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1960-03-26 第34回国会 参議院 予算委員会第一分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月二十六日(土曜日)    午前十時三十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    主査      松澤 兼人君    副主査            村山 道雄君    委員            小林 英三君            小柳 牧衞君            斎藤  昇君            一松 定吉君            秋山 長造君            加瀬  完君            大竹平八郎君   国務大臣    法 務 大 臣 井野 碩哉君   政府委員    法務大臣官房司    法法制調査部長 津田  実君    法務省民事局長 平賀 健太君    法務省刑事局長 竹内 寿平君    法務省矯正局長 渡部 善信君    法務省人権擁護    局長      鈴木 才蔵君    法務省入国管理    局長      高瀬 侍郎君    公安調査庁次長 関   之君   最高裁判所長官代理者    事 務 総 長 横田 正俊君    人 事 局 長 守田  直君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十五年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  本日は先に裁判所議題とすることになっておりましたが、法務大臣が所用のため、十二時ごろまでしか出席できませんので、便宜両者一括して取り扱いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) 御異議ないと認めます。  裁判所及び法務省所管を一括して議題といたします。  まず、裁判所所管につき、最高裁事務総長より御説明願い、次に法務省所管について法務大臣より御説明を願うことにいたします。
  4. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 昭和三十五年度裁判所所管予定経費要求額について御説明を申し上げます。  昭和三十五年度要求額総額は、百三十八億三千三百九十三万二千円でありましてこれを前年度予算総額の百二十三億九千五百二十八万六千円に比較いたしますと、差引十四億三千八百六十四万七千円の増加になっております。この増加額内訳を大別して申し上げますと、人件費におきまして十億三千六百四十七万二千円、裁判所庁舎の新営補修等経費におきまして二億五千三十万六千円、裁判に直接必要な経費におきまして一億百八万一千円、その他、一般司法行政事務を行なうために必要な旅費庁費等におきまして五千七十八万八千円となっているのでありまして、この合計額が先ほど申し上げました十四億余となっておるわけでございます。  次に、昭和三十五年度予定経費要求額のらち、おもな事項について、御説明を申し上げます。  第一に、営繕費でございますが、裁判所庁舎継続工事二十二庁、新規工事十五庁の新営工事費といたしまして十億五千万円が計上され、そのうち東京地方裁判所刑事部庁舎の新営工事費分は五億五千万円でございます。その他法廷の増築、裁判所庁舎補修等施設整備費といたしまして一億三千万円、営繕事務費といたしまして二千四百三十一万二千円、以上合計いたしまして十二億四百三十一万二千円が計上されております。なお、このほかに、実質上の営繕費といたしまして、裁判所書記官研修所施設取得のために四億五千万円を限りまして、昭和三十六年度において国庫負担となる契約を昭和三十五年度に結ぶことが認められております。  次に、訴訟の迅速適正な処理に必要な経費といたしまして、第一審の裁判強化いたしまして、裁判の適正と事務能率向上をはかるための経費といたしまして判事二十人を増員するために必要な人件費二千七百三万五千円、訴訟促進協議会出席旅費等といたしまして五百二十一万三千円、書記官等超過勤務手当といたしまして九百八十八万九千円、自動車二十台の購入費といたしまして千五百六十一万円、事務能率器具、図書及び資料印刷費等が一億三千九百十八万二千円、以上合計いたしまして一億九千六百九十二万九千円が計上されております。なお、このほか簡易裁判所判事から判事へ三十名の組みかえが認められております。  次に、裁判費でございますが、これは、裁判に直接必要な経費でございまして国選弁護人の報酬、証人、鑑定人調停委員等旅費日当、その他裁判に直接必要な旅費庁費等といたしまして十四億九千二百三十五万円、が計上されました。  次に、裁判官等待遇改善といたしまして裁判官管理職手当は前年度三百八十二人のほか、新たに百二十七人が増加いたしまして合計五百九人分が認められるとともに、このうち八十七人につきまして現在の支給率一二%が一八%に増額されました。その経費といたしまして全部で六千九十四万五千円になります。  次に、裁判所書記官および家庭裁判所調査官俸給の調整を現行の八%から一六%に増額するための経費といたしまして、一億九百四十九万九千円がそれぞれ計上されております。  次に、家庭裁判所整備充実に必要な経費といたしまして、家庭裁判所事件処理の適正円滑をはかるため、家庭裁判所調査官二十人の増員及び家庭裁判所調査官補から同調査官へ三十人組みかえに必要な人件費としまして千五百七十六万五千円が計上されております。  次に、調停制度充実強化に必要な経費でございますが、調停委員日当四百四十円でございますのを四百八十円に増額するのに必要な経費二千八百六十一万三千円それから調停制度及びその運営に関する研究、調停委員の知識の向上調停制度の普及及び徹底等を目的とします日本調停協会連合会の事業を助成奨励するための補助金として六百七十九万円、以上合計三千五百四十万三千円が計上されております。  以上はなはだ簡単でございますが、昭和三十五年度裁判所所管予定経費要求額大要を申し述ました。よろしくお認めいただくようお願いいたします。
  5. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) その次は、法務省所管について法務大臣より御説明を願います。
  6. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 昭和三十五年度法務省所管予算内容につきまして、その大要を御説明申し上げます。  昭和三十五年度の予定経費要求額は二百八十六億九千七十九万三千円でありまして、これを前年度の予算額二百六十五億四千百三十一万一千円に比較しますと二十一億四千九百四十八万二千円の増額でございます。  増減の詳細は別途の資料により御承知願いたいのでございますが、増額分についてその内訳を大略御説明いたしますと、第一に、人件費関係の十七億五千五百二十七万二千円でございます。これは人事院勧告に基づく期末手当〇・一ヵ月分増額支給に伴う、職員特別手当及び給与ベースの改訂並びに昇給等に要する職員俸給等増加されたためであります。第二に、営繕施設費の一億三千八百十八万八千円でございます。第三が、その他一般事務費としての二億五千六百二万二千円でございます。これは主として事務量増加等にスライドして増額したものであります。特にこのうち増額されたおもなる事項経費について申し上げてみますと、第一は、現行不動産登記制度土地台帳及び家屋台帳制度を一元化するとともに、計量法施行法規定に従い、昭和四十一年三月三十一日までに不動産登記簿土地台帳及び家屋台帳の面積の表示を書きかえる作業に関するものであります。右作業は三十四年度より実施いたしておりますが、三十五年度より本格的に作業を実施するにあたり、それに要する経費増額分として九千九十二万九千円がございます。第二に、矯正関係収容者処遇改善経費といたしまして、収容者に給与するところの日用品単価増額等に伴う増加分として五千五百六十万一千円がございます。第三に、在日朝鮮人北鮮帰還に伴う業務処理経費といたしまして一千五十七万六千円が新たに増額されております。第四に、非行青少年対策の一環といたしまして、刑事局青少年課を新設するとともに、検事十名及び少年院教官二十五名を増員いたし、その機能強化充実をはかり、あわせて新たに全国百四十五ヵ所(主として地方裁判所及び同甲号支部所在地)に青少年担当保護司を一ヵ所に二名ずつ配置することになりました。それに要する保護司経費として五百二十二万円が新たに増額されております。第五に、本年五月東京において開催を予定されております刑法における人権擁護に関するアジア地域ゼミナール会議運営に要する経費といたしまして二百十三万七千円が新たに増額されております。  なお、このほか機構の充実強化の面といたしまして、さきに申し上げました検事並びに少年院教官増員を含めまして二百名の増員をいたしております。その内訳について簡単に申し上げますと、1、法務局における登記台帳事務事務量増加に対処し、その事務の円滑適正な処理をはかるため百四十二名。2、東京入国管理事務所羽田空港出張所ジェット旅客機乗り入れ等に伴う出入国者増加に対処し、その入国審査業務の適正かつ迅速なる事務処理をはかるため入国審査官を十五名。3、人権侵犯事件調査処理機能強化充実をはかるため、人権擁護局専門調査官を配置するにあたり、その要員として三名。4、前記の青少年対策強化としての検事十名、並びに少年院教官二十五名の増員のほか、司法試験の円滑なる事務処理に要する要員として司法試験管理委員会事務局に五名がそれぞれ増員されることになっております。以上が増加額大要でございます。  次におもなる事項経費について、概略を御説明申し上げますと、  第一に、外国人登録法に基づき、在日外国人登録及び指紋採取通常事務処理するために必要な経費といたしまして一億二百七十一万円を前年度に引き続き計上いたしました。  第二に、法務局地方法務局等におきまして、法令に基づく登記台帳、供託、戸籍等事務処理するために必要な経費といたしまして四億四千二十五万二千円を前年度に引き続き計上いたしました。  第三に、検察庁におきまして処理する一般刑事事件その他各種犯罪事件の直接捜査活動に要する経費といたしまして四億九千百二十七万六千円を前年度に引き続き計上いたしました。  第四に、拘置所刑務所少年刑務所少年院少年鑑別所及び婦人補導院昭和三十五年度の一日収容予定人員八万三千八百人に対する衣食医療及び就労等に要する経費といたしまして四十九億九千五百四十四万四千円を前年度に引き続き計上いたしました。  第五に、犯罪者予防更生法更生緊急保護法及び執行猶予者保護観察法に基づき、刑余者並び執行猶予者を補導監督し、これを更生せしめるための補導援護に要する経費といたしまして三億九千四百二十七万三千円を前年度に引き続き計上いたしました。  第六に、出入国管理令に基づき、不法入国者等調査及び審査事務処理し、被退去強制者につきましては護送、収容、送還する必要がございますので、これに要する衣食医療、及び送還のために必要な経費といたしまして一億二千六百二十五万七千円を前年度に引き続き計上いたしました。  第七に、公安調査庁におきまして処理する破壊活動防止のための調査活動等に要する経費といたしまして六億一千五十四万九千円を前年度に引き続き計上いたしました。  第八に、検察庁庁舎その他、及び刑務所少年院等収容施設の新営、整備等に要する経費といたしまして十億七千三百八十五万八千円を前年度に引き続き計上いたしました。  なお、このほかに営繕費といたしましては、法務局等庁舎その他新営に要する経費として三億三千三百四万八千円が建設省所管予算中に計上されております。  以上が、法務省所管歳出予算予定経費要求大要でございますが、このほか名古屋刑務所及び福岡刑務所の移転に伴う施設取得にかかる総額十五億五千万円の国庫債務負担行為を要求いたしております。  終わりに、当省主管歳入予算について、言御説明申し上げます。  昭和三十五年度法務省主管歳入予算額は六十四億六千八十六万五千円でございまして、前年度予算額六十億四千百二十一万六千円に比較いたしますと四億一千九百六十四万九千円の増額となっております。その増額のおもなものは、罰金及び没収金並びに刑務所作業収入でございまして、過去の実績等を基礎として算出されたものでございます。  以上、法務省所管昭和三十五年度予算について、その概要を御説明申し上げました。よろしく御審議を賜わりますようお願い申し上げます。
  7. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) 御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  8. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 これは裁判所にお尋ねすることになると思うのですが、法務省関係があるので、幸い大臣も見えているのでお尋ねいたしたいと思うのですが、非常なとっぴなことなんですが、終戦直後に起こった、世間を震撼させた大事件に、例の帝銀事件というのがあるわけですね。その被告が言うまでもなく平沢被告、別にわれわれはその裁判内容とか何かに云々すべきじゃないですけれども、この平沢の問題については、すでにもう何年か前に死刑宣告が下されて、時の大臣はだれであったか知りませんが、大臣がすでに捺印をしておるというようにわれわれは聞いている。しかるにかかわらず、それはたしか死刑の極刑だとわれわれは新聞紙上を通じて聞いておるのですけれども、しかるにかかわらず、相当年月が経ても、何か問題がすっきりしていない、こういうことについて平沢がはたしてほんとうの一体被告であったのかどうかということすら、世間の一部でうわさをされているようなことがあるわけなのであります。ということは、あまりその宣告を受けてから日数も長い、むろんその間にはいろいろ抗告その他の法的な手続はしておることとは思いますけれども、何か割り切れない問題がある。ことにこの平沢の問題は、御承知通りあまり世間を騒がした大きな事件だけに、そういう一般考え方というものが、そういうところにあるわけなんです。これは一体どういう工合に今処理をしつつあるのか、その点お尋ねいたしたいと思います。
  9. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) ただいまお尋ねの平沢被告の問題でございますが、なるほどお説の通り判決がございましたのはだいぶ前でございまして、その後当人からあるいは再審に訴え、あるいは抗告等のいろいろな手続をしておりますが、死刑は確定してから六ヵ月以内に法務大臣が裁決いたしまして、そうして執行させるのでございますが、こういった死刑囚でありましても、できるだけ本人のいろいろな異議はできるだけ述べさして十分納得さして死刑にさしたいと考えますので、平沢被告についてはそういった抗告をたえず繰り返しいたしておりますのでまだ執行しておらない、こういうことでございます。  なお詳細のことは刑事局長から御説明いたします。
  10. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) 平沢被告死刑執行がおくれておりますことにつきましての御質疑でございますが、私ども平沢の犯行が内容的に実体的に疑問がある、というようなことはいささかも考えておらないのでございます。ただこの刑事訴訟法の四百七十五条によりますと、今、大臣から御答弁申し上げましたように、判決確定の日から六ヵ月以内に執行命令を出すことに規定されておるわけでございますが、同条の二項によりますと、ただし書きがついておりまして、再審請求等の出願の申し出がありました場合には、その手続が終了するまでの期間は、判決が確定してから六ヵ月以内という期間の中に算入しない、という規定があるわけでありまして、なるほど平沢被告につきましては、すでに確定いたしましてから相当長年月たっておるのでありますが、平沢につきましてはこれまで前後五回に及ぶ再審請求を行なっておるのでありまして、そのつど棄却になっておるのでございますが、もしその期間を今のただし書によりまして算入いたさないということになりますと、わずかに、今の六ヵ月の期間超過しておりますことは、七十数日間を超過しておるに過ぎない状況でございます。この事件については慎重に私どもの手元で内容を審査いたしまして処理いたしたいと考えております。
  11. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 新聞等によりますと、弁護団側から何か新しい事実を提供をして、そして平沢無罪を、弁護人立場ですから当然なんでしょうが、無罪立場を主張したような声明なり談話というものが新聞に出ておるのですが、そういう点はどうなんでしょうか。
  12. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) 新聞紙でときどきそういう記事が出るわけでございますが、これらはいずれも再審申し立てによりまして裁判所で審判をした結果、いずれも棄却になっておりまして、事実に相違する申し立てであったことがはっきりいたしております。
  13. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 そうするとこれは全くしろうとの私ども考え方質問なんですが、再審というものが何回やれるか知らぬけれども、大体最後の見通しというものは一体いつぐらいになるのか、再審というものが、そう何回も繰り返されるわけでもないのだろうが。
  14. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) 再審は何回でもやろうと思えばできるような仕組みになっておりますが、やりました請求内容がもうすでに同じ内容のものでございますならば、もうほとんど同じような理由によりまして棄却になるわけでございまして、過去五回にわたる再審請求内容を見ておりますと、実質的にはもう同じことを言っているのでございますが、多少表現を変えたりいろいろしております程度でございまして、このような再審がこうたび重なっているということにつきまして、再審のあるうちは執行できないという筋合いではないというふうに実体的に私どもは考えております。
  15. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 何ですか、最終判決がありましたのはいつですか。
  16. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) ちょっとここへ資料をもってきておりませんので、ただいまお調べいたしましてすぐお答え申し上げます。
  17. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 私どもの記憶ではとにかくだいぶ前だと思うのですが、それだけにこれはもう人の最後の問題ですから、まあ再審を何回もやられて、そうしてその再審を受けて立たれるということはこれは私ども人道上の問題からいっても非常にけっこうなことだと思うのです。しかしまた反面におきましては、あんまりこういうことがたび重なっていくと、まあ弁護人宣伝等もあるのだが、何か本人がその罪を犯したのかどうか、こういう疑問が非常に起こるわけなんです。何ですか、これは平沢自体事件というものは非常に大きな事件であったのですが、その他にこういうような類似した事件というものがありますか。決して何も世間的な有名な事件であったということでなくて、こういうように何回も何回も死刑宣告を受けて、そうして再審をたびたび重ねてやっている、そうして処断ができずにいるというような事実というものがほかに何かありますか。
  18. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) 大体概論的に申し上げますと、再審申し立てをします場合が非常に多いのでございまして、自分から上告を取り下げて死刑判決を確定さした死刑囚につきましても、その後心境の変化といいますか、なお再審申し立ててみるというような事例も絶無ではございませんし、平沢に限らずかなり多数の死刑囚から再審申し立てをする場合が多うございます。現にそれらの申し立てがありますと、それぞれ裁判所で審理をいたしているのでございますが、同一内容のもので繰り返し、繰り返しして全然理由がないというようなものにつきましては、再審申し立てのとぎれた期間執行いたした例もございますし、これは平沢に限らず多数のところから再審申し立てをする場合がございます。
  19. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 あんまり重なっているものですから、これは率直に言ってやはり何かこういう平沢再審ということについて、部内では一部もっともだというようなところが実際あるのじゃないですか、どうなんですか。
  20. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) 私どもはもうもっともだというような点は少しもないというふうに感じております。それから現に再審申し立てをしておりますのに対して、詳細な再審申し立てに対する棄却決定が出ておりますが、この棄却決定の中にも詳細にその点を論じて、いささかも疑問のないということを明らかにした裁判所決定も出ているのでございまして、この点につきましては何か疑問があるためにおくれているという筋合いのものではいささかもございません。
  21. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 次にいま一つ大臣から御答弁願いたいと思うのですが、最近非常に不良少年が多くなってきていることは御承知通りなんです。最近の少年院状況につきまして少し伺いたいと思います。
  22. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 御説のように最近青少年犯罪の数が増加しております。それから質が非常に粗悪になってきておりまして強暴犯が多くなってきております。まことに遺憾に存じております。従って法務省としましても、本年度予算にも先ほど御説明申し上げたように、青少年対策に重点を置きまして、その予防、その非行少年となりました後の教養あるいは職業訓練、その他の社会復帰を全うせしめるためのいろいろな施設につきまして、予算を相当本年は増額いたしたのでございますが、現在少年院収容されておりまする非行少年は約一万人弱でございますが、これはそう年々数は非常にふえておりません。大体昨年の一月とことしの一月を見ますと、ほとんど十数名ほかよりふえておりませんが、ただ少年院設備がそれだけの青少年を入れますのに現在では十分でないというところから、その拡張もはかってきております。大体一一〇%くらい、一〇%くらい人員超過していると思います。従ってそういうようなことから設備の拡充をはかりますとともに、教官が非常に不足しておりますので、本年二十五名の教官もふやしまして、そしてその施設充実をはかっておる、こういう次第でございます。
  23. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 一〇%超過ということですと、実際の運営からいえば大したことはないと思うのですけれども少年院虐待というのですか、事件が非常に多いように聞いているのですが、前年度あたりはそういうような御報告は大臣のもとに集まっておりませんか。非常にそういう問題をわれわれ……
  24. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 虐待ですか。
  25. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 虐待問題ですね。それからまた同時に非常な脱走が多いですね。これなんか去年あたりどうなんですか。
  26. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 虐待などしたことはないと思いますが、しかしまあそういったような、あるいは脱走者の数とかいうものは矯正局長の方から一つお答え申し上げます。
  27. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 少年院状況につきまして私からお答え申し上げます。ただいま大臣から説明もありましたごとく、少年院の現状は大体横ばいの状態でございます。しかしながら最近の暴力事犯の検挙がやはり少年院にも響いて参りまして、素質的には相当粗暴な犯罪を犯した少年たちが入って参っておるのでございまして、従いまして、この少年院内で乱暴をする者がとかく多くなって参っております。お互い同士の間での問題を起こします者が、昭和三十年中に五件であったものが三十四年には二十一件というふうにふえて参っております。しかしながら、ただいま仰せのような逃走事故は毎年漸次減って参っております。逃走事故を申し上げますと、昭和三十年には年間三百五十五件でございましたものが昭和三十四年には二百八十件に減って参っておるのでございます。  なお、ただいま少年院職員少年たちに対する暴行があるのじゃないかという御質問でございますが、これは実は一昨年さような事件がございました。これは徹底的に調査もいたしまして刑事事件にもなったこともございます。これは検察庁の方にも調べていただきまして処理をしてその後はございません。昨年度も一件もさような事件はございませんので、その点は御安心のほどを願います。
  28. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それから出所後はあなたの方の手を離れて更生保護観察とかなんとかいう方の立場になるかもしれませんが、出所後はどうですか、また戻ってくるようなのが多いのですか、それともほんとうに更生をして、これはただあなたの方だけでなくて、社会環境、いろいろな意味の責任があると思うのですけれども、そういう状況はどうですか。
  29. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 出院者の予後の関係でございますが、これは非常にむずかしいので的確なところをつかみ得ないうらみがあるのでございます。しかしながら私どもの方で保護観察所その他出所後の状況をできるだけ調査いたしました結果を申し上げますと、出所後一年をたった状況でございますが、再犯率は大体三六%という数字になっておるのでございます。これはわれわれといたしましては、この再犯に陥る者を極力減少さすべくいろいろ努めておるのでございますが、ただいま仰せのごとく、いろいろ出てからの社会の状況等も影響いたしまして、なかなか十分な成果をあげ得ないうらみがあるのでございます。
  30. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 再犯三六%というのは相当な数ですね、何か従来とってこられておる教導よりも新しい一つの構想を持って、三六%という数字は相当大きなものですが、これを防止するような特別のお考えはないのですか。
  31. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) 仰せのごとく三六%という数は多いように私ども考えますが、しかしながらこれは非常にむずかしい問題でございまして、最近アメリカあるいはヨーロッパ等の状況を見ましてもやはり同じ数が実は出ておるのでございます。昨年ちょうど私もアメリカに参りましてこの点いろいろ調査して参ったのでございますが、まあ期せずして大体同じような数が出ておるのでございます。これはワシントンでの少年院でございますが、そこでの状況を聞きますと、出院後一年の再犯率三五%と申しておりました。一%の差があるのでございますが、大体同じ数。ほかの方でも五〇%の再犯率というのが大体少年院での現在の状況のようでございます。決して私はそれだからこちらの方もあたりまえだというわけではございません。わけではございませんが、やはり少年院は子供の時分からどうしてもそういうふうな環境に染まって参りました者、小さいときにそういう環境に育つ者ほどやはり予後が悪いのでございまして、おそらく教護院等での者がまだ悪いのじゃなかろうかと私は思います。これは小さい時分からそういうふうな環境にある者ほど、やはりどうしても抜き得ない状況が強いように私は思うのでございます。で、少年院から出ました者がさような関係からどうしても予後の点につきまして結果があまりかんばしくない、というような結果が出て参るのでございます。この点はあらゆる角度からいろいろ検討を加え、また少年院の方でも職業補導にも現在非常に力を尽しておるのでございます。何とか少年の間に自立する一つの素地を作ってやりたいというところから、職業訓練をいろいろもっと徹底的にいたしまして、本人たちの更生の道をはかってやりたいということを考えております。なお、さような再犯に陥るような者はどうしても精神的に欠陥のある者が割合多いのであります。さような点から精神医学的な面からもいろいろな手を加えておるのでございます。これは科学的な面からの解明と、また社会的な各方面からの御協力というものをあわせて、今後の指導をやっていかなければならないものと考えている次第でございます。
  32. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それで再犯三六%というのは、あくまでも少年院としての取り扱いでしょう。ですから、まあ少年院を出るときには未成年者であった、ところが出て一年ぐらいたってから成年になって、今度普通の刑務所に引っぱられていく、その数はここに入っていないんでしょう。そうすると、非常なものになるんじゃないでしょうかね。
  33. 渡部善信

    政府委員渡部善信君) いや、それは入っております。これは少年院に入って参りました者と刑務所に入りました者、全部をひっくるめてでございます。
  34. 秋山長造

    ○秋山長造君 下山事件はあなたの方でやっておられるんですね。ちょっと下山事件のことについてお尋ねしたいんです。  あの当時、下山総裁が鉄道で死んだという事件がどれだけ満天下を驚かしたかということは、お互い、いまだにありありと覚えている。で、当時ずいぶんあの死因についていろいろな説が紛々としてあって、われわれは全く何が何やらわからないような気持で今日まできた。で、文芸春秋の新年号でしたか、松本清張氏の下山事件というのが発表されて、そして当時のこの事件を、推理作家特有な勘を働かせ、また、たんねんに現地につき事実について調べて、まあ相当詳しい、しかも相当信憑性のあるように思われる記録としてわれわれ読んだわけです。で、同時に、あの下山事件という小説は、ずいぶんこれは世論に対しても私は強い影響を与えておるんじゃないかと思うんですがね。で、当時私どもは、何か割り切れない——あの事件の裏には、やはり当時、国鉄で十万名の首切りですか、そういう大きな問題をかかえ、しかも国鉄の労働組合の激しい抵抗を押し切って強引にやろうとした。しかも、そのやろうとした力は、これは日本政府自身というよりも当時のGHQであったことは間違いないです。そこで、組合の抵抗を押さえ、そしてまた世論をこの首切り問題に対して有利に展開をし、かたがた燎原の火のごとく広がってきた労働運動の高まりというものに一撃を与えるというような、きわめて政治的なねらいをもって、そしてGHQが陰に陽に動いたということは、これまた間違いないことであって、下山事件について、そういうような背景からして、アメリカ軍の諜報機関が、これにからんでずいぶん暗躍をしたのではないかと、まあつまり端的に言えば、アメリカ軍あるいはGHQの謀略ではないかというような印象を、大なり小なり当時持っておったと思うのですね。そういう何か割り切れなさというものが、あの松本清張の小説によって私は百パーセント裏づけられたような感じをたしか持っていると思うのですね、一般国民は。で、そういうことであるならば、なおさら私はこの際、この下山事件のその後の処理がどういうことになっておるか、ということを一つ詳しく承りたいと思うのです。  で、まあついでに申しますが、私どもは今安保条約並びに安保条約に伴う新しい協定の審議に入っております。その安保条約並びに新協定と取り組むにあたりましても、それ以前の占領時代、あるいはまたこの前の安保条約、行政協定の時代、こういう時代においてアメリカ軍が日本においてどういうことをしてきたか。またそのアメリカ軍とのいろいろなからみ合い、つながりで日本の政治、行政がどう動かされてきたか。これはもう法務省裁判所の管轄の問題についても同じことです。で、そういうことについて一応この際、まあ洗いざらい白日のもとにさらけ出して、そして再検討をすべき時期じゃないかというようなことを考えておるわけです。まあそういうことであるから、なおさらこの下山事件のその後の処理状況がどうなっておるのかということを、まあこれは国民の一人としても知りたいわけです。一つ御説明願いたい。
  35. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 下山事件につきましては、あの当時世間を非常に騒がした問題でございまして、すでにその死因が自殺であるか、他殺であるかということすら、あのときの鑑定の問題からいろいろな議論が出まして、その確定的な決定も得ていないというようなことで、捜査陣もその後非常な本部としては苦心をいたしましたけれども、ついにまあ迷宮入りのうちに今日まできている、こういう次第でございまして、その後検察当局としてどういう処置をいたしておりますかは、刑事局長から詳しく御説明申し上げます。
  36. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) 下山事件発生以来もう十年余りを経過しております。御承知のように、当時三鷹事件、現に仙台で係属中の松川事件、あるいは福島における、それと同種の国鉄関係のいろいろな問題が起こっておるさなかに起こった事件でございます。私どもとしましては、いろいろな背景を持った、その当時の日本の置かれておった社会情勢の中において発生した事件でございましたので、この事件の捜査取り扱いにつきましてはきわめて慎重な態度で臨んだのでございますが、当時鑑定を委嘱されました学者の間に、下山氏の死因につきましてこれは自殺であるという考え方と、やはり他殺であるという考え方と、二つに分かれたのでございまして、捜査の第一線を担当しておりました警視庁におきましては、まあ可能なる限りの捜査を遂げました結果、まあ自殺であるという鑑定もありまして、一応自殺ではないかというような結論に到達いたしまして、ついに捜査本部を解散するというようなことになったのでございます。検察庁におきましては、他殺という鑑定もある次第でございますし、いろいろな事情から、まあかりに自殺であるとしても、なお他殺という嫌疑をも捨てるべきではないという考えを持ちまして、当時まあ下山事件に対する特別の捜査本部のようなものも作りまして、鋭意、警察とはまた別個の立場から、捜査に当たったわけでございます。  ところが、今大臣も御説明申し上げましたように、的確なる犯人の割り出しというようなことはできないのでございまして、その後いつまでも専従の捜査員をそれに向けておくというわけにも参りませんので、一応検察庁におきましても、専従的に捜査に当たるというようなことはその後取りやめたのでございますが、だからといって捜査を断念したわけではなく、自来十年間の下山事件に関連したいろんな風評が世の中に行なわれます場合には、その風評の出所あるいはその根拠等につきまして、可能なる限り調査を進めて参っておる。ただいま御指摘がありました松本氏の文春における記事のようなものも、もちろん検察庁におきましては詳細に検討いたしておるのでございます。で、なおこの松本氏の意見ばかりでなく、アメリカの諜報機関が関係しているんじゃないかというようなことは、国会でも共産党の委員からも御質疑があって、私どもお答えした記憶があるわけでございますが、共産党の方のお考えは、当時は自殺説であるということを強く主張しておられたのでございますが、最近に至りましては、このアメリカ諜報機関の関係があるんではなかろうか、というような趣旨の他殺説の方に変わってきたような御意見を耳にいたすのでございます。で、いろいろ週刊誌等に出て参りますものを検討いたしますと、結局根拠はないようでございます。多くはまあ売文的な記事である、根も葉もないものになっておるということが、調査の結果明らかになっておるのでございます。今日におきましても、検察庁といたしましては捜査を打ち切ったわけではなく、鋭意あらゆる機会に検討を続けておるというのが現状でございます。
  37. 秋山長造

    ○秋山長造君 まあ共産党がどう言ったというようなことは別に関係のないことです、今の私の質問には。そういう一部の人がどうこう言っているというようなことだけなら、これはまあそれはそれとして処理したらいいことで、そうじゃないと思うのです。下山事件に限らずその他の問題もだんだんありますが、特に私今抜き出して言っているのは下山事件なんですが、下山事件に対する今私の申し上げましたような疑惑というのは、これは何も何か一部の人だとか、一部の思想傾向を持った人だとか、一部の団体の人とかいうことじゃないと思うのです。これはおそらく日本全国民が、大なり小なりそういうそれに類するような、やはり何か割り切れない、フグを食ったというか、何か割り切れないもやもやとした疑惑を持っていると思うのです。そういう疑惑を持っているところへあの小説が出たものですから、これはそれを裏づけられたという感じを、私はおそらく読んだ人はみんな持ったんじゃないかと思うのですね。あなた方自身だってまんざらなんですからね。週刊雑誌なんかに書いた、根も葉もないもう興味本位な記事と同列としてお読みになったわけじゃないと思うのです。かなりやはり関心を持ってお読みになったんじゃないかと思うのですがね。で、今の刑事局長のお話では、まあその後警視庁も捜査本部を解散し、検察庁の方でも捜査本部を解散し、さらにどなたか専従でこの捜査に当たられるという人も専従を解かれた、でそうしてまあ可能な限りやっていくというようなお話のようですがね、言葉では、可能な限りやっていくというと、まあやらぬことはない、何かやるような印象を受けますけれどもね、実際問題として、なんじゃないですか、これだけいろいろな事件が新しく起こって、裁判所もそうですが、検察庁にしてもてんてこ舞いしている中で、十何年前の事件を、しかも専従の人もいないままですよ、これだけ入り組んだ複雑な事件を、ほんとうにこれは何とか処理をすると、解決をつけるという方針でやっておられるとは思えないと思うのです。まあ占領中のことだし昔のことだから適当にということで、結局はうやむやのうちに迷宮入りのままで済んでしまう。またもうそのおつもりじゃないのですか。あくまでこれを徹底的に処理をし、解決をし、結論を出そうという積極的な方針なんですか、おざなりの方針なんですか、どうですか。
  38. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) おざなりではないかという御疑念でございますが、このような事件につきまして、検察庁は終始この他殺説をとっていると申しますか、そういう立場に立っているわけでございます。このように犯人が不明のままになっている事件も、下山事件に限らず強盗殺人事件等におきましても絶無ではないのでございまして、検察庁は毎年このような未検挙事件というものを、記憶を新たにする意味におきまして、下山事件を含めまして常に再検討をし、必要な調査を場合によりましては警察にも依頼し、常にこの全体の事件をこの未検挙の事件との関連において調査するということは、これは職責でございまして、おざなりに済ますというようなことは職責に反するわけでございます。従いまして、時効の期間が満了してしまえば格別、そうでありません限りは終始これは追及している事柄でございます。
  39. 秋山長造

    ○秋山長造君 このほかにもそれは迷宮入りの事件はたくさんあることはよく承知しております。よく承知しているのですから、別に人命の失われたことについて、いずれが軽いということはあってはならぬことだけれども、しかしそうは言っても犯罪というものは一つの社会的な背景ということを切り離しては考えられない。特にこの下山事件なんかは、先ほども申し上げましたような、当時の日本の置かれたいろいろな複雑な国際的あるいは国内的な政治的、社会的情勢というものを背景にして起こった事件ですね。それだけにやはり単なるある一個人が殺されたという事件とは、これはもう比べものにならないくらい重大なる社会的な意味を持っているということは申すまでもない。であるならばなおさらそれだけの大きな影響を持った事件ですから、これに対してはきっぱりとした世人の納得のいくだけの処理をし、結論を出すだけのやはり検察当局としてはこれは責任があると思う、重大な責任がね。で、その点は、これはあなた方自身も十分御承知だと思うのですがね。ただそのうやむやにするのではないとはおっしゃっても、しかしこれだけの事件を何とか解決をつけよう、結論を出そうというのに、だれかこれにかかり切りでやる人もないというような状態で、一体実際問題としては解決つくのですか。その点私はわからないのですがね。それから現にどれだけのこれは予算を使ってどういうふうにやっておられるかということを、もう一度御説明願いたい。
  40. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) 捜査のどういう捜査をやっているかということは、これはまあ捜査に関しますので、公開の席上で御説明申し上げますことは、はばかるわけでございますが、専従の人をただいま置いておらないということは、これはもう十年もたってきておりますので、終始かかりきりでいるというわけには参らない意味におきまして、専従者を廃止しておる、置かないことにしておるわけでございますが、検察庁としましては、機構全体がそういうことに関心を持っておる機関でございまして、絶えず個々の事件処理いたします場合にも、こういう未解決の迷宮に入っております事件につきまして、常に関心を持って調査をしておるということ、これは全体がそういう目で絶えず頭に置いて捜査をしておるということが、この段階におきましては、捜査の方法として最もいい方法であるというような考え方から、そういうふうにいたしておるのでございます。私どもとしては、ぜひとも世の疑惑を解くような解決に到達することを希望いたしております。何さま、むずかしい、今日十年たちましても端緒をつかみ得ないというようなきわめて困難な事件でございます。希望はいたしますものの、いつその希望通りに解明ができますか、鋭意検察当局としましては努力をいたしておるということを申し上げて、御了解を仰ぐほかないと思います。
  41. 秋山長造

    ○秋山長造君 当時から結論が一歩でも進んでおるのですか、どうなんですか。事件の究明というのは、多少でも進む、進むと言っていいか、多少でも解決の方向べ進んでおるのですか、どうですか。全くやみくもなんですか。
  42. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) 解決の方向へというお言葉でございますが、今日におきましても、これは自殺に違いないということは言えない。やはり他殺ではないかという考え方検察庁としては持っております。  それからいろいろ巷間でいわれます論議ございますね。こういうものがおよそ世上に出ておるものにつきましては、検討いたしておりますが、先ほど抽象的に申し上げましたように、ほとんど興味本位の、確固たる根拠なくして、読者の興味をひくというような趣旨で書かれたものであるということも明らかになっております。
  43. 秋山長造

    ○秋山長造君 ちょっと角度を変えて御質問しますが、占領中ですね、あるいは占領後、行政協定のできてからでもいいのですが、占領中からその後にかけてこういう事件、特に検察庁の担当される事件について、進駐軍関係あるいは駐留軍関係あるいはその他、名前はどうであろうとも、とにかく渉外関係からどの程度の干渉といいますか、指導、助言といいますか、関与といいますか、そういう渉外関係からの交渉といいますか、そういうものはどの程度あったのですか。
  44. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) 占領中の事件処理につきましては、干渉ということではなくして、意見が述べられたことはあるように聞いております。しかし独立後におきましては、行政協定によりまして、駐留軍関係犯罪裁判権が第一次、第二次と、競合いたしますものにつきましては、はっきりいたしておりますので、その間の交渉という形で行なわれておるのでありまして、干渉とか圧力とかというようなことは私ども感じておりません。
  45. 秋山長造

    ○秋山長造君 諜報機関と一口にいいましても、これはいろいろなものがあったわけですが、一応この公式な諜報機関としては、ウイロビー少将の諜報機関があったのですね、こういうものがこの下山事件の捜査について、検察庁なりあるいは警視庁なりに対して直接、間接、何か関与されたような事実はありませんか。
  46. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) 終戦直後、私はまあ関係の衝におりませんでしたので、御質問に十分お答えすることができないのでございますが、検察当局に、ウイロビー少将という方は検察関係の担当の方ではなかったかと思うのでございますが、情報関係の方だと思いますが、そういう情報関係として日本側の情報を担当しております機関に何らかのお話があったかどうか、それは私つまびらかにいたしませんが、事、刑事事件の捜査という検察庁の担当部分に関しましては、ウイロビー少将という方は、直接検察庁とは何ら関係を持っていなかったように承知しております。
  47. 秋山長造

    ○秋山長造君 いや、それは少将自身が直接検察庁関係を持ったとか、持たぬとかいうことでなしに、そのウイロビーの諜報機関が陰に陽にこの刑事事件処理、特にこういう社会的あるいは政治的な背景を持った事件処理等については、陰に陽に、直接、間接干渉したのじゃないか、関与したのじゃないかということは、これは十分考えられることですね。そういうことがあったか、なかったかということを御質問しているわけです。あなた方は、それはこう言うと、おそらく干渉されましたということは、ちょっと言えぬでしょうけれども、この際は、あえてそのものずばりで事実を聞いているのです、あったかどうかということを……。
  48. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) 言葉が足りませんでしたが、ウイロビー少将と関係があったかなかったかというような、個人のウイロビーを言っておるのじゃなくてウイロビー並びにウイロビー系統の、いわゆる情報機関と検察庁関係があったかということの御質疑に対してお答えを申し上げたつもりでございまして、言葉が足りませんでしたが、外国の情報機関と日本の検察庁当局との関係におきましては、事件の捜査について関係を持っていなかった、これは事実として申し上げておるわけでございます。
  49. 秋山長造

    ○秋山長造君 私の聞くのは、関係を持つというよりも、いろいろな干渉を受けたのじゃないかということを聞いておるのですけれども、まあ、あなたの方でそれは干渉を受けましたとは言いにくいでしょうから、これ以上お尋ねしませんが、もう一つ、ついでに角度を変えて御質問しますが、行政協定に基づく日米合同委員会がありますね、この合同委員会で、そのときそのときの合意事項については、日米合意書というものが作られておるはずなんです。この合意書というのは、第二の行政協定といわれておるようなもので、何か公表できないということにされておるようですが、この合同委員会で扱われる問題ですね。たとえばジラード事件とか何とかいう、ああいう駐留軍関係事件等もこの合同委員会で扱われてきたと思うのです。そういう事件に限らず、その合同委員会の席上において、合同委員会を通して、直接駐留軍の軍人、軍属に関係しないで、しかも駐留軍として関心を持っておるような事件処理等について、いろんな機会にある程度のやっぱり発言が、駐留側、アメリカ側の発言というのがあったのじゃないかというように、われわれは漏れ聞いているわけなんです。その点についてはどうですか、合同委員会へ出られた局長が見えておられますが……。
  50. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) アメリカ駐留軍の犯罪事件につきまして合同委員会で問題になりますのは、いわゆる公務執行中であるかどうか、公務執行中でありますと、第一次裁判権がアメリカに移る、そうでないと日本に参ります。その点がいつでも合同委員会で問題になったわけであります。今お話しのジラード事件も、初めアメリカとしては第一次裁判権はアメリカだと、こういう主張から、いろいろ日本の当局ともめたのでありますが、その後アメリカ駐留軍も日本の裁判権の性質をよく理解していただきまして、ジラード事件もこちらに事件を移し、その後ロングプリー事件もこちらで扱っておるということで、もう最近におきましては、公務執行の範囲を非常に狭くアメリカでは解しまして、そして日本に大体第一次裁判権を移すということで扱って参りましたので、最近におきましては、もうそういう問題は一切ございません。
  51. 秋山長造

    ○秋山長造君 時間の関係がありますから、もうこれくらいでやめますが、法務大臣にもう一度最後にお尋ねしたいのは、この下山事件に対する捜査方針というものは、先ほど刑事局長から何回もお話があったのですが、どうも私としてはおっしゃる通りを、そのままさようですかといって引き下る気持になれないのですけれどもね。この下山事件処理方針について、もう一度法務大臣から一つ方針をはっきり承りたいと思う。それから刑事局長から、下山事件が起きましてから今日まで十何年の間に、下山事件の捜査関係でどれだけの捜査費といいますか、どれだけの経費を費されたのか、それがわかれば、大ざっぱでもいいですからお答え願いたいと思います。
  52. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 下山事件につきましては、当初私がお答え申し上げました通り、その当時から警視庁と検察庁ともいろいろ考えが違っておりまして、問題になっておったと思いますが、その後、検察庁に捜査本部を設けまして、徹底的に調査をいたしましたが、なかなか真相をつかめなかったという事実から、その後まあ時日も経過しましたので、本部を解き、専従者も置かないで今日に至っておるのであります。しからば今日専従者を置き、また本部を設けて、また捜査を仕直すとかということは、これは検察庁人員関係、仕事の関係から、この事件だけにそう長く置いて参るわけにいきませんので、そういうことはなかなか困難でと思います。  そこで、こういった迷宮事件につきましては、検察庁としては、世論のいろいろな動向を絶えず監視しておりまして、それに応じて、それに関するいろいろな新事実なり、また、あるいは新しいいろいろのうわさと申しますか、そういうものが出て参りますれば、それを他面調査をして、そしてそこに一つの事実があれば、それを根拠にまた捜査を始めるという方針をとっておりますので、下山事件だけが——非常に重大な事件でございます。秋山委員の言われるように、私も割り切れない気持を持っている事件でございますが、検察当局としては、これ以上積極的にどんどん調査を始めるというわけに参らないだろう。そういったような他動的な動き方をいたすよりほか、他の事件と同じように仕方がないのでありまして(秋山長造君「お手あげですか」と述ぶ。)お手あげはいたしません。絶えず注意を払って事件に処していくということが、法務省の今の方針であると御了承いただきたいのであります。
  53. 秋山長造

    ○秋山長造君 どこかに遠慮しているのじゃないですか。そんなことはないですか。
  54. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) どこかとおっしゃるのは、おそらくアメリカ関係だと思いますが、そういう方面には、もう日本の検察庁としては少しも遠慮しておりません。今日の行政協定に基づいて、いろいろの犯罪につきましても、先ほどお答え申し上げました通り、日本が積極的に出ておりますので、アメリカの方でむしろいろいろ御遠慮いただいているような気持もありますので、決してそういうことはございません。
  55. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) 捜査費用についてのお言葉でございましたが、検察庁におきましては、御承知のように予算費目としましては検察費という項がございまして、この検察費からどんな事件の捜査費用も支出いたしておるのでございます。従いまして、十年前からの検察費の使用区分を集計して、これが下山事件であるというふうに経費を出すことはすこぶる困難でございますが、もちろんその根拠は、検察費から支出して、必要な旅費、その他庁費は支弁しておるのであります。
  56. 秋山長造

    ○秋山長造君 大づかみにどれくらいということはわかりませんか。
  57. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) 今ここで急におっしゃられましても、ちょっとわかりかねます。
  58. 加瀬完

    ○加瀬完君 公安調査庁調査活動に要する費用は六億一千万円という御説明でございましたが、この内訳はどうなっておりますか。
  59. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 公安調査庁調査活動費の内容につきましては、決算委員会あるいは法務委員会で絶えずその内容を知らせろという御要求があるのでございます。これは調査費の性質上、内容は申し上げられないということをお答えして御了承を得てきているのでございます。どうぞさよう御了承いただきたい、
  60. 加瀬完

    ○加瀬完君 公安調査庁調査は実にでたらめだと思うのですよ。某県の教員の共産党並びにこれに準ずるシンパの調査公安調査庁がやりまして、これを県の教育委員会に提出をした事例があります。そうするとまるっきり違った者の名前が出されて、実際の共産党員である者の名前はむしろ出されておらない。調査をする事実がいい、悪いということは別ですよ。それはいろいろ疑問がありますが、時間もありませんから、それはやめまして、公安調査庁が少なくも六億一千万のその内訳というのが御説明ができないというのは、そういったものの調査に使われていると思う。ところが出されたものは、まるっきりでたらめですよ。しかしこれは公開されませんから、そのレッテルは、監督官庁である教育委員会だけしか知らないわけです。その者が教頭になり校長になるというときには、もう初めからそういうしるしがついておりますから、どんなに優秀でもこれはなれない。人権擁護局に訴えたいといったところで、その事実が本人に知らされておらないわけでありますから、これもいろいろ問題にするわけに参りません。この問題は、幸いに個人をよく知っている教育委員会の係官がおりましたから、その個人に対するこれによる影響というものは防がれたわけでありますが、こういうでたらめな調査をされては私は困ると思う。具体的な例をあげろというのならあげますよ。こういう事実がありますけれども大臣でなくてもけっこうですが、公安調査庁の方は御存じですか。
  61. 関之

    政府委員(関之君) お尋ねの学校の先生についての調査の問題かと思いますが、具体的にお話しいただきますと、そのことがどうなっているかとお答えできるのでございますが、どうぞ一つ具体的に御質問をいただきたいと思います。
  62. 加瀬完

    ○加瀬完君 具体的にと言っても、これは秘密事項で、あなた方の方も伝達をしているわけであります、教育委員会に。教育委員会も秘密事項として受け取ったものを、公表するわけには建前上いかないわけですから、ここの委員会でそれらの名前を全部あげろということで、あなた方の方に責任者が出ないというなら、あげますけれども、これはあとであなた個人によく教えて上げます。警察とはどういう連絡をしておりますか、警察ではこれは共産党ではないという報告をあわせて行なっているのです。あなた方の方では共産党だとレッテルを張っている。どういう組織と方法を持ってこの調査をしておるのですか。
  63. 関之

    政府委員(関之君) この調査の方法につきましては、一般的に申し上げますと、これは国会で御審議のときに申し上げたように、いわば新聞記者が情報を収集するような程度の方法によって行なっております。大体、強制権はございませんから、そういうような任意な方法によって調査をさせているわけでございます。警察との関係におきまして、ある問題について向こう側は白だと言い、こちら側は黒だと言う、あるいは逆なことも場合によっては私はあり得ることだと思っております。もちろん、いろいろな場合に意見の交換をいたす、情報をいただくことになっておりまするが、調査の進展あるいはいろいろな相互の問題で、そこに場合によっては判断の相違が生まれることもあろうかと私は思っておるわけであります。
  64. 加瀬完

    ○加瀬完君 判断の相違じゃないですよ、事実ですよ。共産党でもシンパでもない者を、社会党員でもない者を、判断の相違ということで共産党だとレッテルを張ってどうなりますか。ある程度具体的に問題をもう少し説明しましょう。
  65. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) ちょっと私からお答え申し上げます。  公安調査庁調査は、次長のお話のような、いろいろな方面から資料をとりまして判断しておりますけれども、中にはむろん間違った場合も私はあり得ると思うのです。ですから、そういう場合には一つ御指摘をいただきまして、これは違うのだということを言っていただきまして、またよく調査いたしまして、十分間違いのないようにしたいと考えております。ですから全然間違いない調査だということは申し上げておりません。
  66. 加瀬完

    ○加瀬完君 そのいろいろな方面から資料をとるというところに私は問題があると思う。いろいろな方面から資料をとる、その資料は人を陥れるような資料を出す場合もあるし、いいかげんのうわさを資料として持ってくる場合もある。これは千葉県のある町の教頭です。ところが、どういうところから一体共産党というレッテルを張られたかというのは、校長もいろいろ検討してみたがわからない。ところがPTAの役員の人の中に共産党員がいる。教頭ですから、PTAの役員でありますから、共産党であろうが社会党であろうが、連絡に行くのは当然だ。おそらく、そこに一、二回連絡に行ったので、共産党の家に出入りをしておるというので、共産党のレッテルを張られたのじゃないか、それ以外に推論できない。こんないいかげんな資料で、共産党だの社会党だのというレッテルを張って、それをもって将来に影響するような要素に、公安調査庁だけが持っているならともかく、監督官庁に報告をするということでは、これは実にうかつじゃありませんか。大臣は具体的な間違いがあったら言ってくれと言っても、今具体的な間違いが見つかりましたから申し上げておる。しかし、まだ間違われておるために、いろいろ一身上の不都合を来たしている事例は、隠れたものはまだあると認定しなければならない。国費を使ってこういうでたらめのような調査をされてはかないませんので、具体的にいろいろな方面から資料をとるというけれども、どういう方法で、どういう仕組みで一体資料をおとりになっているか、あらためて伺わなければ、私どもはどうも安心できない。
  67. 関之

    政府委員(関之君) お尋ねの問題は、要するにある資料の収集においてある結論を出して、この人は党員であるという判断を下す。それが非常にでたらめでいけないじゃないか、こういうような御質問でございますが、そうしてまた、でたらめにやっていはしないかということでありますが、実は私どもは、その共産党並びにその党員という者を調べておりますが、いたずらにある人に対して赤のレッテルを張るということは、これは非常に重大な問題であると思っておりまして、これはそんな軽々なことはいたさないようによく注意をいたしておるわけであります。もちろん末端の調査官もたくさんおりまするから、中には私どもの気持に反することがあると思いますが、私どもの気持といたしましては、破壊的容疑団体として調べる、その構成員であるかいなかということは、その一人一人に対しては非常に重大な問題でありまして、それに御指摘のような問題につきましては、従来からもいろいろ私どもの耳にも入っております。とにかく慎重を期するように、こういうふうに私どもも思って、常にその点については私どもは繰り返し繰り返し訓辞を出し、そして具体的に出張をしたとき、あるいは呼んでいろいろの問題について、繰り返し繰り返し実は注意を与えているわけであります。従いまして、今の問題は千葉の方面と伺いましたが、よく調べてみますけれども、ただ、そういうような私は気持を持っていることだけを一つ御了承いただきたいと思います。決して軽々に事をはかって、いたずらにそういうことをいたすということは毛頭考えておりませんから、その点だけは一つ御了承いただきたいと、こう思うのであります。
  68. 加瀬完

    ○加瀬完君 時間がありませんから、次に移ります。暴力犯とか、あるいは少年犯ということは非常に検察庁も重視いたしているようですが、賭博事犯に対してはどのようなものを賭博事犯の対象に現在いたしておりますか。
  69. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) 賭博につきましては、戦後若干この取り扱いが緩和されているような感じをいたしておりますが、しかし取り調べなり、あるいは検挙なり、さらに進みまして、起訴なりというものをちゅうちょしているという事情ではございません。従いまして、賭博犯罪につきましても、相当数の検挙をいたしているのでございます。
  70. 加瀬完

    ○加瀬完君 金をかけた花札やマージャン、これは賭博事犯として当然取り締まりの対象となると思うのですけれども、どうですか。
  71. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) 仰せの通り金をかけたマージャン、花札は、いずれも賭博になると考えております。
  72. 加瀬完

    ○加瀬完君 かけマージャンの取り締まりは行なわれておりますか。
  73. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) 取り締まっているはずでございます。
  74. 加瀬完

    ○加瀬完君 どういう方法で取り締まっておりますか、また犯罪として対象とする場合は、金額などはどのくらいから対象としていますか。
  75. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) これは賭博罪の規定をごらんになればわかりますが、一時の娯楽に供するという程度のものでありますならば、これは犯罪にならないはずでございまして、一時の娯楽に供するという程度のもの以上のものは、すべてこれを犯罪として取り扱わざるを得ないわけであります。そういう趣旨で取り締まっているはずでございます。
  76. 加瀬完

    ○加瀬完君 国会の政府委員室でかけマージャンが行なわれている事実を知っておりますか。
  77. 竹内寿平

    政府委員竹内寿平君) 私は刑事局長でございまして、捜査官ではございませんので、もし、そういう事実がございますならば、捜査当局にお知らせして、善処してもらうようにいたしたいと思います。
  78. 加瀬完

    ○加瀬完君 ことほどさようにかけマージャンというものは取り締まり外になっているということを私は指摘したいのです。某県の議員宿舎では花札賭博が公然と行なわれている。警察も知っているはずです。ところが、これは取り締まりをしておらない。こういう少年事犯とか暴力行為だけを取り締まっているが、有識階級というか、有産階級というか、こういう有力者といわれる筋の者の当然の犯罪行為というものを、ある程度大目に見るということは許されないと思う。こういうものを徹底的にお取り締まりになるお考えが法務大臣ございますか。
  79. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) もちろん犯罪でございますれば、徹底的に取り締まることは、これは当然でございまして、今お話しのようなマージャンとか、あるいは花札というものは、娯楽か、ほんとうのとばくか、わからないものもだいぶあるので、おそらく、これは警察本部が主としてやるわけでございます。そういう方面で扱いをされておると思いますけれども、事いやしくも犯罪である以上は、厳然たる態度をもって臨みたいと考えております。
  80. 加瀬完

    ○加瀬完君 最高裁に伺いたいのですが、今度書記官でありますか、俸給の調整額を八%か増額をいたしますね。そのしかし条件として、勤務時間の延長をおきめになっておりますね。これはどういうことですか。
  81. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) お話の書記官の待遇問題は、長年の問題でございまして、今度今おっしゃいました問題を取り上げましたのは、一つは、書記官の権限をどのように規定するかという問題とあわせまして、いろいろ検討いたしました結果、書記官につきましては、現在やっております職務のほかに、もう少し調査的な機能を加えますと同時に、裁判官の一番近くにおります、ほんとうの協力者としての体制を確立するという意味におきまして、勤務時間も四十四時間から五十二時間に延ばしまして、それと同時に、長年の懸案でございました待遇の改善、一般職に比べまして一六%の調整をつけるというところに踏み切ったわけでございます。もちろん、これは権限の問題と申し、勤務時間の問題と申し、あるいは待遇の問題と申し、いずれも問題を含んでおります。決してわれわれはこれで十分な線が出たとは思っておりませんが、しかし、諸般の事情とにらみ合わせまして、とりあえず、一歩前進という意味におきまして、今申しましたような点を総合的に考えまして予算をお願いいたし、それから権限の問題につきましては、裁判所法の改正をお願いいたし、勤務時間の問題につきましては、幸いにこれが予算通り裁判所法の改正もできました場合には、最高裁判所の規則をもちまして、勤務時間のただいま申しました延長をやりたいと思っております。
  82. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) 私からちょっと二つの点お願いと、それから御答弁願いたいと思いますが、一つは、最近右翼の人たちが、社会党に対しましても、あるいは労働組合のいろいろ決起大会だとか、あるいは集団デモなんかに、故意に、しかも他人をけがさしてもかまわないというような宣伝車あるいは自動車等の超スピードで群集の中に入ってくるというような事案がよく見られるんですけれども、そこでまあ現在の右翼の活動状況、あるいは組織の発展ということの実情について、発表できるような状況をお知らせ願えればけっこうだと思います。これは資料の問題。それから、これに対する法務大臣の御所見ですね、取り締まりをどうするか。  それからもう一つの問題は、ここに、羽田空港に対するジェット旅客機の乗り入れについて入国審査業務を適正かつ迅速にするために、入国審査官を十五名というのでありますが、聞きますところによりますと、伊丹の空港でも最近国際線が乗り入れまして、四月の一日ですか。CATが最初に入ってくるということなんですが、CATという会社の飛行機が、そうしますと、やはり向こうでも入国管理事務というものが強化されなければならないと思います。十五人ということは、この説明書を拝見いたしますと、羽田だけのようになっておりますけれども、伊丹がもし国際空港として国際線が入ってくるとすれば、それに対する入国審査官という者もふやさなければならないと思います。これはどういうふうになりますか、これは御答弁願いたいと思います。
  83. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 右翼の最近の活動につきましては、主査のお話のように、私どもの方としても憂慮しておる点がございますが、従って破防法に基づく破壊活動に該当するかいなかは、これは左翼と右翼を問わず、われわれとしては十分の調査をいたしておる次第でありますが、その取り締まりにつきましては、これは警察が第一線に当たっておりますので、警察方面ともよく連絡をとって、そういう方面については善処いたして参りたいと考えております。  なお、資料につきましては後日それでは提供いたしたいと存じます。  それから、羽田空港のジェット機の問題でございますが、これはジェット機として、特に旅客機がジェット機になりますと非常にひんぱんになりますので、この事務の輻湊を処理するために増員をいたしたのでございますが、伊丹の方面にもそういった事務が、ジェット機でなく、そのほかの原因からふえるということがあれば、現在の人でそれが間に合うかどうかということも十分調査しなければなりませんが、調査して、どうしても間に合わぬということになりますれば、新たなる予算を要求いたしたいと考えております。
  84. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 法務大臣と、それから最高裁にお聞きしたいのですが、申すまでもなく、裁判官なり検察官、いわゆる司法官の優秀な者をいつも置いておかなければならぬということはまた当然ですが、最近司法官の希望者が非常に少ないとか、もう一歩進んでは優秀な者がこないということが新聞等にも見えるのですが、この実際の状況はどういう趨勢になっておりますか。
  85. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 司法官並びに検察官、弁護士、この三者が司法修習生として志願しておるわけでございますが、数はそう減っておりません。また、質も決して落ちておるとは思いませんが、その中に弁護士になりたい者、検察官になりたい者が少なくなってきたとかいう傾向はございます。これはみずからその仕事自体をよく理解しないために、そういうふうな傾向があるということが認められてきておりますので、試験制度等につきましても十分考えて参りたいというふうに思います。
  86. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 もう少し資料的なお伺いをしたいのですが、法務大臣がお忙しければ……。それでさらにお伺いいたしますが、在職の者が懲戒処分とか、あるいはまた定年とかいうようなのはこれは別問題です。そうでなく、自己の便宜のためにやめるとかいうような者の趨勢は最近はどうなっておりましょうか。
  87. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 司法官志望者が少なくなって、また、いい人がこなくなるのじゃないかという御心配でございますが、確かにただいま法務大臣が申しましたように、相当数の志望者はございますが、やはり従前に比べますと、裁判官あるいは検察官になる人が、多少減っておるということは、傾向としては言えると思いますが、しかし御心配になるほどの変化はございません。やはり相当優秀な人が裁判官志望をいたしております。現に、御承知の、司法修習生の最後の試験をやっておりますが、これなんかを見ましても、かなりいい人が裁判官を志望いたしておるようであります。  それから、いい人がやめていくという点も、やはりある一つの傾向といたしまして、若干見られるように思います。特に、割合若い優秀な人が、若干弁護士に変わっていくというような傾向がないではございませんが、これも、やはり傾向の問題でございまして、今のところ、そう憂慮すべきような状態ではないと思います。ただしこの点は、今後そういう傾向がだんだん激しくなりますれば、ゆゆしき問題でもございますので、この裁判官の採用並びにその養成ということにつきまして、今後も万全を期して参りたいと思います。
  88. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 もう少し、検察官あるいは裁判官の志願者の数とか、採用の数とか、あるいはその比率の傾向を資料によって承知いたしたいと思うのですが、ただいまも法務大臣からお話があったようですが、裁判官等をやめて、弁護士になる人が非常に多いというようなお話でございましたが、これは、はたしてどういうような実態になっておるのか、またはたして、そうであったとすれば、その理由は、どこにあるのか、ごくしろうと考えに考えるというと、非常な激務であって、それに報いるところが少ないのだというようなことで弁護士になる人も、相当あるのじゃないかと思われます。もちろん弁護士がよくなるということも、これは決して悪いことじゃなく、望ましいことですが、しかし関係の人が、全部そろってよくなることを希望するわけなんです。  そういうような、何がゆえにそう志願する人が、大体においてふえないとしても、世間で優秀な者が、裁判官なり検察官になっている人も、また弁護士になるのだというようなことが、少しでも、そういうような形勢があるとすれば、その理由はどこにあるのか、抽象的でけっこうですが、承知したいのです。
  89. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 私からばく然としたことを申し上げますよりも、人事局長が参っておりますので、そちらから、やや具体的にお答申し上げます。
  90. 守田直

    最高裁判所長官代理者(守田直君) ただいまお尋ねのありました裁判官で退官する者のうち、定年、死亡によらない依願によって退官する者の数でございますが、これは大体、年間二十名程度でございます。それから司法修習生から判事補になる者の数でございますが、これは昭和三十三年度は五十名でございます。三十四年度は大体七十名、ことしは目下約九十名ほど判事補になることを志望いたしておりますが、しかしその中に、弁護士事務所にきまるのを待っているというような人も含まれておりまするので、大体八十名程度になると、こういうふうに考えております。  なお参考までに申し上げますと、昭和三十五年度における判事でもって、定年で退官する者が約二十五名、簡易裁判所判事で定年で退官する者が、ほぼ同数になっております。  それから申し落としましたが、司法修習生は三百名を少しこえる程度でございますが、その修習生から約九十名しか志望をいたしていないということは、これは、やはりその根本的な理由は、裁判官の報酬が、弁護士の収入に比較いたしまして少ないということが一つ。もう一つは、裁判官は、やはり裁判所が北海道から九州の果てまでたくさん存在する、その各裁判所に、それぞれ転任していかなければならないといったような関係で、その転任をきらうという点などが主たる理由であろうかと思われます。特に裁判官の仕事に嫌悪を感じて志望しないというような傾向は見当たらないというふうに考えます。
  91. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 裁判官とか検察官とかいうものを、できるだけよくするには、しじゅう不断の努力を払われておると思うのですが、他の公務員との関係等も、まあ規定の上においては、それぞれ皆平等にやっておると思うのですが、実際の仕事と、それに対する報いというものを考えるというと、はたしてどうなっておるのか、さらにまた民間会社——これは直接比較はできぬと思うのですが、そういうようなものとの大体抽象的の見方においても、非常に劣っておるというようなことがあったら、これは大きな問題だと思うのですが、これはまあ、きわめて抽象的ですけれども、その辺についてのお見通し、御見解をお聞きしたいと思うのです。
  92. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 裁判官の待遇を改善いたしますことは、非常に大事なことでございまして、新憲法下におきまして裁判所が発足いたします当時は、これは占領軍のおった関係もございますが、ほかの一般行政官に比べましては、かなり高いところで給与がきまっておったのでありますが、その後次第に一般公務員の給与が上がりますに反しまして、裁判官の方は、それほど変化がないというようなことで、実質的には、だんだん優位性というものがくずれて参ってきたのでございます。  一方におきまして、裁判官の一番いわば上位に位いたしまする最高裁判所長官、最高裁判所判事、あるいは高等裁判所長官というような、いわゆる認証官のランクが、総理大臣国務大臣というようなところに大体右へならえをしております結果、下の一般裁判官も、それに牽制をされまして、それ以下でなければならぬというような形になりますので……、ところが総理あるいは国務大臣という方は、なかなか給与は上がらない、いろいろ遠慮しておれるような面もありますが、従って最高裁判所長官も、あるいは裁判官も上がらない、そこで頭打ちになりまする結果、ここで画期的な報酬の給与の改善ということは非常に困難な状態にあるわけでございます。現在は、御承知管理職手当というものを裁判官にも少しずつつけるようになりまして、いわば糊塗的に、一般行政官に対する比較的に下がって参りましたその報酬額を、何とか調整をしてやってきておるというような状態でございますので、これはやはり、裁判官の報酬というものをもう一ぺんよく考え直していただきまして、全体的に、その給与体系というものを考え直さなければならないのではないかというふうに実は考えておるわけでございます。  しかしこれは、なかなか大問題でございまするし、結局国家の予算の問題とも関係がございますので、それをどういうふうに実現いたすかということに対しましては、実は非常にわれわれも苦悩をいたしておる次第でございます。しかし、これは、中央制度の確立のために、何とか解決をしなければならぬことでございますので、その点につきましては、われわれ最高裁の事務当局の者といたしまして、いろいろ今後も鋭意検討して参りたいと考えております……。
  93. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  94. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) 速記をつけて。
  95. 一松定吉

    ○一松定吉君 一つお尋ねしますが、裁判官の待遇をよくして、裁判官志望者を多くして、裁判官の欠員をなからしめて、裁判官の威信を高めるということで、ちょうど片山内閣のときに、あなた御存じでしょうが、そのときに、これは上がったんですよ。そうして他の公務員よりも、ずっと待遇がよくなったわけです。大臣と同じにしたんです。ただし護衛をつけぬということだけが大臣と違ったところで、あとで全部同じにした。  しかるに、その後、今あなたのおっしゃるように、だんだん普通の公務員の方が、いろいろな名前をつけて次から次に給与を多くしてしまって、それがために、また一面には、国務大臣が自分らの俸給を上げることを遠慮したとかいうようなことのために、判事俸給がやはり依然としておったために、他の公務員と比較して、公務員の方が、どうかというといろいろな名前をつけて給与が多くなったというような結果、こういうことになったということは、われわれ、はなはだどうも慨嘆にたえないのです。そういうようなことをあなた方は知っておるんだからして、これは予算の要求を、あなたの方がかくかくの事情だからということで、予算編成のときに、そういう方面に努力をして、他の公務員より以上にやっておけば、裁判官というものの希望者も多くなるし、また裁判官になる人に、優秀な人がなる。従って裁判官の威信ということが高まる。従って国民は、皆裁判官に信頼をする。たよるべきものは裁判官というようなことになるのです。そういうことを——われわれも遠慮しておりますが、苦悩を感じております、なんというようなことでなくて、実際に実施すべく努力しなければいかぬでしょう。そういうことをなさいましたか。
  96. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 大へんおしかりを受けて恐縮でございますが、実は、今までもいろいろいきさつがございまして、われわれといたしましては、その程度のことしか現在までいたして参りませんのでございますが、やはりこれは御承知裁判所予算につきましては、いわゆる二重予算の制度もございますので、この際、そういう点を考えまして、皆様の御納得のいきますような、裁判所といたしまして自信のある案を立てまして、それをもって、大蔵当局とも折衝いたしたいというふうに考えておるわけでございます。  ただしかしながら、いわゆる二重予算ということは、言うべくしてなかなか困難な面があるということは、われわれもよくわかるわけでございますが、しかしいつまでも、この状態でおりましても、結局は、わずかな操作ということで終わってしまうおそれもございますので、この点は、ただいま非常に御同情のある御発言がございましたが、われわれもよく考えまして、相当決意を固めて、今後の体制を立てていきたいと考えております。
  97. 一松定吉

    ○一松定吉君 そこで、今までは恩給年限が国務大臣は七年だということであって、最高裁の判事諸君も、七年たてば恩給になるというようなことにしなければいかぬと、そうすれば、弁護士から最高裁の判事を希望してくるような者も出てくるからというようなことで、あなた方も鋭意努力しておった、ところが恩給年限について、今日そういうようなことがなくなってしまった。そこで、何とかこれは、ほんとうにしなければならぬのであって、急速に、そういうことを一つ実施すべく努力すれば——国会議員も、最高裁の待遇をよくするということに反対しておる者も、おそらくないでしょうから、そうして、そういうようにして、法曹一元化というものが実現されて、裁判官ならおれもなる、おれもなるというようなことにすることによって、裁判官は、国民の信頼を得て、たよりにするのは裁判官だということにしなければならないから、それらはぜひ一つ、あなた方の事務の方にお携わりになっておる方も、最高裁判所長官や、その他の者ともよく練って、それをお出しになれば、おそらくこれは反対する者はないと思いますから、ぜひ一つ急速に、これは実現をなさるように、特にお願いをいたします。  これは私ども、あのときに、どうかというと、非常に努力して、その結果実現したのが、今のようなことになったのですから、これは、はなはだどうも遺憾にたえないのです。日本国家のためにぜひ一つ御努力相なりたいことをつけ加えてお願いをしておいて、再質問を終わります。
  98. 加瀬完

    ○加瀬完君 今の一松先生のお話の筋からいえば、先ほど総長は、待遇改善の意味もあって、八%の調整額を加えるというのでしょう。それならば、四十四時間の勤務を五十二時間にするということではないはずですね。待遇改善をするというなら、勤務時間をそのままにしておいて、待遇改善の八%を乗せなければ、待遇改善にはならない。で、少なくも、裁判所は、国の法律上だれよりも一番保護する立場にあるのですね。人事院の規則の十四条ですか、「職員の勤務時間は、休憩時間を除き、一週間について四十時間を下らず四十八時間をこえない範囲内において、人事院規則で定める。」とあるわけです。それを五十二時間なんというきめ方を裁判所がするということはおかしいじゃないですか。  あなた方の先ほどの説明を聞いておると、これは人事院というものは、最高裁判所と読みかえることができるから、最高裁判所で、特別の体系を作ってもいいのだといいますけれども、人事院規則というものがあって、一般の公務員は、少なくもその四十時間から四十八時間という間で、勤務時間数というのが制限されておる。ワクがはめられておる。それで裁判所だけですよ、むしろこれを一番遵法しなければならない裁判所が、裁判所だけ、それを五十二時間というふうにきめるということは、これは八%調整額を増加したことにならない。それほど仕事がたくさんあるというなら、これは人員増加すべきだ。裁判官の問題もありましたが、裁判官の当然の補佐役である調査官とか、書記官とかいうものは、やはり裁判というものを重視するということからすれば、これはやはり裁判官に準じて、仕事が多いというなら、その待遇を与えてやるのが当然なんだ。勤務時間というものは現状のままにしておいて、八%の調整額というものを新しく加える、こういうことにとどまるべきだと私は思うのです。  待遇改善、あなたの御説明だというと、一つも待遇改善になっておらない。この間を、どう御説明なさるのですか。
  99. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) まことに御指摘のように、わずか八%上りまして、それに対して勤務時間が相当延長いたすという点だけを捉えますと、まことにおっしゃる通りの、十分な待遇改善とは申せないのでございますが、ただいま、御承知のように裁判所は非常に事件が殺到いたしまして、訴訟の遅延ということが、これは非常に重大な問題になっているのであります。その意味におきまして裁判官は、ほとんど昼夜兼行で非常な努力をいたしておるわけでございます。その裁判官のいわば手足とも申すべき書記官、調査官という者につきましては、やはりこういう裁判所の実情に即しまして、かなりの勉強をしてもらいたいということが一つでございます。それには、もちろん勤務時間を延長するということも、ほかに職員増員いたしまして、その緊急の状態に対処するということも、もちろんわれわれとしても考えておりますし、今回の予算請求の中にも、いわゆる第一審強化の線といたしまして、書記官、書記官補その他数百名の職員増員の要求をいたしたのでございまするが、この増員の点は、ごくわずかなものが、調査官などにおいて認められましただけで、ついに目的を達することができなかったわけでございます。  これはやはり、われわれの努力が非常に足りなかったことを遺憾に思うわけでございますが、しかしともかく、この増員は、また将来の問題に残しまして、少なくともこの長年問題になって参りました書記官の権限の拡張、それから現在の実情に即しました勤務体制をとるということと、号俸調整を、不十分ではございますが、これだけのものをつけるという、この長年の懸案を、この際まず解決いたしまして、これを土台にいたしまして、また将来のいろいろ対策を考えて参りたいというわけでございます。  まことに、皆さま方からごらんいただきますと、いかにも不十分な点が多多あると思いますが、一応、この線で発足さしていただきまして、なお引き続きまして、将来の、書記官の権限問題が、まだ中途半端でございまして問題が残されております。勤務時間につきましても、やはりこれを延ばすということは、何と申しましても一般の大勢には反することではございますし、待遇につきましては、先ほどから申しましたように、はなはだ不十分でございますが一応、これで発足さしていただきたいというふうに考えております。  先ほど、裁判所の、最も法律を守らなければならない裁判所が、先に立って勤務時間の延長をするとは何事であるかという仰せでありますが、これは、われわれといたしましては一般職の中の保安関係、すでに検察事務官等に、その例がございますが、そういう特殊なものにつきましては、時間を延長いたしますことは、これはさかのぼりますれば、労働基準法の精神にも反しないことでございますし、また一般職につきましても、そういう特殊の職につきましては、時間の延長が認められて、これも人事院が認めて、そういうふうにしております。その線にわれわれも沿っているわけでございまして、裁判所だけが、特にとんでもないことを考え出したというふうには私は考えておりません。  まあ、いずれにいたしましても、はなはだ不十分であるということはただいま御指摘の通りでございます。
  100. 加瀬完

    ○加瀬完君 先ほど、私がちょっと例にあげましたのは、違いますから訂正いたしますが、一般職の職員の給与に関する人事院規則ではありませんで、一般職の職員の給与に関する法律の第十四条は、ご存じの通りこれは裁判所は、特別な条件を許されてはおりますが、勤務時間というのは一般の傾向として、だんだん短縮の方向に世界的にもあるわけです。そこで一般職の職員の給与に関する法律で、一応の大本の基準があるわけですから、勤務時間の延長されている裁判所関係、あるいは司法関係職員も、だんだんこれに近づけてくるように、これは配慮するというのが私は当然だと思う。法律の中でできるからといって、四十四時間を五十二時間とするというのは、時代逆行ですよ、これは。  それから権限の拡張をしたから調整額を上げるというのは、権限の拡張という新しい任務によって、調整額をつけたというならば、これは何も勤務時間に触れる必要はない。これで出発をしたいといったって、五十二時間の勤務を八%の調整額ということを見合いにして、最高裁で関係の書記官、調査官は任務についておるのだという実例をここに示せば、来年度大蔵省に要求したって、五十二時間で八%という、このバランスをくずして、人員強化しようという形には、来年は認めてくれませんよ。  なぜ、一体一億九百万円ですか、一億九百万円を八%というものに使わないで、この人員増の方に使わなかったか。むしろ、仕事が非常に輻湊しておって、事務が停滞しておるというなら、勤務時間だけふやしたって、能率には限界がありますよ。人員をふやして、人員によって能率をあげるという形を私はとらなければならない。  それから裁判官が、非常に忙しいと言いますけれども裁判官には宅調というものがありましょう。ですから役所に出て、四十八時間も五十時間も勤めっきりでおらなくても、宅調という方法がありますから、幾らかこれは加減ができる。ところが一方の補佐の任に当たる書記官や調査官は、ぎりぎりかっちり五十二時間を勤務するということは、容易なものじゃないと思う。これをきめろと言ったって、こんなばかなことを、簡単にはわれわれ認められませんよ。今ですね、勤務時間をふやすなんということが、ほかの官庁にございますか。八%調整額をつけたということはけっこうですよ。しかしそれに見合って、新しい職務権限ができて、新しい義務が生じた。そのほかに、さらに四十四時間を五十二時間に勤務時間を延長するということは、時代逆行もはなはだしいと私どもは考える。  これを総長は、御修正をなさる御意思はありませんか。勤務時間を五十二時間だなんて、こんなばかなことは、一応取りやめるという意思はございませんか。
  101. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) この点は、われわれといたしましては、いろいろ考えました結果出た線でございまして、結局全部が、これは一丸となりました——一貫して考えました結論でございますので、結局全部、この調整ということをあきらめまして……。またあるいは、この諸条件のもとに調整をつけるという、この二者のほかには考えられないのでございまして、われわれといたしましては、ぜひともこの線は、堅持いたしたいと考えております。
  102. 加瀬完

    ○加瀬完君 今、人員要求をしたけれども、けられたと申しましたね。そうすると、三十六年度以降、人員要求をして、勤務時間の延長というものは、だんだん元へ返していく御意思はありますか。
  103. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) その点は、人事局長から……。
  104. 守田直

    最高裁判所長官代理者(守田直君) こまかくなりますので、私から御説明申し上げます。  裁判所書記官の権限の一部を拡充いたします法案は、現に今国会に提案されております。いずれ御審議を願うと思いますが、この改正法案は、実は裁判官が現在一生懸命やっておりますが、何しろ、事件が相当数増加いたしておりますし、しかも、その事件内容は、非常に複雑困難になって参っておりますので、裁判官が一生懸命やっておりましても、なかなか思うようにはかどっていかない、むしろ事件は渋滞しつつあるのであります。これでは、裁判所として、国民に負託されました責務を果たすことはできないというわけでございます。  一方におきましては、裁判官増員すればいいじゃないかということが、当然考えられるわけでございますが、御承知のごとく裁判官の補充を求めるには、実に在野法曹から、これを求めるほかはないわけでございますが、ただいま申し上げましたように、裁判官の報酬を弁護士の報酬と比較しますというと、裁判官の報酬の方が、だいぶ低いというような事情並びに現在の弁護士事務所におけるあり方、すなわち法曹一元をとっております米英における弁護士事務所は、みな合同事務所になりまして、弁護士から裁判官に転出するのが非常に容易になっておりますけれども、日本の弁護士事務所は、そうなっていないというような事情から、定員を相当数ふやしてもらっても、おいそれと急には解決できない。  一方裁判所人権擁護の様子は、今申し上げました通りでございます。反面におきまして、書記官につきましては、昭和二十三年に、最高裁判所に書記官制度調査委員会というものができまして、そこに裁判官、検察官、弁護士及び書記官、これらからの委員が出まして、そしていろいろ検討いただきました結果、昭和二十四年度に裁判所書記官研修所というものを設立いたしまして、自来十年間、書記官の養成に努めてきたのでございます。その結果、非常に書記官の質も向上いたしましたし、能力も非常に充実いたして参りました。書記官の面からいたしまして、ぜひ何とか、権限を一つ拡充してほしいという要望が、ここ数年来非常に強く叫ばれてきたわけであります。そういった関係から、どうしても裁判所の現状と、それから書記官の希望とを一つにしまして、権限を拡充して、同時に、現在の裁判所の渋滞面を解決するために、勤務時間の延長ということが必要になってくるわけでございます。
  105. 加瀬完

    ○加瀬完君 権限を拡張して、新しい義務が生じたのだから、八%の調整額をつけるということならばわかるというのです、私は、さっきから。書記官や調査官が、だから四十四時間の勤務を五十二時間に延ばして下さいという要求は、おそらくないと思う。権限を拡張したということと、勤務時間をふやすということは、つながりませんよ。明敏なあなた方がお考えになっても、すぐわかることです。つながりませんよ、どんなに長々と御説明されても。渋滞をしているのを、裁判官をふやせない、だから書記官や調査官のなれたところで、これをよけい働かせて渋滞を何とか解決しようということは労働強化以外の何ものでもありませんよ。なぜ人員増加しないのか、将来、人員増加する考えがあるかといえば、その質問に対して、今のような答えしか出ない。これは総長、あなたは、一体四十四時間を五十二時間に勤務時間を延長するというふうな、幾ら法律できめれば、できるからといって、こういう時代に逆行するようなやり方をして、これで超過勤務も、実質的な超過勤務になりますから、当然事務も、限界がありますから、勤務時間だけ延長したって四十四対五十二という割合には、能率が上がりません。そのときには、一体どうするのですか。それじゃ解決できない問題が、これじゃ残るのです。だから待遇改善待遇改善、権限拡張したのだから、それで八%の調整額をつける。ことしは仕方はないけれども、来年度以降は、人員増加して、延長した勤務時間を縮減、もとに戻すように縮減するように考えるというならば、一応われわれは、それならば首肯できる。しかし当然のような御説明ではおかしいですよ、これは。  秋山委員が一つ質問をしますから、私は、これだけの要望を申し上げて、質問をやめます。
  106. 一松定吉

    ○一松定吉君 ちょっと関連して、一問だけ……。  私、加瀬君の質問は、ごもっともだと思うが、あなた方の答弁が足りないよ。それだから、加瀬君がああいう質問をするのは、当然だと思う。  こういうことじゃないですか。書記官だとかいうようなものは、一つ仕事をするについて、その仕事を自分が継続してやらなければ、他の者に、それを途中から渡してやらせるというようなことは、これは人権に重大な影響のあることですから、できないのだ。ほかの者に、すぐに交替させてやらせることができないから、一人の者が連続してやらなければならぬ。それをやるについては、なるたけ権利関係を迅速に解決する意味において、一人の人が長く勤務せしめなければならぬのだ。そういうことによって、人権の保護ができるのだ。従ってこれらの者に対して待遇をよくしなければならぬ、時間の延長もしなければならぬのだ、こう説明すれば、加瀬君の疑問も、おそらく解けると思う。それを、なぜ人員をふやしてやらせないかというと、それはできない。一つの人権に関係ある仕事を、あの者がやりこの者がやる、人ばかりふやして、それをやらせるようにしてやるということは権利関係を迅速に確定する上において、できないから、やむを得ず、こういうことをやらせなければならないのですというお考えはないのですか。それがあったら、それを加瀬君にお答えすれば、なるほどそうかと加瀬君は賛成してくれると思う。あなたの答弁は、その点が抜けていると思う。  私は現に、裁判官もし、検事もし、弁護士もし、しかも国会議員もして、加瀬君よりはよく知っている。加瀬君は、政治家であって、りっぱな元は教育家である。だから、そういう実際がわからぬのだろうと思うから、あなた方で、そこを説明して、なるほど時間をふやさなければいかぬのだということを、加瀬君が理解して、それ以上に、追求はなさらないであろうと思うが、それはどうですか。
  107. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  108. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) 速記を始めて。
  109. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) はなはだ説明が拙劣でありまして、十分におわかり願えなかったと思いますが、先ほど、書記官は裁判官の一番身近な協力者だと申しましたことは、やはり書記官の仕事というものが、裁判官に即してずっとなされる。先ほど、人がかわらないというような例をお引きになりましたが、確かに、そういう面がございます。  現在たとえば刑事裁判所におきましては、開廷時間の励行というようなことを、非常にやかましく申しまして、午後の時間は、五時まで法廷をやろうというようなことをいたしております。この五時と申しますのは、結局五時が過ぎて、すぐに家へ帰るというわけではないわけでございます。そこに、やはり法廷に書記官の立ち会います際には、裁判官と同じ態勢をとらなければならない。これは、ほんの一例でございますが、書記官の仕事は、やはり、そういうような裁判官の仕事と非常に密接な関係があるわけでございます。  その意味におきまして、はなはだ勤務時間を延ばすということは、確かに問題ではございますが、現状を考えまして、ぜひこの際、そういうふうに踏み切りたいということでお願いいたしておるわけでございます。  増員の点でございますが、私は実はまだ裁判所に参りまして、わずかに二年でございますが、私が参りましてから、裁判所事務量と申しますか、やはりこれが基準になります裁判官の数だとか、書記官の数というものが出て参るわけでございますが、事務量は、なかなか把握しにくいのでございますが、これをできるだけ現状に即しまして、いろいろな裁判所から材料を集めまして、現在いろいろ考えておるのでございますが、それを基礎にいたしまして、どうしても、これだけの人は要るのだという線を出して、大蔵省と折衝する必要がございますので、現在その点を、いろいろやっているわけでございます。  先ほど増員をやったらどうかということは、確かにそれも一つの方法でございまして、われわれといたしましては、もしここに、ある皆様の御納得のいくような数字が出ました場合には、あくまでその数字を基礎にいたしまして、いろいろ増員なり、その他の点も折衝して参りたいというふうに考えているわけでございます。この今回のは、たびたび申し上げますが、はなはだ不十分ではございますが、ぜひこれでもって、一応発足さしていただきまして、定員の問題その他、いろいろ懸案はございますが、それは一つ、われわれの今後の努力によりまして、逐次一つ一つ解決していきたいというふうに考えるわけでございます。  はなはなだ説明が拙劣でございまして、恐縮でございますが、私の本当の気持は、そういうところにございます。
  110. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  111. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) 速記を起こして。  それでは、最高裁判所及び法務省所管に関する質疑は、まだ残っているようでございますので、二十八日午後一時から、第一分科会を開会することにいたしまして、本日は、この程度にて散会したいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  112. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) それでは、そういうことにして、散会いたします。    午後一時一分散会