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1960-02-18 第34回国会 参議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月十八日(木曜日)    午前十時十八分開会   —————————————   委員異動 本日委員小林武治君及び竹中恒夫君辞 任につき、その補欠として岸田幸雄君 及び辻政信君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小林 英三君    理事            大谷藤之助君            佐藤 芳男君            西田 信一君            秋山 長造君            鈴木  強君            松浦 清一君            千田  正君            杉山 昌作君    委員            青田源太郎君            泉山 三六君            太田 正孝君            金丸 冨夫君            岸田 幸雄君            木暮武太夫君            小柳 牧衞君            斎藤  昇君            杉原 荒太君            手島  栄君            苫米地英俊君            一松 定吉君            堀木 鎌三君            武藤 常介君            村山 道雄君            湯澤三千男君            吉江 勝保君            米田 正文君            加瀬  完君            木村禧八郎君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            永岡 光治君            成瀬 幡治君            羽生 三七君            平林  剛君            藤田  進君            松澤 兼人君            東   隆君            基  政七君            辻  政信君            原島 宏治君            森 八三一君            岩間 正男君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 井野 碩哉君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君    文 部 大 臣 松田竹千代君    厚 生 大 臣 渡邊 良夫君    農 林 大 臣 福田 赳夫君    通商産業大臣  池田 勇人君    運 輸 大 臣 楢橋  渡君    郵 政 大 臣 植竹 春彦君    労 働 大 臣 松野 頼三君    建 設 大 臣 村上  勇君    国 務 大 臣 赤城 宗徳君    国 務 大 臣 石原幹市郎君    国 務 大 臣 菅野和太郎君    国 務 大 臣 中曽根康弘君    国 務 大 臣 益谷 秀次君   政府委員    内閣官房長官 松本 俊一君    法制局長官   林  修三君    自治庁財政局長 奧野 誠亮君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    外務省欧亜局長 金山 政英君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵政務次官  前田佳都男君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主税局長 原  純夫君    文部省初等中等    教育局長    内藤誉三郎君    水産庁長官   西村健次郎君    通商産業政務次    官       内田 常雄君    労働省労政局長 亀井  光君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十四年度一般会計予算補正  (第3号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十四年度特別会計予算補正  (特第2号)(内閣提出、衆議院送  付)   —————————————
  2. 小林英三

    委員長小林英三君) これより予算委員会を開会いたします。  委員異動がございましたから、御報告いたします。  本日、竹中恒夫君が辞任せられ、その補欠として辻政信君が選任せられました。   —————————————
  3. 小林英三

    委員長小林英三君) 昭和三十四年度一般会計予算補正(第3号)、昭和三十四年度特別会計予算補正(特第2号)を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。
  4. 岩間正男

    岩間正男君 私は新しい安保条約について質問したいと思います。  まず最初総理にお聞きしたいのは、極東区域についての政府統一見解、これが出されている、これを最初にはっきりお聞きしたいと思う。
  5. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 極東という範囲につきましては、一般的に地理学的にきまった範囲というものは明確にあるわけでもございません。従ってこの条約で用いておるこの意味からこれを解釈していくべきものであることは、これは当然でありまして、すなわち日米両国が共通の関心を持っておるのは、極東における平和と安全を維持していくということでありまして、この意味において私ども極東地域としてフィリピン以北日本及び日本周辺、こういうふうに考えております。
  6. 岩間正男

    岩間正男君 歯舞色丹国後択捉はどうなんです。
  7. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 一々この島や、具体的な問題を今申し上げましたような意味におきまして線を引くことは、困難なところもあろうと思います。ただ歯舞色丹、今お話しの点につきましては、これは日ソ両国の間において意見が違っておりますけれども、私どもはこれは日本固有領土だという考えを持っおります。そういう意味から当然これは含まれるものだとかように考えております。
  8. 岩間正男

    岩間正男君 ただいまの政府統一見解というのは、最後的に確定したものと考えていいかどうか、その点はっきりしてもらいたい。
  9. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 確定したものとお考えになっていいと思います。
  10. 岩間正男

    岩間正男君 それでは現在アメリカ上院でこの問題が外交委員会で問題になっておる、それから日本防衛庁でもこの統一見解に対してはいろいろ異論があるやに聞いております。こういう問題をどう調整するのか。これは首相と外相にお聞きしたい。それから防衛庁の問題については赤城防衛庁長官から答弁願いたい。
  11. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今申し上げましたように、政府として確定した考えでございます。そしてこの点については、安保条約改定交渉の途上においても、日米の間に私は意見の食い違いがあるとは考えておりません。
  12. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 極東範囲につきましては、総理大臣及び外務大臣から御答弁申し上げた通りに私ども解釈いたしております。
  13. 岩間正男

    岩間正男君 注意してもらいたい、防衛庁で異見を持っているということをあなた知らないのですか、その問題についてどう考えるか。
  14. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 別に、検討はいろいろしましたが、異なった意見は持っておりません、政府統一解釈と同一でございます。
  15. 岩間正男

    岩間正男君 その問題についても、十分の統一はなかなかまだついていないと思うのですが、この問題は時間の関係からおくとして、それではお聞きしたいのですが、今の政府確定解釈、この上に立って日ソ共同宣言の中に極東という字があります、語句があります。このことについて、これは総理御存じだと思う、外相御存じだと思う。これと政府のただいまの統一見解というものを、どういうふうにこれは統一して考えるか、この点を明らかにしてほしい。
  16. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほどお答え申し上げましたように、極東という観念につきましては、地理学的にきまった地域が明確に定まっておるものじゃございませんで、従ってそれが用いられております条約や、あるいはいろいろな場合におきまして、その趣旨からその範囲考えていくことが適当である、かように考えております。
  17. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日ソ共同宣言におきましても、特定の地域を限ったわけではなく、一般的な概念として用いられております。
  18. 岩間正男

    岩間正男君 これはきまった範囲はないと言っていながら、一方では統一見解をとっている。そしてこれは国会論議の中で明らかにされた統一見解として出されている。それがある限りは、その問題とこの日ソ共同宣言の中の極東というものは、これはどういうふうに統一するのか。この点については、これは日ソ共同宣言の中に言われている極東というものは、ただいまの統一見解と同じであるかどうか。これは非常に今後の外交上重大な問題になります。この問題についてあらためてお聞きしたい。
  19. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほど総理答弁されましたように、安保条約に用いられております極東というのは、本条約における解釈でありまして、従って日ソ共同宣言においては一般的な概念として用いられているということで、特段の関係はございません。
  20. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほどお答え申し上げましたように、私はこの条約における意味から解釈すべきものであって、今言ったように地理学的にきまった観念があるわけではございません。われわれはこの安保条約の問題として日米共同関心を持っている極東の安全と平和という意味として、実際的にこれをフィリピン以北日本周辺、こういうふうに解釈をしております。
  21. 岩間正男

    岩間正男君 これは重大な答弁だと思うのです。安保条約では今の統一見解を使うが、ほかの場合は、この日ソ共同宣言、こういうものではこれは違うのだと今の答弁は、これは語っている。これは非常に大へんなことになると思う、外交上。こういうものが統一されなければ、私は今後やはりいろいろな国際関係上の立場を守っていくことはできないと思う。こういう点についてどうですか。あなたたちはどういうふうにこの問題を解釈しているのですか。日ソ共同宣言は厳としてある。この中での極東解釈をあなたたちはしなければならぬ。これをやっていただきたい。これを総理外相からやってもらいたい。
  22. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 安保条約関係におきましては、先ほど総理答弁された通りであります。むろん条約がこういうものを規定しますときに、その条約の目的によりまして、いろいろ範囲が違うということは、当然であります。日ソ共同宣言においては、一般的通念としての極東というものが用いられたと、そういうふうに考えております。
  23. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど来お答え申し上げている通りでありまして、私はこの条約趣旨によって解釈していくものと、かように考えております。
  24. 岩間正男

    岩間正男君 私がお聞きしているのは、日ソ共同宣言に言う極東とは、どういうふうにこれは解釈しておられるか、日本政府は。このことを聞いている。あなたの答弁はおかしい。条約ごとに変わるというようなことは、これは成り立たない。統一見解がなかったら非常に重大な問題ですから、今後の外交上。まず第一に日ソ共同宣言の中にどういうふうに解釈しているか。大体御存じですか、極東という字がどこにあるのか。この条文を読んでもらいたい。日ソ共同宣言条文を読んでもらいたい。外相、そしてそれについて解釈をしてもらいたい。
  25. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 前文にございます。「極東における平和及び安全の利益に合致する両国間の理解と協力との発展に役だつものである」というふうに使われております。
  26. 岩間正男

    岩間正男君 答弁になっていない。答弁をさせて下さい。極東をどういうふうに解釈をしているかということを聞いている、それに答弁をしていない。委員長注意をして下さい。こういう答弁では困る、これでは質問できない。こういうはぐらかしでは……。これは委員長注意して下さい。
  27. 小林英三

    委員長小林英三君) ただいまの外務大臣答弁につきまして、岩間君から、これでは不十分だという意見がありますが、いかがですか。
  28. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今読んだらどうだというあれがございましたから、読んだわけでございまして、これを読みましても、私ども先ほど来申しておる通りだと存じております。
  29. 鈴木強

    鈴木強君 関連して。今の日ソ共同宣言の中の極東という地域を、どういうふうに解釈しているかということを聞いているわけですね。それで、それをやはり一つ明らかにしてもらうことが大事だと思うのです。それから、私はそれに関連をして、総理大臣外務大臣にお尋ねをしたいのですが、今度の新安保条約の締結に際して、皆さんアメリカ側十分連絡をとって、極東範囲についてもおきめになった。こういうことで、日米間においては、その見解相違はない、こう今総理もおっしゃったのですね。ところが、われわれが奇異に感ずるのは、一月の十九日に調印をされてお帰りになった後の衆議院段階における質問を聞いておりましても、最初沿海州、あるいは千島列島は、極東地域に入るというふうにおっしゃっておったのが、その後、これは入らない。こういうふうに解釈が変ってきたわけですね。ですから、もし皆さんがおっしゃるように、長い間の藤山外務大臣マッカーサー大使との間の交渉の中で、しばしばメモまで出して、われわれは事前協議の問題とからんではっきりしてもらいたい、こういうことを言っておったのですが、それが明らかになっておらなかった。しかし、少なくとも極東という範囲については重大であるから、これについては日米間においてはっきりと見解統一がなされて調印がなされたと思うのですね。ところが、調印が済んでから、そういうふうに極東地域が変わってきているんですよ。岸総理大臣のおっしゃる政府統一解釈というものを、私たち聞いておりましても、どうもよくわからんのですよ。ですからどうですか、ここに地図を持ってきて、その地図フィリピンの北からシナ大陸の方から、ここがこういうふうに、あなた方の統一解釈で言うと極東地域になるのだ、こういうことをはっきりしてもらわないと、どうもばく然としてわからないのですよ。そうして、とにかく政府極東範囲をはっきりさせたらどうですか。それから交渉の過程において、アメリカ意見が一致しているにもかかわらず、なぜ沿海州北千島までは入らないというふうに変わったのですか、そこら辺がどうもわからないのです。それをはっきりしてもらいたい。
  30. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 大体極東という観念そのものは、非常にばく然とした観念であります。従って、これはいろいろと先ほどからお話し申し上げておりますように、千島まではさまっているとか何とかという明確なものではございません。しかしながら、大体の条約において問題としている極東という地域はどうだということは、その条約趣旨から解釈すべきものであって、今われわれが、両国の間において意見相違がないということを申し上げているのは、フィリピン以北日本を含めて、日本周辺ということにおいては異論のないところでございます。ただ、それじゃ日本周辺とはどこだという線を引けと、地図で実はこれを言うと、地図で北緯何度から何度というふうな明確な線で示すことは、これは私はできないものだと思います。それで具体的に千島はどうだとか、あるいはどこそこがどうだというような議論が出まして、そこで問題が多少こんがらかった印象を与えたと思うのです。しかしながら、千島列島とこう申しましても、千島全体を、北千島まで含めて実は申したつもりはなかったのであります。歯舞色丹先ほど申しておる国後択捉、われわれが固有のものとして考えているのは、日ソの間で意見が違っているけれども、われわれの立場からいえば、日本周辺でもあるし、日本の一部として極東に入ると、こう解釈すべきものであって、北千島まで含めて千島列島という考えではなかったということを明確に申し上げたわけでありまして、そういう意味において具体的に何しておるのでありますけれども地図でもって示して線を引けと言われるというと、そう明確なものでないことを御了承願いたい。    〔鈴木強君発言の許可を求む〕
  31. 小林英三

    委員長小林英三君) 関連質問ですから簡単に願いますよ、あなたの御意見でなしに。
  32. 鈴木強

    鈴木強君 政府答弁ですと、今政府統一解釈をしておるのは、少なくともアメリカとの間に意見が一致しておる。しかし、極東という地域は、地理学的にばく然としておる、これはわかりますが、そうしますと、少なくとも今完全に一致しておる以外、極東というばく然たる地理学的説明の中で、それ以外にわたるという極東ということが出てくると思うのですが、そういう点については、まだアメリカ意見は一致していない、アメリカと、沿海州が入るか、北千島が入るか、極東という地域全体についての解釈は分かれているととっていいんですね。向こうのアメリカ日本見解は。統一見解のほかは。
  33. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今私申し上げましたように、フィリピン以北日本を含めて日本周辺という考え方については、両国一致しております。
  34. 鈴木強

    鈴木強君 そのほかは。
  35. 岸信介

    国務大臣岸信介君) そのほかは実はないので、それが全部であると私は思います。
  36. 岩間正男

    岩間正男君 先ほど日ソ共同宣言極東をお願いします。
  37. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほど来申し上げておりますように、一般的極東という概念のもとに使われておるわけでございます。
  38. 岩間正男

    岩間正男君 これでは話にならぬと思うのです。今、非常にこの問題が一つの焦点になっております。関心が集まっておるのです。必要以上にソビエト中国を刺激している面がある。この問題点、非常にソビエト中国関心を持っている。従って今後平和外交を推進するためには、こういうような考え方ではこれは明らかでない、当然これを結ぶときに話し合いがあったと思う。この内容を明らかにすべきです。これをあくまで条約上の一般的な概念とか、そんなことでいったならば、今後これは大へんなことになる。それからさっきの話では安保条約内容、それからこの条約は違うという、その違うところだけでも言えると思うのです。この点を明確にしなければ、私は論議が進まぬと思う。これ要求します。
  39. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日ソ共同宣言を作りましたときに、そういう問題について特別な議論があったとわれわれは承知いたしておりません。一般的概念として両国が使ったということでございます。
  40. 岩間正男

    岩間正男君 これは少しやはり政府のこの点に対する見解統一して答えてもらいたい。これでは私は進めないと思う。質問できないと思う、こういうことでは。当時の責任者も鳩山さんは地下に行かれたけれども、これはいるわけでしょう、この点明らかにして下さい。それからついでにこの問題についてソビエト意見を聞いたかどうか。あなたたち統一見解を出したが、ここで一体見解統一しなければ、今後の日本外交に非常に重大な障害を来たす問題です。だから従って、当然聞いたかどうか。これから今後聞かなければならない、ソビエトとこの問題は打ち合わせなければならない問題だと思う。政府の勝手な統一見解だけではいけないと思う。その従ってはっきり意見統一してもらいたい。はっきりしない。
  41. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) はっきり申し上げますけれども日本が他国と条約を結びますときに、第三国に一々相談する必要はないと思っております。
  42. 岩間正男

    岩間正男君 第三国に相談するというような問題ではありませんよ。外交を円滑にやるためには、当然これは問題になっておるのだから、この点についての意思統一をするということは、私は当然だと思います。その点についてただすこともできないのです。極東と言ったって、日ソ共同宣言極東については、何一つ言うことができない。ごまかしておる。これは明確にあなたたちはこうだとこう言えるならばいざ知らず、言えない。そうしたら、この点を明らかにするのが当然だと思います。総理、どう思いますか。明確にして下さい。
  43. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど外務大臣が読みましたように、日ソ共同宣言前文趣旨全体からごらん下さればわかるように、これはばく然として極東ということを使われておる、この点についてはこの日ソ共同宣言以来、両国の間に別にこれが問題になってどうだということは、範囲論議されたこともございませんし、私は両国ともそういうばく然とした意味において使っておる、かように解釈していいと思います。
  44. 岩間正男

    岩間正男君 私は、これはどうしても委員長から要求してほしい問題です。この問題を先にやってほしい。第一に、あなたたちの言う、先ほども御説明でしたが歯舞色丹国後択捉日本固有領土だからこれは含むのだ、ただソビエトが今持っておるだけだ、こういうことを言っておる。こういうことをソビエトが了承すると思いますか。そういうことを了承するということを前提にしてこれはあなたたちは言っておるのか。このことは日ソ共同宣言の、極東の平和と安全を開くためにこの条約を結ぶというこの精神、この前文精神に合うと考えておるかどうか、この点を明確にしていただきたい。さっきのやはりソビエト見解ですね、これを調整するためにどういう努力をするかという問題、それから今の歯舞色丹その他の問題ですね、これは一体ソビエトは了承すると思うかどうか、あなた方の見解として。
  45. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 歯舞色丹国後択捉については、日ソ交渉の間において両方の意見が一致しておらないことは、岩間委員の御指摘の通りであります。私はこの問題は両国の間の意見が一致しておらないことをその通り考えております。ただ、日本立場から、日本というものをわれわれが日本人として考える場合において、やはりここに対してわれわれの終始一貫主張しておることをやはり前提として考えることが当然である、かように考えます。
  46. 岩間正男

    岩間正男君 ただいまの見解は了承することができない。従って、委員長並びに同僚諸君にお願いしたいのだが、今の問題は今後これは尾を引く問題です。安保の審議にあたって、ぜひ私はこれはやはり統一すべき問題であると思う。これを要求したいと思いますが、この点で御賛同願いたいと思います。そうしないと、国会の権威を高めることができない。どうですか、委員長
  47. 小林英三

    委員長小林英三君) 岩間君、質疑を続行して下さい。……岩間君、持ち時間がなくなりますから、どうぞ御質問願います。……岩間君、質問を願います、御質疑を願います。
  48. 岩間正男

    岩間正男君 私は、先ほど述べたように、どうしてもこの見解統一するために努力すべきだと思うので、政府統一見解を聞くように、それからソビエトにこの意見をやはり明らかにするような努力をやるように委員長から政府に注意してもらいたい。
  49. 小林英三

    委員長小林英三君) 委員長政府に注意すると申しましても、岩間君の御質疑に対して、政府所信答弁すればそれでよろしいと委員長は思います。政府考え所信を、あなたの質疑に対して答弁をすればそれで私は足りると思います。
  50. 岩間正男

    岩間正男君 それではあらためて聞きますけれども、この問題について当然これは統制する、調整する努力をいたすべきだと思う。この点はいかがですか、総理大臣外相から……。
  51. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど政府見解を申し述べております。われわれは、極東という字句が使われておりましても、その条約におけるところの趣旨からこれを解釈すべきものであって、必ずその地域がぴったり、いかなる場合においても一致しなければならぬ問題だとは考えておらないのであります。従って、日ソ共同宣言に用いている、前文に用いている極東云々というものは、われわれが安保条約に用いでいるようなことよりも、一そうばく然たる意味において使っておる、かように政府解釈をしておるのであります。このことを申し上げておきます。
  52. 岩間正男

    岩間正男君 私は、調整をする努力をするかどうかと聞いておるのです。
  53. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 調整するとお話しになりますけれども、今申し上げたような見解政府はとっておるのでありまして、それ以上調整する必要はないと思います。
  54. 岩間正男

    岩間正男君 この条約は平和のための条約だ、消極的な条約だという……どこまでもこれは調整する努力をすべきだと私は思います。この点について、これは議論になりますから、私はあくまでこれを要求して、次に進みます。  次に、新しくとりかわされた吉田・アチソン交換公文に関する交換公文、これによると、日本は国連軍に対して引き続いて協力の義務を負うことになる。そこでまずお聞きしたいのは、現在の国連軍の実態というものはどうなっておるか。第二は、国連軍の任務と行動範囲はどうなっておるか、これをお聞きしたい。
  55. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現在の国連軍は、一九五〇年、五一年に行なわれました国連の安保理事会及び総会の決議によりましてアメリカに委託されまして、そうしてでき上ったものでございます。今日なお国連軍として韓国に存在いたしております。従って、われわれは当然国連の決議を支持するという意味におきまして、この交換公文が必要であるということを考えておる次第ございます。
  56. 岩間正男

    岩間正男君 私の質問に答えてもらうように注意していただきたい。私は、国連軍の実態はどうかと聞いている、それから任務と、その行動範囲はどうかと聞いている。それにあなたのはまるで違ったことを答えている、もう一ぺん答えていただきたい。
  57. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知の通り、現在韓国に国連軍司令部がございます。日本も国連部隊が来ております。国連軍の任務というものは、休戦交渉以来韓国に駐在して、おることなんでありましてそれ以上に申し上げることはないと思います。
  58. 岩間正男

    岩間正男君 それじゃ、先ほどあなたはそういう中で、国連軍の行動についての協力義務、つまり吉田・アチソン交換公文というのは、これは二つの国連決議によって作られたものだと言っていますね、すると、この国連決議の中に、重要な問題は、これはこの行動範囲について規定していると思うのです。これはどういうふうだったのですか。
  59. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 国連軍の目的は、朝鮮半島における平和の維持ということにあると存じます。
  60. 岩間正男

    岩間正男君 委員長、時間外で申し上げたいが、私の質問にやはり答えていただきたいですね。行動範囲はどうかと聞いている、二つの決議の。それをああいうふうに答えられると、まるでだめになってしまうのですよ。話が食い合わない。時間は私少ないし……、質問にはちゃんと答えて下さい。
  61. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 国連の決議には、特に行動というものがきめられておるわけでございません。一般的な、平和と安全を維持するという観点から決議がなっております。
  62. 岩間正男

    岩間正男君 ちょっと決議を読んでいただきたい、時間がないから。
  63. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 私から補足さしていただきます。一九五〇年六月二十五日の決議でございますが、なかんずく一九五〇年六月二十七日の決議の最後に、「国際連合加盟国が武力攻撃を撃退し、かつ、この地域における国際の平和及び安全を確保するため必要と思われる援助を大韓民国に提供する。」この決議に従いまして統一司令部が設立されまして、行動をやっているわけでございます。従いまして、第一に、この決議におきまして、朝鮮における国際の平和と安全の確保のためという任務が課されておりますし、その任務の範囲で行動がきまるわけでございます。
  64. 岩間正男

    岩間正男君 この中には、はっきり朝鮮と書いておりますね。行動任務を勝手にきめておりませんよ。それなのに、これはこの前、参議院の本会議でわが党の野坂議員も質問した問題ですが、よく答えなかったのですが、いつの間にか、吉田・アチソン交換公文によりますというと、朝鮮の限定が極東にまで拡大されている。この吉田・アチソン交換公文の後段を読んで下さい。
  65. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) お答え申し上げます。  吉田・アチソン交換公文はそのようなことがございますが、これは、あくまでもわれわれは朝鮮に限定した問題であると考えております。すなわちこの最初に、「われわれの知るとおり、武力侵略が朝鮮に起りました。」、こういう書き出しでございます。そうしてこれは、あくまでも朝鮮に関する問題としてわれわれは理解しておりますし、それの具体的な実行といたしまして、国連軍協定ができ上がった次第でございます。この国連軍協定も、あくまで朝鮮に関する問題として内容が規定されているわけでございます。
  66. 岩間正男

    岩間正男君 今のは総理見解ですか。総理も同じですか、今の見解と。
  67. 岸信介

    国務大臣岸信介君) その通りであります。
  68. 岩間正男

    岩間正男君 そういうことを言っても、これは全くごまかしだと思うのです。そう言って、朝鮮に関する範囲だと言っているけれども、実は極東という名でどんどんこれは乱用しております。現にどうです。朝鮮事変が起こったのは御承知でしょう。一九五〇年の六月二十五日だ。ところが、二十七日にはもう第七艦隊は台湾沖に出動しているのだ。二十七日、ここにあります。実態から見ると、ここにわれわれは記録を持っておりますが、二十八日付の新聞によりますというと、もう大統領が出動命令して、台湾に第七艦隊が出動している。こういうような、とてつもない乱用をやっている。これを合理化するためにこの極東という字が出てきている。二つの決議案が結ばれたのは、一九五〇年並びに五一年なんです。しかし、このあとにこういう事態が起こった。この事態を合理化するために、このような吉田・アチソン交換公文ができたわけです。こういう点をどう考えるか。これはまさに乱用です。そうして中ソを敵視してこれらの行動を展開している。これが吉田・アチソン交換公文のねらい。そうしてこの二つの国連の決議、このものにはっきり載っているとあなた考えますか。あるいはこの決議の範囲を越えていると考えているか、吉田・アチソン交換公文は。
  69. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん国連決議の範囲内でございます。
  70. 岩間正男

    岩間正男君 どこからそういうことが出ますか。その根拠を聞きたい。
  71. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほど条約局長が申し上げた通りで御理解いただけると思います。
  72. 岩間正男

    岩間正男君 こういうような解釈をやっているところにごまかしがある。全くこれは、一つの詐欺行為と言わなければならない。私は、時間の関係から、一々この条文を読み上げることはできないが、二つの決議には、極東という言葉は一かけらも出てこない。これを勝手に拡大解釈して極東まで延ばしている。そうしてこれによって現実に行動して、事前にたくらまれておったものだ。こういう格好でどんどん出て行っております。これを合理化するために、これに協力させるために吉田・アチソン交換公文が作られ、この交換公文を、今度の新安保の締結にあたって、さらにこれを合理化しようとして結ばれているのが、いわゆる吉田・アチソン交換公文等に関する交換公文となっている。こういう事態を一体了承することができますか。この目的は何ですか、この意図は。なぜこういうことをやるのか。不合理な二つの決議の上に立って、これに違反し、これで詐欺行為をやる。この点について、これは私は総理見解を聞きたい。
  73. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど外務大臣がお答え申し上げましたように、国連の決議は存続されている。国連軍というものが存在いたしておりますから、これに対して、われわれがその決議の趣旨に基づいた協力支持をするということは当然であると、こう考えます。
  74. 岩間正男

    岩間正男君 私は、そういうような解釈そのものが非常にでまかしであり、そうしてこのたびの条約が侵略的なものでないと言いながら、実は中ソを敵として、そうしてここに対する一つの威圧をやろうとしている。こういうところにはっきりねらいがある。しかも、これは国連の精神に違反しております。国連を尊重すると言いながら、実際は違反している。こういう点を私は明白に指摘したい。  第三に、私は時間の関係から進めたいと思いますが、在日米軍基地が攻撃された場合に、岸総理は、日本領土、領空が侵犯されているのであるから、日本に対する攻撃であり、当然自衛権を発動して反撃すると言っておりますが、いかなる場合でもあなたは自衛権で対応すると、こう考えておりますか。
  75. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 武力攻撃が現実に行なわれれば、必ずそういうことになると思います。
  76. 小林英三

    委員長小林英三君) 岩間君の持ち時間は終了いたしました。
  77. 岩間正男

    岩間正男君 これの関連であと一言。  アメリカ日本の関知しないことで第三国と交戦状態に入る。そのために、在日米軍基地が協議の対象に入らない補給基地として使われた場合、アメリカの相手の交戦国が交戦権を発動して、これらの基地を攻撃することがあり得る。こういうときには、戦時国際法上の正当なこれは当然の権利であります。従って政府は、これに対しまして、正当な交戦権に対して自衛権で対抗することができない。これは当然の私は戦時国際法上の通念だと思います。世界の通説もそういうことになっている。それで、自衛権がほんとうに発動することが許されるのは、急迫した不正の武力攻撃の場合だけであります。正当な交戦権の発動に対して自衛権で対抗することはできない。これは私がさっき指摘した通りであります。それで、どうですか。こういうような問題があるときに、日本の基地にアメリカ軍が駐留する。
  78. 小林英三

    委員長小林英三君) 岩間君、簡単に願います。
  79. 岩間正男

    岩間正男君 こういう場合に、国際法上これは当然、交戦者に対して敵対行為をしたり、交戦者の利益となるような行為をするときには、その国の中立というものは認められないことになっております。日米安全保障条約は、初めから中ソ両国を敵視し、この条約に基づく在日米軍基地は中ソ両国にとって、初めから敵視を持っておるものである。従って、アメリカが世界のどこかで、ソ連、中国もしくは第三国と戦争を始めた場合……。
  80. 小林英三

    委員長小林英三君) 岩間君、簡単に願います。
  81. 岩間正男

    岩間正男君 日本は自然的、自動的に交戦区域に入り、相手国の交戦権の対象となり得るのであります。日本アメリカ軍が駐留し、その基地がある限り、わが国は、われわれの全く意図しない戦争に巻き込まれる可能性がいつでもあり、しかも、正当な交戦権には自衛権で対抗できない、こういう事態がこれは国際法上にはっきり起こるわけです。こうなりますというと、全くこれは政府はお手上げということになるのでありますが、このたびの新しい安保条約によれば、日本に依然として米軍が駐留する、そうしてアメリカ軍の基地がある。その限りにおいては、アメリカが世界のどこで戦争を始めようとも、当然自動的に日本は交戦国に入る、こういう形にこれはなることは当然だと思いますが、この問題は、時間の関係から詳細にこの問題について質問申し上げることはできないのであります。重大な問題だと思います。この問題についての統一見解をはっきり、これは岸総理並びに藤山外相から私は伺いたい。
  82. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今日国連に加盟しておる国々は、国連憲章による以外は武力の行使はできないのであります。従って、アメリカ軍がどこかで武力を行使するという場合におきましては、国連憲章においてそこに侵略が行なわれた場合においてのみできるわけであります。そうして、侵略国がそういう当然の交戦権云々というようなものを持ち得ないことは、これまた国連憲章の趣旨から当然であります。従って、今岩間君の御指摘になるような事柄は、私は、できないのであります。日本領土が現実に武力攻撃を受ける限りにおきましては、日本は当然自衛権を持つ、かように考えております。
  83. 岩間正男

    岩間正男君 もう一つだけ。
  84. 小林英三

    委員長小林英三君) 岩間君の質疑は終了いたしました。時間が相当経過しておりますから。
  85. 岩間正男

    岩間正男君 非常に一方的な説明ですから。
  86. 小林英三

    委員長小林英三君) 他の機会にお願いいたします。
  87. 岩間正男

    岩間正男君 国連を尊重し、国連の決定に従わなければ、それはできないと言いながら、実際はそうでないのが今度の安保条約の姿だとはっきり言えます。今の総理答弁というものは明らかに真実をおおっておる。時間の関係から、私はこれを次の機会に譲りたいと思います。
  88. 小林孝平

    小林孝平君 私は、ただいま行なわれております日ソ漁業交渉の問題並びにこれに関連いたしまして領海の問題、さらに、領海の問題は今回の新安保条約条約適用範囲関係いたしますので、この適用範囲の問題、並びにさらに関連いたしまして、事前協議の対象についてお尋ねを申し上げます。  最初に、日ソ漁業交渉についてお伺いいたしますけれども、これは目下交渉が行なわれておりますので、政府立場考えまして御質問をいたしますから、政府も簡明率直に御答弁をいただきたいと思います。  漁業交渉は、日ソ両国の主張がまっ正面からぶつかって、例年厳寒の候から桜の花の散るころまで約百日前後にわたって行なわれ、特に昨年はついに出漁期に食い込みました。本年もまた交渉は長期化は避けられないものと考えられるのであります。それでも、従来は比較的友好的雰囲気の中で、特に近い将来の日ソ平和条約締結を前提とする友好的雰囲気の中で交渉が行なわれたのであります。しかるに、今年は情勢は一変いたしまして、ソ連の態度はきわめてきびしく冷たいものであります。従って、過去の交渉とは背景が大きく変わっているのでありますが、このときにあたって政府交渉についての根本的な方針と期待とを、総理にお伺いいたしたいと存じます。
  89. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日ソ漁業交渉、いわゆる漁業協定に基づく毎年のこの委員会の交渉は、御承知のように、モスコーで行なっております。これはあくまでも協定に基づいて、科学的な資料に基づいて、その年の漁獲量等をきめる委員会でございます。交渉前提となるところの科学的な基礎資料につきまして、日ソの間の意見が今日まだ非常に隔たりがあることは御指摘の通りでございます。あくまでも、われわれはわれわれの持っておる科学的資料に基づいて、協定の趣旨によりこれを交渉していくつもりであります。もちろん、これはいわゆる政治的な領土問題であるとか、いろんな平和条約の問題であるとかいうものとは切り離されて、従来も交渉されておりますし、今回もそういう考えのもとに交渉を進めていくつもりであります。今日まで、まだ最初でございまして、両方でいろんな資料を出し合っておる状況でございます。例年の例から申しまして、前途なお容易でないということも十分考えられますが、日本といたしましても、今申しましたような態度であくまでもこれが妥結に力を尽くす、こういうことでございます。
  90. 小林孝平

    小林孝平君 モスコーにおける二月五日の第三回本会議及び十日の第六回本会議において、ソ連側から日本漁船の協定違反の多いことが指摘され、日本政府の取り締まりの不徹底が強く非難されていると伝えられておりますが、こういう事実はあったのかないのか。またあったとすれば、それに対する政府の対策はどういうふうにするのか。
  91. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 日ソ漁業委員会の協定に対する違反といたしましては、漁獲量に関する違反というものはございません。ただ、技術的な面につきましてソ連側から指摘を受けましたり、また日本側自体でこれを指摘しておるというものが二、三十件ございます。さような状況でございます。
  92. 小林孝平

    小林孝平君 その対策。
  93. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 違反と認められるものにつきましては、漁業法の規定に従いましてそれぞれ責任を追及しております。たとえば、免許の取り消しでございますとか、あるいは停泊を命ずるとか、さような措置でございます。
  94. 小林孝平

    小林孝平君 今、総理は、科学的資料に基づいて日ソ両国が協議をやっておると、こういうお話でございますけれども、その日本の科学的資料というものは、日本の出しておる資料というものは非常にずさんであり、不正確であり、不当であるということを、ソ連側は強く非難し、きょうの外電もこれを大きく取り上げておる。これに対する日本側の見解はどうです。
  95. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 日本側におきましても、この資料につきましては、科学的合理的に、こういうことで朝野の知識を集めましてその対策を練った次第でございます。ただ、問題になりますのは、ソ連の方は大体川へのぼるサケ、マスを捕獲すると。川の近傍におきまする知識につきましては、ソ連も相当の資料を持っておるわけです。わが方におきましては、大洋におきまして漁獲を行なうというような関係がありまして、勢いその資料の収集というものが大洋中心になるというので、両方で行き違いがあるような次第でございまするが、しかし、私どもはできる限りの両面にわたるところの資料を整えまして、ただいまソ連と検討を相互に交換をいたしておるという段階でございます。
  96. 小林孝平

    小林孝平君 私のお尋ねしておるのは、そういうことではないのです。日本の出しておる資料が不正確であって、ずさんである、こういうことなんです。そういう非難に対して日本はそうでないということが言い切れるかどうかということを、お尋ねしておる。日本は大洋で漁業をやる、向こうは沿岸漁業をやるということは、これははっきりしておるのです。そんなことを聞いておるのじゃないのです。私の質問しておるのは、ソ連が日本の提出しておる資料は不正確である。しかも、総理は、これは政治的に解決するのじゃない、科学的資料をもとにして検討するというなら、その科学的資料がずさんであり、不正確であると言われて、黙っていていいのですか。
  97. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 決して黙っておるわけじゃないのです。私ども日本側が出しておる資料が、これが最も公正な資料であると、かような立場に立ちましてわが方の資料の正当性を主張しております。で、ソ連からもそれに対しましていろいろ質疑があったり、あるいは不正確であるというような意見も述べられておりまするが、それに対して一々反駁を試みまして、最善を尽くしておる次第であります。
  98. 小林孝平

    小林孝平君 二月の十日の第六回本会議において、ソ連側から、マス漁業の全面禁止及び沖どりの規制について発言があったと伝えられておりまするけれども、これは事実でありますか。この発言に対する日本側の見解はどうでございますか。
  99. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ソ連側から、本会議におきまして、マスの全面禁漁を行うべきではないかという意見が述べられております。もちろん、これは提案というわけではないのでございます。そこで、第九回、十五日の本会議におきまして、わが方から、それはどういう意味なんだろうか、サケとマスを、一緒に泳いでおるものを、マスだけ切り離して全面禁止をするというようなことがうまくできるものでしょうか、どんなふうにやるのでしょうかというような質問をいたしたようです。それで、ソ連側の方でもいろいろ検討した結果、実は全面禁止というようなことは私どもは言っておるのじゃないのだと。マスが川へさかのぼる、そのさかのぼる道をあけべきではないかという意見を述べておるのだというふうな、また別の見解を述べておるようでございまして、ただいまはさような意見が述べられたままになりまして、自後の話し合いが続いておると、かような状況でございます。
  100. 小林孝平

    小林孝平君 それならば、日本側としては、ただいまのところは、意見として述べられたにしろ、こういうことは絶対に承服できないと、こういう態度でございますね。
  101. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) モスコーにおきまする当方委員の発言につきましては、そのときの状況によりまして委員が弾力的に対処するように指令をしてありますが、私ども一応考えられまするところでは、さようなことには承服できないという態度をとっておると、かように考えております。
  102. 小林孝平

    小林孝平君 さらに、ソ連側は規制区域の拡大変更を持ち出すという情報がありますが、この規制区域の拡大変更は、条約解釈とも関連いたしまして、日本側としては非常に微妙な問題でありますが、これに対する見解はどうですか。
  103. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まだ具体的な意見を聞いておるわけではないのでございます。従いまして、さような仮定の問題についてお答えするのはまことに困難な点があるのでございまするが、抽象的、一般的に申し上げますると、漁獲量をわが方におきましてはそう制限をする必要はないのではないかということを、資源的に科学的合理的に説明をしているわけなのでありまして、従いまして、昨年以上にその規制の区域を拡大するという必要はないという立場をとることが当然かと、かように考えております。
  104. 小林孝平

    小林孝平君 この量を規制するとか何とかいう問題でなく、私の言っているのは、この規制区域の拡大変更の問題であります。これを拡大変更するということに対して、日本はそういうなまぬるい態度でいいのですか。
  105. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) なまぬるいも何もないのですね。まだ具体的なそういう提案に接していないので、いないのでありまするから、私どもといたしましては、規制区域を拡大するというような、新たなる規制を加える必要はなかろうというふうに、一般的、抽象的に考えておると、かように申し上げておる次第であります。
  106. 小林孝平

    小林孝平君 私は、この質問をする前に、ただいま交渉中であるから、政府立場考え質問をすると、こう言っているのです。あなた、吉田総理大臣のようなまねをして、仮定の問題には答えられないなんて、そういうことを言うならば、質問のやり方も変えますよ。何です。われわれはいろいろの場合を考えて、こういう提案があったらどうだと。また、現にこういうことをソ連はいろいろ言っているのですよ。あなた、東京にいるからわからないのだ。あんた、大体漁業のことに関心を持っているのですか、そういう態度は。これは非常に重大な問題なんです、条約解釈上。もう一度、あんた、答弁して下さい。
  107. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 御質問の意のあるところを私も考えております。従いまして、仮定の御質問でありまするから、まことにお答えしにくいのだけれども、あえてお答え申し上げますれば、さような考え方であると、かように申し上げている次第でございます。
  108. 小林孝平

    小林孝平君 いや、答えていないのです。そういう提案があった場合は、答えにくいけれども、あんた、答えていないのです。日本側はどうなんです。応ずるのか応じないのか、こういうことなんです。また、それは条約解釈上、そういうことはできるのかどうか、漁業委員会がそういうことができるのかどうか、こういうことを聞いているのです。
  109. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私どもは、一般的にはさように、今日行なわれておりまする規制をさらに拡大する必要はないと、こういうふうに考えておりますので、もし現在の規制区域をさらに拡大をするというような話が出ますれば、それに対しましては断固反対をすると、かように考えております。
  110. 小林孝平

    小林孝平君 数年間にわたる安定操業の提案についてお伺いいたします。この問題については、第一回交渉以来日本がこれを主張し、ソ連はこれを拒否したところであります。昨年も、岸さんはみずから、今年は九万トン、明年は八万トンと、あなたは提案されて、安定操業の一つの考え方を示されたのでありますが、モイセーフエ代表が、来年のことを言えば鬼が笑うということわざが日本にあると言って、日本をひやかした。しかし、それはまあ去年のことですが、今年のこの交渉の途中で、この数年間の安定操業の問題を日本は提案する準備があるのかないのか。これは非常に重要な問題なんです。毎年々々こういうことをやっていたら、これは大へんですから、岸さんも去年、ことしは九万トン、来年は八万トンと言われた、そういう考え方を今年もあらためて提案されるかどうか。これは岸さんにお尋ねいたします。
  111. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、本来、この数年の交渉を見まするというと、年々漁獲量について長い間の交渉をし、意見がいつも食い違う。そのために漁期が迫ってくるし、いろいろな漁業者の準備その他の上から申しましても、いろいろな支障があるので、何らかの方法によって数年間安定したところの数量がきまれば非常に望ましいと、かように考えている。しかし、現在のところ、直ちにそういうふうな交渉になるかどうかは、まだもう少しこの委員会における交渉の経過を見なければならぬのであります。
  112. 小林孝平

    小林孝平君 これは、この委員会の樺様を見るといっても、委員会は今年のその漁獲量をきめていない。だから、これは今まで毎年々々非常に困難をしている。岸さん自身も非常にそれを体験されている。こういう状態を見れば、今の交渉とは別に、こういうことは数年間の安定操業の提案をするかしないかは、その交渉とは別に日本政府が腹をきめる必要がある。農林大臣、どうです。
  113. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私どもは、毎年この漁獲量やその規制方法などについて百日近くも交渉するということは、まあ非常にこれは妥当を欠いていると、かように考えている次第ございます。従いまして、これが数年間にわたって安定した約束が一挙にできるということは、まことに望ましいというふうに考えておるのでございまして、代表委員としてモスコーに行っておる方々には、さような気持でおるということを頭に置いて交渉で善処するようにと、かように話をしておるわけであります。
  114. 小林孝平

    小林孝平君 それは、提案をする必要があるということを出発に際して代表に話してあるということに解釈してよろしゅございますか。今声が小さくてわからぬ。
  115. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは交渉のことでございますから、いろんなほかのことがひっからまる問題です。しかし、そういう問題がさような方向で解決されるということは好ましいことであるということを頭に置いて対処するように、というふうに申し上げておる次第でございます。
  116. 小林孝平

    小林孝平君 農林大臣のそういう話では、出発する人々はよくわからなかったろうと思う。私が聞いてもよくわからぬ。だから、あらためてこれから訓令をされるかどうかということを、あなたにお尋ねします。あなたの今の態度並びに総理大臣のお話では、新たに訓令をしてしかるべき問題ではないですか。交渉の経過を見てそういう提案をせいということを言われる必要はあるのじゃないですか。
  117. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) さようなことは万事派遣委員が心得てモスコーに行っております。
  118. 小林孝平

    小林孝平君 あなたはそういうことを言っちゃだめですよ。そんな、全部心得ているなら、これから高碕さんが行ったり、あるいは百日もかかるはずはないのですよ。そういうことではだめだから、私が今お尋ねしている。あなた、そういう御答弁をされるなら、それでも、あとからやりますからいいです。  次は、北洋におけるサケ、マスの漁獲量をめぐって、日本が乱獲したから魚族が減少したとかしないとかいって、今、日ソの間に論議がかわされております。これはことしばかりではない。しかし、いずれにしても、これはここ数年間の話であります。二十年前に比べれば、北洋の魚資源が激減していることは明らかな事実であります。その減少の最大の原因は何であるかといえば、害敵、すなわち、オットセイとかトドとかアザラシあるいはイルカ、サメの類がどんどんふえて、そしてそれにサケ、マスがみんな食われる。人間にたとえれば腹の中に寄生虫を飼っているようなものである、こういう状態であります。それでどんどん減るのです。日本がとったとかとらぬとかいうのは、ここ数年の話。その数年の話で、非常に大激論が行なわれている。そこで、こういうことでは、私は、日ソの漁業交渉というものは今後も打開の道は非常に困難であろうと思う。農林大臣は、全部心得ているとか何とかのんきなことを言っているけれども、そんなことではこれは解決しないのです。そこで、抜本的なことを考えなければならぬ。そこで、まずこの加害獣である害敵を殺戮することが肝要であると思うのです。また、一方からいえば、北洋のサケ、マスの卵はソ連領でできる。そこでソ連、いばっている。日本は略奪漁業をやっているじゃないか、おれのところの卵の大きくなったものをとるのではないか、略奪漁業をやっているのではないかと、こういって議論がいろいろこんがらがってくる。  そこで、私は、日本はこの北洋資源を涵養する道義的の義務があるのじゃないか。ソ連と交渉するにも、君の方は卵をあれするけれども、おれの方は害敵を殺して北洋資源を涵養すると、こういうふうにならなければ話はうまくいきませんよ。頭から湯げ立てて交渉ばかりやったって、進まないのです。そこで、私は、この際、もし政府がほんとうにこれを、抜本的に日本の北洋漁業の問題を解決しようという熱意があれば、この害敵のうちオットセイなどは国際条約でとることはできないけれども、サメとかイルカなどは、日本はとろうと思えばとることができるから、これをとって、そうして積極的にサケ、マスをふやして、そうして日本の漁獲量をふやすと、こういうことにやったらどうか。そういうことを政府はやる意思があるかないか。そうして、これを今度の漁業交渉に提案をして、日本はこういうことをやるのだから、あまりめんどうなことを言うな、こういうふうにおやりになる意思があるかどうかということを、私は総理大臣に特にお尋ねいたします。
  119. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私、サメやイルカがどのくらいサケ、マスの資源に影響を及ぼしているかというようなことにつきまして、十分な知識を持っておりませんから、農林大臣からお答えいたさせます。
  120. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ただいまのお尋ね、私は、御趣旨まことにごもっともだというふうに存ずる次第です。日ソ漁業委員会の話し合いというものが、そういう方にこそ主たる論点がいってもらいたいものだというふうに、私も常々念願をしておる次第でございます。また、お話のオットセイ条約等との関係等もなお、再検討してみる必要があるのではあるまいかとも考えておる次第でございます。日ソの漁業委員会におきましても、このイルカの問題等、これは持ち出しまして、そうして共同調査をできればいたしまして、そうしてこれらのサケ、マス資源に及ぼす影響を除去するという対策、できれば非常にけっこうだと思いますので、さような努力をいたしたいと思います。
  121. 千田正

    ○千田正君 関連質問。ただいま小林委員質問に対して、農林大臣からオットセイの条約等に対する将来の改変の問題が出ておりますが、一応農林大臣にお伺いしますが、最近の国際的なデータから見ますると、オットセイの繁殖状態は大体三百万頭、これが毎年三陸の沿岸から北海道にかけて、現在ソ連が禁止を要望しておるところのアリューシャン南東に対して進んでいっております。そういうことになりますというと、日本の漁獲などよりも、先ほど小林委員質問したように、大体一日一頭で一貫目ぐらいのサケ、マスあるいはイワシ等を食べているということ、毎日三百万貫というものが三陸からアリューシャンにかけて、北洋に向かって荒らされている。こういうものは、一方においては国際条約日本がそういう害獣の退治もできない、片一方においては漁業がそういうふうに圧縮されている、そういう矛盾した状況に置かれていることを非常に私は残念に思うのでありますが、これは一体国際的な今のデータでは三百万頭も増加している、そうして毎日三千万貫ずつくらい食われておる、こういうような実態に対して、農林省としましてはそういうはっきりしたデータを握っておるか。また、将来そういう問題をかけ合って、こうした北洋の問題並びにオットセイの条約の改変要求するだけの意思があるかどうか。そういう点も国際条約と相並んで、農林大臣の所信を承りたいと思います。
  122. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) サケ、マスの問題とオットセイの問題とが、時を同じうして起こってくるので、私どもも大へん矛盾を感ずるわけです。さようなことで、なお私どもも、オットセイの問題につきましては、新たなる角度で検討いたしまして、必要なステップをとってみようかと、かように考えております。なお引き続いて検討いたします。
  123. 小林孝平

    小林孝平君 農林大臣はよくおわかりにならぬから、そういう答弁をされているのです。それで、私は、これに総理大臣も魚のことだからわしは知らぬというような顔をされていますけれども、これは、日ソ漁業交渉というのは、今や日ソの国交回復の平和条約前提にもなり、唯一の日ソ交渉の窓口なんです。従って、魚というけれども、あなたも相当関係がおありですから、よく聞いていただきたいのです。そこで、オットセイは、今、千田委員が言ったように、国際条約があって簡単にいきません。これは大いに検討してもらいますけれども、これはすぐいきませんけれども、サメやイルカは、これは勝手にとれるのです。従って、あなたは今、この漁業委員会で研究をしたい、そういうことも提案したいと、こうおっしゃったのですが、それは非常にいいことなんだが、それを提案すれば、これはおっしゃったように、卵はソ連でとるからこちらは害敵をとると、こういうことになって日本が予算を相当計上してとることになるわけなんです。そういうちゃんと腹がまえをもっておやりにならなければならぬのだけれども、今の御発言では当然そういうことになるのですが、あなたはただ口先だけで言われたのではないであろうということを確かめますが、よろしゅうございますか。
  124. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 調査いたしました結果、さようなことが必要であるという結論に到達いたしますれば、もとより財政的な裏づけをもちましてこれを実行をするということに相なる次第であります。
  125. 小林孝平

    小林孝平君 この日ソ漁業交渉関連して、高碕達之助氏が訪ソされると伝えられておりまして、フルシチョフ首相、ミコヤン第一副首相に会って話しをされると、こういうことでありますが、この際、歯舞色丹の安全操業についても話し合いをされる、こういうことであって、首相とも話し合いをされたそうでございますが、この辺はどういうふうに具体的にお話し合いになったのか、また向こうでどういう話し合いをされるのかということをお尋ねいたします。
  126. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 高碕達之助君が、日本水産会の会長として、北洋の安全操業の問題に関しましても、水産界の意見を代表して、ぜひこれを解決したいという考えを持っておりますのは事実でございます。また、この北洋の安全操業の問題につきましては、従来、日ソ間の外交機関の間におきまして、ずっと長い交渉が行なわれていることも御承知の通りであります。しかし、これがいまだわれわれの希望しているような方向において解決されるというようなことになっておりません。高碕君がソ連に行くとするならば、漁業委員会の方における政府の代表として出すことになると思いますが、そういう資格において問題のあるのは、今、先ほどお話しの漁業委員会の問題でございます。それと同時に、ソ連の首脳部と話し合いをして安全操業の問題について解決の方向を作りたいと、こういう考えを持っておりまして、そういう意味の、もしもソ連の首脳部と会う機会ができるならば、そういう点についても話し合いをすると考えます。
  127. 小林孝平

    小林孝平君 新安保調印と漁業交渉関係政府はないと言われ、またこれは政治的の問題でないと先ほどもおっしゃったのでありますが、現実にグロムイコ覚書が出され、またこの交渉は当初から非常に難航を予想されておるような事態は、どういつでもこの新安保条約調印とは無関係とはいえないわけであります。そこで、明らかにこの関係がありますこの際、日本の北洋漁業のため、安保条約の批准を延期するという気持はありませんか。重大な日本の北洋漁業のため、安保条約の批准はもう少し先にしたらどうか。
  128. 岸信介

    国務大臣岸信介君) そういう考えは持っておりません。
  129. 小林孝平

    小林孝平君 漁業交渉は単なる経済問題ではないのであって、大きい政治問題であることは、現に過去の交渉において最後は政治的折衝によって妥結したことを考えても、明らであります。特に、これは先ほども申し上げましたが、日ソ交渉における唯一の窓口ともいうべきものであります。そこでこういうふうに難航されて、非常に、場合によればソ連はゼロ提案もしかねまじき状態であるといわれる今この際、総理大臣はこの重要な段階にみずから乗り出してこの交渉に当たられる気持はないか。鳩山元首相は病躯を押してモスクワまで行かれましたけれども、岸さんも行かれたらどうですか。あなたは安保条約調印に行く必要のないワシントンまでおいでになって、そして調印されてきた。これは外務省当局でも、あなたがおいでになって調印をするのはおかしいという意見があったのを、押してあなたがおいでになった。そういう行かないでもいいところに行って、大事なこの行かなければならないところに行かないのでのほほんとしているのは、おかしいじゃありませんか。あなたみずからお出かけになったらどうですか。
  130. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 漁業委員会のこの問題は、御承知のように、漁業協定に基づいて年々行なわれておる問題でございます。私は、相手国であるソ連がこの問題と本来関係のない安保条約というものを結びつけて考えておるというような考え方を、実は持っておりません。あくまでも国際的な条約に基づいて、年々変わっていくという基礎においてやるというこの交渉でございますから、そういう意味において取り扱っておるもんであって、いろいろなことをむしろ結びつけて考えることは、私は適当でないと思います。また、そういう意味において、漁業の専門家をわれわれは選んで、科学的な論争におきましても十分太刀打ちのできるりっぱな権威者を送ることが、この条約の本来の趣旨でありまして、そういう意味から申しまして、私がそのために出かけることは適当でないと、かように考えております。
  131. 小林孝平

    小林孝平君 そういう事務的な答弁では、私はおかしいと思うのです。この日ソ漁業交渉というものは、あくまでも今、日ソ交渉の唯一の窓口である。そういうことをお考えになれば、総理大臣はそういう事務的な答弁をされるのはおかしいのであって、あなた、日ごろのそつのない、また説得力があるといわれるあなたが直接でかけて、そしてこの問題を妥結するということが日本のためになるのじゃないですか。日ごろあなたは、日本のため、日本のためとおっしゃるけれども、こういうことをやることが日本のためなんです。私は繰り返して申し上げませんが、当然考えるべきだと思うのです。  ところで、藤山外務大臣は、あなたは七月、モスコーで開かれます見本市に行ってもいいと言っておいでになるのです。私もそれはいいと思うのです。私はこの対ソ貿易を軽視するものでありませんけれども、それも必要ですけれども、この目の前の差し迫った重大な日ソ漁業交渉に、あなたは外務大臣としてみずから乗り込んで早期に妥結をはかって、さらにこれを契機にして日ソ交渉をさらに円満に進展させるという方向におやりになる気持はありませんか。
  132. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 漁業交渉は、総理が言われましたように、私どもはやはり経済的問題の扱いとして、毎年お互いにデータの上に乗って話し合いをすると。ソ連側においてもそれを政治的に使うというようなことはないということを私ども信じております。むろん交渉のことでございますから、漁獲量その他規制措置の問題等につきまして、完全な科学的調査がまだ一致しておらないような段階では年々意見相違する場合がございます。従って、その最後の妥結というものはある程度大きな、何と申しますか、妥協と申しますか、そういうような形で妥結されることになろうと思います。そのような場合におきまして私が今すぐ行くとは考えておりません。
  133. 小林孝平

    小林孝平君 今すぐ行く、今は困るでしょう。今すぐおいでになるのは時期ではありませんけれども、今すぐ行くつもりはないけれども、将来はあり得るということですね。今はないということですか。
  134. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今は申し上げたような交渉の経過でございますから、私が特に行くというようなことを考えなくとも妥結はできるもんだと考えております。むろん政府として適当な人を出す場合もございましょうけれども、私自身が今すぐ行くというふうに考えておりません。
  135. 小林孝平

    小林孝平君 農林大臣はどうです、あなたはおいでになりますか。
  136. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 先ほど来申し上げましております通り、本件はどこまでも資源論ということが中心でございますので、委員に話し合いをさせておるわけであります。この話し合いで話がつくことを期待はいたしておりまするが、もし私が出ていって話をした方がわが方の立場上よろしいのだという判断でありますれば、その際には私はみずから出ていくということも考えておる次第でございます。
  137. 小林孝平

    小林孝平君 農林大臣は行く意思がある、外務大臣は将来行くこともあり得る、こういうことでございますね。そこで、北洋のことをお尋ねいたしましたので関連して領海のことをお尋ねいたします。去る二月の十三日の夕刊の記事によりますれば、十三日午前外務省において山田外務次官と海洋法会議代表アーサー・ディーン氏とが会見したということでありますが、外相はこれを御存じでございますか。
  138. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) アーサー・ディーン氏と山田次官とは会見いたしました。
  139. 小林孝平

    小林孝平君 どういう内容の話をされましたか。
  140. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知の通り、この三月十七日から海洋法の国際会議がジュネーブにおいて開催されます。二年前に海洋法典を作る会議をいたしたわけでございますが、領海等の問題につきまして意見が一致いたしませんでした。従って、海洋法典を国連で作るという目的のために、この領海問題についてさらに会議を開くことになり、その会議が開かれることになっておるわけでございまして、それらの点に関してディーン氏が極東方面を回って歩きましたので、次官もそれに会って、そうして意見の交換をいたしたわけでございます。
  141. 小林孝平

    小林孝平君 防衛庁長官はこの会議のあったことを御存じですか。
  142. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 聞いております。
  143. 小林孝平

    小林孝平君 防衛庁長官、その内容はどういうことが論議されましたか。
  144. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 外務大臣が御答弁申し上げた通りでございます。領海につきましては、各国の意見が非常に違っております。一昨年もジュネーブでやりましたときにも議論がありまして、そのことだけがきまらないで済んでおるようなわけであります。日本の意向等も聞きたいということで話し合いがある、こう聞いております。
  145. 小林孝平

    小林孝平君 第二回海洋会議は来月開かれるのですが、防衛庁といたしましては、この領海についてはどういう御意見ですか。
  146. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 防衛庁としてという特に意見はございません。日本考え方として領海三海里説を前から主張しております。その線でわれわれも考えております。
  147. 小林孝平

    小林孝平君 私は、防衛庁長官総理大臣に尋ねているのじゃないのです。防衛庁長官に尋ねているのです。そうすると防衛庁といたしましては、距岸三海里説を現在も主張されているわけですね。
  148. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) その通りでございます。
  149. 小林孝平

    小林孝平君 外務大臣にお尋ねいたしますが、前回の海洋会議に日本はこの領海の問題について三海里説、六海里説いろいろありましたけれども日本はどういう態度をとりましたか。
  150. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知の通り日本は今日まで伝統的に三海里説を主張いたしております。従いまして、前回の会議におきましても三海里説を強く主張しておりまして、三海里説を主張しておりましたところは二十二カ国かございます。むろん海洋法典を作りまして領海の一定の話し合いをつけますことが必要でありまして、現在の事情から申しますと、各国がそれぞれ六海里なり十二海里なり、あるいは、はなはだしいのになりますともっと大きな主張をいたしております。それがやはり国際紛争のもとになりますので、何か海洋法典というようなもので一定の区域が三海里なり、六海里なり、何らかの形で決定されますことは望ましいことでございますけれども、われわれとしては三海里を主張いたしております立場から申しまして、三海里以上にそう多く違いますことは困るわけでありますから、その意味において三海里説を従来とも主張しておったわけであります。
  151. 小林孝平

    小林孝平君 日本は距岸三海里説を主張しておりましたけれども、前回の会議にはアメリカの距岸六海里説に同意したのじゃないのですか。
  152. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま申し上げましたように、領海が国際海洋法典として決定しまして、各国がそれを順守することになりますと、それぞれいろいろな国が十二海里だ、あるいは六海里だ、三海里だと主張しておりまして、その辺から起こりますいろいろな紛争が解決されることになるわけでありますから、従いまして、われわれが三海里を主張しておりますけれども、適当なところでそれがきまりますならば、それに対してはやはりきめていく方がいいのではないかという立場をとっております。従いまして、前回六海里というような説につきまして、それがもし多数でまとまるならば、あるいはそういう点についてわれわれも考えていかなければならぬということを思っているわけでございます。
  153. 小林孝平

    小林孝平君 これは、実に重大な問題じゃありませんか。われわれの全然知らないうちに、日本領土が大きくなったり小さくなったりしている。今まで日本の領海というものは距岸三海里だ、それが六海里でもいいということになればわれわれは、国会は全然知らない、国民も知らないうちに日本領土が膨大にふくらまることになる。一体だれがそんなことをきめたのですか。その条約に臨んだのですか。しかも、今度三月のそれにもわれわれには全然話がなくて、われわれの領土が大きくなるか、あるいは小さくなるかという条約に臨もうとしているのです。一体何をしているのですか。
  154. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) まだそれが決定されたわけではございません。海洋法会議で各国の主張をお互いに交換して、そうして決定をいたしますれば、それが条約案になるわけでありますから、われわれとしては、現在日本として伝統的に三海里説を主張しております。しかし、多数でもって十二海里とか、いろいろきめられます場合があろうと思いますから、われわれとしては、やはり三海里にできるだけ近いことできめられることが望ましいことであるという立場をとって海洋会議においても奮闘をいたしておるわけであります。
  155. 小林孝平

    小林孝平君 そんな答弁をやったんではだめなんです。六海里でみんながきまれば六海里でもいいと、こう言っているんじゃないですか。日本は最後まで三海里の説に投票するんじゃないんですよ。六海里できまれば六海里でいいという投票をやるわけなんです。この前の会議でもこういう態度をとった。しかも、この十三日の山田次官とディーン氏との会談の発表を見ますと、日本は距岸六海里に同調すると、しかも、これには米国のマッカーサー駐日大使まで立ち会って、そして話をきめているんじゃないですか。こんなことまでわれわれには全然相談なく日本領土が大きくなったり小さくなったりする。こういうような問題がわれわれに全然相談なくアメリカと勝手に相談している。防衛庁長官のごとき、一体あなたはどうしているんです。三海里説を主張しておりますと言われるが、十三日にちゃんと日本の外務次官は六海里説に同意しているんです。これでもってこの第二回海洋会議に臨もうとするんです。おかしいじゃないですか、そういうことは。
  156. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 山田次官とアーサー・ディン氏との話は、まだ六海里説を日本は認めたということを言ってはおりません。むろん会議の進行状況とにらみ合わせて考えていかなければならぬところでありまして、三海里説をわれわれは放棄しておるわけでは決してございません。
  157. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君にちょっと申し上げますが、あなたの持ち時間はまだ八分残っておりますが、要求大臣のうちの総理大臣外務大臣が公用で約一時間ばかり出席されることになっておりますから、そこで、午後一時からあなたの質疑を続行いたしまして、この辺で休憩いたしたいと思います。
  158. 小林孝平

    小林孝平君 それでは一言。外務大臣の御答弁は全然ごまかしですよ。この新聞記事も——岸さんも日本の新聞は信用できない、こういうことを言っているようですが、あなたもそういうことになったのですか。これにはちゃんと承諾したと書いてある。岸さんはそうおっしゃっている。あなたも日本の新聞は信用できない、そういうことになったのかどうか。私はこれで……。答弁は昼からいただきます。
  159. 小林英三

    委員長小林英三君) 午後は一時から再開いたします。  暫時休憩いたします。    午前十一時五十三分休憩    —————・—————    午後一時三十八分開会
  160. 小林英三

    委員長小林英三君) これより予算委員会を再開いたします。  午前に引き続きまして質疑を続行いたします。
  161. 小林孝平

    小林孝平君 午前に、問題の核心に触れようとしているとき中断をされましたので非常にまた繰り返し等がありまして工合が悪いのですけれども外務大臣は、午前の御答弁は、もう間もなく時間がくるだろうと思っていいかげんなことを御答弁なさっておられる。そういうことでは困ります。日本は第一回の海洋法会議のとき六海里に同調したのです。そこで、さっき申し上げたように、一体だれに相談して日本の国土を六海里まで広げたか。国会に全然知らせないで、国民も知らないうちに日本の国土が六海里まで広がるなんということは重大な問題じゃないですか。
  162. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知の通り海洋法会議に日本は代表を送っておりまして、三海里説を主張しております。しかしながら、他に十二海里なりあるいは二十海里なり、その他いろいろな主張をしている国がございます。また十二海里にいたしましても、漁業の問題等考えての十二海里というような問題もございます。従いまして、海洋法会議では三分の二の多数によって決定をして法典を作るということになっております。でありますから、われわれむろん三海里を主張することは主張をいたして、決してそれを変えておりません。が、しかしながら、日本といたしましては、できるだけ決定されるものは、もし三分の二をとって多数で決定されるものが、三海里にできるだけ近いものが必要でありまして、三海里がどうしても否決されましたときに、それが日本の主張とあまり隔たったようなものでないことを希望いたします。でありますから、三海里がどうしてもとれないというときには、それに近い六海里等に賛成することはあり得るわけでありまして、そういう状況のもとにわれわれとしては対処していきたい、こう考えておるのでございます。
  163. 小林孝平

    小林孝平君 あなた方は国の領土が、領域が広がったり、狭まったりするという重大な問題を非常に軽々しく考えているからそういうお考えになるのです。三海里から六海里に広まったら大へんなことなんです。それを勝手に、私たちが全然知らないうちにそういうことをきめようとしておる。さらにマッカーサー大使を立ち会いにして、ディーン代表とひそかに話し合いをしておる。そういうことを否定されておりますけれども、これは午前に申し上げた通りなんです。そういうことを現実に今されておるのです。大臣はこの領海の問題はあまり御存じないから、事務当局の書いた紙を見て御答弁になるからそういうことになるのです。  そこであなたと問答していても時間がたちますので、防衛庁長官にお尋ねします。領海制度を明確に定め、その理論的根拠づけに画期的な寄与をしたバインケルスフークが、国土の支配権は武力の終わるところに終わるという有名な着弾距離説を唱えた。そういう歴史から見て、領海と防衛は重大な関係があります。ところが、現在外務大臣が言うように、三海里説が否定されたら六海里説でもいいという、こういう日本の態度をとりつつあるのに、あなたはまだ日本が三海里説をとっていると考えておられる。そんなことで防衛庁長官が勤まりますか、そんなことであなたはその国の防衛が勤まると思うんですか。私はあなたではとても問題になりません。そういうやり方では問題にならぬと思いますけれども、そんな長官をいただいておるこの自衛隊員というものはほんとうにこれは涙が出るだろうと思う。どうですか、この私の申し上げたことに対してどういうふうにお考えになりますか。この歴史的事実から考えれば、あなたは今のような答弁をされるはずはないんです。
  164. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) お説の通り最初三海里説をとった根拠は、沿岸から砲弾が届く距離であります。しかし、砲弾が届く距離をみんな領海にしたならば、ICBMなどというとアメリカとソ連との間を飛んでしまいます、これがみんな領海になってしまいます。現在の領海は、沿革からいえば、着弾距離ということでありましただろうけれども、それを離れて各国との調整をとって、まちまちのものを一つにきめてゆこう、こういうのが海洋法典のジュネーブの会議だろうと思います。しかし、日本立場といたしましてはやはり従来通りの三海里説を主張しておるわけでございます。しかし、国際的にこれが統一したことになろうということであるならば、日本の三海里に最も近いものに賛成をして、統一をされるならば統一をしたい、こういうことで会議を続けておるわけであります。防衛庁長官の仕事と三海里を固執するということは非常に関係がおありのようでありますが、直接そういうことと防衛庁長官が勤まるか、勤まらないかということとは、少し話が違うように存じております。
  165. 小林孝平

    小林孝平君 防衛庁長官、実際あなたふまじめです。私は何も三海里説は、この説は歴史的説からこういうことになったということだけを言っているんです。だから防衛庁長官としてはそういう配慮もあるべきが至当だと言っているので、何も着弾距離——ICBMができたからそこまでずっとやれということは、ちっとも言っておりません。そういうふうに人の質問を故意にそらしてやるということは、実際それはふまじめだと思う、不謹慎ですよ、そういうことでは。私はそうでないんだ、現実に日本は六海里説でもいいということを言っているのに、あなたはそれを知らないということを言っているんです。そんなことで勤まるかと。何を言っているんですか、ふまじめもはなはだしい。そんなことじゃ質問できませんよ。どうです。何も言っていないことを言いがかりをつけて。
  166. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 日本は三海里を主張しておりますが、ジュネーブにおいて六海里というようなことにつきましても日本の三海里に近いものであるならば、そしてまたこれで国際的にきまるということならば、賛成しようということは承知しております。
  167. 小林孝平

    小林孝平君 あなたはさっきはそれを知らなかったのではないか。今外務大臣と、私のやりとりでようやくそれがわかった。こんなことじゃだめですよ。あなたはむしろ午前中の魚の話でも御答弁になった方が適当なんですよ。防衛庁長官がそんなことを知らないで通りますか。これは重大な問題ですよ。国の範囲を大きくしたり、小さくしたり、しかもそれは新安保条約の、条約の適用区域と関係があるのです。どうもたよりない長官にお尋ねしても、時間がたちますから、この問題はいずれあらためてやります。  そこで領海のことをやりましたから、関連いたしまして領空のことを今度はやりますが、新安保条約の第五条の施政下にある地域とは、領土、領海、領空を言うのかどうか、お尋ねいたします。
  168. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) その通りでございます。
  169. 小林孝平

    小林孝平君 そういたしますと、領空は一九四〇年、これはシカゴでもって開かれました国際民間航空条約ですね、その締結された条約の第一条で領空を規定いたしまして、領土、領海の上部にはその国の主権が及ぶと決定されております。これでよろしゅうございますか、現在も。
  170. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) それでよろしいです。
  171. 小林孝平

    小林孝平君 そういたしますと、この領土、領海の上部にその国の主権が及ぶということになれば、これは無限に及ぶわけです、制限をしてないから無限に及ぶと解釈してよろしゅうございますか。
  172. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 無限という言葉はどうかしりませんが、管理可能な区域ということになろうと思います。
  173. 小林孝平

    小林孝平君 管理可能というのはどういう意味ですか。
  174. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) それにつきましては、条約局長もしくは法制局長官から御答弁させます。
  175. 小林孝平

    小林孝平君 これはどうしてかというと、新安保条約条約適用区域に関係ある重大な問題なんです。こんなことを外務大臣おわかりにならぬはずはないのですよ。
  176. 林修三

    政府委員(林修三君) 大体、領空の範囲につきましては、ただいま問題になりましたシカゴ条約の規定によって国際的にきまっているわけでありまして、あそこでいわゆる領空——領土、領海の上空という意味は、その解釈といたしましては、あそこでは英文ではエア・スペースという言葉を使っております。これは大体大気圏内ということに解釈されております。つまり大気圏外の管理可能性のないというところまでを含めた上空という趣旨ではございません。
  177. 小林孝平

    小林孝平君 あなたは、エア・スペースとおっしゃいましたから申し上げますが、じゃあ、エア・スペースということの範囲ですね、具体的に大気圏というのは地上何キロまでですか。
  178. 林修三

    政府委員(林修三君) これは科学的にいろいろ考え方があるようでございますが、大体いわゆる希薄でも空気のあるところということになっております。しかし、空気のある高さは、私は科学的なことはよく存じませんが、いわゆる高さについては必ずしも一定しておらないように聞いております。大体において、しかし、いわゆる空気のある範囲、いわゆる大気圏というものがこのエア・スペースということの解釈になっております。
  179. 小林孝平

    小林孝平君 これは新安保条約の適用地域関係がありまして、非常に密接な関係があるのです。この地域をICBMが飛んだ場合に、日本領土侵犯で直ちに条約が適用されるわけです。こういう重要なことを、外務大臣は林法制局長官にまかして答弁さしておく。しかも、それがあいまいだ。エア・スペースの範囲内ということは、これは一種の物笑いになっているくらいの議論なんです。こんな古めかしい議論じゃ問題にならぬのです。どうです。こんな安保条約の審議なんかできないじゃないですか、これ一つでも。
  180. 林修三

    政府委員(林修三君) いわゆる、まあいろいろ新しい、空を飛びますいろいろな物体ができてきたわけであります。そういうことで、いわゆるそれについて大気圏外の利用ということも、今国際間の問題になっているわけです。いわゆるどこまでその国の排他的領空権を認めるか、また非常に高いところはどうするかということは、これは私は新しい国際法の問題だと思います。
  181. 小林孝平

    小林孝平君 これからできるなら、問題ないのです。すでにできているのです。これからできるなら、あなたの答弁でいいのです。すでにできているのです。そういうことを前提にして調印された。総理大臣、どうですか。
  182. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど来、外務大臣及び法制局長官からお答え申し上げているように、シカゴ条約考えておることを基礎に置いて、領空という観念を今日においてはきめるべきであろうと思います。いわゆる大気圏外の宇宙圏の問題等につきましては、まだ国際法上の一つの原則がきまっておりませんので、それらについては今後これが問題としてきまる時期もあろうかと思いますが、今日のわれわれが安保条約を結ぶについては、今のシカゴ条約のことを前提として考えておるのであります。
  183. 小林孝平

    小林孝平君 これはきわめて重大なことなんです。大気圏外はいいけれども、大気圏内のことについて考え調印した。しからば、大気圏内を飛んだミサイルが、日本の上空を飛んだ場合には、これは領空俊犯としてこの条約は直ちに発効されるかどうか。外務大臣、どうですか。条約なんか審議できる材料なんかないじゃないですか、ちっとも。一つも明らかになっていない。
  184. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 領空侵犯というお話がございますけれども、武力攻撃があった場合にこの条約が発効するわけでございまして、領空侵犯だけですぐに発効するというわけではございません。
  185. 小林孝平

    小林孝平君 そういう答弁はだめなんです。これは、日本が武力攻撃を受けたときの、衆議院における答弁は、現実に日本の地上が爆撃された、そのほかに、日本の領空が侵された、この二つから武力攻撃が行なわれたものと認めるという答弁をされているのです。従って、今のような私は質問をしているのです。そんなことではだめなんですよ。法制局長官、あなたの答弁では教え方が不十分なんです。問題になりませんよ。あなた方が答弁できるようなことなら、聞かないですよ。できないことを聞いておるのですよ。この条約はこういうふうに事ごとにはっきりしないのです。明確でないのです。それを私は言いたいのです。この問題はあらためてまた新しい委員会において論議をいたしますけれども、これは問題になりませんよ。そんなことで調印されては。岸さんはわざわざアメリカまで行かれて、こんなことを調印されてきたけれども、事ごとに内容が明確でない。  もう一つ明確でないことを申し上げますれば、この条約事前協議の問題で、配備における重要なる変更並びに装備における重要なる変更が事前協議の対象になる、こういうことになっておりますが、一体協議に応じてイエスかノーかというのは、外務大臣はよくイエス、ノーと言うけれども、イエス、ノーのほかに中間的のものもあるのですよ。期限つきでいい、それまではだめだ、こういうこともある。あなたは簡単にイエス、ノーと言っておる。イエス、ノーと言いますけれども、イエス、ノーと言うからには、いかなる変更が行なわれんとしておるかということが明確でなければなりません。そのためには、まず在日米軍の配備、装備を詳細明確に日本側は知っていなければ、そう言うことができないわけなんです。イエスかノーかと言えないわけです。しかも、それが変更されるときは、現在の現状を知っておると同時に、それが変更されるときは、ささいと考えられるような変更も、迅速的確に日本側に通告されていなければ、日本側はイエス、ノーが言えないわけです。現状がわからぬのに、変更したかしないかわからぬじゃないですか。  そこで、防衛庁長官にお尋ねいたしますが、現在日米軍の配備、装備はどうなっておるのか、知っておるのか、知らないのか。どうも先ほどからのあなたの御様子では、こういうことは御存じないのかもしらぬけれども、そんなことではこの条約の発効にあたって困るのではないか。われわれはこの条約の審議ができないのじゃないか、こういうことになるのです。  それから、外務大臣にお尋ねいたしますが、かりに条約……。赤城さんはのんきだから、おそらく知らないかもしれない。知らないかもしれないけれども条約発効のときは詳細に日本側に知らせることになっておるのかどうか、その点明確にしておいていただきたい。
  186. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君に申し上げますが、午前中の質疑が都合によりまして中断されましたので、持ち時間のほかに三分間だけ質疑をお許しいたします。
  187. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 在日米軍でありますが、駐留軍の人員から申し上げますと、約五万二千人でございます。そのうち陸軍が約五千人、海軍が約一万五千人であります。空軍が約三万二千人であります。海と空につきましては、その性質上若干の増減があることが予想されますが、今申し上げた数字であります。陸軍として五千人おりますが、これは管理補給部隊であります。戦闘部隊は駐留しておりません。従いまして、その装備は、自衛隊で保有しておる程度の軽火器のほか、通信とか、輸送とか、装備補給等の任務達成に必要な資材類であります。海軍は横須賀、佐世保に基地要員が主としております。一部に航空部隊がおります。基地部隊は補助艦艇等を保有しておりますし、航空部隊の装備は対潜哨戒機、輸送機、ヘリコプター等でありまして、一部海兵航空隊所属の戦闘機を含んでおります。空軍について申し上げますと、空軍の装備は戦闘機F86D、F102、それから戦闘爆撃機、これはいわゆるF100であります。及び戦術爆撃機等であります。以上が在日米軍の概要であります。
  188. 小林孝平

    小林孝平君 そんな程度では、この条約事前協議の対象に考慮するわけにはいかぬのです。もっと具体的に、どこにどういうふうになっておるという詳細なものがなければ、この重要な装備配備の変更というのはわからぬじゃないですか。こんなことで調印されては困ります。調印はしましたけれども、困るじゃないですか。
  189. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) どこにどうかということもわかっていないわけじゃありませんが、刑事特別法との関係にありまして、申し上げられない点があります。陸軍でいいまして、どこに主力があるのかといえば座間にあります。それから海軍の基地及び要員は、先ほど申し上げましたように、横須賀、佐世保、それから一部航空部隊は厚木、岩国、それから空軍の基地といたしましては、立川、三沢、横田、板付、こういうふうに相なっております。
  190. 小林孝平

    小林孝平君 その刑事特別法の関係で発表できないもの以外のものは、資料として出して下さい。それ以外はいいというのですか。私はそれだけではだめなんですけれども、まあとにかくそれだけ出して、それから外務大臣にお尋ねしたところ、そのお答えをいただきたい。
  191. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 協議をいたします場合に、むろん協議に付帯するいろいろな事項については、協議でございますから、お互いに話し合って、そしてその事情等についても聞くことはむろんでございます。われわれとしては、日米安保条約を締結する両国は、やはりお互いに信頼関係の上に立ってこういうことを締結して参るわけであります。そういうような場合の話し合いにおいて、われわれが得た知識によってそれらのものを決定していくということに相なろうと思います。
  192. 小林孝平

    小林孝平君 外務大臣は、おかしいじゃないですか。一番大事なことで、きめておかなければならないことはきめないでおいて、これは相互信頼でやるのだと。おかしいじゃないですか。むずかしくて一番問題になる点はぼかしておいて、それはもうあなたまかせ、そういうことじゃ困りますよ。  それからさらに、時間がありませんから申し上げますけれども、それははっきりと義務づけられておらなければわからないのですよ。ささいな変更は報告する必要はない、協議する必要はない。ところが、たとえば一万人の移動は何ともないけれども、一万人を三回繰り返して三万人になったら、重要な変更になるということがあるのです。だから、そのたびごとに、移動があったら、詳細に迅速に日本側に報告する義務がなければ、この条約の協議事項というのはナンセンスなんです。  これに対して、どうせお答えができないと思いますから、ついでにもう一つ申し上げますが、重要なる変更というけれども、重要なる変更というのはだれが認定するのですか。アメリカがこれは重要でないと言ったらそれまでじゃないですか。これも相互信頼でいくのですか。むずかしいことはみんなアメリカの善意にたよっておる。そういうことでいいんですか。
  193. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君に申し上げますが、時間が終了いたしました。
  194. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今お話しのありました、われわれとしては、むろん部隊が移動しているというようなことにつきましては、常時の協議でもこれをやはり相談して参らなければならぬので、たとえば、今お話しのように、三万人なら事前の協議にかかるが、一万人ならかかならいから、それを三回に持っていくということは、われわれの信頼関係の上から起こり得ないのでありまして、三万人持っていくけれども、こういうふうに部隊を分けて持っていくというように、お互いの常時の情報の交換なり話し合いで、そういうものを了知されていかなければ、こういう運用はできないとわれわれは考えております。
  195. 小林孝平

    小林孝平君 これで質問を終わりますが、今の答弁答弁になりません。そんなことでは問題になりません。これはいずれあらためていたしますが、要するに、この安保条約はみな、むずかしいことはアメリカの善意によって、相手を信頼する。相互信頼というのは対等の立場において初めてそういうことが言えるんです。対等じゃない。アメリカの何でも言うことを聞いているんです。そこで、私は——委員長、最後ですから……。このアメリカと対等でないという一つの事例を申し上げます。社会党鈴木委員長の名前でハーター国務長官に、安保条約に関する質問書を提出いたしましたら、十二月十日にダグラス・マッカーサー大使の名前で、書簡が、鈴木茂三郎あてに返答が来た。その原文はこれでございますが、この中に、マッカーサー大使がアイゼンハワー大統領の言葉を引用しています。岸さんに関しての言葉なんです。そこで、この言葉はヒー・イズ・ワン・オブ・ザ・フリー・ワールズ・ストーンチスト・リーダース、こう書いてある。それでヒーというのは、あなた、岸さんでございますが……。
  196. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君、簡単に願います。
  197. 小林孝平

    小林孝平君 もう終わりますから、あなた、ちょっと……。そこで、私はこれを見たとき、単に世界におけるストーンチスト・リーダースー日本におけるストーンチスト・リーダースと書いてあるなら気にとめなかったのですけれども、特にフリー・ワールドのストーンテスト・リーダースと書いてありましたので、私は念のために、私もあまり学はありませんが、ウエブスター辞典を引いてみました。ストーンチというのはどういう言葉であろうかと思って引いてみたところが、これは猟の際に犬が忠実に主人の命令に従って動く場合の形容詞だ、こういうふうに世界の権威のあるウエブスター辞典にあるのです。そこで、なるほど、これは自由世界のストーンチスト・リーダースということを、マッカーサー大使が特にアイゼンハワーの言葉を引用して書いたのだなあ、こういうふうに私は了解したわけなんです。そこで、外務大臣は、総理大臣も、相互信頼、相互信頼と言われるけれども、このアメリカから見ると、岸さんはストーンチスト・リーダースである、こういうことであって、相互信頼でなくて、忠実な犬といっちや悪いけれども、こういうことであって、この条約の本質はまさにこれによって明らかにされた、こういうふうに私は思います。(拍手)
  198. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  199. 加瀬完

    ○加瀬完君 私は、このたびの補正予算の内容について質疑をするものでございますが、その質問内容とも若干触れて参りますので、その前に一つ切り離して質問をいたします。  それは、フイリッピンのクラーク空軍基地のスポークスマンの発表といたしまして、三月二十六日から四月八日まで極東諸国の空軍の合同演習が行なわれるが、日本も参加するかまたはオブザーバーを送るように招かれている。そうしてこの演習は、SEATOに加盟しております米、比、タイ、ニュージランド、オーストラリア、五カ国と国民政府、韓国、日本が空軍を派遣して加わるよう招かれており、共同して作戦や防衛等に当たる合同演習である、このように注釈が加えられて発表されております。この要請に対しまして政府はどのようなお考えを持っておられるか、御参加をなさるのか、総理並びに防衛庁長官にお伺いいたします。
  200. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) お話のような趣旨において在日大使館から招請状が来ております。この合同研究は、太平洋米軍の司令部の提案であります。現地のクラーク・フィールドでは、アメリカの第十三空軍、フィリピン空軍が主催しております。しかし、SEATOの主催ではございません。また、参加国の協議の形をとっております。日本でこれに参加するかどうかということでありますが、日本の航空自衛隊といたしましては、予算や装備、器材等勘案して参加しないことにいたしております。
  201. 加瀬完

    ○加瀬完君 予算や装備、器材等の関係からこのたびは参加しないことに決定されたということでございますが、それならば安保体制が進展をいたしまして、今のような問題が解決される暁には、将来はこの種の演習には参加すると考えてよろしいか。
  202. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 参加するかしないかは、そのときの情勢によって決定したしたいと、こう思います。
  203. 加瀬完

    ○加瀬完君 このような演習にどういう法的な根拠をもちまして参加が可能であるか、防衛庁長官に承ります。
  204. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 自衛隊の訓練の目的等から参加する、参加する場合には、そういう根拠でやりたいと思っております。
  205. 加瀬完

    ○加瀬完君 自衛隊法には、出動の条件といたしまして、防衛出動、治安出動、地方長官の災害派遣要請による出動、これ以外にはないはずであります。演習に対する、しかも外国軍隊との共同演習に対する出動というものは、憲法におきましても、自衛隊法におきましても、それらの許容される条件というものはどこにもないと私は思いますが、防衛庁長官は別の御見解がおありでございますか。
  206. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) これは出動でも何でもありません。出動でありまするならば、お説の通りの手続等を経るわけでありますが、これは合同研究ということが目的になっておりますので、(「出動の場合の研究じゃないか」と呼ぶ者あり)その研究をするということは、これは別に自衛隊法に拘束されて、そこで研究をしてはいかぬということはないと思います。諸外国に行きましても、研究をすることは、これは許されておる、こう考えております。
  207. 加瀬完

    ○加瀬完君 日本の空軍なら、空軍の大部隊が部隊編成をもってしかも演習目的をもって、移動をいたしますのを出動と言いませんで、何を出動というのですか。
  208. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 出動につきましては、自衛隊法の七十六条ですか、その他に規定があります。この今の場合は、防衛庁設置法から申し上げますならば、第五条で、所掌事務の遂行に必要な教育訓練を行なう場合に、日本ばかりということに限定されておるものではございません。研究のために出ていくということは、これはあえて差しつかえない、こう考えております。
  209. 加瀬完

    ○加瀬完君 そうすると、端的に条件が許すならば、このたびのような招請には将来応じる場合もあり得ると解釈してよろしゅうございますか。
  210. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 防衛庁設置法とか自衛隊法の許す範囲内におきましては、条件が整っておるとか、また、その場合において、情勢、予算その他の関係もありまして、出る場合もあるし、行かない場合もあります。
  211. 加瀬完

    ○加瀬完君 総理にお尋ねいたしますが、出る場合があるとするならば、今度の場合は、少なくもSEATOに加盟しておる諸国が中心の演習であります。従いまして、たびたび総理が御説明なされまするような極東範囲ではありませんで、北緯二十一度三十分以南、フィリピンより南の地域における地域が、当然作戦の地域として予想されているわけであります。そうなって参りますれば、あなたの今まで御説明極東範囲というものは、また狂ってくると思いますが、その点はどのように御解釈なさるのですか。
  212. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 別段、訓練の目的で自衛隊がその訓練に参加するということは、安保条約にいう極東ということと実は関係ないことでございまして、問題は、そういうことに参加することが、自衛隊の訓練上望ましいことであるか、適当なことであるかどうかということを、各種の点から検討してきめるべき問題で、別にこれが、あるいはある場合にヨーロッパにおいて行なわれるとか、あるいはアメリカにおいて行なわれるから、訓練に対して、そこへ行って訓練することが望ましいという場合には、自衛隊が行く場合も考えられると思うのです。別に極東関係はないと思います。
  213. 加瀬完

    ○加瀬完君 それは演習を主催するものがアメリカで、演習の地域としておりますものはSEATOの地域であります。そういうところに参加をして演習をするならば、やがて作戦行動が行なわれますときに、当然これが、極東フィリピン以北というだけには限らない問題が起こってくる、そういう危険を侵してまでも、一体将来このような演習に参加をする意図があるのかどうか、なお、この種の演習は当然数多くなってくると思う。そのときに、正面から解釈した場合の、自衛隊法の出動からすれば当然禁じられておりますものを、研究とかいろいろのまた新解釈を下して、事実的に出動をいたしまして、それが将来の日本の義務となって新しく加わってくるという心配は全然ないのでございますか。これらの点についてお答えを願いたい。
  214. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 演習訓練のために自衛隊が行動するということは、私どもは自衛隊法にいう、いわゆる出動というのには当たらないわけでございまして、従って、その訓練、つまり演習をするのにもっとも利用価値のある、また、適当な方法において、それに参加していくというようなことは、実は自衛隊法にいっている出動という考え方に入らないというのが私ども考えでございます。
  215. 加瀬完

    ○加瀬完君 この問題は、非常に多くの疑問を持っている問題でございますが、他の委員会に譲りまして、次の質問に移ります。  大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、三十五年度の予算編成方針を見ますと、健全財政の堅持ということを建前にいたしまして、災害復旧と国土保全対策に最重点を置くとして、特に記の冒頭におきましては、「災害復旧に万全を期するとともに、国土保全対策について長期計画を樹立しその推進を図る。」そうしてその末尾には、「地方財政についても、国の財政と同一の基調によるものとする。」こう記されております。従いまして、この基本線は、このたびの補正予算についても、当然予算の性格として裏づけられていると解釈してよろしいのでございますか。
  216. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 補正第三号は、いわゆる財政基本政策ということとは別途に、所要な経費の補てんをしたのでございまして、災害復旧あるいはその他三十三年、三十四年に生じた支出の補てんの計画でございますから、これとは別にお考えおき願いたいと思います。
  217. 加瀬完

    ○加瀬完君 しかしながら、三十五年以降のいわゆる健全財政という建前あるいは国土保全の長期計画という建前から、これを全然かけ離れた災害復旧あるいは国土保全の予算というものが組まれておるというようには考えられない。そこで一応災害復旧であっても、それは三十五年度以降の長期にわたる国土保全計画となるべくつながりがあるような形において考えられてくるものだ、こう解釈をしておるのでありますが、それはそれでよろしいと思いますが、いかがですか。
  218. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。災害復旧費でございますから、いわゆる国土保全計画とは別の考え方でございます。御承知のように、三十四年に発生いたしました災害の復旧、この所要の事業費でございます。御承知のように、災害復旧については三・五・二の基準で重要、緊要災害復旧を完成する、三カ年でやるということを申しております。初年度の事業量が、当初二号補正のときよりもふえておる。そういう部分についての補正をいたしておるのであります。国土保全は性格的には支出される金ですね、金の性格的に申せば国土保全あるいは災害復旧、これと十分関連性がございますが、いわゆる国土保全は、国土保全計画として災害復旧とは別に計画を進めております。
  219. 加瀬完

    ○加瀬完君 私が今の点を伺いましたのは、一応政府説明では、この前の補正予算で災害の予算は大体事足りるという御説明であった。で、ここの、もう三月の年度末の近づいているときに、こういう新しい補正予算がまた出されて、そこでこれは財政インフレになるのではないかという懸念も一部には伝えられておる。そういうときでありますから、これは、長期計画とのつながりにおいて必要欠くべからざるものとして出したのかという点を伺いたかったのです。そこで、この補正予算は少なくも必要欠くべからざるものという前提であろうと思いますので、そこで今までの一体災害予算の進行状態は何%になっておるのか、それが一つ。それからこのたびまた新しく補正を出さなければならない理由は一体何か。それから新しく補正を出すについて当然出さなければならない必要の、昨日も資料要求いたしました各日の明細がわかっておるはずだ。承るところによりますと、非常に膨大なものだから、提出できないということでありますが、少なくもこの明細書の空欄になっておるところに対しまして一応の説明のつくくらいの明細内容を持っておるはずだと思う。それらについてもあわせて御説明を願いたいと思います。
  220. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。第一には、先ほど意見のございましたような考え方で補正を組んだと申しますのは、第二次補正を編成いたします際に、災害直後のことであるから、その後の報告その他によって災害額がふえるかもわからない。しかし、そういう場合には、一応予備費その他もございますから、一応まかなえるでしょう、こういうことを実は申したのであります。その後、現実に災害の被害額の報告がふえて参りました。そういう観点から、事業量をふやさなければならない。同時にまた、災害復旧の事業量そのものの進め方も初年度に相当私どもが予定したより以上に進捗するという見通しが立ちましたので、今回の予算を計上いたしたわけであります。そこで、これまでの予算の使用状況はどうかということでございますが、この詳細は事務当局から説明さしたいと思います。
  221. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 災害復旧費の二次補正に計上いたしました額は百七十八億でございます。そのうち現在までに実施計画を決定いたしまして進行いたしておりますものが百四十八億、現在詮議中のものが二十九億でございます。
  222. 加瀬完

    ○加瀬完君 そういたしますと、ここで新しく補正予算をお出しになられまして、年度末までにこれが消化できるかどうか。
  223. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 大体私どもこれは消化できると、かように実は考えております。同時に、繰り越し明許もございますが、繰り越しをいたします部分は、従来の経験から見ましてもきわめて小部分だ、かように考えております。
  224. 加瀬完

    ○加瀬完君 この各目明細の説明がないわけでございますが、これは自治庁長官に対するあとの質問でもまた触れますので、一応保留をいたしまして、そこでこの補正予算を組みますまでの作業といたしまして、具体的には財政規模そのものをふくらまさないという立場から、補正予算の圧縮あるいは整理節約というものが、相当これは大蔵省としては心がけられたと思うわけでございますが、この具体的な事例を……。
  225. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 補正二号を出しました際に詳細の節約額を説明いたしましたが、当時六十九億の節約をいたしたのでございます。また、三十五年度の予算編成に当たりましても、同じように節約を計画いたしまして、一般経費並びに補助金等の整理で四十四億を節約いたしたわけでございます。
  226. 加瀬完

    ○加瀬完君 これはこの補正予算のみにとどまりませんで、国土保全の長期計画の予算につながる問題でありますが、昨日同僚の成瀬委員質問に対しまして、総理は、国土保全計画と防衛力の漸増とを両立させていくと、こうお答えになられました。そこで総理に伺いたいのでありますが、新安保条約が事実活動をすることになりますと、防衛力増強というものがどうしても優先するのではないか、こういう懸念があるわけでございますが、昨日のお答えに対しまして、もう少し詳しい御説明をつけ加えていただきたいと存じます。
  227. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 防衛力の増強の問題につきましては、かねて基本方針として、国力、国情に応じて漸増するという基本方針がきまっております。安保条約が発効いたしましても、その基本方針に少しも変わりはないのであります。従って、これを重要視して他の重要政策をないがしろにするというようなことは日本の国情に合わないことはきわめて明瞭であります。また、そういうふうな国力以上の防衛力を増強するということは、これは基本方針に反しておるわけであります。従って、われわれはしばしばお答えを申しておるように、これらの問題は、重要政策としてやらなければならぬというようなものとの間には、適当なバランスをとって、健全財政の基礎を堅持しながら、それぞれ重要政策を行なっていくというこの基本方針については少しも変わらぬのでありまして、御指摘のように、将来この防衛関係費というものを優先して、そうして考えていくというようなことは私ども考えておりません。
  228. 加瀬完

    ○加瀬完君 三十五年度予算を見ますと、今、民生安定の費用あるいは防衛関係の費用のバランスをとるという御説明でありますが、私はバランスがとれておるとは思わない。これらの点を大蔵大臣にお答えをいただきたいのであります。たとえば、在日合衆国軍の交付金が百十一億、三十四年度から見れば浮いてきておる。これがそのまま防衛関係費に肩がわりをいたしております。こういう費用というものは、当然、これは民生安定の方に振り向けられてもいいものじゃないか。これを防衛費優先と言わなくて何と一体言うのですか。あるいはまた防衛庁関係の繰越額というのは毎年相当多い。今度の補正予算のような場合は、一体この操作はできないのか。あるいは問題になっておりまする国庫の債務負担行為にいたしましても、相当の初めの計画とズレがある。こういうものには一切手を触れないで、バランスをとると言っても私にはうなずけない。これらの点について御説明願いたい。
  229. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 防衛関係費というものは、御承知だと思いますが、防衛庁費と同時に防衛施設費と、その二つからできておるわけであります。ただいま御指摘になりました防衛分担金、これは実は防衛施設費の方に入っておるわけでありまして、この二つを一緒にいたしまして、防衛費が幾らかということを実は申しておるわけでございますが、安保条約を改定することによりまして、この負担金はなくなります。それで今まで防衛施設費関係で負担いたしておりましたものが減が立ち、それを防衛庁費の方で実は使ったわけであります。ところで、今後の防衛施設費の金額はどのくらい予定されるかということでありますが、おそらく今後は六十億程度がずっと続いて参るのではないか、かように実は考えております。でございますから、今回はこの防衛分担金として減額されたものを、防衛関係費でございますから、防衛庁費で実は使ったということでございます。これらを使いまして、さらに前年の防衛庁費と比べて見ました場合に、一体防衛庁関係の費用というものは幾らふえたか、かように考えてみますと、前年度に比べまして、節約の場合と比べてみてわずか十二億、わずかと申すのもなんですが十二億の増でございます。この点は他の事業費が相当ふえておる場合に、防衛関係費としてのふえ方が非常に少ない、こういう意味で私どもは一応バランスをとった、かように実は申しておるわけであります。ところで、この繰越費用があるとか、あるいは債務負担行為があるではないかというお話でございますが、この防衛庁関係の費用のうちには、御承知のように、継続費に計上されておるものが非常に多いのであります。たとえば船を作るとか、あるいは飛行機等にいたしましても、単年度で終了しないものがございます。そういう意味から債務負担行為が出たり、あるいは繰り越しが出たりいたすわけであります。三十三年度から三十四年度におきましての繰り越しは七十五億でございましたが、三十四年度はややこれよりも減少するのじゃないかという私どもの見込みであります。ただいま申し上げますように、継続費の関係等があるということであります。また非常に誤解を受けやすいのでありますが、いわゆる債務負担行為と申しますものは、この限度額の債務負担行為ができるというだけでありまして、これを予算化するということが、次の年次になりますと起こるわけであります。たとえばロッキードの場合なら二百機作ると申しますが、これは三十六年度以降四カ年の間にこれを予算化して参るわけであります。発注をいたします場合に、二百機というものを全体としての計画で一応いたしませんと、なかなか単価その他がきまらないというようなわけで、債務負担行為をやっておるわけであります。で、今後、先ほど総理が申しますように、防衛庁費あるいは防衛費自身がどういうようにふえていくかという、いわゆる増勢の分と、また、現在持っております勢力を維持していくという維持分と、この二つを予算編成の場合には当然考えていかなければならないのであります。防衛力の維持分と申しますと、たとえば、ことし三十五年度で施設隊をふやしていくとか、あるいは給与の中だるみを是正をするとか、これをいたしますと、三十五年度の予算では四カ月分、あるいは三カ月分というようなきわめて期間の短いので予算を編成しておりますが、これが三十六年度になりますと、維持分としてその支出が平年度化されるが、その増加がございますが、これはいわゆる増勢分としての考え方でなくて、維持分として当然増を見るということになるのではないかと思います。防衛力漸増という意味においての防衛力をふやしていく方、この方につきましては、予算編成にあたりまして、さらにその内容等を検討して参るということでございますから、誤解のないように願います。
  230. 加瀬完

    ○加瀬完君 防衛関係費を全部ひっくるめて、そこで過不足がないということは私は正しいことにはならないと思う。当然負担の軽減をされて浮いてくる額をどう一体使うかということの方がむしろ問題であって、それを肩がわりをして、これで防衛関係費をひっくるめてどうこうと言いましても、私は当たらないと思うわけであります。しかし、時間も急ぎますから、端的に次の点を伺います。競合しない、他の民政安定費用と防衛関係の費用は競合しないと言いますが、大づかみにいって防衛関係の費用あるいは地方交付税、公共事業の費用、文教関係の費用、社会保障の費用、こういう大つかみに分けて申しますと、社会的条件から文教関係の費用あるいは社会保障費というものを、今急に削減をするということは私は不可能だと思う。そうすると残った防衛費か地方交付税と公共事業費、この中でこれを共存させようとしましても、なかなか共存はむずかしくなってくるのではないか。たとえば公共事業を、今度の長期計画のように公共事業を中心に計画を進めて参りますと、地方負担分の、地方交付税というものもあわせて地方負担分というものをカバーしなければ、これは公共事業そのものもできなくなって参ります。そうすると地方交付税と公共事業を両方含めてふやしていった場合に、これは防衛関係の費用をまたふやしていくというわけには参らないでしょう。漸増というものを今までの考え方のように、防衛関係の費用というものを優先的にふやしていったら、一体三十五年度から始める、あるいはこの補正予算によって災害復旧、それがさらに長期的に国土保全という計画に移っていく、公共事業の関係といったものは一体どうなるか。これが競合をしない、両方とも総理がさっき御説明のように、バランスをとってやっていける方法というものは、一体どういう方法なのか承りたい。
  231. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 競合と言われると、どういう意味かちょっとわかりかねますが、もちろん歳入に、その特別な財源が防衛費関係にあるわけではございませんし、また文教なり、あるいは社会保障なり、あるいは公共事業として特別なその財源があるわけじゃございません。道路費だけがある、まあ競合しない財源を持っている、こういう状況であります。問題はこれらの事業の大体の予算額が一応均衡がとれるか、とれないかという点にまあ先ほど総理の話もあったと思いますし、私どもも今後あるものを特に優先する、ことにそれが防衛費であって、防衛費を優先して使ったという場合に、他の費目に対して非常な圧迫を加えるというようなことのないようにしようというのが私ども考え方であります。大体ことしといいますか、三十五年度の国民所得対防衛費関係あるいは国の教育費関係、社会保障費関係、あるいは公共事業費関係、それを一般会計とのまた関連において、どんな比重になっているかと一応御披露してみたいと思いますが、国民所得対防衛関係費は一・四八%でございます。国の教育費は国民所得に対しまして一・八六%、これは相当防衛関係費用より大きい。それから社会保障関係費は一・七四、これまた大きいわけであります。また公共事業関係費といたしましては二・七六%、まあ最も大きいのであります。それを今回の一般会計の予算の場合に、防衛関係費がどういうパーセンテージを占めておるかと申しますと、これは九・八四%、教育費関係は一二・四一%、それから社会保障関係は一一・五八%、また公共事業関係は一八・四一%というようなパーセンテージになっております。このパーセンテージをいつまでも続けていく、こういうことを申すわけではございませんが、三十五年度予算編成に際しましては、防衛費関係は、こういう意味で、過去のものからずっと比べてみますと、順次パーセンテージも減っておる。そういう意味では、圧縮の実績も実は出てきているのじゃないか。防衛費と比べてみると、他の費目に重点を置いたということがいえるのじゃないか、実はかように思っておるわけであります。特に公共事業費等については、非常にパーセンテージが伸びておりますのは、災害等の関係から、特に私どもが力を入れた、かような状況でございます。
  232. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと関連して。ただいま総理及び大蔵大臣から、防衛費が他の支出に対して優先しないという御答弁があったわけです。そこでお伺いしたいのですが、国庫債務負担行為というものはどういうものであるか、継続費というものはどういうものであるか、現在継続費について、防衛費以外に継続費というものはどういうものがありますか。それで今、継続費の中で防衛費が幾ら、他の継続費が幾ら、それから国庫債務負担行為というものは、三十五年度予算だけを見ましても九百十四億ですか、これが四年間にわたって、われわれの税金を四年間にわたって、これから次年度において予算化いたしますけれども、契約することによって、われわれの税金の使い方をそこで制約するのじゃないですか、優先的にですよ。ほかの費目において九百何十億、千億近いそういうものを国庫債務負担行為でやっているのがありますか。従って、この国庫債務負担行為の中で、防衛費と防衛費以外のものと、これを御報告していただきたい。ほとんど防衛費ではありませんか、大部分は。従って、国庫債務負担行為、継続費というものが大部分防衛費であるということは、われわれの税金をそれだけ先に使うということを制約し、しかも、国会の審議権や、税金の使い方をそこで長期にわたって制約するということなんです。制限するということです、他の費目に優先してです。これを見れば、明らかに防衛費が優先しているではありませんか。この点、どうして優先しないのですか。それを、継続費と国庫債務負担行為の内容を具体的に御説明することによって実証していただきたいと思います。
  233. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。継続費のありますのは、ダム特別会計に継続費がございます。これは、事業の性質上、継続費を必要とするものだと思います。また債務負担行為は、ほとんど各省軒並みにそれぞれある、かように考えております。この債務負担行為、もちろん防衛庁関係のように、非常に多額な債務負担行為というものを持っているところはもちろんございません。また、債務負担行為が非常に大きいと、ただいま言われるように、当然債務負担行為までは予算化できるだろう、こういうことになりますが、もちろん、この債務負担行為につきましても、さらに減額のできるものについては、予算化する場合に減額をいたしますし、また四カ年の間にこれをやるのでありまして、これを年度間に平均してやるわけではございません。で、この予算の編成にあたりまして、たとえば六百九十八億の債務負担行為、この航空機関係を四カ年に平均してやるというような予算は、まずできないと思います。ことに、実際の製作状況等を勘案してみますと、そういう点から、この債務負担行為を、それならば幾ら予算化するかということが一つの予算編成の場合に具体的の問題として考えなければならない。一般的には、木村さんの言われるように、債務負担行為を認めたのだから、その額だけは四カ年に支出するようになるだろう、こういうことが一応言われますが、私どもは、そういう場合に、他の方の社会保障や文教費に非常な悪影響があるような方法でこれを予算化するということは避けて参るということをいたしたいのでございます。  ただいま申しました、たとえば予算に占むる割合ですが、防衛費関係が九・八四、こういうことを申しましたが、これが過去三十年度以降、年次別にずっと見ますと、順次その率が実は下がっております。これはいいとか悪いとか、これは別なことでございますが、とにかく三十年度は一二・一一%、それが、一二・九二%、三十二年度は一二・六〇%、三十三年が一〇・九七、三十四年が一〇・八二、これは三十四年の補正で一〇・二三となり、それが今度九・八四、こういうように実はなっておるわけであります。とにかく、総予算に占むる比率が減っておるということは、これは他のなにからしまして、平均伸び率との関係考え方等もございますが、また、前年度総予算において占むる割合というようなものとを比べてみますと、三十五年度予算としては、防衛費関係は前年度よりも考え方が軽くなっている、こういうことが数字的には言えるじゃないか。問題は、先ほど御指摘になりましたように、債務負担行為というものがあるじゃないかということでありますが、これは、平均してこれを予算化するという考え方ではございません。将来になりまして、経済の伸びも考えられるでしょうし、歳入の状況もまた変わって参りますから、そういう場合に、これに応じたような方法で編成して参るということでございます。
  234. 小林英三

    委員長小林英三君) 簡単に願います。
  235. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 九百十四億という国庫債務負担行為は異例ですよ。いろいろ御答弁ありましたが、予算の中で九百十四億という、こんな、千億近い国庫債務負担行為、これを計上して国会に承認を求めるということは、何といったって、少なくとも——毎年予算化するのではないと言いましたが、これを減額できますと言いましたが、航空機の購入においてこれを減額できますか。また、継続費について、前に財政法においては継続費は認めませんでしたが、あれを改正して認めたときに、軍事費等にこれはなるべく使わぬと言ったでしょう。そうして今の継続費予算は、昔の継続費と違って、一応継続費を認めても、各年度ごとにこれを計上しなければならぬ、そういうことなんです。国庫債務負担行為の方へ逃げておると思う。国庫債務負担行為の方がやりいいからですよ。これは言うまでもなく、各省にみなあるのです。ですから、今全体の三十五年度ひっくるめた国庫債務負担行為の中で、防衛費の国庫債務負担行為は幾ら、その他が幾ら、全体の継続費の中で防衛費幾ら、その他幾ら、これを今御報告していただきますが、見ても明らかです。こんなに多額の継続費とか、あるいは防衛費を国庫債務負担行為で認めるということは、実質的には、だんだんまた臨軍費的な予算の性格になり、それでもう国会の審議権がそれだけ制約されてくるのですよ、将来にわたって。これで、民生安定費、文教予算その他に優先しないということがどうして言えるのですか。むしろ、優先させなければ、安保条約に即応する予算にならないから優先しているのじゃないですか。優先しないなんということは、どこを見たってそんなことは言えませんよ。千億近い債務負担行為を認めておる。   —————————————
  236. 小林英三

    委員長小林英三君) この際、委員の変更につきまして御報告いたします。  ただいま小林武治君が辞任せられ、その補欠として、岸田幸雄君が選任されました。   —————————————
  237. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) あまり議論するつもりはございませんが、今回の債務負担行為の大きいのはロッキードの二百機の問題でございます。このロッキードの二百機は、ただいま安保条約改正に関連があるんだろうと言われますが、数回にわたって御説明いたしておりますように、第一次防衛計画のこれは残でございます。もっと早目にきまるべき筋のものが、ようやく昨年末になってきまったという状況でございます。従いまして、この二百機の六百九十八億の債務負担行為を除きますと、他の債務負担行為は、例年防衛庁で計上されております債務負担額とほぼ均衡がとれるといいますか、あまり変化のないものでございます。むしろやや減っておると思いますが、さような状況でございます。この債務負担行為はなるほど大きくなり、それは結局しばられるということでありますが、問題は、ロッキードの二百機を承認されるかされないかということでこの問題はきまるわけでありまして、政府といたしましては、第一次防衛計画の一部として、このロッキードの戦闘機はぜひ採用したいということを数次にわたって御説明しておる通りでございます。私どもは、これを予算化する場合において、十分歳入なり他の事業費との間に均衡をとるように考慮して参るということを実はたびたび繰り返して申しておるわけでございます。  なお、先ほどお話のありました点は、事務当局から説明いたします。
  238. 石原周夫

    政府委員石原周夫君) 継続費は、総理府所管の防衛庁系統のものが二百二億五千六百万円であります。それに対しまして多目的ダムの分が三十七億六百万円、それから国庫債務負担行為の三十五年度におきまする新規の総額は千六十六億であります。そのうち防衛庁関係が九百十八億、そのうち今申し上げましたF104J六百九十八億を除きますと二百二十億、防衛庁以外が百四十八億という数字であります。
  239. 加瀬完

    ○加瀬完君 今大蔵大臣の御説明で、そういう見方も一面成り立つと思う。しかし、パーセンテージが下がったといいますけれども防衛庁予算は、三十一年に二百三十六億、三十二年に九十四億、三十三年に七十五億繰り越し額を残しております。これは、予算そのものが不要不当のものまでもふくらまして入っているという見方も成り立つ。それから、だんだん減ってきたとおっしゃいますけれども、それならば、新安保時代になりまして、将来とも防衛費が減るかというと、私は、減るという見通しは木村委員の御指摘のように出てこないと思う。そこで、将来にわたっての国の財政として、この防衛関係の費用と他の予算費目とがかち合ってくると申し上げたいのであります。具体的にこれは、このたびの災害復旧の予算なり、あるいは国土保全関係の公共事業費というものがふくらんできますときに、地方財政がどうなるかという点をお答えをいただきたいと思います。で、三十四年度の災害の復旧事業費補正増が二百三十億その他が計上されております。これで地方の負担分や災害関連事業の地方負担分というものは相当増加されると思う。そこで自治庁長官に、この地方負担分の内訳を明瞭にしていただきたい。
  240. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 三十四年度の分でございますね。公共事業費関係のあれが十二億だと思います。それで、交付税その他が今回ふえておりますのが約二十億近いものかと思っております。
  241. 加瀬完

    ○加瀬完君 私の伺っておりますのは、この補正予算関係に伴うところの復旧事業が進められるわけでございます。そこで、当然地方が負担しなければならない内訳をもっと明瞭にお示しをいただきたいということであります。
  242. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 第三次補正の関係から、全体で約十二億の地方負担になっておると承知いたしております。補助土木の関係で九億五千万円、伊勢湾高潮関係で一億七千万円、学校の関係で四千万余りというように承知いたしております。
  243. 加瀬完

    ○加瀬完君 従来補正予算がありますと、当然地方財政の額が動いてくるわけでございますから、財政計画そのものが修正をされたわけであります。このたびは、大きな変動がございましたけれども、財政計画そのものはさっぱりいじっておらない。これはどうしたわけですか。
  244. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 御承知のように、交付税も今度相当増額になっておりまするし、それから、先般の臨時国会で、特例法その他によりまして国庫補助も相当増額されておるのでありますから、大体その範囲でまかない得ると、かように考えております。
  245. 加瀬完

    ○加瀬完君 いや、まかなえるかまかなえないかを聞いておるのじゃない。地方の歳入歳出に大変動が起こったわけでありますから、当然これは、地方財政計画そのものを基本的に変えていって、その上に交付税なら交付税、特別交付税なら特別交付税をどの団体には幾らやらなければならないという計算が積まれてこなければうそだと思う。一体なぜ、こういう財政計画そのものに大変動があったのに、これをさっぱり修正しないで、どんぶり勘定の形でやるのか。要は、どんぶり勘定でないのはこういう計算があるからだということを出していただけばいいのです。
  246. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 地方財政計画は年度初めに一応の大きな筋道を立てて、まあ三十五年度につきましては、ただいまいろいろ御審議をこれから願っておるわけであります。そういう意味で、途中でいろいろ変動がありました際に、大体まかない得るという場合に、一々地方財政計画全体を修正したり、いろいろなことをやって御審議を願うというようなことはしていないのでありますけれども、財政計画の内容等を示せということでありましたならば、また地方財政計画三十四年度の内容を別にお示ししてもいいと思います。
  247. 加瀬完

    ○加瀬完君 それなら伺いますが、この第三号の補正による交付税の増額は大体二十億、それから今まで特交分——これ特交分に入ると思います。第二号補正で特交分等で配布されたものが大体七十数億、こういわれておるわけでございますが、財政計画をいじらないでやれると言うならば、この新しい特交分あるいは配布の現在手続中の特交分というのが、どういう目にどういう配分をされるかという明細は、これはなければならぬと思う。この各日別明細を御説明をいただきたい。
  248. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 特別交付税は、当初予定されておりまするのが百四十九億でございましたが、第二次補正で四十一億ふえまして、今回十九億ふえておるわけでございまするが、まあ全体で二百九億ということに相なっております。
  249. 加瀬完

    ○加瀬完君 私が承りたいのは、その金額はわかっているのです。それがどういう配分をされるかという明細の基礎がなければ、これはどんぶり勘定だと、世間でいわれておるような形にならざるを得ないと思う。そこで、これらの金額の配分される基礎はどういう数字なんだということを承りたいんです。
  250. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 公共事業費につきましては、災害査定額の二%を都道府県に、それから二%を市町村分ということになっております。それから、災害救助費関係は二割を配分する。あとは起債でまかなうことにいたしまして、それが約百九十五億だと思っております。
  251. 加瀬完

    ○加瀬完君 それは配分の基準でありまして、そういう配分には、もう一つここに条件というものがなければならないと思う。地方団体ではどれだけ歳入欠陥を生じたのか、あるいはどういう新規事業としての新しい必要を生じたのか、こういうものが積み上がってきて、だからそれで幾ら交付すれば足りるだろうとか足らないだろうとかという問題が起きてくると思う。大づかみにこちらできめたものが二%なり二〇%というもので出されておるが、それが、二%が正しいのか、二〇%が不足なのか、見当がつかない。だからこれは、特別交付税でやるべき性格のものではなくて、財政計画を変えて、普通の交付税の算定でやるようにならなければ、特交というものはどうしてもつかみ取りのような形にならざるを得ないという心配があるわけであります。ですから、当然特交をもらわなければならない団体がもらえなかったり、特交をもらわなくともやりくりのつくところに特交が行ったり、政治的ないろいろな力がその中に加わるということになっては、災害復旧が災害復旧にならない。国費の浪費である。そういうことがないようにするためには、明細な各自の基礎というものがあるならば示されたい。こういう要求であります。
  252. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) われわれのとっておりまする方法は、一応今申し上げたような工合にやりまして、足らざるところを起債で調整しておるわけでありますが、起債につきましては元利償還について三十五年度以降において基準財政需要額でそれを見ていこう。こういうことで全体の調整をはかっておるわけであります。
  253. 加瀬完

    ○加瀬完君 具体的な数字はあとでただしますが、昨日の当初に各日の明細を要求いたしましたのは、それだけしか大体見当がついておらないから、各地域からの、各地方団体からのほんとうの積み上げという基礎が非常に薄弱じゃないか、それがなくて一体交付税を配分するならば、それはどんぶり勘定にならざるを得ないと思ったから質問したわけです。  そこで、質問を展開いたしますが、今起債でまかなうと言いましたが、今度のこの補正案はさらに三十五年度予算につながって参りますけれども、今度の三十五年度の地方財政計画で、この災害復旧によるところの補正予算の延長あるいは新しい国土保全の長期計画という公平事業がふえて参って、三十五年度の財政計画では、はたしてこの問題は解決しておるかどうかという点について伺います。で、財政計画を見ますと、公共事業費の増が五百二十億、そうですね。普通の建設費の方が三百二億、それから単独事業の事業費が百三十二億、しかも、国土保全関係地方分担金として、直轄事業債を百六十億新しく加えておる。単独事業費は、普通建設費というものは、これは財政計画よりいつもはみ出すのが通例であります。こうなって参りますと、今までの例から見ると、どうしても財政計画より実際の地方の支出ははみ出さざるを得ないと思いますが、この点は大丈夫だという御見解でございますか。
  254. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 三十五年度の地方財政計画にありましては、大体国で計画しておりまする治山治水五カ年計画に基づいて、国の直轄事業、補助事業、それから公共災害復旧事業などにつきまして、その地方負担分を全額地方財政計画に一応計上いたしております。大体の数字といたしましては、国の直轄事業に伴うものの負担が九十七億、それから補助事業につきましては千十一億、災害復旧事業につきましては百三十七億を計上しております。それから、単独災害事業につきましても、災害復旧事業の単独分が二百二十九億、普通建設事業につきまして千百四十五億、こういうものを考えておる次第であります。
  255. 加瀬完

    ○加瀬完君 三十四年度と比べて、公共事業費関係で五百二十億の増になるわけですね。特にその中で、普通建設事業費が三百二億、それから単独事業が百三十二億、それに、今までの交付公債の肩がわりが百六十億、こういうようにかかえ込んでしまっては、三十六年度以降これは当然また大きな赤字の原因になる。自治庁も、こういう見解でありましたからこそ、今までは、直轄事業の費用は全額国庫負担あるいは納付金制度の合理化ということを言っている。それは一部できたけれども、まだできない。こうなってくれば、こういうように公共事業費をふくらますと、三十四年度でも消化しきれなかったものをさらにふくらましては、結局地方が背負い込むことにならないか。これを心配している。この点……。
  256. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) お説のように、われわれも、国の直轄事業の地方負担分については、これは、直轄事業については全部国が負担するということを一時主張したのでありますが、そうすると、また反面、補助事業のようなものは、これはまた地方でやるべきじゃないか、こういうことがあるのでありまして、簡単に割り切れない形になりまして、こういう格好になっておるわけであります。お説のように、地方負担分も相当ふえるのでありまするが、また一方には、税の増あるいは交付税の増、特例法によりまして国庫負担の増等もございまするので、三十五年度の地方財政計画としては、一応のめどを立てているつもりでございます。
  257. 加瀬完

    ○加瀬完君 ここに私は名古屋市の数字を持っているわけでございますが、たとえば災害関係で、住宅関係では、既設公営住宅の滅失分は一応の対象になりましたけれども、損傷分の九千八百十六戸というものは、これは査定からはずれております。しかしながら、損傷されているわけでございますから、これは修理をせざるを得ません。そこで、大体一億円余りというものが地方の純然たる持ち出し分になります。それから保護施設、児童福祉施設などについても、付属建物は、これは全然見ておりません。衛生関係にいたしましても、たとえば、災害のために清掃のために車両を購入いたしましても、これが七千五百五万という大体の自治体側の算定でございますが、これに対しまして査定額は、五百七十七万というような査定、あるいは査定からはずされたものを積み上げて参りますと、これは公共事業を負担する余裕はなくなってくるわけです。単独事業の方に振り向ける財源にもう地方は枯渇してしまう。昨年、一昨年と、一つも変りがございません。こういう問題を今度の災害予算では、あるいは来年度の、三十五年度の地方財政計画ではどのように処理いたしてありますか。
  258. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 名古屋市の具体的例をいろいろあげられたのでありまするが、大体の考え方といたしましては、単独債というものもある程度認めていく、それから歳入欠陥債、また特別交付金、こういうものでいろいろの措置をとっていきたい、かように考えております。
  259. 加瀬完

    ○加瀬完君 名古屋のような富裕団体の場合は起債等で将来に延ばしていってもある程度消化ができるかもしれませんが、起債もやれないような町村の団体などにおきましては、今のような方法ではこの問題の解決はつかないと思うのです。そこで、どうしても災害地域等は、あなたの方では住民税のはね返り減税の分を臨時地方特別交付金で三十五年度から三十億をまかなうようにしたといいますけれども、これは住民税の減税というものはできなくなってくる、どうしても住民税はオプション・ツー、オプション・スリーというただし書きを使って、とれるだけとるという形をとらなければやりくりがつかなくなる、確実に住民税を、現状でもあるオプション・ツー、オプション・スリーのよな不均衡の一部課税というものを三十五年度で災害地においても是正できるというお見込みがございますか。
  260. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 住民税の減税をそのまま計算いたしましたならば、これは百二十二億になります。しかし富裕団体にまで減税分の補てんをすることもないでありましょうから、いわゆる交付団体だけを拾い上げてみまするというと、たしか約六十七億くらいだったと思います。しかしながら、最初から申し上げておりまするように、明年は地方税の自然増も相当見込まれまするし、交付税もふえておることでありまするから、地方側でもある程度負担してもらおう、また今回国税三税の〇・三に相当する三十億というものを特別地方交付金として計上いたしまして、両々相待ってこの住民税の減税をぜひ行ないたい、別途地方税法の一部改正案も提案いたしまして御審議を願っておるわけでありまして、私といたしましては十分この減税ができる、また協力をぜひしてもらわなければならぬ、かように考えております。
  261. 加瀬完

    ○加瀬完君 これは、こういう災害などのなかったときでも、自治庁はオプション・ツーやオプション・スリーの無理を解消するというので、標準税率というのも定めました。しかしながら、住民税の標準税率を適用しておる団体というのは、初め自治庁や一般が期待した、多くはない。多くないというのは、標準税率を使いたくてもオプション・ツーをかけざるを得ないような財政状態なんです。今の御説明でも、最小に見ても六十億の不足を、三十億をカバーしてもあとの三十億はどうなるか。しかしながら、税の自然増が非常に多いという御説明ですけれども、十一月に自治庁の発表をいたしましたのは、それほど税の自然増はないという御発表をしておる。特にその税の自然増というものは、これは富裕府県などには非常に多いけれども、今度はそうでないところの交付団体の府県などは、自然増が不交付団体のような比率では上がってこない。どうしてもそこに住民税の減税を解決できない要因というものはまだそのまま残っておる。まして災害地においてこれがひどくなると思います。一方においては個人的支出が非常に多い、その上に税金は非常にかけられる、こういうことでは、災害地の、特に住民税は非常に問題を残すと思う。この点を、そうでないという点も明らかにしていただきたい。
  262. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 今回の地方特別交付金のようなものも、やはり特別交付税と大体一緒にいたしまして、総合的に各地方団体の財政状況を勘案して配分をしていきたいと、かように考えておりますので、税の伸び等につきましても、伸びるために交付税の配分を減らしていっていい団体も相当出てくると思いますので、まあ大体、全体の地方財政計画といたしましては、そのワク内で、十分ではありませんけれども、措置し得るものと私は考えておるわけであります。
  263. 加瀬完

    ○加瀬完君 それでは具体的な問題に返りまして、災害地において、たとえば、今までは法外負担というような意味で、特交や、一般の普通交付税の算定の中に数えられなかった見舞金とか弔慰金とか輸送費とか出動費、あるいは毛布、寝具、日用品、学用品の給付、こういったものも、このたびの災害復旧の予算の中では、特別交付税の算定の中に入れていくというお考えですか。
  264. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 今回の特別交付税の配分にあたりましては、できる限り、地方の事情を十分承りまして、そういうものも入れ得るだけ入れていきたいと、かように考えております。
  265. 加瀬完

    ○加瀬完君 それで結局、三十四年度では決済のつかない赤字額が三十五年度に繰り越された場合は、三十五年度の特別交付税でも、これらの点がある程度考慮されるかどうか。
  266. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 大体、ことしの配分でまかなえ得ると思うのでありまするが、御指摘のように、もし残ったというような場合につきましては、それはもちろん三十五年度でもある程度のことは考えていきたいと、かように思います。
  267. 加瀬完

    ○加瀬完君 これは石原大臣だけでなくて、建設大臣、農林大臣がおりませんでしたら総理でもけっこうでございますが、大蔵大臣をも含めてお答えをいただきたいのであります。  公共事業費が三十四年度の地方財政計画の中でも非常に幅をとりました、これは災害等がありまして、ある程度それが消化されたとはいうものの、公共事業費の伸びというものは地方財政を破綻するものじゃないかという、非常な心配がもたらされたわけです。特に今の公共事業というのは、建設省関係は、建設省のワクの中でずっと地方までおりてくる、農林省関係は農林省のワクでぐっとおりてくる。しかしながら、これの負担をし、あるいはこの付帯工事をしなければならない地方公共団体。国の計画で、地方は自分たちの税収入を一ぱいにかけてしまって、自分たち自体の、住民の要求する必要な事業というものはできかねるという状態であります。この点は自治庁長官お認めになるか。そこで、次に総理やその他の関係大臣に伺いたいのは、こういう形は、各国それぞれを見てもあまりないと思います。どこかにコントロールする機関というものはみんな置いておる。イギリスなんかにおいても当然あります。たとえば、農林省関係、具体的に例を出すならば、あるいはまた建設省関係、こういうものを、自治庁関係のようなところでちゃんとコントロールしている。こういう機関がなければ、私は国土保全計画といったって、それは地方に負担をしょわせるだけで、国の直轄事業はふえるけれども、その付帯的な事業はできないから、そこからまた災害がやってくるという繰り返しをせざるを得ないのです。そこで何か、地方と国が一体になって国土の長期計画に喜んで参画できるような調整機関を設ける考えというものは、総理においておありになるかどうか、最後にこれを承ります。
  268. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど来、御質問のありましたように、公共事業を行なっていくと、国の予算がその方面に多く計上されるというと、実際の各地方団体におきましても、それぞれこれを施行していく上において負担分があるわけでありますから、地方財政にも影響をもってくる。そこでわれわれが公共事業をやっていく、もちろん災害のごときある事態が起こってきた場合においては、これに対する復旧というものは、何にもまして緊急を要するものでありますから、これに対する措置、国及び地方庁が一緒になって、地方公共団体が一緒になってやる。もし地方公共団体が負担能力がない、そのために事業がやれないというような場合におきましては、もちろん、国において事業ができるように考えることは当然であると思います。今御指摘のありましたように、一般的に各省の、建設関係、農林関係その他のものが公共団体へおりていく場合において、その間の調整をどういうふうにとっていくか。何か調整の機構を設ける必要があるのじゃないかというようなお話であります。これが調整をとらなければならぬことは、御指摘のように、私必要があると思います。そのために特別の機構を、イギリス等の云々というお話もありましたが、各国の例も十分一つ調べてみる必要があると思います。が、一応とにかく今の、十分ではありませんけれども、経済企画庁におきまして、そういうものの、国力に応じて、国それから地方公共団体の間のバランスをとった計画を立てるようには努めておるのでありますが、十分な機能が発揮しているかどうかにつきましては、なお検討を要する。十分一つ調整をとるように考えて参りたいと思いますが、特にどういう機構にしたらよいかということにつきましては、なお検討をいたしてみたいと思います。
  269. 加瀬完

    ○加瀬完君 経済企画庁とおっしゃいますがね、公共事業関係のコントロールを、経済企画庁では完全にはとてもできませんよ。やっぱり自治庁か何かに計画局なりあるいは企画局なりというものを設けて、そこで各省の連絡、地方団体との連絡というようなコントロールの機関を、これは設けるような方向にせざるを得ないと思うのであります。そういう点で、もう少し積極的にこの問題を考えていただけるかどうかということを最後にまたお答えいただきます。
  270. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今お答申し上げましたように、調整をとることの必要性は認めておりますから、現在の機構において十分でないならば、適当な方法を十分検討してみたいと思います。   —————————————
  271. 永岡光治

    ○永岡光治君 私は、ILO条約批准促進を中心にいたしまして、岸総理以下関係の各大臣に質問を申し上げたいと思うのでありますが、その前に、同僚議員の小林君から先ほど外務大臣質問いたしました中で、非常に疑惑を呼ぶような答弁がありましたので、この際重ねてその点について明確にいたしたいと思うわけでありますが、それは、領空の問題について質問がかわされた際に、領空の上を通っても爆撃をしなければそれは侵犯にならないのだと、つまり領海といえども攻撃しなければかまわないのだ、そういう意味答弁があったのですが、それは岸総理としては、外務大臣答弁をその通りだと、こういうようにお考えになっているのかどうか、所見をお伺いしたいのです。
  272. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 領空や領海の侵犯という問題と、そのことが直ちにその国の領域に対して武力攻撃を加えたものであるかどうかということは、これは問題はおのずから別に考えなければならぬことだと思います。先ほど小林委員の御質問は、そういう領空侵犯があれば直ちに武力侵略があったとして、何か安保条約のなにが発動するようなことを前提質問されたように私は記憶いたしております。そういう意味において領空侵犯ということと、そこで領域に対して武力攻撃が加えられたということとは別に考えるべきである、かようにお答えをしたつもりでございます。
  273. 永岡光治

    ○永岡光治君 その点は少し外務大臣答弁とは違っているような印象を受けるわけですが、外務大臣は、領空を、これを通っても領空侵犯にならないと、こういうように聞いたわけですが、もしあなたの意見がそうでないというならば、これは外務大臣意見が違いますので、政府見解統一して答弁をいただきたいと思います。
  274. 岸信介

    国務大臣岸信介君) さっきの質疑応答の際に外務大臣がお答えしたことと私の了解では、理解したところによれば、今私が申し上げたような趣旨にお答えをしておると思います。
  275. 永岡光治

    ○永岡光治君 これはしかし、私は了解しないのです。その岸総理答弁外務大臣答弁は明らかに食い違っております。しかし、まあ議事進行に協力する意味で、特に協力する意味で、私はこの席では一応この質問は追及することを他に譲りたいと思いますが、ぜひそういう誤解を生まないように、明確に政府統一見解を一つ述べていただきたいと思います。  そこでお尋ねいたしたいのでありますが、昨年の十二月、機会がございましてゼネバにあるILOの本部を伺う機会に私恵まれたのであります。(「郵政大臣どこへ行った」「大事な質問だ、郵政大臣がいなければだめですよ、永岡君」と呼ぶ者あり)
  276. 小林英三

    委員長小林英三君) います、ちょっと出ているので……。
  277. 永岡光治

    ○永岡光治君 ちょっとそれじゃ休憩します。
  278. 小林英三

    委員長小林英三君) 永岡君、参りました。
  279. 永岡光治

    ○永岡光治君 質問を続けます。  ILOの事務局の本部を尋ねる機会に恵まれたのであります。その際に、いろいろ向こうの——事務総長はおいでになりませんでした。ラオという次長でございました。そのほか関係ある責任者の方も集まっていろいろ話が出たわけで、たまたま全逓を中心にする昨年の、例の依然として団体交渉ができていないという状況から、その話からずっと発展して参ったわけでありますが、まだ日本政府はそのことについてごたごた言っておるのだろうか——もとよりこれは内政に干渉しようという気持はないけれども——実に日本政府というのは物わかりの悪い政府だなということをしきりに言っておりましたが、私も、やっぱりこれは国際的に日本は大へんな信用を落としておるということを残念に思って実は帰ったわけでありますが、帰ったならばさっそく一つその問題を、岸総理にも会ってよく話をして、すみやかに批准をするようにという進言もいたしたいと思っておったわけでありますが、ちょうど、私帰りましたのは暮れの迫ったときでございましたが、幸いにいたしまして、全逓との間の争議の問題も、紛争の問題も、藤林さんのあっせんによりまして円満に団体交渉ができておるという状況で、ほっといたしたわけでありますが、その後、この問題について、政府の方でもいろいろ検討されたと思うのであります。数日前だと思いますが、閣議でしたかありまして、この八十七号条約の批准の問題については早急にこれを批准をしようという方針が決定されて、その準備を進めておる、こういう記事があり、岸総理の談話でしたか、あるいは見解でしたか、よくわかりませんでしたが、岸総理が、早くこれを批准しろと、労働法も改正しろと、こういう意味の発言があったように記事では承知をいたしておるわけでありますが、今岸総理としてはどういう見解で、そうしてどのような準備を進めておるのか、この予算委員会の公の席上において御答弁をいただきたいと思うわけです。
  280. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ILO条約の批准の問題に関しましては、昨年の二月に、閣議におきまして、労働問題懇談会の答申に基づいて、その趣旨を尊重して準備を整えて批准をするということをきめたわけであります。自来、法制上の準備もいろいろといたしておりますが、同時に、今永岡委員お話しにありました全逓の、この問題の正常化ということが今問題になっておりましたが、これも年末に解決をいたしましたので、各法制についての準備の進行状況をさらに促進し、できるだけ早い機会に準備を整えて、この通常国会に批准を求めるように関係各局を督励いたしたわけでございまして、それぞれ関係の法規におきましては、関係省の間において鋭意意見の調整や準備を進めておるという状況でございます。
  281. 永岡光治

    ○永岡光治君 そういたしますと、これは労働大臣も関連をして御答弁をいただきたいと思いますが、準備の進捗状況ですが、いつごろ国会に提案をされるのか、その点一つ。
  282. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 八十七号は御承知のごとく非常に影響するところ広範囲でございます。従って国内法を至急に準備をいたしまして、国内法の整備後すみやかに批准の手続をとりたい、こう考えております。
  283. 永岡光治

    ○永岡光治君 私の質問申し上げているのは時期ですね、この通常国会に提案されるということは、もう答弁ではっきりしておるわけですが、いつ、たとえば今月末とか三月の上旬が目途とか、いろいろその作業の目標があろうかと思いますが、その辺のところを、まあ具体的に実は知りたいわけなのです。
  284. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 先ほど総理から御答弁になりましたように、この国会に批准したいという目途で、至急国内法の整備をするということがこの前の閣議の予解でございます。従って、早く国内法が整備できればもちろん早く批准いたします。それじゃわからないじゃないかという御議論であります。ただいま調整中でございますので、私が一存で申し上げることはできません。各省に総理からも督励いたしております。私も各省に連絡いたしております。各省さえまとまればおのずから時期というものは明確になってくるだろうと思います。こういうように考えております。
  285. 永岡光治

    ○永岡光治君 岸総理にお尋ねいたすわけでございますが、どうも今の労働大臣の答ですと、この国会に間に合わぬかもしれないという印象にもとれるわけです。そういう考えなのですか、政府は。
  286. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど申し上げましたように、この準備が、私から見るというと、どうもいろいろなことがおくれているように考えます。非常に残念に思って、実は各省の関係を督励いたしたわけでございます。最初考えましたよりも、なお広範囲に各種の法規関係があるようでございまして、まだ各省間の意見が、完全に意見が一致いたしておりません。で、私は政府の機関をそれぞれ動かしまして、できるだけ早くこの意見の調整をするように努力をいたしておりますし、なおいたして、できるだけ早く提案するように進めたい、かように考えておるわけであります。ただ、いつを目途にそれをやっておる、何月、どの辺の時期を見当にやっておるかということにつきましては、まだそれを申し上げるほどに至っておらない、私はこの国会に提案するということを目途にやれということは、大体御審議の期間もありますから、四月の初めくらいまでには出さなければなるまいと思います。実際上の問題として、その辺のことを目途として督励をいたしておるのであります。御了承を願います。
  287. 永岡光治

    ○永岡光治君 大体四月上旬を目途に出さなければ審議の関係で無理だろうということで、そういう意味で督励をしておるということでありますが、御承知の通り、ILOの総会も六月に開かれまして、その前にはこの問題に関係のある結社の自由委員会が開かれることは御承知の通りだと思います。なお来月は理事会も開かれる予定でありますので。やはり私は、この前向こうに参りまして、印象を受けたその気持からいたしましても、ここまで日本も誠意を持っておるのだということが、やはり国際舞台に反映することが最も望ましいと思いますので、四月上旬とは言いながらなお準備を進めていただいて、三月中にも提案できるように特に一つお願いを申し上げたいと思うのであります。  そこで、ただいま労働大臣の答弁の中にありました、いろいろ及ぼすところが大きいということでございましたが、その内容について若干お尋ねしたいわけです。具体的にはどうということはありませんですが、四条三項の削除だけでこの批准には事足りると考えておるのでありますが、何か特に、広範と言いますと非常に広いこと考えておいでになるのでしょうか、批准について。そういうものを調整しなければ批准ができないと、こういう事情が特にあるのでしょうか。それをお尋ねしたいと思います。
  288. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 公労法の四条三項、地公労法の五条三項、さらに公労法の四条一項というものも問題になって参ります。と同時に、これだけで法律的にいいか、いけないというのは、批准だけについて私はいけないという意味ではございません。しかし八十七号の精神とか、及ぼす影響ということを考えますと、国家公務員及び地方公務員に影響があることは事実でございます。ただ、影響があるから法律を改正するかしないかということは、またこれは別個の問題になると思います。その影響の度合いというものと、法律を改正するせぬというのはこれはまた別個のものでございます。従って公務員に影響することは事実でございます。ただ法律を改正しなければならないかどうかということは、これまた議論の分かれるところでございます。従って、そういう意味で及ぼす影響が大きい、直ちに私は法律改正と言っているわけではございません。法律改正は地公労法、公労法の改正で批准ができるかといえば私はできると思っております。しかしこの八十七号の精神の及ぼす影響は、地方公務員、国家公務員に影響のあることは事実であります。従ってこれに対して法律を改正するかしないか、するならどうするかということが問題になって参ります。まだそこまでは各省の意見が、非常に所管所管によって各省にこの問題は影響がございますから、少なくとも十何省の御意向というものは、なかなか実は議論の多いところでございます。従って、その調整に非常に苦労しているわけでございます。御了承いただきたいと思います。
  289. 永岡光治

    ○永岡光治君 御苦心のほどはよくわかるわけでありますが、御答弁の中にもございましたように、これは直接労働法を改正するかしないかという問題は、批准とは別個の問題であるという御答弁であります。しかりとするならばなおさらのこと、直接批准に必要な条項の改正だけにとどめて批准をして、あとこれを改正するかどうかというのは、この国会に間に合えば改正するものはするでありましょうし、するかしないかという問題は検討されておるという話でありますから、これはどなたが聞いても批准するしないということとは直接の関係はないと思いますが、その改正をしてもしなくても批准することはするだろうと思うのでありますが、絶対条件であれば、批准することに、改正しなければならぬ絶対条件のものがあればそのものだけにとどめておいて、これはその後もできるのじゃないだろうかという気も実はするわけでありますが、しかるにいろいろ検討されておる、調整しているということでありますが、それは批准とは直接関係ないとおっしゃっているわけですから、それもゆっくり一つ検討していただいていいじゃないだろうか、こう考えるわけですが。
  290. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) その影響という問題は、法律を改正しなければならない影響もございましょう、改正しなくてもいい影響もございましょう。そこが実は今問題のところなんです。従って私がこれを改正という、方向というものをきめてやりませんと、国内法の整備の上でございますから、国内法の整備がつかない。整備というのは、法律上における整備もあれば、思想上における整備もあれば、労政上における整備も影響がございます。私はそれを一々広範囲にただ考えているわけではございません。各省々々の影響ということは、これは甚大なものでございますから、そこで各省の意見というものの早急に連絡をしながら調整を願いたい。そういうものも全部調整しなければ、やはり影響はあとに残しておくというわけにはこれは参りません。特に八十七号は御承知のごとく非常なこれは広範囲な、しかも労働問題として基本的な問題であります。あとに問題を残すようなことはやはりしなくて、一応の調整はしておかなくてはいけないという意味でございますから、どうぞその辺はそういう意味で御了解をいただきたいと存じます。
  291. 永岡光治

    ○永岡光治君 どうも私は理解に苦しむのですが、批准をすることに絶対必要な条項について検討するということ、これは当然だと思いますが、その及ぼす影響があるからとして、それがまとまるまで批准はできないのだということに裏を返せばなるわけですが、それでは本末転倒じゃないだろうか。批准はしておってもいいんですから、どう改正しようとかまわないわけです。批准するという前提のある限りは。事前に特に調整しておかなければならぬという、その必然性、問題があるとすれば、たとえばでけっこうですが、どういう問題があるのでありましょう。
  292. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) これは国家公務員法に八十七号は適用される。これは理論的に適用に私はなると思います。適用は国家公務員、九十八号の団体交渉権においてはまた別格扱いにしております。従ってILOの中において、国家公務員を別格扱いにしている条項もあるわけです。八十七号はそれで特に除外例がないから適用がある。基本的には適用がある、こういう解釈で労懇では御答申になっていると思います。しかし九十八号条約との関連は、これは明らかに国家公務員は除外されております。そこにやはりいろいろ国内法及びILOにおいてもこれは議論の多いところ、労働問題懇談会においても最後までこの問題は解決がついておらない問題であります。そういう問題を八十七号の国内法整備のときにはやはり方向をきめておかなければ、法律改正しなくてもよろしいというならよろしいという方向にきめなければいけない、改正するなら改正するという方向にきめておかなければ整備になりません。あとで問題を残すようなことは、国際的に私はやるべきじゃないという意味で法律改正する、せぬとかと同時に、方向をきめておかなければならないというのが整備の大事なものじゃなかろうか。あとでいいんじゃないか、とにかくこれだけやれというのは、八十七号条約はあまり世間体に申しましても、国際的に申しましてもそう軽々にやるわけには私は参らない、国際信用を得るためには、やる以上は日本は確固たる、縦からも横からも間違いない、八十七号の精神を貫ぬくということがそれは当然のことじゃなかろうか。特に永岡委員はILOに行ってこられて、なお私の言葉を痛切にお感じいただけると思います。ILOにおいて有益な参考になる御意見を伺いました。また永岡委員はかつての経験から非常に尊重される……、(笑声)私は影響を及ぼすであろうと、こう考えております。
  293. 永岡光治

    ○永岡光治君 そういたしますと、ただいまの御答弁を私なりに解釈いたしますと、一応その方向はきまっている、その基礎の上にやりたいという気持ちで検討しておる、こういうことでございますが、及ぼすところの意見調整というものは、方向と申しましょうか、そういうことであって、具体的に法律をどうするという、そういう問題まではこの際触れるというところまで考えていないわけですが、方向だけをきめておいて、労働法の改正あるいは公務員法の問題にも触れるかもしれませんが、そういう法律の改正がかりに必要だと、方向がかりにきまったといたしましょうか、その際にはまたあらためて検討して、具体的の法律は別個の問題として出そう、こういうことですか。それとも同時にこれも出していこうと、こういう考えでしょうか。
  294. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 方向がきまればおのずから問題点というものは、それは明らかになって参ります。従って、方向がきまって、問題点をそれから探すという問題じゃこれはございません。方向がきまれば、おのずから改正するとすれば改正、どの条項、何条かということは、これはおのずから研究を常々各省でやっていることなんです。ただその条項が各省においてはおのおの自分の労務管理上において、過去の経験においてこちらがいいのだという意見もあれば、将来の問題としてこちらがいいのだという意見も各省にあるわけです。従ってその意見が一致すれば、おのずから条文はどうだということは、これは各省御研究になっていらっしゃいます。労働省を中心にそれを研究しております。ただ、今のままの方がいいのだという労務管理上の経験はもっておるわけであります。これではいけないのだという各省の労務管理上の経験もある。そこに私たち議論が実は集中するわけであります。各省の意見は全部まだ出そろっておりません。
  295. 永岡光治

    ○永岡光治君 それは早く一つ各省の意見をまとめてもらわなければいけないと思うのですが、そのまとまった意見は、同時に、批准及びその批准の前提となる労働法の改正とあわせて、一緒に関連の法律案として出す、こういう意味でしょうか。
  296. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 関連において、その法律改正が必要ならば、もちろんその手続きというものはすみやかに私はやりたい、こう考えております。
  297. 永岡光治

    ○永岡光治君 時間が大へん過ぎて恐縮ですが、そういうことになると、私は繰り返して申し上げるわけですが、その検討はけっこうでありますけれども、とにかく六月という総会を控えているわけですから、何としても時期はつまっておりますから、この総会までにまた間に合わぬというような、そういうぶざまなことは国際的な視野に立ちましても、これはとるべきでないというのが私の信念です。そういう意味で、かりに意見の調整が若干残ったにいたしましても、それはそれとして、とにかく批准だけ、及び批准に絶対必要な条項の改正というものだけは、実質的にはやっていただきたいと思うわけですから、そういうことに一つ努力をいただきたいと思います。総理どうでございましょうか。私の要望について……。    〔委員長退席、理事大谷藤之助君着席〕
  298. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど来、労働大臣も申しておるように、また私が関係各省を督励しておる趣旨も、このILO八十七号条約を批准する。それにおいて絶対に必要な条項の法律等の改正はもちろんのこと、また不可分の重要性をもっておるものは、同時に御審議を願うということも当然のことであろうと思いますが、いずれにしても、私としては、政府の基本方針によりまして批准の手続きを早くとるように、この上とも催促をいたします。ただ、必要な最小限度のものだけ出して、あとは他日に残しておけという意味には政府としては考えておらないのであります。従って、今申しましたような趣旨で、この上とも督励をいたすつもりでございます。
  299. 鈴木強

    鈴木強君 関連。労働大臣にお尋ねしたいのですが、国内法の整備を急がれているようですが、なかなか調整がつかぬ。こういうお話です。で、今までの国会の審議の中で、ずっと労働大臣のお考えを承ってきたのでありますが、少なくとも、そういった国内法の整備については、かなり前からILO批准という前提に立って御研究なさっておったように私は思うのですが、にもかかわらず、今日まだ延び延びになっておる、岸総理のお話では、大体四月の上旬というお話が承れたので、一応のめどはついたと思いますが、今調整に苦慮されておるというのですが、具体的に今ここでおっしゃっているかどうかわかりませんが、ちょっと関連的なことですから、どことどこが今非常に問題になっているのか、そういう問題点をここで聞かしていただくわけにはいきませんか。    〔理事大谷藤之助君退席、委員長着席〕
  300. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 昨年の二月閣議決定をいたしましたので、もちろん政府としては、ことに主管の労働省としては、各般の実は準備と法制上の研究をいたして参りました。いかにせん、御承知のごとく、全逓問題が昨年の暮にやっと正常化いたしました。もちろん労働省は、こういうことは計算に入れながら、次は法律だということで準備して参りましたが、各省にしてみますと、やはり全逓が正常化していないのだから、ILOはまだ先なんだという印象をもったことは、関係省としては当然なことだと思います。主管省の労働省はやはり全逓の正常化の後には、早く整備をしなければいけないという、今までの計画を立てたことも事実であります。各省にしてみれば、ある程度全逓というものがあったから、まだ先なんだという意味もあったかもしれません。各省は各省の仕事があります、そういう意味で、やはり昨年の暮に、全逓の正常化のあとですから、さあいよいよこれから本気にならなければならないのだ、という時間的な物理的な条件が出てきました。従って、一月以来、ずっと私の方は週に二回各省の連絡会議をやっております。やはりいろいろな意見が出ておりましてまだそこまで進んでおりません。しかし、十二日に総理から督促をしていただきましたから、十二日以後は各省とも本気で、もっと急がなければいけないという意味で、この十日間ばかりは相当に実は進んでおるやに聞いております。一々内容までは聞いておりません。
  301. 鈴木強

    鈴木強君 一番問題点は……。
  302. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 一番問題点は国家公務員、地方公務員に及ぼす影響について、法律改正をする必要があるかなきやというところが、私は一番問題点ではなかろうか、こう考えております。
  303. 永岡光治

    ○永岡光治君 とにかく批准ができないのは、全逓が正常な団体交渉ができていないということは、口をすっぱく政府答弁してきたのですが、それが解決してみれば、各省がなかなかうまくいかんということで、どうも私としては、言いがかりをつけられているような気がいたしてしょうがないのですが、どうもそういうことのないように早急に批准をし、最小限度必要があるとすれば私は四条三項を削除すれば足りると思いますけれども、そういうところで、どうしてもまとまらなければ延ばすということでなしに、若干のものはあとに残しても、早急にこれは批准すると、いう方向でやってもらいたいと思うのですが。  さらに百五号条約です、百五号条約の批准の問題についてはどういうふうに進んでおるか、これも一つお話を承りたいと思うのですが、これも伺うの事務局に参りました際には、日本政府の方から照会がきておるという話もちょっと出ておりましたが、どういう照会ですか、何か私の聞くところでは、強制労働というものについての解釈でしょうか、内容はどういうものかという話でありましたが、その程度の照会なのか、そしてまたその回答の結果どういうふうに進んでおるのか、これをまたいつ批准をするというのか、この前の臨時国会では、これも批准をしますから、早急にそういう準備を進めておりますという労働大臣の答弁であったはずでありますが、依然としてこれをまだはっきりした見通しは承っておりませんが、どうなっておいでになるか、それを一つお答えをしていただきたいと思うのです。
  304. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 百五号の強制労働につきましては、先国会でも御答弁いたしましたように、強制労働の定義というものが各国で、ILOでもいまだに定義をつけてもらっておりません。強制労働とはいかなるものかという定義は、ILOの中においても議論がございます。たまたま日本政府からもこの定義についての照会をいたしました。ちょうど六一年にILOで、百五号の強制労働についての国際会議が開かれるようなスケジュールについ先般なったようであります。これは同様に世界中が条文の条項については疑義の多いところがございますので、その解明の後にこの批准しなければ、誤りを犯してはならならということで照会をいたしておりますが、ILO自身においてまだ明快な答弁はいたしておりません。また先般政府代表がジュネーヴに参りましたから、なおこの問題について口頭で催促をいたすようにしております。ILO自身強制労働とはいかなるものだということについての定義づけができておりませんので、この返事を実は待っておるわけであります。
  305. 永岡光治

    ○永岡光治君 そういたしますと、この百五号条約の批准は、この通常国会に間に合うという公算は薄らいできておるように印象を受けますが、そういうことですか。そうなりますと、非常に困るわけでございますが、従来からも早くしてもらいたいという希望を述べ、そういう線に沿って努力することを約束していただいて今日まできておるわけですが、今のお話によりますと六一年つまり来年の会議で統一見解ができるとかできないとかという話でありますが、これはもうすでに批准をしている国でも、そういうかりに解釈の問題が残されているにしても、六一年に解決するわけでありますし、私の聞いたところでは、これはILOだけでもこれはきまらないだろう、結局はいろいろな解釈で、紛争が起きればオランダのヘーグに国際条約の何か審判所があるそうですが、そこでしか解決ができないということになっておるという意味の話を承りましたが、そうであれば、何もそうあまり……。一応日本政府政府なりの解釈をして批准をし、もし紛争が起きればそういう道も開かれる。最終的にはそういうことになるそうでありますから、その道でもいいのではないかという気がするのですけれども、どうしても来年ということになりますか。
  306. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) ただいまお説のように、各国、批准をしました国国の解釈が相当相違をいたしております。従って各国の実情の検討を六一年にILOで公式にやって、そうして有権解釈をここで出されるものだと私は考えております。しかしそれでは六一年まで絶対だめかということですが、ILOでもう少し事前にいわゆる強制労働問題についての見解日本政府に御通告あれば、日本政府もそれは考えていいのではないかという意味で、何も六一年でなければいけないという意味ではありません。もう少し事前にILOから強制労働問題についての解釈日本政府に御通告あれば、私の方はある程度この問題について促進ができると思っています。しかし、いまだにないものですから、照会しっぱなしであります。従って、その解釈の明確な御返事が来れば、私はもっと促進されるものだと考えますが、六一年でなければいけないという意味ではありません。ILOはそういうスケジュールをお組みになっていることも承っておりますという、参考で申し上げたわけでございます。
  307. 永岡光治

    ○永岡光治君 これはさらに督促をいたしまして、政府の方で必要があれば、一つ早くその回答を待って、早急に、これもできればこの通常国会中にそういう手続がとれるように一つ要望いたしておきたいと思います。  さらに、ILO第百二号条約の批准の問題ですが、これも先般来新聞紙上を通じて、私ども政府考え方なり動きを承知している程度でございますが、この批准というものはどういうようになりましようか、その進捗状況を承りたいと思います。
  308. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 百二号は、御承知のごとく、これは社会保障の相当広範囲なものでございます。ただしこの条約には、全部でなしに、そのうちの三部門が国内法に整備すればよろしいという条件もついております。ただいまこの問題について検討しておりますが、労働省関係としては、失業保険問題がこの中の一つの規定した条項に入っております。失業保険の問題についてILOの条項と比較検討いたしますと、そう支障があるとは考えておりません。ある程度私はILOの領域に達している。日本の失業保険問題は達していると考えますが、その他広範囲なものでありますから、これは所管が厚生省でありますから、厚生省で御検討願わなければ、私の品からお答えはできません。しかし労働省関係は、失業保険問題でございますから、これは大体条約の域に日本の国内法は私は達していると考えております。
  309. 永岡光治

    ○永岡光治君 厚生大臣に、それでは所管のことについてどう考えますか。
  310. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 御承知のようにILOの百二号によりますというと、九種類というものが今問題になっているわけでございます。この九種類のうちに、三項目が要するに国際基準に合致いたさなければならないのでございます。ただいま労働大臣が申されました九種類というのは医療、疾病給付、失業給付、老齢給付、業務災害、家族給付、出産給付、廃疾給付、遺族給付、こうなっております。このうちの三項目が合致いたさなければこの条約に参加ができないのでございますが、このうちで疾病給付と失業給付というものが合致いたしておるのでございまして、もう一つの今これは交渉中でございまして、これが意見の調整ができ得れば、このILO百二号について、条約批准が可能となるのでございます。私どもはすみやかなる機会におきまして、そういうような条約の締結をやることについてやぶさかではない、かように存じておる次第であります。
  311. 永岡光治

    ○永岡光治君 すみやかなる機会ということは、抽象的でよくわからないのですが、明確にどの程度進んでいるのかお尋ねいたします。
  312. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) ただいま折衝いたしておりますところの他の七種類によりますところの、各条項によりまするところの条件が決定いたされまするならば、その時期によりまして取り運びたいと、かように存じておる次第でございます。
  313. 永岡光治

    ○永岡光治君 その条件が満たされるのはいつなのかということになるわけです。
  314. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 折衝中のことでございまするので、いつとは明確には申されないのでございます。
  315. 永岡光治

    ○永岡光治君 それは何月何日という、ぴたり当てこるとは困難でありましょうが、およそのやはり目途があって……。どうも私は今までの政府答弁を聞いて、この予算委員会に限らずそうでありますが、やはり積極的な熱意というものが感じ取れないと思うのですね。いつ幾日までやってみたいのだという、そういう努力目標といいましょうか、熱意がちっとも表われません。安保条約はどんどん進みますけれども、肝心なこういう国民の非常に欲しておる問題、国際的にも非常に日本の信用を高めるようなそういう問題についてはどうも熱意が足りないように思うわけであります。大体およその目途があってしかるべきだと思うのですが、その目途はお持ちにならぬのか、ただ、まとまればまとまったでそのとき考えるのだ、まあこの国会中に何とか批准をしてもらいたいというので、そういう意味努力をしているのか、そこらあたりの答弁の仕方があろうと思うのですが、出たとこ勝負でいこうというのか、この国会中にぜひまとめたいというような気持で進んでおるのか、その辺くらいの決意は答弁を一ついただきたいと思います。
  316. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 社会保障の最低基準をきめるところの条約でございまするので、わが党政府といたしましては、できるだけ熱意を持って折衝いたしておりまするので、御了承願います。
  317. 永岡光治

    ○永岡光治君 答弁になっていないですね。どうも答弁になっていないけれども、時間が過ぎますから進みますが、そういう熱意のない答弁をしていちゃ困ります。具体的にいつ幾日ということがほしかったのでありますが、とにかくこの通常国会中に批准できるように最善の一つ努力を要望いたしておきたいと思うのですが、次いで関連をして申し上げますが、どうせこれは労働大臣の主管になると思いますが、専門家会議に報告する資料がそれぞれの機会にあるわけですが、今度またその機会に当面していると思いますが、今までのその日本の報告によりますと、これは向こうで知ったわけで、大へん私自身もうかつだったことを悔いているわけでありますが、その報告は、国内における有力な労働組合の方にもその資料を送らなければならぬという規定が、憲章の二十三条かと記憶いたしておりますが、たしかあると思うのですが、そういう手続は当然とるでしょうね。
  318. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) ILOの規定による労働組合に示さなければならないという規定は、年次報告でございます。年次報告は関係に示さなければならないという、年次報告でございます。
  319. 永岡光治

    ○永岡光治君 さっそくこの適用の条項が、専門家会議に対する報告というものは、憲章の二十三条のたしか二項だと思うのですが、あらかじめ国内の最も有力な労働代表、労使双方になっておりますが、それに示さなければならぬということになっているのですから、その言い分を聞くということになっておりますから、たとえばこの九十八号条約その他の問題については、当然私は問題になると思うのですが、労働省ではそういう解釈を持っていないのかどうか。私が向こうで聞いたのは、それは問題になるのだというふうに承ったわけですが、どうでございますか。
  320. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 毎年の年次報告は御承知の通りでございますが、一般的なものについては規定はございません。
  321. 永岡光治

    ○永岡光治君 そうすると、一九六〇年の専門家委員会に対する報告というものについては、いずれ報告されるわけですが、それは労使双方に見せなくていいですか。
  322. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) それは年次報告でございますから、もちろんそういう手続をとるつもりでございます。
  323. 永岡光治

    ○永岡光治君 それからもう一つお尋ねいたしたい。これは岸総理の方が適当だと思うのですが、労働条約の適用の状況、その他の問題について、各国にILOの本部から参りたい、見にいきたいという話があったようでありますが、これはその国が受け入れなければ工合が悪いのでという話でありますが、もとよりILO本部から日本の状況を見たいということで照会があれば、どうぞおいで下さいということになるだろうと思うのですが、それはそういうふうに解釈してよろしいですか、拒否する考えでしょうか。
  324. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 拒否する考えを持っておりません。
  325. 永岡光治

    ○永岡光治君 とにかく、ILO問題については時間がありませんからこの程度にとどめますが、特に八十七号条約等の関連につきましては、早急に批准をできるように要望しておきたいと思います。  次に、よく新聞紙上でいわれました所得倍増問題があるわけです。これについて若干質問いたしたいと思いますが、いずれこれは本予算の審議の際に詳しく質問をされると思いますが、私は賃金問題に関連をいたしまして、特にこの通常国会、ただいま政府の方から給与改訂の法律案が出ておりますので、少しお尋ねしたいと思うのですが、所得倍増と——十年後ですか、所得倍増計画をお持ちになっておるということは、給与所得者、賃金生活者については当然賃金が十年後には倍になると、こういうふうに解釈していいのか悪いのか。  さらにお尋ねいたしたいと思うのですが、その賃金が倍になるということは、今日たとえば課長が三万円もらっておる、係長が二万円もらっておるという仮定をとりますと、十年後にはその係長が四万円になり、その課長は三万円が六万円になるんだ、こういうように解釈していいのか、それとも十年後にはだんだん年をとって昇給もしていくから、これは倍になるんだ、そういうふうに解釈していいのか、そこらあたり一つ明確にしておきませんと、政府の方ではえらいうまい話をしておるようでして、地方に参りますとよくそういう話を聞くわけです。十年たちますと、これは三万円の者は六万円になる、二万円の人が四万円になるんだと、こういうふううに解釈してよろしいでしょうかと質問されるわけで、私は自民党でないから、自民党の方に聞いてくれぬと困るという答弁をしておりますけれども、一応人心をまどわしてはいかぬと思いますので、明確に一つお答えいただきたいと思います。
  326. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 昨年の第三次岸内閣で、国民所得倍増の長期経済計画を策定するということを発表いたしたのでありまして、これは国民所得でありまして、いわゆる月給二倍論ではないのであります。そこで大体の方針といたしまして、十年後大体二倍になるのにはどのような計算をしたらいいかということで、大体経済成長率を七・二%ということで計算いたしまして、十年後には国民所得は十八兆五千億円ということで大体計算をいたしまして、そうして人口は九千九百万になるということで計算をいたしておるのです。そこで大体一人当たりの国民所得は、生産年令人口では一・六倍になるという計算になっております。これは平均でありますからして、一人当たりの平均所得であります。でありますからして、今の国民所得倍増の長期経済計画では、大体一人当たり一・六倍になるということになっております。そこで、しからば月給、大体みなの収入が、各自の所得が一・六倍になるということでありますが、御承知の通りいろいろ産業により、あるいは地方によって所得の格差がありますので、その格差をなくするような方法で、平均して一・六倍になるというような計算で、今いろいろとその具体策を策定中なのであります。
  327. 永岡光治

    ○永岡光治君 総理どうですか、今の……。
  328. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今企画庁長官がお答えした通りでございます。
  329. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) なお私、申し落としましたが、御質問の中に、現在ある地位の人の月給が、それが十年後において大体一・六倍になるという意味なのでありまして、年を取ったから倍になるという意味では決してありませんから、その点誤解のないように願います。
  330. 永岡光治

    ○永岡光治君 今のお話を聞きますと、どうも非常にあやふやでありまして、全部の所得が一・六倍になるので、それを分けてみると、中には二倍のもあるし、三倍のもあるかもしれない、中には一・二倍のもあるかもしれない、こういうように聞き取れるのですが、どうですか。これはたとえば一番基本になるのですが、公務員の給与を一つ例にとってみれば一番はっきりすると思うが、今のベースが一・六倍になるのですか。
  331. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 国民所得が倍になるということであって、一人当たりの人口に割り当てて、一人当たりは一・六倍になるという意味なのであります。そこで今の課長級でかりに二万円であるとすれば、大体それが一・六倍になるように今後いろいろと具体策を策定したい、こう考えておるのであります。
  332. 永岡光治

    ○永岡光治君 そうすると公務員は課長なり係長というのは一・六倍のベース・アップになる。つまり今の平均ベース、一万八千円か二万円か知りませんが、それが一・六になって、三万二千円ですかのベースになる、こういうように解釈していいわけですか。
  333. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) そういうように今具体策を研究中なのであります。
  334. 永岡光治

    ○永岡光治君 そこで十年後といいますと、来年から入るわけですね、三十五年度、ついてお尋ねしたいわけですが、初年度の三十五年度ではどんなベース・アップをするのですか。
  335. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 私どもの国民所得倍増長期経済計画は、国民所得を倍増するがためには、一体何年かかるかということで、大体まあ十年後において倍になるという計算をしております。そこで具体的に来年はしからばなんぼ上げる、再来年はなんぼ上げるというところまでは、まだ計算はできていないのであります。
  336. 永岡光治

    ○永岡光治君 それじゃ何もないじゃないですか、それじゃ十年の末期になって一ぺんに一・六上げるということにもとれるわけですが、経済企画庁長官ともあろうものは、やはり計画を持っているわけですから、まずこれは建設大臣でも、十年計画で道路整備をするとかいうことで、ずっと予算を組んでやっておるのですから、あってしかるべきだと思う。三十五年度ではたとえば公務員のベースはこれですと、倍にするというのですから、最低一割は上げないと十年のあれにならぬと思うのですがね。そういう計画はなくて、ただやるのだやるのだと言ったって、国民は何をやるのかちっともわかりませんですからね。やらないのですか、来年はそれでは。
  337. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 今申し上げました通り十年後に倍になるということでいろいろ今具体策を策定中なんであって、それが大体でき上るのが、まあ早ければ五月と思っておるのでありますが、それができ上って、そうして賃金をどうするかということは、具体的にまた考究するわけであります。
  338. 永岡光治

    ○永岡光治君 そうするとすなおにその答弁を受け取ると、五月ごろ結論が出、おそくも三十六年にはベース・アップになる、どの程度になるか知りませんが、そういう段取りになるわけですね。そういうふうに解釈してよろしいですか。
  339. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) ベース・アップを具体的にどう上げるかということは、これは私の方ではやる仕事じゃないのでありまして、大体の、十年後には国民所得は倍になるということによって、人事院がこの何の方でいろいろ研究しております。(「何の方とは何か」と呼ぶ者あり)
  340. 永岡光治

    ○永岡光治君 これは財政、産業政策の関係がありましゃうけれども、主管大臣は大蔵大臣でありますが、ベース・アップは当分——やるのですかやらぬのですか。今の話を聞きますと、来年ぐらいからでも手をつけなければ、とても十年後には倍にならぬと思うのですが、計画は全然お持ちになっておらぬのですか、それとも今お話しの計画は全然お持ちになっておらぬのですか、ちっとも。それとも五月、ころ結論が出れば、ぼつぼつ三十六年度からベース・アップをやろうということになるのでしょうか。もしそうでなければ、これは政府はうそを言っているということになると思うのですが、お尋ねいたします。
  341. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 所得倍増の計画、これを賃金と直ちに結びつけてみると、いろいろ説明をしにくい点が出てくるだろうと思います。と申しますのは、人口の増がございますし、また特に生産人口の伸びをいかに見るかという問題がありますので、国民所得の倍増が直ちに賃金の倍増ということにならない。ただいま一・六という話が出ておりますが、結局これは生産人口の伸びが相当これから十年間は大きいと見なければならないと思います。ことに戦後に生まれました子供なんかがいわゆる生産年令に達する、こういうこともございます。そういう意味で、賃金を各業種別にきめてかかるということはなかなかむずかしいことだ、かように実は考えております。しこうして、公務員については人事院というりっぱな機関がありまして、公務員給与適正なるやいなやということを絶えず検討しておるわけであります。で、三十五年度におきましては、三十四年に人事院勧告がございましたので、この人事院勧告に沿いまして中だるみ是正あるいは夏季手当を出すということをいたしております。ただいま所得倍増と直ちに公務員給与と結びつけてのお話ですが、これは相対としての所得倍増、従いまして、各業種そのものが現在あるがままの姿ですべてが賃金を倍にするという、こういうことには、必ずしも私はそんなものではないであろう、かように実は思います。
  342. 永岡光治

    ○永岡光治君 ところが所得倍増ということは、所得を今から倍にするという計画で、賃金生活者にとっては賃金の収入が所得になる。それが倍にならなければ所得倍増にならないわけです。で、先般これは池田さんでございましたが、池田さんは、賃金が倍になるということを新聞に発表しておった。国会でもはっきり言っておりましたが、池田さんの答弁佐藤大蔵大臣の答弁は、これは全く食い違うわけですが、統一していないわけですか。まちまちでは、今の政府の言うことは一体だれを信用してよいかわからないということになるが、そういうことでよろしゅうございますか。
  343. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いわゆる所得倍増ということを申しておりまして、政府はいわゆる賃金倍増とは当時もやや考え方が違うでしょうということを実は申しました。と申しますのは、これはもう具体的に産業の例をとってごらんになればわかるわけですから、たとえば石炭鉱業に従事しておる者の労賃を直ちに二倍にするというような方法が十年の間に考えられるかどうか。あるいはまた、いわゆる非常に苦しい状況のもとにある産業自身がそういうように伸びていくかどうか。しかし、もちろん、その規模自身が縮小されて、その賃金労働者の数は変わってくる、こういうことになれば、一人当たりの収益はふえるかわかりません。そういうように、国民所得全体を見た場合に、各産業別、これを構成しておりますものが、現在あるがままの姿で全部が賃金が二倍になっていくかということは、これは経済の発展から見ましても、必ずしも納得のいくことではないのでありまして、そういう点に人口の移動があり、あるいは新しい産業が出てくる。こういうように考えていただかなければならないのじゃないかと思います。
  344. 永岡光治

    ○永岡光治君 そうすると、大体わかりました。所得倍増というのは、賃金の何も倍になるのではなくて、人がふえるから所得もだんだんふやさなければならない。それからいろいろ産業もふえるだろらから、それも所得にもなるだろうし、結局それは何にもならないで、今と変わりはない。倍増いたしますということは、何も大したことはない。こういうようにしかとれぬのですが、そういう意味ですか。どうも答弁がはっきりしないのですが、一番いい例として、賃金所得者が何倍になるかということを、私はほんとうにはっきりしていただきたいと思いますが。
  345. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように、先ほど来経済企画庁長官がお答えしておりますように、経済の平均の伸びが七・二であれば、十年でこれは倍になる、こういう計算が出てくるわけです。毎年々々七・二%ずつふえていけば、これは十年間でその所得が倍になるということであります。先ほど一割というお話が出ておりましたが、一割ではなくて、七・二でずっと成長していけば倍になるということであります。ところで産業構造そのものをやはり十分見ていかないと、それはある産業によりましては、非常な所得の伸びもありましょう。またある産業によりましては、必ずしもそれだけのものは伸びないかもわからない。絶えず平均しての七・二%というものを目標にしている、こういうことでありまして、三十三年、三十四年の経済の伸び率から見ると、今回計画されますものは、十分に、十年間には倍にすることは可能だ。そこで、もっと経済を積極的に成長さす方法はないか、そうすれば、十年待たないうちに、これが倍になるのじゃないか、政府といたしましても、おおむね十年間ということを目標にしており、十年より、もっと短縮できれば短縮したいしということを実は考えておるという状況でございます。
  346. 永岡光治

    ○永岡光治君 それは、もう少し十年を短かくするという話ですが、するにこしたことはないけれども、今のお話を聞きますと、てんで国民が思っている内容と違っておるということです。  これは非常に人心を惑わすのも、はなはだしいと思うのですが、何も、給与所得者を私は一つ例をとったわけですが、それが、給与が倍になるわけでも何でもなくて、人口がふえたり、産業をいろいろ起こしてくるから、所得も自然ふえるだろうというようなことで、これは、大した期待にならないので、まあ経営者の方は、どんどんそれは太るかもしれません。二倍にも三倍にもなるかもしれませんが、勤労大衆や中小企業なんというのは、大したことないのだ、今よりむしろ悪くなるかもわからぬぐらいの印象を受けるわけですが、どうぞ、今後いろいろ政策を発表する際には、人心を惑わさないように発表していただきたい。そうでないと今のような話だと、来年も再来年も、実はベース・アップするわけでも何でもなくて、どうも所得だけ倍増倍増といっても、何も給与所得者が倍にふえるわけでも何でもないのだ、こういうことでは困りますから、ぜひとも一つ、そういうことのないようにお願いしたいと思います。
  347. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) かりに給料を倍にするといたしましても、まずふえなければならぬのは国民所得なのであります。国民所得がふえることによって、各人の所得がふえてくるということでありますから、そこで国民所得が、いかにふえるかということを目標にして、各人の所得がふえるということになるので、過去の例を見ても、国民所得の増進につれて賃金も上がっております。  でありますからして、国民所得をまず倍にして、所得をいかにして各人に配分するかということをやるわけでありますから、決して国民を惑わすものでも、何でもないのです。今申しました通り、国民所得が倍になりましたときには、一人当たりの所得は一・六倍になるということを申し上げておるわけであります。
  348. 永岡光治

    ○永岡光治君 それはとにかく、どう答弁してもでたらめです。所得を倍増して、あとをどう分けるかという問題ですから、どうも給与所得者や、あるいは勤労大衆が倍にふえるわけでも何でもないので、特に池田通産大臣が、賃金が倍になるというあの発言は、今の答弁からすると、重大な問題だと思います。  これこそ、まさに人心を惑わすのも、はなはだしいと思う。これは新聞紙上でなくて、国会答弁した際にも、賃金は倍になるのですよと、そういうことを言っているわけですから、特に、この点を政府の方で慎重に、発表するときには考えていただきたいことを要望して、私の質問を終わります。
  349. 小林英三

    委員長小林英三君) 永岡光治君の質疑は終了いたしました。  これをもちまして、質疑者の発言は、全部終了いたしました。質疑は、終局したものと認めます。   —————————————
  350. 小林英三

    委員長小林英三君) これより討論に入ります。東隆君。
  351. 東隆

    ○東隆君 私は、民主社会党を代表して、政府提案三十四年度予算補正二案について、反対の意向を明らかにするものであります。  わが党の反対理由は一点に要約されます。それは、今回の第三次補正を含めて、昭和三十四年度予算全体を通じて、政府はついに、昨年七月の人事院の公務員給与改正勧告を完全に無視してこれを実現する何らの予算措置をとらなかったからであります。  なるほど政府は、明年度予算案におきましては、人事院勧告を本年の四月一日から実施することにしております。すなわち公務員給与の各俸給与の中級職員、研究職員、並びに医師について、平均約四%の引き上げを行ない、いわゆる中だるみを是正しております。また明年度より夏期季手当を〇・一カ月分増額しております。  しかしながら、人事院勧告におきましては、早急に実施すべき旨を強調していたにもかかわらず、政府は、何ゆえにこれの実施を三十四年度内に行なわなかったのか。政府は、これに対していかなる釈明を行ない得るでありましょうか。政府が、もし財源不足を理由にしようとしても、それは理由にはなりません。なぜならば、政府は、経済好況による祖税収入の自然増加分をもって、昨年十一月及び今回の二回にわたる歳出補正を行なっております。しかも、わが党の見るところ、本年度の祖税収入のうち、法人税と関税収入は、政府見込み以上に、さらに税収の伸びを期待し得ることは明らかであります。すなわち法人税の収入につきまして、政府昭和三十五年度の法人税収入は、昭和三十三年十一月より一カ年間の法人活動収益より、さらに三七%増加するものと査定しております。そこで三十五年度の法人税収入は、本年度より約九百八十億円の増収を見込んでいるのであります。このような法人活動の拡大による法人税収入の増加は、すでに同じような幅で本年度内において進行しているのであります。  従って政府は、当初予算におきまして法人税収入を三千四百八億円と計上し、今回の、補正後の法人税収入を三千七百七十八億円と見て、その間に三百七十億円の自然増加を見込んでいるのでありますが、この増加は、明年度に予定している増収の幅である九百八十億円から見れば、その三分の一にすぎないのであります。この点政府は、本年度の法人税の自然増収は、さらに大幅に見込み得ることを先刻御承知のはずであります。わが党は、苛斂誅求によって税収をふやせというのではありません。正当に大企業法人が負担すべき当然の税負担を、政府は正確に把握せよと主張しているのであります。わが党は、ここに財源があると政府に対して指摘しているのであります。  関税収入につきましても、一月以来の輸入の伸びの成績を見まするならば、増収を見積らない方がおかしいのであります。ここにも、明らかに補正財源が存在するのであります。  わが党は、昨年七月に公表された人事院勧告を、昨年十月にさかのぼって実施すべきであることを主張して参りました。昨年十月より本年三月までの半年間に、一般会計予算において支出すべき一般職並びに義務教育国庫負担分を合計して約五十億円は、法人税だけの自然増収分によりましても、楽々とまかなえるはずであります。人事院は、国家公務員法案第三条が規定している通り、国家公務員法の完全な実施を確保し、その目的を達成されるために設置された機関であります。戦後の政治民主化の過程において、日本の国民が獲得した重要な民主的機関なのであります。これが勧告を忠実に守ることは、主権者である国民が、この国の国家公務員に対して約束をしたことであります。言葉をかえて言えば、国家公務員の権利であります。政府は、理由なくその勧告の実現をおくらせることは、民主政治の名において許されないところであります。面従腹背という言葉があります。わが日本の公務員諸君は、このようなことはないのでありますが、政府の不信行動のゆえに、公務員諸君が順法闘争とか、合法闘争とかの名目で行動することがあっても、これを阻止する条件、資格を政府は持たないことになると言わなければなりません。わが党は人事院勧告を軽視している政府予算案には、何としても賛成できないのであります。これは国会議員としての当然のあるべき態度なのであります。  なおわが党は、災害復旧関係費や失業保険費、その他の赤字補てんについての補正のいきさつについては、釈然としておりません。しかしこれらの歳出補正の緊急性にかんがみ、なお、わが党が臨時国会に明らかにした災害補正予算の組みかえの線に沿っているので、この点に関する限り、政府案を支持します。しかしながら、人事院勧告を無視している一点において、わが党は絶対に政府案を支持するわけには参らないのであります。  従って、この点を再び強調して、上程の二案に強く反対し、討論を終わります。   —————————————
  352. 小林英三

    委員長小林英三君) 佐藤芳男君。
  353. 佐藤芳男

    佐藤芳男君 私は、自由民主党を代表して、昭和三十四年度一般会計予算補正及び昭和三十四年度特別会計予算補正の両案に対し、賛成の意を表するものであります。  さきに、伊勢湾台風によって、激甚な被害が発生するや、政府はいち早く、災害復旧をおもなる内容とする補正予算案を提出して、応急の措置を講ぜられましたが、その前回の補正は、災害発生後短期間に編成されましたために、その被害額を完全に把握しがたかったことは、やむを得なかったところであります。その後調査が進むに従って、被害額もだんだんと明瞭になって参りまして、結果においては、前国会で決定された高率の国庫補助ないし国庫負担を行なうためには、前回程度の補正をもってしては、不十分であることが明らかであります。もしも、新たな補正を加えないならば、緊要な復旧事業についての年度別の事業量の定則となっておりまする三・五・二の初年度の進捗率三〇%を確保することも困難であります。  そこで政府が、あらゆる財源をしぼり出して、他に優先して災害復旧の完全な遂行をおもなる内容とする今回の補正予算を提出されたることは、きわめて適切な措置でありまして、新年度予算編成におけるワクの都合から、この補正が作為的に提案されたのではないかとの揣摩憶測は許されざるところであります。罹災県、罹災民の心をもって心といたしておりまする私どもは、この両案に対し心から賛成するものであります。  なお私は、政府が災害激甚地の指定をすみやかに行なうなど、予算の執行に支障を生ぜないように、万全を期せられんことを要望して賛成討論を終わります。   —————————————
  354. 小林英三

  355. 岩間正男

    岩間正男君 私は、日本共産党を代表して、三十四年度予算補正第三号及び特第二号、に反対するものであります。  この補正予算は、地方交付税交付金と食管会計の赤字埋めを除けば、ほとんどすべてが災害対策費に充てられており、その総額は六十六億円になっている。政府はこの六十六億円の補正によって、今度の災害に対する当面の措置が完了したと言っているが、災害復旧事業費にしても、伊勢湾の高潮対策事業費、公立文教施設災害復旧費、あるいは災害救助費にしても、きわめて過小な見積りの上に立った補てんにすぎないのであります。これでは、実際に必要な当面の災害復旧改良の経費、地元民の要求には、全くほど遠いものがあります。  たとえば、被災害府県の公立学校の復旧進捗を見ても、三割に満たない現状であり、これの復旧を促進することが、各府県の要望であり、急務であります。それにもかかわらず、公立文教施設災害復旧費として、わずか一億足らずの補正予算しかありません。私立学校の復旧のための補助に至っては、全部捨てて省みられていないのであります。その他港湾、漁港、中小企業、住宅建設に対する政府補助は、この補正予算には、一銭も計上されていないのであります。さらに災害復旧費は早期に打ち切られたまま、その後の府県の出費に対する政府補助は考慮されていません。  これらの二、三の事例を見ましても明らかなように、政府の災害復旧のためのこの補正予算は、当初以来の政府の災害復旧に対するおざなりの対策にすぎず、全くのごまかしであります。政府は当然、三十五年度の予算において、災害の復旧改良の根本的対策を実施するだけでなく、この補正予算においても、当面の応急的な復旧のために、あらゆる面について、さらに積極的な施策を講じ、災害府県市町村に対する援助を増し、地元民の要望を全面的に実現するための努力をすべきであります。これらの地方自治体や地元民の要望を実現するための経費は、税の自然増収に待つまでもなく、軍事費、いわゆる防衛費を押えるだけでも、簡単に捻出できるはずであります。しかるに政府は、実際には防衛費を押えるどころか、大幅に増し、災害復旧費は、極端に押えているのであります。  この意味において、本補正予算案は、日米新軍事同盟体制強化のための軍事費の大幅増額を中心とする独占資本本位で、国民の生活改善の要望を押え、ごまかそうとしている三十五年度本予算の、いわば露払い的性格を持つものであります。私は、このような性格の本予算案に反対するものであります。   —————————————
  356. 小林英三

    委員長小林英三君) 秋山長造君。
  357. 秋山長造

    ○秋山長造君 私は、ただいま議題になっております昭和三十四年度予算補正第三号及び特第二号に対し、日本社会党を代表して賛成の意を表するものであります。  今回の予算補正は、総額百三十九億二千九百万円であって、そのうち災害復旧関係六十六億五千五百万円のほか、失業保険費国庫負担金、地方交付税交付金、食管特別会計繰入金等、法令に基く義務的経費の追加を行なうものであります。  昨年中わが国土は、しばしば台風の来襲を受け、その都度各地に甚大な被害を出したのであります。特に七月の局地的豪雨に始まり、八月の山梨、長野地方の風水害に続いて、九月下旬、中部日本を襲ったいわゆる伊勢湾台風は、伊勢湾沿岸の高潮被害を中心に、死者六千、建物家屋の流失及び全半壊二十万、被災世帯五十万、被害総額七千億円に上る空前の大災害をもたらしたことは、われわれの記憶になまなましいところであります。  政府は、これが応急対策として臨時国会を召集し、災害対策費三百四十三億円を柱とする総額六百十四億円の補正予算を組んだのであります。当時わが社会党は、政府のこの数字が、台風被害の実態をあまりにも過小に見積った、きわめて不十分かつ非現実的な数字であることを指摘し、この大災害に対する抜本的措置として、防衛費の大幅節減、接収貴金属の売却等を財源とする予算組みかえ案を衆議院段階において提案したのでありますが、不幸にして、自民党の反対で否決されまするや、当面の緊急事態にかんがみ、やむを得ざる次善の策として、政府がすみやかに第三次予算補正を行なうことを強く期待して、政府原案に賛成したのであります。  しかるに、今われわれの前に提示された補正予算は百三十九億円、そのうち災害関係費は六十六億円にとどまり、政府が、国民のごうごうたる反対をよそに、新年度から買い入れようとしております。ロッキード戦闘機のわずか十三機分に過ぎないのであります。  のど元過ぎれば熱さを忘れうるといことわざがありますが、万が一にも、あれだけ大きな人的物的犠牲を出した伊勢湾台風の惨害も、年を越すとともに、早くも忘られようとしているとしたならば、これほど無情冷酷な仕打はありません。被災者にとって災害が身にしみるのは、いよいよこれからであります。今こそ重ねてわれわれは、むだな再軍備の金をまず災害対策、民生安定に回せと、声を大にして叫ばざるを得ないものであります。  しかも、政府にして真に災害対策に熱意と誠意があるならば、補正予算はもっと早く提出されてしかるべきであったのに、年度追し迫った今、三十五年度予算と抱き合わせで、いな、三十五年度予算のしりぬぐいのような形で提出されたところに、はなはだ割り切れないものを感ずるのであります。  昨年十二月二十三日、新年度予算の大蔵省原案が発表されてから去る一月十三日、政府案決定にこぎつけるまでの三週間、本来国民のものであるべき予算が、与党内外の派閥や圧力団体によって完膚なきまでに食い荒らされ、岸内閣の乱脈無統制ぶりを満天下に暴露したのであります。しかも国民のきびしい批判に対し、一兆五千六百九十六億円という大蔵原案の総ワクだけは最後まで守り通したという体裁をつくろうために、はみ出した百余億円を、逆に本年度第三次補正予算に繰り上げ計上するという窮余の操作が行なわれた形跡の歴然たるものがあるのであります。  さらにまた災害復旧と並んで、当面の緊急案件たる石炭不況対策や炭鉱離職者対策が、全然盛られておりませんし、その財源にしても、依然として不確定な税の自然増収に大きく依存して、防衛費の再検討や接収貴金属の処理は、何ら考慮されていないのであります。  以上のごとく、今次補正予算は、その提出時期がおそきに失した上に、内容がはなはだ貧弱であり、その編成の経緯についても、遺憾な点が少なくないのでありますが、またひるがえって考えれば、とにもかくにも結果的には、わが党の第三次補正要望の線に、曲りなりにも、ささやかながら沿うたものであり、内容的にも緊急を要する災害復旧関係のほか、法令に基づく義務的経費でありますので、政府の政治責任は別に問うこととしてこの際は、不本意ながら本補正予算案に賛成する次第であります。(拍手)
  358. 小林英三

    委員長小林英三君) 以上をもちまして、討論通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  昭和三十四年度一般会計予算補正(第3号)  昭和三十四年度特別会計予算補正(特第2号)を一括して問題に供します。  右二案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  359. 小林英三

    委員長小林英三君) 起立多数と認めます。よって、右の二案は、多数をもって可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則七十二条により、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  360. 小林英三

    委員長小林英三君) 御異議ないものと認めます。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時四十八分散会