○国務大臣(
松田竹千代君) 父兄負担の問題、憲法にうたっておる義務
教育は無償とするという建前からいきますならば、少なくとも義務
教育の問題についてはお話のようにできる限り狭い考えでなしに、公費をもってこれをまかなっていきたいということには、むろんわれわれもその方針でやらなければならぬと思うのであります。また
大学ではお話の通り、私も実情を調べ、また周囲に何人もアルバイトをやっておる
学生もおりますし、実情もよく知っております。これがソ連とか中共とかいう国柄でありますならば、義務
教育のみならず、
高等学校、
大学まで一切のものを無償とし、また生活費までこれを持ってやるということになつおる。そのかわり、また国家の要請するところへ皆職をつかせていくというような形になっておる。そういう今
日本の国柄でないのでありますので、いろいろ困難な事情があって、そのために貧しい者の家庭では、あるいはサラリーマン
程度にしてもとうてい
大学へ子弟を、自分が受けただけの
教育も受けられないというような実情にあるということもよくわかっております。また今御指摘になりましたような、いろいろのむしろ芳しくない入学に要する金のようなことについても、何とかこれは考えなければならぬ。しかしそういう点においても、私学において一番多く金を要するのはやはり
施設の面でございますが、私
ども外国から帰ってきた数十年前の当時の私学の状態と今日の状態とは非常に違っておって、みなあれが
大学かと言われたものも、今日は一応りっぱな
大学として成り立ってきておる。その間において
大学の当局はいろいろの
学校運営に方策を講じてやってきたのでありまするが、国家が相当の利子補給などをやるような場合には、ある
程度のそうした低利の金を
大学が使うことができるならば、相当多額の金を
施設の面に持っていけるのではないかというふうな考え方もできると思うのであります。そういうようなことも考え、そして一面においては
施設が
増加することによって、そうしてその金を低利の金でもって私学はその
施設を
拡充するということができるならば、その点
学校運営の面に非常に緩和する面も出てくるのではないか、かように思うわけであります。しかしこれはソ連のような国は別として、アメリカのような富裕な国でも、あなたも御
承知の通り、
大学のプロフェッサーなどの
給与も非常に低い、研究費も必ずしも、それは
日本とは格段の相違がありますが、足りない。そのために一昨年でありまするか、アメリカの財団が寄って、十五億ドルの金を集めて、そうして
大学の教官の俸給その他研究費に充てたということもありますような状態であります。しかもまた一面においては、アメリカでは州立の
学校、いわゆる
日本の
国立に相当する州立の
学校であるとか、あるいは私学であるとかいうものの間に資格等の点において差異はないのですね。むしろ古い私学の方が優位に考えられておる場合があるが、
わが国においては依然として何と申しますか、事大思想と申しますか、とにかく資格を、何々
学校の卒業生であるならば就職も楽であれば、嫁をもらうのも楽だというようなことも依然としてまだ残っているということがありまして、それらのことはなかなかむずかしい。しかし、アメリカなどの国では長い伝統において民法は、
日本も戦後民法改正後はよほど変わりましたと思いますが、富裕階級が死んだ場合は、財産を
学校とか教会とか、社会
事業とかというところへ二五%なり三〇%なりを出すというような風習もあって、そういう結果
大学などに何々さんのホールができた、何何のライブラリーができた、何々研究所ができたというようなわけで、やはり民間の父兄の負担において、これらの
大学施設なり
学校のいろいろな
施設が
拡充され、
整備されていっておるという実情は今日なお続いておる。だから私は義務
教育においてできるだけその公費をもってまかなっていかなければならないという趣旨は、憲法の条章があるなしにかかわらず、やはりそうすべきである。かように考えまするけれ
ども、しかし負担し得る人々はこれを負担してもらうことは、一面においては、税の不公平を緩和するという面においても私はいいことのように考えており、そういう
施設も一応は父兄の負担になっており、
施設の面などにおいても、これは自発的にむしろ父兄の方で強く要望して、陳情して、これこれの金も集まっておるので、これらをこしらえるという場合には、しばしば陳情をいたしておるのでありますが、そういうこともあるのでありますから、現在の状況においては、こういうことも必ずしもそう非難すべき事柄でないように思う。むろん負担できない養護児童の父兄であるとか、あるいはそういう家庭の保護者については、これはそういう負担をかけることは一切やらないというようなふうにいかなければならない、かように考えます。