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1960-02-03 第34回国会 参議院 本会議 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月三日(水曜日)    午前十一時四十七分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第三号   昭和三十五年二月三日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
  3. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。  日程第一・国務大臣演説に関する件(第二日)。  昨日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。羽生三七君。    〔羽生三七君登壇、拍手
  4. 羽生三七

    ○羽生三七君 私は、日本社会党を代表して、岸内閣施政方針に関し、岸総理並びに関係閣僚に質問を行ないます。  昨日の施政方針を総括的に批判いたしますと、第一に、外交にあっては、依然たる力の政策の過信と緊張緩和に対する具体的方針の欠除、第二に、経済にあっては、手放し楽観論日本経済現状認識の不足、第三に、民主政治のあり方については、少数意見を軽視する独善的解釈、以上の三点に尽きると思いますが、以下順次具体的にお尋ねいたします。  私がここにあらためて言うまでもなく、今日の世界情勢は、かつてない大きな転換期に直面いたしております。久しきにわたって原子兵器等を含む軍備競争を続けてきた世界の大国は、これら兵器の想像を絶する発達によって、戦争が、交戦国はもとより、人類を破滅に導く結果を招来することを自覚し、今、核兵器問題を手始めに、完全軍縮の方向を真剣に指向していることは御承知の通りであります。これらのことは、昨年九月のフルシチョフソ連首相の訪米と、アイゼンハワー米大統領との会見、さらに、フルシチョフ首相国連総会における完全軍備撤廃の提案、これに引き続く国連総会における全面的完全軍縮決議等に表われております。世界は確かに雪解けの方向にあります。もちろん、われわれは、それが完全な雪解けだというのではありません。それが完全に実現されるまでには、多くの困難が横たわっていることは当然であります。しかし、それにもかかわらず、世界人類が生き残るためには、この完全軍縮の方向以外にほかの道はないのであります。その意味で、この雪解けの方向は絶対に正しいし、かつその方向をあらゆる努力を払って生かされなければなりません。世界が一般的に言ってこのような方向にあるときに、岸内閣ば、日米新安保条約を締結し、日米の軍事同盟を強化し、緊張をやわらげるどころか、かえってそれを激化する道を歩んでいることに、世界の大勢に逆行するものとして、われわれはその時代錯誤政治感覚を疑わざるを得ないのであります。(拍手)日本の運命に重要な関係を持つこの新安保条約を、岸総理は、みずから渡米して強引に調印してきたのでありますが、かかる重要問題については、国会の承認を求める前に、衆議院を解散して国民の世論に問うべきであると信じますが、まず第一に、この点についてお尋ねいたします。  次に私は、外交防衛問題について所見を伺います。  さきにも触れましたように、世界は、大量殺戮兵器の発達に伴って、力の対決が人類の共滅を意味するということから、米ソ首脳交換訪問や、さらに近くは東西首脳会談が持たれようとする情勢下にあることは周知の通りでございます。原子兵器宇宙科学の発達は、世界外交や防衛問題に新しい路線を策定せざるを得ない客観的諸条件となって現われているのでありますが、かかる世界情勢に応じて、日本外交防衛政策が新しい角度から再検討されなければならぬこともまた当然でございましょう。今日のように大量殺戮兵器の出現した時代、また、世界のいかなる地点をもその射程目標に選べるほど高度に発達したロケット兵器の時代、このような時代における一国の安全保障は、戦争になったらどうするかということではございません。問題は、戦争の原因、戦争を誘発しそうな客観的諸条件そのものを、平和的な外交交渉によって取り除くことでございます。その意味で、古い時代におけるような戸締まり論的立場でどのように防衛問題を論じても、絶対に問題の解決にはならないし、かつ、今日の段階における兵器の問題を離れての防衛・戦略論議は全く無意味だということであります。岸総理及び藤山外相は、施政演説において、新安保条約は、国連憲章によって否認された侵略行為が発生しない限り決して発動されることはないと言っておりますが、問題は、日本が外国から理由のない直接の侵略攻撃を受ける危険性よりも、安保条約に規定されている「極東の平和と安全」の名において、日本と全くかかわりのない他国の紛争、戦争に日本が巻き込まれ、その犠牲となる危険性の方がはかるかに多く予想されるということであります。(拍手)さらにまた、このような危険を排除するためといわれる、いわゆる事前協議の問題にしましても、条約拒否権のないことはすでに明白となったし、従って、わが方が合意しない場合、米軍を規制する保証はどこにもなく、また、吉田・アチソン交換公文の存続によって抜け道もあるという結果となったのであります。それでもなお日本の安全といわれるのかどうか。総理、外相の見解をただしたいのであります。この場合、日米共同声明の中に、「米国は日本国政府の意思に反して行動する意図はない」という字句を挿入することによりまして能事終われりとしているようでありますが、事と次第によっては国の運命に関するような重大な問題を、ただ相手国の善意だけに託し、条約中これを明記することのできないような外交は、完全な敗北外交と言わなくてはなりません。それとともに、われわれは、岸総理藤山外相等の善意に全く驚きを禁じ得ないのであります。このように見てくると、新安保条約は、日本の安全に役立つどころか、かえって危険な道であり、かつ、世界の大勢である緊張緩和の方向に逆行し、特に、ソ連、中国等との今後の外交にとって重大な障害となることは必至であります。また、中ソのみならず、東南アジア諸国にしましても、たとえば、フィリピンの新聞デイリー・ミラーは、新条約について、「東南アジア諸国は、ワシントンとともに新条約を喜ぶわけにはいかない」と、きびしく批判しております。政府のいう低開発諸国に対する経済協力という問題も、案外期待に反することになるのではありませんか。これらの問題について、総理、外相はどのように考えられるか、お尋ねいたします。  次に伺いたいことは、今度の新条約は、明白に憲法違反と思うがどうかということであります。政府は、憲法の自衛権を際限もなく拡大解釈しているが、今回の条約に盛られたバンデンバーグ決議の趣旨はいわゆる自助及び相互援助を義務づけるものであって、どのように説明しようとも、これは明白な憲法違反と断ぜざるを得ません。岸総理は、なおこれを合憲と考えられるかどうか、この際、あらためて具体的に説明されたいのであります。  なお、この機会に、岸総理は憲法第九条を守る意思を持っているのかどうか、あわせてお答えをいただきます。もちろん私どもも、固有の権利たる自衛権を認めます。それは疑いもなく確固として存在いたしております。しかし、自衛の手段方法は、特に戦争放棄を憲法で規定した日本の場合においては、わが国の置かれた地位、国際的客観的諸条件、地理的条件、国民の願望等、多くの要素の総合的判断の上に求められるべきであります。そういう判断の上に立って考えるとき、日本の真の安全の道は、東西いずれの国とも特定の軍事同盟を結ばず、中ソに対しては、中ソ友好同盟条約の対日軍事条項の削除を求め、しこうして日本国憲法を前面に押し出して断固として中立の道を歩むことであると確信をいたします。(拍手)かかる意味において、この機会に、岸総理安全保障に関する基本的見解をただしたいのであります。  さらに、これと関連してお尋ねしたいことは、完全軍縮に関する岸総理の見解、及び軍縮が具体的日程となった場合、日本自衛隊はどうなると判断されるのかということ、さらにいま一つ、今日の世界情勢に照応して、自衛隊の増強を即時停止する考えはないか。この際あわせて総理の見解を承りたいのであります。  次の問題に移ります。総理は、施政演説において、世界の趨勢は、東西両陣営が共存し得るための最小限度の共通の場を見出そうとする方向にあることをうたいながらも、すぐそのあとで、この気運は両陣営の軍事的均衡のもとにかもし出されているという結論を引き出し、依然として力の政策に重点を置き、外務大臣はまた、それゆえに、政治的にも経済的にも共通の基盤に立つ国との間の集団安全保障という、一種のイデオロギー外交の立場をとっているのであります。この場合、いわれるところの雪解けの原因が、人類を破滅に導く兵器の出現や軍事的均衡に存するという原因のせんさくだけにとどまってはなりません。問題の所在は、世界観の相違にもかかわらず、力の対決によらず、共存の可能性をいかにして求めるかにあるのであります。ましてや、平和憲法を持ち、戦争を放棄し、また、核兵器の保有も認めない日本が、これから力の政策に一枚加わって軍事的均衡政策安全保障の道を求めようというのは、進行する世界情勢にマッチしない時代逆行の方向といわなければなりません。しかも、自由陣営との提携、力の均衡をうたうだけで、具体的な緊張緩和政策を何ら示していないのであります。単に日米共同防衛体制を強化し、軍事力だけを増強すれば事足りるというのでありましょうか。総理は、さきの日米共同声明の際、国際緊張緩和にあらゆる努力を払う決意を表明したアイゼンハワー米大統領に、この決意に対し全く同感であり、これを支持することを表明されたのでありますが、日米軍事同盟の強化と緊張緩和という、この相反する、かつ全く相異なった二つの条件の上に立って、それを可能にするいかなる方針と確信があるのか。岸総理のまじめな意見を伺いたいのであります。これを具体的に言うならば、今新安保条約に対してわれわれが反対であることは、あらためて言うまでもございませんが、われわれのこの基本的立場は別として、政府はこの新安保条約を背景に、つまりこれを通じて西陣営との関係を強固にし、これを足がかりとして、次に東側に窓を開く方針との説も伝えられておりますが、総理の真意はどうか。これについては、先般、中国外交筋から、「新安保条約背景に日中の調整は論外」と手きびしい批判が加えられておりもまた、ソ連も新たな意思表示を行なったことは言うまでもありません。しかし、それはそれとして、岸総理としては、そういう矛盾をどのように調整していくつもりなのか、この困難に直面しての経綸をお聞かせいただきたいのであります。  中国問題につきましては、現に自民党政府部内でも、日中打開し得る者が次期政権担当者というスローガンがあるようでありますが、まさにその通りだと思います。また、国際的に見ましても、中国の承認は、軍縮協定核兵器実験禁止協定等が国際的な課題となったときには、中国承認という問題が世界的課題となることは必然でありましょう。また、現に先ごろ陳毅中国外相が、中国が加わらない軍縮協定には中国政府は縛られないとの見解を表明したのに対し、アメリカ国務省は一月二十一日、中国の軍縮参加を示唆する含みある発言が行なわれており、中国問題に対するアメリカ国内の動きに新たな方向を示すきざしが見え始めております。このほか、あるいはコンロン報告マクスウェル報告、スチーブソンの見解等、米国の有力な機関・人士の中国承認の主張はますます拡大しております。このようなときに、日本政府は、アメリカ中国政策が変化を生じたときは、事前に日本に通告してもらうとか、もらわないとかいうような、自主性のない、情けない外交はやめて確固として日本の方向を策定し、その方針に基づいて、むしろ関係各国を説得し、動かし、新しい外交路線日本のイニシアチブにおいてみずから築くべきであると思いますが、どうですか。現に自民党の三大武夫氏も、中国問題に対する対米打診を不見識きわまるものとして岸総理の態度を批判しているではありませんか。私はアメリカと話し合うのが悪いというのではありません。アメリカに限らず、関係各国と理解を深めるのはよろしいと思います。問題は、それがあくまで理解を深め、わが方の真意を相手に納得させるためのものであって、外国のあとに追随していいということではありません。  さて、重ねて言及いたしますが、岸内閣は、新安保条約の推進、自由陣営との提携強化ということ以外に、何らの政策もないのでありますか。新安保条約と中ソとの外交交渉という二つの異なった要素の調整が岸総理によって可能かどうかは別の問題であります。その可能、不可能は別として、岸総理として、何らかみずからの構想、成算があるのでありますか。防衛力増強以外には何らの対策もなく、依然として国際情勢待ち、静観という立場であるならば、今日の世界情勢に対処する政治家としては、その見識、資格を疑わざるを得ないのであります。(拍手)局面打開の経綸なくば、むしろこの際、国家百年の大計のために、すみやかに退陣さるべきであると思いますが、総理の所信はいかがでありますか、お尋ねいたします。後任総裁の候補は、だいぶそこに並んでおるようでありますが……。  次に、ソ連関係についてお尋ねをいたします。  先般のソ連側の覚書は、根本的には新安保条約の取りきめにかかっており、これを推進する政府の方針と、新安保が国際関係に及ぼす影響についての政府の見通しの甘さは、きびしく批判されなければなりませんが、同時に、歯舞・色丹は、わが国固有の領土であり、情勢変化によって左右される性質のものでないことを、この際明白にしておきたいと存じます。いずれにしましても、日ソ両国当面の事態は、懸案の平和条約はもとより、さしあたっての漁業交渉等いよいよ困難となってきたことは確実であります。この局面を政府はどのようにして打開せんとするのか、先ほどの対中国問題とともに国民の知らんと欲する問題でございます。これは根本的には、ただいまも申しましたように、新安保条約にかかる問題ではありますが、この際、局面打開の一方法として、日ソ不可侵条約を含む平和条約の締結を考慮し、返還される領土が外国の基地として使用されることのない政治的保証のもとに一ここが重要であります。外国の基地として使用されることのない政治的保証のもとに、領土問題の合理的解決をはかることを提案いたします。要するに、返還される領土が軍事的に利用されないという政治的保証を与えることが重要なのであります。それとともに、当面、日ソ文化協定、見本市の開催等、平和の実績を積極的に積み上げることなどの必要は言うまでもございません。このような方向においてのみ領土問題も当面の漁業交渉も正しく解決されるものであると確信をいたします。そうでない限り安保条約の存続中、なかなか本格的な局面打開は困難でしょう。ただいまの提案も含めて、対ソ外交の今後についての政府の明確な見解をただしたいと存じます。  次に沖縄問題でありますが、この問題については、アメリカ国内にも、いわゆるコンロン報告に示されたようないろいろな要素がありますが、とにかく沖縄を日本に返還することを前提として、その間、行政は文民によるという趣旨の方向が現われておるようであります。米国内にもこのような動きがあるときに、沖縄島民の熾烈な日本復帰の願望と関連して、この問題について政府はどのような方針を持っているのか、お伺いをいたします。  以上で外交問題を終わり、次の問題に移りますが、これを要するに、われわれに必要なことは、今日の世界情勢に対処して、日本がみずからのためにもまた国際的にもどのような貢献をするかということであります。その意味で「雪解け」、「完全軍縮」という問題と、「非現実的」とか、「実現性の乏しい理想論」とか言って故意に過小評価すべきではなく、まずもってこの方向が正しいかどうかを確認することであります。そして、もしそれが正しいと確認されるならば、それに到達するための手段、方法、手続等、いわば順序の問題は、提起された目的を実現するための技術的な問題であることを悟るべきでありましょう。今日、兵器や科学の分野における革命的な変化は想像を絶するものがありますが、今や必要なことは、われわれ政治に携わる者の頭脳そのものの革命であります。抽象的な理念だけにとらわれてはなりませんが、同時に、世界の動向、歴史の流れを正しく把握し、人間の英知と創造的な思考を最大限に働かせて、人間世界に、力の対決でなく、国民生活の水準で競争するような時代を築かなければならぬと信じます。岸総理はかかる時代に対処するいかなる経綸を有されるや、あえて一言を呈して外交問題を終わります。  次に、明年度予算案財政投融資計画及び経済全般について、われわれの批判を加えながら政府の見解をただしたいと存じます。  なお、この政府案の内容の質疑に入るに先だって一言触れておきたいことは、予算編成過程における驚くべき混乱と無統制であります。その不手ぎわは実に醜態をきわめたものであり、新聞等もこれをゴネトク予算と評しております。予算編成というものがこのような形であってよいのかどうか、この際、総理、蔵相の所見を伺っておきたいと存じます。  さて、明年度予算案は、一般会計において一兆五千六百九十六億円余、財政投融資にあっては五千九百四十一億円、実質規模で五千九百八十六億円となっておりますが、しかし、これは形式上の数字でありまして、実質的には、さきに触れました予算編成過程におけるぶんどり競争の結果、大蔵省は窮余の策として、原案の規模を形式上維持するために、復活要求のうち約百億円余を本年度すなわち三十四年度の一補正回しとしたのでありますから、実質規模はこの分をプラスしたものと同様であります。さらにまた、明年度は国民の疑惑と批判の的となっているロッキード機を総額約七百億円の国庫債務負担行為で採用しようとしており、なお、これに関連する機材費及び艦船建造継続費等を含めると、国庫債務負担行為の総額は一千億円に近いものとなり、その結果、三十六年度以降の防衛費は飛躍的な増額を必至としているのであります。なおまた、公債は発行しないと言いながら、開発銀行電電公社等で、計五千万ドルの外債発行も予定されているのであります。そのほかにも予定はありましょう。またその反面、税の自然増収を二千百億円以上も見込みながら、減税は国民の切実な要求にもかかわらず全然見送りとなったし、そうかと思えば、一方においてガス料金は一月から値上げ、また電気料金地下鉄運賃等値上げも予想され、通運料金も七日から値上げになることは、もう、すでに御承知の通りであります。また、国際情勢雪解け、軍縮の方向にあるときに、これと逆行して、防衛費は、さきに触れた国庫債務負担行為と別に、防衛支出金の繰り回し分を含めて実質百二十五億円の増加となっているのであります。また、額は十億円足らずではありますが、問題の多い造船血利子補給を、しかも海運界が昨秋以来好転し、船株も上がってきたと言われるこのときに、大資本のために復活することは、容認しがたい問題と言わねばなりません。また、財政投融資にしましても、中小企業農業等には申しわけ的な増額をしているものの、依然として大企業中心であることは、あらためて指摘するまでもなく明瞭でございます。これを要するに、明年度政府案は、軍事費の増額と大資本中心の政策を根幹とした、しかも日本経済及び国際情勢現状認識を欠いた放漫予算の性格と言うことができましょう。もちろんわれわれも停滞的な消極政策を是認するわけではありません。かつ国民生産や所得が増加すれば、それに比例して予算規模もある程度ふくらむのは当然でありますから、必ずしも予算の総ワクだけを問題にするわけではありません。問題は、むしろ軍事費の増顧という世界の大勢に逆行する国際認識、並びに日本経済の特質、産業構造上の欠陥等、いわば、わが国経済構造上のひずみ、矛盾に対する政府現状認識の不足、及びその構造上の矛盾を克服解決するために必要な政策があまりにも貧困であるということであります。この場合、政府は、経済活動を強化すれば間接的に国民生活に寄与するという立場をとると思いますが、この考え方は、もちろん一定の条件のもとにおいては肯定されます。しかし経済活動の波動が間接的にも及ばない階層、また、逆にかえってこの経済活動の犠牲となる階層にとっては、国の予算面における直接的な援護措置が絶対に必要であることを、この際あらためて強調したいのであります。  さて、わが国経済は確かに三十四年度において一二%という高い成長率を示し、成長率に関する限り、昨日の総理の演説のように世界の驚異かもしれません。しかしながら日本経済は、それにもかかわらず重要な矛盾を内包しているのであります。すなわち、国全体としての経済成長率は高度であっても、各部面における富裕と貧困、先進性後進性、いわゆる階層較差はその嘱が狭められるどころか一そう顕著になりつつある事実であります。しかもこの較差は、階層較差という単純なものではなく、農工較差地域較差企業較差と言われる形で、わが国産業構造国民生活上の重大な欠陥となって現れております。三十四年度の厚生白書によれば、要生活援護者のほか、生田保護の適用こそ受けないが、そのすれすれの線にある低所得者層が百六十九万世帯という多きに上っている事実を指摘しておりますが、実際にはその似は一千万人くらいと想像されます。さらにこの白書は、世界で最も高い経済成長率を示したわが国が、自殺者、特に一家心中の数においても世外で最も高率にある事実をあげております。統計によれば、三十二年の自殺者数は、未遂を含めて三万一千八百三十八人であります。大蔵大臣自画自責手放し楽観論にもかかわらず、これがわが国産業経済特異性であり、国民生活の実態であります。また実にこれこそわが国経済の繁栄の陰に隠された暗い断面と言うことができます。(拍手)このように見てくると、政府の施策は平面的な経済成長中心主義であって安定的成長を確保するための予算と施政演説ではうたっておりましても、実際には安定的成長に対する考慮があまりにも不十分であり、かつ欠除していると考えられるが、政府は、わが国経済のこのような特殊性についてどのような現状認識を持っているのか、また正しい意味での安定的成長に今後の施策の重点を移す考えはないか、お尋ねをいたします。これはまじめにお答えをいただきたい。  さて、わが国経済がこのような矛盾や欠陥を持っているときに、国際的な要請にも押されて、わが国も貿易・為替の自由化を迫られる段階となったのであります。今、予算問題の際に、私が唐突にこの自由化問題を持ち出したのは、ほかでもございません。実はこの貿易・為替の自由化の実施にあたって、もしその対策に欠けるならば、先ほど来触れてきたわが国経済構造上の矛盾、欠陥は、一そう激化すること必至となるからであります。実にこの自由化は、国際的弱肉強食時代に入ることを意味するものと言えましょう。しかし、自由化は必然の方向であります。その意味で、政府がこの自由化の方向に踏み切る場合には、当然、明年度予算及び投融資計画の中にその対策が頭を出していなければならないのに、それについての具体的な施策が十分講ぜられておらないことは、先ほど来触れて参りました安定的成長の問題と関連して、明年度政府案の重大な欠陥と言わなければなりません。(拍手)本年は世界的に好況の年と言われておりますが、しかし世界には、今、国際市場競争の激しい冷たい風が吹き始めており、英国の貿易自由連合、欧州の共同市場など、ブロック別カルテル化も進み、しかも、世界的に技術革新による設備更新と相待って、過剰生産の要因をはらむ情勢となっていることは周知の通りであります。自由化を実施する場合には、もちろん実情に応じての段階順序があるべきですが、この場合、世界的にもある程度通用し、かつ日本の実情に応じての自由化のスケジュールを具体的に示されたいのであります。通産大臣にお願いをいたします。この自由化の一般的スケジュールとともに、何よりもまず抵抗力の最も脆弱な部分に対して十分な配慮がなされなければならないと思います。端的に言えば、わが国の現状においては、国際競争に対応できる体質改善や基幹産業の育成も大切でありますが、同時に、経済の二重構造の改革にメスを入れるような積極的な施策が重要だということであります。それに基づいて、中小企業、農業の育成強化、合理化に伴う失業対策、雇用の拡大及び労働者の給与改善等を重点的に施策することが、当面最も重要かつ喫緊の課題と思います。なお、一部企業において雇用増加が伝えられておりますが、最近の傾向はその大部分が臨時工である事実を見のがすべきではないしまた、三十五年度の経済計画においては、明年度の雇用は〇・七%減少することになっているのであります。また、失業問題については、炭鉱ですでに十一万人の整理が発表され、一部においてはロックアウトにより死闘が展開されている等の事実を認識すべきであります。さらにまた、ガット会議において日本農業の保護政策についての批判が出るのではないかということから、農民は今後の成り行きに不安を感じておりますが、広大な耕地を持つ諸外国の農業と、わずか七、八反歩の零細耕地しか持たぬ日本農業とを、絶対に同一視すべきでないことを付言をいたしておきます。(拍手)  さて、これら諸問題について政府はいかなる対策を持っているのか、具体的に関係大臣から答弁を求めます。なお、時間の関係で、以下は単純に項目だけをあげてお尋ねをいたします。  その一は、明年度における国民の税負担総額の国民所得に対する比率は二〇・五%となり、本年度より〇・六%とわずかではあるが重くなりますが、これは政府の宣伝してきた所得倍増計画と矛盾するし、かつ、三十七年度までに税負担率を一八%に下げるという長期経済計画に逆行すると思うがどうか。なお、明年度予算案には明年度計画に照応する所得倍増計画をどのように織り込んであるというのか、年度別の計画を具体的に説明されたいのであります。また、所得倍増計画の作業はどうなっているのか、これは経済企画庁長官に伺います。  第二は、明年度予算の歳入は、いわゆる隠し財源までほとんど吐き出してしまったのであるが、三十六年度における減税は可能かどうか。後年度ということでなしに、明確にお答えいただきたい。  第三は、政府は、明年度予算の膨張と民生安定費の不十分を、災害関係費に籍口するかもしれませんが、しかし、その反面、当面緊急性もなく、かつ国際情勢にも逆行する防衛費を増額し、さらに一千億にも上る国庫債務負担行為をあえてしております。このような災害時等をも想定して、MSA協定第八条には、「自国の政治及び経済の安定と矛盾しない範囲において」云云と、りっぱに規定されておるのであります。われわれはこの場合、防衛費、特に防衛支出金の不用分及びロッキー下生産費等を他の民生安定費に回すことを要求いたしますが、政府の所見はどうか、お尋ねいたします。  第四に、貿易自由化を契機として、外国資本の日本進出が相当激しくなるものと予想されているが、これについての対策いかん。  以上で質問を終わりますが、残された諸問題は同僚議員の質疑に譲ります。ただ、この際、議会政治のあり方に関する総理の独善的見解には徹底的に抗議するとともに、行政府が立法府に対して不当な容像をすることは容認しがたい問題であることを特に付言をいたしておきます。  質問を終わるにあたって触れたいことは、先ほども申しましたように、世界の大局、歴史の流れを一正しく把握し、科学の分野の発展に立ちおくれぬよう、料亭の中でコップの水をかき立てておるような古い型の政・治を一掃し、雪解けの方向に寄与し得るような外交と、国民生活の安定を確保するための平和経済構造をすみやかに確立することの急務を指摘し、政府の誠意ある答弁を期待して、日本社会党を代表しての私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
  5. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 羽生君の御質問にお答えをする前に、一言申し上げます。すなわち、昨日の私の演説中、国会の審議に関し必ずしも適当でなかった表現のありましたことを釈明します。羽生君の外交に関する御質問にお答えをいたしますが、全体についての私の考えを申し述べておきたいと思います。すなわち、いろいろな御議論がございまして、具体的の問題については順を追うてお答えを申し上げますが、根本において国際情勢をどういうふうに見るかという問題について、私の見解を明らかにしておく必要があると思います。  言うまでもなく、この雪解けというこの国際情勢がどういう実態を持っているかということを、お互いに冷静に正しく把握していくことが必要であろうと思います。私は、東西陣営というものの間の緊張を緩和するために、それは今日御指摘になりましたように、科学兵器が非常に発達をして、そうしてこれがもしも全面的に用いられるというような場合は、人類破滅を来たすのであります。また、こういう軍備を増強していくことが、おのおのの国にとって非常な負担であるという意味から、政治家ができるだけこの軍備のこういう状況に対して、軍備競争というものをやめて、そうして話し合いによってこの問題を解決しようという努力をしなければならぬということを、東西陣営ともその首脳部において考えられているということは、これは御指摘の通りであります。また、その方向は、私どもも人類の一人として強く願っていることであります。従って、日本外交政策としてもその線に沿うてあらゆる努力をすべきことは、私は当然であると思います。しかしながら、問題は、現実の状況がそれではすべてこの雪解けになっているかという、この事態の認識であります。今日、東西陣営間におけるところの大きな問題として、あるいはドイツの問題があげられており、あるいは軍縮の問題が取り上げられておって、巨頭会談においても主要な題目として話し合いが行なわれようとしております。しかし、この話し合いにおきましても、前途は必ずしも私は容易にこれが妥結されるものとは思いません。しからばというて、話し合いの努力を続けていく、力強くあくまでも続けていかなければならぬことは言うを待ちませんし、また、そのために、話し合いの糸口が困難であるからといって、糸口をふさぐようなことをしてはならぬと思います。しかし、現実の問題として、東西陣営がその根本的な社会・政治に対する理念を異にしておって、その考え方は、両方が両方とも互いに相侵さず、そうして共存の道を見出していく、内政に対しては不干渉であり、また考え方自身を変えるというようなことを、根本的の考え方を変えるということをお互いに求めるというようなことではなくして、おのおのの立場というものをはっきりして、そうしてその立場をお互いが理解し合い尊重し合って、力を、武力を用いることなく、話し合いで解決していこうという、この情勢が生まれつつあるというのが私どもの見解であり、またそれを推進していくことがいいのであります。しかし、今申し上げるような、この国際情勢の状況を見まするというと、御承知のように、共産主義の国々がしっかりした団結のもとに立っておって、そうして自分たちの主張をこの話し合いにおいて実現するように努力している、これに対して自由主義の国々もまた協力して、そうして自分たちの考え方に基づいての主張を尽くしていく、この話し合いがどういうふうにつくかというのが今後の国際の情勢の推移であると思います。従って、こういう意味において、私は、共産主義の国々もその団結をゆるめることは絶対にありません。同様に、自由主義の国々もまたこの協力を強固にしていくことが、この話し合いを進める上において必要であり、またそれが世界の平和をもたらす根拠になると思います。この意味におきまして、私どもが今回考えておる安保条約というものがその一部である。これは御承知のように、世界の各地をごらんになりますというと、今日まだ、完全軍縮が一方に唱えられておるけれども、軍縮が実際行なわれておるかというと行なわれておらない。ソ連アメリカも、また、その他の国々も、現実に軍縮をまだ実行しておりません。たとえば最近ソ連において百二十万の兵力を減ずるということを明らかにすると同時に、フルシチョフ首相が同じ演説のうちに、これによってソ連防衛力であるとか軍事力というものは少しも弱まっているのじゃない、最近の科学兵器発達からいって、こういう人間は減らしてもわれわれの火力は少しもこれを損じておらないのだ、ということを強く国民に訴えておることから見ましても、これをもって直ちに軍縮が実行されておるというふうに考えることは間違いであります。こういう意味に立ちまして、私どもは、今回の安全保障条約というものは、御承知のように現在存在しております。しかも、それが結ばれたときの特殊な事情から見て、日本国民感情に合わず、また日本の独立と自主性を傷つけるものが非常に多いのでありまして、これを合理的に改めていこうというのが私どものこの安保条約の改定の真意でありまして、これを何か非常に軍事同盟というふうな言葉で表現されますが、その軍事同盟という言葉自身もどういう内容を持っておるか、これは非常にその言葉自身が私は疑問があると思う。これの内容を検討されますならばわかるように、国連憲章に違反しての侵略行為が行なわれない限り、この新しい安保条約防衛に関する規定は発動しないということはきわめて明瞭でありまして、あくまでも国連の精神に沿って運営されることは当然であります。こういうものを軍事同盟という言葉で呼ぶことは非常な誤解を生ずるゆえんであると考えております。(拍手)  そこで、具体的の御質問の内容につきまして順次お答え申し上げますが、第一に、事前協議の点についての御質問であります。これは交換公文において明らかにいたされました事項については事前に協議する、事前協議をするということを明らかにいたしております。そうして、これはしばしば国会においても、協議ということが成立することを前提としており、それが成立するためには日本の同意を必要とすることは、協議というものの性質上言うを待たないのであります。従って、そういう日本意思に反しての行動はとらないということは、従来交渉の途上においても両者の間に意見の一致したここでありまして、これもまたしばしば国会で申し上げた通りであります。それを今回のアイゼンハワー大統領と私の会談の際に再確認して、これを共同声明に盛ったという性質のものでございます。次に、東南アジアの低開発地域に対してわれわれが開発に協力する、特に米南アジア方面に対してこの新安保条約が一つの脅威を与えておらないかという御質問でありますが、私どもは東南アジアに対して、いろいろな意味において今日までも開発に協力をいたしておりますし、いろいろな折衝もいたしておりまして、今お話のような御懸念がこの問題に対して起こっておるとは考えておりません。  次に、憲法違反じゃないかというお話でありますが、この条約にも明らかにいたしております通り、私どもの負う義務はあくまでも憲法の範囲内でありまして、決して憲法違反の条項はございません。あるいはバンデンバーグ決議等に対して防衛力の増強の義務を負うのじゃないかというお話でありますが、要するに私どもは、あくまでも日本防衛につきましては、国防会議においてきめております方針によって、日本の国力と国情に応じてこれを漸増するという方針を自主的にきめておりまして、それ以上に何らの義務を負うものではございません。  憲法九条に対しての御質問でございましたが、これを守ることは従来といえどもわれわれは守ってきておりますし、将来といえども私どもは憲法の九条の精神を守っていくことは、これは当然でございます。しこうして、この解釈については、従来いろいろな議論がございましたが、私どもが国会において明確に私どもの考えを申し述べている通りであります。  次に、完全軍縮自衛隊の問題についての御質問でございます。いわゆる完全軍縮というものが、軍備を一切撤廃するということが私は究極の目的であると思いますが、まだまだこの国際の現実から見まするというと、すべての国がすべての軍隊をすべて撤廃するということに至るまでは、相当な時日がかかると思います。これは羽生君も御理解いただけると思います。そうすれば、その途中において、ある軍縮段階的な問題が考えられなければならぬと思います。その段階的な問題として、今、軍縮会議が行なわれていることも御承知通りであります。これには、その途上において各国の間に均衡のとれた軍事力というものがどういうふうにして維持されるか、また、これの違反をなくするための監視制度をどうするかという問題について、なかなか各国の間に意見がまとまっておらないことも御承知通りでありますが、こういうことは、やはり今後われわれは、国連を通じ、国連の内外において、このいわゆる十カ国会議というものが結実するように努力をしていかなければならぬし、また、その前提である核実験禁止の問題に関する三カ国の会議に対しましては、日本が強くこれを主張し、また、これの世界的な空気を盛り上げてきている関係から申しましても、軍縮問題の前提としても、まずこの核兵器の実験禁止の問題が実現するように今後とも協力をいたして参りたいと、かように思っております。  共産圏との関係についてはどう考えるか。一方において自由主義の立場を堅持し、日米の協力によって日本の平和と安全を守り、日本の繁栄を作っていくという立場をとる以上、一体、共産圏との間の関係はどうなるのだという御質問でございます。私は日本がどういう外交方針をとるかということについては、いろいろな考えもありましょう。しかし、私自身、日本国民の真の繁栄と安全は、日本政治の目的として、中心の理念として考えている自由民主主義の立場を堅持し、同じ考えを持っている国々と提携していくことが、私は日本の繁栄と平和を守る上からいって一番必要であり、その中核をなすものは、やはり日米の真の協力の上に日本の繁栄と平和を守っていかなければならぬという立場を私はかたくとるものであります。で、その考え方がいいか悪いかということは、要するに日本国民がこれを決定すべきものであることは言うを待たないのであります。各国ともいかなる外交政策をとるかということは、その国の国民がきめる問題でありまして、他から干渉を受けたり、あるいはこれに対していろいろな難くせをつけられるべき性質のものではないと思います。この意味から申しまして、日本確固たるそういう立場をとっているけれども、しかしながら、私どもは、私の演説のうちにも申しました通り、決して共産圏を敵視するものではございません。また、あくまでも話し合いによっていろいろな問題を解決していこうということは、これは当然であります。今日、いわゆる世界雪解けといわれる米ソ両首脳部の交換訪問や話し合いということを見ましても、私から申し上げるまでもないことでありますが、ソ連が共産主義の立場を変更して自由主義の方へ行こうという考えでもなければ、また、アメリカが自由主義を変更して共産主義の方へ行こうというものでもないのであります。おのおのがおのおのの政治的理由に立ってはっきりとした立場をとって、そうして話し合いでものを解決するというのであります。従って、日本が今申し上げますような自由主義の立場をはっきりととって、自由主義の国々とはっきりした協力を作って、その上に、私は、そういう立場において、確固たる立場に立って、共産主義の国々とも話し合いによってすべての問題を解決していくということが根本だろうと思うのであります。(拍手)  そうして、ソ連との問題につきましては、最近の覚書の問題に関しましては、私が今申し上げました趣旨から申しまして、私は、日本のとるべき外交方針に対して、このソ連の覚書は、一面においては内政干渉的な意味を持っており、この点についてはわれわれは同意するものではないのであります。また、領土問題については、すでに両国の間に正当にきめられたところの共同宣言に反して、一方的に新しい条件をつけてくるということは、私は、国際信義の上から許すべからざることであるという立場をとっております。(拍手)これはソ連政府の十分な反省を促さなければならぬと思います。ただ、このソ連との問題におきましては、こうした領土問題、歯舞、色丹のみならず、われわれは日本固有領土日本への返還を一貫して求めておりますが、この問題がきまらない限り、実は平和条約が結び得ないことは、日ソ交渉の経過から見まして御承知通りであります。従って、私は、この問題を、やはり領土問題に対して、ソ連日本人の考えておることを正当に理解し、これに対して十分な理解に立った領土問題解決ということを促していかなきゃならないが、それは現在の段階では、まだその段階ではない。そこで貿易の問題を進めるとか、あるいは文化交流をするとか、その他、人の交流を盛んにして、われわれの考えが決して政党政派の立場や、あるいは思想的な立場でもって、領土的の見解が違うのじゃなしに、日本国民全体がそう考えておるということをソ連が十分に理解して、そうしてこれを日本に返すというふうなことを進めていく必要があるし、また同時に、東西陣営の間の国際的緊張緩和という、この情勢をさらに推進することによって、この問題を解決すべきものであって、今御提案になりました日ソ不可侵条約を結んだらどうだというお話がありますが、私はこの点に関しては、日本国民感情から申しましても、日ソ不可侵条約というものはとうてい成り立ち得ないものだと考えております。  さらに、対中共の問題でありますが、この問題は、昨日の外務大臣演説にもありましたように、一面、日中の長い関係から申しまして、日本立場からこれを解決していかなきゃならぬ部分があります。また同時に、世界政治の流れにおいてこれを解決しなければならぬところの国際的な問題もこれにからまっておることは御承知通りであります。従って、日本立場から考えるべきこと、また、日本が最も深い理解を持っておるという立場から世界の各国に呼びかけていかなければならぬ事柄は、もちろん日本が主導的な立場をとってやるべきことは当然であります。しかしながら、同時に、世界政治の流れにおいて解決しなければならぬような問題につきましては、私は、アメリカ初め関係各国と話し合いをしていくことは、これは当然必要であり、また、そういう考えでございまして、決してアメリカに追随するような考えではございません。(拍手)  それから、こうした問題に関係して局面を打開するために解散をしたらどうだとか、あるいは私が退陣したらどうだというような御意見がございましたが、この点に関しましては、解散をする意思がないことをしばしば申し上げておりますし、また、私自身の責任から申しましても、この際、退陣というような無責任なことは絶対に考えておりません。  なお、沖縄問題に関しての御質問でありましたが、沖縄については、御指摘のように、沖縄の住民の気持、また、日本国民全体の考えから申しまして、施政権の返還を求めることはこれは当然のことであります。ただそれには、段階、事情があることも御承知通りであります。そこで私どもは、今回の問題におきまして、特に沖縄に対する住民の生活の向上や福祉の増進、また、その経済の発展のために、日本政府が協力をすることが有効であり適切であるというような問題に対しては、日米協力して各種の施策を行なう。たとえば最近行なわれます西表の開発のようなこういう事態をだんだんと積み重ねていくことが、現在の沖縄の福祉の増進の上からも望ましいことであり、将来これが復帰を求める上からいいましてもそういう実績を固めていくことが適当であると考えまして、そういう方向で進めております。  次に、予算の編成の問題について御質問がありましたが、言うまでもなく、予算の編成は政府が行ないましてこれを国会に提案することに憲法の規定にもはっきりあります。ただ御承知通り、政党内閣制をとっておる日本のごとき立場から申しますというと、予算の編成その他の問題もありますが、予算の編成のごときものについては、政党が国民に公約しておる事項をどういうふうに盛り込むかという問題については、政党が非常な関心を持つことは私は当然だと思います。従って、その過程において政党と政府とが十分話し合いをしていくことはこれまた必要なことである、そういうふうに考えております。(拍手)    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手
  6. 藤山愛一郎

    国務大臣(藤山愛一郎君) 羽生議員の御質問に対しまして総理から相当詳細に御説明がありましたので、私といたしましてその補足的な意味お答えをいたしたいと思います。  今日、対ソの外交につきまして御質問がございましたが、われわれといたしまして、むろん先月二十七日に参りました覚書につきましては、ソ連見解に同意をいたしかねるのみならず、ソ連のああいう覚書自身が誤った見解の上に立って問題の判断をいたしておるのみならず、それが国内各般に影響を及ぼすような形において出て参りましたことは、まことに遺憾に思っております。しかし、そういう立場ソ連が立っておりましても、われわれとして通常の外交に対しましては十分話し合いの上で進めていくことはこれは当然でありまして、現に行なわれております通商協定につきましても、今回は期限を三年にいたし、あるいは延べ払い等につきましてもお互いに話し合いをいたしておるのでありまして、現にこれらの話し合いは順調に進んでおるわけでございます。また、来たるべき漁業交渉にあたりましても、われわれとしては、これを純漁業上の経済問題として、十分科学的検討に立ちました実績に従いまして、日本側の十分な主張をソ連に納得してもらうように、力強く交渉いたして参るわけであります。そうした経済の問題につきましては、当然われわれの合理的な主張というものがソ連側にも十分納得してもらえるものと私どもは考えております。従って、そういう意味におきまして、ソ連に対する外交も力強く、そうした「日本立場を主張しながら進めて参りたいと思うのでありまして、政治問題等につきましては全く違った立場に立った議論でありますから、われわれとしては同感し得ないところでございます。  また、中共との関係につきましても、私が先般の外交方針において申し上げましたように、中共の問題が今日国際社会において次第に表面に出てきておることは、これは明らかな事実でありまして、軍縮問題あるいは核実験等の問題、そうした問題を考えます場合に、中共の問題を考えて参らなければならぬことは、国際社会においても次第に起こりつつあることは当然でございます。また中共が今日すでに十数年をたちまして、経済建設その他中国大陸において進んでおります事実も認めて参る必要があると思います一・ただ総理も言われましたように、今日中国大陸との関係につきましては、一面では、ただいま申し上げましたように国際的な中における処置の問題がございます。他面では、日本中国大陸との関係があるわけであります。それらのものをどう調節していくかという二つの問題があろうかと思います。われわれといたしまして、日本はアジアに国を持っておるわけでありますから、中国大陸と長年の交流を持っております。従って、民族的な感情においても、アジア人同士が同感し得る、あるいは共通な民族的な心理というものを持っておることはむろんでありまして、これらのことが、あるいは西欧の諸国あるいは共産陣営を含めて世界の各国でわからないような点もあろうかと思います。日本としては、やはり自主独立の立場に立ってこの問題を扱います場合には、われわれがアジアの一員として見ております点において、十分西欧各国の人たちに対しまして、これらのわれわれの見ている見地というもの、われわれの考え方ということを十分に申し述べて、そうして、たとえば誤解がありますならば、その蒙を開いていくことも必要であろうかと考えております。そういう意味におきまして、われわれとしては、先般外交方針演説でも申し上げましたように、自主的な立場に立ちまして、漸進的に問題の解決をはかっていかなければならぬと思うのでありまして、世界政治の中におきましても、また両国の中におきましても、この問題は将来とも十分努力をする必要があると思います。ただ今日まで、日本側だけがこれは悪いのではないのでありまして、中国大陸側におきましてもわれわれに対する誤解、不信が相当にあることは、これは明らかな事実だと思います。従いまして、そういう意味においては、日本側も十分考えなければならぬ点があるかもしれませんけれども、中共においても、私はこれはやはり十分考えて参らなければならぬ点があると思うのでありましてそういう点についてはお互いに反省して参らなければならぬと思います。  また、われわれとして軍縮等の問題についてどういうふうに対処しているかということの御質問があったわけでありますが、われわれとして完全軍縮を理想として希望することはもちろんでございます。しかし、今日その段階に入りておりませんことも総理が言われた通りであります。ただ今日十カ国委員会ができまして、しかもこの軍縮問題が国連で扱われますことが一番適当であったと思いますけれども、ソ連の主張する。パリティ方式によって十カ国委員会ができたわけでありますから、国連と十カ国委員会との関係というものは、これは現実の問題として十分われわれは考慮しながら、国連の意向を十カ国の委員会に反映せしめて、これは一日も早く十カ国委員会が何らかの結論を得るように努力して参らなければならぬのでありまして、国連の一員として特にわれわれとしてはそういう軍縮問題の具体的努力をして参りたいと考えております。特に核兵器の禁止問題等は、今日まで相当にジュネーブの会議におきまして、アメリカ側もソ連側も歩みよりをいたしてきておるのであります。でありますから、これが一日も早く決定いたしますことが、軍縮段階的進歩の上にも非常に貢献するところでありますので、その一点につきましては、われわれもできるだけ国連を通じての協力を惜しまないで進めて参ることを願っておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手
  7. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 予算編成の過程について、ただいま総理からお答えがございましたので、私は省略さしていただきます。ただ予算編成にあたりまして、相当長期にわたりましたためにいろいろな誤解を受けましたことは、まことに遺憾に思っております。  予算内容についてのいろいろ御批判がございまして、今回の予算放漫予算ではないか、非常な積極性を持つ予算ではないか、こういう積極性を持つ予算放漫予算は、今後の経済に対して悪影響を及ぼすのではないか、こういうような御懸念からのお尋ねがあったように伺ったのでございます。で、政府におきましては、現在の経済並びに今後の経済の見通し等を十分研究の上、見通しを立てまして、これに基づいて予算を編成いたしたのでありまして、私は御批判のような点は、さらに詳細に御説明いたしますれば、当たらない点が御了承がいただけるのではないかと思います。  概数で申しますと、予算規模国民所得に対してどういう割合であるかということをしばしば申しますが、三十三年度の国民所得に対する一般会計予算の比率は一五・八であります。三十四年度の当初は一五・九であります。今回の三十五年度の規模は一五%でございます。この点からお考えになりますならば、最近の経済の成長は予想以上に拡大しておる、こういう意味におきまして、予算規模としては私はまず適当な規模ではないか、かように考えております。ことに最近の経済の動向等にかんがみまして、特に私ども留意して、公債の発行あるいはインベントリーの取りくずし等、いわゆるインフレ・マネーは使わない。歳入は通常の歳入を基礎として歳入予算を立てるということを堅持いたしまして、いわゆる健全財政の線を貫いたと、かように考えております。  ところで、今回の予算編成にあたりまして、特に私どもが重点を置きました点は、昨日も御説明いたしましたように、今回は昨年の災害等にかんがみまして、特に災害復旧、さらにこれに関連して抜本的な国土保全対策を立てるということ、さらにまた社会保障関係施策を推進していく、この二つ予算編成重点といたしたのであります。この意味においての詳細な数字はすでに説明をいたした通りでございます。  問題になります防衛費等につきましては、羽生さん御指摘の通り百二十六億円、従いましてこの点では、予算の面では、昨年のものに比べまして、防衛庁費そのものも比較的例年の例に比べますと少額の増加にとどまったということであります。防衛関係費といたしましてはわずかに当初予算に対して九億円の増でございます。ただ問題は債務負担行為が相当多額に上っておる、こういう意味で、これを予算化する三十六年度以降において非常に負担が多くなるのではないかという御意見であったかと思います。この約一千億近い債務負担行為、そのうちロッキード採用のための債務負担行為は七百数十億でございまして、その他のものは一般の例年計上いたします債務負担行為でございます。そういうことを考えて参りますと、今回の債務負担行為は特に多かったと言われますけれども、ロッキードに関する限り、三十六年度に全額これが予算化されるものではなくて、今後三十六年以降四カ年にわたりましてこれを予算化いたすのでございます。従いまして、その年々の財政参状態を十分勘案して、これを予算化して参るつもりでございますので、特にそのために、必要な社会保障費あるいは減税等の施策について、これを見送るというようなことはしないように、十分注意して参るつもりでございます。御承知のように、防衛費の増加、防衛力の増加については、国力相応にこれを漸増していくという基本方針を立てております。この観点から十分工夫をこらす考えでございます。  なお、三十五年度の予算を編成いたしました結果、財源を使い果たしたではないか、そういう意味で、二千百億の税の自然増収を見たにかかわらず減税が行なわれておらないという御指摘があり、三十六年度以降においても減税は非常に困難ではないか、こういう御指摘があったと思います。予算の財政演説でも御説明をいたしましたように、今回は減税を見送りました主たる理由は、自然増収二千百億円に上りますが、いわゆる前年度の剰余金その他歳入として計上さるべきものが八百数十億減を来たしておりますので、それらの観点と同時に、また国土保全、災害復旧費等の多額の支出を要することと、また健全財政の線を貫く、この三点から、減税は今年は見合わせざるを得なかったのでございます。しこうして三十六年度以降につきまして、先ほど来言われますように予算の当然増もございます。そういう意味予算の支出の当然増も考えられる、こういうことがございますが、ただいまの経済情勢等から見ますと、税の自然増収を相当見積り得ると思いますし、災害復旧費等が減額されます。これらのことを考えて参りますと、三十六年度予算そのものは、ただいまそれについての見通しを立てることはまことに困難でございますが、ただいま申し上げるような支出増の面もあるが、さらに歳入増の面もあるというようなことを勘案いたしますと、国民の待望しております減税の処置等については、十分私ども考えて参らなければならないと思います。ことに一昨年来始めました税制調査会も順次結論を出しつつございますから、この結論ともにらみ合わせまして、国民待望の減税につきましても工夫して参りたい考えでございます。  ところで、貿易為替自由化予算との関係についていろいろお話がございました。確かにこの自由化はなかなか困難な問題であり、各方面にいろいろな影響を与えるものだと思います。その点で、農村あるいは中小企業の面におきましては相当の影響のあるものだと考えますので、私どもこれが実施にあたりまして、政府として十分慎重に対策を立てて、しかる上でこれを実施して参るつもりでございます。  次に、外国資本の対日進出対策について申し上げますが、外資導入につきましては、日本経済の健全な発展や国際収支の改善に貢献する、いわゆる優良なもの、こういう優良な外資の導入は積極的に私ども歓迎するつもりであります。そういう意味では優先的にこれを取り扱って参るつもりであります。しかし外資導入がワクなしに無制限に入って参りますと、いわゆるホット・マネーが国内に入って来る、そのために経済が撹乱するということも十分注意しなければならないことでございます。そういう意味で、外資導入については、今申すような優良な外資は積極的にこれを歓迎いたしますが、いわゆる資本導入全般についてこれを自由化するという点については、なお対策を考究し、十分検討を続けて参るつもりであります。従って、為替自由化方向としては、資本の点ではいわゆる正常取引の自由化、これをまず取り上げるつもりでございます。この正常取引の自由化を進めて参りまして、そうして国際収支等の面における影響等も勘案いたした結果、差しつかえないという十分な見通しが立ち、さらにまた国内の金融経済情勢等も資本導入について積極的にこれに対する対策が立てられる、こういう見通しが立った後に資本導入についてもこれを進めていく、こういう考え方に取り計らって参るつもりであります。(拍手)    〔国務大臣菅野和太郎君登壇、拍手
  8. 菅野和太郎

    国務大臣(菅野和太郎君) 昨年来から日本経済が非常に発展したについていわゆる産業の二重構造がだんだん激化するじゃないかというようなお話があったのでありますが、もちろんわれわれもその通り考えておるのであります。従いまして、この経済の発展を単に量的のみで発展をはかるのみならず、質的にこの経済の発展をはかるべきであると、こう考えておるのであります。お話の通り経済が発展するに従いまして、いわゆる所得の格差というものが各方面に現われております。たとえば農業と非農業産業との格差、あるいは同じ産業でも規模の大小による格差、大企業と中小企業との格差、またあるいは地域的な格差、こういう格差が現われて参りますので、従いまして、これらの格差をなくすことがすなわち質的の経済発展になるというように考えておりますので、そういうような点につきましては、それぞれの関係の省においてそういう格差をなくするような予算が計上されておると思うのであります。私どもの関係から申しますと、地域的な所得の格差でありまして、これの問題につきましては、たとえば東北開発の促進、あるいは九州の開発の促進、あるいは四国の開発促進というようなことで、これに対する特別な金融措置をとるとか、あるいはその他の補助の方法をとるとかいうような方法をとりまして、この地域的な格差をなくすような方針をとっておるのであります。  それから貿易為替自由化につきましては大蔵大臣からお話がありましたから、私からもはや説明する必要はないと思いますが、お話の通り貿易為替自由化が実現することによって、ただいま御心配になっておられた産業の二重構造が激化されるという心配はもちろんあるのであります。従いまして、貿易為替自由化は慎重にこれを取り扱わなければならぬということで、政府におきましては貿易為替自由化の促進閣僚会議を設けまして、そこで慎重にこれを取り扱うことにいたしたのであります。すなわち、自由化の目標とか、あるいは時期とか、あるいは所要の対策などにつきましては、これを慎重に取り扱いまして、できるだけ貿易為替自由化によって各産業に及ぼす打撃を少なくして、国民全体の福利増進になるような自由化をはかりたい、こう存じておる次第であります。それから所得倍増のことで、来年度の予算所得倍増についての何か予算が計上されてあるかというお話がありましたが、所得倍増につきましては大体目標をきめておるのでありますが、なお具体的に所得倍増の長期経済計画はただいま経済審議会においていろいろ策定中でありましてそこで大体昭和四十四年を目標にしてこの所得倍増の計画を立てておるのであります。それを実現するがためには、まず初年度三十五年度からこの所得倍増の計画を立てる必要がありますので、従いまして、さしあたり、たとえば科学技術の向上発展とか、あるいは産業基盤の強化の費用を計上するとか、あるいは輸出を盛んにする意味において海外経済協力基金の制度を設けるとか、あるいは、ただいま申し上げました所得の格差をなくするというような、いろいろの予算が各省に計上されてあるのであります。なお、国民所得倍増の事業は今どういう状態にあるかというお話がありましたが、ただいま申し上げました通り経済審議会においてただいま策定中でありますが、さしあたり問題になりますのは、経済成長率を一体どの点できめたらいいかということが問題になるのでありまして、今までのところでは、経済成長率を七・二%で、十カ年すれば大よそ国民所得が倍増になるという一応の計算はできておりますが、その七・二%がはたして適正であるかどうかということがただいま考究されておるのであります。御承知通り、今までの経過から申しますと、昭和三十三年の経済成長率は四・四%、また、昭和三十四年は一三%と計算しております。昭和三十五年は六・六%というように計算しておりますが、これを平均しましても大体八%になるのであります。でありますからして、七・二%が適正であるかどうかということを目下研究中でありまして、それが決定すれば、大体具体的な国民所得の倍増計画はでき上がることに相なっておるのであります。(拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇・拍手
  9. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。  ただいまわれわれの置かれた経済上の最も重要な問題は、貿易為替自由化の問題でございます。しこうして、貿易為替自由化につきましての原則、並びに、ただいまそういう措置をとるべきであるということにつきましては、大体世論は一致しております。しからば、いかなる方法でやっていくかという問題でございます。御承知通り、国内経済は自由でございますが、国際経済について見ますると非常に不自由でございます。今、自由に物を輸入し得る額というものは、総体の輸入額の三割二分でございます。しこうして、またその制限されたうちにおきましても、対ドル関係では制限しましてポンドその他では自由になっているもの、たとえば銑鉄、くず鉄、大豆、牛脂、牛皮、アバカ繊維、ラワン、こういう十品目につきましては、全体の一〇%余りを含めております。しこうして私は、対ドル関係でのただいま申し上げましたような原材料につきまして、これをほかの地域と区別するということはよくございませんので、まずこの十品目に手をつけました。しこうして、十品目のうち四品目はこの一月から自由にいたしております。それからまた、残り六品目の、一番やっかいな問題の大豆、銑鉄につきましては、おおむね十月といたしております。大豆につきましては相当の困難な問題がございますので、なるべく先に、しかも、その間に十分準備をしてやる考えでおるのであります。なおまた、大豆、銑鉄はそうでございまするが、鉄くず、牛皮あるいは粗製ラードにつきましては四月からいたします。精製ラードはおくらせます。また原皮は御承知通り中小企業が多いので、四月からやるということは困難でございまするから、三十五年度の上半期中というところでやっておるのであります。こういたしまして、とにかく、いろいろな過去の実績または現状を考えまして、移り変わりをうまくやっていこう。たとえば全体の輸入額の二十数。パーセントを占めます原綿、原毛につきましては、繊維関係各方面の意向を聞きまして、昨年末に、三十六年の七月にこれを施行すると、一年半近くの余裕期間を置きました。その間にいろいろな法律並びに手続等につきましての準備をいたしたいと考えておるのであります。で、今までのそれと、対米十品目を自由化し、そうして繊維関係をやると同時に、消費財また規制品等につきましても徐々に実情を調べまして、すでに昨年の秋から今年にかけまして五、六百品目自由にいたしております。今後また業界の様子を見ましてやりまして、繊維その他をやっていきますと、大体昭和三十六年の四月くらいから全体の七十数パーセントまで自由化し得ると思います。残る問題は、大きいのは石油と石炭と砂糖、その他、銅等がございまして、二四、五%でございます。  私は、理論的にも、また実際的にも、また日本経済をほんとうに力強くし、世界貿易発達さすためには、ぜひ通り抜けなければならぬ関所と考えておりまするが、いたずらに急いで、角をためて牛を殺すのそしりを受けないよう十分な準備をいたして行なっていく考えでおります。(拍手)    〔国務大臣松野頼三君登壇、拍手
  10. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) 貿易自由化に伴いまして、企業の国際競争が強まるということも予想されます。従って労働の質の向上を考えなければならない。技術の向上、技能検定あるいは職業訓練というものによって労働力の質の向上をはかりまして、生産性を上げて、そうして労働者の生活を上げていきたいという方向を、私は特に留意すべきだと考えます。第二番目には、国内に労働者にしわ寄せになるような過当競争が行なわれるということも予想されますので、労働基準法あるいは最低賃金法、退職共済という現行のものを、特に労働者保護の立場からこの運営に万全を期して参りたい。なお、新たな問題といたしましては、家内労働に手をつけて、家内労働の保護ということも検討しなければならないと、私はこう考えております。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手
  11. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お答えいたします。  自由化につきまして、農産物に注意を払えと、かようなお話でございまするが、その通り考えておる次第でございます。すなわち、お話のように、日本の農業はきわめて零細な農家によって作られておるものでございますので、自由化をいたす場合におきましても、それが生産者たる零細農民に与える影響、これにつきまして万全の準備を整えてやっていきたい、かように考えている次第でございます。そこで、重要産物であります米麦や、または酪農というようなものにつきまして自由化をいたす考えはございません。また、大豆につきましては、今までのような価格で政府が買い上げるというような準備をいたした上これを実行したいと、かように考えております。(拍手)     ―――――――――――――
  12. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 杉原荒太君。    〔杉原荒太君登壇、拍手
  13. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 自由民主党を代表して、主として岸総理に対し質問いたします。  質問の第一点は、国際情勢の動向についてであります。キャンプ・デービッドにおける米ソ首脳会談において、国際関係は「力づくでなく話し合いで」という原則が打ち出されて以来、特に、いわゆる雪解けについてさまざまな論議が行なわれております。アメリカの大陸間弾道弾アトラスが十四回目の試射を行なった結果、射程八千キロに対し目標の三・二キロ以内に命中するという精度を示し、また、ソ連の長距離ロケットも一万二千数百キロを飛んで目標に対し二キロの誤差にとどまったと言われるように、最近における長距離ロケットによって代表される新兵器の開発はまことに目ざましいものがあります。そこで一方においては、こういう状態になってみると、もはや戦争は不可能である、雪解け必然的にやってくるとして、きわめて楽観的な見解を持つ者があります。また一方においては、たとえば「資本主義を埋葬しよう」というようなフルシチョフの発言にもうかがわれる通りソ連は依然として世界革命の戦略目標はこれを捨ててはいないのであって、いわゆる平和共存の呼びかけのごときも一種の戦術にすぎないというのがソ連の基本的な立場であるから、雪解けなどというまほろしにだまされてはならないという警戒論もございます。この二つ見解は、米ソ関係を中心とする国際情勢の動向に関する見解の両極の傾向を示すものでありますが、われわれは、国際情勢の動向については、特に冷静に、現実の事態の推移を実証的に把握しながら、大局の趨勢の判断に誤りなきを期せなければならないと思うものであります。そこでお伺いしたいのは、岸総理は、今回アメリカを訪問してアイゼンハワー大統領と親しく会談し、国際情勢を検討されたのでありますが、総理は、大統領との会談を通じて、今後におけるわが国内外施策の前提をなすところのこの国際情勢の動向、なかんずく軍縮問題や東西首脳会談の見通し等についていかなる感想を持ってお帰りになり、いかなる御所見を持って国政に当たらんとしておられるか。先ほど羽生議員の質問に対するお答えの際お述べになりましたところで私は大体了承しておるのでありまするが、私の今申し述べましたような角度からしての質問に対して付加さるべき部分があったならば、その点お述べ願いたいと思います。  第二にお尋ねいたしたいことは、今回署名せられました日米両国間の相互協力及び安全保障条約に関する去る一月二十七日付のソ連政府の覚書についてであります。ソ連の覚書の内容を見ますると、全般にわたってまことに乱暴きわまるものであります。その内容の一部を摘出いたしますれば、たとえば、「新条約によって日本国の事実上の占領が永久化され、日本国の領域を外国の支配の下に置くことになった」とし、また、「新条約を締結することによって、日本国はみずからの手で主権国としての権利の著しい部分を外国に譲り渡し、自国の国家的独立を失ったという事態に立ち至っている」と言っている。また、「この条約による日本の再武装計画の中において、日本の軍隊をロケット核兵器によって装備することが特に要点を占める」というようなことを言っている。さらにまた、「現代のロケット核兵器戦争の下においては、領土が狭く、人口が秘密で、しかも外国の軍事基地の散在する領土を持つ日本全土が、最初の瞬間に広島・長崎の悲劇的運命を見るおそれのあることは明らかである」というようなことを言っている。そしてまた、「この条約日本の独立を失わしめ、外国軍隊が日本領土に駐屯を続けることになったので、歯舞、色丹を日本に譲り渡すというソ連政府の約束の実現を不可能とする新しい事態が作り出されている」として、「ソ連政府は、日本領土から外国軍隊の撤退及び日ソ間平和条約の調印を条件としてのみ、歯舞、色丹が日本に引き渡されるであろうということを声明することを必要と考える」と言っているのであります。われわれ日本国民は、かくのごとく事実を歪曲し、あまつさえ脅迫的言辞を弄した外国の干渉と、理不尽きわまるところの申し出は、断じて許すことはできません。(拍手政府としては、ソ連に対し、近く所要の措置をとられることでありまするが、その際、政府立場を宣明せられることは当然でありますけれども、それと同時に、われわれ日本国民の反応をも率直にソ連側に伝えられるということが、かえって私は両国関係のため適当だと思う。また、この種のやり口は、権謀術数を弄する国の外交において、ことさら作為的に交渉の障害となるべき難題を作り出し、これを外交取引の具として運用せんとすることが往々にして見られるのでありまするが、わが方として、相手方の術策に陥ってならないことは申すまでもありません。むしろ、わが方としては、このソ連覚書を機会として、積極的、自主的な外交を展開していくべきものと存じます。そこで、ここに本件に関する政府確固たる所信をこの国会を通じて国民の前に明らかにしていただきたいのであります。  第三に、わが国外交の基本方針に基づく具体的外交施策の若干についてお尋ねいたします。わが国外交の基本方針は、その目標の上から見まして、独立完成の実をあげることを目標とするところの独立外交の柱と、戦争の防止、平和の維持と国の安全を守ることを目標とするところの平和外交の柱と、国民の暮らし向きをよくすることを目標とするところの経済外交の柱を根幹とすべきものと信じます。今回の「日米条約の締結によりまして、独立国としてのわが国の地位と国民感情に「そぐわぬ点が是正されましたことは、独立外交の上から見まして、一つの画期的意義を持つものであります。しこうしてこの点はわれわれの単なる主観的解釈ではなくして、アメリカ側も、新条約の内容及びその運営については、日本側の自主的立場を十分尊重する趣旨において新条約が作られていると思うが、その点、念のためはっきりしていただきたいのであります。  平和外交の面において、その一環として日米条約の占むる地位とその意義は、われわれの正当に評価するところであります。本条約が、もっぱら平和を目的とする安全保障機構であることは一点の疑いをいれません。ただ私は、ここに二つの点について政府見解を確かめておきたい。  その一つは、本条約第五条の発動と国会の権能との関係であります。条約第五条にいう「憲法上の規定及び手続に従う」という中には、わが国について言えば、自衛隊法等の国内法上の要求を満たすことを条件とするということを含んでおり、従って防衛出動と国会の権能との関係は、条約においてもこれを当然認めた前提に立っていると解すべきものと思うが、はたしてそうであるか、念のため確かめておきたい。  もう一つは、本条約全体を読んでみますると、結局、本条約日本領域の安全保障について日米両国が言っておりますことは、どこの国に対してでも、お前の方からしかけてさえこなければ、こちらから先にしかけることはないのだから、お前の方は安心しておってよろしい。そのかわり、お前の方で日本を侵略しようと企てる場合には、日本の反撃だけでなく、アメリカの大きな報復力による反撃を受くることを覚悟せよ、ということをはっきりと宣言しておるのであって、そこに侵略を夫然に防止するという政治的効果のねらいがあるものと私は思うが、そういうふうに解してよいか、政府見解を確かめておきたいのであります。  今後の平和外交の推進に関し、その重要項目の一つとして政府軍縮問題を取り上げておられますことは、この問題が大国間の国際緊張緩和の中心問題であるという意味合いからいたしましても、われわれの十分理解し得るところであります。しかしながら、軍縮問題の今日までの経緯をしさいに点検してみますると、この問題が実際上いかに国際政治上の難物であるかは、だれしも痛感するところであります。また今日までの軍縮交渉の中には、軍縮を目的とするよりは、むしろ冷戦外交の政略手段として利用せられた面もあったことは、これを否定できません。しかし、それにもかかわらず、大国間対立の中心問題たるこの軍縮問題の重要性というものは、こうも減じているわけではありません。さればこそ政府においても、近くジュネーブにおいて開催予定の十カ国軍縮委員会に対し、国連の内外においてあらゆる支持と協力を与える所存であるということを言明しておられる。その点、われわれも希望するところでありますが、ただ、その支持と協力を与え、他国と連携をとって、外部から推進の空気を作り上げていく外交工作を進めていくためには、軍縮の直接の提案者たる立場にはないにせよ、日本日本なりの構想と方式というものを持つということが必要であると思う。そうしてそれは、あまりに理想に走った全面軍縮の方式などというよりも、第一段階の部分的軍縮として、たとえば西欧側の軍縮案中にも含まれておりますような、武力侵略を受けた場合、自衛措置として必要ある場合のほか核兵器を使用しないというような方式だとか、一昨年十月以来、米英ソ三国の間で交渉中の核実験中止の方式だとか、各般の実情から見て比較的実現性の公算の多い実際的な方式をもって当たることが適当であると思う。かつて小国を代表しながら、ポリチスやベネシュなどが、建設的、実際的な提案方式をひっさげて、そうして国際外交界においても非常な重きをなしておったごとく、また、わが国自身一昨年の中東危機の際発揮したような主導性をもって、今後の外交においてわが国は大国間の対立緩和と大戦防止に寄与する趣旨をもって、外交上、この軍縮外交において積極的な役割を果たしてもらいたいと思う。この点について総理の率直な御所信をお伺いいたしたいのであります。  次に、経済外交の面につきまして、ここには問題の範囲を限定してお尋ねをいたしますが、今回署名せられた日米条約において経済協力の条項が設けられたことは、経済外交推進の上から見ましても意義のあることであり、また、今後その意義を具体的に発揮せしめていかなければなりません。まず、この点について政府考えておられるところを示していただきたいのであります。次に、経済外交の面において、特に太平洋諸国との経済関係を常に総合的ににらみながら、具体的施策を現実的に考えていくというような態度がとれないものか。ある外国の有名な学者が予言しているような、太平洋地域において。パン・パシフィック・ユニオンの形成というようなことは、軽々に言い得ることではないでありましょうが、新国是というようなことが言われる際でもあり、総理において何らかこういった点について御構想があって、お差しつかえがなければお示し願いたい。  最後に、国民所得倍増計画の策定と多少新予算案に触れて、ごく簡単にお尋ねいたします。  今後おおむね十カ年間に国民所得を倍増するという計画は、今日までの経済成長の実績等から見ても、必ずしもその目標において無理ではないと思われるし、また、相当長期の計画を策定してやっていくということは、現代政治の行き方としてもよいことだと思う。むろん長期計画の策定については幾多の問題があるわけでありまするが、ここには二、三の問題だけに限定してお尋ねいたしたい。  経済規模の拡大をはかるにあたって、戦後の復興段階と異なって、今後は全体の大きさもさることながら、特に中身における矛盾、格差の是正等について特段の配慮を要することは申し上げるまでもありません。総理もその施政方針演説において各種産業間の破行的発展の是正などに十分意を用い、適切な施策を講じていく所存であると申しておられる。しこうして、わが国の現状から見まするというと、一地方べの過度の集中、各地域間の格差の調整も大きな問題である。そうしてこれがためには特に交通政策べの配慮が基本的に大事であると思われるのでありまするが、この点、政府はいかなるお考えをもって施策を講じていかれるのであるか  次に、所得倍増計画の策定に伴って、政府自身のやること、すなわち、財政に相当の計画性を持たせなければ、結局長期計画そのものがぼやけてしまつて、ややもすれば一片の作文化するおそれがあると思われるが、政府はこの倍増計画については本気で熱意を傾けてやっていかれるおつもりであるか。さらに目標の達成を期するためには、長期的に見まして、科学技術を身につけた生産的な堅実な人間を作るということが基本であると思われるのであります。いわゆる所得倍増計画に照応して、科学技術の人材養成の教育面について政府はいかなる方針のもとに施策を講じていく考えであるか、これらの諸点について、新予算案における配慮との関係にも触れて政府の御所見を明らかにしていただきたいのであります。  以上をもって私の質問を終わるわけでありまするが、簡明率直に御答弁をお願いいたします。(拍手)    〔国務大臣岸信介君登壇、拍手
  14. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。  第一の国際情勢判断につきましては、すでに羽生君の質問に対してお答えをした通りでありますが、御指摘のように、最近の国際情勢を見るのに、おあげになりましたような二つの極端な見方が存在しておることは事実であります。私はいかなる場合においても、この国際情勢判断において、われわれの希望と現実と混同してはならないということを基礎に考えなければならないと思います。われわれは、国際間の緊張を緩和するということ、また平和的ないわゆる雪解け情勢を促進したい、またしなければならないというこの希望、われわれの念願というものと、現実が雪・解けになっておるというように見ることとの間におきましては、非常な危険が存すると思うのであります。キャンプ・デービッドで米ソ両巨頭が話し合いをして、この東西陣営の間の懸案を、力によらずして話し合いで解決しようということを申し合わされたということは、私は非常なけっこうなことであり、ぜひそうならなければならない。ことに最近軍事科学発達によるところの大量殺戮兵器のとどまるところを知らないような発展から見ましても、これがもし全面的に用いられるということになれば、それは人類破滅であります。従って話し合いで解決しよう、これは非常に望ましいことであり、ぜひ話し合いで解決されるようにしなければならないと思います。巨頭会談が行なわれ、またいろいろな首脳者の間の往来がしげくなることも、お互いの理解を深める上において望ましいことだと思います。しかし、現実に、はたして巨頭会談において主題とされるところのドイツ問題が、あるいは軍縮の問題が、一回の会談でもって結論が出るというふうな安易な情勢ではないと思う。両方の主張の間において非常に大きな隔たりがある、非常な困難がある。しかしながらわれわれの努めることは、どんな困難があっても、どんなに主張が違っておっても、いかなることがあっても話し合いで解決するという、このキャンプ・デービッドの考え方は、あくまでもこの考え方は貫いていかなければならない。そうしてどんなに困難であってもこれの解決に向かって行かなければなりませんが、しかしその途上において、雪解けであるからあらゆる今までの情勢をすべて解決していいという問題ではないと思う。たとえば軍縮の問題にしましても、これが全面軍縮はわれわれの最後の目標であります。しかしそれが全面的な軍備撤廃にすぐなるというような情勢ではないことは言うを待たないのであります。その段階におけるところの均衡のとれた軍縮がどういうふうな方法でやれるか、また責任ある有効な監視制度がどうしてとられるかというようなことが、この東西陣営で話し合いがつくかつかないかということを考えますと、私はまた非常に困難がある。そうして各国がいずれも一面においては軍縮を成立させなければいかぬということを考え努力はしておりますが、現実は少しもまだ軍縮の実はあがっておらないというのが現実の姿でございます。そういう際に際しまして、一方、共産国は強固な団結でその会談に臨んでおります。自由主義国もこれに対して十分な協力の体制をとって、そうして自由主義国の主張を貫いていこうという努力をすべきことが現在のこの国際情勢の現実である。こういう情勢に立ちましてわれわれは今後においても処していく必要がある、かように考えております。  ソ連の覚書についての御質問につきましては、私はかねて申し上げておる通り、われわれがいかなる外交政策をとり、またわれわれが安全保障についてどういう方法を選ぶかということは、日本国民自体が決定すべきものであって、内政干渉を受くべき性質のものではない。いわんや他から脅迫によってわれわれがこの方針を動かすべき性質のものではない、こうかたく信じております。なおまた、領土問題について、歯舞、色丹を外国の軍隊が撤退しない限り返さないということは、言うまでもなく国際信義に反するものであり、国際条約を忠実にお互いが守っていく上からいきまして、きわめて遺憾なことであると思います。日本政府考えは近くソ連に明らかにして、そうしてその反省を求めるつもりでありますが、十分国民におかれてもこの間の事情を冷静に正しく判断していただきたいと思います。  次に、外交の問題として、独立外交、平和外交経済外交を柱とすべきものであるというお話につきましては全く同感であります。そうして今回の安保条約の改定が、現行の安保条約にあるところの日本自主性・独立性にそぐわない点を、真に日米対等の立場から日本の自主独立の意味をはっきりさせるという意味を持っておることは、御指摘の通りであります。われわれがすでに国民の前に申し上げた通りであります。また平和外交意味から申しまして、この新しい安保条約が決していわゆる軍事的な目的から、何か戦争誘発の危険があるというふうな性格のものではなくして、第五条が明らかにいたしておりますように、あくまでも防衛的なものである。従って、国連の憲章に違反した侵略が日本及び日本の周囲に起らない限り絶対に発動することはないのであります。また、自衛隊防衛出動する場合におきましても、日本憲法の規定及び手続に従うことでありまして、自衛隊法によることも当然でございます。また、こういう防衛的な安保条約というものが、侵略を未然に防ぐという、この意味がその主要な目的であることは、これまた御指摘の通りでありまして、この意味において、われわれは自由と平和の防壁としてこれを設けておるということを申しておるのも、その趣旨にほかならないのであります。  軍縮問題の前途につきましては、過去の経緯から見ましても、また、最近における軍事科学発達段階から見ましても、ぜひやらなきゃならぬ問題でありますが、前途におきましては相当な困難がなお存しておるということをわれわれも十分考えなきゃならない。特にわれわれが強く要望し、その要望に従って話が進められております核実験の中止の問題に関しましても、相当な話し合いが進んでおりますけれども、なおしかし、監視制度についての両方の意見の間には、まだ一致を見るのには今後努力を要すると思います。しこうして、これがさらに全面的の軍縮の問題になりますというと、さらに困難があると思いますが、ぜひ日本としても、積極的に国連の内外を通じて今後軍縮問題の解決努力すべきことは、御指摘の通り当然に考えていかなきゃならぬと思います。  今度の新しい条約の二条でありましたか、いわゆる経済協力の点を明らかにいたしておりますが、これは、具体的な内容としては、今後日米間に存在するいろいろな経済の問題、たとえば、日米間の貿易をいかにして拡大していくか、それの支障になるのはどういう点であって、これをいかに調整すべきであるか、あるいは、日米間における外資の導入をいかにスムーズにして、そして繁栄をしていくかというような問題もあろうかと思います。また、最近問題になっておる低開発地域に対して先進工業国が進んで開発に協力するという問題に関しまして、日米が一そう密接な連携を持ってこれが開発に協力するという問題もあろうと思います。今回のアイゼンハワー大統領と私との会談の際に、この経済協力問題については、ただ単にここで協力しようということを誓い合うだけではなくして、今後継続的に日米の間においてこの話し合いを続けていくようにしたいという希望を述べ、アイゼンハワー大統領もこれに同意をいたしまして、今後日米の間の政府レベルにおいても話し合いをすることは当然でありますが、さらに実体的に、民間レベルにおいてこの話し合いを有効に続けていく仕組みなり機構なりを考えたい。こういう意味において、足立全権は数日アメリカに残って関係方面と話し合いをし、それについての考究を今後続けていって、有効な一つの仕組みを考えていきたい、かように考えております。  それからさらに、太平洋を取り囲んでおる国々の間における経済協力の問題について、あるいはヨーロッパにおける共同体その他のブロック的な考え方や、あるいは中南米を含んでのラテン・アメリカン・カントリーズの間の共同体的な考え方、これに対して太平洋を取り巻くところの国々の間で一つ考えたらどうかという考え方もございます。また、アジア地域全体を考えて、AAグループの間においてそういう一つのブロック的、共同体的な考え方をしたらどうだろうという考えもございます。今日直ちにそういうことについて結論を出すことは早いと思いますが、私は、アメリカをたずね、さらにカナダをたずねまして、ディーフェンベーカー首相その他と会った際に、最近。ハリで行なわれた十三カ国会議に対して、域外の国として、カナダは、日本と同じような立場において、ヨーロッパにおいて域外諸国が差別待遇を受けることのないように努力をしておるが、将来とも、そういうことについては緊密に一つ連絡をとろうという話もいたしたわけでございます。何といっても、太平洋を取り囲んでおる地域におきましては、利害関係も密接であり、経済繁栄を続けていく上におきましても協力すべき点が非常に多いと思います。同時に、日本がアジアの一国として、アジアにおけるところの低開発地域の開発に協力して、その繁栄に力を添えるという必要もございますので、すでに御承知のコロンボ会議のごときはほとんど太平洋を取り囲んでおる国々、それに英国が加わって、これが開発に協力をいたしております。こういう機構に今日においてはやはりわれわれは参加しておりますが、さらにその協力を積極化するというような方法によりまして、将来アジア地域の間のこの問題、太平洋を取り囲む国々の間の協力をどうしていくかということを研究して参るべきである。かように考えております。(拍手)    〔国務大臣菅野和太郎君登壇、拍手
  15. 菅野和太郎

    国務大臣(菅野和太郎君) 国民所得倍増計画の策定と新予算案との関係について御質問があったのでありますが、申し上げるまでもなく、国民所得を倍増するについては、経済人自身の活動を一そう盛んにする必要があるのでありますが、同時に、政府自身がこれに対して相当施策をしなければならない問題があるのであります。たとえば、産業基盤の強化、すなわち道路、港湾あるいは通信、治山治水とかいうような事柄は、これは経済人自身ではやれないことでありまするし、これはやはり政府自身でやらなければならないのでありまして、そういうような公共事業は、来年度の予算には相当今まで以上に多額に計上されております。また今後とも、そういう産業基盤の強化ということにおきまして、政府は毎年相当の経費を計上いたしまして、そうして民間人の経済活動をより容易に、より活発にできるようにしたい。こう存じておる次第であります。  それから、科学を身につけた人材の養成におきましても、最近における日本経済の発展のその原因はどこにあるかと申しますと、生産技術の向上にある、こう思うのでありまして、その生産技術を向上せしむるがためには科学技術の発展ということになるのでありますからしてそこで、国民所得を倍増するにつきましては、やはり科学技術を向上しなければならぬということで、来年度の予算につきましても、科学技術の向上については今まで以上の予算が計上されておりまするし、またあるいは、理工科学生をより多く収容するような文部省の予算も計上されておるような次第であります。(拍手)    〔国務大臣松田竹千代君登壇、拍手
  16. 松田竹千代

    国務大臣(松田竹千代君) 国民所得をふやすために、科学技術の振興について政府はどういうふうに考えておるか。私どもとしては、まず第一に、科学技術の基礎研究に力を入れたい。そうすることによって科学技術の新分野を開拓し、また、技術全体の水準を最高度に持っていきたい。それとともにまた、高度の技術を身につけた技術者を大量に養成していかなければならぬ。経済五カ年計画に伴って文部省においてもこれら人材八千人を養成して参ったのでありまするが、ちょうど三十五年度をもって、その八千人を大体完璧にほぼ養成し終えると思います。これだけでは、むろん今日のこれから拡大していく産業に必要な技術員は十分であるとは言えませんので、今後さらに長期計画をもってこれらの人材を養成して参らなければならぬと思っております。さらにまた、こうした高度の上層の技術員のみならず、どうしても、もっと幅の広い、層の厚い技術員を大量に養成していかなければならぬ。そのためには、文部省としては、さらに小学校、中学校、高等学校程度の教育課程の上において技術面に多くの科目をふやし、時間をふやし、そうすることによってこれらの要員をふやしていきたい。また、家庭科に力を入れ、日常生活を通じて国民ひとしく科学技術を身近なものに感じ、これに親しむようにして参らなければ、画期的な飛躍的な技術の向上、科学技術の発展ということは期し得られない。かように考えているわけでありまして、これらに対して、いろいろこれから御協賛を仰がなければならない三十五年度の予算におきまして、二百数十億の増額をいたしておりますが、主として絶対必要な公立文教施設と、そうしてこの科学技術の振興のために、その大部分が使われていくのであるということをもって御了承を願いたいと思います。(拍手)     ―――――――――――――
  17. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 松浦清一君。    〔松浦清一君登壇、拍手
  18. 松浦清一

    ○松浦清一君 私は、先般新たに結党いたしました民主社会党を代表いたしまして、総理、外務、大蔵及び通産、厚生、労働、農林の各大臣に対し、昨日の施政方針演説をもとにいたしまして、国民生活安定施策の問題、人口と雇用の問題、予算経済計画、貿易為替自由化、さらに、日米安全保障条約ソ連の態度に対する外交問題、この五点について質問を行ないたいと存じます。  まず第一に、国民生活の安定方策についてお伺いをいたします。  わが国の現状は、昨日来の各大臣の施政方針演説にもかかわらず、産業経済の拡大速度に比べまして、失業者と低額所得者が多過ぎ、特に農漁業労働者にその例がはなはだしいのであります。高層近代ビルの陰に庶民の住宅が不足し、社会保障がきわめて不完全であります。今の日本アメリカのまねごとはできないといたしましても、この国では年収四千ドルないし一万ドルを中級所得者といたしましてこれが全世帯数の六〇%を占め、残る上下の四〇%を合わせた平均所得が六千二百ドルといわれているのであります。英国もまた、戦後、労働党政府の適切なる施策によりまして、その七〇%が中産階級化されております。さらに西ドイツもまた、完全雇用の経済政策が打り立てられまして常傭熟練工の月収は千マルク、日本円にして八万六千円平均が保障され、日本のように失業対束事業など必要はないとのことであります。これらの国々に比べまして、わが国の現情は、三十三年度の国税庁の実態調査によりますると、民間産業における勤労所得は、年収五万円以上四十万円以下の低所得層が民間産業関係のみで八四%を占め、五十万円以上百万円以下の中級所得者と見られるものがわずかに一三%ということであります。私どもはこの比率を、英、米、西独並みに引き上げる必要を痛感するのであります。現在の日本の消費物価から算定して、一体幾らの所得を中産階級とするか、これは、その人、その人の判断によるところであって、にわかにこれを定額づけることはできないといたしましても、まず、英、米、西独並みに、自分の家を持ち、電気洗濯機、テレビ級の文化生活を営むよう、これを一挙に実現することは不可能といたしましても、漸進的にこの程度を目標とした施策を講ずべきだと思います。これに対する総理の基本的な見解を伺いたいと思います。  また、この中産階級化には、低きを高め、高きを押える施策が必要であります。資本に対する無制限配当を一定限度に制限し、一定額以上の財産相続には高率の税金を取り、高額所得者には税を高率に累進賦課するようにして、低額所得者の減税を行なうよう税場制の根本的改正を行なわなければなりません。ところが、三十五年度の予算案では、しばしば問題になりましたように、二千百億円余の税の自然増収を計上しながら、一銭の減税も行なわず、逆に国民の租税負担率は三十四年度の一九・九%から二〇・六%に上昇するとのことであります。所得とは、実際に身につける経済的な価値のことであります。岸内閣所得倍増論は、伊勢湾台風やロッキードとともに消えてきわめてあいまいになってきたのであります。大蔵大臣は、昨日の演説におきまして、今後抜本的な税制改革を行ない、減税の実現に努めて参りたいと言っておられまするが、政府は、一月二十六日の閣議において、次期戦闘機二百機を購入するため、三十五年度予算で六百九十八億円を国庫債務負担行為に計上することをきめております。この結果、三十五年度予算における防衛関係国庫債務負担行為は九百十八億円の多きに上り、その他、艦艇建造費五十七億円の継続費を含めますると、約一千億円の予算が後年度負担分として計上されておるのであります。これでは三十五年度はおろか、三十六年度におきましても減税はむずかしく、岸内閣所得倍増論は空文となり、わが党の中産階級化施策とも全く対立することになるのであります。財政、経済、税制面から見た国民生活の安定方策を佐藤大蔵大臣から承りたいと存じます。  第二に、完全雇用と所得関係の深い人口問題について質問いたします。わが国の人口は昨年十月一日現在におきまして九千二百九十七万人に達したと言われております。戦後十四年間に、ビルマ、タイ国の総人口に相当する二千八十万人がふえ、さらに三十三秒間に一人の割合でふえつつあると言われております。この総人口は世界第五位となり、その密度においては、オランダ、ベルギー、台湾に次いで第四位となっておるのであります。今やわが国の人口問題は、このままに放任できない段階にきておると思うのであります。さらにまた、農村における労働人口はすでに過剰となり、二三男坊の対策に苦慮している現状は御承知通りであります。都市における産業も、ただいまの現状においては、年ごとに増加する労働人口を全部吸収する能力を持ってはおりません。進学期を控えた学校もまた血の出るような狭き門であります。加うるに、世界近代産業の大勢として、その生産性がだんだんと技術化され、機械化されて、その産業規模と需要労働力との比はますます反比例の傾向をたどっておるのであります。わが国経済力を強化することを目的として生産の拡大をはかる必要はここでは論外といたしましても、人口問題の面から考えてみまして、あるがままの自然に放置することは、もはや許されなくなっておるのであります。従って、これが解決をはかる方法としては、徹底的な産児制限を行ない、これ以上の増加を食いとめるか、ブラジルその他の国々との話し合いによって海外移民を増加させるか、労働時間の短縮を立法化して労働人口の完全消化をはかるよりほかに道はないのであります。このうち第一の点は、世界のいずれの国でも、国策として産制を行なって繁栄をしたためしはないのであります。第二の海外移民もまた対外的に相手のあることで、無制限というわけにはいかないのであります。政府意思によってやろうと思えばできることは、思い切った労働時間の短縮を立法化して雇用の増大をはかり、過剰人口を吸収することだと思うのでございまするが、岸総理は、基本的な人口問題の解決策として、いずれの道を選ばれようとされるか、所信を聞きたいのであります。また、厚生大臣は人口問題の打開策について、労働大臣は雇用と労働時間短縮の問題について、それぞれ所管されているところの方針を承りたいと思うのであります。  第三に、三十五年におけるわが国経済計画とその見通しについて、大蔵大臣、場通産大臣、農林大臣の所信を承りたいと存じます。  政府は、一月二十六日の閣議において三十五年度の経済計画をきめ、これを予算審議の参考資料として提出される由であります。この内容を見ますると、すでに昨年十月二十三日に経済企画庁から発表された計画の数字を予算案に見合うように修正したものであります。政府から発表される経済計画というものは、いわば今後の経済政策をどのように運営するのか、それによって今後の経済がどのような形になるのかを示すものであって、政治的な意図をもってその内容が簡単に変更されるべき性質のものではありません。特に注目すべきは、三カ月前の計画に比べて、今度は景気過熱の危険には一顧も与えられていないことであります。しかも、前回の見通しでは、予算規模を拡大することによって財政面から景気を刺激し、設備投資の増大が景気過熱の原因となることが強調されておったのであります。ところが今度の計画では、年末から年始にかけて予算の編成にいろいろな事情が起こり、基幹産業に対する設備投資が増大したので、本来ならば、いよいよ景気過熱の警戒を強め、金融面における厳格な態度を強調すべきが本筋であるにかかわらず、この点がきわめてあいまいになってきたのであります。政府の説明によりますと、設備投資の増加により生産能力は増強され、あわせて貿易為替自由化による供給不足を一掃して物価上昇の心配はないというのであります。しかしながら、最近のガス電気料金等の値上げ関係で物価は上昇気配を示しており、輸出もまた、貿易自由化に伴う国際競争等の関連から、しかく楽観は許されないものと考えます。大蔵大臣は、昨年の秋、渡米された際、アメリカ人が日本からのトランジスターラジオやライター等に対し強烈な警戒の目を向け始めていることは御承知通りであります。このように、予算にからんで数字を合わせたような経済計画では、私ども信用するにも信用することができないのであります。予算とは別に、すなおに世界経済大勢をながめ、純粋な気持で日本経済の計画と見通しを、この際、大蔵大臣より御説明を願いたいものであります。  さらにまた、経済運営の基本的態度につきましても、単に通貨価値と物価の安定を中心として経済の安定成長をはかると述べているのみであります。昨日の演説においても、この辺がきわめてあいまいとなっておるのであります。いやしくも国の経済計画は長期にしてかつ科学的であるべきであります。少なくとも三十五年度以降の、基幹産業のほか、治山、治水、道路、港湾等、国土保全の計画などを含めて、総合的かつ具体的な見通しを国民の前に示してもらいたいものであります。われわれ国民は、神武景気のあとのみじめさを再び繰り返したくないのであります。たとえば、農林予算一つをとってみましても、食管会計における赤字補てんが百十二億円、伊勢湾対策費が七十一億円で、実質上の増額はございません。全体の予算規模に対する比率は、昭和三十四年度の9一七三%に対し、三十五年度は〇・七一一%とむしろ減少をいたしているのであります。  さらにまた、大蔵大臣を中心としてお尋ねいたしたい第三点は、貿易及び為替自由化の促進についてであります。昨日の総理演説でもこの点は特に強調されましたが、一月十二日、貿易為替自由化促進閣僚会議の決定によりますと、「内外諸施策の整備と相待って貿易及び為替自由化を急速に推進する」として、鉄鋼くず、牛脂、ラードを本年四月から、また原皮を上期中可及的すみやかに、銑鉄、大豆等はおおむね十月から完全にAA化し、その他、毛くず、コーヒー豆等の三百品目を四月からAAに移行するというのであります。これに綿花、羊毛等を加えると、わが国貿易の約六〇%が自由化される勘定となるのであります。これが実施には、貿易為替管理法の改正、関税定率法の改正など、国会自身できめねばならぬ問題もあり、かつ、制限貿易による半独占的な業者等の思惑などもあって、政府方針通り実施されるかどうかはわかりませんが、私は原則として、貿易為替自由化には賛成であります。ただ、しかし、戦後引き続いて行なってきた為替管理による国内産業の保護政策を、今後は、新しい産業秩序政策、新しい金融財政政策に転換する等、国内体制を十分整備してかかりませんと、非常に大きな混乱の起こることが予想せられるのであります。輸入の激増、価格の混乱、外貨の流出、特に国際的に見て生産性の低いわが国の農林漁業に対しては、その生産性を高める施策を講じ、価格の支持制度等を強化し、輸入の増大による圧迫を排除するための強力な措置を講ずる必要があります。このことに関し、わが国経済に及ぼす影響と新たなる保護政策については大蔵大臣にお伺いしたい。あわせて、自由化するそれぞれの品目についての大体の輸入予想量及び為替関係については通産大臣、わが国の農産物に与える影響とその対策については農林大臣に、それぞれ御答弁を願いたいのであります。  最後に、総理大臣及び外務大臣に、日米安全保障条約改定調印に関連する諸般の問題についてお伺いをいたします。  日米安全保障条約の改定が、極東の平和と安全を保障するといううたい文句にかかわらず、その影響するところはまことに深刻であり、かつ広範であります。このことは、前国会以来われ一われがたびたび指摘をしてきた通りであります。先ほどからすでに問題になっておりまするように、今回のソ連の覚書は、二十八日の近藤情報局長の談話、また昨日来からの外務大臣の説明等のごとく、三十一年十月の日ソ共同宣言の趣旨に反するかもしれません。日ソ平和条約が締結された後、歯舞、色丹を日本に引き渡すという共同宣言における日ソの関係と、日米間における安全保障条約は、表面的にはそれ自体何の関係もございません。あるいはまた、ソ連側日本向けの政治的な戦術であることも想像にかたくありませんりしかしながら、日本基地を持つ米軍の行動範囲が沿海州沖合いにまで及ぶという、純然たる軍事同盟としての日米安全保障条約が、中ソに大きな刺激を与えるということも結果としては当然であります。一国の行政首班たる総理や、一国の運命を背負って国際舞台に立つ外務大臣が、この事態の起こる可能性を全く予想し得なかったとすれば、その責任はまことに重大であります。歯舞、色丹が古来よりわが国領土であることは歴史の証明するところであります。三十一年、今はなき鳩山元総理が、国民的な支持を背景として、病躯をひっさげて訪ソし、領土の返還を含む平和条約の窓口を開かれたのであります。そのあとを受けた岸総理や藤山外務大臣は、事ここに至るまでに、ソ連との関係打開のためにどのような努力をしてこられたか、百それがきわめて不明確であります。今日の時点において、ソ連の無理は無理として、このまま放任のできる事態で由ないことは申すまでもありません。この事態は、総理外務大臣が太平洋の空模様ばかりを気にされて、北方大陸の氷雪の激しさにあまりにも無関心過ぎたことに基因していると考えられるのであります。(拍手)このことに対し、政府として正式の抗議的な回答が考慮されているとのことでございますが、それが万一にもいれられず、昨日から開かれた漁業問題にまで万一にも悪い影響が及ぶとしたら、その後にどういう打開の道があるのか。岸総理は、昨日衆議院において、きわめて高い姿勢で、そのような理不尽な態度は断じて許せないと答弁をしておられます。その断じて許せないというお考えを行為で表現すれば、たとえばどういうことであるのか、お知らせを願いたいのであります。  昨日来、総理大臣並びに外務大臣は、その内容についてはたびたび御説明がございましたが、日米安全保障条約の改定は、だれの目から見ても、日米軍事同盟強化であります。米軍出動の事前協議にいたしましても、今までもたびたび議論されました通り、文章上では協議となっておりましても、アメリカの一方的な押しつけになる可能性は十分であります。米ソを中心とする世界戦争兵器は、残念ながら、もはや日本経済力では手の届かぬところにあるのであります。アメリカの側に片寄り過ぎて中ソを硬化せしめる思想は、平和を求める外交としては絶対にとるべきではありません。また、中ソを背景としてアメリカを敵視する態度も、十分慎重を期すべきであります。日本はあくまでも自主独立の中立外交を推進して日、米、中、ソの同意による完全な平和を目ざして全力を傾倒すべきであります。総理大臣、外務大臣の御所信を承りたいと思います。(拍手)    〔国務大臣岸信介君登壇、拍手
  19. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。  第一に、国民生活の安定の点から、日本の産業政策として、いわゆる中産階級化の施策をとるべきじゃないかという御意見でございます。経済の発展を考えます上において非常に注意しなきゃならぬことは、御指摘のように、その繁栄が国民全体になるべく平均化していくというふうに考えないと、いたずらにいろいろな点において格差を生ずる、大企業と中小企業、あるいは農業とその他の産業、あるいは都会とその他の地域というような方面に大きな格差を生ずるというようなことがあってはならぬことは、これは、われわれが経済政策を立て、これを施行する上において、特に留意しなければならぬと思います。ただ、欧米の諸国のいわゆる所得日本国民所得との間におきまして、現在相当な差異のあることは御指摘の通りでありますが、これはやはりいろいろな社会情勢やあるいは生活環境とあわせて考えなければならぬ問題であって、ただ単に、金額で表わされた数字だけで比較することは適当でないと思います。    [議長退席、副議長着席〕  いずれにしても、われわれが経済政策を施行していく上に、ことに国民所得の倍増計画というようなものを施行する場合におきまして、今申しました格差を生ずることのないように、あらゆる施策考えていくということには、特に留意する必要があると思います。  次に、人口問題についての御質問でございました。御承知のように、近年日本の出生率は戦前や戦争直後の状態とは変わってきております。しかし、同時に、一般の国民の平均年令が非常に高まっておりますので、人口の増加の全体から見まするというと、人口増加に対してどういうふうに職業を与えていくかという大きな問題があるわけでございます。この問題につきましては、私はやはり根本の考え方としては、日本の産業経済を拡大して、そうしてこれによってたくさんの人口を養い得るような経済環境を作っていくということであろう、根本はそうであろうと思います。しかしながら、同時に、最近各方面で、いわゆる家族計画の合理的な方法が講ぜられていることも事実でありますし、あるいは海外移民であるとか経済協力というものを推進していくことも当然でございます。また、労働者の就労条件等につきましても合理的なことを考えていかなければならぬと思いますが、根本はやはり日本経済を拡大していくというところに主眼を置いて人口問題に処していくのが必要である、かように考えます。  次に、安保条約に関連して、ソ連の覚書に対する御質問でございます。言うまでもなく、このソ連の覚書そのものが非常に不当な内容を持っていることは、おそらく松浦議員におかれましても御承認になることだと思います。われわれは、外交政策をきめていくということなり、あるいは安全保障の道を選ぶということは、各独立国が自由に決定すべき問題であって、他から内政干渉を受くべきものではない。また、すでに有効に成立しているところの条約、両国間の条約が、一方的にこれの廃棄やあるいは変更ができるものでないことは、国際条約の本質からいって当然であります。こういうことが国際信義の上からきわめて遺憾なことであることは言うを待たないのであります。私どもは日本政府として、ソ連のこれらの点に関して、十分な反省を求めるところの方法を今後講じていかなければならぬ、かように考えております。言うまでもなく、いろいろな誤解でありますか、あるいは特に内容を歪曲していろいろなことが覚書に言われておりますが、安保条約安保体制というものは、今度の新しい条約で初めてできるわけではございませんで、御承知通り、すでに安全保障条約が存在しておって、これによって外国軍隊も駐留をしておるのであります。ところが、今日までの安保条約で見まするというと、全然アメリカが一方的にすべての行動ができる、たとえば、極東の平和云々の問題に関しましても、現在の条約にも同じ文句がある。そうして、その出動の場合においては、アメリカ軍が何ら日本に相談なくしてできる状態になっております。これを今度の条約においては、われわれは事前協議の対象として、日本意思に反して行動しないというふうな制約を設けておるわけであります。また、いろいろな点におきまして、現行制度以上にわれわれが軍事的な義務を負うとか、あるいは日本及び日本の周辺に対して脅威を与えるような条項は一切設けておらないのであります。従って、これを口実としていろいろな事態を言ってくることは、実は全く理不尽であると私は考えております。こういうことに対しては、政府が強くソ連政府の反省を促すのみならず、日本国民としても十分にこの事態を理解して、政府のこの態度に対して御支持を得るようにしなければならぬと、かように考えております。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手
  20. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。  最近の経済の見通しにつきまして、財政演説で私どもの見るところを明確にいたしました。最近の経済の拡大はまことに目ざましいものがありますし、鉱工業生産の上昇率を見ましても、これも大へんすばらしい発展を遂げております。しかし、この鉱工業生産の上昇率を四半期ごとに調べてみますと、第一・四半期では、年率にして約四〇%、第二・四半期は三二%、第三・四半期は一九%というように、順次実は拡大の規模が落ちております。そのテンポがゆるくなっておる。で、こういう鉱工業生産の上昇率、また物価について見ましても、昨年の秋ごろまでは相当強い変動がございました。しかし、暮れになりますと、一応物価も安定を見ることができた。これらのこういうような趨勢をたどりましたことについては、いろいろの見方があると思いますが、これは、一つは、台風災害の影響も一応おさまったことと、あるいは公定歩合の引き上げ、あるいは貿易為替自由化方針が明確になる、あるいはまた、健全財政堅持の予算案が出てくるとか、こういうような点が経済界に落ちつきを与えたと、かように私どもは見ておるのでございます。そこで、今後の経済の見通しにおきましても、手放しで楽観するわけにはもちろん参りませんが、適時適切な方策をとって参りますれば、今日の好況を長期にわたって持続することができるのではないか。今日御審議を願っておりますこの予算について、あるいはまた、私どもが今後随時に適時に採用して参ります金融諸政策、こういうことによりまして、景気を過熱に導くことなく、堅実なうちにも経済の拡大をはかっていく、こういう処置をとって参るつもりでございます。ところで、経済は申すまでもなく安定成長ということが第一に堅持されなければならないことでございます。ただいま申し上げるような考え方で、この安定成長、これを長期にわたって持続していく、これを私どもの目標として考えていくわけであります。同時にこの経済が安定成長していくということは、別な表現をいたしますれば、国民生活をやはり安定し向上していく、ここに私どもの政治努力目標があるわけであります。こういう基本的観点に立ちまして、ただいま御審議をいただく予算案を上程いたしたわけでありますが、そこで問題になりますのは、三十五年度に二千百億円にも上る税の自然増収を見ておるのに国民負担の軽減である減税をやっておらない、この点は先ほど羽生議員のお尋ねにもお答えをいたしたのでございますが、ことし減税をいたすことができませんでしたのは、これは申すまでもなく、過去の剰余金等が大幅に減少いたしておりまして、歳入の面で八百五十八億円にも上る歳入の減がございます。一面に歳出においては、国民年金の平年度化であるとか、あるいは災害復旧あるいは国土保全の費用であるとか、こういう予算の増加もございます。そういう点で本年は減税は見送らざるを得なかった、こういう事情でございますが、この点はおそらく国民の皆様も御了承がいただけるのではないかと思います。ただいま申し上げるように、必要な歳出があり、また、歳入の面で剰余金等が大幅に減少しておる、しかも一面に健全財政を貫く、こういうことで、ことしは減税を一つしんぼうしていただく、こういうことで御了承をお願いいたしたいのでございます。ところで、こういうような三十五年度予算は、ただいま申し上げるように減税はできませんでしたが、お尋ねのうちにもありましたように、一面、防衛関係予算額といたしましては、前年度に比べて九億の増加にすぎませんけれども、一面、御指摘になりましたように、相当多額の債務負担行為がございます。しかし、この債務負担行為は、例年も二百四、五十億の債務負担行為はあるわけでありますが、ことし特に多いのは、ロッキード戦闘機を採用するということで、これが必要な経費を計上したということでございますが、このロッキードの関係は今後四カ年、五カ年のうちにこれを作るのでございますので、予算化いたしますのはその年々の財政計画と十分にらみ合わせまして、他の支出、たとえば社会保障であるとか、あるいは減税であるとか、こういうような国民の要望するものに圧迫を加えないように十分勘案をいたして予算を編成して参るつもりでございます。ところで、ただいま申し上げるような債務負担行為があると、今後はこの減税が困難ではないか、三十六年は困難ではないかという疑問が生ずるかと思いますが、最近の経済の伸び、先ほど説明いたしますような安定成長の政策を持続して参りまして、幸いにしてその効果を上げますならば、また最近も成績が上昇いたしておりますので、三十六年においては税の自然増収は相当の金額を見込み得ると、かように私どもは考えております。もちろん三十六年のことでございますから、ただいまから想定する性格のものではございませんが、一般的に見ましてまず相当の自然増収考えられるだろう、一面に災害復旧費の方は減ずるだろう、それらのことなどを勘案して参りますと、ただいま税制調査会で審議をいたしております減税の基本的な考え方というもの、これを具体化するような状態にもなり得るのではないか、かように実は期待いたしておる次第であります。  最後に、貿易為替自由化についてのお尋ねがございました。貿易の面は通産大臣のお答えに譲ることといたしまして、私は為替の面につきまして少し申してみたいと思います。申すまでもなく、御指摘になりましたように、自由化が国内産業に与える影響、これは軽視はできない、いな非常に重大なものでございます。御指摘の通りでございます。そういう意味におきまして、政府におきましてもこれの取り扱い方については、十分基礎的な条件を整えた上でこれを実施に移す、こういうことで慎重な取り扱い方をいたしておるわけであります。そこで為替の面におきまして問題になりますのは、非居住者の自由円勘定の創設、あるいは為替集中制の緩和であるとか、あるいは海外渡航、海外送金等の緩和等の措置を講ずる等、いろいろ問題があるのでございます。で、これらのうちで、交互計算制度の適用対象の拡大、あるいは海外渡航、海外送金等の緩和は、本日その一部を実施することにいたしまして発表いたしたばかりでございます。しこうして非居住者の自由円勘定であるとか、あるいは為替集中制の緩和であるとか、こういう点になりますと、なお私どもとしては準備を遂げなければならない点があるようでございますので、日本銀行等ともただいまいろいろ話し合いを進めておりまして、準備ができ次第、これらにつきましても緩和の方法をとりまして、そうしてこの自由化を促進して参る考えでございます。(拍手)    〔国務大臣渡邊良夫君登壇、拍手
  21. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 最近の人口動態を申しまするならば、終戦直後におきましては、人口は増加率が非常に多かったのでございまするけれども、ここ二、三年来は出産率というものが非常に低下いたしまして、また、一面におきまして薬剤の進歩その他もございまする関係からか、死亡率も非常に低下いたしました。この傾向を続けて参りまするというと、生産年令人口というものは明年度以降におきましては非常に大きくなり、また、昭和五十年におきましては、老齢人口というものが総人口の一割二分というような傾向に相なるのでございます。こういたしますというと、まず生産年令人口に対しまする対策といたしましては、経済の膨張とともに雇用率というものを考えていかなければなりませんけれども、厚生省の面から老齢人口に対しまするところの対策といたしましては、いわゆる老齢年金の強化拡充、あるいはまた、ことしから新設いたしまするところの生活保護者に対しまするところのいわゆる加算制度というもの、養老年金の加算制度というものを考えておるような状況でございます。  産児制限の問題がただいま御質問になったのでございまするけれども、産児制限の問題は、きわめてこれはむずかしい問題でございまして、先ほど総理が申しましたように、いわゆる家族計画による妊娠調節、私どもは人工妊娠中絶ということをできるだけ避けまして、妊娠調節ということを考えていきたいと、かように存じておる次第でございます。(拍手)    〔副議長退席、議長着席〕    〔国務大臣松野頼三君登壇、拍手
  22. 松野頼三

    国務大臣(松野頼三君) ただいま厚生大臣からお答えがございましたように、今後十年間は相当に生産年令人口、労働力人口がふえる傾向がございます。ただ、来年度は生産年令人口に達する者がちょうど終戦当年に出生した者になりますので、来年度は必ずしもそれほど大幅なものではございませんが、この十年間、特に前の五年間には相当大幅なものがあるやに存じますので、これにあわせて、やはり経済計画というものを長期に安定いたしまして、雇用の吸収ということを経済計画の大きな柱とすべきであるというのが、今日の政府方針でございます。労働時間の問題でありますが、三十三年は月百九十八時間くらいの平均でございましたが、三十四年度は経済の活動が活発でございまして、労働時間も大体月二百時間平均になって、多少労働時間が延びております。御承知のごとく、労働時間はあくまでも生産に関連がある。また、これが賃金に影響するところも多大でございます。なお、生産性にもこれは関連がございます。その三つの関連が適切に行なわれまするならば、労働時間の短縮というのは、原則的にはこれはけっこうなことだと、こう考えております。(拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手
  23. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。  貿易自由化につきましては、先ほど羽生先生にお答えした通りでございます。別に申し上げることはございませんが、誤解があってはいけませんので、簡単にお答え申し上げます。輸入の制限につきましては、原料と製品と、こう二つに分けて考えるべきだと思います。で、原料、製品につきまして、今計画しておるので一番重要な問題は、大豆と原綿、原毛でございます。大豆につきましては国内産が非常に高うございます。今、一割の関税をかけておりますが、なお一割の関税をかけても国内の大豆が非常に高うございますから、この点はいろいろなことで調節しなければなりません。それから、問題の原綿、原毛は、これはもう輸入額の二割以上を占めております。しかも切符制でございますから、二割あるいは三割の眠り口銭があるというような状態でございます。従って、これを自由化いたしますると、繊維製品は相当下がって参ります。そこで問題がいろいろあるのでございます。従って、予告期間一年四ヵ月を置いております。この間に輸出入取引法あるいは繊維工業設備臨時措置法等々、いろいろな法律の改正をいたします。また、予算面におきましても、織機、紡機の調査につきまして、あるいはまた検査につきまして、今年度の予算に六百万円ほどの費用を見ております。あらゆる方法で準備施策を講じております。他の原材料につきまして、とにかく対米関係の問題は問題はございません。私はスムーズにいくと思います。しこうして、中小企業等に非常に関係がありまする、いわゆる消費財製品の輸入につきましては、これはもう全般的に今ストップしておるのでございますが、できるだけ早い機会に、影響のないものから徐々にはすしていこうといたしております。即座にAA制に移してもよろしゅうございまするが、まだ状況を見なければ完全にAA制に移せぬというものは、自動割当制という制度を設けまして、自由に輸入の申し込みをしまして、そしてその状況を調べつつ徐々にやろうといたしております。一月末に相当の品目の自動割当制をやりましたところ、大へんな申請が出ておるようでございます。これを念査いたしまして、将来のAA制に移る準備の資料にいたしたいと思います。そういうふうに、あらゆる面からいろいろな施策を講じまして、円滑にこの政策が実行できるようにやっていきたいと考えておるのであります。しかしてまた、過渡期におきましても、御承知通り昭和三十三年度には政府の当初の予想よりもよほど外貨事情がよくなりまして、五億六千万ドルの黒字でございます。昭和三十四年度におきましても、予定よりもうんとふえまして、実質で少なくとも二億五千万ドル、形式収支、普通の為替収支で申しますると四億六、七千万ドルになります。また、三十五年度の予想にいたしましても、政府は一億五千万ドルの黒字、形式収支で四億四千万ドルの黒字、こう言っております。また、私見といたしましても少なくともこれ以上にいくと思います。従って、私は、こういう外貨の事情から申しまして、外貨予算を組んでおりまするが、昭和三十五年度の当初外貨予算の組み方も、自由化を前提といたしまして、今までのようなきついことをせずに、自由化になった程度とは申しませんが、相当ゆるく組みまして、あまり輸入々々ということに今までのように業者が頭を使わぬように、こういう態勢も整えていきたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手
  24. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お答えいたします。  先ほどもお答え申し上げたのでございますが、日本の農業はきわめて零細である。外国と大へん事情も違いますので、手放しでどうも自由化を受け入れていくというわけにも参らぬと思うのでございます。従いまして、自由化を適用するという場合におきましても、これに対する影響等を考えまして、十分の準備をしてやっていく、これが基本的な方針でございます。そこで、自由で外国から輸入される農産物、これにつきまして、国産の農産物と競合するという関係で重要なものは、米麦、砂糖、大豆、酪農製品、かようなものでございます。米麦につきましては、これは自由化する考えはございません。また、酪農製品についても同様に考えております。それから大豆につきましては、すでに自由化されております。ところが、ドル地域だけ差別的に自由化していない、かような関係になっておりますが、これは近く自由化をしなければならぬと、かように考えております。しかしながら、その際におきましても、国産大豆は従来の価格をもって政府が責任をもって買い上げる、かような準備を整えた上でこれを実行したい、かように考えておる次第でございます。砂糖につきましては、これは自由化した際の影響等を十分慎重に検討した上、結論を得たい、かように考えております。(拍手)    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手
  25. 藤山愛一郎

    国務大臣(藤山愛一郎君) 対米一辺倒の外交ではいけないじゃないか、こういう御趣旨かと思いますが、むろん、われわれは、自分の国の外交方針をきめ、また外交施策をやりますときに、独自の立場でやることは当然でございます。ただ、われわれは自由主義を信奉し、民主主義の体制をとって国を立てております。従って、その意味において、自由主義諸国とは非常にすべての点において共通考え方を持ち、あるいは共通の利益を持っております。また、経済的にも、そういう意味において、十分な連絡、通商の関係を打ち立てるわけでありまして、そのこと自体は、われわれが当然あるべき姿である、こう考えております。(拍手)     ―――――――――――――
  26. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 常岡一郎君。    〔常岡一郎君登壇、拍手
  27. 常岡一郎

    ○常岡一郎君 私は参議院同志会を代表いたしまして、総理並びに関係大臣にお尋ねをいたします。  一国の総理外務大臣世界情勢を誤って判断したがために、その国を破滅のふちに追いやり、幾百万の人の命を失い、国土を廃墟にした実例は、枚挙にいとまありません。岸総理はこのたび新しき日米安保条約を結んでお帰りになりましたが、この条約日本を不幸に陥れないように切に願いながら、以下数点についてお尋ねをいたします。  第一、総理は現下の世界情勢動きをどう判断しておられるかという問題であります。この質問は、昨日衆議院本会議において、社会党の鈴木委員長が質問第一番にただされた問題であります。何といっても、本国会は、日本の興亡盛衰の岐路に立つと言われるほどの新安保条約審議の議会であります。論争する人は政府と野党との両巨頭の外交論戦でありましたから、私も熱心にこれを拝聴いたしました。しかし、この雪解け問題についてはどうしてもわからなかった。一方は、雪解け時代である、そうは思わないか、どう認識するかと詰め寄られましたが、総理はこれに対して、これから雪解けに向かいたいのだ、希望と現実とは違うものだと言っておられました。雪が解けたのか、解けないのか、解けかけているのか、まだ解けかけてもいないのか、はっきり認識をつかみ得なかったので、ここにお伺いをする次第であります。雪が解けるかどうかということは雪の方をただ見ているだけではとても判断はつかないと考えます。雪を解かすには解かすだけの力が要ります。たとえば、太陽が出たならば雪は必ず解ける。南極のように太陽に遠ければ雪もなかなか解けない。太陽が出たか出ないか、もし出たとすれば雪はきっと解けると判断しても誤りは少ないと思います。太陽は雪を解かすように、人と人との心のしこり、これを解くもの、民族と民族との永い冷たいそのしこりを解くものは、それは何といっても心の理解とあたたかい親しみでなければならぬと思います。人は互いに語り合っておるときに、なるほどとうなずけば理解がわく。真理ならば人はなるほどとうなずく。今や世界の指導者たちは、平和に通ずる真理をつかんでおるかどうか、という見きわめが根本問題ではないかと考えるのであります。民族と民族との心にできたしこりを解いていくものは、親しみにまさる力はないということではないかと考えます。力ずくの時代はすでに終わったと見るか見ないかの問題であります。天下の横綱がいかに強い力を持っておりましても、指からわずか一分離れたマッチ一本を動かすことはできない。その間に一分のすき間なき親しみがあってこそ、これが楽々と動かせる。力にまさるものは親しみであります。ソ連首相アメリカを初めて訪問して各地を歩き、遠慮会釈なく語り歩いたことは、久しく凍りついたと言われた米ソの雪解けを始めさせたと言われております。総理はみずからソ連や中共に行く考えはお持ちでないでしょうかということであります。今までは総理自由陣営に気がねがあったためかもしれませんが、あるいはまたふらふら腰だと疑われるおそれがあったかもしれません。しかし今は新しい安保条約を結んだ。腰もすわったはずであり、自由主義陣営の信用もできた。もう行けるのではないかと考えますが、この点はいかがでしょうか。日本の安全を守るものはひとり安保条約だけではありません。逆にみずから進んでソ連や中共とのお互いの理解を深めるために努力し、どんなに激論してもかまわない、命を投げ出してもいとわないだけの決意を持って乗り込んで行かれることが、安保条約は平和の守り手であると言われる、その首相の考え方を実らせるものではないかと考えますが、かねて総理は中共にはずいぶんきらわれておられるようでありますから、みずから積極的に乗り出して行って、この問題の解決に当たっていただく考えはあるかどうか、ということとをお尋ねいたします。  第二問。このたびソ連日本に差しつけました覚書の中に強く言っておりますことは、ソ連フルシチョフ首相は、国際連合総会で全世界の軍備を四年間に全部撤廃すると言っているではないか、世界じゅうがこれを拍手かっさいをして歓迎したではないか、それに安保条約を改定したのはけしからぬといっておりますが、この世界の軍備撤廃という大問題がそんなに早くできるならば、人類のしあわせこれにすぎません。しかしながら言うはやすく行なうはまことにかたい。全世界は旱天に慈雨を求めるごとく平和を望んでおりますために、拍手はいたしましたが、あれほど演説で大みえを切ったフルシチョフが、その後その言葉の通りに軍備撤廃にどれほどの決意を持って努力しているか、どれほど賢明なる方法を見つけ出しているか。ただ努力するだけでは、方法を誤ったらできない。われわれはこれを見詰めて参ったのであります。しかし今日までそのうなずくような方法をいまだ聞かない。かえって逆に、中部太平洋にロケット兵器をぶち込む、また、科学兵器は減らさないと宣言するに至っては、まことに了解に苦しむものであります。(拍手)軍備なき平和の世界の平和を望むにはそれを生み出すだけの母体がなければならぬ。生まれる者には生み出すだけの環境が先に作られなければならない。母なくして子は生まれぬ。春の暖かさなしに桜は咲かぬ。ほんとう「の軍備撤廃を生み出すものは、何といっても第一に恐るべき兵器の出現であります。この武器を使えば戦う者はことごとく亡びる、とても危なくて使えないというような武器が出現したことが、これが軍縮の第一の環境であったと考えます。今そのときに来たと考えます。しかしながら、その武器をどこが管理するか、だれが管理するか、世界軍縮の姿を真に監視するにはいかなる機関を作るか、この問題がこの軍備撤廃の最大の目標でなければならぬと思うのであります。これをきめるものは、米、英、ソいずれの国だけでもいけない、すべての国をこえて、超国家的な、世界でただ一つしかないような機関を作って、それに強力なる支援を与え、全世界がこれを支持して、そうして管理と監督をさせることが、これがただ一つの軍備撤廃の根本ではないかと考える。この点について首相の御意見を承りたいのであります。また、こういう機構を首相は考えられて、米英首脳と会談せられたときに、こういう問題に触れて話し合いをされたことがあるかという問題をお尋ねいたします。また、ソ連首相がこういう問題についていろいろ方策を立て、あるいは動いておられるということを、お聞きになったかどうかをお尋ねするわけであります。  次に青少年対策についてお尋ね申し上げます。  首相は、第二十八国会以来、国家の将来を背負う青少年に希望を持たせて明るく育て上げねばならぬと説いておられ、そうして、政府は、各地に青年の家の設置や育英資金制度の活用などに努力せられることは多といたします。しかしながら、全日本の青少年の数がら言うならば、これはわずかに九牛の一毛とさえ思われます。大多数の青年男女の中には、希望も理想も失ったように、すさんでいく人が非常に多いのが現状であります。これは、一方には、利益本位の不良な出版物や、映画、テレビの中に、かなりいかがわしい表現があったりして、身も心も虫ばまれいくまことに気の毒な青少年の多くなった一つの理由ではないかと思います。一方には、落ちついて勉強もできないような現在の世の中の変りいく波動を受け過ぎて、刺激され過ぎて、勉学よりも政治運動に巻き込まれておる多くの学生があることを考えなければならぬ。ことに、全学連三十万に近いといわれる会員は、全国学生の自治の会であって、断じて政治団体ではないはずであるのに、一部の指導者が政治的に動き出し過ぎて、国会乱入の挙に参加したり、羽田空港の不法占拠など、天下の憂いとひんしゅくを買っております。純なる青年学徒の多くは、静かに勉学のできる環境を願っております。それを、今の時代の、世の波動に刺激され過ぎて、これに巻き込まれることは、まことに気の毒にたえません。国家百年の大損失であると思います。この学生たちによき勉学の環境を与えるために、この全学連などに対する対策を、首相、文相にお尋ねいたします。  さらに、青年にいかにして夢と希望を与えるか、これについてお尋ねいたします。尊敬とあこがれ、これが青年に夢と希望を与える大事な道であると信じます。一国の指導的立場にある人人の一挙手一投足は、感じやすい青年の心に強い影響を与えます。尊敬や信頼炉裏切られたら青年は絶望します。国権最高の機関たる国会でまことに醜い乱闘をやったり、金権政治のにおいがしたり、親分、子分の派閥があるようにいわれることは、これは事実まことに悲しい姿であり、これが青年の心をすさます大きな原因であることは強く自粛自戒しなければならぬと思います。  従って、国会正常化についてお尋ねをいたします。国会が正常でないということは、レールを踏みはずしておるということになりますが、総理は非常にこの点を心配せられて、施政演説の最後にも特に国会の正常化について述べられましたが、確かに全国民あげて国会正常化を切望してやまないのであります。総理は、民主政治の正しいあり方は、各政党が国会という共通の場で十分審議を尽くし、最後は多数決によって決定する、これが議会主義の根底だと言っておられます。これが正常化の根本だと言っておられます。もっともな御意見ではありますが、しかしながら、これくらいのルールのわからない人は国会議員の中には一人もいないと思います。それにもかかわらず、国会が正常にならず、国民に疑惑とふんまんと軽蔑の念すら与えるに至りましたのは、まことに悲しいことでありますが、日本じゅうで一番わけのわかったことばっかりいって選挙に臨み、そのわけのわかったことをいうがために選挙され、そのわけのわかった人が集まって、朝から晩まで、わけのわかったことばかりいって、とうとうわけがわからなくなって、(笑声)そうして不正常になった。これはまことに国民にとって申しわけのない姿ではないかと考えるのであります。こんなわけのわからないことがなぜ起こってきたか、そこで総理お尋ねいたします。総理は、各党が十分審議して最後は多数決できめるのが民主国会の正常なルールであるとおっしゃいましたが、これは考え方が違うのではないでしょうか。これは政党政治の正常化であって、国会の正常化の根底にはならないと考えるものであります。申すまでもなく、日本の国会は、衆議院と参議院と二つから成り立っておることは、これはだれでもわかっておることでありますが、この二院制度の正しいあり方こそ、これが国会正常化の根底をなすものではないかと申し上げたいのであります。今のように自民党が両院ともに絶対多数となりましたならば、どんなに正しい議論を吐きましても、結局は議論倒れになります。国民のほんとうの利益を踏みにじるようなことがもし通過しようとする場合に、これをとどめる道は解散よりほかにありません。与党は何にも言わないで、野党だけがお互いにしやベって、言うだけ言って、どうせおれたちの思う通りになるのだというような姿になったならば、与党、多数党は勉強を怠り、少数党はついに絶望せざるを得なくなります。少数党だけの絶望なら、大体わけのわかった人ですから、そこで話せばわかって折り合いもつくでしょうけれども、しかしながら、天下の世論がこれを許しません。はけ口のない不満はやがて革命に通ずるのは、歴史が教えております。人間もまた、はけ口がなければ生きられません。たくさんの毛穴を持ち、いろいろの穴を持って発散するところに生命の守られる道がある。政治は生きものでありますから、このはけ口を正しく持たなければならない。この議会政治、政党政治のふんまんに対するはけ口はただ一1つ、参議院の正しきあり方ではないかと考えざるを得ないのであります。衆議院で十分に審議したことが、それがもし正しくないといたしましても、参議院で否決されますから、そこによりどころがあります。衆議院の多数決、それが正しく行なわれるということは、その多数決に破れた反対党といえども、正しく述べておけば、参議院において天下の良識はこれを判断してくれるというゆとりが出てくることであります。それに、参議院まで政党化して、衆議院が本家のようになり、参議院は何か隠居所か政党の出店のように、もしなったといたしますならば、そうなったならば、そのときは全く二院制度の意味は失われるものと考えます。同じものを二つも持つ必要は断じてありません。二院制度の確立、参一議院の独立、不偏不党の良識こそ、国民が安心して議会政治に頼り、国会正常化の基本をなすものであると信じます。野党も勉強して、あくまでも審議を尽くし、たとえ破れても安心のできるゆとりができて参ります。目の前の食物に目くらんで何にも真理を悟れないのが野獣の姿である。人間だけは真理を悟り、悟った真理を離さず、その真理を積み重ねて、ついに今日の文明を作り、翼なくして大空も自由にかけり、そうしていながらにして千里の遠くに目や耳を広げるテレビ、ラジオの時代を作っております。物理科学世界では真理に一分の狂いも許しません。政治のあり方もかくのごとく折り目正しく、あくまでも筋目の通ったものでなければ、真に国民の信頼を得ることはできないものであると考えるものであります。宇宙の正常なる秩序は、常に全く異なった性質のものが相対して、お互いに助け合いつつ、お互いに押えつつ、平均をとっております。太陽系の運行に幾億年狂いがないのは、求心力と遠心力の助け合いによって押え助け合っているからであることを考えますときに、真理が教える根本は、これは何といっても、この正常なる二つのあり方であります。すべての宇宙の秩序を真理は支配しております。たとえ一時的には苦しいことがありましても、妥協を排して、真理に向かって邁進する人は、歴史とともに光るものであることを信じます。衆議院は政党が対立してみがき合い、参議院は政党をこえて不偏不党、国民立場に常に立って、公平に政党の行き過ぎを是正する、この国会正常の真理を見つめて、参議院議員全体が党籍を離れて、国民立場に立って、公平にものを考えるようなことになったならば、それこそ国政の危機を打破する新風ではないかと考えざるを得ないのであります。この私の国会正常化の基本的観念と総理の観念とに開きがあるようでございますが、この点をお伺い申し上げます。  私たちが参議院同志会を結成し、この国会正常化の一点を正しく見詰め、思いをこめて参りましたのも、たとえ、そのわれわれの今の集まりは小さくとも、目標は高く、この真理の光は大きく背景として持っております。必ず天下有識の人々、具眼の方々の院内外の賛同を得て、この参議院の正しきあり方、国会の正常化に必ず到達し得るものであると信じて、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣岸信介君登壇、拍手
  28. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。  国際情勢判断につきましては、しばしばお答えを申し上げた通りであります。今日の軍事科学の非常な発達によって、原水爆その他の科学兵器が全面的に用いられるようになれば、人類破滅になる、どうしてもそういうものを用いずに、問題を話し合いできめなきゃならぬということが、キャンプ・デービッドで話をされたことは御承知通りでありまして、これがいわゆる雪解けといわれるものの実体であると思う。今日、どんな意味においても、世界のどこにおいても戦争を起こしてはならないし、また、それを未然に防いで、すべての問題を平和的に解決する、それには話し合いによって解決する、こういう方向に向かってわれわれが努力していかなきゃならない。今日、すべての問題が話し合いでたやすく解決するというような情勢には、まだなっておらないのであります。今おあげになりました軍縮の問題を取り上げてみましても、軍備縮小をしなきゃいかぬ、あるいは軍備の撤廃ということは、われわれの目標であります。これはだれも異存ないことであります。しかしながら、直ちにそれでは目標の全面的の撤廃ができるかといえば、前途はなかなかそんなことが容易にできるとは思いません。また、それを主張したソ連自体の状況を見ましても、決して軍備を全廃はおろか、これを縮小するということではなくして、むしろ、ソ連が持っておる科学兵器が非常な優秀であり、偉大な破壊力を持っておるということを世界に誇示し、国民に対して誇示しておるという実情でございます。従って、この軍縮の問題を、今後これはどうしても恒久的平和を作り出すために、われわれが軍縮という問題について、われわれの希望するような結果をもたらさなきゃならぬ。そこで、国連を中心とし、また、われわれの国連においての従来の活動がその点に向けられてきたことも御承知通りであります。現在、いわゆる十カ国会議においてこの問題が取り上げられており、また、それと並行して核兵器の実験中止の問題が三カ国の間において話言いをされおります。その場合において、最も議論が違い、また必要なことは御指摘のように、監視制度その軍備が誠実に行なわれておるかどうかということを、ほんとうに中正公正な立場で監視するところの有力な機構が設けられなければ、安心して軍縮というものは行なわれないと思う。この監視制度の問題につきましては、まだ不幸にして東西の間における意見が一致をいたしておりません。しかし、われわれは、どうしても軍縮という、この人類全体の念願であるところのものを達するためには、困難であっても、この問題について今後努力を続けて、結論を得るように努めなければならぬと考えております。日本もそういう意味において積極的に協力をする考えであります。  青少年に対して希望を持たせ、さらにこれが将来りっぱな社会人として、国及び民族の運命をになうようなりっぱな者に育て上げていくということは、私どもの大きな任務であると思います。その意味から言って、今日の学生の一部、全学連の動きに対しましては、御指摘のように、私どもこれは正常な学生の運動として、その範疇を越えておるものだ。また多数の学生から見まするというと、その学習や修養の道に対して、いろいろな支障をきたしておるという実情もございますから、十分これに対して反省を求め、学生運動として正しいあり方に立ち帰るように、あらゆる面からわれわれは反省を求めていきたい、かように考えております。  国会の運営の正常化につきましていろいろお話がございました。特にそのうちにおいて、二院制度のあり方、参議院のあり方についての御意見でございます。二院制度は、言うまでもなく、一院制度の行き過ぎや間違い等を是正して、全体として民意が正しく伸びるためにとられておる制度であります。ただ二院制度の真の意義を発揮するために両院の構成をどうするかという問題は、どこの二院制度におきまし  ても非常に意を用いられておるところであり、また、二院制度におけるいろいろな権限の問題等につきましても、各国において、二院制度をとっておる国国においては非常に研究されております。私は二院制度のあり方として、参議院がいわゆる良識でもって、中正な立場から、国政の円満な、また正しい運営がされるように、この参議院自体が運営せられるということは、きわめて望ましいことであると、こう考えております。ただ、現在の日本のこの参議院の構成から申しますというと、御承知のように、すべて選挙によって国民の間から選出されております。また、その選挙制度のあり方から申しましても、衆議院の選挙の場合ときわめて似通った選挙制度でございます。多少その選挙区の大きさ等については差がありますけれども、根本においては同じだ。こうなれば、当然私は政党というものがその選挙においてどうしても重要な働きをするようになることは、これは各国どこにおきましても自然の勢いであり、そういうことから申しますというと、今日のようなこの参議院も、やはり政党の力が入ってくるということは、これを否定することはできないと思います。その問題に、もしも根本に触れて考えると、構成の問題、選挙の問題に触れて考えなければならない問題である。いずれにいたしましても、私はかねて申し上げているように、やはり国会というところは、お互いにこの重要案件についての審議は十分に尽くして、その場合において、各政党はもちろん、各議員の良識と寛容の精神をもって審議を尽くして、そうして、その結果は多数決によってものをきめていくということが、やはりこういう制度の根底であって、それの運営を円滑にしていくように心がけることが必要である、かように考えております。(拍手)    〔国務大臣松田竹千代君登壇、拍手
  29. 松田竹千代

    国務大臣(松田竹千代君) 常岡さんがただいまわが国の青少年の将来を憂えられての御質問でございましたが、総理からもお答えになりましたが、私はやはり青少年の健全なる育成、そうして将来有為な人材として活動するといなとは、一に家の運命もそれにかかっておることでありますから、最も重要な問題であります。これはいずれの国においても最も今大きな問題になっておるのであります。特にわが国においては、近年青少年の不良化の防止問題をやかましく言われておりまするが、なるほどお話のように、テレビやあるいは映画、その他悪い環境から特殊の刺激を受けて、青少年の不良化する者の多数あることを認めざるを得ません。また大学というような、そうした特殊の地帯においてさえ、全学連の一部の行き過ぎた行動が最近において発生したことを、われわれは非常に遺憾とするものでありますが、そうした面のみを見まするならば実に心配でありますけれども、しかしまた一面、健全にして明かるい方面を見まするならば、今日の日本の青年は、決して悲観しているものでもなければ、きわめて明かるい希望を持って将来に向かっておるものと私は確信いたしておるのであります。何と申しましても一番われわれが心がけなければならぬことは、青少年の補導については、ひまな時間をくだらぬことに使わせないで、ひまな時間をフルに活用して、健全な方面に、いろいろの活動に持っていくということでなければならぬ。これは、われわれ壮年、老人でも、あまりひまがあり過ぎては、ろくなことはないことはしばしばあるのでありますが、しかしながら、活力の旺盛な青年に対しては、特にこの点に力を入れて、そうしてその補導を完璧なものにしていかなきゃならぬ。すなわち、青年の家も、あるいは青年学級も、あるいは公民館のごとき、あるいはその他いろいろの社会施設のあるのも、またスポーツその他の方面においても、何としても健全なる方面に青少年の活力を十分に持っていくという方向に持っていかなけりゃならぬ。かように考えておる次第でございます。(拍手)    〔常岡一郎君発言の許可を求む]
  30. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 常岡君、もう時間が切れておりますが、何ですか。
  31. 常岡一郎

    ○常岡一郎君 答弁漏れがありましたから……。第一の、首相は中共やソ連に行くか行かぬか、それを伺いたい。    〔国務大臣岸信介君登壇、拍手
  32. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) ソ連や中共を訪問する意思があるかという御質問に、答弁漏れがありましたのでお答え申し上げます。私は、できる限り今日の世界情勢雪解け方向べ進めていくためには、お互いにできるだけ個人的にも接触して、そうしてお互いの不信、誤解を少なくし、理解を深めていくことが必要である。かように考えております。従って、その点におきましては、友好国のどこに対しましても、適当な機会におきましてはこれを訪問するのが適当である。かように考えております。(拍手
  33. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  次会は明日午前十時より開会いたします。  議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十四分散会     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)