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1960-03-17 第34回国会 参議院 法務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月十七日(木曜日)    午前十時四十八分開会   —————————————   委員異動 本日委員山口重彦辞任につき、その 補欠として田中一君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     大川 光三君    理事            井川 伊平君            後藤 義隆君    委員            泉山 三六君            太田 正孝君           大野木秀次郎君            田中  一君            千葉  信君            辻  武寿君            市川 房枝君   政府委員    法務省民事局長 平賀 健太君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    法務省民事局第    三課長心得   香川 保一君    大蔵省主計局主    計官      広瀬 駿二君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○不動産登記法の一部を改正する等の  法律案内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 大川光三

    委員長大川光三君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  不動産登記法の一部を改正する等の法律案を議題に供します。前回に引き続いて質疑を行ないます。御質疑のある方は御発言を願います。なお、当局からは平賀民事局長が出席されております。
  3. 井川伊平

    井川伊平君 現行不動産登記法第二十五条「登記申請スルニハ左ノ書面ヲ提出スルコトヲ要ス」となっております。この登記のうちには、本登記のほか仮登記も含まれておりますか、お伺いします。
  4. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 仮登記も含まれております。
  5. 井川伊平

    井川伊平君 おる。そういたしますと、この三十五条を調べてみますると、第三号に「登記義務者権利ニ関スル登記済証」俗に言う権利書、これかなければならぬことになるわけでありますが、そのことは間違いありませんか。
  6. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 一般的にはさようでございます。
  7. 井川伊平

    井川伊平君 そうしますと、この権利書がない場合の措置としては、本登記の場合の保証書と同じような保証書めるい同意書、こういうものが権利書にかわって使われるであろうと想像いたしますが、その点はいかがですか。
  8. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 保証書を添付いたしまして仮登記申請することがあり得るわけでございます。
  9. 井川伊平

    井川伊平君 そういたしますと、私のこの間の質問に対しまするお答えが納得がしにくい点ができてくるわけであります。重ねてただいま質問いたしましてお答えを得ました点に関しまして、この前の質問にもう一度お答えを順いたいと存じます。この前質問いたしました要旨は、本登記をするのに権利書がない。それで保証書によってやる。保証書の真偽を確かめるために郵便による三週間を限度とするところのいわゆる事前通知を発して本人意思を確かめるという四十四条の二のこの改正規定のことについてお伺いしたのでありますが、その際、私は三週間もの長い間通知期間——通知の返事を入れる期間を設けるということにすると、その間に、非常に長いものであるから、それ以外の別口の登記事件簿も起きて、郵便による通知をしておりまするその登記の方が害される、登記権利者権利が害されるということがあるのではないかという質問をいたしたのに対して、お答えはそういうことはないと、それは仮登記をしておけはいいから、そういうことは心配ないというお答えでございましたが、仮登記の場合にも権利書が要り、権利書がなければ保証書が要るのだということになりますと、このお答えは、少し何と申しますか、私どもには理解のしにてい言葉になってくるわけであります。仮登記ができるような権利書があるくらいならば、本登記の方にもそれを使えばいいわけで、だから、仮登記をする場合に権利書はあるけれども、そのほかの、たとえば委任状であるとか印鑑証明であるとかいうような点が整わないからといって仮登記をするというものであるとすれば、これはもう権利書を使って仮登記ができるからいいとも言えましょうけれども、そうでなく、権利書自体がないのだと、そういう不備によって本登記が直ちにできないのだ、こういう場合になりますというと、仮登記をすぐする手がないじゃありませんか。仮登記をすぐする手がないとすれば、仮登記をすることによって被害をこうむるおそれはないのだというお答えは、ちょっと聞かれないようなお答えになると思いますがいかがですか。
  10. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 先ほど私の説明ちょっと足りなかったのでございますが、仮登記申請の場合、一般の場合、仮登記もこれは共同登記権利者義務者共同申請で仮登記ができるわけでございますが、その場合には、一般の場合にはやはり登記済証が要ることになるわけでございます。ただ、不動産登記法の第二条、現行法改正法も変わりはございませんが、この第条の第一号に「登記申請ニ必要ナル手続上ノ条件カ具備セサルトキ」という規定がございますが、本来ならば当然もう本登記をし得る場合であるのだが、登記済証がないという場合には、これは第二条の第一号にまさしく当たるわけでございまして、登記済証がそろっていないということで仮登記申請ができるという場合があるわけございます。そういうわけで、本登記要件がほかの点は全部そろっておるのだけれども登記済証が滅失しておるというそういう場合には、それを理由に仮登記申請ができるわけでございます。
  11. 井川伊平

    井川伊平君 第二条によりますと、これは仮登記をすることができる場合のことを書いてある。だから仮登記をどういうような方法でするかという規定はない。仮登記をなし得る場合の規定が第三条である。仮登記をどういうふうにしてするかというのは、第二条の規定ではなく、先ほどあなたの説明によりますと三十五条の規定だとおっしゃった。してみますれば、三十五条にはいわゆる権利書がなくちゃならない。権利書がない場合には権利書にかわるべき保証書がなければならぬ。権利書保証書もなくて仮登記ができるという趣旨にはとれない。ことに昭和二十九年の八月二十九日の甲第一八〇三号の法務省民事局通達によりますと、登記済証が滅失し短時日に保証書を作成することができないことを理由とする仮登記は受理してはならないとある。言いかえれば、権利書あるいは保証書がなければ受理してはなないという趣旨にこういうような通達があるわけでございましょう。私はこれは当然のことではないかと思う。あなたの御説明は、どういう場合にできるかという、仮登記がどういう場合にできるかという二条の規定を、できる場合にどうしてするかという三十五条の規定とごっちゃにしたお答えのように聞こえるが、いかがですか。
  12. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 第二条は、「仮登記ハ左ノ場合ニ於テ之ヲ為ス」で、仰せ通りなし得る場合でございますが、第一号は「手続条件カ具備セサルトキ」ということで、その手続の一つとして三十五条の規定があるわけで、三十五条に定めておる手続上の条件が備わらないということで、仮登記に関する規定でありますところの三条一号の規定があると解釈すべきものだと思っております。それからなお、ただいま仰せ昭和二十九年の回答でございますが、これは現行法のもとにおきましては、保証書の場合にこういう事前通知というような規定がございません。事後通知でございまして、権利書がないということは登記が必然的におくれるということの原因になっておりませんので、現行法のもとにおける解釈としては、その回答通りであるべきであると思うのでございますが、法律改正になりまして事前通知というようなことで、場合によりましては三週間も登話がおくれるという事態になりまして、当然これは現行法とは違いまして、登記済証が滅失しておる場合は第二条の第五万に該当するとして、それを理由に仮登記ができるということに解釈すべきものと理解しておる次第でございます。   —————————————
  13. 大川光三

    委員長大川光三君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日付、山口重彦辞任田中一君選任、以上であります。   —————————————
  14. 井川伊平

    井川伊平君 あなたの御説明によれば、仮処分をなすことのできる場合の規定である第二条も、仮処分をなす手続についての三十五条にも改正はない、現行法通りでございます。従って、この現行法解釈というものが、改正をされないこの条文が、他の条文改正されたという理由解釈が二、三になる理由はないように私は考える。そういうような考え方からいたしますと、この、先ほども申しました回答ですが、昭和二十九年八月二十九日付民事甲第一八〇三号、民事局通達でございますが、これなどが当然に変わってくるのだという解釈はとれない。あるいは特別にこれを変えるなら、変えるという特別の措置をとらねばならない。そういうことならば、そういうことはむしろこの改正の法規のうちに入るべきではないか、こう考えるのですが、いかがですか。
  15. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 仰せでございますが、私どもはそう解しないのでございまして、なるほど第二条、第三十五条は、今度の案では変わっておりませんけれども、この昭和二十九年の回答で示しておりますような解釈は、現行法のもとでは、登記済証がかりに滅失しておりましても、保証書を添付することによりまして登記が遅滞なくできるわけで、当然にそのために三週間という猶予期間を置かなくちゃならぬということになっていないわけでございます。従いまして現行法のもとでは、登記済証が滅失しておるということは、この二条の一号に該当すると解すべきではないと思うのでございますが、新たに第四十四条の二というような規定が加わりまして、直ちに登記ができないということになりますと、登記制度登記法趣旨からいいまして、当然解釈を変更すべきものであると考える次第でございます。そういう前提のもとにこの四十四条の二も立案した次第でございます。
  16. 井川伊平

    井川伊平君 私が今まで質問したうちに、仮登記という言葉を表示しようとして、仮処分という言葉を使ったところがあるかもしれませんが、もし仮処分という言葉を使ったら、本質は仮処分という言葉は使う意思はなかったので、これは仮登記という趣旨に御理解賜わりたいと思います。  ただいまのあなたの御説明、私はますますふに落ちない。法の解釈はあなた方だけが解釈すべき特権を持っていない。第二条の解釈にいたしましても第三条の解釈にいたしましても、これは国民なり裁判所なりが解釈すべきものであって、法務省解釈によって法の内容が変わってくるということは許さるべきでない。法の解釈というものは、法文に書いてある文字自体によって理解のできることでなくてはならない。その理解昭和三十九年以来通達によって統一されて今日に及んでおりますのにかかわりませず、ほかの条文改正されたからこの解釈はこういうふうに取りかえるのだというようなやり方は、これは勝手にあなたが正式の法の改正手続をしないで内容を変更しようとするものであり、不可能ではないかと私は考えますが、いかがでございますか。
  17. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 私どもはそうは考えないのでございまして、法律条文というものは、やはり不動産登記法でありますれば不動産登記法全体、さらに他の関係法律との関連において解釈すべきものでありまして、その条文がたまたま問題になっておるたとえば三十五条、第二条第一号の規定が、字句が変わってないからといって、それだけを見て解釈が変わったか変わらぬかということを決すべきものではないと考えております。  それからなお、行政官庁法律解釈権能がないというお説でございますが、私どもはその点はそうは思っておりませんので、行政官庁もやはり法律解釈をいたすわけでありまして、法律解釈をいたさなければ、登記事務のみならずすべての事務が処理できないことになるわけでございまして、行政機関行政官庁もまた法律解釈権能があると私どもは考えております。
  18. 井川伊平

    井川伊平君 行政庁が法の解釈権限がないという趣旨ではないのです。権限はありましょうけれども、その解釈をもって全国民にこういうように解釈、この法の趣旨はこういうように従えという命令権はないという趣旨で言っておるわけで、最後的にはあなた方の解釈でもってきまるのではないということであります。してみれば、あなた方の御解釈になりますことは御自由であるといたしましても、それをもって日本全国登記に関する役人が全部そうすべきだといって、そういうように法律内容を取りかえた趣旨において押しつけるということは、現実において法律改正そのものになるのではないか。だからいけないのではないかという趣旨であります。内容は違わぬとおっしゃったけれども内容が違うではありませんか。今まででは権利書がなくてはならない。あるいは権利書もないし、それから保証書も簡単にはできない、だからつけられない。そういうような場合には、受理してはならないのだというこの法律の意味だと法律解釈しておったのが、今度はそんなことがなくても受け付けてもいいのだということになれば、法律内容改正になるんじゃありませんか。いかがですか。
  19. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 第四十四条の二が新たに加わりましたこと、それから不動産登記法趣旨からいいまして、第二条第一号の規定も当然解釈が変わるべきものと私どもは考えております。
  20. 井川伊平

    井川伊平君 そういたしますと、あなたの御解釈を、この際私ははっきりしておきたいと思うのでありますが、大体改正の法案がかりにこの通りきまったといたしますれば、本登記保証書によってなそうとする場合において、三週間の郵便による通告期間中、その期間中は、仮登記をする場合に、その仮登記権利書がなくても保証書がなくてもできるのだという、こういう解釈ですか。
  21. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) さようでございます。
  22. 井川伊平

    井川伊平君 権利書がなくてもいい、保証書がなくてもいいのですか。
  23. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 保証書は、これはなくてもいいと思います。
  24. 井川伊平

    井川伊平君 権利書がなくても、権利書がないときには、かわりに保証書かあればいいと、こういうことなんですね。
  25. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) その場合には四十四条の二の第二項による申し出がないので、手続上の条件が具備してないということで、仮登記ができると考える次第でございます。
  26. 大川光三

    委員長大川光三君) ちょっと委員長から牽連してお伺いしますが、そうすると、前回、もし保証書が間に合わないという場合は、仮登記をしておけばいいじゃないかという御答弁は、今の御答弁とこれは変わって参りますか。
  27. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 私今まであるいは言い違ったかもしれませんが、登記済証がない場合、その場合には登記済証がないということを理由に、権利書をつけて、四十四条の第二項の申し出がなくとも仮登記申請ができるという趣旨でございまして、保証書までも要らないという趣旨ではございません。保証書はやはりつけるべきものだろうと思います。
  28. 井川伊平

    井川伊平君 お伺いいたしますが、あなたの今の御説明によると、四十四条の二は本登記の場合に限るんだと、その権利証書がない場合に、保証書の問題は、これは三週間の期間を置いて通知しなくちゃならぬと、それら仮登記の場合においては、四十四条に含まれないんだと、だから保証書の場合でも三週間の通告期間は必要がないんだと、こういう御趣旨ですか。
  29. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 仮登記の場合は通知の必要がございません。
  30. 井川伊平

    井川伊平君 何がゆえに仮登記の場合はその通知の必要がなくて、本登記の場合にのみ通知の必要があるとおっしゃるのですか。
  31. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 仮登記の場合では効力からくるわけでございまして、順位を保全するだけの効力がないという仮登記効力から、そういうことになると思うのでございます。
  32. 井川伊平

    井川伊平君 仮発記でも、本人意思に反してそういう仮登記がせられて、そしてその仮登記をした仮登記簿上の仮登記権利者がその抹消同意しないということになりますと、真の不動産上の権利者というものは非常な損害をこうむると私は思いますが、あなたはそうお考えになりますか、なりませんか。
  33. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) どういう場合でございましょうか。普通は二つ方法があるわけでございまして、登記権利者登記義務者が共同して申請する場合、登記義務者が協力をしない場合には、裁判所の仮登記仮処分命令を受けて仮登記申請することに相なるわけであります。本人意思登記義務者意思に反して仮登記をする場合と申しますと、仮登記仮処分命令によってする場合であろうと思いますが、そういう場合に、もし仮登記権利者が実は権利者ではないということが後日判明しましたら、これは仮登記義務者の方から仮登記抹消を求めることに相なるわけであります。場合によりましては、訴訟を起こさなければならぬということもあり得ると思います。それは現行制度でもその点は変わりはないわけでございます。
  34. 井川伊平

    井川伊平君 保証によりまして、あるいは同意によりまして本登記がされた場合でも仮登記がされた場合でも、本人意思にそぐわないときにおいては、本人の方からその抹消を求め得るのだということにつきましては、これは両方とも同じであって、区別はございますまい。本登記の場合には抹消を求められないのだ、仮登記の場合には抹消を求められるから損害がないのだ、こういうようなことが言えますか。両方とも同じじゃありませんか。仮登記の場合であろうが本登記の場合であろうが、本人意思に基づかないようなそういう保証書が出されて、そうして同意があるとして、承諾があるとして登記をされた、しかし要実は同意承諾もなかったのだ、あるいは求めたけれども、もうその登記をした当時はそういう意思はなくなってしまっているのだ、こういうような場合には、当然に本登記であろうが、仮登記であろうが、抹消を求められることが原則でございましょう。だから、本登記の方については求められない、だから求められないから、非常に大事をとって事前通知をしなくちゃならない、一方の方は求められるのだ、だから事前通知はしなくても簡単にやれるのだからといったような、そういう簡単さの区別がないじゃないですか、同じじゃないですか。ふに落ちなければ説明していいですよ。
  35. 大川光三

    委員長大川光三君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  36. 大川光三

    委員長大川光三君) 速記を始めて。
  37. 井川伊平

    井川伊平君 最後にお伺いを申し上げますが、仮登記をする場合には、いわゆる権利書あるいは権利書にかわるべき保証書、こういうものがなければ仮登記ができないのかいなかという点についてお答えを願います。
  38. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 仮登記申請いたします場合には、ただいま仰せの点でございますが、権利書は要らない、従って保証書も添付の必要がないということにもなります。先ほどその場合でも保証書だけは要るのだという趣旨お答えをいたしましたけれども、あれは間違っておりましたので、訂正いたします。  なお現行法解釈では、権利書がないということは、仮登記要件にはならない、仮登記を要すべき場合には当たらないという現在の解釈でございますが、これは新法が施行になりましたならば、当然この取り扱いは変更すべきものと考えておる次第でございます。
  39. 田中一

    田中一君 私あまり不動産登記法に詳しくないから伺うのですが、一方的に、一人の者が自分の所有の土地または家屋登記する場合に、相隣関係はどういう工合に立証されるのですか、というのは、これはおれの土地である、今度一元化されますと、土地家屋調査士土地調査をする、それを持ってくる、その信憑性といいますか、それは、土地家屋調査士の身分、権利ですね、そういうものを信頼して、それをそのまま登記するのだということが通例行なわれているように見ているのですけれども法律条文を見ると、その場合にも、必ず受けつける吏員、職員といいますか、それが実態調査して、間違いないというので登記されるということになるのが正しいと思うけれども実態はどうなっているのですか。
  40. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 現在の台帳取り扱いにおきましては、建前は、今、田中委員仰せられるように、登記所が職権で調査して、台帳申告が正しいことを認めた場合に登録するという建前になっております。しかしながら実際問題といたしましては、現在の登記所の予算上の制約もありますことでございますので、実地調査を今法律趣旨通りに励行いたしておりますのは、建物の新築の申告がございました場合、それから増築申告がありました場合、なお建物が滅失したというような場合、これは消防署なんかの確実な証明がある場合には調査を省略いたしておりますけれども、そういうふうな場合、確実な証明がない場合でありますと、建物の滅失の場合でも調査をいたしております。ただ土地の方までは、たとえば分筆の申告がございました場合に、その申告の面積がはたして実際に合っているかどうかということまでの調査は、現在はいたしておりません。そういうのが現在の実情でございます。
  41. 田中一

    田中一君 御承知のように、国土調査法による土地調査は、現在実施されて、これも法律改正で、調査の報告というものが、市町村が調査の主体になっておりますから、それはそのまま登録されるということになっているにかかわらず、それがまだ総理大臣の承認することなくそのままになっているように聞いているのですが、それはそうですか。
  42. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 国土調査法による地籍調査が、事実は完了しておるのだけれども、まだ総理大臣認証炉ないというので確定してないという例はあるようであります。認証がかなりおくれるような実情にあるように私どもは聞いております。
  43. 田中一

    田中一君 国土調査法の問題は、ここでその事実があるということなら、それを伺っておきますが、一体、日本の移動しない——個人または国、公共団体等が持っているところの土地というものは、明治初年の登記がそのまま現状であるという認定のもとに登記されているのが実情だと思うのですよ。詳しくというか、わかりやすくいえば、明治初年以来の土地台帳というものが、正確に当時の実態調査をして登記されてないという事実ですね。この点については、土地台帳という制度が生まれて以来、その登記されている港類上の地籍と実体とが、正確で相違はないというように考えられておりますか。
  44. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 現在の土地台帳の基礎になっておりますのは、明治年間地租条例と最初は申しましたが、あれに基づくものでございまして、当時はまだ測量の技術も発達しておりませんし、それから実際やりました測量も必ずしも正確ではございませんでしたために、当時の実測、それからそれに基づいてできましたところの図面、地図というものは、必ずしも正確ではないのでございます。それを、税務署を経まして現在登記所が引き継いでおるわけでございます関係上、必ずしも正確でないというのが実情でございます。ただ、その後におきましても、たとえば耕地整理、現在では土地改良、それから土地区画整理、それから先ほど仰せ国土調査法による地籍調査が行なわれました地域におきましては、精密な実測がなされておりまして、それに基づきまして台帳の方も訂正してございますので、そういう地域におきましては、台帳の記載は現況に合っておるということでございます。ただ、それは部分的でございまして、国全体にわたっておるわけではございません。
  45. 田中一

    田中一君 区画整理あるいは耕地整理改良地区等は全部登記されておりますか。更改した実測登記されておりますか。
  46. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 事業が完了いたしますと、登記をいたしております。
  47. 田中一

    田中一君 国土調査法に基づく正規の変更は、今総理大臣認証がないから登記されておらないのでしょうね。今あなたはそれもされておると言っていましたけれども、されておるのですか、おらないのですか。先ほどはおらないと言っていた。今度はおると言っておるけれども……。
  48. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 手続の完了しておる所は登記をいたしておりますが、今申しましたように、まだ総理大臣認証が終わってない、手続の終わってない所は、これはまだ登記はいたしておりません。登記と申しますか、台帳の方の訂正は、まだいたされておりません。
  49. 田中一

    田中一君 調査は終わっておる。ただ書類上の総理大臣の承認がないから登記されてないのだというように解釈していいのでしょうね。
  50. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) その通りでございます。総理大臣認証がありまして初めてその地籍調査の結果並びに地図が、登記所に送付されてくるわけでございまして、それに基づいて台帳の訂正をいたすわけでございます。
  51. 田中一

    田中一君 国の所有するもの、あるいは公共団体の所有する土地は、現段階で、国土調査法によって調査されているもの以外に、自分自身というか、その人格、国の人格、あるいは地方公共団体の人格という、その自分自身の人格が持っているところの土地というものに対する実測というものは、今日まで行なわれておりましたか。
  52. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) ただいま仰せの国有地につきましては、これは土地台帳法の適用がございません関係で、台帳には載っていない建前でございます、現行法におきましては。それから公共団体の所有地につきましては、台帳法の適用を受けて、これはあるわけでございます。台帳法上はそうなっております。
  53. 田中一

    田中一君 私の言っておるのは、国の場合にしても、不動産登記法を所管しているところの民事局は、国の所有するところの土地というものの実態というものを知りたいという意欲は持ちませんか。ただ単なる権利を守る登記法というものだけであって、依頼されたからやるのだという程度のものしか考えないで、国のものもすべて——国民登記したものがあるならば、国だって、登記という手続を踏まないでも、実態というものを持たなければならないというような考え方をお持ちになりませんか。
  54. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) その点は、この改正法では改めまして、国有地なんかも今度は登記をするという建前に改めておるわけでございます。
  55. 田中一

    田中一君 そこで、今日個人が所有するもの、国が所有するもの、あるいは公共団体の所有する土地というものは、少なくとも実態とはおよそかけ離れているものであるということが、これはもう私自身固く信じているのです。むろんそれも、ことに戦後行なわれたところの土地改良とか、その他の問題につきましての登記は、一応実態に即したものであるであろうと考えますけれども、自分の持っておる財産を売るつもりもなければ貸すつもりもないというものは、おそらく明治初年の土地台帳登記しているものそのままが実在しているということではなくして、少なくとも実態はふえているのが現実ではないかということです。いわゆる通俗な言葉で言うと、どの地籍もなわ延びがあるということです。私ちょうど数年前ですが、国土総合開発審議会の委員として、国土調査法による調査の結果——まあ特定なる所を一つ地点をきめまして——その報告を受けました。山林などは八〇%も登記よりも延びているというものもございます。田畑はおおむね二、三〇%の延びを示しておる。宅地においては、もはやこれは論外です。実際は宅地でありながら山林であったり原野であったり、はなはだしい所は湖になっている、池になっているというものもあるわけです。従って、実態登記されているものとが、おそらく大部分のものが違うのだというようにわれわれは考えておるのです。で、これは国土総合調査法という法律を、徴税の面からも考えられましょうし……というのは、妥当なる徴税という面から、国民が公平な負担をしなければならないという建前からもくるでしょうし、あるいは農地と米の供出とかという問題もあるでしょうし、いろいろ問題があると思います。しかしながら、おおむね権利が動かない土地というものは、実態とはおよそかけ離れたところの登記がなされているということ、現状は、私はそうであろうと考えております。そこで最初に局長が言っているように、一つの権限土地家屋調査士というものに与えられる権限——むろん、これは義務もございましょう——それを信用して家屋に対しては大体抹消あるいは増築、新築等の、実態調査はするけれども、これは徴税の面でするのだと思うのです。おそらく土地に対しては、その実際のものが、一方的に、登記しようとするもの、移動された場合に登記しようとするもの、それだけを信用して登記をするということは、これははなはだ危険ではないかという考え方を持つのです。私はいろいろな事例を知っております。たとえば隣地がこうあると、これは実際百坪といいながら百三十坪ある、三十坪の面を隣地からかまわずこれはおれのものだという登記をする場合は、重なって登記をする、二重登記をする、地積を登記をする場合はこれを調べよう、実際正しいものを求めようということは、この登記法には方法はございますけれども、これは実際としてはないということです。なるほど、こっちはなわ延びしている、二百坪というけれども二百五十坪あるのだ、二百坪というものは一々立ち会ってものをやっておりませんから、古い時代の動かない土地というものは二重にも三重にも——三重はないでしょうけれども、二重の登記ということはあり得るのですね。従って実際今使用して、自分の権利であるといわれているところの土地を調べてみると、二百五十坪あった。五十坪分は隣の人がいつの間にかおれのものだという登記をしている事例がたくさんあるのです。しかしこれはなわ延びの二百五十坪。五十坪余分に実体を持っているという人は、自分はこれを動かす必要はない。自分の父祖伝来の土地で、売るつもりはない、貸すつもりはないというので眠っているわけですね。新しく生じた間違いを発見しょうという気持もない。まあこの法律じゃ、結局その場合には真の所有者がそれに対して何といいますか、裁判でもって、その決定を見なければ自分のものに戻らぬという実態が多々あるわけですね。今度の、ちょうど十年前に作られた十地家屋調査士という主役者が、これを自分で言っております。この連中が言っております、ありますと。しかし私は田中一という所有者から、自分の土地実測を頼まれ、登記するのだ、だから何も隣の人からどうこうと言もれても、これは確かにあなたのものでございますというような証明をもらわぬでも、登記所は受けつけてくれるから、そのままでやればいいのだ、それから土地家屋調査士は、これはおれの土地だと言われて、指図されて実測したものは、これは間違いじゃないのですよ。土地家屋調査士にかりに間違いがあった場合でも、悪意ではないわけでございますね。おれのものだ、現におれが使っているのだと言うから、現にその登記をしているにすぎないというのですね。これは罰則を与えられないのが現行法です。そうした間違いを正すのが登記所の役目なんです。国民の利益を守る、国民の所有権というものをはっきりと法の裏づけをもってそれを確定させようとするところに、登記法本来の役目がある。かつ法務省が戦後これを所管したということも、法務省ならせめてそういう間違いでも正すであろうというアメリカなんかの期待があったと思うのですよ。現在法文ではそれはそのようになっておりますと、しかし、実態に合っていないということを、今、平賀さんから承って、まことに寒けがするものです。国民としておそろしいものだと思うのです。いつの問にか自分の権利がなくなっている、そうして他人に移っている、困るなら裁判しなさいということでは、ひまがあって金があって力があるやつが裁判に勝つ。土地の紛争というやつは五年や十年で片づくものではございません。現在あるところの登記台帳というものが、登記簿というものが、実態と異なっているという事実をわれわれは認めなければならないのです。今度のこの改正案全部を見ると、少なくともわれわれの、国民の持つところの利益を守るかのごとき印象を率直に受けるわけなんです。また守ろうとする意欲があることは認めます。しかしながら、実態というものと現在登記されておるのが違うという場合には、これをまず正すのがこれは法務省の役目なんですよ。それがいまだにその面については……。なるほど申請がある、あるいは紛争が起こって初めて立ち会うということがあり得るでしょう。しかし、それは単なる立証者にすぎないのであって、あなた方は公簿と土地とを見て、何年何月にこれを申請しましたと、それには土地家屋調査士という職権を持っておる者がやったものでございまして、その通りでございますと言うにすぎないのでして、この信憑性の正しさを求めるということはできない、十年たち、二十年たった後には。これでは、ほんとうに国民権利を守る法律ではないと言うのです。というのは、条文の上では守られても、実行しておらぬのではないかということになるのです。ことに戦後保守内閣の政策というものは、土地に対する異常なる注目を与えるような政策をとりつつあるということは、地価の値上がりが起こっておるという現状から見ても、今後もそういうトラブルが多くなるのではないかという心配をしておる。当然今回の法律案も、御承知の通りわれわれ社会党としては、まあ、ざる法ではあるけれども、売春禁止法と同じように、ないよりあった方がいいということで態度をきめておりますけれども、何といってもあなた方が当然この法律によってしなければならないという義務を怠っておるという事実を見のがすことはできません。だれが一体各人所有しておる土地に対する信憑性の正しさを求めるかというと、公簿以外にない。裁判所に行っても公簿によってきまるわけなんです。あなた方はその手続上の間違えさえなければ、それが公簿に載っておるものは正しいのですと答弁をする以外にない。なぜなら、たとえば隣地の所有者に対して、あなたの境界はここでございます、これでよろしゅうございますねという承認を受けたわけでもない、一面また隣接するところの土地の所有者に一々、登記をいたしますからあなたの方で境界線を証明して下さいと、こう頼んでも、隣とけんかをしておると、なかなか証明してくれない、そうするとそれも登記ができない。あいつはにくらしいやつだから、うちの庭のまっ正面におしめを干すからといって、その境界に対する証明をやってくれないときには登記できないということになっても困る、一体どうすればいいかということです。現に、きょうの新聞でしたか、投書欄でこんなのが出ておりました。御承知のように、自分の家を新築するのに、自分の家の空地の建築基準法に基づく建蔽率を、他人の庭を自分の所有の土地であるかのごとく申請をして、一ぱい一ぱい、たとえば四割なり五割という制限を受けるべく空地と建物との建蔽率は建基法できまっておりますが、これは借りている、借りられるのだという前提で認めているという事実があるのです。建築基準法によりますと、これは何ら実体というものをつかむことができない。なぜならば、隣の人が自分にこれを貸してくれることになっておりますからと、あるいはこのあき地は空地として承諾しておりますからということで、一方的な申告でもってそれを認めているのが現状なんです、建築基準法においても。今度の場合には、現在、個人が持っているところの地積というものは、登記されておるものよりもおおむね内法が多いという現実を考えますならば、いかに、どういう手続上の簡素化をはかり、国民手続上の費用の軽減をはかったところが、実体そのものの権利というものが擁護されない限り、これは話にならぬ。ざる法といわざるを得ないのでございまして、私どもは、今日では帳簿に載ったものを信ずる以外にない。実体と公簿面とが違うという事実を、少なくとも正しさを求めようとするところの法務省の態度としては、このような形ではいけないということを言っている。どうすればいいか。法務省が戦後、なぜこの法律を所管することになったかという経緯を一ぺん反省して振り返ってごらんなさい。
  56. 大川光三

    委員長大川光三君) この際、御報告いたします。本件に関連する予算関係について、法務省より批把田局付検事並びに大蔵省より広瀬主計官が説明のため出席されましたから、御了承願います。
  57. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 登記所台帳事務を所管するようになりましたのは、従来、台帳要務は税務署で所管をいたしておったのでございますが、土地建物に対する税が地方公共団体に移譲されたのに伴いまして、税務署で保管をし、管理をしておりますところの台帳事務を、どこに持っていくかということが問題になったのでございます。その際に、土地建物というのは単に租税の対象であるという見地から把握すべきものでなくて、根本的には権利の客体として把握されるべきものではないかということをもちまして、不動産に対する権利関係登記を所管しておりますところの登記所に移管をするのが筋であるということでもって、昭和二十五年に登記所に移管になったのでございます。そういう次第でございますが、この台帳事務におきましては、土地建物の現況というものが正確に把握されなくてはならないということは、税務署所管時代からもこれは当然のことでございます。その点は、税務署時代と、この事務登記所が引き継ぎましてからも変わっていないのでございます。ただ、田中委員も御承知の通りに、土地建物の現況というものを正確に台帳上に反映させるということになりますと、実地調査が必要になるわけでございます。特に土地につきましては、御承知のように国土調査というものがあって、これに基づきまして地籍調査があちらこちらで行なわれているわけでございます。ただこれは、何分膨大な予算を要することでございまして、一朝一夕には現在の国全体の財政事情からできないという実情にあるわけでございます。登記所にこれが移管になりましても、法律趣旨に従いまして、できる限り土地建物の現況を正確に台帳の上に反映させたいということで努力をいたしておるのでございます。この点は、今回の改正におきましても同様でございますが、ただいま申し上げましたように、何分にもこれは膨大な予算を要することでございまして、法務省といたしましては、とにかく、できるだけ昭和三十九年度までに現在の台帳登記簿が二本立てになっておりますのを一本化いたしまして、まずその仕事を完了することが先決でございまして、それから予算の事情をにらみ合わせまして、逐次土地建物の現況の正確な把握、それから正確な地図の作成、建物の所在地の作成ということに進んでいきたいと考えておる次第でございます。
  58. 田中一

    田中一君 国土調査法では十カ年計画でもって何十万坪だったか、やられることになっておりましたね。
  59. 香川保一

    説明員(香川保一君) 大体三百万……。まだ本ぎまりになっていないのです。
  60. 田中一

    田中一君 そこで、国はこのものはおやんなさい。一体大蔵省なんというものは私は自分で自分を軽べつするのじゃないけれども、政治家なんというものは、自分の選挙区の利害だけで動くことがおおむね多いのですよ。実際の国の富あるいは国民の生活等と真剣に取っ組むということは少ない。これに乗って国の財政を動かしているのが私は大蔵省じゃないかと思うのです。それほど大事なもの、国がやる場合に今のような予算のつけ方では、日本の国全体やるには千年、二千年かかりますよ。その間には移動する、分筆される、さいの川原です。こんなことをするのはやめたらよろしいということも書いたくなるくらいなんですよ。せめてそうした実調、その他の負担というものを個人がするところの資産、いわゆる法律で認められておるところの私有財産というものに対する問題だけは、その信憑性というものを、法務省が、登記所がそれを正すということは、これは当然のことだと思うのです。大きな意味の戸籍調査なんというものは、今、局長の言っているように容易なことじゃない。千年、二千年かかる。千年、二千年かかるうちに天災地変もある、風水害もある。いろいろな形でもってその地目は変更される。だからさいの川原なんです。ほんとうに国が強い意思をもって行なおうとする以外にないわけなんです。今あなたのおっしゃっている、今のような予算のつけ方では、あってなきがごときものです。これに並行して、関連して生まれるところの国民の利害というものは著しいものがある、不公平というものは。だから、私などは絶対に総理は認証してはならないと主帳しているのです。今日ひるがえっていわゆる個人の負担によって、自分の財産の正しさを求めるという行為に対しては、当然国はそれに正しさを求めなければならぬのですから、争いをなくそうということなんだから、国はそれに対しては十分なる措置をとらなければならない。ところが現在では、法をいかにかえようとも、実態はそれについていかないという現状から見ると、これは法務省どういう工合にこれを考えようとするか、どういう工合に対処しようとするか、一つこれはまあ法務省としての希望でもいい、あまり強い役所でもないから、希望でもいいからおっしゃい。
  61. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) ただいまのお尋ねは、個人の方で、私人の方で、登記所で把握しております不動産の現況が間違っておるのを正したいという希望があった場合にどう対処するかという趣旨の御質問でございますか。
  62. 田中一

    田中一君 そうです。
  63. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) その場合には、たとえば土地でありますと、面積の表示が違っておるということでありますと、これは現行法では台帳の訂正の申告ができますし、新しい法律のもとでは不動産の表示の更生ということで登記申請ができるということになるわけでございます。その申請なり申告なりが正しいということでありますれば、それに基づきまして台帳あるいは改正法のもとにおける登記簿の表示を変えることに相なるわけでございます。
  64. 田中一

    田中一君 私は手続のことを言っているのではないのですよ。実態の正しさというものを立証する登記所は、登記所へくるものをそのまま載せればいいのだという態度ではいけないということを言っているのです。隣地の関係等も確認しておやりなさい。隣地の確認をしようとすると、そこにだれの所有でもない公簿上にない空地というものが必ず発見されるだろうというのですよ。一体これがだれのものかということになると紛争のもとになる。紛争が起きればそれは裁判でおやりなさいと言ってあなた方は逃げているのが実情なんです。だれの土地でもないというものが生まれるのが今までの常識です、今日までの日本土地というものは。それを、これはあなたが現に使っている、家が建っているじゃないか、この土地はあなたのものだからさっそく正しい登記をなさい、こういうことを慫慂するのがやはりあなた方の行政府の親切さ、国民に対する奉仕の一つですよ。私は今の登記所の職員で、全部で一年間に何件ぐらい一体土地登記等の事務がございますか。おそらく数千万件に上がっているでしょう。現在の職員でこれを私が今言っているようなことをやれと言ってもできっこないのですよ。そのためにどうするかというのです。国家公務員をやたらにふやしても、これも困るでございましょう。本来ならば国民の利害を正しく認め、それを公簿にはっきりと記載することが一番好ましことなんです。これには登記所の職員を三倍か五倍にすることが必要です。大蔵省は決して大蔵官僚に奉仕しているのではない。国民に奉仕すべきものです。ところが、これは登記所の職員等は、その正しさを求めるために純粋な立場から大蔵省に人員の要求、経費の要求、出張の要求等をしたことがありますか。今までおそらく相当なものを要求しているのだろうと信じております。けれども、明らかにして下さい。三十五年度の予算ではどのくらいのものを要求しょうとしたか。それもあなた方の事務の簡素化ではない。事務の簡素化と同時に、あなた方自身の問題ではなくして、国民への奉仕のための要求をどれくらいしているか、一つ明らかにして下さい。
  65. 大川光三

    委員長大川光三君) ちょっと委員長から付加して希望をいたします。ただいまの田中委員の御質問については、すでに前回高田委員から御質問されましたが、その当時、なおよく調査の上で詳しい報告を承ることになったと思いますので、この機会になるべく詳しい御説明を求めます。
  66. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) ただいま登記所の職員の増員の関係の御質問でございますが、法務省の方では、現在最近数年間に登記事件がかなり増加いたしておりますので、いささか人手の不足を告げておりますので、昭和三十五年度におきましては、登記事務に従事する職員約九百名前後の増員の要求をいたしたわけでございます。大蔵省の方では昭和三十五年度におきましては百四十二名の増員を認めていただきまして、これが実現される見込みでございます。
  67. 田中一

    田中一君 定員法上の職員以外にどのくらいの職員を使っていますか。まあ常勤職員あるいは常勤的非常勤職員というものを使っていると思いますが、どのくらい使っていますか。
  68. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) これは登記所と普通申しておりますが、正確に申し上げますと法務局、地方法務局でございます。これは登記以外の仕事もやっておるのでございますが、この法務局、地方法務局の職員の定員は約九千名をちょっと上回っております。約九千名でございます。そのうちの約七千名が不動産登記事務に、商業登記もそうでありますが、それから台帳事務に従事いたしておるわけでございます。その定員のほかに常勤職員が四百八十名いるわけでございます。
  69. 田中一

    田中一君 そのほかに常勤的非常勤職員は何名おりますか。
  70. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 常勤的非常勤と申しますか、賃金職員は現在一日十五人という割合で予算が認められております。
  71. 田中一

    田中一君 そんなことを言わないで計算して出しなさい。一日十五人というのは全体で十五人ですか、法務局、それから地方法務局全部含めて十五人という意味ですか、それとも一登記所に十五人ですか、あるいは一地方法務局に十五人ですか、計算してごらんなさい。
  72. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) これは全国の法務局、地方法務局を通じて一日十五人という割合で予算を認められておるという趣旨でございます。
  73. 田中一

    田中一君 そうすると定員法上の職員は九千名、それから登記関係でやっているのは七千名、常勤職員が法務一局、地方法務局を通じて四百八十名、そのほかに一日十五名の常勤的非常勤職員のワクを持っていると、こういうわけですか。
  74. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) そういうことでございます。
  75. 田中一

    田中一君 今私が前段に申し上げたような、この法にあるように実地検証をしてそれの正しさを求めるということになると、どれくらい人間が必要になりますか、それは今までの過去の統計的な実態から見て。
  76. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) これは実地検査のやり方によるわけでございまして、一々全国の土地建物を正確にということになりますと、これは膨大な職員が要ることになるわけであります。これはきわめて非現実的でございまして、私どもの考え方といたしましては、やはり一般国民の協力も求めなくてはならない、建物を新築したら新築の登録、新法のもとでは登記申請ということになるわけでありますが、資料を添えて申告あるいは登記申請をしてもらう、できる限り正確な申告なり申請をしてもらうために、土地家屋調査士制度もできておることでありまして、国民の協力、土地家屋調査士制度、そういうものをあわせて、そういうことも前提にして考えなくてはならぬだろうと思うのでございます。私どもの現在の考え方といたしましては、この土地建物実地調査ということもさらに強化いたしたいとは考えておりますけれども、現在の財政状態から見まして、そのための増員ということは、現在のところは考えておりません。ただ、現在登記所でやっておりますところの登記事務をもっと合理化する、たとえば機械なんかを採用いたしまして合理化をする。それから今度の台帳登記簿の一元化も、実は登記事務の合理化の一つの手段として考えておるわけでございまして、この一元化が完了いたしますと、ある程度の登記所の負担というものが減少するわけでございまして、それによりまして生じました余力は、実地調査を強化するということに向けたい、そういうふうに考えておる次第でございます。
  77. 田中一

    田中一君 これらの問題に対して、大蔵省の主計官は、私の質問を聞いておったと思いますけれども、聞いておりましたね。
  78. 広瀬駿二

    説明員(広瀬駿二君) はい。
  79. 田中一

    田中一君 そこで登記公簿に載るものと、現在土地が動かないで明治初年の土地台帳に載ったままの姿である土地と重なったりなんかするような場合、それはなるほど数字としては合っているでしょうけれども実態としては三重登記地籍ということがあり得るから、これを是正する、正しさを求めるということのためには、相当なたくさんの費用がかかる。そこで、なぜ九百名の三十五年度の要求を百四十二名にしぼったのか、それをまず伺っておきたい。そういう国民の利害に非常に関係のある仕事に対して、どういう考え方でこれをしぼったのか。他の行政官庁と同じ率でもってこれを認めないということでそうなったのかどうか、伺っておきたい。
  80. 広瀬駿二

    説明員(広瀬駿二君) 法務局職員の増員要求九百人をなぜ百四十二人に査定したか、こういうことでございます。増員要求につきましては、もちろん非常に精細な根拠がございまして、詳細伺ったわけでございますが、それらについて、予算折衝の過程で、いろいろと議論を重ね、また大臣同士、あるいは政務次官同士の大きな見地からの交渉もございまして、だんだんに予算の折衝過程でしぼられて参りまして、法務省全体が二百人、そのうち法務局は特に重点を置かれまして、百四十二人にしたわけでございますが、この百四十二人は、大体現在登記事務に従事している職員と、それから今後の登記事件の伸び率その他を勘案いたしまして、職員の負担をできるだけ緩和し、できるだけ法務省の要望に沿うようにという趣旨から行なわれたわけでございます。
  81. 田中一

    田中一君 土地家屋調査士法も、二十四年か二十五年だったかにでき上がりまして、やたらに定員の増、国家公務員がふえることが能ではないというところでもって、そういう制度もでき、そこに一つの権限を与えて、またそれを信用して、制度が生まれたと思うのです。  そこで、観点を変えて一つ……。今大蔵省の主計官も、そういうように実態を正しく登記させるということは、これは反対でありませんね、主計官も。どうでしょう。
  82. 広瀬駿二

    説明員(広瀬駿二君) ええ。
  83. 田中一

    田中一君 むろん法務省ではそうでしょうね。どうでもいいのだ。間違いがあれば、それは裁判所の問題だというような態度をとるわけではないでしょう。そうなると、ちょっと前進しなければならぬのは、今の土地家屋調査士権限です。土地家屋調査士は、一応法律によって法務省の職員の代行をさせようという含みも持ちながら、やはり正しさを求めようということでございましょう。手続上の正しさばかりではないのです。実態の正しさというものをやはり土地家屋調査士に持たせなければならぬ。どうも大体法務省なんていう役所は、手続のことばかり言っている。実態というものに触れようとしない。先ほど井川さんの質疑を聞いておっても、こちらが実体に触れているのに、どうも実態とかけ離れたところの、自分の作った一つの法律案にこだわって、手続上の問題ばかりを言っておる。抽象論ばかりを言っておる。私は、そういう工合に質疑応答を聞いていて感じたわけです。そこで、土地家屋調査士という制度ができた以上、これを活用しなければならぬ。これは局長に伺っておきますが、現在かかっておる法律案不動産登記法改正案の衆議院における質疑の過程において、どうもはなはだおもしろくないことを言っているのです。というのは、司法書士と土地家屋調査士というものは、権限それから分野等はどういう工合な考え方をあなたが持っておるか、まずその前に伺っておきたいのです、この策議院における田中伊三次君の質疑のことの前に。司法書士と土地家屋調査士との権限、業務分野というもの。おそらく答弁は、双方の法律案がございますから、法律の上で明らかになっておるということを答弁するでしょう。どうですか。
  84. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) これはただいま御説明通り法律の上で限界は明らかにいたしておるわけでございます。
  85. 大川光三

    委員長大川光三君) その法律内容を簡単に説明して下さい。
  86. 田中一

    田中一君 六法全書がありますから私は説明は要りません。
  87. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 司法書士につきましては、司法書士法という法律が御承知の通りあるわけでございますが、この第一条に司法書士の職域が規定してあるわけでございます。「司法書士は、他人の嘱託を受けて、その者が裁判所、検察庁又は法務局若しくは地方法務局に提出する書類を代って作成することを業とする。」これは広く規定いたしてあるわけでございます。それから土地家屋調査士法でありますと、現行の第二条にその規定があるわけでございますが、「土地家屋調査士は、他人の依頼を受けて、土地台帳又は家屋台帳の登録にっき必要な土地又は家屋に関する調査測量又は申告手続をすることを業とする。」、このうち改正法に参りますと、台帳制度が廃止になるという建前がございます関係上、これは改正案の附則の第十七条におきまして、この第二条を改正いたしまして、現行法では「土地台帳又は家屋台帳の登録につき必要な土地又は家屋に関する調査」云々となっておりますのが、不動産の表示に関する登記につき必要な土地または家屋に関する調査測量または、現行法では申告とありますのが、申請手続をすることを業とする、こういうことで両者の職域が法律の上で明らかにされておるわけであります。
  88. 田中一

    田中一君 そこで、今度の改正法案の中で、どうも競合する点があるのではなかろうか。これはお互いに競合させてはならぬ。やはりあなた方がその一つの法律でもって職域の権限を与え、義務を与えるということになると、競合したのではけんかになりますから、これはあなた方、法務省の好むところでないのだ。競合するのではなかろうかと考えられるような点を、正確に説明して下さい。ありませんならありませんでけっこうでございます。全然別でございますという答弁ならそれでけっこうでございます。誤解を受けるような点がこの辺にあるというところがあるなら、それを一つ御説明して下さい。
  89. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) その点につきましては、これは土地家屋調査士法でございますが、第十九条にまた別に規定がございまして、この「調査士会に入会している調査士でない者は、第二条に規定する土地又は家屋に関する調査測量又はこれらの結果を必要とする申告手続をすることを業とすることができない。」この申告手続というのは、この改正案では申請手続ということになるわけでございます。で、先ほど申し上げましたように、司法書士法におきましては広く裁判所、検察庁、法務局に提出する書面の作成を司法書士はできると、広くしてありますが、調査士法の第十九条がございます関係で、土地建物調査測量と、それからそれに基づく登記申請現行法では台帳申告手続というものが、これはもっぱら調査士だけができるということになっておるわけでございます。そういう関係で、まあ法律規定の上では抵触をすることはないわけでございますが、ただ実際問題としまして、今度の改正案のもとにおきましては、従来の台帳にかわりまして不動産の表示に関する登記というふうにみんな登記になってしまったわけでございます。そう相なりますと、たとえば土地の分筆をするとか、あるいは合筆をするというような場合でありますが、この不動産実態調査、それから不動産測量土地測量、こういうものが必要になってくるわけでございますが、これはあくまで調査士でなければならない、本人にかわってやるのは調査書でなければならない。司法書士もこれはできない。しかしながら、たとえば分筆の登記なんかでありますと、同時に権利関係に変動を生ずる場合があるわけでございます。これは不動産登記法規定がございますが、そういう場合の登記申請手続になりますと、これはまた土地家屋調査士はそういう権利関係の変動についての素養があるということを前提にした制度ではないものでございますから、そういう分筆の登記申請書ということになりますと、これは司法書士の職域になるわけでございます。そういう関係で、まあ分筆を例にとりますと、分筆に必要な土地調査測量、それから図面の作成、これは土地家屋調査士がやる。しかしながら、登記申請書の方の、権利関係に変動を伴う場合でありますと、これは司法書士が作成するということになると思うのでございます。多くの場合、両者の職域がダブって困るという事態は、そう起こらないかと思うのでございます。
  90. 田中一

    田中一君 今度の法改正の附則で、御承知のように、法律関係の試験を受けなければならなくなっています。しかしながら、現在持っておりますところの土地家屋調査士はこれは、法律関係のものもマスターしているという前提に立っているものだと理解しているのですが、そうではないですか。
  91. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) これは台帳申告手続に関する限りにおいて、法律関係も試験をするという建前になっております。ただ、その権利関係については現行制度でも試験の対象にはいたしてないわけでございます。
  92. 田中一

    田中一君 私はここに、三十三年三月十日から六月九日まで約三ヵ月間法務局の新宿、板橋、隅田、中野各出張所で実際の台帳登録の申告書の作成者の実態調査というものをした資料があるのですがね、これはむろんあなた方持っていると思いますけれども、これを見ると、むろん何も測量技術を持っている者が、一々土地家屋調査士測量させないでも一向差しつかえないわけですから、やりますし、図面をかくのも、一定規模以上のものは建築基準法の場合においてもその作成届け出の問題は建築士なら建築士という資格者に出させておりますけれども、これはもう由山です。だからこの登録についても本人がやる場合があります、申告を。しかしながら、土地測量、建造物の調査等は、これは土地家屋調査士がやらなければならないことになっておりますが、先ほどあなたが言っているように、土地の場合にはなかなか専門的な技術を持たなければできないものだから割合に少ないけれども、建築物の場合には、大体司法書士がやっているということがこれがもう実態なんです。今あなたの説明にある通り、法の解釈としてはそれはできない。できないけれども本人申告という名に隠れてやっているのが実態なんです。それはお認めになりますね。いわゆる司法書士がやっているということは認めますね。
  93. 大川光三

    委員長大川光三君) ただいまの田中委員の御質問お答えになる前に、私からちょっと伺いたい。  先ほどの局長の説明で、司法書士と上地家雄調査士との業務範囲については、競合点があるけれども大体うまくいけるのだという意味の御答弁だと思いますが、その点は、なんですか、司法書士と土地家屋調査士との問にもう了解がついているのでしょうか、その点もあわせて説明をしていただきたいと思います。
  94. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 先ほど私御説明申し上、げました点につきましては、これは司法書士会並びに調査士会の方におきましても、両者で十分この職域の範囲についての理解があることが必要でございますので、法務省が中に入りまして両者の間で話し合いをしていただきまして、この新法の趣旨に両者とも賛成いたしまして、職域の点につきましては実は両者の間で申し合わせができているのでございます。  それからなお、ただいま田中委員のお話の点でございますが、現行台帳事務関係では、ただいま田中委員仰せられるような事実も間々私どもあるということを承知いたしております。これは司法書士法並びに土地家屋調査士法の建前からいきますと、この制度趣旨には必ずしも合っていない。司法書士がそこまでやるということは、これは行き過ぎであると私ども思っておるのでございますが、ただ実際問題といたしましては、都会や何かのように司法書士も調査士もどちらも手近にあってそれが利用できるという所であるなら、これは制度趣旨通り励行してもさしつかえないわけでございますが、地方によりましては司法書士は手近にいるけれども調査士の所に行くには相当遠方まで行かなくちゃならぬというようなこともあるわけでございまして、こういう場合には、たとえ司法書司がかわって建物の図面なんかを作っておるものでありましても、それが事実と合っておるということであれば、その台帳申告も受理するということにすることが台帳申告をされる人の便宜であることはもちろんでございますので、そういう実情も考慮いたしまして、場合によってはそういうこともやむを得ないということで認めざるを得ない場合もあると思うのでございます。
  95. 田中一

    田中一君 今、委員長がちょっと関連して質問した問題に戻るのですけれども、衆議院でもそういう答弁をしています。法務省民事局が中に入って双方に競合——法律では競合しておらぬが実態は競合しておる、競合するやのごとく、どちらもできるような簡易な権限上の問題がある。また実態として今、局長が言っているように、扱うべき土地家屋調査士がその地域におらぬ場合ということを言っておりますが、私は法を正しく運用さすには、そういうことがあっちゃならぬと思うのです。便宜で法の運用を間違っちゃいかぬと思うのです。運用を間違って施行してはいかぬと思うのです。ことに、いつでしたか、書類がございますけれども、一月の二十八、二十九日の土地家屋調査士会の連合会の議事録を手に入れて調べておるのですが、申し合わせ了解事項というものを作成しております。時間がないけれども、私がこれを一つ一つあなたに伺って、この問題は権限がどうなっているかということを伺って答弁しますか。それとも時間がないからあなたの方で書類で、この問題は土地家屋調査士法ではこうでございます、司法書士法ではこうでございますという工合に分けて、文書でもってお出しになるか、どっちかを要求したいのです。一体今、山間僻地等には需要がないから土地家屋調査士もおらない。だから便宜上司法書士にやらすのだという場合、それもおらないから末端の行政機関の職員が代行することは、これはたくさんあると思うのです。しかし、だからかかる了解事項が作成されたということは、これは間違いです。ことに民事局が中に入ってお互いの顔を立てるようなことをして、未熟なくせに国民権利をなにするような書類ができたときには一体どうするかということです。今あなたがそうして司法書士にやらしても事実と違いはないと認めた場合には——違いないだろうから、ないものならばそれをさしてもいいではないかということを言っておったけれども、だれが事実と相違ないということを立証するんですか。どうもあなた方の頭の中は、条文手続上の問題ばかりにこだわっておるんです。それさえあればどういう間違いを起こそうと、犯罪を犯そうと、犯罪は刑法でおやりなさい、そのほかの訴訟は裁判所でおやりなさいという態度では、完全な行政指導じゃないですよ。役所の吏員や司法書士がやったその事実に、間違いないという立証をだれがするんですかと言うんです。そういうものが出た場合には、登記所は必ずその書類を持って実地検証に行って、間違いがないということを確認したならば、間違いないと認めましょう。ただ単に文書上、手続上、書類上の問題が間違いないというものであればいいというものではないと言っているんです、再三再四。私が質問する点はそこにあるんです。ことに法律でもってきめられているところの権限というものがありながら、こういう了解事項を民事局が中心になって少なくとも作るなんていうことは間違いです。そういう態度が方々にあるならば、法務省所管のあらゆる法律というものは便宜主義で運用されていると言わざるを得ない。なぜ法律を守らぬかということです。そうして、ことに山間僻地とは言わない、相当な町でも、なるほど司法番士の事務の方が多い、土地家屋調査士の仕事の方が少ない。これはまあ大体そうだと思います。そういう権限を司法書士に暗々裏に認めるから、土地家屋調査士というあなたの主管しているところの能力がある者が営業もできなくなるんです。弱肉強食です。そうならざるを得ない。今日のような資本主義社会においては、強い者が勝つんです。すべて法の運用は、どの地区においても国民全部がそれを守らなければならぬ。その場合にはあなたの仕事は、実態から見ると、何々地区ならこれだけの仕事がございますと、非常に不便でございますからどうかあなたの、たとえばそういう士会の連合会が強制加入になっておりますから、士会に命じてそういうものをお出しなさいというぐらいな指導をするような気持がなければ、当然資格者は追い出されてしまうものなんです。民事局がそういうような指導をして、こういうお互いが——お互いかお互いでないかはあなた方の答弁で聞きますが、権限を侵し合うというような了解事項を民事局が中に入って作るということはあり得ないことなんです。この了解事項というものを——まあ委員長ほか皆さん同僚委員の方々も御迷惑でしょうから、あまりここでもって時間をとらしたくはありませんが、この了解事項をあなた方は強要して作らせたのでしょう、もししいて言うならばね。お互いにけんかがあるから、お互いに問題があるから、中に入ってまあまあと言って作らせたものでしょう。強要という言葉が強ければ……。
  96. 大川光三

    委員長大川光三君) 速記をとめて。    〔速記中止
  97. 大川光三

    委員長大川光三君) 速記をつけて。
  98. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 実は司法書士会の連合会、土地家屋調査士会連合会は、新しいこの法律案のもとにおける両者の職域につきまして申し合せができておるのであります。私これを読み上げます。  書面は、日本司法書士会連合会と全国土地家屋調査士会連合会との申し合せ了解事項という表題がついておりまして、  その一として、「土地または建物の現況についての官公署の証明書に基く不動産の表示に関する登記、その他土地または建物の特別の調査測量を必要としない不動産の表示に関する登記申請手続は司法書士がすることができる。」  二としまして、「権利関係登記に変更を生ぜしめる不動産の分割の登記申請手続は司法書士がするものとする。ただし、土地家屋調査士の作成した所要の図面を申請書に添付した場合に限る。」こういう了解事項になっております。  こういう了解を、先ほど強制したのではないかというお話でございましたが、強制したという事実はございません。なお、この了解事項は、私どもの考えでは、新しい法律案解釈としてもかく相なると思うのでありまして、お互いの権限を侵し合うことを認めたという筋合いのものではございません。
  99. 田中一

    田中一君 それでは実態について私は質問いたしますが、たとえば建物の滅失について所轄消防署長の焼失証明書がある場合には、その証明書によって司法書士が取り扱ってもよろしいというふうにお考えになっておりますか。
  100. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 建物の滅失、たとえば火災で滅失した場合に消防署の滅失の証明がございますれば、これは土地家屋調査士という専門の測量の技術をお持ちになった方でなくとも、しろうとが見ても焼けてなくなっておればわかることでございまして、必ずしも土地家屋調査士調査がないから、測量がないからといって、この登記申請手続を不適法だと言うわけにはいかぬのでございます。で、そういう場合には土地家屋調査士ももちろん滅失の登記申請はできますけれども、そういう消防署の確実な証明がついておりますれば、司法書士でも建物の滅失登記申請ができるとういふうにこの法律解釈も相なると思うのでございます。
  101. 田中一

    田中一君 半焼の場合は……。
  102. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 半焼の場合は、これはまた別になるわけでございます。建物が一部滅失いたしまして、床面積が減少してくることに相なるわけでございます。この場合は調査士の調査測量が要るというふうに考えております。
  103. 田中一

    田中一君 半焼という所轄消防署長の証明書があった場合は……。
  104. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) ただ半焼というのでは、一体どのくらい残っておるか、滅失した部分が何坪あるいは何平方メートルということがはっきりいたしませんので、その場合には土地家屋調査士調査測量が必要になってくるわけでございます。
  105. 田中一

    田中一君 もう一ぺん確認いたしますが、全焼の場合は、何にもないのだという前提のもとに、それは認めるということですね。
  106. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) そうでございます。
  107. 田中一

    田中一君 当然その場合には、消防署の権限外の倒壊とか流失とか取りこわし等もこれは市町村長の証明書があれば扱ってよろしいということですか。
  108. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 官公署の正確な調査測量の結果を記載しました証明書がついておれば、これは別でございます。
  109. 田中一

    田中一君 半壊その他の場合には、当然これは土地家屋調査士調査がなければならぬと、こういうことですか。
  110. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) そういうふうに考えます。
  111. 田中一

    田中一君 たとえば建築基準法できめられておりますところの三十平米以下の建物、これは三級建築士でなくとも届け出は自由なんですね、建築の場合。その場合、本人がやる場合には一向さしつかえない、木造の簡易のものは。しかしながら、そういうものはかって司法書士の建築代願人というような制度がありました。現在でもその制度は東京には多分残っておる。建築士でない建築代願人、これらはおおむね司法書士が代行しておる。司法書士の資格の方々の建築代願人というのは、東京都の場合には条例で作っている。ほかにもあります。そういうものの書類——そういう物件の調査等は当然本人もできるけれども司法書士がおもに代行しておる。それらのものは、本人ができるものは司法書士がやってもよろしいということはどうですか。
  112. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 本人ができるから司法書士ができるということにはならぬと考えます。この不動産の表示に関する登記申請でも、本人ができれば本人調査測量してもいいわけでありますが、本人だってできるから司法書士もできるであろう、だれでもできるであろうというわけには、そういうことには司法書士法も土地家屋調査士法もなっておりません。
  113. 田中一

    田中一君 そこで申し上げたいのは、物件の正しさというものを求めるために登記法があるのです。権利を守るためにある。正しい権利——正しいというか、権利が実体にそぐわない登記というものは好ましくないと思うのです。そのために、法律的な手続の問題は司法書士それから土地並びに建物の建築物の科学的な調査に対しては土地家屋調査士ということに立法の精神があるわけです。この場合、本人申告というものですね、本人申告という場合には、たとえば土地並びに家屋の建築物の場合、どこまでも土地家屋調査士の立証というか、調査したという立証がなくちゃならないということには法律上なっておらぬと思いますが、その点はどうですか。
  114. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) その通りでございます。本人がする場合には、本人で全部できるという建前不動産登記法それから台帳制度ができております。
  115. 田中一

    田中一君 私はそこに盲点があると思う。現に正しさを求めようとして、登記の場合には、文書的な正しさじゃなくて実体の正しさを求めるために法律があると思う、そうでなくちゃならぬと思う。その場合、本人がやった場合に、ことに問題が起こるのはこういう点です。あなた方が結局検証に行かないということですね、本人が書類上間違いのないものを出しておればそれでよろしいというような考え方を持っているから、間違った場合には紛争が起こるということです。もしもあの法律の制定の精神が、その物件の正しさというものを専門的な知識のある者が正しさを求めないために制定されたものであるとすれば、本人申告の場合においても、民法上いろいろ疑義はございましょう、疑義はございましょうが、本人申告であっちゃならない、当然土地家屋調査士にそれらのものを委任しなければならないということがかりにも行なわれるとしたならば、せめて実体の間違いは妨げるであろうという考えを持ちませんか。
  116. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 土地建物調査測量を要するものは、やはりすべて土地家屋調査士の手を経なくてはならぬということは、確かに理想としては私は非常にいいことだと思うのでございますが、現在では訴訟なんかでも、訴訟を起こします場合に、必ずしもこれは弁護士を訴訟代理人に委任しなければならないということになっておりませんで、本人が自分で裁判所に出頭して訴訟行為をやるということは認められております。非常に技術的なむずかしい問題はいろいろあるわけでありますが、本人の訴訟を禁じていない、これはやはり弁護士制度を強制しないという建前でできているわけでございまして、調査士なんかにつきましてもやはり同様なことが言えるのじゃないかと思うのでございます。ただ、これは現行制度でもそうでございますが、この新しい法律のもとにおきましても、不動産の表示に関する登記申請します場合には、図面の添付なんかも要求される場合がございます。その図面につきましては様式も規定いたすことに相なるわけでございまして、しろうとではできないというものも出てくると思うのでございます。そういう関係で、しろうとで作りましたのでは、これは法律に要求しておりますところの要件を満たさないということで、事実上調査士に頼まなくちゃならぬという場合も出てくると思うのでございますが、法律をもちまして、必ず司法書士なりあるいは土地家屋調査士の手を経なくてはならないというところまでいきますのは、他の訴訟代理の制度その他の権衡からいいましても適当ではなかろうということで、そこまでは踏み切っていないのでございます。
  117. 田中一

    田中一君 むろん、いろいろ問題があるから、その点はなかなか僕も踏み切ってそうせよということは言えないわけなんです。そこで、先年、三年前でしたか、土地家屋調査士法の改正を行なって、強制加入ということにいたしまして、業として営む者は強制加入にしております。この精神は一体どこにあったのですか。
  118. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) これは、土地家屋調査士というものの素質と申しますか、品位と申しますか、土地家屋調査士制度の向上ということのために、いわゆる強制加入の制度が設けられたものでございます。
  119. 田中一

    田中一君 少なくとも、でたらめな調査報告が出たんでは、これは全く困るわけなんです。で、行政指導によってでも、せめて正しさを求めるという、いわゆる国民の利益を守る、権利を守るという建前から、行政指導でもいいからもう少し強力に、本人申告というものが間違いないんだという前提よりも、間違いがあるんではなかろうかという前提の方が僕は正しいのじゃないかと思うのです。そこで、そういう方向に指導していって、登記所の窓口で、どうも書類上は間違いないけれども、実体に対して間違いがあるんではなかろうかという疑問を持った場合には、職員が検証して、そして、その正しさを認めるという権限、職権で認めるということにするか、さもなければ、もう一ぺん、だれにやってもらいますかというようなことを指導して、技術的にも間違いないというような方向に持っていこうという気持はございませんか。
  120. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 私どもの方におきましても、その気持は大いにあるわけでございまして、従来でも現実の状況に即しまして、御趣旨のような指導をいたしてきておりますし、今後も新法の運用に関しまして、そういう指導をいたしたいと考えておる次第でございます。
  121. 田中一

    田中一君 ところで、三十三年春、三ヵ月にわたって行なったものは、この資料を見ますと、これはもうはなはだ奇怪なものなんですね。たとえば建築の登録にしても、これは当然土地家屋調査士がすべきだと考えております、建築の登録というものは、図面をすっかりつけますから。それが本人申告、あるいは市町村の吏員の申告、あるいは司法書士——司法書士のものは、土地家屋調査士が登録しているものの倍以上あるということです。これは事実です。これは香川君、持っているだろう。この資料を。これは何でもない、実態調査をやったのだから。こういうことが今まで容認されてきた。容認はしないという弁解をするだろうけれども、こういう事実がある、こういう現象があるということは、これは相当反省しなければならぬと思うのです。それには、それらを指導し——取り締まりという言葉を使いたくないけれども、間違いのないように指導するという人がない。また、実地検証に行く金もないということは、やはりあなたの方ではどうにもならぬというところに追い込まれているからできないのだということに尽きると思うのです。ところが、伝聞しておるところによりますと、大体登記所の苦い職員等は、定年になれば、まあ試験制度になっておりますけれども、司法書士の資格は、今までの習熟した経験によってすぐ得られるであろうというような見方を私はしております。従って、司法書士と登記所の公務員とは全然別でありますけれども、有無相通ずるようなものがあるのではなかろうかと邪推するわけです。むろん土地家屋調査士としての資格は、法務省が今度の法改正によって厳正にして、そうしてきびしい試験をやりますから、よろしいけれども測量技術並びに建築技術等は、あなたの方の所管ではない、どうしてもあなたの方は法律屋さんなんですね。だから、そういう面において、登記所の窓口において、指導面において欠けるところがあるのではないかというような見方もできるのではないかと思うのです。その点の実態は、どういう工合に指導しておりますか。今、局長がおっしゃる通りの指導を、しようと思う、また、しなければならぬ、するつもりでございますという答弁だけでは、私どもにはぴんとこないのです。もしもこの法律が制定され——制定というか、改正ができ上がって、ある期間を経てそういう指導が行なわれなければ、もう一ぺんこれは法務委員会に私、出向いてきましてこれをただしますけれども、その点の心組みはどうですか。  このように、当然土地家屋調査士が行なわなければならぬという権限のものを、司法書士が行なっている、権限を侵している。もう一つの問題は、当然司法書士の権限なり業務範囲にあるところの仕事を、土地家屋調査士が侵したような事例は多々ございますか。また、そういう資料があるならば、それをお出し願いたいと思います。
  122. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 司法書士のやるべきことを土地家屋調査士がやったという事例が多々あるかというお尋ねでございますが、私どもは、そういう事実は多々あるということは承知いたしておりません。ただ、司法書士の方で、本来ならば当然土地家屋調査士の方ですべきことを司法書士の方でやっているという事実があるということは、私どもも承知しておりますが、今度の法律改正を機会に、そういうものは是正していきたいと私どもとしては考えている次第でございます。そういう意味からしましても、この際、こういうはっきりした法律に基づく両者の了解事項を自主的に両者で作ってもらいまして、これを一つ、登記所の方はもちろんのこと、調査士会にも、司法番士会の方にも徹底させたいというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  123. 田中一

    田中一君 当然土地家屋調査士の技術をもってしなければならないような本人申請等も、窓口指導によって——むろん、あなたの方は通牒を出して、窓口指導を完全にして、それら習熟した技術を持っている資格者にさした方がよろしいのではないかというような指導は行なおうと思っておりますか。
  124. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) そういう趣旨の指導を従来もして参りましたし、今後もいたしたいと思いますが、ただ、本人にこれは必ず調査士に頼んでこい、あるいは、司法書士に頼んでこい、そうしなければ書類を受理しないということは行き過ぎでございますので、そこまでは申しておりませんけれども、できるだけ正しい登記申請がなされるようにという趣旨で、お話のような指導は従来もいたしてきておるわけでございます。
  125. 田中一

    田中一君 そこで、あなた方は、現在民法上のいろいろな諸制約がありますから、正しさを求めるには、やはり専門的な知識を持ち、経験を持っておる者にやらせる方が間違いなかろうじゃないかと思うけれども、現段階では、そこまで踏み切れぬというあなたの心境は、これは私もよくわかります。わかりますが、では、それらの本人申告に対しては一々出張をして、そして正しさを立証というか、確認しようというようなことは、本人申告の場合には行なおうというつもりだということが前提にならなければ、私は、あなたの答弁だけでは、それはしゃくし定木なものにならざるを得ないと思うのですよ。本人申告のものは大体そういうものに習熟しない人がやっているのだ。ことに税金関係等においては自分の有利な解釈をしてものを出しがちなものなのです、人情として。何もそれが不正があるという見方じゃない。あなた方の方は書類だけの問題で、これが間違いなければ受理しようという心がまえでございましょうけれども、それだけじゃないということは前提に申し上げている通りです。その場合には、必ず登記所の方の職権でその正しさを確認しようということをいたしますか。
  126. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 先ほども申し上げましたように、現在におきましても、たとえば建物の新築であるとか増築あるいは滅失というような場合——滅失の場合、消防署の証明があるというような場合は別でございますけれども、ただ、本人申告だけに基づきましては間違いが生ずるおそれがございまして、土地の方では後日権利関係に非常に大きな紛争が生ずるというおそれはあまりないのでございますが、建物につきましては後日二重登記になるとかいうようなことで、それからまた実は建物が滅失していないにかかわらず、滅失の申告をしまして、新たに新築の申告をするなどというようなことによりまして、違法な台帳の登録、それから発記がなされる危険性がございますので、現在におきましても建物に関しては実地調査を励行さしておるわけでございます。将来におきましても、本人申告で怪しいという点があれば、それはできる限り登記所の方で実地調査をいたしたい、こういうよりに思っている次第でございます。
  127. 田中一

    田中一君 私は、建物の場合にはあなたの登記所の職員が行っても確認できます、滅失の場合は。しかし、土地の方が問題があるのじゃないかということは最初から申し上げているのです。問題は土地の方にあるのじゃないかと思うのですね。従って、土地の場合には、費用の負担の問題は、今回の改正でどうなるかは存じませんが、必ず土地家屋調査士が出向いてそれを検証するということですか。隣地関係寺、この制度がとられなければ、いたずらに紛争を増すばかりじゃないかという気持がするのです。その点はどういう考え方を持っているか。建物の場合は、見ればわかるのですからできます、なくなった場合には。しかし土地の場合には、その点が一番重要だと思うのですよ。従って、あなたの方で行政指導でもって、土地の場合には必ずと言っちゃ語弊があるけれども、できるだけ専門家、土地家屋調査士が検証に出かけて、それを確認するというような方途をとろうという気持はありませんか。
  128. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 土地の場合も、登記所は、やはり実地調査の必要がある場合には実地調査をしなくてはなりませんので、そういう場合には、登記所の職員がもしその技術をたまたま持っておれば——その登記所にそういう技術者の職員がおれば、自分でもできるわけでございます。もしできなければ、これは土地家屋調査士に委託しましてやるということに相なるわけでございます。ただ、これは予算に関連がございますが、予算の制約の範囲内において必要な場合にはそういうこともやるべきであると思っております。ただ現状では、そこまでの予算は認められておりませんので、現在は困難と思いますけれども、将来はそういうこともできるように、一つ予算の獲得には努力いたしたいと考える次第でございます。
  129. 田中一

    田中一君 よくわかるのですよ。だから大蔵省の政務次官でも来れば少し言って、あなたの方に予算の裏づけをさせようと思って、質疑しようと思ったのですが、まあまあ政務次官来ないから、主計官ぐらいじゃ困るからあえて言わないのですが、結局国民の利益のためなんですよ。権利を擁護するためなんですよ。それが一片の書類上だけでもって公簿に登録されるということは、危険を多分に感ずるのです。先ほども言ったように問題があれば、不正があれば訴訟なりあるいは刑事事件として扱えばいいじゃないか、それはおれの方の権限ではないというようなあなた方が態度をとることが、これは正しいりっぱな行政官としての道ではないのです。だからといって、予算上の制約を受けるから動けませんということは、これは悪い政治だということなんです、悪い金の使い方だと……。そこで、これは民事局長に幾ら言っても予算のくることはあなたの力じゃ及ばぬから、これはそれ以上追及しませんが、であるならば、行政指導によって土地家屋調査士というものを使って、そうして、その正しさを求めようという意欲を起こしていただきたいということです。そうして、便宜上地方末端の行政機構の職員とか、それから司法書士とかに認めるのだという態度をおやめなさいと言うのです。どこまでも原則としては法律できめられておりますところの有資格者並びに不動産登記法できめておりますところの方々の手によって行なうのが正しいのであります。今度の改正法案に、そういうものがない場合にはだれがやってもよろしいというただし書きがついているならば、私はあなたの言葉を認めましょうけれども、ついておりますか。おらぬ場合には、だれがやってもいいということがついておりますか。
  130. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 本人申請はできるわけでございますが、本人にかわってだれがやってもよろしいということにはなっていないわけでございます。
  131. 田中一

    田中一君 その通りと思います。  そこで、申し上げているのは、先ほど言っているように、やむを得ぬ場合ということを、これは想像できます、想定できます。しかし、それにやはり強制加入として業種を押えている民事局長であるのだから、これに対しては、間違いのない正しさを求めるためにそういう行政指導、ここにはこれくらいの物件があるから、まず行って間違いのないようにしていただきたいというような行政指導はできると思うのですよ。連合会相手にして。かえって司法書士にやらすのだという前提に立ってはいけない、私はこう思うんです。それでいいのでしょうな、そういうような行政指導をなさろうという気持があるのでしょうな。
  132. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 土地家屋調査士制度というものが設けられた趣旨も、やはり土地建物の現況を正確に把握するというためにあるのでございますから、私どもも従来そのように考えておりますし、今後もお話のような趣旨で指導をしていきたいと考えております。
  133. 田中一

    田中一君 最後に一つ伺っておくのは、御承知の附則にあるところの試験制度の問題ですが、まあまあお互いに話し合って、あなたの方で、だいぶ平賀さんは強硬であったけれども、与党並びに政府の話し合いをきめて、六カ月間実施の期間を延長したことは、これは多とします。しかし、その期間、私もそれらの諸君——現在の有資格者、資格を持っているものをよく知っておりますから、十分にその点はPRして、万間違いのないようにさしておりますが、この試験制度を実施するにあたってのPRが、民事局としてはどういうように地方の登記所その他でもって指導しようとするか。官報に出ればそれでいいのだということだけでは不親切です。そういう予算上の費用も若干取っているであろうと思うのです。従ってその点はどういう考え方を持っているか伺っておきます。
  134. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 具体的にどうPRするかというこまかいところまではまだ計画されておりませんけれども、いずれにしましてもこの土地家屋調査士の試験につきましては、一般法務省としては事前に公告しておりまして、その公告の中でこの改正趣旨もよく明らかにいたしたい。そういうことで周知方法を講じたいと思っております。なお、この公告につきましては予算も入っておりますので、実情に即した措置をとりたいと考えております。
  135. 田中一

    田中一君 要は、今まで長々と質問いたしましたが、ねらいとするところは、結局国民権利を守る、権利を立証する法律であるから、土地家屋調査士という専門家によって正しい事実を調査実測させ、業務範囲を明らかにし、それらの立場を守るとともに、責任を明らかにする措置をとってほしい。同時にまた、できるならば隣地関係ですね、相隣関係の問題は、今後法律改正しても間違いの起こらないような方途をとるべきである。かりに法律でもってそういうことを明らかにすると、土地の問題は必ず検証しなければならぬということをきめれば、これはあなたの方でも予算も相当取れるので、国民のための正しさが求められるわけなんだからいいと思うのです。なぜそういうことを今までしなかったか非常に疑問に思っているのですが、まあまあそのための困難さというものは、国が行なっておる調査においてすらその困難性は明らかなんですから、どうかこの不動産登記法というものを握っておるあなた方は、いたずらな権利関係の摩擦が起きないように、同時に、現在移動しない土地に対しては登記面より以上の何割かの所有者はあるけれども、所有者がありながら登記されない土地があるということは、これはもう一つの常識でございますから、あなた方よく知っておるはずでございます。これを認めながら、逆にいうならばそういう税金関係の、脱税と申しますか、そういうことも言えるでございましょうし、それからまた、だれかがその登記面と実測との相違を発見して、直ちにそれを自分のものだという登記をする場合に、それが悪意を持つ人間が勝手に登記をした場合には、あなた方は、それに対して実地検証してもなおかつその所有者を発見——その人間であろうという想定をする以外にないのです。こういう間違いを正すことにこそ不動産登記法の精神があるのです。それがないというところに、私はこの不動産賢記法がざる法であるということを言わざるを得ない。しかし今の段階では、ないよりも——今度の改正内容にこまかい問題がいろいろあるのでしょうけれども——思想的にあった方がいいというように考えておるから、私の態度としてはまあまあと思いますけれども、近い将来に、必ずそういう点の犯罪を犯すような機会をなくすこと、門違いを正すこと、それができないような、そういう実態にそぐわないような手続法としての登記法だけでなくて、もう少し実状にメスを入れるところの改正が行なわれることが望ましいということを申し上げて、私の質疑を打ち切ります。
  136. 大川光三

    委員長大川光三君) この際、資料の提出を請求いたします。先ほど田中委員質問により、当局よりその存在を明らかにされました日本司法書士連合会と全国土地家屋調査士連合会との申し合わせ了解事項を、書面にして資料として当委員会に提出されるよう要求いたします。
  137. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) ただいま仰せの資料を後刻提出することといたします。
  138. 田中一

    田中一君 今、委員長の要求されました資料のほかに、事例を、この場合あの場合、この物件あの物件、たとえば滅失といいますると、半壊の場合はどうか、半焼の場合はどうかという事例をやっぱりつけて、解釈をとっていただきたいと思うのです。
  139. 大川光三

    委員長大川光三君) 承知いたしました。ただし、今の了解事項そのものがまだ委員会に出ておりませんから、それの提出を求めた上で、それに基づいてただいまの御要望の質疑をいたしたいと、かように考えております。  ほかに御発言がなければ、本件に対する本日の質疑は、この程度にとどめたいと存じます。  以上をもって本日の審議は終了いたしました。  次回の委員会は三月二十二日午前十時より開会し、不動産登記法の一部改正について参考人から意見を聴取した上、質疑を行なう予定であります。  本日はこれをもって散会いたします。    午後一時二十八分散会