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1960-05-13 第34回国会 参議院 本会議 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年五月十三日(金曜日)    午前十時三十一分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第二十二号   昭和三十五年五月十三日    午前十時開議  第一 輸出入取引法の一部を改正する法律案趣旨説明)  第二 農地法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案趣旨説明)  第三 行政書士法の一部を改正する法律案衆議院提出)  第四 一般会計の歳出の財源に充てるための国有林野事業特別会計からする繰入金に関する法律案内閣提出衆議院送付)  第五 交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)  第六 商工会の組織等に関する法律案内閣提出衆議院送付)  第七 刑法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ─────・─────
  3. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。  この際、日程に追加して、日本電信電話公社経営委員会委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございません。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  内閣から、日本電信電話公社法第十二条第一項の規定により、大和田悌二君、中山素平君を日本電信電話公社経営委員会委員に任命することについて、本院の同意を求めて参りました。本件に同意することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立
  5. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件全会一致をもって同意することに決しました。      —————・—————
  6. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第一、輸出入取引法の一部を改正する法律案趣旨説明)、  本案について国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。池田通商産業大臣。    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  7. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 輸出入取引法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  現行輸出入取引法は、昭和二十七年九月、輸出取引法として施行され、その後昭和二十八年八月、輸出入取引法改正され、さらにその後二回の改正を経て今日に至っております。その間、輸出入取引法は、輸出入取引における秩序確立についての基本法として、多大の役割を果たして参ったのであります。しかしながら、最近における世界貿易情勢を見ますと、諸外国においては依然としてわが国の一部の商品の無秩序な進出が問題とされ、差別的な対日輸入制限はいまだ撤廃されておりません。従って、輸出取引秩序確立のための施策がますます強く要請されているのであります。さらに、今後わが国貿易自由化が進捗して参るのに伴いまして、一部商品については輸入過当競争激化が予想され、その対策を整備する必要に追られますとともに、後進諸国との貿易促進のためには、これらの物資買付民間協調体制のもとに進める必要性も増大して参っております。これらの諸情勢に即応いたしまして、この改正案提案した次第であります。  次に、改正主要点につきまして御説明いたします。  第一は、輸出貨物国内取引に関する生産業者または販売業者に対する政府規制規定新設であります。現行輸出入取引法におきましては、輸出業者協定の場合とは異なりまして、生産業者または販売業者輸出貨物国内取引に関する協定につきましては、アウトサイダー規制を行なう規定を欠いておりますが、過当競争原因国内生産または販売分野に存する場合には、必要に応じ生産業者または販売業者協定につきましてもアウトサイダー規制を行なうことができるように改正し、輸出過当競争防止につき万全を期せんとするものであります。  第二は、輸入貨物国内取引における購入に関する事項についての需要者または販売業者協定規定新設であります。現行輸出入取引法におきましては、輸入取引における過当競争による高値買い等弊害を除去するために、輸入業者の段階において協定その他の共同行為を行なうことが認められております。わが国輸入取引におきましては、国内需要者または販売業者輸入取引内容を実質的に左右している場合が多く見られる実情にかんがみまして、輸入業者による共同行為によって過当競争等による弊害を除去することが著しく困難である場合には、きわめて厳重な制限のもとにおいてではありますが、需要者または販売業者輸入貨物を購入する場合の国内取引について協定を締結することができるようにすることが、これからはぜひ必要であると考えまして、この点に関する規定を設けました。  第三は、輸出入調整に関する輸出業者及び輸入業者協定規定新設であります。従来、後進国との貿易においては、外貨資金割当制度によってある程度割高な物資買付を行なって、わが国商品輸出を容易にしてきた例が少なくないのでありますが、貿易自由化の進展に伴い、政府においてかかる措置をとることは次第に不可能となりつつあります。今後は貿易業者間の自主的な話し合いにより後進国との貿易維持拡大をはかることが必要でありますので、輸出入調整に関する輸出業者及び輸入業者協定に関する規定を設けることといたしました。  第四は、貿易連合制度の創設であります。貿易商社が連合して貿易取引を行なうということは、貿易取引秩序確立という観点からも、また特に中小商社の健全な発展のためにも必要でありますが、現行法令における諸制度をもってしては所期の目的を達成することが困難と考えられますので、今回、連合して貿易取引を得なう貿易業者に、貿易連合という名のもとに新たに法人格を付与し、その助長をはかることとし、所要の規定を設けることといたしました。  右のほか、今回の改正案におきましては、輸入組合の設立を容易にすること、輸出組合輸入組合等事業内容を明確にし、非出資組合非課税法人にすること等若干の改正を行なうことといたしております。  以上の改正によりまして関係業界の協力と相待って、貿易秩序ある発展が期待されるものと深く確信いたす次第であります。  以上が輸出入取引法の一部を改正する法律案趣旨でございます。(拍手
  8. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。栗山良夫君。    〔栗山良夫登壇拍手
  9. 栗山良夫

    栗山良夫君 私は、日本社会党を代表しまして、ただいま議題となりました輸出入取引法の一部改正案につきまして、非常に強い不満を表明するものであります。そこで、わが党が不満とする理由をあげ、首相以下関係閣僚反省を促しながら、その所信をただしたいと思うのであります。  まず第一に、本案貿易自由化に名をかりた独占禁止法間接的骨抜き法であるということであります。現行独占禁止法案は、申すまでもなく、戦時中の経済統制弊害を除去し、また経済力過度集中排除して、日本経済民主化する、言いかえれば、官僚及び大資本経済支配の弊を改める目的のために、連合軍の指導によってきたものであります。しかも、今日といえども、その必要性重要性はいささかも後退をいたしていないのであります。国際的経済慣行は、国際通貨基金ガット等の動きが示しておりまする通りに、独占排除の建前でありまして、一九五八年のガット総会におけるカルテル非難決議など、その事実を物語っているわけであります。ところが、わが国現行貿易為替政策は、戦後の経済に残された最大唯一統制経済であることは、万人これを認めるところでありまするが、このたび自由化に名をかりて、本改正案によるカルテル行為を容認強化して、経済独占の強化を許しつつ、一方、政府カルテル行為に対する認可権を握り、個々の経済行為に対する官僚統制の強加温存を策するものであるといわなければならぬのであります。かくて二重構造に悩むわが国産業経済に一段と苦悩を加重するものでありまして、中小企業農林水産業及び多くの勤労者の受ける犠牲は、はかり知れざるものがあるのであります。春秋の筆法をもっていたしますれば、暴力の追放を口にする総理大臣が、姿なき暴力国民経済の上に加えるものであるといわなけれぱならぬのであります。その点に対し、首相及び経済企画庁長官の明快な答弁を求めます。  第二に、本法により独占禁止法が間接的に骨抜きになることに対し、公正取引委員会及び首相の見解をただすものであります。昭和二十二年独占禁止法制定以来、執拠に政府に圧力をかけ続けて参りました大資本本法骨抜き運動に対しまして、貿易自由化は巧みにそのチャンスを与えたものというべきでありましょう。昭和二十七年独占禁止法の第一回の改正に成功しながら、自来なおあきたらず、三回にわたって法の改正を行ない、あまつさえ、さらに三十及び三十一国会改正提案を試みて失敗、審議未了、廃案となっているのであります。この経過より見れば、本改正案提出は、貿易自由化のために偶発的に起きた問題ではなく、政府と大資本とが虎視たんたんとしてねらっていたそのチャンス貿易自由化が利用されたにすぎないのであります。独禁法番人であるところの公正取引委員会は、この明白なる事実に対し、法の番人としての権威を保持するのか、政府の召使となるのか、財界のしもべとなり下がるのか、重要な関頭に立っているわけであります。公正取引委員長がこうべをたれるべき相手は、憲法であり、独占禁止法でなければなりません。この経済秩序維持に関する最高責任者として、公正取引委員長は、その権威を守るために、本議場を通じて国民にその信念を表明せられるべきであると思うのであります。なお、かかる政策の遂行は、欧米先進国に対し、通商上非常な悪影響を与えるものと考えられるのであります。ガット三十五条の援用、対日商品に対する高関税輸入品ボイコットMSA協定ココム制限などの通商上の差別制度撤廃交渉に非常な不利益を来たすのではないか。首相及び外相の率直なる答弁を求めるものであります。  第三に、政府は、わが国経済国際的地位をどのように理解されているかという点であります。政府経済的動向を注視しておりますると、神武景気岩戸景気と称して、若干の好景気に目を奪われているありさまは、まさにわが国経済欧米先進国と同格的の地位確立しているかのごとき錯覚に陥っているのではないかと憂えるのであります。たとえば欧米先進国に比較いたしまして、一人当たり国民所得の低さ、賃金、雇用その他の労働諸条件の貧しさ、技術革新のおくれ、中小企業と大企業との質量両面よりする格差の拡大農水産業生産性の低さ、資源の乏しさ等々、数字をあげる時間的余裕を持ちませんが、何人もこの事実を否定し得る人はないはずであります。若干の大企業や、その系列企業繁栄に目を奪われて、労働基準法すら守り得ないで骨身を削っている多数国民の存することを忘れることは許されないのであります。わが国経済は、このような分析からいたしますれば、欧米先進国に比較して多分に後進性を内包するいわば中進国的地位にあると申すべきでありましょう。政府認識のほどを伺うものであります。また従って、貿易政策自体欧米先進国とはおのずから異なった主体的立場をとるべきであると思います。十九世紀の後半、当時の後進国ドイツが、先進国イギリス自由貿易政策に追従せず、自国産業保護政策をとった故知に学ぶまでもなく、国際的にも、国内的にも、自主性のある独自の政策スケジュールを必要とするのであります。かく国内に残る後進性の強い部分を先進国並みに引き上げる努力が何ものにも優先してとらるべきであります。国内の諸事情を無視して外国要請に無準備のまま即応するがごときは、厳に戒しむべきであります。ことに、新日米安保条約規定をいたしました日米経済提携の実体がかくのごときものであるといたしますならば、国民の失望は想像を越えるものがありましょう。首相及び企画庁長官所信を伺いたいのであります。  第四に、本法案提出のおもな理由を、自由化に伴う過当競争激化に備えることとしておりまするが、このような消極的な施策では弊害のみが多く、実効をあげ得ないということであります。今日、日本経済過当競争悩みがあり、自由化によってさらにその悩みが加重せられるであろうその最大理由は、生産増強拡大に伴う内外を通じての有効需要の開拓に対してとるべき施策が欠けているところにあるのであります。特に、経済ブロックを有しないわが国が、みずから求めて中国を初め共産圏貿易を遮断して、市場を縮めて顧みるところなく、また自由化によりますます後進国貿易を後退せしめる等、弾力性を欠く態度は国民の理解し得ないところであります。特に欧米先進国に対し、中進国日本としては、ガット三十五条の援用、先ほど申し上げました対日商品に対する高関税輸入品ボイコット等差別制度撤廃を強力に迫るべきでありましょう。と同時に、共産圏貿易制限しておりまするMSA協定ココム制限等撤廃につきましても、同様に努力をいたすべきであります。要するに、過当競争排除は、本法による消極的なカルテル政策によるべきではなく、内外に広く有効需要を求める積極的かつ強力なる施策を展開すべきであると思うのであります。首相通産及び経済企画庁長官等関係閣僚の責任ある答弁を求めるものであります。  第五に、政府の強行しようとする貿易自由化は、まだ正式に発表いたしませんが、三カ年九〇%というのであります。外部より求められるままに、その輪郭を示したにすぎないのであります。何ら具体的なスケジュールを持たない突然かつ無準備行政として、本年一月以来世論の激しい非難を受けているのであります。申すまでもなく、貿易自由化は、本来、資本主義合理性を貫くものでありまするから、均斉のとれた経済力の強大なる国が利益をし、しからざるものが不利益をこうむることは、理の当然であります。だからこそ、その理論の上に立ってわが国の中進国的経済実情を確認しながら、互恵平等の原則に立って国際交易発展させること、言いかえれば、この線で貿易自由化を進めることは、わが日本社会党賛成をいたしておるのであります。しかるに、この重要な問題についてその認識を欠き、慎重な配慮なく、無計画自由化に暴走することによって、中小企業日本農業等に深刻な打撃を与えることは、私どもの断じて容認し得ないところであります。一部大資本繁栄の明日は約束されるかもしれませんが、結局、国民経済に不安と動揺を与えるからであります。  そこで、若干の点に触れて具体的にお尋ねをいたしますので、大蔵、通産農林の各閣僚より順次御答弁を願います。  (一)政府がすでに明らかにした自由化実施輪郭、すなわち三カ年九〇%の自由化計画は、無理をしてでもそのまま実行に移す所存であるかどうかということ、また、自由化をしない一〇%とはいかなる品目であるかという点であります。  (二)石炭、石油、非鉄金属、一部工作機械、車両、新興化学製品農水産物等企業体質改善に努めましても、なお三カ年間にはとうてい国際競争力を保持し得ないとされておりまするものについても、自由化を強行するのか、あるいはまた、一部取りやめることがあり得るのか。また、強行するとすればその場合、犠牲産業に対する保護政策は一体どうなるのか。特に中小企業近代化を通じての国際競争力確保のための具体策はどうなるのか。  (三)現在輸入禁止品目でありまする不要不急品奢侈品輸入許可にあたりまして、外貨予定五百万ドルに対し、七千五百件、七千万ドルに及ぶものすごい競争でありまするが、今後輸入業者ワク拡張運動に屈してこれを拡大することは絶対にないかどうか。また、明治以来の宗教的な伝統にもなっておりまする舶来品崇拝思想の一掃に対する施策は一体どうなっているのか。国産品愛用運動はどうして展開を一するのか。なお、この種の品目の中には、特定物資同様に不当利得を予見せられるものがありまするが、これに対していかなる措置をとろうとしておるのか。  (四)特定物資、たとえばバナナ、パイ罐時計等、あるいはまた、特定物資ではありませんが、いわゆるマル特扱いとなっておりまする韓国ノリ雑豆等、現に不当利得を生じておるものに対する具体的な措置は一体どうするのか。輸入禁止立法を行なう用意ありと報道せられておりますが、真偽のほどを伺いたいのであります。  (五)結局、自由化に伴う劣位産業保護は、関税制度によるべきであると思いますが、一体どうするおつもりであるのか。現行関税制度明治四十三年の分類そのままで、九百四十余品目となっており、はなはだ不十分であります。アメリカの三千五百、スイスの五千九百等に比較いたしますれば、きめのこまかい保護関税は行ない得ないのではないか。また、五八年の実績によりまするというと、輸入総額に対する関税額の比率は、イタリアの三五・六%、イギリスの二九・六%に比較いたしまして、日本最低三・六%であります。欧米先進国に対して最低なのであります。かくて、貿易政策の推進上、関税制度改正は焦眉の急を要する問題でありまするが、その用意ありゃいなや。また、用意ありとすれば、今国会提出を約束し得るかどうか。この点であります。  (六)農林大臣衆議院において農林漁業者には不利益を来たさないことを確信すると述べられましたが、世論、特に農林水産業の当事者は、大豆の例のごとく甚大なる不利益をこうむるものとして政府に迫っているのであります。自由化をすれば現実に不利益をこうむる農林水産業不利益を与えない具体策とは、一体どういうものでありますか。農林水産業については自由化をしないと理解してよろしいのか。  以上六点にわたり、歯に衣を着せない率直な答弁を求めるものであります。
  10. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 時間が超過しました。
  11. 栗山良夫

    栗山良夫君 最後に本改正案内容について総括的に批判をいたしますと、第一には、輸入カルテルを容認することは、形式的には輸入自由化しますが、実質的には輸入制限を行なうこととなりまして、自由化内容をゼロとするばかりでなく、国内的には不自由化政策を多数国民に押しつけ、再び財閥育成の道を開くことと相なるのであります。二には、自由化により、安い貨物輸入せられ、日本経済利益するとの宣伝でありまするが、この利益カルテル行為を行なう業者の窓口にとどめられまして、中小企業者農漁民は、依然として割高原料供給を受けることとなり、反面、彼らの製品は、採算を無視して国際価格まで引き下げを強要せられ、今日以上に原料高製品安のため、深刻な打撃を受けるのであります。
  12. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 時間が超過しました。
  13. 栗山良夫

    栗山良夫君 三には、需要者カルテル行為により、従来外貨割当により行なわれた生産調整が、間接的に本法の発動によって生産調整を行なうこととなり、独占禁止法分野を侵す不当な行為となるということであります。経済民主化に弓を引くおそれがあるこれらの点につきまして政府国民に対して何と弁明し、了解を求めようとするのか、伺いたいのであります。  要するに、外国要請による自由化、無準備、無計画自由化日本主体的立場を忘れた自由化のために、日本経済に与える不利益を、国内的にカルテルによる不自由化政策で補完しようとするところに無理を生じているのであります。そうしてこの結果、大資本に奉仕し、財閥を育成し、国民経済民主化に反する日本経済戦前復元政策と見なければならないのであります。政府の誠実なる反省を求めて、私の質問を終わるものであります。(拍手)    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  14. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お答えをいたします。第一点は、この改正独禁法に対し大きな例外を設けるものであって、これを骨抜きにするものではないかという御質問であります。言うまでもな、独禁法日本産業経済のいわば悪法ともいうべき基本法制であることは、これは言うを待たないのであります。これによって公正なる自由競争というものを確保するという趣旨に出ていることは言うを待ちません。今回提案をいたしました輸出入取引法改正は、亡れに対して、実際日本海外における貿易実情輸出入の状況を見まするというと、従来も過当競争弊害がある。これに対する外国からの非難もずいぶんあることは、栗山議員も御承知通りであります。ことに、貿易自由化に伴って、この過当競争がさらに弊害を生ずるおそれがあるという見地に立って、民間業者共同行為によってこの弊害を除去しよう、もちろんそれを無制限に許すものではございませんで、その場合において、消費者や、あるいは農林水産業や、あるいは中小企業等立場を十分に顧慮して、私どもはこれを認めよう、そうして弊害を除去しよう、こういうことでございます。また、これについて相当な監督をしていかなければならぬことは言うを待たないのでありまして、一般消費者や、あるいは中小企業農林漁業等立場を擁護する立場から、相当な監督をしなければなりませんが、それをもって官僚統制の復活であるというふうにごらんになることは、私は実態に当たらない、かように存じます。  第二は、本法改正国際関係から見て何か悪い影響を与えるものじゃないかということでありますが、むしろ、従来日本海外における非難は、過当競争によってその国の産業秩序を混乱せしめるという点に非難が与えられておるのでありまして、従って、むしろこれによって、輸出入貿易日本貿易関係秩序立ってくるということは、決して海外関係を悪くするものではなくして、むしろよくするものであると思います。  第三は、日本経済欧米諸国経済と比べて見るというと、ずいぶん日本経済には後進性がある。欧米諸国に比較してまだそこまでいっておらぬ点がたくさんある。こういう際に貿易自由化をやるならば、非常に日本経済は困りはしないかという点であります。日本経済全体として、私ども貿易自由化というものを採用するにあたりまして、日本経済実態がどうあるかということについては、十分われわれとして検討して、その方針をきめているのでありまして、日本経済をさらに拡大し、国際競争力を強化して、日本経済発展せしめるためには、貿易自由化原則をとることがよろしい。ただ、御指摘のように、日本産業構造のうちには、後進性の強いものもございます。これらのものに対して貿易自由化によるところの影響については、十分慎重な考慮をして措置を講ずべきことは当然であると思います。  過当競争原因は、要するに供給有効需要との関係においてアンバランスであることから生じているのだから、この有効需要拡大するように積極的に努めることの必要があるというお考えに対しましては、私も全然同様に考えております。ただ、その際に、共産圏との貿易を、日本がこれを阻止しているというふうな御意見がございましたが、御承知のように、ソ連との間の貿易については、貿易協定ができまして、漸次拡大してきております。ただ、遺憾なのは、中共との貿易関係でございますが、これは私の方からこれをやめたということではございませんで、従って、われわれは、そういうイデオロギーの違っているといなとにかかわらず、日本のこの貿易経済の交流は、いかなる国ともいたす、お互いお互い立場を十分尊重し、理解し、これを侵さぬという前提に立って、どことも貿易をしていくつもりでございます。  貿易自由化が何か後進国との貿易を狭めるおそれがあるというふうな御議論がございますが、私はそうは思いません。日本経済から申しますというと、全世界貿易拡大して、この間における日本産業立場を十分強化し拡大していくということが、日本産業にとって必要であり、そのためには、貿易自由化のこの国際的体制に順応して、日本においても貿易自由化原則を採用することが適当である、かような見地に立っております。もちろん貿易自由化について、それぞれ慎重なる考慮を払って、各種の産業に及ぼす影響、また、日本産業の特殊性というものを十分考えて、慎重な態度で臨まなければならぬことは、御指摘の通りでありまして、政府としても、そういう考えで進んでいくつもりであります。(拍手)    〔国務大臣菅野和太郎君登壇拍手
  15. 菅野和太郎

    国務大臣(菅野和太郎君) 総理大臣と私との二人に対する御質問につきましては、ただいま総理大臣からお答えがありましたので、私も総理大臣と同意見であります。  なお、貿易・為替の自由化について、三年間で九〇%の実現は困難じゃないかというような御意見があったようでありますが、これは、政府として三年間に九〇%ということをきめたのではありません。去る一月十二日に貿易・為替の自由化の促進閣僚会議におきまして、貿易自由化を急速にやるということを決定いたしたのであります。そこで、急速とは大体目標はどんな目標であるかという御質問がありましたから、大体三年間で九〇%をやりたいという私の希望を申し上げたのでありまして、従いまして、目下各省においてこの具体策を検討中でありまして、本月末までに大体スケジュールを作ります。それによって何年間に何パーセントということが大体決定されるのであります。従いまして、三年間九〇%というのは、まだ政府の決定でありませんから、さよう御了承を願いたいと思うのであります。  なお、無計画にやっているじゃないかというお話がありましたが、決して無計画ではありません。政府といたしましては、各省におきまして目下具体策を検討中でありまして、その各省においてきめました具体策を総合いたしまして、今月末までにスケジュールを作って、そうして初めて計画的な発表をいたしたいと、こう存じておる次第であります。  それから農林大臣に対しての御質問がありましたから、かわってお答えいたしますが、貿易・為替の自由化によって、農産物などに対して影響を与えるからして、農民あるいは水産業者に不利益をきたすのじゃないかというようなお話があったように思いますか、この貿易・為替の自由化によって、農業あるいは水産業に対しては打撃を与えない具体策を今考究中であります。たとえば大豆のお話がありましたが、大豆でありますると、平均手取り価格をもって農民から大豆を買い上げていくということについて、目下具体策を考究いたしておるのでありますからして、貿易・為替の自由化によって、農林あるいは水産業に対しては大体打撃を与えないという方針で、こり具体策を考究中なのであります。(拍手)    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇拍手
  16. 藤山愛一郎

    国務大臣(藤山愛一郎君) 御答弁申し上げます。  ただいま栗山議員が御指摘になりましたように、一九五八年ガットにおきましては、国際的制限的商慣行の弊害に関する決議が成立いたしております。ただこのガットの決議は、国際・カルテル貿易発展を阻害し、関係諸国経済発展に有害な影響を与える場合について非難しているものでございます。また同時に、各国の反カルテル法制も、貿易通商の円滑なる拡大を目標とする規定まで排除しておるものではないのでありまして、今回の輸出入取引法改正は、従来とかく過当競争に陥っておりましたわが国貿易取引秩序確立するものでありますから、この規定に反するものではないと思っております。  また、お話のように、ガットやコロムの緩和を通じて海外有効需要の開拓をはかるべきことは、これは当然のことでございまして、われわれといたしましても最善の努力をして参りたいと思っております。  なお、ガット三十五条援用撤回の問題でございます。御承知通り、今日三十五条を援用している国は十四カ国に及んでいるのでございまして、われわれとしてまことに遺憾な次第でございます」が、しかしながら、これは日本ガット関係に入ることによりまして、戦前のごとく、日本商品がこれらの国の市場に再びはんらんするのではないかという危惧の念から、三十五条の援用をいたしておるのでございます。そうでございますから、今回のような貿易秩序確立をはかって参りますことは、この三十五条援用撤回に対する非常に大きな根本的な基底をなすものと考えるのでございますが、われわれといたしましても、ガット加盟国の多数で為ります十四ヵ国というような国が三十五条を援用しておりますことは、ガットの運営を阻害するものでありますし、またガッド全体としても重大な関心を持たなければならぬ問題であることは当然でございます。従いまして今日までガット匡おいて、それらの問題について日本立場を明らかにして参りますと同時に、今日ジューネーブに行なわれておりますガットの総会等におきましても、議題としてこれを取り上げて、ただいま討議をいたすように進めているのでございます。また、個別的にこれらの国々に対して援用撤回を求める説明をいたしますことは当然で摩りますが、同時に通商航海条約もしくは貿易協定等を締結いたします場合に、それらの点について十分説明をいたしてきておるのでございましてさきに豪州等が期限付きで援用撤回をいたしたのでありますが、数日前に締結いたしましたマラヤとの通商協定におきましては、ガット三十五条援用撤回を承諾いたしたのでございまして、十四カ国がこれで十三カ国になったわけでございますが、できるだけ今後ともそういう両様の線によりまして努力して参りたいと存じております。(拍手)    〔国務大臣海田勇人君登壇拍手
  17. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申し上げます。  今回の為替・貿易自由化は、日本経済の運営を正常化し、また経済基盤を拡大して競争力を強め、国際貿易拡大するための手段でございまして自由化自体が目的ではございません。日本経済をより高め、国内の消費に、もっといいものを安く、たくさん生産するということの手段でございます。従いまして、具体的に御質問のありました点につきましてお答え申し上げまするが、総理大臣あるいは菅野経済企画庁長官のおっしゃるごとく、決して無計画ではやっておりません。対ドル地域に対しまする十品目制限撤廃計画的にやっておるのであります。また、経済の育成のための手段でございますから、無理をして経済をこわしてもいかぬことは理の当然でございます。従いましてお話の石炭、石油、非鉄金属工作機械につきまして簡単に申し上げますると、御承知通り、石炭の合理化法は三十八年度を目標にしておるのであります。重油ボイラー規制法も三十八年の十一月でございます。これは三年以内では石炭の状況は自由化できません。原料炭は、外国のそれと日本のそれとはトン当り二千五百円違っておるのであります。千二百円下げたってこれが競争できるはずがございませんから、これは三年以内ではできませんということをはっきり申し上げます。石油につきましては事情が違いまするが、石炭との関係がございますから、今いつとは申し上げられません。これはお考えを願いたいと思います。次に、非鉄金属、いろいろな種類がございますが、今年の一月から銅合金くずは自由化いたしました。しかし、故銅、いわゆる銅につきましては、六、七万の鉱山に働いておる人々のことを考えなければなりません。しかも、また日本の銅粗鉱は外国よりも相当高うございます。従いまして、これは一番おそい部類に入るのじゃないかと思います。三年間ではとてもできないと思います。また、自動車その他の工作機械につきましても、これは日本工作機械体質改善が十分できて、外国との競争力が来年できれば来年やってもよろしゅうございますが、二、三年のうちは大体、全体としてできないと思います。競争力のできたものから随時やっていこうと考えておるのであります。その次の、消費財の輸入につきまして、国産奨励はわれわれの常に考えておるところでございまするが、外国の消費財で非常にいいものはある程度日本に入れまして、国産品の品質改良の刺激にすることも、経済拡大の一つの手段でございます。従いましてお話の通り、先般消費物資につきまして、輸入の許可申請を許しましたところ、予定の五百万ドルの十倍をこえる六千数百万ドルの輸入申請がございましたが、これは予算上相当切って国内製品の品質の改良に役立つようなものからある程度認めていく、今後もその方針は続けていきたいと考えております。  また不当な利益をあげるもの、たとえばバナナとか腕時計等につきましての輸入は、御承知特定物資輸入臨時措置法がございます。この特定物資輸人臨時措置法は今後も続けていく考えでございます。また最後に、輸入カルテルの問題でございまするが、これは安い物が輸入できるときに何もカルテルを作る必要はございません。特定の品物につきまして先方が独占的に非常に高く売ろうとする、その場合に輸入業者競争で高い物を買うということはよくございません、従いまして、こういう場合につきましては、生産業者協定を認のて適当な値で輸入するようにする措置でございます。安い物につきましてこういう措置をとろうという考えは毛頭ないのでございます。なお、関税制度につきましては大蔵大臣よりお答えになると思います。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  18. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 関税についてお答えをいたします。  まず第一は、関税表品目並びにその分類の問題でございます。今後これを相当品目もふやすし、細分化していく、その必要のあることは政府も認めております。そこで今国際的に広く使用されておりますブラッセル関税表、これを基準とするという考え方が最も望ましい、かように思っておりますので、ただいま関税率審議会におきまして検討をすでに開始いたしております。この新関税表ができ上がりますと、大体品目といたしましては二千ないし三千というようになるだろうと、かように予想いたしております。  次に、関税が、貿易自由化いたしました後において、産業保護の機能を果たすということにつきましては異論のないところでありますし、また他面、この関税は、わが国国内の物価体系に与える影響というものも非常に大きいのでございますから、これについても十分考えていかなければならない、かように考えております。従いましてその適正な関税率というものをどういうようにしたらいいか、これは十分関係の方で検討して参るということでございますが、今次の輸出入取引法改正後の動き等も見まして、その実態に即応するような措置をとりたい、かように考えます。その際に、中小企業、農業等、競争力の弱い産業保護につきましては十分考えていくつもりでおります。大豆についてのお話がございましたが、先ほど農林大臣から御説明いたした通りでありまして、ただいま検討中であります。  次に、関税率の問題でございますが、関税率水準、こういうことはなかなか取り方がむずかしいのであります。ただいまお話になりましたように、イタリアなどは三五%、非常に高いじゃないか、日本は少し安いと、こういうように御指摘がございましたが、イタリアのこの関税率水準として、いわゆる三五%と申しております場合には、国内消費税の収入をも含めて、そしてこの率を出しておるようでございますから、これはこの比率だけを直ちに比較することは当を得ないように思うのでございます。ことに、わが国の場合におきましては、御承知のように原材料等、無税あるいは非常に低関税のものもございますから、そういう意味から見ますと、全体の輸入総額に対する関税収入という比率をとってみますと、無税や非常に低率のものがありますから、低い率になって参りますが、しかし、これを有税品の輸入だけについて、輸入数量、金額、関税収入、これを比較してみますと、日本におきましては、一九五六年では一六・九%ということであります。一九五八年は十六・九%でございます。米国は一九五八年が二・一%、カナダは五七年一六・一%、こういうことでございますので、わが国の関税率そのものが特に安いとか、これはうんと引き上げ得る余地があるとは必ずしもいえる筋ではないように思います。先ほど御説明いたしましたように、品目の追加並びに分類等をいたします関税率審議会において、国内産業に及ぼす影響あるいは物価等を勘案して、適正な関税率を検討していただくことにいたしておりますので、関税率審議会ですでに取り上げております。そういうことでございますが、非常に広範であり、十分慎重に検討しなければならないことでございますので、急いではおりますが、この国会には間に合わない、次の国会提案して御審議をいただく、かような段取りでただいま運ぼしておる次第でございます。(拍手)    [政府委員佐藤基君登壇拍手
  19. 佐藤基

    政府委員(佐藤基君) お答えいたします。  独占禁止法制のあり方は、わが国経済の基本にかかわる重大問題でありまして、現在の民主的な経済体制のもとにおいては、独禁法の基本理念ともいうべき自由かつ公正な競争の原理というものは、軽々しくくずすべきものでないと信じておるのでありまして、私といたしましては、今後もあくまでこの建前を堅持する覚悟であります。今回の輸出入取引法の一部を改正する法律案につきましても、国内の自由かつ公正な競争に悪影響を与えることがないようにとの態度を堅持する立場から、通産省との間に十分意見の調整を行なったのでありまして、先ほどお話のあるように、公取は唯々諾々としてこの法案に応じたということは決してないのであります。さらに、この法案の運用にあたりましても、公取としては、独禁法の根本理念に照らしまして特段の配慮を加える考えでおります。(拍手)     ─────────────
  20. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 島清君。    〔島清君登壇拍手
  21. 島清

    ○島清君 ただいま通産大臣より提案理由趣旨説明のございました輸出入取引法の一部を改正する法律案につきまして、私は民主社会党を代表し、岸内閣総理大臣並びに関係各大臣に質問を申し上げたいと存じます。  詳細の条項にわたりましては、当該委員会の質疑に譲ることにいたしまして、ここでは改正案の法意、改正点の大要概略に限ってお尋ね申し上げます。  ただいま貿易自由化に伴ってその場必要に基づいて本案提出したのだとの説明を承りましたが、しかし、法案の内容の最も重要な部分は、今日、岸内閣が重要施策の一つとして強力に推進しておる自由化とはおよそ似ても似つかない統制とカルテル化にありますことは、あえて言を待つまでもございません。ソツのない答弁技術の専門家であられる岸総理の名人的な説明をもっていたしましょうとも、それは否定することのできない厳然たる事実ではないかと存じます。政府は今までにも数回に及んで独禁法輸出入取引法改正を企図されました。だが、しかし、そのつどきびしい世論の反撃にあって、見るもむざんな敗退を繰り返して今日に及んでおります。今回は、貿易自由化に籍口し、大企業による弱小資本の吸収と淘汰を容易ならしめ、企業統合、資本の集中化を行なうためには、現行独禁法が障害となるので、これを骨抜きにし、多年の宿願を達成しようとのねらいから、新しい擬装をこらして提案されたのが、いわゆる本改正法案の本旨ではなかろうかと存じます。  かかる疑問と、また憂いを感じつつ、総理大臣にお尋ね申し上げたいと存じます第一の点は、主務官庁の権限を不必要に広範かつ強化し、経済統制べの道を広げ、過当競争の防止、輸出入取引における秩序確立という美名のもとに、カルテルの強化を企図していることは、おおうべくもない明瞭なる事実でございます。従いまして、そのことはいたずらにガット加盟国を刺激し、貿易振興どころか、かえってわが国輸出を阻害するの結果を招来するおそれ大なるものがあると存じます。不肖、寡聞にいたしましてこの種の取引制限規定を設けた国は世界にもきわめて例がなく、ただ一つ西独にあるだけだと承っております。そうであるといたしますならば、世界に類例を見ない制限規定を立法化されましても、はたしてガットや日米友好通商航海条約等にも抵触しないとの信念でおられますかどうか。抵触しないとの確信でおられるようでございますが、そうであるならば、その確信のほどを裏づける条文をお示しをいただいた上で、御説明、御答弁を願いたいと存じます。  第二点は、本改正の結果は、必要以上に輸出業者国内における独占を助長し、他の中小企業や新規の事業者へ不公正な圧力を加える可能性が出て参ることでございます。この一事を指摘しただけでも、本案が、ただいま栗山議員も御指摘になりました通り、世評の通り、いわゆる独禁法骨抜き法案であるという事実を実証して余りあるものがあると存じます。もちろん、私のこの見方に同意だと言われるきずかいはいささかもございませんでしょう。そうでないと否定されるにつきましては、国民が十分に納得の参りますような御説明をいただきたいと存じます。政府は、本案をもって貿易自由化に伴う必要な対策であると称しておりますが、自由化対策の全貌を明らかにすることなく、本案のみを急ぐ真意が那辺にあるのか、はなはだ理解いたしかねますので、その点も明らかにしていだきたいと存じます。世界の趨勢は、独占禁止法の強化の方向にありますことは、私が申し上げるまでもございません。なかんずくアメリカ合衆国におきましては、独占禁止を世界法にまで拡大強化しようとする意欲や動きさえ見られますこと、これまた総理御承知通りでございます。アメリカ経済と緊密の関係にあり、将来といえども保守党内閣が存続する限りそうであり、ますます緊密の度を深くするであろうと思われる日米間の政治は言うに及ばず、経済関係より見まして、独占化政策カルテル強化政策日本経済の方向を、はたしてアメリカ側が歓迎するか、はなはだ疑わしいと思います。私がこのような御指摘を申し上げなければならないということは、総理並びに自民党のため、まことに不名誉ではないかと存じますけれども、かかる観点に立って観察するとき、日米間の経済の友好関係がはたして持続され、何の不安もなく、疑いもなく、その発展が円滑に期待できると総理は確信をしておられるのか。どうか率直に御所見を承りたいと存じます。  以上で総理に対する質問を終わり、次は通産大臣にお尋ねをいたします。  外貨割当のもとに特権的地位をむさぼっていた大企業は、今後カルテル強化によって恩典にあずかることができます。自由化官僚統制の終焉を告げるものであるはずでありますにもかかわらず、本案では、すべて共同行為が認可制の対象となり、戦時統制にも匹敵する官僚支配が温存をされております。官僚統制自由化の反対概念だと思いますが、政府の御見解によると、官僚支配と自由化も矛盾なく両立すると考えられるのか、それともまた、これほど明瞭な事柄に対しましてすら官僚支配ではないと強弁されるつもりなのか。国民を納得せしめるに足る御答弁を伺いたいと存じます。  次に、ただいま総理にもお尋ねいたした点ではございますが、別の角度から通産大臣にも御答弁願いたいと思いましてお尋ね申し上げますが、すなわち、貿易を国が統制しているのをやめようとするガットの精神に反し、諸外国との商慣習を制限したり、貿易を国が統制したりするのは、国際的取りきめに反して、自由化しないのと同然ではないかとの非難が諸外国より出てくるものと予想されます。さらにその上、来週の月曜日から開かれるジュネーブでの第十六回ガット総会では、日本品の進出を押えることをねらいに、市場擾乱の回避問題が重要議題になるものと見られていると新聞等は報道され、関係者をいたく憂慮させているようでございます。あれこれに照らしてみるとき、政府の考えているほど日本に対する諸外国の見方や考え方は甘いものではないということが申されると思います。それらに対する認識、対策等について御所見を承りたいと存じます。  次に、輸入商品国内取引まで共同行為を許したのは、国内取引輸入の名で規制するものでありまして、国内の取引まで規制が及ぶことに相なるわけでございます。その防止策予防措置等についてどのように考えておられるかを承りたい。  次に外務大臣にお尋ねを申し上げます。日米友好通商航海条約には、次のような規定がございます。すなわち、「両締約国は、競争制限し、市場べの参加を制限し、又は独占的支配を助長する事業上の慣行で商業を行う一若しくは二以上の公私の企業又はそれらの企業の間における結合、協定その他の取極により行なわれるものが、それぞれの領域の間における通商に有害な影響を与えることがあることについて、一致した意見を有する。」との条文でございます。本案は、明らかに日米間の友好通商航海条約にも抵触し、あまっさえガット精神にも反するものと思いますが、外務大臣の御所見を承りたい。  次に農林大臣にお尋ねいたします。輸入に関する需要者協定を促進することは、生産財、消費財の値上がりを来たすものとして、各農業団体もこぞって反対をし、また農林省も強く反対をしていたとか仄聞をしております。また、当然そうあるべきだと確信をいたしますが、農林大臣として賛成された経過、その理由、農民に不利益をもたらさないという確信があるようでございますが、その理論的な根拠をお示しいただいた上で御答弁いただきたいと思います。  次に経済企画庁長官にお尋ねいたします。五月までに自由化のプログラムを発表すると方針をきめておいて貿易自由化べの総合施策を発表しないうちに本案提出を見たのは、企画庁の存在が無視されたことを意味するものとして、きわめて遺憾のことだと思います。責任上の立場より、長官の所見と、同時に、本案影響を受けて一般消費者のこうむる不利益をどのような施策をもって擁護しようとされるか、伺いたいと存じます。  次は公正取引委員会の委員長にお尋ねいたします。総理並びに各大臣に対する私の質問趣旨によって、私の問わんとする要旨については、すでに御了察願っているものと存じます。御承知通り本案内容は、独禁法カルテル強化、独占化の事項が大部分を占めております。あなたは、この法案が成立しても独禁法に何の影響も与えないとの見解なのか。また、私が指摘申し上げているように、影響を受けると考えているとするならば、なぜ唯々諾々その成立を黙視しているのか。なおまた公取委員会としては、あなたばかりではなくして、全員が何らの影響も受けないとの見解をとっているのか。
  22. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 時間が来ました。
  23. 島清

    ○島清君 公取では本案策定の過程でいかなる見解のもとに、いかなる努力を講じて来られたか。国民経済の民主的発展のため、独禁法を守るべき職責上の立場にある公取委員長たるあなたの本案に対して示した態度は、みずからの権威を冒涜し、存在を否定する態度であるとのそしりを免れないと思います。
  24. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 時間が来ました。
  25. 島清

    ○島清君 よしんば百歩を譲って、カルテル化、独占化を承認するとしても、立法の体系からいたしまして、独禁法のワク内で扱うべき明瞭な事柄だと思います。  以上指摘した数点に対してお答え願いたい。  さらにまた、世界各国の独占禁止の傾向はますます強化の方向にありますこと、新しく申し上げるまでもございません。世界的視野に立って、世界的傾向と本案との関連をどのように認識しておられるか、すなわち本案改正独禁法番人として好ましいと考えておるかどうか、あわせてお尋ねをいたします。(拍手)    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  26. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お答えをいたします。  第一点の独禁法との関係につきましては、先ほど栗山議員に対してもお答えをした通りでございます。私どもは、決してこれによって大企業による企業の統合であるとかあるいは資本集中というようなことを助長するような考えを持っておるわけではございませんで、貿易自由化に対処して、過当競争が生ずるおそれを十分考えて、これに対する必要最小限度の処置をとろうと、こういうことでございます。  第二の、日米間の経済的友好関係が、この立法をすることによって工合が悪くなりはしないかという点に対する御質問でありますが、国際的の関係におきまして、ガット関係、また日米通商航海条約との関係は、外務大臣から詳細に御説明すると思いますが、私は、従来日米の関係におきましても問題になるのは、日本商品が無秩序輸出されて、それによってアメリカの市場や産業に対して急激ないろいろな悪影響を及ぼすということがいろいろと問題になったことは、島議員も御承知通りであります。むしろ、秩序ある輸出をしていくということは、アメリカの強く願っていることであり、また、日米間の貿易を正常の基礎において拡大する上においても、これは必要なことなんです。そういう意味から申しまして、これによって輸出貿易上の過当競争というようなものが防止されて、貿易上の秩序確立されるということは、むしろ日米間の経済協力の上からいえば、いい結果こそもたらせ、悪影響を及ぼすことは絶対にございません。(拍手)    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  27. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今回の為替・貿易自由化は、今お言葉にもありました外貨割当によりまする特権階級を排除するということがこの目的なのでございます。自由化というのは、特権階級を排除する。それによって国内経済の正常化を来たす。客観性がないとおっしゃいますが、昨年暮れに繊維関係の原料、綿花、羊毛の自由化を発表いたしましたところ、毛糸は相当下がっております。綿も上がり方をとめて下がりぎみでございます。こういうことがいわゆる特権階級を排除して経済の正常化のためだ。おわかりになると思います。  なお、お話の通り、こういうことをやったら国際的にどうかという問題でございまするが、その言葉のうちに、ジュネーブで、日本に対して市場撹乱のおそれがあるから警告を出すという議論がある。そういうことがございまするから、輸出入取引法改正して、輸出過当競争世界市場の撹乱のもとを絶とうとするのがこの法律であるのであります。  また、官僚統制とおっしゃいますが、これは特定の場合に特定の物資について、厳重な制限のもとに政令でやるのであります。もしその政令でそういう措置をした場合に、不当な場合があったり、弊害が起こった場合には、何どきでも取り消し、また変更することを規定いたしておるのであります。  また、輸入カルテルの問題についていろいろな例がございまするが、一国を指定することはここではやめますが、向こうが特殊物資について統制をして、日本に高く売りつけるようとしておるのであります。そういう例があります。そのときに日本輸入業者は、高くても何でも、特定の需要者がほしがると言って、高値買いをする例が今までも多いのであります。私は、日本経済、ことにお話の消費者のために、そういう場合におきましては輸入業者が高値買いをすることを防止するために、その輸入物資生産業者共同行為を認めて、高値買いをやめさせて、そうして経済の正常化と国内の物価の引き下げ、安定化をはかるためのカルテル行為でありまして、これは先ほど申し上げましたように品目を指定いたしましてやりますると同時に、主務官庁並びに公取の委員の方々と十分相談してやることにいたしておりますので、御心配の点がないどころか、御心配の点を防止するための措置であるのであります。御了承をいただきます。(拍手)    〔国務大臣菅野和太郎君登壇拍手
  28. 菅野和太郎

    国務大臣(菅野和太郎君) この改正案農林省が反対しておったにもかかわらず賛成したのはどうかという御質問があったように思いますが、この改正案につきましては、農林省といたしましては、この改正によって農林漁業者利益が不当に害されないようにという意味で、意見を申し述べておったのでありまして、むしろ進んで農林漁業者利益が増進されるように考えてもらいたいということで、通産省といろいろ折衝いたしておったのでありまして、従いまして、この内容あるいは運用につきましては、農林漁業者には不当な損失を来たさないように考えておるのであります。なお、もしも農林漁業者利益を不当に害するような場合には、もちろんこのカルテルの認可を認めないという方針でおるのであります。  それから、経済企画庁長官に対しての御質問がありましたが、先ほどからお話がありました通り、この改正案貿易取引秩序化する意味においてこの改正案が出ておるのでありますからして、これは貿易・為替の自由化内容とこれとは別であります。従いまして、この改正案ができることは、貿易取引秩序化するという意味においてもちろん賛成でありまして、この法律案提出せられる前に、通産省から経済企画庁へも相談があってやったのでありますからして、決して抜き打ち的にやったのではありませんから、さよう御了承を願いたいと思います。(拍手)    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇拍手
  29. 藤山愛一郎

    国務大臣(藤山愛一郎君) ガットの一九五八年の決議につきましては、先ほど栗山議員にお答えをいたしましたから、省略させていただきます。  日米通商航海条約の第十八条第一項は、御承知のように、企業合同やカルテル協定が、両国間の通商発展に悪影響を及ぼすようなときには、一方の国の要請によりまして協議をするということでございます。今回の輸出入取引法は元来輸出入秩序確立目的とするものでありまして、過当な競争を防止し、輸出を正常に伸長させるということでございますので、この通商航海条約十八条一項には抵触をいたしておりません。また、この法律に基づく各種の業者協定につきましても、外国との条約等に抵触するものについては許可をしないことになっておりますので、差しつかえないと思っております。(拍手)    〔政府委員佐藤基君登壇拍手
  30. 佐藤基

    政府委員(佐藤基君) お答えいたします。  この法案につきましては、独禁法の垂れ理念を堅持しまして、特に国内の自由かつ公正な競争に悪影響を与えないようという配慮から、通産省とこの法案の立案にあたりまして十分意見の調整をしたのでありまして公正取引委員会の使命を忘れて簡単に応じたというものではありません。  なおこの法案の運用にあたりましては、たとえばカルテルの設立の認可というような問題がありまして、これはやはり公取もこれに関与するのでありまして、その際においても十分に独禁法の根本理念を考えまして、十分な配慮を加える所存であります。(拍手)     —————————————
  31. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 牛田寛君。    〔牛田寛君登壇拍手
  32. 牛田寛

    ○牛田寛君 私はただいま行なわれました輸出入取引法の一部を改正する法律案趣旨説明について、総理大臣初め関係閣僚に対し、若干の質疑を行なうものでございます。  周知の通り近年のわが国経済成長は、まことにめざましいものがあると言われております。この事実はだれしも認めるところではありますが、ひるがえって国民大衆の一人々々の生活内容と、その環境に目を向けるならば、はたして政府当局が述べられている三十五年度における経済の順調な発展の予想、あるいは国民生産六・六%の実質増加の見込みというような、その表現から受ける明るい希望のある見通しというものが、現実の生活の上にどのように具体化されているか、まことに疑問に思うわけでございます。一般国民はこの点に最も深い関心を持ち、また同時に不安を抱くところでもあります。わが国経済の特徴と言われる二重構造、あるいは所得格差の増大、この基本問題解決のために総合的な施策を強力に推進することが最も緊急を要することと考えるものであります。貿易拡大日本経済発展の上に大なる寄与をもたらしたのでありますが、その日本輸出貿易発展は、経済二重構造の中で最も恵まれざる立場の中小零細企業の過重な労働ど苦悩によって、その主要部分が支えられてきたと言っても過言でないと思うものであります。  さて今回の輸出入取引法の一部改正案提案理由として、輸出貿易における過当競争、あるいは貿易自由化に伴う過当競争等の防止があげられておりますが、貿易自由化は、わが国民の意思のいかんを越えて、これが実施に向かっていることは必然の事実でありまして、以上の点から考えると、わが、国貿易の上に重要な役割を果たしている中小企業に対する影響を最も重要視せざるを得ないのであります。この立場から以下数点についてお尋ねしたいのであります。  初めに総理並びに通商産業大臣にお尋ねいたします。貿易自由化に対処するためには中小企業の振興が緊急の問題であると言われておりますが、同じく貿易畠化対策として打宙された今回の輸出入取引法改正にあたってこの改正に基づいたもろもろの施策の上において、あくまでもこの中小企業の振興は原則として守られていくのでありましょうか。守られるとするならば、具体的にその事実を明確にせられたいのであります。  第二に、総理並びに公正取引委員長にお尋ねいたします。本来、輸出入取引法は、わが国貿易発展のために、輸出入取引に関して独占禁止法の適用除外として認められているものと理解しているのでありますが、このたびの改正によりまして、その理由のいかんは別として、次第にカルテル体制強化の方向へ進みつつあることは明白な事実であります。本改正案においては国内取引規制の中でアウトサイダー規制が強化されております。立法の動機のいかんにかかわらず、この方向は、すなわち大企業の独占によって中小企業が一そう圧迫される方向に道を開く結果になると考えるのであります。当面の過当競争に対する臨時的措置としてはやむを得ないと考えるのでありますが、はたして臨時的措置としての改正であるのか。臨時的措置であるならば、いかなる時期に解消される方向に向かうのか。または恒久的措置として改正されるのか。この点、明確に総理大臣よりお示しいただきたいのであります。  さらに、独占禁止法の精神と輸出入取引法目的から考えて、このような改正の方向は好ましいと考えられるのか、あるいはそうでないのか、また将来いかにあるべきかについて、公正取引委員長よりお答えいただきたいのであります。  第三に、輸出規制の点に関連いたしまして、三点、通商産業大臣にお尋ねいたします。  第一の点は、輸出過当競争防止のため、生産者等に対してのアウトサイダー規制が行なわれることであります。輸出過当競争の発生する貨物品目の大部分が中小ないしは零細企業生産者の手になるものであって、しかも、アウトサイダーは、零細ともいうべき小規模事業者が大部分を占めております。卑近な実例の一つといたしまして、いわゆる一ドル玩具と呼ばれている金属玩具でありますが、これが周知のごとく買いたたかれてきた。すなわち、これが特定の問屋との結びつきのないものにおいてはなはだしい。これがダンピングと呼ばれ、過当競争となって現われていることは御承知通りでありますが、これを規制措置のみで解決せんとすることは、かえってこれら零細業者の販路をふざぐおそれもあり、圧迫強化になると思うのであります。また、数量の規制等については、実績がものを言う。すなわち、企業規模の大なるほど利潤が保証され、ますます格差を増大する傾向を強くする結果になると思うのであります。私ね、過当競争が阿ゆえに起こるか、その根本原因を断ち切らないままに、規制の強化にその解決の道を求めることは、はなはだ危険であると考えるゆえんでありますが、まずこの点について大臣の御所見を伺いたいのであります。  第二点は、玩具にいたしましても、また最近問題になりました体温計などの場合にいたしましても、過当競争の起こる根本の原因は、中小生産者の経営の不安定にあると考えるのであります。みすみす損とわかっていながら安売りに出る。その陰には、一刻も早く現金化を迫られている中小零細企業の経営上の弱い立場があると思うのであります。すなわち、金融措置を強化し、資金面での安定をはかること、経営の安定の方向べ中小生産者の保護育成をはかることが、まずこのような規制措置に先立って強力に推進されなければならないと考えるのでありますが、この点についての御所見はいかがでありましょうか、お伺いいたします。  第三点は、中小企業の強化育成を目的とした中小企業金融公庫等の金融機関が設置されておるにもかかわらず、結果においては、特に中小企業中の小規模零細企業等はその恩恵を受けがたい実情にあると思うのであります。過当競争防止等のため現行輸出入取引法の規制措置をさらに強化する必要があるというこの事実は、言いかえると、中小企業保護育成の施策が実際には非常に弱体であることを証明するものであると言い得るのであります。今後これらの保護育成の施策をどのように強化し、具体化される用意があるか、また、その効果に対する見通しを具体的に示していただきたいのであります。  第四にお尋ねしたい点は、本改正案で新しく追加されました貿易連合についてであります。提案趣旨によれば、中小商社の健全な発展をはかるとのことでありますが、その内容は、中小企業協同組合法における協同組合、あるいは中小企業団体法における商工組合等とは異なり、加入、脱退の任意性を欠く点、連合員の企業規模等に制限のない点等に問題があると考えるのであります。この貿易連合は、繊維輸出商社の特殊関係が立案の動機であるやに伺っておりますが、将来この運用のいかんによっては、これが独占企業系列化を作り上げる手段となり得る懸念を持つわけであります。このような機構をぜひとも必要とするいかなる理由があるのか、また、この組織の提案趣旨に沿った正しい運用はどのようにして保証されるのか、明確に、また具体的に、通商産業大臣に承りたいのであります。  さらに、以上の点について、独占禁止法目的を達成すべき責任を達成すべき責任を持つ公正取引委員長のお考えを明らかにされたいのであります。  最後に、総理並びに経済企画庁長官にお尋ねいたします。貿易自由化に直面して、表面化した輸出入取引に関する諸問題は、究極するところ、わが国の極度の過剰人口と経済構造の脆弱性に帰着するものと考えるものであります。すなわち、本法案におけるカルテル体制強化のごとき立法措置も、当面の臨時措置としては必要でもありましょうが、むしろ根本的な経済基盤確立のための総合的長期計画の強力な推進を望むものであります。以上の立場から、この総合計画の一環としての本法案の位置と意義とを明確に示していただきたいのであります。この点について、総理大臣並びに経済企画庁長官にお答えいただきたいのであります。  終わりに、国民大衆が、現在は困難があろうとも、将来に対する明るい見通しと確固たる希望を持って、自由にその力量を発揮し得る方向に、強力な施策を推進されることを強く要望いたしまして、私の質疑を終わります。(拍手)    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  33. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本産業構造の上から言い、また貿易の上から見ましても、いわゆる中小企業の持つ意義がきわめて重要であるということは、牛田議員の御指摘になった通りであると私ども考えます。従って、日本として、この中小企業に対して適切な振興策、育成の方策を講ずべきことは、これは当然でございます。われわれは、従来、金融の面からも、あるいはまたこれを組織化する意味からも、いろいろな法制や施策を講じてきておりますが、なお、この貿易自由化に伴って、中小企業というものが、経営力が弱いために、この自由化影響を受けることが相当に大きいということも十分頭に置いて、この貿易自由化を進めていかなければならぬと思います。従って、いわゆる貿易自由化におきましては、この中小企業体質改善の問題、これに対して国際的競争力をどうしてつけていくかという意味において、物に総合的な立場から各種の施策を強化していく必要があると、かように考えております。  この輸出入取引法の今度の改正というものは、先ほど来お答え申し上げておるように、日本輸出入貿易に関連して、従来も相当に過当競争が行なわれて、不必要に安売りをし、その結果、かえって輸入国の産業経済を乱すということで、非難を受けておったのでございます。特に、自由化になるために、その傾向を一そう促進するような状況でございますから、どうしてもこういう立法を必要とすると思うのでございます。しからば、これは恒久的な制度としてこういうものを考えるのか、臨時的なものであるか、臨時的と存えれば、いつやめるのだということでござやますが、もちろんわれわれは、産業経済の基体としては、独禁法原則を守るべきものである、それの、とにかく制限をしておるとはいえ、必要最小限度とはいえ、例外を作っているのでありますから、そういう必要がなくなれば、この立法はやめるべきものである、その意味においては、臨時的と考えてよろしいと、こう思います。  それから、貿易自由化に伴って総合出な計画を樹立する必要があるということは、お話の通りでありまして、その上において、この立法はどういう地位をとり、どういう意義を持っておるのかという御質問でありますが、この総合的な貿易自由化についてのスケジュールなり計画は、目下政府都内において検討中でございます。これはもちろん、全面にわたって基本的な措置も、また個々具体的な商品についての自由化スケジュールをきめるつもりであります。同時に、この立法は、今申すように、自由化ということを進め、いく上から必然的に起こってくる過当競争を防止するという趣旨の立法でいざいまして、大きく言えば、この自由化についての総合計画の一環のうちに入るものでございますけれども、取りあえずこの問題については必要に応じて改正したい、かように考えております。(拍手)    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  34. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 中小企業の振興は最も重大な政治の施策でございます。ことに、自由化になりますると、これに対しまする施策は万全を期さなければなりません。従来、中小企業団体法等によりまする組織の強化、また設備近代化、あるいは関係金融機関への財政投融資の増加等々によっていろいろ施策をしておりまするが、自由化に伴うこの上の施策といたしまして今国会におきましても、商工会法あるいは繊維工業設備臨時措置法の改正、あるいは中小企業業種別振興臨時措置法等の新しい施策を出しておるのであります。私はこういういろいろな方法によりまして、中小企業をこの上とも育成をいたしていきたいと思いますまた、輸出に関する玩具その他の数量の規制でございまするが、これは実績も考えなければなりませんが、経営のことも考えなければなりません。この規制をすること自体が中小企業のためになるようにという考えでやっていきたいと考えておるのであります。  第二の御質問貿易連合でございまするが、これはお話にもありましたごとく、特殊の産業に弱小の貿易商社が非常な過当競争をいたしましてその弊害外国にもまた国内にも起こっておるのであります。私は、中小の商社がお互いに連合して一つの大きいかたまりとなって貿易をすることが、この際特に必要であるというので、貿易業者の社団に対して法人格を認めることにいたしたのであります。お話のように、大商社がこれに加わって系列化するというふうなことは認めません。通産大臣の認可制度になっておりますので、あくまで中小企業過当競争防止により輸出並びに国内の取引の正常を期そうとする考えであるのであります。(拍手)    〔国務大臣菅野和太郎君登壇拍手
  35. 菅野和太郎

    国務大臣(菅野和太郎君) 貿易の総合計画に対して、この立法はどういう意義を持つかというお尋ねがあったのでありますが、その点につきましては総理大臣からすでにお答えがあったのであります。私も総理大臣と同じ意見を持っております。(拍手)    〔政府委員佐藤基君登壇拍手
  36. 佐藤基

    政府委員(佐藤基君) お答えいたします。  第一の問題は、カルテル体制が強化される、そのために中小企業が非常に圧迫されるという点に関する問題でございますが、今回の輸出入取引法改正におきましては、貿易自由化に伴う必要最小限度の措置にとどめることになっておるのでありまして、関連中小企業べの悪影響のないことを消極要件としておるのであります。なお、法の運用におきましても、さような弊害が生じないよう、十分留意いたす所存でおります。  次に、貿易連合の問題でございますが、貿易連合制度は、中小貿易業者過当競争の防止と、その経済地位の向上をはかるためのものでありまして、その認可要件におきましては、独占的な事態の生じないことを規定しております。従って大企業に対する中小企業の劣弱なものの地位を強化するためのもので、独占企業を強化するためのものではないと考えておる次第であります。(拍手
  37. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      —————・—————
  38. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第二、農地法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案趣旨説明)、  両案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。菅野国務大臣。    〔国務大臣菅野和太郎君登壇拍手
  39. 菅野和太郎

    国務大臣(菅野和太郎君) 農地法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。  農地改革及び農業協同組合法の制定は、農村における民主的傾向の促進、農業生産力の増進と農民の経済的社会的地位の向上とをはかることを期して行なわれたのでありますが、自乗十余年、最近におきまして、農民みずからの創意によりまして農業経営の合理化をはかるために、法人組織による農業経営を行なおうとする動きが高まっておりますことは、すでに皆様御承知通りでございます。このように、農民みずからの創意によりまして農業経営の合理化をはかろうとする動きが高まって参りましたことは、一面におきまして農地改革や農業協同組合に関する施策の成果の現われと見ることができると存ずるのでありますが、また一面におきまして、現行農地法農業協同組合法等は、このような法人組織による農業経営の発生を予想しておりませんことから、これに対応する規定を欠いておりますために、これらの動きは、これら現行の法制の整備を要請しているものと見ることができるのであります。  すなわち、農地法は、農地改革の成果を維持することを主眼といたしまして、農地の権利移動の統制をし、小作地の所有制限をし、その他小作関係調整をいたしておりますが、法人組織による農業経営を行なおうとする場合に、これらの統制規定をどのように適用すべきかにつきましては、必ずしも明確ではないのであります。また、農業協同組合法につきましても、生産の全面的な共同化を内容とする農業経営を農業協同組合が行なうことを認められず、その構成人員の最低限度を十五人としておりますことは、農業協同組合が農業経営を行なう場合の最低限度として必ずしも適当でないと考えられます。  以上の点にかんがみまして、この際、農民の創意を生かし、現行法の原則に沿って法人組織による農業経営が行なえるよう、早急に関係法律の規定を整備したいというのが、今回両法案を提出しました主目的でございます。  次に、法案の主要点を説明いたします。  まず、農地法の一部を改正する法律案につきまして、第一に、法人が農地の使用収益権を取得する場合の許可基準でございますが、実質的に自作農の延長発展と見られるような法人に限り許可を行なうことが適当であるという考え方から、試験研究または農事指導の用に供する等、相当の事由がある場合を除きましては、一定の要件を満たす法人、すなわち、その法人の事業が農業及びこれに付帯する事業に限られ、その法人の構成員となる農民は、すべてその法人に農地を貸し付け、かつ、すべてその法人の事業に常時従事する者であるという要件を満たす法人に限りまして許可を行なうこととしております。また、法人組織をとることによりまして、土地の兼併とか、実質的な不在地主の発生とか、あるいは小作料統制の逸脱等、農地法の基本原則に反する事態を招くことのないよう、これを未然に防止するという趣旨のもとに、取得し得る権利の種類は、試験研究または農事指導の用に供する等、相当の事由がある場合を除きましては、賃借権及び使用貸借による権利に限定しております。そして、要件を満たす法人につきましては、農地の借り受けの最高制限面積をその構成員の属する世帯の数に応じて引き上げることといたします。  第二に、小作地の保有限度に関してでございますが、要件を満たす法人の構成員が所有し、かつ、その法人に貸し付けている農地は、法律上、小作地ということになりまして、現行法では、在村一町歩という保有限度に制約されるのでありますが、このような農地は、これを一般の小作地と同様の取り扱いとすることは適当ではございませんので、この保有限度の例外とする措置をとることとしております。  第三に、要件を満たす法人が許可後においてその要件を欠くに至りました場合、またはその法人の構成員でなくなった場合の措置でございますが、このような場合には、その法人に農地を貸し付けております構成員が、貸付地を引き上げまして、もとの自作農に戻りますことが妥当であろうという考え方のもとに、貸付契約の解約等をいたします場合の許可の基準を整備することといたし、一定期間内にその解約等が行なわれないような場合で、その貸付地が農地改革により創設された土地でありますとか、または在村一町歩の小作地の保有限度を越えるものでありますとか、かような場合には国がこれを買収することとしております。  以上、農地について御説明申し上げましたが、採草放牧地につきましても、これと同様の取り扱いをすることとしております。なお、以上の農地法改正に伴いまして、要件を満たす法人の構成員等には農業委員会の委員の選挙権及び被選挙権を与え、また、果樹農業振興資金や有畜農家創設事業の施策を要件を満たす法人に対しても行ない得るよう、附則で関係法律の規定を整備することとしております。  次に、農業協同組合法の一部を改正する法律案につきまして、主要点を御説明いたしますと、  第一に、農業協同組合が農業経営を行なうことができることとしております。現行法のもとでは、農業協同組合は組合員たる農家の個別経営を育成することを目的とし、その個別経営に便益を供するために、採種圃、稚蚕共同飼育桑園等の農業経営を行なうことができるのでありますが、最近見られますような農業の経営を法人組織により行なって農業生産の合理化をはかろうとする要請にこたえるには、農業協同組合が独立の事業主体として、組合員の協同のもとに農業の経営を行なう道を開くことが必要であります。  次に、組合員の数につきましては、現行法のもとでは、農業協同組合の設立には組合員が十五人以上必要とされておりますが、当面、農業経営の共同化の予想されますのは、二戸、三戸といった小規模な地縁的または血縁的な結合に基づく団体も多いと考えられますので、農業経営のみを行なう農業協同組合に限り、その設立に必要な組合員の最低数を引き下げる等の措置を講ずることとしております。なお、農業経営のみを行なう農業協同組合は、その名称を農業生産協同組合とすることによりまして、農業経営のみを行なうものであることを明らかにすることとしております。  以上が両法案のおもな内容でございますが、なお、農地法の一部改正を行なうに際しまして、次の改正を一点つけ加えております。すなわち、かねて国により買収され、現在、自作農創設特別措置特別会計に所属する土地等で、自作農創設または土地の農業上の利用の増進という買収の目的を喪失したものの旧所有者への売り払いは、現行法では旧所有者一代限りとなつでおりますが、町村合併の促進や宗教法人の組織がえが国の政策として推進されたことにかんがみまして、これらの一般承継人に対してもこの売り払いを行なうことが、現行法の趣旨を生かすゆえんであると存じますし、また、個人につきましても法人との均衡をとる必要があると考えますので、この際、この売り払いの対象を旧所有者の一般承継人にまで拡大することといたしたのであります。  以上が農地法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案趣旨でございます。(拍手
  40. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。北村暢君。    〔北村暢君登壇拍手
  41. 北村暢

    ○北村暢君 私は日本社会党を代表してただいま議題となりました二法律案について、岸総理並びに関係閣僚に対し若干の質問をいたします。  農業法人化の問題は、三年前、果樹農業地帯等において、農家の所得税負担の軽減と農業経営の合理化、近代化をはかる目的をもって、農民の企業的意欲と創意によって発生した問題である。しかるに、当時、税務当局は農民の要求を全く無視してすでに設立登記の認められている農業法人に対してさえ、実質課税の原則を振り回し、これを否認する態度をとったのである。また、農林当局は、農業法人は自作農主義をとっている現行農地法の建前から直ちに認めがたい、との見解を明らかにした。わが党は、このような政府の無責任な態度を追及し、すみやかに解決することを要求して政府を鞭撻してきたのであるが、この間、衆議院農林水産委員会は、昨年三月二十七日、すみやかに農業法人制度の法的措置を講じ、これが育成を期すること、すみやかに農家の家族労働報酬を経費として算入するよう税制改正措置を検討すること、等の決議が行なわれたのである。その後すでに一年余を経過した今日、法人化に対する農民の要望はさらに高まり、放置できない情勢に追い込まれ、ようやく日陰者の農業法人を法的に認知するために、今回の農地法並びに農業協同組合法の一部改正案提出されたのである。    〔議長退席、副議長着席]  この改正案は、農業法人を認めるための必要最小限の改正にとどまる暫定的措置のように受け取れるのであるが、農業法人問題は、戦後の農地制度の根幹をなす自作農主義に重大なる影響を及ぼすとともに、農業生産性の向上と農家所得の増大から見て最大の難関である経営の零細性を克服し、農業生産構造の改善、ひいては農家の家族制度の封建性打破にまで及ぶ、農業の基本政策に関連する問題である。  まず、行政最高責任者である岸総理に対し、農政の基本的問題についてお尋ねします。  戦後における日本農業は、農地改革の成果の上に、農業生産面においても、技術面においても、かなり目ざましい発展を遂げ、五年連続の豊作をもたらし、国民経済の復興と発展とに寄与したが、反面、日本経済の二重構造的ひずみの拡大が見られ、経済の基本的な矛盾が激化するに至った。特に農林水産業はひずみの最たるもので、わが国人口の四割を占める農民の所得は、国民総所得のわずかに二割にすぎないほどの立ちおくれを示している。そして、その開差が漸次拡大の傾向を示しているところに日本農業の体質改善が叫ばれるゆえんがある。かかる農民を窮乏に陥れた事態は、過去十数年間にわたって政権を壟断してきた保守党内閣が、独占資本に奉仕し、再軍備政策を強行し、そのしわ寄せを生産農民にもたらした当然の結果であって、その責任は重大である。今日、混迷せる、そのつど農政の転換を叫び、日本農業の安定的発展のために、農業基本法制定を要求して立ち上がった農民運動は、日を追って激化しつつある。岸総理はこの現状をいかに判断しておられるか、所信を承りたい。  その第二は、農民所得の位置づけの問題である。去る十日答申された農業基本問題調査会の案によれば、農業部門の二人ないし三人の労働単位を完全に就業せしめる規模のいわゆる自立経営農家と、都市を除いた町村地域の勤労家計とを比較基準としているが、自立経営農家の所得は現在の農家の平均所得よりはるかに高いものであり、また町村地域の勤労家計は農業低所得水準の影響を最も多く受けており、農業とともに経済の二重構造の底辺をなしている部分である。従ってへ町村地域の勤労家計と平均より高い自立経営農家の所得とを均衡させるということは、農業の低所得と停滞を永久化することを意味する。当然、都市勤労者の所得と均衡させるべきである。そうでなければ経済の二重構造解消の方向には向かわないと信ずるが、総理の考え方をお伺いいたしたい。  第三は、農業の拡大生産の問題である。答申案によれば、貿易自由化の受け入れを前提として、成長財である畜産物、果実、テンサイ等に生産の重点を置き、他の農産物については、増産よりも、生産性の向上、コストの低下、作付転換等を行なおうとしている。農産物の需給関係を考慮した計画生産には反対するものではないが、従来の未利用地開発の政策が放棄され、わずかに潰廃地を補う程度の耕地の造成しか考えていない。すなわち、日本の農業生産の総ワクを縮小再生産に追い込もうとする方向である。私は、真に農業の発展を願うならば、まず、日本農業の存立の基盤をゆるがす貿易自由化に反対し、国土の高度利用の立場から数百町歩の未利用地を大胆に開発し、勤労大衆の生活水準の向上による農産物消費の飛躍的拡大と相待って農業の拡大生産の方向をとる以外に一方法はないと思うが、総理の見解を承りたい。  第四は、今次農業法人問題とも直接関係を持つ、日本農業の最大のガンである零細過小農の克服の問題である。答申案によれば、一農家の経営面積一・五町歩以上の自立経営農家を基礎として育成し、兼業農家や零細農は他産業に吸収することによって解決しようとしている。すなわち、現在の農業就業人口約一千五百万人を十年後には一千二百五十万人にへ二十年後には八百五十万人程度に減少することを想定している。もちろん、農業過剰労働力を全部農業で吸収することは困難であると考えるが、現在十万人の炭鉱離職者対策に手を焼いている現状で、毎年平均三十二万人の農業離職者を二十年間にわたって第二次産業、第三次産業に吸収する自信がおありになるかどうか。戦前長きにわたって農業就業人口が一千四百万人の水準で固定化したことから判断して、現在の減少傾向がそのまま二十年間継続すると推測することは、あまりにも他力本願の危険な見通しではないかと思うがどうか。私は、このようなやり方は、現在進行しつつある階層分化の法則に便乗した、弱肉強食の原理によって劣弱者を淘汰しようとする無責任きわまる態度であると思う。さらに、これらの零細農の犠牲によって作り上げられた自立経営農家が、十分安定農家たり得るかといえば、すでに述べたごとく、依然として二重構造の底辺の域を脱することができないとするなら、疑問を持たざるを得ないのであります。  愛媛県下の立間地区の例によれば、農家戸数三百六十戸、耕地面積四百町歩、うち果樹園三百町歩二戸平均一町一反のこの地区は、耕作規模に恵まれ、果樹農業として進んだ地区である。この立間地区が、昨年、地区の全農家で四十一の有限会社を設立し、経営共同体の強固な基盤の上に活発な営農活動を実施し、農業経営の過剰投資及び過剰労働力の合理化、階層分化の防止、所得の向上等、数々の好結果をあげたことが報告されているのである。立間地区の例が示すように、農業の経営並びに技術の進歩は、必然的に経営規模の拡大を必要とし、その方法として、経営の共同化が絶対の要件であることを農民の自主的創意によって実証したのである。答申案によれば、構造政策の重点は、あくまでも自立経営農家の育成にあって、将来二十年くらいの間は、これにかわる経営形態は現われないだろうと判断している。協業組織または協業経営の農業共同化の方向については、望ましいという程度で、農協が自主的に取り上げることを期待し、積極的な育成は考えていない。会社形態の農業法人には多く期待できないとしている。このような考え方が今次の法律改正に対しても大きく反映している。朝日新聞は、四月二十六日付の社説で、「自然発生的に作られた農業法人という私生児に、いやいやながら認知を与えるという態度で、農業政策として、共同化法人を積極的に推進してゆくといった態度ではない」と指摘しているが、全くその通りである。零細農克服の問題は、農業就業人口の自然減少による他力本願的危険な方法に重点を置くのではなく、農業共同化に対する農民の創意を尊重し、これを国の責任において積極的に保護育成すべきであると思うが、総理の決意のほどを承りたい。  次に、法案の具体的問題について関係閣僚に対して伺います。  その第一は、農業法人問題発生の直接原因となった農家に対する課税についてである。さきに述べた衆議院農林水産委員会の決議による税制改正措置について、検討の結果はどうなっているか。所得税法を改正して、あらゆる農家の家族専従者控除を認める意思はないか。佐藤大蔵大臣に伺います。第二は、会社法人と特殊法人の関係についてお尋ねします。改正案は、会社法人と特殊法人の農業生産協同組合と両者対等に使用貸借による権利及び賃借権の取得を認め、その許可基準については、自作農主義をくずさないため、厳格な制限を加えている。しかしながら、今回の農業法人化の旨的は、農業経営の共同化によって、経営規模を拡大し、生産性の向上をはかり、農家の所得の増大と家族制度の改革にまで及ぼそうとするにある。従って、純然たる農業政策上の観点から実施するのであるから、当然、特殊法人の農業生産協同組合に限って諸権利の取得を認め、農地法制限をある程度緩和すべきである。この生産組合に対しては、共同事業及び施設の助成、融資、税制上の特典、各種社会保険の適用等、積極的に保護育成の措置を講ずべきである。もし会社法人を認めるとしても、それは会社法人によるより方法がなく、やむを得ず発生した現存する会社法人に対して暫定的に認め、すみやかに生産組合に改組するようにすべきであると考える。政府が会社法人と特定法人とを対等に取り扱わなければならなかった理由は何か。また、農業生産協同組合に重点を置き、その発展のために積極的に保護育成する意思はないか。今後の方針を承りたい。  第三は、法人に対し取得を認める権利は、使購貸借による権利及び賃借権となっているが、創設地等は最初より生産組合がみずから所有することが有利である場合等も考えられるので、生産組合に対しては自作農の延長とみなし、特別に農地の所有権まで認める道を開いておくべきであると思うが、所見を承りたい。  第四は、法人の事業が農業及びこれに付帯する事業に限られているが、農業に付帯する事業とはいかなるものを考えているか。農協の事業のうちの施設事業のほとんどが法人の農業に付帯量る事業に該当するのでぽないかと思うがどうか。また、この法律案では、生産組合は総合農協の組合員と同格であるが、農協の全構成員が幾つかの生産組合によって占められる場合や、農協の構成員と生産組合の構成員と全く一致する場合もあり得ると思う。鑑産組合が発展する場合、事業面においても組織面においても輻湊し、農協組織の改変が考えられるが、政府は農協の組織問題について検討したか。方針を承りたい。  最後に、農地法第八十条の改正によって、開拓地の不用地等の旧地主べの売り払い対象の拡大をはかり、さらに現在の不用地八万町歩に加え、政令改正により十六万町歩の不用地の増加を計画中のようであるが、このことは、今後の有畜農業の飛躍的発展に伴い、従来の開拓適地基準を緩和しても未利用地の開発を実施しなければならないことと矛盾しないのか。未墾地取得のいよいよ困難になっているとき、一たん取得した未墾地は軽々に返還処理すべきでない。これをあえて拡大しようとすることは、不用地返還に便乗した旧地主の圧力に屈したのではないかと疑われてもやむを得ないと思うが、菅野農林大臣代理の所信を承りたい。  以上をもって私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  42. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 御指摘のように、農業と他産業との比較において、その所得におきましても非常な格差ができており、これが増大する傾向がある。従って、農政の基本問題について十分一つ検討をして農家の安定的な発展に資するように考えなければならぬという考えのもとに、昨年以来、御承知のように農林漁業基本問題調査会を設置いたしまして、過般その答申がなされております。非常に各般にわたっている内容でございまして、今、主務省その他関係方面において検討をいたしております。要は、何といっても農業の生産性をいかにして向上し、その所得を増大するかという目標から、各種の政策を総合的に行なっていかなければならぬことは言うを待たないのであります。この点において農業基本法の制定ということが農民の間に強く要望されておりまして、これに対して政府はどう思うかということでございます。私は、農家の安定的な成長のためにとるべき基本的方策について、それを安定せしむる意味から言いますというと、基本的な立法をすることが望ましいと思います。内容等につきましては、調査会の答申等の検討とあわせて、一つ考究したいと、かように考えております。  農民の所得をどういう点と場衡をとらして考えるべきかという点につきましては、いろいろ内容的に検討をしなければならぬ点が多々あると思うのです。これらを十分検討いたしまして適当な均衡をとるような方向に考えていかなければならぬ、かように思います。  未利用地の利用の問題についでのお話がございました。言うまでもなく、日本の農業の一つの非常な弱点は、農地が限られておって狭い農地にたくさんの人口を擁しているということから零細農ができているというようなことでございますので、耕地を造成すること、また、未利用地を大いにその利用度を高めていくということは当然考えなければならぬ。と同時に、最近の農業の実態からわれわれが考え、われわれがとっております酪農やあるいは果樹の農業というようなものに向かって生産性を上げていく意味において、こういう点に力を入れなければならぬことは言うを待たないところであります。  農業の過剰人口を他に移動せしめ、これをさらに、そういうことがただ数字的に機械的にきめられるだけではなかなか実現がむずかしい、さらにこういう点について政府はどう考えるかという点についての御質問でございますが、言うまでもなく、農地が限られておって人口が非常に多いということから非常な困難が出ておるのでありますから、一方においては農地を拡大し、その利用度を高めていくと同時に、過剰の人口を他産業に移動せしめるということも同時に考えていかなければならぬ。また同時に、私は、これが農村から都会べ移るとか、他の土地に移るということではなくして、工業立地の上からいろいろ考えて、農村にできるだけ、従来工場が都会地に集中しているという傾向を分散的な傾向に持っていくという政策をとる必要があろうと思います。こういうこととあわせて考えていきたいと、かように考えております。  経営規模の拡大共同化ということは、農民の創意によって、いわゆる農業法人の問題として現われてきておることは御指摘の通りであります。ただ単に税金の問題というふうに扱うべきものではなくして、その経営の規模を拡大し、共同化によって生産性を上げ、農業の近代化を促進するということに対する農民のこの創意は、私は、尊重し、これを適当に育成していくことが必要である、かように考えております。(拍手)    〔国務大臣菅野和太郎君登壇拍手
  43. 菅野和太郎

    国務大臣(菅野和太郎君) 今回の改正法によりまして会社法人と特殊法人と両方の経営を認めることにいたしたのでありますが、むしろ特殊法人、組合法人にまかした方がいいのじゃないかという御意見であったと思います。この点につきましては、まず農民の創意によりまして、最近、法人経営というものが営めるようになりましたので、一応、会社法人と組合法人とを平等に取り扱っておるのであります。で、将来どちらがいいかという問題につきましては、この改正法を実施して、その推移によってこれは検討すべき問題ではないかと、こう考えておる次第であります。  それから開拓地については、これは所有権の共同化をやったらどうかという御意見であったと思いますが、御承知通り開拓地につきましては、これはやはり政府が買収いたしました土地の売り渡しの対象も、個人経営者たる自作農ということが標準になっておりますので、従いまして、開拓地につきましてもやはり自作農という立場を尊重して、そうして、もしも共同でやりたいという場合には、この改正法によって法人的な経営でやってもらいたいと、こう考えておる次第であります。それから生産協同組合の農業の付帯事業とは何かという御質問があったと思うのでありますが、農業経営に付帯する事業と申しますと、農業と密接な関連関係があり、まあ、農業経営を行なうため必要かつ有益な事業をいうておるのでありまして、その必要または有益な程度は社会通念をもって決定されることにいたしておるのであります。一例をあげますれば、農業生産協同組合員自体の農業経営に本来供せられる施設の不稼働期を利用してする農業用機械の貸付、農村加工がこれに当たると思うのであります。組合員以外の者に対してする販売、購買、信用等の事業はもちろんのこと、個別経営を残す組合員に対し、その個別経営に必要な農業資材を供給し、組合員の生産した農産物を販売することは、ここにいう付帯事業には含まれないものと考えられるのであります。がしかし、農業生産協同組合が、組合自体の農業経営に必要な物資の購入、組合自体が生産した農産物の販売は、一個の経営主体としての本来の事業として当然に行なうことができると、こう考えておる次第であります。  それから農地法の第八十条によって、十六万町歩に政令改正をして、これを軽々に返還するようなことはないかというお尋ねであったと思うのでありますが、この自作農の創設または土地の農業上の利用の増進という目的のために買収した土地が、その後の経済事情の変化等によりましてその目的に使用し得ないまま長期間売り渡しを行なうことができないでおる場合には、これはやはり買収時の所有者に返還、売り渡しすべきものと考えるのであります。政令案につきましては、目下その内容について検討しておりますが、決して軽々しく返還を行なう趣旨ではなく、真に不用と認められるものについて返還するよう措置いたしたいと、かように考えておるのであります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  44. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 現行の税法上から見まして、個人と法人との間に課税のアンバランスがあることが農業法人が出て参りました一つの理由でもある、こういうようなことが指摘されております。ところで、ただいま企業課税のあり方がいかにあるべきかということを中心にいたしまして、税制調査会において慎重に審議しておるのが現状でございます。農業法人の場合において問題になりますのは、農家の家族労働の報酬を経費としてこれを落とし得るかどうか、どの程度認めるべきか、こういう問題があるのでございますが、これはひとり農業だけではなく、個人事業の場合におきましては、この家族労働報酬というものがすべてあるのでありまして、これらの扱いいかんが法人の場合と個人の場合と課税に大きな影響の相違を来たすということでございます。そういう意味で、ただいまこれは検討しておるということでございます。次に、特殊法人につきまして、協同組合が農業経営をいたします場合に、この協同組合の性質から見まして特に非課税というか、あるいは免税というような措置は講ぜられないかというようなことも指摘されておりますが、私どもは、税の問題といたしましては、公平の原則ということが一番大事なことでございますので、各事業種の間において、特殊な形態による相違ということはできるだけないようにするということで取り扱って参りたい、かように考えておりますので、ただいま特に協同組合について特別措置をとる考えはございません。(拍手)      ─────・─────
  45. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 東隆君。    〔東隆君登壇拍手
  46. 東隆

    ○東隆君 ただいま趣旨説明のありました両法律案について、民主社会党を代表して質問をいたします。  戦後の農地改革は革新的なものでありますが、北欧諸国の農地改革が第一次世界戦争直後に行なわれたことと比較して、まさに三十年以上おくれているのであります。農地改革の成果を維持し、再び農民が没落しないために立法された農業協同組合法は、占領政策下において大きな農政上の役割を果たしましたが、農業会時代の全体主義的なものを払拭するために、農民の自由な意思と組合の民主的な発展をはばむような条項を多数持っているのであります。この農地制度のおくれと農協法の不備は、今回の農業法人制度を作りにあたって、政府が当然積極的に検討し、改訂を加うべきであったと思います。しかるに——農地制度についても、農業協同組合についても、その改正はきわめて微温的で、農業法人を作れば事足るというようなものであります。農業法人を積極的に推進する熱意を欠いたものと言わなければならないのであります。  そこで、まず第一に、農地法の基本は自作農主義を貫くところにあると思います。農地法の第一条には、「農地はその耕作者みずから所有することを最も適当であると認めて、」とあります。それにもかかわらず、新たに耕作者になる農業法人に農地の所有権を認めないのは、自作農主義を否定するものであります。農地解放の結果、農地が細分化され、経営規模が縮小され、兼業農家がふえるので、自作農主義を貫き、農地の集団化、経営規模の拡大をはかるというのが、農業法人の中心課題であるはずであります。耕作をしない一部の者の農地の所有権は、この際、農業法人に帰属させるようにすることが自作農主義の徹底化であると思います。何がゆえに政府はこのような所有権を分離してまで農業法人に帰属せしめなかったのか、その理由を明らかにしていただきたいのであります。  次に、今回の農業法人は、会社法人と組合法人の二つを侍ることになっております。そうして種々な条件や規制をつけて、この二つの法人が同一のもののように見せかけております。しかし会社法人はあくまで利潤の追求を会社の目的にしているから、資本に対する分け前を要求し、組合法人は組合員の利益のために事業を進めるのでありますから、労働に対する分け前を要求することになります。これは農業法人という企業体を農村に導入することによって資本主義的なものと協同組合的なものとの二つの異質のものを持ち込むことになるのであります。耕作農民という中小企業者利益を進めるのには、生産的協同組合による組合法人一本にしぼるべきであったと思うが、これを一本にしぼり得なかった理由を承りたいのであります。さらに、将来一本化をはかる意思があるかどうかを、この際明らかにしていただきたいのであります。  次に、農地法改正によって所有権と耕作権を分離することになるが、農業法人の中にあって、構成員の労力に対する分け前を確実にするためには、所有権よりも耕作権に重点を置く必要があると思います。かかる場合、耕作権を物権化することは、耕作農民が出資することにより、労働に対する分け前をふやすための条件にもなり、農地の転用等に対する耕作権の補償という点でも有効なものと思いますがゆえに、単に農業法人に限らず、農地全般に対する耕作権の物権化に対していかなる所見を抱かれておりますか。この際、農林大臣の所見を伺います。  第二に、大蔵大臣に伺いますが、農業法人は税金問題から脚光を浴びてきたと言ってよろしいのであります。国税庁が農業者の法人成りを小商工業者並みに認めておれば問題はなかったのでありますが、国税庁が税の減収をおそれて、農地法をたてに農家の法人成りを認めぬということで問題となり、今回の法律敏正の運びになったのであります。大蔵当局の意図に反したことになったのでありますが、今の段階においていかような考えをお持ちであるか。また将来において農業法人に対する課税問題と関連するものでありますから、あっさり税の問題を離れ、農業の近代化、農民所得の増大という方向に、大蔵当局が頭の切りかえをさらりとされんことを期待するのであります。大蔵大臣の所信を伺います。  次に、私は昨年決算委員会の際、農業法人について大蔵大臣に質問をいたしました。その際のお答えはきわめて消極的なものでありました。すなわち、コルホーズ化は行き過ぎであって、共同作業や機械の共同利用をすればよいというような程度でありました。コルホーズは一種の生産的協同組合であって、ソ連のように土地国有のところでは、日本の協同組合とおのずから違うことは明らかであります。しかし、今日の協同組合は、日本国憲法という民主憲法のもとにおいて中小企業者農漁民がこの組織によりて大経営の持つ有利な点を民主的に獲得しようとするのでありますから、政府はこの際率先して農業協同組合法による農業法人の設立を勧奨すべきであります。大蔵大臣の所見はいかがでありますか。なお農業法人がコルホーズのような協同組合になるのは、農業会社法人よりも危険だと危惧されているのではないかと心配をしております。そのようなことはないと今回はお答えを願いたいのであります。しからざれば大蔵大臣の農業法人に対する理解が危ぶまれるからであります。私はさきの予算委員会において協同組合に対して法人税を課税すべきでないと主張して大蔵大臣と論議をいたしました。その節、私の協同組合非課税の主張に対して、他の産業との調整上、協同組合に法人税をかけるとの、私の納得のいかない返答をされたのであります。今回できる農協法による組合法人は、会社法人のように利潤の追求をいたしません。会社法人ならば、労働に対する報酬を切り詰め、余剰を資本による配分に振り向けるようになりますので、法人税をかける根拠があると思いますが、組合法人の場合は、法人税をかけることは明らかに二重課税になると言わなければなりません。私は組合法人の場合は法人税をかけるべきでないという主張を再びいたします。私の納得のいく返事を期待いたすものであります。  第三に、農村には社会保障的なことは非常に手薄であります。農業災害補償法による共済事業が唯一の社会保障的なものであります。そこで、今回の農業法人の生まれることによって会社法人に対しては厚生年金、組合法人に対しては農林年金の制度が適用し得ると思うのでありますが、これに対する関係大臣の所見を伺います。  さらに、国民健康保険組合は農村に作られつつありますが、今回の農業法人の設立に伴い、健康保険組合を作ることができると考えるので、この件についてもあわせて伺います。  次に、農業法人ができることによって法人の構成員は農業労働者の位置を獲得することになるものでありますので、失業保険制度も適用されると思うので、農林大臣よりその可能性についてお答えを願いたいのであります。  次に経済企画庁長官として国務大臣に伺います。  農業法人を設立することによって、ただでさえ労働力の過剰の農村に農業労働力の過剰を来たすことは、火を見るよりも明らかであります。これに対して農業法人のなし得る仕事は、農業及びそれに付帯する事業と限定されております。これでは農村の余剰労力を増大する役割をするので、完全雇用とはおよそ逆な方向になり、国民所得を低下するものであるといわなければなりません。さらに、農業法人の構成員は、農業法人を組織することによって、その分担する事項がスペシャライズされることは当然で、これに対して構成員としての資格を喪失せしめるというがごときは、農業法人を作る意義を没却するものといわなければなりません。以上のごとき農業法人の消極的なあり方について、経済企画庁長官はいかに考えられるか、所信を伺います。  最後に、以上の質問で明らかなように、今回の農業法人制度の創設に対しては、政府は私生子を認知をしたにとどまり、きわめて消極的であります。しかし、農業の近代化、農業の協同化、従って、生産性の向上、生活の安定等は、この農業法人を活用することによって初めて効果を発揮できると思うのであります。しかるに、農業法人に対しては前述の通りであり、農家は他の生産事業をやってはならぬようなセクト的な感じもいたしますので、わが国生産力を増強し、国民生活の安定を期する上からも、農業法人に対する総括的な態度を首相から披瀝されたいのであります。以上をもって質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  47. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 農業法人の問題は、その起こりは税金に関してでありますが、しかし、現在農民は、日本農業の規模がきわめて小さく、近代化すわけにはいかない。それをこの農業法人によって、企業の協同化により、また規模を拡大することによって、農業の生産性を上げ、近代化をはかろうと、こういう方向に進んできておると思うのであります。私どもは特にその点のこの農民の創意尊重して今回の改正をいたそう、こういう次第でございます。  今回の立法が消極的であるという御批判であります。新しい制度でありますし、今後どういうふうに発展するかにつきましても、なお実際に即して考えていかなければならぬ点があるかと思います。特に、農地制度の問題についてお話がありましたように、自作農を中心とした、この農地制度の根本に触れるような制度をこの際考えるということは、これはよほど私は重大な問題であり、今後の検討に待たなければならない、こう思っております。もちろん、根本において日本農業が非常に零細農であるということからいろいろな問題が生じていることを考えますというと、農民が協同化によって、この農業法人を利用して、協同化により近代化をはかっていくという方向は、これは、私は、新しい方向として、政府としても今後適当に助長していく必要がある、かように考えております。(拍手)    〔国務大臣菅野和太郎君登壇拍手
  48. 菅野和太郎

    国務大臣(菅野和太郎君) この農業法人に所有権を認めないということは、自作農主義を貫いていないのじゃないかというような御意見であったと思うのであります。この問題につきましてはいろいろ検討したのでありますが、御承知通り、農業法人に所有権を認めますと、不在地主というような問題が起こる危険もあり、また、土地兼併というような危険もありますので、そういうような点を考慮いたしまして、所有権は認めないという方針をとったのであります。また、法人を構成している人が、その法人を解散しなければならぬというようなときには、そのもとの提供者、土地を賃貸しした人にその土地を返した場合に、自作農にする必要がありますが、所有権を法人が持つということになりますと、その自作農を作るということが困難になりますので、そういう点なども考慮いたしまして、まず法人には所有権を認めないという方針をとったのであります。がしかし、今後のこの農業法人の推移によって、農業法人に所有権を持たした方がいいという事態が将来において起こるような場合には、もちろん検討してみたいと、こう存じておる次第であります。  それから、会社法人だ、特殊法人だということは、会社法人ではいわゆる資本出資額に対する分配などがあるからして、従ってそういう点において問題が起こりはせぬかという御意見であったと思うのでありますが、もちろん、会社法人であれば、その出資の資本額に対して、いわゆる配当というものが行なわれることは事実であります。がしかし、一方におきましては、こういう農業法人でありますからして、また、提供した労力に対してもまた配当ということも考えられますので、従いまして、この会社法人がいいか、あるいは組合法人がいいかということも、この法人を作る構成員のやはり自主にまかしてやるべきではないか、こう考えておるのであります。がしかし、お説の通り、今後のやはり推移を見まして、この会社法人がいいか、特殊法人がいいかということについては、今後の改正法の実施の結果から見て将来考えてみたい、こう考えておる次第であります。  それから、耕作権を所有権から分離して物権としたらどうかという御意見でありますが、これはなるほど耕作権を強化するという一面においては利益がありますが、また、他方においては、土地所有者の承諾なくしてこれを売買するという危険もあるのでありまして、そういう点から考えまして、目下のところはやはりこれを物権というように認めない方がいいのではないか、こう考えておる次第であります。  それから経済企画庁長官として御質問があったと思いますが、この農業法人ができますれば、余剰労力が増加するから、それに対する対策を考えておるというお話であったと思いますが、大体、農業法人を作る場合には、一方では労力が余っておるし、他方では労力が足らぬというので、そういう意味でこの法人を作る場合が多いと思うのであります。でありますからして、農業法人ができたから必ず余剰労力が増加するとは一がいには断定ができないと思うのであります。でありますからして、そういう点については、大体そう御心配になるようなことはないのではないか、こういうふうに大体認めておる次第であります。(拍手)    [国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  49. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 農業の法人成りについて、過去においていろいろの御議論がありました。ことにまた、大蔵事務当局の考え方等についてこの際新しく一つ考え方を変えろ、こういうお話でございましたが、今回御審議をいただくことになりましたこの法案につきましては、政府部内完全に意見が一致しておりますし、また事務当局も、この法案の成立につきましては、もちろん心から協力する次第でございますから、その点は御了承いただきたいと思います。  また、農業協同組合が行ないますいわゆる耕作所得につきまして特別に非課税措置をとれ、こういう御意見のようでございますが、この点につきましては、ただいま御指摘のありましたように、他に委員会でいろいろ御議論、御意見を拝聴したことがございます。先ほど北村議員にお答えいたしましたように、政府といたしましては、税の問題は、やはり事業間の公平ということを守るということが大事なことでございます。今回の農業の法人成り等につきましても、あるいは株式会社、その他の形において農業を経営する場合もございますので、それとの均衡上から見まして御意見としては、私、十分拝聴はいたしましたが、ただいまこれを直ちに非課税にするということは、なお考究を要する問題で、不適当な問題ではないか、かように考えております。(拍手)    〔国務大臣岸信介登壇、指手〕
  50. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 社会保障制度及び社会保険についての御質問でありますが、厚生大臣が欠席いたしておりますから、私からかわってお答えいたします。  社会保障制度について農村において、行なうべきことを一そう積極的に推進すべきことは、これはもちろん考えばければならぬことであります。社会保障制度の性格から申しまして全国民を相手にしていくべきで、農村その他を区別すべきものではないことは言うを待ちません。大きな健康保険の、囲民皆保険の問題あるいは国民年金の剛題は、全国民を含め、農村のことも考えることは、これは当然であります。その他、いろいろな社会政策保護制度であるとか、あるいは世帯更生資金の問題、母子福祉資金の問題等、政府としては農村に対しましても積極的に推進していくことは当然でございます。  ただ社会保険の問題につきましては、御質問がありました農業法人に対して失業保険を適用する考えはないかという問題でありますが、これは御承知のように、失業保険法の適用は、雇用関係にある労働者に適用されるものでありまして、今回の農業法人は、一般農民が農地をその法人に貸し付けて、その法人の構成員となって、共同して農業経営に当たるという場合でありますから、いわゆる雇用関係がこの間にあるわけではございませんで、従って失業保険をこれに適用するということは考えておりません。また、農業法人に対して健康保険及び厚生年金裸験の適用につきましても、これは農林業というものを、こういうものから除いておりますので、これは適用されないと考えております。医療につきましては、今申しますように、国民健康保険によっていく、年金につきましては国民年金制度によっていく、こういうふうに考えております。(拍手)     —————————————
  51. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 森八三一君。    〔森八三一君登壇拍手
  52. 森八三一

    ○森八三一君 私は、先刻提案理由の説明を承りました農地法の一部改正並びに農業協同組合法の一部改正、すなわち、通例申しまする農業法人の問題につきまして、若干のお尋ねをいたしたいと存じます。  農業法人という、法人問題がやかましくなりましたのは、すでに数年以前からのことであります。同僚の北村君、東君からも申されましたように、すでに両院の農林水産委員会でも再三この問題を取り上げて論議をして参りました。その結果としては、すみやかに法的な措置を講じてこれが育成なり助長をはかるべきであるという趣旨に基づきまして政府に善処を求めてきたことも御承知通りであります。自来、政府におきましては、いろいろ御研究あったとは思いまするが、農地改革の成果がこれによって失われていくようになるのではないかというような心配やら、あるいは中央地方を通じまする税の問題、財政収入に問題が起こるのではないかというような御心配などから、この問題の解決に対しましては、どっちかと申しますると、ちゅうちょ逡巡、なるべくさわらぬようにというような態度でこられたのではないかと考えるのであります。ところが、農民の宙主的な創億に基づきまする行動は活発に展開されて参りまして、だんだんあちらこちらに具体的な法人の設立が生まれてくるというような事態に直面をいたしまして、いたずらに放置ができなくなったということから、やむを得ずと申しまするが、しぶしぶ取り上げられたというように感ずるのであります。日本農業は転換期に際会し、新しい活路を見出して前途を切り開いていかなければならぬという現実にかんがみまして、そういうようないきさつはどうありましょうとも、とにかく、ここに農業法人の問題が具体的に法律をもって取り上げられたということにつきましては、私は非常にけっこうだと存ずるのであります。総理もお話がありましたように農業法人が問題となりました当初におきましては、税対策として生まれて参ったことは現実でありまして否定ができない事実であります。がしかし、今日におきましては、農業法人は、むしろ税対策ではなくて農業の経営の近代化、合理化を推進することに変遷してきております。私も、農業法人が新しい経営の近代化を求めていくものでなければならず、そういうように指向されておりますることを十分理解をいたしております。そういうような前提に立ちまして、以下二、三の問題をお伺いいたとたい。  まず第一は、先刻も北対議員からお尋ねがあったのでありまするが、今回の法律改正によって農業法人が認められまする結果としてただ単に観対策のための法人が生まれてくるのではないか、むしろそのことが重点的に指向されるというような心配がないではないように思うのであります。先刻申し上げまするように、求めるものは農業経営の近代化、合理化をねらうのだということではありますが、過去の実情等から考えますると、今申し上げまするようにともいたしますれば、税対策の農業法人が生まれるということが重点的になるのではないかという心配であります。私は、そうなりまするというと、今回の法律改正もその目的が十分達せられない、きわめて遺憾な感を抱くのであります。で、かような結果になりますことを防止いたしまして、真に求めんとする農業経営の近代化、合理化を達成するためのものであるようにいたしまするためには、農業者に対する税対策は別途に考え、取り組んでいかなければならぬと思います。そのためには、同僚の諸君からもお話がありまとたように、専従者控除の問題をこの際解決すべきであると思います。このことにつきましては、大蔵大臣から、税の問題は全般的に税制調査会に今審議を委託をしている、その結論を待って、というようなことやら、あるいは税の公平の原則というような御答弁が為ったのでありまするが、そういうようなことで日を送っておりますると、税対策のために方向を踏み誤るような姿における農業法人というものが簇生をいたしまして、取り返しのつかぬような結果になるのではないかをおそれるのでありまして、ここに法人問題を取り上げるということでございますれば、当然並行してこの問題を考えていく、専従者控除の問題はこの二法案の改正と並行して処置されなければならぬと思うのであります。くどいようではありまするが、私は非常にこの農業法人に期待をいたしており、その農業法人が求めようとしている近代化のためにほんとうに役立つような姿において設立されることを念願いたしまするので、間違ったような方向で生まれることを阻止するということのためには、当然この問題が並行して解決せられなければならぬ。こう考えますので、重ねて一つ所信を伺いたいのであります。もし公平の観念ということでございますれば、法人化すれば安くなる、法人化しなければ高いということこそが、公平の観念にもとるようにも存ぜられまするのでありますが、重ねてこの点をお伺いをいたしたい。  第二のお尋ねは、今回の法律改正によりまして、一戸一法人の設立竜可能となります。もちろん、一戸一法人の場合でも農業経営と生活経理とを明確に区分ができまするとか、あるいは家長専制的な封建的な風習が改善せられまして、民主的な農家の生活が営まれるというなどの各種の利点があることは私も承知をいたします。いたしまするが、求めようとする姿が経営の近代化、合理化であるといたしますれば、経営規模にも何らの変更もなく、就業いたしまする労働力にも何の変更もたいという一戸一法人でありましては、農業法人の本来の使命と目的を達成するということのためには、必ずしも適切とは思われません。一体、今回の二法案を改正して農業法人というものをお認めになるという御趣旨がどっちでもいいということなのか、あるいは複数の農家を結合せしめる法人の設立に重点を置くのだというのか、今後育成助長されようとする方向はどっちの方向をおとりになろうとするのか、明確にしていただきたいのであります。  第三に、東議員からも御指摘がございましたが、今回の農地法並びに農業協同組合法改正は、別途審議されておりまする農業基本問題調査会の結論を待って本格的な対策を講ずるその間の当面対策であると承っております。はたして臨時的な暫定的なものとお考えになっておりまするかどうか。もしこの改正がそういうものではなくて、恒久的な対策を講ずるということであったといたしますれば、むしろ農業協同組合と密接不可分の関係を持たせなければならぬことでございまするので、農業協同組合法の中で特殊法人として認めるという措置をとるだけでよかったのではないかと思うのであります。臨時的なものであるといたしますれば、将来抜本的な改正の時期があるはずである。それが農業基本問題調査会の結論と関連があるということでございますれば、ただいま総理もお話がありましたように、去る十一日には、本格的な結論ではありませんけれども、一応の結論を得て基本問題調査会は答申をされておるということでありまするが、その答申に基づきまして、すみやかに抜本的な改正が行なわれるべきであり、対策がとられるべきであると思いますが、その時期、構想についてお伺いをいたしたい。これが第三点であります。  その次に、今回の農業法人が認められるという結果、その法人が真に目的を達成いたしまするために非常に大切に考えまする問題は、新法人の経営資金の問題であろうと思います。法人が設立をされましても、農業経営の近代化、合理化を進めて参りまするために必要な経営資金というものに事を欠くということでございましては、仏を作って魂を入れないという結果になると思うのであります。そこで、ぜひとも新法人に対して要する資金の供給について万全を期さなければならぬと思いますが、新法人は農地を所有するわけでもございませんので、金融の面から考えますれば、物的な信用というものはございません。物的の信用を持ちませんところへ要する経営資金を潤沢に供給するということは、通常の金融観念から申しますれば不可能に陥ると、思うのであります。そこで、そういう面を補完する措置としては、今回認められようとする農業法人の組織を無限責任の制度にすべきだと思う。無限責任の制度にいたしますれば、そういう組織にいたしますれば、組織組合員の持っております資産そのものが全部金融の対象にもなり、融資の返還に関する確保の対象にもなるということでございますので、新しく生まれ出んとする法人の目的を十分達成して参りますための資金というものが確保し得られると思うのであります。なぜ一体そういうことを考慮して無限責任の組織をおとりにならなかったかどうか。もしそういう点に十分の研究がなかったといたしますれば、今後の抜本的な改正に際しまして、無限責任の制度をおとりになるお気持があるかどうか。どうしても無限責任がとれないということでございますれば、いかなる方法によって生まれて参りまする新法人に対する資金確保の方途を講ぜられんとするのかを明確にしていただきたいのであります。  さらに、資金が確保せられまするだけでも、もちろん新法人の運営というものが十分には参らないと思います。そこで、政府のとられておりまする各種の農業施策、助成施策というものが、新しい法人を中心として集中的に行なわれていく方途を講ずべきであると私は考える。農機具の共同利用の助成の問題であるとか、あるいは病虫害の防除に対する助成なり、採種圃の助成なり、いろいろあろうと思いますが、そういうような各種の助成が新しい法人を主体として集中的に取り上げられていくということを施策として考えるべきであると思いますが、そういうことにつきまして、一体、御当局はどういうようにお考えになっておりまするか。  以上、すでに他の同僚諸君からも御質問のあったことでございまするが、要約いたしまして数点をお伺いをいたしました。こまかいことにつきましては、いすれ委員会におきまして十分確かめたいと思いますが、以上の点につきまして御答弁をいただきたい。以上をもって私の質疑を終わります。    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  53. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 農業法人の問題は、御意見にもありましたように、最近においてこれに対する要望が各方面から出てきており、農林水産委員会等におきましても決議されておる。こういう状況のもとにおきまして、また実際的に見まして、この共同化によりその経営規模を大きくして、近代化していくこれが日本の農業の必然的にとらなければならないところであるということから見まして、この法人化の問題は、やはり、これを取り上げて法制化することが必要であると政府においても考えた次第であります。ただ、御承知のように、この問題につきましては、事の起こりは税制に関係して起こっており、また地方的にもいろいろな事情もございますし、法人の今後の発達動向というものもなお考えていかなければならないという考えから、とりあえずこの立法はいたしますが、これが恒久的、絶対的ななにであるとは、私ども考えておりません。調査会におきましても各般の政策、基本問題について答申がありまして、これらもあわせて十分検討して将来抜本的なことを考えていかなければならぬ、かように思っております。  また、御指摘がありました一戸一法人と、共同化によって多数の構成員があってやる場合との比較の問題でございますが、もちろん今回の立法においては、これは農業者の自由の選択にまかしてあります。しかし、日本農業が零細なところに、規模が小さいところに、いろいろな近代化をはばんでおる理由がたくさんあるわけでありまして、やはり相当数の構成員をもって共同化により規模を拡大していくことが私は望ましいことであると、かように思っております。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  54. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 税の問題について重ねてのお尋ねでございますが、先ほど来お答えいたしておりますように、税につきましては、ただいま税制調査会で取り上げております。この取り上げております考え方は、御指摘のうちにもありましたように、現行の税制のもとにおきましては、個人所得と法人所得との間にアンバランスがある、これが農業などにおいて特に指摘されるような点があるやに伺っておるわけであります。そういう意味で、アンバランスということは、これはもちろん検討いたしまして、是正していかなければならないことでございます。そういう意味で今回、法人成りの問題が具体化して参るということでございますので、かねてから個人と法人との間において、課税にアンバランスがあるやに見受けるし、同時に、それが企業への課税のあり方から見ましても、当然検討に値する事柄であるということでございますので、税制調査会で取り上げておるわけであります。ところで、ただいま法人成りに関する法案が御審議をいただくことになっておりますから、税制調査会の結論を早く出さないと間に合わぬじゃないかという御指摘でございます。御承知のように税制調査会は、もうすでに、これを開きましてから相当期間を経ております。従いまして、今回のこの農業法人成りの問題についての税の措置については、私どもも、ただ単に税制調査会に問題を預けたというだけじゃなしに、積極的にぜひとも問題を解決したい、かように考えておる次第であります。ところで、先ほどもお答えいたしたのでありますが、議論になりますものは、家族専従、あるいは税の言葉で申せば家族労働の報酬、これを経費として見ることができるかどうか。個人の場合においてはそういうことが問題になるわけであります。中小企業等におきましても、そういう点についてのいろいろな研究もいたしております。今回の場合におきましても、当然そういう点が、この法人成りとは別の問題として、農業の個人経営の場合においても、この家族の専従、労働報酬をいかに扱うかということが問題でございます。今回の法人成りにおきましても、こういう点が一つの問題になりますし、同時にまた、ただいままでの税の建前から申しまして、税を一体だれにかけるのか、また、所得は一体だれに帰属するのか、また、その所得の処分権はだれが持っておるか、こういうことが、個人経営の場合においては絶えず問題になっておるところでございます。新しい考え方には、まだその点でそぐわないものがございます。こういう点が税制調査会において特に取り上げられる問題でございますから、そういう意味で私どもは検討していることを御披露いたしておきます。  なお、先ほど公平の原則云々と申し上げましたのは、今回、協同組合が耕作をして農業所得を得る、こういう措置がとれる、また一面、法人でやる場合がある、会社でやる場合がある、こういう場合にも、組合経営の場合と会社経営の場合とを区別するわけにいかない。この辺は十分公平の原則を考えていきたい、こういうことで、組合の場合は非課税というわけにはいかない、こういうことを実は申し上げたのでございますから、誤解のないようにお願いいたします。(拍手)   [国務大臣菅野和太郎君登壇拍手
  55. 菅野和太郎

    国務大臣(菅野和太郎君) 今回の改正法では、農業法人、一戸法人を認めておりますが、複数農業法人と、どちらを政府は奨励し、育成助長する考めかというお話であったと思いますが、農業法人という観念からすれば、もちろん複数農業法人という方が合法的だ、こう考えますが、しかし、一戸法人につきましても、この法人経営を行なう場合におきましては、家計と経営とが分離されておりますから、いわゆる経営の合理化ということが実現されますので、その意味において、いわゆる生産の向上ということは考えられますし、また、一戸法人による経営によって、経営の合理化ということを実現することによってまた、大規模共同化の法人ということの機運を起こさせることもできる、こう考えますので、必ずしも一戸法人を特に排斥する必要はない、こう考えておる次第であります。  それから、今回の改正案は暫定的なものかどうかというお話がありましたが、お話の通り農業基本問題調査会の結論も最近出ました。が、まだ実は農林省といたしましては、この結論に対して根本的な研究はいたしておりません。この基本問題調査会の結論をもう少し検討いたしましてそうしてまた、この改正案を実施してみまして、将来もう少し根本的な改正をした方がいいということであれば、そのときにまたあらためて検討しても決しておそくはない、こう考える次第であります。  それから農業法人育成のために、経営資金の問題で、無限責任の会社がいいか、有限責任の会社にした方がいいかというお話がありましたが、もちろんこの経営資金を獲得する上からは、無限責任の会社にした方がいいと思います。がしかし、政府といたしましては、この際、無限、有限どちらがいいかということにつきましては、まだはっきりした見通しをつけていないのでありましてあるいは有限責任であるがゆえに農業法人の成立がしやすいということも考えられますので、この点は、やはり構成者の自主判断にまかしたい、こう考えております。しからば有限責任の場合には、その必要な経営資金の獲得をどうするかというお話がありましたが、それは、もちろん人的信用に基づいてその必要な経営資金を獲得するということでいかざるを得ない、こう考えておる次第でございます。なお、農機具の共同利用その他の施策について御意見がありましたが、これは、やはり現在もいろいろ政府が助成の措置をとっておりますが、これはやはり農業法人についてもその助成施策に漏れないようにできるだけの措置を考えていく、こう考えておる次第であります。(拍手
  56. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      ————・————
  57. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 日程第三、行政書士法の一部を改正する法律案衆議院提出)を議題といたします。まず、委員長の報告を求めます。地方行政委員長新谷寅三郎君。    〔新谷寅三郎君登壇拍手
  58. 新谷寅三郎

    ○新谷寅三郎君 ただいま議題となりました行政書士法の一部を改正する法律案について、地方行政委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。  本法案は衆議院提出にかかるものでありまして、その提案理由は、昭和二十六年行政書士法制定以来の施行状況にかんがみ、従来、任意設立、任意加入であった行政書士会並びにその連合会を、司法書士、税理士等類似の業務におけると同様、義務設立、強制加入とすることによって、行政書士会の自主的な指導力を強化して、行政書士の品位の保持、業務の改善、適正化に資せんとするものであります。  地方行政委員会におきましては、四月十四日、本法案の発議者衆議院議員纐纈彌三君より提案理由の説明を聞いた後、従来、任意設立、任意加入であった行政書士会とその連合会を、義務設立、強制加入に改める必要性、それと憲法に認められている職業選択の自由との関係等の諸問題について、提案者並びに当局との間に質疑応答を重ね、慎重審査を行ないましたが、その詳細については会議録によって御了承願いたいと存じます。  五月十二日質疑を終局し、討論に入りましたところ、別に発言もなく、採決の結果、本法案は全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定した次第であります。以上御報告いたします。(拍手
  59. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立
  60. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 総員起立と認めます。よって本案全会一致をもって可決せられました。      ─────・─────
  61. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 日程第四、一般会計の歳出の財源に充てるための国有林野事業特別会計からする繰入金に関する法律案  日程第五、交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案(いずれも内閣提出衆議院送付)、  以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長杉山昌作君。    〔杉山昌作君登壇拍手
  63. 杉山昌作

    ○杉山昌作君 ただいま議題となりました二つの法律案につきまして、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、一般会計の歳出の財源に充てるための国有林野事業特別会計からする繰入金に関する法律案について申し上げます。  国有林野事業特別会計法の規定によりますと、この特別会計において剰余金を生じたときば、これをその翌年度に一般会計へ繰り入れ、または将来の損失補てんのための積立金として積み立てることができることになっております。しかし、従来は一般会計への繰り入れば全然行なわれず、剰余金、はすべて損失補てん積立金として積み立てられて参ったのでございますが、昨三十四年度に至り、初めて、民有林及び公有林の造林事業の規模の拡大をはかるため、一般会計において農林漁業金融公庫への出資及び造林事業費の増額措置をとったことと関連いたしまして、この特別会計の三十三年度の剰余金のうちから十億円を一般会計へ繰り入れた次第であります。しかして三十五年度においても、前年度と同様の趣旨によりまして、この特別会計から一般会計への繰り入れが必要とされるのでありますが、三十四年度のこの特別会計は、伊勢湾台風等の災害により損失を生じ、一般会計へ繰り入れるべき剰余金がないのでございます。ところがこの特別会計は過去における利益の積み立てが多額にありますので、この際、特に十一億円を限りこの損失補てん積立金を取りくずして一般会計べ繰り入れることができるようにしようとするのが本案趣旨でございます。  委員会の審議におきましては、最近のこの特別会計の決算状況、積立金の積立状況、損失処理の方法、十一億円の使途等について、さらにまた貿易自由化後における。パルプ資源対策に対する国有林野事業のあり方等について質疑が行なわれたのでありますが、その詳細は会議録によって御承知を願いたいと存じます。  質疑を終了し、討論、採決の結果、多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。     —————————————  次に、交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案について申し上げます。  昭和三十四年度に実施された所得税の減税に伴う道府県民税及び市町村民税の減収が地方公共団体に与える影響を考慮して、臨時地方特別交付金に関する法律が先般成立したのでありますが、本法律案は、この臨時地方特別交付金の交付に関する政府の経理を交付税及び譲与税配付金特別会計で行なうために必要な規定改正をしようとするものであります。  委員会の審議におきましては、臨時地方特別交付金三十億円をもってしては地方税の減収をカバーするには十分とはいえないのではないか等、地方財政の財源調整に関して種々質疑が行なわれましたが、詳細は会議録によって御承知を願いたいと存じます。  質疑を終了し、討論に入りましたところ、天坊委員より、原案の施行期日「三十五年四月一日」を「公布の日」に改める旨の修正案を付して賛成の意見が述べられ、採決の結果、多数をもって天坊委員提案通り修正議決すべきものと決定いたした次第でございます。  以上御報告申し上げます。(拍手
  64. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。  ます、一般会計の歳出の財源に充てるための国有林野事業特別会計からする繰入金に関する法律案全部を問題に供します。本案賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立
  65. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      ————・—————
  66. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 次に、交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。委員長の報告は修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立
  67. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 過半数と認めます。よって本案は委員会修正通り議決せられました。      ————・—————
  68. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 日程第六、商工会の組織等に関する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。商工委員長山本利壽君。   [山本利壽君登壇拍手
  69. 山本利壽

    ○山本利壽君 ただいま議題となりました商工会の組織等に関する法律案について、商工委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  中小企業対策としてはすでに種々な施策が講ぜられておりますが、小規模事業者対策はいまだ十分とはいえませんので、小規模事業者に対する経営改善のための事業を行なう組織として、商工会議所のほかに、現在自然発生的に各地に生まれておりますところの商工会を法制化するとともに、それらに対する助成措置を講じようとするのが政府の本法律案提出理由であります。  本法律案内容を申し上げますと、  第一に、商工会は本法に基づく特殊法人にするとともに、その地区については、原則として一つの町村に一つの商工会を設けることとし、商工会議所とは地区を重複して設立することのないように定めております。  第二に、商工会は、その地区内における商工業の総合的な改善発達を目的とし、商工業に関する相談、指導、講習会、展示会等の事業を行なうこととされており、その地区内に六カ月以上事業所を有する商工業者であれば、すべて会員となることができることとなっております。第三に、商工会は、その地区内の商工業者の半数以上が加入するものであれば、通産大臣の認可を受けて設立することができ、その管理は、総会、総代会及び役員を通じて行なわれ、所要の監督規定も設けられております。第四に、商工会及び商工会議所の行なう小規模事業者のための経営改善に対する事業については、国がその経費の一部を補助することができるようにしております。以上が政府提出の原案の大要でありますが、衆議院におきまして、商工会の行なう事業の範囲、設立の手続、役員の定数、総代会及び名称独占規定の猶予期間について修正がなされたのであります。  当委員会におきましては、関係者の参考意見を聴取するなど、その審査にあたっては慎重を期したのであります。質疑の範囲も広範にわたるものでありますが、これらの詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。  質疑を終わり、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して椿委員から、自由民主党を代表して川上委員から、民主社会党を代表して島委員から、いずれも賛成の討論があり、その際、それぞれの立場から、会議所をして零細企業指導を重要視させること、金融、税制等に関し積極的に指導すること、将来さらに予算を増額すること、既存商工会の名称変更についても配慮すること、特定政党の商工会利用を厳に排除すること等について希望が述べられたのであります。  討論を終わり、採決の結果、本法律案全会一致をもって衆議院送付通り可決すべきものと決定いたしました。  右御報告を終わります。(拍手
  70. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立
  71. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      ————・—————
  72. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 日程第七、刑法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。法務委員長大川光三君。    〔大川光三君登壇拍手
  73. 大川光三

    ○大川光三君 ただいま議題となりました刑法の一部を改正する法律案につき、委員会における審議の経過並びに結果について御報告申し上げます。  最初に、本法案の趣旨を簡単に御説明いたします。戦後、罹災都市等において、社会的混乱に乗じ、正当な権限なくして他人の不動産を占拠する等の不法行為が頻発し、今日に至るもその跡を絶たず、社会の法秩序を乱すものとして、各方面において問題とされてきたのであります。しかも、不法占拠のためには、しばしば暴力その他の不法手段が用いられ、他方、権利者の側でも、民事的な手続による早急な解決が困難である等の理由から、実力をもって権利の回復をはかる方法を講じょうとする傾向さえ見受けられるのであります。一方、この種事案については、現行刑法の窃盗罪をもって律し得るとする見解もありますが、検察及び裁判の実務においては、窃盗罪における行為の客体の中に不動産を含むものと考えるのは相当でないとの理由から、今日まで不動産窃盗罪として起訴または裁判のなされた事例はないのでありますが、かかる現状を放置することは適当でないので、この際、刑法の一部を改正して、この種事案を不動産侵奪罪として処罰するとともに、これと関連して、他人の土地を侵奪するための手段などとして境界を毀損する行為が頻発している実情にかんがみ、不動産に関する権利の保護に十全を期するためには、現行の器物損壊罪等の規定のみではまかない得ない面があり、この際、土地の境界を不明にする行為自体を境界毀損罪として処罰しようとするものであります。  次に、本法律案の要点を申し上げますと、第一に、不法領得の意思をもって不動産に対する他人の占有を排除し、これを自己の支配下に移す行為を不動産侵奪罪として、十年以下の懲役に処すること、及びその未遂を処罰する等、所要の規定を設け、第二に、境界標を損壊する等の方法で土地の境界を認識することができないようにした者を五年以下の懲役または千円以下の罰金に処するものとすること等であります。  委員会は、三月二十九日提案理由の説明を聴取した後、質疑に入り、各委員から、最近における不動産不法占拠の実態、不動産侵奪罪新設による効果、境界毀損罪の具体的必要性の有無等について熱心な質疑が得なわれましたが、これが詳細な会議録に譲りたいと存じます。  かくて質疑を終了し、討論に入りましたるところ、日本社会党を代表して高田理事から、境界穀損罪を削除する旨の修正案が、また、民主社会党を代表して赤松委員から、境界毀損罪を目的犯とすること及び各条の刑罰を軽減する旨の修正案が提案され、政府原案に反対する旨の意見が述べられ、自由民主党を代表して後藤理事から政府原案に賛成する旨の意見が述べられました。  ついで、右の両修正案についてそれぞれ採決いたしましたるところ、いずれも少数として否決され、引き続き政府原案について採決いたしましたるところ、原案通り多数をもって可決すべきものと決定いたしました。以上御報告申し上げます。(拍手
  74. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立
  75. 平井太郎

    ○副議長(平井太郎君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後二時八分散会      —————・————— 〇本日の会議に付した案件  一、日本電信電話公社経営委員会委員の任命に関する件  一、日程第一 輸出入取引法の一部を改正する法律案趣旨説明)  一、日程第二 農地法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案趣旨説明)  一、日程第三 行政書士法の一部を改正する法律案  一、日程第四 一般会計の歳出の財源に充てるための国有林野事業特別会計からする繰入金に関する法律案  一、日程第五 交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案  一、日程第六 商工会の組織等に関する法律案  一、日程第七 刑法の一部を改正する法律案