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1960-03-14 第34回国会 参議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月十四日(月曜日)    午前十時二十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小林 英三君    理事            大谷藤之助君            佐藤 芳男君            館  哲二君            西田 信一君            秋山 長造君            鈴木  強君            松浦 清一君            千田  正君            大竹平八郎君    委員            泉山 三六君            木暮武太夫君            小柳 牧衞君            重政 庸徳君            白井  勇君            杉原 荒太君            手島  栄君            苫米地英俊君            一松 定吉君            武藤 常介君            村山 道雄君            湯澤三千男君            吉江 勝保君            米田 正文君            荒木正三郎君            加瀬  完君            木村禧八郎君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            永岡 光治君            羽生 三七君            平林  剛君            藤田  進君            東   隆君            島   清君            辻  政信君            森 八三一君            岩間 正男君   国務大臣    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君    文 部 大 臣 松田竹千代君    農 林 大 臣 福田 赳夫君    通商産業大臣  池田 勇人君    運 輸 大 臣 楢橋  渡君    郵 政 大 臣 植竹 春彦君    労 働 大 臣 松野 頼三君    建 設 大 臣 村上  勇君    国 務 大 臣 赤城 宗徳君    国 務 大 臣 石原幹市郎君    国 務 大 臣 菅野和太郎君    国 務 大 臣 益谷 秀次君   政府委員    人事院総裁   浅井  清君    人事院事務総局    給与局長    滝本 忠男君    総理府総務長官 福田 篤泰君    総理府特別地域    連絡局長    石井 通則君    行政管理庁行政    管理局長    山口  酉君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    防衛庁教育局長 小幡 久男君    防衛庁経理局長 山下 武利君    防衛庁装備局長 塚本 敏夫君    調達庁総務部長 大石 孝章君    経済企画庁調整    局長      大堀  弘君    外務省アジア局    長       伊関佑二郎君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主税局長 原  純夫君    大蔵省理財局長 西原 直廉君    大蔵省銀行局長 石野 信一君    大蔵省為替局長 酒井 俊彦君    文部大臣官房長 天城  勲君    文部省大学学術    局長      小林 行雄君    農林大臣官房長 斎藤  誠君    林野庁長官   山崎  斉君    通商産業大臣官    房長      斎藤 正年君    通商産業省通商    局長      松尾泰一郎君    通商産業省重工    業局長     小出 栄一君    中小企業庁長官 小山 雄二君    運輸省船舶局長 水品 政雄君    運輸省船員局長 土井 智喜君    運輸省港湾局長 中道 峰夫君    運輸省鉄道監督    局長      山内 公猷君    運輸省自動車局    長       国友 弘康君    海上保安庁長官 林   坦君    郵政省電波監理    局長      甘利 省吾君    建設省河川局長 山本 三郎君    建設省道路局長 佐藤 寛政君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十五年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 小林英三

    委員長小林英三君) これより予算委員会を開会いたします。  昭和三十五年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三件を一括して議題といたします。  一昨日に引き続きまして一般質疑を続行いたします。羽生三七君。
  3. 羽生三七

    羽生三七君 私は三十五年度予算に関連して、日本経済動向を中心にお尋ねをいたしたいと思います。  最初質問出発点を明白にする意味におきまして申し上げるのでありますが、それは二月三日の参議院の本会議で、政府施政方針に対する私の質問の際に、大蔵大臣質問趣旨を若干誤解されておると思いますので、その点について申し上げたいと思います。  それは、私は三十五年度予算積極性が強過ぎると批判したのではないのであります。しかし御答弁はそういう形でされておりますが、私の申し上げたのは、国民生産所得が増加をすれば必然に予算規模がある程度ふくらむのは当然であるから、必ずしも予算の総ワクを問題にするわけではない。その中における予算の性格や矛盾、そういうものを私は申し上げたのであります。ですから、きょうの質問も私がいろいろ申し上げても、そういうようにとられないように、そういう前提で御質問を申し上げたいと思います。  そこで質問に入りますが、いささか古い問題に入って恐縮でありますけれども、実は一昨三十三年の三月のちょうど今ごろ、私は本予算委員会において、当時の一万田大蔵大臣山際日本銀行総裁にこう質問したのであります。それはその前年来、すなわち、いわゆる神武景気なべ底景気に移って、デフレの深化が問題になったときのことでありますけれども、そういう状況の中にあっても経済基調国際基調においては黒字基調趨勢が見通されるので国際均衡第一主義外貨保有高のみをすべてに優先させるようなそういうやり方から、国際均衡国内均衡をバランスさせる時期にあるのではないか、こういう趣旨質問をしたのであります。これに対する一萬田大蔵大臣山際日本銀行総裁答弁は、このような私の——私のと言うのは羽生ですが——この考えは楽観に過ぎる、そういう内容のものであったのであります。もっとも私はその際、一定の外貨保有ということは必要な条件であるし、また国際均衡も無視するものではないということを前提条件としてお尋ねをいたしたのであります。そういう意味で慎重にやったつもりであります。それはとにかくといたしまして、結果としてどうなったかといいますというと、これは周知の通り、その後日本経済は驚くべき拡大発展過程をたどりました。国際収支も今日黒字は実質十三億二千万ドル程度となってきたことは御承知通りであります。当時の問題の所在は、その原因在庫投資にあったことは、今日となってみればもはや明瞭であります。あの際はずいぶん在庫投資設備投資かということでいろいろ論争がありましたが、今日となってみれば、この問題はもはや明確だと思います。きょう現在の趨勢はどうかといいますと、一、二月は若干の動きがありまして、いろいろに取りざたされておりますが、われわれは不測の事態の発生しない限り、年間を通ずれば三十五年度も黒字基調であることは間違いないと思います。少なくとも逆調に転ずるような基調ではないと考えております。で、私は今日まで再三本会議あるいは当予算委員会等において、経済動向について政府見解をただしましたが、残念ながら政府経済見通しはいつも誤っておったことは確実であります。これはもう過去の実績に徴して明らかであります。この成長と安定を——もっとも最近になりまして、政府も非常にうまい言葉を考え出して、成長と安定をからませて、安定的成長という、実にうまい表現を使うようになって参りましたが、とにかくまあ最近はだいぶ事実を認識されたようであります。そこでお尋ねしたいことは、この数年来の政府経済見通し誤りであったということ、それから日本経済の持つ現実的な力を過小評価してきたのではないか、これをお認めになるかどうかです。それからいま一つは、私は日本経済の持つ現実的な力はいま少し高いところにあるのではないかと思うのであります。この三、四年来政府がしばしば答弁されてきたことと違って、私は相当高いところにあると思う。この過去を振り返ってみて、政府日本経済現状認識は今日どのようなものか、これをお尋ねいたしたいのであります。もっとも私は日本経済の力が高い位置にあるということと、経済機構予算の中における矛盾とは別の問題であるということをつけ加えて申し上げておきます。最初にまずこの点にお答えをいただきたいと思います。
  4. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) お答えいたします。今お話通り、過去におきましては当時考えておったより以上に日本経済が躍進しておったと思うのであります。その意味において過小評価しておったということは事実だと思います。そこでまあことし——昨年の例を見てもわかりますが、経済成長率が五・五%というように、昨年の正月にいっておったのが今日では一三%と変更しなければならぬというようなことで、これほ全く過小評価しておったと思うのでありますが、これはまあ御承知通り、海外の経済事情が非常に好転するし、日本国内経済事情が予想以上に発展したというところにその原因があると思うのでありまして、そのそもそもの原因は、お話通り、やはり日本人経済力というものが相当すぐれておった。その経済力がすぐれておったということを、今まで日本人が多少これを軽く見ておったのではないかというように考えておるのでありまして、昨年経済白書を発行いたしましたときにも、このように日本経済が躍進したのは全く日本人の創意と努力のたまものであるということを発表いたしたのでありまして、われわれといたしましては、この日本人経済力というものを、もう一度再認識して、そうして今後の日本経済発展ということをやはり考えていかなければならぬのではないかというように考えております。
  5. 羽生三七

    羽生三七君 お認めになったことはわかりましたが、それは過小評価しておったことをお認めになっただけで、政府の今までのしばしばの国会答弁が全く経済動向について非常な大きなあやまちを犯しておったということをお認めになるかどうか、最近はまあ違いますよ、これは大蔵大臣から御答弁願います。
  6. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたしますが、あるいは私がお答えするよりも池田通産大臣の方がいいかもわかりません。私は今、時期的な問題としての経済についての見方はいろいろあると思います。たとえば最近景気がよくなるという、毎月々々よくなるとか、その間に停滞もなければ一時的にも下降するようなことはない、こういうような意見をよく聞くのでありますが、政府がいいという以上、少しづつでもたえず上昇していくのではないか、こういうようなことをいわれます。これは一年間経済についてはそういうこともいわれます。また、長い国の経済自身を見ますと、年によりまして時に苦しい立場にあることもあるのです。だが、そういう現われておる現象にあまりとらわれることなしに、経済の実力というものに対して十分の自信を持ち、あるいは十分の認識を持って経済政策が遂行されるならば、これは時に出てきている現象が正式につかまれていないからといって政策が誤ったということはいえないのではないか、実はかように私は考えております。なるほど三十二年当時あるいはその前の神武景気神武景気といった直後において非常な引き締めをやったではないか、その際に神武景気といわないならば、ああいうこともなかったということもいわれるかもしれない。しかし、今羽生さんが御指摘になりますように、今日の経済成長は、当時の設備投資なりあるいは在庫投資というものが今日の発展基盤を作っている、こういうことも実はいえるのでありまして、そういうことを考えて参りますると、十分経済力に対する力を認識している、あるいはまた、その方向について誤りがないならば、やはり政府のとってきた経済政策は一貫してまず誤りなかったのだ、こういうことが実はいえるのではないかと思います。最近の経済力についてどういう批判をするか、日本の国力をどの程度考えるか、政府十分自信がなくて過小評価しておるのではないか、こういうことを今言われたのでありますが、羽生さん自身が非常に日本経済を高く評価しておるわけではないだろうと思います。しかし、この経済力について、たとえば経済企画庁なり、あるいは大蔵省などが大へん消極的な見積もりをした、もっと過大な見積もりをしても可能じゃないか、こういう議論も、もちろんあると思います。しかし、総体から見まして、日本経済が非常に大きな成長をしたからと申しましても、国際的に見ますと、やはり国際的競争力から見、あらゆる点から見、いわゆる工業力がその第一の順位にあるとはどうしても考えられない。やはり中の上というところが、ひいき目に見てもそういうものではないか、こういうことを実は考えます。ところで、これは後ほど出る議論かと思いますが、先にそういう点に触れて、まことに恐縮なんですが、たとえば為替貿易自由化という議論が盛んに出ておりますが、これなどは経済力競争力を十分持っておるなら自由化するのは当然のことなんだ、そのように私ども考えますが、この自由化議論などは、そのときどきの経済情勢で、勝手に実は、なされておることがあると思います。過去におきましても、いわゆる重商主義自由化論が一時横行したこともありますし、また、非常に自主経済を強く主張した環境のもとにおいては、自由化などはとんでもないことだ。どこまでも保護自主経済だというような考え方もあった。しかし、経済そのものから申せば、抽象的なことにはなりますが、原則的には自由化方向に進むのは、これは当然だろう。これはこういうように思いますが、そういうように、やはり政策自身を遂行していく場合の経済の力の認識、またそれに対する一つの信念といいますか、こういうものがその経済政策の根幹をなすものですし、大体においてその方向が間違っておらなければ、短期的な、時期的な違いというもので直ちに政策があやまっていたとか、あるいは非常に重大な過誤を犯しているとかいうことは当たらないのじゃないか、かように私は考えます。
  7. 羽生三七

    羽生三七君 大蔵大臣は先回りして貿易自由化のことに触れましたが、私はきょうはその問題に触れないのであります。  それから、もう一つは、日本経済は外国に比べて中上と言われましたが、私も日本経済総合的経済力をいっているのではない。これは日本がそんな高い位置にあるものではないことは明らかであります。むしろ拡大発展ベースをいっておる、それを申し上げているのであります。それはまたあとからこの問題はお尋ねいたします。  企画庁長官お尋ねいたしますけれども、最近の国民総生産と総支出の数字は、この企画庁の出しておる三十五年の経済見通し経済運営基本的態度、これにあげられている数字で、末尾の方にある十、十一ページですか、これでよろしいのでございますね。特に訂正を要することはありませんか。特別変化ないですね。
  8. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) ちょっとお尋ねいたします。十一ページですか、十一ページというのはありませんよ。
  9. 羽生三七

    羽生三七君 参考資料の九、十ですね。
  10. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 九、十ですね。これは私の方でいろいろ計算して作りあげた数字でありますから間違いないと思います。
  11. 羽生三七

    羽生三七君 それからこの三十五年度経済過熱傾向が強い、こういう議論もあります。それから、そんな心配はないという議論もありますが、これはどちらをおとりになりますか。
  12. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) たびたび申し上げております通り過熱心配はないという見通しであります。
  13. 羽生三七

    羽生三七君 私はこの日本経済現状は、需要が超過して、それからインフレが起こるという、そういう情勢のもとにあるのではなしに、むしろ供給超過圧力の方が強くて、そういう意味物価は特に強含みになることはないと思います。今は弱含みである、せいぜい横ばいである。これは物価趨勢考えておりますが、もちろんいわゆるガス料金とか、あるいは私鉄運賃の値上げ、あるいはこれに類似する一連動きは別にいたしておきます。三月二日企画庁発表月例経済報告は、基調拡大、それから物価は微落となっておりますが、その通りでございますね。
  14. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) その通りでございます。
  15. 羽生三七

    羽生三七君 それでいささか抽象的で、かつ失礼な質問かと思いますが、インフレとか物価騰貴はどういうときに起こるとお考えになりますか。
  16. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) これはもう羽生委員も御承知通り需要が旺盛であって供給が伴わないときにインフレが起こるのであります。
  17. 羽生三七

    羽生三七君 その通りだと思います。言うまでもなく、需要超過圧力よりも供給超過圧力が強い場合はインフレは起こらない。これはもちろんこの問題は、国内的要因条件からだけ観察するのは必ずしも私は適当ではないと思います。たとえば、朝鮮事変で起こったブームというような問題も過去にあったし、あるいはまた輸出が国際的な条件から極端に減退をして生産物があり余まると、そういうような、いわゆるいわば外部的な、国際的な不測要因から起こる場合もありますから、国内的な要因からだけで問題を論ずるのは必ずしも適当とは思いません。しかし、今日ただいまの場合、私はこれが日本経済インフレに転化する兆候はまずないと思います。このことは、昨年、鉱工業生産が前年に比較して三〇%も増加したにもかかわらず、物価がおおむね横ばいであったという事実に徴しても明瞭であります。なお、国際収支は、政府が三十五年度計画で示しておるように、引き続いて本年度三十五年度もやや黒字基調と見て差しつかえないかどうか。貿易見通しも含めて、これは通産大臣からもお答えをいただきたいと思います。
  18. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 三十五年度は大体緩慢な上昇過程をたどっていくというように見通しをいたしておる次第であります。
  19. 羽生三七

    羽生三七君 年間を通じて黒字基調かどうか。
  20. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 黒字基調という意味は、国際収支をお考えかと思いますが、国際収支といたしましては、一億九千万ドルの黒字というように計算いたしております。
  21. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大体黒字基調考えております。
  22. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、総体的にいって生産上昇する、しかし物価横ばいである。そうして、国際収支黒字基調である、大体こういう趨勢にあると思って間違いないですね。生産上昇物価横ばい国際収支黒字基調、こういう趨勢にあるものと見て差しつかえございませんか。
  23. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) お説の通りであります。
  24. 羽生三七

    羽生三七君 経済がそういう基調にあるとき、こういう状況にあるときに、先ほど申し上げましたように、一部においては、三十四年度の設備投資が一兆七、八千億に及んでおる。それが国民生産を一兆一、二千億円程度ふくらませるくらいの生産能力を生み出す。さらに、ことしの需要伸びを七、八千億円見当として、生産伸び需要伸びとの間に三、四千億円程度のギャップが出る。こういう計算をして、下期には過剰生産が必至となる。そういうことから生産調整がとられて、日銀筋——先日は総裁でなしに、どなたか理事の方が言われましたが、日銀筋では依然として引き締め政策を強調しておりますが、政府見解はいかがですか。
  25. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) ただいまのところでは、御承知通り設備投資というものに対しての要求が相当多いと思います。そこでわれわれの方といたしましては、設備投資に対する要望については、できるだけこれをチェックする必要があるというように考えておりますので、日銀なども設備投資の貸し出しはできるだけ押えるような方針をとっておると思います。で、お話通り、これ以上設備投資が盛んで生産が盛んになりますると、下期には供給過多という心配が起こるということは、これはわれわれも考えておるのでありまするから、従いまして供給はこれ以上増さないような方針でいくべきではないか、こういうつもりをいたしておるのでございます。
  26. 羽生三七

    羽生三七君 私は、経済調整に二種類あると思うのです。一つは、金融引き締めを行なって生産伸びを押える。すなわち生産を抑制して、需要の線に合わせるのが一つ。いま一つは、需要の線を生産の線まで高めるということであります。もちろんこれは、そのときの状況いかんによって、実際には引き締めをやらなければならないような条件のもとに置かれることもあることは当然であります。またそれは、程度の問題でもあります。しかし、そこで私は、過去の事実を少し検討してみたいと思います。先年、いわゆる神武景気からデフレに転じたとき、まず現われた現象金融引き締めであります。操業短縮であります。失業であります。さらに、不渡り手形新興産業の破産、倒産、一家心中、これが当時の一連傾向だったことは、御同様に今日記憶に新たなところであろうと思います。当時は御承知通り三十三年度予算に、経済基盤強化基金四百三十六億円が盛られたときでありました、私はそのときに、本委員会において一萬田大蔵大臣に、その経済基盤強化基金の取りくずしを主張いたしまして、すなわちそれで減税とか失業対策あるいはベースアップあるいは弱小企業農業基盤強化等に充てることを主張いたしたのであります。そのときに、一萬田蔵相は、こう答えました。今の日本経済は病気にかかっておる、それをなおすのが経済調整だ、健康体日本経済であれば経済基盤強化基金は使い得る、こう答弁されたのであります。そこで私は、私の処方せんは違う。私は、病人が出れば卵やミルクを与え、栄養を与えて回復をはかる、しかるに政府は、病人ミルクや卵を与えるのでなしに、手持ちの金を貯金するのですか、私はこう反論した。病人が出れば貯金をおろしてきてでも使うというのが常識ですよ。ところが、あの当時のことをお考えいただけたら、これはどちらが正当だったか明白だろうと思います。  さて問題点に戻りますが、日本経済が今日のような趨勢にあるときに、指向する方向は、生産を縮小するということじゃないと思います。私はむしろ有効需要を伸ばす方向が正しいと思いますが、政府見解はどうですか。——断わっておきますが、もちろん先ほども申し上げましたように、限界なしの手放しの論議をしているのではありません。そこにはおのずから限界があることは当然であります。非常識なことは毛頭考えておりません。私は、今日要請されている問題は、公務員のベース・アップ、あるいは農業弱小企業生産基盤強化、あるいは教育文化施設科学技術等の向上あるいはまた減税、こういう一連の処置を講じて、抵抗力の弱い部面の補強工作、これをやるとともに、関連をして個人の消費需要拡大をはかるような政策をとるべき時期であると思いますが、政府見解はどうですか。また、所得倍増計画は、このような拡大均衡の場合でなければ実現達成できるはずがないと思います。これは、あとからこの点に触れますが、あわせてこの問題についての所見を、これは大蔵大臣からも一つ承りたいと思います。
  27. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) お話通り、決して生産は縮小する必要はないのでありますからして、生産をできるだけ伸ばすようにしなければならぬが、しかしお話通り、やはり需要と呼応して生産を伸ばすように考えていかなければならぬ。そこで来年度の国民生産も増加するようにわれわれも計算いたしておるのでありますが、同時に需要も増加するようやはりわれわれも考えをいたしております。  そこでお話の中にもありましたが、差しあたりこのあとからお話があると思いますが、国民所得の倍増、長期経済計画で、経済活動自体の問題はとにかくといたしまして、産業基盤強化について、この際政府は少し今までよりも支出を多く出す必要があるのじゃないか、あるいは最近における生産の増加は、全く科学技術の進歩の結果でありますからして、科学技術の進歩のために、今まで以上に経費を支出する必要があるのじゃないかというようなことで、そういう点が三十五年度の予算に盛り込まれておるのでありまして、そういうことからして政府の事業を増すというようなことも勘案いたしまして、供給需要とのバランスをとるように考えている次第であります。
  28. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。羽生さんのただいまお話しになりました過去の処置、これが当時論争された経過、その要点だけを御議論になりました。羽生さんの御意見はもちろん一方を代表する私どもとにかく傾聴すべき御議論だと思います。同時に、最後にお断わりになりました、もちろん限界なしにかようなことを言っているのじゃないということを言われましたが、ポイントは実にその点にあるのではないかと思います。当時の一萬田大蔵大臣のとりました処置の適否、これは見方によりまして、これをやったからよくなったという議論もありましょうし、またよくなったところからみると、やはりそれを取りくずした方が、もっとよかったのではないかという論も成り立つと思います。ところで、その過去の問題についてのポイントは、限界をどこに置くかということの一つにかかるのだと、かように私は考えます。ところで、最近の金融についての警告、日銀なりあるいはまた大蔵当局もすでにとっておりますが、あるいは昨年の公定歩合の一厘引き上げ、こういうようなものもその現われでありますが、警告処置をもって直ちに引き締めといえるかどうかという問題だと思います。で、最近のような経済状況のもとにおきまして、やはり金融の衝にあるもの、あるいは産業の担当のところにおきましては大いに積極的な意図は持ちますが、限界についての十分の警戒を必要とするというのが実態の問題でございます。私どもそういう意味で、今後の処置として、絶えず金融のそのときの時期的措置を誤らないように注意するということを申しておりますが、これがポイントになるのではないかと思います。特に産業の動きというものは非常に把握がしにくくなっている、もちろん私どもの政治のあり方が自由を本体といたしておりますから、統制なりあるいは計画経済という考え方ではないものですから、実態の把握は非常に困難であります。そういう意味では、国民あるいは関係業界の積極的協力、これを非常に必要とする。そういう意味で、絶えず警戒すべき点は警戒すべき点として事前に御披露している、これがまず現在の状況でございます。ところで、この警戒の機運が非常に強くなって参ると、積極的に経済拡大しようとするその意欲をそこなうことにもなります。だからこの表現は非常に困難な問題だと、かように実は思っておりますので、大蔵省といたしましては、比較的今日までも慎重な態度をとっている。そこで金融自体の問題は、日銀を中心にしての動向等から、国民に対して、あるいは経済界に対して、時々必要な警告を発しているというのが現状でございます。ところで総体の貯蓄の状況なり、あるいは投資の状況なり、あるいは資本の投資状況、あるいは設備投資等の実態等を考えてみますと、総体の数字から見れば、国民所得伸び等から見ても、もう少し拡大してもいいのじゃないかという点は、確かに御指摘の通り指摘し得るところじゃないか、かようには思います。しかし、いずれにいたしましても、まだ総体の計画等が自由化に備え、各業界のあり方等について、それぞれの行政官庁で、おそらくそれぞれの業態についての計画を想定しつつあるという段階と、かように思いますので、ただいまのところは一般的な限度についての警戒機運、かように御了承いただければ実際に合うのじゃないか、かように私は考えております。
  29. 羽生三七

    羽生三七君 私はただいまも述べましたように、経済上昇すればすぐこれを押えたり、金融引き締めをやったりすること、これに限界のあることはもちろん先ほど申し上げた通りです。そういうことは誤りだということであります。とにかくそういうことをやらなければならぬことになりますよ。私は現在の時点においてそれを言っておりますから誤解のないように。とにかくそういう抑制処置だけを考えておるのは、私はこれは典型的な金融資本主義政策だと思うのです。また同時に、経済拡大均衡がはかれるはずはない、そういうやり方では。いま一つこれと関連する重要な問題は、私は雇用の問題だと思う。雇用の問題は日本経済の当面する最も重要なファクターの一つだと考えておりますが、経済が縮小均衡してどうして雇用の拡大が実現されるか、こういうことであります。  縮小均衡をやれば当然事業が縮小され、あるいは中止されて、操業短縮、農産物の価格の下落、あるいは弱小企業の倒壊、こういう方向となることは申すまでもありませんが、これは先ほども申した通り、当時を想起していただけば十分だろうと思います。また、私は国内の有効需要を高めることだけを問題にしているわけではないのであります。輸出拡大振興が重要な条件となるということは当然であります。これはあらためて言う必要もないほど明瞭なことだと思います。そして、そのゆえにこそ国際緊張緩和とか、外交上、政治上の問題もありますけれども、それとともに、純経済上の立場から見ても、中ソ等との貿易再開、または拡大が課せられた重要な要件となって参るのであります。しかし、私はこれを今政経を分離するとか、からめるのがどうとか、そういうことを言っているのでは全然ありません。純粋な経済問題として申しているのであります。雇用は三十五年度計画ではむしろ前年に比して〇・七%と、わずかではあるがむしろ減少を見込んでおります。それは新卒の生徒が少なかったとか何とか、いろいろ事情を上げて説明されているのでありますけれども、それはとにかくとして〇・七%の減少を見込んでいる。雇用の拡大拡大均衡でなければ達成できるはずはないのです。この問題を、実際にはいろいろな他の条件があるにしても、三十五年度においては、雇用のむしろ減少を見込みながら、そして所得倍増計画をうたわれている。これはあとから私はこの問題に触れますけれども非常に矛盾だと思います。だから、私は雇用の拡大をどうしてやるのかということと、もう一つは、貿易拡大について、中ソ等との将来の問題も含めて、通産大臣からも今申し上げた問題についてのお答えをいただきたいと思います。    〔委員長退席、理事館哲二君着席〕
  30. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 今の雇用のお話がありましたが、三十四年度は百万の増の見込みであります。三十五年度は九十万以上、伸び率が減少しているというのでありまして、決して、雇用者数の増加はやはり九十万以上というふうにしております。それはお話通り生産拡大されなければそれだけの雇用を増大するわけにいかないのでありまして、来年度は、前申し上げました通り生産拡大するという見通しにいたしておりますから、従って、九十万以上の雇用の増も実現できる、こう考えている次第であります。
  31. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっと問題を、日本経済拡大をはかるためには貿易の振興が必要な条件となる、それが、中ソ等の貿易をどうお考えになるかということであります。
  32. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大体のお考え羽生委員と私は同じような考え方を持っております。輸出も必要でございます。また、国内需要の喚起も両々相待って経済拡大のためには必要だと考えているのであります。中共との貿易でございまするが、これを促進し発展さすことに何ら異議は、私は日ごろからそれを念願しているのであります。日ソ貿易協定も、御承知通り従来の場合に比べて倍あるいは三倍になることの協定を結んだわけであります。できればどこの国とも貿易拡大したいという念願で進んでおります。    〔理事館哲二君退席、委員長着席〕
  33. 羽生三七

    羽生三七君 きょうは外交上の問題と別個にしていますので、この問題はその程度にしておきますが、そこで有効需要を伸ばす場合に、すぐ消費とその輸入依存度が問題にされます。個人の消費生活の場合は、輸入依存度は、個々についていえば相当のでこぼこはありますが、総体的にいって、輸入依存度は年々むしろ低下の趨勢にあります。これは大蔵省の調査官が発表された統計や、あるいは企画庁の消費とその輸入依存度、これにも出ております。だから個人の消費生活水準を上げても、貿易依存度は決して拡大をしない、むしろ年々低下の趨勢にある、これは企画庁長官認めになりますね。
  34. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 御意見の通りであります。
  35. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、生産調整がいつの場合でも縮小均衡を意味する場合には、農業弱小企業、労働者にそのしわ寄せが及ぶ、そこで結局社会保障費を増額しなければならぬという結果になります。しかも、その社会保障費は十分ではない。しかし、それはそれとして、政府がある程度経済成長を重要に考える場合においてもそれは経済成長過程で落ちこぼれるものを社会保障で解決していくという考え方であります。もちろん私は社会保障は、これは重要な要件と考えておることは言うまでもありません。しかし、他方経済の構造の上から落ちる部面、つまり社会保障の適用圏内に落ちこむことを最小限度に食いとめる、それを経済活動の中に吸収して、独立の生計が営めるような態勢を確立する、これは私は一番望ましい姿だと思います。経済成長し、落ちたやつは社会保障にいく。社会保障も大事だが、そうではなしに、経済活動の中で、そこにある部面を吸収して、問題の解決をはかっていく姿が一番望ましいのではないか、こう考えておるわけであります。その意味で、この農業弱小企業基盤強化、共同化、近代化と、いわば体質改善の施策が積極的に講ぜられなければならぬと思うのであります。これはもちろん農業弱小企業の投資効率は低いのであります。特に農業においてしかりであります。それに自己資金にも融資にもあまり恵まれない抵抗力の弱い部面でありますから、投資効率の立場だけで問題を考えずに、政府予算や財政投融資で、ある程度カバーしていく必要があると私は考えております。それからもちろんその場合、それが効率的に使用されなければならないことは、これもまた言うまでもないところであります。ここでいま一度問題を正しく理解していただくために繰り返して申し上げますが、農業弱小企業強化をはかるためには、特に農業の分野においては、農業外の要因、すなわち経済全般の成長率を高めて、そして雇用の拡大その他経済拡大条件を通じて農業人口の鉱工業、サービス業への吸収をはかって問題の解決をはかることは、これは基本的に重要な問題であります。しかしそれとともに、農業それ自身の領域あるいは弱小企業それ自身の分野において、その生産性を高めて生活安定の基礎を確立していく、これもまた重要だと思います。  この投資効率の低い分野においては、経済成長がそのまま農業弱小企業発展に直結をしない、結びつかない場合があります。経済が高度化していけば、すぐ農業も中小企業もよくなるのだというようには必ずしも直結しない場合も相当あります。だから落ちこぼれたものを社会保障で解決していくということだけで問題を考慮するのはどうかと思う。たとえば昭和三十四年の年次経済報告、すなわち経済白書によれば、農業の面においては昭和二十七年を基準として農機具、大動物、植物等への投資は三十年ごろまでずっと上昇して参りましたが、その後は低下の方向に向かっております。投資効率も、これも固定資本でありますが、ほぼ同様であります。もっとも、一昨日の農林省発表の農家経済調査では、農業所得が戦後最高となっておりますが、これは特殊の作物地帯や中農以上の場合だと思います。三十四年国民生活白書では、生活保護すれすれの線にある百六十九万所帯の中で、零細農家の比率が一番多いということを、政府はちゃんと述べております。従って、それをそのまま放任しておけば、所得倍増どころか、逆の結果になることはいうまでもないところであります。時間の関係で、この弱小企業の問題は、内容的には触れませんが、これらの問題について、農林大臣、通産大臣は、所得倍増との関連で、どういうようにこの基盤強化をお考えになっておるか。ただ今年の予算にこれだけ盛ってあるということでなしに、私は基本的な考え方を承りたいと思います。また、大蔵大臣としては、今後この方面の施策について十分配慮する用意があるかどうか、これをぜひ承っておきたいと思います。
  36. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま農業につきまして羽生さんのおっしゃられることは、私は一々これは私が今やっておることをあなたも申されているので、御意見全面的に同感でございます。すなわち、農業の最大の問題は、今後他の産業と比べて、農家所得というものが均衡的に発展するということを保障し、確保するということになければならぬというふうに考えておるわけでございます。そういう見地から申しますると、一方において所得倍増計画というものが今作案されているわけでございます。この所得倍増計画におきましては、十年間におおむね所得を倍増する、これは国民の総生産のことでございまするから、それに人口、特に労働人口的な要素を加味して考えてみますると、一人当たりの平均は、大体十年間で六割増しということになるわけです。その場合における年率は五%内外、七・二%でなくて五%内外、こういうふうに考えております。農業の方が一体そういう比率が達成できるかどうかということを考えるわけでございまするが、私といたしましては、お話しのように重点は二つあると思うのです。一つ農業基盤というものを大いに国家が助成いたしまして、これを作り上げていく、そうして生産性を高めていくという問題、それからもう一つは、日本経済全体の拡大農業にも取り入れていくという問題、特にその中で重要な問題は、農村に過剰に潜在するところの労働力を、他の日本経済の中に活躍せしめる、こういう問題であろうというふうに考えるわけでございます。過去の趨勢を調べてみますると、昭和三十一年ないし三十四年におきましては、これは農業が比較的安定している時期でございまするが、一人当たりの生産性、すなわち所得、これは四・三%ぐらい上がっているのです。それから、この三カ年間における農村から都市への労働力の移動が一・二%ぐらい達成されておるわけです。すなわち、五%以上の年間所得伸びを示した。しかし、今後のことを考えてみますると、私は生産性の伸びという点におきまして、そういう高い伸びが期待できるかという点には、非常に努力を要する問題ではないか、それがすなわち私どもが今後特に農家の生産を上げる意味におきまして基盤を造成するという点に力を入れなければならぬというふうに考えておる点でございます。それから経済発展します見通しでございまするから、農村の過剰労働力というものが他に転向する、移動するということは、これは引き続いて行なわれるであろう、かように考えておるわけでございまするが、特にこれを容易ならしめるという施策を講じなければならぬというので、三十五年度の予算におきましても、労働省所管において職業補導所というものを農村地帯に設置いたしますとか、あるいは職業安定所に農家子弟の就職をあっせんするための協力員というものを置きますとか、いろいろ工夫をこらしており、あるいは、なるべく工場等も農村地帯に一つ行ってもらいたいという行政上の配慮を加えるとか、各種のそういう配慮を加えておる。そうして生産性が、基盤強化によって増強され、そういう労働力の移動というものが円滑に進むということになりますれば、私は十カ年所得倍増計画におきましても、平均五%内外という年間伸び率というものは農家において必ず私は達成できるという確信を持って、ただいま農政と取り組んでおる、かように御了承願います。
  37. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国民所得拡大は、やはり生産を伸ばすということ、そうして他面生産されたものの消費を考える。それは輸出と国内需要の喚起、私は輸出も必要でございまするが、適正な国内需要の喚起ということが経済拡大に非常に役立つものだ。国内の需要の喚起はやはり特定の富裕階級の所得増加ではまかなえない。一般大衆の所得の増加でないと、有効の国内需要の喚起はできない。過去の日本経済発展は、農民あるいは労働者、中小企業が、十分ではございませんが、戦前に比べて所得がそういう方面が伸びたから、この生産増強にマッチしていったわけでございます。私の所得二倍論というのは、大衆の所得を多くして、生産された物資を、いかに配分していくか、大衆の需要を喚起するような環境を生み出すことである、こういう考え方で所管の中小企業、ことに零細企業の所得増加につきましての、いわゆる生産増強につきましての施策を、今国会でも十分ではございませんが、やっていこうといたしておるわけであります。
  38. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 脱落者に対しては生活保障、こういう割り切った考えではいかぬという御意見でございました。私は基本的にその考え方には、全面的に賛成するものでございますし、私どももそういう考え方で実は今回の経済を伸ばすとか、また所得倍増等についても、そういう意味計画を進めて参りたいと思います。あるいは完全雇用の問題であるとか、あるいは低所得者の所得増ということについては、積極的に産業拡大の際は十分考慮していくべきだ、かように考えております。まあ、今回の予算も不十分ではございます。不十分ではございますが、今後におきましても、この基本的考え方は何ら変更をする考えはございませんし、財政の状態と勘案いたしまして、その趣旨をさらに徹底さすように努力したいと、かように考えております。
  39. 羽生三七

    羽生三七君 次の質問に入る前に、もう一つ簡単に要点だけお答えいただきたいと思いますが、大体の基本的方向としては、先ほど来申し上げたように、経済は今上昇しておる、物価横ばいである、国際収支黒字基調である。この時点においては、やはり依然として、まあ大蔵省の立場としては、御無理のない点もあると思いますが、やはり拡大均衡成長、安定の問題はあとから申し上げますが、それが基本的の路線と考えてさしつかえございませんか。
  40. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 健全成長の路線でございます。(笑声)
  41. 羽生三七

    羽生三七君 そこで次に、政府所得培増計画に関して、先日藤田委員質問の際、私少し関連して触れましたが、それは私は率直に言って、所得培増計画という呼び方は、いささか疑問を持っているのです。これはむしろ長期経済十カ年計画と呼ぶべき性質のものではないかと思う。これは皮肉で言うわけではありませんが、それというのは、政府の年々の予算及び財政投融資計画は、当然のこととして経済成長を高めるように企図されておる。低めようと思ってやっているわけではないと思うのです。そういう形で、十年後には国民所得が倍になるということであるならば、これはやはり長期経済十カ年計画というものが私は妥当だと思う。しかし、そういう自然成長的のものでなしに、あらためてこの所得倍増計画と銘打って、信を天下に問う性質のものであるならば、これは従来の計画と異なる本質的の変化、構造的の変化、極端に言えば、これは非常に極端の言い方ですが、革命的の変化、政府としては。資本主義のワク内においても、私は相当な根本的の変化をもたらす性質のものでなければならぬと思う。そうでなければ、長期経済十カ年計画でよろしいのです。その意味で一般的に言う長期経済計画とどう違うのか、具体的にそれをお聞かせいただきたいのです。これは国民の各層が実質的に所得を倍増するためには、先ほど来申し述べてきたように、本質的の構造上の変化を必要とするのです。また、年率七・二%の成長率を想定されておりますが、これは経済成長が高度化するにつれて、その成長率は先へ行くに従って鈍化していくのが通例であります。今日相当高度の、今の時点で相当高度な成長率を持たなければ、私は先へ行って七・一%をずっと持続していくのは、なかなか容易でないと思う。かかるような意味から、もし本質的な変化というものがないとすれば、この呼び方は、私は選挙用キャッチ・フレーズの感が非常に深い。私はこう言わざるを得ない。だから呼び方を長期経済十カ年計画と改ためるべきではないか。むしろそうでなしに、所得倍増計画と単に銘を打つならば、確信を持った根本的な変化を内容とするものでなければ、私は国民に罪深いものではないかと思う。私はいや味で言うのではないのです。それはむしろ正しい評価をしなければいかぬ。そういう意味でまじめな質問をしておるのでありますから、まじめに答弁をしてもらいたい。これは大蔵大臣と両方から一つ
  42. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) お話しの通り経済成長率が七・二%でやれば、十年で国民所得は倍になります。そこで放っておいてもそうなるのじゃないかという御意見かと思いますが、(羽生三七君「いや放っておくわけじゃないですよ」と述ぶ)自然のままで、このまま成長していってもそうなるのじゃないかということでございますが、この七・二%の成長率を続けるということは、実はお話しにもありましたが、よほど努力を要しなければならぬと、こう考えておりますし、そこで政府といたしましては、何も国民所得を倍増するために十年という考えはないのでありまして、国民所得倍増の長期経済計画で、今私どもで、この成長率が七・二%でよいか悪いかということを今検討中でありまして、できれば国民所得の倍増は、八年でできるのであれば、八年で実現できるように、また政策も立てていかなければならぬというようなことで考えておりますので、そこで十年という数字は掲げなかったのであります。で、国民所得倍増計画といわずに、長期経済計画ということでいいじゃないかというお話がありましたが、やはり国民所得を倍増するということによって、国民に一つの、国民所得が倍になるという一つの国民にそういう見通しを与えることは、やはりこれは一つの政治じゃないかと思うのです。十カ年計画というようなことでは、十カ年計画はどうなるかと言ったら、国民はぴんときませんから、それよりも、やはり国民所得は倍になるのだ、八年かかるなら八年、あるいは十年かかるならば十年というふうにした方が、私は国民の人心を喜こばすというと語弊があるかもしれませんが、安心せしめる点において、やはり政治的の意義があるのじゃないかと思います。こう考えております。
  43. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 所得倍増計画は、ただいま経済審議会にかかり、ここで最終的な結論を出すということになっております。従いまして、まだ閣僚相互におきましても、思想的に完全に統一されているというもののようには、私はまだこの段階では理解いたしておりません。ただいま企画庁長官お答えをいたしましたが、また羽生委員も御指摘になりますように、ただ単に、経済成長率七・二%というだけなら、これは普通の呼び方で、通常の経済拡大計画あるいは十カ年計画それで実現できるではないか。その御議論も当たるかと思います。しかし、私どもは、最近の経済のあり方なり、今後のあり方なりをいろいろ考えて参りますと、やはり経済の構造的変化というものは、必ず考えなければならなくなってきておる。その御議論の中にもありますように、経済成長度が高くなれば、今度長期にわたってその高度の成長率を持続することは困難だ、必ず先行き鈍化するだろう、こういうことを御指摘になりましたが、こういう点は、同時に各産業自身の構造の変化というものもやはり十分考えてみないと、七・二%が持続できるかどうか、これは非常な疑問があると思います。たとえば、先ほどお話しのありました、農業なら農業の問題についてみまして、現在の農業人口を擁し、そうしてこれを技術的にいろいろ工夫するにいたしましても、おそらく農業生産上昇率というものは、今後大きなものは期待できないだろう。しかし、産業全体から見まして、この労働人口の分布というものは必ず変わってくる。またそれを考えない限り、経済成長はできるわけのものではない。こういうことを考えますれば、そこに構造上の変化、これをやはり想定することは当然であります。あるいはまた、最近といいますか、この一両年問題になっています貿易、為替の自由化という問題が大きくなり、在来の経済推進の基本的な考え方がこの自由化基盤にして物事を考えていくということになれば、これまた非常に影響は大きいのでありますし、ただ、このあるがままの姿で成長していく、それにわずかの力をかせばいいと、こういうことでは、この十カ年計画はなかなか樹立できるものではない。政府においてこの所得倍増というものを特に申し上げておるゆえんのものは、そういうことも必ず考えざるを得ないのだ、そういう点も実はあるわけであります。同時にまた、経済成長ということであると、これは非常な長期計画だということになりますと、非常な誤解を招きやすいのであります。たとえば、今農業の問題で申し上げましたが、あるいは石炭なら石炭の産業について、今のままにして所得倍増ということは、まず考えられない。やはりエネルギー資源全体のあり方というものが考えられて、しかる上でその計画遂行が樹立されるわけであります。そういうことをいろいろ考えて参りますると、今、この経済審議会で取り上げていくという場合においては、ただ単に数字の羅列にあらずして、今後の経済の指導方向というものが、やはりその計画を通じて出てくること、これがなくてはいかぬのではないか、実はかように思っております。ただ、冒頭に申し上げますように、ただいまちょうどその審議に入ろうという際でありまするし、大まかな目標としての七・二という計画が立っております。ただ、その七・二をいかにして持続していくかという、こういう問題に当然当面するのでございますから、そういう場合に御指摘になりますような点を、それぞれ工夫していかなければならない。ただそういう場合に、所得倍増というキャッチ・フレーズがいいのか、経済十カ年計画がいいのか、それはもうそれぞれの立場においての議論でございますので、その点にはとらわれませんか、内容的には私はただいまの段階では、ただいま実現するような事柄をいろいろ考えておる次第であります。
  44. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっと横へそれるのですが、この三十五年度予算は、財源も限度一ぱいに見込んでおるのでございますが、この際においても公務員のベース・アップは実現できなかった。これは災害対策に食われたということもありますが、そういう関係で、明年度既定経費に食われている。なかなか私は容易でないと思うのであります。確信がおありですか。本年度はこれだけ大きな財政規模の中で、公務員のベース・アップができなかった。来年度、まあ本年度の補正予算もありますが、それを所得倍増の見地から実現される御確信ありますか。
  45. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 所得倍増と公務員の給与ベース、直接に結びつけられるところに、先ほど来有効需要換起というお話が出てきておりますが、これは数字的にどういうことになりますか、なかなか数字的にはむずかしい計算になると思います。私は公務員のベース・アップについて反対だという気持で申し上げるわけではございませんが、公務員の給与ベースベース・アップの問題につきましては、在来から人事院勧告を主体にして、そして人事院勧告を尊重するという態度で参っております。これにつきましては、過般、永岡委員から一年繰り越しになっているではないかというような御議論が出ておりますが、ともかくもその時期的な問題は、議論は残っておりますが、人事院勧告を主体にして考えている。この考え方は当分変更するつもりはございません。ところで、有効需要換起という点についての公務員のべース・アップ、それがどれだけのウェイトを持つか。ただいま所得倍増計画まだ立案中でございますから、今すぐどうこうとは申し上げかねます。しかし、人事院勧告がありますれば、人事院勧告を尊重するという政府の態度には何らの変更はございません。あらゆる工夫はいたしましても、やはり人事院勧告は最優先すると、こういう筋のものである、かように御了承置き願いたい。
  46. 鈴木強

    ○鈴木強君 ちょっと関連。この所得倍増計画というやつが、一昨年でしたか自由民主党がスローガンとして掲げたのだと思うのです。その当時、池田さんが月給二倍論というのを出されまして、それ以来国民の関心が所得倍増論にかなり集中していると思うのですね。ところが、国民の側から見ると、少なくとも羽生委員がおっしゃったように、三十五年度の予算の中に、具体的にそういった方向が出てくるだろうという期待を持っておったことは事実だと思うのです。ところが、今になってまだ経済審議会にかかって、佐藤大蔵大臣のおっしゃるように、閣内においてもまだ意識が統一しておらない。そういうことに対する責任を、あなた、経済企画庁長官は感じませんか。非常に国民を迷わしておる。それで、私の聞きたいのは、新安保条約が改定になるのですが、あの中を見ると、新しい日米の経済協力ということがうたわれておる。この点についても、国会の審議を通じては、まだ具体的にどうするかということが全然御答弁がない。藤山外務大臣のお話を聞いても、全然そういうことはまだわかっていない。要するに見せかけの経済協力のような気もする。要するに安保条約というものが、軍事的な色彩を非常に帯びてくるので、多少そこに経済協力ということを入れて国民を納得させようとするような、そういう作為があるのじゃないかということも私たち感ずるのですね。問題は、なぜ今日まで所得倍増計画というものがはっきり立たないのか。これについて、今の日米との少なくとも貿易経済問題というものが今後主体になるでしょう、日本の場合には。それが、安保条約が結ばれてその中にうたわれておるのだが、見通しが立っておらない。それが立たないから、残念ながら政府の倍増計画というものが、今日国民の前に明らかにならないのだと、こういうふうに理解をせざるを得ないのですね。実際無責任な所得倍増計画というものをあげておるような気が私はしてならないのですね。そういうことはどこに原因があるのか。これを一つはっきりお答えしていただきたいと思う。
  47. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 所得倍増論、賃金倍増論は、私が昨年の二月に言い出したことでございます。しかし、国内におきましても、中山伊知郎先生は、昨年の一月所得倍増論を言っておられる。また、国際的に見ましても、三年ばかり前にイギリスの大蔵大臣が二十五年で所得を倍増すると言っております。また、イタリアにおきましても、蔵相が、三年くらい前ですか、所得五割増しというのを出しておるのであります。何も新しいことじゃないのですが、政治家としての悲願、念願がここにあるのだということを私は言ったのであります。私がこういうことを言い出したのは、これはちょっと数字的になって恐縮でございますが、昭和二十四年私が大蔵大臣をいたしましたときは、国民総生産は三兆三千億そうして国民所得が二兆七千億、しかるに三十三年は、国民総生産が十年間で三兆三千億から十兆円になりました。国民所得が二兆七千三百億から八兆四千億になりました。そうすると三倍になっております。しかし、その間に朝鮮事変その他におきまして物価が五割程度上がっておりまするから、大体二倍になっておるのであります、実質的に。私は、ここに思いをいたしまして、戦後日本の歩んできたあの生産増強、そうして所得分配の問題等々から、私は十年とは申しません、政治はこういう目標で進むべきだ、こういう考えで打ち出したのでございます。で、私は、十カ年計画というようなものではない。御承知通り昭和二十九年、あるいは三十一年、二回とも五カ年計画を作りましたが、その五カ年計画は一、二年でこわれてしまった、日本発展力が強いから。私は、何年ということを考えるよりも、どうしたらいいかということを考える。過去の歴史を見ながら、歩んできた道を振り返ってみながら、先ほどお話し申し上げておるように、生産増強、そして輸出と国内需要喚起、これにあると思う。七・二%で十年すれば十倍になるということは、これはだれでもできることだ、これはたとえば今十一兆あるいは十二兆というのを二倍にすると二十四兆、二十四兆円にした場合に、ふえた十二兆円をいかに消費するか、使っていくかという問題、もちろん輸出しなくてはなりませんが、この計画でも輸出は七十六億ドル、これは全体の総生産の一割五分を輸出している国は、イギリスとドイツしかございません。フランスにしても、イタリアにしても一割一分、日本も総生産の一割一分しか輸出しておりませんが、黒字です。そうすると十二兆ふえたもののうちで輸出の増加は一兆二千億です、今の倍で七十五、六億ドル、そうすると十一兆というのが国内消費です。この適正な消費を考えるからこそ、初めて生産の裏づけができるのでありまして、その間におきましては、でき上がった総生産物をいわゆる大衆が消費し得るような態勢を整える。それにはやはり農業のいわゆる第二次産業、第三次産業への転換とか、あるいは中小企業、零細企業の育成とか、あるいは労務者の適正な賃金で消費をふやしていく、こういう考え方でいっているので、私は十カ年計画とか、五カ年計画とかいうのではなしに、政治の目標はこういう考え方でいくべきだといったのが私の心境なんで、過去われわれは十年間所得を倍増しております。名目的には三倍になっている。これを続けていこうというのが、私の所得二倍論のもとで、それには健全な国内需要、その健全な国内需要には富の分配、生産のプロフィットの分配ということがもとをなす、こういうことでございます。
  48. 鈴木強

    ○鈴木強君 池田さんの御構想は、私たち今までお聞きしておりますし、書物も読んでおりますから、あらためてお聞きするわけではないのですが、私の言っているのは、これは菅野さんに特にお尋ねしたいのですが、少なくとも池田さんがそういう御構想をお持ちになって、月給二倍論を言っておいでになると思うのですが、その際所得倍増論との見解の相違と申しますか、考え方の多少の相違はあったかもしれませんが、とにもかくにも閣内においてそういう意見が分かれておるような気がするのです。言い回しは月給二倍論か、所得倍増論かよくわかりませんけれども、月給二倍論の方が適切なような気がするのです。当時私は池田さんの意見の方がいいような気がしたのですが、そういうことを政府一つの政治的な信条として掲げるにしても、少なくともそれには閣内統一が必要だと思うわけです。佐藤さんが言っているように、今になっても閣内において統一した意見を言うような時期ではないというような発言が出てくる状況の中で、少なくとも国民に向かって所得二倍論というものを打ち出す政治的なセンスを私は疑うのですよ。だから意見があってもそれを統一してどういう構想で、何年たったらどうなるのだという一つのプロセスを一つきめて国民に訴えなければ、国民も惑うと思うのですよ。そういう今までのやり方に対する責任を私は追及しようとしているわけなんだが、それであなたはそういう点はどう考えるかということと、もう一つは、日米新時代来たるという岸総理の三十二年度のサンフンシスコのプレス・クラブにおける演説を私も聞いておったのですが、向こうで……。そういうときに、日米新時代来たるというような中で、新しい日本とアメリカとの経済協力というものがある程度出てきたと思うのですが、今度の安保条約の改定に際して、さっき私が言っているようにそれがうたわれている、聞いてみると調印されてきた総理の岸さんにしても、藤山外務大臣にしても、まだ今日国民の前に具体的に日米経済協力というのはどういうものだということが示されていないのです。これは海のものか山のものかわからないような気もするのです。そこで、今政府がかくまで延びて、三十五年度予算で具体的に出せないということは、日米の新経済協力という安保条約の中に調印されたことの中に示されている問題が非常に不明確だということからして、これから先の経済計画が立たないじゃないかという、そういうことを私は質問しているのです。その二つについて一つ答弁いただきたいと思う。
  49. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 国民所得倍増の長期経済計画について、閣内で不統一はありません。これは閣議で決定いたしたことでありますからして、佐藤大蔵大臣の言われたことは、それを具体策について、まだ閣内でまとまってないということは、ただいま経済審議会で審議中であります。それで、経済審議会で結論を得ますれば、それを閣議へかけて決定するのでありますから、それについては、いろいろみな意見があります。大蔵大臣としての意見もあるし、私は私としての意見もありますからして、その点がまだまとまってないということを大蔵大臣が言われたのでありまして、国民所得倍増長期経済計画をやるということについては、もう閣内みな統一しておりまして、池田通産大臣とみなと意見が相違しているわけでは決してありません。そこで国民所得倍増、これがはたして実現できるかどうかということについての国民の不安があるというようなことでございましたが、これは先ほど通産大臣が言われました通り、過去においても国民所得の倍増が、あるいは七年、八年でできておるのでありますからして、従ってこの調子で日本経済をやはり進めていかなければならぬということは、これは政府としても考えておる点でございます。また、最近の実績を見ましても、現在やっておりますのは新長期経済計画でありますが、これは経済成長率を六・五%で作っておるのでありますが、最近の実績は、それ以上上回っておるのでありまして、従いましてこの現在やっておる長期経済計画をやり直しをする必要が起こってきたのであります。それで、やり直しをする以上は、やはり国民所得倍増という一つの旗じるしを掲げてやって、それが今申し上げます通り、十年かかるか、八年かかるか、それはまだわかりません。これからその成長率について今検討しておる最中でありますからして、そこで、あるいはこれが八年という見通しがつけば、所得倍増八年計画というように表題を変えると思います。そこで国民所得倍増という表題を掲げたということは、世界各国ともにいろいろやっておるのでありまして、たとえばソ連はアメリカの産業に追いつくために七カ年計画とか、あるいは中共は英国の産業に追いつくために十五年計画とか、それぞれ形容詞がついておりまして、そういう意味で、国民所得倍増という形容詞をつけての長期経済計画を、目下経済審議会において策定中なのでございます。  それから日米安全保障条約の第二条の件でありますが、これは具体的にどうするということは、われわれはまだ聞いておりません。が、しかし、おそらくこの新安保条約によりまして、日米間の経済関係が拡大されるということは、われわれ大よそ想像ができるのでございます。従ってそれがあるいは貿易の上に、あるいは資本の移動の上にいろいろ影響があると思います。そういうこともやはり長期経済計画におきましては勘案して、そうして計画を立てなければならないと、こう考えている次第であります。
  50. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の発言で、大へん誤解を招いたようでございますが、ただいま菅野企画庁長官が申し上げておりますように、政府として、所得倍増計画を樹立するというその方針は、完全に一致しておるということでございますから、もし私の発言で誤解があったら、どうか菅野長官の答弁で御了承いただきたい。
  51. 平林剛

    ○平林剛君 関連して。国民所得を十カ年間に倍増する、そういう方向については、政府見解は一致しておる。先ほどからお聞きしておりまして、なるほど大蔵大臣の言うことも、経済企画庁長官の言うことも、通産大臣の言うことも、大体その方向に向かっています。問題はその方向、その中身にあるわけです。同時に私は、言葉じりをとらえるわけではないけれども、池田通産大臣は、現在の成長率七・二形を維持する、そうして十年たてば倍になる、これはだれでもできることだ、こういうお話をなさった。ところが、経済企画庁長官大蔵大臣の方は、七・二%の経済成長率を維持するということでも、相当努力を要すると、こう言われておる。特に大蔵大臣は、相当努力を要するという内容について分析をされて、たとえば今後経済構造の変化を考える、そういう問題もある。同時に自由化傾向に対して、かなり影響も考えられるので、相当努力を要する。これは明らかに、政府方向は合っていたとしても、その内容あるいはこれからの過程においてはずいぶん食い違いがあるように思われるのであります。特に私はいずれまた機会を得てこの問題に触れたいと思っておるのでありますが、今後の貿易の振興という点を考えますと、かなり日本経済として慎重を要する点が出てきておるように思います。第一はアメリカの経済動向です。特にこれは最近のアメリカの経済を非常に経済企画庁長官あたりは楽観視しておりますけれども、すでに日米経済協力とか、あるいは低開発国振興に対する国際的競争だとか、軍縮の傾向が表われてくるとか、こういうことになって参りますと、自由化の問題と合わせてなかなか日本は容易ならざる事態を迎えることになるのではないか。政府が一生懸命努力をしておる東南アジア方面におきましても、これは賠償その他の関係から見てなかなか伸び悩みということになる。ただ一つ期待を持っておるのは豪州とかニュージーランド方面でありますけれども、これはそれほど大きな期待はできない、日本経済成長が今日著しく伸びたというのは、一つは昨年来のアメリカと日本との輸出入のバランスがくずれて逆転したことからよくなったけれども、ただいま申し上げましたように、アメリカの経済、今後のことを考えると、これはなかなかむずかしい、こういうことになってくると……
  52. 小林英三

    委員長小林英三君) 平林君、簡単に。
  53. 平林剛

    ○平林剛君 結局政府の言う国民所得倍増というのは、どういうところに基本的な考えを置いて達成をするか、これは問題があると思うのです。羽生先生が質問しておるように、そこにやはり内需喚起という方面に相当力を入れなければ、政府の国民所得倍増というのは、ただ選挙のときのキャッチフレーズに終わるのじゃないか、こういう点を指摘しておると思うのです。たとえば貿易と内需喚起、池田通産大臣はこの二つにあると言われましたが、一方の貿易見通しから見るとなかなか困難である、国民所得倍増のためにしからばどういう方向がおもに重点的に置かれなければならぬか、この点を一つ明らかにしていただきたい。
  54. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 七・二%でずっといけることはだれでもできることだ、これは誤解のないように、これは計算上で、実際上は問題だということ。(笑声)  それから日本貿易また内需の健全な増進ということは、これは非常にむずかしいことだ、しかしやらなければならぬ。私は平林君のようにいたずらに悲観をいたしておりません、努力をしてその倍増に向かって巨歩を進めていきたいという考えです。
  55. 羽生三七

    羽生三七君 時間がありませんので、もう最後の結論に入りますが、その前に実は私、きょうは大蔵大臣通産大臣企画庁長官で、もっと通産大臣の性格も出してもらいながら質問しようと思ったけれども、そういうように考えるとどうも皮肉のように思えて遠慮したのですが、実際問題として一つ、今の情勢の中で特に生産上昇をチェックするような作用はしないと、それから有効需要を伸ばすことは適正だ、この基本方針は通産行政の上から変更されることはないですね、そのまま理解してよろしいですね。それは金融引き締めなんか言われておる際に申し上げることです。
  56. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは生産増強をチェックするという気持はございません。御承知通り日本の特色の設備投資というものは、昭和三十四年度予定は一兆七千億くらいでありましたが、一兆七千九百億、一兆八千億くらい、そして計画は来年度におきましては二兆円を見ております。国民所得の二割も設備投資に持っていく国はほとんどない、一割以上の国は少ない。日本は二割を持っていこうとするのでございますから、いかに通産省として設備投資在庫投資について力を入れて、そして輸出と国内需要の喚起、これに積極的であるかということは御想像願えると思います。
  57. 羽生三七

    羽生三七君 結論といたしますが、さっきのこと要約して申し上げます。いわゆる景気過熱は十分警戒しなければなりませんが、いうところの過熱は、おおむね金融資本の部面からいわれる、すなわち資金需要の面からのみ問題を把握しての議論であります。こういう今の場合の生産過剰はデフレという形のものですから、インフレを伴う過熱とは私は本質的に違うと思う、ここはずいぶん世間では誤解されていると思います。過熱というとすぐインフレーションという、これは非常に誤解で、私は日本の現在の基調においては、むしろデフレ傾向にある、有効需要の不足、そういう形になると思いますので、このような場合は縮小均衡では全然問題の解決にならない、従って所得倍増も実現できるはずはないし、私は拡大均衡こそが望ましいのです。問題を正当に解決する一つの道であると、こう考えております。しかも経済成長拡大均衡意味するものは、大企業偏重でなく国民各層にわたる均衡でなければならぬと思います。これも私の言う議論の中の一つの重要な要素であります。  それからもう一つは、それが内容的には所得格差を初め各種の格差の幅を縮める性格を持たなければならぬ、こう考えております。しかし経済見通しについては主観的な意図や希望的な観測だけでは、これは過ちをおかしやすくありますので、どうしても私は統計や調査機能をフルに十分に活動させねばいかぬと思います。そして万全の策をとるべきだと思います。だから変な話ですが、ロッキード一機分の節約で、私は日本の全経済に重大な影響を持つ統計調査機能を今よりもっと確立することは不可能ではない。これは余談でありますが、私はこの方が望ましい姿だろうと思います。なお私は予算の内容をなし、経済成長にも重要な関係を持つ防衛費とか、あるいは軍人恩給その他多くの問題点には何にも触れませんでしたが、これは問題の性質がそういうことに触れているとぼやけてしまい、本質的なことからそれるために、私はこういう問題には全部触れなかったのでありますが、この種の問題は日本経済の上に重要な影響を持つものであることは当然であります。  そこで今日現在の時点において、この生産拡大をさらに高度化して、国民生活水準をさらに高めるように計画するとすれば、先ほど触れましたように、この輸出の拡大が重要な条件となって、そしてこの中ソとの貿易問題も自然これは重大問題になります。これは私イデオロギー的な問題や、外交  とからませる意味でないことは先ほど申し上げた通り、そういうことを想定しなければ国内有効需要の喚起だけではなしに、貿易の振興という場合には、アメリカの動向から見て必ずしもそう望ましい姿ではない、全力をあげてやるには違いないけれども、私はその部面の新しい分野を開拓していかなければならぬと思います。こういう意味で国内有効需要拡大、輸出の振興、それから拡大均衡、その上で生産発展をはかりながら、しかもその中におけるあり方は、今申し上げたような所得の倍増が自主的にできるような、組織的構造的変化を伴わなければならぬ、そういう方向に進むべきではないか、これが私のきょうの議論の最後であります。  これで私は質問を終わりますが、総括的に言ってそういう方向を企図されておるのかどうか、どうも一問一答やっとって私のやつはおおむね議論が多いのです、質問にならないのです、ほんとういうと。しかし参議院の予算委員会で、そういう問題も一度くらい議論するのもと思いまして言ったことでありますが、最終的に一つ企画庁長官なり大蔵大臣から答弁を聞かしていただきたい。  これで終わりますが、最後にもう一つ池田通産大臣からライス・バンクの構想、あれをちょっとお答えをいただいて、これで私の質問を終わります。
  58. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 羽生委員のお説はわれわれも大体同感でありまして、政府もその方針でいくつもりであります。
  59. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 基本的な考え方については私賛成する者でございます。また政府もかねてから考えておる構想も御指摘の通りです。同じ意見でございます。今後もそういう意味で私は大へんきょうの質問ありがたく拝聴した次第であります。  佐藤大蔵大臣はありがたく拝聴した、やはり基本的にはわれわれと同じ  じゃないかと、ここで私語しておったわけであります。私は全くとは申しませんが、大体において私の考えておることと同じでございます。  なおライス・バンクというあれは、私はああいうことを言ったのではないのであります。ただ先般のビルマとの関係におきまして、昨年の暮れ十二月二十一日に日本への輸入を全面的にとめたのであります。こうして三万トンの予定をもう少し米を買ってくれということで、私は通商上の関係から閣議にお願いいたしました。何とかふやしていこう、こういうことで農林大臣の承認を得て一万五千トンふやしました。二月十日には禁止を解除いたしまして貿易ができたわけであります。今後の状況を見ましてもビルマでは米が余る、インドでは米が不足しておる、タイでは米が余るし、インドネシアは不足している。しかし買う金がないというときに、日本が東南アジアとの関係におきまして何とか想を練るべきではないか、日本の計算において余った国から不足の国へ融通して、そうして現地通貨をもってその土地の経済開発をやったらどうかという気持を持っておったのを、ちょっと発言しただけでございます。で、あるいは砂糖協定とか小麦協定、国際的にいろいろなものがございます。米は小麦とか砂糖のようなところまでには参りませんが、しかし東南アジアとともに生き、ともに進もうとする日本といたしましては、東南アジアの経済事情を十分考えて、日本の力でできることなら有無相通ずるような措置をとった方がいいんじゃないか。また力がなければ他の国から日本の責任において金を借りてきてもやるべきではないか。もちろんそれにはいろいろな問題がありますが、私は米の問題についても、一つ銀行というのではなしに、具体的の個々の国と話し合って融通をつけるということが、日本の置かれた立場としていいのではないかというので、ライス・バンクということは今まで言ったことはありませんが、考え方は今申し上げた通りでございます。
  60. 羽生三七

    羽生三七君 これで終わります。   —————————————
  61. 小林英三

    委員長小林英三君) 小柳牧衞君。
  62. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 私はまず第一に、わが国の国土の保全及びその高度の利用について、政府の所信を承りたいと思います。わが国は敗戦の結末、ほとんど領土の半分を失いまして、まことに遺憾にたえないのでありまするが、しかし新日本建設はこれを基準として考えなければならぬことは当然でございます。今日幾多の政治上の難問題がありまするが、これらはせんじ詰めまするというと、結局領土が狭く人口が多いということに帰着するものがはなはだ多いのでございます。それでありまするからこの国土の保全はもちろんのこと、その高度の利用ということに考えを及ぼすことが当然のことと思うのでございます。もちろん海外移民のことも重要でございまするが、それはそれといたしまして、私はどうしてもこの領土の保全、高度の利用につきまして科学なり、あらゆる力を結集いたしまして、その解決をはかりたいと思うのでございまして、政府もすでにこの観点に立ちまして二十五年に国土総合開発法を作り、二十六年には国土調査法を作っております。都道府県あるいは特殊地域についての開発計画ができておりまするが、全国の総合開発計画はきわめて困難なるものであります。ことにその基本となりまする土地利用区分がまだはっきりきまらぬというような事情からして、今もってその作定を見ておりませんが、これはどうしても早く決定をして、そしてその実行に移すべきものと思うのであります。幸いわが国は戦災の復旧につきましては着着として歩を進めておりまするが、この際万難を排しまして各機関を督励して、すみやかに国土総合計画を立てまして、国土の保全と高度の利用を新日本建設のスローガンとして、あらゆる力を傾注して遂行すべきものと思うのでありますが、この点につきまして経済企画庁長官たる菅野国務大臣の御所信を承りたいと存じます。
  63. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) お話通り国全体の総合開発というものは、この際計画を立てるべきだろうと思うのです。昭和二十五年にその法律ができているのでありますが、まだその総合開発の計画が実現しないことを非常に遺憾に思っております。ただこれは長期経済計画との関連において、この総合開発というものを考えなければならないのでありますので、ただいま経済企画庁で国民所得倍増の長期経済計画を立てておりますので、それの進行とにらみ合わせてこの総合開発計画考えるべきだ、という意見が実は出ておるのでありまして、またことに御承知通り最近における経済の進歩というものは急テンポでありますので、従ってこの総合開発ということにつきまして、この経済の急テンポの進歩についてやはり呼応して考えていかなければならなぬというようなこともありますので、長期経済計画と呼応してこの総合開発計画を進めていきたい、というのが私のただいまの考え方でございます。
  64. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 この問題はきわめて重大な国策の一つであると存じますので、政府としましては協力一致して勇敢に実行していただきたいと思うのでありまするが、実は私は往年山口県庁に勤めたことがあるのでありまするが、その際に、大蔵大臣も御存じと思いまするが、毛利藩が関ケ原に敗れまして、中国の八カ国の領土を防長二州に削られまして、その後毛利藩がそのあとを受けまして、その力を伸ばすことに努力したことは実にすさまじいものがあるのでありまして、干拓、開さくを奨励し、宅地、遊閑地の利用に努め、また道路、路線につきましても極力耕地を避けて選定した。あるいはまた民政に非常に力を入れまして、いわゆる三日、米と塩と紙の増産ということをスローガンとして、粒々辛苦二百年にわたって不断の努力をなしたことは実に驚歎に価するものがありまして、今日時代が違っておりまするから施策の全部をうのみにする必要もございますまいが、その精神と熱意というものは敬服に価するものでございます。佐藤大蔵大臣はおそらくは感を同じうすると存じますが、ことに大蔵大臣は先日小平議員に答えられまして、本年度の予算は決して土木予算じゃない、国土保全の予算であるということを言われたことは実に私は卓見であると思っておるのでありまして、決してこの国土の保全ということは土木の力にはよらなければならぬが、さらに一段飛躍した見地においてなさなければならぬと思うのでありまして、この場合におきまして大蔵大臣は、いろいろまた財政にも関係のあることと思うのでありまするから、菅野大臣と所見を同じうして、わが国の建設のために国土の保全と高度利用についての御意見があると思うのでありまするが、それを承りたいと思います。
  65. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま小柳委員の御指摘になりました点、これは私どもも十分考えなければならない点だと思います。日本の特殊性といいますか、その特殊性に基づいての工夫がなければならない。しばしばいわれることでありますが、日本はほとんど耕地に恵まれないとか、山だけだとか、また海岸線が長いとか、こういうことがいわれる。耕地の少ないことが、非常にわが国産業というか、あるいは国民生活に対して重圧になっているような言い方をしますが、しかし、山岳あるいは河川、海岸、これはもう考え方によってはうんと利用ができる。その置かれておる環境についての十分の考慮を払いまして、そうしてまだ手のついていない点を、今後われわれの力によりまして伸ばしていく、ここに初めて日本の国民生活の向上も期待できるのだと、こういう考え方を私どもは基本的に持ちます。  ただいま古い毛利藩のお話が出ておりますが、この先輩がいろいろ考えましたことなども、非常に封土が広い際の考え方と、非常に狭められた後の藩政をまかなう場合の工夫、これなどは当時の人たちとして、当時考えられる最大のものを考えたのだと思いますが、わが国の経済につきましても、国際経済において一そうその力を発揮すると、こういうためには、自然的環境なり、あるいは未開発の資源開発なり、あるいはまた、国民の重圧になっておるものに対しての改善、改良なり、そういうことをあらゆる面から考える。一時非常に土地の造成などをやかましくいわれた政治家もございますし、これなども等閑に付すべきではない、御指摘になりますように。しかし、財政と絶えず考え合わせまして、ただいまのような点を推進していかなければならぬと、かように考えております。
  66. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 国土の開発、高度利用につきましては、もちろん干拓、埋め立てば必要でありましょうが、特にわが国のように面積の約七割を占めておりまする山林地帯の高度利用ということは、最も重点を置かなければならぬと思うのであります。文明国でわが国のように山林地帯の率の高いものはあまり多くないと存じます。この土地が、近年におきましては、やや開発はせられましたけれども、これを平地に比較いたしまするということ、まだまだ開きが大きいのであります。世間では一国の人口の人口比率を総面積と人口の割合でいっておるのですが、諸外国ではわが国に比しまして山林地帯の割合が少ないのでありまするから、実際のわが国の人口比率というものは一そう高いと言わなければならぬのであります。いわば、われわれ同胞は、国土の二割か三割の狭いところに超満員の形において活動を続けてきた次第でございまするが、国土が半減された今日こそは、山林地帯を十分に開発をして、高度に利用し、そこで国民の経済生活を高揚して、できるだけ多くの人口を養うようにしなければならぬと思います。また、これにはわが国の科学技術なり、あるいは労力の点なり、あるいは資力の点についても、可能であると信ずるのでありまするが、この山林地帯の開発につきましては、またあとで詳しく述べたいと思いまするが、要するに、最も多く占めておる山林地帯の開発を、国土政策の重要なる問題として取り上げるということにつきまして、企画庁長官並びに農林大臣の御所見を承りたいと思います。
  67. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お話まことに私も同感でございますが、ただいま林野の開発はおくれておるというふうに私ども観念しております。わずかに人工造林が二八%というような状態でございますので、日本の国土の大半を占める林野をいかに開発するかということは、国土総合開発の観点から見ましてきわめて重大な問題であると、かように存じます。そこで、奥地の山林を開発するということが非常な大きな問題となってきますが、これにはいろいろ、道路の開発の問題でありますとか、あるいは林道の整備の問題でありますとか、さような林業基盤を整備するという問題が一つあるわけでございます。それから、特に民有林につきましては、その原木の価格、コストを引き下げるという方向政策をとらなければならぬ、さようなことで、民有林の経営を助成するという方向政策を進めなければならぬ、さように考えております。また、木材を基盤といたしまして生業を営む製炭業者というようなものにつきましては、なかなかいろいろな困難な事情がございますので、これに対しましても特別な施策を講じなければならぬ。さらに、林野が荒廃することを防止するこめの政策、これはいわゆる治山治水政策に属する問題でございまするが、これにも大いに気を配らなければならぬというので、今国会で緊急根本政策を御審議をお願いしておるというのも、さような観点に立つものでございます。今後国土総合開発の重要なる一環として計画いたしたいと、かように考えております。
  68. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 山林地帯の開発には、もちろん、地下資源であるとか、あるいは発電であるとか、多目的ダムの建設であるとか、さらに山紫水明の日本といたしましては、観光事業にこれを向けるというような、いろいろな考え方がありまするが、しかし、最も普遍的なものは、何と申しましても林業だろうと思います。わが国の林業は、昔から水源涵養であるとか、あるいは国土保全の観点からいたしまして、相当力を入れておったのでありまするが、しかし、経済的に見まするというと、やはり製材なり薪炭の域を脱しないものであったと思うのであります。明治に入りまして、すでに十一年に林業試験場を作りまして、非常な抱負を持って明治政府が立ち上がったのであります。従って、相当の伸展は見たのでありまするが、先ほど申しましたように、農業、平地の開発に比べますると、またまだ大きな差がありまするし、一そうこれには力を入れなければならないと思うのでありますが、そこをどうして、せっかくえらい勢いで立ち上がった林業が腰折れしたかということを考えてみまするというと、私は、山林というものは、米や麦と違って、改良なり試験なり、あるいは収入を得るという点に相当の年月を要するということもありましょうし、また田畑と違いまして、持主がすぐわきにおるというのと違うと、こういうようなこともありましょうが、私は、主としてこういうように立ちおくれを見たということは、わが国は国力が伸展しまして、海外に力を持ち、ことに外地を持った関係上、国内の山林にあまり依存しなくてもやっていけたということにあったのではないかと思うのであります。しかるに、今日すでにおもな外地を失いまして、どうしても国内の林産でまかなっていかなければならぬというときになったのでありまして、この際はどうしても林業の伸展にうんと力を入れなければならないと思うのであります。  この林業方面に科学の力が——まあ十分でないと思いますが、しかしこれは決して不可能ではないのでありまして、私は、林業試験場を見まして実は驚いておるのでありまして、品種改良にいたしましても、日本のものの改良のほかに、海外の品種を入れて育成をしております。ことに驚くべきものは、話はこまかくなりまするが、松のさし木をやっておるのでありまするが、これはおそらくは世界的な発明であると思うのであります。そういうように、日本人のこの方面の才能は十分でありまするし、ことに日本人は稲作につきましては非常な発展をしまして今日に至っておりまするし、先般中曽根大臣の話を聞くと、原子力によって非常な増収ができると言われたのでありまするが、すでにもう林業試験場では原子力の試験をやっておるというような情勢でありまするから、わが民族の本来持っておりまする英知と技能に待つならば、林業の科学的技術的の発展というものは可能であると確信をしておる次第であります。  さらに、どうしてもこの問題を開発するには資本、すなわち融資であるとか、あるいは金融投資であるとか、あるいはまた、予算という方面に相待って力を入れなければ実現ができないと思うのであります。融資につきましては、すでに長期低利の金を得るように相当の力を入れて近年やっておるということはけっこうだと思うのですが、さらに一だんと力を入れなければならぬことは当然でありますが、さらに予算なりその他の面を見まするというと、すでに林業四十カ年計画を立てております。これは御料林の百年計画に比べると規模が小さいと思うのでありますが、しかし四十年で倍額に収入を増すということもけっこうなことでありますが、しかしその実施の状況を見まするというと、大体六割程度の実績しかあげていないということになりますると、非常に心細い。これは結局予算がないということに帰着するのでありまするから、この点につきましても十分の考慮を払っていただきたいのでありまするが、もう一つこの国有林野特別会計の問題であります。私、森林経営としては妥当な制度であるとは思いまするけれども、実際の運用を見ますると、あるいは収入をあげるに急である余り、たとえば木材の値段が下がったという場合にはどんどん切る、売り出す、また下がる、また切ると、結局乱伐ということになるやのうわさもあるのでありまするから、そういう見地におきまして、この実施に警戒すると同時に、特別会計というものを考え、ことにこれには公社の問題もありまするから、公社の利害得失等を勘案しまして、この問題も研究する必要があるのじゃないか。ことにまた、最近できました治山治水の特別会計に対しましては、国有林野の特別会計は大体現状維持というような線において進んでおられるようであります。こういうような機会に、国土保全あるいは国土利用という立場において、かかる予算の制度なりあるいは会計の制度なりについて再検討する必要があるのじゃないかと思うのであります。この点につきましては造詣の深い農林大臣の御所見を承りたいと思います。
  69. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 第一に、逆になりまするが、今回国有林野特別会計の中に治山勘定というものを設けたわけでございます。これが特別会計にならぬで中途半端なものじゃないかというようなお言葉のようでもございまするが、これは国有林野特別会計の中に勘定を、事業勘定と治山勘定を設けるということにいたしたのは、実質的にはこれは特別会計を二つ作ったということなんでございます。なぜそれじゃ別の会計にせぬかという点でございまするが、これは一つの国有林野特別会計の中に勘定を設けるということにしておいた方が、両勘定の中の財源を彼此融通するという関係、また両勘定の中の人をお互いに相協力してもらうという二つの見地から考えまして、別の特別会計を作るよりははるかに効用が大きいと、かような見地から、特別会計という独立なものを作るという議論もありましたが、特に私考えまして、これは国有林野特別会計の中の勘定の方がよろしい、その方が有効である、かように考えまして、さような措置をとったわけでございます。その方がよろしいのでございます。  それから公社にしたらどうかというようなお話がありますが、私自身といたしましては、公社というようなものの動き方を見ておりますと、なかなかよくなっておるところもありますが、ややもすれば民間会社あるいは政府直轄というもののいい面が生かされないで、悪い面が生かされるという傾向もありますので、この機構の変更につきましては、私はにわかにさような結論にはならないのじゃないか、いたしにくいのじゃないかというふうに考えておる次第でございます。  その他いろいろ御鞭撻いただきましたが、いずれもごもっともなことでございますので、私ども今後仕事をやっていく上において十分気をつけて参りたい、かように存じます。
  70. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 私は次に製炭業についてお伺いしたいと思います。薪炭は農山村の重要の燃料源であります。現金収入のおもなるものでありますが、すでに六百億円を数えておるといわれておりますが、しかしこの素材と薪炭林との生産比率を見ますというと、戦前とは全く相反しまして、今日は薪炭の量というものは、素材の半ばにも過ぎないというような状況になっております。これは結局消費者の生活構造が変化したということでありまして、この薪炭業の前途というものははなはだ暗いものがあるといわなければなりません。なかんずくこの炭は、製炭は、生産については、最も安い値段であり、消費者からいえば一番高い値段だというようなこともいわれておりまして、まさに斜陽産業といっても仕方がないじゃないかと思うのであります。目下製炭に従事している人は全国に二十万世帯を数えておりまするし、そのうちで専業というものが一万三千くらいの世帯といわれております。その兼業と申しましても、ほんにこれは零細農家の兼業であって、製炭に関係のある者は全部、言葉は少し言い過ぎるかもしれませんが、これは細民といってもいいのじゃないかと思うのであります。しかもその労働たるや実にこれは重労働中の労働だと思います。未明に起きて、そうしてかま場に行き、そうして夜おそく、しかも重い炭を担いでとぼとぼと細道を、一歩あやまれば谷底に命を落とすというような道を急いでうちに帰る。うちに帰っても別に楽しみもなければ、非常な貧しい生活をいたしておるのであります。お医者さんは遠く、学校も遠い。こういうような生活で、現在では協同組合との関係もあまりよくいっておりません。しかもこの仕事の前途というものは、いわゆる斜陽産業ともいわれるべきものであって、まことに私は気の毒な状況にあると思うのであります。都会の労働に従事しておる人にもずいぶん気の毒な人がありますが、それと比較いたしましたならば、決してこれはほうっておくべきものではないと私は痛感しておる次第でございます。  御承知通り、スイッツルの農業基本法の第二条には、農民は都会と山村とを問わず、皆りっぱな生活のできるように保障されることが規定されまして、スイッツルの山村は実にりっぱな生活をしておるのを目撃した次第でございまするが、そういうようなことを考えてみまするというと、わが国のこの製炭業に対してあたたかい手を打つということは、単に経済問題だけではなく、人道問題といってもよろしいくらいの問題であると思うのであります。でありまするから、これに対しまして相当の対策を練っていただきたいと思いまするが、これにつきましては、いろいろ当局におかれましても御意見があると思いまするが、どうしてもこの原木についてのことを考えなければならぬ。幸か不幸か、この原木は、パルプ材と非常に関係が多いのでありまするから、その競合も考えなければなりませんが、パルプ業との関連において、この問題を解決することも、一つの方法でないかと思うのであります。それからまた、どうしても転業させなければならぬという問題も起こってくるでしょうが、これはただいま申しました。パルプ業なり、あるいは合板業なり、あるいは製材所というようなものとの関連において転業等も考える必要があるのじゃないかと思いまするし、ことに今日の化学の進歩によりまして、炭の用途について、また考えてよろしいのじゃないかと、かつて製鉄業にだいぶ使ったのでありますが、コークスのために、ついに駆逐されたというような状況でありますが、要するに、新しい化学工業等において、炭を使う販路を見出してやるということも、これは非常に困難だとは聞いておりまするが、考えていただかなければならぬと思います。  要は、この斜陽産業、あるい日常非常な苦しい地位にあり、しかもその人は山林の開発には先駆者であり、前衛隊というべきものであって、この存在を無視するわけには参りません。それでありまするから、われわれは、わが同胞の中に、こんな苦しい生活をしている者があるということを強く叫びまして、そしてこの問題に対する当局の御意見を承りたいと思うのであります。
  71. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、常々戦後の緊急開拓者、また零細な沿岸漁民と相並びまして、ただいま御指摘の製炭業者、これは農林当局といたしましても、特別の考慮を加えなければならぬと、かように考えてきておるわけでございます。  お話しのように、昭和三十二年におきましては二十万人、二百万トンの木炭を生産をいたしております。ところが、その翌年、三十三年になりますると、それが一挙に一割も生産が減少するというような状態でございまして、私どもといたしましても、それをどういうふうに今後措置していくべきかということに苦慮いたしておるわけでございます。それで、まあ家庭用炭としての需要は、ガスや電気に相当押されておりまするが、それにいたしましても、根強いものがあります。これに対しましては、どうしても、このサービス面の改善をしなければならぬ。たとえば炭俵というのが、長い間使われておりまするが、そういうものをビニールにかえて、家庭の者があんまり手をよごさないように、あるいは山元から、もうすでに直ちに使えるというように、まあこまかく刻んでそれに包装するとか、いろいろそういうサービス面の改善ということも必要かと思うのです。  それからもう一つは、石炭の需要が時期的に非常にじぐざぐがある、さようなことを考えますると、どうしても値くずれになる傾向が不需要期には出てくるわけでございます。これに対する対策を講じなければならぬというので、組合等と相談をいたしまして、さような面の対策もやっておるわけです。  同時に御指摘の他の産業との抱き合わせということも考えなければならぬ。その第一は、パルプ材でございます。これは大いに今後考えていかなければならぬというふうに考えておる次第でございます。パルプ材のみならず、あるいはシイタケ産業など、キノコですね、これとの抱き合わせというものを考える。さらに植林業との抱き合わせということも、きわめて重大な問題であるというふうに考えるわけです。それから製炭業者の大部分が、これは農業を兼営しておるのです。ですから、農家の再建問題との関連におきまして、いろいろと施策を講じなければならぬという問題があるわけです。また製炭を容易ならしめるために、政府が特別の助成をしなければならぬということも考える必要がありますので、だんだんと奥地林を使うということになりまするが、その際の林道の問題、あるいは昭和三十五年度の予算でもお願いをいたしておりまするが、ケーブルを引いて、これを助成するというような問題、いろいろのことを考えまして、まあこの心配をいたしておる問題が、早く明るい見通しを持つようにと、かように考えておる次第でございます。
  72. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 先刻、総合開発計画を立てることの急務であることは先ほど申し上げたような次第でありまするが、これには、どうしても前提として、土地利用区分を早くきめなければなりませんが、これは農道との、林道との関係において、相当困難な問題があるように聞いております。  それで、私はこういうような二つの関係を考えまして、樹木農場地帯ともいうような地帯を広く設けまして、林業につきましては肥培管理をやって、もっと集約的に林業を進ませると、同時に、たとえば果樹園のようなものは、たとえばクルミとか、あるいは柿、栗というようなものを、できるだけ山林の方に持っていくように指導するとか、あるいはまた竹をそっちの方に持っていくとか、あるいは最も考えてみたいと思いますることは桑園の問題でございます。日本の養蚕業は、今大いに考えなければならぬたくさんの問題はありましょうが、それの一つは、私は従来、靴下本位の製糸はこの際よほど考えなければならぬ。そうしまするというと、昔のように山桑なり、あるいは立木の桑を使うということも考えてよろしいのです。ことに最近は、醋酸系統の糸の混紡が大いに歓迎されておるやに聞いておりまするが、そういうような産業界の趨勢考えまするというと、養蚕部門を相当山林に吸収することができるので、それにはどうしても、ただいま申しました樹木農場地帯というようなものを広く設けてみたらどうかと思うのであります。もちろんこれは民有地がだいぶありまするから、このためにはまたいろいろの法律の制定等も必要でありましょうが、そういう構想を持つことが必要ではないかということが一点。  さらに、これは山林全部を通じてでありまするが、何と申しましても、私は、この林道というものを十分に作らなければいかぬ。もうすでに、相当作りまして効果をあげておりまするが、それは、すべての山林業に共通の大問題と思いますから、一そうこの点に力を注いでいただきたい、こういう自分の希望を申し上げまして、御所見を承りたいと思います。
  73. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 林業につきましても、適地、適産と申しますか、さような考え方を大幅に取り入れていかなければならぬというふうに存じておる次第でございます。  すでに林野庁におきましても、さような考え方で、まあモデル・センターとまではいきませんけれども、林業試験所を中心といたしまして、さような施策を進めておる次第でございます。  また桑なんかにつきましても、これはやはり適地、適産というようなことで、集団桑園ということを三十五年度の予算でもお願いをいたしておりまするが、さような考え方をとり入れなければならぬ。ことに日本にない外国の品種なんかを導入する余地もあるように存ずるのでございまして、さような品種の改善と相まって、適地適産の考え方を進めていくべきである、かように考えます。
  74. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 国土の保全の問題といたしまして、地盤沈下の問題についての政府の御所見を承りたいと思うのであります。  わが国においては、御承知のように毎年各地に地盤沈下の問題を起こしまして、ずいぶん大きな問題として注目を浴びておりまするが、これは決してわが国だけの問題ではなく、諸外国におきまして、たとえば米国とかメキシコ、イタリア、オランダ、あるいはベネズエラというような各地にも、このような問題かあるのでありまして、これは世界的の大問題とも考えてよろしい。また文化の進展の道程において、この大問題に直面するという運命を持っておるやに考えられるくらいの世界的大問題であると、こう思うのであります。ことにわが国のような狭い土地に住んでおる国は、どうしても工場敷地なり、住宅というようなものが自然、海岸の干拓地であるとか、埋立地に集中するということは免れない情勢であって、この沖積層に、こういう建造物をやる場合には、必ず沈下問題に逢着すると思いまするし、また大規模の干拓は、ぜひやらなければならぬのでありまするが、八郎潟にしても、あるいは有明湾にしても大規模な干拓等になりまするというと、相当技術的には考慮を払っておりまするが、長い間には、また沈下問題に逢着するということを想像できるのであります。  また地下資源、工業用水というような問題にかんがみましても、やはり鉱工業の発達の道程においてはこの問題に逢着すると思うのでありまして、ますますこの沈下問題というものは、将来日本に多く出てくるものと、かように私は考えておる次第であります。  それでありまするから、今より政府は、これを大きく取り上げましてこの対策を考える必要があると思うのでありますが、しかしこの問題は、原因については非常に区々であるように思われまするし、その探求もまた決して容易でないと思います。また、この被害の影響は、徐々に表われるのでありまして、その調査にも相当年限を要すると思います。また、対策も、原因が違うように区々であって、かつこれは、多くは特殊の工事になると思います。従って、そのうちには、いわゆる試験的の施工というようなことも、必ずや相当あると思うのであって、こういう点から考えまするというと、普通の土木公共事業というような確実性のあるものとは、だいぶ違ってくるんじゃないかと思われます。  それからまた、この被害の区域というものは、広範にわたっておりまして、役所から申しまするというと、所管役所がずいぶん違っておるということが実際だと思うのであります。  まあ、こういうような点から考えましては、私は国土保全の見地に立ちまして、普通の土木事業と性質を異なるものでありますから、国が統括をして、その責任において調査するなり、あるいは設計をするなり実施すべきものと思うのでありますが、また工事費におきましても、これは、なかなか巨額を要するのでありまして、これを地方団体の、すでに困難をきわめておる地方自治団体の負担にまかせるということは、実際においては酷なるものも必ずあると思うのでありますし、またその地盤沈下の原因につきましては、あるいは政府の行政行為の結果、つまり行政行為に直接、間接の関係を持つものもあるだろうと考えられるのでありまして、かれこれ考えてみまするというと、この種の事業は、国において責任を持って原因を調査し、施工を考えてこれを実施して、そうして国の負担においてやっていく大問題であると、かように考えます。  言いかえますれば、原則としては、これはどうしても国の仕事として、国の経費において実行すべき工事の性質のものとかように考えております。国土保全が大きく叫ばれておるとき、日本の国土が狭く、しかも文化の進展は、必ずや逢着すべきこの沈下問題について、私はぜひ国の力において、国の負担において実施していただきたい。かように考えておるのでありまするが、この点につきまして企画庁長官の御所見を承りたいと思います。
  75. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) お話通り地盤沈下の問題が、今日の国土保全の上から重要な問題になっております。  最近における工業用水の汲み上げあるいは新潟の天然ガスなどからして、地盤沈下の問題を早急に解決しなければならぬということになっておりますが、これは各省が関係しておりますので、総合的に経済企画庁で地盤沈下対策審議会を設けまして、そこで対策を練っておるのであります。先般もそれの答申案を得たのでありますが、そこで、この地盤沈下の調査につきましては、これは全部国費でまかなっております。三十二年から三十四年までに、新潟の問題については一億二千万円の経費を出しておりますが、全部国費でまかなっております。工事費につきましては全部国費でまかなうかどうかということは、これは問題かと思います。その点につきましてはお話通り、地方公共団体で、これを負担するということは、非常にいろいろ問題があると思いますが、目下その問題については関係方面において研究中なのであります。  またこの地盤沈下の原因につきましては、いろいろ原因によっても、また政府のこれに対する補助ということも考えていかなければならぬのでありますので、地盤沈下の原因の点については、もう少しわれわれも知りたい、こう存じておりますので、その上でこの地盤沈下対策の根本問題をきわめまして、できれば、政府提案でこの法案を出したい、こう考えておる次第であります。
  76. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 地盤沈下に苦しんでおる各地は、私も実地に調査したのであって、実際急な問題であると思いまするから、急速に、この問題に進んでいただきたいと思います。  何と申しましても結局は、やはり財政にも関係するのでありまするが、幸い大蔵大臣は、先ほど、土木事業よりも飛躍して国土保全に非常に力を入れておられるのであって、この問題にも、必ずや共鳴していただけると思うのでありまするが、この場合、私は菅野長官と同じように、この問題に非常に熱意を持って、しかも好意を持って、この問題の解決に邁進していただきたいことを希望いたしまして、この際、大蔵大臣の所見を承りたいと思います。
  77. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 地盤沈下につきましては、小柳委員も御出身地が御出身地でありますだけに、大へん関心が深いと思いますが、私は、かつて大阪にいたことがありまして、関西地方の地盤沈下をまのあたり、みずから十分調査もし、視察をしたこともございます。また新潟につきましても、昨年でしたか参りました。また東京でも、同じような悩みがある。ところが最近の産業が興り、あるいは地下水汲み上げ等、いろいろ必要なる事業の結果、地盤沈下というものが生じておることもあるようであります。ただ単に自然現象のみと言えないものもあります。  従いまして、この地盤沈下対策が住民に対して不安を与えるようなことがあっては相ならないのでありますから、そういう意味において、万全を期していかなければならない。よく原因を探求し、またその原因を探求いたしましても、必要な産業は、どうしても興していかなければならなぬ。それらの点も勘案いたしまして、両々相待って、住民の不安を除くような対策を講じていきたい。御指摘ように最終的には財政支出の問題になりますので、大蔵当局におきましても、十分それらの問題も勘案して、善処して参る考えでございます。
  78. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 もう時間もだいぶ過ぎたようでありまするから、文部省につきまして、少しく項目的にでも、御所見を承りたいと思います。  青年に希望を与えるということは、おそらくは各方面に言われていることであって、われわれも当然のことだと思うのでありますが、しかし青年に希望を与えるということは、これは大きく言いますならば、宗教上の問題もあり、哲学上の問題もあり、道徳上の問題もあるので、なかなか容易でないとは思います。しかしながら放っておいてはいかぬ問題だと思います。できるならば、文相のその辺についての所見を承りたい。  しかし、それよりも、私はこの青年の希望につきまして、最もこれを現代において虫ばんでおるものは、第一は進学、好学の青年についての入学試験の問題と思います。入学試験の問題については、ずいぶんいろいろ考慮されておりまするが、今日は、各家庭においては、ほとんどこれはもう家庭の悩みといってもよろしい社会問題と思っております。でありまするから、容易でない問題とはいいながら、これについて十分なる考慮を払っていただきたい。  第二の希望を虫ばむものは、勉学の問題であります。言いかえれば、学費の問題であります。幸いに、育英会も相当発達したのでありまするが、しかしまだまだ容易じゃないのであって、都会における学生の大部分というものは、アルバイトと称することとをやっております。これはなかなか大きな問題だと思うのでありまするが、文部省においては学徒援護会にこの仕事をまかしておるようでありますが、もっともっと、これは大きく組織的に取り上げて、このアルバイトに便宜を与えるようにしなければならぬのじゃないかと思うのでありまするが、その点について文部省の所見を聞きたい。  それから第三に、またこれも青年の悩みであるのは就職の問題であります。これは雇用問題にも関係するのであって、文部省だけの問題ではないかもしれません。しかし文部省といたしましても、民間人との協議会ですか、設けてやっておりまするが、これをもっと組織的に文教の一環として考えてみなければならぬと私は思うのであります。従来、この文教は、いわゆる教授、訓練ということに重点を置いておったのでありまするが、戦後の文教のあり方は、さらに学生、生徒の生活ということに重点を置かなければならぬことになったと思うのであります。そういう見地におきまして、この入学試験あるいはアルバイト、あるいはまた就職の問題についての御所見を承わりたいと思います。
  79. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 何と申しましても、将来、次代をになう青少年の将来は、いろいろ重要な国の問題と考えておるわけでありまして、ただいまいろいろ御注意下さいました点は多岐にわたりまするが、私どもの考えといたしまして、青少年の問題、今日やかましいその青少年の不良化という面からのみこれを見まするならば、まことに憂うべき問題はたくさんあるのであります。しかしこれは日本のみならず、世界的にも、いずれの国においても大きな問題の一つとして、これに対するいろいろな対策を講じておるわけであります。しかしこれを青年全体として見ましたときに、私は、わが国の青年はきわめて健全、明朗であって、実に将来を託するに足るものが多いということを確信する者の一人でありまして、私も長年青少年の学校外の人々と会う特別の仕事を扱ってきたわけでありまして、この問題に対しては、私自身もきわめてこれを重視し、またこれに対する対策に対しても熱心にやって参っておるわけであります。要は、青少年はきわめて一面感受性は強い、また精力旺盛である。しかも今日の社会はきわめて刺激の強い社会である。もしそれ青年にしてひまな時間が多くて、人心うんでいるときに、多くの刺激を受ける場合には、直ちにこれが不良化の方向に向かっているというような事態が見られるのでありまして、どうしてもこのひまな時間をフルにあらゆる機関を通じ、あらゆる設備、機会を与えて、若き人々の心をしてうまざらしめないようにするということが最も大切であると私は考えるわけであります。それで、文部省といたしましても、いろいろこれらに対して、それぞれ施設を充実いたしまして、この青年の人々をしてひまな時間がなく、十分にその精力をフルに活用して、その不良化の余地なからしむるというふうに持っていかなければならぬ、こういうふうに考えております。  今、第一に御指摘になりました入学、いわゆる試験地獄の問題、これは相当長い間やかましく言われている問題でありまして、この問題につきましては、実際、これを一気に解消してしまうという名案も持ち合せておらん、それはけしからんじゃないかとおっしゃいますが、もしそれ、そういう名案がありましたならば、これを採用するにやぶさかではないのであります。しかし、文部省といたしまして考えておりますところは、まず、大学の入学試験については、次のような策を考えているわけであります。大学の学生の収容力の増加は、これはばかっていかなければならぬ。とりあえず、できるだけ増加をはかっていく。また、大都市の有名校にばかり集中するという点、この点を何とかして緩和していく。そのためには、まず地方にそれぞれ特別の交付というか、地方の大学を充実することによって、それへいくらか引きつけていくというような考え方も持っているわけであります。またさらに、大学卒業生の就職試験にあまり差別をつけてもらわぬようにしていかなければならぬ。これもむずかしい問題でありますけれども、そういう方針をもってやっている。さらに、高等学校における適切な進学指導をすることによって、その緩和をはかりたい。入学試験の選抜方法などをまた改善していきたい。高等学校なんかの入学試験の問題について、その解決をはかるためには——高校進学希望者の合格率は、大体三十四年は非常にいい成績でありまして、九四%まではみな入れているわけであります。だから、案外——昨年は一番いい成績でありましたが、今年度、中学校の卒業生は二十万人減っている。明年度は三十六万人減っていくというような状態になっておりますので、競争率は、この点については緩和する。もっとも、それから三年後にはまた一時ふえるということになりますから、これに対しては今日からいろいろ対策を講じてこれに対処したい、こういうふうに考えているわけであります。  またさらに、アルバイトの問題でございますが、アルバイトを必要とする大学の学生数は、約二十二万人、三八%であります。アルバイトに従事する者が約十七万人、右の八〇%、それから職種をあまり選ばなければ、大体そういうふうでありますから、希望は満たせていけるということになっております。お話しの学徒援護会、これにつきましては、全国に八カ所、学生相談所を設けて、学生に対する内職のあっせんをいたしているわけであります。それからまた、全国十一カ所に学生会館を設置いたしまして貧困学生に対して宿舎を堤供するということもやっているわけであります。それから簡易な職業補導、保健、診療なども行なっているわけでありまして、これに対しての補助金も五千七百万円、実績は、大体年間十六万人くらいに内職を与えている、こういうふうな状況でございます。  就職の問題でありますが、これにつきましても、私は、日本の国民がすべてまず大学教育を受けたい、大学に進むという日本の国民の自負は外国に比して一そう強いように思われる。この向学心はまことにけっこうなことと思いますが、しかしこの点につきましても、私は高等学校から大学に入れない者も半数近くあるのでありまするが、しかし、大学に進み得ないで、早く実社会に出た者、そうして、実社会において実際の人生経験を経た者が、必ずしもおくれをとる者ばかりとは考えられないのでありまして、むしろ大学三年やって出てきたときに、早く三年前に実社会に出た者が、むしろ優位な地位にあったということも往々あるのでございまして、人生に対するものの考え方、大学に行く者はけっこうだ、ところが、大学に行くのに、必ずしも適さない人間もある。むしろ、実社会の経験も積んで、その修練を通じて、人世に新しい道を展開されるという場合が多いのでありますから、私はこういう点についてのものの考え方も、やはり持っていかなければならぬじゃないかというふうに考えているわけであります。むろん学校に入って、大学に入っても、アルバイトをやり、あるいは何かして、その勉強するさまは、まことに頼もしいことでありますけれども、また、それと反面、違った方面で、かえって三年間いたずらに時を過ごして、必ずしもいい結果にならない場面もあるのであります。でありますから、この大学の卒業生の就職という問題は、むろんわが国の経済拡大、長期経済計画と密接な深い関係にありますので、これと見合って、そうして、時代のこの要求に応じて、そうして、その時代の要求にマッチするような、やはり指導をして、その学科等についても、それぞれその時代の要求に応じたもので養成していく、こういう考え方を持っているわけでありまして、大体その就職の困難は、どうしても雇用量の増大、そうして、やはり人生観に対するものの考え方ということも、あわせて考えてやっていってもらわなければならないと、かように考えております。
  80. 岩間正男

    ○岩間正男君 関連して……。今の問題に関連して、ちょっとお伺いいたしたいのですが、福岡県だったと思いますが、中学校で入学組と就職組が卒業まぎわに大げんかをやったということが、最近の新聞に伝えられている。非常にこれは教育上重大な問題だと思うのです。従って、この問題に対しては、文部大臣としては、一体この原因はどういうところにあるのか、そうして、これに対して、どういうふうな対策を考えられているか、とにかく入学偏重ということは、非常に最近の教育傾向になってきております。狭い門をくぐるために、あらゆる犠牲を払っても入学の準備をする。全く、これは戦前の体制に戻りつつある。実に憂慮すべき重大な問題である。教育の機会均等ということを言いながら、実際はこれは守られない。ここに根本の原因一つあると思う。従ってそれに偏重するという点から、就職組の方はどうしても等閑に付せられる。従って卑屈観が出てくる。そういう点が非常に問題になっておると思います。こういうような点から考えて、この一つ現象は、単に一つ現象じゃない、至るところでこのような問題を伏在しておるというふうに思うのです。従って文教政策の根本に触れる問題でありますが、文部大臣としては、こういうふうにこの問題をつかんで、そうしてこの根源はどこにあるのか、これに対してどういうふうな一体対策を考えなければならぬか、どう考えておられるか、その点についてお伺いしたいのであります。
  81. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 福岡県の問題については、私は事情をつまびらかにいたしておりませんが、就職難の原因としてそういう問題が起こった事情を一つ調べて適切な対策をいたしたいと思いまするが、その根本原因はどこにあるかと言われるならば、これまた先ほどの話に戻るようでありますけれども、私はこの青年には一つ、小柳委員からも先ほど指摘されたようでありまするが、二十才前後の青年に対してはいずれの国においても、外国の国におきましても、宗教、教育などの関係もありまするが、わが国においても、往時においてはやはりいろいろの精神生活をするの機会があった。そういう機会においては青年はいずれも人生の問題を深く考え傾向にあった。近年はむろんマルキシズムを研究し、思想的な方面を研究される方もたくさんあるでありましょうけれども、多く私は今日は一はスポーツその他そういった体育関係に興味を持ち、一はまた音楽、歌といったような情操関係の問題に非常に興味を持つようになっておるのでありますが、こういう面については、やはり文部省においても、青年指導のために研究会なり、ゼミナールなどをやって、そうした原因についてそれぞれ研究をし、思索をする機会を与えることによって、その一つの方策として立てていきたい、かように考えておるところであります。
  82. 岩間正男

    ○岩間正男君 もう一つだけ。
  83. 小林英三

    委員長小林英三君) 岩間君、簡単に。
  84. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも今の御説明ではピントをはずれているのではないかと思います。これは急の関連質問でございますから、私はここでこれ以上追及しませんが、この問題はやはり研究していただきたいと思う。これは学校が不足だということ、それにもかかわらず、非常に進学の率が盛んになってきている、就学難になっている。この問題をやはり満たすという点に私は根源があると思う。この問題をやはり政治の上で解決するというのが文部大臣の、文部省の任務であり、政府の任務と考えるのです。従ってこの問題、これは別な機会でようございます。また私もいずれ別な機会に質問しようと思っております。至急この問題は調査してこの委員会に報告してほしいと思うのですね。これはやはり今のような答弁で、青年は娯楽を愛好するとか、スポーツで非常に成功しているとか、そういうような点だけでは学生の根本、教育政策の根本に触れた私は御答弁とは思えません。むろん急のことでございますから、他日を期してこの御答弁を願いたいと思いますが、その点お願いしておきます。答弁ございましたら……。別に答弁いただかなくてもけっこうです。
  85. 小柳牧衞

    ○小柳牧衞君 もう時間も迫ったと思いますが、もう一問いたします。ただいま入学難、アルバイト、就職等について御所見を承りましたが、これはなかなか容易じゃない問題と思います。衆知を集めて慎重に研究して果敢に実行していただきたい、かように思います。この問題の名案はなかなかないと思いまするが、私は一つとして、定時制の学校を利用するということが必要じゃないかと思うのです。御承知のように、定時制は非常に志願者が少ないのであって、これを利用すれば入学難もよほど緩和される可能性があるんじゃないか、また平素職業に従事しておりますから、それからアルバイトの問題は解決済みです。また就職の問題は、卒業後別な地位を得たいという人は別ですが、またある一部は就職の問題もそれによって解決するのではないか、これは一つの重要な学校制度と思うのです。しかしこれにつきましてもいろいろの問題もあります。がしかし、一つは予備校的な性質と、一つは官制教育の学校としての見地においてこの学校の充実を期しまして、今日青年の希望を虫ばむものを幾分なりとも緩和していただきたいと思います。今度の予算におきましては、多年の懸案でありました定時制高校の職員の待遇を改善させていただきましたが、さらに進んで定時制高校の振興について一段と努力をいただきたいと思うのであります。これは私の希望であります。  この際、一つ御所見を承りたいのは、科学技術の振興について教員の非常な欠乏を今日来たしておると聞いております。文部省は三十七年度を期して中学校並びに高等学校の技術教育の振興をはかっていく、これはまことに時宜に適した処置だろうと思いまするが、しかし学校制度に手をつける場合には、どうしても教員の問題、校舎の問題、教科書その他の学用品の問題を準備すべきことは、これはもう公式だと思います。従って文部省におきましても、この制度を拡充するように考えられた以上は、教員の養成についても考慮されていると思いまするが、今日、大学においても、機械とか、電気というような教職にある人はごく少ないのであって、非常に困難を来たしておると聞いております。さらにそこを卒業した学生はほとんど大部分は民間に行って、学校の先生にはならぬというような情勢であって、ますますこの問題が困難になってくる。昨年来、文部省は研修会のようなものを設けまして、即時、教員の養成に従事しておりまするが、まだまだ足らない。ことに地方におきましては、科学技術とは申しながら、大部分は農業系統の職員であるように観察されます。従って機械とか、電気とか、土木というようなものには非常に手薄であると思うのであります。かつて臨時教員養成所というようなものがありまして、教員養成に当たった時代もあります。最近、府県におきましては、高校の先生を養成するために特別の機関を作っておる県もございます。何しろこれは非常な急務中の急務であると思います。もし教員を得られなければ、いかに制度の上においては科学技術の振興をはかるといたしましても、その実ははなはだ貧弱なものになると思うのでありまして、これはすでにいろいろ御計画とは思いまするが、この機会に希望を付して、そうして御所見を承わりたいと思います。
  86. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 入学試験の問題は、やはりこれは学校施設をふやしさえすれば、それで一番簡単に解決できると一応は考えられるのでありますけれども、私学で大学教育を担当しておる面もたくさんありますので、その経営上、際限なく施設をふやすということのみによって、これを解決するということもできないであろうと思います。それで、とりあえず施設をふやすということも、逐次ふやしていくという考え方は持っているわけであります。これによって一面その解消をはかる、こういうふうに考えておるのでありますが、しかし今日の時代においては、ほんとうに向学心の強いものが、定時制なりあるいは通信教育なりその他あらゆるやはり機関というものがあるのでありますから、十分にこれらを利用する場合におきましては、きわめて私は能率的に学問をしていく道が開かれておると思うのであります。そういうわけでありまするから、この定時制のごとき、あるいはまた通信教育のごとき、いろいろテレビジョンなども活用して、特別番組をこしらえて、技術課程においてもわかりやすく、よい先生をこの場合には一人のよい先生でよいのでありますから、よい先生を選ぶということもできますので、こういう点でもいろいろ工夫をいたしまして、その強い今日の要請に応じていきたいと、かように考えておるわけであります。  なお、科学技術課程における振興、これをはかるためには、どうしてもよい教員を養成していかなければならぬということはごもっともでありまして、教員養成に対しては、毎年千数百名の教員を養成いたしておりまするが、採用しておるのが二百五、六十名であります。従って量の上においては大体要請を満たしておるわけでありまするが、質の点においてやや心配な点があるのでありまして、しかも一面において、実業界において多くの優秀な科学技術の先生になるべきような人がまあ吸収されていく、それは待遇の問題が主として作用しておるのであろうと思いまするが、その点におきましても、むろん教員の待遇を改善していかなければならぬと思いますが、現在は初任給からいろいろ手当等も入れまして、一万三千円くらいになっておると思いますが、民間との差額は二千二、三百円程度であります。それでもやはり実業界へ引っ張っていかれて、学校にはよい先生が足らぬということは、これはまことに憂うべきことでありまするから、今後、養成の面にも力を入れ、さらに待遇の改善等もはかって、必要なる教員を満たしていきたい、かように考えます。
  87. 鈴木強

    ○鈴木強君 関連して。文部大臣、今の関連で就職のことですがね、たとえば定時制の卒業生を求人側ではどうも喜ばないんですね。そういうことで、せっかく貧乏人は大体定時制に行くんですから、確かに才能を持った者が、定時制を出たということだけで就職の機会が狭まっていく、こういうことが多い。それからもう一つは、たとえば高等学校を卒業しましても、親が片親という場合ですね、特に未亡人あたりで育った子供、お父さんがない、そういう人たちの優秀な子弟がどうも求人側から見ると好まれない、こういう現象が出ていると思うんですね。これは私前から非常に矛盾を感じ、重大問題だと思っておったんですが、いい機会ですから一つ承りたいんですが、こういう問題に対して、何か文部省として日経連か何かわかりませんが、そういう雇用主に対して何か施策をやっておられるのでございましょうか。やっておられましたら、その経過をお聞かせ願いたい。
  88. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 確かに就職にあたって、昼間の学校と定時制の学校の間に差別をつけるというようなこともあるようでありまするし、これは困ったことであると思いまするので、そういう差別をつけないように、使用者側にいろいろの手段をもってそういう考え方を改めてもらうようにと、また一ぺんの就職試験によって、人間の資格、素質というようなものをきめてしまうということも、使用者側にとっても、それはそういうことより道はないのかもしれぬけれども、人間の価値を一ぺんの試験によって定めていくというようなことは、これはむしろ簡単に過ぎる、かように私どもは考えるのでありまして、お話のように、使用者側については、特にむしろ定時制などを経て働きながら勉強してきたような者に、かえって優秀な者もあると思いますので、そういうふうな使用者側の考え方に対して、これを変えてもらうように、いろいろ工夫して、その注意をうながして参りたい、かように考えております。
  89. 鈴木強

    ○鈴木強君 片親の方は……。
  90. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 片親の場合も、これは一種の偏見というか、たとえば片親で満足な家庭でないところで育った子供は、あるいはひがむというようなこともあり得ると思いまするけれども、しかしかえってそうした境遇に育った者こそ、ほんとうに私は優秀な者が出る場合が多いので、この点についても、特に使用者側の注意を喚起したいと思います。
  91. 鈴木強

    ○鈴木強君 したいのですか、しておるのですか。
  92. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) しておると思います。機会があれば。たとえばまあ高等学校の卒業生の試験についても、時期の問題やなんかについて非常に使用者側からの考え方にあまり片寄り過ぎているということに対して、特に注意をうながしている、機会ある、ことにそういう考え方を是正してもらうように注意はしてきておる次第であります。
  93. 小林英三

    委員長小林英三君) 午後は二時から再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後一時十一分休憩    —————・—————    午後二時十八分開会
  94. 小林英三

    委員長小林英三君) これより委員会を再開いたします。  午前中に引き続きまして、質疑を続行いたします。永岡光治君。
  95. 永岡光治

    ○永岡光治君 冒頭、外務大臣に対しまして、日中国交正常化の問題につきましてただしたかったのでありますが、病気のため今出席できないというので、非常に残念でございますが、一応他日に機会を譲りまして、次の私の予定をいたしております質問に入りたいと思います。  所得倍増論、これは本委員会で詳細にわたって討議されましたが、まだ若干私ども疑問に思っているところがありますので、ただしたいわけでありますが、その第一点は、この所得倍増をして参りますときに、物価は大体横ばい状況だ、こうまあおっしゃっておるわけであります。しかりとするならば、所得倍増における給与所得者、賃金所得者の傾向は不十分ながら大体説明を承ったのでありますが、農村における農家の収入です、農家の収入は一体どういう傾向をたどっていくのか。もとより、これは具体的に数字が出ておるとは私も必ずしも思っておりませんが、近いうちに結論が出て、しかも三十五年度から実施しようという政府計画でありますから、大体の構想は持ってしかるべきだと思いますので、その考え方をまずただしたいと思います。
  96. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 農村というか、農業所得の倍増につきましては、結局、農家の所得が倍にふえるということが終局のねらいでなければならぬと、かように考えておるわけであります。  農業生産につきましては、近時非常に成績がいいわけであります。ことに三十一年から三十四年までをとらえてみますると、四・三%の伸びを示しております。一面におきまして、農村から他産業に転出する人口の移動ですね、これがこの三カ年におきましては一・二%くらいなんです。でありまするから、それを考慮いたしますると、農家の所得は五・五%というような伸びを示しております。所得倍増計画におきましては、十年間で倍ということが一応話題になるわけでございまするが、その場合における年率は七・二になる。ところが、これは総生産伸びでございまして、一人々々の所得伸びではないのです。一人々々の所得につきましては、これは人口の要素、特に労働人口の伸びを加えなければならぬ。これを加えて考えますると、人口一人当たりの所得伸びは、倍ではなくて六割増しということになるわけなんです。さような際における年伸び率ですね、これは五%内外になるのです。でありまするから、他の産業と比較いたしまして、農村の、農家の所得がこれから均衡とれた発展をするかどうかということを考える指標といたしましては、この五%内外の年伸び所得が達成できるかどうか、この点を考えていかなければならぬ。  ただいま申し上げましたように、しかし、この三年間の調子ではそれよりやや上回る伸びを示しておるわけでありますが、しかし、今後のことを考えまするというと、そういう四・三%というような生産の面からの伸びが期待できるかどうかということ、私どももこの点非常に必配しておるわけであります。そこで、この点には特に意を用いなければならぬ。考え方の根本といたしましては、どこまでも農村における生産性を伸ばすということをあらゆる角度から努力をしていくわけです。そうして、これが人によりましては二・五%くらいであろうとか、あるいは非常に悲観的な見方をする人は二号だというような人もありますが、少なくとも三%以上の伸びを達成したいという意気込みをもって、今農政をやっておるわけでございます。しかし、それだけでは均衡とれた発展というのはできないのでございまして、どうしてもここに、農村が近代化されたその際に特に加重されるところの潜在的過剰労働力、農村のその過剰労働力を他の産業に秩序正しく転換するという方策がここに必要になってくるわけであります。それが二%くらいの率になりまするかどうか、そのくらいにいってほしいと思うのでございまするが、そういう率に相なりますれば、生産性の伸びの三%と相待って、他の産業と平均のとれた所得伸びを示してくれる、かように考えておる次第でございまして、まあ生産性の伸びと、経済発展に伴うところの他産業への人口の移動と、この二つを軸として、今後農村所得の倍増を進めていきたい、かように考えておるわけであります。
  97. 永岡光治

    ○永岡光治君 それで、私は具体的に一点ずつただして参りますが、農家所得の増加が、大体十年後、約六割程度と見ておるということでありますが、十年後には、農地が六割にふえるのか、あるいは米の値段が六割上がるのか、それとも、そうでなければ具体的にいろいろ指導をあなた方がされるというわけでありますが、どういう指導をして、その生産を、たとえばこういう方法、ああいう方法ということで伸ばそうとしておるのか、私のこの三つの端的な質問お答えいただきたいと思うわけです。
  98. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいまお話のようなことを考えておるわけじゃないのです。もっぱら農業生産をふやす、こういうことでございます。そして総生産の増加が三%以上に相なることを期待しておるわけでございまするが、それと並んで、人口の移動ということを考えておる次第でございます。すなわち、少数の農業人口をもって多量の農業生産をあげる、これに主軸を置いている、かように御了解願います。
  99. 永岡光治

    ○永岡光治君 そういたしますと、今の答弁では、今日のある一軒の農家が五人働いておった、それが年間十万円の収入だった。ところが、これは生産もいろいろな方法によって若干上がるのであるけれども、それよりは、むしろその何人かの労働者を他の産業に転換することによって、たとえば二人で、あるいは三人でその十万円の収入が上がるようにする、こういう計画所得倍増の計画だ、こういうふうに理解していいのかどうか。
  100. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そのウエートの置き方は、生産の増強が主でございまして、それに合わせて人口の移動ということを従として考えるということでありまするが、その二つが所得対策の主軸であるということはお話通りであります。
  101. 永岡光治

    ○永岡光治君 その総生産を上げるというのは、もう大よその結論も審議会では近いうちに出るはずでございますが、それを待つまでもなく、当然、私は所管の農林省においては計画をお持ちになっていると思うのでありますが、そういう計画を持っているとすれば、総生産の内容、上げる内容を具体的に少し示していただきたいと思います。
  102. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 在来の耕種と申しますか、農業の種目ですね、これはある程度能率を上げている面があるわけでございます。ことに米の生産のごときは、非常に最近能率の高いところの生産を示しております。しかし、一部、ことに麦でありますとか、豆でありますとか、さような面におきましては能率が非常に低い。そういう低い面につきまして生産性を上げていくという努力、ことにこれは外国からの輸入と関連をする重大なる意味を持ちますので、そういう努力を傾けていきたいというふうに考えております。このための施策といたしましては、土地改良事業でありますとか、土壌対策の問題でありますとか、いろいろ土地に関係したところの諸問題もあります。同時に、新しい農業の分野を開拓しなければならぬ。その分野は、私ども当面考えておるものは酪農でございます。これは私どもは非常に前途のある農業、新しい分野であるというふうに考えておりまして、これは特に力を注いでいきたい。  それから、もう一つは、砂糖を今一億ドル内外のものを輸入しているのです。国産の自給率が一割くらいでございます。しかも、輸入する先がキューバが非常に多いのです。キューバに対しましては、報償的に日本の商品が出ていくという余地も少のうございます。さようなことから考えますると、砂糖の自給化という政策、これまた新しい分野として進めていかなければならない。十カ年に大よそ総人口需要の五割程度のものを国内で充足したいというので、北海道初め内地各地にわたりましてテンサイの育成というものに着手をいたしておりまして、これは前途相当期待を持てると思います。それから、災害常襲地帯、いわゆる南九州初め、カンショを結晶ブドウ糖化するという作業、これが今緒につかんとしておりまするが、これが緒につくということに相なりますれば、この台風地帯の——まあ台風地帯ばかりじゃございませんけれども、主として台風地帯を中心としたカンショ農業というものの地位も安定してくる、こういうふうに考えるわけです。また、果樹ですね。これは品種によりましては相当輸出可能性を持っておるわけでございまして、これらも大いにやっていきたい。  これらをやりていくためには、やっぱり近代産業社会の特色である機械技術の力というものをこれに導入していかなければならぬというふうに考えておる次第でございまして、そのためには、果樹産業にいたしましても、あるいは酪農にいたしましても、農業の集団化、共同化という政策を進めていきたいと思っております。そしてその政策と並行いたしまして、機械力を農村にも導入する、またそれに見合うところの組織が農村にできてくることが好ましいというふうに考えまして、ただいま農業法人化の問題ですね、これを検討しておりまするが、これもまあ最終段階に来ておるのでございます。さような制席的な施策とも相待ちまして、農村は少数の労力をもってより多量の生産をあげることができる。その際における過剰労働力は、これを他産業に転換する。三十五年度の予算におきましても、生産性の向上というところに、予算の千三百億円ほどの主力を傾注しておりまするが、同時に、たとえば労働省というような方面におきましては、この農家の就業が転換しやすいようにという施策のためのいろいろな施策を講じておる、かような次第でございます。
  103. 永岡光治

    ○永岡光治君 まあいろいろ話は聞きましたけれども、どれ一つとらえてみましても、これはなかなか容易な問題ではないような印象を受けるわけでありまして、まあそれのみならず、これははたして農村というところの在来の収入が非常に少ないところへ持ってきて、その六割か七割程度では、所得倍増の期待が、この購買力の増強といいましょうか、拡大という面から考えると、大した、元が少ないわけですから、思い切った購買力を高めるための措置を講じなければならないと考えておるわけでありますが、その意味からいたしますと、私は、ただ抽象的、あるいはまたいろいろ計画を聞きましても、なかなか容易でないと思うのでありますが、かりに今おっしゃっているようなことを、計画を実際に移すといたしまして、そういう総合的な機関をどこか総合的に作る予定でございますか。これは企画庁長官の方がいいかもしれませんが、いつごろそういう機関ができて発足をするのですか。これはひとり農林省だけではありません。各省にわたってみな出てくることであります。あるいは中小企業にわたっても出てくるわけでありますが、いつごろ結論が出て、いつごろ具体的にそういう機関が発足をして、で、この三十五年度からあなたはやるというわけですから、相当なスピードをかけなければ間に合わないと思うのでありますが、そういう具体的なあなたの施策を一つ伺っておきたい。方策を聞かしてほしいと思います。
  104. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいまは企画立案の期間でございまして、まあ内閣を中心とし、経済審議会にお諮りいたしまして、これを検討中です。また、農林漁業政策は特に重要でございますので、昨年の国会におきまして御審議をいただきました農業基本問題調査会におきまして、あわせてこれをなお詳細に検討しておる、こういうことであります。これが検討が終わり、所得倍増計画として発表される段階は、まあ六月ごろというふうに一応想定をいたしておるのでございまするが、その計画が発表された後におきまして、何か実施上の特別の機関というようなお話でございまするが、ただいまのところそれは考えておりません。これは経済企画庁がその使命の重大部分の完遂のために当たられると、かようなことになると思います。
  105. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 国民所得倍増の長期経済計画におきましては、ただいまの農林大臣のお話がありました通り農業方面は農業基本問題調査会でまず調査研究してもらう。それからなお、エネルギー問題は、経済審議会の一部分としてエネルギー部会でやっておりまするし、租税問題は大蔵省の租税調査会でやっておりますので、それらの案ができるのと相呼応して、経済審議会においてやはり審議をして進めていくということで、私の考え方は、六、七月ごろまでにその具体策を作り上げたいという大体考えをもっていたしております。
  106. 永岡光治

    ○永岡光治君 私は、今のような答弁では、おそらく三十五年度から実施することははなはだ困難だろうという印象を強くするわけでありますが、それはさておき、一まず私は、物価横ばいという答弁でありましたが、私たちの知っておる限りにおきましても、私鉄の運賃の値上げに伴いまして、また国鉄の運賃を近いうちに上げるのではないか。地下鉄の運賃も上がるようです。電気料金も九州電力から値上げの申請が出ておるようでありまして、それにつきましても六・五%から一〇%値上げだという。公衆浴場につきましても、これも十六円を二十六円にしろという。先ほど申し上げました地下鉄の場合でも、二十円を二十五円にするというような動きがあるようでありますし、そういうことになりますと、私は、物価横ばいしないで、結局、所得倍増といいながら、実際上の収入は、物価が上がることによって大した倍増にならぬ。数字の上での倍増と、こういうことになりはしないかと思うのですが、そうでないというあなたの確信がある答弁をいただきたいと思います。具体的に例を示しまして。
  107. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 昭和三十五年度の物価の指数は大体一・一%上昇するという計算をいたしております。で、なるほど個々の問題については価格の値上げがありますが、また中には値下げするものもあると思うのであります。たとえば、今日では繊維品とか鉄鋼とか値下がりしております。でありますからして、その全体的な意味で一・一%の値上がりというように計算いたしておる次第であります。
  108. 永岡光治

    ○永岡光治君 その点については非常に疑問がありまして、ここでただしたいのでありますが、時間がございませんので、次の問題に移りたいと思います。  次は郵政大臣にお尋ねいたしますが、(木村禧八郎君「関連」と述ぶ)関連があるそうです。
  109. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連して。所得倍増の今御質問でございまして、これに関連して簡単に政府に伺っておきたいと思うのですが、政府にこの所得倍増の構想というのが一体あるかないか。で、総理大臣の施政方針演説におきましても所得倍増に触れており、三十五年度予算の提案理由にも、触れておるのです。で、ただいま永岡君の質問に対しましても、農林大臣は、この農業生産あるいは農業所得における所得倍増について御答弁があるのですね。ところが、それでは具体策いかんという質問をすると、これは経済審議会に諮問してこれから作るのだというのでしょう。これから作るというのにですね、それで所得倍増構想というのはないのに、この予算の提案理由や、それからわれわれ委員質問に対して、あたかも所得倍増構想なり計画があるかのごとく答弁されているのですよ。私は非常にその点おかしいと思う。  農林大臣の御説明ありましたが、農林省だけの問題ではないのです。農林大臣の、農家の農業生産なり農業所得の倍増につきましても、全体の所得倍増の総合的な計画があって、その一環としての農業生産なり農業所得の倍増でなければならぬ。ところが、総合的な構想に対しましても、構想すら政府は何らこの説明がないのです。そうして所得倍増の基盤を育成するのだ、三十五年度予算は、その基盤を作るために予算を計上していると言っているのですが、構想がなくてどうして基盤の育成なんかできるのですか。おそらく、自民党が作ったところの、あの青木一男氏が委員長で作ったところの所得倍増構想をもとにして話をしておると思うのです。福田農林大臣のさっきのお話も、大体生産年令人口の所得はこれは倍になるんではない、それを勘案すれば六割である。農業所得農業生産の増加につきましても二%ちょっと上回る、生産計画向上を入れて大体五%。これは自民党の作ったあの所得倍増構想の中身なんです。ところが、これには非常な矛盾がある。  大へんな矛盾があって、もう池田通産大臣も、総生産が十年後二十四兆となった場合、輸出は四十億ドルくらいしかふえない、四十億ドルでは輸出が大体一兆四千四百億しかふえない、それなのに総生産は十二兆もふえる、従ってこの十二兆ふえた総生産から輸出を引いた残り、これは国内でどういうふうに消化するかという案がなければ所得倍増構想は成り立たない、こういうように言われて、池田通産大臣は反対したと伝えられる。また、大蔵大臣も、財政計画の裏づけのない所得倍増計画なんかナンセンスであると、こう言われたやに新聞に伝えられている。従って、自民党の所得倍増構想以外には政府はないのです。何にもない。これから経済審議会に諮問をして、その構想なり具体策を作ろうとしているのでしょう。それなのに、いかにもあるかのごとく答弁をしているのです。私は不思議でならないのです。  これまでずうっと聞いておりまして、何か所得倍増計画、あるいは構想なりあるのかというと、あるはずはないのです。自民党の案よりほかにない。そうして今永岡委員質問に対して、あるかのごとき、農林省だけが一つ何か独走してあるかのごとく御答弁がある、案が。私はこれは非常に無責任だと思うのです。この点、今後の質問の関係もございますので、この点、ないならない、あるならあると、はっきりさせていただかないと、非常に何か三十五年度の予算を裏づけておいて、所得培増計画があるかのごとく錯覚を与えるということは、はなはだ無責任だと思いますので、この点についてお伺いしておきたいと思います。
  110. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 国民所得倍増の長期経済計画の具体的な計画は、これはまだありません。(「構想は」と呼ぶ者あり)それを今経済審議会で審議をしておる。基本構想につきましては、自民党の作りました基本構想を大体一応尊重するということにいたしておりますが、その基本構想の中でも、たとえば成長率七・二%とありましたけれども、はたして成長率が七・二%で適当であるかどうかということは、目下経済審議会において審議をいたしておるのでありまして、でありますからして、具体的の構想というものは出てきておりません。基本構想だけは今申し上げましたように、一応われわれ尊重して、自民党の作った基本構想を尊重してやっていくということでやっておる次第でございます。
  111. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは今後の質問もございますから、ちょっと明らかにしていただきたい。今七・二%の成長率についても検討中だと言うのでしょう。それじゃ、ないのじゃありませんか。七・二%というのは一つの構想でしょう。構想の部類です。それから今度は、具体的に生産につきましても、第一次産業、第二次産業になるとか、雇用がどうなるとか、具体的にこれから作業していくのでしょう。構想さえないのじゃないですか。それが何かあるかのごとくに——私は構想を聞いているけれども、具体的な計画はこれから作るというのですから、構想さえないのでしょう。今検討中だという。もしあるならばお示し願いたい。
  112. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 基本構想は、自民党の作りました基本構想を尊重してわれわれ考えていくということであるのであります。政府としては、まだ基本構想は作っておりません。従って、その自民党の作りました基本構想をわれわれ検討しているのでありまして、でありますから、しかしながら、大体七・二%で十年たてば国民所得倍増になるという一応の姿は描いておるのであります。その姿において、われわれ一応産業基盤強化あるいは科学技術の向上というようなことを、三十五年度においてこれを予算に計上しようということでやっておるわけであります。
  113. 鈴木強

    ○鈴木強君 ちょっと関連して。僕は多く言いませんが、けさこの問題で質疑をやって私が質問をしたときに、基本構想について、政府の内部においてもまだ意見が不一致じゃないか、こういうことを言いましたら、佐藤大蔵大臣は、プリンシプルについては、まあこれは閣議で決定してだれも意見が違っておらない、こういう答弁をしているのであります。午前中と午後の答弁で、そういうことを言われちゃ困る。
  114. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 菅野企画庁長官の午前中にお答えいたしましたことも、私が午前中お答えしたことも、ただいまの話も、変わりはございません。
  115. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 委員長、ちょっとはっきりさせてもらいたい。くどいようで恐縮ですが、これは今度の予算前提としまして重要な問題でございますから、問題を明らかにするために私は御質問するのであります。ただいまの大蔵大臣の御説明では、政府の案、閣議で何かきまったその構想というのがあるように聞こえる。ところがですね、菅野企画庁長官お話ですと、自民党の案を尊重しているというのでしょう。それは検討中だというのですよ。自民党の案を基本にすれば、これは矛盾だらけなんです。矛盾だらけなのであって、それを基礎にしてもし三十五年度予算、自民党の案の構想に基づいて所得倍増の基盤を育成するという予算を組んだとすれば、これは非常に矛盾に満ちた内容なのでありますから、その予算自体が非常に矛盾してくるということになるのであります。これはどちらなんです、大蔵大臣
  116. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 午前中もこの点問題になっており、ただいまも問題になっております。ところで、お答えいたしておりますのは、政府所得倍増計画を樹立するということをはっきりきめたわけであります。これはもう閣議決定をしている。また、ことしの財政演説でも、私はその具体案は立案中だという財政演説をしたのじゃないかと思っておりますが、先ほど来のお話にいたしましても、具体的な話が出ているわけではございません。その点で今非常に先ばしった御意見が出ておりますが、政府経済審議会にかけて、そうして立案するのだということを実は申し上げております。そういう前に、政府自身それぞれのものでその腹案らしいものを持っているということは、先ほど農林大臣のお答えしたような点もございます。しかしながら、この審議会にかける際に、各方面の意見を聞きます際に、政府がその具体的構想を示してどうこうということは、実態にも実は合わないのじゃないかと思います。で、私は、菅野長官もその点ははっきり申し上げておりまして、倍増計画樹立、これはもう閣議決定をいたしまして、具体的な点についてはこれから審議会でいろいろ意見を聞いて、それで最終にそれをまとめる、これがまあ六月の前後になるだろう、こういうことを実は申し上げておるのであります。それまではどういう考え方を持っているかと聞かれますので、私午前中に申し上げましたように、まだ閣僚でもそれぞれの意見は違っておりましょうということを実は率直に申し上げております。  で、ただいまはその経済審議会にかけて、そうして結論を得る段階だ。しかしながら、政策としての目標ははっきりしている。今日まで具体的な問題として発表されたものは、与党の所得倍増計画の具体的なもの——これは具体的と申してもどうか、いわゆる基本構想と称せられるものが出ておると思います。それで、そういうものがじゃあ予算の面では一体どうなっておるのか、こうなりますと、予算の面では、先ほどから物価についてのお話が出ておりますが、物価横ばいに維持するということ、また逆に申しまして通貨価値を安定さす、そういう意味ではインフレは絶対に防がなければいかぬという意味において、インフレ・マネーは使わないように。またこの成長にいたしましても、健全成長を企図する。その意味において経済基盤強化予算を今計上してございますということが実は説明されておるのでありまして、その基本的な問題としての所得倍増計画は、ただいまも申し上げますように、やはり通貨価値を安定し、また経済基盤強化して事業自体の体質改善をしていくというところから、どういうような今度具体的な問題を取り上げるのかということになると、かように私は考えております。また、政府自身も、各閣僚ともその点については意見は一致していると私は理解しております。
  117. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 たびたび質問に立って恐縮ですが、最後にお伺いしますが、今、大蔵大臣の御説明はわかるのです。それは実際だと思うのです。現実の姿だと思うのです。そうすれば、ないわけなんですよね。ないということをはっきり言われればいいのです。ところが、何か所得倍増計画というものを基礎にして、そうしてその基盤を育成する構想においてこの三十五年度予算が組まれているように、提案理由でも、施政演説でも述べているのです。ですから、ほんとうは何もないのです、政府には構想なんというのは。これからなんでしょう、自民党の案を基礎にして尊重してやっていくというのですから。だから、ああいうことを言わなければいいのですよ。言うから、いかにも何か倍増計画がこの予算の基礎になっているというような説明をするから、われわれはわからない。それならば、具体的案はこれから作るにしても構想だけはあるかと聞いても、構想もないのです。基本的構想というものは、自民党の案を尊重して検討中だと言うのです。その点を、大蔵大臣は自民党案についてはどう考えるか。これは非常に矛盾があるように大蔵大臣もお認めになっていると思うのです。ですから、その点はっきり、この今後の質問と関連しまして、ないのならないで、そういう立場で質問しなければならぬ。あるならあるで、やはりはっきりまた具体的関連をついていかなければならないから、はっきりして下さい。
  118. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  財政演説が問題になっているようですが、この点ははっきり申し上げております。こう申しております。「国民所得倍増計画の立案に着手いたしたのであります。」という言葉で、ただいまの経過ははっきりしていると思うのであります。  それから、ただいまのお話でございますが、与党でいろいろ検討いたしておりますことについては、ただいま政党内閣でありますので、与党と政府の間はもちろん連携を緊密にいたしております。問題は、いわゆる基本項目としてあげられますものに一見矛盾しているかのような印象を与える点もあろうかと思います。私自身検討しているわけじゃございません。しかし、この問題は、これを具体化していく場合に、相矛盾しないように調節をとっていかなければならない点もあろう。これはもう、経済の問題でございますから、木村委員もよく御承知のことだと思います。今これを批評することは、私は適当でないと思います。ただいま経済企画庁においてその立案に着手しておる段階でありまして、そういう意味でこれなどは有力なる基本構想、これから作る上でも有力なるものだと、かように私ども考えております。
  119. 永岡光治

    ○永岡光治君 郵政大臣にお尋ねいたしますが、先般テレビの放送免許を許可した際にも、真偽のほどは別といたしましても、われわれの耳に入ってくる中には相当な不明朗なものを聞くわけであります。特に政治的な圧力に屈したというような話もだいぶ聞いておるのでありますが、最近に至りまして、またカラーテレビの問題が相当ゆがめられたような印象——これも真偽のほどは私はわかりませんが、そういう印象を非常に強くすることを聞くのであります。従いまして、きぜんたる態度を持ってもらわなければならない。郵政当局はそういう問題についてやはりはっきりした態度を持っていかなければ困ると思いますし、そういう意味で、私はこの放送についての国策と申しましょうか、この際明確に樹立をしておく必要があるのではなかろうか。特に最近中共その他等におきましても標準放送、中波の放送で相当西の方面は混乱をしておるようでありますが、そういう意味から申しましても、FM放送というものは近く、これは好むと好まざるとにかかわらず、その放送をしなければならぬ段階に来るであろうと私は思うのでありますが、そういう状況考えますと、この際何としてもやはり郵政当局ははっきりした国策を持つべきであろうという私は考えを持っておるわけでありますが、それらに関連いたしまして、二、三質問をいたしたいと思うのであります。  御承知通り、NHKと民放と二つの放送体系があるわけでありますが、もとよりNHK放送は公共放送中の第一位に位するところの公共放送をもって任じておるわけでありますが、民間放送といえども公共性を否定するわけでありませんけれども、やはりおのずから放送の分野には若干の差異があってしかるべきだと思うのでありますが、そういう意味からいたしまして、NHKと民放、この関連をあなたはどう把握し、将来それをどういうふうに育てる、というと語弊がありますけれども、政策をとっていこうとしておるのか、その点をまずお尋ねしたいと思います。
  120. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) お答え申し上げます。  一番初めの御質問の、政治的圧力ということは絶対にございません。  それから、NHKと民間放送のことでございますが、ただいまのお話通り、NHKは公共性をもっぱらといたしておりますので、全国民の要望にこたえ得るような放送をするように育成いたしておるわけでございますが、育成はいたしますが、これは政府が放送業務に関与することはしないことにして、自主的に運営してもらうことにいたしております。具体的に育成方法を申し上げますと、NHKの場合には、まず周波数の割当、あるいは中継放送局とか、その他放送局の許可につきましては、格別の配慮もいたしております。技術的の問題につきましても、その整備につきましては格別の配慮をいたしております。また、自主的の運営でございますから、予算上等財政の補助ということはいたしませんけれども、放送法上にございます通りに、税金の問題で特別の措置を講じたり、あるいは簡保その他の資金融通面におきまして、また放送債券を引き受けるといったような方面で、育成をはかっております。  次に、民間放送の問題でありますが、民間放送の特徴は、これは民間の自由潤達な運営方法にまかせる。そうして、その意味におきまして、民間の創意によるために、また民間の人がこれを利用することができるように、広告等も許しております。そのために、民間放送におきましてはNHKとはまた違った育成の仕方をしておるわけでございます。この民間放送と、公共的であるNHKとが、両々相待って日本の放送を円満にりっぱなものになっていくように育成しておる次第でございます。
  121. 永岡光治

    ○永岡光治君 最近、私たちが見かけるものは、不必要な摩擦、競争をしておるのじゃないかという印象を非常に強くするのですが、どうもその点については、ただいま答弁のありましたように、十分その辺のところを明確にして指導してもらいたいと思うわけでありますが、そこで、ただいま御答弁の中にありました育成の方法等でありますが、NHKに対する育成ということでありますが、今年の予算を見ましても、相当NHKの予算は将来相当の憂慮すべきものがあるのじゃないかというふうに感じられるわけでありますが、特にこの未徴収の分が百六十万世帯あるような報告も受けておるわけであります。これが今後高じてきますと、NHKの財政上憂慮すべき事態に立ち至りはしないかということを私はおそれておるものでありますが、その点についてのあなたの御見解なり、方策というものをお持ちでありましょうか。
  122. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) ただいまの御意見の通り、この問題はNHK運営の重大な問題でございまして、いろいろな方法をただいま検討中でございます。たとえばこのテレビとラジオとの計算を同一にしてやっていく、あるいは聴取料におきましてテレビの方へ移行し過ぎるというふうな傾向もございますので、ラジオのセットを持っておる者はテレビを買いますとテレビの料金しか納めない、そういうようなものを逋脱を防ぎますためにも、これはテレビにラジオ料金を付加してとっていいか悪いか、まだ検討中でございます。その他いろいろな方法を用いまして、このNHKの聴取料の未収金につきましての今後の方策をただいま政府といたしましても、監督官庁といたしましても検討中でございます。
  123. 永岡光治

    ○永岡光治君 普通のまあ放送料金が月額八十五円、テレビの聴視料が月額三百円、しかもその普通のラジオの聴取世帯数は千三百八十万世帯である。テレビが四百六十万と承っておりますが、これは相当伸びるでありましょう。そういたしますと、五百万をこえるのも近いと思うのでありますが、一般のラジオの聴取者の半数近くがテレビに移行する事態にもなりかねないと思うのでありますが、そういうことをかれこれ考えて参りますと、NHKにおける将来の財政というものは、抜本的に私は検討を加えなければならない段階に来ておるのじゃないか。そういう意味で郵政当局においては、どういう具体的な案を考えておるか。ただいまちょっと一端を述べられましたが、その程度の段階なのか、それともまだ相当突き進んだ検討をされておるのか、その点を伺いたいと思います。
  124. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) ただいま申し上げましたほかに、あるいはこれを税金と同じような取り立て方をしたらどうだ、これもございますが、これも議論だけの、議論段階であります。それからまた有線放送によります減収をどうしたらいいか、これも実は検討段階でございまして、いずれもみな検討段階でございますが、これを早急に取りきめなくてはならないのでありますけれども、その影響するところいずれも大きいものですから、ただいまうんと急いで、鋭意検討中でございます。
  125. 永岡光治

    ○永岡光治君 さらに質問を進めますが、中波のチャンネルの不足に伴いまして相当にこれは混乱をしておることは御承知通りでありますが、この混乱の実情と、その見通しについて郵政大臣はどのように把握をいたしておりますか。
  126. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) 確かに中波の波がもう一ぱいに、飽和状態になっております。VHFも飽和状態になっております。そうすれば次に考えられるのは、先ほど申し上げましたFMとか、UHFの問題でございますが、UHFを直ちに取り入れますことは、あのアミリカにおけるUHF、VHF併用のために起きた相当な影響があった歴史がございますので、前の例等もよく検討いたしましてこの問題を考えていきたい。いずれにしても、そうかといってまだたくさんの需要がございます。FMでは百三十からの申請がございます。これをうっかり許しますと、今度は弱小放送会社の経営状態に非常に大きな影響がございます。またそうかといって、ここまで飽和状態になっておるのは、ある程度は許可しなくてはならないであろう。それならば具体的にどうするかということをただいま検討中であります。
  127. 永岡光治

    ○永岡光治君 カバーするか、あるいはまた抜本的に切りかえるか、いずれにいたしましてもFM放送の実現ということは、これはもう時間の問題だと私は認識いたしておりますが、そうなりますと、放送業界における問題につきまして、これは根底から今までのものをくつがえす事態になるわけで、抜本的なそういう意味政策を立てなければならぬということを痛感をいたしているわけでありますが、この前テレビの許可申請のときにだいぶ混乱をいたしました。たくさん申請者があった。私が申し上げました先ほどの政治的圧力に屈したような不明朗な話をしばしば聞いた、真偽のほどは知りませんが、そういう話を聞くわけで、私FM放送をめぐってもそういう問題が出てくるのじゃないか、そういうことをおそれているわけでありますが、そういう意味で、あなた方は一つはっきりした抜本的な方針を立てるとともに、どういう政治的圧力があろうともそれに屈しないで、しっかりした一つ態度で臨んでもらいたいと思うのでありますが、その辺のあなたのお考えを承りたいと思います。
  128. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) ただいまの御意見全く同感でございます。一切の政治的圧力などは、今日までもございませんでしたが、今後もないことを信じ、万が一あるということすらも疑っておりませんが、万が一のときにも絶対にそういうことなく、ただいまの御意見を尊重して、公正に行政をやって参ります。
  129. 永岡光治

    ○永岡光治君 しからばお尋ねいたしますが、ただいま問題になっておりますカラーテレビ、この問題についても、しばしば私は不明朗な話を聞くのであります。私たちが知った範囲では、当初、今問題になっております東京タワーに、NTVの方のカラーテレビでありますが、あの放送塔にもっていくという話でなければ許可しないという話があったように聞いているわけでありますが、それがどうも最近になりましてから、NHKはそのために塔をあすこにもっていったわけですね、御承知通り……。ところが、NTV方のは頑強に否定して、それを今日までがんばった、そのがんばったことがどうやら生かされて、近くそのままで許可されるのではないかといううわさも飛んでおりますが、そういう話を聞くごとに私たちも非常に不愉快なものを感ずるわけであります。何か政治的にやると、どうもそれに屈していくという話を聞くのであります。事実あなたもいろいろな会合にしばしば呼ばれて、いろいろな話を聞かされているはずです。そういうことを考えますと、きぜんたる態度といいながら、どうもそうでもないんではないか、特にFM放送というものが出て参りますと、またぞろ問題が一つ大きくなって、あっちへいったり、こっちへいったりということで、非常に大切な放送事業、公共性のある仕事をゆがめていくおそれがあると思うのでありますが、重ねて、もうあなたは、そういうカラーテレビの問題については、ないかと私が言えば、おそらくないと言うにきまっていると思うのでありますが、この点は十分注意してもらいたい。それでお尋ねするわけですが、かりにFM放送なり、カラーテレビを実施するとして、一体、受信機の生産技術のレベルもありましょう、それから生産量もありましょう、従って、値段という問題もありますが、いつごろ大体このFM放送は、時期ですね、いつごろ大体許可してもいいか、そういう考えがあるのではないかと思うんですが、その生産状況なり、値段なり、そういうものと関連して、大体いつごろにEM放送を始めようと考えているのか、御答弁をいただきたいと思います。
  130. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) FMの方はほんとうにはまだきまっておりません。これはほんとうなんです。まだいつから始めるということはきまっておりません。検討中ではございます。
  131. 永岡光治

    ○永岡光治君 聞けば、今答弁の中にも百三十名に及ぶ申請が出ているということですが、これはあなた、そうじんぜん日をむなしゅうするわけには参らないと思うのでありますが、その大よその構想があってしかるべきだと思うんですが、何かここで発表することにおいて混乱を来たすというようなことで答弁できないのか、それであれば秘密会にして答弁を聞いてもけっこうですが、いずれにしても、あなたの大よその見当は、目途があるはずだと思うんです。
  132. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) 中波のさっき飽和状態ということを申し上げましたが、中波の飽和状態についてもここらでもう一ぺんチャンネル・プランの編成がえを反省し反省と申しますか、再検討する段階にきていると、さように考えます。この編成がえへの検討の方が先だと考えますので、従って、FMの方がおくれるわけでございます。また、FMがあまりにたくさん波の数がございますから、これをうっかり許可いたしますと、先ほど申し上げましたような悪影響が出て参りますので、FM放送をもし許可するとすれば、その範囲は放送用にどれだけ使うべきか、また放送以外の無線に、たとえばそのほかいろいろな気象とか航空とか技術面、その他の面に使用する範囲、それらをまず決定して参らなければなりませんので、すぐには決定いたしかねておる、これはほんとうの事実でございます。
  133. 永岡光治

    ○永岡光治君 決定いたしかねておるということは、優柔不断の態度をとっておるから、ますます混乱をさせるわけでありますが、大体いつごろ編成がえをする目途でいるのです。何月何日ということは言わなくてもけっこうですが、大よその計画がなくてはだめだと思うのです。従ってあなたはいつ標準放送を編成がえをして、そしてFM放送をどういう程度でカバーしていくかというような問題が出てくると思うのですが、これは郵政当局で検討するのか、あるいは何か審議会みたいなものを通じて検討するのか、その方法が一つと、大体いつごろを目途にその検討の機関を発足させるのか、その辺のところをお尋ねいたします。
  134. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) 検討はもう始めておるのでございます。実験放送も始めておりますが、その結末がいつとは申し上げられない、このことを御答弁申し上げておるわけであります。
  135. 永岡光治

    ○永岡光治君 目途はないのですか。
  136. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) 編成がえの方のことは、これはただいま予算……、国会の方で事務当局、技術当局も非常に忙殺されておりますので、暫時御猶予をお願いいたしたいと思います。
  137. 永岡光治

    ○永岡光治君 その時期を明確にしてもらわないと困る。大体予算が済むと結論が出るというわけですか。
  138. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) 結論については申しかねますが、できるだけ急いで検討を終わらせたいと思います。
  139. 永岡光治

    ○永岡光治君 それでは三十五年度中に結論が出ると理解してよろしゅうございますか。
  140. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) できるだけそういたしたいとは思っておりますが、私たちは大きな仕事を、歴代の大臣が一部々々仕事を担当しておりまして、私の時代に課せられましたその責任を今果たしつつあるわけで、自分のやっております間は、結論まではまだいかないかと思いますが、三十五年度中には何とかめどをつけたいと思っております。
  141. 永岡光治

    ○永岡光治君 それならば、三十五年度中に結論を出すという話でありますが、次に私は質問を続けたいと思うのでありますが、放送、特にテレビ、そういうところに新聞資本が相当入っておる。だから独占形態を持っておるわけでありますが、これは、報道機関にこういうふうに独占されますと、悪い影響はあってもいい影響はあまり来たさないのじゃないかと思いますが、郵政大臣はどういう考えを持っておるか。もし私の意見に従って、それが悪いとお認めになれば、将来これをどのように解決していこうとするお考えを持っておるのか、この点もお答えいただきたい。
  142. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) 御説の通りであります。一地区が一つの報道機関に独占されるような放送でなく、公正に放送が行なわれるように念願いたしております。
  143. 永岡光治

    ○永岡光治君 答弁はなってない。どういうふうに規制していくかという……。(「質問通りだったらあなたどうするか」「念願が出てない」と呼ぶ者あり)
  144. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) ただいま申し上げましたような念願のもとに、そういう方針で今後も検討を加えて参ります。これは編成がえのときにもよくその点を十分考慮いたしますし、FMにつききましても、もっともFMは波がたくさんありますから、独占ということでなくて済むと考えております。この独占に陥らないように、ただいまの御意見を十分尊重して検討いたします。
  145. 永岡光治

    ○永岡光治君 それでは、中波の編成がえのときに、そういう点について検討を加えていくという御答弁でありますから、その通りに、そしてまたその方向で実現するように努力することと私は受けて、次の質問に移ります。  実は、東京タワーの事件でありますが、あすこで経営しておる会社がだいぶお家騒動を起こしまして、重役陣が総辞職をするという記事が週刊誌に騒がれておりますが、この真相を郵政大臣は御存じでありますか。
  146. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) 真相は、ことに詳細は存じません。
  147. 永岡光治

    ○永岡光治君 どの程度御存じでございますか。
  148. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) これは衆議院の逓信委員会でも御質問がございまして、私も心配になりましたので、前田社長に会いまして調査いたしましたところが、あれは内輪の問題であって、その背任等は全然ないのだ、内輪の問題で、円満に解決したからどうぞ御安心下さい。そこで私は、放送会社の監督官庁といたしまして、放送会社から見れば家主である東京タワーの内輪の問題であって、放送に何ら影響はないものと、さように認識いたしましたので、それだけになっております。
  149. 永岡光治

    ○永岡光治君 その認識はやはりいけないと私は思うのです。いやしくもあそこは、幾つかの会社の放送塔になっておりますが、そこを経営する会社が非常に不安定な状況であっては、三百三十三メートルですか、あれがこわれてぐらつきはしないかと心配するわけでありますが、どうぞ一つ、もとよりこれは放送事業に干渉をしてはいけませんけれども、健全な発達には、その安全を期するためには、十分郵政当局はいろいろものを言っていいと思うのであります。事実あなたもそういう意味で、個人的に会ったにいたしましても、前田さんに話を聞いたと思うのですが、私は将来こういう問題のないように、十分一つそういう面までも注意をしていただきたいと思うのでありますが、その点が一つと、それからもう一つは、今前田さんに聞いて、円満に解決したというのは、どういうふうに解決したのか、その点を一つお示しいただきたいと思うのであります。
  150. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) 内容までは聞き漏らしたのでございますが、同僚議員である前田議員が、絶対安心だ、内輪の問題だと言いましたものですから、私も信用いたしまして、それはよかった、放送事業に影響がなければそれならけっこうだ、(「これからいつでもそうやるのか」と呼ぶ者あり)というふうに、私の責任範囲では、さように結論いたしまして、安心をいたしておる次第でございます。
  151. 鈴木強

    ○鈴木強君 今の郵政大臣の御答弁にちょっと関連して私伺っておきたいのですが、先般の本会議において、民社党の山田委員質問に答えて、カラーテレビの本免許について、非常に自信のある答弁をしておりましたが、ちょっと私は不思議に思っているのですが、今国際標準放送方式が問題になっている時期でしょう、ことしのおそらく六月か七月ごろには、その問題が昨年来の懸案として、どう解決するかわかりませんが、とにかく結論を出そうという時期にきているのです。ですから、ヨーロッパ方式になるのか、あるいはアメリカ方式になるのか、これは論議のあるところですが、ところがあなたは、非常に世論がカラーテレビの本実施に踏み切っているようなことを言われましたが、それを受けて通産大臣は、生産業者の側に立っても大丈夫だ、こういう御答弁をしておりますが、私は非常に奇怪に思うのは、この問題が、これは政党政治ですから、自由民主党の党議が私はどうなっているのか、まだ不敏にして知らない、それを受けて郵政大臣は、昨年の暮れあたりから、もう早期免許実施の考え方が、新聞なんか見ると出ておりますね、その辺に食い違いがある。非常に私は慎重論者だということは大臣も御承知通りです。ですから、どうしてカラーテレビの本免許の実施を急がれるのか、その裏づけになっている自民党の考え方、それから世論のつかみ方ですね、それから生産業者の受け入れ態勢の問題、これは電機関係の業者の意見を聞いてみますと、ほとんどが、一、二の大会社は別ですが、今白黒テレビをどんどん生産している段階であって、カラーテレビの受像機を作ることは非常に困難だと、こう言っている。先般の逓信委員会でも、四社の方々においでをいただいて意見を聞いたのですが、NTVの清水さんは積極論者でしたが、あとの方は、NHKを含めて非常に慎重論者です。そういう面で、あなたが踏み切って早期実施を呼号しているのは、民意をどう把握しているのかというところに疑問を持っているのでございます。この際その点も明らかにしていただきたい。  もう一つNHKの公共放送に対する資金の裏づけ、経営の面についてはもちろん、自主的にやっておられるわけですが、政府としてあらゆる角度から御協力をいただいておると思うのです。これは大蔵大臣お尋ねしたいのですが、NHKの経営の実態は必ずしも楽観を許せません。一昨年なんかは減価償却自体が十分できないような中で予算が通っておる。そこで、今お話しになりますように、有線放送のラジオを聞いておる人たちの料金を減免するというような話も聞いておりますが、そういうものとあわせて、たとえばテレビとラジオを一緒に見ている人たちが、テレビだけ聞いてラジオははずしてしまうとか、こういうことになってきますとなかなか運営が困難になってくる。ですから有線放送の減免ですね、それからラジオ、テレビを併用している場合の料金制度をどうするかということをあなた今言っておられましたが、いつごろこれは実施されるのですか。  それから海外放送も私は聞いておきたいのですが、唯一無二の海外放送であって、NHKは十六方向十七時間くらい放送をやっておる。それからさらに一方向を加えると言っておられます。そうしますと、かなり莫大な経費がかかる。ところが、なかなか政府はこれに対して金を出さない。昨年も岸総理大臣にも来ていただいて、三十五年度の予算の編成の際には、十分考えてもらうように念を押しておったはずなんですがね。ところが、ことしの予算を見ましてもあまりない。従って、あなたは、NHKから幾ら金が外国放送のために必要であるという要求を受けたのか、そして郵政省がそれに対して幾らの査定をして大蔵省に出して、それが幾らに減らされておるのか、これは昨年の経過がありますから、一つはっきり答えていただきたい。  それからさっきの所得倍増でちょっと関連がおそくなりましたが、あなたにお伺いしたいのは、諸物価がどんどん上がっておるということを永岡委員が言っておる。一昨日の産経新聞でしたか、私ちょっと見ましたが、郵便料金の値上げを考えておられるようですが、これは一種、二種すべてのものを上げるように書いておりましたが、これは上げるつもりなんですか、いつごろから上げようとしておるのか、そういう点も一つ一緒に答えていただきたい。
  152. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) まず最後の方からお答えいたします。料金の問題のあの記事は、記者の感覚で書かれたものだと思います。ああいう意見は述べませんでした。しかし、料金問題はこれは大事な問題でありますから、十分検討するはっきりした考えがございます。  それからその次、NHKの予算につきましては、十億を概算要求いたしましたところが、今まではいつでもゼロ査定であったのが、今度は十億全部大蔵省で査定してくれて、その点大へんありがたいと思っております。
  153. 鈴木強

    ○鈴木強君 十億、とんでもないよ、あなた。でたらめだよ。十億なんて出すはずがないじゃないか。
  154. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) 融資十億……。
  155. 鈴木強

    ○鈴木強君 いや、政府の出す金で、外国放送に対する補助金……。
  156. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) 三十五年度は十七方向十七時間に対しまして、九千八百十万九千円であります。
  157. 鈴木強

    ○鈴木強君 幾ら要求したのですか。監理局長でもいいです。
  158. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) では電波監理局長、ただいま計算しておりますからあとからお答えいたします。(「事務当局だったらちゃんとわかっておるはずじゃないか、ここへ来てまごまごさせるな」と呼ぶ者あり)きょうはちょっとほかの会議に出ておりまして……。お答えいたします。NHKの計画は十七方向二十九時間、四億四千万円、政府命令が十七方向十七時間で九千八百万円の査定でございます。  それから次にお答えいたしますと……。
  159. 鈴木強

    ○鈴木強君 有線放送とラジオ、テレビの併合の場合……。
  160. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) 有線放送の料金の場合は、先ほど永岡委員の御質問お答えいたしました通り、まことにこれは大切な、NHKの経営にとりまして重大な問題であります。また、その有線放送の今後の組み立て方につきましても、今、重大な段階に来ておりますので、これは具体的に結論をまだ得ておりませんが、NHKで十分経営の成り立ちますように、この問題ははっきりと結論を出さなければいけない。これはほんとうに一生懸命になって検討いたしておりますから、どうぞ御了承願います。  それからカラーテレビのことにつきましては、(「いつ認可するのか」「世論世論」と呼ぶ者あり)世論につきましては、これは聴視者の面から申しますと、どうも実験放送のところに集まって参ります群衆などを見ましても、これはもう一日も早くやってもらいたいということが方々でいわれておることを承知いたしております。それからまたメーカーにつきましては、これは白黒テレビの許可のときにも同じような現象がございましたのですが、メーカーのうちには多少疑懼を抱いておるものが——相当疑懼を抱いておるもの等があったわけでございます。いよいよ許可となりましたならば、うんとこれに馬力をかけまして、このようなすばらしい実績、生産高を示しております。同様にいたしましてカラーテレビにつきましても、同じように予測いたしております。今日もうすでにカラーテレビは早期実現すべきであるという考え方につきましては、これがメーカーにも響きまして、相当な決意を持って、まだ少し早そうだと思う業者に至るまで、十分な計画を立案樹立して、これの実行段階に移すような段階になりつつあるというのは、これは情報程度でありますが。さように承知いたしております。
  161. 鈴木強

    ○鈴木強君 だめだ、だめだ。ちょっと委員長……。
  162. 小林英三

    委員長小林英三君) 関連質問でしょう、鈴木君、簡単にやって下さ  い。
  163. 鈴木強

    ○鈴木強君 大臣がお答えしていただかないからまた質問が出るんで、カラーテレビについては、集まった群衆は、なるほど、そこに据え付けられておるテレビを見ておりますから、これは早くやった方がいいと言うかもしれません。しかし、それを実際に自分の家庭に持ち込んでやるといういうことになりますと、まだ五十万円ぐらいかかりますから、一台受像機を買うのに。だから、業界の方でもあなたのおっしゃるように、白黒の普及時代と違って非常に額が大きいものですから、そう私は今後の発達の見通しというのは甘く考えられません。アメリカを見ましても、それははっきり言えることですから、そういう意味において業界の考え方が、決意を持ってやっているというが、私はそうでないと思う。聞いておるのは、やっぱり政党政治ですから自由民主党として、やはりこれに対して態度をきめておると思う。そういうものをあなたは受けて、慎重に世間に向かって発表しなければいかぬと思う。ところが、それは多少ずれておるように思うから聞いておる。それをはっきりしてもらいたいんです。  それからもう一つ、郵便料金の値上げは、あれは新聞社が勝手に書いたと言うんですが、料金をあなた自体として上げようとしておるのかどうかということで、今の郵政事業の五カ年計画としてやるとすればどういうふうにやって、いつごろやるのか、それもはっきりしてもらいたい。
  164. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) 郵便料金の問題は、私も郵便料金のうちにはでこぼこと申しますか、アンバランスがあると考えておりますので、これにつきましては十分に検討してはっきりした答えを何としても出さなければいけないものだと、さように考えておりますが、どれを幾らに上げるかなどということは、まだ検討段階でございまして、そこまでいっておりません。  それからカラーテレビのことにつきましては、白黒テレビでも許可の最初にはあの通り高かったのでありますが、あのように急速にコスト・ダウンをいたしております。日本の製造工業を見ますと、あのブラウスでもそうでありますし、それからミシンでもそうであります。白黒テレビの受像機でもそうでありますし、トランジスターについてもそうであります。日本がコスト・ダウンをしてどんどん逆に海外へ輸出していたあまたの歴史がございますし、のみならず、このカラーテレビにつきましても、これはやがて割合に思いがけない早い機会に相当のコスト・ダウンができて、海外へ輸出できるものと、私はそういうふうにほんとうに確信いたしております。
  165. 永岡光治

    ○永岡光治君 私は、質問いたしました数点を考えましても、早急に放送関係について国策を樹立して、そうして本国会を通じて国民の前に明確にできるように、そういう機会を要望いたしておきますが、一つこれに関連いたしまして通産大臣の所見をただしておきたいと思うのですが、カラーテレビのことは本会議で一応私たちは答弁を聞きましたが、FM放送をかりに三十六年度から実施されるとして、その受信機ですね、それは生産が大体大丈夫になっておりますか。三十六年度から実施して、大体受信機は間に合うと、こういう考えでおりますか。
  166. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) カラーテレビの受信機でございますか。
  167. 永岡光治

    ○永岡光治君 FM……。
  168. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) FM放送というのはあまり私は存じませんので…。
  169. 永岡光治

    ○永岡光治君 それじゃ郵政大臣。
  170. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) FMの受信機は割合に安うございます。それから今FMの受信機と中波の受信機と一つのセットでちょっと変えると変化ができるような方法になっておりますから、受信機の値段についてもあまり心配要りません。
  171. 永岡光治

    ○永岡光治君 それでは質問を次に進めますが、次は、この委員会ではしばしば追及して参りましたが、まだ不明確な点がありますので少しただしたいと思う点は、賃金の問題について、益谷国務大臣お尋ねいたしますが、あなたは私たちが会いましても、あるいはまた公務員の諸君が面会を求めて御意見聞きました際にも、かねがね賃金の低いことは承知している、何とかしなければならぬという考え、非常に理解ある態度をもっておいでになるのですが、その態度は今も変わりないか、また将来も変わりないか、この点を冒頭確かめておきたいと思います。
  172. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) お答えいたします。私は給与担当の国務大臣を引き受けました以上は、一般職の公務員に対しての給与に対しては特別な関心を持っております。福祉増進のために努力いたしたいという基本的の態度は変わりません。ただ給与の問題については、現在の建前といたしましては、御承知通り人事院の勧告を基礎に検討いたして、国会の御承認を仰ぐという建前になっておるのでありまするから、私はかりに給与が気の毒だと思いましても、私から引き上げの法律案を出すというようなことになっておりません建前でありますから。ただ、しかし、給与担当大臣としては、公務員諸君の利益増進のために一生懸命に働きたいと思う存念には変わりありません。
  173. 永岡光治

    ○永岡光治君 これは人事院の勧告を待つまでもなく、やっぱり引き上げが必要だと認めれば、違法なことでも何でもないのでありまして、いつでも実施できるのでありますから、その認識だけは改めておいていただきたいと思うのですが、今の人事院勧告の点でございますが、ことしのかりに夏あるいは本年度中でもいいんですが、人事院から給与引き上げの勧告があった際には、あなたはこれを直ちに実施する、人事院勧告の精神に従ってこれを実施する、こういう考えでありますかどうか。
  174. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) 人事院の勧告はどこまでも尊重するという建前でございますから、勧告がありました際には、十分親切に検討いたして善処いたしたいと思っております。ただ、今論議に相なりました通り、給与引き上げについては、資金が要りますので、その調達の困難な場合に、これが実行せられなかった場合は過去においてあるのであります。しかし、担当の国務大臣としては、忠実に人事院勧告を尊重して参りたいという考えでございます。
  175. 永岡光治

    ○永岡光治君 私は言葉じりをつかまえてどうこういうことじゃありませんですが、すでにあなたはこの国会中も給与担当国務大臣です。そうして給与の引き上げの問題がこの国会で相当に討議されている、しかも、これは三十四年度です。そうして人事院は三十三年度末の三月をもとにして、民間その他と比較して賃金は低いということで、御承知通り勧告は三十四年七月出たわけです。先般、十一月から十二月にかけまして臨時国会がありました。補正をする誠意があるならば補正もできる、つまり賃金を引き上げ得る機会があったわけでありますが、これも見送っております。ただいまあなたは、まだ三十四年度中でありますが、やろうと思えばできる。これが審議されている最中でありますから、ほんとうに人事院の勧告を忠実にやろうと思えばできると思うのです。私は昨日来ずっと計算をして参りましたが、これで大体五十億、金が必要です、人事院の勧告によりますと。これの実施を一年間延ばしましたが、延ばしたということは、あなた方は五十億の予算を支出しなかったわけですから、かりにずっとこのまま複利で計算していきますと、十年で八十九億五千三百万円になるわけです。十五年間の据え置きで、これはどのくらいになるかといいますと、百十九億八千万円、政府はそういう意味で公務員に大へん迷惑をかけているわけです。だとするならば、私はせめて三十五年度の途中においてでも、その過去の一年分くらいは何らかの形において、これはやはりめんどうを見るべきが至当だと思う。にもかかわらず、あなたはただ人事院の勧告があったならば、これを忠実に尊重するように努力をします、というわけでありますが、人事院もすでに昨年の三月末で実施しろということになっているわけでありますから、なぜこれを実施しないのですか。
  176. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) おっしゃる通り昨年の七月に勧告があったのです。それを本年の四月一日から実施しようというのが政府の原案でございます。これは前回、藤田委員の御質問に対しましてもお答え申し上げた通り、これは給与が増額いたしますると国家の資金を要します。やはりその資金の調達が困難だというので、私は当時の国務大臣としても閣議で協議があった、あった際にも、これはまことに遺憾ながら、いろいろの事情を聞きまして、現在提出しております法案に賛成せざるのやむなきに至りましたと申し上げたのであります。今後は私は建前をどこまでも尊重して参りたい考えでございます。
  177. 永岡光治

    ○永岡光治君 金はあるのです。これは時間がありませんからあまり言いませんが、防衛庁の繰り越しを見ても相当の予算が毎年々々繰り越されております。ほんとうに政府にやろうという意思があれば、財源ないことはありません。その点はまたあとに譲ることにいたしまして、人事院総裁お尋ねいたしますが、いつも人事院の勧告が一年ずらされて実施されているこの状況について、あなたは非常に遺憾であるという意を表しましたが、その遺憾であるだけでは済まされない。その遺憾であるあなたの気持を遺憾でなくする具体的方法をどう考えておりますか。私はその方法として、実施期日をなぜあなたは明示しないのか。いつから実施をしなさいということをなぜ明示されないのか、その点をただしたいと思います。
  178. 浅井清

    政府委員(浅井清君) ごもっとものお尋ねでございまするけれども、人事院といたしましては、勧告権以上のものは持たぬのでございます。みずから公務員の予算を編成するというようなことはないのでございます。これは憲法上当然のことだろうと思っております。ただ人事院といたしましては、三月現在で調査いたしておりまするから、四月からこれを実施することを希望することはもとよりでございます。ただ勧告の表にこれを従来表わして参りませんでした。まあこれは財政上の問題もございますから、これは人事院の権限外のことでございまするから、なるべくすみやかにという言葉を用いたのでございます。しかし、このすみやかにということで、これが一年もおくれて参るということは、これは遺憾であるということは、すでに先日この席上で申し上げたのでございまして、実施時期を明示してはいけないという法律上の根拠は何もないのでございます。
  179. 永岡光治

    ○永岡光治君 実施時期を勧告の文の上に明確にしていけないという制限規定はないとするならば、何がじゃまになってあなたは明示しないのですか。
  180. 浅井清

    政府委員(浅井清君) それはただいま申し上げましたように、人事院といたしましては、予算に関する権限を持ちませんから、なるべくすみやかにという表現にして参ったつもりでございます。しかしながら、過去におきましては実施時期を明示したこともございますから、将来どういたしますかはよく研究したいと思います。
  181. 永岡光治

    ○永岡光治君 過去にも明示したこともあるし、しきりにあなたは予算を編成する権限はない。それはあたりまえです。人事院には権限ありません。それは政府です。私はここで比較をして申し上げるわけでありませんが、同じ公務員の中で、五現業の職員、これは御承知通り、仲裁委員会では実施期日を明示しているわけです。予算に非常に制約を加えるわけです。にもかかわらず、仲裁委員会は実施時期を明示しておるのに、人事院ではそれを明示できないという理由は私はないと思う。同じ公務員です。同じ国の予算をしばるわけです。どうしてあなたはそれを明示しないのですか。だから、あなたが政府のかいらいだと言われても、これに対する抗弁の余地がないということはここにあるのです。一年間も延ばされて、じんぜんとして日を送っているので、なぜ人事院の存在の価値がありますか。今日公務員から人事院を廃止しろという声がほうはいとして起こっているのもこの点にある。この点を明確にしてもらいたいと思う。
  182. 浅井清

    政府委員(浅井清君) 実施時期を明示しなかったのは、ただいま申し上げた通りでございますが、将来の問題は、御意見を尊重してよく考慮したいと思います。
  183. 永岡光治

    ○永岡光治君 それでは、これは先般の質問の際にも明確になりましたが、比較の時期ですね、今までは三月をとっておりました。四月か五月という問題を私たち希望として述べております。その問題もあわせ、あるいは実施の時期も勧告する際には一応考慮するということで、あなたはそういうお考えを持っておるということで理解してよろしゅうございますか。
  184. 浅井清

    政府委員(浅井清君) お答えを申し上げます。従来三月で計算いたしておりますのは、予算編成期に間に合うように三月でやって参った。ところが、往々にして、人事院がことさら低い月をとっておるではないかという誤解も多々あるように思っております。それで、今年は何月にやるかまだきめておりません。よく御意見を聞きまして、ただいま研究中でございます。
  185. 永岡光治

    ○永岡光治君 それは特に私から要望しておきます。ぜひ四月ないしは五月、つまり民間の給与の改定されたそのときで一つ比較をしてもらいたい。そういうことを特に要望しておきますが、ことしの勧告の中で非常にふに落ちないことは、これは政府の方に聞いてもらいたいし、また人事院の方にも意見をただしたいのですが、高等学校を卒業した者の生計費をもとにして勧告の参考資料となっておるわけですが、三十四年三月が七千九百三十円というのが出ております。あなた方が用いました資料です。この通りしかも勧告されていないのでありますが、それにいたしましても、その高いといわれる七千九百三十円の中でも——あなた方が高いと言っているのですよ。その中で、食料費を三千六百六十円といたしております。そうすると、一日の食費は百二十円になります。今日、新制高校を卒業した一人前の男子が一日百二十円で生活できると、あなたは食費がそれで足りると考えておりますか。これは、大蔵大臣、給与担当大臣、それから人事院総裁、三者にお尋ねいたします。
  186. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 主計局長に説明いたさせます。
  187. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 一日の食費といたしまして、二千五百三十カロリーという計算をいたしております。
  188. 永岡光治

    ○永岡光治君 百二十円で食えるか食えないかを聞いているわけです。一食当たり四十円。(「答弁々々」と呼ぶ者あり)
  189. 小林英三

    委員長小林英三君) 主計局長、もう少し詳しく答弁して下さい。
  190. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 人事院の資料でございますので、私どもといたしましては、今申し上げた通り、カロリーで計算していることは承知いたしておりますが、それ以上の点につきましては、人事院から御答弁していただきます。
  191. 浅井清

    政府委員(浅井清君) お答えを申します。人事院の計算方式は、いわゆる標準生計費と申すものでございまして、御承知のように、マーケット・バスケット式をとっておりますので、ただいまお手元にありまするようなその資料によって算出いたしたものでございます。これについてはいろいろ御批判もあろうかと存じまするが、人事院といたしましての計算はその通りでございます。なお、御不審につきましては給与局長から補足させていただきます。
  192. 永岡光治

    ○永岡光治君 私の質問しているのは、一食四十円であなたは食えると判断しているのかどうかということを聞いている。食えるならば食える、食えなければ食えないでけっこうです。
  193. 滝本忠男

    政府委員(滝本忠男君) 今のお尋ねは、標準生計費に関連いたしまして、標準生計費の中の食料費、それを一日あるいは一回に割って、それで食えるか、こういうお尋ねでございます。われわれの方といたしましては、具体的にこれで食えるか食えないかというようなことよりも、むしろ標準的な生計費事情というものを総理府統計局の生計費調査から導きまして、そうして標準生計費として成年男子にはあの程度になる、こういう計算をいたしておる次第であります。
  194. 永岡光治

    ○永岡光治君 質問に答えて下さい。食えると判断するならば食えるでいいです。食えなければ食えないでいい、明確に。一食四十円です。
  195. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来お答えしておりますように、全国の平均から見ますと、それで生活はできるということになるわけでございます。
  196. 永岡光治

    ○永岡光治君 やはり、その大蔵大臣答弁をもっていたしますと、一食四十円、一日百二十円で、これは成年男子です、成年男子がそれで食えるか。これはおそらく、もとより平均ですが、今東京の場合を例にとってもこれと大差ないのですが、これで食えるといったら、国民は驚くと思うのです。だから、社会保障費でも、木村委員質問にあったように、五円くらいやって足りると思っているのです。こういうところにあなた方の考えを抜本的に変えなければ、問題の解決にならぬというのです。私は、この資料が、非常に実情に合わないということを指摘する一つの資料として今申し上げたわけでありますが、どうぞそういう意味でありますから、この人事院から勧告が出ている資料もきわめて低いものである、実情に沿わないものであるということを十分一つ頭の中に入れていただきたいと思うのであります。  ついでにお尋ねいたしますが、暫定手当は、前の国会で給与法の改正のときに、順次これを本俸に繰り入れるという附帯決議があり、政府はこれを尊重するというはっきり確約をいただいておりますが、今日依然としてそのままに放置されておりますが、地方におきましては、同じ地域の同じ行政区域内で、三級あり二級あり一級ありゼロありで、非常に転勤にも問題があると聞いているような状態でありますが、この暫定手当をどういうように解決しようと考えているのか、給与担当大臣ないしは大蔵大臣でもけっこうですが、お答えいただきたいと思うのです。
  197. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 三十四年度でその一部を実施いたしました。これを実施いたしますにつきましては、衆参両院の各院の方々の御意見を十分尊重したと思います。ところで、今なお残っております部分につきましては、現実の問題がなかなか調整上困難の点もあります。今後人事院の勧告、これについていろいろ人事院の意見も十分徴しまして、しかる上で残っている部分の調整をはかっていくということになるわけでございます。
  198. 永岡光治

    ○永岡光治君 ただいまの大蔵大臣の意見ですと、人事院の意向を聞いてというのですが、ところが、人事院は暫定手当に関する限りは勧告の権限がないと総裁はおっしゃっておりますが、それはどういうように調整されるのでしょうか。
  199. 浅井清

    政府委員(浅井清君) お答えを申し上げます。暫定手当の前身はいわゆる地域給でございます。この地域給を暫定手当として凍結いたしました際に、地域給に関する人事院の勧告権に関する条文を削除いたしたわけでございます。それで、権限がないと申し上げておったのであります。ところが、今回この国会に出ました給与法の改正案によりますと、またその暫定手当に対する勧告権が復活することになっておりますから、さように相なりますれば、人事院といたしましても、この暫定手当をどうするかということについて研究をいたしたいと思います。
  200. 永岡光治

    ○永岡光治君 今まで怠慢で、佐藤大蔵大臣のように、おそらく人事院が何かしてくれるだろうと思って今日まで待っていたわけですね。ところが、人事院は今日まで、この国会を通過して初めて勧告権ができるというのですから、今まであなた方は職務怠慢で、これを追及されても答弁の余地がないわけですが、まあそれはそれとして、それでは人事院総裁お尋ねいたしますが、この七月がその勧告ないしは報告の時期になっております。その際に、公務員給与について、この暫定手当についての最終的なあなた方の意見をここで国会に報告ないしは勧告されるのか、あるいはそれまでの間に何か意思表示をされるのか、その点をお尋ねいたします。
  201. 浅井清

    政府委員(浅井清君) お答えを申し上げます。ただいまのお尋ねは、私は今年の勧告においてこの暫定手当の問題に触れるのかどうかというように承ったのでございますが、その点はまだ何もきめておらないのでございます。先日もこの席上で御答弁を申し上げましたように、今度の勧告はどうするということをきめておいて数字をおっつけるということはやりたくないのでございますから、ただいまのところ全然白紙でございます。
  202. 永岡光治

    ○永岡光治君 そうでないですよ。国会の意思はもうすでにきまっているわけですね。国会の意思は、これを本俸に繰り入れなさいという意思がきまっているのです。それで、政府もそれを尊重するということになっておるのです。ところが、政府は、あなた方が今まで何も言わなかったからそれをいいことにしてかどうか知りませんが、今日まで放置しておったわけです。ところが、この法律がこの国会を通過、成立するならば、あなた方に勧告権が復活する、こういうようにあなた方は解釈しているわけです。とするならば、早急にあなた方はこの暫定手当を、国会の意思に従ってそれを検討した結果を国会に報告する、あるいは勧告する、あるいは政府の方に報告ないしは勧告する、こういうことになりはしないか。やめろというのではないのですよ。早くやらなければだめじゃないか、こういうことを言っておるわけです。
  203. 浅井清

    政府委員(浅井清君) 私もさように考えております。この法律が通りますれば勧告権が復活するわけでございますから、人事院といたしましては、この暫定手当を今後どういうふうに始末をするか、それをもう一度再検討する必要があると思っております。それはいつの、どういう時期においてやるか、これはまだ何もきめておりません。
  204. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 関連。給与担当大臣と大蔵大臣質問いたしますが、私の承知しておるところでは、一般職の職員の給与に関する法律、この法律は二十六国会で修正になりまして、この修正された暫定手当の問題については次のように規定されておると思うのです。「暫定手当は、昭和三十四年四月一日以降において、これを整理し、その一定の額を職員の俸給に繰り入れる措置をするようにするものとする。」、こういうふうに一般職の給与に関する法律が修正されて可決されておる。そうすれば、人事院の勧告を私は待つまでもないと思うのです、この問題は。法律によって昨年の四月一日以降において措置すべきことが決定されておるわけですから、当然政府がこの法律に基づいて暫定手当の処理をすべきであるというふうに考えるのです。それがどういう理由で実施されないのか、お伺いしたいと思います。
  205. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) 暫定手当については、まだ未整理になっております。国会の意思の決定せられたことも承知いたしております。法律は、目下御審議を仰いでおります暫定手当等については、やはり一般職の給与に密接な関連がありまするので、給与の処置を実施をいたし、また勧告をいたす人事院の勧告を待つのが適当と存じまして、法律改正の御審議を願っております。
  206. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどお答えいたしましたように、御審議をいただきました際に、衆議院の附帯決議と参議院の附帯決議と二つございます。衆議院の附帯決議の方は、「暫定手当の整理を行う場合には現行一級地相当額はこれを本俸に繰入れること。」、こういう決議がございます。この点は、先ほどお答えいたしましたように、三十四年度中に実施いたしたわけでございます。ところで、第二の、参議院の附帯決議は、「昭和三十五年度以降における暫定手当については、これをすみやかに整理し、その本俸繰り入れの措置を講ずること。」、こういうことになっています。この点について、先ほど申し上げました、今後残っている部分につきましては人事院の意向も十分伺って、今後、この決議がございますので、この趣旨を尊重して処理するということを申し上げておるわけでございます。
  207. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私の先ほど質問したのは、暫定手当については附帯決議にあります。しかし、私は附帯決議の問題を言っておるのじゃない。二十六国会で修正議決された一般職の職員の給与に関する法律で、三十四年四月一日以降、この暫定手当を俸給に繰り入れるように措置すべきであると、こういうふうに決定になった。この法律の実施についてどういう政府は措置を考えておられるのか。この問題に関して、なお直接関係の深い自治庁長官、文部大臣がおられたら文部大臣、の所見をこの際明らかにしていただきたい。
  208. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この一般職の職員の給与に関する法律につきましては、こういう規定でありますね、「暫定手当は、昭和三十四年四月一日以降において、これを整理し、その一定の額を職員の俸給に繰り入れる措置をするようにするものとする。」。ただいま申し上げておりますように、「一定の額を」云々と書いてございます。先ほど申しますように、一部を実施した、衆議院の決議そのものがやはりこれに実際には該当し、法律違反じゃないだろう、残っておる分は参議院の決議とこの条文と関係があるものだと、かように私どもは考えて、今後、人事院の意向により勧告を受けました場合にはそれを実施に移す、こういうことに計らって参りたい、かように申しておるのであります。
  209. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) お答えいたします。暫定手当の本給繰り入れにつきましては、国家公務員に大体準じてやっておるわけでありますが、昭和三十四年四月一日から従来の無級地に対して五%の暫定手当が支給される。さらに、同年十月一日から本給に繰り入れられるよう指導いたしましたので、現在は国家公務員の場合と同様の取り扱いになっておると思うのであります。  なお、今後の取り扱いにつきましては、先ほどもちょっと話が出ておりましたが、給与法の改正が成立すれば、国家公務員の暫定手当について人事院からあるいは勧告が行なわれることになると思うのでありますが、その場合は国家公務員に準じまして措置をしたい、かように考えております。
  210. 永岡光治

    ○永岡光治君 今までの質問で明確になりましたように、人事院の勧告になりましたもとになる資料は、きわめて実情に即さない資料である。しかも、それを政府が一年ずらして実施しようというきわめて不合理な、公務員にとってはまことに残酷な案であるということを御銘記願いまして、何らか次の勧告の時期においてこれが解決できるように善処してもらいたいと思うのであります。  それから、次に定員法の関係に移るわけでありますが、実は従来何回か定員法の改正を行ないました際に、非常勤職員を本職員に組みかえる定員法の改正を行ないましたが、依然としてたくさんの非常勤が残っております。建設省においてしかり、郵政省においてしかり、あるいは公安関係においてしかり、非常にたくさん残っております。これは人事院行政の上からいってきわめてまずいものだと考えております。非常勤職員の賃金、これは物件費からたしか、私の記憶に誤まりなければ、出ておるはずであります。人の給与を物扱いにするという精神が、まず問題だと思います。その点についてどう考えておるかということが、まず第一点。  それから、非常勤職員を本採用にしましても、そう私は予算には大きな財源を必要とするものでないと思っております。にもかかわらず、これを依然として非常勤職員に置いている。このことを政府はどう考えるかということが第二点。特に私は、資料をもってここに明示いたしますが、建設省の場合を例にとりますと、勤続年数が非常に長いのでありまして、非常勤職員の総計が一万五千七百程度あります。しかも、三年以上五年未満が約二千九百名、五年以上が約七千八百名あるわけです。郵政省の場合もそうでありますが、今日、定員が不足しておるということは非常にはっきりいたしておりますが、そういう不合理な状態に置いておって、そのままこの国会でも目をつぶろうとしておるのか、それとも、これは国会の意思さえあれば、これを全部本採用にするという考えを持っておいでになるのかどうか、郵政大臣、建設大臣、行政管理庁長官、それから農林大臣にお尋ねいたします。
  211. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) 定員外職員の定員化について、もう一つ、御承知の現場職員と申しますか、これを定員のワクからはずすということでございますが、これは国会においても数年来論議の焦点となっておったことは承知いたしております。行政管理庁といたしまして、この二つの点を今日まで引き続いて検討いたしております。そうして、ただいまは根本的に両面を含めて解決をいたすために、各省間の意見の調整をはかっております。近い将来に解決するものと確信いたしております。
  212. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 常勤的非常勤職員の定員化につきましては、制度的にも根本的解決を与える気持でありますが、すでに、従来、関係行政機関に諮って慎重に検討いたしておるのであります。三十五年度におきましても、関係行政機関において、これの結論を出すように、目下慎重に検討いたしております。  建設省といたしましては、従来のこの非常勤職員の定員化されたものと、現在の非常勤職員との職務内容につきましては、何ら変わっているところがありませんので、むしろこのまま放置しておけば、かえって非常勤職員の勤労意欲に影響があろうかと思いますので、十分関係行政機関と諮った上で、すみやかに定員化したい、かように思っておる次第であります。
  213. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) 本務者の定員がたくさんになりますことは望むところでありますが、全部定員にしてしまいますと、これまた、業務の繁閑等から考えまして、かえって不便もございますが、定員は、現在の状態よりもむろんのこと、もっと増員されることを希望いたしております。
  214. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 定員外職員が、農林省におきましても一万八千名くらいおります。管理者側の立場から考えますると、大体同じような仕事をやっておる職員が、一は定員内であり一は定員外である、かようなことにつきましては、いろいろと不便というか、妥当でないものがあるわけでございます。さような見地から、定員外職員は逐次これを整理していきたいというので、今までもきております。今回もできる限りさような方針を実現したい、かように考えております。
  215. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 別に否定するというわけで立ったわけではございませんが、現在の定員法並びに予算編成上の問題から見ますと、いわゆる定員内の職員、それから定員外のただいま議論になっております常勤労務者、あるいは常勤的非常勤というようなものができるようになっておるわけであります。ですから、昨年は、御指摘になりましたように、相当、七千名でしたか定員に組み入れました。しかしながら、本年になりまして、三十五年度予算をまた計上いたして参りますと、この予算施行にあたりまして、当然、常勤労務者だとかあるいは常動的非常勤、こういうようなものが生まれてくるように実はなっておるわけであります。この点は十分御了承のことだと思います。  ところで、どういうわけでそういうことになるのか、かように申しますと、私どもは、行政の能率を高めることはもちろん考えますし、また公務員、いわゆる国家公務員の待遇を改善すること、これまた努力して参らなければなりませんが、同時に、国民の税によってこれがまかなわれておるということがあるのでございますから、一面国民負担の軽減もはかっていかなければならない、こういうことで、一体この定員、行政機構で働きます適正な数というものは一体何か、これはやはり厳重に考えていかなければならなぬことだと思います。ところで、ただいま各省においては、あるいは定員内の職員と定員外の常勤労務者との間の仕事そのものがほとんど変わりないというお話をしておられますが、もしそういうことでありますならば、現在の定員制度というものは意味をなさない。これは当然定員の中にそういう人を入れるべきだ。また、今予算でまかない得るような人をそういう方向で採用されることは、本来の予算執行にあたっては当を得たものとはいえないわけであります。御承知のように、定員内に入っておる人たちについては、採用の形式が違ったり、あるいは任用の資格条件が違っておるわけです。だから、任用の資格条件なり、任用の形式なりを尊重して参りますと、当然これは定員制度というものは守られなければならない。しかしながら、たとえば工事費を予算で計上いたします場合、あるいは研究費であるとか、その他の事務費等におきましても、当然その予算遂行にあたってある程度の労務者の必要なことは考えられる。工事の場合においては、よほど人件費が多数入っておる。これがただいまいう常勤労務者というようなものを作り出すわけであります。でございますが、これが、私の方も全部がよろしいとは申しません。これはとにかく基本的に考えなければならない問題はあるのだということはよくわかります。  そこで、一面、全部定員化しろという議論もありますが、逆に定員制度をやめてしまったらどうなるか、こういう議論も実は出ております。しかし、各省の実態等を考え、国民負担に対する軽減というような措置を考えて参りますと、いわゆる定員制度を全部なくするということは少し行き過ぎじゃないか、かように考えますので、現在の任用条件なりあるいは任用形式を確保し、そしてやはり能率を上げていくことを考え、一面待遇の改善もするが、国民負担もそういう意味では軽減の方向にやはり工夫していく、そういう意味からは、定員制度をやはり維持すべきである。一面、常勤労務者等において、これが予算上の問題にしろ、年々同じようなものが出てくるという状況でありますならば、その実情に応じて適時これをやはり定員化せざるを得ない。こういうことになる前に、その基本的問題がなお解決を見ない限り、昨年とりましたような措置が実際に合う措置ではないか、実はかように考えております。ことしの三十五年度予算編成にあたりましても、各省の定員査定については、大蔵省はなかなか厳重にいたしておりますが、一面、公共事業費関係等において、事業予算がまた相当膨張をしておる。そうすると、当然御指摘になる常勤労務者が出るということでございます。もう少し基本的問題の解決は預からしていただいて、実情に合っていくような処置をやはり適宜工夫せざるを得ないのじゃないか、かように私は考えております。
  216. 永岡光治

    ○永岡光治君 いろいろ意見のあることを開陳していただいて、こういう意見もある、ああいう意見もあるということを承ったわけですが、そしてしばらく検討する、結論はそういうことになっておるわけですが、もうこれは今日始まった問題ではないのでありまして、私が申し上げましたように、建設省だけ見ましても、私の手元にある資料を見ても、五年以上は七千八百名おるんですね。大蔵大臣、よく聞いておいていただきたい。五年以上は七千八百名おるわけです。こういうことを放置しておっては、それでは済ませられないわけです。あなたは国民負担がどうこうと言われますが、この人たちには給料をやっていないかというと、やはりやっているわけですね。ただ、その人には物件費の賃金でやるか、あるいは給与費でやるかという差異だけです。もとより、本採用になれば若干の増額はあるかもしれませんよ。また、そうでなければほんとうの意味の身分保障にならないから、当然でありますが、わずかの金額を節約—節約というよりか、これはいわば搾取です。搾取をしておって、国民の前にごまかしておってもだめです。それだけ要る人は大いに本採用として、大いに身分も与え、そうして大いに公務員としての襟度を持ってもらい、大いに働いてもらう、こういうことでなければ、ほんとうの人事管理はできないんじゃないかと思うわけです。  もとより、私は、純然たる臨時職員、臨時業務についておる者を本採用にしろということを私は言っておるのではないのでありまして、今日政府がとっておる方針ではなまぬるい、これは抜本的に改正すべきだという考えから言っているわけです。従って、今の定員法のワクの改正が出るのですか、出たんですか、どっちだか知りませんが、この際には抜本的な改正をしてもらいたい、こういう私の希望なんです。これはもうしばしば国会で論議されておりまして、内閣委員会ではそういう意思表示も政府に示しているわけで、行政管理庁の方では、必ず検討します、公務員法の改正の際にはそこまで含めて抜本的にやります、ということをしばしば答弁しますけれども、一向に、国会に来るたびにまだ検討中だということで糊塗されているのは、非常に不満であります。  そこで、私は具体的に聞きますが、ただいま問題になりました全員をはずすかどうかという問題もありましょう。しかし、少なくとも三公社みたいな企業官庁、これは定員をはずしております。しかし、はずすといっても、給与総額を押えているから、大蔵省としてはこれについて別段干渉する手段がないとは言えないわけです。ならば、五現業というような、少なくとも五現業でも定員をはずすという、そういう計画はあっていいのじゃないか。この点について行政管理庁長官の意見をただしたいと思うんですが、歴代の行政管理庁長官は、これは五現業についてははずすように検討を進めますという回答であったわけですが、行政管理庁長官はどういう考えでありますか。
  217. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) 定員のワクをはずすというような問題でありますが、ただいま三公社五現業のお話でありましたが、関係各省の聞の意見を今日まで十分検討いたして参りまするというと、関係各省の統一した取り扱いをいたしたいという意見でございます。従って、なかなか統一した意見に到達いたさないので、今私の方では関係各省の間の意見調整のために努力いたしております。
  218. 永岡光治

    ○永岡光治君 いつごろ結論を出しますか。
  219. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) 行政管理庁といたしましては、きょうにでも出したいのであります。かねがね、前もしくは前々の長官が国会でしろいろお約束をいたしております経緯がありますから、私も後継者としてその責任を痛感しておりますので、私としては本日にも結論出したいんですが、実際問題としてはなかなか困難な事情があることは、永岡さんも御承知のことと思います。できるだけ早く結論に到達いたすために努力をいたします。
  220. 永岡光治

    ○永岡光治君 この国会に間に合うように、意見をまとめて、そうして国会にそれを提案される用意を持っておりますか。
  221. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) 私は、ただいま申しました通り、一日も早く結論を出したいと思って、今事務当局をして一生懸命に意見調整のために努力中であります。従って……。
  222. 永岡光治

    ○永岡光治君 目途はあるんですか。
  223. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) 目途は、なるべくすみやかにという目途であります。
  224. 永岡光治

    ○永岡光治君 この国会中ですか。
  225. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) 私は、むろん、行政管理庁の長官としては、今国会ご出したいと思います。これは前長官もたびたび国会にお約束いたしました通りであります。それを順守していきたいと思っております。
  226. 永岡光治

    ○永岡光治君 総理がおると大へんいいのですが、副総理はおるのですか……。どうも失礼いたしました。副総理は、この国会中に意見をまとめて提案すると、こういうような意思だというように受け取ってよろしゅうございますか。
  227. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) 行政管理庁の長官として御答弁申し上げておるのですが、よく御承知通り、行政管理庁は定員の問題に対しては、関係省庁からの要請と申しますか、そしてそれを行政管理庁が検討する、研究すると申しますか、検査すると申しますか、そういう懸案があるので、こっちからこうしろというのは逆になっておるそうでございます。従って、行政管理庁としては関係省庁の取りまとめは一番必要でありますので、それについては十分努力いたしたいということを申し上げておきます。
  228. 永岡光治

    ○永岡光治君 どうも非常にはがゆい答弁で残念でございます。まことに残念です。あと質問をする勇気を実は私も失うぐらいでありますが、ぜひこの通常国会の会期中にこれはメドがつくような、そういうことで逆算をして国会に提出をしてもらいたい、こう思うわけです。よろしゅうございますね。それは大体できるのではないですか。
  229. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 定員法を近く提案する予定になっております。で、先ほど来申しますように、いろいろな御意見がございます。あるいは定員法を提出する前に、政府部内の意見の調整ができないかもわかりません。しかし、行政管理庁長官、同時に副総理として、先ほど来その決意のほどをお答えになりました、副総理として。これはもう行政管理庁長官、副総理としてお答えになりましたと思いますが、政府部内の意見は早く取りまとめたいということでございます。同時に、定員法に対しましても早く出さなければならないから、あるいは定員法を先に出して、その後調整に移るということもあるかもわかりませんが、いずれにいたしましても、閣内の意見も早く取りまとめたいと考えております。
  230. 永岡光治

    ○永岡光治君 そういたしますと、大体この国会中に、法案の提出の時期は前後いたしましても、政府の、定員法を撤廃するかどうか、するならばどの範囲にするかということはきめるのだ、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますね。
  231. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) 定員法については、先ほど私は、根本的の解決を主といたしまして、各省との間の意見の調整をはかると申しましたが、その一つには、大蔵大臣が今現段階でやるのは反対のようでありますが、定員法を廃止するという問題もございますが、目下重要問題があるので、すみやかに解決いたします。いかようになりましても、定員外の定員繰り入れと国会の意思がはっきりいたせば、それに従ってやるのは当然であろうと思います。
  232. 永岡光治

    ○永岡光治君 不幸にして定員法を撤廃しないというどこかの省が出た場合には、その省の定員法の改正にあたってはどの程度までを組み入れるか、つまり勤続一年以上か二年以上かというような問題が起きてくると思うのですが、それは行政管理庁としてどの程度考えておられますか。
  233. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) 私としては、まだ何年以上をするという考えはございません。ございませんが、先ほど申しました通り、定員繰り入れの問題についても、いろいろこれは調整する要があるのでございまして、でき得ればなるべくすみやかに……、定員法改正になるというのは将来のことでありまして、かりになったといたしまして、さしあたりの問題といたしまして、定員のワクからはずす問題と定員に繰り入れる問題、取り急いで解決をいたしたいと思っております。
  234. 永岡光治

    ○永岡光治君 これは不十分ですが、またあとの機会に譲りまして、労働行政について若干労働大臣の意見をただしたいと思うのですが、実は本委員会を通じて、質疑応答の中に明確になりましたように、国家公務員の給与引き上げにつきましても、当初予算に組んでいない。それから人事院勧告は出る、それを受けて政府が検討する、そこでいつも一年間延ばされる、こういう状況になるのが慣例になっております。それから、三公社五現業につきましても、当初、年度予算がきまってしまう。そのあとで紛争が起こる。そこでまた裁定が出る。その裁定は、まあ三公社五現業に関する限りは、いろいろ予算を差し繰ってこれを実施するということになるわけでありまするが、こういうことでは、いたずらに、私は紛争を一回は起こさなければ問題が解決できないような仕組みになっているのが、現在の状況だと思うのです。従って、もうそういう状態ですから、私はもう今年の状況考えましても、大体賃金の引き上げをしなければならぬのは必至の状況だと思いますが、そうであるならば、そのような用意がされるような、今の労働慣行をそのまま進めるとするならば、そのような用意があってしかるべきではないか、このように思うのですが、労働大臣としては、今のままではどうも何かすっきりしない、片手落ちじゃないかという感じはいたしませんか。私は、この点はもう絶えず、官公労関係の賃金問題なり、いろんな要求事項というのを団体交渉で解決するという分野は、まあ予算に関係しないものは別でありますが、これはしかし実際の意味の待遇改善というものはあまり期待できません。やはり予算を伴うものでなければ待遇の改善というものは期すべくもないわけでありますが、それが絶えず団体交渉して予算に制約されてできない、こういうような状況をあなたは正常だと思いますか。私は、こういう労働慣行は正常じゃないと思う。どこか間違っている。こういう労働慣行は新しい見地からこれを改めていくのが正しいのじゃないかと思いますが、労働大臣はどのように考えておりますか。
  235. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 給与及び賃金が今日のような状況できめられるということは、これはいい状況じゃないと存じます。おそらく民間及び官公労に限らず、給与基準というものの一つの尺度を、労使に与える尺度を、労使は守るという一つの基準の上に立って議論しなければ、いたずらに力と力の衝突で給与がきまるということはいい慣行じゃございません。これは世界じゅう、今日その方向に進みつつあるわけであります。何らかの目標と基準のもとに賃金というものがきまり、その上で労使間において調停される場面というものは幅をある程度限定するという常識がなければ、私は労使の賃金紛争は永遠に絶えないと存じます。世界じゅう、最近はいろいろの尺度が利用されて、ただいま研究中でありますが、アメリカでは最近は生産性に応ずる賃金という安定賃金制をとられております。ある方は、国民経済の中における賃金がいかにあるべきかというヨーロッパ方式というものも研究されております。日本もやはり、私は、世界の常識的な、世界の経済概念に入りました以上、賃金の安定という水準をきめるべき時期は来る時期だと私は存じます。今日、民間におきましては、御承知のごとく、あっせん調停であります。これがあくまでもあっせん調停で、大体上と下のまん中というのが今日の常識になって、理論的にはともにこれは不満足なものだ、こういう状況がございますので、私はやはり、賃金問題というものは日本経済及び労使間の基本でございますから、何らか基本的な方向を示して、その中で話し合いができるという土俵を作る。世界じゅう、今日の時代、一九六 ○年はその時代だと私は思っているわけなんです。おそらくその方向に進んで参りましょう。  その意味で、労働省も立ちおくれないように、あらゆるものを今日統計をとっていますが、あらゆるものの統計をとって、そうして一番安定した統計を労使に使ってもらう。労働者側はこの統計、使用者側はこの統計というところに、議論が永遠に尽きない。統計だけは一つ労働省で責任を持って、そのものさしと土俵、二つを与えるということくらいは、これは本年はできるんじゃないかと、こう考えております。今日はまだ仲裁とか、すべてが法律できまっておりますので、その法律の限度内においては、今日のように三公社五現業におきましては仲裁、これは予算総則で御承認を得ておりますので、予算総則で御承認を得ておる今の仲裁をやる。人事院は、人事院規則による人事院の裁定をやるという以外には——政府としては法律に従うほかはないと思います。
  236. 小林英三

    委員長小林英三君) 永岡君、時間が参りました。
  237. 永岡光治

    ○永岡光治君 もう一つだけ。私の言っているのは、そういう意味で申し上げたのではなくて、私の趣旨は、今日の官公労の労使関係の状況を見ると、今も益谷行政管理庁長官は、まあ賃金は低いと思っておると、まあそういう状態にある。ところが、それは予算に組まれないわけですね。ということは、幾ら人事院が勧告するかわからぬからということがおそらくそういう大きな理由になっておると思うんです。ところが、人事院がかりに千円引き上げなさいという勧告をすると、もうすでに予算がきまったあとなんですね。だからそれは予算上できないということで、いつも一年ずらされているわけです。これが今日の公務員の状況です。それでは一体公共企業体等労働組合はどうかといいますと、三公社五現業の方もどうかといいますと、給与予算が総額できまってしまう。ところが、途中で紛争が起きて、賃金の引き上げということになる。そういう問題が起きて、これは仲裁委員会に移る。仲裁委員会ではそれは月額千円上げなさいと、こういうことになってくると、そのときに初めて予算を差し繰ってやるという道が開けるわけですね。いつも団体交渉だけで、お互いの自主的な交渉だけで解決する分野がどこにもない。必ず仲裁機関なり、公務員の場合のごときは人事院に委託して、ずっと一年なり二年なり延ばされる。こういう労働慣行なり労働運動のあり方は不正常じゃないか。こういうことを許す限り、絶えず官公労の諸君に闘争激化といいますか、あなた方の言葉をもってすれば行き過ぎと、こういうことになるんですが、絶えずこういうことを起こさなければならない仕組みになっておる。このことを労働行政の上で再検討する必要があるのじゃないかということを申し上げておるわけです。特にまあ政府全体にこれは御注意願いたいんですが、そういういやでも応でも公務員、官公労の諸君を闘争の方に追い込むような仕組みにしておいて、やれ少し行き過ぎがあったからというので、これは法律違反だというのでこれを処罰する。一方政府の方はどうかといいますと、いろいろ労働基準法というような法律がありまして、その中に規定しているいろいろの条項がありますが、必ずしも政府はこれを守っておりません。使用者も守っておりません。しかも、政府事業におきましては、政府みずからが基準法違反を犯しておるわけですが、みずからの違反については何ら触れようとしない、そういう労働慣行のあり方というものは、やはりそこに私は最初申し上げました公務員法なり公共企業体等労働関係法の中に大きな欠陥があるのだから、これを再検討する必要があるのじゃないかと、こういうことを私は申し上げたつもりなんでありますが、    〔委員長退席、理事館哲二君着席〕 この点について再度お答えいただきたいと思うのであります。もう一つ、新しく委員長がかわったのですから……。
  238. 館哲二

    理事(館哲二君) なるべく簡単に願います。
  239. 永岡光治

    ○永岡光治君 質問を並べますから、各大臣からお答え願いたい。  郵政省でありますが、これはあなたの資料で、昭和二十四年の郵便物取扱量が三十億通、それに対して定員が七万五千九百三十六人、約七万六千人、ところが、昭和三十三年度の取扱量は五十八億六千万通、約二倍です。にもかかわらず、七万五千六百十五人と減っております。このようなことでは郵便物がおくれるとかなんとかといっても、これはあなたの責任だと思うのですが、この解決方法についてどう考えておるのか、この点をお尋ねいたします。
  240. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) 先ほどもお答え申し上げましたように、定員がもっと増加いたしますことは希望いたしておるところでありますが、ただいまのところは新陳代謝の七千もございますし、本務者に入るものも三千人から出て参りますし、賃金者もございますわけで、大体七千名の賃金者を含めますと、業務量をこなし得るだけの……、(永岡光治君「物数は倍です」と述ぶ)物数は倍でございますが、労働力におきましてはどうやらこなし得る数に達しておるのでございます。
  241. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) これは賃金の立て方の基本でありますが、日本の今日の場合は、人事院は毎年勧告、仲裁は毎年仲裁、一般民間賃金は、毎年賃金といういわゆる長期安定の賃金というものが基本的にございませんために、やはりこういうこま切れ的なものになるだろう。また予算の立て方というものも、財政法がございますから、余裕を見れば——余裕を見るといっても、非常に不明確な予算になりましょうから、余裕を見るだけの予想数というものが出て参りません。従って、今日の場合は、まことにこま切れになるかもしれませんが、今日の現状ではこれ以外になかろう。その上に立って労使が理解をもって、紛争による賃金という思想を改めて、安定的な、また、当然取り得る権利というものを主張すべきじゃなかろうか。基本的にまだまだ賃金問題がございますが、今日の場合はこれ以外はなかろう。その上に立って改善を重ねることが今日の急務じゃなかろうかと私は考えております。    〔理事館哲二君退席、委員長着席〕
  242. 永岡光治

    ○永岡光治君 いろいろ申し上げたいことがありますが、時間がありませんのでこの程度にいたします。   —————————————
  243. 小林英三

    委員長小林英三君) 米田正文君。
  244. 米田正文

    ○米田正文君 私は次の四点について政府にお伺いをいたしたいと思います。昭和三十四年度発生災害復旧事業のその後の状況、治山治水対策、石炭離職者対策の問題及び国民所得倍増計画と国土総合開発計画との関連についてお伺いいたしたいと思います。  まず、昭和三十四年発生災害復旧事業についてでありますが、昨年伊勢湾台風等によって非常な災害を生じまして、ために、臨時国会を開いてその対策を講じたのでありますが、その後、それらの処置が適切に行なわれているか、さらには昭和三十五年度は災害復旧事業の最盛期になっておるが、その事業が十分行なわれることになっておるかどうかの観点に立って質問をいたしたいと思います。まず、農林水産施設、公共土木施設等に関する三十四年度の予算措置の第二次補正、第三次補正及び予備費支出をしたものを合わせて、その金額及び総事業に対する。パーセンテージの御説明を大蔵省から一括御説明を願いたいと思います。
  245. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 三十四年度の発生災害の復旧事業費の査定事業費の見込みは、直轄におきまして八十四億二千二百万円、補助におきまして千四百七十八億三千万円、合計千五百六十二億五千二百万円、これに対しまする国費所要額といたしまして、直轄七十七億六千八百万円、補助が一千二十八億三千七百万円、合計いたしまして一千百六億五百万円というのが国費の見込みであります。これに対しまして三十四年度中におきまして、予備費並びに第三次補正までを含めまして、直轄が四十三億六千五百万円、補助が二百五十八億四千七百万円、合計いたしまして三百二億一千二百万円、これが三十四年度におきまする第三次補正まで含めましての措置額でございます。進捗率にいたしまして直轄が五七・五%、補助が二五・一%であります。両者を平均いたしました。パーセンテージは二七・四%。進捗率は、直轄は五割ということになっておりますが、若干繰り上げ施行をいたしております関係もございまして五七・五、補助は、二五ということでございますが、これはわずかでございますが、〇・一%ほど多目になります。三十五年度予算でございまするが、三十五年度予算に計上いたしました直轄が三十億六千七百万円、補助が四百十億二百万円、合計いたしまして四百四十億六千九百万円でございまするが、これに三十四年度の分を、先ほど申し上げました額を合わせてみますると、直轄、補助を合わせまして七百四十二億八千百万円。三十五年度末の進捗率が、直轄が九五・六尾、補助が六五%、両者を合計して六七・一%であります。直轄は二年間をもって終了しますのが原則でございますが、御承知のように北海道は三年でございますので、その分が若干ございまして、九五・六というふうに相なります。
  246. 米田正文

    ○米田正文君 このうち、この第三次補正を含んだ予算の措置は、前の三十三国会における政府の言明を忠実に実行したものであって、従来の災害対策に比較して適切な措置を講じたものと思います。すなわち、三十四年度発生災害については、第一年度災害復旧の達成率を、国会の要請通りに、直轄事業五〇尾、補助事業二五%にするために今回、最終的に第三次補正を提出したものと思います。このことに関しては、三十五年度予算編成上その総額を一兆五千六百九十六億に押えるための特別の措置であるというような説をなす者もありますけれども、これは全く私は誤解であって、この措置は災害復旧の初年度達成率の確保のためのものであって、今後においても、かような大災害のときには必ず年度末に最終的に補正予算の措置をとりまして、そうして第一年度災害復旧達成率を確保するものと思いますが、大蔵大臣の御所見をお伺いします。
  247. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御所見の通りであります。私どもは、この補正予算を組みましたことが三十五年度現予算の総額維持のために作られたものだと言われますけれども、まことに遺憾に思っております。御指摘のように、第三次補正をいたしましたのは、査定の進捗その他により必要なる経費を計上いたしたものでございます。これは当然のことでございます。御指摘の通りでございます。
  248. 米田正文

    ○米田正文君 しからば、これから災害があった場合には、一つ必ず初年度達成率確保の意味において最終的に補正措置をとるようにお願いをいたしておきます。  で、第二次の補正におきましては、三十四年度事業促進のために、補助事業の復旧総事業費の三・五%相当額を国庫債務負担行為ができるようにしてありました。そうして総復旧達成率を二八・五%ということになっておりました。従いまして、第三次補正におきましても、この率を当初の率通りにやるとすると、やはり国庫債務負担行為を追加しなければならぬものだと思いますが、この点いかがになっておりますか、お伺いをいたします。
  249. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 債務負担行為は第二次補正の際に継続したものでございまするが、この三次補正をいたします際にはその必要を認めておりません。そこで、増額しないでそのままにしてあるわけでございます。
  250. 米田正文

    ○米田正文君 私は、第二次補正のときに、当年災は二八・五%の達成をするんだという趣旨お話があったから、そういう御質問をいたしたのですけれども、実は、私は、この国庫債務負担行為の措置はあまり有効でなかったということを結論的に考えております。なぜかと申しますと、この債務負担行為の支払いは翌年度になるので、当然、当該年度実施の事業の支払い遅延になるわけでございます。従って、延滞利子等の問題が生ずることになっております。本来、国庫債務負担行為は、初年度以降の事業実施の予定を契約するものでありますからして、かかる措置ならば、地方公共団体において独自でもできることでございます。従って、国において国庫債務負担行為の措置をしても有効な効果を期待できないようであります。現に、各県に行って実情を聞いてみましても、あまり関心がございません。そういう示達はまだ来ておらぬというような状態のところが多いのでございます。これはむしろ各省の御意見を伺った方がいいかと思いますが、農林、建設、運輸でこの国庫債務負担行為をどういうふうに処置されたかをお聞きをいたしたいと思います。
  251. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 三十四年度の第二次補正予算の際に補助災害分として事業の促進のために二十億円の国庫債務負担行為が認められたのでありますが、これらの運営につきましては、すでに一部の地方公共団体におきましては予算外義務負担等をもちまして三十五年度にわたる契約を行なって相当量の事業の促進をいたしておるものもありますので、これらにつきましては地方公共団体の希望の有無を徴して目下配分の手続をとっておる次第であります。
  252. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 農林省所管の国庫債務負担行為可能額は八億七千三百万円でございます。そのうち、内訳は、農地の関係、林野の関係、漁港の関係と、かように相なっておりまするが、農地関係、林野の関係につきましては、すでに内示をいたしまして、それぞれ実行に移っております。ただ、八億七千三百万円のうちの漁業関係九千七百万円だけがまだ内示が済まないわけであります。まあ、大体おおむね順調に進行しておる、かように御了承願います。
  253. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 港湾関係の国庫債務負担行為といたしまして第二次の補正におきまして八千万円を予定しておりましたが、第三次補正予算において三億百万円計上されておりまして、国庫債務負担行為の消化については目下検討中でございます。
  254. 米田正文

    ○米田正文君 今、各省の国庫債務負担行為とその後の措置のお話がございましたが、私は、現地に行ってみまして、あまりこの制度は効果がなかったという結論を得て帰ってきたのでございます。で、やむを得ないものは今後あるかもしれませんけれども、大体災害復旧のこういうものについてはあまり効果を期待できないと思いますので、まあ将来こういう問題についてはもう少し慎重な取り扱いでおやり願う方がよかろうということを申し上げて、この問題は了承いたします。  次に、三十五年度災害復旧予算についてでございますが、三十五年度予算案につきましては、災害復旧事業費として、先ほどもお話がありましたが、五百二十八億六千三百万円計上しておられますが、そのうち昭和三十四年発生災害の復旧費を、先ほど申しました各省別にその緊要工事の復旧率、それからその一般工事の復旧率というふうに分けて説明を主計局長にお願いをいたします。
  255. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 省別で申し上げますると、農林省が三十四年度の第三次補正までを含みましたところで二五・七%、それから運輸省が二二・六%、建設省が二八・一考ということに相なるわけであります。三十五年度までの累計で申しますると、農林省が六五・五%、運輸省が六六・八尾、建設省が六七・六%ということに相なっております。
  256. 米田正文

    ○米田正文君 それをお伺いいたしましたのは、各県に参りましても三十五年度には大体六五尾程度のものを実行するというので、そういう予算を組んでおりますので、それに喜平灰が合って政府の施策ができているかどうかという趣旨でお伺いをいたしましたが、今の六五%程度のものはいくようになっているという点をお伺いいたしましたので安心をいたしましたが、問題は、まだ各省の、各県の査定額と、それから今大蔵省から話があった達成率の基礎になる災害復旧額との間にまだ現地においては差があるようで、各省と大蔵省が話し合った結果がまだ現地に十分徹底をしておらないために、この達成率が現地の計算ではまだ六五%になっておらないというようなところがあります。この点については、各省と大蔵省とよく御相談をされたことだと思いますが、その相談をされた点を各都道府県にまく徹底するような措置を一つお願いを申し上げておきます。  そうして三十五年度においては、当初の計画通りにいわゆる緊急工事は三・五・二の原則で行なわれることになりますので、この最盛期がちょうど三十五年度になるわけで、工事の最盛期だと思いますが、そこでこの最盛期に特にここで申し上げておきたいのは、これらの事業は相当大量に行なわれますので、今後絶対に再度災害を受けないような工事を実施するように一つ特段のお願いを申し上げたいのであります。  これは農林省にはなはだ悪いのですけれども、農林省の関係の工事を私は今度行って見たりしても問題になったのは、やはり地元の事業の負担金があるために、あまり復旧工事も大きい事業になると負担金の関係で、十分大きな工事ができないというので、少し切り詰めているような気配も見受けられました。そういうこともありますが、それならそれなりにまた規模は少さくてもこわれないような仕事をするというような方法もありまするからして、そういう点で特に農林省に特別な一つ御指導を願わなければならぬと思います。  なお、そういう地元の負担に対しての、特に災害復旧事業の地元の負担に対して今度は特別立法ができましたけれども、それでもなお、まだ不十分のようなところがあります。弥富町の一部のごときはほとんど全町が災害を受けたものですから、幾らかの負担能力すらできない。幾らか出せるかと言っても、幾らかも出せぬというような実情の特殊なところがございます。そういうところについての何か特別な措置もお考えになる必要があるんじゃないかという気がいたして帰って参りましたが、特に農林大臣の御所見を承っておきたいと思います。
  257. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 農林省の関係の堤防等につきましては、これは国土を造成するんだというような考え方で、今回は特別の対策を立てたことは御承知通りであります。また、農地等につきましてはお話のように、これは高率適用という場合におきましても若干の地方負担または地元負担というものがあるわけでございます。しかし、そういう際におきましては、地方団体におきましてはその負担分について起債を認めることにいたしております。また、地元農家の負担につきましては、農林漁業公庫の長期低利のものを回すというようなことにいたしておりますので、御承知のように、臨時国会で通過しました特別措置法では、激甚地につきましてはきわめて軽微な地元の負担なんであります。そのきわめて軽微なものにつきましてもそのくらいのことを考えておりますので、大体そう御不満はないのじゃないかというふうに考えておりますが、なお、実情に応じまして善処することにいたします。
  258. 米田正文

    ○米田正文君 次に、治山治水対策についてお伺いいたします。昨年の伊勢湾台風を契機といたしまして台風の常襲を受けるわが日本の国土保全の根本問題として、治山治水対策が確立せられることになって、来年度予算上の重要施策として提案されたことに対しましては、まことに全国民とともに慶賀にたえないところでありますが、大蔵大臣は先日この委員会で、来年度予算を土木予算と言われることは何だか暗い感じがしておもしろくないから、そんな言葉を使わぬようにしてもらいたいというような趣旨のことを述べられたようでございますが、私はそれはもう非常におかしいと思うのです。古今東西を問わず国の興るところ必ず土木事業が行なわれております。これによって国土を保全し、産業の振興をはかる基礎を確立するものであります。私は土木予算と言われてけっこうだと思うのであります。遠慮することはないと思います。そして、こういう土木予算であってこそ私はほんとうに日本のよくなる基礎作りができることになる。もっともっと大土木予算と言われるようになりたいものだとすら思っておるのであります。  さて、この機会に治山治水の長期計画の内容を建設大臣にお尋ねをいたし、それからその次に農林大臣にお尋ねをいたしたいと思います。
  259. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 建設大臣、農林大臣にお尋ねでございますが、私の名前が出ましたので、その点申し上げます。過日ここで申し上げましたのは、土木予算という表現であればだれも文句は申しません。土建屋予算という事業に結びつけたような、商売に結びつけたような表現をされたので、その点は非常に誤解を招きやすいからこれはやめていただきたい、むしろ国土保全予算と、かように一つ言っていただかなければならぬということを実は申し上げたのであります。土木予算であることはこれはもう当然でございますから、その意味においては誤解のないように願いたいと思います。
  260. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 治水事業の長期計画につきましては、御承知のように一応三十五年度を初年度とする十カ年計画を策定いたしまして、そのうち前期五カ年、いわゆる緊急五カ年計画というものをそのうちで策定いたしまして、いわゆる五カ年間四千億という事業費を充てることにいたしております。三十五年度当初の初年度の予算は五百八十億程度の事業費でありますが、その後、約一七・五ぐらいのパーセンテージで予算づけいたしますれば、大体われわれの予定している規模に達する、かように考えておる次第であります。
  261. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 治山計画は三十五年度を初年度といたしまして十カ年であります。総額は千三百億円、それを前期、後期に分けまして、前期五百五十億円、後期七百五十億円で、前期は一一・七%ずつの速度で事業量をふやす、それから十カ年通じての平均は八・七%でふやしていくと、こういう計画で十カ年目に千三百億円の支出が完了するわけであります。その場合におきましては、現在荒廃地が三十二万町歩ばかりあるわけでありまするが、前期にその三割程度を解消するわけであります。後期に五割程度を完了いたしまして、約二割の荒廃地が残るということになりまするが、大体それは昭和初期の状態でございまして、まあこの程度の率が十カ年で達成できますれば、まずまず安定した状態になろうかと、こういうふうに考えておる次第であります。
  262. 米田正文

    ○米田正文君 治水十カ年計画について今御説明がございましたが、例の二十八年の水害のあとできました治水基本対策という大計画がございますが、それがこの計画ではまだ百パーセント完成するというわけに参らぬと思いますが、そのあとの、残りの問題はどう処置をされるようにお考えか、その点が一点と、それから農林大臣は、実はこの治山十カ年計画なり五カ年計画の中においては治水事業として千三百億と言っておりますが、このほかに国有林野事業があって、国有林野事業の中に治山事業があって、それが相当な量を占めておるわけですが、それは別になっておる。たとえば三十五年度の予算にしましても、治山勘定は六十一億に対して、そのほかに国有林野事業の中に治山事業が三十四億からございますが、半分以上のもの……、で、こういう会計を作った以上、事業の一体化という趣旨から、これも含めてやる方が効果的である、いろいろな事務的な面からも効果がある。建設省の方では補助事業まで一緒にして一体化をはかろうという趣旨でできております。農林省の方は逆に同じ治山事業を二つに勘定を分けておるというような点で、私はむしろ総合化の意味から全部今の国有林野事業の中の治山事業も含むべきだという感じがいたしておりますが、この点についての御所見をお伺いしておきたいと思います。
  263. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 昭和二十八年に策定いたしました治水事業の一兆二千八百億ですか、というものは、その後毎年のように事業を施行して参りましたが、御案内のように、どうも予算が、台風の非常にひどいときには予算措置ができる、また台風のないときにはどうしても国家財政上その方に金が回らないというようなことで、まことにちぐはぐになっておるわけであります。従いまして、こういう状態では、昨年の伊勢湾台風等にかんがみまして、国土の保全は期しがたいというので、ここにこれらを一応解消いたしまして、新しい十カ年計画あるいは緊急五カ年計画を樹立いたした次第であります。この十カ年計画あるいは緊急五カ年計画は治山治水の基本法によりまして、これらの予算措置につきましても、今後かかることのないように、十分閣議において法の命ずるままに正式に決定するというようなことでありますので、前の二十八・年の計画とは相当違ったものである、いわゆる確実性のあるものができた次第であります。私どもはこの方法をもって今後の国土の保全を期して参りたい、かように考えておる次第であります。
  264. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お話のように、昭和二十八年の計画につきましては、当時およそ三十六万町歩くらい荒廃地があったわけであります。それを解消しようという計画でございましたが、今日までわずかに六万町歩しか実績が上がっていない、これは財政上の理由が多い、そこで今回は三十万町歩、それからさらに災害によってふえました二万町歩を加えて三十二万町歩に対して根本的な施策を講じよう、今回の計画によりますれば、財政上の裏づけもありまするし、十カ年後にはこれがおおむねまあ戦前の状態に復帰できると、かように確信しています。  また第二の問題といたしまして、治山勘定というものを設けて事業勘定と区分し別々になっているが、これを統合した方がいいじゃないかというようなお話でございますが、これはこういうことなんです。今までは民有林につきましては、特別会計、一般会計両方にまたがっておったわけであります。これを今回は国有林野特別会計に統合して、そうして国有林野特別会計の方では事業勘定と治山勘定を設けまして、事業勘定の方は国有林をやりましょう、それから治山勘定の方は民有林をやりましょうということでございます。これは民有林、国有林それぞれそのやり方が基本的に違いますので、これを区別してやった方がいい、こういう考え方から二つに勘定を分けて、そこでそれを一つの会計の中に置くということになりますると、両方で、働く人の交流でありまするとか、あるいは将来、財源のやりくりということを考えますると、その方がよかろうというので、私の方としてはこの形が治山治水特別会計を進める理想的な形であると、こういうふうに考えております。
  265. 米田正文

    ○米田正文君 その点はまだいろいろありますけれども、時間がございませんから、これでやめます。  もう一つ、この治山長期計画ができた機会に、かねてから懸案の建設砂防と農林砂防という問題があると思いますが、これは昭和の初期にいわゆる渓流砂防と山腹砂防とそれぞれの省がやるということで覚書が出ております。もう三十年もたってまだ覚書が生きているわけですが、実際はその通りに行なわれておりません。乱れているのですが、それが各地でいろいろと非難をされる原因にもなっております。地元の方は、どっちに陳情に行ってやってもらうかということで、問題がいつもこんがらかる、そういう点の調整をこの特別会計ができてこれから大々的に治山事業をやろう、いわゆる砂防事業もやろうという時期でありますので、一つ新しい覚書でも作って、両省で完全な一つ総合計画を作るようなことにいたしたらどうかと思います。これは御答弁願うよりもぜひ一つ両省でお話し合い願いたいと思います。  もう一つは、こういう治山治水事業が長期的に策定をされまして、一定の計画に従って進められることになったが、最近の情勢を見ますと、道路事業においてもそうですが、用地の、取得、物件の移転等にいろいろな問題を生じております。こういうことがうまく解決をしていかないと、せっかくの長期計画も頓挫を来たすおそれがないとも言えない。たとえば筑後川の上流の松原、下筌のダムでは、三十五年度予算としては四億余りの予算が今度つくことになっておりますが、新聞や雑誌で蜂の巣城と呼ばれて、その地区反対のためにダム地点の調査すら困難をいたしているという状態にあります。また一面、筑後川下流一帯、八十八万人に及ぶ昭和二十八年の被害を受けた人々はそのダムの完成を一日も早くやってくれと熱望しております。こういう公共の福祉に関する重大な問題でございます。この問題を処理するのに、土地収用法によるのと話し合いによるのと二通りあるのでございますが、いずれにしても、早急に解決するためのその二つの方法について、建設大臣の一つ強い決意をお伺いをいたしたいと思います。
  266. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 筑後川上流の松原、下筌ダムにつきまして、今日土地の問題が非常な問題になっておりますことは御承知通りであります。この問題につきましては、二百戸ばかり水没する大分県側の方は非常に協力的でありまして、まあ八十七万六千人という筑後川沿岸の人たちの生命財産というものが危険に瀕するということから考えれば、われわれは父祖伝来の離れがたい土地ではあるけれども、これはやむを得ないであろうということで協力していただいておるのでありますが、四戸ばかり水没する犠牲者、いわゆる蜂の巣城と言われておりますが、その地点におきましては、非常な反対で、たびたび建設省の者、あるいは地方の知事その他が面会に行きましても、絶対に面会謝絶というようなことでありまして、まことに私どもこの公共事業、いわゆる公共の福祉のために遺憾に思っているところであります。しかしながら、先般社会党におきましても、調査団を派遣し、また参議院におきましては、特に建設委員会で関係各知事及び関係市町村長等を参考人として呼びまして、いろいろとあらゆる角度から検討いたした次第であります。私は土地収用法によらなくても話し合いで十分円満に解決し得ることを確信いたしております。もし話し合いでつかない場合には、私としてはまた八十七万六千という人の生命財産ということから考えますならば、私としての、私なりの考えをいたしたいと、かように思っている次第であります。
  267. 米田正文

    ○米田正文君 もう一つそれに付け加えてお尋ねをいたしますが、そういう事態が今後いろいろなケースとなって現われてくることも予想されます。ダムの問題のみならず道路の問題にいたしても、あるいは都市計画の問題にいたしてもいろいろとあろうと思いますが、そういう将来の対策、根本対策についてのお考えを承っておきたい。
  268. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 現行の土地収用法によりますれば、非常に時間的に長くかかりますので、今国会に提案いたしておりまする予算の中に、公共用地取得調査会というものを設けることといたしております。この公共用地の調査会ができますれば、かような問題はすみやかに私は解決し得るものと、かように思って、その対策をそれによって今後講じて参りたい、かように思います。
  269. 米田正文

    ○米田正文君 次に、炭鉱離職者問題について労働大臣にお伺いをいたしますが、炭鉱離職者は、石炭合理化政策が進行するにつれて漸増して参って、三十五年度はさらに増加を見る趨勢にございます。前国会において炭鉱離職者臨時措置法が制定されて、これによって炭鉱離職者は緊急就労対策事業に吸収されているのであります。昨秋からの実情を見ますと、この事業に改善を必要とする諸点がございますので、お伺いをいたします。  まず、炭鉱離職者緊急就労対策事業は、その予算を一人当たりにいたしてみますと、事業費が八百五十円程度になっております。今日の状況から見て、これは少な過ぎる、事業費が少な過ぎるのでございまして、事業遂行に非常に支障を来たしております。というのは、現在行なっております事業は、その事業効果、それから地理的な関係等から、主として道路事業が多いのであります。で、特別失対事業及び臨時就労対策事業と同程度に、一人当たり千二百円程度としないと現地では非常に工事を遂行するのに支障があると、こういっております。労働大臣の御所見を承りたい。
  270. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 昨年、補正予算で御審議いただきました緊急就労事業は、お説のように八百五十円の単価になっておりまして、緊急就労としては、他の公共事業の特別失対千二百八十円、臨就千四百円に比べて非常に低いわけであります。ちょうどこれは一般失対と特失とのまん中を大体ねらったわけで、予算効果としてもまん中でありますし、事業の内容も大体その中間的なものを実はねらったわけであります。補正予算は大体消化いたしましたが、三十五年度総予算も一応今日は消化をいたしております。必ずしも、お説のごとく満足ではございません。何らか資材費をふやせ、あるいは土地買収費を何とかしろという声もございますので、三十五年は一応消化いたして、一応予算も計上いたしましたし、現地におきましては就労計画は完了いたしておりますけれども、米田委員のお説のごとく、必ずしもこれがいつまでもこれでいいというわけには参りませんので、三十五年度を見まして、よく検討すべき余地はあると、私も、こう考えております。
  271. 米田正文

    ○米田正文君 離職者の、さらに吸収率の問題でございますが、この事業におきましては、離職者の吸収率は八五%と見ております。この事業は、今も申し上げましたように、道路事業が主でございます。これを建設業者に請け負わして施工をしているのでありまして、道路工事のような場合には、業者の手持ち労務が一五%ではとうていやっていけない。特に事業量が一単位二百万とか三百万とかいう事業が非常に多いのでありまして、そういう場合に一五%の手持ち労務ではその工事の指導なり、それから賃金支払いも日払いでございまして、毎日支払う、そういう事務も非常に多いので、一五%というのでは困難だ、まあ最低三〇%、このちょうど倍になりますが、手持ち労務を三〇%程度にせられたいという現地の希望が非常に強くて、そうしないと建設業者に一割ぐらいの今損失を与えている、損失の負担が一割ぐらいといわれているのでございますので、まあそういう損失をさせてまでやらせるというのは非常に無理じゃないか。建設業者はこの損失を覚悟でやっておりますのは、この仕事を引き受けないというと、ほかの仕事を県庁なりからもらえないものですから、ほかの仕事をやるために、こういう損失を十分初めから覚悟しなければならぬような仕事をやっておるというのが現状でございます。この点特に御考慮をお願いしたいと思います。
  272. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) お説のごとく、ただいままでは一般失対が、これは別でございますが、特失が八〇%、臨就が七〇%、緊急事業——今回の率が八五%、最高でございます。しかも非常にお困りのところは、事業費が少部分のために労務者も三十人、四十人というので、一五%といえば四、五人、これは技能者を出せば事務員がおらぬじゃないかというところがもちろんございますので、一応労働省の方の告示の八五%はこのままにいたしましても、何らかこれは、その賃金支払いの程度のものをどうするとかいうことは、私は考えなきゃいけないんじゃなかろうか、こう考えまして、三十五年度の施行を一応見まして、あるいはその途中におきましても、予算に関係がございませんので、何らか告示の問題は善処いたしたいと、こう考えております。
  273. 米田正文

    ○米田正文君 失業対策事業にいたしましても、特別失業対策事業にいたしましても、または臨時就労対策事業にいたしましても、いずれも最近の状況では労働能率が非常に悪いものが多いので、ひいてはこれが一般の公共事業の労働能率に影響を及ぼすおそれがないとはいえないのでございます。労働省は就労人員の確保に努めることは当然でありますけれども、同時に労働能率の向上に関しても特段の努力を要請いたしたいのであります。また各種のこういう就労対策事業あるいは失業対策事業の著しい傾向としては、本来こういうものは暫定的に就労させて、その間に適当な職業につかしめるというのが原則でなければならぬと思うのですが、それがどうも失業者が失業事業に固定してしまう。結びつきができて一定の固定化した事業のようにされた姿が現われてきております。こういう点のいわゆる固定をする傾向について労働大臣の所見をお伺いをいたしたいと思います。
  274. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 一般の失業対策事業は非常に固定化しまして、統計的に申しますと、六年以上の失対労務者が約三割ぐらいになって参りました。非常にふえて参りまして、三年前はせいぜい一割、これがもう三年間に六年以上のいわゆる失対勤務者が三割もふえてきたということは、お説の通り非常に固定化して参りました。その現われとして最近は職業訓練を日雇いにも実は実施しております。この成績が比較的順調に、二百人ばかりのものを就労約半分、訓練を半分やって、この二、三年の状況を見ますると、人数は二、三百人ですが、大体職業訓練を卒業した方は安定雇用に向かっておられます。この訓練をへておられない方はなかなか失対から抜けられない。失対問題は労働行政の中では一番実は難問題でございますので、近いうちに雇用審議会に諮りまして、失対問題の基本的なものを全部一つ諮って参りたい。一つは地域的行政区域で区切るということも失対事業のもう限度に参りました。仕事がなくなって参りましたから、と同時に予算でしばられるという非難もございますので、失対問題全般を雇用審議会に諮りまして、総合的な考えを出していただきたいというので、この国会中に雇用審議会に諮るつもりでございます。そして固定化、能率化をあわせて今後の問題の解決をいたしたいと、こう考えております。
  275. 米田正文

    ○米田正文君 まだ実は、もう少し質問をしたかったのですが、時間の都合があるそうですから、私はこれで質問を終わります。(拍手)
  276. 小林英三

    委員長小林英三君) 島清君。
  277. 島清

    ○島清君 本日は総理大臣も外務大臣もお見えでないので、はなはだ残念でございますけれども、総理大臣の私に関する御答弁は、総括質問の筆頭に御答弁をいただきたいと思います。それから外務大臣の御答弁は、一般質問の劈頭において御答弁をいただきたいと思います。私は約百問くらい御質問を申し上げようと思いまして準備をして参りましたが、しかし制限時間は三十五分でございます。従いましてその割合で参りますというと、私の質問時間が一問につきまして大体十五秒ぐらいである、こういうことでございますので、私は長く説明をする時間がございません。そこで政府側にお願いを申し上げておきたいことは、素朴な国民の席から御質問を申し上げて、説明は報道陣の諸君が報道をしていただくのに差しつかえのない最小限度にとどめたい、こういう工合に考えております。従いまして御答弁を下さいまする大臣に対しましても何々大臣とは指定をいたしません。それぞれの政府の大臣の諸君が所管事項に対して一つ答弁をいただきたいと、こういう工合に前もってお願いをいたしまして御協力をお願いしたい、こういうふうに考えております。  一番問題にされております新安保の案件でございますが、新安保の締結のスタートになりましたのは、岸総理大臣がアメリカの方に行かれまして三十二年の六月、岸・アイク共同声明に端を発するということは交渉の経過に照らしまして明らかでございます。従いましてその岸・アイク声明の中で、沖繩の地位につきまして極東の情勢が緩和されない限りにおいてアメリカの施政権の存置を認める、そのかわり沖縄の県民諸君に対しましては、その福祉の増進について格段の努力をしていく、こういうような声明がなされたわけでございますが、この声明に基づきまして内閣はどのような沖縄県民の福祉の増進のために具体的な政策を進めてこられたか、この点について御答弁を願いたいと思います。
  278. 福田篤泰

    政府委員福田篤泰君) お答えいたします。政府としまして沖繩の施政権を一日も早く日本に戻す、いわば祖国復帰が根本政策であることは御承知通りでございます。ただ問題は、客観情勢の許す限りという前提がありますので、復帰するまでにその間はあらゆる努力をいたしまして沖縄の住民の生活の向上に努力いたしたいと考えております。具体的に申しますと、すでに調査を開始しました西表島の調査団の派遣、あるいは従来技術援助をやっておりますが、来年度は予算も約倍にとりまして、従来の経済協力、または戸籍、教育等、そういう面からさらに産業あるいは社会福祉、医療という面まで広げて参りたい、こういう考えであります。
  279. 島清

    ○島清君 ただいまの御答弁は、西表島の開発の問題に限定をされたようでございますが、日本復帰の問題につきましては、いつ、だれと、どこでこの交渉をされたか、その交渉の経過について御説明を願いたいと思いますが、あわせて後刻資料の御提出を願いたいと思います。
  280. 福田篤泰

    政府委員福田篤泰君) 復帰の交渉につきましては、これは総理または外務大臣からお答えをする方が妥当と存じますが、私どもの、記録で拝見して承知しております点は、従来総理あるいは外務大臣がワシントンに参っていろいろな交渉をした場合に、必ず祖国への復帰の問題について要望いたし、また東京におきましてもアメリカ大使館側と話をしておるというのが従来の経過でございます。
  281. 島清

    ○島清君 貿易自由化の問題に関連をいたしまして、国内産業の保護の面からお尋ねを申し上げたいが、砂糖の問題と、それからパイン産業の問題と、それからバターの問題について、農林大臣はどのようにお考えであるかをお尋ねを申し上げたいのであります。  二月のジュネーヴにおきまするところのガット農業委員会におきましては、各国の風向きはかなり農産物についても日本には強かったように私たちは承っておるのであります。ヨーロッパにおきまして一〇%の自由化がなされてないということは、おもに農産物についてでございまするけれども、しかしながら、ジュネーヴの会議におきまするところの各国の風当りからみまするというと、遠からず農産物に対してもある程度自由化をはからなければならないと、こういうふうに考えますので、国内産業の保護を自由化政策のもとでどのように黒糖、パイン、バター等において対処されていかれるお考えであるか、その点について承りたい。
  282. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 自由化の、農産物の扱いにつきましては、これは各国におきましても自由化とは申しながら、特に慎重な態度をとっております。さようなことから、ただいま御指摘のように、ガットの分科会が先般ジュネーヴで開かれて、そして農作物の輸入制限の状況を聞きたいと、これは別に査問委員会とか、そういうのじゃないのです。実情を調べたいという性格のものでございますが、さようなことは主として後進諸国、すなわち農業生産を主としてやっておる諸国から提唱されまして行なわれております。日本といたしましても農業につきましては慎重にしていきたいと、かねがね私が申し上げておるのでありまするが、米と麦と酪農製品につきましては自由化しない。それから当面砂糖につきましても自由化をする考えはありません。ただ、お尋ねの砂糖につきましては一部には自由化したらいいじゃないかというような意見もあります。しかし、砂糖が今日日本におきまして自給化政策が推進されておる途上でございます。それから国際貿易の構造上から見ましても、キューバ糖を輸入をすることに、まあ自由化の暁においてはなる傾向が強いわけであります。そういう際に、その見返りの品物をキューバに出しにくい事情がある、さようなことからこの砂糖のAA制、これはきわめて私は重大な問題である、慎重にしなければならぬ。ただいまのところにおきましてはこれを自由化する考えを持っておりません。  それからパインにつきましては、琉球のパイン産業を強化するという意味合いにおきまして、ただいまも自由にこれを輸入いたしております。しかし、その他の地域につきましては自由化をとっておりませんです。これにつきましても琉球を守り、あるいは奄美大島のパインを守るというような見地からAA制化はきわめて困難であると、かように考えております。
  283. 島清

    ○島清君 砂糖については自由化をしないという御説明でございましたが、砂糖は目下必要量を二十万トンくらいを割って輸入しておりますが、砂糖業者は、かなりもうけておるということでございます。従いまして、そのもうけを吸収しなければならないというので、差益金吸収制度というものが作られましたときには大体砂糖が目的でございましたが、いつの間にか砂糖がはずされております。従いまして自由化をしないということでございまするならば、砂糖の利益につきまして特定物資に指定するお考えはないかどうかを伺いたい。
  284. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 砂糖につきましては現在非常に高率の関税をかけておるわけでございます。その上にさらに消費税をかけておる。で、大体合わせますると一五〇%近くのものがかかっておるということになるわけであります。そのかける額につきましては、大体原価計算をいたしまして適正な砂糖の価格、まあ斤七十三円前後のところをみまして、そのところに実際上の市価が落ちつくというようなところを見当に、輸入の調整ですね、割当制度を通じて行なっておるというので、過当な利潤が出ないようにということをこの制度の運用上は特に考えなければならぬし、また考えて措置しておる次第でございます。
  285. 島清

    ○島清君 沖縄の施政権の返還の問題と関連をいたしまして、戸籍の日本への返還、それから教育の返還、これは住民側の非常な要望でございましたし、またアメリカにおきましても戸籍の日本との一元化、返還ということは、最近まじめに取り上げられているようでございまするし、またアメリカの国内におきましても、コンロン報告であるとか、シラキューズ報告であるとか、沖縄を日本に返してもいいのではないかと、こういったような報告等がなされておるようでございますが、こういったような背景のもとに、なぜ教育それから戸籍の日本への復帰ができないのかどうか、こういうことについての交渉の経過について御説明を願いたいと思います。
  286. 福田篤泰

    政府委員福田篤泰君) 戸籍に関しましては、先般安保新条約の調印に際しましては、ワシントンにおいてハーター国務長官との間の話し合いの席で正式に取り上げられまして、この点は東京においてアメリカ大使館と外務省と、外交チャネルを通じて懸案として話し合いを進めるということが定められたわけでございます。ようやくいわば懸案解決の糸口をつかみましたので、帰国後法務省、外務省、総理府三者がいろいろと協議をいたしまして、従来の経緯、それからアメリカ側に対する要望の資料等をやっと最近整理を終わりました。先般の台風災害あるいは西表島の派遣等で交渉がおくれたわけでございますが、事務的にはようやく煮詰まりましたので、できれば今週中あたりから正式にわが方の要求をアメリカ側に、大使館を通じまして提案をいたしたいと考えておる次第であります。この点は従来非常に困りまして、福岡と那覇の二つに戸籍が認められておりまして、どうしてもこの際戸籍行政権と申しますか、一元化をこの機会にはかりたいと希望を強く持っておる次第でございます。  なお、教育権の返還につきましては、非公式にいろいろお話もあるようでございますが、まだ戸籍のような具体的な話し合いまで煮詰まっておらぬようでございます。
  287. 島清

    ○島清君 冒頭に申し上げた通り、日米新時代のアイク・岸共同声明は、沖縄の県民諸君の福祉を増進するということでございましたが、しかしながら、その後の経過は必ずしもその声明通りはいってないのであります。従いまして、政府のこの声明の趣旨に沿った本格的な救援の対策について御説明いただきたいと思うのが一点。  さらに、それに反するような——先年石川というところにジェット機が小学校に墜落いたしましたときのまだその補償すらアメリカ軍の方は誠意をもって当たっていないようでございます。そのことにつきましては、沖繩立法院におきまして、超党派的な決議をもって日本政府に、アメリカ軍のその不誠意をなじると同時に、その窮状を訴えて参っているようでございますので、それに対する扱い方について。  さらに最近におきまして、ホーク型ミサイルの基地を設定するということを発表いたしておりまして、これまた立法院におきましても、沖縄も超党派的にこれに反対をしておるようでございます。先年ミサイル用基地の八カ所の土地の接収が行なわれた場合にも、非常な県民の反撃を受けたようでございますが、それにもこりず、今度はまた新しく基地の設定を新規計画をしておるようでございまして、この土地取り上げの問題についてもどのように解消されようとしているか。  さらに渡航の問題でございますが、渡航のことについてはずいぶん最近緩和されたようでございますが、しかし所持金は二百ドルしか認められてないようでございます。沖縄に行くのに何も二百ドル、為替の自由化をしていこうという今日において、その自由化政策に反するような二百ドルというような少額しか認めないということは、私はおかしいと思うのです。この二百ドルのワクを認めたおかげで、沖縄の土地において散華いたしました日本国内の親兄弟、縁故者の諸君はそれを慰霊するのに非常に沖縄を尋ねることが多いようでございます。ですから、私は二百ドルというようなそんなけちなワクではなくして、沖縄の渡航者に対しましてはドルの所持金を無制限に認めてもよろしいのじゃないか、こう思いますが、所見を承っておきたいと思います。  それから沖縄には非常に膨大な国有地がございますが、おもに山林でございますが、今政府がアメリカ軍の要請に従いまして開発しようとするところの西表島も国有地でございますが、その国有地の管理がどのようにされているかの説明を願いたい。
  288. 福田篤泰

    政府委員福田篤泰君) 昨年の数回にわたる台風被害に対して、具体的に政府はどういう救援の手を伸べたか、昨年の暮れに予備金から三千万円出資いたしまして、三百七十トンほど内地米を一月にお送りいたしました。なおさらに先般の閣議におきまして、二千九百万円の予備金支出を決定いたしまして、約四百トン余りの外地米を入れたお米を現地に送る手配が整った次第であります。  なお米だけでは困りますので、現地側の要望がございまして、治山治水、砂防というような関係から、適当な指導者を送ってもらいたいというお話がありましたので、先月末から選考いたしまして、建設省から二名、農林省から一名、合計三名を現地に派遣して指導に当たる手配を整えた次第であります。  なおジェット機の問題でありますが、これは昨年起こりまして以来、長い間まだ完全に解決をみないことはまことに残念でございますけれども、二百七十六件の請求のうち片づきましたものは約二百件、これは御存じの通り、アメリカ国内の外国人賠償請求法に基づいて処理に当たっておるのでありまして、一件の請求額が一万五千ドルをこしますと本国に申達しなければならぬ。ハワイの空軍司令部を通じまして、一々手続をとるために、相当多額の請求額のものはまだ解決をみておらないというのが実情のようでございます。たとえば死亡件数十七件のうち二件は片づきましたが、十五件は全部この一万五千ドル以上の請求でありまして、この点はまだ解決をみませんので先般外務省を通じまして督促方をいたしましたところ、先月の末にアメリカ側から回答が参りまして、米本国からこの点は一万五千ドル以下で現地で適当に解決しろという指令があったそうであります。なおこの点につきましては、なるべく早く残余の件数の解決につきましても、側面的に私どもは今後も努力して全面解決に持っていきたいと考える次第であります。  なお渡航に関しましては御指摘の通り手続が簡素化されました。これは両国にとりましても非常なプラスと思いますが、所持金の制限については全く同感でありまして、この点は今後交渉いたしまして、二百ドルという少額の制限を何とか撤廃いたしたいと考えておる次第であります。  なおその他の点につきましては、具体的な御資問によりましてお答えいたします。
  289. 島清

    ○島清君 石川の被災者に対しましては、アメリカ軍の方が何か事件の解決を回避しているようでございますが、現地新聞の報ずるところによりますると、三カ月間ぐらい被災民に対する陳情を聞くというような折衝機関が置かれたようでございますが、それが解散いたしまして、その解散後は、嘉手納の航空隊の在日米軍賠償部連絡官がときどきやってくるようでございますので、向うの新聞によりますと、在日米軍の賠償官がときどき向うに行くわけでございまするからして、折衝しやすいのは日本において一番折衝をしやすいのではないか、こう思いますので、その辺の事情も御勘案をいただきまして、沖縄の県民諸君の要望にこたえていただきたい。こういうふうに考えます。  さらに沖縄の地図を拝見いたしますと、検定済みの地図の中からも沖繩が日本から除かれておりますので、これは非常に遺憾だと思います。そのことは、日本政府がアメリカに対しまして施政権の返還をもう要求しないのだ、放棄したのだというようなことにとられないとも限りませんので、そういうことについて御善処を願いたい、こう思います。御答弁がありますならば承っておきたい。
  290. 福田篤泰

    政府委員福田篤泰君) 文部省側ともよく連絡の上、御趣旨の点を尊重いたしまして、その点については検討いたしたいと存じます。
  291. 島清

    ○島清君 今、沖縄の問題につきまして申し上げましたことは、そっくりそのまま小笠原の日本復帰にも関係をする問題でございますので、沖縄と同様に、誠意ある態度をもちまして、小笠原島民の帰還乃至小笠原の日本復帰についても御善処を願いたい、こういうふうに御要望申し上げておきます。  今度は、新安保問題と関連いたしまして沖縄の地位についてお尋ねを申し上げたいと思いますが、沖縄の地位が新安保の適用範囲に属するかどうかということについては、折衝の過程におきまして、与党内におきまして議論がありましたことは天下周知の事実でございます。含めるべきであるとする主流派と、それから除くべきであるという反主流派の議論が活発に行なわれましたが、しかしながら、その条約の結果は、沖縄が入っていないということになっているのであります。従いまして、私たちは安保締結の、出されました資料によって拝見いたしまするに、沖縄の問題につきましては、相互協力及び安全保障条約についての合意された議事録というのがございます。その議事録によりますと、前段は省略いたしますが、「武力攻撃が発生した場合には、日本政府は、同政府が島民の福祉のために執ることのできる措置を合衆国とともに検討する意図を有する。」と書いてあります。これは日本側からの全権委員考え方でございます。その次に合衆国全権委員の方から「島民の福祉を確保するため全力を尽す意図を有する。」と、こういうふうに言っておりますが、島民の福祉のためにとるべき措置について御説明をいただきたいと思います。
  292. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 島民の福祉のために政府のとるべき措置を一般的に申し上げますならば、赤十字的な活動でございます。御承知のように、武力攻撃があった場合あるいは武力攻撃の脅威がある場合には、安保条約の第四条によって協議をすることになっております。武力攻撃に対しましては、アメリカ側がこれに対処する。福祉の点については協議をいたします。その協議の内容、福祉の内容は一般的に申し上げます。ならば赤十字的な活動であります。(「赤十字と防衛庁と関係があるか」と呼ぶ者あり)
  293. 島清

    ○島清君 アメリカ太平洋艦隊の責任者が、核兵器を使われるようになると沖縄は全滅するだろうということを言明をいたしております。武力攻撃がなされた場合には、赤十字的な役割のできる地域的な余裕が沖繩にはないと思います。ということは沖縄島民が日本に疎開することだと思うのですが、そのように理解していいですか。
  294. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 疎開するといいますか、引き揚げるといいますかそういうこと、あるいは食糧を補給する、こういうようなことと存じます。
  295. 島清

    ○島清君 太平洋艦隊の責任ある地位の人が、全減すると言う所に沖縄県民を置いておいて、食糧を補給されるつもりですか。
  296. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 太平洋艦隊司令官がどういうことを言ったかはっきりしておりませんが、いろいろの場合があります。ですからそういう仮定をいたしますならば、これは全世界も全滅する場合もある。そういうことに対しての方法はないと思います。全滅する場合には。しかし、全滅しないことについて、これは日本が福祉のために協力するのは当然でありますから、できるだけの協力をすることは当然日本がやるべきだと考えます。
  297. 岩間正男

    ○岩間正男君 関連して。ただいまの防衛庁長官の答弁は、条文を解釈すればそういうことになるのだろうと思うけれども、この交渉の過程なんかでとにかく武力攻撃が発生する、あるいはそういうふうなことの平和を乱されることの危険がある。こういう場合においての島民の退避、避難の問題については全然協議の対象にならなかったのですか。つまりあなたの今の説明では、赤十字的行動、武力攻撃が発生した、しかし現在の核兵器におきまする戦争では、武力攻撃が発生したあとにおける措置というのではほとんどナンセンスじゃないか。生き残った何人かに対する赤十字行動などというものだけについて協議というならば、八十万島民に対する生命の保存ということはとうてい期しがたい、従って当然八十万島民の平和、生命の安全に対する考慮というものが政府の頭の中にあるとすれば、当然私は事前におけるそのような措置について、これは協議するのは当然だと思うのでありますけれども、全然この議事録にはそういう点はない、武力攻撃が発生したあととしか読めない、そういう点についての政府が今までとってきた交渉の経過、この点が非常に重大でありますが、この点どういうふうに一体取り扱われたのか、明確にしてもらいたい。
  298. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 安全保障条約によりまして、第三条で常に日本に脅威が生ずる場合とか、あるいは極東の平和と安全、こういうものに対して随時、あるいは要求によって協議する、こういうことになっていますから、沖縄の問題につきましては随時これは協議の対象になっていると思います。なおこの合意議事録におきましても、今御指摘のように武力攻撃が発生してからの協議もありますが、同時にもしこれらの諸島に対し武力攻撃が発生し、または武力の攻撃の脅威がある場合には、両国はもちろん安保条約第四条の規定に基づいて緊密に協議を行なう、こういうふうになっています。でありますから、武力攻撃が発生した場合、または武力攻撃の脅威がある場合には、この合意議事録で協議することになっておりますが、それ以外におきましても随時協議をする、こういう対象になっております。
  299. 岩間正男

    ○岩間正男君 今の随時協議の問題は第四条だと思うのです。しかし第四条を読んでみるとそういうことになりますか。これはどうもこの安保条約の中で非常に不明瞭な一つの問題があるのです。適当な場合に「日本国」と言い、あるいは「日本国の施政の下にある領域」、こういうふうにいろいろ使って、この日本語の範囲がはっきりしないのです。しかしこの第四条によると「日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも」随時協議する。こういうふうになっているのですけれども、今の沖縄の措置についてこれを含むかどうかということは、これは解釈論になるのですね。明確にあの条文の中にはうたわれていないと思うのです。それから議事録の中には、今言ったように、武力攻撃が発生したあと、当然そういうことに読まざるを得ないのですが、そうすると、あなたの今の御説明にもかかわらず、私は、沖縄の八十万島民に対する事前の生命の保障、これをはっきり安全地帯に待避させるとか、そういうような問題については何らこれは触れていない。見殺しにしている。こういうふうに読まれても私は仕方がないと思うのです。この点今の説明では条文のどういう所を根拠にして、われわれはそれを一体信ずればいいのか。不明瞭です。条文について明確に法的根拠を明らかにしていただきたい。
  300. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 先ほど協議について第三条と言ったのは、御指摘の通り第四条なのであります。第四条は「この条約の実施に関して随時協議」する。「また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。」ということでありますから、この条文によって沖縄は協議の対象になると思います。なお合意議事録によりまして「もしこれらの諸島に対し武力攻撃が発生し、又は武力攻撃の脅威がある場合には」でありますから、発生した場合にでなくて、武力攻撃の脅威がある場合には両国は協議すると、こういうことになっております。それともう一つは、「島民の福祉のために執ることのできる措置を合衆国とともに検討する意図を有する。」こういうことであり、島民の福祉のために赤十字的な措置をとることを協議する、たとえば御指摘のように、引き揚げなくちゃならぬというときに、沖繩の人々を日本へ連れてくるというような措置は、当然この合意議事録からもできることでありますし、そうすべきだと思います。
  301. 島清

    ○島清君 赤十字的役割だとおっしゃいましたけれども、一応は引き揚げということについて限定をして質問を申し上げますと、引き揚げをいたしまする場合には、輸送団が組まれるわけでございましょう。それは海上自衛隊が護衛することだと思います。海上自衛隊ばかりじゃなくて航空機もそれの護衛に当たると思います。しかしながら安全保障条約を締結しておる関係からいたしまして、かりに敵方はこれを拱手傍観しないと思います。そういう場合には当然攻撃があるものと見なければならないと思います。そういうことについてどのようにお考えであるか。そういうことを想定のもとに、去年の十月に太平洋沿岸においてあの大規模な大演習をおやりになったのではないか。仄聞するところによりますと、そういう想像のもとに大演習をやったのだ、アメリカの潜水艦ですか二隻も参加いたしまして、そういう演習がなされたのだと、こういうふうに承っておりますが、いかがですか。
  302. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 沖縄の人々が本国へ、日本へ引き揚げるという場合に、大体におきましては赤十字船等がこれに当たるのが建前だと思います。しかしそれにつきまして、この海上自衛隊が護衛をする、こういうことも当然やらなければならないことであります。しかしこの海上自衛隊の護衛というものは、自衛隊法第八十二条の「海上における警備行動」ということで護衛する、こういう建前に相なろうと思います。それからそういうことに対して攻撃がある場合も、これは想定されます。しかしこれに対しましては、やはりわが方の海上自衛隊といたしましては、正当防衛の観念からその攻撃に対処する、こういうことに相なろうと思います。  それから昨年十月に、太平洋におきまして日本の海上自衛隊が参加して大演習をしたという事実はありません。八月に演習をいたした事実はあります。それからその演習が、こういう引き揚げ等のことを予想して、また相手方の攻撃に対処すると、こういう意味でやったのではないか、こういうお尋ねでありますが、そういうことで演習をいたしたのではありません。  八月には、演習をいたしましたが、十月には、太平洋域で演習したという事実はありません。
  303. 岩間正男

    ○岩間正男君 悪いけど、関連して。重大問題だ、お伺いしたいのですが、八十万の島民を退避させるには、どれだけの船団が要り、これに対する護衛艦隊が要るか、こういうものについて、具体的な検討をしたのかどうか。これは安保の問題と私は関連して重大問題だと思います。  今、北鮮の引き揚げをやっていますけれども、一体、ここ数ヵ月の間、何人帰すことができましたか、これについて日本政府は、安保条約を批准するなら、その前に私は、こういう具体的な方策についてまで、国民の前に明らかにしなければ、私はこれは、沖縄八十万の島民は安心することができない。当然そういう策をお持ちだろうと思いますから、ここでお伺いしたいのです。  どのような船を、どう使って、そうしてこれに対して、どのように一体護衛船団をつけるのか、このような配置、そうして、それには時間がどれくらい要るのか、こういう資料が、当然ここに出され、ここで討議されなければ、私は絶対安心することができない。単に抽象的に退避させるのだ、それからけがをしたなら、あとで赤十字的行動をとるのだ、こういうようなことで、名分だけうたって、具体的な計画なしには、私は絶対に、沖縄の島民の立場に立てば、絶対安心できない、こういうふうに思うんですが、これについて、沖縄の人たちが安心できるような御答弁を願います。
  304. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 沖繩に武力攻撃がありましたときに、安保条約によりまして、当然アメリカが武力攻撃に対処して沖繩の人々を守る措置をとることが建前であります。しかし、その福祉については、アメリカ合衆国と日本が協議することになっておりますから、その福祉の中に、どういうことがあるかといえば、日本は、残念ながら今施政権を持っておりませんから、赤十字的な活動をすることが、この合意議事録の内容である、その中の一つの例として引き掲げる場合に、日本が護衛船を出して引き揚げに力をいたすのかということでありまするから、そういう場合には、力をいたす。沖縄の島民を、全部日本へ引き揚げさせるというような、そういう合意議事録は、全然ありません。  それはちょっと御質問考え方が違うと思います。
  305. 島清

    ○島清君 島民を全部引き揚げさせるという議事録ではございませんけれども、しかしながら島民の福祉のためにとる処置ということになりますると、向こうは、核兵器の基地であるということは、もうアメリカが発表して、世界周知の事実なんです。そこに核兵器の武力攻撃がございました場合には核兵器戦争になるであろうことは、しろうとでもわかることなんです。  ですから、そういう武力攻撃がなされた場合には、本委員会におきましても、外務大臣は日本のたとえ潜在主権であろうとも、日本国土であるからして、当然にこの国土防衛に立たなければならぬと、こういう意味答弁をされておるいきさつから見ましても、やはりこの島民の福祉ということが、これが引き揚げとか疎開以外にないと思うのですが、そうなりますというと、第二次世界戦争のときにも、沖縄から学童疎開がなされましたけれども、その学童が乗っておりまする船すら撃沈をされているのです。そしてその犠牲者が、千名以上も出ているのです。その幼ない、いたいけないところの霊が小櫻の塔と言うて祭られておりまするけれども、第二次世界戦争においても、そういう惨劇の目に会っている。  いわんやこういったような、ともに守るというような条約が締結されておる地域から引き揚げるということについては、それは赤十字のしるしというものが、夜間でございますとわかりません。ですから、当然に攻撃があると見なければなりませんし、それからあなたは防衛すると言いますけれども、攻撃があって防衛する、あるいは防衛戦争になるかもしれませんけれども、しかしながら攻撃があって反撃がある。そうしてここで行なわれますところの動作というものは、戦争状態なんです。そういう戦争状態を——私は素朴な形でお尋ねいたしますが、それは、私たちは戦争である、交戦であると見ているのです。そういうことを、あなたはどういうような観念で見ておられるか御説明願いたい。
  306. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 沖繩が攻撃されるというときには、これはどこか攻撃する国があって攻撃するのでしょうが、とにかく国際連合憲章から言いまするならば、お互いに加盟国は、攻撃的な戦争はしない、こういうことに相なっております。  そういう建前から言えば沖縄が攻撃されるということになれば、だれかが攻撃するのでありましょうけれども、そういう場合は、相当これは大規模なものに相なるだろうと思います。でありますので、そういう場合に日本に疎開といいますか、引き揚げるということにつきましても、これは非常にこの引き揚げについては、相当苦労するといいますか、骨の折れることは、これは当然、日本としても覚悟しなければならぬと思いますが、それに対して攻撃があった場合に、これに対して反撃を加えるということが交戦にならないか、こういうことであります。  交戦という一般的な言葉から言えば、攻撃に対して反撃を加えるのですから、交戦というふうになりましょうが、わが憲法第九条二項に言っている交戦権というのは、そういうふうに一般に戦争状態に入るということでなくて、交戦者の権利というふうに、私どもは解釈いたします。今お尋ねのように、事実上武力攻撃に対して反撃を加えるという状態は、これは戦っているような形になると思います。しかしこれは、いわゆる憲法上の交戦権というようなものではないと私は思います。自衛隊法から言いますならば、八十二条によって、これは正当防衛として反撃を加える、こういうふうに考えます。
  307. 島清

    ○島清君 防衛権の発動として戦争状態になった場合についても、憲法にいうところの交戦ではない——そうすると、交戦ということは、要するにこっちの方から侵略して行く場合の戦いだけが交戦であると、こういうふうに憲法の条項を理解している、こういうことですか。
  308. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 憲法の交戦権というのは、これは戦争をするものの権利、たとえば中立船の拿捕であるとか、あるいは占領行政についての権利、こういうものをさしていると、こういうふうに考えております。でありますから、沖縄の今の設例の場合は、あくまで沖縄の人々の福祉のためにすることである。それに対して引き揚げ等の場合に、攻撃が加えられたときには、これは正当防衛の形として反撃を加える、こういうふうに解釈いたしております。
  309. 島清

    ○島清君 時間がありませんから、納得しませんけれども、あと質問することにいたしまして、私はこれ以上追及しませんけれども、こういうことは、必要のないことなんです。もし沖縄を含めるということの意図があれば、こういうことが必要なんだけれども、しかしながら交渉の過程におきまして、与党と政府内部におきまして、異論がございましたので、私は条約の中には表面的には入れないで、実質的に、こういう議事録を残しておいて、それから岸内閣が、アメリカの方に念書を入れたものだと、こういうふうに、私は理解をいたします。そして私の理解が正しいということについては、後日立証いたしたいと思いますが、その点について、御弁解なり御答弁があれば、承っておきます。
  310. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 御意見は、御意見としてお聞きいたしておきます。
  311. 鈴木強

    ○鈴木強君 関連。赤城さん、ちょっと、私ふに落ちないのですけれども、設例ですから、今後の問題になると思うのですが、沖縄の島民を引き揚げるというようなことが起きた場合一あなたは、さっき赤十字的な行動でやるとおっしゃったのだが、現に自衛隊が、それを護衛する場合があるということを言われたですね。これは、日本の自衛隊の行動範囲というものは、安保条約によって日本の領土内に限られているわけでしょう。ですから沖縄まで自衛隊が行くということは、ちょっとその点から見て、おかしいと思うのです。もちろんわれわれは、沖縄島民をそういう非常事態に対して、どうしても救わなければならぬ日本政府の義務があると思うのですね。ですから、その場合に、自衛隊が赤十字のマークをつけて輸送船として向こうへ行くような場合は、これはあり得ると思う。しかしこれを護衛するというのは、これはアメリカの責任においてやるような協議をするのじゃないのですか。  そういう点、非常にあなたのさっきの答弁ですと、誤解を受けると思いますし、私たち、この条約の精神から見て、ちょっとおかしいと思うのです。そういう点は、どうでしょうか。
  312. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 今の御指摘の点、設例の場合は、自衛隊法の八十二条にこういう規定があるのであります。「長官は、海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊の海上において必要な行動をとることを命ずることができる。」こういうことから、海上における警備行動ができる。今の安保条約に基づく武力行動に対して出動するというのとは別に、この海上における警備行動の役割りを果たす、こういうことに、私どもは了解いたしております。
  313. 鈴木強

    ○鈴木強君 どこまでも行けるのですか、サンフランシスコまでも、ロンドンまでも行けるのですか。
  314. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) これは、そのときの事態によるものと思いますが、なるべくこれは、あまり遠くない方がいいと思います。
  315. 島清

    ○島清君 今、防衛庁長官がお答えになりましたように、防衛庁長官、岸内閣は非常に憲法を拡大解釈しているようですが、それは、本委員会におけるところの佐多委員の御質問並びにわが党の曾祢委員質問等に対しましても、個別的な自衛権はあるが、集団的な自衛権は発動しないなんというような詭弁を弄しておられますが、私が非常に伺いたいことは、これ以上、憲法の拡大解釈をされないかどうかということをお答え願いたい。
  316. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 御見解の相違だろうと思うのですが、別に拡大解釈というのではなくて、憲法を正しく政府としては解釈している、こういうふうに、政府としては考えております。
  317. 島清

    ○島清君 あと議論しますけれども、この条約が成立しますと、今のMSA兵器以外の兵器が持ち込まれるということがあり得ると思うのです。そういう問題が、当然に日本政府の方にも知らされることになりますので、MSAの秘密保護法だけでは、不十分ではないかと思うのです。おそらく考えておられると思うのですが、それ以外の秘密保護法というものを、条約の成立と同時にお考えにならないかどうか。
  318. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 将来におきまして、兵器の種類等について、秘密保護法というものを考える余地があると思います。  しかし今度の新安保条約によって、特に新しい秘密保護法を作るという考えは、義務は持っておりません。今のところでは、この秘密保護法を特に必要とするとは考えておりません。現行の日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法で足りると今のところ考えております。
  319. 島清

    ○島清君 必要になってくると、前段はおっしゃって、今は足りるとおっしゃったのですが、その必要になってくるという時期、それは、いつごろと想定せられますか。
  320. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) この想定は、ちょつといつという、はっきりしたことは申し上げられませんが、この間御質問がありましたので、第二次防衛計画昭和四十年ごろが終期になるわけであります。そのころまでには、これは必要を生じてきやせぬかと、こういうふうに御答弁申し上げましたが、そういうふうに考えております。
  321. 島清

    ○島清君 本条約で、国民が非常に理解しかねる個所が数カ所ありますけれども、中でも、その事前の協議におきますところの拒否権の問題だと思うのであります。  それで、この拒否権を条約上に明確にすべきだという世論が非常に強いわけでございますが、そういう修正が国会で出た場合に、アメリカと再交渉するお気持はないかどうか。
  322. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) これは、外務大臣から御答弁申し上げる筋だと思いますが、私は、そういう修正案が出ましても、再交渉する余地といいますか、再交渉することはないと思います。
  323. 島清

    ○島清君 岸内閣は、ベトナム賠償のときでも、参議院の質問を逃げまして、そして自然成立をはかりましたが、今度の安保でも、そういうような手を使いそうなのですが、そういう手を使わないと明言できますか。
  324. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) できるだけ御協力を願って、普通の通り方で通るようにいたしたいと考えます。
  325. 島清

    ○島清君 私は、何も防衛庁長官に答えてもらいたいというわけじゃないのですが、防衛庁長官は総理大臣心得になられましたとみえまして、ずいぶん御答弁をいただくわけであります。それ以外のことについて、大蔵大臣お尋ねをいたします。  それは、質屋の利子についてでございますが、庶民金融機関としての質屋の利子が非常に高いのですね。それから、いろいろと質屋営業法等によって——それ以外に法律であるわけですが——この質屋営業法によりまするというと、日歩三十銭、月九分でございますか、それから金融業的な、質屋営業法の三十六条によりますと、月の計算でするというわけなんですね、そうすると三十日に質物を持っていきまして、一日に受けましても、一日は、やはり一月と計算されますので、一日が、月の計算で利息を取られるのですね。  そういうことは、今ここの委員会におきましても問題になっておりますように、所得倍増論で、非常に景気のいいことをおっしゃっておられながら、一般庶民に対しましては、特別な所得倍増に対する生活安定の方策を講じておられない、そういう建前からいたしまして、この質屋営業法を改正して、あるいは庶民質屋の利子を下げていくというような方途をお考えにならないかどうか。
  326. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 今直ちに、質屋の金利を動かす考えはございません。なかなかむずかしい問題でございます。  しかし、今の状態で、そのままでいいというわけではございませんから、経済情勢その他を勘案して、さらに検討することには、もちろんやぶさかではございません。ただいま、この金利を直ちに変更するという結論はまだ得ておりません。
  327. 島清

    ○島清君 近ごろの株式市場の投資、証券会社の大衆資金の導入については、目にあまるものがあるといわれておりますが、それは大蔵省も、しばしば警告を発しておるようでございますが、それについて、もし不況時になった場合に、私は、一大混乱が起こるのではないか、こういうような立場からいたしまして、何か、それに対する適切な御処置をお講じになるお考えはないかどうか。
  328. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 投資信託のあり方につきまして、十分一般の利用者の保護に欠くことのないように指導いたしております。その意味では、投資信託の資金の使い方等についても、あるいは社債その他の動かないものを、ある程度まざすような指導をいたしたり、また同時に、過大な広告をしないようにするとか、投機的な色彩の強く出てこないように、私ども絶えず指導しております。
  329. 小林英三

    委員長小林英三君) 島君の持ち時間は、約十分間残っておりますから、この次に、継続してやっていただくようにいたします。  本日の質疑は、以上をもって、終了いたします。明日は、午前十時より、昭和三十五年度総予算に関する公聴会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時二十四分散会