運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1960-03-23 第34回国会 参議院 予算委員会第二分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月二十三日(水曜日)    午前十時八分開会   ————————————— 昭和三十五年三月二十二日予算委員長 において本分科担当委員を左の通り指 名した。            大谷藤之助君            佐藤 芳男君            杉原 荒太君            苫米地英俊君            堀木 鎌三君            湯澤三千男君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            藤田  進君            島   清君            辻  政信君            岩間 正男君   —————————————  出席者は左の通り。    主査      佐藤 芳男君    副主査     藤田  進君    委員            大谷藤之助君            苫米地英俊君            堀木 鎌三君            湯澤三千男君            佐多 忠隆君            島   清君            辻  政信君            岩間 正男君   国務大臣    通商産業大臣  池田 勇人君    国 務 大 臣 赤城 宗徳君   政府委員    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    防衛庁教育局長 小幡 久男君    防衛庁人事局長 山本 幸雄君    防衛庁経理局長 山下 武利君    防衛庁装備局長 塚本 敏夫君    通商産業大臣官    房長      斎藤 正年君    通商産業大臣官    房会計課長   加藤 悌次君    通商産業省通商    局長      松尾泰一郎君    通商産業省企業    局長      松尾 金蔵君    通商産業省重工    業局長     小出 栄一君    通商産業省軽工    業局長     秋山 武夫君    通商産業省繊維    局長      今井 善衛君    通商産業省鉱山    局長      福井 政男君    通商産業省石炭    局長      樋詰 誠明君    通商産業省鉱山    保安局長    小岩井康朔君    通商産業省公益    事業局長    小室 恒夫君    工業技術院長  黒川 真武君    特許庁長官   井上 尚一君    中小企業庁長官 小山 雄二君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○主査及び副主査互選昭和三十五年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————    〔年長者苫米地英俊君仮主査となる〕
  2. 苫米地英俊

    ○仮主査苫米地英俊君) ただいまより予算委員会第二分科会を開会いたします。  本院規則第七十五条によりまして、不肖私が年長のゆえをもちまして、正副主査選挙を管理させていただきます。  これより正副主査互選を行ないます。互選は、投票によらず、便宜選挙管理者にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 苫米地英俊

    ○仮主査苫米地英俊君) 御異議ないと認めます。  それでは、主査佐藤芳男君、副主査藤田進君を御指名いたします。  御協力ありがとうございます。これによって交代いたします。   —————————————    〔佐藤芳男主査席に着く〕
  4. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) ただいま主査に選任を受けまして、光栄に存ずるところでございます。もとより、志あって力これに伴わざるものではございますが、皆様の御支援と御協力によって、その職責を全ういたしたいと思います。何分よろしくお願い申し上げます。  審査に入りまする前に、議事の進め方につきましてお諮りいたします。  当分科会は、昭和三十五年度一般会計予算、同特別会計予算及び政府関係機関予算中、総理府のうち防衛庁調達庁経済企画庁科学技術庁外務省及び通商産業省所管について審査をいたすわけであります。本日は防衛庁及び通商産業省所管につきまして審査をお願いいたし、明後二十五日は経済企画庁及び調達庁所管を、二十六日は外務省所管を、二十八日は科学技術庁所管について、御審議を願うといった方法で進めて参りたいと思います。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) さよう決定をいたしました。   —————————————
  6. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) これより審査に入ります。  まず、昭和三十五年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、防衛庁所管を議題にいたします。  本件につきまして政府より説明を願います。
  7. 岩間正男

    岩間正男君 その前に、ちょっと議事進行。大体、この案によりますと、午前、午後と分かれておるようですが、これは明確に時間的な規定じゃないでしょうね。必要があれば、午前の部が延びて、たとえば防衛庁の問題が午後まで食い込むとか、そういう運営の何はできるのでしょうね。  それから、もう一つ問題は、調達庁所管の問題は二十五日にありますね。これに対して、当然、主管庁大臣としまして防衛庁長官出席を私は要望したいと、こう思います。この点諮っていただきたい。
  8. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) お答えいたします。この日程は、昨日、各会派の代表者会議において御了承を願ってある次第でございまして、原則としてこの通りに進めていきたいと思います。ただし、岩間委員御指摘のように、多少あとに食い入るというようなことは、これは便宜その際に考えていきたいと思います。さよう御了承を願います。
  9. 岩間正男

    岩間正男君 質問によってですね。第二の点は。
  10. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) なお、第二の点につきましては、本日も調達庁長官が見えておりますから、もしも本日これを行なっても差しつかえない、かように考えております。なおまた、先ほど申しました日程の際において、大臣都合を伺いまして、調達庁事項につきまして御審議をいたすわけでありますが、大臣都合は……。
  11. 岩間正男

    岩間正男君 それでは、大臣にお伺いしますが、明後日の午後……。
  12. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 今のところでは差しつかえありませんが、衆議院の方の安保委員会との関係がありますが、それとの関係で、できるだけこちらへ出るようにいたしたいと思います。
  13. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) 政府よりの説明をお願いいたします。
  14. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 昭和三十五年度防衛本庁予算につきまして、その概要を御説明いたします。  昭和三十五年度の防衛本庁歳出予算総額は千四百八十五億五千二百万円でありまして、これを昭和三十四年度の歳出予算額千三百六十億四千万円、これは当初予算でありましてそれに比べますと、百二十五億千二百万円の増加となっております。  このほか国庫債務負担行為として、航空機購入について七百四十一億五百万円、器材整備について百三十四億七千万円、施設整備について十八億八千七百万円、弾薬購入について七億二千九百万円、艦船建造について十六億七千百万円、計九百十八億六千四百万円を計上し、さらに継続費として昭和三十五年度甲型警備艦建造費総額二十九億六千万円、うち昭和三十六年度以降の年割り額二十六億九千五百万円、並びに昭和三十五年度潜水艦建造費総額三十五億九千三百万円、うち昭和三十六年度以降の年割り額二十九億八千九百万円を計上いたしております。なお、昭和三十四年度予算に計上された継続費昭和三十四年度潜水艦建造費につきましては、建造計画の変更に伴って建造費の一部を後年度に繰り延べるため、年割り額を改訂することといたしております。  また、職員定数につきましては、防衛本庁昭和三十五年度の予算上の職員定数は、自衛官二十三万八千三百五十一人、自衛官以外の職員二万四千八百五十四人、計二十六万三千二百五人でありまして、これを昭和三十四年度の予算上の職員定数に比べますと、自衛官において七千四百十六人、自衛官以外の職員において九百八十九人、計八千四百五人の増加となっております。  以下予算の内容について、組織別に申し上げます。  長官官房及び各局統合幕僚会議防衛研修所防衛大学校技術研究本部建設本部並びに調達実施本部職員定数は、自衛官七十三人、自衛官以外の職員三千四百四十五人、計三千五百八人でありまして、昭和三十四年度に比べますと、自衛官において三十人、自衛官以外の職員で百二十四人、計百五十四人の増加となっております。  陸上自衛隊につきましては、民生面に対する協力を推進するため自衛官千五百人を増員して、地区施設隊建設大隊、及び施設大隊の新編を行なうこととしておりますので、このため、五方面隊、六管区隊、四混成団並びにその他の部隊及び機関を編成する陸上自衛隊職員定数は、自衛官十七万千五百人、自衛官以外の職員一万三千四百五人、計十八万四千九百五人となります。  海上自衛隊につきましては、昭和三十五年度に増勢計画している艦船といたしまして、新たに建造に着手する甲型警備艦一隻二千六百トン、潜水艦二隻千五百六十トン、中型掃海艇二隻、給油艦一隻、高速魚雷艇一隻、合計八千四百六十トンのほか、米国より高速救命艇四隻、揚陸艇十三隻、合計十七隻四百六トンの供与を受け、総計八千八百六十六トンの増加予定いたしております。この計画が実現いたしました暁におきましては、保有艦艇は四百五十二隻、十三万六千三百三十八トンとなる予定であります。また、昭和三十五年度中に増加する航空機として、米国から水陸両用救難機六機の供与を期待するとともに、昭和三十三年度より国内生産を開始いたしましたP2V対潜哨戒機十機の購入のほかに、ヘリコプター六機を購入することにしておりますので、これらにより昭和三十五年度末の海上自衛隊保有航空機は二百十七機となります。以上の艦艇及び航空機増加並びにこれに関連する陸上施設拡充等に伴いまして、自衛官二千四百一人、自衛官以外の職員三百五十一人、計二千七百五十二人を増員することといたしておりますので、従来の定数と合わせ、海上自衛隊職員定数は、自衛官三万六十八人、自衛官以外の職員三千百六人、計三万三千百七十四人となります。  航空自衛隊につきましては、昭和三十五年度において、米国より実用機F86D六十二機の供与を受けるほか、実用機について前年度に引き続きF86F四十三機並びにヘリコプター六機を購入するとともに、ジェット練習機について前年度に引き続き二十機を生産するので、従来の保有機数と合わせ、昭和三十五年度末の航空機総数は、実用機五百五十五機、練習機五百五十八機、実験機二機、計千百十五機を保有することとなります。このほかに実用機F104J百八十機、練習機F104DJ二十機の生産に必要な経費として国庫債務負担行為六百九十八億五百万円を計上いたしております。さらに、昭和三十五年度は防空能力等を強化し、各航空団の配置と指揮機能適性化をはかり、警戒管制機能全面引き継ぎと相待って、全国防空警戒態勢の基盤を概成するため第六航空団の新設、西部航空方面隊及び保安管制気象団を新編することとして、自衛官三千四百八十六人、自衛官以外の職員五百十四人、計四千人を増員することといたしておりますので、従来の定数と合わせ、航空自衛隊職員定数は、自衛官三万六千七百十人、自衛官以外の職員四千八百九十八人、計四万千六百八人となります。  次に、予算見積もり概要について申し上げます。  長官官房及び各局並びに統合幕僚会議運営に必要な経費は、(項)防衛本庁七億千万円、(項)施設整備費二億五千八百万円、(項)施設整備等附帯事務費四百万円、計九億七千四百万円でありまして、昭和三十四年度に比べますと、(項)防衛本庁において九千万円の増加、(項)施設整備費において五百万円の増加、計九千六百万円の増加となっております。  附属機関、すなわち防衛研修所防衛大学校技術研究本部建設本部及び調達実施本部運営に必要な経費は、(項)防衛本庁三十一億九千三百万円、(項)施設整備費四億五千三百万円、(項)施設整備等附帯事務費八百万円、計三十六億五千五百万円でありまして、昭和三十四年度に比べますと、(項)防衛本庁において二億二千四百万円の増加、(項)施設整備費において四千六百万円の減少、計一億七千八百万円の増加となっております。  以上の経費のほか、技術研究本部国庫積務負担行為として(事項器材整備六億六百万円、(事項施設整備一億五千七百万円、計七億六千四百万円を計上いたしております。  陸上自衛隊運営に必要な経費は、(項)防衛本庁六百三十六億二千二百万円、(項)施設整備費十億六百万円、(項)施設整備等附帯事務費千八百万円、計六百四十六億四千六百万円でありまして、これを昭和三十四年度に比べますと、四十一億六千六百万円の増加となっております。  このうち(項)防衛本庁において四十五億三千九百万円の増加、(項)施設整備費において三億六千九百万円の減少、(項)施設整備等附帯事務費において三百万円の減少となっております。  このほか陸上自衛隊に属する分として国庫債務負担行為に(事項航空機購入一億四千四百万円、(事項器材整備二十億七千百万円、(事項弾薬購入三億六千万円、計二十五億七千六百万円を計上いたしております。  以上の内訳のおもなものを申し上げますと、現態勢、すなわち昭和三十四年度末における火砲類通信機等装備自衛官十七万人、自衛官以外の職員一万三千四百五人の維持に要する経費が、(項)防衛本庁におきましては六百三十三億七千七百万円、(項)施設整備費におきましては九億九百万円、(項)施設整備等附帯事務費におきましては千六百万円、計六百四十三億三百万円であります。  次に、増勢分経費は三億四千三百万円でありまして、自衛官千五百人の増員に伴う経費であります。  海上自衛隊運営に必要な経費は、(項)防衛本庁二百六十五億二千百万円、(項)施設整備費六億円、(項)艦船建造費二十九億千五百万円、(項)昭和三十三年度甲型警備艦建造費十八億千五百万円、(項)昭和三十四年度乙型警備艦建造費二十億四千四百万円、(項)昭和三十四年度潜水艦建造費十五億二千二百万円、(項)潜水艦建造費一億八千九百万円、(項)昭和三十五年度甲型警備艦建造費二億六千五百万円、(項)昭和三十五年度潜水艦建造費六億四百万円、(項)施設整備等附帯事務費一億千四百万円、計三百六十五億九千二百万円でありまして、これを昭和三十四年度に比べますと、四十三億八千九百万円の増加となっております。  このうち(項)防衛本庁において三十三億六千三百万円の増加、(項)施設整備費において二億三千四百万円の減少、(項)艦船建造費において六億六百万円の減少、(項)施設整備等附帯事務費において四千百万円の減少となっております。  このほか、海上自衛隊に属する分として国庫債務負担行為に、(事項航空一機購入十五億二千六百万円、(事項器材整備二十億二千四百万円、(事項施設整備六千四百万円、(事項艦船建造十六億七千百万円、(事項弾薬購入三億六千八百万円、計五十六億五千六百万円、また継続費昭和三十六年度以降の年割額として、(項)昭和三十五年度甲型警備艦建造費二十六億九千四百万円、(項)昭和三十五年度潜水艦建造費二十九億八千九百万円、計五十六億八千四百万円を計上し、合わせて昭和三十四年度潜水艦建造費について年割り額の改訂をはかっております。  この内訳のおもなものを申し上げますと、現態勢、すなわち昭和三十四年度末における建造または引き取り予定のものを含めた艦船四百三十五隻(雑船を含む)十二万八千八百二十トン、航空機二百三機、自衛官二万七千六百六十七人、自衛官以外の職員二千七百五十五人の維持に要する経費といたしまして、(項)防衛本庁におきましては二百五十七億五千六百万円、(項)施設整備費におきまして四億五千五百万円、(項)艦船建造費におきまして二十二億千万円、(項)昭和三十三年度甲型警備艦建造費におきまして十八億千五百万円、(項)昭和三十四年度乙型警備艦建造費におきまして二十億四千四百万円、(項)昭和三十四年度潜水艦建造費におきまして十五億二千二百万円、(項)潜水艦建造費におきまして一億八千九百万円、(項)施設整備等附帯事務費におきまして五千七百万円を計上いたしております。  次に、増勢分経費といたしましては、昭和三十五年度に増加予定いたしております艦船二十四隻八千八百六十六トン、航空機二十二機、自衛官二千四百一人、自衛官以外の職員三百五十一人に要する初度経費を、(項)防衛本庁におきましては三億八千万円、(項)施設整備費におきましては一億四千四百万円、(項)施設整備等附帯事務費におきましては五千六百万円、(項)艦船建造費におきましては七億四百万円を計上いたしております。なお、建造工程昭和三十六年度に及ぶ中型掃海艇給油艦及び高速魚雷艇については、国庫債務負担行為に十六億七千百万円を計上いたしております。さらに、昭和三十五年度甲型警備艦建造費及び昭和三十五年度潜水艦建造費については、その完成までに四カ年及び三カ年を要する予定でありますので、昭和三十五年度歳出予算に計上した八億六千九百万円のほか、昭和三十六年度分三十億三千四百万円、昭和三十七年度分二十億四千六百万円及び昭和三十八年度分六億三百万円を合わせて六十五億五千三百万円を総額とする継続費として計上いたしております。  このほか増勢分初年度維持費といたしまして、(項)防衛本庁におきまして三億八千四百万円を計上いたしております。  航空自衛隊運営に必要な経費は、(項)防衛本庁三百九十五億二千万円、(項)施設整備費三十一億二百万円、(項)施設整備等附帯事務費六千万円、計四百二十六億八千三百万円でありまして、これを昭和三十四年度に比べますと、三十六億八千二百万円の増加となっております。  このうち(項)防衛本庁におきまして五十四億二千百万円の増加、(項)施設整備費におきまして十七億千九百万円の減少、(項)施設整備等附帯事務費におきまして二千万円の減少となっております。  このほか航空自衛隊に属する分として国庫債務負担行為に、(事項航空機購入七百二十四億三千四百万円、(事項器材整備八十七億六千七百万円、(事項施設整備十六億六千五百万円、計八百二十八億六千七百万円を計上いたしております。  この内訳のおもなものを申し上げますと、現態勢、すなわち昭和三十四年度末における航空機千十九機、自衛官三万三千二百二十四人、自衛官以外の職員四千三百八十四人の維持に要する経費として、(項)防衛本庁におきましては三百六十八億九千五百万円、(項)施設整備費におきましては五億六千百万円、(項)施設整備等附帯事務費におきましては七百万円を計上いたしております。   次に、増勢分経費といたしましては、昭和三十五年度に増加予定いたしております航空機百二十七機、自衛官三千四百八十六人、自衛官以外の職員五百十四人に要する初度経費を、(項)防衛本庁におきましては二十億九千九百万円、(項)施設整備費におきましては二十五億四千百万円、(項)施設整備等附帯事務費におきましては五千二百万円を計上いたしております。  次に、増勢分初年度維持費といたしまして、(項)防衛本庁におきまして五億二千六百万円を計上いたしております。  以上をもちまして防衛庁予算の概略の説明を終わります。何とぞ慎重審議の上、御賛成下さるよう御願いいたします。
  15. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) これより質疑に入ります。
  16. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 問題になりましたこのターターについてちょっとお尋ねしたいのですが、まずターター性能その他について一つ説明を願いたい。
  17. 山下武利

    政府委員山下武利君) ターターは、御承知のように艦上対空と申しますか、船から空を迎え撃つところの誘導弾でございまして、ごく小型のものでありまして、主として駆逐艦程度小型艦艇に搭載するように設計をされておるものでございます。現在、米海軍におきまして開発を終わりまして、約二十隻ばかりの艦艇を目下建造中でございまして、それに伴いましてターターも逐次米海軍の手によって購入をされて参るというような段階になっております。防衛庁といたしましては、米海軍計画とも呼応いたしまして、その一つ購入したいという計画を持っておるわけでございます。  性能につきましては、まだ公表されておらない面も多いのでございますが、現在までのところ米海軍といたしまして公表いたしましたところでは、大体射程が十ノーチカル・マイル、スピードが約二マッハ、誘導レーダー・ホーミングというようなことになっております。
  18. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 このターターを買い入れるというのですが、これは何ですか、一機を買い入れるのですか、それを何に装備しようとしているのですか。それから、その総額ターター総額は一体どのくらいになるのですか。
  19. 山下武利

    政府委員山下武利君) ターターは、三十五年度予算でお願いいたしております甲型警備艦、約二千六百トンの排水量を持つところの警備艦でございますが、これに一機装備をするという計画でございます。価格につきましては、目下米海軍当局と交渉しておるところでございます。ターターそのものは、米海軍の方から無償でもってMAP供与を受けるということに相なっております。これに関連いたします器材の一部も無償でもって供与を受ける計画でございます。その残り関連器材等につきまして、有償でもって日本側負担をして米海軍の方から援助を受ける、こういうことになっているわけであります。日本側負担につきましては、まだ最終的な結論に到達いたさないのでございます。大体この予算といたしましては、三十四年度当初において二十八年度間のレーダー換装費並びに三十一年度間の主砲の換装費として計画いたしましたところの金を振りかえて充当いたすということにいたしておるのでございます。その金額は、国庫債務を合わせまして、総額二十二億三千六百万円ということに相なっております。従いまして、防衛庁といたしましては、この範囲内でもって契約をするように、目下折衝を続けているところでございます。
  20. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうも、その総額がわからないのに、日本分担額だけがわかる、明瞭だというのは、どういうことなんですか。そこのところがよくわからないのですがね。
  21. 山下武利

    政府委員山下武利君) 大体、このターターにつきましては、当初は無償でもって援助をしてもらいたいような希望も持っていたのでありますが、米国といたしましても、援助経費がだんだん減って参っておるという事情から、全部は負担はできないが、約半額の負担であれば考慮してもよろしいというような話が去年の秋以来あったわけであります。総額につきましてはまだ明確にいたしておりませんが、大体、ターター並びにその関連器材の一部を米国側が持って、その残り関連器材日本側が持つ、全体としてほぼ半々程度のことにいたそうということで、目下話し合いが進んでおるわけでございまして、日本側負担は大体において今申し上げましたところに落ちつく見込みでございます。
  22. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうもそこのところが、総額がわからないのに日本側分担額だけが確定をし、しかも三十四年度の予算で支払わなければならないという、その辺の事情がどうもおかしいし、よくわからないのですが、それなら、別な方から聞きますが、今、搭載艦は三十五年度から建造し始める艦に搭載するというお話ですが、一体その艦はいつ完成をするのですか。
  23. 山下武利

    政府委員山下武利君) 現在の線表では、三十五年度中に契約をいたしまして、三十六年度の末あるいは三十七年度の初めくらいに進水をいたしまして、完成をいたしますのが三十八年の八月と考えております。
  24. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、完成をするのはずっとはるかにあとで、たとえば四年後くらいになる。それから、まあその間に逐次装備をしていくんでしょうけれども、それにしても、そういう装備艤装がことし来年ということにはならないように思いますが、そういうふうに考えると、何も今これを、急いで今日三十四年度に支払いをしなければならぬというような必要は毛頭ないと思いますし、しかも、その支払いは一体どこにするのですか。それから、さらにアメリカの分担分、半分くらいはアメリカが分担すると言われるが、そのアメリカの分担分はどういう形式でどこに払われるのですか。その辺の事情はどうなっておりますか。
  25. 山下武利

    政府委員山下武利君) アメリカの分担分はアメリカがアメリカの会社に発注いたしましたものを日本無償供与してくれるということに相なっております。  それから、初めの方のお尋ねでございますが、このターターは三十四年度中に契約をいたしまして、一部の前払い金をすることになるわけでございますが、最終的にこれを入手いたしますのは大体三十六年度の末と考えております。従いまして、ちょうどこの三十五年度の警備艦が進水をいたします時期に入手をして、それに約一年余りの艤装という年月をかけまして、三十八年度の八月に全部完成した船を受け取るというふうに、こういうふうにターターの入手と船の線表というものをあわせて考えておるわけでございます。それから、前金の支払いは、米海軍に対して直接の支払いをする。これは一般の有償援助と同じ支払いの形式をとっております。
  26. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その前払いの支払いはいつやるのですか。
  27. 山下武利

    政府委員山下武利君) これは、この支払いの条件につきましては、総額とともに現在米側と交渉中でございまして、まだ正確にきまっておりません。もとの予算にありましたところの主砲換装並びにレーダー換装の経費は、三十四年度に三分の一、三十五年度、三十六年度におのおの三分の一ずつということになっておりまして、三分の一が歳出、三分の二が国庫債務ということになっておりまして、その条件の範囲内で契約ができるものと考えております。
  28. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、支払いは今でもまだ金額がきまらないとすれば、三十四年度末までには支払う必要はないんだということになるのじゃないですか。年度を越してからでいいんだし、そんなに急ぐ必要もなんにもないということになるのじゃないでしょうか。
  29. 山下武利

    政府委員山下武利君) 目下のところは、大体最後の交渉の段階に至っておりまして、本年度末すなわち三月末までに契約に至ることに相なろうと思います。契約と同時に一部の前金を支払うということになると考えております。
  30. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、その二十二億三千七百万円というものを払う年割りといいますか、あれは大体どういうことに見当をつけておられるか。
  31. 山下武利

    政府委員山下武利君) 年割りのことは、目下交渉中でございますので、最終的な決定に至っておらないのでございます。この予算額といたしましては、三十四年度が七億四千五百万円、三十五年度が六億二千八百万円、三十六年度が約七億九千万円、これは三十六年度はまだきまっておりませんですが、大体こういうふうな年割りでもって実はもとの予算ができておったわけでございまして、この条件の範囲内でもって契約できるものと考えておるわけでございます。
  32. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、その予算は、七億四千五百万円というのは、三十四年度の歳出予算になっておるわけでしょう。あと、さらに継続して歳出予算がずっと見られていたんですか。それから出すんですか。それとも、前の御説明によると、そうじゃなくて、あとの十五億程度は国庫債務負担行為だと、それが年々予算化してくるんだと、こういうふうに聞いていたんですが、そこのところはどういうふうになっておりますか。
  33. 山下武利

    政府委員山下武利君) その通りでございます。三十四年度の予算といたしまして、歳出に七億四千五百万円、国庫債務として十四億九千二百万円、合わせて二十二億三千七百万円という契約権限というものが三十四年度予算で認められておるわけでございます。そうしてこの国庫債務の十四億九千二百万円の三十五年度における歳出化分といたしまして、三十五年度予算に六億二千八百万円というものが計上されておるわけでございます。
  34. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それから、次は。
  35. 山下武利

    政府委員山下武利君) 三十六年度分といたしましては、三十六年度に歳出化いたすわけでございますから、三十四年度にいたしますところの実際の契約額というものを見て、三十六年度に計上することになるわけでございます。全体の契約権限としては二十二億三千七百万円でございますから、この差額が一応三十六年度に予算化されるわけでございますが、あるいはもう少し安くするかもしれない。そういう場合には、その差額を三十六年度に計上していくということになるわけでございます。
  36. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いつか大蔵大臣の御説明では、そのところが——そうすると、三十四年度、三十五年度の経費に入っておるというようなお話がありましたが、歳出予算は三十四年度のところで、あとは国庫負担行為がそのまま歳出予算化していくと、こういうふうに考えていいんですか。三十五年度の歳出予算からもそれに充当されるものがあると、こういうふうに見るのですか。
  37. 山下武利

    政府委員山下武利君) その通りでございまして、国庫債務負担行為は、三十四年度に入っておる十四億九千二百万円でございます。それと三十四年に歳出として入っております七億四千五百万円、これを合わせて二十二億三千七百万円というものが三十四年度中に契約し得る権限、いわゆる契約権限ということになります。そこで、三十四年度中には七億四千五百万円だけは支出する権限を持っておるわけであります。残りの十四億九千二百万円は、三十五年度、三十六年度にこれを歳出化していくということに相なるわけでございます。で、そのうちの年割りといたしまして、三十五年度には、現在提出しておりますところの予算には六億二千八百万円というものが三十四年度の国庫債務の歳出化の予算として載っている、こういうことでございます。
  38. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 もう一つお聞きしたいのですが、それが国庫債務負担行為の歳出化の問題として出てくるわけでしょうが、一体それは財政法あるいは会計法上から厳密にいって、移用、流用その他、どれに当たるというふうに考えておられるのですか。
  39. 山下武利

    政府委員山下武利君) 会計法上のいわゆる流用と申しますのは、目と目との間を移しかえることを流用と申しているわけでございますが、そのターターのもとになりましたところの主砲換装及びレーダー換装の経費というものは、当防衛庁の中の目の器材費の中の節の武器、備品費並びに通信器材購入費というところに入っているものを充当したわけでございまして、財政法上で申しますと、移用でも流用でもないのでございます。たまたま主砲並びにレーダーの換装に充てようとして考えておりましたところの武器、備品費並びに通信器材費をそのままの科目でもってターター購入に充てる、こういうことでございまして、財政法上に何ら違法という問題は生じてこないわけでございます。  なお、これを実際の目的上から申しましても、海上自衛隊といたしましては、警備艦につけておりますところの装備品を逐次高度のものに整備強化していきたいということを考えておったわけでございまして、ことに対空火器というものの性能向上をもくろんでおったわけでございます。たまたま二十八年度艦は、DDCと申しまして、司令の乗るところの船でございましたので、これに強力なレーダーを付置したい。従来、マーグで供与を受けておりましたものよりもさらに性能のいいものをつけたいということで、それの有償援助をお願いしておったわけでございます。それから、三十一年度艦はDDAと申しまして、特に対空装備の強化を目ざしておったところの船でございますが、これにつけておりましたところの主砲がスロー・ファイヤーと申しまして、もう少しそれを速射砲と申します性能の高いものにかえたい、これをやはりMSMSで要求しておったわけでございます。ところが、その段階におきまして同じく対空火器の最も強力なターターというものを有償援助でもらう見込みが立ちましたので、同じ対空装備の強化という目的に合うということから、予算を当初の計画を変更して流用した、こういうことでございます。
  40. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その移用でも流用でもないということですが、しかし、目的外使用にはなっていないという御説明のようですが、一体この国庫債務負担行為というのは、ある意味では年割り額その他きまっているのですから、非常に不確定な経費だと思いますが、それは不確定なものであるから何にでも簡単に使える、移用、流用に準ずるようなことは何でもできるというふうにお考えになっておるのか。というのは、目的外の使用を禁じた場合に、その目的外の使用を原則的には禁ずるが、しかし大蔵大臣の承認を得ればそれができるという場合には、そういう経費としては歳出予算及び継続費についてだけ規定をしているわけですね、財政法では御承知の通りに。それで国庫債務負担行為についてそういう変えたり何かすることができるということは、どこにもうたっていないんです。だから、そういうものは不確定な経費であるから、そういう自由な動かし方ができないのだというふうにむしろ考えるべきじゃないか。そういう意味において、財政法三十二条なり三十三条で、特に歳出予算継続費についてだけ限定をしていて、国庫債務負担行為については何らそういう規定を設けていないのですね。その点、あなた方はどういうふうにお考えになっているのですか。
  41. 山下武利

    政府委員山下武利君) 財政法の解釈でございますから、あるいは財政当局の方からお答えした方がいいかと思いますが、私たちの解釈といたしましては、国庫債務負担行為というものも決して自由ではありませんで、あるいは器材整備、あるいは航空機購入、あるいは施設整備、あるいは艦船建造というふうに、目的を定められておるわけでございまして、その目的を変えてこれを勝手に他の費目に用いるということは、これは財政法上認められておらないと思います。しかし、器材整備という中で認められておるものでありますれば、この予算執行の過程におきましてより有効な使用というものが出てきた場合に、そちらに持っていくということは財政法の禁ずるところではないと考えております。
  42. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、それは歳出予算なりあるいは継続費についてそういう移用なり流用をすることが、承認を得さえすればできるということを言っておるだけで、国庫債務負担行為についてそういうことができるという規定は何らないですよ。ということは、これの精神では、そういう国庫債務負担行為というのはいまだ支出権限ができていないのだから、そういうものについておよそそういうことを考えること自体が初めから問題にならないのだという考え方で、これは抜いてあるというふうに考える以外にないのじゃないか。それを、ただ科であるとか目であるとか、むしろ節の中の内部の流用の問題だから、そういうことは問題にならないのだという、歳出予算並びに継続費に関連した問題としてそれと同じように扱っておられたら、非常な間違いなんじゃないか。
  43. 山下武利

    政府委員山下武利君) 御意見でありまするけれども、私たちといたしましては、この歳出と国庫債務負担行為、歳出と継続費というものは、一本として一つの目的に使用するというふうに考えておるわけでございます。もとより歳出予算が違法な移用、流用をいたすという場合は考えられないわけでございますが、本件のような場合には、その一部を出しておりますところの歳出予算というものは、同じ目の同じ節の中で、ただ単に対象を変えたというだけのことでありまして、財政法にいうところのいわゆる移用とか流用というものに当たらないのでございます。それに伴っておりますところの国庫債務負担行為でありますから、当然認められる範囲のものであると考えております。
  44. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、そうではなくて、三十二条にはっきりしているように、歳出予算及び継続費について云々と、移用とか流用とかいうような問題が問題になるわけですね。従って、それ以外の国庫債務負担行為というようなものについては、そういう変えることがおよそ問題にならないのだということを、ここでは逆に裏からは言っている。そうでなければ、あなたのような解釈になれば、国庫債務負担行為であれば、科であろうと目であろうと節であろうと何であろうと、移用というか流用というか、それに準じた目的外の使用は何でもできるのだということになるわけです。それを、わざわざ国庫債務負担行為をこういう目的外使用のところに入れなかった、入れてないから何でもできるのだということになれば、これは目的外使用は無制約にできる、あなた方の解釈その他から考えれば、ということが声えるわけなんです。
  45. 山下武利

    政府委員山下武利君) もとより国庫債務負担行為も無制限に何にでも使えるというわけではございませんで、予算書の上では当然、先ほども申しましたように、器材整備弾薬購入、あるいは艦船建造施設整備費等に目的が限られておるわけでございます。ただ、その中で当初に考えておったものをどの程度変え得るかという問題でございますが、本件のような場合には何ら内容を変えていない。つまり、器材整備の中に認められておるところの国庫債務負担行為でございますが、同じ対空火器の装備というところに持っていくわけでございまして、これは財政法上から申しましても、また法の精神そのものから申しましても、決して目的外にこの国庫債務負担行為を使ったんだということにはならないと考えるのでございます。財政法の禁ずるところではないと思います。
  46. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならば、それを変える、このターターに変えるというようなときには、もう大蔵省その他にも話し合いその他は何にも必要ないんだ、承認その他の手続を経る必要もないんだというふうにお考えになって、そういうふうに処置しておられるのですか。
  47. 山下武利

    政府委員山下武利君) もちろん、予算の執行につきましては、逐一大蔵省にも御連絡し、また内容の変更等につきましては、そのつど御了解をとってやっておるわけでございます。ただ、本件のような場合は、いわゆる流用について大蔵大臣の承認を要するという意味の流用には当たらないということでございます。
  48. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その点も、この財政法の規定と照らして、国庫債務負担行為がそういうふうな扱いができるのかどうかということについて、私、非常に疑問を持っておるし、どうも納得がいきませんが、これはそれじゃ、別な機会にさらにもっとお尋ねすることにして。  やっぱり、なおわからないのは、総額の、アメリカ側が分担する金額、それはアメリカの側が。こちらが分担する金額は、こちらから金でアメリカ軍に支払いをする、こういうことになりますね。そうすると、アメリカから支払うものはアメリカの軍が、この間の大臣の御説明によると、アメリカの方から金銭で日本側に支払いがなされて、それが日本から向こうに払われるんだというふうなお話じゃなかったかと思いますが、そこのところはどうなるのですか。
  49. 山下武利

    政府委員山下武利君) 本件ターターの場合につきましては、一般のMSA方式と同じでございまして、先ほども申し上げましたように、日本の分担分につきましては日本側がアメリカ軍に支払います。アメリカの分担分につきましてはアメリカ側が、アメリカの政府がアメリカの会社に支払う、こういうことでございます。日本の方の経理の資金勘定を通すということはないのでございます。  それから、今お尋ねの点のあるいは大臣が言われたという点は、今度のロッキードに関する問題かと存ずるのでございますがこの、F104の場合につきましても、アメリカの負担分というものは、日本にじかに金を払って、日本政府にじかに金を払い込んでくるというものではないのでございまして、日本契約会社がアメリカの会社から買います分につきまして、アメリカ政府の分担分だけアメリカ政府がその受け取りを確認した上でアメリカの会社に支払う、こういうふうなことになっておるわけでございます。
  50. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、その点もさらにお聞きしようと思っておったのですが、それじゃ、その点にちょっと入りますが、F104の日本の分担分は六百九十八億だというのがこれまで言われてきたんですが、これも、しかしこれは国庫債務負担行為になって、年割り額がわからないのですけれども、しかしこれの生産計画なり、従ってそれに応じて日本年割り額として出さなければならない金額等は一応ほぼわかっているから、こういう計画ができたんだと思うんですが、その生産計画なり、あるいは従って支出しなければならない年割り金額というようなものは、どういうふうに防衛庁ではお考えになっているんですか。これは大臣自身がよく御存じだと思います。
  51. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) その国庫債務負担行為の中でも六百九十八億円は二百機の生産、そのうち実用機は百八十機、練習機が二十機、その予算折衝、予算要求のための価格の折衝をいたしまして、その価格から割り出した国庫債務負担要求が六百九十八億になっております。それに対して、四十年度までに生産することになっておりますから、生産計画等につきましてはこれから指定会社等と折衝をつけていくわけでございますが、大体の生産計画を持っております。その裏づけの財政計画等につきましては、財政当局とまだ最後的な打ち合わせができておりません。三十六年度だけは大体、いろいろな場所で申し上げているように、五十六億——五、六億というものが予算化するということは大体話し合いになっておりますけれども、四カ年についての財政の裏づけについては、そのときどきの財政計画、そういう点もあろうかと思いますが、まだ確定的にまとまっておりません。生産計画等については、大体私の方でその予定は持っております。
  52. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その生産計画の大体の予定を持っておられるというのは、一体どういうことに、いつから生産が開始され、いつから最初のものができてきてそうしていつ完成をするか。特に三十六年度は、アメリカ側から買い入れるものを考えて三十六年度と言っておられるのか、それはすでに三十五年度に出るのか、そこらの事情はどうなっておりますか。
  53. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 装備局長から御説明申し上げます。
  54. 塚本敏夫

    政府委員(塚本敏夫君) 生産計画は、大体三十七年の三月に国産機の第一号機ができまして、四十年の一月に全部を終わる。で、最盛期におきまして、月産大体七、八機ベース、こういうことでございます。
  55. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうしますと、そういう計算でいくと、三十七年三月から四十年——三十九年までの間、それまで大体どういう機数でできてきますか。
  56. 塚本敏夫

    政府委員(塚本敏夫君) ただいま申しましたように、国産機、これはノック・ダウン機でありますが、これが当初に出ますのが三十七年の三月で、それから大体一機ずつずっと作りまして、三十七年の七、八月ごろになりますと二機ないし三機、こういった状況で、三十八年の八月ごろから、さきに申しました七機ないし八機ベースがずっと入って参る、これが最後まで続きまして、四十年の一月に最終機ができる、こういうような大体の計画であります。
  57. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、大体三十七年度、三十八年度、三十九年度、おのおの年度にして幾らずつになりますか、今の見込みでいきますと。
  58. 塚本敏夫

    政府委員(塚本敏夫君) 三十六年度が、でありますから、一機であります。それから三十七年度は、これはまあ大体でありまして、実際の生産計画とある程度狂ってくると思います。これは実際、これからロッキードと生産担当会社が契約をいたしまして、さらにまた日本政府が本年度、三十五年度末に契約をいたしまして、現実の生産計画を作るわけであります。われわれがただいま予想いたしております生産計画の大体の予想でありますが、これが三十七年度に四十四機、三十八年度に八十五機、三十九年度に七十機、大体そういうふうな年度別の計画を予想いたしております。
  59. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そういうふうに年度別計画がわかるとすれば、それに照応して、その裏打ちをする予算の支出として必要になるものが各年度別にどうなるかということは、おのずからわかると思うのですが、それはどうですか。
  60. 山下武利

    政府委員山下武利君) 生産計画は大体今のように立っておるわけでございまして、従って、佐多委員のおっしゃるような、それに裏打ちになるところの歳出化計画というものがあるはずじゃないかというお尋ねでございますが、実は各年度にどれだけ払っていくかということは、まだこれから会社と契約をして見た上でないと、実ははっきりしたことが出て参らないわけでございます。と申しますのは、これはほかの、たとえばF86あるいはT33といったような航空機とも同様でございますが、全部でき上がってから支払いをするというのではございませんで、一部前金で支払っていくということに相なるわけであります。その前金をどの程度に認めていくかということは、会社の資金繰り等ともにらみ合わせてきめなければならないわけでございますが、どの限度に支払っていくかということは結局契約の段階においてきまってくるわけでございまして、今日生産計画はきまったからといって、すぐにその裏打ちで幾ら金が要るということには当然には出てこないわけでございます。ただ、防衛庁といたしましては、全体大きい計画でございますから、いろいろと試算はいたしておるのでございますが、それが最終的に政府としてきまったという段階のものではないのでございます。
  61. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、政府としてきまらないというのは、それは予算その他がきまらないし、国庫債務負担行為年割り額がきまらないので、それはきまらないのだということはわかりますが、ただ、今のようなお話で、生産計画が、それに大体計画がついていれば、少なくともその生産に見合う所要の金額は幾らかということは算術的に出てくるはずです。それがさらにどういう支払いの式になるかは、もっとこれから聞こうと思っているんですけれども、そういう生産計画を持っておられる場合に、その所要の経費は幾らになるかということは算術的に出てくるから、それをまず示していただきたいと思う。あなたの方では、これは一機百十三万ドルとか幾らとか言っておられるわけでありますから、そこからおのずから出てくるのじゃないですか。その経費は幾らになるか、各年度別に、今の生産計画に照応して。
  62. 山下武利

    政府委員山下武利君) ただいま申し上げましたように、清算払いでありますれば、一応生産計画がきまればその年度に要る金というものが出てくるわけでございますが、前から申し上げておりますように、この航空機契約というものは非常に複雑な前金の制度をとっておりますので、前金をどういうふうな割合で払っていくかということがきまりませんというと、ただ生産計画がきまったというだけですぐにその年度の所要資金というものは出て参らないのでございます。財政法で現在認められておりますのは、契約に対しまして四割までの前金払いをすることができることになっております。しかし、この大きな六百九十八億にもなりますところの四割というものを最初に支払うということは、とうてい考えられないわけでございます。その前金というものをどういうふうな割合で割り振っていけば一番有効に予算が使用できるかということを、いろいろこまかく計算をしてみないと出て参らないのであります。これは契約を締結します段階におきまして、いろいろ相手方との交渉の過程においてきまるということでございます。
  63. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 だから、予算支出の見込みを今出せということではないのですよ。私は、そうではなくて、生産計画が今示されたようなふうに大体の見当がついているのなら、これの所要の経費、それぞれの経費は積算して幾らになるかということは簡単にわかることだから、これをまず示してもらいたい。その上で、そういう所要の経費を今度は各年度ごとにどう割り振って、前金として幾らやるか、完成のときに、これの完成品がどうなるかということは、その次の段階の計算になるでしょう。
  64. 山下武利

    政府委員山下武利君) ちょっと、御質問の趣旨が私よく受け取りかねるのでございますが、これはある年度に何機出るということがわかっておれば、それに百十二万ドルをかけたものがその年の経費ではないかというふうなお尋ねではないかと思いますが、それは計算すればすぐ出るわけでございます。
  65. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 まず、それを示していただきたい。
  66. 山下武利

    政府委員山下武利君) それはすぐ計算すれば出ます。
  67. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それは、むしろ装備局の方で持っておられる。経理局の問題じゃないかもしれませんが、装備局の方では簡単に出るわけです。
  68. 山下武利

    政府委員山下武利君) これは、経費の積算と申しますのは、たとえば一機当たり百十二万ドルというふうにいわれておりますけれども、実は一機当たりの単価が出てから総額がきまったのではなくして、全体が先にきまって、それをたまたま二百機なら二百機で割ってみると一機当たりが幾らになるという、説明便宜としてあとから出て参った数字が百十二万ドルということでございます。従いまして、それをその年度に出てくる機数にかけて、その年度の経費が幾らということには相ならないのでございます。誤解のないように、ちょっとその点を申し上げておきたいと思います。
  69. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならば、そういうふうなずさんなものを、今何を急いで、しかも七百億にも及ぶような大きなものを、国庫債務負担行為としてことしきめていかなければならないかという問題に、問題はもとの問題に帰るのです。そういうものがまだ、大体の一機幾らというような検討すら逆算した程度しかわからないのに、今ここで国庫債務負担行為という、しかも非常に膨大な七百億にも及ぶ、そしてあとにはおそらく、三十六年度は大臣は五十七億程度と言われますけれども、これは後年度になれば二百億をこえることになると思う。非常に膨大な金額になる。そういうものを、ただ総額が幾らになったからそれを機数で割ってみれば一機が幾らだというようなことで、非常に漠然としたものを、何を急いで今、しかも大量に大きな金額をおきめになるか。そこのところがわれわれにはどうしても納得し得ないところなんで、そういう意味で私はその点を聞いておるのですけれども、どうもその点ははっきり御説明にならないから、これ以上はあれしませんが、ただ、もう一つそれに関連してはっきりしておきたいのは、今お話しでしたが、大臣は、いつもコスト・シェアリングだというふうな説明をしておられますが、そういう場合に、なお日本でそれを生産をする、国産をする。そうすると、その金の一部分は、アメリカ側が負担するのも、日本に払われるということになりますね。その日本に払われる場合に、その金はどういう経路でアメリカ側から払われてくるのか。
  70. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) コスト・シェアリングで、費用の分担という形で、無償援助というものはだんだんなくしていきたいという向こうの話であります。でありますので、このコスト・シェアリングにつきましても、個々的に飛行機についてとかというような形でなく、全体としてのコスト・シェアリングという傾向になっております。しかし今の場合は、F104の場合は、F104の国内生産についてのコスト・シェアリングになっております。そこで、向こうの分担でありますが、七千五百万ドルに相なっております。この七千五百万ドルの分担も、これは年度割りでだんだん向こうも出してくると思います。これは、直接日本政府に入ってくるのではございません。向こうでアメリカの政府が、たとえば火器管制装置のナサールというようなものを調達する。向こうのアメリカの政府がその会社へ支払う。あるいはまた、日本生産会社がロッキードから買うものがあります。そういうものに対しまして日本政府がこれを認めた場合に、向こうへ通知をいたしますると、アメリカ政府の方で、向こうのロッキード会社ならロッキード会社に支払う、こういう仕組みになって、直接向こうの金が日本政府の歳入という形で入ってくるわけではございません。そういう形で分担するということになっております。
  71. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それは、しかし日本が、本来ならばロッキードに払わなければならない金を、向こうは向こうで、こっちへ払わなければならない金と振りかえに払う。振りかえ操作を会計上やるというだけであって、コスト・シェアリングである限りは、こちらにそれだけの歳入があることにはっきりなるんじゃないですか。ただ計算上振りかえをするだけである。だから、そういう意味であれば、これは当然に日本の歳入に入れなければ、そこがこのコスト・シェアリングの場合と現物給与の場合の違いだと思う。そういうことは何らお考えにならないで、日本の歳入にもならなければ、歳出にもならないというようなものを、別途そういうことによっておられるということは、どうも会計上の体系なり何なりを乱すことになる。それはどういうふうにお考えになりますか。
  72. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 装備局長から説明いたします。
  73. 塚本敏夫

    政府委員(塚本敏夫君) ただいま長官からも申し上げましたように、コスト・シェアリングの体系については、いろいろ米側として考えておりまして、そういった物で、向こう側が半分を供給する、あと日本側は半分を日本の財政支出で負担する、こういうようなコスト・シェアの考え方、これがまあ大体今までとってきておるコスト・シェアの考え方であります。ですから、この今度のF104の場合におきましても、向こうは金でくれるという意味でありませんで、向こうが、米国の会社でできるものを、七千五百万ドルの範囲内で負担しよう、そのものを日本に供給しよう、こういう形のものであります。でありますから、現金で日本政府にくれるという意味合いのものではないわけであります。
  74. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、向こうでロッキードに支払わなければならない金は、日本の国産をする会社がロッキードに支払わなければならないわけでしょう。全部こっちの国産をする会社がそういうものを集めて買い入れて、そうして国産をするわけなんですから。
  75. 塚本敏夫

    政府委員(塚本敏夫君) ロッキードと三菱が契約する場合の分も、アメリカ側が払ってくれる場合もあると思います。それから、アメリカ政府自体が、自分で買って、それを物でよこすという場合もあるわけでありまして、両方の場合、これはやはりコスト・シェアの考え方に入る、こういうふうに考えております。
  76. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、それはコスト・シェアでなくて、現物給与になるわけですが、今までのターターその他と同じことになるわけですか。
  77. 塚本敏夫

    政府委員(塚本敏夫君) でありますから、さっき申し上げておりますように、コスト・シェアの考えの中には、向こうが現物でくれる場合もコスト・シェアという考え方であります。
  78. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならば、何もコスト・シェアリングに変わっていくんだというふうに言う必要はないじゃないですか。
  79. 塚本敏夫

    政府委員(塚本敏夫君) 従来は、いわゆるマップにつきましてはコスト・シェアの観念がなかったわけでありまして、そのコスト・シェアというのは、非常に広い意味のコスト・シェアでありまして、たとえば、いわゆる日米共同して生産をするという場合におきましては、相当金銭的なコスト・シェアの観念が強かったわけでありますが、マップにつきましては、従来そういった日本側がどれくらい負担しろというような観念は全然なくて、ただ単に向こうがこれだけのものをくれるということでやってきたのでありますが、アメリカの国内事情によりまして、だんだんマップにつきましても、日本にある程度負担してもらいたいという観念が出て参ったわけであります。そういう観念を、だんだんコスト・シェアの考え方を広く考えまして、マップにつきましては、ある装甲車を日本がマップでもらいます場合に、そのほかのものでもいいから、日本はアメリカから、たとえばMSAで有償で買ってくれ、こういうようなこともやはり一種のコスト・シェアであるというふうに向こうは解釈いたしておりまして、そういうふうにだんだんコスト・シェアというものは変わってきておるということを長官から申し上げたわけであります。
  80. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、F104の場合に、コスト・シェアリングといっても、それに装備する一部の部品なり何なりを向こうで買って、それを部品としてこちらの国産会社に与える、こういうふうな考え方だというふうになるんですか。
  81. 塚本敏夫

    政府委員(塚本敏夫君) そういうものと、それから日本生産担当会社が、ロッキードあるいはその他のアメリカの会社から買います場合に、その代金をアメリカ政府が支払ってくれる、こういう両方の考え方が入ると思います。
  82. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 だから、日本の会社が払わなければならない代金を、アメリカの政府が直接に払うというのならば、それはやはり金銭として日本の会計の収入になって、同時に、それが支出になる。支払いをただアメリカが直接にやってくれるだけだ、こういうことになるんじゃないですか。
  83. 塚本敏夫

    政府委員(塚本敏夫君) 日本生産会社が向こうと契約しまして、その代金はアメリカが払ってくれるというのは、これは日本政府にその金を与えるということではなくて、それによって得たものを日本政府に与えるということでありまして、金で日本に与えるという意味ではないわけであります。
  84. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、また現物給与そのものになってしまう。そうじゃなくて、現物給与と別な形式があって、それがコスト・シェアリングだと言われるから、それならば、支払いなり何なりを簡単にするために、直接に日本政府に払い込まなくて、そういうめんどうなことをやらなくて、すぐ直接向こうに払うかもしれない。しかし、それはあくまでも日本政府の収入になってくるんじゃないですか。
  85. 塚本敏夫

    政府委員(塚本敏夫君) でありますから、F104の場合におきましては、非常に広い意味におきましては、現物でくれるというコスト・シェアでありまして、金銭によるコスト・シェアではない。長官が申しましたのは、いろいろの意味のコスト・シェアがある。その中で、だんだんマップ等につきましては、そういった日本側も半分負担しろという意味合いが強くなってきておるということを述べただけであります。
  86. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そのターターの場合とは違うのだということをしきりに言われる場合には、コスト・シェアリングの問題を言われる。それからまた、だからそれは日本政府の収入になるんじゃないかという議論になると、また逆に完全の意味における現物給与のときと違うのだというような議論で、それでは私は納得できませんけれども、私一人でやると全部使ってしまいますから、これでやめます。なお問題は残しておきます。
  87. 辻政信

    ○辻政信君 防衛庁に数日前からきょうの質問に必要な資料の提出をお願いしておきましたが、ただいまいただいた資料を見ますというと、私がお伺いしたいことは載ってない。時間がなかったから仕方がない。従ってこの提出資料に基づいて本格的な質疑をすることはできませんから、これは他日さらに掘り下げて他の機会にやりますが、ただいま佐多さんが質問されたことに関連をいたしまして、まず空幕の予算一つお伺いしたいことがあります。それは104を整備するのが大体四十年末になる。そうすると104がほんとうに日本の防衛の力を発揮するのも四十年の末になる。これからそれまで約六年間ありますが、その六年間の日本の領空の警戒とか防衛はどうしてもあの古いF86でやらなければならない。ところで、このF86というやつは金門、馬祖のおととしの戦いでミグ17に負けたやつです。そういう時代おくれのもので五年間日本の防空を達成しなければならないが、この大きなギャップと欠陥を防衛庁長官はいかにして補おうとされるか、現実問題で……。
  88. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 現実の問題としてはF86Fがありますが、F86Dは御承知のように性能がよくなっております。逐次出てきているものを第一線に——104もこれは出しますが、そういうものを総合して、日本の防空の責任を果たしていきたい。それにもう一つは、安全保障条約等によりまして、米軍の飛行機も日本にきております。そういうものを総合してこの態勢を保っていくという以外にはちょっと考えられません。
  89. 辻政信

    ○辻政信君 F86Fの性能改善で何とか力をつけようということを考えておられますか。
  90. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) F86Fの性能改善は考えていません。F86Dの供与を受けております。F86Fの性能の改善を、ごく少ない機数において改装をするものも考えておりますが、全般的には考えておりません。
  91. 辻政信

    ○辻政信君 ごく少ない機数というのはどのくらいの機数で、どのくらいの金をかけるのですか。
  92. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 戦闘機といたしましては改造二機、それから偵察機として十七機の改造を考えております。
  93. 辻政信

    ○辻政信君 戦闘機として改造する場合にどのくらいの金がかかって、どのくらいの性能がプラスになりますか。
  94. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 事務当局からお答えいたさせます。
  95. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 86Fの改造につきましては、現在考えておりますのはロケット・エンジンをつけまして高度を上げる。大体現在の86Fは御承知と思いますが四万数千フィートでありまして、六万フィートのところまで上げるようにいたしたいということを考えておるわけでございます。金といたしましては二機試験的に改装する費用として五千七百万円入っておると承知しております。
  96. 辻政信

    ○辻政信君 その五千七百万円で二機を改装して、そして能力は四万フィートから六万フィートに上げるのですか。スピードはどのくらいですか。
  97. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) スピードの点については上昇力をつけるという点に重点を置く考えであります。上昇限度を上げるということです。四万数千フィートしか上がらないものを早く二分ぐらいの間で上げるということであります。
  98. 辻政信

    ○辻政信君 そうすると、上昇力を早く上げるということは、スピードを増さなければ早く上がらないことになりますね。そうでしょう。そうするか、航続力を増すか、どっちなんですか。どこに重点を置いているのですか。瞬間の速度を上げるのか、航続時間を長くするために燃料をよけい積むのか、どっちなんですか。
  99. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 上げますために一・二マッハぐらいにいくように改造します。
  100. 辻政信

    ○辻政信君 結局スピードですね。そこでそれを二機やったのは、これは試験的にやるのか、それが成功すれば、現在持っておる三百五十機新しく作る四十数機——四百機全部をそれでやるというのか、単に二機だけやってテストしょうというのか、どっちですか。
  101. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 二機改造いたしまして、運用試験をやってみるということでございますので、その結果によりまして考えていかなければいけないと思いますが、現在われわれは三十六年度以降の次期計画を考えております。私はこれとの関係においてどう調整するか——104も三十七年から出て参りますというふうに考えます。
  102. 辻政信

    ○辻政信君 104が出るのは三十七年に二機だけしか出ない。そんなものは問題にならない。また訓練もできておらぬ。だからほんとうに104が日本の防空の主体として活躍できるのは、どんなにあなた方が勉強しても四十年の末です、実戦部隊として動けるのは。それまで少しずつ出るが、そこで問題は、この時代おくれの改装しなければ役に立たないような、しかもミグ17に負けるようなやつを三百五十機持ち、さらに三菱から五十機近く買おうとしているのでしょう、役に立たないものを作らして。だからどうにもならぬから、スピードが足らぬからというので、二機に五千七百万円を使って、テスト的にこれを改装しようとするのでしょう。ほんとうの腹の中は那辺にあるのですか。この五年間のギャップをどうするかという問題です。せっかく作ったものが四百機役に立たない。新しく作るものは、四十年にならなければできない。このギャップをどうするかということが、この防空の現在における最大の問題なんです。それを予算でも黙っておる、国会でも黙っている。こそこそと二機だけ作って、五千七百万円を飛行機の修理代か何かで、国庫債務負担行為でごまかそうとしている。二機使って、よかったならば少なくとも四百機近いF86Fを百機だけそれに直すのか、全部直すのか、その見積もりはどうなんだ、計画は。それと104との整備計画の食い違いをどう調整していくか。皆さんが104が絶対必要だというのは、86が役に立たぬ、これじゃできないというのでしょう。そうして七百億円というものをぶち込み、地上施設から入れたら大体一千億近くになる。その間の空白はどうなるのだ。F86は役に立たぬでも旅客機にならぬ、一人しか乗れぬから。そうすると、宝の持ちぐされというか、どうにもならぬものをかかえて、売るわけにもいかぬ、使うわけにもいかぬ。これほど見えすいたものを三菱から注文を取り消すことができぬから四十何機税金で買わなければならぬ。ほんとうに今日あなた方は真剣に国民の財産を使うというなら、役に立たぬ飛行機を三菱から契約通り四十機買うようなばかなことをせずに、その金でもって百機なり二百機なりスピードが増すように補修費に充ててそうして少なくとも百機というものは17に対しても19に対しても太刀打ちができるようにする。そこに防空というものの欠陥がある、現在は役に立たぬ、三百何十機が。そういうことで一体いいのか。国民に対して説明できますか、どこに計画を持っているんですか、もしよかったら何機を改装するか、その予算はどうなるか、私の目の子だけでいきますと、四百機を全部改装するとすれば、とてもこの五千七百万円をもって二機はやれない、もっと高くなる。かりにあなた方の数字をほんとうにして、五千七百万円二機として、四百機やったら百億かかるのですよ。百億こすんです。そうすればどうにかミグ17に追いつける。そんな改装をして一体どうするんだ、試験をするつもりで五千七百万円ぶち込むのか、あるいは一つの確信をもってこれができたならば、その百億の金で少なくとも三百機くらい、使えるものにしようとするのか。そうなってくると、使いものにならぬならむしろ全部やめてしまって、そうしてアメリカからでき上がった104を買ってくればよい、国産する前に。四百機改装するやつが百億かかるなら、一機当たり五億、でき上がったのを買ってくれば二十機くるでしょう。これは最新鋭で、訓練もできるし、役に立つ、これをどうするんですか。その計画の見通しを持たずに、先もの買いで104を作るのだとか、六百九十何億要るのだ。国民は反対しておるのです。これができ上がるまでのギャップをどう埋めるかというのが空幕の現在における最大の仕事です。ごまかさずに、その計画がないならないと、五千七百万円をテストにちょっと小づかい使うように使ってみるというならそれでもよろしい。それがよかったら何機改装するのだ、そのギャップをどういうふうに補っていくのか、はっきりここで答えていただきたい。むだづかいしてはいかぬ。
  103. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 御説も非常に考えさせられることでありますが、防衛庁空幕といたしましては御承知のようにギャップと言いますが、今直ちにミグ17等と戦いをしなければならぬというような事態とも考えられません。しかし、そういうふうに対処するための性能をよくするということはもちろん考えなくてはならない。そこで104の生産を開始するわけでありますが、その間におきまして、F86Fあるいは86D、86F等が全然むだなようでありますが、これは機能は104等に劣ると思いますが、全然これが無用の長物のようには考えられません。相当有効にこれは使っていけると、こう考えております。そういう点で今の二機の改造でありますが、性能をよくしていくという用兵上の実用研究として、二機改造に着手することにいたしております。この性能改造が非常によろしい、これによって相当有効であるということであるならば、これはなおさらに改造についても考えなければならぬと思います。そういう点でまだこの改造について計画は持っておりません。二機の改造の結果によってどういうふうにするかという段階でございます。
  104. 辻政信

    ○辻政信君 これは一つよく考えてみて下さい。私が一番心配するのはその点です。現在やれなくても無用の長物でない、多少できるとおっしゃるならば、五千七百万円を出して試験をする必要もない。むしろそんな金があるならばでき上がったものを買ってくればよい。国産するまでにギャップがあるならば、この方が国産するより安上がりでしょう、訓練もできましょう。三十七年の末に二機しか出ないのですから、訓練できないんですよ、飛行機がきたところで訓練できなければそれこそ宝の持ちぐされだ、それならこの費用で、ロッキードに使う七百億のうちの百億を削っていいから、百億で二十機買って来年から訓練やれ、そうすれば再来年から実用にできるのじゃないですか。むだなものに金を使って、試験をしてみる、そうしてその計画さえないということは、これは何たるずさんな防衛計画かということになるわけです。そこのところをよくお考えにならぬと、三菱や川崎を太らすだけのロッキード計画では困る。われわれは国をどう守るかということが真剣なんです。この大きなギャップをほんとうに真劍に考えて具体案を出さぬというと、たった五千七百万円だから黙って議論せぬだろうと思って隠しておいてもだめなんです。これをやるからには、将来改装するという意図を持っているからやっているんでしょう。そうでなかったらやる必要はない。意図を持っているなら、四百機のうちの何百機をやるのだ、その金はどうなんだ、だから全体の予算はロッキードとの関連においてどうなるのだという、その計画が立たなければ五千七百万円という金を何とかの名義でごまかしてもこれはだめなんです。もう一つは、17に対しては太刀打ちできなかった、二年前は。おそらく極東に現われる戦闘機はことしでも来年でも17はもう現われない、もう一段上のやつが出てきます。少なくとも19です。19が出てくると、どんなに性能を改善しても私は太刀打ちできまいと思う。〇・四マッハや二マッハでは太刀打ちできない。それならむだ金じゃないか、そんなことはむだ金だろう。それならば三菱が今から作るというやつはストップさせて、損害は国家で補償してもいい、そのストップした五十機の金でもって新しいものをアメリカから買っていらっしゃい、国産機が出るまで。それでもってほんとうにわれわれは実地の訓練をして、その結果日本に適応したものを編み出すというような考えをやらぬと、源田君が何時間乗ったからそれだけで方針をきめるということはいけませんよ。もう一ぺん練り直しませんか、どうですか赤城さん。
  105. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 104をほごにするということは今考えておりません。ただ、練習機二十機とノックダウンは大体向こうのそのまま持ってきて組み立てるということでありますが、四十機は買うに近いような形だと思います。その他やはり国内生産計画を進めております。
  106. 辻政信

    ○辻政信君 これはまだまだ尾を引きます。きょうは時間がないから言わぬが、とにかく航空自衛隊の防衛計画整備計画の最大の弱点がここに出ている。もうその芽が出ました。これはもっと真剣に研究してもらいたい。  その次は海上自衛隊、これはこの前、数年前から言っているのですが、海上自衛隊の、このパーク海軍大将が海上自衛隊で演説をしている。これを今もらったのです。今もらって読んでみて、どういうことが書いてあるか、「日本自衛隊は多くの困難にも拘らず、津島長官の優れた指導と、野村氏や保科氏のような有能な政治家の助言とにより急速な発展をとげております。」残念ながら大谷さん抜けておりますね。一国の海軍大将が日本にやってきて、個人の名前を上げて、その野村さんや保科さんのおかげでよくなった、ふざけたことを言うな、国民全体のおかげてよくなったというならいいけれども、こういうことを言っているのだ、そうしてこの内容には、日本は西太平洋における防塞としてソ連の潜水艦の行動を制圧せよとはっきり言っている。そこでその観点から、ことしの海上自衛隊の増強計画を見るとはたしてどうだということが出てくる。一体潜水艦を何隻作ろうというのです、将来潜水艦整備目標、四十年末における。
  107. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) パーク大将はパーク大将でアメリカ人でありますから、アメリカ人としての見方はいろいろしていると思います。しかし、われわれは日本としての立場から日本の防衛力の整備計画を立っていくわけであります。その点ははっきり申し上げたいと思うのであります。潜水艦は、次期計画は御承知の通りまだ確定しておりませんので、何隻になりますかということは申し上げかねます。現在までは米国から供与を受けましたものが一隻、それから一隻千トン級のものを進水いたしました。それと本年度の予算で二隻、さらに三十五年度において二隻、合計五隻を国産しようという計画でございます。
  108. 辻政信

    ○辻政信君 加藤君、今あなたはパーク大将のことはパーク大将でアメリカ人だから関係ないとおっしゃるが、それは冗談じゃないですよ。安保条約を結んで、日本の防衛はアメリカと一体だという前提に立ってパークは述べている。イギリスの海軍大将が言ったならあなたの言った通りでいい。アメリカの最高の海軍の責任者が言ったことはそうは逃げられませんよ。ちょっと待って下さい。私は、日本海上自衛隊整備目標の着眼として潜水艦対策に置き、これから割り出して、P2Vという高いものをがまんして作っている。大型警備艦なんか何の役に立つか。そんなものはアメリカでも余るほど持っておる。海上自衛隊整備目標は、アメリカの海軍の持っていない、欠陥を日本が補ってやるというところに特色を持たなければならない。ところがP2Vとか飛行機はアメリカにはうんとある。海上艦隊はうんとある。余るくらいある。くず鉄にするくらいたくさん持っておる。アメリカの最大の欠点は、小型潜水艦です。原子力潜水艦はあるが、小型潜水艦はない。ドイツが作っているのは三百トンから四百トンの小型潜水艦です。日本は旧式の海軍の千トンぐらいの大型を潜水艦乗りが自分の頭で作って船会社をもうけさせておるが、ほんとうの潜水艦はドイツでは三百トン以下です。これは非常に安くて量産できるから、日本の場合も大型を一隻持つより小型を五隻持った方がいい。それから昭和四十年までにわずか五隻の目標で何になるか。これを一つ、私は海軍じゃないから、専門家がそこにおられるから聞いてもらってもいいけれども、ほんとうに日本海上自衛隊整備目標は、アメリカの持たないものを日本が持つのが、特色のあるものを持つのが大切です。そうすればアメリカに対して発言力も強くなるわけです。アメリカの古いものをもらって、相似形の小型のものじゃ、これは植民地軍隊になる。植民地軍隊にならずに自主的にやろうと思えば、一番重要な点はその点です。彼らの持たないものを持つことによって発言力を持つことです。日本の環境、国力、それから戦略的地位から考えて、小型潜水艦をよけい持てば海上に行動するやつはできなくなる、潜水艦と飛行機で押されるから。せめて海の中でも安全を保てばと私は言っておるのだが、依然として聞こうとしない。そこに海上自衛隊整備目標の根本的に反省をしていただきたい点があると私は思います。これは今すぐ結論を出せとは言いませんが、赤城さんよく考えて下さい。アメリカの古いものをもらって小型の相似形の小さいものを作ったのじゃ役に立たない。それじゃ満州国軍隊や関東軍と同じようなものになってしまう、ああいう廃品の兵器をもらってまねしておったら、植民地軍隊というあなどりを受けてしまう。アメリカ軍の持ってないのは小型船です。アメリカはぜいたくだからそういう狭い軍艦じゃ用をなさない。日本人だけが乗れる。そうして安上がりでいける。そういうことを一つ根本的に考えてもらいたい。  それから陸上自衛隊ですが、陸上自衛隊をゆっくり拝見するひまがないから、内閣委員会等で質問いたしますが、陸上自衛隊の一番大きな欠点がどこにあるかということを、常々私考えておりますが、そういう意味で、皆さんにきょう資料をお願いをした。ところが私が要求した、この資料はほとんど出ていない。ぼかしておる。それは防衛庁痛いからぼかしているのだろう、忙しかったのかもしれないが。私の最大のねらいは、十八万にするとか十七万にするという問題じゃない。もっと大きな問題がある。それは昭和四十年に、あなた方の希望する一つの目標が完成したときに、それを運用していく最高指揮官が、どういう素質の、どういう経歴のものがやるかという点です。どんなに軍隊が強固であっても、上に立つ者がまずかったら何にもならない。日露戦争で非常に強かったのはどこに原因があったか。明治維新で鍛えられた、日清戦争で鍛えられたやつが日露戦争の師団長、軍司令官、参謀長になっておった。今度の戦争で負けたのは、これは若いときに実戦の経験がないやつが、成績によって、序列で軍司令官、参謀長になった。ですから偉い者もいたが、くずが多かった。そのために大きなミスを冒した。そこで昭和四十年のあなた方の人事計画を見ても、非常に心配な点はどこにあるかというと、停年制というものがあって、中将は五十八才、少将は五十五才か、そういうことで首を切られてしまう、全部一律に、機械的に、物理的に。そして現在の幹部の過去からの出身別からその素養を判断してみると、そこに重大なものがある。これは赤城さん、よく聞いて下さい。機械的に、物理的にやっちゃならないということを考えてもらいたい。一人の高級指揮官を、勇敢な有能な者を作るために、国が子供のときから鍛え上げて実戦して試験をして生き残った者、これは昭和四十年になったら一人もいなくなります、師団長以上には。これよりも若いやつですね。四十から五十五、六の連中は、この連中が大体ほんとうに戦場で油がのって幕僚勤務をやって指揮官としての体験を持ったのは、大体旧陸軍の士官学校を出れば三十七、八期から四十五、六期まで十年間ですね。この連中が停年にひっかかってしまう。旧軍人は終戦後ブランクがありまして、階級に相当して年令が非常にふえている、年をとっている。それに反して文官出身は年令が若くて高い階級にありますから、この人たちはずっと上がっていきますが、今の最大の欠点は五、六年間のブランクを持った体験を持った軍人の専門家が停年制という物理的な整理によってほとんどなくなってしまう。それは一人一人当たってごらんなさい、目ぼしいやつはそれまでに全部首切りされる。せっかく千五百億の金を毎年使って、でき上がったものは格好はいいけれども、観兵式はいいけれども、とんでもないものが軍司令官になって、そうして師団長、幕僚官が過去の失敗を繰り返さないかということです。もっと詳しくやりますよ、名簿がありますから。それは停年制によってグラフを作り、これは首、これは首、そうして残っているものを調べてみると大体想像はつく、概略見ただけで。そうすると、格好はできたが中身はだめな軍隊になる、こういう心配がある。これはよく一つ長官頭に入れられて、私は旧軍人出身だから軍人の肩を持とうというのじゃない。生き残った、完成された経験と体験を持ったやつが今日生き残っているのには非常な犠牲と非常な金をかけて人間として生き残ってきたのでしょう。これをばっさりやるならば、そこで停年制というものを考えてもらいたい。今五十八になってやめたら今度はどこかの会社の顧問になって老後を何とか暮らそうという連中ばかりだ。そうじゃなしに、この能力はこういう制度上のプールによってどんどん生かしていきなさい。悪く言えば一生飼い殺しなさい。その能力体験を機械的に冷たい意思で死滅さしちゃいけない。かけがえないものなのだ。そこが一般の役人や会社員と違うのです。過去の貴重な体験を腐らせないで。  その次は弾薬。これも私の所望の報告が出ておらない。海上と航空建造費であるとか、施設費に、思い切ったものを使っているが、陸上はもうでき上がったというような考えを持っておられるのじゃないかということは、陸上自衛隊の練習の根幹は弾薬にあるのにアメリカから譲り受けた古い弾丸が九万九千トン、十万トン、年々五、六十トンは使うでしょう、訓練に。そうして小火器弾薬がわずか四千二十三トンしかない。一年分のストックがない。今ことが起こったら、訓練のためにも何千トンが要る、ことが起こったら何万トンも要る。その小口径弾薬の国内の自給態勢ができているのか。あなた方は一機五億するロッキードを作るために国産化として大騒ぎになっているが、そんなものを作っても役に立たない。それよりも大事なのは小型兵器の弾薬日本の工場で要るだけのものは外国から買わぬでも自給できるという計画があるのかないのか、これはどうです。
  109. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) ちょっと初めに申し上げておきたいと思いますが、潜水艦は四十年度末までに五隻とおっしゃいましたが、そうじゃありません。現在のところで五隻だということでございます。四十年度末までの計画は……。
  110. 辻政信

    ○辻政信君 まだきまっておらないのですか。
  111. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) これからでございます。三十四年度までは第二期計画においてやるのでございます。まだきまっておらないのであります。  それからF86がミグ17に非常に劣っているとおっしゃいますが、性能的には劣る点もございます。しかし、これは一昨年の台湾沖のときにはミグ17に対して相当優秀な成果を上げております。
  112. 辻政信

    ○辻政信君 サイドワインダーをつけたんだ。
  113. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) サイドワインダーをつけた場合にはもとより、つけてない場合にも相当やっておりますということを申し上げておきます。  弾薬は、現在の状況はおっしゃる通りでございますが、これを九十日分ぐらい備蓄しようと思いますと——戦闘九十日分——二十万トンぐらい要ります。二十万トンと申しますと、これは大へんな金になるわけでございます。われわれといたしましては、極力、弾薬につきましては米軍から供与を受けたい、こういう考えで、供与と見合って国産の計画を立てていきたい、こういうふうに考えております。
  114. 辻政信

    ○辻政信君 それがあぶない。ふだんは供与できますよ。ところが、私の言うのは、ふだんのことを言っておるんじゃない。事が起こったときには、太平洋は潜水艦が来て、運送船は来れない。少なくとも小口径の火器の弾薬というものは、事が起こったということを考えて国産計画を作っておかなきゃいけない。そうして、たとえば一年に七千トン使うから、一万トンの生産計画を立てる、あるいは二万トンの……。そうして、そのストックだけを何年かかかって三カ月分のストックを持つというような、いわゆる小口径砲の戦力補充計画生産計画というものをお持ちにならにゃいけないというんだ。これができてないじゃないか。できておるか。
  115. 塚本敏夫

    政府委員(塚本敏夫君) キャリバー三十とか、あるいは四十五、五十、こういった小口径につきましては、生産能力は今のところ大体十分にあると思っておりますが、ただ、今、辻委員の仰せのように、ある程度、たとえば九十日分のストックを持つ、こういうことが必要であろうと思っております。これは毎年度、予算にわれわれもその必要性を要求いたしておりますか、予算関係で今のところそこまで備蓄ができないという状況でありまして将来ともこの備蓄をするように最善の努力をいたしたい、かように考えております。
  116. 辻政信

    ○辻政信君 あなた方のねらいを僕は言っているんですよ。柄にもなくロッキードを国産するために、こうごうたる非難を受けて、押し切っておる。それよりもわずかな金で……、一番大事なのは小口径——機関銃、自動小銃、自走砲のあの弾、機関砲の弾、こういうものこそ常に要るものですから、消耗品として、訓練にも。こういうものをあなた方は、日本のどの工場で何トン作ると、これはやらずに、一体、ロッキードに走っていて何になるか。地に足がついておらない。日本の自衛隊は、事があったら役に立つのは陸上だけでしょう。ほとんど空軍はまだ役に立たない。海上もボロ駆逐艦ばかりで問題にならない。そうすると、十七万の軍隊が——陸上が国内警備、治安出動、国土防衛、こうなっているんでしょう。その小銃弾のストックが一つもないじゃないか、一発も。アメリカが持ってくるったって役に立たんでしょう。弾を撃てない大砲を持って何になる、鉄砲持っても何になる、こん棒と同じでしょう。そういう目先の地についたところができておらんじゃないですか、防衛計画に、生産計画に。それをなぜ真剣に取っ組まない、とんでもないものばかり夢中になっていて……。それを言っているんですよ。赤城さん、ほんとですよ、もう一ぺん検討して下さい。これは怠慢です、ほんとうに。驚いたですよ、四千トンしかないんですから。訓練用の弾に足らんでしょう。アメリカがくれるったって、だれがくれますか。できるんですよ、日本で。だからほんとうに兵器会社は困っているんだ、弾を作る会社は。防衛庁は毎年々々買うんだから、いつまでできるかわからんから、この工場を維持できるかできないか四苦八苦しているでしょう。それに目標を与えて、赤字のところはわずかばかりだが国が補助してやると、そうすればロッキードを作るよりもはるかに少ない金でできますよ。その日本の兵器産業の需給計画というものをもっと足元から立てなさいというのですよ。  第三番目。あまりよけいにやりませんよ、時間がありませんから、大事なところだけやりますが、その次に赤城さんに特に考えてもらいたいのは、内局の参事官制度というのは、きわめて重要な制度です。おそらく長官としての最高のスタッフだろうと思うのです。そこで、現在の参事官の名前と経歴を書いてもらった、これは出てきました。門叶君が警視総監、加藤君がやはり警察関係、小幡君が海運関係、山木君が警察関係、石橋君が厚生省、山下君が大蔵省、そうして塚本君が通産省、服部君が外務省、佐伯君が経審と、こうなっておりますが、九人の参事官の中で軍人の経験を持った——軍職の経験を持ったものは一人もいない。そうして、そこで予算とか編成とか訓練とかいう重大な内局としての仕事をやらなければならない。はたしてできるかどうか。加藤君のような優秀な、兵隊以上なのもおりますけれども、あなた個人の優秀ということと制度というものは違うのです。どんなに有能な人でも体験のないものは、単に学問だけでは補い得ない。会社と違うのはそこにある。それならば、なぜこの重要な長官の最高スタッフに陸軍関係もなければ海軍関係もなければ空軍関係も一人も入っていない。そこで国防方針だとか、訓練の方針だとか、編成、制度を作ったって、われわれが大蔵省にいって予算を編成するというのと同じですよ、無理だとは思いませんか。もはや軍服とか警察官とか考えない、今の時代には、これは海軍、これは陸軍と考えてはいけません。ポスト、ポストの適任者、経験の者を持って、ほんとうに信頼できて人から助言を得ずに、自分の経験からあなたに直言できる幕僚をおそろえなさいよ。制度にちっともこれは逆らっていないのです。ただ人事をやるものが、旧軍関係が入ったらかき回すからやめておけというので、みんな自分たちの仲のいいやつばかりで、この内局——参事官制度を守っておる。そこに旧軍関係を入れまいとしてがんばっておる、実情はそこにあるのですよ。これは一つ赤城さんのときに打破していただきたい。  まだ、たくさんありますが、時間の関係でこの四点だけにとどめておきまして、他の機会に、もっと根本的な資料を出してもらってやりますから、よく準備して下さい。
  117. 岩間正男

    岩間正男君 それじゃ、私お伺いしたいのですが、まず第一に、在日米軍ですね。在日米軍の編成はどうなっておるか、これを陸海空三軍についてその詳細をお聞きしたいと思います。
  118. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 在日米軍につきましては、在日米軍司令部というのがございます。現在は第五空軍司令官のバーンズ中将がこれに当たっておられるわけであります。在日米軍司令部の下に、在日米陸軍、在日米海軍、在日米空軍、この三つに分かれるわけであります。在日米陸軍といたしましては座間に本部を置いておりまして、これは管理補給部隊でございまして、現在、地上戦闘部隊はほとんどおりません、約五千名ぐらいおります。海軍は横須賀と佐世保に海上の施設を持っております。そのほかに厚木と岩国に航空隊の施設があるわけでございます。空軍の方を申し上げますと、空軍は第五空軍というのがおるのでありまして、第五空軍の下に二個師団日本に展開しておる状況でございます。
  119. 岩間正男

    岩間正男君 今の、数ですね、この陸海空の数をちょっと知らして下さい。
  120. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 陸軍は今申し上げました約五千名、海軍が一万五千名、空軍が三万二千名ぐらいでございます。これは概略の数でございます。
  121. 岩間正男

    岩間正男君 それから空軍についてですが、あるいは海軍空軍ですが、海軍の艦種ですね、それから艦数、それから空軍については戦闘機数はどれくらいか、そういう詳細についてお聞きしたいと思います。
  122. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 在日米海軍の持っておりまする艦艇雑船でございます。それから在日米空軍の持っておりまする飛行機は約数百機と申し上げる以上には申し上げられません。
  123. 岩間正男

    岩間正男君 雑船というのはどんなものですか。
  124. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 雑船と申しますのは、主として港内の引き船でございますとか、あるいは輸送艇——輸送する船ですね、それからいろいろなものを補給する船、そういうものでございます。
  125. 岩間正男

    岩間正男君 こういうもので、これは役に立つのですか。
  126. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 役に立つとおっしゃる意味が理解しかねるのでございますが、そういう任務に当たっておるわけでございます。戦闘用のものではございません。
  127. 岩間正男

    岩間正男君 それじゃちょっとお聞きしたいのですが、第七艦隊の所属は、どこに所属するのですか。
  128. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 第七艦隊は太平洋海軍に直属する艦艇でございまして、在日米海軍とは指揮関係はございません。
  129. 岩間正男

    岩間正男君 これは赤城長官にお伺いしたいのですが、第七艦隊が日本に入ってきた場合ですね、これはどういうふうになるのですか。
  130. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 第七艦隊は、今防衛局長が申し上げたように在日米軍ではございません。主たる根拠地はフィリピンに置かれて配備されております。第七艦隊の一部が寄港する、油等の補給その他に日本に立ち寄る、こういうことになっております。第七艦隊は大体太平洋地域を遊よくするといいますか、そういう形で行動しております。
  131. 岩間正男

    岩間正男君 今、基地の話が出ましたがね、これはフーヴィックですか、フィリピンのこれは主要な基地になっておると思いますが、それだけですか、日本にございませんか。
  132. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 今長官がおっしゃいました通り、第七艦隊は非常に広い任務範囲を持っておりまして、インド洋の方までも担当しておるのでございまして、その根拠地と申しますか、補給するところはフーヴィック、あるいは台湾とか沖縄とか、佐世保とか、横須賀とかいうところが、ハワイももちろんそうでございますが、根拠地と申しますか、そういう施設を持っておるわけでございます。そうして、絶えずその方面の任務に当たっておるというわけでございます。
  133. 岩間正男

    岩間正男君 根拠地が日本にないとおっしゃるのですか。
  134. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 根拠地ということの意味でございますが、横須賀、佐世保へ補給のために入ることはございます。
  135. 岩間正男

    岩間正男君 これは第七艦隊の実態についてはいろいろ紹介されていることで、国民周知だと思うのですね、そういう中で、極東の中でどういうところに主要な基地を持っているか、これはもう明らかでございます。横須賀はその中で、これはフィリピンのフーヴィックと並んで、これは主要な基地になっておることは、十分周知の事実だと思うのですが、どうですか、この点。
  136. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 横須賀が第七艦隊にとりまして相当重要な意義を持っておるということは、これは事実であろうと思うのです。ただこれは、主たる何と申しますか、根拠地とかどうとかいうことになりますと、第七艦隊は非常に広い任務範囲を持っておりまして、もし南方の方が緊迫したと思えば南方の方に集結する、北方の方が緊迫したと思えば北方の方に集結するということでございまして、どこが一番の中心ということではないように私は承知しております。
  137. 岩間正男

    岩間正男君 それではお伺いしますが、第七艦隊の行動半径とか守る範囲、それは大体どの辺ですか。この範囲についてお伺いしたいのです。
  138. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) これは新聞等でも公表されておりましたが、太平洋海軍のもとには、第一艦隊と第七艦隊とおるわけでございます。第一艦隊はアメリカの太平洋岸の配備についております。その以外の地域は大体第七艦隊がやっております。どの辺で境界を分けておるかということは私は承知いたしません。南はインド洋まで担任しておると聞いております。
  139. 岩間正男

    岩間正男君 北は。
  140. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 北は第一艦隊との区分の問題でございます。はっきり承知いたしておりません。
  141. 岩間正男

    岩間正男君 これは安保条約との関係で出てくるのだが、先ほどからアメリカといろいろ防衛のために協力するということは何回も言われておる。日本の防衛力の不足をそれで補うのだ、こういうことは、赤城防衛庁長官も何回も言われた。相手を知らないでは話にならないと私は思うが、南の方はインド洋、こういうことを言われたが、北の方の防衛区域、それはどの辺までかという点についても明確にあなたたちは知っていられると思うが、少なくともアメリカから報告を受けておると思うが、どうですか。
  142. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) これはわれわれの任務を遂行しますのに必要な範囲におきましては承知しております。
  143. 岩間正男

    岩間正男君 防衛庁長官はどうですか。知っておりませんか。
  144. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 北の方はどこまでというようなことは承知いたしておりません。
  145. 岩間正男

    岩間正男君 大へんなことです。南の方は知っておって、あまり関係はないでしょう、日本には南の方は。北の自分の最も重要なところについて知らないということは、これは何ですか、こんなことであなた防衛庁長官が勤まりますか。これは知らないというふうにおっしゃるけれども、これは天下周知の事実です。アリューシャン海域あたりからずっと北ということは知っておる、国後、択捉まで出ておる。これはどうなんですか。はっきり言って下さい。そんなものを私はここで何も論議をしようと思っておるわけではないけれども、しばしば言われるように、安全保障条約を結ぼうというのにはやはり相手のあることです。その相手を知らないで、そうしてこっちの任務範囲ということだけでは全くどうも……。これは何ですね、象をながめるような格好で、その一部分だけを知って、これで国の防衛が成り立つか、成り立たないか。これはわれわれしろうとだって明白だと思う。これはどうですか。そういう点確認しておきます。
  146. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) お知りなら別に……。私ははっきりどの地点までというようなことは承知いたしません。
  147. 岩間正男

    岩間正男君 私どものしろうとよりもお知りにならないということは、私はずいぶんいろいろなニュースで見ておる。だから確かめておるのです、防衛庁長官は明らかにされておるかどうかを。この点お知りにならないというのなら、大体私のこれを確認していいと思うが……。  さて、この第七艦隊が日本の港に入ってくる、横須賀、佐世保に入ってくる、こういうことになってきたときに、この艦隊はアメリカの艦隊であるから日本関係はない、こういうわけにいかないと思う、当然これは。日本に入ったときに、これはどういうことになりますか。在日米軍との関係はどうなるのですか。この点をお伺いしておきたい。
  148. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 第七艦隊が寄港いたしましても、在日米軍の指揮下には入らない、在日米軍が第七艦隊に対しまして必要な補給をするということでございます。
  149. 岩間正男

  150. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) その通りでございます。
  151. 岩間正男

    岩間正男君 在日米軍というものの規定というのは非常に不明確になりますね。日本にいるときは在日米軍ということになっておりますが、どうですか。あなたの答弁ではこの前、日本にいるときには、これは在日米軍としての性格がある、しかし、極東の範囲から抜けていく、そういうときには在日米軍でないということを言われた。これを裏返せば、日本に入ってきたときは、アメリカの艦隊は在日米軍としての性格を持っておるということになる。そういうふうに解釈しなければ……。そうすると、これは非常に正体のつかめないものになる。その点われわれは、しろうとでよくわからないのですが、その点あなたは今までどういうふうに考えてこられたか。現に日本に入ってきたときに、第七艦隊の性格については、これは在日米軍であるというようなことを、これは今まで話が出たんじゃないかと思うが、そういう点から私はお聞きしておるのですが、この点はどうでございますか。
  152. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 在日米軍という俗にいわれるものと、現在の安保条約、あるいは行政協定のもとで、在日米軍として定義されるものと、おのずから違ったものがあると思います。私は、極東の範囲外にいたら在日米軍でないということを申し上げた記憶はちょっとないのでありますけれども、いずれにいたしましても、そういう二つの意味がありまして、安保条約、あるいは行政協定のもとにおいて、どういうふうに在日米軍というものを規定しているかということにつきましては、事務当局から申し上げます。
  153. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 配備されておるものと、それから日本米国に提供した基地、施設を使うもの、これとは別に考えなければいけないと思うのでありまして、日本におる間は行政協定の適用を受けるということがいえると思います。しかし、指揮系統上から申しますと、第七艦隊はもちろん在日米海軍司令官の指揮を受けるものではございません。
  154. 岩間正男

    岩間正男君 私はここではっきり防衛庁長官に明らかにしておいていただきたいのは、これは太平洋軍の指揮系統を受ける在日米軍ではない、そういうことに第七艦隊はなると。しかし。その第七艦隊が、日本の大きな三つの軍港に入ってくる、入ってきて基地を使うわけですね。その基地を使うときに、どういう根拠でそれではそういうような軍隊は使いますか。在日米軍については、一応安保条約の取りきめによって行政協定の適用をこれは受けて、日本の基地を使うということは根拠があることになります。しかし、今のような話で参りますと、在日米軍でないところのアメリカの軍隊が、無制限にこれを使う、こういうことが許されるのですか。どうなんですか。
  155. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) この行政協定、あるいは安保条約等につきましても、特に在日米軍という字句は使っておらないようであります。合衆国軍隊として、たとえば安保条約の第六条におきましても、「アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」、それに関連した交換公文等におきましても、「合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更並びに日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本政府との事前の協議の主題とする。」というふうに、アメリカ合衆国軍隊としての扱い方について、あるいは安保条約の上において、あるいはそれに基づく行政協定の上においていろいろな取りきめ、あるいは制約等があると、こう理解しております。
  156. 岩間正男

    岩間正男君 そうするとなお重大ですね。合衆国軍隊と在日米軍の境というものはないわけですね、この行政協定に関する限りは。そうすると、どういうふうにしてこの適用範囲を見るかといったら、日本に入ってきて施設を使っておるかどうかということが一つの重要なきめ手になるわけでしょう、この問題を決定する上に。そうすると在日米軍だろうが、それから太平洋艦隊だろうが、これは関係ないのだ、問題は日本の軍事基地に入ってきて、そうしてあなたたちのいう施設、区域を使う、それによって関係がこれは出てくるわけでありますから、赤城防衛庁長官の今の御説明によりますというと、当然日本に入ってきたときにはこれは安保条約の適用を受ける、こういうふうにこれは理解してようございますか。
  157. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 日本施設及び区域を使用することを許すわけでありますが、それに対しましては目的があります。「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」と、そういう目的のために施設及び区域を使用する。それからその施設及び区域というものは、これは行政協定によって具体的にきまる、こういうことになります。
  158. 岩間正男

    岩間正男君 そこで、先ほど私の申しましたことは在日空軍だろうが、どうであろうが、結局、日本施設及び区域を利用する、つまり日本にも入ってくる。日本の軍港にこれは寄港してくる、そういうときは、はっきりこれは安保条約の適用を受ける。先ほど防衛局長が言われましたな、行政協定についてお尋ねした、同じことです。ですから、そういうふうにその点は明確に理解してようございますね。念を押します。
  159. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) その通りに了解しています。
  160. 岩間正男

    岩間正男君 そこで私はちょっとお聞きしたいのですが、第七艦隊の防衛区域については先ほどお伺いしました。北はアリューシャンから南はインド洋まであげての防衛区域、これははっきりしているだろうと思います。そこでその次にお伺いしたいのですが、一体この第七艦隊の主要任務というのはどういうことになっているのか。これはアメリカの太平洋軍の中でどういった任務を持つのか。それからその戦闘力は、これはどのくらいなのか。こういうことは今日本の国民が知りたがっているのですよ。安保条約を結ぶその場合に、非常にこの問題は、第七艦隊の問題がたくさん今まで国民の耳に入っていますからね。それでアメリカと協力するのだということになりますとね、最も身近かにわれわれの近海を絶えず遊よくしておるこの第七艦隊の姿については知りたいと、こう考えておる。従って、どういうことになりますか。
  161. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 第七艦隊がどれだけの戦力を備えているかというようなことを申し上げることは、これは非常に困難であります。申すまでもなくアメリカの艦隊でありますので、またどこの国でもそういうものははっきり公表していることはありません。いろいろな雑誌、あるいは評論等におきましてはある程度出ておりますが、みずから公表していることはないと思います。これはやはりソ連の潜水艦もずいぶん近くにおりますが、こういうものもどれくらいの潜水艦ということを公表してないと同様、どこでも公表してないと考えておりますので、戦力がどの程度ということを申し上げるだけの知識を持っておりません。
  162. 岩間正男

    岩間正男君 それから少なくとも任務を知らなければ、これは先ほど申しましたように、相手がわからないのですが、第七艦隊が向こうから頼まれたからといって、そういう問題を、先ほどお話がありましたね、とにかくどんな目的を持っているのか、その目的によって寄港させることもあり、裏返せば、させないこともあり得るというような御答弁だったと思うのです。そういうようなことになりますと、任務をあなた御存じだと思うのです、第七艦隊はどういう任務を持っているか。アメリカの極東戦略上どういう任務を持っているか、この点お聞きしたい。
  163. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) これは大体といたしましては、アメリカの艦隊で最も有力な艦隊が第七艦隊であり、地中海方面、大西洋方面の平和と安全のために行っておりますのが第五艦隊と了承しております。でありまするから、アメリカの国是といいますか、国の方針といたしまして、国連憲章に書いてありまするように、侵略に対してこれに対抗するというような形、そのためにはやはり平和と安全を守っていく、こういうことで太平洋の領域における紛争が起きないように、起きればこれに対処するだけの備えをして守っていくのが任務だと、こまかいどういう作戦、どういうことに対処して、どれだけの任務を果たすかと、こういうこまかいことについては、私は承知いたしておりません。
  164. 岩間正男

    岩間正男君 いろいろ問題を掘り下げますというと、御答弁なされないようでございますが、御答弁できない面もあるいはあるかとも思いますけれども、少なくとも安保条約を結ぶ、そうして相手をよく知らなきゃならない、そうしてまた国民もこの問題を知りたがっている問題です、そういう問題についてまあ抽象的なただいまのような御答弁じゃこれは困るんですね。とにかく極東における、ことに西太平洋の防衛に任じておるということになると、そうして侵略に対して対抗するのだということになりますと、たとえばどうなんですか、どこが侵略してどれにどういうような一体対応をしておるのか。従ってこれに対して当然お聞きしなきゃならないのは、どれだけの装備を持ち、どれだけの戦闘力を持っているか、こういう点について安心しろ安心しろ、これはどうもおかしいと思うんです。安心しろったって安心できないですよ。正体がわからなくて、そうして安心しろというのは、これはやはり昔の考え方なんです。おれを信じてりゃいいんだ、まかしておけ、そうして日本が負けたことがあるんですからね。そういう点から考えて、私は第七艦隊がどのような一つの主要任務を持ち、それを果たすことのできる、目的を遂行することのできる能力を持っておるかどうか、こういう点についてはやはり防衛庁長官はここで明らかにされる責任があると思いますが、いかがでございますか。
  165. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 岩間委員の御質問が日本とどこかで戦争をし、アメリカの太平洋艦隊がこれをバツク・アップして戦争する場合にどうなるか、こういうような考え方で御質問のようでありますので、これもちょっと目的が違うと思います。たとえば第七艦隊についての御質問でも、たとえば安保……。
  166. 岩間正男

    岩間正男君 それはあなたがそう言ったんですよ。侵略を防衛するのだと、私はそう聞いた。
  167. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 安保条約の前文にもありますように、「両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、相互協力及び安全保障条約を締結する、」戦争するために安全保障条約を締結しているということでなくて、極東の平和と安全のために安全保障条約を締結していると、こういう建前から私は申し上げておるわけです。それから侵略ということですが、こういうふうに申し上げたのでありますが、アメリカも日本もそうでありますが、国連に加盟しておる国といたしましては、あえてみずから侵略して、そうして戦争を惹起しようということは、これは国連に加盟しておる国として行なわないことになっております。そういう関係ですから、これが発動するといいますか、戦争行動に移るという場合には、どこか侵略があった場合と、こういうことが前提であるというふうに申し上げたわけでございます。そういう意味におきまして戦争する場合の予想からいろいろ聞かれますと、なかなか立場が違いますから答弁しにくい点が多いわけであります。
  168. 岩間正男

    岩間正男君 まあ、おとといの晩もだいぶそういうことを防衛庁長官は言ってられました、藤田議員の御質問に対してね。しかし、そのことはここで何も議論するわけじゃございません。私のお聞きしているのは第七艦隊のことなんですよ。第七艦隊の客観的な力、それから戦闘力、こういうものをやはり国民の前に私は明らかにする努力をすべきだと思うのですがね。これは今言ったように、御存じない。私は具体的にお聞きしますが、たとえば金門、馬祖で一昨年御承知のようにああいう問題が起こりました。あのときに第七艦隊が出動したことはまぎれもない事実だと思うのですがね、これが日本の基地を使われたと思いますからね、あのときの第七艦隊の一体艦数はどういうものであったか、あるいは艦種はどういうものであったか、それからそのときの戦闘力はどうか。まあ搭載機もたくさんあったはずですが、そういうものは一体どうであったか。そういうものについて大体の概要だけでいいですよ。私たちこれは、やはり軍事評論なんかでニュースは持っているわけです。だれでも知っておるわけです。しかし、こういうものはまれで、国民の方はつんぼさじきになっていて、それを国会で明らかにしようとする私たちの努力が、今言ったように、防衛庁長官は知らぬ存ぜぬということでこれは逃げられてはまずい。国民はかえって疑惑を持ちます。そういう点は、はっきり客観的事実をあげて、そうしてここで私は明確にするということは、これは国会論議の任務だと、こういうふうに思いますので、そういう点からお聞きしているんですが、その点はどうですか。これはある程度言われるでしょう。
  169. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) こういう問題は、私どもといたしましては公表せられたものを資料として申し上げるほかないのであります。第七艦隊の普通の編成として考えられておりますのは、この前も大臣がおっしゃいましたが、百二十数隻で約五十万トンのものが第七艦隊の所属です。空母数隻が中心でございまして、これを護衛する駆逐艦、水上護衛部隊として巡洋艦、それから潜水艦、こういうふうなものからなっておるということを、これは公表せられております。台湾海峡事件の際には、これも新聞等の公表によりますると、他の方面からは空母を数隻増強したようでございます。六隻と記憶しておりますが、どの程度の戦力を持っているかということは、これはなかなか公表しにくいところであり、また公表をしておりません。大体の想像はつきますけれども、それを申し上げることは適当でないと思います。
  170. 岩間正男

    岩間正男君 それでは、ここに私たち第七艦隊の大体力関係を書いたものがありますが、大体これだけ簡単に聞きたいと思います。  第一に、第七艦隊は六万トンの超大型空母一隻、四万トンの空母二隻、ほかに三万トンの中型空母四隻、この中には対潜警戒空母が一隻含まれている。七隻の空母が中心になって合計六十六隻、それからあなたの今のお話では積載機数ということがお話なかったと思いますが、これは非常に重要だと思います。この積載機数が約六百機、それからそのうち小型水爆機——小型水爆を積んでいる機が、この水爆機が三十機前後、それから戦術原爆搭載機、これが百機前後と大体考えられるのじゃないか、こういうような私たちの手にした情報があるわけなんです。その他いろいろなものを積んでおるわけでありますが、こういうものと、さらにこれがこれだけじゃなくて、この付近における基地との協力でこの力を発動すれば非常に何倍かにこれが大きくなると思うのですが、とにかく現在の、先ほどの艦数、それから艦種ですね、それから搭載機数、こういうものについては大体私の今お話したような点、大体対象の違いがあるとしても、そういうような一つのスケールを持って、かつて史上にないような大きなものと、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。——まあ御答弁ないようでありますから、この問題はこれはなおあとで明らかにしていただくことにしまして、私は先に進めたいと思います。  そこでお聞きしたいのですが、先ほどとにかく米軍太平洋軍だろうが在日米軍だろうが、とにかく日本施設区域を使う、こういうときにはこれは行政協定の適用を受けるのだということでありますが、そういうことになりますというと、第一にこの第七艦隊が日本に入ってきた、こういう事態を考えますときに、これを当然に日本に通告するところの義務があるだろうと私は思うのでありますが、この義務はどうでございますか、防衛庁長官
  171. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 行政協定の第五条に船舶、航空機、貨物等の出入ということに対しての規定があります。これは入港いたしましても通知をする向こうに義務がない、ということになっております。
  172. 岩間正男

    岩間正男君 これは、今から八年前に行政協定が論議されたとき、非常に大きな問題になった。向こうでは通告の義務がない、こういうことでやられたわけですが、今度の新安保の協定ではどうなんですか。
  173. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 同様と解せられます。  なお、つけ加えておきますと、配置にならぬものは通告する義務を持ちません。
  174. 岩間正男

    岩間正男君 行政協定の適用を受けて、しかも太平洋の艦隊ということになりますが、あなたはそこのところを非常にいろいろぼかしておられるようですけれども、日本に入ってきたときは名前をどうつけようとも、これは日本の何ですね、米軍ですね、在日米軍的性格を持っている。性格としては非常に変わるのです。これは私は当然これによれば、交換公文によれば、今度のこの配置における重要な変更というのに入りませんか、米軍の配置の重要な変更というのに入りませんか。
  175. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) これは入りません。相当長い期間でなければ、これは配置というふうに解することはできないと思います。
  176. 岩間正男

    岩間正男君 通告を受けないで、それから全然つんぼさじきにいて、長い期間かどうかということはわからないでしょう、どうです、一体これは、わかるのですか、その点。入るときは通告しないから、出るときも通告しないでしょう。そうすると全然ほうかぶりですか、全然わからないでしょう。そうしておいて、今言ったような配置変更ではない、こういうことになるというと、大体交換公文による配置の変更、事前の協議の対象になる配置の変更というのは、どういう点をさすのですか。第七艦隊のような太平洋最大の勢力である……これはそうでしょう、軍の勢力か、それが移動した、そうして日本のこれは主要な基地に入ってきた、こういうときこそ私は配置の重要な変更と、これは解釈せざるを得ないと思う。もしこういうような第七艦隊の入港が、配置の大きな変更というふうに解釈されないとすれば、どういう場合を一体配置の変更とお考えになっていらっしゃるのか、この点を明らかにして下さい。
  177. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 合衆国軍隊の日本国への配置と、こういうことになっております。第七艦隊は日本国への配置ではないわけであります。
  178. 岩間正男

    岩間正男君 そこのところは言葉のあやですね。やはり日本の港に入ってきて、そして任務を遂行するでしょう、そういうことになるわけでしょう。そうすると、これは全然何ですか、事前協議の対象にならぬと、こういうことですか。
  179. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 日本の基地といいますか、たとえば横須賀等へ入港するということは、これは配置にはなっておりませんので、事前協議の対象には相なりません。
  180. 岩間正男

    岩間正男君 領海はどのくらいですか。日本の領海は何海里ですか。
  181. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 日本では今三海里ということにいたしております。
  182. 岩間正男

    岩間正男君 横須賀に入港した場合には、これは領海に入らない、つまり日本にこれは入ったということになりませんか。
  183. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 配置というのは、そこに置くということなんで、相当これは期間滞在するというか滞留するというか、そういうことが必要で、ある程度給水その他に寄港するというのは日本国へ対しての配置、こういうことにはこれは相ならぬと思います。
  184. 岩間正男

    岩間正男君 今言ったように、どのくらいいたかということは今までお調べになったのですか、何か。
  185. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) ですから向こうで、これは条約ですから、配置ということでありまするならば向こうから通告があります。配置という程度になっておるものならば、向こうから通知を受けています。ところが、いつも配置程度におりませんので通知は受けていない、こういうことであります。
  186. 岩間正男

    岩間正男君 これは重要な問題です。ちょっぴりしたどうでもいいようなことはこれは通知するのだ、しかし、第七艦隊のような巨大な艦隊、史上でもこれは相当まれに見る艦隊だと思うのです。辻さんがそこへいらっしゃるから、お聞きすればよくわかるけれどもね。そういう艦隊が入って、しかも何日いるかもわからない、そういうのは非常に大きいのだから、そうしてしかもこれは今言ったように補給のためだ、こう解釈すればそうかもしらぬけれども、これはそうでないこともあり得るのです。そういうものに対してこれは通知を受けぬでもいいのだというところに、非常に大きな盲点じゃありませんか。  それじゃ、今ここでお聞きしますけれども、どんなものがこれは事前協議の対象になり、通知を受けるとお考えになりますか、どんなものですか。これも非常に不明瞭なんですね。これは大体論議の中で明かにされると思うのですが、一体どういうものを事前協議の対象にして、配置の変更として通知を受けられるものと考えておられますか。
  187. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 今の第七艦隊が入ってくることに対して、入ってきたという通知は受けています。しかし、これは義務として、向こうで日本への配置として連絡をしているわけじゃございませんが、そういう意味で連絡はあります。  そこで、それじゃこの事前協議の対象になっている日本国への配置における重要な変更、これはどの程度のものを考えているか、たとえば一個師団程度の配置が日本に行なわれるというような場合には重要な変更、こういうふうに、例を申し上げるならば、そう解しております。
  188. 岩間正男

    岩間正男君 私はしろうとでよくわからないけれども、一個師団の配置の変更は重要な変更に入るというと、第七艦隊のこれは入港、寄港、それから何カ月いるのかわからないが、そういうことは重要な変更に入らないのですか。
  189. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) ですから、先ほど申し上げておりますように、日本国へ長期間配置をして日本国のためにこれを配置するということであるならば、重要な変更であると思います。しかし、岩間さんが先ほどから指摘されているように、太平洋艦隊というのは、太平洋の領域を方々極東の平和と安全のために動いておるのであります。日本国への配置ということで日本には来ていた……、長期間日本国への配置として来ておるということは、今までになかったわけであります。しかし事態によっては、そういう場合もあるかもしれません。
  190. 岩間正男

    岩間正男君 だから、あなたはさっきぼかされたが、在日米軍ということでこの条約をやっておる。それで米軍の、合衆国軍隊というようなことで、在日米軍とそれから合衆国軍隊の区別を、ある程度あなたはなくされた。ここでは、必要なとき在日米軍で、これは日本にいるときの配置だと、こういうふうに言われますけれども、これは海だろうが陸だろうが、ここのところの解釈の仕方で非常に問題が分かれる。しかも影響するところが非常に大きい、戦力からいっても一個師団などと比較にならないだろうと思う。その持っている戦力的な位置から見たって重大な問題でしょう、大へんでしょう。とにかく原爆、水爆さえ搭載しておる、こういうような膨大な力です。このものが日本の領海に入り、日本施設、区域をはっきり利用する、そういうものについて今後とも今度の条約によってもそれを受ける義務がないと、こうおっしゃったと思うのですが、そうなったら私は大へんだと思う。しかし、今までは通告をしておるとおっしゃった、そうすれば今度の交換公文の適用の中で、当然第七艦隊の行動については、日本国民は、当然この問題は日本の防衛、安全、平和、こういうものと深い関係を持つのでありますから、この通告を受ける、それを義務化するという点で努力することが当然だと思うのですが、その点どうでしょうか。
  191. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 従来の例が日本国への配置という程度までいっておりません。いっておりませんから、連絡の通知を受けておりますが、これは義務として通知、通告として受けておるというわけではございません。今度の交換公文におきましても、日本国への配置という長期間にわたって配置するということならば、これは事前協議の対象になると思います。しかし、従来通りに、給水その他のために寄港する、それもそう長期間ではありません。こういうようなものは日本国への配置というふうにはこれは解釈できないと思います。それでありまするから、日本国への配置という程度になれば当然通知を受けなければならないと思います。
  192. 岩間正男

    岩間正男君 そこのところが非常にあいまいだし、ぼやかせば何ぼでもぼやかせる、その点がわからない。第七艦隊はとにかく二カ月や三カ月洋上で作戦をやって基地に帰らなくてもいいような性格のものです。しかし、それが少なくとも日本の領域の中に入ってきて、日本施設、区域をはっきり使うと、そういう段階のときには非常に重要な課題になる、そうしてこれについて今後非常に影響を持つ。たとえばこれは想定でありますけれども、一たん水爆を持ってそうして日本の軍港に待避してきた、それに対して相手方がこれに反撃を行なうという事態が起こったときに、日本の平和に対しては重要な関係を持っておるのです。これは今現行においても、向こうでは通知をしておるのだ、しかし義務じゃない、向こうの任意的な通知だと、こう言われておりますが、私はこの点は今後の安保の論争の中でやはり明確にしなければならない。事前協議というのが一応あるのだから、拒否権はないけれども、とにかく相互信頼であるのだということを言われる、しかもその実態が第七艦隊の行動についてはっきり日本がこれの通知も受けない、これを認定する権利もないということになりまするというと、今後の日本のやはり防衛の上において私は非常に大きな問題を持つと思うので、この点についてはなおこれは論議したいと思います。今はとにかく論議の対象ではありませんから、この問題を一応他日に譲るといたしまして、そこで今通知を受けたという話がありましたが、どこで受けたのですか、今通知を受けるとすると、自衛隊のどの機構が受けておるか、今まであったところの通知はどこに出されたか。
  193. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 海上幕僚監部が入港しておる通知を受けております。
  194. 岩間正男

    岩間正男君 現地に通告があって、海上幕僚本部にそれが通達されますか、それとも直接海上幕僚本部に通達されるということになっているのですか。これはどういうふうな機構になりますか。つまり現地の機関、それからそれを受けるところの中央機関、これはどういうふうになりますか。さらにそれが防衛庁長官にはっきり通知されるというそういう機構になっておりますか。
  195. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 横須賀及び佐世保におけるわが方の地方総監部という海上自衛隊の部隊がございます。ここと米海軍と緊密な連絡をいたしておりまして、その間の連絡調整をするわけでございます。それが、海上幕僚監部の方にいくということでございます。
  196. 岩間正男

    岩間正男君 あとの問題、これはどうですか。防衛庁長官の方は……。
  197. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 先ほど申し上げましたように、正式な通知はありませんから、私の方へは、海上幕僚監部から、入港しておる、こういう報告を受けるわけでございます。
  198. 岩間正男

    岩間正男君 これは、受けなくてもいいというようなことですか、つまり、その通告を受けるところですね。それから、通告を受けたらやはり私は認定しなければならないと思うのです。通告を受けっぱなしで、ほんとうに向こうさんの言う通り、そのままでいいのですか。私は、やはり日本の防衛上この問題は、通告を受けたら、それをやはり認定する、こういうことは大切な問題だと思うのですが、それは海幕だけで処理していく、こういうことになっておるのですか。
  199. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) そういうことになっています、私の方は。
  200. 岩間正男

    岩間正男君 防衛庁長官は通告を受けなくてもかまわない、こういうふうに解釈できますか。
  201. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 法的には通知を受けなくてもかまいません。しかし、関心を持っていますから、出先の方に照会することもあります。照会する前に向こうから私の方に報告することもあります。
  202. 岩間正男

    岩間正男君 私はやはりここは問題だと思うのです。防衛庁長官の権限問題と、それから三幕の今後の権限問題になると思うのでございますが、向こうは、これは任意の通告だからということになりますと、海幕や、いろいろ第五空軍のときや何かのときに起こってくるだろうし、それから今後ポラリスの問題があれば、こういう問題ともからんでくる問題だと思うのですが、こういうときに自衛隊を統轄する防衛庁長官が、これだけの重大な問題を知らなくてもいいのですか。私は、必ず通告がきたらそれを受ける、こういう体制になっていかなければならないと思うのですが、これは、どうなんですか。どうしてそれがいけないのですか。
  203. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 第七艦隊からは通告を直接に受けませんが、今の内部の機構からいって、海幕なら海幕から私の方に報告があるわけです。
  204. 岩間正男

    岩間正男君 そこは、ただ受けなくてもいい、何とも法的には関係がないのだ、こういうような御答弁ですが、そうなんですか。
  205. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 法律的には、報告を受けなくてはならぬということにはなっていませんが、私が上司でありますから、そういう事情については上司に対して報告をするということになっています。
  206. 岩間正男

    岩間正男君 これは入港だけではなく、退去のときもそうですか。
  207. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) その通りでございます。
  208. 岩間正男

    岩間正男君 これは直ちに通告することになっておりますか。
  209. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 大体、直ちにでございます。
  210. 岩間正男

    岩間正男君 大へんなことだと思うのですね。大体、おおむねですか。近ごろ国会の流行語になったのだが、これは困ると思うのですね。私は、ここでなぜ問題にしたいかというと、軍令系統と行政系統、とにかくその最高責任者はあなたですね。防衛庁に関する限り。しかも、こういう重大なものに対して、必ずその報告を受けるという形になっていない、しなくても法律的には差しつかえないのだ、そうしますと、こういうことが起こりませんか、アメリカはあくまでも作戦上の機密だ、軍の機密だ、従って、これは日本の軍令系統には通告はするけれども、しかし、これは長官まで通達しなくてもいいのだ、やるにしても、これは何日後か知りませんけれども、一週間後とか十日後とか一カ月後ということもあるかもしれません。あとの始末になって、これは聞くということだってあり得るわけです。そうすると、私は非常にここのところで問題になると思うのです。大体今度自衛隊の、防衛庁法案ですね、これは改正案が出されておりますね、これは要点はどこですか。
  211. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 今回の防衛庁設置法の改正案と自衛隊法の改正案の要点を申し上げますと、まず第一は増員でございます。陸海空を通じまして増員をいたしております。第二は統合幕僚会議の権限の強化でございます。それからこの中には統合幕僚学校というものを附置するような改正もございます。  それから陸海空について申し上げますと、空の方では航空団一つ増設をいたしております。それから海上の方を申し上げますと、自衛艦隊の組織を改めまして、航空集群、航空機だけの部隊を作りまして、これを自衛艦隊につけるということもございます。それから保安管制気象団というものを各航空自衛隊に新設いたします。そういうことでございます。
  212. 岩間正男

    岩間正男君 私はその中でやはり非常に性格的に重要に考えられるのは、統幕の権限強化という問題ではないかと思います。私の質問とも関連しまして、三軍を統幕が一手に握る。こういう格好です。これは非常に軍令系統が強化されている。そうすると、今の情勢の中では、アメリカのやはり軍令系統と日本の軍令系統が緊密になってくる。そして防衛庁長官という行政系統が、いわば全体を把握する系統というものは非常に私はつんぼさじきと言っては語弊があるかもしれませんけれども、今言ったように、事後の通知を受けてよろしいということに現われているように、非常にこれは今後軽視されるところの可能性が起こるのじゃないか。こういう点については、これは防衛庁長官は一体どういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。これは作戦上の必要でどうしても統幕を強化しなければならぬのだ、その一点でお答えすればできることでありますけれども、私は日本の現在の自衛隊の性格から考えまして、これは非常にこの点はやはり重要視しなくちゃならない問題だと思うのですが、いかがでございますか。
  213. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 現在でも御承知のように、統合幕僚会議というものがありまして、その構成メンバーは陸海空、三幕僚長及び議長でございます。そういう形でありますが、その間の陸海空の連絡協調を一そう密にする。こういう考え方が今度の改正の基礎をなしておるわけであります。でありまするから、今までは作戦あるいは指揮命令等も各幕僚長が防衛庁長官に禀議をしたり、あるいは防衛庁長官の命を受けて各幕僚長が作戦その他をやることになっておったのを幕僚会議長を通じて行なうということに相なるわけでありますが、その統幕会議には三幕僚長がメンバーとして入っておりますので、特に防衛庁長官のウエートを軽くして三幕の方が勝手なことをするというようなこと、そういうことが考えられるとは思いません。連絡協調が密になるというふうなねらい、こういうふうに私は考えております。
  214. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) 岩間君にちょっとお願い申し上げますが、だいぶ午後の方へ食い込みましたので、なお、赤城長官は渉外事務で急いでおられますから、どうぞよろしくお願いいたします。
  215. 岩間正男

    岩間正男君 私そんなにかかりません。  今のお話があったのでありますけれども、これは今後なお検討しなくちゃならない問題と思うのですが、私心配になったのは、さっきの通告の問題です。あの通告の問題を、通告しなくてもいい、これは法的根拠がないんだ、こういうことを言われますけれども、少なくとも、これは三幕に入った情報が、これは即時防衛庁長官がやはりつかめないという態勢になってくると、私はここのところに問題が起こったら困るんじゃないか。とにかくそれは苦々しい経験をわれわれは持っているのでありますから、この点……。そこでこれがやはり軍令系統が非常に強化されてくる、いよいよ権限の強化、こういう問題と関係しまして、あくまでもそういうとき防衛庁長官の権限をはっきりする、その上に確保するという、そういう何か法的な根拠がありますか。そういう措置は講じられていますか。一つの安全弁、それを保障する、そういうものとして私ははっきり法的な規定がなければならぬし、それはどうですか。
  216. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 先ほどの入港の通知でありますが、ちょっと私の答弁間違っていましたので訂正いたします。行政協定の第五条の第三項にありますが、読んで見ます。「1に掲げる船舶が日本国の港に入る場合には、通常の状態においては、日本国の当局に適当な通告をしなければならない。」こういう規定がありますので、通告をすることに行政協定から規定されています。ですからこれを訂正いたしておきます。  それから防衛庁長官が、何といいますか、三幕が勝手なことをすることに対しての、もしそういうことがあるとすればこれにブレーキをかけるといいますか、そういうような安全弁というものがあるかどうかということでありますが、これは防衛庁長官が最高の責任者、その上にまた総理大臣がありますけれども、責任者として自衛隊法あるいはその他の法律によって、自衛隊に関しては最高の権限をもっているのでありますから、その権限の行使を適切にやれば差しつかえないと、こういうふうに考えています。
  217. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、先の御答弁を少し訂正されたわけでありますが、そうすると、行政協定の五条によって当然これは通告しなくちゃならない。そうすると、今の通告の先はわかりますか、法的にあるわけですね、当然これは長官にあるのでしょう。ところが、実情は今の御答弁じゃあやふやです。これは大へんです。これは非常にぼかされている。あいまいになっている。まあ時間の関係から私はここでやりませんが、これは問題点です。その点と、それからどうなんですか、通告されてこれを認定するとかしないとかという問題が問題だと思うのです。通告されっぱなしですか。
  218. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) この行政協定の「日本国の当局に適当な通告をしなければならない。」これは港湾関係の当局というふうに今解釈しております。でありますので、この点はなお調べてみますけれども、私の方に、防衛庁長官に通告しなくちゃならぬということではないというふうに考えています。
  219. 岩間正男

    岩間正男君 たとえば港湾長とか、水先のああいうもの、軍に対する通告でない——そうするとまたもとへ戻りますな。どうもこれは、ここのところはお互いに、防衛庁長官の方はくろうとだから、私はしろうとだが、検討して——どうもこれはこういうことはいけませんよ、あなたたちもう少しこんなことはきちっとしておかなければならぬ。防衛庁長官を誤らしちゃいかぬ。答弁を二転三転させるようなやり方じゃ私はやっぱり補佐の仕方がまずいんだと思う。これはしかっておきます。これはいかぬ。
  220. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) この程度で……。
  221. 岩間正男

    岩間正男君 ちょっと。それで私お聞きしたいのは、今の問題を明確にすることと、それから認定をどうするかという問題。それで私さっき防衛長官の権限が侵犯されないということの保証ということを聞いたのだが、これはお答えがなかった。私は具体的にお聞きしますが、このことを要求したいと思うのです、資料として。二十九年七月以降から自衛隊に変わりましたね。そのあとでいいんですが、陸海空三軍並びに本庁内の旧軍人の人数、それから減っているのかふえているのか、全体のパーセンテージはどうなっているのか。旧軍人の数は、ウエートはどうなっているのか、この傾向は資料としてお出しをいただけると思うのですね。よろしゅうございますか。この点どうなんですか。
  222. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) ただいまの岩間君要求の資料は御提出を願いたいと思います。  これで岩間君の質疑は終了しました。
  223. 岩間正男

    岩間正男君 もう少し……。
  224. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) じゃ、簡単に願います。
  225. 岩間正男

    岩間正男君 第七艦隊のことをお聞きしましたが、第五空軍の場合はどうなっておりますか。それからもう一つ予想されるポラリス、これについては今後どういうふうにされるおつもりか、この二点をお伺いしたい。
  226. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) ポラリスにつきましては、これはもう御承知と思いますが、まだ実用化しておらないのでありまして、数カ月のうちに実用化されるであろうというふうに私ども承知しておるのであります。  第五空軍の場合は、これはお尋ねが配置の問題かと思いますが、先ほど大臣がお述べになりました通り、一個師団以上くらいのものが日本国に配置になるということであるならば、事前協議の対象になるというふうに考えております。    〔岩間正男君発言の許可を求む〕
  227. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) これだけですよ。
  228. 岩間正男

    岩間正男君 これだけでけっこうです。とにかく私しろうとでよくわからないし、国民の疑問をもとにして一部分、これは全く一部分ですけれども、安保新条約と関連してお聞きしたのでありますけれども、非常に不明瞭な点もあり、問題点は私残っておると思います。幾つか指摘することができるわけです。これについてはまた機会を見てやりたいと思いますけれども、とにかく第七艦隊の実体などというものは相当ある程度これは刊行物、ニュースなんかで明らかにされているにかかわらず、これが防衛庁を通じてほとんどつんぼさじき的にしか公表されないという点に立っておられるとは思うのでありますけれども、ここは逆にやはりもっと明確にする必要があると思います。こういう点、それからその他先ほどから問題になりましたそれらの二、三の諸点については、この点を今後明らかにしたいと、こういうことをここで明確にしておいて、私の質疑は終わります。
  229. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) 岩間君の質疑は終了いたしました。
  230. 島清

    ○島清君 ちょっと、委員長。
  231. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  232. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) 速記を始めて。
  233. 島清

    ○島清君 それでは、食事時間で政府委員の諸君も大体この辺の時間が限度じゃないかと思いますので、質問が重複をいたしまして、お答えになっておる部分がございましたら、答えたからというておっしゃっていただければ、後ほど速記録を読ましていただきますから、そのようなわけで、議事の進行の都合上お答えになる必要はないと思います。  それで、まず第一番にお尋ねをいたしたいのは、新安保条約の審議をいたしておりまする際に、防衛長官並びに政府の御答弁の中では、緊迫不正な武力の侵略に対しては個別的に自衛権を発動して武力の排撃を行なうんだと、こういうことですが、    〔主査退席、大谷藤之助君着席〕 現行の条約並びに新安保条約がかりに批准を終了したと、こういう仮定のもとにおきまして、日本が個別の自衛権を発動しなければならぬというような事態に立ち至りました場合に、そこに作戦が行なわれるわけでございますが、そういう場合には、第三国のあらゆることを考慮に入れないで日本独自の立場に立って作戦なり行動なりができるかどうか。ということをお尋ねいたしますのは、軍事顧問団ですか、今おるかどうか私知りませんが、そういうものが自衛隊を育成する創成期の段階においてはアメリカから来ておったというふうに記憶をいたしておりますので、もしかりに今もそれがあるとするならば、そういうものの役割が作戦行動の中にどの程度の——顧問団でありまするから、諮問ということでございましょうが、今のわが国の自衛隊の実情とアメリカ軍との関係からすると、日本単独の何か作戦はとれないような危惧の念を持っておりますので、その点について御説明を願いたいと、こう思うんです。
  234. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 安保条約が批准された場合に——顧問団、今おりますが、その顧問団が作戦に関与するのかということでありますが、これは全然関与することはないと考えます。今顧問団がおりますが、その目的は、相互防衛援助協定の第七条にありますが、ちょっと読んでみますと、「日本政府は、アメリカ合衆国政府職員で、この協定に基いて供与される装備、資材及び役務に関するアメリカ合衆国政府の責務を日本国の領域において遂行し、且つ、この協定に基いてアメリカ合衆国政府供与する援助の進ちょく状況を観察する便宜を与えられるものを接受することに同意する。その職員でアメリカ合衆国の国民であるものは、日本政府に対する関係においては、アメリカ合衆国大使館の一部とみなされて大使館の長の指揮及び監督の下に行動するものとし、アメリカ合衆国大使館に属する相当級の他の職員と同一の特権及び免除を与えられる。」、こういうことによって相互防衛援助協定についての関連で顧問団が来ております。でありますので、作戦に参加するということはあり得ないわけであります。
  235. 島清

    ○島清君 そうしますと、顧問団というのは、たとえば日本に緊迫不正な武力の攻撃があって、日本がどういうような処置を講ずるかという場合においても、その顧問団の存在については顧だにも与える必要はないと、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  236. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 一顧だに値しないというのは非常に言葉が強いようでありますが、作戦等については全然関係を持ちません。援助関係だけに協力を求める場合がありますが、その他においてはないわけでございます。
  237. 島清

    ○島清君 やはり顧問団が存在するのだということを意識して、緊迫不正な武力の攻撃に対しても日本のとる処置を考慮に入れなければならないということになると、やっぱり顧問団の存在ということは、作戦についても影響を及ぼすというふうに判断をしなければならないと思うのですが、新安保条約が批准を見た場合には、この顧問団についてはどのように考えておられるのですか。
  238. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) この相互防衛援助協定がそのまま、字句を訂正するものも幾分ありますが、存続いたしますので、何ら顧問団の地位等について変更はありません。    〔主査代理大谷藤之助君退席、主査着席]
  239. 島清

    ○島清君 顧問団の国内における身分はどのように条約上からは保障されているのですか。
  240. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 今申し上げました第七条の一項後段の方にありますように、「アメリカ合衆国大使館に属する相当級の他の職員と同一の特権及び免除を与えられる。」、こういうことであります。
  241. 島清

    ○島清君 そういうような、軍事に対して外交官並みの特権を与えられて、一つの国の国籍を持ったものが他の国にそういったような特権を認められたというのは、世界に例が多いのですか。
  242. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 世界で、相互援助協定を結んでおるところは同じような形式で扱っておるということになっております。
  243. 島清

    ○島清君 形式の上ではそうであるといたしましても、実質的にやはりそういうふうに存在しておるのですか。
  244. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) その通りであります。
  245. 島清

    ○島清君 国庫の債務負担行為の中で、弾薬購入について項目があげられているのですが、七億幾らですか、これは何も予算外の国庫の債務負担行為でなくとも、経常予算の中で十分に弾薬購入はできるはずなんですが、何か特別の弾薬購入されるのでございますか。
  246. 山下武利

    政府委員山下武利君) 弾薬購入費は、国庫債務として計上しましたもののほかに、歳出予算としても別個に計上してあるわけでございます。国庫債務として計上しましたものは、陸に三億六千万円、海に三億六千八百万円でございますが、この中で特に陸につきまして、従来は国内調達の弾薬は、先ほどもお尋ねがありましてお答えいたしましたのでありますが、大体従来は小口径の弾種に限って国産をいたしておったのでございます。中口径以上のものにつきましては、原則としてマッグ供与を受けましたものを使用いたしておったのでございます。最近におきましてマッグの供与が非常に少なくなりまして、一方弾種によりましては、次第に底をついて参ったものがありますので、そういうものを新しく国産をする必要に迫られてきたわけであります。何分にも新しい規格等のものでありますので、契約等についても非常に慎重を要するということで、国庫債務でお願いしているわけであります。  陸の新しい弾種としては、三・五インチのロケット砲弾及び一〇六ミリの無反動弾がおもなものでございます。
  247. 島清

    ○島清君 先ほどお答えになっておればあとで速記録を読ましていただきま  すから、この問題はこの程度でとどめますが、継続で、自衛力を漸増し増強して参りますときに、国庫の債務負担行為で一千億に近い予算を見ておられるわけですが、これは五年間継続しておやりになりますと、今の物価の変動からいたしますと、五年間の中では、防衛庁長官の前では非常に恐縮なんですが、自民党の方は十年間で倍増計画を持っておられますので、五年間では五割高ということになりますが、そういうような物価の上昇ということを見込んでの計画なんでございますか。
  248. 山下武利

    政府委員山下武利君) 倍増計画にどういうふうに物価のことが織り込んでいるか存じませんが、おそらく物価の変動ということはそう考えていないのだろうと思います。予算につきましては、現在の物価ベースで見ております。
  249. 島清

    ○島清君 そうしますと、今の物価で組んでおられるとすると、やはり政府が倍増計画をやっておられて、物価も上がることはこれは当然なんですね。それから去年よりも今年、今年よりも来年物価が上がることは、これは当然なんですから、物価が上がると、当然にこの予算では所期の計画を完全に実施することができなくなるわけですが、そうなった場合でもやはり所期の計画は完全に実施される御予定でございますか。
  250. 山下武利

    政府委員山下武利君) それは物価の上がる上がり方によるわけでございますが、現在の経済情勢からいたしまして、特に将来物価の上昇を見込まなければならないという事情は、現在のところないと考えております。
  251. 島清

    ○島清君 それは防衛庁長官からお答えいただいた方がいいと思うのですが、今国会で焦点になっておりますのは、新安保条約の批准の問題と、それから政府が発表しておられます所得の倍増計画だと思うのです。所得の倍増計画を重点施策として出されて、そうして物価が上がらぬということでこういうものの計画をされるということは、どうもやはり矛盾すると思うのです。ですから事務当局がどういうふうにお考えになったとしても、これはやはり大きな政治的な観点に立って判断すると、非常にずさんだというようなことがこれは言い得ると思いますが、その点一つ長官からお答えをいただきたいと思います。
  252. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 所得倍増計画は、十カ年の目標で策定中でございますが、これは生産の伸び——所得を従って倍増するということでありますから、その一面においては、物価を騰貴させないという面もこれは含んでおると思います。物価が騰貴するという形で所得倍増ということになりますというと、これは非常に大きな計画といいますか、倍増が非常にむずかしいことになるのじゃないかと思います。物価の方は、なるたけこれは騰貴させないという基礎の上に立っての所得倍増計画の策定を私はいたしておると思います。また、そうしなくちゃならぬのじゃないかと思いますが、しかし、それにいたしましても、全然物価が上がらぬという見通しはないと思います。そこで、国庫債務負担行為をいたす場合に、そういうものを、そういうふうに物価が上がるという場合に、これが予算化されるときに実行できないんじゃないかと、こういうお尋ねかと思います。国庫債務負担行為で長くやっておりますのは、今のF104の生産だと思います。これにつきましては、国庫債務負担行為によって契約をする権限を与えられるものでありまするから、そういう点も、ある程度考慮に入れて、たとえば労賃というようなものなども考慮に入れて国庫債務負担行為を要求する価格については考えておるわけでございます。そういうことでありますから、私は、ある程度物価が上がるということは、これは考えざるを得ないと思いますけれども、支障を相当来たすようなことにはならぬような配慮をしておるつもりでございます。でありますが、なお五カ年後の時期によりまして、どういうふうになるということにつきましてはっきり今申し上げるわけには参りませんけれども、物価の騰貴によってそう動かないような配慮だけはいたしているわけでございます。
  253. 島清

    ○島清君 それは長官も大へん苦しい御答弁だと思うのですが、意地が悪くて質問しているのではなくて、これからも物価の上昇ということは当然に、国の防衛ということを抜きにいたしまして、経済的な立場から考えるとこれは当然なことなので、そういう意味でお尋ねしたわけなんです。まあこれから一つ計画を立てられる場合には、そこらにも十分な配慮があってしかるべきじゃないか。現時点に立って五カ年先のことを考えないで、足りないときは次の三十六年度の予算のときに要求すればいいじゃないかということでは、ちょっとやはり慎重さが欠けているというそしりを免れないと思います。そういう意味において私もお尋ねしているわけであって、別に意地悪くお尋ねしているわけじゃないわけです。それはそうといたしまして、今までにも、この御説明にもございましたように、長期の継続事業ではございませんが、短期の継続で拡充計画を進められてきたようですが、今までにはそういうことはなかったのでございますか。物価が上がったために、今までの所期の計画が若干支障とまでは言わないまでも、たとえば、こういう最高の備品をつけようと思ったのが、物価が上がったために二流、三流の粗悪品に変えなければならないといったようなことはなかったですか。
  254. 山下武利

    政府委員山下武利君) 私の今までの経験では、三十二年度におきまして、いわゆる神武景気のときに相当物価騰貴がございまして、そのときには若干計画をやりくると申しますか、縮小してつじつまを合わせざるを得ないというような事態もあったように記憶いたします。
  255. 島清

    ○島清君 今度は話題を変えまして、自衛隊が水害等に出動いたしまする場合に、大へん被災者から歓迎をされておるようで、今度の増員計画の中には、建設大隊ですか、こういうものを伸展するということを計画をされまして、予算化しておられるわけですが、これは、この説明の中では、地区施設隊建設大隊、こういう工合に、機構の姿だけを説明しておられるわけですが、内容的にはどういうような仕事をどういうような形でこれをしようとしておられるか、その内容等にわたる詳細な説明をしていただけませんか。
  256. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 今度作りたいと思っておりまするのは、施設大隊一つ建設大隊一つ地区施設隊五つでございます。内容を申しますると、たとえば施設大隊で申し上げますると、装備品は、ドーザーを六両、クレーン・トラック一台、グレーダー二、建設大隊で申し上げますと、ドーザーが十五、クレーン・トラック二、クレーン・ローラーが二・グレーダーの自走式のものが四、ローラー二、スクレーパーが九、コンクリート・ミキサー二、こういうようなことになります。地区施設隊で申し上げますと、ドーザ一三、クレーン・トラック一、グレーダーが一、ローラーが一つ、こういうようなことでございます。  そこで、どれぐらいの能力があるかということでございますが、独立の施設大隊は、作業量といたしましては、一時間に三百六十立米の仕事ができる。これを道路について申し上げますると、幅五メートル、長さ七十二メートルぐらいのものを、一時間に一メートルぐらい作業ができる、こういうようなことになっておるのでございます。今回新設するものにつきましては、それだけでございます。
  257. 島清

    ○島清君 それは災害があったときに出動する、こういうことで、常時は何をやるのですか。
  258. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 施設部隊は、常時は訓練をやるわけでございますが、災害の場合はもちろん出動いたします。それから常時も委託を受けまして、公共団体その他の工事をやっております。
  259. 島清

    ○島清君 たとえば、どういうことが——公共団体の委託を受けて工事をやるということは、たとえば、どういうことが想定されるのですか。
  260. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 実際問題といたしましても、部外からの委託が非常に多いのでございます。やっております仕事は、道路の新設でございますとか、あるいは学校等の整地でございますとか、そういうようなことが大部分であります。
  261. 島清

    ○島清君 そういう建設のための自衛官の待遇と、それから、そうでない自衛官の待遇とは、何か異なるものがあるのですか。
  262. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) ございません。
  263. 島清

    ○島清君 それは、常時は訓練をしたり、公共団体の委託を受けて工事をおやりになると。こうしますと、何かそこに働く勤務時間に、労働基準法なんかというものとの関係は起こってはきませんですか。
  264. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) これは御承知かと思いますが、自衛隊につきましては超過勤務というような観念をとっておらないのでございます。ただ、しかし。毎日一応の稼業時間というものをきめておりまして、朝の八時から晩の五時まで、途中一時間休憩をとりますが、そういうことで仕事を進めておりますが、出動につきましては、そういうことにとらわれずに作業をいたしております。
  265. 島清

    ○島清君 まあ今までにも、アメリカの方の援助によりまして日本の自衛隊というのがずいぶん成長してきたわけですが、そうしてアメリカから貸与される武器は艦船等含めて供与という言葉を使われているわけですが、その供与という言葉の中には、貸してもらっているということともらっているということと、両方の意味が含まれていると思うのですが、もらったものはともかくとして、貸してもらったというものが過去にもあったのではないかと思いますが、その種別と量はどういうふうになっておるのですかね。
  266. 塚本敏夫

    政府委員(塚本敏夫君) 供与の中に、贈与と貸与があるわけでありますが、艦船以外は、大体全部贈与でございます。艦船につきまして、おもなる艦船はほとんど全部が貸与でございます。
  267. 島清

    ○島清君 それは何か、あとでは返すんですか。それから、返した例があるのですか。
  268. 塚本敏夫

    政府委員(塚本敏夫君) 艦船は返すことになっております。従来も返しております。  ただ、こちらでさらに必要な場合におきましては、さらにそれを借り受けると、こういうことでございます。
  269. 島清

    ○島清君 無償貸与でしょうが、返しまする場合に破損をしたりしておった場合には、これはまあ原形復帰ということでお返しになるんでしょうが、そういう以外に何か損害を補償するとか、こういうことがあるんですか。また、過去においてそういう例があったのでございますか。
  270. 塚本敏夫

    政府委員(塚本敏夫君) そういう場合には、全然損害をこちらで賠償するというようなことはありません。
  271. 島清

    ○島清君 破損なんかあった場合には、それを修理いたしまして原形に復帰してお返しをする。これはまあやっぱりあれでしょうね、貸し借りの普通の慣行でしょうから、それぐらいのことはやっぱりおやりになってお返しになったんでしょうね。
  272. 塚本敏夫

    政府委員(塚本敏夫君) 原形を復旧して返すということでございます。
  273. 島清

    ○島清君 今、あれですか、防衛庁長官。この個別のまあ自衛権が、自衛力の発動ができるんだ、こういうことをおっしゃって、この面から見ると、アメリカなんかはちっとも考慮に入れないで、日本は独自のすべての行動ができるような意味の一人前のことを御答弁になっているわけですが、しかしながら、反面自衛隊の成立と成長の過程から見ると、そういうことを言えたまあ義理ではないわけですね、実際。アメリカから貸してもらって、アメリカから育ててもらっておるような関係からすると、やっぱり私は、まあそういう軍事関係では全くのしろうとでございますから、辻委員がおっしゃったように、作戦の面まで入ってのお尋ねはできませんけれども、やっぱり日本の自衛力というものの増強を考えまする場合には、アメリカを全く無視して、抜きにして計画なりあるいは増強をお進めには、これは常識上ならないと思うんですね。これはやはり自衛権があり、自衛力が必要だということになると、やはり四囲の環境の客観的な条件からいたしまして私はそれは無理からぬことだと思います。決してそういうことがいけないといって否定をしようという考え方は持っておりませんけれども、全くのしろうとの立場からお尋ねしているわけですが、今あれですか、日本の自衛力の増強ということは、私が想像するような、常識的に想像するような、やはりアメリカと場合によると共同作戦がとられなければならぬでしょうししますから、それはアメリカということをやはり考慮の中にお入れになりながら、こういう自衛力の増強計画などをおやりになっているんでしょうね。そうなっているかどうかですね、ちょっと御説明いただきたい。
  274. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 今のお話のような過程をもって自衛隊が増強されてきたということはその通りでございます。ただ、アメリカに何か依存する、たよっていかなくちゃならないじゃないかというようなことでございますが、援助等については、第一次計画等におきましても、援助計画の中へだいぶん含めており、第二次計画を策定するにあたりましても、ある程度の援助というものは見込んであります。ありますが、アメリカの言う通りにならなければならぬというような立場には立っていません。しかし、今のお話のように、日本の自衛戦略といいますか、そういうものの増強について、アメリカの援助協力を求めなくちゃならぬ場面があります。たとえば、先ほどもここで議論がありましたターターというようなものを装備するということにつきましては、やはり金銭的なあるいは技術的な援助を仰ぐという場合はあります。あるいはまた、戦闘機のF104を生産するという場合においても、アメリカの技術とアメリカの財政的な援助というようなことを必要といたすわけでございます。でありますから、現状のままでならば別といたしまして、これを質的によくしていくというような場合に、援助の面からアメリカの協力を仰ぐということはやっております。
  275. 島清

    ○島清君 付属機関として、防衛研修所——防衛大学はわかるのですが、この防衛研修所というのは、昔でいいますと、何か陸軍士官学校、兵学校、こういうものに該当するものなんでございますか。
  276. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 今の防衛大学は、もとで言えば、士官学校に相当するものでありますが、防衛研修所は戦争中で言えば、戦争前ですが、総力戦研究所というものがありました。それの似たような機能、機構になっております。
  277. 島清

    ○島清君 これはあれですか。防衛庁だけの単独の、経営は防衛庁でしょうが、防衛庁以外のそれぞれの国の機関ですかあるいは民間でもいいのですが、そういうような研究所などの協力を得て運営をされるんですか。
  278. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 運営防衛庁限りでありますが、研究員には、防衛庁ばかりではなく、公務員として各省からも一、二人ずつ入る、こういうことになっております。
  279. 島清

    ○島清君 同時に、何か、技術研究本部というのがありますですね。これはまあどういう技術を研究されるかわかりませんが、これなども、まあ私思うに、たとえば、国のそれぞれの技術を研究している所もありましょうし、総合的な技術の研究の成果を期待するといたしますならば、あるいは国のものといわず、あるいは民間のものといわず、それぞれを活用し、そしてこれとの横の有機的な連絡をとることが非常に必要だと思うんですが、この技術研究本部は、そういったような、私たちが想像するような、そういう運営になっておるんですか。
  280. 門叶宗雄

    政府委員(門叶宗雄君) 技術研究本部におきましては、今お話がありました通り、自衛隊の装備品についての技術的な調査、研究、考案、試作、試験等をやる機関に相なっておりまして、研究所、試験場等を持っております。他のこの種研究機関との間におきましても、また、大学との間におきましても、それぞれ研究、試作の成果について、努めて相互に知識、技術の交換をはかりたいという方針で運用いたしておる次第でございます。
  281. 島清

    ○島清君 まあ、旧陸海軍は非常な機密費をもって、あるいは研究し、あるいはそれぞれがいろいろの面で活用されておったようですが、防衛庁の、あれですか、旧陸海軍のいわゆる機密費に当たる項目というのは、どこに当たるわけですか。全然ないのですか。
  282. 山下武利

    政府委員山下武利君) 機密費に当たる項目というものは全然ございません。技研が主としてこの研究を進めて参って、大きな経費は、試作、または委託の経費として計上されてございます。
  283. 島清

    ○島清君 それは、それに該当するものは、総額でどれくらいになるのですか。
  284. 門叶宗雄

    政府委員(門叶宗雄君) 今お尋ねの御趣旨でございますが、いわゆる機密費的なものは、私の方にはございません。ただ、報償費というのが約五千万円ございます。これは長官、幕僚長の表彰、あるいは情報を提供した者に対する実費弁償ということに使用いたされております。
  285. 島清

    ○島清君 それは何ですか、この近代的な装備を、まあ予算の範囲内で十分に整えていくという方向で、自衛隊の増強を考えていくという場合には、やはり不十分なものがあるのじゃございませんか。
  286. 門叶宗雄

    政府委員(門叶宗雄君) 私が今申し上げましたのは、いわゆる表彰、その中には、技術の開発に非常に貢献があった者に対する表彰という点も考えておりますが、今お尋ねの点につきましては、先ほど経理局長から御説明がありました、技術開発の委託その他の関係費用でございまして、これが約八千万ばかり予算に計上せられております。
  287. 島清

    ○島清君 この程度にしておきます。
  288. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) 島君の質疑は終了いたしました。  それでは、ほかに御質疑もないようでございますから、総理府のうち、防衛庁所管についての質疑はこの程度で終了したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  289. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) 御異議ないようでございますから、さよう決定いたします。  なお、三十分間休憩をいたしまして、三十分後、すなわち二時二十五分より再開をいたしまして、通産省所管の御審議をお願いいたしたいと思います。  これにて休憩いたします。    午後一時五十八分休憩    —————・—————    午後二時四十九分開会
  290. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) ただいまから予算委員会第二分科会を再開いたします。  昭和三十五年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、通商産業省所管事項を議題といたします。  まず、本件につきまして政府より説明を願います。
  291. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) ただいま議題となっております通商産業省予算各案について御説明を申し上げます。  まず、三十五年度通商産業省所管一般会計の予定経費要求額は、百七十五億六千四百万円でありまして、これを三十四年度予算額百二十九億六千三百万円に比較致しますと、四十六億円増額することになります。三十五年度予算のうち、政策事項につきましては、これを(一)貿易振興及び経済協力費、(二)中小企業対策費、(三)鉱工業技術振興費、(四)産業基盤強化費、(五)石炭対策費の五項目に分け御説明申し上げます。  第一に、貿易振興及び経済協力費といたしましては、世界貿易の自由化の傾向に伴う輸出競争激化の情勢に対処して、海外市場の開拓と販路の拡張をはかりますため、前年度に引き続き各般の貿易振興事業を充実強化するための施策を講ずることといたしまして、前年度対比四億九千二百万円増の二十五億一千八百万円を計上いたしております。まず、貿易振興につきましては、特殊法人日本貿易振興会の事業運営に必要な経費として、前年度対比二億七千九百万円増の十三億六千二百万円を計上いたしまして、従来に引き続き海外市場調査、国際見本市参加、貿易斡旋所の運営日本商品の宣伝、米国市場輸入制限対策等の海外事業を拡充いたしますとともに、国内中小企業者に対する貿易の指導斡旋業務の充実をはかりますほか、来年度は、特にモスコーにおいて大規模な見本市を開催する等、総合的に輸出振興事業を推進する所存であります。次に、昨年七月に設立されました財団法人日本輸出雑貨センターの事業運営に必要な経費として、前年度の約倍額の一億一千百万円を計上いたしまして、引き続きデザインの登録認証制度の確立、共同検査場の設置運営等の業務を行うとともに、新たに、常設展示場の設置等の事業を行なうことといたしております。なお、貿易振興関係といたしましては、日本プラント協会事業費補助等のプラント輸出促進費一億九千万円、東南アジア、濠州及びニュージーランド諸国に巡航見本市船を派遣いたしますための補助金一億二千八百万円、生糸及び絹織物の海外宣伝費補助四千八百万円、輸出品の検査改善強化費七千六百万円等を計上いたしております。次に、経済協力対策費でございますが、輸出市場の培養、輸入原材料の安定的確保、中小企業の海外進出等をはかりますため、東南アジア及びその周辺諸国の経済、社会等の実情を十分調査いたしますとともに、これら諸国に対する経済協力を積極的に推進する所存でございまして、おもなる経費といたしましては、財団法人アジア経済研究所を特殊法人に改組し、その調査事業の拡充に必要な出資金一億円、補助金一億五千万円、技術者及び中小企業者の海外派遣斡旋事業費、海外技術者の受入研修費、投資等基礎調査費補助等一億三千八百万円であります。海外経済協力基金(仮称)の設立につきましては、後ほど財政投融資関係で御説明申し上げます。  第二に、中小企業対策費といたしましては、中小企業の振興が、今後の貿易自由化方策の円滑な推進にも、また、わが国経済の発展のためにも重要であることにかんがみまして、二十四億二千七百万円を計上いたしており、前年度対比八億八千四百万円の実質増となっております。まず、中小企業の設備近代化につきましては、従来の貸付率三分の一を二分の一に引き上げることといたしまして、前年度対比三億円増の十三億円を計上し、中小企業の設備の合理化を一そう推進することといたしております。中小企業対策費として特に重点をおいた事項といたしまして、小規模事業対策費でございますが、現在、小規模事業者に対して、経営、技術に関する相談、指導等を行なっている商工会等を法制化し、商工会議所とともに、小規模事業者の相談、指導に当たらしめることといたしまして、新たに補助金等四億三百万円を計上いたしております。次に、中小企業の実態に応じた総合的振興策を業種別に行ないますための業種別指導事業、企業診断事業及び技術指導事業の強化に要する経費として二億四千四百万円を計上いたしております。なお、中小企業対策費といたしましては、共同施設補助一億二千五百万円、災害復旧利子補給金七千二百万円、団体中央会補助六千四百万円、汚水処理施設補助五千万円等を計上いたしましたほか、中小鉱山の新鉱床探査費補助につきましては、前年度の倍額の一億円を、また煙火関係の災害防止のための補助三千万円を新しく計上いたしております。  第三に、鉱工業技術振興費といたしましては、最近における先進各国のめざましい技術の進歩に対処して、新技術の開発と、これが産業における利用の促進をはかりますため、前年度対比三億五千万円増の二十六億六百万円を計上いたしております。おもなる事項といたしましては、まず、国立試験研究所の重要研究費等に必要な経費として前年度対比二億三千二百万円増の十五億一千三百万円を計上いたし、国立試験研究機関の設備の更新近代化をはかりまして、前年度に引き続き電子技術、オートメーション技術、生産加工技術、エネルギー対策技術、分析技術等、わが国経済にとって喫緊の重要研究を推進することといたしております。なお、北海道における鉱工業の開発促進のため、北海道工業開発試験所を新設いたしたいと存じまして、初年度に必要な経費として五千万円を計上いたしております。民間における試験研究の補助につきましては、四億七千五百万円を計上いたしまして、国家的見地より見て重要と思われる応用研究、工業化試験、機械設備の試作等について助成を強化する所存であります。  次に、近年工業所有権に関する出願件数が激増いたしておりまして、その最終処分にいたる期間が遅延し、産業活動にまで影響を及ぼすにいたっておりますので、定員、経費を充実し、処理の正常化をはかることといたしまして、前年度に比し一億二千二百万円増の五億六千七百万円を計上いたしております。なお、技術振興関係といたしましては、ほかに、原子力平和利用研究費として二億二千八百万円程度が、科学技術庁より当省所管の試験研究機関に移しかえされる予定であります。  第四に、産業基盤の強化対策費でありますが、わが国産業の将来の飛躍的発展の基礎を作るため、前年度対比四億七千六百万円増の十七億二千四百万円を計上いたしておりまして、その内容のおもなるものといたしましては、まず、工業用水の確保が、今後における工業生産の伸長のため重要不可欠な基盤である点にかんがみ、工業用水道の事業費といたしまして、北伊勢、川崎、大阪、尼ケ崎等継続十一地区のほかに、新規事業として、東京都江東地区、大阪臨海、北九州及び加古川の四地区を加え、計十五地区の事業に対し、補助を行なうこととし、前年度対比四億二千八百万円増の十二億七千再万円を計上いたしております。次に、わが国産業の生産性の向上を推進するため日本生産性本部に対する補助として一億四千五百万円、天然ガスの開発、新潟地区地盤沈下対策費として四千百万円等の経費を計上いたしております。  第五に、石炭対策費でありますが、現在の石炭不況を克服し、石炭鉱業の抜本的体質改善をはかりますため、前年度対比二十六億八千八百万円増の二十八億六千八百万円を計上いたしまして、炭鉱の体質改善による合理化を促進する所存であります。すなわち、炭鉱の大規模な合理化工事、石炭流通機構の合理化及び中小炭鉱の機械化を促進いたしますため、炭鉱設備近代化特別貸付金制度及び中小炭鉱機械化促進特別貸付金制度を創設することとし、これがため、石炭鉱業整備事業団を石炭鉱業合理化事業団(仮称)に改組いたしまして、これに二十一億四千万円を出資することといたしております。次に、石炭鉱業向けの日本開発銀行及び中小企業金融公庫の貸出金利が六分五厘に低減されますに伴い、整備事業団に対する加算納付金が廃止されることになりましたので、事業団が買収する非能率炭鉱買収物件に対する補助四億円を計上いたしております。なお、石炭業界共同で設置いたします財団法人石炭技術研究所(仮称)に対し、補助金五千七百万円を計上いたしております。石炭対策関係といたしましては、ほかに、炭田総合開発費として四千万円、石炭鉱害復旧事業費として当省分一億七千百万円及び他省関係六億七千八百万円等の経費を計上いたしております。  以上をもちまして、当省所管の一般会計に関する御説明を終わりますが、詳細については、お手元の予算要求重要事項表をごらんいただきたいと存じます。  なお、当省の所管いたしております特別会計につき、以下歳入歳出予算の大要を簡単に御説明申し上げます。  まず、アルコール専売事業特別会計でございますが、三十五年度の歳入予定額は三十五億三千四百五十九万五千円、歳出予定額は三十億六千三百四十万五千円でありまして、資産、売掛金の関係を加減します。と、三十五年度の益金予定額は四億五千九百九十四万七千円となります。  第二に、輸出保険特別会計でございますが、三十五年度歳入歳出予定額は、ともに八十億七千百十二万八千円でありまして、歳入のおもなるものは、保険料収入十二億六千三百四十九万円、資金運用収入三億一千五百万円、雑収入三億八千六百五十九万五千円、前年度剰余金六十一億六百四万三千円であり、歳出のおもなるものは、支払保険金九億四千六百八十六万円、予備費七十億六千六百五十一万三千円であります。  第三に、特定物資納付金処理特別会計でございますが、本会計は、特定物資輸入臨時措置法に基づくもので、三十五年度の歳入歳出予定額はおのおの三十億七千百二十六万円で、歳入のおもなるものは納付金三十億一千八十九万円であり、歳出のおもなるものは、産業投資特別会計繰入三十億六千七百五万円であります。  以上をもちまして、一般会計及び特別会計予算概要につき御説明いたしましたが、この際、当省関係の財政投融資計画について、簡単に御説明したいと存じます。  昭和三十五年度における当省関係の財政投融資の総額は一千六百十二億円でありまして、これを昭和三十四年度当初計画一千五百四十七億円と比較いたしますと、六十五億円の増加となります。本計画の作成に際しましては、電力、鉄鋼、ガスについての世界銀行借款四十三億五千六百万円及び電力向けなどの資金調達のため開銀による外債三千万ドル(百八億円)の発行が別途に予定されておりますが、またさらに、経済情勢、金融情勢の推移に応じまして、財政投融資計画を弾力的に運用いたすことにより、重要産業及び中小企業並びに貿易振興、経済協力の促進のための資金確保につき遺憾なきを期する所存であります。  まず、日本開発銀行につきまして、三十五年度における同行の融資の重点は、わが国経済の安定的成長を目標といたしまして、産業基盤の強化、産業構造の高度化と資源の有効利用に直接的に貢献する産業の育成、助長を目的として、電力、石炭、特定機械、化学肥料、都市ガス、産業関連施設等を重点的に取り上げることといたしましたほか、地域間の均衡的発展を目途とした地域開発融資を推進することといたしました。運用総額は、六百六十億円を確保するものとし、このため財政資金四百三十億円の融資を確保いたします。次に、中小企業金融公庫でございますが、中小企業の設備の合理化、近代化とその企業の経営の安定化に資するよう資金運用を行なうことといたします。運用総額は三十四年度当初計画六百四十五億円に対し、七十億円増の七百十五億円を確保いたし、このため財政資金三百十五億円の融資を受けることととした次第であります。商工組合中央金庫につきましては、中小企業に対する組合金融の充実をはかりますために、三十四年度の当初計画に対し、百億円増の二百五十億円の貸出純増を行なう計画でありまして、このため財政資金による商中債引受三十億円を行なうことといたしております。中小企業信用保険公庫につきましては、三十五年度においては、信用保証協会の保証規模を拡大いたすことによって、中小企業金融の充実をはかりますために、融資基金として産業投資特別会計から出資十八億円を行なうことといたした次第であります。次に、日本輸出入銀行でございますが、三十五年度におきましては、プラント輸出の促進、東南アジア等に対する経済協力と賠償実施の促進をはかるため、七百二十億円の貸付を行なう計画であります。この貸付規模は、三十四年度当初計画八百億円に対し八十億円の減少ではありますが、同年度の貸出実績見込約六百七十億円に比較いたしますと、五十億円の増加となっております。この貸付計画を確保いたしますため、三十五年度におきましては、出資十億円、融資三百五十億円、合計三百六十億円の財政資金を投入する計画であります。次に、電源開発株式会社につきましては、三十五年度におきましても三十四年度に引き続き、奥只見、御母衣、滝などの電源開発継続工事に主力を注ぎますほか、黒又、二又等の新規地点の開発を計画いたしまして、四百六十五億円の工事規模を確保し、このため財政資金四百二十五億円の融資を行なうこととしております。次に、石油資源開発株式会社につきましては、海洋掘さくを中心とする石油資源の探鉱等を行ないますため、十九億円を産業投資特別会計から出資する計画であります。このほか、油田の開発にかかわる民間資金の借り入れにつきまして、五億円の政府による債務保証限度額を設定いたしました。次に、日本航空機製造株式会社につきましては、三十五年度の事業資金として、経済援助資金特別会計から七億五千万円の財政投資を行ないまして、当社の事業計画の円滑なる遂行を確保することといたしました。最後に、海外経済協力基金(仮称)についてでありますが、昭和三十三年度において経済基盤強化法に基づき、日本輸出入銀行に出資されました五十億円を東南アジア経済協力推進の基金として活用いたしますため、目下、特殊法人の設立を準備中であります。  以上をもちまして通商産業省所管の一般会計及び特別会計の予算の御説明を終わりますが、なお、御質問に応じて詳細に御説明申し上げたいと存じます。何とぞよろしく御審議の上可決せられんことをお願いいたします。
  292. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) これより質疑に入ります。
  293. 島清

    ○島清君 ただいまの通産大臣の御説明を承っておりますと、万事におきまして大へんけっこうずくめの御説明でございますが、私たちの見るところによりますと、必ずしもそうだとばかりは受け取れない節が多いのであります。従いまして、その観点から二、三点お尋ねいたしたいと思いますが、予算の一般質問をいたしましたときにも触れておいたのですが、貿易の自由化が強力に進められているわけですが、そこで、この貿易の自由化の進め方によりましては、通産大臣説明によりますというと、影響を受けても、それに対応できるような体質の改善をしながらその政策を進めていくから影響はない。そこで、漸進的に進めていくから大したことはないということなんですが、その配慮のほどはわからないわけでもございません。よくわかるような気がしますが、しかしながら、この貿易の自由化を促進しなければならないということの最大の理由は、日本の経済の発展の必然性から、貿易の自由化というものが促進されたのではなくして、その点は、大臣がどのように御説明をされようとも、客観的には、そういうことは証明されないと思うのです。それは、たとえば西欧の欧州共同市場等の問題と関連をして自由化が促進をされる。南米においても北米においても自由化が促進をされながらも、なおかつそのブロック化の基盤の上に立って促進をされておるということは、それと並行いたしまして、そのブロック内におけるところの企業の熾烈なる競争が行なわれまして、そしてその経済のみずからの発展、動きの中で、すなわち経済の自律作用によりまして資本が膨張し、独占という言葉は少し言い過ぎかもしれませんが、その経済のワク内においては活動が狭隘性を感じ、そして経済の自立性に基づいて外の方の市場を求めていく、こういうような姿から勢いいたしまして、そういう競争をやっていくと、市場の争奪戦というものが行なわれるから、ひいては市場の争奪戦から、あるいは武力の衝突なんということも考えられるので、いみじくもそういうことはレーニンも指摘をしておりますが、そういうことがあってはならないというので、過去の苦い経験に照らして、そして各国があまり激突して市場の争奪戦をやらないで、おのおのの資本主義経済が維持し、発展していくようにという、いわゆる自由放任の経済の姿ではなくして、そこに何かその指導する国家意思を加えてブレーキをかける、こういうような経済の発展に伴って、ブロックを、地域的な市場共同体を持ちながら、自由貿易化というものが進められてきているということは、またまぎれもない事実だと思うのです。ですから、言葉をかえて申し上げますというと、これは自由貿易化ということは十九世紀的な、単に手放しの自由化に帰るというのではなくして、その自由化の基盤というものは、ブロック的な、地域的なものの上に立っておる。そして激烈な競争にたえて、そういったような自由化というものが叫ばれてきておるのである。私はそれは並行的なものだと思うのですが。それから日本大臣がどういうふうにお考えになりましょうとも、日本が貿易の自由化を進めなきゃならないということは、やはり私はアメリカの要請があると思うのです。そのアメリカの要請がなされたということは、やはり安保条約の中にも、経済提携というものがうたわれておりますけれども、低開発国の集団的な日本を拒否するという態度は、アメリカが肝いりをして日本を参加させたのだということが大へんに私は原因をなしておると思うのです。もしかりに、そういう低開発国の会議日本が加わることがアメリカのあっせんによってできなかったとすると、私はやはり東南アジアのあれだけの人口と、あれだけの資源を持っておりまする市場から——今でもやはり市場を失っておる形ですが、将来においては、やはりあれだけの市場をわれわれがみすみす失うという形になりますので、もしかりに、そういう市場を開拓していこうとするのには、やはり日本がヨーロッパ筋がきらっておる日本のこの統制的な貿易のあり方、これにやはり自由化の促進をしなければならない、こういうような外からの、強いか弱いかは別にいたしまして、応じなければならないという客観情勢が発生をして、そしてその主体的な条件をその客観情勢に対応できるように自由化を促進さしていくというところに、私はその自由化政策の根本があると思うのです。そういうことが誤りでないといたしますると、何といいましても、ヨーロッパにおきましても北米におきましても、世界の先進資本主義諸国家は、やはり激烈な国際競争にたえて、そうして自由化を叫んでおるわけでありますから、相当にその企業の中の体質は改善されておると見なければ私はいけないと思うのです。そういたしますと、そういう観点から、わが国の産業の実情を見ますというと、それは申し上げるまでもありませんが、長いこと温室の中に育っておりましたので、まだ私はある産業においては激烈な国際競争にたえていくほどの体質改善はなされていないと思うのです。そういう意味合いから、一般質問のときにも、コストをうんと下げていかなければ国際的に勝っていくことはできないのではないか。そういう観点からいたしまして、電気の再々編成ということをお考えにならないかということを私はお尋ねをしたのですが、そういう意図はないということで突っぱねられたのですが、たとえば九州電力あたりは値上げを申請しておりましょう。今のような形の——今、広域運営をやっておりますというと、電源開発もできない、非常に高くつくということは、電気の鬼といわれております松永安左衛門さんが指摘しておられるのですね。今のような形ではとても電源開発は高くついてできない。だから電力の再々編成をもう手をつけなければならぬということは、その電力の関係者の諸君が言っておるわけなんですね。いわんやコストを下げて、これから貿易の自由化をして国際競争で打ち勝たなければならぬという場合に、私は電力を安く開発をして、そうしてコストを下げていくという方策がとられないと、私は貿易の自由化を促進して実施してみても、結局、日本が負ける形になるのじゃないかと、こういうふうに思うのですが、その私の考えていることが杞憂に終われば幸いですが、私がそういうふうに心配していることを、各方面から大臣もう一ぺん納得のいくように説明を願いたいと思います。
  294. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 自由化の態勢は、これは理論的にもそうであるし、実際の情勢も自由化に向かっていっております。日本が自由化するということは、先ほどお話しの点から申しますると、イギリス、ドイツ、イタリア、フランス、ポルトガル、そうしてアメリカ、カナダ、この低開発国開発同盟と申しますか、これに入るためのあれではないのです。これは昨年の秋に、ジロンがヨーロッパに飛んでいってからできたことでして、自由化の問題は、われわれはもう数年前から考え、昨年の春も閣議決定をいたしております。私が通産大臣になりましてからも、日本の経済の体質改善とにらみ合わせて自由化していくべきだということは、通産大臣としての就任当初に言ったことでございまして、理論的にも、また情勢から申しましても、自由化が日本経済のこの上の発展を来たすゆえんであり、また日本が世界貿易の拡大に協力していく上においても必要だと考えておる次第であります。お話の点に、アメリカの要請があったというようなお話でございますが、これはヨーロッパの例をとってみますと、ヨーロッパ各国とも、イギリスその他の国は、アメリカに対しまして、相当の制限をいたしておったのであります。一昨年の暮から、対ドル地域に対しまして非常な自由化をはかってきまして、今では、一九四九年あるいは一九五五年の状態から比べまして、九〇数%まで各国はいっている状況でございます。今回対ドルに対して特別な制限を加えておったということは、私は世界の情勢がこうなりましたために、アメリカ、カナダ等に対してのみ差別的政策をとっておった、これはやめなければならぬ。その理由は、一昨年の暮からポンドが交換性を回復いたしました。そうすると、ポンド地域とドル地域とに差別待遇をつけておった理由がなくなるわけです。御承知の通り日本はポンド地域に対しては輸出超過で、ポンドはたくさん入っております。ドルの方は、輸入超過でありますからドルが不足なんです。従って、従来はポンドの方から買うのは自由に買えた。しかし、ドルの方から買うのは、これは切符制にする。これではアメリカとしてもたまらない。今までのようにポンドが楽であり、ドルが不足であったというなら理屈が立ちますけれども、ポンドとドルが交換性を回復したら、差別待遇をアメリカにしいる理由がなくなってくる。アメリカやカナダにのみ差別をして輸入を制限するということは、アメリカの要請がなくても、日本が世界を相手にして平等の立場でいくという意味におきましては、これは当然廃止すべきではないか、こういう立場から、おととしまでは二百三十品目くらいでございましたが、それをおととしの暮ぐらいに十三品目に、去年から十品目にまで少なくした。残った十品目を、われわれはまず一年以内にやっていこう、対ドル差別の十品目をできれば十月までにはずしてしまいたい、こういうことでございます。日本の経済力が自由化しても差しつかえないまでにいっておるかという問題の一つの例として申し上げますが、石こうは今対ドル関係で差別待遇をして入れておりません。これを入れるということになりますると、まだ日本の石こう業者の合理化が進んでおりませんので、石こうは合理化すると発表いたしましたが、制限をつけて合理化いたしております。エジプトから来まする質のよい石こうは、日本と競争がございませんから、これは自由にする。それからメキシコの分は日本の石こうと同じような品質で、CIF価格は今のところ日本の価格よりも安いのでございます、この分は。石こうは自由にしますが、特定の石こうは自由にしていない。日本の石こう関係の合理化を待ってやろうと、こういうふうに一々気をつけてやっておるわけであります。御承知の通り日本の貿易為替管理というものは、資金にいたしましても、物品にいたしましても、全部網をかけて統制をし、そのうちからはずして差しつかえないものを徐々にはずしておったのでございます。機械なんかにつきまして、われわれははずしました。たとえば、機械とは言えませんが、電気洗たく機とか、冷蔵庫とか、あるいはテレビとか、ラジオとか、こういうものは競争力がありまするから、こっちの方が安いくらいになっておりますから、こういうものは入れます。しかし、競争力のないものにつきましては、これは今すぐに入れるというわけにはいかない。たとえば繊維関係を来年の四月から自由にするということになりますると、原料の綿花や羊毛を自由にする。従って織物製品を自由にするように考えておりますが、これはできないことであります。これは、たとえ競争力がありましても、各国とも日本の繊維製品につきましては相当制限を加えておりますから、向こうがはずせばこっちもはずすと、こういうような格好で、たとえ力ができてきましても、そういう方策を講じなければ日本が損をすると、こういうことでありまするから、初めは大体競争力のついたものについてやり、そうしてこちらに競争の品物がない原料品等につきましてまずやっていこうと、こういうことでございますので、これは日本をこれ以上高度な発展をさすためにはぜひ必要なやり方であり、よそから言われるとかどうとかいうことでなくて、日本自体が真剣に考えなければならぬというふうに思っておるのであります。余談でございまするが、私は今から十一年前に大蔵大臣を引き受けましたときに、あの切符制度を、国内につきましては自由にいたしております。これが日本経済の発展に非常に役立ったと思っております。これ以上日本の産業を合理化し力強くするためには、この温室の殻を徐々に破っていって力強いものにしたい。一ぺんにやったら、かぜを引いたり、大へんなことになります。徐々に日本経済を強くしながらやっていく。いつまでも温室におるというのでは安易に流れますから、刺激を与えて、ほんとうに自分の力で、政府もまたこれを助けて、基盤を強化しながら自由化していくことが、日本がこれ以上の発展を来たすゆえんであり、世界の貿易拡大と平和に協力するゆえんであると、こう考えておるわけでございます。
  295. 島清

    ○島清君 大臣の言われる真剣に取り組まなければならないということについては全く同感です。しかし十年以上も温室育ちをしておった日本経済が、すぐにこの貿易の自由化だといって外の荒い風に当たれば——まあかぜを引かないようにという御配慮があるようですが、しかしたとえば、この前お聞きしたところが、独禁法の改正もしないと、こうおっしゃっておるわけです。しかしながら、諸外国の企業というものは、その一国の市場内においてはすでにもう競争が済んで、先ほども申し上げたように、資本の独占化と言っては語弊があるかもしれませんが、いかなる競争にでもたえていくという資本主義経済の試練を経て、そうして国際場裏の競争に出かけてきているわけですね。すなわち、よろい、かぶとで武装して出てきている。私が言うのは、取り組まなければならぬことは同感でございますけれども、日本の産業はまだそこまで資本主義的な経済の試練を経てきていないのではないか、こういうわけであります。そこで、経済の自律的な作用として、貿易の自由を求めるというのではなくして、日本の国策といいましょうか、政策といいましょうか、そういうものが先行して経済の自由化、貿易の自由化を要請をしているという形が私はとられていると思うのですね。それについては、これはもうおくればせながら、あるいはそれを、とらなければならなかったかもしれませんが、そういう政策が経済よりも先行していったとするならば、それに対する、十分勝ち得るだけの条件を整えてやる必要があるのではないか。その条件の一つとしては、つまりコストを下げることに努力をしなければならない。コストを下げる努力の一番手っとり早い条件としては、電力なんかの方面からの、これ以上上がらないような措置をする、するにはやはり電力の再再編成ということに当然に手をつけなければならないのではないか、こういうことを申し上げているわけです。そういう立場からの電力の再々編成ということをお考えにならないか。なぜ私がそれをしいてお尋ねをするかと申しますというと、新聞に、九州では電力値上げを要求しているでしょう。申請しているでしょう。そうすると電力の値上げをする、そこから上がってくる。そうするとコストが上がってくる、コストが上がれば国際市場において勝てないと、こういう結果になるでしょう。そういうことを、私は十分な配慮がなされているかどうかということをお聞きしたい。
  296. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 日本の体質改善につきましては、電力もそうでございましょうが、まず第一に会社、企業の体質改善、それからその次には金利の低下、そうしてその次には技術の振興、こういうことが私はもとであると思います。もちろん電力を安くする、石炭を安くする、これはもちろん必要なことでございまするが、体質改善はそういうことでございます。しかし、自由化するためには、電力を上がらぬようにしなければいかぬ、こういうことでございますが、直接に自由化との関係はございません。間接にはもちろんございます。今お話しがございましたが、体質がよくなっているかという問題について一つ申し上げますると、たとえば鉄鋼でございます。鉄鋼につきましては、御承知の通り相当競争力ができております。しかし、今の鉄鋼にいたしましても、スクラップはヨーロッパやインド、豪州から自由にきておりますが、アメリカからは制限しております。これは四月からやります。そうして銑鉄も、アメリカからの銑鉄は押さえております。しかし、インドその他からの銑鉄は自由に入る、こういうふうに差別待遇をアメリカにしている、しかし、今度は銑鉄につきましては、十月から直せ、こういう議論があります。銑鉄を自由に入れると、その原料の粘結炭は自由にしていない、これじゃ製鉄業者は困るのじゃないか、理屈はその通りでございます。しかし、日本の製鉄業はすでに銑鉄を自由にしても競争し得るだけの力になっている、原料の石炭は、これはまだまだ解けません。石炭工業合理化が済むのが昭和三十八年でございます。ボイラー規制法等がまだもう三年半もあるわけであります。その間に粘結炭の自由化ができるというわけのものではございません。しかしながら、そういうふうに原料を不自由にしておっても、製品が自由に入ってきても差しつかえないのだというだけの製鉄業ができましたから、これをよそうといたしておるのであります。トランジスター・ラジオなんかにつきましては、日本はおくれておったのですが、今では世界に冠たるものである、こういうものにつきましても自由にいたす、そういうふうにして参りますので、それはいろんな点におきまして、より強くするために、原材料、エネルギー等の分は上がらないように、下がるようにすることがほんとうであります。しかし、それができなければ自由化ができないというわけのものではございません。たとえていえば、繊維工業につきましては、紡績、羊毛も一部そうでございますが、日本で一番強い産業といったら繊維工業、世界に負けません。しかし、これは原料を不自由にしている。切符制にしている。しかも切符制があるために、あるときは綿花が二割、あるいは羊毛につきましては三割の配給による特権がそこに加わって、それが原価になっておった。それが原価になりまして、そして国内の繊維製品が高くなって、外国と競争するためには外国にはある程度安く売っていく、こういう間違った、いかに日本の経済力……、繊維工業は世界であります。そういうものについても、不自由なやり方を原料でやっておったからであります。しかし、ほんとうの意味のあり方ではない。国内に安価に低廉な、しかも合理的な配給をしていくというためには、ぜひこれは自由化が必要であるというので、これもやるようにしておるのであります。各産業の実態を見ながら、もとを直しながら、また世界の情勢を見ながら徐々にはずしていこうというのでございます。もちろん今お話しの九州電力で値上げの申請はまだ出ておりませんが、エネルギーの方はできるだけ負担を軽くする。私は一番の問題は金利だと思いますが、こういうものにつきましても徐々に正常化し、合理化して世界水準に持っていかなければならぬものだと考えております。
  297. 島清

    ○島清君 議論にわたるかと思いますけれども、私は国際市場において日本商品が競争しなければならないということについて政策を進めまする場合に、電力が直接、貿易の自由化と関係がないという御議論に対しては、どうも考え方が非常に異なるのですね。商品とは何ぞや。要するにエネルギーの有形的に変化したものなりという説すらあるのですね。それが電力と直接には関係がない、貿易の自由化というものは、要するに自由に競争するということなんですからね。言葉をかえて言えば、外国品をどんどん日本に入れてよろしい、どんどんはあれですが、日本に自由に入れてよろしいということなんですから。それで、最も重要な面を直接関係がないということについては、どうも納得するわけにはいきませんが、それは議論になりますから、御説明をいただけるならばあとで説明していただいてよろしゅうございますけれども、私からはもうそれ以上はお尋ねはいたしません。大臣は何か客観的な要請に基づいて日本の貿易の自由化というものが進められたのではなくして、大臣のお考えの中から生まれてきて、そしてその政策が進められているというような御説明ですが、しかしながら、貿易の自由化を促進をして参りますというと、中小企業が非常に影響を受けるのですね。影響を受けますけれども、新年度の三十五年度を迎えるに当たって会計年度じゃなくて、三十五年を迎えるに当たって、中小企業の高官の諸君が座談会をやっておりますけれども、それには少しも自由化政策については触れてないのですね。三十五年度一番重要な問題である自由化政策から受ける影響についての中小企業の問題については、いささかも触れてないのですね。それから見ると、大臣がいつごろそういうことをお考えになったかわかりませんが、そうすると、大臣のお考えが政策として、また、あなたを補佐しなければならぬ通産省の高官連中にすら強くそれが取り上げられてないということになるのではないか、こう思うのです。私は中小企業の政策の脆弱のことについては、しばしばそれを取り上げて指摘をしているのですが、大臣が自由化をしても影響を受けないという鉄の例をとられましたが、これは日本におけるところの典型的な独占形態なんですね。これが国際市場で勝負にならぬということになると、日本の産業で勝負になるものは一つもないでしょう。これは独禁法の問題と関連をして、しばしば指摘された問題ですが、それはさておきまして、鉄の例というものは、私の質問に関連をいたします御答弁の例にはちっともならないと思うのです。ですから私は方向を変えまして、中小企業の受ける影響というものは非常に甚大だと思うのです。それはあるいは有利になる産業もあるでしょう。しかしながら、おしなべて私は非常に強い打撃を受ける面の方が多いと思うのです。私はそれについての配慮がなされていないということを金融の面からも指摘できると思うのです。中小企業の諸君は金融難にあえいでおりますけれども、今、中小企業の諸君はやはり五〇%は市中銀行から融資を仰いでおるのです。専門の中小企業金融機関から融資をしてもらっているのはほんの微々たるものです。そうして中小企業の諸君の求めております需要量の一割しか政府の財政投融資を含めて資金的な配慮がなされていないのです。それからいたしましても、私は貿易の自由化からきます中小企業の影響というものを考えますときには、もっとやはり財政投融資の面などにも格段の配慮がなされていなければならないと思うのです。しかも直接の中小企業の資金としては二十四億でしょう。それくらいのものを持って貿易自由化に対応する中小企業の対策として、これで十分であるということに至っては私は少し理解しかねるのですよ。ですから通産大臣はしばしばそれを、通産委員会あたりでも皮の例をとられて皮は輸入をしても自由になってもちっとも製革業者の方は影響を受けないのだ、こういう説明をしておられますけれども、それは一面の説明でございまして、私は全面的な説明にはならないと思うのです。それが自由化をされまして、それからアメリカの機械を持ってきまして、資本が投下をされて、そして日本の低賃金で製品化されるということになると、私は目一本の製革業者というものは立ちどころにつぶれてしまうと思うのです。これは中小企業に対する思いやりがなされていないという一つの例ですが、アメリカの資本のねらっておりますのは、日本の労働市場の低賃金ですから、だから非常に中小企業に対する影響というものは甚大だと思うのですよ。私が今御指摘を申し上げた点について御説明がいただけるならば承っておきたいと思います。
  298. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 皮の問題が出ましたが、御承知と思いますが、大体、皮革というものは年に二千万ドルばかり入って参ります。日本の製品の皮革はごく少量でございます。その二千万ドルというものがどこから今まで入ってきておるか。この六、七割というものはアメリカから入ってきておる。アメリカの方は自由に入れません。対ドル制限で指定をされている。そうすると、今では二千万ドルのうち千二、三百万ドルというのが豪州、ニュージーランド等から自由に入ってくる。アメリカのものは初め千七、八百万ドル入っておったものが、アメリカ以外からどんどん入ってくると半分以下になる。こういうことは、今度はポンドの交換性が回復された今日許されない。私は皮革につきましても豪州、ニュージーランドから自由に入るならばアメリカからも自由に入れたらいいじゃないか。ポンドもドルも同じじゃないか、これでやっておるわけです。皮革業者の業態から申しますと、私は業界に十分相談してやる。しかしあなたの言う自由化というものは、原料、製品の自由化ではなく、資本の自由化だ。資本の自由化を今すぐやるとは大蔵大臣は言っていない。これは皮革ばかりじゃございません。どんどん向こうは資本を持ってきて、ここで会社をこしらえて、低賃金でやるということになると大へんなことになる。そういうことは、それは私が就任いたしましても、たとえば3Mといって非常に高度の技術がありますが、これなんぞを入れるとならと、関係中小企業者が困るからこれはとめます。入ったにしても関係業者に影響のない品物を作るとなればいい、こう言ってとめておる。私は今早急に資本自由化なんかをやるということは考えておらない。大蔵大臣もしようと思いません。ただ、経営取引の自由化はぼつぼつ行なわれております。為替の取引の自由化は、大資本家が勝手に入ってきて、ここで自由な姿でやるということは、これはヨーロッパ諸国でも資本の取引の自由化というものは全部踏み切っているわけじゃない。こういうことで、われわれのいま考えておる貿易為替の自由化を徐々にやっていくということは、これはヨーロッパでもやっていないようなことを今ばっとやったらどうかということを言われても、私はそういうことはしませんので、すべきじゃないということを申し上げておる。だから、世間がよく原材料の輸入化をやって日本の製品を下げようということでやって、そのときには今度とてつもない、五年先か、十年先かわからないようなことを、あるいは日本がずっとよくなれば何ですが、そういうことをずっと想像してやられたのでは、これはうまい政治ができないので、何でもかんでも入れるということになってしまう。資本の自由化ということはよほど先のことだと考えておる次第でございます。
  299. 島清

    ○島清君 今のあれお答えになりますか。中小企業の担当の諸君といえども、三十五年の、今の中小企業の対策としては自由化政策の影響というものはちっとも考えていなかったのだと。
  300. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) この三十五年度につきましても、予算につきまして特にその点を考えて、自由化について、繊維工業設備臨時措置法を今度改正いたします。そして機械その他の格納をいたしておりますが、やみ機械が出ないように検査取り締まりの費用を六、七百万円を要求いたしております。金融につきまして今二十四億円と申しますが、実際には昨年に比べまして私は八、九億円ふえておると思っております。だから五、六割ふえていると私は見ておるのであります。前年に対しまして中小企業のようなものが五、六割もふえるということはいまだかつてないことです。これは自由化になることが、あるとかないとかいう問題でなしに、当然やるべきこととして私はやったわけであります。それから資金面につきましても一応財政投融資でやっておりますが、できるだけ資金のことを考えてやっていきたいと思っております。それで今度出しまする中小企業の業種別振興対策、これなんかも、自由化によりまして痛手をこうむるというふうな場合につきましてこれを活用していこう。しかしお話の通り、それが三十五年度で自由化になって因るという業種は今のところ私はあまり見つかりません。繊維関係のものは下準備が必要でございます。対ドル差別待遇十品目を自由化しましても、どこに影響が三十五年度で出てくるか、これは私はほとんど影響ないと思う。三十六年から出る繊維関係につきましては、今申し上げたように予算もとっているし、そうして法律も制定しようといたしておるのであります。繊維関係で申し上げますと、昨年の暮れ各業界関係者、労働者等で、学識経験者で議論していただきまして、三十六年四月からいたすことにいたしておりまするが、この影響が今現われておる。それは二割とか、三割とか、やみをしておった綿花商が、やみがなくなってほとんど働き場がなくなるというので、急にやみの値で買っておった綿花が自由になるというと、それだけ下がりますから、綿花商が今ちょっと困っておるのじゃないか。しかし、糸が下がります。糸が下がりまして、製品は下がっておりませんから、今は機屋さんなんかは非常にほくほくでございます。これは合理化によってよくなっておる。自由化によってよほどいい面が出ておる。しかし、常にそうではございませんから、先ほど申し上げましたような繊維工業設備臨時措置法を作りまして、安価な品物を安定して出そうという下準備をしておるわけでございます。今、自由化につきましては、大企業につきましては、千五百の会社につきまして、自由化したらどうなるかということをアンケートを出してやつております。中小企業の面につきましても、関係中小企業庁等からいろいろな調査をしまして今後の手を考えておるわけでございますが、三十五年度につきましては、繊維関係は出ておりますが、差し向きほかの点ではまだ出ておりません。
  301. 島清

    ○島清君 大臣はよく繊維の問題をみずからお触れになりましたが、繊維の歴史は操短の歴史だといわれておりますし、また事実その通りだと思うのですが、繊維業界を通産省が行政指導をされ、また、それをさらに一歩出て、一段と高いところといたしましては、今、御指摘になりました繊維工業設備臨時措置法ですか、これがございまして、格納の問題があったと思うのですが、それで外貨割当というものがございまして、行政指導の十分にその効果を発揮しておったと思うのですが、しかし、外貨割当というものがなくなって自由になりますというと、もう行政指導の面はお手あげだと思うのですね。残ります問題は繊維工業設備臨時措置法だと思うのですが、これもまあ大したことはないですから、あるいは設備の増設にいたしましても……。で、私は必ずしも従来のような、繊維工業設備臨時措置法が法律としての威力といいましょうか、そういうものを発揮するのは非常に薄くなるのではないかと、こう思うのですが、それに対する何か指導とか、行政といいますか、そういうことが起こらないようにというような配慮を今からしておられるのでございますか、しておられるとすれば、何か臨時措置法の改正とかなんとかいうものをお考えであるのか、これはまあ通産委員会みたいな質問で大へん恐縮でございますけれども、そこらの混乱が起こらないようにという配慮があれば、あってしかるべきだと思うのですが、お聞かせをいただきたいと思うのです。
  302. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 今まではいわゆる原料で統制しております。統制しているのですが、別に法規はないのです。むちゃなことをすれば、切符の割当を減少するというので、そういたしますると、結局、切符にやみ値が出て参ります。これをやはり自由に綿花を入れて、どんどん紡績で糸を作るということになりますと市場の安定ができませんが、今は二重にやっております。繊維工業設備臨時措置法である程度の格納保管をいたしております。しかし、それでもある程度やみが出たりなんかいたしておりますが、今度は織機の方でこれを制限して、そしてやっていこう。で、もし違反者があれば罰金を取るというようなことでは、これはなまぬるうございますので、一定期間操業を停止するとか、また、そういう業者の作ったものについては、問屋筋が買うことをかげんするという気持で、こういう違反があったということを公表する、その点で規制をしていこうとしておるのであります。それではやはり自由じゃないのじゃないかと言われるかもわかりません。しかし、それだけ切符の二、三割というやみがなくなる、それは改善になるわけでございます。それで繊維工業設備臨時措置法、これを改正して、そうしてそれを——お話の通り常に操短だ。もうこれは、御承知の通り繊維関係はさいの河原のように、景気がいいとさっと出てくるし、景気が悪いとまたすぐ織機の買い上げという問題が起こりますので、そういうことのないように法律を改正していこうといたしておるのであります。  なお、一般の自由化に、たとえば繊維関係で申しますと、今まではイランとかパキスタン、イラク等の方から原綿を輸入しておりましたが、相当高こうございます。しかし、日本の輸出のためには、どうしても高いものを買わなければならぬというふうなことが起こります。ことに低開発国の開発を考えておりますわれわれといたしましては、なるべく、そういうところから原材料を高くても入れようというときには、輸出入取引法を改正しまして、輸出業者から、まだ今検討中でございますが、ある程度の過徴金を取って、そうして高いものの輸入の補いをしようということを考えておるので、これはまだ提案いたしておりません。しかし、先ほどの繊維工業設備臨時措置法はすでに国会に提案いたしておる次第でございます。
  303. 島清

    ○島清君 時間がございませんので、これ一点で、委員長にやめろと言われない前に遠慮したいと思うのですが、競輪の収益ですがね、競輪をやめるやめないは、大臣の立場もございまして、即答はできかねると思うので、やめますかということはお尋ねしませんけれども、しかし、やめないにしても、その縮小しなければならない方向にあるということだけはもう確定的な事実ですね。たとえば兵庫の阪本君が県営競輪をやめるという。神戸の原口君が市営競輪をやめると言っておりますし、新潟の北村君がやめると言っておりますし、東京の調布においてもやめると言って、その予算の小委員会ではそれをきめたようでありますけれども、そういう場合には自粛の線がずっと出てきておるわけですね。そうしますと、国庫に入ります、今はどういう名称になっておりますか、国庫納付金という形になっていますか、いずれにいたしましても、国庫に入ります収益が減少することは、これは明確な事実ですね。半減するか、あるいは幾ら減るかわかりませんが、今どれくらい入っておりますか、十億くらい入っておりますか、その十億のうち、とにかく何%か減るわけです。それがこの収益がどういう方面に使われて——もう減ることは確実な事実なんですが、これが減った場合に、今、計画されておる——その収益金の使途に計画されておるものが、お困りになるようなことができるのではないかと、こう思うのですが、その点はどういうふうに配慮しておられるのでございますか。
  304. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 競輪の問題につきましては、競輪運営審議会に競輪のあり方につきましていろいろ御議論願って答申をいただいております。また、わが党におきましても、審議会におきましていろいろ研究いたしまして結論を得まして、ただいまのところ、審議会を法律によって設けて、そうして一年以内にこれが対策を講ずる、こういうことに相なっておるのであります。傾向といたしましては、お話の通り、私は今直ちに全廃ということはなかなか困難である、行く行くはこれをずっと縮小していく格好に相なると思っております。従って、これから出ております収益、大体十億くらいだと思っておりますが、これは実は国庫に入っておりません。これは三十一年度くらいまで入りまして、三十二年度からは国庫に入れない。地方団体には入っておる。詳しくは局長から説明させます。
  305. 小出栄一

    政府委員(小出栄一君) ただいま大臣からお話のありました直接、国庫に入るのではなくて、日本自転車振興会に対します一号交付金という形で入っております。これが大体お話の通り、最近は年間十億円前後のいわゆる機械工業振興費という形で、これは別に委員会がございまして、そこで配分もきめまして、通産大臣限りで自転車産業を初め機械工業一般の合理化資金に融資されております。ただこれはお話の通り、それが競輪全般が縮小されますと、当然その収益が減ってくるに伴いまして当然機械振興費も減るということが考えられます。根本的な方針といたしましては、先ほど大臣がお答えになりましたが、大体、今後一年内に基本的な、政府全体として競輪のみならず、公営企業全般の結論が出ると思いますが、それに基づきまして処置をいたしたいと思います。
  306. 島清

    ○島清君 今の局長説明によりまして、通産省は収益金というものはあってもなくてもさして影響はないと、ただ私たちが思いますに、世間もそう思っている、通産省はあまりがめつ過ぎるのじゃないか、それゆえに十億の金に未練があってやめきらぬのじゃないか、こういう通産省のがめつさを非難めいた批判をする人がいるわけです。そうすると、その十億という機械振興のための、通産大臣限りで分配する、それはもう競輪の存廃いかんにかかわらず、さして影響はない、こういうふうなお考えでございますね。と申し上げますのは、実は東京都の自転車事業者の中でも、自転車振興会の幹部であった連中が、もうあんな金は要らないのだ、だから競輪はやめてほしい、あれはわれわれがあの収益を使うという名目で競輪を設立したんだが、もうしかし、あれは目的を達成したんだし、私たちもいつまでもばくちの材料にはなりたくない、だから私たちの名において作られたんだから、私たちの責任においてあれをやめたいというような意見もあるわけです。陳情運動もなされておるわけですね。ですから、通産省がそういうがめつい気持でなく、そんなに未練がないとするならば、あの機械振興の収益というものは全然通産省には影響ないと、こういう工合に理解してよろしゅうございますね。
  307. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 通産省の会計に入っておりません。ただ十億の金をどういうふうに使うかということにつきまして、今、自転車とか、あるいは機械産業の振興費等に使っております。あるいはオリンピックとかなんかもあります。私は、通産大臣はどこにその金が行っているか知らぬ程度でございます。これは金のためにどうこうという考えは少なくとも通産大臣は持っておりませんし、関係局長もそういう気持はない。ただ産業の振興のために使っておるのが少なくなるというだけで、必要ならば予算を要求して取ればいい。私は金のためにどうこうという考えは持っておりません。
  308. 辻政信

    ○辻政信君 ただいまの大臣説明を承りまして、本年度の予算で四十六億増加になりましたことは、このワクの内ではおそらく通産省としては画期的な成果だろうと思います。武力戦から経済戦に移行しようとする世界の態勢から見ましても、この通産省の予算が非常に活用されることを実は心から期待するのであります。私はこの関係はしろうとでありますから専門的なことはわかりませんが、知っておる限り具体的な二、三の点について御意見を伺いたいと思います。それは午前中防衛庁予算審査いたしまして初めて発見した大きなミスがあります。そのミスと申しますのは、陸上自衛隊弾薬のストックが皆無に近い。実はこの資料によりますと、三十四年の十二月末の現在高が、米軍から移管を受けたものが九万九千トンになっております。これから見たら相当あるように見えるのですが、そのうちの八万七千トンというものが大口径、中口径の火砲でありまして、最も必要とする小中軽火器、そういう小さなものの弾薬がわずかに四千二十三トン、こういう微々たるものであります。総量においては非常に多いが、びっこがはなはだしい。日本に今要りますのは、小口径の自衛火器の弾薬であります。まず一年の訓練用の消耗を考えてみますと、少なくとも六千トンから七千トン小口径が消耗されるのじゃないかと思います。有事の場合を考えますと、少なくも一日千トンというものを見なければならぬ。一日千トンとして三カ月のストックを持つと大体十万トン、こういう見通しが私どもの過去の経験から立てられるのであります。しかるに、四千二十三トンというものが万一の場合は四日間のストックでお手あげになる。もちろん年々発注しておりまして、民間の工場においてもかなり作っておるだろうと思いますが、最大の欠点がジェット機とかなんかの国産計画には全部の神経が集中されているが、足元で事が起こった場合にまっ先に必要なのが陸上自衛隊、この陸上自衛隊の主要火器である小口径弾薬というものがこういう状態では私は日本の防衛に大きな欠陥をもたらすのじゃないかということを実は心配するのであります。従いまして、業界の関係もございましょうし、業界としても困っておるのは、毎年々々捨てぶちのような発注を受けて目標を示されないから、工場設備をどのくらいに整備するか、事業計画はきわめて困難だろうと思います。これに対して通産省としては防衛庁とよく御連絡なさいまして、ストックをどのくらい持ち、何年間にどうするか、こういう観点から国内産業を指導され目標を与えられて、あまり過大でもいけませんが、万一の場合に不足を来たすようなことでは防衛体制に大きな欠陥があると、こう考えておりますので、その点についての大臣の御見解をただしたいと思います。
  309. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) ごもっともの御質問でございまして、私はストックがどのくらいあるかということも存じておりません。朝鮮事変後は特需が相当ございまして、年に重砲弾で約五、六十億あった、今は兵器関係は重砲弾が主でございまして二十五億くらいじゃないかと思います。防衛庁と連絡いたしまして、計画があればその計画のもとに最小限度において育成していこうと思っております。御承知の通り兵器関係の補助金も来年度からは出さないことにしております。やはり計画的に育成というわけではございませんが、補給に必要な最小限度の態勢は整えていかなければならぬと思っております。詳しくは局長から……。
  310. 小出栄一

    政府委員(小出栄一君) 今、辻委員の御指摘の弾薬の中で、いわゆる小口径の弾薬と申しますか、これの備蓄というか、生産実績が国防的な見地から見て非常に少ないのじゃないかというふうな趣旨の御質問だろうと思います。通産省といたしましては、こういった武器弾薬生産につきましては、これは申すまでもなく国防会議の国防計画に従いましてこれを調達したり、また生産しておるわけであります。御承知のように、従来は第一次の国防計画に基づきまして生産をして参ったのでありまして、国内の生産者に対しましては、御承知の通り、これは国防のことは私ども専門家でないのでわかりませんが、小口径の弾薬につきましては、比較的発注量は非常に少ないという傾向でございまして、国内のメーカーに対しましても、ある程度防衛庁の発注の見通しとにらみ合わせまして、それに応ずる生産態勢、企業態勢整備しなければならぬということで指導して参っております。今後の国内生産につきましては、やはり長期的には、現在防衛庁及び国防会議で検討いたしております第二次の防衛力装備計画、これに基づいて行なわれることになります。通産省といたしましては、その第二次の装備計画の内容に従いまして、その内容がきまりますれば、生産面においてはやはりできるだけ国産化を推進していきたい、こういうふうな態度で考えております。
  311. 辻政信

    ○辻政信君 これは実は通産省の責任ではなくて防衛庁が飛行機とか艦船に頭を向けて、足元を守るという点について非常にずさんな感じを持っておった。弾丸はアメリカのストックがあると思っておりましたが、そのストックがこういうふうに全く役に立たない比率のストックとなっておる。これがもう発見されて防衛庁もきょうはかなりあわてておりましたから、よく連絡をおとりになってぬかりのないようなふうにして下さい。  それからもう一つは、大臣の重点を置いておられる貿易振興でありますが、実はこの点について、私たびたび海外に旅行いたしまして、海外の大公使館の経済活動に関心を持って見たわけであります。そうしますと、残念ながら外交官の関心はサービス外交、情報外交で、経済外交というものに無関心とまではいきませんが、陣容が足りないために、きわめて手薄であるということを見たのであります。これに反しまして海外貿易振興会——ジェトロの要員の中にはきわめて優秀な適材がありますが、そのジェトロの海外要員と在外大公使館の仲が感情的にうまくいかない場合がある。また通産省から大公使館の要員に入っておる人と外務官僚との気分的な摩擦も感ぜられるのであります。これでは外交の主体を経済活動に置かなければならないのに、人的な配置、陣容において非常に欠点があるということを実は残念に思っております。その一つの例を申しますと、エジプトのカイロにおきましては、中共の大使館があります。これは館員が二百名、そしてほとんど全部が、大部分というものが経済関係であります。これが大使館員として、外交官の立場で商店のショウ・ウインドーをのぞいてみたり、日本商品の検査をして回ったりしておりました。中近東の貿易全体から見ますと、一昨年あたりはぐんぐん中共に食われてしまいました。一昨々年に比べますと、半分ぐらいに減っておる。こういうような実績に実はなっておったのであります。これに反してカイロの日本大使館は大使以下七、八名という貧弱な陣容で、しかも、経済方面に明るいのが一人しかない。そこにジェトロの西沢所長を初め有数な権威者が大使館からは軽く見られ、どっちつかずの態勢で実はもてあましておる、自分の能力を。こういうことを見まして、この際、通産省から強く外務省に要求されて、ジェトロで活躍しておる優秀な者は民間人であろうが、肩書きがなかろうが、一律に日本の大使館員と考える、兼勤をさせ、経済外交官として肩書きを持たせ、思う存分活躍させるというふうにお導きいただいたら、一本になってかなり強いものができるのではないか、こういう感じを持ったのであります。これは一つ機会がありましたら外務大臣に通産大臣から強く申し込まれて、最大の欠陥が外務省の役人に経済関係のエキスパートが少ない、予算がないから人員を増加するわけにいかないなら、少なくとも、せめてジェトロの人たちだけでもそこに食い込まして、その欠を補うように御指導願いたいと思います。
  312. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 辻さんの御意見まことにごもっともで善処いたしたいと思います。
  313. 辻政信

    ○辻政信君 もう一つ、これも私の専門外であります。全くの気がついた点でございますが、民間の研究開発に対してかなり豊富な、四億七千五百万円という補助をやっておられます。これは非常にいいことだと思います。その中に一つ考えていただきたいことは、色彩研究、この色の研究といいますと、絵かきだけが関心を持つように思ったらとんでもない間違いでありまして、織物とかガラス製品であるとか、その他の雑貨の非常な価値を高めるものでありまして、世界各国がこの色彩の研究には国が本腰を入れまして、膨大な規模で科学的な研究を進めております。しかるに、日本におけるこの色彩の研究所というのは、ただ一つしかありません。和田三造画伯を中心として私設されたものがただ一つ、その人間はわずかに四、五十人の所帯で、しかも、これは和田さんが絵をかいては、もうけた金をつぎ込んで、民間の一研究人として数年間やって参りましたが、最初は芸術の意味から発足したこの研究所が、今は産業界に非常な大きな貢献をなしております。そうして各業界の委託研究を受けて、その委託費で辛うじて予算のバランスをとっておるが、しかし、研究に必要な優秀な機械を買おうとすると、百四、五十万円もかかる。その金がどこからも出ないというので四苦八苦している和田画伯の態度を見まして、私はいけない、国家がもう少しこういう民間の有数な、優秀な研究機関にはたっぷり補助をやらなければならぬということを、実はしみじみと感じたのであります。こういう埋れた篤志家を国が助けていくということが、きわめて重要であります。この色彩の研究が産業開発の面においても、塗料の進歩に対しても、その他雑貨品の輸出貿易の面におきましても、陰で持っている力というものはきわめて大きいのであります。わずかに四、五百万円の補助があれば、世界水準に劣らない研究ができる、こういうことを嘆じておりました。どうか一つ大臣はこの点につきまして、こういうりっぱな研究を政府の力で助成をしていただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  314. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) この色彩の研究というのは、お話の通りまことに大切なことでございます。繊維品ができても、この染色がうまくいくかいかないかということが、その繊維品の生命になっております。陶磁器にいたしましても、雑貨につきましても、非常に大切なことでございまして、従来通産省の工業試験所、それから名古屋の試験所、二カ所で検討はいたしておりまするが、まだ十分ではございません。従って、今後いろいろな方法でやっていきたいと思いますが、今の和田画伯の研究所につきましても検討を加えまして、できれば応分の補助を考えていきたいと思っております。
  315. 岩間正男

    岩間正男君 私も二、三の問題をお聞きしたいと思うのですが、まず第一に、東南アジア開発計画、こういうものに関連したところの具体的な政府の統一的な計画ができておるのかどうか、これができておりましたら、これについて発表願いたいと思うのです。
  316. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 東南アジア等の低開発国につきまして、総合的な施策というものは従来はないのでございます。一昨年の暮れから設立をみました財団法人アジア経済研究所、これを今度特殊法人にいたしますが、これによって主として東南アジアの経済、社会事情を検討していく、また今回の予算で開発基金五十億をもちまして、開発の一助にしたいと考えておるのであります。従来のやり方は、東南アジアの各国別の状況によりまして、相手ごとに考えていく、こういうふうな方向でございます。もちろん政治上の問題もございます。相手国の政治上の問題もございますし、一がいに基本方針をきめていくということよりも、根本的ないわゆる調査をやり、そうして基金を設け、そうして事ごとに、各国と相手ごとにやはりやっていった方が地についたやり方ではないかと考えております。
  317. 岩間正男

    岩間正男君 政府の経済政策の一つの大きな方向として、この東南アジアの問題が出されているわけでありますが、これについての構想というのは、ただいまお聞きした程度で、非常にまだ十分なものではないと思うのです。今後この問題についてこれは検討されると思うのですが、大体、基本的構想、それを具体化してもっと公表すると、そういう態勢はいつごろこれはでき上がるのですか、大体その見通しについてお伺いしておきたいと思います。
  318. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) ただいま申し上げましたように、アジア経済研究所というものでいろいろ資料収集、研究に当たります。そうして五十億円の基金の特殊法人を設けます。こういうことだけでございまして、今アジア全体についてどういう措置をとるかというふうなことは、私はなかなかむずかしいのじゃないか。各国ごとに、情勢に従いまして進めていくということが手っとり早いやり方ではないかと思います。
  319. 岩間正男

    岩間正男君 むろん、まあ個別のそういうようなやり方は必要だと思うのですが、それとともに、やはり総合的な計画を一方で進める、両建でやはり進めることが重要だと思うのです。そういう点で、これはまだそういう構想が現在発表されていない。そこのところが非常に問題だと思うのですが、これに関連して、まああなたの発表された、過般発表されて問題になりましたこのライス・バンク、これはどういうふうになっているのですか。その後、これはあなたの構想としてこれがほかの——閣内においても論議されたのかどうか、そうしてこの結果はどういうようなことになっているのか、これについてお聞きしたいと思います。
  320. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) この問題につきましては、アジア経済研究所に依頼いたしまして、方法その他につきまして案を練らしております。しかし、相当金のかかることで、そうして相手のあることでございます。で、これが御承知の小麦協定とか、砂糖協定等、その商品が全世界にわたるものなら別でございますが、東南アジア、しかも、どちらかというと貧乏国ばかりでございますので、案ができましても実行に移します場合には、資金的になかなかいろいろな問題点があると思います。私は、こういうふうなことをいろいろ考えて、円為替の導入等々と関連させて検討を進めていきたいと思っているのであります。今、いつごろこれが実現するかということはなかなか、国際的な問題でございますから厄介な問題だと思います。しかし、東南アジアとしてはどうしても乗り越えなければならぬいわゆる米の問題でございます。日本としても相当力こぶを入れて検討してみたいと思います。
  321. 岩間正男

    岩間正男君 検討中とのお話ですが、どうです、これは閣内の統一された方針としてこれが前進する見通し、こういうものはありますか。
  322. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 大蔵大臣と話をしただけでございまして、これが閣議決定になるのはまだ相当時間を要すると思います。
  323. 岩間正男

    岩間正男君 これと関連して、私は、最近伝えられている吉田構想といいますかな、去年東南アジア、それからオーストラリアの方を回られて、そうして昨年の暮れあたりに東南アジアの開発計画に対しての一つの案を示された、これは今年の一月の二十日ころですか、通産大臣佐藤蔵相に吉田さんが示されたと思うのですが、これはどういうことですか、まあ差しつかえなかったらここで一つ伺いたいと思うのです。
  324. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) いろいろ話はありましたが、お話の通り書き物をいただきました。しかし、まだ実は読んでおりませんので、読みましてから——毎日こういう状態でございまして、読む機会がまだないのでございます。
  325. 岩間正男

    岩間正男君 これはあなた、もう吉田学校の最優等生としては怠慢ですな、少し。読んでないというようなお話だが、まあそういうことはないと思うのだが、私たち、これもニュース程度のものですが、聞いているのですが、あなた大筋だけはしかしお話しになられて御存じだと思うのですが、差しつかえなかったら一つ話してもらいたい。
  326. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 人の意見を紹介するのでございますから、十分調査してでないと私としては申し上げられません。
  327. 岩間正男

    岩間正男君 まあ、これはニュース程度ですが、こんなことを聞いている。「内閣直属の推進委員会を総理府に設け、海外経済協力基金の有効利用をはかり、シンガポールに東南アジア各国を総括する機関を設けて閣僚級の特派大使を常駐させ、現地と日本の連絡に当たり、アメリカ、イギリス、フランスなど各国との連絡にも当たったらどうか」、こういうような構想に聞いておりますが、いかがでございますか。
  328. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 先ほどお答えした通りでございまして、意見は差し控えたいと思います。
  329. 岩間正男

    岩間正男君 まあ意見はいいです。が、大体こういうことになっているように考えてようございますか。どうもさしつかえないと思うのですけれども、どうですか、巷間もうすでに伝えられ、論議され始めている問題だと思うのです。しかも、先ほどお聞きしますというと、どうも政府の統一した方針というものがまだきめられていない、まあケース・バイ・ケースというような格好にこれを進めていくのだ、こういうことなのですが、これではやはりまだ私は少なくとも日本の今後の経済方針を大きく樹立する面から、先ほどお話の程度では非常に心細いと思うのです。従って、いろいろこれは試論が出されておる。まあライス・バンクのごときも一つのあなたの試論だと思うのです。これと関連してこういうような試論が出されておる、これに対する御意見を承りたいと、こう思うのです。
  330. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私が吉田さんの意見を批評することは、吉田さんの考え方をよく吟味してからでないと申し上げかねると思います。ただいままでのお答えで御了承願いたいと思います。
  331. 岩間正男

    岩間正男君 まあ巷間よく次期総裁の問題が出て、今最も有望な総裁として、これはここで言うのはおかしいのですけれども、池田通産相のこの問題が出ると思うのです。従って、これは今後の方針としてこういうものについてどういう構想をお持ちかということを私はお聞きしたかったのでありますが、これについて、どうもいろいろさしさわりがあるのかどうかわかりませんが、お聞きできない。これは残念ですが、この構想というのは相当私は影響力を持つと思います。吉田元総理の今までの立場、しかも、この構想について池田さん、佐藤さん、こういうような非常に関係の深い人たちにこれは示された、そういうこと、こういうような構想というのはやはり吉田元総理自身がこれは持っておったのじゃないかと思う。元首相時代に十億ドルの金を出資しまして、それで東南アジア進出、そのためにアメリカから金を引き出すという方式でやる、こういう方針をやられた。しかし、これは非常に機会が熟さないで立ち消えになったという格好になったと思うのです。しかし、それがやはり一つの継続的な考えとして残っておられるのじゃないか。そしてこれが今度の吉田構想という形で出てきているのじゃないか、こういうふうに考えられるわけでありますが、どうでございましょう。こういうようなかりに構想というようなもの、これはいろいろ修正もされる、いろいろ検討もされるかと思うのでありますが、すでにそういうような方式とそういうような一つの試案というようなものが入れられて、もう動き出している面があるのじゃないですか。
  332. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私は、それは存じません。
  333. 岩間正男

    岩間正男君 それでは、この問題につきましては、今後の日本の経済政策の上において非常に重要な位置を持つと思うので、実はいろいろお聞きしたがったのでありますが、この問題につきましては、お答えがないのでありますからこのくらいにしますけれども、私は現在の東南アジア開発方式というのは、やはり現在の世界情勢の中で十分に考えてみなくちゃならないのじゃないかと思います。というのは、御承知のように軍縮を中心とする世界の大きな雪どけの大勢がある。平和共存のこの政策というのは、これはやはり今、世界の重要なもう外交の方針になっている。単なるこれはかけ声じゃない。現実的にこれは動き出しておる。たとえば中国とビルマの友好協定が最近結ばれた、それからインドネシアのあの覚書、そうして具体的にそういうものをもとにして大きく援助がなされております。低開発の援助もなされておる、こういう態勢の中で日本の、伝えられるような方式というようなものがどういう影響を持つか、こういう点では総合的にやはり世界情勢の中で検討する、それから東南アジアの情勢の中でこれを検討するということは非常に重大な問題だと思うのです。そこで、先ほど伝えられたような吉田構想というような形になりますと、結局、これはフランス、アメリカ、イギリスというような、これは西欧の資本主義国、こういうものとまた腕を組み、そうしてそこに乗り出していく、こういうことになるわけですが、そういう中で日本がこれらの援助を受けて、そうして東南アジアに出ていく、しかし、こういうような東南アジアの進出に対しまして、必ずしもこれを虚心たんかいに受け入れるという点で、日本の現在の国内の、いろいろな安保条約締結の問題、それとからんだ経済的裏づけの問題としての最近の経済政策、こういうこととの関連で今申しましたインドとかビルマとかインドネシア、少なくともバンドン会議の諸国の平和共存の立場に立っておる国々、こういうところが率直に日本の構想を受け入れるか、私は非常にこれは疑問なきを得ないと思うのです。こういう点で私は平和共存の平等、互恵の立場に立つ経済政策というものが、非常に今後の日本の政策の中でも重要な位置を占める経済政策の中でも、このことは少しも変わりがない、こういうふうに思うわけです。こういう点について、これは通産省はどういう考えを持っておられますか、お聞きしたいと思います。
  334. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 低開発国の開発をいたしまして、その国の住民の生活水準を引き上げることが、隣接はもちろんのこと、世界全体の平和増進のために役立つと、このことは両方ともいいことである、やっていかなければならぬことだと、私はそう考えまして通商産業政策を進めていきたいと思います。
  335. 岩間正男

    岩間正男君 今のどうですか、たとえばインドネシアとかビルマ、こういう国々は日本のこういう一つの、たとえば吉田構想という形で出されておりますけれども、これはむろん具体的な、現在の内閣がこれを採用した方針ではない、しかし、根底の中には長い間ずっと残っておる、それからアメリカとの協力関係ですね、そういうところに深く今まで立っていられた吉田さんのそういう立場、それとつながるあなた、あるいは佐藤さん、こういうことを考えると、これに対して、今の、少なくとも平和五原則の立場を堅持して、こういうような国々ははたして日本の構想に対してこれをすなおに受け入れるか、こういうことに対して検討されておるか、この点についてお聞きしたい。
  336. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 日本の構想を受け入れるかということですが、日本の構想というのはどういう構想でございますか。
  337. 岩間正男

    岩間正男君 あなたは根本的に立てていられないというが、今、試案として出された、たとえば吉田構想というようなものですね、こういうような形でおそらくこれは提出したものがあるのじゃないか、むろんこのままの形じゃないと思いますが、いろいろな形で今後出ていくのじゃないかと思います。で、ここで論議の対象になる具体的な政策が公然とここで公表されていないから、論議の限りでないといえばそれまでだけれども、しかし、私は今後の一つの政策を立てる参考として事前にこういう問題をやはり検討することが重要だと思うのですが、そういう点はいかがですか。
  338. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 吉田さんの構想を私は知らないのでありますから、それを前提としての問題はお答えはできません。
  339. 岩間正男

    岩間正男君 その点で、ハマグリが口を締めてしまったのですから、なかなかこれは——それはいいです。  もう一つ伺いたいのは、中国貿易のことを通産省は言われたわけですが、これは非常にやはり当時問題になっていたように思います。これは日本の現在の立場として、当然水が低きに流れるように、必ずこれは歴史的な発展の中で道は通じなければならぬ、こういうふうに考えられる問題です。これは最近の中国の様子につきまして、いろいろ通産省としても情報を持っておられると思う。たとえば中国の最近の重工業の生産の伸び工合、貿易の状態とか、こういう問題について、これはどういうふうに見ておられますか、お聞きしたいと思います。
  340. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 通産省といたしまして、中国の経済状況を調べてどうこうということは、今のところいたしておりません。新聞報道その他でいろいろ耳に入っておりますが、通産省としてどういう調査したかという御質問に対しましては、何も今そういうことはございません。
  341. 岩間正男

    岩間正男君 これはちょっとたよりないですな。現在、貿易は行なわれていない、しかし、民間ではこれは非常に熱望があった。そうして三次までの民間の貿易をやった。第四次の協定は成立したのだけれども、ああいう形で二年前に中絶した。しかし、これは、アジアの経済というものをながめるというと、中国の最近の経済情勢というものをやはり頭の中に入れておくべきだ。少なくとも日本のその局に当たる通産省の施策を進める上において、当然私は情報というものは非常に重要な問題だと思うのですね。そういう点から、私は、中国の経済事情を調査して、それをはっきりつかんでおくということは非常に重要だと思うのですけれども、どうでございましょうか。
  342. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 先ほど申し上げましたごとく、いろいろな国内で発行されている文献につきましての知識は持っておりますが、中国の経済、通商関係につきまして、通産省が直接どうこうという調査はいたしていないのであります。
  343. 岩間正男

    岩間正男君 これは、して悪いという何かありますか。
  344. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 別に、して悪いということはございませんが、予算その他それだけの余裕がないのです。
  345. 岩間正男

    岩間正男君 うまいことを言うけれども、大体調べていないのですね。莫大な、何億という金が要るわけではないのです。そういう中国の経済情勢を調べるための金というのは、これはそれほど多額を要するのじゃありません。しかも、得るところは非常に私は大きいと思う。これをやられるお考えはありませんか。
  346. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 余裕ができましたらやってみたいと思います。
  347. 岩間正男

    岩間正男君 余裕も何も、やはり私は、今のアジアの中に位置する日本が経済施策を進める上において、もう、これを抜いてやることができない、そういう態勢が来ているのじゃないか。東西貿易の問題も世界の大きな課題になっている。そういう中で、賢明な、そうして少なくとも前途の見通しのきく池田通産相が率いる通産省の機構の中で、そういうものを持っていないということは、私はどうも納得がいかないのですが、ほんとうですか、そういうものをお持ちにならぬのですか。これはお持ちにならないとおっしゃるのだけれども、これは私は、そういうものを研究してやってみて、そういう機構を持って少しも差しつかえないと思う。今年度の予算では間に合わないかもしれないけれども、来年度にはこういうものを組んで、積極的にそういうことを解決されることが当然だと思うのですが、いかがですか。
  348. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) これは、世界の経済についての調査ということはいたしております。御質問の点は、特に中国が隣国なるがゆえにやっておるかということになりますと、特にそういう予算とか、機構を持ってやっておるわけではございません。世界全般の経済調査はいたしております。先ほど話の出ましたアジア経済研究所、これは東南アジアはもちろん、中国、ソ連も含めまして、相当なお金を出して専門的に、根本的に検討をすることをやっておるのであります。こういう資料等を集めまして、通産省としても、いろいろな点から気は配っておりますけれども、特に人を派してどうこうというわけでやっておるわけじゃありません。
  349. 岩間正男

    岩間正男君 そうしますと、先ほどの御答弁と食い違いが出るのです。先ほどは、中国の最近の生産の伸びはどうかということを私はお聞きした。東西貿易、これはどういうふうに見ておるか、こういうことをお聞きした。しかし、これについて通産省知らないというような御答弁だった。そうするとせっかく二億何千万円を出したこの調査機構というものは反映してない、生かされないということになる。それはそれでいいのですか。これはちゃんと調査はできておるのだが、たまたまここの私の質問には間に合うようなふうな了解はされておらなかった、こういうふうに解釈すべきか、それともそういう調査は全然ないのか、あるのだけれども、今、言ったようにたまたまあなたがこれに対して知っていられなかったのか、どちらですか。
  350. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私、矛盾していないと思います。御質問を誤解したかもわかりません。あなたは中国の経済事情について特に調査したか、こういうお話でございました。特には調査機構を設けて調査しておりません。しかし、国内におきまするいろいろな新聞、雑誌その他の文献についての検討はいたしておる、こう言っておるわけであります。中国の七カ年計画がどういうふうになっておるかというようなことは、私はおぼろげには知っておるわけであります。これはあなたの方が詳しいと思います。いろいろな貿易関係もお話でございますが、中国には行ったことがございません。また向こうの新聞も読みにくいので、国内の文献だけでおぼろげながら頭には入れております。
  351. 岩間正男

    岩間正男君 私は貿易をお聞きしたいけれども、これはどなたか、中国局というものはないのだし、アジア局というのがあるが、アジア局の人たちはそれの資料を通産省に提供したら——ここではいいです。  それではお聞きしますが、昨年松村さんについて行かれた三人の方、古井喜實さん、それから井出さん、もう一人ちょっと名前を忘れましたが、あの報告書を出しておりますね。それをごらんになりましたか。
  352. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) まだ読んでおりません。
  353. 岩間正男

    岩間正男君 あなた吉田さんの直系だけにさすがにうまい。私の質問には、当時吉田さんは知らぬと答えることが常識になっておった。そういう伝統は私はあまりこれは継承されない方がいいと思う。民主的にお答えになった方がいい。お忙しいから読んでおられないということもあり得るわけですけれども、あれを見ましても、私たちも実は見たわけです。とにかく最近の躍進の様子、それから国内の情勢、平和に対する努力、そういうようなものははっきり出ていると思います。ああいうものは少なくともこれは他山の石として、ことにあなたたちの党のことですから、これは研究される必要があると思います。どうしても。これは今晩にでもすぐに目を通してやっていただきたい。私はこの中で一つだけお聞きしたい。石炭問題です。日本の切実な石炭の問題がここまできておりますから、そうして予算委員会ごとにこの石炭対策の問題ということが相当に重要な論議の対象になる。この中でお聞きしたいのですが、それは日本の三十四年度の石炭の産額はどのくらいになりますか。
  354. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 三十四年度におきましては、当初五千万トン余りの計画でございましたが、最後の計画は四千八百三十万トン、こういたしました。夕張の爆発それからスト関係ございまして四千八百三十万トンが四千七百九十万トン程度になるんじゃないかと思います。それから消費の方は案外伸びまして、昨年の八月ごろ千百万トンありましたのが、この三月末の繰り越しが七百十万トン程度じゃないかと思います。私は予想は七百九十万あるいは八百万トンの持ち越しじゃないかと思いますが、百万トン近く予想より減って七百万トンないし七百十万トンで四月へ繰り越すと思います。
  355. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、一番ピークのときは五千二百万トンじゃなかったかと思います。これは私のうろ覚えかもしれませんけれども、昨年五千万トンの当初計画が四千七百九十万トンですか、こういう額です。むろん手持ちを食ったから需要量の方はふえているわけです。しかし、そういうところで低迷している。まあエネルギーの問題が世界的な問題だというふうにいわれています。しかし、私は昨年の十月中国に実は参ったんです。それで最近の発展が目ざましい、石炭にそれが一番現われているんじゃないかと思います。昨年の一九五九年の産額が大体三億三千五百万トンということですね、これは日本の大体七倍。その前の一九五八年、これは二億三千万トン。そうすると、一年間の増加率は六〇%、こはれ実際われわれも行ってみて驚いたわけです。向こうの山の上を飛んでゆきますというと黒い山がある、何だと言うと、あれは石炭ですと。それから日本の炭層は大てい厚い所で二メートルというのが珍しい、ところが、向こうは四十メートル、五十メートル、そういう地下資源の量がすでに違うわけですけれども、最近の発展はすばらしい、こういうふうに思うのです。こういう事情については、これは日本の今非常にこの問題をかかえ、そうして毎月少なくとも政府統計では二千人ずつの失業者を出しておる、さらに今後十万から二十万の失業者を出さざるを得ないといわれておる、斜陽産業といわれる石炭ですね、こういう態勢の中で隣の中国の発展というものはすばらしい。鉄も石炭ほどじゃありませんけれども、これほどの伸びは示していないけれども、これもすばらしい発展をしている。こういう中でやはりお考えになることはありませんか。日本の大手の業者が水圧採炭の問題でしたか中国に行って視察したと思う。これは御存じありますか。それから水圧採炭のこのやり方、水で掘るやつですね、こういう最近の炭鉱の近代化、こういうものについてはこれは通産省御存じありますか。
  356. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 水圧採炭ということはソ連でやっておりますので、いろいろの資料は持っておるようであります。中国のそれは視察に行っておりません。ただ、そういう希望はあるそうでございます。詳しくは局長からお答え申し上げます。
  357. 樋詰誠明

    政府委員(樋詰誠明君) ソ連に対しまして大体ことしの五月ごろ行きたいということで今業界の方でいろいろソ連代表部と話しをしておる事実はございます。なお、その帰りに、できれば中国も見てきたいということで、われわれの知っております範囲におきましては、ソ連地区の水力採炭は従来の採炭方法に比べて四倍ないし六倍の能率を上げているというふうな情報を得ておりますので、よく見てきていただきたい、こういうふうに思っておりますし、現に今回の予算の中にも五千七百万円の補助金というものを財団法人石炭技術研究所に出すということになっておりますが、その中の研究テーマの最大のものがこの水力採炭でございます。
  358. 岩間正男

    岩間正男君 これは大体あなたの方で概要——大体どういうような構造か、御存じですか。
  359. 樋詰誠明

    政府委員(樋詰誠明君) 私の承知しておりますのは、水を相当の高圧にいたしまして、そして結局、ホースの先から噴出するそれをくっつけまして炭壁をくずして、水と一緒に、炭壁をくずすというところで採炭が行なわれ、水と一緒になったものをパイプで坑外に運び出すということが水力輸送ということであります。これは地下水を別途くみ上げておりますので、地下水をくみ上げるときに、同時に、その石炭を運び出してしまうことになれば非常に簡単に上がりますので、成功すれば非常な能率向上、コスト・ダウンに成功するのではないか、こういうことで、これは当面の技術的な最大の問題で、われわれ真剣に、今年から本格的にやりたいと思っております。
  360. 岩間正男

    岩間正男君 これは私も現場には入れなかったが、展覧会で模型として見たわけです。中国でも最近ずいぶんこれがとられつつある。この中で、今のコストの問題が一つ、しかし、最も大きな問題は、研究なされておりますか、これは通産省の立場から研究してほしいと思うのですが、単に生産コストの問題、これだけからこの問題を取り上げるということは非常に問題があると思う。一つは、労働保護政策です。つまり御存じのように一番炭鉱で問題になるのは炭塵です、そしてけい肺病です。その次はガス爆発、夕張、筑豊に起こったガス爆発、連続して起こった。そしてその結果は、これはほんとうに石炭不足を来たしたり、いろいろな、それだけじゃない、全く労働者の貴重な命をなくしている。大へんなことです。これがほとんど起こらない、水圧採炭では。水圧採炭と言っているのです。水の圧力で採炭する、こういうものを総合的に検討して、そして今後の日本に、これを単に生産コストから企業の採算からだけ取り上げれば、私はほんとうに、木を見て森を見ないということになるのだと思いますが、これは今の日本の経済組織としてやれるかどうかということは私は課題として残しておきますけれども、最近のそういうような一つの技術の科学的な大きな前進、こういうものが裏づけになっており、さらに最近の第二次五カ年計画のすばらしい、社会主義建設の途上にあってこういうことが出ている。これは日本の石炭と全く対照的なんです。これはほんとうに通産省にも考えていただきたいと思う。東南アジアの道もよろしいでしょう。しかし、東南アジアの道だけが道じゃない。われわれは、はしなくもあなたが正月でしたかどうかわかりませんが、とにかく中国貿易はやりたい、こういうことを言われた。ところが、自民党さんの内部では、どうも次期政権を担当する方は中国との国交、貿易をやらなければもうその資格はない、こういうことが巷間でいわれておる。これは御存じかどうか知らぬ。そういう中であなたがああいうような一つの話を出されたのじゃないか。そしてよくあなたのお考えはわかるのですけれども、こういう点で、私は本気になってこの中国問題を考えるということは、今の日本の産業の中で重要じゃないか。  それ以上のことはいろいろ申し上げたいけれども、時間もなくなってきていますから、私は申し上げませんけれども、今の石炭の問題一つだけでもこれは特徴的なものです。決してほかの産業そうでないかというとそうじゃない。これは単に石炭だけにこういう問題が解決するのじゃなくて、全部総合的にこれは進められているわけなんです。この姿を見ないで、この脈々として動いている姿を見ないで、そうして日本の経済を論じても、もうやはりずいぶん立ちおくれになるのじゃないか、こういうふうに考えられるので、この点についての通産大臣の、私はこれに対する意見、これをお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  361. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 石炭問題はわが国の産業また雇用、あるいは国際的にももちろん非常に重要なことであります。昨年の十一月ですか、通産省の工業試験所が主宰になりまして、石炭についての研究会、生産、配給、需要、それから流通の、いわゆる需要の拡大方面、四つの部会に分かれまして技術者ばかりが集まって検討を始めたのであります。業界の方におきましても、斜陽産業ということでなしに、今後大いに一つ発展していこうといって業界の方から相当の金を出しまして、先ほど申し上げました石炭技術研究所というのを設立いたしました。政府におきましても五千七百万円の補助金をとります場合におきましても、この水力採炭等が経済的にいいというばかりじゃなしに、労働者の健康の問題、保安の問題等からもぜひ必要だというので、この五千七百万円をとったような状態でございます。先ほど申し上げましたように、産業の振興は技術がもとをなすものでございます。われわれといたしましても、その技術面につきまして十分検討をしていきたいと思っておりますが、なお、工業技術院の長官、水圧採炭について今までの研究をここで申し上げてみたいということでございますので、しばらくお聞きを願います。
  362. 黒川真武

    政府委員(黒川真武君) ただいま岩間先生が御指摘になりました水力採炭につきましては、御指摘の通りソビエト、ポーランド、あの辺におきまして非常にかねてから技術の進歩がございまして、わが国におきましてもすでに数年前からこの問題につきまして考えてはおりましたのでございますが、その前提といたしまして、先ほど石炭局長説明いたしましたように、水力採炭したものを、その水で運ぶということに、特に日本の炭鉱事情におきましては、まず運搬ということが欠けているために、その水力輸送という面につきまして最初研究を開始いたしまして、五年以前からこれを行ないまして、現在におきましては工業技術院傘下に資源技術試験所というのがございますが、その支所が九州の筑豊地区にございまして、そこに実際の試験炭鉱が掘ってございますが、その試験炭鉱の中でこの水力輸送の研究をいたしまして、ほぼ現在これが成功を見ておりますし、また、二、三の業界においてもこの輸送の問題につきましては実行に移りつつございます。  次いで今の水力採炭の問題でございますが、これは実は昨年、つまり三十四年度から予備試験を開始いたしまして、現在東京の浮間という所がございますが、浮間に資源技術試験所の分室がございまして、そこで予備試験を行なっておりまして、大体現在は二十ないし五十気圧の水圧をもちまして石炭あるいは岩石を切る研究をやっております。三十五年度におきましては二千二百万円ほどの予算を分かちまして、さらに、これを拡大し、また一部ソ連でやっております機械の図面も求めまして比較検討いたしたいというふうに存じております。こういうものが成功いたしますると、炭鉱の地区によって相当違いはございましょうが、特に九州のような水の多い炭鉱におきましては、この水力採炭によりまして能率よく採炭し、さらに、その水をもってパイプ輸送し、その輸送された水と石炭とまざったものを選炭にすぐかけまして相当な良質の石炭を生産することができるというふうに確信いたしまして、目下研究中でございます。
  363. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) それではほかに御質疑もないようでありますから、通産省所管についての質疑はこの程度で終了したものと認めて御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  364. 佐藤芳男

    主査佐藤芳男君) 御異議ないようでございまするから、さよう決定いたします。  明後二十五日は午前十時に本分科会を開会し、総理府のうち、経済企画庁及び調達庁所管につきまして審議を願うことといたし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十九分散会