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1960-03-10 第34回国会 参議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月十日(木曜日)    午前十一時十五分開会   —————————————   委員の異動 本日委員青木一男君及び小平芳平君辞 任につき、その補欠として斎藤昇君及 び白木義一郎君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小林 英三君    理事            大谷藤之助君            佐藤 芳男君            館  哲二君            西田 信一君            秋山 長造君            鈴木  強君            松浦 清一君            千田  正君            大竹平八郎君    委員            泉山 三六君            太田 正孝君            金丸 冨夫君            小柳 牧衞君            斎藤  昇君            重政 庸徳君            白井  勇君            杉原 荒太君            手島  栄君            苫米地英俊君            一松 定吉君            堀木 鎌三君            武藤 常介君            村松 久義君            村山 道雄君            湯澤三千男君            吉江 勝保君            米田 正文君            荒木正三郎君            加瀬  完君            木村禧八郎君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            永岡 光治君            羽生 三七君            平林  剛君            藤田  進君            松澤 兼人君            東   隆君            島   清君            小平 芳平君            辻  政信君            森 八三一君            岩間 正男君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 井野 碩哉君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君    文 部 大 臣 松田竹千代君    厚 生 大 臣 渡邊 良夫君    農 林 大 臣 福田 赳夫君    通商産業大臣  池田 勇人君    運 輸 大 臣 楢橋  渡君    郵 政 大 臣 植竹 春彦君    労 働 大 臣 松野 頼三君    建 設 大 臣 村上  勇君    国 務 大 臣 赤城 宗徳君    国 務 大 臣 石原幹市郎君    国 務 大 臣 菅野和太郎君    国 務 大 臣 中曽根康弘君    国 務 大 臣 益谷 秀次君   政府委員    法制局長官   林  修三君    人事院総裁   浅井  清君    人事院事務総局    給与局長    滝本 忠男君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主税局長 原  純夫君    通産省重工業局    長       小出 栄一君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十五年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 小林英三

    委員長小林英三君) これより予算委員会を開きます。  委員の変更について御報告いたします。  本日青木一男君が辞任せられ、その補欠として斎藤昇君が選任せられました。   —————————————
  3. 小林英三

    委員長小林英三君) 昨日、鈴木委員から昭和二十七年初めの吉田ダレス書簡及び昭和二十五年七月八日のマッカーサー司令官書簡に関し、元首相吉田茂氏を証人として出席を求めたいとの発言がございました。  本件に関し、理事会で協議いたしましたが、まず、委員長から、できるだけすみやかに両書簡に関する経緯を解明するような資料提出されるよう政府に申し入れることに意見の一致を見ました。  以上御報告をいたします。   —————————————
  4. 小林英三

    委員長小林英三君) 昭和三十五年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三件を一括して議題といたします。  昨日に引き続き質疑を続行いたします。昨日最後に質疑されました小林委員につきましては、なお十五分質疑時間が残っておりまするが、議事進行の都合によりまして、小林委員質疑加瀬委員の次にやっていただくことにいたします。  小平芳平君。
  5. 小平芳平

    小平芳平君 昭和三十五年度予算案が審議されるようになりましてから、多くの時間が安保改定等の外交問題に費やされてきたわけでありますが、私は国内問題、特に国民生活地域的な較差をどのように解消していくか、また国民各層所得階層別較差をどのように解消して経済の総合的な発展をはかっていくか、こういうような点について御質問いたしたいと思うのでございます。といいますのは、国民大衆が非常な関心を持って見詰めていることの一つに、はたして今年度予算案によって大衆生活がどの程度豊かになるかどうか、いわゆる食の面では買物かご内容が豊かになるのかならないのか、衣類の面で、あるいは住宅の面で、はたして豊かになるのか、苦しくなるのか、こういう点が大きな関心一つであろうと思うのでございます。日本経済がすばらしい成長をとげて岩戸景気とかいわれているのでございますが、その実態を分析するとなおいろいろの問題点があります。一部の人は好景気の波に乗っても、地域的に、あるいは階層別によって非常に洩れている人たちがたくさんありはしないか。まず第一に、地域別較差実態についてみますと、経済企画庁地域別生活水準の指数というのによりますと、全国平均一〇〇に対して、最高は東京の一九〇・六、最低は鹿児島の六六・三その差は約三倍となっているのでございます。また日本赤十字社の都道府県別民力測定、この資料によって見ますと、その方法内容は違っておりますので、順位も若干違っておりますが、地域別に相当の較差があることは同じような傾向なんでございます。こうした実情等から富がますます大都市に集中していく、いなかはいよいよ貧乏になる。東京人口は去年三十万人ふえる、そのうち十八万人は各地から東京へ入り込んできた人たちである。若い働き手が抜けていくいなかはますますさびれる。大都市では過剰人口をかかえて、交通難住宅難が激しい。後進地域は赤字のやりくりに苦心している、こういう実情なのでございます。一方では所得倍増計画というのがありますが、この倍増計画とも関連いたしまして、こうした地域別較差をどのように解消していこうとして本年度予算に組まれているかどうか。まず総括的に総理にお伺いしたいと思います。
  6. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御質問地域的な所得較差、従って国民生活水準較差というものが地域的にあることは御指摘通りでございます。私どもが十年を目標として国民所得倍増計画を立てて参ります上において、この地域的な較差というものをできるだけなくして、所得国民均衡になるようにしていくという計画を目下政府において検討をいたし、それを樹立していきたいと考えております。しかしこの計画が具体的にできるのを待つまでもなく、現在おあげになったように水準が違っておりますから、これに対しては従来といえども開発地域と言われる地方に対して総合開発計画を立ててこれを推進をいたしておりますし、本年度におきましてもこの計画強化して参っておりますが、従来なかった地方におきましても総合開発計画を樹立していくように努めたいと考えております。またこういう較差ができますから、これを補う上から申しますというと、交通を、鉄道道路港湾等整備をすることによってこの較差をできるだけなくしていくことも必要であります。金融の面におきましても、これらの地域に対して特別のワクを拡大する、あるいは公共事業に対しましてもそういう地域に対しましては、交付金交付の上におきましても従来も意を用いておるのでありますが、特に本年度予算編成につきましても、そういう意味において政府として意を用いてきたわけでありまして、どうしても地域的な差を縮めていくように、均衡であるようにしていくことは、国の政治として特に考えなければならぬことである。  なお具体的な問題等について御質問があれば、所管大臣より具体的に御説明いたします。
  7. 小平芳平

    小平芳平君 経済企画庁長官にお尋ねいたしたいのでございますが、本会議で大企業中小企業較差地域的な較差をなくすことが質的な経済発展になる、そのように御答弁なさっていらっしゃるのでありますが、ただいまの総理の御答弁よりも、もっと具体的に、どういう政策が本年度、1三十五年度において盛り込まれているかという点についてお尋ねいたします。
  8. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 地域的の所得較差のそのおもなる原因は、いわゆる後進地域と申しますものは、農業を主といたしておるのであります。従いまして農業所得がやはり他の非農業産業所得と非常に較差があるのでありますからして、まずこの農業生産所得を増すということを考えなければならぬと思うのでございます。そういう点におきまして、農林省では農業振興のために、たとえば農業基盤整備費というような費用を計上いたしまして、昨年よりも一割五分以上の費用を計上したしまして、そういう農業基盤強化をはかるということもやっておられるのであります。そういうように農業振興ということをまず第一に考えなければならぬ。  それから次に考える問題は、後進地域産業を興すということが必要なのであります。そこで、たとえば東北地方であれば東北開発公庫資金の額を昨年よりも増額いたしております。また九州四国に対しましては、開発銀行地方部というものを設けまして、特別に九州四国開発のための資金を計上いたしているということで、九州四国産業を興すということを考えているのであります。なお東北地方は御承知のように東北開発促進法というものがありまして、これによって東北開発の十カ年計画を立てまして、まず前期の五カ年計画を立て、それに基づいて公共事業費を計上いたしているのであります。また九州九州開発計画を立てまして、それに基づいて公共事業費を計上いたしているのでありまして、四国四国開発促進法というものがまだできませんが、もしそれが本国会において上程されるようなことになりますれば、また四国開発審議会というようなものを設けまして、また十カ年計画を立て四国開発促進をやるというようなことで、後進地域に対しましては、東北開発あるいは九州開発あるいは四国開発というような、そういう開発事業を興しまして、そしてこの地域的の較差をなくすというような計画を立っている次第であります。
  9. 小平芳平

    小平芳平君 ただいまの国土総合開発計画でございますが、北海道四国九州あるいは首都圏整備離島振興、こういうような計画が非常にばらばらではないかということを感ずるのでございます。特にこうした開発計画というものは、選挙対策とかあるいは利権とか、そういうようなものに結びつけられているような印象を与えるのはよろしくない、もっと総合開発ということを計画的に総合的になさるような方法はないものかどうか、経済企画庁は大体そういうことをおやりになる趣旨の官庁であるかとも思いますが、その点について総理大臣にお伺いいたしたい。
  10. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この後進地域総合開発というようなことを全面的に全国的に総合し、調整していくということが必要なことは、小平委員の御指摘通りであります。従来といえども国土開発につきまして企画庁におきまして総合的な仕事に当たっております。十分各種計画についての総合性というものをとるように考えているつもりでございます。
  11. 小平芳平

    小平芳平君 総合調整費というのがあるようでございますが、これはどううい趣旨のものか、企画庁長官にお尋ねします。
  12. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) この総合調整費は、各種事業調整をはかる費用でありまして、たとえばダムを設けました場合に、そこにまた農業用水道を設けたいというような場合、その費用が計上されていない場合、そのときにこの調整費から農業用水道を設けるための費用支出する金であります。
  13. 小平芳平

    小平芳平君 ただいまの御答弁によりますと非常に総合的な、計画的な施策が行なわれているような印象を受けるような御答弁でありますが、実際には去年の伊勢湾台風の例に見ましても、同じ続いている海岸の堤防さえも計画がばらばらであって、あるいは施工の内容がばらばらであって、思いがけない被害を受けた。このようなのが実態ではないか、ということを憂えるわけでございます。今後非常にその総合的、計画的であるということに、現状に満足するようなことなく、もっとその根本的に考えていかなければならないというふうに考えるのでありますが、まあ具体的な問題に入っていきたいと思いますが、その前に大蔵大臣から経済成長率と三十五年度予算、あるいは所得倍増計画と三十五年度予算、こういうような点についてお願いいたします。
  14. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 所得倍増計画は、企画庁でただいま経済審議会にはかって最終的な案を作るという準備を、いたしております。これは企画庁中心仕事でございます。この倍増計画ができ上がりますと、さらに具体的な財政計画等長期にわたってこれを樹立することになります。ただ、ただいまの段階では、ただいま申し上げるように、その審議にかかっておる際でございますので、まだ結論を得ておりませんから、今年の予算そのものとして、いわゆる倍増計画と関連があると、かようには申し上げかねる点があります。しかしながら、この所得倍増をいたしますためには、経済成長をはかって、その拡大方向というものは大体年間七・二%というような基準で平均成長率を考えておりますが、これを達成するために必要な予算は計上いたしたつもりであります。言いかえますならば、この所得倍増計画を実施するためには、産業基盤を一そう強固にすると同時に、また物価等の安定を期する、こういう点に重点を置いて予算を編成しなければならない、これがその基礎的条件であります。そういう意味予算の規模を適正に保ちまして、いわゆる財政健全性を堅持する、同時にまた支出の面におきましては、産業基盤強化、それに役立つ各種の必要なる予算を計上した。たとえば予算編成に当たりましては、公債を発行しないとか、あるいはその他インフレ・マネーを使わない。経営財政収入によってこれをまかなう。財政投融資においても、経営原資によって計画を立てる。こういうように、いわゆるインフレ抑止方法をとり、健全財政の建前を貫いた。また支出の面におきましては、財政基盤強化という観点に立って、先ほど来お話のありますように公共事業——道路であるとか、港湾であるとか、あるいは鉄道であるとか、電信電話であるとか、こういうような面においての強化をはかる。あるいは国土保全のための治山治水事業を興す。あるいはまた産業として弱いと考えられる農業部門、あるいは中小企業の面に対しての育成強化に必要な所要資金を計上するという実は措置をとりまして、今日の経済の活況を維持することはもちろんでございますが、同時に長期にわたりましては所得倍増計画遂行に遺憾なきを期するような予算を計上したつもりでございます。
  15. 小平芳平

    小平芳平君 大蔵大臣年間成長率を七・二%と大体考えられるという点でありますが、公務員給与はずいぶんその面から考えると上げられるのがおくれているように考えられますが、この点はいかがでしょうか。
  16. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 公務員給与につきましては、公正な中立機関である人事院勧告主体にいたしまして給与適正化をはかっております。三十五年度予算では、すでに説明をいたしましたように、三十四年の七月に勧告を受けておりますので、これを中心にして実施いたしておりますが、この勧告の要旨は、いわゆる公務員給与中だるみ是正ということをいわれております。しかし、もちろん中だるみ是正だけではなくて、それに伴う初任給引き上げ等ももちろん予定されるわけであります。大体そのパーセンテージは約四%程度引き上げになると思います。それ以外にこれは毎年のことでございますが、昇給原資等所要予算も計上いたしておりますので、これらを合わしてみますと、この方も約四%程度の増になります。合計いたしますと八%近い増加率になると、かように考えます。そういうような状況でございますので、私どもはただいまの状況から見ますと一応まかない得るのじゃないか、かように考えております。ただ、昇給自身をただいま申し上げるような点に全部入れることについては、いろいろ議論があることだと思いますから、これは誤解のないように願っておきます。
  17. 小平芳平

    小平芳平君 中だるみ是正昇給とは全然別個の問題でありますから、経済成長率とそれから中だるみ是正昇給と、三つを一緒にして考えるということは、全然違うのじゃないかと思います。そうしますと、将来とも人事院勧告がなければ、経済発展しても公務員給与は上げない、人事院勧告があればその通りやると、こういうことでありますか。
  18. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もちろん必要を感じますれば、政府自身が独自にやりましても差しつかえないことであります。しかし、ただいまは人事院という公正な機関を持ち、そうして資料等も十分備えておる機関がございますので、その勧告によることが最も望ましい姿ではないかと、かように考えております。
  19. 小平芳平

    小平芳平君 このことも非常に問題があると思いますが、時間の関係で次へ行きたいと思います。  先ほど来御答弁なさっていらっしゃるように、後進地域開発には、まず第一に輸送の問題が非常に大きな問題となるわけでございますが、今まで後進地域といわれる、あるいは低開発地域といわれるには、そういうふうにいわれるだけの条件があったに違いない。これを改善していく上において、輸送は非常に大きな問題となるわけでございますが、そこでまず、最初に輸送について、今までは国鉄、要するに鉄道輸送主体となっていたのでございますが、最近の傾向としては道路あるいは航空機、こういうものの発達によって、輸送政策というものが大きく変わっていくのではなかろうかということがいわれているのでありますが、この点についての総合的な見通し、あるいは御見解についてお伺いいたしたい。
  20. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) お話通り後進地域開発ではやはり交通運輸ということが重要な役割りを演ずると思うのであります。そういう意味で、まず道路をよくするということ、あるいは鉄道を通ずるとか、あるいは航空の道を開くとかいうようなことは、これはぜひやらなければならぬ、こう考えておりますので、東北開発振興あるいは九州開発振興におきましても、特にそういう公共事業方面に力を入れてやるべきであると、こう考えておるのであります。
  21. 小平芳平

    小平芳平君 運輸大臣に……。
  22. 細田吉藏

    政府委員細田吉藏君) 大臣にかわりましてお答え申し上げます。  ただいま御指摘がございましたように、在来は、どちらかと申しますと、国内の輸送につきましては鉄道本位でございましたが、最近、自動車航空機発達が非常に著しいものがあるのでございます。そこで総合的な交通政策をどうするか、言い方を変えますと、鉄道はどういう分野をどの程度受け持つべきか、また自動車はどういう分野をどう受け持つか、航空機またしかりでありますが、新しい観点に立ちまして総合的な政策を立てる必要があるのでございまして、極力私どもの方ではそういった総合的な点から、それぞれのどういう投資をするか、どういう政策をとるかというようなことを努力いたしておる次第でございます。  なお、後進地域の問題につきましては、輸送需要があるからついていくという性格と同時に、経済発展に先行いたしまして、輸送がよくなることによって経済のおくれたところが発展するという性格、この二つのものを持っておるのでありまして、私どもといたしましては、単に輸送需要があるところを追っかけていくだけではなくて、新しい開発という観点から、こういった方面十分努力をいたし、またそういった方面に金をかけるというような点を留意いたしております。
  23. 小平芳平

    小平芳平君 建設大臣に、今一番問題になっている国土開発縦貫自動車道という中央道に関する御見解をお願いしたい。
  24. 村上勇

    国務大臣村上勇君) 未開発地域の積極的な開発をはかることは、先ほど御指摘になりましたわいゆる経済倍増等に関しまして最も肝要なことだろうと思います。従いまして、建設省におきましては国土縦貫自動車道、これについてはその計画を積極的に進めたいと思っております。
  25. 小平芳平

    小平芳平君 きのうの御答弁では、交通関係閣僚懇談会をけさやるから、その上で答弁するというような御答弁がほかの委員発言に対してなされておりましたが、そのことについて…。
  26. 村上勇

    国務大臣村上勇君) 今朝九時、交通関係閣僚懇談会におきまして、国土開発中央縦貫自動車道路建設法に基づいての中央路線決定は、満場一致決定いたした次第であります。
  27. 小平芳平

    小平芳平君 そうしますと、路線決定法律案がいつ国会に出される予定でございますか。
  28. 村上勇

    国務大臣村上勇君) 閣議決定が大体来週の火曜日と思います。審議会を開きますのが金曜日十八日、国会に提案しますのが大体二十二日ころ、かように思っております。
  29. 小平芳平

    小平芳平君 この問題についてはまた審議会審議していきたとい思いますが、その他の高速道路予定が、東北北海道中国四国九州、それぞれ法律にあるのでございますが、これらの見通しについてお願いしたい。
  30. 村上勇

    国務大臣村上勇君) 東北九州中国その他国土縦貫道路につきましては、これから調査を進めるために三十五年度予算に計上いたしている次第であります。
  31. 小平芳平

    小平芳平君 東北以外はまだ予定になっていないのでございますか。
  32. 村上勇

    国務大臣村上勇君) 東北を初め九州中国等も皆これから調査を進める予定に相なっている次第であります。
  33. 小平芳平

    小平芳平君 三十五年度予算がついているところはどこかということをお願いします。
  34. 村上勇

    国務大臣村上勇君) これらの地区には皆ついておりますが、これは詳細に申しますならば、東北縦貫道路については百五十万、九州及び中国等については九十万程度であります。
  35. 小平芳平

    小平芳平君 今申し落とした中国北海道はないわけですか。
  36. 村上勇

    国務大臣村上勇君) 中国は入っております。北海道は別に北海道開発でやっております。
  37. 小平芳平

    小平芳平君 縦貫自動車道は以上でございますが、首都高速道路公団ができまして、東京交通難緩和のために高速道路を建設しようというわけで発足しているのでありますが、東京道路の混雑の激しいことは御存じの通りであります。どうも高速道路も浜離宮の辺にちょっと骨組みができた程度で、なかなか前途ほど遠いように思えますが、この見通しについてお伺いしたい。
  38. 村上勇

    国務大臣村上勇君) 昨年発足したばかりでありまして、ただいままでは思うような進捗を見ておりません。しかしながら本年度予算におきましては、三十五億のうち約十億ほど残しております。これを大体三十田年度に繰り越しまして、三千五年度事業費百十億に加えて三十田年度は積極的に事業を遂行することに相なっております。用地問題等におきまして、ちょうど創立早々でございましたのでいささか足踏みをいたしておりますが、これは予定通り必ず三十五年度におきましては、この予算では足りないくらいに積極的に進捗することを私は期待し、また進捗するということを申し上げても差しつかえないと思います。
  39. 小平芳平

    小平芳平君 道路整備五カ年計画によって道路整備がずっと進められてきたわけでありますが、今の高速道路の建設が各地に始まり、あるいは東京にも始まるということになりますと、この道路整備五カ年計画自体が非常に意味をなさないような内容のものになりはしないかというように感ずるわけですが、この点はいかがですか。
  40. 村上勇

    国務大臣村上勇君) 高速自動車道路等は、これは要するに道路網の根幹をなすものでありまして、これはもとより肝要でありますが、しかし、すでに策定いたしました道路五カ年計画による一級国道、二級国道あるいはその他の道路、これらは皆道路網全体のバランスをとる上に策定いたしているのでありまして、この高速自動車道路によってこれらの計画がどうも大して必要がないとかというようなことは断じてありません。
  41. 小平芳平

    小平芳平君 この道路の問題は、特に国民経済の総合的な発展という点について重大な問題でありますから、先ほどの、審議会が開かれるような御発言がありましたので、非常にけっこうなことだと思うわけでございますが、こういう道路の問題、橋をかけるにしても、鉄道の問題にしても、なるべく早く、公の審議会で論議していくような方針で今後進めていっていただきたいと思うわけでございます。どうしても、住民が非常な関心を持っているわけでありますから、公の席上で、絶えず、堂々と論議を進めていくような方針でやっていただきたい。  次に、治山治水について、これも産業基盤の確立にとっては欠くべからざる問題だと思うのでありますが、特に、三十五年度におきましては、土木予算だと言われているように、あるいはまた、十カ年の計画をおよそ予定して三十五年度予算を編成なさったというふうに説明されているのでございますが、この将来の見通しについて、大蔵大臣並びに建設大臣にお願いします。
  42. 村上勇

    国務大臣村上勇君) 昨年の伊勢湾台風等の被害にかんがみまして、どうしても、国土保全のために、治水事業計画性を持ったものをやらなければいかないという見地から、政府におきましては、今回治山治水事業十年計画、あるいは、そのうちの、また緊急五カ年計画を策定いたしまして、その、いわゆる前期五カ年間四千億、後期五カ年間五千二百億、治水におきましては、そういうような計画を立てた次第であります。  私は、ただいま、土木何とかということを言われるような節もありますけれども、少なくとも、これらの五カ年計画によって緊急治水対策をやりますれば、今の災害が、少なくとも今日よりも半減するという確信をもって、その事業を進めようとしておる次第でありまして、国民を、一人でも犠牲者を出さない、人を殺さないようなことをやらなければならないと思いまして、その線に沿ってこの計画を樹立いたした次第でございます。従いまして、初年度におきましては、いわゆる三十五年度においては、その事業費は五百八十億でありますが、大体一一・五程度の伸びによって、前期五カ年計画の目的を達成することができると思います。
  43. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま建設大臣がお答えいたしましたから、それで十分だと思いますが、私も少し補足さしていただきます。  御承知のように、最近の災害にかんがみまして、国民全部が、あげて国土保全の必要を強く要望しておられます。衆参両議院におかれましてもそういう意味国土保全の必要を説かれ、治山治水の十カ年計画政府も立案いたしたのであります。ところが、この予算ができますと、一部におきまして、土木予算というふうな表現をされる。いかにもそれは、何か影が暗いものがあるかのような印象を与えるのであります。で、せっかく作りました国土保全予算が土木予算という表現によりまして曲げられることを政府としては非常に遺憾に思っております。また同時に、土木予算という表現をされる方々は、あるいはこの国土保全予算に反対の積極的な意思を持たれるんじゃないか、かくまで疑いたくなるようにも実は感ずるのでございます。今後は、どうも、土木予算という言葉はなるべく避けていただいて、国土保全予算という言葉に一つ変更していただきたい、この点を強く要望いたします。  また所得倍増論の関係から申しまして、大体過去の国土保全予算増加率等を考えてみますと、今計画しております前期五カ年計画にいたしましても、初年度の一二%程度増加率でこれを宗成し得るように考えられます。従いまして、災害復旧等について特別な支出がない限り、この予算は確保できる、かような自信を持っておる次第でございます。
  44. 小平芳平

    小平芳平君 所得倍増計画で、十年先に経済成長が倍になった場合に、このただいま見通しの十カ年計画で、四千億と五千二百億で足りるというお考えかどうか、その点について。
  45. 村上勇

    国務大臣村上勇君) 大体十年間九千二百億という事業費がありますれば、私ども予定した災害防止というものが可能になると、かように思っております。
  46. 小平芳平

    小平芳平君 次に、予算がついて、いよいよ工事にかかるとなりますと、この労務者でありますが、建設省の方では特別失対、臨時就労というふうに分けて、予算をおつけになって、そして事業にかかられるわけでありますが、またそのほかにも、もちろん請負その他いろいろあるわけでございますが、この建設省の所管する特別失対と臨時就労の実施状況についてお尋ねいたします。
  47. 村上勇

    国務大臣村上勇君) 特別失業対策及び臨時就労対策の両事業は、大体昭和三十四年度におきましては、特別失業対策事業が、国費で三十億七千八百万円、臨時就労、国費で七十七億円を実施して、失業者を吸収することといたしております。順調にこれは実施をしまして、昭和三十五年の一月末現在の進捗率は、特別失対事業で約八〇%臨時就労対策事業で八四%と推定いたしております。従いまして、年度内にはこれらは完了する考えであります。昭和三十五年度におきましては、前年度に引き続き、臨時就労対策事業、国費で八十三億円、特別失業対策事業は、これも国費で三十一億四千八百万円を実施することにいたしております。
  48. 小平芳平

    小平芳平君 今の問題に関連しまして、自衛隊でありますが、自衛隊が、災害のときに、特に昨年の伊勢湾台風では大活躍をなさって、感謝の的であったということは周知の通りでありますが、自衛隊が自衛隊法に基づいて、ふだんから国土建設に働いているようなお話でありますが、その実施状況についてお尋ねいたします。
  49. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) お話しのように、自衛隊は災害出動に出ることになっておりますので、平時におきましても規律を基礎として、災害派遣に対処するための配備訓練等をいたしております。例を申し上げますならば、地方自治団体及び関係機関——警察、国鉄、気象庁、電電公社、こういうものとの連絡を密にいたして協調いたしております。それから、災害発生の場所とか、規模、様相等をあらかじめ調べておく必要がありますので、警備知識と言いますか、そういう調査整備をいたしております。それから、災害派遣能力の向上に寄与する必要がありますので、災害状況の速達とか、地区施設隊の増強等及び装備の状況改善に努めております。三十五年度におきましては建設大隊も新たに設けることをお願いしております。施設大隊も設けることをお願いしております。また地区施設隊といたしまして五つの地区施設隊を設けて災害等に対処いたしたいと思います。そのほか器材等につきましてはヘリコプターとか装備器材いろいろありますが、そういうものの整備にも努めておる次第でございます。
  50. 小平芳平

    小平芳平君 そういたしますと、自衛隊はふだんは関係機関との連絡、それから災害が発生するおそれがあるかどうかの警備、そういうことをおやりになっておるわけですか。  それから、もう一つお尋ねいたしたいのは、災害発生のときの、ちょうど去年の伊勢湾台風の場合で申しますと、人命救助とかあるいはヘリコプターでどうするとか、そういうようなふだんからの訓練が必要かどうか、この点についてお尋ねいたします。
  51. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 先ほど申し上げることが漏れたのでありまするが、自衛隊には建設隊とか施設隊とかありまして、訓練の目的に適合する場合には土木工事等を引き受けてやっております。たとえば隧道とか道路、こういうもので地方自治体からの依頼がありますれば引き受けて、道路の啓開といいますか、開くことなどをやっております。それからまた学校等の敷地の整備等で、ずいぶん自衛隊を利用するといいますか、自衛隊に申し出がありますので、こういうこともやっております。その他日常の訓練の中に災害のときに出動して役立つ訓練が相当あるわけでございます。
  52. 小平芳平

    小平芳平君 そういたしますと、災害のときに役立つ訓練をなさるのはわかりましたのでありますが、今御答弁なさっている道路とか学校の敷地の整備などに自衛隊を使う場合は、どういうような名目で使うわけでありますか。地方長官からこの要請があればどこへでも出かけていくわけですか。そういう点について。
  53. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 御承知のように、自衛隊法の中に訓練の目的をもって土木工事等の委託を受けると、こういうことがあります。そういうことがありますので、訓練に役立つものというふうに認めた場合に、地方長官あるいは地方自治体等からの申し込みがありますときには、それを選択いたしまして出ていくわけであります。まあ非常に多いのでありますが、その全部に対して受けるというわけにもいきませんので、いろいろ事情等を調査した上で、適当と認めるところへできるだけ多く出さしておるような次第でございます。
  54. 小平芳平

    小平芳平君 次の問題に移りたいと思いますが、今度は大都市は人口が非常に過大であって、交通難あるいは住宅難あるいは排気ガスとか工場の煙突とか、そういう環境衛生も非常によろしくない。そこで東京の都議会も今盛んにそういうことを論議しているわけでありますが、おそらく大阪その他の大都市も同じような問題をかかえて、盛んに今論議をしているのではないかと思うわけでございますが、そこで大都市の人口を減らしていくような、もちろん低開発地域開発が、ひいては大都市の人口地方へ分散させる手つとり早い道であるわけでありますが、もっと積極的に、たとえば皇居とか学校とか、官庁の一部とか、こういうものを地方へ移転させるような考え方をしているかどうか。皇居につきましては皇居造営審議会が去年の十月でありますか、答申しているようでございますが、こういう点についての総理大臣のお考えをお尋ねいたしたい。
  55. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 人口が都会に集中し過ぎると、これから生じていろいろな社会上の問題等も起こっておることは、これは世界各国におきましても同様な問題に直面しておるのでありますが、特に日本におきまして、東京中心としての人口の集中があまりにも過度であるということにつきましては、いろいろな点から問題を生じておりますし、政府としてもこれが問題に関しましては、いろいろの点から検討を加えておるわけでありますが、今お話がありました皇居の問題は、すでに皇居審議会におきまして位置が決定をいたしておりまして、これを東京以外に移すという考えは持っておりません。ただ学校や病院等につきましては、これを移すということよりも、むしろそういうものが不備である地方の学校や病院なり、その他の文化的な施設、あるいは娯楽施設というようなものをなるべく完備していくというふうな処置をとっていくほかはなかろうと思います。現在東京にあるものを地方へ移すというようなことはなかなか困難でありまして、従って地方のこうした施設をなるべく充実して、東京へ来なくても、そうした教育やあるいは診療等を受け得るようにしていくということが適当であろう、こう考えております。
  56. 小平芳平

    小平芳平君 ただいまの問題は、まあそう差し迫まってすぐどうする、こうするというわけには参らないわけでございますが、それにいたしましても、最近のような東京の状態にありますと、かりに関東大震災のようなものが起きたらどうなるとか、あるいはかりに伊勢湾台風みたいな台風が東京に襲った場合にどうなるかということが最近論議されているわけでありますが人によっては、おそらく東京がまためちゃくちゃにやられてしまわなければ、とてもそういうことは手をつけないだろうと言う人もある。そうかと思うと、まあ手つとり早く、もうすぐにでも移転を始めればできるように言う人もあるわけでございますが、一つこの点は大いに研究していっていただきたいと思うわけでございます。特にまあ、たとえて申しますと、富士山麓だとか浜名湖の辺だとか、あるいはその他の少なくとも東京よりも条件のいい所はたくさんある。また東京湾埋め立てというようなことで調査もしているようでありますが、東京湾よりも条件のいい所はほかにもあるであろうというように考えるわけでありますが、一つ将来大いに研究していかなければならないと思います。  それから首都圏整備という観点から、団地が各地にできているのでありますが、これがますます交通が混雑するばかりで、長距離通勤者がふえるばかりで、どうしようもない、三十三年度で見ますると、東京駅から見て青戸団地のところまでは交通費は八百八十円、祖師ケ谷大蔵千二百円、下赤塚千百五十円、ここの団地ができたために三〇%ないし三五%、三七%というふうに、ここからの通勤者がふえておるわけでございますが、こういう状態だと、ますます交通は混雑するばかりで、いつまでたってもその解決がむずかしいのではないか、むしろ団地ができると同時に、団地を作っていくとともに、会社なり、工場なりがそこにできるようにしていかなければ、ますます困難な問題が次から次と起きてくるのではないかと、こういうふうに感ずるのですが、建設大臣にそのお考えをお伺いしたい。
  57. 村上勇

    国務大臣村上勇君) 土地造成の関係で郊外に団地を設けておりますことは御承知の通りでありますが、これは御指摘のように、私ども必ずしも賛成ではありません。従いまして首都圏整備委員会におきましては、それらの工場地帯とか、あるいは教育地帯とかいうものを今検討いたしておりますが、まだまだ、私といたしましては、都内に立体化すれば相当収容能力のある交通その他に影響のない土地が相当あると思いますから、目下それらについては十分検討いたしております。すでに、近く具体化される一万戸に近い土地も用意ができておるようでございますので、これらについては御指摘のように、私も十分交通の繁雑等を防ぐために検討いたして参りたいと思っております。
  58. 小平芳平

    小平芳平君 次に、干拓事業、埋め立て等についてでありますが、昨年の伊勢湾台風の苦い体験もありますので、堤防その他について、今後干拓事業を進めていく上については、十分農林省においても対策を練って遂行なさっていると思いますが、その点について農林大臣にお尋ねしたい。
  59. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 伊勢湾台風の経験にかんがみまして、干拓事業につきましては、特に慎重にやっていきたいと、こういうふうに今考えております。従来も干拓計画を進める場合におきましては、人命の保護ということにつきましては意を用いて参ったんでございまするが、過去の施設が必ずしもこれに十分でなかったということも発見されましたので、今度の干拓計画を進める場合、特に伊勢湾の災害復旧等につきましては、従来の復旧ということでなくて、なおその上に、いかなる台風にも大丈夫という規格を作り上げまして、本格的な復旧をいたしたい、こういう考えであります。  なお、伊勢湾台風関係ない部分におきましても、三カ年計画をもちまして、不十分な地域につきましては、かさ上げなどをいたすということにいたしまして完璧を期していく、かような考えであります。
  60. 小平芳平

    小平芳平君 ただいまのかさ上げでありますが、大阪市では戦災復興計画と、大阪港の内港化というような観点から、昭和二十一年から大規模の地盛りをしておりまして、もちろんごらんにもなっていらっしゃると思いますが、こういうような千八百坪にも上る土地が地盛りをなされておる、もうすでに八割、あるいは地域によって五割というふうな完成をみている、それこそ、もう今まで二階の窓だったところが入り口になるような大規模な地盛りをやっているわけでありますが、埋立工事、あるいは干拓に熱意をもって、将来はこの地盛りを考えていく必要があるのではないだろうか。すぐお隣の尼ヶ崎市では、ものすごく高い堤防があるのですが、その堤防でも、もうすでにあぶないから、それにまた堤防を継ぎ足すには、土台からやり直さなければならないというふうにもいっているのでありますが、そういうことについての建設大臣のお考えをお尋ねしたい。
  61. 村上勇

    国務大臣村上勇君) 大阪港の工業地帯におきまして、戦災復興と港湾改修事業とによっての埋立事業をやっておりますことは御指摘通りであります。大体現在まで土地の造成のできましたものが三百五十万坪余りできたのであります。私どもは、この非常にコストが安く、廃止によって埋め立てができたということから考えまして、今後も公共事業等によってこの廃土が出てくるところ、これらについては、十分これを活用いたしまして、埋め立てコストの安い土地を造成をいたしたい、かように思っておる次第であります。
  62. 小平芳平

    小平芳平君 あと時間がないと思いますので、簡単にお聞きいたしたいのでありますが、特に名古屋市の場合のように、高台に鉄筋コンクリートのアパートを建てる、それから街路は非常に広げて、りっぱな街路ができた。が、海岸部の低地帯の学校は木造のままであるとか、あるいは高潮のことはほとんどふだんから考慮に入っていなかったとか、こういうような実情だったと報告されているのでありますが、今後の海岸の低地帯の問題は特にかさ上げをしていく、あるいはコンクリートのアパートを建てるようにしていく、特に学校とか公会堂とか、そういうものはコンクリートでなければ許可しないというような方針でいかなければならないのではないかと思うわけであります。  そこで最後に、地域的な較差をずっと問題にしたわけでありますが、今度は同じ都市の中でも、所得階層別によって非常にその較差が激しい、まあエンゲル係数などから見ても、低額所得者、あるいは零細企業者、まあ失業者となれば問題がまた別ではありますか、そういうような階層別所得階層別較差をなくしていくような方針、方法というようなものについて最後に総理大臣から総括的な将来の政策をお尋ねしたい。
  63. 小林英三

    委員長小林英三君) 小平君、時間か終了いたしました。
  64. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御質問のように、今日いろいろな階層によりまして、所得の間に較差が大きくあります。まず企業につきまして、大企業と甲小企業の間におきまして較差が非常にある。また勤労者につきましても、大企業に勤務している人と中小企業に勤務している人の勤務状態、所得状況は違っている。また、こういう産業に従事しあるいはそれにたずさわっておるという以外に、失業者であるとか、あるいは生活保護を受けなければならないような人であるとか、あるいは病気や身体の障害のためにやれないとか、あるいは老齢のために所得が非常に悪いというような、いろいろな関係があると私は思います。一方から申しますと、産業政策として考えてみるというと、中小企業と大企業とのこの較差をどうして縮めていくかというためには、やはり中小企業自体が持っておる弱点、この企業を近代化し、また生産性を高めていくような政策をとつていく必要があると思います。これに関しましては、中小企業実態に即して、近代化の問題や、あるいは組織化の問題等を進めていくような施策をとってきております。また、勤務している勤労者の問題につきましては、やはり中小企業実態から見まして、最低賃金法の施行や、あるいは各種の動力条件の改善についての施策を進めていく必要があると思います。さらに、今申しましたような老齢者や身体の障害を受けている者であるとかあるいは大業者というようなものに対しましては、社会保障の制度を拡大していって、その所得を保障していくというふうに占えていかなければなるまいと思います。これらのことにつきまして、まだ十分ではございませんけれども、その考えを本年、三十五年度予算の中にも、それぞれその考えに基づいての予算を計上している次第であります。
  65. 小平芳平

    小平芳平君 以上をもって終わります。
  66. 小林英三

    委員長小林英三君) 次は藤田進君。
  67. 藤田進

    ○藤田進君 私はただいまから、岸総理並びにそれぞれの所管大臣に対して、建造物でいえばいわば基礎になる部分をただしたいと思います。  まず最初に、岸総理の政治の大きなキャッチ・フレーズとしては、三悪の追放というようなことを過去言われた。その後、所得倍増ということが言われております。しかし、いろいろ説明はありましたが、本年度予算その他の施策で、所得倍増の具体的第一歩というものはどこにも見られない。従って岸総理は一体わが国をどのような国に仕上げていこうとするのか、政治の根本をなす考え方というものは一体どこにその基本を置かれているのか、まずお伺いいたします。
  68. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 申し上げるまでもなく、私は、日本の国が民主国家として民主主義政治を完成することによって、個人の国民の自由と人権が尊重されて、平和な国を作り上げることがその根本の考えであります。同時に、言うまでもなく、国民生活が向上し、福祉国家が建設され、文化的国家として日本が成長していくように考えていかなければならない。その基礎は、言うまでもなく、私は、民主政治を完成することにあり、日本を平和な国として作り上げる、従ってそういう国民の福祉と文化が向上していく、こういうように考えております。
  69. 藤田進

    ○藤田進君 それでは、政治の根本というものは、人類発展史をひもといてみてもわかるように、原始社会から今日のような状態にまで発展をしてきた。外交あるいは防衛とかいろいろ言われるけれども、その根本をなすのが、憲法の第二十五条も示しているように、平和的に、そうして文化的に最低の生活の権利が保障されるんだ。言いかえれば、お互い人類の平和と同時に、最低生活を営むというところに根本があるというふうに承わりますが、それでよろしゅうございますか。
  70. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん、憲法の保障しておることを、われわれがこれを保障することは当然であります。国民のうちに最低生活すらできない者があるものに対して最低生活を保障することは当然でありますが、私の念願としては、国民をして、最低生活というようなことでなしに、豊かな文化的な高度の生活をもたらすような国を作り上げたいと考えております。
  71. 藤田進

    ○藤田進君 その具体的な方策について伺います。
  72. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私どもがそういう国民に豊かな生活を作り上げるということを念願して、実は国民所得をおおむね十年間に倍増したいということを考えておるわけであります。しかし、この場合においても、倍増計画ということがただ国民の総体において倍増されただけではいけないのでありまして、その間における、先ほど来質疑応答がありましたように、国民の各層においての所得の差であるとか、あるいは地域的な差であるとか、いろいろな問題をできるだけ合理的に調整して、そうして国民全体がその所得倍増の恩恵に浴するように、あらゆる面から施策を進めたい、かように考えております。
  73. 藤田進

    ○藤田進君 しからば、具体的にお伺いいたしますが、所得倍増という考え方は、その上下の較差を縮めて、その実質国民所得というものが国民それぞれに平均化していくという目標を立てて倍増していくと、こういうことになりますか。
  74. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国民所得倍増計画そのものの目標は、国民全体の所得を倍増することでございますが、同時に、その内容としては、今お話がありましたように、国民の各層、各国民所得をなるべく均衡のとれたものにして、現在のようなひどい較差のものを調整していくということを内容的に考えております。
  75. 藤田進

    ○藤田進君 大蔵大臣にお伺いしますが、過去十カ年間国民実質所得の漸増についてお答えをいただきたい。
  76. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 数字を事務当局から説明いたさせます。
  77. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 実質国民所得の数字につきまして、まだ三十三年までしか出ていないのですが、三十三年の指数を申し上げますると、一七〇・八であります。前年の三十二年が一六三・九、べースは大体そういうことであります。
  78. 藤田進

    ○藤田進君 十年前……。
  79. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 二十四年の数字は、指数にいたしまして八一・九であります。
  80. 藤田進

    ○藤田進君 今、総理もお聞きのように、過去十カ年の国民実質所得というものは、二十四年と三十三年の数字で見られるように、倍に余るわけであります。このような国民所得の倍増論であったのでは、決してあなたの言われるような国民生活は向上しないし、福祉国家も成り立たない。私どもはそのことを憂えるわけであります。今数字で示された過去十カ年、すでに所得は倍増、それ以上しているわけであります。こういうものとはおおむね趣旨が違うということははっきり言えますか。
  81. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど来申し上げているように、私どもは今回ほぼ十年を目標として国民所得倍増というものを計画を立てております。つきましては、過去におけるような、ただ国民の総所得において倍増したからそれでいいというような考え方でなしに、内容的にできるだけその間の較差というものをなくしていくという点に十分に意を用いていきたいと、かように思っております。
  82. 藤田進

    ○藤田進君 そういたしますと、言いかえれば、生活費、生計費は現状維持しながらその所得については倍増していくと、こういう意味でありますか。
  83. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん、私どものねらいは、先ほど来申し上げているように、国民生活水準を高めていかなければならないのであります。従って、生計費というものも当然関連してふえていく、こういうふうに考えております。
  84. 藤田進

    ○藤田進君 その生計費がふえていくというのは、インフレその他の場合ではなくて、生活内容が文化的になるということではなかろうかと思いますが、いかがですか。
  85. 岸信介

    国務大臣岸信介君) その通りに考えております。
  86. 藤田進

    ○藤田進君 公務員給与に例をとってみたいと思いますが、抽象的な議論を避けまして、岸総理も大学を出られまして直ちに農商務省に就職されていると考えます。その当時の初任給は幾らでございましたか。
  87. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 月四十五円でありまして、同時に、それに対して戦時手当として戦争中に与えられました手当が三十円でありまして、計七十五円であります。
  88. 藤田進

    ○藤田進君 私の調査も、高文合格、見習いとして月額七十五円で就職されているわけであります。この大正九年の時代と今日の物価指数とを見ますというと、結局、その後昭和九年ないし十一年の基準年次になっているときは大正九年よりやや下がっておりますからして、二〇七・七倍になるわけであります。これを岸総理が大学を出ての初任給を今日の所得に引き直してみると、少なくとも一万五千五百七十七円余になるわけであります。しかるに、現在の公務員、これに相当する六級職、人事院公務員試験にパスして、そうして官公庁に就職いたしました場合の初任給、これを御承知でありましようか。
  89. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私、正確な数字を承知いたしておりませんから、関係の人から答弁させます。
  90. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 今、大学卒業の行政の者は、三十五年は一万八百円、こういうことであります。
  91. 藤田進

    ○藤田進君 岸総理の当時の生活は、これは親のすねをかじればだれでも楽ですが、そうでなければ、決して大正九年の七十五円というのは楽なものではなかったのじゃないか。かなり苦しい生活であったろうかと思うのであります。私どももその経験を持っております。しかし、それに比べて、今大蔵大臣からも言われたように一万余、すなわち五千数百円というものが、今日の初任給において見られるように、生活を切り詰めるような実態になっている。従って、岸総理は、これは公務員生活というのは楽なものではない、相当苦しいものだという認識がなくちゃならぬと思いますが、どういうふうに思いますか。
  92. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私、正確な数字は、今大蔵大臣からお答えした通りで、そのことは私は承知はいたしておりませんけれども、しかしながら、公務員初任給の額、生活上相当苦しい立場にあるということは、現実にいろいろ初任給をもらっている公務員の諸君との接触から承知をいたしております町
  93. 藤田進

    ○藤田進君 さらに、男子の場合に、二十七、八ないし三十までの問に結婚いたしまして家庭を持つということになると、とても生活は苦しい。ことに公務員の場合、しかりであります。岸総理も子供さんはあるわけでありますが、東京の場合、二十七、八で結婚をするということはなかなか容易なことじゃない。本日、清宮の式もあるわけでありますが、とても二十四や五で、また皇太子のように、二十五、六というところで結婚などできる状態でないから、むなしく婚期を見失ってしまうというのが現状ではないかと私は思うのです。ここにおられる皆さんも、自分の生活体験として、ひしひしと感じておられると思います。結婚いたしまして、数字は別として、どれくらいかかるかということのめどは、福祉国家を論じられ、その方策を立てられようとする以上は、腰だめでどれくらい要るかということはわかるはずでありますが、どれくらい要ると考えられますか。
  94. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これもなかなか、腰だめというお話でありましたけれども、もちろん、生活のその人の環境、生活内容というようなものもありますから、見方によりましていろいろなことが言えると思いますが、数字的に腰だめでどうだということにつきましては、ちょっとお答え申し上げかねます。
  95. 藤田進

    ○藤田進君 一国の総理大臣が、国民生活状態というもののこまかなものはつかんでもらわないと、一体、結婚生活をするにはどれくらい要るだろうということが、それがわからないようでは、この間の地図のように、さっぱり所得の倍増とか何とか言われるけれども、選挙にどうしたら勝てるかということが事の動機であったとしかとれない。国民生活が苦しいからこれは何とかしてやらなければならぬ、すべきだというところから出発していないからこそ、さあどれくらい要るかわからないということになるんじゃないかと思うが、いかがですか。
  96. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これはまあ、全体の給与の、国民全体の給与の問題が、それが国家の公務員給与というものと関係をしているわけでありまして、御承知のように、一般の民間の給与との間に適当な均衡をとって今日人事院勧告がなされ、それに基づいて政府がこれをやっているわけでありまして、もちろん、これが今申しますように、生活がこれでもって非常に安定しており楽であるというようなものでないことは私もよく承知をいたしておりますが、今どのくらいの程度にこれを上げるというよう事柄を、具体的に数字的に申し上げることは私としては適当でないように思いますから、そう申し上げたわけであります。
  97. 藤田進

    ○藤田進君 それでは、わかってはいるけれども言うことをはばかるという趣旨でございますか。
  98. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん見方で、私に全然見当がつかないという意味じゃございませんけれども、具体的にそれが数字に表わして幾らくらいが適当であろうとか、幾らぐらいが少なくともなけりゃいかぬということを私はこの場合申し上げることが適当ではないと考えるから、差し控えたいと、こういう趣旨でございます。
  99. 藤田進

    ○藤田進君 諸外国の例についてでありますが、諸外国の公務員給与等について、給与担当の大臣から民間と公務員との較差といったようなところから一つお答えをいただきたいと思います。
  100. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) 諸外国の例は、ちょっと今存じておりません。国内の給与のことはいささか承知いたしておりますけれども、諸外国との較差というようなことは、遺憾ながらまだ承知いたしておりません。
  101. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま諸外国の給与の何を、もちろん私は持っておりません。あるいは、人事院総裁見えておられますから、持っておられれば、人事院総裁からお答えを願うことにいたしまして……。  ただ、私、今諸外国の数字、あるいは日本国内の問題にいたしましても、給与額だけを比較するのは必ずしも当を得ていないと、実はかように思うのであります。ことに、外国との関係においての経済環境なり、あるいは政治形態なり、その全部、税制等が関係いたしまして、やはり給与の比較を考えるわけでございましょうが、これがなかなか一律でございませんから、国民所得の場合におきましても同様なことが言えるのでございますが、これは非常に困難な問題だ。そういう意味で非常に間違いやすい数字でありますので、その点を一つ指摘しておきたいのであります。また、給与は、国内給与にいたしましても、各産業別の給与と申しましても、各会社自身における福祉施設その他の関係もございますし、一律にその見方、高いとか安いとかいうことは非常に言いにくいことじゃないか、実はかように考えております。  そこで、先ほど来問題になっております公務員初任給の問題でありますが、先ほど、私どもが就職した際の給与、これは当時七十五円、そういうものは物価の指数を比べて一万五千五百円だというような計算が一応立つと思いますが、ただいま人事院で行なっておりますものは、各この民間給与公務員給与均衡をとるという考え方で、人事院は各般にわたっての調査を遂げて、そうしてその資料に基づいて適時勧告をいたしているわけであります。ところで、先ほど申し上げました、この給与について先ほど申したのは、大学出の、しかも行政府の面だけでございますが、技術者になりますと、またその給与も変わってくるということでございまして、今度は技術者につきましては、お医者さんが一万三千五百円、研究員、これは一万一千百円、これは三十五年度になります。先ほど申しました一万八百円というのは行政の方でございます。これはまあ漸次、三十三年以来少しずつではありますが上げて参っております。申し上げてみますと、行政は三十三年が九千二百円、翌年が一万二百円、また三十四年は暫定手当を繰り入れた後には一万六百八十円となり、これが三十五年度一万八百円。お医者さんは三十三年が一万八百円、三十四年が一万二千円、暫定手当を入れて一万二千五百六十円、三十五年一万三千五百円。研究員は九千二百円、三十四年が暫定手当を入れまして一万八百八十円、それから三十五年はただいま申すように一万一千百円。また、短大あるいは高校卒、それぞれ三十三年以来少しずつではございますが上げて参りまして、民間給与との均衡を十分考えて参っているつもりでございます。
  102. 藤田進

    ○藤田進君 諸外国の例の比較は非常に合理的ではないような御発言ですが、これはそれぞれの国においての労働条件があるわけで、比較は容易であります。ことに公務員の場合単純であります。この点は一つ、あとで人事院に聞きたいと思います。  そこで、岸総理は、今日の初任給に直せば一万五千数百円を受けられているわけであります。所得倍増という観念からすれば、少なくともその辺にすみやかに引き上げていきたいということが当然施策の基本としてなければならぬと思う。この点いかがですか。
  103. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 数字的に藤田委員の御質問でありますが、まあただ当時の、私が就任した当時と今日におきまして、公務員に対するいろいろな福祉施設というようなものは、当時はどこの役所におきましてもこれはもうほとんど全然なかったといってもいいと思います。そういう点は確かに今日違っておりますから、多少の——これをただ数字的に比べるわけにはいかぬと思います。しかし私は、国民所得倍増計画が具体的にきまり、これを実施して、今後十年を目標として倍増計画を実現する場合におきまして、公務員給与につきましても、これが他の一般産業に従事しておるところの勤労者の給与も私は当然上がってくると思いますし、それらとの均衡をとって、これらが給与が上がってくることは当然であり、また、そういうふうに施策を進めていかなければならぬわけであります。これは、なお、しばしば申し上げているように、具体的の倍増計画を今検討審議いたしておりますから、その内容としては、当然そういうふうな方向に進んでいかなきゃならぬと、かように考えております。
  104. 藤田進

    ○藤田進君 そういたしますと、所得倍増の初年度はいつからになりますか。
  105. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 所得倍増長期経済計画の初年度は三十五年度ということで計算しております。
  106. 藤田進

    ○藤田進君 十カ年間にそれぞれ一割ずつで、累積して倍という考え方ですか。その内容をお示しいただきたい。
  107. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) この所得倍増長期経済計画におきましては、先ほど大蔵大臣からもお話がありました通り、具体的の策につきましては、経済審議会で目下審議をしておるのでありますが、しかしながら、大体、国民所得倍増ということでありますので、十年間にどういう経済成長率で倍になるかというとを一応計算いたしまして、七・二%の成長率ということで十年間の計算をしますると、大体、国民所得が十八兆五千億円ということになりまして、現在の約倍になるわけです。が、しかし、御承知の通り人口が増加いたしまするので、従いまして、この一人当たりの国民所得は倍にはなりません。そこで、大体、人口が七%増加して九千九百万になるというような計算をいたしておるのであります。そういうことで大体計算をいたしまして、十年間に倍になる。それから、毎年一割ずつ上がるということは、まだ具体的には計算していないわけであります。十年後において大体倍になるという一応の目標を立てております。
  108. 藤田進

    ○藤田進君 お尋ねいたしておりますのは、十年先は別として、三十五年度を初年度として計画されているということでありますれば、三十五年度所得について、特に公務員給与を例にとってみると、どのような影響になるかということを、詳しく一つ御説明いただきたい。
  109. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。大体給与の面において、ただいま企画庁長官が申しておりますように、就労率が上がってくるわけでございます。国民所得倍増と申しますと、完全雇用に近い状態をとにかく作っていきたい。完全雇用が一つの目標でもございます、経済成長から申しましても。そういうことを考えて参りますと、給与はおそらく六割程度の増になるんじゃないか、数がふえて参りますので。そういうことが一応想定できるわけでごえいます。もちろん、ただいま菅野長官から申しますように、経済審議会において具体的な案を十分検討しなきゃなりませんが、数字だけで、一応の腹づもりから見ますると、今の国民所得が倍になった場合に、個人の一人当たりの所得増は六〇%、六割増しというような見当になりはしないかと、かように考えます。
  110. 藤田進

    ○藤田進君 初年度、三十五年度はいかがですか。
  111. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど申しましたように、目下案を研究中でございますから、その初年度の案というものはできておりません。  ところで、先ほどの小平委員に対する、私、午前中の説明が少し誤解を招いてはいないかと思いますが、今のように六割程度の増だといえば、年率増加は四%ちょっとではないかと思います。これも正確に計算してみなくちゃなりませんが、四%を上回ることは確かですが、五%まではいかないだろうと思います。  そういうふうに考えてみると、このことしの、三十五年度給与ベースの人事院勧告、さらに、先ほど申しましたこの定期昇給昇給原資というものを、これは全額見るということは不都合だと思いますが、やはり昇給原資をも入れて給与改善が行なわれておることは、これは申すまでもない点だと思いますから、その程度がどの程度入れることが可能か、そこらは議論は残りますが、まず初年度としての人事院勧告、これを実施することは、一応基礎的なものとしてはその大部分をまかない得るのじゃないだろうか、こういうような感じを私はいたしております。
  112. 藤田進

    ○藤田進君 そういたしますと、人事院勧告は、所得倍増計画の初年度を折り込んで勧告されているという理解でありますか。
  113. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 人事院勧告は、所得倍増とは関係なしに勧告を受けたものでございます。政府自身は、ただいま所得倍増計画をせっかく審議中でございますから、どういう結論が出るかわからないが、ただいま申し上げるように、三十五年度として、この所得倍増計画を実施するとすれば、おそらく四%と五%の間くらいな公務員等の給与ベース・アップというものを考えざるを得ないのじゃないか、こういうことを申し上げているのでありまして、これは人事院勧告は御承知の通りに昨年出ておるのでありますし、まだ所得倍増計画は出ておりませんから、その間のものを結びつけるわけには参らないと思うのです。
  114. 藤田進

    ○藤田進君 よくわからないのですがね。人事院勧告——昨年の七月のですね、勧告は無関係に出てきた。で、初年度、三十五年度所得倍増計画に基づいて、さらに四%は三十五年度中に、初年度引き上げるようになるだろうというふうにも聞こえるし、この勧告を尊重したことによって、四%はあれで終わりだというようなふうにも聞こえるし、そのどちらですか。
  115. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 関係のないことでございますが、実施するといたしまして、人事院勧告が、そのうちの大部分をまかなっておることになるだろうということでございます。人事院勧告は、御承知のように昨年に出た。これは昨年の三月の基準でございますし、その所得倍増計画に基、ついてどうこうというものじゃないし、当時の民間給与との関係で割り出したものにほかならないのでございます。ただいま政府自身、その所得倍増計画を立てている。その倍増計画ができ上がりますと、給与をいかに今度上げていかなきゃならぬかということになるわけでございますが、今の人事院勧告を除外してみて、一体どの程度に上げていけばいいかということになると、四%から五%の間じゃないか、こういうことを実は申しているわけであります。
  116. 藤田進

    ○藤田進君 これはしかし、人事院勧告内容、これはこまかい点はあなたには省略しますが、昨年の三月をとり、そして少なくともその面においては一年おくれて実施がされるということで、民間給与のベースというのは、むしろ昭和三十三年度と見てよろしい。それに対して物価その他の指数の変動によって、人事院勧告したと称している。それがそのまま初年度、三十五年度倍増計画の一環にぴたりと当てはまるということは、これはもう数理上あり得ないことなんです。もっと詳しく、納得のいく説明があればしていただきたい。
  117. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま所得倍増計画がせっかく経済審議会で結論を得ようとしておる研究の途上ですから、これが何年度をとってその倍増計画を進めていくのか、これからやっていって、この三十五年を基準にして倍増計画を立てるかということになってくれば、この人事院勧告給与ベースの引き上げは今度は基準になるわけでございます。けれども、ただいまのところ、経済審議会でどういう年次をとっての倍増計画を立てるか、それがまだきまっておらない状況でございます。こういう状況でございますから、直ちに倍増計画と結びつけて、そして今年の給与を幾ら引き上げるということを申し上げるわけにいかない。たまたま三十三年を今度基準にとってそして倍増計画を立案していくとすれば、これはその三十四年の三月の基準でやって、まあ一年間のズレがあるというおしかりを受けるかもしれませんが、基準年次をどこにとるかということでそういう点が変わってくるのではないか、こういうように実は私は考えると申し上げておるのであります。  所得倍増自身は、給与の面では、個人所得はおそらく六割程度の増になるだろうということでございます。これも経済審議会で結論を出して、わが国の産業はもっと成長し得るという結論が出れば、それはもっと所得も、個人所得も六割より以上に上げることができるかもわかりませんし、あるいはまた、日本の産業はよほど成熟しているから、今までのような成長率を維持することは非常に困難だ、十年計画は非常に無謀だという、こういうような結論が出るかもわかりません。そういう点は結局、経済審議会の結論を待って御批判をいただかなければならぬ、かように思います。この人事院勧告は別個のものだということだけは、はっきり言える。だから、その基準年次のとり方によると、ただいま申し上げるように、十年でやればおそらく一年の平均伸び率は四%と五%の間だと思いますから、人事院勧告がたまたま今回出ているものは、これが四%を、これをむりやりに結びつけたように私が説明しているようにお考えになると、それは誤解が非常にありますが、今人事院勧告は、最初に申しますように、所得倍増と全然関係なしとおっしゃっても、それはけっこうなんです。この人事院勧告はそういうものなんだ。この倍増計画は、それならいつの年次をとってやるか、そういうことで今経済審議会で案を議しておる、こういう状況であります。その間の混沌のないように願いたい。
  118. 藤田進

    ○藤田進君 非常に苦しい説明ですが、基準年次と言われても、昭和三十五年度を起点として、これをベースにして、その三十五年度は入ります。で、今後十年間に倍増と、こう言われる以上、これを賃金に圧縮して例をとるならば、昭和三十五年度の現行賃金ベースに対して初年度のプラス、あなた四%と言われるが、そういうものが加わらなければ、これを三年も四年も前のものに加えて、三十五年度からということであっては、十カ年の初年度とは言えないと思う。
  119. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはちょっと、私も質問者の藤田さんの意見をつかみかねますが、初年度が三十五年度だというならば、三十五年度には何もないはずだ。三十五年度に何かしらとおっしゃれば、三十五年度は、基準年次をおそらく三十四年をとって、そして三十五年度は第一年度だ、こういうことになるだろうと思う。だから、ただいま申し上げるように、三十五年から始めるというなら、先ほどから私の申しておる答弁通りでいいので、三十五年は何もしないでいい。人事院勧告を受けたままでスタートする。そして三十五年からその所得倍増の来年以降の伸び率を考えればいいということになるわけでありますけれども、その三十四年度を基準にしてスタートして、そして三十五年度がその第一年度だ、だから、給与もまず第一年度から引き上げろ、こういうお話になれば、これは人事院勧告というものはその大部分をまかなうことになるだろうということになるのです。
  120. 永岡光治

    ○永岡光治君 関連。ただいまいつを基準にするかということで論議されている中に、大蔵大臣答弁によりますと、今出ておる人事院勧告があたかも三十五年度に実施をする所得倍増の一環であるかのごとく私たちは聞くわけです。それで、あなたが今ベース・アップを云々しておりますが、それは三十三年度中の、いいですか、昭和三十三年と比較したら、民間との開きがそういう結果になったということですから、当然これは三十三年末に、今勧告が出ているその給与引き上げを行なっていなければ、均衡がとれないことになっておる数字なわけです。で、一年おくらかして、三十五年の四月一日からやろうとしても、その金額も、民間も三十四年までに上がっているわけです。おそらく、私は、このことしの七月には人事院はベース・アップをしなければならぬという勧告が出ると確信をいたすものでありますが、そういたしますと、あなたの筆法でいけば、十カ年計画ではなくて、公務員に関する限りは所得倍増は十一カ年計画だと、こういうことになる。そういうことですか。ですから、基準をいつにとるか。今のベース・アップは三十三年のものだ。三十四年のものではないのです。いいですか。三十四年のものではないのです。あれは三十三年のものだという頭で考えてもらわないと、大へんな誤りを犯すということを私は思うのですが、その点は私の認識と大蔵大臣の認識と違っておりますか。どうですか。
  121. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 人事院勧告はただいま御指摘通りであります。これは、私も三十三年を基準にしてのものだと思います。これは三十四年に実施しておれば、議論はなくなるかもわかりません。しかし、今までの財政上の支出から、人事院勧告は尊重して参りますが、十分財政とにらみ合わせて云々ということを絶えず申し上げておりますように、今まではその勧告の年にこれを直ちに実施するということはできなかった。ということで、これはもちろん人事院からも非常に不満の意を表明されておりますが、政府としてこれが満足の措置だとは思いません。思いませんけれども、やむを得ない措置として、一般公務員にも御了承を願っておる次第であります。  ところで、ただいま言われますように、あるいは十一年だというような批判があるかもしれませんが、今のようなデータを集めている点から申しますと、そこらに少しは時期的にズレのあることは、私自身もこれは正確に申せば了承いたします。了承いたしますが、いずれにいたしましても、この三十五年度に何らの措置がないじゃないか、こういうおしかりを受けますが、これはもう基本に返りまして、経済成長の基本的計画、いわゆる所得倍増計画というものがまだ審議中でございます。そういう際にです、これを計上することのできなかったことを、これもまた御了承がいただけるじゃないかと思う。  ただ、私申し上げますように、所得倍増計画を進めて参りますと、これは個人所得も必ず倍になるというものではないということ。ことに、私どもが一番心配いたしておりますのは、幸いにして、二十三年、二十四年からこの三十三、四年までの間は、非常な成長の伸びを見せておりますが、この経済発達の途上においては非常に長足な向上も示しますけれども、だんだん成熟して参りますと、これを過去のような成長率を維持していくということ、そこらに非常な困難がある。経済審議会で特に検討を要するのは、この点だと思います。これはもう、経済先進国という国の経済成長率は非常に鈍い、あるいは後進国の成長率が非常に高いという点からも、これは容易に想像がつくことでございます。ですから、そういう点では、基本的な問題として、経済審議会で十分検討してもらわなければならない。そこで、抽象的な議論を申せば、先ほどから申す通り、今の計画そのもので幸いにして十年で倍増とすれば、経済成長七・二%、また完全雇用等を考えてみると、人口の増等を考えてみると、個人所得としては約六割増だ。その六割増というものを年率に見ると、四・五になりますか七になりますか、大体まあその辺のところになるんじゃないか、こういうように思うということは、抽象的に申し上げておるわけであります。
  122. 永岡光治

    ○永岡光治君 それで、年間四%の一応所得倍増計画からいけばそういう数字になるということは、公務員に関する限りは、今の四%の給与の改訂というのは、三十三年末に行なわなければならない数字なんですね。従って、それを実施しても、もう三十四年中には民間はどんどん上がっているわけです。だから、私が言ったように、この七月には人事院からまた勧告が出なければならぬ筋合いのものなんです。従って、さらに四%つけ加えた——このままのベース・アップでいくとするならば、今の四%プラス四%の、それがこの三十五年度に実施されていけば、それでちょうど均衡がとれるわけです。それからいかなければならぬのでありますが、そういうことに認識しないといけないではないかというのが一つ。  その私の認識が誤っておるかどうかということをただすのが一つと、今あなたがおっしゃっておるように、これは審議中だ、結論が出ると。結論が出たならば、その年度の途中において補正予算を組んで、公務員にはさらに四%というものをつけ加えるということになるのかならないのか、そういうことを具体的に私は聞いている。
  123. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 第一段は、遺憾ながら私は賛成いたしかねます。人事院勧告の基礎はその年次をとったこと、並びに勧告のできていることは御指摘通りであります。これはもう三十三年。しかして、政府人事院勧告を尊重するということを申しております。財政実情さえ許すならば、これを完全実施することにもちろんやぶさかではございません。しかしながら、人事院勧告に対して、ただいま永岡君が御指摘になるように、三十四年度末までに実施しなければならないという、義務的なものとまでは考えるわけにいかない。これはもう最初からの問題でございます。これが第一点。  それから、第二点に対しましては、ことしの予算はもちろん今日出しておりますが、この公務員給与べースが生産増強にどれだけ影響を持つかということに今度はなりますが、その目標の問題と、必ずその計画を実施しなければ所得倍増は不成功に終わると、こういうものかどうか、そういう点も十分考えなければなりません。従いまして、ただいま経済審議会で結論を出しましても、その結果、公務員給与を必ず引き上げる、かようなことは私は申し上げかねます。
  124. 永岡光治

    ○永岡光治君 ちょっと、疑点だけただしておきたい。その実施するしないは別なんです。私の言っているのは、政府が今ここに提案しているところのこの四%の給与の改訂というものは、少なくとも筋からいえば、おそくも三十四年度中にこれは行なうべき数字じゃなかったかということを言っているわけです。その認識が私とあなたと違うかどうか。その認識に基づいた資料じゃないか。これが三十四年度に行なっても、もうすでに三十四年四月一日からずっと民間ベースは上がってきているわけですから、三十五年度を比べたら、また四%、五%の開きができている数字なんです。そういう数字と認識することは誤りかどうかということなんです。実施するしないは、これは別の問題でございますから、そういう筋合いの数字じゃないかということを言っているわけです。
  125. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) その点は、先ほど来申し上げておりますように、これは三十三年の数字でやったことでございます。従いまして、財政の事情さえ許せば早く実施すべき筋のものだ、その点の認識は変わっておりません。ただ、義務的なものだと言われる点については、私遺憾ながら賛成しかねたということを申しております。
  126. 鈴木強

    鈴木強君 議事進行をかねて。今の論議の前提になる経済企画庁長官大蔵大臣との認識の相違が多少あるように思うのです。大蔵大臣は、そういうことを言っているから、誤解だという意味答弁されました。だから、その所得倍増計画というものが、菅野長官のお話ですと、三十五年度を基準にしてスタートしてやるということをはっきり言っているわけです。ところが、経済審議会で今検討中だと、こういうふうに言っているわけです。だから、問題は、大蔵大臣はこれは財政担当ですから、私はあなたには質問しようとは思わない。隣にすわっている益谷国務大臣給与担当大臣になったんですから、これはお株を奪わないように、益谷国務大臣の方にそういう給与の問題はむしい答弁をしていただいた方がいいのじゃないかと私は感じておりますから……。これは議事進行の点です。  問題は、さらに、三十五年度予算はもうすでに国会に提案されている。しかも、その中に四%の公務員給与の中だるみの是正がある。これは今まで話しているように、すでに三十三年度を基準にしたものですから、当然これは三十四年三月から実施するというものです。だから、経済審議会でもって所得倍増十カ年計画というものを作る基準が三十五年度だとするならば、それが決定した場合には少なくとも公務員給与はどうあるべきかということ、これは人事院が独立機関ですから、あなた方がその辺をどう答弁されるかは私はわかりませんけれども、しかし、少なくとも、政府がそういう所得倍増計画というものを考えるからには、そういうものを勘案をして作られるのが筋合いだと思う。この点に関して、菅野さんからももう一回、私は、この倍増計画に関する政府のちゃんとしたものを示してもらいたい。  それから、三十五年度でないとするならば、また論議は別ですけれども、三十五年度を基準としてやるということになれば、今言った給与担当の益谷国務大臣が、一般公務員給与はこれから十カ年間の間にどういうふうに上げていくか、そういう構想をお持ちだと思うのです。そういう点を益谷さんから伺いたい。
  127. 小林英三

    委員長小林英三君) 菅野国務大臣
  128. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) お答えいたします。国民所得倍増計画は、計算の基礎は三十四年度が基礎であります。三十五年度が初年度であります。それで昭和四十四年で十年ということで、計算しているわけであります。
  129. 小林英三

  130. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) 所得倍増計画が立ちますと、給与についてもおのずから目標が立つと思います。ただ、その際におきましては、現在の建前といたしましては、人事院勧告を待って、国会において審議していただきたいという建前はとっておりますが、給与引き上げの目途は大体立つと思っております。
  131. 鈴木強

    鈴木強君 そうしますと、益谷国務大臣は、人事院勧告があれば、それを待ってやりたいと、こういうことですね。やがて六月ともなれば勧告の時期になる。それが出ましたら、その補正予算を組んで、ちゃんと実施するということが言えますか。そこで即答できますか。
  132. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) 勧告がありますれば、忠実にそれを尊重して、実行する建前を持っております。しかしながら、これは御承知の通り財政関係がある問題でありますから、私の立場としては、勧告通り必ず出すかという御質問でありまするから、出す心組みでありますが、財政等の関係がありますから、その点をお含みを願いたいと思っています。
  133. 永岡光治

    ○永岡光治君 一つだけ、管野長官に。そうすると、今鈴木君からの質問に対しての御答弁ですが、大蔵大臣のさっきの答弁によりますと、三十五年度に実施しようとしているこの数字は、私と同じように意見が一致して、この数字は三十三年末の数字だということは認識しているわけです。三十四年四月一日から行なわるべき筋合いの数字だ。財政上は別としてですよ、数字はそうだ。そうすると、今三十五年四%上げているが、実は三十四年には民間の方が四%なり五%上がった数字がもう出ているわけですから、だから公務員に関する限り、今あなたが三十五年度を基準にするというけれども、その後ずっと低いものが基準になっていると、こういうふうに解釈せざるを得ないのですが、そういうことですね。あるいは民間並みに一応三十五年度で線をそろえて、それからそれが所得倍増になるという解釈をするのか、そうでなくて、もし大蔵大臣のような認識でこれを行なっていくと、所得倍増ということでなく、倍減になるわけですが、そういうような方向に考えざるを得ないと思うのですが、私のそういう認識は誤っておりますか、どうですか。つまり、絶えず民間と四%いつも一年おくれて——いるのですからね。いまだかつていまだかつてというと語弊がありますが、最近において四月一日から実施したためしはないのです、その勧告された年の。ですから、いつも一年ずれて実施しているから、民間と絶えずおくれている。これは利子にしたら大へんな額になると思うのです。何十年になると大へんな額になると思いますが、それは別として、基準の数字はいつもおくれた数字、一年おくれた数字がもとになって所得倍増ということが計画されている。そのときの数字が対象になると、こういうふうに考えているのです。財政は別として数字の問題を私は聞いているわけです。
  134. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 国民所得倍増計画の計算の基準は三十四年度経済を基準として計算するわけです。三十五年が初年度だということであると思います。公務員の問題と私ども国民所得倍増というのは別ですからして、そういうことは御了承願います。(「おかしいじゃないか」と呼ぶ者あり)
  135. 藤田進

    ○藤田進君 所得倍増計画公務員は全然別に扱われる理由はどこにあるのですか。(「同じ国民じゃないか、日本国民でどうして差別するのか、差別待遇反対だよ」と呼ぶ者あり)
  136. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは理屈の問題ではなしに、財政的の問題が非常に入りますので、私からもお答えをいたします。  御承知のように、ただいままでの給与は民間との給与ベースの均衡をとるということ、そういう意味で公正中立な人事院勧告というものが主体になってきているということでございます。過去の例を見ましても、そこに時間的のズレのあること、これは私ども否定するものじゃございません。このズレがどういうところからきているか、一面やはり国家の財政的な方面からそういう制約をせざるを得ないということになっておるのだろう、かように考えております。従いまして、ただいまの所得倍増計画を推進いたします場合に、一部の時期的なズレが所得倍増計画そのものをそこなうような大きな影響を与えるかどうか、そういうような点を十分勘案して、今後の十カ年計画は遂行していかなければならぬ、かように私は考えております。その点は御了承いただきたい。
  137. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 先ほどのお尋ねは三十三年度を基準として国民所得倍増計画を立てていくというお尋ねであったから、それは三十四年度を基準として国民所得倍増計画、こういうふうに私はお答えしておるわけで、国民所得の、この公務員給与につきましては、私の方で立てます国民所得倍増計画に基づいて人事院なり大蔵省がそれぞれ毎年いろいろお考えになっている、こういうふうに考えております。
  138. 藤田進

    ○藤田進君 別問題ではなくて、経済企画庁としては公務員給与倍増計画の一貫としての数字的にいろいろな作業もし、これを所管省に示そうということになりますか。
  139. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 私の方では公務員だけについての計算をいたしまして、給料所得者は大体どれだけになるかということを一応計算するわけであります。
  140. 藤田進

    ○藤田進君 国民のうちに公務員も当然入るわけでありますから、相当多くの率を占める公務員の数で、これも入ることは当然だと思いますが、その通りですか。
  141. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) もちろん給与所得者でありますから、当然入ると思います。
  142. 藤田進

    ○藤田進君 そういたしますと、所得倍増計画の作業中ということですが、その結論を出そうとされる目途、目標、めどはいつごろになりますか。
  143. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) ただいま経済審議会審議いたしております。ただいまのところではこの倍増計画の正確なるあるいはやり方についていろいろ討議いたしております。私の希望といたしますれば、六、七月ごろまでに結論を出していただくということは希望をいたしている次第でございます。
  144. 藤田進

    ○藤田進君 そういたしますと、今後は民間給与のベースを顧みて、これに対応して、ベース改訂をするということのほかに、所得倍増に基づく公務員の場合を例にとれば、ベース改訂というものが、ここに加味されなければならないと思いますが、そのようになるわけですか。    〔委員長退席、理事館哲二君着席〕
  145. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 私の方では、給料所得者全体として計算しておりますから、その中にもちろん公務員もあるわけでありますから、従って給料所得者としては十年後にどれだけになるかという、一応計算をするわけです。それに基づいてまた公務員の待遇は考えられることだと、こう考えておる次第であります。
  146. 藤田進

    ○藤田進君 今日の法制上、公務員給与に関して必ずしも人事院勧告に基づかなければベース引き上げ、改訂ができないというふうにはわれわれ理解いたさないわけです。所得倍増その他の政府の施策によって、このベース引き上げというものは当然可能だと思う。その通り理解してよろしゅうございますか。
  147. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) その通りでございます。
  148. 藤田進

    ○藤田進君 そういたしますと、今度はベース改訂と称せられているのは、あたかも全公務員にこのベース改訂が行なわれるような印象を今までの御答弁で受けるわけですが、今回の場合は必ずしもそうでなくて、いわゆる中だるみの是正といわれているように、所得倍増の四%説を三十四年度を基準にして、三十五年度年度を考える場合に、当然全体に影響を持つベース改訂がここに出てこなければならぬ、その時期、方法についてお伺いいたします。    〔理事館哲二君退席、委員長着席〕
  149. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来お答えいたしておりますようにいわゆる所得倍増計画は、各産業別においての成長率ももちろん考えるでしょうが、菅野長官が申しますように、全体としての給与のあり方、あるいは産業のあり方なりそういうものを考えて、どういうような結論が出るか、そういうような考え方だろうと思います。そういうことを考えて参りますと、いわゆる公務員給与適正化がどうあるべきかということは、さらに人事院においても十分検討することだと思います。私は今日まで人事院自身がこの所得倍増計画とは別な観点から、言うこととかかわりなしに民間給与公務員給与との均衡を保つという点で、毎年調査をされ、そうして必要に応じて勧告もされる、こういう状況でございますから、人事院の機能というものは従前通りの機能を発揮するものだ、かように私考えます。人事院勧告については政府はこれを尊重するということを申しておりますし、これが財政的に許します限りにおいてこれを実施に移していくということでございます。今日までは内容的な問題で人事院勧告をどうこうしたことはございませんが、ただ時期的な問題として人事院勧告の、いわゆるすみやかにこれを実施すべしというものが、一年年度おくれているというような状況になっているということでありますので、大体人事院勧告を尊重していきたいということであります。先ほど来るる説明いたしましたように、経済審議会においての所得倍増計画が立ちました場合に、それぞれ一つの基準と申しますか、目標といいますか計画遂行への目標が立ってくるだろう、そういうものを今度は財政的にどういうようにこなしていくかという問題が残るが、ただいま言われますように、所得倍増計画を立てた、だから公務員給与は幾らでなければならぬ、必ずそこまで上げるのだ、あるいはまた財政規模、財政投融資計画は幾ら幾らでなければならぬ、そのときの金融状態をも無視して、無理やりな財政投融資計画を立てる、こういうわけにはなかなか参らないと思います。そういう点で所得倍増計画はやはり長期計画になりますし、その経済の動き等にも波があることを勘案いたしまして、そうして十年間においての目標を達成していくということにならざるを得ない、かように私どもは考えております。だから、ただいまのお尋ねが、所得倍増計画をいわゆる計画経済の実行であるかのような意味において御理解になっておられるとすれば、この点は相当私どもの考えと基本的に食い違いがある、そごしているということを御了承いただきたいと思います。
  150. 藤田進

    ○藤田進君 いわゆる社会主義的な計画経済という範疇ではなかろうかと思いますが、しかし、長期計画を立てられる以上は、年次別の計画を持ち、かつこれの裏づけとなる立法、予算の措置をして、そうしてその計画が具現できるように努力することになろうかと思うわけです。従って、単に絵にかいたもち、ペーパー・プランに終わるものではない。その限りにおいては、これすなわち計画一つの設計図である。しかも、それは十分可能であると、こう理解すべきだと私は思うわけですが、そうではなくて、一つの指標を世間に示すだけだという、きわめて無力なものに聞こえるわけですが、私どもの理解としては、前段申し上げたように思うわけですが、その点もう少しはっきりさしていただきたいと思います。
  151. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もちろん、所得倍増計画を立てますと、ただいま藤田委員の御指摘になりましたように、これの実施には、忠実にこれを実施していくということを政府としては当然考えるわけでございます。目標なしというわけにはいかない。しかしながら、時期的なズレがときに出てくるだろうということは前もって一応御了承おき願いたいということでございます。従いまして、ただいま申し上げますように、各産業部門等の成長率が非常に鈍いとか、こういうような意味で、その力の入れ方が変わってくるとか、あるいは給与にいたしましても、公務員ベースが計画通り進まなければ、所得倍増計画は絶対に遂行できないものかどうか。あるいは、やや時期的なズレはありましても、これで国民生活の向上等におくれをとらないで、やはり公務員生活を一般国民同様に生活水準は高まっていくと、こういうような見通しがつきますならば、時期的な一部のズレは御了承いただきたいということを実は申しておるわけでありまして、多分その点では藤田委員が最初にお話しになった通りではないかと思います。私も大体御趣旨はわかるような気がいたします。私どもは、ただ単に絵にかいただけを示してそうして国民に指標を示したのだと、政府は何もしないのだと、こういうような考え方は毛頭ございません。
  152. 藤田進

    ○藤田進君 従来の人事院勧告の不当な点は、これから人事院総裁にも追及をいたしますが、今後政府とされても、給与担当の国務大臣もきめられていることだし、あわせて、所得倍増計画が今申されたようにかなりの力をもって実施されようとするならば、今後の給与改訂については、単に人事院まかせでなくて、政府みずからが少なくともコントロールできる公務員給与について、予算の措置において率先してここに改訂の問題を出されるべきではないかと思われるわけですが、ことに内容を尊重したと言われますが、賃金に関する限り、生活とうらはらですから、時期の問題は何よりも大きい問題です。それが即座に実施されるのと——七月勧告があって、その後すみやかに実施されるのと、翌年の四月以降というようなことになるのとでは、個人の生活に重大な影響を持つわけで、実施時期というのはそんなに軽く扱わるべき問題ではないわけです。そのような点を是正する意味においても、今後においては政府みずからがその機能を持っておるわけです。給与担当大臣もここにきめられたわけであります。政府一つの指標を持つということがあってしかるべきだと思う。この点いかがですか。
  153. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) 今回、昨年の七月の勧告に基づいて、今年四月一日から給与改訂の法律案を出しましたことについては、まことに私は遺憾だと思っております。しかしながら、これに決定いたしましたのは、御承知の通り財政上の関係からであるから、私自身もしぶしぶ賛成いたし、承認をいたしたものであります。今後の給与改訂について、むろん法律の建前からは、政府が出すということもあるだろうと思いますが、今の政府の建前といたしましては、中立的な専門的な人事院の公正妥当な勧告に基づいて国会審議をしていただくという建前をとつておりますので、政府から直ちに改正案を国会提出するということは、今日のところ考えておりません。
  154. 藤田進

    ○藤田進君 首相にお伺いいたしますが、人事院性格は中立公平でなければならぬにもかかわらず、最近公務員の大きな声として、人事院は決して公務員の側にはないとしても、公正中立な機関ではない、これは廃止した方がよい、毒して決して公務員のためにならないと、こういう意見があることは御承知かと思うわけです。御承知か、御承知でないか。そうして、政府とされては、現在の人事院に対して、非常に都合のよいものか、悪いものか、どんなものか、一つこの主観をお聞きいたしたいと思う。
  155. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 人事院制度につきましていろいろな議論があることは、私も大体承知いたしておりますが、この制度自体が従来なかった、戦後に新しくできた制度でございますので、これの運用につきまして、十分まだ熟していない点であるとか、あるいは運用の実績にかんがみてこれが改善を考えていかなければならないとかいうような点につきましても、政府におきましてもいろいろと検討はいたしております。しかしながら、私は、何分この公務員制度の建前から申しまして、人事院というふうな中立公正な機関が存在をしておることが、公務員給与初めその利益の保護の使命を達成するゆえんであって、これを一がいに、十分熟しておらないとか、あるいは多少の改善を要する点があるとかいうような点から、直ちにこれを廃止すべきだとか、あるいはこの制度を根本的に改革しろというふうな議論につきましては、私どもは慎重に一つ検討したいと、かように考えております。
  156. 小林英三

    委員長小林英三君) 藤田君ちょっとお待ち下さい。  午後は二時五十分から再開することにいったしまして、暫時休憩をいたします。    午後一時四十九分休憩    —————・—————    午後三時九分開会
  157. 小林英三

    委員長小林英三君) これより委員会を再開いたします。  委員に変更がございましたから御報告申し上げます。小平芳平君が辞任せられ、その補欠といたしまして白木義一郎君が選任せられました。   —————————————
  158. 小林英三

    委員長小林英三君) 午前中に引き続きまして質疑を続行いたします。  過日の木村委員の御質疑に対し、二点について池田通産大臣及び藤山外務大臣答弁が保留されておりましたので、この際、両大臣から答弁を願うことにいたします。
  159. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先般、木村委員から私に対する御質疑におきまして、吉田内閣総理大臣からダレス長官にあては手紙の背後には何か経済協力の約束があるのじゃないか、あるいは若干技術援助、そういうものがあるのではないかという御質問があり、それがうまくいかなかったのじゃないかという御質問であったと思います。私ども、当時の事情を調べてみまして、そういうことは背後に何も約束されておりませんし、また、あった事実はございません。同時に、当時の二十七年一月三十一日の国会の速記録を見ますと、中曽根委員からこの問題について岡崎外務大臣質問をしておられますが、「書簡の問題についてさらにお尋ねいたします。」「日本の経済自立に関し、何らかの話合い、日本のために有利な話合い、はっきり言えば、ある程度の見返りというようなものがあって、初めてこれらのものが展開されると思うのでありますが、政府はそういう点について何らかの措置を行われなかったかどうか、」という質問をされております。それに対しまして岡崎国務大臣は、「私どもはこういう問題について、商取引のようなことを考えておりません。われわれは善隣友好という大きな筋からいいまして、でき得る限り広い範囲と通常の関係に入りたい、」「いろいろの交換条件等は決してこれをいたしておりません。」、こういう答弁をいたしております。当時の事情から見まして、そうあったと考えます。
  160. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。先般の本委員会で、私がかつて大蔵大臣時代、継続費の使用について答弁した、その答弁とその後の事情は変わっているというお話でございましたが、速記録を調べてみました。私は木村委員質問に対しまして、昭和二十七年一月三十一日に、財政法を改正して継続費の規定を設けるにあたりまして、御質問に対してこのように答えております。「継続費の期間の問題で、まあ昔は軍艦を造る場合が一番多かったと思うのであります。併し、我々は今軍艦を造ろうなんていう気持は全然持っておりません。」と、こうお答えしております。今、軍艦を作る気持は持っていないと申し上げておったのであります。しこうして、防衛力の漸増の推移を見まするというと、私が御答弁申し上げました昭和二十七年一月三十一日は、当時海上警備隊というものはございませんでした。その後、二十七年の八月一日に保安庁が発足いたしまして、二十九年七月一日に防衛庁が発足し、継続費が潜水艦の建造に使われたのが昭和三十一年の予算でございます。で、私がお答えを申しました二十七年の一月三十一日には、まだ海上警備隊もございませんし、今のところ、継続費を軍艦の方で使う気持はないと、こう申し上げておるのでございます。事情は以上の通りでございます。
  161. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今の答弁では不満足なんです。ですから……。
  162. 小林英三

    委員長小林英三君) 簡単に願います。
  163. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 簡単に。私も速記録は見ております。前の、藤山外務大臣の御答弁につきましては、そういう政府の方の記録でしょうが、客観的に見まして、そうでないことをわれわれはいろいろな資料から推測できるのですが、これは議論になりますから、私はそういう書簡を持っているわけではございませんから、証拠というものを持っているわけではないのですから、その当時の事実をここで一々例証していきますと、時間もございませんから、今の御答弁では納得できないのですけれども、一応政府の方から資料に基づいて御答弁がありましたから、その御答弁があったということだけは了承しておきます。  しかし、池田通産大臣の御答弁は不満であります。非常に何か責任を回避するような、ただ「今」という言葉を使ったからといいますけれども、私はこう質問しているのです。私の質問の個所を全然おっしゃらないで、御答弁のところだけを言われたのです。私は、こういうふうに質問したわけです。今まで財政法では継続費というものを認めてなかったわけですね。なぜ認めてなかったか、これはもう御承知だと思うのです。財政法四条、五条でも、公債の発行について厳重な制限をしたり、継続費予算というものを認めなかったのは、日本が、防衛費が継続費とか公債費という形でふえて、再び軍国主義化する危険がある、そういうのを財政面で押えるという意味を持っていたと思うのです。そこで、昭和二十七年に財政法に継続費予算を認めるにあたりましては、われわれ非常に慎重な態度をとったわけであります。私はこう質問したわけです。「一番今我々問題にしておるのは、軍事費的なものですね。軍事費的なものについて今後継続費的なものが多く出て来るのではないかという心配がありますが、例えばアメリカのように軍事予算については、継続費的なものを最長二年の期間に制限しておる。その他のものについては多年度予算とか、或は無期限予算とかありますが、軍事費については、わざわざ継続費的なものについて最長二年の期間に制限しております。で繰越費を仮に認めても四カ年、従ってこういうものについてはやはり今後濫用される弊害があるようなものについては、やはり事前にそういう機械的にではなく制限を設けるのがいいのではないかと思うのですが、その点は大蔵大臣どうお考えになっておりますか。」、こういう質問なんです。今後、軍事予算として継続費がふえるということが非常に心配である。これに対して大蔵大臣は、「継続費の期間の問題で、」——今お話のように、「まあ昔は軍艦を造る場合が一番多かったと思うのであります。併し我々は今軍艦を造ろうなんていう気持は全然持っておりません。」さらにまた、「今軍艦のお話が出ましたが、軍艦陸奥、長門を造ろうと思えば、五百億円ぐらい一艘で要るのですが、とても継続費にしましてもたくさんなことだと思うのです。而して私は継続費の今後設けようとする趣旨をお考え下されば……、」、そういうことはないではないかという御趣旨答弁なんです。現在は継続費はほとんど大部分——全部とは言いませんが、大部分が継続費です。防衛費は継続費なんです。ですから、ただ「今」という言葉をちょっと入れたから、その当時は思っていないが、今はそういうことを考えても食い違いじゃないじゃないかという御答弁は、これはもう非常に無責任だと思うのです。大体、継続費というものがなぜ認められていなかったか。それは二十七年に継続費が出てきたことについては、現在のようになるから、そうして、これがだんだん軍国主義化するにつれて臨軍的なものになるということを、財政法で継続費を認めるときに、われわれは一番憂慮したのです。そのときに池田当時の大蔵大臣は、そういう御心配はないという趣旨のこれは御答弁です。「今」という言葉があるから、また、その当時は軍艦について継続費がなかったから、予算がなかったから、自分はその食い違いがない、こう言っておりますけれども、このことは、非常に言いのがれのように思います。私の質問趣旨は、何も池田現通産大臣の言動を責めようというわけじゃない。今後、こういう形で臨軍的に防衛費が継続費としてますますふえていく傾向は憂慮すべきことです。財政法の精神を踏みにじっていくものである。なるほど、継続費を財政法で認めましたけれども、しかし、こういう臨軍的な継続費予算が、ふえることを財政法の精神は許していないと思う。そういう意味で、この際、はっきりしておきたいという趣旨で私は質問したわけですから、その点、池田通産大臣も私の質問の意図するところを——この点については、おそらく池田通産大臣も反対じゃないと思うのです、根本の考え方につきましては。ですから、もう少し誠意のある、責任のある御答弁をわずらわしたいと思うのです。
  164. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 当時の質問応答の主点は、四年、五年の継続費ということが、二年か、四年か、五年かということが問題になったと思います。しこうして私は、今お話通り、軍艦陸奥あるいは伊勢等を作るには五百億円かかります。こういうことはわれわれは考えていない。経続費というものは、予算の執行上やむを得ない場合において、作ります。当時は、軍艦を作ろうという気持はもちろん政府、私にはもちろんございません。しこうして、その後におきまして、潜水艦を一隻作りました。それから三十五年のもので、全体三項目で九十億円程度でございます。当初の継続費が三件で、これは債務負担行為、合計九百億あまりのものから見れば、当時継続費につきまして議論になったことは、ただいまも私は財政当局が相当守っておると思います。潜水艦、警備艦のみ。私は木村君のあの当時心配なさったことは、たとい情勢の変化で潜水艦を作るようになりましても、継続費としての使い方につきましては、大蔵当局は非常に注意してやっておると私は確信しておるのでございます。債務負担行為と継続費の違いは御承知の通りでございます。やむを得ざる場合においてのみ今継続費が行なわれている。あなたの趣旨は相当財政法の運用につきまして守られておると私は考えておるのでございます。
  165. 藤田進

    ○藤田進君 総理は午前中の御答弁の中で、人事院に関して慎重に検討を加えて結論を出したいという御答弁でありました。その考え方の内容が検討のいろいろな方法でもって明確になると思いますが、少なくともイギリスの場合を例にとってみても、日本と違いまして、全然利害関係を持つ日本のように公務員側の意見を持ち込む機会が法的にもないけれども、イギリスの場合は、官側とそれから職員の側が同数の代表を出して、これでもって構成されるホイットレー協議会において討議されている。そして給与決定をする。こういうことになり、またフランスの場合も初任官職を初め、任用された官吏につきましては、そのきめ方として、官吏制度協議会、政府及び職員組合側が十二名のおのおの代表を出して、この構成のもとにいろいろ検討が加えられて後、政令できまる。またドイツの場合を見ましても、同様に制度というものは受給者側の意見を聞き入れるようになっているのであります。これは法律によってドイツの場合も職員代表によって構成した職員協議会あるいは連邦人事委員会、こういうもので、それぞれの手順を経てきめているわけであります。アメリカの場合は、御承知のように日本の人事院によく似た制度ですが、全く公平無私、中立の立場でやって給与が適当に決定される、こういうわけでありまして、これらのセンスを取り入れて、人事院の改組をやるとか、あるいはかってありましたように人事院を廃止して内閣にこれにかわるべき一局を設けるか、こういった議論もあったわけでありますが、これらについて御所見を伺いたいと思います。
  166. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど午前中にお答え申し上げましたように、この問題はきわめて重大な私は内容を持っておる問題だと思うのであります。いろいろな議論がこれについてあることも承知いたしておりますし、各国の立法例等も十分検討をいたして参らなければなりません。今どういう構想でもって私がこの改善を考えておるかということについての具体的な結論を申し上げるまでいっておりません。しかし、いろいろな議論もあり、従来もあるいは今お話しになったような人事院を廃止して人事局を内閣に置いたらいいじゃないかというような意見もございました。また各国の立法例等につきましても、今御指摘がありましたような事例もございました。日本の公務員制度というものにかんがみまして慎重に検討を現在加えられておる次第でございます。結論的にどういう構想でこれをやるというようなことをまだ申し上げるまでの段階に至っておりません。
  167. 藤田進

    ○藤田進君 自治庁長官にお伺いいたします。地方公務員給与に関して、人口十五万以上の市町村においては人事委員会を設けるということになっているにかかわらず、事実上設けられていないところが相当数あります。従って、使用者である首長がこれを決定するという一方的な独断でもって給与が低位にきめられている。これは国家公務員に対してさらに低い賃金水準であります。これらについてどのように行政指導をされようとするか、お伺いいたします。
  168. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 都道府県と、それから五大市は御承知のように人事委員会必置になっております。その他の市、十五万以上の市は置くことができるということになって、仙台市はたしか人事委員会を置いておると思います。その他の市あるいは町村には公平委員会というものがありまして、不平問題等の処理、苦情処理に当たっております。それから、一般の地方公務員給与の問題につきましては、まあ原則として国家公務員に準ずるようにして、その地方経済事情なり、いろいろなことでそれぞれの地方団体で条例をもってきめるということにしている。大体、国の建前に準じまして、三十五年度地方財政計画におきましても、例の人事院勧告による中だるみ是正、それから三十三年七月一日を基準といたしまして給与実態調査をしておる。その実態調査等によりまして非常に悪いところをできるだけ水準を上げまするようにそれらの財源を見込んで地方財政計画に三十五年度に計上しておるわけであります。大体国家公務員にならうように、ことに町村の水準は低いものでありまするから、それを是正するように指導を加えておる次第であります。
  169. 藤田進

    ○藤田進君 そういたしますと、人事委員会の設置についてはきわめて消極的なようでありますが、従って、今、大臣指摘されるようにきわめて低位にあるものの打開は、地方財源の補てん等を考慮して、公務員に準じ、公務員同等な水準まで少なくとも引き上げるように、早急にこれが達せられるかどうか明確にしていただきたい。ことに単なる行政指導でもって地方財源の乏しい今日、私どもは期待すること自体が無理ではないか思われるので、御答弁通り実際に達成できるかどうか、きわめて疑問であります。
  170. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) ただいま申し上げましたように地方財政計画におきましては、大体国に準じてできるように計画には組んでおるわけであります。しかし、御承知のように地方は非常にその他一般行政水準も低いし、単独事業をやる余地などはほとんど少ないのでありまするから、まあ一挙に現在低い町村が国家公務員に準ずるような水準にまで引き上げられるということに、これはまあ指導を加えましてもなかなか無理であろうと思います。しかし、適当な期間にだんだん引き上げられまするように自治庁の行政局を通じまして計画的に今指導をしているわけであります。それから十五万以上の市等についても、できれば人事委員会を置いてもらいたい。それから直接給与には関係しないのでありまするけれども、町村の公平委員会もまだ若干できていないところもあるようでありまするから、そういうところにも公平委員会を置くように指導を加えておるような次第であります。
  171. 藤田進

    ○藤田進君 労働大臣にお伺いいたします。国家公務員給与決定については、人事委員会が勧告をし、これのみに従来まかせて、しかも実施時期を相当おくらして、辛うじてこの内容を尊重するという実態でありましたが、ILO条約の批准の関係において、公務員給与のきめ方等に対する労働大臣の所信を伺いたいと思うのです。
  172. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) ILO条約の中で賃金にも関係いたしますのは、最賃法というものがILO条約にございます。給与決定の問題は、ILOの規定の中にはございません。従って、今回ILO条約の批准は、給与問題に触れるという条項はございませんので、ただいまその問題については検討は直接いたしておりません。
  173. 藤田進

    ○藤田進君 ILO条約の批准に伴って公務員に対する団体的諸権利がある程度認められるということになれば、当然その所産として給与問題に影響を持つと思われるが、いかがですか。
  174. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) ILOのいわゆる今回政府で意図しております八十七号条約は、御承知のごとく、団結権の問題でございます。団結権によって給与決定するかどうかということは、これはいろいろ将来の問題はございますが、今直ちに団結権を与えたから給与の団体交渉権を与えるかどうかということは、これは別個な問題でございます。特に国家公務員はILO条約の中でも特別の扱いをされておりますので、これは別個な問題でございます。従って、直接八十七号条約批准に関して給与問題を左右するということは、直接はございません。
  175. 藤田進

    ○藤田進君 しかし、団結権が公認されるということになれば、最も大きな利害関係を持つものは生活の問題です。即賃金の問題であります。別個の問題であるけれども、国の政策としては、これをどうするかということが、これを機会に検討され結論を出されなければならないと思います。これが一つと、ILO条約については、公務員関係の諸法規までこれを改正して、そして適用、批准をするということでは、この関係で持たれた審議会、石井さんの審議会長をやりました委員会では、答申が出ていなかったと思うのです。にもかかわらず、その部内調整、各省庁間の、そのために相当批准がおくれてきているということはまことに遺憾だと思います。現実に立って政府はこのILO条約について、それらの問題の結論をいかに出されるのか。出していないとすれば、いつごろどのような方向で労働大臣としては国内に持ち込み、議会に批准方提案をされるのか、明確にしていただきたい。
  176. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 国家公務員給与の問題は労働大臣の所管でございませんので、直接私の方で答弁をすることはどうかと思います。ILOに関して国家公務員法に触れるか触れないかというのは、石井さん及び前田さんの小委員会の答申の中にも明確にはございません。ただ、明確になっておるのは、公労法、地公労法四条三項、五条三項は少なくとも絶対に削除しろという条項でありまして、その他国家公務員についてはよく研究しろという御趣旨であって、触れろとか触れちゃいけないという御趣旨は、この答申の中にはございません。
  177. 藤田進

    ○藤田進君 見通し……。
  178. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) なお、八十七号は非常に民主的な組合の団結を規定する広範囲なものでございますから、当然国家公務員に影響することは当然でございます。ただ、その影響の度合いに応じて法律を改正するかしないかということは、これは次の問題であります。今日各般のことを考えながら、影響があるということは当然でありますから、その影響について法律改正をどこまでやるかということは、今日ただいま各省間において検討中でございますので、本日はまだ見通しを私が言うことは早計かと存じます。
  179. 藤田進

    ○藤田進君 本国会に批准の提案をされるということについては、間違いはありませんか。
  180. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 先般総理からもお話がございましたように、この国会を目途に批准の準備に検討を、各般の法律の検討を急いでおります。
  181. 藤田進

    ○藤田進君 この点について、さらに総理大臣から、今国会提出に間違いがないなら、ないということについての御答弁を願いたい。
  182. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この国会に提案するように、各般の準備を督促し、急いで検討を命じておりますので、その検討の状況につきましては、今労働大臣が申し上げた通りであります。
  183. 藤田進

    ○藤田進君 科学技術庁長官にお伺いいたしますが、今度、科学技術の振興ということで、研究職その他の特定な人人に対する、わずかではあるけれどもベース改訂がなされるということでありますが、たしか商工委員会での御発言を聞いておりますと、まだ十分ではないということで、今後の努力を誓われたわけでありますが、その通り今日も変わっておりませんか。
  184. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) このたびの予算におきまして、研究職は、一般公務員が四%のベース・アップに対して七%のベース・アップが認められたわけでございまして、若干考えていただきました。しかし、最近行なわれました技術者の採用試験の状況を見てみますと、電気試験所にいたしましても、あるいは厚生省関係の研究所等におきましても、昔の旧帝大等から受験する人はほとんどおりません。大部分は地方の大学の方が多いのでございまして、この状況が続きますと、大きな断層ができるおそれがある。その原因はやはり一つに待遇の問題がございまして、そこで、何としても民間の研究所に水準を合わせるような考慮をしていただかないというと、国がやっている開発的諸研究に頓挫を来たすおそれが出て参ります。そこで、人事院当局にもいろいろ資料提出いたしまして、でき得くんば、早期に実態調査していただいて、夏あたりに新しい勧告を出していただくように今努力中でございます。
  185. 藤田進

    ○藤田進君 政策は、公務員に対する低賃金ということのほかに、その業務量において、勤務時間その他において、相当ウエートが公務員自体個々にかかっていると思われます。ことに私、最近の調査によってみましても、益谷さんの行管あたり各地の調査をいたしました、これは単なる政府のアクセサリーなら別ですが、真に行政の監察をするということになれば、それに対応する予算というものが必要です。しかし、旅費も非常に乏しいような状態で、しかも人の数も少ないということで、十分機能が発揮されないまま置かれております。さらに、特許庁に参りますと、今回特許新案並びに実用について四十七名ですか、増員されているものがありますが、これなどかれこれ三年しなければその結末がわからない。貿易自由化といわれておりますが、こういう方面にかなりの停滞をしている。今後特許庁については五十名くらい二カ年間にふやすとかいうことも、内部事情としては聞いているわけです。こういった点について、これは一例でありますが、農林省の統計局を回ってみても、全く旅費もないということで、真の統計資料が集めがたいという実情であります。むしろ中央集権的になり、中二階をつけたりというようなことはなされてきたけれども、末端行政機構というのは、麻痺状態とは言わないが、相当機能を発揮し得ない現状にあると思うのですが、行管長官並びにそれぞれの所管大臣のこれらに対する御所見を承りたいと思います。
  186. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) 行政管理庁の監察関係に旅費の不足のあることは、私も痛感いたしております。旅費が足りないために、調査の時間が短縮せられたり、また調査の範囲が狭められたということで、ほんとうの実のある監察ができないことも非常にたくさんあるようであります。しかしながら、国家の財政の現状をよく考えなければなりません。努めて効率的に旅費を使っていくように指図をいたし、また旅費の増額についても続けて努力したいと思います。  最近の三年間の旅費の状況を申し上げますると、過去昨年まで三カ年間、おのおの年間二百万円ずつ増額をいたしております。本年はまた百万円増額する考えで、予算審議を願っておる次第でございます。乏しいこの予算を効率的に使って、監察の実を上げたいと思っております。
  187. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お話通り、大へん窮屈なことにはなっておるのですが、逐次改善するように努力いたします。
  188. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 技術者の関係につきましては、先ほど科学技術庁長官が答えた通りでありまして、御指摘の特許行政におきましては、昨年の関係法律の改正に伴いまして、また最近の状況から申しまして、ぜひ人員、経費の増加を必要といたしますので、前年に比べまして三割以上の増加を見たのであります。これによって大体処理が円滑にいくと思っております。
  189. 藤田進

    ○藤田進君 しかし、今年度は、特許庁につきましては四十七名、実用新案並びに新案と、従って明年並びに明後年度で大体一年二カ月の審議期間を目標にやっていると聞いておりますが、そうなると、来年並びにその次の再来年の予算に期待しなければ予定通りいかないことになるわけでありますが、そうじゃありませんか。
  190. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 人員の採用につきましては、大体百五、六十名を予定しておりましたが、御承知の通り、技術者を急に大増員するということはむずかしいので、しかし、それにいたしましても、私の記憶では八、九十名の増員をいたしたと思います。予算は多分四億円余りだったと思いますが、本年は五億五、六千万円になっておるはずでございます。これは人員の増加のみならず、施設その他の改善に使ったり、各方面の事務の刷新向上をはかっております。
  191. 藤田進

    ○藤田進君 その際に、特許関係に例をとってみても、その審査官の優秀な人たちが、公務員給与の低さから、なかなか求むる人たちが集まってこないという実情にあると思われるわけですが、大臣はどのようにお考えですか。
  192. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 先ほど科学技術庁長官が申しましたごとく、待遇改善は、昨年八月の人事院勧告がございまして、ある程度了承いたしておるのであります。待遇改善、経費の増額につきましても、財政状況を見ながら、しかし、特に技術関係、特許庁の方につきましては力を入れておるはずでございます。
  193. 藤田進

    ○藤田進君 以上の点について、大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。末端の行政組織というものが、予算に影響されて非常に困っているということは、所管大臣も、表現は違っても、腹の底はそういうふうにはっきり見えるわけです。
  194. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 定員の査定、これはなかなか、予算でまかなうことでございますから、国費の使い方でございますから、非常に厳正にいたしております。もちろん、適正に、能率を上げることを考えていかなきゃなりません。そういう意味で、財政実情とにらみ合わせて、私どもは各省の要望にこたえるという実情でございます。これをもって十分だとは申しません。これはもう際限のないことだろうと思いますが、まず適正な処置をただいまとっていると、かように考えております。
  195. 藤田進

    ○藤田進君 法務大臣にお尋ねいたします。最近、ことに青少年犯罪が累増しているように統計から見るわけです。いろいろ原因はありましょうが、雇用関係が円滑でない、失業者が多い、あるいは入学難であるとかという、いわば一連の社会福祉政策の不徹底から来る青少年の犯罪というものが、かなり多くなっていると思うのであります。この点について御所見を伺いたいと思います。
  196. 井野碩哉

    国務大臣(井野碩哉君) 最近の青少年犯罪の状況は御指摘通りであります。ほかの犯罪は横ばいでございますが、青少年犯罪は、遺憾ながら多少ふえております。その原因につきましては、今お話しのような点もございましょうし、また、その他教育の点から、あるいは家庭の点から、いろいろの点から犯罪がふえてきているのでございますので、そういう点につきましては科学的に十分調査して、未然にそういうことのないように、法務省としては措置いたしておるわけでございます。
  197. 藤田進

    ○藤田進君 未然に措置といいましても、単なる検挙主義であってはその根源は絶たない。結局、社会環境、経済環境をよくしていくということが、大きな施策になってこなければ、この根源をなくすることにならないのではないでしょうか。
  198. 井野碩哉

    国務大臣(井野碩哉君) お説のように、もちろん、環境あるいはその他教育方面をよくしていくことにおいて、非常に犯罪を防止できると思います。しかし、法務省としましては、非行少年となりました者の処置を扱っておりますので、その方面においてできるだけその要望に努めておるということを申し上げた次第であります。
  199. 藤田進

    ○藤田進君 人事院総裁にお伺いいたします。あなたは、中立公平な立場で公務員給与を検討し、政府並びに議会に勧告をする立場にあるわけでありますが、従来のその勧告された内容、今回の七月勧告、これらを見ましても、全く公務員側の立場というものを考慮しないで、私も六年間ばかりそういった調停を中労委等でやりましたが、結局、幾ら上げるか上げないかのめどを先につけておいて、それからあと、それにふさわしいあちらこちらの数字を持ってきて、もっともらしくするというのが、これはもう人事院だけではなしに、最近のやり方はかなりそういう傾向が強い。いわば公務員側に言わせれば、人事院はもう全く政府のかいらい化してしまって、ない方がかえっていいんだ、こういうそしりがあるわけであります。ことに、実施期日が延々と延ばされた場合、また勧告の基礎となる数字の取り方、こういったような点について、先ほどいろいろ所得倍増論に関連して質疑をいたしまして、政府といたしましては、所得倍増を、三十四年度を基準として三十五年度を初年度と考えている。数字のよしあしは別として、これに対しては大蔵大臣は四%云々、全体として六割程度、こういうことを言っているわけであります。今後の公務員給与勧告にあたっては、そういう方面も十分加味されて、もっと公務員側の立場も考え、資料の取り方も再検討される必要があろうかと思います。あと詳しく個々にわたって申し上げますが、どのような態度で今後はおやりになるか、従来と同じ方針で内容においても態度においてもおやりになろうとするのか、まずお伺いいたします。
  200. 浅井清

    政府委員(浅井清君) お説ごもっともでございまして、さような態度でやりたいと思っております。ただ、どうも最近人事院政府のかいらいであるというおしかりでございまするけれども、一方にはこれで政府内の野党だという御批判もあるくらいでございますが、これはやはり人事院の公正な態度をある意味において示しているのじゃないかと思っております。しかしながら、これは決して私ども公務員の保護機関である職分を全うしないという意味を言っておるのではないのでありまして、御趣旨に従って十分やりたいと思っております。ただ、初めに幾ら上げるか数字をきめておいて、あとから押しつけるということでございまするが、さようなことは絶対にございません。
  201. 藤田進

    ○藤田進君 あるとは言えないでしょようが……。そこで、日本の場合は、民間の給与、公的資料によりますと全産業の月額、これは一九五九年度資料で二万二千六百八円、こう出て参りますが、これに対して大学卒の初任給一七等の一号を見るときに、一万六百八十円、これは民間産業の月額に対してはわずかに〇・四七、四割七分であります。また、八等一号についてこれを見れば、〇・三一、三割一分。イギリスの場合を見るというと、同じ方式でこれを計算してみますと、大学卒の初任級はわが国の一万六百八十円に対して三万三千円、これは民間のそれに対しては日本が〇・四七だが、イギリスは一一七%、こういう数字を示している。また、その他の国々、アメリカの場合を見ると、これはけたはずれに初任給も大きい。邦貨に直して約九万五千二百円ばかりになると思います。これは民間産業のそれに対して〇・九六、約一〇〇%に来ている。さらに、その他のドイツ等々、時間がないので全部申し上げませんが、同様に、民間産業の月額に対しては相当大幅なウエートを持っておるにかかわらず、わが国は、以上申し上げましたように、わずかに〇・四七、最低については〇・三一というような低位にある。これでいいでしょうか。日本の公務員はこういう低位にあっていいと思いますか。たとえば議会の場合でも、時間外勤務をしても、そのまま時間外勤務手当を払わないで、その一人当たりの年間割当をきめて、それ以上はただ働きという状態。これは公務員の職場には相当広範に見られる姿であります。
  202. 浅井清

    政府委員(浅井清君) お答えを申し上げます。外国の公務員と民間との比較がございましたが、これはいろいろな統計の基礎によって異なりますから、直ちにこれをもって云々ということはできないだろうと思っております。ただ、人事院がやっておりまする民間給与公務員給与との対比は、お手元にすでに差し上げております勧告に付属しております資料によって御了承を願いたいと思います。ただ、私はこれをもって満足しておるものではございませんが、今後も漸次改善していきたいと考えております。
  203. 藤田進

    ○藤田進君 統計というものは、その取り方でいろいろあって、なかなか比べられないと言われるが、あなたが勧告されているもとは統計を基礎にしているのであります。その統計の取り方で幾らでも変え得るということは、あなたもこれは了解されなければならない。
  204. 浅井清

    政府委員(浅井清君) お答えを申し上げます。統計の基礎がいろいろ違えば違うと申しますのは、外国との関係において申し上げたのでございます。
  205. 藤田進

    ○藤田進君 それでは、あなたの了解する統計の結果は、イギリス、あるいはアメリカ、西ドイツ等について、どういうふうになっておりますか。
  206. 浅井清

    政府委員(浅井清君) 外国の公務員給与ベースがどうであるか、あるいは民間の給与ベースがどうであるといいますることは、これは早い話が、公務員の範囲でございまするとか、あるいはその数でございまするとか、これはいろいろ違うと思いまするし、それから外国と経済事情も違いますし、これを直ちに円貨に換算いたしまして比較はできないだろうと思っております。
  207. 藤田進

    ○藤田進君 外国並みにしろという趣旨ではありません。例を外にとってみてもかようなことなんです。日本の公務員の場合は非常に低いということがはっきり出るわけです。それは日本の特殊事情として、民間産業のそれに比べてそういうものでいいということが、どこから言えるのです。
  208. 浅井清

    ○城府委員(浅井清君) 決して民間の給与に比べて公務員が低いのでよろしいと申していることは、一度もないのでございます。人事院では、官民の較差を幾らと認め、そういたしまして、それに対応する給与改善をこれまではかってきたつもりでございます。
  209. 藤田進

    ○藤田進君 しかし、低くていいということは言わないといっても、出てきた結果は低くなっている。しかも、その統計の取り方は、今日各産業は相当多くの臨時工を包蔵しております。これらの臨時工の給与も加えて、また、職場においてはこれは否定できない事実として、中小企業と大企業との賃金較差というものは、これはあなたも御存じの通り中小企業、これをかなりのウエートで、ことに五十名程度までの中小企業の賃金のベースをここに織り込み、そしてしかも、三月、これは月収においては年間最も低い給与月であります。これをとり、そして民間の方は少なくとも四、五月に給与改訂は集中している。どんな資料を見ても、翌月、翌々月は民間給与が改まる。ベース・アップになる。その直前の三月、そういうものをとって、しかも、これは少なくとも従来一年間そのまま経過して、翌年の四月一日。こういうものがすべて正しいと思うのですか。
  210. 浅井清

    政府委員(浅井清君) お答えを申し上げます。五十人以上の企業と比較したことはございません。五十人以上の事業所と比較しているのでございますから、全国的の調査をいたしまする場合に、ある府県におきまして大きな全国的な銀行、会社がある。その支店がある。その五十人もとっているのでございます。
  211. 藤田進

    ○藤田進君 三月をとる理由は。公務員にとって非常に不利益であります。なぜ三月をとる。かつ一年。少なくとも事実上は二年のこれは持ち送りになってしまう。立ちおくれになる。それがなぜ正しい。
  212. 浅井清

    政府委員(浅井清君) お答えを申し上げます。これは政府予算編成期に間に合わない勧告ではいけないということがございまして、勧告をする時期を大体七月の中旬ときめました。それから逆算いたしますると、最近の数字は三月ということになるのでありまして、別に、三月が特に低いから、これをとって公務員給与を押えるという意味は毛頭ございません。
  213. 藤田進

    ○藤田進君 人事院は、独自の立場で生計費調査もしているはずです。そういう機能を少し活用されて、翌月の四月というものは容易にとれると思う。政府機関の協力も得れば、とれると思う。いやしくも公務員年間給与をきめるのに、統計資料が間に合わないからといって、一番不利益なところをとっているということが、民間給与との大きな落差になる。今朝も申し上げたように、岸さんの時代を今直してみても一万五千五百円余りにはなる。基準年次の昭和九——十一年をとれば、そのときは七十五円です。そこをとれば、大学出の初任給は今日二万三千円くらいには引き直せばなる。国民一人の総生産もふえてきている。こういうときに、統計資料の云々でもって、多くの公務員たちを苦しめるということは、人事院が中立公平なものとはどうしても認めがたい。もう少し人事院の内部の機能というものをフルに運転しながら、政府の統計諸機関の協力を得てやっていくという態度に改めてもらいたいと思う。いかがですか。
  214. 浅井清

    政府委員(浅井清君) お説ごもっともだと思います。いろいろそういう御批判もありますから、ことしでございます、ことし何月を基準として調査をするのが一番いいかということは、目下検討中でございます。これにはいろいろ技術的な問題もございまするので、御趣旨を尊重いたしまして研究いたしたいと思います。
  215. 藤田進

    ○藤田進君 ことに、臨時工というのは相当な低位にあります。昨年でしたか、約二万の公務員に、賃金労務者を定員化したためによって出た賃金水準は、かなりその計算において平均ベースが下がったと思われます。幾ら下がりましたか。事務当局でいいです。
  216. 浅井清

    政府委員(浅井清君) ただいま三月の数字……。去年の十月の数字しか持っておりませんが、二万八百円くらいかと承知いたしております。
  217. 藤田進

    ○藤田進君 いや、幾ら……。賃金ベースが臨時を定員化したために、約二・三%ですか、四百四十円くらいベースが下がったということを聞いている。どうですか。
  218. 浅井清

    政府委員(浅井清君) お説の通り、ベースとは総平均でございますから、給与の低い者が入って参りますれば、これは下がるのでございますが、詳細の数字につきましては、給与局長からちょっと御説明させていただきます。
  219. 滝本忠男

    政府委員(滝本忠男君) お答え申し上げます。定員内に常勤の職員が繰り入れになりましたために、公務員のベースが下がったということはございます。人事院でやっておりまする官民の比較というのは、いわゆる平均ベースではないということはすでに御承知の通りでございます。平均ベースということになりますれば、新陳代謝がありました場合に、高い給与水準の者が抜けてゆきますれば給与水準が下がったり、また低い給与水準の者が入って参りますればまた異動があったり、いろいろなことがあるわけでございます。人事院といたしましては、そういうものでなしに、たとえばある一つの職員といいますか。ポジションといいますか、そういうものの給与というものがどういうものであるか、こういう調査をいたしましてやっておる次第であります。  昨年、人事院調査に臨時職員が入っておったではないかという御指摘でございます。これは、すでに内閣委員会等におきまして議論がございまして、われわれも調査要綱等の表現におきまして多少不十分なものがあったのでございますが、これは実際の調査におきましては十分注意してやったということを申し上げたのであります。しかし、これはそれだけでは了承が得られません場合もありましたので、今後におきましては、こういうことは明確にいたして調査いたすつもりでおります。
  220. 藤田進

    ○藤田進君 それから、実施時期というのは重大な影響を持つと思う、個人にとっては。勧告が七月になされて、翌年の四月一日から実施というのは、今回もそうです。人事院とされては、その趣旨が、民間の、議論は別として、三月を統計にとったとするならば、それは過去三月までの民間給与ベースであった。これは否定できない事実です。そこで、四月にはもう上げるということが例外なしに予定されていいと思うのです。そういうときに、勧告を出す際に、賃金は他の刑罰法規と違うのですから、何月から遡及してとかというようなことが、なぜ人事院としてできないのですか。ここらがやはり政府のかいらい化したという大きな理由になっている。
  221. 浅井清

    政府委員(浅井清君) お答え申し上げます。ただいまお尋ねの点は、まことに私も同感に思っております。三月現在で調査をいたし、勧告をいたしたものならば、これは四月から行なわれるのが当然だろうと思っております。でございますから、これが翌年度に行なわれるということは、私ははなはだ遺憾に思っておるということは、当委員会においてもかつて申し上げたことがあるのでございます。ただ、これを勧告文の表現でなるべくすみやかにと申しますことは、われわれといたしましては、予算の編成権を持っておりませんために、さように表現しておるだけでございまして、お説の通り、これは四月から実施されるのが最も望ましいことだと考えております。
  222. 永岡光治

    ○永岡光治君 関連して。ただいまの資料の説明と実施の時期の点について藤田委員からただしておりますが、私も、この際関連をして、疑問を持っておりますのでただしたいと思うわけです。  三月の資料ですが、大体比較しているのは、そういたしますと三十日として民間は計算しておるのか、三十一日分として計算しておるのか、その点が一つと、もう一つは、国家公務員の分布状況です。ほとんどが東京ですね。国家公務員地方にあるというのはごく限られておりますが、全国の民間の分布状況、民間の賃金と比較する際にも、これと相応した比較、民間の分布の状況ですね。たとえば、東京が八割国家公務員がおるというならば、東京の民間を八割と、そういうように、あるいは北海道ならば、たとえば札幌ですかね。札幌にあるとすれば札幌を、その分野において、その比率においてとる。そういう比較でなければ、私はほんとうの比較にならないと思う。ただ、民間だから、全国の民間だからという理由で、国家公務員のいない所までそれを引っぱり出すという、しかもそれを非常に高くウエートを置いた分布状況調査をするということは、これは当たらないと思う。どういう調査をしておるのか。その点が第二点、  それから、もう一つは、ただいま実施期日について総裁は言っておりました三月で調査したのだから、すぐ四月からやってもらいたいという要望を持っておる、それを実施しないで一年おくらすのは非常に残念だと言うが、しからば、あなたは勧告権を持っておるのだから、三十四年度に、言うならば、公務員が、あなたが要望した通り実施されなかった不満を、三十五年度でどう解決されようとするのか。これは方法があるわけです。たとえば一時金でやりなさいとか、方法があるわけです。途中でもそういう勧告はできるわけです。たとえば、三十四年度でも、補正予算を組まれようとする際においておやりなさいという、誠意があるならばとれるはずだと思うのですが、なぜそれをやられなかったのか。また、やろうとする意思を持っているのかいないのか。その点が第三点。もう一つは、資料のとり方が不十分と思うのでありますが、三月や四月、いろいろありますが、それではことしはぜひ四月の比較でやってもらえるかもらえないか。もしそれが、あなたの言うように、七月に間に合わないとするならば、ひとまず三月の資料でも報告をするが、同時に、一カ月おくれるわけですから、一カ月おくれても、四月で比較した資料をおっつけ国会政府の方へ出す用意があるか。一年に一回しか報告はできないという筋合いのものではありません。勧告をしたらそれでおしまい。一回しか勧告はできないという筋合いのものではないのでありますから、四月ないし五月という、ただいま藤田君が指摘いたしました民間の給与が非常に上がったその時期、しかも公務員は二年、実質上は二年間おくれて実施されておる。その状況と比較しなければならぬわけですから、そういう非常に気の毒な立場にある公務員をこの際考慮するとするならば、その四月で比較するだけの用意があるか。私は特にそれを要望したいと思うのですが、あなたの方では受け入れてくれるかどうか。この点についてお尋ねをいたしたい。
  223. 浅井清

    政府委員(浅井清君) お答えを申し上げます。最後の四月にやるかどうかという問題、これはすでに研究中でございます。ただ、いろいろ技術的な問題もございますので、ただいま研究中であると最前お答えを申し上げた通りでございます。今年度勧告においてどのような内容を盛るかということは、実は白紙で臨んでおりまして、先にきめてあとで調査するという方法はわれわれはとっておりませんから、これはお答え申し上げられません。  それから第一、第二の点は、技術的の問題でありますから、給与局長から。    〔永岡光治君「給与局長の前に」と述ぶ〕
  224. 小林英三

    委員長小林英三君) 関連質問はあくまで関連ですから。
  225. 永岡光治

    ○永岡光治君 だから、給与局長の前に私は質問をしたい。誤解しているから。  私は、今年度勧告するかどうかという、そういうことを言っておるのじゃなくて、三十四年度分、三十三年度分と、非常に損してきているでしょう。実質は二年おくれているのです。形式上からいっても、一年おくれているわけです。その取り分を、たとえば一時金で、一時金ですよ、一時金を三十五年度にやれということは……。はっきり数字が出ておるわけです。一年おくれているという厳然たる事実は、あなたは認めておるわけです。それについて、公務員を擁護する誠意をあなたは持っておるのか、持っておらないのかということを聞いている。
  226. 浅井清

    政府委員(浅井清君) 人事院は、勧告するだけの権限しか持っていないのでございます。それを、国会及び内閣において、何年度からこれを実施するということになれば、これはやむを得ないことであって、その間損をしたものをさらに補てんするかどうかということは、ただいま考えておりません。
  227. 滝本忠男

    政府委員(滝本忠男君) お答え申し上げます。三月分調査ということにつきましては、先ほど総裁から申し上げましたように、これは八月三十一日、これは各省が予算概算要求を出す時期でございます。これに相当余裕を置いて、ということで、従来七月十六日がきまって参ったのであります。意識的ではないけれどもきまって参ったのでございまして、それから逆算いたしまして、三月分の調査ということになっておるのであります。三月分というものについて、日にちが短いか長いかという議論がございまするが、おおむね月給制をとっておりまするものにつきましては、この日にちが短い、長いということはあまり問題にならないのであります。ただ日給制をとっておりまする場合には、大体賃金の締め切り期間というものが、前月の二十四、五日から当月の二十四、五日というようなことになりまするので、たまたま暦月短い、二月の月の短さがこの賃金計算期間の中に入ってくるということはございます。しかし、われわれは従来とても日給者につきましては、やはり正常勤務者というものをとっておる。欠勤の多かった者なんかはとらない。そのためには月間二十日以上働いた者をとるということでやっておりましたので、これはこれでいいと思っておったのであります。しかし、さらに御指摘がありまするならば、多少問題がないでもないという感じがいたしますので、今後の問題につきましては、これは三月分で調査するか、四月にするか、いずれにいたしましても、そういう点につきまして十分研究を進めたいと思っております。  それから民間との比較につきまして、公務員地域別分布がどうであるかという問題でございまするが、これは非常にむずかしい問題であります。これはいわゆる暫定手当に関連いたしております。われわれの方としましては、現在どういう地域の者がどの程度の暫定手当をもらっておるか、これを民間でどういう地域の人々がそれに該当するかということによりまして、これを全部、たとえば一級の暫定手当をもらっておるところで調べました民間のものを、まずゼロ級地にこれを換算し直すということをやるのであります。すべてそういうふうにしてやりまするので、どの地域公務員が集中しておるからどうのこうのという問題はないように思っております。ただ、暫定手当の問題が民間の給与地域較差を反映していない、こういうところに問題が残ると思いますけれども、われわれの勧告の場合の作業といたしまして、民間と公務を対比する場合には、暫定手当で、それぞれ公務に出ております暫定手当に相当いたしまする地域を、それだけの暫定手当が出ておるものとして、それをゼロ級地に換算したらどうだろうかという数字を出すのでありますから、その点に関する限り問題がないように思っております。
  228. 藤田進

    ○藤田進君 さらに貿易の自由化に関連して、結局国内の賃金にしわ寄せされる心配があると私は考えますので、通産大臣にお伺いいたします。日本の場合は、御承知のように鉄あるいは綿花あるいはまた羊毛、石油もしかり、相当量を外国に原材料として依存をしている。結局金利は高い、資本費に占める割合というのは年次累増している。こうなってくると科学技術の振興もさることながら、外国市場における競争力の要件としては、結局国内の労働賃金をできるだけ安くして、そのコストに占める割合というものを押えていく以外に競争力の培養というものは当面ないのではないだろうか、ここに民間産業の労働賃金といったようなところに、さなきだに産業予備軍が相当いるわけであります。産業立地条件と国外の競争市場における諸般の事情から、ここにテープ・レーバーというものが必ず起きてくる。この点について通産大臣はいかにお考えになるか。
  229. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 貿易の自由化は日本の経済を拡大発展さすための手段でございます。経済発展拡大が目的であります。従いまして経済発展拡大すれば、雇用も増大し賃金も上がることは当然であると私は考えております。(「冗談じゃない」と呼ぶ者あり)
  230. 藤田進

    ○藤田進君 かつて在庫不況という経験をいたしました。貿易関係は必ずしもいいものを安くではだめなんで、国際親善がなければならぬことは中共貿易が示しております。こう考えてくると、幾ら拡大発展していって設備投資を進めていっても、貿易関係が相当伸びないとすれば結局在庫になる。従ってその在庫を打ち破って競争力を持たせるということになれば、何といっても当面いいものであると同時に安いものということにもなる、そういう循環をすると私は考えるのですが、いかがですか。
  231. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 物事をうしろ向きに考えるよりも、前向きに考えるべきだと思います。従って貿易自由化というのは、今のように外国の物は入れない、日本の物は買ってくれというのじゃいかない。私が自由化を言うのは、日本の経済を拡大して、どんどん世界の人のうちに溶け込んで、日本の物を買ってくれる手段としてやっておるのであります。従いまして、貿易を自由化したならば、生産が衰えて国内競争が過当競争になっていかんようになるんだ、こういううしろ向きの考え方には私は賛成できません。
  232. 藤田進

    ○藤田進君 従って、国内有効需要を刺激しながら賃金倍増論ということをかつて唱えられたように思うわけです。現在でも変わりませんか。
  233. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) その通りであります。
  234. 藤田進

    ○藤田進君 岸総理にお伺いいたしますが、第一点は、人事院総裁指摘されますように、七月勧告はその年の四月からということです。たびたび遺憾の意を表明したという。結局人事院勧告を尊重したと言いながら、実際問題としては一年間逃げてしまったことになる。重大なやはりこれは問題だと思う。この点、お認めになるかどうか。  第二の点は、同じ閣内における賃金倍増ということが今日も確認いたしましたような実情です。これと所得倍増とは趣旨が違うということで強調されて参りました。どのように所得倍増と賃金倍増の違いがあるのか、具体的に御説明願いたい。
  235. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 公務員給与改善につきましては、従来政府が申し上げておるように、人事院勧告を尊重してこれを実現することに努力をいたしております。ただ時期の点において御指摘のように、先ほど来質疑応答がありましたように、人事院勧告が出されまして、政府としては財政関係を見てできるだけ早い時期にこれを尊重して現実するということの結果、大部分翌年の予算にこれを計上することになっておる。従って、そこの間に時間のズレがあるという点において、先ほど来いろいろの御議論が出ておるわけでございますから、人事院としては人事院の総裁が言っているように、これがすみやかに実現され、過去にもさかのぼってこれが実現できるように希望されておるということも、これ、ごもっともなことなんです。政府としてもできるだけこの人事院勧告を尊重するという建前から申しまして、財政の許します限り、なるべくすみやかな機会に、できればさかのぼる必要があり、さかのぼってでもこれができるというふうな財政的な事情であるならば、これはそれを実現すべきものである、政府としては決してこの人事院勧告を尊重するという意味において、誠意が欠けておるということではないのであります。この点につきましては、財政の許す限りわれわれは誠意を持ってこれを実現する考えで今日もやっておりますし、将来もやるつもりであります。  国民所得倍増計画の具体的内容につきましては、まだ先ほど来お答え申し上げておる通り、これを審議検討中でありまして、まだ具体的の計画の樹立には至っておりません。しかしてこの倍増計画におきましてできるだけ個人の所得も高めていくようにわれわれも内容的にそういうふうに計画を樹立していくべきものだと思います。具体的のまだ計画もございませんので、具体的に各個人がどうなる、あるいは勤労者の給与関係がどうなる、あるいは賃金の内容がどういうふうになるというところまで具体的に申し上げることはできませんけれども、なるべく私どもがしばしば繰り返して申し上げておるように較差を生ぜしめないようにということ、それから究極において国民各自の所得が増強されることが、国民生活水準を高め、われわれの望んでおるような国民に豊かな生活を保障するゆえんでありますから、そういうように計画をなるべく樹立するように努力していきたいと思っております。
  236. 藤田進

    ○藤田進君 一年間ずれたということについてはまことに遺憾であり、この点に関する限りは人事院勧告を尊重していないということが言えるのじゃないですかね。
  237. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほどお答え申し上げましたように、財政関係を十分に考慮して政府としてはいかなければならないという事情でございますので、一年おくれたという結果になることは私もはなはだ遺憾であるとは思いますが、これもやむを得ないことであると思っております。
  238. 鈴木強

    鈴木強君 関連して一つ簡単に。今、総理の御答弁を聞いているのですが、これは人事院総裁にも私は聞きたいのです。少なくとも国家公務員法が制定されて、国家公務員からストライキ権を奪ったその代償としてストライキ権のかわりとして人事院を認めた。その認められた人事院勧告する勧告が完全に実施されたことが何回あるか、今までの間に。それは岸総理のおっしゃるように、日本の財政状況から推して政府は最善の努力を尽くしておるとはおっしゃいますけれども、これはやる気になれば私はやれると思うのです。問題は国力、国情に見合った国防計画を立てておられるというのですが、こういう点を見ても国力と国情に応じていないじゃないですか。人事院勧告というものが出て、その予算が八十億か百億かかるとしても、そのくらいのものはやはり認めてやって、完全実施をしてやって、そうしてなおかつ公務員諸君ががたがた言ったら、これに対してあなた方が対策を立てることはこれはやむを得ないと思う。問題は、そういう立法の精神と人事院が設置された基本的な考え方をある程度尊重しているのだが、完全に認めてやっておらないで、そうして少し何かすれば弾圧するというような、そういう考え方は私はおかしいと思う。ほんとうにやる気になればできるんです。総理大臣、あなたは責任を感ずると同時に、そういうやはり法治国家の内閣として少なくとも過去の経緯から推して人事院勧告したものはずばりやってやる、そういう正しい慣行を私は樹立してこそ初めて正常なる労使関係というものが出てくると思うのですが、それについてどうですか。
  239. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今申し上げました通り、私どもは決して財政上の理由に籍口してこの人事院勧告をおくらすというような考えは持っておりません。私ども今後もその点に関しましては、財政の問題とにらみ合わせて誠意を持って実現するように努力していきたいと思います。
  240. 藤田進

    ○藤田進君 財政に籍口してこれを云云と言われるが、実際に今度の場合明らかに財政事情だという理由のもとに一年間ずらしたのじゃないですか。
  241. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私が申し上げておるのは、財政の理由から延ばしたということはそれは確かにそうであります。それは先ほどから私が申しておるように、財政上の理由ということに籍口して、ただ実現できるのにそういうふうに延ばした、無責任に延ばしたというのではなしに、やはりこれを誠意を持って実現するには日本の財政の全体を見てわれわれは考えなければならない、こういう上から言って、財政上これが早期に、あるいはさかのぼって実現することが日本の今日の財政からできないという点においてやむを得なかったということ、こういうことであります。
  242. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと関連して。公務員の今の給与改訂を人事院勧告通りやる場合には、もし近い将来にやるとすれば、時期はどの程度のころを想定されているのか。あるいは財源的にはどのくらいかかるのか。それは補正予算という形をとるのか。時期的な問題とその財源がどの程度に要るか、それをお知らせ願いたい。
  243. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来人事院勧告については政府は尊重するといったことはこれはもうその通りであります。ところで、人事院勧告は、毎年翌年度予算編成の時期に間に合う七月の候に人事院勧告が参るということになっております。次年度予算を作るのには大いに参考になる時期でございますが、同時にそれはその年にやるといたしますれば、すでにその年の予算は前年といいますか、もうすでに成立した後でございます。従いまして、この財源なりあるいは歳出というような点は一応国会で御審議をいただいて予算をきめた直後ということになります。四月から新年度に入りますから、四、五、六、七の候でございますので、その時分に直ちにその年の歳入増を考えて補正予算を組むということは技術的には実際は困難な問題じゃないか、かように私は考えております。従いまして在来から翌年回しの予算になっておりますが、これは多くの場合は時期的にそういう問題があるということであります。しかし、その一部の実施について、たとえば昨年行なわれました夏季手当の〇・一、この程度のものについてさらに考慮の余地はないかというようなお話になれば、これは十分財政実情を勘案して処置すべきことであろう、かように実は考えております。ただ今年と申しますか、三十四年度の実際におきましては伊勢湾台風等の災害がございまして、現実にはこれを遡及することが非常に困難な実情にあったということだけ御了承いただきたいと思います。
  244. 永岡光治

    ○永岡光治君 関連。今の大蔵大臣答弁ですと、今年は伊勢湾台風等があったから遡及実施できない……。そうすると、三十五年度もしなかったならば遡及は一応できる、こういうように解釈されてくる、そういう誠意を披瀝されたものと受け取ってよろしゅうございますか。
  245. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 三十四年度ははっきりした理由がございましたから明確に申し上げました。今後の問題といたしましては、今まで申し上げておりますように歳入状況を勘案して十分誠意のある処置をとるべきだ、そのように申す以外にはお答えの仕方はございません。
  246. 藤田進

    ○藤田進君 さらに他の面から給与が圧迫を受ける予算上出てくる問題として今度の安保条約の第三条がございます。これは従来、岸総理並びに外務大臣、防衛庁長官は、速記録を取ってありますが、第三条は決して防衛力の漸増その他を義務づけているものではない、従って何ら関係はないのだ、こういうことでありましたが間違いございますか。
  247. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 安保条約の三条の規定というものは、従来日本が防衛力の増強について、国力国情に応じてこれを漸増するという基本方針に対して実質的にわわれれに新たな義務を加重するものではない、こう解釈いたしております。
  248. 藤田進

    ○藤田進君 そういたしますと、十年間のこれは期限を付してあるわけです。その間に内閣がかわって漸減主義をとる内閣ができた場合、その独自の方針によって漸減主義がとれて、何ら条約の拘束を受けないのですか。
  249. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、今のは仮定の問題でございますから、それはそのときに、そういう内閣ができたときに、それがその条約にどうなるかという問題であろうと思いますが、日本が、自主的に国防会議において国力と国情に応じてこれを漸増していくということは、これは今の、この一切の軍備を撤廃するというようなことになれば、これは当然われわれの内閣といえどもこれをやめることは当然でございますが、そうでない限り、国力と国情に応じてやるということが前提になっておりますから、そのふやし方であるとか、どういうふうに扱っていくかというようなことは、この国力、国情がそれを許さないという場合においても、なお予算上ふやしていかなければならぬ、年々ふやしていかなければならぬというふうには、窮屈なものには考えておりません。
  250. 藤田進

    ○藤田進君 そういたしますと、漸増はできるが、この条約第三条は漸減はできないという義務づけがあるということになりませんか。
  251. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今申し上げましたように、日本が、この一体条文の三条の何は、御承知のように、バンデンバーグ決議の、アメリカにおける趣旨が取り入れられておるのであります。それは、要するに、独立国として自分で自分の国は守るというこの実際上の努力をし、そういうふうなところに対して相互的にアメリカとしても援助をするという決議の趣旨を取り入れたものであると思います。従って日本自身が自分の国の防衛上、四囲の関係、その他の何に応じてこれをやる意思を持っており、またその考えのもとに措置しておるということであるならば、私はその防衛費の額であるとか、防衛の人数であるとかいうものがどういうふうに動くかということは私は関係ないものであって、その考えを持っておる限りにおいては、この条約で、三条で宣言しておるところの立場というものはお互いに変わらないと、こういうふうに解釈しております。
  252. 藤田進

    ○藤田進君 すぱっと答えていただきたいのです。今後十年を仮設し、国際情勢その他を勘案されて、予想してこの条約を結んでいるわけです。その間に漸増方式をとるならば無関係だということのように聞こえるわけですが、実際に外交交渉その他の方法でもって国の守りはするのだという説は有力な意見としてある。そういう政権ができた場合に漸減主義はとれないようにこの第三条はくくりつけてあるように思われるし、あなたの御答弁では関係がないということであれば、日本の国防会議なり何なりはその時の内閣がやるでしょうから、これでもって漸減方式をとっていくという際に、第三条には何らの拘束はあるのかないのか。
  253. 岸信介

    国務大臣岸信介君) それは、私はそのときの国際情勢なりあるいは日本が置かれておる立場等から考えるべきものであって、日本が日本の国をみずから防衛するというこの考え方を捨ててしまうということであるならば、この条約の精神には私は反すると思いますけれども、防衛費の額であるとか、あるいは現実の防衛の人数であるとかいうようなものとこの改定は直接に関係がない、こう考えていいと思います。
  254. 藤田進

    ○藤田進君 答えが違うのです。それはそのときの内閣、国際情勢その他慎重に検討した上で防衛力は維持するか、これは発展すると書いておるが、維持するか、ないし漸減をする際に、この第三条がじゃまになるのかならないのか、兵力の数が何だというのじゃないのです。端的に答えて下さい。
  255. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今私がお答えを申し上げたことに尽きると思いますが、全然防衛力は持たない、維持もしないし、みずから日本を守ることをやめるということであれば、これは私は、この条約の三条の精神に反しておると思います。しかしながら、この日本が、どういうふうに、われわれは漸増するということを申し上げておりますけれども、年々ある何か額だけは必ずふやしていかなければならぬというふうには従来も考えておりません。われわれのこの防衛力というものは、日本の国力と国情に応じてこれを強化していくという考え方を、国防の基本方針としてとっておるわけです。これは独立国として、日本みずからが、許す限りはみずから守っていくという考えの現われにほかならないのでありまして、そういうこと自身を捨てない限りにおいては、この条文と相反することはない、こう思います。
  256. 藤田進

    ○藤田進君 ですから、漸増方式をとるという建前でこの三条はできているんじゃないですか。
  257. 岸信介

    国務大臣岸信介君) その条文は、はっきり書いてあるように、維持し発展せしめるという趣旨でできておるのであります。必ず漸増するということをこれでもって義務づけられておるとは私は考えておりません。
  258. 藤田進

    ○藤田進君 だから、そうなると、全然関係がないのであれば……。岸内閣の間においてはということではないわけで、十年間ある。その間に岸さんがいつまでもやられるとは限らない。その時の内閣が漸減方式をとる、全然ゼロじゃあだめだとおっしゃるが、どの程度ならば漸減できるのかという議論も出てくるわけです。
  259. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど申しましたように、日本が日本を防衛するこの力というものを、独立国として自衛力を持つことは当然であり、これを日本の安全を保持するために、日本が維持し発展せしめるということも、これも当然のことでありまして、具体的にどういうふうにそれを増強するか、あるいはこれをどういうふうに具体化していくかという問題は、これはいろいろ客観的な情勢から、これは判断すべきものであって、どの程度まで漸減すればいいのか、漸増すればいいのかということは、数量的な考え方はないと、こう思います。
  260. 藤田進

    ○藤田進君 しからば、漸減をしても、この第三条で拘束は受けないということが断定できるのかできないのか、将来の、念のためにはっきりと聞いておきたい。
  261. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど来申し上げているように、私の申し上げているのは、はっきりこの問題に関する日本の基本的な態度、すなわち、自国を、日本が自分の力の許す限りこれを守っていくというこの事柄を放棄するなら別ですよ。放棄しない限りにおいて、そういう現実に合うところの防衛力を、それを増すことにおくのか、あるいは減らすことにおくのかということは、これは自主的にきめても、この条約に反することじゃない、こういうことであります。
  262. 藤田進

    ○藤田進君 どうも回りくどく言われるとよく理解しがたいのですが、要するに、あなたの内閣としては、漸増主義、国力と国情に応じてということですが、くどいようですけれども、しかし、やがて社会党内閣ができて、十年あるのですからね、そして漸減主義をとるということは方針で打ち出している、何党内閣にしろ、そういう内閣のもとにおいて、漸減主義はもう日本の自主性によって自由になし得るものか、この三条が抵触して、それはできない、少なくとも維持するか増強する以外にないというものか、どっちかはっきりしてもらいたい。
  263. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今社会党のお話がありましたが、社会党の考え方からいえば、安保条約全体に御反対なんですから、これはまた違うかもしれませんが、私は先ほど来申し上げているように、われわれが自国の防衛をみずからやるという意欲を持ち、またそういう考えのもとに進んでいく限りにおいては、この三条によって、両国のこの宣言しておるものは違反しないのである。ただし、その意欲なりその考え方を捨てるということであるならば、これは条約の精神に反する、こう言っておるわけであります。社会党自身のお考えのように、あるいは、おそらくそれは安保条約自体にも御反対であり、また自衛隊自身を持つことにも反対である、みずからをみずからの力で守る必要がないと、こういうことになれば、これは私は、条約とは相いれないものであると思います。
  264. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連。ただいまの総理大臣の御答弁は、二つの問題を含んでいると思うのです。現在は、まあ漸進的な防衛力の維持ということをうたっていますが、三条は、現在よりも積極的な意味を持っていると思う。「継続的かつ効果的」というのですかりね。で、現在よりは積極的な意味を狩っている、義務づけられているという点が一つあると私は思う。その問題か一つ。もう一つは、さっき総理大臣は、漸減という問題もこの中に含まれるという御発言でしたですね。これは非常に重大な御発言だと思う。この二朱から、漸減なんということはどうししも私は出てこないと思う。それで、今までの御答弁を承りますと、岸内閣は漸増方針をとっているから、この条約と矛盾しないのだと、こういう御答弁なんですよ。漸減ということはこの条約から——継続的かつ積極的ですよ。防衛能力を維持発展させる。それも単なる軍隊だけでなく、この前の防衛長官の御答弁ですと、防衛能力ですから、防衛産業までも含むのであります。防衛産業までも継続的かつ効果的に維持発展すると、こういう義務を負っているのでありますから、特にバンデンバーグの精神を受け継いでいるといいますから、これでは、漸減なんということは、もう縦から見たって横から見ても、もう前後左右どこから見ても、そういうものは、そういう観念は、これからどうしても出てくるはずがないのです。それを総理大臣は、漸減の意味も含まれているということを言われたことは非常に重大だと思う。それと、今度の三条は、現在よりも積極的な意味を持っていると思いますが、それで、これは義務づけられておると思うのに、総理大臣は、どうも義務づけられているのではないような御答弁なんです。その点がどうもはっきりしないと思うのです。
  265. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 何か、この三条によって、日本が積極的に従来の方針を発展といいますか、積極的にやらなければならぬ一つの義務を負うたんじゃないかというふうな木村委員の御質問でありますが、私どもはそう考えておらないのであります。ただ、先ほど申し上げたように、バンデンバーグ決議の趣旨もそこにあるのでありますが、その独立国としてみずから自分の国を守るという意図を持ち、それを実際に実行しておるというところに対してだけ、アメリカはこの相互防衛のような方法によってこれを防衛するという義務を負うているというのがバンデンバーグ決議の趣旨であると思うのであります。そうして日本の国が独立国として自衛力をみずからの力でこれを造成し、これを維持していくと、こういう考えを持ち、またそういう実際の行動をしている限りにおいては、この条約におけるところの三条における、これは義務というかどうかは、これは非常な議論がありますが、日本の立場というものはその点において失われるわけじゃない。しかし、自衛力を捨てるという、みずからがみずからを守るのじゃないのだという考えのもとに立って、そうしてこの防衛の問題を扱うようになれば、これはこの精神に私は反する、こういうことを申しておるのであります。従って、私どもが今国防会議において、いろいろな四囲の状況、また日本の自衛力の内容等を考えてみて、国力と国情に応じて効果的にこれを漸増していくという方針を立てております。しかし、年々の予算に盛り込んでくるところのものは、そのときの財政事情やその他の面においていろいろな変化を受けていることも、これは現実の問題として御承知でありましょう。従って、ある場合においてその人員を減らすとか、あるいはある武器を廃棄するとかというようなことをしましても、今言った根本の日本の意図というものが変わらない限りにおいては、私は、この条約において何ら義務違反というものを生ずる、それ以上のことを日本がやっているわけじゃありません。しかし、先ほど藤田委員お話しのように、社会党が、なくする、みずからなくするというために漸減主義をとる、いわゆる今、みずからの力でもって、一つの実力をもって日本の独立なり安全を守っていくという考えを捨てていくということになれば、これは私は、この条約の精神に違反する、こう思います。
  266. 藤田進

    ○藤田進君 そうなると、従来本会議並びに当委員会その他で御発言内容と相当食い違いを持ってくる。すなわち、維持ないし防衛力を増強するという方向以外に、それが後退するということは許されないということになるのじゃないですか。
  267. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 後退するとかというようなこと、この内容につきましては、今私お答え申し上げましたように、この国際的の四囲の状況その他によってこれは私は変更されるものであって、たとえば、アメリカといえども、今持っておる軍備を——これはまあ非常に大きなものを持っていますが、この軍備費を減らしたから、直ちにこの条約にアメリカが違反しているというべき性質のものじゃない。同様に、日本としても同じことだと、こう思います。
  268. 藤田進

    ○藤田進君 それは、ソ連の陸上兵力の削減の議論で、必ずしも兵力自体が削減されるとは思わないという議論と同じですよ、あなたのは。そうじゃなくて、第三条に何らの義務がないと言われておるのは、全くそれはうそである。これ自体増強ないし現状維持といったようなことで、漸減というものは、これは認められないということははっきりしてきたのです。そうならば、当然防衛力の維持ないし増強という形において義務づけられていると解していいんじゃないですか。
  269. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 従来から申しておるように、日本がどういうふうにこれを維持し、どういうふうに増強していくかということにつきましては、日本の国防会議においてきめておる方針通りやっていってちっとも差しつかえない。それ以上のことは、何らわれわれは義務づけられておるわけじゃございません。
  270. 藤田進

    ○藤田進君 全然答弁は的はずれですよ。時間をきめて質問さしておいて。(「進行々々」と呼ぶ者あり)いやいや、全然問わないことを答えている。同じことを繰り返している。どうして真正面から答えられないのですか。第三条は防衛力の義務を負っているかどうかについて聞いている。これは、増強あるいは現状維持と、それは、陸上兵力は減ったって、核兵器になるとか、そういう内容の違いはある。従って、この第三条は、その意味において義務を負っているというふうにとれる。
  271. 小林英三

    委員長小林英三君) 藤田君、質疑を続行して下さい。
  272. 藤田進

    ○藤田進君 やっている。答弁の段階です。
  273. 小林英三

    委員長小林英三君) 答弁しているですよ。
  274. 藤田進

    ○藤田進君 全然核心を回避して答弁されるから、同じことを時間を費やすのはもったいない。持ち時間があるのですからね。
  275. 小林英三

    委員長小林英三君) 答弁しているでしょう。もう少し御不満ならば突っ込んでお聞き下さい。私は答弁していると思いますが……。
  276. 藤田進

    ○藤田進君 答弁はしているのだが、あさってのことをやっている、全然。
  277. 小林英三

    委員長小林英三君) 藤田君。(「明瞭々々」呼とぶ者あり)
  278. 藤田進

    ○藤田進君 明瞭じゃないですよ。全然核心をはずして答弁している。
  279. 小林英三

    委員長小林英三君) 藤田君、質問を続行して下さい。
  280. 藤田進

    ○藤田進君 じゃ、何回も繰り返さざるを得ないのですが、私の言っているのは、この第三条について、従来何ら防衛力の問題について義務を負っていない、わが国が独自の立場で自主性を持って決定し得る、その決定というものには、時の内閣によって——今後十年あるのですから、必ずしも漸増方式をとらないということも言い得る、現に社会党は、御指摘通り、その場合増強ないし現状維持、これは兵力は減して他の近代兵器に置きかえるとか、いわゆる総合戦力において増強ないし維持するということ、これがやはり義務づけられているのであって、いやしくも漸減をする、それは極端な、ゼロだというのではなくして、漸減をするという方針をとる際には、この第三条に抵触してきて、精神のみならず、この条文において抵触してきて、時の内閣は、この有効期間中漸減という政策をとり得ないようになる、その意味のこの第三条は拘束をし義務を課している。そうではないのですかということを聞いているのです。
  281. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私がお答え申し上げているのは、この漸減ということが、社会党の言われるように、自衛力を持たないということを目途としてやるというようなことになれば、この条約の精神に反するということを私は申し上げておるのでありまして、ただ、具体的に年々増強して、この防衛費の増強をしていかなければこの条文に違反するというような性格のものではない、ただ、客観的な情勢等から見まして、いやしくも日本がみずから守るという、この考えを持っておって、それを実現するところの行動をしている限りにおいては差しつかえないと、私はこう言っておるのでありまして、社会党のお話のように、なくするというので、一時になくすることはできないから、ある程度の漸減の方式をとるんだというようなものであるならば、これはこの条約の精神に反しておると思います。
  282. 小林英三

    委員長小林英三君) 藤田君、あと一分。
  283. 藤田進

    ○藤田進君 従って、そのような意味において第三条に義務づけておると解してよろしいでしょうか。その意味において……。
  284. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは私どもは、こういう条文について、お互いがそういうことを宣言し合っていると考えております。しかし、それは誠意を持って、それを実現する意味において、そのことを実現していかなければならない条約上の義務があるというふうに解釈が立つならば、それもけっこうであると思います。ただ、問題を誤解がないようにしておかなければならないのは、これが一部で言われているように、これによって防衛費をふやしていくところの義務があるんだと、こういうものを新たに負ったのだというふうに考えられるならば、そういうものを負っているものではなく、われわれはあくまでも、日本の防衛力については、日本の自主的立場からこれを決定するのだと、それについて何ら実質的な義務を加重するものではない、こういうふうに考えます。
  285. 小林英三

    委員長小林英三君) 藤田君、持ち時間は終了いたしました。(藤田進君「委員長、話が違うじゃないか」と述ぶ)
  286. 小林英三

    委員長小林英三君) それではもう一問許します。
  287. 藤田進

    ○藤田進君 社会保障制度と一般の賃金水準、その他いわゆる民生の問題についてお伺いいたしたかったわけでありますが、従って、各省大臣の御出席をいただいたわけでありますが、それが、お聞きの通り、時間だということでできません。従って、私は次の諸点をこの際お伺いしておきたいと思います。  それは、まず総理大臣に対しましては、現在恩給制度並びにその内容について諸般の議論がございます。たとえば加算の問題とか、その他多数の遺族会の団体の要求もあります。これにこたえて、与党の中では、改正案の提出という動きもあるやに聞いているわけであります。これを社会保障制度一般に取り込むという議論もいろいろありますけれども、現実の問題として、諸般のかような恩給、これについて、総理は、その不合理の是正等についてどういう方針をもって臨まれようとしているのか、これが第一点であります。第二の点は、この恩給は、いわば戦争の結果諸般の犠牲に対して国家補償するという立場ではないだろうかと思われる、その性格であります。これと関連して、原爆医療法の方は、はたし、国家補償という性格のもとに今回そり改正案を出されたのかどうか。そうだとすれば、この内容についてもむろん問題がある。国家補償ではない、単なる社会政策だとしても多くの問題があるわけでありますが、この点について、その性格、原爆医療法の性格、これが第二の点でございます。  さらに、後進地域開発の問題について、今回四国及び九州等ということで若干の調査費が出されている。これについては、いろいろその内容において伝えられているところでありますが、現在与党においても、中国地域開発ということで、その決議並びに議員提出の法案を用意されつつあるし、従来にまして超党派でという動きもあるわけでありますが、この調査費の中には、一体四国九州のほかにどこが含まれて予算的にいるのかどうか、この点であります。  建設大臣にお伺いいたしますが、今度の治山特別会計その他公共事業につきまして、その施行にあたって、請負とあるいは直営、国の直轄、直営ということに分かれてくるように思われます。これについて、今後これが予算執行にあたってこれらの割合はどのようにお考えになっているのか、この点をお伺いいたします。  その他ありますが、まあそこらで一応の御答弁を聞きまして、また……。
  288. 小林英三

    委員長小林英三君) いや、その御質問だけにしていただきます。
  289. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 軍人恩給の問題につきましては、これは、調査会を作りまして、御承知のように、大体その結論に基づいて一応われわれは片づいた問題だと考えております。ただ、こういう恩給のような問題等につきましては、いろいろな権衡上の問題もありまして、いろいろな議論が出てきていることも、藤田委員お話通りであります。別に私は、これを軍人に対して国家補償しているという考え方ではなくして、他の文官恩給等との関係から見て、権衡上一時停止されておったところのものを復活して考えるということに考えております。いろいろな実施に伴いまして、非常な不均衡であるとか、あるいは不公平なことがきわめて明白なものにつきまして、何らかの手直しをする必要があるかどうかというようなことにつきましては、私は今後検討していかなければならぬと思っておりますが、大体においては、われわれはこの問題は一応済んだものだと考えております。
  290. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 原爆医療法につきましては、遺伝性、先天性等、歯科の一部を除きまして、このたびこれを医療給付範囲の拡大をいたすことを今国会に提案をいたすことにいたしておりますが、疾病中につきましては、医療手当を二千円出すことにいたしております。それから、健康診断に対しましては、交通費を支給いたすことにいたしております。国家的な一つの何か援護、見舞というようなことはないか、こういうような御質問でございまするけれども、戦争犠牲者の他のいろいろなものをも勘案いたしまして、目下それは考えておりません。
  291. 藤田進

    ○藤田進君 性格は……。
  292. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 性格と申しますと……。
  293. 藤田進

    ○藤田進君 国家補償の……。
  294. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 国家補償のそれは考えておりません。
  295. 藤田進

    ○藤田進君 何を考えておらない。
  296. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 国家補償として考えておりません。社会保障といたしまして、これを国が補償するということを考えておりません。
  297. 村上勇

    国務大臣村上勇君) 直轄が本年度は三〇%、請負が七〇%ということになっております。
  298. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 各地方開発調査費のことについてのお尋ねだったと思いますが、九州地方のために五百万円、それから四国に三百万円、その他の調査費として百万……。
  299. 藤田進

    ○藤田進君 その他はどこです。
  300. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) その他は、大体中国を含んでおると思います。
  301. 藤田進

    ○藤田進君 いいですか、委員長、まだ。
  302. 小林英三

    委員長小林英三君) いや、もうこれで中止して下さい。
  303. 藤田進

    ○藤田進君 それでは、やむなくここに終了いたします。
  304. 鈴木強

    鈴木強君 議事進行。私は、ただいま藤田委員質疑を終わりまして、わが党加瀬委員質疑に移る段階においてこの動議を出すことは、きわめて不本意には存じますが、わが党の立場から、ただいま緊急な、しかも重大な事態が発生をいたしておりますので、この際約二十分間の休憩をさしていただきますように、特に委員長にお願いし、皆さん方の御協力をいただきたいと思います。お互いに民主的な各党派の運営をしておるわけでありますから、特に党においてかような重大な、しかも緊急な問題がある際でありますので、まことに私も不本意に思いますが、どうぞ一つルールを考えていただきまして、この際二十分間の休憩を与えていただきますように、動議として提案する次第であります。
  305. 佐藤芳男

    佐藤芳男君 私は、鈴木委員の動議に反対をいたすのであります。本日は、総括質問を終わるという申し合わせであり、遅滞なく審議を続行するという理事会の申し合わせを尊重すべきであろうと思います。従って、鈴木委員も、不本意ながらというお言葉さえ使っておらるることによってきわめて明瞭でありますが、絶対に反対をいたします。
  306. 鈴木強

    鈴木強君 ただいま佐藤委員から反対の御意見がございましたが、われわれも、時間を限っての緊急事態に対応する休憩を求めておるわけであります。従って、それも許さぬということは、まことに私は理不尽だと思います。従って、ぜひとも一つお互いのルールも考えていただいて、二十分だけ一つ休憩していただくようにお願いいたします。
  307. 小林英三

    委員長小林英三君) 今、鈴木君から、二十分間の休憩をしてもらいたいという動議が出たわけでありまして、これに対しまして自民党の方から、佐藤君からして、今日は午前中、(発言する者多し)黙っていなさい。委員長発言しておる。黙っていなさい。発言中です、私は。すわりなさい。委員長は、今朝委員長理事打合会におきまして、今日は総括質疑の最後の日でありますから、お互いの党派がお互いに協力して、できるだけ早くこれを審議をいたしたいと、質疑を終わりたいと、こういう申し合わせがあったのでございます。今、鈴木君からして党内のいろいろの問題、何か緊急な問題につきまして二十分間の休憩をしてもらいたいという御動議があったようでありますが、なかなかさような党内の総会その他でございますというと、十分間とか二十分間とかいうお約束をして下さいましても、従来の経験からいたしますと、委員長といたしましてなかなか、二十分が三十分になり、五十分になるというようなこともたびたび経験をいたしております。どうかさような状況におきまして、今少しでございますから、委員長といたしましては、このまま質疑を継続をお願いいたしたいと思っておるのでございます。(「委員長々々々」「議事進行」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)今、休憩につきまして、休憩してもらいたいという御意見と反対という御意見があったんでありますが、この機会に、採決をしないで、委員長はこのまま続行してもらいたいと思いますから、どうか御協力を願います。
  308. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 先ほど鈴木君が、まことに丁重に暫時休憩していただきたいということを申し上げました。その事情ということは、自民党の諸君も、あるいは委員長も、よく御存じだろうと思う。われわれは、この事態で、最悪な状態にならないように、委員長にも自民党の委員諸君にもお願いいたしまして、議員総会の開会等を会長の方から依頼して参ったので、暫時、ほんとうに二十分ばかり、われわれとしましても、議員総会に籍を置いている関係上、呼ばれれば顔を出さなければならぬわけです。そういうわけですから、採決というようなことでなしに、今、委員長はこのまま続行するということでございますけれども、その事情もよくお考えいただきまして、しばらくの間どうか休憩していただきますように、なお、二十分たちましたら、われわれ全員ここに参ります。あるいは、われわれが来られなければ、理事の諸君はこちらに参りまして、加瀬君の残った質問小林君の残った質問を続行することをわれわれとしてはお約束申し上げてもいいと思うのであります。
  309. 小林英三

    委員長小林英三君) 松澤さんに申し上げます。
  310. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 発言中でございます。その事情は、るる申し上げませんけれども、どうか、こういうわれわれやはり党に所属しているものとしましては、党から要請があれば全員出席いたしたいし、また、こちらの議事の進行にも協力いたしたいという非常につらい立場にありますから、どうかこういう事情をよく御了承下さいまして、あまり強硬的な態度をおとりにならないように、まだ予算委員会の会期は長いのでありますから、わはわれは、何も総括質問をあしたまで持っていこうというような考えは毛頭持っておらないのであります。どうか事情をよくお考え下さいまして、善処していただきたいと思います。
  311. 小林英三

    委員長小林英三君) 今、社会党の国会対策委員長の松澤君から、お聞きのような御意見がございました。これは、社会党の理事諸君並びに松澤君にもお伺いするのですが、今、二十分ということでありました。委員長といたしましては、このまま継続いたしまして、加瀬君の質疑を続行いたしたいと存じまするが、しかし、二十分たった暁におきまして、社会党の総会が継続されておるような場合におきましても、松澤君の今言われましたように、委員諸君あるいは小林君、加瀬君はここに必ずはせ参じて、そしてこの質疑を続行していただけますね。それはできますね。それはお誓い願えますね。
  312. 鈴木強

    鈴木強君 とにかく相談したいのですよ。だから二十分して……。
  313. 小林英三

    委員長小林英三君) だから、私の申し上げることについて一つ……。
  314. 鈴木強

    鈴木強君 だから、相談をしてきますよ。
  315. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 委員会はこのまま休憩をしないで、この形のままで、続行の形をとっていただいて、その間に二十分の時間を一つ置きまして、二十分の時間の間に、一つ社会党の方は御相談にお帰り願って、二十分たっても質疑者がおいでにならない、質疑が始まらないということであれば、質疑権を放棄したという了解のもとに一つ始めていただきたいと思います。
  316. 小林英三

    委員長小林英三君) 今松澤君からお話しが話しがありました件は、私は、松澤君が社会党の国会対策委員長としておっしゃったことですから、私は非常に信用がおけると思うのです。のみならず鈴木君にいたされましても、秋山さんにいたしましても、みんな理事でございますから、今私が申し上げるように、かりに暫時休憩をいたしまして、二十分後におきましても、社会党の総会が続行されておりましても、今のように、加瀬君の質疑を続行させていただきますようにお約束していただけますか。
  317. 藤田進

    ○藤田進君 今のところそういうことで……。
  318. 小林英三

    委員長小林英三君) 今のところでなしに、どうですか。
  319. 鈴木強

    鈴木強君 そんなに、だれの言うことは信頼できるとか、そんな……。
  320. 小林英三

    委員長小林英三君) 信頼じゃない。いやしくも党の代表である松澤君や理事のあなた方のおっしゃることでございますから、今松澤君のおっしゃったようにやっていただけますか。(「議事進行」「努力する」と呼ぶ者あり)
  321. 平林剛

    ○平林剛君 議事進行ぐらいのことは、速記をとめてそこで相談なさいよ。
  322. 小林英三

    委員長小林英三君) それでは、鈴木君と秋山さん、ちょっとこっちへ。ただいまの休憩するかしないかという問題につきましては、社会党の国会対策委員長であらせられる松澤君の御発言もありましたし、社会党出身の鈴木、秋山両理事もそう言われますので、二十分休憩いたしまして、二十分たちましたならば、社会党の総会の続行いかんにかかわらず、質疑を継続さすように責任を持っていただけるようでございますから、二十分間休憩をいたします。四十五分まで休憩をいたします。    午後五時二十四分休憩    —————・—————    午後五時五十四分開会
  323. 小林英三

    委員長小林英三君) これより委員会を再開いたします。休憩前に引き続きまして質疑を続行いたします。加瀬君。
  324. 加瀬完

    加瀬完君 私は安保改定と予算関係について、総理大臣ほか関係閣僚にお伺いをいたします。  新安保条約を見ますと、その前文に「経済的安定及び福祉の条件を助長する」という言葉がございますが、これは外務大臣総理大臣交渉の過程でどのような内容お話し合いなされたのか。
  325. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の安保条約の改定にあたりまして、両国がこの安全保障に協力をいたして参ります場合に、両国がお互いにあらゆる分野において、誤解のないように、またあるいは摩擦のないように、そうしてまた一つの共通の目的であります国連憲章その他両国の経済政策等について、同じような方針によって円満に協調していける立場を貫いていきたい、というのがこの基本的な流れでございまして、従いまして、経済の諸般の関係につきましても、今後日米間におきまして、できるだけ摩擦のないように、あるいは誤解のないように、そうして同じような自由主義経済を育てていく、これに対する協力をしていく、こういう意味でございます。
  326. 加瀬完

    加瀬完君 今のお話は、この前文の文言とはあまりにもかけ隔たった御回答ではないかと思うんです。この言葉は、明らかに「経済的安定及び福祉の条件を助長する」とあるわけですから、経済的安定が、あるいは福祉の条件が日本の内政の上において、どのように助長されることにアメリカが協力してくれるのか。こういう具体的な問題が出てこなければ、この文言の性格を的確に現わしたということにはならないと思う。そういう点でお話はあったのかなかったのか。
  327. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま話し合いの基本的なことを申し上げたわけでありますが、前文におきます「経済的安定及び福祉の条件を助長する」というのは、先ほども申しましたように、お互いに安定した経済、貿易の関係を打ち立てていく、またいろいろな国際社会における経済の立場についても、できるだけ協調的な立場をとっていく、そうして安定的な経済が確立していくように促進していく、ということをこれはうたってあるわけでございます。むろんそういうようにお互いが努力をしていくことを希望するという、この前文の意味でございます。
  328. 加瀬完

    加瀬完君 今までの安保条約にはこういう内容はなかった。新しく「経済的安定及び福祉の条件を助長する」という言葉を入れたからには、当然具体的に内政面でどういう影響を及ぼすのか、どういう施策が行なわれるのかという話し合いがなければ、前文の意味というものは、まことにかざり文句にしかすぎないと思う。そこで、もっと詳しく交渉の内容を伺いたいと思ったわけでありますが、お答えの中からは、私にはいろいろ具体的な問題が取りかわされたとは受けとれません。そこで、さらに伺いますが、自民党の所得倍増計画というものは、今私がお尋ねをしました条約前文の趣旨を生かした計画だと考えてよろしゅうございますか。総理大臣
  329. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国民所得倍増計画ということは、これは別に安保条約と関連して私ども考えておるわけではございませんで、日本の国民生活を向上し、その福祉を増進するためには、どうしても国民所得を増進していく必要があるという見地からきておるわけであります。ただ新しい安保条約の前文にいっております経済の安定、また福祉を増進していくということは、今私が申し上げましたこの国民所得倍増計画を新しく立てるということも、今申し上げましたような趣旨でございますから、その結果として、この安保条約にいっておることも、われわれが国民所得倍増計画を立てるということと、少しも矛盾するとか、あるいはそれを取り上げて倍増計画を立てたのだというような意味ではございません。
  330. 加瀬完

    加瀬完君 それではこの前文は、今までの安保条約では満たされなかったものが、新安保条約によって満たされるものだと解釈してよろしゅうございますか。そういう期待を持ってよろしゅうございますか。
  331. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 特にこの前文のその趣旨を条約の内容の第二条にも、いわゆる経済協力というような条約の規定を持っております。これは従来の安保条約にはなかったことであります。今後経済の協力を日米関係において一そう緊密にすることは、ひいて日本の経済発展、またそれがひいて国民の福祉に貢献するものだと、こう思います。
  332. 加瀬完

    加瀬完君 条約本文の中にも「経済的協力」という言葉があるくらいでございますから、まして前文に今のような言葉がうたってあるわけでございますから、新しい期待が持てるのだとこう解釈をいたしまして、それならば政府がこの前文あるいは条約本文の趣旨を生かしまして、アメリカに対して新しく協力、助長を依頼をするものはどういうものであるか、何をお考えになっておるか具体的に……。
  333. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 一つは日米相互間の経済交流を一そう緊密にまた円滑にするという問題であります。その内容としては貿易の問題があります。日米の貿易を両国の経済発展に資するようにこれを拡大していくという問題があります。また従来もあります日米間の経済、技術的な協力やあるいは外資の導入というような問題も、今後一そう円滑にまた日本の経済発展のために資するようにやっていきたいということ。  さらにもう一つは、国際的の関係におきまして、あるいはヨーロッパ共同市場というものができておりますし、あるいはまた低開発地域経済開発というような問題がございます。こういうような点について従来よりも一そう日米経済の協力を緊密にして、そうしてこういうような国際的な関係においても両国とも協力して、それぞれの経済発展に、また世界の経済発展に資するようにしたい、こう思っております。
  334. 加瀬完

    加瀬完君 福祉の条件の助長ということは、どういう内容を期待できますか。
  335. 岸信介

    国務大臣岸信介君) そういうふうに経済発展していき、繁栄していくということになりまするならば、当然私は一般的に申して国民の福祉は、全体的には増大するものだと思います。ただ経済が全体として伸びていっても、あるいは国内においてそれがある階層であるとか、ある地域に偏在するというようなことは、これは望ましくないことでございましょうけれども経済全体が繁栄するということは、一般的に申して国民の福祉を向上せしめるということになると思います。
  336. 加瀬完

    加瀬完君 この条約前文には「経済的安定及び福祉の条件を助長する」こう書かれておる。経済的安定とか経済発展に伴って福祉が増進されるということではなくて、経済的安定ともう一つあわせて福祉の条件の助長というものを問題として取り上げておるわけです。先ほど藤田委員、木村委員との間にいろいろ防衛費の問題が出たわけでございますが、これを素直に読みとればこういう疑問が私は起こるわけです。というのは今までの安保条約では、アメリカの方から極言をするなら一方的に、日本の防衛費というものがきめられた形もなきにしもあらずであったけれども、今度はあくまでも日本の主体性において、福祉の条件というものを満たすがためには、防衛費そのものをもアメリカの今までのような交渉や要求の通りではなくて、はねのけて、福祉の条件の助長というものを、一つの大きな柱として考えていけるんだ、そういう財政措置が講ぜられる新しい権利を持った、こういうふうに解釈はできないですか。
  337. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今、秋山委員とちょっと話をしていて聞いておりませんでしたが、もう一ぺん言っていただきたいと思います。
  338. 加瀬完

    加瀬完君 総理は、経済発展に伴って、福祉の条件がよくなるんだとおっしゃるけれども、この前文の文章でみれば、経済の安定とともにもう一つ福祉の条件を助長するという柱がある。そうなってくると、それがそういう権利が日本に与えられたとすれば、今まで極言をするなら、一方的に防衛関係費をきめられた形もあるけれども、今度の新安保条約になれば、福祉の条件というものをまず前提として考えて、新しい権利というものを日本政府が得たんだ、こう解釈してよろしいか。
  339. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 何か新しい権利を得たとか何とかいうことはないわけでございますけれども、この経済的な発展をお互いに円滑にし、そうして増大していくということは、一つの国家の福祉の基礎になると思いますので、その基礎に立ちまして、お互いに文化的な交流をやる、そういうようなことによりまして、一そうその基礎の上に立ちまして、両国の福祉の増進が進められるわけであります。やはりそれによって国民生活も、何といいますか色彩、光沢のある、充実したものになっていくと、こういうことに相なろうかと思います。
  340. 加瀬完

    加瀬完君 それは今までのこの委員会でも論議されたように、ならないわけです。防衛費というものと民生安定費というものは多くの場面でかち合うのだ。そこでいろいろの問題が今まで論議されたわけだ。しかし今の御説明で承っておりますと、具体的に福祉の条件を助長するという何ものをも与えられてはおらない、と解釈せざるを得ない。それならこの新安保条約で日本に与えられたるものは、防衛費を政府は国力に応じて漸増といいますが、一応拡大をしていかなければならない義務ということになる。そこで防衛関係費が、今までの説明では国民所得に対して幾らということを言っておりますけれども、防衛関係費として使える予算外契約をも含めて、一体今後どういう見通しが生まれてくるのか。
  341. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 債務負担行為は予算化いたしましたときに問題になるわけであります。債務負担行為については、しばしば申し上げておりますように、わが国の防衛費は、漸増方針をとっているが国力、経済情勢に応じた規模においてやると、それから同時に、必要な民生関係費用等に圧迫を加えないように、これを予算化するということを申しておりますので、この点は御心配のないように願います。
  342. 加瀬完

    加瀬完君 大蔵大臣に重ねて伺いますがね、予算外契約というものが、ある年にばっと出てあとしばらくないというならば、今のような御説明もその通り、受け取れる。しかし昭和二十八年以来予算外契約が必ずといっていいほどついている。そうしてそれは予算に盛られた額と同じような防衛関係の増強の費用として実質的には使われておる。こうなって参りますと、先般木村委員の御指摘もございましたように、この予算外契約というものをはずして、私は国の財政なり防衛費なりというものを考えるわけにはいかなくなってくる。で私の伺いたいのは、ことしはこれだけの予算外契約がありましたが、三十五年度はございましたが、三十六年度以降もこの予算外契約というものをどういうように位置づけていくのか、あるいはその予算に伴う予算外契約というものの将来の傾向といいますか、これについて承りたいと思います。
  343. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) たとえて申しますならば、今回はロッキードの関係で債務負担行為の金額が計上されております。このロッキードの生産計画は、今後三十六年度以降四カ年ということになっておりますから、そのときに初めてこれが予算化されるわけであります。で、これを長期に見ますと、三十六年度以降四カ年にそれを整備するだけの予算的負担があるじゃないか、こういうことが言われると思います。しかし三十六年度以降に予算化いたします場合には、ロッキードの生産状況ともにらみ合わせをいたしますが、同時にわが国の財政の規模と十分にらみ合わしてこれを予算化して参るわけであります。またロッキード以外の点についての債務負担行為は、過去の例からごらんになりまして、毎年大体二百億前後のものが計上されております。こういうものもそのつど財政収入とにらみ合わして、また財政支出、他の必要な事業費等に圧迫を加えないようにそれぞれ予算化いたしておるわけであります。で、過去におきましても 非常に防衛費が圧迫したという事実はございませんが、今後におきましても私どもは今日たどっておる防衛予算傾向を維持して参りたいと存じます。全体の総予算から申しまして、ことしのそれは九・八%、一割に満たない金額になっておりますが、こういうような趨勢を維持していきたいということを実は申しておるわけでございます。もちろん九・八をさらに下げるということもなかなか困難でございましょう。しかし一割程度のものに大体防衛費を計上いたしますならば、他の必要な支出に対して圧迫を加えるというようなことはない、かように思っております。
  344. 加瀬完

    加瀬完君 それでは端的に伺いますが、実質的な防衛費の増はお認めになるのかならないのか、今までは。さらに今後の漸増比率はどういうように移行するのか。防衛庁長官にもあわせて伺います。
  345. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 防衛庁には防衛庁のいろいろ計画があるだろうと思います。財政当局として今日言えますことは、ことしの三十五年度予算で計上いたしました予算が平年度化していく。たとえば給与関係で申せば、これは平年度化していくというような、当然今ある勢力維持のために必要な経費の増がもちろんございます。その他の増勢分というか、勢力を増すという意味においてどれだけの経費を見積もるか、こういう問題と二つになるわけであります。いわゆる防衛関係費がふえたふえたと言われますが、維持分につきましては、これは維持という意味において御了承をいただきたいと思いますが、新規の増勢分は今後昭和三十六年度以降にどういうようにこれを計上していくか、これが先ほど来の議論になっておる点だと、かように思います。それについては私どもは他の支出と十分均衡をとって参るということを申し上げるわけでございます。
  346. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 防衛庁関係予算のワクといいますか、規模をどの程度にするかというのは、やはり国民所得、あるいは総予算の規模との関係からきめていくのがまず一番妥当じゃないかと、こう思っております。防衛費つきましては、昭和二十七年からですが、昭和二十七年は国民所得からいって三・五四%でありましたが、その後漸次減ってきまして、昭和三十三年には一・七二、三十四年には一・五九、三十五年には一・四八、また総予算に対する比率から申しましても、昭和二十七年が一九・三%でありましたが、昭和三十三年には一一・一、三十四年には一〇・八、三十五年には九・八、こういうふうに減っております。そこで国庫債務負担行為や継続費がありますけれども、これが毎年予算化されて計上されてくるわけでございます。そのときにあたりましても、今のような国民所得に対しての比率をそう大きくしないように、あるいはまた総予算に対する比率に対しましても十分考えていかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  347. 加瀬完

    加瀬完君 大蔵大臣に伺いますが、防衛関係費全体として見れば、御指摘のように九・八%という数字が出ます。しかし、説明を私どもがするまでもなく、大体防衛費の中心が防衛庁費に移行しつつあるわけです。そこで防衛庁費というものを押えて見ますと、昭和二十七年を一〇〇といたしますと、昭和三十五年は二五一です。他の社会保障に比べると、二二六にしか指数はなっておりません。で、防衛庁費が、先般来の防衛庁長官の御説明によりましても、これは相当ふえるということをわれわれは考えなければならぬ。そうなって参りますると、均衡をとる、均衡をとるといっても、今日までは均衡がとられていないじゃないか。従いまして、将来は一体均衡をとるとおっしゃるならば、どういう漸増の基準がおありですか。防衛の漸増の基準をお示しいただきたい。
  348. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いろいろ数字のとり方がありますので、どういう数字を基礎にしておとりなりましたか、私どもの考え方とちょっと違っておるわけでございますが、防衛庁費だけで見るとか、あるいは防衛関係費とあるいは社会保障関係と比べて見るというお話でございますが、昭和十年を基礎にとって見ると、防衛関係費は最近は非常に減っておる。これは昭和十年は不適当な時点かと思いますが、それぞれの考え方で、少なくとも防衛関係費は御承知のようにただいま防衛庁長官が申しておりますように、ここ数年は総体の総予算に占める割合も下がっておりますし、また、国民所得に対する比率も順次低下いたしておる、こういう実情にございますから、それらの点から勘案されまして、他の必要な面、社会保障だとか、国土保全だとか、教育文教費だとか、そういう方に予算を大幅に出しておる、こういうように思います。幾らのパーセンテージが当当なりやということは、これは非常に困難な言い方でありまして、もちろん国際情勢の変化もございましょうし、あるいは国内情勢の変化等もございましょう。いろいろな点を勘案して、そうして所要な経費を、それぞれの部門に計上していくということでございます。ただいま幾らのパーセンテージが適当だということは申し上げ兼ねます。
  349. 加瀬完

    加瀬完君 それでは重ねて伺いますが、政府は三十三年に道路整備五カ年計画というものをお作りになりました。三十四年には文教施設五カ年計画というものをお作りになりました。三十五年度予算には、国土保全計画というものをお出しになっておる。これらの諸計画と防衛費の漸増というものをどうバランスをとっていくのかあるいはとられていくのか、この間の事情を御説明いただきたい。
  350. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 最近予算の面で長期計画がそれぞれございます。しこうして私どもは最近治山治水国土保全計画前期五カ年計画というものを重点的にいろいろ考えております。また道路の一兆円予算ということをすでに申されておりますが、道路財源は主としてガソリン税が主体となっておりますので、これは別途に考えてよろしいかと思います。また文教のすし詰め教室解消の五カ年計画、それなどはそれぞれ今日までも一般財源をもってその計画の遂行に当たってきております。で、ただいままでのところ、防衛費でそれらの点を非常に圧迫したというような感はないように私は考えております。
  351. 加瀬完

    加瀬完君 防衛費で圧迫したことはないとおっしゃいますが、この道路計画なり文教施設計画なりというものは、二年度あるいは三年度にしかなっておらない。あるいは今度の国土保全計画というものは、これは膨大な予算を必要とするわけです。それらが段々に進行していくときに、一方、防衛費の漸増計画というものと必ずかち合ってくる。そのバランスをどこでとっていくのか、この点をもう一度。
  352. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいままでは過去の経験を申しましたが、今後は一体どうなるかということでございますが、わが国のあり方から見まして、民生の向上、安定に主力を注いで予算を編成するという基本的な考え方には変わりはございません。従いまして、防衛費の増加にいたしましても、他の必要なる事業費に圧迫を加えないということを前提にしまして、国力に応じた増備計画をするということを基本方針といたしておるわけであります。将来の問題として、それらの点に十分バランスのとれた予算を計上していく考え方でございます。
  353. 加瀬完

    加瀬完君 今まで政府のたびたび行ないました国土計画を見てみますと、そのたびごとに変更されておる。昭和二十九年の治山治水十カ年計画というものは、一兆八千億の予算で行ないましたのが、四年後に遂行実績は一一%、これでそのまま立ち消えになっておる。三十一年の治水五カ年計画、三十三年の新治水五カ年計画あるいはこのたびの治山治水十カ年計画、どれを一体基本計画とするのか、あるいはここで抜本的に新しい国土保全計画というものを政府ははっきりと持っておるのか、これを建設大臣に伺います。
  354. 村上勇

    国務大臣村上勇君) お答えいたします。昭和二十八年の台風のあと策定いたしましたものが、どうもはかばかしく実施されておりませんので、あらためて昭和三十五年度を初年度とする五カ年計画あるいは十カ年計画というものを策定いたしました。これは従来と違いまして治山治水基本法という法案によって、正式に閣議決定することでありますので、従来の、ただ単に関係各省の申し合わせ程度計画と全く違って、今度はいわゆる国民総生産等とにらみ合わせまして、その伸び率等も、あまり国の財政に強く影響のないような程度の伸びで緊急五カ年計画を、治水におきましては四千億ということにいたした次第であります。なお、十カ年計画は、九千二百億ということにいたしておりますが、これは私は、十分これが裏づけができて、十分この事業を遂行し得ると確信いたしておる次第であります。
  355. 加瀬完

    加瀬完君 建設大臣道路等の問題はあとに回しまして、政府計画を順調に進めているとおっしゃいますが、たとえば文教施設五カ年計画の第二年度において、すでに計画の変更を政府はいたしておるわけであります。これはどういう理由で計画の変更をなさったのか、あるいはこういう計画変更に基づいて、一体五カ年計画で所期の目的が達せられるのか、あるいは五カ年計画で所期の目的を達したとしても、すし詰め教室の問題、あるいは危険校舎の問題は、それで全部片づくかどうか、文部大臣に伺います。
  356. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) すし詰め学級の解消五カ年計画に狂いが生じておるではないかというお尋ねでございますが、昭和三十五年度は公立文教施設整備五カ年計画の第二年次でありまするので、この計画は、予想通り五カ年計画を三十八年度までに完全に解消したいというかたい決意を持って、その線に沿ってそれぞれ校舎なり、あるいは学級の超過人員等の整理を、生徒の数を減らすという方針でこれを堅持してやっておる次第でありまして、すなわち、初年度昭和三十四年度、国庫負担金七十五億八千万円、坪数にいたしまして四十六万七千坪を実施いたしました。昭和三十五年度予算は国庫負担金八十六億八千万円、五十一万坪といたしまして、前年度より予算額並びに工事量も加増いたすことになっております。特に中学校の生徒は急増いたすことになっておりまするので、中学校の校舎整備に特に重点を置いて、これが施行をいたしておる次第でございます。この点につきましては、むしろ三十六年度の分へも二割ぐらいは食い込んで、繰り上げしてやっていきたい、かように考え、そういう考えで進めておる次第であります。  なお、すし詰め教室の解消につきましては、公立中学校の生徒数が、御承知のように三十五年は七十一万、六年度は百万、さらに七年度は四十万人増加いたしますので、このために生ずる普通教室の不足を五カ年計画で解消することとして、三十五年度以降約五十三万坪、国庫負担金で整備するつもりであります。三十五年度予算といたしましては五十三万坪の四分の一、平均にして四分の一の二〇%までを三十六年度に繰り込みましてやっていきたい、こういうふうな考えでおりまするので、この計画はあくまでも重要施策のうちの最も重要なものとして、この線は堅持してやって参りたいと考えておる次第でございます。
  357. 加瀬完

    加瀬完君 今の御説明はそれはお間違いでないでしよう。しかし、小学校分を中学校の方に回してしまって、つじつまを合わしているにすぎない。そもそもこの計画は、二百五十二万坪現在文部省の不足坪数がある。ところが、百九十万坪を対象に、一応五カ年計画には百四十六万坪しか乗せていない。初めからこれは不足しているのです。そこで中学校がふえてくるからといって小学校の計画分を中学校に持ってきたら、小学校にまた不足を来たすわけです。こういうことをやっておったら五カ年計画ができ上がりましても、所期の目的すら達し得ないのじゃないか。中学校の生徒が三十五年度、三十六年度ふえることは、この五、六年前から見通しがついているわけです。それを今年になって、三十五年度予算を編成するときになってから変更しなければ間に合わないといううかつさは、一体どうしたことだ、この点もあわせて御説明いただきます。
  358. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 五カ年計画といたしましても、それぞれの年次においてはっきりと一定——小学校、中学校並びにその屋内体操場、そういったようなものを適確に平均にやっていくというやり方ではないことはお話通りでありまするが、むろんお話のように多少やりくりということがあります。一方から一方へ回していくというようなこともありますけれども、しかし、計画全体といたしましては、三十八年度までには支障なく、予定通りすし詰め教室の解消をやっていけるという自信を持ってやっておるわけであります。
  359. 加瀬完

    加瀬完君 二百五十二万坪の不足を百四十六万坪だけを対象に五カ年計画を立てましても、二百五十二万坪引く百四十六万坪の差というものが残る。これが新しい二年度、三年度計画に盛り込まれなければ、五カ年計画をいたしましても、この危険校舎なり、あるいはすし詰め教室の問題は解決できないと思うわけでございます。  建設大臣に伺いますが、道路五カ年計画の第三年目ありますが、一、二級国道及び主要地方道、その他府県道は何%改良及び舗装が完了をいたしましたか。
  360. 村上勇

    国務大臣村上勇君) 三十二年に策定いたしました道路五カ年計画は、約五三%程度の進捗率を示しております。
  361. 加瀬完

    加瀬完君 その他の府県道及び市町村道の改良率はどうなっておりますか。
  362. 村上勇

    国務大臣村上勇君) 大体これに準じて比較的スムーズに進んでおります。
  363. 加瀬完

    加瀬完君 スムーズに進んでおらないのですよ。数字を申し上げます。五カ年計画ができたといたしましても、主要地方道は一八%だけしかこれは改良並びに舗装はされません。その他の府県道におきましては三%であります。これで比較的順調といえますか。一、二級国道が進行しても、それにつながるところの道路というものはほとんど捨てられておる。この問題は一体どうお考えになりますか。
  364. 村上勇

    国務大臣村上勇君) 私のお答えいたしましたのは、五カ年計画の進捗率を申し上げたのでありますが。しかし、全般の道路計画といたしましては、御指摘のように、非常にまだ見劣りがいたしております。従いまして、今後これは順を追うて私どもはこの計画を立て直していく必要があろうと思っております。
  365. 加瀬完

    加瀬完君 先ほど大蔵大臣は、防衛費が漸増しても、他の民生安定の費用とはかち合わないというお話でございましたが、この国の道路五カ年計画に伴う三十三年、三十四年度地方負担率はどうなっておりまか。
  366. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 約二割ちょっとであります。
  367. 加瀬完

    加瀬完君 私は、三十三年、三十四年度地方負担率を聞いておるわけであります。(「答弁々々」と呼ぶ者あり)
  368. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 分担率を申し上げますると、国道が四分の一、地方道が三分の一、修繕が二分の一となっております。
  369. 加瀬完

    加瀬完君 そうじゃない。それはわかっている。それに伴う地方の負担は一体どれぐらいになっているか、こう伺っておるのです。——質問を続けます。  いずれにしても、公共事業関係費用というものが著増するわけでありまして、明年度以降……、これは本年度までは著増してきたわけでありまして、明年度以降もこの著増指数は続くものと見てよろしいのでございますか。
  370. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 金額はふえると思います。
  371. 加瀬完

    加瀬完君 そうすると、防衛も漸増方針で進むと、公共事業その他もまた漸増をしていく。そうなって参りますと、防衛漸増プラス公共事業費の増というものを合わせますと、予算規模というものはますます拡大すると考えなければならない。この財源を将来何に求めていくのか。公債発行というような方法をおとりになるという心配は持たなくてよろしいか。それからもう一つ、これが散超要因となって、この前も御指摘がありましたが、経済的な波乱をもたらすもとになるというような心配はまた持たなくてよろしいか、この二点。
  372. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように、経済成長して参りますし、それから国民所得もふえて参りますし、そういたましすと歳入もふえて参りますので、そういうことで予算の規模もそれに相応しての増大をしていく。これは一応予定するわけであります。その際に、ただいま御意見にありましたように、いわゆるインフレにならない、健全成長をどこまでも目途といたしまして予算編成をいたすわけであります。従いまして、ただいまお尋ねになりました公債政策だとか、いわゆるインフレ・マネーはこれは使わないということを一応考えまして、いわゆるインフレにならない健全財政を貫いていくということで参りたいと思います。かように考えております。この点は物価の面その他から見ましても、それが経済成長倍増計画を立てます基本でもございますので、その点は堅持したいという考えでございます。
  373. 加瀬完

    加瀬完君 倍増計画はあとでまたお伺いをいたしますが、歳入を目一ぱいに、財政収入を目一ぱいに予算規模として広げてしまって、経済的な将来ともその発展が、三十四年度から三十五年度に移るようになればいいのですけれども、そうでない場合も考えられる。そういう場合は、直ちにこれは国家財政そのものも破綻に瀕するということに私はなりかねないと思う。こういう心配を全然持たないで、こういうふうに目一ぱいの財政規模というものを考えてもよろしいのか。
  374. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 歳入、歳出の関係の点だと思いますが、余裕を歳入で持っておる方がいいのじゃないかというお話でございますが、そういう考え方もあると思います。また、その年の普通歳入をもってその年の歳出をまかなうということ、それはまた考え方によりましては非常に健全性を貫くということもいえると思います。問題は、経済が向上いたしまして、そうして月々の変動はあるにいたしましても、順次、成長して参るというその基本線が維持できるなら、一定の傾向をたどるなら、ただいまのような御心配はないことだと、かように私どもは考えております。
  375. 加瀬完

    加瀬完君 第二点として、それでは国民が、結局歳入源であるところの租税負担に耐え得るかどうかという問題について伺ってみたいと思います。  国民所得の実体は、戦前と比べてどうなっておりますか。特に、さっき藤田委員からも御質問がありましたが、サラリーマン給与の戦前、戦後の比較についてお示しをいただきたい。
  376. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国民所得に対する租税負担率、これを昭和九年から十一年までは、大体負担率一二・九、また昭和十六年をとってみますと一六・二、二十三年は二六・八、二十四年は二八・五、二十五年二二・四、二十六年二二、二十七年二二・六、二十八年二二・二、二十九年二一・六、三十年一九・七、三十一年二〇・四、三十二年二一・二、三十三年二〇・五、三十四年一九・九、三十五年二〇・五と、こういうふうに変動いたしております。この昭和年間昭和十六年までの問題は、この財政予算編成の方針から見まして、大体税収入は総予算の規模の五割程度、軍事予算といわれておるこれらのもので大体総予算の三〇%は国債財源でまかなっておるのでございますから、これは特別に考えなければいかぬ。戦後の傾向から見ますと、ただいま申し上げましたように、非常に高いときが二八・何がしというものがございますが、最近は大体二〇・前後になって参っております。この規模が適正なりやいなやという問題がございますが、私ども長期の問題として見ますと、二〇・前後、国民所得に対する税負担率が二〇・前後に一応目標を立てる、そうしてこれがふえないように考えていくべきではないか、かように実は考えて努力しているわけであります。いわゆる所得倍増計画、これによりまする財政計画等が明らかになりますと、この国民の税の負担率というものはどういうことになるかはっきりいたしますが、ただいまは一応大まかにただいま申し上げておるような考えを持っております。
  377. 加瀬完

    加瀬完君 税の負担率を私伺ったのではなくて、国民所得を伺ったのです。具体的に伺います。政府資料によりますと、昭和二十七年から三十二年までの法人所得の伸びと月給の伸びを比較いたしますと、法人所得が二・三倍、月給は〇・八倍と示されておりますが、これはお認めになりますか。
  378. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私、その数字自身はっきりいたしておりませんが、これはその二つを比べてみることは、実体が違っておりますから、いろいろ誤解を受けるのではないか、かように思います。
  379. 加瀬完

    加瀬完君 政府の出された統計をもとにして私は二つを引き出してみたのです。  それでは、三十一年、三十二年実収増加率を比べてみますと、各階層別にこれを比較いたしますと、下の方の階層年収三十万以下ぐらいの所得の者はふえる率が非常に低い。ところが八十万以上くらいの階層の者はふえる率が非常に大きい、こういう統計が、政府の統計で出ておりますが、これはお認めになりますか。
  380. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 所得階層別の人員構成でありますが、ただいまお尋ねの筋合いのお言葉は、おそらく企画庁のほうで出されました白書の趣旨でおっしゃったのだと思いますが、私は主税局長でありますから、税の方でということならばと思って、今資料を持ってきましたが……。
  381. 加瀬完

    加瀬完君 いや、税は質問しません。所得を聞いているんです。
  382. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 税の方でも所得をつかむわけでございますから、そういう角度で申し上げますと、今、手元にありますものが三十三年、三十四年、三十五年と、この三年分について給与所得者と申告所得者と分けたものが出ておりますが……。
  383. 加瀬完

    加瀬完君 この傾向は認めますか、数字がわからなければ。
  384. 原純夫

    政府委員(原純夫君) 数字を申し上げますと、まあ所得税の額でも、給与所得の方が今は大きいですから、給与所得で申し上げます。昭和三十三年分では九百六十六万七千人がこの所得税を納めた給与所得者である。約千万人でありますが、そのうち、百万以上のものの比率が一・四七%、約十四万二千人であります。これは実績であります。三十五年分は予算で見積もっているところでありますが、それによりますと、納税者総員が九百七十九万九千人、これはもうほとんど変わりません。十三万人の増でありますが、そのうち百万円をこえる所得者というもののパーセンテージは三・三%見当になります。
  385. 加瀬完

    加瀬完君 私は、実収増加率が各階層別にどういう傾向を持っておるかということを聞いておるのであります。ですから、今の詳しい数字を幾ら並べられても、私の質問には的を射た答は出てこないと思いますので、質問を続けます。で、一応この傾向を、これは政府資料でありますから、お認めになっているとすると、先般来、所得倍増計画ということを盛んにいいますけれども所得は倍増されても、個人所得というものは非常に格差ができている。低い方は所得の増加が低く、収入の多い者は、所得の増加が非常に大きいということになりますから、これは賃金格差がますます問題になってくると思う。この傾向はどのようにお考えになっておられますか。
  386. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどのなんでお答えいたしましたように、所得が倍増いたしました場合に、個人所得は六割程度の増だということを申しております。ただいまの主税局長が説明いたしますように、いわゆる高額所得者というものは、全体の納税者から見ると非常にパーセンテージは低い。言いますと、それ以下の所得層のところで非常に数が多いということであります。
  387. 加瀬完

    加瀬完君 税金が重いということだ。
  388. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いや、税金につきましては、基礎控除その他から、免税点というものを引き上げたりいたしておりますから、そういう意味では所得税のかからない者がみんないわゆる零細所得ということは当たらない。ただいまも申しますように、わずかでも人員がふえておるということは、免税点を引き上げても、なおかっこの所得税を払う人がふえたということは、やはりだんだん収入が変わってきているという実情を示しておる、かように私は考えております。
  389. 加瀬完

    加瀬完君 納税者がふえたから、所得が増加をした階層が大きいということにはならない。そこで戦前と戦後の租税負担比較を調べてみますと、大体九年から十一年をとりますと、五十万の者までは全然税金がかかっていない。百万の者は一万五千百十二円、現在は十五万の所得の者にも独身であれば税金がかかる、百万の者ならば十五万千七百五十円かかっておる。負担率は昭和九年から十一年は一・五一%であるのに比べて、現在では、百万の所得の者は一五・一八%の負担率になっておる、こういう税金のかけ方であれば、これは収入が少なくても、税金を納める者がふえるわけじゃありませんか。戦前と戦後と比べて、とにかく戦前よりも戦後の方がはるかにまだ税金が重いということは、大蔵大臣お認めになりますか。
  390. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 戦前と戦後を比べて見ますと、確かに戦後の方は負担は重い、これは先ほど軍事費等について一点触れましたが、当時の予算内容と、今の内容は違っておるというところから参っております。
  391. 加瀬完

    加瀬完君 それから戦前と戦後を比べて、所得税額はどの階層に集中しておりますか。
  392. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの、あるいは私の説明が非常に簡単だから、誤解を受けるとまずいと思いますので、もう少し説明をいたします。  租税負担率は、戦前は大体一三%程度であります。それが最近になりまして、負担率が二〇%ということでございますから、五割程度の増加ということになるのでございます。  そういたしますというと非常に重い税を課しているかと、かように申しますが、一面、先ほど触れましたように、戦前におきましては、軍事費をまかなうための公債収入、あれが財源の約三割程度を占めて、租税収入が、その五割ということでございます。最近におきましては租税収入の財源が、これは九割をこえるようになっておりますので、これは、まあ先ほど来議論のありました財政健全性を維持するということになると思います。ところで、この税の負担率が、五割増したと申しますが、これを払う方の国民から見まして、非常に強い感じで非常に重いという感じを持つか、あるいは負担が、そう大きくないという実は問題があるわけでございます。ところで、この財政支出の総体としての規模を見ますと、実質で約七割程度の増、形式では約六百倍ということになっております。しかし支出内容としては、社会福祉、産業基盤強化等の国民経済に及ぼす積極的支出の割合が非常に高まつております、これは軍事費と比べてみまして、この点では、いわゆる負担感というものは、非常に緩和されておる、かように思います。  また第二に、負担感を緩和している点では、一人当たりの国民所得自体は、戦前に比べまして実質で約五割程度の増加をいたしております。国民の担税力は、そういう点では増加しておる。この点は、いわゆる負担感を緩和しておるということになると思います。ところが一面で負担感を重くしておる材料もあるわけです。  たとえば租税負担率が二〇%と、かように申しますが、税目別でこれを見ますと、最も負担感を覚えるような直接税の比率が、戦前よりも、最近は高くなっておる、戦前は、大体直接税で五五%、昭和三十五年では五九%、これはその国税だけの比率について申しますと、戦前は三五%、それが三十五年は五二%になっている。こういう点は、負担感を強める方でございます。  こういうような、緩和の材料と負担感を強化する、強めの方の原因等総合的に勘案してみまして、そしてこの租税の負担率が適正なりやいなやということを考えるわけでございますが、以上の点を勘案いたしますと、私どもが、実質的には負担は軽い感じを持っておるというのが実際ではないか、これは数字の上から、私どもさように判断しておる次第でございます。
  393. 加瀬完

    加瀬完君 その戦前戦後の所得税額の集中率を伺ったのでありますが、戦後は、集中部分が低所得者層にきておりますことは御存じの通りであります。戦前は。二百万から一千万が七六・一四%、戦後は三十万から二百万が七〇・九五%です。そこで租税特別措置法が、昨日も問題になりましたが、租税特別措置法について、不自然さをお感じになりませんか。
  394. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 別に感じておりません。
  395. 加瀬完

    加瀬完君 ことしは、あなたは減税まできないとおっしゃったけれども、実質的には租税特別措置を講じられる対象の会社については、三十四年が一千五億減免税が、本年の見込みは一千百二十七億、二百二十二億実質的には免税していると同じようになっている。東京電力の三十一年の総所得は三十一億六千何万、そのうち租税特別措置法による免税は二十三億四千二百万、これはお認めになりますか。
  396. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) その数字そのものは、御指摘通りでございます。しかし御承知のように法人税収が非常に伸びております。その結果、何らの処置を加えないで、従前同様にしておりましたら、おそらく千二百二十七億より以上の減収ということになるだろうと思いますが、しかし、すでにこの特別措置につきましても三、四について、在来も免税をやめて参っております。この整理の仕方が不十分だと言われれば、これは一つの御意見だと思いますが、政府自身は整理はいたしておりましても、その税収がふえると、ただいまのように収入が増加すると金額を計算すれば、金額がふえてくるということでございます。
  397. 加瀬完

    加瀬完君 いわゆる市中八大銀行と言われるものの三十一年三月までの貸し倒れ準備金の残高表は二百七十二億というふうに租税特別措置法というものによって、非常に集中化が行なわれていると思うのです。経済企画庁の長官に伺いますが、生産集中度の実態はどうなっているか。(「むずかしいぞ」と呼ぶ者あり)
  398. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) ただいま資料を持ち合せておりませんから、あとでお答えいたします。
  399. 加瀬完

    加瀬完君 それでは、これはお認めになりますか。損保業関係は、上位十社で三十一年は七八・八%押さえている。製鉄業は、四十四社あるうちの上位三社で七八・八%押さえている。こういう形を、そのままにしておいて、所得の倍増をやったら、その倍増がどっちにふえてきますか。所得の倍増の計画の中に、こういうものの対策と、あるいは一般の庶民階層の倍増計画というものを具体的にどう振り分けてお考えになっているのですか。
  400. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 最近、日本の経済が非常に躍進をしてきたのでありますが、その躍進をしたおもなる原因は、生産技術の向上でありまして、その生産技術の向上は、やはり大資本を要するというような関係で、勢い大企業所得が著増いたしていることは事実でございます。従いまして今後の国民所得倍増計画を立てますにつきまして、大企業中小企業との所得の格差をなくするような計画を立てたい。これが実質の国民所得の倍増だというふうに、われわれは考えておりまして、これを今後、その格差をなくするような計画を立てるように、うまい例を画策いたしておるわけであります。
  401. 加瀬完

    加瀬完君 ですから租税特別措置法と言ったって、損害保険業などは上位十社で、七八・八%押さえている。製鉄業は上位三社で、やはり七八%を押さえている。こういう形で、いくら減税したって、中小企業も興らなければ、一般庶民の経済の回復なり、経済振興なりというものはできないじゃないですか。一体、そういう集中度のますます激しくなってくる問題に対して、どう考えているか。今の答えでは不満です。
  402. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 産業関係いたしますので、私からお答え申し上げます。(「助け舟か」と呼ぶ者あり)先ほど来聞いておりまするが、今の法人所得と個人所得の伸びの違い、これは、個人から法人成りになりまするから、そういうふうになります。これは、法人数を以前と今とをお比べになれば、すぐわかる。個人企業が法人企業になりますから、所得は非常に変わって参ります。  それから、製鉄の方につきましても、三社で八十何%、私は、その数字にはちょっと疑問を持ちまするが、これは、戦前に比べますると大変なことで、八幡製鉄がほとんどやっておる。これが今三社、そうして、八社になりつつあるのであります。いわゆる財閥解体によりまして、非常に民主化しているということは、戦前とお比べになるとわかると思います。  それから所得の分布なんかにつきましても、昭和十年ごろは、所得税は四億円くらいでありましたが、三井、三菱、住友で、大体全体の所得税の一割近くを納めておったという状態でございますので、そういう特殊な事情をお考えになりませんと、戦前と今とを、すぐおやりになってもわからないと思います。また、損害保険につきましても、戦前の状況を見まするというと、やはりそういうのでございます。今、損害保険は二十二、三社ございますが、だんだんこれは上の方も伸びていきましょうが、下の方も伸びるようにやっていかなければならない。決して戦後において非常な集中化が行なわれたということは、私はあり得ない、財閥解体によって、よほど民主化したと考えておるのであります。
  403. 加瀬完

    加瀬完君 これは、詳しく数字を持っておりますけれども、時間がありませんから、いずれ分科会等で、重ねて伺いたいと思います。
  404. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。ちょっと抽象的な質問になるかもしれませんが、今のに関連して承りたいことは、所得倍増計画というものの内容的なものが、はっきり私自身まだつかめないから、お教えをいただきたい。  というのは、たとえば本年度予算が一兆五千六百億。そこで、所得倍増計画を立てて予算規模を特別にふやすわけにはいかない。税金を上げて、一兆七千何百億にして、二千億上げるということもできない。そうすると、特別の所得倍増計画という具体的な内容が明らかにならないと、普通の年次予算で、だんだん発展していって、十年後には成長率で七・二%、それから一般個人所得では六〇%、六割増、こういうことが出るのですね。それは特殊なことをやらなくとも、毎年やっておるような財政投融資とか、あるいは予算編成をやっていっても、十年後にはそうなるということになるわけですね。  そこで、その普通の年次予算と違った意味所得倍増計画というものが立てられる場合には、内部的に構造的な変化が出てこなければうそだ。そういうものを意図される所得倍増計画なのか、ただ十年後には相当成長してくるという、これを選挙用のキャッチ・フレーズで所得倍増と銘打ったのか、ここが私、一つ問題な点であろうと思いますので、どういうことをお考えになっているか、どうぞこの際概念的にひとつ聞かしていただきたい。
  405. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまお話しになりますように、構造の変化ということは、もちろん考えなきゃならんように出てくるのじゃないかと思います。ところで、所得倍増をいたしましたら、予算もやはり倍増を必ずするんだと、こういう筋合いのものでは私はない……(羽生三七君「そんなことは言っていない」と述ぶ)それは、ないと思います。所得倍増計画を立てました場合に、財政投融資計画が、やはり産業成長に影響する面もございますし、少なくとも民間資金等の確保は必要だという問題はございますから、そういう意味においての官民を通じての資金計画だとか、あるいはまた財政計画というものは、やはり必要にはなって参ります。  でございますから、やはり産業自体の構造の変化も一応考えて、その計画を進めていく。ことに申し上げたいのは、戦後の今日までは、産業も比較的小さかったという意味において成長率を高度に維持することができて参ったと思います。しかしながら、もうすでに相当成熟して参りますと、今後従前の成長率を維持していくためには、やはり特別な工夫を必要とするのじゃないか。そういう意味で、一応簡単に七・二%ということを申しておりますが、その通り、はたしてやれるのか、あるいは、もっと七・二%を上げるんだとか、あるいは縮小せざるを得ないとか、こういうものは、ただいまの経済審議会において、十分検討して参るということになると思います。  で、その審議の過程におきましては、御指摘になりますように、必ず産業構造の変化というような点も、あわせて考えていかなければならぬ、かように私は考えております。
  406. 平林剛

    ○平林剛君 関連。ただいま所得倍増の問題について議論が行なわれているわけでありますが、たとえば昭和二十五年から昭和三十三年までの間に、確かに国民所得は二倍になっているわけです。昭和二十五年に約四万六百五十九円であった一人当たりの国民所得が九万二千二百二十円になっているのですから、私は過去においても、そういう所得倍増が行なわれたということを認めるわけです、この数字では。  ところが国民といっても、ピンからキリまであるわけで、所得別、階層別に分けていかなければ、公平な、国民全般が所得を倍増していくというわけにいかないわけですよ。ところが現状においては、どうだと言えば、たとえば今指摘をされておりますように、一部に片寄っているわけです。池田通産大臣は、最近は非常に民主化したと言われますけれども、それは、ごまかしだと思う。全般の数字から言えば、たとえば全国の市中銀行に預け入れた預金残高、これは一つの資本蓄積という資料で見ることができますけれども、これは昭和二十五年に一兆四百八十五億円あったものが、三十三年になると六兆四千八百四十億円になっているわけです。全国市中銀行の預金残高は六倍になっているわけですね。そうかと思うと、産業設備資金投資、これを調べてみれば、昭和二十五年は三千八百九十九億円が、昭和三十三年に一兆六千七百三十六億円ですから、これまた五倍以上になっている。同時に株式の払込資本などを見ても、昭和二十五年は四百七十一億円だが、昭和三十三年は二千三百六十二億円、これも五倍以上ふえている。社内留保だけを見ても、昭和二十六年——二十七年五百一億円だったのが、昭和三十二年では二千四百億円になっていますから、これも五倍にふえている。こういう工合に、大きな法人とか資本家、まあ大企業に蓄積が集中しているわけです。  私は、政府所得倍増という計画を立てる以上は、こういう傾向を拡大をしていくということになりはしないか。だから、そういう方面に関する対策がなければ、ますます貧富の差が激しくなる。所得の格差が増大してくる。こういうことについて、政府はどういう対策を考えているか、これを私はお尋ねしたいと思います。
  407. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 私からお答えします。  お話しの通り、現状のままでいけば、これは所得の格差は、ますます拡大されていくと、こう思うのであります。  そこで、今度の国民所得倍増長期経済計画には、この所得の格差をなくす方向で、所得倍増計画を立てられたということで、目下経済審議会において、その方法論あるいはその性格などについて、いろいろ研究いたしておるのであります。でありますからして、現状のままでいけば、お説の通り所得はますます格差が拡大されてくるというように、われわれも見ておるのであります。
  408. 平林剛

    ○平林剛君 具体的な対策を……。
  409. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 具体的な対策を、経済審議会において、今審議中なのであります。
  410. 加瀬完

    加瀬完君 時間がありませんので、地方財政計画を端的に伺いたい。  本年度地方財政計画は、三十四年、三十五年と膨張する公共事業費を十分に消化できるように立てられているか。そこで、一つは、現在の公債費は、各府県どのような状態になっておるか。それから、各府県でけっこうですが、各府県別、地方税の人口一人当たり平均の、平均に達しない府県は、幾つあるか。
  411. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 足らないところは、あとから調べましてお答えいたしますが、公共事業費の消化につきましては、現行の負担率から考えた計画は、地方財政計画に全部、一応盛り込んでおるのであります。しかしながら、加瀬委員も御承知のように、貧弱団体におきましては、なかなか現行の負担率では、必ずしも消化し切れるかどうかということは私も保証できないのであります。三十四年度におきましても、臨特法の廃止のあとは、二十一億でありましたか、特例債を認めてもらいまして、今これを消化したような状態でありまするので、三十五年度におきましても、まあ交付税の配分なり、あるいは特別交付税の配分等にも、できるだけ傾斜的と申しますか、後進県にたくさんの金がいくように、今努力をいたしまして、消化できるように努めたいと思っております。  今後の問題とてしは、またいろいろ検討しなければならぬ問題があろうと思います。
  412. 加瀬完

    加瀬完君 公債費の都道府県税中に占める割合を見ますと、税収入の四〇%以上が公債費という県が二十六団体あります。この二十六団体を、今度の交付公債を、あのような処理の方法で、この財源処置というのはうまくいくかどうか、これが一点。  それから昭和三十三年度の各府県別人口一人当たり税額を見ると、平均以下が三十六府県、この税収入の財源そのものを考えないで、一体この公共事業費を、もろに受けて、地方がどのようなやりくりができるか、ほとんど私は不可能だと思う。この点をお答えいただきます。
  413. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 交付公債の面につきましては、これは大体、加瀬委員も御承知かと思いまするが、直轄事業のうちの特別会計に属する部分を、交付公債制度をやめまして、地方の現金負担にしたわけであります。その額は、約二百三億であります。そのうち百六十億は、公債の地方債の方へ金を回してもらっておりますので、百六十億は起債で、これは消化できる、あとの四十三億は、基準財政需要額等をいろいろふやしまして、地方財政計画で、それだけのものが負担できるように財政計画を組んでいるのであります。  なお交付公債の今後の償還等につきましては、貧弱県については、その元利償還について、相当額を基準財政需要額に見るようにいたしまして、既往の交付公債の償還につきましても、相当の考慮を払っております。  それから税の平均以下の府県の問題でございますが、これは一昨日でありましたか、高橋委員にも、私お答えしておいたのでありますが、県によりまして、地方税の一人当たりの額というものに非常に高低がございます。そこで低い府県に対しては、交付税なり、あるいは譲与税なり、そういうもので措置をとっているわけでありまして、全体を引っくるめますと、一人当たりの額というものは、ほぼ平均いたしております。逆に一人当たりの単価から見ると、後進県の方が高くなっているところもあるような状態でございまして、交付税なり特交なり、そういうもので平均化の措置を講じているわけでございます。
  414. 加瀬完

    加瀬完君 交付公債の問題は、昨年の国会において、時の青木国務大臣が、元利全部国が処理するという言明をなさっておられる。ところが今度のように説明されようとも、貧弱団体はただ交付公債を肩がわりして、普通の公債にかえただけで、この償還はなかなか骨が折れると思う。たとえば徳島では税収入に対する公債の率は一二二%、税収入の一二二%という公債をしょって、どうして、これが地方財政健全性が将来運行しますか。  こういう点、どうも言葉を濁しておりますので、あなた方の今まで主張しておった、自治庁の今まで主張しておった交付公債の処理の方法というのは、このたびは認められなかった、そういうことですね。
  415. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 私、ただいま、ちょっとここで触れておいたのでありますが、従来の交付公債の元利償還につきましても、その地方団体の財政力によりまして、二五%から九五%までの間で、いろいろ差をつけて今度は財政需要額の中に見ようとしているわけであります。従来は最高でも七五%くらいであったのでありますが、これを九五%まで、元利償還について見よう、地方財政計画の中で操作をしようということになっているのでありますから、まあ一挙には解決をいたしませんけれども、だんだん解決の方向に向かっているということは、一つ御了承を願いたいと思います。
  416. 加瀬完

    加瀬完君 根本の性格の解釈が違うと思うのです。交付公債というものは、初めから地方の負担にすべきものでないという見解を自治庁はとっておった、それを九五%であろうが、七五%であろうが、払うものは払うのだ、こういうことでは、あとで財源の問題で、またやりくりがつかなくなってくる。  と言いますのは、昭和三十二年度の決算でも、道路行政費の寄付金、負担金及び分担金、その他の特定財源のパーセントの一二・四%寄付金や負担金を集めなければ、直轄事業もできないという事態でしょう。公共事業が、こんなにふえたら、ますます寄付金を集めなければ、地方財政は、こんぱいの極に達する。交付公債は今までよりも悪い条件でかぶっている。どうですか、財源は、一つもふえておらない。二十八年度に、公共事業が非常にふえて、地方財政は塗炭の苦しみにあって、それが赤字の原因になって、再建法が出たことは御承知の通り、それをまた、もう一回同じ方向で、同じ歩調で進んでいるのじゃないでしょうか、この問題は……。
  417. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 交付公債の全体の議論につきましては、先ほどから申し上げましたように、地方債に移すなり、あるいは現金納付なりに移して、はっきりその地方団体のこれが負担であるということを地方に認識せしめまして、いわゆる健全化をはかっていこうということを考えております。  その元利償還につきましても、先ほど申し上げましたように、地方団体の富裕の、財政力のいかんによりまして、高低はありまするけれども、二五%から九五%の範囲内で元利償還を計上していこうと、基準財政需要額に計上していこうというのでありまするから、これは、私は非常な変わり方であると思うのでありまして、その点…は、加瀬委員の何らかの誤解であろうと思います。
  418. 加瀬完

    加瀬完君 私は、誤解をしているつもりはございません。あなた方の今までの御主張と変わっておるという点を指摘しているわけであります。  最後に、自治庁の長官に、二十九億八千四百万という臨時地方特別交付金の算定基礎は何か。
  419. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 住民税の減税によりまして、地方税がこうむる減収は百二十二億であったと思います。しかし、それを不交付団体にまで、これを補てんする必要もないのでありまするから、交付団体だけで計算してみますると、たしか約六十九億か六十数億だったと思います。しかし三十五年度におきましては、地方税の自然増もございまするし、それから交付税も、非常に伸びてくるわけでございまするから、これを地方団体の財政力と、しかしながら、これは国の公約減税による、所得税の減税によるはね返りでありまするから、国からも見てもらう、両々相待ちまして、加えて二で割るという意味じゃございませんが、半分に近い三十億ということを考えまして、こういう結論が出たわけでありまして、全く理論的の数字から出たものではございません。
  420. 加瀬完

    加瀬完君 次の質問に移ります。ILO条約八十七号の批准に伴って、在籍専従制度を廃止するという考え方が一部にあるようでございますが、これは同条約に違反すると思いますが、労働大臣の御見解は。
  421. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) ILOの加盟八十カ国のうち、在籍専従規定を設けている国はほとんどございません。無理に探せばベルギーがその一つ、イギリスにわずかに一部あるという以外に、日本以外にはございません。従ってILO条約批准に関して専従制度は何ら支障はございません。
  422. 加瀬完

    加瀬完君 ILO条約第十九条八項は御存じですか。これには違反しませんか。
  423. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 違反いたしません。おそらくこれは保護規定だと私は存じます。既得権の侵害とか、そういうものだと思いますが、今日今までの組合の実態においては、そのような趣旨もございますが、四条三項を削除いたしますと、その実態が変わりますから、ILOに何ら抵触はいたしません。
  424. 加瀬完

    加瀬完君 「いかなる場合にも、総会による条約若しくは勧告の採択又は加盟国による条約の批准は、条約又は勧告に規定された条件よりも関係労働者にとって有利な条件を確保している法律、裁決、慣行又は協約に影響を及ぼすものとみなされてはならない。」とございますが、この条約の内容そのものから解釈すれば、専従制度そのものは当然残らなければならないと解釈できませんか。
  425. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) そのような趣旨はその条文からは断じて出て参りません。元来、専従制度は四条三項というワクがあるからこの問題が出てきたのであります。その基本が変わればその条項というものはおのずから変わるわけで、私は何らこれが恩恵だとか保護とかいうことでなしに、民主的な労働組合の発展がILOの目標でございます。
  426. 加瀬完

    加瀬完君 それじゃあなたは専従制  度はこの際廃止する、こういうお考えですか。特に国家公務員地方公務員等の専従制度。
  427. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 専従制度は四条三項があります以上、必然的に認めた条項であります。特に法律的にこれは認めた条項であります。これが変わるということになれば、この問題について再検討をするのは当然であって、その結論はまだ各省においていろいろな意見がございますから、政府部内で慎重にただいま検討中でございます。
  428. 加瀬完

    加瀬完君 この十九条八項というものは、少なくもやはり尊重されなければならないと思う。この精神は尊重をなさるお考えですか。それとも全然これは無視して、新しい法律を作ってもよろしい、こういうお考えですか。
  429. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 特にそれが組合弾圧という趣旨の条項を加えていけないという意味であります。従って、専従制度廃止が組合弾圧かどうかということが一つ議論の焦点になります。今日まで専従制度というものは、逆にいうならば、組合弾圧にとられたという逆な批判がございましたから、三条四項の撤廃をしたわけであります。今日専従というのは、使用者の意思によって、専従許可もされれば、許可もされない。逆にいうならば、使用者の立場において専従不許可という疑いがあるために、専従制度は逆に批判されたこともあります。従って、それは両面の場合がございますから、この条項には当てはまりません。
  430. 加瀬完

    加瀬完君 次に質問を移しますが、総理大臣並びに通産大臣に、先般競輪審議会が答申をなさったわけでございますが、この答申について御所見を承りたい。
  431. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 通産省所管の競輪審議会におきましていろいろ検討の結果、一応答申が出ておるのであります。また別個、自由民主党におきましても競輪、その他オート・レース等等につきまして、今後どうするかについて今検討をいたしておる次第でございます。両者の結論を見まして、通産大臣として考慮いたしたいと考えます。
  432. 加瀬完

    加瀬完君 競輪を廃止をするお考えは総理大臣にはございますか。
  433. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私はこの競輪の、一面いろいろこれが戦後に行なわれまして、これを利用して産業発達や、あるいは地方公共団体の財政的な寄与をしていることも認めますけれども、制度自体としては、これは健全な制度とは実は私考えておりません。ただ、戦後相当長きにわたってこれが行なわれてきたことを考えますというと、これを一挙に廃止するというようなことは、いろいろなところから、社会的にも、あるいは今申しましたような、従来の寄与している方面から見ましても、考えなければならぬ点があるだろうと思います。しかし、究極においては私は廃止したいと、こういう考えを持っております。
  434. 加瀬完

    加瀬完君 それならば、この存続決議をいたして答申をいたしました審議会のメンバーがどういうメンバーであるか、御存じですか。
  435. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 競輪審議会のメンバーは十数名でございます。そのうちで、多数説と少数説がございまして、多数説におきましても、根本的にこの制度について今後考える、三年間考えた上で、いわゆるいろいろな施設を検討し、考え方をして、そして三年間やってみて、そのあとで根本的に考えるということであるのであります。即時撤廃論とか、三年間試験的にやってみよう、いろいろ議論は分かれております。
  436. 加瀬完

    加瀬完君 この競輪審議会委員は、通産省の関係の者が五名、自転車振興会の関係の者が五名、受益者団体の代表が四名、最小限に見ても十四名は存続論者なんです。こういうメンバーの審議会で、公正な世論が反映できると総理大臣はお考えになりますか。
  437. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 従来の構成によってやっているのであります。しこうして、私は、そればかりでなしに、また党の方の考え方を聞いて、そうして結論を出したいと考えております。(「総理大臣だ」「次期総理大臣だ」と呼ぶ者あり)
  438. 加瀬完

    加瀬完君 現総理大臣に聞いておる。
  439. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 実は、競輪の審議会のなには、通産省の所管として、その構成その他をやって参っておりまして、私自身、総理大臣としてはそれには関与いたしておりませんので、先ほどは、私自身の考えを聞かれましたので、私の気持を率直に申し上げたわけでございます。通産大臣におきまして、この問題を審議するについて最も必要な、また関係の強い方面の意見を聞いて慎重に検討したい、もちろん、この審議会は、法律的にすべての問題をきめるというわけでは私はないように思いますので、いろいろな世論の点を聞くというようなことも、もちろん所管大臣として考えておることと思います。
  440. 加瀬完

    加瀬完君 所管大臣はこのメンバーの構成をお認めになっておる。そこで総理大臣の御所見を承っておるわけでございますが、初めから存続論者が十四名——二十名のうちの十四名は存続論者という、はっきりした前提で一体審議会が出発したって、結論は初めからわかっておる。これでは世論は反映できないのじゃないか、この審議会そのものの構成をどうお考えになりますか。
  441. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 必ずしも私は、その今おあげになりましたのは、ことごとく存続論者だとは実は考えておりません。現に受益団体といいますか、地方公共団体等におきましても、自発的にこれを廃止しておるような方面もございますので、そういう意味から申しましても、今のおあげになったものが直ちに十四名だけは存続論者だと、こう断定することは適当でなかろうと思います。(「その通り」と呼ぶ者あり)
  442. 加瀬完

    加瀬完君 いや、あなたの御答弁の方が適当でない。何なら、時間があれば一人々々どういうひもがついておるか、みんな話しをしてもいい。通産大臣に伺いますが、あの答申をどういうふうにお考えになりますか。
  443. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 一応審議状況を聞いておりますが、正式にはまだ出ていないのであります。また正式に出ましても、私どもの方で党としていろいろ検討し、また今後法律をもって特別の委員会という議論もございまして、所管大臣として、今直ちに競輪に対しての態度をきめることは早過ぎると思います。
  444. 加瀬完

    加瀬完君 この答申に、地方財政の面は別に考えるとある。そうなると、これは競輪法を改正しなければなりませんが、そう考えてよろしいか。
  445. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 競輪に対する対策につきましては、いろいろ検討の上法律を改正する要ありとすれば改正いたします。
  446. 加瀬完

    加瀬完君 今の競輪の目的は、地方財政なり機械工業、自転車工業の振興ということが目的なんです。その目的をなくしてまで競輪を存在させなければならないという必要がありますか。この答申は明らかにこの目的を否定をして出発をしておる。そういう答申に、検討の結果御賛成になりますか。
  447. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 検討しなければ結論は申し上げかねます。
  448. 加瀬完

    加瀬完君 政府の監督行政は、池田さんのお考えのように十二分に行き渡っているとお考えになりますか、あるいは根本的な検討を要するとお考えになりますか。
  449. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私は事務的に法律に従って監督しておると考えております。
  450. 小林英三

    委員長小林英三君) 加瀬君、時間が終了いたしました。
  451. 加瀬完

    加瀬完君 途中だから……。
  452. 小林英三

    委員長小林英三君) もう一問許します。
  453. 加瀬完

    加瀬完君 自転車振興会を徹底的に改組しなければ、競輪の正常化はできないという意見は、本参議院の商工委員会の付帯決議におきましても、その他の地方団体の施行者側の代表からもたびたび出されておる。ところが、あなたは完全に監督をしているとおっしゃるが、ここにある市の決算報告がある。競輪関係官庁の接待費というのが出ている。競輪関係官庁の接待費が七回、それはほとんど一つの料亭で行なわれている。来た芸者もいつも同じ。これでもあなたは監督は十分やっていると言われますか。名誉のために来た人の名前は伏せておく、反省の色がなければ出す。
  454. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) そういうことがあったか私は存じません。事務当局をして答弁させます。
  455. 小出栄一

    政府委員(小出栄一君) お答えいたします。(「競輪は重工業か」と呼ぶ者あり、笑声)重工業局は自転車工業を所管しております関係上、競輪は私どもの方で所管いたしております。  ただいま監督行政の面でございますが、通産省におきまして直接監督いたしておりますのは、御承知のように特殊法人でありまする日本自転車振興会というものがございます。これはその人事の面につきましても、また経営の面につきましても、事業運営の面につきましても、逐一担当の課におきまして所管いたしまして、監査を行ない、監督をいたして、この点につきましては特別問題の点はないと私は確信しております。ただ、今おあげになりました事例は、あるいは地方の自転車振興会、これは御承知のように競輪の施行主体地方自治体でございまして、その地方自治体は、施行者といたしまして、実際の施行の運営の実体は全面的に各府県にございまするので、財団法人の各府県の自転車振興会に委任しているわけであります。それぞれの各府県の振興会の経理の内容等につきましては、通産省といたしましては、各地方の通産局をして監督せしめておりますが、ただいまの事例は、あるいはかって、昨年問題になりました松戸の事件等起こしました千葉県の振興会等におきまして、必ずしも好ましくない事態があったことは私ども承知いたしておりまして、その際には千葉県におきまする自転車振興会の役員の更迭その他の処置をいたしまして、松戸の事件の処理をいたしたことは、御承知の通りでございまして、なお、各府県の、各地方の通産局を督励いたしまして、これらの地方振興会の監督を十分徹底いたしたいと思っております。  ただ先ほど競輪審議会の答申の中で根本的な改革の方向というものが実は示されておるのでありまして、その改革の方向は、地方自治体と、あるいは地方財政とこの競輪の施行主体というものとを切り離すというのが改革の根本になっております。それはそういった点の、そういった地方自治体あるいは各府県の振興会等との関係におきまして、多少従来運営の面におきましていろいろな弊害もあったという事実に基づきまして、そういう改革の方向が示されたものと思います。従いまして、通産省の諮問機関としての答申でございまするので、通産省といたしましてはこれを十分検討いたしまして、また、党の方におかれまして検討されておりまする方向ともにらみ合わせまして、十分一つ政府全体としての御審議を今後お願いしたい、かように考えております。
  456. 加瀬完

    加瀬完君 最後に一問、ちょっと答えが違う、最後に一問。
  457. 小林英三

    委員長小林英三君) 簡単に願います。
  458. 加瀬完

    加瀬完君 私が質問したのは、地方自転車振興会がどうこうじゃない。あなたの直接監督下にある通産局の自転者競技の監督官が、主催者団体である地方に強要し、あるいは自転車振興会に強要をして特定の料理屋で特定の人を呼んで話し合いをしておる。この監督が不十分ではないかというんです。もしそういう事実がないなら、ここに決算書の写しを持ってきております。何月何日、五月一日から一月二十七日まで全部読んでもいい。
  459. 小出栄一

    政府委員(小出栄一君) ただいまおあげになりました事態は、おそらく昨年の松戸事件等に関連いたしまして、千葉県等を所管いたしております東京の通産局に関連する問題だと思います。その当時におきましても、ただいま御質問ございましたような事柄が相当に伝えられましたので、私の方といたしましても、直ちに東京通産局の実態につきまして調査をいたしましたけれども、今御指摘になりましたような事実はございません。
  460. 小林英三

    委員長小林英三君) 加瀬君、時間が参りました。加瀬君時間が参りましたから御遠慮願います。(「委員長委員長」「予算委員会審議に疑惑を残していかぬ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)加瀬君御遠慮願います。小林孝平君。(鈴木強君「もう一問やらして下さいよ、もう一言言うだけだ、答弁は要らない」と述ぶ)御遠慮願います。小林孝平君。(「そんなことじゃいいよ」と呼ぶ者あり)  小林孝平君、御登壇願います。(「議場を静めなさい」と呼ぶ者あり)小林孝平君、御登壇を願います。(「委員長委員長」「議事進行議事進行」と呼ぶ者あり)
  461. 岩間正男

    ○岩間正男君 議事進行委員長の運営について、われわれ協力してきたんだけれども、今の切りぎわは、非常にこれは当委員会としてもまずいと思う。問題が問題だけに、疑惑を残してはまずいのですね。従って、そんなに長い時間じゃないですから、もう一問許して、その結果によっては……。質問の時間を許して、そうして疑惑を解くということが予算委員会の任務だと思う。  だから、そういう意味加瀬委員発言を許可してほしい。これは理事会を開くまでもないことなんです。非常に疑惑の中に包まれたような格好で、あと味が悪い。ぜひこれは許してほしい。
  462. 小林英三

    委員長小林英三君) 委員長は、もう一問許すことはいといませんけれども、そうなると、また何回も何回もやることになりますから、それですから、時間もきておりますから、他日の機会を用いてもらいたいと思うのです。
  463. 岩間正男

    ○岩間正男君 他日の機会じゃ、まずいのです。こういう汚職の問題というものは、話を出したときに、それをやはり追及しなければだめなんだ。明日にやるといえば、つじつまが合って、そうして、もうそれを証拠隠滅をやるかしらない。そういう事態が起こってはまずいから、どうしてもここでやらしてもらいたい。(「答弁は要らぬから、警告だけやらして下さいよ。」と呼ぶ者あり)
  464. 小林英三

    委員長小林英三君) 加瀬君、一分間だけ質問を許します。
  465. 加瀬完

    加瀬完君 そういう事実はないとおっしゃいますけれども、事実があることを確認していただかなければ困ります。  五月一日、通産省監督官、場所は千葉の並木、五月二十一日、某監督官の新任、場所は赤坂の高木、七月十八日、通産省視察員、喜春、二十六日、通産局局員、同じく喜春、九月六日、通産局競輪施行係、一月二十日、監督官、一月二十七日、通産局商工課長、赤坂の高木。こういう事実がございますから、一そう厳重に監督をいたして下さい。
  466. 小林英三

    委員長小林英三君) 小出局長。
  467. 小出栄一

    政府委員(小出栄一君) ただいま、加瀬委員がお述べになりました事実等につきまして、昨年、実は、松戸事件に関連いたしまして、商工委員会、あるいは予算委員会においてもあったかと思いまするが、しばしば私といたしましても答弁をいたしたのでございまして、もちろん、私どもといたしましては、非常に重大な情報でもございますので、直ちに調査をいたしましたところ、今御指摘になりましたような、何か地方の自転車振興会との間におきまして、汚職的な、あるいは供応というふうな事実は、なかったという私どもの方の調査の結果を、先ほど御報告申し上げた次第でございます。(「さっきとは違う、おかしいと呼ぶ者あり)
  468. 小林英三

    委員長小林英三君) もう遠慮して下さい。加瀬君、遠慮願います。他日、速記録があるんでから、いつでも質疑ができるわけですから。
  469. 加瀬完

    加瀬完君 千葉市の決算書に出ているんですから決算書に出ているのだから、事実がないとは言わせない。
  470. 小林英三

    委員長小林英三君) ですから、きょうは、御遠慮願います。
  471. 加瀬完

    加瀬完君 ですから、何という芸者を呼んだと、名前を言おうか。
  472. 小林英三

    委員長小林英三君) きょうは、御遠慮願います。
  473. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林孝平君、御質問を願います。
  474. 小林孝平

    小林孝平君 昨日午後行ないました私の新安保条約についての質問を続けます。  昨日は、主として第五条に関連して、政府のお考えを伺ったところ、政府の御答弁は、著しく明確を欠き、混迷をきわめ、とうていわれわれは納得することができないのであります。しかしこれらのすべてを、残されたわずかの時間で明らかにすることは不可能でありますので、これらは明日からの一般質問、あるいは安保特別委員会において徹底的に追及いたすこととし、本日は、ただ一、二の点をお尋ねをいたします。  そこで、まず政府の説明によれば、新安保条約によって、米軍は、日本防衛の義務を負うことになると述べているが、間違いはありませんか、藤山外務大臣
  475. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 間違いはございません。
  476. 小林孝平

    小林孝平君 その根拠日を示して下さい。——あなた、そんなことは簡単ですよ。
  477. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 第五条にこの「自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する」という言葉がございます。これによりまして、そういう義務が生じております。
  478. 小林孝平

    小林孝平君 今お述べになりました新条約第五条の「行動することを宣言する」とあるのは、法的に義務を設定したものかどうか、お答えを願います。
  479. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 当然、武力攻撃が自国の平和及び安全をあやうくするものであることを認めて、それに対処することを約束いたすことであります。これは宣言という言葉を使っておりまするけれども、同じ意味に解せられるわけでございます。
  480. 小林孝平

    小林孝平君 要するに義務を設定したのですね。(「質問に答えろ」と呼ぶ者あり)
  481. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) その通りでございます。
  482. 小林孝平

    小林孝平君 在日米軍が武力攻撃を受けたとき、日本としては、この武力攻撃を排除するための行動、あるいは対抗措置をとるのかどうかお伺いをいたします。
  483. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 在日米軍が攻撃されますときには、日本の領土、領空、領海を侵さなければ攻撃されません。従いまして、日本に対する攻撃と認めるわけでございます。
  484. 小林孝平

    小林孝平君 対抗措置をとるわけですね。
  485. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本に対する攻撃でございますから、自衛権は発動することに相なると思います。
  486. 小林孝平

    小林孝平君 その場合の日本の行動は、単に日本の自衛権の行使としての任意のものであるか、それとも米国に対する関係では義務でありますか。この任意であるか、義務であるかということをお答え願います。
  487. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 自国が武力攻撃を受けるわけでありますから、当然日本が自衛権を発動する要件を備えておる。発動するわけであります。
  488. 小林孝平

    小林孝平君 それはただ自衛権の発動であって、日本の米軍に対する義務ではないのですか。
  489. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 当然事項でありまして、特別に何か新たに負担したものではございません。
  490. 小林孝平

    小林孝平君 つまり在日米軍が武力攻撃を加えられたときに、日本がかりに何らの行動をとらなかったとした場合、条約の義務不履行にはならないのですね。あなた今の、行動は自衛権に基づく行動である、こういうことでありますから、自衛権は権利でありますから、権利を行使するかしないかは日本の自由であります。従って——法制局長官、あんたそこにすわっている、それは閣僚席だ。あなたたちがきめたのだ。ちゃんとあなたの席はわざわざ作ったのじゃないか。あなたの今の御答弁は日本の自衛権の行使である、権利の行使である。こういうことでありますから、これは条約の違反になりませんね。
  491. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本が攻撃をされましたときに自衛権を発動するということは当然のことでございます。当然のことでありますから、別に条約に違反しているということではございません。
  492. 小林孝平

    小林孝平君 冗談じゃありませんよ。今のは自衛権の発動だけであって、従って、日本がやらなければ条約の違反にならないのですか、やらない場合ですよ。
  493. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 昨日来申し上げておりますように第五条……。
  494. 小林孝平

    小林孝平君 申し上げていることが間違っているから聞いているのです。
  495. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 第五条におきまする「武力攻撃」というのは、いわゆる自衛権の発動で急迫不正の場合でございます。国連憲章五十丁条では認められているところでございます。従って、そういう場合は日本が当然自衛権を発動するということの状態に置かれるような場合でございます。従いまして、日本が発動しないというようなことはあり得ないと思います。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)
  496. 小林孝平

    小林孝平君 これはですね、速記録を述べるのですから、質問の時間にあれされては困りますけれども、速記録が十分できていない。総理大臣、昨日、首相は武力攻撃について次のように答弁されています。「武力攻撃に対しては直ちに武力で対するか、外交交渉によるか、国連に提訴するか、種々の方法があると考える。この場合の武力攻撃は国連憲章第五十一条の武力攻撃と同じで、国と国との間の組織的な行動を指していると思うから、大規模のものは武力で排除することになると思うが、事態をよく見きわめるべきで、損害の大小ではない、そのときの状況実情によるものと思う」と、こういうふうにあなたは御答弁になっています。これは五条の行動には外交措置や側面からの解決あっせんは含まないということは言われておりますけれども、この武力攻撃にはこういういろいろの形のものが対抗手段としてあるということをあなたはおっしゃっているのです。もしこれは——これは当然お認めになると思いますが、いかがですか。
  497. 岸信介

    国務大臣岸信介君) その意味はそこにも書いてありますように、本条に言っておる武力攻撃という場合は国連憲章で言っている武力攻撃という意味に解釈すべきものであって、従って日本を攻撃する意図をもって計画的に組織的にやられる場合であって、その場合は当然これを排除するには実力行使によってこれを排除すると、従ってこの行動というなには外交関係、外交交渉やその他のものは入らないということを申したわけであります。もちろんいろんな例がそのときにあげられまして、いわゆる武力攻撃というものは、そのときの事態であるとかあるいはその四囲の状況内容によってきまるわけで、ただ実力が加えられたというだけで直ちに本条にいう武力攻撃ということになるわけではない。本条にいう武力攻撃というのは国連憲章でいう武力攻撃ということでありますから、その場合には当然自衛権の発動をもって排除するということになるわけであります。広い意味における武力攻撃に対してわれわれがすぐ五条に該当するものとして、いつでも武力攻撃に対してこれをやるという意味じゃない。ある場合においては外交措置をとる場合もあるだろうしいろいろあるけれども、本条にいう国連憲章の五十一条と同じ意味であるからそういう場合のこれに対抗する措置は外交交渉その他のものを含まない、こういうことを申し上げたのであります。
  498. 小林孝平

    小林孝平君 それは総理があとから、そういうふうにきのう法制局長官や条約局長が三転、四転して最後にそういうことになったものだから、あなたは、明敏な総理は、きのうの条約局長と法制局長官答弁を聞いておられてそういうふうに今御答弁を変えられておるのです。しかしここにははっきりと事態を見きわめるべきで損害の大小ではない、そのときの状況実情によるとあなたははっきり言っておられるんじゃないですか。条約局長にお尋ねいたしますが、こういう速記録があります。あなたは事務官としてですね、良心に従ってこの条文はこれで、あなた方の、あなたが最後に答弁されたのと食い違いはないと思いますか。あなたは政治的の答弁をやってはいけませんよ。あなたの良心に従って、外務事務官としての答弁をやりなさい。いや私は……。
  499. 岸信介

    国務大臣岸信介君) いや、ちょっと何かあなたは今非常に誤解されておるようですから、私ははっきり申し上げたい。
  500. 小林孝平

    小林孝平君 今の速記録に……。
  501. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今の速記録も、今の所だけお読みになりますから、その前の所を読んで下さい。
  502. 小林孝平

    小林孝平君 総理がそうおっしゃるならば、速記録ができるまで質疑応答できないということです。
  503. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今お読みになりました。
  504. 小林孝平

    小林孝平君 速記録はきのうのものだからまだ一部ですよ。
  505. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私の申し上げておるのは、いわゆるそこでいろいろ武力攻撃として、飛行機によって何か遭遇してそれを撃ち落した。それは武力攻撃でないかというような、いろいろな設例が出たのであります。そこで本条にいうところの武力攻撃というのは、国連憲章の五十一条の場合の何であって、攻撃の意図を持ち、また組織的計画的に行なわれるものであって、これに対しては個別的、集団的、自衛権が当然国連の憲章においても発動するのだ。従ってただ何か実力が加えられたというような、いわゆる広い意味における武力攻撃があったという場合においては、よくその実情を考えなければいけないので、従ってただ損害の何が幾らになったら五十一条に当たるかというような御質問もありましたから、そういう意味でなしに事態を考えるべきである。こういうことを申し上げたのであってちっとも矛盾いたしておらないと思います。
  506. 小林孝平

    小林孝平君 いや、条約局長に私はお尋ねしておるんです。あなたは良心に従って、これは、こういう政治的な圧力に屈してはだめですよ。
  507. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 武力攻撃の概念につきましては……。
  508. 小林孝平

    小林孝平君 そうじゃないのだ。私が言うのは、先ほどあなたにちょっと見せましたけれども、あなた方の答弁を、食い違っているか食い違っていないかということなんです。あなたは総理の政治的圧力に屈して、答弁を二、三してはいけませんよ。
  509. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 私は食い違ってないと思います。
  510. 小林孝平

    小林孝平君 あ、そうですが。私はこういう場合で、総理がおっしゃれば考えていることも変えなければならないような、こういう今のこの機構では、私は非常に日本の政治がゆがめられると思う。私は追及しませんけれども、こういうことで条約ができ上がればどういうことができるかわからない。  そこで、赤城防衛庁長官は、この間は明らかにこの竹島の事件は、この第五条にいうところの武力攻撃に相当すると言われているのです。この答弁の食い違いどうします。まだ条約は発効していないけれども、かりに発効しておれば、これは武力攻撃に相当する、こう言われておる。
  511. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 新しい条約第五条は、竹島が占拠されたときにはないことは今御指摘通りであります。しかし、これからそのときと同じようなことがあるとすれば、第五条の規定に該当すると考えております。
  512. 小林孝平

    小林孝平君 これは大へんなことです。この条約が発効しておらなかったから外交交渉をやったので、これが発効しておれば、今後は竹島のような事件が起きれば、武力攻撃をやるのですか。自衛権を発動して直ちにこの五条を発動するような行動をやるのですか。あなたの御答弁、今そうですよ。
  513. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) そのときの状況によらなければ判断はできませんけれども、武力攻撃があるということは認められると、こういうことです。
  514. 小林孝平

    小林孝平君 防衛庁長官ははっきりと言われている。そのときの情勢に明らかに武力攻撃であっても、そのときの情勢で自衛権を発動するかどうかわからないと言うておられる。これは総理のおっしゃっていること、あるいは条約局長の言っているのと違うんです。あなたはもういい。これはもう明らかに食い違っている。重大な問題なんです。
  515. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 竹島の問題ではなくて、竹島のような問題が起きれば第五条に該当する。第五条の武力攻撃というものは、日本の平和と安全を害すると、こういことであるということであるから、その武力攻撃というものはその危険に対処する。だからこれはそのものずばりなんです。これはそのものずばりで、武力攻撃によって共同の措置をとるということなんです。ですからこれはやはり約束になります、条約ですから。だけれども、一般のそうでない武力攻撃もあるのです。これは第四条によっていろいろ協議等をする、こういうことがあるのです。だから第五条の武力攻撃のときはそのものずばりです。しかし、そのものでない場合は、協議やその他いろいろある、こういうことでございます。
  516. 小林孝平

    小林孝平君 先ほどは防衛庁長官に対して、私は第五条の武力攻撃に相当するかどうか。これは一昨日あなたはそういうふうに答弁された。今も私は繰り返して聞いたらあなたはそうおっしゃっている。ずばりですよ。(笑声)
  517. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 竹島の問題は、今度の安保条約の改正前の問題ですから、この条約に適用するということは、これは無理ですが、あのように領土を侵害するということがあれば、これは同じような形でやるとすれば、これは該当する、こういうふうに言ったのです。
  518. 小林孝平

    小林孝平君 そうすると、竹島の事件は、あれは条約の発効前であった。今後あれと同じ行動が行なわれた場合は、武力行動をやるんですね。あの武力行動、あれを武力行動と認めるわけですね、第五条の。あなたはそうおっしゃっている。明らかにこれは速記録にあるんです。
  519. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 第五条の武力行使というのは、再々言われておるように、……(小林孝平君「行使じゃない」と述ぶ)武力攻撃というのは、一国が他国に対して急迫不正の侵害を与える、侵略する……。
  520. 小林孝平

    小林孝平君 わかりました、それは。
  521. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) そういうことでなければ、これは該当しない。
  522. 永岡光治

    ○永岡光治君 関連して。竹島と同一のケースの事件が将来起きた場合には、それは第五条の武力侵略として武力を行使するのかということを聞いておるわけです。
  523. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 竹島のような場合がほかにできた場合、その場合はその第五条による武力攻撃であるかどうかという判断の材料が必要であります。その判断の材料は、急迫不正の侵害であって、そして一国が他国に対して、組織的な、計画的な侵害である、こういうことが武力攻撃である。でありまするから、竹島のようなものが、同じようなものが起きたとしても、そういうものに該当するかしないかは、これはそのときの情勢によると思います。
  524. 小林孝平

    小林孝平君 それは重大である。あなたは、竹島の事件は、あのような事件は、これは第五条の武力攻撃であるとあなたは断定されている。何回も断定されている。そうして今そういう事件が起きたら武力行使するかしないかは、そのときの情勢である、こう言っている。重大な食い違いですよ。あなたこういうことで質問を打ち切ろうというのは、これは無理ですよ。私はきょうはあつさりやろうと思ったところが、あなたはそのものずばりで言うから、こんなことになってしまう。
  525. 千田正

    ○千田正君 関連して。防衛庁長官、ちょっと待って下さい。私が一昨日の竹島の問題の質問に対しまして、長官のお答えになったのは、確かに武力侵略である、こう断言されておったんです。でありますから、今の問題を明快に、おとといの私に対する答弁と今日の答弁との間をはっきりしていただきたいと思います。
  526. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) この間から御答弁申し上げておるのも、武力侵略である。しかし、第五条の武力侵害であるというふうに、私はこの間言っておりません。ですから、外交的な折衝の余地もあるんだ、そうして現にそういうことをしているんだ、こう言っておるんです。だからして第五条の武力攻撃だ、こういうふうに私は言っていない。
  527. 小林孝平

    小林孝平君 言っておりますよ。速記録にありますよ。
  528. 永岡光治

    ○永岡光治君 関連。きのうは、明らかに第五条にいう侵略だ。ただし、これは別問題として一般論に入っていくということで、一般論の問題に移ったわけです。これは条約局長は認めているわけです。だから、これがもし竹島のような同一のケースが、全く同一のケースと言いましょう。そういうケースが将来起きたら、第五条の武力侵略になる。ただし、これはすでに発効前に、交渉によって片づけようとしているんですから、これは別問題である、こういうふうに理解してもらいたいと、こういう答弁であったわけです。それは間違いないんです。その通りだと思います。明らかにしてもらいたい。
  529. 小林孝平

    小林孝平君 それは速記録に明らかだ。長官違う。長官の言ったことが、あなたうそかほんとうか聞いている。そんなことくらい長官は……。総理じゃない。武力を実際指揮するのは、長官なんですよ。その長官がこれは明らかに第五条の武力攻撃であるということを繰り返して言った、速記録にもあるのですから。それをあなたは——総理は助け船を出されようとしても、総理にお尋ねすることは総理にお尋ねしますから、あなたはすわっていて下さい。
  530. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) いろいろ私の答弁に疑いの点があったかと思いますが、竹島と同じような状態が起きたとすれば、今度の改定の第五条の武力攻撃、こういうふうに見られます。
  531. 小林孝平

    小林孝平君 ちゃんとまた今言われたじゃないですか。竹島と同じような事情があったら、それは第五条の武力攻撃であると今も言われた。この間も言われた。しかし、そういうものはあるけれども、これは外交交渉によって行なうのだと、おそらく今後もあれと同じことがあっても、日本は武力行使をするようなそういうばかなことはやらないと思う。これは大へんなことですよ。  それがわかりましたから、その次に移ります。そういうふうに自衛権を発動する場合としない場合があるのです。従って、この基地に攻撃が加えられたとき、日本がかりに何らの行動をとらなかったら条約違反になるかどうか、これは外務大臣にお尋ねします。そういう場合が現にあるのです。
  532. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今竹島を例にとりましたけれども、竹島のようにある意図を持って、そうして組織的に武力をもって日本の領土を侵略して参りますれば、これは当然第五条の適用になるわけでございまして、それでありますから第五条の場合におきましても、当然そういう場合には日本が自衛権を発動するという、先ほど来申し上げていることを重ねて申し上げるところでございます。
  533. 小林孝平

    小林孝平君 これは先ほどの総理の御答弁と全然これはまた違ってきました。そんなことはないですよ。そんなら竹島と同じような場合があればやるのですね、日本はこれによってアメリカと共同作戦をやるのですね。
  534. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、当然この条約の第五条が発動いたします。従いまして日本も自衛権を発動いたします。アメリカも集団的自衛権もしくは自衛権を発動する。ただし、それをどう行使するかということは、これは別問題です。
  535. 小林孝平

    小林孝平君 私はこれ以上続けません。これは非常に重大な問題になりますからね。これはこの短い時間で、これは大へんです。そういう国連憲章の五十一条との関連その他でこれは大へんなことですから、このわずかの時間であなたとやっても仕方がありませんから、いずれ速記録を見て、安保特別委員会あるいは本委員会等で行ないます。そういう重大な竹島と同じような事態があったら、日本は直ちに第五条の発動になるのだ、こういうことは全国民が知ったら大へんなことです。われわれはこれから安閑として寝ておるわけにいかんですよ。(笑声)いやほんとうです、大へんです。
  536. 岸信介

    国務大臣岸信介君) いやしくも、私は一国の領土を他国がそれを、日本の領土を侵して、それを自分の領土とするという意図をもって侵略してくるというようなことは、私は日本は独立国として、当然それを武力の行使によってやられた場合におきまして武力を行使して、これを日本の領土を保有することは、国民の要望であり、またこれは当然やるべきことである、かように思っております。ただ、竹島の事件は、これは現在の起こっている竹島の問題は、御承知のように八年前の事態でありますから、これを外交交渉に移して今日まできているから、これを今日すぐ変更して武力でもって取るということは、取り返すということはやりません。しかしながら、将来私は日本の領土が同様な意図をもって侵略されたという場合においては、これを自衛権を発動してこれを回復することは当然である、こう思います。
  537. 辻政信

    ○辻政信君 ただいまの岸総理の言明に対してちょっと関連して。竹島の問題は、明らかに韓国政府計画的な、組織的な武力侵略である。ただしこれはこの条約の効力発生以前の問題であるから、今では条約を適用せずに外交交渉を続けてきた、将来こういう問題が起こったら第五条の適用をするとおっしゃったんですね。そこで問題は、それじゃこの条約が発効すると同時に、すでに行なわれた既遂のその武力攻撃もしくはこの条約発効と同時に李承晩がまた兵力を増加してくる、今の兵力が六百名です、それを一千名に増加したときには、断じてこの第五条を適用するということになりますね、よろしゅうございますか、それで。
  538. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 竹島における問題は、先ほど申しましたように、すでに八年間の外交交渉の経過を経てきておりますし、今なおそういう方向によって、この問題を平和的に解決するという従来の政府の基本方針で進んでいくつもりです。その場合において、竹島におけるところの兵隊の数が何人であり、ふえるとか減るとかいう問題は、これは私は関係ないと思います。
  539. 鈴木強

    鈴木強君 私は簡単でいいんですが……。
  540. 小林英三

    委員長小林英三君) 簡単にして下さい。
  541. 鈴木強

    鈴木強君 藤山外務大臣は、竹島のような場合が起きたときは、第五条を発動するが、行動とは別だと、こう言ったんですね。それはどういうことなんですか。
  542. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 第五条が発動されます。ただ、竹島に日本の自衛隊だけが行ってやって、もう少しアメリカは、その場に、共同にすぐ行かなくてもいいということは、あり得るだろうと思います。第五条の武力攻撃に対する集団的な立場において、その義務を負っているわけです。そういう意味でございます。
  543. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君、続行願います。
  544. 鈴木強

    鈴木強君 ちょっとそこのところがおかしいです。外務大臣ね、その日本軍だけでやるか、あるいはアメリカ軍だけでやるか、そこは別だ、こういうことをおっしゃったのですね。しかし、その五条の精神というのは、日本国にこの五十一条のような武力攻撃があった場合には、かりに日本に加えられても、これはアメリカに加えられたものとして、共同の立場に立って行動するというのが、五条の精神でしょう。従って日本軍だけが行くということではなしに、当然米軍も一緒に行くということにならないのですか。それは四条との関係で、あなたのおっしゃるように、協議の余地はありますからね。そういうようにおっしゃるのか、どうなのか、そこがちょっと不明確ですから……。
  545. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) アメリカは当然行く義務を持っております、発生するわけです。ただ、現実に行動する場合に、どちらが先に行くかというようなことはございますから、行動の場合に、日本が先に行くということもあると思います。そういう意味でございます。
  546. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君、続行願います。
  547. 羽生三七

    ○羽生三七君 一問許して下さい。第五条により、急迫不正な攻撃が加えられた場合は、それは外交交渉その他の余地なく、直ちに自衛権を発動することが条約上認められているし、規定されようとしているし、きまればそれは当然でありますが、しかしその場合、日本としては、国連に提訴したり、これを平和的に解決するということを、わが日本自身が希望しても、もうそういうことをやる余地はないのですか、絶対的武力行使以外には何らの余地のない明白なもの、国連提訴の余地もないということは、私は時と次第によっては、非常に重大だと思うのですが、全然ないものかどうか。
  548. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知の通り第五条が発動されまして行動をいたしますれば直ちに国連の安保委員会に通報することになります。従いまして、国連の安保委員会がその処置をきめましたことに従うことは当然でございます。今のような条約が発動いたしまして、そうしてやって参りますけれども、先ほど申しましたように、六百人くらいだとか、あるいは三百人だとか、ごく少数の場合であれば、それは必ずしも大部隊が行く必要のない場合があるわけでございますから、そういう意味においてわれわれは考えております。しかし、不正行為が日本の領土を組織的に侵害して参ります場合に、しかも、そういう意図をもって軍事行動を起こして参ります場合には、当然われわれは武力でもってそれを排除するのが当然だと思います。一応排除して、外交交渉なり何なりに移るのが、普通にわれわれが考えなければならぬことではないかと思うのでありまして、既成事実をそう長期にわたって作っておくことは、必ずしも適当だとは考えておりません。でありますから、外交交渉というものの余地はほとんどないものだと、そういう事情のもとにおいては、一応とにかく排除の行動をこちらは自衛としてやらなければならぬということであると思います。
  549. 羽生三七

    ○羽生三七君 もう一つだけ、これで終わります。竹島の場合は、先ほど来お話のように、すでに八年以前のことであるから、外交交渉にゆだねておる一つのケース、これはわかります。同じケースのものが将来条約発行後起こった場合は、これは疑問の余地なく、国連憲章第五十一条に基づく自衛の権利を行使するわけです。その場合に、本土なんかが大規模な爆撃等を受けて、国連に提訴して相談しておる余地がない、すでに自衛権を発動してしかる後に国連の処置にゆだねると、これはわかります。しかし、もし何らかの余地がまだある場合ですね、その自衛権を行使して大規模な戦闘に発展するような危険性を侵かすよりも、まずこの程度のことならば、場合によっては国連に提訴して、平和的解決を望もうという場合がないことはないのです。そういう余地はもう絶対にないという解釈ですか。これは重大な問題ですよ。
  550. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知の通り、国際法において自衛権といいますものは、急迫不正な場合であります。従いまして第五条に想定しております場合もそういうような武力攻撃をやると、従ってそういう場合には直ちに発動して、それは排除するのが適当だと思います。ただ、若干の何か武力攻撃がありまして、しかもそれが急迫不正でない、あるいは裏に非常な何か意図を持っているのでないというような場合があり得れば、それはむろん、第四条その他の協議によりまして、どう善処していくかということをやります。そうしてその場合にはむろん外交交渉の余地はあるわけです。できるだけ平和的に解決するのが、これは当然のことだと思います。    〔辻政信君「委員長私は政府を助ける、日本を救う意味でちょっと聞きたいのです、大事な問題ですからと述ぶ〕
  551. 小林英三

    委員長小林英三君) 辻君、簡単に。
  552. 辻政信

    ○辻政信君 これはきょう岸総理、私はあなたをいじめるつもりで言っているのじゃないのですよ。もしあなたの言明が間違ったら、日本の運命が危くなるから、だからそれで日本を救う意味において一つの解釈をただしたい。それは第五条の、あなたはそれは大規模な攻撃はそのものずばりと協議せずに行動するのだということは、非常に危険です。この第五条は先ほど一松先生のおっしゃったように、やはり第四条の適用を受けるのです。第四条には、安全に対する脅威が生じたときはいずれか一方の締約国の要請によって協議する、その協議の結果武力行使をするか、外交交渉でいくか、経済制裁を加えるかということは、第五条の適用においてもそれを含むものとしないというと、抜き差しならぬことになる。この方向に答弁を統一されることはあぶないのですよ。どうですか。
  553. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん、今、辻委員の御質問のように、四条の協議というものは、この条約の施行に関しまして、全体の場合もあります、また日本の平和、安全が脅かされるというような事態においては、日本の要請によって協議をして、これに対処すべき措置を講ずることは、これは当然であります。ただ、五条のいっている武力攻撃という意味は、しばしば申し上げておる通り、国連憲章の五十一条の武力攻撃というものと同じであって、その場合においては、国連憲章においても個別的または集団的自衛権を発動し得るということになっておりまして、それと同じ意味においてこれを書いておるから、そういう場合において自衛権を発動することは当然であります。辻君のお話しのように、広い意味におけるいわゆる武力攻撃とかいういろいろな事態に関しまして、ただ、日本の安全を脅かすというような事態であるならば、もちろん四条の協議の対象で、これに対する措置としてはいろいろある。  それからなお、先ほどの羽生委員の御質問でございますが、私は国連憲章の精神から申して、われわれがこちらにおいて自衛権の発動をし得る条件があって自衛権を発動するということは、決して国連に提訴するとかいうことを妨げるものではないと思います。ただ、必ず国連に提訴しなければならぬという義務はないのでありまして、もちろん、必要があり、またそれが適当である場合において、一応武力でもって排撃するということを行なうと同時に、国連に提訴するというようなことも並行して行なう場合もありましょうし、あるいは事実上いざとなれば何するという態勢を、出動の態勢をとっている、実際の武力攻撃をせずしてやるというような事態もあろうと思います。いずれにしても、五条の武力攻撃というものは、五十一条の場合の武力攻撃の場合というものと同じように解釈しているわけでありますから、意味を持っておるわけでありますから、その場合においては、個別的または集団的自衛権が発動する要件が備わっておる場合の武力攻撃、そういうものは、攻撃の意図、侵略の意図をもって組織的にまた計画的に行なわれておる武力攻撃、こういうことになると思います。
  554. 羽生三七

    ○羽生三七君 今の解釈統一して下さい。最後の岸総理答弁は、私はいいと思う。それは国連憲章五十一条に基づく迫不正の侵害があったときに、もちろん当然自衛権を行使する、しかし場合によったら、自衛権を行使する態勢を整えながら国連に提訴する余地もなおかつともに存在する、こういうことなんです。そういうことであるならば、先ほど来の外務大臣の解釈とやや違う。全然余地のないもの、これはやはり総理答弁が私は適当だと思う。それが最終的、確定的解釈であるかどうか、全然余地のないなんていうことは重大ですよ。それは自衛権は、発動するかどうかは、当然の権利は持っているから。日本の自由ですから。それを国連に提訴にゆだねる場合もあるということは残さなければ、これは重大なことだ。
  555. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は趣旨において違っておらないと思うのでありますが、たとえば日本の島であっても対島がかりに侵略されて武力で侵害されるという場合に、その場合におきましては、われわれが一方においてこれを武力で排除する、自衛権の発動の対象になる、発動すると同時に、国連に提訴するとか、あるいはまた実際の武力の行使はしないが、直ちにそういう態勢をとってやっていくというような場合もあろうと思いますが、いずれにしても、五十一条の場合すなわち五条の武力攻撃という場合には、個別的及び集団的の自衛権が発動し得る一つの国連憲章上のわれわれ侵略された国として権利を持つ、発動さしてよろしいのだ、発動することはできるのだ、こういう地位に置かれるわけでございます。従って、それがそれじゃ国連に提訴するとかどうとかいうものを排除するかというと、それは私は排除するものではない、こう申し上げた。
  556. 辻政信

    ○辻政信君 私の問題にしている自衛権の発動ということを、岸総理は武力の行使と間違っていらっしゃる。自衛権の発動というものは、国連憲章四十二条にもありますよ。陸海空軍による示威、封鎖またはその他の行動これみな自衛権の発動なんです。ですから、自衛権の発動即鉄砲を打つのだ、武力の行使だと誤解をされておるから、そういうことになる。自衛権の発動という第五条は、そういうふうに広範な手段があるのです。そのいずれの手段をとるかということを第四条で協議するのです、それを受けたらすぐたたいてしまうということはいけません。危険です、国のために。もう少し落ちついて考えていただきたい。国のために危険だ、これは。(「委員長、関連して」と呼ぶ者あり)
  557. 小林英三

    委員長小林英三君) もう少し待って下さい。(「そうしなくちゃあぶなくてしょうがない」「四条を残しておきなさい」「答弁々々」「重大だよ、非常に重大だよ」「今言ったように認めておかぬと、あとからとんでもないことになる」と呼ぶ者あり)
  558. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほどお答えを申し上げました通りでありまして、もちろん四条のそういう場合において協議をし、適当なとるべき措置について話し合いをするということは、これは当然でございます。(「関連して、委員長」と呼ぶ者あり)
  559. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君進行を願います。時間も相当たったから…。
  560. 小林孝平

    小林孝平君 じゃ、ちょっとやりましょう。あなた方は、武力攻撃のこの点を日本の自衛権の発動の場合だけ考えられるから、そんなのんきなことをおっしゃっているんです。そういう大規模の場合だけ……。しかし日本にある米軍基地が攻撃されるときには、そんなに大規模なものは行なわれないんです。行なわれなくても、アメリカ軍は出動するわけです。その際に、日本が出動しないでもいいか。アメリカ軍が出動しているのに、日本が出動しなくてもいいか。出動というのは、必ずしも外へ行くという意味じゃないのですよ。この条約違反じゃないですか、そういうことは。そんな大規模のものが日本の国内に加えられるときは、竹島とか何とかが取られる場合をおっしゃるけれども、米軍の基地に数機の爆撃機が来て爆撃を加えた、あるいは加えんとする。その爆撃機は、どういう種類のものであるかよくわからない場合がある。当初は二、三機が来て爆撃をやった。さらにまた、今度は飛行機が来た。それがどういう種類の攻撃を加えるかわからぬというとき、アメリカ軍はのんきにやっておりますか。やっていないでしょう。そこに問題があるんですよ。だからそういう場合でも、日本は自衛権の……、基地の場合と一般の場合とは全然違いますから、藤山さんのお考えをもう少し冷静に御答弁にならぬと大へんなことになるんじゃないですか。
  561. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 非常に冷静に御答弁を申し上げているつもりでございますが、たとえば今御例示のありましたように、一機来て爆撃するというようなことが起こります。それが次々に来るということに、組織的になってきますれば、当然、組織的な攻撃だと思います。これは、日本に対しての攻撃でもあるわけでありますかり、そういう場合には当然自衛権が発動します。先ほどお話のありますように、四条の協議というものはすべてひっかかっておりますから、そういうときには協議をして、そうしてその状況を判断することは当然のことでございます。
  562. 小林孝平

    小林孝平君 こういう御答弁をいただいておりますと、この条約の解釈とは全然異なったことを御答弁になる、お聞きになっておる閣僚のうちにも、これは困った答弁をされておるとお考えになった方もあろうと思うのです。そこで、こういうことは非常に困りますから、私は何も政府を困らせるようにやっているわけじゃないのです。こういうことはもう少し、総理がおっしゃったように国会の論議を通じて国民に明らかにされるという意味からやっているのですから、もう少し統一し、条約の本質をはっきりと国民にわかるようにお話しになれば、こういう間違った説明をされて、非常に危険な状態にだんだん陥っていくということがないようにできると思うのです。  そこで、この点はまた他日に譲りまして、私がお尋ねいたしたいのは、きわめて事務的なことですが、第五条に、「いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、」とこうありますが、この「自国の平和及び安全を危うくするものと」認める、これは認めない場合もあるのか、ないのか、これをお尋ねいたします。昨日の御答弁では、そういうこともあり得る、こういう御答弁でありましたけれども、念のために「自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、」というのは、これはどこにつくのですか。認めない場合もあるのですか。お尋ねいたします。条約局長に伺います。
  563. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 「いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、」この文言は、この武力攻撃即自国の平和及び安全を危うくするものである、こういう意味合いでございます。すなわち武力攻撃、これはここで平和及び安全を危うくするものは、この武力攻撃であります。危うくするものでないということであれば、これは武力攻撃ではない。すなわち、ここにある第五条で言います武力攻撃は即自国の平和及び安全を危うくするものである、こういう認識でございます。
  564. 小林孝平

    小林孝平君 この「自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、」ということはこれは法律上要らないことですね。これはかえっておかしいじゃありませんか。いずれか一方に対する武力攻撃があった場合は、こうすぐいけばいい。こんなことがもし国内の法律で書かれてあったら、日本の法制局はこんなものは通しませんよ。(笑声)法制局長官は、アメリカのものについてはこんなものを入れ、日本の各省がこんな法律を作ったらこんなものは要らないといって通しませんよ。どうなんです。使い分けしちゃだめですよ。
  565. 林修三

    政府委員(林修三君) 条約と法律の書き方は、おのずからまた違う点があるわけであります。従いまして、国内法の書き方を直ちに条約に適用するわけにもいきません。または条約の書き方をとって国内法に適用するわけにいかない部面もございます。条約については従来からのいろいろな国際的な言葉の使い方に、慣例もあるわけでございます。そういうものはもちろん尊重して参るわけでございます。これが不要な言葉であるというお説でございますが、決してそうではないのでございまして、それは最初にこういう武力攻撃が即ここにいうような自国の平和と安全を危うくするものである、こういうことをお互いに確認しておるわけであります。また逆に言えば、そういう自国の平和と安全を危うくするものであることが、ここにいう武力攻撃である、そういう表からと裏からと両方裏腹の意味を表わしておる、こういうことであります。
  566. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君、時間が終了いたしました。
  567. 小林孝平

    小林孝平君 じゃやめます。あなたはそうおっしゃるけれども、あなたが国内の法律審議されるときは、あなたおっしゃったようなことなら逆に書きます。自国の平和及び安全を危うくする武力攻撃が、こうやらなければ法制局は通りませんよ。日本の法制局は通りません。あなた、そんなに使い分けをしちゃだめです。これは条約局長も今これを私に指摘され、条約のことを言って申しわけありませんが、ちょっと頭を傾けて、そういう解釈もあるのではないかといって今言っているところなんですよ。そうして昨日も現にこの認めるのは、だれが認めるのかという議論が相当行なわれておった。それからもう一つは、さらに共通の危機とあります。この共通の危機というのは、これも要らない言葉であるかどうか、これも共通の武力攻撃が即共通の危機であれば、こんなものは要らないのです。こんなものがあるから共通の危機というのは英語で何と書いてあるかというようなことでわれわれも調べなければならぬ。また「自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め」というのは、これは一体法制局長官が言った解釈か、あるいは認めるというのは、お互いに認めて、認めない場合もあるのかないのかといって英語の条文等も今見て、きわめて不十分であるからと言っているのです。あなたのもし国内法だけに、国内の日本文だけに限ってみても、私はあなたの法制局、やかましい法制局が日本の各省を悩ましている態度からいきますれば、この「自国の平和及び安全を危うくするものであること」これは削除、少なくとも危うくする武力攻撃とこう書かなければならない。それから共通の危機は要らない。
  568. 小林英三

    委員長小林英三君) 簡単に願います。時間が参りました。
  569. 小林孝平

    小林孝平君 あなたは赤線を引くわけです。こんなでたらめな条約がありますか。
  570. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君、時間が参りましたから。
  571. 小林孝平

    小林孝平君 こんなでたらめな条約を作って、そうして日本にはアメリカ防衛の義務がないのだとかなんとか言ってごまかして、国民を皆ごまかして、そうしてしゃにむに多数でもって国会を通過させようという、そういう態度は、岸さんがこの間、国会審議を通じてこの条約の実態国民に明らかにすると言われたことと全然違うじゃないですか岸さん。全然あなたは言うことと行なうことが違うじゃないですか。そんな笑ってばかりいたってだめだ。(笑声)
  572. 鈴木強

    鈴木強君 議事進行小林委員質疑の時間がありませんので、これ以上追及ができませんけれども、しかし、きょうまでの総括質問を通じて、第五条の武力攻撃の問題については、一松先生もおっしゃったように、これは国際連合憲章第五十一条の精神からも非常に疑義があります。そのものずばりという解釈については非常に疑義がある。従って、これについてはあらためてわれわれはやります。政府の方ももう少し検討してもらいたいと思う。これは非常に疑義がある。
  573. 小林英三

    委員長小林英三君) 以上をもって、総括質疑は終了いたしました。明日は、午前十時より委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後八時四十一分散会