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1960-03-12 第34回国会 参議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月十二日(土曜日)    午前十時十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小林 英三君    理事            大谷藤之助君            館  哲二君            西田 信一君            秋山 長造君            鈴木  強君            松浦 清一君            千田  正君            大竹平八郎君    委員            泉山 三六君            金丸 冨夫君            小柳 牧衞君            重政 庸徳君            白井  勇君            杉原 荒太君            手島  栄君            一松 定吉君            堀木 鎌三君            武藤 常介君            村山 道雄君            湯澤三千男君            米田 正文君            荒木正三郎君            加瀬  完君            木村禧八郎君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            永岡 光治君            羽生 三七君            平林  剛君            藤田  進君            松澤 兼人君            東   隆君            島   清君            白木義一郎君            辻  政信君            岩間 正男君   国務大臣    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 佐藤 栄作君    文 部 大 臣 松田竹千代君    厚 生 大 臣 渡邊 良夫君    通商産業大臣  池田 勇人君    運 輸 大 臣 楢橋  渡君    労 働 大 臣 松野 頼三君    国 務 大 臣 赤城 宗徳君    国 務 大 臣 菅野和太郎君   政府委員    法制局第二部長 野木 新一君    自治庁税務局長 後藤田正晴君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    防衛庁経理局長 山下 武利君    防衛庁装備局長 塚本 敏夫君    経済企画庁長官    官房長     村上  一君    経済企画庁総合    計画局長    大来佐武郎君    科学技術政務次    官       横山 フク君    科学技術庁長官    官房長     原田  久君    科学技術庁計画    局長      久田 太郎君    科学技術庁振興    局長      鈴江 康平君    科学技術庁原子    力局長     佐々木義武君    外務大臣官房審    議官      下田 武三君    外務省アメリカ    局長      森  治樹君    外務省経済局長 牛場 信彦君    外務省条約局長 高橋 通敏君    外務省条約局外    務参事官    藤崎 万里君    外務省国際連合    局長      鶴岡 千仭君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主税局長 原  純夫君    大蔵省銀行局長 石野 信一君    文部大臣官房長 天城  勲君    文部省大学学術    局長      小林 行雄君    文化財保護委員    会委員長    河井 彌八君    厚生大臣官房会    計課長     熊崎 正夫君    厚生省社会局長 高田 正巳君    通商産業大臣官    房長      斎藤 正年君    通商産業省軽工    業局長     秋山 武夫君    通商産業省石炭    局長      樋詰 誠明君    通商産業省公益    事業局長    小室 恒夫君    中小企業庁長官 小山 雄二君    運輸省自動車局    長       国友 弘康君    労働省労政局長 亀井  光君    労働省職業安定    局長      堀  秀夫君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十五年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 小林英三

    委員長小林英三君) これより委員会開会いたします。  昭和三十五年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三件を一括して議題といたします。
  3. 千田正

    千田正君 議事進行について。  きょうは昨日の打ち合せにおいては十時かっきりというわけで、全員そろっているのに委員長がおくれたので、一応開会に際しまして一つ陳弁して下さい。非常に理想的にいきませんよ。
  4. 小林英三

    委員長小林英三君) 千田君の御発言ごもっともと存じます。今後委員長においてしかるべく気をつけます。東隆君。
  5. 東隆

    東隆君 きょうは週末でありまして、はなはだ御迷惑をかけるようでありますが、私は厚生大臣労働大臣、また大蔵大臣等に対して、意地悪く質問をするのではございません。  まず厚生大臣に、生活協同組合を主管されておる課は一体何という課か、それをお聞きいたします。
  6. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) 社会局生活課でございます。
  7. 東隆

    東隆君 その社会局生活課は一体何人ぐらいで、そして主たる仕事はどういう仕事をおやりになっているのか。
  8. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) 生協とか同和対策が主でありまして、約十二、三名で構成いたしております。
  9. 東隆

    東隆君 生活協同組合プロ。八一でもって何人くらいですか。
  10. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) 三名でございます。
  11. 東隆

    東隆君 次は労働大臣にお伺いいたしますが、労働金庫のお仕事労働省の何の局の何課でおやりになっておりますか。それからまた、時間を節約する意味で、何人でおやりになっておりますか。
  12. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 労働金庫は御承知のように大蔵省と共管でございます。従って労働大臣としては労政局で扱っている人数は私よく覚えておりませんが、担当者は三人ぐらいでやっていると思います。その他に何人かということは正確に存じません。それで政府委員から御答弁いたさせたいと思います……福祉共済課でまとめてやっております。これは検査官も含めまして七名でやっております。
  13. 東隆

    東隆君 労働大臣がどうもお知りにならない点をはなはだ残念に思いますけれども、しかし、これは私は少なくとも労働者関係、あるいは消費者に対する方面における協同組合関係と申しますと語弊がありますけれども、これがその方面に国が力をどれだけ入れておるかということを表明しておると思います。そういうような意味で、大蔵大臣はどういうふうにお考えですか。
  14. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤栄作君) 定員数だけではなかなか仕事ははかどらないわけでありまして、逆に申しますならば、一騎当千の人がおりますならば、三名でも仕事ができますし、これは人数よりも素質の問題だと思います。かような答弁をしますと、大へん不まじめなようでありますが、そうじゃなくて、それぞれの仕事の量から見まして、十分まかない得るように定員は査定して参っておりますから、御了承いただきたいと思います。
  15. 東隆

    東隆君 法人税法の第九条でもって、どれぐらい税金を吸い上げられているか、お聞きいたしたいと思います。法人税法の第九条というのは、  「各事業年度所得の計算」という項目によって協同組合課税をしておるのです。それがどのくらいになるかということです。
  16. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 農協生活協同組合を含めまする全体の特別法人に対しまする昭和三十五年度の課税見込み額は四十二億円、その約四割に当たる十七億円、この程度農協生協等に対しまする課税ということでございます。
  17. 東隆

    東隆君 今申された程度税金をお取り上げになっておるのですが、私は大蔵大臣にお伺いをいたしたいのは、法人税法の第一条の法人は、これは一体どういうような意味を持っておるか。私は端的に申しますが、法人税所得があるところにやはり税をかけなきゃならぬと思います。所得のないところに税をかけるのは間違いだろうと思います。そういうような意味で、協同組合、特に生活協同組合は、第九条に「組合は、その行う事業によって、その組合員及び会員に最大の奉仕をすることを目的とし、営利目的としてその事業を行ってはならない。」と、こういうふうに規定をしてあるわけであります。そこで、営利目的としない協同組合法人税をかけて、その法人税を実は先ほど言ったぐらいの額を吸い上げておるわけですが、これは私は少し無理なことをおやりになっておると思うのですが、その点は別として、あとでいろいろお聞きしようと思っておりますが、厚生大臣は、この生活協同組合が、生活協同組合法の第一条で、国民生活の安定をやるのだと、こういう大目的でもって消費者大衆のための協同組合をやっておりますが、先ほど言ったような、ああいう人数でもって、こういうような大きな大目的を果たすことができるか、これを一つ、やり得るか、そういう自信をお持ちになっておるかどうか、そのことを聞きたいのです。
  18. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) 現在のところ、昭和二十八年から十分な成績を上げておるような次第でございます。
  19. 東隆

    東隆君 生活協同組合が十分な成績を上げておると、こういうお話ですが、ほんとう生活協同組合が十分な成績を上げておるのですか、そして国民生活の安定に役立つような仕事をやっておりますか。
  20. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) 一応今のところ、各方面からの要望を満たしつつ今日までやって参っておりまして、昭和二十八年から三十五年まで二億一千五百万円の国と地方負担と半分々々の融資額を持っておるような次第であります。
  21. 東隆

    東隆君 私は、今申されたのは協同組合に対する設備資金の融通の問題だろうと思います。がその問題はあとでお伺いしようと思ったのですが、しかし、生活協組合法の第一条に掲げた目的を達成するために、先ほど言った三人くらいでもってこの目的が達せられますか。これはもう達するわけにはいかないのだし、それから、お考えになったらわかると思うのですが、政府は盛んに所得倍増だとか何だとか言われておりますけれども、物価を少し高くしてインフレでも起こしたらたちまち、形式的な所得はふえるかもしれませんけれども中身はすっかりだめになってしまうと思う。だから、ほんとうに実質的な生活水準を高める、こういうことをやるのには、一体どういうことを国民がやればいいのですか、そのやり方一つ国民生活の方を御担当になっておる厚生大臣に、そっちの方面を一体どういう方法でもって御指導をなさるのか、それを一つお聞きしたいのです。
  22. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) もちろん、生協活動を活発ならしめるということであろうと、私は御質問趣旨を推察申すのでございまするが、その他同和対策、環境、共同施設、これらの面につきまして、まあ十分とは言えませんけれども最大努力をいたして参っておるような次第であります。
  23. 東隆

    東隆君 私の質問趣旨をそんたくされなくてもいいのですよ。一体どうやったら国民生活を安定させることができるか。そうでしょう、国民所得倍増をなんぼやってみたって、インフレを起こして、そうして倍増をやったって、何にもならないわけです。だから、国民生活中身を、実質的な生活水準を高める方法は、これは国民がみずからでもってやるより方法がないと思う。しかも、みずからでやる場合に、民主的な機構で、そうして自主的にやるより方法はないと思うのですが、その方法は、協同組合のほかに何かありますか。
  24. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) 関係各省といろいろ政府は連絡をとりまして、経済の安定、民生の安定、それらの諸施策、いわゆる社会福祉国定の建設というものに対しまして、われわれは福祉行政予算というものを、今年は多少例年よりも上回りまするところの、総予算の一割以上というものを獲得いたしまして、今日努力をいたしておるような次第でございます。
  25. 東隆

    東隆君 自主的に民主的に国民自分たち生活をよくするためにやるところのものが、生活協同組合のほかに何かございますか。
  26. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) これは、なかなか幅広い御質問でございまして、私どもといたしましては、やはり政府民生の安定諸施策というものを各省が分担いたしまして、そうして上から指導する、あるいはまた下から盛り上るところの自主的な一つ努力というものと相呼応いたしまして、これが運営をいたさなければ期待し得ないと私は存ずるのであります。
  27. 東隆

    東隆君 私は自主的に、そうして民主的な組織でもって国民生活の安定をやらなければならぬとこう言っているわけです。そこで生活協同組合のほかに何かございますかと、こう聞いているわけです。
  28. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) 農業協同組合とかあるいはまた各種共済事業でありますとか、いろいろ例をあげますというとたくさんあるだろうと思いますけれども、今ここに列挙するところのものはちょっと……、直ちにここに並べろといっても並べ得ないと思います。
  29. 東隆

    東隆君 私は厚生大臣を試験するつもりは毛頭ないわけですけれども、実は自主的で、民主的な生活を守るところの組織は三つあるのです。それは何かというと、一つお話になった協同組合、もう一つ共済保険組合、もう一つはそれは労働組合、この三つが国民の自主的な、そうして民主的な国民生活を守る組織なんです。そういう以外にないのです。いろいろな仕事はこの組織を通しやるときに、初めて民主的にしかも自主的にやり得るのです。それ以外にないのです。だから私は、これはお答えを私の方からしたわけですけれども、その必要な部面の協同組合の中の生活協同組合担当されているのですから、一つこれはもう大きく力を入れてやってもらわなければならないわけです。一つ大いにがんばる考えをお持ちですか、どうですか。
  30. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) 大いに努力して今日まで参った次第でございます。
  31. 東隆

    東隆君 私は労働大臣にお伺いしますが、生活協同組合には、実は生活協同組合法は非常に外部から圧迫を受けて、そうして生活協同組合が当然やらなければならないところの信用事業をやっておりませんが、そこで、生活協同組合はかたわのような活動しかできない。それを補てんするような形でもって、協同組織をもって作っているのが労働金庫なんです。労働金庫生協との関係、これがどういうような形になっているか、一つその実績はどういうようなことになっているかお伺いします。
  32. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 同じように、同じ立場階層対象として労働金庫消費生活協同組合というものは大体同じ基盤のものに立っておりますので、今日までは信用事業をして、金融労働金庫でやっておるわけです。しかし結びつきが全然階層が同じでありますから、ある場合にはやはり融資とか貸し金とかいうもののつながりはございますが、今日は運営としては労働組合を中心に労働金庫というものは運営されておるというところに、階層は同じでございますので、全部一致しておるというわけではございませんが階層は同じものを対象に、片一方は目的厚生省所管組合生活協同組合主体として、労働金庫組合金融主体としてやっておるわけであります。
  33. 東隆

    東隆君 実は労働大臣生活協同組合労働金庫に加入しているのです。そこで、これは労働金庫から生活協同組合は金を借りるよりほかに方法はない。生活協同組合はそういうような非常に不自然な形で加入をいたしておりますから、そこで生活協同組合労働金庫資金を貸そうとしないのです。そこで生活協同組合仕事運営に非常に苦しんでおります、これは生活協同組合信用事業をやっておらないから。厚生大臣はどうですか、生活協同組合法を改正して信用事業生活協同組合にやらせる考えはございませんか。
  34. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) 現在のところ考えておりません。
  35. 東隆

    東隆君 なぜお考えにならないのですか。
  36. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) 現在のところ組織で一応金融措置というものが、たとえば労働金庫あるいは政府融資等によりまして不満足ながらもやや一応の運営を見ておるものでございまするので、信用事業をこれより以上広げるということはどうかと思いまするので、目下検討中でございます。
  37. 東隆

    東隆君 大蔵大臣生活協同組合信用事業をさせることに、大蔵大臣はどうかわかりませんけれども大蔵省は私は相当反対をされると思います。それは市街地信用組合法による信用組合があるから。そこで、というようなことで反対をされるだろうと思いますが、生協の方は、私は中小企業者等協同組合法よりも先にできておる。そうしてその間においていろいろな私は政治的な圧力が加わって、生協信用事業を持つことができなかったのだろうと思う。私はこれは非常に国民生活の安定をやるなんという大看板を掲げて、そうしてできておる法律としては非常に片手落ちのものです。で、協同組合には本質的に二つの違ったものがあります。それは生産者立場協同組合もあるし、消費者立場協同組合もあるのです。二つあるのです。厚生大臣はよくそれを承知しておいてもらって、そうして消費者立場に立つところの金融機関を救い上げなきゃいかぬという考え方をお持ちにならなければならない。今考えておるくらいの話であっては、これはやれないというのと同じことだろうと思うので私は申し上げますが、生活協同組合自分出資をふやして、資本をふやして、そうして組合員のためになるような事業運営するには、金の面を閉ざしてはうまくいくはずはないのです。それをとめておるからです。そうして中小企業者等協同組合による方面のものを利用せいとか、あるいは中小企業金融公庫から金を特別のものには融通するとか、あるいは労働金庫の方から出すとか、あるいは設備資金を国から出すとか、こういうことでもってごまかしておるわけです。だから生活協同組合消費者立場に立った系統的な金融機関を確立しなければ、ほんとう国民生活の安定をはかる方法にはならない。それをどういうふうに考えますか。これは労働大臣も同じです。労働省労働者の、先ほど社会福祉などと言われましたが、まさにこれをやらなかったら労働者生活というものはこれは向上いたしません。だからこの消費者大衆の系統的な金融機関を確立するということについて労働金庫が親玉になっても私は差しつかえないと思う。生活協同組合との関連において生活協同組合信用事業をやり得るような態勢を作らなければならぬ、これはどういうふうに考えますか。
  38. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) 現在のところ、組合余裕金組合員に貸し付けることはこれはやっております。しかし、信用事業をこれから自主的に営むということにつきましては目下検討中でございます。
  39. 東隆

    東隆君 生活協同組合余裕金組合員に貸し付けるのですか、そういうことをおやりですか。
  40. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) それは、もうやっております。
  41. 東隆

    東隆君 何の根拠でおやりになっておるのかお聞きしたいのですが。
  42. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) 組合員に貸し付けると、こういうことでございます。(「何の根拠によって」と呼ぶ者ありこ)れは共済的な意味によりまして貸し付けておるわけでございます。
  43. 東隆

    東隆君 これは私は、今の問題には非常に疑問があると思うのですけれども、私はもう一歩進めてみますが、生活協同組合は、御承知のように現金販売ですね、現金販売をやっているのですが、そういうような意味から見て、組合員が、私は、生活協同組合購買貯金というようなものをやるのは非常にいいと思うのです、これは私は事業運営上も非常に都合がいいと思うのですが、その道はお開きになるお考えですか。
  44. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) これは一種の信用事業になりまするので、これは今のところは差し控えております。
  45. 東隆

    東隆君 貸付をおやりになっても差しつかえないようなお話ですが、私は貸付よりもこの程度貯金生活協同組合がするのは、現金販売をやる方面において非常に有効だと思うのですが、その程度のものは認めることが適当でないですか。
  46. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) 御意見として承っておきます。
  47. 東隆

    東隆君 私は、この組合貯金をする、一方的な貸付をしないという条件でもって組合員預金を集めて、そうしてそれに相当な余裕ができればこれを労働金庫預金をする、こういうような態勢をとっていくと、これは生活協同組合は相当仕事がやりやすくなるのじゃないか、こういう考え方を持つわけです。先ほど貸付をするなんてことを言われましたが、私はこれはもぐりじゃないかと思うのです。私は法的な根拠はあまりないと思う。これは非日常に一方的なものだと思う。だから、もう一歩進められて、今私が言ったような範囲の信用事業を拡大するお考えはありませんか。
  48. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) 先ほど御答弁申しましたように、広い意味信用事業ということは今のところ検討いたしております。組合員共済意味をもって貸し付けることは、現在行なわれております。
  49. 東隆

    東隆君 私は今広い意味信用事業について、普通の信用協同組合がやっているような広範なものでなくて、そうして、ある程度のことは、納税組合だとか、貯蓄組合だとかいう簡単な形でもってあるのですから、従ってその程度のものを生活協同組合に認めて、そうして組合運営をうまくやっていくやり方というのは、これは何もそんなに差しつかえないと思うので、それで訓練をして、そうして十分に信用事業をやれるようになったときに信用事業を大きく生協にやらせる、こういうような形をとることが私は協同組合系統金融機関を作り上げることになると思うのです。それをおやりになる考え方はありませんか。
  50. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) これは出資であれば私どもはこれはかまわないと思いまするけれども、やはり出資したものを広い意味信用事業をやるということにつきましては、これは相当検討いたさなければならない、かように考えております。御意見のほどはよくわかります。
  51. 東隆

    東隆君 今出資の話が出ましたからお聞きしますが、大蔵大臣にお伺いいたしますが、実は生活協同組合事業運営をやるのには出資資本を相当蓄積しなければ仕事ができないわけです。ところが税金を取り上げて、そうして仕事がなかなかやりずらいよう大蔵省はおやりになっておる。今租税特別措置法によって免除されておるのは、ことし実は期限が切れることになっておる。それは出資金の四分の一に相当する部分については税を免除する、剰余金ですね。そういう規定が実は三月三十一日で切れることになっておりますが、これは改正される御意思がございますか。
  52. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤栄作君) 今まで特別措置をとって参っておりますが、税制調査会等意見を十分聞きまして、すでに三年の余裕期間を置いて御指摘通りことしで期限が到来するわけでございます。で、これは廃止のための猶予期間を置いたということでございますので、今回期限が到来いたしますと、重ねて延長の法律を出す考えはございません。ところで先ほど来のお話を伺っておりまして、私、根本的に東議員と私ども立場が相当相違いたしておりますから、そこでいろいろ考え方が、結論がなかなか合わないのじゃないか。御承知のように、社会組織なりまた経済活動そのものから見まして、一部だけが非常に強力なものになりましても実は困る。やはり相互の調整をはかること、調整をはかって初めて社会活動が円滑にいくというのが私どもの実は考え方であります。先ほど来御指摘になりますように、生協なりあるいは労働組合なり、あるいはそのもう一つおっしゃいましたが、組合で片づいていくじゃないか、こういうお話のようでございますが、必ずしも社会組織経済活動は全部そういうふうにはなって参りません。そこでただいまの組合に対する課税にいたしましても、その組合営利事業とは私は申しませんが、収益事業であることには間違いはないようであります。収益事業であれば、他の事業との公正な競争ということも考えなければなりませんから、必要な課税は当然することになる。しかし、その組合の特異性を考えまして、一般の課税よりも率は軽減した減税率で課税いたしております。これはただいま申すように、収益事業であるという観点であります。あるいはまた、損益計算の方法等につきましても特別な措置をとっておる。こういうように、特に組合についての保護の面もございますが、やはり大事なことは、社会組織経済組織、この複雑なものを相互に調整をとる、調和をとっていくということが実は望ましい、かように考えております。基本的な考え方が相当食い違っておりますので、そういう意味意見の対立がある、かように私は理解しております。
  53. 東隆

    東隆君 大蔵大臣、予防線を張られたように私は考える。そうじゃなくて、厚生大臣、それでようございますか。今のように、特別措置法の期限が切れるのですが、農協その他の関係のものは来年になっておるわけです。今年から切れるのですが、生協の方が協同組合としては本質的のものなんです。私はこう考えております。消費者大衆組織、こういうふうに考えておりますが、農協の方は、あるいは漁業協同組合あるいは中小企業者等協同組合の方はまだ残存をするわけです。生協だけが切れることになりますが、それでようございますか。
  54. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) 厚生省といたしましては、まだ多少延長していただきたい、こういう考えでございますので、しかし、大蔵当局とも、いろいろな税制その他の関係におきまして、これは広く全般を見なければだめなものでございますから、十分折衝いたしておる次第でございます。
  55. 東隆

    東隆君 私は、アメリカの労働者は、住宅を七五%ですか、八五%くらい所有しているというのですが、日本で家屋、住宅を所有しておる労働者というのはどれくらいございましょうか、パーセントは無理でしょうけれども
  56. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 労働者の個人の住宅所有率は、労働省で正確にまだただいま御答弁いたすだけできておりません。御承知のごとく、勤労者住宅というのは、今日は建設省所管になっておりますので、あと調査いたしまして、日本の労働者が何パーセント個人住宅を持っているかという御質問でございますから、調査いたしまして別の機会に御答弁いたします。
  57. 東隆

    東隆君 私は、日本の労働者が住宅を持っておるのは非常に少ないと思うんです。ことに大工場や鉱山なんかは、みんな会社が所有しておりますし、もうきわめて少ないもんだろう。日本では住宅金融公庫というのがありまして、住宅を建設をいたしておりますが、これは労働者、特に筋肉労働者の方には回る筋合いのものではない。労働大臣はどうですか。労働者は住宅を持つ方がよいか、持たない方がいいか、どっちです。
  58. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) もちろん、労働者の方が住宅をお持ちになるように、労働省としては希望いたします。
  59. 東隆

    東隆君 労働者が住宅を持つのには、どういう方法でやったらいいんですか。これは厚生大臣一つお聞きを願います。労働者が住宅を持つのには、どういうような方法を講じたらいいか。
  60. 松野頼三

    国務大臣松野頼三君) 労働者が住宅を持てるような制度、今日も、日本にはいろいろ住宅政策がございますが、まだ一般的に労働者がこの金融に乗るまでは私はいかないと存じます。従って、今日の制度をより以上労働者が利用できるような制度に改正するか、あるいは労働者がみずから住宅を建て得るような制度を新設するか、この二つでなければ、やはり住宅政策は、どこの国でも同じように、相当長期的な長い融資が必要なことは論を待ちません。イタリアが非常にこの問題は前進しておりますが、これは主として一般的な、税金目的税的なものを取って、一般に労働者住宅が非常に普及したという国もございますが、しかし、日本の税法は、そういうふうな制度はあまりございませんので、やはりこれは、現在の制度をより以上労働者に当てはまるような制度に改正、前進する。ことが一番妥当じゃなかろうか、こういうふうな考え方を持っております。
  61. 東隆

    東隆君 大蔵大臣に。この法人税法の第何条でありましたか、住宅組合というのがあります。これが非課税になっているのじゃないかと思うのですが、御承知ですか。
  62. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤栄作君) 収益事業をやると課税があります。税がかかります。しかし、収益事業でない場合は非課税でございます。
  63. 東隆

    東隆君 生活協同組合で住宅組合を作りますと、私は、これは住宅組合を作ると、収益事業じゃないと思うのですが、税金をかけますか。
  64. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤栄作君) 先ほど来申しておりますように、収益事業という言葉と営利事業という、その二つの観念がもし混同しておりましたら、それは別個の観念だと、一つ御整理いただきたいと思います。私は、先ほど来申しておりますように、生協にいたしましても、あるいはただいま問題になっております住宅組合にいたしましても、そういう営利ではない、営利目的とはしない、しかし収益のあるもの、まあ精算分配するということがあれば、これは収益事業だと必ず見ますから、そういう場合には、組合に対して、普通の営利目的とする収益事業に対する課税率とこの種のものとは率は違いますが、やはり公正な競争ということを考えないと、そこが調整がとれないわけです。先ほど来消費者立場からの御意見がずいぶん出ておりますが、同じような販売事業をやっており、生協も販売事業をやり、また小売業者も販売事業をやっている。その点から申しますと、小売業者は同時に営利事業としてやっている。こういうこ小売業者に対する課税と、同じ販売をやっておりましても、営利事業でない生協の収益事業というものに対しての課税率は違っている、こういうものでございます。私は、先ほど来やや立場が違うだろうと申しますのは、また、社会組織が複雑だと言うのは、そういう点を申しているのであります。消費者立場ということを申しますが、同時に販売者の立場もございますし、それで社会がうまくできる。そういう意味から、生協だけで全部を片づけるわけにはいかない。小売業者の特質というものもやはり尊重していかなければならぬ、そこに調整の問題がある、調和をはかるということでございます。収益事業営利事業、これは観念的には区別をお願いしたいと思います。
  65. 東隆

    東隆君 私は、実はたばこをのまないし、酒を飲まない。税金は取られないのです、結局ですね。ところが、たばこ銭をくれ、酒手をくれと、私のところへはあまり来ませんが、お前は参議院議員だからというので、もしそういうのが来まして、それを取ってよろしいのだ、こういうことは、これはどうですか。おかしいじゃないですか。
  66. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤栄作君) 取ってよろしいとは、何を取ってよろしいというのですか。
  67. 東隆

    東隆君 法律でもって税金を取るように……。
  68. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤栄作君) 寄付金になれば、寄付金を取れば贈与税というものはかかります。これは金額にもよりますが、そういうものがあります。やはり全然所得に対して課税から全部除外するという道はなかなかない。特別なものはございますよ。ございますが、寄付にいたしましても、普通の寄付なら、政治献金はこれは無税にする、しかしながら、その他の寄付は贈与税、やはり課税対象になっておるのでございます。
  69. 東隆

    東隆君 私は、市町村が実は税金を免除されておる、公共団体だから。協同組合税金を取られておる。市町村と今の日本国憲法のもとにおける自治体と、それから今の協同組合と、一体どこが違うのですか。
  70. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤栄作君) 行政組織主体、これが税金を払う、これは国に対して、地方団体が事業を経営している場合に、その事業税がかかっておるものはありません。それから生協自身は、先ほど来生活向上のための施設がと言いますが、これは、お話のうちにもありましたように、消費者自体が自主的に作るものでございます。やはり行政の対象になるものでございます。だから、主体と客体との相違があるから、これは一緒にはちょっと考えるわけにはいかないでしょう。
  71. 東隆

    東隆君 そんな説明が協同組合と自治体が違うところの説明なのですか。そうじゃないでしょう。全く同じでしょう。村長を選ぶのにも、一人一票で選ぶのですよ。村民は発議権を持っていますよ。組合員も同じです。理事長を選んでいるし、みんな民主々義の原則は両方にちゃんと働いておるのです。しかも、町村も営利事業をやりません。利潤の追求をやらない。協同組合も利潤の追求をやらない。同じなのです、違うところが一つあるのだけれども。どうなんです。全く同じなのです。
  72. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤栄作君) ただいまも申しますように、行政の主体と、それから経済行為をいたします、行政と関係なしに経済行為の主体、これは別個のものなのです。その行政組織主体は、いわゆる税を取る方の主体なのです。その場合の中には、同じように、個人だろうが、また組合だろうが、同じ対象があるわけです。ただ、組合の特殊性がありますから、個人との間に差別はつけますけれども、それは同じ課税の客体になるわけです。
  73. 東隆

    東隆君 生活協同組合はマージンを取ります。手数料を取ります。それから、市町村だってハスを運営しておるでしょう。あれは収益事業です。税金を取りますか。
  74. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤栄作君) 市町村に対しては、ただいま申し上げますように、行政の主体でございますからこれは取らない。それから、今の組合は、なるほど営利事業ではない。そういう意味で特別な便宜ははかっておりますし、また、その組合を助長するような政策はとっておりますが、個人経営の場合と組合経営の場合に差等を設けるわけにいかない。本質的には、やはりこれは同じように認めるということでございます。
  75. 東隆

    東隆君 昔、産業組合法によって産業組合ができておったときには、税金を取らなかったのです。取るようになったのは、いつから取るようになったか、御存じですか。
  76. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤栄作君) 過去においての産業組合等において特別の例があった、そういう意味で、ただいまのようにいつから取るようになったかということを御指摘になるかと思うのでございます。しかし私は、先ほど来申し上げますように、組合万能の考え方にそれを徹底するわけにいかない。消費者の利益はもちろん保護しなければならないが、小売業者自身も、自分が販売もするが、同時に本人も消費するのだという、その立場にあること、この社会組織というものは、非常に簡単なものにいかない。片一方だけは消費する、片一方は売るだけだ、こういう区別はできません。そういたしますと、今生協で一番問題なのは、課税の問題もございますししますが、今生協が行なっております経済行為が、現存の他の産業部門にどういう影響を与えるかということが非常な問題になっておる。かように私は感じて居ります。これは、ひとり経済問題ばかりではない。社会問題に発展し、場所によりましては、政治問題にまで発展しておる。そういう場合においてやはり公正な競争ということで、消費者の地位を高めていくというような意味から申しますと、ただいまのような課税に、税率についての差等は設けるが、これを全然別個のものとして、国が行なう、あるいは地方団体が行なう事業と全然同一に考えることは行き過ぎじゃないか、かように私は考えます。もちろん、議論の余地はあることでございましょうが、実際のあり方としては、ただいま私どもがとっておるところが適当な現実の問題ではないか、かように思っております。
  77. 東隆

    東隆君 厚生大臣は、その生活協同組合が員外利用をやるから、そこで税金を取られるのだと、こういう考え方はお持ちになりませんか。
  78. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) 別にそういう考えは持っておりません……。
  79. 東隆

    東隆君 厚生大臣は、営利目的としないところの生活協同組合、これは営利目的としていない公共団体、これは同じですか。しかし収益事業はやっているのです。両方ともやっているのです。その場合に、大蔵大臣は行政なんとかいうようなことを言われましたけれども、どうですか。収益をあげるといっても、それは営利目的にしたのではない。利潤を追求するのじゃない。会社だったら、これは利潤を追求するのが目的ですよ。だから、これに税金をかけるのはあたりまえですよ。ところが、協同組合は、先ほど読んだように、営利目的にしてはならないと、こう書いてある。それに税金をかけるのですから、私はおかしいと思う。どうですか。
  80. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) しかし、現実のところ、やはり営利目的といたしてはいませんけれども、自然そこに収益事業が行なわれておるところに、今日の日本の税制上の問題があるだろうと思うのです。だから、やはりそこに余裕所得といいまするか、あるいは現実にそういう面が出てくれば、当然それはある程度減免いたしましても、たとえば、三三%を二八%に減らしましても、やはり減税措置というものは必要であろう、かように考える次第でございます。
  81. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤栄作君) 国または地方団体が行ないます収益事業、これについては、なるほど行ない得るようになっておるし、これまた課税もいたしておりません。ただいま申し上げますように、行政の主体であるという意味でございます。しかし、国または地方団体が行ないます収益事業については、いわゆる一面民業圧迫は困るという議論が当然出ております。それは、ただいま申し上げますように、国または自治体がやります場合の強力な資本力ということもございましょうが、同時に特別な恩典が付与されておる。そういう意味においていわゆる公正な競争の立場に置かれない、こういう意味においての民業圧迫論というものに私どもがいつも耳をかしておるものでございます。で、最近におきましても、国または地方団体が行ないます収益事業について、そのあり方、いかにすべきかというような議論が一面においてあるのもそういう意味でございます。私らは、繰り返して申し上げますが、社会組織なり、経済組織というものは複雑でございますから、盾の一面だけを見るわけにはいかない、各方面も十分勘案いたしまして、そうしてそこに調整をはかっていくということが、これは当然のことであります。そういう意味において、いわゆる法律論でなしに、おそらくただいまとられておりますものは、法律論よりも現実の実際論としての課税になっておる、かように解すべきじゃないかと思うのです。かつての産業組合等について無税であったというようなのが、ただいま申し上げるような点から発展して参ってきた実際的な措置だろう、かように考えますので、従いまして生協事業と国あるいは団体の事業とをそのまま比較対象することは必ずしも私は当を得たものではないだろう、かように考えます。
  82. 東隆

    東隆君 大蔵大臣は当を得たものでないとばかり言われるけれども、しかしこれは非常におかしいと思うのですよ。先ほど私が質問した、産業組合課税をしなかったのを課税をするようになったのは、お答えがないのですが、戦争中なんです。これは日本の農民が戦争遂行に協力するために、税をかけるのに甘んじたのです。そういう経過でもってずっと進んできまして、そうして戦後にその惰性でもって協同組合課税をしているのです。その額は十七億かそこらです、先ほどお話にあったように。これは協同組合の各般のものを加えて、九条の六項に相当するものみんな加えたものでしょう、おそらく。それがそれだけの額にしかなっていないのです。そいつを減免できないようなのは、これは非常におかしいと思うのですよ。そして先ほどの自治体とそれから協同組合の違いですね、これは私が申しますが、たった一点違いがある。それは自治体というのは強制加入である。協同組合は任意加入なんです。これだけしか違わないのです。あとはもう全然違っておりません。組合員のために、組合員の利益のためにやるのです、組合は。それから市町村は、住民の利益のために収益事業をやっているのです。だから、これに税金をかけるのは間違いなんです。それ以外に違っておるところは一つもございません。ことに日本国憲法のもとにおける市町村と、それから協同組合との違いというのはたったそれだけなんです。で、強制加入の場合には税金はこれは無理やりにとっているわけです。そこに住んでいると税金がちゃんとかかるようになっているのです。だからこれはいたし方ないでしょうけれども、どうですか、この点は、私の言う通りじゃありませんか。
  83. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤栄作君) 大へん明快な御説明をなさいましたが、私は行政の主体というようなことを申したわけでございます。ただいま、その行政の主体ということは、これは強制だというお話のように伺いますが、これはけっこうなことでございます。さうに考えます。
  84. 東隆

    東隆君 厚生大臣、どうお考えになりますか。
  85. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) 生協に対しますところの課税は、やはり当然これはやらなきゃならぬと思います。しかしこれは、生協は、御承知通り組合員は任意加入でございまして、これが余剰金があれば、組合員に割り戻したという場合においては損金に編入されておりまして、これは一つのやはりある意味におきますところの一面収益団体ともいわれないとも限らないのでございまするので、やはり多少減免はいたしましても、課税対象になると思います。
  86. 東隆

    東隆君 厚生大臣、その考え方は間違いですよ。公共団体にしたって何にしたって、たくさん税金を取り上げたら支出が少なかったら黒字になります。協同組合だって利子をたくさん取ったり手数料をたくさん取ったらこれは黒字になります。その黒字になった分を返えすのはこれは当りまえの話です。しかもその黒字を処分をするときに、総会の意思でもって、これは資本の積み立てに過ぎない、こういうことを決議したらこれはみんなの意思でもって積み立てるのですから、これは出資をしたと同じことになる。これは何も税金対象になるべき筋合いのものではないのじゃないですか。どうですか、その点は。
  87. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) 税金とそれから今度所得というものは、これは私は観念上違うものと、かように考えております。
  88. 東隆

    東隆君 私は今、税金と言いましたけれども法人税ですよ、法人税をかける筋合いでないのじゃないですか。生活協同組合を指導し普及をしようという考え方に立っておるのは、そんな考え方じゃ私は間違いだろうと思う。大蔵大臣は社会の調節上税金を取るのだと、こう言っておる。それを肯定されているのですよ、あなたは。どうなんですか。
  89. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) もちろん大蔵大臣考えと同じでございます。
  90. 東隆

    東隆君 大蔵大臣と同じ考え方でもって厚生大臣が主張をされれば、これは消費者大衆の意欲と全然反対のことを厚生大臣は主張をされていることになるのですが、それでようございますか。
  91. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) それでけっこうでございます。しかし、生協に対しまする、私が先ほどからるる申し上げるのでございまするけれども、やはり一部の収益事業を営んでおる以上は、これは税金対象になることは当然でございます。多少そこに減免はいたしましても、これは当然でございます。
  92. 東隆

    東隆君 大蔵大臣と、言われておるのは違うのですよ、あなたの言われておるのは。大蔵大臣のことを肯定されていることは、これはいいのですけれども、そうじゃなくて、収益事業をやっておるけれども、これは会社のやっておる収益事業とは違うのだ、だから本来は法人税というものはかけるべきものでないのだ。しかし大蔵大臣が言うように、社会のいろいろな調節をとるために税金を取るのだと、こういうふうにあなたが言われるならいいですよ。違うじゃないですか。
  93. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) 厚生省といたしましては、あくまで消費者立場は尊重いたしておるわけでございます。消費者立場は尊重しておりまするけれども、その生協というものが一部の収益をあげておる、あるいはまたその収益をあげたものに対しまして、余裕所得に対しましては、すでに四分の一以上でなければ課税をしない。あるいはまた払い戻し金に対しましては損金勘定に入れまして、そうして全然これを見ていないのでございまするから、厚生省の立場も十分御了承願いたいと、かように存じます。
  94. 東隆

    東隆君 今言われたのが、三月三十一日に切れるというのですよ。大蔵大臣はそれをやめるというのですよ。私はその根本にさかのぼって法人税生活協同組合にかけるべきでないと、こう主張をしているのです。だから、その主張でもってやらなければ大蔵大臣を説得できないじゃないですか。今言ったことは切れるのですよ。どうなんですか。
  95. 渡邊良夫

    国務大臣渡邊良夫君) それは先ほど申し上げた通り、厚生省の立場といたしまして大蔵省と折衝中でございますということは、先ほど申し上げた通りでございます。
  96. 東隆

    東隆君 たった三人で生活協同組合の指導をやっておられるのですから、私はなかなか手が回らぬと思いますけれども、しかし、租税特別法の中のごとくらいおやりにならないと、これは問題だろうと思いますが、大蔵大臣どうですか。
  97. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤栄作君) 先ほど来厚生大臣も主張しておりますように、厚生省としてもいろいろ問題があったところであります。またひとりこればかりではなく、農協その他の問題も同じように特に減税措置をとって参りました。しかし、これらについては全面的に改正を要するといいますか、根本的に検討する時期が来たということでございますので、三年前にただいまの一定の猶予期間を置いて、それから整理する、こういう措置をとったわけであります。で、当時の経過などは諸先生方の方が十分御了承のことだと思いますが、三年前から問題になり、そうして今日その期限が到来した、猶予期間が来たということでございます。従いまして、これはいろいろの御議論がありますが、三年前の議論はまた蒸し返されるだけだろうと思います。これは、もうすでに衆参両院で意見の一致を見た。処置もきまっておるもの、これはぜひともその通り実行に移していただきたい、強くこの点を御要望いたします。
  98. 東隆

    東隆君 二十七年に改正になったものを二十九年に改悪されておりますから、大蔵大臣そのところをよく研究する必要があります。これは問題は収益事業をやっても、それは組合員のためにやっておるのです。法人そのものは利潤を一つ目的にしていないのです。それに今のような税金をかけて、法人税をかけて、これは免税の一種の特典ですけれども、しかしそういうむちゃなことが続けられたら、これは生活協同組合なんてものは、これは発達をしませんよ。つぶれてしまう。しかしそれは何かといったら、中小企業者の圧迫だとか、それから政治的な圧迫、大きな会社にはどんどん租税措置法でもって減税をしております。片方の方はかけるべきでないところにかけて、そうしてちょっぴり減税をした形をとって、そしてあめをしゃぶらしておるような形をとってやっているのが今の租税措置法の中身じゃないですか。そういうふうに見えませんか。
  99. 小林英三

    委員長小林英三君) 東君時間がきました。
  100. 東隆

    東隆君 私は税金をかけるべきでないものにかけて、そうしてそれをいろいろな措置でもって減税をして、そうしてやっておるのですから、見ようによっては国民をたぶらかしているように見えます、私は。だから、この点は私はいろいろ議論があるところですけれども厚生大臣、それから労働大臣大蔵大臣も、これはよく相談をして、今言った問題ばかりじゃございません。たくさんあるのです、いろいろな問題が。ことに生協法なんというのは実に消費者大衆生活をチェックすることばかりやっているような法律です。ほんとう協同組合法じゃないんですから、この点は一つ厚生大臣、それから労働大臣もよくお考え下さって、消費者大衆の、国民大衆の利益を守るようにやっていただきたいと——私のきょう質問したことは、どうも一つも取り柄がないようでありまして、はなはだ残念ですけれども、しかしほこをおさめませんから……。
  101. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 議事進行について。委員長意見を申し上げたいと思います。  委員長は発言者が発言中に時間が参りましたという、まことに不見識な注意をされ、時間が来たことを、もし御注意になるならば、少なくともその問題の発言が終わったときになさるというくらいの委員長としての運営の常識は心得ていただきたい。
  102. 小林英三

    委員長小林英三君) 白木君。(「答弁」「答弁」と呼ぶ者あり)  ただいまの佐多君の御意見は承っておきます。
  103. 白木義一郎

    白木義一郎君 最初に運輸大臣にお尋ねいたしますが、最近の交通の混乱より起こる事故防止のために道路交通法案が上程され目下審議中でありますが、その内容の一部の不満な条文を除けば、おおむね民衆の希望及び世論に応じた改正点を認めなければならないと思います。たとえば歩行者優先の徹底、野放し状態にある道路上の駐車等の取り締まりの強化、非常に難解ではあり不親切なそしりを免れないわけではありませんが、これは強く国民が要望されている点であると思います。反面に、違反に対する罰則を一般的に強化したこともまた注目をしなければならないと思いますが、現行の道路交通取締法ができた昭和二十二年当時、全国に十三万三千台の自動車が今日その十一倍をこえる二百六十万台に達し、事故も激増し、昨年は死者一万、事故は負傷者二十三万、このことを考えるならば罰則強化もやむを得ず、これより受ける運転手の影響も大衆の保護という立場から考えればかわいそうなことではありますが、がまんをしてもらわなければならないし、さらにこれに加えて道路運送法の一部の攻正案も上程され、ますます運転手諸君に対してきびしさが要求されてきている現状でございます。しかし、運転手に対しても一方では厳格、一方では寛容をもって臨んでやらなければ不平等の扱いといわれてもいたし方がないと思います。  そこで、運輸大臣は、昨年タクシー業界に新風を吹き込み、タクシー運転手に希望と夢を与える、こういう声明をされたため、政府の中には話のわかる、国民を愛し、国民のための仕事をする人物が現われた、岸内閣の公約の  一つである貧乏追放を実現してくれる大臣であると、定年後に大きな不安を持っているタクシー運転手——与党はともかくとしても、労働者の味方である野党にも不思議に見放された、かわいそうなタクシー運転手は、大臣に対して非常な喜びと期待を持って見詰めておりますが、現在でも大臣はその所信をお持ちになっておりますか。変わらず今後も続けていっていただけるかどうか、まず最初にお尋ねしたいと思います。
  104. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) ただいま白木委員のおっしゃいました個人タクシーの問題は、昭和三十四年の八月十一日に優秀な価格者に対して免許を与えるという方針を明らかにいたしまして、昭和三十四年の九月十日及び十二月二日付をもちまして、個人タクシーの適正かつ確実な運営を期するために免許並びに免許後の取り扱い等につきまして自動車局長から各陸運局長に通達をいたさしたのであります。今御指摘になりましたように、終戦後タクシー業者というものは、ほとんど独占的になっておりまして、運転手には一切個人免許をやらないという情勢下にあったのでありまするけれども、外国等の例を見ましても半数くらいは大体個人タクシーでやっておりますし、ハリにおきましてもやはり個人タクシーの人たちが非常に丁寧に運転し、それが事故防止にもなる、こういう状態等を見まして、これらの人々にやはり希望を与えることがいいというので、実はこういう方針でやったのであります。ちょうど昨年の暮れに東京特別区におきましては百七十三名だけ認可を与えまして現在働いておりますが、すでに新聞等においてもあるいは陸運局からも報告いたしておりますように、在来の働く時間の半分の労働時間で、会社でもらっておる収入よりもはるかに上回る収入で家族も安定しておるという報告等も受けておるのでありますが、これはなお六千数百件の申請が出ておりまして、昨年の暮れまでに一部審査いたしましたものを発表いたしたのでありますけれども、現在約五千件ぐらいはいろいろ審査が進んでおりまして、これを免許することについては今協議を陸運局でやっているような次第でありまして、これが適格者等につきましては、相当大量の個人免許を東京においても許されると思うのでありす。また、大阪も先般白木さんも御存じのように、陸運局から増車の発表がありましたが、これも向こうの審議会等からの勧告もありまして、個人タクシーを優先的にやはり審査するという建前をとっておるのでありまして、福岡でも先般個人タクシーを、小倉でもまた発表をいたしまして、全国これに見習うようにしよう、まあこの個人タクシーの問題でありまするけれども、できればこれらの人々にやはり協同組合なりを作らせて共同の修理場とか、あるいは共同のガソリンの購入とか、何かこれらの人々たちに対してやはりともに助け合うような方針をとらせるように指導しろということを陸運局長にも命じて育成強化していきたい、こういう所存であります。
  105. 白木義一郎

    白木義一郎君 現況としては、東京陸運局の審査状況は昨年末、今お話のように、はなやかなスタートをもって百七十三台の個人営業車が走り出しましたが、その後の陸運局の状態を見ますと、数多くの申請者の中から優秀な適格者を選ぶ、そういう名目で免許には最小限度の条件を課し、不当な義務を負わせてはならないと道路運送法百二十条に規定のあるこの条文を無視して、四十才以上あるいは十年間無事故の人あるいは自家用の車にはガレージを必要としないのに、個人営業の営業車には車庫を持たなければならないというような苛酷な条件を課して、巧みに個人営業の道をふさぎ、既存業者への増車が必然的になるようなことを運んでおるように思えてならないのです。で、関西ではこの苛酷な条件を聞いてびっくりしまして、個人営業の希望を捨てて闇タクに走った多くの運転手を見ておりますが、大臣の声明に反して、事務当局は大臣の方針に反逆をしておる、このように世論は見ておりますが、どうお考えになっておりますか。あるいは希望と夢を与えるという声明は大臣の単なる政治的ゼスチュアであって、実際は既存業者へ新風を送っている、このように考える節も出てこないでもありませんが、はっきりと一つ方針を述べていただきたいと思います。
  106. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) お答えいたします。  いろいろお話のあることはごもっともな点もありますが、この個人タクシーを許すということにつきましては、なかなか白木さんのような御理解を賜わる方もありまするけれども、相当に反対意見等もありまして、また、既存業者といたしましても相当きびしくこれを批判しておりまして、現に業界新聞のごときはボロカスに私のことをしょっちゅう書いておるというような情勢であります。(「しっかりやれ」と呼ぶ者あり)ありがとう。従って、私はこの問題についてはできるだけ私の趣旨を徹底するように、事務当局においてもやるように指示しておりますけれども、やはり交通の安全及びこの問題の堅実な歩みをさせていく第一段階といたしましては、やはり優秀な運転手を、そして問題を起こさないような人を初めよく厳選してスタートして、その状況によって次第にワク等も拡大さしていくのがやはり妥当な方法ではないか、こういうように考えておるのでありまして、今おっしゃいましたような既存業者に対する保護のためというよりも、既存業者と私との間には相当の争いをしておるような状態でありまして、そういう考え方からこの問題を取り組んでおるのでありますが、今の段階ではきめたああいう基準で一応応募している人たちから厳選していくのが妥当ではないか、こういうことを考えておるのでありまして、おそらくここ一、二カ月の間には何台ぐらい合格するのか私もはっきりまだ数字は聞いておりませんけれども、相当の数はおそらく東京でも許されるのじゃないか、大阪でもそういうような方針に従って一つできるだけ優秀な人は、数を限定せずにやはりその資格にはまる人は選び出したがいい、こういうことをやっておるのでありまして、一方に白タクにつきましては、これは明らかに免許を無視した違法行為でありますから、これは厳重に取り締まる方針をとっておるのであります。
  107. 白木義一郎

    白木義一郎君 大臣がはっきり相当数とか、あるいはいずれそうなるであろうとかいう御答弁じゃなくて、運輸行政の最高責任者として、こうするのだ、陸運局はこのようにしろ、こういうように大衆はあなたに望んでいるわけでございます。そこで、タクシー界に神風旋風が吹いて早くも二年になりますが、相変わらずタクシー事故の防止が強く叫ばれてきているにもかかわらず、いまだに労務管理の不適切によって交通事故が頻発している。警視庁は最近既存業者の中から十六社——十六の会社をやり玉にあげてきておりますが、その多くは労働時間をオーバーし、延長運行した末に過労あるいは居眠り等で多くの事故を起こしております。中には用いてはならない第一種の免許証しか持たぬ者に運転をさせたり、あるいは日雇い運転手を使ったり、最近では名義貸しをやっているような既存業者も発覚して、世論に背を向けるタクシー会社が多く出てきておりますが、反面に町では元赤線業者が暗躍を始めている、過去に不幸な女性から搾取をした元赤線業者が、再びあわれな日の当たらない場所で働いている運転手の搾取を考えているというようなうわさも強く町に聞こえております。もし個人営業の道をふさぎ、既存業者あるいは元赤線業者、ひもつき、あるいは覆面申請等の優先取り扱いをするようなことがあれば、これは運輸省の造船疑獄の二の舞を演ずるというそしりを免れない大事なことであろうと思います。そういうことがあれば、憲法十一条、十三条、十四条、二十二条、九十七条、九十八条、第九十九条の違反のおそれが多分にあると思いますが、この点大臣はどういうお考えでしょうか。
  108. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 今おっしゃいましたタクシーの免許の権限というものは、御存じのように、陸運局長に委託されたる権限でありまして、運輸大臣が個々のケースについてこの問題を許可しろ、あるいは許可するなという権限は持っておらないのであります。基本的な方針としては、今白木さんがおっしゃいましたような、たとえば個人タクシーの新しい道を開くという原則を立てるということは、これは大臣のやはり権限でありますから、そういう線に沿うてやっているのでありまして、一方に既存業者並びに新免——今三つありまして、個人タクシーの免許ともう一つは新免——新しい免許を出す人、会社組織によって出す人並びに既存業者、こういう三つのカテゴリーがあるのでありまして、在来は既存業者、新免という二つの線だけであったのが、個人免許という一つの線がここにできて参ったのでありまして、しこうして、新免の問題につきましては、たとえば閣議決定等におきまして、国家の政策によって犠牲になった、そして、これによって失業をしておる人々は、やはり国家の認可等において、これらの人々を活用できる場合においては、やはり優先的に、なるべく資格があれば取り扱えという閣議決定等がありますので、現在進駐軍その他の離職者等につきましても、これらの人々に新免を与える道を開き、そういう人々にはその配慮を十分にするように私からも指示しておるような次第でありまして、この点は厳正公平にやるように言っておりますし、既存業者に対しても偏在するようなことのないように十分警告を発して、この答申がありましたときに、私から各地の陸運局長にも通達を発しまして、この問題については常に厳正公平にいかなる政治家、いかなる政府の者といえども、顧慮することなく厳正にやれという指示を私から通達しているような次第でございまして、御趣旨の線に沿うて厳正公平にこの問題を処理したいと思うのであります。
  109. 白木義一郎

    白木義一郎君 私は、今まで何だか考え違いをしていたように思いますが、今大臣の御答弁では、陸運局に対しては大臣が権限がないと、このようにおっしゃったので、非常にこれから考え直さなければならない、このように思いますが、そこで、なぜ憲法を出したかというと、そういうことをおっしゃるに違いないと思いまして、憲法の条文をここへ持ってきたわけです。そこで既存の会社あるいは新免会社で増車した車には満二十一歳になり——あるいは十八歳で第一種の免許を取り三年間の経験を経て、第二種の免許を得れば未経験の者でも直ちに同じ町、同じ道路を営業者として走れる。片一方において個人営業をしようとすれば、先ほど申し上げた通り、苛酷な条件を課してくる。非常に不平等な事態が行なわれようとしております。それで第十四条には、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」このようにはっきりうたっておりますが、もし陸運当局がこれを犯すようなことがあっても、運輸大臣はそこまで監督し、あるいは強制する権限がないとおっしゃるのですか。
  110. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) この個々の事案についてこれを免許するか、免許しないかということを扱っておるのは、最前申し上げましたように、陸運局で周密な、詳細な調査をやりまして、その基準に基づきまして、行政措置としてやっておるのでありまして、おそらく陸運局が今の個人タクシーの免許におきましても、現状から言って行政的にそういう取り扱いをすることが妥当であるという考え方から、私はこの取り扱いをやっておると思うのでありまして、今の運輸大臣は直接個々の認可、許可についての指示をするということは、これは大体やらないという建前になっておるので、私が申し上げますのは、原則的なつまり方針をきめまして、その方針において彼らが行政官として社会的実情に適応するように妥当な線を出して問題の処理をやって、その職務の円滑なる進捗をするようにしろという指令を出しておるような次第であります。
  111. 白木義一郎

    白木義一郎君 私もその通りと思いますが、しかし、もしこの行政の個々の面においてこれらの数カ条における憲法に違反の疑いのあるような行為あるいは行動があった場合に、大臣としてはどのような態度、どのような考えをもって行政の責任者としての立場を明らかにされるか、明確にお答え願いたいと思います。
  112. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) もちろん憲法違反をやるというようなことは、これは許されないことでありまするけれども、行政の面におきまして、どういう線を妥当として一体認可を与えたらいいかというようなことは、やはり基本的人権という問題よりも、そのことの認可すべきその事業の性質等によってこれを判定するものであって、その業にあずかっておる陸運局が妥当な社会的環境を勘案して、その辺が、この場合の段階においては扱った方が一番個人タクシーの成長の上にも、また、社会的批判の上でも妥当じゃないかという一つの処置をとっておるのであって、その処置は私は憲法違反にはならないと思うのであります。これを法律をもってどれだけでなければならないというようなことをしていくのじゃなくて、一つの基準的な方向としてこの問題の処理をしておると思うのでありますから、そういうように答える以外にないです。
  113. 白木義一郎

    白木義一郎君 話は変わりますが、白タク取り締まりについて、違法とはいいながら一応組織を確立してそうして所在を明らかにしている連中に対して、厳重な取り締まりを今行なっております。また、散在している闇タクに対しては、取り締まりが困難であるという理由のもとに、なかなか取り締まりの手が行き届いてない現状です。白タク発生は、過去の自動車行政の怠慢から発生したものと考えるのが至当であると思いますが、大臣はかねてより人間尊重のための法律論者である、法律は弾力性をもって用いなければならない、いわゆる人情大臣としての名前が高いのでございますが、悪質闇タクの取り締まりは厳重にし、また、世論が迎えているいわゆる所在の明らかなまじめな運転手等に対しては、あたたかみのある主義、主張をそのまま反映さしていくような態度をおとりになっていただけるかどうか。
  114. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 白タクの発生の原因は、これは今白木さんもおっしゃいましたように、確かに私は運輸行政と申しますか、自動車の需要供給のアンバランスからきておる点があると見ておるのでありまして、従って、やはりそういう社会的な要求が非常に強いのに、しかも満たされないという点から、すでに免許がなくして法を犯してそういうことをやるという者も自然に社会環境上生まれてくるということを見ておりますので、従って、そのアンバランスを是正するように、その地区その地区においてやはり急速に実情等を調査して、そうして審議会等にかけて答申を求めて、妥当な解決をするように今指示いたしている次第でありまして、今おっしゃいました白タク等においてやっておる連中も、一部には非常なまじめな方もおるようでありまするけれども、最近の状況は非常な暴力団その他と結びついて、しかもお客にも非常な乱暴なことをやる。たとえば先般小倉等におきましては、白タクの連中と暴力団と三人くらい殺し合いをやったというようなことがありまして、非常な混乱状態を呈しておるのであって、従って、国家が免許制度を認めておる以上は、免許なくして勝手に行動するということは明らかに法律違反でありますから、これは厳重に取り締まらなければ、法の秩序は維持できないと実は思うのであります。従って、先般関西地区における白タクをやっている人たちが、自分たちはそういう行動を一切改めて、まじめに一つ免許を求めたいという気持を持っておるから、何とかしてくれというようなお話等もありましたので、その実情等をよく当地の陸運局長等にも話し、その法を犯すことをやめてやはり正業に返って正しく認定を受けるような方法を取りなさい。陸運局が出しました指令等によれば、法を犯した者は全然これは認めないということを言っておりまするが、法を犯したということの事実がはっきりしない以上、言いかえてみれば、ほんとうに正しく、認めてやれば、認められれば、それまでいかぬということもできぬからというようなことを話しておる状態でありまして、しかし、できるだけこの白タクというものを駆逐してそういうことをしないようにさせなければならぬことについては行政上の、つまりそういう需要供給のアンバランスという問題にも根本的にメスを入れて解決しなければならぬ責任があると思っているのでありまして、できるだけ白タク等によっておる人たちも正道に向くように指導したい、今、白木委員のおっしゃいますような線に沿うて指導したい、こういうふうに思っている次第でございます。
  115. 白木義一郎

    白木義一郎君 昔法律を守ったために飢え死にした裁判官がいたということを記憶しておりますが、そのようなことがないように、一つ監督をしてやっていただきたいと思います。で、増車の免許は運輸大臣の、行政上の責任者として全国的に、また、部分的に全部今度の増車の分は個人に営業権を戻してやるのだ、こう言明していただき、あるいは、これは間違いなく実行していただきたい、こう思いますが、もし実行できなかったならば、大臣としての力がなかった、あれは政治的ゼスチュアであった、こうあなたを評価する以外にないと思いますが、ここではっきり一つ言明をしていただきたいと思います。
  116. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 増車するものを全部個人だけに許してしまうということを、私はそういう方針をとれということを言明するわけにはいきません。これは新しくたとえば進駐軍の人たちが会社を作ってお互いに出資し合って新免を出している、あるいはまた、新しい人々がこのタクシー業にまじめに挺進したいと思って免許を出している、そういう人も認めないというわけにもいかない。また、既存業者も、これを全部排斥して一台もやらないということもこれもまた私は運営上いけないと思うので、その点は既存業者、新免、個人タクシー等、やはり社会環境、その土地々々等の地域等によって十分に勘案して妥当な措置をとらせたい。しかし、個人タクシーの問題だけを限局してやるということが、この場合運輸行政としてはまあ妥当でない、個人タクシーという問題は今申し上げたように、十分に考えておりまするけれども、これだけしか許さない、ほかのものは許さないというわけには現在の段階では私はいかないと思うので、むしろこの場合は個人タクシーを新しく今度設けた制度がありますから、これをやはり逐次培養して堅実な発達をさせて、そうしてそれがやはり業界に一つの新しい新風を吹き込む。事故の問題等におきましても、やはり個人タクシーを相当ふやしていけば、これによって相当事故防止に対する一つの大きな示唆にもなると思っているのでありまして、そういう点で今までできなかった個人タクシーをいろいろと苦労して今ようやく芽を出しているような次第でございますから、漸進主義をもってこの問題を処理していきたいと、こういうふうに一つ御了承を願いたいと思うのであります。
  117. 白木義一郎

    白木義一郎君 既存業者にも増車しなければならぬ事情がある、こういうようなお答えですが、どういう事情があるのでしょうか。ずいぶん既存業者は現在まで保護をされてきているように思っておりますが。
  118. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 既存業者の増車申請の事案は、道路運送法の第六条の免許基準がやはり準用されることになっておりますので、旅客のサービス、法令の順守の状況、労務状況など事業運営の実態等を十分に掘り下げて、把握して、適切な処置を行なうことになっている次第でございます。
  119. 小林英三

    委員長小林英三君) 藤田君、関連ですか。
  120. 藤田進

    ○藤田進君 ええ、関連……。私どうも、お客さんとしての経験なり、いわば乗客の方の側で、タクシー営業に何ら関係がないものですから、勝手なことを言うように思われるかもしれませんが、私ども朝晩現在通ってみて、電車にも乗ります、バスにも乗ります、今度地下鉄ができましたから地下鉄にも乗りますが、しかし、交通事情というものは大へんなものであります。ところで、東京駅に旅先から帰ってくると、大臣や役所の部課長ということになりますと、局長になると、ちゃんとお迎えが来ているでしょうし、国会議員も比較的そういう人が多いと思います。中には自家用車を持った人もある。しかしまず、私どもこうして予算委員会がおそくなる、車はなかなかこの辺ではありませんから、三宅坂へおりましたり、虎の門へおりましたりしてタクシーを探すわけですが、なかなか来ないです。この辺で待ったらとても待ち切れない、来ないというような実情ですね、そして私は一月もかなり末、自然休会中に京都へ行ってみました。国会の調査などで行きますと、県庁やその他の車が来て、別に交通に不自由は感じませんが、個人で行ってみますとなかなか自動車がないです。よほど待ってもないので、これは私だけじゃありません。ずっと行列をしておりますが、百貨店の前でもどこでもというようなことで、観光地の京都においてしかりで、次に来る車を待って、さあ金閣寺でも見て帰ろうかと思っても、出たときにタクシーがいないのですから、そこで待たされなければならない。待っている間に待ち時間を四、五百円とられるというような実情にあるが、大臣やその衝に当たる人々というものは、役所の車その他の車で不自由がない、皮膚でその交通事情を感じていないような気がする。そこで私は理屈は知らないけれども、過当競争だ何だと、いろいろ社会悪が出ては困るでしょうけれども、しかし、どうも私どもかつての円タクだとか何とかいう時代も知っておりますので、最近の実情というものは何といっても白木委員の責めているように、私はそれ以上にこの実情というものはまことに悲憤慷慨を禁じ得ないものがあります。もっとも既存業者なり何なりという立場を無視するわけにはいきますまいが、しかし、需要家の立場考える必要があるのじゃないか、これが第一点。  もう一つだけ、最近私は事情をよく知りません。運輸委員会にしばらくおりましたが、あまり伺っておりませんが、こまかい問題になりますが、東京駅でもそうですが、各地の駅の前にタクシー専用の駐車場があるが、ほとんどあいておるじゃありませんか、繩が張ってあるだけで……。あれはタクシー営業を保護する意味か、お客さんに便宜を与える意味かわからないが、車で東京駅へ行っても、三十分はただであとは金をとるようでありますけれども、タクシー駐車場なんというものは八重洲口の方を見ても反対側を見ても、ほとんどタクシーが駐車してはいないのに相当な面積をとってやってある。このことは東京駅だけではありません、私も各地へ行きまして、どうも小合理なことで、どうしてああいう公共地をあけておいて、一般の駐車に支障を来たさなければならぬかという気がするので、この点もう少し明確にしていただくと同時に、今後の善処を要呈したい。
  121. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) ただいま藤田さんのおっしゃいましたように、確かに、私もタクシーによく乗る方ですか、私大ていタクシーであります。(「乗ったことがないのでしょう」と呼ぶ者あり)いや、そんなことはない、私は有名なんです。タクシーに乗ります。なるほどタクシーがないことは至るところで難を受けておるのでありまして、できるだけタクシーというものを、やはり公共性を一面持っておりますから、需要供給のアンバランスを打破するように一つ指導したいと思いまして、先般二千八百台審査中でありますけれども、おっつけすぐに審議会の方に増車の答申を求めるように、岸道三さんが会長でありますが、先般要求しておるような次第でありまして、御存じのように、審議会がありまして、そこからの答申によってやっておるのですが、そこに、至急実情に即して一つ答申をしてもらいたいということを私から先般要望しておるような次第であります。なお、今おっしゃいました東京駅その他について、あの場所をタクシーだけがとって遊ばせておるという問題は、私もちょっとどういうことになっておるのか、自動車局長から説明させます。
  122. 国友弘康

    政府委員(国友弘康君) お答えいたします。東京駅におきましては、タクシー駐車場は乗り場から少し離れて設置してあると思いますが、お客さんの便利のために、それから、降車口なり乗車口なりへおりて参りました場合には自動車が順序を作って乗せることになっておりまして、まあ最近の、大臣からも申されましたように、状況といたしましては、朝夕のお客さんのラッシュの時期とかあるいは雨の時期とかいうようなときには、相当タクシーが町を走りますので、あるいはそのタクシーの駐車場に自動車のないこともあると思いますが、順序を追ってタクシーが来るようになっておりますし、それから地方の駅におきましては、極力タクシーを一両なり、二両なりは置いておくように指導をいたしておるのでありますが、要しまするに、タクシーの需給の状態から申しまして、足りない面が相当に見受けられますので、それらの面におきましては、今後タクシーを増車していく方向で、われわれとしては指導していきたいと考えております。
  123. 辻政信

    ○辻政信君 ちょっと関連して。ちょうどいい話しが出ましたから、一言大臣に申し上げておきます。それはこの間タクシーに乗りましたら、円タクの運転手がこういうことを言っておる。料理屋に行ってみてくれ、赤坂、新橋の。そこに並んでおる車はほとんど皆公用ナンバーだ。そこに汚職の原因がある。あのナンバーの色を決定するときに、営業用は黄色、個人用は白、官公用は赤にしておいてくれ、赤の札をつけておいて、だれにでも目につくようにしておいたら、料理屋の前に官公用の自動車をとめなくなって綱紀が粛正されるだろうということを流しのタクシーの運転手がしみじみ言っておる。これは大臣一つ頭に置いていただきたい。見るに見かねる状態です。国民の目で、役人が来た、政治家が来た、ああ料理屋の前に置いてあるぞということを一目で見てわかるようにナンバーの色を変えたらいかがか、大臣としてはお考えいただいたらどうですか。
  124. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 辻さんからのお話しでありますが、今官庁ナンバーというものは、ちゃんとわかるように、明確になっておるそうでありますが、一般の人は知らないようでありますから、その点も十分に一つ考慮したいと思います。
  125. 白木義一郎

    白木義一郎君 もう一度、既存業者になぜどういう事情があってこの際増車するか。タクシーの運転手は——会社の社長は自民党、あるいは社会党系と、両方に捉まれて、この際、この機会に大臣が夢と希望を与える、たった一つの楽しみをもって待っているわけですから、はっきりとした一つ態度を示していただきたいと思います。
  126. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 今の白木さんのおっしゃることはよくわかります。私も個人タクシーを踏み切るにつきまして相当に抵抗もありますし、また、今日に至るまででも、既存業者はほとんど仇敵視しておったという状態でありますから、わかりますが、しかし、行政の面を担任いたします立場から申し上げますと、やはり最前申し上げましたように、既存業者は一切やらない、一切の増車は、実績がどうあっても認めない。そして新規と個人だけに許すのだということをやることは、現状からいって、やはり最前申し上げましたように、個人タクシーの面を漸次やはり堅実にこの実績等を見て、社会的な支持を受けるようにしなければならないと実は思うのでありまして、先般も個人タクシーのものが、自分の車を置くガレージかなんかを違反かなんかしておったというので、三つの個人タクシーを営業を停止するということを陸運局で出したということが東京新聞に出ておりましたので、私すぐに陸運局長及び自動車局長を呼びまして、せっかくこうやって芽が出ておるものをわずかな違反をとらえてもちろん違反はよくないけれども、やはり指導して成長するようにしなければ、そういうものを峻厳に取り締まっていくということになれば、相当いろいろだ既存業者、その他の面もいろいろあるだろうから、こういうものをいろいろなにしなければならぬだろうから、やはりそういう点は涙をもってやるべしということを指示しておるような次第で、端的に申しますと、個人のタクシーを許すという点につきましては、運輸委員会その他においても実は相当に反対を私は受けて、社会党の方もずいぶん反対されておるし、自民党の方も反対されている状態ですけれども、少なくともこれをやはり認めてもらって、成長させてゆくことによって自動車界に新風を吹き込み、働く人々に希望を与えるんじゃないかということで、私も無力ですから、ようやくこの辺まで実は働いておるような次第でありまして、今の場合、既存業者を全部無視してしまうということも、いろいろな法の建前から、行政の面からいって妥当ではないんじゃないか。まあこの辺のところで新免及び個人タクシー、既存業者というものを、それぞれの情勢等を見てやはり妥当な一つの措置をして増車をしてゆく。これは一般の交通が公共性等も持っていますし、既存業者が全部悪いんだ、悪いんだと、悪いことばかりしているんだというわけにもいかない。やはり社会的にもサービスしているんですから、それらの点も無視するわけにはいかないんじゃないか、こういうことも考えられるので、この辺でしばらくの間、御支持を願いたいと思うのであります。
  127. 白木義一郎

    白木義一郎君 いろいろ、いろいろの連発で、はっきりなぜ既存業者にも増車しなければならないかという理由を御答弁願えないので、われわれは町に、巷間流布されているうわさをだんだん認めなければならないというような気持になって参りました。  次に、道路交通法の罰金の改正がありましたけれども、これに引き並べて、自動車事故によって起きた被害を受けた人々に対する補償の問題ですが、現在はひき殺され死んでしまったら三十万円、こういうような安い補償金しか与えられておりませんが、この保険金額の改正をなさる意思があるかどうか、お伺いしておきたいと思いま子。
  128. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 今お尋ねの点でありますが、現在保険金額につきましては、死亡した場合に三十万円、重傷の場合に十万円、軽傷の場合に三万円となっておるのであります。最近の判例などの損害賠償の額は非常に高くなっておる傾向でありまして、また保険金額の引き上げは、被害者の保護を厚くする意味からいっても今御指摘のように望ましいことでありますけれども、これの資金といたしまして数億円の財源が必要でありまして、保険料の値上げを伴うことにこれは必然的になるのでありまして、自動車の保有者の負担能力等も考慮しまして、慎重に検討中であります。また、実績を見て計算資料等をいま少しく固める必要もあるのでありまして、昨年の六月開かれました責任保険審議会、これは大蔵大臣の諮問機関でありますが、死亡の場合の保険金額を五十万円にまで引き上げることについて討議をされましたが、いろいろと収支改善のための保険料の値上げは相当大幅になるというので、一応見送るということになっておりますけれども、今白木委員もおっしゃいましたような現状、物価の水準、いろいろな点から勘案いたしまして、将来はぜひ考慮すべき事柄であると思うので、至急検討を加えたいと思うのであります。
  129. 白木義一郎

    白木義一郎君 最後に、昨年末個人免許の写査にあたりまして、陸運局では非常に人手が足りないために残業々々というようなことが続いて、予算がないために大臣はポケット・マネーを、身銭を切って彼らを慰労したというようなことをおっしゃっておりました。一面考えれば非常に人情大臣としての面目を発揮したことと思いますが、これは気をつけなければならないことは、公務員に汚職の気風を与え、また、国民は大臣に借金をしておるというような、こういうような気持にもなりますし、また、親分子分の関係を生ぜしめるというようなことも非常にまずい点だろうと思いますので、大蔵大臣もおいでのことですから、あくまでも国民税金、すなわち予算でもって措置をしていただくように今後御奮闘願って、大臣に対する質問を終わりたいと思います。
  130. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) どうもあれは何かの調子でそういうことをお話ししたんでしょうが、非常に七千件近くも申請が出まして、これは各一件々々ごとに身元を調査し、現状を見るというようなことになるので、非常に人員が少なくて、本省から五十人近くの手伝いをやりましたけれども、それでもなかなかさばき切れなくて、病人も出すと、まあそこの労働組合その他からも非常な陳情なり抗議等もありまして、新風を吹き込むことはいいけれども、新風のためにわれわれはこんな被害を受けるんだというような非常な苦情等も出ましたけれども、その点は私は非常に陸運局長及び各組合の職員の人々にも、参りましていろいろとまあ慰安もし、慰めたような次第でありますが、このたびは大蔵大臣のこの問題についての理解を得まして、九十数名の定員を陸運局に——ほとんど異例な定員をふやしてもらうことになりましたので、その点は事務の進捗の上に今後一段と飛躍性を見ると思うのでありまして、今おっしゃいました点等は、十分に一つ気をつけていきたいと思うのであります。
  131. 白木義一郎

    白木義一郎君 次に防衛庁長官にお尋ねしますが、昨日あなたは仮想敵を想定するということは前時代的な観念であると、こういうようにお答えになっております。そして局地戦争の増大をしないように、戦争防止のための戦力であると言われる。外務大臣は、国際紛争の解決は国連にゆだねるんだとおっしゃられますが、局地戦争の相手国は仮想敵とは言わないのでしょうか。ちょっとお尋ねしたいと思います。
  132. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 御承知のように、仮想敵ということにいたしまするならば、その仮想敵と称するものと戦争をする場合にどういうふうにやっていくかと、ことにそういう場合には守るよりも攻めることが、これは必至だと、攻めることが最大の守りであるというふうに、そういう関係で仮想敵というものが予想されて、作戦計画を今まで立てておったと、こういうふうに思います。しかし、きのうも申し上げましたように、世界的に対立をしておる情勢は、これは現状であると思います。その世界的に東西対立しておるこの国防そのものが戦争の抑制力として最近機能を変えておる、こういう点から見て、日本の国防、防衛力というものもやはりその一端をになう、日本の国力、国情に応じた、小さいながら抑制力としての任務を果たしていく、こういうふうな形になっているからして、敵を攻める作戦計画、そういうもので仮想敵としての準備をしている、こういう形ではないかと、こういうふうに申し上げたのです。
  133. 白木義一郎

    白木義一郎君 何だかさっぱり、頭が悪いせいか、よくわからないのですが、ほんとうの防衛力というものは、たとえていえば、ボクシングのタイトル・マッチの防衛というのは、向こうよりもこっちが力がなければ防衛できないわけです。全世界を圧倒するだけの戦力を持つのがほんとうの防衛力である。攻める攻めないは別ですが、それだけの力がないと守るわけにいかないわけです。で、仮想敵のない防衛戦力というものは、ほんとうに子供だましのナンセンスであると、このように思っておりますが、仮想敵はあるわけです。それは毎年々々確実に日本を襲ってくる台風のことで、この敵に対して一体日本のだれが防衛するのか、それは私は自衛隊以外にないと、こういう意味の自衛隊に対しては、国民は相当の税金を投入しても必ず喜んでくれるだろうと思うのです。そこで自衛隊の主たる任務を、この際毎年やってくる招かざる敵、風水害に切りかえて、内乱の鎮圧とか、あるいは国土開発のためにとどめて、局地紛争のおそれのあることは政治家の皆さん方の政治力をもって最小限に切り抜けて、そうして民衆の希望にこたえていくのがほんとうの防衛力であり、自衛隊じゃないか、このように思いますが、お考えはどうでしょうか。
  134. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 局地紛争等に対して政治的に、あるいは話し合いによってこういうことをなくすることに努めるのは当然だと思います。しかし、同時にそういうものが発生しないように、あるいはまた発生する場合には拡大しないように防衛力を持つ——これは世界の現状からいたたしまして、日本だけがそういうことをしないで済むというようなエゴイズムに陥ってはいけないと思います。やはり国としてそういう体制をとるべきだと思います。  それから、お話のように災害が襲うということもこれは年々あることでありますので、私どもといたしましても、災害に対処する訓練とか、あるいは装備、そういうものに対しましても十分に力を入れていきたい。また、これが国民に奉仕する自衛隊の一つのあり方でもあると、こう考えておるのであります。しかし、自衛隊の本来の仕務は本来の任務として、その訓練その他装備等をしておってこそ初めてこの災害等に対しましても、機能の発揮ができるのだ、こういう観点に立ちまして、災害に対しましても十分に協力できるように対処していきたい、こう考えております。
  135. 白木義一郎

    白木義一郎君 国民所得に比例した防衛力の漸増、このように総理も長官も答弁されておりますが、景気が悪くなったら減らしてもいい防衛力、これはどんな防衛力かと疑わざるを得ないのですが、はっきり一つお教え願いたいと思います。
  136. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 防衛力というものは、これは四囲の情勢とか、国際的な関係とか、あるいは国内の経済負担力とか、こういういろいろな要素から出てくるものだと思います。そこで、どの程度がいいかということには、再々申し上げておりまするように、的確な基準というものはなかなか困難だと思います。しかし、世界各国とも防衛力に対しましては、国民所得のパーセンテージでどの程度というふうに出ておるのが常識的になっております。でありまするから、景気が悪くなったら防衛力を少なくするとかなんとかいうことでなくして、やはり国民所得というもの、これが一つの国力に応じた基準ということに考えられると思います。そういう点では、世界的にも非常に日本の防衛負担というものは軽いといいますか、重いものではございません。それから終戦後の国民所得に対する率から言いましても、ことし以降は最も少ない率をもって予算をお願いしておるような状況でございます。でありまするから、一がいに不景気になったら減らすのだというふうにおっしゃられますけれども、そのときの情勢によって判断するよりほかはないと思っております。
  137. 白木義一郎

    白木義一郎君 防衛力という問題は、一国の興廃あるいは国民の生死の問題にかかわる問題ですから、真剣な論議をしなければなりませんが、それは他日に譲ることといたしまして、防衛庁長官はわが日本国を愛していらっしゃるでしょうか、また真剣に防衛するお心をお持ちでしょうか、お答え願いたいと思います。
  138. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 私は日本に生まれまして日本に育っております。こういう自分が、先祖から受け継いで子孫に渡さなければならぬこの日本というものを、われわれの親子兄弟、縦からいえば親子、横からいえば国民、この縦横の関係の中に育っておる私は日本を愛します。また、この伝統ある日本を侵されるようなことがあったり何かしては私は相ならぬと、こういう強い信念を持っております。
  139. 白木義一郎

    白木義一郎君 まことに心強い信念を伺いました。で、日本の国土防衛のあなたは責任者として、国土を防衛するために、あなたの名誉や地位や財産、あるいは家族、あるいは一身を投げ打って長官としての責任を果たしていこうというかたい決意を固めていらっしゃるかどうか、これもお伺いしたいと思います。
  140. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 今、何ものも捨てていくということではありませんが、有事の際、そういう場合などは率先して何ものも捨ててやらなければならぬ、こう考えております。
  141. 白木義一郎

    白木義一郎君 長官がそのような熱意であれば、最近の自衛隊の軍規あるいは士気はどんなようになっているのでしょうか。スタイルの上では大へんスマートにりっぱになって参りましたが、貯金帳を気にしていたり、あるいは株式の投資の研究に没頭したり、あるいは退職金、あるいは自動車の運転免許をとればやめていってしまうというような自衛隊員、すなわち国土防衛の精神の希薄な隊員に血税より生じた前近代兵器を幾ら与えても期待にこたえてもらえるような防衛力が発揮されるのかどうか。防衛予算はできるだけ切り詰めて、その足らざるところは隊員の防衛精神の確立をもって補うべきではないかと思いますが、現在の実情と、隊員に対する教育の内容をお教え願いたいと思います。
  142. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 自衛隊員としても空気だけ吸って生きているわけではございません。でありまするから、やはり生活のこともある程度考えるのはこれは人間として当然だと思います。生きていく上に。しかし、それにのみ走って防衛の責任と任務といいますか、それを放擲するということであっては、これはお話のように相ならぬと、こう思っております。  そこで、自衛隊としてどういう精神指導をしているかということでありまするが、私どもは先ほど申し上げましたように、先祖から受け継いで子孫にこれを渡すところの日本の国土、国民でありますので、これに対しまして私どもは国家のゆるぎない存続を保って、そうして独立を守っていく、これに対する国家の繁栄と、高い文化に対しての奉仕をしていくと、こういう責任を強く感ずべきだと思うのであります。自衛隊も公務員でありますから、憲法にありまするように、公務員は国民に対しての奉仕者であります。その奉仕の点におきまして、特に強度の奉仕を要請されているのが自衛隊だと、私、こういうふうに考えております。でありますので、自衛隊といたしましては、非常危急の際、その任務を果たすことが本来の姿でありまするから、常に有事の心を心とし、訓練に励むべきだと思うのでありますけれども、平時にありましても努めて、そのほかにも民生に協力して国民を思う気持を強くしていかなければならぬと、こういうふうに考えております。  また服務の規律等につきましては、自衛隊法の中に服務の規律等がありますので、そういう規律を重んじ、団結をかたくして、そうして国民に奉仕する強度の責任を感じて身を持していかなければならぬ、また団結をかたくしていかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  143. 白木義一郎

    白木義一郎君 先ほどの御決意を長官としてかたく持して今後の指導、監督に当たっていただきたいと思います。  で、次に外務大臣に。
  144. 鈴木強

    ○鈴木強君 ちょっと関連。今の質疑の中でちょっとわからぬ点がありますから、防衛庁長官にお尋ねしますが、自衛隊本来の任務が有事の場合の国土防衛にあると同時に、白木委員指摘していますように、年々来襲する不時の招かざる敵台風に対する防衛ということも任務である、こうおっしゃっている。で、戦争が勃発した場合の自衛力に対する平素の訓練というのはよく新聞で見ますけれども、昨年あたりの風水害に際して、自衛隊に出動していただいておりますが、どうもああいう風水害に対しての自衛隊の心組みといいますか、平素の訓練というものがいろいろ批判を受けておるわけですね。ですから、そういう台風等の襲来に対しての日常の訓練というものは自衛隊でどうやっておられるのか、具体的に私はこの機会に示していただきたいと思うのです。  それからもう一つ、今問題になりました隊員の規律の問題ですが、これはやはり率直に自衛隊の人たちに機会を得て聞いてみると、失業者が多くてなかなか職につけぬ、そこでこういう自衛隊という組織ができたので応募して、退職金が出るから、何年先にはどうなるということを考えておる人が多いようですよ。ですから、昔は軍人勅諭があって、ああいう軍の規律がはっきりしておったのですが、そういう時代と違いまして、憲法に違反した、しかも戦争になったら一番先に立つ——敗戦を受けていないときはそういう気持はなかったかもしれませんが、現実に第二次世界戦争、大東亜戦争で負けたああいった悲惨な状態になった事実をまのあたり見ていますから、そういう有事の際に対する恐怖心というものがかなりあると思うのです。こういうものをどう払拭してあなたの言われる自衛隊の規律を確立されようとしておるのか、これが問題になると思うのですが、その辺を長官として、今、隊員として苦労していただいておる皆さんの気持をどういうふうに把握されて、それに対してあなたの言われているような思想をどういうふうに植えつけていこうとしておられるのか、その辺を明確にしていただきたい。
  145. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 災害に対してどういう日ごろ訓練をしているか、こういう第一のお尋ねでございます。御承知のように、自衛隊の中に建設隊あるいは施設隊というものがあります。これは訓練の目的に適合する限り努めて道路あるいは橋梁その地階道とか、こういう土木工事に従っている建設隊であります。それから施設隊、これは小規模のいろいろの施設等に協力する施設隊であります。今度の予算で五つ要求しておりますが、これで全国ほとんど各地に置ける。これは日ごろそういう土木復旧の工事等に役立つ訓練をいたします。そのほかの普通の部隊等についてでありますが、これにつきましても、災害出動という場合がありますので、災害を想定いたしまして、災害の発生する時期とか場所及び程度等によってどの程度の対策を講ずるかというような一つの想定のもとに訓練をさせることを特にことしからやっております。それからまたそういうものに対しまして、この建設隊あるいは施設隊等につきまして、いろいろな装備、機械類、ダンプカー、ブルドーザー、そういうものを持っております。そういうものに対しまして堤防の決壊については十分にやる。たとえば昨年の災害におきましても、大阪の淀川が決壊しかけておったのを、早期に出動して対策を講じましたので決壊を免かれた。こういうふうな訓練をいたしておるわけでございます。その他通信とか輸送、復旧計画的な訓練をことしから特に命じておきます。  それから第二の第二次大戦によって日本が敗戦を喫した。そういうことから自衛隊員もほんとうに真劍に国のために挺進するという気持がなくなってきておりはしないか。ことに就職等のために——就職といいますか、そういうために自衛隊に応募している者が多いのじゃないか、こういうことのお尋ねでございますが、そういうことがないとは申し上げられないと思います。そういう事実もあろうかと思います。しかし、やはり給与等におきましても、先ほど給与の問題がありましたが、一般の公務員よりはそれだけの過重な労働といいますか、そういうことでありますので、給与等もよく見てもらうようにいたしております。そういう点で、何といいますか、体育といいますか、そういう方面に特に力を入れておりますが、それと同時に、今の、精神的な面が欠けるのじゃないか、こういうことなんですが、終戦当時、また警察予備隊とかあるいは保安庁というような形でおったときよりも、現在の自衛隊となりましてから、非常にその面は私よくなってきておると思います。しかし、十分だとは申し上げられません。しかし、私はやはり、何といいますか、戦前の愛国心というものが、上から押しつけられて、お前らは愛国心を持たにやならぬというふうに押しつけられておった愛国心、これでは満足できないと思います。ですから、自分たちの親子兄弟、あるいは郷里郷土、こういうものはやはり自分たちがこれを愛して守っていくというような気分になるように私は特に指導しております。そういうものが団体生活の中から、下から盛り上がってくる、こういう形に相なりませんと、ほんとう国民あるいは日本国に対する奉仕者としての自衛隊がしっかりしたものにならぬというふうに考えております。まだ、十分誇り得るような形ではございません。せいぜい私どもも力を尽くしていきたいと思います。
  146. 白木義一郎

    白木義一郎君 それでは、外務大臣にお願いいたしますが、御承知通り、わが国は、残念ながら人類の歴史始まって以来最高の火薬、すなわち原子爆弾の洗礼を受けた世界で唯一の国家であり国民であります。で、世界の平和に対しては、人間が人間を殺し合わなければならない悲しい宿命を打開していく努力を続けていかなければならないと思います。その立場から、特にわが国は全世界の核武装をやめさす、また雪解けの最前線に立って、そうしていかなければならないと思います。政府は当然そういうお考えを持っていただいておると思います。  そこで、国連依存以外に、全世界の人々の胸をつく訴え、そういうような具体的な推進方法政府からはっきりと示していただくならば、また打ち出されるならば、日本の国民は全部喜んでもろ手をあげて協力をしていくであろうと私は考えます。そこで、そういう問題につきまして、過去あるいは現在、また未来にわたって、どのような具体的な努力を全世界に対して政府は呼びかけ、あるいは今後もこうやっていくのだという、大きな立場から世界の民衆の世論を引っぱっていくような、指導をしていくような推進方法をお持ちですか、お答えを願いたいし、またお教えをいただきたいと思います。
  147. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お答えいたします。ただいま白木委員の言われましたように、日本が原水爆の第一の洗礼を受けた国であるということは、国民ひとしくこれは遺憾に思っておるのであります。こうした兵器が地球の上からなくなることを待望していることは、これまた申すまでもないことであります。また同時に、日本が今回の戦争でこうむりました種々の経験から申して、再び戦争に突入したくないということは、これまた国民一般の願望だと思います。従って、御指摘になりましたように、核兵器をなくしていく、また戦争をこの地球の上からなくしていく、できるだけ紛争は話し合いの上で解決していくという願望、また強いそうした希望を持っておりますことは、これは申すまでもないことで、われわれとしても全くその点については、日本国民の一人として同じ気持を持っております。  ただ、これをどうして実現していくかということに相なるわけであります。むろん、理想的にこれをアッピールして参りますのには、いろいろな方法があると思います。ただ、具体的にこれを推進していくということになりますと、やはり国際機関等において逐次そうした具体的な方向をとりながら解決していくという方法手段を考えて参らなけばならぬ。世界のいずれの国の人々といたしましても、むろんその気持は同じと思いますが、しかし、過去から現在につながっておりますいろいろな歴史の事実の上に立ちまして、また特殊ないろいろの事情もあって、従って、やはり今日そういうものをなくしていこうという手段方法については、おのずから各国は見解を異にいたしているようなわけであります。それは、お互いに残念ながら不信感を持ち合っているということからも起こってくることでありまするし、従って、不信感を、精神的に申せばお互いの不信感を払拭していく、そうして信頼し合いながら、どの方法が一番最善の方法であるかということは、各国の主張をとりまして比較検討してみましても、おそらく一長一短がありまして、その一長一短の足りないところは、お互いに不信感を払拭して、そうして信頼し合いながらそれらの具体的な方法を見出だしていくより方法がないと思う。  私どもといたしましては、当然そういうような方法を見出だしていくことは、国連の場においてお互いに話し合いながらしていく。これは何といいましても、戦後世界の平和を維持するために、国連は相当高い理想を掲げて各国が結成した団体でございまして、しかも、メンバーも逐次ふえて参りまして、すでに八十二カ国にもなっております。今後も新しく独立した国々はそれぞれ加盟して参ることになりましょうから、世界の各地におけるそれぞれの人たちの意思を代表している機関でありますから、こうした機関において問題を処理していくことが必要だと思います。そういう意味におきまして、われわれ政治あるいは外交に当たっているものとしては、そういうような具体的にこれを一歩でも推進していく方法として国連の場を使い、そうしてお互いに話し合いの上でそれを一歩——一歩と申しますか、二歩と申しますか、完全な満足な話し合いはできないにいたしましても、その引っかかりをつかまえながら進めて参るのが方法だろうと思います。むろん、高い精神のもとに世界にアッピールするということにつきましては、われわれ同感でありますけれども、これらのものはおのずから、宗教方面なり、あるいは国民思想の方面なりに携わっておられる方が先頭に立っていただくのが、一番適当であろうかと思います。
  148. 白木義一郎

    白木義一郎君 そうしますと、政府として、あるいは、国民全体として、世界の相手国に対して、話し合いという意味じゃなくて、かくあるべきだ、日本はこうしたいのだというようなはっきりした思想なりあるいは考え方を、政府としては御用意がない、こうおっしゃるならば、われわれはその用意もありますし、現在それを実行しておりますから、また別の機会にお話をしたいと思います。  次に、これはまことに不本意なことであり、また歯がゆい問題ではありますが、御承知通り、韓国の不法行為の犠牲者及びその留守家族。で、彼らはみんな貧しい人たちでございます。また同時に、いろいろな歴史をたどっている沖縄在住の日本人諸君、これらの方々はみなはっきりと戦争犠牲者であると、このように思っても差しつかえないと思います。そこで、皆さん方、われわれは、こういうハイクラスで、ハイクラスの立場で日を送っておりますと、どうしても観念的な、あるいは理論的な一日を送ってしまって、ほんとう国民の苦しみ、悲しみ、絶望さに対して、意識が薄れてくるのじゃないかと思います。自動車に乗っておりますと、どうしても真夏になんか汗を流して歩いている人が愚かに見えるような錯覚をいたします。そこで、政府といたしまして、彼ら貧しき人々の心中を思い、戦争の犠牲になっている方々の心をおもんばかっていただいて、そうして総理大臣あるいはその代理としての外務大臣は、現地へ飛んで行って、そうして日本国民の代表者として、ひざを交え彼らの苦しみを聞き、訴えを聞いて、そうして現況をこちらから報告して、こういうわけなんだ、もう少ししんぼうしてもらえないか。また外交力の不足であり、国力が足りないために、皆さん方に迷惑をかけているのだ。しかし、将来にわたって全力をあげてこのようにやっていく、見通しはこうである。しかも、お金で解決できる問題じゃないだろうが、こういうような具体的な保護の措置もとっているのだ。どうか一つこらえていただきたい、しんぼうしていただきたいと、心からそれらの犠牲者に対して陳謝の意を表していくのが、民衆の機微に触れた政治じゃないかと思うのでございます。  で、外務大臣として、また学校の最も尊敬すべき先輩の一人といたしまして、このような気持で今後やっていっていただきたいと思いますし、とりあえず、さっそくそういう方法をとって、そうして慰問し、慰めていただければ、政治に対する信頼を失った国民は、そこにほのかな希望を持ち、またあしたへの活動力の源泉になるように、あさはかな心をもって考えておりますので、どうか一つそういう点に深く考慮をされて、行動し、働らいていただきたいと、このように思いますが、さっそく一つ、働らき手を失った貧しい漁師の犠牲の家族を、政府が心から見舞うんだというような意思表示をしていただけないものであろうか、どうであろうか、お伺いしておきます。
  149. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 同窓の白木君から、心からの政治に対する真情についてお話がございました。われわれ政治に携わっておりますものが、お話のように、国民の心の持ち方から離れて参りますことは、非常に危険でありますこと、むろんであります。その実情等についても、絶えず身についたような、直接の感受される気持を持って参らなければならぬのでありまして、その点は、われわれ東京におりまして政治をやっておりますと、ともすれば失いがちになってくるということは、厳に警戒して参らなければならぬと思います。  今、御指摘のありましたように、不法に拿捕されました漁船乗組員の方々の留守家族の問題等を考えますと、私どもも実にお気の毒に思うのでありまして、私もたびたびそういう方々からの悲痛な訴えの手紙をいただいております。でありますから、何とかして一日も早く外交折衝によってこの問題を解決しなければならぬという気持も、私自身としては強く決心をいたしておるわけでございますし、また、沖繩方面の方々のことにつきましても、同様の感じを持つわけでございます。そういう意味におきまして、留守家族の方方とお話しすることをわれわれは決して避けているのじゃございません。先般も、留守家族の援護会の会長であります小浜さんがおいでになりまして、最近に留守家族の方が上京してくるが、その人々の話を十分外務大臣としては聞いてやってもらえないかという。私は、喜んでお聞きしますし、そういう機会がありますれば、お話を承って、そうして十分われわれの力によって韓国問題を解決する一つの私自身の力にもして参りたい、こういうことを申したわけであります。ただ、今日国会等がありまして、直ちに今現地におきます各家族の方々をお見舞するというようなことは、時間的にも不可能であろうかと思います。心組みとしては、今御指摘のありましたような心組みを持って参ることが当然であると、こうかたく考えております。
  150. 小林英三

    委員長小林英三君) 時間が参りました。
  151. 白木義一郎

    白木義一郎君 じゃ、最後に。そのような、向こうから代表が来たから、よく聞いて善処するというようなことじゃなくて、為政者としては、その機微をとらえて、現地に飛んでいく。そのためには、昔ならいざ知らず、現在では自衛隊のヘリコプターもあるでしょうし、あるいは大臣機を買っても国民は納得するだろうと思いますから、その点一つ深く御考慮を願っていただくことにいたしまして、時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。(拍手)
  152. 小林英三

    委員長小林英三君) 午後は一時二十分から再開するといたしまして、暫時休憩いたします。    午後零時四十八分休憩    —————・—————    午後一時二十九分開会
  153. 小林英三

    委員長小林英三君) これより委員会を再開いたします。  午前に引き続き質疑を続行いたします。
  154. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 私は、まず最初に、文部大臣に対しまして質問をいたしたいと思うのでありますが、最近御承知通り、観光ブームの名によりまして、至るところ名所旧跡が荒らされておる状況は文部大臣も御承知通りであります。特に、最近ひどいのは、松島のいわゆるタワー事件であります。これは、たしか大正八年ぐらい、風致の保護指定もなし、昭和二十何年かに特別名勝指定となっておる所でありまして、しかも日本の三大風景の一つとしておりますことは、国民のことごく知っておるところでございます。こういうような所にもって参りまして、突如といたしまして、文化財保護委員会の認可もなくして、ああいうどえらいものが建ち始めた。このことにつきましては、すでに文化財保護委員会といたしましても、その工事の中止を命じておるようにも聞いておりますし、それからまた、あの風致地区を原形に復するようなことも要請しておる。こういうことを聞いておるのでございますが、これが県教育委員会が承認をして、そうして県議会で決定してこの問題をでっち上げたというように聞いておるのでございまするが、最近のいわゆる観光ブームによりまして、たとえば日光の神橋のそばにあります大杉が、これが自動車の通行のために伐採されようとしたというようなこともあって、地元でだいぶ問題が起こったこともあるのであります。こういうことが簡単に県当局の意向によって、そうして大事な文化財の特定地区というものが破壊せられるということは、国民の文化思潮の上に及ぼす影響というものもきわめて甚大と考えなければならぬと思うのであります。  それから、いま一つの事件といたしまして、これもすでに新聞で御承知通り、それからまた、この問題につきまして、文部大臣御自身が先週の土曜日に現地に行っておりまする、例の埼玉県の長瀞の事件でございます。これは、大体私の聞くところによりますと、特定指定地区三キロと聞いておるのでありますが、あの奇岩というものは、長瀞の奇岩というものは、御承知通り、地質学者が常に羨望をいたしておるところなんです。従って、あの地区というものは、単に埼玉県の名勝にあらずして、学問的にも日本の非常に大事な風致地区なんです。こういう所が、昨年の十一月でございますか、灌漑用水の名によって埋没をしなければならぬというようなことが言い出されて参ったわけであります。保護委員会当局といたしましては、そのときには、おそらくその裏にございました発電計画というものを御存じなかったように聞いておる。ということは、その灌漑問題に関しまして、たびたび保護委員会で農林省当局に交渉をせられ、農林当局自体におきましても、その発電計画というものは全然知らなかった。ところが、最近になりますと、この発電計画があわせてこの灌漑の問題とある。しかも、二十メートルの突堤を作りますというと、この三キロのいわゆる特定地区というものは埋没するわけなんです。しかもこの問題につきまして、発電の工費が一体どのくらいかかるかということを聞いてみまと、大体十三億八千万円、しかも千四百キロワット、わずか千四百キロワットを作りますにあたって、その工事費が十三億八千万円かかる。これは常識では考えられないのでありまして、大体常識的な一キロ当たりというものは、十一万円か十二万円でございます。このままでやりますと、実に一キロ百万円近くもかかるというような、いわゆる無謀な案をもって、そうしてこの水力計画を推し進めようとしておる。そうして、しかもその裏面におきましては、それぞれのいろいろな勢力が介在をいたしまして、きわめて圧力的な態度をもって、そうして保護委員会に臨んでおるということを私どもは耳にいたしておるのでありますが、これは、私が最近問題になりました二つの例をあげただけでございますが、今日、先日ほど申し上げました観光ブームによって、こういうような事情というものは非常に多いのであります。たとえて言いますならば、芝公園がある。芝公園は、戦災でやられたとは申しましても、今、東京のわずかに残っておりまする緑地帯としては唯一のもので、それがいつの間にか、ある資本家の手によって、そうしてぶちこわされて、これは私どもは公共の福祉のためにこれが利用されるということであるならば、これまたやむを得ない。ところが、でき上がったものを見ますると、大臣も御承知通り、あすこはゴルフの練習場か何かになっておる。せっかく都民のいこいの場所として残された唯一の緑地帯というものがそういうような状態である。これはむろん保護委員会関係ではございませんが、そういうような状況が全国に非常に多いのであります。私どもは、観光の点から申しますならば、むしろそういうものを残すことによって観光の値打ちというものがあるのであります。しかるにもかかわらず、こういう状況が繰り返されるということはまことに遺憾にたえないのでございます。大臣も、長瀞の問題につきましては、現地をつぶさに御調査にもなっておられます。それからまた、この松島のタワー事件につきましては、すでに文部省としても大きな問題になっておると思うのでありますが、この際、一つ明確にこの問題につきまする御所見と、それから御方針を承っておきたいと思います。
  155. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) お話のように、わが国の文化財、天然保護記念物、名勝というようなものが、わが国にとりまして最もわが国の保有する重要なものと考えておるわけでありまして、これはただに観光上の重要なものであるばかりでなく、わが国の最も貴重なものとして、わが国の文化の上にこれらのものが十分に保護されて参らなければならぬと考えておる次第でございます。史跡名勝、天然記念物の現状変更の問題については、公共事業との調整で困難な問題が少なくはないのでありまして、御指摘のように、現在でも、年間数百件に及ぶその調整を見ていかなければならぬ問題もあるわけでありまして、昭和三十二年六月十一日の閣議了解事項にも、「近時、国土開発その他の事業の施行等に当り、文化財保護に支障をきたすおそれが少なくないので、文化財の保護と事業の施行等との円滑な調整を図って文化財の保護に遺憾なきを期するため、関係各省各庁間における相互の連絡をいっそう緊密にするものとする。」という基本的方針が定められておるわけでありまして、お話の松島の問題につきましては、特別名勝であるこの松島における松島タワーの建設、これは、文化財保護委員会ではすでに不許可といたしておるわけでありまして、業者は文化財保護法第八十条、建築基準法に違反して無許可で工事に着手し、関係当局の再三の工事中止の指令にもかかわらず工事を続行してきたという事件でありまして、これに対しては不許可の方針を明らかにして、県当局へも十分な注意をして、県当局からも中止命令を出しておる次第でありまして、また長瀞の問題につきましては、建設省の二瀬ダム建設事業に見合うところの農林省の荒川中部の比企地区、大里地区等の農業水利事業、県営発電事業等との関連するもので、両省と十分に協議して、何らかの調整の道をはかって参りたい、かように考えているわけでありまするが、この問題は、私も現地に参りまして実情を見て参ったのでありまするが、この地区は名勝指定並びに文化財天然記念物として十分に保護していかなけりゃならぬものと考えておる次第でございます。なお、詳しい両地点についてのこれまでの経緯につきましては、文化財保護委員会の委員長も見えておりまするから、その詳細について説明させたいと思います。
  156. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 今お話で、文化財保護委員会としては、中止命令を松島には出しておる。それからまた、それに同調して県も出しておるということを伺ったんでありますが、しかし、もう事態は相当進行しておるのですね。こういうことについて、あなたのところにいろいろな圧力、と言ってはなんでありますが、政治的なこの問題について圧力があったように私どもは聞いておるんでありますが、この点は大臣はいかがおとりになっておりましょうか。  それからいま一つ、そういう最中に中止を出しましても、あれだけできておるものを一体いつ時分に原形に復させるような付帯条項を作っておるか、あるいは、ただ事態の推移をある程度の年限をつけて待っておるのか、この点もあわせて伺いたい。
  157. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 松島のタワーにつきましては、先刻申し上げた通り、再三の中止命令を出しておるわけでありまして、この問題はやはり原形復旧というようなことになろうかと思いまするが、現在の事情の詳しい点につきましては、保護委員長から御説明申し上げさしたいと思います。  なお、政治的圧力云々については、私は承知いたしておりませんし、また感じてもおりません。
  158. 河井彌八

    政府委員(河井彌八君) ただいまの御質問に対しましてお答えを申し上げます。文化財保護法というものが制定せられまして、ただいまおあげになりました天然記念物あるいは史跡名勝等の保護はもちろんでありますが、そのほか美術的な品物、それから建造物の古いもの、それからさらにまた、その民俗資料として大切なもの、さらにまた無形文化財と申しまして、芸能なり、あるいは工芸の価値の高いもの、そういうものをすべてこの保護法によって保護するということになっております。これはその所有者等がたれであるにかかわりませず、国がその文化財保護法によって保護すべきものと指定してあるものにつきましては、国の行政力をもちまして、長くそれが保たれ、そして国の宝として保存せられるのみならず、さらに後世にこれを伝える、あるいは広くこれを観覧に供するということなどの目的をもちまして、強い行政力が与えられておるのでございます。そこで、そういう建前から、文化財保護委員会というものは五名の委員をもって組織しておりまして、十分な審議をいたしまして、その文化財に指定するかということを決定するわけであります。しこうして、その決定の場合には、まずもって先決条件といたしまして、専門審議会というものを設けまして、九十名の専門家を集めまして、それぞれの分科をきめまして、そして慎重に検討しておるのでございます。そういうふうにいたしまして、文化財の保護というものを強く突き進めようという制度になっておりますので、このことは御承知通りであると考えます。そこで、文化財保護委員会におきましては、一々の事項につきまして、十分なる審議を遂げておるのでございます。で、ざっと申しますと、今お話にありました史跡とか天然記念物関係等だけでも特別名勝あるいは特別史跡をもこめまして、大体一千件になっております。特別の記念物というものはありますが、これは除きます。大体九百三十六件現在あります。それだけの多数のものを保護していかなければならぬ、こういうことになっております。ところが近来、御承知通り、あるいは公共事業であるとか、あるいは教育の関係であるとか、道路であるとか、あるいは発電であるとか、いろいろな必要な事業が各地に起こっております。そういうものが問題となりまする場合に、つまり特別名勝がこわれるとか、あるいは史跡がつぶれるとかというようなことが頻々と起こっておるのであります。それで、ただいま大臣が御説明せられました通りに、そういうことがこれまでは各所管の官庁の専断でもって、法律によって自分のところの官庁がこれは権限として行なうべきだということから、それをどしどしやりますると、その文化財がつぶれてしまうというようなことがしばしばあったのであります。従いまして、今大臣がお話しになりましたように、三十二年六月ですかに閣議決定をもって、そういう場合に、文化財に指定してある場所、物に影響があるような事業については、あらかじめ十分に連絡をするようにという決定があるのであります。ところが、それがほんとうにうまくいっているかと申しますと、遺憾ながら必ずしもうまくいっておりません。しかし、大体においては相当によくいっておるつもりでございます。今おあげになりました松島の何といいますか、観覧塔——松島タワーというものにつきましては、これは特別名勝に指定してありまする松島の区域内にあそこにずっと前にその埋め立てをした土地所有者——これは会社でありますが——でありまして、それはやはり以前の規定でありますが、現在の文化財保護法の制度せられる前の時代でありますが、やはり成規の手続を経まして県知事の許可を得て埋め立てをした、約六万坪あるということであります。そうして今度はその後に特別名勝として去る二十六年でしたか指定をいたしました。そうして今度はそこに、その自分の所有地にヘルス・センターと申しますか、という建物を作るということで、これは文化財保護委員会の許可を得ましてそうして合法的にできたわけでございます。それまではよろしい。ところが、その所有者は、これは会社でありますが、その所有者は今度は文化財の保護委員会の許可を要するにかかわらず、全く無許可で大きな鉄塔を建てる、松島タワーというものを、九十メートルの高さのものを建てようとして用意をいたしたのであります。そうして用意をしたのみならず、もう断りなしにどしどし建築を進めた、そのことが文化財保護委員会にわかりましたので、それは許可が要るのであり、それはいけないのだという意向を通じました。ところがどういうわけでありまするか、どしどし強行いたしました。その強行するに従いまして、委員会においてはその取り扱いを慎重にいたしますると同時に、強い警告を発しましてそれはいけないということを申したのであります。その理由といたしますところは、今日いろいろな、お話のように観光ブームなり、いろいろのことがありますけれども、そういうものに便乗という言葉は悪いかもしれませんが、そういう勢いに乗じまして、そうして各地の重要な各勝あるいは史跡等が破壊されるおそれがあるのでありますから、委員会としましては……
  159. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 河井先生、簡単でけっこうです。
  160. 河井彌八

    政府委員(河井彌八君) 特にその点につきまして重きを置いて警告をいたしました。ところが、それにかかわりませず、やはり工事を進行しておりました。だから結局、工事の進行を中止しろ、それからさらに原状に戻せというまでの通告をしたわけなんでございます。  それからもう一つは、長瀞のことは、ただいまお話のありましたような状況でありますが、初め委員会に持ってきましたのは、昨年の十一月に初めて委員会承知したのであります。しかし、それは川の用水計画、灌漑計画とそれから発電計画と、後にわかったのでありますが丁初めは発電計画だけわかりまして、用水計画はわかりませんでした。ところが、今度そこに二十メートルのダムを作りますというと、このほんとうに大切な岩石関係の学術上の価値あるあの場所は水没しまするし、さらに景観としましては大きな変化を受けるということでその計画のままではどうしても許可することができない、こういうような態度をとってきめておるわけであります。しかし、このことにつきましてまたさらに、いろいろ計画を変えて何か申し出があるだろうと思いますが、そのときには委員会といたしましては、十分に検討しよう、こういうことを考えている次第であります。
  161. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 いま一つ伺いたいのですが、きわめて簡単にお答え願いたいのですが、今お話の特別名勝並びに史跡ですね、大体約千件というお話であります。先ほど文部大臣の話では、松島それから長瀞の事件に類するようなものが数百件と言っておったのですが、そんなにあるのですか、問題になっているのは。その点を伺います。
  162. 河井彌八

    政府委員(河井彌八君) お答えします。これもちょっとわかりませんが、最もやかましいのは、そうですな、二十何件あるでしょう。しかし、われわれにわからない——どれだけ各地にあるのやらそれはちょっとわかりません。
  163. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 今、河井委員長からるる説明があったのでありますが、まあ文化財といたしましては強い行政力というものを与えられているということが答弁の中にあったのでありますが、一つこの際、観光ブームの波に乗って、そうしてそういった大事な史跡あるいは特定地域を破壊するというこの種の行動に対して文部大臣は今後相当な強腰の態度をもって臨まれるかどうか、この点伺っておきたい。
  164. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 文化財の保護に当たりましては、これはその重要性にかんがみてあくまでも強い覚悟をもってその保護に当たるべきものと考んでいる次第であります。特に長瀞のごときは、まことにその珍石奇岩特にある種のものはほとんど世界においても珍しい、ニュージーランド、カナダ以外にはないというようなものもありまして、これはただに埼玉県の名勝であるばかりでなく、ほんとうに日本としては非常に重要なものでありまするから、県民の方でもむしろその保護に当たってもらいたいと思っているわけであります。何分にも文化財保護についての建前としては、これが保護の一部は県にも委任しているというような、県費においても一部負担しているということもありますので、でき得る限り、その天然記念物が損傷を受けないように調整をはかって参りたい、かように考えておるわけであります。
  165. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 次に、外務大臣にお尋ねをいたしたいのでありますが、これは去る五日の本委員会において私の総括質問の中にも触れましたし、それからその後、同僚各位からも相次いで問題になった日韓問題でございます。これはお聞きの通り各党各会派を超越いたしまして一致した意見であることはもうすでに、御承知通りであります。衆議院におきましても、また本院におきましても、まだ議運の理事会の段階ではございますけれども、社会党からもこの韓国の問題に関しましては決議案を上程しょうといたしております。それから多少文章と考え方は違いますけれども、民社党からも出ているような状況でございます。そういうわけで、まさに日韓の問題というものが一つの統一せられた国論になりつつあるということは、すでに藤山外相も十二分にお考えのことと思うのであります。そういうその論議のたけなわなときに、たまたま柳韓国大使が東京に帰られた、そうして帰ると同時に伊関外務省アジア局長との会談が行なわれたということを、私は新聞を通して知ったのでありますが、むろん私は外交の機密をあなたにこの席において話をしてもらいたいとは申しませんけれども、少なくとも柳大使が東京を立つときと帰られた直後のこの日本の国論の状況というものは、相当大きな相違があることなんでございまするので、その点に対して、私どもは、韓国政府としても相当態度をやわらげて、そうして私は、この交渉に臨んだものとは思いますけれども、この際、差しつかえない限りは、国民の前に、この会談の内容、それからその見通し等について承りたいと思うのであります。
  166. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 柳大使は、一昨晩東京に帰ってこられまして、昨日の十一時から伊関アジア局長と会談をいたしたわけであります。その会談の要旨は、柳大使から、三月中に相互送還を取り行ないたい、それから米の問題については、そうした問題の後に貿易問題としてこれを考えたいという二つのことを言われたわけであります。同時に、その話の結果といたしまして、明後月曜日の午後三時から、相互送還に対します事務的な連絡の会議を、柳大使と伊関局長との問ですることになります。一、二回の事務打ち合わせの上最終的の日がさめられるだろうという予測を、今申しましたような柳大使の話でございますから、考えております。しかし、いろいろ今日までの経過から見まして、月曜日、うまく話が進んでいくことをわれわれとしては期待をいたしておるわけであります。
  167. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 これもお話をすることができなければやむを得ませんが、こういうような日本の国内の情勢にあるときに、私は、従来のようなおそらく交渉はアジア局長もしておらぬと思うのでありますが、相当いわゆる国論の反映をせしむる、そういう態度をもって強硬に今度の会見に際しましては柳大使に対して臨んだのか、その点を一つ差しつかえない限りお答え願いたい。
  168. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) もちろん、この相互送還の問題は、御承知のように、昨年の十二月二十四日に相互送還をするというような話し合いが、日取りまで決定したわけであります。ところがたまたま韓国の外務長官が日本に立ち寄りまして、そうして国際司法裁判所に北鮮帰還の問題を提訴するということを申して、そうして第一船が十二月二十四日に出ます前後から、非常に、従来の弁明を翻してきたわけであります。そういう事情もございますので、われわれとしては、日韓会談を進める上からいいましても、もちろんこの問題が片づかなければ会談を続行するわけにいかぬし、日本の国民の各界、各層の方も、韓国が決して正当なものを行使しているのではないという強い日本の国民的な信念も、また感情も持っております。そういう意味や、便々としていたずらにこういう問題を引き延ばすということになっては困る、ということを申し入れておるわけであります。その結果と申しますか、二月の初めから、将来貿易も再開したいし、韓国米も買ってもらいたいし、なるべく韓国側においても早くこの問題を解決するようにしようということで、相互送還の話が再びまあ軌道に乗ってきたと申しますか、取り上げられてきたわけでございまして、そういうことでありますから、今回柳大使が帰られましたのも、おそらく日本の諸般の事情を伝えるため打ち合わせに帰られたことと思うのでありますけれども、私といたしましては、実は昨日の十一時の会談で、少なくも向こうから特定の送還日の指示があることを実は期待しておったのでありますが、その日の指示はございませんでした。しかし、三月中には話をしその事務的会談を開く、そうして十四日午後三時ときめましたのでありますから、この話が全然進まないということはないのではないかということを今考えております。  われわれとして、むろん抑留漁船員の留守家族の方ばかりでなく、国民感情として、今日の日韓会談に対しては、重大な関心を各方面でお持ちになってきておることは十分承知いたしております。また国会等におきましても、超党派的に、いろいろな決議をしようかという御意向も承っております。従ってそういう点については、強い態度を持っていくことに終始して参りたい。こう考えております。
  169. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 私は、重大な外交の問題を、仮定的な問題にからまして質問をいたしたくはないのでありますが、しかし、事、日韓問題に関しましては、もう何回か日本側としてだまされてきている、言葉は悪いのでありますが、ことに今お話の、昨年の十二月に、この相互送還というものは全く決定をいたしたわけなんです。しかし、向こうの反対、あるいは放棄の理由というものが、北鮮への帰還という問題を唱えておるわけでありますが、これはもう全く世界的な人道の問題であって、そうして国連が介在をしてきまったことだ、こういうようなのっぴきならない事実までも、これを理由にして、せっかく取りきめたものを破棄しておるという点におきまして、私どもは、その会談に、事実をもって事を示してもらわなければ、その会談自身というものについて実際大きな信用を持てない。  そこで私は、外務大臣に重ねてお尋ねいたしたいことは、三月中に相互送還をするというお話し合いをされたということなんでありますが、もし、この三月中にそれを実行せないという場合に対しましては、外務大臣はどういう御態度をおとりになりますか。これもむずかしいことでありますが、一つ国民が燃え上がっておるときでありますから、差しつかえない範囲におきまして一つお答えを願いたいと思います。
  170. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のように、日韓交渉というものは八年の歳月をかけております。私がこれを取り扱いましてからも、すでに二年半かかっております。相当長期にわたって隠忍して、日本としては、ある場合には大人の気持でというような心がまえでやってきておるわけで、要は、問題は、われわれができるだけ忍もして、そうして一日も早く何らかのめどをつけていきたいというのは、私など、就任早々抑留漁船員の家族の方に伺いましても、自分たちは犠牲になっても、日韓間を強い態度でもって——若干延びても問題が解決してくれるならば、これは国民のために幸福なことだ、われわれはできるだけ、忍べるだけ忍んで待つという悲壮な気持を持っておられたわけであります。そういうことを伺いますと、われわれとしては、なおさら早く帰れるように、そして問題を今後韓国に考え直してもらわなければならぬ。それには李ラインの問題を解決せざるを得ないのでありまして、そういう意味からいいましても、日韓会談というものを早期に開いて、そうして何らかの対案をもって、たとえば魚族保存のための地域設定等のことによりまして、李ライン問題を解決していくということも考えられるわけであります。その努力をいたしてきたわけでございます。またしかしそういう努力をする前提としては、やはり抑留漁夫の方々を帰してもらわなければならぬというのが前提であったこと申すまでもございません。で、今日まででもその努力をそういう意味で続けて参ったのでありまして、われわれもできるだけ努力をして、そういう意味で円満にやって参りたいと思いますのは、もしこれが決裂いたしますれば、あるいはある相当長期にわたって釜山の抑留されておる方々が帰れないのじゃないか、そういうことがあるとまことに困った事態になりはしないかということをしえるのでありますから、できるだけまあ何やかや申しながら、帰ってくるような方法をとってきたわけであります。しかしそれにも限度がございますし、われわれといたしましては、かえって、あらためて軌道に乗せて参りますためには、日本は日本のやはり立場を守って、そうして若干抑留漁船員の方に御迷惑をかけましても、問題の解決が根本的に進む方法考えるべきじゃないかとこう思うのであります。北鮮送還の問題にとりました日本の強い態度というものは、ある意味からいえば、昨年の二月以来途絶しておりました会談を、八月に無条件再開というところまで持っていった経緯もございます。従って、そういうような日本の確固たる態度というものが、あるいは根本的な問題の解決を若干時間がかかってもかえって促進することにもなり得る場合もあるわけでありまして、そういう点を私どもといたしましても十分考慮の上でこれに対処して参りたい、こういうふうに今考えておるわけであります。
  171. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 珍しい藤山さんの強い態度を示されまして、私ども藤山さんのその態度を大いに一つ期待いたしまして、この問題の打開を今月中にぜひ一つやっていただきたいということを要望いたしまして、次の質問に移りたいと思うのであります。  やはりこれは外務大臣でありますが、私今度の新安保条約の中におきまして、先般も総括質問の中にちょっと触れたのでありますが、日米間のこの経済協力という条項が、ある意味におきまして、日本とアメリカとの経済の新体制を作るというようなまあ状況になると思うのであります。従来、戦後の日本とアメリカとの関係を簡単に見ましても、終戦後から日本の経済破局に対するマッカーサーの吉田書簡への警告、これをまあ第一期と見ていいのでありましょうが、続いては、日本の経済の緊急対策が具体化されまして、同時に国際情勢が変化をいたしまして米ソが対立の段階に進んでいった、そうして、従って、従来の強硬な対日管理政策というものが漸次転換が行なわれまして、いわゆる米国の対日援助というものが非常にふえて参った。そこへ持って参りまして、昭和二十五年の六月の朝鮮動乱というものが勃発をいたした。それからさらにこの動乱に続きまして、二十七年の講和条約と、そうして日本が独立をいたしまして、しかも朝鮮ブームの波に乗って、そうして一応の経済自立体制にまあ踏み切ることができた。あとは今日に至りますることは御承知通りであります。こういうような工合で、従来日米経済関係の紐帯というものが、貿易の面におきまして、それから防衛生産の面において、特需において、それから東南アジアの開発の問題におきまして、米資本との提携あるいは技術の導入などによってそうしてきたわけなのでございますが、今後これらの問題が一そう強化をされていかなければならない状況になるのでございまするが、この問題につきまして、あなたがアメリカに行かれてこの本案の問題を協議するときにあたりまして、いかなる先方から話があり、この問題について具体的に交渉がかわされたのか、この点についてまず伺いたいのであります。
  172. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今日までの日本の復興というものは、むろん日本国民努力によることが第一であることを申すまでもございませんけれども、アメリカがそれを理解して援助をし、あるいは国際社会に、国際経済に日本を復帰させるという努力の手を差し伸べてくれたことも事実でございまして、たとえば最恵国約款の締結を第一にした、通商航海条約も締結した、ガットの加盟なりIMFの加盟なり、こうした経済関係の国際機関に加盟する第一の音頭をとってくれたということでありまして、その意味におきましていろいろな援助を与えてくれたことが、日本復興の一つ経済的な意味における大へん大きな力だと思います。むろんその間に、貿易等の拡大に伴いまして、アメリカ国内における業者のいろいろな意見等もございまして、ある場合には、輸入制限なり、あるいは関税率引き上げなりの問題によって、両国の経済関係に若干の陰影を投げたこともございますけれども、アメリカ政府としてはそれらに対して相当日本の立場を理解して善処してくれていると思います。今回日米安保条約を締結するにあたりまして、第二条に、経済的なまた社会的な緊密関係を樹立する条項を入れたわけであります。また今後できるだけそういう経済政策においても食い違いのないようにしていこう、ということを入れましたことは、今までの両国の経済的な緊密な関係を確認するとともに、さらに一そうその努力をお互いに続けて参りまして、そうして今後自由社会におきます経済の発展というものに協力していく。で、一面においては日米間の両国の経済関係をさらに一そう緊密ならしめていくということを主題とし、他面においては、国際社会におきます諸般の経済問題につきまして、お互いに協力していくということを話し合ったわけでありまして、そういう面をこれに書き表わしたのでございます。
  173. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 本年の一月の二十六日に大蔵省並びに日銀当局で発表されたのでありますが、昭和三十四年のわが国の輸出額が三十一億四千六百万ドル、これは従来の最高記録を示したわけでございます。特にその中で特徴を持っておりますのは、従来入超の連続でございました米国に対しまして、戦後初めてまあ一億二千万ドルの出超と相なったわけであります。日本の輸出の重点というものがいかに対米中心にあるかということは、これはもう言うまでもないのであります。ただここで問題になりますことは、その対米関係の輸出品というものが、多く日本の中小企業の手によって行なわれておる製品というものが多いわけであります。たとえてみまするならば、主要輸出品のトランジスタ・ラジオのごときは、前年同期の四倍にも達しておるのであります。そのほかミシンにいたしましても、カメラ、玩具、雑貨等が、これがほとんどその中軸をなしておるわけなんです。ところが、いずれも今申し上げました通り、この中小企業の手になっておるものが多いのであります。ことにミシン工業のごときは、ミシン自体が中小企業なのでありますが、その下に零細企業者二百六十種くらいの部分品の段階を経まして、初めて輸出の対象品としてのこのミシンというものが作られておるというようなことでございまして、これは米国の態度が、輸入制限とかあるいは今とっておりま態度というものが、向こうの勝手な単独の理由によってこれが変更されるということになるというと、これは大へんなことになるわけです。生糸であるとか、ある数種の品物は別といたしまして、対米輸出のおそらく二〇%——総生産の二〇%というものが、この対米輸出に振り向けられておる現状なのです。そういうところにもってきまして、この中小企業の手によるこれらの物というのが、もしそういうアメリカの方針が変わって参りますということになると、たちまちこれは大きな問題になる。これは一社会問題でなくして、日本の国内としても大きな政治問題になるわけです。本日もこれはロイター電で新聞に報ぜられておりますが、駐米大使の朝海大使がメキシコに行って演説をいたしておる中に、米国のこの輸入制限の問題を非常に非難しておる記事がロイター電に載っておるわけです。もうすでにこういうような状態があり、また過去におきましても、むろんこれはアメリカのいわゆる日の当たらないところの軽工業産業が反対するがゆえに、大統領としてもやむを得ず輸入制限という問題をやらざるを得なかったのだとは思いますけれども、こういうような問題が降りかかって参りますというと、日本の総生産というものが根本的に変更を見なければならぬ、そうして申し上げたような大きな政治問題にもなるわけでありますが、この点につきましては、あなたは特に向こうと交渉せられたことがあるか、あるいは今後この問題についてどういう方針をもっておやりになっていくか、この点を伺いたい。
  174. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本の対米輸出の大宗というものが、御指摘のありましたように主として中小業者の生産品であるカメラでありますとか、あるいはレンズでありますとか、あるいはミシンでありますとか、陶磁器でありますとか、あるいは代表的な例の燕市の洋食器でありますとか、そういう種類の中小企業者のものが多いわけでありまして、従いまして、これが輸入制限なり、あるいは関税が増徴されますということは、日本にとりましては非常に大きな打撃であることむろんでありまして、これは何としても日本の実情を申して、そうしてアメリカの理解を求めて参らなければならぬことなのでございます。従いまして、私が参ります機会には必ずこうした問題を取り上げて話をいたしておるのであります。特に日本の輸出にあたりまして急激に伸びて参りますということ、あるいは日本品がどうもデザイン等において模倣的であるというようなことについては、われわれ日本としても自粛自戒をして参らなければなりませんし、あるいは現に通産省がやられておりますように、指導方法をもちましてやって参りますが、しかし、そうした問題は必ずしも日本側ばかりが悪いのではないのでございまして、向こうの輸入業者あるいは商業者等につきましても、日本の中小企業の弱点を利用しまして、そうして注文等の場合にあたりまして競争をさせるというようなことによって値段をたたいていく、あるいは向こうから注文をして、そうしてデザイン等もこうしろと、ところが日本の中小企業者としては、そうしたデザインがアメリカの有名なデザインであるかどうかわからない事情のもとにありますので、そうした注文を正当に受けたつもりでやりました場合、それがひつかかるというような問題が多々ございます。従いまして、アメリカ側に対して、日本は、日本としてもこうした点は十分注意をして、日本の過当競争によります弊害というものを、日本側自身においても是正して参らなければなりませんけれども、それを利用するアメリカ側においても反省をしてもらわなければならない点があると思います。  で、そういうような点は緊密な双方の話し合いによって理解をして参らなければならぬのでありまして、たとえば昨年私が九月にワシントンに参りましたときに、いきなり問題に出ましたことは、いわゆる既製服の輸入でございます。非常なかなりの問題になって、国務省等も私に対してそれの説明を求めたわけであります。当時調査をいたしてみますると、わずかにアメリカの既製服の一〇%どころじゃございません、一%、一万何千着しか出なかった問題を非常に大きく取り上げられたわけであります。しかし、これがなぜ取り上げられたかと申しますと、初めて既製服のいわゆる裁縫人組合労働組合から出た問題であったのであります。そういう点はやや誇大に取り上げられ過ぎるきらいもございますが、しかしながら、やはりわれわれとしてもそういう点についてはむろん注意をして参らなければならぬ。十分説明をいたしまして、その事情も了解されたと思っておりますので、その後この問題が特に取り上げられているようなことはないと存じておりますが、われわれとしてもできるだけ気をつけて、常時そういう問題について日本側でも検討し、また、アメリカ側でそういう点について、特殊な日本の事情等も理解を得なければならぬのではないか、こう思っております。
  175. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 次に、東南アジアの開発と日米の協力の問題につきまして伺いたいのでありますが、東南アジア地域の開発と、そしてこの経済水準を引き上げるということは、ある意味におきまして日本の経済の宿命的な私は問題であろうと思うのであります。ところが、この地域一帯には、御承知通り歴史的に強力な地盤を持っておりまして、また同時に非常なその国の影響をたぶんに受けておるわけです。すなわちイギリスであるとか、あるいはフランスにしてもそうであります。さらに最近進出をしてきておりますところの西独、こういうような状況を見まするというと、日本の今の経済力でこれらの諸国と太刀打ちが一体できるかどうかということになりまするというと、当然東南アジア開発の宿命的な立場にあります日本というものは、単独ではこれはとうていいけないことはもうはっきりしているわけであります。そこで米国の資本とそれから日本の技術の合作、こういうことによって私は東南アジアの開発をはかるということが焦眉の急ではないか、またそういうことが当然この日米協力の段階においてもやらなければならぬと、かように考えておるのでありますが、この点はいかがでありますか。
  176. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 大竹委員のお説の通りにわれわれも考えておるのでありまして、東南アジア方面経済的な開発を促進して参りますことは、東南アジアの各国の民生の向上、購買力の増進ということになるわけでありまして、ひいて日本にも利益して参ること当然でございます。でありますから、そういう意味から申しましても、これらのものに積極的に日本としては力を入れて参らなければならぬのでありますが、残念ながらまだ資本的には日本が十分海外投資をいたすほどの余裕を持っておりません。従いまして、日本としては持っております技術、特に東南アジア方面におきます中小企業の今後の発展に対する経験というようなものを日本は持っておりますから、そういうものと日本以外の国の資本とが合わさりまして、共同的な活動をいたしますことは非常に有益なことだと思います。西欧、ヨーロッパ方面の各国は、それぞれ長い間東洋に対する経験をある意味からは持っていると思います。それでありますから、独自の力でもって、持っております財力と技術をあわせて独自の進出をいたしておりますけれども、アメリカはその意味からいいますと、私ども考えて、あまり東南アジアに過去にいろいろな一経験を持っておりません。でありますから、アメリカの資本を日本人が活用していくというようなことができますれば、両国のためにこれは非常に有益なことであろうかと、こう考えております。
  177. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それから、これも日米経済協力の大きなものでございますが、これはあるいは大蔵大臣にお伺いした方がいいのかもしれませんが、藤山さんにあえてお伺いしますが、いわゆる米国の日本に対する融資問題であります。わが国への融資実績を見まするというと、三十三年度には六千五百万ドル、それからその年度には世界銀行の融資がだいぶございました。これが一億六千六百万ドル、合計して一億三千万ドル三十三年度にあったわけであります。これは三十年度から見ますると、その実績の大体五倍なんです。で、まあこれから自由化になりまして、いろいろ日本の産業の構造の上に大きな変化があるのでありまして、従いまして、日本が米国に求める融資というものはいよいよますます大きくなるのでありますが、この日米経済協力という問題に関連をいたしまして、この点についてどういう話し合いがなされたか、また、どういう方針を進めていくおつもりであるか、これをお伺いいたしておきたい。
  178. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 大蔵大臣の御答弁する分野にあまり入らない程度におきまして申し上げたいと思います。  日本とアメリカとの間に資金の交流をいたしますことは、これは私は必要だと思います。資金の交流と申しましても、実はこちらからそう出すわけに参りませんから、向うから入れてくるということに主眼が置かれると思います。それは日本の今後の産業の体質改善等にあたりましても非常に有効に働き得るわけであります。私どもとしては、そういう点が十分に円滑に進行して参ることを望んでおります。アメリカの観点から申しまして、何か日本は東南アジアに対する融資をし得るようなすでに立場にあるのだ、それだからアメリカとして、あるいは輸出銀行その他が日本に融資をしなくても、もうお前の国自身が東南アジアに若干の資金を出せるようになっておるのだから、自分の方から借りなくてもいいのじゃないかというようなことがかりにありますれば、われわれは外交のルートを通じまして、そういう点の門は開いて参りたいと思っております。それ以上のいろいろな問題につきましては、大蔵大臣の分野でありますので差し控えたいと思います。
  179. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 次に、御承知通り、最近ヨーロッパにおきましてはヨーロッパ共同市場ができ、それからまた、イギリスを中心にいたしまして貿易連合ができ、そうしてその地域の共同的な立場というものをはっきりして、これが貿易、経済だけでなく、ややともいたしますならば、将来政治的にまで発展をしなければならぬというような傾向さえ見られるということは、歴史的に宿怨の敵であり、そうして破りつ、あるいは破られつつありましたフランスと西独が、こうした問題に手を固く携えて進むというように、こういうように世界の状況というものが非常にブロック化してきておるわけでありますが、こういうときにあたりまして、この日米経済の協力の新体制の立場からいいまして、アメリカあるいはカナダは、この欧州共同市場なり、それから貿易連合なりの関連というものは、これはきわめてスムーズにやられておるようであります。しかし御承知通り、日本自体はこの問題につきましてはむしろ排斥をされておるというような、こういう格好になっております。そこで、日本がどうしてもこの東南アジア中心に、それから対米関係を強めていくというような貿易体制を作るということにつきましては、日本とこの東南アジアあるいは太平洋を中心にして一つのブロックというものを作らなければならぬ。まあ、たとえてみまするならば太平洋共同市場であるとか、あるいは日米共同市場であるとかというようなものを作らなければならぬのじゃないかというような段階にだんだん追い詰められておるのではないかと、私はかように考えておるのでありますが、この点に対する御意見を伺いたい。
  180. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 大竹委員もすでに御承知のように、ヨーロッパ共同市場の背景にはヨーロッパ連合というような思想が含まれておりますこともむろんでございまして、シューマン・プラン以来の計画がありまして、ますますヨーロッパのいわゆる共同市場体が固まりつつある。しかも、これは政府間の関係において固まっておるばかりではなくて、民間、たとえば航空会社等が連携を保ちながらいく。あるいはヨーロッパの中におきます各国が、工場立地等につきましておのおの最適地にそれぞれ工場を移しつつあるというような民間の実績等から見ましても、単に貿易・為替の面の上からするというだけのまとまりだけでなくて、相当強いものになるのではないかという見方は、これは当然していかなければならぬと思います。従いまして、これに対しまして域外の諸国として相当考えて参らなければならぬ。この共同市場以外のアウター・セブンの動向もその一つの原因だろうと思います。しかし、そうしたものができて参りまして、二つの何と申しますか、経済共同体みたいなものがヨーロッパにできますと、それに対する域外の国としてのアメリカなりカナダなりそういう国が、どうそれに対応するかということを考えて参るのは当然だと思います。またその立場は、ある面におきましては日本の立場と全く同じ立場なのでございます。従いまして今回の場合におきましても、デュロンが一月に参りまして、急速にこの二つの問題——この問題と、それから低開発国の問題を取り上げて、そうして将来の推進の形を取り上げたわけでありますが、この低開発国の問題は、御承知通りこの九日からワシントンで開催することになりまして、そうして日本もそれに参加することになりましたけれども、しかしヨーロッパ共同体、アウター・セブン及びアメリカ、カナダのいわゆる太平洋の経済問題というものに関しましては、イギリス等の主たる考え方からして、日本が必ずしも急速に参加はできないような情勢にありはしないかと、こう思っております。これらの問題がすでにいろいろな面で動いておりますし、また働きかけております。そういうことを考えてみますると、今お話しのようなヨーロッパ共同体以外の国として、工業国であります国が何らかの連携を保とうという考え方一つ起こつてくることは当然起こるのであります。ただ、いわゆるヨーロッパ共同体のような歴史的な、あるいは政治的背景を持った固まりの動き方と、カナダ、アメリカあるいは日本、ニュージーランド、濠州というようなものの性格が若干違っておりますから、いきなりそうしたものがすぐに一つの共同体的なものが作り得るか得ないかということには、相当まだ研究の余地があるのでありますが、今にわかに何とも申し上げかねるわけであります。そうした問題については、日本の経済・外交の面においても十分注目しつつ、また絶えずその動きというものに関心を払って、それが日本の経済立場を害さないように進めることを考えて対処して参らなければならぬと、こう考えております。
  181. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 大蔵大臣に簡単にお伺いいたします。たびたび御答弁の中にも触れておられたのでありますが、明年度、なぜ一体減税をしなかったかという、こういう問題なんでありますが、むろん伊勢湾台風のような不測の大事件もあったからでもありましょうが、一説によりますというと、明年度は、非常に好況の連続で、二千億円も剰余金が出るというようにもいわれておるのでありますが、もし、これはもうすでに、はっきりいたしたことでありますが、これをやり得なかった事情というものを、いま一応、一つ御説明願い、それからあわせて、むろん減税の問題につきましては、将来はおやりになることを、しばしば言明せられたのでありますが、その計画等につきましても、あるいは御答弁になったと思いますけれども一つ簡明でけっこうでありますから、承りたい。
  182. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤栄作君) わが国の国民負担から見まして、まだ相当高いのでございますし、まあできるだけ、これを積極的に減税をする。直接国民への還元、こういう方法が望ましい、これはもう御指摘通りであります。  三十五年度におきましても、そういうような考え方を、当初は一部持っていたわけでありますが、しかしながら、御承知のように伊勢湾等の大災害が起きたこと、さらにまた社会保障なども相当前進さす、こういうような歳出の面を考えて参りますと、減税は、なかなか困難な状況じゃないか、実はかように考えたわけであります。国民への還元は、直接減税の方法もありますし、また社会施設その他等、国民の福祉増進に歳出が行なわれますならば、これまた負担軽減の方法だということもいえると思います。一応、そういう点も勘案いたしまして、三十五年度は減税を実施することができなかったのであります。  しかし、ただいま開いております税制調査会等におきましても、税制そのもののあり方についての基本的な考え方を立てる時期に来ております。そういう意味もございますので、税制調査会も、各般にわたって審議を進めております。この審議の経過と相待って、順次減税を遂行していきたい。ところで、三十六年度は、しからば減税ができるかということでございますが、私は今日の経済状況が続いて参りまするならば、税の自然増収それは相当多額のものを期待し得ると思います。また税外収入等の面も、もちろん考えて参りたい。一面支出の面においても、経費の節約も協力を得、また当然増等もございますが、それらを十分勘案いたしまして、国民待望の——待望と申しますか、全体が心から願っておりますこの減税を実施して参りたい、かように思っております。  ただ、申すまでもないことですが、ただいま三十六年度の歳入歳出をいろいろ、どういう数字になるかを想定いたしますことは、まことに困難な状況でございます。ただ、政府としての考え方だけ御披露いたしまして、抽象的でございますが、御了承いただきたいと思います。
  183. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 税関係で、自治庁に質問がありますが、先に端折って、大蔵大臣にいま一点、これは税関係じゃないのですが、お尋ねしたいのです。  今度の自由化の問題につきまして、一番何といいますか、けじめになりますのは、これは関税の問題なんでありまして、この関税の使い方いかんによって与える影響というものが非常に多くなる。いわばその関税自体というものが、トラの子のようなものなんであります。そういうわけで、関税は非常に幅が広いわけでありまして、高いものでございますと一三〇%も一四〇%もかけておるというようなものまでもあるし、そうしてまたこれが、一一国会の承認を得るとか何とかいうような問題にもなることが多いのでありますが、私は、何かこうこの関税に対しまして、一つの機動性を持たすようなことをお考えになる意思があるかないか。たとえばある物が入ってくると、これにたくさん入ってこられちゃ日本の産業に非常に影響がある。そこで相手国との交渉によって、ある高い税金をかける。そのかわり、また相手国に対して、それに見合うような方策を立ててやるというような意味で、何か一つの関税の中に機動性を持たせるというような、これは私のほんとうのしろうと的な言い方であり、また考え方であるかもしれませんが、これは自由化のいわゆる貿易としては、一番大きなものだけに、何かそういう点でお考えになっていることがあるか、あるいはまた私の考えとは違った別な意味においての一つ新しいお考えを持っておられるのかどうか、この点を一つお聞きいたしまして、それで、あとはまたございますけれども、これは政府委員からお答え願います。
  184. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤栄作君) 御指摘のように、自由化に備えまして、関税の適正化をはかる、これはもう当然しなければなりません。従いまして関税率審議会で具体的な審査を、もうすでに始めております。ところで、ただいま御指摘になりますように非常な一国がダンピングをする、そういう場合に、何らか機動的な措置はとれないか、こういうことでございますが、現行の関税法も、そういう点を一応予定してできております。しかし、今までは、特にそれを発動するというような事態は起きておりません。しかし、将来の問題もございますし、十分御指摘の点について、私どもも工夫のできるものならば工夫して参る、かようにいたしたいものと思っております。
  185. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 自治庁長官は了解済みで、きょうはやむを得ない用事で御旅行されたのですが、だれか政府委員から、御答弁を願いたい。自治庁です。さっき税の問題に触れたのでありますが、私は、この大衆税でございます電気あるいはガス税のごとき悪税をなぜ撤廃をしないかという、こういう点でございます。  電気あるいはガスが、国民の必要品であることは、これは言うまでもないのでありまして、全くこれくらい取りやすい税金というものはないわけなんであります。そうして、また、景気に左右されるという心配もないわけなんであります。そういう意味におきましては、ある意味においては、これは人頭税だと思うのでありますが、そういうような悪税を何がゆえに温存しているかどうか、この点について一つ、自治庁の長官おられぬから……。
  186. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) お答えを申し上げます。  電気、ガス税は、御承知通り、電気あるいはガスの消費を通じて担税力を見出しして課税をいたしているわけでございます。そういたしまして、現在市町村民税の中で、住民税なりあるいは固定資産税と並びまして、非常に重要な市町村財源の一つになっているわけでございます。また、同時に、地方財政の現状は御承知通りであります。  そういうふうな意味合いから、私どもといたしましては、現在の段階で、この税を廃止をするということは不可能であるというように考えているのでございます。ただ、御指摘通りに、税負担の均衡あるいは税負担の軽減というような点につきましては、財政の許す限り、これはわれわれとして、当然考えねばならぬことでありますので、将来とも、そういう点につきましては、十分検討をいたしたい、かように考えております。
  187. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 時間がありませんので、端折って、あと一、二申し上げたいと思います。  これは労働省関係の方にお尋ねしたいのでありますが、今度の自由化によって、わが国の産業構造というものが相当大きな変化をすることは、御承知通りでありますが、自由化のねらいというものは、資本と資源とそれから労働力を適切に使うという、こういうことにあることは、言うまでもないのであります。そうして、生産性の低い日本において、将来とも伸びそうもない産業は、これはいやでもおうでも整理をされていくわけなんであります。  そこで問題になりまするのは、この労働力の配置転換という、こういう問題が浮かび上がって参るわけなんであります、今まで身についておりまして、そうして非常に熟練をしていた人が、それをみすみす捨てて、他に転換をしなければならぬというような余儀ない事情というものが、相当出てくることを想像せなければならぬと思うのであります。従って、これに対して職業訓練とか、あるいは職業紹介について、特に今後配慮をせられなければならぬと思うのでありまするが、先般通過をいたしました炭鉱離職者法のような小型のものを作っていく必要があるのか、あるいはただいたずらに産業界で向きもしないような職業訓練をしても、これは何にもならないのでありますが、今度は、よほど腰を入れてやりませんと、この問題が、相当政治的に大きくなってくるということは、大体これは想像できるのでありますが、労働省は、どういうような構想を持っておられるのか、政府委員でよろしいから、一つお答え願いたい。
  188. 堀秀夫

    政府委員(堀秀夫君) 自由化に伴いまして、雇用に及ぼす影響は、これは長期的に見ますると、ただいまお話のように、経済の成長を通じまして、雇用には好影響を与えるものであろうと考えます。しかしその自由化の進み方によりまして、一部の産業におきましては、いろいろな摩擦を生ずることも考えられるわけでございます。  最近までの状況を見ますると、自由化が比較的一部に限られておりまして、原材料その他一部製品に限られておりましたために、雇用には好影響をむしろ与えておると、たとえば化学薬品関係につきましては、化学工業の雇用は、三十年に比べて、大体三十四年は一二%程度の雇用増、それから鉄鉱関係では、三十年に比べて二三・四%の雇用増、それからゴム製品関係にお叩きましては、三四%程度の雇用増になっております。しかしものによりましては、いろいろな影響が起きてくる。  そこで先般の炭鉱離職者につきましては、ただいま御指摘のように、職業紹介を広い範囲にわたって行なう公益職業紹介の制度を考えました。それと並びまして、職業訓練制度の拡充を考えたわけでございまするが、今後におきまして、労働省といたしましては、経済各省と密接な連絡をとりまして、第一に職業訓練の飛躍的拡充を行なうと同時に、公益職業紹介の強化をはかりまして、貿易自由化に伴って生ずるところの摩擦を最小限にとどめると同時に、労働力を発展的な産業に吸収していくということを考えたいと思っております。
  189. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 次に、中小企業の金融の問題につきまして、池田通産大臣に少しくお尋ねいたしたいのであります。  昭和三十五年度の予算におきまして、中小企業関係予算のうち、特に注目すべきものが二つあるわけであります。その一つは、商工会を法制化して、これに対し小規模事業指導費補助金として、三億九千二百万円を計上しておることであります。いま一つは、中小企業信用保険公庫に対しまして、その基金を十八億円増額をいたして、信用保証協会へ貸しつけさせる。これによりまして、大幅に信用保証事業を拡充しようと、こういうことでございますが、ここでは、この信用保証の問題についてお伺いしたいのでありますが、信用保証事業を活発化させようという意向につきましては、むろん私どもは大賛成なんであります。その意図が、全く親心から出ていることは、これは言うまでもないのでありますが、しかし、はたしてその親心が、末端まで浸透するかどうかというところに、大きな問題があるのでありまして、この点につきまして、通産大臣の御所見をまず一つ伺いたいのであります。
  190. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。  商工会法につきましては、これは従来町村を主体として、自然発生的にできているところが相当あるのであります。これを組織化を、もっと強くいたしまして、活動を、もっと広範囲に、質的にも量的にもやっていって、中小企業の指導育成に当たりたいという考え方でございます。  それから中小企業信用保険公庫に対します出資、これは従来、大体四十億円ございました。昨年の補正予算で十億円ふやしまして五十億、今度十八億、相当資金量ができましたために、保証協会に対しての原資の増額ということがはかり得られると思うのであります。これは、法制化しまして四、五年になるのでございますが、だんだん成績を上げつつありますので、これを通じまして、主として零細企業に相当な力を入れてやっていきたいという考えでございます。
  191. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 私どもの理解いたしておりますところでは、信用保証とか、あるいは信用保険とかは、むろんこれは中小企業が信用力が足りなくて、そうして金融の道をふさがれている、この状況を打開するために、こういう制度が、いわゆる補完事業としてできたことは、これは、もう言うまでもないのでありますが、しかしこれは中小企業の中におきましても、非常に信用のあるものは、これは、もうあるいは銀行からでも借りられるわけなんでありますが、そういうようなときに、ややともいたしますというと、こういう中小企業関係金融機関というものが、大企業に非常に、これは信用という大きな問題があるのでありましょうが、非常に利用せられて、そうして中小企業自体が、これを活用する面というものが非常に狭められてくるというようなことが、ままあるのでございますが、これは、いろいろ通産省の統計なんかにも出ているのでありますが、これに対しまして、今後一つ、通産大臣とせられましては、中小企業の金融という大きな政治的立場から、どういう一つ御方針をおとりになりますか、その点を、あわせてお聞きしたいと思うのであります。
  192. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 問題は、保証協会が相当担保を要求するというふうな点があると思うのであります。それからまた、その手数量が相当高い、こういう問題だと思うのでありますが、担保につきましては、やはり人的保証ということを主としていくべきであって、なるべくこういう零細の人に担保を要求するということは避けていきたい、少なくしていきたいと思っております。また信用保証料につきましても、原資をふやすことが、保証量の軽減の道でございますので、先ほど申しましたように、保証料の引き下げのためにも、出資をこれからもふやしていきたいと、こう考えております。
  193. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 経済企画庁長官にお尋ねをいたしたいのであります。  今日の世界は、いずれの国といえども、貿易というものを中心にし、そうして貿易に極度の依存をいたしまして、そうして国民経済の発展というものをなしているわけであります。ことに日本のような資源の乏しい国では、その産業や国民生活向上のために、外国から物資を輸入し、さらにこれに対して、また必要な生産をして、そうして輸出資金というものをとらなければならぬ。それでこれは、景気不景気によって、いろいろ変わるのでありますが、昭和三十七年を終期とする長期経済計画というものができたわけでありますが、その目的達成のために輸出目標を、その為替ベースにおきまして四十四億二千二百万ドルにした、それから通関ベースでは四十七億三千万ドル、こう想定しているわけでありますが、また一面におきまして、所得倍増計画というようなことにも、大きな関連を持つのでありますが、自由化の問題を中心として、非常なる経済界の混乱というものが、私どもには多少予想されるのでありますが、一体、こういうような輸出目標額を、これは完遂できると政府はお考えになっておられるのか、その後いろいろの計画の中に、五年目標のある計画が二年で目的に達したので終わった、自然消滅をしたというような問題もございますけれども、この際におきまして、長期経済計画の根本方針、それから見通しを簡明でけっこうでありますが伺いたいのであります。
  194. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) お答えいたします。ただいまお述べになりました新長期経済計画におきまして、貿易の実績は見通しよりもふえておるのであります。それは御存じの通り、海外の経済事情の好転と日本の国内の経済の好転ということからして、貿易額が長期経済計画よりも好転いたしております。そこで、今度の国民所得倍増の長期経済計画におきまして、貿易はどういうように見通しておるかと申しますと、まだ具体的には出ておりませんが、かりに国民総生産を倍にいたしまして、昭和四十四年に二十二兆四千億円ということにいたしますと、輸出額は大体七十億ないし七十五億ドルの輸出額を上げなければならない、こういう計数にしております。そこで貿易自由化になりますると、もちろんこの七十億には貿易自由化ということも見込んでおるのでありますが、この十年後に七十億ドルの輸出を上げるということは、よほどこれは努力しなければ実現ができないと思っておるのでありますが、幸い貿易自由化がもっと完全に行なわれるようになりますると、私はこの七十億ドルの輸出額が大体実現できるじゃないか、こう考えておるのでありまして、御承知通り、貿易自由化は、貿易、国際交流を盛んにするという目的のために自由化をいたすのでありますからして、従って世界各国ともに自由化が盛んになれば、それだけ世界の経済交流が盛んになるということでありますからして、従って日本の貿易も盛んになる、輸出も盛んになるということで、大体七十億ないし七十五億ドルの輸出は、可能であるというような見通しをいたしております。
  195. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 最後に科学技術庁にお尋ねしたいのでありますが、長官が、これも了解済みでありますから、だれか政府委員から一つ御答弁願いたい。  科学技術振興財団というものが最近できたのでありますが、その事業計画を見まするというと、科学技術振興方策に関する調査と献策あるいは科学技術諸団体活動の総合調整と援助、それから大学及び官公立試験研究諸機関と産業界との連携など、こういうことをうたっておるわけでありますが、私どもは、文部省なりあるいは科学技術庁なり、いろいろ同じようなことをやっておる機関というものが非常に多いのでありますが、これは行政審議会でもすでに大きな問題になったのでありますが、たとえて申しまするならば、文部省所管の学術会議と、この科学技術会議というものは一体どういうような連関で行なわれていくのか、こういうような問題につきまして一つお尋ねしたいのであります。
  196. 横山フク

    政府委員(横山フク君) お答えいたします。振興財団は、初め財界の人が一、二呼びかけがございましたが、十三団体、民間団体がございまして、それらが連絡なくいたしておりまして、これを総合調整するという民間の自主的な形からこれができたわけでございます。それで科学技術庁といたしまして、それをリーダー・シップをとるという形でなくて、側面的に援助をいたしておるというのが実際でございます。で、大阪の方では早くから産学共同、いわゆる産業界と大学関係とが共同して、そして中小企業にもう少し新技術を取り入れるという形が強くございました。それでたまたま東京の方で、こうした財団を作るなら全国的に統一した形をとりたいというので、この科学技術振興財団の方に大阪も入ったわけでございまして、これは役所関係とは全然別な形で、全く民間の自主的な活動でやっておるわけでございます。  それから学術会議と科学技術会議との問題でございますが、これは科学技術会議ができまして、科学技術会議は行政機関の総合調整ということが主たる問題になっておる。で、学術会議はその前から産業界あるいは学術界等の間の問題を議しておったわけでありまして、これは科学の問題です。で、科学技術会議は科学技術の方——で、そういうところがございますけれども、全然連絡もないものではございません。ある点においてはお互いが総合調整するという必要があるわけでございまして、科学技術会議の下部組織に連絡会議というものがございまして、この連絡会議にお互いが出ておりまして、そこで連絡をし、密接に連携を保っているわけでございますが、また同時に科学技術会議の中にも学術会議の議長が入っておりますとか、あるいは分科会あるいは総合部会に科学技術会議の議員が出ておるわけでございます。しかしこれらは科学技術会議、学術会議の代表者という形ではございませんで、全く個人の形で出ておりますけれども、お互いがやはり同じ人でございますので、相互の連絡を密にする形では十分に運営なされておるように私は存じておるわけでございます。以上です。
  197. 小林英三

    委員長小林英三君) ちょうど時間が終了いたしました。
  198. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 十秒、関連しまして、文部大臣にお尋ねいたします。十秒でよろしいです。
  199. 小林英三

    委員長小林英三君) あと一問……。
  200. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 三十五年度予算で、教官研究費が二〇%増額をされておるのでありますが、これでもやっと戦前の三分の二程度なんであります。で、戦前の水準までにこれは私どもは至急に持っていく必要があるのじゃないかと思うのでありますが、この点について文部大臣のお答えを得て質問を終わります。
  201. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 科学技術の振興をはかるためには、何としても基礎研究に重きを置かなければならぬ。そういう点からいたしまして、大学教官の研究費を少しも早く戦前の水準にまで持って参りたいと考えておる次第でございまして、三十三年には四十億、四年には五十一億、三十五年には六十二億というところまではきておりますが、もっと急ピッチで戦前の水準までどうしても持っていきたいと考えておる次第でありまして、この点につきましては鋭意努力をいたして参りたい、かように考えております。
  202. 小林英三

    委員長小林英三君) 次は岩間正男君。
  203. 岩間正男

    ○岩間正男君 新安保条約の第五条の論議が発展してきましたが、今まで繰り返された政府答弁を総合してみると、その根拠は、帰するところは、国連憲章第五十一条に基く個別的、集団的な自衛権の発動ということになっています。そこで私は五十一条に基づく自衛権、特に集団的自衛権の実態を、歴史的な事実に基づいて明らかにしたいと思います。政府の単なる法理論や解釈によるのでなく、歴史的事実に基づいてはっきり答弁してもらいたい。  そこで、あげたいのは、一昨年起こったレバノン事件のことであります。これは、藤山外相もみずから国連に出席して、直接その処理に参加した事件であるから、まだ記憶に新しいことであります。レバノンに事件が起きて、紛争が大きくなったとき、国連はこれを非常に重要視して、国連監察団を編成して現地調査を行なったわけです。次いで、ハマーショルド事務総長がみずから現地におもむいて実情を視察しました。この二つの調査報告が七月三日、同四日、それぞれ国連になされたはずである。その内容について、その要旨をまず伺いたいと思います。
  204. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知通り、六月、シリアとレバノンとの間に国境に関する紛争が起こりまして、スエーデンがたぶん安保理事会に提訴したと思いますが、その結果として監視団ができたわけであります。その当時の詳細につきましては、国連局長から御説明をいたさせます。
  205. 鶴岡千仭

    政府委員(鶴岡千仭君) お答え申し上げます。  レバノン監察団員三名は、六月十八日、ベイルートに到着いたしまして、翌十九日から公式の活動を開始いたしました。監察団は、七月三日、安保理事会あて報告を出したのでありますが、その報告は、国境線の大部分が反政府軍の占領下にあるため、監察の実施が困難であることを認めました。同時に、外部からの浸透の積極的な証拠は見出せなかったことを述べておるのであります。これに対しまして、七月八日、レバノン代表は、監察団報告は不十分な監察活動に基づくものであって、外部からの浸透の存在しないことを立証するものでないという書簡を提出いたしました。
  206. 岩間正男

    ○岩間正男君 今の説明、不十分です。私は、二つの報告を聞いている。ハマーショルド事務総長、監察団、二つ聞いている。これをはっきり答えなさい。それから、非常に局部的だ、今の答弁は。
  207. 鶴岡千仭

    政府委員(鶴岡千仭君) それから、七月十五日付及び七月十六日付報告というのがございまして、監察団が反政府リーダーとの交渉によって、国境全般にわたる活動に入る態勢となったこと、それから、約百名の軍事オブザーバーの増強、軽飛行機を十八機、またヘリコプターを四機、それぞれ増加する必要があるということを報告いたしました。
  208. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは、やはり政府委員は、私の質問の要旨をよく聞いて、そして答えてもらいたい。事務的でいいです。  私は、この監察団の報告の要旨はどういうのだ、この重要な点を聞いているわけです。それから、二つの報告というのは、監察団とハマーショルド事務総長の報告があるわけです。これをあなたは少しも答えていないのです。ちょっと外相、注意して下さい。そんなことじゃだめだ、あんな答弁では。何か、そらそうとしては、だめですよ。事実を言いなさい。
  209. 鶴岡千仭

    政府委員(鶴岡千仭君) 今の御質問にそのままそれが当たるかどうか、あとでお聞きしたいと思うのですが、私が今存じておりますところは、六月十六日に、事務総長は、カーロ・ブラサ・エクアドル元首相を長といたしまして、インドの元国連常駐代表、それからノルウエー代表からなる三名の監察団員を任命した旨報告いたしましたのでございます。それから、監察団の下に各国の陸軍士官からなりますところの非武装の軍事オブザーバーを配属いたしました。最初のオブザーバー若干名は、国連の。パレスチナ休戦監視機関というのがありまして、そのうちの要員中から暫定的に派遣されたのでございます。  それから、ハマーショルドの報告というのは、私は今承知しておりませんので、詳細取り調べた上で申し上げたいと思います。
  210. 岩間正男

    ○岩間正男君 当時、外相は国連においでになっておるから、御存じないですか。最も要点を、これはおわかりだと思うがどうですか。
  211. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私も当時、八月、緊急総会に行っておりますので、若干の経緯はむろん十分記憶しておるつもりでございますが、詳細にわたりましては、はなはだ十分な記憶がございませんから、こまかい点は、事務当局から御説明させることにいたしたいと思います。  この六月に、先ほど申し上げましたように、スエーデンの提議によりまして国連が監視団を作った、その報告がただいま申し上げました報告でありまして、ハマーショルド事務総長が当時、直ちに行って報告したかどうか、むろん、あれは九月でありましたか、行っておりますが、今のお話は、六月中にハマーショルドが行って報告したということでございますから。
  212. 岩間正男

    ○岩間正男君 やはりこういう重要な問題ははっきりさしておいていただきたいと思う。私は、時間の関係から、申し上げますが、これは七月三日にハマーショルド事務総長が報告をしております。それから七月四日に国連監察団の第一次報告があるわけであります。その報告の要旨を見ますというと、先ほど、ちらっと出しましたが、外部からの侵入という事実はない、あくまでも内政問題だ、それから外国軍隊はもちろん、国連軍も介入すべき筋合いでないということをハマーショルド事務総長ははっきり言っております。  それから監察団の報告では、七月四日の報告では、レバノン問題は国内問題的要素が非常に強い、従って、現在の戦争は単なる内戦にすぎない、国連警察軍は不要である、こういうことを出しております。これだけじゃない、そのあとにさらに、監察団は七月三十一日に第二次の報告をしております。八月十五日には第三次の報告がなされております。その内容はほとんど第一次報告を再確認している、内戦状態であるから、国連軍の介入は全然不必要である、こういうことを述べている。この事実を外相は認めますか。
  213. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 当時御承知のように、国境侵犯の問題が起こりまして、ただいま申し上げましたように、スエーデンの提訴によって監視団が参ったわけであります。その場合、あのときの構成は、私の承知しております範囲内では、いわゆる国連警察軍というものではなかったわけであります。国連警察軍を派遣するという意見はございましたけれども、あくまでも、あれは国境に対する監視団として国連は編成をし、出したと記憶いたしております。
  214. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は国連警察軍が行ったなどということは言っておりません。国連警察軍は介入する必要がないということを監察団が報告したということを言っている。そういう事実はお認めになりますか。これは私は正確な記録から選んだので間違いないだろうと思います。これは、あなたの出している外務省の記録の中にあるんですよ。ほかならない外務省の「わが外交の近況(第三号)」に、はっきり出ているんです。どうですか。
  215. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま申し上げましたように、一部には国連警察軍を出したらどうだというような意見もありましたけれども、国連として、当時国連の国境監視団を出して、そうして調査をしようということであったと私は記憶しておるので、国連警察軍が出たということを申し上げているわけではございません。
  216. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあそこのところは、今の事実を認めるかどうかということは、これは当然認めざるを得ない。外務省の出した文書の中にあり、ちゃんと記録をわれわれは正確にとったものです。  ところが、アメリカ軍がこの勧告がなされておるのにかかわらず、この二つの報告がなされておるのにもかかわらず、そこには全然国連軍の介入は必要でない、そういうふうな報告がなされておるにかかわらず、どうですか、アメリカが五千人の軍隊をレバノンに派兵した、そうしてこれに介入してしまいました。これはいつですか、御存じですか。
  217. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のように、七月の十日前後でございましたか、イラクに左翼革命が起こりまして、レバノンとヨルダンは非常にこれに対して心配いたしまして、そうしてそれぞれ国際法の原則に基づいて主権国政府の要請をアメリカとイギリスにいたしておる。アメリカはこのときに、今お話しのように、兵隊をレバノンに出しました。
  218. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうしてイラクに革命が起こったから、これはレバノンに出兵したのです。そういう必要がどこにあるか。これは、その点は今のような御説明で、非常にいかにも事実をおおって何かを擁護されるような気分が見えては私はまずいから、事実について今論議をしている。これは非常に重大な問題なんです。こういう事実を私たちは科学的に正確に検討することによって、今度の安保の問題なんかも私ども検討しなければならない。そういうことになっているのであって、何かさっきから何かを擁護するような形でもってお答えを願っては、これはまずいと思う。その点は虚心たんかいにやって下さい。私も虚心たんかいにやります。  そこで、そのときにアメリカが軍隊を送った。それを合理化するために、その出兵の理由を合理化するために、当時これに対して理由をあげている。アメリカの出兵の理由ですね、これは当時発表されているはずですが、この内容は御存じですか。
  219. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私、今申し上げましたのは、イラクに革命が起こりまして、当時イラクの革命に対してヨルダンとそれからレバノンが非常に心配したということは、これは事実でございまして、従って両国がアメリカ及びイギリスにそれぞれ主権者として出兵を要請いたしたわけです。そこでアメリカが出兵をいたしたわけであります。そのときにアメリカとしては、主権国の要請と国連憲章の精神に従って、そうして出兵をするということを申したというふうに存じております。
  220. 岩間正男

    ○岩間正男君 今の理由ですね。これは四つあるんじゃないですか。四つ。今言われたのは、主権者の要請があったということ。第二には国連憲章の精神に従ってということを言われたけれども、これははっきり国連憲章の五十一条による集団自衛権の発動によっている。これはちゃんとはっきりアメリカ側の文書には、これは出ている。それから第三に、これは「米国居留民の保護を目的とする」、それから第四に、レバノンの「主権と領土保全とを擁護するためである」、こういうことを言っておるのでありますが、この点は確認されますか。
  221. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 記録によりますれば、ほぼ大体そういうことをいったと思います。
  222. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、その中で非常に重大な問題は、ことに今安保改定が問題になり、それから五十一条の集団自衛権の問題が当委員会で数日論議されました。こういう態勢の中で、私は非常に重大なのは五十一条による集団的自衛権の発動によってアメリカが出兵した。これは外相が、今はっきりあなたの御答弁の中で確認された事実なんでありますが、これはどういうことになりますか。これは私は非常に重大な問題だと思うのでありますけれども、こういう事実を一体正しいと外相はお考えになっていらっしゃるかどうか。つまり国連の正式な監察団それから事務総長、こういう人たちが数次にわたって報告をしているんです。そうしてそれは内政問題である。従って国連軍は全然これに介入する必要はない。数次にわたって、そのような報告をはっきり出され、国連も大多数がこれを承認している。ところが国連のこのような決定にそむいて、アメリカが自分の理由をつけて、そうして出兵をしてしまった。レバノンに五千人の兵隊を送ったということは、明らかに私は国連憲章違反、国連の精神に従ってと言われるけれども、私は五十一条の拡大解釈であり、しかもこれは全く国連憲章をじゅうりんするものだというふうに考えられますが、どうでございますか。
  223. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま申し上げましたことに若干訂正いたします。  今聞きますと、アメリカは国連憲章五十一条の集団自衛権のために行ったということはいっておりません。その点は後に開かれました安保理事会あるいは今言ったソ連側がそう主張をいたしておったわけでございます。
  224. 岩間正男

    ○岩間正男君 重大な訂正をされたが、これはどういうわけなのですか。外務省のこれを否認されるのですか。この中にはっきりと書いてある。われわれはこれによって調べている。これを否認されるか。
  225. 鶴岡千仭

    政府委員(鶴岡千仭君) ただいまの大統領声明と思いますが、原文は今持ち合わせませんが、訳文をお読みいたしたいと思います。「米国は、レバノン政府の要請に応え、米国人の生命を保護し、またレバノンの主権と保全のため戦っているレバノン政府を激励するため米軍の一部をレバノンに派遣した。これらの軍隊は、戦争行為として派遣されたものではない。」……「米国は、これらの行動に関して、今朝、国連安保理事会緊急会議に報告するつもりである。国連憲章は、集団自衛という固有の権利を認めている。この憲章の精神にそって米国は自国のとった措置を安保理事会に報告し、安保理事会が国際の平和と安全を維持するに必要な手段をとるようになり次第これらの措置を直ちに終らせることを明らかにする。」以上でございます。
  226. 岩間正男

    ○岩間正男君 今のこれは声明、これに対してハガティ秘書は、それを説明して、アイゼンハワー大統領がレバノンに海兵隊を派遣したのは、国連憲章五十一条によったものであるということをはっきりこれは言明している。こういう事実がある。それから今の外務省のこの「わが外交の近況」によりますと、これははっきりそう書いているじゃないか。レバノン派兵に関し、「米国は、その派兵がレバノン政府の要請に基くものであること、レバノン政府を支援し」、二、「その主権と領土保全とを擁護するためであること」、第三に、「国連憲章の集団的自衛権の規定の精神に従ってとった措置であることおよび米国居留民の保護を目的とするものであること」、こういうふうにはっきり書いてある。こういうふうに書いていながら、それを訂正される、否定されるというのは、私は非常におかしいと思うんですが、これは外相その点どうですか。
  227. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私としては、一々文書をもってお答えしたわけではないので、一記録をもって読んでお答えしたわけでありますから、若干の誤ちがあったことはお許しを願いたいと思います。詳細にそれらの文書を読みますと、ただいま大統領声明で言われたようなことが大統領から言われているということでございまして、それがアメリカの声明であることは申すまでもございません。
  228. 岩間正男

    ○岩間正男君 五十一条による発動であるということを認められますか、どうですか。
  229. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今申し上げましたように、国連精神によりましてそうしてやったわけでありまして、正確に申していわゆる五十一条の発動ではないと考えられます。
  230. 岩間正男

    ○岩間正男君 精神などということを言っていますけれども、こんなあいまいな言葉はないのですよ。それじゃ精神によってやれば何をやってもいいということですか、これは重大な問題じゃないですか。なお重大だ。国連憲章の精神によったら何をやってもいい、他国に勝手に入ってもいいし、国連憲章をじゅうりんして入ってもいい、こういうことをはっきりこれは言うことになるのですね。それから、あなたは今までそういうことを答えられたことないですか、両院の論議の中で。外務委員会で、あなたはこれは国連憲章の五十一条によってですね、アメリカが発動したということを答えられた事実はありませんか、ありますかどうですか。
  231. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私が国会等でどういう答弁をしたか、今記憶ははっきりいたしておりません。
  232. 辻政信

    ○辻政信君 関連して。今の外務省当局の話を聞いていますと、これは事情が違う。あの当時私は現場におった。そうすると、事の起こりは、イラクの革命が起こったのは七月十五日。そこでその革命の波及を押えたのが米、英陣営です。その米、英陣営のもう一つの味方をなすのが、レバノンのいわゆるキリスト教的な政府だったのです。これが革命の拡大をおそれてアメリカにお願いをする、次いでイギリスにお願いをするということで、この米、英軍というのは国連軍という資格じゃなしに、レバノン政府から頼まれて出て行った。そうするとソ連が動員をする。非常に切迫いたしましたので、ハマーショルドが行きまして現場の状況を見て、これは国際的背景のないものだ、だから米軍は撤退しなさい、こういうことで、国連の監視団だけを残して、米、英軍の撤退ということで、レバノン事件というものは拡大せずに済み、米、ソの戦争というものは起こらずに終わったのです。これが事実であります。でありますから、今、岩間君が説明しております五十一条の集団的自衛権で国連軍の武力発動として米軍が出たものじゃない。私は現場で見ておったのですが、いかがでありますか
  233. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 大体私も当時の事情から申して、今、辻委員の言われた通りだと思っておるのでありますが、事実は、われわれもその線に沿って、その後国連緊急総会等におきましても対処して参ったつもりでございます。
  234. 岩間正男

    ○岩間正男君 あなたは助け舟が出たようなつもりで、これに対して待っていたというようなことで……。そうすると何ですか、国会の論議と答弁を、過去のことは責任を負わないというのですか。今助け舟を、待ってましたとそれに乗っていって、これをごまかしてしまったということでは、大へんなことになる。あなたはそういうことを言うけれども、たくさんの例がある、これについて。たとえば二十九回国会閉会中の審査、これは一九五八年七月三十八日自民党の佐々木盛雄議員が質問して、あなたが答弁している。アメリカに対する正統政府の主権者からの要求、それから国連憲章の五十一条による集団的自衛権——侵略という問題を主たる問題として、集団的自衛権、それから居留民の保護というのが第三の理由じゃないか、こう思うのでありますが、こういうふうに事実を、ここで安保との問題があるから、そこで何とかここのところは伏せてしまおうというようなことで、ここのところをいろいろ言いくるめしても私はいけないと思う。これは今後日本の運命をかけるような重大な関連を持つのであります。当委員会でもおそらく今度の論議の中では最も重点になった問題で、私は当時この問題について発言をしばしば要求しても、委員長は四日にわたって私の発言を封鎖してきた。だからどうしたってここで明らかにしなければならぬ。日本の将来に対してはこれは重大な問題になっている。そういう点から考えて、どのようなあなたが理由をつけて、そうしてこれに対してとやかくサギをカラスと言いくるめても、私は全くこれは問題にならないと思う。アメリカのレバノン出兵は国連憲章五十一条の集団的自衛権の発動によるものであるということはこれは認めざるを得ない。そういう点で非常に問題をはぐらかしてごまかしておりますが、この点どうでございますか。
  235. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は、特にはぐらかしておるわけではございません。私の記憶をたどりながら申し上げたことでございますから、若干のそれは誤謬はあるかもしれません。しかしながら、当時私が日本としてとりました態度等も、比較的当時は明瞭であったと思うのでありまして、われわれとして今申し上げておるような処置をとって参ったと、こういうことであります。
  236. 岩間正男

    ○岩間正男君 それはどうなんです、自衛権によって発動したんですか、その点を認めるのですか、認めないのですか。
  237. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私どもは、いわゆる国連が監視団を出しております、従いまして、主権国の要請でありましても、アメリカあるいはイギリスが出兵いたすことは必ずしも適当ではないと、従って一日も早く撤退する方がいいじゃないかという立場をとって終始いたしたのであります。
  238. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうもここのところ時間の関係で、あなたは当然これを認めなくてはならないし、私のあげた外務省の文書、それから国会の論議、その他これは先ほどの大統領の書簡の言明、こういう点からこの問題ははっきりしておる。そういうことは、ここであなたは認めるような認めないようなことを言っていますが、ここのところを時間の関係から押し問答をやっていては時間がなくなりますから、私はその点を確認しておきたいと思うのです。それで、そういうことになるいうと非常にここに重大な問題が発生すると思うのです。つまり五十一条に基づく集団自衛権の実体がこれではっきり示されたことになるからです。国連憲章の五十一条は、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合において、安全保障理事会が国際の平和及び安全に必要な措置をとるまで個別的または集団的な個有の自衛権を害するものではないとあって、急迫不正の攻撃に対するやむにやまれぬ緊急措置としての自衛権の発動を認めておるのです。積極的なものではない、これはむしろ消極的なものです。これは法理上、解釈上どうひねっても米国の出兵を正当化する理由にはならないのです。このことは、先ほどからの論議で明らかであると思います。先のレバノン事件の経過が示しておるように、国連の正当な機関が外国からの侵略の事実はない、あくまで国内内政問題であり、国連軍の立ち入りを必要としないと、再三にわたって断定し、アジア、アラブ諸国はもちろんのこと、国連加盟国の大多数がそれを支持、確認したにもかかわらず、米国はこの決定を破って、事実上の内政干渉をやった事実を何と見ればいいか。この不法な侵略行為を、集団自衛権の行使として押し通している事実を隠すことはできないのであります。それこそ米国の言う集団的自衛権の行使の具体的露骨な事実であります。藤山外相はこの動かしがたい事実の上に立っても、なおかっこのようなアメリカの行動を、国連憲章に定められたところの集団的自衛権の正当な行使でないとこれ以上あなたは言い切れますか。私はここで先ほど申し上げましたように、この論議は時間の関係から言えませんけれども、これは言い切れるものではない。これははっきりしておる。世界中知っておることだ。この事実から見ても、集団的自衛権というものは、この名によって侵略でも何でもできる、使いようによっては危険きわまりないものであるというふうに、こういうふうに考えられるものでありますが、あなたはどうお考えになりますか。
  239. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今申し上げましたように、国際法の観念からいいましても、政府の主権者が要請いたしますれば、友好国の軍隊はその国に駐留してもらうことはできます。当時の事情から見まして、レバノン政府としてはシリアとの国境紛争も持っておりましたし、またイラクの革命も起こったわけでありますから、自国の安全に対して相当急迫な状態が起こったとレバノン政府としては認定いたしたと思います。そういう状況のもとにレバノン政府としてはアメリカ軍を招請いたしたのであります。そういう状況のもとにおきまして、普通ならば何も国連安保理事会に報告をしなくてもいいわけでありますが、アメリカがそういう点については報告をいたしたのでありまして、それは国連憲章の精神に準拠したものだと思っております。
  240. 岩間正男

    ○岩間正男君 あなたはあくまで擁護の立場に立ちますが、アイゼンハワーの声明というものをごらんになったんですか。この声明から見ても、アメリカがはっきりそう言っているじゃないですか。そうでないと言っているのは、あなたたち、あるいは日本の与党の諸君だけじゃないですか。これはどうなんです。アメリカの大統領の声明の中にちゃんとそういうことを言っているじゃないですか。国連憲章は、集団的な自己防衛の固有の権利を有することを認めておるが、レバノンには二千五百名の米国人が在留している事実にかんがみ、これを出動さした。ハガチー秘書が、先ほど申しましたように、はっきりそれを言っている。こういう事実があるのに、あなただけが擁護されるというのは、事実に反すると思うのですが、これはどうですか。
  241. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は当時の状態から見て、特にアメリカだけを擁護しておるつもりはございません。アメリカがレバノン政府の主権者の要請によりまして兵を出すそのこと自身は、レバノン政府が急迫したやはり危険があると思って要請したと思います。従いまして、アメリカとレバノンとがそういうような事態に対処して、あるいは国連憲章に準拠した集団安全保障を話し合っておれば、そういう問題は起こらないでしょう。ただ、それについてまだ的確な当時の話し合いはなかったわけであります。しかしアメリカとしては、やはり国連に一応報告した事実はあるわけでございまして、相当に国連憲章の精神に準拠しておった、こういうふうに考えております。
  242. 辻政信

    ○辻政信君 関連。これは重要な問題ですから、藤山さん記憶を呼び起こしてもらいたい。先ほどの経過は、私が申し上げた通り、そのときにシリアの総領事をやっておった田村さんが、あなたの招請に応じてワシントンに飛ばれました。そのときに私飛行場へ行きましたが、田村さんに、これはアラブの独立を米英が実力でもって弾圧するような影響を与えてはだめだから、日本は国連憲章の精神で不偏不党、米英軍の撤退を要求しなさい、こういうふうにあなたが確かに意見を述べられたはずです。そこであなたが国連総会におきましてアラブ連合のいわゆる民族派の主張を支持させて、そうして米英軍の撤退を主張されたはずです。それがナセル以下非常に日本外交に対して実質以上に大きな信頼を寄せた。こういう原因になっている、当時は。こういう重大な問題は、もう少し自信をもって、外務省の連中もたくさんおりますから、間違いない事実ですから、もっと自信をもって、日本がアラブ独立に積極的な外交の新しい方針を示したんですから、こういう問題にもっと積極的に自信をもってお答えになったらいい。
  243. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今、辻委員お話通りでありまして、(笑声)私は初めからこの問題について日本の態度としてそういう態度をとってきておるわけであります。そこで、今申し上げたようにレバノンの政府が要請して、アメリカはその要請にこたえて兵を出したわけでありまして、イギリスはヨルダンの政府の要請に応じてこれを出したわけであります。ただ、国連の監視隊がすでに出ております。国境監視隊が出ております。そういう処置がとられておるときに国連が何らかの処置をとるわけでありますし、それ以上の発展については厳重な監視をしておりますから、かりにそういう条件にありましても、アメリカとしては一日も早く撤兵すべきではないか。いつまでも兵を置くのは適当でないというのは、これは私どもの見解であり、日本政府のとった態度でございます。従いまして、今申し上げましたような趣旨で、レバノン政府の要請によってアメリカの軍隊が出た。むろんレバノンとアメリカとの間にどういう話し合いがありましたかわかりません。しかしアメリカとしては、やはり国連憲章の精神によって、そうした主権者の要請によって兵を出しましても、一応それに対して国連に報告をいたしております。
  244. 羽生三七

    ○羽生三七君 私は特に答弁を要することではないのですが、今のレバノンの出兵要請は、当時レバノンの国会議長並びに国会議員の多数の意思に反して行なわれたことを想起すべきであります。
  245. 岩間正男

    ○岩間正男君 ただいまのお話がありましたように、これははっきりしていると思うのですね。この大統領というものはかいらい的なものだ、これが実際は要請したという格好で出ている。これに対して四月十六日に、レバノン議会のアデル・オーセーネ議長は、アイゼンハワーそれからダレス、国連安保理事会議長の三者に対しまして、米軍の撤退を要求するメッセージを送っております。こういう事実があるので、それをあなたは唯一の根拠にしておられますけれども、その点は事実と違う。  それから辻委員の体験から出たお話がありましたが、これはいろいろ参考になる意見だとは思います。しかし広く公式な国際間のそういうものについて、私たちは情報に基づいて論議をしている。あなたは軽々に、その通りでございますなんてさっそくやりますけれども、これは確かめてやられておるのですか。この態度はもう少し慎重でないと、またあとで災いを残すと藤山さんのためになりませんから、私は注意しておきたい。
  246. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知通り、当時はレバノン国内自身において内乱状態にあったわけです。そしてアメリカの出兵は、全閣僚の支持を得ましてレバノン大統領が正式に要請をしておったわけでありますから、レバノンの国内において反政府立場をとっておる人は、それは、こういうふうに反対をしておったことは事実でございます。しかしながら、政党政府の大統領として閣僚の承諾を得て、そうして閣議を経た上で要請したのでありますから、これは正当な要請と見るのが当然でございます。
  247. 岩間正男

    ○岩間正男君 まああなたは、大統領の要請を唯一の根拠にされて、ここのところを何とか言いくるめようとされますけれども、これは事実に反しておるし、今までの声明、こういうものに反しておるし、そこだけにこだわらないで……。安保の論議は盛んになって、集団的自衛権が問題になっている。こういう中で刺激すまいと思ってあなたの配慮されておる気持はわからないわけでもない。しかし、そういう格好で国会論議を展開してはまずいと思う。しかもどうです、このアメリカが集団的自衛権をたてにして軍事介入をやった。すなわち侵略をやったのは、このレバノン事件だけじゃないのです。これはほかにやろうとしたことはあります。たとえばこの前問題になりました、あのイーデンの回顧録、これはまだお読みになりませんか。これは翻訳中だという話だったが、これをごらんになれば、どうですか。一九五四年のベトナム内戦のとき、ディンエンビエンフーの陥落が迫った、それに対しましてアメリカはフランスをそそのかし、それから英国を強引に誘い込んで東南アジア諸国を道連れにして共同の介入をやろうとした。そうしてそのときアメリカが掲げたその理由は、国連憲章五十一条の集団的自衛権である。これをはっきり私は文芸春秋で見たのでありますけれども、公文書ではないけれども、はっきりイーデンの回顧録の中に載っております。しかしイーデンがこれに対して、非常に国際的な論争に発展することの危険を考えて、英国がこれを押える、そういう格好の中で、これはまあ介入まではいかなかった。しかしそのときダレスが背後からこれに対して、この集団的安全保障五十一条の発動をもってこれに臨もうとしたというのも、これは事実です。こういうふうに考えてくるというと、米国は、自国の利益のためには他国の内政に干渉し、侵略的軍事行動をとるとき常に掲げる大義名分というものは国連憲章五十一条であることは、全くこのように隠れのない事実です。だからこそ、今同じく五十一条の集団的自衛権の名によって、    〔委員長退席、理事館哲二君着席〕 新しい安保条約を結ぼうとしてあなたは非常に苦心されている。この当のあなた、あるいは岸総理、こういう方に、私は国民の名によってこの問題を明らかにしておかなければならぬと思うのです。この歴史的事実を見るときに、少なくも米国については、集団的自衛権の名による行動というものは、これは明白だろうと思う。しかし、集団的自衛権の実体は、自衛という名によるごまかしだ。そして内政干渉や侵略的な軍事行動ができるということ。そして、そういうことは歴史的事実の中ではっきりしている。これがアメリカの言う集団的自衛権の中身であるということ。こういうことを、私はここで明らかにしておきたいと思うんです。あなたは先ほどから、今になって米国を擁護するために、いろいろなきれいな口をきいています。しかし、レバノン事件当時、あなたは、さっきも言ったように、最初米国の行動が間違っていると、こう思ったればこそ、米国の行動に対してこれを非難する声明にあなたは参加したはずなんです。それがどうですか。米国の決議案が出るというと、一夜のうちにころりと変わった。そして、途中で態度を変えて、今度は、条件つきとはいいながら、米国の決議案に賛成した。こういうことを考えると、私は今、新しい安保条約の改定の締結の中で、実に心配でたまらない。米国の強権によって背後から支配されるというと、いかに正しいと思ってやったにしても、一晩にして変わってしまう。集団的自衛権というものが、今言ったような形で使われてきたならば、実に、日本の安全のためにこれは保障にはならない、こういうふうに私は考えるんです。こういう点から、やはり私は、はっきりこの問題を明らかにしなきゃならぬと思います。  それで、以上述べたように、国連憲章五十一条の集団的自衛権は、英国がその不当な軍事行動を合理化するための、これは全くイチジクの葉です。(笑声)新安保条約に対して、政府は今まで、あくまで国連憲章五十一条による防衛的なものであることを宣伝してきましたが、その大前提は、すでにここでくずれてしまった、私はこう考えざるを得ないんです。これは全く侵略的なものであり、弁解のしょうがないものだ。それだけではないんです。レバノン事件の歴史的事実はさらに次のことを教えています。それは何かというと、日本に軍事基地がある限り、常に直接戦火の危険にさらされているという事実です。岸総理や藤山外相は、日本に基地があっても戦争に巻き込まれる危険はない、もし在日米軍基地に攻撃が加えられた場合、日本は当然その攻撃に対して自衛権をもってそれに対抗する、ということをしばしば言っています。そして、その根拠としては、米軍は侵略をしないのだから、攻撃する方が常に侵略的なんだ、そのような攻撃は日本の領海、領空を侵すから自衛権を発動するのだ、というようなことを言っています。しかし、ここで私の特に指摘したいのは、レバノン事件でも明らかなように、米国は集団的自衛権や、当該政府の要請という名のもとに、国連決定を無視して、他国に対し侵略的軍事行動をとっている。とる危険がいつもあるからです。こういう場合に、相手国やその同盟国が、武力行動をとって米国と戦争状態に入ることは、当然あり得ることです。そういう場合を考えるときに、交戦状態の発展としまして、当然、在日米軍基地がたたかれることも起こりかねないのです。つまり、アメリカが、このレバノンの場合のように、集団的自衛権の名によって、事実上内政干渉や侵略行動をやって、その国と戦争状態に陥った場合、これは世界のどこでも起こり得ることでありますが、特に極東において、その相手側が、正当な交戦権の発動として、国際法上これは認められることになる。この場合、日本が、岸総理や藤山外相の言うように、武力による侵略行動だとは、これは言えないわけです。従って、自衛権の発動によってこれに対抗することは、国際法上成り立たないことになるわけです。つまり、米国と戦争状態に入った国が、いわば正当な交戦権の行使として、在日米軍基地をたたいた場合、    〔理事館哲二君退席、委員長着席〕 日本はいわゆる自衛権の名でこれに対抗し、在日米軍基地を守ることは、全く成り立たないのであります。これでは、アメリカの行動によって、日本は在日米軍基地がある限りいつでも戦争に巻き込まれる危険があります。この事実ですね、この事実を一体藤山外相はどう考えられるか、この事態に対してはっきりした答弁をしてほしいと思う。
  248. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 全然お考えと違っております。今度の安保条約というものは、国連憲章に準拠しまして、すべてその基礎の上に立って作っておるのでありますから、国連憲章に従って行動することは間違いないのであります。でありますから、今、岩間委員の言うことは全然違うと思います。
  249. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうようなことをあなたは言われるけれども私は実体論について、歴史的事実の教訓から学ぼうとしているのです。アメリカとしては侵略はしないのだ、国連憲章を守るのだと言っているけれども、守らない事実が、今あげたような事実の中にあるのです。こういうような相手があるわけだ。その相手と、しかも力の対等でないところの日本が、ここで安保条約を、対等だというような名前だけで、結ぶ、そういうときに何が起こるかということは、先ほどから私が申し上げた通りだ。そうすると、とにかく今言ったような、かりにレバノンはこれは非常にまだ力がなかったからですが、あのときレバノンはですよ、当然これは日本の在日米軍基地をたたく、こういう事態が起こったとしましても、日本では、これは自衛権の発動だとしてこれを守ることはできないはずです。これは国際法上の通念でしょう。自分で侵略しておいて、そして自衛も何もないものです。こういうことは、これは当然認められないものになるわけでありますから、あなたはそういうような点で、いろいろに問題を言いくるめられようとしておりますが、この問題は非常に重大です。これはレバノンのやはり教訓の第二として、私はここで明らかにしたい。  で、まあいろいろに話されましたが、私は今までの論議を通じまして、二つの問題をこれは考えることができる。第一は、米国は集団的自衛権の名のもとに他国の内政に干渉し、軍事的介入を行ない、侵略を行なう、勝手気ままなことは何でもできるということ。第二は、米国の集団的自衛権の名による軍事行動から端を発して、米国の相手国及びその同盟国が、日本の米軍基地を攻撃した場合、相手国及びその同盟国が、正当な交戦権で攻撃してくるのであるから、国際法上、日本は自衛権に対抗できないものである、この二点について、私はここではっきりさせておきたいと思います。  で、時間の都合から——時間は幾らです。五分ですか。  私は次の問題に入りたいと思いますが、これは中立の問題です。岸内閣は、外交政策の基調として自由主義諸国との緊密な提携ということをうたっています。で、極東における自由主義諸国というのは、どことどこですか。ちょっとお伺いいたします。
  250. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 自由主義諸国と申しますと、私が申すまでもなく、岩間君自身が御存じだと思います。われわれとしてはやはり中華民国、あるいは韓国等は、自由主義を信奉しているものと考えております。
  251. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、中華民国、それから韓国1まあアジアでは二つでしょうね、おそらく。そうすると、岸総理は、この前の社会党の鈴木委員長質問に対する答弁で、こういうことを言っている。自由主義諸国と理想を同じくし、進路を同じくしているということを言っているのですが、一体、李承晩の韓国や、中華民国の蒋介石と、どの点で一体理想を同じくし、進路を同じくするのか、ちょっと伺いたい。
  252. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん自由主義を信奉しておりましても、その成立の過程なり何なりにおきまして、必ずしもわれわれの理想とするような日本の目的としているような自由主義の段階に発展してない国は、東南アジアのような新しく独立した国には、たくさんございます。従いまして共産主義を信奉しておらなくても、やはり発展段階における過程として、ある程度の強力な政府があるというような事情は、当然歴史的過程として存在することはむろんでございます。
  253. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は具体的にお伺いしているんですがね。たとえば李承晩の選挙が三回にわたって行なわれました。そのたびにこれはひどいことをやっておることは、私はここでくどくどしく申し上げませんが、あるいは対立候補を抹殺するやり方、あるいは三分の二を取ることができないというと、これを四捨五入なんかしてこれでもってやった。そういうやり方。またそういうことでもって、相当買収も行われておるということを、これはわれわれは情報として知っております。  さらに国家保安法の強行成立をやる。地方自治法の改正をやる。野党有力紙の停刊処分。そういうような言論の封殺。民主主義というものについては全くこれは今日破壊されていると思う。これは進歩の過程などと言いますが、これは進歩の過程と言えますか。大へんなことだと思う。どうです。
  254. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私はある過渡的な時期にはそういうことがあるかもしれませんけれども、自由主義を目途としておることは事実で、間違いないと思います。
  255. 岩間正男

    ○岩間正男君 これが自由主義の内容だとすると、これは大へんなことです。これが自由主義の内容だと大へんなことになる。竹島の問題。困ったものだとあなたは何回言われました。そういうことをやる相手と、それと今度は進路を同じくするということになりますと、どういう共通の利益に立つことになりますか。共通の利益に立つというようなことも言っております。どうなりますか。
  256. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私の申しておりますことは、共産主義を信奉していない国は、それに対してやはり民主主義的な思想を持って国を立てておるのだと思います。しかしながら、それは発展段階におきましてはいろいろな過程のあることはむろんでありまして、その国の置かれております国際紛争の形その他から見て、ある程度やむを得ない場合もあろうかと思います。われわれは自由主義というものを信じて、そうして今その上に立ってやっていくことを理想としております。そういうことでそれを逐次達成していくことを目的として参ることむろんでございます。
  257. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ、ほどにもよると思うのですね。こういう問題で苦しんで、そうして全くこれは自由主義に反する方向、こういうような形で、これが自由主義の内容とすると私は大へんだと思う。  台湾についても私はいろいろ申し上げたいけれども、時間の関係から省きます。しかしこれは全く最近の、たとえば第三回国民大会におけるところの、この蒋介石の演説でも、これを見てもわかるのです。目下の世界情勢は戦後最大の混迷に陥っている。ソ連は軍備全廃や核実験停止を叫んで、奇襲計画をカムフラージュしており、中共はその手先であるというようなことを演説して、大陸反攻を盛んに言っておりますけれども、この国際情勢の見方において蒋介石と一致することはできますか、どうですか、藤山外相。
  258. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 国際情勢その他の見方につきまして、どこの国でもその国の置かれている立場からいたしまして、全部が全部必ずしも一致するとは自由主義国だってないと思います。ヨーロッパの各国においてもそういう紛争の見方についてはいろいろな立場があろうと思います。
  259. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ、外相の立場でこれは言いにくいだろうと思いますから……。しかし、あなた自身も腹の底では、困ったものだと考えておられることはほとんど私はこれは察することはできます。しかし私はこのような中で、この自由主義諸国の結集しておるその中で、一つの問題、はっきりした一つのこの問題だけは共通しておる。それは何かというと、反共的な軍事同盟を作るということ。もう一つの問題は、平和共存の政策に対して全くこれを否定的な立場に立っておる。この点を私は指摘することができると思います。これに対しまして私はお聞きしたいんですが、たとえばビルマ、インドネシア、インドまたはアジア、アラブの諸国、アフリカさらに最近立ち上がっている中南米諸国、こういういわゆる中立諸国といわれる国と自由主義諸国との違い、これは外相おつかみになっていらっしゃると思うが、どうですか。
  260. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は、自由主義と共産主義というものは、社会思想上の違いだと思います。中立主義というようなことは、共産主義と自由主義との間に何か中立主義的な社会思想というものがあろうとは思いません。その国の外交上の立場としてある程度どちらにも片寄らない立場をとるんだというような考え方を主として中立主義と言っておるのでありまして、共産主義と自由主義思想の間に何か中立主義というような社会経済思想があろうとは考えておりません。
  261. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういう情勢の分析じゃたいへんな間違いを犯すのじゃないか。中立主義の諸国のはっきりとっている政策はある。それはもう世界的な政策になってきた。世界の現実の中で脈々として生きている。それは何かといったら、言うまでもなく、これは平和五原則です。平和五原則に立ってそうして中立政策をやっていく、こういうことになっています。それで、たとえばさっきのレバノンの問題の中で、中立主義諸国、アジア、アラブの諸国が、あの戦争を拡大しないという非常に役割を果たしたと思う。どういう役割を果たしたか、ちょっとお聞きしたい。
  262. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 当時におきましてアジア、アラブの一団というものが当然アジア、アラブの中にいて紛争の拡大することを好んでおりません。したがって、それに対して自分たち考え方を述べ、そうしてその方針に従って進んで参ったのでございます。
  263. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は、具体的に聞いているんですよ。あのレバノン事件のとき、どういう役割を果たしたか。
  264. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 具体的に申し上げましても、ただいま申し上げた通りでありまして、私は当時フアウジ外相とは相当に連絡をとって一話し合いをいたしましたけれども、今申し上げた通りの態度でございます。
  265. 岩間正男

    ○岩間正男君 あのとき、インドを中心とする十ヵ国の決議案が出され、それが大いに支持されてあの撤兵の方向に行ったと思います。こういう事実を見て、そうして、「わが国は自由主義世界の一員として、共産主義世界と共存の道を見出すための熱意と努力を欠くものでもありません。ただ、平和と共存の道は、相互の立場の尊重と内政干渉の原則が誠実に実践されることによってのみ可能であると確信をいたします。」と、岸総理はこういう演説をしています。しかし、そういうことは口では言っていますけれども、全くこれは理想にすぎないということで、ところが、これは、はたしてそうなのかどうか。私は、これは理想などというものではなくて、今や平和五原則は、民族独立の政治宣言である段階から、もう新しい国際関係を現実的に規制していくところの、いわば新しい国際法規になっていると思う。たとえば、本年一月結ばれた中国とビルマの条約、あるいはまた、三月初めに結ばれましたソ連とインドネシアの共同宣言など、こういうものを見るというと、全くそのいい例だと思います。これらの条約に共通している点、どういう点が最も基本的な点であるか。これは外相が日本の外交を進めるためには世界の外交を詳細に検討されなきゃならない。こういう点で最近アジアに起こった新しいこういう事実の中ではっきり検討されておると思うのでありますが、この点を伺いたい。
  266. 小林英三

    委員長小林英三君) 岩間君に念のために申し上げますが、時間は終了いたしております。
  267. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 要するに、共存をうたいます場合には、お互いに内政不干渉でなければ相なりません。したがって現に内政不干渉を守って参らなければ共存の道は明けて参らないのであります。そういう意味において私どもは内政不干渉ということをやはり一つの大きな柱として考えておるということであります。
  268. 小林英三

    委員長小林英三君) 岩間君時間が終了しております。もう一問だけ許しますから簡単に願います。
  269. 岩間正男

    ○岩間正男君 これらの条約に共通している点で、内政不干渉をあげられたのは一つの進歩だと思いますけれども、やはり平和五原則に立っているということですね。何といってもそれでその内容、平和五原則をどういうふうに実現していくか。そういう中で相手国を対象とする軍事同盟に参加しない。さらに一切の紛争を力の解決に任せない、平和的話し合いで解決する。第三には緊張緩和と冷戦解消に努めておる。さらに経済、文化交流を発展させて、友好を促進させる。この結果これは五月に開かれたパリの首脳会談を成功させた。これはインドが非常に努力をしておる。あるいは軍縮、核実験停止に非常にこういうものに努力をする、こういうふうに言っています。また経済援助を見てごらんなさい。これはこれらの条約の内容を検討しますというと、全くこの経済援助は自由主義諸国の、いわゆるアメリカの経済援助とはまるで違う。ひもつきじゃない。たとえばどうです、今度ソ連とインドネシアで結ばれました経済技術協力協定を見ますというと、七年間で二億五千万ドルの借款をやっておる。そうしてそれに対して年利二歩五厘、十二年年賦、こういうようなその他の一切の条件のないところの、こういう借款をやっております。こういう点から考えまして、私は現実的でないということをしばしば言われて、この問題は避けてこられたのでありますけれども、これは大へんな私は間違いじゃないかと思うのです。しかもこの中で、はっきりソビエトの対日覚書に示されておりますように、これは今年の一月二十七日の覚書でありますが、その中でソ中の日本の中立に対する必要な保障の確約をやれ、また第二に日本を中心としてソ連、中国、米国その他太平洋諸国を含む平和友好条約の締結をする。
  270. 小林英三

    委員長小林英三君) 岩間君、簡単に願います。
  271. 岩間正男

    ○岩間正男君 第三に、極東における核非武装地帯の設置をやる。まずその中で重要なことは、アメリカを除く、アメリカを排除することではない。アメリカを含めて、そうしてほんとうの平和共存の方式をとろうとする。ここが非常に私はこの政策の中で重要であり、そうして核兵器の対立の中にあるところの世界の情勢では非常に私は重要だと思うのです。それから今、日本は東南アジアに進出しようとしております。しかし、私は今のような日本の外交政策では東南アジアは非常に警戒していると思う。ことにこの安保条約を結ぶ日本のやり方に対しては非常に警戒をしている。ほんとうに日本が東南アジアで歓迎されるためには、どうしても私は中立政策をはっきり打ち出して、そういう態勢の中で、私は日本の外交政策を大きく転換させるということが非常に重要だというふうに考えるのです。
  272. 小林英三

    委員長小林英三君) 岩間君、相当時間を超過しておりますので、簡単に願います。
  273. 岩間正男

    ○岩間正男君 非常にこれは現実的な政策なんですね。ただ、これを妨げているものがある。その妨げている理由、それが一体だれとお考えになりますか。この妨げているものがあるので、日本の中立政策をほんとうにこの現実的な態勢として日本がとり、そうしてやろうと思えば、もうアジアの社会主義諸国はこれを非常に望んでおるし、それから中立諸国はこれを支持しておるし、日本の国民の大多数もこれを望んでおる。これは最近の世論調査を見ればわかることです。条件は熟している。それにもかかわらず、これを妨げているのが今の政府やり方、あるいはアメリカの考え方じゃないか。私はだからここの二つの点を変えて、そうしてほんとうに平和共存の方向でわれわれの政策を変えるということが、今の日本の置かれた現情から考えまして、また日本国民の進むべき当然の道だと思うのでありますが、これに対して外相はどうお考えになりますか、御意見をお伺いしたい。
  274. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 中ソ友好同盟条約というものに参加している国もあるわけでございます。それが軍事同盟に参加するのはけしからぬというのはずいぶんおかしな話だとわれわれは思っております。インドネシアにフルシチョフ首相が行かれまして、あの国会でこの安保条約の問題の批判をされているということは適当でないわけであります。インドネシアの議会は非常に迷惑をいたしまして、その部分だけの発表を差し控え、ラジオへカットして出したわけであります。そういうような事情をとりますことは、決して平和共存にいく道ではございません。私はソ連だけが何か非常に正しいことをやっているということには同感をいたしかねます。
  275. 小林英三

    委員長小林英三君) 本日の質疑は以上をもって終了いたします。  次回は明後日、月曜日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十七分散会