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1960-03-28 第34回国会 参議院 予算委員会第二分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月二十八日(月曜日)    午前十時二十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    主査      佐藤 芳男君    副主査            藤田  進君    委員            大谷藤之助君            杉原 荒太君            苫米地英俊君            湯澤三千男君            小林 孝平君            辻  政信君            岩間 正男君   国務大臣    国 務 大 臣 中曽根康弘君   政府委員    科学技術庁長官    官房長     原田  久君    科学技術庁長官    官房会計課長  杠  文吉君    科学技術庁計画    局長      久田 太郎君    科学技術庁振興    局長      鈴江 康平君    科学技術庁原子    力局長     佐々木義武君   説明員    科学技術庁資源    局長      黒沢 俊一君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十五年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) それでは、ただいまから予算委員会第二分科会を開会いたします。  昭和三十五年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、科学技術庁所管の事項を議題といたします。  まず政府から説明をお願いいたします。
  3. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ただいま議題となっております科学技術庁昭和三十五年度予算案について御説明申し上げます。  科学技術はその影響するところ大きく、一国の政治、経済、外交、文化等、国政の各分野において、きわめて重要な役割を演じているところでありますが、最近における目ざましい技術革新進展に伴い、この傾向はますます強化されつつあります。政府といたしましては、つとにこの点に思いをいたし、科学技術振興策を最重要施策一つとして取り上げ、その振興努力して参ったところでありますが、来たる昭和三十五年度におきましては、次のような諸施策を強力に推進いたしたく、必要な経費を計上した次第であります。  まず、昭和三十五年度一般会計予算案に、歳出予算額百八億六千百八十万五千円、国庫債務負担行為額四十三億九千六百六十四万円を計上いたしました。これを前年度予算歳出予算額九十八億九千二百八十四万五千円、国庫債務負担行為額三十五億六千七百万円に比べますと、歳出予算額九億六千八百九十六万円、国庫債務負担行為額八億二千九百六十四万円の増額となっております。以下、予定経費要求書の順を追って、その大綱を申し述べます。なお便宜上、一般行政費関係につきましては、最後に御説明申し上げることといたします。  まず、科学振興費関係として三億五千百七十万七千円を計上いたしました。その内訳は、次の通りであります。  科学技術者渡航  科学技術振興をはかるためには、研究者養成が不可欠の要素であると考えられますので、各省庁関係研究公務員海外先進諸国派遣して、そのすぐれた技術を習得させることといたしております。このため渡航費として五千三百四十万円を計上いたしました。  発明実施化助成  第三十一回国会におきまして、特許法改正法案を御審議願った際、衆参両院附帯決議をされました御趣旨に沿いまして、特許発明奨励助長には大いに意を用いることといたしまして、明年度はまず優秀な発明考案であるにもかかわらず、経済的理由からその発明実施化することが困難なものに対する、発明実施化試験のための費用を補助して、その実施化をはからせる経費として二千五百四十七万九千円を計上いたしましたほか、新たに、地方における発明に関する諸施設を総合的に運営するいわゆる発明センターを設置したいという要望がありますので、このセンター設立者に対して補助金を交付することといたしました。このため二千八百五十万円を計上いたしました。  科学技術試験研究助成  多数部門の協力を要する試験研究及び各種研究に共通する試験研究を総合的に実施しようとするものに対し、試験研究費を補助し、または研究委託費を交付してその試験研究促進をはかるため三千百三十二万八千円を計上して、水質汚濁防止研究等、本年度より実施しているものの継続研究のほか、大気汚染防止等、新しい問題についても、研究実施させるようにいたしております。  日本科学技術情報センター整備  昭和三十二年八月発足した日本科学技術情報センターは、第一期整備計画として理、工学部門整備をはかって参りましたが、明年度はその業務の一そうの強化充実をはかるとともに、原子力関係の情報の収集及び提供等業務も行なうことにいたしております。このため政府出資金及び補助金を交付することとして、一億一千三百万円を計上いたしました。  宇宙科学技術研究  米、ソ両国中心に最近目ざましい発達を遂げて参りました宇宙科学技術研究は、単に新しい研究というばかりでなく、気象観測通信中継等研究に新たな分野を開拓できる科学技術総合的研究であると考えられますので、明年度は当庁においてもこれが研究開発促進をはかるため、総理府設置法及び科学技術庁設置法所要改正を行なう法案を別途御審議願っておりますが、さしあたり気象観測用ロケット試作研究民間に委託することといたしております。このため三千万円を計上いたしました。なお、このほかに、宇宙科学技術に関する諸問題を審議するための必要な経費一般行政費の中に計上いたしております。  日本科学技術振興財団助成  科学技術振興国民的基盤培養のため、科学技術普及宣伝、啓発の実施及び産学連携強化促進等事業を行なう中枢的機関として、財団法人日本科学技術振興財団が三月十五日発足いたしましたので、この財団の行ないます事業に対して補助金を交付することとして、七千万円を計上いたしました。  次に、特別研究促進調整費として一億円を計上いたしました。これは科学技術会議の答申に基づく特別研究について各省各庁の所管にかかる研究業務の総合的な促進をはかり、かつ、その相互間の調整をはかるための経費で、明年度は、台風防災科学技術宇宙科学技術海洋科学技術等特別研究がこの対象となるものと考えております。  次に、原子力平和利用関係として六十八億二千八百八十九万八千円と国庫債務負担行為額四十二億八千四百八十六万一千円を計上いたしました。その内訳は次の通りであります。  日本原子力研究所  原子炉開発につきましては、第三番目の炉に当たる国産号炉昭和三十五年度中に完成させるとともに、動力試験炉建設を鋭意促進させることといたしております。また、平均質型原子炉につきましても、臨界実験装置を設けて、その研究開発を推進する予定にしております。このほか、原子力基礎研究を初めとする各種試験研究技術者養成訓練等業務を強化して、日本原子力研究所が真にわが国原子力研究中核的機関であるよう、その機能拡充整備をはかることといたしております。このため四十四億円と国庫債務負担行為額三十四億九千百万円を計上いたしました。  原子燃料公社  核原料物質探鉱は、人形峠及びその周辺地区重点を置いて探鉱実施するとともに、新規有望鉱床探鉱にも努力を続けていくことにいたしておりますので、今後の探鉱進展に伴って確定鉱量の一段と増加することを期待しております。またウラン製錬につきましては、前年度に引き続き、東海製錬所におきまして粗製及び精製錬パイロット・プラントによる工業化試験を続行していく考えであります。このため十二億三千万円を計上いたしました。  核燃料物質等購入等  日本原子力研究所を初め民間及び大学等原子炉が漸次完成して参りますので、これに使用する燃料使用量が急増することが予想されます。従いまして、政府が行なうことになっております燃料の賃借または、購入並びに加工契約等に必要な経費として二億六千七百三十万二千円と、別に国庫債務負担行為額七億九千三百八十六万一千円を計上いたしました。  原子力技術者海外派遣 原子力関係技術者海外先進国派遣して、これらの技術者養成訓練を前年度に引き続き行なうこととして、三千二十四万円を計上いたしました。  民間企業等原子力平和利用研究 原子炉及びこれらに関連する機械器具材料等国産化をはかるための試験研究、及び核融合原子力船ウラン濃縮等研究促進させる目的をもって、民間企業等に対し、前年度に引き続き、補助金または、研究委託費を交付するため、三億二千十万円を計上いたしました。  放射性廃棄物処理対策  放射性廃棄物処理を一元的に行なう機関に対する事業費補助金として、三百十四万一千円を計上いたしました。  国立機関等原子力試験研究  関係行政機関等原子力平和利用研究につきましては、固有の研究分野に関連して行なう核融合原子力船研究、並びに放射線及びその利用研究のほか、核原料物質調査等原子力開発利用等に直接関係する研究テーマに対して、それぞれの特色に応じた研究活動を期待することといたしまして、五億一千五百三十三万五千円を計上いたしました。  放射能調査  大気海洋、土壌、上下水、及び食品中に分布されている自然放射能、または人工放射能につきましては、これを定期的、組織的に測定調査して、放射能障害防止対策等資料とする必要がありますので、前年度に引き続き、国立機関及び公立衛生研究所等にその調査実施させることといたしまして、四千八百二十三万円を計上いたしました。  核原料物質探鉱奨励  核原料物質開発を早急に実施できるようにするためには、民間鉱業権者の行なう核原料物質探鉱についても、これを奨励助長する必要がありますので、核原料物質賦存が予想される地域に存在する鉱山を積極的に探鉱させるため、補助金として一千四百五十五万円を計上いたしました。  次に、所管試験研究機関関係として三十二億五千六百八十七万八千円と、別に国庫負担行為額一億一千百七十七万九千円を計上いたしました。その内訳は次の通りであります。  航空技術研究所  昭和三十一年度以降建設を急いでおりました遷音速風洞は、いよいよ本年秋には完成し、直ちに通気試験を行なう予定にいたしておりますが、これにより、わが国航空技術研究は一段と促進されることと期待しております。また、昨年発足いたしました日本輸送機製造株式会社が目下設計中の国産中型輸送機は、昭和三十六年度中に完成する予定となっておりますが、機体関係試験航空技術研究所施設を利用しなければならないので、これらの要求に即応できるよう、機体関係試験研究施設整備明年度中に行なうことといたしております。これらの諸施設整備航空技術関係試験研究とに必要な経費として十九億七十三万八千円と、別に国庫債務負担行為額一億一千百七十万九千円を計上いたしました。  金属材料技術研究所  金属材料試作試験を総合的に行なう諸設備整備重点を置いて整備をはかって参りましたが、金属材料の物理的、化学的各種試験研究用装置がいまだ整備の途中にありますので、引き続きこれらの整備充実に努め、すみやかにわが国唯一金属材料に関する総合的試験研究所としての機能を十分に発揮させたいと考えております。このため、六億五千四百五万円を計上いたしました。  放射線医学総合研究所  昭和三十二年度より千葉市に建設を急いでおりました研究庁舎が昨年完成いたしましたので、関連諸施設整備充実をはかって、放射線による人体の障害並びにその予防の研究、及び放射線医学的利用等試験研究を本格的に開始いたしたいと考えております。また明年度は目下建設中の付属病院の完成をはかって、診断治療等研究実施できるよう所要準備を進めております。このため七億二百九万円を計上いたしました。  理化学研究所  大蔵省所管経費として五億二千万円を政府出資金として計上いたしております。理化学研究所は、民間における唯一総合研究所として、特色ある研究活動を期待するとともに、民間企業では開発の困難な新技術開発する態勢を整えたいと考えております。出資金内訳は次の通りとなっております。一般研究部門に三億九千万円、新技術開発部門に一億三千万円、なお、理化学研究所土地建物が借物であり、かつ狭隘老朽化しておりますので、他に新しい土地を求めて移転計画を立てていますが、そのための移転準備費一般研究部門経費の中に若干計上いたしております。  最後に、一般行政費関係として三億二千四百三十二万二千円を計上いたしました。  一般行政事務処理費科学技術振興のための長期計画策定費内外科学技術調査公表費技術士法施行費原子力関係行政費、及び各種審議会等運営費等のほか、内部部局人件費事務費として、二億七千七百四十三万五千円を計上いたしました。  科学技術会議  科学技術会議運営費として九百四十万九千円を計上いたしました。  原子力委員会  原子力委員会運営費として一千四百六十四万二千円を計上いたしました。  資源総合利用方策等調査  資源調査会中心資源総合利用方策調査及び資源利用に関する各種資料等収集分析等を行なう経費として、二千二百八十三万六千円を計上いたしました。  以上申し述べました経費目的別に大別いたしますと、当庁の昭和三十五年度予算要求額は、一般の部におきましては、大蔵省所管に計上しました分を含めて、歳出予算額三十七億四千九百九十七万一千円、国庫債務負担行為額一億一千百七十万九千円、原子力の部におきましては、関係行政機関より別途行政費として要求いたしております分を除き、歳出予算額七十六億三千百八十三万四千円、国庫債務負担行為額四十二億八千四百八十六万一千円となります。  近時諸外国におきましては、科学技術重要性に対する深識に基づき、その振興のため、異常な努力をしている実情であります。わが国におきましても、このような世界の趨勢にかんがみ、科学技術振興に、官民相提携して全力を傾注しなければならないと確信いたします。かかる時期に際会して、科学技術庁は、職員をあげてその全機能を十二分に発揮すべく、重大な決意を新たにしているところであります。  つきましては、当庁が科学技術振興のため予定いたしております各種施策実施に必要な経費として計上いたしました昭和三十五年度予算案について、何とぞ十分に御審議の上、すみやかに御賛成を賜わりますようお願いいたします。
  4. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) これより質疑に入ります。通告順に従いまして、順次これを許します。
  5. 辻政信

    辻政信君 まあこれを御説明承りまして、中曽根大臣新進気鋭の情熱を傾けて、積極的な予算の取得に努力されて、また大臣中心として皆さんが、おくれた日本技術をいかにして追いつくかということに努力されている跡がよくうかがえる。この点については敬意を表し、期待を持つものでありますが、ただ私が今の御説明を聞いて、まことに残念に思うことが二、三ある。  それは、岸内閣は、科学技術振興策を最高の重要施策としておる。安保条約なんというものは、国民の生活にも大した関係のないもの、ああいうものに血道をあげて一番じみなこの科学技術振興ということに、看板は最重要施策として掲げておきながら、その中身を読んでみると、きわめて貧弱なものという感じを抱かざるを得ない。努力されて、しかもこんな程度なんだ。まあ一つ比較を申しますと、西ドイツにおける一つの例をとってみると、西ドイツにおきましては、放射能の害毒に対して国民を守るという一項目だけに二百億円近いものを投じております。日本の全年予算一つ項目にしぼっておる。この立案をなさるときにドイツであるとか、アメリカであるとか、ソ連において、この科学技術研究に全予算の何%ぐらいを充てておるかということを、資料として御研究になったものはありますか。
  6. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 外国実情調査いたしまして、その数字も心得ておりますが、政府委員より説明させます。
  7. 原田久

    政府委員原田久君) 諸外国研究関係予算がどんなふうになっておるかということにつきまして御説明申し上げます。いろいろな角度から比較することができるわけでございますが、政府予算に対しまする科学技術関係予算各国別に一応申し上げますと、一九五八年でございますが、米国が二十八兆五千億円の予算に対しまして、科学技術研究関係は二兆六千億円ほど邦貨に直しまして投入しております。英国は、総予算が四兆九千億円、これは同じく一九五八年でございますが、科学技術関係は二千六百五十億円。それから西独は、政府予算が三兆四千億円でございますが、その科学技術関係は六百八十億円。ソ連を申し上げますが、ソ連は、政府予算が五十七兆八千億円に対しまして、研究関係は、一九五九年でございますが、二兆六千億円となっております。  次に、他の角度から、民間と国の機関との研究費を全部ひっくるめました全研究費につきましての国際比較を申し上げますと、日本が一九五八年におきまして、七百九十億円の研究費を投入しておりますが、米国は四兆三百億円、ソ連はこれは一九五六年ですが、一兆二千四百四十億円、英国は三千二十億円、西独が千六百三十億円、フランスが二千八百二十億円、こういうことに相なっております。
  8. 辻政信

    辻政信君 そこに皆さんが自覚しておられる通り岸内閣の一枚看板として積極的な、国民を幸福にする内容を持ったものはこれだけなんです。それがいかに貧弱な予算であるか。もちろんこれは皆さんを責めるわけじゃない。内閣全体の責任として、もう少し画期的な、積極的にその認識を深めさして、つまらぬ問題に税金を使うよりも、こういうところにぶち込め。ロッキードを作るのに七百億円、その地上設備費を入れて大体一千億円、しかも、五年たったときには、何の役にも立たない古ぼけたものになる。それをやるならば、なぜミサイルの研究をやらぬか、あるいは放射能防衛対策をやらぬかということを、私は数年前から声をからしておるが、耳を傾けようとしない。その点について、きわめてこの予算不満があります。不満がありますが、今さら組みかえせと言ったってできる道理がないから、以下、逐次内容につきまして、私の気がついたところをお尋ねしたいと思います。  それは、三ページのところで「科学振興費関係」として三億五千百七十万七千円、そうしてその内訳を見ますと、「科学技術者渡り航」というところに、ちょっぴり五千三百四十万円計上されておる。そしてその内容は、「各省庁関係研究公務員海外先進諸国派遣して」と、こうなっておる役人だけを半年や一年、名目をつけて海外へやろうとされるが、私はこういうものこそ、特定の人間——役人であろうが、学者であろうが、無名の人であろうが、それを引き出して、それに三年でも五年でも一つの仕事にかみつかすような、ほんとうのものをやってもらいたい。役人出張旅費に流れるんじゃないかというようなことでは、ほんとう研究はできないと思うが、内訳は一体どうなっておるか。どういう目的で、どのくらいの期間、どのくらい派遣されておりますか。この積算の基礎はどうなっておるか。
  9. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) この予算は、各省国立研究機関研究者のみを対象にしておるわけでございます。それで、なおこのほかに、たとえば、学術会議の方からは、国際学術会議に対しましての学者派遣という予算がおよそ一億以上あると思います。それから、日本学術会議はそれほどございません、やはりこの程度予算でございます。それから大学研究者につきましては、文部省の方から約一億数千万円を、もちまして渡般さしております。科学技術庁の担当しておりますのは、今申し上げましたように、国立研究機関研究者派遣でございます。内容といたしましては、大体短期長期、それから外国スカラシップをもらいまして、渡航費のみを支給するというようなカテゴリーに分けて支出しておるわけでございます。長期と申しますのは大体一カ年でございますが、年令は大体四十歳以下の中堅の研究者を選抜いたしまして、各外国研究所に、あるいは大学派遣をして勉強させるというのが第一項でございますが、これが大体二十五名程度出し得る見込みでございます。それから三ヵ月の短期出張でございますが、これは大体研究所の部長あるいは所長クラスの方に海外研究状況を見てもらうということで、これは大体五名程度出張者予定しております。そのほかに、国立研究機関の場合もありますが、また相当多いのでございますが、これは大体国連におきまして、向こうの滞在費並びに片道旅費を持ちまして、あと片道旅費だけ政府から支弁すれば行けるという制度がございます。これは大体四、五十名の人が行っております。そのほか、各国政府あるいは各国大学等におきましてスカラシップを出すという制度もございます。それに対しまして旅費をこちらからやればよろしいという点がございますので、そういうことによりまして行く方々が大体二十名程度、その程度の方方が行けるわけでございます。これは官庁研究者だけの問題でございますが、あと私費留学生民間方々につきましては、それぞれの所属の会社からも支給されますし、あるいは自己支弁で行かれる方もございますが、これにつきましては外貨特別割当をいたしておりまするので、外貨は買えるわけでございますので、相当多数の人が出ておるわけでございます。
  10. 辻政信

    辻政信君 私は今の説明を聞いてびっくりしたんですが、長期といわれるから、少なくも三年くらいかと思ったら、長期が一年間、短期が三カ月、これはまるで代議士の恩典旅行みたいなものですね。内容的には何もない。しかもその予算がれいれいしく書いてある。五千三百四十万円というのは、岸総理が四回外国を回った。岸総理外国を回った漫遊費だけで一億、勲章を持って回ったのが一億円、まじめな学生や学者がこの大きな問題に取っ組むのに半分しかない。そこに岸内閣科学に対する認識不足をこの予算は暴露している。よそへ行って説明するのに恥ずかしい。こんなことを選挙に行って演説したら台なしです。岸さんの四回よりも、全国の学者旅費が半分しかないということは、これは世界のもの笑いです。  その次は、発明実施化助成、これは着想としてはいいが、私はこれを読んでみてしみじみ思うのは、民間発明意欲を押えているガンはどこにあるとお考えになりますか。
  11. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いろいろございますが、一つ特許法関係というのがあります。それから特許の審査というものが非常におくれておって、平均二年くらいかかる。これが一番大きなガンだろうと思います。
  12. 辻政信

    辻政信君 名答です。その通りなんです。これは私も、たくさん苦情を申し込まれておる。ちょっとしたことをこつこつ勉強して、特許をとろうと思って命がけになっていると、二年かかるんです。そうして、その窓口の連中が、ちょっとおつかいものをしなければ、促進してくれない、ただでは、理屈では……。おつかいものをすると、少し早く通る。そうして二年間かかっておる。あなた方が首をひねるなら出しますよ、個人の名前が出るから控えておるが。二年たつうちには、創意がもはや古くなってしまう。魚だって、二年たったものを刺身にできぬでしょう。こういう科学技術鮮度がよくなければならない。実験に対して間髪を入れずやるというだけの鮮度をもってやらなければ、うまくいかない。そういう意味で、苦労した発明が、二年間あの特許庁の倉庫の中にうずたかく積もっているうちに、担当官が親しい会社にちょっと耳打ちする、こういう出願が出ているから、お前も負けずにやれと漏らしたりする。そういう式にやるものだから、有能な民間発明家というものは、大企業にどんどんとられる。仕方なしに特許に持っていかずに、大きなメ—カ—に売り込んで、五万、十万もらうのに頭を下げなければならぬ。それによって発明者がわずかの反対給付を受けなければならない。それが制度の欠陥ですよ。いわゆる特許庁の役人の怠慢です。そこに政府が目を光らさぬから何にもならない。二年たって冷蔵庫から出した魚を刺身にしたって食えたものじゃない。生きのいい魚をほんとうに食わすには、特許事務というものを、これは岸内閣ほんとうのまじめな気持で直してやらぬとだめなんです。少し毒舌を吐くようですが、これはほんとうのことを言っているんです。  それからもう一つ、仕事をおやりになるのはいいけれども、気象観測用ロヶツトの試作研究に三千万円をもって民間に委託するということが八ページに出ているのですが、大学研究室へ行ってみると、驚くべき貧弱なものです。校舎は、中学、高等学校は代議士の選挙に関係があるから、みな鉄筋コンクリートを建てる。しかしその研究室へ行ってごらんなさい。一体何があるのか。校舎だけは鉄筋で補助金を取るのに夢中になっているが、基礎科学ができなくちゃ高度の科学ができる道理がない。これはあなた方の分野じゃないかもしれないけれども、ほんとう日本科学振興しようと思えば、小学校の教室から、中学校の実験室から、高等学校、大学実験室に国の予算重点を向けろと言うんです。基礎のない科学なんというのは、まねごとにすぎない。ほんとうにやろうと思ったら基礎科学です。国民科学教育から出発をしなければならぬ。そういうことについて、文部省と関連を持っておられるのか。
  13. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 文部省ともいろいろ連絡してやっておりまして基礎科学としては、教官研究費——大学の教官が自分の専門事項をこつこつ研究する経費として、今年度五十億出しましたが、明年度は十億ばかり増額計上いたしました。これでふえた分は、純粋に研究費に回りますから、かなり潤うだろうと思います。  それからもう一つは、科学研究費というのがございまして、これは学術会議の専門委員会が文部省と連絡して、優秀な研究を募集してその中から割り当てておるのですが、これも昨年に比べて四億近く増しました。しかし、それでもまだ九牛の一毛でございまして、私考えますのに、科学技術の仕事をしばらくやりましたけれども、やはり日本の行政機構の屋体骨から変えないというと、ちょっとだめじゃないかという気がいたしまして、そういう一つ考え方を科学技術庁審議会に、今どういうふうに変えたらいいか、鋭意研究さしております。  それから、今経済企画庁の作業に関連しまして、十年後を目標にする日本経済政策というのをやっておりますが、その中心科学技術にあるわけでございます。そこで、その十年後、所得倍増を期するためには、どういう技術の革新をやっていかなくちゃならないか、それにはどの程度大学の理工科部門を拡充し、どの程度の生徒と先生を養成していかなければならないか。それにはどの程度に高等学校や中学校の理工科部門を充実していかなければいかぬか、そういう基礎的な研究をやらしておりまして、秋ぐらいまでにはできますから、それをぜひ実現していくように努力いたしたいと思います。
  14. 辻政信

    辻政信君 その次は、十九ページを見て下さい。十九ページの航空技術研究所というところで、遷音速風洞をお作りになるのはいいことですが、日本で、ことにエンジンがよくできないのは、三菱とか川崎、そういう会社が自分の資本でちっぽけな風洞を作っておる。そうして、ほかの会社に利用できないように、小さな規模でこそこそやっているところにある。これでは世界的な研究はとてもできない。小さな民間資本では……。これをねらったのだろうと思うのですが、このねらいは、少くとも航空技術関係あるすべてのメーカーが国で作ったものを利用できるようにということを考えられて、思い切ったものをお作りになったらどうか、その点を一つ
  15. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この遷音速風洞は、防衛庁とも協力しまして、また民間会社等も試験できるように、そういう考慮のもとに、総合的に実はやっておるわけです。各省関係が利用できるものを科学技術庁が扱っておる、そういう考え方でやっておりますが、この遷音速風洞では、一つはジェット機や右翼プロペラの両方をやるつもりですが、これから大事なのはロケットなんです。それでロケットの方にもこれが適用できるように、今改装をさせておりまして、主としてこの次はロヶツトになるに思いますから、そちらの方に重点を置いております。
  16. 辻政信

    辻政信君 それにしては、こんな貧弱な予算でできますか。
  17. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 年次計画でずっとやっておりまして、これは大体ことし中に完成することになっております。たしか三カ年計画か五カ年……。
  18. 辻政信

    辻政信君 そうしますと、ことし中にこの研究所ができると、大体国際水準に近いというところまで持っていけますか。
  19. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国際水準には超音速風洞を作らなければいけない。そこで、これをやる研究を進めましたら、超音速風洞の方にかからなければならないと思います。
  20. 辻政信

    辻政信君 ほんの芽ばえですね。
  21. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そうです。
  22. 辻政信

    辻政信君 その次、二十二ページですが、放射線医学総合研究所、これに七億三百九万円をとられておる。これはきっと中曽根さんにどこかでお目にかけたことがある。これを御存じですか。
  23. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 知らないです。
  24. 辻政信

    辻政信君 それじゃ見て下さい。これをあなた方知らなければ困ったものですね。
  25. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) マイクロですか——フィルム・バッジですね。そ回は拝見しました。
  26. 辻政信

    辻政信君 西ドイツで使っておるのです。空中の放射能をそれで検定する。これはアデナウワー首相が来ておりますから、会って聞いてごらんなさい。これは、国が国費で作って、四千万の西ドイツ国民全員に配っております。これにフィルムが入っておりまして、空中の放射能が鋭敏にこれに感ずる。それを現像すると、何カウントの被害を受けているということが立ちどころにわかる。それによってこれは致死量だ、これは治療すればなおる、これは何パーセント入っておる、これは無害だということが判定される。そうしてその判定に応じて、放射能から全国民を救うような医療、退避を計画し、広い意味における民防衛ということに年々二百億をこえる予算を投入しております。ちょうどアデナウァー首相が来ておりますから、直接お会いになってお聞きになったらいい。  そこで、私が言うのは、これは日本で千葉でおやりになるのもいいけれども、これも芽を出した程度であって、これではとても追いつかないから、アデナウァーさんが来ておられる機会に、進歩した西ドイツ放射能医療対策、こういうものは秘密で、各国ともなかなか公開しないから、これこそ政治力を利用せぬと、単なる公務員が出張したって、においもかげない。どうか中曽根長官は、岸総理を動かし、藤山さんを動かして、いいチャンスですから、同じ境遇にあるドイツに対して、放射能の被害から生きたものをどう守るかという道義的な研究に関するドイツの国家機密を一つ許してくれぬか、こういう話し合いをされて、真剣に取っ組む学者を少なくとも数名、即時出してもらえぬだろうか。昨年六月の臨時国会で岸総理にこれを見せて、あなたは防衛ということを言うが、近代防衛というものは、戦車や大砲に対して守るのじゃない、空中の放射能に対して九千万の国民をどう守るかということが防衛なんだ。それに対して関心を持っておるのか、全然関心がない。やはり前大戦当時の国防観念から一歩も出ておらぬ。これでは国民が安心しているわけにいきませんから、ここに書いてあるのは、これは千葉を中心とした医者の研究でありますが、国としてもやらなければならない。西ドイツにおきましては、この研究をどういうふうにやっておるかというと、赤十字社を中心にしております。そして学校の先生、民間技術者、お医者さんというものを総動員しております。ことしでたしか四年目くらいです。この研究皆さんが今千葉で七億の予算でおやりになるということは着想としては悪くないが、とても追っつけるものじゃございませんから、ドイツにほんとうに友好の精神があるなら、これは戦争の秘密じゃないのですから、平和の学術の秘密ですから、このチャンスにぜひそのおみやげだけはお取りになるように、貿易のことだけを夢中になっておるが、もっと大きな問題を忘れておる、総理大臣以下。それは一つ中曽根さんから滞在中にぜひ取りつけてもらいたいですな。私が言ったってとても聞いてくれない、無所属の陣笠じゃ。これこそ外務大臣を動かし、中曽根君自身が取っ組んで下さいよ。
  27. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 承知しました。
  28. 辻政信

    辻政信君 お願いしておきますよ。決してあなたのあげ足をとるわけじゃない。今までの科学技術庁予算から見ると、確かにこれは中曽根新大臣が馬力をかけられただけの功績は認めます。しかし現在の世界科学の進歩に比較するというと、あまりに恥ずかしいものです、そのパーセントといい、その内容といいですね。これで一枚看板科学振興ができるなんて思ったらこれは笑われます。着想としてはいいが、そういう意味でじみな仕事で派手じゃないが、どうか一つむだな金をここへ突っ込んでもらうように、元手をかけぬところに芽が出る道理がありませんから、科学技術庁は思いを新たにして、民族の運命を皆さんの時代に築くのだというつもりで今後とも努力していただきますように要望しまして、私の質問を終わります。
  29. 岩間正男

    ○岩間正男君 ただいまの辻委員の質問の中にもあったのですが、科学技術の向上ということを問題にしておるが、全般的な日本の学術の体制ですね、これが基礎になる、これは当然だと思うのですが、こういう点で今の学校教育の基礎ですね、こういうものについてどういうふうに考えられるか、先ほどちょっと伺いましたが、もっとくわしくお聞きしたい。  小学校から、高校、さらに大学までの現在の組織のやり方です。たとえば一学級が六十人近い、そこで研究をやるといっても、これはできないじゃないか、そういう体制である。先ほどの話では、教官の研究費を増額する話があるけれども、教官の研究費の増額、これもないよりはいいでしょう。しかしこういうような体制でほんとうにこれは科学技術を培養することができるか、どう考えていますか、その点。
  30. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 当面の対策と、それから恒久的な対策と二つあると思いますが、当面の対策で、私がやってみて一番大事だと思いましたのは、一つはやっぱり科学技術に非常に理解のある大蔵大臣が出るというか、予算を握られているということから見て、(「今のはだめだ、あれはもうけ仕事でなければ出さない」と呼ぶ者あり)政党自体もそういう認識を、全部の政党あるいは政治家というものが科学技術というものを非常に重要視する、そういうことがやはり大事だと思います。その点では私らの力は足りませんので、まだこんな貧弱な予算であることは遺憾であります。  もう一つ大事なことは、研究のリーダーが出ることだ、仁科さんという人が出たためにあの門下から非常にりっぱな人が出てきた、やっぱり全部を見渡している研究のリーダーが出て、お前はここまで突っ込め、お前はこっちに回った方がいい、こっちを考えてみたらどうかと、そういうふうに指導してやる人が非常に重要です。そういう人が戦後の日本に少ないのです。この二つが端的に申し上げて私は大事なことだと思います。  恒久的な対策ということを考えますと、埋もれている科学技術の能力のある者を科学技術の方にどんどん引っぱっていく、そして国民層を深く培養するということが非常に大事だと思います。それはどういうことかというと、結局、端的な話ですが、科学技術に行けば立身出世もできるとか、世の中に貢献できるとか、そういうふうに、昔は東郷元帥になろうとか、乃木大将になろうという気持を、今度は湯川さんになろうという、そういうふうに子供の心に芽ばえさせることが非常に大事だと思います。そういう点からすると、科学技術者をもっと社会的に優遇するとか、研究公務員の待遇をもっと改善するとか、そういうことが非常に大事だと思います。そういうことをやると同時に、子供のころからの理科教育というものを充実させまして、子供心にもものに疑問を抱く精神、それからこつこつ食いついてそれを解決してみるという精神、そういうものを作り上げるということが大事なように思うのです。そういう点からしますと、今の日本の教育の体系というものが、ややもすれば明治以来の儒教的な教育の流れできておるのですから、足りないところが非常にあるように思います。そういう点は逐次改革していきたいと思っております。
  31. 辻政信

    辻政信君 ちょっと関連して。今岩間君の質問に関連して、ちょっとさっき質問するのを忘れておったから質問しますが、そこに並んでおられる科学技術庁政府職員の中で、技術出身の方は手をあげて下さい。……全部そうですか。
  32. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 科学技術庁は非常に優遇しておる。
  33. 辻政信

    辻政信君 そこで、その月給が、あなた方と一緒に大学を卒業した行政事務官と比べてどうなっておりますか、率直に言いなさい。
  34. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 率直に言っていいです、実情だから。(「遠慮することない」と呼ぶ者あり)
  35. 原田久

    政府委員原田久君) 私の立場は特別なあれでございますから例外かと思いますが、一般に申しまして、技術畑の行政官と事務畑の行政官とは、大体比較しましてもかなり開きがあるようでございます。
  36. 辻政信

    辻政信君 非常に低い。
  37. 原田久

    政府委員原田久君) 非常にとは言えるかどうかしりませんが、かなりあるように思います。
  38. 辻政信

    辻政信君 これですよ。人事院総裁から総理大臣を引っぱり出してたたかないかね。だから優秀な者は行かない、技術畑に。文一に行って口が達者になって、そして行政事務をやると、どんどん抜擢されて局長になり次官になり大臣になる。そして技術を出た人はせいぜい下積みになって会社の工場長くらいで首になる、ほんとうに。糸川教授は会ったことありませんが、おそらく糸川教授の月給なんというものは、その辺の三流会社の専務の半分もないだろうと思います。そして科学を興せ興せといっても、人間は生きておるのですから、自分の努力に報われる報酬がなければだれが一体そこに行くか、それをようく考えて、これは技術庁だけではできないから、中曽根さんが閣僚の一人として、今の間違った給与制度を根本的に改める、そこに一肌抜いでもらいたいと思う。
  39. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 全く同感です。
  40. 辻政信

    辻政信君 八百長質問じゃない、決して。
  41. 岩間正男

    ○岩間正男君 小さいときから科学心を起こさなければならぬという話ですが、学校教育について聞きたいのです。今の施設あるいは今の組織のやり方で、一体これで科学技術を向上させることができますか。たとえば理科室一つ見ても、高校に行っても大学に行ってもこれは大へんだと思うのです。ことに戦後の姿をわれわれはずっと見てきたんだが、これはほんとうに十分に、試験管やフラスコさえこれは供給をできないような態勢にあるのです。それから研究室というのは全く荒廃しております。水道もろくに出ない、これは昔相当名を鳴らした官立の大学でそういう実情です。そういうことを知っているかどうか。それで教官の研究費もいいけれども、一体どこに科学技術を向上させる基盤を作るか、この点が非常に問題だと思うのです。この問題と、それから今従ってこういう足りないところを民間施設に期待しているという方向をとっておられるけれども、一体科学技術の向上、こういうような政策の面に学校とそれから民間とどこにウエートを置くのか、こういう点で基本的に一体科学技術の発展のためにどこに重点を置くのか、こういう点をお伺いしたい。
  42. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 科学技術のやはり基本政策は学校にあると思うのです。学校も理工科系の学校教育というものを中心にして考えてやらなければならないと思います。そこで、一番の今の隘路は先生がいないことなのです。理科の教室を拡充しましても、酸素を作った経験のない先生ばかりです。それから大学にいたしましても、近ごろは会社の方が景気がよくて給料が高いものですから、いい大学院の学生はみんな日立とか東芝へ行ってしまう。官庁研究所はもっと悲惨でありまして、大学には多少の自由がある。官庁研究所は給与も社会的地位もない、従ってことしあたりは旧帝大の卒業生はほとんど参りません。しかし電気試験所とか、あるいは原子力研究所とか相当設備のいいところがあるので、これが日本研究を今まで引っぱってきたわけです。そこに非常に大きな断層ができるということになる。そこで、今辻委員のおっしゃいました給与とかあるいは身分、待遇の問題というのは一番根本的に差し迫った問題になりつつありまして、そういう研究所、及び教師というものの充実ということが大事なことであるように思います。
  43. 岩間正男

    ○岩間正男君 現状から考えますと、大体小学校で今非常に大きな問題になっているすし詰め学級の問題、一教室五十八人というのが現状です。中学校も大体同じだ。こういう形で科学技術振興するなんというのは、この点についてはどう考えておられますか。
  44. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今御質問の趣旨がはっきり受け取れなかったのですが。
  45. 岩間正男

    ○岩間正男君 つまり、一学級に六十人の子供を入れて、いわば大量生産的な教育ですね、一人々々が実験をやろうといってもそういうことはできませんよ。こういうのが日本の教育の根底に横たわっているのです。その上に積み重ねているわけだ。中学、高校、大学とこういう体制で、ほんとうにこれは科学技術を推進させるということは可能だと考えておられるかどうか。
  46. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 理想を申せば切りはありませんが、少なくとも最低限われわれが戦争前の中学校で実験した程度のものはやらせなきゃいかぬ。そこまで今いっていないように思います。従いまして、この点は速急に打開する必要があるように思っております。
  47. 岩間正男

    ○岩間正男君 本会議と並行してやりますか。
  48. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) 並行してやります。
  49. 岩間正男

    ○岩間正男君 それではお伺いしますが、中学校程度で中曽根さんの時代にやられた程度のものに引き上げてやらなければならないというお話ですけれども、とても今の要求から見れば、もう時代から隔絶しているじゃないか。ところが日本の現状はそれ以下だ。私はそれと関連してお聞きしたいと思います。  大体、ソビエトの科学とそれから自由主義陣営といわれる国を代表するアメリカの科学というのは年々大きく開いてきている。はさみのように大きく開いている。その根源はどこにあると長官は考えているのか。
  50. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私はやはりアメリカやソ連がずっと抜きん出て、イギリスとかフランスとか日本とかイタリーというようなヨーロッパ系統の法制をとっている国がおくれているというのは、やはりある程度政治の基本的な構造にあるように実は思うのです。アメリカあたりはああいうふうに大統領が思い切ったことを国民の支持を求めてやります。ある程度任期が安定してアイゼンハワー大統領も八年やる。そうすれば経済計画も三年計画なら三回やれる、それを継続して。しかも最近の研究というものは、たとえば空の問題でも、サルの心電図から電子流体力学とかプラズマの研究を一緒に総合してやらなくちゃならぬということですから、結局国が中心になって大資本を使って、そうして学者を全部総動員してやるといった国が伸びているのです。それをやっているのがアメリカとソ連です。ところがイギリス、日本、イタリー、フランスというのは、従来のヨーロッパ系統の体制をとっている国は思い切ってそれをやれない体制にある。こういうな根本的な国の構造自体の問題もあるだろうと私は思っております。
  51. 岩間正男

    ○岩間正男君 私のお聞きしておるのは、ソビエトとアメリカの科学程度が非常に開いてきておる、これは認められると思うのです。認められますな。
  52. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ええ。
  53. 岩間正男

    ○岩間正男君 その認められる、はさみ状にどんどん開いてきておる根源はどこにあるか、それを聞いておる。あなたの今の御答弁では、ソビエトとそれからアメリカは抜き出ていて、フランス、イタリー、イギリスその他こういう国は非常におくれておるという点について御説明があったんでありますが、そうじゃなく、私のお聞きしておるのは、これはソビエトとそれからアメリカの開きが年々大きくなってきておる根源はどこにあるか、これを聞いておる。
  54. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ソビエトとアメリカがそんなに開いておるとは私は思わないのです。それは月とか人工衛星の部分ではソビエトのすぐれたものもあります。しかし全部の潜在力と総合的な顕在力を見ますというと、やはりアメリカの方がはるかにすぐれておるように私は思います。しかしソビエトはああいう国ですから、非常に技術者の大量増員、あるいは技術者の優遇ということで思い切ってやっておるようです。従ってこれがだんだん花が開いてくるようになるというとどうなるかわかりませんが、現在のところでは、一部分ではソビエトはなるほどはなやかに引き離しておるように見えるところもありますが、全部の総合的な力を見ますというと、必ずしもそうとは断定できないと思います。
  55. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあこれは議論にわたりますから、ここで議論しようとは思いません。しかしもう世界周知のことですね、具体的に世界の人々の前に示された事実です。そうしてその開きは年々大きくなっておることはいろいろな最近の現象なんかでも明らかです。この点を今のような御説明で、現実に、客観的な事実の上に立ってこれを追究するという努力がないので、今のような説明に立っておるというと、私は大へんなことになるのじゃないかと思うのです。この点もう少し研究をされる必要があると思う。私の見るところでは、全くこれはもう国民的な規模で下からの基盤ができていて、たくさんの研究者を持っておる。三百万、四百万の科学研究者を持っておる。その上に立って、そうして段階に応じてほんとう技術が大衆的なものになって、そこから大きな成果が出ておるという点が一つ。その点を作り上げた長い間の教育、それから科学的ないろいろな政策によってこれを作り上げた努力、これを見なければならない。さらにもう一つ、その根源の中には大体社会主義というものは非常に科学的なもで、科学的な基礎の上に立っておるのですから、科学というものに非常に大きな関心を持っておる、そういう点があるように私は思う。(「共産主義の宣伝なんかやめ給え」と呼ぶ者あり)宣伝じゃない。今の長官の考え方を聞いて、そこが非常に私は重要だから、それについての意見を述べておるだけです。しかし、これはまあ意見にわたりますからやめますけれども、この点についてもっと客観的な事実を私は調べる必要がある。アメリカの研究者、たとえば研究所はどのくらいありますか。
  56. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど申し上げましたように、ものによって優劣はあると思うのです。それでたとえばソ連あたりではロヶツトの燃料とかあるいは誘導装置とか、こういう点はやはり非常に発達しておるだろうと思います。しかし工作機械とか、あるいは繊維とか、あるいはその他の科学、そういう面については必ずしも発達しておるとは思わない。私はソビエトへ参りまして、ソビエトスカヤ・ホテルというホテルへ泊まりましたが、電気をつけるのにスイッチをこうやると、ぽろっとみんなこわれてしまう。あれを見て、これは非常に発達にへんぱなものがあるのだということがわかります。それから工場もずいぶん見ましたけれども、工場の工作機械はアメリカやドイツのものがかなり私が行ったときにはありました。そういう面からして、非常に発達しておるところと発達してないところがあると思うのです。それはああいう国ですから、国家が目的研究をやらせる。これをやれといった場合には金とあらゆるものを投入するが、全般的に基盤ができ上がって発達しておるかというと必ずしもそうではない。そういう国情の差異があるのではないかと思います。
  57. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) 岩間君に申し上げますが、本会議は始まっておりますが、並行審議の許可をとっております。ただし、中曽根長官が法案説明で本会議に出られる予定は今後大体一時間ぐらいのちと考えておるのであります。従いまして、御所見の違うところは、これはもうやむを得ないことでありますから、純然たる質疑を行なっていただきたいと思います。
  58. 岩間正男

    ○岩間正男君 それでは、ちょっと意見を述べただけですから、これはやめます。  次に伺いたいのですが、科学研究科学研究と言うのですが、今年度予算を見ますと、なるほど原子力研究とか、それから軍事科学、そういうものに関連したところの研究費は非常にふえていると思うのですね。原子力予算は総額どれくらいですか。
  59. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国全体の原子力関係で言いますと、七十七億二千六百万程度です。
  60. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は、これに比べて、たとえば文部省の全科学研究振興費というものを見ますと、これは三十一億なんですね。そうすると、原子力研究予算というのは二倍以上になっているわけです。それから、その中でさらにもっとこまかに見ていきますと、気象庁関係あるいは国民の生活に非常に必要な衛生関係、たとえば伝染病研究費、こういうところの予算、こういうものを見ますと、これは問題にならないと思うのですね、相対的な問題として、非常に問題にならない。こういうことは科学技術庁長官として等閑に付すことはできないと思うのです。つまり、科学技術の平和的なしかも民生安定の面における研究というものが非常に私は重要だと思うのです。そういう点でお聞きしたいのですが、この気象庁の予算はどうなっておりますか。
  61. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大体、気象庁は研究費として一億四千万程度です。
  62. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは非常に少ないじゃないですか。
  63. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 気象庁の方の予算は、われわれ大いにバツク・アップして、この間の台風の経験にかんがみまして、非常に充実させようといたしました。ところが気象庁の方では研究者の定員が非常に少ない。そこで定員を増さないというと実際は予算も取れない。定員を増すことは非常に努力いたしましたが、今度はそうあまり著しく定員を増さないということで、気象庁の方も割合にじみな予算要求した。あれはどういうものですか、気象庁長官以下、技術者というのは、今まで日本の行政機構でならされたというか、何か小さくなってしまいまして、この程度でたくさんだ、たくさんだと実は言っているのです。それを私が輪をかけまして、そんなことでどうするか、どうするかということで、ずいぶんふくらまして要求さしたのです。
  64. 岩間正男

    ○岩間正男君 われわれも聞いておりますがね。ことに労働者の立場からこれに対する要求はいろいろ聞いているのだけれども、そんなことはないと思うのだけれどもね。あなたたちは長官とかそういうところだけしか聞いていないから実情がわからないのじゃないですか。そうじゃないと思うのです。大体、今の施設、それからいろいろな設備、こういうものを見ても全くこれは立ちおくれですよ。私はこれは国民経済から考えても大へんだと思うのです。伊勢湾台風一つあれに見舞われるというと約一兆の損害です。ばく大なものです。それを全部気象庁によってまかなうということはむろんできません。しかし、これを予知し、さらにこれを未然に防ぐための努力をすれば、ずいぶんこれは違ってくるのです。損害を半分にこれは食いとめることができるかもしれない。それにしたってばく大なものです、この利益は。ところが原子力の方にどうも目が行って、そっちの方の予算はとる。そしてこれは非常に大写しになる。そうすると、中曽根長官の今年度の業積の中で、何をやられたかというと、そういうところで非常に努力されたとこういうことが言われておる。しかもじみな、国民生活には欠くことのできない、日本経済にとっても非常に深い関係のある国民生活にはのっぴきのならないこういう問題については、今のような御説明じゃこれは話にならぬです。どうも長い間ならされたもんだから、もっと取れと言っても遠慮して困る、こんなことは、話としてはいいかもしらぬけれども、実情には合っていない。かりにそうだとしても、あなたがもしもほんとう国民生活の安定という面に目を向ける覚悟があったら、そういうことは問題じゃないと思うのですね。もう少しやはりその点について大所高所からこれに対する予算を私は拡充をするという努力をすべきじゃなかったかと思いますが、非常にこれではまずいじゃないかと思う。たとえば、そのためにこういうことが起こっておると思うのですね。これは、気象庁の建物が全国にあるわけですが、ほとんど古くなっておる、これは御存じでしょう。私は熊谷の事情を聞いたんですが、熊谷の地方気象台の建物、これはいつ建ったかというと、明治二十七年、そうして全くぼろぼろになって、もう倒壊寸前になっている。それから高山観測所、この建物は明治三十一年です。伏木の測候所を見るというと、これは明治四十二年、これでは全くもう何というか、時代がかっているとも何とも話にならない。こういう基礎の上に気象研究をやろうといったところでできないじゃないですか。従って、これに伴うところの設備というものも大体想像がつく。こういう点についてはどうお考えになりますか。
  65. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 気象庁の業務関係設備が十分でないということは御同感であります。今度は台風の災害にかんがみまして、レーダーの整備とか、あるいは防災気象官を置くとか、そういう点では今までに比べましてかなり気象庁の仕事も前進しております。また中央の気象庁の建物にいたしましても、今のような古いのではいけないというので、あそこの大手前に今度は大きな鉄筋のものをかためて、移ることにいたしまして、順次地方のものもそれにならうように永久建築に改善していきたいと思います。
  66. 岩間正男

    ○岩間正男君 とにかく七十七億の予算原子力の方には向けられているわけですが、全体としてのワクが少ないということもあるだろうと思いますが、私はこれは話にならぬと思うのですね。こういうものはやはりはっきりした計画をもっと持つべきじゃないか。  もう一つ伺いたいのですが、伝染病研究所とか、東大にあります国立予防研究所、こういうところも非常にもう施設が古くなっているんですね。その中で、御存じですか、ネズミとかハエが研究所の培養所のところに出入りしている。それを駆除する方法がはっきりしていない。従って非常にこれはむしろ危険性を持っておるわけですね。こんな問題はもうさっそく改良しなければならない問題だと思うのですが、この設備の不完全、予算の不足、こういう方面における予算の不足というものは、これは非常に民生の安定から考えて大へんな問題になると思うのです。国民の生命の安全という点から考えましても私は重大な問題のように思っているんですが、こういう問題について長官は知っておられますか。また知っておられるとすれば、これに対してどういうような対策を持っておられるわけですか。
  67. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それらの研究所は大体厚生省系統の研究所でございますが、実情は聞いております。まだ必ず。も十分ではありませんので、特に民生に関係するところは大いに充実して参りたいと思います。
  68. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは厚生省関係でもあるけれども、やはり科学技術の総合的な立場に立って、そういう点を考えます上に、私は、もう少しやはり総合的な対策が立てられるべきじゃないか、こういうふうに考えられるわけです。  それでは時間があまりありませんから最後にお聞きしたいのですが、米国とロケット開発の協定を結ぶそうですが、これはどのような協定になるのか。それでこれは軍事的なものではない、そういうことを言われておりますけれどもはたしてそうなのか。最近の新聞の情報によるというと、米国の航空宇宙局は、この米軍関係では月に米国の軍事基地を作るというようなことを言っている。これは平和的なものとは非常に違う、そういう性格を持っているのじゃないか。こういうものに対してどういうふうに考えておられますか。
  69. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 科学技術庁がやっておりまする研究は、原子力にいたしましてもロケットにいたしましても、宇宙開発にいたしましても、全部平和目的でやっておるのでありまして、七十億円余の原子力関係の費用も全部これは平和のための原子力の費用になっております。宇宙開発の問題も同様でございまして、これは主としてコスパールというのが、国際学術連合の宇宙室間研究委員会というのがございまして、そこでやっている仕事を補うという意味で実はやっているのでありまして、ただコスパールでやっておりまするのは、学術だけで技術が入っておらぬのです。技術を補う方法は何かというと、やはりある特定国と、われわれの要望を達する国とそういう提携関係を進めていくというのが早道のようであります。現にアメリカ、ソビエト・ロシアと中国あたりは非常に緊密な連絡をとって相当大量な技術者がモスコーに駐在して研究しているようでありますが、日本にはその道がないのであります。そこで、従来太平洋をはさんでいろいろ高層気象の観測とか、あるいはジェット気流の研究とか、人工衛生の観測とか、かなり具体的な事実上の連携もあったわけでありますが、これを進めまして、もう少し公けにも政府が正式に監督して目が届くような形でやりたい、そういう考えをもちまして、とりあえず米国とそういう関係を結ぼうと思ったのであります。しかしこれは正式の協定という形でなくとも、交換公文というような形でも十分やれると思いまして、今そういう方途で進めている次第でございます。
  70. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) 岩間君の質疑はこれで終了いたしまして、通告順に従いまして藤田君にお願いいたします。
  71. 藤田進

    ○藤田進君 私は原子力発電所の関係についてお伺いしておきたいと思うのですが、最近、五日ほど前にアメリカから帰ってきたその筋の専門家の話を聞き、あるいは西欧諸国、それから後進国といわれる地域の原子力発電について検討しましても、結局は商業べースに乗るコストという面でかなりちゅうちょしているし、これをわが国の場合考えてみても、原子力発電所というものを今後どうするかということはかなり大きな問題になるような気がするのです。従ってコストの面からくる原子力発電について相当こまかいデータを持っておられると思うので、こまかい説明は加えないでお伺いするわけですが、少なくともここ見通し得る期間を考えてみたときに、はたして原子力発電所というものの発展について、どういう所信のもとに今後これが対策を講じられようとするのか、まずお伺いしたい。
  72. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 原子力発電の関係世界的趨勢では停滞しているというふうに報ぜられておりますが、私は必ずしも停滞しているとは思いません。現にアメリカやイギリスの情勢を的確に把握してみましても、イギリスではやはり一九六六年までに五百万キロを開発するという計画で、その計画はくずしておりません。それはみんなコールダーホール改良型を進めておるという形です。アメリカあたりにおきましても、最近の原子力委員会の正式の発表によりますと、ここ二、三年でPWRあるいはBWRというものが商業採算が成り立つといってきておるのであります。アメリカの商業採算という意味は、日本からみればはるかに低いコストでありまして、一キロワット七ミルというのは二円五十銭相当で、新鋭火力に対抗できるということになっております。しかし日本の場合は四円前後になれば、新鋭火力がその程度でありますから、従いまして十ミルくらいあるいは十一、二ミルくらいまでは対抗できるということになるわけです。そういう面からいたしますと、アメリカやその他よりも原子力発電の果すべき役割というものは日本は非常に多いわけであります。そういう観点からいたしまして、原子力発電というものを今いわれているように、停滞ぎみに持っていくということは必ずしも私は当を得た政策ではないと思います。現在やっておりますのは、みな原子力発電の基礎研究であります。科学基礎研究でありまして、発電所を作るというのは、それは内外の情勢を見まして決断しなければなりませんが、しかし基礎研究というものはあくまでこれは進めていくべきものだと私は思います。
  73. 藤田進

    ○藤田進君 ですから、各国ともそのコストのそれぞれ入ってくる要素というものに、純然たる商業ベースより基礎的な研究費というものが除外されておる。そのコストの明確な公開がないので把握をしがたい。現地調査に行って帰ってきた人たちはそう言っているので、はたしてこれが原子力発電をそのままコストに直して引き合うかどうかという点に疑問がある。従って今後の原子力燃料による、核燃料による発電というものが研究費という形で別途にこれをカバーしてコストに直しているからやっていけるのであって、そうでなければなかなか大へんな予算になるということを言っているわけで、わが国の場合、石炭なりあるいは水力なりということで、まだまだ当分は行かざるを得ないのではないだろうかというのが現地調査の結論のように私は思うのです。従って今申し上げたい点、問題にしているのは、研究というものでなくて、商業ベースによる原子力発電というものがはたして採算上見通しがあるかどうかという点にしぼって申し上げております。
  74. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) コールダーホールの改良型にいたしましても、原研で建てますものは一キロワット五円前後ということになっておりますが、二十年の耐用年数で直しますと大体新鋭火力ととんとん、四円三十銭前後になります。商業採算という面から見ますれば、私は必ずしも合わないとは言えないと思います。その上さらに将来のための技術研究という面がそこにも入っておりまして、動力炉と濃縮ウランによるアメリカ型の炉を入れる、あるいは天燃ウランによるイギリス型の炉を一基ぐらいずつ入れておくということは、現在の研究を進める上にも非常に重要であろうと思っております。しかし、それ以上どの程度入れるかということは、これは慎重に経済界の実情やコスト計算等をやってみてしなければならぬと思っております。そういう観点から今原子力長期計画を練り直すように努力している最中であります。
  75. 藤田進

    ○藤田進君 従って、研究段階でその成果について自信が持てて、これが在来の発電方式よりも経済投資的に有利だという、あるいはとんとんだということはなかなかまだ見通しがつかないという段階じゃないのですか。
  76. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) コールダーホールにつきまして、大体とんとんに行けるという見通しであります。それから、PWR、BWRアメリカ系統のものはペーパ・プランによるコスト計算が出ておりまして、実際運転した結果コストがどれぐらいになるかというデータはまだないわけです。従って、現実に運転経験一年以上つまりその資料に基づいてやらぬというと危険でありますので、そういう点われわれは慎重に進めて参りたいと思っております。
  77. 藤田進

    ○藤田進君 ウランの開発、まあ人形峠その他計画が進められておるようですが、国産によるこれらの燃料というものはかなりコスト高になって、かえって輸入した方がいいんじゃないかということが、今の原子力発電そのもののコストにも関連して、必ずしも自給自足態勢というよりも、その面からもコストの面を勘案していかなきゃならぬという事態になってきていると思うのですが。
  78. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 世界的に今ウランが余ってきているという情勢から見まして、カナダやあるいはその他のイエロー・ケーキを買いまして、その後、それからあとのプロシーディングを日本でやるという方が、コストとしては安上がりのように今思います。しかし、国産燃料で品位のいいものが出ますれば、必ずしも外国燃料にたよらないでも、コスト上独立採算でいけるという見通しもあるわけであります。大事なことは、そういう高品位の燃料を探すということでありますので、そういう探索費等はやはり十分国家として計上しなければならないと思っております。
  79. 藤田進

    ○藤田進君 それに関連して、人形峠の場合も、その鉱業権は、民間の社団をわざわざ作って、そうしてこれの提供を受けるというやり方は、すなわちそのコストにも影響してくるように思われるのに、どういうわけでああいうふうになったわけですか。
  80. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 今までは人形峠開発の様式の中で鉱業権の処分の問題がございますけれども、その鉱業権の問題につきましては、政府で直接この鉱業権のあり方を指導するという性格のものでございませんので、ただいまの段階では、もし租鉱権等を公社の方に話し合いで譲りまして、そうして開発した中から何%かを返してやるというふうな行き方で契約ができれば、その方式でけっこうですし、そうでない場合には、その山の租鉱権者がみずから開発してもけっこうですということで、その選択は鉱業権者にまかしておるような格好でありますので、お話のありましたように、民間で特別な社団を作っているという話は実はまだ承知しておらぬのであります。
  81. 藤田進

    ○藤田進君 人形峠の場合は、坂口さんが中心になって鉱業権を別に設定したのじゃございませんか。
  82. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 鉱業権は別でございますけれども、租鉱権は要すれば公社の方に譲りまして、そうして公社で掘った中の何%は租鉱料として返してやるというふうな格好にして話をつけてきたのであります。
  83. 藤田進

    ○藤田進君 国の大幅な助成のもとにやっていく一つ事業になっているのに、私ども非常に異様に感じたのは、坂口さんが中心になってああいった団体を作って、そこに一つの権利を設定されるということ自体が、政府との間でもう少し話し合いをしていかなければ、それだけ余分な権利金なりを出すという結果になって、非常に地元としても不明朗だという声が強いようです。
  84. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 御承知のように、原子力基本法等を作ります際に、鉱業権の問題が非常に問題になったのでありますけれども、これはなかなか、現憲法下におきます鉱業権といたしましては、これに手を加えるということはむずかしいのでございまして、従いまして、どうしても新鉱業権と申しますか、これの持っている精神というものは生かして、たとえば先願優先といったような線はくずすわけに参りません。従いまして、早く先願し妥当なものでありますれば、やはり鉱業権者になれるわけでございますから、どうしてもそれが鉱業権者と実際の掘る人との関係をどうするかという問題が生じてくるわけでありまして、私ども、ただいまの段階では、できるだけその間は話し合いで円満に片づけ得るようにということで、私も坂口先生にはしょっちゅうお会いしておるのでございますけれども、別にその問題はないように承知しておるのでございます。
  85. 小林孝平

    ○小林孝平君 一つお伺いします。新潟の地盤沈下の問題ですけれども、昨年の六月二十四日に新潟地区地盤沈下対策特別委員会が答申書を技術庁長官あてに出されまして、これは御承知のように、二年間調査の結果を発表されたんですけれども、その内容は、水溶性ガスの採取に伴う地下水の大量くみ上げを地盤沈下の重要なる原因として重視せざるを得ないと、こういうふうに報告されているわけですが、なお付随して、関係各省庁が適切なる対策を考えるように、こういう答申がされました結果、九月の一日から大臣勧告の形でガスの一部採取規制が行なわれた。今までは一日に七十万立方メーターをくみ上げておったのを、この九月の一日からそのうち二十万立方メーターを規制をしておるわけなんです。そこで九月から九、十、十一、十二、一、一「三と、すでに七カ月規制を行なってきたわけなんです。それで、規制の結果が相当明らかになっているのではないかと思うんです。現実に地盤沈下の速度は相当鈍った。建設省の断片的の報告でも、そういうことが言われておる。そこで、科学技術庁としては、この沈下と地下水のくみ上げとの関係をどういうふうに具体的に考えられておるのか、こういうことをお尋ねいたしたいと思います。  そこで、今の段階でこの答申ではいろいろのことを考慮せられて「重視せざるを得ない。」というような表現を使われておるのでありますけれども、今の段階では断定的に言ってもよいのではないか、こういうふうに考えるのですが、その点。
  86. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 資源調査会から答申が出ましたのは、今御指摘の通りであります。その後ガス規制をやりました結果、規制の効果というものがその通り出て参りまして、沈下の速度も非常に鈍りました。従いまして、ガスに相当な原因があるようにわれわれは考えております。ただ、あそこへ新潟の地元の意思としてある程度産業を誘致したいという考え方で、いろいろ行政措置も講じておるようでありますから、その辺の新潟の地元の工業誘致という面との調和の面を考えなければならぬと思います。従いまして、その辺はよく注意いたしまして、企画庁及び通産省とも連携をとりまして、規制の実をあげつつ、ある程度また地元の知事さんの御要望等にも沿うようにいたしていきたい。行政上はそういうふうに漸進主義で進むのがいいのではないかと思っております。
  87. 小林孝平

    ○小林孝平君 行政的にそういう配慮をされて漸進的に措置をされるということは、それは当然でありましょうしかし、科学技術庁としては、こういうふうにもう少しこの関係は断定的に、あなたも今おっしゃったように、非常に鈍り、相当関係がある、こういうふうにおっしゃっているのですから、もう少しはっきりとこの関係を明らかにされたらどうかと思うのです。その上で、そういう事実の上に立って行政的配慮あるいは政治的配慮を加えるということは必要でありましょうけれども、科学技術庁としては、もう少し技術的な立場、科学的な立場に立ってものを言われる必要があるんじゃないか。
  88. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 答申が一回出ましたけれども、もう一回やるかどうかということを、私はよく技術的にわかりませんが、その点は資源局長から答弁させたいと思いますが、大体の方針といたしまして、重視せざるを得ないというところで規制をやりました効果は、ある程度出て参りました。しかし、それがどの程度の影響力を持っておったかというのは、もう少し時間をかけて測量したりなんかしなきゃならぬと思いますが、で、いろいろな説もありまして、地球物理学者の面からの議論もありますし、あるいはそうでない面からの議論もあります。やはり二年くらい測量し続けないと、正確な科学的な根拠には乏しいわけです。現に勧告が出ましたのは、約二年くらい測量した結果、あれを出したのでありまして、その後に関しましても、今日すぐどうということでは、資料はややまだ不足ではないかと思います。
  89. 黒沢俊一

    説明員(黒沢俊一君) 資源調査会におきましては、大体あすこの地区の水準測量というのが、これは一番確かな沈下の目安になるということでやっておりますが、不動点から引っぱりだしましてほんとうの真高をとるというのが、大体二年に一回ということになっております。それでございますから、ほんとうに確実な裏づけのある、つまり東京湾の中等潮位あたりと結んだ不動点というものが二年に一回なんでございますが、その前に、一年に一回の測量というのが、多少の修正はございますが、かなり精度が高い。そのほかに、なお精度の落ちるのが半年及び三カ月に一回という測量が、これは範囲がだんだん小さくなるわけで、こまかくすればするほど手間を食いますので、精度が落ちまして、そのかわり範囲が小さい。そういうことで、ほんとうのことを申しますと、二年に一回ぐらいのところで結論を出すのが一番確かなのでございますが、現地の方が非常に重要な段階になっておりますので、その一年一回の測量ということで、今まで昭和三十三年の六月に中間報告、それから昨年の六月に報告という形で、一年一回ずつ出しているわけでございます。現実のことを申しますと、あと二年でございますから、昭和三十六年の六月にならないとほんとうのことがつかめないのでございますが、資源調査会の方におきましては、ことしの六月、と申しますのは、今の三月の測量結果をもとにして今度は報告という形になりますか、あるいは観測データを整理した結果という形の程度になりますか、そこのところははっきりいたしせまんが、結論を動かす、つまり水の過剰くみ上げということを動かすようなデータは今のところ出ていないようでありますが、測量の結果が大体三月で締め切りますので、ちょうど今ごろ測量が終わったところでございます。この結果を整理して出して参りますのが四月から五月と思われますので、その結果を見ました上での整理というのが、おそらく六月ごろになるんじゃないかと存じますが、これはそのほかに観測井によりまして地盤の収縮量と地下水の水位をはかっておりますが、それは何といっても従のものでございまして、主力をなすのは水準測量でございます。今のような工合でございますので、大体一年おきくらいの頻度で報告を続けていくという工合にしたいと思っております。
  90. 小林孝平

    ○小林孝平君 そうしますと、三月の測量の結果は六月に発表する、こういうわけですね。それから、もう一つは、今局長が言われた今の規制の変更をする結果は出ないという意味は、今後二十万立方メーターの規制は継続するということなんですね。
  91. 黒沢俊一

    説明員(黒沢俊一君) その規制の点につきましては、これは通産省の権限でございまして、ただいま通産省の大臣勧告でございますから行政指導という形で、命令ではないようでありますが、それをどういたしますかは通産省の方でございます。私の方といたしましては、今までの規制と、それから沈下が非常にゆるんだ——非常にと申しましても、ほかの地区に比べますとまだかなり大きなものでございますが、それでも昔に比べて半分から六割ぐらいになっておりますから、まあ非常に影響はあったとは思っておりますが、規制の範囲をどうするとか、予後をどうするとかいうことにつきましては、私どもは関係方面の善処を要望するというようなことで、直接幾らやったらいいというような量的の問題は、私の方から申し上げるわけにはいかないのでございます。
  92. 小林孝平

    ○小林孝平君 あなたはそういうことをおっしゃるけれども、さっきそうおっしゃったのです。規制を変更するという結果にはならないと思うと、こうおっしゃった。私も知っていますよ、あなたの方がやられるのでないということは。これは大臣勧告であり、通産省の所管であることはわかるけれども、通産省がそういうことをやっているのは、この特別委員会の答申に基づいて、その結果関係各庁は適切なる対策を考えよということでやったわけなんです。そこで、あなた方の方は、その結果、こういうことを変更する結果は現実的に出ない、その行政的な措置は通産省がやるけれども、変更をするような結果は出ないということをおっしゃったので、私がもう一度確かめたら、責任の所在しないような発言をされる。そういうようなやり方がこの問題を非常に混迷を来たさしているのです。また、私はそういうあなた方の態度だと、科学技術庁というのは大したことないということにだんだんなってくると思うのです。あなた方はその行政的配慮、あるいは政治的の配慮などをやらないで、そのありのままの結果を発表されればいいので、それをあなた方があまり政治的な配慮をされて、一分間もたたいうちに言うことが変わるというようなことが、どれくらい地元に混迷と混乱を来たさしているかわからないのです。  それはともかくとして、要するに、この通産省のやっている結果は、これは通産省の所管であるけれども、この答申に基づいてそういうことが行なわれた。そうしてその結果、現実に規制の効果は長官の言われるように上がっている。大いに、相当関係がある、こういうような判断から、この規制は増加するとか減少するとかと、そういうことでなく、この規制は続けると、こういうことがいいのだというのが科学技術庁考え方ですな。
  93. 黒沢俊一

    説明員(黒沢俊一君) 規制の結果は、ただいま申しましたように、中間的な水準測量でございますが、かなり減っているという事実は確認いたしております。
  94. 小林孝平

    ○小林孝平君 だから、減っているから、これが減らないなら変えるとか何とかいうことはあるけれども、減っているのだから、今やっているこの措置はそのまま継続してやった方がいいと考えるのが普通じゃないですか。そうなんでしょう。
  95. 黒沢俊一

    説明員(黒沢俊一君) まあ、そういうことでございます。
  96. 小林孝平

    ○小林孝平君 長官にお尋ねします。どうですか。
  97. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 規制の結果沈下が減ったという事実がありますので、この規制をそのまま続けていくということはいいことだと思います。
  98. 小林孝平

    ○小林孝平君 そこで、もう少し中間的のいろいろの報告がある。相当減ったと今も長官もおっしゃいましたが、具体的にどういうことになっているか、その結果をお聞きしたい。
  99. 黒沢俊一

    説明員(黒沢俊一君) ただいま私の方に集まっておりますのは、昨年の十二月ぐらいのデータでございますが、一・四ミリぐらい昔下がっておったやつが、〇・九ミリ見当まで——一日でございます、一日の量、一番ひどいところでございます。そのくらいまで下がっておる。しかし、これはただいま申しましたように、中間的の水準測量でございまして、不動点から結んでおりませんので、こまかい、つまり〇・九というところが〇・八五なのか、〇・九五なのか、そのくらいの、一〇%見当くらいの不正確さがまだあるようでございます。この次の、現在進行中で、もう今三月末でございますからほぼ終わったと思われますが、ほぼ終わったと思われますのは、その昨年の十二月ごろの資料よりはもっと精度の高い測量になります。おそらく、今私が聞いておりますのでは、その結果よりももう少し沈下がゆるんでいるんじゃないかというようなことを、これは正式報告ではございませんが、仄聞はいたしております。どの程度ということは、ちょっとまだデータの整理がつかないようでございます。
  100. 小林孝平

    ○小林孝平君 そこで、もう一つお尋ねしたいのは、この答申に基づいて関係各省は適切なる対策を考えよということが付随して言われているわけです。そこで、関係各省でどういう適切な対策を考えているか。どういうことを考えて、どういうことを実施したのですか。この通産省の規制もその一つでしょうけれども。
  101. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その勧告に基づきまして、経済企画庁を中心にする各省連絡機関会議を作りまして、そうしてそれに関する行政措置のあり方についていろいろ協議をいたしました。まあその結果に基づいて大臣勧告という形になってきたのだろうと思います。今後科学的データの結果どういうふうに取り扱うかということは、企画庁を中心にして関係各省集まって処置していくということになるだろうと思います。
  102. 黒沢俊一

    説明員(黒沢俊一君) ちょっと補足いたしますと、ただいまの地下水のくみ上げの方は、そういうことで勧告規制になっておりますが、なお、海岸の防潮堤、それから排水ポンプ等の事業が運輸省並びに建設省等で行なわれることになっております。現在もかなり行なわれておりまして、ことしの冬はほとんど被害がなくて済んでいるようでございます。明年度もそういう事業が継続して、拡充されることになっておるように聞いております。
  103. 小林孝平

    ○小林孝平君 そこで、もう一つお尋ねしたいのは、この勧告が出て、適切なる対策を考えよ、こういうことで、当時ともかく一日に一・四ミリの沈下をしておったと、こういうことで、この二十万立方メーターを規制すれば、一体どのくらいの沈下速度がゆるむと考えられてやったのですか。
  104. 黒沢俊一

    説明員(黒沢俊一君) それはよくわからなかったのでございます。現在もゆるむであろうと思ってやったのでございますが、幾らゆるむか、二十万やったら幾ら、四十万やったら幾らになるということは、これからデータを集めませんとわかりませんので、何しろ下の方は水でございますので、流れておりますので、この区域で幾らやってどうなるかというまでのデータはこれから集まってくる段階でございます。
  105. 小林孝平

    ○小林孝平君 そうしますと、全然このガスの二十万……。それならば、この二十万立方メーターの規制の根拠はどこなんですか。
  106. 黒沢俊一

    説明員(黒沢俊一君) 規制の根拠は存じませんが、市街地であるということで、その線を引いたのかと存じます。これは、もっとも規制をいたしましたのは通産省の大臣勧告でございます。通産大臣の勧告でございますので、こちらから特にこの範囲を規制したらどうかということを申しておりませんが、想像にすぎませんが、おそらく市街地で影響が大きいだろうからということからと、これは私どもの方で推測するわけでございます。
  107. 小林孝平

    ○小林孝平君 それは、市街地だからこの問題になったんです。七十万立方メーターを二十万立方メーターにしたと、その根拠は全然ないんですね。ともかくちょっとやってみよう、こういうことだったんですね。  私は長官に聞いていただきたいのですけれどもね、この科学技術庁というものは最も科学的に技術的な立場に立っていろいろの仕事をやられるのであって、あまりに政治的、行政的配慮をし過ぎると、こんなものは要らないのじゃないかということになりゃしないかと思うのです。そこで、幸い中曽根さんのような非常に有力な方を長官に迎えたこの機会に、これをしっかりしないと、たとえばこういう問題であまりに政治的配慮をしておりますと、結局あんなものは要らないという空気が出てくると思うのです。従って、この問題等についても、非常にこれはむずかしいけれども、科学技術庁としては、こういうふうな見解を発表され、指導され、また国会における質疑等もそういうふうにやっていただきたいということを特にお願いいたします。  そこで、今の問題です。七十万立方メーターを二十万立方メーターにしたと、このことについては全然科学技術庁としては関知しないわけなんですか。この大臣勧告でやることは、それは通産省がやるけれども、七十万のうち二十万規制するということについては関知しないのですか。
  108. 黒沢俊一

    説明員(黒沢俊一君) 幾らにしろということをこちらから申しません。あちらから、こういうことにしたがという通告は受けておりますが……。
  109. 小林孝平

    ○小林孝平君 したがと言ったって、することの相談はなかったのですか。あったでしょう。
  110. 黒沢俊一

    説明員(黒沢俊一君) 文書ではございません。
  111. 小林孝平

    ○小林孝平君 文書じゃない。相談があったでしょう。
  112. 黒沢俊一

    説明員(黒沢俊一君) 下相談はございました。しかし、こちらの方からそれでいいとか悪いとかいうことは申しておりません。
  113. 小林孝平

    ○小林孝平君 そういうことは困りますよ。ほかの各省の問題ならいいですよ。科学技術庁はもう少し科学的なお話でなければ……。相談があったかないかということを言っておるので、そんな事務的のごとくらい私でも知っていますよ。あなたの方は権限がないから、通知があるだけですよ。しかし、あなたの方が勧告をして、その結果やるのに、あなたの方が全然知らないということはないじゃないですか。そういう責任のがれのことを言っておるのが、新潟の人に非常に不安を与えておるのです。大臣からもともとと事務当局に忠告しなければいけませんよ。あなた一人で張り切っておったって、こんなことなら、今に科学技術庁なんか必要ないという空気が出てきますよ。今のような話だって、そうじゃないですか。簡単なことじゃないですか。相談あったかないか。ないはずないですよ。それをありません、書面ではありませんって、そんなばかなことはありますか。
  114. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 御趣旨に沿っていたします。ただ、デーダがないというと科学的判断ができませんので、その正確な判断を公表するに価するだけのデータを目下収集中であるとお考え願いたいと思うのであります。特に、規制後はまだ半年くらいしかたっておりませんから。
  115. 小林孝平

    ○小林孝平君 私、まだそんなことは聞いておりませんよ。現にこういう七十万立方メーターのうち二十万立方メーターを規制するということは、あなたがさっきおっしゃっておるように、ガス関係業者には非常に大きいと。また、そういうことでとまるかどうかということを、一般の人も関心を持っている。そこで、七十万を二十万にした根拠というものはどうなんだ。根拠がなかったならなかったで、およそまあ二十万やってみると、こういう御答弁なら、それでいいのです。
  116. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大体そんな検討だろうと思うのです。
  117. 小林孝平

    ○小林孝平君 いや、そう御相談されたのですか。
  118. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私はそういう数字は聞きませんが……。
  119. 小林孝平

    ○小林孝平君 だから、局長に私はお尋ねするから、局長はもっと直接関係されたのだから、具体的にお話しになればいいのです。どうせこれは非常に政治的な配慮を加えられて行なわれているということは明らかなんですからね。だから、はっきりと。どういう打ち合わせをされたのですか。
  120. 黒沢俊一

    説明員(黒沢俊一君) 打ち合わせではなく、とにかくこの範囲は市街の密集部分であるから、このところは影響が大きいだろう。この程度を停止すると二十何万かになる、それでどうだろうか。これ以上非常に広げるということは、いろいろ、まだはっきりとこれだけとめたらこれだけ下がるというデータがない以上、非常にむずかしいのだというお話を通産の方から受けまして、私の方もそうでございまして、量的にどこでどれだけとめたから、それだけ沈下が鈍るとは言えませんが、やはり市街密集地でかなりの範囲ということで、その程度までやってみる。その結果によってまたどうかなるでしょうというようなところで、まあ賛意を表したわけでございます。
  121. 小林孝平

    ○小林孝平君 非常に政治的な……。この問題は、あなた方そんなことをおっしゃると、この問題をめぐって非常な政治的な動きがあったというようなことを言われるんですよ。従って、私はそういうことはないだろうと思うけれども、あなた方のそういう態度がある、その結果いろいろのことが言われる。私は例をあげてもいいけれども、まあきょうはやめます。やめますが、むしろそういう配慮をやらないと非常に弊害があると思うから、お尋ねしておる。  そこで、まだはっきりしないけれども、科学技術庁として、一・四のものが、二十万立方メーターやったら〇・九になった。これは三月にはどうなるか知らぬけれども、相当効果があったと、これは長官もおっしゃられる、なあた方もおっしゃる。それならば、今後これをさらに規制すればこれがゆるむということは、当然考えられるわけですね。
  122. 黒沢俊一

    説明員(黒沢俊一君) 私はそう考えております。
  123. 小林孝平

    ○小林孝平君 長官にお尋ねしますけれども、この新潟の地盤沈下の問題は非常に大問題であって、世界にも例が少ない。一つの大都市が沈没してしまう、こういうような非常に大きい問題ですが、あなたは科学技術庁長官として、このような二十万立方メーターの規制をやればこれだけ効果があった。あなたのおっしゃるように、非常に速力が鈍る、相当関係ありとおっしゃる。今の局長も、今後さらに規制をやればこの速力は鈍るであろう、こういうふうにおっしゃった。こういう事態を政治的に判断をして、さらにこの規制についてどういうふうにお考えになりますか。
  124. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ただいまの規制の結果のデータをもう少し正確に、また時間をかけて集めまして、そのデータを見た上、また考えてみたいと思います。
  125. 小林孝平

    ○小林孝平君 これは、規制のデータはもう明らかにあるので、あとはもうわずかの、これに正確さが多少違ってくるというだけの話で、現実にはもう非常にはっきりしているわけなんです。そこで、この結果を見るとか何とかいったって、あなたも技術者じゃないのですから、そんなもの見たってわかるはずはありません。この程度でそれこそあなたが政治的判断をして、あなたは科学技術庁の長官として非常に大きい政治的判断をされて話題をまいておられるんですから。そこで、これはどうですか、あとその精度が多少変わったって、大したことはない。今の段階でどういうふうにお考えになりますか。
  126. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) やはりある程度正確な資料をもって判決を下しませんといけませんので、もう少し観測並びに資料収集を行ないまして、その結果考えてみたいと思います。
  127. 小林孝平

    ○小林孝平君 それならば、これはかりに——大きい違いがないのです。仮定の問題として、一日従来一・四ミリ沈下していたものが〇・九ミリになった、こういう数字の上に立って、あなたは政治的にどういうふうに御判断になりますか。
  128. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) こういうことは政治的に考慮する余地もない問題でありまして、ともかく数字の問題でありますから、それをもう小し、半年とか八カ月とかデータを収集いたしまして、その数字の結果を見ましてから、今度は総合的に、それではこれは行政的にどうするかというところで、政治的に判断すべきものだと思います。
  129. 小林孝平

    ○小林孝平君 それはおかしいじゃないですか。私の言っているのは、一・四ミリというのが、〇・九ミリになる、この〇・九ミリを政治に判断せいということを言っているのではないのですよ。この数字を見て政治的にどう判断するか。ところが、あなたは、そういうものを、私の質問に対して、政治的の考慮をする余地がないとおっしゃったけれども、最初に、これは非常に重要な問題だから、行政的、政治的な配慮をやらなければいかぬとあなたはおっしゃった。ところが、そういう実際やるということについては、そういう配慮が必要であるけれども、あなたは、原子力研究を大いに推進されるようなこういう構想を発表されたあなたからすれば、こういうデータから——これはデータが多少変わることはありますよ。しかし、そういうことは誤差の範囲内の問題でしょう。そこで私の聞いているのは、この一・四ミリというのが〇・九ミリ、こういう数字に立って、それは多少変化があるかもしれぬけれども、どういう判断をされるか。
  130. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この前勧告が出ましたときには、約二年ばかりの資料をまとめまして、その正確な資料に基づいて判定を下したわけであります。今回のはまだ期間的に時間が短いのでございますから、そういう正式の判定を下すにはややデータ不足という感じがしております。ただし……。
  131. 小林孝平

    ○小林孝平君 ちょっと速記をとめて下さい。
  132. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  133. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) 速記をつけて。
  134. 小林孝平

    ○小林孝平君 主査は簡単にやれとおっしゃったけれども、これはきわめて重大な問題ですよ、世界にもちょっと例のない。一つの大都市が海底に沈下しようという大問題なのに、五分でやれとか何とかいうことでは、私はできませんから、またあらためてお尋ねいたします。  最後に申し上げておきますが、中曽根長官は、科学枝術庁の長官としてはもう少し科学的な立場で行動、御発言が願いたいと思うのです。私らが非常にあなたに期待したゆえんも、旧来の旧式政治家でなく、あなたのような方がなられたので、非常に期待しておったのに、本日の応答を聞いていますと、やや失望せざるを得ないわけです。これは全国の科学関係技術者も非常に失望するのではないかと思いますから、どうか今後そういうことでなく、ほんとう日本科学振興のためにやっていただきたいと思うのです。特にこの新潟の地盤の沈下の問題については、科学技術庁のきぜんたる態度があって初めて解決すると思いますから、特段の御健闘をお願いいたします。
  135. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) 小林君の質疑は終了いたしました。
  136. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は先ほどの質疑応答と関連してですが、ソビエトの科学技術の非常に優秀なことについては、長官も先ほど認められたと思うのです。日本の今後の科学技術を平和的に大きく前進させるためには、東西の科学技術研究の交流ということは、非常に大きな一つの課題になってきておると思う。こういう点について、たとえばソ連とは国交を回復してすでに三年になるわけですが、こういう点についてもっと計画的に考えられる必要があるか。つまり日ソの科学技術の交流ですね、この問題についてどう考えられるか。
  137. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 平和を目的とした科学技術の国際的提携ということは、推進することは私は非常に望ましいと思います。従いまして、われわれにはわれわれの要望があるわけでございますが、われわれの要望を達してくれる国とは、いかなる国とも協力していくように参りたいと思います。
  138. 岩間正男

    ○岩間正男君 この問題について、科学技術庁長官として何か計画をお持ちですか。また、これについてソ連との間に交渉されたことがございますか。
  139. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ソ連との間にまだ交渉したことはございませんが、日ソ科学技術交流の協会もできまして、たしか北村さんやその他の保守党もバツクアップしてやっておられるようになっておりますが、こういう協会とも提携しまして、できるだけそういう空気を作って参りたいと思います。なおまた、ソ連に対する科学技術調査団は、民間のベースで二、三行っておりますから、こういう動きも非常にいいと思いますので、協力していくようにしたいと思っております。
  140. 岩間正男

    ○岩間正男君 民間というのは、日ソ協会なんかのあれなんですか。日ソ協会などが学生みたいなものを送っておりますが……。
  141. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今度は、小峰さんやその他やっておるああいういろいろな調査団が行っております。
  142. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは日ソ協会の留学生が、ここ二、三年、五、六人ずつ送られて、第三回ですか、ことしも間もなく出発することになっておりますが、こういう問題についてはどういうふうに援助をされるお考えですか。
  143. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 具体的な方法は関係局長に答弁させますが、私は方針としてはいいことだと思いますので、協力して参りたいと思います。
  144. 鈴江康平

    政府委員鈴江康平君) ソ連との問題につきましては、外務省を中心にいたしまして、学生の派遣、あるいはまた調査団の派遣を交互に行なうという取りきめをしたいということでございまして、私どもも長官の御趣旨を体しまして、非常にそういうことを促進するように、その会議に出席しておるわけでございます。従いまして、こちらから出しました者を向こうで受け入れてもらい、勉強さしてもらうと同時に、ソ連の方からのこちらで勉強したいという方については、各省と連携しまして、受け入れ態勢を進めていきたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  145. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は、今の程度のワクでは、日本科学技術の前進のために大きな貢献をするというには、非常に十分でないと思うのですね。この点について、もっと組織的、計画的にこの問題を推進しなくちゃならぬと考えているのですが、この点はいかがですか。
  146. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今後そういう方向に進めるために努力をいたして参りたいと思います。
  147. 岩間正男

    ○岩間正男君 この点について、外務省その他、文部省ですね、こういうところでいろいろやはりこの問題についてのまだ隘路が打開されていないと思うのですが、こういう問題について話し合われる用意がありますか。
  148. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 外務省、文部省ともよく話し合いまして、なるべく交流を活発にするように努力をいたしたいと思います。
  149. 岩間正男

    ○岩間正男君 過般の、これは二月末ごろだったと思いますが、ソビエトとインドネシアの友好の覚書が発表されました。それで、この中で、国際友好大学という問題、この問題についてフルシチョフが演説をしているはずですね。各国の留学生を迎えたい、そうしてここで学問の交流をやりたい、そのためには大幅な努力をしたいというような演説を、これはしているわけなんです。これに対して日本にもおそらく、まだこれの勧誘は来ているかどうかわかりませんが、おそらく間もなく来るのじゃないか、こういうふうに考えられます。これについてはどういうふうに対処なさるつもりですか。
  150. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) フルシチョフ首相の演説は、私はまだよく詳細に知っておりませんが、もしそういう招待が参りましたら、善処いたしたいと思います。
  151. 岩間正男

    ○岩間正男君 内容をよく検討し、そうしてできるだけ、先ほどの要望から考えても、これに相当積極的に進んでこちらから出かけていくというのが私は望ましいと考えるのですが、また、このことは文化交流の面から考え、さらに両国の友好を促進させるためにも大きな意味を持っていると思うのですね。そういう点から考えて、十分にこの問題について、これは長官に聞きたいと思うのですが、いかがですか。
  152. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) できるだけ努力いたします。
  153. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) 岩間君の質疑は終了いたしました。  ほかに御質疑はございませんか。——御質疑もないようでございますから、科学技術庁長官への質疑はこれで終了したものといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり)
  154. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) 異議なしと認めます。よってさよう決定いたしました。  以上をもちまして、本分科会の担当事項でありまする昭和三十五年度予算中、総理府のうち防衛庁、調達庁、経済企画庁、科学技術庁、外務省及び通産省所管の審査は全部終了いたしました。  予算委員会における報告の内容及び審査報告書の作成につきましては、慣例により、主査に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  155. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) 異議なしと認めます。よってさよう決定いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十六分散会