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1960-03-30 第34回国会 参議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月三十日(水曜日)    午後零時十一分開会   —————————————   委員の異動 本日委員津島壽一君辞任につき、その 補欠として吉江勝保君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     大川 光三君    理事            井川 伊平君            後藤 義隆君            高田なほ子君    委員           大野木秀次郎君            林田 正治君            吉江 勝保君            千葉  信君            赤松 常子君            辻  武寿君            市川 房枝君   国務大臣    法 務 大 臣 井野 碩哉君   政府委員    法務省司法法制    調査部長    津田  実君    法務省人権擁護    局長      鈴木 才蔵君    厚生省公衆衛生    局長      尾村 偉久君   最高裁判所長官代理者    事務次長総務局    長事務取扱   内藤 頼博君    人事局長    守田  直君    総務局総務課長 長井  澄君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○裁判官報酬等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣提出衆議  院送付) ○検察官俸給等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣提出衆議  院送付) ○裁判所職員定員法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○検察及び裁判の運営に関する調査  (人権擁護に関する件)   —————————————
  2. 大川光三

    委員長大川光三君) ただいまから法務委員会開会いたします。  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案、以上二件を一括して議題に供します。  まず、本日提出されました資料、すなわち「裁判目平均報酬等について」及び「検事総長次長検事及び検事長俸給額表」等について、それぞれ当局より御説明を願います。
  3. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) それでは裁判官平均報酬等につきまして、昨日御提出を命ぜられました資料につきまして、御説明申し上げます。  まず、裁判官平均報酬単価でございますが、これは高裁地裁家裁庁別、各判事判事補簡裁判事別にここに掲げました。まず高裁判事では七万六千百四十九円、地裁七万一千三百二十八円、家裁七万二百六十一円。判事補につきましては、地裁三万一千八百五十七円、家裁三万三千三百二十四円。簡易裁判所判事、これは地裁の項になりますので、地裁の欄に掲げましたが、五万一千七百二十四円となっております。  次に裁判官平均扶養手当暫定手当額でございますが、高裁では扶養手当が千二百八十二円となりまして、扶養家族が二・四人というふうになります。それから暫定手当が九千二百五十六円。地裁になりますと、扶養手当が千三百五十一円、一・二五人の扶養家族があるという割合になっております。暫定手当が四千四百三十円。次に家裁でございますが、扶養手当が千二百二十四円となります。これは二・七人の扶養家族があるというふうになります。暫定手当が五千八十二円ということになります。  次に裁判官平均在職年数でございます。これは、ここに掲げました年数は、いずれも判事判事補になってからの在職年であります。簡裁簡裁判事に任命された後の在職年でございます。  まず、判事補大学を卒業いたしまして、司法試験に合格いたしまして二年間司法修習生期間がございますが、正確にもし司法修習生期間を入れるとすれば、判事判事補につきましては、この数に二年をプラスする必要があろうかと思いますが、この表では、まず判事補在職年数以降のもの、それから簡裁判事になってからのものを掲げました。判事平均しますと二十四・二年、判事補の五・六年、簡裁判事は十六・一年でございます。  次に、裁判官学歴別人員でございますが、判事大学卒九百二十四人、専卒等百七十四人、判事補大学卒六百二十人、専卒等四十四人、簡裁判事大学卒百三十六人、専卒等三百三十八人とございます。なおこれに掲げませんにしたが、簡裁判事専卒等とあります、三百三十八人のうち二百四十七人が中卒になっております。それから三表と四表とにおきましては、簡易裁判所判事判事及び簡易裁判所判事判事補につきましては、それぞれ判事及び判事補の方に掲げてありますので、念のため申し添えます。
  4. 津田実

    政府委員津田実君) 本日御提出申し上げました資料につきまして御説明申し上げます。  まず、最初の衷は、検事総長次長検事検事長俸給額でございます。これはそれぞれ人数がきまっておりますので、しかも俸給額法律で定まつておりますので、これは平均額は出してございません。なお検事総長次長検事検事長、以上は扶養手当がありませんので、家族構成はちょっとわかりかねるわけですが、大体において二人内外ではないかと考えられます。  第二枚目は、この認証官たる検事長以上のものを除きました検事及び副検事についての表でございます。そこに官署区分がございますわけですが、最高検察庁十五人、高等検察庁九十八人、地方検察官署——これは地方検察庁並びに区検察庁でありますが、それが八百五十六人。平均給は、最高検察庁に勤務する検事は七万七千十二円、高等検察庁に勤務する検事は六が九千七百十三円、地方検察庁並びに区検察庁に勤務する検事につきましては五万七十一円、検事全体の平均が五万二千四百七十五円。それから副検事につきましては、これは区検察庁のみに勤務しておるわけでありますが、これは六百八十六人でありまして、平均額が四万一千三百三十一円ということになっております。  それから第三枚目でありますが、これは扶養手当調べでございますが、やはり同じような分け方になっております。人員も同じになっておりますが、大体におきまして、最高検察庁におきましては一人平均千二百九十三円、それから高等検察庁におきましては千四百八十四円、それから地方検察庁におきましては千三百八十三円でありまして、大体、扶養人員は、最高検が二・五人、高検が三人、地方検察庁並びに区検察庁が二・六人ということになっております。それから副検事につきましては大体平均が二・八人でありまして、額は千四百八十四円ということになります。  それからその次、四枚目でありますが、これは学歴調べでございますが、大体、新旧制大学卒以下をずっと分けております。なお、検事、副検事につきましては、それぞれの試験に合格したものでありますが、その分はもちろん掲げてございません。途中に検定試験等経ておると思われますが、その分はむろん掲げてございません。最終学歴のみを掲げたわけでございます。  それから、一番最後の大きな表でありますが、これは検事及び副検事勤続年数調べでありまして、これは各年次別人数別にできております。ただ、注にございますように、検事勤続年数は、その前に裁判官あるいは弁護士の在職した年数を含んでおります。それから副検事につきましては、検察事務官裁判所書記官警察官等国家公務員在職年数を含んで計算してございます。これによりますると、検事平均勤続年数は十四・八年、副検事二十七・四年、こういうことになっております。なお、裁判所からお出しになりました表との対比上、ここに一つ数字を恐縮でございますがお加え願いたいのでございますが、それは、検事のうちで十年以上勤続者、すなわち判事資格を有する者、つまり裁判官で申せば判事と同じ資格になっておる者、これの勤続年数は二三・三ということになります。それを平均勤続年数の欄にお書き加えいただければ幸いであります。つまり十年勤続以上の検事平均勤続年数は二十三・三ということになります。昨日申しましたように、若干裁判官より下回るということでございますが、判事の方は、先ほど裁判所の御説明によりますと、二十四・二年ということになっておりますので、約〇・九年、検事勤続年数が少ない。これは検事の定年が六十三年であるというようなことから生じておる差であろうと思われます。  以上がこの表の御説明でございました。なお、法律につきましては、裁判官報酬等に関する法律検察官俸給等に関する法律特別職職員給与に関する法律、それから法務省設置法法務省組織令抜粋部分、これをお手元に差し上げてあります。
  5. 大川光三

    委員長大川光三君) 以上をもって資料説明は終わりました。資料並びに法律案に対し御質疑のある方は御発言を願います。
  6. 千葉信

    千葉信君 最高裁にも法務省にも同じことが言えると思うのですが、平均報酬額というか、普通いわれる平均給与額を必要だと私が考えたことは、たとえば、きのうの委員会でも問題になりましたが、裁判官優位性の問題、御答弁によりますと、最初の出発当時においては大体四割方高い水準俸給額がきめられておる。いろいろの経過もあったのでしょうが、現在ではその点はかなり不利な取り扱いになってきておる。こういう点と、やはり国会としても十分どの程度水準にすれば適正かどうかという問題とか、あるいはまたそれをやるにはどういう方法が解決の方法として考えられなければならないかという、そういう問題も含めて検討する必要があるのです。従ってそういう角度からいいますと、私の言葉が足りなかったかもしれませんけれども、平均俸給額を必要とした理由は、たとえば通例民間でもあるいは国家公務員の場合でも、その比較対象になっておるものに平均俸給額というものがあります。あるいは平均給与額というものがあります。これは国家公務員一般職職員等の場合には、大体現在二万一千四百円ぐらいが現在の平均俸給額です。その一般職職員との比較という問題は直ちに俸給額だけでは比較はできない。これはおわかりの通りそれぞれの職種も違い、構成する職員の内容も違います。年令も違い、勤続年数も違う。そういう関係があるから、簡単に数字比較することができないから、従ってそのためには判事裁判官の場合、あるいは検事の場合等においても、その勤続年数であるとか、学歴であるとか、いろいろな要素が比較対象として考慮されなければならぬことになる。そういう角度からまじめにその比較検討をするために必要だと考えて、私は実はその平均俸給額ないしは平均報酬額というのは、たとえば最高裁における一般職員を除いた裁判官、それから秘掛官の総体の平均額判事だけの俸給額とか、あるいは簡裁判事だけの平均俸給額じゃなくて、全体の平均俸給額は一体幾らぐらいになるか。一人々々では私はこれは事情もあって比較にはならないと思います。それからその職種だけでは比較にならない。そういう角度から横事の場合にも同様の考えで、私のきのう要求した資料というのは、そういう考えの上に立っての平均俸給額、全体を含んだ平均俸給額最高裁の場合にはこの法律対象になっておる職種の場合の平均俸給額、それから法務省の場合では検事全体の平均俸給額は一体幾らになっておるか、それぞれ検事総長を除いた全体の平均俸給額というものが、俸給を決定する場合の、審議する場合の比較検討対象になっていますから、まあ実はそういう資料がほしかったわけです。しかし、まあおそらく、出てきたこの資料を見ますと、今ここで計算し直すということも簡単にはできないでしょうから、私はやむを得ずこの資料基礎にして午後から質問に入りたいと思いますが、これではほんとう比較対象にならない。一般職職員との比較もできない。まあしかし、今あらためてそれをここでどうこうということになると、また事がめんどうになるし、委員長もだいぶ急いでおられる御様子だから、何かまたその点について、特に私が議事引き延ばしでもはかろうとするのではないかという誤解を与えるおそれがありますから、この資料基礎にして午後から質問に入りますから、この点は私としては、ほんとうはほしい資料をいただけなかったということだけ申し上げておきます。そういう事情ですから……。
  7. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 一般職との比較というような資料をというお話でございますが、昨日求められたのがこの資料でございましたので、ただ念のために調べてきたものを御参考までに報告しまして、審議参考に供したいと思います。  第三の裁判官平均在職年数の点、これはただいま申し上げましたように、判事判事補は、いずれも司法修習生期間二年をプラスして考えるべきものでありまして、判事は二六・二年、判事補は七・六年というのが在職期間に算入さるべきものだと思います。それの判事の全体の平均報酬は七五二千五十九円となります。そのうち一二%の調整を、管理職手当を受けている者は、八万七百六円、本年度の予算で一八%のものができましたが、もしこのうち一八%の調整を受けるものとすれは八万五千二十九円となります。それから判事補の方は、これは平均しますと三万三千三百二十四円ということに平均報酬がなります。これを行政官比較いたしますと、判事の方は次官クラスに当たる。一等五号がいわゆる次官でございますが、七万四百十円というのが次官平均俸給になるように考えられます。これに皆二五%の調整がついておりますので、二五%の調整をいたしますと、八万八千十三円ということになりまして、調整額がつくことによって、判事報酬の方が手取りが少なくなっているということがわかるわけでございます。次に判事補に相当するところは、これは本省の係長クラスでございます。五等二号、一万七千三百十円ということになります。起動手当の点を考えますと、大体三万四百二十五円程度であろうと思われます。そうしますと、判事補につきましては、優位を保っておるということが言えると思います。参考までに申し上げておきます。  なお判事平均年令を申しますと、四十八・五才、判事補は三十三・三才、簡裁判事は六十才ということになっております。
  8. 大川光三

    委員長大川光三君) 他に御発言もなければ、午前中の審議はこの程度にとどめ、午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時三十六分休憩    ——————————    午後一時三十八分開会
  9. 大川光三

    委員長大川光三君) これより委員会を再開いたします。休憩前に引き続き質疑を行ないます。  御質疑のある方は御発言を願います。
  10. 高田なほ子

    高田なほ子君 昨日大臣に対しまして、裁判官優位の原則について政府所信をただしたわけです。その所信の概要は、私確認するところによると、憲法の七十九条、八十条の精神をそのまま尊重されている、裁判官優位の原則は当然これは認めるべきものである、こういうような御答弁をいただいて終わっておると思うわけです。その次に私質問いたしましたことは、政府裁判官優位の原則を認められるというお考えはわかるけれども現行の裁判官報酬法の二条の二、それから九条、十条、こういうようなものからいいますと、一般公務員の例に準ずるというような項目もあって、必ずしも裁判官優位の原則というものが保たれない仕組になっているのではないか。従ってむしろ憲法法の七十九条、八十条の意思を引いて明文化される必要があるのではないかというふうにお尋ねをしたわけです。その途中で大臣御退席になりましたので、そういう質問に対して大臣の御答弁をお願いをしたいと思います。いかがでございますか。
  11. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 裁判官待遇につきましては昨日お答え申し上げました通り憲法七十九条、八十条において、裁判官というものはほかの官吏と違って優位な待遇憲法としては考えておることはこれはその通りでございまして、従いまして、それに基づいて、法律上におきましても裁判官待遇というものが他の官吏よりは優位に規定をしておることは御承知の通りであります。ただ、この今お示しになりました裁判官報酬等に関する法律の第二条の二というのに、他の官吏俸給に、一般官吏の例に準じてという言葉を使ってございますが、これは特別号俸とか手当の問題については一般官吏に準じた規定を置いておりますけれども、俸給に対しましては特別の扱いをしている点も多々ございますので、裁判官は他の官吏よりは優位に待遇されていると解釈しているわけであります。
  12. 高田なほ子

    高田なほ子君 御主張ではございましょうけれども、きのう最高裁判所側からのこの問題についての見解をやはり一応尋ねたわけでありますが、裁判官報酬法ではおっしゃる通り特別号俸の設定、各種手当の支給、ベースアップ等一般官吏の例に準ずる旨の従属的な規定を置いているわけでありますが、しかし、原則としてやはりこの裁判官優位の原則というものはくずれちゃいけないものであるにかかわらず、結果としては昭和二十五年度以後の裁判官一般官吏との較差は次第に消滅をしてきておる。初め四割の差があったものが今はだんだんとその差が縮められていっていることを最高裁判所の方からも御説明をいただいたわけであります。従いまして、裁判官俸給ではなくて裁判官報酬、これは明らかに俸給というものと報酬というものとは内容的に実質的に違う意味を含めて報酬という言葉が使われているのだろうと私は思います。前の委員会でもこの俸給報酬という問題については論議されたごともございます。そうだとすると、この一般官吏の例に準じてというような、これをもう少し明確にして、裁判官優位の原則というものが明文化される方法というものをおとりになる必要があるのじゃないか、こういうふうに私考えるのです。手当としてではなくて、手段としてではなく、規定として明文化する必要があるのではないかと、こういうふうに考えますが、この点はいかがでございましょうか。
  13. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) まあ字句の問題は、いろいろ解釈があると思います。俸給報酬は学説によれば同じだという説もございますが、まあ違った使い方をしておりますところに、また何かの意味があるかもしれません。これは政府委員から答弁をさせます。  まあ少なくとも政府考え方としては、裁判官一般官吏よりは優位に扱っておるという気持ですべての規定ができておるわけであります。たまたま手当であるとか、あるいは特別号俸であるとかというようなことについては、一般官吏の例に準じて扱っておるというふうな程度でありまして、報酬自体につきましては、他の官吏よりは優位に扱っておることは今日事実でございまして、ですから、法の書き方いかんによってそれを変えていくという必要があるかないか。こういう点は私どもとしても検討してみなければならぬと考えております。
  14. 千葉信

    千葉信君 関連。今の大臣の御答弁ですが、事実とずいぶん食い違った答弁をされております。まあその手当関係等報酬という観念に含まれるか含まれないかは別として、主として公務員に対する、官吏に対する、あるいは一般職員に対する俸給と、それから裁判官に対する報酬は、対比すべきものだし、同じものだし、それからまたたとえば諸手当等関係においても、これは当然の報酬としてその問題ごとに、項目ごとに労働の対価として支給されておる。そういう意味では俸給報酬も諸手当も同一の意味だと思うのです。ところがそういう考えからすれば、今の大臣答弁は明らかに事実と食い違っておる。何か依然として政府法律解釈もそうだし、実際上裁判官に対しては優位をもって待遇しているとか、方針を考えておるという御答弁でしたが、きょう御提出願った、あなたの方からお出し願った資料、それから最高裁の方からお出し願った資料について説明を聞きました。その説明によると、次官の場合と裁判官の場合、判事の場合、この関係がですね、次官の場合には七万四千五十円、それに対して今度は二五%の調整額がついておる。ところが、それと大体同等と考えられる判事の場合は七万二千五十円という平均賃金。そうすると、判事諸君の全体の平均した賃金額報酬額が、優位を認め、あるいは有利な条件待遇しているどころのさたではなくて、金額においてもはっきり二千円違っておる。報酬俸給がですよ。それから諸手当関係等一つの例としての特別調整額関係では次官は二五%、判事の場合には今度上げられて一八%、これは一体どういうことですか。
  15. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 私が優位と申し上げましたのは、たとえば最高裁長官報酬でありますとか、あるいは最高裁判事報酬というものが、検察官に比べれば優位に扱われている。また高検高裁を比べましても、裁判官の方が現在は優位になっておりますが、そういう具体的な事例をとって申し上げているわけでありまして、一般的に今お話のように、次官と比べてどうかというようなことになりますと、私もまだそこまで研究しておりませんので、政府委員から御答弁いたさせます。
  16. 津田実

    政府委員津田実君) ただいま各省事務次官につきましては、その初任は大体一等級の四号だと思われます。しかしながらこの次官勤続年限等から考えますると、これはやはり二十年以上二十五年というような程度の人である。そういたしまして、今度はそれでかりに対比して参るとどういうことになりますかと申しますと、やはり判事におきましても、その程度の人は、本俸においてほぼ同額をもらっていることになる。問題は今の管理職手当、つまり特別調整の問題だと思うのでありますが、管理職手当は、御指摘の通り事務次官については二五%であり、判事についてはこのたび一八%あるいは一二%というふうになるわけであります。ところが事務次官につきましては、これは各省事務当局最高俸でありまして、少なくとも一人であり、しかも同一人が同じ職を占めることは、大体二カ年以上にわたっております。そういたしますと、少なくとも毎年採用されました人員のうち一人は、事務次官にならないで終わるということになる。そういう次第でありますが、判事の場合におきましては全部が判事、四号なら四号になり得るわけであります。勤続年数に応じてなり得るという意味におきまして、いわば選ばれた人と、一般になり得るというような比較で、一面考えてみなければならぬ。それから判事につきましては、先刻来申し上げましたように、八万三千九百円という特号がある。それまでに一号がある。一号があると申しますことは、これは東京、大阪等帝国大学総長のみにほとんど認められている給与である。ところが判事の場合は、それまで、普通の段階の勤続年数によってそこまでいけるわけであります。そういう意味におきまして、あらゆる状態比較してみました場合にも、やはり実質的に判事の方が相当優位になっていると、こういうふうに中さなければなりませんので、昨日申し上げましたように、最初判事最高旅一般職最高俸とは四割の差があった。今日では本俸においてそれほどの差がないということも、昨日申し上げました通りでございまして、その後各省一般職につきまして、管理職手当ができたということによって、その優位の差が縮められたということも事実であります。しかしながら、一面また判事につきましても、管理職手出を最近認めることになりましたし、また、ただいま申し上げましたように、その占めるポストになり得る人というものを考えた場合においては、やはり一般職職員よりも相当の優位が保たれる、かように申し得ると思うのであります。
  17. 千葉信

    千葉信君 午前の答弁に関連しての金額を上げての質問ですが、それに関して今御答弁を聞いていると、勤続年数の問題だとか、あるいは任用条件等を並べ立てられて、さながら現在の状態が合理的であるかのような態度で御答弁をされているのですが、しかし何と強弁してみても、最初裁判官優位の待遇等が、今日較差が縮まったどころではない。私の聞いている数字では、完全にくずれ去って逆になった。こういう点に対しては、私は最高裁も同様だし、法務省としても、そういう問題については適正な状態に、もと通り状態に返すという努力をしなければならない。当然そういう努力は義務づけられているはずなんです。そういう観点からしますれば、いたずらにその現在の状態に対して弁解がましい言葉を並べ立てて、国会の審議が終わればそれでよしということじゃなく、私はやはり憲法上認められている裁判官の優位なら優位というものを、その処遇においてもはっきり確立するという努力をしなければならぬ。それがまた僕は将来の法務大臣の責務でもあると思う。そういう点からいえば、今のたとえば平均俸給額関係で、明らかに判事諸君の場合、ダウンしているという状態等に対しては、むしろ次官の任用の条件だとか、あるいは勤続年数なんかを理由として、ここで釈明がましいことを言うよりも、どうして本来の姿に返すべきか、もしくはまた返す方法として、法務省としてはどういう方法考えているかというそういう立場で答弁するのでなければ、単にきよう質疑が終わって、この法律が成立すれば、また問題は先にいって、しかもいつまでも解決のめどもないという格好になる。法務大臣は一体裁判官の優位という条件をはっきり将来に向かって解決する用意があるのか、もしくはまたその方法についてどう考えているのか、その点を私は承りたい。
  18. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 数字をあげての御説明でございましたから、政府委員からお話のような数字でなく、現在はこういう状態だということの実情を申し上げたのでありまして、実情はこうだから、もうそれで私ども満足しているということは決して申し上げません。裁判官の問題につきましては、法務省としても従来からその優位性について十分に考慮して参っているのでありますが、今日お話のように、あるいは較差も縮まったとか、いろいろな点においてその優位性が少し低下したというようなことがありますれば、私どもとしましても、十分その点考慮して、今後とも裁判官優位性については、努力をしていかなければならぬという気持を持っておりますが、その気持におきましては、本年も管理職手当の問題を予算で多少解決をしたようなわけでありますが、それはそれで決して十分だというわけではないのであります。今後も十分その点に関して研究もいたし、努力もいたしたいと考えております。
  19. 高田なほ子

    高田なほ子君 御努力と御決心を今承ったわけでありますので、さらにその努力を具体的にどういうふうになさるかという点について少し御意見を聞かしていただきたい。判明は報酬を受けます。検事俸給を受けます。それから一般官吏もこれは俸給を受けるわけであります。判事検事一般官吏とこういう三つ並べて、裁判官優位の原則を打ち立てるという場合には、制度上の任官年数が同じであるにもかかわらず、その間に何にも較差は存在してないということであれば、これは裁判官優位の原則はちっとも打ち立てられないわけです。同じ年数勤めて、検事の方はこの定年六十三、ところが判事特号を前に設けたことがあるわけですが、この特号検事の六十三才に比べることのできない年令判事特号をつけた。同一の任官年数のものの間に起こってくる較差が、それじゃ何もないことになってしまう。検事は六十三のものにあって、これがもう終わりで、今度は裁判官判事の方は、この六十三才以上のものに特号をつけたわけです。だからもし裁判官優位の原則を立てるとするならば、やはりこの検事と同じように、六十三というふうに特号を受ける年令を引き下げなければ、裁判官優位の原則ということは、私は実際的に打ち立てられないんじゃないか、そういう疑問を一つ持っているわけです。これは研究問題として一つ研究していただきたい。優位優位というけれども、そういうところを取り上げてみると、必ずしも優位にならないんじゃないかという疑問が一つあるのです。  それからもう一つは、十年以上在職しておる判事補の場合、当然判事に任官されるという保障はないわけです。最高裁の方でも、今度だいぶ気をもんでおられるようでありますけれども、最高裁の方で気をもんで、十年以上在職した判事補判事にするということではなくて、当然判事補の職にあって、十年以上在職した者は判事に任官できるという保障の道が、やはり明文化されて作られなければならないのじゃないか、そういう気持が私はするわけです。こういうような点については、大臣はお考えになってみたことがありますか。この点伺っておきたい。
  20. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) そういう点について十分研究したことがあるかというお話ですが、話は伺っております。しかし、それについて十分どうしたらいいかという研究までは、正直の話まだ私はしておりません。十分また研究してみたいと思います。
  21. 高田なほ子

    高田なほ子君 法務大臣は非常に正直におっしゃるので、全く私敬服するわけです。しかし正直だけが取り柄であってはならないので、こういう重大な問題は、まことに最高裁の方には失礼な申し分かもしれませんけれども、閣内においての発言権は何も持っていない。その持っていないところでごたごたしているものだから、大臣も御承知のように、今度はこれを解決するつもりかどうかしりませんけれども、きわめて事件の多いといわれる簡易裁判所判事を、今度一ぺんに三十人も定員をぶち切らなければならないというところに追い込まれているようであります。これはあくまでも私の推察でありますが、そういうばかなことをして、そうして十年以上在職した判事補の昇進の道を開こうなんということは、これは不合理もはなはだしいことです。こういう抜本的な問題について、当然開かれるべき昇任の道というものは、法的に保障されるような方途を講ずることが、裁判官優位の原則を保持するといわれる大臣の御意思にふさわしいことじゃないか、こういうことでありますから、一つこの点は早急に御研究をお願いしておきます。  もう一つは、判事判事補も、任期は十年です。任期満了後に必ず再任されるかどうかというような保障は私聞いたことがありません。検事の場合は任期の制限はないようであります。そうだとすると、裁判官優位の原則というものは、こういう点からも非常に不安定なものになってくるので、報酬の面だけではなく、身分上の問題、こういう点についても、何らか確固たる対策を講じなければならないのではないかという気がするわけです。この点について、判事並びに判事補の任期十年、その任期満了後においての措置というものは、いかに保障されなければならないかという問題について、法務大臣として何かお考えになっておりますか。
  22. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 判事の任期につきましては、これは憲法規定がございますので、従って憲法上そういう取り扱いになっておる。それであとの保障の問題につきましては、これは最高裁において適当に善処しておられることと私どもも信じ、また現在、そのために非常に不都合が起こっておるという事態もございません。ですから今別段御説のように、特別な立法の必要はないんじゃないか、こう考えております。
  23. 高田なほ子

    高田なほ子君 これは裁判所の方に聞かなければわかりませんが、任期満了後における再任の問題については、何も不都合がないときわめてあっさりと言い切っておられますが、必ずしも私はそうは行っていないのではないかという気もするわけです。この点については、再任されているからいいというものではなくて、再任される保障、こういう問題については、御研究いただく必要があるのではないかと私は考えますが、そうあっさりと、しごく簡単にお考えにならないで、もう少し裁判官の身分保障という問題について取り組んでいただきたい。
  24. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 私の申し上げましたのは、憲法の建前から申し上げたので、必ず再任されるということなら、任期を切る必要はないわけでございますから、そういう点は裁判所において、適当に運用の上において善処しておられる、こう信じておると申し上げておる次第でございます。
  25. 高田なほ子

    高田なほ子君 それは十年という任期は保障されているかもしれませんけれども、この任期満了後の保障、任期満了後まで憲法は何も保障していないという、そのことを私は心配しておるわけです。不都合が起こらないようにお考えを願いたい。私がここで再三裁判官優位の原則、それから身分上の保障、それから昇進上の保障ということを、大臣にむしろきびしく要求するゆえんのものは、ほかにあるわけです。それは大臣も御承知のように、閣内でもいろいろ御相談があったと思いますが、定員法は昭和三十六年度を期して全廃されるという方向にあるようです。御承知のように現行定員法は、昭和二十四年の占領政策の指令に基づいて公務員人員整理を目途として、現状に合おうが、合うまいが、緊縮政策の一環として現在のこの定員法というものが出発した。しかし、だんだん仕事が実際にはふえてきた。しかし定員法は、その後いろいろな形でもって内容的に動かされているようでありますが、一応法的に定員というものが、縛られてくる。仕事の量はふえてくるのです。しょうがないものだから、今度定員外の人間というものがだんだんとふやされてきている。ですから、今大臣もずいぶん頭を悩まされる点ではないかと思いますが、予算の面でも大体三本になっていると思います。定員内の者とそれから常勤と非常勤、この三本建になって、予算も配分していかなくてはならないという非常にややこしい事態があるわけであります。特に最近事務量が、あるいは事業量がふえて参りますので、これに対する人員数の適正な配置というものについては、現状に迫られた結果、現在の定員法を全廃すべきであるというような意見が出てきたのだろうと思いますし、私はこれが全廃される方向に必ず行くのじゃないかという気がするわけです。この点、閣議ではこの方向をどういうふうに御検討になっておられるのかということが質問一つ。  もう一つは、もし来年度に定員法が全廃されたときに、現定員というものが、新しい定員法を全廃したあとの何といいますか、既得権といいましょうか、既得権になるというようなおそれはこれは十分にあるわけです。ですから私どもは、報酬の問題にしても、あるいは定員の問題にしても、ここでよほどがっちりと大臣にも腹を固めていただかないと、来年度のに礎になるようなことが、ここでやすやす通ってしまったのでは、はなはだ裁判所にもお気の毒で、事務量が激増する裁判所の定員というものについて、私はここで既得権を確保しなければならない。その既得権は、どちらが先というような計画というようなものについても、相当やっぱり計画的な御研究をいただかなければならないのではないかとにらんでおりますが、こういう点の見通しはどうなんだろうか。  それから現在の裁判官の定員、それから下級裁判所職員の定員、給与、これらのものを含めた現行法について、三十六年度の定員法全廃を目ざしていかなる構想をお持ちになっているのか。またいかなる計画を今立てつつあるのか。立てていないのか。この点について伺わしていただきたいと思います。
  26. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 定員法の廃止の問題につきましては、閣議でもいろいろ問題になりました。本年からぜひやれという意見も党内にもございますので、閣議でも十分検討いたしましたが、本年はやらぬ、来年は、やるやらないは別として、やることを目標にして一つ研究をしてみようということに閣議では大体話がきまっております。従って、明年度あるいは廃止ということになるかもしれませんが、廃止になりますれば、その保障はどうするかという御質問でございますが、これは予算面にはっきりその数が出てくるわけでございます。保障は、定員法があるとないとにかかわらず、現在の者をそう急に整理するというような問題は起こってこないと私は信じております。
  27. 高田なほ子

    高田なほ子君 もう一つ答弁が漏れておりますね。もう一つ大事なことがあるわけです。来年から大体そういう方向にいくとすれば、これは裁判宵の定員並びに裁判所職員の定員、きのうも千葉委員がだいぶ突っ込まれたのですが、臨時の職員の問題なんかもあるわけですが、相当やはり今から適正な配置、事務の適量措置のためにいかなる職員が配置されなければならないか、臨時職員はどういうような方向にこれは持っていかなければならないかというような計画というものをお立てにならないと、裁判所は弱腰というのですか、閣内における発言権がないというのですか、どうもほかの方と比べてみると、定員や何かもべらぼうに低くなっておりますから、これは早急に御計画をお立てになられて、来たるべきものに確固たる資料を添えて主張のできるような態勢をお作りになる必要があると思うので、その点をお尋ねしたわけであります。
  28. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 本年廃止しないということもそういう意味だと思うのです。十分やはり態勢を整える必要があると思いますので、法務省としましても、裁判所側と十分連絡をとりまして、そういう点は遺憾なきを期したいと思っております。
  29. 千葉信

    千葉信君 関連。今の閣議の方針について少しお尋ねしたいと思います。その定員法で各省ごとの職員の定数がはっきりときまっておる場合には、その改変は国会で論議されるわけです。それに基づいて結論が出される。今お話のように定員法廃止ということになれば、一利一害があって、特に予算の関係でははっきりしているから、その職員の数等については、身分の関係も保障されるという意味大臣の御答弁でした。なるほどその予算額は、これまた国会で審議される問題ですから、その意味では政府の方ではむやみに定員を増減したりすることはできないという条件はそこにはある。しかし、少なくとも国会において、定員法に基づくその定数が適当かどうかということについて論議される場が失なわれるということは、それだけ当該職員にとっては私は不安感を与える方法だと思うのです。それに対しては、一体そういう不安を除去するための方法としては、政府は何も考えないで、ただ予算ではっきり計上されているからいいじゃないかという、そういう考えだけに終始しておられるのですか。その点を伺いたい。
  30. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 定員法をかりに廃止するといたしますれば、むろん定員法を審議する機会だけはなくなりますが、予算面ではっきりしておりますから、予算の審議にあたって十分御審議を願えば、それでいいのではなかろうかと思っております。
  31. 千葉信

    千葉信君 それが、その問題になる点は、その年度の予算額の増減によって職員の数がふえたり、減らされたり、簡単に問題の処理が行われるという懸念が出てくるわけです。それは決して法務政策上私は当を得たやり方ではないと思うのです。そういう見地からみれは、大臣の言うように、予算だって国会で審議されるじゃないか、従ってそういうことはないという簡単な割り切り方では問題は済まぬと思う。かりに大臣に、立場をかえて職員の立場に立ってものを考えてもらえば、これは簡単にわかることだと思う。片方の定員法があっても、首切りの問題は絶えず起こってくる。しかも職場の実態に沿わないにもかかわらず、定員数が制定されて、絶えずそのことから不満が起こってくる。非常勤職員等の問題は別にしても、問題が起こってくる。それを今度は定員法の論議も行われないで、予算だけという関係になったら、これは相当職員諸君にとっては問題だと思う。その点は、政府は簡単に割り切ってやるという態度をきめるということは私は相当問題が出てくると思う。そういう点については閣議では全然触れないで、今大臣答弁のように、しごく簡単な割り切り方で論議されているのですか。
  32. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 先ほど来申し上げておりますように、まだ閣議で決定したわけではないのでございまして、本年は廃止しない。明年度は廃止するという要望が非常に強いものですから、こういう要望に対して、上分検討してみようという意向をきめただけでありまして、今お説のような点もまたその研究の中にはおのずから入ってくるのではなかろうかと考えております。
  33. 高田なほ子

    高田なほ子君 それでは、それに付随して一つ要望をしたい。これは今の問題ですが、現在定員外の臨時雇というのが五万人もいるのです。その五万人は、千葉委員も指摘されたように、予算でもって減したりふやしたり勝手にできるわけですよ。問題は現在いる五万に余る定員外の臨時雇というものを、今度定員法が廃止されたときにどういうふうにすべきか、特に裁判所職員は臨時に雇っているのが多いですよ。しかも今までずっと、昭和三十五年にちょっと十四人か十五人臨時雇があったようですが、それから二十六、二十七、二十八、二十九、三十、三十一、三十二と、ほとんどあまりなかったようです。去年百四十一名ですか、うんとふやして、ことしは百六十何人ですか、先ほど資料をいただきましたが、ふやしているわけです。これは裁判所だけでもそれだけの問題ですね。一般だと、これは今言うように五万人以上にも及ぶ臨時雇というものを、今度定員法が全廃されたときに、どうするかという問題はかなり大きな問題だと思うのです。政治的な問題でもあると思う。法務大臣は、少なくとも裁判所職員について、昨年来急増している。この臨時に身分を持つというような不安定な者について、いかなる方法をとるかという点については、一つ単に予算ではなくて、とくと身分の問題、それからそれらの任用の問題等について、抜本的な御研究を今からしていただきたい。これは私の非常に強い要望ですが、いかがでございますか。
  34. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 十分研究もしてみたいと思っております。
  35. 大川光三

    委員長大川光三君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  36. 大川光三

    委員長大川光三君) 速記を始めて。  それでは当局に対して質疑がありますれば……。
  37. 千葉信

    千葉信君 いろいろな、かなり問題がありますけれども、私は単刀直入に問題点になる点を最高裁の方へお尋ねしたいと思います。最高裁の方から積極的に出された資料にはなかったけれども、私どもの質問に、あるいは要求に応じて出された資料には、最高裁の内部、裁判所の内部等にかなり定員外の職員があるということが、きよの提出された資料ではっきりしてきました。三十四年度現在その数が百五十五人というふうにはっきりしてきました。これは今度の定員法の改正に基づいて現在の全体の職員の欠員の状態から見ますと、九十五人でしたか、欠員数があることになっていますから、その欠員の補充という格好に必ずしも簡単に持っていけない職種職員がこの定員外の職員の中にはかなりいるようです。主としてその特殊常勤職員と呼ばれる諸君は、用人あるいはまた用人と雇員との中間的な職種の人が多いようですが、今度の最高裁の予算の中には、なるほど三十五年度分として千四百四十五万一千円計上されておりますが、これだけ予算が計上されていて、しかもその雇用されているその臨時職員の立場からすれば、非常にその身分が不安定な状態にさらされている。私の聞くところによりますと、最高裁は臨時職員の使役の仕方は非常に巧妙をきわめている。さすがに法律を扱っている官庁だけに、法律にひっかからないようにうまい工合にその点は操作をされている。たとえば、現在いるその臨時職員等については、この年度末で一回首を切るというか、やめさせるというか、その携わっている仕事が全然なくなったわけではないのにそういう措置を講じて、そうしてまた再び来年度この新しい予算で臨時職員を採用するという方法がとられようとしている。  そこで、私のお尋ねしたいのは、今いるこの百五十五人、三十五年度では百三十九人ということを言っておりますが、この職員の中に、たとえば国家公務員に対する臨時退職手当法に基づく退職手当の支給が必要となっている者があるに違いない。たとえ一日ごとに切りかえて採用した場合でも六カ月以上継続採用した場合には、国家公務員退職手当臨時措置法に基づいて手当を出さなきゃならぬという条件がはっきりきまっておるはずです。この百五十五人のうち何人該当者がおりますか。私の方でも調べておりますけれども、ここではっきりと御答弁を承りたいと思います。
  38. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 百五十五名のうち百名くらいおります。
  39. 千葉信

    千葉信君 退職手当支給を必要とする臨時職員が百名くらいですか。この問題を次長にお尋ねするのはちょっと酷かもしれませんが、こういう取り扱いをあなた方は一体どうお思いになるか。これは法務大臣にもせっかくおすわりいただいておるから一緒にお答えしてもらいたい。実際仕事は、職種がどうであろうと、普通の常勤職員とあまり変わらない態様で勤続しておる。ただその定員法の関係あるいは国家公務員法との関係から、臨時職員という格好で非常に不利な扱いをされて、しかも、今回また予算が継続されて、三十四年度よりもその臨時職員関係の予算は増額されておるのです。百四十一人分から百六十一人分に三十五年度は増額されておる。増額されておるにかかわらず、この諸君は首を切られなければならぬ。そういう方法をとっておかないと国会の答弁で困ることがあるから、従って法律に触れないように新しく更新していく。こういうやり方は、その雇用制度における模範的な立場をとらなければならない国家のやり方として、法務省最高裁もひとしくそういう立場をとらなければならないはずのものが、どうして一体そういう不合理な待遇をしようとするのか。私はその真意がわからないのですが、その点一体政府もそれから最高裁も、然と心得て、今後継続しようとするのですか、それを一つ両者から一人ずつ答弁願いたい。
  40. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 千葉委員の、私に用がないから帰っていいというお話でありましたが、ここにおりますのは、そういったいろいろこまかい点について御質疑のあることを勉強したいというつもりでおりますので、私にそういうこまかいことをお聞きになりましても、これはまだ勉強が足りませんから、よくわからないということを先ほどから申し上げておるのです。実は勉強のためにここにおりますのですから、あまりおいじめにならないようにお願いします。(笑声)
  41. 千葉信

    千葉信君 最高裁の方からあとから聞きますが、人事管理というか、あるいは労務管理というか、そういう立場から、これは大臣はそこで話を聞いていればわかります。おそらく大臣の目の届かないところで働いておる職員諸員の中には、極端な言葉で言うと、こういう不合理な扱いをされている職員がたくさんおるということは、これは大臣は無関心ではいけないと思う。大臣としては、今質疑応答の中にあったように、政府としては脱法行為でこれを使役している。それで急場の間に合わせと、言いながら、実際上は何年も政府に使役されており、十年をこえる者がある。この前の国会でその問題が処理されて、今五年ぐらいの者がまだ残っている。ところが、大事な仕事に関係を持っている最高裁の中にもそういう職員がいる。ところが、調べてみるというと、最高裁はかなり要領よく、年度末には首を切って、またお前は来年使ってやるからなというようなことで、なだめて首を切るようなことをやっている。今度は私の聞くところによると、四月一ぱいだけでもいいから使ってくれという頼みを聞いて、まあ四月一ぱいぐらいは何とかしてやろうという話が進みつつあるそうです。しかし、この諸君はさっきも申し上げたように、百五十五人のうち百人は、りっぱに国家公務員退職手当暫定措置法によって退職手当の支給を受ける権利を持った諸君です。りっぱに勤務が継続しているという何よりの証拠です。こういう扱いを、大臣は、こまかいことは答辨できなくても、一体いいと思うか、悪いと思うかぐらいの答弁はできると思う。不合理か、不合理でないか。労務政策としてそれが妥当かどうかぐらいの答弁は、大臣はできると思うし、すべきだと思う。はっきりお答え願いたい。
  42. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 最高裁の取り扱いにつきましては、私どもも詳しい内容を開いておりませんから、今御質問の点で、いいか悪いか返事をしろと仰せられましても、もう少しいろいろの質疑応答を聞いた上でなら判断できますけれども、まだあなたの御質問だけですから、私の判断の場に至っていない、こうお答えするよりほかないと思います。
  43. 千葉信

    千葉信君 その事実がいなかということを大臣考えておられると思うのですが、もし、私の質問通りだったら大臣はどう思われますか。
  44. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 何かこう不合理のような気もいたします。
  45. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 最高裁の扱いについて、私からお答え申し上げます。今の定員外の職員のことでございますけれども、退職金の支給に該当する者には、やはり退職金は当然支給しているわけでございます。たとえば予算の年度末に一応やめさせて、また新年度に採用することがあるのじゃないかというような御質問でございますが、特殊常勤職員にせよ、あるいは臨時用員にせよ、そのときの仕事の状態に応じて必要な場合に採用するわけでございまして、それは仕事の量と、そのときの予算を実施する面の実際の予算上の状況によりましてきまるわけでございまして、ただいまお話がございましたように、ことさら何かこう法をくぐって意地の悪いような採用の仕方、あるいは期限のきめ方をしているわけではございません。  なお、数字を多少申し上げますが、特殊常勤職員が二月十五日現在百十二名おりまして、このうちの百名が、先ほどお答え申しましたように、退職金を受ける資格を持つ者でございます。それから臨時職員の方は百五十名おるわけでございます。
  46. 千葉信

    千葉信君 今御答弁を聞いておりますと、何か臨時職員、特殊常勤職員等関係は、仕事がその日ごとに更新されるとか、切れるとか、ふえたり減ったりするとか、そういう全く臨時的な仕事とか、そういう仕事に従事さしているというような御答弁です。ここに出てきている資料によりますと、そうはならない。なぜかというと、これは昇降機の運転手であるとか、これが五名、火夫十四名、あるいは診療所の看護婦、法廷警備員——法廷警備員のごときは人手が非常に不足のはずです——電話交換手、一体こういう仕事が、あなたの言われるようにその日その日で切れたり、あるいはそこに携わっている職員が明日からは要らないというような、そういう仕事じゃないし、そういう職員でもないでしょう。
  47. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) ただいま御指摘のございました職種は、これは特殊常勤職員の仕事でございまして、これはその日その日の雇用にはなっていないわけでございます。ある期間の定められた採用でございます。それからなお看護婦、それから法廷警備員、これらはいずれも昨年の定員法の改正によりまして、定員に組み入れられておるわけでございます。この減と書きましたのは、この中で定員に組み入れられた分。
  48. 千葉信

    千葉信君 妙な答弁ですが、期限をきめて使用されている職員というのは、どの法律によってきめられている期限ですか。
  49. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) これは裁判所職員定員法の第二条にございます「二箇月以内の期間を定めて雇用される者」というのに該当する者であります。
  50. 千葉信

    千葉信君 それが問題なんですよ。日々雇用という方は、これは一般職職員の場合にも非常勤職員という格好で扱っている。それから一般職職員の場合における定員法でも、今あなたが読まれたと同じように三ヵ月ごとに更新される、つまり二ヵ月ごとに雇用を切りかえていけば、定員法には該当しない職員だということで脱法行為が行なわれているんでしょう。そこが問題なんです。あなたは何かこの裁判所職員定員法の第二条をたてにとって、正当な雇用のような顔をされますけれども、これはその法律にそうなっているから、その法律の裏をくぐってこういう職員を無制限で採用したりしているところに、ここに問題がある。二カ月ということは二ヵ月以内ということであって、二ヵ月以内の期間でもって使用される場合には、定員法の定員内の職員には該当しないという考え方で臨時職員を、あなた方の場合には特殊常勤職員という名前で呼んでおられます。日々採用の場合でも、日々更新の場合でも、二カ月ごとの更新の場合でも、職員の立場に立てば同じじゃありませんか。そうしてそれもはっきりと予算が何人ということで組まれているわけだから、従ってその採用の仕方というのは、さっきも高田委員が触れましたが、どうしてこういうことが起こるかということは、私がここであらためて言うまでもなく、昭和二十四年に定員法が制定された。仕事の量、それに対応する職員の数なんというものは全然考慮の対象外にして、レッド・パージを主たる目標として職員の首切りが計画された、そのときに定員法が制定されて、どの省庁も十分にその仕事をまかなえないような職員の数になってしまったそこでその脱法行為としての一ヵ月ごとに雇用を新たにする職員の採用方法をあなたの方の第二条によって、——定員法にもその条項がある。そうしてその条文に基づいて採用されている職員の使用の状況が、定員内の職員と全く違わないような勤続の状況とか、あるいは執務の状況とか、そういう条件が問題になってきた、これが定員法の一番の問題なんです。だからこれは昭和二十九年にこの問題が政治問題として明るみに出た当時は、日々雇用の臨時職員を含めると、これは五十四万人いたのです。そうしてそれが今国会、まあその後二回の定員法の改正によって常勤労務者と呼ばれる一般職員の場合の臨時職員、それからあなた方の方の場合のこの特殊常勤職員というのが、定員法で修正を受けたじゃありませんか。そういう従来の経緯から言っても、ここにまたせっかく定員法を改正するというこの機会に、そういう問題のある特殊常勤職員などという二ヵ月ごとに雇用の手続をしなくちゃならないそういう人たちを置いて、法律上からいけばそれは違法行為でないかもしれない。しかし、それによってその二ヵ月ごとに雇用をかえるという手数は別としても、同じ仕事をして働いている職場の職員の立場になったら一体どうですか。労務管理上こういうやり方がいいという判断で今後もやっていくつもりなのか。思う通り定員獲得ができないから、やむを得ずやるというのか。その点、最高裁当局考えをはっきりここで——単にここで答弁して言いのがれすればいいという態度ならば、私はあくまでも食い下がるつもりですから、その点、性根を据えて十分はっきりと御説明願いたい。
  51. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 裁判所の事務の上で常時当然必要な事務につきましては、それだけの定員の増員をしなければならないものと考えます。裁判所の日常の仕事の上におきまして、そのほかにやはり臨時の仕事があるわけでございまして、これはやはり臨時のそういった特殊常勤職員あるいは臨時用員によるほかはないわけでありますが、そういうわけで、今回裁判所の常時の事務量に当たる者といたしまして、用員の六十三名の増員を今度定員法の改正でお願いしているわけでございます。六十三人という数がどうかというような御意見はあろうかと存じますけれども、今日裁判所が恒常的な事務として考えられますところの事務量は、この六十三人の定員の増によってやっていきたいというように考えているわけでございます。   —————————————
  52. 大川光三

    委員長大川光三君) この際、委員の異動について御報告いたします。本日付で津島壽二君辞任、吉江勝保君選任、以上であります。   —————————————
  53. 千葉信

    千葉信君 今度の定員法で増員される分については、私はそれで一応筋は通ると思う。そっちの方は問題じゃない。しかし、そういうふうに六十数人を今回の定員法で増員をして、そうして用員にその関係の仕事をさせるということは了解できますが、一方でそういう措置をとられながら、また片方で、昭和三十五年度で、たとえば電話交換手のごときは七十人、交通事件職員としては二十二人、火夫十四人、掃除夫十九人、こういう定員外の職員を初めから使役することにして、予算定員という格好で予算を最高裁は取っているわけです。定員内で処理する職員の場合の問題は、私は問題にしていないのです。こっちに問題があるのです。なぜこれをはっきりと、こういうふうに……。だれの目から見ても簡単にはなくなる仕事ではない。掃除用員とか、庁舎の清掃用員であるとか、あるいは電話交換手であるとか、火夫であるとか、火夫の従事しておる仕事などは、そう簡単にはなくならないという状態じゃないか、こういうものを一体どうしてこういうふうにしておくのかという問題です。
  54. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) ただいまの御指摘のような職種の特殊常勤職員は、大体庁舎の新設に伴いまする分でございまして、庁舎が必ずしも年度の最初から落成できるわけではございません。そういった場合にそういった臨時の職員を必要とするわけでございまして、この程度職員は、やはり随時必要な場所に配置できるようなやはり仕組みが必要であると存じます。これは庁舎の管理上そのときどきの状況に応じて、やはりこういう制度、こういう仕組みが必要になっておるのであります。御指摘の火夫につきましても、これはやはりそういう暖房の設備のできた庁舎ができました場合に一応必要なわけでございますけれども、これは冬期の期間に必要なわけでございまして、新しくただいま庁舎が落成して暖房の設備ができたというような場合には、その冬期に入りますときから火夫を採用することになるわけでございます。
  55. 千葉信

    千葉信君 そういう答弁の仕方をされると、聞きたくなるのですが、定員法というのは、どういう目的で制定されておる法律ですか。私の了解するところでは、定員法というのは、たとえばどの官庁は職員の数を何人ときめて、そうしてその職員の数によって、その仕事が運営されておる、それを規定したものです。その法律規定の趣旨は、一方ではみだりに職員を使ってはならないということ。と同時に、あまり欠員数がある場合に、それをほうったらかしてはいけない。その法律を忠実に実行しろうということが第一の条件、第三の最も大事な問題は、たとえば行政機関なら行政機関全体の仕事に対して、これだけの職員が従事しておる。つまりこれだけの職員を使役して現在行政事務が運営されておる。従って、その職員の賃金、俸級については、これは国民の税金の負担ですよ、国民に対するこれは一つの約束なんです。そうして正確なその数字に従って国民は公務員給与を負担しておる。いわばこれは単に数をきめただけじゃなくて、定員法の趣旨とするところは、その国民の税金負担の職員の数について、責任をもって明確にきめるということです。それを、はっきり定員法で数をきめながら、一方では法律の抜け穴をくぐって、たとえば最高裁では数は減ってきておるけれども、今回またその定員法の数以外に百六十一人分の予算が計上された。これは国民は知らない、こういうことは。そういう不明朗なやり方を廃して、定員法は定員法本来の立場に立って、はっきりと規制するという態度をとらなければならない。ただしかし、私は全くの臨時の仕事、今あなたの答弁の中にも、なるほどそれは臨時の仕事であろうと思われるような職種一つあげられましたが、そういう臨時の分については、私は否定もしない、反対もしない。そうではなくして、恒常的に同一人が使用されて、絶えずその仕事はなくならないというふうに、退職手当等法律に基づいて退職手当を支給しなければならないような者が過半数という格好で今あなた方の力では使役されておる。こういう分については、結局定員法の改正の際に明確な態度をとって、国会でもこれは責任を負うと同時に、あなた方の立場としてもそういう点をもっとすっきりした格好にする責任は私はあると思うのです。定員法の趣旨をどうお考えですか。
  56. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 定員法につきましては、まことに御指摘の通りだと存じますが、定員法で定められました定員で処理いたします事務のほかに、先ほどから申し上げますような臨時の仕事が出るためにこういった別の採用方式があると応じます。これもやはり予算の制約の範囲内ですることでございまして、これが、そのために決して、何と申しますか、やみであるような、あるいは隠れてやるようなことではないと私は考えるのでございます。なお、こういった臨時の仕事が恒常化して参りますれば、それに応じまして定員法を改正して定員化して参ることも当然のことと存じます。
  57. 千葉信

    千葉信君 まあ政府の力で、大臣答弁通りに、今後定員法をどうするかということは懸案事項になっておるようです。しかし、政府の方で、いっそこの際、定員法は廃止した方がいいという考えになった一番大きな理由は何かというと、こういうやり方をしていたらだめだということです。すこぶる不明朗だ。国民に対してはうそをついている。定員法はこれこれだという人数をはっきりと法律できめていながら、実際上は、ある時期には常勤労務者の数は七万五千人、その他の日々雇い上げという職員の数は、最高裁では、これは全体を含めて五十四万人も使われていた。六十八万人の定員に対して定員外の職員が五十四万人も使われていた時期がある。それが尾を引いてきている。あなた方の場合にも同様です。そういうやり力がいかぬというので、定員法の廃止という問題を政府の方でも真剣に考慮せざるを得ない結果になった。これは非常勤職員とか常勤労務者という形で使役していることは不合理だし、労務政策上当を得たものじゃないという判断からそういう問題が出てきた。そういう政府の現在の考え方からいうと、あなたの答弁は、それと完全に食い違った格好で、これでいいんだという答弁に終止することになるのですよ。考える必要があるということ、この問題を何らかの形で——私は今ここで全部これを定員法に入れろということを言っているのじゃない。このやり方が正しいものかあるいは合法的なものかどうか、そういうことを含めて、好ましい状態かどうかということも今論議の対象になってきているわけです。その際に、あなた方が現在のような最高裁のこの臨時職の職員に対するやり方が妥当だ妥当だと言ってがんばっていると、あなた方今度の国会に出てきて、この前の国会の速記録を引っぱり出されて意地悪されたら答弁に困るに違いない。少なくともあなたは、これはりっぱなものだとお考えになるのでしょうが、しかし、何らかの形でもっと合理的なものか、もっと好ましい形に切りかえなければならぬということを、あなたはお考えになりませんか。
  58. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 私ども最高裁当局として考えますことは、裁判所の事務は、臨時のものはやはり臨時の職員に当たらせるべきであり、恒常的なものは恒常的な職員に当たらせるべきものと思いますが、ただ、裁判所の事務は年々やはりふえて参りまして、臨時であったものが恒常化する場合もあり得るわけでありまして、そういった場合に、当然臨時職員の当たっていた事務が恒常的な事務となり、定員がふえまして、定員化された職員によりましてその事務の処理をせられることは当然だと思っております。  で、定員法が必要かどうかの問題でございますが、これは先ほど政府の方のお取り扱いを法務大臣から伺ったわけでごゆいますが、裁判所の場合に、別のいろいろな問題はあるかと思いまするけれども、予算の方で人員がきまりました場合には、実体的に定員法のある場合とそう大差がないのじゃないかというふうに私どもは考えております。
  59. 千葉信

    千葉信君 最後に、この問題について一つ。時間の関係もありますから、私はこれ以上触れませんが、今いる最高裁関係の臨時職員ですが、これはこの年度末に予算の関係ですが、あなたの方の資料によりますと、前年度よりかえって逆に予算額は千二百三十九万円から千四百四十五万円にふえて、人員の数も百四十一人から百六十一人にふえております。  この際お尋ねしておきたいのは、こういうふうに前年度よりも臨時用員の使役の金額がふえるというこの段階で、今いる臨時職員をどうさるれおつもりか。一説によりますと、もうすでに首切りを申し渡して、しかも一部の者から懇請されて、四月一ぱいは何一かしてやろうという回答もあったということを承りましたが、今いる臨時職員を、こういう条件のもとで、予算がふえ、使役する人員もふえたという段階で、どういうふうに処理されるおつもりですか。
  60. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) これは全く裁判所各庁の仕事の実態と、それから予算の実情によることでございまして、年度末であるから特にこの際やめさせるというようなことでは必ずしもないのであります。しかし、やはり何と申しましても予算が年度末になりますと、まあ余ることはございませんが、足らなかったというようなことから、そういった措置をやらざるを得なかったり、あるいは新年度の予算の実行の見通しが十分立たないために、必ずしも臨時用員が続けられなかったりすることがあるかと存じますが、これは全く各庁の仕事の実態と予算の実行の面によることでございます。
  61. 千葉信

    千葉信君 そういう各庁の事情等によって勝手にでたらめに処理していいということにはならないと思います。最高裁としては、現在いる臨時職員に対して、予算もふえ、人員もふえるというこの段階において、さっきの御答弁のように、退職手当も出さなければならぬ職員がたくさんいる——これはかなり勤続してきているという条件を証明するものです。そういう職員に対して、一体最高裁としては、基本的にはどういう態度で臨むのか。
  62. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 私でも基本的な態度は、やはりこの制度に即応するということだけでございまして、前年度から引き続きまして同様な仕事が新年度にわたってある場合には、やはり臨時職員はそのまま継続するということになるわけであります。またそういった仕事が、臨時のために、なくなれば、それでその職員の仕事は終わるわけでございます。基本的態度といいましても、やはりその制度自体のそれぞれの目的によってきまるほかはないと考えております。
  63. 高田なほ子

    高田なほ子君 それに関連してちょっと伺いますが、退官退職手当の予算は、三十四年度はどのくらいになっておりますか。
  64. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 今資料を持ち合わせませんで、非常に概括的なことを申し上げまして恐縮でございますけれども、退官退職手当は、三十三年度よりは三十四年度、三十四年度よりは三十五年度と、ずっとふえておりまして、今の見通しは退職手当で不自由を来たすことはないと考えております。ただ、その計数を持ち合わせておりませんので、あとで御答弁いたします。
  65. 高田なほ子

    高田なほ子君 概括的な御答弁なんですが、三十三年度の一億千八百万円に比べると三十四年度は大体その倍額くらいになっているはずですね。三十五年度はさらにふえているように思いますが……。
  66. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 三十四年度は大体二億程度でございます。
  67. 高田なほ子

    高田なほ子君 二億五千万くらいですね。
  68. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) それから三十五年度は三億程度になっております。
  69. 高田なほ子

    高田なほ子君 この退官退職手当と、千葉委員のさっきの御質問というのは、非常に関連して考えられるから今伺っているわけです。昭和三十年度では一億二千万ぐらいの予算で、二百八十人の人の退官も含めた首切りがあった。昭和三十四年度は今言うように二億五千万円、三十五年度は今言うようにほぼ三億というふうに、退官退職手当の額はきわめて多くふえてきている。こういう点から見ると、今、千葉委員の指摘されたような希望せざる首切りというようなことが行なわれるのではないかというような予想が、予算面からされる。この点はどうですか。
  70. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) ただいま退官手当の増額が首切りに関連するんじゃないかというようなお尋ねでございましたが、そういうことは全然ありません。これは裁判官の定年退官が非常に増加いたしますので、それで順次ふえてくるわけでございます。
  71. 高田なほ子

    高田なほ子君 裁判官の定年退官というのは何人くらいですか。
  72. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) ただいま定年退官と申しましたけれども、定年退官のみならず、死亡退官、任期終了による退官、任意退官、こういったものでございますが、昭和三十四年度は七十四人でございます。それで、裁判官報酬額昭和三十年度当時よりは相当上がっておりますので、おのずから額が自然増になるわけでございます。
  73. 高田なほ子

    高田なほ子君 それにしても、本年度は三億という今までにない異例な数字を数えているので、千葉委員の指摘されたような行政整理も当然この中に含まれるものと私ども予想して聞いておるのですが、あなたの方がそうじゃないと言えばそうじゃないと私承知していいと思う。
  74. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 御承知のように昨年の十月一日から国家公務員等退職手当暫定措置法が一部改正になりまして、退官退職手当が非常に率が多くなって参っておるわけでございます。それに即応して増加した予算が掲げられているということになるわけでございます。
  75. 高田なほ子

    高田なほ子君 それではもう一つちょっと今の御質問に関連してのことですが、お尋ねしておきたいのですが、さっきいただきました特殊常勤職員定数で三十四年度が百五十五、それからことしは減って百三十九、こういうふうに特殊常勤職員の定数が減ってきておるようでありますね。これは三十四年とそれから本年度分だけの資料をお出しになったようですが、私の調べ資料ですと、昭和三十年度は百九十四、三十一年度が二百二十、三十二年が二百十、三十三年が百六十六、三十四年が百五十五、ことしが百三十九、こういうふうに特殊常勤職員も減ってきているようであります。これに伴って定員化された分が必ずしも定員化されていないのじゃないかという気がいたしますが……。それから臨時職員の定員は、単にこの特殊常勤職員だけではなくて、あなたの方で言うところの非常勤職員、それから常勤的賃金職員、こういう三種類のものがひっくるまっていると私どもつかんでおるわけですが、そうじゃないのですか。特殊常勤職員というふうに数字を出されたけれども、このほかに非常勤職員があるでしょう。その非常勤職員最高裁判所、研修所、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所というふうに各庁に非常勤職員も配分されている。そのほかに賃金職員というのが各庁に配分されている。そのほかにこの特殊常勤職員というのが配分されている。それを全部ひっくるめて、これは臨時職員だと私どもも考えているのですが、そうでしょうか。
  76. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) ただいまお話がございました非常勤職員は、これは大体家庭裁判所あたりの医務室などに勤務している技官でございます。専任の技官が置けませんので、その土地のお医者さんの方に技官としてお願いして職員になっていただいて、そういう方が非常勤職員になっております。定員外に、そのほかにございますのがただいま御指摘の特殊常勤職員と臨時職員でございます。
  77. 高田なほ子

    高田なほ子君 ですから、千葉委員が御指摘になったのは、単にこの表の中にある三十四年度百五十五、三十五年度百三十九という数字だけではなくて、このほかに非常勤職員、それからそのほかに常勤的賃金職員というのがありますよ。ですからこの三種類のものにくるめておるわけでありますから、これの総計は単に百五十五とか、百三十九とかいう、そういう数字ではないわけです。少なくともこれは三百をこえておる数字です。この三つのものをひっくるめた、いわゆる臨時職員の定員の総計というものがおわかりですか。
  78. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) お手元に差し上げました資料によりまして、特殊常勤職員の数、これが百三十九、それから臨時用員百六十一でございます。そのほかに非常勤の職員、これは先ほど申し上げた技官でご奪いますが、それが約四十名——三十九名おります。
  79. 高田なほ子

    高田なほ子君 どうも時間がかかって申しわけないのですけれども、理屈に合わない数字が出てくるものだからつい働きたくなるわけです。たとえば、最近少年事件なんかが非常にふえてきております。それからそのことのための総合研究などについても相当医学的な、技術的な方々が活躍する部面が多いということを私どもは法務省から聞いている。こういうような方々の、非常勤職員というのも内容がわかりませんけれども、とにもかくにも、昨年は四十一名であったものがことしは三十九名に、これは二名減っておるわけです。この非常勤職員の各庁別の配分の数字を申し上げると、家庭裁判所が一番これは多いわけです、いわゆる少年問題がありますからね。家庭裁判所では、昭和二十九年度以降ですが、十、三十年が十五、三十一年が二十、三十二年が二十四。二十八、三十二、こういう工合にふえてきております。これはまあ家庭裁判所の特殊なそういう技術面の仕事がおふえになっているから、こういうふうにふえてきているわけでしょうけれども、ことしはあれですか、また三十九というように、今度は減らしてきていますからね。総体的に減らしてきていますから、減らしてくると、家庭裁判所の事件が多くなってきているというのにかかわらず、必然的にこれは技官の数も減ってくるということになるんじゃないですか。
  80. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) ただいま申しました数字は、三十四年度の数字でございまして、ことし、つまり三十五年度になりますと、技官が四十一名、看護婦が四名、合計四十五名になるわけであります。
  81. 高田なほ子

    高田なほ子君 今御説明がありましたから、一人、二人のことは一応了といたしますが、しかし総体的にいって、裁判所職員というのは、よその庁並みに滅らされてきておりますね。今まで昭和二十四年度以降ずっと数字を私、調べてみた。そうしましたら、最高裁にしても、研修所にしても、高等裁判所にしても、この定員の異動状況というものを見ますと、やはりずっと減ってきておるようです。必ずしも仕事の量に適応しただけに人員がふえておらないのであります。仕事の量はおとといだかの委員会でもって伺いましたから、くどく言いませんけれども、急増しております。非常にふえておりますね。ふえておるにもかかわらず、各庁別の定員の異動の状況を拝見いたしますと、ふえてきておらない。このことは大へん不合理であるとともに、何とかこれはしなけりゃ解決つかないんじゃないかという気がするわけですよ。ここであまり抽象的な議論を言っても困りますから、ちょっと昭和二十四年度から三十四年度までの定員のどういうふうに増減したか、私、数字をあげます。そこで持ってないでしょう、皆さん持っていますか。持っていらっしゃらないじゃないですか。それだから工合が悪いんですよ。これは減ってきています。昭和二十四年では、定員が三万九百四十五名、それからその次の年はちょっと減りまして、二万四百九十一名、二十六年度では二万一千三百九十六名、ここのところ二十五年から二十八年までは二万台です。二十九年になってから、これは臨時国会で行政整理されたんですが、このときに一万九千という台になってきている。それから三十年になっても一万九千で一人もふえない。三十一年でも二万九千で一つもふえてない。三十二年もそうである。三十三年に若干三十人ばかりふえている。三十四年でやはり二十人ばかりふえている。今度三十何人かふやすそうですが、こういうわけで、昭和二十四年を一〇〇とすると、事件数は大体三倍——三・八五倍ぐらいにふえているようですね。何か皆さん方の出した統計を私、調べてみたんですが、仕事の量は三・八五倍にふえている。しかし人間の数は三十四年当時から見ると少ない、今度三十何名ふやしても、二十四年当時よりは少ない定員であって、こういうような不合理なふやし方というものは、どうもここで何時間論議したって、この不合理を、皆さん方が合理的におっしゃる根拠というものは見出せないと思う、数字は正面ですからね。これはもうどうしなければならないかということは、私は御答弁を聞くまでもないことなんで、よくこれは性根を据えて、この事業量に適応するだけの適正配置というものについて、がんばっていただかなきゃならないのじゃないかということを、ほんとうに私は心から、これは皆さんの立場に立っても、またそこにお勤めになる方の立場に立っても、心底からこれは一つがんばっていただかなきゃならないと思うのです。こういう今までのふやし方というものは、予算の範囲内でこういうことをやってきたからこうなっているんじゃないかと思いますが、どうでしょう、法務大臣。約四倍近くも仕事がふえているのに、定員がむしろ減ってきているということ。それから今言うような、非常勤職員——臨時雇のようなものが若干ふえているというようなことでは、これはもう収拾つかないことなので、何とかこれを合理的に打開してもらうような方法を講じなきゃなりません。その方法として時間延長なんていうことは、私どもはまっぴら反対です。このことは人員の方において、科学的に合理的に配置をするのにはどうすればいいかという計画というものを一応やはり立てていただきたいですね。そうでない限りは、私どもはこの法律でふえるからといって、さようでございますかと言って、飛びついて心からお喜び申し上げるという気には、どうもなり切らぬのです、正直のところ。どういうふうにこれは裁判所の方で御計画を進めていかれますか。
  82. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) まことに御指摘の通りでございまして、裁判所の事件が年々増加いたしまして、それだけの負担を負っておりますことは、ただいま御指摘の通りでございます。昭和二十九年に行政整理、これは国家一般の方針に従いまして、やはり裁判所も減員になったわけでございますけれども、しかし、この際にも、やはり事件を扱います職種裁判官、書記官、そういった面の職種につきましては、やはり減員はいたしません。事務の面におきまして、一般の行政庁に準じまして、行政整理による減員があったわけでございます。そういうようなやり方で、裁判所といたしましては、事件の処理には差しつかえないように、できるだけのことはいたしているわけでございますが、しかし何と申しましても、先日も申しましたように、基本的な問題としては、裁判官の増員ができないということ、それのために、もう全く裁判所の今日の訴訟の遅延であるとか、いろいろそういうような弊が生まれているわけでございますが、どうも裁判官の増員ということが、いろいろな面の制約を受けまして、思うようにできない事件ばかりがふえていくというようなのが今日の実情でございます。これにつきましては、法務省におかれましてもいろいろ研究されているようでございますが、また弁護士連合会等の協力も得まして、今後解決していきたいというふうにも考えておりますが、何と申しましても、裁判官の給源と申しますか、求めるのは、弁護士、検察官も含めて法曹界以外にないわけでございます。従いまして、そういった関係方面の協力を得まして、この問題を解決する以外にないわけでございます。  もう一つは、最高裁当局といたしましては、やはり今後の事務の扱いの合理化と申しますか、そういった面に十分の研究をいたしまして、一そう事務の能率化をはかりたいというふうに考えているわけであります。
  83. 高田なほ子

    高田なほ子君 関係方面の協力はもちろん大事だと思いますが、やはり主体になる最高裁判所自体が、もう少し積極的な計画を示されて、こういうところに欠陥がある、これを是正するにこうすべきだというような、やはり五カ年計画でも三カ年計画でも、近代的な裁判所だったら、そういう合理的な計画書というものですかを、お作りになって、やはり関係方面の協力をお求めにならなければ、むだなんじゃないかという気がします。たとえば裁判官の増員の問題にしても、大へん条件がむずかしいと言われるけれども、きのうのあなたの御答弁、黙って聞いていたのですが、簡易裁判所判事のなり手がないと一号たって、それは判事補を三年以上やった方が、ごろごろしているのに、二年以上たった方は簡易裁判所判事さんにだってなれる資格があるのです。そういう方を抜擢しないで、何を一体増員できないと言ってぼやいているのか、ちょっと私どもわからないのですよ。私どもにもわからないことを、関係方面にわからせるような手当をして下さらなければ、やはりこれはまずいのじゃないでしょうか。処理には支障のないようにしていると言うけれども、裁判期間というものは、数字的に見て長くなっていますよ。そういうようなやはり科学的な根拠からの計画書を一つお出しになることが必要なんじゃないでしょうか。裁判所の白書、こういうものが必要じゃないでしょうか。まあ蛇足のようなことですが、裁判官だけではなく、書記官補、これを書記官に昇進させる道等について、どうも積極的でないようです。この点についても、職員の中から、書記官に進める道を開いてほしい、研修所の収容定員なんかもふやしてほしいというような熱烈な希望がある。そういう希望をいれることなしに、裁判官が足りない足りないと手をこまねいておいでになったのでは、やはりますいのじゃないかという気がする。ですから、私は研修所の問題と、書記官補を書記官に昇進させる具体的な方法、何かあれば、この際聞きたいし、特に裁判官ばかりふやしても、ちょうだいした資料にあるように、廷吏の数が三百十八名の欠員ができている。これはことしいただいた資料ですよ。廷吏というのは一つの法廷に何人というふうにきめられてこれは置かれるものだと私は思うのですがね。それなのに三百十八名も欠員を嗣いでおいて、何を一体裁判所はやっておったか。こういう資料をお出しになって、これについて説明がないようなことも私は不満なんです。どういうわけでこういう欠員があるか。裁判官だけでなく、こういう方面の欠員はどういうふうにするのか。事務雇の欠員は千八百三十一名に及んでいる。これが他の種目の人員補充のために相殺されているかどうかわかりませんけれども、どうもすっきりしない幾多の問題をかかえております。今指摘した二、三の問題は、きわめて小さい問題のように思われますけれども、こういう小さな問題がいろいろわからない、協力するにもしようがないという気持を起こさせる大きな原因になるだろうと思うのです。白書の問題と、それから具体的にこれはどういうふうなのかということ、書記官補は一体どういうふうにして書記官にしていくのか、研修所はどうするのか、こういう点について、少し具体的に私を納得さして下さい。
  84. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 書記官の制度につきましては、昭和二十四年以来、最高裁判所に書記官制度調査委員会というものを設けまして、裁判官検察官、弁護士、あるいは書記官の人たちが委員となりまして制度を検討しております。その間に書記官の任用資格であるとか、あるいは研修制度についての問題が討議され、また答申もされたわけでございます。それによりまして書記官の任用資格を定めておりますし、また書記官の研修制度も定められまして、研修所も設立されたわけでございますが、書記官が今後裁判所職員としてどうあるべきかという点でございますが、従来の裁判所構成法時代の裁判所書記の時代とは、さらにこれを改めまして、そうして新しい書記官制度を作りたいというのが私ども最高裁判所の懸案になっているわけでございます。そこで、書記官補から書記官に昇任いたしますのにも、相当これは厳重な条件をつけているわけでございまして、ただそのために、書記官補、これがなかなか書記官になれないということも現実の問題としていなめないのでございますけれども、しかし、私どもといたしましては、できるだけ多く研修の機会を作りまして、昇任の機会を得られるようにしたいということを考えているわけでございます。昨年度あたりにおきましても、そういった意味合いにおきまして、相当期間書記官補の経験を積みました者につきましては、特別な研修によりまして書記官に昇任するような施策を講じているわけでございます。そういったやり方を今後も一そう工夫いたしまして、書記官補がそれだけの実力を持って、それけだの学識を持って、そうして書記官に昇任されるようは道を開いて参りたいというふうに考えているわけでございます。
  85. 大川光三

    委員長大川光三君) ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  86. 大川光三

    委員長大川光三君) 速記をとって。
  87. 辻武寿

    ○辻武寿君 今度の定員法一部改正が通れば、第一審が強化されるはずですが、いなかの方の判事は、近ごろ大都会の方に引っ張られて少なくなっている傾向があるように見受けられるのですけれども、これはどうですか。
  88. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) ただいまのお尋ねの件は、東京地方裁判所に職務代行として派遣されたことを御指摘のことと思います。これは東京地方裁判所に古い事件が相当ありまして、これを新しい刑事訴訟法の精神に基づきまして迅速な裁判をやっていくためには、どうしても古い事件を早く片づけた上でないと、それに取りかかれないというような関係がありまして、一時、各地から合計五名ほどの裁判官に応援に来てもらったというような関係にあるわけでございます。これは本年度、本年度というのは、本年四月以降におきまして、判事の増員ができますれば、それによりまして適正な配置をし、できるだけ早くその点を解決いたしたいと考えております。
  89. 辻武寿

    ○辻武寿君 私は東京と限ったわけではないのですが、小都市からは中都市へ引っ張られちゃうし、中都市からは大都市の方に引っ張られていくという、これは犯罪数の関係からそういうふうになっているのだというようなことも聞いておるのですが、この間、実は鳥取に行きまして、ちょっと寄って聞いてみたのですが、家裁地裁の所長を含めて、六人が定員である。三十四年度からは、七人の定員を六人にされたというのです。減らされたわけです。しかも事件はふえているわけです。それで、五年以上の判事補を、特例として、仕事の面で判事並みにやらせる。月給はそれだけもらっているかというと、よけいもらってない。判事補並みにしかもらってない。非常に事務は負担過重になって困っている。何とか手を打ってもらいたいというような希望もあったのですが、そうなると地方の方は、定員法で幾らか、判事五十人増加するけれども、このやり方によっては、かえって地方都市は弱化しているわけですよ。第一審は強化されないわけです。そういう面について考えておられるかどうか。
  90. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 最高裁判所では、法律に定められました裁判官の定員を、各地方の各裁判所に配置をするという規定を作っております。その配置の基準でありますが、これは過去二年間に裁判所が受け付けました事件数、これが基礎になっております。過去二年間に受け付けました事件数に応じまして——そのほか多少の要素は加わりますけれども——裁判官を按分いたしまして、配置数をきめるわけでございますが、実はことしは、その改める年になっておりますので、ただいま御指摘のような地方につきましては、今度新しい事件数に応じまして、適正な配置が行なわれるかと存じます。これは全く全国裁判所の数に応じてのことでございますので、どこもかしこも、ふえるような場合には、必ずしもふえたからそれだけの割合でふえるというわけには参りませんけれども、最高裁判所といたしましては、事件数に応じて配置定員の方は適正を期しているわけです。
  91. 辻武寿

    ○辻武寿君 定員をふやすということは、非常に私は今の裁判所としては当然だと思いますけれども、そういう配置のやり方がまずいと、全体としてかえって第一審強化にならない。特に地方の中小都市からどんどん引っこ抜いて、大都市へ持ってきてしまうというようなことは考えものである、そうすると、裁判官が少なくなって、弁護士も裁判官検事も全部顔なじみであって、お互いに戦い切れない、ほんとうのことを言い切れなくて、遠慮し合って、それでそのために裁判長が何代もかわって裁判が片づかないし、裁判が遅延しているということはそういうところが響いているのです。そういう点を考えて、よく配置をしてもらいたいと思うのです。
  92. 内藤頼博

    最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) そういう点につきましても十分留意をいたしまして配置をいたしたいと思います。
  93. 大川光三

    委員長大川光三君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  94. 大川光三

    委員長大川光三君) 速記を始めて。  別に御発言もなければ、これにて質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  95. 大川光三

    委員長大川光三君) 御異議ないと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  96. 千葉信

    千葉信君 私は、この裁判官報酬並びに検察官俸給の改定に関する法律案について反対の意見を表明いたします。  特に裁判官報酬の改定の問題については、この委員会質疑の中にもありましたように、本来裁判官報酬はその出発の最初において憲法の精神を尊重し、特に裁判官優位性を認めるという立場から、他の公務員に比しておおむね四割程度の高率をもって報酬が制定せられたことは、すでにこの委員会質疑にも明らかなところでございます。それが今日の段階におきましては、最高裁等の提出する資料の不備の関係で、今日の状態は必ずしもつまびらかにはなりませんけれども、しかし、法務大臣答弁並びに最高裁答弁に徴しましても、今日の段階においては、その報酬額の決定等において著しくその優位性が減殺せられ、もしくはまた概数として考えられるところでは、たとえば事務次官に対し、判明諸君の今日の報酬額は約二千円以上の低位であるという状態ですらあるのであります。これに対して政府答弁は、たとえば総理大臣俸給額関係等が理由となり、ないしはまた改定のつど、なかなかこの条件を確立することができなかったというような立場から今日の状態が招来されたと弁明しておりますが、私は特別職職員給与関係についてはもちろん、一般職職員給与の改定ないしは人事院の勧告等を基因として、これに準ずる方策がとられることについては異議がないけれども、おのずから問題は別個の立場からやはり原則的な裁判官優位性というものが確立される努力を払うべきだと考えるのでありますが、その点に対しての努力が十分でなかったこと、また国会におけるこの問題の扱いについても、所期の成果を期待することができないという状態のまま、今日再び同様な劣悪な条件のもとに裁判官優位性が事実上滅却されようとしておる状態にあるのであります。私どもは、この条件だけから言っても、この法案にはとうてい賛成することができない。従ってわれわれとしては、あくまでも国会としてもこの問題をもっと合理的な形で、しかも憲法の精神を尊重して裁判官優位の体制を確立するために、将来この問題について努力をしなければならないという責務をはっきり痛感しつつ、この法律案に反対する次第であります。
  97. 井川伊平

    ○井川伊平君 私は自由民主党を代表して、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案並びに検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案につき、賛成の意見を申し上げます。  右の二法案は、今回行なわれようとしております一般政府職員の中級職員給与の改善並びに一般職員俸給表の月額の端数切り上げの措置に対応して、裁判検察官報酬俸給を改正しようとするものでありまして、けだし適切かつ当然な改正措置と考えられますので、両法案に対し、いずれも賛成いたす次第であります。
  98. 大川光三

    委員長大川光三君) 他に御意見もなければ、これにて討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 委員長大川光三君)御異議ないと認めます。  これより採決に入ります。裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案、以上二件を一括して問題に供します。  ただいまの二件を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  99. 大川光三

    委員長大川光三君) 挙手多数でございます。よって裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案外一件は、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続等につきましては、先例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  100. 大川光三

    委員長大川光三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
  101. 千葉信

    千葉信君 議事進行について。  そこまでは、ただいまの委員長お話にありました通りで私は異議ありませんが、この法律業の本会議上程という問題については、昨日の委員会の懇談会におきまして私からも見解を表明し、委員長においてもその考慮をする旨の御意見がございましたが、本会議の上程の時期については、この法律案と同種の法律案が現在衆参両院において審議中でございますので、その法律案の動向等を考えることなしに国会としてこの法律案の議決を終わるということは不謹慎のそしりを免れないと考えられますので、その点については委員長において善処されることをはっきりと私は党を代表して希望します。
  102. 大川光三

    委員長大川光三君) ただいまの千葉委員の御希望につきましては、その御希望のあった旨を適当の機会に委員長より伝えることにいたします。   —————————————
  103. 大川光三

    委員長大川光三君) 次に、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題に供します。  御質疑のある方は御発言を願います。——他に御発言もなければ、これにて質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 大川光三

    委員長大川光三君) 御異議ないと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  105. 千葉信

    千葉信君 私は、この法律案に反対を表明いたします。  反対する理由の一つは、本来定員法なるものは、その行政機関もしくは国会の場合では最高裁の機関内における職員の定員を明確に規定し、それによってほしいままなる職員の採用等を防止するという一方、同時にその定数内の職員の確保については、少なくとも定員法の精神に基づいて当該機関が積極的に努力をしなければならない条件を持つものだという判断の上に立ちますと、現在の最高裁判所内におけるたとえば判事にしても、あるいはその他の職員にいたしましても、非常にその欠員数が偏在するという状況がおびただしく見られるところであります。今日の裁判業務の遅滞という問題もここに大きな原因があると私は判断しております。従って、そういう定員法の定数確保という問題について、いろいろな問題はありましょうけれども、結果として今日の最高裁のとってきた態度の中には、私は少なくとも不満を表明せざるを得ないという条件を発見せざるを得ません。  反対する第二の理由は、この定員法が、この際は最高裁における職員の定数を規定し、その規定に基づいて職員裁判関係の業務を処理するという建前に立って、その職員に対する俸給ないしは手当報酬等の支払いについては国民は税金の負担をしているという意味において、国民に対してもこの定員法の定数ははっきり守られなければならないという条件のもとにあると私は考えております。そういう観点から言いますと、現在及び三十五年度におきましても、特別にこの定員に基づく定数以外の職員を採用する予算を計上し、そして特殊常勤職員であるとか、ないしはその他の臨時職員という名目で少なくとも三百名以上の職員が今日存在し、また三十五年度も同様な措置がとられようとしておりますが、問題は、これらの職員待遇なるものが、この定員法に基づくものではないという関係で、不当に不利益をこうむっている、しかも身分上も不安定な状態に常にさられているという状態は、法律の裏をくぐった脱法行為を行なっていると言っても私は過言でないという立場から、これらの職員に対して、定数内の職員として処理をするという措置が今回の定員法改正にあたっても本来とらるべき筋合いであるにもかかわらず、依然としてかくのごとき不合理が継続されようとしている。今回のこの定員法の定数については、私は理解できない、そういう立場から、私は第二の理由としてこの法律案に反対を表明いたします。
  106. 井川伊平

    ○井川伊平君 私は自由民主党を代表して、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案につき賛成の意見を述べます。  本改正法案は、第一審裁判所、特に事件の輻湊を来たしている地方裁判所における事件の適正迅速なる処理をはかるため、判事の定員を五十名増加し、その反面、裁判官の事件負担並びに欠員の状況等を勘案して簡易裁判所判事の定員を三十名減員し、一方、家庭裁判所調査官の事務量の増大と裁判所の各般の機構整備に伴う用員増の必要性にかんがみ、家庭裁判所調査官等裁判官以外の職員の定員を増加しようとするものでありまして、これらの措置は、いずれも裁判所機構全体の充実と事務能率の増進に資する適切妥当なものと思量されますので、賛成する次第であります。
  107. 大川光三

    委員長大川光三君) 他に御意見もなければ、これにて討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 大川光三

    委員長大川光三君) 御異議ないと認めます。  これより採決に入ります。裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  109. 大川光三

    委員長大川光三君) 挙手多数でございます。よって本案は、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続につきましては、先例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  110. 大川光三

    委員長大川光三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。
  111. 千葉信

    千葉信君 議事進行について。この問題も先ほどの報酬に関する法律案の問題と同様に、これも現在国会において審議中の案件であり、しかも従来の経験に徴しますると、たとえば定員法の改正にあたって、過去三回の経緯は、いずれも国会において修正を行ないましたが、この修正にあたって、その内容が問題となる常勤労務者ないし非常勤職員の定員化の修正でございました。従って、最高裁の定員について、この常勤労務者等の定員化の問題について、最高裁関係法律案が先行しました関係上、あとで定員増の修正が行なわれたそのときに不利益をこうむった経験がございます。従ってそういう経緯から見ましても、この法律案の本会議上程という問題については、慎重を期さなければならないと思いますので、さきの二法案と同様の取り扱いを委員長に強く希望いたします。
  112. 大川光三

    委員長大川光三君) ただいま千葉委員より御要望の御趣旨につきましては、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案外一件同様、適当な機会に委員長よりその旨を伝えることにいたします。   —————————————
  113. 大川光三

    委員長大川光三君) 次に検察及び裁判の運営等に関する調査の一環といにしまして、人権擁護に関する件について調査を進めたいと存じます。  去る三月十八日及び二十三日の二度にわたって、山形県鶴岡市において保健所がホテルの従業員に対し検便を行なった際、人権じゅうりんの疑いを生じた事件については、新聞紙上においても報道されましたが、これについて、まず政府当局より概要の御説明を願いたいと存じます。
  114. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 御説明申し上げます。去る三月二十六日付の日別紙に出ました山形県での検便の問題でございますが、その概要を御説明申し上げます。  事件といたしましては、三月二十五日から高松宮殿下が山形県に御来県になるということで、そのお泊りになる湯野浜温泉の亀屋ホテル、肘折温泉の村井旅館、油田市の菊水ホテル、この三カ所が宿泊予定でございますので、その旅館の従業員の赤痢菌の保菌検索を行なった際に起きた事件でございます。そのうち亀屋ホテルで起きた事件が新聞に報道されておる事件であります。これは三月十六日と、十九日と、二十二日の三回にわたりまして、亀屋ホテルの主人、家族並びに従業員を合わせまして三十六名の保菌検索を、同一人につきましては二四にわたって実施したものでございます。実施方法は、直接採便法ということによりまして、この実施の前にあらかじめ該当の全興の方に集合をしてもらいまして、保健所からこの健康診断に対する協力を求めまして、必要性を説明して、一応その集合体といたしましては納得をされたという認識に立ちまして、客室を検便室に充てまして、一名ずつ実施したものでございます。その検便の際の採便者は保健婦が行なったのでありますが、その際、部屋には一般の男子はもちろん同席させない建前であったのでございますが、一人々々採便して直ちに培養器に植える必要上、患者の方を見ないようにいたしまして、保健所の培養の専門の技術員、これは男子でございます、これが壁側の方に机を置きまして、受け取っては直ちに培養器にそのまま植えつける、こういう作業をしたわけでございます。その際の姿勢が、第一回目のときには前かがみで、うしろから取るということであったんでございますが、これは非常に不適当であるということで、二回目以後は横臥させまして毛布をかけまして、その下で一人々々取る、こういうことを三回目以後はやったよしでございます。この際、強制的にやったかどうかということが第一に人権問題として問題でございまして、集団的に納得はさせましたものの、やはりこれを法に基づくというような形でいわゆる強制するということがどうかということを調査いたしましたが、これはあくまで従来やっております赤痢の検索の場合の検便法の一環といたしまして勧奨をする、おすすめして納得を受けてやる、こういうことであったよしでございまして、これを強制下に今回の検索を実施するというようなことは、最初からも意思がなかったそうでございますが、全員が受けたことは間違いない、こういうことでございます。なおその際、ただいま申し上げましたように、第一回目の姿勢のとり方等は、これは確かに不適当であるということは、われわれも調査の結果認めたわけでございます。  それから、いま一つの問題は、従いまして宮様のおいでになるということのために取り立てて普段やらないことをやったかどうかということが、やはり広い意味の人権と関連で問題でございます。われわれといたしましては、公衆衛生の立場では、特に山形県は全国第二位の赤痢多発県であります、全国平均のちょうど倍、例年倍であります。隣県の同じ人口である秋田県の約二倍、毎年約二千名をこす、他の県は約一千名程度。そういう形で特に赤痢の多発しておる県につきましては、極力赤痢の防止のために患者の発見あるいは保菌者の検索は、これは大いに熱心にやってもらうということは非常にけっこうでございます。昨年、私どもの方から全国的に赤痢が非常に増加しつつある状況にかんがみまして、ことに飲食を扱う従業者の保菌者の発見ということは強調いたしておりますが、しかしやり方といたしまして、特にたまに何か事あるときにやるというのでは、ほとんど目的を達しませんので、一般的に観光地等におきましては、集団が多数来るときには特に念を入れてやる。といいますのは、地元の利用者よりも、全国に広がりますと、あとの方の始末が非常に工合が悪い、蔓延の度が非常に危険でございますので、概して観光地については全国的に保菌者の検索を励行するということは、われわれの方も指導いたします、各県ともにそういう建前でやっております、県の当事者の意見を聞きますと、山形県が従来かように多発しておりますけれども、他県以上に赤痢の対策につきまして県民あるいは関係者の意欲が他よりはるかに強くないと、なかなか防遏できないのでありますが、そういう状況になかったのであります。ちょうど観光シーズンに当たったことと、まあ利用したという形で、まことに遺憾でありますけれども、これをきっかけにいたしまして、こういうような旅館ないしは飲食業者の本年度の観光シーズンを迎えての保菌者検索の皮切りをした、こういうつもりであったようであります。ただその手段方法におきまして、目的を達するためにかかる採便の仕方等の必要なく、また場所につきましても適当でない節がございまして、やはりやり方について非常に慎重を欠いた、こういうふうに言えるわけであります。  なお、もう一つつけ加えますと、一昨年この亀屋ホテルで実は一人の赤痢患者と炊事従業員等から五名の保菌者を発見いたしまして、非常な問題を起こしまして、対策を立てたわけであります。なお、同じ高松宮様が山形県に昨年の秋おいでになったときに、他の県下の温泉地で、宮様もろとも五十名の一行が実は食事からくる下痢症を集団発生いたしました。そういうこともありましたので、一そうかかることに若干慎重を欠いて拙速をやったために、相手がこういう営業者である、一方が取り締まり、監督、指導と合わせてやっております保健所であったために、納得ずくでやったつもりでありながら、その間、不適当な感じを抱かせ、またやり方について不満を見たことでございますので、この点は、今後も赤痢の保菌者発見については一そう馬力をかけるべきでありますが、納得ずくでやっていただくというやり方につきましても、これは大いに改良の余地ありと、こういうことで、私の方からも県に厳重にこれを指示いたした次第であります。
  115. 大川光三

    委員長大川光三君) それでは鈴本人権擁護局長から御意見を伺いたいと思います。
  116. 鈴木才蔵

    政府委員(鈴木才蔵君) 私の方はまだ調査が全部完了はいたしておりません。ただ、山形地方法務局の人権擁護課におきまして、新聞情報によりまして、二十六日、二十七日と二回にわたりまして関係者約十名を調査いたしました。その結果の中間報告を受けておるにすぎないのであります。中間報告によりますと、今公衆衛生局長からお述べになりました事実と大体同じであります。ただ、私の方が報告を受けておりませんのは、この女子の採便をいたします場合に、男子の保健所職員がその部屋におった、ただそれが女子の方を見ないようにというふうな注意を払ったかどうか、この点まだ報告は受けておりません。私の方の報告では、採便にあたって男子職員が立ち会った、手伝いをしたと、こういうふうな報告を受けております。この点が少し違うようであります。その他については大体同様であります。
  117. 大川光三

    委員長大川光三君) では御質疑のある方は御発言を願います。
  118. 高田なほ子

    高田なほ子君 亀屋ホテルの従業員三十六人を四つんばいにして検便した事件、この事件は、私どもの党では非常に重要視をいたしております。現に国会対策委員会から調査員が派遣をせられまして、昨日帰ってくる予定でありますが、まだ着いておりませんので、その実態をもとにしてこれを御質問することに少し欠くる点があるかもしれませんが、今、人権擁護局長あるいはまた公衆衛生局長の御説明、並びに三月三十六日の朝日新聞が取り上げました記事の内容等から御質問をいたしたいと思うわけです。  私どもは、最近になくこの配下を非常に不愉快なものに感ずるわけ、あります。天皇の地位というもの、あるいはまた皇族の地位というもの、この地位は戦前の地位とは全く違って、憲法に基づく人間天皇としての地位であり、また皇族も同様にそうした地位を保たれる立場に立っておるわけであります。しかるにもかかわらず高松宮様がスキーにいらっしゃるというようなことから、事もあろうに四つんばいにして直接検便をしたということ、これは明らかに人権軽視もはなはだしい、ただ女中さんの数は今公衆衛生局長は明示せられなかったわけでありますが、少なくとも婦人を四つんばいにさせて公衆の面前で検便をするなどということは、近代社会では考られないような野蛮きわまる。こういうようなことが白昼平然として行なわれたということを、くしくも朝日新聞が取り上げられたから問題になったようなものの、朝日新聞が取り上げなければ、この問題は暗黙のうちに見過ごされたかもしれない。  そこで、まっ先にお尋ねしたいことは、この中に女子が何名含まれておったのか、それから亀屋ホテルのみならず、高松宮様がお泊まりになる所は亀屋ホテルだけでなくて、その他のホテルにもお泊まりになる予定があったと聞いております。従って、お泊まりになる場所は単に亀屋ホテルの問題だけでなくて、その他に新庄あるいは酒田、これらの旅館も予定されておったと聞いておりますが、これらの旅館では一体どういうふうな措置がとられたものか、この点をもう少し詳しく説明をしていただきたい。
  119. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) ただいまの女子職員の内訳でございますが、この点、今正確な数字ははっきりいたしておりませんので、後ほど正確な数は申し上げることにいたします。ただ家族が六名と従業員が三十名で、合わせて三十六名でありますが、この家族の中にもむろん女子がいるわけでございます。従業員は宿屋でございますので女子職員が相当数あるわけでございまして、正確な数字は今ここに手持ちしてありませんので、後ほどお答えさせていただきます。  それからなお、ただいまの公衆の面前ということでございますが、この点は十分注意いたしまして、あくまでも特定のあき室の中で、余人を入れずに採便に当たる保健婦が一人、それから採便を直ちによごさずに手渡されて、隅でこれを培養器に植えつける保健所の細菌専門の職員が一名、これだけが中にいるだけでございまして、これは全然家庭、従業員その他の人間を入れないで検査室に充てたわけでございます。いずれにいたしましても採便者である保健婦、それから植えつけの職員一名、こういうことでいたしたわけであります。  それから他の旅館においてでございますが、これは実は保健所が違った保健所でございまして、この採便の方法等につきましては、同じく従業員から保菌者の検索をするということには、直接採便、間接採便、またその方法につきましてもいろいろな方法がございますが、これは保健所長が自分の所管の中のいろいろな環境、それから従来の発生の状況等から判断いたしまして、これらの細部のやり方については決定するわけでございますので、他の旅館は、ほかの保健所が実施いたしておりまして、この点は直接採便はいたしておりますが、これは十分納得を得まして、今のような四つんばいというようなことでなしに、これは不満もなしに、またむろん今回のような事件も起こさずに、適切な了解ずくでこれはスムーズに行なわれた。なお、ただいまのは、二十六名のうち三十六名。女子の方が多数でございます。
  120. 高田なほ子

    高田なほ子君 二十六名の婦人たちが完全な設備もない所で四つんばいの直接検便をされるなんということは、もう何としても私どもは了解することができない。客室に普通使うような所に座ぶとんを一つ置いて、そこで四つんばいにされて、どんなに恥ずかしかったことか。それが次々——納得したとは言うけれども、納得しなければこれは工合が悪い状況にあるから、やむを得ず納得したのでありましょう。まさか、しかし四つんばいにされて、おしりをまくられるというようなことは予測していなかったかもしれない。多分、これは予想してないことであったでしょう。幾ら壁の方を向いて、培養するためにそうしたんだというけれども、これは明らかにあれですよ、公衆ですよ。刑法でも人のからだにさわるというようなことについては、これは非常に注意されている。特に婦人の場合には、身体にさわる場合には、相当にこれはきびしく規制されておる。ところが、高松宮様がおいでになるというようなことから、こういうようなことが不思議もなく行なわれているというところに、私は問題があると思う。法務大臣は、実はこの問題はこれからまあこまごまのことを聞きますけれども、人権擁護局長並びに公衆衛生局長のそれぞれの御報告を聞かれ、かつまた非常にまずかったという点も言っておられるわけでありますが、このことは、今始まったことではないようでありますが、秩父宮様が昭和三十三年の六月に水戸においでになったときにも、これと似たような人権じゅうりん事件がやっぱり起こっておるわけです。それは問題になったから水戸の事件が出てきたかもしれませんが、しからざる面においてこれと似たようなケースがそれぞれ行なわれているのではないかと疑わざるを得ない。法務大臣は、このような近代で考えることのできないようなこの人権軽視の傾向に対して、どういうような一体お考えをお持ちになり、こういう問題についてどういうような一体対策をとろうとするのか。この点をお伺いしたい。
  121. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 山形県の亀屋ホテルの問題につきましては、二十六日の新聞で見まして、さっそく山形地方法務局に対しまして調査を命じました。新聞の報ずるところが事実であれば、これは人権の上から重大な問題であると考えましたので、調査を命じたわけであります。その調査の結果が、まだ中間報告でございますが、先ほど人権擁護局長からお答えしたような経過でありまして、その経過自体を、中間報告でございますが、私としては相当にこれは問題の事件だと考えております。  ただ、強制したかしないかということは、これは強制してない。また公衆衛生上、そういう処置を公衆衛生法に基づいてやるということの適否については、これはしなければならぬ場合にはしなければならぬと思いますが、問題は、先ほど公衆衛生局長も言われたように、高松宮殿下がおいでになるということの理由でこういうことをしたということになれば、これはまた一つの問題であります。また、そのやった手段が適切な手段でなければ、これもまた人権擁護の面からの問題も考えてみなければならぬと思います。従って、よくなおもう少し調べまして、そこに人権上不当なことがございますれば、法務省としましても、県に対しまして適切なる処置をとりたいと、こう考えております。
  122. 高田なほ子

    高田なほ子君 まあ最終的な報告を待って処置をされるような御態度でありますが、昭和三十三年の水戸の問題が起こったときに、これは人権擁護局は問題にしたはずです。この事件は人権擁護局を通して、法務省を通して、全国に何らかの手当というものがされたのかどうか、そのときに。今度こういう問題が起こったのは、その趣旨というものが徹底しない、その結果こういう問題が起きてきたのではないかというふうに考えられる。また、表面に出ないけれども、全面的にこういう問題がやはり起こりつつあるのじゃないかという気もする。この点について人権擁護局長の方から御答弁を伺いたい。
  123. 鈴木才蔵

    政府委員(鈴木才蔵君) 御指摘の昭和三十三年に秩父宮妃が水戸においでになりましたときに同じ事件ございますが、それの調査の結果、当時の茨城県の衛生部長から県下の各保健所長にあてて「防疫時の検便について」という実に適切なる指示がなされたのであります。私どもの方は、これによって一応この人権上の問題は解決したと考えまして、この事案を全国的な問題として厚生省その他には別に通告その他の措置はとっておりません。
  124. 高田なほ子

    高田なほ子君 厚生省には何もその通告をしなかったということでありますが、なぜそのときに通告なさらなかったのですか。今度も何もなさらないつもりですか。
  125. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) そのときのことは、私もおりませんから、その措置については知りませんが、今度のことは、私としては相当この問題が重大なる問題と考えまして、もしもそういうことがあれば、あるいは衛生部長の扱い方が悪かったか、県のその他の扱いが悪かったのか、その点について十分調べまして、適切なる措置をとりたいと、こう考えております。
  126. 高田なほ子

    高田なほ子君 衛生局長に今度は尋ねますけれども、この採便の方法というのは、直接採便をするというのはどういう法律に基づくんですか。私はあなたの方の役所のこの「防疫必携」というもの、これは防疫課から出しているのであります。それからこれは「防疫必携」の「第二輯」です。それから伝染病予防法というものをいろいろ研究してみましたけれども、直接採便しなければならないというようなことがどこにも見えていない。そうしてあなたの方の役所では、今の時代では、直採採便を人のおしりをまくってやるというようなことをしなくても、もっと科学的な、合理的な方法があるんだということを言っておられる。これは私照会をして附いた。それなのにあなたの御答弁では、採便のことについては直接採便と間接採便と両方ございましてと、こういうような、それがあたかも当然であるかのように答弁をしておられるわけですけれども、人のいやがるそういう方法を無理にするというのは、これは何の法律に基づくものですか。特に婦人の場合は横にして二回目はやったというけれども、採便をするときには全部やはり毛布をまくっていやな目をしなければならないでしょう。どうしてそういうことをやらなければならないか。山形の赤痢菌の問題について種々説明があったようでありますが、だからといって直接採使をしなければならないという法的な根拠というものは、遺憾ながらどこにも発見することができなかった。これはどういうわけ、ですか。
  127. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) ただいまの御意見のように、直接採便をしなければならぬという掛比はございません。ただ、この伝染病予防法によりまして、予防上必要な処置をするというのが、伝染病予防法の十九条にありますが、これはあくまで公衆衛生の立場で必要なことをやるわけでありまして、その手段方法で、今の人権と差しさわるような、本人の納得を得ず、拒否するにかかわらず、からだに触れてどうするというような、法の規定はございません。従いまして、伝染病予防上必要——たとえばこういう飲食店の従業員等で、その地帯に伝染病がはやっておるとか、あるいは過去においてそこで患者があったとかいうような場合に検便をするということは、これは必要な場合がしばしばありまして、ことに知らずして多数の人間が集まりまして、提供されるものから危害を受けるというようなことの防止のために、必要な職種並びに必要な環境の条件がそろえば、この検便は求め得られる、こういうふうになっております。従いまして、検便の場合には、目的が達せられるならば、殺菌してある器を渡しまして、極力本人からその中に入れてもらいまして集めていく。これがもう一番常識的でもあり、それで十分目的を達する場合が大部分でございます。ただ例外といたしまして、たとえば下痢患者の場合、これがまた、しばしば自分が赤痢じゃないかという非常な恐怖感を、杞憂をいだきまして、しばしばこの便の提出に応じない場合がございます。それよりも、実際問題としては、これが間接採便でありますと、実際に取りにくいのであります、こういうような場合。それから往々にして年配者にあるのでございますが、便秘しておりまして、もう十日も出ない。これからも出る見込みがないというような場合等がございまして、この場合には、ちょうど医師が患者の診断をするごとく、ちょうど相手の——まあやむを得ないからどうしてもおしりで取らにゃいかぬというような、納得づくといいますか、依頼関係によりまして、初めてこの間接採便にかわってやる。これがもう建前で、われわれもさように指導しております。従いまして、間接採便がどうしても目的を達しない場合に、何でもかんでもおしりに検便俸を突っ込むとか、ああいうようなことは、これは不適当である。そういうような場合でも、一人々々便所の外で取り方を教えまして、本人が中で取って、それで外でそれを受け取ると、まあこういうような形をとるのが、この直接採便の中でも至当なやり方でございまして、大体それで全国的には必要な検便は施行されております。私ども、さような意味でこれは指導しておるわけでございます。従いまして、この再便方法の中で、本人の意思に反しましてからだに触れるということは、もう決してこれは法律の裏づけもございませんし、そうして積極的にからだに触れていいということはございません。今のような、一般的な医師の診断行為と同様な扱いの中でやる以外にはないと思っております。さような意味で、今後も検便は全国的にはますます盛んにはしなきゃいけない。非常に保菌者が——大体日本全国で六十万と、今かなり確実な推定もございます。これをもとにしまして、今、年々赤痢の実際の発症者がふえているわけでございますので、特にこの集団発生防止というためには、保菌者を早く発見いたしまして予防処置を講ずる、これは必要であろうと思っておりますが、やり方につきましては、むしろ協力を求める意味では、法律の恨拠なしに、行政的な、あるいは威圧的方法で無言のうちにやるということは不適断でございますから、こういうことのないように、一そう注意してやりたい、こういうことでございます。  なおもう一つ。今、人権問題と関連があるというお話でございますけれども、宮様だから、その場合に今度極端にやったということが、他の場合でもあり得る。こういうような不適当な検便方法が、一そう人権じゅうりん的な印象を社会に植えつける。われわれもそういう感じがいたしたのでございます。この点につきましては、決して宮様だからやったことでなくて——この場合のみに公衆衛生に必要があるというような指導は、一切いたしておりません。また、そうであってはならぬのであります。要するに、多数の旅行者が危険のある所へ行った場合には、もう宮様の御一行であろうが、あるいは東京から行く修学旅行であろうが、これはもう危険の防止は同じことでございまして、さような意味で適切な予防処置を講ずる、こう存じておりまして、特別にこれを扱うという指導はいたさぬつもりでございます。今後も十分注意させます。  それから、なお昨朝来、山形県も入れまして、全府県の予防課長会議を招集いたしておりまして、昨日も、かような公衆の福祉の保持と、衛生を通じての人権じゅうりんというようなこととは、これはもう全く意味のないことであって、むしろ公衆衛生は協力してもらって、両方が一緒に認識してやっていかなきゃいかぬということは、十分に昨日も訓示もいたし、指導いたした次第でございます。今後こういうことは二度と起こらない、こう信じております。
  128. 高田なほ子

    高田なほ子君 今後はこういうことは二度と起こらないというような確信をお持ちになっていらっしゃるようでありますが、宮様だからこうしたというような、私どもの憶測だけで質問しているわけじゃない。これは厚生省の防疫課から防疫必携ということでお出しになっているものですね。この中には、第五篇の中に、「行幸啓防疫実施要領」というものが掲げてある。これは天皇の行幸啓でありますから、多分皇族もこれに準じて、こういうことを今もおやりになっているのだろうと思うのですが、これを見ると、まあ大へんなことでございますよね。まあ実にこれを読んで、私も驚きましたです、ほんとうに。こんなにまでしなければならないかと思うほどの——たとえば料理の場合でも、まないたは何枚も用意して、それで、一ぺん使ったらかわりばんこにそのまないたを使うとか、あるいは消毒したふきんも、一ぺん使ったふきんはもう絶対それを使っちゃいかぬとか、こうした場合には手を洗うとか、また魚をいじった場合には手を洗って、手を洗ってからでなければ、またお皿をさわっちゃいけないとか、実にこれを見るとノイローゼになるようなことが書いてある。今どきこういうものを行幸啓の防疫実施要領というようなことで、各保健所はこれを金科玉条のようにして考えているから、こういう問題が起こってくるのじゃないでしょうか。これは一体どういうふうに消化しておるものでしょうか。これと、それから今度の問題と、どういう関係があるのか。保健所はこれをどういうふうにしているのか、あなたの方はどういう指導をこれについてしているのか、こういう点を一つ、ずっと詳しくお話しいただきたい。
  129. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) この厚生省の防疫課で編さんいたしまして発行されておる書類——書物として発行されておる「防疫必携」でございますが、これは今からちょうど五年前に、各防疫に従事する者の一つ参考資料といたしまして、本省の防疫の技術者がそれぞれ予防衛生研究所その他の専門家の参加を得まして編さんしたものを書店から一種の参考書として発行しておるものでございます。この行幸啓の事項でございますけれども、これは当時は天皇、皇后並びに皇太子殿下と、このお三方に対してのやり方として、当時編さんしたそうでございます。ちょうど当時私はおりませんでしたので、当時の者から聞いてみますと、さようなことでございます。しかもこれは通達その他で出したのではございませんで、一般書店が防疫官の参考書として有償で発行しておる、こういう書類でございまして、本省からかような形でぜひやれとか、行政的な指示権に基づいてやったものでも何でもないわけでございますが、しかし編者が本省の防疫課になっておりますもので、おそらく地方では、これを有効な参考としてやっておるかと思います。ただし、この行幸啓の問題につきましても、最近の医学の進歩、その後の抗生物質、あるいは予防薬等の発展から、かようなことは、必ずしも学問的にも時宜に適しないということで、一昨年来、もうこういうようなことは廃止して、一般的に、他から集団的に集まるところの一般防疫として、この中で当然やるべきことはやる、まあこういうような形でこれを撤廃してしまって、いわゆる集団に対する防疫措置という形でこれは非常に予防されておりますので、まあそういうような形でこれを編さんしかえたらどうか、こういうような意向で今進んでおるわけであります。従いまして、皇族の方あるいは皇族類似の貴顕の方に、特別に今防疫必携にあるようなことで扱えというようなことは、一切厚生省でも指導いたしてきておりませんし、またその必要もなく、あくまで遠来の多数の旅行者といたしまして、これはもう当然危険のないように防疫措置をやる。公衆衛生的に見れば、修学旅行と同様である。だれがかかってもいかぬ、まあさようなふうに存じております。従いまして、これは最近は再版をいたしておりませんが、もう当然この部分は削除する。その他にも、最近の学術に合わぬ部分が、この五年間の進歩で、方々へ出て参りましたので、これを今編さんしかえるように努力中でございます。従って、将来にこれが影響するということはいたさぬように、かように存じております。
  130. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうすると、問題は、これはもう廃止になった。そしてまた新しくこれと内容の若干違うものをまたお出しになるわけですね。これは確かに廃止しなければならないようなことがありますよ。カン詰めでもつけものでも、できる限り火を通して差し上げることとか、外科手術のときと同じように、手を洗って料理をすることとか、差し上げる新聞はアイロンをかけて差し上げるとか、こんなばかばかしいことは、これはもう噴飯ものですよ。こんなものを天皇陛下がごらんになったら、科学者の天皇だから卒倒なさるぐらいだろうと私は思います。こんなばかみたいなことは。またこれに基づいて、これと若干違うようなもので、特定のこういうような方法にたよるというようなことがまたありますと、やっぱり封建的なところであればあるほど、宮様がおいでになるから、そそうがあっちゃいけないからというようなことで、四つんばいというようなことが起こってくるわけです。ですから、これは廃刊になるのだから、今後特定なものについて、こういう特定な定めをしたものを、たとえ本屋さんとはいいながら、厚生省防疫課が、「防疫必携」なんというようなことで、これをなるたけ見せるようなしかけにするということはよくありません。また、天皇、皇后両陛下に対するエチケットは当然私は必要だと思うし、公衆衛生も当然必要ですが、何も天皇、皇后だからそういうことをしちやいけないという気持はありません。皇族だからそういうことをしてはいけないというんじゃありませんが、あまりにも度が過ぎておる。そのことのために主権者である人民が、民主国家としてふさわしくないことまでも平気でやられるということになるわけでありますから、もし採便の必要があっても、こういうことは避けるべきであります。私はそういう意見を持ちます。それから採便は、これは特定の場合を除くほかは避けるべきだと私は思います。先ほど下痢とか秘結をした場合に云々ということがございましたけれども、これはもうそういう異常の場合にそういうことをされるので、こういうことは申し上げにくい話でありますけれども、どうも検便々々と言っているけれども、これは検梅でもしたんじゃないかというような、そういうような巷間うわさを私は聞くことを悲しむ。これは宮様にとっても非常に迷惑な話だし、また当局としても、そういう疑いをかけられるようなことは、大へん気の毒だと思うし、今後婦人に対する直接検便の方法というものについては、これは直接こういうことはなさらないようにしてもらいたい。飲食店、旅館業者、これらの方はシーズン期に年に二回適当な方法でもって検便なされていることを承知しているし、私もそうあるべきだと思います。しかし、その方法については、特に婦人に対するこのような直接の検便をやる方法は絶無にしてもらいたい。これはできませんか。
  131. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 第一段の問題であります行幸啓の特別事項を撤廃するということは、私御説明申し上げたのはそのつもりでございます。むしろ入念に、そういう特定の方でなくて、集団に飲食を供するというような場合の、またそういう場所の従業員等の取り扱いについては欠けておりますので、さようなものがむしろ必要であったということでございまして、決してこの行幸啓なり、あるいは宮様方に対する特別扱いというものを、これに基礎を置いてまた別なものを出そうという意味ではないのでございます。この点、私のしゃべり方が悪かったら改めますが、これはあくまで一般の公衆衛生上の必要という形で進むべきであって、特定の対象によって技術、方法が学問的に違ったことがあるはずがないのでございますので、その点は改めよう、こういうことでございます。それから直接採便は、婦人に関する限りは全部やめろ、これは勇子はいいというようなことに逆に言えるわけでございますけれども、これは先ほども御説明いたしましたように、十分保菌検査の目的を達することさえできれば、間接採便に越したことはないのであります。これは当然従来も原則にしておりますが、今後も原則にする。ただし、それでは非常に成績が出ない。むしろ雑菌等が入る、あるいはひからびたものを持ってくる。なお、一番最近頻発しておりますのは、実はこういうような飲食店等で、少しでも腹工合の悪い人が、他の人の便を分けてもらって出すという例が非常に多い。このために、むしろもらった方の便に菌が発見されまして、巻き添えで、やった方の者ともらった方の者が一緒に、その保菌状態がなくなるまで就業禁止というような問題が出まして、逆に問題を起こした例が幾つかあるのであります。さような意味で、目的を達しない場合には、あくまでよく本人に説明いたしまして、最後には、それじゃ直接検便、これは他人がやらないという採便方法でございます。先ほど言いましたように、真にやむを得ない場合に、便所へ行って自分でとる、これが直接採便。さような方法から順序を立てまして、先ほど申しました採便方法として四つんばいというような、だれが考えてもおかしいようなことは避け、しかも女子の場合に、男子が同室にいる、あるいは場所も非常に不愉快な場所というようなことは避けまして、当然医師に体を見せるような形の場合は、これは例外としては、特別の場合に、やむを得ず本人の納得を得てやる場合もあるかと思います。原則としては今のように、納得のいく方法で、菌発見の目的を達すればいいのでありますから、さような方法でいきたいと、こう存じております。
  132. 高田なほ子

    高田なほ子君 とにかく地方の末端に徹底するように、今のあなたの御答弁が十分徹底して、こういうことが二度と起こらないように気をつけていただきたい。私は山形県という所はちょっとおかしい所じゃないかと思います。あそこは衛生思想はどうか私はわかりませんが、どうも上ノ山温泉、あそこは売春婦が一ぱいおって、それに子供が公衆浴場で集団的にりん病に冒された事件がありまして、これも大問題になったことがあるんですが、どうも公衆衛生という面については、どっちかといえば開けない所の方が問題が多いようでありますから、その点よく注意をしていただくこと。  それら念のため伺っておきますが、これは宮内庁からこの前お借りしてきたんですが、昭和三十五年三月三十一日付で、天皇、皇后両陛下が神奈川県の葉山へおでましになって、大鳥に旅行をなされることが出ております。小涌園という所に二泊なさるようになっておるわけですけれども、この場合もやはり二週間なら二週間という日時を置いて、これは目的によって違うでしょうが、赤痢であったら二週間、コレラであったら幾ら、日本脳炎だったら何週間という期限があるでしょう。やはりそういうような期間を置いて、前に検便をしたり、それから健康診断をしたりということをやるわけですか。その場合の健康診断の方法というのは、法律のどういうところに規定されておりますか。
  133. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 今回の大島への行幸啓につきましては、特別に私の方では指示も与えておりませんし、また特別な措置を講ずるということは現在考えておらぬ。ただし、これは現在あくまで東京都下といたしまして、都にそういうふうな、よそから多数の、ことに天皇、皇后両陛下がおいでになるということに基づきまして、現在大島にどういうふうに赤痢なりあるいは集団中毒が発生しておる、あるいは最近において、一般的にこれら関係従業者の定期の健康診断——これはそれぞれ結核については結核予防法、それぞれ各種の営業の立法の中に、水道従業者については水道法によりまして、ある程度定期の健康診断という形で規定されておりますが、それらがすでに励行されておるかどうか等に基づきまして、健康診断とかあるいは検便の計画をいろいろ立てるわけでございますが、その場合にも、いずれにいたしましても、直ちに直接検便でなければ頭から全部いかぬとか、そういうようなことは一切今まででも東京都は考えておらぬようでございます。また、われわれの方も昨日指示したわけでございますが、あくまで合理的に目的を達する、集団の旅行者等に対する立場で、常識的な方法で目的を達する、こういうことになろうかと存じます。
  134. 高田なほ子

    高田なほ子君 これは将来の問題になると思いますが、結核予防法では健康診断の方法が具体的に法文の中に出てきております。しかし、伝染病予防法の場合にも第十九条を適用するといっても、健康診断、第十九条の一項の健康診断の方法というものについては、必ずしも明記されていない。従って、健康診断というのは、観光客に対する、いわゆる公衆衛生の見地から一つありましょうけれども、従業員そのものの健康を保持するという意味と、二つ兼ねなければならない。ですから、従来シーズンをねらっての健康診断はもちろん必要かもしれませんが、何か合理的な伝染病予防に関する健康診断の具体的な方法なんかも、もう少し親切に指示される御用意があることを私は望みますけれども、この点はどうでしょう。
  135. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 確かに結核等、ほかの特殊な疾病に対する法律においては、かなり詳細に省令等で規定しているのが多数あります。これによりまして技術的にも適当に行なわれ、それから本人自身も早く発見されて、自分も早く利益を得ると、こういう方法でございますが、伝染病につきましては、若干趣が異なりますが、周辺に相当集団発生をしている、たとえばこの間の宮城県の場合、この場合には検病戸口調査といいまして、この場合には、あくまで第一に本人の知らずして症状が起こっていることを認めるという意味では、これは臨床検査までやるようになっております。おなかにまでさわってみるような方法も講じております。一番中心は、やはり菌の検索でございますので、やはり菌の検索ということに一言にしていえるのでございますが、今お話のように、菌を検索する方法がいろいろあると思うのでございまして、適切なときには、適切な方法というのが、詳細要るかと思いますが、これは省令等で規定する方法もございますが、こういうような検便のやり方をこまかく事情に応じてやるのは、相当改変を要することもございますので、通牒ないしは「防疫必携」も少し欠けているところがある。そういうのを今度盛り込む、こういうふうにして不適当なのははずし、必要なものは大いに入れる、こういう形で、両面で進んでいきたい、こう存じます。
  136. 高田なほ子

    高田なほ子君 最後に大臣にお尋ねやら要望やらしたい。  最近非常に復古調になつきています。復古調もいいところはあるわけですけれども、天皇の地位というものを特別に神がかりの方向に持っていこうとするような動きがあることを、私大へんに遺憾に思うわけです。実は一昨日来検察庁に天皇の警衛の状況について詳しく報告書の提出を求めて、その資料が参ったのであります。なかなかもって容易ならざる警衛の仕方であります。できるならば、できるだけ国民とともに歩むというような、そういう形の方向にいくべきで、国民とのかきを作るような方法は、これを方向として避けるべきではないか、戦前から比べれば大へん楽にはなりましたけれども、どうも最近きびしさが少しきつくなってきているように思います。こういうような流れが、たまたま高松宮の単にスキーの旅行ぐらいのことで、人を四つんばいにするというような問題も起こりかねない。これは非常に私は危険なことだと思います。天皇、皇后、皇族に対する警備の方針等について、最も民主的に、模範的に私はやっていただきたいということを強く要望するとともに、大臣にこの点をお尋ねしたいのです。特にきょうは自治庁がおいでにならなくて非常に私残念に思うのですが、最近自治庁の傾向が非常に悪い。まあこれは法務大臣が閣内でも少しこういうことをおっしゃっていただくために、質問ではなく、お知らせだけしておきますけれども、浩宮様の誕生に伴う行事について、各都道府県に指示する内容などは、これはもう噴飯ものですよ。きょうはまあ自治庁か参りませんから、これいたしませんけれども、実にばかばかしい限りです。こういうことは多分宮内庁あたりでもこれを知ったならばずいぶん迷惑するのじゃないかと思うのですが、どうか大臣は閣僚の一人として、復古調もある場合にはそれはようございましょうが、民主主義に反するような方向にいかないように、特に皇族のあり方というものについて、もう少し検討されてしかるべきだというふうに考えるわけです。最後に御意見を承っておきたい。
  137. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) お説のように、天皇の地位に関しましては、現在の憲法におきまして、戦前と違った観念で規定されておりますし、また国民から見ましたら、天皇は国民の父親というようなお気持ちで国民も皆親しみを持って臨んでおられるので、昔のような、いわゆる皇室的な気持は、今日では国民も持っておりませんし、また政府自体も天皇に対するいろいろなお扱いにつきましては、昔のような扱いをしておらないのが建前でございます。警備の点につきましては、公安委員長の方の問題でございますので、私の方としてはお答えすることございませんけれども、おそらく昔のような警備をしてはいないと思いますし、ただ天皇が国民の親しみの的であるということから、その身辺に対してできるだけ安全をはかりたいという趣旨からの警備態勢ができておると考えておりますので、今御質問のような気持でわれわれも臨んでおるわけでありまして、皇室みずからもそういうお気持で臨んでおられることもよく了承しておりますので、そういう方針で今後も進んで参りたいと考えております。
  138. 千葉信

    千葉信君 私どもの方では、今、高田委員質問しました今回の問題について、人権侵害事件という立場から今調査団を派遣している、それがきょう帰って参ります。従いまして、私どもの立場から調査をしました資料を持たないでの本日の質問ですから、従って、これは地元の保健所等からの連絡に基づいての公衆衛生局長の報告が土台になって、それと新聞記事とが本件審議対象になると思います。私どもとしては、またあらためて人権擁護局長のおいでを願って、この問題究明をする折があろうと思いますが、この際ですから、一つだけ公衆衛生局長に伺っておきたいと思う。それは検便のやり方自体にかなり問題があり、疑惑を持たれるやり方をしている、直接検便といいましても、四つんばいにしたとか、あるいはそれが問題になるので、うつぶせにしたとか、いろいろありますけれども、その検便の仕方自体に疑惑を持たれることが一つある。それからもう一つは、これはあまりはっきり言いたくない問題ですが、従来の地方においでになっての高松宮の動静について、かなり下々ではさまざまな認識を持っている。そういう点から私は一点お尋ねしておきたいことは、今度の赤痢菌を検査をするためにという検便という御答弁ですが、検梅はやらなかったかどうか、この点はっきりお答え願いたいと思います。
  139. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 検梅というようなことは、一切これは、県の予防課長も招致いたしまして聞いたのでございますが、さようなことは全然毛頭最初から意図もございませんし、そういうような事項は全くない、こういうことでございます。便を保健婦が直接肛門から採取する、これだけの、間違いない事実でございます。従いまして意図ももちろん、担当者が違いますし、さようなことは絶対ない、かようなことでございます。
  140. 赤松常子

    ○赤松常子君 二、三ちょっと簡単にお尋ねしたいのでございますけれども、私きょうこういう委員会で、こういう問題を取り上げてお尋ねせんならぬということは、ほんとうに私は恥ずかしい気持で一ぱいなんでございますけれども、たまたま女中さんが怒って、そして意見を言い出したから、われわれの目に入ったと、こういうのでして、もしもこれを泣き寝入りしていたら、こういうことが問題にもされなかったでしょうしと思うと、こういうことはまだまだたくさん行なわれているような気がしてならないわけです。そういうことをほんとうに恥ずかしく、また当委員会でこういうことを取り上げてやらなければならぬということ自体、いろいろ原因もあると思うのでございますけれども、直接公衆衛生局長及び法務大臣の所管のことから起きたということにつきまして、これからどうぞこういうことのないように注意していただきたいと思うわけでございますが、実際亀屋ホテルの問題のときに、直接の指導者というのでしょうか、責任者はだれだったんでしょうか。
  141. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) これは保健所長でございます。保健所が保健所管内の伝染病予防法に基づきまして検便をする、こういうことであります。
  142. 赤松常子

    ○赤松常子君 こういう場合には、あれですか、県の当局というものは、直接指示するとか、あるいは命令を出すということでなく、保健所長の権限でこういうことが処置されるのですか。
  143. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) これは行事の予定が県に参りますと、各行事につきましては県から流しまして、そういう予定を、またその際における結核とか、あるいは伝染病についてこういう注意をしなければいかぬとか、一般的なことは、これは当然県も流しますが、それを具体的に管内の預っておる住民に対して、計画して実施するということは、これは保健所長のやり方にまかしてあるのでございます。
  144. 赤松常子

    ○赤松常子君 それでは今度の場合は、そこの保健所長が責任者であるわけですね。それでいろいろ指図してやらせた直接の責任者は、保健所長さんですか。
  145. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) さようでございます。
  146. 赤松常子

    ○赤松常子君 いろいろ先ほどから伺ってみまして、非常にその保健所長さんに対する本省の指導といいましようか、あるいは県のそういう当局者と申しましょうか、ほんとうにこういう場合、そういう場合というふうな、いろいろなこまかい指導というものが行き届いていない。ですからこういうおくれている、失礼ですけれどもこの封建性の強い所では、こういうことが難なく——私むしろ深く勘くって言えば、何か興味的な気持も少しまじっているのではないかという、実に不潔な、不愉快な思いを深くするわけでございます。こういうことについて、保健所長さんたちにどういう指導をしておいでになるのか。ことに女中さんは、使われる弱い立場です。そうして、今度は宮様がおいでになるというと、何か特殊な、特権的な力をもって圧力を加えられやすい、相手は弱い女中さんです。その際に、保健所長さんたちが、ほんとうに検便される側の気持になって、あたたかく、そうして合理的に、科学的にするという心がまえがむしろほしかったのですけれども、私は不覚であったような思いがするのです。そういう場合、一体本省としてどうお考えでいらっしゃいましようか。
  147. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 確かに県なり保健所のいろいろな行政ないしはサービス事業のやり方につきましては、私ども非常な指導の義務がある。従来保健所は、全国に約八百ございますが、これに対しましては、保健所の運営指針というものが出ておりまして、いわゆる技術的な内容につきまして、この技術行政が主なのでございますから、主としてこれでこの方はやっておる。しかしながら、技術者である保健所長に対する今言いましたような一般良識的なこと、これはなかなか指導書で指導するという形ではむずかしいせいもありますが、若干おろそかであった、かように気づいておりまして、いわゆる保健所管理学といいますか、これは病院につきましては、最近病院管理学というのが、本にまでなっております。ただ、治療行為等の技術のみならず、職員の把握とか、あるいはお客に対するサービスの心がまえというような事柄の学問的体系までできて参りましたが、保健所のように、やはり住民に接する場合には、保健所運営管理の一般の良識に基づくものが非常に大事でございます。この点が抜けておったことをわれわれも認めておるのでありまして、ただいまその方の保健所の運営管理の指針を今作成中でございます。やはりそういうような常識的な、技術ではなくて、女子の立場に立ってどう思うか、良識の問題でございます。さような方の扱いをもっと指導強化しなければならぬ、かように存じております。  それから今お話のございました興味的な因子が入っておったのではないか。女子の下半部を見るというような、これはそういうことは絶対ないと見ております。またなかろうとわれわれは勝手に推測するのでございます。と申しますのは、これは保健所長も医師でございまして、ことさらさような興味を、業務を通じて抱くような立場とはむしろ逆でございます。それから検便に立ち会った者は女子の保健婦でございます。ふだんから家庭訪問をして子供の浣腸とかそういうことをむしろ頼まれてサービスしておる連中でございますので、さような因子は全然ないと確信しております。
  148. 赤松常子

    ○赤松常子君 さっきお話のように、非常に山形県は赤痢菌、そういう伝染病が多発する。で、将来こういう保健所の活躍というものを非常に盛んにしていかんなりませんし、そういう活動をこれからしていただかなければならぬ地方でございますから、特に今後、ただこういう場合のみならず、年寄りあるいは子供を扱うという場合に、十分これを最末端の保健所長さんから職員、保健婦さん方に非常にこのサービスの気持が徹底するようによくやってもらいたいと私は要望いたします。  それからもう一つちょっとお尋ねいたしますが、こういう場合に、宮内庁の方見えておりませんようですけれども、何か宮内庁も下検分するとか、これは宮さんあたりはそうでないにしても、陛下がおいでになるような場合には、必ず宮内庁の役人が先発いたしまして、いろいろ宿屋のことだとか行幸道路のことだとかを検分するわけでございますが、そういう場合に、こういう衛生方面のことを厚生省と連絡するとかして、何か共同動作をおとりになるようなことが。今もあるのですか。
  149. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 現在さようなことはいたしておりません全く普通にいたしております。  それからもう一つ、今山形県の特に指導でございますが、御了解得ないで呼び出しておるのでございますが、実は昨日から県の予防課長を会議に招集しておりまして、ここにも列席させていただきまして、実は先ほどからの御意見も聞かせたわけでございますので、今後は先ほどからの御意見は十分山形県でも励行されると、こう存じております。何とぞ御承知願います。
  150. 赤松常子

    ○赤松常子君 もう一つ。先ほど局長さんがおっしゃいましたが、検便する場合には本人の承諾を得てやっているとおっしゃっておりますけれども、この新聞では女中さんが憤慨したということからもわかるように、皆を集めて一場の話をして、それから始めているというようなことで、非常にその点手ぬかりで不親切だという印象を受けるのでございまして、どうぞそういうからだにさわるような場合は特に気をつけていただくように、強く要望いたしておく次第でございます。
  151. 大川光三

    委員長大川光三君) 他に御発言もなければ、本件に関する本日の調査は、この程度にとどめたいと存じます。  以上をもって本日の審議は終了いたしました。  次回の委員会は四月五日午前十時間会いたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後五時二分散会