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1960-03-29 第34回国会 参議院 予算委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月二十九日(火曜日)    午前十時二十八分開会   —————————————   委員の異動 三月二十八日委員原島宏治君及び森八 三一君辞任につき、その補欠として牛 田寛君及び加藤正人君を議長において 指名した。 本日委員島清辞任につき、その補欠 として相馬助治君を議長において指名 した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小林 英三君    理事            大谷藤之助君            佐藤 芳男君            館  哲二君            西田 信一君            秋山 長造君            鈴木  強君            松浦 清一君            千田  正君            大竹平八郎君    委員            泉山 三六君            太田 正孝君            金丸 冨夫君            木暮武太夫君            小柳 牧衞君            斎藤  昇君            重政 庸徳君            白井  勇君            杉原 荒太君            手島  栄君            苫米地英俊君            一松 定吉君            堀木 鎌三君            武藤 常介君            村松 久義君            村山 道雄君            湯澤三千男君            米田 正文君            荒木正三郎君            加瀬  完君            木村禧八郎君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            永岡 光治君            羽生 三七君            平林  剛君            藤田  進君            松澤 兼人君            東   隆君            相馬 助治君            牛田  寛君            辻  政信君            加藤 正人君            岩間 正男君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 井野 碩哉君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君    文 部 大 臣 松田竹千代君    厚 生 大 臣 渡邊 良夫君    農 林 大 臣 福田 赳夫君    通商産業大臣  池田 勇人君    運 輸 大 臣 楢橋  渡君    郵 政 大 臣 植竹 春彦君    労 働 大 臣 松野 頼三君    建 設 大 臣 村上  勇君    国 務 大 臣 赤城 宗徳君    国 務 大 臣 石原幹市郎君    国 務 大 臣 菅野和太郎君    国 務 大 臣 中曽根康弘君    国 務 大 臣 益谷 秀次君   政府委員    内閣官房長官  椎名悦三郎君    法制局長官   林  修三君    警察庁長官官房    会計課長    大津 英男君    警察庁刑事局長 中川 董治君    行政管理庁行政    管理局長    山口  酉君    行政管理庁行政    監察局長    原田  正君    防衛政務次官  小幡 治和君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    防衛庁経理局長 山下 武利君    防衛庁装備局長 塚本 敏夫君    調達庁長官   丸山  佶君    調達庁不動産部    長       柏原益太郎君    経済企画庁長官    官房長     村上  一君    経済企画庁総合    計画局長    大來佐武郎君    法務省刑事局長 竹内 寿平君    公安調査庁長官 藤井五一郎君    外務大臣官房長 内田 藤雄君    外務大臣官房審    議官      下田 武三君    外務省アメリカ    局長      森  治樹君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省為替局長 酒井 俊彦君    国税庁長官   北島 武雄君    厚生大臣官房長 森本  潔君    厚生省社会局長 高田 正巳君    労働省労政局長 亀井  光君         —————    会計検査院長  山田 義見君         —————   説明員    外務省欧亜局外    務参事官    重光  晶君    会計検査院事務    総局次長    上村 照昌君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十五年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 小林英三

    委員長小林英三君) これより予算委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について御報告をいたします。  昨日原島宏治君及び森八三一君が、また本日島清君が委員辞任せられ、その補欠といたしまして牛田寛君、加藤正人君及び相馬助治君が選任せられました。   —————————————
  3. 小林英三

    委員長小林英三君) 昭和三十五年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三件を一括して議題といたします。  本日より締めくくりの総括質疑に入ります。鈴木強君。
  4. 鈴木強

    鈴木強君 最初に、今非常に重大段階に参っております三井三池争議についてお尋ねをいたします。この問題について、政府は今日の事態にどう対処しようとしているのか、まず、この点を伺います。
  5. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 三井の鉱山の争議は、御承知のごとく昨年の十一月中労委職権あっせんに乗り出しまして以来、労使ともにそのあっせんを拒否いたしました。従って、事態の推移と円満解決政府は期待しておりましたところ、昨日突如として非常な大きな人命の死傷の被害を出すということは、まことに遺憾なことであります。ちょうどたまたま炭労から昨日のあっせん依頼中労委に出ました。従って、あっせん依頼ということは、平和解決という方向であります。にもかかわらず、突如として昨日多数の悲惨な状況を見たことは、政府としてまことに遺憾なことであるし、同時に、暴力行為ということは平和解決へ近づくものではございません。あくまで私たちは平和な事態を期待して、そうして平和解決の道を、中労委という機関が今日乗り出しておるのでありますから、これを中心にやっていただくことが現に私は今日の一番緊急なことだと考えております。
  6. 鈴木強

    鈴木強君 それでは、具体的にお尋ねをいたします。この三井三池生産再開については、御承知通り、もしこの再開強行すれば不測事態が起きるということは明らかにわかっておったはずであります。従って、炭労も三鉱連に対してぜひその事態を認識して、もうしばらく待ってもらいたいという申し入れをしたようであります。にもかかわらずかような強引な再開措置がとられたために、今労働大臣からもお述べになりましたような不測事態が起きたと私は思うのであります。こういう点について、もちろん労使の問題でありますから、私の方ではそこまで介入できなかったという御答弁をするかもしれませんが、そうでなくて、こういう事態の、特に石炭産業の現状にかんがみて、もう少しく適切な措置政府としてとれなかったものかどうなのか、これをお聞きいたします。
  7. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 第二組合会社との組合結成以来労働協約というものは、これは合法でございます。従って第二組合会社側との就労契約、これも合法でございます。ただ、その中にやはり感情的に第一組合、第二組合という二つの感情から今日の事態が私は出てきたのではなかろうかと思います。従って、もちろん、暴力ピケもこれは違法でございます。といって、強行入坑することもこれは奨励すべきことじゃございません。そこに問題があるわけでございまして、どちらがいい悪いというよりも、やはり合法の範囲でともに戦うということが労働運動の私は平和解決の道だと思います。今日の場合、まだ事態の内容を現実に私たちは把握しておりませんから、どちらが暴行を働いたかとかいうことは、これはまだ今日私は言い表わすのは軽率だと思います。ただ、暴力行為と同時にああいう事態が起こったことだけは、これは現実の問題として労働問題から断じて排除しなければいけないことだと。その上で、ともに合法の上において私は組合運動というものは戦うということは、これはあり得ましょうけれども、暴力で戦うということは、これはもう今後とも組合運動に対する非常な大きな世論の反撃を受けるのではなかろうか。まことにこれは残念なことだと考えております。
  8. 鈴木強

    鈴木強君 石炭鉱業の問題につきましては、すでに何回か論議を尽くされ、日本石炭産業が非常に危機に立っておる。従って、これを抜本的に解決する方策を政府はとるべきではないか。この前の委員会で、通産大臣は、次期通常国会には日本総合エネルギー対策の一環として石炭産業については基本的な方針一つまとめてみたい、そういう御答弁があったのでありますが、その基本的な問題が今日国会にも提案されておらない。従って、いろんな問題がこれに派生をして今日のような事態が私は起きていると思うのであります。労働大臣も率直に認められておりますように、何としてもこういった不測事態が起きましたことは、日本労働運動の面を通じて、また、日本産業の面を通じて、これは不幸なことであります。したがって、こういう問題を政府当局としてももっと真剣にとっくんでもらう態度が私はほしかったと思うわけであります。この石炭鉱業の基本的なあり方に対して、政府はいったいいつそれをわれわれにも示してもらえますか。これはひとつ岸総理からお答えをいただきたいと思います。
  9. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 石炭鉱業につきましては、臨時国会におきましても、いわゆる石炭産業合理化から生ずる失業者に対する臨時措置を講ずる案につきまして御承認を得たわけであります。さらに、この国会におきまして、予算を通じて石炭業に対する国の施策予算の上にわれわれは実現をいたしていくと。もちろん、これだけでもって石炭の将来というものに対してのあらゆる面が解決し尽くされることではございません。今お話がありましたように、エネルギー全体として総合的に考えていく必要がありますので、この点についても、それぞれ専門家や有識者を集めて、われわれは各般の方面からこれを検討をいたしております。その結論を待って石炭業に対しましても根本的の対策を強硬に推進していきたい、かように考えております。
  10. 鈴木強

    鈴木強君 総理の御答弁でございますが、なるほど、今度の三十五年度予算に約二十五億の離職者対策費が盛られております。したがって、私たちは率直に考えます場合に、今われわれが強く念願しております基本的な石炭産業あり方についてはこれをよそに置いて、もう石炭産業は首切りを伴う合理化によってでなければ再建できないんだ、そういう思想に立って、とにかく首を切られた方々の姑息的な措置予算的にもとっておると、こういうふうに判断せざるを得ないのであります。ですから、もう少しく私は国会の審議の経過もございますし、本腰を入れて国会答弁されたことについては明確にその事実をもってわれわれに示していただかなければ問題は解決しないと私は思います。そういう点について、総理はいかがでございますか。これは通産大臣がちょっと来ませんから……。
  11. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ただ単に合理化から生ずる失業者に対する対策を強化するというだけではございませんで、効率の高い炭鉱の新坑を開発していくというようなことに対する助成なり、あるいはまた、石炭業のとうてい成り立たないような不合理な立場にあるものを整理して効率の高いところへ集中するというようなことに対するそれぞれ財政的な措置も今回の国会に提案をいたしております。が、これだけでもって、私はまだ石炭業の前途はこれでもうだいじょうぶだというわけには参りませんので、十分国会を通じての論議なり、あるいはさきほど申しましたエネルギー全体を総合的に検討した上において、これに対する根本的の施策を進めていきたい、かように思います。
  12. 鈴木強

    鈴木強君 それから、運輸大臣お尋ねしますが、今度の争議の中で特徴的に出て参りましたのは、第一組合、第二組合現実にございます。その第二組合を、海上保安庁の「ありあけ」外二隻の警備艦が、三角、長洲港から第二人工島に上陸をする援護警備をしておる。この事実を運輸大臣はいかにお考えでございますか。
  13. 楢橋渡

    国務大臣楢橋渡君) ただいまお尋ねの点でありますか、二十七日の二十時三十分長洲を出港いたしまして第二人工島に向かった第二組合員約四百名を乗せた漁船十三隻が、二十一時三十分現在未着で消息、不明につき捜索方会社側から依頼がありましたので「ありあけ」を捜索に当たらしめまして、「ありあけ」は、三池南防波堤ピケ中の第二組合員に対して同船団到着の有無を確認するために、第二人工島の桟橋に到着係留中の大牟田港を出港いたしました上記の「さらし丸」が「ありあけ丸」の左舷に強行接舷したのであって、三池保安官はそれを確認すべく上陸中で、船内に船長ほか五名が残留して保船に当たらしたということで、当時のそういう捜索命令等は、捜査のことは依頼等を受けたので、その際に第二組合員が「ありあけ丸」を足場にして上陸したという事実を誤解されたのであって、これが海上保安庁の船がことさらに第二組合のものを上陸するために援助したという事実はありません。
  14. 鈴木強

    鈴木強君 その報告はどこから受けたのですか。
  15. 楢橋渡

    国務大臣楢橋渡君) 海上保安庁現地から受けております。
  16. 鈴木強

    鈴木強君 それはどうも現実を無視しているように私には思われます。現に現地からわれわれが確認したところによりますと、海上保安庁厳重抗議をした結果、そこの責任者会社からは何も頼まれておらない。ただ新聞でそういうことがあることを知った。で、海上が荒れていたので援護に出たのだ、護衛に出たのだ、こういうのが事実のようでありますが、その報告はちょっと間違ってはいませんか。
  17. 楢橋渡

    国務大臣楢橋渡君) これは今報告した通り間違っておりません。
  18. 鈴木強

    鈴木強君 間違っておりませんといってそこで答弁をされますが、これは現実に確認したわれわれの資料に基づくものでありまして、大きな食い違いがあります。しかし、ここでは一つ論議を一応避けますが、もう少しく真実を把握していただいて問題の解決にしていただきたいと思います。大体こういう海上保安庁争議の応援をするなどということは、これはとんでもないことであって、私はあってはならないことだと思います。まあしかし、これは一つまた別の機会にやりますが、詳細に一つ真相を調べておいて下さい。  それから労働大臣、さらに石炭鉱業関係では十三万人以上の馘首者が予定されているようであります。これに対して具体的に対策はどうなっておりますか。
  19. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 十三万人ということはまだ正式に、一つ報告として出ておりますけれども、まだ決定したものではございません。これこれこういう合理化の中において、いろいろな合理化の中においてあるいは十三万という数字が出ておるかもしれませんけれども、これは年始とか本年という意味ではもちろんございません。将来の問題として、試案として私たちは聞いておりますけれども、まだそれが政府として確定したものでもなければ、私労働大臣としてそういうことをまだ正式に聞いておりません。今日は当面の失業者離職者に対して政府は全力をあげておるわけであります。  なお先ほど言葉の中に死傷者ということは誤りでございまして、けが人でございます。訂正いたします。
  20. 鈴木強

    鈴木強君 これはまあ非常に重大な問題でありますから、短い時間で全部を言い尽すことはできませんので、わが党はまたあらためて各委員会を通じて政府のこれに対する態度をただしたいと思いますが、どうぞ一つ積極的に事態解決できますように、御配慮をいただきますようにお願いをしておきます。
  21. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 関連質問三池に起こっておる問題は非常に重大であり、これは早急に解決に努力すべきであるというふうに考えられます。特に炭労はこれを中労委あっせん申請をいたしております。これは労働組合態度としては平和的にこの問題を処理しよう、こういう方針を決定しておるわけです。しかし、現地との間に若干の食い違いがあって、ああいう事態が起こったわけです。しかし、この事態労使双方の間においてお互いに解決するように努力すべきことは言うまでもありませんけれども、この問題をやはり政治的に解決するように努力するという、解決のために配慮するということは政治家として私は当然の責任である、そういう政治的解決の面は当然考慮さるべきである、かように考えるわけであります。特に炭労中労委あっせん依頼いたしておりますが、会社側がそれを受けない、こういう事態である。これでは平和的に解決するといっても解決のしょうがないわけです。こういう問題は、やはり政治的に解決方向に、平和的に解決されるように努力すべきである。特に政府はそういう配慮をすべきであるというふうに私は考えておりますが、この際総理大臣並びに労働大臣の御意見を聞きたい。総理大臣にまず聞きたい。
  22. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 三池の問題はまことに日本労働運動の上におきまして遺憾な事態でございます。これが一日も早く平和的に解決されることは最もわれわれが望んでおるところでございます。先ほど労働大臣がお答え申し上げましたように、中労委炭労からあっせんを申請いたしておる。中労委がこれに対して平和的な解決について努力するという立場にございますから、政府がこれに早く介入するというようなことは、労働運動立場から私は避けなければならぬと思います。しかしながら、平和的にこれが解決される、一日も早く。これは望ましいことであり、われわれが念願しておることでありますから、そういう考えのもとに中労委あっせんをしばらく見守っていくことが適当であろうと、かように考えます。
  23. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) もちろん政府平和的解決に最善の努力をいたします。同時に昨日の事態が、ああいう突発的事故が起こりましたけさでございますから、直ちにきょうどうしろということは、これはお互い冷静になっていただくそうして、暴力行為をともにみずから制してもらう、そうして法律の上において合法的な立場に立てば、おのずから労使ともに私は冷静な平和的な解決の道が開かれると信じております。ことに炭労からは中労委あっせん依頼が出ております今日、私は必ずその道が開かれるものだと存じますが、きょうきのうは、やはり両者とも刺激と申しますか、ある程度興奮状態にありますので、早くこの事態を冷静にすることが平和解決への私は一番糸口をつかみ得ると、こう考えて、政府はその方向に努力いたすつもりでございます。
  24. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 問題は私は二点あると思うのですね。それは平静になって、そして事態を平和的に解決方向に努力する、これは当然でありますが、問題は私は二つあると思う。労働組合中労委調停を申請しておる。しかし会社側はこれを受諾しないという現実ですね。これを平和的に解決するのに非常に障害になるということを、よしあしは別として、平和的に解決し得ない一つの問題として起こってきておるわけです。  それからもう一つは、この第二組合による就労強行です。これが会社側によって依然としてとられておるということになると、なかなか平和的に解決しようとしても、そういうむずかしい問題が起こってくる。こういう二点については私は政府に介入すべきであるという意見を今述べておるのではない。しかし、これは政治的に政府もあるいは政党もこの事態がさらに発展しないように、平和的に解決されるように配慮するということは政治家の当然の責務じゃないか、こういう考え方を持っておるわけなんです。そこで、この中労委に対するあっせん会社側の拒否あるいは会社側の第二組合就労強行、こういう問題はやはり平和的にあっせんするように政治家として努力すべきじゃないか。特に政府としては、この点は介入というよりも十分政界において話し合いをして、うまく進展するように配慮すべきではないか、こう言っているのです。この点を岸総理から伺いたい。
  25. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) ただいまの御趣旨もございますが、今日は、中労委あっせん申請をされているのは、炭労でございます。従って、炭労は、中労委機関というものを通じて、このあっせん解決を求めることが今日の問題であります。しかし、今日は、やはり中労委というものを通じて、いわゆる中間機関として公平なあっせん調停ということがなされることが、今日の問題としては急務であります。また、政府が関与する、あるいは政治的にやるには、まだ少し時期としては今日煮つまっていない。また、そういう事態にならずに私は平和解決ができると信じておるわけであります。なお、第二組合が、再びまた強行就労するのは、好ましいことじゃございません。しかし、第二組合は、組合として労働協約を結んで、今日就労をやるのでありますから、これは違法だとは私は言えないのです。違法だとは言えないのであります。同時に、暴力ピケというものも、やはり平和的にやろうとするならば、これはともにやはり平和的な方向に向かうということも、ともども考えませんと、ただ、これがいけないのだ、あれがいけないのだと、一つ事態をとらえて言うのについては、私はまだその事態にあらずと考えて、中労委というものが、個々の問題について審査しながら、労使あっせんをするという段階を今日見守ることが、一番平和的に早道であると考えております。
  26. 鈴木強

    鈴木強君 自治庁長官けさ新聞によりますと、あなたは今度の争議催涙弾ガスを使うということを言っておりますが、これはほんとうですか。
  27. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 昨夜、記者会見が行なわれました際に、警備態勢その他についていろいろ話が出まして、警察官の出動についてもおそかったではないか、あるいは人員がどうだという話がございましたので、こういう不法事態は、これは一刻も早く押えなければならないし、今後もこういうことがあってはならないと思う。そういう点について、十分警備態勢一つ固めなければならないというような話から、人の足りない場合にはどうするかということで、そういう場合について、非常な事態になれば、場合によれば、催涙弾等も用いなければならない場合もあるだろうと、会見の際にその席に同席しておりました者からちょっと出た話でございまして、話の発展からそういうことになっておるのでございまして、非常な事態であれば、いろいろなことを考えなければならぬだろう、そういう意味で出た話であります。
  28. 鈴木強

    鈴木強君 あなたの方では、争議の根本的な解決あと回しにして、何か起きた事態催涙弾を使ってけ散らそうと思う。そういうことでは本末転倒ですよ。だから、さっき言っている基本方針をぜひ一つ立てて、解決方向総理以下御努力願いたいと思います。  次に、岸総理大臣にお伺いいたします。あなたは、本委員会において、ILO八十七号条約の批准については、国内法を整備して四月の初めに本国会に提案すると答弁をされました。われわれはぜひそうやっていただきたいと思いまして、強く期待しておるところでありますが、四月もいよいよ間近かになりましたが、これに間違いございませんでしょうか。現在の準備の進行状況等一つお伺いしたいと思います。
  29. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ILOの条約批准の問題につきましては、かねて政府国会を通じて申し上げておりますように、諸般の準備を整えて、この国会におきまして御承認の審議が尽くされるような時期に提案したい。それには四月の初旬ということが私は目標であるということを、かねて申し上げました。自来、政府部内を督励いたしまして、準備を急がしております。まだすべての準備ができ上がったという段階ではございませんから、いつ何にちには出せるということを申し上げかねますけれども、私は極力関係方面を督促いたしまして、準備を整えるように幾たびか督促をいたしております。そのために関係各省におきましても、真剣に検討をして、結論を得るように努力をいたしております次第でございます。まだ、日にちをはっきり申し上げることはできないことは、非常に遺憾であります。私は最初の申し上げたことを今日もなお考えて、関係方面を督励いたしてやっていきたいかように考えております。
  30. 鈴木強

    鈴木強君 総理の御努力は非常に多といたします。ただ、世上、社会党がILO問題と、安保批准とをからましておるようなうわさも流れておりますが、それは全くの誤解であります。われわれは絶対に新安保とこれとからませようという気持はございませんので、一つぜひ各官庁を督励して、あなたの当初お示しになりました四月の初めごろに出せるように、一つ強くあなたにお願いしておきます。
  31. 秋山長造

    ○秋山長造君 ちょっと。今の四月上旬を目途とされるという総理大臣方針ですね。これはその後、今も鈴木君から質問がありましたように、われわれは直接間接、政府部内のこと、あるいは自民党の党内の意見、いろいろまちまちなうわさを聞くわけです。そのために、総理大臣がせっかくああいう積極的な言明をこの委員会でなさったにもかかわらず、われわれとしては相当不安を持っているわけです。疑問を持っておる。そこで、もう一度この機会に総理大臣から、四月上旬を目途としてぜひともこれを批准へこぎつけたいのだ、こういう総理大臣の確たる方針を、もう一度ここで再確認していただきたい、一つその点もう一度はっきり言明をお願いしたい。
  32. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 鈴木委員にお答え申し上げましたように、政府としてはこの批准を本国会において得るように、また御審議の関係も考えまして、従来四月上旬を目途としてということで、私は関係政府部内を督励をいたしております。まだ今お答え申し上げましたように、すべてのものが結論を得たということではございませんから、必ず何にちにはこれを提案するということは申し上げかねますが、最初言明した通りの心持で、今後も政府に準備を急がせるようにいたします。
  33. 鈴木強

    鈴木強君 次に、西独のアデナウアー首相が今、御来日でございますが、政府はアデナウアー首相との間に、どういう問題を中心にしてお話をなされておりますか。
  34. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国際情勢一般についてのこの見解につきまして、特に東西首脳会談が行なわれるときでありますし、また、日本に来日される前にアメリカを訪問してアイゼンハワー大統領とアデナウアー首相会談をされておりますから、国際情勢一般についての意見を率直に交換し合った。並びに日独の間におきまして、経済関係におきまして貿易の状況が必ずしも望ましい状況にございません。これの改善に関しての意見の交換、またヨーロッパ共同市場と日本との関係については、かねて非常にわれわれは関心を持っているところであります。ヨーロッパ共同体の中において、ドイツの演じておる役割というものは非常に大きいわけでありますから、これとの関係を将来相互に有利なように発展せしめることについて努力をいたし、また低開発地域における日独の協力の問題等も、隔意のない意見を交換しております。
  35. 鈴木強

    鈴木強君 抽象的にはわかりましたが、特に西独は御承知通り核武装を認めております。わが日本は、岸総理が核武装は断固として反対されておる。そういう状況の中で、おそらく自由陣営の今後の強化ということが話題になったと思うのでありますが、何かアデナウアーさんからそういうような軍事体制的なものについてお話がありましたか、また、こちらからそういうことをやろうとしておりますか。
  36. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 核武装につきましては、西独と日本との違いは御指摘の通りであります。私どもはいかなることがあっても、核武装しないという従来の方針を堅持していくつもりでございます。別段そういう防衛的な立場からの日独の間の話し合いというものはいたしておりません。
  37. 鈴木強

    鈴木強君 首相は明日も箱根の芦ノ湖において午後アデナウアー首相とお会いになるようでございますので、私はこの際、ぜひともこの日独の友好親善をはかることはもちろんでありますが、その際日独の文化、技術、経済交流等によって日本とドイツの間の友好を深めると同時に、現在の国際緊張の緩和の方向一つ互いに手をとって進んでいく、そして平和共存の道を開いていくということを、一つ強い信念として総理にこのアデナウアーに訴えてもらいたいと思いますが、そういうことはやってもらえますか。
  38. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日独の間において、従来も文化面における文化の交流や、あるいは技術面における提携等につきましては、ある程度スムーズにいっております。しかし、今後ますますこれらを進めることは当然のことでございます。また、日独ともに世界の平和を強く望んでおるという立場におきまして、これは全然同じ立場にあるわけでございますから、国際緊張緩和につきましても、われわれも非常な強い関心を持っておるし、ドイツもまた同様に、非常にその点については関心を持っておるわけでございまして、そういう今お話しのような心組みで従来も話をしておりますし、さらに話を進めることは当然であります。
  39. 鈴木強

    鈴木強君 次に私は、日ソ漁業交渉の問題についてお尋ねいたします。情報によりますと、二十六日の日ソ漁業交渉の本会議においてソ連側は日ソ漁業条約に基づく規制区域内のほぼ西半分、そのほかに規制区域の南に相当広い禁止区域を拡大するということと、またさらに、漁期は昨年よりも一カ月早く七月半ばに終わらせるという要求が出ておるようであります。この規制区域の中の西半分というのは、有力なマスの漁場でありますし、規制区域の南の側の今度拡大しようとするところは、流し網漁業のマスの中漁場であります。従って非常に重大な問題が提起され、事態はおろそかにできないと私は思うのであります。塩見さんもお帰りになるようでありますが、これに対して、政府はこの日ソ漁業交渉を一日もすみやかに解決するために、どういう態度で今後臨もうとするのか、岸総理みずから出ていくことも一つの方法でありましょう、さらにまた高碕さんや主管大臣である農林大臣の福田さんが出かけていくことも、これもあるかもしれませんが、いずれにしても、本腰を入れてこの問題を解決していただきたいと私は思うのでありますが、これからの政府の腹がまえと見通しについてお尋ねをいたします。
  40. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 日ソ漁業会議は、二十五日から再び本会議を開きまして、その劈頭におきまして、ソ連からお話しのような提案があったことは、事実のようでございます。そこで考えてみますると、毎年今ごろの段階になりますると、ソ連から相当思い切った提案があるわけでありまして、昨年におきましても、ほぼ同様の提案があったのであります。私どもはしかし、今後に対しましてなるべく慎重を期したいというような見地から、塩見顧問の一時帰朝を命じまして三十一日に帰ってきます。塩見顧問から相当詳細に事情の報告があろうかと思いまするが、それを基礎にいたしまして、万事今後の計画を立てていきたい、かように考えておる次第でございます。最善を尽くして日本の漁業権を守る、かような決意でございます。
  41. 鈴木強

    鈴木強君 この問題については、しばしば政府の御答弁を伺っておりますが、まだ現在の国際情勢の中に立って、ソ連の態度が明確に分析されていないような気がします。私は岸総理の御答弁のように、ソ連がこの問題と、漁業交渉と安保の問題をからめてやるようなことはないと思いますが、しかし、遺憾ながら客観的な情勢は、何といっても昨年より以上の危険な、また困難な情勢があると思うわけです。従ってもう少し私は本腰を入れて、塩見さんが来て詳細な報告を受けなければわからぬ、こういうことでありますが、そうでなくて、今は電波が発達しておりますから、電報ででも電話でも、自由に真相は早くつかめるわけですから、帰るのを待つということは、なまつちょろいのでありまして、真相を十分連絡をとった上でどうするかをきめる段階にきていると思います。岸総理大臣はみずからも出かけて行くような気持はないですか。それでなかったら、福田農林大臣あたりを早急に派遣をして、そしてその交渉に当たらしたらいかがですか、そういうことがなければ、解決は困難だと私は思いますから、あえて私はここで伺うわけです。
  42. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日ソ漁業交渉の問題は、年々いろいろな交渉の段階においては、困難な事態があったことは御承知通りであります。ところが最近におきまして、昨年のこの実際の漁業の実績やその他のことから見まして本年度の漁業交渉が相当困難な事態にくるだろうということは、私ども昨年来予想をいたして、いろいろな資料等でこれに当たるような準備をいたして、そしてそれぞれの専門家を派遣して交渉をいたしておるわけです。しかし、これでもって専門家同士の科学的なこのデータだけでこの結論が得られるかどうかということについては、過去においても、なかなかそれではできないのでありまして、本年度におきましても、最後の仕上げのためにどういうように進んでいくかということについては、政府としても十分対策考えております。ただ、塩見君を一応日本に帰ってもらいまして、詳細な事情、あるいはまたソ連側の現地における交渉の間における意図、空気というものもはっきりつかんで、そしてこれに対してわれわれとして最善を尽くす方向考えてみたい、政府代表として高碕君を出すことは、かねてわれわれとして考えておるのであります。さらに主管大臣であるとか、その他の代表を派遣すべきことにつきましても検討いたしております。いずれ、その時期とか、あるいはどういうふうに派遣するかというようなことは、塩見君が帰ってきた上十分検討してこれをやる、今日においてだれをいつ派遣するというようなことは、まだ申し上げることは適当でないと思いますが、御趣旨のように沿うて十分な処置をとるように、政府としてもあらゆる点から検討いたしております。
  43. 鈴木強

    鈴木強君 最悪の事態には、あなた御自身でも行く決意はございますか。
  44. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今の現在の状況におきましては、まだそのことは考えておりません。しかし、十分事態を検討した上で政府としては最善の方途を講じたい、かように思います。
  45. 鈴木強

    鈴木強君 次に、山形県の鶴岡市の亀屋旅館でおきた宮様が泊まるために、四つんばいの検便をしたということがありますが、これは非常に人権じゅうりんもはなはだしいのでありましてその真相を一つ聞かしていただきたいと思います。法務大臣。
  46. 小林英三

    委員長小林英三君) 法務大臣は法務委員会にちょっと退席しております。秋山君の了解を得てやっておりますが。
  47. 鈴木強

    鈴木強君 議事進行ですよ。厚生大臣に最初、法務大臣が来るまで時間がもったいないからやってもらいます。
  48. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 私の方は報告は受けておりますけれども、法務省の方で直接調べております。
  49. 藤田進

    ○藤田進君 その間にちょっと関連質問……。
  50. 小林英三

    委員長小林英三君) 今の鈴木君のこ……。
  51. 藤田進

    ○藤田進君 岸総理にお伺いいたしますが、先ほどアデナウアー総理との会談の内容に触れられたわけですが、なかんずく経済関係についてであります。私が現地で調査した結果では、アジア、アフリカ、あるいは中近東を通じてプラント輸出においてあるいはその他の開発において、肥料その他の消費物資について、ことごとく苛烈な競争関係にあるわけであります。それが単にアデナウアー総理との間に短時間話し合いが行なわれたことによって、これらの経済の協力関係というものが、はたして実を結ぶかどうか非常な私は疑問を持っております。むしろ、ドイツ側は積極的に御承知のように日本の労働賃金にまで触れてきている実態であります。従って引き続き、これら経済の問題について今後話し合うきっかけを作る、そういうやり方でお話しになるのか、単にまあ肩をたたいた程度で終わるということになるのか、私どもはこの成果について重大な関心を持っているものでありまして、もっと詳細かつ将来の糸口をつけたあとの方法等が、構想があればお示しをいただきたい。
  52. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今回のアデナウアー首相はブレンターノ外務大臣を伴ってきております。われわれの会談にもブレンターノ外相が列席いたしておりますし、またいろいろな意見を述べておりますし、わが方からも外務大臣がこれに出席しております。さらに続いて外務大臣及びブレンターノ外相の会談も行なわれております。もちろん、時間に制限があるわけでございますし、首相自体、経済の問題等につきましては、なおそれぞれの閣僚があるわけでございますから、そういう方面とさらに話をしようというようなことになっている点も少なくないのであります。お話しの通り、経済の点において各地における日独の間において非常に競争している、ことに肥料等におきましては各地において、われわれから見るというと、ドイツ側のダンピングじゃないかと思われるような価格でなにしている、こういうことで両方が競争するということは、非常にむだなことである、この方法について、一つ協力のことを話そうじゃないか、それには具体的に将来話すというようなきっかけを作るというのが、この際の会談の大体のやり方でございます。経済問題にしろ、ずいぶん詳細に経済問題についてのわれわれの希望なり意見を述べております。しかし、それらについて一々今度の会談ですぐ解決ができる、こういうふうな結論が出る問題ではございませんで、将来そういう問題について日独が友好的な立場において、協力的な立場において話し合いを進めようという、また進めるについては、外務大臣が列席しておりまして、この方を通じてやろう、また必要があれば、民間の間におけるところの話し合いもしていくような糸口を作っていきたいというような気持で、日独ともに話が今日まで進んできております。具体的にお話しの通りすぐ解決がされるというような簡単な問題でもございませんし、またこういういい機会でございますから、ただ単に抽象的な友好親善ということでなしに、具体的に将来話し合いができる、話し合いの糸口を作るというような、続いてそういう話し合いができるように持っていくように、話し合いを今日まで進めてきております。
  53. 藤田進

    ○藤田進君 そういう政治外交の面の解決も、私は否定いたしませんが、実際問題として、日独における諸産業を調べ、それが産業の構造と運営について調査を私は遂げて参りましたが、結局わが国における自由主義的な方向と、ドイツがとっている産業の構造自体、あるいは大きなファクターとしては、労使関係といったような点について格段の戦後差がついてきているように私は思います。端的に言えば、自動車産業においてそうであります。その他の重要産業またしかりであります。私はこの際、アデナウアー総理と会われる際に、時間がないので、そこまでは触れないといたしましても、大いにわが国の産業構造、大蔵大臣は所得倍増論に関連して産業構造についての検討ということを触れられ、私も時間がないので深くその構想はお伺いしておりませんが、わが国の産業構造という点が、いかにドイツとの関係において競争関係に太刀打ちができないかという点も十分考慮される必要があるのではないだろうか、ことに、ドイツの肥料の例を総理もとられましたが、国がいかなる肥料に対する政策を講じておるかということを、現地西ドイツに行ってもなかなか明らかにしないのが実態であります。こういったような面からも、ほんとうにドイツと日本の国際市場においての苛烈な競争ということを勘案され、ことに中共貿易については、日本と中共との貿易が再開されないままでいることを、ひたすら喜んでいるようにも私ども見受けられるわけであります。十分今後の外交交渉、あるいは所管別の交渉をせられる際には、広範な意味で、一つわが国の産業自体についても十分考慮を払っていただきたいと思いますが、御所見を伺いたい。
  54. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん、ドイツの事態は、御指摘になりましたように、産業経済の実情と日本の実情との間に相当な差異があることはお説の通りであります。また、政府がとっておる政策につきましても、日独の間に違っておる問題も、いろいろな点があると思います。しかしながら日独ともに自由主義の立場から自由経済の基本をもって参って、そうしてともに貿易で立たなければならない、貿易に依存しておることが強い状態にありますので、自然その国際市場において苛烈な競争の立場に立つ。しかしながら両国のほんとうの友好親善、また協力関係というものを進めていく上におきまして、ただこの自由の競争というものを全部なくするというようなことはできませんけれども、しかしながらこれが非常な激烈なものになるということは、これは望ましくないのでありまして両国とも十分に考えなければならぬ点が私はあると思う。こういう点についてアデナウアー首相の来日を契機として、日本の実情についてもできるだけ認識を深めてもらって、しかも日独が協力できる面において協力し、過度の競争をいたずらにやるということのないようにしていくことが両国の相互の利益である。かように考えますから、十分藤田委員のお話のような心組みでなお今後の会談には臨んでいくつもりでございます。
  55. 小林英三

    委員長小林英三君) 鈴木君、法務大臣も郵政大臣も見えておりますから。
  56. 鈴木強

    鈴木強君 答弁を……。
  57. 小林英三

    委員長小林英三君) 法務大臣。
  58. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 鶴岡の亀屋ホテルの事件に関しましては二十五日に新聞に出ておりましたので、二十六日に鶴岡の法務局に調査を命じまして、十人ほどの係官を呼んで現在調査をしております。事実は相当人権問題に深い関係を持ちますので、私の方としては十分調査の上、新聞に出ておりますことが事実でございますれば適当な措置をとって参りたい、かように考えております。
  59. 鈴木強

    鈴木強君 先ほど厚生大臣は法務省でやっておるので私は知らぬという答弁をされたのですが、これはけしからぬ話で、保健所の管轄はこれは厚生省の管轄でございます。新聞によると、県の方から非常に厳重にこういう検便をやるようにという要請があったのでやったということなんですが、これはあなたの所管でないのですか。そういう事実はいかがですか。
  60. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 保健所の所管は厚生省の末端の所管でございます。しかしこのたびのこの事件につきましては厚生省は何ら指導をしていないのでございます。
  61. 鈴木強

    鈴木強君 現にこの新聞記事によりますと、県から厳重にやれというのでやったということを当該保健所の課長は言ってるのですね。これはそうしてみると、あなたのところからそう言わないということになると、だれがこれをやる……。
  62. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 目下十分調査中でございます。
  63. 鈴木強

    鈴木強君 先ほどの御答弁は非常に不親切な御答弁ですよ。検討しているならしているで最初からそういったらいいでしょう。最初はしらを切って、わしゃ知らぬ、法務大臣のことだから。こういうような国会議員を侮辱するような答弁をされちゃ困ります。これは法務省も十分検討中のようでございますから、しかもお話のように、人権じゅうりんの疑いがあるということを法務大臣はおっしゃっておる。これは総理大臣に一応聞いてみたいのですが、どうも天皇が行かれる場合とか宮様が行かれる場合には必要以上にこういう厳重な検査をしたり警戒をしたり準備したりしておられる。これは天皇陛下も昔と違って人間天皇になったわけです。どうしてそういう特別な、しかも人権をじゅうりんするようなことまでやらなくちゃならないのか、どうなのか。これはもう非常に重大な問題と私は思うのです。おそらく、宮内庁の見解を聞いてもこれは迷惑だということまで言っております。そういうことをあなたの部下の、下の方の連中がやっているということはこれはゆゆしいことだと思います。もう少し皇室関係と国民との間というものは明瞭にして、もっと緊密にやるようにやらなくちゃ、ますますもう戦争前のように天皇というものは何か上に浮び上がっちゃって、昔のような観念に戻ることを私はおそれるのです。こういう点について岸総理は率直にどうお考えですか。この人権じゅうりん問題のようなことはけしからぬ話で、即刻調べて厳重に処罰してもらいたい。
  64. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御指摘のように、戦後におきまして新しい憲法のもとにおける皇室というものの立場というものを、十分に頭において警備その他の処置を講ずることが政府方針でもありますし、また直接宮内庁あたりの強い希望でもあるのでありまして、そういうことに関連して、もしも人権じゅうりん的なことが行なわれるというようなことがあってはこれは私は非常に遺憾なことだと思います。ことに皇室のことに関連してそういうことが行なわれるというようなことがありますというと、皇室と国民との気持の上からしましても、はなはだ遺憾なことであり、また皇室の心持はそういうことでは絶対ないと思います。従ってもちろんいろいろな御歓待を申し上げるとか、あるいは警備の点等について遺憾のないように配慮すべきことは、これは私は当然していかなければなりませんが、しかし、そこにおのずから限界がある。ことに、いわんやそれが人権じゅうりんの疑いがあるというようなことにつきましては、ゆゆしいことでありますから、十分に一つ私はこの事態、この事件自身は今法務大臣答えたように真相を明らかにしたい。それの責任があるならばその責任を明らかにすることは当然であります。全体として十分に、今言ったような心持で配慮して参らなければならぬ、かように考えております。
  65. 鈴木強

    鈴木強君 検討中ですからこれ以上ここではできませんが、一つどうぞ再びこのことの起こらないように厳に一つ今、総理のおっしゃったような思想で指導監督を厳重にしていただきたいと思います。  次に会計検査院。過去十年間の国費の不正、濫費の状況はどうでございますか、年度別の件数と金額を示してもらいたい。
  66. 山田義見

    会計検査院長(山田義見君) 年度別の金額は今ここにもっておりませんが、国損金額の合計で申しまするならば、二十二年度から三十三年度まで大体十七億、三十八年度から三十三年度までは大体、五億七千九百万円程度であります。その年度別が必要でありますれば係の者に答弁いたさせます。
  67. 鈴木強

    鈴木強君 私は質問の通告をして、明らかにしてもらうようにやっておった。あなた怠慢じゃないですか、何のために質問を聞きにきたのですか。
  68. 山田義見

    会計検査院長(山田義見君) 私は資料の要求があったということは聞いておりますけれども、そういう質問があったことは聞いておりません。(「何だそれはおかしいぞ」「国会をばかにするな」と呼ぶ者あり)
  69. 藤田進

    ○藤田進君 議事進行について。会計検査院長国会に対する答弁その他の態度について、私は疑義を持つわけです。先般加瀬委員の質疑に関連して、あなたの直属の部下が前日答弁したことは、全然連絡もないし、われ関せず、これを否定して、そのままこれで通ると考えられておる。あなたは、その行政組織——会計検査院の長として、部下との関係において十分緊密な連絡をとりつつ国会に対して責任のある答弁をする態度でここに臨んでいるのであるかどうか、私は疑います。ことに今の御答弁でもそうであります。これでは議事が進行しない。部下とあなたの答弁との関連は、全然超然的にあなたはおやりになっているのかどうか。緊密な、会計検査院内部のその総意の上に立って、実態を見きわめ、把握して、議会に責任ある答弁をしようとするのか、しないのか。はっきりと一つ、その態度の問題からお尋ねをしておきます。
  70. 小林英三

    委員長小林英三君) 山田院長。
  71. 山田義見

    会計検査院長(山田義見君) この前の答弁でありますが、私は、私の信ずるところを答弁いたしまして、これに対して、以前に下位の者が私と違った答弁をいたしておりますならば、その点は間違いであるということを申しました。(「そういうときは理由をあげて言いなさい」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  それから、態度の問題でありまするが、私は、質問に対しましては、誠意をもって答弁いたしているつもりであります。
  72. 鈴木強

    鈴木強君 いや、僕はこれは議事進行ですよ。私は、きのう会計検査院から来ましたから、その資料を、きょう答弁するのは何ですかと聞いてきたから、これですよと言って知らしたのに、資料の要求はあったが、答弁することは聞かなかったと言って、そんなべらぼうなことはない。この前の関連でも、そんな不誠実な答弁があるか。
  73. 小林英三

    委員長小林英三君) 会計検査院長に申し上げますが、質疑者の鈴木君から、前もって、こうこうこういうことを質問するということを最初から御注意申し上げておったそうでありますが、この点につきましてはどうでありますか。
  74. 山田義見

    会計検査院長(山田義見君) 私は、資料の要求のありましたことは聞いておりますけれども、それ以外のことは聞いておりませんから、下位の者に答弁いたさせます。
  75. 鈴木強

    鈴木強君 あしたの質問は何だと、あなたの方から聞きにきたんだ。
  76. 山田義見

    会計検査院長(山田義見君) 私は、知らないと申しておるのであります。
  77. 鈴木強

    鈴木強君 君のところへ連絡がないなら、なぜ連絡しない。
  78. 山田義見

    会計検査院長(山田義見君) だから、下位の者に……。(「委員長の今の質問に対して、われわれ聞こえなかった、正式に答弁させろ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  79. 小林英三

    委員長小林英三君) 会計検査院長に申し上げますが、ただいま委員長から申し上げた通りに、昨日、質疑者の鈴木君から、前もってこういうことについて質疑をするということを申し込んであるということでありますけれども……。
  80. 鈴木強

    鈴木強君 聞きにきたんだ、向こうから。
  81. 小林英三

    委員長小林英三君) 会計検査院の方から質疑者の鈴木君に、前もってこういうことを聞きにきたそうでありますが、それに対する院長の先ほどの発言はちょっとおかしいと思います。念のためにもう一ぺん、会計検査院長が出て、指名して下さい、部下を、会計検査院長、あなたが指名して下さい。
  82. 山田義見

    会計検査院長(山田義見君) 連絡不十分であったようでありまするが、下位の者に答弁いたさせます。(「あったようとは何だ、院長」「あやまりなさい、そんな態度があるか」「委員長、注意しなさい、あなたは委員会をばかにしておる」と呼ぶ者あり)
  83. 小林英三

    委員長小林英三君) 会計検査院長、ここで、発言台に出て、部下を指名して下さい、発言する者を。
  84. 山田義見

    会計検査院長(山田義見君) 次長に答弁をいたさせます。
  85. 小林英三

    委員長小林英三君) 上村事務総局次長。(「ちょっと待て」「そんなばかなことがあるか、陳謝しろ」「次長が答弁する何も資格ないよ」と)呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  山田会計検査院長に申し上げますが、昨日、質疑者の鈴木君へ、会計検査院の方から、わざわざどういうことについて質問するかということを連絡に来たくらいでありますから、会計検査院長から、ただいまの発言に対して行き違いのあったことを一応釈明願って、その上で、お願いいたします。会計検査院長
  86. 山田義見

    会計検査院長(山田義見君) 私はそう聞いておりませんでしたけれども、その内部の連絡の不十分であったことはまことに遺憾に存じます。私は今承知をいたしておりませんからして、次長をもって答弁いたさせますから、御了承願います。
  87. 小林英三

    委員長小林英三君) 上村事務総局次長
  88. 上村照昌

    説明員(上村照昌君) 事務当局の方で連絡が悪かったのは、はなはだ遺憾であります。  件数のことでございますが、二十三年から三十三年までの批難件数が一万四千百四十四件で、批難金額は四千十億というふうに、総体ではなっております。    〔荒木正三郎君「今の検査院の院長のやり方はおかしい。この間の問題だっておかしいのだよ。ここで答弁したこととは違う答弁をして、そのままほおかぶりしてやめているのだから、それは許せないよ」と述ぶ〕  これを年度別に申し上げます。  二十三年度が六百二十三件で二千五百七十六億。それから二十四年度が七百五十件で八百十九億。これは件数と批難金額でございます。それから、二十五年度が千百十三件で百四十九億円になっております。二十六年度が千百九十八件で三十億円になります。二十七年度が千八百十三件で百二億円でございます。二十八年度が二千二百二十二件で百四十八億円。二十九年度が二千二百四十六件で七十三億円。三十年度が二千百八十五件で六十六億円。三十一年度が千百二十八件で二十五億円。三十二年度が五百一件で十五億円。三十三年度が三百五十五件で十二億円。以上でございます。
  89. 鈴木強

    鈴木強君 さっきの検査院長は、何の数字を持ってきてさっき言ったのか。まるきり答弁がさっきの数字と違うのだ。あなた、さっき言ったの違う。十七億と言ったのだよ。
  90. 秋山長造

    ○秋山長造君 今の次長の御答弁は、さっきの院長の御答弁とも相当違うようですがね。さっき来の院長の答弁にしても、また答弁される態度にしても、実ははなはだどうも納得ができない。だからこのままで議事を進行されることは、はなはだ不本意です。今の院長と次長の答弁の内容の食い違いについても、ここできっぱりしていただきたいと思う。それでなければ、うやむやに議事進行されるということは、われわれは反対します。委員長、善処願います。
  91. 小林英三

    委員長小林英三君) ただいまの秋山委員の議事進行に対する発言に対しまして、会計検査院長からこの際、発言を願います。
  92. 山田義見

    会計検査院長(山田義見君) 私、先ほど答弁いたしましたのは、公務員の不正行為による国損金額の御質問と思いまして、その金額を答弁いたしました。もしそうでなくて、指摘金額でありましたならば、今次長の答弁いたしました通りでございます。(「自分の言うことが一番正しいと言ったじゃないか。今度変わったな。頭がおかしいんじゃないか。」と呼ぶ者あり)
  93. 秋山長造

    ○秋山長造君 今、小林委員から発言があるように、これは院長がただそこで今のような答弁をなさっても、われわれはそれを真に受けるわけにはいかぬ。なぜならば、先だっての答弁のときには、前の日に局長が来て、われわれにはっきりした答弁をしておりながら、それとはまるで違ったことを院長は答弁している。そしてこちらからそれに対して反問した、その反問に対しては、局長が何と言うたかしらぬけれども、とにかく、わしの言うことが一番正しいのだと、こういういたけだかな答弁をされた。そういう院長ですからね。だから次長と何にも打ち合わせも何にもしないで、ただ何か知らぬけれども、次長が違ったことを言ったんなら、次長が言った通りが正しいんだというような答弁をされても、われわれはそのまま納得ができない。責任を持ちますか、次長の答弁したことに。よく打ち合わせをしてですね、はなから仕直してみて下さい。通り一ぺんの、その場のがれのことを言われては困る。会計検査院はこれで通用するのかもしれませんけれども、国会は通らぬ。そんな会計検査ばかりやっておるから、ろくなことはできやせぬ。(「理事会を開いて相談せよ。」「休憩休憩。」「打ち合わせてまじめに答弁をしなさい。」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  94. 山田義見

    会計検査院長(山田義見君) 先ほど申しました通り、私の答弁いたしましたのは、質問を誤解したかもしれませんが……、(「したかもしれませんとは何だ」と呼ぶ者あり)国損金額を答弁いたしました。もしそれが御質問に合ってなかったならば、その点はこちらの答弁が誤っておりました。それから……、(「こんなことばかり繰り返していたんじゃ時間のむだですよ。われわれは院長の態度に対しては納得しない。」と呼ぶ者あり)それから今、次長が申し上げたのは、批難金額でございまして、批難金額については次長の答弁いたしました通りでありまして、私は別にそれに対しては間違いはないと思っております。
  95. 鈴木強

    鈴木強君 僕の質問を誤解したのじゃないのだよ。間違って聞いているんだよ。(「誤解も何もない。」と呼ぶ者あり)
  96. 山田義見

    会計検査院長(山田義見君) だからその点は、私が間違いであったということを私申しているわけであります。(「間違いだったということをはっきり確認しろ」「陳謝ぐらいしたらどうです」と呼ぶ者あり)
  97. 岩間正男

    ○岩間正男君 委員長
  98. 小林英三

    委員長小林英三君) 何です。議事進行ですか、岩間君。
  99. 岩間正男

    ○岩間正男君 ただいまの論議を聞いておりまして、私は非常に奇怪にたえない。会計検査院のこの職責から考えて、こういうことでは、会計検査院の院内の運営を一体最高責任者としてどうしているかということが、非常に疑問になってきている。第一、具体的にこういう問題を追及しているのは、これはいろいろな下の課長なり局長なり、さらにその下の職員です。この答弁に対しまして、この前これは部長が何と答えようが私の答弁が正しい、こういうことでは、会計検査院の運営全体が、これはできないことになるだろうと私は思う。一つの行政機構の中で、こういうような考えを持つところの院長を持っておったら、これはできない。  第二点に私はお聞きしたいのは、この前の加瀬委員の質問に対してあなたは問題を判定する一番正式な問題として、私は当然その書類によるところのはっきりした裁定に基づいて、それを検査しなければならないと私は考えておった。ところが大蔵省の方から話があったから、それでいいのだという答弁をした。それが正しいのだ、だれが何と言おうがそれが正しいのだと答弁した。そうすれば、会計検査というものは、正式の書類に基づかない、このような一体実態に基づいた、この会計検査をやっておっていいのかどうか。私は正式の書類が一番何よりの証拠であり、その上に立って問題を進めない限り論議は進展しないと思う。従いましてこのような根底に立って、同じことをきょう繰り返しているこの会計検査院長態度は実に根本から間違いだと、従ってこの点について、明確な私は釈明を求め、そうしてはっきりした態度を明らかにすることなしに、この論議は進まないと思う。従って、やはり理事会を開いて、この問題を明らかに追及する必要がある、会計検査院の基本的な態度を明らかにしない限り、大へんな問題が起こります。(「そのために理事がいるんじゃないか、理事会をしろ」と呼ぶ者あり)委員長、今の議事進行の発言、取り上げて下さい。
  100. 小林英三

  101. 山田義見

    会計検査院長(山田義見君) 正式の書類に基づいてというお話でありましたが、先日私が申しましたのは、大蔵省からそういう通知をいただきましたからして、私どもはその通知に基づいて、それから検査を始めると申しました。それからまた局長答弁で、私の答弁に矛盾するものがあれば、それは私のものを正しいと御了解願いたいということを申しているのであります。その後、そのあとで局長答弁をみて参りましたけれども、私の答弁と矛盾するところはないようであります。(「そんなら速記録をよく調べろ」と呼ぶ者あり)それで局長意見を、全面的に否認したわけではございませんので、当時の局長答弁は間違いがありません。(「それは速記録見たか」と呼ぶ者あり)と同時に、その後、私の答弁したものも、局長答弁とは何ら矛盾するところはないと、私は考えております。(「答弁内容が違う、それを同じだなんておかしい」「速記を見たか」「休憩々々」と呼ぶ者あり)
  102. 秋山長造

    ○秋山長造君 議事進行。ただいまの院長の御発言は、また新しい問題を持ち出されたわけですが、われわれはあの速記録を調べて、明らかに院長と局長答弁食い違いがあるという見解を持っている。現にこの間、院長に質問された当事者である加瀬委員も、ここに見えておりますが、加瀬委員もこれは明らかに食い違っていると、ただいまの院長の答弁にはこれは納得できない、間違いであるということを言っているのですから、委員長、この際暫時休憩をしてですね、そうして速記録を早急に調べて、そうして議事をレールに乗せていただきたい。とにかく大体われわれは、答弁の内容も内容ですがね、院長の先日来の答弁態度というものは、全く言語道断だと思う。われわれはこういう院長の答弁では、これは議事進行に協力するわけにいきません。(「あなたが言ったことと下の者の言ったことと、明瞭に速記録が違ってるんですよ」「違ってないと明言してるんだ」「休憩」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  103. 小林英三

    委員長小林英三君) この際会計検査院長から発言を求められております。発言を許します。
  104. 山田義見

    会計検査院長(山田義見君) 先ほど申しました通り鈴木委員の御質問を私誤解いたしまして、違った答弁をいたしましたことはまことに遺憾に存じます。この点おわび申し上げます。  それから私の態度をどうのと言われますけれども、私は誠心誠意御答弁いたしたつもりであります。前回の問題でも、私はそう了解しておるのでありますが、もう一ぺんまた帰りまして、よく速記録を調べてみたいと思います。私のことが原因になりましてだいぶ議事がおくれたようでありまして、その点非常に残念に思います。(「残念じゃないよ。相すまぬと言え。「残念とは何だ、残念はこっちだ「日本語を勉強してこい」と呼ぶ者あり)
  105. 鈴木強

    鈴木強君 議事進行ですよこれは。僕は坐ってやりますからね。私は会計検査院のこの批難事項に関連をして交際費と報償費の使い方について十分にただしたいと思っておるのです。かなり時間を私はこれに取っているのですね。しかしまあ、今この会計検査院長は率直に悪い点は悪いと言ったから、一応私は質疑をやりますけれども、まだ納得していないですよ。本来なら私はここで質疑はできないところなんです。できないところなんだが、いろいろ話があるから一応私は次の問題にいきますけれども、少なくとも数字を根拠にして法的に国民の税金ですから、だからその不正支出を何とかなくすように努力せぬと税金怠納運動が出てくるから。税金不納運動が。ですからその意味で私は質問しようと思っているのですから、よく私の言うことをきいてもらうと同時に、明確な資料をもって答弁していただくと同時に、今あなたが言った加瀬委員に関連したことは、これは完全に違いますよ、あなた。局長答弁とは。その点は一つあなたよく調べて見て下さい。これは議事進行。  それでは私は次に、自衛隊の問題についてちょっとお尋ねをいたします。総理大臣お尋ねいたしますが、昭和二十五年の七月八日当時のマッカーサー司令官から吉田総理大臣あての書簡によって警察予備隊七万五千名が新設をされたと思うのであります。このことについては間違いございませんか。
  106. 岸信介

    国務大臣岸信介君) その通りだと思います。
  107. 鈴木強

    鈴木強君 これは押しつけられたものではないのですか。私はそう思いますが、総理はどうお考えですか。日本じゃいやだと言った……。
  108. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 昭和二十年の七月八日にマッカーサー最高司令官から吉田総理あてに警察予備隊設置に関する書簡が出ております。その書簡全体の趣旨からみますとディレクト、命令と書いてあります。
  109. 鈴木強

    鈴木強君 最後がはっきりしませんが、命令ですか。ディレクト……、オーダー……
  110. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) ディレクティブですから命令と解釈しております。(「押しつけられたかどうかということだよ」と呼ぶ者あり)
  111. 鈴木強

    鈴木強君 これは押しつけられたというふうに私はこの書簡をみておったのですが、あなたはどうお考えですか。
  112. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) このディレクティブに従いまして、ポツダム政令を出しております。ポツダム政令は連合国最高司令部の承認がなければ出せなかったわけであります。警察予備隊はポツダム政令として発せられております。でありますので、押しつけられたかどうかというかどうか知りませんが、命令に従ってポツダム政令を出して警察予備隊は発足している、こういうことであります。
  113. 鈴木強

    鈴木強君 とにかくマッカーサーの書簡によって警察予備隊ができ、それが保安隊になり、今日自衛隊になっているという事実は、これは間違いないと思います。それで現在の自衛隊の陸海空軍の装備のうち、米国から貸与または供与を受けたのはどれだけございますか。特にミサイルがその中にいくつあるか、一つ知らせてもらいたい。
  114. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) マップとして供与されておるものを品目別に申し上げます。現在数でございます。艦艇で申し上げまするというと、供与を受けているものが百十八隻、現有数であります。それから貸与が六十隻、合計して艦艇といたしましては百七十八隻であります。航空機につきましては、陸上自衛隊の航空機現有数で百七十六機、海上自衛隊で百八十一機、航空自衛隊が四百十七機であります。特車では中特車二百九十九両、野戦特車が四百七十四両。車両では装輪車九千百六十五両、装甲機甲車両で千三百十三両であります。弾薬で申しますと、陸上自衛隊は九万八千七百四十三トン、海上自衛隊で四千五百七十二トン、航空自衛隊で四千五十一トンであります。そこでミサイルの供与を受けているかということでありますが、ミサイルにつきましては現在まで何ら供与を受けておりません。現在防衛庁が持っておりまするミサイルといたしましては、昨年スイスから購入いたしました研究開発のエリコン十発、同じく昨年、アメリカからMSAで購入したサイドワインダー十四発、これだけであります。
  115. 鈴木強

    鈴木強君 この、米第七艦隊は、核武装しているというふうに思いますが……
  116. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 米第七艦隊は、核武装ができることになっておりますが、日本に入港しているときには、核装備はしていないというふうに私は了承しております。
  117. 鈴木強

    鈴木強君 核武装をしているが、日本に寄るときには、それを持って来ないというのは、寄るときにはどこに置いて来るのですか。
  118. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 核装備はできることになっておりますが、日本で核装備をしているという事実は、私ども承知しておりません。
  119. 鈴木強

    鈴木強君 このワシントンの二月二十一日のUP電報によりますと、アイゼンハワーが南米に旅行に出る際に、テレビを通じて演説をしておりますが、それを見ますと、米軍の前線基地には、弾道弾は当然持っている。また、艦船その他爆撃機については、すべて核武装をしている、こういうふうな演説をしておりますが、日本におります米軍ですね、爆撃機、これはこの趣旨から言うと、核武装をしているように思うのでありますが、その点はどうですか。
  120. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 日本におります爆撃機は、核武装をしておりません。
  121. 鈴木強

    鈴木強君 おらないですか。
  122. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) ええ。
  123. 鈴木強

    鈴木強君 大へん自信を持ってお答えでございますが、おそらく軍機の秘密にも関係することだと私は思うのでありますが、そのことは、米軍からちゃんと聞いているのでございますか。
  124. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 日本では、再々政府の意向といたしまして、核武装をしない、また、核装備をしたものを入れない、こういうことをはっきりしております。でありますので、米軍といたしましても、その点を了承しておりまするから、核武装をしているということでありまするならば、通知があるはずであります。そういう通知は全然ございませんし、私どもいろいろな方面から承知していることにつきましても、核武装をしていない、こういうことがはっきりしていると言い得ると思います。
  125. 鈴木強

    鈴木強君 岸総理、藤山外務大臣にお尋ねしますが、皆さんは、安保調印にワシントンまで行かれました。その際、米国首脳と、日本の第二次防衛計画、すなわち、三十六年から始まるといっておりますその防衛計画の基本構想について、説明をした事実はございませんか。
  126. 岸信介

    国務大臣岸信介君) そういう事実はございません。
  127. 鈴木強

    鈴木強君 情報によりますと、あなたは、米国政府首脳とお会いになりましたときに、基本構想を説明し、その計画を達成するために、米国の軍事援助約一億ドルを要請したというふうに、私たちは聞いておりますが、それはうそでございますか。
  128. 岸信介

    国務大臣岸信介君) そういう事実は全然ございません。
  129. 鈴木強

    鈴木強君 加藤防衛局長はお出になっておりますか。
  130. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) はい。
  131. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 今ので……、今度のロッキードの日本での生産につきまして、七千五百万ドルのアメリカの分担が、申し出があったわけであります。それにつきまして、総理、外務大臣がちょうどアメリカに行っておられましたので、機会がありましたならば、一億ドル援助を話してほしいという連絡を私どもの方でいたしましたので、多分そのことをお尋ねになられたのではないかと思います。
  132. 鈴木強

    鈴木強君 岸総理は、それはやられたのですか。この防衛計画と別にやったのですか。
  133. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ロッキードのアメリカと日本との分担の問題について、今赤城長官が申しておりますアメリカ側の分担が従来七千五百万ドルと言われているのを、なるべく一つ一億ドルにしてもらいたいということは申しました。
  134. 鈴木強

    鈴木強君 加藤防衛局長お尋ねしますが、あなたは全権団に随員として参加をしておりますが、一月十三日に羽田を出発しております。そのときに第二次防衛計画の大綱を文書にして携行してはおりませんか。
  135. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 第二次防衛力整備計画につきましては、御承知のごとくまだ確定したものはございません。昨年の八月に赤城長官が一応の構想を御発表になりましたが、その程度のものは用意して参りました。
  136. 鈴木強

    鈴木強君 あなたは米国で、どことどことを訪ねて、だれとだれに会いましたか。
  137. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) ワシントンにおりますときに、国防省でゲート長官、それからシャープ空軍長官、バアク作戦部長、レムニッツアー陸軍参謀総長、キューター・ノーラッド司令官、アーヴィン国防次官補、パアマア国防次官補代理、それからその下の係官、こういう方に会いました。あとはケープカナベラルの空軍のミサイル実験場を視察し、ホワイトサンドの陸軍ミサイル実験場を視察いたしました。国防次官補代理のパアマア大将と会いましたとき以外は、船田先生と増原先生と御一緒でございます。
  138. 鈴木強

    鈴木強君 その際、あなたは赤城防衛庁長官が昨年発表された二千九百億のこの構想について持って行かれたということは認められました。それを持って行ったからには、だれかにそういうふうな構想を説明されたと思うのですが、そういう事実はございませんか、正直に言って下さい。
  139. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) これはもし必要があればと思って持って行ったのでございます。説明はいたしませんでした。
  140. 鈴木強

    鈴木強君 藤山外務大臣、一月の渡米の際に、今ちょっとお話に出ましたロッキードF104J国産の経費分担について米側と交渉したことは、総理も認めております。その際に、米側から七千五百万ドルという、二百七十億円の増額についてお話が出たと思いますが、それは間違いございませんか。その経過を一つどういう経過かを御説明願いたいと思います。
  141. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 七千五百万ドルを増額してもらいたいということは、話が出たわけでございますけれども、しかし、当時それ以上いろいろな事情を聞いてみますと、アメリカ側は厳として七千五百万ドル以上は、なかなか出せないということでありましたので、われわれとしてそれ以上の特別な交渉はいたしておりません。
  142. 鈴木強

    鈴木強君 そうすると、今ロッキードの分担金はまだ未定でございますか。幾らになるかということは、はっきりしていないわけでございますか。これは防衛庁長官から。
  143. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) アメリカ側の負担が七千五百万ドルということはきまりました。
  144. 鈴木強

    鈴木強君 続いて赤城長官にお尋ねしますが、自衛隊のミサイル化については、二つばかりあげましたが、これから、あなたも指摘されておるように、ミサイル化の方向に、好むと好まざるとにかかわらず、いかなければならぬ、こういう御所見もありましたが、その見通し、どういうものをこれから取り入れようとしておりますのか、伺いたいと思います。
  145. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 先ほど申し上げましたように、エリコンと、サイドワインダーは、誘導兵器として入っておるわけであります。これから考えておりますのは、ことしの予算警備艦をお願いしておりますが、それにつけるターターでありますが、ターターを今予算にいたしましては七億、及び国庫債務負担行為十四億ばかりでありますが、それで装備をしていくということが一つ。それから地対空といたしましてナイキ・アジヤクスを導入したい、こういうことで、アメリカへことしの予算で四十五人だけ訓練のために派遣することにきまっております。これは訓練が終えたときには、ナイキ・アジヤクスの供与を受けるというわけであります。そのほかは、先ほど申し上げました飛行機につけるサイドワインダーをなお購入する。それ以上のことにつきましては、今のところ特に計画を持っておりません。
  146. 鈴木強

    鈴木強君 続いて長官にお尋ねしますが、アメリカ国防省ですか、最近防衛庁に対したMWDPという、相互武器開発計画というのでありますが、それによって日本独自のアイデアによる新兵器の研究開発に資金援助を与える用意がある、こういう申し入れをしてきたということでありますが、これは事実でございますか。
  147. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 昨年ずっと早いころに、そういう話が一度ありましたが、中途でそれが中絶いたしております。昨年の暮れに、日本の技術の開発につきまして向こうが援助したい、その技術の開発ができたものは向こうでも使う、こういうことが今のお話しのことであります。それにつきまして申し出がありました。これはまだきめておりません。今検討中であります。
  148. 鈴木強

    鈴木強君 具体的に兵器の構想、所要研究費等の細目のリストは、そうするとまだ出しておらぬと、こういうことでございますか。
  149. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 具体的にまだそういう点で調査中でありますので、きまっておりません。
  150. 鈴木強

    鈴木強君 もし検討されて、これからこういう開発計画に乗っていくということになると、これは簡単に手続は済まぬと思うのでありますが、これは協定かなんかにして、国会の承認を求める、こういうお考えでございましょうか。
  151. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) まだきまっておりませんが、それがきまるとすれば、特別会計をお願いするということになるふうに考えております。でありますが、今具体的に特別会計、その方までまだいっておりません。具体的にまだきまっておりません。
  152. 鈴木強

    鈴木強君 協定になるのでしょう、やることになれば。
  153. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) いやまだやるか、やらないか、きめておりません。
  154. 鈴木強

    鈴木強君 やれば……。
  155. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) やれば特別会計等を出すということになりますから、国会の御審議を経るということになります。
  156. 鈴木強

    鈴木強君 そこはわかりましたが、もしこういう開発計画というようなことをやるとすると、やはり一つ日本とアメリカとの協定にしなければいかぬと思うのですが、この点はどうですか。
  157. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) アメリカとの間に、特に協定は要らないというふうに承知しております。
  158. 鈴木強

    鈴木強君 それから最近アメリカは極東方面にポラリスという潜水艦を配備しているようですが、これは中距離弾道弾を積んでおるわけであります。こういう潜水艦が極東に就役することになりますと、日本の海軍基地、横須賀とか佐世保ですか、ここいらをかなり使わなければならぬようになると思うんですが、そういう話は聞いておりますか。で現に来ておりますか。
  159. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) まだアメリカでポラリス潜水艦はできておらない、こういうふうに聞いております。
  160. 鈴木強

    鈴木強君 それは長官の認識不足ですよ。もうすでに実用に供せられて、極東にも一隻来ているはずなんです。これは見解の相違だ。ちょっと調べて下さい。
  161. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) ちょっとお尋ねが原子力潜水艦との間違いじゃないかと思います。ポラリス潜水艦というのは、まだできておらない、こういうことになっています。
  162. 鈴木強

    鈴木強君 じゃ、まあ調べて下さい。  そこで私は岸総理大臣と防衛庁長官と外務大臣にお尋ねいたしますが、今お聞き取りのように、日本の自衛隊は、かなり高度な装備をしておりまして、この前の予算委員会の公聴会でも、渡辺公述人は、もうこの日本の自衛隊の兵力というのは、皇軍時代の兵力よりもまさるとも劣らないところまで実力を持っているんだと、こういうふうに判定をされておりますが、この点について、これからいろいろとミサイル兵器等も入れ、第二次防衛計画の策定をして国防会議に諮るでありましょうが、そういった中で、総理は皇軍当時に比べて現在の自衛隊はまさっておるかどうか、こういう点を一つ三人から聞きたいと思います。
  163. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは戦前の日本の軍備と今日のなにを比べてみて、そうしてどっちが内容的に充実しておるかという比較は、なかなかある程度困難だと思いますが、なるほど装備のうちにおきまして、かつて戦前にはもちろんそういうふうな軍事科学が発達しておりませんから、持っておらなかったものもあると思います。そういうものを持っておる。しかしまた同時に、自衛隊のなにから申しまして、もとの軍隊は予備、後備というような制度がありまして、人員につきましても、ただ現実に自衛隊の数と比較することも、実態上違っておる、そういうふうな点をいろいろ考えていかなければなりませんから、どうも戦前のなにと比較して、どっちが充実しておったんだと、こういうことにつきましては、軽々しく結論を出すことはむつかしいんじゃないかと、かように思います。
  164. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま総理の言われましたように、軽々しく比較することはいかがかと、むつかしいのではないかと思います。
  165. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) いろいろ相対的な関係もあると思いますが、現在の陸の管区隊の火力あるいは機動力、こういう点から比較いたしますと、旧陸軍時代より数等進んでおります。
  166. 鈴木強

    鈴木強君 防衛庁長官は非常に正直な人ですから、私は信頼しているんですよ。やはりはっきり言うのは防衛庁長官、あとはまあお答えいただきましたが、やはり劣っているとも言えないんだから、大体とんとんぐらい、どっちともわからないというのが総理大臣と外相の答弁。やはり赤城防衛庁長官の所管長官としての御判断が私は正しいと思うのですよ。そこで、岸総理お尋ねいたしますが、私は現在の自衛隊は憲法違反だということをはっきり確認している立場から聞くわけでありますが、今お話しのように、少なくとも皇軍当時から比べてすぐれている自衛隊が、今、日本にはある。しかし、これは経過をたどってみますと、朝鮮動乱勃発直後に、米国のマッカーサーから指令が出て警察予備隊を作ったけれども、これも当時の経過を勉強してみますと、なかなか、保守派の中でもそういうことはおかしいという意見もあったようでありまして、国民は何か知らぬうちにこの警察予備隊というものが生まれて、その後、保安隊になり、自衛隊になってきた、こういう経過をみるときに、少なくとも皇軍当時以上の武力を持つ自衛隊が、憲法第九条に照らして見る場合に、これは明らかにここにもありますように、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」というような戦力は持たない、交戦権はもちろん認めておらない、こういう四つの九条を分析してみましても、今になってもまだ自衛隊は戦力ではない、こういうもしお考えがあるとすれば、これは明らかにごまかしであって、りっぱな陸海空軍が日本にあるんだ、こういうふうに確認しなければならぬと私は思いますが、この点に対しては総理はどうお考えでしょうか。
  167. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど、戦前の日本の軍隊とこれを比べるということは、私はなかなかむずかしいと思うと、防衛庁長官が申したように、装備の点であるとか、ある点については私も先ほどお答え申しましたように、戦前になかったものを持っていることは当然のあれでありますが、しかし、自衛隊の組織の基礎と、かつての陸海軍のいわゆる徴兵制のもとにおいて、また動員力の上において、これは非常に違うのですから、私どもはこれが、現在の装備がある程度前よりまさっている、すぐれている、数段それよりも実力を持っているということだけでもって、直ちに戦前のなにと比べることは適当でないと思いますが、いずれにしても、この憲法のわれわれの持ち得る自衛のために必要な最小限度のものを持つというのが、私どもはその程度においては実力を持ち得るというのが憲法の解釈でありまして、その自衛のために必要な最小限度という限度を、どういうふうに見るかという議論は、いろいろな点から検討しなければならぬと思います。従って私どもの見解によれば、このわれわれが持っているところのいろいろな、陸海空の自衛隊というものは、あくまでも自衛のために必要な最小限度のものを持っている。従って、その範囲においては憲法に違反しないんだ、こういう解釈をいたしております。    〔委員長退席、理事館哲二君着席〕
  168. 鈴木強

    鈴木強君 私は、日本岸総理に対して、ほんとうに日本国民の気持の上に立って平和外交、平和政策をやっていただきたい。そうして戦後、敗戦の中からここにまで立ち上がってくる中に、あらゆる苦労をして参った国民生活を安定してもらいたい、そういう基本的な態度を私は持っております。そこで、吉田総理は戦力なき軍隊と言い、今ここに自衛のための戦力といいますか、自衛のための力だと言って国民を欺瞞するような宣伝、憲法第九条の本質から言って、私どもは戦力は陸海空とも持たない、保持しない、しかも交戦権というものはこれは認めない、こういうことにはっきりと九条は戦争放棄を認めております。これは紛争に対しても永久に武力行使というものは放棄するんだ、こういうことが明定をされているわけでありまして、私は、むしろ率直に、憲法から見て、これはだんだんと自衛力がふえていきますと、当然これは抵触してくる。従ってあなたが憲法改正論者であるならば、国民にその真実を伝えてやるのが、ほんとうの行くべき道だと思うのです。これを戦力なき軍隊、自衛のための戦力といって、九条は自衛権は否定してないから持てるのだ、それならば、自衛のためだったならばどこまでも持っていいということになるのです。そういう解釈は、九条の精神からいって私はおかしいと思う。少なくともこれから第二次防衛計画を作って新安保の中で戦力を増強していくということが、バンデンバーグの決議によって義務づけられております。これはどこまでいっても自衛力であって、憲法にいう武力でないと、こういうふうに岸総理はおっしゃるのですか。私はもう少し謙虚に、立場はあるでしょうが、やつぱりその点はしてもらいたいと思いますが、どうですか。
  169. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん、鈴木委員お話しのように、われわれは絶対の平和を望み、これによって国民生活の向上、福祉国家の建設に政治の主眼を置いて努力すべきことは、これは私も鈴木委員と全然同感です。ただ、自衛力を持つということが、戦争をするということではなくして、現実の国際情勢から見ると、そういうわれわれが避けなければならぬ、われわれが極力避けようとしており、またどんなことがあっても巻き込まれてはならぬ戦争というものを抑止するためには、やはり独立国である以上は、ある程度の自衛の措置だけは講じなければならぬということが、今私どもの自衛隊についての根本の考え方であります。しからば、自衛のための実力としての最小限度のものはどの程度のものであるか、どの程度をこしたら、いわゆる憲法が禁止している戦力というものになるのかということについては、私も鈴木委員と同様に無制限のものだ、日本が国力さえあれば無制限に防衛力を増強していっていいものだと私は考えておりません。しかし、やはり防衛力というものは、戦争の抑止力としての自衛力を持つという意味から申しますというと、これはやはり相対的なものであって、いろいろその国が置かれている客観的の情勢を全然無視して、数量的にあるいは技術的に、これだけがもう限度だということをきめるということは、これは私は実際上できないだろう。しかしそうかといって、今われわれが国力、国情に応じて漸増するという方針をとっておりますが、その場合において、常に国民生活に対して圧迫を加えるとか、あるいは諸外国の防衛費が予算の何割あるから、日本も当然その程度までやるとか、あるいは国民所得に対して諸外国の実例が何パーセントまでは負担しているのだから、日本も負担するというような性格では私はないと思う。現実において、われわれが予算の上に、あるいは国民所得に対して自衛力として漸増してきている負担というものの割合というものが、ほとんど他の諸国に比べものにならないくらい低いということは、これは憲法の本質からきていることでありまして、これは安保条約を改定しようがどうしようが、この根本は私は変わるものじゃない、また変えてはならないものだ、かように考えております。
  170. 鈴木強

    鈴木強君 これは見解が当然対立すると私は思って質問はしておりますが、しかし、憲法に武力によって威嚇をしてはいけないということがございますが、これはやはり自衛隊が今日これだけの力を持ちますと、たとえば韓国にしても、台湾にしても、中国にしても、東南アジアの国々が再び日本の軍国主義化をおそれているということは、これは事実であります。こういうことがやはり威嚇の対象に自衛隊がなっているということは、これは一つの事実だと私は思います。それから、自衛隊というものが無制限には増大できないということは総理も認めておるようでございますが、しからば、その今自衛するためだといって、戦力という言葉を使いませんが、自衛力というものをどんどんふやしていく状況にありながら、どこまでいったらそれでは戦力というふうに認定ができるのでございますか。私は無限大なものだと思うのです、今の政府の解釈から申しますとね。それから、新安保によって外敵が侵入した場合に、これをはねのけていく、これは岸総理の御信念です。そうなりますと、かりにこれが受身の形であったとしても、相手国と交戦するということは、戦いを交えるということは、事実です。そういう場合に憲法で規定されております、禁止されております交戦権というのは、どうなるのか。ここにも私は疑問がある。要するに四つに分析してみまして、それぞれ大きな疑問がある。国民は、自衛のためだといって盛んに自衛力を増強しておりますが、その裏には非常に憲法との関係を心配しておる。憲法違反の疑いがかなりあるということは、これははっきりしておるわけでありまして、もう少しく責任政治をやられるわけですから、国民に納得できるような説明を九条との関係で私はやってもらいたいと思う。どうも納得できません。
  171. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 憲法九条の解釈につきましては、従来からも相反しておる対立した考え方があることは事実であります。しかし、今日において私はやはり独立国である以上は、憲法の九条のあの規定というものは、その国の自衛権を否認しておるものじゃない。これは国際法上はもちろんのこと、国内的にもその自衛権というものはあるんだという解釈については、ほとんどだれも異存はないと私は思います。ただその自衛権の、それでは自衛権というものは観念的なものであってこれがあるというだけで、実際上は自衛権がどういうものかといえば、他から不当に侵略を受けた場合においてこれを独立国なら守る、これを排除するということなんであると思いますが、その場合に何らの実力を伴わず、ただ観念上そういうものがあるというだけじゃなしに、やはり自衛権がある以上は、これを裏づけるために必要最小限度の実力というものは持つのだ、こういうことは私は当然出てくるだろう。ただ、その持つ実力がどこまでいったら戦力になるのだと、憲法が禁止しておるのだという点については、実際問題として私はいろいろ議論があると思います。しかし、今申し上げたわれわれとしても自衛力として持つものを無制限に、無限にこれを持つという考えじゃなしに、やはりこれはまあ諸外国の何かを比べてみても、日本がいかにその点において一つの制限的な考えのもとにきているかということは、私は予算編成の上からいってもこれは言えると思います。それからなお、交戦権がないという問題は、これはまあ事実その侵略があった場合に実力を行使してこれを排除するという、いわゆる何ですね、常識的に交戦するということとは違って、国際法上の、いわゆる交戦段階として持つ交戦権、いろいろな中立国の船を拿捕したり、いろいろな権利を持つわけですが、そういう国際法上に認められておる交戦権としては持たない。事実上今のような戦闘行為をやっても、そういうことにはならないというように解釈すべきものだと思います。いずれにしても私どもは独立国である以上は、憲法も自衛権は否定していない。自衛権がある以上は、これを裏づけるところの最小限度の実力は持っていかなければならない。その最小限度の実力というものは、やはり科学の発達や客観情勢の変化につれて、やはりその内容は変わってくることは、これは当然のことである。われわれはそういう意味においていろいろ考えておるけれども、しかし、いかなる場合があっても、日本は特別の立場にあって武装はしない、こういう点でもって国民にも了解をしていただくことが必要であるとかように考えます。
  172. 鈴木強

    鈴木強君 これはもう絶対に私は納得ができません。まあ、これは大いに意見の対立するところですから、ここであなたに幾ら言っても、あなたはわれわれの態度を認めるということはないと思いますから、まあこの程度で私はやめておきますが、やはり国土の防衛ということは、総理のおっしゃるように自衛力そのものを全然否定する立場はとれぬと思います。これはわかります。しかし、その自衛力の限界というものは、明らかに憲法から見て相当に厳格にこれは発表をしていかないと間違いを起こすことになると思います。特に交戦権の問題については、国際法上どうこうといいますが、憲法においては、特に「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」ということははっきり書いておりますから、特に安保条約の締結によって、事態は国際紛争の方向日本の自衛隊が入っていく、または基地として米軍がこれを使うということになるわけですから、相当私は疑義があるところだと思います。従って、まあ端的に国民は昨年の風水害等を見ましても、何とかこれは一つ自衛隊というものを、国土防衛の方向に使ったらどうかという意見も出てきているところであります。ですからこの際、最後に伺いたいのは、自衛隊も昔の警察予備隊くらいにしておいて、そしてあとは国土防衛隊に切りかえて、そしてほんとうに国土を守るために、今の自衛隊諸君が奮起してもらうようなことはお考えになりませんか。この前、私は赤城官房長官にも自衛隊の精神というもの、隊員の精神というものは、ほんとうに祖国を愛し祖国のためにどこにでも行ってやるという気持になっておるかどうかということを聞いたのですが、必ずしも全部が全部でないという答弁があるのです。また、今日若い人が失業その他の問題でやむを得ず行っておる人もあるでしょう。ほんとうに日本を愛する立場に立って先頭に立ってやろうという気持があるかどうか、これは疑問があります。これは一朝国土を守るということになると、ふんどしを締め直すことが根本だと思う。そういう意味でこの点岸総理はどう考えておるか、一つ伺っておきます。
  173. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 自衛隊の本質は、私は先ほどから申し上げたような、独立国としてその国の独立と平和と安全を守るという点に、他から不当な侵略を受けないというように祖国を守るということが、中心の問題であると思います。しかし同時に、自衛隊の中でも、災害の場合においては出動して、平素そうした祖国を守るという他から侵略されないように守るという精神のもとに訓練をされ、養われてきている自衛隊が、やはり祖国が自然的災害によって被害をこうむる場合においても出動してそうして国民のためにいろいろ働くという、そしてそれは感謝されておるということも事実であります。こういうことから直ちに自衛隊の本務を変えて、そしてこれを組織し直してむしろ国土の防衛の方はむしろ軽くしてそれよりも自然災害等における災害に対して、国土を守る、国土の保全を考えるということに、むしろ主体を置いて任務を切りかえるというお考えのようでありますが、私はやはりそうすべきものではなくて、今の自衛隊の精神でもって訓練をして、そうして自然災害に対しては、平素養っておるところのその訓練またそういうことの多い日本の事情から見まするというと、そういうことに対処して十分な活動のできるような訓練を平素からもあわせて行なっておくということは、もちろん必要であると思いますが、自衛隊そのものの編成変えにつきましては、遺憾ながらあなたと意見をことにいたすものであります。    〔理事館哲二君退席、委員長着席〕
  174. 藤田進

    ○藤田進君 関連して。国防会議の議長でもある岸総理にお伺いいたしますが、今朝、朝日新聞によるワシントン電によりますと、アメリカの戦略体制、ことに装備の面では一大変革を来たして予算書も組むことになりました。しばしば御答弁のように、直接侵略に備える防衛ということが明らかになっておる以上、わが国の今後自衛隊に対するその装備においてかような相対的原理の上に立った自衛力であるとするならば、ここにアメリカを初めソ連等相対的に変わりつつある、この装備の変遷に対して将来わが国の装備に関する弾道弾を中心とする方向への再検討を必要とするのではないだろうかと思われるのですが、いかようにお考えでしょう。
  175. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 軍事科学の発達に伴いまして、いろいろな戦術、戦略等も変わってくることは当然予想されることであります。私ども、しかしいかなる意味においても世界の両陣営のトップに立っているアメリカやあるいはソ連と競争したり、これに対抗するような防衛の手段を講ずるという考えは持っておりません。しかし軍事科学の発達に対して常に十分な関心を持って、そうしてできるだけ効率的に質的な改善を加えていくということは、常に考えなきゃならぬと思います。従って世界の軍事科学の変遷に基づき、また各国の防衛の内容等につきましても、十分な検討をいたして参って日本が時代おくれな防衛の手段でいつまでも満足しているというようなことのないようにしなければならぬことはもちろんであると思います。これらのことについては、十分に専門の防衛庁において検討を加えていくべきことは当然であろう、かように考えております。
  176. 藤田進

    ○藤田進君 最終的には国防会議で御決定になると思うのですが、ただいまの御答弁は、ただいま申し上げた事情によって、その装備、軍事科学の進展に伴って再検討を加えるということを示唆するのかどうか。
  177. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは従来も国防会議におきまして今お話しのような国際的の変化というものはこれを検討しつつ、日本の防衛力につきましても、われわれが検討を加えておるわけであります。特に本年のアメリカの装備がこういうふうに変わったとか、あるいは米ソの間の今年度の予算に現われているところの何がこういうふうに変わったから、直ちにそれに応じて日本がどうするということは私考えておりません。しかし十分に世界の国際情勢の、また軍事科学の発達ということは、常に頭に置いて、国防会議において検討して参るつもりでございます。
  178. 鈴木強

    鈴木強君 藤山外務大臣、このイーデン回顧録の翻訳をいただきました。これを見ますと、私が吉田総理にここへ来ていただいて当時のいきさつを聞きたいということに関連をしておったわけでありますが、この回顧録によってわかりましたので、私は一応遠慮しておったわけでありますが、あの内容によりますと、当時米国と英国との間には、二つの中国のどちらを選ぼうとも自由である、日本の意思にまかせると、こういうことになっておったのを、その後ダレスが日本の吉田総理いろいろ話をしたのでありましょう。その結果、対日平和条約等の批准を妨げることになるかもしれないので、日本は蒋介石政権を承認しなきゃいかぬ、そういう意向を示さなきゃいかぬということで、吉田総理がダレスにあてて書簡を出しております。このことについては間違いございませんか。
  179. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お話のようにイーデン回顧録におきまして、アメリカとイギリスとが日本の中共に対する態度については、日本が自主的に決定すべきものだという話し合いをいたしておったのは、その通り事実であると思います。吉田総理としては、当時からおそらく、日本としては中華民国と話し合いをつけていく考え方であったのでありまして、従って何かダレス長官と話し合いした結果、急にそういうような両国との関係をきめたということには、われわれ承知いたさないのでありまして吉田総理自身が前々から持っておられる考え方をダレスに述べたのであると存じております。
  180. 鈴木強

    鈴木強君 この翻訳によりますと、そうでないのですね。要するに対日平和条約を結ぶのに、アメリカでどうも障害になるので、早く蒋介石政権を承認した方がよろしいと、こういう意向が示されて、その結果、吉田元総理がダレスに書簡を送った、こういうことですから、その間の経緯はあなたの方で翻訳してもらったこれにちゃんと書いてあるのですから間違いない。今の御答弁ちょっと違うのではないですか。
  181. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) イーデン回顧録で、イーデンとアチソンとそういう話をしておったというようなことは、それは事実であろうと思います。われわれも。しかし、それでは吉田総理がアチソンと話をして、あるいは当時日本との平和条約締結に奔走しておったダレスと会談されましたときに、その圧力によって、吉田総理が自分の所説を変えられたということではないと思います。ただ、その間の状況がイーデンに十分承知されておらなかったので、イーデンとしては、そういう経緯がどういうことであったか、そうして突然そういうふうに、当時のアチソン国務長官がそういうようなことを事前に話してなかったということのために、誤解が起こったのではないかと、こういうふうに存じております。
  182. 秋山長造

    ○秋山長造君 藤山さんは、吉田元首相の「回想十年」という回顧録をお読みになったことがありますか。あの回顧録を読みますと、あの第三巻だったと思うのですが、ここに持ってきていないのですが、あの中で吉田さん自身が、今鈴木委員が質問されたような趣旨のことを率直に語っておられるのですね。吉田さん自身は、当時中共政権を相手として選ぶか、あるいは台湾の政権を相手として選ぶかということは、日本の将来にとってまことに重大な問題だから、これは軽々にどちらかにきめるということはなすべきでない。だから今後しばらくの間、当分の間これはペンディングにして、速急にきめない、もう少し様子を見よう。こういう方針であったところが、アメリカ側から、あの平和条約の批准が上院にかかっておって、チャイナ・ロビーなんかの有力な議員がおって、そうして日本がもし万一中共を相手に選ぶというようなことがあったならば、おもしろくない。だからこの平和条約の批准をやるためには、その前提として、日本をして速急に台湾政権を選ばすべきである。こういうような強い発言がアメリカ側から吉田さんに対してあったわけです。また、ダレス当時の顧問も二十六年の暮れに東京にやってきて、吉田さんに対してそういう強い希望を述べられた。そこで吉田さんは、自分の気持にはいささか反するけれども、これはやむを得ない対策として、急に台湾政府を相手に選ぶことに方針を変えたのだ。こういう意味のことを率直に「回想十年」という吉田さんの回顧録に書いてあるのですがね。ですから今鈴木さんの質問しておられる通りだと思うのです。この点いかがでしょうか。
  183. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は今の「回想十年」を読んでおりませんので、秋山委員の言われたことにつきまして、その内容等については何とも申し上げかねるわけでございます。当時吉田さんとしては、むろんこういう問題について軽々に処置すべきことでないということをお考えになっておったことは、これは当然だと思うのです。しかし、いずれは何らかの方向をとらなければならぬ、その場合に吉田さん自身の考え方からすれば、おそらく私どもは、中華民国との友好関係を確立するということに考えの基底がおありになったとわれわれは考えております。同時にそれを表明される時期その他の問題につきまして、あるいはアチソンでありますとか、ダレス顧問でありますとかというような話し合いが機縁になったことも、あるいはあろうかとも思います。しかし吉田さん自身のお考えとしては、私はやはり、中華民国と友好関係を結ぶという立場にあられたのだと存じております。
  184. 秋山長造

    ○秋山長造君 外務大臣、あれを読んで下されば、それはもっとはっきり書いてありますよ。
  185. 鈴木強

    鈴木強君 私は、この委員会で吉田元総理の御出席を要求し、理事会において検討の結果、一応資料をいただいて、それで不明確の場合には、さらに再検討しょうということになっております。従って、私はきょう、この回顧録についてお尋ねをし、歴代保守党内閣としてその方針を継承されているわけでありますから、外務大臣でもおわかりだろうと、かように考えて、吉田元総理の出席については保留になっておるわけでありますが、どうも現外務大臣が当時の様子について、これは吉田元総理の御心中の奥の奥まではわからぬとしても、大体の方向というものをお認めにならないとするならば、委員長にお願いいたしますが、まだ三十一日までありますから、一つ吉田元総理を適当な機会にお呼びいただいて、そうしてこの質問を私は続けたいと思いますから、きょうはこの程度で保留をいたします。委員長、それはよろしゅうございますか。
  186. 小林英三

    委員長小林英三君) 今の鈴木君の吉田元総理の件につきましては、いずれ理事会を開きまして相談をいたしたいと存じます。
  187. 鈴木強

    鈴木強君 そこで、米華条約と日華条約によって、台湾の領土というのは、大体どうなっておるのでございましょうか。これを一つはっきりしてもらいたいと思います。
  188. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 詳細については、条約局長から御説明申し上げます。
  189. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 御説明申し上げます。  御承知通り、領土と申します場合には、中国、国としてはこれは一つでございますので、どちらの領土であるとか、そういうことはないかと思っております。すなわち、国としての人格は一つでございますから、これは台湾、澎湖島も含めまして一つの中国としての領土であると一般に考えられております。今度はそれを代表する政府という場合に、現実にどちらが支配して、どこが現実の問題としてどうであるとかいう問題が起こる、こういうふうに考えております。
  190. 鈴木強

    鈴木強君 ですから、台湾といっても、本島と澎湖島ですか、具体的に問題になります金門、馬祖なんかは、条約では、条約というか、一応施政権があるということかもしれませんが、台湾政権の領土だ、こういうふうに言っておるのですが、こういうことは間違いないのでしょう。
  191. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) それは条約の適用範囲の問題でございます。具体的に条約を実施する場合に、やはり地域的な限定が必要とされる場合がございます。たとえば通商航海条約とか通商関係の議定書で、物の輸出入というような場合に、どこから物が輸出されるか、どこに輸出しなければならないか、そういうような地域的な限定が必要とされる場合は、これは中華民国の場合は、台湾及び澎湖島というふうに考えます。
  192. 鈴木強

    鈴木強君 具体的に、台湾政権の領土として、日本は、日華条約によって金門、馬祖等は入れてあるわけですか。
  193. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 米華条約でございますが、これは金門、馬祖は全然除外されております。
  194. 鈴木強

    鈴木強君 日華条約は……。
  195. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 日華条約におきましては、これは台湾と澎湖島につきまして、そのすべての権利、権原、請求権を放棄したことが承認されると、日華条約においてそのことを確認しておるわけでございます。  それから、現に支配する云々というものは、交換公文にございまして、この条約の適用と申しまするか、われわれがただいま考えました具体的な適用が地域的に必要とされる場合は、そのほかに、現に支配し、または今後支配に入る地域というふうに考えております。従いまして、それに入るかどうか、現に支配している地域または今後支配に入る地域になりますれば、その具体的な適用としてその地域が考えられるわけでございます。
  196. 鈴木強

    鈴木強君 そうすると、中国は、領土的には台湾も澎湖島も全部含めたものが一つの中国だ。それで、現実に台湾政権と中共政権とある。従って、その台湾政権の一応施政下と申しますか、施政の行き渡っているところといいますか、そういうところに金門、馬祖が入っている。で、領土はどこのものだかわからぬ、一つの中国だ。こういうふうに解釈していいわけですか。
  197. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 大体そのようにお考えになってけっこうだと思います。
  198. 鈴木強

    鈴木強君 大体でなくて、日華条約からいって、そうなるかどうかということをはっきりして下さい。
  199. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) それは日華条約は、ただいま申し上げましたように、平和条約におきまして、台湾、澎湖島、それからここにございます新南群島、西沙群島に対するすべての権利、権原、請求権を放棄したことが承認されると、これで一つ承認しまして、それからこの交換公文で、やはり、現に支配し、今後支配する地域に入る地域に適用になる、こういうような点でございます。従いまして、これは適用範囲の問題でございます。それから、国の領域というようなことになりますと、われわれは、どちらがどっちということは考えない、これはただいま御指摘の通りでございますが、日華条約の適用問題になりますと、そうして地域的な限定が必要になりますと、そういうような現に支配している地域、また今後支配に入る地域が入ってくるわけでございます。
  200. 鈴木強

    鈴木強君 そうしますと、かりに領土の要求権を中共から日本が日華条約によって中華民国に認めているのはおかしい。これはおれの方だと言ってきた場合に、領土権はどうなりますか。
  201. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) それはいわゆる客観的と申しますか、政府が二つありますものですから、おのおのの政府は全体だと考えているわけです。そうして、国の問題としては、それは全区域が領土だとして国は考えますが、その領土を代表する政府というものが二つある。従って、ある一方の政府は、自分が全領土を代表するといい、他方の政府は、自分が全領土を代表する、こういうふうに理論的には言うわけでございます。そこでいろいろそういうふうな問題が起きてくる、こういうことになるわけでございます。これが現実の客観的な状態でございますが……。
  202. 鈴木強

    鈴木強君 日本はどうなんですか。
  203. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 日本としては、日本と中華民国との平和条約を締結いたしまして、その平和条約におきましては、一応理論的な問題といたしまして、中国は今の領域全体を代表するものとして考えなければならない場合もあるわけでございます。たとえば、戦争状態の終了、こういう場合は、これは全体を代表すると申します場合、地域とか領土を出与えずに、抽象的にその戦争状態の終了というものを考えなければならないと思います。ただ、具体的な通商関係の問題というふうなことになりますと、どうしても地域を考えざるを得ないような問題もありますから、そういう場合は、台湾、澎湖島や、現に支配しているところを考えていかなければ、ちょっと実施が困難じゃないか、こういうような現実の状態だと思います。
  204. 鈴木強

    鈴木強君 どうもわからぬですね。そうすると、中共の方では、台湾、澎湖島を含めた全部のものがおれの領土だと、台湾の方でもそう言っているのだという解釈ですね。そうすると、二つの中国がお互いに、こっちがおれの領土だ、向こうは、こっちがおれの方だといっている。だから、中共の方から、台湾の領土を返してくれと言ってやってきたら、どうなりますか。向こうはおれの方だと言っているのですから。
  205. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) ただいまの問題は、そういう問題はございますと申しますか……。でありますから、日本は、台湾、澎湖島に対する一切の権利、権原を放棄したわけでございます。すなわち、ほかの条約では、どこどこの国のために放棄するということを言っております。すなわち放棄した相手方を言っているわけでございますが、平和条約においては、そういった問題もございますので、単にこれは、われわれは放棄したということを宣言いたします。すなわち全然放棄しましたものですから、どこにやるとか、どこに渡すとか、こちらによこせとかいう問題は起こらぬと思います。
  206. 鈴木強

    鈴木強君 中国は、領土自体はどこのものなんですか。どこに帰属しているのですか。
  207. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) ですから、これは一つの統一体としての中国ですね、国という問題じゃないかと思うのです。
  208. 鈴木強

    鈴木強君 その国がない。
  209. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) その国がないと申しますのは、具体的に申しますと、その田が行動する場合には、その代表者によって行動しなければならないわけでございます。ところが、その代表するというところが今まで二つに分かれている。ですから、その背後にある国という、統一体としては、これは国は同一のものである、一つである、こういうふうに考えなければならぬ。
  210. 鈴木強

    鈴木強君 ちょっとあなたの高等理論じゃわからぬですよ。もっと端的に言って下さい。要するに、日本は台湾と澎湖島を放棄した。放棄したのはどこにいっているのですか。だから中共から正式にあれはおれのものだといってきた場合に、日本がそれじゃ国際法上に、それはそうじゃないという論拠はあるか。
  211. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) それはこちらが放棄いたしましたものですから、全然こちらの手を離れてしまったのですね。ですから、向こうとしては、こちらに言うすべがないわけでございます。従いまして、サンフランシスコ会議の問題だとか、そういう問題になるわけでございます。
  212. 鈴木強

    鈴木強君 委員長、わからぬですよ、今の答弁。外務大臣、あんた明快に答弁して下さい。
  213. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今、条約局長が申しましたように、日本はサンフランシスコ平和条約によって台湾、澎湖島、西沙島、その他を放棄しております。従いまして、放棄した以上、日本に発言権がないと申しますか、あるいは向こう側から日本に、これを日本はおれのところに返すのだというようなことは言ってこないということを、条約局長は申しております。そこで、その取り扱いはどうなるかといえば、いわゆるカイロ宣言とかその他で、連合国がこれをどう処置するかという問題になろうと思います。
  214. 岩間正男

    ○岩間正男君 関連して。今の解釈は、これは南千島についても適用されると思うが、そう解釈してよろしゅうございますか。これは非常に重要だ。台湾の問題だけについてはそう解釈するというようなわけにはいかない問題だ。当然南千島の国後、択捉についても同様の政府態度で臨まなければならない、こういうふうに確認すべきだと思いますが、それに相違ございませんか。
  215. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 南千島の問題につきましては、違うわけであります。精細は条約局長から……。
  216. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 北方領土の問題も同じように考えるべきだと、私は考えております。と申しますのは、南千島はこれは固有の領土でございますから、われわれは放棄しているわけではございません。北千島の方の問題でございます。これは一切の権利、権原を放棄したということになっておりますから、そうでございます。同じでございます。南千島は違う。
  217. 鈴木強

    鈴木強君 そういう意味でしょう。
  218. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) そうです。
  219. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私の申したのは、南千島の関係でございまして条約局長は今最初に北千島のことを言ったのでございます。
  220. 鈴木強

    鈴木強君 どうも明快な……。外務大臣の答弁でも明快になっていないので、私は、中国大陸を含めて領土というのは、どこにいっているのかわからないのだ、さっぱりわからぬですよ。そういう中で日華条約が結ばれて、一応金門、馬祖を入れた台湾というものが台湾政権になっているようですが、これはどうも私が頭が悪いのかどうかわかりませんが、さっぱりわかりません。もう少し頭を冷やして私も聞きますから、あんたの方も考えておいて下さい。  それからその次にお尋ねしたいのは、新安保条約の中で、外務大臣は仮想敵国はないと、こう明確にお答えになっておりますが、私は予算委員会が始まってから、またその前からずっと研究をしてきたのですが、どうもそう受け取れない。なぜかというと、明らかに自由諸国と共産圏と二つに分かれておるわけでありまして、日本は少なくとも自由諸国の側に立つ、こういうことになるわけでございましょう。そうしますと、まさか自由諸国の中から日本に戦争をしかけてくるものはない。そうすると共産圏の方がそういう可能性が強くなってくるわけでしょう。そういう点からいっても、どうも仮想敵国は北鮮やソ連や中国のような形になるのじゃないか、私はこう思いますが、どうもこいつははっきりしないので、一つもう一回総理からお答え願いたいと思います。
  221. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 仮想敵国というものは、私ども考えておりません。従来、戦前におきましてたとえば日本の陸軍というものをどういうような目標で拡充していくか、あるいは海軍をどういうふうな目標でもって拡充していくかというような場合において、仮想敵国ということがいわれておりました。ある一つの特定の国の陸軍力なり海軍力なりというものを頭に置いて、そうして日本の軍備を拡充していくという考えから、そういうことがいわれたのであります。そういう意味においてわれわれは、今日日本の自衛力の増強についてそういうことを考えておらないということを一貫して申し上げておるのであります。ただ、この安保条約のねらっておるところの平和、日本がどこからも侵略を受けないというようなことに対して、国際情勢がどういうふうに今後動いていくかというようなことに大きく影響を受けることは、これは当然のことであります。従ってわれわれの、この現在の東西両陣営が対立しており、世界の平和というものが、その対立から何らかの不安を受けておるという国際情勢は、これは私は否認できないと思います。従って、あるいは自由主義の立場にあるところの国は、共産主義の国から何か不安をもたらすような事態がくるのじゃないかというようなことを考えることも、これは今の国際情勢の判断から、そういうことも言えるだろうと思います。しかしながら、私どもがそういう意味において仮想敵国を持って、それに対抗するところの防衛力を作り上げていくというような考えには立っておらないという意味において、しばしば申し上げておる通り、仮想敵国というものは、われわれ安保条約においても考えておらない、これは一貫して私の考えでございます。
  222. 藤田進

    ○藤田進君 関連。そうしますと、かねて直接並びに間接侵略に備える防衛体制ということがいわれている以上、間接あるいは直接侵略の仮想グループということは当然考えられていると思う。その間接並びにあるいは直接の侵略グループというものについての考えがあるかないか、お伺いいたします。
  223. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私どもが日本の平和と安全を守るということは、やはり国防会議の国防の基本精神にもありますように、あくまでもわれわれの自由と、それから、われわれの民主政治を基礎とした、民主主義を基礎としたこの国民生活、それを基礎としての国民生活の向上なり平和というものと繁栄を考えておる、こういうことでありますから、これに対して国際情勢のいろいろな変遷というものを頭に置いて考えなければならぬ。あるいはそれに対して、従来考えられているところの脅威というものは、共産主義の脅威であります。またフアッシズムの脅威である、こういうふうに、抽象的には従来からわれわれが、真の民主政治を守り、その上の平和と繁栄を考えていくという場合において、それを外部から、あるいは内部から、あるいは直接あるいは間接の方法において脅威を与えるというものは、その私が申し上げているような、われわれが理想としておる政治形態及び国民生活の社会制度の基礎というものに対して及ぼしているところのいろいろな脅威に対して自衛していく、こういうのが私どもの考え方でございます。
  224. 鈴木強

    鈴木強君 これは岸総理大臣、ちょっとあなたのお答えは、さっきの第九条と同じような立場に立って言われていると思うのですね。何と言おうと仮想敵国は考えておらないというのだが、その裏にはちゃんとある。現に自由民主党の安保条約批准促進の演説会なんかを聞きますと、現にソ連が侵攻してきたじゃないか、あるいはヨーロッパのあそこで、中近東はどうだとか、そういうことを引例して、まさに共産圏がこちらに押し寄せてくるがごとき演説をやる方がこれはございます。私は産経ホールの、船田政調会長ですか、あの方の話も聞きましたが、そういう話をしておる。そうしますと、あとでも極東の範囲を私は触れますが、極東の範囲の中で、あえて共産圏を除外して、自由諸国の陣営の領土をこれを極東の範囲と限定して、そしてそこに安全と平和を保つためなんだ。極端にいえば、中国やソ連の方の極東は、これは極東でないし、平和はかまわない。こういうことにも私は通ずると思うのです。そういう国民を惑わせるようなことは、私はやっぱりとるべきではないと思う。何と言おうと、やはり仮想敵国の、今、藤田委員から言ったような、やはりグループ的に分けたらどうかということくらいは、これは出てくる答えだと私は思うのですが、こういう点はごまかしじゃございませんか。
  225. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は先ほど来お答え申し上げているように、本来、日本の自衛、また日本の平和と安全ということは、民主政治の民主主義をもととしての国民の平和と繁栄ということを、他から侵略されないという考えのもとに立ってやっておるわけであります。現在世界の、先ほど申し上げたような国際情勢から見まして、われわれがこういう考えに立っておる立場から、いわゆる自由陣営と共産主義陣営というような二つに分かれて対立しておる情勢であることは、これは否認できません。その場合において、自由主義の立場に立っておる人が感ずるところの一つの不安というものは、現在においては、共産主義の国々からそういうふうな何がありゃしないかという不安を持っておることは、これは事実であります。しかしながら、私は、それだからといって、戦前にあったように仮想敵国、ソ連なり、あるいは中共なりというものの軍備を具体的に頭に置いて、これに対抗するところの武力を日本に、あるいは陸上の自衛隊あるいは海上の自衛隊、これを持つのだというような考えを持っておらない。また、将来国際情勢が変遷し、また一部にありますが、右翼的な脅威によってわれわれの立場が脅かされるということになれば、それに対して日本の安全と平和を守るということは、これはまた当然なんです。
  226. 鈴木強

    鈴木強君 ちょっとわかりました。まだよくわかりませんが、次に進みます。  条約第三条によりますと、両国は武力攻撃に抵抗するために、その能力を維持し、かつ発展させるという条項がございます。先般岸総理は、この国会において、そのときによっては自衛戦力を拡充するのだということを考えておれば、減らしてもいいのだという、こういうお話しをしておりますが、これはちょっと私は防衛庁長官のお考え方と食い違いがあると思う。きょうはおさらいですから、私は全般にわたっては触れませんが、そういう点ちょっと心配ですから承っておきたい。  それから第二次防衛計画をなぜ国防会議にかけないのか。すでに防衛庁の加藤局長がその大綱をアメリカに持って行った。必要あれば出すつもりで持っていったでしょう。しかし話はしていないということですが、いずれにしてもそういう状況下にあるが、第二次防衛計画をあえて三十六年に持っていった。そして安保との関係で自衛力の増強ということを国民にひた隠しにすると、こういうふうにとられても、これは抗弁のしょうがないじゃありませんか。
  227. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 第三条の趣旨はどういうことかということに関連して、前の私のお答えしたことに対する御質問だと思います。私は、この条文はアメリカ側から見れば、いわゆるバンデンバーグ決議の趣旨を盛り込んだものでありまして、アメリカがその立場から、いやしくも一国において、独立国として、自主的に自分の国は自分で守るという意図を持ち、決意を持ち、それに努力しておる国に対してだけ、そういう国でなければアメリカはこれに援助はとらないという精神を盛り込んでおる。日本立場から見まするというと、われわれは、あくまでも憲法の規定に従って、先ほど来議論があるような自衛力の最小限度の何は持つと、そしてみずから日本を守るという意思を決意をしており、その決意を表わすために、国力、国情に応じて自衛力を漸増していくという方針で今日まできておる。この方針を少しも変えるものではない。これだけの決意を持ち、これだけの努力をしておる以上は、これは決して三条の精神に反するものではないし、それ以上のことを三余が要求するものではない。そして現実に、それにはそういう意図を持っておりますが、いろんな予算の編成の何から申しましても、ことし、毎年それじゃ防衛費というものをふやしていかなければならぬかというと、私はそうではない。ある場合において、特別ないろいろな国民生活の上から考えまし、自衛力を、憲法の自衛力を増すんですから、先ほども申しましたように、国民生活を圧迫するとか、あるいは福祉の上から見て望ましくないような防衛費を増額するわけにはいかないような事情の場合におきましては、これは災害があったというような場合におきまして、ことしはふやさないというようなことをしましても、あるいはある場合においては多少減額することがあっても、さっきからの基本方針の決意というものが変わらない限りにおいては、私は条約違反というものにならない。ただ自衛力を持たない、自衛力というものはこれは持たぬ方がいいんだと、従って漸減とかいって、究極はなくすとか、あるいは一時になくすということになると、これは私は三条の精神に反すると、こういうことを申し上げたわけであります。
  228. 鈴木強

    鈴木強君 第二次防衛計画はどうですか。
  229. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 第二次防衛計画の問題につきましては、防衛庁内においてもいろいろ審議をしております。また、国防会議の事務局においてもある程度の審議をしておるように聞いておりますけれども、まだ国防会議を開いて審議にかけるまでの準備にいってないと私は聞いております。
  230. 鈴木強

    鈴木強君 防衛庁長官、さっきの岸答弁と、いいですか。
  231. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 安保条約第三条については、今総理が御答弁申し上げた通りと思います。抽象的に規定されております。ですから、アメリカ側からいえばバンデンパーク決議をここに盛ったという形でありますし、抽象的な約束になっていると思います。具体的に防衛力をどの程度に増していくかということは、日本の自主的な判断、自主的な判断の基礎をなすものは、先ほど申しましたような国防会議における国力、国情に応じて漸増していく。ですから漸減、漸減というか、途中で、維持されていて、ふえないときもあると思いますが、しかし、方針がそういう形であれば、これは条約違反として追及される問題ではないのではないか、こう思います。第二次計画については、総理と同じに考えます。
  232. 鈴木強

    鈴木強君 その次に、条約第二条の経済協力の点でございますが、今日までの質疑を通じては、何ら具体的に日米の経済協力について策がございません。そうしますと、結論的に言えるのは、われわれが当初指摘をしておりましたような、現在の安保条約を改定する際に、軍事同盟化の方向に進むという国民の危惧をおそれて、経済協力ということをちょっぴり条約にうたっておるというふうにわれわれは判断をせざるを得ないのです。そういうように理解してよろしゅうございますか。
  233. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今度の条約の考え方は、ただ単に防衛の点において日米両国が協力するものではなしに、また、防衛に関して協力する以上は、さらに基礎をなすところの政治、経済の面においても十分な協力関係が必要であるという考えに立って条約の二条を設けたわけであります。経済協力についての具体的なことが何にも進んでないじゃないか、従ってこれはただ軍事条約ということをカムフラージュするためのものではないかということでございますが、私はそう考えておりません。現に私とアイゼンハワー大統領との間の話におきましても、従来も日米の間におけるところの経済関係というものは相当緊密にいっていることは事実でございますが、しかしさらに特にその点について大統領と話をしまして、共同声明の中にも、経済問題については両国の間において継続的に話し合いをしていく、こういうことを私が強調いたしまして、大統領もこれに同意を表しております。その継続的に話していくということは、ある問題ができたときにたまたまやるということでなしに、常時何かそういう話し合いをするところの仕組みも一つ考えていきたいということを頭においておったのであります。ただしかし、あの条約の調印の際に、それじゃ具体的なものを、こういうものを作ろうというところまでいっておりません。アメリカにはアメリカの事情がありまして、なかなか政府レベルの関係は、むしろ普通の外交チャンネルを通じて円満にいっておるのだから、この交渉をなお緊密にやっていこう、しかしそれだけじゃ足りないから、何か民間において一つ委員会とかいうような機構を作る必要があるのじゃないかということで、当時一緒に行きました足立会頭がいろいろな資料を持ってきて、こちらでも検討をしております。私の最近聞いた話では、この場合にアメリカの有力な人を呼んで、さらにそれを継続的にやっていく方法について話し合いをするというような構想であるというふうに聞いておりますが、政府としても、そういう民間のレベルにおいて話し合うことのできることは非常に望ましい。そこで具体的のいろいろな問題がとり上げられることになると私は考えます。
  234. 鈴木強

    鈴木強君 外務大臣、この今の総理の御答弁の中に、具体的に民間レベルの何かルートを作ってやろうというようなお話もあったのですが、足立会頭が全米外国貿易協議会に出られて、いろいろ意見を言ったそうですが、ほとんど問題にされていなかったとこういうわけであります。ですからどうもこの政府のルートではどういうふうにやっていくのか、あるいは民間のレベルではどういうふうにやっていくのか、そういったような何か構想をお持ちですか。
  235. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 政府のレベルにおきましては、先ほど総理が言われましたように、政府レベルでもって何か特別の委員会を作るということは、まだ進捗いたしておりませんし、また現にそれを行なうことがどうであるかという問題については検討を要しますが、しかし通常外交ルートにおきまして、今日までも十分話し合いをいたしておりますので、それを進めていく、そういう意味から言いまして、やはり日米が同じような立場に立って協力をいたしていく。先般のいわゆる後進国の開発に対するワシントン会議に日本の参加を強力にアメリカが支援してくれた。イギリスその他若干の反対があったようでございまするが、そういう点もやはりこの第二条による精神の発動であろう。またたとえば生産性の関係におきます日米技術協力によりまして、低開発国の援助をやっていこうというようなことも、最近話し合いが進んでおるわけでありまして、そうした面において、特別な何か会議体を持ちませんけれども、常時何か話し合いを、問題ごとに連絡して、しかも日本をバツク・アップしてもらうような立場において十分やってもらいたいと思います。また同時に、足立会頭が行かれましたが、行ってからの報告を聞きますと、全米商工会議所はメキシコ、カナダ等に合同委員会的なものを持っておられるようでございます。従って会頭が帰ってこられましてから、全米商工会議所からそういうような資料等がみえたそうでございまして、最近足立会頭の方から全米商工会議所に連絡いたしまして、今週七、八名の有力な会議所系統の民間実業家を、これらの人選等についてはミューラー商務長官も非常に熱心に、第一回の会合であるし、また将来そういう基礎になるから、アメリカの有力な実業家をよこすようにという考え方を持って、側面からアメリカの全米商工会議所に話をしていることも聞いております。そういうような線に沿って今後進めて参りたい、こう考えております。
  236. 鈴木強

    鈴木強君 一月二十日のワシントン発のUP電報によりますと、岸総理が二十日に米議会の上院外交委員会を訪問した際、二十二人の議員の諸君の前で、日本は米国の工業を不当に圧迫しないようにするため、対米輸出を規制する意向である、こういうことを約束したという電報が入っておりますが、これは事実でございますか。今の経済協力の点から言っても、少しおかしいと思いますので質問するわけです。
  237. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ちょっとその報道は私の何と違っておりますが、こういう日本とアメリカとの間の貿易関係が非常に改善されてくる、われわれの希望している一対一の何よりいくらか日本の方がいいという状況になったのでありまして、これが相当急激に日本の貿易が伸びたために、いろいろな方面から日本品がはんらんして、アメリカの産業を圧迫するという声があり、またそれに対して日本品を制限するというような、あるいは関税の税率を高くするというような意向があるように聞くけれども、これは日米のために非常に好ましくないことであります。日本としてもアメリカとの貿易は増進していきたいという何で努力しているけれども、アメリカの産業に急激な悪影響を及ぼすようなことについては、従来も自制的な方法を講じており、将来においても日本はそういう点については十分考慮するという考えなんであります。決して一部に起こっているような日本品の制限であるとか、日本品に対して特別に関税を上げるというような措置を取らぬようにしてもらいたい。あるいは非常に困る、こういう商品がアメリカの産業にこういうふうに影響を及ぼして困るというようなことについては、十分に一つ日本側とも話し合いをして、日本側においてもそういう場合においては自制をするなり、従来の綿織物についてやっているような考え方をやっていく用意があるという話をいたしたわけでございます。
  238. 鈴木強

    鈴木強君 防衛庁長官、新安保条約第五条によって自衛隊が出動するときには、自衛隊法の七十六条に準拠して当然国会の承認を得るようになると思いますが、この点はいかがでございましょうか。
  239. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) その通りでございます。
  240. 鈴木強

    鈴木強君 ちょっと議事進行についていいですか。僕は地図をそこに張りたいと思うのですが、いいですか。
  241. 小林英三

    委員長小林英三君) いいです。
  242. 鈴木強

    鈴木強君 ちょっとこれは説明しなければならぬ。ちょっとここでいいですか。
  243. 小林英三

    委員長小林英三君) ええ、いいです。
  244. 鈴木強

    鈴木強君 今日までの政府の統一解釈によりますと、南千島、台湾、日本周辺、金門、馬祖を含めて、韓国——これは三十八度線以南であります。フィリピン以北ということになりますと、こういうことになります。これが極東の範囲ですね。ところが最近米国の上院の外交委員会で、海外援助の法律案を審議する際に、米国国務次官補代理スティーブスが言っているように、極東とは日本、朝鮮、中国、東南アジア諸国、オーストラリア、ニュージーランドと、こういうふうに言っております。この青で塗ったところがアメリカの言っている極東、日本政府の統一解釈はこの赤線であります。これは間違いないですか。あなたの言ったことを地図に書いてくれと言ったのに書いてこないから書いてきたのです。赤いところで間違いないですか。(「棒がないかな。竹か何かで地図をさして説明してくれないとわからない」と呼ぶ者あり)これは私は岸総理に地図に書いてくれと言ったのに示さないのです。だから出さぬから作ってきたのですよ。あれで間違いないでしょう。あの赤いところで。
  245. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のように私どもは初めからフィリピン以北、日本を中心とする周辺及びそれを取り巻く海域ということを言っております。特に地図に線を引くあるいは東経何度、北緯何度というようなことで線を引くというようなことを申し上げておらなかったわけです。それからおそらくアメリカの援助の問題につきましては、アメリカの国務省の極東担当というのがあの範囲になっております。従ってアメリカのいわゆる極東という担当は、あれだけの範囲を経済援助とかいろいろな意味で扱っておるという意味において、極東担当が扱っておる範囲だという意味だと思います。
  246. 鈴木強

    鈴木強君 あなたは答弁が二転、三転をして、最終的に政府の統一解釈として示したのがあれなのです。その間われわれの質問に対して、これはアメリカとも十分話し合いをしてやっておることである、こういう御所見を承っておるわけであります。ところが現にこれはまだ二十五日くらいにスティーブス国務次官補が、極東とはこうだ、こう言って、ちゃんと武器援助の法律案を審議の際に明確にしているのですから、アメリカとちっとも話し合いをしていなかったじゃないですか。その点はどうですか。
  247. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 前に申し上げておりますように、本条約において両国が極東の平和というものに共通の関心を持っておるというのは、フィリピン以北、日本の周辺及びそれを取り巻く海域ということで、われわれはアメリカと理解をいたしておるわけであります。お話のようなものは、アメリカの国務省の職制において極東を担当する部がございまして、従ってその極東を担当する部として経済問題その他一般のことをやります場合には、ああいうところの範囲を担当しておるのだ、こういうふうにわれわれは理解をいたします。
  248. 鈴木強

    鈴木強君 しかし国務次官補代理であっても、少なくとも米国の上院の外交委員会において、極東とはどういうことだという質問が出たときに、こうだという答弁をしておるのですからね。ここは一般的に使っている極東ということとは私は違うと思うのです。特に安保条約の審議が進んでおる段階でございますから、今までアメリカとほんとうに話をして、あの赤線が極東だというふうにきめたのだとは、私たちは受け取れないのですがね。
  249. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のように、今お話になりました経済援助の問題等をアメリカが扱う場合には、極東というものをああいう範囲内に置いた。しかも極東を、国務省の職制の上から申しますと、そういうような極東担当というものはああいう範囲になっております。そういうことは間々あるのでありまして、たとえば日本で欧亜局と申しましてソ連とヨーロッパと中近東を含めて、しかも欧亜局は豪州、ニュージーランドも実は担当して、はなはだおかしい担当でございますけれども、そういうような担当にもなっている場合がございます。でありますから、やはり職制上、そういうような範囲内でやったということの説明であろうとわれわれは考えております。
  250. 鈴木強

    鈴木強君 これは世界地理辞典、大言海、漢和大辞典、広辞苑、辞海、それから言林、新字鑑、全部調べてみましても、大体アメリカの言っておる極東というのとこれは当たっておるのです。そういう一般的な地理学上の概念は、これは語彙から発展をして、地域からちゃんとある。自然がどうだとか、そういうことがあるにかかわらず、われわれが何回もこの委員会でまた他の委員会を通じて質問をして参ります過程において、フィリピン以北ということを言って、ああいう解釈になっておるのでございましょう。だから今の話は違いますよ。これはアメリカと相談したのですか。
  251. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほど来申しております通り、本条約において極東の平和と安全ということに関心を持つ地帯として、フィリピン以北、日本の周辺及びそれを取り巻く海域というように、われわれは了解をいたしております。
  252. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと関連して。アメリカが一般的に言っておる極東の範囲というものは、今外務大臣のお話の通りと思います。そこで今度の条約に言っておるこの極東の範囲という場合に、日米間に日本の今の政府の解釈しておる解釈というものは、アメリカ側の合意を取りつけての統一解釈でありますか、お伺いいたします。
  253. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の場合におきまして条約地域というものは、日本の四つの島でございます。極東の平和と安全に共通の関心を持つ地域という意味において、フィリピン以北、日本の周辺及び日本を取り巻くその海域ということで両方理解をいたしております。
  254. 鈴木強

    鈴木強君 その答弁は前にも聞きましたが、しかし最初は中国の奥地まで入るという答弁をされて、その後沿海州も含められ、北千島も入る、こういうふうにそのときどきによって変わってきております。アメリカと少なくともこの条約を締結する際に、私は極東の地域について話し合いがなされておったとするならば、ネコの目の変わるように、そのとき場当りの極東の範囲というものが出てくるはずはないでしょう。アメリカと話をしたと言っているが、私はしておらないじゃないかと思うが、どうですか。
  255. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今申し上げたことによりまして、御了解いただける通り、アメリカとその点については理解した上で私は申し上げているわけでございます。
  256. 鈴木強

    鈴木強君 それでは岸総理、藤山外務大臣にお尋ねいたしますが、従来この委員会において、極東の範囲として明確に政府が統一解釈をしたのは、フィリピン以北、台湾、金門、馬祖を含む、それから中国の沿岸、日本周辺これは沿海州は含まない、歯舞、色丹、国後、択捉島等の南千島をいう。こういうふうに従来当委員会に対して政府の統一解釈としてお示しになったものは、現在でも変わりはございませんか。
  257. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 政府の最後の統一解釈につきましては、二月二十六日の衆議院の安保条約の特別委員会におきまして、愛知委員の質問に対して私がお答えしたことをもって政府の統一見解と御了承願いたいと思います。
  258. 鈴木強

    鈴木強君 それは岸総理が三木武夫氏と会われて金門、馬祖を含むのはまずいと言われて、それでは答弁を訂正しよう、こういうお話があったことが、新聞紙上、ラジオ、テレビを通じて報道されたとき、藤山外務大臣は御病気で約一週間出て来られませんでしたが、御病気が回復して出て来られた席上において、「従来の統一解釈を変えるお考えはございますか」と聞いたら、「ありません」と言う。三木・岸会談のことについては、病床にあったので何の相談も受けてない。私が、今まで言ってきたのが、政府の統一解釈でございますと、これは一週間も前にならぬ、ここではっきり藤山外務大臣は答弁されている。それを二月二十六日の統一解釈がそうだと言うのは、これはけしからぬ話です。岸総理の私は良識を疑う。あなたは一国の総理ですから、そういう不まじめな人でないと思う。人間ですから間違いもあるでしょう。あったら正すべきです。そういう藤山外務大臣との食い違いが明らかにこの委員会に出ている。これをはっきりして下さい。
  259. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 二月二十六日に統一解釈として、今まで答弁いたしましたことを取りまとめてお答えをいたしております。新条約の条約区域は「日本国の施政の下にある領域」と明確に定められている。他方、新条約には「極東における国際の平和及び安全」ということも言っている。一般の用語として使われる極東とは、別に地理学上正確に画定されたものではない、しかし日米両国が条約で言っている通り、共通の関心を持っているのは、極東における国際の平和及び安全の維持ということである。この意味で、実際問題として両国共通の関心の的となる極東の区域は、この条約に関する限り、在日米軍が日本の施設及び区域を使用して、武力攻撃に対する防衛に寄与し得る区域である。かかる区域は大体においてフィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国及び中華民国の支配下にある地域も含まれている。新条約の基本的な考え方は右の通りであるが、この区域に対して武力攻撃が行なわれ、あるいはこの区域の安全が、周辺地域に起こった事態のため脅威されるような場合、米国がこれに対処するためとることのある行動の範囲は、その攻撃または脅威の性質いかんにかかるものであって、必ずしも前記の区域に局限されるわけではない。しかしながら、米国の行動には基本的な制約がある。すなわち、米国の行動は、常に国際連合憲章の認める個別的または集団的自衛権の行使として、侵略に抵抗するためにのみとられることとなっているからである。また、その米国の行動が戦闘行為を伴うときは、そのための日本の施設の使用には、当然に日本政府との事前協議が必要となっている。そしてこの点についてはアイゼンハワー大統領が、岸総理大臣に対し、米国は事前協議に際し表明された日本政府の意思に反して行動する意図のないことを保証しているのである。これが統一解釈でございます。これを出しました二月二十六日は、今お話にございました、三木君と私が会ったよりも前でございます。そうしてその解釈を政府としてはずっと一貫して持っているわけでございます。
  260. 鈴木強

    鈴木強君 三木武夫さんと会ったのはいつでございますか。
  261. 岸信介

    国務大臣岸信介君) あれはたしか、はっきりは覚えませんが、三月の十六、七日ごろではなかったかと思います。
  262. 岩間正男

    ○岩間正男君 関連して。この前私は、この極東の問題について最後的なこれは統一見解であるかということを岸総理にただしました。ところが私の質問に対して岸総理は、そうでございます、と、はっきり答えているのですね。ところが、それから一週間くらいして、また衆議院の安保委員会で、愛知議員に答えました答弁というのは全くまた内容が変わっている。これはどういうことですか。最後的な統一解釈と言ったのが、そういうふうに二転し、三転し、四転し、五転する。どれを一体最後的な統一解釈とこれは了解していいのですか。この点は速記録に、はっきり出ている。これはご存じだと思うのです。当委員会で、はっきりこの点を私は念を押したのです。これに対してあなたは、この点を明確に答えておられる。どうなんですか。そんなふうに何回も最後的統一解釈というのは、私は、出るわけはないと思うのです。こういう点について、一体、総理の真意というのはどういうところにあるか。われわれは何を信用していいのか。この点を明確に答弁していただきたい。
  263. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今申し上げました、その二月二十六日、ただいま読み上げたことか、われわれの統一解釈として責任を持って申し上げているところでございます。
  264. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、私に答えたものは何ですか。一週間前にあなたの答えたのは何ですか。
  265. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 岩間委員の御質問がどういうことであって、どういうふうにお答えを申し上げましたか……、私はこの二十六日に政府の統一見解をとりまとめて申し述べておりますが、それと、趣旨に反するようなことは申さないつもりでおります。
  266. 鈴木強

    鈴木強君 二月二十六日の愛知質問に対する政府の統一解釈が二月二十六日、それから三月九日の当委員会の総括質問において、小林委員の質問に答えて、明らかに、さっき申し上げました、フィリピン以北、金門、馬祖を含む台湾、中国の沿岸、日本の周辺——沿海州は除く、歯舞、色丹、国後、択捉という、この南千島が極東の範囲であるということがはっきり議事録に載っておるが、ここで答弁しているじゃないですか、藤山外務大臣は。それから三月の何日かに三木さんと会ったのでしょう。そしてこの前の委員会では、こういうはっきりした名前をあげれば、そうではないというようなことを言っているのだが、藤山外務大臣が病気がなおって来られたときに、私が、そういう三木・岸会談があったにもかかわらず、あなたは統一解釈は従来と変わりはありませんかと言ったら、変わりありません、ということをはっきり明確に言っているわけです。従って、今私が申し上げました島々を含んだ従来までの極東の範囲というものはその通りでございますか。
  267. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今私が読み上げましたのが政府の統一解釈でございます。そうしてこのことは、従来いろいろな具体的の島や何かが問題になったことはございます、そのときにお答えを申し上げておる趣旨を変更するものでは私はないと思います。ただ問題は、極東の範囲というものについて地図にこれを書き込むとか、あるいはどの島がどうだというようなことを具体的に一々出入りをきめるということは、極東という観念から見てそれは適当でない。われわれはこの統一解釈のように申すことで十分であり、またそれが適当である、かように考えております。
  268. 鈴木強

    鈴木強君 これからまた違った島を言えとは私は言わないのです。少なくとも今日までフィリピン以北、金門、馬祖を含む台湾、中国の沿岸、沿海州を含まない日本周辺、歯舞、色丹、国後等南千島が極東の範囲であるということは、これは間違いないですかということを聞いているんです。
  269. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私が申しましたのも、今、総理が言われたのも同じでありまして、従来個々の島その他についていろいろ出ておりましたが、しかしそれは必ずしも、初めから申しておりますように線を引くというようなことはできない。また緯度、経度で締めくくりをするというようなこともできない。そういう意味においてわれわれは今後ともそういうことに、一々の島等についてふれないということが適当であろうと考えたわけであります。従いましてこれまで答弁いたしておりました趣旨とは、総理が今言われましたように、今回の愛知質問に対する答弁というものは趣旨は変わっておらぬのであります。その趣旨が変わっておらぬということを申したので、私は愛知質問に対する答弁の趣旨はちっとも変わっておらぬということを申し、またそれが政府の最終的解釈であるということを申したのであって、当時は三木氏等の話がまだある前だと思いますけれども、私としてそういうことを申し上げたわけでございます。
  270. 鈴木強

    鈴木強君 それでは今、私が申し上げた島は入るのでしょう。——閣議を開いて相談してきて下さい。無理なことを言ってないですよ、絶対に。
  271. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 極東という観念につきましてはいろいろなところでいろいろに用いられているなにがあります。辞典等をお引きになりましても必ずしも地理学的に、はっきりしているわけじゃない。そこでこの条約の用いている極東ということは、やはり一種の私は抽象的なものであって、一々の島が入るか入らないか、あるいは緯度でこれを示すというようなことは事の性質上適当でない。しかしいろいろな点において従来政府が、この島について具体的の御質問がありましたときに、答弁をいたしておるものはございます。これはたしかにございます。ただしかし、この点につきましては、私はいろいろな島の名前をあげてこれが入るか入らないかというようなことを、政府がお答えを申し上げるということは、むろん国際的な問題の上から見ても適当でない。むしろやはり極東という観念がそもそも不明確なものであり、漠然とした性格のものでありますから、そういうことで御了承願うことが適当である。  しかしそれにしても大体の範囲といいますか、大体のなにがつかめなければいけないわけでありますが、フィリピン以北、日本及び日本を中心としての周辺における所も含んでおる、こういうふうにお答えをいたしておくのが一番適当でないか。しかしながらそれを、従来それじゃこの島が入る、この区域が入ると言ったのは、それを何か変更したのか、こう言われますというと、私どもはそれを変更したということでない。それを具体的に表現することは政府として適当でない、かように考えて御答弁を申し上げておるわけであります。
  272. 鈴木強

    鈴木強君 頭のいい岸総理が、われわれが聞いてもわからぬような答弁をするところに問題があるのですよ。だから私の聞いておるのは、あなたが統一解釈として示された一つの輪郭が出てきました。その中にあなたが今まで言ってきた島は入るのですか、入らないのですか、それを一つはっきりしておいて下さい。
  273. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今申し上げました通り、それを入るとか入らないとかいうことを具体的にお答えすることは、この際適当ではないのじゃないか。しかしそれじゃ何か従来言うたものとは範囲を狭めたのか、あるいは違うことを言っておるのかと言われれば、趣旨においては変っておりませんけれども、具体的にそれを表現することは適当でない、こういうことを申し上げたわけであります。
  274. 鈴木強

    鈴木強君 一党の派閥の鎮圧にこういう問題をからまして、きわめて政府態度が急変したことを私は国民の名において非常に残念に思います。少なくとも国会を通じて国民にこの島とこの島は入ります、入りませんということをはっきり言っておきながら、今この段階になって入るのか、入らないのかわからない、今までのことはどうだということでやられたのじゃ困るのですよ。総理大臣どうですか。今までこの国会で発言してきた島々については取り消す意思がないでしょう。それを一つ
  275. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私の申し上げておることは、政府として従来お答えをしておるところがございます。これをさらに変更するというような考えは持っておりません。しかしあらためてそれをさらに表現して具体的に言うことは適当でない、こういうことを申し上げておるのであります。
  276. 鈴木強

    鈴木強君 それでは先ほど文書で読み上げられました極東の中に、さっき私が申し上げた、政府答弁をしておる島々は入るということでございますね。そこまでは言えるでしょう。それが言えなければ言えんで……。
  277. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは押し問答にはなりますけれども、鈴木委員も御了承いただけると思うのでありますが、(「了解できない」と呼ぶ者あり)具体的にそういうように、どの島が入るとか、入らないとかいうことをここで政府としてあらためて言うことは適当でない。しかし私どもが従来言っておることを変更する、何か重大な変更をするという意味で申し上げておることじゃない。前から申し上げておることと趣旨においては変わっておりませんが、一々の島を取り上げて、そして入るとか入らないとかいうことはこの際はお答えすることは適当でない、こうお答え申し上げておるのであります。
  278. 鈴木強

    鈴木強君 それではわからないのです。要するに、今まで言ったことは取り消さない。じゃそれが入るのかというと、そうでもないような答弁をされるわけです。実際に今まで問題になってきた島々というのは生きているのでしょう。私はあなたに島をあげろとは言いませんが、私があげましたから、この島は今の話し合った統一解釈の中に入るのですか、入らないのですか、それは言えるでしょう。
  279. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今私が答弁をしておることでその趣旨は明瞭であると思いますけれども、ただ具体的に今これは入るのだと政府に言え、入らないのだということを明言しろというなにに対しましては、私は明瞭にそこのところを申し上げるわけにはいかないが、しかし現在までにわれわれがお答えしてきたなには、この統一見解で趣旨を変えてはおりませんということを御了承願いたいと思います。(「おかしいじゃないか」「範囲は今まで言っているじゃないか」と呼ぶ者あり)
  280. 鈴木強

    鈴木強君 同じようなことで、私の答弁に答えていないじゃないか。委員長は少し総理大臣に注意を喚起して、私の質問に答えるようにして下さい。(「間違いなら間違いで取り消せ、ということなんですよ」と呼ぶ者あり)実にあいまいですよ。
  281. 藤田進

    ○藤田進君 関連して。ですから、今まで言ったことは変更しないで、そのままだと、すなわち金門、馬祖も入るんだと言ってこられたわけですね、これは記録に残っておる、これは認められると思う。ただそれを、その島の名前をあげて、今ここで言えないんだと、こういうことでは、言ってしまったことをまた言えないんだというふうにも聞こえる。あなた言ってしまっている、それは変えないんだ、しかしこれは言わないんだということでは、これでは実に私は困るんで、勝手な解釈はできませんよ、これを審議している以上。だから岸家がゴルフに誘われた、本人の岸信介と家内とだれそれが行きますと言っていたんだが、今度は総称して、家族全員が行きますということに変えられたというような趣旨になるのか。案外その中で行かない人もあるというふうにも見えるので、それはだれだれかと名前をあげて聞くと、それに間違いありませんとあなたが返答しておきながら、それじゃだれとだれと行きますかと言ったら、家族全員が行きますと言う、こういうようなことで、わかったような、わからないようなことになる。これはやはりこの際頭隠してしり隠さずということでなしに、時間がもったいないです、はっきりとされた方がいいと思うし、私どもも勝手な解釈ができないので、おわかりになっているとおっしゃっても、わかっていることは、従来言われた金門、馬祖を含むフィリピン以北云々、こう解釈いたしますが、それでよろしゅうございますか、ということをあらためて重ねてお伺いいたします。
  282. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 極東という観念が抽象的なものであって、従ってその範囲にあいまいさのあることは、これはわれわれが地図にこれを書き込んで、極東の範囲をはっきり書き込めといった幾たびかの要求に対しては、そういうことはできませんと、こういうことを申し上げた趣旨もそこにあったわけであります。しかし問題は、私はこれは国民としての関心の非常に強い問題であり、また日本として考えなければならぬことは、米軍の出動する場合における、事前協議の場合における日本が承諾を与える地域、拒否すべき地域ということが、私は問題になると思うのであります。しかしただ極東における国際的な安全と平和という観念自体につきましては、これは本来不明確な点があることは、ほかの条約におきましてもこういう文句が使ってありますし、あるいは他の用語例もございますから、これは私は少し明確でない点が出ることもやむを得ないと思います。しかし問題は日本の非常な重要な、国民が関心を持っておる米軍の出動の場合におけるこの地域というものは、これは日本の本来の平和と安全に直接もしくは密接な関係のある地域とわれわれは考えておるわけでありまして、極東の範囲がどういうふうになろうとも、それに関係のないことについては厳に米軍の出動を拒否すべきものである、拒否する考えでございます。こういう意味におきまして従来島をいろいろあげまして、御質問があった場合に対して政府の所信を申しておりますけれども、根本的に申しますと、そういう極東の性質というものはそういう性質のものであるから、あらためて具体的の島を入るとか入らないとかいうことをお答えすることは、私は適当でない。  しかしながらそれでは従来具体的に答えたところのものの範囲を狭くしたのか、あるいはまたそれを広げる意思があるのかというようなことにつきましては、従来からお答えしておるところのものの趣旨を変える意味じやありませんから、極東の範囲というものを大体そういうふうな、お答えをしたような範囲に考えておるということは御了承いただいていいと思います。しかし特に島をあげて、これが入るか入らないかということについては、この際はお答えをすることは私どもとしては適当でない、かように考えておるという気持を先ほどから申し述べておるわけでございます。
  283. 秋山長造

    ○秋山長造君 関連。私は端的にお伺いしますから端的に答えていただきたいんですが、まず第一に総理大臣は従来金門、馬祖が極東の範囲に入ると答えてきたというこの事実をお認めになるかどうか。  それから第二は、その従来の答弁をこの際特に変更したり、取り消したりする意思はないのか、という二点についてはっきりお答え願いたい。
  284. 岸信介

    国務大臣岸信介君) そういうことをお答えした事実はございます。速記録に明らかに残っているだろうと思います。そうして私は従来にお答えを申し上げておることと趣旨の違った、この趣旨を変更する考えはございません。
  285. 辻政信

    ○辻政信君 関連。今の議論を聞いておりますと、極東の範囲については、一々島をあげて論評しないと、これはまあ一応納得しましょう。  それじゃあ具体的に承りますが、岸総理のただいまの答弁は、米軍の行動を事前協議によって控制することの方が極東の島をあげるよりも大事だとおっしゃっているが、それでは起こり得べき一つの例をあけます。金門、馬祖に再び紛争が起こって、在日米軍が金門、馬祖の方へ出動するときに、あなたは総理大臣としてノーと言うかイエスと言うか、それをお答え願いたい。
  286. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この国際の紛争なりあるいはそのいろんな武力攻撃なり、そういうものが起こってきたところの客観的情勢なり、またその事態を判断しなければ、さっき私が申し上げているように、日本の平和と安全に直接密接な関係のあるものは、これは日本の平和と安全を守るこの条約の趣旨から申しまして、日本の自衛隊はそういう所まで領土外に出ることはできないわけであります。(辻政信君「米軍ですよ。」と述ぶ)米国にやってもらって何しなければならぬと思いますが、今の、たとえば過去の金門、馬祖の事態のようなときには、実は日本の基地を使って米軍は出てもおりませんし、われわれはああいう事態でもって米軍が直ちに作戦行動をするということは——ああいう事態であればわれわれは拒否する考えでございます。
  287. 鈴木強

    鈴木強君 従来われわれは安保条約の審議にからんで、極東の範囲については具体的な島をあげて質問をし、それに対して政府はイエス、ノーと言って参りました。しかしこの時期になって政府の統一解釈というものが、岸総理答弁を聞いておりますと、従来の委員会で発言したことはこれは認める、そう言っておきながら、具体的にはわれわれがこの島は入るかどうかと質問をいたしますれば、それはあらためて言えない、こういう不誠意きわまる態度については、私は絶対に納得できません。もうばかばかしくてこれ以上質問する気にはなれません。わが党の態度は——従来の審議の経過からして明らかに三木、岸会談によってその解釈が変わってきた。金門、馬祖の問題について三木さんの進言を入れたのです。これは何に原因するか。自由民主党の派閥抗争に対する注射の一本じゃないですか。そういうことによって、少なくともこの重大な安保条約の問題に対して、われわれが条理を尽くしてお話を申し上げ、みずから認めていることがこの委員会を通じて言えないということは、私はまことに残念でなりません。しかし予算は審議を続けなければなりません。私はここであえて岸総理に猛省を促すと同時に、われわれは従来の政府態度については絶対納得できませんので、いずれ安保特別委員会等で場所を変えまして、この点は徹底的に政府を追及したいと思いますから、私はきょうはこれで終わっておきます。
  288. 小林英三

    委員長小林英三君) 午後の開会は二時四十五分にいたしますが、なお、この際、予算審議の時間をできますだけ有効に使いたいため、委員各位、閣僚各位に対しまして開会時刻につきましては何とぞ御協力をお願い申し上げます。  暫時休憩いたします。    午後二時五分休憩    ——————————    午後三時二分開会
  289. 小林英三

    委員長小林英三君) これより委員会を再会いたします。午前に引き続き、質疑を続行いたします。西田信一君。
  290. 西田信一

    ○西田信一君 私は、自由民主党を代表して、総括質疑を行ないたいと思います。私の質問は、安保問題を中心とする外交の問題、領土の問題、貿易・為替の自由化に伴う諸問題、財政経済その他の内政問題等にわたるつもりでありますが、最後の締めくくりの意味におきましてなるべく総理から御答弁を願いまして、必要に応じ関係閣僚からお答えをわずらわしたいと思います。  国賓として迎えましたアデナウアー西独首相との会談の経緯、内容等につきましては、質問を申し上げるつもりでおりましたが、先ほど鈴木委員がこの問題に触れられましたので、この問題は質問を重複いたさないことにいたします。  第一にお尋ねをいたしたいのは、さきに政府は二回にわたって、新安保条約に関するソ連覚書に対しまして反駁の回答を行ないましたが、その後の経過はどのようになっておりますか、外務大臣からお伺いをいたします。
  291. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先般の二回の覚書に対して当方からも回答をいたし、覚書を手交いたしたわけでございますが、その後特段の反響が出ておりません。ただ、モスクワ放送等、非公式にいろいろと引き続き同じような点を、放送等を通じまして申しているような現況でございます。
  292. 西田信一

    ○西田信一君 ソ連は、今回の新安保条約調印に対しまする対日覚書を初めといたしまして、あらゆる機会に外国軍隊の撤退等を主張しておるようでありますが、この主張をわが国の場合に当てはめますれば、これはとりもなおさず安保条約の解消を要求している、解消をねらっているものではないかと考えるのでございます。昭和三十一年十月に結ばれましたいわゆる平和宣言、日ソ共同宣言におきましては、その3のb項において、「日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、それぞれ他方の国が国際連合憲章第五十一条に掲げる個別的又は集団的自衛の固有の権利を有することを確認する。」、このように宣言されているわけでありますが、この宣言といわゆるソ連のこの要求、主張とは、非常な矛盾をしていると思うのでありますが、政府はどのようにお考えになっておられますか、総理大臣からお答えをいただきたいと思います。
  293. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日ソ共同宣言が結ばれましたときにおきまして、日本が日米安保体制のもとにあったことは、これはソ連も十分承知していることでございます。われわれの今度の安保改定も、その従来ありましたところの安保体制というものを、合理的にしようというだけのことでございますから、これに関連して、日本のこの安全保障体制を解消する、もしくは中立政策をとるようにいろいろと覚書その他で申しておりますことは、実は私どもとしてははなはだ不可解であります。また、日ソ共同宣言の今おあげになりました条項、また当時安保条約があった、さらに同宣言の中に、お互いに内政に対しては干渉しないというこの宣言の趣旨から見まして、最近のソ連の日本に対するいろいろな非難やあるいは覚書等はこの趣旨に反しておると、かように考えております。
  294. 西田信一

    ○西田信一君 ただいま私は率直にお尋ねをいたしましたように、こういう要求を突きつけて参るということは、これは率直に申すならば、このような安保条約の解消を要求する、こういう態度であろうと考えるのでありますが、総理もそのようにお考えでございますか。
  295. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ソ連の意図しているところはそこにあるように考えます。
  296. 西田信一

    ○西田信一君 安保条約の解消をねらっておるといたしまするならば、これは当面のソ連の対日政策の眼目は、日本をして中立政策をとらしめる、こういうことをしむけておるように見受けられるのでありますが、政府の見解も同様でございますか、その点を伺いたい。
  297. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 覚書等におきまして、あるいはその他の責任ある人々の演説その他におきまして、日本の中立化をはっきりと述べておることから見ましても、その意図は日本をして中立的立場をとらせようというところにあると思います。
  298. 西田信一

    ○西田信一君 ソ連が日本に対して中立的立場をとらしめるようにしむけて参っておるという御答弁でありますが、そこで、私は総理並びに外務大臣から見解を伺いたいのでありますが、ソビエトは、日本を含む周辺のいわゆる自由主義諸国に対しましては、中立政策を採用することを強く要求しておる。むしろ、これは一つの強要をしておるというふうに私は考えるのであります。ところが、これに反しまして、共産陣営の内部において、ことにその衛星国が中立政策をとろうとする、こういうようなことに対しましては、これを厳に阻止する方針をとっているように思います。これは例をあげるまでもない。ハンガリー動乱の場合に、これは戦車をもって弾圧を加えたという事実に徴しましても明らかである。あるいはまた、ルーマニアの中立唱道者に対しましては、死刑の重圧をもって臨んだという事実に徴しましても、この点は明らかに言えると思うのです。しかるに、日本に対しましては中立を要求するその態度において、日本がみずから非核武装を表明しておるこの日本に対して、日本の領土は狭い、多くの人口がおる、そして工業施設がたくさんある日本に対しては、原水爆攻撃の絶好の対象であるかのごとき一つのどうかつ的な態度をもって中立を強要しておる、こういうふうに考えるのでありますが、総理並びに外務大臣は、このソビエトの中立に対するこの二つの違った態度に対しまして、どのようにお考えになっておられますか、お答えをいただきたいと思います。
  299. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 東西両陣営が対立しておる現状におきまして、自由主義陣営の国に対して中立を要望しておるということは、言うまでもなく、従来の自由主義諸国との提携なり、あるいは協力関係から離れて、一歩共産主義の陣営に近づけしめようという意図で私はあると思います。ということは、今おあげになりましたように、今度は共産主義陣営に属しておる国が中立政策をとるということは、従来の共産主義の国との提携関係を弱めて、そして自由主義の国の方へ一歩近づく結果になるということを、一切認めないという立場と今ちょうどうらはらをなす私は事態であると思います。従って、従来のソ連の中立政策に対してとっておるところの態度が、自由主義の国に対して要求し要望しておることと、共産主義の陣営の国に対してとっておる態度というものの間に、はっきりした態度の違いがあるということを、私どももはっきり認識いたしております。
  300. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま総理答弁されました通りでございまして、大体、ソ連としては、やはりソ連の信奉しておる信条によって、自分の持っております考え方を広めていきたいという立場が一方にございます。また、それを強化する意味におきまして、中立政策というものを利用いたしておると申しますか、使っておるところは十分考えて参らなければと思っております。
  301. 西田信一

    ○西田信一君 第二次世界大戦が終わりを告げるにあたって、連合国は共同宣言で、領土その他のいかなる膨張をも認めない、こういうことを全世界に向かって誓約をいたしたはずであります。ところが、この誓約がはたして守られておるかどうかと申しますと、私はソ連に限ってこの誓約が守られておらないと考える。バルト三国であるとか、あるいは東欧の弱小国、一々あげなくても、たくさんこれに該当するものがあります。あるいはドイツの分割、またわが日本の千島、樺太、これらがあたかも自国の領土であるかのごとくふるまっておるように考えるのでありますが、この宣言とこれらの事実関係を政府はどのように考えておられるか。また、これらのソ連がいわゆる領土の膨張を来たしておるという観点に立つならば、これはどの程度の広さのものであり、またそれによって人口がどの程度ソ連陣営の中に吸収されておるというふうに見ておられるか、この点を外務大臣からお答えを願いたい。
  302. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 領土そのものを拡大するということが必ずしも適当であるかどうかは別といたしまして、ソ連が自分の何と申しますか、力の及び、あるいは自分の同じような考え方でいくというような立場から、これを強く働きかけた上で、今お話しのように、いわゆる鉄のカーテンというような形もございます。いろんな意味において、ソ連の勢力圏というものを充実し、あるいは拡大しようという状況にあることは、われわれも認めざるを得ないと思います。
  303. 羽生三七

    ○羽生三七君 西田さんの前段の質問で関連質問しようと思ったところが、西田さん次に移られたので、ちょっと前に戻りますが、中立の場合、私がしばしばこの委員会、本会議等で申し上げたように、政府が、あるいは岸総理、岸内閣が、アメリカの考え方と同じであったり、あるいは自由陣営に好意を持ったり、あるいは社会観、世界観は共通の場面を持っているのは自由であります。それを制約することは何人もできません。それはよくわかります。しかし、私どもの言いたいのは、たとえば日本に対する直接攻撃の場合、これの自衛をやるやらぬということは別の問題として、この場合はよくわかりますが、日本にかかわりのない他国の戦争に日本は軍事的中立を守っていけないのでありますか。思想的にアメリカと共通である、そういう世界観的に共通であることはよくわかります。しかし、日本にかかわりのない他国の戦争に、どうして日本は中立を守っていかぬのですか。私は中立守り得ると思う。他国の戦争に軍事同盟関係に立つことは、全然私はこれは問題の性質が違うと思う。あくまで私は軍事的には中立であっていいと思う。思想的には中立なんていうことはないから、世界観的に共通のお考えを持っておることは、これは私はあえて問題にはいたしません。この点は非常に不明確でありますから、しばしば私はお尋ねいたしましたが、明確になっておらないので、今の西田委員の質問と関連して明確に御答弁を願いたいと思います。
  304. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今日の世界情勢から見ますというと、いわゆる東西両陣営の対立から生じておるいろいろな不安があることは、これは事実でございますが、この間に処してその国の安全を保持していくという場合に、われわれはあくまでも日本の安全を保持していくということがその中心でありまして、今羽生委員のお話のように、他国の戦争というものにわれわれが巻き込まれるということは、これは厳にわれわれとしてそういうことのないようにしていかなきゃならぬことは言うを待ちません。  しかしながら、日本の安全ということと日本に近接しておる地域における平和と安全ということは、これは私は非常に関係が深いと思います。ある場合におきましては密接不可分であり、ある場合においてはこの日本の平和と安全を守るためにはその周辺の平和と安全というものをどうしても守らなけりゃならない。この因果関係はきわめて密接な事態があると思います。そういう場合において、日本の平和と安全を守っていくために、事が日本の領土以外で起こることについては、われわれが無関心であり、いわゆる中立、一切関与しないというようなことは、私は、日本のほんとうの平和と安全を守っていく上から、これはそういうことではいかぬと、こう思います。ただ、その場合に考えなきゃならぬのは、そういう意味において日本の平和と安全に密接に関係があるからといって、そういう理由のもとに広くあらゆる国際紛争なり戦争というものに日本がタッチしていくというような弊害を生じないように考えていくことが必要である。ただ観念的に、日本以外の戦争というものに対しては一切軍事的に中立だということが、現在の状況において私は日本の平和と安全をはかっていかなきゃならない、これは絶対至上命令だと、それを遂行する上からいうと、そう観念的に言い切ってしまうことはできないと、こう思っております。
  305. 羽生三七

    ○羽生三七君 もう一点だけ、簡単にお尋ねいたします。  そうすると、時と場合によっては、日本とかかわりのない他国の戦争に、日本が軍事的に介入することがあるかどうか。
  306. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本の平和と安全に関係ないことにわれわれが介入することは、これはございません。
  307. 西田信一

    ○西田信一君 ただいま外務大臣からお答えがございましたが、もしおわかりになるならば、このようないわゆる領土不拡張の原則に反して領土が拡張されておるとするならば、それはどの程度の広さであり、またこれによって吸収された人口はどのくらいになっておるかということも、もしお調べがございますれば、お答え願いたい。
  308. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 非常に正確なものでありますかどうか、大体日本の二・七倍くらいのものが第二次大戦後に拡大されておりますし、人口も、不明でございますけれども、大体千五百万くらいではないかというふうに思うわけであります。
  309. 西田信一

    ○西田信一君 現在ソ連が占拠しておるわが北方の領土、それは歯舞、色丹、国後、択捉等でありますが、この四つの島の施政状況が現在どういう状態にあるかということは、外務大臣おわかりでございましょうか。
  310. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 政府委員から答弁いたさせます。
  311. 重光晶

    説明員(重光晶君) ただいま御質問の北方領土の現在の施政状況でございますが、詳しいことは、最近のことは、直接の材料がございませんものですから、わからないと申し上げるほかはないのでございます。しかし、終戦直後、ソ連当局といたしましては、これらの領土をソ連の国内法上自分の領土にする法律的な措置は行なったし、それからまた、形式的にこれらの領土を含んだ選挙区を設定いたしまして選挙をしたと、そういうことだけはわかっております。
  312. 西田信一

    ○西田信一君 それだけですか。
  313. 重光晶

    説明員(重光晶君) そのようなことだけはわかっておりますが、こまかいことはまだわからないのでございますが。
  314. 西田信一

    ○西田信一君 過般の本委員会におきまする公聴会におきまして、朝日新聞の論説委員である渡辺公述人はこういうふうに言うておられます。これは安保条約に関連して、日本に対する周辺の国の、何といいますか、戦力配備等についての公述でありますが、問題になるのはソ連だと思うのですが、ソ連の場合、たとえば千島とかあるいは北樺太とか、沿海州とか、そういうところに、まあ北海道を取り巻くような形で兵力が配備されておるというふうに考えざるを得ないのですけれども、それは一体、そういう配備が現実日本との問題を予想して配備されているかどうかという点では、やはり吟味しなければならない問題がある、こういうふうに答えられておるわけであります。  そこで、防衛庁長官にお尋ねいたしますが、ただいま渡辺公述人が申されましたような趣旨において、このソ連の極東方面における陸海空軍の配備状況がおわかりならば、わかる限り、一つお答え願いたいと思います。
  315. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 極東におけるソ連軍でありますが、これは公表のものはありません。しかし、諸情報及び諸資料によって申し上げたいと思います。陸軍は三十五個師団以下でありますが、人員にして約四十五万程度に見ております。海の方、海軍では約六百隻、トン数で約五十万トン、潜水艦約百十隻を含んでおる。空軍では約四千二百機と、こういうふうに考えております。  それから、お話のような、歯舞、色丹、国後、択捉、千島等でありますが、これもソ連側の公表資料等は詳細にわたってありません。諸情報によりますと、千島には、南千島を中心にして相当の地上兵力があると認められます。歯舞、色丹諸島には、多数の国境警備隊の沿岸部隊がおる模様であります。なお、千島方面では、国境警備隊の海上監視艇が配置されている模様であります。択捉、国後、ここには数カ所の航空基地がある模様であります。
  316. 西田信一

    ○西田信一君 これは私も的確な基礎に立って申すのではありませんが、千島に一個師団、樺太に三個師団、沿海州に十個師団、ウラジオに百隻余の潜水艦が配置されておる、こういうようなことが伝えられておりますが、大体においてこういう状況でございますか。
  317. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 先ほど申し上げましたように、公表されたものではありませんので、諸情報及び諸資料によって申したのでありますが、今お話しのような情勢になっておるように思われます。
  318. 西田信一

    ○西田信一君 ただいまの答弁によりますと、南千島、つまり国後、択捉にも軍の配備がある、さらにまた歯舞、色丹等にも若干の配備がなされておる、こういうふうに見ておるとお答えを願ったと受け取れましたが、そこで、この北方領土の問題に関する国民の世論を政府ほどのように把握し、認識をされておるか、国民は相当北方領土の問題について重大な関心を持っておると思いますが、これは政府はどの程度把握をされておるか、認識をされておるかという点を、一つ外務大臣からお伺いしたい。
  319. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 国民としまして、北方領土の問題に対しては深い関心を持っておりますことは、これは当然のことでありまして、一日も早くこれが返還をされることを強く要望いたしておるのでございます。同時に、北方領土に関しましては、漁業等の関係もございます。従いまして、領土問題としてばかりでなく、経済問題としても相当、日本の漁業者の間にはこれに対して非常に深い関心のあることをわれわれは承知いたしております。
  320. 西田信一

    ○西田信一君 この千島、歯舞諸島の方から引き揚げて参った住民が組織しておるところの住民連盟であるとか、あるいはまたそれらの人々が中心になって作っておる返還懇請同盟であるとか、あるいはその他幾多の民間団体、こういうものが非常に悲痛なる叫びを上げておる。また、これらの島に関係の深い北海道におきましては、しばしば道民大会等が催されておる。あるいはまた全国の知事会議、あるいはまた全国の市長会、町村長会、あるいはまた全国国民大会、こういう名において、しばしば痛切な叫びが上げられておりまするが、これらは十分御承知になっておられますか。
  321. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいまお話のありましたように、北海道の漁業関係の方々、あるいは単に北海道ばかりではございません、北辺の漁業に関係している人たち、そういう人たちが深い関心を持っておることはむろんでございます。そういう団体におきまして、これらの問題が絶えず論議をされ、あるいは決議等がされておりますことも、承知をいたしております。なお、領土問題として、各方面でいろいろな団体がそうした決議をして、要望達成を政府に対して進言いたしておることも、われわれ承知いたしております。
  322. 西田信一

    ○西田信一君 こういう声をよく御承知であるようでありますが、中には、領土問題等について、若干の、ただいまの悲痛な関係団体あるいは全国的な要望に対しまして、違った考え方を持っておる人も、私は絶無ではないと思うのでありますが、この二月二十四日に千島、歯舞諸島居住者連盟が重大な決議を行なっておりますが、このことは外務大臣御承知でございますか。
  323. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 当日の決議そのものは存じておりません。
  324. 西田信一

    ○西田信一君 これは、ともすれば関係者は、たとえば漁業等、大部分は漁業に従事しておりましたが、漁業問題と領土問題とをとかく混同して、これを放棄するというような考え方があるのではないかというような見方も一部にございますけれども、この二月二十四日行なわれましたこれら居住者の団体の決議は、このようになっております。「一、日ソ平和条約締結の根幹は未解決となっている領土問題の正常な取り決めであり、領土に対しての見解は、不法に占拠されている北方領土択捉、国後、色丹、歯舞諸島の日本復帰を速かに実現すべきことを要望する。二、北洋漁業並に安全操業等漁業交渉の円満解決はわれわれも熱望するものであるが、飽くまでも北方領土の返還とは別個のものである。よってこれを明らかに区別することを要望する。」、こういうふうに決議をいたしております。このことは、私は日本国民としてのほんとうの気持が表われておると思うのですが、こういう点に対して、総理並びに外交の衝にあたられます外務大臣の所信を伺いたいと思います。
  325. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま御指摘のございました決議の中にございます日ソ漁業交渉、いわゆる北洋漁業の問題は、これは純経済的と申しますか、あるいは魚族保存の見地から、問題の解決をはかるべき問題でありまして、ソ連側におきましても、日本側におきましても、まず会議の前提として、調査を基礎といたしました技術的検討からやっておるわけでありまして、そうした扱いをして参ることが当然だと思います。また、近海操業の問題等につきまして、日本の北辺漁業者の生活の問題としてこれを解決していくのが当然だと思うので、領土問題とこれとを混淆いたしますことは、われわれ至当であるとは考えておりません。
  326. 西田信一

    ○西田信一君 政府も、歯舞、色丹はもちろんでありますが、国後、択捉についても、はっきり日本領土であるという確信をお持ちになっておることを私は確認いたしますが、この国後、択捉、これはいわゆる南千島でございますが、これはもう歴史が明らかにこのことを立証しておるのでありまして、先ほど共産党の岩間君が国後、択捉も放棄したのではないかというようなことを申されましたが、これは明らかに間違いである。安政元年十二月二十一日、下田の長楽寺でプチャーチン提督と幕府の重臣筒井肥前守との間に調印された日露両国間の通商条約第二条で、日本領土と明らかにきまっておるのであって、太平洋戦争の跡始末として、ソビエト政府がこれを召し上げる根拠は全くないと私は考えておりますが、これに対しまして、国後、択捉の領土権を主張するのは日本の報復手段であるというソ連の主張に対しまして、日本政府はどのような決意をもってこれが解決に当たられようとしているか、総理から一つ所信を伺いたいと思います。
  327. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国後、択捉につきましては、今西田委員の御指摘になりましたように、歴史上日本の固有の領土であるということは、ソ連におきましてもこれを認めておるのであります。また、この第二次世界大戦において、他国の領土を併合するということはしないというこの原則に立って、平和がもたらされておるという経済にかんがみましても、この国後、択捉が日本のものであり、日本に返還さるべきことは、これは私どもの当然の主張であると思います。従って、このことに対しては、従来日ソ交渉のあらゆる場面におきまして、このことを主張して参っておるのでありますが、不幸にしてソ連がわれわれの主張をいれるに至っておりません。従って、そのことが解決されない限り、領土問題を含んでの平和条約が締結されないというのが、現在の状況でございます。われわれは、しかしながら、これは正しい主張であり、従ってこれを貫徹するということは、われわれの主張を貫徹するということは、国民の強い信念であり、政府としまして、その国民の信念を実現するように、今後といえども努力していかなければならない。ソ連が非難しているように、これが復讐主義の再現だというようなことは、これは全然間違っておると私どもは確信しております。
  328. 西田信一

    ○西田信一君 先ほど外務大臣が十分認識されておりますように、あらゆる関係団体、あるいは北海道議会その他におきましてこういう領土問題に対する決議が再三にわたって行なわれております。ところが、私は寡聞にしていまだ国会においてこの領土権主張の決議等が行なわれたということを承知しておらない。これはもちろん政府お尋ねすることではないのでありますけれども、どうしてこういうような領土権主張に対する国会の決議が今日まで一度も行なわれないのか、これに対するお考えをお聞きしたいのでございます。ことに、過般ソ連の日本に対する対日覚書に対する領土権確保の決議さえも、実は行なわれない。これは政府にお聞きすることはあるいは当たらないかもしれませんが、政府はどうしてこういうような領土権の主張というものが国会において一度も決議されないとお考えになっているか、これについて総理大臣として御見解がありましたら、伺っておきたい。
  329. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん、国会でどういう決議をするかということは、国会自身が御決定になることでございまして、これをもって政府国会に要望すべきことでもなければ、またもちろん、決議があった場合において、政府がこの決議をどう思うかというような点については、従来とも意見を発表いたしておりますが……。  今までできなかった理由はどこにあるのかという点でありますが、従来の国会の運営の扱いから見まするというと、各政党各派においてその決議が満場一致採択されるような決議でなければ、これを決議案として提案しない、またそれをのめないというのが、従来の国会運営の慣行になっておるように私は承知いたしております。そういう意味におきまして、各政党間において、また各派の間におきまして、十分この決議等をすることにつきまして意見を交換して、意見が一致して、そうして決議案が出されるのでありますが、今日まで、私は、そういう議がどこからも出ておらないのか、議が出ても意見がまとまらなかったものであるか等につきましては、十分事情をつまびらかにいたしておりませんけれども、国会運営の上から、私は、こういう問題について各政党政派が、いわゆる政党政派を超越した日本国民の要望としてそういうことが取り上げられるということは望ましいことであると、こう考えます。しかし、今申しましたように、国会がおきめになることであり、また国会がおきめになるについては従来の慣例がございますから、それに従ってこういう問題は取り扱われる、かように考えております。
  330. 西田信一

    ○西田信一君 おそらくは、総理がお述べになりましたような理由で、今日までこういうことが行なわれないで参ったのであろうと私も考えます。しかし、このような国民的な悲願でございまするから、国会において国民の名において適当な意思表明をするということは、私はぜひ望ましい問題であると思いますので、これができないでおることははなはだ残念であります。  そこで、日本は今全く理由なき領土侵犯を現実に受けているわけです。これは、領土の喪失ということは、物質的損失ということだけではありません。日本の独立国としての主権の喪失をも意味することと考えるのであります。その、ただいま申し上げましたような最も大きいものは、ソ連に略奪されておるところの北辺の諸島であり、また隣邦韓国に不法占拠されておる竹島の問題があり、また、これは占領という形ではありませんが、米軍政下の沖縄の問題等もあります。特に韓国による理由なき竹島の占拠と、国後、択捉の返還要求を日本の報復手段であるというような威嚇的な態度に出ておるソ連に対しましては、私どもは日本国民としてとうてい忍びがたいところであります。政府はこの解決に、話し合いによって、平和的手段によってこれをしようというお気持はよくわかります。わかりますが、理解できますけれども、この際、このような分割状態にある日本領土の領土権の主張を、これを正々堂々と政府は全世界に向かって、いわゆるその主張を宣言すべきであると思うのでありますが、このお考えがないかどうかを岸総理からお答えをいただきたい。
  331. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 領土の問題は、歴史的に見ましても、これは各民族の非常な強い関心のある問題でございます。これが正しくその帰属がきめられないということが、過去において幾たびか戦争の原因になったことすらあるのであります。そういう意味から申しまして、われわれは戦後においてわれわれの本来の日本の固有の領土であり、またそこに住んでいるものは日本人であると考えておるところの地域が、あるいは条約によって、あるいは今なお両国の主張が違うことによって、あるいはまた、われわれからいうと不当にある力をもってこれが占拠されておるという事態につきましては、これは政府はもちろんのことでありますが、国民的なそういう関心の深い領土問題でございますから、あらゆる努力をして、われわれの本来の固有の領土が、りっぱにこれがわれわれの領土として日本の施政下に帰ってくるように努力をしなければならぬと思います。  南方の沖縄、小笠原につきましては、平和条約との関係でああいう事態ができておりますが、これにつきましても、全面的な施政権の返還について従来とも努力しておりますが、今後も努力していかなければならぬ。北方の領土につきましては、日ソ共同宣言によってある程度のソ連側の意思が表明されておる部分もありますし、全然ぺンディングになっておる問題もございますから、これらの問題は平和条約の締結ということの根底をなすわけでありますから、われわれとしては、今後におきましてもあらゆる部面においてこの回復に努力をしていかなければならぬ。また竹島の問題につきましては、これは発生後、日韓の間において両国交渉の対象になって本日に至って、解決を見ないのでありますが、これらについても解決をしていきたい。  いずれにいたしましても、この領土問題については、そういう強い民族的な関心を持っているこの悲願を達成するために、政府は努力すべきことは当然でありますが、それを、過去にありましたように、平和的の手段でなくて、これを武力をもって回復するというようなことは、これらの問題についてはとにかく私どもは避けて、平和的解決を促進していくようにしなければならぬ。しかし、それが関係両当事国の間においてのみ交渉するということに限らずして、国際的な世論、また世界の公正なる判断に訴えるというようなことの手段をとることも私は必要であると思います。これらのことにつきましては、十分諸般の事情を見ながら、また国際情勢を検討しながら、最善を尽くしていくようにいたしたいと思います。
  332. 西田信一

    ○西田信一君 大体、ただいまの御答弁で私は了承いたしますが、私は決して武力でこれを奪還せよというようなことを申すのではありません。平和的手段でやられる、場合によっては国連提訴ということもございましょう。しかしながら、私は、ただいま総理が申されましたように、全世界にこの正しい日本の主張を認識してもらうということがきわめて大切であり、たとえ国連提訴のような手段をとるにいたしましても、日本がこのような領土についての態度を堂々宣言すべきであるというふうな意味において申し上げたのでありまして、適当な手段で御考慮になるようでありますから、ぜひそういうことをお考え願いたいということを希望を申し上げておきます。  次に、農林大臣はまだお見えになりませんから、後ほど伺いますが、ソビエト政府は、二月一日に、国民経済協議会漁業顧問のミネー・パルテローフ氏が日本に向けてモスクワ放送をした。その内容は、歯舞、色丹を含む千島列島に大がかりな漁業基地を設ける、そうして極東漁業の総合開発に乗り出す、こういうことであります。そうして、さらにこれを足場として、北方のみならず南方までも手を広げる計画である。その証左でありますか、ソ連のイシコフ漁業担当相が、過般、ウラジオストックで開かれた極東漁業会議に、歯舞、色丹を特に視察に来たという事実がある。こういうことを政府はご存じでありますか。外務大臣から御答弁を願いたい。
  333. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) その点については、必ずしも詳細というわけに参らないかもしれませんけれども、ある程度承知いたしておりますので、政府委員から答弁いたさせます。
  334. 重光晶

    説明員(重光晶君) ただいま御質問の、ソ連側の極東における漁業活動の点でございますが、ソ連側が、日本がやっておりますように、沖どりと申しますか、沖の方で魚をとりたいということは、実は漁業条約を作りましたころからソ連は言っておったわけでございます。そうしてソ連側としては早くそういう船を作り、人間を養っていきたいということは、ときに触れこの四、五年間ずっと言って参りました。  それから、御指摘の、最近の会議における情報でございますが、実は私どもも、今御指摘の程度しか、情報をそれ以上キャッチしていないのでありますが、しかし、国後、択捉を特に大きな根拠地として、そこからということも入っておりましょうが、しかし、極東全体についてそういう沖どり漁業を伸ばしたい、そういうことが主眼ではなかったかと存じます。それから、歯舞、色丹につきましても、私どもの情報として承知しておる限りにおいては、御承知通り、あそこはコンブその他の漁場でございますが、最近ソ連側もコンブというものをとってどういうふうに使えるものか研究してみようと、こういうような意見が出ておると、大体そういうようなことは承知しておるわけでございます。
  335. 西田信一

    ○西田信一君 お答えですが、対日モスクワ放送は、南千島、歯舞、色丹沿岸に遠洋漁業基地を建設すると、こういうことを明らかに言っておるのです。要するに、われわれが主張しておる日本固有の領土であるところに永久性のある漁業基地を建設するということを言っておる。このことはきわめて重大な問題だと思いますし、このことは、ソ連が日本に大きな言いがかりをつけ、そうして歯舞、色丹も、それはだいぶ問題が、外国軍隊が撤退しなければ返さない、永久に占領すると言わぬばかりの態度をとっておることと、何らか関係があるというふうに思うのですが、外務大臣はどのようにお考えになりますか。
  336. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 沖とり漁業の問題につきましては、ソ連が長年そういう希望を持っており、従って、沖とり漁業をやるための根拠地の建造ということは考えておることと思います。しかし、それを歯舞、色丹に建設するということが何らか最近の日ソの間の関係から出てきたのかどうかという的確な点については、まだ材料を十分検討してみなければ申し上げられない点だと思います。しかしながら、日ソ共同宣言におきまして、歯舞、色丹というものが、すでに、平和条約を締結いたされますれば日本に返してもらうところでありますから、あそこにそう膨大な漁業基地ができることは望ましいことではないわけであります。なお、それらにつきましては、最近の事情でございますから、われわれも十分情報を収集いたしまして、それに対して的確になって参りますれば、考えて参らなければならないと思います。
  337. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 関連して。今の問題につきまして、私どもが非常に心配しておるのは、ソ連が第二回の覚書で、日本は共同宣言を守っておらないということが言われておる。これに関連して歯舞、色丹等の問題も、われわれは単にあそこに現われておるような、日本に軍が駐留している間と、こういうようなことはそのときの言い方であって、今後どういうふうに展開してくるかわからない。北海道のあの千島あたりから引き揚げた漁民は、この歯舞、色丹、国後、択捉などにおける漁業センターを作るということについては、非常な関心を持っております。さらに、これがもしそういうものができれば、三陸地方の漁業、三陸沖漁業にも影響してくるような結果が将来起きるのではないかと、こういうふうに見ておるのでありますけれども、あそこにうたわれておるような、日本が共同宣言を守っておらないと言われたことについて、私は何も痕跡がないと思いますが、何か引っかかりでもあるものか、またそれを引っかかりとして将来外交上非常なめんどうな問題をふっかけられてくるような形跡がないか、その点をお伺いしたいと思います。
  338. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知通り、日ソ共同宣言では、集団安全保障の体制からも、集団的な自衛の問題も、あるいは個別的の自衛の問題も、うたってございます。また同時に、文化、社会各般の方面についての協力をたってございます。そういう面におきましても、今日でも通商条約、通商貿易の取りきめをやって参りまして、すでに三年目の協定をいたして、しかもそれは次第に拡大の傾向にある。あるいは延べ払い等の問題も解決しておるのでありまして、われわれはそうした面において共同宣言の精神に違反していることは断じてございません。従いまして、それはソ連側がもしそういうことを考えておりますならば、それは何らかの日本に対する誤解だろうと存じております。
  339. 西田信一

    ○西田信一君 農林大臣がお見えでありますが、先ほど外務大臣からお答えを願ったわけでありますが、最近、ソ連の対日モスクワ放送で、南千島、歯舞、色丹沿岸に非常に巨大な漁業基地を設ける、こういうことが明らかになったのでありますが、これに対して農林大臣はどのように受け取っておられるか、また対策をどう考えておられるか、伺いたい。
  340. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 昨年の春、イシコフソ連漁業相が千島方面を視察したというような話を聞いております。視察の目的ははっきりいたしませんけれども、捕鯨の基地を千島方面に設けようということがあるというようなことが伝えられておる次第でございます。歯舞、色丹、国後、択捉は、わが国といたしましては、しばしば当委員会におきましても政府から表明したように、わが国の領土であるべきである、こういう主張をいたしておりますので、さようなことが、もしこの地域について行なわれるということでありますると、まことに遺憾千万と存ずる次第でございます。日ソ間の外交交渉におきましては、領土問題につきましては常々さような方針を堅持しておるわけでございますから、その方針を今後とも堅持いたしまして、北洋の漁業権をも守らなければならない、かように考えております。
  341. 西田信一

    ○西田信一君 まだ、農林大臣は十分これを的確に把握されておらないようであります。私は、これはそういうことであるならば、大へんこれは安心がいくわけでありますけれども、イシコフがこの歯舞、色丹を視察したというのは、ごく最近のことであります。そうして具体的に三つの項目をあげておりますが、一つは、千島列島にソ連の漁労船隊の港を作る、そうしてこれが魚群探知学術研究をやる。それから二番は、周辺海域の原料資源を活用して、沿岸水産経営の飛躍的拡大をはかる。第三は、南千島、歯舞、色丹沿岸に遠洋漁業基地を建設する。しかも、その放送しました方は、ミネー・パルテローフという方で、二月一日、こういうことでありますから、私は、重大な問題だと考えるのであります。  ことに、この二、三日、ソ連が、ただいま行なわれておる漁業交渉に関連して、非常な禁止区域の拡大を提唱している。しかも、これは千島沿岸にずっと沿って、しかも最近の様子では、さらにこれが禁止区域外までも延びて、青森県、岩手県の沿岸までもこれを含めておる、こういうことが伝えられております。このことは、いずれ塩見さんがお帰りになったら明らかになるでしょうが、これと、このような漁業基地を歯舞、色丹にあるいは設けるということとは、重大な関係があると考えざるを得ないのでありますが、こういう点はどのように見ておられますか。
  342. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お話のように、去る二十六日にソ連側が日ソ漁業委員会におきまして、規制区域拡大の提案をいたしております。あわせて、禁止区域を規制区域内に設けようという提案もいたしておるわけなんです。これがただいまお話のような漁業基地を千島に設けようというものと意識的に関連がある問題であるかどうか、これは私どもちょっと判断できませんが、いずれにいたしましても、それが相並行してきておるということにつきましては、私どもは重大なる関心を払わなければならぬというふうに考えておる次第です。それで漁業問題につきましては、日本側といたしましても、塩見顧問の帰国を待って根本的な対策を講じ、最善の努力をいたしたいと、かように考えておる次第であります。
  343. 千田正

    ○千田正君 関連。ただいま西田委員の質問に対してのお答えに関連いたしましてお尋ねいたしますが、禁止区域の問題につきましては、先般西村水産庁長官は当委員会の席上におきまして、絶対ソ連側の禁止区域の要請に対しては反対である。日本側としては、それに対しては応諾できない、こういうことを言明されておりましたが、農林大臣も同様のお考えであるかどうか、この一点。それから歯舞、色丹が日本の領土であるという概念のもとに立ちました場合、領海問題というものが当然それに伴ってくる。で、領海というものの考え方並びにそれに伴う、領海に付属するところの近海漁業あるいはカニ漁業等に対する問題に対して、日本側はどういう見解を今後とるか。この二つの問題について農林大臣の御所見を承りたいと思います。
  344. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 禁止区域を設けようというソ連の提案に対しましては、あくまでも反対をいたしたいと、かように考えております。また領海問題がわが国の漁業に重大なる関係があることはお話の通りでございまして、わが国のように非常に水産方面において活躍しておる国といたしましては、領海の禁止区域が狭ければ狭いほどよいという考えを持つわけであります。外務省において交渉いたしておりまするが、農林省といたしましては、さようなわが国の漁業権益を守る趣旨から、できるだけ狭い地域にこれを限定して参りたい、そのようなことをお願いいたしておる次第であります。
  345. 西田信一

    ○西田信一君 安保論争におきまして日本が仮想敵国を持つのかどうかということがしばしば論議されております。そこで、総理一つお伺いいたしますが、私は日本が仮想敵国というものを考えておらないということは、もう明確に答弁になっておって、われわれはよくこれを了承できるのでありますが、私お聞きしたいのは、逆に立場をかえまして、日本はそういう態度をとっておるが、日本を仮想敵国とする国がこの世界に存在しておるのかおらないのか、現在。このことを一つお伺いしておきたい。
  346. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 仮想敵国という言葉はいろいろな意味がございますが、私どもはいかなる意味においても仮想敵国は持っておらないということを申しております。それならば世界のうちに日本を仮想敵国と考えておる国があるかということでありますが、私は、そういう今日の状況のもとにおいて、日本自身を仮想敵国とはっきり明示しておる国は私はないと思います。ただやっておる行動等につきまして、いろいろ日本側に声明やその他の点において、日本というものに対して強く当たってきておる国もございますし、あるいは条約等において、日本というものが明書をされておる条約もありますけれども、私自身は日本を仮想敵国としていろいろ行動し、すべての政策をきめておる国があるとは実は考えておりません。
  347. 西田信一

    ○西田信一君 外務大臣にお聞きをいたしますが、中ソ同盟条約において日本名を明書しておることはこれは明らかでありますが、この条約は今総理が述べられたように、日本を仮想敵国としておるのではないというふうにお考えになっておられるかどうか、外務大臣にお聞きします。
  348. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま総理が言われましたように、条約の上でそういう言葉が使われておりますけれども、そういうことのために何か日本を特殊な相手として、そのために非常な、日本だけを目当てにしての何か武装と申しますか、ということをやっているという意味における仮想敵国という意味ではないことは総理の言われた通りであります。
  349. 西田信一

    ○西田信一君 この国会で、この委員会におきましても、他の委員会におきましてもひんぱんに安保論争が行なわれておる。私はこれを聞いておりまして、どうも本質的の論議の混乱があるように実は私は考える。政府答弁も大体において私は当を得ておるかと思いますけれども、何といいますか、私の感じですが、野党の非常に巧妙な質問戦術に巻き込まれて、何かどうも若干明確を欠くような点がありはせぬかというように思われる節があります。(「冗談言ってはいけないよ」と呼ぶ者あり)これは私の感じでございますから、どうぞ野党の諸君も気を悪くなさらずに……。そこで、今度改正しようという新安保条約でございますが、いわゆる安保条約、これは要するに安全保障ということを第一義にしておる。つまり侵略の抑制ということ、これが第一義である。そして純粋の軍事行動としての防衛ということ、これとは別個であるのだが、これがときには混同する、あるいは場合によってははき違えるような感じを与えるような場合がないでもないのじゃないか、こういうふうに思うのです。この条約はいわゆる安全保障の条約であって、いわれるところの防衛条約ではないのだ、こういうふうに私は考える。ところが、この議論におきましても、こういう新条約を結べばすぐ何か日本本土が決戦場になるとか、本土で決戦が行なわれるというような議論がときどき行なわれておる。私は極東の地域問題につきましても、この条約をいわゆる防衛条約と考えられるところに議論の混乱があるのじゃないかと思うわけです。戦争が起こらないためには何をするかといえば、自分の方から侵略をしかけないことがこれが第一である。だがそれだけでは足りないのであって、だれも侵略をしかけないように、侵略野心というものを抑制することが必要である。これがねらいである。そして万が一の侵略に対しては、これを阻止するために極力実力をもってこれを排除する、これが私はこの条約のほんとうの意義であると考えるのであります。で、これは全体を通してよく聞くとわかるのでありますが、とかく答弁の一部分をとらえますと、新条約は防衛的なものだから、侵略が現に行なわれなければこれは発動しないのだというような答弁も、中をむきますとそういう感じを国民に与えることがないとは言えないと思う。私はこれはもう非常な間違いであって、条約のねらいを離れておる、そういう部分を除いた意見というものはこういうふうに考えます。条約の効果というものは侵略戦争を未然に防止するところにある。要するに、備えあれば憂いなしといいますか、こういうところに条約のほんとうの意義があると思うのであります。で、これがその通りであるとするならば、これはもっとこのことをはっきりと国民に間違いなく知らすべきであると考えるのでありますが、総理大臣の所信をこの機会に御表明を願いたい。
  350. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 現在ありますところの安全保障条約も、今度改定して新しき形において結ぼうとしている安全保障条約も、言うまでもなく日本の平和と安全、日本が他から侵略されないという事態を確保して、そうして日本の国民が平和のうちにそれぞれ繁栄の道を求め、また、それによって日本の福祉と文化を向上せしめ、世界の文化と福祉の向上に貢献するという点にあるのでありますから、御指摘のように侵略を起こらしめない、侵略を未然に防ぐということが、これは条約の主たる第一の目的であることは言うを待ちません。で、こういう安全を保障していくためには、他から侵略をされないという状態を作り上げるためには、もし不幸にしてそういう事態が起こるならばわれわれはこれを実力を行使してそういう侵略を排除する、こういうことでございまして、そういう意味において、一部の人々が言っているように、本条約ができれば何か戦争に巻き込まれるとか、あるいは軍事的な同盟を作り上げるものだというふうな考え方では私どもはないのであります。あくまでも侵略は起こらず、日本の平和と安全がこれでもって守られるということにこの新条約の目的があることは言うを待たないのであります。
  351. 西田信一

    ○西田信一君 ただいまの御答弁で十分だと思いますが、私は、そういう意味においてむしろこの条約の効力といいますか、効果というものは、常にこれは条約が締結されると同時にこれは発動しておるんだ、まあそういうことが言い得ると思う。つまり、そういう条約が存するから侵略野心というものは抑制できる、こういうふうに私どもも実は考えております。総理答弁できわめて明瞭でありますが、さらに、この点について外務大臣と防衛庁長官からも一言伺っておきたいと思います。
  352. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいまも総理答弁されましたように、また今回の条約の交渉にあたりまして、安全保障条約という題名をとりましたのもそのゆえんでございまして、われわれとしてはこれが抑制の力として、今、西田委員の御指摘のありましたような力をもっていくというふうに考えておるわけでございます。
  353. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) お考え通りであります。今の安全保障条約は、安全保障条約を持っていることが侵略を受けないというような形で日本の安全を保っております。これが、侵略があってからこの条約が発動するんだ、これは第二義的なことで、条約そのものが戦争の抑制、安全になっている、こういうふうに考えます。
  354. 西田信一

    ○西田信一君 そういう前提に立っていると思いますが、そこで、午前中にもずいぶん花が咲いたのでありますが、いわゆる新条約にいうところの極東、これは私は、本来、地図の上にカラスロをもって細い線を引くというのではなく、本来抽象的な概念であると考えますが、午前中の御答弁で私は明らかであると思いますが、なお、念のために明確にしておきたいと思います。また同時に、政府の現在堅持されておる統一解釈というものは将来変更されるものではもちろんない、こういうように了解してよろしいか、総理大臣からお伺いをしたい。
  355. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 午前中に鈴木委員にお答えを申し上げましたように、二月二十六日に私が衆議院の安全保障条約の特別委員会におきまして答えましたところで御了承願いたいと思います。この考え方を将来とも政府は変える意思はございません。
  356. 西田信一

    ○西田信一君 条約の第二条は、これは新条約の軍事的性格を隠蔽するためにわざわざ入れたんだ、こういうような説をなす方がありますが、同条の経済条項はきわめて私は重要な意義を持っているものだと解しておりますが、政府の日米経済協力に対する考え方、構想を承知いたしたいのであります。総理大臣
  357. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 安全保障条約というような、この締約国が協力して戦争を防止し、また、不幸にしてある侵略が起こった場合においては、ともに防衛の任に当たるというような条約というものは、これは締約国のほんとうの信頼と理解の上に協力されなければできないと思うのです。しこうして、こういう両国、ことに日米両国においてそういうような提携をしていく上から申しますというと、ただ単にいわゆる軍事的な、防衛的な意味の協力関係だけじゃなしに、その基礎をなすところの政治、経済、文化等に一そうの協力が必要であることは、それを根底となすべきことは私は当然であると、そういう意味においてこれが設けられたのでありますが、さらに経済協力の面におきましては、日本の経済の戦後におけるこの回復というものは、一面において日本国民の非常な努力と、勤勉とのたまものであることは言うを待ちませんが、同時に、日米経済協力が各面において実を結んだこともいなむことができないのであります。今後日本の経済的繁栄をはかり、国民の生活水準を引き上げていくというためには、この協力関係をさらに一そう有効適切なものにすることが必要である、こういう意味において二条が設けられたのでありますが、さて、それでは具体的にどういうことを考えるかと、どういう方法によってこの協力を進めるかという問題に関しましては、その機構といいますか、仕組みというものについては、午前中にお答えを申し上げましたように、政府政府の関係においては、従来の外交チャンネルを一そう強化していく、また、今まではなかった民間のレベルにおける話し合いの機構も一つ考えようということでいろいろ計画が進められておるように思うのです。これによって日米相互の間の貿易関係はもちろんのこと、経済、技術面における提携であるとか、あるいは外資の導入面におけるところのことを一そう円滑にやっていくことはもちろん、また国際的の関係において日米が協力して当たることが必要で、低開発地域の開発であるとか、あるいはヨーロッパ共同市場に対しての日本の利益を増進するために日米が協力するというような問題に関しまして今後一そう力を入れていきたい、こう思っております。
  358. 西田信一

    ○西田信一君 この新しい条約でも、現行条約と同様に、米軍の常時駐留方式がまあとられることになっておりますが、政府が従来同様にこの米軍の常時駐留を適当と認めた理由を外務大臣から一つお答えを願いたい。
  359. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほど来西田委員の御所説にもございましたように、安全保障条約として戦争を抑止するという考え方をもって参りますと、常時に基地を貸し、あるいは駐留をしてもらうことが適当であろうかと考えております。むろん、岸・アイク共同声明以来、相当数撤退をしておるのでございますから、最小限の駐留であるということには相なると思いますが、その方式が適当だと考えておるのでございます。
  360. 西田信一

    ○西田信一君 交換公文にあげられた三つの事項の、米軍の配置の重要な変更、それから装備の重要な変更、それから戦闘作戦行動の基地としての施設区域の使用、この三点のみをこの交換公文にあげまして、事前協議の対象としたその理由を一つ明らかに願いたいと思います。
  361. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 元来、この種条約を二国間で締結いたしますときに、相互の信頼の上に立っておりまして、お互いに他の国の好まないことをやろうという考え方ではないことはむろんのことでございます。しかし、日本としては、御承知通り、第二次大戦によりまして非常な戦争の惨禍をこうむりまして、また原水爆の第一の洗礼を受けたわけでございますから、そういう立場から国民的な感触を考えて参りますと、これらの、そういうような戦争に巻き込まれやすいような場合に、事前協議によって話し合いをしていくと、また原水爆等の問題については、事前協議の対象にいたしまして、これを日本国民の意思を表わすということが適当であろうということでそれを取り上げた次第でございます。
  362. 西田信一

    ○西田信一君 私がこの条約の本質を先ほどお聞きいたしましたので、私はおそらくそういう理由によると思いますが、条約を十年としたことについて、いろいろ批判と申しますか、意見がありますが、十年の期限を設けたその理由を明らかに一つお示しを願いたい。
  363. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 申すまでもなく、この種の条約を締結いたします場合には、ある安定的な年限が必要であろうかと思います。    〔委員長退席、理事館哲二君着席〕 ただその年限をどうするかという問題につきましては、各国で結んでおります年限につきましても、それぞれ長短があるわけであります。あるいは三十年、あるいは二十年というような長期のものがございます。従いまして、われわれとしては、どの程度安定的な時期を選ぶべきかということを考えました上で十年ということにきめたわけでございます。
  364. 西田信一

    ○西田信一君 この新しい、新行政協定という言葉は適当でないかもしれませんが、これで日本人労務者はすべて今度は間接雇用に切りかえられることになっておりますけれども、それによって日本側はどういう具体的な利益を受けるのであるか、外務大臣からお答えを願いたいと思います。
  365. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知通り労働問題につきましては、駐留軍労働組合がございます。それらの方々の実情も伺いましたし、また直接雇用の場合には、日本の司法裁判に付するのでありまするけれども、その間手続上困難等もございます。そういうようなことを勘案いたしまして、今回の場合には間接雇用を原則とすることにいたしたわけでございます。
  366. 西田信一

    ○西田信一君 防衛庁長官はおられませんが、調達庁長官おりますね。安保条約は、これは外務大臣からもお答え願った方がよろしいかもしれませんが、安保条約による駐留米軍、これは陸海空を含めまして、何と申しますか、駐留軍の兵力に異動があったと思います。そこで、これは外務大臣からお答えを願いたいと思いますが、一番多くおったのはいつごろであって、その一番多いときの兵力といいますか、たとえば人員でも継続的にどのくらいおったのか、それからその当時の米軍に使われた施設区域、これは土地、建物等でありますが、一番多いときはどのくらい、面積あるいは件数等でお示しを願いたいのでありますが、これはどのくらいあったか、その時期はいつか、これは調達庁長官からお答えを願いたい。それからずっと私は駐留米軍の兵力というものは漸次減少していき、撤退をしたと思います。そこで、現在の駐留兵力はどのくらいになっておるのか、それから同時に、施設区域は現在どの程度に減少しておるか、これを数字をもってお示しを願いたい。
  367. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 詳細につきましては、調達庁長官からお説明申し上げたいと思います。やはり安保条約の発効当時あるいは占領行政が終わった当時には、今のようなお話のような事情においては一番多数の兵力、あるいは多数の施設区域を使用しておったということでございます。
  368. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 私から兵力を申し上げて、調達庁長官から施設の数を申し上げます。  兵力は終戦時におきましては約百万おりました。昭和二十七年、講和発効時には二十六万、現在は約五万、今後の見通しは、若干の削減が見通されるという程度でございます。
  369. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 駐留米軍が使用しております施設及び区域の推移でございますが、平和条約の発効の時には、件数といたしまして二千八百二十四ございました。途中、昭和三十二年の六月にいわゆる岸・アイク共同声明がございまして、今、兵力の説明がありましたが、陸軍の戦闘部隊が撤退をするという事態状況におきましては、件数が四百五十一、ただいまのところ、件数としまして二百五十、これを土地及び建物の面積で見ますというと、平和発効時には土地につきまして四億九百万坪、それが昭和三十二年の六月には二億九千百万坪となり、現在では一億百万坪に減少しております。建物はまた、平和発効時には四百十万三千坪、それが途中の時期におきまして二百八十一万六千坪、現在におきましては百六十四万坪と相なっております。
  370. 西田信一

    ○西田信一君 外務大臣にお聞きいたしますが、この新安保条約の発効によって、ただいまお述べになった現在の駐留米軍兵力、これが増強されるというようなことはないかどうか。それからまた、施設区域の使用がさらに増大するというような傾向はないのかどうか、お伺いします。
  371. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現状におきまして、駐留米軍が増加するということはございませんし、また施設区域の変更は若干ございますが、それがふえていくというようなことはございません。
  372. 西田信一

    ○西田信一君 行政協定実施以来ことしの会計年度末までに米側に支払った防衛分担金は総額幾らになっておるか、お聞きをしたいのです。  それからもう一つお聞きをしたいのは、新しい協定が実施されるのは新会計年度発足後になると思います。その場合に、現行協定に基づく分担金支払いの義務は若干新年度にも食い込んで発生するのじゃないかと考えますが、もしそういう場合にはどのように処理をされる方針でございますか、外務大臣から伺いたい。
  373. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 本年度までに払いました防衛分担金は、総計二千八百七十億でございます。もし御必要があれば年度別にまた政府委員から申し上げます。(西田信一君「けっこうです」と述ぶ)  それから今御指摘のありましたように、四月一日以降の防衛分担金につきましては、アメリカ側と協議をいたしまして、三十五年度の予算には一応まあ組まないことにいたしました。しかし、これの処置につきましては、条約発効後に協議をいたすことにいたしております。
  374. 西田信一

    ○西田信一君 総理大臣お尋ねいたしますが、この新しい条約発効後、対中共関係についてどのような御方針をお考えになっておられますか、総理から伺いたい。
  375. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん日本といたしましては、自由主義の立場を堅持して、自由主義国との提携協力関係を強化するという基本方針で進んでおりますが、しかし、決して共産主義の国々を敵視するものではございません。これとの間においても友好親善を進めていくというつもりでおります。しかし、問題は要するに、日本の国がどういう立場をとるかということだけははっきりときめて、そうしてお互いがお互いの立場を十分に理解し、尊重し、そうして侵し合わない、そうして内政に不干渉である、内政には干渉しないという原則が成り立ってから、私はほんとうの中共との関係も正常化してくると思うのであります。われわれはもちろんこの安保条約は改定をいたしますが、決して中共を敵視するものではございませんで、自由主義の立場で日米が協力するということは、これによってなお一そう明確になりますが、それを基礎として中共、ソ連等の共産国とも、いわゆる平和共存の道を見出していく方針で進めていく、こういうことに進んでいきたいと思います。
  376. 西田信一

    ○西田信一君 先ほど午前中に質問がございまして答弁がございましたから、重ねてお聞きをいたしませんが、農林大臣に日ソ漁業を今後進めるにあたっての決意を伺っておきたいのでありますが、このたびのソ連の提案というものは、これがそのまま受け取るならば、これは北洋におきましてはサケ、マス漁業はほとんど不可能に近いというように考えますし、まあ見方によりましては、この北洋というものはソ連の海である、公海というものは認められないというふうな非常に乱暴な提案のようにも考えられまして、この重大な段階を迎えて農林大臣はどういう決意を持っておられるか、決意のほどを伺いたい。
  377. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ソ連が二十六日にいたしました提案は、お話のように、まことに理不尽である、かように考えております。政府といたしましては、漁業交渉におきまする資源論争でも展開しておりまするわが方の資源の見方を基礎といたしまして、日本の正しい漁獲量の主張をどこまでも進めていきたい、こういうふうに考えている次第でございます。三十一日に塩見顧問の中間報告がありますので、それを基礎といたしまして今後どういう方針で臨むか、また日本からどういうふうな人を派遣するかというようなことを含めまして対策を立てて、そして遺憾なきを期したい、かように考えている次第であります。
  378. 西田信一

    ○西田信一君 それでは、大蔵大臣お見えになるまで一つ企画庁長官からお聞きしたい。まずは三十五年度の経済見通しをお聞きしたいのですが、三十五年度の経済見通しについては、上期は非常に順調である、ところが、下期は非常に下り坂になるだろう、こういう説が非常に強いようです。その逆の説も若干あるようでありますが、政府はどういう見通しを持っておられるか。まあ大蔵大臣にその予算編成の基礎になるところをお聞きしたいのですが、おられませんから、経済企画庁長官から。
  379. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 三十五年度の経済の見通しにつきましては、今までたびたび申し上げておることでありますが、大体上期が好景気で下期にはその反動が来るのではないかという説もあるのでありますが、しかし、これは上期に過熱があって、その反動として、下期にはその反動が来るのではないかというように考えられておったのでありますが、幸い昨年からこの景気が非常に平穏に推移いたしておりまして、この調子であれば下期に反動が来るということはなく、大体一年通じて緩慢な上昇過程をたどるというような見通しをいたしております。
  380. 西田信一

    ○西田信一君 それでは、そういう状態を保つであろうとまあ期待しまして、下期に不況になるとか、中だるみになった場合の対策ということはそうお聞きしないことにします。  次に、大蔵大臣お見えになりましたが、この経済の安定成長のためには、投資が非常に盛んでありますが、これは適正な速度で行なわれることが必要だと思います。ところが、大企業の設備投資意欲は非常に盛んである。ところが、この過剰投資のおそれもあるわけでありますが、あるいは鉄鋼であるとか、石油化学、パルプ、その他の企業面におきまして、非常な競争心の影響だと思いますが、これが非常に見受けられる。ところが、自主調整というものはなかなかうまくいっておらないという情勢でございますが、これに対しまして何か政府では進んでこのような投資の調整ということをお考えになるお気持がおありになるかどうか。これは大蔵大臣でもよろしいし、経済企画庁長官でもよろしいが、どっちでもけっこうです。
  381. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 最近の経済の拡大傾向から見まして、設備投資、あるいは在庫投資その他各面に投資意欲なかなか強い。そういうものの自主的な調整をいろいろ指導はいたしておりますものの、なかなか十分効果が上がらない、最後に一体どうなるか。これをやはり統制しないで自由な立場でやるといたしますと、金融の面から十分実情を把握するということ以外にはないということでありまして、銀行自身も、大蔵省も指導はいたしておりますものの、相互に競争いたしております。しかし、最後に一本でしぼって考えますと、中央銀行の機能というものがこういう場合に十分役立つのではないか、そういう方向で私どもも今後過当競争、不当競争、そういうことのないように十分注意して参るつもりでございます。
  382. 西田信一

    ○西田信一君 金融面から調整を行なうというお話でありますが、次にお伺いしたいのは、来年は相当の一般会計で公共事業費等も組まれております。そのほかにまた、財政投融資も六千億近くになっております。こういう予算を執行するにあたって時期的な支出の配分といいますか、これをお考えになっておるか。つまり景気の調節的な、影響を考えながらやるというようなお考えであるかどうか。この点はいかがであります。
  383. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 本来から申しますならば、この予算を過去の経験等から見まして、いわゆる上期になかなか予算が使われないというようなことがございますから、できるだけ早目にこれを実行に移すように努力することが一つであります。同時にまた、年間を通じまして、やはり一般情勢等も勘案して適正に具体化するということに努力すべきだ、かように考えております。
  384. 西田信一

    ○西田信一君 今お聞きしたこととは別に、ことしの公共事業費、ことに災害復旧費等は相当の額に上りますが、これが年度内に完全に消化できるというふうにお考えであろうと思いますが、その心配がないという根拠を一つお示しを願いたい。  それからもう一つ自治庁長官おられませんけれども、大蔵大臣からでもけっこうでありますが、地方財政にも相当の負担をかけなければなりませんが、これが両々相待って確実に年度内に消化できるという一つ確信を根拠をもってお示しを願いたい。
  385. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように、ただいままでの公共事業費、ことしは非常に多額になっております。従いまして、認証を与える点についても、できるだけ早目に準備をいたしておりますから、これは完全に消化できるようにこの上とも努力するつもりであります。地方財政との関係におきましては、国の予算を作ります場合に、にらみ合わして地方財政計画を立てておりますので、ただいまの公共事業の遂行の上においては支障がないように、かように考えております。    〔理事館哲二君退席、委員長着席〕 問題は、起債の時期等が結局問題になるだろうと思います。これなども十分そのときの金融情勢等勘案いたしまして、実行に事欠かないように努力して参るつもりであります。
  386. 西田信一

    ○西田信一君 次に、歳入見積もりの問題ですが、実はこの間公聴会で、大蔵大臣もお聞きになったと思いますけれども、慶応の高木教授は租税函数等の関係から三千八百億ぐらいの自然増収が見込まれる、同じ公述人の下村博士はもう少し下がりまして、この増加率は二〇%から二五%ぐらいであろう、こういうふうに申されたのでありますが、そこで、お聞きしたいのは、政府はこの両者、両説をどのように考えておられるか。それからもう一つは、税と国民所得との関連、これをどのようにお考えになっておられますか。大蔵大臣からお伺いをいたしたいと思います。
  387. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) なかなか税収の見積もりはむずかしいものでございます。で、高木博士、下村博士、両博士ともその道のりっぱな有識者だと、かように申されてはおりますが、ただ、今御指摘になりますように、国民総所得に対する租税函数からただ割り出しただけでありまして、これは税収見積もりといたしましてはあまりにも素朴過ぎるんじゃないかと思います。もう少し税収の見積りを立てます場合には、精査を必要といたします。各項目についての租税の実績、あるいは経済の成長度等から見まして、それぞれの業種についての見積もりを立て、その全部の総合計をしないと、なかなか見積もりが立たないように思います。その意味で、私どもは、政府が出しておりますものについては、十分な確信を持っておりますが、ただいまの下村博士と高木博士の相違は、国民所得の基礎数字も相当違っておりますし、また二五%というのが高木博士のとらえた租税函数でございますが、下村博士の方は、大体二〇%程度にとっておるのじゃないか。かようなことを考えますと、両者の開きが出てきておるのだと思います。ところで、私ども大体国民の租税負担力という点を考えますと、まず二割を越さないように努力することが望ましいんじゃないかと、かように考えております。今後の減税等考えます場合には、負担を二割以上にしないように努力して参るつもりでございます。
  388. 西田信一

    ○西田信一君 三十四年度はここで二回補正が行なわれております。この補正後の予算で、三十四年度に生ずるであろう剰余金といいますか、繰越金、これはどのぐらいとお考えになっておるか。それから、租税の年度内実収予想ですね、これもお立てになっておると思いますが、どのくらいとお考えになっておりますか。
  389. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 三十四年度の一般会計、租税及び印紙収入のこの実績が一体幾らになるかという見積もりをただいままだ申し上げる段階でないように思います。しかし、これまでの実績から申しまして、第三次補正後の予算総額が一兆千七百八十五億になっておりますが、この予算額に対しまして、二月末までの収入実績が九三・一%ということになっております。これを前年同期の対予算収入割合の九〇・七%というものと比べてみますと、今回は二・四%以上上回っておる。ただいままでのところは、きわめて順調な税収を見ております。かようでございますので、私どもはある程度の自然増収を生ずるものではないかと、かように考えておる次第であります。
  390. 西田信一

    ○西田信一君 剰余金の見通しは立ちませんか。それから、ついでに次の問題もお聞きしますが、先ほど経済企画庁長官はお答えになりまして、上期は順調だが、下期はどうかという質問に対して、大体においてそう心配がない、下期も大体順調な、やや緩慢であるが、順調な上昇線をたどるであろうという御答弁がございました。そこで、大蔵大臣にお聞きしたいのでありますが、このような経済企画庁長官のようなお見通しを大蔵大臣かりにおとりになるといたしまするならば、これは相当の予算上の増収が、先ほどお答えがございましたけれども、ことしは見込まれるのじゃないかというふうに考えるわけであります。そこで、減税の問題は、ことしは見送られましたが、もし、こういう状態であるとするならば、国庫収支が揚超になって、金融が逼迫するというような結果にもなると思いますし、そういう状態であった場合には、年度内にも減税ということをお考えになる、踏み切るという気持があるかどうか。
  391. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 三十六年度は減税をするかという……。
  392. 西田信一

    ○西田信一君 三十五年度内に……。
  393. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 三十五年度内に減税するかということでございますが、ただいま三十五年度の予算では減税を一応見送るということで参っております。今後の情勢を十分見なければならないことでございますから、減税につきましては、国民各界、各層あげての強い要望だと思いますので、私どももその要望をかなえるように、あらゆる機会に努力すべきだと、かように実は考えております。
  394. 西田信一

    ○西田信一君 今のお答えはそうすると、三十五年度の後半においても経済界が好調であり、その余裕を生ずるならば年度内にも考える、こういう御答弁のように受け取るのでありますが、そのように受け取っていいかどうか。
  395. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私どもの心がまえをただいま申し上げたのでございまして、ただ三十五年度内に減税措置がとれるかということになりますと、しかし、なかなか見通しは困難ではないか、かように考えます。
  396. 西田信一

    ○西田信一君 それでは伺いますが、三十六年度は確実にやるという一つお約束をされますか、そのことを伺います。
  397. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まだお約束するわけには参らないと思います。もちろん三十六年度の歳入歳出の計画をただいま立てておる状態でございますので、しかし、私どもは先ほど来申し上げておりますように、三十六年度は何とかして要望に沿いたい、かような意味で十分検討して参るつもりでございます。
  398. 西田信一

    ○西田信一君 国民所得に対する租税負担率の割合、これは先ほど二〇%くらいに押えたいというお話でございますが、ことしはいろいろな特殊事情で去年よりも、去年は一九%、ことしは二〇・五%と上昇、こういうことでございますが、そこで、税制調査会でも二〇%以下に押えるようにという中間結論を出されたようでございます。  そこで、私は経済企画庁長官にもお聞きしたいのですが、新長期経済計画では三十七年度が最終年度でございますが、この年度は一八%という計画を立てておるわけです。そうすると、何とこれは明らかに一つの下降線を描いておる。それは一時的であるかもしれないが、ことしは上昇線を描いておるということであるが、この新長期経済計画の一八%というものとの関連はどういうようにお考えになるか。これは修正されるということであるかどうか。大蔵大臣と経済企画庁長官から一つお聞きしたい。
  399. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 今後、所得倍増計画を立てて参ります場合に、いわゆるその裏づけとなります財政計画をやはり樹立しなければならないのでございます。そういう場合に、ただいまのような国民負担軽減という方向で十分考慮して参りたいと思います。ただいま御指摘になりました数字は、いわゆる今日まで遂行中の計画だと思います。これが実現できれば大へんけっこうだと思いますが、政府は新しくいわゆる所得倍増計画というものをせっかく立案中でございますから、その場合の財政計画と一つあわせてみていただきたい、かように考えます。
  400. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) ただいま大蔵大臣からお答えになったことと同じ意見でございまして、今現在の新長期経済計画では軽減の線をたどるというような一応計算をしたのでございますが、今後は国民所得倍増の長期経済計画とにらみ合わせて国民の税負担の問題を考慮して参りたい、こう考えておる次第でございます。
  401. 西田信一

    ○西田信一君 次は、貿易、為替の自由化に伴う対策についてお聞きするのですが、問題点が数点ございますが、時間の関係もございますから、一度に申し上げますからお答え願います。  この貿易、為替の自由化ということは、これは大勢であり、また当然だと思いますが、一面にはこの政府が独走であるとか、あるいはみだりに自由化するというような批判も生まれないわけでもない。そこで聞くのですが、私はぜひ重要な問題として関税制度の問題を再検討するということが必要であると、こういうように実は考えるわけです。そこで、具体的にお聞きいたしますが、関税品目の区分が非常に荒過ぎる。これをもう少し細分化する必要があると思いますが、これはどうですか。それから次には、従価税率が大部分でありますが、従量税率をもっと取り入れる考えはないか。それからもう一つは、日本は工業国で、工業国としては比較的低過ぎる傾向があります。これは外国の主要な工業国と比べてどういうふうになっているかということを聞きたい。この基本税率は、日本は一五%から二五%になっておると思いますが、さらに、これはガットの譲許税率を認められておるから、なお実効税率は低い、これはどういうことであるか、これを合理化した場合においてガットとの関係はどうなるか、どの程度の引き上げが許されるかということ。それから、外国の製品がこれはどんどん入ってくるということが考えられますが、その場合に国内産業に非常な影響を与える、こういうようなことが起きた場合には、現行法でもいろいろあります。報復関税とか、相殺関税とか、不当廉売関税とかというものがあります。これは実際には使われておらない。こういうふうなものがもし現実に起きた場合におきましては、これは自衛措置として関税割当制度、つまり数量制限であるとか、一定数量以上のものに高税率をかけるとか、こういうことを考慮すべきではないかと思いますが、これに対するお考えはどうか。それから関税制度を改正するとすれば、政府はいつごろからを目標に、また、どういうような基本方針でこれをまとめるつもりか、こういう点について大蔵大臣から、まとめてお答えを願いたいと思います。
  402. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま御指摘のように、貿易の自由化に備えまして、新しく関税品目の整備をするつもりでございます。その際は、同時に関税率も再検討する、全面的に。そうして大蔵省にあります関税率委員会、これを通じまして準備を取り運ぶつもりでおります。それで、関税品目はブラッセル方式をとりまして、今度はうんと品目の数をふやすつもりであります。それからお尋ねのありました、その場合に関税率の再検討もいたしますが、従量税を大幅に取り上げろということでございますが、これは簡単にどうするとはなかなか言いにくいことでございますので、十分、品物につきまして従価、従量、その二つの制度を勘案して、しかる上に適正なものにして参るつもりでございます。また、工業国としては大体低いではないかというお話でありますが、これは低いとか、高いとか申しましても、いろいろな比較の方法があるようであります。私ども必ずしもただいまの状況が、総体、そう高いとは言えないけれども、全部がいわゆる低い、こういうわけにも考えにくいものもございます。しかし、いずれにいたしましても、これから国内の産業の面で保護を要するもの、たとえば農業関係、あるいは今後育成して参りたいというようなものについての関税率は、やはり保護的な高率のものにしたいと思います。わが産業を積極的に助けるという意味の原材料の輸入等につきましては、関税は無税あるいは非常に軽いものにするというような考え方で処理して参るつもりでおります。また、特別関税を設けました場合に、ガットとの関係で再交渉を要する品目、二百七十数品目でございますが、その品目に該当する場合なら、相手国と再交渉して、それをきめて参るつもりであります。また、今日の関税にありますように、一定の関税率は設けてありますが、不当なダンピングその他の場合には、関税を適当に上げ得るような委任の権限もいただいておるようでございます。過去においてはそういうことをやったことはございませんが、今後の自由化に備えましては、そういう点も将来の問題として、やはり政府にある程度まかしていただくようにお願いしたいものだと、かように思っております。いずれにいたしましても、関税委員会において、今後、再検討をできるだけ早目にいたしますので、次の国会にはもちろん提案いたしまして、御審議をいただくという段取りに運びたいと思います。
  403. 西田信一

    ○西田信一君 次に、同じく貿易自由化に関してですが、企業の体質改善をやるために必要な措置として私は二つある。一つは税制上の考慮を払う、もう一つは金融政策の問題です。これはこの間の公聴会でも、下村さんもあるいは豊田公述人も、日本の公定歩合は高すぎる、コール金利も非常に高すぎるということでございました。これに対する大蔵大臣のお考えをお聞きしたい。それからもう一つは、自己資本の蓄積をはかるためには、現在は自己資本が企業の三〇%しかない。これは少なくとも一〇%ぐらい引き上げる必要があるということは、これは財界の一般の世論でありますが、それにはどうしても税制上の措置が必要であると思います。この二点について、これは抜本的な一つ対策を必要とすると思いますが、大蔵大臣はどのような方針をお考えでございますか。
  404. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 今、企業の体質改善ということを、一昨年来申して、順次その方向で整備いたしております。ところで問題になりますのは、自己資本の強化をはかるということ、これがやはり税制に関係のあること、これは御指摘の通りであります。ただいま税制審議会におきまして、いろいろ審議いたしております企業課税のあり方というような点から、ただいまの点も十分検討して参るつもりでありますが、まだ結論は出ておりません。  もう一つは、ただいま御指摘のありました、わが国の金利が高いじゃないか。貿易の自由化をはかった暁において、こういう高金利では困るのではないか、こういう問題であります。金利は、申すまでもないことですが、一日にして金利ができたわけではありません。そこで政府といたしましては、国際金利にさや寄せするという基本的方針は確立しておりますが、金融の実情等から見まして、ときに公定歩合なども引き上げざるを得ない、こういう事態が起こります。そういう事態に対処するためには、わが国自身の国内の金利を安くすることに努力をいたしますが、同時にまた、わが国産業に対して有益な働きをする意味の外資の導入を積極的に歓迎して、この量をふやしていく、こういうことも一つの方法ではないかと思います。そこで政府といたしましては、あらゆる機会に外資が円滑な状況で入ってくることを歓迎いたしておりますので、あらゆる機会にそういう呼びかけをいたしている次第でありまして、国際機関である世銀を通じて、あるいは世銀のあっせんによる外国銀行の協力とか、あるいはまた国内産業自身が外国銀行と特別な関係をもって、そうして資金的援助を受ける、こういう方法を実は奨励しているわけであります。いずれにしても、金利をもっと下げる、これはいろいろの努力をしていかなければならぬことだと思います。
  405. 西田信一

    ○西田信一君 次に、同じ立場に立って、農業の体質改善が当然考えられなければならぬ。そこで、これは中間的でありますけれども、農林漁業基本問題調査会では、試案として、農家経営規模の拡大ということを考えているようであります。これは農地法の改正を伴うものでありますが、農業の機械化と経営規模が零細化しているこの矛盾は、どうしても解決しなければならぬと私は考える。そこで、一面、所得倍増計画の立場から、農林大臣は、過般、将来農業の生産性の向上——これはいろいろ方法がありますが、これと農業人口の縮減と申しますか、縮小、こういうことによって所得倍増計画に乗せていきたい、こういうふうなお話がありましたが、この農家経営規模の拡大ということと、農林大臣のお考えととは、ある意味において私は一致する点があると思うのでありますが、これに対する農林大臣の方針といいますか、お考え一つ伺っておきたい。
  406. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お話しの通り、農家の所得を大いに向上するというためには、一面において、生産、流通、加工、各段階を通じましての意味の生産性の向上ということをはからなければならぬと思うのです。もちろんその場合には、酪農でありますとか、あるいは果樹でありますとか、そういう将来性のある産業の開拓ということにも気を使わなければならぬ、こういうふうに考えます。同時に、それだけでは解決いたしませんで、これは日本経済の発展をはかり、その中に今の農業人口というものが吸収されていくための秩序ある政策を必要とする、かように考えている次第でございます。この二つの政策が実現いたしますれば、私は農業も他の産業と同じ比率をもちまして所得を向上し得る、かように確信をいたしている次第でございます。
  407. 西田信一

    ○西田信一君 厚生大臣にお聞きいたしますが、厚生省と日本医師会とは、何といいますか、非常にあなたの御努力によって雪解けを迎えられたといっておったのに、最近また、何か爆弾的な武見覚え書というようなことによって、険悪な空気になっているというようなことが伝えられておりますが、これはどういう内容のものか、簡単でけっこうですから。そこで、政府は医療行政を進めていく上には、何といっても医療を受ける国民大衆の気持というか、意向、これと医療担当者、お医者さん側と同じ比重で協力を得られるということでなければならぬと思うのですが、一つ厚生大臣から、この医療行政に対する根本的な御所信を伺いたい。  それからもう一点は、社会保障制度が非常に、これは岸内閣が誕生以来進んで参りました。しかし総体的な社会保障制度の体系としては、まだ整っていないと思うのです。そこで、政府のこれからの使命は、国費、公費が二重に講じられるということをなるべく避けて、そうして政策面の総合調整をはかるということが必要だと思います。これからの社会保障は救貧政策から防貧政策ということでなければならぬと思いますが、どういう方針によって社会保障制度の総合調整を行なうとするのか、また防貧政策をどのように進めていく考えか、この二点について厚生大臣からお答え願います。
  408. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 日本医師会と厚生省との関係についてでございますが、私どもは今抽象的に、日本医師会からの医療制度全般の問題についての意見の開陳が今参っておりますが、私どももこれにつきましていろいろ検討し、所信を述べまして、事の円滑化を期そうとしているような次第でございます。医療行政についての今後の厚生省の根本方針、こういうことになりますと、まず近く発足いたそうとしております医療制度調査会におきまして、その基本概念というものを、私はそこにおきまして答申を求め、あるいはまた半身不随になっている、昨年の七月九日から休んでおりますところの中央医療協議会等の発足も引き続きやりたい、かように考えている次第であります。社会保障制度、この全般の問題につきましては、いろいろ均衡がとれていないのじゃないか、私どもは昨年、総理大臣から、社会保障制度調査会におきまして、この総合調整の問題の基本方針についての諮問を求めておりますが、その結果によりましてこの点を解決をいたしたいと、かように考えております。
  409. 西田信一

    ○西田信一君 いろいろ百万都市の建設とか、その他にも質問がありましたが、これは時間の関係上割愛いたしまして、最後に一点お聞きしたいのは、冬季オリンピックを日本に呼ぶことについて、政府はどういうふうなお考えであるか。一九四〇年に御承知のように夏のオリンピック、冬のオリンピックが日本に決定しましたが、戦争によってこれは放棄せざるを得なくなった。そうして終戦になりまして、一九六四年の冬季オリンピックが決定したわけであります。私は、この前の本委員会におきましても、当時の松永文部大臣に、冬季のオリンピックについてお聞きをしましたところが、これは大いに、東京大会同様にこれに対して努力をしたいという御答弁がございました。しかし、これは東京大会を成功させるために、二兎を追わなかったということは賢明であったと思いますが、そこで、その東京大会のさらに四年後の冬季オリンピック大会、一九六八年の大会は、これは日本体育協会でも、公式ではないが誘致する方針をきめて、過般アメリカにおきましても、日本の選手団がこれを発表し、津島会長も参られたようでありますが、また前回決定をした札幌市長もこれを誘致する意思を述べているようであります。そうしてまた、国際オリンピック会長のブランデージ氏も、これは日本に十分開催の能力がある、第十回冬季大会はりっぱに、スクォーバレーのアメリカの大会よりもりっぱに行なわれるであろうということを述べておりますところから、八年先のことでありますが、その当時には、日本もこの長期経済計画等の成功によってさらに日本の国力も充実するであろうし、この前は戦争で放棄したわけでありますが、今度は平和を守るために、こういう大会を招致することについてその時期が熟しているように思いますが、文部大臣はどういうお考えであるか、さらに総理大臣からも所信を伺っておきたいと思います。
  410. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 一九六八年、この東京大会のオリンピックの次のオリンピックの冬季大会を日本で開催すべきではないかというお話でございますが、なるほどその話は最近になって私どもの耳にも入るのでありまするが、また、日本の冬季のスポーツはきわめて近年活況を帯びてきておるというような事情、さらにまたお話のように昭和十五年でありましたか、札幌においてオリンピック冬季大会が開かれるということの決定を見ながら、その実現を見ることができなかったというようないきさつもあります。従って近い将来においてこのオリンピックの冬季大会を日本に持ってきたいというお話は、多くの人々が期待しておるだろうと思うのであります。しかし、何分にも先のことでありますから、今日いよいよこれを招致するということになりますると、第一その開催地の候補都市というようなことも、まだこれからのことでありまするし、また施設やそれに要する経費、そういったようなこともいろいろ考慮しなければならぬ、これらのことが関係団体において自然に話が熟し、計画が立ち、そうして一般の国民の支持も盛り上がってくるというようなことでありまするならば、そのときには政府としても協力したい、かように考えております。
  411. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今、文部大臣がお答え申し上げましたように、趣旨としては私は賛成でありますが、何分まだ先のことでありまするし、関係団体その他の何も十分協議の上で決定したいと思います。
  412. 小林英三

  413. 相馬助治

    相馬助治君 去る三月二十五日の衆議院の安保特別委員会において、極東の範囲について政府答弁がきわめて適切を欠き、かつ不誠実であるというので、野党委員の退場となって審議ストップの状況となっておりますが、これでは安保問題に対して注視している国民の疑惑は解けずに、審議が進むことを期待している国民に対して、これはまことに困ったことであるというふうにも一応考えられる、首相はこのことについてどのように現在お考えですか。
  414. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 安全保障条約の審議は国民の関心がきわめて大なるものでありまするから、特別委員会が設けられて、それによって審議を進め、十分審議を尽くして国民の理解と納得を深めていくように政府としては努力する、また努力しつつあるのであります。この前の衆議院の安保特別委員会におきまして、審議が一時停滞をいたしたような状態にあることは非常に遺憾でございます。十分、委員長理事その他関係の方面におきまして、この審議が継続されるように私は期待いたしております。
  415. 相馬助治

    相馬助治君 委員長に期待するということより、問題はきわめて簡単であって、極東の解釈について再三にわたって答弁の変更を見ておる。本日も同僚の鈴木委員の質問に対して依然として明快な御答弁がなされておらないのであって、この統一した見解が明瞭に示されない限りにおいては、この問題は依然として解決しないように思うのでありまするが、本日答弁されておりまする二月二十六日の愛知質問に対する答弁通りであると、かようなことでありますか。
  416. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほどもお答え申し上げました通り、その通りでございます。
  417. 相馬助治

    相馬助治君 かつて金門、馬祖は含まれておると申しております。次の段階において、前に述べた趣旨の通りであるとして愛知質問に対して答えておるのだと、こう申しております。そうすると論理上、また言葉の行きがかり上金門、馬祖は含まれていると、かように了解されるわけでございますか。
  418. 岸信介

    国務大臣岸信介君) しばしばお答え申し上げておりますように、極東という観念は一つの抽象的な観念であって、どの島が入るとか、どの区域が入らないとかいうふうに、この地理的な限界を明瞭に示すことは、これはそもそも極東の観念ということからいって適当でない、かように考えまして、政府としてこの極東の範囲について地図を明瞭に示せという御要求に対しましても、そういう趣旨でお答えを申し上げてきたのでございます。しかし、過去におきまして、午前中にも御質問がありましたように、島等について申し上げたことを、それでは変更する趣旨かということに対しましては、私どもはそれを従来お答えしていることを根本的に変えるというふうな考え方を持っておりませんけれども、なおこの上具体的の島等について意見を申し述べることは差し控えたいということを申し上げたわけでございます。
  419. 相馬助治

    相馬助治君 岸首相が最初からそういう御答弁に終始しておりますれば、意見の相違はあるとしても、そのこと自体は国民に納得されるものだと思うのです。いわゆる条約上で言う地域などというものは何丁目何番地というわけにはいかないのだ、こういうことで了解されるのでありますが、残念なことに岸さんは、そつのないといわれる岸さんが今日に至ると大そつであったということを賢明にお気づきであろうと思うが、べらべらと島の名前を上げてしまった。ところが、あとで党内の事情その他の問題で、これは言わない方がいいと、こういうふうにお気づきになって、今日は言うことが適当でない、こう言っておる。それで、言うことが適当でないのであって、前に言ったことは間違いだというならば、これは意見の相違はあろうとも、そのことで野党側も納得するけれども、今日何か言い含めるようにするけれども、了解されないというのが現在の状況です。金門、馬祖は含まれておるか、いないかと、こういうことを私は端的に聞きたいのですが、それは午前中鈴木委員があれほど熱心にやってもおっしゃらないですから、私の質問にもこれはお答えにならないでしょう。おろかなことをすることは私もやめます。ところが、午前中あなたは明瞭に裏からこれに対して答えられてしまっている。すなわち関連質問に立った辻委員の質問に対して、金門、馬祖に紛争が起きた場合に米軍が日本の基地から出動する場合に、あなたは協議を受けた場合に拒否するか、こういうことに対して拒否すると、かようにお答えになったのですが、しかとさようでございますか。
  420. 岸信介

    国務大臣岸信介君) どこに出動するかということは、出動を認めるかと、いうことは、しばしばお答え申し上げましたように、日本の平和と安全、これに直接密接な地域にだけ出て行って、そうしてそこの平和と安全を守るということが日本の安全と平和を守るゆえんでありますから、そういう範囲に限定して考えておるということを申したわけであります。そうして金門、馬祖についてのお話がございましたのに対しまして、それはそのときの事態考えなければならぬけれども、先年起きましたような事態につきましては、われわれは日本の平和と安全に直接関係するものとは考えないがゆえにこれは拒否する、こういうことを申し上げたわけでございます。
  421. 相馬助治

    相馬助治君 確かにそういうふうに申したので、無条件で出かけることを拒否するとは申さずに、あのような場合に拒否すると申したのです。あのような場合、すなわちこの前の金門、馬祖の紛争を首相はどういうふうにお考えになっているか。すなわち具体的に言うと、第七艦隊が金門、馬祖の付近に出動したことは、これは明瞭です、その場合に日本の軍事基地から一兵も出動はしなかったとお考えでございますか。一機も出動しなかったとお考えでございますか。それともそういうことは知らぬと申すのですか。
  422. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私が承知しております限りにおきまして、日本の基地から米軍が出動したということはないと考えております。
  423. 相馬助治

    相馬助治君 それが非常に間違いなので、金門、馬祖にまっすぐに飛行機が飛んで行った事実はないが、F86が一たん沖縄に集結し、あるものは一たん台湾に集結して出動した事実があるのですが、それを首相はお知りになっていないのですか。それともまたさようなる事実はないと、ここではっきりと具体的な実例をあげて、信憑すべき具体的な何者かの言明をかりて答弁することができますか。
  424. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私が承知しておる限りにおきまして、日本の施設及び区域を使用して、あの場合において日本から飛行機その他の軍隊が、アメリカ軍隊が出動したということはないと、かように考えております。
  425. 相馬助治

    相馬助治君 戦争というものはだからこわいのであって、内閣総理大臣がアイクとどのような了解点に達しようが、現実に起きる紛争については内閣総理大臣の知らないところで飛行機が飛び立って行って、そうしてそれが敵側に日本の基地攻撃の口実を与えるということが十分今後も予想せられるわけです。すなわち板付から明瞭に爆撃機が沖縄及び台湾を経由して出動している事実がある。そうしてこのF86が相手に対して威嚇的な攻撃力をもってかなりの効果も上がっているという事実が、すでに、軍事評論家でなくて、まじめに政治を研究している七、八割の国会議員すらこれは了承しているところなんです。軍事的なことについてはとんとしろうとである私自身がこういうことを知っておる。で問題は、この次問題が起きたときに予想せられますことは、板付の飛行場にあるエンベア戦闘機というのが今日米軍が持つ最優秀の戦闘機ですから、これを出動して金門、馬祖に対して対応するということが予想されまするが、首相はこういう問題については在日米軍の兵力の況状及び予想をせられる紛争における米軍の出動の可否、そうしてその場合における事前協議についての予想、こういうふうなものをどのように把握されておりまするか。
  426. 岸信介

    国務大臣岸信介君) まず前提の、この前の事態におきまして、私は米軍が金門、馬祖に直接戦闘、作戦行動に出たとは私は承知いたしておりません。そういう事実はないと私は思います。一部の補給が行なわれたのも、これも領海外で補給がされたというふうに当時のなには報道しております。従って日本に基地を持っておるものが、この基地施設を使用して、そうして金門、馬祖に出かけて行ったという事実は、たとえ他のところを経由いたしましてもそういう事実はなかったと私は確信をいたしております。しかし、この次の問題であります今後その問題といたしまして、米軍が日本の施設やあるいはこの基地、いわゆる基地を利用して、もととしてそうして作戦行動に出ます場合におきましては、今度の条約及び附属交換公文におきましてはっきりと事前協議の対象とせられております。事前協議というものは、しばしばお答えを申し上げているように、日本はその場合にイエスという場合とノーという場合がある。ノーと言った場合において、これに反した行動をアメリカはとらないというふうにはっきりと両国の意思が一致いたしております。そうして、それではどういう場合にこれは認めるかということにつきましては、いろいろな国際連合上の制約やその他のことはもちろんありますが、日本の平和と安全ということから考えてみまするというと、これに直接密接な関係を持っている地域に対して米軍が出動いたしまして、そうして平和と安全を守る、日本の平和と安全がこれによって確保されるという場合に限定して考えるべきものである、かように考えております。
  427. 辻政信

    ○辻政信君 ちょっと関連して。私は一昨年金門、馬祖の事件が起きたときにちようど香港におりましたので、香港から沖繩に寄って日本に帰ったのであります。そのときに沖縄飛行場で半日おりまして、日本の本土の方面から戦闘機が群をなして南の方に移動するのを現地で私は見ているのでありますが、岸総理は、一昨年は日本から一機もその方面に移動しなかったとおっしゃるのか、それを知らぬとおっしゃるのか、ないとおっしゃるのか、念を押しておきます。
  428. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私の先ほど申し上げましたのは、金門、馬祖に対して米軍が日本の基地を使用して作戦行動をした事実はないということを申し上げました。その通りでございます。ただ、日本に基地を持っている米軍の航空隊の一部が南に移動したというものがあるということは聞いております。
  429. 相馬助治

    相馬助治君 関連質問でも聞かれたのですが、この前の金門、馬祖の紛争において特に板付の航空機がほとんどここを留守にして南方に移動し、そうしてこれが台湾にある第七艦隊の指揮下に入ったという事実を私どもは——私自身は確認して以上の質問をいたしているわけなんですが、こういうことはあくまでないということですか、それとも、自分は知らぬからあとで調べて答えるということですか。もう一回一つ御返事が願いたい。
  430. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん私は、私の知っている限りにおいて責任を持ってお答えを申し上げているわけであります。私の報告を受けているところにおきましては、そういう事実はないということを聞いておりますので、明確にそういう意味においてお答えを申し上げているのであります。
  431. 相馬助治

    相馬助治君 そこですね、私は戦争というものはだから非常に問題であり、事前協議というものも重大、であると、こういうふうに考えるわけです。突如として起きる戦争に一体事前協議というものがどういう形で行なわれるか、この前の金門、馬祖の紛争のときには今度の安保条約はありません。ですから、米軍としても相談する必要もなかったし、日本政府としてもこれに対して積極的に関与する必要がなかった。ところが今度は、こういう条約ができたから、かりにここで批准されればこれはできた、そういうことになった場合に、すなわちこの前のような金門、馬祖のような問題がこの土地に起きたときには、当然アメリカ軍は事前協議をするものと岸首相は了解しますか。事前協議があった場合に、さしあたり返答に対しては期限が付されるというふうにお考えですか、またこれに対してどのような期間でどのような答えをするということが予想されますか。
  432. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 交換公文で明瞭なように、今後どこの地域に対しましても日本の施設や基地を根拠として作戦行動をする場合におきましては、ことごとく事前協議をしなければならぬことになっております。いかなる場合におきましても事前協議の対象にされるわけであります。しかしてその事前協議をする場合におきまして日本としては日本立場から自主的にこれに対して協議に応ずる場合もありましょうし、拒否する場合もある、その標準は、先ほど申し上げましたことは大きな標準としてわれわれは考えていく、こういう考えでおります。
  433. 相馬助治

    相馬助治君 そこで具体的な問題で、金門、馬祖に紛争のきざしがある、そこで内地の空軍基地から大量の米空軍が南方某方面に向かって出動の態勢にある、その一部はすでに出動した、しかし、現実には金門、馬祖でいまだ紛争はない、こういう事態日本側が察知した場合には事前協議の意思を明瞭に相手に言うて、そのように紛争に対応して在日空軍基地から在日米軍を動かすことがむしろ事態の、紛争を増加させるからやめてくれ、こういう積極的な、こういうときにはとめるだけの岸首相には勇気とまたそれに対処する気持がございますか。
  434. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 第四条におきまして極東の平和と安全に脅威を与えるような事態があるという場合におきましては、一方の国の要求によって協議する、一般的な協議をすることになっております。今お話のような、作戦行動ではないけれども、極東の地域に一つの国際的平和と安全に関する脅威であるという場合におきましては、この四条に基づいて協議をすることになっておりまして、事態を十分に分析し、またその場合において日本意見等も述べ、向こうの意見も聞くということになると思います。そして日本におけるところの米軍が他に移動するという場合におきましては、実はこの事前協議の対象とはなっておりません。この日本自体を根拠として、そして作戦行動をする場合に限っておりますから、日本にいる米軍が他に移駐する、他に移動するという場合におきましては、これは事前協議にはなりません。しかし今、相馬委員が御質問になっているような、そのこと自体が極東の平和と安全にある種の脅威を与えるものであるというようなことであるならば、両方で協議をいたしまして、日本側の意見も十分に尽くすという機会はあるわけでございます。
  435. 相馬助治

    相馬助治君 辻委員の質問に対しては、あのような場合という前提は付したけれども、米軍のそういう行動を拒否すると明瞭におっしゃいましたが、今またそういうふうに予測されるような状態においても十分に、そのこと自体が紛争を増すという危険があるとするならば積極的にとめるということをおっしゃったわけです。これは岸首相としては非常に明快な態度であって、そういうことをおっしゃったこと自体に対して敬意を表します。そこで承りたいのですが、あなたの今のような答弁を米軍は満足するとお考えですか。
  436. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 事前協議の問題に関しましては、はっきりとこの交渉の過程におきましても、事前協議という性格上日本がこれを拒否した場合において日本の意思に反した行動はとらぬ、これは言っておるのでありまして、アメリカ側におきまして十分に私はこの事前協議の場合の拒否というものは尊重されることを信じて疑いません。ただ、一般のこの極東の平和と安全に関する協議があった場合における意見交換におきましては、これは事前協議という今言ったような明確な条件が付してありませんからいろいろの点があると思います。しかしながら、この条約自体が両国のほんとうの信頼と、そうして協力の上にでき上がっておるということなんでありますから、われわれは一方の意思を無視して、いろいろな行動をするということは、条約自身の基礎的な気持からいいますというと、私どもはそういうことはない、またないようにしていくことがこの条約の真の日米の信頼と理解の上の協力と、こういうふうに考えております。
  437. 相馬助治

    相馬助治君 岸首相は、仮想敵国はないと、こういうふうにおっしゃっておりますが、確かにそうでしょうか。ただ歴史的な今までの経過を見ると、岸・アイクの共同声明が、今般の新安保条約の根拠になったわけです。これは外相の提案趣旨にも明瞭です。その共同声明には何と書いてあるか、現在日本もアメリカも国際共産主義の脅威にさらされておる、何とかしなければならないと、こう言っておる。何とかしたのが今度の新安保条約です。そこで共産主義陣営と別の方の陣営との一番問題の起きそうなところが金門、馬祖です。そこでこの金門、馬祖の問題については、どういうことがあっても米軍出動に対しては承知しない、拒否すると、こういうことを言うたとしたならば、米軍は、米政府は非常に私は不満じゃないかと、こう思うのですが、これについてはあくまで自信がおありでございますか。
  438. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほどもお答え申し上げましたように、問題はこの前のような事態のもとにおいては、私はこれを拒否するということを申し上げたわけであります。どういう地域にどういうふうに出ていくかということは、一つ地域だけからこれは論ずるわけにはいかないのであります。その事態を十分に認識して、先ほど申し上げましたように、日本の平和と安全に直接に密接な関係を持っておるという事態に対して、米軍の出動を求めるということでございまして、その点については、私ども本条約の精神において根本的にアメリカ側と意見の相違はございません。
  439. 相馬助治

    相馬助治君 条約は岸首相の政治的な生命を越えて、その権力を持ち、力を持ち、そして日本の行く末というものを規制するものです。それだけに私は、戦争というものの実態から徴して、きわめて心配にたえないので、以上のような質問をしておるのであり、幾ら金門、馬祖の問題は追及しても、何とかぬらりくらり言いのがれるから、言いたくないというのが、党内事情その他から十分予想されまするが、この問題はこのようなことでは、衆議院の方の安保特別委員会における審議も、依然としてストップ状況だと思いまするから、どうか、一つ十分考えて、悪かったものは悪かった、言い過ぎたものは言い過ぎた、実際のところこうなんだということを国家民族将来のためにおっしゃることが必要だと、こういうふうに思います。  私は、藤山さんに一つ聞いてみたい。あなたは三月二十五日の閣議後の記者会見において、今度の国会の安保審議は、民社党の安保修正案提出が山であろう、こういうふうにお答えになっておりますが、さようですか。
  440. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日付ははっきり記憶いたしませんけれども、記者会見の場合に、安保委員会論議がこれから続けられていくであろうが、やはり民社党は何か修正案等を用意しておられる、というような話がございました。従いまして、それでは修正案等が出てくれば、それは非常に党議の山になるだろう、ということを申したわけであります。
  441. 相馬助治

    相馬助治君 どうも始終新聞あたりも、民社党が修正案を出すとか、あるいはきのうあたりになると、出さなくなったとか、こう申しておりますが、私どもの党は、この重要な問題に対して、必要とあらば出します。必要がなければ出しません。従って、外相から、民社党から安保修正案が出たとき云々というようなことを前提としてのお話は、若干迷惑なんですが、しかし、こういうことを発言されたので、私はあなたにお聞きしておきたいが、かりに、修正案が出たらまじめに政府は検討なさる気持ですか。
  442. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 民社党の方々がどういう修正案を出されるか、あるいは出されないか、私ども今から申すわけではございません。私といたしましては、この交渉にあたりまして、一年四カ月の歳月を費しましたし、一昨年の臨時国会以来、種々国会等においても激しい論議の焦点になっておるし、その間いろいろ各方面の御意見を伺って参りましたので、私としてもそれらの御意見を通じて、交渉の上に相当裨益したところもございます。従いまして私といたしましては、現在においては最善の案を作り上げた、こう考えておりますので、特に修正の必要はないように考えております。
  443. 相馬助治

    相馬助治君 そうすると、これは話は話として、こういうことを言うたが、修正案が出ることを別に期待しているわけでもないし、自分たちの案はよくできておるから修正案をまじめに検討する気はないのだ、裏を返せばそのようなことですか。
  444. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん私が民社党の修正案が出るとか、出ないとかをあげつらったわけではありません。記者諸君が、どうも出るらしいがどうだということですから、出れば、安保委員会等の論議にもなるし、政府原案と対照して非常に山になるだろうということを申したわけでございます。そういうことでありますので、私といたしましては、今私の申し上げた通りの心情を持ちまして、今後とも進んで参りたい、こう存じております。
  445. 相馬助治

    相馬助治君 岸首相にただいまの問題でお尋ねいたしますが、国会にかりにわが党が修正案を提出した場合には、衆参両院の安保特別委員会でこれが問題になるはずです。その場合は国会の問題であるから、政府自体はあずかり知らないところである、こう一応答えることもあろうと思いまするが、御承知のように、責任政党内閣なのであって、現在政治を担当しているのは自民党であり、首相はその総裁なのでありますから、国会と行政府の関連というものも、そう割り切った考え方だけでは片づかぬと、こう思うのです。自民党の総裁という立場から、国会において修正案が提案されたような場合は、党をどのように指導して参りますか。また、行政府の最高責任者としての首相の立場からは、どのようにこれを基本的に考えて参る御予定ですか。
  446. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国会に修正権があるかどうかという問題も提案されておりまして、国会において審議中でございます。まだ結論が与えられておらないのでありますが、いわゆる修正案が出された場合に、これは修正権があるかないかという問題もございましょう、しかしそれと離れて、修正案の内容をなしておる意見、この意見に対しましてはいわゆる審議を尽くす意味におきまして十分審議をされるべき私はものだと思います。御意見に対しましては慎重に考慮していく、考えていくことは当然であります。ただ外務大臣が申しましたように、政府もそうでありますし、また与党といたしましても、この今回調印をいたしまして御承認を求めております原案が最も適当なものであり、最もいいものであるというこの確信は今なお続けて、継続的に一貫して持っておるわけでございます。しかし、御意見が出た場合においてそれを十分真剣に検討するということは、これは当然だと思います。ただ修正権云々の問題は国会において今まだ結論が出ておらないようでありますから、その結論に政府としても従うべきものである、かように思っております。
  447. 相馬助治

    相馬助治君 修正権があるなしの問題はしばらくおくといたします。今の首相の答弁はまことにりっぱです。すなわち修正案の内容について聞くべきものがあったら耳を傾けたい、まことにりっぱです。ところが、今持っている政府自身の出した原案が最もいいものであるという自信をお持ちである、これも当然でしょう。ところが人間ですから、自分がいいものだと思っても人の意見を聞いているうちに、なるほどあっちがこっちよりいい、こういうことがあり得るわけです。そこでその修正意見に耳を傾けなければならなくなった場合、そうして具体的には国民の世論に支持されて自民党の反主流派や、あるいは社会党の諸君がこれに同調して条約修正についての強い機運が巻き起こったときには、謙虚にこれに耳を傾ける用意はありますか。
  448. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今具体的にお話しになっておりますことは、実は仮定の問題でありますから、どうだということをお答えすることは非常に困難でありますが、一般的の何としましては、私は私どもの提案しておることが一番いいと思いますけれども、しかし国会論議を通じて、あるいは反対の立場での御意見、あるいはそうでない御議論でありましても、われわれが謙虚にこれに耳を傾けて、これに対してわれわれの所信をはっきりさせていくということは、これは私は当然どの政府であっても考えなきゃならぬことである、かように思います。ただ具体的にこの事情を、今のはだいぶ前提がございまして、いろいろあるようでありますが、そういうことにつきましては、今日あらかじめどうだということを申し上げることは差し控えたいと存じます。
  449. 相馬助治

    相馬助治君 仮定のことについて明瞭に答えられないということは一般原則論として承知いたしますが、最高の機関である国会においては、あり得べき仮定のことも想定いたして議論を進めておくというのが当然責務です。だから私は聞いているのです。そこで気がまえとしてはわかりましたが、具体的にそれじゃ仮定のことですが一点申しますと、かりにわが党の修正が十年の期限を三年なら三年に変更しようというただ一点に限られたといたします。そうしてこれが非常に国民の世論にも支持され、かつ各会派の了解も得た、そしてまた首相自身もいろいろ考えてこの方がベターであると考えられたとしたような場合に、アメリカ側と再交渉する余地が本条約についてはあるのですか。それから、そういうことは一切ないのだ、従って修正案などということはもう問題にならないのだと、こういうのですか。これは一つ非常に重大な問題であると思うので明確に承っておきたいと思います。
  450. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 期限の問題につきましては、実は十年ときめる前におきましていろいろの議論が党内にもございました。またその他の方面にも意見があったことは承知いたしております。私どもはそれらのことを頭に置いてこういう条約の一方、安定性と国際情勢の見通しなりその他から十年が適当であると、こう決断、断定をいたして今日もなおそう思っております。われわれはそういう意味において、この期限について変える考えは持っておりません。しかし、条約につきまして一応調印を両国がいたしておりますから、一番平穏にいく場合は、両国においてこれが国会その他の憲法上の手続によって承認を得られて批准を交換するというのが一番スムーズにいった場合であります。しかし、それぞれの憲法によりましてそれぞれ承諾を求めなきゃならぬことがありまして、その承諾を得る途上においてのいろいろな論議なり、国民的な要望とか、いろいろなものが重なった場合におきまして、さらに再交渉するということは、これは過去におきましてもそういう実例は国際条約の間には私はあったと思います。従ってそういうことを一切いかなることがあってももう出したらしないのだとは、これは私は申し上げることは適当でないと、ただ期限の問題については、今申しますように私どもは十年が一番いいということを確信を持っているということだけ申し添えておきます。
  451. 相馬助治

    相馬助治君 期限の問題を離れますと、いわば一般原則論としては、場合によってはあり得ることである、再交渉の余地もあるし、また必要によってはそういう気がまえも持っている、こういう首相の答弁であるというふうに了解をいたしまして、この問題についてはまだ不満の点もありまするが、質問を一応打ち切ります。  私は、次に厚生大臣に承りたい。皆保険達成後における医療制度というものは非常にデリケートになると思うのです。今日、社会保険制度がばらばらです。これについて、今後の医療制度についてどのような構想をお持ちであるか、一つ承りたい。
  452. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 国民皆保険は三十五年度内におきまして全部これは一応完了されることになっております。従いまして、その後におけるところの医療政策というものにつきましては、国民医療というものは、私どもといたしまして先般お答えいたしましたように、医療制度調査会あるいは医療協議会等のいろいろな諮問の議を経まして、そうして私は万遺漏なきょうな対策を講じていきたい、かように存じております。
  453. 相馬助治

    相馬助治君 万遺漏があるとかないではなくて、この段階へくると、厚生大臣としてはもっと明確な財政上、機構上の構想を持っているはずだと思うのです。私はそれを承りたいのです。  それでは具体的なことを、ただいまの答弁は不満ですから二、三聞いて参りたいと思います。医療制度調査会は昨年国会を経て設けられたのですが、十カ月を経た今日においても、全く停止されておる。これはどんな事情でこういうことになっておるのですか。
  454. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 御承知のように、医療制度調査会は医療に関係するあらゆる方面の人々を網羅し、発足いたしたいと考えております。今のところ、私どもといたしましては、この学識経験者、特に学識経験者に重点を置きまして、しかも日本医師会あるいは歯科医師会あるいは事業者団体あるいは保険者団体、被保険者団体、こういう人々のあらゆるところの協力を得て円満なるところの遂行をなしたいと、かように考えております。
  455. 相馬助治

    相馬助治君 日本医師会の協力が得られないために発足できないということは、まあ天下周知の事実です。しかし、私は率直に申して岸内閣のもとにおいてはこの医師会の満足するようなことについて、かなりこれは財政上からも苦労をしておやりになったと、こう思うのです。これは率直に私は高く評価しているんです。ところが、いまだにこの発足を見ていない。どうもいよいよわからない。一体厚生大臣としてはその責任をどう痛感しているのか。そうしてまた具体的にはいつごろどんなふうにする見解ですか。
  456. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 医療制度調査会の発足につきましては、近く私どもは発足するところの準備を進めております。
  457. 相馬助治

    相馬助治君 あなたは閣議において三月中に発足するということを発表して閣議の了解を得ているという事実を聞いているんですが、さようですか。その後変更しましたか。
  458. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 大体そのめどで準備を進めている次第でございます。
  459. 相馬助治

    相馬助治君 そのめどで進めたところが、後に触れますが、武見メモというようなことで、また支障ができて若干御迷惑していると思うんです。それはあとで触れますが、先ほどの西田君の質問に対して、医療協議会は半身不随だということをおっしゃった。私は実にこれは正直なことをおっしゃったものと思って感心しているんですが、半身不随なものですから、具体的にいうと、カナマイシンという薬は結核予防審議会の答申を得ておりますけれども、医療協議会が開催されないものですから、これはそれを使用することができない。健康保険でも結核予防法でも使用することができない。それで良識ある医者を嘆かせているという事実は厚生大臣は御承知だと思いますが、この医療協議会の方は現在どうなっておりますか。そうして将来どうするつもりですか、これは。
  460. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 先ほどお答え申しましたように、昨年の七月九日以来その半数の委員のまだいまだに推薦を得ていないわけでございます。でありまして、ただいまも言いましたように、各関係団体の協力を得ることに今円滑に、これが遂行を期して努力をいたしておるような次第でございまするので、これが得次第に、私どもは直ちに医療協議会も、これは開催できることと、かように存じておる次第でございます。
  461. 相馬助治

    相馬助治君 それは、若干楽観に過ぎると私は思うのです。  というのは、御承知のように、政府自身は——厚生大臣自身は、そういうふうにお考えだったでしょうけれども、今日、日本医師会は依然として不満なようです。それが武見メモというものになって現われたと思うのですが、武見メモというのは、新聞で報ぜられて、朝日新聞のきのうの新聞に詳しく出ていますが、内容は、どういうもので、そうして厚生大臣自身としては、それをよく了解されて読み取りましたか。
  462. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 抽象的には承知いたしております。しかし詳細なることについて、ここに公表せよと言いましても、私どもは、ただいま抽象的にいろいろ意見というものを、まとめている最中でございまするので、その段階ではございません。
  463. 相馬助治

    相馬助治君 それは、答弁を糊塗するためにおっしゃっているのか、事実知らないのか知りませんが、朝日新聞のきのうの報道によりますと、武見メモというのは、きわめて具体的なのであって、甲表、乙表一本化の問題、それから中央医療協議会の委員日本病院協会推薦の委員は、今度だけは認めるが、その次には、首切っちまえというようなことまで触れておられて、これはかなり問題があろうと思うのですが、これについて、安田次官の答弁として——当然なことだと思いまするが——全面的には受け入れがたいといっている。全面的には、というのは、どういうことですか。そうして厚生大臣は安田次官に指示して、こういう返答になっておるのですか、どっちですか。
  464. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 事務的に次官に命令をいたしまして、折衝をいたさせておるような次第でございまして、ただいまも申し上げましたように、折衝の段階でございまするので、詳細なことは申し上げられる段階ではございません。
  465. 相馬助治

    相馬助治君 しかも武見メモによると、医療金融公庫は、日医と相談してやれということです。これはごもっとものことです。しかし日医のみと相談したのでは、岸内閣のもとにおいて、この医療金融公庫というものを、財政的にもかなり苦しい中から設置されて、世の多くの開業医に歓迎されると同時に、無医村、無薬局村の各方面に多大の期待を与えておるこの際に、こういう日医の要求といいますか、それにのみ耳を傾けるとすれば、これはかなり重大な問題が起こるし、しかも七団体といわれる例の社会保障関係団体との摩擦等が生じて、せっかく軌道に乗らんとしている現在の医療の問題が、また混乱すると思うのでございまするが、明年を期して国民皆保険の段階に入ろうとしているこの際でございまするから、これらのことについて、この際私は、厚生大臣の確たる御所見を承わりたいと思うのです。  それで、日本医師会とも十分うまくやってほしい、しかし同時に、七団体等の要求にも耳をかさなければいけない。また医療を受ける国民大衆の声にも、耳を傾けなければいけない、こういうふうな立場に立って、厚生大臣はどういうふうにお考えでございますか。具体的に、かなり突っ込んで御答弁を願いたい。
  466. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 医療金融公庫は、御承知のように開業医に対しまするところの長期かつ低利の医療金融機関でございます。私どもは、その公的医療機関というものが起債により、あるいは国の補助により、あるいはまたその他の公的な扶助等によりまして、運営されておりますけれども、国民皆保険にならんという今日におきまして、やはりその開業医の職務も、これはまた一つ私は、大いに体質の改善をさしていかなければならんと、かように考えております。  でございますから、これは各方面に、公平にして、かっこの国民医療金融公庫の使命が達せられるように、私は十分、これは念を入れまして、公平なるところの国民医療としての使命を果たしたいと、かように存じておる次第でございます。
  467. 相馬助治

    相馬助治君 もう一点、やはり重大問題ですから突っ込んで聞いておきたいのですが、医療金融公庫を岸内閣のもとにおいて、かなりの勇気をもって設けた、この事情は無医村、無薬局村、そういうふうなべき地の恵まれない、日の当たらない人々の医療の問題について、何とかしたいという最初の希望から、こういうふうな考え方が出てきたと、私どもは歴史的経過として知っているわけです。  ところが今日、これがかなりゆがめられんとする傾向にあるように思いまするが、これは、どのような方法をもって厚生大臣はこのような設置をお考えになったのか。そしてどういうふうな方針で貸付を将来行なわんとするのか、これを軸として、将来の日本の医療制度及び開業医の問題を、どのようにお考えになるのか、きわめて重大なことだと思うので、この際、ぜひ私は、岸内閣総理大臣の、社会保障制度の中の重要な部面である医療問題についての御見解を一つ承っておきたいと思います。
  468. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私から申し上げるまでもなく、近代的社会保障制度の一つの大きな柱は、医療保障を完璧にするということであります。先ほど厚生大臣が申し述べたように、公的な医療機関に対しましては、従来もいろいろな国家的な助成の方法で、漸次これを完備しつつあります。  ところが、多数の開業医につきましては、これは自由営業にまかされておりまして、従って、その設備や内容等の改善を要するものも少なくないと思います。同時に、今相馬委員のおあげになっておるように、日本のこの交通や文化が、全体的に上ってきておるにもかかわらずまだ無医村や無薬局のこの村等があるのに対しまして、これに対して、国民の皆保険の実をあげるためには、やはり医療施設や薬局の施設等をしていくことを助成していかなければならんと思います。そういうことに対しては国家的に、いろいろな助成も必要でありますが、この医療金融公庫が長期低利の金融を行ないまして、これらの欠陥を補なっていくということが、この医療の保障の上から言って、最も必要である。こういう見地で、このたびこの公庫が設けられたのでありまして、十分その目的を達するように私どもは、人事から運営に至るまで考えて参りたい。こう思います。
  469. 相馬助治

    相馬助治君 この際、私は文部大臣にお尋ねしたいのですが、先般の当委員会で、加瀬委員が指摘したように、昭和三十三年度決算書を見ますと、文部省は、国家公務員共済組合負担金の中から、二千五百六十九万四千円というものを、教職員並びに国民一般に教職員勤務評定の趣旨を普及徹底させるため、こういう名目で流用しておりまするけれども、これは文部大臣は、財政法上、私は不正だとは言わないが、不当だとはお考えになりませんか。
  470. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) お答えいたします。  加瀬委員から御指摘のあった際に、もし不当であれば、申しわけありませんと、私は答えたのでございますが、その後よく詳しく調査いたしました結果、何ら不当な点はないということは確かめました。
  471. 相馬助治

    相馬助治君 加瀬委員の指摘したのは、九月四日に大蔵省が承認したのに、九月一日に、もう文部大臣は流用を認めているということは、財政法上不当でないかということを責めたのですが、私は、その問題を取り上げているのではなくて、こういうふうに勤評の問題に関連して、中央から金を流して、本省予算の流用まで行なって指導してくるということが、どうなのか、こういうことを聞いておるのでありますが、あくまで、このことは勤評指導というものが、こういう金によってなされたことは正しいとお考えでございますか。それとも、やむを得ないのだというふうな見解ですか。
  472. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) あの金は、勤務評定のみに使ったのではございませんので、道徳教育、教育課程その他一般文教行政について、その趣旨のあるところを、一般国民に周知徹底せしめるために使用したのでございます。
  473. 相馬助治

    相馬助治君 そういう面もありましょう。しかし群馬県では、この金で、勤評問題で処罰したものの処罰理由説明書、こういうもののために使っておるのです。そうしますと、文部省が勤評の普及指導に名をかりて、地方における教育委員会と教職員との間の勤評紛争に対して、闘争資金を送っているようなことになると思うのですが、文部省としては、これは適切な指導であると、今でもお考えでございますか。
  474. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 文部省はこれらの問題について、その趣旨を普及するためのPRが非常に足らぬ、下手であるというようなことでありましたので、そういう方面に使ったのであります。
  475. 相馬助治

    相馬助治君 これは、実に正直な答弁で、どういう形で追求していいかちょっと苦しむのですが、PRが下手だから、何とかやらなくちゃならない、やるについては、手元に金がないから、こういうものを流用してやったのだ、こういうことでしょうが、これは大蔵省の問題、それから、こういう金を流用したことがいいか悪いかという問題があろうと思いますが、私が聞いているのは、そうじゃなくて——それも問題です。勤評問題は、地方の教育委員会の問題だと常におっしゃってきたのです。そこで中央支配になるおそれのあるような、こういう金の使い方をしたということは、一体いかがなものかと私は聞いておるのですが、いささかも、遺憾だとはお考えになりませんか。
  476. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 流用するのでなしに、実は予備金の支出を要求いたしたのでありますが、それはできなかったので、たまたまおっしゃるような金を流用したことになっております。
  477. 加瀬完

    ○加瀬完君 関連して……。九月四日に大蔵大臣の承認、決裁があったにもかかわらず、文部大臣が文部省庁費等を流用して、示達というような条項で、支出負担行為示達書を都道府県出納長に発送する決裁は、九月一日に済んでおる。それからあなたが、これは勤評対策だけに使ったものでないと言っているが、そうなると、ますますおかしい。流用した理由は、教職員並びに国民一般に教職員勤務評定の趣旨を普及徹底させるために庁費に不足を生じたためという理由で流用している。道徳教育でも何でもないのです。大臣にいろいろ伺うのは、大臣が、当面の責任者じゃなかったからお気の毒ですけれども、今の御答弁は、違っております。
  478. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) こういうことは、文部省といたしましては、加瀬委員の御質問もありましたことでありまするので、この際文部省として、正確に調べて、これに間違いがないということを、結果を、ここで一つあらためて申し上げたいと思います。  先般の、加瀬委員の御質問に、全般的に答えるような形になりまするが、まず八月の十二日に、大蔵省に対して流用協議を行なう、それは文部大臣から大蔵大臣にあてて文会一第七百十五号であります。次いで九月一日付で、流用承認する旨、九月八日付の文書で、大蔵大臣から文部大臣に回答があった。さらに流用額は二千五百十九万一千円であり、国家公務員共済組合負担金から流用されました。それから次いで九月八日に、九月一日付の初等中等教育局長名の支出委任通知書を各都道府県あてに発送した。次いで支出負担行為計画示達表は、九月一日付で文部大臣より各都道府県教育委員会教育長あて、九月十日に示達した。次いで支払い計画表は、文部大臣より大蔵大臣あて九月八日に承認方を依頼し、九月九日付で承認されたので、同日付で九月十日各都道府県に示達した。  で、大蔵大臣から確実に承諾があったのは九月一日であって、その示達した日は、今申したような事情でありまして、金を出されて、支出して、使われ始めたのは、十五日過ぎになっているのであります。
  479. 加瀬完

    ○加瀬完君 もう一つ関連して……。
  480. 小林英三

    委員長小林英三君) 加瀬君、簡単にね。
  481. 加瀬完

    ○加瀬完君 九月一日付で、承認が通知があったのは九月八日、主計局長が承認決裁をしたのは九月四日、この前の初等中等教育局長答弁書によれば、その前に、承認の通知が文部省にない前に、九月一日各都道府県に対する支払い委任通知書を、局長、参事官の決裁を終わって、文部大臣の決裁も終わられていると、こう答えている。不法でないにしても、手続上まずいじゃないかということはお認めになったので、これは大蔵大臣も、下僚に今後こういうことのないように注意をしたという御趣旨の御答弁があった。これははっきりとお認めいただかなきゃ困る。  それから第二点の勤評だけではなくて、これらは文教施策全般に使ったと言うけれども、それならば、流用申請がおかしいじゃないか、流用申請は、ちゃんと教職員勤務評定の趣旨を普及徹底させるために、庁費に不足を生じたため、流用されたいという承認願いが大蔵省に出ている、この点は、明確にしていただきたい。
  482. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 先ほど、単に勤務評定のみならず道徳教育、教育課程、その他文政一般の趣旨普及のために使ったと申し上げたのは、金額は、全国的に使った金額のお話のようでございましたので、さように答えたのであります。群馬県の場合には、流用額は二千五百十九万一千円、先ほど申し上げた通りであります。群馬県の場合には、あるいはその大部分と申しますか、私は、こまかい数字を持っておりませんが、勤務評定の趣旨、それは人事管理、その他について、必要であるか、何がゆえにやらなければならぬかというようなことについて、チラシを配ったり、その他協議をして、その趣旨徹底をはかったということでございます。  この金の流用の承認につきましては、口頭で、八月中にあったのであります。九月一日には、先般、大蔵大臣、ここにおられますが、大蔵大臣より、一日に承認を与えたということを言明されたのであります。
  483. 相馬助治

    相馬助治君 私が追及したように、流用の目標も、これはおかしいと、教育委員会あり方からしておかしいということを追及しましたし、ただいま関連しての加瀬君の質問でも明らかでありますように、これは文部省だけではなくて、国家公務員共済組合自体の問題でもあり、大蔵省の問題でもありまするから、後に決算委員会において、徹底的にこれは追及するということを申し上げて、この問題を一応進めます。  最後に文部大臣、私はお聞きしたいのは、現行の勤務評定の問題は、愛媛県における赤字対策としてスタートし、その後は、自民党の日教組対策として政治的に取り上げられた感があるのです。過去の日教組の運動についても、とかく批判のあることも事実です。天下識者の知るところでもあります。しかし、自民党のこの勤評問題に対するお考えと、それからこの間にはさまつた、歴代の文部大臣の困ったいろいろな点、こういうふうな既往の事実を考えますというと、大体、この辺で勤評の再検討を加える時期が来ていると思うのであります。  これに対して文部大臣は、何かこの際、構想並びに腹案がございますか。
  484. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) この問題につきましては、私は、日夜苦心いたしております。しかし、一挙にこれを解決するような名案を、まだ発見いたしません。しかしこのままでよろしいとは、私は思っておりません。教育界の溝が、まだ詰まっている感じがいたします。これはすらすらと流通するようにしたいものである、かように考えておるわけでありまして、現在の状態をもって、まだ教育界は正常な姿であるとは、私は考えておりません。
  485. 相馬助治

    相馬助治君 時間がなくなりましたので、農相に対する質問もやめて、私は文部大臣に、この質問だけにとどめまするから、明快にお答え願いたいのです。  というのは、どうしても、この勤評というものは、大きな問題です。そうして政党の争いや、その他のものを離れて、この際、何とか調節しなければ、将来教育界にとっても、これは好ましくないと思うのですし、犠牲者は何人であるかということについても、指摘する必要はないと思うのです。わが党は、今般教育職員勤務評定問題審議会の設置というものを提唱しております。本来ならば立法して、そうして国会に提案するのですが、謙虚な態度をもって、私どもは、自民党並びに行政府並びに社会党と、その他に提案をしているわけなんです。このわが党の提唱について、文部大臣は御承知ですか。承知だとすればどのような御見解をお持ちでございましょうか。これだけを承って、私の質問をやめます。
  486. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 先般民社党の案として、新聞で拝見いたしました。まだ、十分検討をいたすいとまもございません。ああした案も、一案であると考えております。
  487. 鈴木強

    鈴木強君 議事進行。  きょう私は時間がなくて、文部大臣に質問できなかったのですが、実は資料の件ですが、現在義務教育といわれておりますが、現実には、中学生で、うちが貧しいために正規の教育が受けられない、そういう人がかなりおると思うのです。東京にも、私も知っておりますが、幾つか先生方が犠牲的な精神を発揮して、そういう気の毒な人たちの教育に当たっていただいておるわけであります。私は、その実態を少し知りたいと思いまして、資料を要求したのですが、もう半月も前に頼んであるのですが、文部省は出してくれない。一つ、それは早急に、大臣取り計らって、全国的な、そういう児童などが、どの程度であるか、それから学校施設が幾つあるか、早急に出していただきたいと思います。
  488. 小林英三

    委員長小林英三君) 本日の質疑は、以上をもって終了いたします。  明日は、午前十時より委員会、終了後理事会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時十七分散会