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1960-03-25 第34回国会 参議院 予算委員会第四分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月二十五日(金曜日)    午前十時五十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    主査      東   隆君    副主査            米田 正文君    委員            太田 正孝君            木暮武太夫君            武藤 常介君            村松 久義君            吉江 勝保君            荒木正三郎君            木村禧八郎君            平林  剛君            原島 宏治君   国務大臣    文 部 大 臣 松田竹千代君   政府委員    文部政務次官  宮澤 喜一君    文部大臣官房長 天城  勲君    文部大臣官房会    計課長     安嶋  弥君    文部省初等中等    教育局長    内藤譽三郎君    文部省大学学術    局長      小林 行雄君    文部省社会教育    局長      斎藤  正君    文部省体育局長 清水 康平君    文部省調査局長 杉江  清君    文部省管理局長 福田  繁君    文化財保護委員    会事務局長   岡田 孝平君   説明員    大蔵省主計局主    計官      大村 筆雄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十五年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 東隆

    主査東隆君) これより予算委員第四分科会を開会いたします。  昭和三十五年度一般会計予算同じく特別会計予算同じく政府関係機関予算文部省所管を議題といたします。  まず本件について政府より説明を願います。
  3. 宮澤喜一

    政府委員宮澤喜一君) 昭和三十五年度文部省所管予算案大要につきまして御説明申し上げます。  昭和三十五年度文部省所管予算額は、千九百四十七億八千九百十八万六千円でありまして、これを前年度予算額千七百五十八億六千三百三十四万八千円に比較いたしますと、百八十九倍二千五百八十三万八千円の増加となっております。  また、この文部省所管予算額一般会計予算額に占める比率は十二・四%となっております。  次に、昭和三十五年度予算のうち重要な事項について申し述べたいと存じます。  第一は、すし詰め学級解消に必要な経費であります。義務教育水準維持向上をはかるため、前年度に引き続き、すし詰め学級解消五ヵ年計画を推進することとし、公立義務教育学校教職員定数増加及び施設整備に必要な経費を計上しております。まず教職員定数の増といたしましては、小中学校児童生徒数自然増減に伴い、教職員千百一人の増加が見込まれますが、さらに、公立義務教育学校学級編成及び教職員定数の標準に関する法律の実施、すなわち、すし詰め学級解消教員定数充足の五ヵ年計画に基づき、学級編成基準小学校は一学級五十六人まで、中学校は五十四人までとする等のための教員増四千八百二十人を見込み、合計五千九百二十一人の増員に必要な経費を計上し、さらに人事院勧告実施、昇給の実施、三十四年度不足見込額補てん等に必要な経費を含めまして、所要給与費千九十九億二千八百万円を、また教材費として十七億六千七百万円を計上したのであります。  次に、公立文教施設につきましては、これが整備に必要な経費八十六億八千六百六十九万七千円を計上したのであります。  すなわち、本年度においては、前述の、すし詰め学級解消その他公立文教施設整備のため五ヵ年計画の二年次分として五十万九千坪の整備を見込んでおるのでありまして、一般校舎不足解消、特に中学校生徒急増に伴う施設整備を最重点とし、このほか小学校校舎及び屋内運動場整備学校統合促進危険校舎改築等計画的に実施することとしたのであります。  なお、このほか昭和三十四年度に発生した災害復旧費の二年次分として十二億八百四十五万五千円を計上しております。  第二は、科学技術教育振興に必要な経費であります。まず初等中等教育におきましては、理科教育及び産業教育振興重点を置き、それぞれの振興法に基づく補助金を五億五千万円及び九億九千七百三十二万八千円に増額し、また、新たに理科教育センター設置費補助金として五千百六十八万八千円を計上したのであります。とくに産業教育につきましては、中堅技術者養成に関する産業界の要望にこたえて前年度に引き続き、高等学校機械課程十、電気課程八、工業化学課程三及び産業科三を新設するとともに、新たに設備更新費に対する補助金を設け、また、中学校産業教育設備についても、その充実をはかっております。  次に、国立大学におきましては、理工系の十八学科増設、十学科拡充改組工学部新設短期大学新設等により、科学技術者養成のため千百二十六人の学生増募を行ない、また前年度に引き続き、新たに九州大学北海道大学名古屋大学において、原子力に関する学科講座または部門増設を行ない、物性研究所蛋白質研究所等拡充をはかるなど、科学技術の進歩に即応するため特段の措置を講ずることといたしたのであります。  さらに科学研究重要性にかんがみ、その振興に資するため科学研究費交付金等に必要な経費として十八億千九百四十万六千円、また、私立大学についても、同様の趣旨に基づき理科特別助成費として六億五千五百十七万六千円、研究設備助成費として三億八千六十二万九千円をそれぞれ計上したのであります。  なお、このほか民間学術研究団体補助金一億八百七十五万千円、さらに前年度にき続き第四次南極越冬隊ならびに第五次南極地域観測事業に要する一経費二億三千三百三十八万九千円を計上しております。  第三、国立学校運営に必要な経費であります。  これ、国立大学七十四、国立高等学校八、大学附置研究所五十八、大学附属病院二十三を維持運営するため必要な経費でありまして、本年度におきましては、さきに申し述べましたように、科学技術教育振興の線に沿いまして、東京大学原子力工学科新設し、東北大学東京大学、東京工業大学京都大学大阪大学のほか、新たに北海道大学名古屋大学九州大学原子力研究に関する講座または部門増設または新設し、大阪大学歯学研究科を、京都大学に薬学部を、岡山大学工学部を、北海道大学外十四大学に十七の理工学系学科をそれぞれ新設し、また、北見工業短期大学室蘭工業短期学部等新設することといたしました。また、教官研究費及び設備更新費についても増額を行ない、基準経費充実をはかる等の措置を講じております。これらの経費を含め国立学校運営に要する経費の総額は四百九十六億百六十三万千円でありまして、国立学校の項に三百五十八億八千三百七万八千円を、大学附属病院の項に九十四億九百三万五千円を、大学附置研究所の項に四十三億九百五十一万八千円をそれぞれ計上したのであります。  なお、国立文教施設につきましては、学術及び科学技術教育振興に即応する施設重点的な整備をはかるとともに、大学施設一般整備老朽校舎改築等のため、四十三億三千五百七十五万三千円を計上したのであります。  第四は、特殊教育振興に必要な経費であります。  まず、公立養護学校整備特別措置法に基づき公立養護学校十一校の増設を見込み、教職員給与費及び教材費の二分の一を国庫において負担するに必要な経費一億二千九百三十九万円を計上し、さらに養護学校特殊学級設備整備費補助金及び養護学校用スクールバス購入費補助金を合わせまして三千四百九十八万八千円を計上したのであります。また、精神薄弱児教育のための実験実習校として東京教育大学及び東京学芸大学養護学校を附設するとともに、東京学芸大学外大学養護学校教員養成課程を設け、一方養護学校教育担当教員のための講習会を行ない、また、養護学校及び特殊学級用学習指導要領及び教科用図書を編集する等のために必要な経費三百九十三万九千円を計上しております。  次に、盲学校ろう学校及び養護学校の小、中学部児童生徒に対しては、新たに修学旅行費を、また、高等部生徒に対しては、新たに寄宿舎居住に伴う寝具費等を、それぞれ補助するため必要な経費を加えまして、特殊教育学校への就学奨励に要する経費として一億五千二百七万八千円を計上したのであります。  第五は、勤労青少年教育及び社会教育振興に必要な経費であります。  勤労青少年教育振興は、学校教育社会教育の両面において両者相待って行なわなければなりませんが、学校教育の面におきましては、公立高等学校定時制教育または通信教育に従事する校長及び教員に対し新たに定時制通信教育手当を支給するための補助として一億七千万円、定時制高等学校設備費及び通信教育運営費補助として一億六百九万四千円、夜間高等学校給食施設及び設備補助として千二百一万九千円、さらに放送利用による高等学校通信教育の普及に必要な経費として千六十四万円をそれぞれ計上したのであります。  次に、社会教育の面におきましては、従来に引き続き青年学級改善充実をはかるため、八千二百八十万円、地方青年家施設整備に五千七百二十一万二千円を計上いたしましたほか、公民館等設備整備に二千三百九十五万円、教育放送の積極的な活用を促進するため五千六百十二万九千円、婦人学級開設等助成するため八千三百二十七万五千円、さらに、青少年団体及び婦人団体その他の社会教育関係団体の行なう事業助成するため五千五百五十万円をそれぞれ計上いたしました。このほか、社会教育上特別に助成を必要とする事項を一括して社会教育特別助成費といたしまして、これに八千五十九万七千円を計上したのであります。  第六は、体育振興に必要な経費であります。  体育振興をはかるため、前年度に引き続き地方スポーツ充実費として千三百三十一万千円、本年ローマで開催を予定されております第十七回オリンピック大会の参加を初め、国際スポーツの交歓に要する経費として五千百三十五万四千円、スポーツ団体助成費として日本体育協会に対する補助金千四百七十万円、オリンピック東京大会実施準備に必要な経費として八千二百万円、さらに国民体育施設整備するための経費として、五千三百六十万円をそれぞれ計上したのであります。  このほか、青少年スポーツリクリエーション活動等助成するための体育振興特別助成費として五千七百九十万円を計上したのであります。  第七は、私立学校助成に必要な経費であります。  私立学校教育振興をはかるため、私立学校教職員共済組合に対しましてはその給付費及び事務費の一部を補助するに必要な経費八千二百万八千円を、また、私立学校振興会に対し、私立学校施設等整備するために要する資金の一部として従来からの五十億円に加えて三億円の増額出資を、さらに昭和三十四年度に発生した災害復旧費として五千三百九十四万三千円をそれぞれ計上いたしたのであります。  第八は、国際文化の交流及び文化財保存事業に必要な経費であります。  まず、東南アジア中近東及び欧米等から来日する留学生並びに沖繩からの内地派遣研究教員及び学生に対する手当給与東南アジア中近東よりの学生招致旅費、さらに沖繩教育向上のための教育指導委員派遣東南アジア教育事情調査のため調査団派遣等に必要な経費として一億四百五十四万千円を、外国人留学生受け入れ等事業を行なっている財団法人日本国際教育協会事業費補助に必要な経費として千百七十七万円を、また、第十一回ユネスコ総会その他の国際会議に出席するための外国旅費として千七百八十五万八千円を、それぞれ計上したのであります。  次に、文化財保存事業は逐年その成果を上げておりますが、本年度も前年度に引き続き国宝、重要文化財等保存修理防災施設整備を行ない、さらに無形文化財を保護する等のため必要な経費として五億五千四百七十五万千円を計上し、また、国立劇場設立準備のため必要な経費として二千五百万円を前年度に引き続き計上し、その事業促進を期することとしたのであります。  このほか教育課程の改訂に伴い、教員現職教育を徹底すること、学校管理適正化をはかるため教頭に対しても管理職手当を支給すること、いわゆる準要保護児童生徒対策としては、教科書費修学旅行費医療費等に対する従来からの措置のほか、本年度より新たに学校給食費負担軽減をはかるため準要保護児童生徒の率を二%から四%に引き上げること、日本学校安全会の支部の事務費補助すること及び同和教育のための研究協議会研究指定校を設置すること等のため新たに予算の計上をはかった次第であります。  以上文部省所管に属する昭和三十五年度予算案大要につきまして御説明申し上げた次第であります。
  4. 東隆

    主査東隆君) それではこれより質疑に入ります。  政府側から出席されておりますのは、宮澤文部政務次官天城文部大臣官房長、安嶋文部大臣官房会計課長内藤文部省初等中等教育局長小林文部省大学学術局長斎藤文部省社会教育局長清水文部省体育局長杉江文部省調査局長福田文部省管理局長等であります。  それでは質疑のある方は御発言を願います。
  5. 吉江勝保

    吉江勝保君 一、二質問してみたいと思います。まず最初大学関係でありますが、まあ大学の問題につきましてもいろいろありますが、一応その施設関係につきまして伺ってみたいと思います。  文部省では公立学校すし詰め学級解消につきましては、ただいま説明もありましたように、公立文教施設整備のための五ヵ年計画として第二年度に入っておりまして、五十万九千坪の整備を見込んでおられるのであります。現在の国立大学——主として大学にしぼって、国立大学につきまして相当校舎等が老朽しておりまして、至るところの大学施設を見まするときに、一番おくれておるんじゃないかというような感じを抱かされるのであります。最近は、あるいは小学校中学校から、あるいは市町村の他の建物におきましても、相当完全な施設ができてきておるのでありますが、一番施設充実をはからなければならない国立大学施設が老朽しておったり、あるいは内容がおくれておったりしておるように見受けるのでありますが、こういうような国立大学整備計画性というものが文部省にあるのか。昭和三十五年度に、ここに提案されておりまする計画というものは、その全体的の計画の中の一部として行なわれていくのか、ただ、その年に要求のあったものをある程度拾い上げて、予算要求されておるのか。大学設備に対しまする文部省当局のそういう面の説明を承ってみたいと思います。
  6. 福田繁

    政府委員福田繁君) ただいまの御質問の点でございますが、御承知のように、戦後国立学校施設が戦災で相当甚大な被害を受けましたことと、新制大学出発等にあたりまして、いろいろ施設整備等が非常に重要な問題として起こって参りましたので、そういった関係で確かに国立大学施設の面につきましては、いろいろやりにくい点があったと思いますが、文部省といたしましては、この新制大学の発足にあたりまして、各大学施設整備計画というものを個々大学について設定いたしまして、それに基づいて少なくとも十五年程度計画整備をはかって参ることになったのでありますが、しかしながら、なかなか御存じのように、予算範囲内におきましていろいろ実際に計画いたしました計画とずれて参るというような問題も生じましたので、また、科学技術振興という見地から新しい整備というものが出て参ったのであります。従って、従来の一応の整備はともかくといたしまして、今後国立大学施設整備するには、この一般施設整備、それから従来の老朽校舎改築、それからさらに加えまして科学技術振興というような見地から、全体計画を策定いたしましてそれによりますと、少なくともこの坪数といたしまして今後整備を要する坪数が八十八万坪くらいになるわけであります。しかしながら、それも一挙になかなかできませんので、昭和三十五年度からその中の一部、最も緊急を要する面を取り出しまして、五ヵ年計画を策定いたしたのであります。従って、その五ヵ年計画の中で、三十五年度の第一年度としてここに計上いたしました国立文教施設整備費四十三億円というのが緊急五ヵ年計画の第一年度分としてまあ計上されたようなことになっております。従って、今御質問になりました点につきまして、私どもとしては整備計画を立てて、年次を追って大学整備をはかる、こういうような観点から計画を進めておる次第でございます。
  7. 吉江勝保

    吉江勝保君 一応計画を持っておられるという御答弁であったのでありますが、その計画はどの程度権威があるものになっておるのですか。
  8. 福田繁

    政府委員福田繁君) 権威があると申しますと何でございますが、文部省といたしましては、各国立大学施設整備計画個々に策定いたしまして、そうして文部省としてはこの全体計画を進めていくという工合に決定をいたしました。しかもその中での緊急五ヵ年計画というのは、これは最も当面緊急を要する計画として三十六万坪を取り上げているわけでございます。従って、この緊急五ヵ年計画の数字につきましては、大蔵省関係方面とも十分相談をいたしまして進めているような次第でございます。
  9. 吉江勝保

    吉江勝保君 ただいまのその緊急五ヵ年計画でありますか、それは国立大学七十四ですか、この国立大学施設について特に緊急なものについての五ヵ年計画、しかもそれは文部省だけが承知しているものでなくして、大蔵省もそれについては同意を与えている。文部省大蔵省といわば両省で認めて立てている五ヵ年計画だ。こういうふうに了承してよろしいのですか。
  10. 福田繁

    政府委員福田繁君) これは大蔵省が了承を与えているというようなことを申し上げるのはどうかと思いますけれども予算範囲内でその緊急五カ年計画に基づく施設整備をはかっていくということについては、第一年度として大蔵省もお認め願っていることと考えております。
  11. 吉江勝保

    吉江勝保君 最初に申しましたように、すし詰め学級解消についてのこの五ヵ年計画というものにつきましては、相当国会におきましても、また、関係省におきましても、一応これは認められているというように私どもは解釈しているのでありますが、今お話のありました大学の緊急という名前のついているその五ヵ年計画というものも、聞いてみますというと、文部省要求されるために、文部省自体がただ立てておられる案の程度ではないかというようにとれたのですが、もう少しその内容も示してもらいまして、そうして国立大学学校整備をしますのに必要な資料も整えて説明がいただきたいと思うのでありますが、その内容資料は御提出がいただけますか。
  12. 福田繁

    政府委員福田繁君) この五ヵ年計画につきましての資料は後ほど差し上げたいと存じますが、大体申し上げますと、前年度計画八十八万坪の内訳になるわけでありますが、その八十八万坪の中で、大体科学技術振興に要する経費につきまして約二十一万坪余りを一応の計画としております。一般整備につきましては約三十九万坪余り整備しなければならぬというような状態になっております。そのほかに、従来の校舎の中で老朽校舎がございますので、それを二十七万坪ということになっておりますが、その中で老朽校舎なら老朽校舎の中での大体三〇%程度が最も緊急を要する、改築を要するものだ。従って、約八万坪になるわけですが、それから一般校舎整備につきましても約十四万坪ですが、パーセントにいたしますと三〇%程度に当たるわけでございますが、一般校舎整備の全体計画の三〇%程度に当たるわけでございます。それから科学技術振興の部分につきましては、二十一万坪余りの約七〇%、これを最も緊急に考えまして、七〇%の約十四万坪、その程度をとりまして、全体として緊急五ヵ年計画は三十六万坪程度、こういうことで進めている次第でございます。これは資料は後ほど差し上げたいと思います。
  13. 吉江勝保

    吉江勝保君 ただいままでの説明施設についてのようでありますが、それでは大学の今度は内容設備の方につきましては、そういう計画がお立ちになっておるのでしょうか。
  14. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 大学研究用教育用設備につきましてはこれは御承知かと思いますが、実は相当もう老朽した設備が各大学にございます。これらの老朽設備更新ということが非常に大きな問題になっております。これにつきまして、私ども予算の許す範囲内でできるだけ設備改善という点から予算要求して、年々改善の実を上げておるわけでございますが、現在までのところ、まだ何ヵ年計画というようなところは立てておりません。なお、老朽設備改善と同時に、新たに学術振興に伴う相当規模も大きい設備等要求されてきておりますので、これらもあわせて予算要求の対象にし、額としては高くはございませんが、これをいただいて、年々整備をいたしておる状況でございます。
  15. 東隆

    主査東隆君) 吉江君に。今大蔵省から大村主計官が見えておりますから。
  16. 吉江勝保

    吉江勝保君 施設の方につきましては、計画的には立てておらないようでありまするが、大学施設とあわせまして、その内容施設について特にもう少し突っ込んだ充実計画といいますか、更新計画というか、そういうものを持たれなければならないのじゃないかと思うのでありますが、教育振興といいましても、大学におきまするそういう施設が不十分では十分な成果が上げられないのじゃないかと思うので、この科学技術教育振興の中におきましては、十分にそういう施設について予算が組まれておるのでありますか。
  17. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 科学技術教育振興の一環といたしまして、国立大学所要経費の中に、設備充実に必要な経費を織り込んでございます。その中にはいろいろ設備と申しましても文科系等もございますので、図書購入費等も入っておりますが、特に科学技術系設備更新費といたしまして、三十五年度といたしまして約八億の経費予算計上いたしておるわけでございまして、これは前年に比べますと約二割の増になっておるわけでございます。
  18. 吉江勝保

    吉江勝保君 まだお伺いしたいのでありますが、時間の関係もありますので、次の問題に移っていきたいと思います。  次は、これは留学生の問題でありますが、日本大学留学したいという諸外国留学希望者というものは相当多いように聞いておるのでありまするが、その留学生に対しまする文部省措置といいますか、あるいはこれは外務省も関係があるのかもわかりませんが、一応受け入れまして、その留学生大学におきまして勉学さしておりまするのに対する措置というものがどうも不十分ではないかというように感じられるのであります。これは特に諸外国と申しましても、わが国関係の深いアジアあるいは東南アジアでありますとか、あるいは中南米でありますとか、特に海外のわが国関係の深い地域から来ておりまする留学生に対しまするその受け入れ態勢整備というものにつきまして、今年度留学生課程というようなものが、先ほど御説明があったようでありますが、この程度のものではたして諸外国留学するのに対しまして、わが国留学する留学生がまだ不十分なといいますか、留学の目的を達しまするのに条件が不利ではなかろうかと思うのでありまするが、そういう点につきまして、組まれておりまする予算内容をどういうように諸外国受け入れ態勢というものに比べて改善されておるか、あるいは同じような程度にまで組んでおるのか、まだ不十分であるのか、そういう点を比較して御説明をいただきたいと思います。
  19. 杉江清

    政府委員杉江清君) 本年度予算におきましては、外国人留学生招致といたしまして五千六百万円の予算が組まれております。その内訳といたしましては、新しく留学生を招致する数が七十名でございますが、この内訳といたしましては、東南アジア中近東と欧米と両方含まれておりまするが、おもに東南アジア中近東を考えております。現在までのところの外国人留学生の在籍総数は二百二十三人になっております。なお、今年は旅費の支給についても改善いたしました。それから次に、この留学生の招致及び広く言いまして、まあ諸外国との学生の交換、ことに東南アジア諸国との教育協力の重要性にかんがみまして、東南アジア教育事情視察のための予算が八百九十万円特に本年度組まれております。そのほか受け入れ態勢といたしましては、日本国際教育協会に対する補助金が一千百七十七万ばかり組まれております。そのほか先ほどお話のありました留学生課程を新しく設置するための経費が四千九百八十万ばかり組まれております。本年度留学生関係予算は以上でございますが、このことの重要性に比較して決して十分であるとは言いがたいと思います。これを諸外国の事情に比較いたしますと、かなり見劣りがするということが言えると思います。試みに主要国のわが国から招致しておりますところの学生数を見ますと、次のようになっております。アメリカは三十四年度において百二十名の日本学生を招致しております。フランスは四十三名、イギリスは十四名、インドは四名、ドイツが十名、その他イダリア、イスラエル、オーストラリア、イラン、フィリピン、タイ、カナダ、スエーデン等、今申し上げました国々に比較しては数は少ないのでありますけれども、いずれもやはり一「三名は招致しております。こういうふうな事情に比べますと、わが国留学生招致の数は少なく、また、その策も不十分であるとは思いますけれども予算の制約その他もあって本年度はこの程度にとどまったのでありますが、今後は大いにこの点について力を入れなければならぬことだろうと考えております。
  20. 吉江勝保

    吉江勝保君 今諸外国の方から、先進国といいますか、そういう国から日本留学生を招致しておる数字をお話になったのでありますが、ドイツがえらく少ないように聞きましたが、ドイツが日本学生を呼んでおりますのは十名くらいのものですか。
  21. 杉江清

    政府委員杉江清君) 失礼いたしました。十名と申し上げたのは、私の資料の読み違いでございまして、西独は各種の種類がございまして、三十四年度においては六十九名になっております。
  22. 吉江勝保

    吉江勝保君 留学生わが国へ呼んでおります数も少ないと思いますが、その留学生に対しまする国内におきまする何と申しますか、措置、待遇というか、そういう点につきましては、諸外国が講じておるのに比べましてどういう程度にまで進められておるのですか。
  23. 杉江清

    政府委員杉江清君) 留学生の待遇につきましては、各国いろいろ事情を異にしておりまして、なかなかその比較はむずかしいのでありますが、その滞在費、旅費等の支給におきまして、先進諸国に比べますとわが国は劣っておると考えられます。
  24. 吉江勝保

    吉江勝保君 私の特に注意を呼びたいのは、将来日本が諸外国におきまして文化的に海外に発展していきますのにも、やはり海外の留学生を相当受け入れまして、そういう留学生が帰国の後におきまして、日本の文化をその国に取り入れていくというような措置は、文部省が相当しておりまする一番重要な任務の一つではないかと思うのでありまして、それに対してあまりにもおくれておるといいますか、そういうような感じがいたす。で合ありますが、今度は大蔵省の出席されておりまする責任者の方に、こういう点につきましての見解、どういうふうに考えておられますか、日本の海外におきまする経済的な発展をはかりますためには、やはり優秀なこういう留学生日本に来まして勉強しまして、それが帰国の後には相当な地位についていくのであります。経済界におきましても、あるいは学術界におきましても、あらゆる面についていきまして、日本との親善をはかっているのでありますが、こういう留学生の国内招致あるいは措置につきまして、こういうような立ちおくれをしておることに対しまして、大蔵省はどういうような見解をとって措置をされておるか、それを御説明を願いたいと思います。
  25. 大村筆雄

    説明員大村筆雄君) お答え申し上げます。留学生、ことに海外からの留学生の受け入れ措置の問題でございますが、人数の点あるいは国内における待遇の点、また、海外留学生受け入れのその将来に及ぼす効果等の点につきましては、ただいま御質問がございましたように、ただ、財政的な点もさることながら、その将来に及ぼす効果等を十分に勘案いたしまして、適当な措置をとらなければならないという点も、私ども同様に考えているのでございますが、従いまして、本年度におきましても、東南アジア留学生の受け入れ措置につきましても、特に東南アジアにおける留学生受け入れ態勢整備、その他に重点を置いて考えておるわけでございます。ただ、受け入れ人数その他の点につきましては、各国と必ずしも人数の点で一致しないという点もございますが、それぞれ特殊事情がございまして、必ずしもアメリカで百二十名受け入れるからこちらも百二十名というようには参らない点もあるかと思います。ただ、海外留学生を受け入れることと、その将来の効果という点につきましては、私どもも同じ考えで今後とも配慮しなければならぬ、かように考えております。
  26. 吉江勝保

    吉江勝保君 私はアメリカとの関係でアメリカが日本留学生を招致している数に相当するものをアメリカから日本に呼べというようなのではなくして、アメリカや、あるいは西ドイツとか、あるいはフランスとかイギリスが、たとえば後進国の東南アジア、中南米の留学生を数多く呼んで、そうしてその国で十分に待遇を与えて教育をしておるというのに比べて、日本がやはりもっと力を入れて東南アジアでありますとか、中近東でありますとか、あるいは日本人の多く行っている中南米に対しましては、もっと理解のある措置を講ずべきじゃないか、ことに英語で勉学のできまする国に行けば、学年の短縮といいますかで、勉強が、目的を達するのが、日本に来れば日本語から教育を受けなくちゃならぬので、一年あるいは二年年数もよけいかかる、そういう不利益な条件のもとにありながらも日本に行って勉強したい、こういう後進国家の希望も満たすためには諸外国に比べてそれだけの待遇を日本が与えなければ留学生が将来日本に来ることをやめて、あるいは欧米に行くようになってしまうのじゃないだろうかというようなことも気にかかるので、もう少しこの予算措置におきましては、よその国と同じ程度にまだ細れまておらないのでありまするが、その程度に組んでいるからそれでよろしい、こういうような考え方でなしに、日本語の教育から受けなくちゃならぬ、こういう留学生に対しましては、あるいは英語でありますとか、そういう語学でありますと非常に簡単に勉学できるようでありますが、日本語につきましては相当不利益を受けるようでありますので、特に在学期間を延長されることになる、そういう点の費用の負担という点につきましても特に考慮してやらなければいけないのではないかと思うのであります。そういう点にどうも大蔵省の認識が十分でないように今の説明で感じられるのでありまして、これはもう説明要りませんが、十分にそういう点を一つ考慮してもらいたいと思います。一応これで終わります。
  27. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は、初めに高等学校の問題について質問いたします。ことしの四月はこれは前例にない中学校では児童の増加、この事態は三年後には高等学校にやってくるということは自明の理であると思うのですが、そこで最初にお尋ねしたいのは、三年後にはどういう高等学校の入学希望者がふえていくか、そういう見込みですね、その点をお話し願いたいと思います。私がきょうここでこの問題を特に取り上げておる理由は、教員の養成の問題を一つ考えてみても、それから校舎施設等を考てみても、すぐに間に合う問題ではないわけです。教員の養成一つ考えてみても、高等学校教員の養成というものはそんなに来年すぐできるというふうな問題でないので、今この対策をはっきり立てておかないと、そのときに当面をして非常に困る事態が起きるのじゃないかという趣旨から今問題に取り上げておるわけなんです。それで大体三年後を目標にして高等学校の入学希望者といいますか、どういう傾向にふえていくものか、文部省でもいろいろ調査なり検討をしておられると思いますので、その点をまず初めにお答えを願いたいと思います。
  28. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 中学校の生徒数の増加を簡単に申しますと、昭和三十五年が四年に比べて七十万の増加でございます。それから三十六年がさらに百万人ほどふえることになっております。それから三十七年は、さらに四十万の増加と、こういうことになるわけでございます。高等学校の進学率は、定時制、通信教育を含めて、現在のところ五六%でございます。もとより全日制のみを比較いたしますれば、これは四〇%を若干上回っておる、こういうような状況になろうかと思います。御指摘のように、三十八年からこの子たちが高等学校に入ってくるわけでございます。それからの問題として、高等学校の対策をどうするかということをいろいろ検討しておるところでございます。本年中学校が非常にふえましたけれども昭和三十五年の総数を見ますと、大体昭和三十一、二年のところとほぼ同じでございます。ですから、三十四年が非常に低かったと言えるわけでございまして、従って、三十五年は七十万ふえましたけれども中学校の生徒総数から見ますと、大体昭和三十一、二年と同じであると、こういうふうに御理解いただきたいと思います。いずれにいたしましても、三十八年からただいま申しましたような生徒が入って参りますので、それに対して今の進学率を維持していきたい。この点から考えますと、少なくとも半数程度のものが高等学校へ進学するという前提でものを考えなければならぬと思います。今私どもが検討いたしておりますのは、このベビー・ブームが昭和四十二年まで続くわけです。ですから、四十三年以後が大体正常化して参りますので、四十三年にどの程度高等学校が設置されるか。御承知の通り、毎年の経済の伸張もございますので、それに相応いたしまして、高等学校増設が行なわれ、進学率が向上しておりますので、毎年一%程度の進学率の向上を見ておりますから、その昭和四十三年における伸びを計算いたしまして、大体三十八、九、四十、この三年間に全日制高等学校増設する、こういう考え方を一つ基本的に持っておるわけであります。まあこれで、大体三年間に少なくとも十五万から二十万ぐらいの生徒の収容力が可能であると考えておるのでございます。
  29. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 十五万とか二十万というのは……。
  30. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 高等学校の生徒総数です。十五万と申しますのは、一学年五万でございます。三年で十五万。ですから、十五万から二十万程度の収容力を考えておるわけでございます。ところが、御承知の通り、さらにさらにふえて参りますので、その間これは経過的にふえるわけでございますので、経過的にふえる分については、大体二割程度すし詰め学級をいたしたい。これは臨時増募を考えておるわけでございます。二割程度の臨時増募によりまして、四、五十万程度の子供は救われると考えておりまして、この場合に、どの程度教員数をふやすかという問題が別個にございます。これは今自治庁ともいろいろ検討しておるわけでございますが、高等学校の定数基準の問題として解決したい。ですから、高等学校増設の分と臨時増募の分を含めまして、五、六十万程度のものは吸収したいと考えておるわけであります。それからこのほかに、できるだけ高等学校の就学の機会を広げるために、通信教育、特にテレビやラジオによる通信教育も普及いたしまして、この場合には一年間に二十日程度のスクーリングがございますけれども、そのスクーリングを三分の一、あるいはテレビの場合には二分の一くらいに減じまして、全国的な規模において通信教育振興をはかっていく。通信教育だけで全部の単位がとれるようにしていきます。現在普通課程は、全部高等学教の卒業ができるわけであります。また、職業教育学校につきましても、ある程度通信教育だけで卒業できるような仕組みになっておりますので、さらにこれを拡充して参りたい。それからもう一つは、これはまあ学校教育法の改正とも関連がございますけれども、現在技能者養成施設で行なっている教育を、高等学校程度のものにつきましては、特別の認定を行ないまして、そこで修得した単位は高等学校教育の一部とみなして、残りの分を定時制教育なり通信教育で単位がとれるようにしていきたい。できるだけ高等学校の就学率を普及して参りたい。従って、今後三十八年以降に予想されるところの中学校卒業生の激増に対する対策としては、十分御期待に沿えるように、今検討をしておるわけでありまして、特に教員養成の面、あるいは施設の面につきましては、今後関係局及び関係方面とも十分連絡をとって、遺憾なきを期したいと考えております。
  31. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今の説明の中で、若干問題点があるというように思うのですが、その第一は、高等学校の入学希望者といいますか、収容の問題ですね。これは、四、五十万という数字では、相当実際とは開きがあるのではないかと思うのです。文部省はどういう調査か知りませんが、私の持っておる資料では、本年度——昭和三十四年度において、公立高等学校の生徒数は二百二十九万一千人、こういうことになっております。おそらく、これは文部省資料ではないかと思うのですが、かりに進学率を、先ほど説明があったように、五六%と押える。この進学率も私は問題があると思うのです。この間も予算委員会で、政府は、所得倍増計画、こういうものを発表して、国民生活の引き上げをやるのだと、こういうことになっておる。漸次国民の生活内容充実してくるということになれば、進学率もふえてくるのではないか。私最近のこの進学率の経緯を調べたものを見ると、昭和三十年で大体五二%ですね。それから年々ふえております。昭和三十四年度において五六%、これは私は、経済力の発展とやはり相関した関係を持っておるのではないかと思うのです。ですから、進学率の問題についても、五六%という数字を固定しておくということについては、若干の問題があるということを申し上げておきたい。しかし、一応現在の進学率というものを基礎にして、大体の中学校の子供の今のふえ方を見ると、昭和四十年には二百九十三万四千人、こういう数字になると思うのです。これは大体七十万ばかりの増と、こういうふうに見なければならぬと思うのです。この昭和四十年以前——昭和三十八年度から三十九、四十年と急上昇をして、昭和四十年をピークとして約七十万ふえる。やはり最小限度に見積もっても、私はこの七十万という数字を基礎にして対策を立てる必要がある、こういうふうにこの点は思うのですがね。それからもう一つは、これに対処する方針として臨時的な措置でやっていきたい、こういうお話です。これは非常に問題があると思うので切り離して次に尋ねます。
  32. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 私が申しましたのも、経済の伸長率によって進学率の増加を見込んでおるわけであります。この増加率を見込んでいくと、昭和四十三年が平常化しますので、四十三年のところを押えまして、それを基礎にいたしまして三十八年以降の高等学校増設計画をしていきたいということを申したわけであります。それからその途中は、これはふく回上がった分は恒常的な分と臨時的なものに分けて、臨時的なものは二割程度の増員が可能であると考えたわけであります。現在五十人おるところに六十人まで詰め込むわけでございます。ここに若干問題はありますけれども、そこで今考えておりますことは、二割といたしますと、今おあげになりましたように、かりに二百三十万でございますれば、二割で四十六万になる。ですから、その程度のものは臨時増募の対象にいたしたい。それから最初に申しました高等学校の恒久的計画としての増設分として十五万ないし二十万と申しましたのは……。
  33. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この二割というのは臨時的なものですか。四十三年以降の恒久的なものですか。
  34. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) これは昭和三十八年から四十年までの臨時的な措置です。ですからこれで今申しましたように、四十六、七万から五十万程度のものが可能ではなかろうか。それから恒久的な分として大体二十万程度を予想しております。これは高等学校増設でございます。大体一県当たりにいたしますとそう私は大きな負担ではないと思っております。ですから、その増設で大体二十万、合わせて今御指摘のように七十万程度のものは私どもも計算に入れているわけでございます。
  35. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それで今のお話では、恒久的なものとしては二十万生徒数の増加を目標にして恒久的な対策を考える、それから三十八年から四十三年までの六ヵ年、それは臨時措置で大体生徒の一学級の収容人員をふやして、そうして四、五十万を現在の施設でまかなっていく、こういうわけですね。  そこで、私は少し現在の問題についてお尋ねをしておく必要があると思うのですが、現在文部省令によって甲号基準と乙号基準とあるわけですね。ところが、甲号基準というものは実施されておらない、大体乙号基準実施されておるように思うのですがね。この文部省令では少なくとも最低の線として乙号基準は必ず実施しなければならない。もし実施できない場合は地方庁は理由を付して承認か許可を求める、あるいは報告か何か、そういう措置をとっているのじゃないかと私は思うわけです。その点は説明をしてもらいたいと思いますが、甲号基準は非常に望ましい、しかし、なかなかこれを今実施するということは困難であるということは私も認めます。しかし、最小限度の乙号基準ですね、これは文部省がきめたんです、最小基準。それが現在実施されておらない実情にあると思うのですが、この点一つ実情を説明してもらいたいと思うのですがね。
  36. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 教員定数の基準につきましては、学校教育法施行規則で省令で出しておるわけであります。交付税でできるだけ考慮をいたしておりますが、現在のところ、九二・三%程度でございます。私どもも毎年高等学校の単位費用の改訂をいたす際には、大幅に高等学校教育費を増額して参った。三十二年には大体三割程度の単位費用の増額をいたしました。白来毎年教員の定数につきましては一人ずつふやして参りまして、大体乙号基準が充足できるというところまでまあ来つつあるわけです。この際私どもは、小中学校にやりましたような教員定数の標準をきめていきたい。今せっかく自治庁あるいは大蔵当局とも交渉を重ねておるわけでありまして、乙号基準とか甲号基準じゃなくて、新しい観点から立った教員の合理的な定数基準を考えていきたい。乙号基準の中にももちろん不備な点がございますので、乙号基準、甲号基準を考えて、この両方を考慮しながら世界的な高等学校教育の水準をも考慮しながら新しい基準を今検討しつつあるところでございます。
  37. 東隆

    主査東隆君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  38. 東隆

    主査東隆君) 速記をつけて。  それでは午前中の質疑はこの程度にとどめ、これにて休憩をいたします。    午後零時九分休憩    —————・—————    午後一時十九分開会
  39. 東隆

    主査東隆君) これより予算委員会第四分科会を開会いたします。午前中に引き続き、文部省所管質疑を行ないます。
  40. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 高等学校の生徒が三十八年度以降急激に増加するということが予想され、それに対する対策、これについて文部省の方でも検討を進めておられるということですが、この対策についてはやはり法的な措置をして、そうして遺漏のないようにもっていく必要があると思うのです。やはり相当な予算を必要とするし、施設あるいは教員の定数確保等について相当な予算を必要とするというふうな建前から、どうしても法的な措置を早急にする、そういう必要があるのじゃないかと思うのですが、文部省の見解を伺いたいと思います。
  41. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 高等学校につきましては、現在のところ財政的な裏づけといたしまして、交付税による措置をいたしておるわけでございます。これは御承知の通り法的措置が行なわれておるわけでございますが、高等学校の定数基準につきましては、現在のところ施行規則でございますので、できますれば、これを法律的根拠のある定数基準にいたしまして、それを交付税におきまして百パーセント保障するように、現在小中学校が行なっている方向でこれを保障するために必要な立法を検討いたしておるわけであます。
  42. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私も今の文部省の考え方に賛成をするわけです。というのは、従来の例から見まてしも、この交付税でみておるわけなんです、高等学校教職員の費用を。ところが省令で実施された乙号基準に達しない、交付税の算定基礎は乙号基準に達しない、こういう状態にあるということは、やはり法的な強力な基礎がないというところにあるのじゃないかと思うのです。そういう意味で今初中局長から法的な措置をする、こういう御答弁がありましたが、私はぜひそれは法的な根拠をもって対策をきめる、こういう必要があると思うのです。それは非常にけっこうなんですが、その中身が私は問題になってくると思うのですよ。法律を作っても、その中身が十分でない、こういうことになれば、これはせっかくの法律も意味がない、こういうことにもなります。従って中身の問題について文部省の方でどういう考えでおられるか。  それからもう一つは、この法的な措置は私相当急を要するのじゃないかと思うのです。私この間若干この問題について調査をいたしました。そうすると、二十二都道府県から衆参の議長に対して地方議会の議決をもって意見書が出されております。それは国の方で早く方針をきめてもらいたい、そうしなければ、地方としても方針が立ちにくい、こういう趣旨の内容でありました。そのほか私は教育関係者、特に全国高等学校PTA協議会、あるいは全国の高等学校校長会、その他日本高等学校教職員組合等からこの問題について真剣な陳情が各方面になされておるわけです。そういう点から見まして、私はこの国会で立法措置をする必要があるのじゃなかろうかというふうな見解を持っているわけなんです。そうでないと、なかなか地方の方ではその対策が立ちにくい、こういう現状にあるというふうに思いますので、この法の内容ですね、今文部省でどういうふうなことが考えられておるか。それからまた、その法律の措置は、この国会で提案をされるお考えであるかどうか、この点をお答えいただきたいと思います。
  43. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 内容につきましては、従来の乙号基準と甲号基準との大体中間の合理的なところをとっていきたいと考えておりまして、今回は、たとえば、生徒数二十人について一人あるいは二十五人に一人というふうな方式で検討いたしております。で、教員数で申しますと、大体一万以上の増員になろうかと考えておるわけですが、一ぺんに一万から一万五千人の増員は困難でございますので、年次計画を立てて増員することを考えておるのでございます。そこで、先ほど申しました急増対策の一部につきましても、多少その点を考慮しながら検討を進めておるわけでございます。できますれば、今国会に上程いたしたいという考えのもとに、ただいま自治庁、大蔵省当局と緊密な連絡をとりながら、急速に準備を進めておるわけでございます。
  44. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今初中局長は、一万から一万五千くらいの範囲教員の定数を増加したい、こういうお話でありますね、これは私ども常識で考えても、だいぶ数に開きがあるわけなんです。大体四十年度には現在の生徒数が七十万ふえるということは、三〇%以上ふえることになる。私は今高等学校教職員は、公立は大体十万ちょっとこえるのじゃないかと考えておるのですがね。そうして三五%ぐらいになりますね、生徒がふえるのは。そうすると、大ざっぱに勘定してみても、少なくとも三万五千ですね、これは最小限度必要だと思うのですね。今一万五千という数字では、これはだいぶ隔たりがあると思うわけですが、その点はどういうふうにお考えですか。
  45. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) まことにお説の通りでございます。そこで、ちょっと誤解していらっしゃると思うのですが、私どもの方で今考えておりますのは、急増対策の増員は別個に考えております。ですから、急増対策を除外して高等学校の定数基準を考える場合に、一万以上と申し上げておるのです。急増対策の分として学校増設がおそらく各県数校にはなるだろうと思います。全国合わせて百何本校かにのぼると思いますが、それとあるいは今後予想されるところの臨時増加の分に見合う分は、これは別個に検討いたしたいと考えております。
  46. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 先ほど法律の内容としては、乙号基準と甲号基準の中間ぐらいというふうな方針で考えたい、こういうことですが、そういうふうな方針で考えると、現状でも一万や二万ふえるのじゃないかと私は大ざっぱに考えておるのですよ。ですから生徒がふえれば、恒久的な面から考えて、それくらいの数では足らぬのじゃないかというふうな気がするのですが、この点どうでしょう。
  47. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 交付税の方で見ております教員数は、割合に見ておるのでございますけれども、現実に乙号基準の充足率が九〇数%ということを先ほど申し上げたわけでございます。ですから、乙号基準改善していきたい、こういう点で、教員数が現状から見ると、やはり一万から一万五千くらいのところに落ち着くような基準を考えておるわけでございまして、もちろん乙号基準から一ぺんに甲号基準に飛躍するようなことは考えておりません。少なくとも乙号基準を上回る線で合理的な基準を考えておるわけでございます。その数が一万から一万五千くらいではなかろうかということを今検討しておるわけでございます。
  48. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それからさっきの答弁で、私気にかかりますので申し上げておきたいと思いますが、非常に生徒がふえる昭和四十年を中心として、臨時措置として、一学級学生の数を五十人から六十人に引き上げるというお話がありましたね、これは文部大臣、容易ならぬ問題ですよ。高等学校の一学級の生徒を十人もふやす、いかに臨時的な措置であってもこういうことは私は大きな社会問題にもなるのじゃないかと思うのです。この点どうでしょうか、文部大臣の御意見は。
  49. 松田竹千代

    ○国務大臣(松田竹千代君) お話のように、小学校でも五十八人、六人あるいは四人と、理想的に言えば四十人くらいのところまでという、まあ理想的にいきたいという考えがあるところへ、小学、中学校よりもさらに体の大きいものが一教室に六十人入れるということになれば、これは指導の条件が一そう困難なものがあると思います。しかしこれも一時的現象として、臨時措置としてやらざるを得ないようなことになるのではないかというふうに、今のところでは考えられるわけでありますが、そこで私は、先刻も申し上げたように、高等学校の生徒の急増する状態が到来したときに困らぬように、あらかじめこれに対する対策が必要である、こう考えてあなたと同様の心配をいたしておるのでありますが、何分にも現在のところでは施設、またこれに伴う設備、定員等、いろいろ一時にきておる段階でありまするので、そういう事態もこれは一時的にはやむを得ないのじゃないか、こういうように考えております。
  50. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 一時的といっても、昭和三十八年から四十三年と、六ヵ年ですね、これはやっぱりほおかむりできませんよ。どうしてもそういうことは、今考えて、六十人でもしんぼうしようといっても、世論は許さぬと思う。事教育の問題ですから。五十人を五十一人にするとか五十二人にするとかいう範囲なら、これは私は臨時的な問題として十分考えられると思うのです。五十人から十人ふえるというのは大きな数字ですよ。やはりこの点は、私は要望として、再検討してもらいたいということを要望しておきます。  それから法律を作る場合、忘れがちになるのは事務職員、養護職員、実習助手等の問題です。これは、現在交付税の算定基準にはこれらが入っていないのです。乙号基準にはきちっと出ておるのが、算定基準に入っていない。これを軽視するという考えは私は文部省にないと思いますが、この点は十分配慮されますか。
  51. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) もちろん事務職員も、養護教員も、実習助手も、それぞれ重要な役目を果たしておりますので、この点も明確にいたしたいと考えております。
  52. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それで、さっき文部省が、この国会にできるだけ提出したいと、こういうことで、これは大臣に伺っておきたいと思うのですが、今の政府の方針は、安保条約等がありますから、できるだけ法案の提出を見合わしていきたい、こういう方針をとっていることは明らかですね。そこで文部大臣としても、これを出すというのには、文部大臣が相当決意しなければ、今の段階から出せるかどうか、これは相当心配になると思うこの国会で出せない、来年の通常国会で出すということは、時期的におそいと思う。すでに今日、各都道府県で問題になっているのですから、ですからこの国会で出すということが一番適切な時期ではないかと思うのですが、その点文部大臣どうですか。やはりこの国会で出すという決意をお持ちになったらどうでしょうか。
  53. 松田竹千代

    ○国務大臣(松田竹千代君) でき得る限りこの国会に出せるような運びにしたいとは思いますが、その点について、なおいろいろ検討しなければならない事柄は、例の全般の公務員の定員制度というようなものも三十六年度を期して、それを目途として廃止するというようなことも今決定を見ているようなわけでありまするので、それらとからんでどういう結果になるか、その辺のことも考慮して出せるような事情になれば、一つ今国会に出したいと、かように考えております。
  54. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは私からも、この国会で法案が出るように要望しておきたいと思います。  高等学校の問題ですが、全般的にいって、義務教育と違うという点から、地方交付税でその予算のなにを見ているという関係で、やはり今日の現状からいって、率直にいって高等学校教育は若干谷間にあるのではないかという感じがするのです。地方へ行ってみると、老朽校舎が相当多いのです。これは否定できない事実だと思う。ですから、この点は相当文部省としても施設——これは小学校中学校施設は大事ですけれども高等学校になると、特に理科教育とか、実験、実習をやるという面になってくると、施設が相当充実してないと教育はできないと思う。私はこの間行政管理庁長官からの産業教育の監察をした報告書を見たのですが、やはりそういう点を指摘しておりますよ、非常に悪いということを指摘している。ですから、私は高等学校教育についてこの際相当力を入れてやってもらいたい。このことは結局文教予算全体の問題になると思うことしは、さっきの説明でも相当な増額になっておりますけれども、全体の予算からいうと、去年も全予算から考えると、文教予算は大体一二%、来年度も大体一二・四%、パーセンテージからいうと、あまり上がっておらない。これについて文部大臣が努力しておらぬと、こういうふうに言っているのではないのですよ。しかし私は狭い知識ですけれども、若干諸外国を回って、ひしひしと感じている点は、やっぱり教育に対する考え方というものは積極的になっている。言いかえれば、非常な熱意をもって各国は当たっている。特に科学の時代といわれる今日において、何といっても、国運の進展は教育に待たなければならぬという考え方が非常に強くなってきていると思うのです。私はこういうことは、文部大臣はもう申すまでもなくよく御承知だと思う。私はできれば総理大臣や大蔵大臣のおるところでしゃべりたいのですが、そういうわけにもきょうばいきませんので、これは口で言えば同感だと言うかもしれぬ。しかし防衛庁の予算文部省予算と、天びんにかけて、同じぐらいだ、とか、まあこっちが少ないとか、こんなことでは将来の日本の発展というものは期待できないと思う。それは自民党の中にも、自衛隊を作るのに自民党の人はみな賛中なんですが、その中でも、この科学の進歩の時代に特車を作ったり、鉄砲を作ったり、あんなことをして何しているのだという御意見を私はしばしば聞きます。自衛隊を作るにしても、科学というものが基礎でなければならぬ。私どもはそういう必要はないと存じますが、とにかく日進月歩の今日の時代、急速な発展をする時代に、科学教育振興ということはもう国運の消長にかかわる、文字通りそう言っていいと思います。それを、防衛庁の予算と天びんにかけて、文部省予算が少ないと、こういうことは、私は根本的に政府は考えを変えてもらう必要があると思うのです。私は大学問題にちょっと触れますが、高等学校でもこれはうまくいっていないのです。第一に金の面ですよ。道徳教育の問題とか、教科課程の問題とか、いろいろ問題はありますが、やっぱりもとは、教育できるような状態に置くということが一番の私は問題だと思うのです。そういう点で、一つ文部大臣は——いつまで文部大臣をおやりになるか知りませんけれども、やっぱり何年も続けてやるという決意で、この文教予算について画期的な努力をしていただきたいということを要請しておきます。  法の内容については、先ほどの説明以上にはないのですか。もう少し詳しい大体の構想はありませんか。
  55. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) せっかく今検討中でございますので、先ほども申しましたように、基本として乙号基準よりも改善していきたいということと、教員の問題、事務職員の問題、養護教諭、実習助手、それから各教科の課程によって相違がございますので、普通課程の場合に対しまして、職業課程の場合はある程度の増員をしなければなりませんので、そういう点を基本的な骨子といたしまして、現在の高校教育改善充実をはかっていきたい。お話のように、義務教育大学との間にはさまって、大へん高等学校教育は困難になっておりますので、この困難に対応いたしまして、立法措置を講じまして、これを改善していきたい、こういうのが基本的な考えでございまして、ただいま自治庁、大蔵省と交渉中でございますので、いましばらく待っていただきたいと存じます。
  56. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでは、この問題はこの程度にしておきまして、次に大学の教官の研究費の問題ですね、これは来年度予算で二〇%の増額をはかっておると、こういうことで、文部省の努力に対して敬意を表します。しかし、私はこの研究費が非常に少ないということを憂えておるのです。そこで、若干私もこの機会に調べたのです。まず一つの問題として、戦前における教官研究費と現在の教官研究費がどういう関係になっておるかということを調べた。幸いそういう資料がありまして、昭和三年における——実験の方ですが、研究費が一万一千二百三十一円になっております。それから、これが昭和十八年までずっと続いて、これは大体貨幣価値が変わらない。昭和三年から昭和十八年まで一万一千二百三十一円、これが教官の研究費になっておるわけです。これは講座です。そうすると、今物価は——これはいろいろとり方はあると思うのですが、さっきもここで話したのですが、六百倍くらいになっているのじゃないかというお話もありましたが、一般に公式に認められるものとして三百倍——これは物価の指数は昭和三年から昭和十七、八年までの物価に比べて約三百倍と、こう見るのが一般に言われておる数字なんです。そうすると、一万一千円の三百倍というと三百三十万、これが今日戦前並みの研究費に当たるのではないかと、私はこういうふうに見ておるわけです。今度二〇%増額されて、結局百五十万円というところまで増額になったわけですね。そうすると、今の三百三十万円に比べると、やはり戦前に比べて、予算の面で半分だということが言えるわけですね。この科学の時代において、大学教官研究費が戦前に比べて二分の一に達しない、こういうことでどうして科学教育振興ができるかと、こういう問題なんですね。この二〇%を増額されたことに対して敬意は表しますが、これでも非常に少ないということです。この点について、大学局長の見解を伺いたい。
  57. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) ただいま、戦前からの詳細な数字をあげて戦後との比較をしていただきましたが、確かに、私どもの計算におきましても、現在の大学の教官の研究費は非常に少ないと思っております。ただいまお話にもございましたように、明年度予算におきましては、約十億の増額をしてもらいまして、大体六十二億予算案には計上をいたしておりますが、平均の講座研究費といたしましても、私どもの計算でも、ちょうど半分程度にしかなっておりません。もちろん、この教官研究費につきましては、科学技術教育振興という点からも、また学問の全体の水準の点からも、これではいかぬということで、従来も実は努力をして参ったところでありまして、ことに昨年以後、御承知のように年々十億ずつふやしてもらってやっと六十億に達したという状況でございますが、今後におきましても、この大学教官の研究費につきましては、文部省としても最重点の一つといたしまして、できるだけ急速な増額をはかっていくように措置をして参りたいと思っております。
  58. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 文部大臣にお聞きしておきたいのですが、これはやはり画期的な何をやらないと、とても私は追っつかないのではないかと思うのです。先ほど吉江委員から大学施設等についてお話がありました。これも重要な問題です。私どもの聞くところによれば、一応大学という名前で言えるためには、今の施設は非常に老朽しておる。役に立たない。私の聞いておるところでは、大体六百億円くらいの金を投じなければ、ちょっと大学という名に値する施設はできないのではないかと、こういうふうに聞いておるわけなんですが、この問題は私はきょう質問をする趣旨でないから、これはおいておきますが、研究費は、これはもう大学にとって非常に重要な問題だと思うのですね。そうすれば、この問題について、毎年十億ずつふやしていくということは、非常にけっこうな話ですよ。しかし、私は飛躍的に、この戦前の例に見ても倍額——倍額にしたってだめですよ。しかし、一応そこに目標を置いてこれを達成できるように、文部大臣お考えになったらどうでしょうか。私諸外国の例も若干あとで引きますが、これはとてもけた違いですね。
  59. 松田竹千代

    ○国務大臣(松田竹千代君) 私も就任当時から、特に科学技術振興に対しては、どうしても基礎研究が一番大事である、そのためには教官研究費を大幅に増額しなければならぬということで、まず少なくとも二年くらいの間に一応検事並みの——これは俸給ですが、検事並みの俸給に持っていく。教官研究費に至っては、飛躍的に考えなければ、今日の社会の要請に基づく仕事ができないのではないか。また、多くの優秀なこの方面の学者が民間に引っぱられるということを食いとめることもできないのじゃないかということで強く要望してきたところでございますが、三十三年十億、三十四年十億、ことしは十一億と記憶いたしますが、これも辛うじてそういうことになったので、御説のように、これは口先きだけでなしに、あなたと全く同感の気持でございます。飛躍的にこれを進めることが日本の技術研究の水準を上げ、よってもって国民生活に通ずる産業全般の振興をはかることができるか、かように考えておるわけでございます。
  60. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そこで、講座研究費の問題については、ずっと前に文教委員会で相当問題になったことがあるわけなんですよ。それは文部省から支出している少ない講座研究費がなお文部省で天引きされている、それから大学本部で天引きされておる、教官のところに渡るのは半額しか渡らぬ、こういう実情が報告されておる。そこで私も若干その方面の調査をしたわけです。そうすると、やはり今日でも、これは東京大学理学部の内容ですがね、この資料は、これは衆議院の文教委員会の調査の資料ですが、それを見ると、やはり教官に渡る研究費というものは非常に少ないということですね。総額が少ないのに、また手に渡るのが少ない。この点は改善する必要があると思うのです。文教委員会でも改善するようにという申し合わせばいたしませんでしたが、そういう趣旨の報告が行なわれた。この問題については文部省に実態調査をするようにと、その当時講座研究費、教官研究費がどのように実際使われているのか、そういう実態調査をするようにという要望があり、文部省はよろしいという答弁をしているわけなんです。その後何らの報告もないわけですが、私はできればその実態調査の結果は報告してもらいたいと思います。特に私は若干質問したいのですが、科学技術庁のこの研究所の予算では、いわゆる管理費ですね、ガスとか水道とかの管理費と、純粋の研究費を分けておるのですよ。ほんとうに研究のために使う金はこれだけ、それからガスとか水道とか、いろいろそういうものに使う管理費というものがこれだけと分けている。文部省はそれが一本になって研究費、しかも私は東京大学の理学部の実態を見ると、管理費が半分以上こえているのですよ。修繕費までここから出しているのです。そうしたら、少ない研究費がほんとうに研究のために使われるということは非常にわずかな額になってくる。これはやはり研究の趣旨からいって、やはり研究のために多く使われるためには、予算の編成上研究費と管理費ときちっと区分して、そうして研究費がどれくらいあるかということを明確にしないと、研究費百五十万、こういっても、そのほとんどがガス代や水道代に取られておるような現状では私はいかぬと思いますね。だから、現に科学技術庁はそういう予算の立て方をしておるという点で、一つ見解を聞いておきたいと思います。
  61. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) この国立大学教官研究費文部省で天引きするということは絶対にございません。これは天引きしても文部省に使えるものがございませんので、文部省で天引きするということはないわけでございます。ただ大学本部におきまして、その一部を共通的な支出の関係で、共通経費のために天引きすることはあろうと思います。御承知のように、ことに実験関係教官研究費の研究の実態を申しますと、やはり電気、ガス、水道その他そういったものに使われる経費が非常に大きいわけでございます。これは各学部ごとに支払うというよりも、大学本部で一括支払いをする方がいいということから、研究の実態に即してそういった天引きをしておるわけでございまして、それ以外に特に大学本部が自分のために相当天引きをするということは私はなかろうと思っております。ただいまお話の中に修繕費等にも使っておるというお言葉がございましたが、これはやはり実験関係の器具、機械等の修繕関係のものが出ておるのではなかろうかと思います。お話の中にございましたように教官研究費につきましては、大学財政の実態調査等も従来いたしておりますし、その中で教官研究費等もいろいろな調査をやっておるわけでございますが、現在の立て方が特に悪いというふうに私どもは結論を持っておりません。科学技術庁の方でお立てになっている立て方として、管理費と純粋の研究費と分けておるというお言葉でございますが、そういったことも一つの確かに行き方だろうと思いますが、そういうことになりますれば、この教官研究費の中でいわゆる純粋の、たとえば図書費とか消耗的な経費だけを教官研究費にするということでございますが、はたしてそれが大学の実験あるいは臨床関係の研究の実態に即するのかどうか、それらのことについては疑問もございますので、さらに検討さしていただきたいと思います。
  62. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私もこういうふうにしたらいいという考えがあって言っているわけではないのであります。しかし、こういう立て方から研究費それ自身が非常に圧縮されてくるのじゃないかと、こういう心配をしているわけでありますから、まあ一つなお検討は現場の学者の皆さんからも意見を聞いて、そうして検討してもらいたいと思います。  なおこの機会に、教官研究費とともに科学研究費が出ておるわけですね。六十二億円に対して十八億円、この科学研究費というものも私は必要だと思うのです。いわゆる個人の研究に対して援助をするという、これは六十二億対十八億というのは大体バランスのとれた考え方じゃないかというふうに一応私は見ておるんですが、この点はどうでしょうか。
  63. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 御承知のように、科学研究費はまあ個人研究も一部入りますけれども、大体におきまして共同研究、それからまた機関研究というような規模の大きいものについて、国から直接研究機関なり研究者に助成をするという趣旨で、予算が計上されておるわけでございます。これにつきましても、もちろん各研究者あるいは研究所等からの要望を取りますと、非常に大幅の申請が出て参っておるわけでございますが、それに現実そのまま要望に沿っておるわけではございませんけれども、年々数億ずつ増加をいたしておりまして、明年度には二億の増加ということでございます。私ども教官研究費増額と並行して、この科学研究費のワクの増加をはかって参りたいと思っておりますが、現状においては、大体教官研究費と歩調を合わして伸びてきておるというふうに考えております。
  64. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 ですから、私は教官研究費は戦前並みにするために文部大臣に要望しておきたいのですが、今の倍額、六十二億が百二十四億、十八億が三十六億、こういう点で努力されることを要望しておきたいっと思います。  さらに、一つつけ加えたいのは、今度東大に応用化学教室が増築されるというように聞いておるのですが、これは間違いないですか。私もあまり時間をとるのはいかんですから、端折ってやりたいと思います。これは、私の聞いておるところでは、東大に応用化学教室が増築される。今度の予算に一億円組まれておる。そうでしょう。来年度予算で一億円。お忘れになっておればお話にならないが、来年度予算に一億組まれておるはずです。
  65. 福田繁

    政府委員福田繁君) ただいまのお話は、工学部の五号館の建物の工事のことだと思いますが、一応三十五年度に予定をいたしております。
  66. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この内容は、私から言うのはおかしいんですが、応用化学教室の建築三ヵ年計画ということになっておるわけです。私の問題にするのは、来年度一億円組まれておるわけですが、これは六億かかるわけですね。で、三億は一応国の予算でみたいということのようですが、あとの三億は大学で調達しろということなんです。私の聞いているのでは、最近大学の先生方が産業界を走り回ってあとの金を調達しておる、一生懸命になって。これはよくあることです。それは高等学校を建てる場合に敷地を出せとかね、地元で。それから設備をしろとかいろいろあるのですよ。私は原則として反対です、こういうことは。しかし、ある場合にはやむを得ない場合もあるかと思いますけれどもね。しかし、国立の、しかも東大でですよ、そこで教室を建てることに半分は大学の方で工面をしなければならぬということでは、私は大変だと思うんですがね。そういうことは間違っておりますか。そういうふうに聞いておりますがね。もし、そういうことであれば、東大でそういうことをやれば、もうどこの大学でもそういう例をずっと押しつけていくことになりはしないか。また、大学の教授にそんなことにあまり頭を使わしてはならぬと思うのですがね。その点はどうですか。
  67. 福田繁

    政府委員福田繁君) ただいまの工学部の建物につきましては、私の承知している範囲におきましては、むしろ学部の方がと申しますか、業界の関係者が非常に御熱意がございまして、むしろ積極的に寄付を推進するというような話になっておるようでございます。従って、工学部自体がそれに動きまして、できるだけまあ業界の寄付者の金も集めてそうして整備をしたい。それについては国の方も相当の整備をはかってもらいたい。こういうような、むしろ大学当局としては、寄付を強要するとか、あるいは進んで寄付を求めておるというようなものではなかろうと考えております。むしろ、業界の方々が、特殊な学科でございますので、そういう工学部整備に非常に一生懸命になっておる、こういうように伺っております。
  68. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私の聞いている占用も、強要という言葉を使っておりません。寄付を集めている。これは実情を調べて下さい。国立大学施設ですよ。進んで寄付をしたいということがそれはいかぬという、そういうことはないと思いますがね、けれども大学の教授が、教室を建てる金が国の予算にないから穴埋めに走り回る、こういう状態はよくない、こう言っているのですからね。一応私の聞いておる事情と違いますから、これは調査していただきたい。  これで質問を終わりますが、やはり私は、さっきも申したように、今日、日本の今後の発展は、何といっても教育、そうして科学の振興、これをおいてないと思うんですね。で、ここに若干の資料がありますが、いわゆる科学とかそういう研究のために出している各国のあれが出ておりますが、これは文部省も参加して作られた資料なんですから、よく御承知だと思いますが、ソ連では国民所得の三%に近い金をこれに出しておる。米国は最近非常に急速に上昇して、これもまた三%に近い予算を組んでおる。ソ連とか米国といえば、日本に比べてけたはずれの国民所得があると思うのです。その国においてこれだけの金を出している。それに続いてイギリスも二%。ところが、日本は〇・五%にすぎないということですね。まあ米国やソ連のことはおいても、西独に比べても西独の半分にも達しない、こういう状態です。もちろん日本の国力というふうな点からも考えなければなりませんがあまりに少ない。この資料は経済企画庁と文部省と共同して作られた資料、それに基づいて私は言っているわけなんですが、これではなんぼ自衛隊を、文部大臣に言う話でないかもしれませんが、これはなんぼ人数をふやしてみたって、だめですよ。何としてもその基礎がなけりゃならぬ。だから、この点は一番の担当大臣として文部大臣あるいは科学技術庁長官、こういうあたりは大いに協力して、手を携えてそういうことに努力する必要があるということを切言をして私の質問を終わりたいと思います。
  69. 原島宏治

    ○原島宏治君 私は、主として義務教育終了後の教育をどうするかという点について御意見を伺いたいんですが、ただいま荒木先生から高等学校の問題についていろいろと質疑がありましたが、私の方はその高等学校へ行けない、ことに全日制の高等学校へ行けないそうした生徒をいかにしていくか。教育の機会均等という立場からも、また社会の要請の上からいっても、今は高等学校はどうしても出なきゃならん時代になってきていると思うんですね。ところが、先ほど初中局長のおっしゃったように、昼間に行っている高等学校の生徒というのは四十何%、半数以上がそうした普通の高等学校へ行けない状態になっている。これをどうしていくか、根本的な考え方ですね、文部大臣にお伺いしたいのですが。
  70. 松田竹千代

    ○国務大臣(松田竹千代君) 今、その問題については、定時制の学校を大いに拡充し、また、通信教育、これにはマスコミの力も十分に利用して、この方面の定時制学校拡充を十分にはかっていくことが最も大切である。また、その他の社会教育機関をそれぞれ充実して、その必要がある義務教育を終えた青年期の者たちをできるだけ養成していきたい、かような考えでございます。
  71. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 大臣の御答弁を補足さしていただきたいと思います。定時制に学んでおりますのは現在三千校で五十四万人が定時制の教育を受けておるはずであります。通信教育は約七十校でございまして、ここに修学している者は六万、合わせて六十万ほどの者が定時制、通信教育教育を受けておるわけです。これを含めましても、先ほど申しましたように中学校の卒業生の五六%が修学しているという状況でございます。私どもはできるだけこの層の教育を普及し、将来義務制に持っていくように努力をいたしているわけでございます。特に現在考えております施策といたしまして、一つは技能者教育との連携でございます。最近は各工場、特に大企業では三年程度の技能者養成をやっております。ここで学んだ者を、少なくとも高等学校と同程度という認定のつくものは高等学校教育というふうにいたしまして、残っている分を定時制なり通信教育で単位を取りますれば、これでも十万程度のものは可能ではなかろうかと思っております。それからさらにいま一つは通信教育の面でございますが、現在の通信教育は府県を単位にいたしております。そこで通信教育は本質的にある意味で広域を予想されますので、日本全国どこへいっても郵便料金は同じでございますから、広域の通信教育制度を考えるべきじゃなかろうか。特に最近はラジオ、テレビ等も発達しておりますので、ラジオ、テレビを利用いたしまして通信教育の普及もはかっていきたい。現在六万でございますが、これは各県でやっておるのでございますが、今申しましたような広域のものを考え、ラジオやテレビを活用いたしますれば、さらに数十万のものが可能ではなかろうかと思うのでございます。それ以外に、実は高等学校には別科という制度がございまして、中学校を卒業してから一年ないし二年の別科というものがございまして、これに高等学校の単位を与えるように検討しておるわけでございます。この中には普通課程もございますけれども、職業課程が多いわけでございまして、工業課程、農業課程、商業課程、あるいは家庭婦人の場合の家庭科、こういうふうにそれぞれの課程を整備いたしまして、一年ないし二年で短期の技能教育を保護するような態勢にいたしまして、文部省でもこの産業教育振興法に基づきまして、こういう関係経費にも実は設置の奨励のために補助金を支出しているわけでございます。こういう層をできるだけ拡充いたしまして、先ほど申しましたようにこの層が何らかの意味において義務教育の後の課程を修学いたしまして、日本の国力の充実の根源にいたしたい。特にアメリカやイギリスあるいはドイツ等と比べてみて、一番私どもはこの点がおくれておると思っておりますので、今後の重要な施策の一つとして、この普及徹底に努力をして参りたいと考えております。
  72. 原島宏治

    ○原島宏治君 通信教育あるいは社会教育の問題はあとで触れることにいたしまして、今お話の定時制ですが、これは全日制へ行けない、主として経済的事情からくるものと思いますが、そういうわけで全日制へ行けないからやむを得ず定時制というものを設けて、そこでそうした子供は救っていこう、こういうのが考えの置きどころになっているのでございますか。
  73. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 全日制に通えないような子供も相当おります。全日制の学校増設することが一つの問題でございます。同時に、みんなが全日制に行けるような日本の経済的状況でもございませんので、定時制、通信教育をあわせてやりたいと思っております。
  74. 原島宏治

    ○原島宏治君 教育という面から見まして、働きつつ学び、学びつつ働くというのが理想じゃないかと思うのです。そういう見地から私は高等学校の定時制というものが設けられたのは、非常にけっこうなことだと思うのです。基本法にも勤労という問題は特に強くうたわれておりますので、大事なことでありますが、しかし、せっかく設けられている定時制というものが、まだまだ何といいましても不遇な立場に置かれている。その状態は、父兄あたりもとても高等学校へやれない、勉強したかったら夜学へでもいけといったような調子ですね。また定時制の者は、方々の職場で働いておりますが、働いているところの雇い主にも無理解の者がだいぶ多い。また文部省としてもこの面を重点的に考えた予算措置とは思えないわけです。それから子供も——生徒ですが、卑屈な気持で通っている。こういう状態でして、実際の教育現場を見ますというと、せっかく定時制というものを設けたにかかわらず、その成績が上がっていないように見えるのです。そうした面について今おっしゃった積極的な施策としてどういうふうに今後やっていかれるのですか。
  75. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 定時制がわが国教育体系の中に取り入れられ、その実施を見ましたのは昭和二十三年でございまして、当時全日制の高等学校には、国は何らの補助をいたしておりませんけれども、発足当時は、教員給与費について十分の四の補助金を出して参っておるわけでありますが、これが途中でシャウプ勧告によりましてその当時の平衡交付金に入ってしまった。今ではそれが交付税の中で算定されておる、こういう状況でございますが、できるだけ交付税の算定にあたりましては、定時制教育が十全に行なわれますように自治庁とも交渉し、最近約三割程度改善を見ているわけであります。それ以外に、お話のように大へん重要なことでございまして、イギリスでも西ドイツでも、雇用主に義務を課しているような状況でございますが、わが国はまだそこまでいっていない。そこで、できるだけこの施設改善のために、定時制のために実は六、七千万円の建物の経費も出ておるわけであります。それから設備につきましては、約一億の経費補助しておるわけであります。なお夜間の子供たちが事業場から通って空腹で困っておりますので、こういうために給食施設といたしましても一千数百万円程度のものが補助金として出ているわけでございます。いろいろと今日まで改善に努力をいたしましてことに来年度予算では、定時制、通信教育に従事する先生方にも七%の手当を支給しよう、こういうことで三分の一補助で一億七千万円を予算に計上しているわけでございます。御趣旨の点は大へんごもっともでございまして、何とかして私どもも一そうこの定時制、通信教育が普及充実するようにいろいろと改善を加えておるわけでございます。
  76. 原島宏治

    ○原島宏治君 先般文部省が学力テストをやりましたね、あれの成績、全日制とのあれはわかりましょうか。すぐわからなければけっこうですが。
  77. 杉江清

    政府委員杉江清君) 先般の学カテストの結果、一般におきましては、定時制は全日制に比して、かなり劣る学力が現われております。たとえば国語につきましては、全日制高校が全国平均六十二点を取っておりますのに、定時制高校は四十九点になっております。数字につきましては、これは全般に期待された成績を下回っておるようなわけでございますが、全日制高校におきましては三十一・九点になっておりますが、定時制高校におきましては十五・九点になっております。大体こういう状況でございます。
  78. 原島宏治

    ○原島宏治君 だいぶ学力テストにおいても低い標準を示しておりますが、全日制と比べて定時制の生徒というのは、これは労働関係から非常に過労になるようですね。最近の都の教育庁の調べによりますというと、現在健康だという生徒は、男が四三・五%、女が三三・五%、残りは医者の診察の結果病気だとか、疲労だというような自覚症状を訴えておる、こんな報告があります。これは確かに八時間労働後の四時間の勉学、途中もちろん往復の時間等も入れると、非常に過重なものになっております。こういう問題については、どういうふうに今後もやっていかれるか。
  79. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) お話のように、定時制に通っておる子供たちが大へん過重になっておるという点はもっともでございます。実はその点で、全日制に比べまして修業年限は一年延ばしております。普通ですと三年でございますが、定時制の場合は四年以上にいたしております。ですから、多少この点は就学が楽ではなかろうか。従って、一日の授業時数は全日制に比べますと少ないという状況でございます。その他、教育内容の面につきましても、体育の面についてはできるだけ単位数を少なくするとか、定時制の実情に合うようにいたしております。次に、先ほど申しましたように疲労して空腹のまま帰っていくようなことのないように、学校給食施設を設けまして、できるだけあたたかい取り扱いをいたしたいと考えておりまするが、いずれにいたしましても、いろいろと不十分な環境でございますので、学校における環境につきましては、今後さらに整備して完全なものにして参りたいと思います。
  80. 原島宏治

    ○原島宏治君 文部省が三十五年度予算にも、先ほどの通りいろいろ考えられておられるし、今のようなお話もございますが、どうも定時制というものは思い切った改革をしなければならぬように私は思います。最初に申し上げた通り、教育の本質というものが、単に精神と肉体とをはっきり分けられるものではございませんが、心の方の問題だけに主体を置くということは、これはまずい。筋肉という面の陶治もしなければならない。心身バランスのとれた人格を陶治しなければならないということが大事です。そういたしますと、私は定時制というものの制度は非常にいいものだ。むしろこれは将来の高等学校のあり方というものは定時制というものを主体にした教育に移行していくのがほんとうじゃないかと思います。学問の方面も青年時代を逸しては取り返しつかないのは当然ですが、いわゆる筋肉方面の訓練というものも、これは青少年時代が最も大事なときである。そうしたときに勤労の精神というものも養われる、そうした心とからだの両面の均衡がとれていってこそ、ほんとうにすべてに役立つ人間ができる、こういうのが教育一般の常識じゃないか。そうした面からいいますと、定時制というものに対して最初の考えの、食べられないから行くといったような考えを一切捨て、勤労を一つ学ぶことが本当のあり方だという考え方にまず文部省あたりのあなた方の頭を切り変えていただき、また、社会一般の人もそしうた気持になる、家庭あるいは本人も、そうした尊い自分は立場に立って勉強しているのだし、働いているのだというような方向に持っていくべきである。それについて、やはり八時間という青年層が労働する時間を働いてその後勉強というのじゃだめで、八時間労働内に勉強させる、半分。まあ、いわゆるこれは半日学校制と言われておりますが、半日を学ぶ、あるいは逆に半日を学んで半日を働かせるという形になるのもあると思うのですが、そうしますというと、学校なんかも二部制を場合によっては三部制にも使える。いわゆる試験地獄なんという問題、それから先ほどから問題の教室の問題なんかも非常に緩和されるし、それよりも根本的に大切なのは、先ほど言ったように勤労の精神を養う、心身両全の人格がここに陶治できるというよい面がある。これはもちろん今までの方式によってすぐどうということはできませんし、各方面の理解や協力なしにはできないことでありますが、これは文部省としてそういう方向へ今後いく考えがないのかあるのか、その御決意を聞きたいのですが、文部大臣としていかがお考えでしょうか。
  81. 松田竹千代

    ○国務大臣(松田竹千代君) 御指摘の通り、私はやはりあなたと感を同じゅうするものでありまして、働きながら学ぶ、つまり働きの中に、勤労というものに非常な教育的な価値がある。勤労を通じてほんとうに人間として学ぶべき事柄を学び得るのじゃないか、同時にまた学びながら勤労、職場における状態を改善していくというようなことについても考えられるので、勤労と学びの一致ということがまさに私は理想的なものだとも考えておるわけであります。しかし、今おっしゃいますように、八時間の労働を終えて、さらに夜間を通じて勉強するということは、どうしてもオーバー・ワークになるきらいは免れない。これに対して半日制、あるいはその勤労の時間を縮めるようにしてやるということは、一つの非常ないい考え方であると思います。これを実行するのにはよほど検討を要することと思いまするけれども、ものの考え方としては私は非常にけっこうなことだと思うわけであります。いずれにいたしましても、最も大事な義務教育を終えてからのハイティーンの期間、心身の健全をはかりつつ学ぶべきものを学んでいくというような制度については、私は非常にけっこうな考え方であると思います。
  82. 東隆

    主査東隆君) 原島君、ちょっと関連して聞きたいと思うのですがいいですか。……はなはだ勝手ですけれども、今の文部大臣のお答えに関連して、勤労と勉強とをかね合わせるという問題ですが。英国なんかの協同組合等を見ますと、高等学校程度学校を卒業した者が一度協同組合の実務に携わって、それから大学に入る、そういうものがほとんど中心的な人物になっておるのですね。そして非常に成績を上げておるのです。ところが、日本の場合にはどういうことになっているかというと、高等学校を出て大学に入る、しかもアルバイトをやって、そしてその勉強はうまくいかない、こういうのも相当あるわけです。私はこの際相当考えて、今言ったような高等学校を出て実務につく、そして実務を通して経験をしたことを今度は大学でもう少し系統的に勉強する、こういう形のものがあってしかるべきじゃないか、それには今の入学試験制度だろうが何だろうが、相当変えて、そういうような条件を備えた者を有利に扱うような方法を講ずれば私はできると思うのだ。そういうような道を開かなければ、今の働きながら学資をかせいで、そして学校はこれも百パーセントにはやれない、こういうものをこしらえていっても、これは私は非常にまずいものになるのじゃないか。やっぱりりっぱなものを仕上げていくのには、学んである程度経験を持ち、そしてまた大学で学べ、それを系統を立てていく、こういうような形が、これがほんとうのような気がするのですが、そういうことが今の制度ではなかなかできませんが、この点お考えございませんか。何とかいい解決の方法をお考えになったことはございませんか。
  83. 松田竹千代

    ○国務大臣(松田竹千代君) 制度としてそういうふうに持っていったらばどうかというところまではまだ考えておりません。しかしこれは一例でございますが、私の身近かな例でありまするけれども、職工学校を、今の高等学校でありますが、職工学校を出てある会社に奉職し、非常に優秀であったとみえて喜ばれておったのでありますが、しかし、家賃にしてその職工学校を出て受ける俸給だけでは一家を支えるによしなしという状態で、惜しまれながら職を辞して村へ帰って漁師を三年やって一家を支え、弟も高等学校へやる、百姓片手に漁師をやって一家を支えてきた。それからまた志を立てて東京へ出てきて、やはりアルバイトをやって昨年早稲田を出たのでありますが、その男はまあ特殊の例でもありましようけれども、ものに対する考え方、世間に対する考え方、自分が若くして三年一家を支えることのために、自分の学業を一時捨てて、向学心を押さえて、それに従事してやったというその経験がものを言うて、私は必ずやこれは将来有為の人物になるということを考えておりますが、そういう点から申しまするというと、若い期間に一時実務について、そして実務を通じて習得したその心がまえと申しますか、そういうものを持って、さらに高等の学問を研究するということが非常に私はよいことと思います。
  84. 原島宏治

    ○原島宏治君 私の申し上げておりますのは、いわゆる半日学校制度でございますが、これは高等学校に限らず、小学校から大学までそうした制度をとるのが本当じゃないか、それで学校というのは、細く長く義務として、あるいは準義務として、それで全部がそうした教育を受けられるようにというのが教育の機会均等という精神にも合っているのではないか、しかもこれを実施することによって、いわゆる不良青少年というものの救済の多くができるのじゃないか。不良青少年なんというものは、もちろんいろいろの原因によってなるのでありますけれども、どうもいろいろの調査の結果を見ますと、勤労という精神が植えつけられていない、そうしたことから惰弱な精神に陥り、誘惑に負けるような子供から多く出てきているというふうに承知しておりますが、そうした青少年の不良化防止にも非常に役立つ、また本当の教育という立場からいってぜひそういうふうにありたい、文部大臣も趣旨には御賛成のようでございますが、もちろん教育技術の改良等も伴っていかなければならぬし、各方面の理解と協力もなければならぬことでありますが、その点は十分検討していただきたいと、こう思うのです。  先ほど初中局長の話の中に、高等学校に行かれない子供の教育の一つとして通信教育の話がありましたが、実情の概略をお話願いたいのですが、実情といいましても、現在どのくらい学んでおって、今まで卒業生がどのくらいおりましたか、お願いいたします。
  85. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 通信教育は今のところ府県に一校ないし二校の学校が、これは都道府県立でございますが、全日制の高等学校に併置させてやっておるのでございます。そこに学んでおります者は総数約六万人でございます。通信教育だけで卒業できるようになっておりますが、だんだんと改善して参りましたので、正確に卒業生が何人出たかというお尋ねでございますが、そうたくさんはまだ出ていないのでございます。おそらく千人くらいではなかろうかと記憶しておりますが、初めは全教科を通信教育だけで卒業するという態勢になかったのを、だんだん改善いたしまして、ようやく通信教育だけで普通課程は卒業ができるようにいたしました。なお職業課程の方は、これはなかなか通信教育だけでは困難でございますので、実験、実習を伴いますので、これにつきましてもだんだん改善いたしまして、できるものから通信教育だけで卒業のできるようにいたしたわけでございます。まだ卒業生がたくさん出ておるという段階ではございません。
  86. 原島宏治

    ○原島宏治君 この通信教育というのは大へんなことだと私は思うのですね。期間も五ヵ年でしょう。長い期間をほとんど励まし合う友達もなく、教師にも直接には触れずに勉強していくというのは、これはなかなか大へんで、こうしたことに関係のある先生のお話も聞いてみましたが、百人入学したうちの三、四人しか卒業しない。これは詳しい調べじゃございませんがね。とても五ヵ年間というものを通信教育によってやり通せるもんじゃないというようなことを聞きましたのですが、文部省として非常に通信教育には力を入れておられるし、今後の施策も考えておられるようでありますが、私はこの通信教育というものは、現在の国情、経済的面からやむを得ない一時的の方策としてやる、あるいは高等学校の補習的な意味で通信教育というものはやられたらけっこうと思うんですが、全日制に出られないその者が定時制、定時制にも行けない者は通信教育と、その通信教育高等学校の教科というものを習わしていくということは、これは無理じゃないか。どうしてもこの教育というものはやはり先生と生徒の触れ合い、あるいは仲間同士の研さん、励まし合いというようなことが、これが基礎にならなければいけないので、学問方面だけでしたら、これは通信教授というものも意味はあるかと思うのですが、少なくとも教育として高等学校と同じ程度のものを得させようという意味からいいますと、考え方において間違いがあるのじゃないか。やはり教育には教育する場所自体が社会を形成しているので、その社会性というものを強く打ち出していくことが教育上重大なことじゃないかと思うのですね。ただ学問という面でしたら、テレビでもラジオでも新聞でもいいかと思うんですが、教育という立場に立ったときには、どうしても先生と生徒、その生徒の仲間、こうしたものの社会活動の中から学び取られていくところに大事なものが存在しているのじゃないか。そうしてみますれば、先ほど言った補習的の意味でこうした機関を設けていくことはいいけれども、できるだけそうした事情にある子供を定時制に吸収していく、そこに考えを置いていただきたい。そういう学校にも行けない者には通信教育でなくて、学校に行けるような状態にしてやる。そのためには、学校は先ほど言った金のかかる一日勉強していなければならぬというわけじゃなくて、働きつつ学ぶという半日学校の制度というものができれば、そうした人たちも大部分が吸収されるし、また全然通信教育も受けないような生徒もそこに行きやすくなるのじゃないか。ぜひこの面は文部省として研究していただきたいと思うんです。  それから関連していろいろありますが、時間の関係上、大学教育について根底に横たわる問題を一つだけお聞きしたいのだが、文部大臣は文科系は私立大学でというようなことをおっしゃられたと聞いておりますが、私はこれは大へんいい着想じゃないかと思う。どういう考えでそうしたことが言われたかは私はよく存じませんが、時代の流れから見まして、大学教育などはもう民間に移してもいい時代が来ているのじゃないか。国家が保護政策をとらない昔の時代はともかくとして、もう現に私立学校もどんどんやっている状態でありますので、だんだんとそうした私学の方面に大学教育というものは移行していく、こういう考え方をとるべきじゃないかと思うのですが、一つ文部大臣のお考えを伺いたい。
  87. 松田竹千代

    ○国務大臣(松田竹千代君) 私は、今日大学学生徒数が激増し、わが国の青年子女の向学心の強いのに十分こたえることのできない現在の国立並びに私立の学校の状態を見て、やはりこれからは、今でも大きな教育部門私立大学において担当しておるという状況から考えて、国立大学にももちろん長所あり、私立の大学にも短所もありまするけれども、将来私立大学に漸次移行していくようなことが望ましいのではないか。もちろん現在の状況としては、科学技術、理科系統の方ではやはり国立に現在は依存して、十分なる設備、研究をもって有能な人材をこしらえていくということは、現在としてはやむを得ないが、その他の面においては私立大学を大いに振興して、それに国家の補助を、あるいは融資を多額に回すことによって、それは一面においては大学入学難を緩和することにもなるのではないかというような考え方から発言したことがあるのでありますが、それには非常に私の予想外の反響を呼んだようでありまするが、ということは、同時に多くの人々もそういうことを考えておったのではないかというふうにもとられる。従って、この問題についてはなお賛否両論が非常にありまして、深く検討を要する問題と思っておる次第でございます。
  88. 原島宏治

    ○原島宏治君 だんだん父兄においても金がかかるかかからないよりも、学校のよしあし、そこの学校の能率というようなことを気にする時代になってきて、すぐれた私立学校を選ぼうという空気もあるのですが、何分にも一般から見ますと、私立学校は金がかかりますし、行きたくても行けない、官立はごく限られておりますので非常に競争率が多いというようなことで、大学を志しても思うような学校の選定ができないというのが現状であります。まあすでに私立大学学生の七割を収容しておるのでありますから、できるだけ物質面の援助は国でやりまして、内容方面は学校の創意工夫にまかして、よい私立学校というものがどんどんできるように、もちろんこれを放任していいかげんな学校ができることは望ましくないことでありますが、文部省において監督して、りっぱな私立学校というものを育て上げるようにする、と同時に大学の官営は徐々に民営に移していくという方向を私はとっていただきたい、こう思うわけです。  それから、最後に、教育問題というのは、先ほど荒木先生からもお話しされた通り、非常に大事なもので、国の存立に関する問題でありますし、あらゆる活動の基礎になるものでありますので、十分文部大臣としても心してはおられると思いますが、重大な教育事業というものをどんどん遂行していく機関ですがね、その最高機関を一つ作る。今文部省がそれに当たっているわけではありますが、どうしても文部省という役所は、既定の法規に照らしていろいろの運営をやっていくということに忙殺されるわけでありますが、そうしたものにとらわれない、まあいわば教育対策本部、これはかりの名ですが、何物にも左右されないで、現状に即して教育を打ち立てるというよりも、今後の国のあり方をどうするか、それを教育によって変えていけないかと、そうした面に頭を置いた企画立案というものをする機関ですね、教育対策本部、そうしたものを作ってはどうか、これはどうお考えでしょうか、文部大臣として。
  89. 松田竹千代

    ○国務大臣(松田竹千代君) 教育の根本的な重大問題を将来をはかって決定するというような教育対策本部というようなものをこしらえたらいいではないかということで、文部省は文教全般をあずかっておるということになっておるが、文部省だけではやや弱体である、いかなる勢力にも拘束されることなくやれるようなものがほしいというお考えのようでございまするが、教育という重大な問題を、しかも将来にわたって教育は国の大本である、従ってもっと強固な大きな構想で教育のことを考えるようなところがほしいではないかという考え方、まことにけっこうであると思いますが、今そういう考えを持っているかといえば、持っておるわけではないわけであります。
  90. 原島宏治

    ○原島宏治君 教育万般にわたって系統的に、また恒久的な計画を立てる対策本部ですね。先ほどからの話も聞きましたが、たとえばベビー・ブーム、そうしたものも、三年、四年あるいは五年後のことについてもすぐどうすることはできないと、非常に困難な問題が横たわっておるということになるし、また、社会情勢の変化に引ずられながら教育政策を打ち立てるというのは、これは後手じゃないかと、こう思うんです。進んで社会情勢を最も望ましい方向に持っていくということで、憲法でうたわれておる平和国家を打ち立てる最も大事な問題が教育にあると教育基本法にもうたわれておりますけれども、そうした意味から言いましても、私は国家の最も基本的な重大な教育事業というものに対しては、このくらいの最高機関を設けて今後やっていかなければ、ほんとうの教育政策の進歩はないのではないか、こういうふうに考えております。どうか一つそうした面に今後十分お考えを願いたい。  以上、希望いたしまして、終わりといたします。
  91. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、教育費の税外負担の問題ですね、ただいま教育重要性については各委員からお話がありましたが、最近の教育費の税外負担の増加、これは著しいものがあると思うんですね。これはもう軽々に看過できないものがあると思います。で、私は、単に義務教育だけでなく、義務教育以上高校、大学も含めて問題にしてみたいと思います。政府は多少減税なんかやったって、教育費がかさんでくれば全く意味がない。この間も新聞の社会面に出ていましたが、ある高校に入学するのに入学金を子供が三万円持って行く、それを落としたか取らたかれしまして、子供が家へ帰って来ないというので非常にびっくりしていろいろ探して、ようやくあの学校の先生が入学金を納めないでも特別な計らいをしたので無事入学できて喜んだという新聞記事を見ましたが、お父さんと子供がいてですね。で、私は、そこで予算委員会に配付されました資料に基づいて御質問したいと思います。これは文部省からお出しになったのじゃないかと思うんですが、「過去三カ年間におけるPTA等の学校経費負担状況(小・中学校)」、これを見ますと、昭和三十一年から三十三年までが出ておりますが、三十三年を例にとりますと、公費支出金が三千百十一億、それに対して百三十二億がPTA等の支出分。その比率が四・二%になっていますが、これはどういう計算でこういうPTA等支出金というのをお出しになったか、どうもこれは少な過ぎるのじゃないか。「PTA等」とありますから、その「等」にどういうものが入るのかわかりませんが、教育費といいましても、学校教育費と家庭教育費とありますが、学校教育費だけについても、学校教育費は、普通、教科書、学用品、通学用品、そういう直接の支出と、給食費、学級費、PTA会費と間接のそういうものがあるわけです。そういう直接、間接費があるわけですが、このPTA等支出金というのはどういう項目を含んでおるのか、私はこれは少な過ぎるのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  92. 杉江清

    政府委員杉江清君) 文部省で行なっております父兄負担の教育費につきましては、これはかなり広くその範囲を考えておりまして、教科書とか参考書類、鉛筆、クレヨン、カバン等のかなり直接的な経費、それからまた、父兄から学校に納めます経費、たとえば給食代金とか、学級費、旅行費とか運動会などの経費、PTAの経費とか、そういうものも含んでおりますし、それからまた、家庭教師を雇うよりな場合の経費、塾へ通わせる場合の月謝、それから家庭学習専用の机、いす、参考書、こういうようなものも一心含めてその実態を見ております。その内訳等については、かなり詳しく実態をつかんでおるつもりでございます。
  93. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうすると、このいただいた資料のPTA等支出金というのは、今お話のあったような項を含んでいるわけですね。
  94. 杉江清

    政府委員杉江清君) どのような資料がお手元に渡っているか、私ちょっとはっきりいたしませんけれども小学校では年間一人当たり一万二千五百八十二円、三十三年ですね、それから中学校では年間負担教育費が一万二千六百十四円、こういう数字を示しておりますが、これは先ほど申し上げましたような費用の全額を指しているわけでございます。
  95. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、その総額はどうなんですか。総額です。
  96. 杉江清

    政府委員杉江清君) その経費の総額負担ですか。
  97. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうです、父兄の負担。
  98. 杉江清

    政府委員杉江清君) 今資料がちょっと見当たりませんからあとで。
  99. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ええあとで。  憲法二十六条で言う義務教育の公費無償の原則、この中には義務教育というのはどの程度のものまでを含めて考えられておるのですか。
  100. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) まあ憲法上は明確になっておりませんが、学校教育については教育基本法で授業料は徴収しない、こう書いておりますので、今の法律体系から申しますと、授業料を徴収しないということが最小限度の要請ではなかろうか。もちろん憲法の趣旨には、そういうその他教科書とか給食とかいろんな経費も含めて、理想としては考えられていると思うのでございます。
  101. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういう何かその確定した固定した考え方というのはないわけなんですね、今までのところね。しかし少なくとも義務教育ですよ、義務教育については、ただ授業料を納めなくてもいいというだけではそれは教育の機会均等にはならないでしょう。ですからやはりさっき言われました給食とかあるいは教科書代とか等々は、やはり含めるべきじゃないかと思う。それでこれはまあ地方財政とも関係してくるわけですけれども、寄付金とかその他の税外負担が——あとでまあ数字を伺いますが、あるわけです。ですから、まあその範囲というのはどの程度ということは一応持っておられないのはどうもおかしいのですね。そのときの財政状態の都合によって、便宜主義によって最低授業料だけでいいということになれば、それは財政の状態いかんによってはですよ、そこまで切り下げられるかもしれませんしね。
  102. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) まあ憲法の理想とするところは、私どもは教科書から学用品から通学用品に至るまで、ともかく国なり地方公共団体なりで見るというのが理想ではなかろうかと思っておりますが、現在のところ教科書や給食、あるいは修学旅行費あるいは子供たちの治療費、こういうようなものは生活保護で見ているほかに、それに準ずる程度の貧困家庭につきましては、国と地方公共団体でめんどうを見ておるわけであります。そこで、今問題の点は授業料は徴収しないということで学校経費がそれでは公費で十分まかなわれているかどうかといいますと、先ほど来この数字が問題になりましたけれども、百三十何億かが当然公費で支払うべきもの、すなわち教員給与費の一部のようなもの、特に給食に従事する職員のものとか、あるいは教職員の旅費のごときものが払われておる。あるいは建物の維持管理に要する費用として光熱水料、あるいは修繕費とか、それから建物の経費も一部含まれるのでございまして、建物に対する経費もPTAその他の寄付によってまかなわれておる。こういうような状況でございまして、この分は当然私どもは公費で負担すべき原則の経費だと考えております。そこでまあPTAから寄付しておるもの、それからその他の後援会等の名称によるものがもちろんございまして、百三十数億のうち当然公費でまかなうべき経費はこれは公費に振りかえるのが原則でございます。これは国の方ではできるだけ教材費やあるいは理科の設備費、その他技術、家庭科の経費等、国の方で負担すべきものはできるだけ国庫負担を増額していくのが一つの道でございます。  今一つは地方財政の中でこの経費をいかに解消するかということが問題だと思うのであります。そこで私どもは三カ年計画を立てまして、本年度は自治庁と交渉いたしまして、約三十二億円ほどの経費を税外負担から解消しよう、こういうことに話がまとまっておるわけでございまして、そのおもなる経費は給食に従事する職員の給与費のようなものをPTAから払っておる、これは解消したい。こういう経費が約十二億ございます。それから光熱水料、修繕費、こういうようなものも当然公費でまかなうべき経費、これが十五、六億、合わせまして大体三十四億くらいのところでございますが、これだけは今年度解消しよう。特に人件費に類するような経費と維持管理に要する経費につきましては、これはPTAに転嫁してはならぬ、こういうふうに今自治庁と協議をしておりまして、そういう政令を自治庁で用意していただいておりますので、税外負担をPTA等にかけないで、公費で支弁する原則を確立するよう、その方向にすみやかに努力いたしまして、公費支弁の原則を確立したい。かように考えておるわけであります。
  103. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今度三十五年度が初めてですか、この税外負担を地方財政解消予算を計上されることは。
  104. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 三十五年が初めてではございません。今までも毎年地方、特に市町村の教育費が不足しておりますので、この点について自治庁と毎年交渉いたしまして、数十億ずつ増額をして参ったわけです。しかし、いかに増額いたしましても、学校へ行きますと、町村財政が苦しいので、まあPTAでまかなってもらえというようなことで、おおむね切られておるというような状況でございますし、また学校経費としてもできるだけが多い方がよろしいのでございますので、市町村の教育費をふやしましても、現実にPTAの経費が減らないという実盾があります。で、各県によりましては、できるだけPTA等の寄付を半減するなり漸減する方向で公費で負担をしてあるわけでございます。ところが御指摘のように実績が上がりませんので、自治庁と協議いたしまして、先ほど申しましたように、政令によって特殊な経費についてはPTAに転嫁しないという方向を打ち出すべく今検討しておるところであります。
  105. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今の地方財政における税外負担の解消に積極的に努力をされたということは、これは非常にわれわれも賛成ですし、ぜひもっと積極的に努力されたいと思うのですが、このいただいた資料の中のPTA等支出金というのは、これは父兄の税金以外の教育負担を全部網羅したものではなく、主としてPTAの負担を集計したものじゃないでしょうか。もっと私は百三十二億というよりこの十倍くらいあるのじゃないかと思うのです。千億近い負担があると思うのですが、どうですか。
  106. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) それは大へん過大な見積もりでございまして、教員給与費が大体二千億こえておる程度でございます。これは、小、中学校。そこで今一番PTA等の税外負担は、大きなものは教職員の旅費のようなもの、これが六億くらい出ておるのでございます。それから給食従事員の手当、これが六、七億出ております。こういう経費が人件費に類するものでございまして、光熱水料の関係で約四億くらい、それから修繕費が案外出ておりまして、約十億くらい修繕費に出しておるわけでございます。それから土地、建物等のものや、あるいは学校の備品等で、これが三十七、八億出ております。ですから、PTAの寄付で一番私どもが今度解消したいといいますのは、人件費に類するものと維持管理費に関するもの、それから土地、建物の分がある程度ございまして、それと設備関係でございます。土地、建物につきましては——建物につきましては、文部省でも毎年相当大幅な増額をいたしておるわけでありますので、だんだん寄付金にたよる率は少なくなろうと思いますが、設備費に関するものはまだこれが解消いたしておりません。国の方で教材費として約十八億程度予算を組んでおりますけれども、これは半額でございます。なおPTA等の御協力を仰いでおる分がありますが、これはなかなか一挙に解消できませんが、国の負担をできるだけふやすことによって漸減させる方向に持っていきたいと考えております。
  107. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は憲法第二十六条の無償の原則を、少なくとも義務教育に関してでありますが、文部省は何か非常に狭く、なるべく教育予算がふえないように解釈しようとしているのではないかと思うのですが、とかく少なくとも今までの、たとえばPTAが負担しているくらいのものは、これはもうやはり国が全部見るのがほんとうじゃないかと思うのですが、その程度まではやはり無償という原則に立つべきだと、こういうようにお考えじゃないのですか。
  108. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) まことにごもっともでございまして、PTA等が負担しておるものくらいは最小限これは解消したいと思いまして、これは三カ年計画くらいで解消する方針で自治庁、大蔵省とも交渉しておるわけでございます。
  109. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから義務教育以外に、先ほど大学のお話もありましたが、文部大臣は私立学校私立大学についての拡充についてのお話がありましたが、とにかく最近入学金なり授業料がもう続いて値上がりでしょう、ものすごいですよ。文部大臣御存じでしょう。私新聞で見たのですが、これでは普通のサラリーマンの家庭では、子供をちょっと大学に入れられませんね。たとえば早稲田の文科系ですね、昨年三万円が今度三万六千円になるのですね。それから早大の理工系が三万七千円が五万円になる。授業料です。それから明大の文科系が二万三千円が三万円になる。まあ軒並みこういう状態ですね。医科なんかはこれはものすごく高いようですね。これではなかなかサラリーマンの子供を大学に入れるというのは、これは容易なことじゃない。ですから、みんななるべく授業料の安い官立の方に殺到するわけです。これは大学だけでなく、高校だってやはりそうだと思うのですね。私立の方に行けといいますけれども、実際私立の方は経済問題からして非常な負担がかさみますから、そこでどうしても公立とか国立とか、そういう方に殺到するわけです。やはり経済の負担、教育費の負担関係があるのですよね。そこで必要以上にものすごい競争率になり、非常なまた学生もひどい勉強をしなければならぬと、そういうことになる。何とかこういう状態は手を打たれる必要があるのじゃないかと思うのです。こんなにものすごく授業料が上がると——これはあとの奨学金の問題についてもお伺いしたいのですけれども、それで大学生のアルバイトを、文部省の外郭団体と思うのですが、九段に職業を紹介しているところがあります。そこに頼まれて話をしに行ったことがあるのです。こういう[悲劇が起こっているのですね。そこの職員の人が待遇が低いので、職業をあっせんする職員ですが、待遇が低いので、ストライキをやるという話が出たのです。ところがそにこ泊まっている学生がその職員にストライキをやられたのでは、アルバイトをあっせんしてもらえなくなるのですね。それは切実な深刻な問題です、学生諸君にとっては。そこでその職員は待遇が非常に低いので、労働も過重である、しかしどうしても引き上げてもらいたい、そこで学生諸君から聞いたのですけれども、非常に矛盾を感ずるわけですね。学生諸君はその職員の人の非常な薄給なこと、待遇の改善には同情をするが、ストライキやられたのでは自分のアルバイトがなくなる。今大学生の半分以上はアルバイトをやっておりますね。ですから病気が非常に多いのです。病気にかかる方が多い。そういう状態なんですよ。それで福祉国家の建設とか、文化国家の建設なんて言えたものじゃないと思うのですよ。文部大臣は大学生の最近アルバイトをしている実情を一つごらんになったらどうですか。それは惨たんたるものですよ。ですから、全学連の諸君がどうのこうのといいますけれども、ああいう状態になる社会的背景というものがあるのですよ。実際にもう生活の問題ですから、いわゆる非常に深刻な悩みを持っております。この点どうなんですかね、一つ文部大臣にお伺いしたいのですが、これは今までの惰性的な考えじゃだめなんじゃないですか。思い切った着想で、これは松田文部大臣はそういう大英断を下す腹がまえがおありじゃないかと思うのですが、僕はこの点文部大臣に期待していいのではないかと思うのですが、実情を一つ調べていただいて、何かやはり手を打っていただかなければならないと思いますが、いかがでしょうか。
  110. 松田竹千代

    ○国務大臣(松田竹千代君) 父兄負担の問題、憲法にうたっておる義務教育は無償とするという建前からいきますならば、少なくとも義務教育の問題についてはお話のようにできる限り狭い考えでなしに、公費をもってこれをまかなっていきたいということには、むろんわれわれもその方針でやらなければならぬと思うのであります。また大学ではお話の通り、私も実情を調べ、また周囲に何人もアルバイトをやっておる学生もおりますし、実情もよく知っております。これがソ連とか中共とかいう国柄でありますならば、義務教育のみならず、高等学校大学まで一切のものを無償とし、また生活費までこれを持ってやるということになつおる。そのかわり、また国家の要請するところへ皆職をつかせていくというような形になっておる。そういう今日本の国柄でないのでありますので、いろいろ困難な事情があって、そのために貧しい者の家庭では、あるいはサラリーマン程度にしてもとうてい大学へ子弟を、自分が受けただけの教育も受けられないというような実情にあるということもよくわかっております。また今御指摘になりましたような、いろいろのむしろ芳しくない入学に要する金のようなことについても、何とかこれは考えなければならぬ。しかしそういう点においても、私学において一番多く金を要するのはやはり施設の面でございますが、私ども外国から帰ってきた数十年前の当時の私学の状態と今日の状態とは非常に違っておって、みなあれが大学かと言われたものも、今日は一応りっぱな大学として成り立ってきておる。その間において大学の当局はいろいろの学校運営に方策を講じてやってきたのでありまするが、国家が相当の利子補給などをやるような場合には、ある程度のそうした低利の金を大学が使うことができるならば、相当多額の金を施設の面に持っていけるのではないかというふうな考え方もできると思うのであります。そういうようなことも考え、そして一面においては施設増加することによって、そうしてその金を低利の金でもって私学はその施設拡充するということができるならば、その点学校運営の面に非常に緩和する面も出てくるのではないか、かように思うわけであります。しかしこれはソ連のような国は別として、アメリカのような富裕な国でも、あなたも御承知の通り、大学のプロフェッサーなどの給与も非常に低い、研究費も必ずしも、それは日本とは格段の相違がありますが、足りない。そのために一昨年でありまするか、アメリカの財団が寄って、十五億ドルの金を集めて、そうして大学の教官の俸給その他研究費に充てたということもありますような状態であります。しかもまた一面においては、アメリカでは州立の学校、いわゆる日本国立に相当する州立の学校であるとか、あるいは私学であるとかいうものの間に資格等の点において差異はないのですね。むしろ古い私学の方が優位に考えられておる場合があるが、わが国においては依然として何と申しますか、事大思想と申しますか、とにかく資格を、何々学校の卒業生であるならば就職も楽であれば、嫁をもらうのも楽だというようなことも依然としてまだ残っているということがありまして、それらのことはなかなかむずかしい。しかし、アメリカなどの国では長い伝統において民法は、日本も戦後民法改正後はよほど変わりましたと思いますが、富裕階級が死んだ場合は、財産を学校とか教会とか、社会事業とかというところへ二五%なり三〇%なりを出すというような風習もあって、そういう結果大学などに何々さんのホールができた、何何のライブラリーができた、何々研究所ができたというようなわけで、やはり民間の父兄の負担において、これらの大学施設なり学校のいろいろな施設拡充され、整備されていっておるという実情は今日なお続いておる。だから私は義務教育においてできるだけその公費をもってまかなっていかなければならないという趣旨は、憲法の条章があるなしにかかわらず、やはりそうすべきである。かように考えまするけれども、しかし負担し得る人々はこれを負担してもらうことは、一面においては、税の不公平を緩和するという面においても私はいいことのように考えており、そういう施設も一応は父兄の負担になっており、施設の面などにおいても、これは自発的にむしろ父兄の方で強く要望して、陳情して、これこれの金も集まっておるので、これらをこしらえるという場合には、しばしば陳情をいたしておるのでありますが、そういうこともあるのでありますから、現在の状況においては、こういうことも必ずしもそう非難すべき事柄でないように思う。むろん負担できない養護児童の父兄であるとか、あるいはそういう家庭の保護者については、これはそういう負担をかけることは一切やらないというようなふうにいかなければならない、かように考えます。
  111. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 次に、奨学金の問題について伺いたいのですが、よそに比べて非常に奨学金が、在学者に対する奨学金支給者の割合が少ないと言われておる。また金額も非常に少ないのじゃないかと思うが、これはさっき言ったアルバイト学生がずいぶんおるし、また健康上にも非常によくないように思われるのです。その点で奨学金の問題についてもっとふやされる考えはないか、非常に少な過ぎると思う。
  112. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 奨学金につきましては、御承知のように、日本育英会の方で国庫支出を通じ、また高等学校以上の生徒学生に対しまして、育英資金の貸与をやっておるわけでございます。現状を申し上げますと、高等学校におきましては、大体採用率は三%、貸与の金額は月千円というふうにいたしております。また大学につきまして、一般の学部の学生に対しましては、大体申請者の二割程度のものを採用いたしておりまして、貸与の単価は月三千円、それから学芸学部及び教育学部に在学して将来先生になるという教育学生につきましては、大体四割を採用いたしております。月額の方は一般学生と大体同じでございます。なお大学院の学生に対しましては月六千円、それから昨年度から実施をいたしました高等学校から大学へ行くことの予約されております特別奨学生につきましては、これは他の高等学校一般学生に比べまして高い月三千円の金額を貸与いたしております。全体の予算といたしましても、昨年度に比べて三十五年度におきましては約二億程度増加を見込んでおりますが、ただいまお尋ねのように、御指摘のございましたように私どももなお現在の採用率はきわめて低いというふうに考えて、年々大蔵省予算の折衝をいたします場合には、この採用率を一つ上げてもらいたいということを要求いたしております。今後もこの採用率の引き上げにつきましては、やはり何とか手を打って参りたいと思っております。  なお、金額につきましては、これはいろいろ実は申請者の中にも段階がございますので、段階に応じてできるだけ引き上げていきたい。ことに、たとえば大学院の奨学生とか、あるいは特別貸与の奨学生といったようなものについては、これは比較的家庭経済も他の者に比べて悪いものが多いわけでございますので、こういったものについてはできるだけ奨学金の貸与の単価の方も引き上げて参りたい、こう思います。
  113. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、この予算全体を見まして、いつも非常に矛盾を感ずるのです。昭和二十五年から三十五年までのおもなる費目について、予算専門調査員に予算を計算してもらったのです。大体、防衛関係費に、二十五年から三十五年までに一兆三千百三十八億使っておるのですね。文教関係には一兆一千七百二十億です。これは一般会計ですがね。防衛関係に文教関係以上の予算を使っているわけですよ。それで予算の性格というのは、佐藤大蔵大臣も言っておりますが、各費目のバランスというものが予算の性格ですね。それで、私は教育専門家じゃありません。ありませんけれども、この予算を見る場合、いつも非常に矛盾を感ずるのです。社会保障費には一兆九百四十億、ずば抜けて防衛関係費が多いのですね。それならば、日本の今の教育について、予算が非常に豊富であるといかなくても、ある程度教育予算が組まれておるならば、まだ問題ないのです。ところが、先ほどこれは荒木委員なり他の委員のお話を聞いても、これはわれわれしろうとで考えても教育予算が非常に貧弱である。〇・五%である。そういう状態なんですね。ですから、私は教育予算について無関心ではいられないのです。あまりに矛盾がひど過ぎるのですよ。それで文化国家の建設だとか、社会福祉国家の建設だとか、そういうことを言うから、私はこういう文教予算について御質問したくなる、またしなければならない義務があるのです。予算全体から見まして、それで予算委員会では時間もございませんから、こういう分科会でこういうことをこまかく聞くのですが、それは文部大臣も、ほかの全体の予算関係から考えて、文教予算というのはとにかく私はバランスとしては低過ぎる。防衛費というものは、それは再軍備反対の立場もいろいろあるかもしれませんが、そういうものを離れても、予算としてはバランスを失していますよ。そういう点も、これは文部大臣としても全体の予算の文教予算の占める地位というものをよく認識されて、そうして対処される必要があるのじゃないか。それから文化国家の建設ということを言っていただきたいですね。これは自分の意見になりますから、別に私は御答弁はいりませんけれども
  114. 平林剛

    ○平林剛君 私はこの方面はしろうとでありますから、特別に用意した質問がありませんでした。それで各委員の御意見を静かに長い時間聞いておりましたから、お許しを得まして、若干事務的なことですけれども質問をいたしたいと思います。  それは昭和三十五年度予算を編成するときに、補助金の整理というのが問題になりました。それで大蔵省としては、ことしも若干の補助金の整理を行なったのです。その前提として、昨年学識経験者の人に調査を依来いたしまして、どういう補助金を整理すべきかという相談をしたときに、文部省関係から青年学級運営費約七千万円、それから高校産業施設費三億九千万円、この二つがそのときの素材に上がったことは御承知の通りだと思います。特に金額の大きい高校産業施設費ですか、これにつきましては、産業教育充実する観点から、その呼び水的な補助金として設けたのがこの目的でありましたけれども、実際には調査した学校では、一般財源や寄付などで雨天体操場やプールなどができていて、補助でできた建物が産業教育施設としての特色を持たなかったりして、不想応なものだったなどが指摘をされておるのですね。私の記憶ではこの二つは今回は整理をされて、文部省予算の中には落とされておるというように記憶しておるのでありますけれども、どうなっておるか。またこの二つについて、何か文部省側として御見解があればこの機会にお聞かせいただきたい。
  115. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 公立高等学校産業教育施設費のお尋ねでございますが、私どもそういうことを聞いていなかったのであります。で御承知の通り終戦後、普通課程は非常に伸びた。産業教育学校が伸び悩んでおる。これはまた経費もかかりますので、そこで昭和二十七年に産業教育振興法が制定されまして、施設及び設備に対して相当大幅な充実をして参ったわけであります。当初は設備関係だけでございますが、その後は実験、実習室も補助の対象になったわけであります。これは双方とも三分の一補助でございます。これが対象になったということは私聞いていなかったのですが、実験、実習室を整備して、そうしてそれに必要な電気なり機械なり、あるいは農業なり水産なり、必要な設備補助していくことは、これはわが国産業教育振興する上に不可欠でございます。今日までできるだけ新しい学科、特に工業の電気、機械工業、科学等については学科増設をいたしておりまして、それに伴う実験、実習室の施設、同時に設備費の補助をして参ったわけであります。御指摘のような事例はほとんど私聞いておりませんし、これが整理の対象になったとは記憶もございません。今日の産業教育の負担金を見ましても、前年以上に私は入っておると記憶いたしておるのでございます。
  116. 平林剛

    ○平林剛君 そうすると、これはようございます。高校産業施設費の三億九千万円が、これは学識経験者の中で話題にされたということは御存じなんですね。ただそれには見解が違って、議論があるのだということなんですか。
  117. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 大蔵省の部内で論議されたかどうか知りませんけれども、少なくとも教育関係者は非常に熱望しておる経費でございますし、そういう事態はございません。あるいは多少誤解があったとすれば、第一次五ヵ年計画が済んだので、まあこの辺でということが話題に出たかもしれませんけれども、まだまだこの第二次計画を進めているときでございますし、特に今日のように科学技術の目ざましい進歩がございますし、設備更新もしなければならぬし、拡充もしなければならぬ、こういう段階でございますから、この経費はむしろ総額として十億に増額されておるのでございますから、これを削られるようなことは大蔵省もお考えにならぬと期待しておるのでございます。
  118. 平林剛

    ○平林剛君 これは私大蔵省の方の所管ですから、昨年の秋、十二名の民間学識経験者に頼んで、補助金制度の研究懇談会で文部省補助金についてもいろいろ検討を加えまして、その際に、その結論が調査報告告の中にあるものですから、あなたそれをごらんにならなかったというだけで……。その中には今私が申し上げたような点も指摘をされておったのであります。  それで、私は議論するのではありませんから、また別の機会に譲りますが、この文部省予算の中に、補助金等調査旅費百二十四万四千円というのがございます。これはどういう目的にお使いになるのですか。一般会計歳出予算各日明細書文部省所管、文部本省七ページ。
  119. 安嶋弥

    政府委員(安嶋弥君) これは補助金の実態調査のために使用しておる旅費でございます。
  120. 平林剛

    ○平林剛君 昨年指摘をされたような問題と特別に関係があって組まれたというのではございませんか。ただ私の希望するところは、まあ今文部省の責任者の方もあまりよく御存じないようでありますが、第三者から見ると、そういう指摘事項もあるわけです。そうなると、やはり国の補助金を有効に使う意味から、一応周到な注意、配慮を加えなければいけません。そういう意味で、私はこれらの指摘もあったことであるから、補助金の調査を特にやってみようというお気持になって予算要求され、これが組まれたのじゃないかと、こう理解したのでありますが、血遅いますか。
  121. 安嶋弥

    政府委員(安嶋弥君) この経費は事務的な経費でございまして、毎年度標準的な予算として計上されておるものでございます。従いまして、御指摘の青年学級補助金あるいは産業教育施設費の国庫負担金等との問題とは関係がございません。
  122. 平林剛

    ○平林剛君 どういうことを目的にしてお使いになりますか。
  123. 安嶋弥

    政府委員(安嶋弥君) この経費は、たとえば公立文教施設費の補助金等、その他文部省には各種の補助金がありますが、毎年重点を定めまして、その補助金は主として経理事務に重点を置いて調査しているわけであります。事業の執行状況等も含めまして調査するために必要な経費でございます。
  124. 平林剛

    ○平林剛君 今回は、私は先ほど申し上げたことを要望として申し上げておくことにとどめておきます。ただ補助金の問題は、整理統合というのは国として大へん大事な点でありますから、文部省所管におきましても、これらの調査旅費をお使いになるときには、今回は私はあまり触れません。こまかくこれはこうだというようなことは申し上げませんが、来年そういう話が出ないように、文部省においても周到な御配慮を願いたいということを要望しておきます。  もう一つ事務的なことで、文部省予算の中に統計機械借料二百八十八万四千円とある、その統計機械の借料というのは、私の推測するところ電子計算機の借料と思いますが、いかがですか。
  125. 杉江清

    政府委員杉江清君) これは文部省で統計の集計をいたします場合に、IBMという統計機械を使います、そのときの借料であります。
  126. 平林剛

    ○平林剛君 念のために伺いますけれども、どういうような統計のときですか。
  127. 杉江清

    政府委員杉江清君) 私の方でいろいろ学校の——学校だけに限りませんけれども学校に関する基本的調査が主になっております。たとえば学校に関する児童数とか、生徒数とか、それからまたいわゆるその経費とか、そういうふうなかなり大きな調査統計を行なっております。それらを集計するのにはそのIBMの機械がきわめて有効なものでありますので、それを使っているわけでございますが、これを買えばいいのでありますけれども、現在のところの借料を支払って使用してやっているわけでございます。
  128. 平林剛

    ○平林剛君 その予算は今年だけですか、昨年はどうでした。
  129. 杉江清

    政府委員杉江清君) 毎年借料を支払って使っているわけでございます。この機械は購入することができないのでございます。
  130. 平林剛

    ○平林剛君 ほかのことはいいです、知っているのですから。去年も一昨年も例年お使いになって、その予算も大体本年程度の借料をお支払いになっておりますか。
  131. 杉江清

    政府委員杉江清君) さようでございます。
  132. 平林剛

    ○平林剛君 これはあなたの方をいじめるためじゃなしに、私は別のある問題のために予備的にお尋ねしているのですが、ただ非常に大きな問題をはらんでいるので、いずれ別の機会に深くお尋ねすることもあると思います。  そこでお尋ねいたしますが、IBMはこれは千代田区にあるIBMの東京支社、ここに金を払い込んでおりますね、どうですか。  それから私の聞きたいことは、このIBMの機械の型式はどういう……、今目的はわかりましたので、機械の型式をちょっとお聞かせ願います。
  133. 杉江清

    政府委員杉江清君) ただいまその点はっきりいたしませんので、調査いたしましてお答えいたしたいと思います。
  134. 平林剛

    ○平林剛君 大へん困りますね、それは。二百八十八万四千円の借料を国会に請求しておきながらですよ、その算出基礎がないというのは大へん困るのですよ。まあ今すぐここでわからなければ仕方ありませんから、私のところに型式、IBMの何型であるか、多分これはあなたの方は専門家でないからご存じないと思いますけれども、何型というのがきまっているのです。六〇四型とか、六七型とか、その機械の型、それから使用する回数ですね、それからその機械の仕出し国、多分これはアメリカだと思います。アメリカ製、フランス製かあるいはカナダ製か、どっちかだと思いますけれども、大体お使いになっておるのだから、これはその算出の基礎がなければだめなんですからね。大体こういう目的に使うので、この算出の基礎によってこういう数字をはじいたと思いますから、それがあると思いますから、それを資料として一つお出しいただきたいのです。  きょうはこの程度にして、ただ私少し申し上げておきます。これは非常に私は重大な問題を今調べておるのです。この機械はまあかなり高いことは高いのですがね、一台について四億円、いいのになると七億円、文部省のお使いになっておるのは、多分そんなに、今の学校の生徒とか経費を調べるくらいでは、大した機械ではありません。まあそんなに高くありません。まあせいぜい一億二、三千万円のものでしょう。これを文部省だけじゃないのです。これは厚生省も建設省もすべての会社、官庁が使ってお金を払っておるのは、全部IBMなんですね。まあこれはあまり今からしゃべってしまうとあれだけれども、非常に国家としてですね、借料の予算の使い方に私は疑義を感じておりますので、きょうは文部省だけの調査をいたしました。調査不十分でありますが、先ほど申し上げた点をなるべく近い一両日にすぐわかるわけですから、私のところにお知らせ下さるようにお願いいたします。私はこれで終わります。
  135. 東隆

    主査東隆君) 平林君の要請の資料提出を願います。  ほかに御質疑ございませんか。    〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  136. 東隆

    主査東隆君) ほかに御質疑もございませんようですから、文部省所管についての質疑はこの程度で終了いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  137. 東隆

    主査東隆君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお明二十六日は午前十時より労働省所管について質疑を行ないます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十四分散会