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1960-03-30 第34回国会 参議院 予算委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月三十日(水曜日)    午前十時十七分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小林 英三君    理事            大谷藤之助君            佐藤 芳男君            館  哲二君            西田 信一君            鈴木  強君            松浦 清一君            千田  正君            大竹平八郎君    委員            泉山 三六君            太田 正孝君            木暮武太夫君            小柳 牧衞君            重政 庸徳君            白井  勇君            杉原 荒太君            手島  栄君            苫米地英俊君            一松 定吉君            堀木 鎌三君            武藤 常介君            村松 久義君            村山 道雄君            湯澤三千男君            米田 正文君            荒木正三郎君            加瀬  完君            佐多 忠隆君            永岡 光治君            羽生 三七君            平林  剛君            藤田  進君            松澤 兼人君            東   隆君            相馬 助治君            牛田  寛君            辻  政信君            加藤 正人君            岩間 正男君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    文 部 大 臣 松田竹千代君    厚 生 大 臣 渡邊 良夫君    農 林 大 臣 福田 赳夫君    労 働 大 臣 松野 頼三君    国 務 大 臣 菅野和太郎君   政府委員    法制局長官   林  修三君    経済企画庁調整    局長      大堀  弘君    外務省条約局長 高橋 通敏君    外務省移住局長 高木 広一君    大蔵政務次官  前田佳都男君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    文部省初等中等    教育局長    内藤誉三郎君    厚生大臣官房長 森本  潔君    水産庁長官   西村健次郎君    水産庁次長   高橋 泰彦君    通商産業政務次    官       内田 常雄君    労働省労政局長 亀井  光君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十五年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 小林英三

    委員長小林英三君) これより予算委員会を開会いたします。  昭和三十五年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三件を一括して議題といたします。昨日に引き続き、質疑を続行いたします。牛田寛君。
  3. 牛田寛

    牛田寛君 初めに岸総理大臣にお尋ねしたいのですが、三池争議が周知の通り非常に混乱の状態でございます。昨日も当委員会で問題になったのでございますけれども、何とか収拾の道へ持っていきたいという総理のお考えはございましたけれども、現状をどうするか、具体的な明示はなかったようでございます。また厚生大臣お話では煮つまるのを待ってというようなお話もございましたけれども、けさの新聞報道によりますと、第一組合組合員一名が殺されているというような事件が起こっているわけでございまして、これは非常に大きな日本の社会問題であり、また外国に対しても日本の恥であると思うのでありまして、これを具体的に実際に今どのように早急に収拾していくか、この点についてまず総理大臣のお考えをはっきりとお答え願いたいと思うのであります。
  4. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 三池労働争議状況に対しましては、私も非常に従来から心配をいたしておるのであります。正常な形においてこれが平和的に解決するようにということを常に念願をしており、非常の事態が発生しないようにあらゆる面で注意をして参ってきたのであります。一昨日並びに昨日はついに死者も出したという事態でございまして、昨夜おそく労働大臣とも打ち合わせをいたしまして、とにかく事態をこういうふうな激化させる方に持っていくことは適当でない、どうしても冷静に第一組合及び第二組合、さらに労使双方の間においてこの事態収拾するために冷静な状態を作り、暴力ざたを絶対に起こさしめないように処置する必要があると考えまして、労働大臣より組合使用者側に対してそれぞれこの意向を伝えまして、特にこういう事態を冷静にせしめるために、本日においては就労の強行を取り控え、そうして事態収拾に当たるようにということについて警告を出したわけであります。昨日も申し上げておりますように、問題は、中労委労働者側からあっせんの依頼が出ておりまして、中労委中心となって事態収拾についてあっせんをするように乗り出してきております。この労使双方関係に、労働争議政府自体が直接に介入することは、これは従来からも堅持してきております不介入の態度をとるべきである、しかし今の事態そのものを激化しないように、とりあえずわれわれは労使双方に対して、先ほども申し上げましたような警告をしたわけであります。しかし事態そのもの収拾につきましては、中労委あっせんの進め方を見て、そうしてこれによって私ども平和的に収拾されることを実は念願をいたしておるのであります。事態そのものを激化せしめず、また事態を平和的に解決するためには、今申しましたように、労使双方ともに冷静に立ち返ることが必要である。また労働組合以外の暴力的な第三者介入のごときはこれは厳に私は取り締まるべきものであると、かように考えまして、治安当局ともその点については十分今後に遺憾なきょうに処置していく考えでございます。
  5. 千田正

    千田正君 関連して。今総理大臣は第三の暴力に対する問題についてお答えがありましたが、総理大臣は、岸内閣の使命というものは三悪追放である、しかもそのうちの一つとしての暴力はあくまで徹底的に追放しなければならないということをしばしば国民に向かって声明されております。今度の三池炭坑中心にして起きたこの不祥事は、労働組合同士の問題ではなくして、逆に第三の暴力がその間に入ってきて、そうして殺人事件まで起きておる。こういう問題は私はただ等閑に付すべき問題ではなく、一片の声明において行なうべき問題ではなく、厳重にそれこそ処分しなければならないと私は考えます。その点において、もう一度明確に総理大臣の所信を明らかにしていただきたい。
  6. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今の牛田委員の御質問お答えをいたしたのでありますが、今千田委員の御質問お答えをいたしたのでありますが、今千田委員お話のように、で私は、労働組合あるいは労使の間におきましても、いかなる意味においても、争議においても暴力を用いることは許されないのでありますが、いわんや第三者暴力的な団体がこれに介入するというがごときことに対しましては厳重にこれを抑制する必要がある。まあ今回の発生しました暴力の行為につきましては徹底的に実情を調査いたしまして、これらの何に対しましては、そういう暴力を用いた者に対しましては法によって厳重に処断して、そうして暴力介入をなくするようにすることは、私のかねての念願でもございますし、今回の事件に対しましては、特にその点留意するつもりでございます。
  7. 辻政信

    辻政信君 関連。今、千田委員から関連質問がありましたが、こういう事態を見て、労働大臣公安委員長も涼しい顔をして東京にいることはおかしい、なぜ現場に飛ばないか。現場収拾が一番大事で、口先の答弁で解決できるような事態ではない。血を流し死人を出している。アデナウアーにきょうの午後お会いになるそうですが、ドイツにはこういうことは起こっておりませんよ。日本の恥と思うなら、なぜ大臣みずから現場に飛んで現場の処理をおやりにならないか。
  8. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろんこの問題の処置につきましては、先ほどお答え申し上げましたように、私ども事前において、できるだけ情勢を把握してこれに対処するように、労働省もあるいはまた公安委員会委員長等におきましても考え処置しております。そうして現地においてはそれぞれの機関がございまして、現在までのところそれに指令を出して、取り締まりは十分であると考えておったと思います。しかし、辻委員お話のような点もございますから、さらに主管大臣としましては、十分一つ事態収拾に最善を尽すように私からも話をいたしまして、万全を尽くすようにいたしたいと思うのでございます。
  9. 牛田寛

    牛田寛君 ただいま万全を尽くすというお話でございましたけれども、実際現地には組合員以外の者が多数入り込んでおります。それがこのたびの不祥事を起こした根本原因になっていると思います。この点は、もう争議状況労働争議の範囲を越えて一つの暴動化しているような形が出てきていると思います。この点総理大臣に、もう少し強力な措置をとっていただかなければならないと私は思うのであります。現に事件が起こっているのでありまして、組合員以外の第三者が入り込んであのような騒ぎになっていることを、具体的に現在どのように措置をとって、どのように進行しているか、これが全国民の関心の的だろうと思います。各家庭々々の中に入り込んでいる、そうしていろいろな問題を起こしてくる、これは人権侵害でもありますし、家庭を破壊していくことにもなるのでありますから、これは国民としてこのままに見過ごすことはできないと思うのであります。この点具体的に実際に今どういうふうに措置がとられるのか、どのように事件がおさまりつつあるのか、この点をこの機会に明らかにしていただきたいと思うのであります。
  10. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 具体的の措置につきましては主管大臣がちょっとおりませんので、私もまだ具体的にどのような措置をとっているかということは申し上げかねますが、しかし事態に対して、とにかく労使双方注意を喚起するとともに、今日あの事態を起こしております強制就労のことを、とにかく事態を冷静にするまで取りやめるようにさせております。従って、あと現地における、あるいは家庭における平和な生活そのものを脅かすような事態に対しましては、治安当局も十分これに対して措置を私はいたしていると、かように思います。ただ具体的にどういう処置をとっているかということになりますと、ちょっと私としては、具体的には今ここでは申し上げかねますが、さらに主管大臣より詳しくお答えすることにいたしたいと思います。
  11. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 関連三池問題について関連をしてお尋ねをいたします。きのう政府がとられた処置、平静な事態を招くために強制労働就労を一時見合わす、そういうふうな意向労使双方に伝えられた、こういう新聞記事があり、ただいまは総理大臣からそういうお話がありました。私はこの措置は賢明な措置であると率直に思います。しかし、問題は、今中労委がこの問題を平和的に解決したいという努力をしておりますので、新聞報道では一日だけというふうに限定をして、そうして強制就労の問題を一日延期する、こういうような方針のようですが、それでは私は不十分である。やはり中労委解決案を出すその時期までは少なくともそういう平静な事態を招来するように、労使双方とも平静な状態が続けられるような措置をすべきであるというふうに私は考えるのです。  それからもう一つは、この暴力団介入の問題です。ただいま総理大臣はこれについては十分な措置を講ずる、こういうお話でありましたが、きょうの新聞を見ると、警察当局も相当大きな手落ちがあったということを認めております。この問題を治安当局は軽く見ておったんじゃないか、そういうふうに思われる点があります。従って今後の事態に処して、再びこういう事態が起こらないようにするために、具体的な、どういう措置をとられるか、暴力団に対してどういう措置をとられるか、具体的な方針がなければ、また不祥な事態を繰り返すおそれがないでもないと私は思うのです。  それからもう一つ、これは新聞報道ですからよくわからないが、暴力団会社側とが関係がある、会社側暴力団を要請したのじゃないか、こういう報道もされているわけなんです。こういうことは万々あるまいと思いますけれども、これは私はそういうことがあれば非常に重大な問題であると思いますので、この問題について、もし政府の方に情報等があれば御説明を願いたい。しかしこの問題については、十分私は想像をし得る、予想し得る問題であるので、そういうことのないように、これは政府としても十分注意使用者側に喚起しておく必要があるのじゃないか、かように考えます。その二点について一つ説明を願いたい。
  12. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 使用者側暴力団との関係があるのではないかという御質問でありますが、私どもそういう何らの情報を得ておりません。しかし今回の、先ほどお答え申し上げましたように、暴力団が、第三者介入して、こういう事態を起こしたというこの現実の事実を十分に究明して、その責任を明らかにし、またそういうことを行なった者に対しましては、法で厳格に処罰することは当然でありまして、またそれが介入するに至った事情等につきましても十分究明をいたしまして、将来そういうことの根源を断つようにいたしたいと思います。ただ治安当局の、警察当局等処置において、はたして遺漏なかったか、あるいは遺憾の点があるというような点に関しましても、十分事情を調査の上、処置をいたしたいと思います。ただ、御承知のように、私は警職法の改正のときにも申し上げたのでありますが、事前にいろいろの取り締まりをするということがらにつきましては、現在の警職法ではなかなかむずかしいことがあることは、これは私どもいろいろと警察官の行動を聞いてみますというと、無理のないところもあるように思います。しかしながら、こういう暴力的な地方の治安にまで及ぼすようなことにつきましては、私は相当立ち入ってやはりこれを防止するようにいたさなくちゃならぬ、かように思っておりますので、十分事情を究明いたしました上においてこれが処置をいたすつもりでございます。  この強制就労の点につきましては、実は非常にこれを就労させることは相ならぬとかいうようにいきますというと、政府が、正当に使用者と第二組合との間に、労働組合との間に結ばれている正当な法律関係介入することになるのでありまして、その辺のこともやはり政府としては考慮しなければならぬ、しかしこういう事態現実に起こっておるのをそのまま放任するということはできませんから、とりあえず冷静な事態を作るために必要な緊急の措置としてそういうことを要望したわけでございます。事態推移を見まして、私はあくまでも平和的に解決し、一日も早く結論を得るように、事態収拾するように、今後とも事態推移とにらみ合わせて処置していかなくちゃならぬと、かように思っております。
  13. 牛田寛

    牛田寛君 この問題は非常に重大でございまして、またいろいろとお尋ねしたいのでありますけれども労働大臣がおいでにならないようでありますから、あとにいたしまして、次の問題に移りたいと思います。  まず総理にお伺いいたしますのは、昭和三十五年度の予算の御説明にもありました通り、今の日本経済は非常にめざましい上昇を続けてきた形をとっておりますけれども国民生活内容を見てみますというと、一般大衆生活内容というものは非常に多くの問題をはらんでいるわけであります。総理府統計局の家計調査の中で、所得階層別エンゲル係数推移というのがございますが、それを見てみますと、全国平均昭和二十九年が四五・五、昭和二十三年が四一・二というわけで、まあ平均して生活は向上を示している、こういうことになるわけでありますけれども、次に階層別最大値最小値の差をとってみますというと、昭和二十九年は一六・四、昭和三十三年は一七・四、むしろ較差拡大している傾向を示している、こういうことがわかるわけであります。従いまして、国民所得はふえているけれども一般大衆生活は非常に不安だということが言われているのは、根拠がないわけではない。このところからでもうなずけられるというふうに考えるわけであります。実際に中小企業あるいは零細企業対策であるとか、あるいは農村の二、三男対策であるとかいうことが問題になっております。結局こういうところが出発点だと思う。で、これを突き詰めて参りますと、結局は、行き当たる壁は、日本人口が多い。この狭い国土に一億近い人間が閉じ込められている今、現実の問題になっております同胞が血で血を洗うような非常に悲惨な姿になっておりますのも、一つにはこういう問題が根源に横たわっておる。貿易の問題にいたしましても、その他一般経済的な問題にいたしましても、ここに日本の宿命的な問題があると思うのであります。  で、人口白書にはこういうふうに述べられております。低率所得層疾病率は高い、疾病と貧困との悪循環的拡大を示しておる過剰人口下人口資質の問題も放置しては置けない、こういうふうなことも述べられておるわけでありまして、この点はわれわれの国民生活にとって重大な問題だと思うのでありますが、これを将来どのような方針で、どういうふうに解決していくかということについての総理大臣の確固たるお考えを承りたいと思うわけでございます。
  14. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御指摘のように、戦後国民経済全体の拡大、従って国民生活におけるいろいろの全体の水準は上がっておると思いますが、同時にその内部的な構造において、いろいろな点において所得較差ができ、また生活水準上昇と申しましても、その間の較差が大きくなっていきつつある傾向も見のがすことができないと思います。また日本人口増加のこの傾向を見ましても、戦後二十三年をピークとして、最近における出産率はやや低下しておりますけれども、それにつきましても、やはり一%前後の増加を示しておることは御承知通りであります。特に日本人口の構成を見ますると、十五才からいわゆる生産人口といいますか、この増加が非常に目立っております。それからまた六十才以上の老齢人口が近時非常にふえております。こういう一つの特徴を持っておるように思うのであります。従ってこれに対するいわゆる政府対策としましては、第一に生産人口のふえておるというものに対しては、やはり雇用問題において、これを雇用において吸収するような政策をとらなきゃならぬ、それにはどうしても経済拡大していく。私どもが十年を目途としての国民所得倍増計画というものを審議立案中でございます。その大きな目標はこれらの増加するところの生産人口に対しての雇用問題を解決するところに主眼を置いて考えております。また老齢人口のふえることに対しては、やはり社会保障制度、いわゆる国民年金制度を完備していくことによってこれらの人々に対する社会保障制度を拡充していくという二つのこの方向に向かって人口問題についての大きな考え方に基本を置いて考えなきゃならぬと思います。もちろんその間におきましていろいろ農村から都会へ、あるいは農村の二、三男対策であるとか、あるいはその間起こってくるところの一時的の失業に対する方策であるとか、あるいはまた疾病、病気、それらの問題というような、いろいろ各種の政策をあわせ考えなきゃなりませんけれども基本としては、今申すところの二つのことを基本として対処していきたい、かように思っております。
  15. 牛田寛

    牛田寛君 次に、厚生大臣にお尋ねいたしますが……。
  16. 小林英三

    委員長小林英三君) 牛田君に申し上げますが、厚生大臣は本会議が済むとすぐこちらへ参りますから約十一時過ぎになると思います。
  17. 牛田寛

    牛田寛君 では、総理大臣に御質問申し上げます。ただいまの総理お話でございますが、この日本過剰人口経済拡大によってどの程度に解決しておるかということは、はなはだ疑問であると思うのでございます。現在貿易自由化ということが問題になっておりまして、この貿易自由化が進行すれば非常に失業者もふえてくるのではないか、そういう心配が、もう国民一般の中にも広がってきておるわけであります。私はこの点どうしても日本人口過剰の問題を解決するには、もちろん貿易政策も必要でありましょう。しかしその裏づけとして、どうしても海外移住発展さしていかなければならないということを考えておるわけでございます。過去におけるヨーロッパの例を見ましても、現在ヨーロッパ諸国があのように高い生活水準を保っておりますゆえん一つは、海外移住が強力に推進されてきたということに一つの大きな原因があると思うのであります。現在アイルランドは非常に小さい国であることは御承知通りでありますが、まあ三百万人ということであります。海外におりますアイルランド人は千六百万人ぐらいであると推定されておるのであります。日本としてもアイルランドと同じような性格を持っておる国……。この際どうしてもわが国が高い生活水準を維持し、将来世界発展に寄与していくだけの日本民族の優秀な力量を発揮していくためには、どうしても海外移住によって日本生活圏を広げていくよりほかに道はない、このように考えるわけなんでございます。この点総理大臣海外移住の問題についてどのようにお考えになっておるか、お示し願いたいと思うのでございます。
  18. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 海外移住の問題は私は非常に国策として重要な政策である、これに重点をおいて従来も考えてきておりますし、将来も考えたいと思います。ヨーロッパ諸国の例をおあげになりましたが、ヨーロッパ諸国日本との関係におきましてはいろいろな事情もまた同一に論じがたいところもございますが、特によくこの人口現実増加率と、それから移民の出ていくところの数とを比較して、人口問題の解決というようなことには移民というものは大した効果ないのだというような説をなす者もございます。しかし、私はただ単にこちらからそれだけの人口を減すという意味においては、その数は総人口増加出産率等から見まして大きなものを出すということはなかなか、いろいろ困難があると思いますが、しかしながら海外においてこれらの移住者がそこに居ついて、そうしてその国の経済発展に寄与するということになりますというと、日本との貿易関係拡大するとか、あるいはその他経済協力の面においてそれだけ日本民族の活動の分野が広がっていくことであり、いわゆる国際協力の点において非常な効果があるのであります。従って数からだけこれを論ずるわけには私いかぬと思います。そういう意味において海外移住を強力に推進することは日本経済発展に資するゆえんであり、またそれが世界に国際的な協力を進めることによって、世界の繁栄と平和を推進するという大きな目的がかなえられると同時に、日本経済基盤がそれだけ拡大することによって、いわゆる人口を養い得る基盤がそれだけ大きくなるわけでありますから、人口問題の解決の上には非常に私は効果があるものである、かように従来考えておりまして、実はこの移住問題については私といたしましては非常に重点をおいて施策していきたい、こう思っております。
  19. 牛田寛

    牛田寛君 経企庁長官は……。
  20. 小林英三

    委員長小林英三君) 今呼びにいっておりますが……。
  21. 牛田寛

    牛田寛君 ああそうですか。厚生大臣は……。
  22. 小林英三

    委員長小林英三君) 厚生大臣は本会議が済みますと、こちらに入りますから、十一時ちょっと過ぎになると思いますが……。
  23. 牛田寛

    牛田寛君 それでは外務大臣にお伺いいたします。  ただいま総理お話がありましたように、海外移住にも力を入れて参らなければならないということでございまして、今まで明治以来海外移住が行なわれてきたわけでありますが、ようやく現在のようなところまで来たというわけでございまして、非常に海外移住が何のために行なわれているかということが国民にははっきりしないというような貧弱な状態であると思うのであります。ただ、今まで全く表面に見えない、陰の力で黙々と努力してこられた方に対しては敬意を表するわけでございますが、この際、海外移住の具体的な問題について二、三お尋ねしたいと思うわけでございます。  まず初めに、昭和三十四年度に海外移住五カ年計画が策定されたわけでございますけれども、これが現在どのように実施に移されているか、具体的にお示しいただきたい。それからまた、この五カ年計画が将来、その後においてまた次の五カ年、あるいはその先十年というふうに、どうその構想を進められておいでになるか。基本方針があればお示しいただきたいと思うわけでございます。
  24. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 移住の問題は非常に重要な問題であること、申すまでもございませんが、御指摘のありましたように、従来比較的まあ力を入れておらなかったような点もございます。従いまして、今後これに相当力を入れて参りますことは必要だと思うのでありまして、われわれとしてはそれに努力をして参らなければならぬのでございます。従って、移住を考えてみましたときに、単に人を出すということだけ考えました場合に、諸般の十分な準備が必要であることむろんなんでありまして、それらの点を逐次われわれといたしては考えて参らなければならぬと思っておるわけでございます。第一は、むろん、受け入れ国側との協調、従って、移住協定その他というものを逐次受け入れ可能な国と作って参る、こういうことが第一必要だと思います。それからまた、受け入れ国側に受け入れてもらいますためには、送り出すために適当な人を選び、また、それに対する訓練をしていくということが必要なことだと思います。同時に、移民は棄民であっては相ならぬのでありまして、やはり現地におきまして、行った方々が気候風土、あるいは風俗習慣等になれないのでありますから、それらに対して定着するための指導と申しますか、あるいは援護措置と申しますか、そうした問題を完備して参らなければならぬのであります。他国内におきまして、それらのことをその国の政府と円滑に話し合いながらしていくようにして参らなければならぬわけでございます。さらに、出て参ります方々に対して、今日までも貸付金の制度等がございますけれども、零細農家の方々が出て参ります場合に、必ずしも貸付金制度だけでなくして、出発時にあたります諸般の費用等もございますので、本年から若干ながら仕度金を支給するということを予算にもお願いをいたしておるわけでございます。そういう点もございます。同時に、輸送能力というものが非常に大きなネックになりますことが問題なんでありまして、従って、輸送能力というものをやって参りませんと、かりに年間一万名の送出をするということを考えておりましても、その輸送能力ということを考えませんと、これまた十分に達成できないわけであります。そうした問題について、並行的にすべての施策を立てて参るのでありませんと、完全な、しかも円滑な、しかも受け入れ国側において十分期待をし得るような移住者の送出ということの計画が相成り立たぬのであります。でありますから、われわれといたしましては、今後そういう点を並行的に考えながら充実をして参るということを基本的にこの際打ち立てて参りまして、そうして関係各省とも連絡の上で、そうした面についての充実をはかっていきたい、これが根本的に、移住にあたりましての外務省の考え方でございます。また、それを推進して参らなければならぬと、こう存じております。
  25. 牛田寛

    牛田寛君 ただいまのお話はよくわかったのでございますが、五カ年計画であれば、ただいまのお話内容のような一つの目標といいますか、理想というものを具体的に実現していくためのいろいろな面での目標というものが打ち出されてこなければならないと思うわけであります。まあ移住の問題であれば、まず移住者の数が問題になる。それから次は、受け入れ先が問題になってくると思います。あるいは、どのような形で移住を行なわせるかというような移住の種類がまた問題になって参ります。ただいまお話のような運ぶ船の数も必要でありましょうし、そのほか、相手国との協定が問題になる。それを五カ年間の間にどのように拡大していくか、それに対する予算措置はどうかというようなところまで、はっきりした御計画がなければならないと思うのですけれども、その点はどうなっているか、お伺いいたしたいと思います。
  26. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 大体今回、今目標といたしておりますのは、三十五年度に一万一千名を出しまして、五カ年間に大体十万人を選出するということを目標にしてわれわれは計画を進行するために諸般の、今申し上げたような点についての各省との調整その他をやって参りたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  27. 牛田寛

    牛田寛君 数の点はそのようであるかもしれませんけれども、数をきめただけで一カ年たってしまったのでは、とうてい五カ年間に十万を送ることはむずかしいと思うのであります。その送り出す数を土台にいたしまして、その上で具体的にどういう措置をとるかということまで決定していかなければ、これは千年たっても、三千年たっても目標は達成できないという結果になるのではないかと心配するわけでございまして、この点をもう少し明らかにしていただきたい。
  28. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のように今日、大量と申しますか、移住を受け入れてくれております国は、ブラジルでありますとか、パラグァイでありますとか、あるいはボリビアでありますとか、そういう国でございます。従って、さらに、国につきましても、南米各国と日本移民の実績から見て受け入れしてもらう国をふやして参らなければならぬのでございますが、現状におきまして御承知通り、今までは約七〇%ぐらいがブラジルに行っておるわけでありまして、大体六千名から七千名程度ブラジルに出ております。昨年できましたパラグァイとの移住協定によりますれば、平均をとりますと、年間三千五百名ぐらいのものが受け入れてもらえることに相なるわけでございまして、そういうものがプラスされております。現在、ボリビアには約八百名程度おりますが、これは相当にやはりふやし得る可能性があると思います。そうしたものを基礎にいたしまして、そうして、われわれとしては、今申し上げましたように、今日受け入れてくれておる国の数もふやして参らなければならぬ、それには、むろん、入植地等の整備をいたして参らなければならぬこと、むろんでありまして、入植地等の整備がなければ、ただ送り出しただけでは相ならぬわけであります。で、同時に、今申し上げましたように、新しい国との移住協定というものもやって参らなければならぬ。現にブラジルとはごく最近に移住協定ができることになろうと思います。そういうことによりまして、今の目標を達成し得るように今後やって参るのでありまして、普通の国内における五カ年計画というものを策定いたしましたように、政府だけの考え日本政府だけの考え方でこれは参らぬ場合が多いのでありますから、受け入れ国側と十分相談をして今の目標を達成するように現実の方法をとって参るということに相なるのでございます。
  29. 牛田寛

    牛田寛君 移住五カ年計画の数の点でございますけれども、三十四年度が一万一千、それからまあ五千ずつふやしまして、最後に三万というふうに伺っておるのでございますが、これは間違いないでございましょうか。
  30. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 大体そういう目標で今立案を考えておるのであります。
  31. 牛田寛

    牛田寛君 そういたしますと、今年度の一万一千は少し最初の計画よりも減ったように思うのですが、計画を御変更になったのでございましょうか。
  32. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) なかなか、これは輸送関係とか、募集の関係とか、いろいろの点がございまして、若干最初の計画より減っておると思いますが、詳細につきましては移住局長から御説明いたさせます。
  33. 高木広一

    政府委員(高木広一君) ただいまの大臣説明を補足して申し上げます。  外務省が策定いたしました移住計画では、三十四年度を第一年度といたしまして一万一千名。それから毎年五千名ずつふやして、五年間で十万名という計画でございました。ところが、実際これを推進いたしますにあたりましては、なかなかそう簡単に進みませんこと、ただいま御指摘の通りでございます。三十四年度——実際上この三十一日で終わります数字は約八千でございまして、一万一千名に欠けること三千名でございます。来年度もすぐに一万六千名ということはなかなかむずかしいということで、実はこの五カ年計画はさらに再検討しておりますが、三十五年度の予算では一万名送出ということで予算手当をいたしました次第でございます。
  34. 牛田寛

    牛田寛君 ただいまの御説明の五カ年計画一万一千というのは、どういうふうないきさつで割り出されたか、お伺いしたいと思います。
  35. 高木広一

    政府委員(高木広一君) この移住の重要性にかんがみまして、至急に、少なくともヨーロッパ並みにするぐらいの強力な送出をしたいという相当強い希望から、この数字が出たのでございます。しかし、実際上は、なかなか移住という問題は貿易とも違い、他の政策とも違いまして、非常に複雑であり、日本側といたしましても、国内に祖先伝来住みついた日本人を引き抜いて、そうして未知の国へこれを植えつけていく。これが安心して定着し発展するようにせねばいけないのでございます。それがためにはよく移住者を選んで出すということも必要でございますし、またわれわれの送出の機構その他におきましても、戦後新たに始めました関係上、なかなか十分これもいかないということもございますので、本年度の予算はきわめて実際的な、まず達成できる数字にまとめました次第でございます。
  36. 牛田寛

    牛田寛君 内閣に移住審議会というのがございますが、移住に関して今まで審議会はどのような答申をなさったか、伺っておきたいと思います。外務大臣から……。
  37. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のように、内閣に移住審議会がございまして、関係閣僚等が入っておったわけでありますが、必ずしも機能が十分でございません。従って、先般、実は移住審議会は民間の方々を主体にして改組することにいたしまして、そうして民間の方々の活発な御意見によりまして、十分な実情に即した答申をしていただくというようなことに、まあ改組をいたしたわけでございます。その意味において、過去の移住審議会というものは内閣関係閣僚皆入っておりましたけれども、必ずしも活発に動いていなかったのが実情でございまして、そういう意味で、私としては改組をいたしまして、民間の方々の強力な意見の開陳を願って、今後活発に政府に対し建議をし、あるいは政府を御鞭撻していただくようにしていただきたいと思いまして、そういう措置をいたした次第であります。
  38. 辻政信

    辻政信君 関連。今牛田君の質問にありましたが、私はこの移民がふるわないのは、政府部内に不統一、農林省と外務省とかなりけんかしている。おそらく移住局長も農林省方面の取りまとめ、圧迫というか、足を引っぱることに相当苦労をしておられるのじゃないかと思う。これは農林省にも通産省にもいろいろの点に関係ございますから、政府としては強力に各省を外務省に統一させる、一本で推し進める、そういう御決意がおありかどうか、総理及び藤山大臣から承りたい。
  39. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 移民の問題は私ども政府として非常に重点をおいている、しかもなかなか成績が上がらない、これは事実でございます。その原因はいろいろ私はこれはあると思いますが、その一つとして御指摘のように、この仕事が農林省に関連をいたしております。一面は外国との交渉、外国に居つかせるという仕事があると同時に、国内において移民に適するところの人を選び、またこれを訓練するという仕事があるわけでありまして、もちろんこの外の関係におきまして、われわれは一本の外務省の所管にいたしておりますが、しかし内政上の、農村のうちから優秀な人を選んでこれを訓練するというようなことにつきましては、どうしたって農林省の協力なくしてはできないことだと思います。ただその間においていろいろな摩擦とか円滑にいかない点が従来あることにつきまして、私も非常に苦慮いたしております。内閣に設けられている移住審議会におきましても、そのことが指摘され、従来からもいろいろ改善を加えてきておりますが、これをどうしても強力に推進するためには、内閣の間において十分統一して、そうして外務省のこの仕事を推進するようにすべての機関協力する態勢を作り上げなければならぬというふうに考えておりますので、十分一つ御趣旨のような点については、なお私としても努力していきたいと思います。
  40. 千田正

    千田正君 関連して、移民問題について今お話がありましたが、私は戦後におけるドイツ及びイタリアの移民状況を見ますというと、ドイツにしましてもイタリアにしましても、政府自体現地へ行って相当きびしく調査している。適地であるか、適当の条件であるか、そうして現実においては役人そのものがジープをかってアマゾンの流域の上流にまで行って、あるいはマラリアやその他一切のことを研究した後に本国の青年あるいは移民希望の者を入れている。日本はそこまでいっていないのじゃないか。どうもお役所仕事で、一応の話し合い程度のことでやっているというようにしか思えません。そこでやはり移民というものは日本の国家の政策として当然大きな問題としていかなければならないのでありますから、適地あるいは条件一切のことをもう少し真剣に調査されて、国内の移民されて行く人たちの訓練等に対しても十分な方針で臨んでいかなかったならば所期の目的は達成されないのじゃないか、こういう意味におきまして、農林大臣あるいは外務大臣から、今後の方針についてもう少しはっきりしたことを伺いたいと思います。
  41. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は、前の国会でも御答弁申し上げたと思うのでありますが、移民の仕事の非常に重大なことを考えますと同時に、過去のやってきておりました移民の諸般の問題を検討してみまして、この際、やはり移民政策全般について検討を新しくして参らなければならないというふうに考えております。御承知通り、移住等の規則でも非常に古いものもございまして、これらも、必ずしも時代に適応しているとはわれわれ考えません。そこで、全般的にこれらの問題をやはり検討して参ります場合に、第一必要なのは、今申し上げましたように、民間各方面の意見、ほんとうの建議あるいは政府に対する鞭撻をしてもらう。従来の内閣にありました移住審議会は、各閣僚がメンバーになっておりまして、非常にりっぱなものではございましたけれども、率直に申しまして、必ずしも十分な運営ができておらなかったわけであります。今回は、まずそれを改組いたしまして、それらから十分な御意見をいただきまして、そうして根本的にこれに手をつけていこうというのが、私のまず基本的な一つ考え方でございます。で、今お話がございましたように、政府関係各省との連絡ということは、これはもう緊密にいたして参らなければならぬことは当然でございます。また政府自身が、移民の問題につきまして現地政府と話し合いをし、あるいはそういう点につきまして、今の移住地の問題その他につきましては、これは政府みずからが調査団を出し、あるいは在外公館を通じて調査をするというようなことも、これまたやって参らなければならぬことは、御指摘の通りだと思います。現在移住会社の方におきましてそういう仕事をやっておりますけれども、もう少し移住会社自身も充実をして参らないと、現状では必ずしも私は十分な機能を発揮しているとは思いませんし、また、それを強調して参ります政府の出先機関におきましても、移民の重要性を考えまして、いま少しくこの問題について力を入れて参らなければならぬということも考えるのでありまして、それらの問題を逐次改善していくということからまあ根本的には始めて参らなければならぬ現状だと思います。私といたしましては、できるだけそういう面につきまして考慮しながら、他方、国内各官庁との関係もございます。今の農林省との関係もむろん緊密にして参らなければならぬのであります。農林省は農林省の立場で、国内の農村対策として、移民政策に対してはいろいろ御意見があることは当然なことでありまして、われわれは、やはりその御意見を十分尊重して、そうして参らなければならぬ。いたずらに農林省と外務省とが角突き合わすようでは、これは円滑に参らぬと思いますから、今日では、農林大臣と私とは緊密な連絡をとりながら、そういう問題について検討をして参っておるのであります。また、ただいまお話し申し上げましたように、存外移住船の問題などというものが大きなネックになっております。これらの問題も、まあ運輸大臣等と十分話し合いをして参らなければならぬ点でございます。あるいは移民の援護局等につきましては、大蔵省等の理解を得ていかなければならぬのであります。幸いにして、移民そのものの重要性につきましては、逐次政府においても、総理大臣の今言われました方針に基づいて仕事を充実し、重要視して、大きな重要な政策一つとして取り上げつつありますので、今後そういうことに向かって努力して参りたいと、こう思っております。
  42. 千田正

    千田正君 もう一点だけ総理大臣にお伺いしたいのですが、現在、ことしあたりからは、低開発の後進国に対して援助資金等の問題で日本も片棒をかつぐというような問題が起きているようであります。私は、イタリアにしましても、ドイツにしましても、移民した移民に対しまして、祖国の金融団体がそのあと押しに十分な金融措置までして応援しておる。こういう実態を見ました場合に、日本移民のほんとうの海外発展のために考えるならば、低開発国に対する援助と同じような、もっと深い関心を持って、日本移民に対して、金融問題等に対しても十分考慮する必要があるんじゃないか、こう思いますが、総理大臣としては、そういうお考えはございませんか。
  43. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 移民を振興していくために、今外務大臣が申し上げましたように、私は、いろんな点において改善を要する点があると思います。今、千田委員お話しのように、移民が向こうに行って、居ついて、そうして仕事をやっていくのに必要な金の金融という問題につきましても、実は、移民会社の大きな仕事の一つとして、そういう貸し付けもいたしておるわけでございます。しかし、そういうものが不十分であり、また、そこの実態に即したように円滑にいっているかどうかという点も検討を要する。各般の点を改善していく上におきまして、金融の点ももちろん一つの重要な問題として考えていきたい。こう思います。
  44. 牛田寛

    牛田寛君 いろいろ御説明はございましたが、移住推進に対する基本的な考え方というものをはっきりしていかなければならないと思うのでございます。五カ年計画で何名送り出すときめても、お話のように、確かに移住の問題は複雑でございます。外交の問題もございますし、貿易上の問題もからんでくるし、また日本の国内の状況、たとえば、農村が非常に豊かになってきた、そうなりますと、なかなか農家の人たちは行先のわからない海外などに行こうというような気持は起こさないというようなこともございますし、また、日本の教育の方針などというものもからんでくるわけであります。それで、幾ら一万なり五万なり十万ときめましても、そういう複雑な状況のからみあいで、その目標額を切り下げていかなければならないというのが実情ではないかと思います。私は、そうではなくて、反対に、絶対これだけの必要な移民を送り出すということを根本にいたしまして、その上に、各方面の協力で、あらゆる隘路を打開していくという態勢をとっていただく。外務大臣が今年度からは新しい審議会の形で強力に推進していくというお答えでございました。今後はその行き方で、強力にぜひともやっていただきたい。これから十年あるいは十五年先の日本人口問題は、非常に容易ならぬものがあると私は考えるのでございます。警察庁長官にもお伺いしたいと思うのでございますが、おいでになりませんので、お伺いいたしませんが、それに加えまして、今までの移住の主力は中南米でございますけれども、すでに中南米には外国の進出が盛んになってきておる。日本の農業移住は、今までかなり成果をおさめて参りました。そればかりでなくて、移住は、さらに企業の移住も必要である。ところが、中南米あたりは、もう諸外国の企業が盛んに入ってきておる。日本の企業、まあ自動車会社などが進出いたしまして成果が上がらない。これは締めなければならないというようなことも聞いておるわけでございます。日本の国内の人口問題から考えましても、この十年か十五年が、移住という問題についても最もわれわれが努力を注いでいかなければならない時期に当たると思うのでございます。この時期を失するならば、非常にわれわれは一つの困難な経済上の壁にぶつかるんじゃないかと思うわけでございまして、この点、一点、今後の移住政策について、外務大臣の強力な御推進を切望するのでございまして、この点お願いいたします。  そのあと、こまかい点二、三お伺いしたいのでございますけれども、昨年総理大臣の中南米訪問の際にでき上がった形になりましたブラジルとの移住協定の問題でございますが、その後何か停滞の形になっているというふうに承っています。これは、何か貿易の問題とからんで、ブラジルが日本に対する信頼感を失って、それから発展しないというふうに聞いておるのでございますけれども、これが事実であるかどうかは、私も確かめ得ませんからわかりませんけれども、もし事実であるとするならば、この大切な移住の態勢を作り上げるために、多少貿易上の譲歩をいたしましても移住を強力に推進すべきだ。早く協定を締結すべきでないかというふうに考えます。これは、外国の移住政策におくれをとらない意味においても大切であると考えるのでございますけれども、この点について、総理大臣のお考えを承りたい。これが総理への最後の質問といたします。
  45. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 昨年私がブラジルを訪問いたしましたときにも、この問題についてクビチェック大統領と話をしまして、日本移民に対しては、ブラジルは非常に好意を持っておりまして、これは進めるということでございました。いろいろ協定上、外交上のテクニックの問題等がございまして、その後両国の間に交渉をいたして参っております。その細部的な経過は、外務大臣からお答えすることにいたしますが、今御指摘になりました貿易の問題とは、これは全然からましたような事情はございません。これとは別でございます。近く成立するように聞いておりますが、なお詳しくは、外務大臣からお答えいたします。
  46. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今総理が言われましたように、貿易上の関係には特段影響されておらぬと思っております。話し合いは比較的スムースに進んで参ったのでありますが、いろいろな技術的な問題で若干話が長引いておりますが、今日では、ほぼ大体話し合いがついてきております。従いまして、ブラジルの大統領選挙が終わります二、三カ月後には、これは締結できるというふうに確信を持っているのでございます。
  47. 小林英三

    委員長小林英三君) なお、牛田君に申し上げますが、厚生大臣労働大臣も見えていますから……。
  48. 牛田寛

    牛田寛君 厚生大臣にお伺いいたします。  日本人口問題でございますが、ただいま出生率が次第に下がってきているということでございますけれども、まだこれから十年、十五年後は労働人口増加は激しくなる、こういうふうに承っております。で、これから先、大体推定で、いつごろになれば安定した人口状態を続けるか。その点、どのように推定されているか、承りたいと思います。
  49. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 人口は、各国に比べまするというと、比較的出生率は低いわけでございます。しかし、昭和五十年になりまするというと人口が一億人、それから、昭和六十年になりまするというと人口は一億五百万人と、こういうふうになっております。
  50. 牛田寛

    牛田寛君 もう一つお尋ねしたいのですが、これは経済企画庁長官にお尋ねいたします。おいでになっておりませんか。
  51. 小林英三

    委員長小林英三君) 経済企画庁長官は衆議院の商工委員会におりまして、今呼びに行っておるのですが、十五分までには出席するという約束でしたが、まだお見えになっておりませんから、なお催促いたしております。
  52. 牛田寛

    牛田寛君 それでは厚生大臣にお伺いします。  将来の人口増加の目標といいますか、推定はお伺いしたのですが、もう一つ問題になるのは、労働力人口の激増の問題でございます。これは、雇用吸収の問題とからみまして非常に問題となるのでございますけれども、これから何年か後にそれが起こってくるということでございますが、大体労働人口増加が急激に起こってくる、その一番の圧力がかかってくるのは大体何年後になるか、その辺をお伺いします。
  53. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 十五才から五十九才までを生産人口年令と私どもは称しておりますが、これが大体十年後にはピークに達するのではなかろうかと、かように考えておるのであります。
  54. 牛田寛

    牛田寛君 それでは、移住の問題に返りまして、移住計画が予定の通り進まないでいるという点については、いろいろな原因があると思いますけれども、まず第一番の問題は、移住者の融資の問題があると思うのでございます。最近の新聞紙上には、土地分譲の頭金が支払えないので移住が渋るというような記事が見出しに載っておるようでございますけれども、実際にはこういうふうな融資の機構があるわけでありまして、もし事実そういうふうなことがあれば、これは非常に何か組織上の欠陥がある、手落ちがあるというようなことも考えられるわけでございまして、これがそのままに流れていけば、移住に対する国民の誤解を招いてくると思うのでございます。それが一つ。  それからもう一つは、移住推進の機構が複雑ではないかと思うのでございます。それは、海外協力連合会、いわゆる海協連と、それからもう一つは、農林省の予算が出まして、県から市町村へ、それから農業協同組合という系統がございます。これがまあ農村において二つの系統ができておるわけでございまして、まあこの海協連と地方の海外協会とそれから県と、これが一体になって推進するということでございますけれども、はたして別々の予算措置の系統で、実際に一体になり得るかどうかということが疑問の点の一つであろうと思うのであります。特に地方協会の方には予算措置がございません。海協連にまかしてある。しかも、協会の方からの実際の移住に対するPR、いわゆる移住推進員と申しますか、そういうものは、市町村の有力者に名誉職の形で嘱託にしておるというような形であるそうでありますので、これでは移住に対する非常に複雑な要件、家族の内容でありますとか、あるいは生活資金の問題でありますとか、そういう非常に話がこまかくなってくる。そういう問題をさばいて、そうして移住に対するあっせんを能率化していくということはむずかしいんじゃないか。そういうふうに感ずるわけでございまして、この点について、外務大臣、農林大臣にお伺いいたします。
  55. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今の貸付金の問題については、移住局長から御説明を申し上げます。国内の問題につきまして、いろいろまあ従来言われております。むろん、連絡協調が末端において必ずしも十分でないというような点もあろうと思います。われわれとしては、それらにつきまして、農林大臣とも話し合いながら、十分改善をして参りたいと、こう存じております。
  56. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 移住の仕事は、外務省において主管をいたし、農林省におきましてその移住者の選定につきましてお手伝いをしておるような次第でございます。これは、外務省が一貫して、海外の移住からその移住者の選定に至ることを全部やるということに相なりますると、一つの系統ができてくるわけでございまするが、そういうわけにも参りません。また、農林省が海外の移住の場面まで受け持つということも、これは不可能でございまして、相協力してやるほかはないのでございます。ところが、御指摘のように、国内の末端におきまして、どうも工合が悪いというような面も、私ども伺っております。そういう面につきましては、藤山外務大臣からお話しのように、最近におきましても話し合っておるのでございますが、そういう声の起こらないように、できる限り円満に進行できるように努力をしていきたい、かように存じておる次第でございます。
  57. 高木広一

    政府委員(高木広一君) 移住者に対します融資につきましては、まず最初は、渡航費の貸付の融資がございます。これは海外移住協会連合会からやっておりまして、三十五年度からは、従来の貸付条件を大幅に緩和いたしまして、最初十年間は無利子据置、あと十年間、年三分六厘五毛元利均等払いということで、今その条件緩和の法律案を国会にもお願いしている次第でございます。それから、移住者が渡航いたしますときには、営農に必要といたします農耕機械その他を買い付けますために、五十万円を限度といたしまして、市町村の保証をもって、移住者に移住会社より融資しております。それから、移住会社は、受け入れ国において受け入れ準備者がない場合には、たとえば、パラグアイとかその他の地域におきましては、直接移住地を購入いたしまして、これを造成いたしまして、これを大体、二、三年据置、その後四、五年払いというような、必ずしも一定しておりませんが、大体それぐらいの延べ払いで、二、三年据置、あと五、六年から八年ぐらいまでの延べ払いということで融資をしております。その場合に、さっき御指摘の通りに、頭金を取ることにしております。最低が十万円、それから金額に応じまして、非常に土地代の高い所では三割程度まで頭金を取ることになっておりまして、この点も今御指摘の通り、頭金を要し、またそれ以外にも、移住地に入りましてからの営農資金もかなりに要ります。たとえば、パラグアイのような所でございますと、一年分の営農資金に三十万円ぐらいは用意していかにゃいかんというようなこともございますので、なるべく移住者に、最初要する現金を少なくするようにいたしたいと思いまして、関係省とも交渉している次第でございます。
  58. 小林英三

    委員長小林英三君) なお牛田君に申し上げますが、経済企画庁長官も見えておりますから……。
  59. 牛田寛

    牛田寛君 産業開発青年隊というのがあるそうでありますが、この青年を南米に送り出しているということを聞いておるのでございますが、これはどういう組織を持って、どの省の所管になっておるのか。また、移住については、どの機関がこれを取り扱っているのか。それについてお伺いしたいと思います。
  60. 高木広一

    政府委員(高木広一君) 私からお答えさせていただきます。産業開発青年隊はブラジル・サンパウロ州に送っておるのでございまして、この青年隊は、建設関係の技術を持った青年を、内地で一年ばかり訓練いたしまして、その上でサンパウロに送っておるわけであります。サンパウロでは、コチア産業組合という、強力な日系の農業組合がございますのですが、これが中心になりまして、農業拓殖組合というものを作りまして、単に農業移住者だけでなくて、建設関係の進出、移住をもはかりたいということ、それに共鳴をいたしまして、これらの青年を今お世話している次第でございます。これにつきましては、非常に、最初の計画でもございますので、なかなか所期の目的通りにはうまくいかないのでございますけれども、しかしながら、目的とするところは、きわめて必要に考えられますので、われわれといたしましても、今まで足らないところを十分再検討しながら、これが有益な成功をするように持っていきたいと思っております。本年度は予算として二千万円、この建設隊が必要とする建設機械その他を計上されましたので、これを送りまして、かれらの指導にこれから力を入れてやっていきたい、こう思っておる次第であります。
  61. 牛田寛

    牛田寛君 最近の各国の傾向を見ますというと、受け入れ側も、また移住する側も、大規模な移住が活発になってきているようでございまして、たとえばただいまのような建築関係の技術者を組織的に送るというような形が出てきていることは、注目しなければならないことだと思います。また、南米にはいろいろな大企業も進出しているわけでございまして、ただ懸念いたしますのは、そのような場合に、農業の訓練所ができると、また、これとは別個に、大企業が進出して、独自の力でまた技術者の移住をするというような形が、あらゆる方面から出てくることがございます。これは一面から言えば非常に好ましいことで、民間の自由意思で活発な移住活動が行なわれるということは好ましいことだと思うのでございますけれども、その反面に、移住先での一つの競合といいますか、せり合いというものが起こってくるのではないかという場合もありはしないか、また、各個別々の立場でそのような移住の形をとって参りますと、それぞれの利益のみを中心考えて参りまして、その企業のために逆に現地の産業が圧迫されるというようなことも起こらないとは言えないと思います。それで、このような紛争が、結局は移住を禁止するというような結果にもならないとは言えない。で、過去にもそういうような経験があったと思うのでございます、ブラジルなどに。それで、受け入れ国との現地交渉、あるいは受け入れ国側の利益なり希望なりを十分理解し、また認めた立場で日本側の主張も認めさしていくという形が、これはぜひ密接にとられていかなければならないと考えるわけでございます。この立場から、現地における受け入れ国側とのいろいろな折衝というものは、やはり現地事情に十分通じた機関に責任を持たせまして、いわゆる責任は一元化した態勢をとっていただく、そうして、その上で各方面の協力態勢を強化していくといった行き方が望ましいと思うのでございますが、この点について、外務大臣がどのようにお考えになっているか、また、実施されている面がございましたならば、お示しいただきたいと思うのでございます。
  62. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お話しのように、いわゆる集団的な農業移民という以外に、今日では、技術的な建設関係経済協力に伴います移住者というものが多数に出てくることは望ましいことでございますし、また、そういう傾向にございます。たとえばミナスの製鉄所がもしできるとすれば、それに関連して相当な中小企業者が出ていくという状態も起こって参ろうと思います。あるいは貿易振興の面から申しまして、日本の産業構造もだんだん高度の機械生産になって参りますと、たとえばトランジスターでありますとか、あるいは自動車でありますとか、そういうものが輸出されますときには、それの修理もしくは部分品の供給というような意味におきまして、商業移民なり、あるいは技術移民なりがついて参りませんと、そうした機械類の輸出に対しては、十分なサービスができないというようなことが起こるわけであります。従って、そういう面から、メーカーなり、あるいは商業者なりが現地に何らかの形で技術移民を出すというようなことも起こって参ると思います。これはやはり今申し上げました観点から申しまして、奨励はして参らなければわれわれならぬと思うのでございますけれどもお話しのように、現地におきまして、それらのものが現地の人たちと仕事が競合する、あるいはそれによって、何らかの現地において弊害が起こりまして、当該国政府、あるいは当該の国民に対して影響を与えるような問題が起こって参りますと、せっかくそうした道が望ましいことでありますけれども、御指摘のように競合することになろうかと思います。でありますから、それらにつきましては、十分何か将来考慮して参らなければならぬと思っておりますけれども、現状においてまだどういうふうにそれを考えていったらいいかという問題について、具体的にわれわれも結論を得ておらぬような次第でございます。
  63. 牛田寛

    牛田寛君 海外移住の問題は、今までも出たわけでございますけれども、単に農家の移住あるいは農家の次三男を外国に送り出す、これだけの数が出ていったというだけでは目的は果たせないと思うわけでございまして、この日本の移住民によりまして、相手国の開発に寄与して、さらにそれが貿易発展を促す。また、貿易発展がまた移住を促進していくという形をとる、この三者の関連の上に移住政策が推進されていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。今までの行き方は、主として中南米が中心になっておったようでございます。しかし、最近では各国の経済投資が東南アジアの方面にも盛んになって参りました。もちろん、中南米でも盛んのようでございます。その点について、わが国としては、さらに積極的な経済開発に伴った一つの移住政策というものが立てられなければならないと思うわけでございます。ただいまの外務大臣お話にも、技術者の移住、企業の移住というお話ございましたけれども、その点をただ一つのアイデア、考えだけではなしに、具体的な施策として早急に策定されなければならない時期に来ているのじゃないか、そういうふうに考えるわけでございます。現在、経済開発の要求に応じました技術者移住の態勢が、まだ整備されていないというお話でございますが、この点について通産大臣はきょうはお見えになりませんが、次官おいでになりますか、通産省ではどのようにお考えになっておりますか、これを承りたいと思います。
  64. 内田常雄

    政府委員(内田常雄君) 牛田委員お話しのように、この移住問題に関連しての技術者の移住を進めて参るということが非常に大切だ。それはやがては貿易発展にもなるということは、私どもよく感じておるところでございまして、この面に関しましては一昨年、昭和三十三年ぐらいから中小企業の技術者移住の問題についてある種の施策をとって参ってきております。これは政府が直接と申しますよりも、現在のところでは日本商工会議所に企業技術協力斡旋本部というものを設けさせまして、その日本商工会議所が国内と海外にそれぞれ斡旋所、支所を持っております。国内では東京、大阪、名古屋、現在三カ所に相談所と申しますか、斡旋所を設けまして、そうして、中小企業技術者の海外移住を希望する者たちの登録をいたしております。この登録せられた者につきまして、海外への移住先の具体的措置につきましてあっせんをしておるのでありますけれども海外におきましては現在六カ所、ブラジル、アルゼンチン、フィリピン、マライ、インド、パキスタン、この六カ所に支所を設けまして、そうして、現地に行く者の世話をいたしておる、こういうことをいたしておりますが、いまだ十分ではもちろんございません。ただ、一昨年より昨年、あるいは明年度と予算も大蔵省方面では、理解を得ましてだんだんふやしております。もう一つ技術面につきましては、こちらから技術者が押しかけるだけではだめでございまして、現地におるその国の技術者を日本で養成をする手段を講じております。御承知と思いますけれども、そのためには幾つかのルートがございまして、たとえばコロンボ・プランに日本も加盟いたしておりますので、これは東南アジア、現状におきましては主として農漁民の技術者が多うございますが、これらを日本に招致して教育をいたす、あるいは海外技術者研修協会という財団法人を作らせまして、それに対しまして国から、通産省から相当額の助成をいたしまして、海外の企業技術者を日本に連れてきて、いろんな工場にあっせんして技術を習得させて向こうに帰すというようなこと、さらにまた米国のICAあるいは日本の生産性本部なども協力いたしまして、低開発国の技術者を日本に連れて参って技術訓練をして、そうして向うに戻すというようなことで、日本から行く技術者に対して向こうも相呼応する措置ができるような努力をいたしております。さらにまた、現地民の技術訓練につきましても、海外技術センターというようなものを、これは通産省と外務省と協力をいたしまして、海外に設けておりまして、海外の技術者を向こうで、現地で養成するというような方法をとっておるのであります。さらに、一般的に大企業の進出、これに伴う技術の植付というようなことにつきましては、御承知のプラント協会のコンサルテーションを通じての企業の海外への発展、あるいは機器類の輸出、それに伴う技術の供給というようなことをやっておりますことはもちろんでありますが、明年度の予算におきましては、さらにアジア経済研究所とか、あるいは海外経済協力基金というような制度も設けまして、移民を単に労務移民という従来の形ではなしに、企業と貿易と、現地の開発というような、現地協力と結びつくような、総合的な政策をできるだけ進めて参りたい、かように考えておる次第であります。
  65. 牛田寛

    牛田寛君 ただいま承りましたところ、現在の技術者の移住は、個人的な登録制度、それからあっせんというような形で行なわれているのが主のようでございます。これでは非常に能率が悪いと思うのであります。それで、これはいろいろ現地との複雑な関係がありまして、あっせんの困難な事情があると思うのでございますけれども、将来企業が海外に進出するという形であれば、どうしても技術者の派遣、あるいは移住の養成が大量になってくる。これにマッチする、適応した態勢をとるためには、どうしてもその目的のために、優秀な技術者を養成する機関を組織化しなければならないと考えるのであります。で、文部大臣にお伺いしたいわけでありますが、現在の日本の技術教育、特に二十才前後でもって社会へ送り出し、将来技術の指導的立場に立ち得るだけの教育を与えてやるという技術教育の問題は、非常に程度が低いように思うのでございます。現在では、高等学校でやっておると思うのでありますが、高等学校の職業教育というものが非常に程度が低い。従いまして、技術革新による各種の産業が、そういう人たちを実際使う場合に、もう一度再教育をしなければならないという面もあるわけでございます。こういう面からも、この海外へ優秀な技術者を送り出すためには、現在の職業課程の教育、これをまず量の上で大幅に拡充しなければならない。時間がございませんので、数の点は云々いたしませんけれども、これをまず大幅に拡充するということと、もら一つは、技術教育の内容、方法を根本的に変える必要があると思うのでございます。現在の職業教育のやり方は、まず具体的に言えば、実習の形でやっております職業高等学校の実習の内容というものは、非常に基本的な内容であります。非実際的になる。たとえば機械の技術を教える高校学校の実習と言えば、まあ機械工場の実習であるならば、丸棒をけずる、あるいは四角いさいころを作るというような程度でございまして、実際の生産に従事したその技術の中から技術というものを体得していくというような場所がないわけであります。従って理屈は知っておりますけれども、実際卒業した者は、なかなかすぐには使えないというようなことになっておりまして、特に海外に移住させるという問題になりますというと、その欠陥が出てくるのではないかと思います。そこで私が考えておりますのは、高等学校の教育の中で、ある時間を実際の職業に従事させる。それは工業の高等学校であるならば、一日の授業課程の半日を工業の実際の仕事に従事させる、農業でもその通りであります。そうして半日は実際の職業に従事して、その技術を体得していく。あとの半日はその技術に関連した理論を学んでいくという形の職業教育に移していかなければならないと思うわけでございまして、この形は現在中国でとっているようでございますけれども、ぜひとも私は将来この方向に職業教育を進めていかなければならないと考えるわけでございます。これは技術者を移住させるという目的のためにも、また、国内に優秀な技術者を作っていくというためにも、ぜひともこの方向に行かなければならないと考えるわけでございまして、ただ、現在これを全面的に改革するということは、不可能でございますから、まず技術者の移住ということを一つの目的にして、一、二の特定校にこの方法を適用していく。あるいは企業の中の機関を利用するといいますか、借りてそれをやっていくというような方法をとっていく必要があるのではないか。こういうふうに考えるわけでありますが、この点について文部大臣のお考えをお伺いしたい。
  66. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 中堅技術者の養成ということは、産業全般からも非常な要請のあるところでございます。文部省におきましても、この時代の要請に基づいて小、中、高等学校の教育課程の内容を改めて、その方面に力を入れておることは御承知通りだと思います。また、お話しのように実務に半分くらいの時間をさいてやるがよかろうという話でございますが、そういう傾向は、英国などにおいては、それを相当前から実施いたしておるようなわけでありまして、わが国におきましても特定の学校が民間の工場に行って実習をするというようなことも、少しはやっておるわけであります。しかし、これはみな日本における日本人の技術者を、国内の需要に基づいて養成していくという建前でありまするので、いまだ海外移住を目標としてそういう養成をやるというところまで行っておりません。ただ、ある宮城県の県立加美高等農業学校などでは、海外養成所を附設いたしております。鹿児島におきましても拓殖科を附設しておるという学校もございます。しかし、海外移住を目標として技術者を養成するというのは、わが国の海外移住という問題は、私はもっとこれをわが国の国是として恒久的な施策が望ましいと思うのであります。一時非常に海外移住熱が盛んになったかと思うと、また出生率がやや減退の傾向にあるということで、あるいはまた、何かの蹉跌が一つ二つあるということになると、いつしか移住熱がまたさめてしまうというようなことであっては、学校教育にあたって、海外移住を目標として特定の技術者を養成するというようなことは困難になってくる。こういう問題もよく検討して参りたいと思いますが、私もかつて少年移民でありましたから、海外移住の問題については深い関心を持っておるわけであります。私はこれは技術者を海外に移住させるということについては、相当の可能性があると思います。たとえば短期農民移住はアメリカ合衆国に対しても行なわれておりますけれども、これはもっと幅広く、アメリカにおいて非常に欠乏されておる、たとえば理髪、あるいはテーラー、あるいは園芸というような方面においては相当の要望があって、イタリアから万を数えるテーラーなどが行っておるというようなことがありまするので、現在の移民法によるクォーター・システムなどとは別に、相当数の移住者を外交折衝によって私は送り出せるようになる機運ができてきておるということは、個人的にアメリカの外交官などと話し合って、そういう機運が出ておることを承知いたしております。  また、私は先ほどからお話がありましたが、海外移住にあたっては、どうしてもその国内の十分な事情を調査するとともに、受け入れ態勢を定めるにあたっては、きわめてこまかく精密に取りきめをするということが、非常に必要である。そうして移住さしてしまったら、そのまま事終われりということであってはいけないのであって、あとでのやはりめんどうを見ていくというところまで力を入れるのでなければ伸びないと、私はかように考えるのであります。これらの点について恒久的なことがきまれば、海外移住を目標として、そうして技術者を養成するというようなことも考えられるわけでございます。
  67. 鈴木強

    ○鈴木強君 関連質問。今、文部大臣から海外移住基本政策にちょっと触れられましたので、さすがは文部大臣だと思うのです。あなたは非常に苦心されておりますから、そういう意見を一つ日本政府の、あなたも閣僚の一人ですから、閣議でもう少し検討していただきたいと私は思うのですよ。これは私も昭和三十二年にちょっとアメリカに行きまして、あれは農務長官とか何とかいう向こうの人に会ったときに、向こうで一番先に言ったのは、日本人は島国根性を持っているというのですね。要するに出かせぎ的な移住を戦前やってきた、そういうことがアメリカでいうならば、きらわれている原因になっている。だから日本人がもう少し腰を据えて、アメリカの国籍を取得して、そうして将来アメリカの土になるというようなしっかりした信念を持ってくることになれば、これは受け入れ用意があるのだということを私は聞いたのですね。去年でしたか、藤山外務大臣もちょっとそのことを何かの委員会で言ったと思うのですが、そういう根本的な精神の入れかえをやはり行く人にも持ってもらうような施策をやることが大事だと思うのです。そうすれば受け入れ態勢は出てくると思います。そういう点を基本的にもう少し私は内閣の方で統一していただいて、何らかここに一つ人口問題の増大に対応して、日本人口問題を解決する意味からいっても、根本的に一つ考えてもらいたいと思うのですが、この点一つ外務大臣にもこの際ちょっと御所見を承っておきたいと思います。
  68. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) たとえば御指摘のありましたことは、いわゆる出かせぎ根性ということでなしに、行き先におきまして、その国のよき市民となって、その国の福祉に貢献していくという立場をとって参りますことは、これはもう絶対に今後の移民の根本的な精神でなければならぬと思います。アメリカ等におきましても、あるいは南米等におきましても、最近は戦争を契機といたしまして、それぞれの国のよき市民になるということが、日本人としてできるのだということが認められてきたことが、戦後の移民開始にあたりまして非常な大きな日本に対する考え方の変化だと思います。従いましてそれに対応いたしまして、われわれとしては十分送出いたします移民の人たちに対しまして、単にある程度の所得を獲得したなら日本に帰ってくる、老後は日本で楽しむということでなしに、よき市民となって、そうして二代、三代子孫をそこへ植え付けていく、そういう気持でなければならぬと思っております。また、今、文部大臣も言われましたように、私ども技術移民の中で、たとえばテーラーだとか床屋だとか、外国においでの方はご存じの通り、どこでもほとんど床屋はイタリア人だというようなことで、しかも、これが非常に高いというようなこういうような関係もありますから、何かそういうような工業的な技術でなくても、そういう日常の技術によって活用する道があるのではないか。ただ問題はこれを軽々に出しますと、当該国の労働組合等の関係もございますので、その点は十分に準備をして日本が出しませんと、誤解を招く点もございます。ことに賃金の水準が低下するというようなことが起こって参りますと、当該受け入れ国としては事のよし悪しにかかわりませず受け入れを困難にするようなこともございます。ですからそこらの点につきましては、十分関心を持って参らなければならぬと思います。  また、先ほどお話のございました東南アジアに対する技術移民につきましても、今日東南アジアの各国がそれぞれ植民地から解放されまして、自国民主義というようなものが非常に主唱されております。その点はフィリピンでありますとか、インドネシアにおきます華僑問題あるいはその他の問題を通じて見ましても、相当そういう点が看取されるところでございまして、これらに対しまして技術移民を送ります場合に、よほどのよき準備と連絡がありませんと、うかつにそれだけを日本側が持ち出しますと困難な場合があるわけでありまして、そういう点は外交折衝においてわれわれ十分慎重に考えてやって参らなければならぬと思いますので、今後全般としてよき市民となるという立場において日本の技術者が、技術を持った人たちが出て行くことは、何らかの形でこれを推進していかなければならぬ、こういうふうに存じております。
  69. 牛田寛

    牛田寛君 文部大臣の移住に関する御理想を伺いまして、非常に心強く思うのでありますが、現在の移住の不振の原因一つに、国内のPRの不足ということが指摘されております。もちろん、宣伝啓蒙が必要であることは言えるのでございますけれども、教育の面においてもう一つ考えなければならないことがある。それは現在の学校教育の内容では、日本人が日本人の力で広く海外へ働く場所を求めていくというような思想がないようであります。ただ円満な人格を形成して、それによって社会に貢献する、いわば小市民を作り上げるというようないき方になっているのではないかと私は思うのであります。そうでなくて、日本移民というものが、移住というものが日本の力で世界の国の福祉と繁栄に寄与する、その代価によって日本人口過剰も解決でき、それから日本の産業を発展さしていくという関連性の上に立って、文化の上において世界の国々と強力に結び付いていくという理想の上に立った移住であるという考え方を、教育の面から徹底することが私は最も大切ではないかと思うわけであります。この点について教育の内容、課程というものにこの思想を入れるように一つお願いしたいのですが、この点文部大臣に伺います。
  70. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 今日はちょっと速度の結果、世界はきわめて縮小されておる現代でありますので、世界に対する知識を、どうしても普及さしていかなければならぬ。そういう意味におきまして、中学校でも高等学校でも世界地理を教える時間を特に持っておるというようなことをもって、その点にも考えを及ぼしておるということを御了承願いたい。
  71. 牛田寛

    牛田寛君 では最後に、外務大臣にお尋ねいたしたいと思いますが、今までお尋ねして参りました結果、現在の移民政策はまだ根本的な方針が立っておらないようにうかがうわけでございます。これに関連しまして、経済企画庁長官においでいただきましてお答え願いたいと思いますが、たびたび先ほどから取り上げましたように、労働力の過剰によって労働力の吸収が非常に困難になる時期が十年後に迫ってきておるということで、この移民政策の確立ということは緊急を要すると思うのでございます。内部からは人口の圧力で、外部からは貿易自由化の波を受けているのが、わが国の状態であると思います。この強力な移住政策によりまして、海外の国々と経済的に密接な関係を保って、しかもその上に教育をその目的に適応させ、移住計画を打ち立てていくといった、各方面の協力態勢に立った移住というものが必要であると考えるわけでございまして、本年度の予算を見てみますというと、農業移住関係あるいは技術者の移住関係で若干の増額があったのみであります。このような方向に移住政策が盛られておるというふうに見受けないのを、はなはだ残念に思うわけでありますけれども、後進諸国が工業化によって経済開発していくという意欲が盛んになって参りましたそういう態勢に即応するために、一つ移住政策の積極的な推進をお願いしたいと思うわけでございます。まず、企画庁長官に労働力の関係お答えいただきまして、最後に外務大臣の今後の方針の御確信を承りたいと思うわけでございます。
  72. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) この人口増加のことにつきましては、厚生大臣からすでにお話があったかと思いますが、最近の増加率は低下いたしておりますから、問題は、この十年間における増加する人口をいかにして雇用せしめるかというところに、この人口問題の解決策があると思うのであります。十年後になりますと、人口が漸減いたしますので、雇用関係が緩和されるということに考えておるのでありまして、そういう意味におきまして、先ほどからお話の移住問題ということは、今の人口問題解決の非常に重要な役割を演ずべきだと、こう考えるのでありますからして、そういう点におきまして、今後の国民所得倍増の長期経済計画にやはりこの移住問題もあわせて一つ考慮したい、こう考えておる次第であります。
  73. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほど来申し上げておりますように、移住政策というものが非常に重要でありながら、必ずしも今日まで万全の措置がとられてきておらぬということは、私ども率直に認めざるを得ないと思います。私自身できるだけ総合的な、そうして強力な対策を打ち立てますように、現在押し進めつつあるわけでありまして、いずれ皆さん方に対して、十分な御期待に沿うような、何らかの移民の総合的な問題についての提案をするように努力して参りたいと考えております。
  74. 小林英三

    委員長小林英三君) 本日の質疑は、これをもって終了いたします。明日は午前十時より委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時十五分散会