○東隆君 私は、民主社会党を代表して、
政府提案三十四年度予算補正二案について、反対の意向を明らかにするものであります。
わが党の反対理由は一点に要約されます。それは、今回の第三次補正を含めて、
昭和三十四年度予算全体を通じて、
政府はついに、昨年七月の人事院の公務員給与改正勧告を完全に無視してこれを実現する何らの予算措置をとらなかったからであります。
なるほど
政府は、明年度予算案におきましては、人事院勧告を本年の四月一日から実施することにしております。すなわち公務員給与の各俸給与の中級職員、研究職員、並びに医師について、平均約四%の引き上げを行ない、いわゆる中だるみを是正しております。また明年度より夏期季手当を〇・一カ月分増額しております。
しかしながら、人事院勧告におきましては、早急に実施すべき旨を強調していたにもかかわらず、
政府は、何ゆえにこれの実施を三十四年度内に行なわなかったのか。
政府は、これに対していかなる釈明を行ない得るでありましょうか。
政府が、もし財源不足を理由にしようとしても、それは理由にはなりません。なぜならば、
政府は、経済好況による祖税収入の自然増加分をもって、昨年十一月及び今回の二回にわたる歳出補正を行なっております。しかも、わが党の見るところ、本年度の祖税収入のうち、法人税と関税収入は、
政府見込み以上に、さらに税収の伸びを期待し得ることは明らかであります。すなわち法人税の収入につきまして、
政府は
昭和三十五年度の法人税収入は、
昭和三十三年十一月より一カ年間の法人活動収益より、さらに三七%増加するものと査定しております。そこで三十五年度の法人税収入は、本年度より約九百八十億円の増収を見込んでいるのであります。このような法人活動の拡大による法人税収入の増加は、すでに同じような幅で本年度内において進行しているのであります。
従って
政府は、当初予算におきまして法人税収入を三千四百八億円と計上し、今回の、補正後の法人税収入を三千七百七十八億円と見て、その間に三百七十億円の自然増加を見込んでいるのでありますが、この増加は、明年度に予定している増収の幅である九百八十億円から見れば、その三分の一にすぎないのであります。この点
政府は、本年度の法人税の自然増収は、さらに大幅に見込み得ることを先刻御承知のはずであります。わが党は、苛斂誅求によって税収をふやせというのではありません。正当に大企業法人が負担すべき当然の税負担を、
政府は正確に把握せよと主張しているのであります。わが党は、ここに財源があると
政府に対して指摘しているのであります。
関税収入につきましても、一月以来の輸入の伸びの成績を見まするならば、増収を見積らない方がおかしいのであります。ここにも、明らかに補正財源が存在するのであります。
わが党は、昨年七月に公表された人事院勧告を、昨年十月にさかのぼって実施すべきであることを主張して参りました。昨年十月より本年三月までの半年間に、一般会計予算において支出すべき一般職並びに義務教育国庫負担分を合計して約五十億円は、法人税だけの自然増収分によりましても、楽々とまかなえるはずであります。人事院は、国家公務員法案第三条が規定している
通り、国家公務員法の完全な実施を確保し、その目的を達成されるために設置された機関であります。戦後の政治民主化の過程において、
日本の国民が獲得した重要な民主的機関なのであります。これが勧告を忠実に守ることは、主権者である国民が、この国の国家公務員に対して約束をしたことであります。言葉をかえて言えば、国家公務員の権利であります。
政府は、理由なくその勧告の実現をおくらせることは、民主政治の名において許されないところであります。面従腹背という言葉があります。わが
日本の公務員諸君は、このようなことはないのでありますが、
政府の不信行動のゆえに、公務員諸君が順法闘争とか、合法闘争とかの名目で行動することがあっても、これを阻止する条件、資格を
政府は持たないことになると言わなければなりません。わが党は人事院勧告を軽視している
政府予算案には、何としても賛成できないのであります。これは
国会議員としての当然のあるべき態度なのであります。
なおわが党は、災害復旧
関係費や失業保険費、その他の赤字補てんについての補正のいきさつについては、釈然としておりません。しかしこれらの歳出補正の緊急性にかんがみ、なお、わが党が臨時
国会に明らかにした災害補正予算の組みかえの線に沿っているので、この点に関する限り、
政府案を支持します。しかしながら、人事院勧告を無視している一点において、わが党は絶対に
政府案を支持するわけには参らないのであります。
従って、この点を再び強調して、上程の二案に強く反対し、討論を終わります。
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