運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1960-03-03 第34回国会 参議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月三日(木曜日)    午前十時三十七分開会   —————————————   委員異動 二月二十二日委員江田三郎君、大森創 造君及び千葉信辞任につき、その補 欠として大矢正君、亀田得治君及び藤 田藤太郎君を議長において指名した。 二月二十三日委員赤松常子辞任につ き、その補欠として田畑金光君を議長 において指名した。 二月二十四日委員大矢正辞任につ き、その補欠として江田三郎君を議長 において指名した。 二月二十五日委員藤田藤太郎君及び江 田三郎辞任につき、その補欠として 千葉信君及び大矢正君を議長において 指名した。 二月二十六日委員大矢正君及び亀田得 治君辞任につき、その補欠として江田 三郎君及び大森創造君を議長において 指名した。 三月一日委員大森創造君及び田畑金光辞任につき、その補欠として大矢正 君及び赤松常子君を議長において指名 した。 三月二日委員大矢正君及び江田三郎辞任につき、その補欠として大森創造 君及び小柳勇君を議長において指名し た。 本日委員大森創造辞任につき、その 補欠として吉田法晴君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     大川 光三君    理事            井川 伊平君            後藤 義隆君            高田なほ子君            石黒 忠篤君    委員            林田 正治君            久保  等君            小柳  勇君            千葉  信君            吉田 法晴君            赤松 常子君            市川 房枝君   国務大臣    法 務 大 臣 井野 拓哉君   政府委員    警察庁長官   柏村 信雄君    法務大臣官房経    理部長     大沢 一郎君    法務大臣官房司   法法制調査部長  津田  実君    法務省刑事局長 竹内 寿平君    公安調査庁次長 関   之君    大蔵省主計局給    与課長     船後 正道君   最高裁判所長官代理者    人 事 局 長 守田  直君    経 理 局 長 栗本 一夫君    総務局総務課長 長井  澄君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    警察庁警備局警    備第三課長   倉井  潔君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○不動産登記法の一部を改正する等の  法律案内閣送付予備審査) ○裁判所職員定員法の一部を改正する  法律案内閣送付予備審査) ○検察及び裁判の運営等に関する調査  (昭和三十五年度裁判所関係予算に  関する件)   —————————————
  2. 大川光三

    委員長大川光三君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  この際、委員異動について御報告いたします。三月二日づけ江田三郎辞任小柳勇選任、三月三日づけ大森創造辞任吉田法晴選任。以上であります。
  3. 大川光三

    委員長大川光三君) 次に、不動産登記法の一部を改正する等の法律案議題に供します。当局より法律案の御説明を願います。
  4. 井野碩哉

    国務大臣井野拓哉君) ただいま議題となりました不動産登記法の一部を改正する等の法律案につきまして、提案の理由を説明いたします。  現行制度におきましては、不動産権利関係を明確にする公簿、すなわち登記簿権利客体である不動産自体現況を明らかにする公簿、すなわち土地台帳及び家屋台帳とが分離しておりますため、ひとしく登記所において所管いたしております登記制度台帳制度がそれぞれ別個制度になっているのであります。しかしながら、この二つ制度は、相互に密接不可分関係にあるのでありまして、本来ならば不動産登記簿だけで不動産に関する権利関係のみならず、権利客体である不動産現況をも明確にすることができるような制度に改めることが望ましいのであります。  このように現行登記制度及び台帳制度はそれぞれ別個のものとなっておりますため、これらの制度利用者は、同一内容台帳申告登記申請とをしなければならないほか、台帳登記簿両者について閲覧、謄抄本の交申請を必要とする等二重の手数と費用の負担を余儀なくされ、他面、登記所におきましても、不動産現況に関する事項につきましては、台帳登記簿両者に同一内容の記載をする等、二重の手続をしなければならないため、これが一因となって登記所事務負担過重ならしめ、ひいては登記事務の適正迅速な処理に支障をきたしているのであります。さらに、現行不動産登記法は、明治三十二年の制定にかかるものでありまして、これまでも数次にわたって改正行なわれたのでありますが、従来の運用の実績に照らし、規定不備と思われる点がなお少なくなく、これらの規定を改めて登記手続を整備するとともに、その合理化及び簡素化をはかる必要があるのであります。  この法律案は、以上に述べましたような登記制度台帳制度二元的構成に伴なう不便並びに現行登記手続不備の点にかんがみ、不動産登記法所要改正を加えるとともに、土地台帳法及び家屋台帳法を廃止しようとするものであります。以下この法律案の要点を申し上げますと、第一点は、登記制度登記灘)と台帳制度土地台帳及び家屋台帳)とを統合一元化し、登記簿をして土地口帳または家屋台帳の機能をも果させりため、不動産登記法土地、地物の現況を常時明確ならしめるための登記手続に関する所要規定を加えると同時に、土地台帳法及び家屋台帳法を廃止することとしたことであります。おもな規定内容は、次の通りであります。  1 不動産登記は、不動産に関する権利関係を明らかにするのみならず、不動産自体現況をも明確ならしめるものとする。2 不動産現況を明確にするための登記不動産表示に関する登記)は、不動産所有者にその申請義務を課するとともに、登記官吏実地調査権を認め、その調査に基にづき登記官吏が職権ですることが、できる。3 不動産を特定し、これを明確にするため、土地の区画、建物位置等を明らかにする地図及び建物所在図登記所に備える。4 不動産表示に関する登記は、不動産表示及びその変更並びに不動産の滅失についてするものとし、不動産表示登記としては、土地については、土地の所作、地番地目地積建物については、建物所在家屋番号種類構造床面積附属建物を記載するほか、地方税法による土地又は建物固定資産税関係から、所有権登記のされていない不動産については、所有者の氏名及び住所等を記載する。5 土地地番地目及び地積の定め方並びに建物家屋番号種類構造及び床面積の定め方は政令で定める。6 不動産に関する権利関係の錯雑及び混乱を防止するため、不動産の合併を制限する。   第二点は、不動産権利に関する登記手続を整備し、その合理化をはかるため、不動産登記法所要改正を加えることとしたことであります。   改正点のおもなものは、次の通りであります。  1 いわゆる保証書制度の乱用に伴う虚偽登記を防止するため、保証書を提出してする登記申請の場合には、登記義務者登記申請の真意を事前通知方法により確認する。2 買い戻しの特約その他権利消滅に関する事項登記合理化する。3 共有の登記においては、必ずその持分の登記をする。4 登記済証作成手続を簡易化する。5 土地収用による所有権取得及び所有権以外の権利消滅登記手続を整備する。6 所有権に関する仮登記に基づく本登記手続合理化する。7 用益権に関する登記手続を整備する。8 遅延損害金に関する定めが抵当権登記事項であることを明らかにすると同時に、民法第三百七十五条の規定による抵当権処分登記及び同法第三百九十三条の規定による代位の登記手続を整備する。9所有権登記されていない不動産については、処分制限登記を除くほか、所有権以外の権利に関する登記を認めないものとする。10 所有権保存登記、仮登記及び予告登記抹消手続を整備する。   第三点は、不動産登記法の中に、  虚偽保証書を作成した場合及び登記官吏実地調査を拒み又は妨げた場合の刑事罰を設け、また、同法の中に、不動産表示に関する登記申請義務を懈怠した場合の民事罰を設けることとしたことであります。  第四点は、以上申し上げました不動産登記法改正並びに土地台帳法及び家屋台帳法の廃止に伴い、所要経過規定を設けるとともに、関係法律の整理をすることとしたことであります。   以上がこの法律案の概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに可決されんことを希望いたします。
  5. 大川光三

    委員長大川光三君) ただいま御説明を受けました不動産登記法の一部を改正する等の法律案に対する質疑は、次回に逐条説明を聴取した上でこれを行ないたいと存じます。
  6. 大川光三

    委員長大川光三君) 次に、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案議題に供します。  当局からは律田司法法制調査部長及び守田人事局長出席をされております。御質疑のある方は御発言を願います。
  7. 高田なほ子

    高田なほ子君 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の中で、政府は今度の改正主要点として、第一審の充実強化のために、これらの法案改正をするのだと主張しておるようであります。特に裁判官負担が非常に過重になっている地方裁判所、この訴訟の適正な処理をはかるために改正を見られたようでございますが、現在の負担過重になっているというこの点について若干資料は出ておるわけでありますが、その過重になっている現状というものと、それから今度増員されました五十人が、この過重現状を解消するに足るものであるかどうかという問題が一つ。それから、もう一つは、五十人増したとはいうけれども、反面、簡易裁判所判事人数を一挙に三十人減員しておるようであります。簡易裁判所判事減員というのは、私はこれは問題が残るのではないかという気がするわけでありますが、一方五十人をふやし、一方で三十人を減したというこのことについては、どうも現状と照らし合わせまして、はなはだ納得のいかない点であります。以上の質問の中から、問題になる三つの問題について一応説明していただきたい。
  8. 津田実

    政府委員津田実君) 裁判所におきます事件の輻湊につきましては、ただいま御指摘通りでございまして、従いまして、最も必要でありますることは、裁判官充実するということにあるのでありまするが、御承知の通り裁判官につきましては、相当高度の資格を要しますために一般の判事判事補と、それから簡易裁判所判事と、それぞれ資格は違っておりますけれども、非常に厳格な資格でありまするために、なかなか充員が困難なのが実情でございます。ところが一方、複雑困難性、あるいは難易というようなものを比較いたしますると、これは簡易裁判所事件につきましても、地方裁判所事件につきましても、それなりにやはりいろいろ難易があるわけでありまするけれども、これを審理期間の面から平均して考えますると、通常、一審の地方裁判所事件につきましては、民事につきましては簡易裁判所に比較しまして約三倍、刑事につきましては約二倍強の審理期間を要しているのが実情でございます。従いまして、どちらをまず充実してその審理期間平均化をはかるかということになりますると、結局地方裁判所充実してその審理期間平均化、すなわち審理期間をなるべく減少する方向にもっていくということが筋であろうと考えられるわけです。そういたしますと、現在昭和三十五年一月一日現在におきまして、簡易裁判所判事欠員は四十四名になっている。一方判事欠員は四十名、判事補欠員は二十四名という状況になっておりますので、これらの判事判事補欠員状況と、簡易裁判所判事欠員状況並びに簡易裁判所判事充員状況、それから判事充員状況考えまするときに、かような操作をいたしまして、簡易裁判所判事を三十名減少せしめて判事定員を五十名ふやす、結局この法案を実施することを予定されておりまするところの四月十七日おきましては、判事資格取得者が九十数名あるわけでありまするので、それによって判事を一挙に充員すれば地方裁判所審理期間を減少し、すなわち地方裁判所審理充実し得るという考えのもとにおきまして、かような法案を提出するに至った次第でございます。
  9. 高田なほ子

    高田なほ子君 審理期間平均化し、またそれを短くするために五十名の増員をしたということは、これはよくわかる。しかし、下級裁判所裁判官定員及び現在員という資料を見ますと、簡易裁判所欠員は四十四名、これは地裁高裁等と比べると非常に重い比重を占めた欠員であります。高裁の場合の欠員は十九名、地裁判事は六名、判事補は二名でありますから、これは大体ここで八名、次は家裁の方の判事が十五名、判事補が二十二名、簡易裁判所判事は四十四名の欠員である。こういう最も欠員の多い簡易裁判所人数を三十人も減して、果してその簡易裁判所運営というものは成り立つかどうかという疑問が残る。私は疑問が残る。第一番の強化につきましてはこれは異存はありませんよ。だからといって簡易裁判所にしわ寄せするようなやり方というものは私は納得ができない。今の御説明では、私の、第一審の強化の問題についてはそれでわかります。第三点になる簡易裁判所判事の三十名の減員は、現在のこの欠員の大きさにかんがみて、はたして運営することが困難になりはしないかという、こういう意味を持った質問が私の第三点の質問であった。この質問に答えてもらいたい。
  10. 津田実

    政府委員津田実君) 先ほども申しましたように、簡易裁判所につきましては、御指摘のように、一月一日現在におきまして四十四名の欠員がございます。これにつきましてはむろん充員をすべきでありますが、簡易裁判所判事適格者をなかなか得られないという状況におきまして、欠員を保持せざるを得ないというような、やむを得ない結果になっておるわけであります。ところがこれに対して早急に簡易裁判所判事充実し得る見通しがありやということになりますと、これは主として裁判所の方のお考えによると思いますけれども政府側で見ました場合には、早急に四十四名を充員し得るという見通しは、ほとんどないと言ってもいいと思われるのであります。従いましてそういたしますと、この欠員を抱えたままでおるということは、現実にその裁判官がいないで簡易裁判所運営していかなければならないということになるわけでございます。これは定員の問題でなくして、むしろ実員の問題が問題になるのではないかというふうに考えられる次第でございます。そこにおきまして今度の三十名減の操作をいたすわけでありますが、将来とても簡易裁判所判事充実を期さなければならないということは、これはもう疑いのないところでございます。問題は、充員し得るや否やという見通しとの関連において決すべき問題だというふうに考えておりますので、簡易裁判所判事充員見通しが可能であるという時期に至りますれば、当然この今回減そうといたしまする減員分を回復するのみならず、さらに増員を企画するという必要があることはもとよりでございます。
  11. 高田なほ子

    高田なほ子君 ただいまの説明では、この充員し得るやいなやの見通しというものについて触れておりませんね。そうだとすると、いつこれは充員できるのか、充員するためにはどういう条件が整えられなければならないか。こういう問題は究明されなければならない問題だろうと私は思います。そこで充員するためには、どういう条件を私たちが作るために、国会として努力しなければならないかという課題が私は課せられたような気持がするわけです。どういう条件を一体充足したならば、この現状を打開することができるかという点について、どなたでもいいですが、的確な御答弁のできる方に答弁していただきたい。
  12. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 現在裁判官欠員が相当数あるわけでありまするが、この補充の困難なのは、これは一つ裁判官給与弁護士収入に比して低いということが一つであります。それからもう一つは、簡易裁判所欠員になっているところは非常にへんぴな単独簡裁でございまして、そこに在野法曹から簡易裁判所判事を募りましても、結局任地の関係で、なかなか転補することができない。  もう一つは、これは弁護士事務所事情によるわけだと私は思うのでありますが、いわゆる法曹一元制をとっておりまするアメリカあるいは英国のように、弁護士事務所がいわゆるロー・ファームといいまして、合同事務所組織になっていない。それで弁護士といたしましては、大体個人で営業しておるという状況にあります。従いまして事件を受ける際に、大体は着手金、そうして事件が完結すれば成功報酬をもらうというような行き方で運営されております関係上、事件を持っておられる弁護士さんは裁判官になろうとすれば、やはり今まで受け取った着手金等を返していかなければならないといったような、日本における弁護士事務所のあり方にも関係してくるわけでございます。そういった原因がありまして、なかなか充員が困難になっております。
  13. 高田なほ子

    高田なほ子君 今の問題に対して、この給与が低いということについて、弁護士に比べて云々という御発言があった。これは現状をそのままあなたおっしゃっておられるだろうと思います。私の考え方によれば、やはり憲法に保障されている裁判官優位の原則というものが、打ち立てられることが必要であって、単にその弁護士と比べて低いの高いのということは、これは理屈にならないと思う。まあ理屈ではあるけれども理屈にはちょっと向かない議論じゃないかと思う。だから、要するに憲法に保障された裁判官優位の原則というものをどういうふうにして体系づけていくかということが、私たちの研究しなければならない課題のように考えますけれども、この点について、重ねてあなた、どうお考えになりますか。
  14. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) お説ごもっともでございます。私どもといたしましても、結局裁判官欠員司法修習生修習を終わった人たちから順次採用していくというこの行き万をとる以外には、在野法曹の方から奮起して来ていただくほかに充員方法はないわけであります。従いまして、弁護士さんがこの裁判官に奮起してなろうというためには、やはり現在弁護士をしておられる当時における経済的な面を当然お考えになりますし、この程度の保障ができないと、やはりただ迫義的にだけ奮起を求めるというだけでは、どうしても実現は期し得られないわけであります。そこで弁護士さんの報酬は大体どの程度かというようなことにつきまして、弁護士連合会事務総長を通じましていろいろ聴取などもいたしましたけれども、結局いまだ確定的な資料を用意することができない事情にありまするので、そういった関係で、本格的な報酬法改正の推進をまだいたしていないというのが実情でございます。
  15. 高田なほ子

    高田なほ子君 これは私研究課題ではないかと思うのですよ。弁護士さんの収入というものについては私もよくわかりません。しかし常識的に考えて、生活水準がだんだん高くなれば、それに伴ってやはり弁護士さんの給与もスライドされて……、こうなんですか、自由なんでしょう、弁護士さんの収入というのは何も約束もないのだから。だから生活水準が高くなってくればくるほど、弁護士さんの収入というものも社会現象ですか、経済現象の中にスライドされていくという特質を持っておるものだというふうに私理解する。そうだとすると、弁護士さんの収入というものを対象にして考えると、いつまででも私この問題は解決できないのじゃないかと思う。私、個人的に若い人にどうしてあんた方弁護士さんから簡易裁判所のような方に移らないのと言ったら、どうも空気が窮屈だし、それに給与が低いしねと、こういう率直な返事ですよ。それが率直な返事だとすれば、やはりそれを充足するための制度的な問題というものを考えなければ充足できないのじゃないかという気がする。そんな気が私しますが、これは私の意見ですからお答えいただく必要はありませんが、しからばその欠陥をどういうふうにして今補っていくのだろうか、裁判所法の三十八条では、簡易裁判所事務移転について規定されております。地方裁判所にその事務の一部を移転することができるという条項であります。現状は一体この四十四名の欠員に対してさらに三十名の減員をしたとすれば、この三十八条の条文が適切に生かされるのでなければ、簡易裁判所の適正な運営をはかることができないという結論に到達するだろうと思います。で、ここはどういうふうになっておりますか。三十八条の事務移転についての実情は一体どうなっておりますか。
  16. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 現在未開庁簡易裁判所は韮崎、東淀川、西成、宝塚、奈良、柳生、十津川、鹿野という八カ庁であります。これらの事務はいずれも、もより簡易裁判所で取り扱っております。これらの未開庁はいずれも適当な庁舎の敷地がないとか、あるいは庁舎として使用し得る適当な建物が得られないとかいったような事情、並びに管内の事件数がきわめて少なくて、交通が非常に便利であるために、近くの簡易裁判所で扱った方がいいといったような関係から今未開庁になっておるわけであります。そのほか、すさみと愛知横須賀、この二つは田辺及び半田にそれぞれ事務移転をしておるというのが実情でございます。
  17. 高田なほ子

    高田なほ子君 今来開庁の場合についての説明がありましたが、「特別の事情によりその事務を取り扱うことができないときは、」と、取り扱うことができないときはというのは、もっと拡大されて解釈されるのじゃないですか。たとえば事務が非常に繁忙である場合に、その一部を、または全部をこれを転移することができるという、特別の事情というのは、そういう場合にもこの三十八条というのは適用されて、ここに規定されているのじゃないですか。この法文の解釈はどうなんですか。
  18. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 現在は、たとえば伊勢湾台風で桑名の簡裁が水浸しになってそこでやれない。その場合には四日市の簡易裁判所事務移転をしばらくしたというような、天災地変といったような、そういう場合にのみ適用いたしております。それからそのほか物理的な事由で開庁のできないといったような場合だけでございます。
  19. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうすると、さか立ちするようになっても、忙しくて目が回るようになっても、その事務をこの条文を適用して適正な連打をはかるということはできないのですか。
  20. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 現在はそこまできておりませんので、そういう事例がないのでございますが、簡易裁判所の現在をちょっと申し上げます。  現在簡易裁判所判事の常置というのは、充員されていない裁判所が百二カ庁あります。いずれも独立の裁判所で、これはずっといなかの方にある裁判所でございます。で、平均月間受理件数が二十件ないし二十五件の庁が七庁、十五件ないし二十件の庁が六庁、十ないし士五件の庁が十庁、十件未満の庁か七十九カ庁ぐらいでございます。それでこういった事情でございますので、これらをみんな充員するのが望ましいわけでありますけれども、こういった事件が非常に少ないものですから、それはもより裁判所から転補してまかなっているという、それでまた十分事足りるという状況でありますので、特に専務移転をする必要はないというふうに考えおる次第でございます。
  21. 高田なほ子

    高田なほ子君 まだたくさんあとに質問も残っておりますし、問題も多いのですから、まあこの点、私やめますけれども、三十六条の条文を見ましても、やはり簡易裁判所重要性が裏づけされているような条文に私なっていると思うのですが、今の質疑の中でいろいろの問題点が私ども大へんはっきりしたような気がいたします。委員長、この問題については、さらにあらためて私十分質疑の時間を与えていただいて、この問題に関する限り、ここで保留いたします。  さらに裁判所定員増に関連して、その他の事務関係する定員という問題についても、数々の不審に思われる点が出てきているわけであります。丁吏の問題とかそれから事務雇の問題とか、あるいは事務官の問題、一連のこれは裁判官の第一審強化に必要欠くべからざる条件整備の問題だと私心得ています。きょうはこの問題に触れませんで、次回総括してこれらの問題についてお尋ねをする機会を得たいと思いますから、今指摘した点を、よく資料を整えてお聞かせいただきたい。
  22. 井川伊平

    ○井川伊平君 一点お伺い申しておきますが、定員のワクがありましても実数が足りぬというのは、大体年度を調べてみましても、地方別で、この地方は常に足りないのだといったような地方があるように思いますが、たとえば北海道のごときはその大体の例かと存じますが、今この一部改正をすることによりましてそういうような地方の、現在のように実数が少なくて事件がたくさん残って非常に迷惑しているわけでありますが、こういうような地方はそういうような問題から理解されると、こういうことになるのですか、お見込みはどうですか。
  23. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 今度の改正によりまして、判事五十名増員ということになりますが、この五十名は現在の欠員分四十名と合わせまして合計九十名、これは本年判事補で十年になりまして判事資格取得いたします者が任官するので充当されるわけでありまして。
  24. 井川伊平

    ○井川伊平君 全員……。
  25. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) そうでございます。で、その九十名の人たちはいずれも判事補の職権特例に関する法律によりまして判事の仕事をしておる人たちであります。ですからこの五十名が増員になったからといいまして、すぐに事態が解決するといったようなものにはならないわけであります。ただ、こういう関係で、司法修習生を本年終了いたします者から判事補を採用いたしまして、この判事補が各地に配置されることになりますので、その関係では増強になるわけでございます。
  26. 井川伊平

    ○井川伊平君 大体ある特定の土地判事が行きたくない、いやがるということにつきましては、特殊の事情があるのだと存じますが、そういう事情はなぜ、どこどこの裁判所には判事が行きたがらないのかということについては、具体的に御調査があろうと存じますが、そういう特殊の問題の解決ということは全然度外視しておいても差しつかえないことですか。
  27. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 先ほど北海道の例があげられましたですが、われわれといたしましてもそういった点を十分考慮いたしまして、人事の配置をやっておるわけでございます。北海道の人事は従来はどちらといいますと、あまり恵まれない人たちがよく行っておるような状況でありましたけれども、現在は最も優秀なクラスを旭川、釧路あたりまで配置いたしまして、そしてそこに行ったような人たちは中央に帰してやって、そしてそれぞれの重要なポストにつけるというような方途のもとにここ二、三年やりました結果、北海道に行くということを選ばれたものとしてこのごろはそれほど北海道の充員が困難にならなくなったという現象が起きております。こういったようなやり方で、次は非常に充員の困難な東北管内といったようなところを順次やっていくつもりであります。結局そこへ行きたがらないということは、それはその地方に長くおって、いつ帰れるかわからないというような不安があるものですから行きたがらない。それから生活が、やはりいなかに参りますというと、都会におるとは違いますので、やはりどうしても文化的な生活にあこがれるというような点がありまして、人情上行きたがらないというのはもちろんでありますが、そのほかに学校の問題がありまして、子供を高等学校以上に出している裁判官は、現在の国立大学の入学が非常に困難な状況から、やはりいい学校のある都会におりたがるというような事情がありまして、相当年輩の裁判官を全国的に移動させるということは非常な困難にあることは現在も同様でございます。
  28. 井川伊平

    ○井川伊平君 ここ二、三年北海道へ行きたがる判事さんが多いようなお話でございましたが、私は昨年の暮に釧路の事情等も調べましたが、非常に実際の割当があるけれども判事さんがなくて困っておるような事情も附きまして、特に家庭裁判所等においては、はなはだしいように聞きましたが、そういうような問題はその後解消されているのですか。
  29. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) お指摘の釧路には、昨年度はお指摘のように人員の点では少なかったですけれども、非常に優秀な連中が行っております。本年度は、この四月十七日前後ころを見計らいまして、さらに増強する予定となっております。
  30. 井川伊平

    ○井川伊平君 優秀な方が行っているということは、判事資格のある人は全部優秀な人です。判事のうちの優秀な者と、非優秀な者を区別して、数が少ないけれども優秀な者をやっているんだということでは、満足のいくお答えとは心得られないわけで、実際におきまして私の心配するのは、定員数を割って非常に少ない判事の実数しかいないというところが一定の地区に限られて、それが永年続くというところに非常に私は心配を持つわけです。しかし大体の事情は皆さんの方でおわかりのようでございますから、そういう点に御考慮を賜わっておきたいと存じ上げます。希望です。
  31. 赤松常子

    赤松常子君 ちょっと一、二お尋ねしたいのですけれども、五十名今度増員になりましたのですが、これであれでしょうか、事務量は相当さばけるのでしょうか、また十分の仕事を消化していくにはどういう、まだ欠員が相当あるのではございませんでしょうか。その辺のところをちょっとお聞かせ下さいませんか。
  32. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 現在事件が非常にふえまして、しかもその事件の質が非常に複雑になっておりますので、五十人増加したといいましても、それほど事態の改善に大いに役に立つというほどのことはないと思います。やはり相当の大幅な人員増を必要とするものと考えられますが、先ほども申しましたように、その補充源は一に在野法曹に仰ぐほかはないわけでありまして、しかも在野法曹から裁判官に誘致いたしますためには、先ほど申しましたような種々な隘路がございますので、まずどうしても増員をせざるを得ない部分だけを本年増員をしたというにとどまるのでございます。
  33. 赤松常子

    赤松常子君 十分いえばどの程度増員の必要があるのですか。足りないのはどのくらいですか。
  34. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) どのくらい足りないかというほんとうのことは、正確な調査をする必要がございます。来年この三十五年度におきましては、そういう調査をいたしまして、そうして、裁判官のみならず、その他の職員につきましても、そういう調査をして、正確な資料を出して、増員を要求するつもりでおりますが、三十五年度にあたりましては、大体八大裁判所における必要な数として、大体二百十六名程度考えまして、まず、その一カ年分として、百八名ぐらいを本年三十五年度充員したいという目途のもとに要求をいたしたわけでありますけれども、結局五十名程度に終わったというわけであります。
  35. 赤松常子

    赤松常子君 ちょっと伺いますと、何か計画性が足りないように私感じましたのでございますよ。まだどれくらい処理するのに人が足りないかということは、相当資料があっていいのではないかと思ったのですが、今度その辺のところをお聞かせ下さいませ。今五十名しか増員できなかったというのは、人が足りないのですか、予算の関係からだったのですか。
  36. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) この百八名をふやすことにつきましては、その補充源を弁護士に仰がざるを得ないということは、先ほど申し上げました通りであります。それには弁護士連合会の協力を要するわけであります。そこで、弁護士連合会と種々協議をいたしまして、協力方を仰いだのでありますけれども裁判官報酬等の問題で、これではどうも責任が持てないというような御意見でありましたので、さしあたり五十名増員ということになったわけであります。本格的には来年度に持ち越してやろうということであります。
  37. 赤松常子

    赤松常子君 いろいろ問題のあることはよくわかって参りましたし、ここでもしなければいけない問題があるように思うわけでございます。  もう一つお尋ねしたいのでございますけれども下級裁判所実情を伺いましたのですが、まだときどきございますけれども、おうちに帰って判決文を書いたりなさる方もございまして、そういう下級裁判所の忙しい方の声もちょくちょく聞くのですが、それにもかかわらず、今度三十名減員なさったというのですね、これは、私そういうところをどうも割り切れないのでございます。そういう下級裁判所の方の実際の実情ね、よくわかっているのでございましょうか、どうでしょうか。
  38. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 下級裁判所にはいろいろあるわけでございまして、高等裁判所地方裁判所簡易裁判所に分かれております。先ほど申し上げましたのは簡易裁判所実情でございますが、地方裁判所あたりになりますというと、これは判決文の起案をする、あるいは訴訟、よく開廷日の審理の準備等を、家に帰って、そこで起案ないし準備をしているという実情でございます。これは私どももそういう経験を持っておりますので、十分承知しておりますが、先ほど申しました簡易裁判所事件というものは比較的軽微な事件で、短期間に終わる事件が多いのでありまして、それほどの負担はかけていないというふうに感じます。
  39. 大川光三

    委員長大川光三君) ほかにございませんか。——ほかに御発言がなければ、本件に対する本日の質疑はこの程度にとどめたいと存じます。   —————————————
  40. 大川光三

    委員長大川光三君) 次に、検察及び裁判の運営等に関する調査の一環といたしまして、昭和三十五年度裁判所関係予算並びに法務省関係予算及びこれに関連する諸事項について調査を行ないたいと存じます。御質疑のおありの方は御発言を願います。  なおただいまのところで、政府当局からは竹内刑事局長が出席されております。
  41. 千葉信

    千葉信君 三十五年度の裁判所の予算の関係についてお尋ねをしたいと思うのですが、最高裁関係の方は御出席政府委員は先ほどの守田人事局長以下三人だけですか。
  42. 大川光三

    委員長大川光三君) 最高裁判所からは栗本経理局長が出席されております。ほかに横田事務総長を呼んでおりますが、ただいまのところでは栗本経理局長が出席されております。
  43. 千葉信

    千葉信君 守田人事局長、長井総務局総務課長が御出席になっておりますか。
  44. 大川光三

    委員長大川光三君) 見えております。
  45. 千葉信

    千葉信君 最高裁に対して三十五年度予算の関係で若干の質問を申し上げたいと思います。  質問に入るにあたって申し上げておきたいことは、前回の法務委員会の席上で、最高裁からの予算の関係について説明がありました。そのときに高田委員の方から要求があって、そう説明している内容と同一の説明書を文書をもって至急提出しろという要求があり、最高裁の方としてもこの委員会の席上で了承されたはずであります。ところがいつまでたってもそれが来ないので、今事務局の方に確かめてみたところが、まことに不親切きわまる説明書なるものが送付されておるようであります。これで一応最高裁としては約束通り説明書を出したということを言われるかもしれません。国会の審議にあたりまして、説明されたその内容が重要な審議の対象になります。説明された内容と文書が違うようでは私ども審議上非常に支障を生じます。ですから、今後はこういう不親切な文書ではなく、説明されたその説明を同一内容の文書を出す程度の誠意はぜひ示してもらいたい。この点は委員長からも厳重に最高裁に対して注意を促しておいてもらいたいと思う。その措置をお願いすることにして、早速私は質問に入りますが、この最高裁から出されておるかなり粗末な文書のこれを基本として私は質問せざるを得ませんが、ここに説明書の第四項に、裁判官等の待遇改善という項目がございます。そこには(一)に、裁判官の管理職手当の説明が行なわれて、(二)に書記官と、それから家庭裁判所調査官の俸給の調整に関する説明があり、この(二)によりますと、待遇改善の一環として、俸給の調整を「現行の八パーセントから十六パーセントに増額するための経費として一億九百四十九万九千円がそれぞれ計上されました。」と、待遇改善の経費だとして報告されております。この内容を知らないものは、この説明書によれば、この一億九百万円云々で、さながら八%の俸給の調整号俸が行なわれる、それによって待遇改善されるかのような印象を与えております。私は、この点について、最高裁当局の不誠意を激しく糾弾いたします。これにはもっと説明を要する事項があるはずでございます。単に待遇を改善するために八%の俸給の調整を行なうのだなどという説明ですが、実際上はそうじゃなくて、一方月約三十二時間ないし三十四時間の勤務時間の延長が考えられ、その反対給付として大体十二時間ないし十三時間に匹敵する程度の号俸の調整、俸給の調整じゃありませんか。そういう事実をおおい隠して、なぜ一体こういう説明書を国会に出すのですか。聞かなければ、あなたの方では、説明しないで通す場合もあるかもしれない。それじゃ予算の審議は、一体国会の審議はどうなりますか。まあ初めから激しい口調を使ったようですが、これは少しあなたの方としても当然補足して説明しなければならぬ部分がたくさんここにはあるはずですから、その点をここで一応まず説明を補足して承って、それから質問に入ります。補足することがあるでしょう。
  46. 栗本一夫

    最高裁判所長官代理者(栗本一夫君) 御指摘通り、書記官及び調査官の号俸調整、待遇改善ということに関しましては、これは経理局長としての私の責任でございますが、ただこれは、別段他意があるわけじゃございませんので、結局八%から一六%に増額されたという点においては、待遇改善という面も考えられるという趣旨におきまして、かようなことをここに書きましたわけでございますが、その実質的、今御指摘のような点につきましては、人事局長が今来ておりますので、人事局長から答えてもらうことにいたします。
  47. 千葉信

    千葉信君 人事局長の説明を聞く前に、今あなたは、依然として、八%の増額をしたのだから待遇を改善するのだ、待遇改善という言葉に間違いはないというあなたの説明ですが、そうではないでしょう。待遇改善ということを言えないようなこの調整号俸の内容でしょう。そういういいかげんなことを言うから、私は激しい言葉を使わざるを得ない。取り消しなさい。あなたはその言葉をたとえ経理局の立場から書いたにしても、内容をわかっていながら、待遇改善どころか、全然待遇改悪じゃないですか。それを依然として、金額がふえるのだから待遇改善だとか、俸給の調整をして増額するのだから待遇がよくなる、そんなことを言えない内容でしょう。まず、今の言葉から取り消しなさい。待遇改善などという、そういう言葉を取り消しなさい。あなたは内容を知っているでしょう。
  48. 栗本一夫

    最高裁判所長官代理者(栗本一夫君) 待遇改善という点が、言葉がいけないという御趣旨のようでございますが、そのいろいろな根拠がございますが、ただ簡単に、結局八%から一六%に増額されたという点においては、収入がふえるという点においては、待遇改善ということも考えられないことじゃないと考えましたので、さような言葉を使ったわけであります。
  49. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 私どもといたしましては、目下用意中の裁判所法の一部改正案が近くここに提案されるような時期になりまして、一緒に御審議を仰いだ方がいいと思いますけれども、今簡単に申し上げますと、裁判所書記官の職務をある程度拡充いたしますことは、これは書記官の多年の念願でございまして、その件につきまして、書記官制度調査委員会というものが最高裁判所に設置されておるわけでありますが、その委員会に諮りまして、ある程度拡充するというような答申を得て、拡充することに踏み切ったわけでございますが、その拡充することは、それは時間延長と関係のないことではありますけれども、やはり現在の裁判所における事件の渋滞その他を考えまして、それを十分に発揮し得るためには、ある程度の時間の延長もやむを得ない。その裏づけとして八%の調整というものを考えたわけでございます。なるほど御指摘のように、それは待遇の改善にはならなくて、改悪だとおっしゃる見方の立つことはごもっともでございますが、いわゆる給与の裏づけという意味で、やはりそういう表題にまとめられたものと考えるのであります。
  50. 大川光三

    委員長大川光三君) 千葉委員に御相談でありますが、ただいま御質問の点は、非常に重要な点かと委員長考えます。しかし、今説明になりました通りに、他の法律案とあわせて、そのときに掘り下げた御質問を願った方が適当かと思いますが、そういう意味で、本日は要点だけはお聞き願ってということにしたらどうでしょうか。
  51. 千葉信

    千葉信君 他の法律案の関連、たとえば当委員会に一応付託されました給与に関する法律案等もあるようですがこれは、非公式に委員長にも申し上げましたように、従来法務委員会で審議をしておりました検察官及び裁判官等の給与の問題、報酬の問題等については、その所管する委員会に疑義がありまして、現在委員長の了解を得て、議運の方でその問題を検討中でございます。私どもの主張としては、その法律案は大体において内閣委員会に所管すべきものという見解に立って現在折衝が進められておるわけでございまして、私どもの主張通りになれば、おそらく当委員会ではなく内閣委員会でただいま私が質問中の問題に関連する法律案の審議が行なわれるはずでございます。そこで、最終的には、ただいまお尋ねしている問題も、その内閣委員会の方で審議をするときがあろうかと存じますけれども、しかし問題はかなり差し迫っている問題であります。一方法務委員会としても、給与そのものの問題としては、かりにその法律案が内閣委員会で審議されるということになりましても、最高裁判所関係あるいは法務省関係の予算の一環としては、やはり当委員会で相当重点を置いて審議をしなければならない内容を含んでいる。しかも、単にこれは予算の関係だけではなく、場合によっては最高裁判所全体、裁判全体における、裁判の進行、能率の向上という問題等にも関係を持っている問題ですから、私は、そういう意味で、少なくともそういう裁判事務の進行に影響を持つような問題等については、当委員会でも、予算の問題の一環として審議を必要とするという私見解で今御質問申し上げているわけです。委員長のおっしゃるように、私は、その所管する委員会で十分に審議されることを期待しつつ、なおこの委員会で若干の質問は必要だという見解に立って、今質問を始めているわけですが、一つ御了承願っておきたいと思います。
  52. 大川光三

    委員長大川光三君) 申し上げますが、決してあなたの御質問を制約する意味ではないのでありますが、重要な問題でございますので、委員長みずからも十分研究をして、適当な機会に、また機会を作りますから、後日の委員会で御発言を願うということにして、きょうは最小限度におとどめをいただきたい、かように考えます。
  53. 千葉信

    千葉信君 わかりました。最小限度でやりますから……。続いて最高裁の方にお伺いいたしますが、私は、この問題一つをとらえてみても、最高裁判所関係もしくは地方裁判所を含めて、裁判所の職員の身分関係ないしは給与関係等、同じ国家公務員でありながら、他の公務員と比べてかなり不利益な扱いを受けている部分が非常にたくさん散見されます。そういう点を掘り下げて調べれば調べるほど、その欠陥の大きな前提は、現在の法律の中にあります。国家公務員の関係でははっきり、一般職の職員等に対しては、国家公務員法が制定されて、まあどうにかその利益を保障する立場がとられております。ところが、最高裁の力の関係の職員については、裁判所職員臨時措置法が昭和三十六年に制定された。今でもそのままです。しかも、この臨時措置法たるや、最も根本となるべき国家公務員法を援用しながら、重大な点については全部除外されている。そして全く間に合わせの臨時措置法が今日もずっと継続している。たとえば、その弊害の一つとして取り上げますならば、一般職の職員等の場合には、十分その公平委員会の審議の状況なり、公平委員会の構成の内容等の中にも合理的なものが存在する。ところが、最高裁裁判所関係の職員については、その公平委員会の構成そのものにも第三者的な要素が全然欠除しているような格好で運営が一平然として行われている。こんな一つの例です。特に待遇の興趣等については、私は御質問申し上げたこの八%の調整号俸の問題についても、極端なことをいえば、この脇町措置法から来る法律の不備欠陥を巧みに利用して、職員の待遇を不利に陥れている。しかもそれは、どこの法律にもひっかからない。そんな不利益な扱いをすることがどこの法律にもひっかからないということは、この臨時措置法の不備欠陥に大きな原因がある。そこで、一体最高裁としては、この臨時措置法をいつまでそのまま暫定的な扱いをするつもりなのか。それとも少なくとも一般職の職員なり、あるいは国会の職員なり、他の職員と比して遜色のないような立法をする用意があるのかないか。まず私はそれからお伺いしたい。
  54. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 裁判所の職員につきましては、裁判所法及びただいま御指摘裁判所職員臨時措置法で、国家公務員法その他一般国家公務員法に適用されておりますすべての法律を準用いたしまして、そうして連帯するというふうな方途を現在とっております。御指摘のように、昭和三十六年、いわゆる人事院の統制下にあった裁判所——行事政官庁としての内閣の所轄する人事院のもとに裁判所の職員が統制されていくということは、これは司法権の独立その他につきまして好ましくない。むしろ憲法違反の疑いがあるということから、そういう措置を講じた次第でございまして、法制定以来相当の年月を経過いたしておりますが、国家公務員法と関連の深い裁判所職員のかりに裁判所職員法と申しますか、裁判所職員法を制定するということは、実に大事業でございます。しかも国家公務員法は、そのつどいろいろな点で論議され、改正といったようなことも言われている事情でありますので、今までその改正の動向なんかを見計らうために今日に至っておるようでありますが、もちろん、裁判所職員につきましては、裁判所職員にふさわしい法を制定することが望ましいわけでありまして、その点につきましては、それぞれその関係調査のために外国に調査派遣する等の方法資料を集めつつあるのが現在でございます。現在のところは、以上の程度しか申し上げられません。
  55. 千葉信

    千葉信君 私は、考えとしては、今御答弁があったように、必ずしもこれがりっぱなものではないから、裁判所の職員にふさわしい立法を考えているということについては、この点は私は了承します。しかし、たとえば公務員法の改正の問題等があるから、それを横目でにらんで、その点も考慮の中に加えて今日まで来たということですが、そういう考慮を加えつつ、八年間も今日まで時日を経過して、なお調査中で、立案にも着手していないということは、私は怠慢しごくだと言わなければならない。同時に、今の言葉にもあったように、この臨時措置法から来る裁判所職員の不利益があるとか、あるいは他の公務員に比べて遜色を来たすような待遇や取扱い等については、最高裁としても、十分その救済の方法なり、緩和の方法考えなきゃならなかったはずです。ところが、私の知っている限りでは、ほとんどそういう点についての考慮が払われておらない。しかも、今回の予算の関連する問題として私が今御質問申し上げている問題のごときは、この臨時措置法の不備欠陥をねらって、それを利用して、職員に対する待遇の改善どころか、劣悪な待遇に追い込もうとしている。あなたは、さっき答弁の中ではっきりとおっしゃらずにお茶を濁したけれども、私は、この八%の号俸調整を計画するに至る経過を全部知っております。あなたの方の最初の考え方、大蔵省との折衝それから大蔵省との最終的な妥結。なるほど、あなたの方は、最初は、待遇改善とか、あるいは職務権限の拡充というような問題を考えられたことは、私、承知いたしております。しかし、あなたの方で待遇改善の一環だとして出してきているこの説明書によって見ても、待遇改善ではなくて、具体的に言うなら、この待遇改善の第二項として取り上げている八%の調整号俸というのは、厳密に計算をすると、あなたの方では、書記官とか、あるいは調査官の勤務時間を、一カ月三十二時間以上延ばそうとしている。一週五十二時間というべらぼうなその勤務時間を、これによって規定しようとする。しかも、三十二時間の勤務片岡の延長をしながら、実際上は、八%の調整号俸による待遇改善というのは、時間に直すと、十三時間ぐらいにしか当たらないじゃありませんか。こういう不利益な待遇を、あなた方は平気でやろうとしている。しかも、あなたの方では、その勤務時間の延長という問題を、この臨時措置法の不備欠陥を利用して、たとえば、一般の公務員の場合には、勤務時間の延長等については、人事院の承認を得なきゃならないということに規定されている。あなたの方の場合には、この臨時措置法で、その人事院の承認というその言葉が、最高裁の承認と読みかえられておることを利用して、何らの第三者のこれに対する考慮も加えないで、勤務時間の延長というやり方を平知でやろうとしている。しかし、この臨時措置法の中身なり、あるいは国家公務員法、あるいは公務員に対する一般職の給与法等の関係では、最高裁の承認があれば、最高裁の職員の勤務時間を四十八時間以上延長することができるというふうに理屈はつけることはできるけれども、最高裁みずから労働基準法を破ろうとしておる。これは一体どういうことですか。最高裁では労働基準法なんかは認めないで、そんな、その法律の不備欠陥を利用して、五十二時間などというべらぼうなその勤務時間を強要しようとすることが、正しいと考えておいでですか。一説によると、あなた方は、地方裁判所の職員等に対して、こそこそと本人の承諾書を取ったりする。少なくとも、最高裁としてやるべきものじゃないと思うのです、そんなことは。人に隠れてこそこそと、職員一人々々呼んで、承諾書を取る。あなた方は、全員から承諾書を取れば、これでもう承諾したからいいのだということに持っていこうという考えかもしらんけれども、そんな汚いやり方が許されますか。一体、あなた方は、今でもその方針は変更しないでやろうというお考えなんですか。あなたに聞くのは少し酷かもしれない。これは最高裁の長官を呼んで聞くべき筋かもしらんけれども、きょうは気の毒だけれども、あなたしかいないから、あなたに聞かなくちゃならん。少し気の毒だと思うが、少なくとも問題は重大ですから、かなり性根をすえて、そこで答弁してもらいたい。どうですか。
  56. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) ただいま勤務時間の延長に見合う調整ではないという御指摘がありましたが、まことにその通りでございます。現在裁判所には事件が山積しまして、そして事件も質的に非常に困難になっている。裁判官は、増員が十分できないままに、週六十五、六時間くらいは、判決の起案、あるいは審理、あるいは和解、あるいはその他のことをやっておると思いますが、こういった状況のもとにおきまして、基本的な人権擁護の機能を守り抜こうとするためには、何らかの方法考えざるを得ない。で、そういった関係で、一方におきましては、裁判所書記官は、昭和二十四年に裁判所書記官研修所というものを設立いたしまして、そこでじっくり、一年ないし二年の研修を積みまして、そして初めて裁判所書記官に任用し、あるいは昇任試験はこの養成所卒業程度でいたしまして、順次その素質及び能力を向上させて参ってきたわけでありまして、今書記官をいたしまして、裁判官事務の一部を多少補助させるということは、決して無理のない、しかも書記官の希望するところでございます。で、そういったことから、裁判官の今の執務状況に即応いたしまして、そして一部を補助させ、そうしてこの事態を乗り切ろうというふうに考えたわけでございます。で、もちろん、そういった裁判官の勤務態度からいたしまして、やはり書記官が裁判官事務の一部を補助するとなりますならば、裁判官はとにかく夕方五時ごろまでは開廷、ないしは和解、その他の事務をやっておりますし、書記官はやはりそれに、立ち会いはもちろんのことでありますけれども、さらに補佐をするといったような関係にもなってくるわけであります。で、勤務時間を延長いたしましたのは、これは実はそういった事情に基づくものでございまして、その八%の調整といいますものは、これはその見合いに過ぎないのであります。従いまして、勤務時間の延長に対しまして、八%の調整ということは、これは非常に少ないのでございます。それですから、この程度しかやれないものですから、こういうことをはたして実現していいかどうか、これは書記官の意見を聞いてみなければいけないというわけで、書記官の一番上部に当たります首席書記官を最高裁判所に呼びまして、私からこういう事情を詳しくお話ししまして、そしてよく意見を聞いてもらいたいと言って帰したわけでございます。ですから署名を取れとかいうようなことは絶対にありませんが、いろいろな形でとにかくこういうふうな意向を確かめてもらったわけでございます。そういう過程を経まして、初めて裁判所法の一部改正案を用意いたしたわけでございますので、事情は以上の通りでございます。
  57. 千葉信

    千葉信君 これは守田さん、あなたにはちょっとお気の毒だけれども、あなたがいかに裁判所の予算が足りない、いかに人員が足りない、いかに仕事が多くて苦労しているということをなんぼ述べても、そういう事情はかりにみんなの了解するところであっても、それを処理するために、それにふさわしい人員なり、あるいはその激増する事務処理するために必要な予算等をはっきり計上しないで、そしてあなた自身の口からもはっきり言われるように、まことに少ない調整号俸でお気の瀞だなどということは言いながら、書記官や調査官の勤務時間を延長するということはできないことです。許されないことです、これは。どんな理由があっても、たとえば労働基準法ではっきり三十二条では「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間、一週間について四十八時間を越えて、労働させてはならない。」これは最低限度をきめた労働基準法です。その最低限度をきめた労働者の最低の権利を侵してまで、あなた方はそんな理由でもって勤務時間を延ばすということを正当づけようとしたって、それは法律上も許されないし、不合理もはなはだしいじゃないですか。予算が足りないならば、あなたたち全体の努力で足りなければ、その予算の足りない分は、国会の協力を仰いでその問題を解決する道もありましょう。また、人員の不足という関係裁判官や書記官に対する待遇が悪いからという理由もあれば、それはそれとして解決しなければならない。定員が不足だというならば、それも国会を通じて解決する方法があるのですよ。それをやらないで書記官だとか調査官の犠牲で、あなた方はその仕事を処理しようとする。しかもあなた方の立場は、たとえば労働基準法におけるああいう方の立場も、これを守るという立場をとらなければならない。それを最高裁みずからがそれをくずしていいという理屈は、幾らそこであなたが並べても、その理屈は出てこないのですよ。しかも、最高裁としては五十二時間という勤務時間を考えている。一体日本の国会の中でも、この人口問題の処理の一環としても労働時間の短縮という問題が論議されていることを知らないはずはないと思う。私は世界の大勢なんていうことはここで言わない。しかし、労働時間の短縮という問題が国内でも論議されているこの段階で、四十八時間の今の勤務時間を短縮するなら別です。しかも延ばすといっても労働基準法のワク内で処理するというならば私はわかる。それをワク外にこえて五十二時間というのは一体なんです。しかも、あなた自身も言うように、もし人が足りなくて仕事が十分さばいていけないというならば、そして書記官なり調査官なりに対して勤務時間を延長するなら、なぜ正規の超過勤務手当を払おうとしないのか。しかも二五%ふやさなければならない超過勤務手当を払うことができないというならば、なぜ五十二時間延ばすならば、その五十二時間に匹敵する俸給の調整をやらないのか。三分の一以下の経費でごまかそうとしている、どの点からいったって筋も通らないと思う。あなたの答弁いかんによっては、これは最高裁の長官なり、あるいは横田さんなりに来てもらって答弁してもらわなければならぬだろうし、一つにはこれは法務大臣の責任問題でもあるから、またあなたの答弁によっては、ここへ連中を引っぱり出して聞かなければならぬと思う。あなたの一応今の私の質問に対する答弁を聞いておきたいと思う。
  58. 大川光三

    委員長大川光三君) ちょっと委員長からも関連して伺います。今、千葉委員の御質問の要旨は、非常に裁判所の職員に対する好意ある建設的な意見だと考えます。従ってこの問題は、人事局長だけにこれ以上強く質問するのは無理だと思う。特に事務総長出席をいただきたい。かように委員長考えておりますが、事務総長が見えておりませんので、この点は最高裁全体としてこういう重要な問題については検討をして、そうしてもし当委員会に協力を求めるという事項があれば、ざっくばらんに真意を漏らしてもらいたい。そこで伺いたいのは、最初の予算請求では、実はこういうふうにやったのだけれども、かように大蔵省でしぼられた。その結果、窮余の一策として、ただいま問題になっているような案にしたのだということがあれば、それを率直にこの際説明してもらいたい。そうしてこういう窮屈なワクはどこにあるのだということを明らかに説明をしてもらいたいと思います。
  59. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 勤労者に対する労働時間の短縮という傾向は、一般論としては、その通りになることが願わしい次第であります。私どももその点は十分考える次第でございますが、そうした労働時間の短縮ということは、これは一般としてはそうでありますが、しかし基本的の人権の擁護とか、あるいは治安の確立とかといったようなそういう特殊な任務に従事している者は、それは特殊に考えるべき性格のものではなかろうかというように考えるわけであります。御承知のように裁判所書記官や、あるいは家庭裁判所調査官は、これは裁判官とともに国民の基本的人権の擁護の一翼をになうといってもいいような職員でございまして、事件がたまったら、それでもう時間がきたらそれでいいのだといったようなふうには、そうは考えていけないものじゃなかろうかというふうに考えられるわけであります。刻下のいわゆる裁判事件の渋滞している現況におきましては、こういう特殊の勤務にある職員としては、勤務時間をある程度延長するということもまたやむを得ないのじゃないかというふうに考えるわけであります。勤務時間がある程度恒常的に長くなるということは、例外的な場合に支給するところの超勤手当、そういったような形で解決できないのでありまして、やはり本俸に組み入れて、そうして勤勉手当、期末手当その他の手当の基礎となるようなものにせざるを得ない、それがいわゆる八%の調整でございます。現在デスク・ワークで調整を受けているものはいろいろありますが、やはり書記官や調査官は、今度八%受けますことによって、合計十八%の調整がつくことになるわけでありますが、他のそういった特殊の任務に服する人たちも、やはり一六%の調整ないしそれが織り込まれた特別俸給表の適用を受けている職員でございまして、それらの勤務時間もいずれも五十二時間になっているといったような点を考え合わせまして、これはやむを得ないものと私は考えている次第でございます。
  60. 大川光三

    委員長大川光三君) ちょっと、私自身の質問に対して答えがないようですね。いかがですか。委員長みずから質問に対してお答えにくければいいですが、簡単にあなたの考え方を率直に聞きたい。
  61. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 大蔵省との折衝の事情を話せということでございますが、私どもといたしましては、現在の一六%調整を受けている人と同じような状況で調整をしてほしいということを申し出て、そのままつけてもらったという事情であります。(「おかしいよ」と呼ぶ者あり)
  62. 千葉信

    千葉信君 答弁聞いていると、実に愚劣しごくで、裁判所関係の職員が、合理的な予算も計上されない状態の中で、待遇も悪い、そのため人も足りない、そのために仕事が非常に山積みしている。それに対してやらなければならないのは、あなた方が部下を督励して居残りをさせ、仕事をしろということを、国家はちっともあなた方に要請していない。そういう問題はそういう問題として解決をしなければならぬのです。それはあなたの責任だと私は言わない。それは最高裁の長官なり、もしくは法務大臣なり、もしくは行政当局の首長なりがその問題はその問題として解決の方途を見出す。そうして適正な解決をしなければならぬという立場にある。そっちの方には何らの手も打たないで、今聞けば、裁判所では初めから大蔵省に対してこの程度の要求をしたと、あなたは委員長質問に対して答えた。そうなると、極端な言葉だけれども、ほんとうにその通りなら、私は失敬だけれども、ばかだと思う。しかし、あなた方はそんなばかなことをやっていないはずだ。あなた方は最初大蔵大臣に対して要求したときは、そんな要求じゃなかったはずだ。金額をあなたは隠しておる。しかし、財政上の理由から大蔵省に押えつけられて、あなた方は最初の要求とは見る影もない格好に予算を削られ、そうして、しょうことなしに一切の犠牲を裁判所の職員に押しつけようとしている。特にこの際は、書記官なり調査官にその犠牲をしわ寄せしようとしている。しかも、その調整号俸のやり方も、何回も繰り返しているように、あなた方の方で超過勤務手当でもって支給することになれば、これは他の給与の計算の基礎にならないからという点を取り上げたが、その点は全くあなたの言う通り、その点は全くその通りだが、しかしそれならば、俸給の調整をやるというわけなら、なぜ勤務時間全体に対する合理的な従来の待遇を下回らない調整号俸を考えなかったのか。あなた方自身最初からその数字をその通り計算したのではないはずだ。端的に言って、超過勤務手当で支給することにすれば、少なくともこの一億九百万円の予算の七倍は必要とした。合理的な俸給の調整額の計算からいっても、少なくともこの予算額の三倍は要るはずだ。それを三分の一の予算で三倍の勤務時間を、この調整金額の三倍以上の勤務時間をあなた方は延長しようとしている。しかも、それは労働基準法の違反なんです。最高裁みずから労働基準法の最低限度をくずそうとしている。そんな理不尽なやり方を、たとえあなた方の方の裁判所職員の臨時措置法なり、国家公務員法なり、あるいは一般職の給与法等の抜け穴をねらって、たとえ現在の職員に対する法律の上からいっては、非合法ではないにしても、そんなことは私は百も承知で全部調べてある。それでも労働基準法という、最高裁判所として労働者の最低の権利を保障する立場に立たなければならぬあなた方が、それをくずすということは一体許されていいかどうか。幾ら事務が渋滞しているとか、職員が足りないとか、予算が思う通りに取れないといっても、そんなことを理由として、こんな理不尽なことはできないはずだ。私はあなたの顔を見ながらこの質問をするのは、あなたの立場なり、あなたの地位からいうと、これは言うに忍びない気の毒な気持も持っているけれども、何といっても、あなたはその最高裁判所の人事局長だ。責任者はあなたでなくても、この計画はあなたのところでなされた、あなたの責任重大だと思う。委員長も改めて最高裁の長官なり、横田氏を呼んで本格的にこの問題の糾明をすると言っておられるから、私はこれ以上あなたの顔を見るに忍びないから、これ以上はやらぬけれども、しかし、この計画はあなたたち直ちに変更する必要があります。こんな理不尽なやり方は国会で承認されるはずはないのだから、絶対許さぬのだから、これは与党、野党の別なく、こんな理不尽のやり方は認められないはずだ。こんなばかなことを計画するようで、最高裁の人事局長と言えますか、あなたは。もう一度答弁しなさい。
  63. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 労働基準法にそういう制限があることは、もちろんわかっておりますが、特殊の地位にある職員でありますので、そういう考えをしたわけであります。
  64. 千葉信

    千葉信君 そこに問題がある。そんな答弁じゃ答弁にならぬのだ。特殊な地位、あるいは特殊な仕事という関係で、労働基準法のワクをこえて勤務作間の延長をされている職種があることは、私も知っている。たとえば宿直勤務を要する者、あるいは船舶に乗り込む者、その職務の内容いかんによっては、どうしても四十八時間という動務時間のこの労働基準法のワク内ではできないことについては、労働基準法もその点は認めている。ところが、裁判所の書記官とか、あるいは調査賞なんかは、そういう職種に該当しないのだ。そんなこの場で言い逃れをしようとしても、あなたは、そう簡単には参議院の法務委員会は、あなたのそんなちゃちな答弁では言いのがれはできない。
  65. 大川光三

    委員長大川光三君) ちょっと速記とめて下さい。    〔速記中止〕
  66. 大川光三

    委員長大川光三君) 速記を起こして下さい。
  67. 高田なほ子

    高田なほ子君 議事進行に関してちょっと発言いたしますが、今の千葉議員の質問について、その処理方法については、今委員長から話されましたし、私も同感です。ただ、宿題のような形で、実は三者協定の問題についてありますから、一つこの次おいでになるときには、この趣旨を明快に答弁ができるような形でお願いをしたい。御承知のように、三十一国会で、裁判官報酬等に関する法律、この法律をわれわれが審議する以前に、最高裁判所事務総長横田正俊さん、法務事務次官の馬場義続さん、大蔵事務次官の森永貞一郎さん、この二者が立法機関を無視するがごとき協定をした。この協定については、私ども法務委員会としても、非常に重大視しまして、事前にこのような三者協定をするということによって立法機関を拘束することは、今後してはならないというような意味でのきつい私どもの注文があったはずであります。私はこの三者協定を、今ここで持ち出すつもりはさらさらありませんけれども、お互に拘束してはならないという、その協定の影響を受けると思われるようなものが、今千葉議員の質問の中に出てきております。念のために、ここでちょっと指摘しておきますが、これは昭和二十七年の十二月十六日に、大蔵省の主計局長の河野一之氏から最高裁判所の人事局長鈴木忠一氏にあてての、要請文ですか何ですかわかりませんが、「俸給の特別調整額について」という、こういう覚書みたいなものが手交されております。これは、「今回一般職給与改正案においては、管理又は監督の地位にある職員に対して新たに俸給の特別調整額を支給することとしているが、上記調整額は、従来これらの職員に支給されていた超過勤務手当に代えこれらを支給するものであるから、従来超過勤務手当を法制上文給しないこととなっている裁判官に対しては、超過調整額は支給することができないものとする。以上念のため通知する。」、こういうふうにして、大蔵省から農高裁判所にえらい覚書が出されている。この覚書に対して、今度は最町裁判所の人事局長の鈴木忠一氏から河野一之氏にあてて、これに対する回答が出ている。その回答はここで読み上げませんが、あとで書類を調べていただきたいのですが、その内容は、超過勤務手当を支給しないことにはなっているが、特別調整額というものを出すのであるならば、超過勤務手当の額以内のものならば裁判所としては了承することはできない、それ以上のふくれたものでなければ裁判所としては了承することができないのだと、こういう返事をしておる。これは私は、あくまでもこの裁判官優位の原則を主張した裁判所の主張だと思う。それなのに、三者協定は私は認めないけれども、それなのに、またその態度をくずして、今千葉議員の指摘したような現実が起こってきたということは、私はやはり、この三者協定の当事者、責任のある大蔵省の方にもこの次の機会には来ていただいて、こういう申し合わせというものをしっかりここらで確認しながら、千葉議員の問題点を根本的に一つ理解したいと思っております。これは宿題として私は提出しておきますから、委員長においてしかるべくお取り計らいを願います。
  68. 千葉信

    千葉信君 今新たな問題が提起されましたが、この問題審議のときには、大蔵大臣も当委員会にぜひ出席させるように、委員長の方でお取り計らいを願いたいと思います。
  69. 大川光三

    委員長大川光三君) よく理事会で相談した上で、善処いたします。ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  70. 大川光三

    委員長大川光三君) 速記を起こして下さい。  それでは、引き続いて調査をいたします。ただいま、政府委員としては、関公安調査庁次長説明員として、警察庁倉井第三課長、警察庁曽我参事官、川井公安課長出席されております。なお、竹内刑事局長は、他の委員会のため一時退席されましたが、迫って出席される予定であります。御質疑のある方は、御発言を願います。
  71. 小柳勇

    小柳勇君 質問する前に、この前の高田委員発言によりまして、柏村警察庁官に対して、調査願い、この次には詳しく報告してもらうという高田委員の御発言がありました。そうして、その日は長官は退席されたので、かわって倉井課長が話をされたと、こういう速記録になっております。きょうなぜ長官は出席できないのか、この点を開いておきたいと思います。
  72. 大川光三

    委員長大川光三君) ただいま柏村警察庁長官は他の委員会に出席しておられますが、追って当委員会に出席されるはずでありますから、その意味で、現在の政府委員及び説明員の範囲内でまず質問を続けていただきたいと思います。
  73. 小柳勇

    小柳勇君 法務大臣はどうでしょう。
  74. 大川光三

    委員長大川光三君) 法務大臣も請求しておりますが、さらに請求いたしますが、本日はこの程度で進めて下さい。
  75. 小柳勇

    小柳勇君 それでは、原則的なもの、あるいは私どもが重視しておる問題については、あとで大臣並びに長官の出席を得て質問いたしますが、具体的な問題をこの前の岡田委員の発露に関連いたしまして質問いたしたいと存じます。主として九州大学における強制捜索の事件を中心に、警察権力が学生運動など大衆運動に対して不当介入しておるという前提に立って、当局の意向をただしていきたいと思います。  まず第一は、この前の委員会で、倉井課長説明しておられるこの事実は、事実と相違するように私は考えます。私も事実を調査いたしております。倉井課長は、どこからこのような報告を受けられたか。直接調査されたのかどうか、答弁を願います。
  76. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) 面接はいたしておりませんが、第一線の福岡県警の報告を総会いたしまして御報告申し上げたのであります。
  77. 小柳勇

    小柳勇君 ここの冒頭の方に、倉井課長説明の中で、九学連の書記局代表が来ておった、こういうような報告をなされております。問題は、この九学連の書記局代表がおれば事件が起こらなかったのでありますが、そういうような問題、それから、この報告というものが学内に入らないで外から指揮しておった者の立場から報告がなされておるように私は理解いたします。問題は、学内に県警から大隈次席が中に入っておりますが、その大隈次席と学校当局と学生との間にいろいろな交渉が持たれておる。そのようないきさについては、ほとんど報告はされておらない。従って、このような報告でこの法務委員会というものが済んでいくならば、これが将来行政の運営の基礎になるし、それから、立法の判断の資料になりますから、非常に危険になると思います。もう少し、ここにないものが詳細に御調査になりましたならば、これに加えるものがあれば、報告を願いたいと思います。
  78. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) 概況につきましては、この間御説明した通りでありますが、その報告は、現場にいなかった者だけの報告ではなしに、現場にいた者からも状況を聴取いたしまして、それを総合して報告いたしたというふうに聞いております。従って、こまかい点につきましても、私の方へ参りました報告によりまして答弁できるものにつきましては、御答弁さしていただきたいと思います。
  79. 小柳勇

    小柳勇君 今の私の第一の質問の、九学連書記局代表がおったということをここにかれておりますが、その点どうですか。
  80. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) 私の前回の説明の中にはあるいはなかったと思いますが、私どもが聞きました内容につきましては、捜索のその時期には九字連の代表はいなかった。しかし、名前はわかりませんが、後ほどいろいろ警察側あるいは大学側との折衝過程におきましては、学生代表としていろいろ警察側と話し合っておるということが、報告によりますと、そういうふうになっております。
  81. 小柳勇

    小柳勇君 この速記録をお読みになりましたか、自分のしゃべったあとを。
  82. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) 申しわけありませんが、まだ読んでおりません。
  83. 小柳勇

    小柳勇君 ここにあなたがこの前しゃべっている。「学校側では副田経済学部長が午前六時四十分に来所いたしまして、そして九学連の書記局側は代表が来ましたが、全学連の書記局側は代表が来ないために、しばらく捜索の義手を待つこととしたのであります。」と書いてある。九学連の書記局の代表が来ておったら第一の問題は発生しなかったということですが、その点はどうですか
  84. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) 今の点につきましては、今のお話の通りでありまして、経済学部長が六時四十分に来所したけれども、そのときには、九学連の書記局側は代表が来ないために、しばらく捜索の着手を待つことにした。これは、この間申し上げた通りであります。
  85. 小柳勇

    小柳勇君 それでは、そのときには九学連の学生、書記局側はいなかった、こういう意味ですね。
  86. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) そうであります。
  87. 小柳勇

    小柳勇君 それから第二の問題は、学校側が、午前六時四十分に来ておった。しかも、副田経済学部長が来ておった。このことについて調査したところ、学生側が言うには、こういうことです。この前の日の十一時二十分に学校側に警察側から通知があったはずだ。その当事者である自分たちには何ら通知がないにもかかわらず、学校側には通知が来ておった。だから、経済学部長はすぐ六時四十分に来たのだと報告しておるが、この点どうですか。
  88. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) 私の今までの報告によりますと、経済学部長に対しまして、前日に申し入れといいますか、御連絡を申し上げたということはなくして、学長に対して事前に連絡はした。こういうことに聞いております。
  89. 小柳勇

    小柳勇君 学長に対していつの日の何時に連絡してありますか。
  90. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) 詳細の時間は聞いておりません。
  91. 小柳勇

    小柳勇君 非常にこれは重大なことです。あの学連書記局というものは学内にありますけれども、そこには自治会の役員もおるし、あるいは九大の学生の詳記局もあるし、それから全学連の書記局も、あるいは九州全体の大学の学生の書記局もある。かような管理者、そういう人の管理している部屋です。そういう所を捜索するのに、前の日に学長に連絡があったのに、なせ当事者である管理者に連絡が行かないのか。前の日の時間を正確に調べて、すぐここで発表して下さい。
  92. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) 今、手元で時間がわかりませんので、お許しを得まして、その時間は調査して報告します。
  93. 小柳勇

    小柳勇君 学長には連絡して、なぜ当事者であるその事務局を管理する者に通知しなかったのですか。
  94. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) 学長には前日というふうに聞いておりますが、当日の押収捜索につきましては、学長ではなしに、学長にかわる者、経済学部長に御連絡申し上げて、その立ち会いのもとに押収捜索を実施したということでございまして、なぜそれでは学生側の代表に連絡しなかったかということにつきましては、私どもは、九学連の書記局というものは、その書記局そのものよりも、その場所というものはこれは、私どもは、むずかしいことを言いますが、公務所と言っております。公務所でありますならば、公務所の管理者あるいはその代理の者に連絡すればよろしいというふうに考えておりますので、原則的には学生側の立ち合いを求めませんでしたけれども、当日は、学生側にも関係がある問題でありますので、学校側から学生側にも連絡していただきたいということを申し上げまして、しかも、それにつきまして、前回御説明申し上げたように、約一時間くらい待ったのであります。従って、私どもとしては、法的手続についても間違っていないと思いますし、また、具体的な問題としても、私どもの執行の妥当性といいますか、学生側にも連絡するようにということを言っておりますので、別に行き届いていないというふうに考えておりません。
  95. 小柳勇

    小柳勇君 今、学長に対してこちらから言って、そして全学連、九学連の力にも通知してくれということを頼んだということは事実ですか。
  96. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) その通りであります。
  97. 小柳勇

    小柳勇君 どういうふうな手続でそういう通知をやりましたか。たとえば書類、電話でやったか。それから、こちらの方の通知した者、それからそれを受け取った者、そういうものを詳しく発表して下さい。
  98. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) 前回と重複して申しわけありませんが、当日捜査員は、午前六時三十分に九州大学に到着いたしまして、直ちに守衛室におもむきまして、参りました意味を告げまして、守衛の案内で当直室に至りまして、当直中でありました文部事務官に令状を示して、学校側代表と九学連書記局側代表一名の立ち会いのもとに捜索を実施したい、こういうことを言っておりまして……。
  99. 小柳勇

    小柳勇君 そういうことを質問していない。前の日のことだよ。
  100. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) 前の日でございますか。
  101. 小柳勇

    小柳勇君 前の日です。
  102. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) 田の日は、前にも申し上げましたように、時間その他もわかりませんので、別口に総長に、翌日捜索をするということを事前に連絡をいたしました。これだけしか資料がありません。
  103. 小柳勇

    小柳勇君 その前の日に、学長に対して、警察側は明日捜査するので、これを学連代表にも知らせてくれと、そういうことを今あなたは言ったのだが、それが事実であるならば、それを指名した人、相手、それを受け取った者、それが一番大事なポイントであって、そういうことがあるならば、あのような不祥な事件は発生しなかったと第一に私は考えるから、あとにも問題がたくさんありますが、そういう点をまずはっきりしておきたいと思う。
  104. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) 今のお話で、前日に総長に連絡したときに、学生側にも連絡してもらいたいということは申しておりません。前日はそうじゃなくて、当日の押収捜索の現場におきまして、経済学部長を通じて、学生側にも連絡してくれ、こういうことを言うたのでありまして、前日に学生側にも連絡をしてもらいたいというように言っておらぬように報告を聞いております。
  105. 小柳勇

    小柳勇君 あなたは答弁するとき、速記に残っているから、前の答弁と今の答弁と違うから、それでは幾ら質問してもこの問題の解明にならない。前には、前日学長に連絡するときに、学連代表にもあなたの方から連絡をしてくれと言いましたと、そういうことを今あなたが言ったから、私は質問している。それが、学長にはあなたはそういうことは連絡しなかった。どちらが正しいのですか。はっきりして、明白にして下さい。
  106. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) ただいま答弁した方が正確であります。
  107. 小柳勇

    小柳勇君 そうすると、前の日に学長に連絡してあって、そうしてなぜ管理者である学連の方には連絡しなかったか。翌日は、行ってわざわざ一時間待ったというが、当然それは待たなければならぬと思う。待たなければならぬと思うが、それほどであるならば、学長に連絡するときに、なぜ書記局の当事者である、管理者である学連の方に連絡しなかったか。
  108. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) その詳細は、ただいま申し上げましたように、詳しくは存じておりませんけれども、捜索個所が公務所であるという判断に立ちましたために、学校の管理者は総長でありますので、総長に事前に連絡しておけば、それで十分であるというふうに考えたのだろうと思います。
  109. 小柳勇

    小柳勇君 その前の日に連絡を学長に対してしたと、このことは、そう言われるから、それはどういう方式で連絡したか、いつ連絡したか、そのことをすぐ調査して、後日また質問する機会があろうから、はっきりして下さい。そのことが第一のポイントです。
  110. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちょっと関連して、はっきりしておきたいのですが、前回言われました「九学連の書記局側は代表が来ましたが、全学連の書記局側は代表が来ないために」云々という、これは間違いだという、捜査の際には学生の立ち会いはなかった、こういうことで、それははっきり訂正されたのですね。前回の答弁は不正確でありましたと、こういう点はお認めになりますね。
  111. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) 私は、前回のと今回のと食い違いがないというように考えております。
  112. 吉田法晴

    吉田法晴君 速記録を読んだかと言うと、読んでいない。速記録を読みましょうか。速記録にはっきり、九学連の詳記局側は代表が来ましたが、全学連の書記局側は代表が来ないために云云と、はっきり書いてある。この速記録のとにかく信憑性をあなたは疑うのですか。あるいは委員会の席上で、委員会の速記録について信用ができない、こう言うのですか。
  113. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) 前回の答弁がその通りであるとするならば、今回の答弁の方が正確であると、かように思います。
  114. 吉田法晴

    吉田法晴君 だから、前回の答弁は不正確でありましたと、前回の答弁は訂正いたしますと、はっきり言いなさい。
  115. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) 実は申しわけないのですが、前回のを詳細に検討しておりませんでしたので、そこで詳細に検討いたしまして、どこが食い違っておったということにつきまして、私にはよくわかっておりませんので、そこで、きょう御説明した内容を私の答弁とさせていただきたいと思います。
  116. 吉田法晴

    吉田法晴君 そういう態度は、これは委員会冒涜ですよ。あなたはこの前、国会の法務委員会に出て来て、全学連書記局の代表が来たと、はっきり言っているのです。速記録に書いてあるのを、これを違うと言うのですか。国会を何と心得ているか。僕らは、速記録によって警察側の答弁を知る以外にない。速記録に書いてあるものを、それを違いましたと言うならば、違うなら違うと言いなさい。違う立場をはっきりしなさい。いいかげんにごまかそうといっても、記録にあるのだから、ごまかせませんよ。いいかげんに、とにかく委員会では、あのときはこう、このときはこうと言いくるめられると思っているのですか。これは、基本的な態度を伺っているのです。委員会——国会を言いくるめさえすればいいと思っているのですか。
  117. 大川光三

    委員長大川光三君) ちょっと委員長から吉田委員にお諮りいたします。  ただいまの質疑応答を聞いておりますと、倉井課長の方では、前回の速記録を十分読んでいないようでありますが、ただ、その後調査の結果、本日ここで答弁することが正しいのだと、従って、本日の答弁と食い違う前回の答弁はこれを訂正すると、こういうふうに了承していいかと思いますが、課長、いかがでしょうか。
  118. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) よろしゅうございます。
  119. 吉田法晴

    吉田法晴君 その点はわかりました。基本的なとにかく委員会を言いくるめようという態度はやめてもらいたい。  もう一つ伺いたいのは、前日には、学長に連絡したけれども、学生には連絡する気持はなかった。従って、それは、その解釈が公務所だということですが、しかし、刑訴法百十四条に書いてあります「公務所」というのは、これは学校ではありません。あるいは学園の自治とか、こういうことは、これはあなた御存じかどうか知りませんけれども、実際に制度上確立されている問題です。それからなお、当日は学生の立ち合いを求められた。これは学校側を通じてであろうと思いますが、それは、やはり学生側にも連絡した方がいいということが警察の考え方にあるのですから、これは法の百十三条による「当事者の立合」というような点があることから、強制捜査であるけれども、その強制捜査ができるだけ公正に、いわば民主的に、あとに出て来ます還付その他の異議が申し立てられるように当事者の立会という制度が設けられている。その当事者の立会ができるだけできるようにという考え方が私はあったと思う。従って、全然学生側には連絡しなくてもいいのじゃないかという、こういうことは、あなたの答弁からしても私はあり得るわけはないと思います。それならば、なぜ当事者の立会なしにやられたか。それを一つ承りたい。
  120. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) 約一時間ぐらい書記局代表の来るのを待っておったそうでありますが、その代表が現われて来ないので、いたずらに時間をつぶす。そうすると、その他の多数学生の登校がありますし、そこで、無用のトラブルを引き起してはいけないということで、やむを得ず押収、捜索を開始したというふうに聞いております。
  121. 吉田法晴

    吉田法晴君 実は、まあこういう法の基本精神あるいは行政検察の根本問題を課長に尋ねるのは、いささか酷だと思うのです。警察庁長官がおいでになるということでありますが、まだおいでになりません。審議に支障を来たします。
  122. 大川光三

    委員長大川光三君) 吉田委員に御報告いたします。柏村警察庁長官は約二十五分ほど後に見える予定でありまするから、その間、他の説明員なり、政府委員に御質疑を続行願いたいと思います。  ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  123. 大川光三

    委員長大川光三君) 速記をとつて。
  124. 吉田法晴

    吉田法晴君 倉井課長は公務所というお話ですが、大学の自治ということは御存じであるかどうか。それから当日学生の立会を、これは学部を通じてではありますが、求められたのでありますが、それは当事者の立会ということではないのですか。  それから捜査状に響いてありました名前は、これは宮崎大学の学生、従って学連関係の捜査であったろうと思うのですが、その学連関係の者を立ち会わせようという気持ではなかったのか、その点伺いたい。
  125. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) 第一点の大学の自治の問題でありますけれども、大学の特殊性というものを現地でも考えられまして、そしてやはり事前の連絡なりあるいは事後の押収捜索上のいろいろの問題点につきましても、長時間にわたって、なるべく学生側の了解を得て、そうして円満に執行しようという福岡県警察の態度でありますので、そういう態度につきまして特に福岡県警察のやり方が大学の自治というものを無視したというふうには私ども考えておらないのであります。  それから押収捜索の問題で、学連関係の者ということになっていますが、当日の押収捜索の差し押えるべきものというのは、一線報告によりますと、一月十六日の羽田闘争に関連のある書類ということになっておりますので、そういう立場から押収捜索を実施されたのだと思っております。
  126. 吉田法晴

    吉田法晴君 令状の内容を御存じですか。令状の内容をお示しをいただきたい。
  127. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) 一線からの報告によりますと、令状の内容は、被疑者の名前は、宮崎大学学生の伊達鎮。こういうこと以下第一線からの報告が来ております。
  128. 吉田法晴

    吉田法晴君 それから件名は。
  129. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) 罪名は、住居侵入、「暴力行為等処罰ニ関スル法律」違反。
  130. 吉田法晴

    吉田法晴君 宮崎大学の学生が被疑者になっておるので、九大の学生でないということはわかりますね。捜査をしようというのは学連関係、あるいは特にその中で、学連のものなら何でもとにかく捜査ができるというのじゃなくて、住居侵入云々と書いてありますが、先ほど言われたけれども羽田関係云々と、こういうものに限定をされるという点は、令状の性質からして、あるいは令状の内容からして明らかじゃないのでしょうか。
  131. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) お説の通りだと思います。
  132. 吉田法晴

    吉田法晴君 もう一つ。そうすると、トラブルを起こさないようにというあれはわかりますけれども、学生を立ち会わせよう云々というのは、当事者の立会があったかどうか、これははっきりしませんけれども、そういう精神であったということは明らかじゃないでしょうか。
  133. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) まあなるべくトラブルを避けたい、できるだけ円満な執行をしたいという意図のもとにそういう配慮がとられたわけなんだろうと思います。
  134. 吉田法晴

    吉田法晴君 トラブルを起こさないということも必要でしょうけれども刑事訴訟法が改正になって、新しい刑事訴訟法の中には人権の擁護というのが入っておることは御承知だろうと思います。あなたたちも民主的な警察で、戦前の警察ならば別問題。そうすると、令状を持っていって捜査をするにしても、あるいは日出後はいいが日没後はいかぬ、これも継続している場合は別問題。それから立会人の制度を設けたのは、令状に書いてあれば、学連関係の書類ならば何でもとにかく押収できるというのじゃなくて、非常に限定をして件名とそれからやむを得ざる捜査の必要限度の範囲内、こういうことであることは、私は申し上げるまでもないことと思う。ところが、実際には学生は立会しないで、それから令状に番いてある以外の物も持っていったという事実がございますが、その点はあとで小柳さんから御質問をいただけると思うのですが、学生の立会、法の公正な執行、民主的な運営、それから関係者の中から異議の申し立てもあり、あるいは還付等もあり得ると、文句が言い得ると、こういう余裕を与えるという意味で当事者の立会制度が設けられたということは、これも私は言うまでもないことと思う。その点についてはどういう工合にお考えになりますか。
  135. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) お説の通りだと思います。
  136. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると、前日にあっては、学生の立会を求めなかった、連絡をしなかった。学校側には、これはまあ法の要求するところじゃないが、事前に連絡があった。しかし当日は、学生が、探しに行ったけれどもおらなかったという理由云々だけれども、あるいは待ったという理由を言われておるけれども、学生の立会を、関係者の立会を求めなかったという点は、これは直接法違反であるということは言わなくても、民主的な新刑事訴訟法の精神には欠くるところがあった、こういうことは言えるのじゃないですか。
  137. 倉井潔

    説明員(倉井潔君) これは私先ほど申し上げましたように、法律的には学校の代表者——学長または学長にかわる者でよろしいと思います。ただ、できるだけ民主的といいますか、お話しのような線で、担当の——担当のといいますか、捜索場所の、現に使用しているのは学生ですから、学生の代表も立ち会わせる方がより民主的であるということは言えると思います。ただしかし、これは程度問題でありまして、やはり学校側にも連絡してもらって一時間も待ったと、待って、それ以上待てばより以上の問題が起こるという見通しのもとに実行に着手したということは、やはり私どもとしては警察としてやむを得ない点ではなかったかというふうに考えております。
  138. 吉田法晴

    吉田法晴君 この点はあとで警察庁長官なりあるいは法務省関係の方が来られてからお聞きしたいと思いますが、あともう一点お聞きしたいと思います。トラブルを起こさない云々ということだけで、学生の立会人なしにやるということができるという点は、私は間違いじゃないと思います。公務所の解釈、公務所はおそらく政府機関であるとか、あるいは自治体の機関でありますとか、そういうのを予想していると思いますが、捜査令状から見てみて、この宮崎大学の学生が関連をしている九学連の関係だと、こういうことになりますと、関係者というのは、あるいは当事者というのは、本人は拘束されてもしようがありませんが、それを法律で立会を求めるとすると、それは学長なら学長でよろしいのだということは、にわかには言い得ないと思いますが、その点はまた責任者が来られてから質問をいたします。
  139. 大川光三

    委員長大川光三君) 吉田委員に申し上げます。ただいま竹内刑事局長が出席されましたから、懸案の法律関係は竹内刑事局長に御質問の点があればこの際していただきたいと思います。
  140. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは刑事局長、初めの質問をお聞きになっておりませんでしたが、問題の点は、九大のこれは九学連の事務所と目して捜査をした。ところがそこには、その場所は九学連の関係だけでなしに、あるいは学連の関係だけでなしに九大自身の事務所も兼ねておった。令状は御承知だろうと思います。被疑者は宮崎大学の学生、それから関係事件は羽田事件ということで住居侵入云々と、つながりは羽田事件関係している。ところが、学生の立ち会いはなしにあとから来たということになっている。ところが、その捜査のときにはこれは学生は立ち会っておりません。これは先ほど警察庁の方で認めた通りであります。そうすると警察の方では公務所だと考えるから、学長なり学長にかわる者の立会があればよろしいのだ、刑事訴訟法百十四条に基づいてやったのだという、こういう解釈でありますが、学園の自治ということもあり、百十三条の当事者の立会という制度の設けられた精神から言うならば、これは何でも捜査してよろしい、昔のように令状さえあれば、そこの場所をたなの上からどこもかしこも捜査してよろしいということにはならぬと思うし、それから事件関係のない書類ということが明らかになれば、それを押収するということは、令状の公正な執行とは言えぬのじゃないか、当日は立会を求めようとされた。しかし一時間ほど待ったけれども来ないから、トラブルが起こらぬうちに、学生が来ないうちに捜査された。ところがその説明の中には、やはり学生にも連絡したから、学生に来てもらいたいということですし、現地は九学連なりあるいは九大の自治会、事件関係のない事務所、事件関係のない書類もある。そうすると九学連関係の立合人を立ち会わせて、関係者を立ち会わせて捜査するのが当然じゃないか。あるいは九学連、宮崎の羽田事件関係のない書類を持って行くというのは、これは法の公正な執行じゃないのじゃないかと、こういう点をお尋ねしておりますが、公務所というものについての解釈、それから当事者の立会という百十三条の規定の精神、そういう点からいって学生の立会がなかった、それから令状に記載しておる以外の書類を持って行ったということは、これは行き過ぎではないか、こういう点はいかがですか。
  141. 竹内寿平

    政府委員(竹内寿平君) 警察側からの御答弁を聞いておりませんのでございますが、私どもが現地の警察庁から報告を受けているところによりますと、この捜索令状に書いてあります九学連書記局というものでございますが、この書記局は、国立九州大学の構内にありますところの同大学の、学長の管理にかかる法文系ビルの地階の一室にあるということでございます。で、これは学生が事実上一時的に控室として使っていたものの由であります。従って、その室は、法律上は先ほどおあげになりました刑事訴訟法第百十四条第一項にいうところの「公務所内で」という、その公務所と認められると解するのであります。これを捜索するにあたりましては、第一項に規定してあります通り、「その長又はこれに代るべき者に通知してその処分に立ち合わせなければならない。」こうございます。従って、学長またはこれにかわるべき者の立ち会いがありますならば、これは適法なる執行ということになるわけでございますが、問題は、さらにこの関係の学生を、書記局に関連を持っております学生の立ち会いまでも要するかどうかという点は、これは違法、適法の問題ではなくて、相当であったかどうかという問題だと思うのでございます。この捜索というのは、割合に厳重な手続でございまして、その二つ前の条文の百十二条をごらんになりますとわかりますのですが、「差押状又は捜索状の執行中は、何人に対しても、許可を得ないでその場所に出入することを禁止することができる。」というような規定もあるのでございまして、法律の求めております最小限度の要件としましては、今申しましたような長またはそれにかわるべき者に通知をし、その処分に立ち会わせるということは、法律上要請されたことでございますが、それ以外のことは、その場の状況あるいはその他によりまして、執行官の判断になると思いますが、場合によっては、何人もそこへ立ち入ることを禁止することができるような厳格な手続になっているのでございますが、これまた私どもが伺っているところによりますと、その衝に当たりました警察職員は、長に連絡し、その長の指定する経済学部長ですかの立ち会いを得たほかに、さらに関係の学生についても立ち会いを求めるのが相当であるという判断をされて、それに通知をいたしたのでありましたけれども、(「通知はしてない」と呼ぶ者あり)出てこなかったというように聞いております。もしそうだといたしますならば、その措置は、百十二条の規定との関連においてこれは警察官がそう判断したのでございまして、その判断が相当であるとするならば、そういう措置をとったということは、相当な行為ではないかというふうに私は考えております。
  142. 吉田法晴

    吉田法晴君 あの百十二条だけあげられて、非常に厳重なものだと、あるいは第三者の許可も立入禁止もすることができると、まあこういう非常な厳格な解釈、国家権力の行使はどういう妨害を排除してもやり得るのだ、こういういわば昔の刑事訴訟法の解釈のような御意見と私は解するのですが、というのは、公務所——百十四条にいう公務所というのは、一番いいのは政府機関、そうしてそこで捜査をする場所についても、あるいは書類その他についても公文書その他です。そうすると、課長だとか部長だとかいう者がいなくても、その長あるいはそれにかわる者に通知すればそれでよろしい、こういうことになるでしょう。ところが、実際には、それは名儀上はなるほど学長の所管ということになるでしょう。しかし、それは財産上の帳簿が学長のところにあるというだけの話であって、実際はその建物全体は、これは学部長の管理、そういう意味で、まあ学部長が行った。しかしその部屋は、九学連なりあるいは九大の自治会に貸与されている品物、被疑者は宮崎大学の学生、で、その建物全体を、あるいは部屋全体をとにかく捜査し得るというのじゃなくて、伊達何がしの羽田事件に関連をする関係だけを捜査するというのがこれは強制力の及び得る範囲でしょう。そうすると、その建物が学園の自治ということもあります。それから令状の公正なる執行という点からいっても、非常に限定をされて、九学連というか、あるいは羽田事件に関件のある事項、あるいは書類、あるいは部分だけを捜査できるというのが私は法の建前じゃなかろうかと思うのです。そうでなければ強制力の乱用になります。国家権力の乱用になります。それが私は新刑事訴訟法の精神だと思う。それからもう一つ、当事者の立会が、あなたは百十三条を全然お読みになりませんでしたけれども、それはなるほど「できる」と書いてある。「できる」とは書いてあるけれども、あとの押収物の還付あるいは仮還付等からいうならば、立ち会いが、民主的に昔のように行き過ぎがないように運営すべきである、強制力はきわめて厳格にこの条件をきめてその範囲で行なえ、こういうことを考えると、当事者の立会はできるだけこれは求めるのが当然、当事者が身体拘束を受けておればそれにかわるもの云々と、この場合には九学連なら九学連の関係者に立ち会いを求められるのは私は当然だと思うのです。全然とにかく当事者の立会を求める気がなかったかというと、やっぱり当日探すのは探した、こういうのですが、そうすると、百十三条の精神というものはやっぱりあったと見なければならない。それなら、なぜ前日学長には連絡をされたけれども、前日学生に連絡しなかったか。あるいは学生に連絡したけれども、それは連絡がつかないというのは、これは口実ですよ。実際にはしばらく待ったけれども、来ないからというようなことでそのまま執行した、こういうことだと思う。その結果は、九学連に関係のない書類まで持っていった、あるいは事件関係のない書類まで持っていった、こういうことになる。それは立会人がなかった、こういうことから来る私は結果だと思うのです。刑事訴訟法の全般的な精神からいうならば、関係者の立会を求めなかったということには、私はやっぱり欠陥があるのではないか、法の精神からすれば、これははずれるところがあるのじゃないか、あるいは件名以上のものを持っていったのは間違いじゃないか、こういう工合に考えるのですが、どうですか。
  143. 大川光三

    委員長大川光三君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  144. 大川光三

    委員長大川光三君) 速記をつけて。
  145. 竹内寿平

    政府委員(竹内寿平君) ただいま御質疑の部分について、私も同感の意を表する部分が非常にたくさんあるわけでございます。ただ、その中で一つ私の意見の違いますところは、事実関係をつまびらかにしておらないのでございますけれども、学部長には前の日に伝えたが、学生に前の日に伝えないのは法の精神に反する扱いではないかという御意見があったように伺ったのでございますが、犯罪の捜査をいたします場合に、事前にあなたのところへ捜索に行きますというようなことは伝えないのが常例でございまして、その点は私は見解が違うわけでございます。しかし、先ほども申しましたように、警察のとられました措置は、私の聞いておる限りにおきましては違法でないことはもちろん、ただいま幾つかおあげになりました刑事訴訟法の各条文に照らしましても相当な態度であったというふうに私は考えておるのでございます。
  146. 吉田法晴

    吉田法晴君 警察庁長官おいでになりましたから同じことを伺いますけれども、問題は、まあ警察の行動に主として関連をしておりますので、あなたにお尋ねしたいわけですが、九大の法文系事務室の地下室、それを九学連も使っておる。それから机その他は多少違っておると思いますけれども、九大自身の学生自治会の事務所にも使っておる。これは私が説明するまでもありませんで、九学連というのは九州全部の大学の連合体だと思うんです。令状に書いてありました被疑者は宮崎大学の学生、九大の学生ではない。九大の学生ならば、あるいは九大の自治会の机の場所も捜索するということも、あるいはあり得るかと思うんです。九大には全然関係がない。学生の身分は宮崎大学である。それを九大——これを九学連だけでなくて、九州大自身の自治会の机の場所あるいは書類の場所等も捜索をし、それから事件関係のない書類も持って行っているということははっきりしている。これは押収目録を見ればはっきりしている。それは公務所ということで、学長の立会なりあるいは学生にかわる者の、これは経済学部長ですね、その立会だけで捜索をされておりますが、学生の立会はなかった。そこにやっぱり問題が起こってくる原因があったのだと思うのですが、そういう政府機関あるいは百十四条に書いてあります公務所のさすところそのものでないようなところについて捜索をする場合には、関係者当事者の立会というものが必要ではないか。立会がなかったからそういう間違いが起こったのだと、まあ思うわけですが、今刑事局長は前日に連絡するのは云々——まあ学生に連絡するのは証拠隠滅のおそれがあるから連絡いたしませんと、こういう話でしたが、それならなぜ前日に学長に連絡をされたか、こういうことも起こってくるわけですが、実際にはどうも警察と学長と、学長側と1学長そのものであるかどうかわかりませんけれども、打ち合わせをして捜査をなされた形跡がございます。ございますが、前日になぜ連絡しなかったかということではなくして、学生の九学連関係の立会をどうして求めなかったか、それは法の精神から言えば、百十三条等の精神から言えば、これは間違いではないか、こういうことをお尋ねしておるわけであります。
  147. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 九学連の捜索についての御質問でございますが、まず第一の学長に前日連絡をして、学校とまあ協同的に捜索をしたのではないかというような点につきましては、まあ必要はもちろんないことでございますけれども、学園というものにいきなり入って行っていろいろトラブルを起こす。あるいはまた学園の自治も私は犯罪捜査についてまで治外法権的なものがあるとは考えておりませんけれども、とかくの紛議を起こすことを避けるために、学長に対して事前に連絡を念のためにしておったというだけであって学校当局と捜索について協力関係にあったというようなことは毛頭ないと存じます。また当日学生を立ち会わせなかったということにつきましても、たしか私聞いているのでは、一時間ほど学生の来るのを待っておったがなおかつ見えなかったということで、やむを得ず学生の立ち会いなしに捜索をしたというふうに聞いているわけででございまして、あのときのいろいろ状況としてはやむを得ないことではないかというふうに思います。  また、部屋につきましても、同じ部屋に一体的に存在しているところでございますので、その部屋について捜索をするということ、これはまた捜索をする人間としては当然の処置ではなかったかと思うわけでございます。  また、その押収いたしました書類でございますが、これも羽田事件関係ありと認定してこれを持って参ったということでございまして、全然関係のないものというふうには聞いていない次第でございます。
  148. 吉田法晴

    吉田法晴君 あの百十三条の当事者の立会の制度が設けられたり、あるいは百二十三条で還付の制度が設けられているのは、先ほど刑事局長には申しましたけれども、それは強制捜査を何でもやってよろしい、どこでもやってよろしいのだという昔のやり方を直すために当覇者を立ち会わせ、あるいはそれは事件関係ないのではないか、こういうことで、いわば抗議を言う機会を与える、こういう意味で私は設けられていると思うんですが、その点はどういう工合にお考えになりますか。それからもう一つ、今関係のない書類を持って行っておらぬ、こういうお話ですけれども、捜査目録、押収目録を見られればわかると思うんですが、安保反対の署名運動を、これは九学通のじゃなくて、九州大学の学生自治会がやった、そういう署名簿まで押収をしている、そういう押収目録を言ってもらいたいが、そういう直接事件関係のない書類が押収されているということも妥当な捜査であった、あるいは押収であった、こういう工合にやっぱり抗弁されるのですか。二点について刑事局長と警察庁長官にお伺いしたい。
  149. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 立ち会わせるということにつきましては、先ほど申し上げましたように、学校当局者の立ち会いは得ているわけでございますし、それからまた学生につきましても、できるだけそういう措置をとりたいということであったが、それが不可能であったということでございまして、尽すべき手は尽しておったのではないかというふうに考えるわけでございます。  また書類の点につきましては、どうも幾たびも申し上げましたように、捜索官としましては、関係ある書類として認定してこれを持って参つたということに理解しているわけでございます。
  150. 吉田法晴

    吉田法晴君 百十三条にいう当時者というのは、この場合はだれですか。それからその押収目録の中で、署名簿等を私申し上げているんですが、押収目録をそこであげていただいて、押収目録の中の署名簿等が羽田事件関係のある書類であると認定をされるとするならば、その根拠をお示し願いたい。
  151. 竹内寿平

    政府委員(竹内寿平君) はなはだ失礼でございますが、今御質疑の趣旨がよくわかりかねたのでございますが、恐縮でございますが、もう一度お示しを願いたいと思います。
  152. 吉田法晴

    吉田法晴君 第一点は、刑事訴訟法百十三条にいう当事者というのは、この場合だれをさすと考えられるか、それが第一点。  それから、押収目録をここで御披露を願いたいと思うのですが、その押収目録の中に、安保反対の署名運動を福岡市内その他でやった。その安保反対の署名簿が捜査令状に書かれております、伊達鎮君の羽田事件関係があるといわれるのだから、関係があるというなら、どういう理由で関係があると認定されるのか、それを承りたい。
  153. 竹内寿平

    政府委員(竹内寿平君) よくわかりました。第一の御質疑につきまして、私からお答え申し上げます。  刑事訴訟法第百十三条でございますが、当事者という言葉がありましたけれども、第一項には、「検察官、被告人又は弁護人」、こうありまして、まあこれをさして当事者というのかと思いますが、この百十三条の規定は、これは裁判所がなす場合の規定としてここへ書かれておりまして、これらの規定は捜査の場合に準用されることになっておりますが、この百十三条だけは、捜査には準用されていないのでございます。この点、御了解をいただきたいと思います。
  154. 吉田法晴

    吉田法晴君 第二点は。
  155. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) この書類につきましては、総合的に判断して、関係ありと思量したということでございまして、現にこれらの書類は、検察庁においても、その必要ありとして還付していないものでございまして、警察も検察庁も関係ありと認定をしておる書類でございます。
  156. 吉田法晴

    吉田法晴君 関係あるかないかは、最終的には裁判所が判断をするわけですが、国家権力がやることならば何でもやってよろしい、こういうことではないはずです。これは、先ほど刑事局長お認めになりました。そうすると、これは捜査令状ですから、警察官がその衝に当たられるとしても、令状それ自身は、令状の根拠になりましたのは刑事訴訟法、刑事訴訟法の中の百十三条が準用になっておらぬというか、あるいは適用になっておらぬと、こういうようなお話ですけれども、私はそうではないと思うのです。そういうことはないと思うのですが、最後の一これはまあ時間もございませんから、争いになりますから、ここで十分審議をするのはまたの機会にするとしても、法の精神からいって、事件関係のないものを押収してよろしいかどうか、こういう点は、最終的には裁判所が判断をいたしましょうが、これは、法の精神に従うと、当事者も、これはあるいは代理人も文句を言われて、国民が強制執行を受ける、国民がその執行について民主的な意見が述べられ、法の執行が公正になされるために設けられたものだと思うのです。百十三条にしても、あるいは還付の問題にしても、それを全然入れる余地のないよう立ち合いも認めない、あるいはあとで問題になりますが、それは裁判には関係がないじゃないか、返してもらいたいというときに、警察はこれに対して一顧のあれも与えなかった、そういう点が法の精神に違反があるんじゃないかということを申し上げておるわけでございますが、検察庁が関係ありと認めておる。それは、検察庁は警察の行為を是認するといいますか、そういう立場にありますから、それはそうでしょう。それはそうでしょうけれども、その前段で、事件には関係がないじゃないかということを言うた。ところが、全然それを考慮に入れないで、あるいはそういう抗議をいれる余地を全然なからしめたのは、法の精神に非常に違反するんじゃないかと、こういうことを申し上げたわけです。従って、もしそうでないと言うならば、署名簿等について、ただ検察庁が認めておる云々ということでなく、警察としてそれはどういう関係事件関係があったと認められたか。それをお述べにならないと、それは現場でのとにかく争いを国会に持ち込んだということになりますけれども、法の運営として重大な問題です。いかがですか。重ねて御答弁を願いたい。
  157. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 捜索に当たって関係のない書類を押収するというようなことは、もちろんあるべからざることでありまして、そういう点についてできるだけ慎重を期するということはお話しの通りと、私も理解しておるわけでございます。ただ、この書類につきましては、警察でも検討をいたしまして、関係ありと認定をして持ってきておる事情でございますので、何も検察庁が返さないからということを私はうしろだてにするつもりで申したわけではございません。警察の見解として、そういう判断を下して持ってきたというふうに考えておるわけでございます。
  158. 吉田法晴

    吉田法晴君 その宮崎大学の伊達鎮君の羽田事件関係がありという書類、証拠ということで捜査をしたのに、伊達君には全然関係のない、九州大学自身の学生自治会の書類を押収捜査したわけですが、それはどういう関係があると認定をされたのですか。
  159. 大川光三

    委員長大川光三君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  160. 大川光三

    委員長大川光三君) 速記を始めて。
  161. 吉田法晴

    吉田法晴君 もう一ぺん繰り返しますけれども、伊達君あるいは伊達君の羽田事件という特定の事件に関連をして捜査された。これは、まあ私はそこまで文句は言っておるわけじゃない。ところが、九州大学それ自身の九学連全体には全然関係ない、伊津料にも伊達君の羽田事件にも関係のない場所を索捜し、あるいは書類を押収をするというのは、それは令状の執行としては行き過ぎではないか。これは明らかでしょう、その主張は。で、具体的に九学連に関係がない書類を捜査して、それが関係があるというならば、どういう認定をされたのか。場所は九学連の場所じゃない。九州大学それ自身の場所、部屋も同じです。これは場所が違う。九学連の事務所と同じ部屋でしても、九学連関係の机、書類、それから九州大学自身の机、書類と、これは違います。組織が違います。書類も違います。九州大学の学生自身が街頭署名をやって、そして署名を持ってきた。それがこの事件関係があるというなら、あるというとにかく認定をされなければならない。どういう認定をその場合されたか。関係あるという認定をどうしてされたか。それは、個々の場合に学生も抗議をし、繰り返して言うが、まああなたの方から言うと、極端な言葉だろうけれども、法の執行の点から言うと、行き過ぎの捜査については、これはそれをセーブする権限が認められている。憲法なりあるいは刑事訴訟法にしても、法律を守る権限が与えられている。それが民主主義なんです。どうですか、それは。
  162. 竹内寿平

    政府委員(竹内寿平君) 長官からもお答えがあるかもしれませんが、私の考え方を申し上げますと、この差し押え令状には、羽田闘争に関係のある書類を押収するということが記載になっておるようでございます。で、場所の違い、九学連の事務所にその関係ある書類が存在するかどうかということのつながりは、羽田の事件に九州の学生も、九学連に所属する学生も参加しておるという事実によって、場所は隔たっておりましても、関係のあるであろうということは推測がつくわけでございます。それから、その事務所が九学連、九州大学の校内であるということになりますと、その場所を選ぶことも関係のある場所である。そして許可を受けております令状では、闘争に関係のある書類ということでございますから、その関係の書類と判断をいたします限りは、押収すべき義務があるわけでございます。しかしながら、これはもちろん証拠として、証拠になるであろうということを前提として押収するものでございますから、もしも捜査の進展によりましてその書類が不要になって参りますならば、この刑事訴訟法の第百二十三条、先ほどおあげになりました、留置の必要のないものは終結を待たないで返す、この規定は捜査にも準用されております。従って、委員長も先ほどお話のように、関係ないじゃないかということで、返してもらうというようなこともあり得るわけでございまして、そういうふうに処理する、これが刑事訴訟法を貫いておる立法の、人権の受忍の義務と捜査の必要という、この二つを調和した点がこの規定に現われているわけでございます。  それからなお、もう一つついでに申し上げますと、当事者という言葉で先ほどお答えしたのでございますが、この刑事訴訟法の二百二十二条に、この準用規定が掲げてあるわけでございますが、この百十三条の当事者が立ち会うという規定は、捜査については準用されておらないわけでございます。その趣旨は、やはり捜査の必要上そういう規定が準用されておらないのでございまして、これまた法の精神でございますが、警察当局は、なおそれでも立ち合う機会を与えようということでやったのでございまして、その点は、ただいまの御質疑のような趣旨に私ども考え、むしろ法律の精神からすれば、立ち会わせ、この規定の準用の規定のないその精神までもここに持ち込んでおるというふうに私は理解しておるわけでございます。
  163. 吉田法晴

    吉田法晴君 刑事局長の答弁、大体了承をいたしますが、しかし、件には、九大の学生も被疑者として検挙されておるから、そこで、九大の自治会の事務所も捜査することができるのだ。こういう御答弁は、これは刑事局長の答弁しは思えませんね。  それで、この前高田委員から御質疑がありました問題、取り上げられました、学連あるいは学生の自治団体全部を引っくるめて調査をしようという意味で、事件関係のない学連の書類も押収、捜査をする。こういうふうな、それはわかるけれども、少なくとも外事訴訟法の精神からすれば、捜査令状に書いてあることしかできないというのが捜査令状なり刑事訴訟法の精神だと思う。捜査令状に書いてない、九大の学生を事件に関連をして捜査をするなんということが認められますか。そんなばかな話はないですよ。これは刑事局長のとにかく答弁とは思われません。どうですか。
  164. 竹内寿平

    政府委員(竹内寿平君) 羽田事件関係のある書類ということでございまして、先ほどお述べになった伊達君でございますか、その人と関係のある書類というんじゃないわけですね。従いまして、今のように私お答え申し上げたのであります。
  165. 吉田法晴

    吉田法晴君 刑事局長にとにかく次のことを承るわけですが、たとえば、伊達何がしの被告の名前だけ書いてあって捜査令状が来たら、これが一応九大なら九大としては断わるべき建前にあると思う。九大の学生じゃないのだから、宮崎大学の学生だ。ただ、その羽田事件で、九州大学の一部に九学連、九学連の中には宮崎大学の学生も入っておるから、そこで、この九学連に関係のある部分としての捜査というなら、これはわかる。しかし、九学連に関係のない、あるいは被告にも関係のない、九州大学自身の学生自治会なら、学生自治会に関する場所と、管理をしておる場所と、それから書類を押収するということが、今の刑事訴訟法のもとでできますか。被告は伊達何がしと書いてある。その伊達何がしの羽田事件、こういう工合に特定をしておる。その特定の事件に関連して捜査をするのがあたりまえじゃないですか。
  166. 竹内寿平

    政府委員(竹内寿平君) 十分御理解をいただくように御説明がいたしかねるかもしれませんが、犯罪事実として掲げてありますのは、この事実に基づいてある場所を捜査するわけでございます。その捜索する場合は、その犯罪事実に関係しておる被疑者とその場所との間に何らかの関係がなければならぬというものではなくて、押収するものと犯罪事実との間に何らかの関係がなければならぬ。こういう意味でございます。
  167. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると、令状に書いてある、伊達何がしと関係がないことでも、羽田事件関係のあるものなら何でも捜査ができると、こういう御答弁ですね。そうすると、これは伊達何がしという被疑者の要件に関する羽田事件に関する捜査令状というものを持っていけば、どこでも全部捜査ができる、東大でも捜査ができる、あるいは京大でもできる、あるいは阪大でもできる、こういうものですか。
  168. 竹内寿平

    政府委員(竹内寿平君) 伊達君を含む犯罪事実につきまして、それとの関係のある書類でございますならば、場所のいかんを問わないわけでございます。従いまして、お説のようにその事件関係のある書類として、それが東大の構内にあるということならば、東大について押収捜索をすることは、これはあり得るわけでございます。それは場所との関係ではなくて、犯罪事実と、その場所にあるものとの関係について言うわけでございます。
  169. 大川光三

    委員長大川光三君) ちょっと委員長から関連して刑事局長に伺いますが、刑事訴訟法百二条の第二に「被告人以外の者の身体、物又は住居その他の場所については、押収すべき物の存在を認めるに足りる状況のある場合に限り、捜索することができる。」、この条項がただいま御答弁になっておるのに引用されておるのでしょうか。
  170. 竹内寿平

    政府委員(竹内寿平君) ただいまおあげになりました百二条は、捜索の一般原則をここに善いてあるわけでございますが、まあわかりやすく申せば、犯罪事実を掲げて、その犯罪事実に関連のある証拠物を捜索、押収したいということを裁判所から可を受けますならば、その許可に基づいて捜索できるということを申しておるわけであって、場所のいかん、場所が関連がなければいかぬというものではないという趣旨をお答えしておったわけでございます。
  171. 大川光三

    委員長大川光三君) ちょっと速記とめて。    〔速記中止〕
  172. 大川光三

    委員長大川光三君) 速記をつけて。
  173. 小柳勇

    小柳勇君 私はこの法の違法の問題は吉田委員と同じ立場ですが、警察行政のあり方について柏村長官に一、二点質問しておきたいと思います。この問題をわれわれ今ここで追及しておるのは、そうやって立ち会いをまず一応しなかったので、押収品と目録とを対照したいという学生団体の願い、それがいれられなかったために、十八時間も警官隊と学生が対立したという点が一つです。それからもう一つは、最後の場面で、一番前線にあった大隈次席と学生側と学校当局の間に妥協点がなり立とうとした。学校でも警察でも、第三者の場所で照合しましょうということで、話がまとまりかかったときに、県警本部から指令が来て、すぐ引き上げろ、こういうことで強行突破したという点。それから第三点は、もう午後の九時ごろになりまして、警官隊を三百名導入してきて、そうしてこれで直ちに実力行使に入る、あるいは五分待つとか、十分待つとか、そういうふうな警察力、いわゆる機動力、あるいはそういう集団的な警察力によって圧力をかけながら、内部における交渉を混乱に陥れた。この三点がこの問題の一番紛糾しておる原因であろうと思うのです。そのどれを見ましても、第一のこの照合の問題にいたしましても、九学連の代表が来るのを一時間待ったという、それほど学生代表というものを見るならば、最後の場面で、学生部長室ですから、ふろしきを前に置いてだから、その押収した目録と押収品を照合するぐらいの良識ある計らいをなぜできなかったか。  それから第二点は、もう妥結点に達して、そうして第三者の場所に行ってそれじゃ照合しましょうと、そこまで話がついておるのに、一方的に強奪して帰った。それから第三点は、その大きな三百名の動員をもって交渉圧力をかけた。かつて東大の事件のときは、警視庁では数日間待って、そうして問題を円満に解決しておる。それだけの良識あることをやったものに比べて、この九大の場合については、あまりにも暴力的な、権力主義的なやり方だ。そういう警察行政のあり方について、これは長官の一切責任であろうと思うが、長官の意思を聞いておきたい。
  174. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) すべて警察が行動を起こしますときに、非常に威圧する態度というようなことは、極力避けるべきものであることは申すまでもございません。できるだけ納得し得る方法でやるということは、私の常に奨励、指導してきておるところです。  ただ、第一点の照合の問題、私この問題は、照合させてくれという要求があったということ、私自身は今まで聞いておりませんが、かりにそういうことがあったとしても、学校当局との間において、はっきりそのことがなされておるわけでございますから、必ずしもその必要はなかったのではないかと思うわけでございます。  それから第二の、話し合いがつきそうなところを、一方的に引き上げさせたということについても、私はそういうふうなことをやったことは聞いていない。むしろ、外から、中に閉じ込められております者を、あまりに時間が長くなるから、これを実力によって救出しようということで、部隊を出したことは事実でございますが、その間に学校当局あたりが、何回となく、自分たちが説得するからということで、実力行使を差し控えたということは、しばしばあったようでございますが、非常に性急に実力行動に出たということはないと私は考えておるわけでございます。  最後に、警察が実力を行使いたしましたのは、どうにも学校当局としても、もう説得の余地がないということの言明があって、初めて実力行動に移ったというふうに私は聞いておるわけでございまして、その点、事実の認識において相違がございますが、基本的には、お話しのように、警察がむやみやたらに、実力行使によって、たとえ法律上差しつかえないことであろうとも、無用の摩擦、あるいは圧力をかけるというようなことは、極力避けるように指導いたしておるつもりでございます。
  175. 小柳勇

    小柳勇君 今の当事者の照合の問題についても、当事者はさっきから論争があっていますから、まだ結論は出ていないが、当事者が学生代表であるということについては異論はないと思うのです。そういうものが照合によって、ふろしきを前に置きながら十数時間対立しておったということ。冒頭に、長官おられぬときに、課長質問したのですけれども、この間の、長官にかわって倉井課長がここで報告をしたことは誤りがあるし、一方的だ。従って長官はそのことを調査されたのであろうかどうかということを、私心配しながら今質問しておりますが、長官は、私ども調査したほども、まだ現地の実情について詳細に調査をしておられないように私は理解するが、長官は、詳しく現地を、たとえば警察本部長が外から見た情勢、あるいは中に入った、交渉しておる情勢など、この問題を十分把握されているものかどうか、その点を御答弁願いたいと思います。
  176. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 私といたしましては、現地からの報告を信頼せざるを得ないわけでございます。もちろんあなた方が現地について非常にこまかく双方からお聞きになったほどの詳細な調査は、私自身としていたしておりませんが、相当念を入れて事務当局で報告を徴し、疑問の点はこれをただすということをしてまとめたものが、先般倉井課長から申し上げたことだろうと、私は考えております。
  177. 小柳勇

    小柳勇君 私はこれで質問を終わりますが、九大事件ではございませんが、ほかのたとえば労働運動に対しての警察官の、多数の警察官が、機動部隊を動員して強制捜査並びに逮捕した事実がございます。御存じだと思いますが、二月二十二日の朝、神戸の港湾建設局で労働組合員四名を逮捕している。その場合に水上署百五十名の機動部隊を投入している。それから二月二十九日の朝、埼玉県の川越自動車労働組合員二十三名、これは組合員が二十四名しかいない小さな組合ですが、その二十三名を逮捕するために、埼玉県警全部管内十四警察を動員して強制捜査しておるという事実がございます。これはあとで問題にいたしますが、こういうような福岡県警における今度の九大事件のときの強制捜査も、これは県警だけの責任ではないと思います。警察庁にも、あるいは検察庁の方にも指揮を仰いでやっておるはずでございますが、全国一元に、九大事件だけではなくて、そういうことで強制捜査並びに逮捕について警察力を多数動員して、威圧的に権力的に動いておる事実があるので、そういう点を質問したいのですが、今の点、私の今言いました三点の問題については、長官は十分実情を御存じないようでありますから、いま少し、たとえば福岡県警の警備課の大隈次席とか、その他直接捜査に当たりました、あなたの方の部下職員から十分一つ事情を聴取しておいていただきたいと要請いたしまして、質問を終わります。
  178. 高田なほ子

    高田なほ子君 議事進行について。実は、この間の委員会で、長官が御退席になりましたから、事情を伺おうと思いましたが、念を押したところが、大体資料がそろっておるという倉井課長の御答弁でありました。倉井課長は、その大体そろっていると言われる資料に基づいて事件の概要について御説明をされた。それは速記録に残っておるわけであります。ところが本日この速記録をもとにして、吉田小柳委員質問をいたしましたが、この事実そのものについても、若干の違いが出てきたわけであります。また、今の小柳委員発言のことについても、さらに調査してもらいたいという御発言でありますから、私はぜひ委員長にも御善処をわずらわしたい点でありますけれども、最終的に文書をもって再度別状の御報告をしていただき、それに基づいての調査でなければ私は問題にならないと思います。でありますから、小柳委員発言に基づく内容を盛られた再調査をされ、そしてまた先ほど誤りがあるという点についても文辞をもってただす必要があると思いますので、どうか一つ文書をもってお出しいただけるようにお願いをしたいのです。委員長もまたこれについて御善処をわずらわしたいのであります。いかがでありましょうか。
  179. 大川光三

    委員長大川光三君) 委員長から警察庁の当局に申しますが、ただいま高田委員発言のように、今よく実情調査された上、追って書面をもって御報告を願いたいと思います。けだし、もうこれ以上のものはない、こういうならば、この程度でこれはこれ以上求めるわけにいかぬですが、まだ審議の過程から見ますと、前回の倉井課長の答弁は食い違ってきた。そこで本日言うのが正しいのだということで、現に前回答弁の訂正されてをおる、そういう事実もございますから、さらによく実情調査され、そうして報告を願いたいと思うのでありますが、これに関する意見を伺います。
  180. 柏村信雄

    政府委員(柏村信雄君) 委員長からの御要求でございますので、できるだけ詳細に提出をいたしたいと思いますが、ただわれわれの方の調査ということだけでなしに、御質問の方の具体的にこの点はこうなっておるはずだがどうだというようなことで個条書でもかまいませんが、そういうことでとくと調べるところを明示していただけば、なおさら正確を期し得るのではないかと思いますが、その点はいかがでございましょうか。そういうことをお諮り願えれば、なお正確を期し得ると思います。
  181. 大川光三

    委員長大川光三君) 高田委員に伺いますが、ただいまお聞きの通り警察庁長官からは、さらに実情を書面で徴する、けだし質問者の方も一つ要点を書面にしてもらいたいということですが、いかがでしょうか。調査の進行上、便宜上、この点とこの点という具体的に質問要綱をお出し願って、そうしてそれに対してお答え願うということは、結局最後的には要領を得るのじゃないでしょうか、お諮りいたします。
  182. 千葉信

    千葉信君 今、長官の言われるように真相を相当徹底して明らかにするためには、質問者の方の把握しておる状態というものもやはり警察庁当局では、その点についてはどういうふうに把握しておるかということを突き合わせて最終結論を出すのじゃなければ、なかなかほんとうの状態はわからないと思います。そういうふうにすることにして、ただし、その文書によってというお話しでしたが、私どもの方の委員諸君、寧日ない格好で仕事に追われておりますので、文書でということではなく、警察庁の方と質問者の方と適時問題ごとによって連絡の上、資料の作成をしてもらう、こういうことにしたらいかがでしょう。
  183. 大川光三

    委員長大川光三君) ただいま千葉委員の御発言のように委員長も取り計らいたいと思いまするから、さよう御了承をお願いいたします。
  184. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちょっと速記をとめて。
  185. 大川光三

    委員長大川光三君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  186. 大川光三

    委員長大川光三君) 速記を始めてください。
  187. 吉田法晴

    吉田法晴君 問題は小柳君からも御質問がございましたが、大事な点については、なお質疑がたくさん残りますが、今までの答弁で一番の問題のところだけお尋ねをして、きょうは終わりたいと思います。刑事局長から被疑者の明示はあるけれども、その被疑者のいかんにかかわらず、羽田事件なら羽田事件関係あるものは、どこでも何でも捜査できる、こういう御答弁でしたが、それだと、これは公安調査庁で学生団体の調査をやりたい、こういうことと同じになってしまう。おそらく学連なら学連に関係のあることなら、どこでもあるいはどういうものでも捜査し押収することができると、こういうことで、刑事訴訟法の建前というのは根本的にくずれてくると思うのですが、やっぱり先ほどの答弁を繰り返されますか。私は刑事局長の答弁としては、きわめて奇怪しごくな御答弁をいただいたと思うのですが。
  188. 竹内寿平

    政府委員(竹内寿平君) 先ほど委員長もおあげになりました条文をごらんいただきたいと思いますが、刑事訴訟法第百二条、ここは「裁判所は、」となっておりますが、これは捜査機関になるわけですが、「裁判所は、必要があるときは、被告人の身体、物又は住居その他の場所に就き、捜索をすることができる。」と、これが原則でございます。そして、これをやり得るかどうかは裁判所の許可にかかっておるわけであります。これがいわゆる捜索令状でございます。その令状を得ました場合には、この百二条に基づきまして、必要があるときはやり得るわけでございます。
  189. 吉田法晴

    吉田法晴君 その必要がある場合と認定をして裁判所が令状を出すわけですが、問題のときには伊達何がしという被告人の名前が書いてある。その被告人のことに関連すれば何でも捜査ができるというのじゃなくて、羽田事件関係のある場所を特定し、それから件名関係を特定してその捜査ができるとういのが、私は令状の内容だと思うのです。その令状をまあ見せてもらわなければ……。そういう特定の被疑者とそれから件名、場所等を明示した捜査令状の執行にあたって、その明示をしていない場所あるいは件名の捜査、押収がなされたとするならば、それは刑事訴訟法のとにかく誤った運用じゃないか、こういう点をお尋ねをしておるのですから、もう一ぺんそれを明らかに御答弁願いたい。
  190. 竹内寿平

    政府委員(竹内寿平君) ただいまの点は仰せの通りでございまして、この状令には場所を特定し……当然のことでございます。私が先ほど来申し上げておるのは、羽田で起こった事件で伊達君という方は宮崎大学の人だ、全然関係のない九州大学の捜査ができるかというような御質疑があったので、そういうふうに申し上げたのでございますが、もちろん、その令状には場所を特定し、押収しようとするものについての指示がなされておるわけです。その指示に沿った捜索をしなければならん、これは当然のことでございます。
  191. 吉田法晴

    吉田法晴君 特定の令状に基づいて捜査がなされ、それから押収がなされた、その押収目録も出ておるのです。これは伊達君の属しておる宮崎大学の自治会その上部団体の九学連、その関係なら捜索ができるだろう、押収ができるだろう。しかしそれ以外のものが押収されておるじゃないかということで、九州大学独自の自治会の活動、あるいは書類まで押収されたからそれは違法じゃないか、こういうことをお尋ねしたのですが、令状、押収目録等をお持ちでありませんから、今の報告といいますか、打ち合わせて出していたたく書類の中に令状の写し、それから押収目録等を御提出願った上でさらに審議したいと思います。抽象論で水かけ論になりますから……。
  192. 大川光三

    委員長大川光三君) 吉田君に申しますが、押収目録、写しの提出というよりも、先ほど千葉委員の言われたように、そういういろいろなことを打ち合わせの上で調査を進めたいということに御了承願っておきたいと思います。  ほかに御発言もなければ、検察及び裁判の運営等に関する本日の調査はこの程度にとどめたいと存じます。  以上をもって本日の審議は終了いたしました。次回の委員会の期日は追って公報をもってお知らせいたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後二時十五分散会