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1960-08-31 第35回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年八月三十一日(水曜日)     午後一時四十九分開議  出席委員    委員長 稻葉  修君    理事 菅野和太郎君 理事 保科善四郎君    理事 前田 正男君 理事 石野 久男君    理事 岡  良一君 理事 北條 秀一君       赤澤 正道君    徳安 實藏君       丹羽喬四郎君    服部 安司君       石川 次夫君    岡本 隆一君       松前 重義君  出席国務大臣         国 務 大 臣 荒木萬壽夫君  委員外出席者         科学技術事務次         官       篠原  登君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   島村 武久君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   杠  文吉君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局次長)  法貴 四郎君     ――――――――――――― 七月二十二日  委員西村英一辞任につき、その補欠として奧  村又十郎君が議長指名委員選任された。 同月二十七日  委員奧村又十郎辞任につき、その補欠として  赤澤正道君が議長指名委員選任された。 八月二十二日  委員橋本正之辞任につき、その補欠として竹  下登君が議長指名委員選任された。 同月三十一日  委員小平久雄君、正力松太郎君及び竹下登君辞  任につき、その補欠として徳安實藏君、服部安  司君及び中村幸八君が議長指名委員選任  された。 同日  委員徳安實藏君及び服部安司辞任につき、そ  の補欠として小平久雄君及び正力松太郎君が議  長の指名委員選任された。 同日  理事小坂善太郎君七月十九日委員辞任につき、  その補欠として菅野和太郎君が理事に当選した。 同日  理事西村英一君七月二十二日委員辞任につき、  その補欠として中曽根康弘君が理事に当選した。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事の互選  科学技術振興対策に関する件      ――――◇―――――
  2. 稻葉修

    稻葉委員長 これより会議を開きます。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  先般、委員各位の御推挙によりまして当委員会委員長重責をけがすことになりました。まことにふなれではございますが、委員会運営に当たりましては一生懸命努力をいたしたい所存でございます。どうぞ委員各位の格別の御支援と御協力を切にお願い申し上げます。(拍手)      ――――◇―――――
  3. 稻葉修

    稻葉委員長 この際、お諮りいたします。  ただいま理事が二名欠員となっております。つきましては、その補欠選任をいたさなければなりませんが、これは先例によりまして委員長において指名いたすことに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 稻葉修

    稻葉委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長菅野和太郎君及び中曽根康弘君を理事指名いたします。      ――――◇―――――
  5. 稻葉修

    稻葉委員長 次に、科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  この際、荒木国務大臣より科学技術行政に関する所信を披瀝したいとの発言を求められております。これを許します。荒木国務大臣
  6. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 この機会を拝借いたしまして、科学技術振興方策原子力開発利用長期基本計画につきまして概略申し述べさしていただきます。  近年における科学技術発達は、申すまでもなく、まことに目ざましいものがあります。技術革新の名のもとに科学技術産業構造を大きくゆり動かすとともに、国際政治の動向を左右する動因にもなり、さらには国民の福祉の向上にもきわめて重要な役割を果たしているところであり、まさに現代は科学技術時代とも称し得る情勢であります。  一方、一昨三十三年暮れの西欧諸国通貨交換性回復を契機として、貿易為替自由化の動きは世界経済一大潮流となり、わが国経済にもその門戸の開放を迫りつつあるところであります。  このような変革期にあって、経済安定的成長国民生活向上をはかるためにはわが国経済国際競争力培養強化推進し、もってわが国資源の最も有効な利用と輸出の一そうの伸張をはからなければならないことは申すまでもありませんが、これらの基盤となり、推進力となるものは、まさに科学技術振興であると私は確信するものであります。科学技術庁長官重責をになう私といたしましては、このような科学技術重要性認識に基づき、そのすみやかなる振興のためあとう限りの努力を傾注する所存であり、さしあたり次のような施策推進したいと考えております。  まず第一に、国産技術開発に力を注ぐ所存であります。従来わが国外国技術導入に依存するところが多く、外国技術導入による対外支払額は年々増加の一途をたどり、昨年のごときは二百二十三億円に及び、その二十五年以来の累計額は実に一千億円を上回っている状況であります。このように外国技術導入に対して積極的である一方、国内における新技術開発に対する意欲は乏しく、わが国独自の優秀な科学技術をもり立て、成果をあげる点において必ずしも十分といえず、ときにはわが国研究者の独創的な研究成果海外において先に開発せられ、企業化に成功するといった事態さえ起きるありさまであります。このような外国技術依存体制を打破し、国内技術の再評価とその開発を行なうことは、わが国産業国際競争力培養のためにも、また、わが国科学技術発達をはかる見地からもきわめて肝要なことと思われますので、この際積極的に優秀な国産技術開発に努めることといたし、このため理化学研究所開発部門を分離独立させ、政府資金による新技術開発公団設立推進するとともに、日本開発銀行の新技術工業化のための融資制度を大幅に活用し、工業化資金の円滑な流通をはかる所存であります。  第二、研究公務員処遇改善を行なう決意であります。国の政策として科学技術振興をはかるために最も重要かつ基本的な問題は、科学技術教育振興科学技術者待遇改善に関する方策であると考えるのでありますが、なかんずく研究公務員待遇は、諸先進国に比してはもちろんのこと、民間研究機関に比べましてもその劣位はおおいがたく、そのため研究者国立試験研究機関を離れ、あるいは新規採用がほとんど不可能となっている実情であることはすでに皆様御周知のところであろうかと存じます。この点に関し、先般給与額改善については人事院勧告のあったところでもありますが、私としては給与の額もさることながら、むしろ制度のあり方が問題であり、生涯をかけて研究に没頭する研究者処遇としてふさわしい給与体系確立と運用の改善をはかることが必要と考え、これに努力する方針であります。  第三に、科学技術振興中軸となる研究活動助成促進につきましては、三つ観点、すなわち、一、民間研究活動助成、二、国立試験研究機関等設備更新近代化、三、特に各部門協力を要する重要研究推進重点を置いて施策を進める所存であります。  まず、民間研究活動推進についてでありますが、最近の目ざましい技術革新進展に伴ない、民間企業は競って研究活動に力を注ぎつつある情勢にあります。政府といたしましては、わが国科学技術水準向上中軸として民間研究活動活発化は必要不可欠のものと思われますので、所要の税制上の優遇措置を講ずるよう努力するとともに、必要の助成金を支出してその推進をはかる所存であります。  次に、国立試験研究機関等民間試験研究機関でなし得ない基礎研究開発研究を行なうという重要な機能を付与されているのでありますが、その設備の多くは老朽化あるいは陳腐化していて十分な活動が期待されない状況にありますので、計画的に設備更新近代化実施推進し、その試験研究効率化をはかる決意であります。  また、宇宙科学技術基礎電子工学海洋科学技術等、特に各部門協力を要する重要研究につきましても、最近の各国における研究開発の趨勢にかんがみ、従来の研究体制を維持強化することはもちろん、さらに時代の要請にこたえ、基礎電子技術研究所設立海洋審議会設置をはかるなど所要施策を講じ、その総合的な研究開発促進する所存であります。  第四に、原子力研究開発利用重点的推進であります。後に御説明申し上げる通り、現在原子力委員会は、原子力をめぐる世界及び国内の諸情勢変化に対応するべく原子力開発利用長期基本計画改定を行なっておりますが、明年度は新長期基本計画初年度であり、同計画基礎として原子力研究開発の新展開を期する年であるとの観点に立ち、原子力船開発材料試験炉開発準備核融合反応研究、再処理研究開発放射線化学開発放射線の生物及び環境に対する影響の研究等事業重点的に取り上げるとともに、本年度に引き続き日本原子力研究所原子燃料公社放射線医学総合研究所を整備拡充して研究体制強化をはかるほか、国際協力促進核燃料計量制度確立人材養成計画推進を期する所存であります。  第五に、科学技術に関する広報普及強化についてでありますが、従来わが国国民各層科学技術に対する認識と理解とにおいて必ずしも十全とは言いがたく、そのため科学技術振興のための社会的基盤の形成が不十分でありました。政府といたしましては、この弊を除去し、改善するため、国民各層、なかんずく青少年の科学技術に対する関心を高揚させ、次代のわが国科学技術のにない手を培養育成する方針でありますが、そのため、政府広報普及事業をさらに強化し、日本科学技術振興財団普及事業を援助するほか、科学技術に関する広報普及の機構を整備拡充する所存であります。  次に、原子力開発利用長期基本計画改定について御説明申し上げます。  わが国における原子力研究開発につきましては、昭和二十九年度その緒について以来、今日までの数年間に目ざましくかつ堅実な進展を見せ、わが国における原子力研究開発基盤は着々譲成されてきているのでありますが、一面、この数年の間には原子力平和利用をめぐる国内国外情勢変化もまたかなり顕著なものがあるのであります。原子力委員会ではさきに昭和三十一年、原子力開発利用長期基本計画を内定していたのでありますが、その後の情勢変化、たとえば一、海外における核原料面見通しの好転、二、電力需要の予測以上の増大エネルギー供給構造変化、三、新鋭火力発電コスト低下傾向、四、原子力関係技術進展に伴う新しい問題解明のための必要な研究開発量増大等状況に対応して同計画改定し、今後におけるわが国原子力研究開発利用長期的の指針として、本年中には各界の衆知を結集して新長期計画を策定する方針であり、去る七月末にはその基礎となる考え方原子力委員会において内定したのであります。この内定に基づき、新長期計画においては原子力発電原子力船等、動力としての利用アイソトープ利用放射線化学等放射線としての利用核燃料材料開発利用及びこれらの基盤となるべき研究開発の進め方の四点を基本線とし、さらに原子炉安全対策放射線障害防止などを総合的に検討し、一応今後二十年間を計画期間として、開発利用の時期及び段階についても再検討を加え、また、国際的な視野をも取り入れてわが国原子力平和利用の健全な発達に最も効果的に寄与しようとするものであります。  なお、簡単に二、三敷衍いたしますと、原子力発電については、計画期間の前期一九七〇年までの十年間を開発段階と見、主として技術育成発展人材養成に資するため、数基約百万キロワット前後の原子力発電が行なわれるものと大よそ見込み、本格的に商業ベースに乗ると考えられる一九七〇年以降の十年間には、一応新規火力発電設備建設容量の約一五ないし二五%、五百ないし八百万キロワット程度開発されるものと推定しております。原子力船については、経済的に引き合うのは一九七〇年代と見られるが、造船、海運国として将来の国際競争に備え、  一九七〇年を目標原子力船一隻を建造する方針を立てるものとしており、三十六年予算要求においても遮蔽実験用スイミングプール型炉建設に着手することを期待しているのであります。核燃料開発については、探採鉱、精錬、加工、再処理にわたり、全体を通じ関連させた方針でこれを行ない、放射線利用についても意欲的にその推進をはかろうとするものであります。また、原研、燃料公社放医研等原子力関係機関充実を通じ研究体制強化し、基礎研究推進を期しているのであります。  以上、重要施策として当面考慮いたしております科学技術振興方策の大綱と原子力開発利用長期基本計画改定の概要について申し述べたのでありますが、私といたしましては、これらの方策中心として科学技術振興原子力開発利用推進に全力を傾注する覚悟でございますので、各位を初め関係各位の切なる御協力をお願いいたす次第であります。
  7. 稻葉修

    稻葉委員長 以上をもちまして荒木国務大臣所信表明は終わりました。     ―――――――――――――
  8. 稻葉修

    稻葉委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。岡良一君。
  9. 岡良一

    岡委員 ただいまの荒木長官の御所信は一々まことに傾聴に値するものでございます。しかしまた、最近はこのような御意見が、実は国会のつど政府側から申されるのでございます。しかしながら、それが実際にどの程度まで花を開き、実を結ぶかということになると、私どもとしては遺憾な点が多々ございます。世評においては、科学技術振興を真剣にはかろうとするならば、政府国会の頭をすっかり切りかえなければならぬというふうな批判も私ども聞く次第でございます。  そこで、まず国務大臣としての荒木長官にお尋ねをいたしたいことは、前総理の岸さんは、組閣のつど、内閣重点施策として科学技術振興という問題を掲げられました。池田内閣においては、私ども新聞等で拝見をいたしますると、減税、社会保障公共事業に対する投資というふうなことがきわめて重点的な施策として伝えられておるのでございますけれども科学技術振興というこの課題と真剣に取っ組んで、これを重点的な施策として推進をし遂行するという御決意内閣にあるのかどうか、まず、この点をお伺いをいたしたいと思います。
  10. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 御指摘の点でございますが、新聞等に今掲げております課題としては、御指摘のような三つの柱を主眼とするように散見いたしておりますが、御承知の通り池田内閣誕生早々に、池田総理がさしむきの所信を表明いたしました場合も、科学技術振興の重大さを全国民に訴えましたことを御記憶であろうかと思います。さらに、すでに御案内の通り、前内閣時代からではありますが、一年有余にわたり科学技術会議で、十年後を目ざして、日本科学技術振興はいかにあるべきかということを克明に検討されまして、来月、九月一ぱいにはこれが正式に内閣総理大臣に対する答申として出てくる見込みでありますが、実質的なその権威者検討に基づく裏づけのもとに、科学技術振興のためには、池田内閣としても十分なる重点施策としてこれを考慮に入れることを考えておりますことを、この際申し上げまして御了承いただきたいと思います。
  11. 岡良一

    岡委員 御所信の前段にもありまするように、特に為替貿易自由化というこの大きな世界的な潮流の中では、国産技術培養ということが欠くことのできない枢要な課題となって参った次第でございますので、この際内閣といたしましては、科学技術振興については、うたい文句ではなく、実際その予算においてわれわれの納得し得るような施策をぜひ講ぜられるように、この機会に心から私は要望いたします。  そこで、今お話し科学技術会議でございますが、本年のたしか二月かと思います。この委員会で私は、政府長期計画を立てる場合、たとえば所得培増計画にしても、やはり科学技術振興についての年次的計画裏づけが考えられるべきではないかという点を当時の中曽根長官にお伺いをいたしました。そのときに、本年六月に科学技術会議総理答申を出すことになっておる、これに基づいて来年度以降における十カ年間にわたる総合的な科学技術振興計画を作るのである、具体化するのである、こういう御答弁があったのでございます。今お聞きをいたしますると、九月中に科学技術会議答申が出る、しかも、すでに来年度予算の作業は皆さんお始めになっておる、これではせっかく設けられた科学技術会議への諮問が予算の上に生きてこないうらみを私どもは感ずるのでございますが、この点の関連はどういうことになっておりますか。
  12. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 中曽根長官時代に今お話しのようなことがあったことを直接は私も存じませんけれども、しかしながら、池田内閣ができまして、御指摘のような所得培増計画の達成ということを一つ目標に掲げておりますことはおっしゃった通りでございますが、その所得培増という考え方にさらにつけ加えて、今後の十年間の見通しを立てる立場からの科学技術会議検討もあったと承知いたしております。従いまして、そういうことから、かつて中曽根長官時代に六月を期してとお話になったことが、幾らか手直し等もありましたために、今御披露いたしましたような九月一ぱいという見当に正式の答申は出るという段取りでございます。しかしながら、今予算裏づけとしての科学技術会議答申の時期がおくれたら懸念にたえないという御心配の御指摘です。これはありがたい御心配で、お礼を申し上げねばなりませんが、実際問題としましては、各部会でずっと検討されておる過程において、科学技術庁事務当局としましては、密接な連携をとりながら並行的に参っておりますので、大体の構想は、三十六年度を十カ年計画初年度としていかにあるべきかということは、実質上は取り入れつつ進行いたしておりますので、支障はなかろうかと思っております。また、お話もございますから、さらにその角度からの手落ちのないようにいたしたい。さらに、今お話がごさいましたように、貿易為替自由化という事柄、あるいは今の所得培増という事柄にいたしましても、これは日本科学技術の飛躍的な進展裏づけなしには培増計画そのものそごを来たすのでありましょうし、少なくとも渋滞を免れないであろう、さらに、自由化の問題との関連においては、日本科学技術の力強さを期待するのでなければ、諸外国科学技術に圧倒されてしまって、とんでもない結果に陥ることをおそれる次第であります。そういうことも考慮に入れながら答申が行なわれるものと承知いたしております。まだ正式の答申が出ませんので、形式的には、正式なお答えとしては申し上げかねますけれども実質的には、先刻来申し上げるようなことで脈絡をとりつつ進んでおることを御了承いただきたいと思います。
  13. 岡良一

    岡委員 この科学技術会議を設けて、日本科学技術行政総合化充実発展をはかるべきだという決議は、当委員会がいたしたものでございます。正力松太郎氏が科学技術庁長官で、ここにお見えの菅野和太郎氏がこの委員会委員長であらせられたときに、満場一致科学技術会議設置法というものの制定を政府に要望いたしまして、これができたものです。そこで、これは当然三十六年度からを第一年度としての十カ年計画を立てる、この答申は六月中に総理に出す、私は、これは当然なんだと思う。予算編成の前にこの答申は出さるべきだ。しかも、総理議長です。ところが、内々において来年度科学技術予算については、科学技術会議との連絡があるやにおっしゃいますが、それでは会議としての権威というものは無視されているんじゃないかと私は思います。またそういうところに、せっかく国会が総合的な科学技術行政進展のために満場一致をもって政府を鞭撻して作った科学技術会議というものの権威を無視されておる。そのこと自体、池田内閣科学技術振興に対する熱意が足らないのじゃないかということを私は非常に心配をいたすのでございますが、この点について重ねて長官の御所信伺いたいと思います。
  14. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 一番最初の御質問に対してお答え申し上げたことで御了承いただいておるかと思いますが、池田内閣としましては、科学技術振興について重大なる関心を寄せておることは、繰り返しそうであることを申し上げることによって御了承いただきたいと思います。科学技術会議権威云々という御指摘は、まさしく形式的にはそうだと思います。思いますが、算術的に、物理的に、ついそごを来たしたということでございまして、実質的には、科学技術会議の御意向等を参酌しながら事務的には進んでおる。正式に科学技術会議答申が提出されました暁においては、もし今実質上の連絡をとっておることで不十分な点ありせば、予算関係としましては、追加要求をするということででも、御指摘のような権威失墜の結果にならないように努力をいたしたいと思います。
  15. 岡良一

    岡委員 せっかく私どもの心からの要望が科学技術会議に集約された事情を申し述べまして、ぜひ一つ科学技術庁長官としては、むしろ会議のいわば事務局長的な重大な推進的役割をしておられるわけでございますので、庁内の諸君を深く督励をされて、また科学技術会議においても、われわれの納得し得るような答申が期待されると同時に、その答申実施については、明年度予算においても、若干の時のずれがあっても、ぜひ一つ責任を持って長官の御努力をこの機会にお願いいたします。  なお、この第一から第五まで、るる科学技術振興原子力平和利用進展についての御所信を承りました。この中で、一々私どもはまことにもっともでございますが、ただ若干、具体的にどうされるのかという点について、数字は要りません。数字はおそらく来年度通常国会で、新しい国会で審議することとなりましょうが、具体的な運営方針等について若干お伺いをし、また、足らざるものとしてここに加えて、私どもとしての若干の希望を申し上げて、国務大臣としての御所信を承りたいと思います。  第一は、国産技術開発に力を注ぐ所存であるという点でございますが、「このため理化学研究所開発部門を分離独立させ、政府資金による新技術開発公団設立推進云々ということでございますが、具体的にはどういうふうな形になるのでございますか。同時に、また、この新技術開発公団理化学研究所との関連がどういうふうに運用されるのか。と申しますのは、御存じのように、かつて理化学研究所といえば、仁科博士あるいは大河内博士等日本の当時における科学技術自然科学にいそしむ者のメッカでございました。これが戦後占領軍意思等もありまして、一株式会社に追い込められてしまったのを、どうやらわれわれの微力を協力いたしまして、理化学研究所に発足いたしたわけでございます。そこで、大学等における基礎研究応用化する機関というものがどうも足りないから、理化学研究所はこれにその力を集中せしめる、同時に、また、その工業化のためにも理化学研究所に当たらしめよう、そこで、新技術開発ということでは、とても理化学研究所ではおぼつかないので、技術開発公団構想は前々からあって、若干の予算は一応与えられておったようなわけでございますが、これが新技術開発公団として独立をする、そうしますと、大学基礎研究応用化中心とする理化学研究所、さらにまた、その工業化等中心とする新技術開発公団、これらの関連性、それに民間産業、この一体的な、不可分な形で進められなければならないと思うのでございますが、この全体総合的な運営についての御所信をこの機会に承っておきたいと思います。
  16. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 この開発公団を作る構想は、今お話通り以前からもあったことでありますが、第一に、総合的にどういうふうにやるんだという御質問でございますけれども大学における学理研究、それに続いて、その学理をもっと実際的に応用する立場からの基礎研究、それを理研は担当することが一つ、さらに、基礎研究からもうちょっと具体性を持った応用工業化研究と申しますか、そういうことも理研の受け持つ分野かと思います。さらに、それがマス・プロダクションに移るもっともっと具体的な面があろうかと思いますが、それは民間企業体が担当する場合もございましょうし、また、理研がそういう役割を果たすということもあり得る。その意味において、理研の中に新技術開発的な仕事をあわせてやってもらうという意味合いで、岡委員指摘予算等も成立しておると心得ます。ところが、先ほどの所信表明でも申し上げましたように、新技術開発なるものがもっともっと大量に、しかもスピーディに実現を期せられなければ、科学技術の急テンポの上昇はおぼつかない。外国からの技術導入しての糟粕をなめることになるのだという点に特に重点を置いて、理研の中にある、御指摘予算を運用してこの目的を果たすについては、どうも場所として理研の中に置くのが適当でないじゃなかろうか、むしろ、これは独立さして、運用さるべき資金ももっと大量にそれにつぎ込んで、そうして理研その他等から出てきました新しい日本固有の技術を現実面に移すという目的を果たしたい。しかし、その場合に、いきなり民間企業体内でこれを負担しますことは、成否おぼつかないという問題も当然あるわけでございますから、そういう点でちゅうちょするおそれがある。そのために、新技術開発テーマは優秀なものを持ちながら現実化せられないうらみが今まで多分に顧みるとあるのだ。そこで、その経済的なリスクについての懸念なからしめるという点を主眼といたしまして、民間企業体に理研の責任において新技術開発の施設その他をやる。もしこれがマス・プロダクションに移せるくらいに経済的に採算がとれるという意味で成功しましたならば、その企業体が研究施設、研究費用等はその利益の中から公団に返還をする。もしそれが不成功に終わりました場合は、公団がその危険負担をする。それでは、その危険の負担のリスクは、公団側から見てどの程度かということが問題になりましょうけれども、それはあまり私も具体的には申し上げかねますが、大体そう大した危険負担をしないでも済むのじゃなかろうか。まあ希望的なものではありますけれども、いずれにせよ、そういう遅疑逡巡するということのために、優秀な新技術が現実化せられないという悩みを解消しようということを主眼にする。そうだとすれば、理研の本来の基礎的な応用研究ないしは工業化研究という本来の姿からいうと、余りにも現実的で、ある場合は危険負担をしなければならないという特殊性も持った新技術開発でございますから、別個に開発公団と仮称するようなものを作って運営した方が適切であろう。かれこれの混淆を来たさないでいいであろうということから、こういう構想をこの際三十六年度を期して、要すれば実現したいものだということになったと心得ております。
  17. 岡良一

    岡委員 この点、なお具体的に、せっかく篠原次官も島村官房長もお見えだから御説明願いたい。
  18. 篠原登

    ○篠原説明員 ただいま荒木大臣からお答え申し上げました通りでございます。新技術開発公団構想は、すでに科学技術庁設立せられました当時からございまして、これが実現を期すべく努力して参ったのでございますが、何にいたしましても、新しい試みでございますので、にわかに公団を設立することはまだ早い、こういうような大蔵省等の御意見がございまして、それでは、とりあえず理研がたまたま特殊法人になりました機会に、理研において、その理研のひさしを借りまして、そこで細々まずスタートしてみたらどうか、その結果によって、新しい公団を作るかどうかをきめようじゃないかというのが、ちょうど三年前でございまして、最初の年は八千万円、それから昨年が一億三千万円、本年同じく一億三千万円で、合計三億四千万円の経費を投じまして、理研の一隅に開発部を設けてやったのでございます。最初取り上げました課題は人工水晶その他一件でございまして、人工水晶の研究は山梨大学研究されましたものでございますが、これを東洋通信機株式会社と提携させまして、理化学研究所開発部門であっせんをいたしまして試みてみたのでございますけれども、大体成功をおさめまして、まず最初の凱歌は上がったのでございます。昨年におきましても、約二件を取り上げまして、それぞれ発明者とそれからしかるべき企業体との間のあっせんを行ないまして、それぞれ現在進めつつございますけれども、このようにいたしまして細々やっておりますことは、やはり現状ではおもしろくない。日本開発しなければならない新しい技術はそれからそれへとたくさん現われて参りまして、とてもわずかの金でもってこの開発を期すことができない。三カ年たちまして、大体こういうようなやり方が非常にいいやり方であるということがわかりましたので、来年からは、あらためて最初の科学技術庁ができたときの構想に基づきまして、新技術開発公団を理研から独立いたしまして、これに相当多額な資金を投ずる。足りないところは、これから七カ年におきまして五十億を投じまして、それぞれ新しい技術開発に力を注ぎたいということでございます。新技術をいかにして選ぶかということにつきましては、斯界の権威からなる開発委員総理大臣が任命いたしまして、そこで十分に検討いたしまして、これならばいいというときに、初めてこれを試験的に最小の企業規模において実行することになっております。大体今のところ成功率は八〇%、従いまして不成功率が二〇%という予定をもって進めております。イギリスなんかの例によりますと、大体この程度が一番妥当なところじゃなかろうかと考えております。かようなことでございまして、このリスクのある――ある程度二〇%でもリスクがございますが、これを理化学研究所でやりますことは、ただいまのように全体の額が少ないときはいいのでありますが、非常に大きな額になりますというと、リスクまでも理化学研究所の本来の使命である研究に及ぼすことは、これはひびが入るというようなこともございますし、また、この新技術開発公団構想は、大学あるいはまた国立研究機関あるいは理研自身その他民間におきます新しい技術をも広く吸収するという意味におきまして、やはり独立で大きなものにしていった方がよかろうかということで、来年度はぜひこのような形式の公団を創設いたしたい、かように考える次第でございます。
  19. 岡良一

    岡委員 その構想は、私どももきわめて賛成でございますが、この機会に、ぜひ荒木国務大臣として思い切って大規模な構想をこの理化学研究所あるいは新技術開発公団のために立てていただきたいと思います。私どもの同僚である松前君もこの委員会において、せめて厚木の飛行場くらいは返還を求めて、これを敷地に充てるくらいな構想で、国が思い切った責任を持って応用化あるいは実用化、工業化のための施設を作るべきだ、それなくしては、日本の現状において国産技術確立はとうてい不可能であるということをしばしば繰り返し申しておるところでございますが、ぜひ一つ組織を別に作る、同時に、その組織の規模、運営について相当思い切った構想を持ってぜひ一つ予算閣議等にも臨まれて、がんばっていただきたいと思います。  ただ、そこで私の申し上げたいことは、理化学研究所でも民間の委託による研究をいたしておるようでございます。私は詳しい数字は今持っておりませんが、大体理化学研究所に委託研究をする経営体というのは、そう小さいものではございません。おそらく新技術開発公団の恩恵に浴するものも中小経営ではないのではないかという点でございます。一方、ここに書いてあるように、昨年だけでもロイァリティ等に対する支払いが二百二十三億、昭和三十年には四十億ほどで、三十一年にはほとんど倍の七十億、三十二年には百十億、三十三年には百六十億というように幾何級数的に外国に対する技術の支払いがふえておる。ところが、さて日本が受けておる支払いというものは、対外支払いの五%にも足りないというような意味で、このままでは日本科学技術の植民地的な、従属的状態に置かれる。むずかしくいえば、そういうようなことも心配をしておったのでございますが、同時に、おそらくこれだけのロイァリティを払えば、それに伴う施設等の導入もいやおうなく相当な巨額に上るのではないかと思います。一説によれば五千億から六千億、これはロイァリティとともにどうしても日本が買い込まなければならない。いわゆる設備をこの程度海外から買い込んでおるというようなことを伝えておるものもあります。ところが、これにしたところで、もう大経営、大企業でなければなかなか外国からロイアリティを買い込むことやノー・ハウを買うということはできない。もちろん設備を買うというようなことは手が及ばない。私は、日本科学技術振興という政府の政策が、ほんとうに日本の全産業構造の発展のてこにならなければならぬと思う。これが大経営を高原景気で潤しながら、中腹からすそ野では、もう設備技術におくれをとった零細企業、中小企業というものが、せっかく科学技術振興しながら置き去りにされておるということでは、日本の全国家経済のためにも、ひいては国民の生活の繁栄にも私はならないと思う。御存じのように、通産省あたりは、中小企業に対する設備の近代化資金は総額約六百億を必要とするというようなこともことしの予算委員会で申しておる。ところが、事実上計上された予算は十四億余り、こういうようなことでは、新技術開発公団を作ったって、理化学研究所をいかにりっぱなものにしたところで、さてそこで結ばれた人間の英知の実というものが国家経済国民生活の潤いにならない。一部少数の大経営や大企業に奉仕するということでは、私は真の意味の科学技術振興にはならないと思うのです。従って、これはやはり科学技術庁長官として、同時に国務大臣として、今日設備技術の立ちおくれに悩んでおる、従って、ますます二重構造の悩みを深くしておる中小企業や零細経営に対する設備の近代化、新しい技術導入、こういう具体的な政策が、この科学技術振興政策と同時にやはりわれわれに示されなければならぬ。それが真にあたたかい、ほんとうの科学技術振興政策だろうと私は思う。そういう点について、国務大臣はいかなる御所信を持っておられるか、お聞かせを願います。
  20. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 この振興財団は、今の篠原次官からの説明で尽きておりますけれども、ひとり理研の基礎研究ないしは応用研究から導き出される新技術開発のみならず、国立の他の研究機関から出てくるものも、大学研究が直結して企業体内に結びつくという課題は、もちろん所管から申し上げれば、御指摘の中小企業を担当する通産省の関係におきましても、あるいは農林省、厚生省または運輸省にも関係する課題があり得ると思うのですが、そういうこともひっくるめまして、この開発公団が担当するという気慨を持ち、構想のもとに発足すべきものと心得ております。しかし、現に他の各省所管の研究所、試験所等で同様のことをやっておりますことをどうしようというのではない。それを、さらに中小企業面につきましては、特に通産省側において御指摘のようなことに努力すると同時に、この開発公団もまた相協力することによりまして、総合的に御指摘のような期待の方向に持っていきたい、かように思っております。
  21. 岡良一

    岡委員 いずれ機会を見て、こういう点はよく政府の関係大臣の御所見も承りたいと思います。  そこで、研究公務員処遇改善ということでございますが、この点、大学の助手は研究公務員に該当するのでございますか。
  22. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 大学の方は助手、講師、助教授、教授ということで、大学の職員というカテゴリーで考えるわけであります。研究公務員は、大学以外の国立の研究機関給与制度上、研究公務員と別に分けているようでございますが、大学の教授系統の給与体系とは全然別個に扱います。
  23. 岡良一

    岡委員 私ども、この委員会から派遣されて各種の国立試験研究機関に出向きました。また、三公社、五現業あるいは民間研究所へも出向きました。そうすると、とにかく国立の試験研究機関では、こういう給与では人材が集まらない、こういう設備では研究の意欲が満たされないという、まことに切実な訴えをいつも聞かされておった。本年度予算についても、中曽根長官は若干研究公務員の手当の増額を要求せられました。これは実現をしなかったので、まことに私ども遺憾に思っております。国立の研究機関は新しく建ったものは別として、これまで古く建っておるものは、全く私どもが玄関に入って何となくさびしい思いをするわけです。訴えがそうした生活の問題というようなことで、これでは名は国立ではあるけれども、とうていこの諸君の意欲を満たすことはできないと思うので、この点は、ぜひ荒木国務大臣としてがんばっていただきたいということをこの際強く要望いたします。  さて、大学の点でございますが、大学の教官研究費は、来年度要求予算では大体理工学部ではどの程度でございますか。
  24. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 まだ数字的なことは頭に入れておりませんので、具体的にお答え申しかねますけれども大学教授系統の給与の面における処遇改善、これは今御指摘通り当然のことといたしまして、それだけではいけないので、大学におきましても、研究施設に思い切って投資をする、それに加えて設備と人間がありましても、その運営のための研究費がございませんければ、仏作って魂入れずのそしりを免れない。従来明治以来の予算要求科目であるがゆえに、現実に即した研究費がかちとられていないうらみもあるようでございます。従って、予算の科目そのものにも再検討を加えて、研究設備がブレーンとともに現実の研究成果を上げ得るに値するだけの研究費をということを目標に、来年度予算は要求したいと思っております。再び申し上げますが、具体的金額を記憶いたしませんのでお許しをいただきますが、考え方としては、そういう考え方で参ります。
  25. 岡良一

    岡委員 科学技術振興と申しても、結局、私は人だと思うのです。人の量と質だと思う。それで量の問題については、新聞等で拝見すると、高等工業学校というような程度のものを設けたい、あるいはまた大学の理工学部の講座を増設する、相当な学生数をふやす、ただ問題は、量的にふやされても、質の問題です。私自身の体験を申しますと、私は昭和初年にはある大学の医学部に研究生としておりました。その一講座当たりの研究費は三千円です。私は当時普九俸の下と言って、月俸はわずかに三十五円でした。しかしウサギ一匹でも、試薬一本でも全部伝票でくれたものです。ですから、私ども研究の意欲だけは満たされました。みんなが研究の意欲だけは満たされて、自由な研究ができた。本も、外国の本がほしいと思えば、伝票一本で必ず来ました。ところが、私はここ五、六年、また母校の研究室に帰っておりますが、ウサギ一匹、試薬一本、本一冊、全部自腹を切らなければならない。大学を出て、助手として勤務しておられる諸君――大体月給は二万円そこそこでしょう、こういう方が医学の研究ということで、ウサギや試薬や書物に全部その中から差引かれたのでは、これはもう長続きしません。だから学校の先生は、結局外国の本を読みたいとすれば、アルバイトに他の原稿を書いたり、講演に出歩くということで、これまた研究に専心できぬ。三千円ですから、三百六十倍しても百万円。ところが昨年は、医学部で教官研究費のうち、その講座で教官の自由になるのが大体二十四、五万円、理工学部では十七、八万円、五分の一程度です。若い人が大学を出て研究室に入る場合には、生活より、やはり自由な研究研究の意欲を伸ばしたいというあこがれを持って入った。ところがすぐ生活難という壁にぶち当たる。これでは日本のほんとうの研究は私は伸びないと思う。そういう点、どうか一つ年度予算要求においては、基礎研究の中核である、大学における講座の自由に使用し得る研究費というものは、文部大臣としても、大蔵省とよほど強く折衝していただいて、ほんとうに日本科学技術振興の人の質を高めるという努力を、ぜひ一つやっていただきたい、このことを私は強く大臣に要求いたしたい。  それから、宇宙科学技術の来年度要求予算は、大体今どの程度見積もっておられますか。
  26. 島村武久

    ○島村説明員 二億円余りでございます。
  27. 岡良一

    岡委員 先般の通常国会でも宇宙開発審議会が作られました。そうして、いよいよ日本もロケットの製作等に取りかかろうという本腰を入れたスタート・ラインが引かれようとした、機構だけはできた。ところが、今年度はおそらくそれ以上でございましょうが、昨年度も防衛庁のミサイルの研究費というものは十七億、宇宙開発審議会ができて、宇宙科学技術振興をはかる、これがわが国科学技術振興重点的な一つの路線であるといいながら、二億余りしか金がない。科学技術というものは、やはり日本日本の独自な立場において平和目的に直結する形において進められなければならぬ。ところが軍事目的の同じロケットの分野で、ミサイル研究には十七億の金が使われ、平和目的を推進しようとする科学技術庁予算は二億数千万円しかない。最近ミサイル等の調査のために海外に行かれた方の報告を見ますると、非常に危険な思想がある。科学技術は、日本では、やはり平和目的に直結をする、あくまでもこの大きな太い原則を乱さない、これが私は日本科学技術振興の基本的な態度でなければならぬと思いまするが、ロケットの予算を見てもこういう不均衝がある。荒木長官どういうふうにお考えでございますか。
  28. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 宇宙科学開発につきましては、実は私もはなはだ認識が貧弱でありまして、実態をつかみ得ないことを率直に申し上げなければなりませんが、いろいろとお教えをいただいて善処したいとも思います。ただ、私の乏しい考えを申し上げますならば、おしかりを受けるか知りませんが、ロケットないしは衛星等によって具象される宇宙科学ということを念頭に置いて考えました場合、世界では米ソ両国がしのぎを削って、特に軍事目的からでございましょうが、切瑳琢磨しておる。そうして理論的に、科学的にある線まで到達しておるというのが現実にあるわけでございますが、お話のように、日本日本自体として独自の平和目的から宇宙開発のために努力すべきことは、理念的にはもちろんわかりますけれども、さて現実となりますと、米ソの到達しておる今の科学技術の線、宇宙開発の線まで、幾ら切歯扼腕しましても、日本みずからの財力とその道についての研究努力がおくれておるがゆえに、自主的々々々ということだけでいっておったのでは百年河清を待つような気持がいたすわけであります。ですから、現に米ソ両国を中心として非常に飛躍的な発展過程にある、研究段階にあるその科学技術を、率直にいえば教えてもらうということが当面主眼として考えられてしかるべきじゃなかろうか、そうして教えてもらい得たその線をスタート・ラインとして、お話のような自主的立場からの具体的検討に入っていくというふうな考えはいかがであろうか。私だけが自問自答しておることを、こういう席で申してははなはだ不謹慎ですけれども、私が当初申しましたように、宇宙開発そのことについての認識不足のゆえにこんなことを申し上げることをお許しいただいて、お聞き取りをいただきとうございますが、私としましては、一応そういう考え方でおる次第でございます。
  29. 岡良一

    岡委員 重ねてお伺いをいたしたいと思います。  私ども原子力基本法を作りましたときに、原子力開発の目的は、まず第一に平和の目的である、かつまた民主的に、自主的にという原則をうたったわけです。この原則は、今日日本の全科学技術振興政策の基本であっていいと私は思います。従って、科学技術振興が民主的にということは、日本の全産業に、その科学技術振興が新しい設備となり、新しい技術となってこれを潤し得るように、自主的にというのは、政府のもろもろの施策によって日本国産的な技術開発の道を進められ得るように、同時にまた、平和の目的ということが大原則だと私は思うのです。  そこで、重ねてお伺いをいたしますが、科学技術庁長官として、日本科学技術振興の基本的な目的は平和の目的に限るのである、こう荒木国務大臣は信念を持ってお答え願えるか、この点を重ねてお伺いをいたします。
  30. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お説の通りに心得ております。ただ、防衛庁が現に存在しております。いろいろ議論もございますけれども、それはあくまでも消極的な防衛的な立場、その防衛的な範囲内においての防衛力を維持する角度からの科学技術というものもそれ自身あろうかとは思いますが、あくまでも、一般的に申し上げて、科学技術振興なるものが平和的な目標に向かって邁進するというお説は、私もその通りに心得ております。
  31. 岡良一

    岡委員 非常に穏健な憲法学者である佐々木惣一博士のごときも、防衛といえども、やはり防衛目的は軍事目的だという規定をしておられるようでございます。従って、私どもは、現実に今人類が当面しておる宇宙科学技術、宇宙大気圏外の平和利用のための科学技術の政策を立てる。ところが、軍事的な目的のためには十七億をこえる国費が投ぜられているのに、平和目的のためにはその五分の一、六分の一にすぎない。これは決して私は正しい日本の宇宙開発方針ではないと思う。この点を私は強く申し上げておきます。  なお、原子力開発利用長期基本計画改定については、明日あらためて原子力委員、特に常勤の方の御出席を願って、これまでの経過を中心に、今度きめようとせられる新しい開発計画の態度について、若干御質疑をいたしたいと思います。本日の私の質問はこの程度で終わります。
  32. 稻葉修

    稻葉委員長 北條秀一君。
  33. 北條秀一

    ○北條委員 ただいま岡委員から、科学技術の質と量の問題についてお話がございましたが、特に質の問題が非常に大事だと思います。そこで、政府は、科学技術者の養成に非常に大きな力をいたすということでございます。もう一つは、池田内閣は、絶えず青年に夢を与えるというようなことを大方針として打ち出しておられますが、これに関連いたしまして、非常に小さな問題でありますが、幸い荒木長官が文部大臣を兼ねておられますので、この際解決していただきたいと思いますことをこれから述べますから、もし、きょうお答え願えればけっこうでありますし、お答え願えなければ、次の機会に御答弁願いたいと思います。  それは、理工科系統の大学の入学の問題でございます。本年の春の各大学の入学試験は、学科試験と体格試験と、この二つが基本になっておりますが、ことに体格の方では、公立保健所の体格検査表を持ってこいということが原則になっております。従って、各青年は、その公立保健所に非常な信頼を持って自分の身体検査をしてもらって、それをパスした上で入学試験を受けておるわけです。ところが、本年の春の東京工業大学の入学試験では、五百六名か七名学科試験に通りまして、そして体格検査、すなわち精密検査をやった結果、六名の青年が不合格になっておるわけであります。こうなると、青年は入学試験のために払った非常に大きな努力、エネルギーといいますか、これをむざむざとむだにするわけです。もう一つは、公立保健所の身体検査ということに対する信頼が全く置けないというようなことになってくると思う。従って、私は、これは何らかの手段でもって是正していかなくてはならぬと考えるのです。ある大学では、一応精密検査の結果不合格になった者は一カ年間入学を延期して、そしてからだを直させて入れるというようなことをやっているところもあるようですが、これから科学技術者の大量養成をしなければならぬ時期でありますから、わずか六名の者でありましても、その中に、質的にいえば、実に惜しむべき青年がおるのじゃないかというふうに私は考えるのです。従って、この点を来年度の入学試験ではぜひ是正をして、夢多き青年の、彼らの情熱を十分に科学技術振興に役立たせるように国家としてはやるべきじゃないか、こういうふうに考えておるのですが、もし荒木大臣の御所見がございましたならば、この際出していただければ非常にありがたいと思います。
  34. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 私は、お話になりました事実そのものすらもむろん存じませんけれどもお話通り、二重手間をとらなければならないということは、どちらかが間違っているということは確かです。そこで、要すれば、そんなことのないように――具体的にどうすればいいかはお答えいたしかねますけれども、だまされたような結果になりませんように処置をいたしたいと思います。もっとも、文部省という立場からは、御承知の通り各国立大学に、そういう具体的なことまでこうしなさいと言う職権と申しますか、立場はございません。だから、そういう例もあったようだが、今後そういうことのないような適当な処置を講じてほしい、時間と労力のむだ、またお話のように、苦心惨たんして勉強して、どうやらパスした、パスしたら、学校の体格検査でおじゃんになったなどということは、その労力と情熱が無視されたような気持を青年に抱かせるので、まことに遺憾千万と思いますから、方法はちょっと申しかねますが、御指摘課題を記憶いたしておきまして、できるだけ善処いたしたいということは申し上げ得ると思います。
  35. 稻葉修

    稻葉委員長 石野久男君。
  36. 石野久男

    ○石野委員 荒木長官に、この際CP5の二号炉の問題についてお尋ねしたいと思います。  長官は、先般東海村に参りまして、このCP5二号炉の問題をずっと見ておいでになったと思います。昨年の九月に炉ができてから、いまだに火が入らない。燃料の問題で行き詰まっておるのだということも事実でありますし、また、当初に計画されたように、それは出力においても予定通りのものが出ないということも事実になっております。長官は、今度初めて長官としての仕事におつきになられて、わが国原子力開発の中できわめて重要な炉の設置とか、開発の問題についてのこういうあり方をどういうふうにごらんになってこられたか、また、こういう問題について、長官としては、今後その炉の注文の仕方とか、あるいはまた、燃料の注文の仕方とか、具体的に今日炉の開発のためにやっていることの中に、いろいろな不始末があったと私たちは思います。このままでは幾ら予算をとっておっても、日本の炉の開発計画通りいかないじゃないかということをわれわれは憂えるわけです。長官が今度ごらんになったときにも、これが当てにならないやつかなというようなことで、燃料を見ながらお話があったということが新聞に書いてありましたが、一つこの際東海村をごらんになった長官の、あの炉に対する所見を聞かせていただきたい。
  37. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 東海村に行きまして、CP5の現場も見たわけですが、しろうと目にはなかなかりっぱだという感想以外に出ませんけれどもお話のごとく、この炉と燃料との相関関係において、予定の出力が出ないであろう、出るであろうということをめぐって批判があることも承知いたしております。その間の事情はもとよりことごとくを知り尽くし得ておりませんので、私自身かれこれ結論的には申し上げかねます。けれども、もし炉の注文、あるいは燃料の注文、燃料と炉の相関関係において考えらるべきことが考えものであったかどうか、その存否も私自身はさだかではございませんけれども、何らかのそういうやむを得ざる過誤があったとしますれば、今後についてそんなことが絶対ないようにという心がけでいくべき他山の石とせねばなるまい。現実にCP5それ自身につきましては、現地に行きまして、あそこの原研の理事長にお目にかかって、その点を私のしろうと考えで質問してみたのですけれども、あの理事長は、相当自信を持っておられるような発言でありました。これは純科学者としての立場における発言かと思って聞いたのですが……。そこで、せっかく教年前から当委員会におきましても御関心を持っていただきつつ、科学技術庁において原研と一緒になって注文をし、現にCP5の炉も完成に近く、燃料も厳選の上、十何本か到着したと聞いておりますが、いろいろ批判をすべき点はあるにしましても、それを今後の建設的なことに役立てていくということも、また今の試験、研究開発段階においては一応御了解いただけるものではなかろうかというふうな気分でおるわけです。御質問にぴたりとお答えするような能力が現在ありませんから、はなはだ恐縮ですが、私のごく乏しい観測と、私だけの常識の範囲を出ないことを申し上げまして、一応お答えにさせていただきます。
  38. 石野久男

    ○石野委員 長官は、まだ自分としてもそれだけの何がないから、この程度でという御答弁でございますが、しかし、先ほど岡委員からも質問がありましたように、わが国科学技術振興という問題については、今日非常に重要な問題がありまするし、政府としても、それに対していろいろな手立てをしなければ、長官の言われるような、固有の日本の新技術というものの開発は容易に達成できないだろうと思います。そういう意味合いからしますると、今日些少であっても予算的処置をしているものについては、できるだけそれがむだのないようにしなければいけないということは、科学技術庁としても、また原子力委員長としましても考慮されなければならないのじゃないかと思います。しかし、この問題につきましては、もう三年越しの問題であるし、それが炉の設計の過程におきましてもいろいろ問題があった、また燃料の問題についても、このような不手ぎわなことになってきておると思います。私は、この際、別に政府を責めたり、あるいはその関係した人々を責めようとはしませんが、この日本原子力開発という問題について、相当熱意を込めて関係各位がこれを審議しておるときに、こういうようなことでは、とてもじゃない、日本原子力開発というものはうまくいかないのじゃないかということをわれわれは考えるわけです。この際、私は、長官に、こういうようなことをたびたびやってもらっては困る、他山の石として、これからいい方向へそれを活用するようにしたいということはおっしゃられましても、そう言っているだけでは、これはうまくいかないだろうと思うのです。現実にこういう問題があるときに、たとえば、金の使い方についても、当初一万キロを予定したものが、かりに五百キロとか二千キロとかいうことになってくれば、その金の値打というものは四分の一とか、あるいは十分の一とかいうことになってきてしまうわけです。こういうむだな使い方はされるべきではないと思います。同時にまた、原子力開発におけるところのスケジュールが大事です。その期限がそのために非常におくれたり、あるいは不可能になったりするということであるならば、これは当局の責任であると思います。私は、この際、大臣が就任当初にこういう問題の技術的な内容がわかる、わからないにかかわらず、政治家としての大臣の立場で、これは考え方をはっきりしていただかないと、当委員会としても、それを大臣の答えとしては受け取りにくいものがあるし、また、今後も大臣が国産技術開発ということを言われても、それはなかなか私たちも受け取れないと思いますので、こういう問題についての大臣の率直な御所見をもう一度お伺いしたいと思います。
  39. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 かりに金額が少でありましょうとも、国民の血税を役立てるという筋合いでございますから、いやしくも過誤のないように、あくまでも効率的に活用するという心がまえでもって関係者がえりを正して臨んでいくことは御指摘通りだと心得ます。  そこで、CP5に関しまして、どこにどういう具体的な過誤があるかいなかということも、むろん究明さるべきでありますが、私は、この関係者が原研であれ、科学技術庁であれ、きわめて真剣に熱意を込めてやりつつ、かりに誤りがあったといたしましても、ちょっと現実問題としてはやむを得ない事由によって、その積み重ねによってそごを来たしたのじゃなかろうか、関係者の一人々々の熱意と今御指摘のような真剣に取っ組めという御警告をいただいたのですけれども、それを完全に念頭に置いて行動したであろうことを信じます。今後に一切の過誤をなからしめる決意を持って、私ども一同善処したいと思います。
  40. 石野久男

    ○石野委員 このCP5の問題につきましては、新聞などではいろいろな報道があって、火がいつ入るということなどについても、あれこれの報道を聞いております。今の進行状態からいきますると、炉はいつからどういう形で動いていくかということについて、一応報告をしてもらいたいと思います。
  41. 杠文吉

    ○杠説明員 具体的な問題ですから、私からお答えいたします。  先ほど大臣がお答えいたしましたように、燃料はすでに大臣が東海村を視察なさいましたおりに到着いたしております。到着いたしました燃料は、注文量の二十二本よりも少ない十九本でございます。三本につきましては問題がございましたので、これを加工を請け負いましたアメリカのMC社におきまして、向こうの費用において作り直しをいたしまして、近く到着することになっております。十九本ございますと、最初の計画の出力には間に合う量でございますので、目下炉の検査を原子力局から出張いたしましてやっております。炉の検査をいたしております。そこで、炉の検査が終わる日程でございますが、近く終わる予定でございまして、それからいろいろの試験等をいたしまして、十月の初めに、先ほど申し上げました到着いたした燃料を装荷する、そうして、それが臨界量に達しますのがおそらくは十月の下旬だと考えられます。そうしますと、臨界量に達しましたら、それから試験研究は始まっていくということでございます。これが目下のところの進行状況でございます。
  42. 石野久男

    ○石野委員 これは十月の下旬になれば臨界に達するということで、それから試験が始まるということですが、この炉の注文をし、あるいは燃料の注文をする当初、AMF社と契約をするときには二号炉――二号炉というのは、大体出力としては一万キロまでは出るのだというような話をしておりましたが、今のところ、炉の試験をして出るであろうと予想される設計上のいろいろな評価というものは、大体どのくらいの出力が出るというふうに考えておられますか。
  43. 杠文吉

    ○杠説明員 ただいまのところでは、現在の燃料ということに限られております。現在の燃料と申しますと、十九本到着いたしておる燃料でございます。その燃料を使いますと、原子力研究所の計算によりますれば三千キロワット出るであろうということでございます。ところが、当初の計画におきましても、第一期におきましては一千キロワット出るという予想のもとに研究計画を立てております。それから第二期の燃料の装荷でございますが、第一期の燃料を取り出して、要するに、第二期の取りかえ燃料時期におきまして、当初の計画は五千キロワット出る、第三期におきまして一万キロワット出るということになっております。しからば、現在の燃料で第一期というのはいつかということでございますと、向こう一カ年一応現在の燃料を燃やしまして、第二期は、その向こう一ヵ年後におきまして第二期の装荷をする。その第二の装荷は、従いまして、先ほど申し上げました二十二本を頼みましたMC社にAMF社が出しました第一期のスペック通りに作らせるかどうかにつきましては確定しておりません。今回はAMF社のスペックによっておりますけれども、次回の第二期以後におきましては、ただいまのところは原研自体がアメリカのコンサルタント等を入れまして指示する、その加工業者は、従ってそのスペックによりまして、おのずから入札とかその他適当な方法によってきまっていくだろうと思います。従いまして、現在の炉そのものが一万キロワット出るか出ないかということは、ただいまも申し上げますように燃料の問題でありまして、AMF社が出しました現在の燃料におきましては、先ほど原研が計算しました出力以上に出すことはいろいろ支障があるであろう、それまでの出力のところで研究を進めたらいいであろうということでございます。
  44. 石野久男

    ○石野委員 現在の燃料というのは二〇%濃縮ウランということでございます。しかも、それが二十二本ということで、先ほど言われた三千キロワットというのは、その二十二本を装荷した場合ということの意味でございますか。
  45. 杠文吉

    ○杠説明員 その通りでございます。
  46. 石野久男

    ○石野委員 一万キロワットに到達させるためには、濃縮ウランの濃縮度というものは二〇%をこえる三〇%、五〇%とかいうふうになってこなければ一万キロワットは出ないという意味でありますか。
  47. 法貴四郎

    法貴説明員 御指摘のように、今使っております燃料は二〇%の濃縮度の燃料を使っておりまして、これは日米原子力協定でもそういうことになっておるわけでございます。御指摘のように、将来その濃縮度を上げ得れば燃料の設計、工作がいろいろ楽になりまして、出力が上げやすいということは確かにございます。しかし、今の燃料でも絶対に一万キロ出せないということも言えないわけでございます。これは今後十分やってみなければいけないということなんでございまして、われわれとしては、まだあきらめておるということではございません。しかし、今後の進め方としましては、これは協定の関係がございますし、相手方もあることでございますので、今後話し合いを進めなければいけないわけでございますが、なるべくならば濃縮度を上げまして、出力を増すことを容易にするということも考えていきたい、そういうふうに考えております。
  48. 石野久男

    ○石野委員 濃縮度を上げるということになりますと、やはり日米の原子力協定の問題が当然またひっかかってくるのではないかと思いますが、その場合には、日米原子力協定に関係のない、ほかから燃料を入れるというような意味ですか。
  49. 杠文吉

    ○杠説明員 ただいま法貴次長からお答え申し上げましたが、直ちに濃縮度を上げなければ一万キロワットが出ないということを申し上げておるのではございませんので、従来の二〇%濃縮度におきましても、加工のいかんによりまして上げ得るのではないかということも言われております。だが、そのことは、この時期におきまして直ちに濃縮度を上げなければ出ないというようなお答えだとすれば、それは訂正させてもらいます。と申しますのは、加工の方法等もいろいろございますので、その加工の方法よろしきを得れば、二〇%においても一万キロワット出すことは容易であるというふうに考えております。
  50. 石野久男

    ○石野委員 大臣が時間を急がれておるようでありますから、今の問題についてまだ質問があるのですが、大臣にあとの問題をちょっとお聞きしたいと思います。  今の燃料の濃縮度の問題は、炉を注文する際の契約のときに、その炉は大体一万キロ出るはずだということになっておるし、また、その炉を使う上において、AMF社がMC社に出したスペックというものも、AMF社というものが責任を持って出したものだとわれわれは思っておるわけです。従って、当然炉は一万キロ出てくるものだと考えておる。そうすると、その炉に契約されました非常に大きな金額に当然これも入るというわけでございます。十三億以上のものが入るわけでございますが、そういうことになりますと、注文しただけのものが出ないということになれば、これはずいぶん損をしたということになるわけです。実を言うと、こういうような問題は、契約の場合に非常に重要であると私は思っております。こういうような問題の処置の仕方についても、これは大臣としても相当考えなければならぬのではないかというふうに私は思います。こういう点について、大臣はどういうふうにお考えになるかということが一点。  それから、これとは別でございますが、東海村を大臣は視察されておわかりになりますように、東海村には今速度の早い建設が行なわれておりまして、あそこには幾つかの炉が集中的に設置されておるわけでございます。こういうことは、実は地元の方としますと、原子力開発のために地元が協力するということにはやぶさかではないので、原子炉を入れる、あるいは原子力研究所なり、原発なりというものを入れることに協力して参ったのでございますけれども、地域といたしますと、あまり炉が集中的にああいうふうに設置されるということについては、災害のための防備ということが非常に心配になってくる面があるわけでございます。こういう点について、原子力委員長としても、また科学技術庁長官としましても、日本における原子力開発の問題として、炉の設置がああいうふうに集中的になることがよろしいかどうかという問題について、私は一つ長官の御意見を聞きたい。  もう一つ、第三点としましては、こういうふうな炉の設置をし、あるいはああいう東海村の開発をいたして参ります上において、新しい施設がどんどんできて参りますと、当然あの地域には新しい研究施設なり、あるいはそれに関連する事業体ができて参りましたときに、地域がそれに追っついていけないという諸般の事情が出て参ります。たとえば、教育の問題にいたしましても、あるいは環境衛生の問題にいたしましても、そういう問題がたくさん出てくるわけでございます。そうなりますと、地域の当局者としましては、追っついていけないという関係から、すべてちぐはぐな関係が出てくる。長官はあそこに行かれまして、あそこの研究に携わっておる人々に、こんなへんぴなところで御苦労さまですということを言われておりますが、そういうへんぴなところを、なるべくその人たちに適応するような環境にしてやらなければならない。そうなりますと、当然やはり政府といたしましても、そういう問題について、もう少しあたたか味のある施策が必要でないかと思います。そういうことから、私は、ああいう地域に対してのいわゆる環境整備という問題で、やはり政府予算的措置なり、あるいは何かの援助措置が講ぜられなくてはいけないと思う。あそこの村長が学校問題等について起債の問題など大臣にお話しされたはずでございます。実を言うと、こういう問題とか、あるいはまた屎尿処理の問題でありますとか、何かといろいろな目に見えない問題で地域の中には非常に大きな問題が出ておるのです。そういう問題について、やはりもう少し政府があたたかい援助を予算的な面とかその他の面でしてやるという用意があるかどうか、この際大臣にお聞きしておきたいと考えます。  もう一つは、炉がたくさん出て参って、特に二号炉などが出て参りますと、原研は、あそこでもし災害でもあったときにということから、防護隊というものを編成しようという計画があります。この防護隊の編成計画について、今原研と組合との間にいろいろと問題がこじれておるわけです。この問題は、結局、何か事故があって放射能が出たり何かする、何か緊急事態が出て、それを処置しなければならないときに、工場なり、研究所なり何なりに、外からそこへ防護するためのいろいろな人員を入れなければならぬということから、班の編成を組もうとしているのが今の原研当局の考え方である。こういうものに対してやはり従業員の諸君が協力しようとしますと、相当決死の態度が必要になって参ります。従って、それについては、やはり労働組合の側から要求されておるいろいろな問題は、これは当然他の災害とは別個な形で考えていかないと解決できないのじゃないかと思うのです。こういう問題に対して、原研の当局は一般の労災規定の問題で処置しようというような考え方であるようでございますけれども、私は、こういう考え方ではとてもあそこの従業員の諸君は納得しないだろうと思いますし、研究に携わっている人たちは、私たちよりもより以上に放射能災害の危険度というものをよく知っているわけでございます。それだけに、これらの人々は原研当局の言っているようなことに納得しないのは当然だと私は思います。こういう問題に対して、科学技術庁長官として、また原子力委員長として、もう少し従業員各位の要求している問題について理解のある態度をとっていただかなければいかぬと思います。また原研に対しても、政府当局からそれだけのあたたかい指示が与えられなければならぬのじゃないかと思いますが、そういう問題について大臣はどういうふうにお考えになっておられるか。  以上、四点の問題について……。
  51. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 第一点は、ただいまの契約の条項に基づいて善処すると申し上げるよりほかになかろうかと思います。誠実にそういう線に沿ってやりたいと思います。  さらに、東海村あたりに続々と炉が集中することのいい、悪いという点ですが、私もちょっとその点はわかりかねますけれども、しかし一面、私なりの常識でお答え申し上げますが、原研にしろ、あるいは原子力発電にしろ、あるいは燃料公社にしろ、こういうふうな類型というか、相互関係に立ちますものがなるべく近接した地域にある、あるいはまた、大学研究をするというふうなことで付属の設備等をすることも考え合わせましても、一応は一つの地域に、ほかの条件が許しますならば集中した方がより効果的であるのじゃなかろうかという気持がいたします。ただし、これはもっと専門的な検討を要しましょうから、検討した上でなければほんとうの結論は出ないかと思いますが、さしずめ私の存じ寄りを申し上げれば、そういうふうに存じます。  なお、第三点としての、ああいう研究施設、特に原子力関係の研究施設はへんぴなところたらざるを得ないわけで東海村にいっているわけだと思うのですけれども研究に従事する、あるいはその協力者としての職員、こういう人たちになるたけコンフォータブルな環境を与え、研究所自体が、眼を窓の外に投げてみればりっぱな景色がそこにあるので、気分もなごみ、疲労をいやすよすがにもなるというがごとき環境を提供するということは当然必要なことだと心得ます。さらに、東海村なら東海村の村という立場からも、いわば村のもともとの住民の立場からいえば、国家的科学技術振興の目的のために新しい施設がそこにできることによって、村が町となり、町が市にならぬとも限りませんが、そういう国家目的上の必要性から、一つの集団生活に余儀ない環境が付加されていく、それに応じまして国の立場から親切なあたたかい気持で諸般の援助を与え、あるいは環境を整備するがごとき立法措置の考案もあるようですけれども、要すれば、そういうところまでも発展して、安心してもらえるように、喜んでもらえるようにという角度からの努力は必要だと存じます。  第四番目に御指摘になりました、働いておる現地の人々は放射能等の非常に危険なものを扱うわけですから、万に一つも事故があってはなりませんけれども、万一の場合を考慮しての防衛体制というか、防災対策というか、そういうことは原研当局その他の現地にあります関係当局はもちろんのこと、職員の意向も十分に考え合わせまして、これまた親切に、徹底的に、厳粛に取り組んで処理すべきことと心得ます。
  52. 石野久男

    ○石野委員 今の御答弁のうち、ああいう施設の集中することは、研究の体制上むしろよろしいのではないかというようなお話でございますが、これは今までの重工業部門あるいは産業施設の部門からいいますと、関連施設が集中することは非常によろしいわけですけれども、また原子力研究の場合でも、関連するものが集まることは、一般的にはそういうことがいえると思います。問題になるのは、結局放射能という災害の問題がここに出てくることだと思います。放射能災害というものを考えますと、かつて私たちが、これは戦争のためではあるけれども、長崎とか、あるいは広島とかいうような、ああいう放射能災害をきびしく受けておるわけでありますから、一たび何かの事故が起きたときを考慮すると、あまり多くのものが一ところに集まると、われわれはそこで大きなものを期待しながら、かえって大きなものを失うという結果にもなってくるので、やはり相当考えるべきだろうと思います。特に、あそこには御承知のようにアメリカの飛行機の演習場があります。前渡飛行場が、原研の所在ということから考えますと、不適当だと思っておるわけです。特に、あそこの投爆演習はたびたび誤爆がありまして、演習地以外にずいぶん落ちておる。あるいは先般は飛行機があの上空を飛ぶとかなんとかで、飛ばないということを約束しておったにもかかわらず、そういうことがたびたび行なわれておるということになると、非常に問題が多うございます。  私は、ここで二つの問題があると思う。一つは、集中化の問題については、放射能災害という問題を考えた場合に、今委員長が言われたような、一がいにただ集中化だけがいいという考え方はちょっと危険だと思います。  第二点としましては、あの前渡飛行場のアメリカ軍の演習は、あの原子力研究所または原子力発電所の所在から考えますと、非常に危険であると思います。前に中曽根長官のときにも、あの演習場は一日も早く返還してもらうということについての努力をすることを強くこの委員会でも言っておりました。荒木委員長も、この際あの前渡飛行場の問題については何か適切な処置をしてもらわなければいかぬと私は思う。こういう点では、あの演習場というものは、日本原子力のメッカとして考えられておる東海村を発展させるためにも、また、その産業としての発展の基地を作るためにも、非常に不適当だと思いますので、これは池田内閣として適当に早急に措置していただくべきものだ、こういうように考えるのですが、それについてはどういうふうにお考えになりますか。
  53. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 集中した方がいいかどうかについては、お断わり申し上げましたように、私の乏しい常識を一応申し上げたので、それも、まあ権威者の御意見を聞かなければわかりませんと申し添えましたごとく、今聞きますると、原子力委員会原子炉安全基準専門部会というものもあるそうですが、そういう権威ある方々の御意見等も承りまして、また、御心配のことも当然のことでございますから、善処いたしたいと存じます。演習場のことは、実はこの間行きまして、あそこの知事さんからも言われたことですし、また、東海村の村民も非常に心配しているということも承っております。もちろん、お話のように善処することを私はお約束を申し上げます。同時に、原子燃料公社の今後の発展がどういうような形をとるかわかりませんけれども、もし、あそこで公社自体がさらに設備を増設するなどということになりますれば、すでに余地がない。従って、あそこの演習場を、そういう意味からでも、返還してもらって、拡張余地をとるという課題もあろうかと思います。いずれにしましても、御指摘のようなことは希望すべき方向でございますから、微力ながら努力したいと思います。
  54. 石野久男

    ○石野委員 あと一点。あの東海村が、先ほど私申しましたように着々と原子力研究中心として発展していきますと、従業員諸君に対して心持のよい環境を作ると同時に、あの地域に先住している方々がそういうような施設に追っつかないいろいろな面が出てくるわけで、新しいものを次から次へと作らなければならなくなってくる。そういう点で、むしろ当局としては、非常に新しい、自分の予想しない問題が次から次と出て参りまして、そういうことでは予算がとても追っつかないという事態が出ているわけです。先般の学校移築の問題についての起債の問題なんかもそれでありますし、特にこれは原子力だけでありません。あそこには最近重工業部門の富士電機、新三菱、住友などたくさん入ってきます。そうしますと、あの辺で出る排水処理の問題は非常に処理の仕方がむずかしいものになってくる。こういうことから、その処理のいかんによっては飲料水が非常にむずかしいものになってくる。原研を建設するときにもおわかりになりますように、あの地域はほとんど砂地でございますから、排水はほとんど地中にそのまま入ってしまうという形になっている。そうしますと、予想以上のことを必要とする。水道など、あの広域な農村地帯みたいなところにどうしても水道を作らなければならぬ、こういう問題も出て参りまして、予算の面では、とても県とか、あるいは村では背負い切れないような問題が出てくる。こういう問題については、一方においては前向きの形で科学技術の前進ということを考えますと同時に、背後の地帯について、もう少し科学技術施策としてそういう処置が予算配分でされないと、とても今後の新しい固有の技術というものを発展させることはできないのじゃないか、こういうように私は思う。そういう点で、この際科学技術庁長官としての荒木大臣に、一つそういう問題についての予算措置をはっきりとしていただくように御答弁をいただきたい、こういうように思いますが、いかがでございますか。
  55. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 御指摘事柄はことごとく同感でございます。ただ、三十六年度予算そのものには、お話のようなことを総合的にぴしゃっとはめ込むという努力は足りておりません。もっと具体的に検討させていただきまして、なるべくすみやかにそういう懸念がないようにという方向に向かって努力をいたします。
  56. 石野久男

    ○石野委員 それでは大臣はけっこうです。  そこで、CP5の問題について先ほどからお話がありますように、所期の予定通りのものが今できないような実情になっているわけですね。ただ、今度は三千キロワットしか出ないだろうと言われる炉というものをこのまま導入していくかという問題も一つありまするし、私たちの聞き及んでいるところでは、ともかくも、試験をしなくてはいかぬし、何とか炉を動かさなければならぬということで、今早急に、入った燃料で火を入れていこうというお考えだそうでございますが、私は、炉を動かすことは別に悪いわけではなし、むしろ、そのこと自体はいいことでございますけれども、どうも予定通りのものができないのに、契約の事後処理というものが十分にいかなくて前へ前へいくということでは、ほんとうの意味の建設といいますか、開発というものができていかない。それはやはり予算の使い方という問題に非常に大きな問題が出てくると思うのです。先ほど荒木大臣は、その問題については契約の内容について処置するほかにない、こういうお話でございましたか、こういう事態が出てくることを予想されて契約はなされておりましたか。アメリカのMC社などとやりました契約の内容についてちょっとお聞かせ願いたい。
  57. 杠文吉

    ○杠説明員 ただいまの御質問にお答えいたしますが、実は御承知かと思いますが、原研がCP5の炉を入れるということを決定いたしましたのは、ひとり原研だけではございませんで、当時は、まだ原子力の黎明期とでも申し上げましょうか、昭和三十一年のことでございまして、閣議におきまして一月に決定をとっております。それは第一に入れるのは、ウオーター・ボイラー一基、これはすでに御承知の通り動いております。次にはCP5を入れるという閣議決定というような、慎重な態度をとっております。これに基づきまして、原研といたしましては、どこの社に発注するかということでアメリカの方に当たりましたところが、アメリカにおいても、当時は四社が応募いたしております。四社それぞれに条件が違っておりまして、非常に慎重に、原研では当時の全知識、全能力をあげまして検討いたしたわけであります。まず第一は、AMF社、ACF社というのがございます。それからNAA、GE、この四社であります。この四社におきまして、AMFは十メガワット出るCP5炉を作る、ACFは五メガワット、NAAは五メガワット、GEは五メガワットということでございました。それから保証関係でございますが、燃料の保証までもしようというのはAMF社、ACF社、それからGE社、この三社でございます。燃料を保証しないというのがNAA社でございます。と申しますのは、先ほど来御説明申し上げましたのでおわかりだと思いますが、燃料は日本政府が契約担当者にならざるを得ない。これは日米協定のしからしめるところであります。しかし、原子炉というものは特殊なものでございますから、燃料と実質的には不可分一体のものとも考えられるわけでございます。そこで、その燃料を保証するということは、いわば日本政府が契約するものに対して保証をしてやるというような形にもなるわけでございます。それから保証をしないというようなことが本来は本筋ではなかろうかと思うわけでございますが、しかし、今申しましたように、炉と不可分一体という関係におきまして、燃料についても保証をするということでございました。しかも、当時納期の保証というものがどうなっておったかと申しますと、AMF社は契約後十八カ月、ACF社は十二カ月、それと船積みの期間をプラス考えておる。NAA社は約二カ年、GE社は約二年半ということでございます。この意味におきましては、AMF社が必ずしも有利とはいえなかろうと思うわけでございますが、しかし、炉の建設のためには建屋等のこと、あるいはそれに付帯するもろもろの設備関係もございますので、その辺の完成時期と歩調が合う必要がございます。その意味からいたしましても、AMF社の十八カ月が一番最適であろうというような判定に立っていたわけでございます。その次には、日本メーカーを参加させるか、させないか、要するに、下請として参加させるか、させないかということにおきまして、AMF社は参加させる。ところが、その他の三社におきましては、日本メーカーは参加させないというようなことでございます。この点は非常にAMF社というものは日本側にとって有利ではないかと思われましたのは、当時、今申しますように黎明期時代において日本側のメーカーが参加するということは、非常に日本原子力工業を進歩させることになるのではないかというような判定がございました。しかも、それでは炉を作った経験等はどうかということになりますと、いずれもがCP5については経験がない、つまり、あげました四社ともにアメリカでは大会社でございますが、その経験がないということでございます。しからば、AMF社はどういうような経験を持っていたかと申しますと、スイミング・プールを作った経験を持っているということがございました。そこで、私の方といたしましては――私の方と申しますのは、原子力研究所並びに当時その指導監督の任に当たっておりました原子力局におきましては、先ほど申しましたもろもろの観点から、AMF社が一番いいのではないか。ただ、保証については、日本流の保証ではない。要するに、契約のときから何ヵ月、今の十八カ月というような保証の仕方は日本流儀の保証の仕方ではないので、日本流儀の保証の仕方、つまり、完工のときから何カ月、炉が完成してから、あるいは引き渡し後といってもいいでしょうが、何カ月というようなきめ方をしたいという交渉をした由でありますが、何しろ、当時は黎明期でございます。それならば、アメリカ流の契約に従ってボーナスを要求するということがあったということでございます。ボーナスと申しますのは、完工の時期を契約面できめておきまして、それよりも実際に早く完成した場合には、その完成に応ずるところの金額を、ある割合できめておきまして、もらいたい。要するに、メーカーの方でいただきたいということでございますが、そういうことは日本の財政会計法上においてはきわめて特例的には認められるといたしましても、一般的には認められないことでございます。従いまして、何度も申し上げますように、当時の状況下におきましては、アメリカ流の契約方式の、契約のときからの保証ということはやむを得ないということに落ちついた事情があるわけでございます。その結果におきまして、今日しからば十メガ出るか出ないかということになって参りますと、すでに契約締結後三十カ月の保証期間、すなわち、それは三十四年五月十四日まででございましたが、その期間はもう過ぎておるということでございまして、その点、われわれも遺憾に思っております。この上は道義的にと申しますか、世界の大きなメーカーの一つであるAMF社の信用にかけても、当初十メガの燃料の保証までいたしますといった点を実効あらしめるようにしてもらいたいということで、原研側において交渉を進めております。しかし、それがなかなか難航しておるということだけは申し上げておくべきだろうと思います。  以上のような状況にございまして、当時の、すなわち、昭和三十一年当時の状況下においてベストは尽くしましたが、今日においては、その契約の面におきましても、先ほど詳しく申し上げましたように、多少遺憾の点があったということは率直におわび申し上げるよりほかないと思うわけでございます。
  58. 石野久男

    ○石野委員 これは今の契約内容から見まして、特に保証期間が昨年の五月十四日で切れてしまっておる。そうして、まだほんとうの意味の納期にもなっていないだろうと思います。そうなりますと、契約は最初からめちゃくちゃだったということになるわけですね。しかも、相当莫大な金がここにつぎ込まれておるということになりましたならば、これは一原研だけの問題でなくして、特に発注する場合には原子力委員会の方も関係し、科学技術庁の方も関係しておるわけでございますから、原研だけの問題としては処理できないものだろうと私は思うのです。今お聞きしました問題についての事後の処置の仕方、それから今日、今、原研が炉をすぐ使うという非常に差し迫った、そういう気持と、契約上出てくるそごというものとは、そう簡単に、まあいいじゃないかということでは済まない問題であると思っております。このことについては、いずれ私はあとでもう少しこまかくその後の折衝の過程から一つ聞かしていただきたいと思いますが、ただ仕方がないでは私は困ると思うのです。ことに、もう炉は原研の方としてはすぐにでも火を入れたいということになっておるのでしょうし、日本の業界とか、あるいは原子力委員会の方としても、そうしたいという気持があるだろうと思います。そうなって参りましたときに、契約事項の問題を全然無視してということは、これはお大尽がやることであって、日本のようにこんな貧乏な国が、そう簡単に次から次へやられてはたまったものではないと思う。もう少し原研が向こうと交渉している事情がわかっておりましたら、ここで聞かしていただくし、わからなければ、この次の機会にでも聞かしていただきたいと思います。
  59. 杠文吉

    ○杠説明員 ただいまの御質問は、今直ちに現在までの交渉内容を――現在というのは、この現在の時点におけるまでの交渉内容を承知しておりませんので、原研の方とも十分に打ち合わせして、明日お答えいたしたいと思います。
  60. 稻葉修

    稻葉委員長 他に御質疑もないようでありますから、質疑はこの程度にとどめ、次会は明九月一日午後一時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後三時五十一分散会