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1960-03-08 第34回国会 参議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月八日(火曜日)    午前十時四十一分開会   —————————————   委員の異動 本日委員北畠教真君及び曾祢益君辞任 につき、その補欠として吉江勝保君及 び基政七君を議長において指名した。   ————————————— 出席者は左の通り。    委員長     小林 英三君    理事            大谷藤之助君            佐藤 芳男君            館  哲二君            西田 信一君            秋山 長造君            鈴木  強君            松浦 清一君            千田  正君            大竹平八郎君    委員            泉山 三六君            太田 正孝君            木暮武太夫君            小柳 牧衞君            斎藤  昇君            重政 庸徳君            白井  勇君            杉原 荒太君            手島  栄君            苫米地英俊君            一松 定吉君            堀木 鎌三君            武藤 常介君            村松 久義君            村山 道雄君            湯澤三千男君            吉江 勝保君            米田 正文君            荒木正三郎君            加瀬  完君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            羽生 三七君            平林  剛君            藤田  進君            松澤 兼人君            東   隆君            基  政七君            辻  政信君            原島 宏治君            森 八三一君            岩間 正男君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 井野 碩哉君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 佐藤 栄作君    文 部 大 臣 松田竹千代君    厚 生 大 臣 渡邊 良夫君    農 林 大 臣 福田 赳夫君    通商産業大臣  池田 勇人君    運 輸 大 臣 楢橋  渡君    郵 政 大 臣 植竹 春彦君    労 働 大 臣 松野 頼三君    建 設 大 臣 村上  勇君    国 務 大 臣 赤城 宗徳君    国 務 大 臣 石原幹市郎君    国 務 大 臣 菅野和太郎君    国 務 大 臣 中曽根康弘君    国 務 大 臣 益谷 秀次君   政府委員    法制局長官   林  修三君    警察庁長官   柏村 信雄君    調達庁長官   丸山  佶君    外務省経済局長 牛場 信彦君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    運輸省海運局長 朝田 静夫君    労働省労政局長 亀井  光君   最高裁判所長官代理者    事 務 総 長 横田 正俊君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十五年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十五年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 小林英三

    委員長小林英三君) これより予算委員会を開会いたします。  先ほど開きました委員長及び理事打合会の経過について御報告を申し上げます。昨日の委員会において、荒木小林委員質疑のうち、台湾帰属に関する質疑に対し、政府側答弁について速記録を調べましたところ、社会党側から疑義がある旨の申し出がありましたので、理事会で協議いたしました結果、本日の委員会冒頭荒木委員から再質問をしていただくことに意見の一致を見ました。  以上御報告をいたしました通り運営することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小林英三

    委員長小林英三君) 御異議はないものと認めます。
  4. 小林英三

    委員長小林英三君) 昭和三十五年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三件を一括して議題といたします。
  5. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 昨日台湾帰属問題について、私から岸総理にその見解をただしたのであります。これについての答弁は、台湾帰属中国帰属するという旨の答弁がございました。私はその意味において了承をいたしたのであります。ところが、その後この関連質問において、小林委員から、現に中国の中には二つ政権があるじゃないか、そのどちらをとっているのか、こういうふうな質問に対して岸総理は、中国と言うのは中華民国政府をさすのである、こういう答弁をせられたのであります。これはこういうふうに述べておられます。「日本としてはこの中国というものを代表する政府として中華民国政府というものを認めております。これと平和条約を結んだわけでありますから、それに帰属すると言ったのであります。」こういう答弁をしておられます。これは岸内閣の新しい解釈であると、かようにまあ考えるわけです。従来政府がとっておった態度でない、こういうふうに考えますので、その答弁については私は了承ができないので、重ねてまあ質問をする次第であります。
  6. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 多少私の言葉が不十分である点もあったとも思いますが、私の申し上げた趣旨は、中国に、カイロ宣言のときには中華民国という言葉が使ってあるから、日本文の翻訳はそうなっておりますが、それは要するに、その当時は政府は一つであったからいわゆる中国という考え方をすべきものであろうと思います。中国に、これを台湾その他のものを引き渡すということがカイロ宣言で明らかにされた、それを、ポツダム宣言日本が受諾した関係上、これはそういうことを踏襲しておるわけでございまして、サンフランシスコ条約からだけ申し上げますというと、日本としてはこの領土権を放棄しただけであって、こういう関係から見て中国帰属するということを、帰属するということを日本としては承知せざるを得ない立場にある。そうするというと、中国というものを、それでは政府が事実上二つできたわけでございますから、どちらの政府正統政府として認めるかということについては、それは大いに議論のあったところであったけれども平和条約を結んだときの趣旨から見るというと、中華民国政府というものを中国正統代表者と見てこの条約を結んだという立場に当時あったわけでありまして、この政府によって代表されておる中国帰属すると、こういうふうに岡崎国務大臣も申し上げたんであろうし、われわれもそういうふうに考えておると、こういうことを申し上げたわけでございますから、その間に食い違いはないものとわれわれは考えておりますと、こういうことを申し上げたのであります。
  7. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 重ねて総理の釈明でございますが、やはり私はこれを了解するというわけには参らないのであります。と申しますのは、この日華条約が結ばれるときに、伊達委員からこういう質問がなされております。「台湾中華民国のものと承認したのであるか、」こういう質問に対しまして、岡崎国務大臣は、日本としては「中国に属するというふうに考えております。」こういう答弁をいたしているのであります。さらにこの日華条約について、中国という言葉中華民国政府という言葉とが出て参ります。その中で岡崎国務大臣は、「中国全般に関する事項に触れた場合には中国」いわゆる台湾とか、中国大陸とか、そういう区別をして考えないで、これをまとめた全般として考えた場合は中国という言葉を使っている。「それから全般でなくして現在中華民国政府が支配している地域に関する事項については、中華民国という特に区別した名前を付けてこの条約の中で表現しておるというふうに御了承願いたい。」と言っているわけであります。すなわち岡崎外務大臣は、中国という場合は、これは台湾とか大陸とかいう区別なしに、まとめた中国全体をさして総称する言葉である。そうして台湾及び澎湖島に関して特別な区域に限定した場合に中華民国、こういう使い分けをしていることを了承してもらいたいと言っているわけであります。そういう立場に立って、台湾帰属問題について、これが中華民国に属するのか、こういう質問に対して、「中国に属する」というふうに、帰属すると考えている。こういう答弁をいたしているのであります。そうすると、これは岸総理が言われるように、台湾中華民国政府帰属する、こういう見解をとっておらない。これは中国帰属するものだ。こういう見解をとっていると思われるのであります。そこに今の御答弁相当食い違いがあるということが第一点。それから第二点として、この点は中国代表する政府として中華民国政府というものを認めた。こういうお話ですが、日華条約についてはその点はずいぶん論議されております。結局吉田総理曾祢益君の質疑において、この中華民国中国全体を代表する政権というふうに認めていないということが明瞭であります。私はここで速記録を読む煩を避けたいと思うのですが、これは明瞭にするために申し上げたいと思うんですが、曾祢委員質問の要旨は、「日華条約によって日本政府は、この中華民国政府を全面的な中国の主人として承認したものではない、こういうふうに考えるが、その点は総理はどうか。イエス・オア・ノーではっきり答えてもらいたい。」こういう質問に対して吉田総理は、「これは条約にもはっきり書いてありますが、現に中華民国政府の支配しておる土地の上に行われる事実を認めて、その支配せられておる領土を持つ中華民間との間に条約関係に入る。将来は将来であります。併し目的は終りに一中国全体との条約関係に入ることを希望して止まないのであります。」さらに曾祢委員が「ずばりと言えば、全面的な承認ではないとこういうことでございましょう。」こういう質問に対して、当時の吉田総理は「そういうことです。」こういうふうに答えている。ですから、日華条約が結ばれた当時の政府の責任的な解釈からいえば、中華民国中国代表する正当な政府としてこの条約が結ばれていないということは明白であります。そういう点で、今御答弁になりました総理の考えというものが非常に変わってきている。こういうふうに思いますので、私としてはなお了承できないと申しているのであります。
  8. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今申し上げました通り、いわゆる広い意味における中国の一部であるという考え方につきましては、私と当時の何とちっとも違っておらぬと思います。ただ、当時の何から申しまして、その中国代表、広い意味中国代表する政府としてどういうふうに認めるかということは、大いに議論があるところであると私は思います。思いますけれども日本として、たとえば戦争終結の問題を規定しているというようなことは、われわれは初めから台湾━━当時戦争台湾においては行なわれておらないのでありまして、われわれの当時は領土であったわけなんですから、その戦争終結というようなことを考えてみるというと、やはりこの中華民国との間に結ばれた条約は、当時日本としては中国代表する政府としてこれとの間に条約を結んだ、こう解釈すべき問題であると私は思います。事実上当時の中華民国が支配しておるところがどういう地域であるかということは、もちろん当時議論された通りであろうと思います。しかし、条約内容から見るというと、当然そういう条項を含んでおるわけでありますから、日本としては一応中国代表する政府として中華民国のことを認めてそうしてそれとの間に平和条約を結ぶ、こういうふうに解釈すべきであろうと思います。
  9. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 なお私は了承できませんが、この問題であまり時間をとるということは運営上恐縮に存じますので、もう一点だけ申し上げておきたいと思います。  この問題について、岡崎国務大臣はこういうふうに答弁されておるのであります。「今中共政府中華民国政府二つあるわけであります。中共の政府はいわゆる中国全部の領域を主張し、中華民国政府中国本土全部を含んだ中国全部を代表する政府である、従って領域全部であると主張しておる。」それを第三国がどちらがどういうふうにということは内政に干渉するということになる。いわゆるどちらの政府正当政府であるかというようなことを第三国がかれこれ言うということは内政干渉である、こう言っております。そうしてこの条約審議において、最後まで正当政府であるということは、政府見解を承認していない。だからその意味において、私は今の総理見解ですね、御答弁はどうしても満足できない。しかし、先ほど委員長理事の打ち合せ等があって、この問題にあまり多く時間をとるということは恐縮でありますので、この問題は次回において、他の機会において、なお十分これは質疑し、明瞭にしておきたいということを申し上げたいと思います。
  10. 小林孝平

    小林孝平君 関連。ただいま荒木委員総理との質疑応答を聞いておりますと、非常に重大な問題が出てきたわけであります。それは、荒木委員も指摘されましたように、日華条約締結当時は、この中華民国は全中国を支配する唯一正当の政府ではないという立場でもってやっておいでになります。ほとんど現在までそういう立場をとっておられます。ところが、ただいまの御答弁は、あたかも昨年の暮締結されましたベトナムの賠償問題の際に、政府がとりました……法制局長官、ちょっと総理によく聞いてもらわなければならぬのです。終わってから相談して下さい。私はすぐ答弁していただかなくてもいいのです。よく相談してから答弁してもらってもいいのです。発言中に要らぬことをするな。ベトナムの際には、南ベトナムが全ベトナムを支配する唯一正当の政府であるという見解を、政府はわれわれの反対を押し切って強行されました。今までの中華民国に対する態度は、このベトナムに対する態度とは全然違ったものであったのです。ところが昨日から本日にかけての論議を見ますと、昨日の速記録にも明らかなように、中国というものを代表する政府として、中華民国政府というものを認めております。こういうふうに言われ、さらにこれを敷衍するように、非常に強い言葉で、この唯一正当の政府であるかのごとき発言漸次答弁を通じて移り変わっておるのであります。これは重大なことであります。おそらく総理は、お考え違いになってそういう御発言をされたのだろうと思いますので、この際明らかにして、その誤りであることを訂正していただきたいと思います。
  11. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日華条約のこの条項によりましては、経済条項等は、現に支配しておるところでなければ実際適用を受けないと思います。また先ほど申しましたように、戦争終結というようなことを規定しておるということは中国大陸において戦争が行なわれたわけでありますから、そういう点において、現に支配しておるところだけの戦争終結ということは本来意味をなさないことでありますから、そういうような条項を含んでいるわけでございます。ただ、この領土権の問題に関しましては、先ほど荒木委員も当時の外務大臣答弁をお読みになりましたように、両方政府の主張は、全中国に対してお互いがその何を主張し合っている、こういうことであります。その間の領域がどういうふうになっているのだということを他からかれこれ言うことは、今おっしゃる通り内政干渉だと思います。そういうことを私が言っておるわけではないのでありまして、日本としてはサンフランシスコ条約によって放棄しておる何であるから、これがどこに帰属するかということについて発言の何らの権利をもっておるわけでもないし、またそのことを言おうとしておるわけでもございません。われわれが放棄しておるその帰属は、サンフランシスコ条約に署名したところの連合軍側において決定する。ただこれの領土の、戦争終結後における帰属カイロ宣言においてきめており、またそれを内容としておるこのポツダム宣言というものを日本が受諾しておる限りにおきまして、いわゆる当時の表現もいろいろありますけれども、結局、広い意味における中国に属するということを連合国との間において話し合ったカイロ宣言というものを、日本としては承知しておるわけでありますから、これに異議を唱えるとかどうするかということは、これはできないことであります。本来これはどこに属するかということは、日本解釈すべき何らの権利も私は持っておることじゃないと思います。ただ、今言った中国との間に、今申したようなカイロ宣言等がございますから、それを承知しておる。それに対してわれわれがそれを否認する、それに対して異議を言うというような立場にない。結果としてそういうふうな解釈問題について先ほどから申し上げておる。日本がこれはどこに帰属するのだというようなことを言うような何らの権利もない、そういう立場にもないのであります。またそういうことを政府としてしょうというわけでもございません。ただ解釈問題として今言ったような関係から、中国帰属するということを日本としては承知しておるということでございます。しこうして日華条約を結びましたときにおいて、この日本との間の平和条約戦争終結をさせる平和条約を結び、将来友好関係を続けていくというこの条約締結にあたりまして、その範囲がどこに及ぶのだということになりますというと、条項によって、今申しましたように戦争終結の問題であるとか、経済関係の問題であるというようなことで、適当に解釈していくよりほかない、かように考えているわけでございます。
  12. 小林孝平

    小林孝平君 総理はわれわれが今この貴重なる時間をさいて論じていることの論点をそらして御答弁になっておる。われわれは、台湾帰属は昨日から申しておるように、日本がどこに帰属するかということをきめることはできないのみならず、これは世界もきめることはできない。これは連合国が合議してきめることでありましょうが、そういうことを言っておるのじゃないのです。この問題に関連して、あなたはこの帰属をきめる際に中国というものの解釈を曲げて解釈をされましたから問題になっておる。そこをわれわれはただしておる。そこで今までは政府立場というものは中華民国というものは中国唯一正統政府であるという立場をとっておらない。少なくとも昨日までとっておらないのに、昨日岸総理はこういう発言をされ、今日に至ってはさらにそれを押し進めて、あたかも南ベトナム統一政権であるという、昨年のあの論争のとき政府最後まで主張された態度と同じような態度をとったということに非常に問題があるのであります。岸さんはそういう点をことさらに避けられて、そうして自分の昨日発言された言葉合法化されようとしておる。合法化のみならず、さらにそれを一そう押し進めようとしておるところに問題があるのであります。そこでこれは理事打合会の際に相当の時間を費やして論議を許されたのでありますけれども、非常に重要な問題でありますので、この問題は後日に譲りまして、岸さんは大いに反省されまして、次の機会には、もう少し明確な態度を持って御答弁をされんことを望みます。
  13. 羽生三七

    羽生三七君 関連して。今の小林委員発言と大体同じなのですが、前の日華条約審議するときの委員会大勢は、私はそのときは関係しておりませんが、その大勢は、台湾が全中国本土に対して主権を持つという意味でなしに、現に事実的に成立をしておる台湾という現実の事態を承認する意味で、その主権本土に及ぶとか及ばないとかいうことを別にして、事実関係として交渉に入る、こういうことだったのです。これは今の速記録を読まれたことから見ても間違いのない事実であります。だから台湾政府主権中国本土に及ぶとか及ばないとかということは、全然吉田総理も言ってないし、岡崎外務大臣も言っていない。また今の政府の言われたことは、抽象的には非常に立場が苦しいのでよくわかります。わかりますが、それからいくと非常に発展している。単に現実の問題として存在している台湾を無視するわけにいかないので、私ども立場は違うけれども、それを無視するわけにいかないので、一応台湾というものの事実関係に入る、こういうことだったのです。それを今の台湾政府主権中国本土に及ぶという解釈は、これは非常に私は大きな発展だろうと思う。ですから、これは昨日荒木委員が、この前岸総理台湾に行かれて蒋介石総統と会ったときに、台湾本土反抗云々のことを質問されましたが、そんなことを言ったことはないと岸総理はおっしゃった。実は台湾からお帰りになった直後、私は外務委員会で、岸総理発言は後日必ず中国日本敵視政策として問題にするに違いないから、この発言は取り消したらどうか、私は数回、回を重ねて申し上げた際に、岸総理大臣は、いや、それは武力を意味することでない、精神的な意味で言ったのだというふうに訂正されましたが、そのときから考えてみて、また昨日来の御発言が将来私は何らかの問題を起こさなければいいがということを杞憂する一人であります。従って今私はここでどうこうということは申しませんけれども小林委員発言通り、あとでゆっくり御相談の上、私はしかるべき明白な回答を出されることが適当だろうと思います。私は意見だけ申し上げておきます。
  14. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど来申し上げておりまするように、私は領土権がどこに及ぶとか、領土がどういうふうになっているとかというようなことを申したつもりは毛頭ないのでありまして、その意味において、私自身が先ほど来申し上げている考え方は、決して日本としてこの領土権がどこにあるとか、この二つ政府の間の関係をどういうふうに領土権の上において考えるかというふうなことは全然考えておらないのであります。問題は、先ほど来から申しますように、中国に属するということを、帰属するということを、日本として承知しているということでございまして、しこうして中華民国政府日華条約を結びましたことは、その条項によりまして、いろいろな条項を含んでおりますから、それがどこに対して効果があるかというような解釈の上から申しますと、経済条項等は現に支配しているところの地域に限ることは当然でありますが、戦争終結というようなことを意味していることは、これはやはり中国代表する政府として、これとの間に一切の戦争関係を終結するということでなければ実は意味をなさないことでございますから、そういうような意味で申し上げたことでございまして、決してこの両方領土権をどういうふうにするとか、支配権が、主権がどういうふうに及んでいるというようなことを申し上げたのではないのでございますから、御了承願います。
  15. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これで質問を終わります。この問題はまだ明白になっておらないので、後日さらに政府との間に明らかにしたい、かように考えますから、この問題は留保いたします。
  16. 小林英三

  17. 松澤兼人

    松澤兼人君 昨日の質問冒頭におきまして新しい安保条約が、いわゆるわが国の自主権をどの程度に回復したかという問題から、米軍基地の問題に発展してきまして、いろいろと審議が中断されたのであります。本日は基地の問題につきましては、資料が提供されております。しかし、四件、七件、八件あるいは九件くらい、十件以内の施設要求拒否の概要という書類では、私どもとしては納得いかないのであります。また同時に、昨日も質問の通告を追加しておいたのでありますが、一九五七年の岸・アイク共同声明によりまして、米軍のすみやかなる撤退、あるいは漸減の方針、これを時期といたしまして、前と後における在日米軍基地の件数、あるいはその広さ等の資料も質問通告として出しておいたのでありまするが、それが出ておらない。一応昨日の質問なり、あるいは質問の通告をいたしましたこれらの一九五七年共同声明前後の基地使用の状況等につきまして、防衛庁長官から御答弁を願いたいと思います。
  18. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 提供施設区域の推移の状況を申し上げます。  講和発効時、すなわち二十七年の四月二十八日には、件数から申しますと、二千八百二十四件あるわけであります。三十年の六月一日に岸・アイク共同声明のときには四百五十一件になっております。現在は、三十四年一月二十一日現在でありますが、二百五十五件になっています。土地につきましては、講和発効時、二十七年には四億九百十七万坪、それが三十年の岸・アイク共同声明のときには二億九千百七十二万二千坪、現在は一億百四十六万七千坪になっています。建物につきましては、講和発効時におきましては四百十万三千坪であります。岸・アイク共同声明当時は二百八十一万六千坪、現在すなわち三十四年一月十一日には百六十四万九千坪、こういう状況でございます。
  19. 松澤兼人

    松澤兼人君 この問題につきましては、さらに一般質問あるいに分科会等において質問申し上げたいと思います。  そこで問題は、すでに衆議院の予算委員会なり、あるいは他の委員会などにおいて論議せられたことでございますけれども、新しい条約と憲法の関係の問題であります。これは、第三条の能力の維持発展の問題、あるいは武力攻撃に対する行動に関する問題等の問題に関連してくるのでありますけれども、たとえば、五条の、共通の危険に対処して自国の憲法の規定と手続によって、わが国においては自衛隊が行動を起こすということであります。この自国の憲法の規定、手続という意味はどういう意味でございますか。
  20. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 自国の憲法手続に従うということがありますが、アメリカ憲法には、憲法上その手続等があります。日本の憲法については、第九条によって規定されたことがありますが、どういう出動手続をするかというようなことは、自衛隊法に規定されておりますので、その自衛隊法の手続に従って出動する。こういうことに相なっております。
  21. 松澤兼人

    松澤兼人君 条約によりますというと、明らかに憲法上の規定及び手続ということになっているのでありまして、今お話になりました、自衛隊の出動については自衛隊法があるということでありますならば、条約のうたい方としては、憲法及び国内法の規定及び手続というふうにならなければならないのであります。九条の問題は、これは意見の分かれるところでございますけれども、自衛力がある、あるいは自衛隊があるということを単にあなた方が解釈しているだけであってわれわれは、そういう解釈がいけないということを言っている。あるということ、その憲法の九条は自衛力を否定しているものでないから自衛隊というものはあるのである、あり得るのだということはあなた方のお考えであります。しかし、この自衛隊が行動をするという場合の規定は、第九条によっては解釈できないのであります。この点は、岸総理に……。
  22. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 自衛隊、自衛権の問題は、憲法の九条の解釈として、当然不在な、不当な侵略があった場合に、これを実力をもって排除するというのが自衛権の内容でございますから、われわれとしては、この憲法の規定に従って、そういうような不当な武力攻撃が加えられた場合に、これを排除するために実力を用いるということは、これは私は、憲法の私ども解釈から当然あり得ることであります。日本には、たしかに憲法上にその場合の手続を規定した手続はございません。しかしこの条約は、日米両方何しているわけでありまして、アメリカの方には、憲法上にも何かそういう手続に関する規定があるように伺っております。しかし、日本において、憲法の上において、自衛権によって、武力攻撃が加えられた場合に、これを実力を行使しして排除するということができるというふうに解釈をいたしましても、それが現実にどういうふうに行動し、どういうふうにやっていくかということについては、憲法に基いて考えられているところのこの自衛隊法でございますから、先ほど防衛庁長官がお答え申し上げましたように、自衛隊法の規定、手続によって自衛権を発動し行動するということになってくると思います。
  23. 松澤兼人

    松澤兼人君 アメリカ側においては、憲法上の規定及び手続によって行動する、日本側は自衛隊法によって行動するのだ、こういうことは、条約の対等性ということから考えてみて、これは全く問題にならない。アメリカにおきましては、憲法上の手続、規定が国内にあるから、条約として憲法上の規定及び手続といううたい方をしている。日本にはそれがないから、あるいは国内法としては自衛隊法がある。それでは対等の条約というふうにはならない。この点はいかがですか。
  24. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほどお答え申し上げました通りでありますが、今、日本には憲法上に手続をきめているものはございません。しかし、自衛隊法というものは憲法に基いて作られている法律でございますから、これに日本が従うことは当然でありまして、従って私は、別にそういう解釈から対等性がないというふうな問題ではなくして、それはその国の法律、制度の建前からくるわけでございますから、別に差しつかえないと、こう思うのでございます。
  25. 松澤兼人

    松澤兼人君 別に差しつかえがないという問題じゃない。これは、日本において正当に条約上それをなし得る体制があってから、あるいは法体系があってから初めてそういうことが言える問題であります。たとえば、韓国におきましても、やはり戦争に参加するとか、あるいはまたは宣戦の布告をするとかいう権限は大統領にある。しかし、それには立法院の議決が必要であるとかいうことがある。あるいは中華民国におきましても、総統が条約締結し、あるいは宣戦を布告し、講和をなす権限がある。それには立法院の同意を必要とするということがある。フィリピンにおきましては、議会が各院の総議員の三分の二以上の多数の賛成をもって戦いを宣する権限を有するということになっている、アメリカは、連邦議会において戦争を宣言する権限というものを持っている。こういう手続があるから、条約としては、憲法上の規定及び手続によってということが規定されるのであります。日本には、これに相当するいかなる憲法上の規定もないにもかかわらず、対等の立場においてこういう規定をするということは、総理は、それはあたりまえである、差しつかえないと言われても、国際法上あるいは外交上の通念からしまして、これは無理であるということははっきりわかる。無理でないとお考えでございますか。
  26. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは、日本の憲法の規定がよその憲法と違っておるわけでございまして、普通には、憲法上の手続に従ってというふうに書けば、それで済むわけであろうと思いますが、日本におきましては、特に憲法の規定及び手続に従ってという、この規定を入れませんと、手続が何も憲法上に直接に書いてございませんので、そういう意味において、従来のほかの条約等に使っている字句とは違った字句を使って、日本に適用するように規定をいたしたわけでございます。ちっとも無理ではないと考えます。
  27. 松澤兼人

    松澤兼人君 総理は無理でないというふうに言われるのでありますが、無理でなければ、言葉を変えたらいい。「自国の憲法及び国内法の規定及び手続に従って」、こうするのが当然であります。なぜそれに対してあなたの方は、総理としては、これに対する特殊の立場を表明して、日本に対してはこういう規定ということをなさらなかったのですか。
  28. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今申しましたように、日本憲法の特殊の事態を考えまして、特に「憲法上の規定及び手続」と、こうやったわけでございまして、憲法上の規定ということを特に明示したのは、日本の独特の立場を憲法の立場を、意味して書いたわけでございます。ほかの条約等から見まするというと、特にその点が違っておるのも、日本憲法の立場を考えたわけでございまして、それ以上ほかにつけ加えることはないと思います。
  29. 松澤兼人

    松澤兼人君 ほかの条約と比較してこういう規定をおいたということが、日本の特殊性を表明するものであると、こういうお話であります。しかし、それは全く話が違うのであります。たとえば、米華の相互防衛条約におきましても、自国の憲法上の手続に従ってというふうに書いてある。米韓相互防衛条約におきましても、自国の憲法上の手続に従ってと書いてある。さらに、米比の場合におきましても、自国の憲法上の手続に従ってと書いてある。その他各種の条約におきましては、みな同じような表現の仕方をしている。これはそれぞれ━━あるいは中華民国であるとか、あるいは韓国であるとか、あるいはフィリピンであるとかいうものは、憲法上の自国の中における戦争に関するところの規定及び手続を持っているからこういうことをいっている。日本の特殊性があるからといううたい方ではないのであります。そこで、日本の特殊性ということを考えるならば、今申しましたように、憲法上の規定及び国内法の規定に従ってと、こう書かなければならない。これをやらないで、他の条約と同じようにしている。特殊性というものは少しも認められてない。これはどうですか。
  30. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん、ほかの国におきましても、これに関する国内法もそれぞれあると思いますが、今お話のように、よその条約におきましては、憲法上の手続に従ってと、こう書いてありますから、特に憲法上の規定ということを入れましたのは、憲法九条の規定、これに従うべきことを特に明示したわけでございますが、御承知の通り、他の国と違って、日本の場合において、武力攻撃を排除するということについて、日本が交戦権を持たないというふうに憲法でも明示されております。こういうことは、ほかの国の憲法にはないわけでございまして、そういうような点を特に考えて、憲法上の規定と、九条を特に考えたわけでございます。そして今も申しましたように、よその条約におきましては、そう書いてあっても、国内法に従うことは当然でございまして、また日本におきましても、その意味におきまして、憲法に基づいて作られたところの法律である自衛隊法の規定に従ってやることは当然でございまして、これを排除するような意味は一つも持っておらない。かように考えております。
  31. 松澤兼人

    松澤兼人君 自衛隊のことにつきましては、これは、自衛隊というものに対するいろいろの意見がある。しかし、じゃこれが他国の場合におきましては、軍隊を動かすということは、やはり憲法上の規定があって、それを受けて国内法が発動するということになると思う。ところが、日本の場合におきましては、そういう自衛権の発動ということにつきましては何らの憲法上の規定がない。ただ、国内法として自衛隊法というものがある。ですから、憲法の規定を受けてたとえば自衛隊が行動するというような規定は何らないのであります。直接、条約から飛び越えて自衛隊法の発動、自衛隊の出動ということに来る。これは明らかに条約としては無理な考え方であります。それを少しも差しつかえはない、自国の憲法上の規定及び手続に従ってと、憲法上には、行動に関する規定というものは全然ないじゃないか。どういう根拠で日本の自衛隊が行動するという、そういう事態が発生しますか。
  32. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん、日本の自衛隊が行動する場合というものにつきましては、憲法九条の趣旨及びその範囲に限られることは当然でございます。そのことを受けて、自衛隊法が手続を規定しておりますから、これに準拠してやっていくと、こういう意味でございまして、なお、各国の他の条約との関係であるとか、アメリカなんかの法律、憲法の関係等につきましては、御質問ございますれば、法制局長官をして答弁をさせます。
  33. 松澤兼人

    松澤兼人君 それじゃ、してもらいましょう。
  34. 林修三

    政府委員(林修三君) 御承知のように、各国とも憲法にいろいろ、戦争宣言あるいは宣戦等についての規定は書いてございますが、たとえばアメリカ憲法で申しましても、憲法で直接規定しておりますものは、戦争宣言の規定だけでございまして、そのほかのいわゆる軍事行動等については、大統領の権限に属しておるわけであります。こういう点におきまして、やはり国内法の問題は残っておるわけでございます。しかし、御承知の通り、各国の相互防衛条約あるいは、安全保障条約というものは、大体みな憲法上の手続ということだけを規定しておるわけでございますから、わが国の場合においては、御承知の通りに、憲法上の手続というものがないわけでございます。そこで、むしろ憲法第九条のワク内ということをはっきりさせる意味で、憲法上の規定という言葉を入れたわけであります。この憲法上の規定というものは、もちろん第九条のワク内という考え方であります。その範囲内において自衛隊法があるわけであります。その自衛隊法の規定を排除する趣旨ではもちろんございません。この点は、先ほど総理がお答えいたした通りでございます。
  35. 松澤兼人

    松澤兼人君 仮定して御質問をするわけでありますけれども、武力攻撃が行なわれた場合には、戦争宣言等の手続なしに、直ちに自衛隊が行動するということになりますか。また、そういうことは、国際連合の五十一条なりの関係におきましてどういうふうにお考えでございますか。
  36. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん、日本の憲法によれば、武力とか、そういう戦争宣言というようなことは、これはいたさないのであります。また国連の規定五十一条も、そういう宣言があることを必要とするものとは私ども解釈いたしておりません。
  37. 松澤兼人

    松澤兼人君 国際法上の問題としましては、やはりたとえば真珠湾攻撃のように、攻撃が開始されて、あとから戦争宣言をするというようなことは妥当でないという見解が通念であると思います。そうすると、日本におきまして武力攻撃があった場合には、当然宣戦の布告なり、戦争参加の宣言ということがなされないで行なわれるということになりますか。
  38. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本の場合におきましては、安保条約の場合におきましてもそうですが、自衛権というものの本質上、他から現実に武力攻撃が加えられたときに、これを排除するためにだけできるわけでありまして、こちらから攻撃していくということではないのであります。従って、今お話のような説例がありましたが、そういう事態はこの関係においては起こり得ない、かように考えております。
  39. 松澤兼人

    松澤兼人君 それでは、もう一つお尋ねいたします。  日本戦争宣言をやらないということは、これは、もちろん憲法に規定はございませんし、国内法におきましても、戦争の宣言をやるというような法規はございませんから、やらないかもしれません。やらないのは当然でございます。しかし、もしかりに武力攻撃があった場合に、戦後の処理といたしまして、日本相当な莫大な被害があったと、こういう場合に、戦後の処理としていろいろの外交交渉が行なわれると思います。戦争にならない。日本戦争じゃないのだ、戦争じゃないからということで、賠償等の問題は起こらないということになりますか。
  40. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほどもお答え申し上げましたが、われわれが、不当に外国から武力攻撃を加えられて、その場合に、自衛権が発動して、これを排除するわけでございますから、私は、普通の場合、今までの観念でいうところの戦争宣言して戦争をするというようなこととは違うと思います。この事態がおさまった後においての保障をどうするかとか、あるいはその原状回復とか、あるいは損害賠償というような問題をどうするかというような問題は、これは事態処理の問題でございまして、それとは関係ないと思います。
  41. 松澤兼人

    松澤兼人君 そういうことと関係ないということでは済まされないと思うのであります。しかし、その問題からさらに進みまして、日本の自衛隊法の中には、武力攻撃、それからカッコして、武力攻撃のおそれある場合というふうに書かれておるのであります。そういう点の規定があると思うのであります。そこで、いわゆる内乱条項でありますけれども、今度の新安保条約によりますと、内乱条項というものがない。そうしますと、自衛隊は、大規模になっておるから、あるいは騒擾に対しては行動する。総理大臣が出動を命ずる。しかし、それは国会の承認を必要とするということになっておるのであります。そうすると、自衛隊の性格としましては、この新安保条約五条による、米軍とともに武力攻撃に対して行動する場合は一つ考えられる、それから、内乱あるいは大規模の騒擾等に対する自衛隊の行動ということが考えられる。そういうことを考えてみますというと、自衛隊の性格の中には、明らかに別個のものがあるというふうに考えるのであります。この点、別個の性格ということを十分に総理はお考えになっていらっしゃるかどうか、この点をお尋ねいたします。
  42. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 自衛隊法の場合におきまして、治安出動の場合と防衛出動の場合があることは、御存じの通りであります。この二つは従来からもありますし、将来においても、その規定に従っていくという考えでございます。
  43. 松澤兼人

    松澤兼人君 いや、そういう自衛隊法の中の問題は、私もわかるのであります。そこで五条はいわゆる共同してという言葉は使ってない。ただ、共通の危険というふうな言い表わし方をしておるわけでありますが、いわゆる行動の問題につきまして、共同でやるのか、あるいは別個に行動するかという問題が残りますけれども、かりに同時に、並行的な場合でもよろしい。共同しないという場合でもよろしいのであります。米軍それから自衛隊、同一の原因に対して、まあ、並行的でもかまわないですけれども、とにかく行動した。そうすると、日本の自衛隊は、総理大臣が国会にその承認を得なければならない。もし国会が不承認の場合には、同一の原因が発生し継続しておるのに、もし国会が不承認をした場合には、自衛隊は直ちに撤退しなければならない。そうすると、米軍だけが戦う、行動するということになるわけであります。こういう事実はあり得ることでございますか。
  44. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん総理大臣が、そういう場合の、共通の危険に対処するために自衛隊が行動する、その行動について、国会の承認を得ることについて国会の承認を得ることができなければ、日本としては行動ができないことになることは、われわれ国会の承認を得なければならぬということから当然であると思います。しかし、ある武力攻撃が現実に加えられて、これに対処するところの必要な手段として政府が考えておることでございますから、現実のそういう事態自身に対処することにつきましては、十分に政府としては国会の御承認を得るように努力をしなければならぬことは、これは当然であります。しかし、不幸にして承認を得ることができなかったということになるならば、自衛隊の行動はとめなければならぬ。
  45. 松澤兼人

    松澤兼人君 そうしますと、国会が不承認という決定をいたしました場合には、米軍だけが発生したところの武力攻撃に行動を継続して、自衛隊は撤退するということはあり得るというふうにお考えでございますね。
  46. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 現実の実際の場合にそういうことがあり得るかどうかということは、これは一つの仮定の問題でございますから、何とも申し上げられませんけれども、法律の解釈としては、もちろん、先ほど申し上げたように、自衛隊の行動は、不承認であった場合においては、とめなければならぬ、こう思います。    〔委員長退席、理事館哲二君着席〕
  47. 松澤兼人

    松澤兼人君 具体的な例でございますけれども、たとえば竹島問題のように、これは武力攻撃による占拠といいますか、占領というふうには考えられない。これに対しては武力攻撃ではありませんから、結局日本としては、これに対して何らの発言権もないということになりますか。
  48. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本の考えておるところの領土権が、他から侵略されるということは不法侵略でございます。しかし、それが武力攻撃によってそういう侵略が行なわれたかどうかというような問題について疑義があるようなものにつきましては、もちろん、これは両当事国において十分に話をし、協議をすべき問題であるとかように思います。
  49. 松澤兼人

    松澤兼人君 政府は、竹島の問題に例をとってみましても、そういうことを国会において質問されれば、外交交渉なり、あるいはまたはその他の外交上の手続によって処理すると言っておりながら、いつまでたっても処理しないのであります。そういう状態を考えてみまして、私どもは、いわゆる日本の外交上の自主権といいますか、あるいはこの安保条約が対等、平等の自主性のある条約であるということにはどうしても考えられないと思います。本来から言えば、自衛隊の行動は、この新しい条約の規定に基づいて、たとえば、かりに条約第五条に基づく自衛隊の行動に関する特別の法律というものが必要である。これは明らかにそうでなければ、自衛隊を動かし、あるいはまた場合によっては、あなた方は共同行動だと言わないと思いますが、実際上は共同行動をとり、しかも、国会不承認の場合にはどうするか、こういうことについての今後の規定というものが、まことに明確を欠くのであります。特別の立法があってそういうような自衛隊の行動を規制し、もしくは行動させるというそういう関係が、条約との関係においてなければならないと思うのであります。別に、私はそれを作れということを言っておるわけではないのですけれども、そうでなければ、条約及び憲法、国内法の関係におきましては、あいまい模糊たるものがいつも残って参りまして、行政府でありますところの総理大臣、あるいはまた内閣なりという一方的な解釈によって自衛隊を動かし、そして戦争状態に突入する危険が将来必ず起こってくる。それに対しましては、法律上の手続によらないで、行政府の責任において自衛隊を、いわゆる軍隊を動かし得るというそういう権限が出てくるわけであります。この点は非常に心配でありますが、そういう戦争に突入する。あるいは参加する場合における岸総理としての信念をお伺いしたいと思います。
  50. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今度の安保条約の五条によって、日本の自衛隊が出動するということの前提として、条約にもはっきりありますが、武力攻撃が日本領土内に加えられたということの条件があるわけでございます。このことは、具体的にきわめて明瞭な事実でありますから、それに基づいて自衛隊法の手続を進めていくということにつきましては、私は何ら不明確な問題はないと思います。今、松澤委員のお話しのように何か非常な不明瞭な、不明確な間に日本戦争状態に巻き込まれるというような危険があるのじゃないかという御懸念のもとの御質問でありますが、前提として武力攻撃が加えられたというきわめて明確な事実がない限りは出動しないわけでございますから、そういう事実に基づいてそれを排除するだけの自衛隊の行動をとるということは、きわめて私は事態は明確な事態である、かように考えております。    〔理事館哲二君退席、委員長着席〕
  51. 松澤兼人

    松澤兼人君 この問題につきましてもう一つお伺いします。いわゆる内乱条項というものが新安保条約においては削除せられた。そうしますと、国内において何か大規模な騒擾事件があった場合、これは自衛隊自身の問題であって、今後は一切米軍としては、いかなる形においてもこれに参加し行動するということはないというはっきりした保証ができたということでございますか。
  52. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 普通の内乱とか騒擾とかいうものにつきましては、今お話しの通りでございます。ただ、今日の国際的の、いろいろな国々におけるところの内乱と称せられるところのもの実態が、外部から非常に武力的な事実上の関係をもってそういうものが行なわれるようなことがあり、いわゆるなににおきましても直接侵略というものの現実の事態は、個々具体的の場合について判断しなければならない情勢があると思います。しかし、今回の条約におきまして、純然たる内乱や騒擾事件については、自衛隊の力をもって、これを出動させ、治安を維持するというのが建前でございます。
  53. 松澤兼人

    松澤兼人君 前段はまことに明快でありますけれども、後段につきましては、やはり何か自衛隊以外、米軍が、国内における大規模の内乱あるいは騒擾等に対しまして行動をともにし得られるというようなふうに承ったんでありますけれども、この点をさらに明確にしておいていただきたいと思います。
  54. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今お答えを申し上げた通りでありますが、この米軍が動く場合においては、外部からの武力攻撃があった場合でございます。この武力攻撃というものがない限りにおいては、米軍は出動いたしません。
  55. 松澤兼人

    松澤兼人君 それで大体明瞭になりました。そこで、簡単にもう一つだけ別の問題についてお伺いしたいと思います。条約の第三条によりますというと、能力を維持しあるいは発展させるということが規定されておるのでありますが、「能力」ということは一体どういうことでございますか。
  56. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 「能力」というのは、私はその文字通り解釈いたしておりますが、なお政府委員より答えさせます。
  57. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) お答え申し上げます。これは武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力でございますから、単に軍事的能力のみならず、一般的な国力というふうにわれわれは考えております。
  58. 松澤兼人

    松澤兼人君 そうなりますというと、非常に広範になってくると思うのであります。大体自衛力というのは、自衛実力、いわゆる軍隊でありましょうが、人員及びその装備ということが問題になってくると思う。それを増加するということ、これはもちろん、要請されておると思うのであります。しかし、一般にいって国力ということであれば、その次には軍需産業ということに対する能力も出てくると思う。さらには、いわゆる狭義の意味における愛国心という問題も起こってくる。おそらくこの条約におきましては、そういうことを必ずしも言っておるとは考えられません。しかし、今申されましたように、自衛の実力及び国力ということになりますというと、国力の限界ということが非常にむずかしくなってくると思うのであります。これを維持し発展させるということは、具体的にはどういう内容を持っておるのでございますか。
  59. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これはそれぞれの国が自主的にもちろんきめて努力するということでございまして、特に具体的に何をどうするということを言っているとは、私は考えておりません。
  60. 松澤兼人

    松澤兼人君 交渉の内容におきまして、いわゆるキャパシティという言葉内容がどういうものであるかということは、話し合いになっていなければならないと思うのであります。その話し合いの過程における「能力」キャパシティという問題はどういうことを意味していたのか、外務大臣に。
  61. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 「武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力」ということは、むろん防衛自身に直接関係いたします。日本でいえば自衛隊の数、あるいはそれの装備とか配置とか、そういうものはむろん関係いたします。同時に、それに関連いたしますそういうものの供給的な問題というようなものも、当然武力抵抗に対処します能力でありますから、先ほどお話しのように精神力まで入ることはございませんけれども、そういう直接武力攻撃に抵抗いたしますことに関連しますものについては、当然入ると思います。話し合いの上でそういうことになっております。
  62. 松澤兼人

    松澤兼人君 ここで私たちが非常に心配する新安保体制というものが、徐々に出てくるのではないか、こういうふうに考えるのであります。そこで、私は今ここで外務大臣がちょっと思いつきのような、あれも入る、これも入る、かもしれないというようなことでは、満足するわけにはいかないのでありまして、キャパシティの内容というものが、一体どの辺までこれに包含せられるかということを、後日明確にしていただきたいと思います。軍需産業の育成であるとか、あるいはまた交通その他いわゆる防衛の能力、抵抗するための能力、だんだん拡げてゆきますというと、教育までその中に入ってくるということになると思うのであります。これは単にこの場における思いつきということでなくて、「能力」の内容というものを厳密に規定して、そうしてこの委員会報告していただきたいと思います。
  63. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) もちろんこの条約の「それぞれの能力」というのは今申し上げたように、武力攻撃に対する抽象的な能力全体をさしているのでありまして、一々これが、これがというようなものを抽出して申し上げるわけにはいかないこと、むろんでございます。
  64. 松澤兼人

    松澤兼人君 時間が参りましたので、これは御注文だけ申し上げておきます。いかないならば、いかないということをはっきり明確にしていただきたいと思います。「能力」がいわゆる兵員と装備というふうな、いわゆる固有の自衛実力ということに限定されるなら、問題はありますけれども、それはそれで一応は了承できます。しかし、漸次これを拡大してゆくということになれば、われわれが心配しておりますところの新しい安保体制の強化ということになる。そういう事態がいわゆる準戦時体制ということをもたらす非常な危険をわれわれは感じますので、この点は、さらに詳細に明確な御説明を願いたいと思います。まだたくさんありますけれども、後日に譲ります。
  65. 小林英三

    委員長小林英三君) 午後は十二時五十五分から再開いたすことにいたしまして、暫時休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩    —————・—————    午後一時十二分開会
  66. 小林英三

    委員長小林英三君) これより委員会を再開いたします。  午前に引き続き質疑を行ないます。一松定吉君。
  67. 一松定吉

    ○一松定吉君 私は第二十八国会におきまして、わが国の観光国策の一般についてかなり詳細な意見を述べて、総理大臣初め関係大臣からほぼ満足すべき御答弁を得たのでありまするが、二ヵ年を経過いたしました今日において、内外の情勢はかなり変化しております。政府の観光施策も多少進展の跡もうかがわれまするけれども、まだきわめて不十分のように考えられまするので、ここに再び同じ問題を取り上げて私見をごく端的に申し上げて、総理初め関係大臣の御所見を承りたいと思います。  日本は観光資源として自然の風光に富み、世界有数のかの観光国としてのスイスに比較してみましても少しも遜色はないと私は考えておるのでございます。また、世界一の観光国イタリアは自然の風光と文化財とをあわせて持っておりますけれども、この点でも日本とよく似ておりまするが、かのアルプス山脈の風景は日本にまさるものもあることはあるけれども、火山の風光とかいうようなものは断然日本がすぐれていることは御承知の通り、海岸の景勝も日本の方がすぐれております。文化財についても日本は独特のものを持っておりまして、興味ある古いものが数多く日本には存在しておりますが、結局、日本の観光資源はイタリアと伯仲すると言っても少しも過言ではありません。そのイタリアでは年間一千五百万人の外客を迎えまして、年間六億ドルの観光収入をあげ、五年間に二倍に躍進しておるのであります。このようにして国際収支上最も重要な役割を果たしているので、この国ではごく最近に観光省を設置いたしまして、世界一の観光国として飛躍を期していることは御承知の通りであります。しかるにわが国は、最近の調べでは、外客の数は十三万人、収入は六千五百万ドルというごく貧弱であります。これは日本が太平洋の西辺に孤立するという地理的な不利益条件であるばかりではありません。イタリアでも観光客の七〇%に近いものが隣国から、しかも日帰りで出入りする者が多いという実情であります。この点から見ますれば、わが国は非常な不利益でありますけれども、アメリカやカナダのような遠出のできる国を海のかなたに控えておりまするし、ハワイまでは日本よりも多くの利用者が来ているようでありまするから、これらの外国人が一歩足を伸ばして、わが国にまで観光のために渡来するということができるようにするということは非常にけっこうなことであると思うのであります。また、東南アジアから豪州なども近い国でありますから、こうした国々に宣伝を強化すべきであります。また、こうした国々と手を携えて、欧米各国に呼びかけるようにしなければならぬと私は考えております。また、日本には北海道から九州まで、気候風土の異なった観光地が数多くあるばかりでなく、春の桜、秋のモミジ、世界各国の国民的旅行シーズンにある七、八月のころには日本を宣伝をして、また、冬の北国のスキーを紹介し、全国にあるところのいろいろなものをこれを世界に宣伝し、日本至るところに湧出するところの温泉は、国民の人身のために有効であり、かつ、外客の人々を誘致するには最も適当な施設でありまするから、こういうようなものを外国に宣伝をいたしまして、滞在日数をふやすようにすることも可能であると私は思うのであります。このようにして外国人を誘致して、外貨の獲得をして、国民のふところをこやし、それによって国民が安らかな生活を持続することができ、そうして税金等も喜んで納めて、政府をして思う存分のよい施策を行なうことのできるようにするというようなことについて、非常な効果のあることを私は確信をいたしておるのであります。こういう点につきまして、政府のお考えはいかがでありまするか、これを一つ伺ってみたいのであります。
  68. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 観光ということが、その国の国際収支の関係から見ましても非常な重要なことであることは、今の御意見通りであります。さらに私は、この観光が盛んになることによって、外国の人々が日本を知り、日本との友好親善を深めていく。また、大きく言えば、これが世界の平和にも貢献するゆえんでありまして、観光事業につきましては、従来も政府としてもできるだけのことをしておりますが、今後、画期的にこれを推進する必要がある、かように考えております。
  69. 一松定吉

    ○一松定吉君 次に、近ごろ日本人の観光客は年々二〇%くらいずつ増加いたしておりまして、国内の観光地は都会地のような雑踏をきわめております。このような国は外国では見られないことは皆様御承知の通りでありまするが、私ども日本国民としてまことに喜ばしい現象であると考えております。その利用の状況は、決して満足すべきものではありません。むしろきわめて不健全な面が強く現われているのでありまするから、ゆるゆる自然に浸って健全な快味を覚えるような施策をするということが必要でありまするし、その大部分はあわただしい日帰り客が占めているような状況でありまするが、これは、欧米のように、休暇制度に恵まれていないためでもありましょうし、また、費用に余裕のないからでもありましょう。これらの点につきまして有給休暇の制度をとり、また、旅行資金積立制度を始めたり、あるいは厚生年金による厚生施設を拡充して国民宿舎のようなものを作ることも肝要であると思うのでございまするが、これらの点に関しまする所管大臣の御意見を承ります。
  70. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 国立公園におきまする施設におきまする駐車場、あるいはスケート場、リクリエーション場、あるいはまた、共同便所とか、こういうものにつきましてのあらゆる施設につきましては、目下私どもは予算措置を講じておりまして、今年度におきましても一億七千五百万円を計上いたしておるわけでございます。また、この自然公園審議会等にかけまして国定公園、国立公園を将来一本化する問題につきましても大いに、これが対策を練っておるような次第でございます。
  71. 一松定吉

    ○一松定吉君 その他旅行地といたしましては、国民が近いところに健全な休養地を持つようにすること、その分布について考慮する必要があります。たとえば箱根や日光や湘南海岸のように、雑踏して自然を味わうわけにいかないような場所━━東京、名古屋、京阪、北九州地方にはもっと多くの休養地をこしらえて、国立公園や国定公園その他地方公園地帯を設くることが必要であります。日本は工業国として発展していかなくてはならない国であることは言うまでもございません。都市生活者を自然の休養地に向けることについては、全国にわたって計画すべきことであると私思うのであります。そうしてすぐれたるところの風景を持たないイギリスでも国土の一〇%を国立公園に指定しております。また、景勝地に指定する計画であります。ことに西ドイツでは、最近国土の三〇%に及ぶ土地を自然公園に指定する計画を策定しているということを聞いております。現在わが国におきましては、国立公園と国定公園とを合わせてもわずかに六%に過ぎないような小さい施設よりほか持っておりません。一割程度のものに拡大すべきであると私思うのであります。イギリス、西ドイツでも日本と同じように、産業と自然保護につき調整をはかる建前だから、このように広大な自然公園を設定するということも少しも障害ではなく、最もわが国においては必要な施設であると私は考えておるのでございまするが、この点に対しまする所管大臣の御意見を承りたいのであります。
  72. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 現在国立公園は十九カ所になっております。また、国定公園は二十カ所となっております。三十五年度におきましては数カ所これを審議会にかけましてこれを選出いたしたいと、かように考えております。
  73. 一松定吉

    ○一松定吉君 本年度の予算を拝見いたしますると、国立国際会館を京都に作るために二億円、東京国際空港整備費に十億円、かくのごとく見るべきものはたくさん計上されております。特に道路公団の有料道路等にも相当の配慮の跡が見えまするが、一般に観光施設整備費は、内閣観光事業審議会の四ヵ年計画の初年度に計上したものから見ますると、すこぶる貧弱でありまして、関係当局の理解と努力とが不足しておるように思われるのでございまするが、こういう点については所管大臣はいかにお考えでありまするか。
  74. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 御指摘のように、観光が、特に国際観光が日本の外貨収支の上に大きな影響を与え、また、開発すべきところのあることは一松委員の御指摘の通りでありまして、総理大臣からもお答えになりましたが、その点につきまして、観光の問題について予算の面では三十四年度は日本観光協会の予算は二億円でありましたが、三十五年度には二億一千二百万円を計上いたしまして、一方に一松委員のおっしゃいました海外宣伝等の点につきましても、従来ニューヨーク、サンフランシスコ、ホノルル、トロントの四カ所にありましたが、昭和三十四年にパリに、三十五年に、バンコックに、本年はシカゴに宣伝事務所を開設することにしておるのであります。  また、開銀の融資の問題ですが、これは補てんの問題になりまするが、三十二年度は六億円でありましたが、三十四年度は十二億円、なお、客船建造に五億円を投じておりまして、三十五年度も開銀との間に倍額くらいまでの折衝をやる考えでおるのであります。  さいぜん方おっしゃいました各地における国民的な最も低廉なものを作ったらどうかとおっしゃいましたが、運輸省におきましてユース・ホステルを設けておりまして、これは三十三年度に八カ所、三十四年度に十カ所、本年度に八カ所を設けることにしておりまして、なお、大津に二千万円を投じまして国際ユース・ホステルを作るという計画をいたしておるのであります。こういうように漸次財政等の関係もありまするけれども、観光問題について極力力を入れつつある次第であります。
  75. 一松定吉

    ○一松定吉君 私がちょうど第二十八国会の予算委員会におきまして、一昨年の三月八日です、この観光国策について詳細な質問をいたしました。それに関して岸総理大臣並びに堀木厚生大臣、中村運輸大臣、それから赤城国務大臣、一万田大蔵大臣、これらの方から詳細に御意見を発表していただきまして、私はほぼ満足しておったのでありまするが、こういうような御意見が二カ年たった今日着々進捗していられますかどうですか、そういう点について一つ関係各大臣からあのときに発表した意見でこういう点がすでにこういうことになっている、ああいう点がこういうことになっているということを具体的にお示しをいただければけっこうであります。
  76. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤栄作君) お答えいたします。  観光事業につきましては、二十八国会に一松委員詳細に御意見を開陳され、同時に、政府の所信、施策についての質問を受けたのでございまして、ただいま御指摘のように、それぞれ当時の所管大臣が説明をいたしております。結局観光事業についての認識、これはもう一松委員と全然同感でございますが、最終のところに参りますると、財政規模、財政支出、それらとの関係によりまして思うように予算を計上することができておらないので、この点は一松委員の御指摘になりますように、急速に事業の発展を希望する面から申しますと、なお私どもも不十分だと思います。しかしながら、総体の歳入歳出の関係から申しますと、比較的重要視してそれぞれの所要の金額をふやして参ったように考えております。  ところが、具体的に申し上げますと、まず第一は、道路の整備の問題でございますが、三十五年度の予算におきましては、道路整備特別会計にある観光関係の道路のみをとって参りまして三十九億一千五百万円計上されております。三十四年度に比べますと約四億程度の伸びでございますが、三十四年度は三十五億七千百万円であったと思います。かように道路については特に注意いたしたつもりであります。  この道路と並びまして空港の施設整備並びに日本航空株式会社の器材の整備に努力して参りまして、三十五年度におきましては空港整備費として十四億五千三百万円、日本航空会社に対しては、ただいま楢橋運輸大臣から説明いたしましたように五億円を計上しております。  次に、観光施設の整備の面におきましては外客用のホテルの整備をはかること、これに対する開発銀行等の融資といたしまして三十四年度においては十四億七千万円を充てておりますが、三十五年度におきましてももう三十四年度計画を下回るようなことは絶対にしないつもりでございます。その他の観光施設につきまして先ほどお話がありました国立公園の整備であるとか、あるいは文化財の保護であるとか、あるいはユース・ホステル、あるいは青年の家の整備、それらを中心にいたしましてそれぞれ予算措置を講じたのであります。国立公園の整備については二億三千三百万円、文化財保護費としては九億二百万円、ユース・ホステル整備費として四千八百万円、青年の家の整備が五千七百万円、これらを計上いたしております。  また、ただいま楢橋運輸大臣からお答えいたしましたように、宣伝につきましても日本観光協会を中心にしての宣伝に特に意を用いておりまして、同協会に対する補助金も三十五年度におきましては二億一千三百万円、三十四年度よりもさらにこれを増額いたしておるのであります。  また、海外の事務所は、ただいまお話をいただきましたように、在来のホノルル、トロント、バンコック、パリ、これが三十四年度に四ヵ所開設いたしたのでありますが、三十五年度におきましては、さらにシカゴに事務所を開設するということをいたしておるわけでございます。内閣においての観光事業審議会、これを中心にいたしまして国際観光事業の整備について総合的な計画を進めております。また、国内観光につきましてはそれぞれの省におきまして所要の施策をしておりますという状況でございます。
  77. 一松定吉

    ○一松定吉君 他の閣僚諸君で、まだ私の今お尋ねしたことについての御意見の御発表があれば承りたいと思います。大蔵、運輸の方がありましたが……。
  78. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 先ほども申しましたように国立公園、国定公園というのは漸次これが指定を広げております。従いまして国の直轄によるところのいろいろな駐車場とか、あるいはレクリエーションの場所であるとか、こういうものが毎年々々これは多く増加しておるような次第でございます。その他、先ほど申されました厚生年金還元融資等も利用いたしまして国民宿舎等の設備も逐年これを考慮いたしております。
  79. 一松定吉

    ○一松定吉君 各大臣の御答弁で十分の満足をいたしませんけれども、一つそれは必ず実現をせられまして、ほんとうにわが国を世界有数の観光国といたしまして、外人を誘致し、外貨の獲得をやって、そうして国民の収入をふやし、一面には国民が喜んでこれらの土地を利用して生活の安定や健康の保持に努めることができるようにということに一つ十分に御尽力あらんことを特に私はお願いしておきまして、観光国策に対する質問はこれで終わります。  次には、治水問題につきまして少しく政府に伺います。  政府は三十五年度から向こう十ヵ年の治山治水特別会計を設けまして、前期五カ年の間の治水事業費が四千億円、治山事業費が五百五十億円、また後期五カ年間に五千二百億円の治水事業費、七百五十億円の治山事業費を計上しておりまするが、昨年の大水害にかんがみまして、私はこれは当然の処置であると考えるのであります。また、大蔵省なり建設大臣がこういう予算の成立に御尽力に相なったことは私は満足をいたしておりまするが、この際一つ確かめておきたいことは、去る昭和二十八年の北九州を初め各地に発生いたしました大水害のときに、二度とこういうような水害は繰り返すことのないようにとの考えから、昭和二十八年八月二十六日に政府部内に治山治水対策協議会というものを設置されまして、そうして緒方副総理が会長となり、関係閣僚及び学識経験者を会員といたしまして、建設、農林の当局者もこれに関係をし、根本的に水害を根絶しようという趣旨で調査研究の結果でき上がったものが同年十月十六日に政府から公表いたしましたいわゆる「治山治水基本対策要綱」であります。このことは、国会の速記録でも明らかになっておりますし、またその際に、国会ではせっかくこういうりっぱな政策のまとまりができたのだから、この治山治水の基本対策を、これを裏づけるところの資金計画をしなければならぬ、そうでなければこの計画は画餅に帰するからということを論じた者もあり、また政府は何分にも莫大な経費を必要とするのであるから、この点は今後の研究にゆだねるという答弁があったことも、この国会の会議録に明記せられていることは皆さん御承知の通りであります。そうして二十九年度以後も治水予算はむろんこの基本対策を満たすに足らないわずかな予算ではありましたけれども、歴代の建設大臣がこの基本対策を基礎にして治水の予算を計上したことは、これは速記録に明らかに認められます。つきましては、明年度から治水の特別会計に計上される多額の治水費は、これに昭和二十九年度以降三十四年度までに支出した災害復旧費を除きました治水費を加算すると、治山治水基本対策要綱で決定された治水費の大部分を満たすことになりまして、長年の懸案でありました治山治水基本対策要綱に基づく治水事業が今度は軌道に乗って来年度からはこれを発足することができるという解釈が至当だと私は思われて非常に喜んでおりますが、この私の見解は建設大臣におかれましても同様のお考えで、必ずこれを一つこの基本対策要綱に基づいて実施するというかたき御決心をお持ちになっておりますかどうですか、この点を一つ承ってみたいのであります。
  80. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) お答えいたします。昭和二十八年に樹立いたしました治山治水の十カ年計画、これがどうもはかばかしく参っておりませんので、新たに三十五年度を初年度とする五ヵ年計画あるいは十ヵ年計画を策定いたしまして、これを今度は間違いなく実行しよう、そのために基本法を作りましてただいま提出いたしておりますが、この法によって五ヵ年四千億という事業費をこれを閣議決定し、そうしてこれに予算の裏づけをしていこうということにいたしております。
  81. 一松定吉

    ○一松定吉君 次に伺いますが、わが国の河川工事は、明治四十三年の大災害の結果、明治四十三年に臨時治水調査会において、国において直轄事業として改修工事を施行しなければならぬといって六十五河川を決定いたしました。その後大正十年の臨時治水調査会で五つの河川をこれに付加いたしました。これらの河川はともに国内の重大河川に属しまして、すでに一応の改修工事を竣工したものも少なくありませんが、それらの工事の終わった河川が、その後の洪水に遭遇して、再度の改修や再々度の補修工事の必要に迫られているものも相当にありまして、これらのことは当初の改修計画を企てたときよりも降雨量が多く、多大の洪水が出たからこういうことになったのであるというような意見を発表しておる方もありますが、私の見解では降雨量が多かったからこういう被害が出たのであるという、この見解は誤っておると思うのであります。測候所の調査を見ましてもわかりますように、降雨量は昔と今とあまり変わりはありません。しからば何のためにこういうような被害が年々歳々繰り返されるのかというようなことは、その原因を十分に研究しなければなりませんが、河川改修の計画に当たってとうてい測量することのできない山のくずれ、あるいは谷川の流れの荒廃、あるいは莫大な土砂の流出、石つぶてが大雨によって押し流された実情、そういうようなものが洪水量を予定したより以上に増加しておるためで、こういうように被害が年々歳々多くなっておるものであると私は考えております。でございますから、この多量土砂が流れ出まして、日に夜に川底にうもれまして、ますます川底を高め、それがために一そう洪水のはんらんを強く招くようなことになると私は思うのであります。よって私は河川の改修を行なうに際しましては、これらの測定不可能の、いわゆる土や石の流出をあらかじめ予防することが先決問題である。すなわち、これが砂防工事そのものである。かの明治五年にオランダから五人の技師を日本に招きまして、淀川や木曽川や利根川や、その他の大河川の改修に当たったときに、これらの技師が口をそろえて河川の改修にはまず水源を治めることが必要だ。そうでなければ、河川の改修は満足にはできないのだということを、これらの五入のオランダの技師が非常な要求をしたことは、私も記録によって見たことがあります。明治十四年ごろの淀川、木曽川の河川の改修費は、ともに六万円だったのであります。明治十四年の六万円というものは今日からいたしますれば、大へんな金でありますが、その六万円のうちの四万円というものを砂防工事に使い、残りの二万円を河川改修費に使ったということが顕著な事実であります。こういう点からみましても、いかに治水上砂防の重大であるかということを明らかに物語るものであると私は思うのであります。最近では河川改修の一方法といたしまして、多目的ダムを設けて洪水量を調節するとか、あるいはそのダムを発電または灌漑用に併用しておりますが、こういうようなものはいわゆる強い雨に臨んでみごとに洪水を調節するだけの効果はございますが、これがいわゆる多年経過いたしますと、多量の土砂でこれを埋没するに至りますために、その多額の工費を投じたところのダムの効用を没却することは当然であります。このことは昨年一、二回の洪水で今までは百年ぐらいは洪水をみごとに調節すると考えておったところの多目的ダムが、驚くばかり埋没した実例もあることは建設大臣も御承知の通りであります。こういう点から見ますれば、いわゆる上流の砂防工事というものはきわめて重大であるということがわかるのであります。このことにつきまして、ちょうど私が建設大臣でありましたときに、全国の土木部長を集めまして、この河川の改修ということについては何をおいてもいわゆる上流の砂防工事が必要だということを彼らは論議いたしまして、土木部長会議でまず河川の改修には砂防工事を優先しなければならぬという決議までしたのであります。これならば年々歳々起こるところの洪水を大いに緩和することができようと思っておったのでありまするが、その後における建設大臣や建設方面の関係者は、相変わらず上流の砂防というものに力を置くことをせずして、やはり下流の河川の堤防だとかいうようなことに重きを置いておりまするがために、なかなか洪水というものが思うように防ぐことができないことが今日の実情であります。この間の第七号及び伊勢湾台風のあのときの模様でも、山梨県あたりの河川の模様を見ますると、砂防工事のできたところは被害が少ないが、砂防工事のできていないところは被害が非常に多い。しかも砂防工事をしたところのものの費用が一であったならば、砂防工事をしないで水害にあったところの損害は十に当たる、十倍もの被害があるというようなことは、実地をはかってみても明らかでありまするが、この点につきましては、総理大臣も建設大臣も同時にさっそく実地を御視察になりまして、十分に御認識相なったのでありまするが、こういう点につきまして、どうも本年のこの予算でも、砂防工事の方の費用が河川のほかの改修の費用に比べてみれば非常に少ない。これではやはり私は土砂の流出によって水害が非常に多くなるというようなことを防ぐことはなかなか困難であると思いまするが、こういう点に対して総理大臣並びに建設大臣、それから予算を上流の砂防工事よりも下流の河川の方の工事にたくさんとったところの大蔵大臣等の御所見を一つ承ってみたいのであります。これでよろしいですかどうですか、やはりこれは大いに改正して、砂防工事というものに力を置かなければいかぬじゃないか、こういうことを考えておりまするか、それを一つお考えを伺いたい。
  82. 小林英三

    委員長小林英三君) この際、委員の変更がございましたから御報告いたします。  曾祢益君が辞任せられ基政七君が選任せられました。
  83. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) お答えいたします。  河川災害の原因の最たるものは、ただいま一松委員の御指摘の通り、いわゆる山くずれにあると思います。従いまして、私どもはこの砂防には非常に力を入れております。三十四年度の予算におきましては八十二億円でありますが、本年度の三十五年度の予算、それは百十億ということで、その伸び率は大体三三%でありまして、他の治水関係の事業費の伸びよりも、はるかに上回っておるのであります。また、この砂防施設の完備によりましてダムの、いわゆる多目的ダムの維持管理について相当効果があるということも十分認めておりますので、今後ともに砂防事業にも重点を置いて考えて参りたいと思っております。
  84. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤栄作君) ただいま建設大臣がお答えしたような考え方でございまして、御指摘の通り山を治めることがまず第一だと、かように考えております。十分予算編成にあたりまして御趣旨を尊重して参りたいと思っております。
  85. 一松定吉

    ○一松定吉君 関係大臣が今のようなお考えで砂防に関しまする予算というものの計上に御留意を賜わるということでありますれば、私ども非常に満足でありまするが、この治水関係の基本対策事業費が一兆一千六百九十一億円のうち、河川費が六千百九十三億、ダム関係費が一千六百七十三億、砂防費が三千八百二十五億になっており、また昭和二十九年度から三十四年度の間に実施されたところの事業と基本対策に対する進捗率は、ダムあるいは河川工事が三四%及び一八%となっておるにかかわらず、砂防の方はわずかに一一%にすぎないという状況でありまするが、これでは年々の水害を防止することはなかなか困難でありまするから、私どもは過去のことをかれこれは申しませんから、政府は、今あなた方のお答えになりましたように、みずから進んでこの治水上の大いなる欠陥のあった点を反省せられまして、そして今後は一つ相当な予算を計上せられるように御留意せられますように特にお願いを申し上げておきます。  次に砂防工事は、明治三十年に砂防法が制定せられて以来、内務省において、引き続いて今日では建設省でこれを施行しておりまするが、荒廃地復旧工事は、明治四十四年以来森林法によって農林省がこれを施行し、両者がほとんど同様な工事であるがために、たびたびこれが国会で論議されて、ついに昭和三年の閣議において、渓流工事並びに傾斜急峻の工事は、これは内務省、すなわち今日の建設省がこれを主管する、また森林造成を主とする山腹工事並びにこれに関連する渓流工事は農林省の主管とするということにしておる。ところが、今日どういうことになっておるかというと、この山腹工事は農林省の主管とすることで、両者間で施行してきたものであるが、近ごろになって、農林省は山腹が崩壊してもこれを顧みることなく、関係のない建設省が施行すべき渓流工事に走って、崩壊地はほとんど放置されておるという実情であると私は思うのであります。それでは何のためにこの閣議決定がせられたのであるかということについてむしろ疑いを持つくらいでありまするから、今後は私は治山特別会計の設けられるを契機といたしまして、農林省は本来の仕事に返って、治山の実をあげるべきであると私は考えておりまするが、この点に対して農林大臣のお考えはどうでしょう。
  86. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 御趣旨まことにごもっともでございまして、その御趣旨で参りたいと思います。
  87. 一松定吉

    ○一松定吉君 これで私は治山治水問題に対する質問を終わりまして、今度は方向を変えまして、公務員の職務放棄の問題に入って、政府の所見をただしたいと思います。  まず第一に、小学校の先生が、自分の待遇を改善せよとか、あるいはいろんな労働問題等に参加してはち巻をして、赤だすきをして、そして赤旗を打ち振って、自分の受け持っておる授業は放棄してしまって、そして国会の周辺にデモを行ない、もしくは総理大臣や文部大臣の室にすわり込むというようなことをするような傾向が非常に多いわけですね。こういうようなことに対しては、一体文部大臣はどういうようにお考えに相なっておりましょうか。私どもは、この日本において、われわれが小さいときには、学校の先生は、うぶすな神様の次には先生だというくらいに、尊敬されたものである。従って生徒も先生を尊敬して、先生も生徒に向かって熱心に道徳を説き、教育に力を入れられておったのが、今日ではそうじゃない。おれは労働者だから、労働基準法の中に、教員がやはりこの労働者の中に入れてやられておる。こういうことは一体これは間違いであると思うけれども、また労働者だ、労働者の中に教員が入っておる。おれは労働者だ、だからしておれの月給を上げてもらわなければ食えないから、お前方はおさらいをしておけ、先生はこれからほかのものと一緒に月給を上げるように文部大臣に談判する、部屋にすわり込むというようなことで、先生が受け持ちの授業を放棄してやるなんということは教育基本法にそむいておる。教育基本法には、つまり第一条、「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として」正しき道を生徒に教える。そうして「個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ」るように教育しなければならない。第二条、教育の目的は、あらゆる機会において人々から愛されるような教育をしなければならない。そうして「学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い自他の敬愛と協力によって」りっぱな文化国民を作らなければならない。また、六条には、「学校の教員は、全体の奉仕者であって、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。」、こういうようなことが想定されておる。そうしてもしこれを怠ってデモをやったりいろいろのことをすると、これが罰せられる。しかるに、どうも文部省は懲戒処分などをやるけれども、そういうような学校の先生等について刑罰を加えないというようなことがあるので、私はどういうわけでこういうことにするのかと思っておるのですが、学校の先生がこういうことをやれば、地方公務員法の第三十七条並びに六十一条の四号等において、刑罰をもってこれを罰することができる。しかるに検察庁もそういうことに手を出さず、また文部省もただ懲戒処分ぐらいにして刑罰をもって臨まないということをやりまするから、ますます教育という大切な事業に従事しておるものが教育をおろそかにする。こういうことのために道徳はだんだんに頽廃して、大和民族というものがまるで野蛮国民のようになりつつあることは文部大臣も御承知の通りであります。こういうことを是正して、教育基本法にあるような目的のためにりっぱに教育をして、国民を指導して、大和民族の誇りを世界に誇るくらいにしなければならないのに、今では全く日本の教育というものは地に落ちてしまった。無頼漢を養成しておる。この間の新聞の記事によりますと、どこか岐阜県でありますか、学校の卒業式で、写真をとりますからといって先生を校外に連れ出して、大ぜいの生徒が寄って先生をひっつかまえて、先生を池の中にはうり込んだというようなことがあったり、あるいは卒業した生徒が、卒業証書をもらったその日に、女の先生に、おい、ねえちゃんというようなことを言った。これに至っては言語道断です。こういうことに対して文部大臣はどういうようにお考えになっているか、これを一つお答え願いたい。
  88. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) お答えいたします。一松委員がいろいろ御心配になっておる点、私どもも全く同感でございます。教育基本法並びに憲法の各条章にうたわれてある点を堅持して、りっぱな次代の国民を養成していかなければならぬというところに基本観念を置いて施策を進めておるわけでありまするが、今いろいろ御指摘になりましたように、教職員のあり方についてはまことに憂慮すべきいろいろの事例があるのでありまして、御指摘にありましたようなことのほかにも私の手元に集めた事柄で、これはもうまことに教職員としてふさわしからぬ行動であり、その結果、それが児童の上にいろいろ忌まわしい事態となって現われてきておる点もございます。しかし、また戦後教育基本法なり憲法の条章にもうたわれておることを基本としてやって参った教育の中にも、一面よいところなしとしない。たとえば児童が非常に明るく卑屈な態度をとらぬ、あまりに行き過ぎた遠慮しない、自己を主張し得ることもよく知っておるというようなことも出てきております。この点は、私はまことにけっこうだと思うのでありまするが、他面お話のような、また誤った行動に出る者がある。一つの例をあげまするというと、一松先生が長く選挙区とせられたあの日岡高等学校なんかにおいても、昨年これは卒業式でありましたか、一生徒が答辞を述べるべく演壇に立った。開口一番、諸君、われわれはこれから闘争に入るのである、こういうことの事態もあったのでありまして、(「漫談じゃないぞ」と呼ぶ者あり)他面またそういうような事例もあるのでありまして、いろいろよほど戒心していかなければならぬことと考えておるわけでありまして、教育職員にふさわしからぬような行動に対しては、これは現に非常な特別の注意、厳正な態度をもってこれに臨み、そうして適当な指導をして参らなきゃならぬと思います。もとよりまた法に示された事柄に違反するようなことに対しては厳正な処罰をもって臨んでおるようなわけであります。
  89. 一松定吉

    ○一松定吉君 私はそういうようなことをする教員をことごとく刑罰に処せよという意味ではありませんが、いわゆるこういうようなことは教育家としてなすべきことではないということを彼らに自覚せしめて、自分から反省するような方法をとるのには、これはいわゆる刑罰をもって自分らは処分せられるのであるということを彼らが自覚するだけの方法は、政府当局としては彼らに知らしておく必要があると思うのです。いまだかつてそういうような教員を刑事罰をもって臨んだという例がございますか。どれくらいありますか。その点については一つ文部大臣並びに法務大臣からお話を承りたいのです。そういうようにいたしまして、彼らがわれわれのやったことは刑罰をもって臨まれるのだ、こういうようなことはよくないなということを自覚すれば、教育に専念し、昔の教育家のようにりっぱな国民を養成し、教育基本法にそむかないようなことができようと思うのです。今では全く刑罰をもって臨まぬ。ただ、ひどいやつは懲戒免職くらいであるということになりますと、彼らは何も懲戒免職くらいでは、やれ、やれというのでおだてられてやるのだ。これは何とかして一つ是正しなければならぬ。私はこれは心配しておる。この点について、刑罰をもって臨んだという実例があるならば、それをお示し願いたい。それが一つ、それからまた一々刑罰をもって臨まないというのなら、臨まない理由はどこにあるか。なぜこれを刑罰をもって罰しないか。この点は実は検事総長に聞きたかったのでありますが、検事総長が御用があって出られないそうで、法務大臣がよく検事総長と話し合いの上でお出ましになったということを聞きましたので、そういう点について、一つ法務大臣からもその点を明らかにしていただきたい。
  90. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 文部省におきましては、いろいろ懈怠行為に出たり、職場を放棄したり、法を犯した者に対しては懲戒免職で九十五名まで免職にいたしておるわけであります。御承知のように、先生に対しては行政罰の規定をもって臨んでおるのでありまして、教育二法案の場合におきましてもこれを刑事罰にすべきであるということでありましたが、行政罰をもって臨むということに修正されたことと記憶いたしておりまするが、今までのところ、教員の法を犯した者に対しては、それだけの数を免職にいたしておる次第であります。しかし、私の考えまするところにおいては、そうした先生もありまするが、しかし、今日といえども大多数の先生はやはり良識を持ち、教職員という自覚を持って日々教壇に立って子弟を教えておると思う。中には愛情の欠けておるような者もあって、先ほど御指摘にあったような事件を起こしましたけれども、大部分の先生というものは、今日といえども私は真剣に自分の職を十分自覚し、人の子を教える自分が立場にあるのであるという自覚に基づいて日々教壇に立っておるものということを確信いたしております。そのために、いろいろ間違ったことをやる先生も少なくありませんけれども、私は事いやしくも教育に関しては、よほど慎重な態度をもって事に当たらなければならぬということを考えておる次第でございます。
  91. 井野碩哉

    国務大臣(井野碩哉君) 教職員の職務を離脱しました行為につきましては、ただ刑罰をもってこれに臨むだけでは私はいかぬ、やっぱり文部行政の上からいろいろの手段を講じていくべきだと思います。しかし、事いやしくも法律に違反して刑に当たる者につきましては、検察庁としては今までも検挙いたしております。そうして起訴もいたしております。現在昭和三十三年、四年の統計を見ましても受理件数の三三%を起訴いたしております。これは一般の刑罰が四〇%の起訴率を持っておりまするのと比べまして、決して教職員だからといってこれを甘くしたりしておるというようなことはございません。
  92. 一松定吉

    ○一松定吉君 今、文部大臣や法務大臣の御意見で大体のことはわかりますが、それはごくわずかな例であって、私は全国の教育家がこういうようなことをして、生徒を全く放棄してしまって、生徒がわがままになり、教員は労働者というような考えで、教育の大本を全く没却してしまっておるというようなことで、せっかく地方公務員法の三十七条及び六十一条の四号で処罰規定があるのですから、これは一つ地方公務員である小学校の教員には、お前方それをすると、これを一つあるいは適用することもあるぞ、だからしてやりなさるな、こういうように言うて聞かせれば、非常に効果あると思う。いわゆる一罰百戒ですね、一人を罰して百人を戒めるというような方法をとって、しかもこれを彼らにのみ込ませなければいかぬ、こういう法文があることを。地方公務員法の処罰だから教員じゃないというような考えでやるのじゃないかと思うのですが、こういうようなことが明らかに刑罰をもって臨まれるのだということを知らせる必要がある。ことに今、法務大臣から処罰しておるということを聞きましたが、私があるところから調べたところによりますると、学校の教員が怠業したとか、罷業したとかいうようなことをしてもすぐに検事が手を出してこれを検挙するのは少しやり過ぎのように思う。なぜかというと、こういうのは教育委員というものが彼らを懲戒でもしたならば、その上で刑事処罰をもって臨むこともいいけれども、この教育委員会というものがいわゆる刑罰も加えぬようなものに刑事罰をもってすぐやるのは何だからというので、これは前々の検事総長のときからこういう方針をとってやっておるということを聞いておる、それがために教員に対して刑事罰を課したことは少ないです。この点は一つ大いに考慮して、そういうことの再びないようにしていただきたい。ことにある……。これは兵庫県ですが、兵庫県では学校の先生が入学試験をしない、おれはそういう義務はないのだ、しないといって職務を懈怠したというので、教育委員会でこれを懲戒にした。そこで、さあ懲戒したから、こういう職務懈怠である者は、明らかに地方公務員法の三十七条、六十一条の四項に当たるのだから起訴しなさいと言うて、今検察庁に要求しておるにかかわらず、検察庁は知らぬ顔をしてまだ今日放任しておるじゃありませんか。こういうことはよくないのですから、やはりこれは一つの刑罰をもって臨むぞというて、一人罰してごらんなさい。あとの者はふるえ上ってやらぬことになるのです。これはぜひお考え願いたいということを申し上げておきます。  次にはやはり文部大臣にお尋ねしますが、今のは公立の学校ですが、小学校ですが、今度は高等学校や大学、あるいは私立大学、こういうようなものの職員が近ごろ非常に思想が赤化いたしまして、そうして生徒に向かって赤の思想を注入する。これは労働法の講義とかいうことなら、これは別ですよ。そうでない教員が赤になって、りっぱな生徒を赤に導く、そうして政治活動をさせるというようなことは明らかにこれも法文で禁止しておる。こういうようなことも一つ場合によれば刑罰をもって臨むくらいなお考えをもっておやりになる。あるいは私立大学であるならば、そういうことをするといわゆる解散命令を出すぞということにすれば、私立大学もそういうことを注意することになりますが、そういうような処置に出られなきゃいけませんよ。それに対して文部大臣のお考えを一つ承りたいと思います。
  93. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 大学の先生方が、生徒、学生に向かって赤の思想を吹き込む、けしからぬというお話でございます。むろん私どもは、学問の自由は、これは尊重して参りたい。しかし、それは純粋に学問の研究、真理の探究、そういうことに限られるのであって、その研究の結果を発表する、いろいろ知見を発表するということはもとより自由でありますけれども、その限界を逸脱して特殊の思想に基づいて行動に移るということはむろん行き過ぎであると考えるのであります。従って、そういう場合におきましては、文部省といたしましては、大学の自治大学の先生、学長等に特に指導、助言をいたして参っておる次第でございます。
  94. 一松定吉

    ○一松定吉君 にわかに態度を変えて、今までやらなかったのをやり出して、彼らをして恐怖せしむるというようなこともよくないことは、わかっておりますが、教育法の第十三条によりましても、学校の閉鎖命令ができるし、それから教育基本法の定めるところによりましても、学校の生徒の政治活動は禁じられておる。また、特定の政党の支持ということも禁じられておる。そうして、しかもこれらのものは学校教育法によると、文部大臣が監督権を持っておる。そういうものについては閉鎖命令もできるし、従わなければ、これを罰することもできる。ちょうど第八十九条にそういう規定がある、こういうような規定をときどきぴらぴらひらめかして、そして彼らをしてそういうことをしちやこういうことになるぞぐらいのことはせにゃいかぬです。ただかれらがやるからして、あまり問題を大きくしちやいかぬというようなことで、いわゆる低姿勢でやるというようなことはよくないと私は思うのですから、これらの点については、一つ十分にやって、再びそういうことのないようにして、ほんとうにかれらの本来の職務に帰るように一つしていただくことが国家のためにいいと思いまするから、ぜひそういう点についての御意見をもう一ぺん伺いたい。
  95. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 私立学校等に対しては、もしその学校にしてお話しのような、まさに先生も悪いし、学校の状況が非常に悪いというようなことでありまするならば、むろん閉鎖命令もできることになっておりまするけれども、しかし、これは学校当局はみんなそれらの事態を十分に認識して、そうして適当な補導によって改めていこうとして苦心しておるわけでありまして、だから、でありまするから、閉鎖命令を出すというような、非常なる事態というのはあまりこれを見ることはできない。そういうひどい状態になっておるということはまだこれを見ないのございまして、一つの学校にはややそれにほぼ近いような状態になっておる学校もありまするけれども、そういう学校はあまりありません。学校の多くはそれぞれ適当なる学長なり、理事会のもとに定款に基づいてりっぱに教育の任務を果たしておるものと私は考えるわけでありまして、ただおっしゃるように、閉鎖命令を出すぞというようなことをちらつかせてやるということに対しては、まだそこまで私の考えは持っておりませんけれども、ときどき適当だと思われる指導助言をいたしておる次第でございます。
  96. 一松定吉

    ○一松定吉君 先刻私が申しましたように、大学の教授もしくは助教授等に赤の思想を持っておる者がたくさんある。赤の思想を持っておる者は必ず悪いとは言いませんよ。これは法律も共産党というものを認めているのですから。そういうようなことを生徒に宣伝をして、そうして政治活動に参与せしむるというようなことは、今言った教育基本法等において禁じられておるし、そういうことをやれば刑罰をもってしいられるのですから。そういうことをする教員が大学の教師のうちに多いのです。私の手元にどこから送ってきたのか無名で、私のところに共産主義活動に関係ありと見られる大学教授と、こういう本を送ってきたものを見ると、大学教授で共産思想を持っておるものが非常に多いのです。そうしてまた、学校の生徒のうちで、自分は大学において学業を修習するということよりも、共産主義の宣伝をするために四カ年の課程を終えるにかかわらず、わざと試験を受けずして、八年おり、十二年おって、そうして学内の生徒をその思想に引きずって、そうして、政治運動をさせるというような傾向がある。こういうことはわが日本の将来を考えますると寒心にたえないのですから、こういう点につきましても、一つ文部大臣はほんとうに注意をなさって、そうして、一つ彼らをしてこれらを改悛せしむるような方策をおとりになることがよくはないかと思います。大学は自治を持っておる。自治を持っておるからして大学にみだりに干渉を許さぬということは間違いです。なるほど自治を持っている。自治を持っているが、それは法律の範囲内における自治なんです。法律の範囲内において持っておる自治が、法律の範囲内においていろんな禁じられておるような行動をすることは大学の自治権によってそれができるというような解釈は、これは間違いです。そういう点をよく明らかにして、大学の先生といえども、学内において、いわゆる共産主義を生徒にしきりに━━労働法の受け持ちの先生が労働のためには共産主義はこうこうだということを話すのはけっこうですが、何も関係ないものが共産主義を生徒に宣伝をして、そうして生徒を引き連れて、そうして、いろんな労働争議に参加せしめるというようなことは、これは間違っておることですから、そういうことについては一つ十分にこれを戒告を発するようなことをなさった方がいいと思う。あなたは特に大学に向かって、大学総長にいろいろなことを言ったらば、文部大臣はわれわれにそう言う権利はない、われわれは自治権を持っておるのだというようなことを言ったというようなことが新聞に出ておりましたが、これは間違いです。自治権はある。自治権はあるが、それは法律にそむいてまでも彼らに自治権を与えているのじゃないですから、そういう点を明らかにして、あなたは、あなたが文部大臣として公立学校監督権があるのですから、その監督権に基づいてそういうことを一つ是正するように将来御留意を願いたい。この点に対する御意見を一つ承りたい。
  97. 小林英三

    委員長小林英三君) この際委員の変更について御報告いたします。北畠教真君が辞任せられ、補欠として吉江勝保君が選任せられました。   ━━━━━━━━━━━━━
  98. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 今お話の点につきまして、私はこれまで大学学長とも一再ならず懇談会をいたしまして、今お話のあったようなことに対して、学生の教育をもう少し厳重にやってもらいたいということもお願いをし、指導をし、やって参ったのでありますが、いろいろ大学内のことを検討いたしてみまするというと、学長自体も非常な苦心をしておられる。各教授会また各学部長等に対してもいろいろ学長としてできるだけのことをやっている。多くの学生を個々に説得するというようなことは、むろん至難なことで、できないかもしれませんけれども、特に学長方面においては、大学の自治を守るために、また、学生補導のためにも非常な苦心を日夜払っておられるということを私承知いたしておるのでありまして、今のところ学長を信頼し、大学内の自治を守り、適切な学生の補導に当たってもらいたい、かように考えております。
  99. 一松定吉

    ○一松定吉君 文部大臣のそういうお考えであることはけっこうですが、一つこれを実効のあるように一つ御考慮を願いたい。それから学校の生徒が、自分らの同志が犯罪を犯した、それが学内に逃げ込んだ、それを一ヵ月も二カ月も取り囲んで捜査官をして捜査させないとか、逮捕状の執行をさせないとかいうようなことで、暴力をもって警察官の逮捕状の執行に対抗するというようなことも、これは大へん間違いです。こういうことは職務執行妨害になるのだよ、それは犯罪になるのだよ、あるいは学校内にそういう者を入れてかくまっておくということは犯人蔵匿という犯罪になるのだよ、こういうことで罰せられるのだよというようなことを、正々堂々と一つ言うて聞かせると、彼らも父兄から汗と油によって送られた学資を使って、そういうようなことをして、監獄に行くけいこをしようと思いませんから、反省しましょうから、こういうことを一つあなたの方で御注意になることが私はいいと思います。ただ学校に生徒が入っており、何日間も何日間も警察が令状を持っていってもこれに応ぜぬで隠しておるというようなことをやはり大目に見ておるから、ああいうことをしてもいいのだなというので、またほかの学校でもそれをまねしてやるのですが、大学でこの間やったところが、今度はまた二、三日前にほかの学校でもそれをやって、とうとう実力をもって中に入って逮捕状を執行したということがありますから、こういうことを十分学生に言うて聞かせて、学生は何も自分が監獄に行って赤い着物を着るようなことを喜びはしませんから、なるほどこれはいかぬというので彼らが反省すればそういうことはなくなるのです。こういう点について、文部大臣にもう一ぺんお伺いしたい。
  100. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 今のお話を伺いますと、お互い大阪の言葉をもってすれば、まことに歯がゆい気持もするのであります。従って、私はときどき若き学生にも会っております、大学院の学生や。私もしばしば時間があればみずから進んでこれらの学生の説得の衝に当たりたいとさえ思ったことは一再ならずあるのであります。しかし、かつて全学連の学生にして、昭和二十四年ごろの学生にして私が最近会った者にも、最も先鋭分子の一人であった者が、今日きわめて優秀な好個の青年としてりっぱにある特定の職務についておるというようなことも見ますし、やがて彼らも反省のときがあるであろう、かように考えておるわけでありまして、あまりに強権のみをもって若き学生に当たるということも、事教育の点から考えましてどうかというような考えもあるのであります。しかし、お考えの通り、やはりこれこれのことをすればこれこれの刑罰があるぞということは、十分に認識せしめていかなければならぬと思うのであります。
  101. 一松定吉

    ○一松定吉君 そういう方針でいっていただけば、学生もよくなるでしょう。  これから一つ次には郵政大臣にお尋ねしたいのです。つまり近ごろ郵便事務に従事している職員が、おれの月給を上げない、おれの待遇をよくしない、おれに休暇を与えないとかいうような理由のために、にわかに年末年始の一番忙しいときに同盟休業をして、郵便物や電報とかいうようなものを取り扱わないというようなことは、これは明らかにあなた、郵便法の七十七条、七十九条、七十八条において、これは犯罪行為なんです。そういうものをあなたの方では、今日どういうような態度をもって臨んでおりまするか。今父危篤すぐ帰れという電報がいかなければならぬのに、これを配達しない。それがためにその子は両親の危篤に会えなかった。今こういうことになって、母が出産をしたのだすぐに帰れと電報を打っても、これがいかない。こういうようなこと、急な用の電報あるいは手紙を郵便に出して、これが配達されなくて、そうして非常な国民はこれがために迷惑をするのです。そういうようなことをしても、郵政大臣の方であまりこれを━━懲戒処分に付したようなことは私は聞いておるが、あまり刑罰をもって臨んだというようなことはないようです。あるいは一部の地方ではやったことがあるようですが、全体の郵政大臣というその地位を御利用に相なりまして、あなたのお持ちになっておる職権を利用して、そういうようなことは私は処罰をもって臨んだがいい。ただし、全部そういうことをするのじゃなくて、やはり先刻申しましたように、一罰百戒、一人を罰することによって百人の者が戒めて、これはいかぬなという考えを持てば、二度とそれはしません。そういうことについてのあなたのお考えを一つ承りたい。
  102. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) お答えいたしますのを二つに分けてお答え申し上げます。  第一は電報の場合でございますが、これは電報に従事いたします者は、電電公社に所属いたしますその全電通の組合の人たちが従事しておりますので、郵政省としてはこれを、電電公社を行政監督いたしております立場でございますので、その処置につきましては、電電公社の方で検察当局と連絡をとりまして、処置いたしておる次第でございます。  私が郵政大臣として直接の監督の任に当たっておりますのは、御質問の後段にありました手紙の場合、郵便事務の場合であるわけでございますが、これにつきましては、御指摘の通り、郵便法第七十九条によりまして、郵便に従事いたします者がことさらに郵便物を取り扱わなかったり、また、ことさらに遅延いたしましたときには、一年以下の懲役、あるいは二万円以下の罰金が課せられることになっておりまして、郵政当局といたしましては、これはそういう事実のございましたときには、相当の処置をとっておるのでございますが、これは一罰百戒ということもございますが、また、法の適用を公平にいたしますためにも、そういうふうな事実がございますれば、公平にこれに処置をとっていくというふうな方針をただいままでとっております。もっとも検察につきましては、一松委員は往年鬼検事として令名をはせられましたその方面の権威でいらっしゃいますので、よく御理解いただけると存じますが、一見郵便法第七十九条の適用があるように見えましても、なかなか挙証その他におきまして、ともかくこの郵便法七十九条の真に適用を受けるかどうかということにつきましては、検察当局の専門方面から見まして、あるいは検挙、起訴される場合もあるわけでございますが、今回の年末闘争におきましては、幸いそういったような処罰を受けます者は出てこなかったのであります。この件につきましては、郵政当局としてはさっそく郵政監察官を派遣いたしまして調査いたさせましたところ、この郵政法七十九条の刑事事件までには至らず、しかし、監督者といたしまして、行政上の措置は、免職、戒告、減給、また停職等をいたしまして、適切な処置をとった次第でございます。
  103. 一松定吉

    ○一松定吉君 なるほど、私は鬼検事と言われたことがあります。それはつまり、鬼━━悪らつという意味でなくて、一松が起訴した事件は無罪にならんということなんです。それはなぜかというと、悪質なものだけを起訴して、善良なものは起訴しない。そうして、言い含めてりっぱな改過遷善の実をあげさせるようにやったがために、私の起訴した事件は一件も無罪がない。そうして、不起訴にした者が十人あれば、九人は不起訴だ。そこで、私が弁護士になった時分には、一松さん、あれでよかったから、あの通りやって下さいって、その九人の者が門前市をなして私のところに事件を頼みに来た。そこで、私は、今の犯罪行為をやった者を厳重に全部罰せよということじゃない。再びこういうことをさせないようにするためには、こういう刑罰があるんだから、これをよく言い聞かして、そして彼らをして悔悛の実をあげしめよと、こういうことを私は申し上げておる。  そこで、今あなたが罰するという方針であるということならば私は大へん喜ばしいのでありまするが、こういうように従業員が罷業して仕事に従事しないために、年末年始の郵便物を処分するためにたくさんの学生を雇い入れて、これに国家が費用を支払っておりますが、その費用がどのくらいあるか、そういうようなことをちょっと承っておきたい。
  104. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) お答えいたします。もしもこの年末の問題が最悪━━悪化いたしましたときには、これこれの費用がかかるという計算はいたしておりました。約三億円と見積もっておりましたが、幸いに、組合におきましても三割休暇闘争の指令を早期にこれを解除いたしまして、あの通り組合との間も円満妥結いたしましたので、その費用もかからないで済みましたので、例年の通りの円滑な運営をいたすことができた次第でございます。従いまして、その費用につきましては、ただいまのところ資料をここに持ち合わせないで本日出席した次第でございます。御了承いただきたいと思います。
  105. 一松定吉

    ○一松定吉君 そうすると、何ですか、遅配の郵便物を処理するために、学生などアルバイトを使ったことはないのですか。あったらば、私は、ただでしないでしょうから、それに費用を払ったでしょう。そういう費用がどれくらいあるか。その払った費用は国家の損害であり、その損害は郵便に従事する者が怠業したから国家にそういう損害を及ぼしたんだということを明らかにしたいのです。
  106. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) ただいま申し上げましたように、三割休暇闘争に入って最悪の場合が生じました場合には、約三億円の予算を考えておりましたけれども、その事態がございませんでしたので、特に年末の問題につきまして非常な出費があるということがございませんでしたのであります。
  107. 一松定吉

    ○一松定吉君 まあとにかく、そういうことをすることは国民に非常な迷惑を及ぼすんだということは、彼らも知っておるはずですから、十分に一つあなたの方から訓示を出して、再びしないようにしてもらいたい。  次に、運輸大臣に同じ問題について伺いたい。いわゆる鉄道従業員が、自分の地位を擁護し、もしくは給与を増額させるために、汽車の運行をとめておいて、そうしてやるというようなことが近ごろしきりに行なわれておるが、これに対するあなたのお考えを伺いたい。
  108. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 公共企業体である国鉄が、国民の人々に迷惑をかける労働運動の逸脱行為というものはまことに遺憾でありますので、この点につきましては、十分に当局におきましても業務の管理をするように指令をいたしておるのであります。また、そういう違反行為をやった者は、公共企業体等労働関係法あるいは国有鉄道法等によりまして処分をいたしておるのでありまして、昭和二十八年から五万九千三百五十人ですか、処分をいたしまして、その中で免職したものが六十六名あるのであります。しかし、私が運輸大臣になりましてから、国鉄労働組合長並びに国鉄の当局等の間に立ちまして、志免炭鉱その他いろいろな問題のときに、懇談的に話をするような、なるべく話し合いをしていこうということで、最近の統計等を見ましても、だんだんと国鉄従業員は自分の職務に自覚をいたしまして、漸減いたしておるような次第でありまして、今後ともそういうことがないように極力努力していきたいと思うのであります。
  109. 一松定吉

    ○一松定吉君 そういうようなことをして国民に非常な迷惑をかけておることは、どうかというと、年々歳々行なわれてきたことは事実なんです。そういうことに対して、運輸大臣としてこれをただ懲戒にして免職したというようなことでなく、刑事処分にしたような実例がありましたならば、どのくらいそれをやりましたか、それを一つ伺いたい。
  110. 井野碩哉

    国務大臣(井野碩哉君) 鉄道の関係につきましても、相当の刑事処分をいたしております。起訴もいたしております。その数は大体、三十三年、三十四年を通じまして、やはり先ほどお答えいたしましたように、受理件数の三三%ぐらいは起訴いたしております。
  111. 一松定吉

    ○一松定吉君 処分しておることはおるでしょう。おるでしょうが、それはいわゆる九牛の一毛じゃありませんか。あれだけのたくさんの者が、全国の何万という国鉄の従業員が、ストライキをして国民に非常な迷惑をかけておきながら、そのうちのわずかの者だけ処分される。あとの者は処分されないということになると、その処分されない者がまたやる。それが処分されると、処分されない者がまたやるという工合に、次から次にやればこういうことはどこまでも整理することができない実情にあるのだから、そういう点についてお考えを承りたい。
  112. 井野碩哉

    国務大臣(井野碩哉君) 刑事事件に該当しますものにつきましても、悪質のものを検挙し起訴いたしております。一松さんもおっしゃったように、検事も起訴しました以上は無罪になることのないようにいたしおりますから、検事もそうむやみに起訴いたしておりませんから、そう、その数もおのずから多くないということになるわけでございます。
  113. 一松定吉

    ○一松定吉君 むやみに起訴せいというのじゃありませんよ。私の言うのは、そういうようなことをおもにやった、たとえば東京管内がやった、仙台管内がやったとか、九州管内がやったとか、大阪管内がやったとかいうときには、そういう首魁者に向かって、遠慮会釈なくこれを刑罰に処するか、しからざれば免職をして他の戒めとするかというようにして、再びこういうことの起こらないように御留意相なりたいということを、あなたは法務大臣ですから、法務大臣は直接起訴権はない、ただ検察庁がやるのだから、検察庁のやることについて、あなたは法務大臣として監督権がおありになるのですから、これを十分に一つ指揮監督して、これを平常に復して国民にあまり迷惑のかからぬようにしてもらいたい、これが質問の要旨です。もう一ぺん……。
  114. 井野碩哉

    国務大臣(井野碩哉君) 御趣旨のように、検事総長を指揮しておりますから、検事総長もその気持で今後やるように申しておりますから、御了承願います。
  115. 一松定吉

    ○一松定吉君 郵政大臣、運輸大臣は、私はこれでよろしゅうございます。  これから労働大臣に伺います。今まではいわゆる国家公務員、地方公務員等の怠業、罷業等について伺ったのですが、いわゆるそれ以外の労働に従事しておる人が、憲法の二十八条ですか、団結権があり交渉権がある、だからして、われわれが団結して交渉することは憲法において認められておることで、犯罰にならないのだというようなことをいうてよくやりますが、これはなるほど憲法で認めておるのだからいいですが、しかしながら、労働法規によれば、暴力を用いたり不正にやったりすることは禁じられておりましょう。しかるに、彼らは、憲法において保障されておる権利を行使するために、あるいは暴力を用い、あるいは不正な方法によっていろいろな目的を達しようとすることについて、やはりこれも刑罰があるのだから、そういう点について労働大臣としてはどういうような御処置をとり、どういうようなお考えを持っていらっしゃいますか、それを承りたい。
  116. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 日本の憲法及び労働法は、労働組合に特権的階級を与えているものでは断じてございません。ただ、労働者の権利と、それから雇用条件の向上という、きわめて限られた範囲内において組合法というものが制定されておるわけであります。ややもすれば、組合運動としては拡大解釈をして、組合運動は何でもいいのだというふうなことは大きな誤りであります。従って、他の方法においてはあらゆる法律の処罰を受けなければなりません。従って、ただ労働組合の雇用条件及び労働条件の向上に関して使用者に交渉するという範囲内における保護であって、他の一般の交通法とかあるいは障害物とか、すべてのものが当然全国民にこれは当てはまるものであります。それをはき違えているところに、今日の労働法が誤りを犯す、同時に労働組合もこういう状況では発展しないという歎かわしい現象がときどき見られると私は考えております。
  117. 一松定吉

    ○一松定吉君 労働組合法の第一条の第二項、今あなたのお話のように、正当の行為であると刑法三十五条によってこれらのものは罰せられないのであるが、正当なる行為でなくて、そうして暴力をもって自分らの主張を通そうというときには、この労働組合法の第一条第二項は、これは禁じておることは、今あなたのお話の通りなんです。しかるに、近ごろ、こういうようなことがいわゆる正当な方法でなく暴力をもってやるということがしきりに行なわれております。これについて何か、刑法のいわゆる三十五条の規定を適用せずして、処罰したのがどのくらいございますか。
  118. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 労働法の中にも、御承知のごとく、特に暴力禁止規定というのを入れております。労働法の第一条に、少なくともこの暴力行為というものは絶対いけないのだということを特に強くこの際うたっているわけで、この趣旨は、ややもすれば労働組合というものが暴力的になりがちな、いわゆる大衆心理に駆られやすいということから、特別に労働法の中に入れたわけであります。最近こういう事件で、もちろん多数実は検挙者も出しております。これは組合にとっても不幸なことであり、私にとってもこれは非常なる誤りである。また毎回警告を発しております。そのたびに、実はこの問題についてはいろいろ刑事事犯も出ておりまして、それはそれ相当の処分を相当多数受けております。件数につきましては後ほど政府委員から御答弁いたしますけれども相当なものが出ております。国家公務員においても、同様にやはり相当な刑罰規定を、今日まで件数を多数実は持っております。
  119. 亀井光

    政府委員(亀井光君) ただいま労働大臣から御答弁申し上げましたように、各種犯罪の内容によりまして、検挙されました数も相当に上っておるわけごありますが、その一々につきまして労働省としましては十分な把握はいたしておりません。むしろ、それぞれの検察当局の方におきまして十分その実数につきましては把握されておるものと、かように考えます。
  120. 一松定吉

    ○一松定吉君 それでは、一つついでに裁判所の問題について、同じ労働問題で伺ってみたい。裁判所の下級職員が近ごろ、執務時間が朝九時から夕方五時までということにしているのでありまして、その時間以外には長官の命令があっても従わぬで職務を放棄する、こういうようなことは、やはり彼らは国家公務員である以上は、長官から、業務の執行上必要のある場合には居残れという命令権はある。しかるに、そういうものに従わずして、勝手に退庁して職務の執行を遅延ならしめるということが、往々にして、厳正なるべき裁判事務にある。そういうことについてはどういうような処置をおとりになっておりますか、それを承りたい。
  121. 井野碩哉

    国務大臣(井野碩哉君) 全司法の動きにつきましては、今、一松委員がお話しのようないろいろのことがございます。しかし、裁判所に対しましては、法務大臣はそういう監督、指揮権がございませんので、最高裁長官がそういう点については非常に心配されまして、絶えずいろいろ訓令も出し、またそういう事態があれば処分をいたしているように伺っております。
  122. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者(横田正俊君) ただいま御指摘のような事実がもしございますれば、これは捨てておけないことでございます。ただいま法務大臣から一応申し上げましたように、裁判所といたしましては、そういうことがありませんように常々非常に監督を厳にいたしております。かりにありました場合には、そのつど、長官からいろいろ申しているはずでございます。
  123. 一松定吉

    ○一松定吉君 そういう場合がありませんか。あなた、御調査なさって、そういうことを断言なさるのですか。
  124. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者(横田正俊君) 絶対にないというふうには申しませんが、ただいまのところ、そういう事態があるとは聞いておりません。
  125. 一松定吉

    ○一松定吉君 そういうようなことじゃ、あなた、それじゃ最高裁判所長官に出てもらわぬとだめじゃないか。つまり、私の言うのは、そういうことがあることを将来なからしむるためにこの質問をしているのですから、そういうことがあったならあったように厳正に処置して、再びかくのごとき不幸のないようにということをお尋ねするためにしているのですから、あったならあったと、あったならこういう処分をしたということを、はっきりお話しになることがようございましょう。ないならないで、ほんとうにけっこうです。ないものをありと言えとは言いません。
  126. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者(横田正俊君) 勤務時間外に居残れと言われて居残らなかったというようなことは、実はまだ聞いておりません。
  127. 一松定吉

    ○一松定吉君 この判決の謄写をやれ、この判決文の原稿を整理せよというようなことを命じられて、そんなことをするひまはないといって、その命令に従わなかった実例を私はたくさん知っております。私は弁護士で、裁判所に出入りしておりますから。そういうようなときに、裁判官は、ただ指を食わえて、ああそうかといって彼らの行動にまかせるというようなことは、よくないことだ。そういうことの取り締まりはやはりやらなければならぬ。そういう点について、あなたの方で何か処分しておりますか。
  128. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者(横田正俊君) 御質問趣旨を取り違えて、まことに失礼いたしました。今御指摘のような問題は、三十三年当時に、遺憾ながら、いわゆる裁判書きの浄書の拒否の問題といたしましてございましたことは事実でございます。それに対しましては、その当時、相当数の者に対しまして、かなり厳重な懲戒処分をいたしております。
  129. 一松定吉

    ○一松定吉君 検察庁の方にもそういう事実はありませんか、法務大臣。今のは裁判所の方ですが。
  130. 井野碩哉

    国務大臣(井野碩哉君) 検察庁の方にはほとんどございません。
  131. 一松定吉

    ○一松定吉君 それで、私の今までお尋ねしたことは、近ごろ、そういうようないわゆる運動がしきりに起こっておって、それがために非常に国民に迷惑をかけているから、これは一つ政府当局としては、法律の命令規定するところに従って、それらのことを十分に是正すべき手段方法を講じなければならぬのじゃありませんか。それについては、こういう取り締まり法規があるのだから、それによって一つ断固処分するということになれば、他の者は、前車のくつがえるを見て後車の戒めとなすで、しないようになるから、そういう方針でお進め願いたい、これが私の質問の要旨でありますから、さよう一つ御了承賜わりたいのであります。  これ以外に、私は、伊勢神宮、靖国神社、護国神社の宗教法人の問題や、農地解放に関する国家補償の問題、あるいは旧軍人遺家族に対する恩給並びに金鵄勲章年金復活の問題、裁判遅延の問題、判事の待遇問題、法曹一元化の問題等について質問いたしたいと思うのでありますが、時間がありませんから、この最後の判事の待遇問題、法曹一元化の問題を、ちょっと法務大臣や最高裁判所長官にお尋ねしてみたい。  近ごろ非常に裁判が遅延いたしまして、一時は七千件も最高裁判所に停滞しておりましたが、近来それが非常にさばかれましたが、五千件ぐらいになっておるということであるが、こういうようなことは早く是正して、国民の権利義務が少しでも早く確定するような方針をとらなければならないのが首脳部の責任だと思う。今、どのくらい最高裁判所に事件の遅滞件数がございますか。それが一つ。これを促進して早く権利義務の確定するという方法をとるにはどうすればいいかというその方法。この二つだけお伺いしておきます。
  132. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者(横田正俊君) ただいま七千件とおっしゃいましたのは、最高裁判所にかってそれほど事件がたまりましたその数字でございますが、現在は民刑合わせまして四千ちょっとでございますから、その当時から比べまして、大へん減ってはおりますが、やはり民事事件の中には大へん時間のかかっておるものもございますので、御承知でございましょうが、現在最高裁判所につきましては、機構改革問題あるいは、訴訟手続についていろいろな工夫をすべきではないかというようなことで、その問題を現在鋭意検討いたしておる次第でございます。  なお、一審の裁判につきましても、一審強化という観点からいたしまして、検察官、弁護士会等と協議をいたします組織を作りまして、一審強化につきましては非常な努力を払っておる次第でございます。
  133. 一松定吉

    ○一松定吉君 そういうふうに事件が遅滞することを改善して、少しでも早く事件を解決して、国民の権利義務の確定に努力する方法についてどうすればいいですか、それを聞いている。どうするのです。
  134. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者(横田正俊君) 最高裁判所につきましては、ただいま申し上げました。裁判所一般につきましては、やはり何と申しましても、戦争後事件の数が非常にふえて参りましたということ、事件の内容がかなり複雑なことになって参りました点が原因でございますが、これの是正策といたしましては、やはり判事の数が少ないということが一つの原因でございますから、この判事の数をふやすことに今後できる限り力を尽くして参りたい。この今回の予算におきましても、幸いに、はなはだ僅少ではございまするが、判事につきましては二十名、並びに簡易裁判所の判事の三十名を切りかえまして、判事五十名の増員が久しぶりで認められたというようなことでございます。これははなはだ僅少ではありますが、現在の判事の補給源から考えましてやむを得ないと存じます。あとは訴訟手続をいろいろ考える必要がございますので、この点は鋭意各方面におきまして、この訴訟手続の促進のやり方につきましては、いろいろ制度上の問題、運用上の問題等を考えておる次第でございます。
  135. 一松定吉

    ○一松定吉君 判事の数が少ないから事件が停滞するというのは、判事をふやせばいいというのはわかりますが、判事をふやすについては、ただふやせばいいということについては、判事の応募者がないでしょうね。その点について、裁判所の待遇の改善とか何かあると思いますが、その点について。
  136. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者(横田正俊君) 裁判官の報酬につきましては、実は、御承知のように、現在の裁判官の採用制度が、大学を出て試験をしまして二年間の研修制度はございますが、判事補を経まして判事になるという、いわばプロモーション・システムの形で参ります結果、ここにやはり一般の官吏に対してそれほど隔絶した待遇を与えるというようなことがいささか困難であるような面がないではないのでございます。一方、しかしながら、やはり裁判官につきましては、御承知のように、一般職にない月額八万円というようなクラスもございまするし、それに最近は管理職手当が相当数の裁判官につくようになっております結果、かなり改善はされて参りましたが、御承知のように、裁判官の上の方のクラスの、いわゆる認証官クラスの待遇が総理大臣あるいは国務大臣の線に押えられておりますもので、今申しました八万円のクラスに管理職手当等を加えますとほとんどそれらの認証官の待遇とすれすれになるというような、いわゆる頭打ちの現象がございますが、この認証官たる裁判官の待遇というものをあわせて考えまして、何かそこに別な待遇の方法を考えなければならない段階に来ているように思うのでございます。その方面に向かいまして、われわれは今後改善策をいろいろ考えて参りたいと思っております。
  137. 一松定吉

    ○一松定吉君 その待遇の方法を考えて、どういうことを考えているのですか、それを具体的に一つ。
  138. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者(横田正俊君) ただいまのところは、結局、認証官たる裁判官の待遇を別途高めるということが一つの方法でございます。それから一つは、これははなはだイージー・ゴーイングな行き方でございますが、管理職手当を一つもっとふやし、これは現在千百数十人の判事に対しまして五百人近くの管理職手当がついております。少なくともこれを、判事全員にこの管理職手当をつけたい。こういたしますると、かなりの待遇改善となります。現在考えておりますことはその程度でございます。
  139. 一松定吉

    ○一松定吉君 それはほんとうにけっこうなことですが、それについて大蔵大臣はどうお考えですか。裁判官の待遇をよくするために月給や給与を高める。高めるについては結局予算の問題ですが、大蔵大臣はその法務省の、裁判所の意見を入れて、裁判官の待遇を改善するという御意思がありますかどうですか、伺っておきます。
  140. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤栄作君) ただいま横田事務総長がお答えいたしましたように、裁判所判事その他職員につきましては、一般公務員とは別な号表を使っております。しかしながら、仕事の性質等から見ますると、現在の給与そのもので満足だとはなかなか言えないだろうと思います。しかし、もちろん、この種の給与を改善いたしますと、当然一般公務員についての給与についても思いをいたさなければならない。国家の給与制度でございますから、当然のことでございます。そういうことを考えて参りますと、総予算から見まして、なかなか給与予算を増額するということは困難でございます。  しかし、私どもは、この給与については、国の歳出の面からのみこれに特別な拘束を加えるというわけに参りません。特に団体交渉を持つとか、あるいは争議権のない一般公務員でございますので、そういう場合におきましては、どうしても公正な中立的な機関の勧告なりによりまして、そうして適正な給与を作っていくということにならざるを得ないのであります。そういう意味で人事院は、毎年の物価水準その他から見まして、給与の勧告をして参ります。これを政府自身が予算の方と十分にらみ合わせて、そうしてこれを予算化し、実施に移していくということをいたすわけでございます。裁判官につきましても、そういうような考え方で今日までの号俸の整理等をして参りました。しかし、ただいま横田事務総長から説明いたしますように、一般公務員も最高のところで押えられておりますが、また特別職におきましても、最高がただいま頭打ちの状況でございます。そういうために、給与の全般を直すことはなかなか困難な事情もございます。そういうこととはまた別に、ただいま話されております管理職の範囲を拡大する、これは三十五年度におきましても、特に裁判官の実情等に適するように処置をとったつもりでございます。あるいはまた、最高裁の判事諸公の、特に職務遂行上必要なる研究施設の整備、こういうような点も、三十五年度の予算編成におきましては考慮いたしたつもりでございます。いずれにいたしましても、より待遇を改善したいという気持はもちろんございますが、最終的には、予算とのかね合いの問題がございますので、なかなか要望にも沿い得ない。そういうようになりますと、ただいま、先ほど来お話のありましたように、訴訟事件が依然として減少しない、長期にわたって関係者に迷惑をかけておる、こういうことがございますので、これらの点は裁判所関係の方々の意見を十分聞きまして、大蔵省としても、歳出の面から十分にらみ合わして要望に沿うように努力して参るつもりでございます。
  141. 一松定吉

    ○一松定吉君 大蔵大臣が、国家の財政を処理なさる立場から、ごもっともな御意見でありますがね、しかし、私の考えでは、今の世の中において最も厳正中立にして、いわゆる富貴に淫せず貧賎に屈せずというような公明正大な態度をとるのは裁判官以外にない。そういうような裁判官に対しては、相当の待遇をして、よい人をこの方に採用するということをしなければならぬので、これは御承知の通り、片山内閣の時でありましたか、われわれが非常に奔走いたしまして、他の官吏よりも裁判官だけは特別に一つ優待するために俸給を上げなければならぬと言うて上げて、国務大臣と同じにした。ところが、今度は行政官がいつとはなしに、いろいろな名前をつけて、あの収入、これの増加というようなことで、もう今では行政官の方が裁判官より実収が多いということになっている。これでは裁判官を望んで優秀な人が行くということができませんから、一つ、大蔵大臣の今のお話もごもっともでありますけれども、裁判官というものは、よほど優秀な、りっぱな人を集めて、日本の治安を維持するということに従事せしむる、職務に安んじて従事するというような人を集めるのには、待遇をよくするということが必要なんですから、待遇をよくするについては、いろいろな位階勲等というようなこともありましょうけれども、やはり収入がふえるということが望みですから、一つあなたもそういう考えで、他の官吏に優先して裁判官を優遇するような予算をお組みになるようにお願いしたい。それと同時に、いわゆる裁判官の頭数の少ないについては、法曹一元化ということが今日叫ばれています。弁護士をして裁判官たらしめるということが必要であるが、その弁護士がなるについて、やはり司法官の待遇ということがよくなかったら、だれも行きませんから、そういう点について大蔵大臣のお考えを願って、よく法務省と裁判所とお話の上に、他の官吏より優先してりっぱな待遇にするということを特にお願いします。もう一ぺん御意見を伺います。
  142. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤栄作君) ただいま御指摘になりますように、裁判官並びに検察庁関係の職員、これは一般公務員とは別な特別職としての待遇をいたしております。そこで、検察庁関係の職員と裁判所判事等との均衡をとるということはなかなかむずかしい問題でございます。一松委員がよく御承知のことだと思います。ただいまの号俸は一応の均衡がとれたものだと思います。しかし、将来のことを考えて参りますと、これが基本的に改善されれば、他の特別職との関係等ともにらみ合わせた上で、そうして裁判官並びに検査官の給与の適正化をはかっていくということにいたさなければ、ならないと思います。ただいま御承知のように、政府閣僚はこの給与の改善をいたしておりません。辞退いたしておりますので、ただいまは最高の給与をもらっておられるのは裁判官である、かように考えております。最高裁の長官が一番多い、こういう形になっております。
  143. 小林英三

    委員長小林英三君) 一松君、時間が終了いたしました。
  144. 一松定吉

    ○一松定吉君 時間がないからやめます。やめますが、本日私の質問いたしましたことは、ことごとく時局に直面いたして最もわれわれ国民が考えなければならぬことだけを私は取り上げてやったのです。でありまするから、空理空論じゃないのです。どうか一つ、これは今後、予算を組む上において、政治を実施される上において、これらの点を十分に御考慮に入れて予算を組み、政治を進めていただきたいということを特にお願いいたしまして、私の質問を終わります。長らくありがとうございました。
  145. 小林英三

    委員長小林英三君) 一松君の質疑は終了いたしました。
  146. 小林英三

    委員長小林英三君) 次は松浦清一君。
  147. 松浦清一

    ○松浦清一君 きょうは例によって海運の問題、それから日韓交渉の問題、選挙法の関係の問題、そういう問題についてお伺いする予定でおりましたが、先般、わが党の曾祢委員質問の際、時間を割愛をいたしまして、二十五分となってしまいました関係上、予定をいたしておりました全部の質問が終わるかどうかわかりません。そういう関係でありまするから、問題ことに簡明直截にお尋ねをいたしていきまするから、それに対してイエスかノーかという、そういう形で御答弁をいただきたいと思います。その過程で押し問答しなければならぬようなことになりますると、従って、そういうことに時間を空費して予定の質問ができませんので、その点、閣僚各位においても御高配をいただくようにお願いいたします。  まず最初に、海運の問題についてお伺いいたしますが、この委員会でも若干問題になっておりましたが、今度の予算編成にあたって、貿易、為替の自由化ということがかなり重要な問題として取り上げられております。この貿易、為替の自由化に伴いまして、そのかけ橋となっておるわが国の海運が一そうその重要性を持ってきたと思いまするが、総理大臣はそれをどのように海運の影響についての認識を持っておられるかをお伺いいたします。
  148. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 貿易、為替の自由化の問題はこれによって世界の国際的な経済交流を盛んにするということがねらいでございまして、従って、当然、海運業の前途に対しましても、そのになうべき使命は、従来にもまして重要化してくる、こういうふうに考えております。
  149. 松浦清一

    ○松浦清一君 その重要化してくるという御認識の上に立って、政府はどういうことをなさろうとしておられるか。総理大臣から伺いたい。
  150. 岸信介

    国務大臣岸信介君) そのためには、ぜひ日本の海運業というものが、国際競争力を持って、国際的に他の国々の海運業に太刀打ちして負けないような基礎を持った、そういうふうな海運業を確立しなければならぬと、かように考えております。
  151. 松浦清一

    ○松浦清一君 外国の海運に負けないように、日本の海運を強力にするという具体的な方策についてお伺いいたしたいと思います。
  152. 岸信介

    国務大臣岸信介君) それにつきましては、何といっても一本の海運業の基礎を合理化し、従来持っておるところの日本の海運業の弱点を、これを是正して強化していくように努めなければならぬ、かように考えております。  具体的なことにつきましては、運輸大臣からお答えいたします。
  153. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 貿易・為替の自由化は、これは世界貿易の進展の上からいって、海運にとっても好ましいことではあると存じますけれども日本海運の現状といたしましては、いまだ国際競争力が十分でないのでありますので、直ちに運賃とか用船料を自由化しますと、邦船の使用が阻害されまして、積みとり荷揚げに大きな支障を来たし、外貨獲得に影響を与えますので、従って、自由化に基づきまして、われわれが考えておりますことは、当分の間、現制度を維持しながら、段階を追うて自由化の方向へ実施していきたい。一方には、国際競争力の強化を、ここでつけていかなければならぬということで、先般利子補給等の問題、あるいは第三国間輸送の補助の問題等を出しておるような次第でありまして、何を申せ、日本の海運は、世界の海運、ことに競争相手の英国なり、あるいはアメリカなり、ドイツなり、各国から見ますと、非常な弱体でありまして、先般も、私、木村委員の御質問のときにお答えいたしましたように、日本は戦時補償━━国家目的のために、日本の民間の商船を動員して戦争目的に使いながら、これは何らの補償を与えておらないのでありまして、英国その他各国は、これに補償を与え、かつ、また、ほとんど半額近い国家が補償を与え、なお、残りの利子等につきましても、三分五厘の利子をもって、国際競争力を強化しておるというような状態でありますが、日本は、利子補給等の問題が起こりました原因も、そこに実はあるのでありまして、御存じのように、日本は戦時補償をしないために、外航船舶を作るために、約二千五百億くらいの借金をもって九分五厘の市中銀行、六分五厘の開銀の金をかかえて競争に出ておるという状態でありますので、日本の海運は、ことにこういう島国である、最大の、大きな動脈でありますから、これをぜひ強化して、国際競争力に勝つような態勢をとりたいと思って、諸般の設備をやっていきたいと思っておる次第でございます。
  154. 松浦清一

    ○松浦清一君 総理も、担当の運輸大臣も、貿易の自由化によってさらに激化されてくる国際海運に対する競争力をつけなければならぬ、そういうことを認めるということをおっしゃいましたが、それは聞いておきましょう。  通産大臣は、この問題についてどう御認識になり、どうお考えになっておられますか。
  155. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 総理並びに所管大臣のお答えの通りでございます。
  156. 松浦清一

    ○松浦清一君 外国との競争に耐え得るために、日本の海運力を増強しなければならぬということは、具体的にどのくらい増強すれば、外国の海運との競争に耐える状態になるか。それを運輸大臣、大蔵大臣からお伺いいたします。
  157. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) まあ、どのくらいしなければならないかということは、ちょっとむずかしい問題でありまするけれども、私たちが、運輸当局として考えておりますことは、少なくとも、やはり外国並みの金利くらいまでにして、やはりその体質を改善してもらうということでなければなかなか容易でないのではないかと思うのでありまして、これは国内の仕事と違いまして、全部外国相手の仕事でありますから、相手の国が、どういう一体態勢でくるか、それに、どういう競争をいどむかということが基本になるのでありまして、従って、アメリカのように、建造費の半額を国家が補助して、残りの四分の三は三分五厘の利子をもって、これを補助してやる。こういうようなアメリカの補助と、日本の船が戦時補償も打ち切られて、借金を背負って九分五厘でいくというような態勢でいくと、なかなか容易ならない問題であると思うのでありまして、従って、海運の問題の大きなポイントは、松浦委員もご存じのように、相手国、つまり国際競争相手国との間に対立しておるところの運賃及び運航費その他の問題が、ここに介在しておるのでありまして、従って、運輸当局といたしましても、一番日本の海運の収入の大宗であるニューヨーク航路につきましては、やはり私が運輸大臣になりましてから、九会社の過当競争を避けさせるために、また合理的運営をするために、三つのグループ化をさせまして、経費の節減並びに収入の増大等をはかって、効果を上げておるのでありまして、最近ニューヨーク航路等におきまして、あの航路同盟の中に容易ならない一つの空気が出て参りまして、外国の船等において脱退するもの、あるいは同盟外の競争する相手等が出て参りまして、混乱状態を呈するという段階にきておりますので、先般私が日本の九大会社の人々を集めまして、国際的信義にこたえて、同盟脱退の口実を作らないように自粛自戒するように、実は警告を発しておるというような状態でありまして、まあ私の希望といたしましては、やはり外国の造船等におきましても、やはり鋼材等におきましても、外国から見ますれば、トン当たり七千円くらい日本は高いというような状態等もありますので、そういうような諸般のことを勘案いたして、国際的な競争力に耐えるような態勢をとりたいと努力しておる次第であります。
  158. 松浦清一

    ○松浦清一君 定期船の主要な航路はニューヨーク航路であることは、今運輸大臣御指摘になりましたが、ニューヨーク航路が、容易ならざる状態になっておるということを前提として、若干の現状を述べられましたが、もう少し、その点を具体的に御説明願いたい。
  159. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) ニューヨーク航路の同盟国の中のある国のものが、盟外でやっておりますものを押えきらないということを、口実といいますか、そういうことを理由といたしまして脱退の通告をして参っておるのであります。  そうしますると、かつて二十八年ごろに、やはり運賃競争等が行なわれまして、荷上げする費用にも満たないような運賃競争までやって、惨たんたる状態に海運界はなったのでありまして、従って、そういうような過当な競争によって出血をやるということを是正するために、各国が良識に返りまして、航路同盟を作ったのでありまするけれども、その航路同盟の中において、今申し上げましたような同盟外のものが現われて参りまして、そうして運賃体系を乱す、そいつを同盟が押えることができない。そういう同盟ならば、入っても仕方がないから、自由行動をとるというような通告を受けておるので、今、非常にさわぎが大きくなりまして、その問題の対策等について、苦慮いたしておるような次第でありまして、どうしても日本海運を健全にするためには同盟をやはり強化して、そういう運賃競争をやらないようにするという方向へ持っていかなければならない。  これにつきまして、同盟として同盟外の、そういうことをいどんできていることを、どうしてこいつを押えるかというような問題等について、今協議をいたしておるような次第であります。
  160. 松浦清一

    ○松浦清一君 その定期航距同盟を脱退した船主、それから同盟外からニューヨーク航路に割り込んでこようとしている船主は、具体的に言うと、どこの国のどこの船主ですか。
  161. 朝田静夫

    政府委員(朝田静夫君) お答え申し上げます。  ただいま、大臣から御答弁申し上げました、アウトサイダーに当たるものは、マルチェシーニという会社であります。それに対応して、同盟は本質的にオープン・カンファレンスという、脱退加入ともに自由な脆弱性を持った同盟でありますので、そういった同盟には、とどまれないと言って通告を出したのが、北欧船主系のバーバーという会社でございます。
  162. 松浦清一

    ○松浦清一君 同盟外から割り込んできた船主は、どこの国の何という船主ですか。
  163. 朝田静夫

    政府委員(朝田静夫君) ただいま申し上げましたアウトサイダーであります、マルチェシーニという会社は、ギリシア系のアメリカ船主でございます。
  164. 松浦清一

    ○松浦清一君 海運局長の御説明のように、非常に弱体な定期航路同盟であって、競争することが自由になるというと、どんどん脱退をしていく。それから同盟外の船主もどんどん割り込んでくる。ニューヨークは、先ほどの運輸大臣の言葉ではないけれども、容易ならざる状況になってくるが、何とかしなければならぬ状況では困る、こういう定期航路同盟というものは、船主同士間において、自主的にその同盟をやっているのか、あるいは日本の海運の行政官庁たる運輸大臣が、これに関係しておるのか、また外国と話し合いがあるときには、外務大臣はそこに顔を出すのか、その辺のところを明確にしてもらいたい。
  165. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) この同盟は、自主的にやっておるものでありまして、運輸大臣が直接関与し、あるいは監督しておるものではないのでありまして、御存じのようにニューヨーク航路は、荷物の約六割は、日本の船主が積んでおって、その他のアメリカが約二〇%でありますから、その他第三国が入っておる。つまり国際的な組合なのであります。  従って、運輸大臣があまりその自主的な同盟に入って、いろいろと関与してやるということは、筋合いが違うのでありまするけれども、少くとも運輸大臣といたしまして、航路に対する監督をやっておる関係等もありまして、先般、私が各船会社の幹部を集めまして、日本の積み取りの荷物等が紳士協約以上に積んでおるということも、一つの口実となって、連盟脱退の理由になりつつあるというような傾向等も見ましたので、そういう点も、誤解のないように、やはり紳士協約を守っていくようにということを申し渡しておるのでありまして、その後、日本船主外の外国船主も、一ぺん懇談的に話したらよかろうというので、私は出席いたしませんでしたが、朝田海運局長が集めまして、懇談をして、同盟全体の航路安定のために、運賃体系の安定のために、あっせんをしてやっておる次第でありまして、その同盟外の撹乱しつつあるものと、どういうふうに対抗するかという問題等につきまして協議をいたしたことにつきましては、朝田局長から答弁させたいと思うのであります。
  166. 朝田静夫

    政府委員(朝田静夫君) 大臣からお答えを申し上げましたように、同盟に対しましては、政府は不干渉主義を従来からとっておるのでございます。これは同盟自体の問題でありますので、政府は立ち入ったことを申し上げる立場にはないのでありますが、先ほど来、お話がありましたように、アメリカ航路につきましては、日本の貿易、海運から見まして、最も重要な航路であり、ヴァイタルな航路でありますので、そういうことに対して、重大な政府としても関心を持っておるということを示しておるのであります。  従いまして、同盟は種々対策を講じまする際におきましても、海上運送法の規定によりまして十分対処し、それに対して、承認を与えるという方針を明示いたしたのであります。ただしかし、アメリカのシッピング・アクトという海事法と、その点が少し規定が違う点もございますので、この間におきまする処理が、なかなか困難になるというふうに予想いたしておる次第であります。
  167. 松浦清一

    ○松浦清一君 定期航路におきまする運賃の協定、集荷の共同化は、いわば日本船同士の自衛措置であります。それが最近米国の独禁法違反だとか、米国商船法違反だとかいう理由で、日本の在米商社が捜査をされたり、裁判所から召喚状が発せられたりしておりますが、日本政府として、それに対して、どのように対処しておられるか、具体的な事例を外務大臣からお伺いいたしたいと思います。  日本の汽船会社の在米の商社がアメリカの官憲によって捜査をされたり、裁判官から召喚をされたりしておるわけなんです。御承知ですか。
  168. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は存じておりませんから、海運局長から答弁させます。今アメリカ局長も、経済局長も来ておりませんから。
  169. 松浦清一

    ○松浦清一君 これは、だれか答えるまで待っておれば、時間はつぶれるのですが、どうしましょう。前例もあることだし、答弁ができなかったり、資料がなかったら、そのまま待っておれば、時間はつぶれるという前例があるのですが、委員長どうしますか。
  170. 小林英三

    委員長小林英三君) 政府にお伺いをいたしますが、資料が集まりますか、関係政府委員をすぐ呼べますか。呼んでください。
  171. 松浦清一

    ○松浦清一君 私は、海運局長に質問しているのではない。日本人の在外商社が、その国の官憲によって、捜査をされたり、裁判所に召喚をされたりしているという事実を外務省は知っていますかと、外務省に、こう言っておるのです。
  172. 小林英三

    委員長小林英三君) アメリカ局長、すぐ来ますか。来るまで時間を保留しますから、(「休憩」と呼ぶ者あり)休憩しないで、このまま、保留しますから。  速記をとめて。    〔速記中止〕
  173. 小林英三

    委員長小林英三君) 速記を始めて。
  174. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御指摘のような事実はあるようでございます。在米大使館と連絡して、今やっておるところでございます。いずれ後ほど調査いたしまして、お答えいたします。
  175. 松浦清一

    ○松浦清一君 どの会社が、いつどのように捜査をされたか、どの会社が召喚されたか、御承知ですか。そういう関係については、運輸大臣や海運局長は、おそらく知っておると思うのですよ。これほどの重要問題を運輸大臣や海運局長だけが知っておって、外務大臣が知らないということは不見識だと、こう思うから、外務大臣に尋ねておるのです。
  176. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま私、外務大臣は、相当まあ広範ないろいろな問題がございますので、ついそういう書類を読み落しておるかもしれませんので、まことに恐縮いたしております。ただいまアメリカ局長が参りますから、暫時お待ちを願います。
  177. 松浦清一

    ○松浦清一君 これは時間外ですが、大体、日本の海運なんというものを運輸省だけが所管をしておって、ほかの役所は関係がないように思っておるからいかぬのですよ。  日本の海運というものは、非常に多額の財政資金を使って、そして九億五千万円くらいの利子補給をしたら、それをいいとか悪いとか政府から批判されておる。それは、閣内一致して日本の海運の重要性というもののPRをやらぬからですよ。そういうことを私は、まことに遺憾に思うのです。これは時間外ですよ。
  178. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) まだ参りませんけれども、外務省から運輸省の方に連絡をして、その内容も行っておりますので、それを読むことにいたします。  「一月の四日から六日にかけて七十一の海運会社に対し、ワシントン地方裁判所に文書を持参の上、出頭すべしという召喚状が出ております。で、召喚期間は一月二十五日でありますが関係会社とも弁護士により、管轄権、文書提出範囲等につき異議申し立てをやっております。本件に関しましては、イギリスは特別に動きを示しておりませんけれども、ノールウェー、スエーデン、デンマーク政府は、国内書類の提出を不当と抗議の模様であります。フィリピンは、国営のゆえに書類提出につき、政府より異議を申し立てております。日本といたしましては、本件に関しましては重大な関心を有すること、及び今回の措置の背景、今後の見通しにつき通報を得たい旨を在米朝海大使から国務省に申し入れますと同時に、日本船会社に照会いたしまして、外務省より、国内書類を提出することは、国際法の一般原則により必要なき旨を回答いたしておるのでございます。」  以上は、外務省から運輸省に対する連絡でございます。
  179. 小林英三

    委員長小林英三君) 松浦君に申し上げますが、今、問もなく森アメリカ局長と高野経済局次長が参りますので、しばらく。  この際、委員長から政府に御注意申し上げます。委員質問に対しましては、政府委員席もあることでありますから、支障のないように、御注意を願いたいと思います。  松浦さんに申し上げますが、牛場経済局長が見えました。そこで、あなたの持ち時間以外で、もう一回質疑の要点をおっしゃっていただきたいと思います。
  180. 松浦清一

    ○松浦清一君 先ほど外務大臣にお伺いを申し上げたことを、時間外でもう一ぺんお伺いをします。  定期航路における運賃の協定、集荷の共同化は、いわば、わが国国内における自衛措置である。それが最近、米国の独禁法違反だとか、米国商船法違反だとかいう理由で、日本の在米商社が捜査されたり、裁判所から召喚状が発せられたりしているが、日本政府は、それに対して、どのように対処しておるか、外務大臣にお伺いしたい、こういうのです。  そうして、日本のどの会社が調べられたか、それも、ついでにお答えを願いたい。
  181. 牛場信彦

    政府委員牛場信彦君) ただいま御質問のことに対しまして、お答えいたします。  日本の船会社で召喚を受けましたのは、日本郵船、大阪商船、三井船舶、川崎船舶、大同海運、新日本海運、飯野海運、三菱海運、山下汽船、あとほかに二社ございまして、全部で十一社になっております。(「二社は何ですか」と呼ぶ者あり)失礼いたしました日産汽船と日東商船でございます。それが全部召喚を受けておりまして、召喚をいたしましたのがワシントンのディストリクト・コートということになっております。その容疑は、ただいまお示しになりました問題もありますが、そのほかにもアメリカの一九二八年の海運法に違反しておるようないろいろな問題もあるのじゃないか、ということで召喚が出ておると思います。これは日本だけではございませんで、そのほか相当多数の国の船会社に対しても同じく召喚が出ておるわけでございます。これに対しまして日本政府といたしましては、アメリカの司法権がアメリカ国内において営業しております船会社の支店に及ぶのは、これは当然でやむを得ないことでありますし、その結果といたしまして、日本にありまする船会社の本店の持っておりますような書類についてまでも提示を求められるということは、これは妥当ではないじゃないかということで、そういう見解を明らかにいたす方針であります。その旨ワシントンの朝海大使に訓令を発しまして、大使から国務省に対して申し入れを行なった次第でございます。ヨーロッパ各国におきましても日本と同じような態度をとっておりまして、この問題はまだ今後法廷において争うことになっておりますが、現在のところ日本政府といたしましては、そういう方針、態度をとりまして抗弁をいたしておるところであります。
  182. 松浦清一

    ○松浦清一君 そういうことの起こって参ります原因は、日本の海上運送法、それから米国のこれらの法律との相違が予測せざる事態を起こしておると思うのです。それの調整をはかる必要があると思いますが、外務大臣、運輸大臣、お考えがあれば伺っておきたいと思います。
  183. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) ただいま松浦委員の御指摘のように、日本の法律とアメリカの法律との間にいろいろな食い違いが起こっておることは、こういう問題を惹起する一つの原因であると思うのでありまして、従って運輸省におきましても、この問題について法の改正等についての問題を検討させておる次第でございます。
  184. 松浦清一

    ○松浦清一君 いつのころかは知りませんが、かつてカナダの政府は商業関係書類の国外提出を禁止する立法を行なった例があるということでありますが、御承知であればお知らせ願いたいと思います。
  185. 牛場信彦

    政府委員牛場信彦君) カナダ政府は確かにそういう法律を制定いたしておりまして、日時ははっきりしたことはちょっとわかりかねますが、昨年であったと思います。
  186. 松浦清一

    ○松浦清一君 それではほかの国はどうですか。
  187. 牛場信彦

    政府委員牛場信彦君) オランダとドイツにおきまして、ただいまアメリカで起こっております事件、つまり国外における支店の営業につきまして、本店が書類の提出を求められるという場合には、それを差しとめるという法律ができております。
  188. 松浦清一

    ○松浦清一君 日本ではそういう法律を作る御意思がありますか、ありませんか。
  189. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 今こういうような事態にかんがみまして、各国等の例等も調べまして、こういう法律を作って日本立場を守りたいということを考えております。
  190. 松浦清一

    ○松浦清一君 これは運輸大臣だけの考えではいけませんから、総理大臣、外務大臣、今の運輸大臣の御答弁に御同意なさいますか。
  191. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御質問のように運輸省関係だけでなしに広く関係がございますから、政府といたしましては十分各国の立法例等も調査いたしまして、慎重に検討した上で適当な措置を講じたい、かように思っております。
  192. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 総理と同じ考えでございます。
  193. 松浦清一

    ○松浦清一君 それは私は作るべきだと思うのですよ。運輸大臣の考え方が正当だと思うのです。これから貿易の自由化がだんだん進展して参りますと、アメリカのみならずそのほかの国でもそういうことを行なう所が見えてくるかと思うのです。そのたびごとに日本の貿易に関する営業行為に支障が起こるようなことがあっては困るので、絶対に私は作るべきだと思う。日本の書類を外国がその国の法律によって日本国外に持ち出すとか、提出を要求されたりするということは国の屈辱だと思うのです。どうでしょう、検討してじゃなく作るということをはっきりおっしゃることはできませんか。
  194. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御趣旨はごもっともでございますけれども、いろいろな及ぶ所も各般の何でありますから、政府としては一つ全体を十分に検討して結論を出していく、御趣旨の点は私どもも同感でございますけれども、法制の問題でございますから、各種の立法との関係もございます。十分検討した上で措置したい。こう申し上げておるわけでございます。
  195. 松浦清一

    ○松浦清一君 その点は、それではそういう意味の国内法を作ることが必要であるということを、私は要請するにとどめて次に移ります。  最近伝えられるところによりますと、八幡製鉄、富士製鉄等の鉄鋼会社が、便宜置籍船形式で石炭専用船を建造する契約をするとのことであります。便宜置籍船については、海洋法の国際連合会議において船舶の国籍が問題となり、これを受けてILO四十一回総会においてその排斥が勧告されております。これは御承知ですね。かかる国際的に非難の対象となっている形式によって、実際は輸出船でないものを輸出船として輸出金融の便宜を与えることは、きわめて問題であると思いますが、大蔵、通産大臣の見解を伺いたいと思います。
  196. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤栄作君) 御承知のようにただいまは船の輸出にはずいぶん力を入れておりますが、わが国の産業に直接悪影響を及ぼすような措置は、輸出が大事でありましても差し控えるのが当然でございます。かように考えておりますので、具体的にこの問題が出て参りましたら、具体的問題として十分検討してみるつもりでございます。ただいままで事務的な話としては私どもの耳にまだ入ってはおりません。しかし、すでに新聞等で私どもの所信を聞かれておりますので、私どもの所信は新聞紙上に発表いたしております。
  197. 松浦清一

    ○松浦清一君 私は新聞を頼りにしてお尋ねしているのじゃありませんから、これから伺っていきまするその経過でその問題にぶつかることがあります。  日本の計画造船に対して、先ほど申し上げたように多額の財政資金を融資して、そうして日本海運の増強をはかっておる。海運に対して助成をしなければならぬということは、外国との競争に耐え得るためだ。にもかかわらず開銀で融資を受けて船を作れば六分五厘、それから輸出船として船を作れば金利が四分、計算上どういうことになるか、あとで伺いたいと思いまするけれども。そうして輸出船の形式をとって船を作らして、それを日本の業者が用船をして石炭を運ぶ、こういうことが許されるかどうかということは非常に問題だと思う。運輸大臣どうでしょう、通産大臣はあとからお答え願いたい。
  198. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 今、この問題は非常な大きな海運界にも問題を巻き起こしておるのでありまして、この事案は、御存じのように、臨時船舶建造調整法に基づく許可の対象となるものでありますが、今松浦さんおっしゃいましたように、日本の、輸銀の四分の金を利用して、外国船の名前によってこれを発注して、そうしてこれを独占的に使うというようないき方が、果して日本の海運政策の、つまりプリンシプルといいますか原則にそういうことが抵触するかどうかという問題になるのでありまして、ただいま大蔵大臣からもお答えされましたように、少なくともわが国の商船隊の公正な海外活動に著しい不利を与える、影響を与えるというような場合には、これは許すべきではないという考え方を持っておるのであります。ただ輸出船の場合におきまして、かりにわが国がそれを拒否した場合におきましては、他国に発注してやるという問題等もありますので、船の輸出という問題を考えてみますと、運輸省の船舶局、海運局、そこに一つの問題が起こってくるのでありますが、やはり基本は、日本が海運の保護政策を、国際競争等の立場からとっております建前から、この問題を大きく考えなければならぬじゃないか、こういうような問題が起こってきますることも、輸銀が四分でやっておる、しかも外国は三分五厘ないし四分でやっておる、日本は六分五厘ないし九分五厘でやっておるというところに問題があるのでありまして、こういう問題の起こってきますごとに強く感じますことは、日本の長期にまたがる海運の保護政策と申しますか、国際競争力に耐え得るような態勢を、原則をきめて、国際的な対象物として日本立場を作っていくということを考えなければならぬじゃないか、こういうことを考えるのでありまして、この問題は、事態が、まだ実は全然こちらの方にも申請等もきておりませんので、それがきました上で十分に検討いたしまして善処いたしたいと思うのであります。
  199. 松浦清一

    ○松浦清一君 大臣答弁としてはそれでいいんですけれども、もうそういう計画があるということは天下周知の事実なんですよ。私よりあなたの方が身にしみてわかっているはずなんだ。そういうものが許可されるということになると、着々と準備を進められるでしょうが、八幡では調査員を向こうに派遣しておるということですから、そういうものを調査をしても、これは許可にならぬだろうということになればやらぬかもしれぬ。今のうちに政府態度をきめておきませんと、それが具体的に申請書類がやってきて、そうして許可するのせぬのということを言えば、八幡製鉄さんに迷惑をかけることになる。その辺のところのはっきりした見解と信念をお尋ねいたしたいと思います。  重ねて尋ねておきますが、そのことによって、私の考えは、造船所の造船量が減ったりするということは、造船所に対して、はなはだ気の毒だから、そういうことは欲しない。そういう裏道をくぐって、ある方法を講ずれば安い金利の船が作れて、そうして荷物が運べるという一つの事態と、それから今おっしゃるように六分五厘、九分何厘の金を借りなければ船は作れない、よう二つの事態を一つの政府の目で同時に見ているということは許されない。造船所に対して船を作らしてやりたいなら、それに対抗するだけの国内船に対する助成を強化しなければだめじゃないか、その辺のところをはっきりしてもらわぬといろいろな面に迷惑をかけると思います。
  200. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) お説ごもっともでありまして、今申し上げたように、やはり日本の輸銀を通じてきめております四分という輸出船の問題の、つまり法の精神を━━端的にいえば知能犯的にこれを活用して、そうしてうまくやるというような行き方に対しましては、これは許すべきでない、少なくともそういうことが日本の海運に、商船隊に大きな悪影響を与えるべきものは、やはりその設けました精神等に反しますので、従ってそれは十分に検討した上で、やはり抑制すべきものは抑制するということをとったらいい。しかしこれも大蔵省その他とも一ぺんよく相談いたしまして、これに対する根本的な対策を至急きめたいと思うのでありますが、今松浦さんがおっしゃいましたように、やはり法の盲点をくぐってうまくやるというような行き方は、やはり法の精神からいってもこれを抑制したい、こういうように実は思うのであります。
  201. 松浦清一

    ○松浦清一君 総理大臣から責任のあることを聞いておきたいと思うのです。総理大臣、そういう矛盾した二つの形をずっと日本政府が一つの目で見ているというわけにはいかぬと思いますが、どうしたらいいかということをちょっとお伺いいたします。
  202. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 船の問題につきましては、政府として全体から見ると、造船業の振興といいますか、これも盛んになっていくように考えなければいけない。同時に日本の海運業自体が十分に国際競争力を持つようになっていくようにいかなければならぬと思います。このために従来いろいろな措置が講ぜられてきたわけでありますが、今松浦さんが御指摘になりましたように、輸出船舶に対して輸銀で四分の利子でやり、また国内船に対しては利子の点から見ますると六分五厘と九分五厘というような、ここに相当の開きがあるということがいろいろな支障を来たしていることもこれは御指摘の通りだろうと思います。政府としてこの間において適当な措置を講じなければならない事態が存すると思います。今どうするのだという具体的なことの結論を申し上げる段階でございませんが、十分に関係方面が検討いたして、この矛盾から生じてくるいろいろな好ましからぬ結果等につきましては、十分政府として、関係するところにおきまして検討して、調整をいたして、海運業もまた造船業も共に成り立っていくように考えていきたい、かように考えます。
  203. 松浦清一

    ○松浦清一君 通産大臣、御見解はありませんか。
  204. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。  ただいまお話の点は八幡、富士、鋼管の三社が四万ないし四万五、六千トンの原料炭の輸送船を計画しているようであります。御承知の通り昨年も外国の原料炭を五万トン近く輸入している、八割はアメリカ、しかも日本の鉄鋼業から見ると、ここ一二、四年のうちに一千万トン程度の原料炭をアメリカから輸入する、そういう場合におきまして、スエズ問題が起こつた三十一年、三十二年の状況で申しますると、トン当りの運賃が二十四ドルぐらいかかった、今は御承知の通り八ドルないし七ドル五十セント、こういう運賃がフラクチュエイトすることは鉄鋼の価格に非常に影響いたしますから、鉄鋼業者としては安定した安い運賃で恒久的に石炭と原料炭を確保することが必要であるという計画でやっておると思うのであります。私は、通産省といたしましては、その計画につきましては非常に納得いくのであります。しかしその船を、今お話のように外国船として輸出入銀行から融資してやるか、あるいは国内船として鉄鋼会社あるいは既存の船会社にその船を特別に持たすかということにつきましては、これは通産行政を離れておる問題でございますが、私は、そういう石炭の輸送の特別の船を作るということは考えられることで、賛意を表するのでありますが、どういう格好でどうするかということにつきましては、所管が違いますので、しばらくお答えを待たしていただきたいと思います。
  205. 松浦清一

    ○松浦清一君 私の計算したところによると━━この数字は必ずしも厘毛も違わないという数字ではないかもしれません。しかし輸出船として、輸出入銀行から四分の利子で金を借りて今の融資条件で船を作った場合には、その平均負担利率が五・一七%になります。それから今の計画造船の方式で財政資金五十・五十の比率で、開銀六分五厘、市銀━━利子補給を受けて七分五厘、こういう勘定にして七・一二%の利子になる。だから日本の荷主が、今まで申しましたように外国の船主と結託をして、そして平均利率五・一七%の船を外国船主に作らして、それを用船して運航するという場合と、日本自身が融資を受けて計画造船によって船を作る場合に七・一二%の金利がかかる。これの競争のできないことはこれはもう説明の必要がないわけであります。この調整をはかる必要があるというのです。私はどんどん船を作って輸出すること非常にけっこう。それから日本船もどんどん増強していって、外国船に荷物を積ませて外貨で運賃を払っているのを、日本船で荷物を運んで外貨を確保すること、こういう建前をとることが非常に必要だと思うのです。この利子の計算というのは厘毛違わぬということじゃないですよ。大蔵省でも計算しておられるそうだから出ていると思うのです。しかし相当の開きがあるということは、もう間違いのない事実なんです。だから、政府としてとるべきことは、そういう裏をくぐって都合よくやろうとすることをやめさせるか、それともこれと競争にたえ得るような助成を日本海運に対して強化してやるか、いずれかの道をとらなければならぬと思うのです。その点についてどの道を選びますか。
  206. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤栄作君) 国内の船舶につきましては、御承知のように利子補給法を今回御審議をいただいております。またその他の第三国間輸送助成金だとか、あるいは主機換装等の資金を確保する、こういうことでわが国の船舶の増強、いわゆる計画造船を推進していく。ところで輸出いたします場合は、輸銀の金利でありますが、ただいまも計算しておられますように、輸銀から融資いたします場合には二割の頭金をとり、年賦払い、これは七カ年ということであります。ところでこの二割、引いた残りのものについて民間協調融資の関係もございますから、四分の金利でないことはこれはもう御承知の通りであります。この輸出造船を計画いたしておりますのは、造船業から見まして機械輸出を進めるという観点に立っての問題であります。この輸出造船が、ただいま御指摘になりますように悪用されまして、わが国の自国船に対する計画造船より以上の便益が与えられる。それでそれがわが国に返ってきて、わが国の船舶で当然輸送さるべきものに対して悪影響を及ぼす、こういうことになれば、それは本来の輸出増強のためにいたしております輸銀の制度という範疇に入らない計画だ、と言わなくっちゃならないのであります。そういう意味から私たちは、今回の新船については、もうすでに大蔵当局としての意見を実は発表いたしておるわけであります。しかし、ある一面においては、外国からの鉱石等についても、安い鉱石が確保され、さらにそれが生産の面で製鉄その他にも役立つと、こういうようなこともございますから一がいには言えないと思いますが、輸銀が扱います金融は、ただいま申すように、これは単純な輸出貿易、その増進のための金融でございますから、その範疇に入るかどうかということで具体的問題を考えていくというのは、これは当然だと、実はかように思っておる次第でございます。
  207. 松浦清一

    ○松浦清一君 これを掘り下げて尋ねていけばまだまだ問題は残されますけれども、結局、総理大臣、大蔵大臣、運輸大臣、通産大臣等の今までの御答弁によりまして、こういう変則的なやり方はいかぬと、こういうことだけはお認めになりますね。四大臣ともお認めになりますね。
  208. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤栄作君) ただいまこういうような変則的な事態が起きたと、その根本についてはもちろん検討を要すると思いますが、変則的なやり方は、これはよろしくない、かように二つに問題を分けて考えるべきじゃないか、かように思っております。
  209. 松浦清一

    ○松浦清一君 総理大臣、疲れたですか。
  210. 岸信介

    国務大臣岸信介君) その通りです。
  211. 松浦清一

    ○松浦清一君 通産大臣もその通りですね。こういう変則的な輸出のやり方は間違いだと、よくないと、こういうことをお認めになりますか。
  212. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) ただいま大蔵大臣のお答えになった、これは、変則的なやり方はよくないというように私はとっていない。私の考えといたしましては、まあ実例をもっと申しますると、たとえば今までの原料炭の輸入も日本でやっているのは大体三分の一で、三分の二は外国船でございます。しかも今後そういうふうな需要が非常に多くなる、その分を全部日本の船会社あるいは製鉄会社がそれを引き受けるのだという方針がいいか、あるいは、一部は日本でもやろうし、一部はいわゆる輸出のための機械工業、その他日本の造船業奨励のためにある程度は向こうの分を引き受けてもいいのじゃないかということも私は考えられると思います。従いまして、今まで輸出入銀行が船舶輸出に対しましての受け持ち比率ということは、そのときの注文の状況によって変わっておったのであります。だから私は、これはオール・オア・ナッシングという形で片づける問題だけでなしに、今後の日本の鉄鉱石あるいは原料炭等の輸入の状況を考えまして、輸出船もいいでありましょうし、また国内でも船舶会社あるいは製鉄会社等が持つのもいい、これはよほど検討を要する問題であると思います。御承知の通り、今まで石油会社につきましては、外国資本を借りて日本の製油会社が船を作って持っているという例もあるのでございますから、これは一がいに左か右かと分ける問題でなしに、船舶の事情、いろいろな事情を考えて、輸出入銀行の融資割合を変更しただけでいいかどうか、こういうことは深く検討して考えなければならぬ問題だと考えます。お話の点は私は従来から考えておった問題でございまするが、まだ結論を出し得なかったのでございます。御質問の点がありますから、十分今後検討していきたいと考えております。
  213. 松浦清一

    ○松浦清一君 ちょっと重複するようになりますけれども、これに対処する方法としては、こういう変則的なやり方は認めないということにするか、それと競争ができるように、日本の計画造船を助成してやるかという二つの道しかないと私は思うのですよ。実際問題として。そのほかに方法があればお教え願いたい。今、通産大臣おっしゃったように、日本に輸入される石炭が全部日本船で運ばれているということはない。そのことは私、知っています。何パーセントの比率で日本船で運んで、何パーセントは外国船で運んでいるという事情もよく知っています。しかし、同じ日本人が日本で商売をしてそして、国費の息のかかった金を使って船を作るのに、そういう逃げ道があるのをそのままに見のがす手はない、こういうことを申し上げたいから私は言っているのです。今二つ以外の調整方法があればお教え願いたい。
  214. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤栄作君) 輸出入銀行の融資の問題としてお話しいたしますと普通の外国船についての輸出の場合ですが、大体頭金二〇%、二割を取りまして、残りの分を七カ年で償還するということですが、その七カ年分についての融資割合が、輸銀で八割する場合もございますし、あるいは七割の場合もある。その残りの部分は民間融資を受けるわけであります。そこで頭金の問題も、ただいま二割程度になっておりますが、もともと延べ払いを始めました当初においては三割というような高い現金の支払いを受けておる、こういうことであります。輸銀の金利は四分だということをしばしばいわれておりますが、全額が四分の金利で輸銀が扱っているわけではない。そのうちの二割ないし三割というものは現金で支払いを受ける、そして残りの部分について協調融資をしている、民間協調融資の分は九分五厘になるということでございます。この金利の計算は、そういう意味でそれぞれ違ってくるわけです。でありますから、その具体的の場合に、そういう点についてどういう措置をとるかという問題が一つ残っておるわけであります。  ただいま通産大臣も御指摘になりますように、外国から原料が入ります場合に、日本船ばかりでそれを使っておればいいが、ただいまの運輸業、その他綿糸の関係等がありまして、全部が邦船というわけにはいかない、外国の船による場合の荷物量も相当あるのですね。どんなに見ましても、輸入の場合に五割以上が外国の荷物が邦船によるということは、今の状況ではまだむずかしいのではないか、かように実は考えますが、そういうことを考えてみますと、外国船によるということも一つの方法、だから、もともとそういうような競争用の分もあるだろうという点が一点、また競争するとしても、ただいまの輸銀の条件というものは、それぞれの荷物の状況なり、あるいは注文主の状況等によってそれが動くものであるという点を考慮に入れていただきたい、かように実は思うのであります。非常に簡単に御指摘になれば、外国船に対しての輸銀と同じ金利で邦船を作れと、こういうことは一応言えると思いますが、しかし今やっておりまする利子補給にいたしましても、開銀の融資の六分五厘というものは、定期船等の場合には八割の開銀融資をしている。しかしタンカーやオアの場合には五割融資というところで協調融資、民間資金のパーセンテージが非常に高い。しかし、いずれにいたしましても邦船の場合は十五年の支払いでございます。そういう条件が違っておりますので、そう簡単に金利だけ比べて、開銀の金利六分五厘、輸銀四分だ、この比率だけでは優劣はなかなか判断のつかないものだということを申し上げたいのでございます。
  215. 松浦清一

    ○松浦清一君 大蔵大臣と金利計算の論争をしておると時間を食いますから、やりませんけれども、そのことは私の計算にも出ておるのです。邦船の場合は三〇%は自己資金で、七〇%は輸銀から借りて、そのうちの七〇%の八割しか借りられない。それを全部まとめて計算すると五分になる、そういう数が出ておる。これは私自身がやったのではない、専門家に計算してもらったのです。だからあなたが大蔵省で調べておるのとは若干違うかもしれませんが、厘毛違わない数字ではないということを前提にして申し上げておる。しかし相当金利の開きがあるということは間違いのない事実です。片一方が七年で、片一方が十五年と、そういうことを全部計算に入れても、日本船の場合の方が金利が高いということは間違いない。どんな専門家に━━意識的にそろばんのはじき方を間違えれば別だけれども、そうでなければ高いことは間違いない。それをトントンにいくようにすべきではないかということを私は申し上げているので、それをよく考えておいて下さい。
  216. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤栄作君) ただいまの御指摘の通りであります。問題の頭金の現金支払いの部分をどういうような金利に見るか、また変わってくるわけであります。ところで国内船について在来は六分五厘と九分五厘、これでは邦船が非常にきついというので、今回利子補給の制度を考えた。おそらく松浦さんの専門家的な意見からいえば、今回の利子補給は程度が非常に低い、こういう御指摘ではないだろうかと思いますが、私どもは必要最小限度の利子補給を再開した、かように考えております。  先ほどお話がありましたが、一体どのくらいにすれば国際競争力にひけをとらないで済むかというお話でありますが、これはその意味からいえば、うんと補助を出せばいいのだろうと思いますが、国内の産業全般関係もございますし、また金利体系等も考えまして、今回の措置といたしましては、まず私どもも必要最小限度の補助じゃないかというように考えておる次第でございます。
  217. 松浦清一

    ○松浦清一君 この問題について議論をしておると私も若干知っておりますし、これだけで時間を取ってしまいますから、結論だけを申し上げておきますけれども、もし、今のようなことが簡単に許可されるようなことになれば、日本の船主には便宜置籍船がふえてきますよ。それから今言ったように外国船主と共同して安い利子の金で船を作って、それで日本の船を圧迫するという、こういう傾向が顕著になることを今から指摘しておきます。ですから、そういう申請がきたらどうだこうだということを運輸大臣、おっしゃられたけれども、そういうことじゃなしに、閣内の意見を一致せられて、そうして善処せられることを私は要望しておいて、この問題を打ち切ります。  次は、もうだいぶ時間がたっているでしょうから、要点的に御質問を申し上げますが、選挙制度の改正についてです。これは岸内閣の重大な公約の一つだと私は記憶している。選挙制度の改正が、昨年の暮れに選挙制度調査会に諮問をされて、そうして昨年じゅうに答申があって、そうして自治庁で案を大体作り上げた。自民党さんの中の選挙制度調査会の中でも、大体結論ができて成案ができた。こういうことなんですね。これは今度の国会に提案される御意思があるかどうか、伺いたいと思います。
  218. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 選挙制度の問題につきましては、今御指摘のありましたように、選挙制度調査会に諮問して、その答申を得ております。党としてもこれに対する調査をいたす面もありますことも当然でありまして、今この国会に提案するということを目標として、自治庁において意見の調整、また検討すべきものは検討を至急するように命じて、それぞれ検討しております。その成案を得て、今国会に提案するようにいたしたいと、私は考えております。
  219. 松浦清一

    ○松浦清一君 法律案の最終決定は出ておらぬかもしれませんが、今までに選挙制度調査会の答申に基づいて自治庁で作られている、作業をしておられる現在のその改正の状態をちょっとお知らせを願いたい。
  220. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 先ほどお話がありましたように、昨年暮れに選挙制度調査会から答申を得まして、大体、その答申を基本といたしまして、自治庁でも一つの案をまとめてみたのであります。しかし、先ほど総理からお答えもございましたように、この問題はやはりいろいろ実情ともマッチさせなければいけませんし、党にも選挙調査会を設けて検討されておりますので、その方との意見調整を目下やっておる最中でございます。真剣に両者の意見の検討をかわしておる最中でございます。
  221. 松浦清一

    ○松浦清一君 大体自民党の七役会議か選挙制度調査会か、御相談をされて、大体の要綱の成案ができておると伺っておるのですが、その内容の説明はできませんか。そうして調査会の答申が、全部その現在の作業中の要綱の中に取り入れられているか。もしも取り入れられていないとすれば、その部分はどれであるか、説明を願いたい。
  222. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) ただいまのまとめております案をここでいろいろ詳しく申し上げましても時間がかかりますから、選挙制度調査会の答申の中で自治庁案に取り入れられてなかったのは、例の高級公務員の立候補制限の問題なんでありますが、これも選挙制度調査会の答申は、必ずしも立法化せいというだけの問題ではないのでありまして、立候補の制限等何らかの措置を講ぜよとようような意味の答申であったわけです。この問題は、先年、たしか二十九年だったと思いますが、国会でもいろいろ議員立法かなんかで論議されまして、憲法上の疑義とか、いろいろの問題があったものでありまするから、一応自治庁の案からはこれを落としまして、むしろ内部的の規制等でこの問題は処置する方がいいのではないかという意見で、今いろいろ当たっておるわけでございます。選挙制度調査会の答申と自治庁の案との一番大きな違いはそこでございます。党との折衝の過程におきましては、党側の方からも、いろいろ自治庁に強くした意見も出ているのでありますけれども、まだ最終的結論が出ておるわけではございませんので、ここでの発表は差し控えておきたいと思います。
  223. 松浦清一

    ○松浦清一君 今の高級公務員の立候補制限の問題については、今自治庁長官がおっしゃられたほど弱い意味で選挙制度調査会は答申されたのではないと私は聞き知っているわけです。ところが、その答申が自治庁に回ってきたその瞬間から、ある特定の層の人たちからの非常に強い抵抗があって、自治庁の案の要綱の中に入れることはできなかったと、こういうふうに私は聞いておる。もう少しそれを入れなかった理由を詳しく説明して下さい。
  224. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) これは、私ただいまお答え申し上げたのがそのままの真相でありまして、別にどこからの圧力があったとかどうとかいうのではない。むしろ一般と申しまするか、党側などでは要望しておる声の方がむしろ大きいくらいでありますから、率直に申し上げまして、先年の議会でもいろいろ論議されて、結局憲法上の疑義があるというようなことで日の目を見ていないのであります。また、立法技術上の書き方にもいろいろ問題点がありますので、そこらを法制局の意見を徴する、あるいは党側との意見の調整をやっておるという段階でございまして、これが率直に申し上げまして、今までのほんとうの真相でございます。
  225. 松浦清一

    ○松浦清一君 選挙制度調査会のいう高級公務員、それから、今あなたが中に入れることができなかったという高級公務員の範囲というのは、どの辺までですか。
  226. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 高級公務員の内容もいろいろあると思いますが、一応高級公務員といわれておるのは、大体局長あるいは局部長クラス以上の者をさしておるようであります。
  227. 松浦清一

    ○松浦清一君 選挙は民主政治を確立する基礎でありまするから、きわめて公明に行なわなければならぬということは、これは論ずるまでもないのです。ところが、今言われた高級公務員の諸君は、現職中に役所の自動車を使って、現職中に役所の電話を使って、そうして地方に出張したときには、地元から招待された宴会の席上で、今度立候補するからよろしくということをやる。そういうことが今まで公々然として行なわれておるが、それを取り締まる方法がございますか、自治庁長官、総理大臣。
  228. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) これはたしか二十九年にこの問題が論議されたときの、あとの結論として生まれたものと思うのでありまするが、現職中に今申しましたような高級公務員が、いろいろその地位を利用して選挙運動、事前運動をやっておったというような場合には、罰則がたしか倍加されておるのであります。一年のものは二年という、そういう現在の立法におきましてもいろいろの制約を設けて、これが取り締まりをしておるわけであります。
  229. 松浦清一

    ○松浦清一君 総理大臣、どうですか、これは。選挙はなかなか重要問題ですからね。
  230. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この高級公務員の問題につきましては、従来もいろいろ弊害があることも指摘されております。また、今、石原自治庁長官が申し上げましたように、従って、従来国会におきましても問題になったことでありますが、一方、民主政治の運営において、立候補するというこの権利を特に制限するということは、憲法上の問題もありましょう。私は現在、事前運動の取り締まり、また公務員としての服務の上から取り締まりというようなことによりまして、そういう弊害を阻止するというようにいたしておりますが、それではたして十分であるか、あるいはさらに、何かの取り締まりを加えるべきかというようなことにつきましては、今、公務員制度であるとか事前運動の取り締まりの問題等に関連して考えていくのが適当じゃないか、かように考えております。
  231. 松浦清一

    ○松浦清一君 自治庁長官に伺いますが、その答申の中に、寄付行為の制限、それから資金規正の強化、そういうものは答申されておるのですか。
  232. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) お答えいたします。資金の規正とか、こういう問題につきましては、これも去る二十九年に、当時政党が五党ありまして、五党会談でいろいろ検討をされたのでありますが、ついにこれはやはり結論を得なかったのでありまして、そういう意味から、今回の答申の中にも資金規正、こういう問題については触れていないのであります。選挙制度調査会でも、この問題はまだ根本的に検討をいたしていないのであります。
  233. 松浦清一

    ○松浦清一君 どういうわけで検討しなかったのでしょうか。選挙が腐敗し、事前運動がひそかに料亭において行なわれるということは、結局寄付行為に対する制限が非常に弱いからそういうことができる。この間も、予算委員会の要求によって、各方面からの政治資金の献金の表が出ておりまするけれども、あるところに行って聞いてみるというと、これは献金したのではない、取りにこられたからしょうがなしに出したのだ、こういうところもある。われわれが、いなかの方の週刊紙か月刊紙か知りませんけれども、正月になるというと、名刺広告を出しておいたからこれに五百円ほど出してもらいたいというようなことを言うてくれば、これはおつき合いでどうしても出さんならぬというような仕儀になることもあるので、その制限が強化されなければ、取りにいき放題で、そうして、何か仕事を頼んだとか、何かやってもらおうとか、そういう考えを持った者は出さざるを得ぬというところに追い込まれるわけです。だから民主政治が発達するために、何党が強くなるために献金をいたしましょうというような誠意から出たもの以外に、その金を取りにこられてしょうことなしに出すということもこっちにあるわけです。どうしてそれが問題にならないのですか。
  234. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 一応問題になることはもちろんでありまするが、昨年秋、選挙制度調査会に諮問いたしました際には、国会の提案等の関係もありまするので、なるべく暮れぐらいまでに答申をしてほしい。しかもその問題は、春の地方選挙、参議院選挙等の結果にかんがみまして、いろいろ公営の拡充であるとか、問題がございましたので、それらに重点をしぼって答申をしてあるわけでありまして、資金の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、ずいぶん長い間各党が寄って知恵をしぼっても、ついにやはり結論を得ていない。それほどやはり困難ないろいろむずかしい問題が伴っておるのであります。この問題は選挙制度調査会でもさらに今後あらためてまた検討をするということになっておるのでありまして、この問題は決して投げておるわけではないのであります。
  235. 松浦清一

    ○松浦清一君 次に、定員の問題についてお伺いをいたします。現行の制度は、議員一人当たりの人口が三十万人に余るところがあるかと思えば十三万人のところもある。これは御承知の通り、選挙区画と人口の調整をはからなければならぬということは多年の懸案であった。それがどのようになさるおつもりであるか、お伺いをしたい。  続けて申し上げますが、最近、これは新聞に報ぜられておるところによりますと、自民党の選挙制度調査会の中で、自治庁と相談の上で、東京の一区、六区、大阪の一区は各二名、東京の二区、四区、五区、兵庫の一区、大阪の二区、神奈川の一区はそれぞれ二名、計十二人を定員よりふやすという案である、こういうことが報ぜられておりますが、それは爼上に上っておるわけですか。
  236. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 選挙区の定員と人口のアンバランスの問題は、まあ最近いろいろやかましく論ぜられておる問題の一つでありまして、まあそのために選挙制度調査会におきましても、それらの問題を公平な第三者で検討をするという意味で、選挙区画委員会という構想が打ち出されておるわけでございます。しかし、この問題、手をつけなければならない問題と思いまするが、しかし選挙区の問題には、御承知のように、衆議院においては小選挙区の問題、参議院においてはさらに全国区をどうするかという大きな問題がいろいろ控えておるのであります。これらの問題とさらにあわせて考えるべきではないかというようないろいろ強力な意見もあるわけでございまして、そういうことからみ合わせて、この問題が今党においても真剣に検討をされておるところでございます。先日、新聞に出ました数個の区において定員をふやすという案につきましては、自活庁、正式に相談を受けてああいう案を話し合ったというわけではないのであります。一部にああいう検討がされておるというのが、たしか毎日新聞であったかと思いまするが、に出たようなわけであります。私もまだ正式にこれは相談を受けておるわけではございません。
  237. 松浦清一

    ○松浦清一君 ただいま私の質問中に、東京の二区、四区、五区、兵庫の一区、大阪の二区、神奈川の一区はそれぞれ二名と申し上げましたけれども、これは一名、合計十二人を増加するという案が問題になっております、こういうことなんです。この議員定数と人口の関係というものがだんだん変なものになってきて、これを調整しなければならぬということは天下の世論だと思う。総理大臣はどういうおつもりでございましょうか。
  238. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 現在の選挙制度のもとにおいて、有権者の数と議員の数との間が、全国的に見まして非常にアンバランスになっておる、これを適当に調整しろという議論は、私は有力なお考えだと思います。ただ、これを調整するにつきまして、実際問題として、あるところをふやして、あるところを減らすということは、これはなかなかむずかしいことでありまして、さらに中選挙区の制度を維持しながら六人以上のような区ができるということも、中選挙区の性格からは非常に問題であろうと思います。従って、選挙区の区画の問題にやはり関連してこれは調整していかなければならぬということになるだろうと思います。先ほど自治庁の長官が申し上げましたように、選挙制度調査会におきましても、この問題につきまして、選挙区の区画の問題と関連して考えるというような意味におきまして、区画委員会というような構想が生まれてきておるのであると思います。私は、直ちに小選挙区制だとか、あるいは全国区の問題を取り上げて、それをどうするのだという結論は軽々に持っておりませんけれども、選挙区の問題と有権者の数の調整という、バランスをとるという問題が密接な関係があることだけは事実でありますから、そういうものとあわせて、さらに慎重な検討をして結論を出すべきものである、こう考えております。
  239. 松浦清一

    ○松浦清一君 自治庁長官、選挙法の改正案を出すことに決定すれば━━大体出すのでしょう。出せば別表を同時に出しますか。
  240. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 選挙法の改正は、さっき総理からお答えになりましたように、出すという目途、目標のもとにただいま検討をしておるわけでございます。しかし、出せば同時に別表の改正案までという御質問でございまするが、今の選挙制度調査会の答申なり、われわれが考えておりまする一応の段階は、その前に選挙区割り委員会といいますか、区画をどうするか、区画を割る場合に定員をどうするか、こういうことを公平な第三者で一応案を作る、その組織法をあわせて出したいということを考えておるのでありまして、別表までいじって同時に出すという、直ちに選挙法の改正と同時に出すという考えはただいまのところ持っておりまん。
  241. 小林英三

    委員長小林英三君) 松浦君に申し上げますが、持ち時間が終了いたしました。
  242. 松浦清一

    ○松浦清一君 わかっております。もう二間だけ聞いておきたい。  選挙区画委員会設置法というものが出るわけですね。そうすると、今のあなたの話を聞いておるというと、この委員会設置法案が先に出て、それがきまって、そこで相談をして区画をきめて、総理大臣に答申をして、それから選挙法の改正案を出す、こういうことになるのですか、同時に出すのですか。
  243. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 選挙法の実体法の面は、これはすぐ出す場合には改正案が出てくるわけでありまして、別表の人数を訂正といいますか、いじるのは、その前に区割り委員会というものを設けて、区割り委員会で一応検討した答申が出て、それに基づいて今度は別表の数をいじる、仮定の議論でありますけれども、出すとすればそういう形になるのであります。
  244. 松浦清一

    ○松浦清一君 もう一問。そうしますと、選挙法の改正案と区画委員会設置法案とが同時に提案をされて、そして区画委員会設置法案が成立をして、そこで総理大臣に区画をどうする、別表をどうするということが答申をされて、それから選挙法の改正案というものが出るのですか、その辺がちょっとあいまいなんですが、説明して下さい。
  245. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 選挙法の中の公営部分をどうするとか、供託金をどうするかとか、そういう改正案はすぐできるわけです。別表の部分については、別に区画委員会議という組織法を出して、その組織法が成立したあとでその答申に基づいてさらに別表の改正をやる、こういうことになりまするので、別表の改正は二段になるということでございます。
  246. 松浦清一

    ○松浦清一君 区画委員会設置法と選挙法の改正と一緒に出てくるのですか。
  247. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 選挙法の改正と区画委員会議法の立案は、これは同時にやる、やることになれば同時にやります。
  248. 松浦清一

    ○松浦清一君 それから十二人増というのは、問題になっていることは間違いないですね。
  249. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) これは一部にそういう意見が出ておるようであります。
  250. 松浦清一

    ○松浦清一君 それじゃ日韓交渉の問題をやる予定で農林大臣にも御出席を願いましたけれども、時間切れとなってやれませんでしたから、また、委員会か何かでお伺いすることにいたします。
  251. 小林英三

    委員長小林英三君) 次は千田正君。
  252. 千田正

    ○千田正君 私は、主として現在問題になっておりますところの安保条約の改正について、一、二総理大臣並びに外務大臣の御所信を承りたいと思うのであります。  一月の十九日に総理並びに外相はアメリカにおもむいて調印をなさりましたが、同時にこの問題は、世界の各国においていろいろな批判を生んでおる。ソ連や中共の批判はこれはまた別といたしまして、私の手に入りましたいわゆる新聞等に通じて見ましたときに、英国のタイムスあるいはデーリー・テレグラフが、日本の結ぶ新条約日本の外交上また軍事上の同盟関係に何一つ変化をもたらすものではないということを書いておるのであります。われわれ国民としましては、総理が何回となくわれわれに対して、極東の安全と平和のためにこの条約が改正されるのだ、こういうことをおっしゃっておられます。それで具体的に、しからば大きな意味の、具体的にどういう点が従来の問題と異なってあるいは進んで、日本の国民の福祉にあるいは幸福に役立つものであるかということを、ここに明白にお答えを願いたいと思うのであります。
  253. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お説のように、現在も日米の安保条約がございます。これも防衛的なものであることはその通りであります。今度の改正案におきましても、その本質におきましては、そういう点においては何ら変っておらないのであります。ただ、しばしば御説明申し上げておるように、現在の安保条約において、日本としてはアメリカ軍に基地を提供しており、アメリカ軍が駐留しておるけれども、その行動については、日本が何ら自主的な立場から日本意見というものが反映しない。たとえばその装備の点についても、問題になる核兵器についても何らの反映がない、あるいはまた、この条約の上からの、国民が問題にし議論になっております、日本領土が、武力を使うのではなくして、極東の平和と安全のために米軍が出動するという場合に、日本の意思が何らこれに反映する余地のないような条文になっておる。こういう点が、この日米の関係、対等な関係において日本の自主性を認めるという意味から申しますというと、いわゆる事前協議の対象として十分に日本の意思を反映せしめるというような点である、あるいはこの種の条約において全然期限の定めのないことに対して一応の条約の期限というものを定める、あるいは日本に駐留しておるところの米軍が今の安保条約においては明瞭でない、日本が武力攻撃をされた場合において、米軍自身もそれに対して日本を防衛するということをはっきりさせるというような幾多の点におきまして、日本とアメリカとの関係における基本的な安保体制というものについては何ら変更はないけれども日本とアメリカとの関係における日本の自主性、日本との間の関係というものは、今申しましたような諸点において明瞭にして、日本の自主性を明らかにする、これが国民の要望でもあるし、それに沿った改定である、こういうように考えております。
  254. 千田正

    ○千田正君 ただいま総理大臣のおっしゃられた分を要約してみまするというと、先般来衆議院並び応当参議院における本会議等において、総理がしばしば言明されたところだと思います。また、問題になっておる点もそうだと思いますので、要約すれば、大体三つの重大な問題が論議の中心になると思います。それはまず第一には、条約の期限の問題、次には事前協議の問題、次にはいわゆる極東という制限に対するところの範囲の問題、この三つが安保条約を中心とするところの国民の視聴を集めるところの重点であると、こう思いますので、第一の、いわゆる期限の問題につきまして一月二十日のニューヨク・タイムスはこういうことを言うておるのであります。条約の期限が十年となっているが、一年前に廃棄を通告しない限り無限に延長されるであろう、日本がアメリカとの同盟のもとに自国の防衛、軍隊を持って自国を防衛できるようになるときがくれば、アメリカ軍隊は日本から引き揚げるであろう、日本が自己防衛できるときというのは、一体何年先を予想しておられるか、かりにそれが十年という期限を切った理由の一つになっておるかどうか。この点は、十年というこの年月を切ったという点はそういうところにあるのでありますか、どういう点でありますか。
  255. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この種の条約についてある種の安定期間を持つことが私どもは必要である、しかし、その安定期間としてどのくらいの期間が適当であるかという意味につきましては、これはいろいろ現在存しております各種の各国の間のこの種同様な条約については違っておる、従って私どもが十年ときめたということは、いろんな日米の関係、国際情勢その他を考えまして、一応の安定期間として適当であるという十年をきめたわけであります。これでもって日本が直ちに、日本一国でもって日本の自衛体制ができる期間だというような標準で考えたわけではございません。
  256. 千田正

    ○千田正君 そうしますというと、この十年というのは大体━━という見積もりでこういう期間をきめられた。一方において、私は防衛庁長官にお伺いいたしまするが、この新条約を結ばれると同時に、昨日の同僚議員の質問に対して、防衛庁長官のお答えは、今後、次第にアメリカの駐留軍は、少なくとも陸上部隊は漸次撤退するのだと、あるいは今までもすでに撤退しておるのだと、こういうことをおっしゃられておる。それにかわるべきところの日本の防衛隊のいわゆる増員であるとか、あるいはその他の空軍あるいは海軍等におけるところの増強ということは、相当考えておられるようなお答えであったと思うのであります。それで、十年という長い期間の間に、この第三条の防衛力増強に伴うところの財政負担という問題は、直ちに国民の肩にかかってくる問題であるとわれわれは考えるのでありまして、今後におけるところの防衛金額というものは、アメリカ駐留軍の引き揚げに伴って、漸次陸上部隊も増強し、あるいは空軍も増強し、海軍も力を増強して、一応十年後においては日本の防衛体制の期間として整え得るという確信のもとこういう条約への目安をつけたのかというふうにわれわれも推定されるわけですが、その点はどうでありますか。
  257. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 安全保障条約の期限を十年ということにしましたことにつきましては、その間に防衛力が増強できるからと、こういうものとは直接関係はありません。これは総理が御答弁申し上げた通りであります。  ただ、防衛庁といたしましては、第一次計画が三十五年度で終わります。第二次計画を四十年度を期限として策定中であります。しかし、これは今お話がありましたように、アメリカの軍隊が漸次撤退してきております。陸は戦闘部隊はおりません。空の方も非常に減ってきております。それを補う数をわが自衛隊がふやしていくということをそう考えておるわけでありません。たとえば、第二次計画によりましても、陸上自衛隊としてはほぼ十八万を下らない程度ということにしてありますけれども、それにつきましても、さらに検討を加えなければならないと思います。要するに、人員ということだけをそう強く考えておるわけじゃありませんが、装備その他につきましては、近代化をはかって質的によくしていきたい。それからまた、財政の点につきましては、国民生活を圧迫するようなことは極力避けなければならぬと思います。現在においても、防衛費は国民所得に対して一・四八%でありますので、再々申し上げておりまするように、どの程度の防衛費が適当かということは非常にむずかしい問題でありますけれども、大体世界的な傾向といたしましては、国民所得に対してどの程度かということが一応の標準になっておるようでありますので、四十年度におきましても、一応は国民所得の二%程度のものは持ちたいという考えを持っています。国民所得もふえまするし、それに比較しての二%程度ということです。戦後もずいぶん二%程度になっておったことがあります。三十四年度は一・七%でありましたが、これは国民所得がふえましたので、一・五六くらいになってきておるかと思います。そういうことで、財政の面におきましても、まだ第二次計画の査定はできておりませんが、国民生活と密接な関係のある問題でありまするから、圧迫するようなことは考えずに、まあ抽象的でありますが、極力国情に応じて整備をしていく、こういう考え方であります。
  258. 千田正

    ○千田正君 今の防衛庁長官のお答えによるというと、自衛隊の増強とか、そういう面の問題は安保条約という問題とは全然別個だと、こうおっしゃるのでありまするが、きのう防衛庁長官は、同僚議員の質問にお答えになって、世界各国の兵力の数等についてお答えがありました。ただいま総理大臣は、極東の安全と平和のためにということであったならば、これは何らそうした武力ということは問題にならないのか、問題にしないで極東の安全と平和というものを保つというお考えなのか。安全保障条約日本の自衛隊の増強というものは一つのうらはらになっておるのではないかとわれわれには考えられるのですが、今の防衛庁長官のお答えによると、全然それは関係ないのだと、こういうようなお話でありますが、総理大臣のお考えはどうですか。
  259. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私どもが自衛力を増強していくこと、日本がどういう自衛力を持つかということにつきましては、すでに国防会議におきましてその基本方針を決定いたしております。そうして、その基本方針は、今度の安保条約の改定によって少しも動かされることがなくして、われわれが自主的にきめた基本方針によって将来の日本の自衛力の増強ということは考えていきたいと、こういう意味におきまして、安保条約が改定されるということと自衛力の増強ということは関係ないと、かように防衛庁長官がお答えをいたしましたことは、私はそういうふうに、やはり同じように考えております。
  260. 辻政信

    ○辻政信君 関連。今の総理発言は、きわめて重大でありますから、念を押しておきます。日本の自衛力の漸増が安保条約関係がないのだということは、安保条約の第三条━━この第三条には明らかに、条約を果たす双方の義務として、「締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。」ということがある。これに基づいて、日本の第二次防衛計画はこの条約を履行する義務として当然受けなければならない。にもかかわらず、自衛力漸増が安保条約関係なくして自主的に日本の一方の意思によってやれるというふうに総理はお答えになったのでありますが、間違いございませんか。あとから重大問題になる。
  261. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私がお答え申し上げましたのは、従来といえども、また今後といえども日本の自衛力の増強というものは、日本の国防会議において決定をしておる。自主的に決定しておる。その方針を貫いていくのであって、その点においては何らの変更はないと、かように考えております。
  262. 小林英三

    委員長小林英三君) 辻君簡単に願います。
  263. 辻政信

    ○辻政信君 これはちょっとおかしい。それでは防衛庁長官に聞きますが、日本の自衛力というものは、日本が独力で、アメリカに関係なく独自の立場で立案をされるか、それともアメリカ・プラス・日本というものの力が、これが総合の防衛力になるか。従いまして、アメリカの持っておらないものは日本が持つ、日本の持っておらないものはアメリカが持つと、この相互の力を結合してこの条約の第三条というものができ上がると私は見ておるのですが、防衛庁長官は防衛力漸増の内容について、アメリカに相談せずに日本独自の観点からひとりで守るという自主的な立場で増強計画をお立てになることができるかどうか、この一点を念を押しておきます。
  264. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 安保条約と防衛力の維持発展ということが全然関係ないとは申し上げません。
  265. 辻政信

    ○辻政信君 総理はないと言っておる。
  266. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 全然関係ないとは言っておりません。第三条によりまして、防衛力をそれぞれの能力に応じて維持発展すると、こういうことがきめられております。これは一般的にそういうことでありますが、具体的にしからば防衛力の範囲、能力をどの程度にするか、こういうことにつきましては、これは従来の国防会議におきましてきまった方針に従って日本の国力、国情に応じ、あるいは国際的の関係等を勘案してきめていく、具体的にはそういう方針できめていく、こういうことにつきましては今度の安全保障条約の改正についても具体的にきめていくことについては変更はない、こういう意味でございます。  それから日本の防衛力を維持し発展するについて、日本だけで日本の防衛の目的が達せられるか、こういうことでありますが、この点につきましては、日本だけで達せられることもある程度できますが、ある程度以上におきましては達せられない面もあります。でありまするから、今度の安全保障条約におきましても、共同の防衛というような関係も出てきておるわけであります。しかし、日本の防衛力をどの程度に維持し、あるいは発展させるかということは、具体的な問題は、これは日本自体がきめることである、こういうことに私は了承しております。
  267. 辻政信

    ○辻政信君 食い違いがありますから、もう一点だけ簡単に総理にお伺いしますが、条約の第四条は、この条約の実施に関して随時協議する。第三条の実施に関しても随時協議して参らなければならない。第三条というのは自衛力の増強なんですよ。その自衛力を増強する今のやり方に対しては第四条においてアメリカと随時協議しなければならない。そうすれば、日本独自の立場で、アメリカに相談せずに第二次防衛計画が自主的に立つなんということは詭弁ですよ。条約の精神に反しておる。
  268. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん四条において条約の実施に関して、必要なことについては協議すべきことは当然であります。たとえば、われわれがアメリカの援助を得なきゃならぬ、日本の防衛力を増強していく上において援助を得るというようなことにつきましては、もちろん協議をして円滑にいくようにはかっていくことは当然です。しかしながら、この日本の自衛の力をどういう計画によってこれを増強していくかということは、従来の通り日本の国防会議できめた基本方針に基づいて日本が自主的にきめるものだと、私は従来と同じに考えております。
  269. 辻政信

    ○辻政信君 従来相談せずにきめましたか。何を言っておる。
  270. 千田正

    ○千田正君 今の辻委員質問に対してのお答えも、はなはだ私どもは不思議に思うのは、今までの国防会議なるものは日本だけできめておるように今お話でありますが、なるほど具体的には日本だけできめることがあるでしょうが、そのきめるにあたっての共同作戦あるいは共同防衛というような問題に関しては、少なくとも日本の分担すべき分野の問題等に対しては、アメリカ側との間に一応の交渉か、あるいは協議をされておるものとわれわれは推測するのですが、そういうことはかってなかったし、今後もないというお考えなんですか。
  271. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん、日本の今日の自衛力の増勢につきましては、アメリカ側のいろいろな援助もございます。従って、日本としてアメリカ側に協議をしたこともあることは、事実であります。しかしながら、防衛計画そのものの決定ということにつきましては、アメリカ側のその決定の案を決定する場合におきまして、その案に、ついて協議したというようなことはございませんし、また将来においてもその必要はわれわれはないと考えております。
  272. 藤田進

    ○藤田進君 ちょっと関連して。非常に重要な点で、いずれ千田さんが深く掘り下げられると思いますが、見のがすことができないのは、安保条約について本会議における質疑以来、今回の予算案に関連してのわが党の木村委員質疑に対しても、従来岸総理は防衛力の増強については、何らという言葉を使って、安保条約とは関係はございませんということでこられたわけです。ところが今、防衛庁長官の御答弁は、辻委員からの御指摘に基づいて、裏返せば、防衛力の増強は安保条約関係がないとは言えない、関係があるということであります。かように重大な点について閣内の意思が統一していないし、私ども総理答弁をずっとそのものとして聞き、いずれこの問題については深く掘り下げてただすところでありましたが、本日かような明確な閣内における総理と防衛庁長官の御答弁が違うわけでありまして、言いくるめるのではなくて、この際、この間の食い違いについて明確にしていただきたいと思う。
  273. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほどからお答え申し上げております通り日本の自衛力の増強につきましては、日本では国防会議において諸計画をきめる、国力、国情に応じてこれを漸増するという基本方針をきめております。これに基づいて従来もきめております。この安保条約の改正が行なわれましても、やはりその方針はその方針の通りに自主的にきめるということにおいて何ら相違はないのであります。その点を私は従来から申し上げておるわけであります。
  274. 藤田進

    ○藤田進君 もう一点だけ。そういたしますと、たまたま既定計画、あるいは予想として防衛力の漸増計画があった、そこに今回の安保条約が結ばれ、第三条の規定ができて、義務負担がある、従って、結果において新しい防衛漸増計画というものを立てるのではなくて、たまたま一致しているんだから、事実問題として、その安保条約のために増強するのではない、こう私はなるんだと思う、あなたの答弁は。そうではなくて、条約の条理から、この条約の義務的部分として防衛力は常にアメリカとの関係において安保条約が公式的には前面に出て、防衛力の増強ということが考えられてくる、こういう筋合いのものであって、あなたのは、事実問題としてはたまたま増強計画があるんだから、何ら関係がないというふうにこじつけをされているように思う。この二つのうちどちらをおとりになるんですか。
  275. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本の防衛力の増強ということが、先ほどから御議論がありますように、アメリカに相談しなければできないものであるかどうかという問題と、それからもう一つは、新しい安保条約ができたので、その従来の義務が加重されるものであるかどうかという二つの点が問題になると思います。私はその二点に関して先ほどからお答えを申し上げておるのでありますが、第一点の、従来具体的の計画を立てる場合において、われわれがアメリカに相談して、アメリカの案につきまして相談をして、そうしてこれを決定するというような意味において協議したり相談したことはないということを申し上げました。その通りでございます。将来といえどもそういうやり方においては何ら変わりはないのであります。また安保条約の改定によって、それでは防衛力の増強について何か義務が加重されるか、こういいますというと、私が先ほどから申し上げておるように、日本は今後といえども国防会議できめておる国力、国情に応じて漸増するという基本方針を貫いてゆくわけであって、何らその間において加重されるものではないというこの二つの点を申し上げておるのであります。
  276. 藤田進

    ○藤田進君 漸減方針の内閣ができたときには、どうなるんですか。  答弁漏れがあるのは、防衛庁長官との食い違いを明らかに本席におる者は聞いておるところであります。総理の言われる点は、防衛庁長官の答弁との食い違いが解明されておりません。さらに、たまたま岸内閣において漸増方針があるから新しく加重するものではないというのは、これは事実問題でしょう。けれども条約本文からいけば、防衛力について漸減主義をとる内閣がかりにでき、あるいは現状維持の方針をとる内閣ができたという場合には、安保条約をたてにアメリカとしては発言するここにチャンスもあるし、また日本に対してはその義務があると考えなければならぬ。この点はいかにお考えですか。
  277. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今度の三条の規定は、独立国としてそれぞれの国が他からの武力的な攻撃に抵抗するところの能力を維持し発展させるということを互いに宣言し合っているわけでございます。そしてそのおのおのの、それぞれの国の能力をいかに維持し発展すかということは、その国が自主的に考えていいことであって、これが他の方から数量的にどうしなければならぬというふうな性格の問題ではない、私はこう思っております。
  278. 藤田進

    ○藤田進君 防衛庁長官との食い違いはどうなのですか。
  279. 千田正

    ○千田正君 防衛庁長官との食い違いは、今藤田君が質問していますが、私もその点をお尋ねしたいと思います。
  280. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 総理の御答弁申し上げたことと私の申したこととは全然違っていません。私は、今度の安保条約において全然自衛力の維持、発展ということは関係ないとは言えない。具体的に維持、発展するということについては、第三条にあるように、それぞれの能力に応じてやっていく、こういうことになっています。ですからアメリカはアメリカ、あるいは日本日本、それぞれの能力に応じてやっていく。それで日本ではどうかといえば、従来の方針のように、日本の国力、国情に応じてこれは維持し、あるいは発展させる。ですから今度の条約によって特に日本の責任が、あるいは義務が加重されているというふうには考えられない、こういうことですから、総理答弁とは違っておりません。
  281. 千田正

    ○千田正君 どうもこの第三条、第四条をわれわれが考えますときに、防衛庁長官のお答えはどうもぴんと来ないのです。第三条等においては、当然日本がその能力に応じてむしろ、とにかくアメリカとの約束のもとに国内における装備をやらなくちゃならない。あなたがこれから航空部隊に飛行機を買うにしたって、やはりそれは一つの第三条に基づく国内において、日本の能力においての分担すべきところの防衛力拡充のためにやらなければならない。私は大いにあると思うのですがね。これはないとか、あるいは非常に薄いとかいうことじゃなくて、今度の新安保条約とうらはらの問題として日本が当然アメリカの期待にこたえるだけのことをやらなくちゃならないというふうに私は義務づけられておると思うのですが、その点はないと思うのですか、それはどうなのです。
  282. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 日本とアメリカとの互いの約束でありますから、約束にはなっていますけれども、しからば、向こうの言うことを聞いてやらなかった場合にどうかというような問題はありますが、そういう問題で義務違反だとかなんだとかいうことを問われる理由は一つもないわけであります。やはり日本といたしましては、日本の国力、国情に応じて維持、発展していくその計画についてアメリカの指示を仰ぐとか、そういう必要は毛頭ありません。しかし、ほかのことについて協議はありますが、協議をしました結果、判断するのは日本ではあります。向こうの命令とか指示によってその通り動くということではありません。判断はもっぱら自主的に判断して、日本の国力、国情に応じてどの程度にするかということをきめるということでありますから、加重をされておるわけではありません。
  283. 千田正

    ○千田正君 これは、どうもこの議論はいつまでやっても併行線のようであります。われわれとしましては、やはり第三条、第四条において、アメリカと日本との間に結ばれたこの条約に基づいて、日本側は良識的にアメリカの期待に沿うべく国内において漸増しなければならないのではないかとわれわれは考える。この点についてはいずれ別の機会議論します。  次の問題について私はお答えいただきたい。事前協議はすなわち事前同意ではないかという点で、反対論の方々が相当これを議論の中心にやっておられる。しかし、それに対しましては、総理もしばしばそうじゃないのだということをおっしゃっておられますが、特に拒否権の問題については、日本がアメリカに対してノーと言えば、アメリカも日本の拒否権に対しては同意するのだというような意味のことを言っておられますが、それは確かかどうか。特にこれは日本岸総理並びに藤山外務大臣がそうありたいという希望であって、向こうはそれによって拘束されるということでないじゃないか、こういうふうに拒否権の問題は考えられるのですが、どうなのですか。
  284. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この事前協議を主題とするところの解釈は、この交換公文の作成にあたりまして、日米両国の代表の間において意見の一致しておりますことは、事前協議でありますから、その場合に、協議された相手方が承諾することもあるし、あるいはこれを拒否する場合もある。拒否する場合においては事前協議はととのわないのであります。そしてととのわない場合においては、アメリカは日本側の意思に反した行動はとらないということの解釈であるという意味において交渉をされたわけであります。そのことは、外務大臣もこの交渉にあたりましての交渉の経緯なり、事前協議ということについて、しばしば国会の議場におきましても、それと同様なことを申していたわけであります。さらに私が今回アメリカを訪問した際に、アイゼンハワー大統領との間におきまして、この問題に触れた話し合いがありました。そのことを共同声明にも、今、私が申し上げました両当事者の解釈というものを再確認するようなことが、アイゼンハワー大統領によって確認されたということを共同声明で述べているわけでございます。
  285. 千田正

    ○千田正君 外務大臣にお伺いしたいのですが、交換公文ですか、条約のときの問題は、ノーと言った場合に対して、アメリカ側はいわゆる儀礼的には、という意味を私は含めていると思います。そういうふうに日本側が拒否するというようなことを申し出た場合においては、あえてそれに対して反対しないというような意味にしかとれない文章の表わし方ではありませんか。全然それは同意するということでありますか。
  286. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま総理が言われましたように、事前協議におきまして、協議はイエスと言った場合は成立します。ノーと言った場合は成立しません。成立しないものは、これを実行しないのでありますから、それは何と申しますか、いわゆる常識的な意味の拒否権というものと同じであると解釈していただいてけっこうでございます。
  287. 千田正

    ○千田正君 私は実際の問題としまして、この拒否権を実行し得るかどうか、私どもの非常に危惧することは、力の関係であります。実際そういう約束をしておっても、現実の問題にぶつかった場合、言いかえると、先般極東の問題に対してある線を引きましたが、この線以外の所において戦闘が開始されたという場合、アメリカの軍隊はいわゆる国連軍として出動するのか、あるいはアメリカ自体の軍隊として出動するかわからぬのですが、出動する場合においてはどうしても日本の力を必要とするというような場合において、力の関係でノーと言い切ることはできないところへ押し込められたときにも、なおかつ、ノーとあくまでがんばれるというふうにわれわれはどうも考えられないような気がするのです。実際においてそういう問題が起こらないとは限らないのであって、そういう点についてはどういうふうにお考えになりますか。
  288. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 協議でございますから、いろいろな条件を勘案して、そうしてイエスという場合がある、ノーという場合があること、これは当然でございます。今例にあげられました国連軍の場合でございますけれども、これは国連の総会で何らかの決議をして、今度新しく何かアジアにおいて起こりまして、新しく国連が決議をする、そうしてその決議に従って在日米軍が国連軍に編入されるというようなことが起こりましたときには、その国連の決議自体に対して検討を加えまして、そうしてイエスなり、ノーなりを言うことになると思うのであります。そういう場合でもむろんわれわれとしてノーと言えないというようなことはないわけでありまして、ノーと言う場合が十分あるし、またそれはノーと言った場合に、アメリカがそれに対して、何と申しますか、押し切っていわゆるやるとはわれわれ考えておりません。
  289. 千田正

    ○千田正君 非常にその点は私危惧するのでありまするが、日本がいざという場合に、国連軍の一員として強要されるか、あるいは日本も国連の一当事国としての立場に立って、日本側が防衛力を持っておる、しかしながら、いわゆる国連軍の一員として要請された場合には、日本はどういう立場をとりますか、日本の軍隊はそういうときにどういう立場をとりますか。
  290. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 国連が何か平和維持のために決議をいたしまして、国連軍というものを編成いたす場合、それに参加するかしないかは、日本の憲法上の規定その他を参酌いたしまして、日本自身がイエス、ノーと言うのでございます。
  291. 千田正

    ○千田正君 この問題はあとにも残る問題であります。  第三の問題は、先般もここでいろいろお答えがありましたが、極東の範囲でありまするが、ずっと話を伺うというと、フィリピンの北方から金門、馬祖を含んで、朝鮮の三十八度線から日本の千島の国後、択捉のところまでの線があらかじめ引かれたかのように、思うのであります。そこで、金門、馬祖というのは、いわゆる今、中共と台湾との問題、いわゆる中華民国中国人民共和国との内政問題である、よけいなことを日本は言う必要はないのじゃないかというて、中共側は盛んに攻撃しておる。この点については、いろいろお答えもいただきたいと思うのですが、これは、かりにほかの国の問題である。ところが、山口県の西北方におけるところの竹島はどうですか。竹島は日本領土であるはずであります。その竹島の領土に対してまでも一体、日本側は自衛もできなければ、防衛もできない。しかも、最近の新聞等におけるところの報道によるというと、朝鮮側は六百名の警察隊と称する軍隊を設置して、いわゆる竹島防衛部隊というものを設置して、日本がかりに竹島を占拠するようなことがあったならば、あくまでこれを阻止しよう、戦おう、こういう決意を宣伝しているのであります。金門、馬祖はよその国のことであるが、自分らの領土であるとわれわれが自認しておるところの竹島の問題は、そのような具体的な問題が眼前にありながら、われわれはただこれを黙視する、こういう立場であるのかどうか。そういう点につきましても国民に日本政府の考えを明らかにしていただきたい。この点はどうでありますか、総理大臣並びに外務大臣に伺いたいと思います。
  292. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 竹島の問題は、まことに遺憾でありますことは、申すまでもないことであります。この問題は外交上の問題として折衝を開始するように日韓会談の中でもこれを取り行なうことにいたしておるわけであります。従いまして、われわれといたしましては日韓会談を通じて十分これが問題の解決をはかっていきたいと思います。むろん、過去におきましてこれを国際司法裁判所に提訴しようということも考えましたけれども、韓国側が応諾いたしませんから、そのままになっております。われわれとしては、日韓会談を通じて平和裏にできるだけこの問題の解決をはかっていきたいという強い決心を持っております。
  293. 千田正

    ○千田正君 防衛庁長官はどういうふにお考えですか。たとえば現在竹島というものは、そういうふうに他国の部隊によって占拠されている、あるいは占拠されようとしておる。しかも、これは日本領土である。しかも、これは施政権がどうのこうのというのじゃなくて、当然日本がこれを守って、そうして日本領土というものをはっきりすべきとぎであるにもかかわらず、放置しておるということは、どういうことですか。あなたは少なくとも日本の国防のために日米安全保障条約等の点においても心配されておると思いますが、一体どういうふうにお考えになりますか。
  294. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 竹島が占拠されておることは、私どもも遺憾に存じます。ただ、これに対しまして武力の発動によってこれを回復するか、あるいはまた、外交的な手続等によってわが主権の主張をし、これを奪回するかということにつきましては、検討を加えた上にその措置をとるべきだと思います。現在におきましては、私どもといたしましては、武力によってこれを奪回するというようなことでなくて、やはり外交的な折衝を続けていくことが適当であろうと、こう考えております。
  295. 辻政信

    ○辻政信君 関連して、たった一問だけ外務大臣にお伺いしますが、竹島は現在施政権をとられておるが、第五条の適用範囲に竹島は含まれるか、含まれないか、あとで議論を進めますから、一言だけ言って下さい。
  296. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 形式的には含まれております。
  297. 辻政信

    ○辻政信君 含まれておるのですか、第五条に。第五条は「施政下の領域」となっております。竹島には施政権は行なわれておらないのですか。これは第五条に含まれておりますか、もう一回……。
  298. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 不法に占拠されておるのでありまして、日本の施政が行なわれておらぬということは言えないと思います。
  299. 辻政信

    ○辻政信君 施政権は行なわれておるんですか、現に竹島に対して。それじゃあそこに燐鉱石が四十万トンあるが、日本はその採掘権を得てそうして数年前から掘ろうとしても掘れない。あの周辺の漁業もやれないんですよ。それで施政権があるんですか。施政権がないと私は見るんですから、第五条に含まれないと思うかどうですか。
  300. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 施政下にないとは言えないのであります。ただ、それが実際的に行なわれてないということはございますけれども、施政下にないとは言えない。
  301. 辻政信

    ○辻政信君 施政下は施政下にあるけれども、ほんとうに行なわれておらないということじゃないですか、施政権はない。施政下にあるとどうして言えるんですか。
  302. 千田正

    ○千田正君 辻委員の御質問にお答え願うと同時に、私も質問しますが、これはアメリカが小笠原であるとか、あるいは沖縄とか日本領土を使っておるのと違うわけであります。何ら朝鮮に対しては竹島を日本が放棄したという覚えもなければ、また、日本がその施政権を許した覚えもないはずであります。その点についてはっきりして下さい。
  303. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お説の通り日本は竹島の施政権を放棄したこともございません。また、向こうに譲渡したこともないわけであります。現に日本の施政下の領域であることは当然であります。
  304. 千田正

    ○千田正君 しからばその施政下の領土は、経済的にしろ、あるいは武力にしろ侵された場合は、これは侵略と見て差しつかえないと思いますが、これは朝鮮の侵略じゃないですか。
  305. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん侵されましたこと自体は、そういうふうに解釈していいかと思います。
  306. 千田正

    ○千田正君 私は防衛庁長官に伺いますが、防衛という、自衛という言葉は、少なくとも自分の領土を守るという意味においてわれわれ国民も一応納得しているはずであります。日本領土がゆえなくして侵略され、そうしてそのままそれに対して放置するということは、あなたとしてはどう考えるのですか。当然、防衛庁長官としては防衛の任につかなければならないはずだ。あなたとしては、どう考えられるのですか。
  307. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 武力行使をするかしないかということは、これは、慎重に考えなければならない問題と思います。領土が侵されていることについて、私どももまことに遺憾であることはお説の通りでございます。
  308. 千田正

    ○千田正君 どうもまことに遺憾であるというだけでは、おそらく国民に対する答えにならないんじゃないか。少なくとも、今度は極東の安全と国民の平和のために、日米安全保障条約というものは改定される。この際において、なぜ竹島という問題を、あなた方は日米問題に対して当然日本が主張すべきこの安全保障の立場に立って、共同防衛なり、あるいは何らかの方途をとらなくちゃならない、何らその点には触れていないということはおかしいと思う。
  309. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) これは、そう、何といいますか、占拠されたからすぐに武力行使をする、それで国際的な紛争を拡大するかしないかという問題とも関連があります。ことに、竹島は終戦直後占拠されてきているので、ずうっとその後において外交的な抗議を申し込んだり、あるいは折衝をしているものであります。これに対して直ちに自衛隊が武力行使をして、そうして国際紛争等を起こすか起こさないかということについての見通しもしないで、そういうふうに簡単にお説の通り動かすわけには参りません。
  310. 千田正

    ○千田正君 どうもこの問題に関しては日本の国民は、少なくとも朝鮮側が一方的に李承晩ラインというような悪いラインを引いて、そのラインの内部は自分の領土であるというような無謀な主張をしておる。そういうような無謀な主張に対して、日本こそ正義の立場に立って、世界平和のために、あるいは極東の平和のために日本が立たなくてはならないという立場に立っての日米安全保障条約であるならば、真に極東の平和のためにこれは打開する問題でなければならない。そのためにあらゆる努力をすべきである。国民はそういう期待をかけておるのです。それに対して今のようなお言葉では、まことに私は残念だと思う。総理大臣、いかがですか、そういう問題に対して。
  311. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この問題につきましては、先ほど来お答え申し上げておる通り日本領土が他国によって不法に占拠された、侵略されたという事態は、これは当然日本として、独立国としてその事態をなくするように努力すべきことであることは、これは当然であります。その場合に直ちに武力を用いて、実力行使によってこの問題を解決するか、外交手段によって解決すべきかということにつきましては、これは私は侵略があったらもちろん武力行使ができる日本の自衛権の性質から申しましても、あるいは安保条約からいってもありますけれども、どういう小さいことが行なわれても、直ちに全体の武力を動かしてどうするというふうにやるかどうかという問題は、各種の侵略の行なわれた事態、またその事情等に応じまして、あるいは外交手段によって交渉に入り、あるいは外交手段だけでいかなければ、裁判の方法によるとか、あるいは国連を使ってやるとかいろんな方法があると思います。直ちに、一方から侵略があったら直ちに実力を行使しなければならないような事態もあると思います。これらのことはその侵略の態様なり、前後の事情というものを十分考えて、最も有効にして適切な方法をとるということであろうと思います。ただ問題は、この日韓の間の交渉というものが、御承知のように多年にわたって行なわれておりますけれども、その結論を得ることができない状況でありますために、今、千田委員のお話のように国民的にいって、韓国の態度に対して、非常な国民感情からいろいろな議論が出てくるということも、私は独立国として当然であると思います。しかし、何とかして、会談中でございますから、この会談を終結に持っていって、そうして諸種の懸案問題を解決したい。この竹島の問題につきましても、そういうような扱いをして参っておりますから、私どもは、決してこれを看過しているというような考えでは毛頭ないのであります。ただ、そういう事実があるから、直ちに自衛隊が出動するとか、あるいは米軍を出動せしめるというようなことでこれを解決することは、この問題については適当な処置ではない、こう政府は考えておるわけであります。
  312. 千田正

    ○千田正君 今の総理大臣の御答弁で、政府考え方はわかりましたが、それでは外務大臣にお伺いしますが、終戦以来のこうした無謀な侵犯に対しまして、日本は、外交的に平和的にこの問題を直接にやったのでは、今の通りなかなか解決できません。あるいは、武力を用いるかということになると、防衛庁長官初め、武力を用いるべき時期ではないと、しからば、平和的に解決するには、何のメドをもってやるか。これは、今の極東の平和のためには、あえて武力のみではなく、あらゆる面において、あるいはアメリカが協力してくれるかもしれない。そういう面において、あなた方はそういう折衝なり交渉なりなされましたか。あるいはなさろうとするお考えはありますか。これは、総理大臣あるいは外務大臣、どちらでもよろしい。
  313. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろんこの問題の解決には、先ほど申し上げましたように、国際司法裁判所に提訴することも一つの方法でございます。あるいは、外交折衝の過程において問題を解決することも必要でございます。われわれは、二国間の問題につきましては、できるだけ両国の間で話し合いによって解決することが望ましいことむろんでありまして、第三者を入れまして問題の解決をはかりますよりも、両国の間で話し合いによって解決することができますれば、これは一番常道であろうと思います。でありますから、われわれ今日まで、外交折衝を通じてこれに努力をいたしてきたわけであります。むろん、外交折衝の過程におきまして、両国の意見が合わないというような場合に、第三国、たとえばアメリカの判断を待つというようなこともあり得るわけでもございますし、たとえば、日韓交渉におきます財産請求権等の問題について、アメリカの解釈を出してもらいまして、それによって、両国がその解釈を順奉していくというような形において問題が解決したこともございます。でありますから、今後竹島の問題を扱います場合に、国連等に提訴し、あるいはアメリカその他第三国にこれらの問題を持ち出すことも、可能であることはむろんでございまして、あらゆる手段を尽くす意味におきまして、そういうこともございます。ただ、二国間の問題につきましては、できるだけ第三国が介入しないで話し合いができれば、それが一番けっこうなことであろうと、問題ないのでございます。  そういう意味において今日まで努力してきているわけでございます。
  314. 千田正

    ○千田正君 いずれこの問題も後日に譲りまして、昨日の朝日新聞の夕刊が、ワシントンの電報を報じております。これには、非常に重大な問題が書かれております。ドナホー米海軍作戦部長補佐が、先般開かれたアメリカ下院の歳出委員会の秘密聴聞会で、「安全保障上の理由から米海軍は、現在日本にいる小笠原島民は一人も帰島させたくない」と証言している。さらに米海軍は、サイパン、テニアンなどの諸島の元島民に帰ってもいらたくないのと同様に、小笠原島民にも帰ってもらいたくないという重大なる発言をしておりますが、これはどういう意味なのか。日本民族に加える強制的な抑圧ではないか。極東の平和と安全と日本の幸福を思うならば、このような証言がアメリカの国会においてなされるということは、非常に私は遺憾なことであると思います。この点につきまして、総理大臣並びに外務大臣のお考えを承りたい。どういうわけでこういう証言をしなければならないか、小笠原島民を一人も自分のかつてのいわゆる祖国へ帰すことができない、帰さない、こういうような証言は、非常にこれは重大な問題であると思いますが、どうお考えになりますか。
  315. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) アメリカの下院におけるこの証言の内容についてはつまびらかに私どもいたしておりません。従いまして、どういうことを言ったかということを根拠にするわけには参らぬのであります。ただ、今日まで、われわれといたしましても、小笠原から内地に来ておられます方々の帰島という問題について、アメリカ側にも数度要請をいたしていることはむろんであります。しかしながら、アメリカ軍は今日の状況下においては、そういうことは適当ではないということを言っているわけであります。そういう問題がございますので、われわれも補償を要求するということはアメリカにいたしてきているのでありまして、それらの点について、われわれとしても善処をいたしているわけであります。帰島ということを放棄しているわけではありません。
  316. 千田正

    ○千田正君 この問題は、小笠原島民に対しての補償、その他に対してアメリカ側に要求していることがありますが、あるいはそれに関する問題じゃありませんか、どうですか。
  317. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のように、アメリカに対して、帰島が当分できないのであれば、これに対して補償をしてもらいたいということであります。アメリカ側におきましては、先般、補償の法律が昨年のアメリカの国会を通過いたしております。これに伴いまして、アメリカの国会では、そういう法律が通りましたあとで、さらに財政支出の法案を重ねて出すことになっております。今多分それを審議しているときだと思います。
  318. 千田正

    ○千田正君 この問題もまた時間がありませんので、次の機会に譲ります。  日ソ漁業問題について一応承りたいのでありますが、北洋の問題としましては、日本の権益と相からんでこの問題は大きな日本としての問題であると思うのであります。第一回の交渉は、かつて日ソ漁業の交渉は五十六日かかっております。第二回は九十九日、第三回は、昨年は百二十二日かかっております。そうして今度は第四回です。これは、今非常にわれわれは危惧されるのは、ソ連側においてグロムイコのやはり声明等を通じましてみましても、日本の漁業条約というものに対してのソ連側の考え方相当強硬である、一方、日本側は資源論というような問題、あるいは操業権の問題、いろいろな問題で議論を戦わしているのでありますが、これはどうもわれわれが初期に考えていたような安易な結論には達しないような空気であるのであります。それで、昨年は最終的には政治折衝として岸総理大臣が、豊漁年においては九万トン、不漁年においては八万トン、その線の真ん中をとって八万五千というところにぎりぎりのところは結着した。ですから、日本の要求の量というものはそれしかないのだというように考えられては、これはまた大へんに迷惑なことでもあるし、それによって、漁獲量が制限されることによって、当然日本の出動するところの独航船あるいは母船その他の船団に対しましても、国内的において調整する何らかの方途を考えなければならないところに当然追いやられると思う。こういうあらゆる点を勘案しまして、今後のこの問題がたな上げになり、あるいは結論が出そうがないじゃないかというふうなちまたの声が聞こえてきておるのであります。この点について、今から見通しということはないとしましても、少なくとも総理大臣は、昨年は、不漁年は八万トンだと、豊漁年においては九万トンだ、こういうようなところで日本側の意図を明確にしておるのでありますから、八万トン以上にかりに結論がなった場合において、これは日本政府としてある程度国内の調整に対しては責任を私は負わなくてはならないと思う。そういう点におけるところの考え方総理から伺いたいと同時に、また農林大臣から対処方針を承っておきたい。  もう一つは、時間が参りましたから、もう一点、領海の問題であります。最近日本の問題としまして、国際的な問題としましては、この領海の決定という問題は日本の産業に重大な問題を及ぼす。従来長い間三海里説を主張してきておる。しかもその三海里説が現在の国際状況においてはどうも主張し切れないのではないかというようなわれわれが考えを持たざるを得なくなってきた。そういう場合において、新たなる段階において日本がどういうことを主張するのか、かりに破れた場合においては何海里説を主張し、なきゃならないのか、あるいは日本をとり巻くところの日本と直接関係ある海辺において各国はどういう主張をしておるのか、その他の点におきまして、この領海問題に対するお考えをあわせてお答えをいただきたいと思うのであります。
  319. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 日ソ漁業につきましては、漁業条約の規定に従いまして漁業委員を派遣して、ただいま委員会でこれを検討中でございます。この委員会はその性格上資源論が中心になるわけでございます。お話のように、今度安全保障条約の問題があるからなかなかこれは複雑な交渉になるのではあるまいかというような観測をする向きもありまするが、私どもは漁業条約に基づく委員会の交渉はあくまで資源論的な論争の場でありますので、政治と経済とはこれは別だ、かように考えて対処をいたしております。日ソ貿易協定に見られるように、ソ連側におきましてもそういうような態度を今日とっております。そういうようなことで、去る二月の十五日に本会議が開かれまして、自後資源委員会に入って今日に至っております。この資源委員会で、ただいまわが方の資源に関する見方を科学的に今展開をいたしておる次第でございまするが、この交渉がまあ近く終わると思うのです。そのあとでカニの交渉がありまして、そのあとでいろいろむずかしい漁の問題でありますとか、あるいは区域問題とか、そういうものが出てくると想像いたしております。しかし、あくまでもただいま申し上げましたように、科学的にやろう、資源論で対抗しよう、こういうふうな態度であります。ただいま具体的にどういう見通しであるかということを申し上げにくいのでございまするが、わが方の主張はあくまでもこれを貫徹するという含みをもちまして、ただいま現地で大いに委員が努力をしておる、かような段階でございます。  なお、その問題と関連して船団の問題が起こってきやしないかというようなお話でございまするが、私は日ソ漁業問題と関連なしに、この船団問題というのがある。すなわち、これは漁業上の経営を改善するというような見地から、どうしても船団は再編成すべきである、こういうふうに考えておるわけであります。それで独航船につきましては話がついております。ただ母船の方につきまして、調整を今業界の自主的立場において進めてもらっておる、かような段階でございます。  なお、領海につきましては、外務当局からお答えいたします。
  320. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま御指摘になりましたように、本年の三月十七日から海洋法会議が開かれます。前回の海洋法会議は、一九五八年に開かれたわけでありまして、当時海洋法典の作成に当たりましてこの領海の問題だけが決定いたさなかったわけであります。従って今回の会議におきまして、主として領海の問題を片づけて、そうして海洋法典を作ろうということになって集まるわけでございます。現在のところ、まあ国連の事務局が作成しましたことから見ますと、三海里説を主張しておるのは二十二カ国でございます。また、六海里説を主張しておるのは十二カ国でございます。十二海里説を主張しておるのは十一ヵ国、なお、四海里二国、九海里一国、二百海里というのはエル・サルバドルというのが二百海里を主張しておるわけでございます。こういうことでありまして、総計八十二ヵ国が出席をしてこの会議をやるわけでございます。法典を作成いたしますためには、御承知の通り、三分の二の多数決によってそれを決定して参るわけでございます。日本は、従来も三海里説を主張しておるわけでございまして、今回も三海里を主張することを主たる目的としてむろん出席をいたします。しかしながら、こうしたいろいろの主張が重なっておりますので、前回にもそうでございましたが、どれも三分の二の多数がとれなかったから、結局、規程ができなかったと、こういうことでございます。今回は相当歩み寄って、おそらく何海里かに決定するようになってくるんじゃないかということが考えられるわけです。そこで、われわれといたしましては、漁業国であります立場からいいまして、領海が三海里がかりにとれなかった━━多数を得られないような場合には、できるだけ三海里に近い領海の決定が望ましいのであること、むろんでありまして、従って、そういう意味において三海里に近い、多数の同意を得るようなところに持っていくようにわれわれも━━かりに三海里がいけなかった場合には、できるだけ一番三海里に近い、多数の方に持っていくように努力していかなければならぬと思うのであります。そういうことで今回出席をいたしております。現在の見通しでは、カナダがこれを、十二海里を主張しておるのでございますが、御承知のように、カナダは、いわゆる領海六海里の、漁業水域六海里ということになっておるのでございます。これに対しては、われわれといたしましても、十二海里まで持っていって、漁業水域はさらにそのうち六海里に持って参りますことは、必ずしも賛成を実はできない、日本立場からいうと賛成できない。これらに対する修正案としては、漁業水域の六海里は過去五ヵ年の実績等によってそれを——六海里以上のものは、過去五ヵ年の実績等によってそれを各国の漁業に認めようというような程度の修正的な考え方もございます。われわれといたしましては、今この前の会議で二年間のギャップがございますから、その間に各国がさらにいろいろ考えてきておると思いますので、会議に出席した上で、その動向を察しながら、われわれとしては、三海里がもしできなかった場合には、できるだけ三海里に近いところで決定するように努力して参りたい、こう考えております。
  321. 千田正

    ○千田正君 最後に一点だけ、法務大臣がお見えになっておりますから、特にお聞きしたいのですが、先ほど、日米安保条約の改定に基づいての問題について、大綱については総理大臣からしばしば承っておりますが、国内において日本の国民が直接アメリカ軍に接触しておるところに、さまざまな問題が過去において起きております。将来も起きるだろうと思うのでありますが、第一番にわれわれが心配しておったのは、例の刑事特別法に基づくいろいろな日本の国民の人権の侵害の問題、こういう問題、あるいは土地に対するところの問題等がありまするが、特に、時間もありませんから、駐留軍が日本に駐留して以来、日本の国民が損傷を受け、あるいは、そのために人権が侵害された、そういう問題で解決しない問題が幾つあるか、現在までに解決しないでそのままになっておる問題が幾つぐらいあるのか。また、将来、従来の刑事特別法とは、ある意味において一段と改正された方向に一体持っていかれるのかどうか、こういう点だけ一点お伺いしておきたいと思います。
  322. 井野碩哉

    国務大臣(井野碩哉君) 今回の新協定、いわゆる駐留協定の十七条は、現在の行政協定の十七条を何ら変更しておりません。従って、従来の刑事特別法を継続していくわけでございます。ただ名前が変わるということだけが出てきております。  そこで、従来駐留軍が日本におりますときに、日本国民の人権にどういう影響を与えたかというお尋ねでございまするが、これは合衆国の、アメリカの公益に関する罪、公益を害する罪並びに公務執行中の作為、不作為による罪、こういうことだけが向こうの第一次裁判権に属するのでありまして、あとはみな日本の裁判権に属することになっております。御心配の例のジラード事件などのときにも一時問題になりましたけれども、アメリカ側とも話し合いがつきまして、これも日本側が裁判することになりましたし、またロング・プリーの事件も日本が裁判をすることになりまして、ほとんど日本人に対する罪に対しましては日本が裁判するということになっておりますので、人権の侵害については御心配要らないと思っております。  なお、その数字的のことでございますが、駐留軍が昭和二十八年以降昨年まで起訴しました重大犯罪だけの資料を申し上げますと、暴行が八、殺人が八、強盗が八十三、強盗致死傷が百四、強姦が九、強姦致死傷が四十四、傷害致死が四、業務上過失致死が四百七、これはおもに自動車事故でございます。このうちどれだけが未決、裁判が終わっておりませんかは今はわかりません。後ほど調べましてお答え申し上げたいと思います。
  323. 千田正

    ○千田正君 それでは私はまだ質問したい点もありますけれども、それから特別調達庁長官にも質問したいのでありますが、時間もありませんから、次会に譲りまして、これで終わります。
  324. 小林英三

    委員長小林英三君) 本日の質疑は以上をもって終了いたします。  明日は午前十時より委員会を開きます。  本日はこれにて終了いたします。    午後六時四分散会