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1960-03-11 第34回国会 参議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月十一日(金曜日)    午前十一時三十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小林 英三君    理事            大谷藤之助君            佐藤 芳男君            館  哲二君            西田 信一君            秋山 長造君            鈴木  強君            松浦 清一君            千田  正君            大竹平八郎君    委員            泉山 三六君            太田 正孝君            金丸 冨夫君            木暮武太夫君            小柳 牧衞君            斎藤  昇君            重政 庸徳君            白井  勇君            杉原 荒太君            手島  栄君            苫米地英俊君            一松 定吉君            堀木 鎌三君            武藤 常介君            村松 久義君            村山 道雄君            湯澤三千男君            吉江 勝保君            荒木正三郎君            加瀬  完君            木村禧八郎君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            永岡 光治君            羽生 三七君            平林  剛君            藤田  進君            松澤 兼人君            東   隆君            島   清君            白木義一郎君            辻  政信君            森 八三一君            岩間 正男君   国務大臣    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 佐藤 栄作君    農 林 大 臣 福田 赳夫君    通商産業大臣  池田 勇人君    運 輸 大 臣 楢橋  渡君    建 設 大 臣 村上  勇君    国 務 大 臣 赤城 宗徳君    国 務 大 臣 石原幹市郎君    国 務 大 臣 中曽根康弘君   政府委員    法制局第二部長 野木 新一君    自治庁財政局長 奧野 誠亮君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    防衛庁経理局長 山下 武利君    防衛庁装備局長 塚本 敏夫君    科学技術庁振興    局長      鈴江 康平君    外務省アメリカ    局長      森  治樹君    外務省条約局長 高橋 通敏君    外務省国際連合    局長      鶴岡 千仭君    大蔵省主計局長 石原 周夫君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十五年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 小林英三

    委員長小林英三君) これより予算委員会を開会いたします。  昭和三十五年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、右三件を一括して議題といたします。  本日より一般質疑に入ります。
  3. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 日米の両国は、昭和二十七年に日米安全保障条約締結して以来、一方には日本アメリカとの関係において日本軍事力増強約束し合いながら、積極的に逐次進めて参っております。対米的にそういう約束をし、そういう義務を負って、その義務をさらに国内において逐次実現をし、実施をしていかなければならないという意味において、いろいろな法律を作り、機構を作り、そして国内軍事体制を積極的に増強をして参って、わが国の憲法第九条に全く違反したことを次々にやって、今やそれが隠せない事態にまで発展をして参った、このように私たちは見ておるのでありますが、まず外務大臣お尋ねをしたいことは、軍事力増強のためにどういう約束をし、どういう義務を負ってきたか。それを日米の両方の条約その他の関係でどういうふうに見られるかという点を、まずお伺いをいたしたいと思います。
  4. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お尋ねの焦点がちょっとはっきりしないのでありますけれども日本アメリカ安保条約を作った、あるいはMSA協定を作ったと、そういうことが何か軍事力強化のための約束ではないのかというお尋ねの趣旨であろうかと思うのでありますが、たとえば、日本といたしまして自衛力をみずから持って参りますことは、これは独立国家として当然のことでありまして、それは憲法九条にも許された範囲の問題であることは申すまでもございません。従いまして、そういう点を進めて参りまする意味において、日本自身経済力なりあるいは社会的事情なりを勘案しまして、日本みずからが決定していくということ、これは私は当然のことであって、何かそれが押しつけられてやる問題ではないと思います。MSA協定におきましても、その点は明瞭になっておるわけでありまして、私どもとしては、それが何か押しつけられた義務を加重しているものであろうとは思っておりません。
  5. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それじゃ、お聞きしますが、日米時代に関する岸・アイク共同声明がなされた日時、それから安保に関する日米委員会を作るという声明をされた日時、それから安保条約改定交渉を具体的に始められた日時、それを事務当局でいいですから、正確に御報告願います。
  6. 森治樹

    政府委員森治樹君) 岸・アイゼンハワー大統領共同コミュニケの日付は、昭和三十二年六月二十一日でございます。日米今度の新条約交渉を始めましたのは、一昨年のたしか十月の四日だと記憶いたしております。
  7. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 正確に、三十三年十月四日ですね。
  8. 森治樹

    政府委員森治樹君) さようでございます。
  9. 佐多忠隆

  10. 森治樹

    政府委員森治樹君) 日米安全保障委員会が第一回に開催されましたのは、昭和三十二年八月十六日でございます。
  11. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それはわかってるんですが、この新しい日米委員会を作るという声明か何か出されたことがありますが、それはいつなんですか。
  12. 森治樹

    政府委員森治樹君) 日米安保委員会は、先ほど申し上げました岸・アイク共同声明に基づいて設置されることになったわけでございます。
  13. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今の御答弁ではっきりいたしますように、日本昭和二十七年にアメリカとの間に日米安全保障条約締結をした。この条約ができた二年後には、二十九年に相互防衛援助協定を作っている。そうしてさらに、三十二年になりますと、今お話し通りに、岸・アイク共同声明ができて、日米時代なるものが声明された。その日米時代声明に即応して、安保に関する日米委員会を三十二年の六月に作っている。そうして、そこでもろもろの交渉をいたしておりますが、それは後ほど詳しく究明をいたしたいと思いますが、それが済んで、三十三年の十月から安保条約改定交渉に入った。これが防衛力増強、むしろそういうごまかしの言葉でなくて、軍事力増強の相談をし、約束をしたこまこまであると思います。日本国内における防衛体制軍事力増強は、それを背景とし、それを原因とし、あるいはそれと因果関係をなしつつ、練り合わされたなわのように発展をいたして参っております。  そこで、私は、防衛庁長官に、今言ったような日米関係背景にしながら、日本自体とし軍事力をどういうふうに増強してきたか、法令的に機構的にどういう発展をしたかということについて、防衛庁長官の御答弁を願います。
  14. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 法律的には、御承知のように、自衛隊法あるいは防衛庁設置法に基づいて、自衛隊の整備をしてきました。実質的にどういうふうにやってきたかという問題でありますが、初めは警察予備隊、その次に保安隊というような形が、自衛隊になり、自衛隊といたしましても、陸上自衛隊が一番先に発足いたしました。その次に海上自衛隊、その次に航空自衛隊、こういう順序で自衛隊が整備されてきた。その三自衛隊が、まあ調和がとれたような形で、そうしてまた、装備等も初めは供与を受けた装備が多かった。だんだん日本でその装備をして、変えていくというような形で、装備近代化といいますか、そういうものをはかりつつやってきているのが現状でございます。
  15. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今御説明がありましたように、昭和二十七年に日米安全保障条約を作って、警察予備隊を、本来の意味における軍事力に転化をし始め、昭和二十九年に相互防衛援助協定を作るのと相前後して、今お話し保安庁法自衛隊法ができて、ここでいよいよ内外に向かって軍事力を発動する保安隊自衛隊が設立をされた。これはまさに、日本アメリカとの相互防衛援助協定ができたと時を同じゅういたしております。それから三十二年に、防衛力増強計画国内においてきめると同時に、先ほどお話のあったように、岸・アイク共同声明なるものが発表をされて、日米時代ができた。日米時代背景は、従って、あの第一次防衛力増強計画、それと全くうらはらなものであって、新時代とは、日本アメリカとの共同防衛体制を、共同作戦体制を明らかにするスタートであったと思うのであります。従って、それに基づく安全保障条約に関する日米委員会は、先ほどお話がありましたように、三十二年六月に出発をいたしておりますが、この三十二年八月十六日第一回の日米委員会をやって、それから三十三年の八月まで、一年間にわたって日米委員会を六回にわたってやっておる。その六回は、太平洋軍司令官、あるいは在日米軍司令官中心にして、日本外務大臣防衛庁長官が、日米軍事協力体制日米共同作戦体制をどのように進めるかということをもっぱら論議をいたしております。  そういうことが一年間にわたってなされた結果、先ほどお話のあったように、三十三年の十月から——第六回の日米委員会、これはまさに軍事委員会でありますが、この日米軍事委員会、しかもその軍事委員会は、技術的な専門的なものというよりも、外務大臣防衛庁長官アメリカ側太平洋軍司令官在日米軍司令官、それとの間の軍事委員会、それが八月の二十七日に終わって、それを引き継いで直ちに安保条約条約改定交渉に入っておる。  それらの経過を見れば明らかでありますが、今度の安保条約、新条約が、従来の旧条約をいよいよ本格的な日米共同作戦行動条約面を表現をする、こういう意図を持ち、こういう計画を持って、非常に計画的に組織的に進められたものであると私たち判断をいたすのでありますが、かるがゆえに、私たちは、旧来の安保条約もそうであったが、特に今度の安保条約軍事協定であり、しかも共同作戦協定共同防衛協定相互防衛協定にほかならない、軍事同盟にほかならない、軍事協定にほかならないと私たちが言うゆえんはそこにあるのでありますが、過去の数年間の歴史を一つ一つ現実的に見て参りますと、過去の事実からそういうふうに判断する以外にない。条約案文その他から見てもそうでありますが、過去の歴史的な事実も、まごうかたなくそれを実証をしている、こういうふうに思うのでありますが、外務大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  16. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本占領時代を脱しまして、そうして独立国家として国際社会に復帰いたします場合に、日本としては当然みずからを防衛していきますという方法をとらなければならぬことは、これは私は独立国家の当然のことであると思います。ただ、日本が戦後のいろいろな困難、特に経済的困難というような場合にあたりまして、日本自身がとり得る防衛的な能力というものは十分でないところも、これはまた当然でございます。従いまして、日本の安全と平和を維持いたしますために、あるいは防衛的に、予防的な措置としても、何らかの形でもって友好国と緊密な連絡をとっていくということは、これまた私ども日本の民生を考えてみましても、これは当然なことだと思います。  で、われわれは、自分独立のために防衛をやって参るのでありますけれども、御承知のように、今申し上げた理由からして、現行安全保障条約ができたと思います。でありますから、われわれとして、日本国民として、自衛力をある程度増強をして参りますことは、当然必要でありますけれども、その増強をいたして参ります上において、日本経済力から見て十分でない、あるいは日本軍事産業その他の能力から見て十分でなければ、やはり何らかの援助を求めることも、これまた当然であります。あるいは近来の情勢から見て、アメリカ意見の交換をするのもあたりまえでありまして、そのこと自体が、何か過去におきます、いわゆる国連ができまして、国連憲章によって定められている今日、いわゆる昔のような合従連衡によります軍事同盟というようなものがあり得ないことは当然であり、防衛意味におきましてそういう国連のワク内における協力をして参りますことは、これは別に、軍事的に何か日本が非常に侵略的な意図をもってそういうことをやったということでは全くないのであります。その点は、いささか佐多委員と見解が違うところだと思います。
  17. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならば、もう少し具体的に、内容的にその点をお尋ねをいたしたいと思いますが、二十七年に締結をした現行安保条約、これは、アメリカ日本防衛力を漸増することを期待をする、日本はこれに道義的に政治的にこたえなければならないというふうな条約であったと思います。従って、事実においては、政治的に道義的にこれにこたえるという形で、先ほど事実をもってお示しをしましたように、警察予備隊から保安隊自衛隊、こういうふうに発展をいたして参った。しかし、そのときには、ただアメリカ側日本に漸増することを期待をするという程度であったから、これは条約上の義務ではないというふうに言いのがれをして、条約案文の改正その他ではごまかしながら、現実においては、先ほど言ったように、軍事力を内容的にも機構的にも明瞭なものにして、憲法違反をやり始めてきた。それが二十九年の五月の相互防衛援助協定になれば、しばしば同僚諸君から論及をされましたように、その第八条では、自国防衛力及び自由世界防衛力発展及び維持に寄与するということを非常に明瞭にうたい出してきて、ここでは明らかに条約上の義務を負ったと思うのであります。  私たちは、あの協定締結の際、条約審議に際して、私たちは、それが明らかに条約上の義務である、しかも、それに基づいて日本は積極的に大っぴらに軍事力増強をやるのじゃないか。それをわれわれは、きびしい、その憲法違反がいよいよはなはだしくなることを憂えるのだということを追及をいたしましたが、政府は、決してそういうことはないのだ、憲法違反するようなことはないのだ、しかも条約上も義務を負ったことはないのだというようなことを言われた。ただし、最近になると、どうもそこのところは非常にずうずうしくなって、いや、条約上の義務は負ったのだ、軍事上のいろいろな約束はしたのだ、条約上の義務は負ったのだ、しかし憲法違反をしておるのじゃないというような御議論に変わったかのように受け取れる。この点は非常にあいまいでありますが、この点をまず、相互防衛援助協定日本軍事力増強義務日米の間に条約上負ったものかどうかということについて、まず明瞭に御答弁外務大臣にお願いしたいと思います。
  18. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知通りMSA協定第八条でありますけれども防衛力の問題に関して「自国政治及び経済の安定と矛盾しない範囲内でその人力、資源、施設及び一般的経済条件の許す限り自国防衛及び自由世界防衛力発展」のために寄与する、こういうことが書いてあるわけであります。従いまして、日本としては、憲法範囲内において、また日本経済的社会的な事情範囲内において、自主的に決定をいたして参るわけでありますから、その限りにおいて特別の意味を持っているものではございません。しかしながら、それを有効に使わなければならない。有効に使うということは、当然、くれた方からいえば、それを有効に使ってくれと言うのがあたりまえだろうと思います。これまた、あたりまえのことを書いてある。そのあたりまえのことを義務といえば、それは義務だといえるのであります。
  19. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 あたりまえのことを言っただけで、あたりまえのことを義務といえば義務だ、しかし義務じゃないのだ。何を言っておられるか私には捕捉しかねます。あの条約の当時は義務であることをひた隠しに隠さなければならなかったせいか、義務でないということをあくまでも言い張ってこられた。しかるに、最近新安保条約ができて、これでいよいよ問題があらわになる。過去数年間の間に、その事実が、軍事力増強を大胆にしかも恥知らずにやった、そのことがあまりにもあらわになってきつつあるために、今はその程度のことをやることが義務だといえば義務とも申せましょうというような、非常にあいまいな言葉に濁し始めてきておられるのですが、条約として、条約上これが義務であるのかないのか、そこのところをもう一ぺん明瞭にお答えを願いたい。
  20. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 当然のことを、日本がたとえば新しく何か特別な義務、しかもそれは日本が制約された義務を負うという意味においては、日本自分でもって自分防衛力を決定するのであります。そうして、それをどういうふうに年次的に計画していくとか、そういうふうなことは自分自身がきめるわけであります。でありますから、これは独立国家として当然自分がやらなければならないことをやるのであります。それを、何か条約上の義務でもって、あれはこうしろ、これはこうしろ、こうしなければならぬというような特段の義務を負っておるわけではございません。日本が当然やることを約束しているのであり、その約束を、それを義務といえば義務であるということを申し上げたのであります。
  21. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 当然やるべきことをやっていても、当然やるべきことかどうかということ自体憲法第九条違反の問題がありますが、今はかりにそれを論じないとしても、当然やるべきことを日本が独自にやればいいじゃないか、独自にやっているにすぎないのだというなら、問題はないのですが、独自でなくて、いかにアメリカに強要され、あるいはアメリカの指示、指導に従って行なわれているかということは、後ほど一つ一つの実例をあげながら詳しく論及をして参りたいと思いますが、とにかく日本がやることをアメリカとの間に約束をしているのでありますから、これは条約上は義務と言わざるを得ない性格のものではないのか。  しかも、問題は、日米相互防衛援助協定のときには一年間でありますから、年々の問題としてこの問題を考えていけばよかった。ところが、この度はその義務がさらに非常にはっきりなってきて、これは申し上げるまでもなく、日本武力攻撃に抵抗する能力を維持発展させなければならない、こういうことを非常に明確にしてきている。これは軍備は拡張をしますということを日米相互約束し合ったことにほかならない。そういう意味では、防衛力増強義務として今度は非常に明確に、しかも長期間にわたって約束をし合った。義務として、しかも長期間にわたって約束してしまっているということが問題であると思うのでありますが、この点はどういうふうにお考えになりましょうか。
  22. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本自衛をするということ、またその自衛に対する能力を維持し発展さしていくということは、これは先ほど来申し上げているように当然なことでございます。そこで、今度の安保条約においても、お互いに助け合っていくという仲でありますれば、当然お互いの立場として、自分たちがそれぞれの自分たちの国のそうした防衛に対する能力を維持していく、あるいは発展さしていくということ自体は、私はこれは当然なことだと思うのであります。従って、もしそうした条約を作りますと、相手がそういう考え方を全然持っていないという国とはこういう条約が作れないのは、これは当然でありまして、お互いにやはりそうした防衛能力を持っていくからこそ初めて、こうした条約ができ得るわけであります。そういう意味において、われわれは、日本としてもアメリカとしても、お互いに現在の事情においては、アメリカ側は集団的及び個別的自衛権日本としては個別的な自衛権を発動し得るような、それに対する準備というものをし合うということの決意を表明していかなければこの新条約は成り立たぬことは、これは当然でございます。  ただそれの範囲というものは、過日来申し上げておりますように、それぞれの国の経済的な具体的ないろいろな事情によってその国自身がきめていくわけであります。しかしながら、防衛的な能力も持つことは必要ないというふうな観念でその国の人があっては、お互いのこうした条約が結べないのは当然だと、こう考えます。
  23. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 防衛力軍事力として、しかも、近代兵器原子兵器中心にした防衛力として、さらにアメリカと共同して、合同作戦のもとに持つべきかどうかということについては、いろいろ意見があるし、私たちは、これはそうであってはならない、しかも、日本憲法もそのように規定をしておる、こういうふうに思うのでございます。従って、私たちは、もし憲法に忠実であろうとするならば、今やられておるような軍事力増強も、それを背景にする日米協定も、すべて憲法違反であり、従って、当然にやるべきことではない、そういうふうな政治判断のもとに、それでは日本がそういう政治方針に変え、あるいはそういう政治方向をとり、従って、そういう政策を遂行するということになれば、それは今の外務大臣お話からいえば、今度の新安保条約協定違反するものではないのだ、それは日本が自主的にきめればいいのだ、何も義務ではないのだと、こういうふうにお考えになるかどうか。
  24. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今まで申し上げております通り自衛力日本が持っていくという意思を持っていることはむろんでありまして、国民のだれもが、私はおそらく日本が侵略をされたときに、自衛力を持たないでいいという考え方国民は私はないと思います。そういう意味において、われわれは当然自衛力を持っていく意思を持っているし、これは憲法九条においても、それは排除しているものではないというのがわれわれのかたい考え方でございまして、そこで、それをどういうように持っていくかということは、先ほど申し上げましたように、経済的な、社会的な諸般の事情から見まして、そうして日本自身が決定していくことであります。この程度まで防衛力を持ってとか、持たぬとかいうような約束をこの条文でしておるわけではないのであります。でありますから、そういう意味における義務というのは負ってはおらぬ、兵力はどうしなければならぬ、軍艦をどうしなければならぬというような義務をわれわれは負っておらぬものであります。
  25. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その軍事力の数量、内容、具体的な一つ一つの問題、そういう問題について義務を負っているか負っていないかということをお尋ねしているのではない。方向として、方針として増強をしなければならないことは、条約によって義務づけられ、外部から制約をされるということになるのかどうかということを聞いている。どうも、そうでなければならないような結果になってしまっておる。ただし、それを明瞭にいうと憲法違反であることがあまりにあらわになるから、それをごまかしてしまうというのが今の御答弁じゃないかと思う。昨日の藤田委員の質問に関連する総理の答弁においても、そこのところは非常にあいまいになってしまっている。だから、それならばもっと端的に聞きますが、私たち軍事力を、日本防衛の名のもとに軍事力を持つことは憲法違反だし、しかも、それが現在のように近代戦を、原子兵器装備してまで、しかも、アメリカと共同作戦のもとにそういう軍事体制を作るということは、これはまごうかたなき明らかな憲法違反であるという態度を前提にいたしております。同時に、そこへ持っていく過程心おいては、私たちは政策的にはそれを目標にして、軍備を全廃することを目標にし、軍備の増勢をストップさせ、それを漸減の方向に持っていってこの問題を解決するというのが私たちの立場であります。そういうふうな増勢をストップする、そうして漸減に持っていくというような政策をわが国がとるとするならば、それはこの条約違反になるとお考えになりますか、何もそういうことは日本の独自の問題だというふうに考え判断をしておけばいいというふうにお考えになりますか、そこのところ明瞭にお答えをいただきたい。
  26. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 自分の国を自分でもって守るだけの意思も持ち、また自分がその守るための意思に応じて、いろいろな諸般の施設と申しますか、設備と申しますか、そういうものをしていくという意思があることは必要なんであります。佐多委員の言われますように、もう軍備は全廃だ、自分の国はもうそういう、たとえば侵略があっても、それに対する抵抗はしないんだというような立場に立って、これを漸減していくということは、私は条約の趣旨に違反するものだと思います。
  27. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その趣旨なりなんなりは別として、とにかく軍備の増強はやらないのだ、あるいはこれを漸減するのだというふうな政策をやった場合には、それは条約違反考えられますか、どうですか。
  28. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) やらないのだという意味が、どういう意味かはっきりいたしませんけれども、あるいは国際的な軍縮の取りきめがあって、もうとれ以上数量もしくはその他増強しなくともいいのだというような事態になりますれば、しかし、自衛力は、やはりその範囲内において維持していく意思があるのだということであれば、むろんそれは条約違反ではございません。しかしながら、もし何が何でもそういうものを持たないのだということになって参りますれば、当然それはこの条約の趣旨に違反しております。
  29. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それは外務大臣もよく御存じの通りに、軍縮なりなんなりをやる場合には、軍備を全面的に全廃をするということが目標で、その目標を目当てにして、どういう段階で、どういう方法で、どういう期間をかけてそこへ持っていくかということが軍縮の具体的な政策になってくると思う。従って、国連で昨年決議された軍縮決議案でも、その点は全く同じであって、全廃を目途にしながら、その段階として、どういうふうに軍縮をするかということが問題になっている。従って、それならば、そういうふうな国際的な話し合いなりなんなりと並行しながら、日本がそういう方向を打ち出していくということは、条約違反でも何でもないというふうにお考えになっているのか。それからさらに日本が独自にそれをやった場合には、条約違反であると、こういうふうにお考えになるかどうか、そこのところを……。
  30. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 世界的な軍縮が、条約の形あるいは取りきめの形でできまして、そうしてやって参ります場合には、当然これは条約違反いたしておりません。しかし、そういう取りきめもできないで、日本だけが、軍備はもう理想的に全廃すべきだ、だから自分は漸減的にそれをやるのだということであれば、この条約の趣旨に相反しております。
  31. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうなれば、昨日の総理大臣の話と完全に食い違って参ります。完全に食い違うのみならず、今お話のところで非常に明瞭なことは、国際協定によってそういうことがなされれば条約違反ではないけれども日本が独自にそれをやれば、条約違反になるということは、裏を返せば、日本アメリカとの間に日本独自にそういうことをきめられないということを条約義務づけられている、憲法はところが逆なんですから、憲法軍事力を持たない、防衛力の名であろうと何であろうと、軍事力を持たないということが憲法の規定です。その日本憲法の趣旨に従って今のような政策では困るから、軍備の増勢はストップなんだ、さらには漸減をするのだと、これがまた国際的な傾向でもあるのだというふうにして、日本が独自にそれをやることはもはやこの日米の新条約によってできなくなったということでありますから、そういう意味においては、日本が独自に自主的にそういう方向を決定することを今や制約をされている、妨げられているということにほかならないと思いますが、どうですか。
  32. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 佐多君と私どもとは立場が違うのでありますから、その意味において、今のお説が変わってくると思います。たとえば、先ほど申しましたように、国際取りきめができて、そして日本防衛あるいは極東の防衛が、逐次他と比例して日本防衛力を減らしていってもいいのだという状況になれば、これは当然減らしていいと思います。しかしながら、日本自体がそういう取りきめもできないでもって、そうして軍備をどんどん減らしていくということは、われわれの立場からいえば、それは日本が他国から侵略を受けるというような場合に対する日本国土を守りますことには相ならぬと思うのでありまして、われわれはそういう考え方は持っておらぬ、ある程度やはり防衛力はそういう状態では維持していかなければならぬという日本自身の決意を持っておるわけでございます。従いまして、それは条約日本が押しつけられたことでなしに、日本自身が国を守らなければならぬ、守るためには、また、ある程度防衛力は持っていなければならぬ、その防衛力というものは憲法第九条によって排除されないものであるということをわれわれは考えておるわけでございます。その点若干立場が違うことに相なろうと思います。
  33. 鈴木強

    ○鈴木強君 関連して。きのうの岸総理大臣の御答弁と、今の藤山外務大臣答弁では明らかに食い違います。今、前段で佐多委員が主張しております日本軍事力増強ということは、これは歴史的に見ましても、第五次の吉田内閣の当時に、当時の岡崎外務大臣はこう言っているのです。MSAを受け入れるか受け入れないかということが論議になったときの国会の予算委員会です。昭和二十七年の四月十六日の予算委員会で、MSAによる武器援助を受けるとなれば、日本は将来直接侵略に対するための防衛力増強という新しい義務を負うことになる、こういうふうに当時の岡崎外務大臣ははっきり答弁している。従って、MSA協定締結することによって、日本はこういう義務を負ったということですね。第五次吉田内閣の岡崎外務大臣ははっきり言っている。自由民主党内閣で今日その政策は継承されておるのでしょう。しかもあなたは、三十三年六月にダレスさんと会っておる。そのときにこの新安保条約改定について、相互防衛的なものにしようという約束をして、その中にも岡崎さんの言われたような趣旨を話されていると思う。従って、第三条のバンデンバーグ決議を取り入れた自衛力の維持発展ということは、少なくとも日本が現在より以上に自衛力を維持するか、ないしは発展さしていくということは義務づけられているのですよ。ところが、きのうは総理大臣がこう答弁したのですね。日本が、日本自身がたとえば自衛力というものを維持発展していくというか、表現は別としても、そういう気持を持っておれば、かりにその年度によって自衛力を減少してもこれは第三条に違反しない、こう言っておる。これは私は明らかにおかしいと思う。こういう問題はどうか一つ率直に国民にやはり知らしてもらいたいと思うのです。総理大臣の言われていることと、外務大臣の言っていることとは食い違いが出てきておる。これはおそらくきのう新聞にも出ておりますように、そこにすわっている赤城長官もこの点については、私はやはり防衛庁内部の問題としても出ていると思うのです。私は新聞でけさ見たんです。こういうふうに全世界が軍縮を全部やって、そして世界的に軍縮をするという状況が来たときに、それはあるかもしれない、あるかもしれないと佐多委員も言っているように。そうでないならば、明らかに第三条によって、日本は維持発展義務づけられているのですよ。だから、日本自分自衛力を拡大するということを思っておれば、実際には減らしてもいいんだという、そういう答弁国民をまどわすもはなはだしいですよ。そういう理屈は私は成り立たないと思う。維持発展ということは、減少ではないです。漸減ではない。これは一つ、岸総理大臣はきょう来ておりませんけれども、明らかに食い違いがあるので、その点は政府の統一解釈をやはりする必要があると思う。あなた方の閣僚の中でも違うと思う。もうちょっと相談をしてゆっくりと、間違いないところで一つ答弁してもらいたい。
  34. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 総理の言われたことと、私の申し上げておりますことが、そう私は食い違っているとは思っておりませんが、ただいまお話のありましたように、第一、自衛力を持って、そしてみずからを守るという意思を持ってなければこれはいけないと思います。これは当然のことだと思います。そしてそれに対する努力をしていくという気持もなければならぬのであります。しかし、それをどういうふうにやっていくかということは、たびたび御説明申し上げておりますように、社会的な経済的な事情による、従って、総理にいたしましても、今御指摘になったように、年々どうするかという問題についてしばられておるわけではない、ですから、あるときは予算が多くなる場合がありますし、あるときは少なくなる場合もありましょうし、それはそういうことまで約束されて義務づけられているものではない、そういうことを総理は申したのだと思います。
  35. 小林英三

    委員長小林英三君) 簡単に。
  36. 鈴木強

    ○鈴木強君 そこのところが、最後のところがよくわからないのですよ。日本日本を守る自衛力を、日本自衛するだけの力を持つんだという考え方を持っておれば、実際には予算を減らしてもいいというような、今の自衛隊の力というものを減らしてもよろしいのだということが私にはわからないのですよ。少なくとも第三条においては、維持発展をするということが、これは憲法ということはついておりますが、はっきりあるのですから、少なくとも、あなたの言っているのは、この第三条からいうと協定違反になるのです。維持発展するということが義務づけられておるにもかかわらず、そう思っておれば、日本自分の国を守るということを考えておれば、減らしてもいいというようなことはこの条約からいったら違反ですよ。そういう解釈は出てきません。これは赤城防衛庁長官にも、この際所見を承っておきたいと思うのです。これは藤山さん、もう一回、これは詭弁ですよ、あなたの言っていることは。そんなばかなことはない。
  37. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) つまり鈴木委員の、いわゆる漸減ということが問題だと思います。意思を持っているからということは当然なことだと思います。自衛力を持っていくということは。しかし、漸減ということが、言われておるように、ゼロにするというようなことでは、ほんとうに自分の国を自分で守る意思を持っているとは言えないのであります。でありますから、そういうことであれば、その漸減というものはそういう意思を持ってないということになるのであります。
  38. 鈴木強

    ○鈴木強君 漸減ということは、漸次減らすということだ。なくなすということではないです。あなたのゼロというのはなくなすことだ。
  39. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) しかしながら、防衛力を漸次減らすか減らさないかということは、これは先ほど来申し上げておりますように、国際間の情勢を見、また日本の立場も考えていくべき問題で、防衛意思があって、そしてそれが完全にできるだけ一国で守られることが一番必要なことであることは申すまでもないことであります。しかし、それが一国だけではなかなか今日の防衛というものはできないから、友好国と一緒になって、そして守っていくという形を考えるわけなんであります。そういう意味において漸減ということが、何とも日本経済力が非常に弱まって、もうとうてい持てないのだというようなときがありますれば、そういうことについて……。
  40. 鈴木強

    ○鈴木強君 第四条で協議をするのですか。
  41. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) それは当然協議をしていくことはあたりまえだと思います。しかし、それは、そういり事態にならぬように、われわれは日本経済力発展さしていかなければなりませんし、それは当然のことだと思うのでありまして、われわれは当然なことを当然に言っている。ただ、総理の言われましたことは、先ほど来申し上げているようなことであって、私と食い違っておるとは思っておりません。
  42. 鈴木強

    ○鈴木強君 答弁が一つ漏れていますから……。MSA協定締結当時、国会において岡崎外務大臣が、防衛力を増大していくのだということを義務づけられたということをはっきり言っておるのですね。その政策を岸内閣は継承しておられるのでしょう。そうであれは、それとの関係はどうなりますか。
  43. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) おそらく、岡崎外務大臣は、日本防衛力が不足していると考えておられたと思います。従って、当時の状況から見ても、まだまだ日本自衛力というもの自体増強していかなければならぬという考えを述べられたと思います。
  44. 鈴木強

    ○鈴木強君 防衛庁長官
  45. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 第三条で、「武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。」、これは抽象的に維持し発展させる約束だと思います。具体的にその限度をどれくらいにするかと、これは日本自体が自主的にきめていくことだと思います。そこでしからば、防衛費というものについては、やはり維持し発展させる、漸増の方針でいくのがこれは当然だと思います。しかし、その年によって、予算面において減ることもこれはあると思います。しかし、それが、さっき外務大臣の言ったように、漸減の方針で、これから逐次減らしていくということで、その年から減らしていくということであれば、これは間違っていると思います。(「それは条約違反になりますよ」と呼ぶ者あり)そういう守る意思自衛意思を放棄した漸減方針であれば、これは条約約束と違ってくると思います。しかし、その年だけの経済状況その他財政状況によって減らすということ、その年だけ減ったということであった場合には、それは決して条約違反だと、こういうふうには考えません。それから、総理が減ることがあるというふうに言われましたことは、これはお互い約束ですから、アメリカが軍縮を打ち出して、アメリカも減らすのだと、こういうことで、お互いに減らそうじゃないかというような場合もあるし、あるいは国際情勢等によって減らすような場合もある。そういう場合は、これはあり得る、こういうことで総理は答弁されたと思っております。
  46. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいま防衛庁長官は、抽象的にこの防衛力の漸増を約束したと言いますが、これまで具体的にこの防衛分担金の問題につきまして義務づけられてきたではないですか。防衛分担金を減らす場合には、その半分を防衛力増強に充てなければ、これは減らしてもらえなかったのではないですか、そうでしょう。(「その逆だ」と呼ぶ者あり)防衛力を倍にしたときに、半分減らすと。これは前に重光さんが交渉に行ったときに、その約束をさせられたわけです。それで、日本防衛力増強し、海外派兵ができないから、これを減らすことはできないと言われたのでしょう。そうして、重光さんのときから——昭和二十九年だと思います。防衛分担金は、防衛力をふやしたら——たとえば百億ふやした場合には、半分減らしてくれると、これは義務づけられたのです。それから、この三十五年度予算もそうでしょう。防衛分担金が百十一億なくなるから、それが防衛庁の予算にそっくりこれを増強の方に充てたから、それで今度の新条約違反にならない、こういうことに実際なっていると思う。過去の経験からいってもそうです。ですから、抽象的と言いますけれども、今日までは具体的にアメリカにそう義務づけられているじゃないですか。そうでなければ、分担金をそっくり削られるわけです。防衛庁の予算をふやすという義務はなくても、減らせたはずであります。ですから、抽象的じゃないのです。これはもう具体的にそういうふうに義務づけられてきておるのであって、今後もこの新条約によってそういうことが義務づけられてそういうことが裏にあるから、やはり第三条は義務づけられておると見ざるを得ない。
  47. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) それは違います。防衛分担金をなくしていくのには、防衛費を年々ふやしていったその半分ずつを減らしていくというこれは手続です。だから、ふやさなければ、防衛分担金はそのままなんです。ふやさなければそのままなんで、何もふやさなくちゃならぬということはない。ふやさないでもよいのです。そうすれば、防衛分担金は減らさないと、そういうことなんです。防衛費をふやさなければ、防衛分担金も減らさないのですから、そのままなんです。だから、減らさせようという場合には、これをふやすということなんで、それが義務ということではないのです。  それから、この第三条の抽象的ということは、私は維持発展というものを要されないと、これは強要しておるものではないのです。具体的には日本自体がやるのですから、そういう意味において、抽象的に維持発展するという原則をこれは約束したのだと、こういうふうに解釈いたしております。
  48. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 今までの質疑応答を聞いておりまして、肝心なところだけ一つはっきりした御答弁をいただきたいと思います。  佐多君が最後に外務大臣にお聞きしましたことは、自主的に軍備の縮小をするというようなことはできないのではないかと、こういう点にあったと思うのであります。それに対しまして、今外務大臣及び防衛庁長官お話を聞きますと、国際連合その他国際的な取りきめができた場合には、日本はもちろん防衛力の減少をすることができると。防衛庁長官は、アメリカが軍縮をやった場合に、話し合いの上で日本の軍縮ということは当然やれる。ただしかし、問題は、最後に残りました、日本だけが、日本の立場から、かりにゼロにするために漸減するのでなくとも、ある段階において軍縮を行なおうと、こう考えた場合には、防衛力の縮小をしようと——これは一時的であるかもしれない、一時的にかりに防衛力の縮小をしようとする場合に、これはアメリカとの関係においてできないのだと、そういうことをやれば条約違反になるのだという点が肝心だと思う。日本独自でかりに一時的に防衛力の減少をすることができるか、できないか、その点だけをお答え願いたいと思う。
  49. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) それでありますから、先ほど申し上げたように、一時的に軍縮をするのだということが、どういう意味でありますか。本年は財政上の都合があってこれ以上できないのだと、日本自身がその経済的な事情によって取り行なう、しかし景気が好転してきて、さらにすればというような立場に置かれておる、いわゆる一時的ということなのか、あるいは一時的、一時的といって、実はどんどん減らしていくというのか、そういうような面において、私は結局やはり防衛力を持つという意思の問題がやはりその裏に強く働いておると思います。でありますから、一時的という言葉が、今のように予算上の措置その他の関係で、本年はこういうふうにしなければならないのだというようなことは決して条約違反はいたしません。
  50. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今の質疑応答を聞いておりますと、日本が独自に防衛力増強を、軍事力増強をストップし漸減し全廃をしていくと、そして日本憲法に忠実にそれを実施していくというようなことは、およそ今度の条約でできなくなったのだということを非常に明瞭に主張をしておられると思うのであります。ただこの点は、また総理大臣はその点きのうあいまいな答弁をしておられますので、もっとここは明瞭に、総理大臣も同席の上に明瞭にしなければならない問題であると思いますが、私は要求をしておきましたけれども、きょうは遺憾ながら御出席がありませんので、これは、この質問だけは留保をして次の問題に移りたいと思いますが、時間がかかりますが……。
  51. 小林英三

    委員長小林英三君) 午後は一時四十五分から再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後零時四十四分休憩    —————・—————    午後二時十分開会
  52. 小林英三

    委員長小林英三君) これより委員会を再開いたします。  午前中に引き続き、質疑を続行いたします。
  53. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 午前中に、わが国をどういうふうにして守るかという問題の論議がありましたが、私たちは、わが国を守るんだと、わが国の発展を願うんだという点においては、むしろ藤山大臣、あるいは岸政府よりも、もっと非常に熱意を持っていることは申し上げるまでもありませんが、ただ守り方をどういうふうにするか、現在置かれておる日本の情勢をどう判断し、どう守るかと、どういう方法で守るかという問題で意見は分かれて参ると思うのであります。そこでどうもこれまでのやり方を見ておりますと、アメリカとの関係その他から、特に今度の新安保条約締結をされて相互防衛体制に入っていかれる。しかも、きのうおとといも非常に論議がなされたように、武力攻撃に対してどうだどいうような問題が非常に重要な問題になってきております。そこで私は外務大臣お尋ねをしたいんですが、目前にわが国の独立をおびやかしたり、あるいは国民の生命や財産を危うくするような状態が今迫っていると、そういうものがあるからこういう条約を新たに緊密に結ばなければならぬというふうにお考えになっておるのかどうか、その点を御説明願いたい。
  54. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん現在目前に何かそういうものが迫っていて、そのためにこういうことをしなければならぬのだというわけではないとは、それは当然でございます。現存安保条約というものがあるわけなんであります。われわれはそれを今回は改正して参るのであります。何にもないところに新しく安保条約というものを作るのではない。そういう意味において、目前にすぐ何か侵略が起こりそうになっておるというようなことを考えておるわけではございません。
  55. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 しかし、新たに変えられた場合に、安全がおびやかされるとか、あるいは武力攻撃があった場合とかいう、われわれがそういう問題を問えば、それは仮定の問題だしお答えできないというような、ばく然としたことをたてにとりながら、それに対処してどういう行動をするかということに対しては、条約で決定をし、具体的に軍事力増強という形で、あるいはアメリカとの共同作戦という形で具体的に進めておられる。それを見れば日本独立をおびやかすような、武力で反撃をしなければならないような脅威が迫っているというふうに判断をしない限り、ああいうものがああいう方向で改められるということはあり得ないじゃないか、その点をどう御判断になるかということです。
  56. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 独立国として、当然平時においても日本をみずから守るだけの固めはいたしておかなければならぬことは、私は当然だと思います。戦争を取り行ないたいためにこういうものをするのでなくて、総理も言われたように戦争をできるだけ避ける意味からいいましても、こういう平時の固めというものが必要であるとこういうふうに確信をいたしております。
  57. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 しかし、そういう武力攻撃をやらなければならないような、武力攻撃が迫っていて、それを反撃しなければならないような状態が迫っているというふうにはお考えにならないはずだし、そういう御答弁のようですが、それならば、今国内で非常に膨大な軍事力増強をやっておられる——これは後ほどこまかに一つずつ質問をしたいと思いまするが、一体そういう膨大な軍事力で何に対処しようとされるのか、どういうふうな仮想敵国、どういうものに対処し、どういう方法で対処しようとされるのか、その点について、これは防衛庁長官お尋ねをいたします。従って、その相手は何を考えておるのか、どういうふうな対処の仕方を考えて、ああいう膨大な、憲法を平気で踏みにじっておるような軍事力増強をやられるのか。
  58. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) よく仮想敵国、仮想敵国というふうに指摘されますが仮想敵国という考え方は、第二次大戦前ぐらいの考え方じゃないかというふうに私は思っておるのであります。世界の情勢が残念ながら東西両陣営に分かれておることは認めざるを得ないと思います。そうして、世界の軍備というものが、かつてはお話のように仮想敵国をもって、どうして仮想敵国を壊滅させるかというようなことで軍備競争をしておったことも事実だと思いますけれども、最近におきましては、国防というものは、東西両陣営において仮想敵国々設けて相手方をたたくということよりも、その軍備が頂点に達したといいますか、科学兵器の発達に伴って国防というものが、軍備というものがお互いに戦争を抑制しようじゃないか、戦争抑制力に私は変わってきたと、こういうふうに認識しておるのであります。従って仮想敵国ということでなくて、東西両陣営おのおのが戦争を抑制しよう、こういうことになってきた。従ってその陣営の中において、日本なら日本といたしましても、日本の国力、国情に応じた力をもって戦争の抑制に寄与しよう、こういうのが日本自衛のあり方だ、こういうふうに考えています。でありまするから、御承知のように第三次世界戦争というものは、まずないというふうに見ておるのは、これは常識だと思います。しかし、日本なら日本の周辺ばかりでなくて、世界におきまして、いわゆる局地的な紛争を避けなくちゃなりませんが、局地的紛争の種というものはまだ完全に除かれておらない、所所にやはり対立関係があることもこれは事実だと思います。従って局地的な紛争とか、局地戦とかということが起こらないように、そういうものが起きればこれは大きくならないうちに対処していく、こういうふうに私どもは認識しておるわけであります。
  59. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 よく局地戦争を想定し、それを抑止するために日本は対処するのだというような御説明がありますが、日本がそういう事態に当面をしたときに、それが局地戦でとどまり得ない、日本は少なくとも全面戦争になるだろうし、それを契機にして極東その他が全面的なものになるだろうし、これはあなたの言われるように局地戦にとどまらない問題であると思います。それはもっと後の方で具体的にお話を聞きたいと思いますのでそっちに譲りますが、少なくとも今お話のように考えれば、どこかに紛争が局地的にあることを想定しておる。しかもその種があるんだというふうなことでありますが、それならばその局地戦争なりその種をどこどこだ、どういう地点だ、どういう方向で、どういう問題としてそういう紛争があるというふうにお考えになっているか、それを具体的にお示しを願いたい。
  60. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) どこにそれが的確な種があるかということは非常にむずかしい問題だと思いますが、ヨーロッパで言えば東西両ドイツが対立したままで、これにつきましてのいろいろ問題があります。あるいはまた中近東等におきまして問題が起きた事実もあります。あるいはまたインドと中共との国境等におきまして問題を起こしている事実もあります。あるいはまた共産陣営と自由陣営とに一つの国が分かれているベトナムのような所もありますし、ラオスというような所もあります。あるいは台湾に問題のできた最近の事実もありますし、朝鮮も二つに分かれている、こういうような事実もありますが、それが必ず何か紛争を巻き起こすということでありませんが、紛争が起こらないという保障もないというふうに考えております。
  61. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そういう今あげられた地点、特に極東あるいはアジアにおける紛争の種というようなものをあるいはお考えになっているかもしれないが、最近の方向、傾向から言えば、そういうものがすべて武力によっては解決しないので、話し合いによって解決をしなければならぬという方向がむしろ方向としては決定的になっている。だからまずやられなければならないことはそっちの問題であって、そっちの問題をほったらかしておいて、武力解決の方法をもっぱら主眼点にしてそっちを押し進めて参る、そういうことはむしろ今われわれが好まないところの紛争を、しかもそれを武力によって、しかも原子兵器による紛争に拡大する以外の何ものでもない、むしろそういう種を作っていることになってしまう危険性があると思うのですが、その辺の最近の情勢をどう具体的に認識をされるか、これはまず外務大臣からお答え願いたい。
  62. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 国際紛争を平和裏に解決するということは、国連ができて、そうしてこの時代におきましては当然われわれが考えて参らなければならぬことはこれは申すまでもないことでありまして、日本といたしましても、今後国際紛争ができるだけ平和裏に解決するように努力して参ることは当然でございます。従いまして、われわれとしてはむろん外交上の手段方法を尽して、また国連協力して、そういう問題については努力をして参ることは日本外交の本資でございますが、しかし、日本自身独立国として生きて参りますために一応自分の態勢を整えておくということも、これは今の外交上の平和手段に訴えて、できるだけ紛争を解決する努力を並行して差しつかえない問題だと思っております。
  63. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 問題にまともに答えておらない。それは国際紛争を解決するのに国連協力しなければならぬということはこれはもうずっと一貫した態度である。ただ問題は、今言ったように、国際紛争の種があちらこちらにある。具体的にはアジアにおいては、東西南北、朝鮮にあり、あるいは南北ベトナムにあり、あるいはラオスにあり、あるいはインドその他にもなきにしもあらず、あるいは特に台湾にあるというようなお話を具体的にされるから、それならばそこの紛争の種は具体的には武力でなくして、平和的に解決するという方向に今は行きつつあるんだ、そうしてそれをむしろ日本が先頭に立って推進しなければならないときなんだ。それを日本がそっちの方をやらないで、その問題をほったらかしにしておいて、武力侵略の問題を想定しながら武力解決の方向に手段方法を考えていくということは、抑制力だと言われますけれども、抑制力にならないで結果的には激発力になるのだ。なぜ外務大臣はそれを押えて平和的な話し合いの解決の方向を進められないのだ。特にそれは中国との関係においてしかりだと思うのですが、その点はどうですか。
  64. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん今回の安保条約改定というものは、申し上げておりますように、日本自身防衛の態勢を整えることであります。極東におきますいろいろの政治上の紛争あるいは今日まで第二次世界戦争後に起こっておりますいろいろな関係というものに対して、日本が積極的に平和裏に解決するように行動しなければならぬことは当然でございます。従いまして今日まででも、歴代の内閣がその線に沿って努力はしてこられておると思います。ただしかし、日本といたしましても国際社会に復帰してまだ数年でございまして、国連に加盟いたしたのもそう長い年月の前ではございません。また日本の国力等もだんだん充実して、世界的に日本の立場が認められてくるということとおのずから平行して、やはり平和裏における解決に対しても日本が逐次やはり先頭に立つと申しますか、人後におくれないように進んで参ろうと思いまして、われわれとしてはそういうことに対して絶えず努力をして参ることはこれは日本外交の本質でございます。
  65. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 口ではそういうことを言いながら、具体的に個々の一つ一つについては軍事力増強、これで問題を押えていくのだ、そうしてそれを押止政策と称しながらそれで押えていくのだ、その方面だけに全力を注いでおるというのが今のあなた方の政策にほかならないと思う。  そこで、問題をもっと具体的にするために、それじゃ、一体第一次防衛計画なるものは、この二年間、さらに今年度が終年度になると思いますが、その間にどういうふうに進捗をし、どういうふうに実現をしたのか。これをまず具体的にお示しを願いたい。
  66. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 第一次防衛計画の進捗状況につきましては、数字的に申し上げたいと思います。  陸上自衛隊は目標といたしましては十八万を予定いたしておりまして、予備自衛官として一万五千人。ところが三十五年度末の見込み、それから予算でも要求していますが、陸上自衛官といたしましては十七万一千五百人の見込みであります。予備自衛官は一万五千人の目標に対しまして三十五年度末におきまして一万五千人の予定であります。管区隊でありますが、管区隊は六隊、その通りに三十五年度末になります。混成団は四混成団を予定しておりましたが、四混成団になる見込みであります。海上自衛隊につきましては、艦船といたしましては約十二万四千トンを目標といたしておりましたが、三十五年度末におきまして十一万五千八百四十七トンになる予定であります。また海上自衛隊の航空機は二百二十二機を予定していましたが、三十五年度末において二百十七機になる見込みであります。航空自衛隊につきましては航空機としまして千三百四十二機を正確に言えば予定しておりましたが、三十五年度末には千百十五機。飛行部隊として三十三隊予定しておりましたが、これは十四隊であります。航空警戒部隊といたしましては二十四隊を予定していましたが、三十五年度末におきましては二十四隊、こういうふうになっております。
  67. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今の数字のうちで、特に海上自衛隊——海軍は、あなた方は十一万五千トンと言っておられるし、防衛庁予算の説明のときには十三万六千トンという数字が出ていますが、これはどういう関係になっておりますか。
  68. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 今申しましたのは、雑船を含まない数であります。雑船を含むと十三万六千トンということになります。
  69. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それでは、そのうちに、特にちょっと一つ海上自衛隊——海軍の方から聞いて参ります。あなた方は憲法違反して、もうすでに海軍を作っている。海軍と私はあえて申しますが、これは今の十一万五千トン、二百十七機で、どういう敵に、どういうふうに対処するというつもりでこういうものをお作りになっているのか、その点をまず明確にしていただきたい。
  70. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 主要の港湾、海峡の防備、こういうことに任じております。また、潜航艇に対する哨戒をいたしております。それから掃海をいたしております。そして、それから外航の護衛とか内航の護衛、こういう任務についております。
  71. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 この安保条約改定をされる前に、先ほどお話の出た日米委員会をお開きになった。その第三回の日米委員会のときに、パーク作戦部長の見解だとして、それを中心にあなた方はいろいろ論議をされておるはずですが、その場合にはどういう論議になっておりますか。
  72. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 防衛局長から御答弁申し上げます。
  73. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 第三回の日米委員会でございますが、三十二年十一月二十七日に行なわれております。日本側の出席者は、藤山外務大臣、津島防衛庁長官、米国側は、マッカーサー大使及び太平洋地区司令官スタンプ大将の代理としての駐日軍司令官のスミス中将でございます。委員会におきましては、米軍の撤退状況並びに施設の返還、労務需要減少の一般状況を検討されたのであります。藤山外務大臣は、特に雇用の削減について、今後とも米国側が日本の労働事情並びに労働慣行を尊重して措置するよう要望されたのでございます。その際におきまして、マッカーサー大使から、そのちょっと前にパーク作戦部長が来日されましたので、その来日に言及して、日本地域の海上防衛問題に対するパーク部長の見解を披露した、ということに相なっております。
  74. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そのときに、パーク作戦部長を中心にした論議で、仮想敵国はどういうものだというふうに論議されたのですか。これは、外務大臣防衛庁長官、両方にお尋ねします。
  75. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日米安保委員会におきますそうした問題については、一々その内容を公開するわけには参りません。
  76. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 仮想敵国というようなことが論議されたということには、私は聞いておりません。
  77. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 日本軍事力を持たない、従って、軍事機密というものはないはずであります。だから、外務大臣が主としてこの合同委員会に出ていて、いろいろな論議をされた、その論議が前提になって安保条約改定が進められておるときに、それは話せません、ということはおかしいじゃないですか。
  78. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この種の外交は当然慣例から申しましても、その内容については、共同コミュニケに発表する以上に言及するわけには参らぬことは当然でございます。
  79. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それをそのまま発表しろとは——文字通り発表しろとは申しませんが、それならば、そういう日本海上自衛隊——海軍の作戦計画、作戦要領について、どういうふうに論議をされたか、あなたはどういうように考えられるか、それを詳しく説明していただきたい。
  80. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今申し上げたように、内容等にわたりましてお話を申し上げるわけにはいかぬことは当然で、ございまして、特に私としては、そういう方面の知識が薄いわけでありますから、十分そういうことについて記憶をいたしておりませんし、また、われわれとしてそういうことを概略でも申し上げる任務はございません。
  81. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それじゃ、まず、そのときのコミュニケを、あなた方が出されたコミュニケを全部読んで下さい。
  82. 森治樹

    政府委員森治樹君) 該当のところだけお読みいたします。「マッカーサー大使は、先般のパーク作戦部長の来日に言及し、日本地域の海上防衛問題に関する同部長の見解を披露した。」
  83. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今の簡単なコミニュケからも、はっきりしておりますが、パーク作戦部長の極東戦略、特に海軍戦略を中心にして、あなた方はいろいろな論議をされておる。しかも、それは秘密だからその内容は言えないと言って逃げておられる。わが日本は、そういう戦力を持ち、海軍を持ち、そういう意味での軍事的な、作戦的な問題を論議をされないはずの国であると思うのです。それにもかかわらず、それをやり、しかも、軍の機密であり外交の機密であるという名のもとに、口を緘して語られない。そうして、それを基礎にして安保条約改定を進めておられる。これが安保条約背景であり内容なんです。それならば申し上げますが、あのときにパーク作戦部長はどういうふうに発表いたしましたか、その発表を紹介していただきたい。
  84. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今、共同コミュニケに書いてあります以上に、私はここで詳しく記憶をいたしておりませんし、むろん、この点につきましては、防衛庁当局として、当時しばしば熱心に聞いておられたわけであります。そういうものをここで、どういう点までどういうふうに話されたか、要するに、ここに出ておりますように、日本の地域の海上防衛問題等に関してお互い意見を交換したのでございます。
  85. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) これは第三回会合に関する共同発表でありまするから、発表は一致しておるものと思います。
  86. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 私が聞いているのは、その合同委員会の前にパーク作戦部長が日本に来て日本で話をしておる。それに基づいてあなた方は論議をされた。その話なるものはパーク作戦部長自身が発表しているのだから。それを何か外務大臣は発表はいやだとか何とか、おかしいと思うのです。だからパーク作戦部長自身がどういうふうに発表したかということを、それを御紹介願いたい。
  87. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) これは直接聞いたわけじゃありませんから……、当時新聞か何かに出たものがあります。防衛局長からお答えさせます。
  88. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 私の記憶では、当時パーク作戦部長が、午餐会か何かありまして、その際に演説をされたことがあったようでございます。それ以外に発表せられたということは聞きません。その演説の内容は私は聞いていなかったのでございますが、きわめて抽象的なものでございまして、特に日本防衛に関して具体的な発言はなかったように記憶をいたしております。
  89. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならば至急に資料として出してもらいたいのですが、そのときの午餐会におけるパーク作戦部長の演説、それからそのときに外人記者団との会談をいたしております。そのときの会談に何を育ったかを正確に具体的な資料で出していただきたい。しかも非常に抽象的に言ったと言われますが、私の聞き及ぶところによりますと、パーク作戦部長が東京における外人記者団会見で話したことは、一九五八年二月、ソビエト、中国の潜水艦を極東地域において封鎖、撃滅するための対潜部隊である。これに、この対潜部隊を作ることが日本海上自衛隊の任務である、非常に具体的にはっきり言っていると伝えられておりますが、これどうお考えになりますか、防衛庁長官から。
  90. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) そのことは私承知しておりませんが、当時新聞等に出た資料をよく調べてから申し上げたいと思います。
  91. 佐多忠隆

  92. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は当時パーク大将が来まして新聞記者会見をし、そういう見解を述べたということを現在記憶しておりませんし、承知しておりませんのでお答えいたしかねます。
  93. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 あのときに、共同コミュニケにも出ておりますように、パーク海軍作戦部長の戦略構想を中心にして論議をしておりながら、そしてそれはパーク作戦部長自身がそういうことを話しておるのにかかわらず、それを白っぱくれて承知しておりませんというようなことを言いながら安保条約改定をやられるという態度がさっきから言っているようにあなた方の態度なんです。そこで、その関係の資料は詳細に御提出を願って、あとでさらにその問題を論議をいたしますが、そういう考え方に従って今お話の海上護衛と対潜作戦部隊を作るということが、今日本海上自衛隊の主要な任務であると、こう伝えられておるのですが、しかもその重点が特に潜水艦作戦に移りつつある、こういうふうに伝えられておりますが、それは事実なのかどうか、そういうことを基礎にして、大体第一次の軍事力増強計画はどういう対応の仕方、どういう対潜の仕方をすることになっておるのか、今申し上げたように仮想敵国は非常にはっきりしておる。中国、ソ連、しかもその潜水艦だという、それはパーク作戦部長が非常にはっきり言っておる。特に潜水艦を追っかける、封鎖する、撃滅する、それが日本海上自衛隊の任務である。非常にはっきりしておるのですが、従って、それらの点を現在の海上自衛隊、海軍の艦隊構成あるいは航空機の構成等で、どういうふうに実現をしておられるか、その点を詳しく説明を願いたい。
  94. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 御承知のように、日本は島国であります。潜水艦の脅威にもさらされているといいますか、こういうことに対しても相当考えなくてはならぬ立場にあります。でありますから、決してパーク作戦部長の指示とか命令とかによってではありませんが、潜水艦に対する対策を講ずることは、これは海上自衛隊の当然の任務だと思います。これは世界の海軍軍備の動向からしても、この対潜防衛能力の充実、これがなくては十分成果をおさめがたい、こういうことでもありまするし、指示とか命令とかということでなくて、海上自衛隊の整備目標として対潜防御を重点としておりますることはこれは変わりないわけであります。御承知のように潜水艦も昨年一隻作りました。ことしも予算で要求しておるわけであります。あるいはまたP2V、飛行機があります。これも潜水艦の哨戒をいたしておるわけであります。
  95. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ソ連、中国を対敵として、しかも潜水艦を掃蕩するという任務を帝びておるということは、これはアメリカ第七艦隊の一翼をになってその先端の部隊としての活動をするということが非常に明瞭なんじゃないかと思うのです。従って、その点で今ちょっとお触れになりましたが、そういうことを主要任務として艦隊の構成あるいは航空機、P2V、そういうものがこの第一次三カ年計画の間に具体的にどういうふうに増強されてきたか、それがどう推移して参ったか、その点を御説明を願いたいと思います。
  96. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) ただいまもちょっと触れましたが、昨年潜水艦を日本で一隻作りました。またP2V、対潜哨戒機等の航空機を備えております。数字的の具体的なことにつきましては事務当局から……。
  97. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) お答えを申し上げます。P2Vの対潜哨戒機は、これはアメリカから供与を受けましたものと、国産の四十二機で構成されることになっております。現在持っておりますのが昨年末現在十七機でございます。S2Fは、これは全部米国から供与を受けたものでございまして、昨年末で六十機を持っております。P2Vの方が長距離の哨戒機でございまして、S2Fの方が短距離でございます。いずれもレーダーを備え、磁気探知機を備えまして、潜水艦が浮かびました場合には船体、マストその他をレーダーに映し、また水中におきましては、下がりまして、磁気探知機によりましてその所在を発見いたしまして攻撃を加える、こういうふうなことであります。
  98. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると三十五年度末に、今言われた雑船を除いて十一万五千トン。その中に、警備艦といいますか、それと、潜水艦、そういう主たる艦船がどういうふうな状況になっているのか。それから、今の二百十七機の航空機が、内容的にどうなっているのか。そこを、もう少し詳しく御説明を願いたいと同時に、それが三十三年度から、非常に逆増して増強が行なわれてきておる。これはさっきも言いましたように、援助協定ができて飛躍的に発展をしたんでしょうが、従って、アメリカ援助がこれに金額としてどういうふうに行なわれたのか、物としてどういうふうに行なわれたのか。それから、それが全部無償であったのか、有償であったのか、そこいらの詳しい状況を、もう少し御説明願いたい。
  99. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 数次にわたりますし、こまかいことでありますので、事務当局から御説明いたします。
  100. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 昭和三十四年度末で申し上げますると、警備艦が三十七隻、敷設艦が一隻、潜水艦が一隻、警備艇十二隻、掃海艇五十隻、掃海補艇二隻、敷設艇一隻、駆潜艇九隻、魚雷艇九隻、揚陸艇三十六隻、哨戒艇十五隻、特務艇十九隻、雑船が二百十九隻。この雑船と申しますのは、港内で、はしけとか、あるいは水船でありますとか、交通艇、そういうふうなものでございます。合計いたしまして、四百十一隻でございます。  海上自衛隊の航空機で申し上げますと、先ほど申し上げましたごとく、P2Vが十七機。PV12、これはP2Vよりか古い型のやはり対潜哨戒機でございます。これは全部米国から供与を受けたものでございますが、これが八機。小型の対潜哨戒機といたしましては、先ほど申し上げました、S2Fが六十機、TBMというものが七機。水陸両用艇、これがPBYというものが一機、JRFというものが四機。練習機といたしましては、SNJ四十六機、SNB三十五機、T34一機。ヘリコプターといたしまして、S58二機、S51三機、S55三機、ベル七機。それから、貸与機といたしまして、R4D四機。連絡機といたしまして、KAL一機でございます。  海上自衛隊の艦艇について申し上げますると、三十五年度末十一万五千トンと申すのは、建造計画中のものを含んでおります。実際就役の——三十四年度末が、艦艇が十万八千九百五十一トン。そのうちで、護衛艦艇が六万九千百三十トン。掃海艦艇が一万六千九百六十四トン。海峡港湾防備艦艇が六千七百二十三トン、その他が一万六千百三十四トンとなっております。この艦艇は、初めは全部供与を受けたもの、一部旧海軍のものを掃海艇等に使っておりましたが、逐次国産の艦がふえて参っておりますが、今の数字はあとで調べて申し上げたいと思います。
  101. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今言うのは三十四年度ですね、三十四年度末の現勢力……。で、私は第二次計画との関連をさらにこれからお聞きしていきたいと思いますが、三十五年度末をとって、今のがどういうことになるかということを、もう一ぺん、主要なものについて簡単に……。  それから同時に、その今の資料はあとで資料としてさらにお出しを願いたい。
  102. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 三十五年度末を申し上げます。  艦艇が先ほど防衛庁長官おっしゃった通り計画中のものを含んで十一万五千八百四十七トン、あと護衛艦艇、掃海艦艇、港湾防備艦艇とありますが、資料で御提出をいたします。
  103. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 じゃ、それらに関連して、この艦艇と航空機、それの増強が、予算あるいは決算において、金額としてどういうふうに行なわれたか。特に三十二年度、三十三年度、三十四年度、三十五年度と、どういうふうに増強してきたか、それを御説明願いたい。
  104. 山下武利

    政府委員(山下武利君) ただいまお尋ねの艦艇の数字を今手元に持っておりませんので、後ほど資料として御提出いたしますが、御参考までに、各年度におきます海上自衛隊の予算の推移を申し上げますと、昭和二十九年度は二百億円、うち維持費が百四十三億円、増成費が五十七億円、三十年度は百九十億円、うち維持費が百十五億円、増成が七十五億円、三十一年度二百二十九億円、うち維持費が百八十億円、増成四十九億円、三十二年度二百十九億円、うち維持費が百七十九億円、増成四十億円、三十三年度二百五十七億円、うち維持費が二百十八億円、増成が三十九億円、三十四年度三百二十二億円、うち維持費が二百七十三億円、増成が四十九億円。目下提出中の三十五年度予算におきましては、総額が三百六十五億円、うち維持費が三百四十億円、増成が二十五億円、以上でございます。
  105. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今の数字を資料で出していただくと同時に、私の特に知りたいのは、先ほども申したように、艦船、航空機の分でありますから、これはこれとして特記して、一つ資料でお出しを願いたい。  今のところで、大体もう見当はつくのですが、増成が非常に高まってきておる。その中で、特にアメリカ援助がどういうふうに行なわれたのか、特に艦船と航空機、それからその前に、今示された予算とそれに対応してアメリカからの援助はそれにどのくらいの金額になっているかということをあわせて御説明願いたい。
  106. 塚本敏夫

    政府委員(塚本敏夫君) P2V四十二機につきましてアメリカ側が負担いたしましたのは約百五十五億でございます。それから艦船であります。艦船につきましては警備艦につきまして申し上げますと、これはPF型十八隻二万六千トン、それからDD型、これが二隻、三千二百六十トン、それから同じくDD型でありますが二隻、四千百トン、これはトン数はおのおの違っております。さきに申し上げたDD型は一隻、千六百三十トン、あとで申しましたのは一隻当たり二千五十トン、こういうふうな艦種であります。それからDE型、これが二隻、三千二十トン、警備艦につきましてはこういうものをアメリカから供与を受けております。以上であります。
  107. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今のあれで特にアメリカ側援助金額が艦船、航空機、特にその両方についての数字が明瞭でないのであれですが、これはもしあれでしたらあとで資料を出していただきたいですが、これも申し上げるまでもなく三十三年度から非常に増加をしておる。問題は日本のこれらに関する経費も増嵩しているが、その相当な部分が、あるいは大部分と言っていいようなものがアメリカから供与をされていることになっている。そうするとこれはアメリカの指揮命令を受ける、指示に従ってこれが運行をされている、ということはそこからもおのずから明瞭であると思うのですが、そういう意味先ほど申したように日本海上自衛隊アメリカの第七艦隊の一翼をになっておる。従ってそこから今後、あとで問題にしますが、日米合同作戦の問題になり、新安保条約の問題に発展をして参ると思います。  そこでもう一つ私がはっきり聞いておきたいのは、一体日本における海軍関係軍事基地というのはどことどこがあってどういうふうにそれが使われているのか、この点を具体的に明瞭にお示しを願いたい。これは大臣。
  108. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 横須賀に佐世保であります。アメリカの小艦艇等が入っておりますが、ときどき第七艦隊も来ることがあります。
  109. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ときどき。
  110. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) ときどき来る。
  111. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それから呉は。
  112. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 米海軍関係の基地といたしましては、今大臣のおっしゃいました横須賀と佐世保でございます。これは海上の基地でございます。そのほかに海軍の航空関係の基地といたしまして厚木と岩国がございます。岩国は海兵航空隊の部隊がおります。厚木は第七艦隊等の航空母艦が入りました際に、そこの訓練の基地に使っておるようでございます。平素も若干航空機がおるようでございます。  横須賀と佐世保はさっき申し上げました日本の雑船程度のものがおるのでございます。
  113. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 第五回の日米委員会、これはいつやられて、だれが出席して、どういうことを論じられたか。
  114. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 第五回の日米委員会は、昭和三十三年四月十四日私と津島防衛庁長官、米国側からマッカーサー大使及び太平洋地区総司令官スタンプ大将の代理としての、在日米軍司令官のスミス中将です。
  115. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ここで日本の海軍の軍事基地共用の問題を論議されたということが伝えられておるのですが、その会議の内容は言われないと言われますから、私はもうこれ以上聞きませんが、ただそれを離れてでも、今あげられた軍事基地の日米共用関係はどうなっておるんですか。これを御説明願いたい。これは防衛庁長官です。
  116. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) おっしゃる意味は、米軍の使っている基地を、自衛隊でも使うということであろうと思います。これはやはり行政協定に従いまして、相当の数を自衛隊でも使っておる。こういうことでございます。
  117. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どういうふうに、特に海軍の問題を。
  118. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 海軍の問題といたしましては、岩国をしておりますが、ここを海上自衛隊が使っております。  こまかく申し上げますと(「あまりこまかく言わなくていい」と呼ぶ者あり)横須賀の田浦地区の倉庫でございますとか、横須賀の海岸施設の一部をこちらの工作所として使っております。  岩国のほか、佐世保の一部を海上自衛隊の総監部が使っておる。向後崎の一部も佐世保の海上地方部隊が港湾本部に使っておる。倉庫にも使っておる。こういう状況でございます。
  119. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 海軍の基地あるいは施設、そういうものが日米共同で使われて、そこに合同作戦の基盤もできると思うのですが、そういうことを土台にして、一体これは海軍だけにまず限りますが、日米の間で共同の合同演習を去年からことしにかけて、去年、ことし、どういうふうに行なわれたか。
  120. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 海軍、海の方では昨年の八月日本海において日本海上自衛隊も参加いたしまして演習いたしました。
  121. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それだけですか。
  122. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 大臣のおっしゃいましたほかに、アメリカの潜水艦、わが方は先ほど申し上げました通り、ただいま一隻しか潜水艦がございません。潜水艦に対する作戦の演習等のために、米海軍と共同して米海軍の潜水艦を貸してもらってやっておるようなこともあります。掃海訓練につきまして一緒にやっておることも数回あると思います。
  123. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 去年の十月やられた合同演習は、どういう態様、どういうものが参加し、どういうものが演習の目的であるか。
  124. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 海上自衛隊の方からよく聞きませんと——今記憶しておりません。
  125. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 非常にそれは今までのあれに比べれば、長期の、大規模なものが行なわれたというふうに伝えられておる。それをしかも十月ですよ。ついこの間の……。そういうことを知らないで日本の海軍、自衛隊は合同演習をしているのですか、長官も知らない間に。
  126. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 私、よく承知しておるのです。ただ、どういう艦船がそれに参加したかという数字を問われますと、どうも私今それははっきり申し上げるだけの記憶がないのです。その点はよく覚えております。
  127. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 大臣は、先ほどはそういうものがあったことをすら言われない。それから今あったという事実を、十月ということを指摘すると今度は、いや、あったことは知っているんだけれども、内容がわからなかった。それはとぼけておられるのか、お知りにならないのか、忘れられておるのか。そういうふうな態度をもって国民をごまかしながら、この共同演習、共同作戦体制を進めていかなければならないのか。あるいはあなたがそういうことを知らないうちに、あるいは大して関心をさせられないうちに、軍が自体としてそういうものを進めているのですか。そこが非常に問題だと思う。その点はどうですか。
  128. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) とぼけているわけでもなんでもありません。私、八月と思ってたのですが、今十月というお話ですから……。
  129. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 八月は第一回の対馬沖のときですよ。さらに対馬沖だけでなくって太平洋方面において、あるいは台湾海峡方面において、しばしば大規模に行なわれておる。それがしかもお隣りの中国を非常に刺激をして、国際緊張の激化をもたらしておる。そういう非常に重要な問題なんです。それを忘れられたり、それを知らなかったりということは、もしほんとうに知らないのならば、さらに、あなたが知らないうちに、そういうことが秘密のうちに行なわれているとか、あなたに関心を持たさせないうちに行なわれているとかいうところに、重大な問題があるし、それを知りながらとぼけておられるのなら、もっとたちが悪いし、それが問題だと思う。
  130. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 知らないわけでも、とぼけたわけでもありません。ですから去年の八月に演習するときには、私も北海道で演習することを発表しております。ですから決して私は隠しておるわけでもなければ、私が知らないわけでもありませんが、そのときにどういう艦船が参加したとかいうようなことについては、私、今記憶がないということを申し上げておるわけであります。  それから、これは日本ばかりじゃありません。ソ連でも日本の近くで去年だいぶ演習をいたしております。そういうことをよく覚えておりますが、どのくらい参加したか正確な数字を、私、今記憶がないということを申し上げた。(「政府委員は、こういうときに補佐するのだ」「大臣、とぼけたようなことを言って、それはいかぬよ」と呼ぶ者あり)
  131. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そういうふうに、非常に重要な合同演習、大演習、これは十月のやつは三週間にわたるものだと言われておるのです。対馬沖のときよりははるかに大規模なはるかに意味の大きなものだったということが、言われておる。それが行なわれているのに、それを失念をしたり、そしてそのしつペい返しにはソ連もそうやっていますから、私たちがやるのは当然だというようなことを言われる。私たちに言わせれば、ソ連がやること自体がこれは不届きなんです。お互いにそういうふうに両方からあそこの海域で大演習をやる、それが両国の国際緊張を激化してついには戦争になる。そういう危険性をはらんでおるから、お互いにそういうことはやらないように、やめるように話し合いをしていくことが今やらなければならないことであって、ソ連がやっているからおれの方もそれに輪をかけてやるのだということなら危険た。そういう問題を私たちは問題にしておるけれども、どうですか。
  132. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) お話の点はよくわかります。ただ私はあまり記憶がない、記憶がないというから、ソ連もそういう演習をいたしたということの記憶を持っている、こういうことであります。(「答弁にならぬよ」と呼ぶ者あり)
  133. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 事務当局から八月の演習と十月の演習の態様を説明して下さい。
  134. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 八月の演習は私記憶ございますが、これはやはり米海軍と協力いたしまして、向こうも警備艦を出しているし、こちらも警備艦とP2Vを出しまして、あの辺で一緒に防衛の訓練をしたことがございます。  十月の演習とおっしゃいますのは自衛艦隊、自衛隊が海上でやったのもございますし、当時米軍がフィリピンから台湾方面で演習をやったことがあったように思いますが、いずれにいたしましても、台湾方面で日本海上自衛隊が演習をしたということは全然ございません。
  135. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 私が聞いたところによると、三十四年の十月、三週間にわたる太平洋沿岸の演習に日本から相当部隊が参加をしているが、特にアメリカからはアメリカの潜水艦二隻が参加をしている。しかもその演習の目的は船団護衛と潜水艦作戦、それを本格的な演習としてやっておる。こういうことがいわれておりますが、これ以上伝えられもしなければあれもしない。従ってそれはどういうふうな態様で行なわれたのかということをお聞きしているのですが、どうもらちがあきません。まだ問題がたくさんありますから、そこいらはあれしておきますが、このように日本海上自衛隊、海軍はその装備の点からいっても、あるいは基地の点からいっても、あるいは演習訓練の点からいっても、アメリカの海軍と、第七艦隊と緊密な連絡を保ちながらやっておる。しかもそれではっきりしていることは、そのほんの一翼を、しかもソ連、中国の潜水艦狩りをやるというほんの一部の任務をになわされながら育てられているということが非常にはっきりすると思うのですが、そういう意味で、一体自主性のある軍隊であるとか、あるいはさらにそういうものがあれば、戦争の抑止になるのだということが言えるのかどうか。むしろそうでなくて、さっきも言いましたように、これが合同演習をやる等々のことで軍事的の緊迫状態をもたらして、国際緊張を激化する、そういう結果にしかなっていないと思う。  それでは次に問題を移しますが、もっとそれらの点で空軍あるいは陸軍の内容を一つ一つお尋ねをいたしたいと思いますが、時間がありませんので、これは次の時間にさらにお尋ねをしますが、今ここで特に聞いておきたいのは、第一次防衛計画は今お話のような形で一応終了をするのでありますが、第二次計画、それにおいて最も主眼点を置いておられるのはどこにあるのか、特にミサイルが原子兵器をもって装備をするという態勢をどのように進めようと、どういうふうに考えておられるのか、その点を詳しく御説明願いたい。
  136. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 大へん日本自衛隊が向こうから援助を受けて主体性がないようでありますが、向こうからの援助日本の予算に比較すればごく少ないのであります。大体二百億か三百億くらいの限度であります。  それから今第二次計画においては、原子兵器のミサイルを整備する計画を立てておるのではないかというような御質問でありますが、原子兵器を使うような計画は全然持っておりません。しかし御指摘のように日本の防空というような点から、ミサイルで装備していこう、こういう計画は持っております。たとえば次期戦闘機をこの聞きめましたが、こういう戦闘機に対してのサイドワインダー、これはミサイルでありますことは申し上げるまでもありません。サイドワインダーを装備すると、こういうことであります。あるいはまた今度の予算でもお願いしておりまする警備艦にターターを据えて、地対空——船から空に対するミサイルを装備する、こういう計画も持っていますし、あるいはまた地対空の関係で、ナイキ・アジヤックス——これは原子核をつけることはできないミサイルでありますが、その訓練のために自衛隊員を派遣する、こういうふうな計画を持っております。とにかく航空機、有人機にかわるミサイルというようなことにもなっていますので、そういう装備は研究もし、だんだんそういうふうに移行していくという計画は持っていますけれども、それが原子核を据えつけるとか原子兵器に移行する、こういう計画は全然持っておりません。また第二次計画につきましては、実は三十五年から四十年までの六カ年計画を立てようとしておるわけでありますが、予算の都合その他で三十五年が予算の審議を願うことになっておりますので、三十六年から四十年までの五カ年計画を立てようということで、目下検討作成中であります。まだ国防会議その他に諮っておりませんが、検討中でありまするので詳細はまだ申し上げる段階にいっておりません。
  137. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今防衛庁長官は第二次防衛計画がミサイル化を中心に行なわれておるということをおっしゃったと思うのですが、私は注意深くそう言っておるつもりでありますが、ミサイル化、従って原子兵器化なんです。これがすぐ私はそれが即核武装だとは申しません。しかしミサイル化するということは原子兵器装備をやるということであり、それはさらに必然的に核装備に転化をするということを言っておるので、少なくともミサイル化されておる限りは、これは原子兵器をもって装備がなされておると言って差しつかえないのだと思うのです。これはさらにあれしますが、しかしそこでもあなたもおっしゃっておるように、はっきりなっておるのは、たとえば空軍に対しては、特にロッキードに対してサイドワインダーを装備をされる。あるいはこれは陸軍になるのでありますか、ナイキ・アジャックスを使われる。このためにはアメリカにまで大部隊を派遣をされる予定だということが言われておる。それから問題になりました海軍ではターターを装備をされる。さらにそれにとどまらずホークになりボマークになる、というようなことも予想をされる。そういうことは取りもなおさずこれは原子兵器化、原子兵器で武装をしておるということにほかならないと思うのです。  そこでもう一つお尋ねをしますが、その最も端緒的な問題であった、問題のエリコンはどういうふうになっておるのかエリコンはどれくらいの金を使って、いつどうやって入れてから、どうなったのか、その点についての詳しい御説明をお願いしたい。
  138. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) エリコンは開発試験用に買いましたが、日本で開発もできまして、去年の何月でしたか、実験ができる程度まで進んでおります。
  139. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 エリコンについてもっと詳しくこれは事務当局でいいのですが、性能、内容、その経費をどうしたか、どこから買ったか、特にそれを売り込んだのはだれか、その点を詳しく御説明願いたい。
  140. 塚本敏夫

    政府委員(塚本敏夫君) エリコンの誘導弾につきましては、三十三年の十月以降、技術研究本部の第一研究所でありますが、ここで組み立て調整を行ないまして。土浦、習志野等で地上におけるところの総合試験、核機能部品の調査試験、詳細な部品の調査、それからロケット・ニンジンの試験、誘導装置の電波試験、回収装置の試験、こういったいろいろな試験を実施いたしたのであります。で、地上におきますところの主要な調査研究はまあほとんど終了いたしまして、目下成績の整理中でありますが、誘導兵器としての幾多の貴重な資料が得られたのであります。電子工業とか機械工業、そういった面の材料工業等の分野において、非常に貴重な資料を得たと思っております。ただ射場の関係で実射がまだできておりませんので、早く実射をやりたい、かように考えております。これはスイスのエリコン社から輸入したのでありまして、だれから売り込んだというものではありません。こちらがいろいろ調査いたしまして、これが今後わが国の誘導兵器として調査研究の必要がある、ということで選んだものであります。
  141. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 だれから売り込んだというようなものでありません、というふうな白ばくれの仕方ですが、それじゃ外務省にお尋ねをしますが、ハインリッヒ・スターマー、この名前を聞かれたらあなた方はどきっとされるのじゃないかと思うのです。どうですか、御記憶ありますか、外務大臣。ハインリッヒ・スターマー。
  142. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 戦争中にいたドイツの人であったかと思いますけれども、はっきりは覚えておりませんが。
  143. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 もう少しはっきりこれは記憶を新たにしていただきたい。申し上げるまでもなく、日独伊三国同盟を作るために、第一回は密吏として日本にやってき、第二回は覆面の公使としてやってき、そうして日独伊三国同盟を作った当人であります。しかもこれがその後ドイツの日本大使になって日本にやってきた人、これは当時のナチスの非常に辣腕をうたわれた外交官、これが……。
  144. 小林英三

    委員長小林英三君) 佐多君、発言中でありますが、時間終了いたしましたから、そのつもりで一つ。
  145. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 これが終戦と同時に戦犯になって、ニュールンベルグの戦犯裁判にかけられた。われわれとしては——このスターマーは日本の当時の東条、岸氏と日本を誤った方向に導いた当人であります。そのスターマーが戦後やってきたのですが、いつやってきて何をしたか、御説明を願いたいと思います。
  146. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は今、たぶんドイツ大使だと思っておりましたけれども、御説明によってはっきりいたしました。戦後いつやってきたかということは、実は私全然存じておりません。    〔佐多忠隆君発言の許可を求む〕
  147. 小林英三

    委員長小林英三君) 時間終了しました。終了いたしました。(「まだいい」と呼ぶ者あり)
  148. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 まだいいと言っている……。
  149. 小林英三

    委員長小林英三君) いや終了いたしました。
  150. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 これから若干……。
  151. 小林英三

    委員長小林英三君) あなたの持ち時間は終了いたしましたから、御中止願います……。
  152. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それじゃこれは別な機会に申し上げますが、はっきり調べていただきたい。はっきり調査を出していただきたい。このスターマーが戦後エリコンの軍需会社の支配人として日本にやってきて、エリコンを売り込んだのは、このかつての日独伊三国同盟を作ったスターマー大使なんですよ。しかもこのスターマーが、あなたの一番よく知っておられる経団連の防衛産業計画委員会の郷古、植村、その他の人たちを帯同をしながら、この手引きによって防衛庁に売り込まれたものなんですよ。この点についてはさらに私は詳しくお聞きをしたいと思いますので、よく調査をしておいていただきたいと思います。残念ながら時間がありませんから、これでとめておきますけれども
  153. 小林英三

    委員長小林英三君) 今、理事の御希望によりまして、あと四分追加をしてけっこうです。
  154. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、もういい、あとにします。
  155. 小林英三

    委員長小林英三君) 村山道雄君。
  156. 村山道雄

    ○村山道雄君 私は、政府が地域的な所得格差の是正という命題のもとに重要施策として取り上げられております未開発地の開発問題につきまして、具体的にはすでに実施の段階に入っておりまする東北開発の問題につきまして、政府の御見解をただしたいと存ずるのであります。  まず、この問題に対する基本的な考え方についてお伺いをいたしたいのであります。昨年経済企画庁で発表されました「国民生活の地域別分析」という調査によりますと、人口一人当たりの所得の全国平均に対します割合は、全国を十三の地区に分けているのでありまするが、南関東が一四八%で第一位、途中を略しまして、山陰が七八・一%で第十一位、東北が七六%で第十二位、南九州が五七・三%で最下位となっているのであります。同じ調査によりますると、第二次産業就業者数の全産業就業者数に対する比を計算してありまするが、全国平均が二二・八%であるのに対しまして、南関東が三一・一%で、近畿、東海にわずかの差で続いて、全国第三位であります。これに対しまして山陰が一四・二%で第一一位、東北は一三・六%で第十二位、南九州は一〇・四%で最下位となっているのであります。このことは、山陰、東北、南九州などでは産業の開発が進まず、第二次産業が発達をしておらないことが、所得水準を低くしている決定的な原因であることを端的に表わしていると存ずるのであります。  それでは、これらの低所得地域の所得を引き上げるのにはどうすればよいか。それは産業の立地条件を整備いたしまして、これらの地域に第二次産業を起こせばよいということはきまっておるのでございます。しかしそれができない。どうしてできないのかと申しますと、これらの未開発地域におきましては、貧困の悪循環が行なわれておるからであります。第一に、所得の水準がきわめて低いということは、言いかえますれば購買力が低いということであります。購買力が低いところに工場を建てましても、採算がとれませんから工場ができないのであります。第二に所得の水準がきわめて低いということは、資本の蓄積力に乏しいということであります。工場を作りたくても地元の資金が集まらないのであります。第三に、所得の水準がきわめて低いということは、租税負担力が低いということであります。これらの低所得地域で産業基盤を造成いたしますために、公共事業や公益事業を行なおうといたしましても、地方団体がその負担に耐えないということが起こっているのであります。自治庁で調査されましたところの昭和三十四年度の都道府県の基準財政需要額に対する基準財政収入の割合は、全国平均は五四・九%であります。これを府県別にいたしましたものを経済企画庁の地域別分析の十三の地域に区分して平均をいたしてみますると、南関東が七八%でやはり全国第一位であります。途中を略しまして、東北が二六・二%、南関東のちょうど三分の一でありまするが第十一位、南九州が二四・二%で第十二位、山陰が二〇・九%で最下位となっておるのであります。そこでこの状態をそのままに放置いたしますと、未開発地域は、未開発地域であるがゆえに、いつまでも未開発地域でなければならないという、いわゆる貧困の悪循環が繰り返されるのでございます。この悪循環を断ち切るのにはどうすればよいか、それは後進国開発に関します、たとえばラグナー・ヌルクセ教授などの経済学説を待つまでもなく、未開発地域に一定の短い期間の間に、思い切って多額の資本を投下いたしまして、立地条件を一斉に整備して、第二次産業を一時に起こして、地域住民の所得、すなわち購買力、資本蓄積力、租税負担力を急速に引き上げるほかに方法はないと存ずるのであります。政府昭和三十二年に東北開発促進法を制定をいたし、翌三十三年の八月十五日に閣議決定をもちまして、東北開発促進十カ年計画を決定されたのであります。そのおもなる内容は、東北地方の産業基盤を造成いたしますために、七つの公共事業及び公益事業、道路、港湾、治水、農地、漁港、鉄道、電力に対しまして兆二千四百八十億円を投資しようというものであります。  私は、政府のこの閣議決定に全面的に賛成をいたすものでありまするが、それと同時に、その実施の面において、その開発事業の規模と速度とが真に未開発地域の貧困の悪循環を断ち切るに足るものでなければならない、さように存ずるものであります。すなわち、東北開発の場合におきましては、十カ年に一兆二千四百八十億の事業を完成をするというところに意義があると存ずるのであります。政府は誠意をもってこの閣議決定の完全実施に御努力を願いたいのでありまするが、この点に関しまして佐藤大蔵大臣の御所信を伺いたいのであります。
  157. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤栄作君) 地方の団体によりまして行政水準が異なる、そのために産業の成長あるいは住民の負担、生活の状況等がいろいろの差等のあることは御指摘の通りであります。政府におきましては、この地方別の格差をなくするようにあらゆる努力を進めておるわけでございます。しかしながら、御意見のうちにありましたように、なかなか計画通りに実施できない面もございます。しかして東北開発促進法ができましてから、あるいはその補助率を引き上げるとか、あるいはその他の具体的計画を遂行して、これを実施に移すということになりましてからは、方向は非常にはっきりして参ったのじゃないかと思います。また、公共事業についてのいわゆる国の補助率を引き上げたことは、それぞれの事業を遂行する上において、従前に変わった成績をあげておる、かように思います。お尋ねのように政府といたしましては、この東北地方だけではございません。東北地方の開発促進法に付随というか、あるいは関連いたしまして、次々にそれぞれの開発促進法ができつつございますが、この開発促進法の趣旨を十分尊重し、また閣議決定をいたしました計画の遂行に、この上とも努力をするつもりでございます。しかし何を申すにいたしましても、最終的には予算との関係がございます。そういう意味において、今後とも歳入、歳出の関係を十分考えまして、予算の範囲内において、それぞれの地方の御要望にこたえて、所要の事業を完成していくように工夫して参りたいものだ、かように考えております。
  158. 村山道雄

    ○村山道雄君 昭和三十五年度をもちまして東北開発事業は第三年目を迎えようとしておるのでございます。政府が閣議をもって決定されました公共事業、公益事業に対する投資も着々実行に移されておるのでございます。その点は関係大臣各位に深く敬意を表する次第でございます。ただ、東北開発審議会におきましてもいつも問題になっておりまする事柄は、道路事業費が現在のところ計画投資額を相当に下回っておるということでありまして、この点につきまして、村上建設大臣にお尋ねをいたしたいのでございます。  閣議で決定をいたしました道路に対する十年間の総投資額は二千七百億円であります。実際の支出額は、政府から御提出いただきました資料によりますると、昭和三十三年度が百五十一億、昭和三十四年度が百八十三億、昭和三十五年度の推計が二百億でありまして、いずれも十年計画の年平均二百七十億をはるかに下回っておるのでございます。このことは、道路がすべての開発事業の先行条件となっておりまする関係上、遺憾に存ずるのでございます。しかしながら、私も、現在道路整備五カ年計画が全国的に実施されておりまして、東北開発促進計画の中の道路事業も一応はそのワクの中に入っておりますること、そうして道路整備事業費がガソリン税収入と見合っておりますることはよく承知をいたしておるのでございます。しかしながら、そうであるからと申しまして、十カ年に限った東北開発事業の中で最も先行しなければならない道路の建設ということがあと回しになるということは忍びがたいのでございます。そこで、建設大臣にお伺いいたしたいのでございまするが、所得倍増計画に伴って全国道路整備計画もさらに拡大強化する方向において再検討されるやに伺っておるのでございまするが、はたしてそのようなお考えがありますかどうか、もしおありになるといたしまするならば、その際には、この閣議決定による東北開発計画中、特に先行要件でありまする道路建設投資のおくれを取り戻すことにつきまして好意ある御配慮をいただけますかどうか、この二点につきましてお答えをいただきたいのでございます。
  159. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) お答えいたします。昭和三十二年に道路の十カ年計画を策定いたしたのでありますが、その当時の経済状態というものと、その後の非常に経済の伸張のピッチが進んでおりまして、私どもは必ずしも今日の輸送関係から申しまして、この計画で満足するものではありません。従いまして、揮発油等の伸びから勘案して、少なくともこの際、今日の経済の上昇率に合っていくような道路計画を拡大していかなければならないと思っております。東北地方の道路につきましては、三十二年に決定いたしましたのが十カ年二千七百億円、そのうち前期五カ年計画で千百億を投入しようということであります。三十五年度までの投入額は五百四十六億ばかりでありまして、これが大体パーセントにして五二%になっております。全国平均の投資額が五二・六%でありまして、全国的な平均と大した見劣りはないのであります。今後も東北地方につきましては、この計画通りに必ず実施して参りたい、かように思っておる次第でございます。
  160. 村山道雄

    ○村山道雄君 東北地方の鉄道輸送力のきわめて低くありますこと、そうしてその主たる原因が、東北の幹線鉄道が単線であることにある。これにつきましては、一昨日、米の輸送に関する質問に対しまする楢橋運輸大臣の御答弁の中でも明らかにされたところでございます。東北開発促進計画におきましては、道路と同じく鉄道輸送力の増強が開発の先行要件であるといたしまして、十カ年千五百八十億の投資を予定いたしておるのであります。そこで運輸大臣にお伺いいたしたい第一の点は、閣議決定にも東北地方の幹線鉄道の複線化と電化をはかると言っておられるのでありまするが、その複線化と電化のお見通しはどのようになっておるのでありましょうか。  第二の点は、その閣議決定の中におきまして、北海道と本州間の輸送力の増強をはかるために、津軽海峡連絡隧道について調査を行ない、その実現を促進するとあるのでありまするが、この調査はすでに開始されておるのでありましょうか。またこれはいつごろ終了するお見込みでありましょうか。以上、二点を運輸大臣にお伺いいたしたいのでございます。
  161. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 後進国というべき東北地方の開発について、鉄道が重大なる要素を占めることは御指摘の通りでありまして、ただいまお尋ねになりました東北方面の各線の電化につきましてお答えを申し上げますと、国鉄の電化十カ年計画の中に、第一期工事といたしまして、東北本線上野—盛岡間、常磐線上野—岩沼間が取り上げられておりますが、そのうち、東北本線は、現在福島まで完成し、目下福島—仙台間を工事中であります。三十六年度の上期以降に完成する予定でございます。常磐線は現在上野—平間を工事中でありますが、上野—水戸間については三十五年度下期以降、水戸—平間につきましては三十六年度下期以降にそれぞれ完成の予定でございます。  なお、東北本線仙台—盛岡間の及び常磐線の平—岩沼間につきましては、今後の予算規模あるいは工事中の区間の進捗状況等もにらみ合わせまして、逐次実施いたしたいと思っている次第でございます。  次に、東北本線の複線化の計画でございますが、盛岡以南は福島—岩沼間を除きまして、全線複線化する計画であります。現在残っておりまする区間は、宇都宮—白河間、白河—福島間、陸前山王—品井沼間、石越—有壁間、一ノ関—前沢間及び花巻—盛岡間でございます。  工事の順序といたしましては、線路容量の行き詰り等が特にはなはだしい区間から実施する計画でございまして、現在宇都宮—白河間、白河—福島間及び陸前山王—品井沼間を着工中でございます。三十五年度も、引き続き工事を実施する予定でございます。  なお、残余の線区につきましては、今後予算規模あるいは工事中の区間の進捗状況とにらみ合わして逐次着手したいと思っている次第でございます。  なお、第二のお尋ねの、本土と北海道とつなぎまする津軽海峡の鉄道調査日の状況でございますが、国鉄におきましては、昭和二十一年ごろから地上の踏査を行なってきましたが、昭和二十八年第十六国会で青森県三厩付近から渡島国福島に至る鉄道として鉄道敷設法の予定線に追加されまして、初めて本格的の調査が行なわれることになったのであります。これまで陸上部の地質調査、海底部の水深精測、岩石採取などを実施いたしまして、これらの資料に基づきまして国鉄内に設けられました津軽海峡連絡ずい道技術調査委員会におきまして審議を重ねた結果、隧道の掘さくは技術的に可能であるという結論に到達した次第でございます。  しかしながら、この隧道は世界に例を見ない史上最大の海底隧道でございますので、その後も調査を進めまして、三十三年度以降は各種の地質に対する注入、止水工法の現地の実験等をやりまして、また三十四年度は米国から音波による海底地質探査の技術輸入を行ないまして、海底の地質構造を飛躍的に明らかにしている次第でございます。  なお今後は、海底深部の地質確認のために、ボーリング、施工上の調査及び試験、新工法ないし経済的な工事を進めまして、研究を始めておる次第でございまして、縦坑を開さくいたしまして、大規模な試掘を行なう必要があると今日見ておる次第でありまして、そういうことを行ないたいと思っておるのであります。  この隧道による鉄道連絡は、現在の航送連絡に比しまして、時間の短縮並びに輸送の安全確保というようなことで、非常にまあ重要でありまするが、何しろ隧道の建設には資金が約六百億円、工事期間が十年を要する見込みであります。  以上、御報告いたします。
  162. 千田正

    ○千田正君 関連して。ただいまの村山委員の質問に対して、運輸大臣から丁寧な御答弁がありましたが、そのうち東北本線、常磐線、これに対する複線の計画と電化の問題がお答えがあったのですが、複線を先にやるのか同時に電化をやるのか、この辺が明確じゃありません。それで、複線化はいつまでにこれは完成する、電化はいつまでに完成すると、この点を明確にお答えを願いたいと思います。
  163. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) お答えいたします。ただいま千田さんのお尋ね意見は、電化は五カ年計画、複線も五カ年計画でやりまして、並行してやるということですが、多少複線の方がおくれておるということでございます。
  164. 村山道雄

    ○村山道雄君 次に、農林大臣にお伺いをいたします。  昭和二十六年に施行されました積雪寒冷単作地帯振興臨時措置法が、東北地方などの単作地帯の農業基盤の整備と農家経営の改善に尽しました功績は大なるものがあります。ところで、この法律は、昭和三十五年度末をもって効力を失なうことになっておるのでございまするが、まだ実施予定の事業がたくさんに残っておりまするし、特に東北地方では、東北開発促進法によりまする東北開発十カ年計画によりまして、目下進捗中の八郎潟の埋め立てを初めといたしまする千二百億を目標とする農地造成の大事業と並行しまして、このいわゆる積寒法によりまする温水ため池などの小規模の工事を進めることが特に必要でありまするので、施行期限をさらに延長するような御措置をいただきたいのでありまするが、これに対する福田農林大臣の御見解を承知いたしたいのでございます。    〔委員長退席、理事館哲二君着席〕
  165. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お話は一々ごもっともでございます。まだ政府といたしまして最終的な結論は出しておりませんけれども、私といたしましては、当然これは延長すべきものである、かように考えて、さようなことにいたしたいと存ずる次第でございます。
  166. 村山道雄

    ○村山道雄君 東北開発促進計画に基づきまする諸事業は、今や第三年目を迎えようといたしておるのでありまするが、東北各県の県民の所得の水準がきわめて低く、租税負担力に乏しくありますために、事業費の地元負担に堪えられないという貧困の悪循環の現象が早くも起こりつつあるのでございます。自治庁におきましてこの問題を解決いたしますために、未開発地域における建設事業に対する国庫負担割合の特例について立案をして、その実現に努力中であるという旨を、去る四日に石原国務大臣より御答弁がございました。これはまことに時宜に適したことであり、ぜひその実現に御努力をいただきたいのでありまするが、その御構想の概要につきまして、まだ政府で決定しておらない事柄でありますれば、困難な点があるかと存じますが、お差しつかえのない範囲でお示しを願いたいのでございます。
  167. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 御案内のように、東北には、東北開発促進法がございまして、赤字県その他特殊な事業に対しまして国庫負担をかさ上げ、ふやしております。その考えが近く九州にも、九州関発として行なわれるのじゃないか。さらに続いて四国、中国等各地に、こういう考え方が出てきておりますので、そこで、そういう地域的でなしに、これら困っておる後進県は、各地にあるのでありますから、むしろそういう県に一律に、こういう考え方をとっていったらどうだろうか。ことに最近、国土保全その他によりまして、公共事業がずいぶん伸びてきております。この地方負担について考えなければならない。このままの状態でいけば、最もこういう事業をやらなければならない後進県が、負担に耐えられなくて、せっかく国の予算があっても、これが消化しきれないのではないかという心配もまあ生じつつありますので、そこで未開発地域の公共事業に対しまして、国庫の負担率を少しかさ上げするという考え方のもとに、いろいろ研究をしておるわけでありまして、これは、その地方の財政力と公共事業の事業量とを比べまして、財政力が低いにかかわらず事業量が多いところを逓増的に国の負担率、——逆にいえば地元の負担の率を低める、国庫の負担率を高める、こういう構想で、いろいろ検討しておるのであります。これは、その年度の事業量を決算的に見まして、翌年度において補助の精算をする、こういう考え方であります。  まだ財政当局その他との話し合い、あるいは党における研究も煮詰まっておりませんので、でき得る限りこれが実現できまするように、せっかく今努力中でございます。
  168. 村山道雄

    ○村山道雄君 四日の委員会におきまして、この問題が論議されました際に、佐藤大蔵大臣からは、地方団体の財政調整については、まず地方交付税制度を活用いたしたいという旨の御意見が述べられたのでございます。  私は、その点は全く同感でございまして、交付税の配分につきまして、未開発補正を強化するなどの当面の財政措置として、財政調整上の御配慮をぜひお願いをいたしたいのでございます。それと同時に、私は大蔵大臣にあわせて御考慮をいただきたい三つの事柄があるのでございまして、順次それを申し述べまして御考慮をわずらわしたいと存ずるのであります。  その第一の点は、地方交付税は、本来地方団体の自主的な財源として交付されるのでありまして、国が交付にあたって条件をつけたり、その使途を制限をしてはならないということが地方交付税の税法の第三条に規定されておるのでございます。従いまして、未開発地域において具体的な建設事業を実施することを可能ならしめ、またこれを容易ならしめますためには、それに相応する財政措置をも、あわせてお考えいただきたいということでございます。  第二の点は、現行の地方交付税は、シャウプ勧告によりまする平衡交付金、すなわち、地方団体の基準財政収入と基準財政支出との差額を、すべて国が補てんをするという趣旨のものから昭和二十九年以来は変質をいたしまして、現在では、そのワクを所得税、法人税、酒税収入の一定割合に限定したものとなっております。  従いまして、東北開発計画に基づきまする十カ年一兆二千四百八十億というような大きな開発事業の地元負担を十分にまかなわせるには足りないのでございます。そこに基本的な問題があると存ずるのであります。数字的に申し上げますと、昭和三十四年度に東北六県のいただきました交付税は二百八十四億円でありまして、そのうち特別態容補正分は八億であります。自治庁で考えておられる国税補助の特例によりますると、現在の案では約三十六億が県財政にプラスする見込みのようでありまするが、現在大蔵省でお考えになっております交付税の特別態容補正の増額の案は七億円であると承っておるのでございます。両方ともいただけるのならば、これに越したことはないのでございまするが、七億の方をふやしてやるから、三十六億の方はあきらめろというのでは、あきらめがたいという次第でございます。  第三に申し上げたい点は、地域開発事業の進行中に国庫負担の割合に特例を認めておりまする事例が現存をいたしておるということでございます。東北開発促進法によりまする現在の規定は、それぞれの地方団体が再建整備団体でなくなれば、国庫補助の増率がなくなるわけでございまするが、御承知のように、北海道に対しましては、河川法の第六十七条、道路法の第八十八条等に特例が設けられておるような次第でございます。そして政府のこの北海道開発に対しまする財政的な助成政策は、すばらしい成果を上げておると存ずるのでございます。  すなわち先ほど申し上げました経済企画庁の調べによりましても、今や北海道の道民一人当たりの所得は、全国平均の九九・二%で、全国第四位であります。第二次産業の就職者の割合も二二・一%で、これまた全国第四位であります。もちろん広大な未開発地と豊富な資源を持っておりまする北海道に対しまして、その建設事業に対する特別なる財政措置を、さらに継続をされるということには私たちも非常に賛成をいたすものでございます。  しかしながら、それと同時に、私は同様の財政措置を、その住民所得も第二次産業就職者の割合も、はるかに低い、しかもほぼ同一の面積と豊富な未開発資源とを持っておりまする東北地方の、しかも特例立法に基づいて実施されつつありまする開発事業に対しても適用をしていただくということは、政府の当然考慮せらるべき施策ではないか、さように考える次第でございます。  大蔵大臣におかれまして、その地方交付税による地方団体の財政調整に、十分の御配慮をいただきますと同時に、私のただいま申し上げましたような諸点をも、十分御検討をいただきまして、自治庁長官の提案に対しまして好意のある御決定をいただきまするように、強く要望いたしまして、私の質疑を終わる次第でございます。
  169. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤栄作君) ただいままでの東北開発促進計画に基づく公共事業、これはそれぞれの大臣から所管事業についてのお話がございましたが、私はただいままでの財政投資の傾向をたどってみますと、大体計画通り遂行できるのじゃないかと思います。と申しますのは、道路、港湾、治水、農地、漁港、これらのものを総合計いたしまして、全期の投資額は二千三百三十億ないし二千四百四十億といわれておりますが、総体といたしまして今日まで、三十五年度までに支出いたします総合計額は、千百四十三億ということになっております。そういたしますと、四九・一%ないし四六・五%という、こういう数字になります。この数字が、半分にも満たないじゃないか、三年で、そうじゃないかというような感じがしようかと思いますが、この逐年金額は増加して参りますので、私は、ほぼこの計画通り遂行可能じゃないか、こういうように計画の遂行ができておりますゆえんは、最初に申し上げました東北開発促進法に基づく国の負担割合が、普通の場合よりも高くなっておりまして、一・二倍、いわゆる二割増しというところの結果だと思うのでございます。ところで、さらにこれらの二割増しで、どういう結果になっておるかといいますと、三十二年度は補助、直轄、合わせまして二十六億四千七百万円、三十三年度は三十二億八千九百万円、三十四年度は四十一億七千二百万円、それぞれ金額がふえた金額であります。そういうふうに実はふえておる。  そこで今度は、地方財政と国の補助率との関係で、ただいま御議論をせられましたように、地方団体の財政収入が非常に不足しているから、特殊な事業についての補助率を上げろ、こういうお考え方、また自治庁の方におきましても、そういう主張をしておられる、ただいま石原長官からの説明の通りであります。しかし私ども、これについて考えますのに、いろいろな考え方があります。  まず第一には、御指摘になりました交付税の配分について、十分にその効果をあげるような配分方法はないか、申すまでもなく交付税は、これは地方の自主的財源になる、いわゆるひもつきの財源ではございません。自主的の財源であるというところに交付税のよさがある、地方には地方の特殊事情があります。ただいま申し上げましたように、一つの国の計画事項もございますが、国の計画事項だけで地方の開発は十分にいかない、時には国で考えることよりも、自分の方でもっと進めたいものがある、こういうのが必ずある。たとえばもっと耕地に力を入れてほしい、あるいは治水の方はややおくれても、まず耕地が先だ、こういうような事柄も必ずあるだろうと思います。そういうことを考えてみますと、この地方が、自主的に使い得る財源をふやすことが何にいたしましても第一じゃないか、後進県で、一番困っておりますのは、どうもひもつきの財源では、地方の財政がついていかない、だから特別な事案を中央からよこすなら、財源までつけてこい、こういうことで、場合によれば、公共事業を辞退するという話も出て参りますが、本来の自主的財源がふえてくれば、そういう事態は起こらないだろう、従いまして、交付税の分配にあたりましては、ひもつきでない自主的財源をふやすように、ことに考慮を払っていただきたい、こういう意味から、第二の問題であります基準財政収入に対するこの交付税の上げ方についても、今までのような八割とか七割とかいわないで、さらに九割とか八割とかに引き上げる、これを一割引き上げることが、地方の自主的財源をふやすゆえんじゃないか、この点では私ども遺憾ながら自治庁と所見を異にしております。けれども、これはよく実情を話し合って、そうして地方の自主的財源をふやすようにすることを、まず第一に自治庁にも考えていただきたいことだ、また各関係方面においても、それを考えていただきたい、また地方団体の相互間の財源調整、これは、それぞれが自治体でございますから、非常に困難なことで、団体間の調整は困難だということはよくわかりますが、少なくとも今までとっておられるような譲与税の配分においても、こういう点を工夫していただきたいし、あるいは態容補正等についても、特に私は考慮を願いたいのであります。  今回、自治庁におきましても、この調整の面において、面積その他について、いろいろ工夫をこらしておられる。これは、一つの前進だと思います。大へんけっこうなことだと思いますが、さらにもっとこの考え方を徹底さすわけにいかぬか。たとえば金額的に申しますならば、本年も相変わらず、態容補正について三十億しか計上しておられない。昨年は五十七億です、特別態容補正に計上しておられる。少なくとも昨年程度の特別態容補正を計上されることが、私は地方の自治体に対しての財源補てんになるのではないか。国の援助を云々申すわけではございませんが、持っておられる財源を、まず、ただいま申すような方法で分けられる。これがまず第一じゃないか。そうしてまた、中央から、事業について特別なお願いをするというような場合におきまして、なお、先ほど言われますような、特殊な補助率を高めろという問題があるだろうと思います。  それらの点につきましては、従来からも申しておりますように、この特別地方の開発促進法、これなどの補助率を引き上げておるごと、これが今後再建団体でなくなれば、どうなる、こういうようなこともございますが、本来の行政水準を高めることになるわけでございますから、再建団体でない方がいい。しかしながら実態に合わないにもかかわらず、再建団体の指定を受けている方が楽な場合もある。こういう点は、自治体自身が選ばれることが望ましいことではないか。  自治体についての、いろいろ財政的な援助なり協力の問題については、ただいま申し上げるような幾多の問題があること、これも実は御指摘いたしておきます。在来から、各方面から、いろいろのお話を伺っておりまして、大蔵省の考えだけが、私正しいと申すわけではございません。これは十分関係の方面とも、よく話し合って参りたいと思いますが、ただいま申し上げるように、何にいたしましても、国、地方の税源の再分配にいたしましても、これはやはり地方財源を、もっと強固にふやす方法はないかということなんで、そうすると、まず第一に、今あります制度のうちで、ひもつきでない、自主的財源になる交付税、これをできるだけ後進県にたくさんいくような工夫で、分けていただくことが第一の先決問題じゃないか、かように強く考えております。  どうか、ただいま申し上げるような点は、私の方からも、問題として御披露いたしますので、この自治体のあり方、また国の財政補助のあり方等、あわせて十分御検討をいただきたいと思います。お話の点を無視するつもりでは毛頭ございません。
  170. 村山道雄

    ○村山道雄君 大蔵省のお話は、よく了解をいたしましたが、ただ、問題の所在は、交付税でもらいますと、ワクが非常に小さいというところにあるのでございまして、同じだけの資金が、地方団体に来るのでしたら、これは用途を指定されなくても、その方に使いますから、それでけっこうなのでございますが、先ほど申し上げましたように、交付税ですと、七億だし、片方の方でいただくと、三十六億ももらえるということになりますので、やはり大きな方をほしいというような意味合いでございます。  なお、この問題につきまして、いろいろと御検討をいただきたいと存じます。
  171. 館哲二

    ○理事(館哲二君) 持ち時間が残っていますが……。
  172. 村山道雄

    ○村山道雄君 けっこうです。
  173. 館哲二

    ○理事(館哲二君) 村山君の質疑は終了いたしました。  明日は、午前十時から委員会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時十八分散会