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加賀山之雄君 私は
参議院同志会を代表いたしまして、
会期延長について
賛成の
意思を表明するものでございます。
社会・民社両党の全
議員欠席の本
会議におきまして、異例の
討論を行ないますゆえんのものは、去る十九日
衆議院において行なわれました
会期延長の強行、並びにその後引き続いて生じておりまする
事態について、心から遺憾にたえないと存じますと同時に、
わが国民主政治と
二院制度の
現状と将来について、
憂慮にたえないものがあるからでございます。
自由民主党の一方的行動と、
日本社会党の
暴力行使とは、ともに強く非難されねばならないものだと考えます。わが
同志会は、
わが国民主政治の健全なる成長のために、また、
わが国議会制度の権威を防衛するために、この壇一上より両
党諸君の猛省を強く要求いたすものであります。(
拍手)
さて、わが
同志会が、今回本院において
会期延長の
議決を行なうべきことを率先して提唱いたしました第一の
理由は、ひとえに
わが国二院制度の
基本的原理を保持せんがためにほかなりません。すなわち、
日本国憲法第四十二条は、「
国会は、
衆議院及び
参議院の両
議院でこれを構成する。」とし、
衆議院及び
参議院が、それぞれ独立の
意思決定機関として、その両
議院の合致した
意思が初めて
国会の
意思となる
趣旨を明記しております。しかるに、最近における数
国会の
事例に徴しますると、本院は、
衆議院が
会期延長の
議決を行ない、そのつど、その旨を本院に
通告して参りましたにもかかわらず、本
会議を開会して本院独自の立場から
会期延長の
議決を行なうことを怠っております。もとより、われわれも、
国会法第十三条によりまして、
参議院が
議決いたしませんでも、
衆議院の
議決が
国会の
議決となることを存じないわけではございませんが、もともとこの
規定は、
参議院が
衆議院と異なる
議決を行なうか、あるいは、不測の
事態により、本院において
会期延長の
議決を行ない得ない場合を予想しての
規定でございまして、正当なる
理由なくして
参議院の
議決を怠ってよいという
趣旨のものでないことは明らかであります。不幸にしてわれわれは、過去数
国会の
事例を顧みまして、
会期延長の
議決を行なうために本
会議を開くことができなかった何らの
理由も発見することはできません。かくて、
日本国憲法第四十二条が
わが国に
二院制度を採用した本来の目的も次第に没却され、ひいては、
衆議院に対する
参議院の独自の機能もようやく抹殺されるに至るであろうことを、われわれは深く
憂慮いたすものであります。(
拍手)これが第一の
理由であります。
第二の
理由は、御承知のごとく、今
国会は新
安保条約の
承認を
重大眼目といたしており、それに伴いまして、
衆議院における
審議も、同
条約の
審議に多大の時間をさかれました結果、今日まで
国会に提出されました
法律案、
内閣提出百四十二件、
議員提出五十五件、計百九十七件のうち、両院を通過して成立したものは、わずか八十七件にすぎず、いまだ
審議中のものは百十件の多きを数えておるのであります。この中には、新
安保条約に伴う三十一
法律案のほか、
ILO条約第八十七
号並びにそれに関連する
法律案などの
重要法案が残存しております。さらにまた、突如、表
日本を急襲いたしました大津波による
被災者対策も、また緊急を要する重大な問題であることは申すまでもございません。これらの
審議のためには、
議長より提案された
会期延長はぜひとも必要であると考えるものであります。
第三に、ここに私が申しますまでもなく、
政局はまことに
憂慮すべき段階にあります。
国会もまた、二十日以来全くの
空白状態を続けております。かかる
事態を収拾し、
国会の
運営を正常化し、
政局を正しい
軌道に乗せることは、われわれ
国会議員に課せられた
重大責任でございます。(
拍手)われわれは、
政府与党がかかる
事態を招来した
責任について、いまだ
反省の色が足りないように思うと同時に、また、
与党内部を収拾して新
安保条約の
承認をいよいよ強行せんとするがごとき態度を続け、また野党の
諸君も、重大なる外交問題を政争の只に供し、倒閣に急にして、いたずらに政情の不安をあおるがごとき傾向にあることは、遺憾のきわみでございます。
国民は、今後
国会はどうなるのか、
政府はどうなるのか、そして国の一番大事な
国家国民の将来は一体どうなるのか、深い
憂慮を続けておるのが
現状であります。一刻も早くこの心配を除き、民心を安定せしむることが、現下最も大切なことであると信ずるのであります。
以上、私は
会期延長について賛意を明らかにいたしましたが、この際、特に明らかにいたしておきたいことは、このことが直ちに
与党だけの
単独審議にわれわれが喜んで協力することを意味するものではないということでございます。われわれが要望いたしたいことは、今なすべきことは、せっかくきょうの
議決によって
国会が
延長されるならば、一日も空費することなく、
即時政局を安定し、
議会運営を
軌道に乗せ、それぞれ
反省の上に立って、三
党首会談を開く等、あらゆる手段を講じて
国会審議を正常化することであると思うのであります。これに渾身の努力を払うことが必要であると思うのであります。そしてこの混乱の
事態を一日も早く収拾し、
国民のわれわれに対する負託にこたえるべきであると信ずるのでございます。
これをもちまして私の
討論を終わります。(
拍手)