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1960-05-10 第34回国会 参議院 法務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年五月十日(火曜日)    午前十一時五分開会   —————————————   委員異動 五月六日委員佐野廣君及び西田信一辞任につき、その補欠として平井太郎 君及び植竹春彦君を議長において指名 した。 五月九日委員後藤義隆辞任につき、 その補欠として鹿島俊雄君を議長にお いて指名した。 本日委員鹿島俊雄君及び江田三郎君辞 任につき、その補欠として後藤義隆君 及び亀田得治君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     大川 光三君    理事            井川 伊平君            後藤 義隆君            高田なほ子君    委員            大森 創造君            亀田 得治君            千葉  信君            赤松 常子君            片岡 文重君            市川 房枝君            辻  武寿君   政府委員    警察庁刑事局長 中川 薫治君    法務省刑事局長 竹内 寿平君   最高裁判所長官代理者    事 務 次 長 内藤 頼博君    人 事 局 長 守田  直君    民 事 局 長 仁分百合人君    総務局総務課長 長井  澄君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    法務省大臣官房    参事官     影山  勇君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○裁判所法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○刑法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付)   —————————————
  2. 大川光三

    委員長大川光三君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず委員異動について御報告いたします。  五月六日付、佐野廣君、西田信一君が辞任中井太郎君、植竹春彦君が選任。  五月九日付、後藤義隆君が辞任鹿島俊雄君が選任。  五月十日付、鹿島俊雄君が辞任後藤義陽君が選任。  以上でございます。   —————————————
  3. 大川光三

    委員長大川光三君) 次に理事補欠互選を行ないます。  ただいま申し上げました通り後藤理事が一時委員辞任されたので、理事に一名の欠員を生じておりますので、この際、理事補欠互選を行ないたいと存じますが、その方法は、慣例により、その指名委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 大川光三

    委員長大川光三君) 御異議ないと認めます。  それでは私より後藤義隆君を理事指名いたします。   —————————————
  5. 大川光三

    委員長大川光三君) 次に、裁判所法の一部を改正する法律案を議題に供します。  本日は最高裁判所より内藤事務次長、同守田人事局長長井総務課課長法務省より、影山参事官が出席されております。  御質疑のある方は御発言を願います。
  6. 井川伊平

    井川伊平君 私は先般の委員会におきまして、本法律案について質問をいたしておきましたが、時間の関係で若干残っておるものがございましたので、本日まだ残っておりました分につきまして質問を進めたいと存じます。  第一に、書記官欠員試験制度についてお伺いするわけでありますが、資料によれば、書記官欠員が六百十四名あり、今次の改正措置により、書記官事務量は一そう増加することが予想されるので、右の欠員を早急に補充する必要があるのではないか、また欠員補充につき、現在の試験制度が隘路となっているようなことはないのか、書記官書記官補に対する試験制度内容難易等について説明をお願いいたしたいと思います。
  7. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) ただいま御質問のございました書記官職務内容改正とともに、書記官にそれだけの職務増加いたしまして、従いまして、欠員補充というようなことが一そう切実な問題になってくるのではないかという点でございますが、御指摘のように今側の改正によりまして、書記官事務内容が改められますとともに、その仕事増加するわけでございます。それに伴いまする増員ということは、当然考えなければならない問題でございます。現在書記官は六百名余りの欠員を持っているわけでございますが、直ちにその欠員補充するということは、望ましいことには相違ございませんけれども書記官補から書記官に任命いたしますのにつきましては、それだけの客観的な条件を必要としているわけでございまして、一つは、書記官研修所における研修でございます。その研修を経ました者、あるいはただいまお話のございました昇任試験に合格した者ということになるわけでございます。書記官欠員を、至急に補充するという要請が  一方にございますが、一方にまた書記官にはそれたけの資質能力を要する面があるわけでございます。従いまして、その資質能力に応じただけの研修なり試験なりを必要とするわけでございまして、そういう面におきまして、欠員補充が今日までなかなか実現し得なかったわけでございます。これは前にも申し上げましたように、新しい書記官制度というものを作り出す上におきまして、過渡的にそういう現象を生じてきたわけでございます。しかし、幸いにして書記官研修も充実して参りました。多くの書記官研修によりましてそれだけの資質能力を備えて参りまして、そういった資格を得る者が多くなって参りまして、今回の改正をお願いする段階になったのでありますが、それに応じまして、欠員補充もおいおいその見込みがついて参るようになって参ったのであります。ただ、欠員補充をしさえすればいいということにはなかなか参りません。先ほど来申し上げます新しい書記官制度というものを作り出す意味におきまして、書記官資質能力の向上、充実ということを考えますので、そういった過渡的な現象ができたわけでございます。欠員補充につきましては、昨年来そういった研修あるいは試験運用によりまして欠員補充をはかっているわけでございます。  詳細の点につきましては、さらに人事局長から御答弁いたします。
  8. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 書記官欠員が六百十四名ほどございますが、現にこれに見合う書記官補は、五百九十五名ほど書記官補定員で過員になっているわけです。書記官定員書記官補に流用するということは、これは認められておるわけでございまして、従いまして、書記官定員の一部を書記官補に流用いたしまして、現在書記官補予算定員よりは書記官補の数は五百九十五名ほど上回っておるわけでございまして、書記官欠員六百十四名は全然これに見合う者がないというような性質の欠員ではございません。従いまして、この書記官補から順次書記官昇任をさせていくことになるわけでございます。  昇任方法といたしましては、これは書記官研修所養成部というものがございまして、その養成部で一年ないし二年の研修をいたしまして、書記官に任用していくのがこれが正規の方法でございますけれども、いろいろな家庭の事情その他の事情もありまして、これをカバーする意味書記官昇任試験というものを実施しておるわけでございます。  書記官昇任試験程度は、これは書記官研修所養成部を卒業した程度で行なっております。さらに昨年から特別研修というものを実施するようにいたしまして、そしてその最終の合格者をもって書記官昇任せしめるような道を講じまして、昨年度は約四百八十名ほど特別研修を実施しまして、書記官昇任する道を開いたわけでございます。その程度が、書記官補から書記官昇任するのをはばんでいるのじゃないかというような御質疑でございましたけれども、これは、やはり書記官が一人前の書記官として実務の遂行をいたしますにふさわしい程度試験をせざるを得ませんので、そういった試験をしておるわけでございまして、特別研修書記官補在職年の長い人に限りまして、その実務経験にプラス学理的な研修を行なった上で任用するというような方法で進んでおりますので、これあるがゆえに書記官への昇任を特にはばんでおるというような状況はないものと考えております。
  9. 井川伊平

    井川伊平君 欠員をだんだんなくしようというお気持のほどはわかりましたが、いつごろになれば欠員は大体なくなる見通しであるか、その月日の関係についてお伺いいたしたい。なお、欠員がなくなった時代における執務の時間はどういうふうになるのかも、あわせて承っておきたいと思います。
  10. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 欠員補充の点でございますが、これは大体本年中には欠員補充されることになるのではなかろうかというふうに考えております。  それから今度欠員がすっかり補充された場合の勤務時間の問題でございますが、実はこの勤務時間につきましては、欠員のございますほかに、別の問題があるわけでございます。これは今度書記官に新しい権限が付加されまして、それを行なうにつきましての問題になるわけでございますが、これは裁判所ごと裁判官執務実情からくる別の要素がまたそこにあるわけでございます。御承知のように裁判官が、年々ふえます事件を、非常な手不足の中に処理をいたしておるわけでございまして、その勤務の仕方というものは、時間的に、何と申しますか、非常に多くの時間を費やさざるを得ない状況でございます。従いまして、その裁判官が行なう調査の補助をするという新しい権限書記官が行ないます場合には、やはりそれに応ずる勤務時間ということにならざるを得ないのでございまして、そういう点から勤務時間の延長ということを考えております関係上、書記官欠員の充員必ずしも勤務時間の延長を必要としなくなるというようなことではないわけでございます。書記官が、裁判官とともに、書記官権限によって仕事をするわけでございますけれども裁判官書記官が一体となりまして裁判事務処理するわけでございまして、今日の裁判所事件処理実情から申しまして、まことにこれはやむを得ないことに存じているわけでございます。
  11. 井川伊平

    井川伊平君 欠員補充されたといたしましても、なお執務時間は裁判官の手伝いと申しますか、補助ですか、それをすることによってなお延ばさざるを得ない、それはやむを得ないと言うけれども、そのやむを得ない理由が私どもにはわからない。それであるなら、さらにもう少し人をふやしたらいいじゃないか、人をふやせば、そういうような無理もしなくて済むのではないか。やむを得ないということは、人をふやしては絶対ならぬというような何か根拠があるのですか。
  12. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) まことにごもっともな御質問でございます。それにつきましては、やはりどうしても裁判官増員ということが根本に要請されるわけでございまして、裁判官増員によりまして、今日の事件数に応じまた今日の事件内容あるいは手続に応じたところの裁判官——裁判官が無理な負担なく行なうことができるようにする。そうすれば書記官につきましてもやはり御指摘のような執務体制になり得るわけでございますが、その基本になる裁判官不足、しかも欠員をかかえまして、なおその補充に苦しんでいるという、裁判官のそういう補充困難という問題が根本にございますために、どうしてもそういった点が解消し得ないのでございます。私どもといたしましては、終戦後のこの事態に応じ、また今後の裁判事務に応じましての裁判官必要数の確保ということにつきましては、ぜひ在野法曹方面の協力を得まして、この問題を解決したいということを考えているわけでございます。
  13. 井川伊平

    井川伊平君 裁判官補充の問題もさることながら、書記官職務の範囲を拡大いたしまして、裁判官補助をなさしめる、それはけっこうです。補助をさせることがいけないというのではないが、補助する時間を執務時間に入れるならば、よけいな時間働かなくてもいいのではないか。言いかえると、書記官の定数というものをふやすことによって、そうしたような矛盾は解決されるのではないか、その解決しようとする御努力のない理由はどこにあるのかという趣旨で承っているのであります。
  14. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 裁判所執務実情から申しますると、確かに書記官増員ということも必要でございますが、しかし執務態様という点から申しますと、どうしてもやはり裁判官増員ということが必要になるわけでございまして、それが裁決し得ないと、やはり今日の執務態様ということが改められないのでございます。で、裁判官がそうやって多くの事件をかかえ毎日相当多くの時間を事件処理に充てておりますが、そういった執務体制に応じて、やはり書記官補助をいたします以上、勤務時間の延長ということはやむを得ないのでございまして、これは書紀官増員だけでは必ずしも解決し得ない問題と考えておるのであります。
  15. 井川伊平

    井川伊平君 裁判官の数が少ない、あるいは仕事の量が多い、このことはそうでございましょう。それにはそれで裁判官の数をふやすということができようし、それとは別に、書記官の方を切り離して、書記官の方が足りないとすれば、そして裁判官との関係において仕事の量が多くなるのはやむを得ないんだといったような、やむを得ないというんではなしに、数をふやせばよろしいのだから、裁判官の方の量もふやし、及び書記官の方の量もふやす、こういうようなことも考えられないことではないと思うのでありますが、裁判官の方の仕事が多いと、だから書記官の方はこのままにしておくんだといったことは、矛盾じゃありませんか。
  16. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 御指摘のように、裁判官の数もふやし、書記官の数もふやすということが私どもの考えておる目標でございまして、それが解決できればこういった事態は解決できるわけでございます。
  17. 井川伊平

    井川伊平君 そういたしますると、そうしたような理想に基づいて考えれば、一体書記官についてはどのくらいの人数をふやせばその理想に近づく、あるいは理想に達するというようなお考えですか。
  18. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 今日私どもが考えております裁判官増員でございますが、事件が殺到いたしまする大都会の裁判所増員ということをまあ目標にいたしまして、それから一審の強化ということで、合議体を増強するというふうな角度から考えまして、裁判官が大体二百名は増員が必要であるというふうな計数が出るわけでございます。それに伴います書記官増員ということは、大体裁判官一人について三人の書記官というふうに考えますと、六百名の増員というようなことになるわけでございます。
  19. 井川伊平

    井川伊平君 そうしますと、裁判官の二百名、書記官の六百名の増をなし遂げたいということが理想であり、かつその努力をしておると承ってよろしいのですか。そういう努力はしとらぬ、気持はあるけれども、していないと承ってよろしいのですか。いかがですか。
  20. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 私どもは二百名の増員が必要ということを考えております。しかし現実の問題として、なお裁判官欠員をかかえている今日の状態では、二百名の増員の前に、ともかく欠員補充ということが最初努力目標になる。で、欠員補充が、まあ従来何年間かできませんで今日に至っているわけでございますが、判事並びに判事補欠員が、ことしの春にはほぼ補充ができたという事態に到達したわけでございます。なおしかし、簡易裁判所判事などには欠員をかかえておりますけれども、ともかく判事判事補は一応欠員補充ができたという形になっておるわけでございます。しかし、さらにその後、また今後も、裁判官が退官し、あるいは死亡し、そのためにまた欠員ができていくとは存じますけれども、まあそういった事態にまではようやくこぎつけられた事情でございます。それで、欠員補充ということに努力することが現実目標としては精一ぱいであるというような次第で参ったわけでございますが、私どもといたしましては、欠員補充ができれば、さらに進めての増長の要求ということになるわけでございます。二百名の増員ということを口では申しますけれども、実際問題として、一ぺんに二百名の裁判官が得られるわけではございません。私どもは一応事務的な面では百名の増員ということをまず第一の目標にしているのであります。しかし、これも大蔵省との予算折衝等におきまして、欠員をかかえながら増員要求ということはなかなか予算上認められることではございませんので、先ほど来由しますように、欠員補充ということに現実努力目標が向けられてきたのであります。しかし今後少なくとも百名ぐらいの増員ということを現実目標として努力して参りたいと思います。
  21. 高田なほ子

    高田なほ子君 関連。二百名の増員と現在の欠員補充ということがずいぶん述べられておりました。この三百名というのは、どういう科学的な根拠から出ているものか、これをまず明らかにしてほしいと思います。裁判官定員というものは一九四八年から一九五八年までの十一年間にわずかに二七・四%きりふえていない。しかし事件数というものは非常にふえている。刑事事件起訴人員が四三三・二%に躍進している。これは裁判統計から私は出したのですが、民事事件がこの間に三五二・六%に上昇している。そういう科学的な数字から考えてみると、現実に現在の裁判官は、もとの三倍以上の仕事をして能率を上げている。三倍以上の労働がしいられている、裁判官自体は。こういうような科学的な数字というものをもとにして二百名の増員ということを言っていられるのかということを私は非常に疑わざるを得ない。日本裁判官制度というものについては、これは抜本的に検討しなければならない事態にきておるわけですが、アメリカ法曹人口は七百五十人と聞いております。西ドイツの法曹人口が千九百人に対して、日本はこれはけたはずれで一万四十二人というべらぼうな数字があるわけで、これでは文明国とは言えないわけですが、世界各国法曹人口に比べて日本のはかばかしいような法曹人口に対して、最高裁の方では二百名という裁判官増員して、一体どれだけの解消ができるかということについて、はなはだ私は疑問に思っている。従って、裁判所でもこういったような過去の統計による数字もとにされて、もう少しわれわれに納得できるような計数をあげていただかなければならない。この点について御答弁願いたいことが一つ。  もう一つ関連ですから続けて質問をいたしますが、重要な御発言がさっきありました。それは書記官欠員補充を大体ことし中にやる、解消する見込みであるという御答弁があったわけです。これはきわめて重要な発言だと思う。なぜなれば、現在の書記官欠員は六百十四名、この欠員を埋めるために五百九十五名の書記官補を流用させて書記官と全く同じ職務内容をやらせておる。これは法的に違法ではないという説明があったので、その通りだと思います。はたしてことし中にこれが解消されるかということについては、私は疑問に思わざるを得ない。その疑問の第一点は、この昇任試験にハスするものは現在では三八・一%の比率を示している。この率ではとてもことし中に解消されないのじゃないかという疑問が一つ。もう一つの疑問は、研修所に、この前の質問で明らかになったように、希望したものが全員入れない、その中のごく一部分きり研修所にすら入ることができない。なぜ入れないのだと質問したら研修所が足りないからである、研修所整備ができていないからであるとあなたはお答えになっている。その研修所整備のできないのに、この六百十四名の書記官欠員が、ことしじゅうに解消されるとはどうしても考えられない、現実問題として。もっと納得できるような答弁をしてもらいたい。もう一つは、研修所に全員が満足に入ることができない理由に、整備ができていないからであるということがありましたが、研修所に入ること、自体にまた試験をやっているではありませんか。また昇任試験のその前に、研修所に入る前に試験をやっている。そういうことをやっておって、どうしてことしじゅうに解消できるか。この点はもっと科学的に、具体的に数字をあげて、六百十四名の書記官欠員が完璧にことしじゅうに解消できるかどうかということを、もっと明確に言って下さい。
  22. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 最初裁判官増員の問題でございますが、終戦後、事件が著しく増加いたしまして、裁判官が戦前に比しまして非常に多くの事件をかかえているということは、御指摘通りでございまして、これに応ずる裁判官増員ということは、まことに望ましいことでございます。先ほど私が二百名の増員ということを一応目標数字として考えているということを申し上げました意味は、これは八大都市——現在、事件が特に集中いたしまして、裁判事務処理の上で支障を生じておりますところの八大都市——につきましての裁判官増員意味で申し上げたわけでございます。で、実際問題といたしまして、裁判所事件負担でほとんど破産状態だといわれております現象は、大都市において生じているのでございます。そこで八大都市におきまして、今日非常に遅延しております事件処理を、審理期間をかりに今日の二分の一に縮めるというようなこと、それから合議体を増強いたしまして、刑事事件民事事件、それぞれ合議体処理する事件の数をふやすということをいたしまして、そうして出ました数字が三百という数字になるわけでございます。これが現実裁判所が当面しております八大都市事件処理に対する対策としての増員を申し上げたわけでございます。  で、根本におきましては、高田委員の御指摘になりましたように、日本全体の法曹人口不足ということがございます。これは終戦後、憲法が変わりまして、いろいろな問題が訴訟事件あるいはその他の事件として裁判所に持ち込まれるようになりまして、事件も多く、問題の幅も非常に広くなりました今日におきましては、この法曹人口ではとうてい対処できないということは、まことに御指摘通りでございます。アメリカ、ドイツその他の諸国と比較いたしまして著しくそこに相違があるわけでございます。これにつきましては、御承知のように法曹たる資格を得るのは司法試験に合格いたしまして、さらに二年間、司法修習生修習を必要とするわけでございまして、こういった人を得ますには、やはりそれだけの年数を必要とするわけでございます。で、司法修習生修習が軌導に乗りまして、今日ようやく十年を経たのでございます。それによりまして、ようやく先ほど申し上げました刑事判事補欠員補充ということが現実の問題としてここにできるようになりましたが、これは十年の時日を経たからでございます。で、今後、法曹人口の全体の不足にどう対処すべきか、これは非常に大きな問題でございますが、司法研修所におきましても、年々修習生の数をふやしてはいるわけでございます。しかしまた、修習生になりますためには司法試験という関門を経なければなりませんので、この関門を経る人数というものは、そう一ぺんにふえるわけではございません。年々優秀な学生がふえるようになりまして、合格者の数はふえてはおりますけれども、飛躍的な増加ということを一ぺんに望むわけにはいかないのでございます。法曹人口増加ということは、やはりそういった現実に照らしまして考えるほかないのでございまして、今日の法曹人口におきまして、一ぺんに法曹人口を倍にする、三倍にするということは、とても考えられないわけでございます。そういった法曹人口不足の上に、裁判官地位——それは報酬であるとかあるいは先ほど来申し上げております執務状況——というようなとが影響して参ると存じまするけれども、必ずしも法曹が、裁判官たることをすべてが望むわけではございません。裁判官志望者がなかなか得られないという実情もあるのでございます。そういうところに今日の司法制度運用に関する根本の問題があるわけでございまして、この解決につきましては、私どもあるいは弁護士会の方とも協力いたしまして解決に努力を重ねているわけでございます。それが今日の裁判所がそういう無理を生じている実情であるわけでございます。  それから次に、書記官欠員補充の問題でございますが、大体本年じゅうには欠員補充を実現したいというふうに私先ほど申し上げたわけでございますが、これは大体本年じゅうというめどを申し上げたわけでございまして、これにつきましては、やはり試験その他がございますので、所期するたけの試験合格意があれば実現するわけでございますが、これにつきまして先ほど人事局長からもお答え申し上げましたように、最高裁判所といたしましては、書記官補のために特別の研修をいたすわけでございます。特別の研修と申しますのは、勤務期間が長くて十分に実務の実力がある人につきまして補習的な研修をするわけでございます。そういたしますると、実務の経験が長く、実務に習熟し、その方面の法制に通じておりますので、特別の研修を行ないますことによりまして、その人の書記官たる実力が十分につくわけでございまして、こういった研修の実施によりまして、書記官昇任を行なうことをいたしたいと存じているわけであります。これはそういう意味研修でございますので、書記官研修所に全部集めましていたすという措置を必ずしもとらないで、各高等裁判所におきまして、その管内のそういった書記官補の人たちを集めまして研修を行なうようなやり方ができるのであります。先ほど高田委員から、研修所に入るのに非常にむずかしい、しかも入るのが施設の少ないところから非常に制約されているのでないかという御質問がございまして、それはその通りでございますが、それは一年ないし二年のいわゆる養成部研修についての問題でございます。ただいま私が申し上げております特別の研修につきましては、書記官研修所の施設そのものを使用するわけではございませんので、そういった書記官研修所そのものの施設の制約からではないのでございまして、もっと広く研修を行ない得るのであります。これはしかし、ただいま申し上げましたように特別の研修だからであるわけであります。その特別の研修によりまして、長年実務の経験のある書記官補が、さらにそういう実力を備えまして、そうして試験に合格するということになるわけであります。  それからもう一方、研修を受けません人たちの昇任試験でございますが、これは先ほど人事局長が申し上げましたように、毎年相当数が受けるわけであります。これが何人通るかということは、全くこれはそのときの試験を受ける人たちの力によることでございまして、これは私ども予想するわけにいきませんが、相当数が試験に合格するということを期待しているわけであります。  以上が欠員補充していける私どもの持っている見通しでございます。
  23. 高田なほ子

    高田なほ子君 関連ですからもう一問だけちょっと。それでは私は納得できないのです。まず裁判官増員の問題については、八大都市の現在の訴訟期間ですか、これを三分の一に縮めるためにこの三百名という数字を出したというお話でございますが、私は裁判という性格からいって、八大都市だけが重要視されるべきではない、あなたのそういう御発言は、憲法を無視するに似た発言で、非常に遺憾だと思います。たとえいなかでありましょうとも都市でありましょうとも、裁判の審判権が重要視されるということはあたりまえのことであります。八大都市だけ、まあ順序としてそうおやりになるということはいいと思うのですけれども、それ以外の下級裁判所については、もっと軽く見ているというやり方は、それは憲法無視ですよ。あなたのやり方は、これは訂正していただかなければならない。それから、私は一ぺんに三倍も三倍もふやせというような暴論を言っているわけじゃない。ただ、明治からずっと今日までの日本の政府自体が、裁判というものの地位をどういうふうに考えているのか。非常に軽く考えてきていると思うんです。それは明治憲法時代は、またある意味では重かったでしょうけれども、政府自体としては、裁判所そのものについては、私は軽視しているんじゃないかということを指摘せざるを得ない。だから、最高裁の当局者は、もっとお答えのときには、権威を持っていただかなければならないのであります。ずっと資料で調べてみますと、警察の方なんかは、明治からずっと計算してみると、大体五倍くらいにふえておるのですね。人口は明治の時代から比べると、現在わが国の人口はもう二倍以上にふえてきておる。それだけふえたのですから、裁判所も当然二倍には最低ふやさなければならないのに、二倍にもふえていない。数字をあげる時間がございませんが、ふえていない。警察の方は四倍以上にもふえている。裁判所の方は二倍にもふえていない。このことは、いかに裁判というものを国自体が軽視しているかということ、これについて裁判所がやはりもっと強腰になって、司法権の独立のために戦かわなければならないじゃないか。それを、あなた自体がこういう委員会に来て、まるで憲法を無視するようなことを言っておられますが、裁判の遅延というものは、裁判権それ自体を否定するものだというふうに私は考えております。はなはだ私はあなたの御発言には不満なので発言をしたわけです。  第二の質問の中で、一応あなたに御答弁いただきましたが、それはあくまでも特別研修についての御答弁であって、資料でちょうだいしている第一部、第二部、これらの書記官研修所の養成の問題については触れられておりません。これは明らかにこの研修所整備上の問題であります。第一部は八・七%第二部は三八%という資料をいただいておるわけですけれども、単に五年以上勤務した者、あるいは十年以上勤務した者というような、古参の人たちの昇進の道を開くことは当然でありましょうけれども、やはり若い人に対しても、どんどんと昇進の道の開けるような研修所整備というものを急がなければ、とてもこれは今年中に解消されるとは考えられない。特に最近の書記官補の年令構成を見ましたり、あるいは学歴別の構成を見ますと、大学卒業というのが非常に多いようであります。こういう若い人たちの書記官補の昇進の道を開くためには、急いでこの研修所整備、それができなかったらば、五年以上の経歴を持つ方に対する特別研修、この特別研修の中にも若い人たちの入れるような道を開いて、研修所整備ができないという理由でもって昇任の道をふさぐようなことがあってはならないと思うんです。特別研修は、これは何年以上の者がこれに該当するのか、特別研修には若い人がここに参加する道はないのか、あらためてこの点をお尋ねいたします。
  24. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君)  先ほど裁判官増員について八大都市のことを申し上げましたけれども、実は八大都市以外の裁判所を決して軽視している趣旨ではございません。と申しますのは、八大都市についてそういう手当てをいたしまして、ようやく八大都市事件処理が地方の裁判所並みになるということを申し上げているのでありまして、裁判所全体といたしまして、さらに一そうの審理の促進ということに努力しなければならないことは当然なことでございます。ただ、八大都市に早急にそういう手当が必要だということを申し上げておるわけでありまして、決して八大都市以外の裁判所を軽視する趣旨ではございませんので、その点は釈明させていただきます。  それから、書記官研修所の問題でございますけれども書記官研修所の施設を充実し、それから研修方法を工夫いたしまして、なるべく多くの若い人たちのそういう研修を受ける機会を作りたいということは、私どもも考慮しているところでございまして、何とかそれを実現して参りたいということを考えているわけでございます。研修方法も、いろいろ工夫して考えられるわけでございますので、ただいま御指摘のありましたように、若い人になるべく多く研修の機会を与えて参り、そういう素養、実力をつけて参りたいというふうに考えております。
  25. 高田なほ子

    高田なほ子君 不満ですけれども、この次また質問します。
  26. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 研修所の施設につきましては、今回国庫債務負担行為ということによりまして、来年度中には施設の拡充ができる見込みでございます。それから研修方法につきましても、十年来、今日の研修をしているわけでございまして、そのやり方についても、さらに検討を加えまして、一そう能率的な研修が行なわれるように私どもも考えているわけでございます。それから特別研修は、先ほど来申し上げまするように、期間といたしましても十分な期間ではありませんので、十分実務に経験を積んだ、実務に習熟した書記官補を対象にするわけでございます。今日のところでは、在職十年以上の書記官補を対象といたしまして、先ほど申し上げたような特別研修を行なうことにいたしておるのであります。
  27. 井川伊平

    井川伊平君 裁判所書記官書記官補を含めますが、それと一般行政職にある者との待遇につきまして、裁判所書記官の方がはなはだ不利な立場に立っておると、かように一般的に申されていますが、さような事実があるかないか。もしあるとすれば、どういう点であるか。具体的に御説明を願いたい、かように存じます。
  28. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 裁判所書記官か一般の行政官吏より待遇上不利になっているということは、ないと言えます。昇任試験あるいは養成部を卒業して書記官に任用されましたその書記官の待遇は、非常にスムーズなコースをとっています限り、一般の国家公務員試験に合格した人たちが各省で昇進していきます速度よりは、一年ほど早くなっているわけでございます。そういった意味で、特に制度的に低くなっておるというようなことはありません。ただ、全体の職員の俸給単価が、各省の職員の平均単価と比較しますというと、下回っているように見えるわけでございます。しかし、これのあげられましたその表の数字は、各省におきましてはそれぞれ次官、局長以下全部を引っくるめたその平均単価でありますが、裁判所の平均単価は、いわゆる裁判官を除きました者のみの平均単価でありまして、もし裁判官を含んでの平均単価を出しましたならば、大体上位から五番目くらいのところにはあるものと想像されます。これはなぜそういうふうになっておるかと申しますと、結局裁判所は、戦争中に大体職員の多くが軍需産業その他の方へ転出いたしまして、終戦後は若い人をたくさん採用して、そうしてそれを充実していく以外に方法はなかったわけでございます。ですから裁判所職員の年令構成から申しますというと、他の官庁よりは平均年令においても相当若い、そういう関係で俸給の点もある程度下回っておるということから、平均単価も下になっておるということでございまして、そういったいろんな点を取り除きまして、はだかにして比較いたしますならば、決して裁判所職員が一般の行政庁の職員よりも低くなっているということはないということが言えると思います。
  29. 井川伊平

    井川伊平君 大体了承いたしましたが、次にこのたびの改正措置に対しまする書記官の意向がどういうようなものであるか、望んでおるかいなか、こういった点につきまして、御調査になっている事実があるか。あるとすれば、そういう面につきましての調査の結果について御報告を願いたい、かように存じます。
  30. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 昭和三十五年度予算の第二次査定で——第二次にわたりましたところの内示によりまして、書記官及び調査官の調整予算が認められるということは、大蔵省から内示されたわけでございます。で、これは初めの構想通り書記官権限を拡充いたしますとともに、勤務時間の延長がこれに関係しておりますので、はたして書記官、調査官が、権限の拡充とそれから勤務時間の延長ということで、調整を受けるかどうか、受ける気持になるかどうか、そういった点を知る必要があるわけでございます。で、そういう関係から、高等裁判所書記官の一番上に当たります首席書記官を招きまして、書記官及び調査官の意見を聞いてほしいということを依頼したわけでございますが、この結果参りました同意書というような名前もありますし、あるいは上申というような名前もありますし、いろんな形、あるいはただ同意書あるいは反対者といったような数だけのものもありますし、そういったのを文書として合計いたしますと、千七百四十七通ほどになっております。これは反対ももちろんあるわけでございます。それを賛成と反対を計算いたしますというと、書記官のうち二千百五十人が賛成、すなわち八三%ほど賛成しておる、調査官は五百六十名、六八・五%ほど賛成、そのほかは反対ということになっております。以上でございます。
  31. 井川伊平

    井川伊平君 次に、最高裁判所及び高等裁判所における裁判所調査官との関係についてお伺いいたします。  裁判所法第五十七条に規定されておる最高裁判所及び高等裁判所の調査官との今回の改正措置により職務内容の拡張された最高裁判所及び高等裁判所書記官との権限は一体どういうものか、どういうような開きがあるのか、相違があるのか、あるいは全く同じなものか、こういう点についての御所見を承ります。
  32. 影山勇

    説明員影山勇君) 最高裁判所及び高等裁判所に置かれております調査官は、裁判官の命を受けまして、事件の審理及び裁判に関して必要な調査をつかさどる、つまり審理及び裁判でありますから、そうすると裁判事務の全般に関しまして、裁判官の命を受けて、必要な調査を、いわば調査官の事務として、もちろん裁判官の命令のもとでありますけれども、自分の事務といたしまして調査いたします。この同じ裁判官、調査官と申しましても、現実最高裁判所と高等裁判所に置かれておりまして、現実運用は、高等裁判所の方は、特許事件とか海難事件とか、特殊な事件についてのみ調査を行なっているのでございます。以上のように、この最高裁、高裁の調査官は、事件の全般について、命を受けて調査するというのに対しまして、この今度書記官に認められます調査の権能と申しますのは、事件の全般にわたるということはございませんで、特にこの法文に掲げられておりますように、法令とか判例の調査といったようなことに限定されまして、しかもこれももちろん裁判官の命を受けまして、裁判官事務である調査を、裁判官の命ずる限度、方法というふうに限定いたしまして、個個的に命ぜられた範囲のことをやるという点におきまして、最高裁の調査官あるいは最高の調査官とは非常に異なっております。本来最高裁の調査官は、調査だけが本務でございますのに対しまして、これは従来の固有の書記官としての事務のほかに、裁判官の命を受けて、個々的な調査をつかさどるという点が、非常に調査官と異なる点でございます。
  33. 井川伊平

    井川伊平君 最後にもう一点お伺いいたしますが、外国の書記官制度との比較につきましてお伺いするわけでございますが、書記官職務権限及びその身分上の地位等について、わが国の書記官制度と諸外国のそれとを比較して、説明をしていただきたいと思います。また将来、軽微な裁判事務を取り扱わせるため、ドイツにおける司法補助官のごとき制度を設けるような考えを持っているかいないかを、あわせてお伺いいたします。
  34. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 裁判所書記官職務権限でございますが、これを外国の法制と比較してみました場合に、アメリカにせよドイツにせよ、その本質において、基礎において、それほどの相違はないと考えられます。日本裁判所制度は、裁判所構成法以来、御承知のように、ドイツの法制に学びましたものでございますので、ドイツの書記官制度に近いかと存じまするが、裁判所書記官としての仕事は、アメリカにおきましても、そう大した相違があるわけではございません。ただ、書記官仕事の中心が、もちろん訴訟の記録の作成、保存にあるわけでございまして、その根底において変わりがあるわけではございませんけれども、たとえば調書そのものを書くというような仕事に重点があるもの、あるいはそれ以外のその事件処理に関するいろいろ準備的な行為にまで書記官が積極的であるというようなものもあるわけでございまして、それは法制上、あるいは実務上、若干のそういったニュアンスの相違は国によってあるわけであります。日本におきましての書記官制度は、裁判所構成法以来のいわゆる裁判所書記として発達して参ったわけでありますけれども終戦後、先般来申し上げますように、書記官制度というものをさらに再検討いたしまして、新しい意味書記官制度を作り上げていきたいというのが、新しい裁判所法制定以来の起源になっているわけであります。その方向といたしましては、もちろん法廷における手続の調書を作成するということが非常に重要なことであるには相違ございませんけれども、たとえば供述の内容というようなことになりますと、これは速記制度を採用いたしまして、書記官から、そういう供述の内容を記録するという仕事からは書記官が離れまして、事件そのものの進行についてのいろいろ準備的な仕事におきまして裁判官補助しようというような方向に書記官仕事を向けるべきではないかということから、あるいは速記制度の採用、あるいは書記官研修制度などということを実現して参っているわけであります。そういった方向に書記官職務権限を改めて参りますその段階に今日あるわけでございます。今回の裁判所法改正もその一つのステップとしての改正をお願いしているわけなのであります。  そういう意味におきまして、書記官仕事の基本的な、本質的なものが変わりがあるわけではございませんけれども、その実際の執務態様につきまして、新しい裁判所法もとにふさわしい書記官職務体制というものを作り上げていきたいということを考えているわけでございます。  それからドイツにおきましてございます司法補助官というような制度があるわけでございまして、これにつきましては私どもかねがね研究もいたしております。特に先ほど来申し上げますように、事件の非常な増加裁判賞の不足、こういった事態に応じまして、やはり司法補助官のような、ある程度裁判官補助として裁判事務の行なえるような職務制度というようなものが必要ではないかというふうに考えているわけでございまして、ドイツの司法補助制度そのままにはもちろん参りますまいけれども、そういったような方向で新しい制度を実現していきたいというふうには考えているわけであります。これは今日なお私どもの間において研究中の問題でございます。
  35. 井川伊平

    井川伊平君 一応質問はこれで終わりました。
  36. 赤松常子

    ○赤松常子君 ちょっと二、三お尋ねいたしたいと思うのでございますが、まず最初、さっき井川委員おっしゃいました裁判関係の方々の俸給というものが、他の一般職の方たと比べて非常に低いということは、いつも言われているわけでございまして、ここでもしょつちゆうそのことは取り上げられて、そういう待遇の向上についていろいろ論議がかわされております。ところが、先ほど人事局長の御答弁では、そう低くないとおっしゃっていますが、私が調べて参りました資料では、これは非常に低い数字が出ているわけでございますが、一般職員の方々は三十八万五千人の平均賃金が三万四百四十円、ところが裁判所職員の一万九千七百人の方を調べてみますと、一万七千六百五十二円と、だいぶ開きが出ているわけなんでございます。先ほどおっしゃったように、統計のとり方もいろいろ方法がございますから、こういう数字が出たのかもしれませんけれども、いつもここで俸給が少ない、少ないと言われている。裁判官不足もそういう待遇が悪いから民間から回っていらっしゃらないということがいつもここで論議されているにもかかわらず、今の御答弁では、そう低くないとおっしゃっていますが、私どうもこの点納得いかないのですが、私のこの調べた数字とはあまりに違います御答弁ですから、ちょっとその点お伺いしたいと思います。
  37. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) ちょっとお尋ねしたいのですが、その資料は何に基づくものでございますか。
  38. 赤松常子

    ○赤松常子君 私、秘書に調べさしたのでございますが、もう一ぺん出所をよく調べてみましょう。
  39. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) それはいつの資料でございますか。
  40. 赤松常子

    ○赤松常子君 最近の資料でございます。
  41. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) そうでございますか。それでは私が申し上げておりますのは、各省の職員の基本給というようなものが裁判所にはございませんので、ただ昭和三十四年一月一日現在の資料がございますので、それを検討いたしまして、ただいま申し上げたわけでございます。それによりますと、裁判所の職員の、裁判官を除く分だけの基本給の平均額は一万七千七十七円になるというわけでございまして、厚生省が一万七千七十三円という最下位はございますけれども、まず一番下に近いという数字になっておるわけでございます。この数字自体を見ますれば、これはやはり低いということが一般にいわれるのも、これは当然のことかと思いますが、しかし基本給の平均が問いか低いかといいますのは、これはただ単にこの単価だけではいけない、やはりその人の年令とかあるいは学歴とか、そういったものをも、いわゆる職員の構成によって考えていかないというと、一がいにただ表づらに現われただけで判断することはできないものだと私どもは考えるわけでございます。  もう少し詳しく申し上げますと、裁判所の職員と一般の職員の平均年令の比較をいたします。これは昭和三十四年の七月一日現在で比較するよりほかに資料がありませんので、それで比較するわけでございますが、各等級別に比較いたしますと、まず一番下の方の八等級から申しますと、八等級では裁判所職員が二二・五才、一般職員は平均しまして二三・九才、七等級にいきますと、裁判所職員は三〇・八才、一般職職員は三一・二才、六等級に参ります三三・七才、一般職は三八・九才、五等級では裁判所職員は三六・一才、一般職職員は四二・九才、四等職になりますと、裁判所職員は四五・二才、一般職職員は四六・七才、それから三等級になりますと、これは裁判所職員は五一・二才、一般職職員は四七・八才というふうになっておりまして、平均いたしますと裁判所職員は三三・四才、一般職職員は三五・八才、大体二・四年ほど若いというような状況になっております。これがやはり相当の違いになってくるわけでございます。さらに昇級率の点を申し上げますと、これは三十四年一月一日現在で裁判所職員の昇級率は一三三・一に当たります。ほかの省庁の職員よりは昇級率は最高になっております。これは若いからそういうふうな昇級率になっているわけでございます。またさらに裁判所職員と一般職職員の折れ曲がり人員というものがございます。これは各等級の号の中で所要の昇級期間があるわけでございますが、その昇級期間が、ある号にいきますと少し長くなってくる。その長くなった人たち、長くなったところ以上におる人員、これが折れ曲がり人員の率と申すわけでございます。これが全体のその各等級の中で折れ曲がりのところから以上にどのくらいの率でおるかということも、またこれは一つの考える資料になるわけでございます。それを考えますと、まず行政職俸給表で申しますと八等級は折れ曲がり人員は裁判所にはございませんが、一般の行政官庁には〇・八%いる。七等級は裁判所には一・二%ですが、一般職職員は三%。六等級では裁判所職員は二・七%でありますが、一般職職員は三三・七%。五等級では裁判所職員は二丁三%、一般職職員は四〇・一%。四等級では裁判所職員は一〇・三%、一般職職員は一六・一%。三等級では裁判所職員は七・四%、一般職職員は二八・八%。二等級になりますと、これはもう本省の局長クラスに当たるのですが、裁判所職員は一一・一%、一般職職員は七・三%。これを合計して平均いたしますと、裁判所職員は三・八%であり、一般職職員は二五・五%になっております。すなわちそういう期間の長くなった、昇級期間が長い期間を要する昇級の以上におる人が非常に少ないということを表わす。裁判所職員の待遇というものが非常に等級が上に上がっていきましたので、決して停頓していないということを表わしているわけでございます。これらの事情をいろいろ考えまして、結局先ほど申し上げましたように、平均基本給はなるほど低い、しかし待遇としては決して劣っていないということを申し上げた次第でございます。
  42. 片岡文重

    ○片岡文重君 関連して。今のお話ですと、あまり裁判所の職員の給料は下がっておらぬというお話ですけれども、学歴別に、たとえば大学卒業者、旧制の大学、高専あるいは新制の短大、新制大学あるいは高校、学歴別に、そしてそれを在職年数別に調べたものがありますか。
  43. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 私、手元には持っておりません。おりませんし、各省の学歴別、在職年数別、号別というのは、資料が手に入りませんので、比較のしようもありませんが、裁判所で大学卒を採用し出したのは、終戦後の三十四、五年ごろからでございまして、そういう点から申しますと、若いところに大学卒は相当いますが、各省のようにずっと大学卒を明治、大正、昭和を通じてとってきたところと、大学卒の面から見ますと非常に数が少ないということだけは言い得ると思います。しかも上の方に少ないというようなことが言えるのじゃないかと思います。
  44. 片岡文重

    ○片岡文重君 今の関連ですが、給与が多いとか少ないとかいうことは、言うまでもありませんが、経験年数それから学歴等がやはり大きな算定のファクターになると思います。特に裁判所のごとき完全な知脳労働の職員になれば、この学歴等も十分ものを言うし……。今のお話ですと、何か高学年の研修をしたものが少ないようにおっしゃっておられるようですけれども、たとえばいただいた資料を見ても、書記官補ですから大学卒は二五・三%を占めており、短大卒が一二・七%もおるわけです。高校卒が五一・七%になっていますが、これは官補の学歴ですね。それで、書記官の学歴はどこかにあったと思うんだが、研修所の構成を見ると、いただいた資料によって研修所の入所資格、それから入所試験程度はここに出ておりませんけれども、少なくともこの入所資格によって研修手数を見れば、いわゆる就職以前の学歴はともあれ、入ってからの学歴というものは相当高く評価されてしかるべきだと思う。だから俸給の等級等を考える場合には、そういう点をまず同じレベルに直してみて、どの程度に違うのかということを見ていただかなければ、大へんこれは失礼なことになるかもしれませんが、一般職の官公庁、公共企業体にしても諸官庁にしても、大学出ももちろん多いようですが、むしろ高校程度の職員の方が非常に多くて、しかもそれ以上研修とか何とかいうことに対してこういう制度のあるところは限られたところだと私は思うのですね。そういう点等を考えてみれば、この処遇というものは、決して裁判所が他の官庁から比べて高いと自負し得るような程度のものではない、少なくとも就職前の学歴、就職後の研修、これらの努力に対して報われるところの俸給が、他の官庁に比べて大体同等であるのか、高いのか、低いのかということが、この処遇が適当であるかどうかの問題だと思う。そういう点からの御説明としては、何か私少し不十分だと思うのですが、もし、資料がここにはないが、あるというのなら、他日出していただいてもけっこうです。しかし今ないができるというのなら、これをお待ちしてもけっこうです。とにかく何かそういう御説明がなされることを私は希望するのです。
  45. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) ただいまお尋ねの範囲でありますならば、ここでお答えできると思います。  それは、まず書記官研修所養成部に入って、そうして一年ないし二年で養成部を卒業して書記官に任用される者のそのときの給与は、これは一般の行政官庁で国家公務員試験によって大学卒で採用されまして、そして任官して昇進する者の速度よりは、一年早くなし得るようになっているわけでございます。すなわちその労に報いるようにしてあるわけでございます。それから書記官補の中に大学卒がだいぶおりますが、この大学卒の人たちは、それぞれ書記官補採用試験に合格して採用された人たちでありまして、その初任給は行政職の七等級試験、いわゆる国家公務員試験に合格して採用されたものと同じでございます。だから、大学卒が特に他の官庁の大学卒と初任給及び昇進の速度において、上の方は別といたしまして初めの方で変わるというようなことは全然ございません。この程度は申し上げられると思います。
  46. 赤松常子

    ○赤松常子君 私伺いまして、いろいろ処遇のことを考える角度及び条件というものの複雑な点の考慮も必要だということはよくわかりますけれども、今おっしゃいましたように、厚生省より一段上という程度では、先ほどおっしゃったように、そうひどくはないという証拠にはならないと思うのでございまして、私が調べて参りましたこれの信憑性も、もっと私確かめたいと思っておりますが、そういう諸官庁の一般職員との比較表を、もっと私どもにわかるような資料を、この次お出しいただきたいと思っております。  それから、この前にちょっとお尋ねして、それに続いてちょっとお聞きしたいのでございますが、こういう今度の改正に伴いまして、時間の延長であるとか、あるいは八%ながら昇給ということが考えられておるようでございますが、これなども先ほど井川委員でございますか、書記官の御意見というものを伺ったかというその御質問に対して、御答弁がございました。私、この前お聞きしましたときに、裁判所書記官制度調査委員会というものがあって、これにもいろいろそういう問題を諮問するのだとおっしゃておりましたが、その委員の顔ぶれを見ますと、なるほど書記官も出ていらしゃいますけれども、首席書記官であるとか、あるいは主任の書記官の方であるとか、非常に上の方が出ておいでになる程度であって、一般の書記官の方の御意見というものが、はたしてどういうお話し合いで出るようになっているのか、ことにこういう労働条件の問題について、具体的に一般の方の御意見というものを、下から吸い上げると申しましょうか、披瀝すると申しましょうか、そういう方法がどこでどういうふうになされているのかということが一点。  それから先ほど賛成の方が相当おいでになるようでございますが、その方法が、やはり首席書記官に頼んで一般書記官の意見を聞いた、賛否を聞いたという、その方法が、はたして民主的であろうか、一般の下の声がすなおに率直に出る方法であろうか、これがはたしていい方法であろうか、これについては私は疑問がございますが、こういう方法論についても、これでいいとお思いでございましょうか、いかがでございましょうか。
  47. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 書記官制度調査委員会の問題でございますけれども書記官制度調査委員会は、ただいま御指摘のようなメンバーが委員になっているわけでございます。書記官の中から首席書記官あるいは主任書記官等が委員になっております。この委員会あるいは幹事会の運営におきまして、私どもは、なるべく御指摘のように一般書記官あるいは書記官補の諸君の意向が反映するようにということは努めているわけでございまして、幹事会あるいは委員会の過程におきまして、いつもその間に、この人たちが、幹事なり委員の人たちが、職場におきまして書記官の諸君、書記官補の諸君の意向を徴しているわけでございまして、その点については、実際の仕事をしている書記官あるいは書記官補の人たちの意向が少なくともこの制度調査委員会に反映するように努めているわけでございます。で、委員、幹事になっておりまする書記官の人たちも努めてその点は努力をいたしまして、そういった点に遺漏のないように努力しているわけでございます。それから、なるほど裁判官の人たちが多いではないかというお話でございますけれども、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所から出ております、あるいは最高裁の判事も同様でございますけれども裁判官書記官との仕事は、常に日々これは一体の仕事をなしているわけでございます。裁判官が、多くの場合、こういった席におきましては書記官の立場になり、書記官の意向を相当に反映し得る人たちでございます。これは最高裁の事務総局といたしましては、事務総長が出ているだけでございますが、実際日常直接同じ職務に携わっている裁判官委員になっているわけでございます。そういった意味におきまして、この書記官制度調査委員会におきまして、実際に日々一体の仕事をしていく裁判官書記官、そういった人たちの意向が十分に反映し得るように努めているわけでございます。  それから第二の、書記官の意向を徴するについての問題でございますが、こういったこの法律の改正につきまして、内部の職員の意向を徴するということは、今回に限ったことではないのでございますが、方法といたしましては、やはり各庁から全部もちろん集めるわけには参りませんので、連絡の方法といたしましては、先ほど人事局長から申し上げましたように、首席書記官を通じまして連絡いたしたわけでございます。これも首席書記官を通じましたといいますのは、ただいま赤松委員から御指摘がありましたような点を私どもは配慮いたしたわけでございます。所長を通ずるとか事務局長を通ずるということを避けまして、首席書記官を通したわけでございます。これは書記官のほんとうに忌憚のない意見を聞きたい、書記官の同僚を通してそういうことをすることによって、書記官の忌憚のない御意見を聞きたいということからしたので、御了承をいただきたいと思います。
  48. 赤松常子

    ○赤松常子君 労働組合が各官庁にございますが、そういう団体との正式交渉というふうな場をお持ちになっているのでございましょうか、いかがなものでございますか。
  49. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 裁判所には全司法という組合があるわけでございますけれども、今日その組合の役員が正常な状態にはないものでございますから、正式の意味の団体交渉ということはいたしておりません。ただ、事実上、当局におきまして接触をいたしまして意向を徴したり、あるいはこちらの意向を伝えたりしていることは、事実上ございます。ただ、正式の団体交渉ということは現在いたしておりません。
  50. 赤松常子

    ○赤松常子君 こういうことは私非常に不幸だと思うわけでございまして、一番労働条件に関連がある問題こそ、そういう団体の方々と直接正常な話し合いの場を持って、スムーズに話し合いができるようにしていかなければ、そこからまた無理が生ずるようなことになるのではないか、このことは、掘り下げればいろいろ問題はあると思いますけれども、どうぞこういう問題については、今申しますように裁判所の中の問題でございますから、両方が常識をもって正しい慣行を作るようにしていただきたい、そうでないと、いろいろそこから無理が起こるのではないかと心配をいたすのでございます。
  51. 高田なほ子

    高田なほ子君 ちょっと今の問題に関連して。今の交渉の問題ですが、私は今の御答弁はちょっとおかしいのじゃないかと思う。全司法の組合の代表者が正当な代表者じゃない、従ってあまり話し合いしない、こういうような内容の御答弁であったように伺うのですが、しかし、ILO条約の八十七の精神からいいましても、それから公務員法九十八条から考えましても、解雇された代表者とは交渉しないというような考え方、そういう考え方は私は誤りではないかと思う、そういうふうにはお考えになりませんか。
  52. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 交渉しないということを申し上げたのではございませんで、正式の団体交渉はしていないということを申し上げたのでございまして、先ほど来申し上げますように、事実上の接触はいたしておるわけでございます。
  53. 高田なほ子

    高田なほ子君 国家公務員の場合は、何も協約、調印ということはないわけなんですから、それはやはり十分に話し合いというものが持たれ、またその意見というものは尊重されなければならないはずのものだと私は思う。しかし今日までの最高裁の態度というのは、事務総長のところまで行政措置の要求内容なんかは知らされてないらしいですね。途中で消えちゃってるようですね。これは私はどうかと思うのです。少なくともやはり措置要求が十三項目も十四項目もにわたって過去にされておるのに、事務総長のところまでその考え方がいかないということについては、これはずいぶんおかしなものだと思う。この間私質問してわかったのですが、あなたのところでも措置要求内容なんていうものについて知ってないですね、この間聞きましたら。これではまるで話し合いをしたとか何とか言ったって、その内容というものが上の方まで伝わらないということは、組合自体を無視している態度じゃないかと思う。これは全く憲法の番人である最高裁が、自分からその憲法の精神をじゅうりんしていくというやり方、これははなはだしく権威を欠くものであり、不当なものであるというふうに私は思う。こういうきめつけ方はけしからんというような駁論をしてもらいたい。御答弁いただきたい。
  54. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) ただいま御指摘のように行政措置要求が参っております。その行政措置要求要求事項は、これは決してその人だけで解決し得る問題だけではなくて、やはりこれは全体としていろいろと解決しなければならぬ問題である。それにつきまして、私自身といたしましては、これは全司法の役員の方がしょっちゅう見えますし、しょっちゅうお話しておるわけであります。そういった点の解決をしていくということの熱意も私ども持っておるわけであります。そういう案を作りまして、それからいろいろと内部で事務的にこなしまして、そしてやっていくというほかはないわけでございますが、公務員法におきまして、免職された職員が当然その組合員だというような解釈は、やはり現実ではとっておりませんで、正式の団体交渉にするためには、少なくとも全逓で行なわれました程度の、やはり臨時代表か何かを選んでほしいということを、再三私の方からは申し入れてありますけれども、それはそのままになってきておるわけでありますしかし私どもといたしましては、やはり職員組合の方から申し入れられた事項は、相当いろんな点で考えなければならない。しかもそれをやるためにはいろんな制度をいじらなければならないといったような問題がありますので、しかも、申し出られた措置要求は、個人個人で解決すべき事項でもないものですから、紋切り型にしても意味がないというふうに考えますので、その方面の解決のためには、順次準備を進めつつあるわけでございますが、正式の団体交渉し得るような形を、全司法の方においてとってほしいということを要望して現在に至っておる次第でございます。
  55. 赤松常子

    ○赤松常子君 はしなくもILO条約の問題が出て参りまして、これは非常に重要でございますし、これはまた日を変えて全般的に考慮していく問題だと思っておりますので、その一環として、私ここで要望したいことは、いろいろ法律の改正をこれから早く進めていって、そうして裁判所の職員の皆さんも、正常なそういう問題についての団体交渉をお進めになっていただくように、私ども努力いたしましょうから、当局の方もどうぞ推進の方向に向いていただきたいとお願いいたしておきます。  それからもう一つ私ちょっとお尋ねしたいのは、私は他の官庁のこともよくわからないのでございますけれども、今度時間が延長されるということは、結局人員が不足であるから、予算がないから、そのしわ寄せが時間延長ということになってきているわけでございますが、こういう例が他の官庁にあるのでしょうか。お聞きでございましょうか、いかがでございましょうか。裁判関係書記官関係最初なのでしょうか。結局予算がないというしわ寄せが、時間延長事務量増加ということになるわけなんで、考えようによっては、非常に他の官庁に波及するおそれもあると思いますが、これはいかがでございましょうか、他の官庁の状態、私ちょっと調べてくるべきでありましょうが、お知りでございましたら……。
  56. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 時間の延長の問題は、他の官庁にもございます。たとえば警察事務官であるとか、公安調査庁あたりでも同様に勤務時間が長くなっているようでございますし、また船員のような場合にも相当勤務時間の延長があるようでございます。裁判所の場合には、予算不足、人員の不足のしわ寄せではないかという御質問でございますが、もちろんその面がございます。先ほど来申し上げますように、今の裁判官執務の体制あるいは裁判所全体の事件執務状況から申しまして、こういう措置をとるわけでございますが、同時に、何と申しますか、仕事の性質そのものからくる点があるのでございまして、そういった点につきましては、時間の延長勤務時間の延長という点ではないようでございますが、警察事務官であるとか、あるいは公安調査庁事務官、あるいは船員、そういった職種とはまた別の要素がそこに加わっているわけでございます。そういう意味におきまして、裁判所事件を扱うという仕事、そういった職務内容からくるところの特殊なものがあるわけでございまして、ちょっとこれは他の官庁には同じような適切な類例があるとは存じられないのでございます。
  57. 赤松常子

    ○赤松常子君 今、特殊とおっしゃいまして、また各官庁が特殊々々と言ってこの書記官事務量の増大ということにならって、特殊事務だからというので、それに見ならうおそれも私はありはしないかと、それを非常におそれているわけでございます。結局時間の延長をして、今までいつも聞かされておりますように、家に帰ってまだ役所のお仕事をし続けなければならぬというようなことは、一応解消されるわけなんでしょうか、いかがなんでございましょうか。
  58. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 家に帰って実際仕事をしている場合が相当あるように私も聞いておりますけれども、そういった事態は、これでなくしたいというふうに考えているわけでございます。実際の裁判をしております人たちに接しましていろいろ聞きますると、なかなかやはり仕事の最が多くて、書記官の人たちが熱心に残って仕事をしている、あるいはさらに持ち帰っていろいろ仕事をしているということも私聞いております。そういう意味におきまして、そういった家へ持ち帰るようなことのないように私どもは努めたいと思っております。延長されました勤務時間内で何とか処理できるように、これはもう実際に個々の裁判所における執務のあり方になりますけれども、そういうように努めて参りたいと私どもは考えております。
  59. 赤松常子

    ○赤松常子君 私、次長のその希望意見はよくわかりますけれども、先ほどの欠員補充といい、なかなか事務量をさばいていくという問題は容易ならぬ問題だと思っているわけで、ただ二時間の時間延長ということだけで解決できないと思っております。それこそ私一種のしわ寄せをされる方々の大へん御迷惑なことだと、どうも納得いかないわけでございますが、それに引き続いて、それほどおそく仕事をなされれば、やはり庁舎を管理なされる方だとか、あるいはお掃除をする方だとか、電話の交換手の方だとか、それに付随した方々も居残りをするわけでございますが、そういう人々のことを考えておられるのでございましょうか。
  60. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 今度の勤務時間の延長は、書記官、それから家庭裁判所調査官に限っているわけでございます。これは書記官の場合は、調査の補助という職務からそうするわけでございますし、調査官の場合には、やはり事件の調査ということからそうなるのでございまして、そのこと自体からすぐに、たとえば電話の交換手であるとか、掃除をする人であるとかいう人たちの勤務時間の延長ということには、すぐに参りません。しかし、必要があってそういう人たちに超過勤務を命じまする場合には、もちろんそれに応じた超過勤務手当を支給される。
  61. 赤松常子

    ○赤松常子君 その点、考えておられるわけでございましょうね。
  62. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) その点につきましては、超過勤務の手当について考えている次第でございます。
  63. 赤松常子

    ○赤松常子君 それからもう一つ最後に、「その作成又は変更を正当でないと認めるときは、自己の意見を書き添えることができる。」、これは私独立した書記官のお仕事として当然だと思うのでございますが、そういう場合に、たとえば裁判官の失敗であるとか、裁判官の方の間違いであるとか、責任を負うべきような問題が起きたときに、書記官は、これは巻き添えを食わされるのでしょうか、共同責任を負われるのでございましょうか。
  64. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) たとえば裁判官が手続上の過失がありました場合に、それは訴訟法上是正される道が開かれているわけでございますが、そういった場合には、もちろん裁判官のそういう判断、措置につきまして、書記官には何ら責任が及ぶことはございません。
  65. 赤松常子

    ○赤松常子君 今度の改正の場合も、この意見書をつけたということにおいて、共同責任を負うというような、不利な立場に立つことはないのですね。
  66. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 今回の改正は、全く裁判官の調査の補助でございまして、裁判そのものは、裁判官裁判官の責任においてするわけでございます。その裁判につきまして、書記官は何らの責任を食うものではございません。
  67. 片岡文重

    ○片岡文重君 勤務時間の問題で私、一つ、三つお尋ねしたいのでありますが、今の御答弁ですと、結局今まで裁判官が持ち帰っておったような仕事はやらなくて済むようになるというお話でしたけれども、いろいろな資料によって、また今までの御答弁によって、私どもが考えられるのは、仕事は少しも減ったわけではない、ただ書記官に、今まで裁判官がやっておった仕事の一部をやらせるということだけであって、手が多くなったのたから、時間中にできるであろう、しかしそれもできないから、結局勤務、時間を延ばしてやらせるということになったわけです。従ってその手をふやし、実働時間をふやしただけで、今まで持ち帰ったものが全部解消できるのかどうかという、この具体的な証明というものは、これは将来のことですから、できないと私は思うのですね。同時に、将来のことだから証明できないということは、持ち帰ることがなくなるという断定をすることには私はならないと思うのだな。やはり今まで裁判官、つまり判事が持ち帰ったものを、今度は書記官が持って帰ってやるようなことになりはせぬだろうか、多分にこの危険があるのですが、そういうことについてどうお考えになりますか。
  68. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 先ほど申し上げましたのは、裁判所書記官が家へ持って帰って今一仕事をしております、そういうことは今後なくしていきたいということを申し上げたわけでございまして、裁判官が家へ持って帰る仕事、これはなくなるものではないというふうに考えております。で、今回の裁判所書記官の新しい職務は、裁判官が行ないまする調査の補助でございまして、これは、ただいま御指摘のように、それによって裁判官が今までよりも仕事が減るとかいうようなことにはやはりならないと存じます。この新しい職務は、要するに事件の適正、迅速な処理ということに向けられるわけでございまして、そのために裁判官仕事負担が今日すぐ軽減されるというふうには考えておりません。軽減されるためには、やはりもっと抜本的な施策も必要になってくるわけでございます。ただ、事件のただいまのような著しい遅延の解決策の一つとして考えておるわけでございます。
  69. 片岡文重

    ○片岡文重君 抜本的な対策としては、やはり何としてもその定員をふやすことだと思うのですが、先ほど来、その定員のふやせない理由の御答弁を伺いました。しかし、この裁判官とか書記官とか調査官等の職員になる者が、希望する者がひっきょう少ないから定員は満たされないのだと思うのですが、この満たされない原因はどこにあるかというと、やはり処遇が、少なくとも就職までに、また就職後に払うところの努力に報われるところが妥当でないからだと私思うのですね。おさめた学歴に対しても、あるいは研修所努力に対しても、ほかの方ならもっと早く進み得るとか、あるいは適当なポストが与えられるとかということであって、少なくとも裁判所というものがもっと権威を与えられ、全国民が信頼し得るような高度の信憑性を持つためには、手腕も人格も識見も、ともにすぐれた判事であり、職員でなければ私ならぬと思う。そのためには、やはりそれだけの処遇が与えられていいのじゃないか。ただ一般官庁と比較しただけで、何番目になるとか、若干すぐれているとかいうことだけで私は満足すべきことじゃなくて、もっともっとかけ離れて考えられていいのじゃないかと思うのですね。ところが、そういう点に対する御説明はさっぱりないようでしたけれども研修所に入る者も少ないし、採用試験にも合格する者が少ないということは、結局そういう試験、検定に容易に合格し得るほどの能力資質を持っているような諸君は、もっとほかの方に行ってしまうのですね。この研修所のなにを見ても、たとえば法科の卒業生に対しては、研修は六カ月ですか、それから経済その他の学部卒業に対してはだいぶ長い。しかも与えられる処遇は同じです。これはこの優秀な人たちは、まあそう言うと、大へん現在勤めておられる方々に失礼になるかもしれませんけれども、別に今勤められている人が悪いと言っているわけじゃありませんけれども、この資料を拝見しても、法学部以外の方々は研修期間が長いはずです。しかも出てくると、これは同じです。ところがほかの一般の他の官庁なり、あるいは他の会社等に行けば、これはそれ以上に、やっぱりこういう研修三年なんということをやらないで、それだけの処遇が与えられるわけです。こういう点等を考えれば、私は非常にその処遇が悪いと思う。こういう点について何かもっと処遇を改める必要はないのか、特にこういう仕事の上に対する努力のほかに、これはまあ警察その他にも例がないわけじゃありませんけれども、ひんぱんに転勤をさせられるわけでしょう、裁判所の職員というものは……。書記官以下の方々はどうか知りませんけれども、少なくともこの転勤等に対しても、これは非常にやはり家庭生活にとっての苦痛なんですから、そういう諸条件等もやはり考慮して、もっと処遇というものを適当に考えれは、こういうところにはもっと希望者も出てくるし、従って定員もそんなに困らないで充実させることもできるだろうし、従ってまた、増員をする場合にもそう苦労されぬでも増員はできると私は思うのですけれども、そういう対策については、もっと積極的に大蔵省に交渉される御意思はないのかどうか、この機会に伺っておきたいのです。
  70. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) まことにごもっともな御質問でございますが、現出の問題といたしましては、欠員補充に、志望者が少ないために悩んでおりますのは裁判官でありまして、今日のところ、幸いにして裁判所書記官補あるいは家庭裁判所調査官補の人たちは、相当の希望者がございまして、その中から選抜して任命しているのでございます。ただお話のように裁判所書記官あるいは家庭裁判所調査官、そういう方たちが相当の学歴と相当の研修を経まして非常に重要な責任ある仕事をしているわけでありますが、それに見合うところの今日待遇が与えられていないではないかという点、まことにごもっともでございまして、私どもといたしましては、そういった重要な責任につきまして十分に各方面の認識を得まして、それにふさわしい待遇に改めたいということを念願しているわけでございます。ただ、何と申しましてもやはり古い伝統のございます裁判所でございますので、外部から見られた場合には、従来の裁判所書記制度というものの観念が今日なお残っておりまして、私どもは新しい裁判官書記官制度ができまして全くその内容内容的に面目を一新していることを確信していますけれども、必ずしもその理解が十分に得られていないのでございます。今日裁判所書記官あるいは家庭裁判所調査官の諸君が、その責任を十分に自覚いたしまして日々の業務に励んでいる実情を見ますと、私どもはまことにそういう点について遺憾にたえないのであります。裁判所書記官にせよ、家庭裁判所調査官にせよ、たとえば課長であるとか課長補佐であるとか係長であるとか、そういうような形において仕事をしているのではございません。これは裁判官のようにやはり一人々々が一つ一つのむずかしい事件を扱っているのでございます。そういう意味におきまして、そういった仕事にふさわしい給与体系、ふさわしい待遇ということをぜひ実現したいと私どもは考えているのでございます。しかしこれにつきましては、やはり各方面の理解と支援をいただきませんと、なかなか実現しにくいのでございますけれども、私どもといたしましては、一日も早くそういう給与体系を得たいというふうに考えておるわけでございます。それによりまして書記官なり調査官の諸君が一そうその職務を自覚いたしまして、その職務に励むことができますし、また、優秀な人たちが正そうそういった書記官、調査官になることを志望することになりまして、裁判所のほんとうに質的な充実がはかれるようになるのではないかと存ずる次第であります。  転勤につきましても、まあ書記官、調査官の人たちの転勤がそう回数が多いわけではございません。しかし、これにつきましても今日の住宅事情あるいは家族構成その他にかんがみまして、なるべく無理のない転勤を行なうように考えているわけでございます。裁判官につきましては、これは若い裁判官は相当激しく転勤をいたしております。これは一面には若い人たちには裁判実務に対する勉強というような意味も含めまして、大都会にいたりあるいは地方へ行ったりということで、若い裁判官には比較的転勤が多くなっております。しかし、これも相当年数を経まして、家庭が、何と申しますか、子供などができまして、判事になりました際には、比較的安定できるようにはなっておりますけれども、やはり裁判官にはそういう意味の転勤が相当ございます。これはしかし今日においては若い裁判官の人たちもその趣旨を十分に了解いたしまして、相当に大幅な異動が行なわれているわけでございます。
  71. 片岡文重

    ○片岡文重君 転勤の問題について私お尋ねしている趣旨は、転勤を今させるとかさせないとかいう意味ではなくて、少なくともこれから自分が裁判所に就職しようとするときに、一体裁判所はどういう勤務状態なのかということを考えたときに、不利益な条件として考えられるだろうということです。裁判所に就職すると当然転勤も考えなければならぬ。そういうことになると、子供ができたときの学校の問題や、あるいは場合によれば住宅の問題で二重生活をしなければならぬというようなことでは、いろいろな不利益も起こってくる。そういう不利益な労働条件の点もあるのだから、この処遇の点については、転勤をどうしてもさせなければならぬというなら、これは私はやむを得ないことだろうと思うのです。そういうこともあるなら、その精神的な苦痛、物質的な苦痛をカバーする——精神的な苦痛に対してはカバーできないが、物質的な苦痛に対してはできるだけのことをする。かばってやるということについて、全般的な号俸なり、進級なりの場合に、他に比べて率がよくなるように考えてやる必要があるんじゃないかと、こういうことで申し上げたわけです。  それから勤務時間のことについてですが、書記官、調査官等にそういう希望者が幸いにして多いというなら、私は現在まで書記官補にもっと急速な養成を施すなり何なりして、もっとどんどんふやしたらいいと思うのですね。大体勤務時間を長くしてこれをカバーしようというようなことは、失礼だけれども、私はおよそ時代おくれだと思うのですね。世界の趨勢は、あなたは御承知だろうけれども、全部労働時間短縮に向かっておるわけです。アメリカだってソビエトだって英国だって皆一週五日間しか働かないという状態です。日本の労働組合も、全労でも総評でもみな週五日間の労働を主張しておるわけです。もう進歩的な資本家の中にもこれについては賛成しているわけです。少なくとも知識水準の最先端を行っておる裁判所が、時代に逆行して勤務時間の延長によりこれをまかなっていこうというようなことは、およそ私は古い考え方だと思う。どうして一体こういう考え方になられたのか。書記官や調査官補に対する希望者が全然なくて、定員の埋めようがなくてどうにもならぬで、これは窮余の策としてとられたんだと私は今まで考えておったんですが、そうではなくて、幸いにして希望者が多いというなら、これは定員をふやすなり何なりして、少なくとも現在の最低、最悪の事態においても、現在の勤務時間をもってまかない得るような方法を私は講ずべきであって、勤務時間を延長するというようなことは、これは今日一番おくれた使用者でも考えないやり方ではないですかね。どうですか。
  72. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 勤務時間の延長につきましては、実は私どももただいま御指摘のような点について、いろいろ十分に考えているわけでございますが、実は裁判所事件を扱いまする執務現実の問題がここにあるわけでございまして、そういう点から、今回の勤務時間の延長はやむを得ないというふうに私どもは考えたわけであります。と申しまするのは、先ほどから申し上げまするように、裁判官事件を扱います執務というものでございますが、これはまことに多くの時間を費やしているわけでございます。裁判所の内部で調査いたしましたところでは、実に一週間に六十時間に余るような仕事をしておる状態でございます。これは日本の司法の現実でございます。そういった裁判官が行ないます調査の補助として今回の新しい職務を行ないますのにつきましては、やはり現実の問題として勤務時間の延長ということにならざるを得ないわけでございまして、確かに御指摘通りに世界の労働の趨勢から見まして、逆行ではないかという点でございますが、勤務時間の延長という点から見れば、確かにそういう御指摘通りだとは存じますけれども日本の司法の運営の実情、そして少なくともその司法の運営、裁判を適正、迅速ならしめようということを考えますると、今回の書記官職務改正とそれから勤務時間の延長ということは、どうしてもやはりやむを得ないというふうに私ども考えるわけでございます。できますれば、もとより十分な裁判官を備えて、事件に応じたところの人員によりまして処理することが望ましいことに違いございませんけれども事件は年々ふえて参りますし、それから手続は法律できまっておることでございますので、それによって処理する現実からそういう事態が生まれるわけでございます。
  73. 片岡文重

    ○片岡文重君 これは書記官だけに判事補助をさせるというお話ですが、そうすると、書記官補には、これは全然補助させないんですか。
  74. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 今回の調査の補助は、書記官に限ってさせることになっております。
  75. 片岡文重

    ○片岡文重君 この改正案を拝見しただけでは、まさにそうですけれども、この六十条の二を見ると、二項において、「裁判所書記官補は、上司の命を受けて、裁判所書記官事務補助する。」となっております。この法律は、そうするとどうなんですか、書記官がやれといったときに、書記官補が、この仕事に限ってやらないといって拒否し得るんですか。
  76. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 裁判官の調査の補助ということが書記官職務になりますと、やはりそれは裁判所書記官事務になりますので、書記官補がさらにそれを補助するという関係は六十条の二の二項から出ると存じます。そういう意味でそういう面の補助もできますけれども、今回の勤務時間の延長という問題は、書記官に限っていたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  77. 大川光三

    委員長大川光三君) ちょっと速記を待って下さい。    〔速記中止〕
  78. 大川光三

    委員長大川光三君) 速記を始めて下さい。
  79. 片岡文重

    ○片岡文重君 そうしますと、いよいよ私は大へんなことになりはせぬかと思いますが、勤務時間の延長、従ってそれに対する何か号俸是正とか、うまい御答弁をなさっておられるんですが、そういう処置を書記官だけにとられる。ところが、六十条の二の二項において補助させることができるということになっている。この条文に何らかの制約が加えられるなら別として、加えられなら、当然書記官補は、これを命ぜられたときに拒否することができないんじゃないか。仕事だけはやらされて、それに対する処遇は受けられない、こういうことになりはせぬかと思いますが、その点はどうですか。
  80. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 今回新しく書記官に加えられまする調査の補助職務内容を考えますと、実体的に申しまして、法律的に高度の職務内容にはなるわけであります。これは書記官資格を得ましたところの人たち、相当の勤務期間、相当の研修ないし昇任によりまして書記官になりました人によって初めてできるような職務内容になるわけであります。従いまして、法律の規定の上で確かに書記官補がその事務補助するということにはなりますけれども、実際の問題といたしましては、裁判所書記官がみずからこれに当たるほかはない。普通の事務と違いまして、調査の補助でございますので、裁判所書記官みずからが当たらなければならない場合が、実際問題としてはほとんど全部じゃなかろうかと思います。その間に若干の補助がございまして、書記官補にそれを命ずることはございましょうけれども、その内容を申しますると、勤務時間を延長しなければならない、あるいは号俸是正をしなければならないということにはならないと思います。これは今度の新しい職務の実体に即してそう考えます。
  81. 片岡文重

    ○片岡文重君 今度させる職務の実体は、これは何か資料をいただいておったですか。たとえば国会の会議録を調査するとか、あるいは他の下級審、上級審の判決、調書を調べるとか、いろいろなことも書記官にやらせる仕事の中に入っておりますね。そうすると、たとえば国会の議事録を調査して、どの議員がどういう質問をし、政府はどういう答弁をしているとか、あるい、は、いつ何日にどういうことをやっておるかというようなことは、これは書記官が調べなくても、書記官補の方で十分できる仕事じゃないか。今度判事補助として書記官が手伝う仕事内容が、どうしても書記官でなければできないんだということになると、書記官補というものと書記官という人たちの間に、これはたとえば老練の書記官と、まだ書記官補になって半年や一年の未熟な者とでは格段の相違があるでしょうけれども、少なくとも書記官補というてもピンからキリまである。少なくとも書記官の代行を命ぜられることもあるわけですから、こういう人たちが、仕事内容からいって、どうしてもできないんだということは、実際問題として私は言い得ないんじゃないか。しかも、これが技術的に試験管をいじるとか、機械操作をするとかいうことで、化学的に老練の者、あるいは一定の国家検定を受けた者でなければいじれないんだというような法律的な制約でもあるなら別として、現に補助させることができるという厳たる条文が残っている以上は、これをたてにとったら、少なくともさせられることを拒否することはできないんじゃないか。しかも、お前はこれくらいはやれるじゃないかといわれたときに、私はしろうとでよくわかりませんけれども仕事内容について、少なくとも同じ部屋におって、書記官が上席におって上級者として始終いる場合に、私も若いころ勤めた経験がありますけれども、やはり上級者から命ぜられれは、それは拒否しますというわけにいかぬ場合が多い。そういう場合に、これはできるんですか。
  82. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 事件に関するこういうような調査になりますと、裁判官がどういう補助のさせ方をするか、あるいは書記官がさらに書記官補にどういう補助のさせ方をするかということは、その裁判所の考え方でございますけれども、私ども一般的に考えますと、何分にもそういう法律事項に関する調査でございますので、裁判官が中心になり、そうして書記官補助させるということにならざるを得ないわけでございますが、その補助も、先ほど申し上げますように、法律的な相当高度の仕事になりますので、書記官が、さらにそれを書記官補にやらせていいというような面は非常に少ないんじゃなかろうかというふうに考えるわけでございます。それは仕事内容によりますけれども、実際に裁判仕事をしておりますと、大部分がそういった書記官なりあるいは裁判官仕事になるということが、その仕事の実体から申し上げられると存じております。
  83. 片岡文重

    ○片岡文重君 これは水掛論というか、押し問答になると思いますけれども、実際問題として書記官書記官補の間にどれだけの違いがあるかということになったら、経験年数からいき、学力等からいって、ほとんど区別のつかない、むしろ逆に、書記官補を長くやっている方と、書記官になりたての者では、実際のことをいって、書記官補の方が上の場合だってある。そういう場合に、ひまなときは用はない。仕事が輻湊しているところに問題が起こってくるのであって、ただこの場合に、しいて考えれば、何か号俸調整の場合に、むしろこれでは号俸是正をしないで、超勤手当にしてもらった方が有利になるという計算の仕方もあるわけですから、もしそういう計算の仕方でいくんなら、これは書記官補も号俸是正を受けないで、やれない仕事は超勤でやってもらうということになるかもしれません。しかしこの思想は私は根本的に反対ですよ。少なくとも休憩時間なりお昼の休み時間なども返上してやるような事態になってくるわけですね。この勤務時間でワクを締められておって、この仕事が命ぜられてくれば、しかも超勤手当は予算でもって押えられているんですから十分には出ません。号俸是正もされないということになったら、そのしわ寄せはいつかしら必ずかかってくるということを懸念するのですけれども、今のような御答弁ですと、それならば一体できない仕事というのは、どれとどれができないのか。そうすると全部だとおっしゃるかもしれませんけれども、その仕事全部だというならば、むしろ老練な書記官補と未熟な書記官との違いを、実力においてどのくらい開きがあるか、証明できないでしょう、どうですか。
  84. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 書記官書記官補資格上の相違はございますけれども、実力の相違がどういうところで明らかにされるか、はっきりできるかという御趣旨のようでございますが、そういった力について、はっきりした、ものさしで測ったような相違は、これはなかなか実際には申し上げられないと思います。これは法制上、たとえば判事判事補の間にも同様のことがございます。しかし、やはり判事補判事補職務しかないのであります。これは一般的な、何と申しますか制度としてそう考える、そう定められるわけでございまして、そういう定め方は、そういった法制上仕方のないことでございます。ある形式的要求を満たした場合に、判事補判事になり、あるいは書記官補書記官になるということになると存じます。その間に、たとえばほんとうに判事になるばかりの判事補がおって、判事とどこが違うかということでございますけれども、その間にどれだけ差があるということを、形の上で申し上げることは困難だと思います。
  85. 片岡文重

    ○片岡文重君 判事は判決をするわけですね、判事補はこれはできませんね、命ぜられたときだけでしょう。ところが判事は決定をするわけですよ。ところが書記官のする仕事は、決定に至るまでの補助をするわけでしょう、事務的な。従って、その決定が直ちにその判決に影響を与えるようなこともまれにはあるかもしれませんけれども、その責任は、さっきの御答弁で、あくまでも判事にあると思います。従って、あくまでもその結論を出すための経過の、といいますか、調査をすることであって、その限りにおいては官補と書記官との違いは、責任の、何といいますか、所在を明確にするほどの違いも私はないのじゃないかと思う。だから判事判事補との間の区分ほどには、私は厳格に考える必要はないのじゃないか。今の場合、たとえばこの六十条の三の二項に該当するような問題は、判事判事補の間には存在しないでしょう、今この問題は、新しくできた問題だと思うのですよ。その場合に、これはあなた、どうしてもないんだとおっしゃるなら、これからの問題ですからね、私はあると思う、起こるだろうと思うのですよ。そして「裁判官の行う法令及び判例の調査その他必要な事項」、これらを具体的に何か列記したものを資料として御提出していただいたでしょうか。
  86. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 差し上げてございます。
  87. 片岡文重

    ○片岡文重君 ありますねじゃ、たとえば「その他」ということになったら、これは全然列記はできませんね、「その他」だからどんなことがあるかわからないのですから。「その他」の中に一体どういう問題を予想されますか。
  88. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 裁判官の調査の補助内容でございますが、これは私ども考えまするのに、調査と申しましても、実は法律的な調査でございまして、法律的な能力、素質がございませんと、そういった調査ができないわけであります。そういう意味におきまして、書記官に限ってそういった調査の補助ができるという今回の改正になるわけでございまして、調査といいますと、いかにもこう何といいますか、普通の常識上常識とは申しませんけれども、調査といいますと、だれでもが、必ずしもそう高度の能力を必要としないのじゃないかという考えがあるのじゃないかと存じますけれども、実は裁判に関するそういう調査になりますと、高度の法律上の能力、素養を必要とするわけでございまして、そういう意味におきまして、やはりこれは書記官に限ってされるというのが相当であると私どもは考えているわけでございます。  で、調査の内容でございますが、法律、命令、規則、告示等を調査いたしますほかに、裁判例、学説その他参考文献の調査でございますとか、あるいは記録に基づきまして訴訟手続が実現されたかどうか、あるいは記録中の書類が法律に適しているかどうか、そういうような各般の調査があるわけでございます。さらに事件内容によりましては、審判に必要な計算を合わせます検算であるとか、あるいは多くの証拠書類あるいは被害調書のようなものが膨大な数が出るわけでございますが、そういった照合等もあるわけでございまして、そういった記録に基づく広範ないろいろの調査があるわけでございます。こういったことの中には、確かにそれは機械的な照合も、ある場合はございますけれども、この内容をなします大部分のものは、法律的な能力を非常に必要とするものが多いのでございまして、それでこそ初めて訴訟の、先ほど来申し上げます審理の促進にも役立つわけでございます。
  89. 片岡文重

    ○片岡文重君 そうすると、この改正される六十条第二項の次に加えて、六十条第三項になるわけでございますね。この二項については、ただし補助しないのだという規制をどこでするわけですか。これは書記官が行なう仕事でしょう、この六十条の二項。それから今度できるこの三項は、書記官の行なう仕事なんでしょう。そうすると、その書記官の行なう仕事を、六十条の二の二項では「補助する」のだと言っておる。しかもその補助する仕事内容については、別に制限はないわけだ。だから書記官の行なう仕事全部について補助をするわけじゃないですか。そうなったら、この新しく加えられる改正も、後になっては——今はあなたのおっしゃるようなことが言えるかもしれませんが——この中に入ってしまったら、当然その入った新しい仕事も、補助の対象になるのじゃないですか。
  90. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 今回の新しい裁判所書記官事務につきましても、その補助の対象にはなると存じます。しかし、先ほど来申し上げますように、その新しい事務内容、実体から申しますると、その補助につきまして、同様に勤務時間の延長であるというようなことが必要であるとは考えられないわけでございます。
  91. 片岡文重

    ○片岡文重君 私の質問が悪いのですかな。その勤務時間の延長等が考えられないと、仕事だけはやらされて、勤務時間が延びないのだから、困るのは書記官補がそのしわ寄せを受けることになりゃしないかということを、お尋ねしているわけです。
  92. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 書記官補が行なう補助でございますけれども、これは新しく書記官に与えられますところの職務内容から申し上げまして、その補助勤務時間を延長しなければならないような形において補助するということにはならないと私どもは考えるわけでございます。その理由は、書記官に今回新しく加えられます職務は、先ほど申しましたように、法律的に高度な職務でございますので、勤務時間を延長して調査を補助しなければならないことは、書記官には起こりますけれども、そういった高度の法律的な職務は、書記官がみずから行なうことが大部分でございますので、その補助につきまして、さらに勤務時間の延長が必要であるというふうには考えていないということを申し上げたのであります。
  93. 片岡文重

    ○片岡文重君 勤務時間の延長を必要とするかいなかは、これは仕事の量によってきまるわけです。私が今言っているのは、仕事の量のいかんにかかわらず、たとえば一年間に一件でもあったとして、今あなたの御説明では、新たに加えられる六十条三項に該当する仕事は、書紀官補にはさせないのだ、させてはいけないのだというお話のようですが、この法律の上からいったら、六十条の二の二項が存する限りにおいては、六十条の三項の仕事だから補助はできませんということを書記官補が言い得る何ものもよりどころがないじゃないか。だから書記官にこの仕事をお前手伝いなさいと言われたら、書記官補としては、やらざるを得ないのじゃないかということなんです。仕事が多いか少いかは別問題として、勤務時間を延長ずることがあるかないかは別問題として、とにかくそう命ぜられたら、書記官補としてやらざるを得ない。あなたのおっしゃるように、もし書記官補がこの仕事はやらなくていいのだということになりますと、この仕事に関する限りはこの補助の対象にはならぬということを、どこかに一項がなければならぬと思うのですが、一項がどこにあるのかということをお尋ねするわけです。
  94. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 書記官補の行ないます補助の対象になります裁判所書記官事務の中には、今度の新しい職務も入るわけでございます。従ってそういう意味では、ただいまお話のありましたように、その補助を命ぜられるということがあり得るわけでございます。ただ今度の新しい職務内容が、先ほど来申し上げますような性質のものでございますので、その補助勤務時間の延長を必要とするような形における補助にはならない、これが実際のあり方であると存じておるわけでございます。万一かりにも一年に何件かそういう補助のために残ることがあったらどうかということでございましたら、やはりそういった場合におきましては、超過勤務手当ということで処理することになっております。
  95. 片岡文重

    ○片岡文重君 そうすると、答弁が変わってきたと思うのですが、六十条三項に該当する仕事補助の範囲には入るということなんですね。
  96. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) 入ります。
  97. 片岡文重

    ○片岡文重君 そうなってくると、今度は法律の上では入る、しかし実際問題として仕事内容から補助をさせるわけにはいかぬだろう、だからないだろう。要するに未来形ですよね、ないだろうということでしょう、想像されるわけです。しかしそうなってきたら、実際問題として、先ほど申しましたように、老練な官補と、新任の書記官では私はそう大した違いはないと思う。提出された資料を見ると、五十才以上の官補がおられますね。こうした人たちは二十才台、三十才台の熟練しない書記官の方々がなされるよりも、むしろてきぱきと事務的な能力を持っておられるのじゃないか。実際問題として私は仕事が起こり得ると思う。そのときの救済は超勤以外にはないということなんでしょうか。
  98. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者内藤頼博君) どうも、事件に関するこういった調査について書記官が行ないます補助内容についての御意見かと思いますけれども、てきぱきと事務処理できるというようなことと、やはり能力資質において違うのでございまして、法律につきましての理論的なあるいは実務的な習熟がなければ、やはりこういった裁判官の調査の補助は行なえないのでございまして、それを行ないますのには、やはり書記官になるだけの実力、素質が必要であると私どもは考えるわけでございます。実際にこういった事件処理にあたりまして調査を行ない、あるいは調査の補助を行ないます場合には、そういったことは当然に要請されてくることでございまして、書記官補補助させると申しましても、その補助の範囲はおのずから限定されてくるのでございます。
  99. 後藤義隆

    後藤義隆君 ちょっと関連してお聞きしますが、今問題になっておる時間延長の点ですね。時間延長はこの条文上は全然出てこないのですが、それは何でやりますか。最高裁判所の何でやりますか、時間延長は。
  100. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) これは最高裁判所の規則でやることになります。
  101. 後藤義隆

    後藤義隆君 最高裁判所の規則でもってそれをきめる。
  102. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) でございます。
  103. 後藤義隆

    後藤義隆君 最高裁判所の規則は、裁判所書記官についてのみ延長を規則できめますか、それとも書記官補もきめるわけですか。書記官補は全然もうその規則から除外しますか。
  104. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 書記官及び調査官についてのみです。
  105. 後藤義隆

    後藤義隆君 書記官並びに調査官についてのみであって、書記官補は全然時間延長ということはきめない。
  106. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) きめない。
  107. 後藤義隆

    後藤義隆君 はい、よろしゅうございます。
  108. 千葉信

    ○千葉信君 今の後藤君に対する答弁少し不十分でないかな。規則できめるというけれども、聞いている方の立場からいうと、どの法律の根拠に基づいて最高裁がきめる権限を持っているのか、その権限に基づいて最高裁は規則なら規則できめるということですが、正確な答弁としては、やっぱり裁判所職員臨時措置法による最高裁の権限に基づいて最高裁の規則できめるという答弁が正しいのじゃないですか。
  109. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) それはその通りでございます。正確に申しますと、裁判所職員臨時措置法によって準用されます一般職の職員の給与に関する法律の第四条の第三項に基づいてされるわけでございます。
  110. 千葉信

    ○千葉信君 そういう答弁しなきゃだめだ。けさからいろいろ質疑応答を聞いておりましたが、質疑応答を聞いていて、私は非常に不満にたえない、答弁については。私は裁判所法の一部改正法案については、次回以降の委員会でじっくりお尋ねしますが、しかし、きょうせっかく片岡、赤松両君が質問されているのに、残念ながら事態が明白にならない。せっかくですから、私はきょうその問題をやはりある程度明らかにしないと、今後の審議にかなり影響しますから、一点だけ私はお尋ねしたいと思う。  最高裁では、たとえば給与の関係等にしましても、今の御答弁があったように、裁判所職員の臨時措置法なりないしはそれに基づいて一般職の職員の給与法なりが適用されて、従って、その一般職の職員の給与法等が適用されている中で、最高裁としては、たとえば勤務時間の延長の問題も含めて、勤務時間の問題については、最高裁は他の行政機関と違って、人事院の承認を受けないで左右する権限がある、最高裁は。で、その勤務時間というのは、労働賃金を決定する場合の重大な要素であることは、これは御承知通り。そこで、今この裁判所法の一部改正の問題に関連して、勤務時間の問題が問題になっているわけですが、その場合に、その給与なり勤務時間を、給与なり賃金を左右するというその労働時間の問題を考える場合に、一体、最高裁の裁判所関係の職員の賃金が、他の公務員等に比べて高いか安いかということは、かなり私は重要な問題だと思う。ところが、その問題についての質疑応答では、高いのか安いのかさっぱりわからない。全然不明確。あんな答弁では私は仕方がありませんから、少々意地悪く聞こえるかもしれませんが、その根本というか、まず比べ方の問題からお尋ねをしたい。最高裁では、その賃金の額を決定するとか、労働時間を左右するという権限を持っている以上は、少なくもその権限を持つ以上は、正確に事態を把握していなければ、その問題に対する意見は持てないと思う。そういう立場ならば、私は、これが一体高いか安いかというこを検討、比較する要素というものを、はっきり最高裁では知っているかどうかということについて、さっきの質疑応答では疑問を持ったのです。そこでお尋ねしたいことは、賃金が安いか荷いかということを比較する場合に、何で一体比較するか。これはおそらく平均賃金額によって比較するという御答弁だと思うのですが、その点はいかがですか。
  111. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) ただいま申し上げましたように、もちろん基本給の平均額だと思いますが、しかしその平均額は、やはりいろいろな要素から出ておりますので、必ずしもそれたけではないということを先ほど申し上げたわけであります。
  112. 千葉信

    ○千葉信君 まあ聞いたことだけ答えないと、先に進むとまた問題が混乱するから、私は今の答弁の基本として、貸金を比較する場合には、平均賃金額がその基本だということが最高裁のお考えだというふうに了解して、問題を先に進めます。そこで、平均貸金額を比較するという場合に、その対象となる職員ですね、それについては、一体国家公務員の場合と、最高裁の場合とでは——一般職の職員の場合と最高裁の職員の場合とでは、少し偉う点があると思う。片方は局長からずっと、場合によっては次官も含めて、一切の平均賃金額が計上される。最高裁の場合では、私が前の委員会要求したときには、裁判官も含めて平均賃金額を資料として出してほしいという要求をしたのですが、それはとうとう出てこなかった。で、やむを得ず、この際は裁判官を除いた場合の書記官裁判官裁判官の秘書官以外の職員の平均給与額が出てこなければいかぬ。その点は最高裁としては出せますか。
  113. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 裁判所職員だけならばこれはもちろん出せます。
  114. 千葉信

    ○千葉信君 さっきの答弁に、たとえば八級職が幾ら、七級職が幾らという年令別の答弁がありましたが、これの平均の年令というさっきのあの数字は、悉皆調査に基づく平均年令ですか。それとも各級の平均年令を出して、それをさらに平均した年令ですか。その点はどうですか。
  115. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 各級に格つけされております職員の年会の平均に人員をかけまして、そうしてそれをさらに平均したもの、そうして出たものであります。
  116. 千葉信

    ○千葉信君 それはいいとして、その平均賃金額が、従来一般職の職員の給与を決定する場合に、重要な要素として論議されておりました。これは、たとえば他の職種上と比較する場合、あるいは民間との比較をする場合でも、平均給与額が常にその比較の対象になる。その比較の仕方に少し問題があるにはありますけれども、現在では、何といってもそれが重点で比較されている。そうしてそれだけでは、人事局長の言うように、高いか安いかということを見きわめるきめ手にはならない。これは勤続年数なり、学歴なり、ないしは基準賃金の中に入っている暫定手当の関係なり、あるいは家族手当の関係等も考慮すれば、家族構成が幾らか、あるいは勤務地域が甲地域か乙地域かという点についても、比較検討の対象として判断の材料になる、こういう点を一切がっさい検討を加えて、そうして平均賃金が高いか安いかという結論が常に出てきたわけです。そこで私のお尋ねしたい点は、たとえば今ここで一番問題になるのは、一般職の職員と最高裁はどうか、ないしはまた、各省庁別の平均質金と比べて、最高裁が高いか安いか、同時にその場合、その問題を判定するきめ手としてのいろんな職員構成の要素なるものが、条件として検討されにやならぬ。それを検討した上で、はっきりと荷いか安いかということ、適正であるかどうかということが、結論として出てくるわけです。そういうものを持たないで、最高裁が、裁判所の職員の賃金が、他に比べて安いか高いかなんということをもし言っていたとすれば、これはナンセンスだと思うのです。さっきの御答弁では、そういう他の省庁の場合の平均賃金額は、はっきりしたものがないというお話でしたが、これは全然答弁にならない。そういうものなしには、今まで比較検討することができないのだから、そういうものがはっきりあって、その上で従来の平均賃金額が安いか高いかということが論議されてくる。これは国会の速記録をごらんになってもわかる。ですから、一般職の場合と最高裁の職員の平均貸金とを比校する場合に必要なのは、何といっても最満載の平均賃金額、それからその職員の構成要素のいろんな条件の精密な調査、同時に片一方では、一般職の場合のそれに該当するものは、常に従来一般職の職員の給与を決定する場合に論議の対象になって国会に出されてきた、さっきはないという御答弁をされましたが、これはないのじゃなくて、私は知らないのだろうと思う。そういうものを持っているところがありますか。国会でも論議された。ですから、きょうの質疑応答でははっきりしなかった最高裁の職員の——書記官も含めて——高いか安いかということは、この法律案審議の、特に勤務時間に関係する今度の裁判所法の一部改正については、相当大きな要素になるわけです。それを早急に出してもらわないと、この法律案の審議の前提条件が整わないわけです。至急、今私が申し上げたような精密な、平均賃金額を検討できる調書出してもらって、その上で私はこの問題を最高裁当局に質問したいと思いますが、いかがですか。
  117. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) その要求されます資料とおっしゃいますが、それを要求されるならば、その資料を用意しなければなりませんから、どういう資料を要求されますか。私が先ほど申しましたのは、昭和三十四年一月一日現在における省庁別給与水準比較表、これは人事院で出しております。これをその当時における全官庁の平均と、それから裁判所のその当時における基本給ですね、要するに俸給、それから扶養手当、暫定手当全部を合計したものとの比較で申し上げた次第でございまして、その額はわかっておりますが、最近のものの、各省別のあれを手元に持たないということを申しているわけであります。
  118. 千葉信

    ○千葉信君 私は、決して無理なことを言っているのじゃなくて、昭和三十四年の四月一日現在ならばそれでもよろしい、それ以後のものがなければ。ただし、単にその平均賃金額だけではだめです。さっきから問題になっている最高裁の職員の学歴、勤続年数、それから最低限度その勤務地別の在勤職員数。それの必要な理由は、基本給の基礎に入っているものが、勤務地いかんによって違ってくるという条件がありますから、それも必要。それから全職員の平均家族構成数、こういう、何も守田局長が僕のところへどういう資料を出さなければならないということを聞かなくても、私がさっきから言っておるように、平均給与なるものを高いとか安いとか言って比較する場合には、単に平均賃金額だけではだめだ、守山局長が答弁しているように、その根本にある職員の構成内容が高いか低いかという判定をする対象になるのだ。たとえばその中には、意地悪いことを言うようだけれども、最高裁の場合には、かつての給与の切りかえに非常に不利益に扱われてきておるという現実もあります。そういう点も正直にその資料の中に加えてもらわなければならぬ。同時にまた、一般職の職員の場合の資料については、あなた方から人事院に連絡して持ってこられても、私はそれで了承する。そういう比較検討のできるものを出してもらいたい。わかりますか。
  119. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) わかりました。ただ一言、勤務地別ということになりますと、相当時間がかかると思います。だから、平均の暫定手当ではいけませんか。
  120. 大川光三

    委員長大川光三君) ちょっと委員長から……。今、千葉委員から請求がありました資料を出せますか、わかっていますか、内容が。
  121. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) ただいま私が説明申し上げました基準となったのは、昭和三十四年四月一日現在の省庁別給与水準比較表でございます。それには、昭和三十四年四月現在におきます各省庁における、国会もありますが、職員数、俸給額、それから扶養手当、暫定手当のそれぞれの平均額が出まして、それの合計額が出ているわけでございます。こういう点でよければ、これはもうすぐにできる、ただ、学歴別、これは裁判所のものは作りやすいのですが、各省庁のものは、私どもの方ではなかなか手に入らぬという意味でございます。
  122. 千葉信

    ○千葉信君 各省のものについて、学歴別のものが全然ないという場合でしたら、私はそこまでは要求しません。しかし、かつての給与改定ごとに、その平均賃金額の比較が絶えず委員会で行なわれてきていますから、それは法務委員会では行なわれなかったかもしれませんけれども内閣委員会等ではその問題はかなり精密に論議の対象になってきていますから、ないはずはないので、お調べになって、その点については次回の委員会で御答弁いただきたい。なければないで、私の方ではそれに対する手配をしますから……。それから、今になってから勤務地別の職員数については調査困難だということであるならば、私はできないことを要求はしませんから、今おっしゃったように、平均概数でけっこうですから、それを出してもらいたい。特にこの際、最高裁に申し上げておきたいのは、最高裁は賃金の決定なり、特に勤務時間の決定等については、臨時措置法で、最高裁がその権限を持っているはずです。そういう給与法上の重大な問題について権限を持っている最高裁が、従来給与額の検討にあたって絶えず問題にされてきた、そしてまた、比較検討の対象になってきた平均給与額というものを、他の省庁の場合と最高裁との比較をする正確な資料を持たないで今日までやってきたということは、私は不届き千万だと思う。それを持たないでいて最高裁の職員は安いとか高いとかいって答弁しようとするから、さっきの委員会みたいに混乱して、全然正確に捕捉できないという結論になってしまう。この点は最高裁の怠慢だと思う。しかし、今ここでそれを言ってもしようがありませんから、できるだけすみやかに、今申し上げたように、できないものまで出せとは言いませんから、早急に賃金額の比較検討に必要な資料として提出していただきたい。
  123. 大川光三

    委員長大川光三君) ただいま千葉委員から要求のありました資料は、明後日の委員会に間に合うように提出を願いたいと存じます。
  124. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) できる限度を次回までに提出いたします。
  125. 大川光三

    委員長大川光三君) 本件に対する本日の質疑は、この程度にとどめたいと存じます。  なお午前中の審議はこの程度にとどめ、午後三時まで休憩いたします。    午後一時四十九分休憩    —————・—————    午後三時二十八分開会
  126. 大川光三

    委員長大川光三君) これより委員会を再会いたします。  まず委員異動について御報告いたします。ただいま江田三郎君が辞任され、亀田得治君が選任されました。以上であります。   —————————————
  127. 大川光三

    委員長大川光三君) 次に、刑法の一部を改正する法律案を議題に供します。  御質疑のおありの方は御発言を願います。
  128. 亀田得治

    亀田得治君 前回、本件に関連して、神戸の白石事件についてお尋ねをしたわけですが、その後法務省なり関係の向きにおかれてもこの事件の調査をされたことと思います。お三人の方の御出席を願っておるわけですが、大体先だって私が申し上げたようなことで、真相はそんなに違っていないはずですが、その点は刑事局長の方でどういうふうに調査の結果受け取っておられますか。あるいは若干違う点等があれば御指摘を願ってもいいと思いますが、どうでしょう。
  129. 竹内寿平

    政府委員(竹内寿平君) 先般亀田委員から御指摘のありました白石工業会社の所有土地の不法占拠をめぐる事件のあらましにつきましては、大体先だって御指摘通りのものが真相のように私ども考えております。
  130. 亀田得治

    亀田得治君 法務省からの文書による報告書は、ただいま簡単にちょっと拝見したところですが、内容については、警察並びに裁判所の方から民事局長が来ておられて、大体御存じになっていると思うのですが、このことに関して白石工業株式会社の方から大川委員長並びに私、亡くなられた石黒さん三名あてに参考資料として報告書が来ておるわけです。これには非常にこまかく実際に体験したことがよく書かれておりますが、こういう報告書は、これは警察並びに何か神戸の担当裁判官の方にも参考として送ったようにここに書いてありますから、ごらんになっておると思いますが、これはいかがでしょう、こういうものをごらんになっておりますか。
  131. 竹内寿平

    政府委員(竹内寿平君) 送付先には検察庁は入っておりませんが、検察庁にもいただいておりまして、それは私の方へ転送されて参っておりますので、私は拝見いたしております。
  132. 亀田得治

    亀田得治君 私は、これはとにかくひどい事件だと思っておるわけですが、この法律を作るについて、検察庁の方で法務省が中心になって警察なり、いろいろな方面から具体的に事件の資料を集められたわけですね。ところがこの事件が、われわれに渡された資料の中には載っておらない、そういうことをこの前の委員会終了後私がお聞きしたわけですが、これははなはだふに落ちないわけです。まあどうでもいいような簡単な事件であって、ちょっと失念しておったというものなら別ですが、こういう重大な迷惑を及ぼしてそして、地元では問題になっておることを資料の中に載せてこない、はなはだ不明朗なものを感じているわけです。法務省がそんなつもりで削ったわけではないだろう。こういうふうなことはありようわけはないのだから、その辺のところは一体どうなっていたわけでしょうか。
  133. 竹内寿平

    政府委員(竹内寿平君) その点、私も不明朗という言い方がいいかどうか別といたしまして、私どもの方でもこの種の事件処理に困っておる事例というようなものを、各検察庁にお願いしまして資料を集めたわけでございます。その中に報告されなかったという点につきましては、非常に遺憾に思っておるものでございます。ただ今度調査をしてみますると、直接それが監督者の目にこの事件が映じなかったかと思われます。これはこちらで想像してのことでございまするけれども、本件の取り扱いをしました担当の検事が転任をしておることが一つと、それからあと引き継ぎました検事がちょうど各種の選挙の時期に入りまして、選挙違反に忙殺されてしまって、私どもの方で調査を依頼した時期を逸してしまったというようなことが、結局報告漏れになってしまったんじゃないかというふうに想像されるわけでございますけれども、私どもとしてはそういう事件こそ報告していただきたかったと思いますし、また報告があれはこの議場でも、この種の事件につきましては御説明をする機会があったというふうに考えておるわけでございます。その点私も非常に遺憾に存じております。
  134. 亀田得治

    亀田得治君 こまかい点は後ほどまたお聞きしますが、法務省からいただいたこの報告書は、これは全部地元の検察庁がこの文書も書いて送ってこられたものですか。
  135. 竹内寿平

    政府委員(竹内寿平君) さようでございます。この神戸の検事正から私にあてた、ちゃんと日記番号も入った書面をそのまま写したものでございます。ただこの中で、文章そのものはちっとも違っておらないのでございますけれども、六日付で検事正から一部訂正の電報が入っております。その部分は、六ページのまん中の「更に」というところからの部分でございますが、この内容自身は、抽象的に読みますと違っているわけではございませんけれども、「新たな家屋の建築を開始したので、右弁護士は同年三月初頃知人を介し多くの会員を有し勢力のあるH会の副会長Sに右土地の管理を依頼し、」、こうあつて、いかにも弁護士がそういう多数の勢力を持っているH会の副会長を選んで介入を依頼したように書いてございますが、法律的にはその通りでございますけれども、会社とH会との間に話し合いができておりまして、こういう人を管理者に頼みたいからということであったので、それを受けて、宮内弁護士が、その趣旨の取り扱いを法律的にしていった、こういうのが真相であるから、その点を誤解のないようにという電報をいただいておりますので、ここの部分の三行ばかりの記載を、そういう趣旨において御理解をしていただきたいと思います。
  136. 亀田得治

    亀田得治君 まず検察庁の関係ですが、この法務省から出された報告書の三ページですが、これを拝見いたしましても、検察庁における処理ですね。ほかの事情も書いてありますけれども、はなはだおそいですね。昭和三十四年の三月には封印が破棄されておるということがわかっていて、結局同年の十二月、八カ月ぐらい放置されていたことになる、ようやく起訴しておる。こういうことは、ほかにいろいろな事件もあったというようなことは書いてありますけれども、実際にその場所で起きている状態から見て、はなはだしくこれは職務怠慢だと思うのですがね、こういうことはどういうふうに受け取っておられるわけですか。それは検察庁にはたくさん事件があるのですから、ほかの事件があるからというようなことで、あるいは検事が変わったからというようなことを理由にもしないのであれは、どんな場合だってありますよ。そんなことは私は理由にならぬと思うのです。
  137. 竹内寿平

    政府委員(竹内寿平君) これは検察官としての感覚の問題になると思うのでございますが、一般的に申しまして、いわゆるこれは直告事件と申しておりますが、直接検察庁に告発してきた事件、こういう事件処理の仕方といたしまして、これはもうこの種の事件に限らずに、どんな告発でありましても、告訴でありましても、受理をいたしましたならば、すみやかにこれを各検事に配点いたしまして、また各検事はできるだけ早くこれを処理するというのが、告訴、告発事件処理の基本的な態度でございまするけれども大都市の検察庁におきましては、この告訴、告発事件というのは、どうも処理がおくれる傾向があるわけでございまして、私どもも常々この点につきましては、幾たびが警告を発して、処理の促進をはかっておるわけでございます。これは一般的な基準から申しますと、三十四年の二月十八日にこの事件は告発を受けておりますが、三月初めごろから捜査に着手して、現地の写真なども写して、関係者を呼び出して取り調べを続けておりまして、同月二十五日になって同検事が転任と、こういうことになっております。そうだといたしますと、スタートは相当適正にといいますか、そう必ずしもおそくなく着手したと思うのでございますけれども、その後、先ほど申したような事情でおくれたようになっております。こういう事件を受け取ったときの主任検事の感覚と申しますか、それはある程度主任検事によって支配される事件処理の態度になると思いますが、そういう点から申しますと、最初の検事は非常に出だしはよかったし、感覚もよかったと思うのでございますが、これを引き継ぎました検事が、ほかに忙しかったとはいえ、ややそういう点においての感覚が十分でなかったように私どもも看取されるわけでございます。
  138. 亀田得治

    亀田得治君 いや、これははなはだしく不適当なんで、報告書を見ましても、最初の検事は、三月の四日に係争地に行って、現場写真をとっておるわけですね。封印破毀ですから、これはすぐわかるわけでしょう。専門家であれはこんなことは当然わかっておることですが、封印が破毀されたということは、当然そのままにしておけば、さらにもっと問題が進行していくと、こんなことは当然なことですね。だから、その段階ですぐなぜ処理できないのか。とにかく客観的にそういう現場を写真までとっておりながら、告訴、告発状には、最初暴力団などが来て、ブルトーザーでへいをこわして、押し切ってやったと、そんなことも書いてあるわけです。そんな現場まで見ておって、写真をとって、そして関係者を型通り呼び出して調べを続けておる。こういうことが了承できないのです。だから、法律は適用する場合に、人権を侵害しないようにいろいろ気をつけてやってもらわなければなりませんが、事がきわめて明白だという場合には、やはりそれに即応した迅速な処置をやってもらわなければ、はなはだ困るわけです。あとに何か選挙違反の事件がその後かわった検事がやってきたときにたくさんあったというようなことが書いてあるわけです。それは検察庁の内部のことですから、国民から見れば、そんなことは何もどなたにかわろうが、同じようにやってもらえるものと、そういうふうに考えるのが当然だし、またそうでなければならぬはずでしょう。それが年末までほってあるわけですから、現場はすっかりその間に変わってしまっておる。こういうことで、検察庁というものは責任も何もとらぬでもいいのですか。私は大きなミスだと思いますがね。検事正のそういう点等についての意見というものはどういうことになっているのか、この書類には少しも書いてありませんが、あるいは法務省の方でそういう点さらに突っ込んでお聞きになっておれば、聞かしてもらいたい。
  139. 竹内寿平

    政府委員(竹内寿平君) こういう処理が適切であったかといいますと、私も亀田委員と同じように、適切であったとは申しかねるわけでございますが、それならばどういう責任を負わさるべきであるかということになりますと、これはまた別の観点から十分慎重に検討しなければならないことだと思います。要するに、私先ほど感覚の問題を申し上げましたが、これは、封印破毀という事件は、刑法犯の犯罪といたしましては、必ずしもきわめて重大な犯罪だということにはならないかもしれないのでございますけれども、この封印破毀の事件の背後にありますものは、もしただいま御審議いただいております不動産侵奪罪がその当時存在しておりますならば、それに該当するような事犯を伴っておる、いわばその跡始末的な事件であるわけでございまして、特に私どもの手元におきましては、ここ二、三年来しばしば不動産侵奪の、あるいは不法占拠の状況等につきましては、検察庁をもわずらわして調査をしておったわけでございますし、検察官としてはそこへ勘がこなければならぬはずだと私は思うわけでございまするが、まあそこに勘が至らなかったためにおくれておるというような結果になっておるのではないかというふうに思います。そういう意味におきまして、やや感覚において欠けるところがあったように思うわけでございます。特に、裁判所の立場とは違いまして、検察官はそのときの最も適切な妥当な処置をするということをまず第一に念頭に置かなければならないわけでございますが、本件を一般の封印破毀の事件と同じように考えて、一般の事件並みに扱って、いささか時期を失してしまったという感じがせぬでもないわけでありますが、しかし、地元の検察庁にしてみれば、この事件が結局ものにならなかったわけではなくて、ただいま公判にもかけておると、こういう状況でありますので、事件処理といたしましては、一応体をなしておるということになるわけでございます。この事件処理がかりに今申したような点において妥当を欠く点があったといたしましても、直ちに職責の問題になってくるかどうか、これはなお私どもとしては研究をしみないと、ここでお答えするわけには参らないかと思います。
  140. 亀田得治

    亀田得治君 警察の方にちょっとお聞きしますが、白石工業の方では、本件の約五百坪の土地について、へいをめぐらして保管をしていたわけですね。それに対して、昭和三十三年十二月の下旬に、いわゆる組というものがブルトーザーを入れてきてへいをこわして侵入してきた。即刻兵庫署の方に被害者から申し出ておるわけなんです。警察はその段階で関与できると私は思うのですがね。それをちつとも取り上げなかったわけですね、第一段階で。そこで実はこの問題がだんだんこじれていったわけなんです。で、警察がみだりに刑事事件関係のない民事問題に介入しちゃならぬということは、それは私たちも当然だと思うのですが、明らかにへいをこわしていくと、そういうものはどんな権利関係にあろうがなかろうが、とにかく被害者が自分のうちのへいがこわされて困っていると、実力でいきなりこうやられているといえば、これは当然破毀罪として親切にその場で取り上げていくべきなんです。そういう点が、一体本件についてどう刑事局長はお調べの結果考えておるのか。
  141. 中川薫治

    政府委員(中川薫治君) お答えいたします。最初お話のありました、三十三年の十二月の二十五日に白石工業の社員の方と他の方と計二人が、この土地を管轄しております兵庫警察署においでになっております、それで、白石工業の報告書にあります通り、一口に言えば民事事件だから警察は関与できないと、こういう旨の報告書がありますが、そういうふうにお答えしたことは事実でございます。その関係を今度いろいろ当委員会亀田さんからお話が出ましたので、法務省から連絡を受けまして、私も事が重大だと考えまして、さっそく調べて参ったのであります。一品に申せば、民事事件だから警察はいかぬということは申したのは事実でございますが、その間のやや詳細にわたる、そのときのおいでになった状況等を、私が調べた結果申し上げたいと思うのであります。三十三年十一月二十五日、これは実は警察におきましては、この方が相談においでになったと理解しておりますので、供述調書とか何とかはとっておりませんので、当時御相談に応じました兵庫警察署の警部補の鳴海国博という人物が取り扱ったのですが、そのときの記録がございませんから、鳴海警部補に詳細聞きまして、当時三十三年の十二月の下旬のことでございますので、記憶を呼び起こしてずっとたどつてみたのでございますが、大体その状況は、次に申す通りでございます。  夕方にその二人がお見えになりまして、「御相談に参りました。」と、こういうことでありましたので、ちょうど夕方で、執務時間をこえておったようでありますけれども、兵庫警察は御案内かと思いますが、相当事件が多い警察でございますので、執務時間が過ぎてももちろん残っておりますし、鳴海君ももちろんおったのであります。それで、鳴海君の係は外勤の係だったのですけれども、御相談がありましたので、御相談に応じております。それで白石さんの方では、「私の方で買った土地に、建築用の砂が運び込まれているのだが、このまま黙っていると家を建てられてしまうから、家を建てられてしまわないように、警察から一つ排除してもらえないか。」、こういう趣旨のお話があったのであります。それで鳴海警部補は、「だれが砂等を運び込んでいるのですか。」と聞きましたら、「実はその土地は私の方で買ったのですが、元の所有者から賃借している者があって、その者が運び込んでいるのです。」と、「そうすると、相手方もその土地の使用権があることを主張しているわけですね。」というて反問いたしますと、「そうです、実は土地の権利がごたごたしているので、相手方と話をつけようといっているのですが、相手方が先手を打ってきたのだと思いますそれで相手方に家を建てられてしまうと自分は困るので、相手方に、土地に関する権利について話がつくまで、警察でとめてもらえぬでしょうか。」と、こういうようなお話があったのであります。それで鳴海警部補は、「そういうことでしたら、所有権の関係が両者の意見が違うわけですね。」と、「使用権の関係で意見が違うわけですね。そうすると、土地所有権、管理権の問題でありますので、これは警察で権利を確定することはできませんので、裁判所できめてもらうよりほかに方法がありません。」と、こう答えると、「裁判所というのは、民事関係で結着がつくのにずいぶん時間がかかると思いますので困りますね。」と、こう言うたのですが、鳴海警部補は、「裁判所と申しても仮処分という制度がございますので、お話のような係争については、仮処分という制度によって活用願って、仮処分の決定ということによって立ち入りを禁止すると、こういう方法がありますので、裁判所の手続をお進めになることをおすすめします。」と、こうお答えしておるのであります。そうすると、「そうですが。それでは裁判所に行くことにいたしましょう。」というふうに答えたんですが、やはり鳴海警部補は警察官でありますので、「ところで、相手方はあなた方に暴力ざたをするとか、けんかを吹きかけるとかいうことはありませんでしたか。」というふうに聞いております。「今のところはそういうことはありません。」と言うて答えたんですが、「たとえばその砂を運んでいくときなどは暴力ざたその他をやったことがありませんか。」と聞きますと、「いいえ、暴力ざたはありません。」、「そうすると、砂などは何で運んでおるのですか。」、「トラックで運んできて、さくの破れておるところから入れておるようです。」と、「だれか見ていたのですか。」、「私の会社の者が見かけたのです。」、鳴海警部補は、「さくといいますが、何か囲いでもあるのですか。」と、こう聞きますと、「そうです。金網ようのものでさくを作ってあるのです。」と、「それはあなたの方で作ったのですか。」、「そうです。土地の権利の話がごたごたしているので、話がはっきりつくまで取りあえず私の方で作ったのですが、かまわないでしょうか。」と、「それはかまわないと思いますが、相手方はそのさくを破って砂等を運び込んだのですか。」と聞いたら、「いいえ、運んでくるところは見かけた者がいるのですけれども、破っているところは見かけた者がありません。」と。「すると、破ったのはだれかわからないわけですか。」と言うと、「そうです。その土地は子供などが出入りして遊んでいるところですから、子供かもしれません。」、「そうすると、あなた方の知らない間に破れていたわけですね。」、「そうです。以前にも破れていたことがあって、それを直したこともあります。金網のことよりも、相手方に家を建てられてしまうと困るので、砂等の建築材料を持ち込んでこないようにしてもらいたいと思っているのです。」と、そういうふうに問答をしておりまして、結局は今にして考えてみれば、さらにこういう御相談を受けたときに、私どもの警察運営の立場から見れば、民事関係もとではあるけれども、さくその他に関して器物損壊罪があるのではなかろうかということをもっと緻密に考えて、さらに見張りその他をするという措置を講じておれば、だれが破ったかということを明確にできたんだと思うのですけれども、その相談を受けました警部補といたしましては、こういう問題を、「警察で建物とすることをやめてくれませんか。」と、こういう質問であった関係もございますので、「それはそうは参りません。」と。ところが、暴力ざたとか、無理に何か向こうが物を破るとか、そういうことがありました場合におきましては、一つ警察に御連絡をいただきたい旨も申し添えて、それからそのときおいでになった方が白石工業の社員の方でありますので、仮処分その他のことも御存じなかったことでございますので、これは当然のことでございますけれども、「裁判所の権利確定の前段階として仮処分の方法もあるので、仮処分の方法を講じていただけばどうか。」と、こういうことを申し添えておる状況でございます。それで、今度われわれ警察の立場の批判になるわけですが、こういう問題は兵庫県の兵庫署に起こりましたのでございますが、いつもこの不動産に対して侵奪行為、今度改正案に予定しておるような行為等がありました場合においては、被害者に当たる方から警察に何とかしていただきたいということの申し出をあちこちで受けることが少なくないのでありますが、それはまあ事実問題として相談的の形になるわけですから、権利の確定を要するということで、今鳴海警部補が申しておられるようなことを各地で申しておると思うのですが、ところがこういう有業につきものは、よくその後暴力で人の自由を抑制して事を処理されるとか、それからそこでけんかざたが起こるとか、こういうふうになりがちな性格がございますので、私ども警察といたしましては、民事事件に不介入であるということを一本はっきりするとともに、その民事事件にからんで現行実定法上の器物損壊罪を含めて各種の犯罪に対する処理というものは的確にやるということを十分教養に努めておるつもりでございますけれども、殺人とか強盗とかいうようなことにつきましては、それほど多く抜かることは少ないのでございますが、器物損壊につきましては、事柄が親告非であるというような性格も一つあるのでございますが、比較的そこに的確な捜査活動がこの場合におきましてもできていない、こういうことが言えようかと思うのでございます。私ども鳴海警部補の取り扱い等について考えますことは、まず本人が会社の方でやったのでないということを一応言ったということだけをもって、その後の現場についての捜査をやっていないということは事実でございます。その点に関しまして、一応被害者に当たる人が向こうの会社がやったのでないと言うことを信用したと脅えば信用したのでございますけれども、向こうで問題になっておりますように、次から次へいろんな事件が伏在して参ることを思い合わせますと、そのときに的確に器物損壊罪であるという、親告罪であるにいたしましても、もっと的確な措置をしておくことが望ましかった、こういうふうに考えておる次第でございます。
  142. 亀田得治

    亀田得治君 さっきのお話ですと、その当時白石から来た人の供述調書はとっておらぬのでありますね。
  143. 中川薫治

    政府委員(中川薫治君) ええ。
  144. 亀田得治

    亀田得治君 警察では何かその当時聞いたことの控えでもあるのですか。
  145. 中川薫治

    政府委員(中川薫治君) 先ほどもお答えいたしましたように、兵庫署に限りませんが、各警察で警察活動をやっておりますと、困ることが起きると相談に見える方がある。この場合もそういう意味の相談だと理解しておりますので、被害者としての供述調書をまずとっていない。それから供述その他に関して大へん次に響く問題等につきましては、警察活動として日誌を書かさせているわけですけれども、この事件につきましては、やや相談的なことだと理解いたしまして、鳴海警部補はその関係を記録していないのであります。それを記録していないから、文書ての他によって当時の状況を明らかにすることはできませんので、私どものやりましたことは、当時の関係職員について調べさせて、当時の関係等を思い起こさせて、今お答えいたしているような次第であります。
  146. 亀田得治

    亀田得治君 ずいぶん今詳しい報告があったわけですが、その供述調書もない、それからその当時の控えもなくて、そんな詳しいことを言うてくるということは私はおかしいと思うのです。それは白石工業にしてみればそんなことを——すべてこれは速記録に載ったわけですが、ごらんになったらおそらく憤慨しますよ。それは警察にいかにも落度がなかったように要点要点を注意してちゃんと報告しております。ミスだったらミスだったということをはっきりしてもらわないと、そういう方法だけでは、これはこの事件を取り上げた以上はこれはちょっと了承できませんね。この白石からの報告によりましても、昭和二十二年の七月にこの土地を白石は買っている。そしてさくを設けてずっと管理をしてきていて、約九年間別にその間権利関係のそういう異議などは一切どこからも出ておらぬわけです。そういうものについてあたかも何か警察自体が、自分の立場といいますか、何かあるのじゃないかというふうに思うのがもっとものようなことを言うために、書類に基づかないで、そんな詳しいことをおっしゃるのは、私は了承できない。だからこれは一つ委員長の方で鳴海警部補と、白石のそのとき出かけて行って申請した人を呼んでもらって、こういう具体的の問題で一体どうなっているのかということを、私は調べてもらいたいくらいに思う。そうしませんと、それはしゃんとしてきません。今沈まれたのは、あれやこれやその当時の人に兵庫署の責任者が聞いて、文書でそれだけのことを送って来たのですか。
  147. 中川薫治

    政府委員(中川薫治君) 亀田先生の言われることはよくわかりますが、ところがいろいろ国会で審議なさっているので、その間のことを私も知りたいと思いまして、率直に申して、その関係者の記録がないので明確を欠いているわけです。ところが、そのときの係はだれであったかということを私が調べたところ、偶然なことですが、鳴海警部補はほかの事情で転任して私のところに来たわけです。本庁の私の部下に来ているわけです。私がうちの係をして鳴海警部補に事情を供述せしめてそれを調書にしたのです。そういう本人の記憶をたどって作ったものであるということを明らかにしてお答えしたわけであります。御了承願います。
  148. 亀田得治

    亀田得治君 そういうことになると、なおさら信憑性がある意味で欠けるわけです。あなたの立場から言うたら、私の部下に今なっているから、直属の部下だから、これは間違いないとおっしゃるかもしれぬが、外部から見ると、その当時調べた鳴海警部補があなたのところにいるなら、そんな変な都合の悪いものは国会に出さぬじゃろ、こういうふうに逆に考えますよ。あなたは私に限ってそんなことはないと言われるかもしれないが、そこが問題ですよ。だからこれはちょっとそのままさようですかというふうに、これはお聞きするわけにはいかぬ。私は今はちょいちょい法務委員会に顔を出すたけなので、あまり時間をとりますと文句が出てもいかぬが、これは今の報告だけではいけません。それはほんとうに調べられたら相当違ったものがありますよ。  次に裁判所の方に一つお聞きしますが、私は裁判内容にごちゃごちゃこちらはタッチするつもりはないのです。ないのですが、ともかく結果から見て裁判所の処分がおそい。そしてまた仮処分の決定をやって、その結果というものがこわされている、いろいろな現象が現われているわけです。その一つは、警察が先ほどのような態度をとられるものですから、白石工業の方では三十三年の十二月二十七日に裁判所に仮処分を持ち込んでいるわけです。ところが、きょうは年末のあいさつだけであるということで、これは受け付けてもらえなかった。一体裁判所というところは年末年始になると、告発とか、仮処分だとか、そういう緊急のものでも、もう一切受け付けぬ、こういうことになっていないはずですが。
  149. 仁分百合人

    最高裁判所長官代理者仁分百合人君) 訴状その他一切の申立書、これは休日といえども裁判所書記官の方で受理をこばむという権限はないわけでございます。本件の仮処分、これは先ほど二十七日に提出があったというふうな亀田委員のお言葉でございますけれども、私どもの調査いたしましたところでは、申請書の受付の日付は三十四年の一月の六日になっております。その申請書自体の、これは代理人がお書きになった記載でございますが、この申請群の日付によりますと、三十四年一月五日となっております。それが一月六日と訂正されて、代理人の訂正印が押してあるわけでございます。従いまして、年末に仮処分の申請書が出て、それが受理されなかったかどうかという点にかなり疑問を持っておるわけでございます。なお、神戸の受付の職員等について調べてみましても、そんな記憶は全然ない、また、受理するかしないかでもんちゃくを生じたというような記憶も全然ないというふうに言って参っておる次第でございます。
  150. 亀田得治

    亀田得治君 これは結局受け付けてもらえなかったから、これは書類を持ち帰っているから証拠が残っておらぬ。そういう点についてはそれだけのことなんです。持っていかぬものを持っていったというようなふうに、まさか関係者がわれわれにそんなことを言うはずがない。そうして警察へ行ってその翌々日ですから、これは当然そうあるべきことですが、警察に行ったのは三十五日、一、二日弁護士かだれかに相談したのでしょう。そして二十七日、それは本人の当時の状況から言えば、私はやはり持っていったのがほんとうだと思うのです。それは持っていっておって、受け付けてあれば、受理自体はしてもらったとわれわれには言うてくるに違いない。受け付けてももらえなかったというところに非常な納得のいかぬところがあるわけなんです。だから、これは年末に持っていったかあるいは正月に持っていったかどうか、一日や二日の記憶違いはあっても、私は本人たちを呼び出せばこのことははっきりすると思う。年末であるか、正月であったかということは、普通の月じゃないのですから。だから非常にこれは重大だと思っているのですがね。  それで、今民事局長のお話ですと、何か申請書が一月五日となっておる日付のところが訂正して六日となっておる。それでは申請自体がおそかったんじゃないかとも、それだけでは断定できない。それはやはり昨年作った書類を、どうも年度の違うものをそのまま出すのも格好が悪いというような感じがあって、そこだけはタイプなりを打ち直して出しているということは、当然普通の常識として考えられる。だから、そういう訂正印があるから、それだけで本人たちが年末に持っていったというのが間違いだということは、私は言えないと思うのです。そうでしょう。それたけではちょっと断定できないでしょう、あなたとしても。
  151. 仁分百合人

    最高裁判所長官代理者仁分百合人君) こちらといたしましては、先ほど申し上げたような材料によりまして、疑問があるというふうに申し上げただけで、間違いであるということは絶対申し上げているわけじゃございません。それで、なおよく調査いたしまして申し上げたいと思います。
  152. 亀田得治

    亀田得治君 これは一つぜひ明白にしてほしいと思うのです。こういうことがわれわれの目のつかぬところで、もし実際にそんなことがやられているとしたら、これはほんとうに改めてもらわなければならぬことですね。  そこで、その点はそういうことで民事局長に、なおこの法律案と離れてもいいですから、明らかにしてほしいと思うのですが、仮処分事件に関する決定にあたっての疎明の問題ですね。これは、民事訴訟法の二百六十七条に疎明の方法というものが規定されているわけですが、よく私たちも訴訟事件を扱ってぶつかる場合があるのですが、仮処分で、従って証拠としては、疎明なんだから、だからあまり検証だとか、そういう複雑なことは困る。そういうことをよくおっしゃる裁判官があちこちたまにはある。そういうことが定説でもないと思うのですが、どうも不動産のこういう明らかな不当な侵害事件とか、そういうものについて、やはり時機を逃がすようなことがあるわけです。本件なんかも、これは事件裁判所が正式に受け取ったのはどうも一月六日だというふうなことであって、それが八日に仮処分が出ているわけですから、そこだけをとって考えれば、そんなにこれは怠っていたというふうには考えられませんけれども、これがさっきのように、もし二十七日に実際に受理されていたということですと、どうも今の感覚から言うと、受理はあっても年を越すのじゃないかという感じを受けるわけなんですね、そういう際に、二百六十七条の疎明の方法というやつがやはり何か一つ関係があるのですね。ところが、二百六十七条の第二項の方には、別個な立証の方法というものを、疎明にかわる方法というものがあるわけでしょう。こういうものの活用なりというものはあまりない。この仮処分というのは、急を要するものだということが前提になっておればこそ、この第二項のようなものも置いてあるのだと思うのです。だから、私はほんとうに裁判所が国民のそういう権利義務ということを重んじておられるのであれば、この規定があろうがなかろうが、じゃ、参考に行って、ともかく見てきてやるということが、これはあってもいいことだと思っております。いつもかもそんなことはできぬでしょう、どんな場合でも。そういうことなんですが、何か手っ取り早く処分ができない場合がよくあるのだが、民事訴訟法上そういうことができないのか、取り扱う裁判官の態度の問題なのか、その辺はどういうふうにお考えになっているのでしょうか。もしほんとうに民事訴訟法自体が悪いなら、これは訴訟法を変えたらいいわけですから、どうなんでしょうか。
  153. 仁分百合人

    最高裁判所長官代理者仁分百合人君) 民訴の二百六十七条の疎明に関する規定でございますが、この規定によりますと、「即時取調フルコトヲ得ヘキ証拠」ということで、証拠方法を疎明の場合は制限いたしまして、即時性ということを要求しているわけでございます。そういたしますと、これが人証の場合でございますと、在廷の証人、あるいは在廷している当事者、物証の場合でございますと、裁判所が留置している物、あるいは当事者が持っている文書あるいは物を書証あるいは検証物として出すというようなことになるわけでございます。検証については、これは即時性という点からみますと、これは厳密な意味から言うと、疎明方法には属しないということを言わなければならないのじゃないかと思います。ただ裁判官の一部に、仮処分の場合にも検証の必要が非常にあるのだというところから、民訴の百三十一条の釈明処分の規定によりますところの検証、これをやっているという例もわずかではございますが、あったように聞いております。あるいはまた事実上現地に臨んで現場を見るというようなやり方をしておられる裁判官も、一部にはあるように聞いているわけでございます。また、こののちの問題には、正確な検証はできないという建前で、調書なんかはとっておられる方はないようでございます。なるほど仮処分の場合におきましても、実地を見るということが、これが非常に便利であるということは疑いを入れないと思いますけれども、ただ二百六十七条の即時性というものに抵触するということから、現行の民訴は一応検証ということは許されないのではないだろうか。それでは立法論としてはどうしたらいいかという点が問題になるわけでございます。この点につきましては、三十二年の三月の裁判官の中央会同において、この問題を取り上げたわけでございます。そのときいろいろの議論が出たわけでございますが、一、二申し上げますと、疎明方法によれというふうに仮処分の手続ができている。これを検証ということまで取り入れるということになると、鑑定、あるいは証人を呼び出すというふうに広まっていって、結局この法の建前に反することになりはしないか、そうすると、本案訴訟とダブってくるような関係にもなってくると、どちらかが不要になるのではないか。それから不便に感ずるという事件も、これは東京の場合でございますけれども、年に大体一万件の事件があっても数件にしかすぎない。検証をしないで写真を出すという方法もあるのじゃないかというような議論の方が結局大勢を占めたわけでございまして、さしあたりといたしましては、何とか運用上まかなっていけるのではないかというふうに考えているわけでございます。
  154. 亀田得治

    亀田得治君 鑑定とかいうことになると、相当慎重な手続になると思いますが、仮処分なんかの場合に、現場へ行って見るということはこれは一番いい、事件にももちろんよりますけれども、いい方法だと思うのです。だからそういうことの必要のあるような事件が持ち込まれてくる、すぐその場で一時間ほど行ってとにかく見てくる。この方がものによっては、書類の上でああでもない、こうでもないと見ているよりも、よほど適切なことができると思います。だまされもしないだろうし、写真といったってこれは間接ですから。それから即時といったって、何も二日も三日も間を置くというわけじゃないのですから、なぜ裁判所の方で検証が疎明方法の第一項のところに含まれないというふうに解釈するのか、私には、実は了解できないのです。それは裁判所に書類を持ってきて出しても、それじゃ裁判官が実際手をあけて待っているわけじゃないでしょう。ほかの事件をやっていれば、それが済むまでなんですから。これも多少へ理屈のようなことを私申し上げますけれども、やはり時間を待たされることはあるのですよ。即時といったって何も即刻というふうに解釈する必要はない。やはり真相を早くつかめるようなものであれば当然私は含ませてやっていくのが親切な解釈だと思うのですがね。なぜそういうふうに一般の裁判官が検証を除外するのか、どうもふに落ちないのです。除外しないでやはり含めておいた方が、それを使った方がいい場合もあるのですから、便利なんじゃないでしょうか。現に検証という方法じゃなしに、一つ参考に見て来ようというふうにして行く裁判官もありますね。むしろそんなことの方が邪道ですよ、もし検証がいけないんだということなら。そういう邪道のことをやっておりながら、検証も含めて解釈していい余地があるのに、それをわざわざ排除して解釈していくというのはどうもふに落ちない。どうしてもそういうことなら、これは検証も含むように訴訟法を改めたらいいじゃないでしょうか。どういうふうにやるのが一番いいんですか。そこを聞きたいわけですな。
  155. 仁分百合人

    最高裁判所長官代理者仁分百合人君) 亀田委員の御質問まことにごもっともなところが多々あると思うわけでございます。実際に現場を見ました方が非常にわかりがいいというような点もあるわけでございますけれども、この検証を正式にいたすということになりますと、調書を作らなければならない。調書を作るということになりますと、それは書記官仕事としては最もむずかしい仕事でございまして、日時も要する、従って手続というものもそれがために遅延してくるんじゃないかというようなこともおそれるわけでございます。それと先ほどの会同あたりで出ました、一部からは実際上非常に必要なんだからということから検証できるようにしろという意見もございましたけれども、大多数はやはり即時面前で、その場でという即時性の要求で貫かれている、この疎明というものを考えると、少し行き過ぎではないかという意見でございました関係で、検証ができるということを立法化するということに疑問を持つわけでございます。
  156. 亀田得治

    亀田得治君 だから、つまり、即時ということがあるのがじゃまになるなら、そこを多少変えてもいいわけでしょう。しかし即時を置いておいても私はやれると思うのです。今検証調書のことをおっしゃったが、では疎明の場合には検証と言っても概略を見ればいいわけだから、疎明の場合にはそんな調書を作る必要がないというふうにここへ書いてもいいじゃないですか。仮処分というのは急いでおるものですから、そう書いたところで、それが検証でないとは言えぬでしょう。だから、そこをいろいろなむずかしい問題が片づくようにしなければいかぬのです。これは調書を作らぬでもいいとただし書きを付ければ、含めていいでしょう。どうです。
  157. 仁分百合人

    最高裁判所長官代理者仁分百合人君) 検証を特にやることができるというふうにしなくても、現在運用上十分やっていけるのだというのが実務家の大部分の意見なものでございますから、それを申し上げた次第でございます。
  158. 亀田得治

    亀田得治君 実務家がそうおっしゃると言うけれども、僕らそういう不動産の事件なんかをやった場合に、それじゃ一つ、次回何日にこれは非公式に見に行きましょう、こういうことで行っているわけなんです。法律をそういうふうにきちっと解釈すると、直してないものだから非公式ということになるし、実際は日を改めて行っているわけです。だからそこがどうも納得がいかない。そして結局、こういう白石事件のようなことが起きますと、てきぱき処理できなかったことに対する今度は言いわけに使われるだけだ、こっちは。
  159. 大川光三

    委員長大川光三君) ちょっと関連して私からも伺いたい。われわれの調査によると、むしろ第一線の裁判官は、いわゆる即時性というのが、一つの迅速に行動するための隘路だ、よろしく二百六十七条を改正してもらいたいという強い案は要望もあるのです。そこで、実際はこれで不便を感じないと言われる局長のことをわれわれは真に受けておるわけにいかない。のみならず、これあるために、裁判所一つの逃げ口上の材料にも使われる。ですから、この条文にとらわれずに、もっと積極的にこれを検討して、悪ければこれを改正する、足らなければ追加条文を入れるというような熱意が、一体民事局長にあるのかどうか、それもあわせて伺いたい。
  160. 仁分百合人

    最高裁判所長官代理者仁分百合人君) 法制審議会の民訴の部会におきまして、民訴全般の体系との関連におきまして、この上とも検討してみたいと思います。  それから、先ほどの白石事件関係があることでございますが、申請書の受付が一月六日で、決定は即日ということになっております。その点ちょっと申し上げておきます。
  161. 亀田得治

    亀田得治君 即日でしたら、大へんこれは適切にその点はいっているわけですが、これは裁判官は非公式に現場をごらんになったものでしょうか。そこまではわかっておりませんか。
  162. 仁分百合人

    最高裁判所長官代理者仁分百合人君) その点は聞いておりません。
  163. 亀田得治

    亀田得治君 まあいずれにしてもこの書類が出されて、即日処理されたという点は私は高く評価するのです。だがそれだけにそれが年末の十二月三十七日、そのときやられておれば、その後の正月休みにおける、実力によってこういろいろなものを建てた、これ自身がとめられたわけですね。そういう点で一つ最初のところの受付の問題を明らかにしてほしいと思う。それで、まあ一応お三人の方に、きわめて問題になるところだけをしぼってお尋ねしたわけですが、この白石の方からいいますと、現在まあ不動産窃盗という刑法の一部改正が出ておる。それに対する白石としては積極論であるわけなんですが、ところが陳情書の中で、立法化の問題とは別に、この程度のことは現行法のもとでも処理できるものと信じておるということが付記されておるわけなんです。私はこれは非常に重要だと思うのです、この点は。そうして実際に、事件自体をありのままに当たっていけば、現行法でこういう問題はてきぱき処理できないものでこれは絶対ないわけなんです。私もそういうふうに確信する。しろうとの人から見てもそういう意味では、現在の警察、検察庁、裁判所のこういう問題に対する扱いについて非常なやはり不満があるわけです。これは刑法の一部改正ができたからといって急に改まるものじゃないでしょう、その点が。もしそういうことなら、何もそう法律をたくさん作っていくのがこれは能じゃないのでして、これはいつも問題になることですが、最小限度刑罰法規というものは作って、その作られた法規は十分活用もしていく、こういうことでいい。むしろ活用の方が足らない。しかも、これは法務省の報告書の一番裏、先ほど竹内さんからも指摘のあった、結局は組がこの問題を最終的には押えたわけですね、相手の組の動きを。そうして法務省の方の報告書の中にも、現在白石工業は毎月五万円の管理費を払っておる、こういうぶざまなことが書かれなければならぬ。これでは、ただたくさん費用をかけてそうして、世間から見たら、警察、検察、裁判所、これは一番こわいところと思っておる。その三つが寄っても組よりもだめじゃないか。まあざつくばらんに言えば、そう言われてもこれはしようがないじゃないですか。その点一体——これは一番始まりが警察ですから、中川刑事局長はどういう感想を持ってこれを見ておられますか。
  164. 中川薫治

    政府委員(中川薫治君) 私も亀田委員と同じように、いろいろこういうような事態が起こるということは、私ども大いに反省しなければならぬと思うのですが、そうして、結局は日本の社会で法律というものがびしっと全部活用していくように努力する責任は、これは警察のごとき最末端で、最前線でやっておるものが当然考えなければならぬことで、警察としては今犯罰という点を一生懸命捜査して、それを刑罰法令を的確に見つけていくということの最前線の責任を持つものと考えておりますので、現行法につきましても、今度改正される法律につきましても、法律の内容その他は厳に戒めなければなりませんが、そういうような法律の施行という点につきましては、教養をまず第一にやりまして、的確に法律を執行していく、こういう方法で進んで参りたいと思うのであります。それで、現行法の範囲内でもできるだけやるべきでございますけれども、不動産侵奪ということになりますと、現在の解釈でも、執務例でも、刑法の窃盗罪の適用はないと、こう解釈しておりますので、窃盗は適用しない。そうすると、自然考えられますのは器物損壊とか、それに伴っての暴行傷害とか、そういう点について結局警察としてはやらねばならぬと、こういうふうに思うのでありますが、そうすると、若干被害者の立場の方からいえば、警察が非常に手ぬるいという社会常識が働くわけでございますので、こいねがわくば内容等は厳につつしみますけれども、こういう侵奪罪というものが出ますと、侵奪行為というものを証明することによって刑事罰が的確に行なわれる、こういうことになりますと、こういう関係の皆さんの希望といいますか、警察の官憲に対する不安感も一部払拭されていくのじゃなかろうか、こう考えておる次第でございます。
  165. 竹内寿平

    政府委員(竹内寿平君) 現行法のもとでも何か取り締まれるじゃないかという点でございますが、これは器物損壊非が一応考えられるわけです。さらにまた器物損壊を通じて暴行等の行為がありますれば、暴力行為あるいは繋行、脅迫、傷害等のそれぞれの罪状に照らしまして処断できるわけでございますが、この事件の実態は何といっても不動産侵奪なんでありまして、やはりまあ会体を通じて考えますと、不動産侵奪罪がほしいなあという感じを私はこの事件を通じて持つわけであります。やはり仰せのように、法律があるからといってすべてが法律の予想しているような運用にいくというわけには参らないと思いますけれども、事本件に関しましては、もし侵奪罪があるとすれば、警察の活動ももっと的確に時期を逸せず処理できたんじゃないかという感じもいたすのでございまして、現行法のもともということは私も考えますが、この現行法のもとでは少し取り締まり規定としては不十分という感じを持つわけでございます。もちろん中川局長も述べられましたように、逸脱あるいは法の予想している以上の法の動き方になるということは、これは警戒を、要するところでございますが、ただいまの私ども運用実情を見ますると、行き過ぎもいけないと同じように、動き足らない面もないとは保しがたいのでございまして、ただ単に刑罰が重い罰がついておるから動く、軽い罰だから動かぬ、こういうもちろん性質のものじゃございませんけれども、特に器物損壊ということになりますと、親告罪にもなっておりますし、かなりその被害者の意思を尊重して、その処分にまかせておるというような種類の犯罪でございますので、どうしても一線の警察官としては力が入りにくいという傾向もあるのじゃなかろうかというふうに考える次第でございます。
  166. 仁分百合人

    最高裁判所長官代理者仁分百合人君) 本件は債務者の占有を奪って執行吏の保管にするというきわめて強力な仮処分をやっております。そうしてその旨の公示も講じてきたのでございます。従いまして、公示の破毀をするというようなことになりますと、封印破毀罪になることは当然でございますし、公示の中にも特にその点は警告されておったようでございます。しかるに公示札を撤去して、そうしてこの執行吏が保管中の土地に侵入して家を建てるというような行為に出たわけでございまして、仮処分も全く無意義にしてしまったと申さなければならないかと思います。そうしてその結果は妨害排除の実力のある者が介入いたしまして、実力対実力という形になって均衡をとっておるようでございます。実力が結局法にかわってしまっておるという結果になるわけでございます。これに対しまして民事手続上の救済といたしましては、この執行性のある対抗手段というものはちょっと考えられないわけでございまして、仮処分命令を無視する者、しかも犯罪を犯してまでも法を無視していこうとする者に対しましては、刑事的処置によるほか救済の道はないのじゃないかというふうに考えておるわけございます。
  167. 亀田得治

    亀田得治君 私のお聞きしたがったのは、ともかく検察、裁判、警察、三者おりながら、結論において白石工業が毎月五万円ずつ組に払ってそうして急場をしのいだ、こういうことに対するやはり国の機関としての責任ですね、これは私は非常に重いと思うのです。いろいろなことを皆さんの立場としては言われますが、その結果については十分これは反省をしてもらわなければならぬことなんです。そうしなければ、たとえ不動産についての侵奪罪を作ってみたところで、やはりたとえば初めの警察段階において白石のこの管理しておる土地へ組が入ってくる、入ってきた者は、いやこれはこういう理由でおれの方の関係の土地なんだ、決してそんな不動産侵奪にならぬのだといったようなことを、また何か理屈を設けて言わないとも限らないわけなんです。同じことですよ、これは。だからそうじゃなしに、大体それはそのときの顔色なり態度でわかるものですから、被害者の一応その気持になって問題に当たってみてやる。当たってみてその通りでなければやめたらいいんだから。当たりもしない。そうして何かはかの関係がからんでおるようだから一こういう考え方がともかくあるわけなんです。こういうことでは幾ら法律を作ったってやっぱり同じことになりますよ。検察庁の方だって封印破毀という明確なことがなされておる。その同じ考えじゃやはり不動産侵奪罪ができたってやつぱり同じようなことになりますよ。これは不動産侵奪罪ができたから急に態度が変わるというものじゃなかろうと思います。それがないことが何かこういうことの原因とまではおっしゃらぬが、関係のあるようなことをおっしゃるが、それは非常に納得いかぬ、そういうことは。その程度で一応この問題の質疑は終わりたいと思いますが、これは法案と離れてでも、もう少し何かこの事件の実態を委員会で明らかにできるように、先ほど御指摘したような点について一つ考えてもらいたいと思います。
  168. 大川光三

    委員長大川光三君) 亀田委員の御要望の点については、機会を得て国政調査の一環としてなお調査する機会を作りたい、かように思います。
  169. 亀田得治

    亀田得治君 この前、本法に関しての質疑は竹内刑事局長にいろいろお聞きして、その後法制審議会の速記録を出していただきまして私も拝見しました。ところが法制審議会の中でも私たちがやはり心配していたと同じようなことが相当委員の方から発言が出ているわけですね。だから私はやはりこの議事録を拝見して、大体公正に考える専門家であれば考えることが一緒だなあと実はそういう感じをもってこれを見たのです。だからそういう意味で端的に申し上げると、この不動産侵奪罪の方はともかくとして、境界のこの損壊罪ですか、これの方はもう少しやはり研究の余地があるのではないかと思うのですが、この法制審議会でもやはり第一には不動産侵奪罪はいろいろ陳情もあるが、この境界に関してはそんな陳情なり要請等がない。こういうことがやはり一つの問題として意見が出ておる。それから条文の配列個所の問題ですね、これは法務委員長からも先だって御指摘もありましたが、やはりこれも問題になっておる。そういうわけで、せっかくこの新しい刑法の改正草案等が準備されつつある段階だから、それと一緒にこれは検討されてもいいんじゃないかというふうな御意見等もこれはここにも出ておる、法制審議会でも。で、私はそれらの意見にみんな同感なんですが、実際のところ境界損壊罪というやつはもう少し練ってみる必要があるように思うのですが、大体不動産侵奪罪ができればまあ大体それでまかなっていける。で、先ほども申し上げたように、第一その法律を扱う方の心がまえですね、これがなっていないですからね。それもしゃんとしてもらって、これは比較すればすぐわかると思う。たとえばああいう三池の問題とか、いや安保反対のデモだとか、こういう社会的な和音問題になっているようなこととは全然関係ないですからね、神戸の事件なんというのは。これはだれが見たって見こんなものを肯定する者はだれもおりゃせん。そんなものについて逮捕ということがされておらぬでしょう。逮捕していいわけですよ。こういう事件では逮捕せぬというような大体先入観がおかしい。ところが一方ではちょっとした道路交通取り締まりとか、デモが行き過ぎだとか、ついでにプラカードが警官にさわったとか、公務執行妨害だとかいって現行犯逮捕をやっているわけでしょう。そういうことはだれが比較したってこれはみんな不公平に感ずる。そういう社会的にいろいろ問題が、背景にあるものこそ、これは良識的に処理をしなければならぬ事柄がたくさんあるが、どうもこういう暴力団に関係があるようなやつは弱いのですな、何か裏に関係があるように憶測されるわけですよ。たくさんの中にはたまにはそういう事案もあったわけですからね、そうするとみんながそうじゃないか、こういうふうに考えられる。だからその辺のところがやはりしゃんとすべきなんで、そうして不動産侵奪罪、この二つぐらいで大体いいのじゃないか。大体境界の方は相当専門的にもずいぶん議論がありますよ。そっちさえ抜けてもらえば、それはもうすぐ審議を打ち切ってやってもらってもいいと思いますが、私は法制審議会の議事録を読んで、なお一そう疑問を深めているのです、いろいろの点で。
  170. 大川光三

    委員長大川光三君) ちょっとそれに関連して、私からも意見があるのですけれども、時間の関係で、鶴田委員は境界毀損罪についていろいろの御質疑を用意されていると思いますけれども、残念ながら時間がありません。しかし境界毀損罪に関する疑義は、亀田委員も私も相通ずるものが多いのでありまして、次回のときに私みずから境界毀損罪については質問をいたしたいと、かように考えておりますから、あらかじめ御了承をお願いいたします。  ほかに御発言もなければ、本件に対する本日の質疑はこの程度にとどめたいと存じます。以上をもって本日の審議は終了いたしました。次回の委員会は五月十二日午前十時より開会いたします。本日はこれをもって散会いたします。    午後四時五十九分散会