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1960-04-05 第34回国会 参議院 法務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月五日(火曜日)    午前十時三十一分開会   ―――――――――――――   委員異動 三月三十日委員後藤義隆辞任につ き、その補欠として紅露みつ君を議長 において指名した。 三月三十一日委員吉江勝保君及び紅露 みつ辞任につき、その補欠として津 島壽一君及び後藤義隆君を議長におい て指名した。 四月一日委員山口重彦君及び田畑金光辞任につき、その補欠として江田三 郎君及び片岡文重君を議長において指 名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     大川 光三君    理事            井川 伊平君            後藤 義隆君            高田なほ子君    委員            津島 壽一君            林田 正治君            平井 太郎君            前田佳都男君            千葉  信君            赤松 常子君   国務大臣    法 務 大 臣 井野 碩哉君   政府委員    法務大臣官房司   法法制調査部長  津田  実君    法務省刑事局長 竹内 壽平君   最高裁判所長官代理者    事 務 次 長 内藤 頼博君    人 事 局 長 守田  直君    総務局総務課長 長井  澄君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    法務省刑事局参    事官      高橋 勝好君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○下級裁判所設立及び管轄区域に関  する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出) ○裁判官災害補償に関する法律案  (内閣送付予備審査) ○刑法の一部を改正する法律案内閣  送付予備審査)   ―――――――――――――
  2. 大川光三

    委員長大川光三君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  この際、委員異動について御報告いたします。三月三十日付、後藤義隆辞任紅露みつ選任。  三月三十一日付、吉江勝保辞任津島壽一選任紅露みつ辞任後藤義隆選任。  四月一日付、山口重彦辞任江田三郎選任田畑金光辞任片岡文重選任。  以上であります。   ―――――――――――――
  3. 大川光三

    委員長大川光三君) 次に、理事補欠互選を行ないます。  ただいまの報告中にもありました通り後藤理事が一時委員辞任されたため、理事に一名の欠員を生じておりますので、この際、理事補欠互選を行ないたいと存じますが、その方法は、慣例によりその指名を委員長に御一任賜わりたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 大川光三

    委員長大川光三君) 御異議ないと認めます。  それでは私より後藤義隆君を理事に指名いたします。   ―――――――――――――
  5. 大川光三

    委員長大川光三君) 次に、下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案裁判官災害補償に関する法律案、以上二件を一括して議題に供します。  当局より法律案の御説明を願います。
  6. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨説明いたしまする  この法律案は、土地状況市町村廃置分合等により、簡易裁判所名称所在地及び管轄区域変更する等、下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律に所要の改正を行なおうとするものであります。以下簡単に今回の改正の要点を申し上げます。第一は、簡易裁判所名称及び所在地変更であります。すなわち、大阪地方裁判所管内古市簡易裁判所所在地層ある大阪府南河内郡南大阪町について、同町を南大阪市とする処分及び南大阪市の名称羽曳野市に変更する処分が行なわれたのに伴い、同簡易裁判所名称羽曳野簡易裁判所に改め、また、土地状況等にかんがみ、広島地方裁判所管内上下簡易裁判所所在地広島県甲奴郡上下町から同県府中市に変更するとともに、その名称府中簡易裁判所に改めようとするものであります。  第二は、簡易裁判所管轄区域変更であります。すなわち、土地状況、交通の利便等にかんがみ、京都簡易裁判所管轄に属する京都市南区久世川、原町ほか八ヵ町の区域を、向日町簡易裁判所管轄区域とするほか、五簡易裁判所管轄区域変更しようとするものであります。  第三は、市町村廃置分合名称変更等に伴い、別表第四表及び第五表について当然必要とされる整理を行なおうとするものであります。  以上が、下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますよう、お願いいたします。  次に、裁判官災害補償に関する法律案について、その趣旨説明いたします。  政府は、労働者災害補償保険法の一部改正と対応して、一般政府職員災害補償制度の改善及び整備を行なうこととし、今国会に国家公務員災害補償法等の一部を改正する法律案を提出し、御審議を仰いでおりますことは御承知通りであります。この裁判官災害補償に関する法律案は、裁判膚についても他の特別職職員と同様、一般職職員の例にならって、その災害補償制度を整備しようと一するものであります  御承知通り現在裁判官公務上の災霊に対する補償につきましては、他の特別職職員と同様に、労働基準法等施行に伴う政府職員に係る給与応急措置に関する法律規定によっているのでありますが、このたび一般職職員公務上の災警に対する補償について、国家公務員災害補償法の一部改正により、身体障害程度の重い者及び長期療養者に対する補償を改善し、さらに特別職職員給与に関する法律に掲げる特別職職員公務上の災害に対する補償等についても、同法の一部改正により、一般職職員の例によるものとすることになりましたので、この際、裁判官公務上の災害に対する補償等につきましても、一般職職員の例によるものとして、その災害補償制度を整備しようとするものであります。  以上が、裁判官災害補償に関する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願いいたします。
  7. 大川光三

    委員長大川光三君) ただいま御説明を受けました二法律案については、後刻質疑を行なうことといたしたいと存じます。   ―――――――――――――
  8. 大川光三

    委員長大川光三君) 次に、刑法の一部を改正する法律案議題に供します。  本日は、まず竹内刑事局長から逐条説明をお願いいたします。
  9. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 法律案逐条説明を申し上げます。  まず第三条第十三号中「第二百三十五条、第二百三十六条」を一第二百三十五条乃至第二百三十六条」に改める点でございます。  第三条の改正は、第二百三十五条ノ二の新設に伴い、日本国民が国外で犯した不動産侵奪罪及びその未遂罪をも処罰するためでございます。  次に、「第二百三十五条の次に次の一条を加える。」「第二百三十五条ノニ他人不動産侵奪シタル者ハ十年以下ノ懲役ニ処ス」ということでございます。  第二百三十五条ノニは、不法領得意思をもって、不動産に対する他人占有を排除し、これを自己支配下に移す行為処罰する趣旨規定でございます。従来におきましても、不動産に対する窃盗罪成立を認める学説はございましたが、判例は、これを消極に解するもののようであり、検察及び裁判の実務では、窃盗罪における窃取の観念を不動産についてまで拡張するのは相当でないという理由からいたしまして、不動産窃盗として起訴または裁判された事例は全くなかったのでございます。従って、今直ちに従来の解釈を改めますことは、法律生活の安定という面から好ましくありませんので、不法領得意思をもってする不動産に対する占有侵害処罰するためには、特別の規定を設ける必要があると考えられるのでございます。そこで、窃盗罪と同じ性質犯罪類型として、新たに本罪を設けることといたしたのであります。従って、客体不動産であるという点を除いては、本罪の本質法益犯罪成立要件などは、すべて窃盗罪の場合と同じでございます。  本罪の客体不動産でございます。不動産とは、土地及びその定着物をいう。これは民法八六条に規定されておるところでございます。建物は、独立の不動産であります。なお、自己所有不動産であっても、地上権賃借権等目的として他人占有し、あるいは、公務所の命によって他人が看守しているときは、窃盗の場合と同じように、刑法第二百四十二条が適用されるのでございます。  本罪の行為は、侵奪であります。侵奪とは、不法領得意思をもって、不動産に対する他人占有を排除し、これを自己支配下に移すことでありまして、実質的には窃盗罪における窃取と同じ意味であります。ここに言うところの不法領得意思とは、窃盗罪成立要件として必要とされるそれと同様に、ほしいままに権利者を排除し、他人の物を自己所有物と同様にその経済的川法に従い、これを利用しまたは処分する意思意味するのであります。侵奪の態様には、さまざまのものが考えられますが、その典型的なものといたしましては、権限のない者が新たに積極的に土地占拠してそこに住宅などを建てる場合や、境界線を越えて隣地を侵略し、土地取り込みをする場合などがございます。また、民事訴訟で敗訴し、強制執行を受けて一たん明け渡した他人家屋を、再び何等の権限なくして占拠し、居住を開始した場合の如きは、家屋に対する侵奪行為でありまして、本罪が成立するものと解します。相手方の抵抗を抑圧する程度の暴行または脅迫を用いて不動産侵奪した場合は、従来から刑法第二百三十六条第二項の強盗罪成立すると解されております。この解釈は、本罪の新設によって左右されるものではないと存じます。  なお、本罪の構成要件としては、不動産不法占拠という特別の類型犯罪にすることも一つ考え方として検討されたのでございますが、そうしますると、その保護法益がはっきりいたさないだけでなく、処罰範囲が広くなり過ぎまして、土地家屋に関する賃借権消滅後の継続使用や、いわゆるすわり込みなどにも適用される余地が生じ、また、継続犯と解されます結果、改正法施行前からの不法占拠についてまで本罪の適用を見ることとなりまして、このようなことは立法政策上妥当でないと考えられましたので、採用しなかったのでございます。  本罪の法定刑は、窃盗罪と同じく、十年以下の懲役となっております。  次に、第二百四十三条中「第二百三十五条、第二百三十六条」を「第二百三十五条乃至第二百三十六条」に改めるという点でございます。  第二百四十三条の改正は、第二百三十五条ノ二の新設に伴う改正でございます。すなわち、窃盗罪におけると同様、新設不動産侵奪罪につきましても、侵奪に着手しながら、占有の排除および取得の目的を達しない場合がございますので、このような不動産侵奪未遂をも処罰することに改める趣旨でございます。  次に、第二百四十四条第一項中「第二百二十五条ノ罪及ビ其未遂罪」を「第二百二十五条ノ罪、第二百三十五条ノニノ罪及ビ此等ノ罪ノ未遂罪」に改める点でございます。  第二百四十四条の改正は、第二百三十五条ノニ新設に伴う改正でございます。すなわち、親族間の不動産侵奪も、その本質窃盗と同じであります以上、第二二五条の場合におけると同様に、これにも親族和盗例を適用することが相当と考えられまするので、これを適用できるように改める趣旨でございます。  次に、「第二百六十二条の次に次の一条を加える。」「第二百六十二条ノニ境界標損壊移動クハ除去シハ其他方法以テ土地境界認識スルコト能ハザルニ奄ラシメタル者ハ五年以下ノ懲役又ハ千円以下ノ罰金処ス」という点でございます。  第二百六十二条ノニは、土地に関する権利範囲に重大な関係を持つ境界明確性保護法益とし、土地境界を不明にする行為処罰する趣旨規定でございます。  右のような行為は、広い意味では土地に対する一種の損壊行為であり、また、境界標損壊等方法を用いることが多いのでありますが、土地の効用の棄損とは、直接関係がない点で、通常損壊罪とは、やや性質を異にしていると思うのでございます。また、本罪に当たる行為は、隣地取り込みという類型不動産侵奪の手段として犯されることが多いと思われますが、両者は、その保護法益犯罪類型を異にしておりまするので、それぞれ別個に犯罪成立するものと解されるのでございます。  本罪によって保護されます境界は、必ずしも真正の境界意味するのではなく、それまで関係者の間で一応認められてきた境界をいうものと解するのでございます。従って自分で正しいと信ずる境界を設定するための行為でありましても、従前境界を不明にいたしますれば、本罪が成立し得るわけでございます。  法文境界を不明にする行為として境界標損壊移動及び除去の三者を明記してありますが、これは例示でありましてその他の方法によって土地境界認識することができないようにした場合にも、もちろん本罪が成立するのであります。境界標とは、権利者を異にする土地境界を確定するために土地に設置された標識、工作物立木等物件を言うのでございますが、これは他人が設置したものに限られず、行為者本人が設置したものもこれに含まれるのであります。「其他方法」とは、たとえば、境界を流れる川の水流を変えるとか、境界にあるみぞを埋めるなどの行為であります。他面、境界認識が不可能になるという結果が生じない場合には、本罪は成立しないのであります。従って、境界標損壊はしたが、いまだ境界が不明にならない場合は、通常器物損壊罪成立することは格別、本罪は成立しないわけであります。もっとも、境界認識不能という結果は、絶対的なものであることは必要ではなく、従来の境界標その他の境界を表示する物件がなくなったため、境界確定のために関係者の供述とか図面によるなど他の方法にたよらなければならないという程度になれば十分であると解します。  本罪の法定刑は、五年以下の懲役または千円以下の罰金となっております。  次に、附則でありますが、「この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。」、「罰金等臨時措置法昭和二十三年法律第二百五十一号)第三条第一項の規定は、この法律による改正後の刑法第二百六十二条ノニの罪につき定めた罰金についても、適用されるものとする。」という点でございます。  第一項は、本法がその公布の日から起算して二十日を経過した日から施行されることを明らかにしたものであります。  第二項は、罰金等臨時措置法第三条第一項の規定本法による改正後の刑法第二百六十二条ノニ境界棄損罪)につき規定している罰金についても適用されることを明らかにしたものであり、罰金等臨時措置法第三条第一項によりますると、刑法の罪――そのうち第百、五十二条の界を除くのでありますが――について定めた罰金につきましては、それぞれ多額の百五十倍に相当する額をもってその多額とすることとされておりますので、右に述べましたように、第二百六十二条ノニ罰金千円は五十倍の罰金五万円となるわけであります。  以上をもちまして趣旨説明を終わります。
  10. 大川光三

    委員長大川光三君) ただいまの御説明に対し、御質疑のある方は御発言を願います。――それでは、私より一点だけお伺いいたしますが、現在の不動産不法占拠実情についてその代表的な形態をあげて御説明をいただきたい。なお、今回の改正法案によって処罰対象とされるものはどういう形態のものであるのか、また、処罰対象から除外されるものはどういう形態のものであって、どういう理由でそういう除外がされねばならないかというようなことについての御説明をいただきたいと思います。
  11. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 不動産に対する不法侵害事態は、終戦権利関係の混乱しておりました時代、しかも、住むに家なく、従前所有目的で賃借しておりました土地、その建物が消滅いたしましたために、臨時措置法等によりましてその土地を使用することができることには相なりましたが、なかなか建築資材等が乏しいといったようないろいろな事情もありました上に、外地から帰って参ります者、あるいは兵籍から免除されてそれぞれその居住地に帰って参りました者、こういったような戦後のいろいろな事情のもとに、やむなく公園とかあるいは学校跡とかあるいは空地になっております所に住宅を建てて使用するというようなことも起ごつたのでございますが、これらの中には、もちろん承諾を得、あるいはその勧奨に基づいてできたものも多数あるわけでございますが、中にはこのような混乱期に乗じまして、勝手に他人土地に家を建てるというようなことが、特に罹災地におきましてははなはだしく行なわれたようでございましてこれらの不法占拠の問題が、終戦後数年を経ましてようやく権利関係明確化が一段と国民の間に強く要望されるようになりますとともに、各地においてこれの取り扱いが問題となって参りました。特に罹災都市におきましては、多くの都市計画ども実施されるに際しまして、これらの不法占拠が問題となって参りまして、ことに、最近におきましては土地の価格の非常な暴騰と相待ちまして、一そうこういう傾向は助長されてきたと思うのでございますが、かようにして漫然と行なわれて参りましたこの不法侵害が、権利者にとりましては、今日まで許されております方法は、これを民事訴訟に訴えて権利を確保するということになるほかないのでございまするが、この民事訴訟もなかなか権利者の希望するように迅速に判決を得ることがむずかしいのでありましてこういうことからいたしまして、やはりこの不動産にも、一定の限度のものでありますが、このような不法占拠状態につきましては刑罰をもって臨んでほしいという強い声が各地から起こって参りました。お手元にも資料として差し上げてあるわけでございまするが、最近、法務省におきまして、各地罹災都市について実情調査いたしましたところが、相当過去におきまして多くの不法侵雷実態をつかむことができたのでございます。しかし、それにいたしましても、これはまあ終戦直後の出来事であって、その後、だんだん民事訴訟進行等に伴って逐次改善されていくのではないかという考え方も実は一方においてあったのでございまするが、なお、私ども手元において調査し得る限りの方法をく尽して、検察庁その他につきましては不動産不法侵害に関連していろいろな犯罪が起こっておるということも確かめられたのでございましてそれらを見ますると、はなはだしいのは殺人までも起こっておるといったようなことが明らかになって参りましたのみならず、最近におきましても、火災その他あるいは風水害等によりまして一時監視の口が離れるというようなことになりますると、不法侵害をする者がなお跡を断たないという状況であることも明らかになって参りました。  そこで刑事立法としてこれを刑罰的に保護していくということもどうしても必要ではないかというふうに考えまして、実はここ三、四年来、鋭意、実態調査とその法文化につきまして研究を重ねてきたのでございまするが、一応、このような実態でありまするので、不動産に対する占有侵害に対しましても何らかの手を打つということで、その刑罰類型につきましてもいろいろ研究をいたしたのでございまするが、先ほども趣旨説明で御説明申し上げましたように、これには二つ考え方があるように思うのでございます。その一つは、今回政府提案としてただいま御説明した不動産侵奪という類型。これはまあ窃盗と同じ考え方に立つものでございまするが、もう一つは、この不法占拠そのものを罰するという考え方でございます。この二つ考え方に対しまして、実態不法占拠なんだから、不法占拠そのものをずばりと罰するということが実情に合うんではないかという御議論も相当各方面にあることは、私ども承知いたしております。ところが、この不法占拠と申しますのは、法律的に見ますると、一つ占拠されておる状態を罰するのでございまして、その占拠の着手のときには、住居侵入のようなことも伴って、ある期間継続して占拠状態があるということになるわけでございまして、こういうふうにいたしますと、一体、保護しようとするのは財産権保護であるのか、一つ不法侵入のようなものを保護しようとするのであるかという、その保護法益という点につきましてもすこぶる明確を欠くのでありますし、なお、この状態を罰するということになりますと、これは刑法の方から申しますれば、いわゆる継続犯というふうに見られるのでございまして、そうなりますると、ただいま御審議を経て成立いたしました場合に、それは将来に向かって効果を発するというのが刑罰法の大原則であります。刑罰規定の不遡及原則と申しますのはそれでございまするが、継続犯ということになりますると、不遡及原則にもかかわらず、過去の不法占拠事態についても、現に犯罪があるということになりますので、解釈上、過去のものにまでさかのぼって適用を見るという結果になるわけでございます。のみならず、不動産関係権利関係というものは複雑でございますが、賃借権が消滅した場合には、これは民法上違法なる占有になりますことはもとより申すまでもないところでございまするが、その違法であるか違法でないかの争いのある状態につきまして、そのような争いのある不動産占有状態をも不法占拠処罰されるといったようなことにもなるおそれがありますし、そうなりますると、刑罰規定によって民事法律関係に不当に介入するような悪い影響を与えるようなおそれもないとは言えないのでございます。立法政策的に考えてみましても、不遡及原則に反するような結果を生ずることは適当でないのでありますから、右のような不法占拠そのもの処罰するという類型をとらないで、ここに提示いたしましたような、不動産侵奪―積極的に他人権利者占有を、所持を排除して自己支配に移すという、窃盗と同じ類型の形で、対象がただし不動産と動産の違いであるというにすぎないと、こういう類型不動産侵奪というものを立案いたしたのでございます。これによりまして、今申しましたように、過去に不法占拠状態になっておりますものにさかのぼって、本罪が適用されることはないということがはっきりいたします。それから、不動産侵奪という類型をとりますれば、窃盗と同じになり、その犯罪即時犯というふうに解されますので、将来に向かってのみ適用を見ることはもちろんでございます。それから賃借権の消滅した後になお引き続いて占有しておるというような場合には、これはまあ民事訴訟対象にはなりまするが、積極的に他人所持を侵すという関係ではございませんので、不動産侵奪罪にはならないというようなことで、その間の法律関係は明確になるばかりでなく、民事訴訟にも不当な影響力を与えないというような点からいたしまして、世したくさんあります不法占拠の中で最も悪質と思われまする事案のみがその対象になるという意味におきまして取り締まり上は、若干手ぬるいという御批判もあろうかとは存じますが、立法技術的に見まして、あるいは立法政策的に見まして、このような改正をいたしますのが最も適当であるというふうに考えた次第でございます。  申すまでもなく、刑法にこのような規定を設けますことは、刑法が持っております一般他戒的な意味、こういう効果は十分これから期待され得るのでありまして、不法占拠何ものぞというような、堂々たる法蔑視の風潮に対しまして、やはり刑法の中にこの規定を設けることによりまして、将来に向かって大いに一般他戒の効果を発揮するもの、かように期待いたしているのでございます。  大体御質問の御趣旨にお答え申し上げたつもりでございます。
  12. 大川光三

    委員長大川光三君) 御懇篤な御説明をいただきまして、大体よくわかりましたが、ただ、いま一つ、これは常識的に伺いたいのでありますが、この不動産侵奪罪というものを新たに設けなくとも、刑法の二百三十五条、「他人ノ財物ヲ窃取シタル者(窃盗ノ罪ト為シ十年以下ノ懲役ニ処ス」というこの条文で、不動産侵奪というものは処罰できないのでしょうか。まあ言いかえますと、当局の方では、不動産には窃取行為成立しないという御解釈になるのでしょうか。その点はっきりしてもらいたい。
  13. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 政府当局の考え方といたしましては、二百三十五条の窃盗罪の中の「財物」という観念の中には、この窃取という類型からおのずから限定されまして、不動産は含まれないという解釈でございます。仰せのように、この二百三十五条の中には不動産も含めて解釈すべきであるという牧野英一博士の学説が、明治四十一年以来あるわけでございます。しかし、当時は牧野博士の所見というものは少数説でございました。きわめて簡単に言えば、一人であると言ってもいいくらいの少数意見でございましたが、その後、逐次、まあ牧野博士の所見に賛成する向きもないでもなかったのでございますが、特にこの戦後、不動産侵害の事実が各地に発生いたしまして、この事態に対処しようというような考え方が学者の中に強く出て参りまして、最近におきましては、積極説を唱える学者は、牧野博士を初めとしまして、木村教授あるいは宮本博士という方も積極論になっております。それからなお、若干趣旨は違いますけれども、結局において積極というような意見を述べておる滝川教授あるいは日沖教授あるいは先般なくなりました江家教授、小野清一郎博士もこれに類した方でございしますが、今日といえどもなお消極意見を強く主張しております方々もまた少なくないのでございまして、古い力としては、当時大場博士などはもちろんでございますが、東大の団藤教授なども消極意見でございます。この点につきましては、いろいろ議論はありますが、判例といたしましては、明治三十六年、明治三十九年、この辺、旧刑法の時代でございますけれども、傍論ではございますが、はっきりと窃盗の中には不動産は含まないという解釈を出しております。自来、検察庁においても、不動産窃盗として起訴をした事例もないわけでございます。従って、下級審の裁判例はもちろん、大審院判例にもこれを論議した例はないわけでございます。かようにして明治新刑法施行後五十一年になりますが、五十一年間、二百三十五条の対象として不動産を認めずして運用して参った今日におきまして、学者の議論は別としまして、実際の運用において、法律解釈を今後変えるというようなことで不動産窃盗を認めて参るというような運用をいたしますことは、これは法律生活の安全ということから好ましくないので、この問題に対処いたしますためには、新たに立法するのが相当であるというふうに考えるわけでございます。
  14. 井川伊平

    ○井川伊平君 二百六十二条の二の方につきましてお伺いいたしますが、同一人が隣接する数筆の土地を所有する場合、その自分の土地の間に、番地が違いますために自分で境界標を作った、そういうような境界標もここにいう「境界標」に入りますか。たとえば畑なり水田というようなもののまん中に宅地がある、宅地に家を建ててある、そこに生けがきを作ってある、生けがきが土地の境である、こういうような場合に、その生けがきを自分で勝手に切ってしまったというような場合にも第二百六十二条の二に該当する行為か。いかがですか。
  15. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 同一人の所有する幾筆かの土地境界を作っております場合におきましては、本罪の適用を見ないのでございますが、ただ、その数筆のうちのあるものについて、他人に貸与している、つまりそこに賃借権が存在しているとかあるいは地上権が存在するとかいうようなことになりますと、他の権利者と所有者との問には、その境界について利害関係があるわけでございましてそういう場合には、所有者といえどもみだりに境界標除去する、移動するということは許されない、つまり本条の適用を見る場合になると思いますが、そういう関係がなくて、同一所有者の場合に、幾筆かの土地に設けられております立木だとか、そういうものは、かりに所有者が勝手に切ったといたしましても、本罪の適用を見る場合には当たらないというふうに解釈いたしております。
  16. 井川伊平

    ○井川伊平君 そういたしますと、この境界標という観念は、所有権の境といったような意味合いのみではないのですね。所有権と賃借権との境といったような意味合いもこれで標識させるわけですね。
  17. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 二人以上の所有者の間の境界原則とはいたしますが、これは所有権だけを保護するのではなくて、やはり自己並びに自己以外の土地に対す権利権利者、その間の権利関係、底面関係を明確にするという趣旨でございますので、所有権だけを保護するという趣旨からの規定ではございません。
  18. 井川伊平

    ○井川伊平君 別の点でございますが、所有者を興にする隣接地の境、あるいは両方とも自己の所有地ではあるけれども、一方を貸しているという場合のその境、そういうものに所有者が境界の標識を立てた、あるいは木を植えた、ところが、その植え込みを、あるいは設立した人がそれを除去する場合、これは有罪になるのだ、犯罪成立するのだという見解ですが、ただ、そうした場合に、もう一つ条件が伴うのではないか。隣接の人が、やはりお隣の人の植えたのが境であるという認識があるとか、あるいは一般人もそれを境界標であるとかいう認識ができた上であるとしたら、自己のこしらえた標識であろうが、自己が植えた木であろうが、それを損壊することは本罪を成立するであろうけれども、隣接地の所有者もまだそれを境としては認めておらぬ、一般人もそれを境として認めて便宜に供していないのだ、そういうような場合にはいかがですか。
  19. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 仰せの通り、そういう場合にはそこまで適用範囲を広げて考えておらないのでございまして、ここにいう境界標なり、立木、境界の標識なりは、やはりこの本人だけじゃなくて、ある程度関係人が境界だとして承認しているというか、いやいやながらの場合もありましょうけれども、とにかくそれが境界だとして一般に認められておる、そういう客観的な事実を前提といたすわけでございますから、今仰せのように、まだ境界としてだれも考えていない。一応そこへ境のようなものを所有者が打ったにすぎないというような場合でありますれば、ここにいう、境界にはならないというふうに解釈いたします。
  20. 井川伊平

    ○井川伊平君 一般的という言葉をお使いになりましたが、一般的ではなく隣地の所有者が、お隣の人がこしらえた境で、あれでけっこうだという、一般的でなくてただ隣接の所有者が認めただけでも、それは、こわせば本罪が成立するのじゃありませんか。一般的ということになれば、範囲が広くなります。
  21. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) そこは社会通念に従って理解しなければならない問題ではありまするが、隣地とその今の所有者との関係が現に争いになっているということについて、お互いに承認しないというような場合もあるわけでございますが、それならば自由自在でいいかというと、そこにあります境界というものは、直接利害関係人ではないけれども、もう昔からそこに境界になっているのだといううことを、ほかの人も知っているのだというようなある程度の客観性も持った標識、境界標であることを要するというふうに私ども理解しておるわけです。
  22. 井川伊平

    ○井川伊平君 それはあなたのお話の、昔からあるようなやつなら、コケのついたようなやつなら問題がないが、こしらえて一年たったとき、一年めにこわすかもしれませんがね、そういうような場合を考えますから、一般の人は、そこにそんなような標識があるかないか知らぬけれども、少なくとも所有を異にする人が、隣接地の人が、あの境はあれでけっこうなんだという、それだけで、それを破損した場合には、一般的に認められていなくても、この本罪が成立するのじゃないか。
  23. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 仰せのように、積極に解します。
  24. 高田なほ子

    高田なほ子君 資料をちょっとお願いしたいのですけれども……。いただきました資料の中に、不動産不法侵害関係資料五の、「民事第一審通常訴訟新受事件の種類別件数表」をちょうだいしてあります。これは地方裁判所と簡易裁判所不動産をめぐっての訴訟受理件数が種類別に書かれてあるようですが、たとえば地方裁判所で、土地所有権に対する訴訟の受理件数は、昭和十年からだんだん数がふえて、三十三年には千四十三件という数字がごこに掲げられておりますが、今この法律逐条説明の中にもありました、ように、民事の訴訟の手続が必ずしも適正迅速に行なえない向きもあるので、刑事罰をここに併用するという旨の御説明があったが、この受理件数が、どのような形で受理されているのかという資料が、いただいた中にございませんので、その資料がありましたら一つ提出をしていただきたいことが一つ。  それからもう一つの資料は、最も悪質なものに対して侵奪罪を適用するという御説明があった。今、委員長の質問の中にもありましたが、刑法民法との相互関係というものは、かなりデリケートな作用をすると考えられます。こういう意味で、悪質な不動産会社、これらに対して常業取り消しによって不法を押えるという手は幾らでもあるはずだと思うわけなんですが、もし悪質な不動産会社に営業取り消しの処分をしたというような資料があれば、そういう資料をちょうだいしたいと思います。  以上二件の資料をお願いしたいのですが、委員長において善処されるようにお願いしたいと思います。
  25. 大川光三

    委員長大川光三君) ただいま高田委員から請求されました資料を、適当な時期に御提出を願いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  26. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) この民事事件の力は、裁判所でございますし、私どもの方で個々の民事事件の実態を、検察庁を通じまして調べるとい、こともなかなか困難でございます。これはもう全く統計から引っぱり出したのでございまして、一般的に平均してどのぐらいの訴訟がかかるものであろうかというようなことを調査しますことを、私どもいろいろ考えてみたのでございますが、ある特定の事件について報告のありましたのを掘り下げまして、その一審、二審、審理の状況、そういうものは、若干の事例につきましてはわかっておるのでございますが、そういう程度のものしか私どもの手としてはできないのでございますが、それでよろしゅうございましょうか。
  27. 高田なほ子

    高田なほ子君 できる限りのものでけっこうです。  ちょっとこれはお尋ねする分になると思うのですが、やはり資料関係でお尋ねしたい。それは、いただきました不動産不法侵害関係資料の三の中にあるのでございますが、大体この資料三の方を拝見いたしますと、市立とか市有とか市営とかいう、いわゆる地方公共団体に属する一つのケースだと思うのです。全部これ、そうだと思う。そうじゃなくて、私有のものについての資料というのは、なかなかむずかしいのじゃないかと思いますが、この点はどうなんですか。
  28. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) お手元にあります資料三の、「各都市における不動産不法侵害実情について」と申しますのは、仰せの通り各都市の所有地、あるいは管理地、公有地、こういうものについての調査の資料でございます。これは各地方団体にお願いをいたしまして、調査をしたのでございますが、これは割合にわかるわけでございます。ところが、私の地についての不法占拠状況は、先ほどの民事裁判の実体がつかみにくいのと同じように、なかなかわかりにくいのでございます。そこで、商工会議所あたりには、相当個人から苦情なり相談なりを受けておることを聞きましたので、日本商工会議所に連絡をいたしまして、東京、大阪その他五大都市の商工会議所が、それぞれその会議所の会員といいますか、その方々から実情調査いたしまして、それを私の方へ報告してくれた資料がございます。ここに差し上げますと非常にいいのでございますが、各地から来ておりますから、これは各地で作った資料でございまして部数がありませんために、差し上げられませんから、この中から調整をいたしまして、できるだけ御要望に沿うような資料を作って、差し上げたいと思います。
  29. 高田なほ子

    高田なほ子君 もう一つ。この資料三のことについて伺いたいのですが、この資料三を拝見いたしますと、大阪、それから神戸、それぞれの所の不法占拠の実例があげられております。その実例のあとに、不法占拠に対する対策というようなものが、案として大へんけっこうな案が出ているようでございます。本法を制定される前に、こういう資料をお集めになってこういうけっこうな対策についても、本法を制定するために参考にせられたのですか。それとも、この対策案というものを出されたのは、どういうふうな処置をされてきたのですか。
  30. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) それぞれ各地から案を出して下さっております。大阪などでは、法律家も入りまして、十分検討されて、一つの試案というものを作られているわけです。その試案を持って私のところまでわざわざ皆さんおいでになって、説明をされるというような労までとっていただいております。従いまして、これらの意見につきましては、もちろん慎重に考えましてそれは先ほど委員長の御質問の際にも触れてお答え申し上げたのでございますが、不法占拠に対する救済保護を求めるに熱心でありますると、他面、民事裁判への影響等も生じて参りまするし、先ほど申しましたような不遡及原則に反するような結果を免ずるような事態も、法律解釈上生まれて参りまするので、慎重に研究をいたしました上で……。法制審議会でもやはりこの問題は議論されまして大いに議論の末に、政府案の方がよかろうということに結論が出たような次第でありまして、十分検討いたしたのでございます。
  31. 高田なほ子

    高田なほ子君 どうも政府案は各地の対策かなり具体性を持った、実態に即した対策の貴重な意見が書かれてありますが、今度の法案を拝見しますと、地方の深刻なこの悩みに対して、これに即応して、これを解消するために立案したのだというようにはどうも考えられない。地方のこういう意見が法律案にどうも盛られていないような気がする。今、委員長にあなたが御説明になりましたが、法律論としては、私はなるほどそうだというふうに非常に傾聴するわけですが、現在の不法占拠そのものについて、本案が何らの解決策を与えることになり得ないということについて、何かもう少し具体性がないものかというような気がしたものですから、各地方の具体的な対策というものに深甚な敬意を表しながら、何とかこれがこの法律案の中に組まれなかったものかという気がするのですが、それはどういういきさつなんでしょうか。
  32. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) お言葉まことにありがたく拝聴いたしたわけでございます。一言に申しますと、不遡及原則を貫いていくということが、刑事罰を設ける場合の最大の要請でございますので、この点に疑問が出てくるような立法ということは、やはり慎まなければならないというような考えが強くありましてこういう結果になっておるわけでございますが、ただ、それにいたしましても、現在世間でいわれております不法占拠は、非常に段階的にいろいろな形がありましてどれもこれも、もしこの法律がもっと早くできておればこの法律によって引っかかるというような不法占拠ばかりではないと思うのでございます。要するに、不法占拠が不完全な形で占拠されておるというのがかなりある。従ってその土地の上に新たに家を建てて占拠が完全なものになるということが、今後この法律施行後に起こってくれば―家を建てて、もうこの土地は自分のものとして使うんだということが外部にうかがえるというような行為がございますれば、そのときに不法侵奪になる。そういう場合もそうたくさんあるとは思いませんが、そういうことも解釈上これは言い得ることでございます。  それからもう一つは、刑法にこれを掲げるということによって、今まで不法占拠を、やりどくだというような考え方に対し、これは頂門の一針になると思いますし、民事訴訟は、この法律ができたからといって、従来とちっとも変わりないわけでございますが、もしこの法律が前にあれば、犯罪になるような行為だというような不法占拠の事案でございますれば、民事訟訴におきましても原告、被告の論争におきまして、不法占拠をして犯罪になるような不法占拠をしておる側は、やはりそれだけひけ目を感ずるわけでございますし、訴訟も促進もされていくということが考えられるのでございます。要するに、ここで一つの筋目を立てていくということになりますので、直接はれものを切開するような効果は期待できないのでございますけれども、やはり刑事立法効果は、私は相当高く考えておるのでございます。
  33. 高田なほ子

    高田なほ子君 これは資料ともつかないと思いますが、資料だと思って聞いていただきたいのですが、罹災都市借地借家臨時処理法というものが出ましたですね。あの当時、やはりこの法の運用について各都道府県にいろいろなこまかい資料をお出しにな。たんじゃないかという気もするのです。そういう気もするのです、古い話ですから。そういうごの法律施行に伴って運上用のいろいろな注意というものについて御指導なさった面があれば、それが文書で残っているんじゃないかと思いますから、あれば資料として御提出いただければ非常にしあわせいたしますけれども、この点いかがでしょうか。
  34. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) これは民事局の方の所管になっておりますが、民事局に連絡いたしまして、当時の解釈通牒のようなもの、その他資料的な文書がありましたらば、資料として提出いたします。
  35. 高田なほ子

    高田なほ子君 資料を私要求したいのは、その法律は確かに非常にいい法律ですが、それが根を引いていって、それで係争が残っておるというような部面もあるんじゃないかと思う。その法律施行にあたって、十年間の期限を切って、話し合いでもって借地権なりそういうものを取得できましたでしょう、その法律で、当時。その法律施行にうまくいかなかった部面などがあってごたごたを起こしたんじゃないかというような気もする面もあるので、法の運用について、こまごまの御注意があったように思いますから、そういう意味での資料なんです。
  36. 大川光三

    委員長大川光三君) ちょっと速記をとめて下さい。    [速記中止〕
  37. 大川光三

    委員長大川光三君) 速記を始めて下さい。
  38. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 高橋参事官からちょっとその点につきまして、とりあえずの意見でございますが、述べさせていただきます。
  39. 高橋勝好

    説明員(高橋勝好君) 今御指摘の点は、僻地借家臨時処理法によりまして、従来家を借りていました者すなわち借家権者が、その建物の敷地を使うことができるようになった、これが臨時処理法の趣旨でございますが、実は当時、その借家権者が明らかにその土地を使う権利があったかどうか、権利もないのに家をそこに建てたんじゃないかというようなことで民事訴訟が相当係属しておる事例は、従来から伝えられておりましたわけでございますが、しかし、いずれにしましても、そのように権利があったとかなかったとか、あるいはすでに借地権が消滅したとか、現に存続しておるというふうな関係の事案は、民事上いかほど争いが起きておりましても、新たに制定されるこの法律適用範囲外でございまして、それは従前通り民事訴訟として扱う、これが犯罪として処罰対象になるということはないわけでございます。
  40. 大川光三

    委員長大川光三君) ちょっと私からも関連して伺いますが、ただいまの御説明は、結局、罹災都市借地借家臨時処理法というのと、それからいま一つ、接収不動産に関する借地借家臨時処理法なんという法律がありますね。この両法律のいずれかに該当する場合でしょうね、今のお説の実例は。
  41. 高橋勝好

    説明員(高橋勝好君) さようでございます。
  42. 大川光三

    委員長大川光三君) それでよく趣旨はわかりました。
  43. 高田なほ子

    高田なほ子君 適用しないというなら、私は別に資料は要りません。本法適用しないと今おっしゃっているんですからね。  私、ほんとうにあなたがそうおっしゃるんだから信じたいのですけれども、やはりケース・バイ・ケースで取り扱われるべき筋合いの説明がさっきあったんです。悪質なる者に対してとか、善意の了解者があっても、あとで善意でない第三者がここに介入してごたごたを起こすなんということになれば、これは必ずしも法の適用外というふうには考えられないのですけれどもね。
  44. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 私は民事の方のことは詳しくないのでございますが、少なくとも、はっきり申し上げますことは、二百三十五条の二の侵奪罪の適用になりまするのは、この法律ができてから後に発生した事件のみなんでございまして、過去において不法占拠されておりますものは、これは適用外なんです。適用外でありますが、民事訴訟としては、明け渡しの請求などは、これは従来と同じようにできる。ただ、御承知のように民法規定によりまして、不法占拠の場合でありましても、二十年間平穏、公然に占有しておりますと、所有権を取得するという規定もあるのですから、現実に十年も前に不法占拠したやつを、この法律ができたからといって、所有者が勢いついて取り返しにいくというようなことになりますと、やはり所有者といえども、不法侵奪の罪に触れるという場合があるわけでございます。過去の、終戦直後に起こってきて臨時処理法で争いになっておるような不法占拠であったかどうかというような問題は、もうすでにそのときから勘定しても、もう十年以上になるわけでございますし、おそらく本法適用を見る場合はない、むしろそれを侵奪すれば、侵奪した人の方が罰せられる結果になると思います。
  45. 大川光三

    委員長大川光三君) ほかに御発言もなければ、本件に関する本日の質疑は、この程度にとどめたいと存じます。   ―――――――――――――
  46. 大川光三

    委員長大川光三君) 次に、先ほど当局から御説明を受けました下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案につき、質疑を行ないます。御質疑のある方は御発言を願います。
  47. 高田なほ子

    高田なほ子君 法律案を拝見しまして、この三ページの一番冒頭に改正の地名表が載っておりますが、これは何と読むのでしょうか。
  48. 津田実

    政府委員(津田実君) 「はびきの」であります。
  49. 高田なほ子

    高田なほ子君 それから四ページの冒頭にある町は、何という町ですか。
  50. 津田実

    政府委員(津田実君) 「むこうまち」であります。
  51. 高田なほ子

    高田なほ子君 土地の名前は大へん読みにくいので、あちこちに読みにくいのがございますけれども、ちょっとこれを聞かしていただきたいのです、大へん事務的な質問にわたりますけれども……。
  52. 大川光三

    委員長大川光三君) 便宜、委員長からお願いしますが、この下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律を、令部一つ朗読願いましたならば一番わかると思います。御迷惑ながら朗読を願います。
  53. 津田実

    政府委員(津田実君) それでは朗読いたします。    下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律   下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律昭和二十二年法律第六十三号)の一部を次のように改正する。   別表第四表名称の欄中「古市簡易裁判所」を「羽曳野簡易裁判所」に、「上下簡易裁判所」を「府中簡易裁判所」に改め、同表所在地の欄中「長野県埴科郡屋代町」を「更埴市」に、「大阪府南河内郡南大阪町」を「羽曳野市」に、「広島県甲奴郡上下町」を「広島県府中市」に、「鳥取県日野郡黒坂町」を「鳥取県日野郡日野町」に、「青森県下北郡田名部町」を「大湊田名部市」に改める。  別表第五表藤沢簡易裁判所管轄区域の欄中「茅ケ崎市」を「茅ケ崎市  大和市」に改め、「大和町」を削り、同表浦和簡易裁判所管轄区域の欄中「与野市」を「与野市 蕨市」に改め、「蕨町」を削り、同長大宮簡易裁判所管轄区域の欄中「北本宿村」を「北本町」に改め、同表熊谷簡易裁判所管轄区域の欄中「千代田村」を削り、同表小笠原簡易裁判所管轄区域の欄中「源村」を削り、「若草村」を「若草町」に改め、同表長野簡易裁判所管轄区域の欄中「須坂市」を「須坂市 篠ノ井市 更地市大字稲荷山、桑原、野高場及び八幡」に改め、「稲荷山町 八幡村 塩崎村」及び「篠ノ井町」を削り、同表屋代簡易裁判所管轄区域の欄中「埴科郡の内」を「更埴市(大字稲荷山、埴科郡の内桑原、野高場及び八幡を除く)に改め、「屋代町」及び「埴生町」を削り、同表岩村田簡易裁判所管轄区域の欄中「本牧町 布施村 春日村  協和村」を「望月町」に、同表松本簡易裁判所管轄区域の欄中「松本市」を「松本市 塩尻市」に改め、同表新潟簡易裁判所管轄区域の欄中「内野町」を削り、同表新津簡易裁判所管轄区域の欄中「五泉市」を「五泉市 白根市」に改め、「白根町」を削り、同表巻簡易裁判所管轄区域の欄中「和納村」、同表高田簡易裁判所管轄区域の欄中「高士村」及び同表堺簡易裁判所管轄区域の欄中「泉ケ丘町」を削り、同表古市簡易裁判所の項を次のように改める。同表京都簡易裁判所管轄区域の欄中「南区」を「南区(久世川原町、久世上久世町、久世高田町、久世中久町、久世殿城町、久世大藪町、久世築山町、久世大築町及び久世東十川町を除く)」に、頂表右京簡易裁判所管轄区域の欄中「右京区」を「右京区(大原野北存日町、大原野南春日町、大原野上里北ノ町、大原野上里南ノ町、大原野石見町、大原野灰方町、大原野石作町、大原野上羽町、大原野小塩町、大原野外畑町及び大原野出灰町を除く)」に改め、同表向日町簡易裁判所の項を次のように改める。  同表亀岡簡易裁判所管轄区域の欄中「南桑田郡」及び同表桜井簡易裁判所管轄区域の欄中「初瀬町」を削り、同表五条簡易裁判所管轄区域の欄中「白銀村 賀名生村 宗檜村」を「西吉野村」に改め、同表和歌山簡易裁判所管轄区域の欄中「海草の内紀伊村を削り、海南簡易裁判所の項を次のように改める。  同表すさみ簡易裁判所管轄区域の欄中「江住村」、同表新宮簡易裁判所管轄区域の欄中「下里町 太田村」、同表松阪簡易裁判所管轄区域の欄中「西外城田村」、同表大台簡易裁判所管轄区域の欄中「大杉谷村」、同炎福井簡易裁判所管轄区域の欄中「国見村」、回護武生簡易裁判所管轄区域の欄中「白山村」、同表富山簡易裁判所管轄区域の欄中「池多村」、同表安芸西条簡易裁判所管轄区域の欄中「寺山町」並びに同表編山簡易裁判所管轄区域の欄中「府中市」及び「蘆品郡」を削り、同表上下簡易裁判所名称の欄中「上下」を「府中」に改め、同簡易裁判所管轄区域の欄中「甲奴郡」を「府中市蘆品郡甲奴郡」に、同表本郷簡易裁判所管轄区域の欄中「美川村」を「美川町」に改め、同表児島簡易裁判所管轄区域の欄中「児島郡の内郷内村を削り、同表若桜簡易裁判所管轄区域の欄中「丹比村八頭村」を「八東村」に改め、同表八橋簡易裁判所管轄区域の欄中「由良町」を削り、同表黒坂簡易裁判所の項を次のように改める。  同表長崎簡易裁判所管轄区域の欄中「村松村長浦村」を「琴海村」に、同表大村簡易裁判所管轄区域の欄中「彼杵町千綿村」を「東彼杵町」に、同表天草簡易裁判所管轄区域の欄中「龍ケ岳村」を「龍ケ岳町」に、同表屋久島簡易裁判所管轄区域の欄中「下屋久村」を「屋久町」に、同表加治木簡易裁判所管轄区域の欄中「溝辺村」を「溝辺町」に、同表川内簡易裁判所管轄区域の欄中「高城村」を「高城町」に、同表志津川簡易裁判所管轄区域の欄中「歌津村」を「歌津町」に、同表村山簡易裁判所管轄区域の欄中「東根市」を「東根市尾花沢市」に、同表田名部簡易裁判所管轄区域の欄中「下北郡」を「大湊田名部市下北郡」に、同表八戸簡易裁判所管轄区域の欄中「南部村」を「南部町」に、同表苫小牧簡易裁判所管轄区域の欄中「写真村」を「写真町」に改め、同表根室簡易裁判所管轄区域の欄中「花咲郡」を削り、同表綾南簡易裁判所管轄区域の欄中「岡田村久万玉村」を「綾歌町」に改め、同表徳島簡易裁判所管轄区域の欄中「板東町」を削り、「秋月を除く)」を「秋月を除く)大麻町大字板東、萩原、津慈、川崎、檜及び三俣」に改め、同表鳴戸簡易裁判所管轄区域の欄中「堀江町松茂村」を「松茂村大麻町(大字板東、萩原、津慈、川崎、檜及び三俣を除く)」に改め、同表高知簡易裁判所管轄区域の欄中「土佐市」を「土佐市南国市」に改め、「後免町野田村岡豊村香長村」を削り、同表赤岡簡易裁判所管轄区域の欄中「岩村」を削り、同表安芸簡易裁判所管轄区域の欄中「安芸市」を「安芸市室戸市」に改め、同表新居浜簡易裁判所管轄区域の欄中「新居郡」を削り、同表野村簡易裁判所管轄区域の欄中「黒瀬川村」を「城川町」に改める。    附 則  1 この法律は、昭和三十五年六月一日から施行する。  2 この法律施行前に従前管轄裁判所で受理した事件は、その裁判所で完結する。  以上であります。
  54. 大川光三

    委員長大川光三君) ありがとうございました。御質疑のある方は引き続いて御発言を願います。
  55. 高田なほ子

    高田なほ子君 これは、町村の統合で名前や何かが変更されたように理由としては述べられておりますが、たとえば、今御説明いただきましたページのうしろから二行目のところですが、「「与野市」を「与野市 蕨市」に改め、ということになっておりますが、これは従来の与野市だけのものを、裁判管轄区域を与野市、蕨市に改めたという意味ですか。
  56. 津田実

    政府委員(津田実君) 従来、浦和簡易裁判所管轄区域の中には、与野市と蕨町が入っておったわけでございます。ところが、蕨町が蕨市になりましたので、「与野市 蕨市」に改め、蕨町を次で削ったわけです。
  57. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうすると、以下そういうところが二、三個所ありますが、従来の管轄区域とちっとも変わらない、名前だけ変わったということになりりますか。
  58. 津田実

    政府委員(津田実君) その通りでございます。
  59. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうしますと、この法律改正することによって、人員配置について新たな考慮をするというところは別にないわけでございますか。
  60. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) この程度改正でございますと、特段にはないと存じます。
  61. 高田なほ子

    高田なほ子君 この法律改正に伴って適正配置を新たにするというのではなくて、適正配置をしなければならないというような所はないでしょうか。
  62. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 人員の適正配置につきましては、これは裁判所全体の事件の増減によりまして勘案するわけでございまして、今回の管轄区域法律改正に伴いまして配置を改める問題はないと存じます。
  63. 赤松常子

    ○赤松常子君 関連して。こういう変更は、そこの住民の方々に周知徹底させる方法を親切になされるのでしょうと思いますけれども、そういう点の御配慮は、何かしていらっしゃいますか。
  64. 津田実

    政府委員(津田実君) これは大体市とか町村の名前が変わった場合が多いわけでございます。大体この法律公布される前に、すでにもう住民の方々は御存じで、ただそれを法律上整理するというような意味にすぎませんので、住民の方々は御承知です。ただ名前の変更自体は、まあ正式には官報でわかるわけでございますが、大体は看板の書きかえ等によってわかると思います。
  65. 赤松常子

    ○赤松常子君 住民の方々にはもう迷惑をかけないように、不便のないようにということは、万全になっておると考えてよろしゅうございますね。
  66. 津田実

    政府委員(津田実君) 名称変更につきましても、あるいは管轄区域の多少の変更につきましても、全部厳密に調査をいたしまして、その土地市町村当局それから関係の機関、たとえば弁護士会といいますか、そういうところの意見を十分聞きまして改めておりますので、もちろん住民の方々の御反対はないわけであります。
  67. 大川光三

    委員長大川光三君) 速記をとめて。    〔速記中止]
  68. 大川光三

    委員長大川光三君) 速記を始めて。  ほかに御発言もなければ、これにて質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 大川光三

    委員長大川光三君) 異議ないと認めます。  これより討論に入ります。御意見のおありの方は賛谷を明らかにしてお述べを願います。―別に御発言もなければ討論はないものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 大川光三

    委員長大川光三君) 異議ないと認めます。  これより採決に入ります。  下級衆判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  71. 大川光三

    委員長大川光三君) 全会一致でございます。よって下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案は、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続等につきましては、先例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    (異議なし」と呼ぶ者あり)
  72. 大川光三

    委員長大川光三君) 異議ないと認め、さよう決定いたします。  以上をもって本日の審議は終了いたしました。  次回の委員会は四月七日午前十時に開会いたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後零時九分散会