○重政庸徳君 私は、ただいま
提出されました中国地方総合開発促進に関する決議案について、発議者を代表いたしまして
提案の
趣旨を
説明いたします。
まず決議案を朗読いたします。
中国地方は、その
中央部に中国山脈が横たわっているため陰陽両地域間の連絡が困難であり、瀬戸内海には多数の小島しょが散在してこの間の交通も極めて不便なので、立地
条件もよく資源も豊富なのに開発が遅れている。殊に、山陰ならびに山陽の中北部山間地帯は、積雪寒冷、特殊土じょう、急傾斜等の悪
条件下に置かれているので、産業の見るべきものがほとんどなく、開発の立ち遅れが特に顕著である。
したがってこの際、本地方を一丸とする画期的総合開発計画を樹立推進して、積極的開発の実を挙げ、産業
基盤の強化をはかることは、国家的見地からも極めて重要な急務だといわなければならない。
よって
政府は、すみやかに、本地方の総合開発に関する基本計画を樹立し、積極的開発を促進するため立法その他所要の特別
措置を講じ、国家資金の重点的投資、各種
財源の計画的投入、民間資本の積極的導入等、
施策の万全を期すべきである。
右決議する。
以上の通りでありますが、簡単にその
内容を
説明いたします。
荒廃した国土の復興と経済の再建は終戦以来の国家的課題でありますが、すでに国土総合開発の一環といたしまして、北海道、東北、九州の各地方の開発促進が立法化され、三十四年三月、本院によって決議された四国地方の総合開発も今
国会において立法化されんとしておるのであります。着々その緒についていることはまことに御同慶にたえないところであります。
ただいま決議案を
提出いたしました、中国地方が
わが国における後進地域に属すると申しますれば、実情を御
承知ない方はちょっと異様な感じを持たれるかと思うのでありますが、これは汽車の窓から見られた風景があまりに恵まれているからであります。しかしながらこれはあくまでも中国地方の一部分でありまして、面積の比率から見ましてもごく小地域に限られた現象であることが立証できるのであります。すなわち、中国地方は、広島、岡山、山口、鳥取、島根の五県をもって構成されておりますが、その面積は三万一千六百余平方キロで、全国比の八・六%を占めておりますが、人口は六百九十九万余人でありまして、全国比の七・八%を占めるに過ぎません。人口密度は一平方キロ二百二十二人でありまして、全国平均二百四十一人に達しないばかりでなく、四国地方の二百二十六人にも及ばない現況であるのであります。また
昭和三十一年度における中国地方の生産所得は、一人当たり七万七千四百円でありまして全国平均八万二千四百円にも遠く及ばないのであります。これら
政府機関の確実なる諸統計より判断いたしましても、中国地方は明らかに日本の後進地域に該当するわけであります。
そこで、中国地方がどうしてこんなに後進性を持っているかという
理由でありますが、次の諸点をあげることができると思います。
第一に、中国地方は、その
中央部に東西に走る中国山脈が横たわっていることであります。これがため、まず日本海側の山陰地方と瀬戸内海側の山陽地方との交通連絡が著しく阻害され、当地方の産業の一体化を困難ならしめているのであります。
第二に考えられることは、第一次産業のうち最も比重の多い農業の経営
基盤である耕地面積が著しく狭小で、「耕して天に至る、勤なるかな。耕して頂に至る、貧なるかな。」の言葉によく表われていると思うのであります。すなわち、全国農家の一・戸当たり耕地面積が○・八五ヘクタール、八・六反であるのに比べまして、中国地方は○・六一ヘクタール、六・二反という
状態であります。従って……。戸当たり農家所得も、全国平均一○○に対しまして山陰側が九一・六%、山陽側が九二・八%でありまして、いずれも全国平均に達しておりません。特に、山陰地方並びに山陽地方の中北部山地地帯は、積雪寒冷、特殊土壌、急傾斜の自然的悪
条件のため、各種
法律の保護を受けておりますが、基本的な立地
条件の悪さは、農民の
努力にもかかわらず、これ以上の向上発展を期待できない実情に立ち至っておるのであります。
第三に、寒冷な気候は特に山陰地方の産業発展を妨げているのであります。
第四に、山陽地方は、戦前戦後を通じまして、重要拠点並びに沿海地域の大半を旧軍部あるいは駐留軍に接収されましたので、平和産業の発展に著しい制約を受けたのであります。第二次産業の
主体をなす製造業について見ましても、零細企業が圧倒的に多く、工業付加価値額の統計を見ましても、
昭和二十八年の対全国比七・四%を頂点といたしまして二十九年は七・一%、三十年六・七%、三十一年六五%と、漸次減少の傾向をたどっているのであります。
以上のような
理由によりまして、中国地方の経済的実情は、外観の印象とはよほどかけ離れているのであります。しからば中国地方の今後の向上発展は絶望であるかと申しますと、私は、さにあらずと、確信を持ってここで申し上げることができると思うのであります。当地方は、阪神、北九州の二大工業地帯の中間に位して、観光資源は申すに及ばず、近代産業の根幹たる豊富なる電力資源、工業用水、労働力等の工業立地の基礎
条件に恵まれております。また石炭、石灰石、硫化鉱等を生産し、最近に至りまして、核原料物資、天然ガス等の所在も確認されております。特に工業発展に、絶対不可欠の要件である電力について見ますると、現在は水力発電と火力発電によってまかなわれておりますが、水力発電の未開発分は実に百八万キロワットも残されているのであります。かように、一部臨海地域を除き、鉱工業の見るべきものなく、従って
地方財政は自主
財源に乏しく、産業開発の
基盤をなす公共事業の投資力は弱く、金融面におきましても、地元資本の蓄積は少なく、地域開発の発展速度は緩慢である実情であります。未開発のままに放置されております各種資源を十分に活用し、陰陽両地域の総合的な産業
基盤の
整備をはかるならば、産業及びその構造の近代化がなされ、開発効果、経済効果は非常に上がるものと信ずるものであります。
以上のような後進性を内蔵し、伸び悩みのもとにあります
事情の解消、後進性打破のためには、中国地方各県地元の自主的
努力と推進は申すまでもありませんが、
政府の強力な
施策を切望しているのが中国地方住民多年の念願であります。まず、
政府は、すみやかに本地方の
実態に関する基礎的
調査を強力に
実施するとともに、これに基づく具体的な開発促進の
方策に関し、立法上、
予算上、金融上、その他の特別
措置を講じ、もって地域開発の実をあげ、産業の健全な発展と民生の福祉増進とをはかられるよう、特に期待するものであります。
以上の
趣旨によって本決議案を上程いたしたのでありますが、議員各位の御賛同を切にお願いする次第であります。(
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