すでに石野先生もよくおわかりだと思いますが、一期装荷、二期装荷ございます。一期装荷において、いわば一メガ出れば、研究の遅延したことは別としまして、研究自体には差しつかえないわけでございますから、そこで、その論争のままにおいて燃料を引き取ることを科学技術庁においては決意したわけで今日に至っておりますから、いわゆるそれが非常に厳密にスペックに合っているかいないかという論争は、実証するよりほかない。実証すると申しますのは、今度装荷してみるよりほかないというようなことになっておる状況でございます。
  37. 石野久男

    石野委員 MC社において、自分からほんとうに自発的に黒い固体のようなものがあると言われて、AMF社の方で、それならばということでエックス線検査をした。エックス線検査では、厳密にスペックに合っておるかどうかということで、論争になり得るような条件が現在まである。あるけれども、今度当方の事情によって、こちらではとにかく第一期に装荷するということによって一メガの出力が出てくれば、そのことを先にすべきだということで今やっているのでというお話でございますが、問題は、エックス線検査で出てくるものが厳密にスペックに合っているかどうかという論争の問題が、ただ出力を出し得るかどうかという問題のカテゴリーでなくて、炉の運転とか何かに対しての問題点があるといたしますならば、かりに出力が出ましても、そこから事故が出てくるようなことがあり得ると、これは非常に重大なことになるだろうと思うのです。私は、厳密にスペックに合っているかどうかという問題の論争点が、実際に炉の安全という問題とどういうように関係しているか知りませんけれども、もしそういうような安全性に及ぶようなことであるといたしますならば、これはむしろ装荷することを急ぐことは、かえって危険でなかろうかというふうに私は思うわけでございますが、そういう観点についてはどういうふうな考え方を当局は持っておられますか。
  38. 杠文吉

    杠説明員 ただいまの御質問にお答えいたしますが、当局におきましても、CP5は初めての経験でございます。しかしながら、原子力研究所の全知全能をあげまして、安全運転ということを考えております。従いまして、先ほどのストリクトリーに合っているかどうか、スペックに合っているかどうかということが、安全の問題に関係しますならば、科学技術庁におきましても、燃料の引き取りは絶対にお断わりしたいと思っているわけでございますが、安全の問題ではなしに、出力の問題に関係しているということでございますから、出力のことでございましたら、先ほど来御説明申し上げておりますように、保証期間延長等努力をいたすべきであると思って、目下AMF社原研との間に折衝を重ねているというような状況でございます。
  39. 石野久男

    石野委員 私は、こまかくまだ自分で調べているわけではございませんし、今、局長が言われるように、厳密にそのスペックに合っているかどうかの問題で論争点がまだ残っておるということが、安全性に全然関係なく、ただ出力の問題だけだ、こういう御説明は、ちょっと燃料に関して問題を残すような気がいたします。あとで、そういう問題についてもう少し私たち研究しなくちゃいけないと思いますし、それから向こうの事情も聞かなくちゃいけないと思うのです。すでに原研の方でも、今度の燃料を使って三メガワット出力が出るんだという確信を持っているやに聞いておるわけでございますから、そうすれば、第一期のものとしてはそれでいいんだというような結論が出ておれば、何もAMF社の方で出力問題でそんなにごたごたする必要はなかろうと思うのです。また、AMF社の方が、ほんとうに十メガワットのものをこちらとの契約通りに出そうということを真剣に考えて、そのスペックに対する厳密な角度からするOKを与えようとしているとするならば、善意な立場でやっているわけですから、こちらがそれを無理にけってまで、その論争点を拒否していく必要はないと私は思うのです。そういう立場当局がとったりあるいは原研がとったりすることは、かえって間違いじゃないかと思いますし、それからまた、非常に予算の使い方や何かについても軽率でなかろうかと思うのです。そういうような観点からいたしますると、私は、やはりこのスペックに厳格に合っているかどうかという問題については、局長が今言われるように、安全性の問題を無視して、ただ出力観点からだけの論争であるというようなことは、ちょっと理解しにくいのですが、それはどうなんですか。
  40. 杠文吉

    杠説明員 ただいまお答え申し上げました、原研がこの燃料につきまして三メガワットを出し得ると申し上げましたのは、安全ということを十分に織り込んで三メガワットを出せるということであります。もしも安全という問題を度外視して考えますならば、十メガワットを今日原子力研究所へ到着しております燃料におきましても出すことは可能であるということを、私の方は聞いております。安全ということを十分考慮して、そして三メガワットまで出せるということになっているわけでございます。従いまして、安全を十分に見越しておりますけれども、何度も申し上げますように、当初の計画が、すでに一メガワット研究をなすということでございますから、三メガワットの最高の出力、最大の出力を現在の燃料において出させるというような考え方はございません。それ以下における出力において研究をやらせる。それがより安全ではなかろうかと考えておるわけでございます。
  41. 石野久男

    石野委員 この燃料の問題で、エックス線検査の結果として問題になる、スペックに十分に満足し得られないというAMF社クレームつけ方ですね。このつけ方を、私たちは今局長が言われるように、安全性は十分なのだけれども出力云々ということでしますと、もっとそうなれば問題が大きくなってくるのではないかと思うのです。なぜなら、たとえば二十二本の燃料が来た場合に、それを全部装荷すれば、当初の計画では十メガのものは出せるのだ、こういうことを言っておったわけですね。今の段階ではそれが不可能だという結論になっておるわけでしょう。そういうところは案外に眠っておいて、そしてたでこの少しのところ、エックス線の問題で安全性は十分なんだけれども出力の問題——それじゃ出力の限界で、論争はどんなところに限界点を置いてやっておるのか、それはAMF社の方は十メガということをねらってやっておるのか、約束だから、どうしても十メガは出さなければならぬのだというようなことで、燃料に対する要求をしておるといたしますならば、この原子力研究所にしても、あるいは科学技術庁にしましても、そういうAMF社のとる態度を受けて立つべきである。そしてMC社に対しては強い立場をとることが、一日、二日を争うよりは、かえって日本の原子炉の活用と発展のためにいい結果をもたらすのじゃないかと思うわけです。     〔中曽根委員長代理退席、委員長着席〕  きのうから何べんも言っておりますように、そうしてまた、お話がありましたように、CP5は非常に高い授業料を払ったといのようなことで、もうケリをつけようというような考え方がもしあるといたしますと、それは間違いでありまして、われわれが自分の使った金というものは、それだけの正当な効果を出さなくちゃいけないだろう、効果をねらうために、一月や二月の問題じゃないだろうと私は思うのです。むしろ、やはり炉はもう少し細心の注意をして要求をすれば、当初の計画通りにいくことになる。二〇%濃縮ウランで十メガのものが出せるという約束通りのことはできるというならば、それを当局はやはり確実にすることの方が、予算的に見ましても、科学技術の前進のためにも、いいのじゃないかと思うわけです。従って、今のエックス線検査の結果として出てきておる論争点というものは、そうわれわれは軽視すべき問題じゃないように思います。当局は非常に急がれておるから、そんなことはあとにしてもいいから、炉に装荷して、とにかく第一期の出力だけ出してみよう、こういうようにおっしゃるけれども、ちょっと問題の置き方がさかさになっておるのではないかと思うのですが、その点、局長はどういうように感じておられますか。
  42. 法貴四郎

    法貴説明員 局長の答弁をちょっと補足させていただきます。ただいまの石野先生の御指摘のインクルージョンの問題でございますけれどもAMF社クレームをつけたと申しますのは、エックス線検査の結果、インクルージョンがあるらしく思われるというような写真も出ておりますので、それをもとにしまして、非常に大きなインクルージョンのあった場合を仮定しまして、あれはたしか五十ミルくらいの大きさのインクルージョンがあると仮定しますと、そこで熱が集中して出ますので、一メガとか二メガとかというようなところまで出力を上げますと、そこに熱が集中して、燃料体が一部分溶けるとか、あるいはアルミの被覆にクラッキングが入るとかというふうなおそれもあるのではなかろうか。だから、仕様書には合っておるとはいっても、出力をむやみに上げることには問題があるというふうな言い方でありまして、非常に今大事を踏んで、われわれに注意をしてくれたというふうにわれわれは受け取っているわけでございます。しかし、われわれは経験がないことでもありますから、それをどう考えたらいいかということは、今の段階ではここではっきりとわれわれ結論つけるわけには参りませんけれども、大体の感じといたしましては、AMF社は少し大事を取り過ぎた感じもあるのじゃなかろうか。もう少しエックス線の写真等も検討しますと、とてもそんな大きなインクルージョンは考えられませんので、もう少し合理的にあり得べく想定されますインクルージョンの大きさについては、いろいろの大きさのものについて原研においても勘定いたしまして、われわれとしては十分いけるという見通しを持っております。安全性の問題と申しますのは、結局温度上昇がそこに集中して、そこで温度が上がって、燃料体が溶けるとか、あるいは被覆にクラッキングが入るとかいう問題でありますから、そういうおそれのない使い方で、つまり、安全性も十分確保した上でそれを使って、そして数メガワットのところまでは十分いき得るであろうというような見通しを現在持っておる、そういうことでございます。
  43. 石野久男

    石野委員 今の法貴次長さんの説明は、よくわかります。ただ、その場合に、原研の方では、五十ミルのインクルージョンが出た場合に、燃料が集中的に熱を持って、あるいは溶けてくるとかなんとかいうことについての研究は、こちらはこちらとしてやるといたしましても、AMF社としては、そのことを非常に心配してクレームをつけてきているのだろうと私たちは想像するわけです。そうなりますると、今度燃料検査については、原研AMF社との間に協定があるわけですね。そうしてそれによって検査をしているわけですから……。しかも、われわれの方は経験が乏しい。その経験の乏しい方が、経験の豊かなものの注意を無視してそれをあえて使うということは、理にかなわないことだと私は思うのです。そういうような意味で、私は、このエックス線検査においてスペックに合格しているかどうかという問題は、非常に重要だ。そういう問題についてAMF社の方がオーケーを出した場合は、もう別にわれわれはとやかく言う必要はありませんけれども、そういう論争点を残しておるにもかかわらず、それを装荷させるということは、非常に危険じゃないかということを憂えるわけです。私は、契約の内容もさることながら、安全運転という問題からすると、非常に危険じゃないかというふうに考えるので、今聞いているわけです。そういう点についてはどうなんですか。
  44. 法貴四郎

    法貴説明員 ただいま御説明いたしましたように、そのエックス線検査によりますインクルージョンの大きさというものは、決してそんな大きなものではない。多少そのインクルージョンらしきものがあったものはリジェクトしまして、結局そのために、二十二本のうち三本だけは再加工するということで、残りの大丈夫なものだけを十九本取りつけたわけでございますから、その中には、そう明らかなインクルージョンというものは、まずないと考えてよろしいわけでございます。そういうことでありますから、われわれはそんなに心配していないわけでございますけれども、しかし、念には念を入れまして、今後燃料を装填いたしましてから二、三カ月の間は、非常な低出力で性能試験を十分にやりまして、そこで見通しをつけましてから、一メガないし三メガの運転に入るというふうな段取りでやっておりますので、しかも、期間も半年ないし一年というふうな相当の長期間を見込みまして、その安全確保の観点からも、十分慎重に取り組んで運転をしていきたい、運転計画を固めていきたいというふうに考えておりますから、まず安全性確保の点では御心配の要はないというふうに考えております。
  45. 石野久男

    石野委員 私は、この燃料を使って炉を運転する場合は、研究のためにけつを追われるようにしてあちこちから要求が出ていることでもありまするし、また、原子力開発立場からしても、それは早期に装荷することは望ましいことだと思っておりまするけれども、それがいたずらに先を急ぐために安全性が度外視されたり、事故の発生を予想さるべきものを持っていながら、しかし安全運転をするのだ、あるいは熱を高めないで、なるべく低位において運転をするのだというようなことだけで運転していきまして、そのために事故が出てくることを非常に心配いたします。だから、これは一つ当局側原研も、非常に注意していただきたい。特にAMF社としては、どういう観点からか知りませんが、とにかくそういうクレームをつけておる。本来ならば、AMF社クレームがつけらているものに対しても、なおもう一そうこちらは厳密にクレームをつけて受け取るのが、商売の筋だろうと私は思うのです。それがこの場合は逆になっておる。ここにも私は非常にあせりがあるような気もいたしまするし、そういうあせりが非常なつまずきとなって、かえって逆に元も子もなくするというようなことにならないように注意してほしいと、私はこう思います。  それからいま点は、もし原子力研究所あるいは原子力局科学技術庁の側では、大体燃料については、もうAMF社が考えるほどそんなにシビアに考えなくても、われわれの英知をしぼってこれをなにした結果としては、大丈夫いけるのだと思われるにもかかわらず、AMF社が非常に注意深くそういうクレームを主張するということになりますると、これは常識的にはちょっとまた異常なものがあるということも、率直に言いますと、言えるわけです。私は、そういう点から、今度は炉の問題に対するAMF社の自信のなさというものがあるのじゃなかろうかという心配を、実を言うと持っているのです。今はまだ燃料の問題で論争が非常にきびしく行なわれておりまするけれども、これが燃料も来た、しかも、もう十月の初めには装荷するのだ、こういうことになっているのに、今度は炉の方で所期の出力も出ないとか、あるいは何かの事故でも出るというようなことがあると、非常に危険だと思います。おそらくやはりAMF社の方でもそんな不手ぎわなことはすまいとは思いまするけれども、しかし、なお自信がないからというので、燃料の方にいろいろな責任づけをしておるというようなことがもしあるといたしまするならば、やはり炉に対する厳密な検査と、それに対する私たちの監視が大切になってくると思います。そういう点は、私はこの機会に特に当局にお願いしておきたいと思う。私は、今の段階では、当局もあるいは原子力研究所も、誠意をもって、しかも、安全性を傷つけないような形で運転されるものというふうに見ております。ぜひ一つそういう点は注意していただきたいと思います。  私は、まだあとに大臣に対して聞きたい問題がありますけれども、今大臣が見えておりませんから、これはあとの機会に大臣がおいでになりましたときに、AMF社との間の契約の問題とか、あるいは炉の運転についての問題とかいうことについての大臣の所信は、次の機会に伺わせていただきたい。
  46. 稻葉修

    稻葉委員長 岡良一君。
  47. 岡良一

    ○岡委員 昨日、科学技術庁長官で、原子力委員長である荒木さんから、今後のわが国の原子力の研究開発、利用についての骨子を承りました。それからまた、資料といたしまして、原子力の長期にわたる利用に関する基本計画の基礎となる考え方というようなものをいただきました。そこで私は、なかんずく、その原子力発電というものを中心といたしまして、久しくこの委員会ではお目にかからなかったので、お忙しいところを石川、兼重両委員の御出席をわずらわしたわけでございます。私は、うしろを振り返ってものを言うというよりも、前向きの姿勢で、今後の率直な御見解を若干承りたいと思います。  そこで、まず第一に、最近の原子力の平和利用のための研究開発の内外の情勢からいたしまして、一部には、原子力がスロー・ダウンというような評もあるようでございますが、この点はっきりさせていただきたいと思います。やはり今後の長期にわたる基本計画では、内外の情勢、特にまた、わが国におけるこれまでの過去の実績を慎重に反省をし、検討をし、長期的な観点で、あくまでも原子力の平和利用のための研究開発を推進するのだという強い御決意と存じてはおりますが、その点御決意のほどをあらかじめ承っておきたいと存ずるわけであります。
  48. 石川一郎

    石川説明員 ただいま世界の大勢についてちょっとお言葉がございましたが、各国とも、スロー・ダウンという言葉がいいか悪いか存じませんけれども、そういうふうな傾向にございます。それはエネルギー事情がだいぶ違って参りましたので、たとえば石油が大へん安く入ることになり、また、石油を使います大きな発電所のコストが大へん安くなったものでございますから、多少スロー・ダウンになっておるきみにわれわれも感じております。しかし、将来の日本のエネルギー事情から考えますと、十年、二十年先には、相当の原子力発電をやらなければならぬと存じますので、スロー・ダウンされておりますけれども、その間に十分基礎的の研究をどんどん固めて参りたい、こういうふうに考えております。なお、その基礎的な研究のみならず、実は一番初めに、あるいは明らかに長期計画に書いてはなかったかと存じますが、まずイギリスの炉を入れてみて、これで練習する、その次にはアメリカの炉を入れて練習する、こういうふうな十五万キロぐらいのものを入れてやっていく、こういうことでございましたが、アメリカの方の事情を見ますと、まだわれわれが安心して輸入するような状況になっておらないように思います。ちょうど来年くらいからそろそろその計画を遂行する準備を始めてもいいんじゃないかというふうな状況になっておるかのごとくに思いますので、はっきりいたしましたらば、あるいは書きものにはなかったかも存じませんけれども、前からわれわれの考えておりました、英国式の次に今度はアメリカ式のものを入れまして、そして炉の方の研究並びに開発をやって参りたい。しかし、その間時間がございますから、われわれが初め考えておりました、たとえば当初増殖炉の問題が非常に問題になって、早くやらなければならないということであったけれども、むずかしい問題なので思うように進んでいない。もちろん将来の問題としては、日本としても大いにやらなくてはならない。ところが、増殖炉をやることを決議して参ったのですけれども、まだ実はプルトニウムをいじった人さえ日本にはいないのです。それで外国でも、プルトニウムとU二三五とが同じ値打があるかどうかということも、まだはっきりしておりません。そういうことをその間に確かめまして、研究をいたしまして、そうして進んで参りたい、そういう基礎から固めて参りたい、こういうふうに考えて、われわれの行き方は、われわれが前に考えておりましたよりは——たとえば五年間に六十万キロの発電所を作る考えでおりましたが、これは少し延びるかも存じませんけれども、足固めをすっかりして、そうしてしっかりやっていきたい、こういうつもりでどんどん進めることについては、決して怠けておるとか、あいはよそうとかというようなことは考えておりませんから、そういうふうに申し上げておいていいだろうと思います。
  49. 岡良一

    ○岡委員 私どもも、この原子力の平和利用については、たとい若干足踏みの事情がかりにありといたしましても、その将来には大きな期待がつなぎ得る。従って、過去の実績、内外の情勢等を十分に検討した上で、りっぱな長期計画をぜひ作っていただきたいと思うわけです。ただ、日本では、御存じのように、学術会議の諸君もこの原子力には非常な関心を持っており、同時にまた、原子力産業として若干の産業グループも発足しておる。そこで、長期利用計画を私どもがいただいたのは、その骨子でございますから、これに血肉を与えるという場合には、やはりこういう方々の意向というものを十分に尊重しつつ、血肉化される必要があろうかと思いますが、具体的にその手順等について、原子力委員会として御考慮があるならば、この際お示しを願いたいと思います。
  50. 石川一郎

    石川説明員 基本的の考え方につきまして、これは皆様方にも差し上げましたが、各方面にこれを差し出しまして、御意見を伺っております。ところが、どこからもまだ意見が出ません。しかし、産業会議あたりとは、ときどき会って話しておりますが、別に意見がないようでございます。ただ、学術会議の方ですが、八月に何か会が開けないとかいうので、九月の二十二日ごろにその考え方につきましての意見を申し述べる、こういうことになっております。その最初の基本的の考え方がきまりましたならば、これによりまして将来どういうふうに——これをこまかく分析いたしまして、また案を作りまして、そうして固めて参りたい。それができ上がるのは多分年末ごろになるのじゃないか、こんなふうに考えて進めております。
  51. 岡良一

    ○岡委員 最近、原子力の研究開発の推進の上において、私どもの不幸な経験と申しましょうか、いわば原子力の学界の権威者あたりから、原子力委員会あり方にかなり批判的な態度があったことは、御存じの通りでございます。そこで、これは原子力委員会とすれば、原子力産業に努力しておられる産業界の意見、同時にまた、研究室で原子力の研究をしておられる学界の諸君の意見、こういうものをやはりうまく手綱をとって、そうして、日本の原子力というものをそういう調和の上に進めていかれるという大きな政治的の責任があろうと思います。そういう点でぜひ一つ、かつてわれわれが味わったような、学界の批判的な意見を無視していくというようなことのないように、基本計画にうたわれたように、あくまでも民主的に学界の意見も尊重しつつ、新しいりっぱな長期の基本計画を仕立てられて、この骨子を血肉化されるように私はお願いをいたしたいと思います。  なお、それではこの長期計画というものがさらに具体化されたものは、いつごろでき上がるのでございましょうか。
  52. 石川一郎

    石川説明員 ただいま申し上げましたように、まだ学会の方からの御意見はございませんけれども、実は学術会議の方に幹事会というのがあるそうでございます。その方には、どういうふうな御議論をなされつつあるかというようなことは、これは非公式でございますけれども、伺っております。まだ正式の御意見の発表がございませんから、それを待っておる次第でございます。それで今お話のように、そういうものができますまでの間にもどんどん仕事は進めておりますが、よく御意見を伺いまして、とるべきものは喜んでこれを採用し、また、もしわれわれの意見と違う場合には、よく御了解を願いまして、われわれとしては、りっぱな長期計画を具体的には作って参りたい、こう存じております。それは先ほど申し上げた通り、ことしの末くらいになるのではないか、こう存じております。
  53. 岡良一

    ○岡委員 なお、このいただきました長期基本計画の基礎となる考え方の中で、わが国の原子力の政策も大きく修正をする必要がある、その理由はというので、第一から第四までの理由があげてございます。しかしながら、私はこの理由を拝見いたしただけでは、かつて今日までわが国の原子力の平和利用政策がたどってきたあり方に対する正しい反省があるのかどうかという点、実は私も若干疑問を持っておるわけです。たとえばこの委員会一つの論争となりましたことは、今日国際的に見ても、原子力発電というものはいわば実験段階だ、従って、やはり各国の成果というものを十分に摂取しつつ、わが国の原子力発電というものは進むべきであって、今直ちにこれを実用段階にあるという判断からわが国の原子力発電を推進することは、出発点において急ぎ過ぎるのではないか、こういう意見がございました。当時の中曽根長官にしても、また原子力局の当事者にしても、いや、そうじゃない、原子力発電はすでに実用段階だ、こういうようなお考えで発足せられたわけであります。そういうような点に、やはり原子力発電を急ぎ過ぎたというようなこと、そういう反省があってしかるべきではないかと私は率直に思うのでございまするが、その点については、特に当初から原子力発電に御努力石川委員のお考えはいかがでしょうか。
  54. 石川一郎

    石川説明員 原子力の発電が実用段階にあるか、あるいはないかというような問題は、要するに安全性の問題と経済性の問題だろうと存じます。それでアメリカあたりで、最近、ことしの春ぐらいでありましたが、いろいろ国会あたりでおきめになっているところを拝見いたしますと、まずアメリカとしては、アメリカの中であるいはまた外国で、比較的電気の高いところには、あと五年間あったらりっぱなものを作っていけるだろうというようなことを言うております。なお、十年たてば、アメリカの最も安い発電所、石炭なり何なりの発電所に匹敵するようなものができるだろう、こういうふうな考えで仕事を進めておられるようでございます。われわれも初め三十一年に案を作りました当時は、ちょうどスエズ運河事件の前後でございまして、世界じゅうが少しのぼせていたというような考えでありますし、われわれも心配しておったのでございますが、その後いろいろ事情を見ますと、これは要するに、間違いではないのだけれども、そう急ぐ必要はないじゃないか。要するに、しっかりした足場を作ってからそれによっていくべきじゃないかというふうに考えておりまして、その反省が要するにタイム・ラグ、幾らか時をおくらしたというだけで、根本的の問題はあまり違ってないかと存じますが、急ぎ過ぎたという感は多少あります。しかし、原研で入れましたイギリスの炉は、ともかく日本が非常におくれておりますし、あれは経済的に申しましても、約五円キロワット・アワーつきますものですから、経済的には非常にいいとは申せませんけれども、要するに、あれを入れまして、そうしてみんなのこれを動かすことに対する研究、建てることに対する研究、それからまた、人間を養成するための機械、設備というふうに使いたいということで入れたのでございまして、あれは経済性から申しますれば、少し高いのでございますけれども、諸外国が相当な金を使い、いろいろこのごろ伺うところによりますと、一つの炉を完成するのにまず一億ドルは要るようでございます。なおそれでも現在の油の事情あるいは火力発電の事情から考えますと、経済性には少し及ばないので、さらに約一億ドルくらいかけて、その目的を達するようにいこうということでございますので、そういうふうな意味で、今直ちに原子力発電を大きくやろうという意思は毛頭ございません。要するに、非常におくれておりますし、人の養成あるいは経験を得るため、あるいは建設をどうしたらよいかというようなことを練習していざというときにそれが使えるような考え方でいく、こういうふうにわれわれは考えておる次第でございます。
  55. 岡良一

    ○岡委員 原子力発電がわが国でひとしお声高くなったのは五年前でございましたが、ヒントン卿が来られて、いわゆる〇・六ペンスということであったと思うわけですが、今石川委員は原子力発電のコストの点に触れられまして、〇・六ペンス説を唱えられた当のヒントン卿も、ことしの六月、マドリードで開かれた世界の動力会議の演説の中で、はっきりと、火力、新火力と大体価格が引き合うのはここ十年はかかるだろう、同様なことが、英国動力相の同じく六月の声明にも出ておるわけです。ユーラトムの四月の報告書を見ましても、やはりここ十年かかる、こういうようなことを言っておる。このコストの点では、なるほど諸外国に比べてわが国は新鋭火力の発電単価に若干の格差があります。しかし、また  一方、わが国とすれば、原子力発電をするとすれば、どうしても輸送費の問題とか、あるいはまた耐震設計のための安全のための諸経費、そのほかいろいろな要素も加わってくるわけなので、この基礎となる考え方にいたしましても、十年後にはこの新鋭火力と原子力発電が大体価格において交差線を描き得るかどうかという点には、おそらく何人も自信を持てない。引用してある数字も、おおむね外国の報告を引いてあるようでございますが、それにプラスするいろいろな要素が、まだまだ慎重に考慮されなければならないだろうと私は思います。ただ、そうだといたしましても、今アメリカのお話をされましたが、アメリカも、ことしの初めAECから議院に提出をしたいわゆるピットマン報告、これなど読んでみると、一九七〇年までに八つの異なったタイプの炉を開発する、そうして発電コストは七ないし八ミルに下げる計画を立てるが、それにはAECとしては、日本のお金にして九千億かかる、国家の資金をもって助成する、こういうような計画も出ております。そういうようなことで、今度原子力委員会としては、これは石川委員が、一昨年の国際原子力機関のジュネーブの第二回総会で御声明になった、昭和五十年には七百万キロワットの発電をする。ところが、今度の新しい計画では、昭和四十五年までにせいぜいが百万キロワット、こういうふうに非常にテンポが下げられた。そういうわけで、わが国の計画が内外の諸事情によって大きく切り下げられたということは、私としてはこれは当然なことだと思いますが、問題は、なぜ切り下げられなければならなかったかということについての反省があってもいいのではないか。その当時、われわれは、急ぐべきじゃない、よほど慎重にかからないと——少し軽率過ぎるのじゃないかということを、実はこの委員会で何回申し上げたかわからない。ところが、やはり昭和五十年の七百万キロワットが、昭和四十五年の百万キロワットに大きく切り下げられた、ここの反省があっていいんじゃないか。私はこの点のもう少し率直な見解を承らしていただきたいと思います。
  56. 石川一郎

    石川説明員 お説の通り、われわれは多少浮かされたという点もございましょうし、あるいはまた未知であった、無知であったということもございましょうと思います。それでわれわれとしては、現在の情勢からだんだんとわかって参りましたものですから、この点を切り下げなければならなかったのでございまして、もし石油でもこうなってこなければ、もっと急がなければならなかったということもあったかも存じませんが、何しろこのごろの世界の石油事情は、非常なオーバー・プロダクションになって、どんどん下がってきているような状況でございますから、こういう点から見て切り下げなければならぬのだろう、こう考えております。ただ、アメリカの相当大きい炉は、あまり遠からざるうちに入れて、学校に入ったつもりで練習をしておく必要があるのではないかということは考えておりますが、前の七百万キロという数字は、あれは五十年でございますが、今度は四十五年に百万キロくらいじゃないかというので、これもまだ明確に数を当たったわけではございませんが、それくらいになるだろうということを言っただけでありまして、あるいはもう少し減るかもしれませんし、もう少しくらいふえるかもしれませんしというふうに考えておりまして、要するに、その時分にはわれわれの知識が足りなかったということがあったと私は思うのでございます。だんだんそれがわかってきた。これはもっともわれわればかりではなく、ユーラトムの三賢人の御調査でも、やはりあの時分には、ちょうど偶然ですけれども、千五百万キロという数字が出ておったのですが、この方もよほど何分の一かに切り下げておるような状況でございます。要するに、石油や何かのことを考えますと、先を見ることができなかったと申していいでしょう。私はそう思っております。
  57. 岡良一

    ○岡委員 第一回の原子力の平和利用会議のときには、原子力発電ブームというものがあった。一昨年は非常に沈痛な反省の空気があった。それ以後この国際会議に現われた国際的な動向というものを忠実に受け入れるというよりも、むしろ既定の方針を急がれたというような傾向が実はあった。こういう点を今後慎重にぜひ一つお考えを願って、新しい計画を立ててもらいたい、こう私は希望いたすわけです。  そこで、昭和四十五年まで、ここ十年の間に百万キロワット程度の発電をされるというのは、一体具体的にはどういう計画を持っておられるか、今御推定としてのお心組みでもけっこうでございますが、承りたいと思います。
  58. 石川一郎

    石川説明員 その数字の問題につきましては、われわれも百万キロ前後とたしか書いてあったつもりでございます。ある方面ではもっとやらなければいかぬという御議論がございます。しかし、われわれは少しその点については消極的であります。そう急いでやる必要もないのじゃないかということも考えておるのでございますが、まだそういう数字についての調整がついておりません。もう少し話し合いまして、ある方面ではもっとよけいやったらいいだろうというお話があるのでございますけれども、どういうわけでどうだという理由等も伺いまして、われわれの意見等も述べまして、そうしてその数字を決定していきたい、こう思っております。
  59. 岡良一

    ○岡委員 ここ十年の間に原子力発電でどうしても百万キロワットの電力エネルギーを持たなければならないという事情は、私は日本のエネルギーの需給状態からいってないと思う。従って、この百万キロを原子力発電でやるかやらないか、やるとすればどういうものを入れるのかというようなことが、私はやはりこの原子力発電計画の、今後お立てになる計画の中でも、まず第一の問題点になろうかと思う。そこで問題は、かりに今東海村で建設中のコールダーホール型とすれば、五、六基ぐらい入れなければならない。実用化五十五、六万キロワットとすれば、一体何を入れるのか。ただばく然とこの十年間に百万キロワットということは、私は納得のいく計画にもならないし、また、そういういわばずさんなやり方の中にいろいろと批判が出てくると思うので、ここは非常なポイントになろうと思う。そういう点でもう少し具体的なお心組みはございませんでしょうか。
  60. 石川一郎

    石川説明員 そういう御意見を伺いたいために、実は皆様方に基本的の考え方を差し出しておるわけでございますが、先ほど申した通り、一部では、もっと大きくやらなければならぬという議論もございます。だから、そういうことを皆さんからよく伺いまして、そうして研究して参りたい、こういうつもりで、私はいい御注意だとあなたの御発言を感じておる次第でございます。
  61. 岡良一

    ○岡委員 この百万キロをもっとやれとか少なくやれということは、私は量の問題ではないと思うのです。というのは、日本はここ十年の間にどうしても原子力発電で百万キロを補わなければならぬという、逼迫したエネルギー事情にないという前提に私は立っておるのですから、百万キロがいいか、二百万キロがいいかということよりも、とにかくまず原子力発電の準備段階として、何を具体的にやるのか、ばく然と百万キロ程度というのではなくて、百万キロ程度というその内容は何だという点、これがこの計画の大きなポイントになる。もちろん私にも意見はございません。意見はございませんが、ここらあたりが産業界の意見または学術会議方面の意見の一つの論争点になろうかと思いますので、できるだけ率直に双方の意見を十分に吟味していただいて、誤りのないように御努力願いたい、こう思っておるわけであります。  それから、このいただきました資料で、十年後における原子力発電のコストの計算が出ておりますが、私はその中で、特にプルトニウム・クレジットについて、少し疑問を実は持っておるわけです。資料で見ると、一グラム十二ドルというようなことになっておりますが、御存じのように、現在プルトニウム・クレジットというものは、非常に政治的な価格だといってもいいかと思います。現在アメリカでも八基ばかり、イギリスの今動いておるチャペルクロスにしたって、コールダーホール型にしたって、発電とプルトニウムの生産の両用です。フランスにあるマルクール外三カ所の三基の動力炉にいたしましても、サハラ砂漠の原爆実験に貢献したプルトニウムの生産と両用である。そういうわけで、原爆保有国の軍事的な利用というものを目安にした政治的な価格であるという点、特にプルトニウム・クレジットというものを十二ドルと見られるというようなこと、この点について可能性があるのかどうか。何か一つ資料でもあったら、この際、原子力局の方からでもお示しを願いたいと思います。
  62. 石川一郎

    石川説明員 実は岡さんのお考えの通り、十二ドルの値打があるかどうかということは、まだわれわれにはわかりません。日本で使う場合において、売る場合はまた別でございますが、向こうに渡す場合には、平和利用にしか使わぬということは言っておりますけれども、それを全部こちらが調べて歩くわけにも参りませんから、この十二ドルというものはいいかどうかわかりません。われわれとしては、U二三五とプルトニウムは今等価的に考えております。同じ値打があるというふうに考えておるわけであります。しかし、これも確たる研究の結果は出ておらないようでございますので、われわれはこの十年の間に、プルトニウムの値打というものは一体どのくらいあるかということを確かめたいと思っておるのでございます。要するに、日本で自分のところでできたプルトニウムを使う場合に、二三五とどういうようなバランスになるか、二三五の方が安いということになるか、あるいはまた二三五をわざわざ作らなくて、プルトニウムだけ作って、それを補って入れていけばいいかということを確かめたいと思っております。
  63. 岡良一

    ○岡委員 ちょうど村田君もおられるし、最近御帰朝のことだから、向こうの御様子は御存じだと思うのだが、私ども新聞雑誌などで聞いておると、最近はプルトニウム二三八が原爆あるいは核兵器の原料になっている。しかし、最近はプルトニウム二四〇もどんどん核兵器になっている。だから、一キロくらいの核兵器は、もうプルトニウム二四〇がどっさりまじっていても十分できるのだというので、プルトニウム二四〇もくるめて核兵器の原料としての軍事的な需要が英米等にはある。ところが一方、これは現地におられたのでよく御存じかと思いますが、私どもの聞いたところでは、核兵器は作らない、外来兵器で防衛する、そのかわりに、国内で生産された特殊核分裂性物質はアメリカに引き渡す、アメリカの核兵器で核戦争に備えて核武装する、こういうような方針がとられていると私は聞いておる。そういうことになってくると、これは協定のいかんにかかわらず、使用済み燃料というものの引き渡しは、日本立場からしては、非常に問題が起こってくると私は思うのですが、それはさておいて、その辺の事情はどういうようになっておりますか。直接ロンドンにおられて御存じだと思いますが……。
  64. 村田浩

    ○村田説明員 御承知の通り、イギリスでは非常に大きな原子力発電計画を持っておりまして、いずれもコールダーホールから発展しました改良型と呼んでおりますが、原子炉一歩で現在では二十七万五千ぐらいの大きなものを作っております。その前に、いわゆる核兵器用のプルトニウムとしましては、ウィンズケールの原子炉をとめましたあとは、コールダーホールにあります熱出力百八十メガワットの原子炉四基、及びチャペルクロスにあります同型の原子炉四基、合わせまして八基をもって核兵器のためのプルトニウムを作っております。そのプルトニウムの量は、もちろん発表されてございませんが、現地でいろいろ関係者が申したり、推定したりするところによりますと、大体年間四百キログラムくらいであろうということになっております。このプルトニウムは非常に純粋な形のプルトニウム二三九のものでございます。従いまして、最近問題になっております小型兵器に作るとしますと、かりに五キログラムで一発ができますとしますと、一年に八十個の原爆ができるという計算になるわけでございます。もちろん、国防計画の内容としまして、イギリスとしましては、どの程度の核兵器を持っておれば事足ると考えておるか、あるいは米英、いわゆる自由諸国側としまして、どの程度の戦略小型核兵器を持っておったらいいかということは、どこにも公表されたものはございません。しかし、このコールダーホール及びチャペルクロスでできますプルトニウムというものも、相当な量に上っておるということは事実と思います。  さて、現在、中央発電庁の方で商業用に作っております原子力発電所、これはすでに建設に取りかかっておるもの、及び計画ができ上がったものを入れますと、七カ所ございます。その七カ所はいずれも大体コールダーホールの改良型でございますが、これが全部動き出しますのが一九六六年ごろになろうかと思います。今からまだ五、六年先の話でございますけれども、そのころに全部動くようになりましたきに、これらの原子炉から出てきます燃料を再処理しまして得られるプルトニウムはどのくらいになるだろう、これも単なる推定にすぎません。しかしながら、大体この燃料の燃焼に伴って出てきますプルトニウムの量等から推定いたしますのに、この七カ所の原子力発電所の合計が、大体大ざっぱにいって約千キログラムの程度になるようでございます。そういたしますと、一九六六年あるいは六七年には、コールダーホール、チャペルクロス合わせまして、年間約一トン半のプルトニウムができるというくらいの計算になるかと思います。しかしながら、岡先生の御指摘の通り、コールダーホール及びチャペルクロスでできますプルトニウム、それから中央発電庁の方で運転することになっております商業用の発電所、商業用の原子炉から出ますプルトニウムの性質がかなり相違しております。御指摘の通り、商業用の原子炉では燃料をできるだけ長く燃やします。大体コールダーホールあたりで五百メガワットデー・パー・トンあるいは六百メガワットデー・パー・トン程度と考えられますが、それに対しまして商業用の原子力発電所では、三千メガワットデー・パー・トンの程度で燃やすということになっておりますために、精製いたしましたプルトニウムの一部が炉の中で燃えまして、そしてプルトニウム二三九がプルトニウム二四〇あるいは二三一というふうに一部変わっていくわけでございます。従って、その意味では、チャペルクロスやコールダーホールでできますプルトニウムに比べまして、これら商業用の原子炉から出ますプルトニウムは質が悪いといいますか、そういうことになるわけでございます。なぜかならば、プルトニウム二四〇といいますのは、核分裂性でございませんし、そういう意味で核兵器としての質は劣るわけでございます。そういう点からイギリスの原子力発電計画が考えておりますのは、この商業用の原子力発電所でできますプルトニウムを再び動力用の原子炉の燃料として使う、その場合には非常に質的にすぐれておりませんでも、十分燃やせるわけでございますので、そういうことを考えまして、計画を一応立てておる、こういうふうに私ども向こうにおって了解しております。もちろん、その成分の主体がプルトニウム二三九でございますし、また、一部に精製しましたプルトニウム二四一も燃えますから、そういう意味で、商業用の原子力発電所から出てきましたプルトニウムが絶対に軍事用に使えないということではございません。技術的には使えるであろうということをイギリスの技術者も申しておるようでございます。しかしながら、ではこれをどういうふうに使うかということは、私はあちらにおりましては具体的には聞いたことがございません。御承知のように、最近の核兵器の動向を見ておりますと、ミサイル等の発展と相待ちまして、いかにして小型の原水爆を作るかという方向に向けられておるようでございまして、イギリスでもこの例に漏れないようでございます。そういう点からしますと、できるだけ不純物の少ないものを使いたいということでございますので、やはりイギリスとしましては、小型の核兵器用として、引き続きコールダーホールあるいはチャペルクロスを運転し、そこから得られるプルトニウムを充てまして、そして質の少し劣ります商業用原子力発電所から出ますプルトニウムは、将来の燃料サイクル上、たとえば、ただいまドーンレーでやっております増殖炉の燃料とするというような方向に向かって利用することを最大の目的としてやっておるものと了解しております。
  65. 岡良一

    ○岡委員 実はこのコールダーホール型の導入の場合に、この委員会でやはり一つの大きな論争点になったわけであります。それで今おっしゃったように、一日トン当たりの燃焼率は三千か二千か千二百になるかというような点でございます。言ってみれば、これは非常に燃焼率が高い。であるから、プルトニウム二三八のいわば含有率と申しましょうか、非常に精度が落ちて、二四〇ないし二四一が多いので、だからして、日本のコールダーホール改良型炉の運転の結果出てくるところの使用済み燃料というものは、プルトニウム二三八を原料とする限りにおいては、軍事的利用の懸念はさしてないのだということも、当時言われておったわけです。ところが、今申しましたように、一昨年あたりから、いわゆる一キロトン程度の小型核兵器というものの研究が進んで開発がされ、その結果、プルトニウム二三八でなきゃならぬことはなくなってきた。プルトニウム二四〇でも二四一でも、これは小型の核兵器には使える。アメリカの文献あたりははっきり申しておるわけであります。当然英国もそうであろうと思う。そうなってくると、私どもが条約上平和利用ということをうたってあるとしても、やはり一グラム十二ドルというクレジットが妥当であるかどうかというのではなくて、これを引き渡すという妥当性が問題になってきやしないかという点を私は考えるのです。そうなってくれば、これを一体どこで再処理をするのかというような問題が出てくる。こういうような点について、原子力委員会の十分な御考慮をわずらわしたいと思いますが、その点御方針がおありでございますれば承りたい。
  66. 石川一郎

    石川説明員 軍事の方にどう使われているか、われわれ全然存じません。しかし、今の日本でできたものがあるいはそっちへ回りやしないかという御心配、われわれも心配しておりますが、約束は使わぬという約束だから、それで安心しているという程度でございます。向こうへ調べに行くすべてもございませんものですから、そういうふうな考えで今やっておるのです。ただ、再処理をどうするかという問題でございますが再処理を小さなプラントでやると非常に高くつくとかいうような話もございます。それからまた、モルあたりで今度年に百トンくらいなものをやるということになっておるのですが、われわれとしては小さくやるということで、それがそのまま大きくできるかどうかわかりませんししますから、これは私個人の考えでありますが、ああいうモルみたいなところに幾らか加わって、再処理の将来の規模等をよく研究して、できるような連絡ができれば非常に仕合せだ、こういうふうな考えを持っております。先般ユーラトムの方の元委員長のアルマンという方が見えました。今はそれをやっていらっしゃいませんけれども、その方にもお目にかかりましたときに、何かあそこで一緒になってわれわれが研究し、将来の計画を立てるようなチャンスがあるかないかという話を伺ったところが、今の自分はその位置にないから——この人はフランスの鉄道の総裁をなすっていらっしゃった。今また違っておりますが、その時分に日本の鉄道の者があちらへ行きまして、フランスの鉄道は進歩しておるものですから、大へんお世話になっておる。それで十河さんがお呼びになったのですが、その方が幸いそういう方ですから、お前たち会ったらどうかという御親切な言葉で、二日ばかり会ったのです。今のようなことで、先生は、自分の意見は言えない、しかし、まあぶつかってみたらどうだというようなことを言われたものですから、今度議員の方の会議に参りますので、そこらあたりでいろいろそういう方々にお目にかかるようなチャンスに、そういうことができるものかどうか。あれはOEECの方の株式会社になっておりますが、そういうことをするには一体どのくらいの金を出したならばいいのかというようなことをサウンドして参って、そうしてほんとうの将来の計画を立てたい、こんなふうに私は考えております。  なおまた、アメリカでは、最近再処理を民間でやってみたらどうかということで、今デザインをしているようですから、そういうふうな方々に対しては原研の方でも連絡をとっておりますししますから、そういうことによって、将来の方向をどう持っていこうかということを立てたい、こう存じております。
  67. 岡良一

    ○岡委員 使用済み燃料の再処理は、大体一千トンぐらいでないと経済べースに乗らないというようなことを、数年前に英国の原子力公社の専門家が言っておりましたが、なかなかそれじゃ日本ではやれっこございません。モルもいかがなものでしょうか。日本でちょいとといっても、なかなか私は無理だと思うのですが、せっかくこの月中においでになるのですし、インドも原子力発電をやるようでございますし、日本にも何か入れようという計画がある。やはりこれは、国際原子力機関が発電炉の使用済み燃料は一括再処理をやる、これは原子力機関の当然の任務だと私は思うのですが、そういう方向に、日本の原子力委員会としても大いに御努力があってしかるべきじゃないかとも思いますが、いかがなものでございましょう。
  68. 石川一郎

    石川説明員 ただいまのお話、いいヒントだと存じます。そういうことも一つ考えてみてもいいかと思います。ただ、方々で、自国でも相当大きなものをやっておりますから、なかなか国際会議に経費を使うことをやかましく言う国があるものですから、はたしてできるかどうか存じませんけれども一つのお考えかと存じますので、考えてみたいと思っております。
  69. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 先ほどの岡委員の御質問に対しまして、石川委員からお答えになりまして、格別申し上げることはございませんけれども、ただ個人的なお気持として、おっしゃった中に行き違いがあるかもしれません。イギリスとの契約で、プルトニウムを引き渡すわけだが、あくまでもそれは平和目的に使うということになっているんだけれども、向こう様でどういうふうに使うかまではちょっと押えかねるという意味合いのお話があったようですけれども、これは少なくとも、建前として、日英協定を結んで、その正式の協定の文言の中に、平和的利用以外には使わないということがある以上は、向こう様がそれ以外の目的に使おうということは、日本側としては信じられないことなんで、あくまでも英国側の誠実な契約履行を信じておる、こういうことでないといけないとも思うわけですが、補足的に申し上げました。
  70. 岡良一

    ○岡委員 それは実は荒木長官、あの協定のときの論議に御参加にならなかったわけですが、非常に問題になったわけです。私ども相手国の誠意というものは信頼する。しかし、この核兵器の競争というものは、関与すべからざる国際的な情勢にあるわけです。そこであの協定では、アメリカから核燃料をもらったり英国からもらっても、これはどれだけ使ったか、どの程度の効率を上げて、どこにどう貯蔵しておるかということは、みんな向こうから人が来て査察するわけです。ですから、対等の条約ならば、向こうへ引き渡すなら引き渡してもいいんじゃないか。持っておったって困る、さしあたり要らないのだから、それならば日本も査察する。向こうも平和利用に使われるかどうかということを査察する権利を持っておるのだから、こちらも査察するというところまでやはりだめ押しをすべきじゃないか。そうでなく、ただ一方的に、片務的に査察の義務をわれわれがになうというのでは、問題が問題であり、日本がやはり原水爆禁止運動において国際的に先頭に立っておるのだから、日本としてはそこまで念を入れないと、実際問題として、このように小型核兵器がプルトニウム二四一まで使ってやっておるときに、ごっそりそれを無条件で返しておる。紙きれで平和利用といっておるからということにしないで、もう少し国としての責任なり義務を条約で明らかにしろという論争もあったわけですね。それができなかった。私ども相手国の誠意を信頼しないというわけじゃないのですが、ものがものだけに、やはり慎重を期する必要があるということを申し上げておるわけです。  松前さんから荒木大臣に質問があるようですから、私は、またあとに譲ります。
  71. 松前重義

    ○松前委員 御新任早々でありまして、しかも、池田内閣一つの目先の変わった政策をいずれ御発表になるようなふうに承っておりますから、ここで一言科学技術に関連したことの範囲、そしてまた、科学技術の振興と文教政策との関連性について、お尋ねを申したいと思います。  まず第一に、私は率直に伺いますが、所得の倍増に関する政策をいろいろ御研究になり、そうして場合によってはこれを実際の政治の上に実行していきたい、こういうふうな御計画があるやに承っております。この所得倍増計画というものは、これは経済論として議論をきょうしようとは思いませんが、これと科学技術との関連性、これを検討しない限り、私は非常にこれは困難なことであると思うのでありますが、これに対してどういうふうなお考えを科学技術庁長官としてお持ちであるか、伺いたいと思います。
  72. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 所得倍増を、昭和三十六年を第一年度として十年間に果たしたい、こういう構想で、経済企画庁が中心になりまして、各関係省も密接に関連を持ちながら作業を進めておるわけでございます。文教関係といたしましても、この所得倍増という経済課題を目標とした政策ではございますが、科学技術の進歩発展のテンポが世界的に非常に速いと承っておりますので、日本におきましても、やはり世界的レベルにおいて科学技術が進歩発達していきませんければ、所得倍増計画はできても実現が困難、少なくとも渋滞を来たすであろう、これは当然関連を持って考えねばなりませんので、御承知の通り、科学技術者の不足、特に理工系あるいはお医者さんの方もだいぶん足らぬようでございますけれども、年次別に見て、倍増計画が経済論で伸展していく度合いに応じて、その人材の不足を補うというためには、応急的な人材養成も考えねばならぬと同時に、一面、年次計画に合わせ得るような経常的な養成施設も人的に、物的に、あるいは研究費も含めまして裏づけがないと、優秀な人材が現実に社会に出てこない。その両面を考え合わせまして、極力それにマッチするように、三十六年度においても措置いたしたい、こういうことで文教関係では考えております。  それから、科学技術庁としましては、特に科学技術会議が今の所得倍増計画とも関連せしめながら検討をしていただいておりまして、すでに一年以上も前から総合的な検討が行なわれ、さらに具体的には、所得倍増の関連においても裏打ちをしていただくという計画の線に、これまた事実上マッチした角度から人材の獲得あるいは養成等も考える。それに合わせまして、大学制度の検討もむろん必要でございましょうが、理工学系統及び医学系統におきまして、特に研究設備が陳腐化しておる。それを近代化したい、研究費も増額したい、先にちょっと触れましたが、そういうことも物的な面において考えていこう。さらに、実際問題としては、すでに御承知の通り、大学の研究者として残る人、助手、講師、助教授、教授という系統を経て大学に残って、人材の養成に当たるその先生のグループがなかなか獲得難。これまた、これを確保する措置を講じなければなるまいというので、人事院の勧告にもございますが、あの線に沿って予算措置を、十分とはいきませんまでも、極力財源の許す限りは措置したい、こう考えております。また、国立の科学技術試験研究機関におきましても問題は同様でございますから、この面についても裏づけ的な措置もしたい。これは昨日も御説明申し上げた通りでございますが、そういう関連性を持ちながら所得倍増計画との照応性を現実化したい、かように考えております。
  73. 松前重義

    ○松前委員 だいぶ科学技術振興に対して熱意をお持ちのようで、非常にけっこうだと思います。ただしかし、幾ら経済企画庁に優秀な頭脳を持った諸君がそろっておるといえども、たとえば、ただいまお話があったような人間の養成というようなものは、そう簡単にいくものではないのでありまして、ことに科学技術の現状から見まして、科学技術というものは長い歴史の積み上げの上にできておる。この長い歴史の積み上げの上にできている現在の科学技術というものは、過去における一切の基礎的な人類の努力、その上に実は最近における努力が積み上げられて、そしてここに現在というものがある。でありまするから、時間がたてばたつほど、科学技術者というものは昔の人よりもうんと勉強をしなければならない、こういうふうなことになっておりまして、そう簡単に、五年や六年で一通りの科学技術者として使える者ができるということにはならないのであります。十年計画に問に合うように今から養成するというようなことでは、これはとても——ようやく一人前の人間ができかかってきたところに、もう所得は倍増したというようなことになるならばけっこうでありますが、まことにこれは絵にかいたもちだと私思うのです。そういう意味からしまして、私は少しばかり御質問したい。  それは、来年度の予算として計上されようとしておられます原子力を除いた科学技術予算、ただいまのような多角的な抱負をお持ちでありますから、その抱負を満足させるための科学技術予算、これは一体どのくらいをお考えになっておるか、その辺を承りたいと思います。
  74. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 ちょっと今私自身数字を持っていませんので申しわけないのですが、研究公務員の処遇改善の関係を除きまして、原子力関係を除いて約九十億見当でございます。
  75. 松前重義

    ○松前委員 これは岡委員からもきのう盛んにお話があったようでありますが、九十億では、ただいまの文部省関係は別としまして、所得倍増という大きな政策に対しての裏づけにはとうていならないと私は思うのです。その点についてあなたに答弁を求めたりなんかいたしませんけれども、少なくとも、百億前後では、これはもう問題にならない。年々歳々アメリカあるいは諸外国の技術をわが国の会社その他が使っておりまするために、海外にロイアリティ、技術料として払っておるものが、大体、所信表明の中にもありましたように、二百二十三億でしたか、そういうふうな多額のものが、ただ研究成果を使わしてもらうために出ておるのです。それ以下のものの研究で、それを克服できないことは当然の話です。私は、それの十倍くらいはほんとうは要るだろうと思うのでありますけれども、そのくらいの重点政策をとらなくちゃならぬと思うのです。せめてもその三、四倍の予算を計上されないと、所得倍増計画というものは、少なくとも絵にかいたもちになることは必然的なことです。それは選挙運動の、国民をごまかすための看板にならなるかもしれませんけれども、まじめな、ほんとうの所得倍増をやろうということは非常にけっこうなことでありますが、それを裏づけする基礎にはならないと私は思うのですが、これはどういうふうにお考えになっておりますか。この際、私は予算とるべきだと実は思うのですけれども科学技術庁長官としてどういうふうにお考えか、承りたい。
  76. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 まことに御激励をいただいてありがたいことですが、先ほども申し上げました通り、科学技術会議の十年見通し計画等ともマッチさせながら、アドバイスをちょうだいしながら、そしてまた、今御指摘がございましたから、原子力関係を除き、研究公務員の処遇改善関係は一切別にしました、まあ純粋のと申しますか、それが今申し上げたような数字ですが、むろんそのほかに、債務負担行為とか、あるいは民間の科学技術研究等に投じます関係は一切抜きにしたものでございまして、十年計画第一年次としては、多いに越したことはございませんが、一応の線じゃなかろうかと思っております。さらにお知恵を拝借して再検討を要する面はむろんございましょうけれども、さしあたりこれでスタートを切ったらいかがかという意味合いにおいて申し上げた次第でございます。
  77. 松前重義

    ○松前委員 それはとうていできませんな。きょう私は申し上げておきますけれども、非常に有力な大臣がそろっておりますからできるかもしれませんけれども、大体これは常識的にできないと断定できると私は思うのです。この問題につきましては、またいずれ——次の委員会がいつあるか存じませんが、そのときにもう少し数字で伺いたいと思うのでありますが、これがわずか九十億程度で満足されるようじゃ私はだめだと思うのです。もう少し増額されるような御努力はなさいませんか。これで十分だとおっしゃるのですか、もう一ぺん伺いたい。
  78. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 同じことを繰り返すようですが、科学技術庁所管の予算を中心に、原子力関係を除き、処遇改善の関係を除き申し上げた数字が以上でございまして、民間の関係あるいは政府各省関係の同じ目的に費やします予算の金額としては別途申し上げなければなりませんが、手元にこれだけしかございませんので、科学技術庁所管のもので、先ほど申し上げた意味においての金額を申し上げると以上の通りであります。むろんこれで十分だというわけじゃございませんけれども、おのずから国の財政の全体のワクということを念頭に置きながら現実性ある線を描けば、少し心臓が弱いかもしれませんけれども、一応このくらいでと思っておる次第であります。
  79. 松前重義

    ○松前委員 荒木さんは、まことに昔から心臓が強いとは言いませんけれども、正しいことには邁進されるというので、私は敬意を表しておったのです。今の御発言じゃ、どうも敬意を表するのは取り消さなくちゃならぬような実は感じのする御発言でありますが、とにかくこの九十億程度では——よその省でいろいろ出したり、民間で出したりしておることは、私もよく知っております。けれども、九十億程度では科学技術庁という、すなわち技術の大本山がお手本を示さないで、よそにばかり依存しておるようなことで所得倍増計画のいしずえを作るというのは、池田さんももう少し考えぬと、池田内閣は羊頭を掲げて狗肉を売ることになりますよ。国に忠実であることはもちろんであると思いますけれども池田内閣に忠実であるというためにも、これは一つもっとふやさなければ攻撃の的になる。同時にまた、将来、これはあなた方が政治家として必ず羊頭を掲げて狗肉を売ったという形になると私は今断言しますが、一つ大いにやって下さい。もう一ぺん御答弁願いたい。
  80. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 御忠言、御激励ありがたく拝聴いたします。
  81. 松前重義

    ○松前委員 どうも九十億で御満足のように承ったのでありますが、まことにわれわれとしては不満千万であります。いずれまたこれは資料要求いたしまして質問をいたしますが、資料としては民間の研究費、それから各省における研究費の体制——人件費は入れません。原子力はもちろん除く。それから科学技術庁、これらを分類して、昨年、一昨年、最近の五カ年くらいを一つ集計して、資料としていただきたいと思います。  その次は、今度は、これは文教委員会でやるべきであるかもしれませんが、科学技術振興に特に重要であり、しかも所得倍増というような問題に対する基礎的な問題としての人材の養成の問題でありますから、ここで御質問したいと思うのです。  所得倍増計画というのは、少なくともパー・ヘッド・プロダクション、一人当たりの生産力を増加せしめる、これがすべての基礎にならなければならぬと私は思うのです。この一人当たりの生産力を増加せしめるということになると、農村における人口というものは相当過剰になる。機械化したりなんかしますと、その耕地の面積も広くなるということになりまして、パー・ヘッド・プロダクションの増大によって農村の人口が過剰になる。その過剰になった人口は、当然工業に吸収しなければならないでしょう。こういうふうな格好になるといたしますと、従来の教育体系が、地方における、たとえば農業高等学校、工業高等学校等における生徒の数等を考えてみますと、そのような姿になっていない。おそらくどの県も、工業高等学校と農業高等学校とは、生徒の数においても同じくらいか、あるいは農業高等学校の方が多いくらいだと私は思う。そういうふうにして、教育そのものは農業に相当力を入れておるにもかかわらず、国民の就労関係は工業方面にこれを持っていかなければならない、こういうふうになるおそれがある。もちろん、農業でも、どんどん学校に入れて知識を高くすることは当然のことであります。しかし、工業教育というものは、現在の数において十分であるかというと、これは全く不足しておる。こういうような情勢の中にありまして、人工の将来の移動状況から見て、工業教育の重要性というものは当然起こってくる現象であり、また、現在起こっている現象であります。従って、この農業高等学校なるものと工業高等学校なるものとの関係、そうしてまた、将来の農村のあり方に対しましてそれを裏づけする教育、工業への人口移動に対するところのかまえ、準備、その教育を中心としたところのかまえ、これらに対してどういうふうな考え方をお持ちであるか、現在、また来年度の文部省のやり方といたしまして、どういう具体的な措置を講ぜられてきておるのか、これを伺いたいと思うのです。
  82. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 今の御指摘の点は、確かにそういう方向をたどるかと思います。これも科学技術会議の各部会の御答申が一応ございまして、正式の答申は九月末になるかと予想されますが、これの関連もむろんございまするし、所得倍増計画における今後十年の産業構造の変化、それに応ずる人材の配分等も、計画上当然数字的にもはじかれておるようでございます。それと関連を持たせながら、学校教育の場で極力それに合わせるようにという考慮も払っております。たとえば、高等学校が、中学からそうでございますけれども、七、八、九の三年がピークだといわれる。就学児童が激増する。学校をうんと増設しなければならぬ。それは、中学に関する限りは、義務教育ですから一般普通の中学の増設ですけれども、その中でも科学技術教育に重点を置いて、理科系統の学科をふやすことによって、次に伸びていく。いきなり社会に出るにいたしましても上級学校に行くにしても、今の御指摘のような方向に消化できるようにという考慮を払おう。高等学校の急増対策にいたしましても、これが設置に数百億円を要すると思いますが、これもやはり、工業学校系統の高等学校を今までよりも、さっき申し上げた計画の線に沿うように割り振りをして新設をしよう。それから既設のものにつきましても、収容人員をふやすというやり方でいこう。大学におきましても、新しい学部の創設ないしは学科の創設、あるいは講座数の追加等は、理工系、一部理学部系統、そういうもの以外は原則としてふやさないで、主として理工系に集中するというやり方、その間おのずから教員の養成が必要になって参ります。応急的な養成もいたしませんと間に合いませんので、新設しても間に合いませんから、おもな大学に付置するやり方で、一種の臨時教員養成所的な施設を整備し、養成にも当たる、そういうふうな考え方で、数字を申し上げられないのは申しわけないことですけれども、考え方としては、そういう計画にマッチさせるという筋を通そうという方針でやっております。
  83. 松前重義

    ○松前委員 数字は、いずれ資料一つ御提出を願います。  今のことは、お言葉を信じまして、一つうんと推進していただきたい。あとは数字の問題であります。  それからもう一つは、今のようないろいろな計画をお持ちでありまして、計画に数字が伴っていくならば、私は非常にけっこうだと思っております。しかし、一例を申しましょう。まだ御就任当初ですから具体的なことは御存じないかもしれませんが、われわれの耳にひしひしと入ってきますることを申し上げます。現在の官立の大学に電子工学科を設けたところが、先生はおらぬ。同時にまた、電子工学科を作るための予算は、一年間にわずか七十万円だそうです。先生の給与だけはふやしてあるそうですけれども、先生自身はなかなか探し得ないで、空席になっている。しかも、七十万円の予算が一年間についておるそうです。私は私学をやっておるけれども、そんなものでとうていこの学科ができるものでなく、一学科を作るならば、少なくとも一億円前後の金は要るのです。ところが、官立においては七十万円でこれを作らなければならぬというので悲鳴を上げている。従来の蓄積がありますから、多少の流用はきくでしょう。けれども、あまりにもひどい予算じゃないか。これは今年の四月からの話です。来年以降はこれをどういうふうにお考えになっておられるか。このことだけを申し上げるのじゃありませんよ。全体的に、大学に理科系の学科を七十万円で増設した。こんなことで一体ほんとうの教育ができるかどうか。それから、もしこれが私学において一つ計画を文部省に提案いたしまするならば、少なくともそんなことは絶対に科の増設を文部省が許しませんよ。これはもう教室はどうなっているか、坪数はどうか、書籍はどうか、機械類はどうか、何はどうか、それから先生はどうか、実に厳密な検査がありまするので、そんなへっぺら予算ではとうてい文部省の規格に通らないし、また設立をお許しにならない。その十倍の一千万円くらい使うにしても、お許しになりません。そういうふうにして、官立においては七十万円でおやりになる。それで私立の方でそれじゃやろうということになると、これまたなかなかお許しにならぬ。こういうふうな格好で、結局あぶはちとらずの形になってしまうという憂いが、現在の文部行政の中にある。このことを一つ申し上げて、こういうことでいいのか悪いのか、ちょっと伺いたいと思うのです。
  84. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 今お示しの事例そのものは私も存じませんけれども、ありそうなことだということだけは想像いたします。ある医科大学でもって、医療費から電灯料を払っておるというふうな例があるということも聞きますが、これは国立の大学におきまして、一大学に大学の一種の運営費と申しますか、経常費、研究費、それらが一括流用のきくような制度になっておるらしゅうございまして、それにしましても光熱費等が、極端に申せば、明治以来の予算科目そのままで、単価の増額について、なかなか大蔵省は頑強で言うことをきかない。それを毎年々々わずかずつふやしながら、ようやくたどりついておるような話を聞いたわけなのでありますが、そこでさしむき三十六年度におきましては、予算の科目そのものを一々新しくやりますことは時間的に間に合いませんので、少なくとも研究費のごときは、戦前の水準に必ず達しさせる。物価指数で比較いたしまして、戦前のあるものは三分の一、あるものは五分の一程度しか研究費、運営費なるものがないということでありますから、そういう面においては、せめてそこまでは到達させたい。すなわち、三倍ないし五倍にはさせたい。それからさらに、研究学部あるいは学科を増設するにしましても、大学当局からの要求に基づいてやるわけでございますが、これも今の御指摘のような非現実的な、看板だけは上げたが、実がないということにならぬようにということを、一般的には事務当局にも話しまして、そういう内容を極力充実する角度からの予算要求をいたそうとしておるところでございます。
  85. 松前重義

    ○松前委員 その点は一つ大いに努力されまして、決してこれは文部省だけの責任でなくて、大蔵省の存在もわれわれはわかっておるのですから、大いに一つふんばっていただきたいと思います。  それから、そのような困難性が、官立として、直接文部省の支配下にある機関の中に存在しておる。また、文部省の監督下にある私学においては、またこのような国家の人材養成の要求に応じて、科目の増設あるいはまた学部の増設等を考え、これを文部省に申請しておるのは、たくさんあると私は思う。その際に、この私学に対する——もちろん、これは私学の内容その他に不健全性その他も一応ございます。あるところもないとは言えません。けれども、一応これが大勢において健全な形を持っておるところの信頼すべき機関が、大学なら大学が、責任を持って学術教育に関する学科の増設等を申請したような場合に、あまりにも小うるさく、あまりにも条件を厳密にして、なかなかこれを許さない方向にのみ進めていく。もちろん、これは大学設置審議会というものがありまして、官立はほとんどこれにはかかっていない。私立はそこで全部厳密な審査をされる、こういうことでございまして、私学の方でそのような要求を満たそうという努力はあっても、途中で挫折する、こういう傾向が現在の姿であると私は思うのです。こういう行政方式の基本的な問題に対して、どのような考え方をお持ちであるかを伺いたいと思うのです。たとえば、学校教育法ですか、あの中に、私学においては学部の増設あるいは学校の新設、大学院の新設、これらは大学設置審議会の議を経なければならない、こういうことが書いてある。だからして、学部の増設や、大学院や学校の増設等が、それではそういうふうに運用されておるかというと、もちろん、これは設置審議会の厳重な審査を受けるのです。厳重な審査を受けてもそれは差しつかえないけれども、この場合において、やはりなるべくその熱意を生かすように実は審査してもらいたいという希望もわれわれにはございますけれども、とにかくそういうふうに一応審査をなさる。ところが、学科の増設に対して同じような審査が行なわれる。これは法律にはないわけです。こういうふうなところで、現在、私学審議会としては文部大臣に対して質問状が出ております。どういうふうにお答えになっておるか私は存じませんけれども、質問状が出ております。その法律の解釈、これは法制局等にも当たって、実は出してあるはずです。そのことによって、非常に私学の伸展を妨げておる。この理科教育の重要なときに、理科教育の方向、金の要るのに向かってやろうというならば、ある程度この点は、足らぬところはむしろ政府から少し助成でもしてやるくらいの気持でやらせるべきではないかと実は私は思うのですが、どうもそうはいかぬようでありまして、非常に厳密な審査と、そしてなかなかこれをお許しにならない、こういう傾向にある。これらに対して、いわゆる今後の行政指導に対してどういうお考えをお持ちか、承りたいと思います。
  86. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 先刻来の御質問に対しまして、もっぱら国立、公立学校の、直接文部省として責任を第一義的に持ちます範囲について申し上げたわけです。ただいま私学のことについてのお話でありますが、まず第一に、私学審議会の審議の基準、方針というものがどういうものかは、まだつまびらかにいたしませんけれども、しかし、これは察しまするに、私学といえども、学校に入る者は官公立に入る者と同じように日本人だ、それで同じ学校でありながら、学校法人として自主的な管理運営はなされるにいたしましても、やはり学生もしくは学生の父兄にかわって客観的な立場から審議し、アドヴァイスするという角度でできておるかと思います。そのことは、今松前委員もおっしゃいましたように、審議することは当然だとお認めいただいておるわけですが、その場合に、科学技術の振興をにわかに急テンポでやらねばならぬという世論の要請があり、世界的な傾向だそうでございますけれども、そのゆえにこそ、所得倍増に関連しまして科学技術振興の物的、人的裏づけなかりせばやれないということで、先刻来の質疑応答を通じておっしゃったように、私もお答え申したような考え方でおるわけですが、そういうふうな基本観念というものが、必ずしも、今日までの大学設置審議会では当然の考慮に入るべき要素として重点が置かれていなかったうらみがありはしないだろうか、これは私の想像でございますが、従って、大学設置審議会におきましても、今後はやはり、大学を通じての人材育成の結果が社会的な要請にマッチすることでなければ、これは妥当でないわけですから、そういう角度からの格別の考慮を払ってもらうようにお願いをする、指導をするといいますか、そういうことが必要ではなかろうか。さらに、私学振興につきましては助成金が出ておるようですが、これも相当増額したいと思って計画をいたしております。また、その使用計画にいたしましても、やはり科学技術関係の、特に理工科系統の人材養成ということには格別にウエートを置いて振興目的を達するようにいたすべきであろう、こういう考え方で、ただいま処置いたしつつあります。学科の設置について、必要以上にやかましく言うからけしからぬという仰せの点は、実は私もよく具体的には存じませんので、御要望が出ておりますれば、むろんそれを検討して善処せねばなりませんが、無用のブレーキを特に理工系統の学部設置等について申し上ぐべできはなかろう。しかし、客観的な立場から御忠言申し上げるということはやってもいいけれども、ことさらにやかましく言うという、旧套を脱しないような、ぎこちないやり方では現状に即しないのではなかろうか。想像を交えてのことで恐縮ですけれども、即座のお尋ねで推敲を経ておりませんが、気持だけはそういう考え方でいきたいということに御了承をいただきたいと思います。
  87. 松前重義

    ○松前委員 その行政問題については、私立大学審議会というものがありますから、その組織にお尋ねになりますと、実情は私よりももっと詳しく申し上げるだろうと思います。ただいまのようなお答えで、問題は数字の問題になりますけれども、とにかく科学技術教育というものが——私は、研究と同じように、むずかしいのは教育だと思うのです。私も大学を作りましたし、高等学校なども作っておりますけれども、なかなかどうして、一つの学校がある程度軌道に乗って踏み出していくのには、どんなに短く見ても五年はかかります。五年たってもなかなかうまくいきません。ですから、そういう非常に気長に考えてやらなくてはならない問題ばかりをあなたはお引き受けになって、ちょっと派手な立場ではないのでありますけれども、御苦労でありますが、その点は非常に重要な仕事であると私は思うのでありまして、特にこの点十分御承知であろうと思いますけれども、われわれとして、また昔の友人としても、いろいろ御努力を願いたいと思う次第であります。  後最に一言申し上げたいのは、昨日岡委員から質問をいたしておりましたが、私は今ごろから新大臣で一つやっていただきたいことが一つあります。それは、だんだん駐留軍が撤退していきます。撤退というよりも、私は、ミサイルができたり、あるいはまた、原子力の時代というようなことで、軍の編成がえのために兵隊さんが要らなくなって、それで撤退することになっておると実は思うのでありますが、その駐留軍の撤退のあとに、膨大な施設を実は残す可能性が近くあります。昨日も話がありましたように、相模原などにも膨大な施設があります。あれをまた自衛隊が占領なさるということが大体日本の常識のようでありますが、自衛隊ばかりにあんなものはやらないで、一つ科学技術の大研究機関をそういうところをセンターにして作る。そうすると、これは別に予算を必要とするものでないのでありまして、保管転換をすればそれでよろしい。土地を買わぬでも何でもいい。建物もありますし、あらゆる施設がある。研究施設こそなけれ、研究に必要な環境というものができ上がっておる。そういうふうな大計画を今からお立てになって、しかるべく処置をしておかれまするならば、ここ一年くらいすれば、必ずそれが実を結んで具体化してくるのではないか、こういうふうに思うのでありますが、この点については特に一つ——私はここで御答弁を要求はいたしませんが、この総合的な大研所を作るというような方向に向かっての具体的な措置、しかも、まずこれには最初予算が要りません。だから、そういうような方向に向かって今後科学技術庁を御指導願いたい。そうして、あらゆる研究機関を総合的に、一つ科学技術庁のもとに設置していただきたい。最近の工業なるものは、専門化された一つ研究所はもちろん必要であります。必要でありまするが、その専門化が総合化されなければ一つの具体的な研究成果としては現われてこないのでありまして、従って、この総合研究所というものが絶対に必要であります。こういうふうに私は考えております。こういう方向に向かって、どうか新大臣は、一つ遺産を将来の日本の科学技術の歴史の中に残していただきたい。これを私は要望だけいたしまして、質問を終わらせていただきます。
  88. 岡良一

    ○岡委員 時間もありませんので、要望という程度で、簡潔に御答弁願いたいと思います。  それは、先ほど石川委員の御発言の中にあったプルトニウムの問題でございます。この基礎となる考え方、これを見ると、われわれが新しい長期計画を立てる理由の一つとして、海外における核原料面での見通しが好転したということをあげられておりますが、しかし、大体ウランの埋蔵量百万トン、現在のような採掘でいけば二十五年というふうな予想もいわれておる。そうなりますると、どうしてもやはりプルトニウムの活用によって、ウラン二三八なり、あるいはまたトリウムに潜在する莫大なエネルギーを原子力発電に転化するということが当然考えられるべきことで、御発言のような形で、まだまだこれからというような段階でございまするが、この点にぜひ一段の力こぶを入れていただきたいということを要望いたしたいと思います。新しい長期計画を立てられるときには、責任ある具体的な方策をぜひ御考究願いたい。  それから、プルトニウムの問題でございます。この所有権、管理権というのは、先般の国会でいろいろ論議になっておりましたが、はっきりとしためどがまだ立っておらないようでありまするが、どうなんでございますか。外国から買った、たとえば燃料というものは、国が所有するということに、閣議では二度の閣議了承になっております。ところが、使用済み燃料は一体だれが管理するのか、だれが所有するのか。国が買い取って、国が所有するならば当然国の所有になる。従って、その管理等についても専門的な機関として燃料公社があるわけですが、この点は原子力委員会はどういう方針でおられるか、この点をお伺いしたい。
  89. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 新任早々の者が、ちょっと見当違いを申し上げるかもしれませんが、今まで私が承知しております限りでは、原子燃料公社に入りましたものは原子燃料公社が管理いたしますが、民間では、また別途燃料が入ってくると承知しております。そういうものについての一元的な原子燃料の管理機構というものは、制度上はまだできていないわけでありますから、岡委員も今その点を御指摘になったかと拝察いたしますが、何としてもこれは国として一元的に、いわば放射能を含んだ危険な物質でもございますのみならず、国際的にも問題があることですから、責任ある態勢を整えて、そうして一手に管理し、責任を一本に集中するという考慮は、当然あってしかるべきかと思います。  さらに、いささか話が飛ぶかしれませんが、先刻来の岡委員お話等から想像しますことですけれども、英国との関係においても、プルトニウムを向こうに引き渡すということになっておるわけです。これは契約を更改しなければできないことかもしれませんけれども、今後、日本自体で十年後には経済べースに乗った原子力発電をするという一応の見通しを立てております以上は、その経済ベースに乗った何百万キロワット、さらには、火力発電に全部置きかえられるくらいの勢いになってくることも想像されますことも含めて、燃料の国内資源の発掘はもちろんのこと、製練その他加工、あるいは使用済み燃料の再処理もあわせ考えた、日本独自の燃料供給源を持つという機構まで考えていかなければ、先刻御指摘の、何百万キロワットか知らぬ商業べースに乗った原子力発電ができたとしまするならば、やはり炉だけでなしに、燃料そのものも有機的な相関関係を持たないことには運営ができないかとも想像されます。そういうことまで含めて、私は、検討を要する課題が制度上そこにあるのではないか。なるべくすみやかにそういう制度をきちんとしませんと、責任の所在もはっきりしないし、もしはからざる災害が起こりまして、責任の分野もさだかでないということは、国民に対しても申しわけない次第ですから、そういうことは、少なくとも検討を開始すべき課題ではなかろうかと思います。
  90. 岡良一

    ○岡委員 この問題は、この委員会でも論議されておる問題でございますが、私が繰り返し申し上げておるのは、原子燃料公社法をよく読んでいただきたい。そうすれば、原子燃料公社がやはり一貫的に管理する権限を法律上与えられておるわけです。だからこれをわき道に持っていかないように、これは一つ原子力委員長として十分責任を持ってやっていただきたい。  また、お説の通りでありますが、コールダー・ホール改良型を入れまして、大体年間六十トンくらいの使用済み燃料が出てくるのじゃないでしょうか。そういたしますと、十カ年の間に百万キロワット発電すれば、三百六十トンくらいの使用済み燃料が出る。ところが、一千トンほどの使用済み燃料を処理しなければ処理工場としての採算ベースに乗らないということになりますると、では一体その赤字をだれが負担するのだということになる。これは電力料金の増加ということになる。いろいろな問題が起こってくるので、そういう点もあわせて、これは一つ率直に、石川委員が国際原子力機関に行かれた場合に——国際原子力機関憲章の第二条には、機関は世界の平和、保健及び繁栄に対する原子力の貢献を促進するとうたっているから、日本の国がそういう壁に当たっておるという事情の上に立って、一つ十分御検討をいただきたい。  それから、十カ年以後に百万キロワットの発電ということは、これはだれがすることになるのでございますか。原子力委員会の現在の御方針を承りたい。
  91. 石川一郎

    石川説明員 最初のものは御承知の通りに原電でやることになっております。その次のものも原電でやるということになっております。その次のものはまだ何も決定しておりません。さらに今度は英国式を入れるか、米国式のどういうものを入れるか、そういうものもまだ決定しておりません。
  92. 岡良一

    ○岡委員 そういたしますと、日本に今原子力産業のグループが六つかあります。それで、私は非常に懸念しておるのですが、御存じのように、アメリカでは、十カ年間ほどの間に九千億くらいの金をつぎ込んで八つの動力炉の研究開発を終えようとする。ところが、英国の方では、御存じのように、五つあったのを三つに減らしてしまった。そして、国の内外の動力炉の受注に応ずるような原子力産業態勢というものを再編成しておる。ところが、まだ全然白紙の日本で六つある。あるに越したことはないというような意見もありますが、しかし、これではこの会社自体は非常に苦しいのではないか。そこへもってきて、貿易・為替の自由化というような形で、技術提携でもどんどん競ってされるというような形から、いわばいろいろな商業主義的混乱が、日本の正常な原子力の研究開発の道をゆがめる危険がありはしないか、こういうことも、私は杞憂かもしれないが、考えるわけです。だから、これはやはり原子力委員会としては、国内における原子力産業の育成という建前から、無用な過当競争を押えて、日本原子力開発に最も適当な外来技術の導入も認める、あるいはその他研究の委託もやるというような、やはり一つ統制のあるコントロールをやっていかないと、ほんとうの意味で将来日本の原子力産業というものの花が咲かないのではないかという考えを持っておったわけなんですが、この点については、特にこの方面に接触の深い石川委員の御見解を承りたい。
  93. 石川一郎

    石川説明員 原子力産業の方に御関係の方が、今おっしゃったように、なかなか数が多いのです。われわれは一番初めに、そういうことをやらないで、合併か合同かして、またシンプル化したらよいというお話を申し上げたことがありましたが、まだわれわれはそういう私企業の合併とかなんとかいうことをわれわれの方でできませんものですから、そういうアドバイスはしておりますし、そう考えておりますけれども、権力がありませんものですから、まだやっておりません。しかし、外国から特許を入れるとか、あるいはノー・ハウを買うとかいう場合には、われわれの方に御相談がございまいますので、これはもう少し延ばしたらいいじゃないか、もう少し模様を見たらいいじゃないか、この程度ならいいじゃないか、こういうことをやっておる次第でございます。
  94. 岡良一

    ○岡委員 とにかく日本の自主的な研究を育てていこう、こういう思いやりを持って——安易に走って外来の技術導入を野放しにするという方針は、これは日本の原子力産業そのものについても非常に大きな悪い影響を与えると思います。十分一つ御戒心を願うように御指導をお願いしたいと思うのです。  それから、この基礎となる考え方では、電気事業会社もこの百万キロワットの発電には参加する、あるいは電力会社がやるのだというような意味に受け取れるようなことが書いてございますが、やはり日本の現在の電力会社にこの十カ年間の間に原子力発電はやらせる、そういうようなお考えがあるのでございますか。
  95. 石川一郎

    石川説明員 まだ決定しておりません。
  96. 岡良一

    ○岡委員 それから最後でございますが、私は、ただばく然と十カ年の間にこの百万キロワットの原子力発電実用規模で五、六キロのものを入れるという方針は、その点だけについて言えば、率直に申し上げて、少し無責任なやり方ではないかと思うのです。そういうわけで、私の率直な意向を申しますと、これはやはり日本の独自な立場から幾つかの大綱をきめて、現に日本でも水均質増殖炉あるいは平均質炉、臨界実験等のところまでこぎつけられておるように聞いておるのですが、いずれにしても、やはり日本は外国の知識を学びながら、日本の独自の工夫を加えた、さらに日本の創意をその上にプラスしていくというような炉の形というものを、原子力委員会としてはできるだけ早くつかむ努力が必要ではないか、こう私は思うのです。というのは、臨界実験をやる、原型炉を作る、さて試験炉を作って、いよいよ商業炉をやるというときに、PWRにしたって、年数にしても七カ年かかっておる。そのほかの炉にいたしましても、相当巨額な費用を使い、年数もかかっておるようでありますが、十年後にその商業べースに合うのだというならば、私は、日本の原子力委員会としても、日本の独自なということは特に申しませんが、独自な判断において、日本の原子力関係のあらゆる条件の中で、どれがいいのだという正しい判断を立てる。そしてこの炉について、とにかく基礎的な分野から、人の態勢も資金の態勢も整えて取り組んでいくというような形が、ここまで、十年余まで下げたというならば、ぜひお考え直しを願えないかと私は思うわけなんです。この点について最後に御所見を承って、私の質問を終わります。
  97. 石川一郎

    石川説明員 われわれもお説の通りに考えております。ただ、どういう形の炉を成功させるか、あるいはプロト・タイプまでいくか、それはまだ決定しておりませんが、それでも平均質炉は日本で考え出したもので、その後、イギリスあたりでも新しく研究題目として取り上げているようであります。そういうものは、一つ何か日本でも新しく研究をやっていく考えを持っておりませんと、常に向こうのうしろからこれをながめていくようなことになりますので、そういうものを一つ持ちたい。それには平均質の方がいいのではないかというふうに考えておりまして、この研究は十分にやっていきたいと考えております。それから新しくない、今まですでに外国で発達した炉でございますが、これは今お話のように、大体一億ドルは各炉に対して使っておられるようです。また、これから先五年、十年の間にはさらにワン・タイプに対して一億ドルもかけていこうというものもあるようであります。そういうものを日本から追っかけてやってもなかなか追いつかないだろうと思いますので、そういうものは、たとえば炉が適当かどうか存じませんが、百万ドルでノー・ハウを譲ってくれるということならば、それを日本で譲ってもらって、日本で作るという方に進んだ方がいいのではないか。ともかく一つの炉で二億ドルもかけるというようなことは日本でとてもできませんから、そういうふうに向こうで非常に進歩したものは、われわれの方で適当にいいものは採用する。それに対してある特許料を払ってもいいという場合には払わしてやる。それからまた、そういうことでなく、先ほど申し上げたように、日本でオリジネートしていくのはぜひ一つやって、日本でもこれだけのことをやっているぞということを示す。たとえばイギリスの方に対しましても、これから申し入れでもしようと思っているのですが、ドラゴン計画というものをやっておりますが、それと日本と連絡でもとって、イギリスでやっていることにわれわれの方も資料を提供する、向こうの方からももらう、こういうことでもできれば非常に仕合わせだと思っておりますが、そういう方向に行ったらいいのじゃないか、そんなふうな考えを持っております。  それから、水均質炉も今非常にやっております。これは非常におもしろい問題でございますけれども、炉までいくのには非常な金がかかる。オークリッジでやっているのが、今までに約一億ドルかかっておるそうであります。これからも一億ドルの金をかけていかなければ発電炉までいかないように伺っておりますので、これはわれわれとしては、せっかく今研究をし始めております。たとえばコロージョンとか、あるいはまたそれがスライムになってぐるぐる回って沈澱したりするために、非常に故障を起こしておるようでございますが、そういうふうな基本的な研究をしていったらいいんじゃないか。アメリカあたりもコロージョンで非常に困っておりますし、スライムが沈澱して非常な支障を起こしておるようでありますから、そういうポイントだけとって炉を作るということでなしに、そういう点を研究して、向こうにこれを知らして、向こうで研究しているものをまたもらってくる、こういうふうにいったならば非常にいいのではないか、こんなふうな考えを持っております。      ————◇—————
  98. 稻葉修

    稻葉委員長 この際、参考人出頭要求の件についてお諮りいたします。  すなわち、核燃料物質等に関する問題について、本日、原子燃料公社理事長高橋幸三郎君を参考人と決定し、意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 稻葉修

    稻葉委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————
  100. 稻葉修

    稻葉委員長 北條秀一君。
  101. 北條秀一

    北條委員 私は、命を受けて八月二十五日から二十九日まで、秋田、山形、新潟三県の国政調査をいたしたのでありますが、これに関します報告書は、まとまり次第委員長の手元まで提出するつもりでございます。つきましては、この三県の国政調査の結果及び従来自分なりに考えておりましたことにつきまして、この際、原子力局長及び原燃公社の高橋理事長、さらにまた通産省の鉱山局長に、それぞれ質問をいたしたいと存じますので、どうかお考えの点を遠慮なしに一つお答えを願いたいと存じます。  その考えをまとめて申し上げますと、第一は、国産原子燃料開発問題でございます。第二は、先ほど来岡委員がしばしば質問いたしておりましたが、廃棄原子燃料の再処理の問題、第三点は、原研と原燃公社の関係でございますが、この三点について、私はそれぞれ質問をいたしたいと思います。  そこで、第一の国産燃料開発でございますが、これにはいろいろと今までも当局においても努力されてきておるのでありますが、かつては、わが国においては原子燃料はほとんどないのではないかというようなことでございましたが、先年の岡山県における人形峠の発見から、急速にウラン鉱区の開発ということが問題になって、懸命にやっておられるのであります。そこで問題は、わが国の地質調査というものが非常に不十分であると私は思います。従って、従来の経緯から見ましても、ウラン鉱というものは相当わが国にも賦存しておるということが考えられるのでありますが、同時にまた、今日のところでは、あまりにもその品位が悪いので、なかなか開発できないということは、経済的に引き合わないということでございますが、しかし、今日経済的に引き合わなくても、明日の資源としては、科学技術の進歩に伴って、今日採算がとれないものが、将来は採算がとれるという時代がくることは当然のことでございます。従って、国産燃料開発という点は、要は、一にかかって当局者の熱意いかんにある、こういうふうに私は考えるのであります。そこで、国産燃料開発について、政府は一体どの程度までの熱意を持っておるかということが一番問題になってくると思うのでありますが、さしあたり三十六年度には一体どの程度の熱意をもって国産燃料開発していこうと考えておるのか、この点についてまず原子力局長の見解をお示しいただきたい。
  102. 杠文吉

    杠説明員 ただいまのお尋ねの点でございますが、三十六年度におきまして原子燃料公社が行なおうとしております探鉱は、前年度に引き続きまして、人形峠鉱山及び東郷鉱山並びにそれらの周辺地区に賦存します堆積型ウラン鉱床の探鉱に重点を置くことはもちろんでございます。このための予算といたしましては、約三億七百万円をもちまして地質鉱床の精査、物理探鉱、地化学探鉱などの地表探鉱延べ約四千四百日、試錐探鉱約二万メートル、坑道探鉱約六千メートルを実施する考えでおります。  また、人形峠鉱山及びその周辺地区におきましては、前年度におきまして、すでに峠、夜次、赤和瀬地区の鉱床につきましては探鉱を終了しておるのでありますが、中津河地区鉱床につきましては鉱床下部の方を調べていきたい。本年度は中津河地区の鉱床には主としてひ押しにより坑道探鉱を行ないまして、鉱床の実態を明らかにしようと考えておるわけでございます。また、人形峠東方の岡山県の倉見及び黒岩地区に広範囲に賦存しておりますところのウラン堆積岩に対しましては、前年度に引き続きまして地表探鉱を行なうほか、試錐探鉱を実施いたしまして、鉱床の概要を明らかにするという考えでおります。  次に、東郷鉱山及びその周辺地区におきましては、これまた前年度から引き続きまして、方面に非常に有望な鉱床があるようであります。麻畑及び神倉地区鉱床に対しまして坑道探鉱を行ない、鉱床の実態を明らかにする。また、人形峠からその北方十数キロメートルにわたりまして広範囲に賦存して、優勢な露頭が各所に発見されておるようなところもございますので、前年度に引き続きまして地表探鉱、試錐探鉱を実施して、鉱床の概要を明らかにする考えでございます。今のは主たる地区でございます。  その他の地区におきましては、前年度までの調査によって有望とわかってきております山形、新潟県境の、——これは先日来北條先生視察になったところでございますが、小国、金丸地区及び京都の宮津地区にありましては、地表探鉱及び試錐探鉱を行なうという考えでおりまして、燃料公社におきましては探鉱の方に十分力を入れていただくという考えでおります。その他、地質調査所その他で行なわれますところの調査につきましては、それぞれのところからお答えになると思います。私の方の監督下にあります原子燃料公社におきましては、今申し上げたような探鉱を活発に行なわせたいと考えておるわけでございます。
  103. 北條秀一

    北條委員 これはよけいなことですが、どうも当局の御答弁の中に先生という言葉が出てきますが、先生という言葉は私はあまり好みませんから、一つ遠慮していただきたいと思います。  今あなたのあれでわかりましたが、地質調査所の方は、きょう私手違いで来てもらうようにしておりませんでしたが、来ておりますか。——地質調査所の方が来てなければ、また次の機会にいたします。  そこで、ただいまの原子力局長の御答弁にございましたが、原燃公社の高橋理事長にお伺いしたいわけでありますが、あなたの方ではそれぞれの探鉱及び開発についての技術者を持っておられると思います。その技術者の能力と今の政府の考えておる予算規模、こういうものとはマッチしておるのでありましょうか。それとも、あなたの方はまだ人材があるのだ、もっとやりたいと思うのだけれども政府が予算をこういうことにするから、やむを得ずこうなっているのだというのか、どっちなんでしょう。遠慮しないで話していただきたい。
  104. 高橋幸三郎

    ○高橋参考人 その点につきましては、われわれ平素仕事をやる上にいろいろ関係の深い原子力局と絶えず綿密に接触を保ちながら進めておるので、先ほど局長の説明になりました数字、範囲というものは、現在の公社の人員その他の規模において可能な線を極力勉強して出した線でありますので、御承知の通り、先ほどからいろいろお話も出ましたように、科学技術者、ことにジオロジスト、それからマイニング・エンジニア、こういうわれわれの仕事に密接な関係の深いエンジニア、技術者のなかなか優秀な人が得られませんので、一方において養成しつつ、また経験ある人を指導者として次々に仕事を発展させつつある現状でございます。幸い、人形峠の鉱石は、今より四年前に発見されたウラン鉱山でありますが、そこで今日まで四年の間にいろいろ指導養成ができましたので、かなり経験を積んで自信のあるエンジニアも相当出て参りました。また、毎年各大学の卒業生で優秀な若い青年を公社に採用しまして、今指導しつつ現場で養成しておるわけでございます。先ほどいろいろ文部省関係の方の問題も出たようでございますが、そういう方面にだんだん技術者の補充が充実して参りますれば、われわれの方もできるだけそういう若い熱心な青年を大ぜい採用して事業を進めたいと思います。国内全般から見まして、調査すべき価値のあるところはまだたくさんございます。残念ながら、今の段階においては公社の実力がそれに伴いませんので、今の局長の説明された予算の数字を、われわれとしては現段階において最も活用して効果をおさめたいと考えております。
  105. 北條秀一

    北條委員 先般来、原燃公社が持っております鉱区のことを調べてみますと、鉱区というものの大部分が、民間の会社なり個人と原燃公社との共有になっておるのです。これは非常にまずいことだと思うのです。将来いよいよその鉱区を開発するということになって参りますと、鉱区を持っている人に原燃公社は必ずロイアリティというか、そういうものを払わなくちゃならぬということになってくる。それだけ損なわけですが、こうなってくると、だんだん技術が進歩し開発が進んでくると、民間の人たちがどんどんウラン鉱を求めて、いわゆる鉱業権を申請して鉱区を押えてしまうということが起きるのじゃないかということが考えられるのです。ことにこの鉱区の問題は、他の石炭とか鉄とかと違いまして、非常に危険を伴う鉱区でもございますし、従って先進国はどういうような処置をしておるか知りませんが、私は、この際思い切って、ウラン鉱区だけについては国家が直接これを管理する、あるいは国有にするというような、特別の処置をすべきではないかということを考えていたわけでありますが、現地に行っていよいよその必要なることを私は感じてきたわけであります。つきましては、これについて原子力局あるいは原燃公社両者で、どういうように今までお考えになっておったか、あるいは結論的に国有にした方がいいのだ、そういった立法措置をとった方がいいので、こういうようにお考えになっておるかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  106. 杠文吉

    杠説明員 ただいまの御質問の件でございますが、鉱山関係は私企業としておやりになっている面が多いわけでございますが、それを直ちにウラン鉱山に関する限りは国有化せよというような御意見は、ウランの特殊性にかんがみましてごもっともかとも存じますけれども、その立法化はなかなか困難ではないかと存じますので、立法化をはかるというようなことをいたしたことはございません。また、立法化をはかろうという考えもございません。と申しますのは、燃料公社におきましては、探鉱契約の鉱区は、共同鉱業権の設定をいたしておりまして、二百四十九鉱区を現在持っておるわけでございます。この二百四十九の鉱区におきましても、いざこざといいますか、国有にしなければ差しつかえがあるというような事態が起こった例はございません。従いまして、直ちに国有化の立法をしなければならないというような事例が過去においてございませんでしたのみならず、おそらくは将来にわたってもないのではなかろうかと考えておるわけでございます。もしも非常に困難な場合におきましては、あるいはそのような特例の立法を行なわなければならぬかと考えるわけでございますが、今日までの経過において、また近き将来にそういう事態は起こり得ないのではなかろうかと考えておるわけでございます。
  107. 北條秀一

    北條委員 現在の鉱業権に関する法律は、ウラン鉱などは全然考えてなかったという古い法律なんです。先年直しましたけれども、非常に古い法律ですから、非常に古い頭で考えた鉱業権法を、全く新しい、いわば奇想天外な鉱物にぶつかったのですから、これは当然そういうような古い考え方をやめて、新しい時代の要請に応じた措置をすべきだ、私はそういうふうに考えてきたわけです。ですから、あなたの方でそういうふうにお考えになっておるなら、この際、革命的な事態でありますから、一つもう一ぺん考えを直していただいて、そうしてやり直してみたらどうか、再検討してみたらどうか、こういうことを一つ強く要望したいのです。もしそれについてあなたの方の御意見があるならば出して下さい。
  108. 杠文吉

    杠説明員 ただいまの御希望でございますが、一応、御承知の通り、核原料物質開発促進臨時措置法というのが昭和三十一年に設けられております。しかし、これを発動したような事例なしに円滑に燃料公社の探鉱は行なわれておるということでありまして、このような法律も一応はあるわけでございます。しかし、これ以上に強い法律を必要とする事態がございましたら、その際には考えざるを得ないだろうということでございます。
  109. 北條秀一

    北條委員 それにいたしましても、結局その鉱区を開発するときは、必ず今言った共同鉱業権の所有者に何らかの代償を払わなくてはならないことは当然のことです。だから、そんなつまらぬことはやめたらいいというふうに、しろうとですけれども、考えられるわけです。ですから、必要を生じたときに法律を作るのだというが、そのときにはもう後手なんだ。そのときは全部鉱業権がない。だから、お願いします、頼みますといって、金を取られてやらなければならぬ、こういうことになるから、今から再検討しなさいということを私は言ったので、その点は一つ重ねてあなたに要望いたします。これは先ほど荒木大臣がおられるときに言えばいいのだけれども、荒木大臣は就任早々で勉強されてないようでありますから、直接の責任者であるあなたに一つ強く要望いたしますから、私の要望に沿うように努力していただきたい、こう思います。  第二は、廃棄燃料の再処理の問題でありますが、これは高橋理事長が先般お書きになりました報告書を読みますと、じゅんじゅんと高橋理事長のお考えが出ております。この廃棄物質の再処理の問題については、原燃公社が国内にあるものすべてを一括して責任を持って処理しなければならぬことだと私は思っておりますが、その点は一体どういうふうにお考えになっておるかということです。  もう一つは、再処理するという強い要求がありましても、原燃公社においでは、これは大へん失礼な言い方でありますが、技術力、技術陣営という点からしまして、再処理ができるかできないか、この点についてどうでしょう。
  110. 高橋幸三郎

    ○高橋参考人 再処理の問題は、原子力産業の一番あとの方に起こる問題で、しかも非常に重要な問題であることは、先般からいろいろこの席上で議論なされまして、特にプルトニウムの問題がだんだん表面に出て参りましたために、再処理というものはそれと直接関連があります関係上、われわれとしては、公社の性格上、原子力産業の再処理という問題、ひいては燃料サイクル、つまり燃料をいかにして経済的に利用するかという問題と結びついて、いろいろな面から非常に大事な問題であることは、前からよくわれわれも存じております。ところが、この再処理の問題は非常に関係方面が多岐にわたりまして、第一、炉の形式は一体日本においてどうあるべきか、つまり天燃ウランでいくか、濃縮ウランでいくか、それによって使う燃料がみな異なります。従って、その処理方法は当然変えなければいかぬ。また、その時期の問題、一体いつからその燃料処理の工場が日本に必要であるやいなや、これも非常に重要な問題であるけれども、今日まだそれが確立しておりません。それからキャパシティの問題、工場の能力の問題ですが、先ほど岡先生からもお話が出ました通り、従来は経済ベースが千トン単位として、そこに線を引かれておったようにわれわれも思っておりましたが、最近は必ずしも千トンという数字は固執されないような傾向がはっきり出て参りました。その一例としまして、アメリカで昨年来経済ベースで民間の再処理工場を計画しておることは御承知の通りだと思いますが、われわれはこれをIRGといっておりますが、その計画が最近一応終わったように聞いております。しかしまだ結論は私存じておりませんが、その計画によると約年百トンという計画のように聞いております。民間の事業としてはつまり百トンでも経済的にやれるという見通しがあって初めてそういう計画が今研究されておるのだろうと思いますが、そうしてみれば、必ずしもわれわれが最初考えたような千万トンというふうな大きな数字をわれわれは考えなくても、現段階は、つまりその後数年の進歩の結果、もっと小さいスケールでも経済的にいくのじゃないかということが当然考えられるのでございます。ですから、そういういろいろ原子力の技術の進歩なり経済情勢の変化、そういうものに対応して、日本としてはもっと適当なスケールにおいて、時期において、また方法において——われわれがただいま絶えずその方面の調査研究をしておるので、まだ実際に具体的にそういう研究室というものは持っておりませんが、一応まず初めの段階としては原子力研究所がその設備を一部作る、そして公社はそれに協力するという線で今進んでおります。これは三十六年度の予算に出てくる問題だと思いますが、現段階においてはわれわれは調査段階であります。しかし、この調査段階も、日本には、先ほど御指摘になりましたように、はたしてそういった適任者、エキスパートがおるのかどうか、そういう御質問を受けますると、これははなはだ残念ながら、われわれ公社は勉強はしていろいろ調査はしておりますけれども、さてそれが公社にエキスパートがおるとはちょっと申し上げかねる段階でございます。しかし、これは日本の技術水準から申しまして、つまり科学のレベルを相当高くわれわれは評価してもいいのじゃないか。原子力における科学の領分というものはかなり重要であることはよく海外の方面から聞くのでございまするが、日本もやはり同様に再処理をわれわれが将来やる以上は、科学の方面のレベルについては相当飛躍したわれわれの考え方を持ってしかるべきであろう。それにはやはり早く海外の情勢を調査し、また国内においてはそういう技術者を養成するということがまず先決問題ではないか、こう考えております。そういう面で早く調査員、調査団を海外に出して、われわれの未知の世界がたくさんあると思いますので、その方面の調査を急ぐべきだということを実は関係当局ともいろいろ打ち合わしておる現段階でございます。
  111. 北條秀一

    北條委員 その調査は来年度から始められるのですか。
  112. 高橋幸三郎

    ○高橋参考人 できれば今年度中に出したいと思っております。
  113. 北條秀一

    北條委員 第二点でありますが、これは原子力局長に最初にお伺いしたい。それは原研と原燃とは車の両輪のような関係にあると私は思っておる。一方が進み過ぎても、片方がおくれても困る。両方が一緒に進んでいかなければならぬことは当然だと思うのです。それはもとよりあなたの方もその通りだとおっしゃると私は確信する。ところが、先般来いろいろその問題について小さく検討してみますと、こういうことを発見したのです。原研と原燃との研究者の待遇が違うのです。これはどういうわけで違うのか、私は非常に不思議に思う。同じところにおって、同じ環境の中にあって、そして車の両輪でありながら、片方はいい待遇を受けて、片方は待遇が悪い、こういう不合理はすみやかに是正しくなてはならぬと私は強く確信をしておるのでございますが、その点についてどういう理由でそういうふうな差があるのか、あるいは直すつもりなのか、この二点についてお伺いしたいと思います。
  114. 杠文吉

    杠説明員 ただいまのお話原研と公社とは車の両輪であるとおっしゃることは、まことにその通りでございます。やはり両々相待って参りませんと、円滑な原子力の発達はないものと考えております。しかるにもかかわらず、給与の面において格差があるではないかということでございますが、確かに原研と公社においては、給与の格差ということは非常にむずかしい問題でございますが、現状におきまして、ほぼ一割近い開きがあるということはわれわれも認めております。しかし、原研と公社というものはそれぞれに性格の違いがございます。と申しますのは、確かに車の両輸ではございましょうが、原研は、もっぱらといっていいかと思いますが、研究所という性格を持っておりますし、燃料公社は、事業体と申しましょうか、——研究の分野も最近は相当大きくなってきております。それは先ほど高橋理事長から御説明がありましたように、再処理等の研究が相当大きく取り上げられております。製練につきましても相当研究が広がっておることは確かでございます。しかし、当初探鉱をやる、すなわち、鉱山を探して回るということが主体であったころにおきましては、事業体であるという性格を持っておりました。それと同時に、また一方、原子力研究所は、特殊の法人として民間の資本が入っております。燃料公社は、公社として全額国家の資本が投下されておるわけでございます。従いまして、燃料公社におきましては、他の公社というものとの振り合い等が考えられて、給与がきめられていっている状況にあったと承知しております。そういうような両者の違いもございますので、格差がおのずからそこにできてきていると思うわけでございます。しからば、その格差をそのまま認めるかどうかということでございますが、われわれは、そのまま認めていいものとは考えておりません。やはり研究の分野が公社において広がってきた限りにおいては、研究をもっぱらとする原子力研究所との間において、研究所というような分野に従っている人たちの間におきましては、同一とはどういう関連から言えるのかわかりませんけれども、同一と簡単に言い切れるかどうかわかりませんが、非常な、今の一割に近い格差があるような状況は改められなければならないと考えております。何しろこれは財源の問題もからんでおりますので、大蔵省との間に今後交渉を重ねていって、ぜひその間の格差はできるだけ縮めていきたいというふうに考えております。
  115. 北條秀一

    北條委員 人事院の勧告が出たこの際に、格差を直していくということは、私は最も適当な時期であると考えるので、その点は、今のお話通りに鋭意努力してもらって、三十六年度にはその格差を解消してもらう、こういうことは絶対必要だと思いますから、一そう十分に相談されて努力していただきたい、こういうことを要望いたします。  その次に、鉱山局長さんに一つ質問いたします。  先ほど冒頭に言いましたように、新潟県に行ったのでありますが、かねて新潟県の地盤沈下については、他の地域におきます地盤沈下とはおのずから本質が違うというふうに私は考えておりましたが、行ってみますと、やはりその通りだと思います。すなわち、新潟県の地盤沈下は、地下資源の開発ということと、それから地盤沈下という二つの要素が重なっておるわけです。その重なっておるものを一律に地盤沈下、地盤沈下というから、地下資源の開発ということが地盤沈下の陰に隠れてしまっておるというのが、現在の状態ではないかというふうに私は考えるのです。そこで、新潟県における天然資源の開発ということと地盤沈下ということが不可分の関係にあるのかどうか、この点について御見解を示していただきたい。
  116. 福井政男

    ○福井説明員 新潟の地盤沈下問題につきましては、この原因論が従来から非常に問題でございまして、私ども、現在なおこの原因論は続いておる、こういうふうに見ておるわけであります。現在の地盤沈下がどういうふうな原因によるかということは、私は科学者でもございませんので、自分の意見としてどうこうという意見は申し述べる知識を持っておりませんが、従来、科学技術庁におきましてこのために特別委員会を作っていただいて、ここで長い間御検討をいただいて参りましたのは北條委員も御承知のことであります。それでいろいろ私ども通産省内部では議論もありましたけれども、とにかく資源調査会の方で、新潟の地盤沈下の原因といたしまして、天然ガスの採取に伴いまして急激に多量の水を揚水する関係が大きい原因であるというふうな結論をいただいたわけでございます。これははっきり断定的な結論に読むことができるかどうかという点につきましては、まだ報告書を見ましてもあるいは若干の疑義を差しはさむ余地があるかと思いますが、とにかく資源調査会でそういう報告書が出されました。私ども、現地の非常に被害の大きい、沈下の度合いの激しいという関係もありまして、そういう点も、極力原因と思われるものは除去してほしいという現地の官民あげての御要望もありまして、そういうあらゆる点を勘案いたしまして、できるだけ水のくみ上げを伴わないような資源開発をやっていきたいということで、現在処置をして参っておるわけであります。従いまして、現在では、新潟ガス田につきましては、水溶性のガスにつきましては極力押えて、構造性のガスなり、あるいは深部の、現在まで水溶性ガスの主力でありました六百五、六十メートル前後のG五層よりさらに深いところのガスを採る、こういうような工作をいたしておるわけでございます。
  117. 北條秀一

    北條委員 向こうに行っていろいろと調査してみますと、あるところでは、今のお話の構造性ガスを活用して肥料を作るなりなんかすれば、現在の原価の半分にいく自信があるということさえいわれておるのであります。今日、ことに肥料問題で外国との貿易の問題からいきますと、日本の肥料は非常に高くて、とうてい貿易にならないんだという問題なんです。ところが、地下資源を開発すれば十分に外国の肥料に対抗できるという確信を持っている。ですから、これは地下資源として開発さすべきではないか、こう考えてきているのです。そこで、あそこの越後平野全体の地層の調査ということはあなたの方で十分されているのでしょうか、その点、まず承りたい。
  118. 福井政男

    ○福井説明員 新潟ガス田の地層につきましては、御承知のように、私の方の工業技術院に地質調査所がございまして、そこで担当いたしておるわけですが、今までのところ、ある程度の解明はいたしておりますけれども、新潟ガス田全体の地層がどういうふうにあるかという明確なる最後的な解明ということは、まだなかったように承知いたしております。今日、地質調査所の燃料部長の金原博士が見えておりますので、金原部長から御答弁申し上げるのが適当かと思います。
  119. 金原均二

    ○金原説明員 ただいまお尋ねのございました新潟平野の地質の点ですが、御承知のように、新潟平野は、地表は全部非常に新しい沖積層でおおわれておりまして、下の方は、地面から見ておりますのではわからないわけでございます。それを調査いたしますのは、やはりボーリングをやりますなり、あるいはいろいろな方法の物理探鉱あるいは地化学探鉱というようなものを実施いたしまして、間接にこれを推定する、こういう方法をとらなければわからないわけでございます。それならば、新潟平野全体に対してどの程度の物理探鉱なり地化学探鉱というものが実施されておりますかと申しますと、これは案外まだやってございません。たとえば、新潟市の付近でございますとか、あるいは最近ガス田の見つかりました東三条、それから長岡、そういうところは地震探鉱を一応やってございます。そして、またかなりの程度の試堀井もございますので、ごく大ざっぱに申し上げますと、三条から南の地域に関しましては、ある程度の地質及び地下構造がわかっておる。それから新潟市付近につきましても、ある程度地質及び地下構造がわかっておる。それから最近開発されました中条の付近、そういうようなところにつきましてはある程度わかっておりますが、主体を占めておりますところにつきましては、まだ物理探鉱も何も実施してないという状態でございます。従いまして、そこの地質及び地下構造は、決して十分にわかっておるとは申せない、しかしごく概略のことは、一応周囲からの推定である程度は見当がつく、そういう程度でございます。
  120. 北條秀一

    北條委員 金原さんの非常に正直なお話で、私も全くそうだと思います。先日行って聞きますと、鉱山局でボーリングをして、そのついでに地質のあれを見る、あとは地震探鉱をしてやっておるというようなことで、それでは自信のある地殻の構造はどうなっておるのかと聞いたところが、どうもそれは想像の部分がかなりあって、なかなか自信が持てませんということだった。そういうことだと、地盤沈下の問題と地下資源の開発という問題は、いかにもくっついておるように言いますけれども、これは私は、必ずしもくっついておるという結論は出せないと思うのです。そこで、きょうせっかくお見え下さったのですが、あなたの方では、地震探鉱だけじゃなしに、積極的にボーリングをやって、あの越後平野全体の地殻の研究をなぜ一体やらないのか、こういうことなんですがね。今まで、そういうことについて、越後平野の全体の地殻の構造を知るためには、いかに金がかかっても、どうしてもボーリングをやらなくちゃならないのだというような要求をされたことがあるのでしょうか、どうでしょうか。
  121. 金原均二

    ○金原説明員 お答えを申し上げます。確かにおっしゃる通りでございまして、私たちも、かねがね新潟平野の下には相当なものがひそんでおるのではないかという考えを持っております。それで、それならばどうしたらいいかということでございますが、これはやはり、今おっしゃいますように、物理探鉱と地化学探鉱、それから周辺地の地質調査、それに伴いますボーリングということになるわけでございます。それで、実はただいま大蔵省に三十六年度予算——これはまだ工業技術院の中でも固まっておりませんし、まして通産本省の中でも固まっておりませんので、今こういうことを申し上げてよいかどうか、私わからないのでございますけれども、個人の判断で申し上げますと、今私たちの方で計画しておりますのは、先ほど申し上げました三条から北、それから新潟市に至る地域に対しまして、大体二キロのメッシュで地震探鉱をやりたい、それに伴ういろいろな地化学調査、地質調査その他を実施いたしたいということをお願いいたしております。それで、なぜ二キロという数字を出したかと申しますと、最近見つかりました大きな油田である見附でございますが、見附の構造というのが、大体長さが二キロでございます。従いまして、二キロの目で切れば、どこかに大きな構造があればその二キロの目には必ずひっかかってくるという考えでございます。さらにその端緒がつかめましたならば、そこに対して詳しい地震の精査を実施する、こういう考えで、ただいま昭和三十六年度の予算の要求をいたしております。これは鉱山局ともよく御相談いたしまして、そういうものに対して、いいものがたとえばどこかにあったとするならば、鉱山局の方では幸いに補助金というのを持っておりますから、そういうものを積極的に使っていく。これは鉱山局長から申し上げるべきことを申し上げて失礼でございますが、そういうお考えのようでありまして、鉱山局と私の方とで一緒になりまして、何とかして構造性ガスを積極的に見つけていこうという考えでございます。これは私たちのお願いするところが通りましたならば、昭和三十六年度からこの仕事に手がつけられるわけでございまして、ただいまの計画では、新潟平野全体を約二カ年、それからさらに海上を一カ年、合計三カ年で新潟平野の全貌を探ってしまおう、こういう計画でございます。
  122. 北條秀一

    北條委員 先ほど鉱山局長が言われました調査特別委員会は、ことしですか、一応結論をお出しになっておるのですが、その調査結論は、従来の民間会社が穴を掘っておりますね、そのデータに基づいて、そういうものの研究によって私はあの結果が出たんだと思うんですね。だから、これは非常に早まった結論でないかと思うのです。幸いに、今お聞きしますと、二年間地層の調査をし、それから三年目には海洋の調査をするということであります。おそきに失するわけでございますが、従って、そうなると、三年後には一応科学的な結論が出るということになるわけですそうすると、現在はあなたの方であやふやな中に地下資源の開発を制限しておるということになるので、どうも私はそれは割り切れないというふうに思うのですが、現在のような地下資源の開発の抑制は、あなたの方では、現在持っておられる制限を、今後とも向こう三カ年間続けていく御方針なのかどうなのか。
  123. 福井政男

    ○福井説明員 ただいま金原部長の申し上げました点は、三カ年間で地質調査所であの地区の地質をよく調べて、調べれば必ずや構造性ガスがあるであろうから、それをまた開発するようにしたい、こういうような御説明を申し上げたように私は承ったのでありますが、それで今のガスの採取制限につきましては、先ほどちょっと申し上げましたように、資源調査会の方で、急激に大量の水をくみ上げるようなガスの採取は一つやめてほしいということが、政府に対する答申でございます。私どもは、この水を非常に多量に伴っておりますガスの採取を極力抑制いたしまして、そうしてそれにかわる構造性ガスを大いに開発するようにいたしたい、そうして先ほどお話のございました肥料の原料でありますとか、あるいは天然ガス化学工業の原料として供給するようにいたしたい、かような考え方で措置をいたして参っておる次第でございます。
  124. 北條秀一

    北條委員 この問題はすでに、言うまでもありませんが、先般の国会において超党派で決議をしているわけであります。しかし、私が今申し上げましたことは、多少誤解を生ずる危険があるのでありますが、要するところ、地盤沈下をあくまでも食いとめるためにも、やはり科学的な根拠がなければ意味がないということであります。ただ、片方の地下資源の開発を抑制することも、これまた科学的根拠がなくてやったのでは意味がないのじゃないか、こういうことが結論でありますから、その点は一つ間違いがないようにしていただきたいと思います。  きょうはこれで終わります。
  125. 稻葉修

    稻葉委員長 ちょっと委員長から質問いたしますが、昨日の、またきょうの委員各位の質問から推して、原子燃料公社法第一条の目的が、原子燃料公社は、核燃料物質の生産及びその管理について、能率的に総合的にこれをやるとあるのだけれども、一体原子力局原子燃料公社の方で、そういう点について見解は一致しているのか。まあウランの開発をやられる、それの粗製練をやられる、精製練をやられる、将来は再処理までもやろうというような意気込みのことを高橋参考人が先ほど述べられたが、これについては、原子力局においても、つまり科学技術庁においても、その通りやっていく方針が定まっているのか、あるいは民間にもそういうことを並行的に許しているのか、あるいは将来は日本開発するよりは、濃縮ウランでもできたやつを買った方がいいというふうに考えて、まだ方針はきまっていないのか、そういう点を一つ御答弁願いたい。
  126. 杠文吉

    杠説明員 ただいまの委員長の御質問でございますが、燃料公社法によりますと、公社は探鉱、採鉱並びにその粗製練、精練及び核燃料物質の再処理等をもっぱら行なう、すなわち他には一切やらせなくて、いわゆる公社の専業であるというふうには規定されておらないとわれわれは解釈しております。そこで、しからば政策として、公社の専業にただいま申し上げましたような事業を行なわせるかどうかということにつきましては、まだ原子力委員会並びに原子力局におきましても、方針は固まっておりません。と申しますのは、今後の長期計画が具体化されて参りますときに、それらの問題についても政策を打ち出さなければならないのではなかろうか、まだそれが固まっておりませんので、ただいまのところにおきましては方針はきまっておらないということを申し上げます。
  127. 稻葉修

    稻葉委員長 それでは、近い将来方針を固めて確立したいという意欲はあるのかないのか。
  128. 杠文吉

    杠説明員 ただいまの御質問につきましては、その意欲は十分にございます。
  129. 稻葉修

    稻葉委員長 そうすると、意欲があるならば、少なくとも所得倍増計画も三十六年度を第一年度として始まることだし、所得倍増計画に技術振興計画が伴わなければならぬことは当然だというのだし、そうなれば、三十六年度の予算に間に合うようにただいまの方針を固めるという意味でありますか。
  130. 杠文吉

    杠説明員 ただいまの御質問につきましては、長期計画というのは三十六年度を初年度にはいたしておりますが、予算というのは、御承知の通りに八月末日をもって大蔵省に提出することが例となっておりまして、もうすでに本日大蔵省で説明に入る予定であったわけでありまして、それでは間に合いかねておりますので、おそらく三十七年度以降において予算に反映してくるのではなかろうかと考えております。
  131. 稻葉修

    稻葉委員長 はなはだたよりない御返答ですけれども、まあやむを得ません。  もう一つ補充的に聞きたい。これは通産大臣にいてほしいんだが、幸い、担当局は違うけれども鉱山局長とあなたがおられるから聞きたい。それは、技術の振興と産業の振興ということが矛盾する場合がある。技術が進んだために、現存の設備の悪い産業はある程度整理していかなければならない。技術が進んで整理できればぐんとコスト・ダウンできるんだけれども、それを思い切ってやると、弱体産業が倒れる。これはきのう岡委員からも中小企業について質問があったが、大企業相互の間においてもこれは起きておりますね。肥料工業のごときは、あまり技術をどんどん使わして、ある会社にだけ生産させると、他の連中は半分くらい整理しなければならぬというような状況にあるわけだが、これも所得倍増、輸出増強というわが国の根本国策からすると、ある程度思い切って手当はしつつやらなければならぬことだと思う。通産大臣も科学技術庁長官もいないからだけれども、当分この委員会も開かれませんから、この際開いておくんだが、あなた方で答えられれば答えてもらいたい。担当局が違うからだめだというならそのように、そういう点を頭に置いてもらいたい。お答えになりますか。
  132. 杠文吉

    杠説明員 ただいまの問題はきわめて広範囲な問題でございまして、一原子力局長が所見を申し上げるような問題ではなかろうかと思いますので、お答えは私からいたしません。
  133. 稻葉修

    稻葉委員長 それでは、そういう質問があったということを、あなた方せっかくおられるから、原子力局長鉱山局長もそれぞれ科学技術庁長官、通産大臣に伝えて下さい。そして閣議において総合的に判断して、池田内閣の施策に誤りなからんことを期せられたい。  それでは、次会は追って通知いたすこととします。  高橋参考人には貴重な御意見の発表をいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表し、私より厚く御礼を申し上げます。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十分散会