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1960-03-09 第34回国会 参議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月九日(水曜日)    午前十時四十一分開会   —————————————   委員の異動 本日委員斎藤昇君、基政七君及び原島 宏治君辞任につき、その補欠として青 木一男君、島清君及び小平芳平君を議 長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小林 英三君    理事            大谷藤之助君            佐藤 芳男君            館  哲二君            西田 信一君            秋山 長造君            鈴木  強君            松浦 清一君            千田  正君            大竹平八郎君    委員            青木 一男君            泉山 三六君            太田 正孝君            金丸 冨夫君            木暮武太夫君            小柳 牧衞君            重政 庸徳君            白井  勇君            杉原 荒太君            手島  栄君            苫米地英俊君            一松 定吉君            堀木 鎌三君            武藤 常介君            村松 久義君            村山 道雄君            湯澤三千男君            吉江 勝保君            米田 正文君            荒木正三郎君            加瀬  完君            木村禧八郎君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            永岡 光治君            羽生 三七君            平林  剛君            藤田  進君            松澤 兼人君            東   隆君            島   清君            小平 芳平君            辻  政信君            森 八三一君            岩間 正男君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 井野 碩哉君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君    文 部 大 臣 松田竹千代君    厚 生 大 臣 渡邊 良夫君    農 林 大 臣 福田 赳夫君    通商産業大臣  池田 勇人君    運 輸 大 臣 楢橋  渡君    郵 政 大 臣 植竹 春彦君    労 働 大 臣 松野 頼三君    建 設 大 臣 村上  勇君    国 務 大 臣 赤城 宗徳君    国 務 大 臣 石原幹市郎君    国 務 大 臣 菅野和太郎君    国 務 大 臣 中曽根康弘君    国 務 大 臣 益谷 秀次君   政府委員    法制局長官   林  修三君    外務省アメリカ    局長      森  治樹君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省理財局長 西原 直廉君    大蔵省為替局長 酒井 俊彦君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十五年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 小林英三

    委員長小林英三君) これより予算委員会を開会いたします。  委員に変更がございましたから御報告申し上げます。  原島宏治君、斎藤昇君が辞任せられ、小平芳平君、青木一男君が就任せられました。   —————————————
  3. 小林英三

    委員長小林英三君) 昭和三十五年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上一件を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。森八三一君
  4. 鈴木強

    鈴木強君 議事進行について。私は議事進行について発言をいたしますが、その一つは、先般予算委員長理事打合会において、日米合同委員会における合議に達した事項に対して、各省と連絡をとってすみやかに出していただくと、こういうことになっておるのでありますが、総括質問も明日で終わりまするので、審議都合上、これはいつごろ出せますか、模様を一つこの機会に承りたいと思います。  それからもう一つは、これは提案でございますが、委員長、私はこの際吉田総理大臣証人としてこの委員会出席をしていただくように提案をいたしたいと思います。その理由は、一つは先般から問題になっております一九五二年の初めに、日米両国政府日本は国府を中国の真の政府として認める、こういう約束をしたダレスにあてた吉田書簡がございます。これは秘密書簡でございますが、この内容については当時のいきさつがよくわかりません。従ってこれは一つ当時総理であった吉田さんをお呼びしてその真相を確かめたいというのが一つであります。  それからもう一つは、昭和二十五年の七月八日に、マッカーサー司令官から吉田当時の首相にあてて、警察予備隊を七万五千人新設をすること、それから海上保安庁の要員を七千名増強すること、こういう指令が書面出ております。これは単なる書面ではありますが、おそらく当時の情勢からして、朝鮮動乱が勃発をする当時でありましたから、絶対的な至上命令だと私どもは解釈しておるわけであります。従ってこれらの書簡について、当時のいきさつをぜひただしたいと思いますので、この際証人として元首相である吉田茂氏をこの委員会に出ていただくように一つお取り計らいいただきたいと思います。  これが私の提案であります。
  5. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 議事進行。私は、ただいま鈴木君の提案につきまして、ここで協議するのも大へんですから、委員長理事打合会に付されることを望みます。すみやかに議事進行を願います。
  6. 小林英三

    委員長小林英三君) ただいま鈴木君からお聞きの通り議事進行に対しての資料要求がございました、証人要求がございましたが、これに対しまして、大竹君からして、委員長理事打合会において協議するとの発言がございましたが、さように取り計らうことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 小林英三

    委員長小林英三君) それでは委員長理事打合会において取り計らうことにいたします。  なお、今の資料合同委員会合議に達した件に対しての資料については、外務大臣から答弁を願います。藤山外務大臣
  8. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 他省話し合いをいたしまして、今調整中でございますので、一両日中にはお手元に出せると思います。(「間に合わないな」と呼ぶ者あり)なるべく間に合うように急がせます。
  9. 鈴木強

    鈴木強君 外務大臣からかなり誠意のある答弁をいただきましたので了承いたしますが、ただ審議都合がございまして、明日で一応総括が終わりますから、できるならば最初総括の中でやりたいと思うのです。ですから、できるだけ明朝くらいまでには出せますように、特に御督励いただいて、御配慮いただきたいと思います。
  10. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) できるだけ希望に沿いますように、他省との話し合いを進めます。
  11. 小林英三

    委員長小林英三君) 森八三一君。
  12. 森八三一

    ○森八三一君 私は、外交問題と天然現象に伴う非常時における対策の問題、さらに総理の重要な政策でありまするいわゆる所得の倍増の問題等を中心としてお尋ねをいたしたいと思います。  そこで、まず最初外交の問題でありまするが、国民の全部と申し上げては少し過言かと思いまするが、大多数の国民皆さんは、事外交に関しましては経験も持っておりません。またそういう点から端的に申しますれば、しろうとだというようにも言えるかと思うのであります。がしかし、しろうとであると申しましても、国の浮沈に関する、民族消長に関する重要な外交の問題について無関心だということではございません。それぞれその立場々々によりまして、日本外交がこうなければならぬ、かくありたい、こうすべきであるというような希望なり意見なり主張を持っておると思います。もちろん相手のある外交のことでありまするから、一方的な独善が許されませんこともよく承知をいたしておりまするし、時にはかけ引きということではございませんが、技術的なテクニックを必要とする場合もあろうと思います。あるいは忍耐強くじっくりかまえて折衝の取り運びをしなければならぬということもあろうと思いまするし、時には涙をのんで譲るというような場合の起きることもよく承知をいたしておると思います。さような認識の上に立って、常に大多数の国民皆さんが考えていらっしゃるその考えは、条約や、条約にも等しい国際的ないろいろの取りきめ、あるいは長い歴史の上に築き上げられておる国際慣行というものに従って正しく述べられる主張というものは必ず実現されなければならぬものであり、実現されるということであろうと思うのであります。この国民的な希望と申しまするか、感情が無視せられて満たされないということになりますれば、そこにはおのずから不安がきざしてくる、不平が生まれてくると思います。そういうような不安や不平の心の動揺の間隙に忍び寄って参りまするのが私は思想戦であろうと思います。そういう結果として、ついには国をあやまるような憂慮すべき事態に発展することも過去の歴史に見るところであります。あるいはまたそういうような不平不満が爆発をいたしますると、直接行動に訴えるというような右翼の台頭を誘発をするというような結果にも相なると思うのでありますが、そういうことも過去において私どもの経験しておるところでありまして、まことに憂慮にたえないところであります。最近の日本外交の実情を考えますると、国民の多くの人はそういうような気持にかり立てられていっておるというような状況ではないかと思うのであります。私はこれが私だけの単なる杞憂であることをこいねがうのでありますが、安易な気持で、ほんとうに声なき底を流れておる底流を見失っては大へんなことになると思うのであります。と申しまするのは、近ごろ町における一般大衆諸君の雑談を耳にいたしますると、民主政治の衝に当たる政党が、その党の中における派閥抗争に終始をしておる、あるいは、そういう結果として、党の運営の指導権をだれがとるかということにのみ心を奪われて、国家、国民というものを見失っておる、あるいはまた、政治家も、自分だけの栄達にのみきゅうきゅうとして、民族悠久の繁栄を忘れておる、ことに外交の問題につきましては軟弱であり、渋滞をしておる、混乱をしておる、もうこれではたまらぬ、頼りにならぬというようなことをよく話されていることを耳にするのであります。私どもは、かねて外交に関しましては、こういうことになってはいけませんので、国論を統一して国民的な支援のもとに強力な外交を展開しなければならぬというふうに主張して参りましたゆえんのものも、ここに存するのであります。総理は、あるいは外務大臣は、こういった最近における——右とか左とか色のついた人は別にいたしまして、ほんとうに中正な、純朴な立場におる国民諸君の声を、気持を、どういうように一体把握されておるのか。そしてまた、把握された認識の上に立ってこういう問題にどう取り組んでいかれようとしておるのか。そのことをまず最初総理外相にお伺いをいたします。
  13. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 外交の問題につきましては、ただいま森委員の御意見にもありましたように、その国の消長に重大な関係を持つことでございますから、国民として何人も強い関心を持っておることは、これは当然であると思います。この見地からいろいろな意見も出て参りますし、また、国を憂う気持からいろいろな事態が起こってくるということも、歴史的にもあったことでございますから、われわれとして、政局を担当し、外交の衝に当たっておる者としては、他の問題も当然でありますけれども、特に外交の問題につきましては、十分国民要望や、あるいは国民民族としての感情というようなものは、正確にこれを把握して、そしてこれを実現し、あるいはまた、これに対しまして十分理解を得るような手段を講じていかなければならぬことは言うを待たないのであります。もちろん、外交交渉におきましても、いろいろ途中におきまして機密を要することもあることは、御意見のありました通りでございますけれども、しかし、国が進んでいく根本に関して、外交の基本に関しまして、あるいは、いわゆる民主政治のあり方としましては、できるだけ国民理解協力の上に外交を進めていくということが必要である。特に戦後の日本状況から申しますというと、かつて戦前におきましては、一つ日本が持っておる何といっても武力背景として外交が行なわれるというような当時の一般国際情勢もありましようし、日本立場もあったと思います。しかし、われわれのこの戦後におけるところの民主政治平和外交趣旨から申しますというと、やはり、そういう力を背景として折衝するわけではございませんで、あくまでも道理に基づいて、また、国民的な支持のもとに進んでいくという必要があるわけでございます。こういう意味においては、戦前よりも、特に外交のことを進めていく上におきましては、民意のあるところを十分に考え、また、国民理解協力を得るように努力しなければならぬと思います。こういう点において、いろいろな点において、現状において、今、森委員もお話のように、国民において不満に考えておることも私ども十分理解し、またわれわれ自身が努力しなければならぬ点もあることにつきましても十分反省して、そうして、今申しましたような心がけで外交を進めていくということがこの際必要であるというふうに考えます。
  14. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 外交をやっております者といたしまして、絶えず考えて参りませんければならぬことは、今、森委員の言われましたように、右翼でありますとか、左翼でありますとか、そういう一部を除きまして、国民常識判断というものをやはりわれわれとしては高く考えて参らなければいかぬ。その中には、先ほど総理も言われましたように、民族的感情もございますし、あるいは、いろいろな国際的知識が乏しいといえども直観的な考え方があるわけであります。存外、そういうものが正しい判断をしていく場合もあるわけであります。そういう点については、十分心にとめて参らなければならぬことは申すまでもないのであります。そういう意味において外交を扱って参ることは当然のことだと、私どもといたしましても、そういう心がまえでおる次第であります。
  15. 森八三一

    ○森八三一君 大体総理外相ともに、私の申し上げました趣旨については同感の意を表明されました。特に、総理からは、道理に基づいた外交を、というような表現があったのでありますが、私が申し上げましたのは、その趣旨条約や、条約にもひとしいいろいろの取りきめ、あるいは、歴史の上に積み重ねられておる国際慣行というものに従って正しく述べられる主張というものは、必ず実現されなければならぬものであり、実現するということが、素朴な国民感情であり、両翼に片寄っておらぬ中正な立場の多くの国民が持っておる念願である、そのことを、総理がその通りだというようにおっしゃったと了解をいたします。  そこで、昨日も問題になったのでありますが、竹島問題、これが、そういうような国民の素朴な感情の上には、どうしても割り切れないというのが、私は現状だと思うのです。すでにこの問題は、私は、岡崎さんが外務大臣当時にこの問題を取り上げまして、予算委員会ではありませんが、他の委員会でこのことを論議をいたしたことがございます。一体、昨日の御答弁によりますると、韓国軍隊によるわが領土不法占拠であるというように述べられたと思いますが、そういうように理解していいのか。武力を用いてきているのではございませんから、韓国人不法侵入をしておるというように理解すべきか、不法侵入なのか、不法占拠なのか、その辺が、昨日の御答弁でやや明確になったようではありまするが、事態が必ずしも明確になっておらぬと思いますが、いずれであるのか、まず、その辺をはっきり一つ解明をいただきたいと思います。
  16. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 竹島の事態は、御承知のように、約八年前に生じて今日に至っておる状況であります。これに対して日本政府として韓国側に抗議を申し入れ、また国際司法裁判所に提訴する等の問題をいろいろと交渉しておることは昨日お答え申し上げた通りであります。私どもはあくまでも純然たる日本領土であって、これを韓国側において不法占拠しておるものだ、かように考えます。
  17. 森八三一

    ○森八三一君 不法占拠だということになりますると、昨日も論議をされましたし、私が質問の冒頭に申し上げました素朴な国民感情から申しますると、これはどうしても安保条約等を基礎とする日米条約に基づきまして、米軍協力を得てその撤退を敢行しなければ国民は納得をしないと思う。  そこで、昨日の御答弁は、直ちに今武力的な行動をとるべき段階ではない、外交折衝をもって平和裏にこれを解決いたしたいということでございました。そのことを私は非と言うのではございませんが、ただいまの総理の御答弁通り、すでにこの問題が発生いたしましてから八年なんですね。そういう長い間かかってもなおかつ不法占拠がそのまま継続しておる。一体いつになったら二の問題が解決するのかということが国民も非常に不安であり、今の外交に物足りなさを感じてきておる、そこに不平不満が生じてきておる私は大きな一つ問題点があると思うのです。でございまするから、ただ平和裏解決する——平和裏解決するということで、いつまでもこう日がおくれて参りますると、これは憂慮すべき直接行動というような問題に発展していく私は危険性を感ずる。  で、その場合に、もし国民が、これはだれが行なうか知りませんが、そういうような直接行動に訴えるというような事態が発生いたしました場合に、その責任の所在は一体どこに帰属するのか。そういう例をあげることは非常に飛躍をする談論かもしれませんけれども、国法が犯されておるというようなことに対して国民が善良な立場からそれを究明する。もっと端的に申しますれば、他人の財産を侵そうとするような者をつかまえたというような場合には、これは政府からおほめの言葉がいただけるということなんで、もし、不法占拠をしておる韓国軍撤退をさしたというようなその行動に出た者があった場合、それは一体どういうことになるのか。そこにまたえらい問題が巻き起こった場合に、その責任は一体どこに帰属するのかという点について御解明をいただきたいと思います。
  18. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御承知のように、今日韓国日本国との間には長い、約七、八年に及ぶところの日韓会談というものが行なわれております。韓国日本との間の諸種の問題を解決し、同時に将来に向かって平和的な関係を打ち立てるという意味においてこの日韓会談というものが行なわれておるのであります。この長い期間、あるいは一時中絶したり、再開され、またいろいろと交渉が続けられてきておる。こういう状況でありまして、この会談におきまして、もちろん竹島問題に関する問題もその会談内容一つのアイテムにもなっているわけでありまして、こういう問題を通じてどうしても会談を何とかして妥結するということには非常に忍耐強い困難な交渉が長い間行なわれておるのであります。しかし、それは言うまでもなく、この隣接しておる国の間におけるところの諸種の問題を平和的に解決し、将来長きにわたって平和的関係を打ち立てようと、それが日本のためでもあり、また同町に極東の平和、世界の平和の上からも望ましいことであるという見地からやっておるわけであります。しかしながらこの交渉において、ただ単に話し合いをするというだけではなしに、こういう問題で解決できない、またこれを急速に解決しなければならぬというような問題につきまして、あるいは国際的な機関にこれの解決を求める、あるいは今日までも陰に陽にアメリカのこの問題に関してのあっせんやその他の協力等も得て、これが円満な平和的な解決をはかるということに政府としては全力をあげてきているわけであります。国民もこの点は十分に一つ了解をしていただきたいと私は考えます。  そうして、今御質問にありました、しかし、国民がしびれを切らして実力をもってこれを解決するというような行動に出た者があったならば一体どうするのか、それの責任はどこにあるのかという御質問でございますが、私どもは今言ったような政府の態度また日本立場というものを国民理解されまして、そういう事態のこういうものを個々に実力でもって解決するというふうなことにならないことが日本の基本的な外交方針として、また平和を望む見地からいって望ましいことであるということを十分に国民にも理解していただかなければならぬと思います。しかし、不幸にしてそういうことが起こったらどうするのだということでございますが、私は今申し上げているように、あくまでもそういうことの起こらないように今日努力しているということでございまして、実際仮定の問題として起こったらどうするかという点に関しましては、これはやはりその事態に応じて措置しなければならぬことでありますが、いかなることであっても、不法状態をまた不法な形において実力行使してやるということは、私は国際関係においては望ましくないことである、かように考えております。
  19. 森八三一

    ○森八三一君 結局平和裏解決しようということで八年間御苦労願って参りました。そのことに私はとやかく申すのではございませんが、隠忍とか、しんぼうとかいうことにもおのずから限度があろうと思うんです。今国民が見ておりますところでは、結局無理が通れば道理が引っ込むという状態に追い込まれているのではないか。そこに問題の発火するもとが私は伏在しているように思うのです。そこでそういうようなことから、平和裏解決する、平和裏解決するとおっしゃっておっても、ちっとも解決しない。そういうことから生ずる紛争が起きた場合に、道理のない武力行使あるいは実力行使でございますれば、問題が起きることは想像せられますが、ほんとう日本領土であり、何ら問題のないところへ来ているのを追っ払うという行動が、私は不法の行為というわけにはならぬのではないか、当然の正当な行動ではないか、正当な行動をした者がもし不測な侵害を受けるとか、いろいろな問題の起きたときは、その責任は一体どうするか、それはそのときの状態において解決するということでございますが、これはそのときの状態ではないのだ、もうすでに今から明確になっている問題のようにも私は思うのでありますが、重ねてそういう危険を私は感じますので、そのことを理論的に明確にしていただきたいと思います。
  20. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私はこの日本立場から申しまして、そういうことを実力でもって排除しなければならぬいう国、どうしても平和的な解決はできない、しかしながら国民的要望によってこれを実力をもっても排除しなければいかぬということであるとすれば、私は考えるべき問題で、個人が思い思いにそういう気持からこれに実力行使するということは、これはやはり適当でない、こう思います。
  21. 森八三一

    ○森八三一君 国民も当然そういう感覚に立って政府の努力に期待をして今日に及んできたのですね。ところが一向にそれが進展をしない。そうしてただ抽象的に平和裏解決をしたい、平和裏解決をしたいというだけでございまして、具体的にとられた措置というものを国民はちっとも承知するチャンスがないのです。それじゃアメリカの方にどういうような交渉を依頼して、その依頼した結果がどういうような経過でこうなっておるか、と申しますると、ちっともそれはわからぬ。日韓の会談というものも開かれておりまするが、一向この問題は進展をしないということで、もう国民は待ち切れない。別に政府行動を非としておるのではないのです。それに期待しておったけれども、もう待ち切れぬというのが国民の素朴な感情だと思う。その感情を押えるということはこれはできないと思う。それが不法行動であるというならばこれは押えなければなりませんけれども日本領土不法占拠しておるものを追っぱらうということはこれは当然なことでございますので、政府の期待が、もう、つなげぬという状態にまでせっぱ詰まって参りますれば、そういう行動に出る者が出て参りますることはこれは考えていかなければならぬことだと思う。ただ政府政府がやるんだから、そういうように国民が直接行動に訴えることのないように期待する、これは期待でございまして、そういう行動が起きないということは、私は今の段階にきて、もう言っておれない状況に迫っておるのではないかという感じをしみじみ思うのでありますが、総理はそうお考えになりませんですか。
  22. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国民日韓会談の今日までの経過について非常にもどかしく考えており、あるいは頼りなく考えており、その結果として相当強い不満があっていることは私も十分承知をいたしております。ただ竹島の問題を解決するのに、そういう個々の力によって個人的な実力行使によってやるということは問題を解決するところの私は適当な方法ではないとあくまでも考えておるのであります。この意味において、国民のそういう気持は十分自分たちもこれを把握し、そうして日韓会談の進行につきまして、われわれとしても、長い交渉でありますから、その結論を得るようにさらに努力を現在やっておりますし、それによって解決するようにあくまでも政府としては進んでいきたい、こう思っております。
  23. 森八三一

    ○森八三一君 それでは、もう一つ話題を変えまして、第五八幡丸事件はその後どういうように進展をしておりまするか、外務大臣の御説明を願いたいと思います。
  24. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 第五八幡丸の事件が起こりまして、二月十五日に日本側といたしましては韓国側に厳重な抗議を申し入れましたことは御承知いただいておるところだと思います。韓国側はその後二十七日付をもちまして日本の抗議に対して回答いたしておりますけれども、その回答というものは、われわれが公海上において不法にその漁船を拿捕するというような本質的な問題について抗議をいたしておるにかかわりませず、あるいは拿捕地点がどうのこうのというような末梢的な返事しかよこしておりません。従いまして、日本政府としては三月七日付をもちましてさらに新たに厳重な、そういう問題を含めた抗議を韓国側に出しております。そうして、われわれとしては今後ともその立場に立ちまして厳重に韓国側に抗議もし、韓国側折衝して参るつもりでございます。
  25. 森八三一

    ○森八三一君 この八幡丸事件につきましても、私ども政府から説明を聞いておるところでは、確かに認めておるものではございませんが、李承晩ラインからはそれておる、外であるということが明確であり、しかもそういう明確なものを、拿捕連行する途中におって、沈没に至らしめたということがきわめて明確であるのに、さらに言を左右にして李承晩ライン内であるとか、あるいはみずから沈没に至らしめたんだというような歪曲した反駁をしてきておるというような状態でございまして、全く韓国には誠意が認められないというのが私は実情だと思うのです。そういうような相手を相手にして、今の竹島問題にいたしましても、平和裏解決する、平和裏解決するとこう申しておりましても、相手の気持は全然そういうことには乗ってこないというような状況ではあるまいか。そういたしますると、ただ単に口先だけで平和裏解決するということだけでは国民感情を納得せしめるに至らぬじゃないかということを心配するのですが、そういうような状況を御認識の上に立って、なおかつ竹島問題なり八幡丸問題なりを平和裏解決するという確信がおありになるかどうか。もしそういう確信がありとすれば、今後どういうような運びをされようとしておるのかを明確にしていただきますれば国民も納得をすると私は思いますが、今の状態では、もう政府外交に頼っておったんでは仕方がないという気持に私はかられていくと思うのです。そこが非常に危険だと、こう申し上げているので、国民によく理解せしめるような御説明をいただきたいと思う。
  26. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御指摘のように、韓国日本との諸般の懸案の問題につきましては、すでに昭和二十七年からの問題でございまして、御指摘のように八年も経過いたしておるわけであります。国民の皆様方が非常な焦燥にかられますことは、これは当然であります。われわれ局に当たっております者も、実ははなはだ相手方の態度に対しても不満に思う点がたくさんあるのであります。われわれとしては、誠意をもって対処いたしておりますけれども、必ずしもそれに誠実にこたえてくれないような点が多々ございますが、ただ二国間のこうした問題はやはり二国間の間で、できるだけ平和裏話し合いによって解決すべきことが原則であることは申すまでもないのでありまして、従って、いわゆる隠忍自重と申しますか、難きを忍んでわれわれとしては折衝をして、そして解決の道を二国間において求めていくのが適当であるという立場に立ちまして、この問題を今日まで継続してきております。しかし、二国間の問題でありましても国際紛争でありますれば国際司法裁判所に訴え、あるいは国連等によってこの問題の解決の道を開くというような方法も平和裏においてまだ考えられないことではないのでありまして、従って、そういう点につきまして、われわれとしても、どうしても二国間でなかなかこの問題が解決困難であるといたしますれば、やはり適当な第三者の仲介をとるか、あるいは国連等の機関において何らかの判断をしてもらうか、あるいは国際司法裁判所等に提訴をするという1提訴しても向う側が受けないと思いますけれども一そうしたいろいろな、まだ平和裏解決すべき方法はあろうと思いますので、二国間のできるだけ問題として最終的にやりませんければ、そうした国際紛争を、国家間の紛争というものを他の機関に提訴する理由も薄弱になってくるわけであります。提訴する場合には、長い間こうやって二国間で努力したけれどもなかなか解決しないのだ、従って、国際機関において何らかの形で判断してもらわなければならぬという十分な理由もできてこなければならぬと思うのであります。そういう意味において、われわれとしては今後とも努力をして参りたいと、こう思っております。
  27. 小林孝平

    小林孝平君 関連。今、森委員から竹島の問題が質疑され、昨日も千田委員から質疑が行なわれましたけれども条約の問題としてきわめて不明確な点がありますから一つお伺いいたします。  昨日の外務大臣の御答弁でも竹島は明らかに日本の施政下にある地域である、こういうふうに御答弁になっております。そして日本はこれに対して施政権を放棄したことはない、他に譲ったこともない、こういうことであります。さらに防衛庁長官の答弁からいたしましても明らかにこの竹島は侵略されている状態にある、日本が自衛権を発動するかどうかは別といたしまして、現に侵略をされている。従ってこれに直ちに日本武力をもって処理するのでなく、外交交渉をもってやるのでありますと外務大臣もただいまそういうふうに御答弁になりました。私も日本がそういう武力攻撃を受けました際に、直ちに自衛権を発動して、国力を傾けて武力行動に出るということはいいか悪いかは非常に問題でありますけれども、この条約の問題といたしまして、こういうふうな状態日本が現に侵略を受けている、そうしてそれは日本の施政下にある地域である、こういう際に、かりにこの条約が発効いたしました際に、第五条の精神からいたしますればアメリカ日本を防衛する義務があるのでありまするから、この竹島の問題についてアメリカはどういう態度をもって臨むのでありますか。日本武力をもってこの竹島の問題を処理するならばアメリカは当然共同作戦をやるでありましょうけれども外交交渉をやっている際にはアメリカも李承晩に対して強硬に、日本と同様に強硬なる態度をもってこの竹島の処理の問題について発言をするかどうか——当然これはしなければならないと思いますけれども条約の解釈上どういうことになるのですか。
  28. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) われわれといたしまして、先ほど申し上げましたように、二国間の問題はできるだけ二国間で解決すべきが適当だと思います。しかしながら困難であります場合には第三国に依頼し、あるいはその仲介、あっせん、あるいはその力を借りることも適当なことだと思います。従いまして今日まででも日韓会談状況等につきましてはまだあっせんを頼んでおりませんけれども、時々日本立場というものははっきり、アメリカばかりでございません、これは各国に対しても通報いたしまして、日本主張しておりますことが決して不当な主張ではないということを通報いたしているのでございます。  そういう関係でございますから、われわれとして当然、これを国際的な紛争として取り上げて参ります場合には、国際機関なりなんなりによってまず平和裏にこれを処理していくという方向に向かいますのは当然でありますけれども、その場合には日本側の今日までとっております主張、また隠忍自重してやって参りました立場というものは国際社会において十分私は認められていると思うのでありまして、国際世論というものが必ず日本に味方してもらえるのではないかというふうに考えております。そういうことによりまして、今すぐに条約を発動するかしないかということは問題外でありまして、われわれとしてはそういう方法によりましてこれを解決していきたい、こう考えているわけであります。
  29. 小林孝平

    小林孝平君 私は条約の解釈をお尋ねいたしているのです。今まで政府がとられた行動についてこれは私たちもある程度了承いたします。この竹島の問題を直ちに武力をもって処理すべしということを私は言っているのではないのです。李承晩を相手にして非常な困難な交渉をしておられるその苦衷はわかりますけれども、そういうふうなことでもって答弁をそらしては困ります。外務大臣もっと落ちついて下さい。話が終わってから相談をして下さい。私が聞きましてから頂ちに回答をいただかなくてもいいのです、これは重要な問題ですから。私がお尋ねいたしましたら、条約局長とも、あるいは法制局長官ともよく御相談の上、総理とも御相談の上お答え下さい。話の途中でそんなことをやるからわからなくて、とんでもないことを答弁する。そこで条約論として私はお尋ねしているのです。これは二国間の問題は二国間で処理するというのは当然でしょう。また第三国が入ることは外交の自主性をそこなうということも私たちは承知いたしておりますけれども、この条約が発効すればアメリカは当然義務として日本を防衛する義務がある。それは第五条に明らかに書いてある。従って、日本がこの竹島を不法に侵略されておると、こういうことで、日本武力行動に出ないけれども外交交渉によって解決をしようとして藤山さんが非常に悩んでおる。こういう状態に、今までの政府の説明からいけば、当然アメリカはこの五条のこの発動によって日本協力する義務が生じてくるのではないか、李承晩に強硬に申し入れをしなければならぬ義務が出てくるのではないか、こういうことをお尋ねしておるのです。その一般論を聞いているんじゃないのです。非常に問題は簡単なんですから、そのいろいろなことは要りません。そういうことがなるのかならぬのか、よく相談してから御答弁下さい。条約局長とも法制局長官ともよく相談して答弁して下さい。それは簡単に御答弁できないですよ。よく相談して下さい。
  30. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本の平和と安全というもの、あるいは日本が他国から不法にいろいろな問題を持ちかけられるということは、日本の平和と安全あるいは極東の平和と安全に非常な大きな影響がありますから、むろんアメリカとこれを協議することは当然のことでございます。協議した上でどういう方法をとるかということは、これは第二段の問題に相なると思います。
  31. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君簡単に願います。
  32. 小林孝平

    小林孝平君 それはおかしいです。簡単にと言いましても、ものによりますよ。昨日から非常にあいまいなんです。時間切れになってみんなあいまいになってくるのです。そこで私はお尋ねをいたしておるのであります。防衛庁長官おいでになりませんけれども、昨日の防衛庁長官の御答弁によりますれば、この竹島の不法占拠は明らかに武力行動であると、こういうふうに御答弁になっておるのです。この質問がそういうふうな質問をやったもんだから、それに答えて、これは武力行動であるけれども、この侵略行動——その意味武力行動であるけれども、自衛権の発動をやらないで外交交渉でやっておる、そういうことはわれわれ了承しておるのです。そこで、武力行動であれば、第五条のこの規定によって当然の義務として日本を防衛する義務がある。共同の行動をすることを宣言しておるのですから、そういうことをやらなければならない。その際に日本武力行動をやればアメリカも同時に武力行動をやらなければならぬけれども、それを日本が、賢明なる藤山外務大臣はやらないから、従ってここは外交交渉をやっておられるのですから、アメリカ外交交渉協力しなければならぬ義務ができてくるのではないか、こういうことを言っているのです。あなたは協議をするというけれども、それは別の規定ですよ。そんなことを今ごろ言われるなら、あなたは条約内容すらよく御存じないと言わなければなりませんから、法制局長官だけでなく、条約局長せっかく立っているからよく御相談の上ゆっくり御答弁下さい。ちょいちょいと聞いてやるのは困ります。委員長からも御注意願います。そう何べんもあなたはやらせないから、一ぺんでいいように一つゆっくり、総理一つ御相談の上……重大な問題ですよ。
  33. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま御答弁申し上げました通り日本の平和と安全、あるいは極東の平和と安全に影響のあるような問題につきましては、これは当然協議をいたします。従って竹島の問題等がそういう状態にありますれば当然協議をすることになるわけであります。そこで、ただ武力行動をとるか、武力行動が現実にすぐそこで起こるか、起こらないか。起こった場合には、(「全然答弁が違います、外務大臣」と呼ぶ者あり)むろん、日本に対する武力行動の侵略であれば、それを排除することについては、むろんこの条約が適用されることになるわけであります。ただ、この占拠を排除するために、かりに、日本が警察行動その他でもって措置していく場合に、すぐに必ずしも武力行動が——向こうからの武力の抵抗がなければ、それはこの条約をすぐに発動しなくても解決し得る問題である、こういうふうに考えます。
  34. 小林孝平

    小林孝平君 委員長
  35. 小林英三

    委員長小林英三君) もう一ぺん許します。
  36. 小林孝平

    小林孝平君 委員長も、この重大な質問内容はおわかりだろうと思うものですから。  条約局長、もっとですね、あなたは事務的にですね——私は政治的にあれを求めているんじゃない、事務的に。あなたは外務大臣を補佐する必要がありますよ。外務大臣の今おっしゃったことは、これは第四条の規定によって行なわれている場合です。私は、第五条のもう段階にきているんです。不法占拠され、しかもそれは武力行動であると、こういうふうな場合には、これは第五条なんです。第五条の前段の規定が適用されるんです。外務大臣が先ほどから御答弁になって、協議をするとか何とか言われるのは、その前の段階で、第四条の規定なんです。だから、何べんもこんなことをやって時間をとらないように、十分御協議をなさって、場合によっては休憩されても私はいいと思うんです。これはほんとうに——委員長、こんなことをですね、繰り返してやっておると、藤山さんのおっしゃったことが、間違って、それがだんだん拡大して、間違いを、もう一度今度正当化するために、別のことをおっしゃらなければならない。これはやがて国際的にも非常に問題になるから、そういうことでなく、少し、五分でもいいから休憩されて、とくと御相談なさったらいかがですか。私は総理大臣にお尋ねをしなかったけれども、これも総理は、当然ですね、御相談になって、間違いのないような——そんな、おかしいじゃないですか。四条と五条の規定を混同されて答弁されるというようなことは、私は承知できませんよ。委員長からも一つ御注意を願うと同時に、五分間休憩したらいかがです、ほんとうに。(「解釈に関連した問題なんだ」「政治論じゃないよ」「具体的にどうするか」と呼ぶ者あり)条約局長、あなたしっかり補佐しなさいよ。
  37. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 条約局長より御説明いたさせます。
  38. 小林孝平

    小林孝平君 いや、私はね……。
  39. 小林英三

    委員長小林英三君) 高橋条約局長
  40. 小林孝平

    小林孝平君 条約局長、ちょっと、あなたは御説明になってもいいですけれども、これはですね、あなたが、ただ事務的に、思いつきでやられては困るですよ。私はね、あなたのために言っているんです。この前も、あなたは外務委員会で、条約でも国会の承認を得なくてもいいという発言をしたこと、あるじゃないですか。そうして、われわれの追及にあって、ついにこれを撤回しているじゃないですか。そういうことは、私は、許されないです。従って、あなたのためにほんとうなら、われわれは条約局長の解任を要求しようと思ったけれども、やめたんです、あの場合。従って、今回もそういう轍を踏まないように、十分協議をしていただいて、外務大臣も、条約局長にあとをまかせないで、少し、五分間休憩して、よく御相談下さることをお願いいたします。私は、何も条約局長答弁を拒否するものではありませんけれども条約局長答弁……。
  41. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君、お待ちなさい。今外務大臣から条約局長を指名しましたから、条約局長発言を許します。
  42. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 補足させて……。
  43. 小林孝平

    小林孝平君 いや、この間もちょっと条約局長、あなたはこの前の……。
  44. 小林英三

    委員長小林英三君) 条約局長発言を許しました。
  45. 小林孝平

    小林孝平君 条約局長、あなたはこの前も、条約は……。
  46. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君。
  47. 小林孝平

    小林孝平君 何ですか。
  48. 小林英三

    委員長小林英三君) 着席を願います。条約局長委員長発言を許しました。着席願います。(「それはだめだよ」と呼ぶ者あり)だめということはない。条約局長発言委員長条約局長発言を許しました。(「だめですよ」と呼ぶ者あり)だめということはない。発言を許した。
  49. 小林孝平

    小林孝平君 発言してもいいけれども、ちょっと待って下さい。
  50. 小林英三

    委員長小林英三君) だめですよ、委員長の運営を妨害しちゃ。小林君、着席願います。
  51. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 第五条の法律的な解釈の問題であると考えますので、私から説明させていただきます。  第五条は、日本の施政のもとにある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認めまして、この共通の危険に対処するように行動することを宣言する、このような規定でございます。(「それはその通り」と呼ぶ者あり)  そこで、この武力攻撃に対しまして、当初この武力攻撃が行なわれましたのは八年前でございます。すなわち、この条約交渉の行なわれたずっと以前に行なわれた問題でございますが、この武力攻撃に対しまして、政府といたしましては、これにすぐ対処して行動するということを日本が決心しました場合には、これはただいまの五条の発動の問題になるかと存じます。しかし、この武力攻撃に対しましては、あくまでも平和交渉でいこうというようなのが政府の考え方でございますから、第五条の、共通の危険に処する行動ではない。すなわち、第五条の問題として行動することを考えずに、政府といたしましては外交交渉でやっていこうというわけでございます。  ただし、今大臣が申されましたように、これが日本における安全に対する脅威であることは確かでございますので、もちろん第四条の「協議」の範疇には入るわけでございます。
  52. 小林英三

    委員長小林英三君) 森君。(小林孝平君「森さん、あなた、この問題についてされるのはいいけれども、まだ解決しないのだよ」と述ぶ)森君の発言を阻止しちゃいけません。
  53. 小林孝平

    小林孝平君 いや、阻止なんかしちやいない。ちょっと待ちなさい。あなた、そのかわり……。
  54. 小林英三

    委員長小林英三君) じゃ、もう一回、小林君に発言を許します。
  55. 小林孝平

    小林孝平君 じゃ、私が発言する前に……。
  56. 小林英三

    委員長小林英三君) いや、そういう……。小林君に発言を許しましたから……。(「発言があるのです、関連して」と呼ぶ者あり)
  57. 小林孝平

    小林孝平君 もう一回ですか。条約局長はですね、せっかく御答弁になりましたけれども、そんなことはへ理屈ですよ。もう少し、理屈を言うなら上手な理屈を言ったらどうですか。八年前だとか——八年前だけれども、それは武力行動が行なわれて、われわれも武力行動をやったらいいか、自衛権の発動をどういうふうにしてやったらいいか、いろいろ政府として考えられて、これは非常に重要な問題であるけれども外交交渉でやろう、こういうことでやってきているのですよ。だから、その外交交渉の実際の内容は、武力行動と大した違いがないくらい重要な問題です。  そこでわれわれは、当然の義務として、アメリカはこの日本協力して、外交交渉をやる義務が生じてくる。しかも、さらにこの行動という意味は、行動にも、いろいろ武力行動もあるし、それから外交交渉をやるという行動もある。この行動をいつ武力行動に限ったのですか。国会では、一度もそういう話はありませんよ。行動することを宣言する、武力行動に、これをいつ限ったのですか。  そこで、今条約局長答弁は、へ理屈だったけれども、ともかくこの第五条に限ったからややいい。ところが外務大臣は、今のこの問題を、あなたは四条によって解決しようとしていられる。(「条約局長もそう言ったのだよ、第四条でやると。」と呼ぶ者あり)四条でやったり五条でやったり、いろいろやるのですよ。  そこでわれわれは、多くは、委員長は簡単にやれとか時間だとか言うものだから追及できなくて、そのままになって、こういう事態になるのです。従って、私はやめますが、(「やめなくてもいい」と呼ぶ者あり)やめろと言うのだから、仕方がない、やめますけれども、昼の休みに、休憩時間中に、十分政府は協議して、そうして、統一解釈といっても、いつもその統一解釈なるものはあやしいけれども、一応統一解釈というか、はっきりした御答弁を、この午後の再開劈頭、総理から御答弁をいただく、こういうことにしていただきたい。理事一つ
  58. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと関連して簡単に承りますが、アメリカは、日本の今度の条約のほかに、アメリカ韓国との米韓条約を結んでおる。だから日本アメリカとの条約、それから韓国アメリカとの条約で、竹島がそういう問題になったときには、アメリカという国はどういう態度をとることになるか、これを承りたい。
  59. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) アメリカは、米韓条約も持っております。あるいは今回の安保条約も持っております。従ってアメリカとしては、非常な大きな関心を両国の関係に持っておることはこれはもう当然だと思います。竹島の問題は、日本領土占拠されている問題でございますから、当然日本立場が、十分アメリカに了承されるものと考えております。
  60. 辻政信

    ○辻政信君 関連して。この竹島問題は、おそらく外務大臣外交的にやるとおっしゃっても、日韓の現状では容易にできない。これをほんとう解決するのは、私はアメリカだと思います。アメリカが同じ自由主義陣営で日本韓国が争うことは、アメリカの利益でもない。でありますから、アメリカ韓国に顧問団をやりまして、燃料とか弾薬はみな握っております。たとえば韓国の軍隊が三十八度線を越えようとするときには、燃料と弾薬を閉めてしまう。そこで越えることができない。この作用を竹島に利用すれば、竹島の不法占拠とか、あるいは李ラインで打ちあげることはできない。それにかかわらず、やらしておるというところに、大きな疑惑を国民は持つ。その疑惑というのは、日本の自衛力を増進するために李承晩にいたずらをさせて、日本人を怒らせて自衛力を増強させようとする、その大きな考え方があると疑われても弁解の余地はない。これを裏付けする一つの証拠がある。  それは私が数年前、竹島及び李ラインの現状を視察をした。現状を視察をしたときに、私の乗っております海上保安庁の巡視船のある船員、青年が、しみじみと私に言うた。それは韓国の警備艇と日本の巡視船が洋上会談をやったときに、韓国の警備船に乗っている韓国人日本の船員に対して、われわれは日本とけんかしたくない。アメリカの顧問がやれと言っておるということを口走っておる。それを私は、はっきり聞いてきている。そのときの名前も覚えております。これを考えますとアメリカ政府の当局は、そういうばかなことを考えんでしょうが、出先の顧問あたりが、何とかして日本を刺激をして、日本人の力で、自衛隊を増強しようというような謀略があるんじゃないかという疑いを持っておる。そういう疑いを国民にいだかすことは、日米関係を根本的に破壊をする。  でありますから、総理外務大臣も、そういう疑いを日本人に持たさないためには、アメリカが腰を入れて、李承晩の間違いをアメリカの手によって押える。これ以外に解決の方法はないと思うが、総理大臣、御答弁をお願いします。
  61. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私どもは、アメリカ日本の自衛隊を増強せしめるために、そういうふうな措置を韓国をしてなさしめておるとは考えておりませんが、しかしこの問題の解決につきまして、先ほど来申しておるように、われわれはできるだけこれを平和的に解決するという趣旨のもとに、今日までしんぼう強い交渉を続けてきております。  しかしその前途が、必ずこれによって、それでは近く解決するかという点に関しましては、今までの交渉の経過にかんがみまして、そう容易なものでないことも、私も十分これに当たって承知しております。従ってこれを解決するために、あるいは国際的の機関その他の力を必要とする面も、私は最後においてはあると思っております。  またアメリカにこの間において、この問題の解決に今日まで、特にそれを依頼したことはございませんけれども、側面的に、いろいろと協力していることも事実でございますが、さらに強力な、その方面におけるところのこの問題解決に、アメリカの力を使わなければならんというような事柄に関しましても、将来の交渉の経過とともに、十分考えていきたいと思ます。(「もう一問だけ、簡単に」と呼ぶ者あり)
  62. 辻政信

    ○辻政信君 今の総理の御答弁には、誠意があります。しかし私は、こういうことを言ってもらいたい。こういう疑惑を持たしたままで、安保条約を批准しても、これはいけない。第五条は、日本が明瞭に侵略されておるにかかわらず、アメリカがほおかぶりをしておる。そうして日本国内において米軍がやられた、いや応なしにやらなければならん。こういうきわめてへんぱ的な感じを国民に与えたんじゃ、安保条約を結んでも、ついてこない。だからアメリカが、ほんとうに安保条約で共同防衛をやろう、その気持があるならば、この条約の批准に先立って、アメリカが強大な指導力でもって竹島の韓国軍撤退させる、そうでなければ、この安保条約の批准はしない。これくらいの強い決意を持って、竹島問題をアメリカに抗議してもらいたい。李承晩ではだめです。これについて藤山外務大臣
  63. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知通りわれわれとしては、先ほどから申し上げておりますように、二国間の問題は二国間で片ずけ得るならば、それが一番いいことなんでありまして、それによって片ずけるのが常道でございます。ただそれが、どうしても韓国側の態度が改まらない場合におきましては、当然今、辻委員の言われましたように、あるいは総理の言われましたように、アメリカのあっせんを依頼するということも、これは当然のことでありまして、あるいは国際会議にかけることも必要だと思います。  そういう手段については、われわれ今日まで隠忍自重して、そうしてできるだけ二国間で問題を片ずけていくという立場をとって参ったんであります。むろんそれに対しても、ある限度があることは、これは当然だと思います。  従って、われわれ外交を預っております者としては、そういう国民感情の上に立ちましても、そういうことを打来にわたって考えていく時期が、あるいはあり得るのかもしれないと存じております。(「議事進行」「議事進行を許さんということはないじゃないか」と呼ぶ者あり)
  64. 鈴木強

    鈴木強君 小林委員から、先ほど発言の最後に言われておりますように、四条、五条との解釈ですね、とにかく安保条約が結ばれた場合に、米軍が第五条によって義務を負うわけでしょう。だから、この問題の解決協力をすべきだという見解をとって小林委員質問しておるんです。  それで関連が、羽生委員からもありまして、それから辻委員からもありましたけれども、その問題は、依然として残っておりますから、小林委員の言うように、あとで十分に、米韓等、日米安全保障条約立場に立って、板ばさみになっているようだが、第五条から言うと、当然義務があるという立場をとって、われわれは協力すべきであると言っているのですから、それに対して、政府はどう解釈をされておるのか、そのことは未解決でございますから、その点は、意思を統一して午後の冒頭に御返事いただきたい。それを委員長に……。
  65. 小林英三

    委員長小林英三君) 鈴木君の議事進行についての委員長に対する御質問でございましたが、ただいま森君が、この問題についての質疑続行中でございますから、そのあとで、この問題を取り上げます。
  66. 森八三一

    ○森八三一君 私の発言に関連して、各委員からいろいろの質問がございましたが、私がこの問題を取り上げてきましたのは、ほんとうに素朴な国民感情としては、政府も非常に努力されてきてはおります、そのことがわからぬわけではございません。  これは了承をいたしておりまするが、いかにも時間が長くかかり過ぎて、そうして前途の見通しというものは、非常に暗いと申し上げざるを得ないようなふうに了解をしておる。これでは待ち切れないと、そこへもってきて、今回安保条約の改正が行なわれる。私は安保条約の改正について否という意見を持っておるものではございませんが、先ほどからお話がありましたように、素朴な国民感情としては、日本の国土が侵されておる場合には、当然この安保条約は、その規定が発動するのではないか、その発動をしないようなら、安保条約は役立たぬじゃないか。(「その通り」と呼ぶ者あり)こういうように国民了解して参りますると、岸総理が、非常に情熱をこめておやりになっておるこのことに対して、非常に国民としては疑惑を持ってくるということになるので、そういうことについて、この際、きれいに解明しておくことが、安保条約の改正の問題を取り扱うためには非常に重要なポイントになってくるのではないかということを私は心配いたしますので、取り上げて参ったのでありまするが、関連質問に関連いたしまして、統一見解を御表明になるということになろうと思いますので、私はすみやかにこの当面する問題が、いかなる方法でございまするか、私は、方法はできる限り平和的な解決希望はいたしまするが、それによってのみ、事を託するというわけに参りかねるという場合もあり得るかと思いますので、そういうような万般の問題を十分御考察をいただきまして、当面素朴な国民感情が、完全に解決されまするような手続、取り運びを急速にやっていただきたいという希望を申し上げまして、この問題は打ち切っておきます。第二にお伺いしたいのは、私は、国際紛争等から国内に非常事態が発生するというようなことは考えておりません。おりませんが、地震だとか、その他の天然現象によって、国内に非常事態が発生するということは、これは一応考えに入れて対処をしておかなければならぬのではないか、こう思うのであります。  そこで、二月二十八日の週刊朝日によりますると、大正十二年の九月一日に東京を中心として巻き起こりました関東大震災程度の震災が、今日の東京に発生したらという仮定に立って記事を載せております。私は、その記事を一読いたしまして、ほんとうにりつ然たるものを感じたのであります。そこで、そういうような事態が、もし発生いたしました場合に、一番大切な問題は、何と申しましても治安の維持の問題、食糧の確保の問題、経済上、特に金融の混乱を起こすという問題、そういう問題等が取り組んでいく一番ポイントの問題だと思う。  そこで、第一の治安の維持の問題でありますが、今日は、軍隊もございませんし、あるいは戒厳令というような制度もございませんが、しかしながら、すでに伊勢湾台風等によって、十分経験されました自衛隊の出動だとか、あるいは民衆警察として相当に充実されて参って来ておりまする警察力の活用によりまして、治安の問題については、私はこれはもう、そう心配をする必要はないというように私は了解をしておるが、食糧の問題については、必ずしも安心できない状況にあるのではないかということを思うのであります。    〔委員長退席、理事館哲二君着席〕 と申し上げますのは、幸いに五年続きの豊作だとか、あるいは海外の食糧事情が非常に好転したというようなことにささえられまして、量的には、私は一応心配はないと思います。ところが、二月二十九日の日本経済新聞の朝刊の記事によりまするというと、「お米の輸送に赤信号」という見出しをつけまして、非常に大きな記事を掲げております。その記事によりますると、東京都における基準・配給量を確保するためには、昨年の同期よりも五十七万五千トンを増送しなければならぬということであります。基準量を配給確保いたしますために、五十七万余トンを今後よけい送らなければ、そのことが達成されないという状況に今量的におかれている。これは、比率を求めますると、昨年よりも今後三割以上の輸送を増さなければならぬということなんです。おそらく農林当局におきましては、食糧管理上配給の責任をお持ちになっておりまするわけでありまするので、東京都の人口に対処するために、必要な基準配給量の輸送の計画をお立てになりまして、量はあるのですから、そこで運輸当局と打ち合わせになりまして、お運びになっていると私は確信をしております。そのことが、その農林当局で樹立をいたしました一番大切な食糧の輸送について、こういうような状態になっておりますることについては、了解をいたしかねる。  そこで運輸大臣にお伺いをいたしますが、一体、食糧の輸送について、ことに帝都の——これは帝都だけではございません、その他の大都市も同様と思いますが、数字を、この新聞記事によって、東京都だけのものしか持っておりませんが、ただいま東京都の問題に限定をしてお尋ねをいたすのでありまするが、こういうような状態にまで非常に急迫をしてきているということは、一体運輸当局の方では、農林当局が樹立したその輸送計画というものを、どう受け取っておられるのか。これは疑いますと、いわゆる岩戸景気で、米なんか運んでいるよりは、ほかの物を運んでおった方がもうかるというような安易な考えから、農林当局の計画をこわしている。それで治安の問題から、一般の問題に不安を巻き起こしてきているということに通じておるのではないかというように、私は端的にこう見るのでありますが、一体、どうですかこれは。    〔理事館哲二君退席、委員長着席〕
  67. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) ただいま森委員のおっしゃいました輸送の問題でありますが、米は二月の何でありますが、全国的には、七四%でありますけれども、東北は四五%と実はなっておるのであります。この東北が、こういうふうに非常に落ちているということは、東北は、ちょうど今貨物としましては、リンゴが出ておる時期でありまして、リンゴが鮮度を重んずる関係もありまして、リンゴをその点で運んでおるために、リンゴは、東北から九八%、ほとんど一〇〇%近く運んでおりますが、これが三月一ぱいに済みますと、原状に回復すると思われるのであります。  そこで、大体現在の滞貨しています貨物が、百七十万トン近く全体的にありますが、これは、米の今申されました豊作というような問題もありまして、貨物が、そういうような鮮度の物ともダブッておる関係もありますけれども、この点は、今申し上げましたように三月以降においては解決し得ると思うのですが、大体、貨車が非常に不足いたしておりまして、その点を、どうしても解決しなければならぬというので、貨車の増備計画を立てておるのであります。三十五年度の予算で車両の新造の計画を六千両計画をしていますが、そのうち二千五百両は廃車しまして、純増するものがありますので、三千五百両だけは、これを完成したいと実は思っているような次第でありまして、何を申すにしましても、貨車の問題、ことに東北等におきましては、単線等の関係がありますので、そういう点も多少問題を惹起しておると思うのでありますが、全国的には大体七四%の米については輸送をやっておる次第であります。
  68. 森八三一

    ○森八三一君 まあいろいろ御説明がございましたが、少し私は運輸大臣の感覚がどうかと思うんです。と申し上げまするのは、何と申しましても、食糧の問題は常にこれは安心感を与えておくということが、これは一番大切な問題なんです、治安の問題、一般の問題のこれは基底となる問題ですから。そこで、リンゴの輸送がどうだとか貨車が足らぬとかということは、私は一番重要な帝都の食糧問題を御説明なさる理由にはならぬと思うんですね。全然ないというなら別なんです。鮮度の落ちるリンゴを運ぶ貨車はあるが、ほんとう国民の生活になければならぬ食糧の問題について、不安を与えるような記事が載るようなことにまで追い込めていらっしゃるということは、私はどうかと思うんです。これは運輸大臣、今の御説明では納得ができません。今後私はいろいろなことをやって、三月以降にこれを手直しをするとおっしゃいまするけれども、非常にむずかしい問題である。と申し上げまするのは、産業経済活動が相当に伸びていく。いわゆる岩戸景気に際会をしておるんですから、これからますます貨物の動きというものは活発になろうと思うんです。そういう際に米をそこへ三〇%よけい割り込んでやるということ、前年の同期よりもよけいやるということは、これは容易ならぬことで、もしそれを強行するとすればほかの産業活動に非常な私は影響がくると思うんです。このことはここでさらに追及いたしましても、済んだことですから今さら取り返しはつきません。つきませんが、そういうことを疑いたくはございませんけれども政府貨物である米を運ぶ場合には、別につけ届けも何にもないからそういうものはあと回し。リンゴやそういうものの方がどうも都合がいいということで、私はそっちへいっておるんじゃないかと疑いたくなってしまうんです。疑うということじゃございませんけれども、そういう気持が自然出てくる。もう少し国民の主食の問題については真剣に考えて、農林当局の計画通りにこれは完遂を願うということだけは、しっかり考えてもらわなければ、そういう監督を願わなければ、私は大きな問題になると思う。災害は忘れたころにやってくるということでございまして、いつ何どきくるかわかりません。きたときにはどうする。さあ、きょうきたらどうなさるんですか。三割も、五十七万トンもマイナスになっている。きょう、もしそういう事態が発生したらどうなさる。これは大へんな問題ですよ。今日貨物自動車が発達しているからといいましても、道路がまだ整備されておらぬのですから、そんなに貨物自動車で五十七万トンを運ぶなんということは、これは私は簡単な問題じゃないと思うんです。もう少しそういう点について、国民ほんとうに安心して生業にいそしめる、やみのものを買って貯蔵しておかなければ困るというようなことが、新聞記事に出ないようなことをやってもらわなければ、私は政治にならぬと思う。この点は十分注意を喚起しておきたいと思います。  それから、運輸の問題が出ましたので、もう一つ運輸大臣にお伺いいたしたいと思いますが、ことしの年の初めに通運料金の引き上げ改定を閣議で決定承認されました。この通運料金があらゆる物価に直接関係を持っておりますことは、もう御承知通りであります。しかも、この仕事は私企業ではありまするが、独占的な性格を持っておる、公共的なかなり性格を持っておる仕事であるということも、大臣よく御承知通りであります。ということでありまするから、これが処置についてはきわめて慎重でなければならぬと存じます。特に貿易の自由化をはかりまするということになりますれば、それに並行して産業の体質改善をやりながら、国際競争に耐え得るような措置をとっていかなければならぬ。そこにこの輸送に関連する運賃というものが、非常に大きな私は問題になってくると思うのであります。こういうような見地に私は立っておりまするので、かねがね該当する委員会等におきましても、当局との間に質疑を交わして参りました。私は今日の時点に立って考えますると、この通運料金の引き上げ改定等は、厳に回避すべきであるという所論に立って論議を重ねて参りました。その論議を通して明らかになりましたことは、通運料金の改定は七カ年間も据え置きになっておるから何とかしなければならぬ。もう一つの問題は、その間に国鉄運賃等も改定になっておるし、電気その他の価格も改定値上げになっておる。そういうものとの並びをとるという意味からも通運料金の改定はすべきである。もう一つの理由といたしましては、昭和三十三年度における通運業者の経営は赤字である。公的性格を多分に持っておるこういう業者の経営内容が、赤字であるということは放置ができないから、そこで合理化するための値上げを考えなければならぬ。こういう三点が大体委員会における質疑を通して明らかになったわけであります。  そこで、七カ年間据え置きになっておるということは、私は問題にならぬと思う。何年据え置きでもけっこうであります。それから、その他の運賃が値上がりになったから、それとの比例をとるということはナンセンスなんで、これも値上げの理由にはならぬと思います。最後の公的な性格を持っておる業者が赤字経営で、その運営が非常にまずいということでございますれば、これは考えてやらなければならぬ。これは一つ理由になる。そこで、こういう問題は、だんだん究明していきますると、政府資料によりますれば、ほとんど貨物輸送の実権を握っておりまする日本通運について例が出まして論議をしたのでございますが、日通の三十二年度における経理は一割四分の配当をして、黒字計算ができております。三十三年度に至りまして突如として、配当は一割二分をいたしましたけれども、その内容において、当然損失の計上をしなければならぬもの十五億何がしを未計上のままにやった。ここに初めて赤字という現象が出てきた。そこで、その赤字がどうして出たかというと、いわゆる神武景気がダウンしてきたか取り扱い量が減りました。これが一千万トン、それがそういう赤字の果因でありまするという御説明でございましたので、そうすれば、今岩戸景気になってきたから、また貨物の取り扱いがふえるので、ただ一時点だけをとらえてこういう大切な問題を解明すべきでない。相当長い間の見通しに立ってやらなければならぬということを御注意を申し上げておったのであります。  ところがその後の状況を見ますると、私はそういうことを指摘いたしまして、事実が現われてきております。と申し上げまするのは、国鉄も、昨年十二月におきまする貨車輸送量は千六百三十四万トンでございまして、これは国鉄創始以来のレコードであります。確かに岩戸景気を反映しております。三十四年度中の年間見込み量を聞きますると、一億八千二百万トンということでございまして、前年対比千数百万トンの増加なんです。運賃を構成する他の物価は、大体当局の御努力によって横ばい。そこで、一千数百万トンの輸送量がふえたということになりますれば、通運料金を改定しなくても黒字計算ができるという三十二年度の状態に戻るべきはずなんです。だから、私はそういうことでございまするから、やつちゃいかぬということを申し上げたのでございますが、一月ですが、これを断行せられた。ここで通運業者は独占的な性格を持っておる。それが不当利得を占めるという結果になるが、どうするか。それが日本の産業活動に一つの大きなマイナス条件を作ってくる。体質改善に非常に悪影響をもたらすが、他にもつながってくる そして貿易にも関係する、私はこういう結果になると思います。総理はこんなこまかいことを一々ごせんさくなさるわけではございませんから、総理の所信を聞くということではございませんが、運輸大臣、この点どう御説明なされますか。せっかくやったけれでも、そういうことができたらもう一ぺん値下げ認可をやる、こういうことになりまするのか、不当利得はどうなさるのか。
  69. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 通運料金の問題は、今、森委員が申されましたように、先般いろいろと慎重審議をしまして、運審等の答申も得まして改定に持っていきました。業者側から申請しました半額近くを妥当な線として許可をいたしたのであります。今申されましたように、七年間据え置きをしておることは問題にならぬということをおっしゃっておりまするけれども、やはり通運業者も労働者を使い、あるいはガソリンを使い、あらゆる物資を使ってやっておる関係があるのでありまして、やはり他のものから見ますると、通運料金は、昭和十一年を基準としまして百五十四倍でありますが、ガスは二百四十七倍でなお値上げされた、新聞は三百四十九倍、はがきは三百三十三倍、こういうように実はなっておるのであって、今おっしゃいました通運業者は、日通がなるほど独占的な立場をとっておられまするけれども、他の四割近くの業者は非常な赤字でありまして、日通それ自身も通運部門だけを計算といいますか、経理計算を大蔵省その他でやっておるのを見ますと、やはり通運関係だけは赤字でありますが、倉庫業その他多角経営をやっておりますので、ああいうような配当をやっておる次第でありまして、従って日通に対しまして、独占的ないき方等に対しましても、私が運輸大臣になりましてから、全通というものが形成されまして、やはり公正競争をするために、交互計算制度を設けまして、日通の独占性というものを押え、方中小の企業者である他の通運業者に対するにウエートを強くするという政策をとって、先般認可したような次第でありまして、現在の状況におきましては、私は通運業者の全般的な状況から見ますると、あの値上げは妥当であると信じておるのであります。
  70. 森八三一

    ○森八三一君 これはまあ総理大臣もよくお聞きを願いたいのですが、総合経営をやっておるから黒字が出ておるんで、その部門だけを計算すれば赤字、これも私は確かに資料によって了承をしております。しかし今日歯を食いしばって体質の改善をし、日本経済の安定をはかっていかなきゃならぬときに、総合経営であろうと何であろうとも、その組織体と申しますか会社と申しまするか、それが全体的に黒字計算ができておるということでございますならば、これはごしんぼう願うのが私はあたりまえだろうと思うのです。どの部分、どの部分が赤字だから、その部分を黒字にしてあげるといういき方は、これは経済政策としてはいかがかと私は考えます。そういうものではないと思います。  それから七カ年問据え置きで云々ということは、私は問題にならぬと言ったのですが、これはよくおわかりになると思うのです。そんなばかげた——何年据え置きでもいいと思う、三十年据え置きでも、四十年据え置きでも、その事業が、私企業であっても公的性格を持っておるのでございますれば、黒字計算ができれば、それでしんぼうを願うということが、これは当然なことなんです。理由にはならぬと私は思うのであります。こういうことにつきましては、よく一つ内容をきわめていただきまして、もう時間が来ましたので、私はもう少しこの問題を掘り下げて論議をいたしますれば、はっきり御了解を願えるし、日本経済の伸展を期するために、これがいかに大きな隘路となるかということが解明できると思うのでありますが、こういうことをめぐって世間ではとかくの批判をしているんです。黒字計算ができておるにもかかわらず値上げをするということは、その裏面には何かあるのじゃないか。こういった経理の三悪追放をまたこわしていくような議論が、こういうところから起きるのです。これは非常に私は残念なんです。総理が一生懸命おやりになっていることを、次から次へとこわしていくような施策がとられて、しかもそれが、数字的に、理論的に筋の通らないことであっては残念だと思いますので、よく一つ御検討をいただきたいし、他のことにつきましても同様に一つ御処置を、物価対策についてはお願いを申し上げたいと思います。  時間が終わりましたので、最後に、私はまとめて一つ簡単に御答弁をお願いいたしたいと思いますが、それは第一は、当然なことと思いまするが、三十五年度には税制の根本的な改正はいたさない、ただ一部改正になりますものでございますが、その他は手をつけぬということでございますので、実質的に昭和三十四年度よりも増税になるという施策はないと思います。といたしますれば、例の昨年問題になりました米の予約減税の問題は、歳入にも見積もられておらぬことでございまするので、税制調査会の結論が出るまで、昭和三十五年度については昨年同様の措置が行なわれるものと私は了解をいたしておりまするから、この点は、だめ押しになるだけと思いますが、はっきりさせていただきたいということが一つ。  それから第二は、所得倍増論の問題についてお伺いをしたいと思っておりましたが、時間がございませんので、メモだけを読み上げます。  岸第一次内閣の成立と同時に、三悪追放という政策を発表せられ、全国民から拍手をもって迎えられました。さらに昨年参議院議員の通常選挙を控えて、所得倍増論を発表されますと、全回にもまさる国民的拍手を得られたのであります。私も心からそのことを歓迎した一人であります。もちろん三悪追放にいたしましても、所得倍増論にいたしましても、これが実行は容易ならざる難事でございまして、早急にその実が上がるというふうには考えられません。しかしながら、ただふろしきを広げただけで、その実行が伴わないとなりますると、善良なる国民をぬか喜びをさせ、失望させ、ついには政治に対する不信を招くということになる、憂慮すべき結果を生ずると存じます。そこでどこまでもこれはその実行をはかってもらわなければならぬと私は思います。  そこでお伺いいたしたいのは、いわゆるその所得倍増論の内容なんです。今日の数字に見ますると、農林漁業者と他産業者との間の所得は、非常に大きな格差を持ってきております。それから大企業傘下に組織されている労働者諸君と、中小企業関係に従事をする労働者諸君との間にも、同様な大きな格差がございます。総理のおっしゃる倍増論では、この問題をどうされようとするのか。さらに生産の業に従事をしている場合には、経営者でも、その仕事に従事している勤労者の諸君でも、生産性の向上によって、所得の増加をはかるということは可能でございましょう。しかしながら中央、地方を通ずる公務員諸君のような場合には、生産性の向上というわけには参りません。そうすると、どうしても所得を国民全体にふやしていこうということでございますれば、生産性の向上によって、その目的を達することができない立場にいる諸君などに対しましては、今申した公務員等については、年々一定のベースアップでもやらなければ、その目標は達成せられぬということに私はなるような気がするのでございますが、ところが三十五年度の予算を拝見いたしますると、中間の中だるみ等は是正されておりまするけれども、この所得倍増論に対応するところの予算措置はちっとも講ぜられておらぬ。これは非常に片手落ちじゃないかという感じを私は形式的に持つのであります。こういう場合原始産業と第二次産業の格差を、所得倍増論でどう修正されるのか。中小企業と大企業との間にあるその労働者、勤労者諸君の格差をどう調整なさろうとするのか。そうしてまた生産性向上によっては解決されない公務員等の所得の倍増論というものは、どういうふうに解決なさろうとするのかという点が第二点であります。  最後に、第三点で、昨年の十月二十六日に召集せられました災害臨時国会におきまして、二十七の立法をいたしたのでありますが、その実施をめぐりまして、地方へ参りますると非常に遺憾なことがある。と申し上げまするのは、復旧工事等をいたしまする場合に、すでに緊急を要しまするので、各地の団体ではそれを実施いたしました。そのあとへ行って査定をなさるというときに、ああいう非常時ですから、大工さんにしても、左官さんにしても、電気工事の工夫にいたしましても、千円とか千二百円という日当を払わなければ来てくれません。来てくれないといって待っていたのじゃ、政府の米を入れておく農業倉庫は雨漏りして大へんなことになるというところで、手直しをしてやってしまった。ところが、査定をされますと大工が六百円、左官は七百円といって、ちゃんと大蔵省の方ではえんま帳持っていらっしゃいまして、それにきちっと当てはめてやってしまう。そうすると実際に千二百円払ったものが六百円の対象にしかならない。これではわれわれ立法した趣旨とは違うのですが、こういう問題をどうなさるか。われわれの立法の趣旨を踏みにじっておやりになるのか、こういう点を第三点として最後にお伺いいたします。
  71. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国民所得の倍増という問題につきましては、実はまだ具体的な計画は目下政府において検討、審議中でございます。しかし今お話になりましたこの農業部門と農業以外の部門との間の所得の格差を、どういうふうに調整するか、また中小企業と大企業、企業形態によっての格差をどうするか、あるいはまた地域的な、都会と農村との間の開きの相違であるとか、あるいは地方的にいって未開発地域におけるところの所得が非常に低い、こういうものをどういうふうに是正していくかということは、所得倍増計画におきまして、特に私は内容的に重要視しておるところであります。まだ具体的に、はっきりと計画ができておりませんから、一々のことを具体的に申し上げることもできない状態でありますが、たとえば農業の部門におきましては、これは森委員もよく御承知でございますが、どうしても日本の農業の生産性を高める、どうして高めていくかという、そのためには、日本の零細農業というものを、最近の科学技術の発達によって各産業が非常な生産性を上げておるけれども、農業部門に取り入れていくものについては、この日本の特有の零細企業の農業のままでこれを取り入れるということは非常にむずかしい、それをどういうふうにやっていくかというようなことも考えなければならない。同時に、農家の所得というものを考えますというと、農家一の人口のうち他の産業への転換というものを、もう少し有効に、かつ効果的に、かつ円滑にいく方法を考えていく必要がありはしないか、こういうような問題に関しましても寺に考えたい。  また、未開発地域につきましては、すでに北海道、東北地域における特別の総合開発計画がありますが、その他の未開発地域についてもそういうものを推し進めていく必要があるだろう。また、中小企業と大企業との労務者の所得、あるいは企業の所得がどういうようになっているかということについては、労務者については一応最低賃金法の制定をいたしておりますが、これをやはり中小企業自体の所得というものを多くし、中小企業自体が十分に大企業とある程度競争裏で立っていくような近代化の方策や、いろいろな点を考えていく必要があるだろう。  なお、お尋ねになりました公務員の給与の問題でありますが、こういうふうな所得倍増計画というものが立てられ、生産性を上げる、またその間における不均衡についての各種の施策を行なって参って企業が盛んになれば、企業者も、またそれに従事しておるところの労務者も、その生産性の向上の当然の利益を受けて、給与がよくなるわけでありますけれども、公務員の場合においては、今御意見にありましたように、生産性と結び合わせるわけに参りません。しかし公務員の給与というものを、他の一般産業の労務者との関係を見て、これを人事院の勧告によって是正していくという、現在の公務員制度の給与の建前から申しますというと、一般の給与がよくなっていくならば、やはり一般の例とにらみ合わして、人事院において適当と認め勧告をいたす、政府はそれを尊重して実現していくということに進んでいくことになります。で、言うまでもなく、国民所得倍増計画というものは、一応国民経済として、全体の国民所得というものを目標として計画を立てるわけでありますが、従って、国民の各自の所得がことごとく二倍になるという結果にはなかなかこれはなり得ないと思います。しかしながら、私どものねらいは、やはり国民各個の所得も二倍に近い、均衡のとれたものに持っていくということが必要であって、全体の所得は二倍になったけれども、それはただ大企業と一部の者だけの所得が三倍、五倍になって、大多数の者はわずか何パーセントしかふえないというような状況にならないように計画を現在検討いたしており、審議いたしておるわけでございます。
  72. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 総理のお答えにならなかった点について私からお答えをいたします。  予約減税は存続するのかどうかという点でございますが、御承知のように三十五年度の予算には、これを従前同様の措置のもとに予算を作っております。その一事を明確にいたしておきますので、先ほど御意見のありましたように、御安心だろうと思います。  第二の問題で、ただいま所得倍増について、公務員あるいは地方公務員等はどうなるかというお話でございますが、ただいま総理からお答えいたしましたように、人事院勧告、原資にいたしまして約四%の増であります。また、昇給原資等も約四%のものを見込んでおります。この昇給原資そのものが所得倍増計画とうらはらをなすものだ、かように私は申すわけではございませんが、給与自身はそういう意味におきまして、二つ合わしてみまして、約八%近い予算増が見込まれるということでございますので、まあ倍増計画の七・二%という平均率から申しますと、一応その数字には合うのじゃないかと思います。  次は災害復旧についての材料や、あるいは人夫賃等の計算について、大蔵省は一定の査定方針のもとにやっているので非常に窮屈だ、ことに災害後において材料や人夫賃等が高くなっておる、こういう面から実情に合わない、こういうお話でございますが、まあ大体悪いことはみんな大蔵省のようですが、全部が大蔵省の実は責任じゃございません。御承知のように、災害復旧費の査定にあたりましては、十分主務省——農林省あるいは建設省が地方団体と十分協議をいたしまして、そうして設計をするわけでありますし、そういう場合には、材料だとか人夫賃等も十分話し合って、実情に即したもとにおいて実は査定をするわけであります。盛んに首を振っていらっしゃいますが、ことに現地の査定等になりますと、材料のとりやすい場所、とりにくい場所がございます。たとえば砂利一つにしてもそういうことがございますが、そういう点も十分勘案されまして、適正な価格が、予算が計上されておる、実はかように私どもは心得ております。もちろん、災害復旧でございますから、その災害の直後の物価騰貴と、それだけで云々はできないと思いますが、三年ないし四年のうちに災害復旧は完成するのでございますから、まあ長期に見ますと、予算実施上において必ず不都合は起こさない、かように私ども確信いたしております。しかし、ただいま御注意のありましたような点は、私どもも今後の査定上に際しましては、十分地方の実情に合うように心がけて参るつもりでございます。
  73. 森八三一

    ○森八三一君 これで私の質問は終わりますが、時間の関係上、御出席を願った大臣に御質問を申し上げる時間がなくなりました。まことに申しわけなく思います。最後にまとめて申し上げました事項につきましては、必ずしも御説明で十分納得したというわけではございませんが、私は分科会その他でさらに御質問をいたしたいと思います。
  74. 小林英三

    委員長小林英三君) 先ほど鈴木強君から議事進行についての発言がございまして、小林孝平君の竹島問題と新安保条約の条項と関連いたしましての解釈について、いま一度政府答弁を求められましたので、午後の委員会の劈頭に委員長から政府発言を求めております。  午後は一時二十分から再開することといたしまして、暫時休憩をいたします。    午後零時二十九分休憩    —————・—————     午後一時四十八分開会
  75. 小林英三

    委員長小林英三君) これより委員会を再開いたします。  委員の変更について御報告申し上げます。基政七君が辞任せられ、その補欠として、島清君が選任せられました。
  76. 小林英三

    委員長小林英三君) 午前中委員長が申し上げました通り、竹島の問題と新安保条約の条項の解釈に関し、政府から答弁を願うことになっておりますので、この際、外務大臣発言を許します。
  77. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 竹島問題は、すでに八年前に起こった問題でございまして、自来日本は一貫して平和的にこれが解決をしようと交渉してきたものでございます。すなわち、日本自身が新条約第五条の規定によるような行動をとるという問題ではないのであります。従いまして、米国が第五条に基づいた行動をとらなくてはならないという状態にはなっておりません。ないのであります。第五条にいう行動から見まして、武力攻撃に対する対抗処置でありまして、外交交渉を、これに外交交渉が含んでおると、側面でやるというようなことに対する措置を意味しておるものではございません。もちろん、竹島問題につきまして、日米間で協議をいたしますことは当然のことでありまして、十分協議をいたすわけでございます。
  78. 小林孝平

    小林孝平君 ただいまの政府の見解につきましては、非常にわれわれは不満でございます。しかし、議事の進行の関係がございまして、後刻私が政府質問をいたします際に、詳細お尋ねいたしたいと存じますが、ただ一言申し上げたいのは、政府は、この竹島の問題が第五条にいうところの日本国の施政下にある領域である。従って、この条約が発効の際は適用される地域であるということを確認されました。また、竹島のこの不法占拠が第五条にいうところの「武力攻撃」であるということも確認されました。また、この事態が「自国の平和及び安全を危うくするものである」ということも認められております。こういうことをわれわれは確認をいたしますが、さらにこの武力攻撃が八年前に起きたことであるから、この五条の適用がないという御説明でありまするけれども、これは全くこの条約の解釈を勝手にゆがめてされたものと言わなければならないと存じます。  なお、もう一つの点は、この五条の前段の最後に「行動することを宣言する。」という、この「行動」は、外交交渉を含まないものであるということを、ただいま外務大臣はおっしゃいましたけれども、これはただいままで政府からかくのごとき見解が表明されたことは一度もないのでありまして、これは英文を見ましても、この「行動」はアクトとなっております。アクトというのは、この外交交渉を含まないというようなことは、私は絶対ないと存じますので、従って、政府の見解は非常に誤りであるということをここに申し上げ、後刻これらの詳細の点については、私の質問の際にいたしたいと存じます。
  79. 小林英三

    委員長小林英三君) 平林剛君。
  80. 平林剛

    ○平林剛君 私は、昭和三十五年度予算の隠れたる性格と問題点に触れながら、総理大臣初め関係閣僚に対し、主として経済問題を中心に若干の質問をいたしたいと思います。  第一は、岸内閣の唱える日米経済協力の中で、特に外資導入政策、これがわが国経済に与える影響、第二に、ガリオア、イロアのいわゆるアメリカの占領中における対日援助の意味を、第三は、弾力性を失っておる国家予算の中身における疑問、最後に国民が待望しております減税問題について論ずるつもりであります。  第一に、お尋ねいたしたいことは、新安保条約に掲げられたいわゆる日米経済協力、外資導入との関係につきまして、政府の考えておる点を明らかにいたしたいと思うのであります。新安保条約第二条には、両条約国がその国際経済政策上の摩擦を除去することに努め、かつ相互の経済的協力を促進するものとするとありますが、防衛のための条約に経済協力事項をうたう必要がはたしてどれだけあるか、どれだけの実効があるか、はなはだ疑問でありまして、私は特に条約中にこれをうたった理由を総理大臣からお伺いをいたしたいと思うのであります。
  81. 岸信介

    国務大臣岸信介君) われわれのこの平和的な外交を推進し、他から侵略を受けない防衛的な協力を約束するということは、さらに政治経済の面におきましても、両国が十分に理解協力をすることが必要であり、また、そういう基盤の上に立って、初めて防衛的な協力やあるいは平和推進ということが可能であるという考えから、今回の新しい条約におきましては、一般的の経済協力に関する規定を設けて、表題につきましても、ただの安全保障に関する条約ではなくて、日米の相互協力及び安全保障に関する条約というふうにいたした理由でございます。
  82. 平林剛

    ○平林剛君 私は、ただいまの御説明でもなお疑問に思いますことは、日米間における経済問題、これは何も防衛のための条約にうたわなくとも、外務省を通じ、その他各省を通じて、両国の話し合いによって解決できるわけだと思うのであります。この規定自体には、あまり影響が実際上、まずないのではないかと思われるのですが、もう一度その点を明らかにしていただきたい。
  83. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 従来といえども、もちろん日米の間におきましては正式の外交ルートを通じ、また、各種  の協議なりあるいは交流が行なわれて、経済的にもある程度の協力が行なわれてきたことは、これは事実であります。しかしながら、今後、この日米の間において、日米におけるところの貿易やあるいは資本、技術の関係というようなものの交流を一そう円滑ならしめ、また、国際的な面におけるいろいろな経済問題について日米協力していくということは、私は日米両国の繁栄にとって必要であるのみならず、さらに世界の平和にも寄与するゆえんである。われわれが安保条約を、このきめております条約の本質は、一部の人がこれを非難するような、われわれは軍事的なことを、同盟的なことを考えておるわけではございませんで、あくまでも平和と安全を維持し、世界の平和と安全に寄与するという精神でございますから、その重要な内容であるところの一つである経済に関する協力関係条約に明定して、今後一そうこの協力関係を緊密ならしめることは必要であると、かように考えております。
  84. 平林剛

    ○平林剛君 きわめて抽象的なお答えでありまして、次の質問に入ります  それでは、一九六〇年一月十九日に発表されました岸日本国総理大臣あなたと、アイゼンハワー合衆国大統領との共同コミニュケについて、その中身を読みますと、「総理大臣は、日米が相互に関心を有する経済問題に関し継続的に協議することの重要性を強調し、大統領も全く同感である旨を述べた。」と共同コミニュケに掲げられておるのであります。ここにいう経済問題とは一体何であるか。また、総理大臣が特にその重要性を強調された経済問題とは何か、どういうことを強調されたか。これをこの機会に明らかにしていただきたいと思うのであります。
  85. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この共同コミニュケに現われている問題、今お読みになりました点におきまして、私は特に重要なことは、継続的に協議することが望ましいのだ、何か問題が起こったときにその問題について協議するということではなしに、日米の間にこの経済交流を正常かつ円滑ならしめる意味から申すというと、日米の間において継続的に懇談するようなことが必要であって、あるいはいろんな摩擦をこれによって未然に防止する、あるいは将来のこの発展に、経済的成長について、両方が常時継続的に話をするというようなことが望ましいということを考えたわけであります。経済問題としては、言うまでもなく、先ほど申しましたように、日米間における貿易の拡大、また、技術並びに資本等の交流についてこれを円滑ならしめる。また、国際的な経済問題に触れて、日米協力するという点について、日米の間において継続的に懇談していくことが望ましい、こういうことを私が述べて、アイゼンハワー大統領はこれに賛意を表した次第であります。
  86. 平林剛

    ○平林剛君 この問題に関するただいまのお答え、また、衆参両院の質疑を私が総合的に判断をいたしますと、一つ日米間の貿易拡大、一つは低開発国における経済協力一つは貿易・為替の自由化に関連する政策不一致の調整、一つは外資導入、これが岸総理答弁をされた総合的な概要であります。そこで、私は本日はこの外資導入の問題について、総理大臣は、日本立場に立って現在どういう構想を描き、また、このアイクとの会談においても強調をなさったか、その基本的な考え方があまり明らかにされておりませんので、この機会に、その構想と方針とを明らかにしていただきたいと思うのであります。
  87. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本の国情から申しまして、御承知のように、労働者等がふえており、これに対しての雇用問題を解決する、また、国民生活の水準を高めていくように考える上から申しますと、どうしても日本経済の安定した拡大成長をはかっていかなければならぬことは当然であります。しかして、これが一番望ましい形は、日本のこの蓄積した資本によって、また、日本人の創意工夫になるところの技術によって、これが成長拡大をはかっていくことが一番望ましい形であると思います。しかしながら、これに対して足らざる資本、あるいは足らざる技術というものを他の国から導入して、この日本の経済の安定した成長拡大をはかっていくということは、これまた私たちの……これをやはり取り入れていくことが適当である。要はわれわれがそういうふうに導入するという、今御質問のこの資金を入れる形なり、また、その資金の内容自体が、これが今私が申し上げたように、日本の経済の安定した成長拡大に必要であり、また、それにとって好ましいものはこれを入れていくということは当然のことであります。ただ、これを入れる場合におきまして、いろいろ他の産業との関係もございますし、またそれが、先ほど申しました根本のわれわれが考えておる日本の資本で日本の技術を盛り立てていくことは基礎的に考えなければならぬ。そういう事柄に非常な支障を来たすというような下柄は、これはもちろんそういうものまで入れるという考えはございませんので、根本はそれに役立ち、それにとって望ましいものはこれを取り入れていくということが私は必要であると、こう思っております。
  88. 平林剛

    ○平林剛君 ただいまはお触れになりませんでしたが、日米経済協力という名のもとに行なわれるアメリカ資本の導入について、総理大臣の政策の中には、目下世界の関心平となっておる後進国開発、特に日本の場合は東南アジア開発、あるいは東南アジアに対する資本輸出に必要な財源を得る、そういう構想が描かれておるのではありませんか。
  89. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本がこの東南アジア地域に関して、経済開発に、あるいは資本の点において、あるいは技術の点においてこれに対して協力をするということは、私どもの従来からとってきておる一つの方針であります。しかし、その足らざるこの東南アジア地域、いわゆる低開発地域の開発ということにつきまして、なぜそれがおくれているかということを考えてみまするというと、いずれもこれらの国におけるところの技術が非常におくれておる、まだその技術が十分ないということ、また一方、開発に必要な資金が、民族資本が欠乏しておるとか、あるいは国際収支が悪化しておるというようなために、それに必要な資金が十分でないということにあると思います。しかし同時に、従来これらの地域が長い間西欧の支配のもとにあったために、そういうものが一つのひもつきであるとか、あるいは政治的意図をもって投資されるということに対しましては、相当これらの地域においては懐疑的であり、また、それに対しては警戒的であると思います。従って私は、従来そういう意味において東南アジア開発基金というような中立的な、一国が何かの意図でやっておるというふうな疑惑を生ぜしめないような中立的な基金を作ることが望ましいじゃないかということを従来唱えておったのでありますが、われわれとしては、そういう意味において世銀であるとか、特に最近行なわれたところの第二世銀とかいうようなものにも、日本の力としてできる限りこれに参加して、そうしてその資金がこれらの方へできるだけたくさん流れていくように努力していく、また、日本自身としてもわずかではございますが、これらの地域に対する協力基金的なものを設けてこれを活用していくというようなことを私どもとしては考えておる次第であります。
  90. 平林剛

    ○平林剛君 大体政府のお考えになっておること、私もまさにその通りであろうと思うのであります。  そこで、最近伝えられておるアメリカの産業界におきましても、やはりアメリカで賃金水準が高いこと、その結果コスト高になること、そこで同じなら日本で作った方がいい、アメリカの東南アジアの市場を確保するためにも日本の力を利用した方がいいという考えが伝えられておるのであります。アメリカの国務省筋の情報をたどってみましても、日本は米国にとって魅力のあるマーケットである、日本経済の立ち直りは著しいものかあるか、資本の不足には悩んでおるからアメリカ資本の対日投資は日米両国にとって利益下ある、こういう見解から日本の外資道人政策が緩和されるのを待ちかまえておるといわれるのであります。この意味では、東南アジア諸国に対するアメリカ関心もまた強いと見なければなりません。ソ連が最近、フルシチョフの後進国東南アジア訪問というめざましい後進国開発予算政策におくれをとるまいとする、アメリカも後進国開発を競争的にやる、軍備競争にかわる経済的な競争が今日後進国において行なわれようとしておるのであります。これは一面から見ると、日本アメリカも、東南アジアにおいては競争的立場に立たざるを得ないのではないだろうか。そういうときに、総理大臣日本としてはどういう認識に立って行なうか、ある一部ではどうも結局、日本日米経済協力というものも、アメリカの下請業者あるいはそのお先棒の役割りを演ずるにすぎなくなってしまうのではないか、資本力が違うから。日本の産業の進出が指導権をとれないというような心配も聞くのであります。こういうことに関して総理大臣の御認識はいかがですか。
  91. 岸信介

    国務大臣岸信介君) かつて東南アジアの開発について、一部におきまして、アメリカの資本、日本の技術、そして現地の労力というものをもって、東南アジア開発をやるのだというふうな考え方を述べられた人もあるようでございますが、私は、先ほど申したように、そういう考えではなしに、やはりこの後進、低開発地域の開発ということが、それらの地域における国民の生活水準を高め、その経済基盤を確立していくことが、同時にそれだけ国際的市場を拡大するゆえんであって、このことは後進国といえども、先進国といえども、私は結局においては共通な利益を受けるものだと思います。従って、こういうことを、各国がそれぞれの立場で競争的にやる、意図をもってやるということは、やはり望ましくないので、やはり国際的協力のもとに、そういうことが行なわれることが望ましいと思います。国際連合におきましても、そういう意味における特別基金の制度も定めておりますし、また第二世銀というものが設けられたゆえんも、そういうところにあると思います。従って、できるだけの、低開発地域の開発について、最近ワシントンにおいてヨーロッパ共同市場とアメリカ日本も参加して、そういう問題が論議される、相談されることになっておりますが、これらの国々が協力して、これらの低開発地域の経済の基盤を作り、国民生活の向上をはかり、そうしてその繁栄をはかっていくということが、それらの地域の利益であると同時に、この工業的先進国の面から考えれば、それだけ国際市場が拡大されるわけでありますから望ましいことであります。こういうような見地から考えていくべきものであると思います。私は、決してこの東南アジア開発の問題について、アメリカの資本を導入し、日本の産業が、アメリカの下請的な立場において、アメリカ資本の支配のもとに、そういうことが行なわれるというような意味において、アメリカ資本を日本に導入する考えはございませんし、また、日本経済の最近の基礎のできました形からいうと、私はそういうような状態では、日本の経済は、ないと思います。また、われわれが資本の導入を認め、為替取引の自由化をなにしましても、先ほど申し上げましたように、そういうふうに、日本の産業というものを、アメリカ資本のもとに隷属せしめるというような意味で、為替取引の自由化であるとか、あるいは資本の導入ということは、これは今後においても絶対に考えていくつもりはございませんから、今申したような趣旨で、低開発地域の開発には当たりたい、こう思います。
  92. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連……。ただいま総理大臣から、アメリカの資本を導入する場合、日本の産業がアメリカ資本に隷属する、支配されるような考えでやるのではないということを言われました。それは当然だと思うのです。しかし、現在の日米通商航海条約の十二条の第二項によりますと、「いずれの一方の締約国も、その通貨準備の水準が著しく低下することを防止し、又は著しく低い通貨準備を適度に増加するため必要な範囲内で行う場合を除く外、本条5に定める為替制度を行ってはならない。」とあるのですね。そこで、御承知のように、外資法の問題につきましても、これを廃止するか、あるいはどういうふうに改正するか、問題になると思うのです。そうすると、日米通商航海条約との関係が出てくると思うのです。この日米通商航海条約は、現状のこの法規のままですと、国際収支の関係以外については、向こうの資本の導入、これを制限することができないのです。それで、聞くところによりますと、西ドイツあたりは、インフレ保護という立場から、制限してもよろしいということになっているそうですが、これは一つの盲点だと思うのです、百米通商航海条約の。これをそのままにしておいて、それは岸総理は、主観的には、そういうアメリカの外資に日本の産業が支配されないようにしたいと言っておられますけれども、今の日米通商航海条約がある以上、もし外資法をやめるような場合、これは制限できないのですから、実際問題として、企業支配がどうしても起こらざるを得ないのですから、今財界でもその点は非常に心配しているわけでしょう。いろいろな点を今検討しておるやに聞いております。この点はどういうふうにお考えか。  それからもう一つ、関連して簡単に申しますが、これは大蔵大臣に伺いたいのですが、やはり日本の国際収支及び通貨準備等の関係がIMFの関係と関連して起こってくると思うのです。今御承知のように、日本は、IMFのいわゆる十四条国です。つまり国際収支上の理由によって暫定的に輸入を制限してよろしい国なんです。ところが自由化をやって参りますと、いわゆる第八条国になる。そうなった場合、やはり制限できなくなってくるのです。国際収支上の理由によって制限することができないのです。この二つの点、これは今後自由化に関連して、特に外資を入れるような場合、非常に重要な盲点になってくると思うのです。この点について、どうお考えになりますか。
  93. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 日米通商航海条約十二条の2には、お話のような規定がございまして、国際収支の点からのみ制限する、産業政策からはできないように相なっておりまするが、それ以前に、昭和二十四年に、外資法並びに外国貿易為替管理令が出ておりますので、ただいまはそれでいっておるのであります。しこうして、将来日本の為替並びに貿易をいかにしていくかという問題と、通商条約十二条の2の問題は、かね合いの問題になって参りますので、将来非常に不便なことのないようなことを考えていきたいと思っておるのであります。なお……。
  94. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今の不便なことのないというのは、どういうことですか。
  95. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) それではかわってお答え申し上げます。今の十四条国になるかならぬかという問題でございますが……。
  96. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 八条国でしょう。今は十四条国です。
  97. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) これにつきましては、IMFも日本の国際収支その他につきまして、十分検討を加えている。私は、イギリスあるいはフランスがまだなっておりませんので、日本が今すぐIMFの方からドイツあるいはイタリアのような勧告を受けることは、今のところはないと考えております。しかし、これがあるなしにかかわらず、日本の経済を正常化し、また、拡大していくためには、やはり貿易・為替の自由化ということは必要であると考えております。
  98. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 国際収支の問題を考える場合、大体どの程度の外貨準備というものが国際収支の安全に必要か、これはやはり問題になると思うのです。政府はどう考えておりますか。今、約十三億ドルちょっとこえましたが、それで一応安定化していると、それで自由化に踏み切ったということになれば、十四条国から八条国になる可能性が出てくるわけです。これはもちろんIMFの理事会できまることでありましょうが、この点やはり自由化の問題と関連して重大な問題だと思うのです。
  99. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) どの程度の外貨準備を持つことが必要であるかということは、従来議論されておりまするが、御承知通りIMFからの指定を受けましたドイツは、輸入総額の六、七割の外貨を持っております。また、昨年指定されましたイタリアのごときは、輸入総額とほぼ匹敵する外貨を持っております。しこうして、初めから自由化しておりまするカナダにつきましては、輸入総額の大体三割程度。で、イギリス、フランス、あるいはベルギー、オランダ——このベルギー、オランダは日本と同じように三十二、三億ドルの輸入でございまするが、日本と同じように十三億ドル程度の外貨の保有でございます。で、私は、この程度ではIMFの方からどうこう言われることはないと。しかし、十三億ドルの外貨を持っておりますが、政府といたしましては、昭和三十五年度におきまして形式収支では四億ドルぐらいふえるだろう、こういう考えを持っております。これはまあ見通しでございますから、来年の今ごろ、十三億二千万ドルというものが、十七億ドルになるか十八億ドルになるか……、私は普通の状態でいけば十七億ドルぐらいにいくのではないか。しかし、これにいたしましても、まだ指定を受けましたドイツやイタリアのようにはなりません。しかし、外貨準備から申しますると、大体今のところでは、今、政府が計画しておりまするような自由化をいたしましても支障にはならないし、また、自由化し得る態勢ができておると私は見ておるのであります。
  100. 平林剛

    ○平林剛君 私は、外資——外国資本なら何でもいけないと、こういう極端な意見を述べるつもりはないのであります。しかし、一般的にいって、外国の資本はこれに伴う弊害や問題が必ずついて回る。国際的な支配や従属の関係も必ず作り出されてくるのであります。その有力な手段と性格を外資が持っておることは政府も御承知通りです。アメリカ大統領が後進国を訪問したり、あるいはフルシチョフのソ連首脳が東南アジア訪問等一熱烈な後進国援助の競争を行っておる事実がこれを証明しておると思うのであります。私どもの日常生活においても、借金は同じことであります。そこで私は、次の質問を進める前に、わが国の借金——対外債務が一体どれだけあるか、この全貌を明らかにしていただきたいと思うのであります。
  101. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 政府委員から詳細に説明します。
  102. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) わが国の対外債務でございますが、いろいろ多岐にわたっておりますので、一つ一つ申し上げますと、まず外貨債、これは昭和三十四年十二月末——昨年末の残存債額は英貨債、米貨債、仏貨債合計で八百三十三億円ということに相なっております。内訳を申し上げますと、英貨債が五百二十六億円、米貨債は三百六億円、仏貨債が一億円ということに相なっております。これはもちろん昨年発行いたしました米貨債を含んでおります。  それから次に、これも債務と心得ていいのだろうと思いますが——今の御質問の債務に入れていいのだろうと思いますが、賠償関係でございますが、これは三十五年の三月末の見込みで申し上げますと、フィリピンの賠償残高といたしまして千六百五十億円、四億五千八百万ドル。ビルマが三百六十億円、一億ドル。インドネシア賠償は六百五十九億円、一億八千三百万ドル。ベトナムは百二十八億円、三千五百万ドルでございます。それから賠償ではございませんが、カンボジアに対する経済技術援助、これは八億円残っております、二百万ドル相当になります。ラオスについても同じ経済援助が三億円。なお、オランダ・クレームは大体七億円でございまして、これらを合計いたしますと、賠償と賠償に似た形の経済技術援助の合計が二千八百十五億円、七億八千百九十万ドルということでございます。  それからそのほかに、賠償協定を結びました国と経済協力協定がございます。これは普通の一般の延べ払い式のものでやっておりますので、今まで進んでおりますものは大してございません。詳しくはまた御必要でございましたら申し上げます。  それから外貨借款であります。これは総額から申し上げますと、二千百三十五億円、五億九千三百万ドルになっております。これは政府の債務、それから政府関係機関、民間全部を含んでおりまして、政府の借り入れ債務は三百七十九億円、余剰農産物の借款を含んでおります。それから次に、政府関係機関及び公団の借り入れ債務、これは七百七億円、一億九千六百万ドルでございます。中身は電力、鉄鋼等の世銀借款、これは開銀を通じてやります。それから農地開発公団、愛知用水公団というようなものの債務の合計でございます。それからそのほかに、これは短期でございますので、数字に入れない方がいいかと思いますが、いわゆる綿花借款、これは一年ごとに切りかえになりますけれども、これが残高といたしまして三千七百万ドル、百三十二億円でございます。それから民間からの借り入れ債務でございますが、この内訳は、ワシントンの輸出入銀行からの借款が相当大きな部分を占めております。これが九百十七億円、二億五千五百万ドルでございます。  大体、以上でございます。
  103. 平林剛

    ○平林剛君 ただいまの政府の御説明によって、対外債務の合計は五千七百八十三億に達するのであります。しかし、私が本日質疑を展開しております、いわゆる外資導入の中の技術援助——技術提携による特許使用料とか、あるいは情報提供、技術指導など、いわゆる技術援助による支払い対価がただいまの説明には含まれていないのではないか。これも外貨の形で将来日本が支払う借金というべきものでありまして、対外債務に準ずると思われますが、この点はどうですか。
  104. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) 民間関係の外資導入の状況を申し上げますと、昭和二十五年度から三十四年の昨年末、それまでの技術援助の総額が、件数にいたしまして九百七十五件でございます。株式の持ち分は累計して、外資法で認可いたしましたものが九千二百万ドル、そのほかに受益証券で百三十万ドルございます。あとは先ほど申し上げましたように、貸付金債権というものがございます。これの送金でございますが、これは実は技術援助は出来高について何%というパーセントで払っておりますので、確定的に毎年幾らだということはなかなかむずかしいのでございますが、今の技術援助の対価といたしまして、どういうふうに払ってきたかと申し上げますと、あまり古いところから申し上げても何ですから、三十二年度について見ますと、三千九百万ドル、それから三十三年度が四千四百万ドル、それから三十四年度——これは四月から十二月まででございますから、年度一ぱいではございませんが、三千六百万ドル、これだけの技術援助の対価の支払いをいたしております。
  105. 平林剛

    ○平林剛君 総額で幾らになるですか。日本円に換算して幾らか、わかりやすく説明して下さい。
  106. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) 支払いが三千六百万ドルでございますから、三百六十円をかけましたものが円になります。今すぐ計算いたします。——どうも手間取りまして申しわけございませんが、今の三十四年の四月——十二月の三千六百万ドルを換算しますと、百二十九億六千万円ということになるかと思います。
  107. 平林剛

    ○平林剛君 外債を初め、民間企業に導入される技術提携に至るまで、私は、これは将来の国民に残される負担であり、国としては借金であると思うのです。借金は、お互いの家庭生活であまり自慢にならない。特に、将来の国際収支に大きな影響を与えると予想される外資、対外債務の累積に対しては、よほど慎重でなければならぬと思うのであります。政府としては、一体これら累積する債務に対して、はっきりした見込みと計画を立てて、その上で外資導入政策を唱えられるのかどうか、この点を明らかにしていただきたいと思うのであります。
  108. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) たいまた持っております総額というものは、先ほど来御説明いたした通りであります。ところで、先ほども、外資導入につきまして、積極的に、重要な資本でありあるいはすぐれた技術ならば、またわが国産業に及ぼす影響などを考えて、好影響を及ぼすものならば、政府はむしろ歓迎しておる、ひとりアメリカだけではなく、他の地域に対しても同じ歓迎の意図を持っておるということを申しましたが、そこで、これらの返済計画と十分ににらみ合わせてそういうことが計画されるかというお尋ねでございます。逆に申しますならば、一体借金能力はどのくらいが適正なものであるかということにもなるのではないかと思いますが、これはどの程度までやれるかということを、幾らまで借りていいのかということをきめることは、なかなか困難であります。と申しますのは、国内事情もありますし、外国事情もある。国内事情から申しますならば、外貨準備もその一つでございましょうし、さらにまた、わが国経済の成長の度合い、いわゆる負担力というか、そういうようなものが国内的にはありますし、また国際的といいますか、相手国には相手国の金融市場の問題等がございますから、幾らがいいということはなかなか申し上げかねるのでございます。ことにまた、外債自身につきましても、おそらく平林委員も御指摘になろうとしていらっしゃることだろうと思いますが、返済の時期がいつくるかということ。ことに、先ほど来申し上げました、八十三億以上に上ります外国債が三十六年から三十七、八年までに返済の時期が到来する。そういうようなこともございますから、そういう返済の能力なども考えてみるというようなことで、各方面から勘案してみないといけないのであります。ただいま正確にその返済計画を立て、またそれぞれの年における借り入れ計画というものまでは持っておりませんが、十分それらの点を勘案して外資導入というものを実施していくということでなければならないと、かように実は考えております。
  109. 平林剛

    ○平林剛君 私は、今日の日本の経済、また財政政策が、総理大臣以下言われるように、外資を積極的に導入するところの資格と要件を備えていない。抽象的に日本の経済の基盤が安定しておるからということだけでは、満足しないのであります。私は、現実はきわめて憂慮すべき現状にあるということを指摘いたしたいのであります。その一つとして、国としての債務償還の実情を指摘いたしたいのであります。この機会に昭和三十五年度の国債償還計画をまず示してもらいたい。
  110. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 政府委員から説明いたさせます。
  111. 西原直廉

    政府委員(西原直廉君) 昭和三十五年度の国債の償還計画でございますが、償還は内国債、外国債合わせまして二百八十一億円でございます。これ以外に内国債の借りかえ分がございまして、これが六百十五億円でございますので、両方合わせますと、総額では八百九十七億円の償還を予定しております。このうち内国債の償還につきましては、遺族国庫債券につき約百十六億円、引揚者国庫債券につき約四十八億円を見込んでおるのがおもなものでございます。普通国債につきましては、満期額が六百二十九億円ございますが、そのうち日銀、市中銀行等で処理しております六百十五億円は、借りかえを行ないまして、個人等で持っております十三億円について現金償還をする予定にいたしております。これに対しまして、財源といたしましては、一般会計から七十八億五千四百万円、特別会計から十五億六千九百万円、国鉄、電電から三十二億三千五百万円及び国債整理基金特別会計の繰越資金百五十四億七千百万円、合計二百八十一億二千九百万円をもって現金償還に充てますほか、借りかえ収入で六百十五億九千五百万円を予定しておるわけであります。
  112. 平林剛

    ○平林剛君 私の承知しておるところでは、外貨債の昭和三十六年から三十八年に満期の到来するのは四百三十四億円であります。とても今年の償還計画のように、外貨債の返済でも五十九億円程度では済まない。そのときの用意というか、準備がなければならぬと思うのであります。その準備とか用意がなければ、外資導入の積極化を唱える資格はない。満期到来の普通国債も、ただいま御説明がありましたように、大部分は日銀や市中銀行の借りかえをして財政を処理しておる。これは決して健全財政とは言いがたいのです。大蔵大臣に、アイゼンハワー大統領の予算教書の一節を私参考のためにに読み上げておきます。アイゼンハワーの教書に、  「一九六一年度会計年度分として、私は」——これはアイゼンハワーであります——「私は国債償還に充て得る予算剰余金として四十二億ドルの計上を提案する。私の判断によると、これこそ唯一の堅実な行き方である。好況期に若干額を国債償還に振り向けておかないと、将来緊急事態が、景気後退のために再び赤字を生ずるような場合、ますます国債額がふえることを覚悟せねばならぬことになる。」、これは大統領の教書であります。ことしの国債、償還計画は、三十六年、三十八年に累積する外貨債の返済に対して特別な配慮、外債、償還に対して何らの措置が加えてありますか。
  113. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど御説明いたしました外貨債の大部分は、減債基金の協定がございます。従いまして、その減済基金を積み立てていくことが一つ、もう一つはただいま御指摘になりますように、三十六年から三十八年の間に満期到来すということがございますので、できるだけ市場の状態などを見て、これを買い取るという処置を今まではとって参っております。しかし、これはなかなか計画通りにも参りません。市場の好条件のもとにおいてこれを買うのでございますが、非常に買うことが強くなりますと、だんだん高くなりますし、また品物もこちらが考えるほどの十分なものがないというようなことがございますので、あわせて、ただいま申し上げるような措置をとってこの返済に備える考えでございます。
  114. 平林剛

    ○平林剛君 ただいま、将来の返済に備えるつもりだと言われましたが、具体的に、昭和三十五年度の外貨債の償還計画の中にその措置が含まれておるとおっしゃったのですか。
  115. 西原直廉

    政府委員(西原直廉君) 三十五年度の外貨債の返還金額として一応計上してございますのは、五十九億円でございますが、そのうち、減債基金の規定によりまして、減債基金に充当いたしますものが二十五億円でございます。あと残額の約三十三億円が、ただいまお尋ねのような使途に充てるつもりで計上してあるわけでございます。
  116. 平林剛

    ○平林剛君 私は、ただいまの御答弁、どうも衆議院の予算委員会の北山愛郎議員との質疑応答の会議録を読みまして、そのときから疑問に思っておった。どうも今年の五十九億円の返済の中には、来年度の分も加えてあるんじゃないかと思ったのであります。これは財政法に照らしますというと、法律上の措置からいいまして適法ですが、財政法には債務負担行為あるいは継続費、その他もう一つが許されているだけでありまして、来年度必要な経費を今年の予算に入れるということは適法なんですが、どういう根拠でおやりなんですか。私は、いいことをやっておいて、また責めるのはおかしいけれども、法律の根拠を一つ示してもらいたい。
  117. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 財政法の問題でございますから、政府委員答弁いたさせます。
  118. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 先ほど来、大臣及び理財局長からお話を申し上げておりますように、買い入れ償還をいたすということで経費を計上しているわけでございます。従いまして、これは債権の約款によりまして、当然買い入れ償却、買い入れ償還ができるわけでございます。それに基づきましての、外債の今申し上げました減債基金以外に、買い入れ償還の費用を計上をいたしておる、こういうふうに御了承いただきたいと思います。
  119. 平林剛

    ○平林剛君 どうも、ただいまのお話はよくわからないのでありますが、五十九億円という外債の償還計画は、今年全部やってしまうのですか。今年やらない、もしやらないのであるならば、先ほどお話のあった三十三億円というのはいわゆる隠し財源ということになりはしませんか。
  120. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 先ほど来申し上げて、大臣がお答えになりましたように、外債の市場の状況もございますから、これを見ながら買い入れ償還をいたして参るわけであります。従いまして、その全額が必ず当該年度に買い入れ償還がせられるということは申せない場合もございます。その場合におきましては、御承知のように、国債整理基金特別会計法に基づきまして、歳出権が繰り越しになるという結果に相なります。
  121. 平林剛

    ○平林剛君 次にお尋ねしますが、ただいまの国債償還計画において、満期到来、期限の来たものを日銀あるいは市中銀行と借りかえをして、こういう借金を一時やりくりして償還を引き延ばすというようなことは適当じゃないと思うのでありますが、どういう根拠でおやりになるのですか。
  122. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 積極的に返済するということもございますが、借りかえもやはり返済の一つだと、かように私どもは考えております。
  123. 平林剛

    ○平林剛君 私は根拠を聞いておるのです。
  124. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 従前からずっとこれをやっておりますから、法律的根拠があることだと思います。
  125. 平林剛

    ○平林剛君 法律的根拠があるだろうと思うということでは困る。どういう法律が根拠になっておるかをお伺いしておる。
  126. 西原直廉

    政府委員(西原直廉君) 国債整理基金特別会計法第五条に、「政府ハ国債ノ整理又ハ償還ノ為必要ナル額を限度トシ起債スルコトヲ得」とあります。この法律によりまして、借りかえをいたしております。
  127. 平林剛

    ○平林剛君 ただいまの法律は、制定はいつですか。
  128. 西原直廉

    政府委員(西原直廉君) 国債整理基金特別会計法は、明治三十九年三月二日に制定されております。
  129. 平林剛

    ○平林剛君 ただいまの通り、これは明治三十九年に実施された古い法律、いわば明治時代の思想であります。私は、今日は財政は民主化されなければならぬ。また、これからいろいろな経済政策を近代的にやるためには、新しい考えに基づいて政策を行なってもらいたい。明治三十九年の根拠法によって、相変わらず、満期償還の来たものを借金をしては繰り越し、借金をしては繰り越し、いつまでたっても国家としての借金はなくならないということになる。だから、こういうような国債償還計画の実態が、まず政府の唱えるような外資導入を積極化する資格に欠けておる、そういう日本経済を表わすものだと私は指摘をするのであります。政府の外資導入政策に私が慎重論と警告を発する理由は、まだほかにもあります。国際金融機関の介入増大と外国資本の企業支配の傾向がそれであります。世銀借款が従来から貸し付け条件がきびしく、厳密な審査が伴ったことは、すでに定評がありまして、政府も御承知通りであります。この結果、あるときは道路公団の事業計画にこまかい注文がつけられたり、電力借款には契約内容に電力料金引き上げをほのめかして、内政干渉めいた感じを受けたことがあるのであります。最近ではアラビア石油、北スマトラ油田開発に対する輸銀の貸し付けに、国鉄や道路公団など借款を求めておる日本政府機関である輸銀が、そんな余裕があるなら貸さぬと言ったかどうか知りませんけれども、非公式に世銀当局から横やりがあったと伝えられておるのであります。これが事実とすれば、その背景には国際金融資本の圧力があると思われるのであります。外資導入に積極的な立場をとられる立場上、それを唱えておるのでありましょうが、池田通産大臣の御見解をお伺いいたします。
  130. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) ただいまちょっと席をはずしておりましたので、初めごろの質問はわかりませんが、おしまいごろのアラビア石油その他につきましての、世銀の当局者が貸さないとか、こういうふうなことは私聞いておりません。誤報だと思います。総体的に私が考えまして、労働力の余っておる、しかも勤勉な日本人、足りないのは資本でございます。私は、大いに外資を導入いたしまして、そうして完全雇用、経済の発展に資したいというのが私の念願でございます。
  131. 平林剛

    ○平林剛君 それなら、通産大臣にもう一度聞きます。外資の導入あるいは日米経済協力の新しい方向として、注目をされておるこの技術提携、これがほんとう日本の経済に役立ち、発展の基礎になるというなら、話は別であります。私は抽象論で答えてもらいたくないのであります。しかし、残念ながら、外資のおかげで著しい効果があったと目を見張るような現実に、私は不幸にしてお目にかからない。大蔵省の調べた技術提携関係の生産計画達成率を見ますと、二十六年は九五%ありましたけれども、二十七年、二十八年は八二%に落ちておる。二十九年は七〇%、三十四年は六六%、必ずしもあなたのおっしゃるようにかんばしい成績を上げたとは言えないのであります。外国技術を導入した製品の輸出計画に対する輸出実績の対比、あるいは輸出の計画達成率になると、もっとひどいとは私聞いておる。しからば、具体的にこういう実情はどうなっていますか。  もう一つ、技術提携の関係の外貨バランス、それが国のために役立ったという資料があれば、その外貨バランスは一体どうなっておるか、それも一つ示してもらいたい。
  132. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 技術提携によりまして日本がライセンスとして払う金は、先ほど為替局長が申しましたように、三十二年度で三千九百万、三十三年度で四千五百万、三十四年度は大体五千万ドルくらいになると思います。四月から十月までが三千六百万ドル。この程度の技術導入では、私はまだ少ないくらいに思う。これは具体的の例をとおっしゃいますが、今から六年前ですか、日本には七万五千キロの発電機ができなかった。それを外資導入によりまして七万五千キロの発電機を入れましたら、その後において日本はもう十五万キロあるいは二十五万キロの発電機もできる技術が今や日本にでき、発電機の外国への輸出もでき、この技術導入によって日本の生産は非常に上がったのであります。いろんな例がございますが、たとえばポリ  エチレン、この技術導入のときには日本は一万五千トンくらいでいい、こう言っておったのが、今や六、七万トンになっておって、しかも輸出もそのためにできる。これも非常に日本の産業に影響をいたしておる。例を申し上げますと、ナイロンの導入技術のロイアリティの支払いに比べて、ナイロン・メーカーの二会社が外国に輸出しているナイロンの手取金は比較にならぬくらい大きいものがあるのであります。テトロンにいたしましても、まだ操業早々でございますが、私は、日本の今日の経済の発展は、その一つは外国の技術の導入が非常に役立っておるという確信を持っておるのであります。今後におきましても、日本の産業全体に悪影響がなく、ことに中小企業に不当なしわ寄せのないような、しかも国際収支に役立つようなものは、私は入れていくべきだという考えでおるのであります。
  133. 平林剛

    ○平林剛君 私は後ほど、外国技術を導入した製品の輸出計画に対する輸出実績の対比、輸出の計画達成率、技術提携関係の外貨バランス、これに関する資料の提示をお願いしたいと思うのです。池田通産大臣とここで議論をしておる時間は、他の質問がありまして、ありません。ただ、池田通産大臣に申し上げておきますが、あなたは積極財政の責任者として、かつて当時の経済界の混乱を追及をされたときに、投資は貯蓄の範囲内で行なうべしという名言を吐かれた。これを私は記憶いたしております。投資は貯蓄の範囲内で行なうべし、これは経済の原則でもある。外資導入についても、今日までの現状を私が言うまでもありません。日米経済協力、こういう名のもとに今拡大されようとする外貨導入政策に対して警告を発しておる。あなたもそういう点はよく考えておいていただきたいと思うのであります。  外資の導入と日本経済に与える影響の問題につきましては、なおいろいろ問題が残されておりますが、私の結論として強調しておきたいことは、政府の軍備拡張経済による財政政策のはね返りが、先ほど指摘いたしました国債償還計画、あるいは日米経済協力の名による外資導入につながっておる、これにつながっておるということを指摘いたしておきたいのであります。日米安保条約によって中国との国交の回復が閉ざされた結果、政府は、総理大臣の言うように、東南アジアに対する進出を画策をせざるを得ない立場にあります。その積極化が必然的にアメリカ資本の国内進出、これに伴う経済的な支配、その弊害を招こうとしているということを、私は申し上げているのであります。外資という日本の借金は将来の国民の負担になることにかんがみ、政府は慎重な方針と、政策についての再検討を行なってもらいたい、これを要求いたしまして、私は次の質問に移ることにいたします。  ガリオア、イロア、いわゆるアメリカの占領中における対日援助の事項についてであります。一九六〇年一月十九日、先ほどの岸・アイク共同声明で、総理大臣が、両国が相互に関心を有する経済問題に関して重要性を強調されたという点を私は指摘しました。この日米両国が相互に関心を有する経済問題の中で、総理はガリオア、イロアの返済問題について話し合った事実はないかどうか。国民はいわゆる対日援助と、こう理解しておりましたのに、今総額二十億ドル、七千億円をこえるガリオア、イロアを債務としてアメリカ側から返済を迫られておりますことは、これは一大ショックであります。まさに重大な関心を有する経済問題であります。アメリカにとっても重大な経済問題であろう。総理がもしそのとき話し合いがなかったとすれば、それは一体どういうわけか、これをお聞かせ願いたい。
  134. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私とアイゼンハワー大統領との会談の際に、今御指摘になりました問題は話し合っておりません。これは従来日米の間において、過去におきましていろいろと話し合いが行なわれたことは事実でございますが、今回の私との会談におきましては、これに触れた話し合いは一切いたしておりません。
  135. 平林剛

    ○平林剛君 なぜですか。
  136. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 特別にこちらから話す必要もありませんし、向こうからもそのことを話し出しておりませんので、話し合っておりません。
  137. 平林剛

    ○平林剛君 日本にとっては重大な経済問題です。それを今日まで、政府は、対日援助のすべてが債務とは言いませんが、アメリカの占領中における行為に対してただ感謝決議をするだけでは不十分だから、何らかの措置をとらなければならぬ。そこで一応債務と心得る、こういう態度で、アメリカとの折衝に臨んでおられたというのは、私ははなはだ疑問だと思う。国民理解しがたい点であります。憲法や財政法の定めによる国会の承認を受けることもなく、政府が勝手に債務と心得る。国民にとって重大な問題に対して独走しているのは、これは民主政治の建前からいっても許せないことだと思う。特に私が指摘いたしたいのは、対日援助に関する日米間の折衝を、従来の記録をいろいろ調べて検討してみたのでありますが、返済交渉の推移、日本側の態度も、話し合い内容もきわめて不明確である。常に時の情勢に応ずる政治的の取り扱いと、秘密外交的の傾向が強いのであります。一体これはどういうわけでありますか。  外務大臣にお尋ねをいたしますが、ガリオア、イロアに対してアメリカ側が初めて日本に返済の申し入れをした日時、これは一体いつですか。
  138. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ガリオア、イロアの最初のそういう問題につきましては、政府委員から答弁いたします。
  139. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 正式に折衝に入りましたのは、一九五四年でございます。
  140. 平林剛

    ○平林剛君 何月何日。
  141. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 五月でございます。
  142. 平林剛

    ○平林剛君 五月の何日だい。
  143. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 五月の十一日でございます。
  144. 平林剛

    ○平林剛君 だれから、どういうような形式をもってなされましたか。
  145. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 当時、東京で行なわれたものでございまして、東京の大使館の係官と、当方は外務省と大蔵省の係官との間で行なわれた記録が残っております。
  146. 平林剛

    ○平林剛君 ただいま申すように、きわめて、最初返済の申し入れの日時、それからその手続等についても不明確なもので、私が、時の情勢に応じた政治的な取り扱いと秘密外交的な取り扱いが多い、こういうことを指摘した。一例として申し上げた。外務大臣は何ともこれに答弁をなさいませんが、肯定なさいますか。
  147. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 最初交渉が係官同士で行なわれますことは、あり得ることでありまして、特に秘密外交という問題ではないと思います。
  148. 平林剛

    ○平林剛君 こんな重大な問題が、そのときに大きく報道されない、ないしょでやられるということを、私は秘密外交だ、こう言うのです。そうして政治的な取り扱いが過ぎる、こう言うのです。日本国民にとっては重大なショックです。そこで、国立国会図書館の調査立法考査局発行のレフアレンス百七号の調査資料によりますと、最初の返済申し入れがあったあと、昭和二十七年の末にもアメリカから申し入れがあった。これは昭和二十八年二月十九日付朝日新聞が報じているのであります。このとき政府は、債務という字句を避けて、占領中の援助の事項についても交渉に応じると返答したと言われるのでありますが、政府の記録によると、この報道は正しいですか。
  149. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 政府委員から御答弁させます。
  150. 森治樹

    政府委員(森治樹君) ただいま私どもの手元にあります記録によりますと、一九五四年に始まったのが最初交渉でございます。
  151. 平林剛

    ○平林剛君 私の質問にまっすぐ答えていないのです。
  152. 小林英三

    委員長小林英三君) アメリカ局長、平林君の先ほどの質疑に答えて下さい。
  153. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 私は当時の事情を記録によって申し上げるほかはないのでございますが、私どもの記録から申しますと、一九五四年五月十一日の会談、先ほど申し上げました会談から始まっております。
  154. 平林剛

    ○平林剛君 まだ答えていないですよ。委員長、注意して下さい。
  155. 小林英三

    委員長小林英三君) アメリカ局長、先ほどの平林君の質疑は……。質疑に対するはっきりした答弁をしてくれませんか。
  156. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 私、ちょっと記録の方を調べておりましたものですから、御質問をもう一回お願いしたいと思います。
  157. 平林剛

    ○平林剛君 委員長、時間外でいいですか。  昭和二十七年の末にもアメリカの返済の申し入れがあったと、昭和二十八年の二月十九日付の朝日新聞が報じている。これは先ほど御説明がありました一九五四年五月十一日より前のことであります。これは、この報道は正しいかどうか。また、そのとき政府は、現在のように債務と心得るという言葉を使わないで、債務という字句を避けて、占領中の援助の事項についても交渉に応ずると返答したと言われているのでありますが、政府の記録によりますと、この報道は正しいかどうかということであります。その前のやつはないならないと、こう言って下さい。
  158. 森治樹

    政府委員(森治樹君) その資料はございません。
  159. 平林剛

    ○平林剛君 その事実はあったかどうかですね。
  160. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 記録がございませんので、承知いたしておりません。
  161. 平林剛

    ○平林剛君 私、これは、あまり時間がありませんから、きわめて不明瞭で、もっと指摘をしたい点がありますけれども、次に移ります。  ただいまのような報道がされているにかかわらず、今日のように債務と心得ると変化せねばならなかった理由が、どっかにあるのですか。
  162. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ガリオア、イロアの問題は、このごろ突然起きた問題ではございません。非常なショックだとおっしゃいますけれども、ただいまの記録にもありますように、一九五四年の時分から、もうすでに起きております。過去の本会議あるいは委員会等を通じまして、しばしば政府の所信を申し上げております。政府といたしましては、債務——国の債務ということになれば、先ほど御指摘にもありましたように、国会の承認を経たものでないと、国の債務というわけにはいかない、これはもうはっきりしておると思います。そういう意味でございますが、このガリオア、イロア、この援助について国または国民が利益をしておることはこれはもうはっきりいたしておるわけであります。幾ら利益を受けたかということはまた別でございます。また、これについて感謝決議もいたしておりますし、国民としてこの援助についての感謝をしておることもこれはもうはっきりいたしておりますが、政府といたしましては、この問題について相手国から交渉がありますとその交渉につきましてもやはり誠意のある考え方をして参るということでございます。で、御指摘のように正式な国会の承認を経たものではございませんし、いわゆる債務ではない。従いまして、当初におきまして債務というような言葉を使わない、こういうような答弁はあったかと思いますが、私の記憶いたしておるところでは、債務と心得るというような表現をいたしたと思います。そういう考え方からその後が一貫して債務と心得るということを実は申しております。これはいわゆる正式の債務と、かように実は申しておるわけのものではございません。
  163. 平林剛

    ○平林剛君 私は、先ほどこの問題の取り扱いがきわめて政治的で秘密外交的だと申し上げましたけれども、現在、それでは政府がこの問題に関してアメリカと話し合っている原則的な立場はどこにありますか。債務と心得るという、そういう抽象的なことでなく、たとえば昨年の十月佐藤大蔵大臣がIMF年次総会に参加のために渡米したときに、債務額の総額は従来の交渉で確認された数字をすべて御破算として新たに検討する、その他各諸点が述べられておりましたけれども、これは今日、日本側における見解として受け取っていいかどうか。
  164. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 事柄の性質上、いわゆる秘密交渉というわけではございませんが、交渉の経過を一々発表するわけには参りません。その点は御了承をいただきたいと思います。しこうして、この問題については、私が大蔵大臣に就任いたしまして東京のアメリカ大使館からのこの問題の解決方を迫られたことは、一度ではございません。数回にわたってそういう話を持ち込まれております。また昨年私がアメリカに参ります際も、その事前にアメリカに出かけていくならばガリオア、イロアについての日本政府の考え方を十分意見をまとめて一つ話をしてもらいたいという申し入れを受けたことも確かであります。従来、政府は債務と心得ると、かような表現は使いましたが、わが国のいわゆる対外債務、ことに、この賠償の問題が全部の見通しの立たないうちはガリオア、イロアの問題についてはしばらく猶予をしてもらいたいということが骨子であったように思います。ところで、昨年になりますとベトナムの賠償についても大よその見当がついて参りました。従いまして、在来アメリカ政府に対して申しておったような条件はなくなったと、こういう段階でございます。ところで、この相手方の申し入れに対しても当方もこれにこたえるという段階になりますので、それではガリオア、エロアについても十分基礎的な資料から固めて、そうして話し合いを進めていこうということは実は申しております。しかし、昨年帰りまして以後具体的にまだ積極的な交渉は持っておりません。先ほども平林委員からもお話がありますように、総額が幾らであるとか、あるいはその全部が債務としておるものではないだろう、こういうようなお話のように私は伺ったのでございますが、政府自身にいたしましても、ガリオア、イロアの総額そのものを全額債務と心得て弁済を考える、こういう段階ではもちろんございません。そこで、その総額が一体幾らになっておるか、相当時期も古いことでございますので、十分資料等を突き合わせまして、そうして総額を確かめる、こういうことを実はいたしたい、かように考えておる状況でございます。ただいま過去の交渉は全部御破算にして新しく話をするということをしたらどうかというお尋ねがあったかと思いますが、ただいま申し上げましたように、私がアメリカ当局と話しましたところが、総額についてのまず基礎的な数字を確かめるごと、これを第一段にしようということで実は別れたのであります。そしてその後、全然折衝が進んでおらないというのが現状ございます。
  165. 平林剛

    ○平林剛君 私は占領中のアメリカの援助に感謝をしておらないというのではありません。鬼畜米英と、鬼の方がアメリカで畜生の方がイギリスと言っていた戦時時代から見ると、今日は日米経済協力という時代にもなっており、国民もこの点は感謝をしていると思います。しかし、私どもガリオア、イロアの経緯、性格その他の事情を判断すると政府が債務と心得る、現在心得ているのは大へんな誤まりでありまして、私はかつての対日援助は感謝はしておるけれどもアメリカとしても十分政治的な利益に役立っておるし、今日までの日米関係はその援助を補って余りあるものがある、こう考えておるのであります。で、昭和二十七年当時、政府が債務という言葉を避けて占領中の援助の事項についての交渉に応ずる。政府は公式には認めておらないのでありますが、天下の大新聞朝日新聞が報道しておるので全然間違いであるとは言わないのであります。そこで、こういう慎重な態度をとったと伝えられるように、私は債務と心得ると、国民理解しがたい表現を避けて、やめて、もう一度出発点に戻り、アメリカ側と話し合うべきではないか、こう思いますが、日米新時代を強調する総理大臣の御見解を承りたい。
  166. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この問題に関しましては、相当に今、最初にいつから話が始まったかという点に関しましても、われわれの方の外務省にある記録と、あるいは新聞に載った記事と違うじゃないかという御指摘もあるように、相当な長い経過をとってきている問題であります。しかしながら、まだ経過をとっておりますけれども、具体的な根本の考え方においてすべてが一致している状況ではございません。そこで、大蔵大臣がお答えを申し上げましたように、一体その援助の総額というものが幾らになっているかという点に関しましても、これは将来債務と心得て、そのうちどういうふうな分をどういうふうな方法で向こうに払うかというような問題を最後に結論を出す意味から申しましても、その基礎になっている数字そのものについて、従来の見方は、アメリカ側の見方と日本側の見方が必ずしも一致しておらないように私は聞いております。こういう問題について、最初の基礎になる数字から一ついろいろな今日においては証拠でもって証明することは困難であるものもあるかもしれませんけれども、できるだけ確実な証拠その他のものによりましてこの基礎になる金額というものを日米両国においてまず両方の意見を一致せしめることが、この問題を処理する上においてどうしても基礎になるわけであります。そういう意味において今日両方がいろいろな資料を集めて検討しているという段階であると思いまして、平林委員のお話のように、従来政府がこれを債務と心得るということ自体に関して、全然これを御破算にして本来それは何らそういうふうな債務と心得るべきものではなくして、これに対して国民は感謝するけれども、同時に米国もこれによって得ているところがあるから、差し引き何らこの関係においてはもう利益なしというふうに出直して考えろという御意見には、日本の従来の政府がずっととってきております、また、アメリカとの折衝のこれまでの経緯をとっているものを御破算にすることは適当でない、かように考えます。
  167. 平林剛

    ○平林剛君 次の問題に移ります。予算案の中身についての私の第一の疑問は、予算編成時において醜態を演じた予算編成とか、派閥のつかみ合いとか、不明朗なぶんどり合戦を批判されました政府与党と大蔵省の復活交渉において、三百億円をこえる経費、財源が、当初予定された大蔵省原案の予算の規模を全体として変えないで、政府予算案はでき上がったということであります。この差を一応私も検討してみましたが、予備費が二十億、国債費二十億、賠償等特殊債務処理費六十一億、雑件費五十二億九千八百万円、この程度の違いはわかるのでありますが、あとはわからぬのであります。よくいえば、予算編成期においての大蔵大臣の苦悩です。悪くいえば、財政の手品、魔術。この辺がよくわからない。この際その経緯、全貌を後学のために教えていただきたい。
  168. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 予算の編成にあたりましていろいろ苦心をすることでありますが、私も、大蔵大臣になりまする前には、予算の状況等をずっと見まして、よく最初の案通りにおさまるものだ、実は私も長いこと外にいるときは、さように考えておりました。二回予算を作ってみますと、なるほどと思うような点が実はございます。その一々と申されましても、これはやはり予算編成の技術的な面の問題でございますので、これは一つ大蔵当局におまかせを願って、そうしてでき上がりました予算案についての御批判を十分いただきたい、かように思います。御了承を得たいと思います。
  169. 平林剛

    ○平林剛君 国民が知りたいこと、それは予算の編成における混乱が国民の利益を中心に行なわれたものか、それとも、一部の派閥政争によって不明朗なぶんどり合戦があったかという点だと思うのであります。この疑惑が十分解明されないことはまことに遺憾でありますが、私の方で解明していくようにいたします。  外務大臣、最近の新聞報道によりますと、アメリカのゼネラル・エレクトリック社など戦前日本に投資していた米国企業が、戦後日本国が行なった連合国財産補償が十分でないとして、総額百七十億円の追加補償を日本政府要求し、近く東京で日米財産委員会が開かれるということでありますが、この事情を御説明願いたい。
  170. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 連合国の財産補償問題については、アメリカばかりではございません。今日まで懸案になっているものがございます。申し上げますれば、アメリカの十七件、イギリスが十件、フランスが一件、及びオーストラリアが一件、それぞれ財産委員会に付託しているわけでございますが、その総請求金額は百七十九億円でございます。
  171. 平林剛

    ○平林剛君 ただいまのアメリカ側の請求については、日本政府としてはすでに百十億円を補償し、株式もその後の増資までつけて返還したのでありますが、日本側として、サンフランシスコ平和条約に基づいて米国側の意向も入れて定めた連合国財産補償法で計算すれば、請求の追加補償は全く不要だと言われているが、政府の見解はいかがですか。
  172. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本としては、その通り財産委員会主張いたしております。
  173. 平林剛

    ○平林剛君 予算の中身について対照してお尋ねをいたします。賠償等特殊債務処理において、先ほどの手品の種ではないが、六十一億円と著しく減額のできた理由は何ですか。
  174. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 政府委員から詳細に説明させます。
  175. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) お説のように、いわゆる大蔵原案と称せられまする一閣議に最初提案をいたしましたものと、閣議で最終的にきまりましたものとの間には、六十一億の差がございます。これは二つの点からなっておるわけでございまして、一つは、ベトナム賠償におきまする金額の問題であります。当初におきましては、年平均額三十六億という金額を計上したわけでありますが、編成の過程におきましていろいろ、今後におきまする実施計画の進行の状況、そういうものを突き詰めまして、おおむね三分の一、十二億円程度で本年度の支払いベースにおきましては足りるのじゃないかという見当をつけまして、減少いたしました金額二十四億。あと、予備費といたしまして四十二億という金額を当初計画いたしたのでございまするが、これは連合国財産補償ないし各国からいまだ要求のございまするクレーム、こういうようなまだ未定の関係が相当多いのでございまして、これに対して一応考えたのでございまするが、その後におきまして、連合国財産補償の関係につきましては、財産管理委員会におきまして審議をいたす手続がだんだん進捗いたして、そういう関係もございましたので、今後におきまする財産委員会審議手続を待ち、それの処理を待ちまして処置をいたすということにいたしまして、予備費を五億円ということにいたしました。その両者の合計が六十一億でございます。
  176. 平林剛

    ○平林剛君 大蔵大臣、ただいまの御説明の通り、現在賠償等特殊債務処理特別会計の内訳を見ますと、初めは四十二億円、今度の予算では五億円予算が計上いたしてあるのであります。ところが、外務大臣の御説明によりますと、こういう必要はないというのが日本の態度だと言われるにかかわらず、初めは四十二億円組んでおいて、現在まだ五億円組んである。これはどういうわけでありますか。
  177. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まだ英国その他のクレームがございます。このクレームについて、扱い方がなかなかむずかしい問題がございますので、金額をたくさん入れておくこともいろいろに考えられますし、全然入れないことも、はっきりしているものにつきましては問題を起こしやすいのであります。ただ、私どもそういう点から見まして、一応五億程度は予定しておく必要があるだろうというので、これが組んであるのであります。この内容の、英国等のクレームにつきましては、事柄の性質上、双方で主張するものもございますので、一括してこの五億という予備費を計上しておる、かように御了承をいただきたいと思います。
  178. 平林剛

    ○平林剛君 日米財産委員会でどうなるか、まだ全部わからないのでしょう。わかってから予算を計上するという措置を、なぜおとりにならなかったのか。
  179. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどの自動車の関係のものなどにつきましては、過去に一度弁済したこともございますので、非常にはっきりいたしておりますが、なお在来から懸案でございまして、それが一応その事件そのものを否認できないようなものも実はあるのであります。そういう意味のものがここに計上されておるという次第でございます。
  180. 平林剛

    ○平林剛君 どういう事情があったとしても、百七十九億円の要求に対して日本側が五億円を計上するということの方が、かえって誤解を生ずることになりはしませんか。五億円の計上に私は疑問があると思います。
  181. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) アメリカのものは除いてございます。英国その他でございます。
  182. 平林剛

    ○平林剛君 それでは、疑問の第三点についておたずねをいたします。昭和三十五年度予算の特別家計予算総則第九条の2、これを見ますと、「外国為替資金に属する現金の補足のため昭和三十五年度において一時借入金を借り入れ、融通証券を発行し、又は国庫余裕金の繰替使用をしていることができる金額の最高額を五千五百億円と定める。」とあります。三十四年度と比較いたしますと、実に二千億円近くふえておるのであります。これはどういうわけでありますか。
  183. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 最近の貿易状況等から見まして、一応のアローアンス相当のものを予定して、その限度を定めたという実情であります。
  184. 平林剛

    ○平林剛君 昭和三十五年度予算の基礎になりました経済の見通しからいくと、国際収支の年度間実質収支というものははるかにこれより小さいのでありますが、経済企画庁長官、この間をちょっと説明をして下さい。
  185. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまお答えした通りであります。
  186. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 三十五年度の国際収支の計画では一億五千万ドルの実質収支というように計画しております。それを実際にいろいろと予算に計算するのは大蔵省のやることでございまして、私の方では一億五千万ドルという一応計画を立てております。
  187. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 一億五千万ドルということで申しておりますのは、いわゆる実質収支でありまして、これにユーザンス、外債、外銀ユーザンスというようなものを加えまするというと、合計いたしまして、国庫収支といたしましては、外貨収支におきまして国庫の収支ベースで四億二千万ドルという国庫収支の黒字となります。外貨収支が四億二千万ドル、国庫の関係において四億二千万ドル、これに対しまして外為証券の限度額といたしましては、フラクチュエーションのある幅を考えなければならない。これを外貨受け払いの額の二%、一億七千五百万ドル、こういう金を見まして、合計額が五億九千五百万ドル、これが外為証券を今回増額いたしました金額に該当いたすわけであります。
  188. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連。ただいまの御説明ではどうも了解がいかないのですがね。大体形式収支で四億四千万ドルでありますが、一挙に二千億円ワクを拡張するということは五億五千五百万ドル、約六億ドルふやすわけです。非常な大きな開きがあるわけです。その点であまりにワクが大き過ぎるのと、それから経済見通しの方とも食い違っておりますし、もしそういうことになれば、それは来年度の国際収支は、外貨保有は大体二十億ドル近くなるということになると思うのですが、二千億円というのはあまりに大き過ぎるのじゃないか。もしそうなると、また、これは自由化のテンポなんかとも影響してくると思うのです。そういう外貨手持ちのあまりに大きい計上を予想しているということになりますと、どうもあまりに過大過ぎると思いますが、この点どうなんですか。ワクが大きいにはこしたことはないでしょうが、あまりに大き過ぎます。
  189. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 木村委員の御指摘の点でございますが、御承知のように、外為証券の限度額は、年度間におきます最高の場合におきます限度でございます。従いまして、期間中におきまする若干のふれもございますし、あるいは急に外貨需要がふえるようになった場合におきましてまたあらためて補正予算で直すというわけにも簡単に参りません。従いまして、今申し上げましたような外貨の受け払い全体をにらみ合せまして、約二%程度のフラクチュエーション、二%というのは比較的低い金額でございますが、全体から見ましてこれだけの余裕を見まして限度のワクをとっておる。これはもちろん限度内で実行することでありますから、万一の場合も、と申しますか、やや極端にいきました場合におきましてもまかないがつくというような見当におきまして、今申し上げました一億七千五百万ドルという金額を加えまして、五億九千五百万ドル、こういう見方をいたしたわけであります。
  190. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじゃ簡単に伺いますが、三十五年度末の外貨保有高はどのくらいになる見込みなんですか。それが一つと、その場合、二千億円ワクを広げることによって、計算してみますと二十一億ドルくらいになると思うのです。二十一億ドルのこれを外為会計に置いておくことが適当かどうかという問題が起こってくると思う。この二つの点について伺いたい。これを一部日銀に持たせるとか、あるいは為替銀行や商社の手持ち外貨をふやす方に回すべきか、そういう問題がやはり出てくると思う。ですから、この二つの点を伺いたいと思います。
  191. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) 最初のお尋ねの三十五年度末の保有外貨が幾らになるかということでございますが、ただいまの計画で申しますと形式収支が四億四千万ドルの黒字でございますから、三月末がどうなるかはまだわかりませんが、現在は、大体十三億二千万ドルとなっておりますから、それに三月中の動きをプラスしたものの上に形式収支——外貨準備の増加とは、完全には同じではありませんが、大体四億四千万ドル程度ふえることになるかと思います。しかしながらこれは経済計画でございまして、実は国際収支のことは国際関係のいかんによりまして、ときどき変動いたします。ぴたっとその通り参りませんので、あるいはこれより黒字がふえて非常に外貨がたまるかもしれません。御承知通り外為会計につきましては、一定の値幅をもちまして外貨を売ってくれば無条件に買わなければならない、また無条件で売らなければならないという義務を持ております。従いまして、多少計画からズレまして一億七千五百万ドル、これは受け払いの二%程度でございますが、それくらいの余裕は見ておきませんと計画通りにぴたっといかないという点がございますので、ワクをふやしたわけでございます。  なお、日銀との関係でございますが、これは外貨をどういうふうに分けるかということでありますが、一応現在の建前は、ふえまする外貨は全部外為で買わなければならぬ。その原資のために、どうしても外為証券を出す必要があるというので余裕を見て組んである、こういうことでございます。
  192. 平林剛

    ○平林剛君 まあ、ただいまの問題については私は通常のとしならそれでもいいと思うのであります。しかし、今年度は国際収支をめぐってすこぶる微妙な一つの曲りかどになっている年なんです。このときに来年度の国際収支が大蔵省の予想のように五億五千五百万ドル黒字になって、それに見合う円資というものが市場に出されるというならば三十五年度の経済の姿というものは、経済企画庁の予想している姿とはずいぶんかけ離れた姿になるのじゃないかと考えられるのであります。まあ私はどうもこの二つの点について食い違いがあり、疑問を抱いているのであります。とにかく二千億円の債務が、証券が広がるということは、大金でありますからあまりむぞうさにやっていいものかどうかという点の心配をいたしておるのであります。しかし、時間がありませんから、この点はまた後日機会をあらためてお尋ねすることにいたしまして、最後に減税問題に関する質問を続けたいと思うのであります。  昭和三十五年度予算案は二千百五十億円をこえる税の自然増収を伊勢湾台風による災害復旧と国土保善に籍口して国民が期待、待望をしておった減税を怠ったという意味で私は国民生活を犠牲にした大資本家の擁護で土木予算の性格を一段と強めておるものだと思うのであります。このため国民の税負担の国民所得に対する割合は二〇・五%となりまして、本年度より〇・六%増加し、国民生活における税の重圧が加わりまして、政府の宣伝をした所得倍増論と矛盾した結果になっておるのであります。私は、そこで政府にお尋ねをいたしたいのでありますが、先般政府の新経済計画によりますと、昭和三十七年度末までに国民所得に対する税負担率を一八%程度まで下げると、軽減すると、こうはっきり約束をいたしておるのであります。私は、なぜ減税ができないかという言いわけ的な説明よりも、この新経済計画の税負担率の目標は一体今後どうなるのか、計画の目標を変える必要があるかないか、変えるか変えないか、こういう点をお尋ねいたしたいと思います。これは自民党の総裁の岸さんでもけっこうです。
  193. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま政府が長期経済計画、十カ年計画、これを経済審議会にかけて立案中でございます。この計画と十分にらみ合わして、最終版と申しますか、決定版を出すということにならないと見当はつかないと、かように思います。ところで、この税負担の問題は非常に大事な問題でありますし、国民全部が非常に深い関心を持っておる問題でございます。その意味政府も与党も、減税につきましては、すでに税制調査会などを設けて基本的な問題としてただいま検討しておる最中でございます。ことし減税のできなかったことは、毎回申し上げておりまするように、私どももまことに残念に思っております。今後の問題といたしましては、税制調査会の審議の結果ともにらみ会わした上で、三十六年度以降ぜひともこの減税を実施するという心組みでおります。総体の一八%だとか、あるいは二〇%であるとかいう問題につきましては、先ほど申しますように、国民所得倍増計画とにらみ合わして十分検討して参るつもりでございます。
  194. 平林剛

    ○平林剛君 私は、長期経済計画における税負担の目標を——まだわからないと言いますが、一応これをきめておるわけです。もしその通りであるとすれば、税負担率一八%にするため今後一体どの程度の規模の減税をしたらいいのか、こういう試算ができておるかどうか、もしこの試算ができてないとするならば、大蔵大臣がしばしば委員会その他で答弁をしておりますように、大体二〇%程度にすることをまあ目標に考えておると、こうおっしゃるなら、それならその二〇%にするために、昭和三十七年までに一体どの程度の規模の減税をすべきであるか、する必要があるか、こういうことを明らかにしていただきたいと思うのであります。私は、政府の経済計画の税負担率一八%まで下げるためには、一応約四千億円の減税をしなきゃならぬと、そういう説明を聞いて参ったのであります。この意味から、ことしもし減税をしないとすれば、今後相当大幅な減税をしなければ約束通りにいかない、こういうことを考えまして、その試算を聞きたいと思うのであります。
  195. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの国民負担の一八%という、この一八%を目標にいたしますならば、三十三年度から三十七年度までの間に、国、地方を通じて総額四千億の減税ということになるのでございます。これは現在の財政状態等から見まして、試算といいますか、勘定はできることでございますが、実際問題として、こういう数字を申し上げましても、今後の歳入なり歳出なりと十分にらみ合わせて考えなければならぬことでございますから、ただいまこの点については私は十分確信があるとは申し上げかねます。今までの委員会等を通じて大蔵大臣として申し上げております点は、二〇%程度の国民負担というものを持続するように努力して参りたいということを実は申し上げておりますが、それにいたしましても、いわゆる税の累進税率その他がございますから、二〇%という場合にどういう国民層が税を負担するか、こういう点がございますので、二〇%程度に考えますならば、低所得層というものは税の負担から非常に苦しい状態だということはまず考えなくていいんじゃないか。むしろ逆にその程度の歳入によりまして社会保障その他を進めて参りますならば、生活の改善等にも資するのではないか、かように私は考えております。
  196. 平林剛

    ○平林剛君 どうも説明が明確でなくて、減税と社会保障とをあわせてすりかえておるような感じがするのでありますが、次に移ります。  大蔵大臣は三十五年度は減税しないという弁明として、昭和三十六年度は減税をするとしばしば述べて参ったのでありますが、その減税の規模と構想についてはいまだ明らかでありません。税制調査会で検討するとぼかしておるだけであります。政治家が、特に岸内閣の重要閣僚である大蔵大臣が減税をする、こういう約束をした以上、その減税の構想と規模、可能性についてあらかじめ用意したものがなければならぬと思うのであります。そうでなければ、私は無責任発言だと思うのであります。あなたまかせ、税制調査会まかせ、こういうことになりまし出て、大蔵大臣としてまことに遺憾に存じますから、そういう責任回避的な答弁でなく——これは国民が断じて許しませんから、今後の減税の構想と可能性、これにつきまして明らかにしていただきたいと思うのであります。
  197. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 三十六年度以降減税をするという問題についてのお話でございますが、私どもが減税をする基本的方針を持っておるということは、これはもう国民理解していただいておると思います。問題は、しからば、来年度どういうような減税、どういう金額のものをやるかということでございますが、今までのお尋ねにいつも答えておりますように、ただいま三十五年度予算の御審議をいただいておる最中でありまして、三十六年度予算の内容をなすような事項につきましてまだ申し上げる段階じゃないということをいつもお答えいたしておるわけであります。従いまして、本日も同様のお答えをする以外に方法がございませんが、三十六年度になりまして私どもが考えますことは、非常に抽象的な一般的な問題でございますが、ただいまの景気を継続して参るということができますならば、必ず税の自然増収は相当見込み得る。これは歳入の面でふえてくる。同時に、特別な災害など起こらないならば、災害復旧費などはこれは減額が可能だ。また各省関係におきましても、経営費その他につきまして十分節約などを考えていただきますならば、相当の財源なども生み出すことができるのじゃないか。そういたしますと、この財源としてのプラスの分で今後当然支出が増加されるであろうところのものをまかないましても、なおかつ、相当の余裕をつかみ得るのじゃないかということが実は大まかに言えるのであります。もちろん新しい事業もいたさなければなりませんから全部あげて減税というわけのものではございませんが、十分事業の緊要性なりとにらみ合わせました上で、自然増収分の一部を減税に振り向けるという努力をしたいということを実は申しておるのでありまして、今日減税を確約したという程度にはもちろんなっておりません。これは毎回の委員会でお断わりいたしておる通りであります。しかし政府、与党ともこの減税問題については非常な熱意をもって今後の、三十六年度の予算編成の場合には、これを十分熱意をもって検討して参るということを実は申し上げている次第でございます。
  198. 平林剛

    ○平林剛君 ただいまの大蔵大臣の発言中に、減税は約束、確約したものでないと、こう言われますが、これは重大です。三十六年度以降減税するというのは、しばしば本会議、委員会であなたが説明をされてきた言葉でありますから、確約したわけでないなんというのは、これは訂正されては困ります。もう一度はっきりして下さい。
  199. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 三十六年度以降減税をしたいということははっきり申し上げております。で、いわゆる減税を確約するとなりますならば、ただいまお尋ねのありますように、規模は一体どうなる、どういう内容であるか、これは必ずそういうものがなければならぬはずでございます。そういう点についてはいつも、毎回申し上げておりますように、三十六年度の歳入なり歳出なり十分勘案してということを申し上げております。ただいまはそういう段階にございます。
  200. 平林剛

    ○平林剛君 あなたは、今日の段階では昭和三十六年度の見通し、どの程度のものが要るか要らないかということはわからないと、そういうことは今話ができないと、こう言いますが、私は大体昭和三十六年度以降、政府としてどのくらい財源が必要であるか、どの程度の歳出の増加があるだろうかということを一応試算をしてみた。私にできることが大蔵大臣にできないはずはない。減税をしたい、減税すると、そのために努力をするというならば、そういう計算もある程度ここでお話しになる必要があるんじゃないかと私は思うのであります。明年度以降の経済の成長なり、自然増収も見込むことができる。災害復旧も三・五・二の割合で来年は二に当たるから、そういう意味でできるということだけでは抽象的だ、これは三回も四回も質問者が立って尋ねてもそれだけしか答弁にならない。これではやはり国民としては安心ができない。それなら、ことしやってもらいたいとはね返って言わざるを得ないことになるわけであります。そこで、昭和三十六年度における歳出の増、相当の財源を必要とする——私も一応試算をしてみたのでありますけれども、一体、今日の段階で予測し得る歳出増というものがあるわけです。債務負担行為であるとか、それから国会やその他に義務を負うている当然の歳出増加、これは今でも予測し得る。念のために各省大臣にお尋ねをいたしたいと思うのであります。  建設大臣、災害復旧費の、よく大蔵大臣が三・五・二の割合の二だというその二の割合に相当する災害復旧費は幾らであるか。それから治山治水計画は今後十カ年一兆五百億円といわれ、そのうちで緊急を要する、緊急に実施する前期五カ年計画の三十六年度どうしても組まなければならないのは一体幾らであるか、その金額を御説明願いたいと思うのであります。
  201. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 全額を、数字を今すぐ即答はいたしかねますが、ただいまの御質問のいわゆる治水事業に対する三十六年度はどの程度の伸びがあるかという点につきましては、三十五年度の純国費の治水事業費が三百六十億程度になっておりますので、これがいわゆる一一・五程度の伸びでこの治水五カ年計画を十分進行し得ることとなると思います。それから災害につきましては、大体本年度の、いわゆる三十五年度の災害の予算よりも約二百億程度三十六年度は平常の災害であれば減るもの、かように思っておる次第であります。
  202. 平林剛

    ○平林剛君 厚生大臣の方はいかがですか。国民年金に必要な経費の長期見通し、どうしても三十六年度は必要であるという財源はどのくらいありますか。
  203. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 国民年金につきましては明年度、福祉年金が今年十カ月分でございますが、明年度は十二カ月分になります。それから拠出年金の二分の一国庫負担がございますので、合わせまして百六十億ちょっとでございます。
  204. 平林剛

    ○平林剛君 防衛長官にお尋ねいたします。本年度の国庫債務負担行為九百十八億、これは全部あなたの方の関係ではありませんが、ロッキードの生産、これをまあ三年ないし四年計画でやるにしても、昭和三十六年度は一体どのくらい必要になるか。このほか、第二次防衛計画に関する経費の資料はいただいてありますけれども、念のために三十六年度に必要な経費、これを明らかにして下さい。
  205. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) ロッキードの三十六年度に予算化するのは、今、予定中のは五十数億であります。防衛庁費全体といたしましては、人件費としてあるいは国庫債務負担行為の予算化するもの、増勢の平均年度化するもの、こういう点を勘案いたしまして、大体増勢費を除いて昭和三十六年度に百億ぐらいの増を見込んでおります。
  206. 平林剛

    ○平林剛君 まあ、私は時間がありませんからこれ以上お尋ねすることはやめますが、各省各大臣から……、所要経費の試算をいたしますと、かりに二千五百億円程度の自然増収があるといたしてましも、減税の規模というのはこの範囲内、しかも、いろいろな所要経費を引きますときわめて少額なものになってしまう。このほか国家公務員に対するベース・アップの財源あるいは科学技術の振興に要する経費、新規の政党としての政策、いろいろなものを織り込んでみますと、はなはだ、来年度は減税をすると約束をされましても、財源そのものから見ましてどうも大蔵大臣の言っていることがほんとうにでき得るのかどうか不安を覚えてくるのであります。だから私は政府が減税をすると約束をした以上は、この財源を生み出そうとする努力、これを具体的にあなたから説明をする、来年はこういうことをする、こういうようなことで財源を生み出ずということを積極的に説明をなさるのはこれはあなたとしての義務だと思うのであります。もう一度お答えを願いたい。
  207. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来お答えいたしておりますように、ただいま三十五年度の予算の審議をいただいておる最中でございます。従いまして、三十六年度についての詳細についての話はもちろんできません。また、具体的な詳細とまでいかなくても、具体的な話も私どもはただいま見込みだけの問題の際にさような点を申し上げることはいろいろ誤解を受ける、かように考えますので、これは差し控えたいと、かように考えております。で、ただこの際私が申し上げたいことは、政府並びに与党といたしましては、減税が国民の心から願っておることである、かように考えますので、あらゆる努力をいたしまして減税を実現するような努力を払っていきたい、かように申し上げる以外には、ただいまの段階ではそれ以上のお答えはできません。
  208. 平林剛

    ○平林剛君 減税といってもいろいろあるわけであります。で、税制調査会において検討すると大蔵大臣はしばしば述べておるのでありますが、現在進行中の調査会の討議の内容は、これは三年間の調査期間、税制の根本的問題を総合的に検討している、ここに重点が置かれている。特に重点を置いているのは、配当課税の問題とか、増資配当の免税、主として企業の体質改善、自己資本の充実、増大、こういう大企業、企業資本の立場に立つ検討が進められているのであります。私は、今日国民が待望し、要求をいたして、また、社会党が唱えておりますのは、むしろ社会政策的立場に立って、中小企業や労働者、つまり政府の税制で一番被害を受けている層に対する減税を求めているのであります。蔵相は、今日の税制調査会の傾向から考え、やはり私が主張するような線に沿って、昭和三十六年一体どのくらい減税したらいいか、減税できるかということを、あらためて諮問をなさる義務があると思うのであります、いかがですか。
  209. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま税制調査会で審議いたしておりますものは、過去におきましてしばしば御説明いたしておりますように、基本的には国民の負担が一体どうなっているかという問題がございます。それからいろいろ調査を始めて参りまして、企業課税のあり方、あるいは国と地方との税源の分配の問題、あるいは個人と法人との間の均衡がとれているかどうか、こういうような点を検討いたしているわけでございます。ただいま御指摘になりますような点は、それぞれ考えられることだと思います。もちろんこの調査会は、ただいま平林委員のお話になりますように、当初三年を目途として発足したものでございます。しかしながら、それぞれの段階におきまして、それぞれ結論の出ているものもございますから、そういうものから取り上げて、これを実施に移していくという考えでございます。しばしば言われていることでございますが、今回の三十五年度予算の組みかえ動機等を見ましても、一面減税もするが一面増税も考えられる、これは必ずしも増税があるじゃないかという意味で私は非難するわけではありせまん。おそらく累進税の問題なり、あるいは個人と法人との関係で、社会党は社会党の立場で増税並びに減税案を考えておられることだと思いますが、そういう点も今後の税制調査会の問題として、どういうように問題を進めて参りますか、私どもは総体としてやはり国民負担の率というものは相当高い、これだけは無視できない。ことに貧富の差がだんだん激しくなるおそれもある際でございますので、低所得層についての負担はできるだけこれを軽くしていくという、これはおそらく社会党も私どもも考えは同じであろうと思いますが一そういう意味で税制の新しいあり方なども考えていかなければならぬと考えております。また一面、関税等につきましても、貿易・為替の自由化等に対しまして、関税率等について全面的な再検討を行なっていくということを、もうすでに準備にかかっておりますが、そうしてこれなども自由化に備えて、保護すべき産業というようなものについては十分私ども、ガットには加入しておりますが、その範囲で許される措置は講じていくということは考えておりますから、全体のあり方をどうしたらいいかということは、いましばらく、調査の進行の結果、私どもが発表し得ることでございますから、この段階におきましては、しばらくその結論は、具体的なお答えは差し控えさせていただきたい、かようにお願いをいたします。
  210. 平林剛

    ○平林剛君 私の指摘いたしたい点は、政府は減税はすると約束はいたしておりますけれども、その中身は何か、中身はただいまお話しになったように、どちらかというと、企業あるいは資本の充実、こういう方面に力を加えられて、また、最近は自由化の傾向から、資本家側においてはなおいろいろな税の恩典を与えろとか、税制上のいろいろな政策を政府に追っておる。これは国民が考て、あるいは来年は減税をする、ことしはがまんしよう、こういうことをかりに言う人がありましても、来年度もまた失望するという結果に相なるんであります。今年度は減税をしない、減税をしておらないとこう言われますけれども、私に言わせると、政府はこの自然増収を国土保全だとか、あるいは災害復旧に回して、減税ができない、減税をしないと言いながら、一部には減税をしておるのであります。これは私に言わせると、一部の資本家あるいは大企業に対して、莫大な恩典として与えている租税特別措置法、これによる減税であります。一般の国民の生活費が非常に増大をするこの段階において、これには減税をしない、しかし、大企業、大法人に対しては相変わらずとして租税特別措置法の恩典を与え、この減税はなさっておる。これはまことに政府の今お話しになったことと矛盾をしておると思います。この機会に、昭和三十五年度における不当な減税額は幾らになるか、租税特別措置法の昭和三十五年度の減税額、この額を明らかにしていただきたいと思うのです。
  211. 小林英三

    委員長小林英三君) 平林君に申し上げますが、あなたの持ち時間は終了いたしましたから……、答弁を……。
  212. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 租税特別措置は本年も減税をしておると、こういう御指摘でございますが、まあ法制によりまして、その年々に一年限りの建前をしておりますので、それぞれ前年同様の措置をとります場合には、御指摘のように、いかにも一年限りでございますが、大体これを経過として申し上げますと、今までの扱い方から申しまして、相当の期間が予定されておるものでございます。そういう意味で、その本年に限って特別措置をとったという点は実は当たらないかと思います。それで、この資料は、お手元に配付した資料でございますが、千二百二十七億というようなものがことしも特別措置として減税をされておるわけでございます。お手元に資料が参ってございます。
  213. 平林剛

    ○平林剛君 最後にお尋ねしますか……
  214. 小林英三

    委員長小林英三君) 時間は終了いたしました。
  215. 平林剛

    ○平林剛君 一つだけ……。
  216. 小林英三

    委員長小林英三君) あと一点だけ許します。
  217. 平林剛

    ○平林剛君 私は、税の自然増収というものは、その性格からいいまして、国民に返還をするというのが原則でなければならぬと思うのであります。自然増収の一定割合を、たとえば剰余金の国債償還の財源に繰り入れる措置と同じように、これを減税に充てることにあらかじめ定めておいて、年末調整あるいは確定申告のとき、前年度の納税額をこえる分のその割合を減税控除するような措置を政府として研究する意思はないか、これが最後の質問であります。  お答えのある前に、最後の結論を申し上げておきます。先ほどお答えがありましたように、ことしは一般の国民に対しては一銭も減税をしない。そして来年度もただいまの大蔵大臣のお話では、はなはだ国民としてはあきれてものが言えないという実情に相なろうと思う。政府は、一たん三十六年度は減税をすると約束をした以上は、あくまでも、どんな犠牲を払っても国民に約束をした通り減税をしてもらわなければならぬ。特にことしは減税をしないと、こう言いますけれども、先ほどお話しのように、租税特別措置法では千二百二十七億円も大法人、大企業に対しては恩典を与えておる。私は、そういう意味でも、すみやかに社会党が唱えるように、生活費には課税をしないという原則に立って、社会政策的な立場に立つ減税を来年度実施をすべきである、いや来年度どころか、ことしの予算のやりくりをつけて、本年度その減税を実施すべきである、そういう財源の所要の措置はできる、こういうことを最後に申し上げたいと思うのであります。  以上、私は、四点にわたって、予算の内容あるいはガリオア、イロア、外資導入等について申し上げましたが、総じて言えることは、やはり今度の予算案は、ただいまの減税政策における政府の考えでもわかるように、大資本だけを優遇して、そして国民の生活を忘れている予算であるということを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思うのであります。
  218. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 別に答弁は求められなかったかと思いますが、私、不幸にして平林委員とはだいぶ考え方が違っております。ただいまの租税特別措置にいたしましても、なるほど大企業についての減税もございます。しかし同時に、農村その他に対する減税の措置もあるわけでございます。一がいに、これは大資本擁護だということは当たらないと思います。また、これが大資本擁護でありましても、産業が興ることによりまして、国民は必ず、勤労階級におきましてもその職場を得るごとにもなりますし、また、給与も適正に向上して参ることでございますので、全体として考えますと、この措置自身が非常に的はずれだということは、必ずしも私は賛成いたしかねます。いたしかねますが、それらの点は議論でございますから、別にそれ以上は申し上げません。ただ、一定の自然増収分を減税の形において国民に還元しろと、こういう御提案めいた御意見でございますが、私どもも、さような方法ができればまことにけっこうだと思います。しかし、御承知のように、国が事業を行ないます場合は、いわゆる国民負担によって事業を行なっていくのであります。その事業のうちには、国土保全のために必要な治山治水もございますし、あるいは、住宅の建設によりまして、あるいはスラム街をなくす、あるいはまた、社会保障を前進させていくとか、それぞれ必要な費用にその収入を使うわけであります。私は、直接減税の形において国民に還元するのも一つの方法だと思いますが、ただいま申し上げたような事業を遂行することによりまして、これを国民に還元するということも一つの方法ではないかと思います。しかし、これも、もちろん議論のあるところでありますが、私どもも、あえてこの主張をするつもりはございません。一番端的に、簡明にわかるように、その自然増収の分を減税としてはっきり計画することの方を、より国民は望むだろうと思います。そういう意味で、この自然増収について一部を減税に充てるというのは、これは過去におきましても、減税の際には必ずそういう措置をとって参っておるのでございます。今後におきましても、自然増収がありますれば、そのうちから必要な新規事業も計画するし、あるいは当然増もまかなっていくし、また余裕を作って、そして直接減税の方法をとって国民負担を軽減していくということにいたしたいと思います。しかし、何と申しましても、一定の率をあらかじめきめておくということは、財政収入の規模から申しましても、また、そのときの事業計画等から見ましても、一応二割とか五割とかきめるということは、非常に困難なことであり、そういうことは私どもとしてはしかねる、こういうことを最後に結論として申しまして、お答えといたします。
  219. 小林英三

    委員長小林英三君) 平林剛君の質疑は終了いたしました。
  220. 小林英三

    委員長小林英三君) 次は、青木一男君。
  221. 青木一男

    青木一男君 まず、首相と建設大臣にお尋ねいたします。  議会政治の尊重、国法の順守ということが政府の常に強調しておるところであり、私も、この問題は国政の運営上、きわめて大事なことだと思うのであるが、それには、まずもって政府みずから範をたれて国法の命ずるところを忠実にこれを実行し、国会と国民に対する公約は忠実にこれを果たすということでなければならないと思います。国土開発縦貫自動車道建設法は第二十六国会で衆議院、参議院の各党各派を通ずる総意をもって成立した法律であり、新しい日本の国作りの構想であるとして、国民から多大の期待を寄せられた法律であります。国土開発縦貫自動車道のうち、東京—大阪間を結ぶ中央自動車道は、小牧—吹田間がすでに工事に着手しておるのであるから、同建設法第三条の規定により、政府は東京—小牧間の路線決定の法案をすみやかに国会に提出する義務を負っておるのであります。昨年三月の本予算委員会において、当時の建設大臣は私の質問に対し、昭和三十四年十二月召集される通常国会にこの路線決定法案を提出すると言明し、岸首相もこれを裏書きされたのであります。その後、政府は同じ趣旨の言明を衆議院及び参議院において何回となく繰り返し、昨年秋の臨時国会でも、村上建設大臣は私の質問に対し、前任者の方針を踏襲して次期通常国会に必ず路線決定の法案を提出すると言明されました。すなわち、本国会に路線法案を提出することは、政府の明白な公約となっておるのであります。去る二月四日の国土開発縦貫自動車道建設審議会において、法案提出の時期についての委員質問に対し建設大臣は、今準備を進めておるから、本国会で法案が通過する余裕を見込んで必ず提出すると言明されました。私は、村上大臣のその言明を信頼して、提出日の追及を打ち切り、議事を進むべきことを提議したことは、建設大臣御記憶のことと思います。しかるに、その後、一カ月以上を経過して、いまだ法案の提出がない、法案提出の前提となっておる建設審議会の付議も行なわれておりません。国会を通過するには相当の期間を要することも明白であります。もし、かりに私どもの、村上建設大臣に寄せてきた信頼が裏切られるようなことが起こったとしたならば、国民は国会と国法の権威を疑い、政府に対する信頼を失うに至るのでありまして、その影響は一道路問題ではなくなるのであります。そこで、私は、まず岸首相から、政府みずから国法を守り、また、国会と国民に対する公約は必ず果たすという決意をお持ちかどうかを伺いたい。また、村上建設大臣からは、東京——小牧間路線決定法案提出のおくれた理由と、提出時期について、この際、明白なお答えを得たいと思います。
  222. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国法を守り公約を実現するということは、これは政府として当然考えておることでございまして、私どもその決意のもとに努力いたしております。ただ、今おあげになります路線決定がおくれておるということにつきましては、これはいろいろな事情——青木委員もいろいろその間の事情を察知だと思います——がありまして、今日までおくれておりますけれども、その事情につきましては、村上建設大臣からお答え申し上げますが、必ずこの法律の精神に基づいて、これに必要な、政府として提出すべき路線の決定につきましては、できるだけ早くこの結論を得て提案をいたすように努力をいたしたい。事情につきましては建設大臣より申し上げます。
  223. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) お答えいたします。中央道の路線決定につきましては、私も、臨時国会等におきまして青木委員より御指摘のような答弁をいたして参りました。本通常国会の劈頭に、これらの手配をいたしまして御審議を願うような段階にいたしたいと思って努力いたしましたが、御承知のように、審議会にかけるその前に、一応交通閣僚懇談会の了解を得なければ提案したあとで、いろいろとそこに問題が起きてくるおそれもなきにしもあらずと思いまして、実はその交通閣僚懇談会の段階に到達するまでの事務的な段階で、いろいろと関係各省が交渉して参りまして、ようやくそれも数回にわたっていろいろと事務的折衝した結果、明日午前九時に交通閣僚懇談会を開くという段階にまで至りましたので、ここで私どもはどこまでもこの法律によってきめられておりまする、いわゆる中央道の路線決定につきましては、あくまでも建設省としては明日これが法文化されるような努力をいたして参ります。  また、私といたしましては、たびたびお答え申し上げました私の言質については十分これを重んじております。従いまして、今国会には必ずこれが成案を見るに至るようにお取り計らいいたしたいと思いますが、何とぞ御了承のほどをお願いいたします。
  224. 青木一男

    青木一男君 会期は余すところ二カ月にすぎない今日の段階において、建設大臣から私の第二の質問であった法案提出の時期について明答を得なかったのを遺憾といたします。しかしながら、法案提出の決意のほどは了承いたしました。建設大臣は法案提出の遅延の理由として、交通関係閣僚協議会の関係を述べられたのであります。しかしこの協議会というのは、法令に基づくものでもなく、政府が任意に作った内部機構でありますから、その付議手続をもって法案提出遅延の理由とされることは見当違いであります。一体政府の公約であり、法律上の義務である路線法案の提出に反対する閣僚があるでありましょうか。私はその点を明らかにするため、まず岸首相に対し、村上建設大臣の法案提出の方針に賛成か反対かを伺いたい。ただいま、さきほどの御言明で一応了承しましたが、あらためて法案提出の方針についての御見解を伺いたいと思います。
  225. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私も閣議の際に、この法案の検討がおくれておる、提案がおくれておることにつきまして、これを促進をいたしておるような状況でございまして、私自身も必ず近く成案を得て提案をする考えております。
  226. 青木一男

    青木一男君 次に、経済企画庁長官にお尋ねします。  長官は路線法案提出の建設大臣のお考えに賛成か反対かをお伺いしたい。  なお、企画庁長官は所得倍増計画立案の政府責任者でありますが、先に自由民主党で立案した所得倍増計画におきましては、各方面に存在する国民所得と国民生活上の格差を是正し、国全体として均衡のある経済の発展をはかるという点に力を用いておるのであります。政府の案は、この党の基本政策に基づくものだと思われますが、この格差是正という構想にどの程度重きを置いて立案されるつもりであるかをお伺いしたい。  また、地域格差の是正方法としては、未開発地域に交通、運輸の便を与えるということが何よりも根本であると思う。この点からいたしますと、今路線を決定しようとしておる中央道の東京——小牧間は、本州中央部の未開発地域を通るものでありますから、地域格差是正に最も役立つかと思いますが、長官の見解を伺いたいと思います。
  227. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 中央道路の問題でありますが、ただいま建設大臣から申されました通り、交通関係の閣僚会議を明日開くことになりまして、大体そこで最後的な決定を見ることに相なると思うのであります。従いまして、明日開かれます交通関係の閣僚会議の一つ御決定を待っていただきたいと思うのであります。なお、この中央道路が地域的の所得の格差是正に役立たないかというお話がございましたが、これはわれわれはこの中央道路を開設することによって、この地域的の開発のために非常に貢献するということは青木委員のお考えと同じであります。
  228. 青木一男

    青木一男君 企画庁長官は、この中央道の法案に反対か賛成かということに対して御答弁がなかった。それに対してあらためて御答弁を願いたい。
  229. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) この中央道路を設けるということについては賛成であります。
  230. 青木一男

    青木一男君 次に、運輸大臣にお伺いします。私は、国土開発縦貫自動車道の調査、建設、管理というようなことについては、運輸省と建設省と共同責任を持っておったのではないかと思うのでありますが、事実はどうなっておるのでありましょうか。東京——小牧間の路線につきましても、運輸省は建設省とは別に独自の調査をされたはずであり、その一端であると思われる転換交通量を一万七百台と発表した由を新聞で承知しております。これは事実でありますかどうか。要するに、東京——小牧間の中央自動車道の価値をどう見ておられるか。従って、路線法案の提出に対し運輸大臣はいかなる態度をとられるかを伺いたいのであります。
  231. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 中央自動車道の予定路線の法律案につきましての問題は、今国会に提出すべく目下建設大臣と協議中でありまして、今大臣も申しましたように、明日の交通閣僚懇談会においてこの問題は大体見通しがつくと思うのであります。そこで今青木委員が申されました、運輸省といたしましてもこの高速自道車道の交通量の問題につきまして調査をいたしたのでありますが、これを使用する自動車の輸送量及び車両数の見通しにつきまして、昭和三十二年度から調査を行なってきておりましたが、一応の調査ができたので、先般発表した次第であります。その調査の結果は、中央自動車道による東京—神戸間の高速自動車道を使用する自動車の輸送量及び車両数につきましては、昭和四十二年度を例にとりますと、輸送量は貨物四十四億一千八百万トンキロ、旅客は二十七億一千五百万人キロでありまして、一日当たり全線平均の通行車両数は、トラックが一台当たり平均積載量を三・五トンとしますれば八千九百十七台、四トンとしますれば八千四十七台であります。なお、高速自動車道の開発により誘発されます輸送量及び沿道地域の開発によって生ずる輸送量の見通し等、東海道新幹線等が建設された場合の影響等につきましても、これは目下調査中でありまして、それはまだ明確にはいたしておりません。なお、建設省が中央道において大体出しました平均交通量は六千五百台でありますが、運輸省におきまして調査いたしました交通の量ですか、交通量の調査につきましては、今転換対象及び転換の割合等を求めるという点から建設省の数と私の方の数とが多少食い違っておるのでありますが、今申し上げたような観点に立ちまして、この法案は、総理も申されましたように、法案を出すことについては運輸大臣といたして賛成をしておるような次第であります。
  232. 青木一男

    青木一男君 関係閣僚としてさらに大蔵大臣と農林大臣からこの路線決定法案に賛成か反対かをお伺いしたい。もし反対の場合には理由をあわせて伺いたいと思います。
  233. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 賛成であります。
  234. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国土開発縦貫自動車道建設法、この法律の提案につきましては私どももその首唱者の一人であります。従いまして、調査が終了しました今日、路線決定、その段階に来ていると、かように私ども考えておりますが、交通関係閣僚懇談会を明日にも開くことでございますので、その閣僚懇談会において結論を出すことでございますから、しばらくお待ちをいただきたいと思います。(「大蔵大臣は賛成か反対かと聞いている」と呼ぶ者あり)その点は保留さしていただきます。
  235. 青木一男

    青木一男君 大蔵大臣の答弁には不満足でありますが、時間の関係上、次に進みます。  次に、道路の本質について建設大臣にお伺いします。近時有料道路というものができました結果でありましょうか、この道路は採算がとれるとかとれないとかいう話を聞くようになったのでありますが、元来、道路というものは、国道にせよ、地方道にせよ、一般公共の利便のために設け、また改良するものでありまして、目前の採算などという観念に出発するものではないと思うが、建設大臣の御所見を伺いたいと思います。
  236. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) お答えいたします。私も青木委員と同様な考えを持っております。少なくとも、天下の公道でありますから、これで料金をとるということは好ましからないことであります。しかしながら、今日国費をもってしてはどうしても、その要望する、地域の住民の要求するようにまんべんなくいくということはとうてい困難でありますので、どうしても、その需要度の高い、採算のとれるようなところを、あるいは観光とか、あるいはまた産業の開発のために、これを一応有料道路として踏み切っていくということも、これはまたやむを得ないことだろうと、かように思っております。原則的には、道路は私も青木委員と同じ考えを持っております。
  237. 青木一男

    青木一男君 次に、建設法の解釈について建設大臣にお尋ねいたします。国土開発縦貫自動車道建設法は、衆議院の議員立法であり、建設大臣も当時の提案者の一人でありますから、法律の趣旨はよく御存じだろうと思います。法第一条に、立法目的が示されており、それによりますと、「この法律は、国土の普遍的開発をはかり、画期的な産業の立地振興及び国民生活領域の拡大を期するとともに、産業発展の不可欠の基盤たる高速自動車交通網を新たに形成させるため、国土を縦貫する高速幹線自動車道を開設し、及びこれと関連して新都市及び新農村の建設等を促進することを目的とする。」とありまして、一大国策具現の立法であり、従って、この自動車道で採算上引き合うとかどうとかいうようなことを眼中に置いたものでないことは明白であると思うが、建設大臣はどう解釈されるか。従って、法律第三条に基づき建設線の予定路線の法案を国会に提出するに当たっても、目前の採算などということを条件とするものでないと解釈するが、建設大臣の御所見を伺いた  いと思います。
  238. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) この中央道路の原則論につきましては、全く青木委員と私は同じ考えを持っております。ただ、要するに、国の財政というようなものからはたしてこれが直ちに御希望のようなことになるかということになりますと、これはもう日本全国至るところ全くまだ町と町、あるいは大都市と大都市の間が、二級国道とかいうような名前はついておりますけれども、ただそれは名前のみで、自転車も通らないというようなところが全国各地に相当ありますので、これらとにらみ合わせながら、この中央道の持つ大きな使命につきましてはわれわれ十分これを了解できるのでありますが、さていよいよこれを着工するということになりますと、なかなか全国各地のあらゆるものとにらみ合わしてこれは考える必要があろうかと思います。従いまして、その重要度につきましては、十分、これは私はあなたの今御指摘になったことと同じように考えております。ただ、それから先は、要するに国の財政の力ということになると思いますので、この点については私にはちょっと、いつどうするとか、いつどうなるということは、これは今日の場合申し上げられる段階ではないと思います。
  239. 青木一男

    青木一男君 建設大臣の最後に言われたことは、別に私はお伺いしているわけじゃございません。  引き続き、建設大臣に、政治と行政との関係についお尋ねいたします。先ほど建設大臣は、法案提出遅延の理由として、交通関係閣僚懇談会のことを述べられたのであるが、しかし、関係閣僚は所管大臣の提案に御賛成の方が多いことが明白であります。事務当局の会議で一カ月も何がために日時を空費したのか、私にはわかりません。一体、事務当局の会議は、いかなることを審議したか。伝えられるところによると、路線法案提出の賛否について意見が一致しなかったために、何回も会議を開き、しかも、最終の幹事会においては結論が出なかったということである。そして賛否の各省別の色分けまでも新聞に出ておったのであります。東京——小牧間の路線法案の提出は、政府の法律上の義務であり、また今国会にそれを提案することは現内閣の公約であるにかかわらず、事務当局はいかなる権限に基づいてこれに反対することができるのでありますか。また、それが事務官の妥当な態度ということができるでありましょうか。世間には、親の心子知らずという言葉がありますが、親の心を知りつつ、なおこれに反対するのは許しがたきところであります。私は、これは明らかに事務当局の越権行為であり、下剋上の現われと思うが、それを放任して、いたずらに日時を空費したことは政府責任であります。私は、公務員の規律という見地から、また事務が政治を支配してはならない、政治は事務に対して常に優位を保たなければいけないという見地から、あえてこの点を建設大臣にお尋ねするものであります。
  240. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 交通閣僚懇談会に諮る、その以前の段階として、事務的にこれを折衝するということは、これはもう各省当然な行き方でありますが、しかし、事務当局の間でいろいろとこの問題について討議するということも、これはやむを得ないことであります。しかし、国家の最高意思決定をされた場合には、直ちにそれに予算でもつけるというようなことになるというような、非常に早急な考えをするものがあるとしたならば、それはやはりその際には相当考えるのじゃないか。まあそういうような点で、私もこれは新聞で見たのですが、もしも事務当局の間でいろいろと議が一致しないということがあったとすれば、そういうような点じゃなかろうかと思います。しかし、その点については、先ほど青木委員に私が御答弁申し上げましたようなことで、事務当局は、そういうことをいえば、ああそうですかということになると思うのです。で、私どもがそういう、いわゆる交通閣僚懇談会の議を経て、そして初めて審議会にかけるということも、これはやはり一つの法案を出す場合には、与党も、あるいは与党内においても、これに対していろいろな賛否を論議することは考えまして、それにはやはり何としても関係各省が一致していなければいけないと、そうしなければこの法案がスムーズに通過成立を見ることができないおそれがある、こう私も考えましたので、十分その法案を提出するまでには時間をかけますけれども、この法案が一たび提案されれば、私は関係各方面の了解がついておりますから、全くスムーズに、これが通過をみる、こういうつもりでおりますので、その前の、いわゆる準備の期間を少し長くいたしておりますが、先ほども申しましたように、これは事務的な段階で、たとえ何と、どういうふうに検討しようとも、結局明日の閣僚懇談会で、最終的に決定をみるのでありますから、まあ今までのことについては、あまりとやかく言わないように、一つお願いいたします。
  241. 青木一男

    青木一男君 私の質問の骨子である法律上の義務であり、また政府の国会、国民に対する公約に関することを、事務当局が反対の意見を言うという根拠を伺ったのですが、その点のお答えはなかった。しかし、建設大臣の苦衷はよくわかります。以後事務当局が勝手に、そういう政府を引っぱるというようなことのないように、今後注意を願いたいと思います。  さらに建設大臣にお尋ねしますが、建設省は、先に中央自動車道、東京——小牧間の調査結果を発表した。それによると、この路線は、技術的にさほど困難ではないが、建設費は三千二百億円もかかり、経済的にとうてい採算がとれないという印象を世間に与えているのであります。  元来、この調査報告は、路線決定案を審議会に付議する場合の参考資料とすべきものであるのに、その路線決定案を審議会に付議することを今もってせずに、参考資料の報告書だけを各方面に配布し、東京——小牧間の路線が採算がとれず、不適当であるというような宣伝に、これ努めておるのは、まことに不都合きめまる措置といわなければなりません。  交通関係閣僚協議会の下部機構たる事務官会議でも、建設省は、所要経費三千二百億円として路線法案の賛否を諮り、それがために、一部の省の反対を招いたと伝えられているのである。しかし、先ほど建設大臣も認められた通り、国土開発縦貫自動車道の建設は、工費の高とか採算いかんなどということを条件とするものでないから、建設省が路線法案と、所要経費の見積りとをからませて会議に諮ったことは、大きな間違いであります。路線決定の法案が通過したならば、法律に基づいて、さらに基礎調査を行ない、基本計画を定め、しかるのちに工事に着手する順序であって、そのときに予算や資金計画をきめればよいのであり、法案提出の今の段階で、所要資金の額まで問題にする必要がないのであります。  この点は、交通関係閣僚協議会の議題としても同様であって、建設大臣は、三千二百億円の建設費をからませて路線決定法案の賛否を諮るべきものではないと思うが、建設大臣の御所見を伺いたい。
  242. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 私も同様に考えております。そういう三千二百億円かかろうが、四千億円かかろうが、あの調査というものは、完全無欠なものでない。いろいろと私どもは検討を要することであろうと思います。  従いまして、あれよりずっと安く上がるんだということも、これも、私にはまだ了解することができません。従って、明日の閣僚懇談会に三千二百億円という事業費をもって、それによって、そうした問題を諮るということは絶対にいたしません。
  243. 青木一男

    青木一男君 ただいまの御答弁に満足します。  引き続き、建設大臣にお尋ねします。建設省の発表した東京—小牧間の建設費三千二百億円という見積りは、故意に過大の見積りを発表したものであって、関係各省に対し、この数字をのめと言っても、各省が同意しないのはむしろ当然であります。私の見るところをもってすると、千九百億円以上かかることはないと信じますが、建設費の五〇%以上を占めるトンネルの経費を過大に見積っております。建設省が、最近完成した東海道の宇津谷トンネルは、延長八百四十四メートルもあるのに、換気装置を設けていない。しかるに、東京1小牧の中央自動車道では、五百メートル以上のトンネル全部に換気装置をつけております。また、七キロ級の長大トンネルのキロ当たり工事費を十六億円と計算しておりますが、国鉄の長大トンネルである新丹那トンネルの工事費は、キロ当たり五億円弱であり、これに換気のための断面増と換気、照明、通信等の一切の施設費を合計しても、キロ当たり十一億円以上に上るはずはないのであります。またむやみに長大橋梁をかけることにしているのは、路線選定の拙劣によるか、あるいは工事費を故意に水増ししたものであります。大河川の河口を通る東海案の場合にも、百メートル以上の長大橋の総延長は八キロであるのに、同じ河川の上流を通る中央自動車道において、長大橋の総延長が、その二倍半の二十キロに上るということは、いかにも非常識きわまる話であります。極端な例として申し上げますと、富士川の支流の早川の雨畑川のさらにその支流の稲又川に、長さ五百六十メートル、高さ百六十メートル、これは丸ビルの五倍以上の高さであります。その長大橋をかけるというに至っては、今や専門家の笑い話の種となっているのであります。この個所は、少し設計を変えますれば、百メートルか白五十メートル程度の橋で、十分間に貧うということであります。ことに私が不思議に思うのは、長大トンネル長大橋梁を含め、全線四車線の計画で経費を見積ったという点であります。中央自動車道の建設については、一般に四車線計画でありますが、長大トンネルと長大橋梁については、経費の関係上、当分二車線とし、将来交通が増加し、必要となったときに四車線に改めるというのが、当初からの一貫した方針であって、現に今工事中の小牧—吹田間については、この方針で二車線として実施計画も予算も立てられているのである。しかるに、何ゆえに東京—小牧間に限って、当初から全線四車線の計画にしたのでありましょうか。もしこれを小牧—吹田間と同じように、長大トンネル、長大橋梁を二車線に改めたならば、それだけで建設費は自動的に九百億円増額されるのであります。さらに路線選定を慎重に行ない、不必要なぜいたくな設計を改めると、総工費は千九百億円以下となるのであります。  建設省は何ゆえにこんな過大な見積りを公表したのか。ことに長大トンネル、長大橋梁を全部四車線として計算した根拠は、どこにあるのであるか。区間に、この中央自動車道の東京——小牧間の不経済線であるという印象を与えるがために、わざわざこういう見積りをしたのではないかという説もあります。私は、この四車線、二車線の関係だけでよろしゅうございますから、運輸大臣から理由を伺いたいと思います。
  244. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 四車線にいたしましたのは、どうせ作るんですから、これを要するに百キロなら百キロというだけのスピードの出るものにしなければならないので、どうしても一応一ぺんにやって、再び手をかけないようにという恒久的なことを考えてやっておることでありまして、それは、これを二車線にしても、その半分になるというものじゃないと思います。  従って、それは青木委員の御希望ならばどういうふうにでもいたします。ただいまの青木先生の御質問の中に、早川の支流の雨畑橋梁が非常に長いということでありますが、これは橋梁は、川の長さじゃないと思います。要するに、その盆地を、それを橋梁でやる、その方が、工事が楽だ、あるいは、要するに橋梁を長くすれば、すぐ山に入るからトンネルが短くなる。橋梁を短くしていけば、トンネルの方が長くなって、また工費がかかる。  こういうような点もいろいろあって、今のあなたの資料は、どこであなたが勉強されたか知りませんが、今の日本には、要するに一万分以下の地図がない。建設省では、航空測量によって、建設省も直接測量したものではございません。この航空写真を五千分の一の地図に引き延ばして、そしてそれで設計したのでありますから、これも私は先ほど申しましたように、絶対に間違いがないとは言えない。しかしまああなたの地図は少なくとも一万分ぐらいのものだろうと思います。そういうようなことで、そういう点について幾らかの違いがあると思いますが、しかし故意に事業費を高くしてどうというようなことはないと思います。これは建設省の道路局の名誉のためにも、私は道路局は絶対にでたらめなことはしていないということをあなたに申し上げます。そうしてもしも御不審な点がありましたら、御遠慮なく一つ専門家同士の話し合いをしていただきたい。そういう意図は毛頭持っておりませんから、その点について一つ十分御理解願いたいと思います。
  245. 青木一男

    青木一男君 稲又川の橋の問題は、またあらためて適当の機会にお目にかかって申し上げます。ただ私は、建設大臣は専門家であると思いますが、トンネルの問題については理解がないということを私は思います。ついでに作れば安く作れる、やはり初めから四車線を作った方がいいというお話ですが、これは建設大臣の非常な誤解です。四車線を作る場合にも、トンネルを二本作るのです、必ず。しかも別なところに作るのです。それでございますから、両方一緒に作れば安くできるなんていう根拠は全然ないのです。この点は建設大臣の非常な誤解でございますから、どうか部下から十分お聞きいただきたい。しかしこの点の論争は、私、時間がないからこれ以上いたしません。  最後は、建設大臣にお尋ねいたします。建設省は、その調査報告書において、所要経費を三千二百億円とし、転換交通量を六千五百台とし、この二つを前提として、中央自動車道には採算がとれないという結論を出しております。この道路は採算などという見地から論議すべきでないことは前述の通りでありますが、かりにこの問題を取り上げるとしても、私はりっぱに採算のとれる経済線であると考えます。建設省は、転換交通量を六千五百台と予想しておるのに、運輸省は最近転換交通量を一万七十台と発表しております。民間のある権威筋では九千五百台と発表し、運輸省の計算に近いのであります。そのほかに開発交通量の問題がある。建設省はこれを無視しておりますが、某研究所調査によれば、開発交通量は千五百台に及ぶということであります。もし建設費見積りを千九百億円と改め、転換交通量を一万台、開発交通量を千五百台としたならば、建設省当局に計算させても、中央自動車道、東京——小牧間はりっぱに採算がとれる結論となるのであります。
  246. 小林英三

    委員長小林英三君) 青木君、発言中でありますが、時間がなくなりました。
  247. 青木一男

    青木一男君 もう一点、そうしてこれは長大トンネル、長大橋梁、二車線の計画でありますが、将来これを四車線に改めることは、交通輻輳して二車線で間に合わないときでありますから、四車線としても採算のとれるときであることはきわめて明白であります。右の開発交通量を計算した研究所は、建設省が中央自動車道の経済効果の調査を委嘱した権威ある調査機関であります。すでに建設省に対し、報告書を提出した由に聞いておりますが、そうしてその結論は、開発の経済効果の予想外に多大であることを裏書きしていると伝えられております。中央自動車道案にとって、不利と思われる資料は建設省がどしどし発表し、利用しているのに、かような有利と思われる資料の公表を押えているのは、公正の態度ではありません。建設省はすみやかにこの経済効果の調査結果を公表し、少なくも建設審議会の委員には配付すべきであると思うが、建設大臣の御所見を伺いたいと思います。
  248. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) ただいまの自動車の台数等につきましては、建設省としても、建設省だけで勝手にやったのではないので、早稲田大学のその方の研究所に頼んで、そうして十分調査したわけであります。しかしその後建設省と運輸省との間に、いささかの違いがあるので、両省が相談して、まあその程度だろうというのが、七千台ということになったそうであります。しかしそういうことは別として、今着工の段階やら、設計の段階じゃないので、私は青木先生の今この工事に従ってその路線決定をやらないというようなことは、先生のあれであろうと思います。その点につきましては十分明日一つ、だれが何と言おうが、この法案を提出できるような運びにいたしますので、どうぞ一つ、あとの点はこれは今後の問題でありますから、私ども二車線、四車線についても十分研究して、御趣旨に沿っていくところがあれば、その場合は、十分御思意は尊重して参りたいと思います。
  249. 青木一男

    青木一男君 これでおしまいですが、今村上大臣のおっしゃったことについて一言だけ……。
  250. 小林英三

    委員長小林英三君) 時間がありませんから、簡単にしてください。
  251. 青木一男

    青木一男君 大臣の誠意のほどはわかりました。ただ大臣は御存じないことが多いのです。たとえばあの調査は、建設省がやられたほか、民間の機関にも依頼しておりますが、その機関というのは、皆中央道反対の従来主張をいたしておった人にお頼みになっているということを大臣は御存じない。それから最後に、この経済効果を調査した機関のこの報告計は、少なくもこの審議会の委員にはなるべく早くお配りいただきたいという希望を重ねて申し上げまして、私の質問を終わります。
  252. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林孝平君。
  253. 小林孝平

    小林孝平君 私は本日は貿易自由化の問題について、政府のお考えをお尋ねしたいと思っておりましたのですが、当委員会において、数日来の安保条約に関する論議を聞いておりましたら、非常に政府の見解があいまいである、どうしても明確にしておかなければならないと思いまして、その問題を最初にやろうと今朝来考えておりましたところ、その後さらにこの竹島の問題に関連しまして政府の見解がきわめてあいまいである。そこでこのまま放置するわけには参りませんので、その問題からやりたいと存じます。非常に唐突でございますので、私も準備不十分で、十分政府の所信を伺うことができるかどうかわかりませんので、政府においても親切丁寧に具体的に明確にお答えを願いたいと思う。  そこで、先ほど藤山外務大臣から、この午前中の竹島問題について御答弁がありましたけれども委員長、この速記録の写しは委員に配ってありましょうか。
  254. 小林英三

    委員長小林英三君) まだ配ってありません。
  255. 小林孝平

    小林孝平君 これがないと、ほんとうはよくわかりませんのですが。
  256. 小林英三

    委員長小林英三君) それは今ようやくできたところですから。
  257. 小林孝平

    小林孝平君 これを私が読んでみますと、私だけ読んだのでは困りますけれども、読んでみますと、外務大臣は何をおっしゃっておるのか、はなはだ失礼でございますけれども、わかりません。ちょっとこれを政府委員から読んでいただきたいと思う、だれか、ちょっと。
  258. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君、自分でお読み下さい。
  259. 小林孝平

    小林孝平君 時間があれですから……。(「政府が説明したのだから、繰り返して読めばいいじゃないか、もう一度」と呼ぶ者あり)それならば、先ほどの外務大臣の御答弁がわかりませんから、もう一回お願いいたします。
  260. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 竹島問題は、すでに八年前に起こった問題でありまして、自来日本は一貫して平和的にこれを解決しようと交渉してきた次第でございます。すなわち日本自身が新条約第五条の規定によるような行動をとるというような問題ではございません。従って米国が第五条に基づいた行動をとらなくてはならないという状態にはならないと思います。第五条にいいますことは、第五条の趣旨から見て、武力攻撃に対する対抗処置であって、対外交渉になっておりまするこれらの問題から——面から考えますと、こういうような外交交渉になっておりますこういうものが、現在あっせんするというような措置を意味するものではないと思うのです、五条がです。もちろん竹島問題につきまして日米間で協議するということがあることは、これは当然のことでございます。
  261. 小林孝平

    小林孝平君 今外務大臣が非常に重要なところを言いよどんでおられましたけれども、先ほどのお読みになったのは、外交交渉を含んでおるとか、側面でやるというようなことと、こういうことになっておるのです。そこで側面でやるというのはどういうことなのか。
  262. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 外交交渉その他わきからという意味でございます。第五条の、そういうことだと思います。
  263. 小林孝平

    小林孝平君 これは第五条のあれとかというのと違います。外交交渉が側面でやる仕事であるかどうか。そういう考え方だから日本外交がことごとに停頓をしているのではないかと、私はこの言葉一つでも非常に重要な問題だと思う。一体この側面でやるという意味は、もう少し具体的にお答え願いたいと思います。
  264. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) もう一度申し上げますが、第五条にいう行動は同条の趣旨から見て武力攻撃に対する対抗処置であって、外交交渉ないしこれを側面からあっせんするというような措置を意味するものではないのであります。
  265. 小林孝平

    小林孝平君 第五条にいうところのこの行動というのは、武力行動であるというようなことはいつ政府はおきめになったのですか。一度もそういうことは国会で御説明になっておりません。しかもその行動ということは、英文の方で見ますと、アクトということになっておりますけれども、私らのはなはだ乏しい英語の理解力をもってしても、アクトというのが武力行動であるというようなことは初めて知りました。そこでそういうことはアメリカといつ交渉してそういうことになったのか、そういうことはいつ国際法上そういう決定になった、具体的に御説明を願います。
  266. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 第五条に明らかでありますように、いずれか一方に対する武力攻撃が自国の平和及び安全を危うくするものであることを認めた場合には、こういう規定によってこういう制限をすると、こういうことになっております。
  267. 小林孝平

    小林孝平君 そういう私がお尋ねしたことでないことをおっしゃると、私がまた要らないことを言わなければならない。私が聞いているのは、そんなことじゃないのです。それはもう解決しているのです。政府ははっきり武力行動があっても、これに対応してはいろいろな手段を講ずるということは、きのうから明確に言われた。自衛権を発動するけれども、その自衛権の内容というものは、いろいろなものを含むということは明確なんですから。われわれの言っているのは、この五条の行動というのは、アクトというのは、これは武力行動によるものである、こういうことをいつおきめになったのか。一体国会の論議の、いっそういうことをおきめになった、またアメリカとそういうことはすでにお約束になっておるのか、そういう協議が具体的に行なわれたら、これをお知らせ願いたいと思います。
  268. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほどから申しておりますところで尽きておると思うのでありまするが、今英文等も御引用になりましたので、そういう点についての解釈について条約局長から説明をいたさせます。
  269. 小林孝平

    小林孝平君 あとから間違わないようにゆっくり考えて答弁して下さい。
  270. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) お答え申し上げます。第五条はいずれか一方に対する武力攻撃が行なわれた場合でございます。そうしてこの武力攻撃を、自国の平和及び安全を危うくするものと認めまして、この共通の危険に対処する、すなわち武力攻撃がございましたときに、これに対処する行動でございます。武力攻撃が行なわれている相手方に対して対処する行動でございますから、これは武力行使、これが主体となるものである、このように考えております。
  271. 小林孝平

    小林孝平君 そういうあなた答弁しちゃだめですよ。あなたの先ほどの午前中の答弁は、この行動か、武力行動日本が起こせば、この五条は全部適用になると、こういうふうにお話になっているのです。今の説明全然違うじゃないですか。だから具体的に、問題にそういうことじゃないのですよ。第五条の適用はこれはできると、それで、これはわれわれが、日本武力行動を起こせば、アメリカ武力行動を起こす、こういうことをおっしゃったけれども、この行動というものは武力行動であるかどうかということを聞いているのです。いつアメリカとそういう約束をしました、この交渉の途中に、この行動というのは武力行動であるというようなことを相談がありましたか。
  272. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) もう一ぺん補足をさしていただきます。これは武力攻撃が行なわれているわけでございますから、そうしてこれに対処する行動でございます。従いまして、ここで考えられていますのは、武力行動を主体とする行動、われわれがやはりこれに対して武力行使する、すなわち武力攻撃が行なわれていますから、これに対処する行動でございますから、私どもはこの武力行使がこの主体になるものである、このように考えております。ただ武力行使と申しますそれだけではございません。それだけではございません。ただここで外交交渉とか、そのようなあっせんとか、そういうことはこの第五条の範囲としてわれわれは考えているわけではない。これはこの第五条の文体から当然私は了解されることである、このように考えます。
  273. 小林孝平

    小林孝平君 あなたが考えたってだめですよ。アメリカとこれは両方の条約じゃないですか。アメリカもそういうふうに理解していなければだめですよ。あなたはいつ、条約局長がそういうふうに考えておりますと言ったって、考えているだけならだれでも考えられます。私はいろいろのことが申し上げられます。外務省の大先輩である西春彦氏が、これは総理大臣がお読みになった書類でありますが、その中に——考え方ならいろいろありますよ。単純に日本領土に対して攻撃が行なわれた場合、日本がとるべき対抗置措は、もっぱら日本独自の考えで決定されるべきものであって、ある場合には——対抗措置ですよ、武力攻撃に対する対抗措置としては、ある場合には日本武力反撃をしないで、外交的な交渉、その他の外交努力によって事態の平和的解決を目ざすかもしれない。こういうふうにあるじゃありませんか。こういうあなた方の大先輩である西さんもちゃんと武力攻撃に対する対抗措置は平和的の交渉があるということをおっしゃっておるじゃありませんか。一条約局長がそんなことを言ったってだめですよ。藤山さんどうなんです、アメリカとこれは相談されましたか。私はこの問題が片づかなければ、次々といろいろ問題があるのだけれども、全部片づきませんから、明確な、いつの幾日国会でこういう答弁をして皆が了解した、あるいは少なくとも報告をした、しないけれども、あるいは日米両国はこういう了解に達した、あるいは今までの例から見て、アクトというのは武力行動である、あるいは日本の文字の上でアクトという、行動というのは武力行動であるということを明確にされなければだめですよ。
  274. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この第五条の問題は、もう条約文自身に明確にされておるのでありまして、これに疑義がはさまれる余地はほとんど私はないと思っております。
  275. 小林孝平

    小林孝平君 そんなことをあなたはおっしゃいません。国会の速記録をみな読んであなたに説明をしなければならぬので、これは何時間たっても困る。日本は——あなたは何べんも言っております。武力攻撃があったときは日本は自衛権を発動する、個別的自衛権を発動する、こう言っております。この自衛権というのは国際法上、武力攻撃、武力反撃もあるし、その他のいろいろのあれがあります。国際法上帆走しているところの、私はしろうとでございますからね、そのいろいろのことはわかりませんけれども、少なくとも常識的な、外務大臣もまあ私と大差ないでしょうが、自衛権の発動というのは、軍事力による場合だけではないのですよ。自衛権の発動は国際法にいうところの群民蜂起のような形で民衆が外敵に抵抗することを国家が命令するような場合も含みます。警察が行動するような場合も自衛権発動の中に含みます。さらにこの中には、先ほどの西さんの御説のように外交交渉も含むわけです。こんな明かなことを、あなたたちはそういうふうに言いくるめようとしても、それはだめですよ。外務大臣、それはだめですよ。あなたは押し問答しておれば時間がくると思って、そういうことをやられているが、外務省の戦法はそうだということはわかっておりますから、私はもうあなたと応答しませんから、はっきり私の要求したことを、あなたたちはそういう作戦を立てていることはちゃんと知っている。そんな手に乗らない。
  276. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この解釈につきましては疑義がないところでありまして、ただ小林委員の言われますように、自衛権の中に外交交渉、普通の意味において自衛権というものの中に外交交渉が入るということではないわけで、外交交渉外交交渉で、当然、起こりましたときに、自分の判断でもってこの外交交渉を片づけていくということを考えますことは、自由でもあり、当然でもあるわけであります。そういう意味において私どもは考えているわけで、この五条の意味におきます解釈につきましてはいささかも懸念がないと、今まで申し上げたことと違っておらないのであります。
  277. 小林孝平

    小林孝平君 委員長に申し上げます。私が質問していることに答弁が少しもない。具体的にアメリカとどういう話し合いをしており、このアクトという言葉で、それがなければならぬ。条約局長、そう思います。あるいは疑義がないのです——疑義だらけじゃないですか、あなたのお話は。それで質問せいと言ったって、それはできませんよ。私は明確に私がお尋ねしたことに御答弁がなければいたしません。
  278. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この解釈についてアメリカ側と今のように、これには外交交渉、自衛権の中には外交交渉が含まれるかというような点については、あまりにも明快でありますから、私ども特に協議したことはございません。
  279. 秋山長造

    ○秋山長造君 議事進行について。小林委員質問されていることはきわめて簡単明瞭なことなんです。アクトということについて、日米交渉の過程の中でどういう話し合いをし、また、双方でアクトということを具体的にどういうように解釈することにしたのか、こういうことを聞いているのですから、それについて御答弁を願ったら先へ進むのじゃないでしょうか。
  280. 小林英三

  281. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) アクトの問題につきましては条約局長から説明させます。
  282. 小林孝平

    小林孝平君 条約局長、ちょっと。私はすぐ答弁いただかなくてもいいから、よく考えて、あとから補足などしないでもいいような御答弁をいただきたいです。
  283. 小林英三

  284. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 「共通の危険に対処する」ために行動するとございます。これは先ほど申し上げましたように、それが当然そのように私ども了解いたしておりまして、意見の相違はないと思いますから、そのようなことを打ち合わせる必要もございませんし、打ち合わせたこともございません。
  285. 永岡光治

    ○永岡光治君 関連。今の条約局長答弁で、「共通の危険に対処する」行動というのは、武力行動以外にないということが私たちにはわからない。待ってくれという交渉行動もあり得るわけですね。武力のみが行動ではないと思う。だからその点を小林委員は聞いておる。私たちもその点を疑問に思っておる。だから、行動というのは武力行動だけだという限定をするどこにもそういう根拠がないということです。
  286. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) お答え申し上げます。ただいま武力行動武力行使のみであるというふうに私は解しません。武力行使を主体といたすものでございます。しかし、武力行使と申しますのは、武器を使いますところの武力行使以外に、やはりホース、力をもって行動する、圧迫と申しますか、そういう行動を考えているわけでございます。従いまして、外交交渉とか平和交渉という問題はこの第五条の範囲ではない、このようにお答えいたします。
  287. 小林孝平

    小林孝平君 私はそういうあなたたちが、そう思いますということじゃ通用しないのですから、あなたたち外務省の大先輩である西さんがはっきりと武力攻撃に対する対抗措置はこの武力反撃だけではなくて、交渉その他、こうあなた、外務省の西さんが言われるなら、私はこれはしろうと考えかと思うけれども、西さんのようなりっぱな方が言われるのだから、これはあなたたち後輩は、(笑声)そんな偉そうな顔をしなくても、ちょっと電話で聞いてごらんなさい。私は質問待ちますよ。あなた、こういう権威ある人が言われておる。これは西さんだけじゃない。私、今昼から、さっきあってから私が思い出して、確かにどこかで読んだことがあると思って図書館で見てきたのですが、だからほんとうはこの質問は私はあすに延ばしていただきたい。そうすれば私も研究をして十分の質疑が行なわれると思ったのですけれども委員長はきょうやれとおっしゃるから、協力してやっておるのだから、あなたたちもそのつもりで、なに時間がくればいいというような、そういう卑怯なことではだめですよ。(辻政信君「関連」と述ぶ)
  288. 小林英三

    委員長小林英三君) 今の問題の関連ですか。
  289. 辻政信

    ○辻政信君 外務大臣にお伺いしますが、この武力攻撃という字句の解釈が非常に不明瞭であります。たとえば領空におきましてソ連の飛行機とアメリカの戦闘機が遭遇した。偶然にどこか知らぬが、たまを撃ってきて一人けがをしたような場合も武力攻撃です。原爆でもってアメリカの基地をたたく場合にも武力攻撃、武力行為という中には一人の人がけがをすることから、原爆で全部たたかれるということまでも含めておるのです。そうなりますと、一人けがをしただけで日本が宣戦布告をして軍事行動をすぐとるというのは不謹慎です。その武力攻撃の程度によってわれわれは行動しなければなりません。これに対処する行動というものは、外交折衝もあるだろうし、国連提訴もあるだろうし、あるいは本格的に宣戦布告による参戦ということもあり得る。武力攻撃の程度、その範囲、それが非常に広範でありますから今のような議論が起こってくるわけです。これが第五条の武力攻撃についての大きな矛盾であります。その範囲というものを、一人けがした場合と、原爆でやられた場合をともにこれは武力攻撃というのです。ですから高橋条約局長答弁は間違っている。その程度において外交交渉、抗議、国連提訴、こういうことがみな含まれることが対処、行動と、こうなるのじゃないのですか。そこの観念を統一しておかぬと、これは幾ら議論しても平行線になって固まりませんよ。それは外務大臣武力攻撃の程度、限界というものが各種各様にある。従ってこのくらいに広いものはない。武力攻撃という表現には、それを同じように行動で規定しようというところに無理がある。でありますから、私はこの第五条の適用については、米軍日本の軍当局、もしくは政府同士で、ほんとうにはっきりした了解事項というものをきめておかぬと、きわめて危険であると思います。いかがですか。
  290. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今、辻委員のお話にありましたような、たとえば第三国の飛行機が領空あるいは領海、そういう範囲に入ってくる。これに対して哨戒しているものがたまたま衝突する。そういうような場合はいわゆる領空、領海における排除の警察事項だと思います。必ずしもそれ自体をすぐに攻撃と認めるのは適当ではないのであります。たまたま誤まって領空を侵してくる、そういうようなことがありまして、それがたまたま衝突をいたしたということでも、それはすぐに武力攻撃と、ここにいう武力攻撃と認めるということは、それは軽率でありまして、そういう問題につきましては話し合いで今日まででも各国とも解決をしてきておるのでありまして、そういう意味でわれわれは申し上げておるわけではないのであります。(辻政信君「それでは関連して」と述ぶ)
  291. 小林英三

    委員長小林英三君) まだ許しませんよ、発言を。まあ少し御遠慮願います。(辻政信君「関係があるのですよ、重大な関係が、冗談じゃないですよ」と述ぶ)
  292. 小林英三

    委員長小林英三君) それではもう一問。
  293. 辻政信

    ○辻政信君 それでは、藤山外務大臣にお聞きしますが、第五条に書いてある武力攻撃というものは、具体的にどれだけの損害を与えたのを武力攻撃というか。あるいは十人殺されたら武力攻撃ではないのか、百人殺されたら武力攻撃というのか、それがはっきりしませんと、それの対抗手段になる武力攻撃であるのか、武力攻撃にならないのか、はっきりしないのです。それだけ、はっきりして下さい。この一問で終わります。
  294. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今申し上げたように、単純な領海侵犯というような問題は明らかだと思います。しかし、そうでない点につきましては、条約局長から御説明いたさせます。
  295. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 武力攻撃の問題でございますが、この第五条におきます武力攻撃は、国連憲章第五十一条に規定せられております武力攻撃と同じ概念であります。すなわち、個別的、集団的自衛権が発動するという場合の武力攻撃であります。これは一国が他国に対して武力をもって、実力をもって攻撃する意図をもってこれを組織的、計画的に実行することであると考えます。従いまして、起こった損害という問題ではなくて、そういう場合における場合が第五条の武力攻撃の問題であります。
  296. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君、質疑を続行して下さい。
  297. 小林孝平

    小林孝平君 ちょっと質疑の前に……。私はこれで政府を困らせようとか、こういうことを言えば答弁に詰まるだろうとか、こういうことでやっておるのじゃないのです。これはみんな国民はわからないのです。少なくともおれたち専門家がわかればいいというようなものじゃないと思うのです。僕らが人に、国会の条約審議をやって、この「行動する」というのはどうだと聞かれて、少なくとも答弁ができるようにするのが親切でもあり、当然のことでしょう。そこで、これは今申し上げたように、西さんのような方でも違うのです、あなた方と。これは外務省の中だって——あなたはここに来て言われるけれども、帰ってこの話をしたら、それは半分くらいあなたと反対です、おそらく。これはあなたそうでないと言われるけれども、この安保条約については外務省の中でも、事務当局の中でも賛否両論あるくらいのことは知っているのですから……。そこで、私は、今すぐ無理をして答弁をしてみても、いたずらにそういうことは混乱のもとになるから、私は、朝言ったように、よく相談をして、藤山さんもこのくらいのことはおわかりになって、総理もそれはもっともだと、こういうことでおやりになる方がいいのじゃないかと、私朝言ったわけです。そこで、今これはすぐ解決はできませんよ。これは解決ができませんから、これが解決できないと次に質問ができませんから、押し問答していても仕方ありませんから、これは今晩お帰りになってよく御相談になって——何も二時間や三時間急がないじゃないですか。私も朝やろうとは言いませんから、ゆっくりと御相談の上、適当なときに御説明下されば——私は何もむちゃを言っているわけじゃないのです。総理大臣もそうお考えでございましょう、この条約の解釈でない、私の説を……。
  298. 岸信介

    国務大臣岸信介君) どうしても何か調べなければならぬ、打ち合わせなければならぬようなことがあるならば、今小林委員のお話の通りに考えるべきであろうと思います。しかし、今問題になっておりますことは、本日午後最初に、政府としても十分打ち合わせをいたしましてお答えを申し上げました、先ほど外務大臣がお答えをいたしましたことでございまして、この第五条に言っている武力攻撃があった場合において、これに対処する問題としてとる行動という問題につきましては、もちろん武力攻撃がありました場合に、あるいは侵略があったというような場合に、直ちにこちらが武力行使するかどうかということは、これは私は大いに全局から考えなければならぬ。先ほど辻委員のお話にありましたように、何かほとんど間違いであるかと思うようなことが、事実上侵犯が行なわれている。すぐ全体の力を動かして、これに対処するというようなことをすぐやるべきかどうかということは、これは大いに考えなければならぬ。しかし、この五条でいっている武力攻撃に対処する行動として、日米両国がお互いに約束している事柄は、その武力攻撃を実力をもって排除する、これに対抗するという場合をこれは規定しているものであって、これには、その場合にとるところの外交措置や、あるいはお互いに外部から、側面からあっせんし合うというような事項は、平和的の行動は五条には含んでおらない。これは私どもの解釈であり、その点について日米で打ち合わせをしたかということでありますけれども、われわれはこの条文、五条の条文の立法の、条約の制定の趣旨から見て、こうあるということについては、日米両国の間に別にこれに異論を差しはさむべき筋でもないし、今申し上げましたことでわれわれは十分筋の通っていることである、かように解釈をいたしておりまして、そのことをはっきりとお答えを申し上げておるのでありますから、あるいはそれでは足りない、行動のうちには外交交渉を入れろとか何とかいう御議論があるかもしれませんが、私どものとっておる解釈は、はっきり申し上げた通りで、御了承願いたいと思います。
  299. 小林孝平

    小林孝平君 これは、あなたは自分で調印をされたのですから、直ちにそれは小林君の言うのはもっともだというわけにはちょっといかないかもしれません。しかし、これは国内法ならまだいいですよ。これはアメリカとの関係なんです。しかも、これは軍事行動関係する重大な問題でありますから政府もつらいでしょうけれども、私は、やっぱりこの際もう少し慎重に研究をして、そうして何も今こう言ったからこれでなければならぬ、条約局長が言ったから、大臣もそれを固執されるけれども、おそらく大臣は、そういうことは初めからお考えになっておらなかったのです。そこで、私が言っているように、そういうことを押し問答したって仕方がありませんから、しっかりと、われわれが納得——何もあなたのおっしゃることを全然聞かないということを言っておるのではないですよ。私は岸さんのお説はときどき非常に敬服して聞いているのですから、もっともだということを言っていただければ、なるほどということをわれわれも言うのでありますから、一ぺん言ったから、これでなければならぬと、そういう態度は私は困るのです。そういうことを言えばこちらもまた理屈を言いたくなります。そういたしますと、どういうことになるかというと、安保条約なんていうものはみんないいかげんなものだ、極東の範囲を初めとして、事前協議もおかしければ、この行動もおかしい、武力攻撃もおかしいといって、あなたの期待されないような空気が国民の中にだんだん出てくるのです。それよりもむしろ一日待って、十分研究して、がっちりしたものを出した方がいいのじゃありませんか。私は、今のままじゃとても質問を継続できません。今の武力攻撃の点も、私はこれに関連してしたいと思う。これもきわめて不明瞭です。
  300. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君に伺いますが、質問を継続なさらぬということは、棄権なさるという意味ですか。
  301. 小林孝平

    小林孝平君 そうではない。ばかなことを言うな、委員長。そんなばかな……いまだかつて、答弁がわからなければ質問をしません、委員長
  302. 小林英三

    委員長小林英三君) 着席なさい、着席なさい。  小林君に申し上げますが、今あなたは、先ほどから政府に対して第五条その他について御質疑中でございますが、私は政府が所信を持ってあなたの言うことに答弁しておれば、それ以上を答弁さすことは無理じゃないですか。あなた、西さんと言われましたが、西さんというのは何です、西さんとは何ですか。
  303. 小林孝平

    小林孝平君 西さんを知らぬのですか。
  304. 小林英三

    委員長小林英三君) 知っておりますが、何ですかというのです。
  305. 小林孝平

    小林孝平君 前の駐英大使の西春彦じゃないですか。
  306. 小林英三

    委員長小林英三君) 政府答弁しているのですよ。
  307. 小林孝平

    小林孝平君 政府以外の発言を言ったら悪いのですか。こういう意見もある、ダレスの発言もある、マッカーサーの発言もある、こういうことを言って悪いのですか。そんなばかなことがありますか。
  308. 小林英三

    委員長小林英三君) 政府の所信を聞いて、政府が所信を言えば、それでいいじゃないですか。
  309. 鈴木強

    鈴木強君 議事進行委員長は、小林委員の言われている趣旨がよくわかっておらないと思うのです。
  310. 小林英三

    委員長小林英三君) わかっております。
  311. 鈴木強

    鈴木強君 委員長質問者と問答していては工合が悪いので、私が議事進行発言を求めたのです。そこで、私はあなたにちょっと御注意いただきたいのは、小林委員の言っている趣旨をよく理解していただきたいという意味で言っているのです。その通りにあなたが理解しておるならば、私は引き下がります。小林委員は先ほどから、永岡委員質問に答えて、条約局長は、前に、武力攻撃に対する行動の中には、武力以外に、外交的な手段も入るということを、高橋条約局長ははっきりそこでおっしゃったのです。その後に、岸総理が、そうでない、藤山さんと同じ、同一見解を表明しました。しかし、明らかに政府委員である高橋条約局長との間には食い違いがあるのですよ。そういうものが、もし高橋さんの言われているようなものであるか。岸総理大臣の言われているのがそうであるのか。そうであるならば、やはり高橋局長発言は取り消して下さい。明らかに議事録を見てもわかります。永岡委員が具体的に、武力攻撃に対する行動というものの中には、第五条にいっているその中には、武力攻撃だけでなくて、外交的ないろいろな話し合いも入るだろうと言ったら、入る、こう言ったのです。そこに食い違いがある。そういう食い違いがある中で、質問をしたって無理だというので、小林委員は、もう少し考えて下さい、こう言っているのですから、私は無理ないと思うのです。だから、小林委員に、お前は放棄をしたのかと言うならば、その疑点をはっきり委員長政府にただして、高橋条約局長のさっき言ったことが間違いであるならば、それを取り消して、岸総理大臣の言った通りだということにして下さいよ。
  312. 小林英三

    委員長小林英三君) 私は、委員長といたしましては、先ほどから小林委員が、第五条に対する解釈の点について御質疑中でございますが、先ほど小林委員が言われましたように、政府答弁を聞かないで、西某がこう言うから、それは間違いだろうというような態度をとっておられるから、私は、質問を続行しなさい……。
  313. 小林孝平

    小林孝平君 委員長、それは違います。私、弁解さしてもらいます。そうではない。政府はそうおっしゃるけれども、われわれは納得のできない。これはわれわれだけではなくて、いろいろ多くの人の疑問があります。しかし、委員長が、きょうすぐ質問をやれとおっしゃったものだから、私は、過去に読んだ本の記憶のうち、確かにあったと思って今調べたら、西春彦氏の書いたものの中にありますから、具体的に外務省の前の駐英大使の西さんもこういうことをおっしゃっている、こういうことを言っただけで、こんなことがおかしいということなら、これはほとんど国会の発言はできませんよ。
  314. 小林英三

    委員長小林英三君) いや、そういうような、今のあなたのおっしゃったような言い回しでありますれば委員長も了承をいたします。  それからもう一つ、私は今、あなたに、質疑を御棄権なさいますかと申し上げましたことは、小林君の御質疑に対して、政府責任を持って答弁をしているわけであります。私は、質疑ということはそういう意味だろうと思う。質問することに対して政府責任を持って答弁すれば、それで足りると思う。
  315. 小林孝平

    小林孝平君 その政府が言ったことは、あなたは絶対的のものとお考えになるんですか。
  316. 小林英三

    委員長小林英三君) 絶対的なものとは思っておりません。
  317. 小林孝平

    小林孝平君 政府はおっしゃったけれども、それは誤りでないかと言って、それが明確にならなければ次に移れませんから、はっきりして下さいと言ったんです。総理は、その私が言ったのにさらにお答えになりませんよ。私は、明確になればいつでもやりますよ。何時でもやりますよ。何もやらんとは言いませんよ。委員長協力するって、私ほど協力している者は一人もいない。
  318. 小林英三

    委員長小林英三君) それでは、小林君は質疑を続行していただくことといたしまして、もう一度政府からはっきりと、小林君の質疑に対して御答弁願います。
  319. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 政府は、先ほどもお答え申し上げました通り、午前中にこの御質問がありまして、昼の休憩時間に打ち合わせをいたしまして、午後の初頭におきまして、外務大臣政府の見解を明瞭に申し上げました。ただ、その政府の見解を申し上げたのに対して、明瞭でないということがございましたから、さらにそれを繰り返して私が先ほど申し上げた通りであります。  高橋条約局長政府委員答弁がこれと食い違っておるというふうに鈴木委員が御指摘になっておりますが、これは、速記録をお調べ下すっても、私の聞いたところにおきましては、私は何らこの間に食い違いはないと思っております。それはしかし、昼に打ち合わせして、こういうものの統一見解を述べる場合におきましては、高橋条約局長ももちろん入って研究した結果を申し上げたわけでありますから、そういう先入観があって、違ったことを言っておるのを私が誤って聞いたのかもしれませんけれども、私が先ほど聞いておりました何は、この五条は、武力攻撃があった場合に対処する行動としてやることについては、外交交渉やあるいはなにのものは含まない、こういうことを……(「主体として」と呼ぶ者あり)その武力行動を主体としての考えでありますと、そのバツクとしての力を用いることを言っておるのであって、平和的な外交交渉やあっせん等は、これに含まないものと認めますと、こういうことを申しておるのでありまして、その間には私は食い違いはないと思います。ただ、西君の見解でございますが、私は、先ほども申し上げましたように、何か武力攻撃があったら、直ちに日本が、幾ら小さいことであっても、あるいはそのときの情勢いかんにかかわらず、すべて全部を動員してこれにあたるというふうな処置をとるか、あるいは、そうではなくて、外交交渉によってこれをなにするか、あるいは国連に提訴するか、いろいろな事態いかんによってはあると思います。ただ、武力攻撃という、五条のあった場合ということは、先ほど高橋条約局長が御説明申し上げましたように、国連憲章の五十一条と同じような趣旨であって、それは、国と国との間において計画的な一つの組織的な行動としてとられた場合における、これをさしておるというふうに申しておりますから、そういうような大規模の計画的ななにがあった場合において、武力をもってこれを排撃するというようなことになると思いますが、しかし、武力攻撃という字義いかんは、各種のその事の起こったときの事態で考えなければならない。必ずしも、損害が何人以上あったら武力攻撃だとか、一人のときはそうじゃない、こういうことは言えないと思う。損害じゃなしに、そのときの発生した状況なり、武力行使されたところの実情というものから判断しなければならない。そうして必ず、その場合には、こちらも武器をとってこれに対抗するというばかりじゃないと思います。外交の方法による場合ももちろんあるのだが、この五条で規定している場合は、武力攻撃があった場合には武力をもってこれに対抗する、武力を主体としての行動を規定しているものであって、平和的な外交交渉やその他の手段でことをやるということは、これは、五条の初めからの制定の理由がそういうことを目途としておるわけじゃありませんから、これには入らないという、そのことについては、政府の見解が統一したものをすでにお答えをしておりますから、二時間かけても三時間かけても結論は変わらないと、私、責任をもって申し上げます。
  320. 鈴木強

    鈴木強君 関連して。今のやつ、私の聞き違いでないと、こう思うんですがね。今あなたのおっしゃったのは、藤山外務大臣はそうおっしゃったんです。その前に、永岡委員の具体的な武力攻撃に対する対抗手段ということをさして質問したときに、高橋条約局長はそういうふうに言ったと思うんですよ。だから、速記録を見なければはっきりしないんですけれども、その辺、食い違いがあると私思うんですよ。この点は、やっぱり明らかにしなければいけませんので、そのする法方は、議事録を見る方法もあるだろうし、高橋さんにもう一回やらせる法方もあると思いますが、さっきの議事録をやっぱり私はちょっと見たいと思うんです。委員長、どうですか。
  321. 小林英三

    委員長小林英三君) 今、鈴木君の速記録という問題がありましたが、先ほどから政府答弁しておることが、私は一番最後の正しい御答弁であろうと思います。
  322. 鈴木強

    鈴木強君 それはわかっている。その間における食い違いがあるということを言っておる。
  323. 辻政信

    ○辻政信君 鈴木君の意見に関連して。これは、総理大臣に申しますが、これは決してあげ足とる意味じゃない。非常に危険な兆候があるんです。ドイツと日本が軍事同盟を結んだときに、こういう了解がある。ドイツか日本のいずれかが、自分から挑発をせずに、向こうから受けたときには共同作戦をやる、こういうことがあると思います。従いまして、日本が真珠湾を奇襲したときに、ドイツの国会においては、日本と同時に参戦するかどうかという議論があった。真珠湾攻撃は日本の挑発だ、そこで、非常な議論があったにかかわらず、結果においてああいうふうになった。そこで問題は、この武力攻撃というのは、簡単にお考えになつちゃいけない。ということは、たとえばアメリカの軍部のある者が、予防戦争をやろうということを考えるというと、そうすると、さも向こうから受けたように、謀略的に一つの飛行場を引つくり返す。だれがしたかわかりません。武力攻撃があったから武力でやれ、お前もやれという危険性があるわけなんです。そこを私は言う。非常にあぶないのです。非常にこの武力攻撃ということを簡単に考えておられますが、国際謀略、予防戦争、こういう観点もございますから、日本が少なくもアメリカとともに参戦をする条項におきましては、挑発によらずして、武力攻撃を受けた場合にはやる。挑発して起こす場合にあり得る、激しい国際戦争では。ですから、これを簡単に、字句を通り一ぺんに御解釈なさらないように、この武力攻撃ということは非常な幅を持っております。飛行機が一台落ちた場合も武力攻撃なんです。原爆でたたかれた場合も武力攻撃なんです。潜水艦が沈められた場合も武力攻撃なんです。これは計画的に現われているものかどうかわからないのです、相手の意図というものがそれほどむずかしい問題ですから、今晩ゆっくりお考えになって、そうして私は、間違いのないように国民に御説明なさる方が、この法案を通す上においていいと思います。通される上において不満を除かれる方が……。
  324. 小林英三

    委員長小林英三君) 辻君、あなたのは関連質問じゃないじゃありませんか。希望じゃないですか。関連質問なら関連質問らしく、はっきりして下さい。
  325. 辻政信

    ○辻政信君 だから、その点はっきりしてもらいたい。簡単にいく問題じゃないですよ。
  326. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今、辻委員の御意見、私も、先ほど申し上げたように、その武力攻撃というものの起こった事態、また、この条約におきまして、第四条によりまして、常時日本の平和と安全とか、極東の安全と平和を脅かすような事態というものについて協議をし、十分日本としても情報を取り、あるいはなにから検討してもちろん処置するのであって、また、武力攻撃と見られるべきものがあっても、その場合にどう処置するかというのは、必ず何かそれが起こったからすぐ武器を取って立つのだということは考えない力がよい。外交交渉であるとか、あるいはいろいろな平和的手段によって解決するというようなことも考えなければならぬことはもちろんのことである。しかし、この武器を取る場合の規定が五条の規定であって、従って、その場合の行動ということは、そういう武力行使を主体とするものをいっているのであって、純然たる平和的な処置である外交折衝であるとか、あるいは国連に提訴するとかいうようなことは、これには含まれておらない。こういうふうに御了解いただきたいと思います。
  327. 小林孝平

    小林孝平君 この点は明確になりませんが、今のような空気を私も承知いたしまして、他日にそれは譲って、次にやりますが、ついででございますから、「行動することを宣言する」と、こうあります。それで、一応この行動内容は別といたしまして、「行動することを宣言する」とありますが、この「行動する」ということは、時期は一体どういうことになりますか。日本行動しなければ1先ほど条約局長は、これは、日本武力行為を竹島に対して行なえば、この五条は適用になると、こう言われたのです。従って、この「行動する」という内容は、日本行動しないなら、米軍はやらないという意味なのです。先ほどの条約局長の話では、こういうことになる。そういうことは、条文のどこに書いてあるのですか。日本の固有の領土に攻撃が行なわれた場合に、日米両国が、日本米軍行動するのだけれども、そのアメリカ軍の行動の条件は、日本軍が行動することを前提とするということはどこに書いてあるのですか、この条約の。大体私、戦争の例を言うのはおかしいけれども、こんなことで戦争できるのですかね。そういうことは大体どこに書いてあるのですか。日本軍が行動を起こさなければアメリカ軍は待ってますという、そんなことがどこに書いてありますか。逆の場合は、アメリカ軍の基地がやられた場合、その際に、米軍行動を起こさなければ日本行動を起こさないということをあなたは言われておる、速記録にはっきり。もう実に重大な発言をされておる。あなたはどこからそんなことを引っぱり出してきたか。これは今のと違いますよ。これははっきり答弁できますよ。大体そういうことを言ったということも忘れたのではないですか。そんなことがどこに書いてありますか。
  328. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 私、ただいまの御指摘の点でございますが、それはいっそういう……、私、そのように考えております。しかし、いっそのような発言がありましたかどうか。
  329. 小林孝平

    小林孝平君 午前中に。これはあなた忘れておるでしょう。教えてあげます。だから委員長、先ほどこれを配っておかなければだめですよと申し上げたのだけれども、やれやれとおっしゃるから……。「対処して行動するということを日本が決心しました場合には、これはただいまの五条の発動の問題になるかと存じます。」こういうふうにはっきりあなたおっしゃっているのですよ、私は、この速記録を見て驚いたのです。こういうことになると、この条文のどこに書いてあるのだろうと思って、私はさっきから見ましたけれども、どこにも書いてない。あなた自身も、だから、朝から言っておるように、よく考えてお答えなさい。
  330. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) その問題は、竹島の問題につきまして、八年前から平和交渉をやって、平和的に解決しようというのが政府の方針であり、そのように政府として努力してきたと、こういう問題でございました。従いまして、そういう方針でありますからこそ、五条の問題ではないと……。
  331. 小林孝平

    小林孝平君 冗談言っちゃだめですよ。条約局長、そんなことはだめですよ。私はよくこれを、(「まあ聞きなさい。」と呼ぶ者あり)聞きなさいでない。これに書いてある。むだですよ、そんなの横から……。
  332. 小林英三

    委員長小林英三君) 一応答弁を聞いて下さい。
  333. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 政府の方針といたしましては、平和交渉の方針で参った。従いまして、第五条の問題としては考えてはいないと、こういう意味なんでございます。従って、反面といたしまして、平和交渉の問題でなくなった場合、これはまた別の問題であると、こういうふうに考えております。
  334. 小林孝平

    小林孝平君 だから、この「五条の発動の問題」になるが、日本武力行動をやれば五条の発動になる、こう言っておるのですから、その際に、この日本が発動しなければアメリカが発動しないということなんです、これは。(「おかしい」と呼ぶ者あり)おかしいとは何です。ちゃんと書いてあるのだから。あなたこれを見なさい。ちゃんとよく読んで、でたらめ言っているのじゃないのですからね。
  335. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) お答え申し上げます。ただいまの申し上げた通りだと思います。この五条の発動、「しかし、この武力攻撃に対しましては、あくまでも平和交渉でいこうというふうなのが政府の考えでございますから、第五条の、共通の危険に対処する行動ではない。」政府としては、そういうふうな方針をとってきている、すなわち、第五条の問題として行動することを考えずに、政府といたしましては、外交交渉でやっていごうというわけでございます。
  336. 小林孝平

    小林孝平君 あなた、何を言ってるのです。(「よく聞いていなさい」と呼ぶ者あり)何べんも繰り返して読んでおる。よく聞いているとは何だ。こちらが教えてやっておるのです。これはおかしいですよ、あなた。  これはさっきの問題とまた違うのですけれども、これだってはっきりしないじゃないですか、ちゃんと。そういう事実をやったけれども、この日本行動すれば、アメリカ軍は第五条によってやらなければならぬ。しかし、日本が今武力行為を起こさないからやらないと、こういっておるのです。だから、この条約のどこに、そういう場合に日本行動しないなら米軍がやらぬのかどうかというのがどこに書いてあるのか、それを聞いておる。
  337. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) それは第五条の問題、第五条の法理論としての問題ではございませんので、私どもは、竹島の問題としてずっと考えてきたわけでございます。
  338. 小林孝平

    小林孝平君 今度竹島の問題を離れて、日本行動しないなら米軍行動しないのかどうか。では、今度はそういう御質問をします。この行動するということですが、日本行動を開始しなければ米軍は開始しないのか。今度そういうことをお尋ねします。
  339. 林修三

    政府委員(林修三君) これは、私からお答えした方がいいかもしれませんが、一般問題としての御質問なんだろうと思います。で、第五条の要件が備わります場合には、日米両国は、共通の危険に対処するために行動するわけでございます。従いまして、共通の危険が、ありとすれば、日本アメリカも、どちらも日本を守るために行動するわけでございます。
  340. 永岡光治

    ○永岡光治君 関連。そうすると、共通の危険というのは、だれがいつ判断するのですか、どういう方法で。勝手に、たとえば日本日本なりに、アメリカアメリカなりに危険だと判断すればそれでいいのか。そういう危険ありという判断は、どういう方法でやるのですか。
  341. 林修三

    政府委員(林修三君) 先ほど来条約局長から御説明したと思いますが、第五条の適用の要件は、武力攻撃が日本の施政の領域においてあった場合でございます。これが日米両国共通の危険なりと、この条約は宣言しておるわけでございます。従いまして、武力攻撃があったということが、すなわち、日米両国に対する共通の危険とこれは認めているわけでございます。武力攻撃とは何ぞやという問題につきましては、先ほど高橋条約局長がお答えしました通りに、それは国連憲章の五十一条を引いておるわけでございます。この国連憲章五十一条の武力攻撃は、やはり、ある国がある国に対してそれを武力攻撃する意図を持っている、その計画によってやる行為であります。その目的、意図、計画というものを総合的に判断して、判断すべき明瞭な概念とかように考えております。
  342. 永岡光治

    ○永岡光治君 だからあなたはそういうように武力攻撃があったならば、これは危険だといって、即そういう考えになっているのですが、そうでしょう、そういうわけですね。
  343. 林修三

    政府委員(林修三君) この条約をお読みになってもわかります通りに、日本の施政下の領域に対して武力攻撃があったことを、日米両国の共通の危険と認めているわけでございます。
  344. 永岡光治

    ○永岡光治君 だからおかしい。だから竹島に武力攻撃が加えられて占拠されているでしょう、それは危険じゃないのですか。
  345. 林修三

    政府委員(林修三君) 竹島の問題につきましては、先ほども外務大臣からお答えがありました通り、実はこれは八年前に起こりました問題でございます。その八年間において日本韓国との間に平和的に交渉するという立場でずっと交渉を続けてきておるわけでございます。これを直ちに、今新しい条約ができたから直ちにその武力攻撃としてそれに対処するという問題ではない、かように先ほど申し上げました。八年間交渉を続けている問題でございます。今後においてもそれを続けよう、そういう過去からの引き続いた問題でございます。新しく起った問題ではないということでございます。
  346. 永岡光治

    ○永岡光治君 もう一つだけある点で、とにかく武力行動が加えられたときにはそれは危険だ、そう認定するというわけでございますか、とにかくそれはアメリカであろうと、日本であろうと、武力攻撃が加えられた際には危険だ、こう判断するわけですね。直ちにそれを認定するわけですから、武力行動に入るわけですね、対抗措置に入るわけですね、そういう端的にはっきり割り切ってよいのですね。あなたの答弁はそうなるのですよ、そうでないというふうにはどうも解釈はなりません。
  347. 林修三

    政府委員(林修三君) 武力攻撃は、この条文をごらんになりますとわかります通りに、日本の施政下の領域に対する武力攻撃は、日米両国の共通の危険であることと認めと書いてございます。でございますから、武力攻撃があれば、共通の危険と考えておるわけでございまして、その武力攻撃は明白な武力攻撃であることは当然でございまして、武力攻撃という観念から当然出てくると思います。同時にそこに、要件は両国がそれぞれ憲法の手続または憲法上の規定に従っての範囲においてやる、こういうことでございます。
  348. 小林孝平

    小林孝平君 私は先ほどお尋ねしたのは、高橋条約局長答弁とも関連して、日本行動しないなら、日本の本来の領土米軍の基地じゃありません。日本の本来の領土に攻撃が加えられたときは、米軍は、日本が攻撃を、対抗措置を講じない限りは、米軍行動しないのですか。そういうことが明確になっておりますか。なっておるかおらないかを聞きます。
  349. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) ただいまの問題でございますが、法制局長官からも御答弁になっておると思いますが、武力攻撃というのは、これは明白な概念でございます。従いまして、この武力攻撃が加えられました場合に、共通の危険に対してともに行動し、対処するわけでございます。
  350. 小林孝平

    小林孝平君 私はそんなこと聞いておるのじゃない。みんなわかっています。私の聞いておるのはそれじゃないのです。
  351. 小林英三

    委員長小林英三君) では小林君、済みませんがもう一ぺん言ってやって下さい。
  352. 小林孝平

    小林孝平君 米軍の基地じゃないのです。日本の普通の場所に武力攻撃が加えられたとき、ともかくこれに対して対抗措置を講ずる。その際に、その対抗措置を講ずるときは、日本行動しなければ米軍行動しないのか。するのかしないのか。そうしてするならどこにそういうことが書いてあるのか。
  353. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) ただいまの場合でございますが、武力攻撃が起きたわけでございます。従いまして、日本は当然行動いたすわけでございます。従いまして日本行動を起こします、アメリカも同時に従って共通の危険に対する行動を起こすわけでございます。(「答弁にならぬ」と呼ぶ者あり)日本行動を起こしますが、同時に……。
  354. 小林孝平

    小林孝平君 日本が起こさなければ、アメリカが起こさないのか。
  355. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 起こさなければといって、必ず起こすわけでございます。明白なる……。
  356. 小林孝平

    小林孝平君 これは全然違う。
  357. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 明白なる武力攻撃が行われたわけでございますから、それに対して……。
  358. 小林孝平

    小林孝平君 これは条約局長、あなた答弁ができないことを答弁しようとされているから、そういうことになるのです。これはどこにも書いてないのですよ、このあれには。あなた、そんなことを言ったってだめです。そんなことが行なわれるならば大へんですよ。それはできないことは、やはりわからないと答えなければいかぬ。
  359. 小林英三

    委員長小林英三君) 条約局長小林君の質疑に対して直接答弁して下さい。
  360. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 答弁の前に関連がある。関連して一緒に答えてもらいたい。今、条約局長が、そういう武力攻撃という事態があればともに行動するとこうおっしゃった。ともにです。条約のどこにともにと書いてあります。共通の危険ということは書いてある。行動する場合にともにということは書いてない。この問題は重大です。共同作戦ということになるじゃないですか、そういう意味でおっしゃっていらっしゃるのですか。
  361. 小林孝平

    小林孝平君 やっぱり一日休んで研究した方がいい。
  362. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 私がともにと申し上げましたのは、同時にということでございます。同時にということでございます。
  363. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 あとで同時にとおっしゃったけれども、さっきはともにとおっしゃった。
  364. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) それは失礼いたしました。同時というつもりでございます。
  365. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そんな答弁はありません。
  366. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) ともにということであれば、訂正さしていただきます。同時に行動するということでございます。
  367. 小林孝平

    小林孝平君 訂正しても答弁にならない。同時になんというのは、どこに書いてあるのですか。
  368. 秋山長造

    ○秋山長造君 関連して。共同行動せずに同時に行動するということができるのかね、実際。
  369. 小林孝平

    小林孝平君 そんなことは条文のどこに、交換公文にありますか、ないじゃないですか。
  370. 小林英三

    委員長小林英三君) はっきり答弁して下さい。
  371. 林修三

    政府委員(林修三君) 今、小林委員のおっしゃる通りに、同時にとも、ともにともそれは書いてございません。書いてございませんけれども、先ほど条約局長の申しました趣旨、あるいは私の申し上げました趣旨は、武力攻撃がありました場合には、日米両国はこれを共通の危険であることを認めて、共通の危険に対処するために行動するので、行動するということは、日本アメリカ行動するということでございます。それをまあ条約局長は、日本行動すれば同時にアメリカ行動すると、そういうので言われたと思いました。そういう趣旨で言われたのだと私は了解しておりました。
  372. 小林孝平

    小林孝平君 私の質問はそうではないのです。アメリカ軍が行動するのは、日本行動するということが条件であるかどうか、こういうことを聞いているのです。
  373. 林修三

    政府委員(林修三君) これはともにするということは、もちろん条約には書いてございません。書いてございませんが、日本武力攻撃を受けたという場合に、武力攻撃を受けたということをまず判断できるのは日本でございます。日本がそれに対して対処するということでございまして、これはアメリカも同時にこれに対して対処すると、こういうことでございます。そういう趣旨をまあ多少平易にと申しますか、かみ砕いて条約局長は言ったもんだと、かように考えております。
  374. 秋山長造

    ○秋山長造君 関連して。その点は政府側の方がちょっと小林委員質問を誤解されている点があるのじゃないかと思う。こういう質問が出るのはなぜかというと、小林委員は、こういうことを心配していられるのだと思うのです。その点は今の点をはっきりしておかないと、たとえば武力攻撃という点は、程度の差が、さっき辻委員がおっしゃったように、程度に差があるから、いろいろな程度の武力攻撃というものがあるのですから、だから、ごく軽微な武力攻撃ということも現実にあり得るわけです。また相当重い武力攻撃ということもあり得るわけでしょう。軽微な武力攻撃等に対しては、自衛権はなるほどあるけれども、直ちに日本が武器をとって立ち上るというところまでいかないで、さっき岸総理大臣がおっしゃったように、できるだけ平和的な方法というものを考えるというのが、日本の基本的な態度なのです。日本としてはだからこれを平和的なあるいは外交交渉等で片づけようと考えておっても、自動的にアメリカの方がぱっと先へ立ち上がってしまうということもあるかもしれぬ。だからそういうことでは危険だから、だから、日本にこれは武力攻撃はなるほどあった。程度はともかくとして、武力攻撃はなるほどあった。しかし、日本としては直ちに武器をとって立ち上がるのでなしに、まず外交交渉か何かでこの問題の善後処理をやりたい、こう考えておるにもかかわらず、この第五条が自動的に発動して、アメリカ側がすぐ立ち上がってしまうということになれば、これは日本の本意でなしに、不本意ながらそれにまた引きずられて、外交交渉をやろうという気持を持ちながら、それを捨てて武力行動に出なければならぬという場合が想定されるのですね。だから日本が立ち上がるということが前提になって立ち上がる。武力攻撃を受けた場合に、日本がまず立ち上がるということが前提になってアメリカ行動するのかどうか。その点をはっきりしておかないと非常に危険じゃないかということを質問しておるのですから、だからその点をはっきりして下さい。
  375. 林修三

    政府委員(林修三君) 先ほどからお答えいたしております通りに、武力攻撃というのは、実は国連憲章五十一条の問題でございまして、実は明白な観念であると思っております。いわゆる単なる領空侵犯のごときは、私は武力攻撃ではないと思います。従いまして領空侵犯的な一機、二機の領空侵犯があったからといって、直ちに国連憲章五十一条の問題にはならない。これはいわゆる自衛隊法の領空侵犯に対する排除措置、さようなことだと思います。それからそういうふうな一国が他国に対して不法な侵略をしかける、そういう明白な意図を持ってしかけてきた場合がこういう武力攻撃だと思います。武力攻撃によって現実にどの程度の損害が生じたか、今後生ずるか、その問題は必ずしも問うところではないと思いますが、要するに明白な意図を持って一国に対して、一国を侵略する目的を持ってしかけてきたものがここで言う武力攻撃である。単に出先の飛行機が一機迷い込んだとか、あるいは船が迷い込んできたというのは、ここで言う武力攻撃ではない。そういう意味武力攻撃については明白な観念だと実は思っておるわけでございます。今、御質問の場合は、日本がまず攻撃を受けた場合で、これは日本判断能力を一番持つわけでありますから、日本判断して、それに従ってアメリカは共通の危険に対処するために行動する。これは事柄の当然ではないかと思います。
  376. 辻政信

    ○辻政信君 今法制局長官武力攻撃があった場合に、これは立ち上がらなければならぬという認識判断はそれは日本側にあるとおっしゃった。ほんとうにそうですが。日本側にあるならいいですよ。これをかりに協議するあるいはアメリカ判断にまかせたら大へんなことになります。あなたはその危険なりという判断は、日本側にあるとおっしゃった。それは条約のどこを根拠にして日本側にあると解釈できるのか。
  377. 林修三

    政府委員(林修三君) 私の申しましたのは、武力攻撃を日本が受けたという場合には、日本が第一次的に武力攻撃を受けたわけでございますから、いかなる武力攻撃を受けたということを知るのは、第一次的には日本国でありますから、日本がそれを知って、それに従っていかに対処すべきかということを決定し、これに従ってアメリカも共通の危険と認めて対処するわけでございます。日本が攻撃を受けた場合に、日本がそれを第一次的に考えるということは、これは事柄の当然じゃないかと思います。
  378. 鈴木強

    鈴木強君 法制局長官武力攻撃というのは国連憲章五十一条による明らかな武力攻撃である、こういうことを言っている。こういう場合に武力攻撃が日本に加えられた場合でもアメリカに加えられた場合でも、アメリカの駐留軍の施設に、これはあなたは同一の、どちらにも加えられたというふうに判断をして、共同の作戦、行動を起こす、こう言っておる。あなたの言うように、日本に爆撃が加えられたものは、即アメリカに加えられたものと認定をして、共同責任をとるということになっておる、行動をとるということになっておる、この第五条というのは、そうでしょう。だからあなたの言っているのはおかしい。日本に攻撃を加えられた場合のことですよ。
  379. 小林孝平

    小林孝平君 今、鈴木委員質問に関連しまして、二つの問題がある。あなたの質問を敷衍します。日本行動をしないとき、これは今論じておるのは、日本本来の領土に対するあれです。鈴木委員は、それにまたつけ加えられまして、それはまた次に出てくる。これはまた大へんなんです。今前段をやっているのですから、前段について限定して御答弁があったらして下さい。後段になるとなお大へんですから。答えられないのを無理して答えるとだめだ。
  380. 林修三

    政府委員(林修三君) 従来から、先ほどからお答えしたことだと思いますが、今の鈴木委員の御質問は、米軍の基地がやられた場合のことでございます。
  381. 小林孝平

    小林孝平君 それは前のです。
  382. 林修三

    政府委員(林修三君) それでは、そうでなくて、前の日本自体がやられた日本のみがやられたという場合のことでございましょうが、これは日本武力攻撃が加えられたということは、日本が第一次に経験する問題でございます。日本が第一次に経験する問題でございますから、日本に第一次に武力攻撃があった。それに対して対処する、作戦をきめるわけであります。もちろん、そういう場合において、日米両国がいろいろ協議することは、これは当然でございますが、日本がその場合に第一次に判断できる地位にあるわけでございまして、当然に日本の決定が先に行なわれる。これに従って米軍ともこれは協議すべきことは当然でございまして、これは協議があることは疑いをいれないわけであります。その場合にいかにこれに対処するか、相談するのであります。
  383. 小林孝平

    小林孝平君 これは新しいことを言われた。協議するということはどこに書いてありますか。第五条の行動は、協議することは必要としない。自動的に行なわれるごとです。一番条約の重要な問題です。これは別個にまた質問しようと思ったけれども、あなた、そんなことをおっしゃったけれども、どこに書いてあります。いくら法制局長官でも、勝手にしんこ細工のように法律をあれしちやいけません。ここに書いてあることを忠実に……。だめですよ、そんな、どこにも書いてないです、そんなことは。根本的なもう重大な問題です
  384. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 協議の問題の前に、ちょっと補足させていただきますが、第五条は、武力攻撃でございます。すなわち憲章五十一条に言います武力攻撃でございまして、個別的なまたは集団的な自衛権が発動する、すなわち、自衛権の発動という事態でございます。ただ、一国がある国を侵略と申しますか、武力をもって攻撃する意図をもって、組織的にまたは計画的に、いろいろなことがございますが、そうしてこれを武力をもって攻撃を実行する、そのような場合は、これはまさしく急迫不正な侵害でございます。そうして、他に方法がないというような場合に、この第五条が発動するわけでございます。(「他に方法がない場合なんて書いてない」と呼ぶ者あり)これは自衛権の当然の問題であると思います。従いまして、そのような行動に対処する、こういうのが、そのような武力攻撃に対処する行動なのでございます。従いまして、その明白な、急迫不正なそのような武力攻撃が、自衛権をもって対処しようという場合でございますから、いずれが、どういう行動の余地がある、行動の余地と申しますか、それの武力を主体として、われわれは即時と申しますか、同時にそれに対処するというのが、五条の趣旨であると思います。
  385. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君、は立ってやって下さい。坐って発言すると私語になりますから。
  386. 小林孝平

    小林孝平君 今のそれは、法制局長官の話と全然違うじゃないですか。
  387. 林修三

    政府委員(林修三君) 今の条約局長の問題は、協議の問題には答えてないのであります。協議の問題は、私は事前協議とか何とかいう問題でお答えしたつもりはございません。つまり、これは日本も、アメリカにも一緒に自衛措置をやってもらうわけでございますから、当然にどういう方法をとるかということについて、お互いに相談することは当然だと申し上げただけでございます。これは事実上の問題で協議をすることは当然だということを申し上げたのであります。(「それは事実論でやれば幾らでも言えるよ、法理論で言わなくちゃ。」と呼ぶ者あり)
  388. 秋山長造

    ○秋山長造君 関連。
  389. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君に進行さして下さい。    〔秋山長造君「私に対する答弁と違ってきたのです。」と述ぶ〕
  390. 小林英三

    委員長小林英三君) それでは質疑の御継続を願います。
  391. 小林孝平

    小林孝平君 私の質問は、要するに、この「行動することを宣言する。」のこの「行動」は何らかの条件があるのかないのか。たとえば、日本行動しなければ、米軍は、日本の本来の領土については、日本行動しなければ米軍はしないという、そういう条件があるのかないのか。それはないはずなんです。これは無条件に即時行動することを書いてあるのです。この行動内容は別ですけれども。お尋ねするまでもないのですけれどもね。
  392. 林修三

    政府委員(林修三君) 先ほどから条約局長からもお答えがありました通りに、武力攻撃に対して行動することは、そのときにおいて、武力攻撃が急迫不正に行なわれた、これに対して他にそれを防衛する手段がない場合に行なわれるものでございます。国連憲章第五十一条に従って行なわれると同一の条件に基づいて、ここでは個別的または集団的自衛権を発動する、そういう趣旨でこの第五条は規定されているわけであります。従いましてそういう条件において、日本アメリカも、そういう危険があれば、これを共通の危険と認めて行動するわけでございます。そういうことになっております。法文上からはどちらがどちらを条件とするということは書いてございません。しかし、先ほどから申しましたように、事柄の性質から言えば、日本がまずこれは受けるわけでございますから、そういうことにはなると思いますけれども、法文上から言えば、先ほど申し上げましたような自衛権を発動し得る条件がある場合には、これは日本もやり、アメリカもやる、こういうことでございます。(鈴木強君「もっと法律解釈をずばりとそのものにやって下さいよ。そんな事実問題なんか出しても……。それはいろいろあるでしょう、事実問題になってくれば。法律の解釈は、あなたが前段で言ったところでやめておけばいいのだ。よけいなことを言うから、また問題が起こる」と述ぶ)
  393. 小林英三

    委員長小林英三君) 鈴木君、発言を許していませんよ。
  394. 林修三

    政府委員(林修三君) 先ほどから申し上げました通りに、この第五条において発動する要件は、国連憲章第五十一条と大体同様な要件で、これはきめてあるわけでございます。従いまして武力攻撃があり、これに対して個別的または集団的な自衛権を発動し得る状態、そういう場合において日本アメリカも共にというのは、共同してという意味ではございません。共に日本アメリカもというと意味でございまして、これは個々に対して共通の危険に対して行動する、条文だけの文言で言えばそういうことでございます。協議するというのはこれは、これは事実上当然あるわけでございまして、これは四条に基づきまして随時協議することになっております。第四条に基づきまして、そういう攻撃があった場合に日本アメリカにおいて、しからばいかなる具体的な方策をとろうかということについて協議すべきことは、これは当然のことでございます。
  395. 小林孝平

    小林孝平君 ちょっと議事進行ですがね、法制局長官がなぜそういう御答弁をなさるかというと、あなたは私の質問に卒直に答えると、次に私が何を質問するかということをおわかりだから、それをやっている。それをやれば、次に私がやることを条約局長と二人が御存じだからそれを答弁されないのです。だから私に質問せいと言ったって無理じゃないですか。これはこうなんです。これを条約局長なり、法制局長官も知っているのですよ、これ。知っていて答えないのです。それを、あなたがこの条約通り答弁をすると、次に私が質問することがわかっているものだからあなたは答えられない。それを私に質問を継続せいとは無理じゃないですか、あんまり。
  396. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君の質問をはっきりもう一ぺん言って下さい、はっきりと。
  397. 小林孝平

    小林孝平君 はっきりじゃない、もうわかっているのです。そんなことがわからなければ……。
  398. 小林英三

    委員長小林英三君) それではあなたの質問が続行されませんから、はっきりして下さい。
  399. 小林孝平

    小林孝平君 議事進行ですが、そんなことでいいのですか。私らははっきり言っているのに横のことを言って、そして委員長政府には勝手なことを言わせてわれわれには同じことを何べんも言わせるのか。それで国会の審議が行なわれるということはこれは私、困りますよ。この条約が通る通らないはいいんですよ。
  400. 小林英三

    委員長小林英三君) ですからいま一度はっきり言って下さい。
  401. 小林孝平

    小林孝平君 何べんも言っている。それはひどいじゃないですか。
  402. 小林英三

    委員長小林英三君) いや、時間は与えますよ。はっきり言って下さい。それに対して政府がどういう答弁をするか……。
  403. 小林孝平

    小林孝平君 この条約は、何か日本米軍はともに行動を起こすのに要件が必要であるかないか、それだけです。
  404. 小林英三

  405. 林修三

    政府委員(林修三君) 武力攻撃があることがまず第一の要件でございます。それから憲法上の手続に従ってお互いにやることでございまして、要件はそういうことでございます。(「違う、違う」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  406. 小林英三

    委員長小林英三君) 腰を折らぬで下さい。小林君の質問を続行しているのですから。
  407. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連して。政府の言うことはよくわかるのです。それは急迫不正の攻撃があった場合に、日本が直ちに自衛力を発動する場合もあるし、場合によれば外交交渉にゆだねる場合もあるのです。そこで日本としては外交交渉にゆだねようと思ったときに協議する余地もない間に、アメリカが即時これを共通の危険とみなして対処した場合に、これを制約する何らかの条約的根拠があるか、こういうことなんですよ。
  408. 林修三

    政府委員(林修三君) この第五条に言っておりますことは、武力攻撃があって、これに対して自衛権を発動してその武力で阻止する以外に方法がない場合のことを書いておるわけでございまして、それに対してなおいわゆる領空侵犯あるいはその他の侵略で外交交渉の余地のある場合のことは、この第五条は規定しておりません。第五条は、武力攻撃に対して国連憲章五十一条に規定するような個別的自衛権または集団的自衛権を発動し得べき状態、この場合に限って規定しておるわけでございます。この場合においてはわが国、日本もそれに対して自衛権を行使するのが当然でございます。これに対して米国もやってくれる、こういうことだと思います。
  409. 羽生三七

    ○羽生三七君 そうすると第五条は、もう協議する余地もない、外交交渉にゆだねる余地も何もないのですね。それこそ武力的な対抗処置以外には、何らの方法がない場合と解釈していいのですか。ずっと前の御答弁では、場合によっては外交交渉にゆだねる場合のあるように説明されて、それがだんだん飛躍されておるように思うのですが、その点明確にして下さい。
  410. 小林英三

    委員長小林英三君) よけいなことを言わないではっきり答弁して下さい。
  411. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) お答え申し上げます。  第五条の適用といたしましては、ただいま法制局長官から御答弁があった通りでございます。武力攻撃でございますので、これに対しまして急迫不正な武力行使でございます。そうして他に方法がない場合に、これに対処するというのが第五条の趣旨でございます。
  412. 一松定吉

    ○一松定吉君 関連質問。私は今の条約局長法制局長官のお答えが、第四条の規定をまるで無視して五条だけを極言して解釈をなさるから、そういうように疑われるような答弁ができるわけです。第四条にはどういうことが書いてあるかというと、「この条約の実施に関して随時協議し、」という、「この条約」というのは、第四条だけではないのです。この趣旨は、安保条約に関する全部にこの文句は関係しているのですから、この四条のいわゆる「この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。」この四条はこの安保条約のすべてに関連している条文である。それならば第五条のいわゆる今小林君の質問しているような場合が生じたならばどっちが先にやるかとかなんとかでなくて、疑いのあるときは条約の規定によって条約の実施に関し随時協議する、協議して危急な行動に善処するということは四条の規定もやはり五条を支配しておるのですが、なぜに、四条だけを抜きにして五条だけで説明しようとするから小林君から突っ込まれて、一体どうなるのだと、こういうふうに言われる。あなた方は四条を無視しておるからそういう答弁が出ると思うのですが、四条は私の言うように、安保条約のすべての法文にも、「この条約の実施に関して随時協議する、」「いずれか一方の締約国の要請により協議する、」というものは含むのですか、含まないのですか。
  413. 林修三

    政府委員(林修三君) 四条の問題は、当然全文にわたるものでありますから、先ほど私も申し上げましたが、五条の事態が起こった場合におきましても、当然日米両国の間には協議があるべきものだと、先ほども申し上げたつもりでございます。
  414. 一松定吉

    ○一松定吉君 それならば小林君の質問に対して四条のこの法文を引用して、あなたの、小林さんのお尋ねのあるようなことがあった場合においては、この四条の規定によって日米双方が随時協議をいたしましてかくかくの行動をいたします、と、なぜ答えないのか。あなたは一体四条の規定を無視しておいて五条の規定だけを引用して、自分のことばかりを言うものだから、五条の規定に協議がないから協議はどうするか、だれがこういうふうに論及をするのだというふうに突っ込まれると答弁ができないのだが、四条の規定がやはり五条を支配するということになると、今言ったように随時協議する、いずれか一方の締約国の要請によって随時協議するということになるのだから、五条の問題でも、危急存亡の事態が起こった場合には、四条の協議でやるのだということになると、小林君の質問はなかったと思うのですが、この点どうですか。
  415. 林修三

    政府委員(林修三君) そういう場合に四条の協議があるというのは、これは事柄の性質上当然でございます。先ほどから私もその趣旨は申し上げておるつもりでございます。その点は実は小林さんも御了解をいただいておると思います。
  416. 一松定吉

    ○一松定吉君 それならば小林君の質問に対してそうお答えになれば、小林君は五条にはこの適用がないのだというようなことは小林君は言わないから、それを明らかにすれば小林君もよほど頭が明敏な方ですから、納得下さると思うのです。
  417. 島清

    島清君 関連して。せっかく一松さんのお教えの通り答弁になりましたが、そういうことは小林君も私たち委員の方も百も承知質問しておりますので、それは武力行為があってそこに停止状態であればよろしいわけですが、しかしながら協議をして、事態は停止をしないわけです。そこでかりに日本のどっかの地点において武力攻撃があったものとしてアメリカ軍が判断をして、アメリカ軍自体がその行動に対処した場合どうなるかということ、私たちが聞きたいのは。しかしながら、四条があって協議するのだという、そういう事態が起こって停止する、アメリカ軍と日本が相談をしてもらいたい、どういう協議をするだろうかということについて見ておる場合は、事態を静観する場合には、その四条の規定するところの条文というものが一松先生のおっしゃるようにそれは作用しますけれども、そういうことは、いつもそういう状態であるとは考えられないわけですが、そういうことについて明確にお答えを願わなければならないと思うのです。
  418. 林修三

    政府委員(林修三君) 先ほどから申し上げております通りに、武力攻撃というものは、一国が一国に対する攻撃でございまして、単なる一局部において、非常な小さなものでありましたものを直ちに武力攻撃とは私は言えないと思います。一国が一国に対して明白な意図を持って、他国を侵略する意図を持って攻撃をしかけてくるごとでございます。これはやはり国連憲章五十一条の解釈から当然出てくることだと思います。これに対して国連憲章五十一条によって、個別的または集団的な自衛権が国際法上に認められておる、それを第五条において日米両国が行使するということでございまして、そういう場合においていかなる対処の仕方をするかということについて日米両国が相談をすることは、これは事柄の性質上当然のことでございまして、これは第五条に書いてないからといって、相談を排除してやるのだということは、これはあり得ないことでございます。
  419. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君、いいですか。
  420. 小林孝平

    小林孝平君 全然私の質問に答えられてないのですよ、それを質問せいと言ってもそれは無理ですよ。それはただ委員長としては早くやりたいという気持はわかります。しかし、先ほどから言っているように、条約局長法制局長官は、私が、それを普通の条約通り解釈をすれば次に私が何を質問するかということを考えているものだから答弁しないのです。私はわかっているのだ。だから私は質問できないのです。また、そのくらいのことがわからなければ、条約局長とか法制局長官にはなれないはずなんです。勤まらないはずなんです。だから言っているのです。私は無理を言っているわけじゃないのですよ。
  421. 小林英三

    委員長小林英三君) どうするのですか、あなたは一体。
  422. 小林孝平

    小林孝平君 そこで……。
  423. 千田正

    ○千田正君 議事進行について。ただいま小林君の質問に対して政府の統一見解のお答えが小林君の質問に対するお答えにならない。どうも自分の質問に対しては十分な答えじゃない、こう言うし、一方においては十分答えたつもりであるらしいのですが、これでは堂々めぐりですから、政府の方でもそれこそ事前協議いたしまして、見解を統一してやられるように休憩なり、あるいは明日やられるなり、理事の諸君かなにか相談して考えていただきたい。そういうようにしていただきたいと私は思います。
  424. 小林英三

    委員長小林英三君) ただいま、この場におきまする委員長理事打合会におきまして、散会をしないでこのままの状態で約十分間休憩をいたしまして、その間小林君の質疑の要点と、政府のこれに対する明快な答弁をまとめまして、直ちに再開をして続行いたしたいと思います。  このままの状態で十分間休憩をいたします。    午後六時四十四分休憩    —————・—————    午後七時十九分開会
  425. 小林英三

    委員長小林英三君) 休憩前に引き続ままして委員会を開きます。  小林君の質疑を続行いまします。
  426. 小林孝平

    小林孝平君 私は休憩前に明確に質問をいたしております。私の質問が不明確であるというようなお話がしばしばありましたけれども、私は明確に質問をしておる。しかるに、政府委員の万はそういうことははっきりわかっていて、別の問題を繰り返し、五条の精神の話をされておる。こういうやり方は、これは国会議員をばかにしておるものだと私は思うのです。従来こういうことで全部あなた方は国会の審議を終わってきたんです。私は、今回のこの新安保条約日本の運命を決する重大な問題でありますので、少々委員長には御不満のようでしたけれども、繰り返しお尋ねしておるのです。私のどこが一体質問がわからないのか、はっきり言っているじゃないですか。この「行動することを宣言する。」というのは、日本固有の領土がやられたときに、日本行動しないなら米軍はやれぬものか、こういうことを聞いているのに、それは同時にやる、同時にやるというのはどこに書いてある、ちっとも書いてない。  それからもう一つの重大なことは、武力攻撃があった場合には必ず行動すると言われますけれども、そんなことも書いてないのです。先ほどは、1昨日から今日にかけて、そういう武力攻撃があった場合も外交交渉によってやることはある、こういう説明をやられているのです。また法制局長官は、そういうことはないのだとさっき言っていますけれども、全然違います。そういうことを言われるなら、これは質問ができないのじゃないか、こういうふうに思うのです。与党の一松さんもこの助け舟を出されるように、ここでおかしいおかしいと言われて、さっき助け舟を出されたのですけれども、そういう態度じゃ困ると思うのです。ともかく今の質問に明確に答えて下さい。
  427. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) お答え申し上げます。  ただいま御指摘の御質問は、日本領土が攻撃された場合、日本がこれに対処して武力行動をとるのでなければ米国は行動をとられないのか、またそういう場合には必ず日本がとるのかという御質問の点かと思います。
  428. 小林孝平

    小林孝平君 いや違います。必ずとるかなどと聞いていません。今私がはっきり言っているじゃありませんか。その調子でやるんです。私はそんなことを聞いていませんよ。はっきり言えと言うから言ったら、言わないことを言っているのです。
  429. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 武力行動日本がとるのでなければ米国はとらないのかと、こういう問題でございます。そこで、たびたび今まで申し上げました通り、第五条のこれは武力攻撃の問題でございます。そこで第五条の武力攻撃と申しますのは、一国の、他国に対する侵略の意図をもちまして組織的あるいは計画的な武力行使を行なう、こういう問題でございます。従って、そこに認定というようなことが問題になる余地のない事態であると、このように考えております。すなわち自衛権の行使でございますから、実力をもって排除するほか方法がない場合なのでございます。この場合、日米両国は当然個別的または集団的の自衛権を行使いたしまして、共通の危険に対処するため行動するわけでございます。従いまして米国が行動をとるにあたりまして、日本がまず行動をとることが条件であるというような問題ではないのでございます。日米双方とも、国際法に従いまして、または国連憲章に準拠して行動する。そうしてこのような場合に、新安保条約の第四条において協議が行なわれることは事柄上当然であろうと、こういうふうに考えております。
  430. 小林孝平

    小林孝平君 今の御答弁は、私がお尋ねしていることとまたやっぱり違います。そういうことは条件にあるかどうか、武力攻撃……。その前に武力攻撃があった場合に、自衛権を必ず発動するとあなたおっしゃられたけれども、そんなこといつきまったのです。きのう防衛庁長官は言われました。武力攻撃があった場合でもそういう武力措置をとるかどうかは疑問なので、外交交渉をやる場合もある、こういうふうに言われています。(「外交上は別だよ」と呼ぶ者あり)何ですあなた、要らぬことを言って。人が質問しているのに。それをあなたは勝手にそういう解釈をいつしたのですか。いつ政府はそういうことをきめましたか。武力攻撃があったとき、必ず武力による自衛権を発動するというようなことは、いっそういうことをきめましたか。きめてないじゃないですか、そんなことは。きのうもそういうことはやらぬと言ったのですよ。
  431. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) お答え申し上げます。  たびたび御説明申し上げておるつもりでございますが、第五条の武力攻撃という言葉でございますが、その際に、もしも外交交渉をやるというような余地のあるような問題でございますれば、この第五条の言うところの武力攻撃——国連憲章に言うところの武力攻撃ではないと考えます。
  432. 小林孝平

    小林孝平君 それはおかしいですよ。そういうことは全然今までの国会論議ではないのです。あなたが、それこそ条約局長の一方的な解釈で、そういうことがきまったということになったらこれは大へんですよ。これはまた新たなる問題が展開してくる。それから日本行動しないなら米軍がやるかやらぬかということも答弁していないじゃないですか。日本が必ずやるなら米軍もやるのだ。それは大体同時であろう——同時であるかどうかわからぬじゃないですか。日本が自衛権を発動するのは、これはするかしないか、自衛権は権利ですから自由なんです。ところがこの第五条によってアメリカ日本を防衛する義務があるのです。義務としてやるのです。違うのです。権利を行使する場合と、義務を行使する場合とがあるのです。
  433. 小林英三

    委員長小林英三君) 今の小林君が条約局長答弁に対して非常に不満のようであります。違うと言われるのですが、法制局長官、今の条約局長の言われたことが正しいか正しくないか。
  434. 林修三

    政府委員(林修三君) 私からとやかく言うべきところじゃございませんが、条約局長の言われたことで、私ども条約の解釈としてそういうことじゃないかと思っております。
  435. 鈴木強

    鈴木強君 議事進行。そうなると、さっき一松先生の言われた第四条の関連はどうなるのですか。先生いわく、これはこの条約全体に対しての適用条文ですね、第四条というのは。従って、そういうような場合、第五条のような場合でもそういうようなことがあるのではないかということを指摘されておるのですよ。おかしいですよ、これは。
  436. 小林英三

  437. 林修三

    政府委員(林修三君) その点は先ほどもお答えしたと存じますが、第四条は、もちろん第五条に当たる場合において協議することを何ら妨げておるものではございません。第五条の場合においても協議があってしかるべきものだと考えます。
  438. 小林孝平

    小林孝平君 法制局長官、それはそういうことをやっても差しつかえないけれども、どうも四条は五条の要件であるということはないのです。第五条は独立したものですよ。そんな子供だましみたいなことを言っては困りますよ。
  439. 林修三

    政府委員(林修三君) いや、実は今私は鈴木委員の御質問にお答えしたつもりであります。第四条は第五条の場合にも協議があるかということでございますから、これは当然あるべきだと申し上げたわけです。
  440. 鈴木強

    鈴木強君 そうするとおかしいですよ。そうすると第五条というのはそのものずばりで、国連憲章五十一条に基づいて、攻撃を受けた場合、規模の大きい場合、侵略を意図するような場合、そういう場合には、さっきからの説明では、それは実際問題として話し合いをするとか何とかいうことはこれはあると思います。実行問題では。しかしこの条文そのものは、そういう余地がない。五十一条で加えられた攻撃なんだから、もう当然日本領土が攻撃された場合には、アメリカも同じ立場に立って、それは機械的とか自動的とかという言葉も出ておるのですが、条件なしに行くのだということを条約局長は言われておるのです。そうすれば、今、法制局長官が第四条によって協議するのだと言うのは、これは何ですか、第五条ずばりのことを言われるのはおかしいじゃないですか、そういう解釈は成り立たぬじゃないか。
  441. 林修三

    政府委員(林修三君) ちょっと御趣旨が私わからないような点があるのでございますが、第五条を適用すべき場合において、第四条に基づく協議があり得ないということは、これはないと思います。これは当然あってしかるべきものだと思っております。(「ちょっとおかしいじゃないか」「委員長」「委員長」と呼ぶ者あり)
  442. 小林英三

    委員長小林英三君) いや、待って下さい。発言を許しておりませんから……。鈴木強君。
  443. 鈴木強

    鈴木強君 条約局長がさっきから言っておるのは、第五条というのは、さっき僕が言ったわけなんですよ、ずばりなんだ。これはどうしても武力行為によって排除しなければならぬという攻撃を受けたことを言っておるのです。そうでしょう。そのときには何らの余地もないということを言っておるのです。明らかに食い違いなんです。そういって法制局長官と二人で違うような意見を言われては困る。
  444. 小林英三

    委員長小林英三君) 林法制局長官。(鈴木強君「法制局長官、あなたに聞いたのじゃない。」と述ぶ)
  445. 林修三

    政府委員(林修三君) 先ほど条約局長が自衛権の発動の要件について言われましたことを、私として否定したつもりは全然ございません。(「委員長おかしいよ」「条約局長に許可したのか」と呼ぶ者あり)
  446. 小林英三

    委員長小林英三君) いや、今法制局長官に許可したのです。その次に条約局長お願いします。
  447. 林修三

    政府委員(林修三君) 先ほど私が申し上げましたことは、条約局長の申しました第五条の武力攻撃あるいはこれに対する自衛権の発動の要件と実は矛盾したことを申し上げたつもりはないわけでございます。その場合に事前協議は、事前じゃありません。協議はあり得ないかとおっしゃいますれば、それは協議がないというはずはないということを申し上げたつもりであります。協議がその場合に絶対にないということは、これは言えないわけでございます。当然に協議があってしかるべきものだと思いますが、時間的余裕というものもないということはないと、私はかように考えております。
  448. 小林英三

  449. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 武力攻撃が起こりました場合に自衛権をもって対処するわけでございますが、先ほど申し上げました条件と申しますのは、それは客観的な条件でございます。自衛権を発動するにあたって、国際法上こういう要件を備えなければ自衛権というものは発動できないのだ。そのような要件として自衛権があり、それに対処するわけでございますが、一方振り返って、内側におきましてそういうふうな協議をするということは、もちろん向差しつかえないことでございまして、できることであると考えております。(「関連」と呼ぶ者あり)
  450. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君継続して下さい。
  451. 藤田進

    ○藤田進君 関連。これは一松委員発言をそのまま受けて答弁されておりますが、一松委員発言は、四条は全条約にこれは関係を持つのであって、五条しかり、従って事前協議をすることになっているんじゃないか、それを答弁すればはっきりするのだが、こういうことだったと思うんです。それは間違いない。従って、当然相談があってしかるべきだ、こういう御答弁ですが、やかましい議論で言えば、その事前の協議がいわゆる前置主義で、それがね。従って、急迫不正かつ組織的、計画的な侵略があるというときにおいて、なお、当然協議をしてしかるべきだ。当然にまたそれが要件となって、協議前置主義で五条は四条を受けているのだ。こういう答弁にも聞こえるし、余裕があればそれは協議してしかるべきだとも聞こえるし、その点が不明確のまま答弁されているわけです。そう思いませんか。そこらはやはりはっきりと、是非はまた賛否できるわけでありますから、その条約の精神というものは、はっきりとやはり答えられる必要がある。だれかそう言ったから、その方もちょっと薬を盛り込むように、こっちの方も盛り込んで適当にそういうことは卑怯です。そうであっちゃならぬ。
  452. 林修三

    政府委員(林修三君) 私は先ほど鈴木委員の御質問に対して実はお答えしたつもりでございまして、第五条からいって、四条は絶対の要件であるということを申し上げたつもりはございません。第四条に基づく協議があってしかるべきである、また当然あるであろうということを申し上げたわけでございます。
  453. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。簡単にやります。第五条の場合ですね。これは協議の余地がない、自動的な自衛権の発動になるが、その場合も第四条の場合に協議をすることがあり得ると、それはそれでいいわけで、わかります。その場合の協議とは、相手の攻撃というものが、国連憲章第五十一条に基づくものであるやいなや、これが一つ。もう一つは、外交交渉にゆだねることがあるかどうかを協議することが一つ。もう一つは、作戦行動を協議することがあるかどうかということが一つ。その三点ですよ。ですから、どれを協議するのですか。協議するというのは、外交交渉にゆだねるということを協議するのか、作戦行動を協議するのか。向こうの攻撃の内容について、それが自衛手段として適当であるかどうかということを協議するのか、どれをするのですか。協議の内容です。
  454. 林修三

    政府委員(林修三君) これは、協議は制限はないわけでございますから、何でも協議できるわけでございますが、ただいまの御質問について、いわゆる自衛権の発動し得べき要件に当たるやいなやということは、これは明白な問題でございまして、協議をしなければきまらないという問題では実はないと思います。しかし、もしも協議をしなければ判定できないという問題であれば、もっと低い実は問題でございまして、そういうことまでいかない問題の場合が多いのじゃないかと思うわけです。(「たとえば」と呼ぶ者あり)それで、あと外交交渉すべきやいなやということにつきましては、これは、そのほかの武力による脅威等がありました場合に、その場合にいかなる手段をとるべきか、外交交渉をすべきか、あるいは国連にどうすべきかということは、当然協議は四条からあるわけでございまして、それは私は五条の問題ではなかろうと考えております。(「それじゃ協議なんか要はないじゃないか、そのものずばりだ」と呼ぶ者あり)
  455. 小林英三

    委員長小林英三君) 質問を続行して下さい。
  456. 小林孝平

    小林孝平君 質問をしたのがわからんというのです。
  457. 小林英三

    委員長小林英三君) わからんと言われるあなた自身が続行して下さい。あなた自身御本人の……。今のは関連質問ですから……。林法制局長官
  458. 林修三

    政府委員(林修三君) 先ほどの羽生委員の御質問に対して一言落としましたので補足さしていただきます。  もちろんこの協議、いよいよこの第五条を発動しなければならないという問題の場合に、いかに対処すべきかということについては、当然これは協議の問題だと思います。
  459. 小林孝平

    小林孝平君 わからなくなつちまった。質問せよといっても、あなた、いろいろそれと違う答弁されたりいろいろやられるものだからわからなくなってしまった。
  460. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君、わからんと思うところを明らかにして質問して下さい。
  461. 小林孝平

    小林孝平君 さっぱりわからないんだよ。総理、わかりますか、あなた……。わからなくなったよ。(「だいぶどうもわからなくなった」と呼ぶ者あり)
  462. 小林英三

    委員長小林英三君) わからんところはどんどん究明して下さい。
  463. 小林孝平

    小林孝平君 委員長、いや、そういう形式的のことをおっしゃる必要はないのです。あなた、させないというのならそれでいいですけれども、やはりもうこれは採決すれば政府のあれは通るのですからね。だから総理、あなたこの間も言われたでしょう、国会の審議を通じて明らかにする、総理のこの間の御発言が……。
  464. 小林英三

    委員長小林英三君) 立ってやって下さい。
  465. 小林孝平

    小林孝平君 総理、この間の御発言ほんとう総理の心から言われたのなら……。
  466. 小林英三

    委員長小林英三君) 座席でやって下さい。
  467. 小林孝平

    小林孝平君 質問じゃないんだからね。
  468. 小林英三

    委員長小林英三君) 質問にして下さい。小林君、残り時間十五分あります。質疑を続行願います。——小林君残り時間十五分ありますから、質問を続行して下さい。
  469. 小林孝平

    小林孝平君 今ちょっと理事が相談しておりますから……。
  470. 小林英三

    委員長小林英三君) 本日の質疑は以上をもって終了いたします。明日は午前九時三十分より理事会を、午前十時から委員会を開会いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後七時四十九分散会