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説明員(勝尾鐐三君) 青
少年非行防止対策につきましては、ただいまお話もございましたように、当
委員会で具体的かつ明白な決議がございましたので、予算面におきましてもこの決議を実行するに万遺憾なきを期したいと思いまして、
昭和三十五年度の予算の要求の際にも全力を尽くしたわけでございますが、結果は必ずしも私たちの思うような経費が獲得できなかったのでございますが、引き続き来年度におきましても努力をいたしたいと思っております。
まず最初にお手元に御配付申し上げました法務省所管
昭和三十五年度青
少年非行防止対策費対前年度予算額比較表に基づきまして、
概略の御
説明を申し上げたいと思います。
青
少年非行防止対策を大きく分けますと、青
少年の風紀検察をどのように強化していくか、また青
少年の
保護観察をいかに充実していくか、さらに
少年院の現況にかんがみて、これをいかに整備充実をいたしていくか、なお基本的な問題といたしまして青
少年非行の
原因をいかに科学的に究明をしていくか、さらに
関係の
少年法等につきまして改善すべき点があるならばいかなる点を改善すべきか、大体ただいま申し上げましたような項目に分けられるのではないかと思っております。ただいまの項目につきまして予算上
数字を当てはめてみますと、お手元に差し上げましたような
資料になるわけでございますが、最初に青
少年問題のブレーンをいかに充実するか、さらに当面いろいろな問題をかかえております
少年院の教官をいかに充実するかということにつきまして、大蔵当局とも折衝を重ねたのでございますが、結局刑事局に青
少年課を設置する、なお
少年院に教官を増員をするという二面にしぼられまして、青
少年課の設置につきましては、すでに法務省組織令の一部を改正する政令によりまして実現いたしております。青
少年課におきましては、従来刑事局の刑事課で分担いたしておりました
少年の
一般刑事事件の検察、それから青
少年犯罪の予防に関する事項、それから
少年の福祉を害する成人の刑事事件の検察、麻薬覚醒剤
関係事件の検察、それから人身売買その他風紀事件の検察並びにこれらの予防をつかさどるということで発足をいたしているわけでございます。この要員につきましては、刑事局の刑事課から若干の要員を充当するとともに、地方検察庁からも若干の人員を充当していくということで発足をいたしておるわけでございます。そういう面もございますと同時に、主要な
地検における青
少年の検察が非常に多忙になって参りましたので、その要員という趣旨も含めまして、検事十名の増員を実現したわけでございます。
それから
少年院につきましては、昨年度三十名の教官の増員を実現したのでございますが、その後
少年院の現況を見ますと、非常に粗暴な
収容少年がふえているようでございます。特にぐれん隊、暴力団等の影響もあってか、
少年院における
収容少年の暴力事項が増加していくといったような
状況にありまして、教官の負担が質的にも非常に重くなってきておりますので、それらの負担を幾分とも軽くして、
少年院の教育を充実したいという趣旨で二十五名の増員が実現したわけでございます。
青
少年の風紀検察
関係でございますが、すでに御
承知のように成人
犯罪は
昭和三十二年以来横ばいの
傾向にあるのでございますが、
少年犯罪につきましては、
昭和二十七年以来増加の
傾向にある。特に強制わいせつ、強姦等の性的
犯罪、それから恐喝、傷害等の粗暴犯が著しく増加をしているわけでございます。そういった現況にかんがみまして、具体的な容疑者として検察庁に送られてくる青
少年犯罪容疑者について、家庭の環境から前歴その他明細な
資料を作成する、その作成された
資料に基づきまして具体的な検察を樹立すると同時に、それをさらに法務総合研究所において科学的な検討を加えていくといった趣旨の構想を立てまして、対策
資料作成費として百十四万四千円の
増額が計上されたのでございます。それから、なお
少年院の現況を見ますと、最近
少年院における
収容者のうち、正常な
精神状態と認められます者は約一〇%くらいでございます。明らかに
精神障害者であると認められる者の人数は二七%といったような
状況でございまして、こういった
状況等も考えますと、検察庁に
犯罪容疑者として送致されてきたときに、的確にその
精神状態を把握して単に機械的に家裁に送る、あるいは不起訴にする、あるいは起訴にするといった処置ではなくてもっと
精神状態を的確に把握して適正な処置をする必要があるということで、特に
精神鑑定謝金として百十七万四千円の
増額が計上されたのでございます。
次に青
少年保護観察でございますが、青
少年保護観察の現況につきましても、三十三年、三十四年、三十五年の
取り扱い事件数を統計上把握いたしてみますと、三十三年がおおむね七万四千くらいであり、さらに三十四年度におきましても七万二、三千のものが、
昭和三十五年度におきましては七万七千件を上回るのではないかといったような
傾向がうかがわれますので、そういう事件数の増加に伴う補導援護経費の
増額が千五百九十四万九千円
増額されたのでございます。なお、補導援護のうち、更生
保護委託費というのがございますが、そのうち、
食費付きで宿泊をさせて被対象者の更生
保護をはかる、その経費として現在八十一円五十銭の単価になっておりますのを、八十五円に
増額をするということで、その経費が六十万円
増額されたのでございます。なお青
少年事件の重要性にかんがみまして、地方裁判所の本庁四十九庁、甲号支部八十一庁、なお
少年事件を
取り扱います乙号支部十五庁、計百四十五庁のそれぞれの都市に青
少年担当
保護司を二名当て指名いたしまして、それらの人は一日三百円、月五回この青
少年問題について、特に専念をして処理をするという形式をとりまして、それらに要する出費弁償金といたしまして、五百二十二万円が
増額されたのでございます。
それから
少年院につきましては、
昭和二十七年以降、数学的にはむしろ減少の
傾向もうかがえたのでございますが、昨年秋ごろから、次第に
収容人員の増加が顕著になりまして、十一月には一万を若干オーバーするという
状況になりましたので、三十五年度におきましては、九千八百人の
収容人員を一万四百人に見込みましてその増加に伴う
収容所経費が二千四百三十三万一千円増加されたのでございます。なお
収容者の日用品につきましては、先ほど御
質問もございましたが、現在の男子並びに
女子の日用品の内訳につきまして、
石けん、
ちり紙、あるいは歯ブラシといったものにつきまして、その枚数、個数をふやすことによりまして、男子一人当たり四百二十二円七十五銭、
女子一人千三百十円八十五銭という
増額された単価によりまして、従来よりも総計において百三十八万七千円の
増額を見たのでございます。男子と
女子の間に差がございますのは、
女子の特別な日用品が要りますので、単価が多くなっているのでございます。それからなお
少年院は御
承知のように、へんぴな所にございます。また
刑務所等に比べて規模が小さいといった
関係で、従来とも電話料だとか、あるいは電気料、あるいは水道料といった身近な
生活費的な予算が非常に窮屈でございまして、全般的に非常にゆとりがなかったのでございますが、その辺の事情を加味しまして、こういった
生活費的な経費につきまして、九百八十四万七千円の
増額を見たのでございます。それからなお映画、演劇、あるいは宗教といった面の教育謝金が百六十八万八千円
増額されたのでございます。従来五百九十万円ばかり認められていたものでございますが、それになお百六十八万八千円の
増額が計上されておるのでございます。それからなお
少年院の施設は、昔の軍の兵舎等を転用したものが多い
関係で、大きな部屋は幾つもあるが、集団
生活に適しない
少年を
収容する個室が非常に少ない。それも一因になりまして、いろいろ事故があったのでございますが、その面を解消し、かつ先ほども申し上げましたように、教官の実質的な負担を幾らかでも軽くしたいということで、個室を特に新営するために施設費として五千八百三十三万四千円の
増額を計上されたものでございます。なお
少年院が山の上、あるいはへんぴな所にございまして、教官の住宅が非常に不便な
関係で、せっかくいい教官が来られましても、宿舎の
関係でやめる、あるいは宿舎の
関係でいい教官が来ないといった悩みがございましたのでありますが、その点幾分でも解消するという趣旨で、前年度宿舎費として三十戸を認められていましたものが、
昭和三十五年度におきましては五十七戸の新設が計上されるに至ったものでございます。
それから総合刑事政策研究費といたしましては、昨年度法務総合研究所の研究部が発足いたしましてから、非行
少年の
犯罪原因の探究、あるいは累犯者の
処遇の問題等につきまして研究を進めて参ったわけでございまして、近く
犯罪白書等の形で一年の成果が取りあえず出版される運びにもなっておりますが、来年はさらに従来の研究の上に積み重ねまして
少年の非行
原因の探究、あるいは累犯者の
処遇の問題等につきまして研究を継続するという趣旨によりまして、前年度の初年度設備費の節減がございましたが、研究経費といたしまして百九十四万円が
増額されたものでございます。なお次にブリュックとございますが、これはグリュックのミス・プリントでございます。ハーバード大学のグリュック研究所の所長でございますが、アメリカにおきまして三十年余にわたりまして、
少年犯罪の
原因につきまして貴重な研究を遂げられ、その成果が着々上がっておりますので、このグリュック博士をわが国に招聘いたしまして、法務総合研究所においてゼミナール、あるいは大学等において講演をする。そうしてこの青
少年の非行問題に関する一段の前進を遂げたいという趣旨で、グリュック博士をわが国に招聘するために謝金が四十八万五千円
増額計上されたのでございます。
最後に
少年法、あるいは不動産の
窃盗等に対する立法その他緊急立法を幾つか掲げておるわけでございますが、
少年法につきましては、いろいろの問題点がございまして、十分な
資料と慎重な検討を要しますので、現在刑事局において着々その準備を進めておりますが、それらの
調査研究に要する経費といたしまして百十七万三千円計上されまして、前年度に比較いたしますと約十二万円の
増額になっておるわけでございます。結局青
少年非行防止
関係で、ただいま御
説明申し上げました経費は、前年度に比較いたしますと、一億三千五百九十万八千円の
増額で、総額におきまして九億二千百三万三千円という予算が計上されているわけでございます。
以上が青
少年非行防止対策経費の予算面の概要でございます。