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1960-03-15 第34回国会 参議院 法務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月十五日(火曜日)    午前十時三十九分開会   —————————————   委員異動 本日委員久保等辞任につき、その補 欠として山口重彦君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     大川 光三君    理事            井川 伊平君            後藤 義隆君            高田なほ子君    委員            泉山 三六君            太田 正孝君            林田 正治君            千葉  信君            辻  武寿君            市川 房枝君   政府委員    法務省民事局長 平賀 健太君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○不動産登記法の一部を改正する等の  法律案内閣送付予備審査) ○参考人出席要求に関する件   —————————————
  2. 大川光三

    委員長大川光三君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。本日付久保等辞任山口重彦君選任、以上であります。   —————————————
  3. 大川光三

    委員長大川光三君) 次に、不動産登記法の一部を改正する等の法律案を議題に供します。  右法律案は、前回をもって逐条説明を終わっておりまするので、本日は直ちに質疑を行ないます。御質疑のある方は御発言を願います。なお、当局からは平賀民事局長が出席されております。
  4. 井川伊平

    井川伊平君 四十四条の次に四十四条の二が追加されるようになっておりますが、この四十四条の二のことにつきまして二、三お伺い申し上げたいと思います。物件の得失、変更は、当市者としては多くの場合に緊急を要することに追い込まれている。長い間持っている不動産を手放しする、あるいけ抵当権設定してお金を借りる。こういう場合におきましては、非常に急な問題があり、そしてそれに応ずるためにいろいろな準備にかかっておりますために、登記は非常に急ぐというのが普通のよう考えられております。しかるに、保証書を作りまして登記をする場合に、届け出をいたしましてから三週間もの長い間、あるいはそれよりもっと早くなるかもしれませんが、最大限でいえば三週間になりますが、その間、本人の方へ問い合わせの通知をしておりますために、ほんとう登記ができない。そのできない限りにおきましては、代金を受け取ることも、借金を受け取ることもできない、こういうことになるわけでございます。従って、事前通知は、非常に当事者に親切なようで、後日問題を起こさないようにという心がまえはわかりますけれども、そのためにこうむるところの当事者損害というものは非常に大きなものがあろうと存じますが、これは当事者に対しまして非常に不親切な取り扱いになるのではないかと、こういうふうに存じますので、この点がお伺いいたしたい点であります。  それから、それに関係がございますが、本人が長い間国外旅行、それから国内旅行病気、そうしたやむを得ない事情がございまして三週間以内にすみやかに出頭することができない、こういうようなことが事実あり得る。そういう場合に、この改正ができました結果が、かえって不利になっていくのではないかと、かよう考えられるわけであります。それよりも、やはり今までの通り、一定の印鑑証明がつき、委任状がつき、そして保証書もついておるというのならば、一応はそれらのものを信頼をして、そして今までの通り登記をして、本人の方でお金を手に入れるという事実ができるよう方法を講じさしてやる方が、むしろ親切ではないか。言いかえれば、これは改善ではなくして改悪になるのではないかと、こういうよう考えられますが、この点につきましてもお伺いをいたします。  それからこの四十四条の二の二項でありますが、いわゆる申し出というのがありますが、これは本人申し出に限っておるものか、委任によりましての代理申し出がきくものかどうかという点を、あわせてお伺いいたしておきたいと思います。
  5. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 保証書の問題でございますが、第四十四条の二を新設いたしまして、こういう手続を定めましたのは、虚偽登記を防止して取引の安全を保護しようというのがねらいでございます。新聞紙上なんかにもちょいちょい出るのでありますが、無権利者が、あたかも権利者ような顔をして不動産を売る、あるいはこれに抵当権設定するというようなことがありましてその不動産譲渡を受けた者、あるいは抵当権設定を受けた者が、不測の損害をこうむる事例が間々あるのでございます。それからまた、ほんとう所有者も、その間違ってなされました虚偽登記を消すのに多大の手数を要しておる。真正権利者、それから無権利者からその不動産譲渡を受けあるいは他の権利の取得をした無権利者取引をした者のこうむります不利益、これを防止するための規定でございます。こういうように、真正権利者、あるいは無権利者取引をした者のこうむる不利益に比べますれば、この第四十四条の二に定めるよう事前通知手続もまたやむを得ないのではないかというのが、この法案の考え方でございます。ただ、従来に比べまして、この事前通知をやりまして三週間という期間がございます関係で、登記が迅速にできないということはあるのでございますが、しかしながら、一面、この登記義務者、すなわち不動産を売ろうとか、あるいはそれに抵当権設定ようという相手が、信用のできる相手でありますれば、登記はすぐできなくても取引は行なわれるという可能性はございますし、それからまた、仮登記方法もあるわけでございますので、登記をしようというそ登記権利者の方でも、ある程度の不便というものは救済できるのではないかというふうに考えられるわけでございます。  それからなお、実際の実情として申し上げますと、こういうことが実はあるわけでございます。登記済証ほんとうは滅失していないのだけれども、家に忘れてきたと、また家に取りに帰るのはめんどうだからというので、滅失したということで、現在では所によりましては、この保証書が簡単に作れるものでありますから、保証書で間に合わせておけというので、実際は登記済証があるにもかかわらず、保証書をやる例がかなりあるわけでありまして、この第四十四条の三のよう規定ができますと、そういう場合は必ず登記済証を持って参りまして登記をするということになりまして保証書を利用する場合というのが相当現状より減るのではないかといのが、私どもの見通しでございます。  それから、この三週間内に申し出るというのは、必ずしも登記義務者本人登記所に出頭する必要はないわけでありまして、申し出方法は、出頭することはもちろん可能でありますが、それ以外に、登記義務者登記申請に間違いないという書面を郵送することも可能であります。本人旅行中であるとか、病気登記所に出頭できない場合でありましても、申出書を郵送することによってその不便は救われるのではないかと考えております。  それからなお、この申し出代理人がすることができるかという御質問でございますが、代理でやりました場合は、やはりその目的は達しないわけでありまして、本人が自己の名前で書きました書面申し出るということにしなくては、目的を達しないわけでございます。
  6. 井川伊平

    井川伊平君 今のお答えは私には非常に不満足でございますが、木登記がおくれるために、仮登記ができるじゃないかと、登記前に金銭授受ができるじゃないかというお話がありましたが、これは事実にはなはだそぐわないことでありまして、金を貸すのに、抵当権をつける前に仮登記をやるとか、不動産を買い取るときに、本登記はしないで仮登記で金を貸すとかいうような、そういう事柄が、登記がおくれるために便宜をはからうのだということは、事実はあり得ないことであって、そういうことが行なわれるからして登記がおくれても差しつかえないのだという御意見は、世相とあまりに遠ざかった御意見ように私は考える。この点は、もう一度お考え直しを願ってお答えを願いたいと存じます。  それから、先ほどの、実際は権利書はあるのであるけれども忘れてきたといったような場合は、便宜上簡易にできるところの保証書によって登記をする例が多いと言いましたが、多ければ多くてけっこうじゃありませんか。家に取りに帰らなくても、本人が出ていって、そこで保証書を作ってもらって、それで登記ができれば、家に取りに帰らなくてもけっこうじゃないですか。何がゆえに権利書を使わなければならないのか。何がゆえに本人が行って保証書を作ってもらってやるのが悪いのですか。それが悪いことのよう考えるのは、何か、とらわれている考えではないですか。この点、もう一度お伺いいたします。  それから先ほど郵便通知を受けまして、それに対する申し出本人でやらねばならぬのか、委任によって代理でできるのかというお尋をいたしましたところが、これは本人に限るとの答えであります。海外旅行ような場合は、これは絶対にできないことになりましょう。あるいは長期病気ような場合にも絶対にできないことになる。これでは実際に不動産の売買であるとか抵当権設定による金銭貸借であるとかいうことが行なわれなくなってしまうのではないか。角をためて牛を殺すということがあるが、間違いがないようにしてやるという考えから、間違いがないことであっても、実際に売り買い貸借もできないというような場面に追い込まれてしまうことがあるのではないか。もし代理でいいのだというようなことであれば、事前に、旅行の前に、こんなことがきたら頼むぞと言って、代理にして旅行することもできます。病気の場合においても、今は自由にものが言えるし考えもできるけれども、わしがもしいけなくなったときには一切のことはお前に頼んでおくぞと言って、病気の治療に専念もできますが、本人でなければいけないということになれば、そういうこともできなくなって、結局三週間たってもこれは整わないところの申請だから却下する。で、売り買いもできないし、貸借もできないことになりましょう。私はそういうような不便をやるべきでないと考えますが、これらの点につきまして、もう一度お伺いいたします。
  7. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 本登記ができませんでも、仮登記によって金銭授受をするということは、現在でも多々行なわれておるごとでございます。保証書の場合には、事前通知を要することとしても、仮登記ができるのでございます。登記申請に必要な書面が整わないということで仮登記取引をしておる例は、実務上多々ぶつかるわけでございます。それからただいま申しました代理人といいますのは、これは四十四条の第二項で書面をもって申し出るということになっておるわけでございます。この書面何某代理人何某とした書面ではだめだという趣旨なのでございまして、本人外国に行っておるすきに家人がかわって本人印鑑を使いまして申し出をするということは、実際問題としてあり得ることであります。登記所の方としましては、そういう申出書でありましても、それが本人意思なりやどうかという事実審査をいたさないわけでございます。それがほんとうに間違いない——申出書に、かわって署名してもいいということで……。本人外国に行っておるのでありますれば、もちろんそういう申出書も有効でございます。私が先ほど代理は許さないと申しましたのは、その申出書に本人何某代理人何某としてその代理人署名捺印では不十分であるということを申し上げたのでございます。
  8. 井川伊平

    井川伊平君 もう一点答弁漏れがありますよ。答弁漏れの点は、権利書を取りに行かないで、簡単に保証書登記することがなぜ悪いのか。悪いというような御趣旨に聞こえたから承るのです。
  9. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) これは、なぜ登記義務者権利に関する登記済証登記申請書類添付書類として提出させるかということに連なる問題でございまして、これはやはり登記義務者の人違いなき場合の証明として登記済証を出させるわけであります。ほんとうにその者が権利者であるかどうか、要するに、虚偽登記の防止の手段としての登記済証なのでありまして、その趣旨から考えまして、登記済証があればそれを出させるというのが、登記真正を確保するための欠くことのできない手段であるわけでございます。ですから、登記済証があるのであれば、それを出させるのが筋であろうと、こう思うのでございます。  それからなお、忘れたからということも一つの例としてあげましたが、そのほかに、地方によりましては権利書というのは非常に大事なもので、この権利書登記所につけて出すと、これに、その不動産が人手に渡ったとか、故意に抵当権設定されておるという記載がされるわけでございまして先祖伝来不動産が汚れるということで、大事に家にしまっておいてそっとしておくという例もなきにしもあらずということでございまして、そういうことも防止できるのではないかというふうに考える次第でございます。
  10. 井川伊平

    井川伊平君 本人郵便による告示を受けまして、本人申し出をするのが原則であって、代理人はできない。ところが海外旅行ような場合にどうするのかといえば、そういう場合には本人名前で届けてあれば、代理形式で届けたのはいかぬけれども本人名前で届けておればそれでいいのだというお話でありますが、それはあまりにも何と申しますか、形式に過ぎたことではありませんか。非常な有名な人でありまして、その届け出をする本人が、今、日本にいないということが明白なような場合がありますね、そういう場合に、本人名前届け出てあるものとするならば、それは必ず本人が作成のしようのない場合であるから、そういう場合にはうそだということはわかっている。うそだということはわかっているけれども、この事実を、実質的な審査をする責任がないのだという点で、本人が書いたものだということで通すというのは、それはおかしいのじゃないですか。わかっている場合どうするのですか、わからない場合は知らなかったで通りますが、その反対の場合はどうするのですか、お伺いしましょう。
  11. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 登記所というのは、御承知のようにこの権利に関する登記関係では実質審査権がないわけでございまして、この申出書がはたして本人が委嘱したものなりやいなやということの調査はしない建前でございます。たまたま新聞なんかに出ておりまして、本人がいないということがわかっておりましても、そういう事実は登記所としては取り上げない、もっぱら書面だけによって事を処理するという建前でございますので、この申出書がありますれば、これによって登記をするということになろうかと考えます。
  12. 井川伊平

    井川伊平君 それならば、この法改正目的を達しないではないか。本人の方から保証書付で出ている、真実かどうかわからぬ、本人意思であるか意思でないかわからぬ、ゆえに本人意思を確かめる、それで郵便による送達をして本人意思を聞いた、その本人届け出たということはわかっているが、その本人がいない、届け出たということがわかっておるが本人がいないで真実を確かめることができない。初めのままにしておいたのと同じじゃないですか、いかがですか。
  13. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 登記真正を確保するために、最小限度こういう形式を踏むというのが四十四条の三の趣旨でございます。人間同一性を確認するということは非常にこれは困難なことでございまして、こういう形式的な方法によるということ以外には、なかなかその方法がないのでございます。さらにこれを慎重を期しようとしますれば、登記所にも非常にこれは不便をかけることになりますし、それからまた時間もとるということに相なりますので、こういう形式といえば形式でありますけれども、こういう方法をとったわけでございます。現行法事後通知よりは、未然にこういう虚偽登記がされることを防止するという意味で、こちらの方がよりよいと考えるのでございます。  それからなお四十四条の二項では三週間ということになっているのでございますけれども登記義務者のその登記申請が、ほんとうに間違いないものでありますれば、不動産を売って早く代金を手に入れなければならない、あるいは抵当権設定して、早く現金を手に入れなくちゃならぬ必要に迫られているわけでありますから、ほんとう登記申請意思があるのならば、この申し出も即刻なされるでありましょうし、何も三週間の最後ぎりぎりまでして申し出をするということは、実際問題としてあり得ないわけでございますので、登記の遅延ということも、実際問題としては、この事前通知をやりましても、おくれるということは普通はないわけでございます、おくれる場合はむしろ問題なので、無権利者が勝手に登記申請をしているという疑いが非常に多くなってくるわけでございます。
  14. 井川伊平

    井川伊平君 今のあなたのお答えは、土地を所有している人が登記をする近所に住んでいる、健康な、旅行等のない場合に当たる言葉でありますが、登記をする役所からは、本人の住んでいる所が非常な遠方な所におったという場合、あるいは海外あるいは国内でも、長期にわたる旅行をしておったという場合、及び病気をしているというような場合に当てはまらぬことであると、私はこう思って聞いているのであります。登記役場近所におって、健康で何もしてない、役所から書類がきたから、すぐに行って判こを押してくるということなら簡単でございましょうが、そういう安易でない場合が事実の問題としてたくさんある。それからもっと慎重に考えてそういう場合でも、たとえば外国へ行っておって一切をまかしてあった、全部のことを委任してあった、外国で金の必要が生じた、それで、かねて話をしてあるように金をこしらえて送れといったそういう場合には、あなたの説明によれば、全然金を送ることができないということになる。本人がやらなければならないということになる。その場合には、本人名前さえ書きかえしてあれば、本人でなくてもいいのだ、ごまかしでもいいのだということになれば、これは別ですよ。だけど、本人がいないのに、本人名前をかたってやった、かたると言ったら語弊がありますが、本人名前を使って出したのだけれども番数だけそろっておればそれで登記の方はいいんだという考え方は、いろいろあやまちを生ずる源になるのではないかと思う。今日まで登記簿上のいろいろな不正な事件もありましょうが、形式だけはそろっているんです。しかしながら、形式がそろっておるが、実質形式に伴ってないから、犯罪にもなるのだろうと思います。外国へ行って、いない、長期病気で今行けなくなっている、しかも本人がやっているのだというような見方をすることは、形式上はいいかもしれませんが、実質的に見たならば、実質にそぐわないということは、初めから明白な事実である。だから、そういう場合でもうまくいくようなふうに作りかえるべきじゃないかということを聞いているのです。これ以上私は意見になりますから、もうせぬでおきましょう。別のことを聞きます。
  15. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) もしただいまのような仰せでありますと、あに保証書の問題のみならんやで、登記申請それ自体が、本人外国へ行って、いないという場合にはできないことにならざるを得ないと思うのでございます。登記申請をします場合には、本人登記所に出頭できなければ、これは代理人がということになりますが、それには委任状が要りますし、委任状署名捺印はできないということになるのでございまして、そこはやはり実質審査権がないということから、形式的に審査をいたしまして、本人外国に行って長期不在日本国内におりませんでも登記申請がやはりできますと同じように、保証書の問題も同様でございます。
  16. 井川伊平

    井川伊平君 それはとんでもない間違いですよ。外国旅行するときに、外国で金の必要ができるかもしらぬからということで、委任をしておいて旅行できませんか、できるでしょう。それから別のことを……。お答えしなくてもよろしゅうございます、常識でわかりますから。  一体、わが国では一年間にこの保証によりまして不動産登記をする件数はどのくらいあって、保証なしに権利書をもって登記をする場合は、何%に当たっているのかということが一点。それからもう一つは、保証書によってなされました登記に、いろいろの苦情がつく、事実に反しておったというので苦情がつく場合はどのくらいの件数があるのか。そして、それは一般の登記に関しまするところのいろいろの争いごと苦情ができますものの何%くらいに当たっておるのか、これをお伺いいたします。
  17. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) この権利に関する登記申請、大体最近におきましては、年間七、八百万件あるわけでございますが、その一割弱、まあ大体六十万件ぐらいが保証書による登記申請でございます。ちょっと今こまかい数字を持ち合わせませんが、大体そういう見当でございます。それから現在ではこの事後通知——こういう登記をしたということを登記義務者の方に通知をいたしておりますが、あれは間違っておるということで、当事者から異議が出る例もこれは間々ございますが、その登記所としては、虚偽登記がどのくらいされたかということは、なかなか把握しがたいのでございまして、登記所に文句を言ってきましても、これは登記をしたあとでございますので、登記所としてはどうにも手の施しようがない。どうしてもこれは訴訟なんかで解決するということに相なります関係で、当事者事後通知をいたしましても、それに対して何にも返事をよこしてこないケースがかなりあるわけでございます。それから、事後通知書面がつかないようなことも間々ございまして、登記所としては、そのうち虚偽登記だったと思われるのが何%ぐらいあるかということの正確な把握は困難でございます。
  18. 井川伊平

    井川伊平君 七百万の不動産登記か行なわれて、保証書によるものが約六十万、六十万もの保証書による登記かできておりまして、その保証書による登記本人意思に基づかないものであるという、これが何通あるかわからぬということは、はなはだ無責任な言い方ではありませんか。本人意思に基づかぬものであれば、本人間の話し合いにより、あるいは裁判所の判決を経まして、この登記取り消しになりましょう。取り消しになりました登記が幾つあるかということがわからぬということは、調べないからわからないだけでありまして、もしそういうふうであるとするならば、ほとんど保証書によってなされたる登記が、本人意思に基づかないということで表ざたになったことはないのだいうお答えになるようでありますが、いかがですか。
  19. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 登記所としては、その点、先ほど申し上げたように、正確にどのくらいの件数があったかということは、把握する方法はございません。ただ、この規定を設けました一つの動機といたしましては、東京の弁護士会からもこの点については非常に強い要望がございまして、虚偽登記が非常に多い、まあ弁護士の方にしてみれば、こういう虚偽登記に基づいて迷惑をこうむった真正権利者の、訴訟代理人となられるケースが多々あります関係で、この現在の保証書制度というものの欠陥を痛感されるわけでございますが、実はこの四十四条のを新設いたしますにつきましては、これは私どももかねてから保証書制度改正をいろいろ考えておったのでございますが、この弁護士会からの強い要望も実はあったのでございます。
  20. 井川伊平

    井川伊平君 今のお話で、私はもう聞くまいと思ったのですが、そう言われると聞きたくなるわけでありますけれども抵当権なり所有権虚偽の移転あるいは設定が行なわれたとすれば、それが保証書によりましてなされておる場合にそれが事後通知を受けまして、苦情ができましたならば、真実苦情があるのであれば、その抵当権登記の抹消登記をすべきでありましょう。抵当権の抹消登記所有権以前の抹消登記がなされれば、その件数が幾らであるかということは、調べさえすればすぐわかることではないですか。調べてないと言うんなら、私は了承しますよ。調べる方法がないということなら了承できないと思いますが、いかがですか。
  21. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) その虚偽登記の抹消は、普通は当事者間に話し合いがつけば共同申請で参りますし、共同申請でありますと、これは虚偽登記であったかどうかということの判定は、登記所としてはつかぬわけです。普通は大体当事者間に争いがあるわけで、訴訟によりまして判決をもらってくるわけでございます。判決によって抹消の申請をしてくるわけでございます。今、私手元にその統計の数字は持ちあわせておりません。
  22. 井川伊平

    井川伊平君 総じて申しますと、私は、保証による登記の場合に、本人を律するおそれがあるという建前から四十四条の二項を設けられようとするお気持はわかりますが、そしてそれによって若干保護される所有者もあることも一応わかりますが、しかし、それによって円滑に不動産の売買及び抵当権設定による金借をするというようなことができなくなって不動産上の権利者が非常な私は大きな不便、損失に追い込まれるだろうと思う。暮れが迫って金を借りるんだというような場合においても、登記がうまくいかないために、ついに年を越すんだといったような非常に苦しい数がふえてくるだろうと思って一そういう点で、一面におきましては権利者を保護しようとするお気持はわかりますけれども、他の一面において不動産を利用していこうという経済上の目的達成の意思が、思うように参らないという面がたくさん出てくるだろうと思って聞くわけですが、その目的を達するためには、今までの通知方法によりましても目的を達する方法があるんではないか、その一つは何かといえば、保証をなす場合の条件を厳にする、それからその保証をなしたものの責任を重くする、虚偽のを知らないで保証したようなでたらめな保証は、保証になっていないのであるから、一種の責任の持てないことをやっていることになりますから、そういうのを責任を重くする、現にこれは改正のうちに入っているようでございます。それから本人から後日に至ってその登記本人意思に反せるものであるということがはっきりした場合、すみやかにさきの登記を抹消するという手続を簡単にしてやるという、こういうような特別の法の取り扱いによって目的を達するんではないかと思いますが、そういう点では達せられないという御意見ですか、いかがですか。
  23. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) たとえ実際は虚偽登記でありましても、登記所としてはこれを審査する方法が御承知の通りないわけでございます。従いまして、一たん登記をいたしますと、これを消すのは登記義務者本人から、あるいは間違いだからという申し出があったからということで、これを消すわけにはいかぬわけでございます。登記権利者登記義務者双方がそれを認めて、共同申請で抹消登記申請してくれは、これはいいわけでございますが、なかなか実際問題としてそういうわけにいかぬ、これは必ず訴訟によるということになってくるわけです。それからまた、虚偽登記者として、虚偽の無権利者から不動産譲渡を受けて代金を払ったものあるいは金を貸したもの、こういうものはその回収をする。その払った代金なり貸し金なんかの回収をする。これもなかなか容易なことではないわけであります。そういう真正権利者、あるいは虚偽の無権利者権利者なりと信じて給付をした買い主あるいは債権者、こういうもののこうむります不利益を防止するために、保証書制度を設けましたのでございましてただいま仰せのよう方法をもちましては、救済は十分でないというふうに考える次第でございます。
  24. 井川伊平

    井川伊平君 別のことをお伺いします。登記事務が、各登記をする役所におきまして渋滞している事実は、ほとんど公知の事実ではないかと存じます。調べてみますると、昭和二十六年と昭和三十三年とを比べてみますと、一人当たりの事務量は、一対三の割合で増加しているように思いますが、しかるに人員の増を見ますると、わずかに昭和二十六年に比して昭和三十三年は一割の増加にしかすぎないように、私の調査ではなるわけでありますが、このように仕事の量が三倍もふえているのに、人はわずか一割しかふやさない、そういう事柄が、今日のような事務の渋滞を来たして、一般国民に迷惑をかけている原因ではないかと思うが、さような事実があるかないか。あるとすれば、そのようなふうに人の増をしないで投げておく、こういうところに何らかの責任の観念は生まれて参りませんか、お伺いいたします。  なお、続きまして、職員の実数は、予算の定数の七五%ぐらいじゃないかと思いますが、これはいかがでありましょう。もしそうだとすれば、実数が予算の数にはなはだしく欠けているこの原因は何であるか、何がゆえに補充しないのであるか、これらをあわせてお伺いします。
  25. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 登記所の所管しておりますところの登記申請事件が、近年非常にふえておりますことは、ただいま仰せの通りであります。また、登記所の職員の数は、この事件増にスライドしてふえていないことも事実でございます。そのために、非常に登記申請事件のふえましたところの登記所におきましては、事件の処理が渋滞するという結果を来たしておりまして、私どももこれは登記事務の性質上、はなはだ申しわけないことであると考えている次第でありましてそのためには、年々増員のために努力をいたし、それからまた事務を機械化するというようなことによりましてできる限り事務処理の渋滞を来たさないようにということで、努力して参ったわけでございます。幸いに昭和三十五年度におきましては、百四十二名の増員が認められることになる予定でございまして、もちろんこれだけでは必ずしも十分とは申せませんけれども、重点的にこの増員になりました人員を配置いたしまして、事件処理の遅延を防止したいと考えている次第でございます。  それからこの定員の七五%しか職員の実数がないという仰せでございますが、ただいまこの法務局、地方法務局の職員の定員は九千をちょっと上回っておりますが、欠員はもうきわめてわずかでございます。二五%も欠員はございません。わずか数名、十指を屈するに足る程度のそれくらいの欠員しかないのでございまして、もう欠員はできるだけすみやかに埋めるようにという考えでおりますので、実数が七五%しかないということはございません。ただ法務局、地方法務局において所管しております仕事は、ひとりこの登記だけじゃございませんで、戸籍の仕事もございますし、供託もございますし、訟務の仕事もございますし、人権擁護の仕事もございますし、非常にたくさんの事務を処理しております関係で、この法務局の職員の全部を、登記事務の方に回すということは、これはもちろんできないわけでございまして、九千何百名のうち、約七千名が登記事務に従事しているのでございます。で、ただいま仰せの七五%というのは、法務局、地方法務局の全職員のうちの七五%が登記事務従事職員だということではないかと思うのでございます。もしそうでありますとしますと、仰せの通りでございます。
  26. 井川伊平

    井川伊平君 新法の百四条。これによりますと、「所有権登記ナキ不動産ニ付キ所有権ノ処分ノ制限ノ登記ノ嘱託アリ」とありますが、この嘱託ということの内容をお聞きしたいわけです。たとえば裁判所の決定に基づく嘱託もありましょうが、そうでなしに、裁判所に関係のない嘱託というものがあり得るかどうかです。これは私、全く知らぬのでお伺いするわけです。
  27. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) この処分の制限の登記の嘱託の例は、ただいま仰せの裁判所の嘱託の場合以外に、滞納処分——税務署からする滞納処分による差し押えの登記の嘱託があるわけでございます。
  28. 井川伊平

    井川伊平君 そうしますと、そういう役所を経ないで、民間の方々の希望による嘱託というものはあり得ないわけですね。裁判所等の決定のない場合です。
  29. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 一般私人からの処分の制限の登記の嘱託ということはございません。
  30. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 四十四条の二に関連しますが、四十四条は、登記義務者権利書を滅失かなどして所持しないときに、保証書によって登記申請をするという規定が四十四条にあって、今度は四十四条の二というのが新しくできるわけなんですが、そうすると、四十四条の規定に基づいて保証書を添付して登記申請をすれば、申請書を出したときに受け付けるんですか受け付けないんですか。
  31. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) そのときに一応受け付けます。
  32. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 そうして今度はその次に——登記は一応受け付けることになると、今度は四十四条の二でもって、その場合に四十九条の第一号ないし九号の規定によって却下する場合を除いたほか、登記義務者通知をすると、こういうふうな規定があるが、それは、ただ、あなたは保証書を提出して登記申請してありますが、という意味の通知をするだけになるわけですか。
  33. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) これこれの不動産についてこれこれの登記申請があった、間違いありませんか、ということで通知をいたすわけでございます。
  34. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 その場合に、その次の第二項にこういう規定がある。その通知を受けた場合に、三週間以内に法務省令の定むる書面をもって登記申請の間違いのないことを申し出たときは、そのときに申請書を受け取ったものとみなすというふうな規定があるが、そうすると、三週間以内に返事がなかったならば一体どうなるかという規定がないんだが、それはどうなるか。
  35. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) その場合は、新しい案の第四十九条の十一号をもちまして「第四十四条ノ二第二項ノ期間内ニ同項ノ申出ナキトキ」ということで、却下をいたすわけでございます。
  36. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 そうすると、四十四条の二の二項の規定でもって、書面でその申し出をした日に申請書を受け取ったものとみなすという規定があるが、そうすると、実際に申請を受け取った——申請書を提出された日にちと、今度は、あとで書面を受け取る日にちとの間には相当な期間がある。一週間や二週間、あるいは三週間ぐらいな期間がある。そうすると、登記の受付順位が非常におくれることになるのですが、おくれることになると、せっかく今言うようなふうな書面を提出してあるにもかかわらず、それからあとでもって第三者がその権利に対して、いろいろな差し押えなどをされるようなことがあるが、それはどうなるのですか。
  37. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) その間に差し押えの登記がきますれば、そういうものは登記をしてしまいますので、順位がこの保証書によってする登記の順位はおくれることになるわけでございます。
  38. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 そうすると、保証書によってせっかく登記所書類を提出しておいて、しかも登記所の方から郵便でもって出すということが第一項に書いてあるから、郵便で出して、郵便が何日かかるかわからない。そうして今度はその次に二週間ないし三週間ぐらいの期間内にそういう書面を出すことになると、非常にそれは第一の登記申請した登記権利者を保護することに欠けやしないですか。約三週間もそういうようなふうな不安定な状態に置くことになるが、その点はどう考えますか。
  39. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 確かにそういう不便がございますので、この最初の、保証書をつけまして登記申請をしました際に、あとで差し押えられるとか、あるいは他にその不動産を処分されるという懸念がありますれば、仮登記をいたしまして順位を保全するという措置を講じましてそういう事態を防止すべきものであろうと思うのでございます。
  40. 大川光三

    委員長大川光三君) ちょっと私からも関連して伺いたいのです。なるほど四十四条の二を設けて、保証書による登記の間違いを防止するということはよろしいです。しかし、あまりその方に念を入れ過ぎる結果、登記義務者登記が迅速に行なわれないという一つの私は弊害があると思う。そこで伺いたいのは、四十四条というものは、従前の通り登記済証が滅失したときには、いわゆる保証書は許すという規定ですね、その保証書による登記申請しますときに、義務者本人登記所に出頭しておるという場合でも、やはり郵便による通知をなさることになるのでしょうか。あるいは便宜、人違いでないということが確認されるなら……。この郵便による通知をし、三週間以内に返事を待って初めて申請があったものとみなすということは、非常に回りくどいので、義務者の権利を擁護することにならぬような気がするのですが、その点はいかがですか。
  41. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 御意見非常にごもっともだと思うのでございますが、ただ登記所としまして、自分が本人だとして出頭しましたものが、はたして本人なりやいなやという確認の方法がないわけでございます。非常に懇意な顔見知りの人であればわかるわけでございますが、自分は何の何がしであると言って参りましても、はたしてその者が本人なりやということを登記所としてはどうも確認の方法がないのでございます。でありますから、どうしてもやはりこういう形式を設けまして、できるだけ人違いがないことを確保しようという趣旨でございます。
  42. 大川光三

    委員長大川光三君) それはわかりますが、たとえばこれとよく似たことが印鑑証明をもらうときにその例があるのです。印鑑を届けていっても、その場では印鑑証明はしてくれない。しかしながら役所は、便宜、印鑑届け出のあったということを、届け出人の宅べその通知書を持たしてよこすのです。そうしてその宅へ通知書がついて、それに対してすぐ返事をしたら、即時にでも印鑑証明は交付されるという実例が、実際問題があるのです。そういう便宜をこの手続ではできないのでしょうか。
  43. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) ただいま仰せの印鑑証明も、やはり本人の人違いでないことの一つの確認の資料として、現在登記申請の場合には登記義務者印鑑証明を提出さしておるわけでございます。そうして印鑑証明も即日印鑑届をして、その場でもらえる所が多いのでございますが、この印鑑証明の交付の事務というものが必ずしも間違いなく行なわれているという、その保証が実はないわけでございます。大体多くの市町村の条例では、本人が出頭しなくちゃならぬということにしておりますけれども、必ずしもそれは励行されておりませんので、代理人でやらせている場合もありますし、また非常に事務の輻湊する市町村なんかでありますと、印鑑証明の交付なんかも、とかくやはり形式に流れまして、本人でない者が印鑑証明を取りに来る、全然赤の他人が他人の印鑑証明を取りに来るという例も少なくないわけでございます。登記所の窓口におきまして、どうも印鑑証明がおかしいというので、市町村に照会しまして、そういう印鑑証明を出したことはないとか、あるいはその印鑑証明は間違っているというようなことが判明した例もございまして、印鑑証明必ずしも百パーセント信用が置けないのでございます。
  44. 大川光三

    委員長大川光三君) もう一つそれに関連して伺いますが、三週間以内に一定の書面による申し出があったときに、「其登記申請書ヲ受取リタルモノト看倣ス」という、この規定は、むしろ遡及効を認めて間違いがないということを確認すれば、申請のあった日に登記があったものとみなすということにするのがほんとうじゃないでしょうか。
  45. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 遡及効を認めますと、最初の、保証書をつけて申請がありまして、それから後に、この申し出があるまでの期間に、同一不動産について登記申請が出てくるわけでございまして、そういうのを全部あと回しにし、待っていなくちゃならぬという結果に相なりますので、それではやはり順位が狂って参ります。そういう関係で、この申し出があれば、あらためて受け付けの手続をし直しまして、それに基づいて登記をしていくということにいたしたわけでございます。外れ先ほど申しましたように、そういたしますと、保証書をつけて登記申請する人の順位がおくれますが、その順位がおくれることの不利益は、先ほど申し上げましたように、仮登記という方法で救済すべきものだと考える次第でございます。
  46. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 それからさっき井川委員からお聞きになったわけですが、今度新しく改正ようとするその四十四条の二の二項ですな、この登記官吏に申し出あった場合はという、その申し出ですな、それは代理を認めぬというのはどういうわけですか。代理を認めてもいいんじゃないですか。代理を認めないというのはどういうわけですか。
  47. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 書面形式を申し上げておるわけでございます。書面でやるわけでございますので、本人何某代理何某というのでは、その代理権の授与が真正のものかどうかということがやはり問題になってくるわけでございます。で、書面形式としましては、やはり本人署名捺印ということを要求をいたします。ただ、先ほども申し上げましたように、たとえば細君だとか子供なんかによく頼んでおいて、登記所から通知がきたら間違いないという申し出書に自分の名前を書いて実印を押して返事をしておいてくれということの委任がございますれば、それに基づいて家族の他の者がその書面を作るということは、これは可能であると先ほども申し上げた通りでございまして、実質的には、これは署名代理ようなことになるわけでございます。そういうことも許さぬという趣旨ではございません。ただ、代理人署名捺印、そんな、代理人として署名捺印したんではいけないという趣旨でございます。
  48. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 それがちょっと私はわからないのですが、あなたが言われるのは、法律的にこれはいわゆる民事行為でないというおつもりか何かしらぬけれども、これを代理を禁止するという意味が、ちょっと私はわからないのですがね。これは訴訟行為でもないし、代理を許していい行為じゃないかというふうに考えるわけなんですがね。そこでもって真正代理かどうかが判定がつかないとおっしゃるならば、代理の場合に、印鑑証明をつけた委任状を添付せよとか何とかというふうなことで、代理権を証明する信用のできるよう添付書類をつけさせることはいいですよ、しかし代理人という表示行為のあるものは一切いけない、受け付けないということがおかしいのじゃないか。それとともに、今あなたのお話からすると、家族の者にそういうような自分の名前を書いて、こういうふうなものをするようにということを言ってさせることは差しつかえないと、こう言うが、それは完全な事実行為じゃないし、ある意味から言ったら、やはり代理行為の場合が多くあり得るのですが、ただあれを頼むから自分の名義できたなら私の名義でもって書いて出しておいてもらいたい、判もどこへ置いて置くからというふうなことは、やはりこれは民法の代理じゃないかと思うのですが、そういう代理でありながら代理ということを表示せずに、これは有効だと言って、今度は委任状をつけて明らかに代理だということを表示した場合にはこれは無効だ、受け付けないというのは、ちょっと何かおかしい、矛盾しておるじゃないですか。
  49. 大川光三

    委員長大川光三君) ちょっと関連して未成年者の場合も説明して下さい。
  50. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) この未成年者の場合は、これは別であります。本人には法律行為能力がないわけでございますので、登記申請自体が、これは法定代理人からしなければならぬ筋合いでございます。その法定代理人がむしろ本人とも言ってしかるべきものであります。この二項の関係におきましても、未成年者の場合は法定代理人が間違いないという申し出をすることにこれはなるわけでございます。  それから一般に権利登記申請の場合は、不動産登記法におきましては、やはり真実を確保するという趣旨から本人登記所に出頭して登記申請をするという建前になっておりますが、ただ本人の出頭を強制しますと、先ほどもお話ように、病気で行けないとか、あるいは旅行をしておるという場合には困りますので、そういう場合には登記申請代理を法律でもはっきり認めまして、その場合には委任状印鑑証明をつけるという規定があるわけでございます。この第二項の「申出」は、本人が出頭する必要はないわけでございますので、代理を認めるという必要はないということから、この代理規定を実は置いてないのでございます。
  51. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 しかし、代理を認めないということになると、私は、そういう意思表示——これは私のしたものに相違ございませんという意味の意思表示は、代理を認めてもいいのじゃないかと思うんです。正式な代理人意思に基づいて代理権を授権したということがわかりさえすれば、代理を認めてもいいのじゃないかと思うんですがね。これがもしあなたの力で言われる通り代理は無効だということになると、この登記は却下しなければならぬものだ、ほんとう代理人がやった場合には。代理という書面があってもなくても、とにかく、もし代理行為でやった場合には、これは却下しなければならぬものだ。そうすると、これはその次の登記など、あるいは所有権取得とか、あるいは差し押えとかする場合に、あの登記は元来無効じゃないか、却下すべきものを却下してないんだからというような問題が起きてくると思うのですがね。私は、だからこの意思表示というものは、本人がしてもあるいは代理がしても、本人がしたものと認めることができる条件さえそろっておれば、本人意思に間違いないということを伝達されるものである以上は、これはやはり有効であると認めることが相当じゃないかと思うがね。絶対にあなたの言うよう代理は認めないのだというようなふうにすると、これはもう必ず却下せねばならぬ場合がたくさん出てくると思うんですがね。
  52. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 厳格に言いますと、いわゆる民法の代理というものは法律行為の代理でございまして、この印し出は、これは法律行為ではない。むしろ、観念は通知と申しますか、そういうことになるわけで、ほんとう代理ということにはならぬわけでございますが、まあそれは別といたしまして、私申し上げておりますのは、書面形式について申し上げておるのでございまして、何某代理人、甲代理人乙ということで、乙の署名捺印では四十四条の三の第二項で要求しております申出書にはならないということを申し上げておるわけでございます。しかし、本人甲の依頼に基づきまして乙が甲の名前をここに書いて、甲の実印を押してこの申出書を出しますれば、それで第二項の書面形式はそろうわけでございますから、そういう点からいいますと、実質的には代理を認めているんだと言ってもいいと思うのでございます。あくまで書面形式につきまして甲代理人乙ということで乙が署名捺印したのでは、二項の申出書にはならないと、それだけのことでございます。
  53. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 それが私は将来民事上、登記の効果について大きな問題が裁判上起こると思いますがね。そこで、実質的には、あなたの今のお話でもって代理を認めるような形になる、形式だけは本人名前にしてもらいたいと、こうおっしゃるのだが、それなら、実質的に代理を認めることになると言うならば、委任をされた人が何それがしの代理人ということで、委任状をつけて申し出れば、それを許可しない、無効だという理由はないんじゃないですかね。実質的に代理を認める以上は、これを形式的にも代理を認めてもいいのじゃないですかな。
  54. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) そうしますと、登記所としましては、またさらにほんとう委任があったかどうかということの調査ということも問題になる余地がございますし、先ほども申し上げましたように、本人登記所に出頭しなければならぬという、そういうことにはなっておらぬのでございますから、代理人代理人として署名捺印することを認めるまでの必要はないというのが、この二項をこういうふうにいたしました理由でございます。実際上さしてそのために不便になることはないという考え方でございます。
  55. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 これはしかし、たとえば売買契約書など、実際にこれは真実に売買あるいは抵当権設定される場合、そうして犯罪等が行なわれることを予想される場合でなしに、ほんとうの売買ないしは抵当権設定の行なわれる場合に、売買契約書に判を押して、あるいは登記申請書に判などを押しておいて、そのあとでもって——これの権利書も紛失しておらぬ——この四十四条の二の第二項の意思表示についても委任状をもらっておくということはあり得るのですよ、買い受け人が。いわゆるこの意思表示をすることについての委任状をもらっておく、そうして印鑑証明をつけるということもあり得るのです。しかし、実印はもうすでに本人が、本人というのは登記義務者が持ってどこかへ行くこともあろうし、また、その判はもう渡さないというような格好もあり得ると思うんですがね。登記申請者の委任状と同時に、この四十四条の二の第二項の意思表示の委任状を渡しておくということはあり得ると思うがね。その場合に、それを無効というようなふうにする理由はない。広くやはりそれも有効だと見てもいいのじゃないかな。印鑑証明がついた売買の登記申請書の判とそれが同じならば。
  56. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) あらかじめ登記義務者からその署名捺印のある申出書をもらっておくということになりますと、虚偽権利者すなわち無権利者が勝手にそういう申出書を作って買い主なり抵当権者の方に渡しておく、それが利用できることになりますと、この目的はやっぱり達せられぬわけでございまして、相手が信用できないからこういう手続をするわけでございます。で、第二項をもちまして、法務省令の定める書面をもって登記申請の間違いなきことを登記官吏に申し出るということに法律の規定がなっておりますが、この法務省令の規定といたしまして私ども考えておりますのは、登記所がこの第一項の規定によりまして通知をいたします。その通知書の末尾の所に、登記義務者本人あるいは登記義務者本人名前で右の登記申請は間違いないとして署名捺印をさせまして、通知書自体はまた送り返させるという方法によって処理しようと思っておるわけでございます。そうすることによりまして、より一そう登記義務者の人違いのないことが確保できるのじゃないかという考え方でございます。ですから、あらかじめ登記義務者かあるいは登記義務者と称する者が、登記権利者の方にこういう申出書に署名捺印して渡しておくというのでは、せっかくこういう事前通知を設けた趣旨が没却されてしまうことになりはしないかと思うのでございます。
  57. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 それにしても、登記義務者にこういうようなふうな通知を、あなたはこれこれの書面を出して保証書を出して抵当権設定申請があるとか、あるいは売買の申請があるがということを本人通知するだけで、それでもって十分じゃないか。そうすれば本人は、いや私はそういう申請はしておりません、そんな売買の書類も出したことはない、あるいは抵当権設定書類も出したことはない、だれか第三者がしたのだからと言って、登記所に飛んで来るかもわからない。だから、この第一項の書面登記所から通知をすることは非常にいいことだと思うんです。しかし、それを出したあとから、それは間違いありませんということを、今度相手から書面を出すのに、本人じゃなければいけない、印鑑証明をつけた代理じゃいかぬという、そこまで制限するのは、これは私は非常に不便だと思うですよ。偽造とか何とかでなしに、偽造などの場合にはそれはいいけれども、九分九厘あるいは九割九分は偽造でない真正なものなのだから、そういう人に対して非常な不便だと思うがな。ほんのきわめて一分か二分の偽造の場合を防止するために、あとの九割何分の真正登記申請者に対して非常な不便をかけると思うがね。
  58. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) まあその点はさきほどるる申し上げた通りでございますが、登記義務者本人意思に基づいてさえおりますれば、登記義務者本人が自分で筆をとって名前を書いて判を押す必要はないわけでございましてほかの者がかわってこの申出書を作成するということは差しつかえないわけでございます。それから第一項の通知だけでよくはないかということになりますと、これは現行法と同じわけでございますが、そうなりますと、第一項の規定によりまして保証書を添付しました登記申請がございますと、その申請に基づいて直ちに登記をしなくちゃならないわけでございます。その通知を受けました登記義務者があるいは間違っておったということになりましても、これはあとの祭りでございまして、もとの状態に復するには訴訟をしなくてはならない。虚偽の無権利者から不動産を買ったり、あるいは抵当権設定を受けて金を払ったものは、それもまた回収しなくちゃならぬ。その登記をした虚偽の無権利者は行方もわからないということで、払った金の回収もできない。真正権利者、それから取引相手方は、非常に不利益を受けるわけでございまして、そういう不利益に比べますれば、この第二項の手続もやむを得ないのではないか。三週間という期間でございますけれどもほんとう登記申請する意思があるならば、登記所から通知が参りますれば直ちにこの申し出をするでありましょうし、実際問題として三週間も待たなくちゃならぬということはあり得ないわけでございまして、そういう両者の利害を考量いたしまして二項の規定もやむを得ないというよりも、やはり最近におきますところの、よく新聞なんかに出ております地面師なんかが虚偽登記をして人をだまして金を取り、真正権利者に迷惑をかけるという事例もふえていく傾向にございますので、それの防止策として四十四条の二項のような措置をとることが適当であると、そういう考え方でございます。
  59. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 四十四条の二の一項の登記所の方から通知をするのは書留郵便か何かでやりますか、普通どういうお考えですか。その郵便を出して、それがついたかつかないかということは、何によって確認しますか。
  60. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) これは法務省令でその点は具体的に規定いたしたいと思っておりますが、書留郵便までの必要はないのではなかろうかと考えております。
  61. 大川光三

    委員長大川光三君) ちょつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  62. 大川光三

    委員長大川光三君) 速記をつけて。
  63. 井川伊平

    井川伊平君 この登記簿の原簿の甲区の見本をもらったのですが、この甲区に所有権を取得した受付の日が書いてありますね。昭和三十六年九月十八日受付第一二八二六号と書いてありますね。これは保証書によってなされる登記の場合でありますと、受付とは書いてあるけれども、受付の日ではなくして、申し出を受け取った日ということになるわけですか。
  64. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 二項によって申し出があったときに受け取ったと見なしておりますので、その申し出があったときの日付、そのときの受付番号によるわけでございます。
  65. 井川伊平

    井川伊平君 そうすると、先ほどの後藤さんの質問に対してあなたのお答え、最初に書類の提出があった場合に受け付けますと言ったのは、登記簿に受け付けるという意味ではないのですね。
  66. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) その通りでございます。最初の受付番号では登記はしないという建前でございます。却下する必要もございますので、やはり受付の形はとっておかなくちゃならぬわけでございます。
  67. 井川伊平

    井川伊平君 登記簿上には受け付けないけれども、何かに取っておくというわけですね。
  68. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 受付手続はしますが、その手続によって直ちに登記はしないということでございます。
  69. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 さっき、四十四条の二の登記所の方から通知をしますね。その通知は書留で通知をしないということだが、いつついたかわからぬのじゃないか。そうして通知を受け取ってから三週間以内に申し出ないときは却下するというのだが、通知を受け取ってからというのだが、何日の口についたかわからぬのじゃ、ないですか。書留かあるいは配達証明かならば、何月何日についた、もうすでについてから三週間たったから、それ以内に申し出がないから却下するというならわかるけれども、こっちから、こっちからというのは登記所の方から、郵便の出しつぱなしなら、それが何日についたかわからぬから、何日品から三週間経過したかということは計算ができないのじゃないですか。
  70. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) これは、通知を発した日から三週間ということでございます。途中で郵便が延着するなどという可能性もございますので、三週間という余裕を置いたわけでございます。
  71. 高田なほ子

    高田なほ子君 現在、土地、建物に権利を持つ実数というのは、全部はわからないと思いますが、大体それはどういうふうになっておりますか。
  72. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 土地、建物の所有権者の実数という御趣旨でございましょうか。
  73. 高田なほ子

    高田なほ子君 権利を持つ者のね。
  74. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) これは、土地、建物の所有者の数が何人あるかということは、ちょっと調査をいたしておりません。それからまた、調査も困難でございますが、ただ日本全国に土地が何筆ある、建物が何戸あるということは、これは統計でとっております。こまかい数字はちょっと持ってきておりませんが、土地は約二億筆でございます。それから建物は約二千万戸でございます。所有者となりますと、これは共有者などもございますし、相続なんかでは、新民法下では、これは共同相続というふうなことになりますので、所有者の数は非常に多くなるわけでございます。
  75. 高田なほ子

    高田なほ子君 所有者の数は大へん多くなるという説明がありましたが、この所有者の中で、登記を希望しているのはどのくらいおるのでしょうか。
  76. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 現在の不動産登記では、所有権登記をしたいと希望する人は保存登記をいたすわけでございますが、この土地、建物の総数の約八割ぐらいが保存登記をされておるという大体の見込みでございます。
  77. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうすると、あとの二割の者が登記を希望しておるのだというふうにつかんでいいわけですか。
  78. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) あとの二割は保存登記がしてないということで、所有権登記をしてないわけです。しかし、その中には国有の土地、建物、あるいは市町村などの公共団体の所有の土地、建物なんかもございまして、登記してないからといって、本人意思が、希望してないとも必ずしも言い切れないわけでございます。まあ実際所有権登記をする必要がないから、してないというのが実情で、大体それは総数の約二割ぐらいの見当ではなかろうかと思っておるような次第でございます。
  79. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうすると、この二割の数の者が全部登記を希望しているものとは限らないわけでありますね。
  80. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) まあ所有権の保存登記をしてないわけですから、してもらわなくてもよいということで、してないわけでございますね。
  81. 高田なほ子

    高田なほ子君 登記を希望しておるものとしていないものが、この二割の中に入っておるというふうにつかんでよいわけですね。
  82. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) まあ保存登記をする必要がないということで、あるいはしたいけれども登録税がかかるからというようなことで、してないのもございましょうし、これはいろいろな動機があるかと思いますが、とにかく、いかなる理由によるかははっきりわかりませんけれども、二割くらいが所有権登記がされてないと、そういうことでございます。
  83. 高田なほ子

    高田なほ子君 この二割というのは、一体どのくらいの件数に上るものだと考えておられますか。
  84. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 先ほど申し上げましたように、土地が約二億筆でございますから、二割といいますと、約四千万筆が所有権登記をしてない。建物でありますと、二千五戸でございますから、四百万戸については未登記であると、所有権登記がしてないと、まあ大体概数を申し上げますと、そういうことになります。
  85. 高田なほ子

    高田なほ子君 今度の法律は、この四百万戸ですか、それから二億筆の大体二割になりますが、四千万筆ですか、それらのものを全部ひっくるめたものが今度の法律の対象になるわけですか。
  86. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) さようでございます。
  87. 高田なほ子

    高田なほ子君 次にお尋ねしたいことは、現在の制度でも、土地については構図、あるいは建物については建物の所在図をちゃんとそろえることになっておると思いますが、この点はどうですか。
  88. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 現行の制度におきましては、地図、建物所在図、はなはだ完備いたしておりませんが、土地につきましては地図が一応できております。ただ、建物所在図は現在はできておりません。
  89. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうすると、現行の制度でも、上地やあるいは建物の所在図をそろえることになっているわけなんでしょう。
  90. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 地図だけは、これは土地台帳法の施行細則という法務省令で地図を設ける規定がございます。建物については、そういう規定がございません。
  91. 高田なほ子

    高田なほ子君 しかし、現在建物の所在図を、現行の制度になくとも、実際にやっておる所があるのではないですか。
  92. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 登記所では、建物所在図は現在のところ持ちません。
  93. 高田なほ子

    高田なほ子君 それは、建物の所在図というものを備えておるという登記所というものは一つも今ないわけですか
  94. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) ございません。建物所在図を備えるという根拠の規定が今全然ございませんので、登記所はどこも持っておりません。
  95. 高田なほ子

    高田なほ子君 重ねてお尋ねしますが、そうすると、現在の制度では、土地については構図だけを持っていると、しかしその構図も現在においては整備されていない所が多いと、こういう御答弁だったと思いますが、なぜそれではそのように完備されないのですか。
  96. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 登記所がこの地図を引き継ぎましたのは、昭和二十五年でございます。これは、土地台帳制度が税務署からこの登記所の方に移管になりました際、この地図も一緒に引き継いだわけでございます。これはまあ明治、大正年間にできた地図が大部分でございまして、必ずしも正確でございません。登記所に移管されましたのは昭和二十五年でございますが、まだ十年足らずの間でございまして、登記所の方としましては、この地図の整備を心がけているのでございますが、予算上、何分この地図の整備ということは膨大な予算を要することでございますので、この十年間では、税務署から引き継ぎました地図を完全なものにするということは、なかなか困難でございまして、ただいま仰せの通り、この地図は必ずしも正確なものであると申し上げられない実情でございます。
  97. 高田なほ子

    高田なほ子君 予算上、制度があってもそれが実施できないというお話ですが、それは予算上だけの問題ですか。
  98. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 主として予算の問題でございます。
  99. 高田なほ子

    高田なほ子君 主として予算上だけの問題だということですが、私は予算上だけの問題ではないと思いますけれども、もう少しその辺、本法とも関係がありますから、詳しく説明してもらいたい。
  100. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) この地図整備のための予算さえ確保できますれば、地図の整備はできると思います。
  101. 高田なほ子

    高田なほ子君 技術の面ではどうですか。
  102. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) もちろん地図の整備をするにつきましては、測量、製図についての技術者が必要であるわけでございますが、その方面の人員を、新たに予算を獲得いたしまして、採用いたすことによって、地図の整備もやっていくわけでございまして、要は、やはり予算の問題であると考えております。
  103. 高田なほ子

    高田なほ子君 明治、大正年間に作られた地図ということになってくると、これはずいぶん間違いがたくさん出てくるだろうと思う、実際には。そうしますと、この膨大な仕事を正確にまたやり直していくというためには、単に予算上だけの問題ではなくて、今言うような測量技術というようなものの人員についても、予算が取れたからといって、必ずそこに確保されるというような私は見通しはないのじゃないかという気がする。これはしろうとの考えですけれども、技術の面における実情はどうなんです。
  104. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) これは、その方面の人は現状でも必ずしも不足をいたさないと思うわけであります。測量士、測量士補の資格を持っている人も相当あります。土地家屋調査士、全国約一万以上の人がいるわけでございますが、この人たちも、調査、測量それから製図の技能は持っておるのでございまして、予算さえ確保されますれば、こういう人たちを新たに職員として雇い入れ、雇い入れなくともあるいは依頼をしまして、地図の整備ということは可能でございます。ただ、全国の土地につきまして精密な測量をしまして地図を整備するということは、これはもう実に膨大な予算がかかることに相なるわけでございます。
  105. 高田なほ子

    高田なほ子君 膨大な予算というのは、どのくらいの予算なんですか。
  106. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 実は国土調査法という法律がございまして、これは現在のところ経済企画庁の所管でございますが、毎年・国土調査法に基づきまして、精密な土地の一筆調査をいたしまして、地図を作っておるのでございますが、年々約一億七千万円の予算が計上されております。ところが、この国土調査の現在の進行速度をもって日本全国の国土調査、測量をいたしまするには、なお数十年かかる、そういう実情でございます。それから推しましても、実に膨大な予算のかかる大事業でございます。
  107. 高田なほ子

    高田なほ子君 今、国土調査法の説明があったのですが、伝え聞くところによると、こういう法律はあっても、今、あなたがおっしゃるように、まるで空文に等しく、調査法自体の目的が迅速かつ適正に実施されていないということを伺っているわけです。そうだとすると、やはり今度制度を改めまして、正確に権利の所有、それを国の力でもって、国の機構の中で処理していこうというような法の目的から考えてみても、私は、かなりの人員とか予算というものが、計画的に説明されなければ、どうも納得がいかない点が多いわけです。それで、以上の質問を今してきたわけでありますが、この法律の目的を完成するために七年間の長日月を要するようでありますが、この七年間の具体的な計画というものは、すでにもうできておりますのですか。この点どうですか。
  108. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) この法律案の附則の第二条で、登記簿の表題部の改製及び新設というふうに表現してございますが、これは実質を申し上げますと、現在、土地につきましては土地台帳、それに土地の登記簿、家屋につきましては家屋台帳、それから建物登記簿と、二つあるわけでございますが、この二つの台帳と登記簿を一木にしまして、登記制度というものを合理化しようというのが、まず第一のこの法律案のねらいでございます。その二つのものを一つにする、一元化と私ども申しておりますが、この一元化の事業は、現在の予定では、昭和三十九年の三月までにこれを完成いたした。その間におきまして、それに並行して全国の土地につきまして地図を整備するということは、考えてないわけでございます。まずこの台帳と登記簿というものを一本にするということがねらいでございまして、その間の計画は、現在のところ一応立っているわけでございます。ただいまのところでは、これは将来のことでありますから、将来動く可能性があるわけでございますが、予算の総額は、大体二十一億円という見込みでございます。さしあたって来年度すなわち昭和三十五年度におきましては、約一億四千万円が計上される見込みでございます。
  109. 高田なほ子

    高田なほ子君 三十九年の三月までにこの法律を完成させる。しかし、その間、地図の整備は考えていないという御答弁ですが、この新しい条文の中には、ちゃんと地図を整備することになっているのじゃないですか。
  110. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) この新しい法律案の十七条をもちまして、地図及び建物所在図を登記所に備えるということになっておりますが、これは一挙にということは、ただいま申し上げましたように、実際問題としてこれはできることではございませんので、私どもの計画といたしましては、地図につきましては、現在あります地図で当分は間に合わせるよりほかない。一元化の仕事が進みまして、徐々に急を要する所から地図並びに建物所在図の整備をしていきたい。予算の関係とにらみ合わせながら整備をしていきたいという考えでございます。
  111. 高田なほ子

    高田なほ子君 それはおかしいじゃないですか。現在の地図は、明治、大正年聞に作られた地図で、昭和二十五年に税務署から登記所に事務が移管されてから十年たったけれども、実際は、その地図というものもできてないし、古いので、必ずしも正確なものだと言えない、こういうことであるから、今度の法律を改正して、この十七条あるいは十八条、ここに土地、建物の正確な、何といいますか、所有権ですか、所有権の正確公正を期すためにこの法律を出すのだということになれば、その本元になるものができないようなしかけで、どうしてこの法律の目的を達成していくことができますか。
  112. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 十七条におきまして、こういう地図、建物所在図を備えることにいたしましたのは、登記所におきまして、土地台帳の現況を正確に把握し、土地、建物を特定するという建前からいきまして、この地図、建物所在図を、どうしても法律の中ではっきり規定しておくべきものということで、この案の中に入れたのであります。ただ、実際問題といたしましてただいま申し上げましたように、これを一挙に整備をするということは、膨大な予算を要することで、実際問題としてこれは不可能でございます。徐々にこれを整備をはかっていこうという考えでございまして、なお昭和三十五年度におきましても、これはまあ全国の土地の面積から申しますと、きわめてわずかな額ではございますけれども、約六百万円ほどの地図整備のための予算が組まれておるわけでございます。予算の状況等とにらみ合わせながら、徐々にこの地図、建物の所在図の整備をはかっていきたいと考えております。
  113. 高田なほ子

    高田なほ子君 あなたは前回の委員会でこの逐条説明をして下さった。そのときに十七条と十八条については、旧来は台帳の整備の場合だけであった。今度は新法でもって建物の所在図の制度を新設していく、これは基本的な条件なんだ、本法を完成するための基本的な条件である、こういうふうに御説明になったわけです。しかし今伺ってみると、これは一挙にすることは不可能であると言われておりますし、また、私どももこれを一挙にしなければならないというふうには考えられませんけれども、従来からの国土調査法の実績において、また現行の土地についての構図を整備するということの実績の上において、徐々にするといっても、その徐々ということが一体どういう徐々なのか、はなはだ私は疑問に思わざるを得ないのです。今日までの実績から考えて、徐々というのはどういう意味なんですか。
  114. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 現在でもあまり量としては多くございませんが、地図の整備は行なわれておるわけでございまして、先ほど申しました国土調査法による一筆調査がなされますと、これは精密な地団ができるわけでございます。その地図は登記所に送られることになっておりまして、登記所ではその地図に基づきまして土地の現況の変更を書き込んでおるわけでございます。こういうのはもう地図が整備されておるわけでございます。それからなお全国各地に土地改良事業あるいは土地区画整理事業が行なわれておるわけでございますが、そういう土地改良あるいは土地区画整理が行なわれました地域につきましては、これまた完全な地図が作製されましてこれも登記所に送ってくる建前になっておりまして、その地図が登記所備え付けの地図として完備されておるわけでございます。で、現在でも徐々にそういうふうに地図の整備ということは行なわれておるわけでございますが、私どもの希望といたしましては、さらにそういうよそでやった調査に基づく地図を送ってもらうということだけではなしに、将来の見通しとしましては、登記所におきましても、土地の移動の激しい所、取引の活発な所なんかを優先的にしまして、予算を獲得いたしまして、地図の整備をはかっていきたい、そういうふうに考えておる次第でございます。
  115. 高田なほ子

    高田なほ子君 今度の予算で百四十二名の人員の増加が登記に関して出ておるようであります。今も御説明があったのでありますが、これはあれですか、地図を整備するというようなことのための人員の増加なんですか。
  116. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) この百四十二名と申しますのは、従来、最近におきまして登記事件が非常に増加いたしまして手不足を来たしておるということで、それを緩和するための増員でございます。
  117. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうすると、登記事務の渋滞が、先ほど井川先生からもあげられたんですが、その手不足を直すために定員増がはかられた、こういうわけでございますが、そういう手不足の中で、現行制度でも整備されていない地図を整備するために、現に整備しつつあるということでありますが、これはどういう地図を整備しているんですか、何の地図を整備しているんですか。
  118. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 何の地図と申しますと、もちろんこれは土地の地図でございますが、現在整備されておりますのは、国土調査法による一筆調査の行なわれました地域、それから土地改良あるいは土地区画整理事業が行なわれておりますところの地域につきましては、完全な地図が作製されまして、それが登記所に送られてきておるのでございます。
  119. 高田なほ子

    高田なほ子君 建物の所在図を今実験的に備えるような準備をしておる所があると聞いていますが、そういうことをやっておりますか。
  120. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 建物所在図は現行制度の上でそういう制度がございませんので、登記所では作っておりません。
  121. 高田なほ子

    高田なほ子君 現在の制度ではそれはないでしょうけれども、準備として何かやっている所があるのではないですか。
  122. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 準備としてもやっておりません。
  123. 高田なほ子

    高田なほ子君 それは全然やっていないのですか。
  124. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) さようでございます。建物所在図を作りますには、やはり地図をまず作ることが先決になって参りまして、地図を作るには測量もやらなくてはならない、相当予算がかかるわけでございまして、私どももその必要を感じないわけではないので、何らかの方法でということを考えたわけでございますが、予算の獲得がこれまでできません関係で、実際にまだ試験的にもやっておりません。
  125. 高田なほ子

    高田なほ子君 お尋ねいたしますが、結局今お話しのように、土地の地図が正確にできるということが非常に大切なことであることを今指摘されたわけなんです。しかし現在の仕事の中でも、登記事務が手不足のために大へん渋滞をしている、そこに持ってきて今度は地図の整備を急がなければならない、こういうところに追い込まれてくるようでありますけれども、現状は、ずいぶん登記所の方々もお忙しいように私ども聞いておるわけですけれども、現状はどんなふうでございますか。
  126. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) その点は、先ほども申し上げましたように、近年登記事件がかなりふえておりますので、登記所の職員の事務負担量も以前に比べまして増大いたしておるわけでございますが、私どもとしましては、増員あるいは事務の機械化その他の手段によってこの隘路を克服したいと考えておる次第でございます。なお、この法律案登記簿と台帳とを一元化することによって登記制度というものを合理化しまして、手続を簡易、簡素にするということも一つのねらいで、この法律案のねらっておりますところの登記簿、台帳の一元化もやはり負担軽減の一つ方法だと考えておる次第でございます。
  127. 高田なほ子

    高田なほ子君 こういう現状を打開して、新法実施の目的を達するために、それぞれの立場での計画が進められるようお話があったわけですけれども、なかなか容易ならざる仕事でありますだけに、私どもは、これを克服するための人員の増とか、あるいは言うところの事業の合理化というようなことについては、もう少し具体的に承らなければならないわけです。少なくともこういった膨大な法律をお出しになるからには、三十九年三月までに完成するために、どれだけの人員と、どれだけの事業整備の具体性があるものか、こういう計画性というものについて、私は伺いたいと思うわけです。ここでは、何かその資料があれば、私どもを納得させるに足る計画、こういうものを資料としてお出しいただけるようにお願いしたいし、委員長にもそのことを私はお願いしておきたいわけです。
  128. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) この登記簿と台帳の一元化の作業につきましては、実は昭和三十四年におきまして、一部の登記所においてこれは実施をいたしているのでございます。その実施の実績をまとめた資料がございますので、これは後刻提出いたしたいと思います。その実績に基づいて、三十五年度の予算も組まれておりますし、今後これが大体基礎になりまして、この一元化の作業が行なわれることになる予定でございます。
  129. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうするとあれですか、一元化の実績を一部している所があるのだという今お話ですけれども、さっきはどこもありませんと、私の重ねての質問にお答えになったのですが、それはどういうことなんです。
  130. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 先ほど申し上げましたのは、建物所在図を作った所があるかというお尋ねでございましたので、建物所在図を試験的に作ったという所はないということを申し上げたのでございまして、一元化の作業、登記簿と台帳を一本にする作業は、昭和三十四年度におきまして、一部の登記所においてこれは実施いたしたのでございます。
  131. 高田なほ子

    高田なほ子君 この一部の登記所で一本化にする作業をやった、従って、これはあとで資料としてお出しいただけることはけっこうだと思いますし、またそれを希望いたしますが、しかしこれはあれですか、法律ができる前にこういうことをおやりになったということについては、どういう御見解をお持ちになるのですか、行政というものは、そういうふうに立法に先行して何でもできることなんですか。
  132. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 三十四年度においてやりましたのは、これは土地台帳、家屋台帳の書きかえということで、法律上は土地台帳、家屋台帳の様式の改正を法務省令でいたしまして、法律上はそういう形で実施をいたしたわけでございます。
  133. 高田なほ子

    高田なほ子君 法律上はどうか知りませんけれども、行政措置として、行政面で一木化にする作業が次々と進められていっているというようなことは、私は立法前における行政のあり方として必ずしも適当ではないのじゃないかという気がするわけです。私どもは、この四月一日にこの法律を通さなければならないということで、ずいぶん問題点もあるようですけれども、とにかく審議を急いでやらなければならないということで、一生懸命になっているわけですが、しかし既成事実として一本化の作業が進められているということについては、私はずいぶんおかしなものだと思うのです。法律上の解釈を今話されましたけれどもね。
  134. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) この一元化の仕事というのは、先ほども申しましたように、現在の概算で申しましても約二十一億を要する大事業でございます。それから不動産登記制度にとりましては、非常に大きな改革になりますので、国会にこの法律案を提出いたしまして、御審議を仰ぐ上におきましても、あらかじめ事前に試験的にこれを実施して、その結果も御参考にしていただいて、この不動産登記法改正を行なうべきかいなかということをおきめ願う上においても必要ではないかと考える次第でございます。
  135. 高田なほ子

    高田なほ子君 私はその考え方には賛成しないのです。どんなことをあなたおっしゃっても、これは賛成はできないのです。これはあとでまた議論をしたい点でありますが、納得はいたしません。  次に、もう一点だけちょっと聞かして下さい。さっきこの土地家屋調査士が一万以上もいるから大体やっていけるだろうと、こういうようお話ですけれども、それは実績に基づいてそういうような御答弁をされたのですか。
  136. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) これは将来登記所におきまして、この地図を整備するという場合に、人手があるかというお尋ねでございました関係で、実際の人の問題ということは、これは解決の道がありますということを申し上げた趣旨でございます。予算さえつきますれば、土地家屋調査士に依頼をいたしまして、調査、測量を行なうことも可能だと、そういう趣旨で申し上げたのでございます。
  137. 高田なほ子

    高田なほ子君 今度は、この法律全般にわたって、登記についてですね、職権作川が行なわれることになるわけですね。ですから、この実態の把握というものは非常に正確であり、かつまた容易ならざる仕事だというふうに考えるわけです。で、この法律を拝見いたしますと、もしあやまって他人の権利をそこなうようなことを、これは悪意でなくともやった場合に、所有権に対して侵害を与えるような場合だっても、ときになきにしもあらずです。そういうような場合に、これを何か救済する方法というものは、何かこの条文の中にどこか出ておりますか。
  138. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) ただいま仰せの点は、現在の台帳制度におきましても起こり得る問題でございまして、土地建物の現況を把握して現行法でありますと、土地台帳、家屋台帳に登録する、新しい制度でありますと、登記簿の表題部の登記をするということになるわけでありますが、もし登記官吏が認定を誤った登録、あるいは新法のものでは登記をしたと、そのために私人に損害を与えた、故意、過失に基づきまして損害を与えたということになりますれば、国家賠償法によって国が損害賠償責任を負うということになるわけでございます。この法律自体にはそういう規定はございませんが、国家賠償法がございますので、それによって処理されていくことになるわけでございます。
  139. 高田なほ子

    高田なほ子君 具体的には、登記所の職員の過失というものを国が賠償するということになるわけですか。
  140. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) そういうことでございます。
  141. 高田なほ子

    高田なほ子君 もう一つだけお尋ねして、あと次回に譲りたいと思いますが、この現行の台帳では、職権主義ですね。
  142. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 職権で登録できるという建前でございます。
  143. 高田なほ子

    高田なほ子君 なぜこれは職権主義でなければならないのですか。
  144. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) これは土地建物の現況を把握して、権利の客体を明確にする、その他国の政策上、土地建物を特定して、これを明確に把握しておくという必要上、この台帳制度というものがあるわけでございますが、ただ本人の申告あるいは申請に待っておりましただけでは正確を期することができません関係で、この職権調査ということが建前になっておるのでございまして、これは台帳におけると同じように、台帳の機能を果たしますところの新しい案のもとにおける登記簿の表題部においてもこの職権主義の建前をとった次第でございます。
  145. 高田なほ子

    高田なほ子君 権利の客体を明確にするために職権主義をとったと、こういうわけでありますが、なぜ権利の客体を明確にしなければならないか、どういう目的なのか。
  146. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) これはひとり権利の客体を明確にするという必要だけでなく、その他の必要からも不動産の現況というものを明らかにしておく必要があるわけでございますが、ただ権利だけをとりましても、土地の所有権、建物の所有権があるといいましても、その土地がいかなる土地であるのか、どこに所在しておる土地で、面積はどれだけあるのか、地目は何であるのか、建物でありますと、いかなる構造、建物か、大きさはどれくらいかということをやはり明確に把握されておりませんと、これはやはり取引の安全のためにも支障を来たすわけでございまして、国民の権利を保護するという見地からだけ申しましても、権利の客体がいかなるものかということを明確に把握しておく必要があると考えるのでございます。
  147. 高田なほ子

    高田なほ子君 土地台帳は権利の客体を明確にする、その他の必要、何のために必要かということをお尋ねしたい。これは取引の安全のためだということを今おっしゃったのですが、その通りですか、台帳というものはそういうものですか。
  148. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 取引の安全を確保するためには、やはり権利の客体が明確になっておることが第一の要件であると考えるのでございます。
  149. 高田なほ子

    高田なほ子君 台帳の場合は、そういう目的は副次的の目的になるのじゃないですか
  150. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 台帳は——台帳並びに今度の改正案のもとにおける登記簿の表題部も同じことでございますが、これはいろいろの利用面が考えられるのでございますが、その一つとして権利の客体を明確にするということも一つの重要な作用に相なるわけでございます。
  151. 高田なほ子

    高田なほ子君 それはおかしいじゃありませんか、私有財産に対して私法的な権利に対して職権調査を今までもやっていいという考え方は、ずいぶんこれはおかしな考え方じゃないですか。それじゃ民法の精神を初めからじゅうりんしたよう考え方じゃないですか。土地台帳というものはそういうものじゃないんじゃないですか。そういう私法的な取引秩序のために土地台帳が明確にされなければならないという理由は、私は納得できないのです。この点はおかしいじゃないのですか。
  152. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) ある土地なり建物に対する所有権あるいはその他の権利がだれに帰属するかということは、これは当事者たちの任意にまかせまして、自分の名義で登記してくれという者にその権利登記をしてやる。これは現在の不動産登記制度がそうでございますから、その点はそれでいいのでございますが、その権利があるという土地、建物は一体何かということは、これは当事者の任意にまかせておきましたのでは、これは安心がいかぬのでございまして、卑近な例を申し上げますと、同じような建物がそのあたりにたくさんあるという場合に、甲という人が所有権を持っておる、あるいはこれに抵当権設定した、その建物は一体どの建物かということをやはり特定しておきませんと、これは非常に取引の安全を害することに相なるわけでありましてこれは当事者がこの建物だと言うからそれでいい建物の特定は当事者まかせでいいということにはいかぬと思うのでございます。
  153. 高田なほ子

    高田なほ子君 私は登記のことを聞いているのじゃないのです。台帳のことを伺っている。台帳はなぜ職権主義なのかということを尋ねておるのです。登記簿について私尋ねているわけじゃないのですが、これ、ずいぶん今のお答えだとおかしなことに私は考えますけれども、この台帳というものの職権主義というのは、権利の客体を明確にし、取引の安全のためにこの職権主義が妥当であるのだ、またそのための職権主義なのだと、こういうふうにおっしゃっておられますけれども、一体この私的財産について国家が介入するというのには限界があるだろうと思う。職権主義というのは、国家が介入することだろうと思う。私的財産についても国家が介入する場合があり得ると思いますよ。全部私はないとは言いません。しかし、それは法律でもって限界があると思う。私的財産について、国が国自体の公共の目的のために介入する場合は、これは私は認めますけれども、これは限界があるでしょう。あなたの今の答弁だと、これは何だかずいぶんおかしなことになってくるんだけれども、どうなんですか。
  154. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 私は一向おかしくないと思うのでございますが……。ただいま職権主義のことを申し上げましたのは、新しい案の登記簿の表題部についても申し上げましたが、土地台帳、家屋台帳についても同じことでございますが、この所有権に対して国家の介入ができるかという点、これは法律によっていかようにも定められることでございまして、この職権主義もこの法律ができますれば、それによって可能になるわけで、現に台帳制度におきましては職権制度が土地台帳法、家屋台帳法に規定されておる関係であるわけでございまして、それによって職権調査が行なわれておるわけでございます。一向におかしいことはないと考えております。
  155. 高田なほ子

    高田なほ子君 誤解していらっしゃるのではないですか。私は新法のことについて言っておるのではないのですよ。今までの土地台帳は今までは職権主義だったでしょう、台帳というものは。登記簿の方は職権主義ではなかったのですね。この三つは違うわけでしょう。片方は任意主義でしょう、登記簿の方は。それから台帳の方は職権主義であったと思います。だから台帳で職権主義をとられたのはどういうわけで職権主義をとられなければならなかったのか、現行制度のもとで。そのことを私はお尋ねしておったわけです。あなたは新法での説明をされたんでしょうか。私は現行制度のもとにおけるこの台帳の職権主義というものは、どういう目的のためにやられているのかということを一応これは確かめておきたかった、基本的な知識として。今までの御説明は、新法に基づいての御説明だったんでしょうか。
  156. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 新法、現行法両方について御説明申し上げたつもりでございますが、現在の台帳制度におきまして職権主義がとられておりますのは、先ほども申し上げましたように、権利の客体である不動産がいかなるものであるかということを明確にする役割も、これは一つの役割でございます。そのほかになお、たとえば国なり地方公共団体その他の団体の公の団体におきまして土地改良事業を行なうとか、土地区画整理事業を行なうとか、あるいは大規模な国土開発の工事を行なうというような場合には、そこにいかなる土地があるか、土地の現況がどうなっておるか、その所有者はだれかというようなことを明確に、事前に把握しておきませんと、そういう計画を立てることもできませんし、その実施もできぬわけでございまして、そういう場合に、土地台帳というものは、非常に大きな働きをするわけでございます。  それからなお、御承知の通り現在、土地、建物に対するいわゆる固定資産税、これは市町村が徴収することになっておるわけでございますが、その固定資産税の賦課徴収の基礎としましても、やはり土地台帳、家屋台帳というものが大きな働きをしておるわけでございます。そういう各方面の必要のためにこの土地台帳、家屋台帳という制度が設けられておるわけでございます。
  157. 高田なほ子

    高田なほ子君 まあ水かけ論になるかもしれませんがね。今の説明だと、私的所有権に対して国家が強制をもって介入するということはあたりまえのことであるというふうに私は受け取れるのですが、それは無制限に国家が介入すべきものではないと思う。今の民法の精神からいってもですね。しかし、今お話ように、農地法とか土地收用法とかあるいは都市の計画、こういうような公共の目的がある場合に、国が特定の法律に基づいて介入するということはあり得るかもしれませんけれども、台帳の職権主義というものは、私は国がその私的財産に介入をしてこれの取引の安全のための職権主義であるというよう説明については、どうも納得し得ない点であります。ここは議論にわたるかと思いますから、後刻また私はいろいろな機会にこの点はお尋ねしておきたい点です。  一時になりましたから、あとに譲ります。
  158. 大川光三

    委員長大川光三君) ほかに御発言がなければ、本件に対する本日の質疑はこの程度にとどめたいと存じます。
  159. 大川光三

    委員長大川光三君) なおこの際、参考人出席要求に関する件についてお諮りをいたします。不動産登記法の一部を改正する等の法律案審査のため、参考人から適当の機会に意見を聴取してはいかがかと存じますが、御異議はございませんでしょうか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  160. 大川光三

    委員長大川光三君) 異議ないと認めます。参考人の人選、期日その他の手続につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  161. 大川光三

    委員長大川光三君) 異議ないと認めます。さよう決定いたしました。  以上をもって本日の審議は終了いたしました。  次回の委員会は三月十七日午前十時より開会いたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後一時二分散会